○妹尾
政府委員 お答え申し上げます。
テロというのはもちろん非常に長い歴史のある話でございますが、最近の傾向を見ますと、八四年、八五年とテロが数字の上では非常にふえ、それが昨年になって数の上では減少しているということはただいま
委員の御
指摘のとおりでございます。八四年三〇%、八五年四五%とふえたのが、去年は少し減ったということでございます。
それからその形態、
内容的に見ますと幾つか特徴がございまして、一つはハイジャックというものが非常に減っているということが言えます。八四年は二十七件、八五年は二十六件、去年は八件、それからことしに入ってから二件ということでございまして、ひところ非常に多かったハイジャックというものが非常に減ってきております。これは、ハイジャックの問題は特に重点的に各国で対策を
考えまして、またハイジャック
防止のための
国際協力もいろいろ
考えられる手だてを講じてきているということでございまして、私
どもとしてはその効果があらわれてきているということを期待しているわけでございまして、そうだろうと思いますし、またそうあってほしいと
考えているわけでございます。
それから、問題は別な形のテロの方でございまして、爆弾テロが非常にふえている。これはただいま御
指摘あったとおりでございまして、ヨーロッパで随分爆弾テロ事件がございました。件数にしまして去年が約四百件で、テロ事件全体の約半数を占めております。ドイツ、フランス、イタリー等各地で爆弾テロが起こりまして、非常に無差別的なものであるために無事の市民に随分
被害を及ぼして注目されたわけでございます。
ただ、その後こういう事件というのは全体の数としてはヨーロッパを中心に減ってきておりまして、数字として見ましても、去年の場合テロ事件の数は西欧では約三三%、広範に減りまして、多方中南米のテロ事件が同じように三分の一ぐらいふえているということが特徴でございます。ことしに入りましてからは西欧でテロリストが随分捕まりまして、フランスとかドイツでテロリストが逮捕されたわけでございます。他方、今度はレバノンで誘拐
人質事件というものが続発しているというのが特徴でございます。それに西欧ではやはり各国の
協力、一つは外交的なものもあったと思いますが、サミットとかECの場等を通じてテロ防圧のための
国際協力、いろいろな施策がうたわれましたし、また
協力措置もとられてまいりました。
それから各国でもいろいろな措置をとってきたわけでございまして、その中には、フランスがそれまで査免をやっていた国に対して査証を要求するといったものまで入ってくるわけでございますが、そういう一連の措置がとられた結果、ヨーロッパではテロがだんだん減ってきているというか、根っこにテロを支援する国の支援も恐らく減ってきているのではないかと見られる。それからテロリストがだんだん特定されてきて捕まったりするということでやはりハイジャックとは違う次元で、またそれよりかおくればせながらテロに対抗する努力が成果を上げてきているということが言えるのではないかと思います。
ただ、レバノンで最近
人質事件が非常に相次いで起こっているというのは、一つにはそれに対する対抗措置のような面もあるわけでございます。これで国際テロというものがだんだん鎮静化してきたので、将来余り心配しなくてよくなってきたと
考えるのは大変時期尚早だと思います。テロというのは比較的安い金でかつ簡単な手段で非常に大きな特定の政治的
目的を達成できる手段でございまして、同時にいろいろ国内的な努力とかあるいは
国際協力をやらないとなかなか防圧できませんし、かつ、それをやってもなかなか根絶しにくいというものでございますから、その根っこにあるような国家
関係、国際情勢というものはやはり問題として残っております。そういう問題についての手当ては講じながら、テロそのものについてはいかなるテロであっても断固反対するという努力を今後とも続けていくことが非常に重要であるというふうに
考えております。