○井上計君 それでは私の
意見を交えてお伺いをいたしたい、かように
考えます。
去る十月二十四日でありますけれども、新聞にこのような報道がなされておりました。
中国の
胡耀邦総
書記が、訪問した作家の山崎豊子さんに対して「
日本には誤国主義者がいる。」、この誤国主義というのは国を守る主義者じゃなくて、誤った主義者、誤国主義者が多数いるというふうなことを言われたようであります。私もこの誤った誤国主義というのは初めて耳にする言葉でありますけれども、それは、四十数年前に戦争をしかけた連中は売国主義じゃなくて誤国主義者である。ところが、最近は愛国主義のつもりでも、物事を短絡的に
考える誤国主義者が
日本におる。例えば蒋介石総統の顕彰会を開いたりする人たちは誤国主義者である、こういうふうなことを山崎豊子さんに話をされて、今度賓客として見えるときにこのようなことを
総理に言うことは失礼だから、あなたから
総理にお伝えをするようにと、このような発言がなされたということが各紙に報道を大きくされておるわけであります。
あえて、このことを
総理が山崎豊子さんからお聞きになったかどうかということについてはもうお伺いいたしませんけれども、私は
胡耀邦総
書記のこの発言は、
中国首脳の発言としてまことに遺憾、残念である、こういうふうな感じを強くいたしておるわけであります。仮に立場を逆にした場合、我々がこのようなことを発言したら
中国の首
脳が何と言うであろうかということを
考えますときに、私は抗議とは言いませんけれども、もっとこれらのことについて、いわばお互いの
国民の信条等の自由、これらについてまで踏み込んでくることはいかがであろうか、こういう感じを特に強く持っておるわけであります。
したがって、私はこの機会に私の
意見としてぜひお聞きをいただき、またテレビを通じて
国民の皆さん方にも御理解をいただきたい、あるいはまた
中国の首脳にも御理解をいただきたいとも
考えるわけでありますが、蒋介石総統の顕彰会ができまして、私もいわばこの設立発起人の一人であったわけであります。
そこで、蒋介石総統が終戦のときに
日本に示していただいたいわば対日四大
政策は非常に温情であろう、こう私は信じております。また、事実そうであったわけであります。すなわち、恨みに対し徳をもって行うというこの布告のもとに、四つの大
政策を
日本に示していただきました。その
一つは、当時
中国大陸に残留しておった軍隊及び民間人二百数十万人、約二百五十万人と言われておりますが、これを半年以内に無条件で送還をしてもらったこと。さらには、天皇制廃止ということが事実上連合国側で決まっておりましたのを反対して、天皇制護持を明確に主張して、またこれを実現してもらったこと。さらには、
我が国に対して当時八百億ドルあるいは六百億ドルと言われておりましたいわば
中国に対する戦争によって与えた被害に対する賠償権、賠償を取ることによって
日本は絶対に再起できないということでこれを放棄してもらったこと。そうしてもう
一つ重大なことは、
日本の占領
政策、当時は分割占領が決定しておったわけでありますが、北海道はソ連、四国、
中国は
中国、本州はアメリカというこの分割占領
政策に反対をして、そうしてアメリカ一国の占領
政策になった。おかげで現在のいわば
朝鮮半島やドイツのような分裂国家にならないで済んだということ。あれこれ
考えるときに、現在の平和、そうして自由、そして豊かさ、これはそのおかげであるということを感じますときに、純粋にその恩義に対して我々が感謝をするという会をつくることが果たして国を誤った主義であるかどうか。私はそのようには
考えられないのであります。
したがいまして、我々はこのことについて、
胡耀邦総
書記がどういう
考え方か知りませんけれども、あえてこのことを純粋に
日本人として、また人間として感謝とそして恩に報いるというふうな発露であるということをぜひ
中国の首脳にも理解をしていただいて、いわばこのような思想や良心の自由を侵してはならないという、
我が国の憲法に明記されておるわけでありますから、これらのことを十分御配慮いただきたいし、また今後も
総理並びに
外務大臣は外交
政策の中でやはりそれらのことについても配慮しながらお
考えをいただきたい、このように思うわけであります。
このことについて
総理の御所見をお伺いすればいいんですけれども、
総理のお立場上、また現在の
中国あるいは
韓国等々の問題からしてまた別の問題が起きてもいかがと、このように案じますので、あえて御答弁はいただきませんが、それらのことについては明確にしておくべきだ。事実は事実として我々が
国民に知らせ、あるいはまた
国民に知ってもらい、そこで現在の
我が国の
発展があることは、いろんな理由がありますけれども、その中の
一つの大きな理由はそうである、このようなことも明確にすべきであろう、このように私の
意見としてお聞き取りをいただきたい、こう思うわけであります。