○倉成国務大臣 衆議院
安全保障特別委員会の開会に当たりまして、
我が国の
安全保障政策について、
所信の一端を申し述べたいと思います。
我が国の平和と繁栄は、言うまでもなく、
国際情勢の動向に大きく依存しており、良好な国際環環境を築いていくことは、
我が国にとって死活的な重要性を有するものであります。今日、
我が国の対外関係は、
政治、経済の両面にわたって大きな転換期にあります。今日ほど、
我が国が
国際情勢を的確に判断し、他の自由民主主義諸国との団結と協調を維持しながら、諸問題の解決に向けて適切に対処していくことが求められているときはないと思います。
我が国に対する内外の
関心や期待は日増しに強くなっております。
我が国は、二十一世紀に向けて、真の「国際国家
日本」を
建設し、
世界の平和と繁栄に積極的に貢献していかなければなりません。私も、外交の衝に当たるものとして、内外の期待にこたえるべく、できる限り
努力する決意であります。
最近、米ソ
軍備管理交渉をめぐって活発な
動きが見られることは御承知のとおりであります。核の廃絶は人類の悲願であります。他方、今日の
世界の平和と安全は核を含む力の均衡と抑止により維持されているというのが冷厳な現実であります。かかる現実を踏まえ、具体的な成果を求めて一歩一歩着実に
努力を積み重ねていくことが、結局、核
軍縮への近道であると思います。
我が国は、今後とも、
我が国を含む自由民主主義諸国全体の
安全保障を念頭に置きつつ、米ソ間の
軍備管理交渉促進のため、他の西側諸国とも協調しながら、米国の交渉
努力を積極的に支援してまいる所存であります。
東西関係の改善のためには、
我が国としても東側諸国との対話を行い相互
理解を深める
努力が重要であります。昨年八年ぶりに、二度にわたり開催された日ソ外相間定期協議において、領土問題を含む平和条約交渉が再開され、さらに、これを継続することが合意され、また、最高首脳レベルも含めて日ソ間の
政治対話の一層の強化につき合意を見たことは、今後の対ソ
政策を進めるに当たって重要な第一歩であったと考えます。また、本年一月、中曽根総理が、
我が国総理として初めて東西関係の接点に位置するフィンランド、東ドイツ、ユーゴスラビア及びポーランドを訪問し、各国首脳との間で、相互
理解及び友好関係の増進を図るとともに、緊張の緩和と東西間の
政治対話の進展に向けてお互いに
努力することについて意見の一致を見たことは有意義であったと考えます。
我が国が、自由民主主義諸国の一員であるとともに、アジア・太平洋地域に位置する国として、この地域の平和と繁栄に寄与することは、
我が国の安全にとっても不可欠であります。そのため、今後とも、関係諸国の
理解を得ながら、
我が国にふさわしい役割を果たしていく所存であります。朝鮮半島における緊張緩和、カンボジア問題の
政治解決やイラン・イラク紛争の早期平和的解決のための環境づくり、アフガニスタンからのソ連軍の全面撤退を含む
政治解決等に向けて、できる限りの
努力を続けていく考えてあります。
開発途上地域の安定と発展は
世界の平和と繁栄にとって不可欠であります。今や
世界有数の経済力を有する
我が国にとって、これら地域への経済協力を拡大していくことは重要な国際的責務であります。現在、第三次中期目標を掲げ、
政府開発援助の拡充に努めておりますが、今般、本目標につき、少なくとも七カ年倍増目標を二年繰り上げて実施すること等を明らかにしました。また、量的拡大にとどまらず質的改善も加えつつ、各国のニーズに合致した適切かつ効果的、効率的な援助を実施してまいりたいと考えております。
我が国は、以上に述べましたように積極的な外交により、平和で安定した国際環境を維持し、危機の発生を未然に防止することに努めております。同時に、脅威が現実化した場合に対処するための備えを行っておくことも肝要であります。こうした備えを行ってこそ脅威が現実化することを抑止することができます。
我が国は、自由と民主主義という
基本的価値観を共有する米国との
安全保障体制を堅持し、
必要最小限度の
防衛力を
整備することにより、いかなる態様の侵略にも対応し得る体制を保持し、もって侵略を未然に防止することとしております。
日米安全保障体制を円滑かつ効果的に運用し、その信頼性を高めることは、
我が国の
安全保障の基盤であります。現在、「日米
防衛協力のための
指針」に基づく研究の推進、共同訓練の実施、対米武器技術供与の枠組みの
整備などに代表される日米
防衛協力は着実に進められております。昨年九月には、SDI研究参加問題につき
政府の方針を決定し、現在、参加を円滑なものとするため米国
政府と協議を進めているところであります。
政府は、空母艦載機の夜間着陸訓練場の確保や米軍家族住宅の
建設について地域社会の
理解を得るべく
努力してきておりますが、これは
日米安全保障体制の基礎をなす米軍の
我が国駐留を効果的なものとするために極めて重要であります。個人の自由と尊厳に立脚する民主主義を守り、繁栄した市民生活を確保していくことは、諸般の
努力を通じて
日米安全保障体制を維持することによって初めて可能となります。
最後に、この
委員会に御出席の
皆様方は、
安全保障問題に精通され、多年にわたってこれに真剣に取り組んでこられた方々であります。今後とも、
皆様の御指導と御
鞭撻を賜り、引き続き外務大臣の重責を無事果たせますよう、
皆様の御協力をお願い申し上げます。(拍手)