○宮里
委員 政府がこれまで推進してこられた
沖縄振興開発計画の基本問題や今後の
課題などにつきましては前回お聞きいたしましたので、今回は、ただいま
議題となっております
復帰特別措置の延長問題を中心に
綿貫沖縄開発庁長官並びに
関係御当局の御所見をお聞きいたしたいと思います。
昭和四十七年五月十五日に念願の祖国
復帰が実現することになりましたとき、
沖縄県民の多くは期待と不安の交差する複雑な思いでその成り行きを見守っていました。
沖縄県民は、先刻御承知のように、
沖縄戦で
米軍に占領されて以来平和条約が発効する
昭和二十七年四月二十八日の前日までは米占領軍の占領支配下に置かれ、平和条約の発効後は同条約第三条に基づく米国の施政権下に置かれて、結局二十七年間も異民族の支配下で自治権を奪われ、基本的人権を大幅に制限されるなど、苦難と屈辱に満ちた歴史を歩んできたのでありますから、祖国
復帰そのものに異存のあろうはずはありませんでした。
しかし、
沖縄県民は二十七年間も
本土から分離され、政治、
経済、社会その他の全分野にわたって
本土と全く異なった
制度のもとで、それを基礎にして生活を営みあるいは企業活動などを行ってきたのであります。特にその間は、
沖縄独自で一国並みの立法、行政、司法の三権を運営しなければなりませんでしたので、それに必要な各種の機関を
設置するとともに、職業上必要なあるいは企業経営上必要な各種の資格試験なども独自で行い、それに基づいて
県民に各種の資格や免許などを付与し、
県民の多くがそれによって生活を営み企業活動などを行ってまいりました。
また、各種の租税
制度につきましても独自の
制度が
実施され、特に
県内企業の保護育成の面などでは、保護
関税的機能を持った特殊な物品税など幾つかの相当強力な保護措置が講じられておりました。したがって、
復帰と同時に
県民がそれまで生活や企業活動などの根拠にしてまいりましたこれらの
制度を廃止し、直ちに
本土の
制度に全面的に移行するとすれば、
県民の多くは生活の基礎を失いまた県内の各種企業も企業経営の基礎を失って、ひいては県
経済そのものにも大混乱を引き起こしかねない
状況にありました。
それに
本土は、
昭和三十年代の後半ごろから
政府の高度
経済成長政策によって
経済的に目覚ましい
発展を遂げてまいりましたが、
沖縄は長い間施政権者が軍事優先政策のもとに低賃金、低物価政策をとってきたこともあって、
県民の所得水準や企業経営の基盤
整備などの面で著しく立ちおくれております。その上、
復帰直前には
県民が長年通貨として
使用してきた米国のドルが暴落をし、いわゆる通貨危機の問題を引き起こしたことによりまして、県
経済や貿易その他の商取引にも大変な混乱をもたらしました。これらのことは当然のことながら、
県民の先ほど申し上げた不安、動揺に一層の拍車をかけることになりました。したがって、
沖縄県民は念願の祖国
復帰が実現することになったからといって、ただ喜んでばかりもおれなかったわけであります。
そこで、
県民のそのような立場や心情を考慮し、当時の琉球
政府と国との間で熱心に、しかもたび重なる協議を重ねた上で、
復帰の際には
沖縄振興開発特別措置法を制定して
沖縄の
復帰後の
振興開発計画を強力に推進することにするとともに、一連の
復帰対策を
規定した
復帰特別措置法を制定して、
復帰に伴う
制度の急激な変化によって
県民生活または県
経済に混乱や不利益を与えることのないように税制その他
県民生活の広い分野にわたって
特別措置が講じられたわけであります。
復帰の際に講じられたこれら一連の
特別措置の中には、既に
制度創設の目的を達成して廃止をされたものもあるのでありますが、
沖縄の
産業経済や
県民所得等の実情を
考えるとき、当分の間さらにこれを継続しなければならないものも数少なくありません。
そこで、ただいま当
委員会に付託された内閣提案のこの
沖縄の
復帰に伴う
特別措置に関する
法律の一部を改正する
法律案において、
原則としてさらに五年間延長すべきものとして
内国消費税関係の
沖縄県産酒類に関する
酒税の
軽減措置、
砂糖消費税の
軽減措置、
揮発油税及び
地方道路税の
軽減措置、
指定施設用輸入酒類に対する
酒税の
軽減措置など四件、
関税に関する
特別措置として、特定の
製造用原料品に対する
関税の
軽減措置、発電用の特定石油に対する
関税の免除措置、特定の消費物資に対する
関税の
軽減措置、旅客の携帯品に対する
関税及び
内国消費税の払い戻し
制度、いわゆる観光戻税
制度などの四件、合計八項目の
復帰特別措置はいずれもそのような見地からさらに
制度を継続する必要があると判断をされて提案されたものと
考えるのでありますが、そのように理解してよろしいでしょうかということであります。その点、
開発庁長官は、先ほど
提案理由説明の中でも触れておられましたが、どのようにお
考えてありますか、いま一度念のために御所見を伺っておきたいというふうに思います。