○
薮仲委員 それではこの問題は
大臣の
お答えで納得をいたしておきます。
大臣も合いみじくもおっしゃられたように、一人の政治家として、与党、野党、という問題ではなくして、賛成、反対ということではないと私は思います。この売上税が、本当に通産省が懸命に築いてきた、あるいは国民の英知を集めて努力してきた
日本の
産業構造にどういう影響を及ぼすのか、この点だけはしかと通産省の立場から見きわめていただいて、いわゆる大蔵省の言う税の転嫁であるとかそういうことの手続ではなく、これが
産業政策上是とできるか非とできるか、その点について十分御論議をいただきたい。私はこのことをお願いをいたしておきます。もっとしたいのですが、時間が来ましたので、ほかの問題に移らしていただきます。
大臣のところに資料が行っていると思うのですが、今の三番、四番の前に一番、二番が行っているかもしれません。大変ポンチ絵みたいな絵で恐縮なんですが、資料の二は通産省の方からいただいた資料でございます。その二をもとにしてつくったのが上の資料の一でございまして、これは私のところでつくりましたからごらんいただきたいと思うのですが、これは何を言いたいかといいますと、為替レートの急激な百四十円台突入ということに対して、
大臣も心を痛めていらっしゃると思うのです。私は、この日米の貿易摩擦というものが、為替レートを論じても
黒字は減らないんじゃないか、物事の本質をきちんとしないで、為替レートを変えれば
貿易黒字が転換される、あるいは改善されるということはある意味では錯覚に等しいのじゃないか、こういうことをきょうは
指摘したいと思うのでございます。
そこでポンチ絵をかかしていただいたのでございますが、現在の日米間の貿易の状態がどうなっているか。ポンチ絵にございますように、まずドル建てでございます。ここには為替レートを二百円、百五十円、百円と
円高ヘシフトした絵がかいてあるわけでございます。
大臣、この前提もちょっと御了解いただきたいのですが、この前提では、通産省の通関統計を私もいただきました。
日本の輸出の上位の十品目、これは自動車、ビデオテープレコーダーあるいはICの素子、こういうものが一番の主力の輸出の上位の商品でございます。これは極めて競争力が強い。いわゆるICであるとかビデオは
アメリカにおいて、例えばICなどはここに資料をいただきましたけれ
ども、DRAMで言えば、二百五十六キロビットのDRAMはシェアで八〇%から九〇%、一メガビットになってまいりますと何と九〇%が
日本のシェアを持っています。ICの問題が起きるのもむべなるかなと思うのでございますが、またVTRにしましても
日本は圧倒的に競争力が強い、これは確かだと思うのです。しかし自動車については二百三十万台という自主規制枠がはまっております。このポンチ絵の前提は何かといいますと、自動車については一定量の輸出である、そしてビデオであるとかICにしても、全く向こうが批判できないほどストレートに入っていく商品であることを前提にしております。
その前提を踏まえて、ちょっとこれを
説明させていただきます。
簡単にするために、自動車が一台一ドルといたしましょう。為替レートが一ドル二百円レートであっても、ドル建てですから間違いなく
アメリカの
企業に一ドル入ります。そのときは、一ドルで売ったものが一ドルで買われたのですから、
アメリカの貿易収支はプラス・マイナス・ゼロと出ております。
仮に為替レートを百五十円に
円高にシフトします。ドルベースですから、一ドルで自動車を売っていきますと、
円高にシフトしても一ドルは一ドルのまま
アメリカ企業には入っていきます。ところが、
日本の
企業は一ドルで百五十円しか入りませんから、これはたまらないということで、これを五十円値上げするのが二番目の段階で出ております。
日本企業は、赤字ではかなわないから百五十円を二百円に値上げします。二百円にしますと、今度は為替レートが換算率が変わってきます。一ドル百五十円ですから、車の実体は今までと何も変わらないのに、レートが変わっただけで一・三三ドルと値上がりになります。そうすると
アメリカは一・三三ドルで自動車を買う。
アメリカ企業は損したなと思うわけです。それで、このときにどうなってくるかというと、一・三三ドル
日本へ払っておりますから、貿易収支はマイナスで、貿易赤字が〇・三三出る。
三段階目は、仮にさらに百円にシフトしたとしますと、ドルベースで一ドルで売っているときには一ドルで入りますから、これは関係ありません。
日本企業は一ドルでは百円しか手元に入りませんから、たまらないから百円値上げします。そうすると二百円になります。ドル換算が一ドル百円ですから、二百円は、
アメリカに行くときは二ドルになります。
アメリカの
企業は一ドル高い品物を買うわけです。通関のところは二ドル払っておりますから、マイナス一ドルという
数字が出てまいります。
大臣、難しいことは聞きませんから、いいですか、これは何を言いたいかといいますと、例えばこれが自動車だとしますと、二百円のときも百五十円のときも百円のときも
日本は同じ自動車を売っているのです。同じ値段で売っているのです。同じ自動車を売っているのですけれ
ども、
円高にシフトしてくると、同じ自動車が同じ数量だけ向こうへ行っても、通関手続の
数字は全く同じだ。ところが、貿易収支だけは
黒字で残ってくる。だから、貿易収支が
黒字だというけれ
ども、これは
数字のトリックだ。
日本の自動車が一台こっちへ移っただけで、レートが変わっただけで——もともと自動車を二百万なら二百万という値段で円建てでやれば、これはもっと圧縮されるのです。そうすると複雑になりますので、きょうはやめます。
国内で二百万のものを仮に一ドルとして、どの円レートのときも同じように売っているのです。ところが、円がシフトされただけで貿易収支は
黒字に出てくる。
日本の
企業はその都度赤字に泣かされているのです。貿易収支は確かに
黒字ですけれ
ども、では売っている輸出業者はどうなのかというと、値段を下げて売るか、あるいは自動車のように競争力があってもう少し上乗せできれば、これは自動車ですからみんな値上げしていますが、現実は値上げができないので手取りが減って泣いているのです。
ですから、私は何を申し上げたいかというと、
円高にシフトすれば
貿易黒字が減るということは誤りです。なぜかならば、通産からいただいたこの日米の通関の資料を見てみても、主力な製品というのはほぼ一定量、
アメリカが必要ですといってどんどん行ってしまう。ですから、これは為替レートに問題があるのではない。もっとはっきり
日本の国も物を言わなければならない。これでいきますと、レートを
円高にシフトすればするほど
貿易黒字は逆にふえていきます、
日本と
アメリカの間は。それをいかにもG5だ、
G7だといってやっておりますけれ
ども、本質はそこにあるんじゃない。レートを高くすればするほど
数字的には、ここに表が示すとおり、通関の
黒字は上がってくるわけです。
日本の
黒字はふえて
アメリカの赤字はふえる。
しかもこれは、一番下の表を見てください。仮に円レートを、最初の二百円をぼんと四百円に上げちゃった、こうなると、レートだけぽんと変えて同じ自動車が行っただけでどうなるかといいますと、一ドルで
日本の
企業は四百円、
企業はほくほくです。じゃ大変だからこれを二百円に値下げしましょうといって、二百円自動車を値下げしても二百円です。二百円で安く売りますよというと、これが為替レートを通っていきますと何と〇・五ドルになる。今まで一ドルだった自動車が〇・五ドルで買えますから
アメリカの
企業もにっこり、〇・五ドルもうかった。通関でも同じように〇・五の
黒字が残るのです。
このように、今のは為替レートのトリックみたいなものである。それで、同じ自動車が行っているだけなんですけれ
ども、いかにも為替レートが
円高にシフトすれば
貿易黒字が減るという、それはどなたが言っているのか知らないけれ
ども、まあそのことは確かに
日本全体の貿易を抑制しますから、これは非常に国内景気にとってマイナスなんですけれ
ども、今
日本の主力となっている自動車とかビデオとかICとか、これがある限りこの
黒字は全く減らない。ですから、
円高にシフトすれば変わるだろうなんというそのおまじないみたいなことはやめて、もっとはっきり物を言わなければならない。
何をはっきり言わなければならないかと言えば、通産省の統計も大蔵省の統計も私はもらいました。じゃ日米の主要品目の中で何が一体輸出として強いのだろう、弱いのだろう。この
数字を見てみますと、ある意味ではがっかりするわけでございますけれ
ども、
アメリカから輸入を拡大しなさい、こう言われるわけです。最近の主要輸入品目を大蔵省からもらいました。
アメリカからどういうものが入ってくるのだろう。この中に十品目ぐらい挙がっております。ちょっと読んでみます。トウモロコシ、大豆、小麦、木材、石炭、航空機、こういうところですよ。これは幾ら貿易を拡大しろといっても、一定限度以上入ってきません。これが
アメリカからの輸入の主要品目です。幾ら為替レートをどうのこうのといって、じゃトウモロコシを今の倍食えるか、小麦を倍食えるか、あるいは石炭を倍使えといっても使える相談じゃない。もう限界があるような品物もあるわけです。
〔
委員長退席、与謝野
委員長代理着席〕
そうなってきますと、こういうことは我々ですから言えるわけでございますけれ
ども、この原因の大方は
アメリカ国内の
経済運営、あるいは
日本の国が買えるように国際競争力のあるものをつくらなければ、日米の貿易のインバランスは
円高に幾らシフトしたって何にも変わらない。そして、わずか三億ドルぐらいのICの素子がどうのこうの。金額でいったらわずか三億ドルです。それを袋たたきに遭わせるようなやり方は、決して正しい
経済運営のあり方じゃないと私は思うのです。そういう意味で、輸入をしなさいと言うのだったら、輸入できるような努力をし、
アメリカは大国としてもっと国際競争力のある品物をつくらなければならない。
また
日本としては何が必要かと言えば、
大臣もきょうも
委員会で何回もおっしゃっていますが、内需の拡大です。私も全く同感でございます。このことも後でお伺いしたいのです。それと同時に、いわゆる差益の適正な還元ということも、内需の拡大の上では非常に大事なことだと私は思うのですね。そうしますと、単なる円レートを
円高にシフトするということだけではなくて、やはりもっと
アメリカに対して物を言い、
日本の国内でも、単なる
円高にすればどうのこうのという神話のごときものはやめていただいて、本気になってこの貿易摩擦を解消するとなったら、単に円レートをやったところで全く変わらない。そうではなくて、輸入できる品物をまずやるということ、国内においては差益を適正に還元することを考える。
内需の拡大と言いますけれ
ども、私はこの内需の拡大についても、もう時間が来たようですから
大臣にいきなりお伺いしたいわけでございますが、
大臣が、まだ予算が通っていないから予算を通してくれ、こうおっしゃると思うのですね。私は、あの程度の予算ではいかがかなという感じを持っております。通産省も、
大臣のもとでGNPの一%はやらないとだめだなという暴言もなされておるようでございます。やはり今
日本が本当に内需拡大をして、国内
産業を助けなければなりません、輸出できないのですから。内需の拡大というと言葉は何かあなた任せみたいな話ですけれ
ども、内需の拡大というのは何かというと、国内の
中小企業、国内の
産業を守るために、つくったものが国内で消費できないと国内
経済はぶっ壊れてしまう。豊かな国民生活が保障できません。外の話とは違って、私は今本気になって国がこの内需拡大に——財政再建もそれは大事です。でも、私は民間を見ておって思いました。会社が倒産すると
債務は棚上げです。そして何とか会社を生き残らせようとします。国も今は、もうここまで来るとやらなければならないのは、財政再建はちょっとおいておいても、通産
大臣として内需の拡大、景気の回復、国民生活を守らなければならない。腹を据えて取り組まないと
日本の国がおかしくなる。
しかも私は、予算を通したい。でも、あそこに売上税が入っていると、私は商工の
委員としてさっきの答弁では納得できない。本当に納得できれば私だって、ここにいる野党の先生だってみんなそうだなと思うかもしれない。納得できないものがあるから反対する。下手に言っているのではないのです。理路整然と言っているのです。だから、私たちも予算は確かに通したい、でもあれば考えなければならない。また、財政再建はどこかにおいておいても
大臣に本当に国民生活、
産業を守っていただきたい、こういうことを思っております。
もっといろいろなことを言いたかったのですが、
大臣、今の為替レートの問題等含めまして、
日本の国をよくするのはやはり通産
大臣、通産
大臣が本当に腹を据えて国をよくするように施策を講じていただかなければだめだと思うのです。そういう意味で最後に御答弁をいただいて、残念ながらこれで終わります。