○野田哲君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま
議題となりました
防衛庁設置法及び
自衛隊法改正案に反対の討論を行います。
世界じゅうの平和を願う諸
国民の注目と
期待を
集める中で行われたレイキャビクにおける米ソ首脳会談は、残念ながら合意を見るに至りませんでした。核兵器の削減、軍縮に向かう重要なステップを
期待していた世界各国に大きな失望をもたらしました。この決裂の原因は、
アメリカの
レーガン大統領のSDIへの固執によるものであります。レイキャビク後の
情勢は、
アメリカのSALTIIを無視した百三十一機目のB52戦略爆撃機の新規配備に端的にあらわれているように、核軍拡のエスカレート、米ソの対立と緊張が再び激化する
方向に向かいつつあります。
このような
情勢の中で、
アメリカの世界戦略に深くコミットした
日本の自衛隊が、その
規模と役割を
拡大することに私たちは強く反対するものであります。
アメリカの対ソ戦略として極東第二戦線論という戦略が提起されています。
アメリカ国防総省のリチャード・ソロモン
政策企画局長は、この極東第二戦線論について次のように述べています。
欧州でソ連との間に戦争が起きれば、戦場はソ連側が望む場所だけに限定されないことをソ連に思い知らせなければならないであろう。我々はアジアで第二の戦線を開く準備を怠ってはならない。我々には
日本、韓国、タイ、フィリピン、オーストラリアという強力な同盟国がある。
このように
アメリカの戦略の中では
日本の自衛隊はアジアにおける第二戦線を担う重要な軍事力として、また
日本列島はその重要な基地として位置づけられているのであります。最近の在韓米軍まで加えた米軍との合同演習の繰り返しやその
規模の
拡大には、このような背景があることの危惧を強く感じるものであります。
毎年
拡大を続ける
日本の軍事力について、
アメリカ国防総省のアーミテージ次官補は次のように評価しています。
日本の自衛隊は十三個師団の現役師団を保有している。米軍はこれに比較して十七個師団である。モンタナ州よりも狭い
日本の領土で十三個師団というのは強い印象を受ける。
日本の海上部隊は五十隻以上の最新型駆逐艦を保有しており、この隻数は西太平洋とインド洋の全域を担当している第七艦隊の駆逐艦隻数の二倍以上に当たる。
日本の海上航空部隊は、保有中と発注分を合わせるとP3Cオライオンを百機所有する。これは我々が保有している最新式の対潜用航空機である。この機数は
アメリカ第七艦隊に配備されているP3Cの三倍以上である。
日本の航空自衛隊は
アメリカ本土防衛担当の米空軍部隊と同数の迎撃機を既に保有し、一九九〇年までに我々の最新型戦闘機F15イーグル二百機が第一線機として配備される。
このように評価しています。
日本の国土を守るための必要
最小限度の自衛力と言っていた自衛隊が、
アメリカの国防総省からさえ、このような評価を受ける戦力を持つに至っているのであります。そしてその戦力が、
アメリカの同盟国として対ソ戦略の一翼を形成していることを指摘し、その
拡大強化に強く反対するものであります。
今からちょうど十年前、三木内閣のもとで防衛計画の大綱が策定されました。その今と同じ自由民主党内閣のもとで策定された防衛計画の大綱でさえ、
実施上の留意
事項として「そのときどきにおける
経済財政事情等を勘案し、国の他の諸
施策との
調和を図りつつ」行うと明記し、その具体的な歯どめとして、
防衛費は
GNPの一%以内と定めたのであります。
ところが、現在はどうでしょうか。
経済財政事情を勘案し、国の他の諸
施策との
調和が図られていると言えるでしょうか。昨年、一昨年とお年寄りの生活のよりどころである年金
制度が大きく改悪されました。そして今、さらに追い打ちをかけるように、
老人保健法の改悪によってお年寄りの医療費の
負担が大きくふやされようとしています。
政府の誤った
経済政策によって、造船、炭鉱、製鉄を初め多くの製造業で閉山や工場の閉鎖、操業
短縮が相次ぎ、国鉄の分割・民営による影響も含めて
雇用不安が大きく広がっています。
百四十兆円を超える
国債残高が重くのしかかっている厳しい
財政事情によって、すべての
政策分野で
予算要求はマイナスあるいはゼロシーリングが続いている中で、自衛隊の
予算だけが毎年六%、七%とふえ続ける、このような状態が防衛計画の大綱にいう「
経済財政事情等を勘案し、国の他の諸
施策との
調和」を図っていると言えるでしょうか。本当に
経済財政事情を勘案し、国の他の諸
施策との
調和を図るのであれば、自衛隊の定員増加を取りやめ、巨額を要する新規装備を含めた十八兆四千億円もの
経費を必要とする
中期防衛力整備計画を撤回すべきであります。
軍事力が大きくなり、軍事同盟の度合いが深まれば深まるほど、その軍事力をフルに運用し、軍事同盟関係を
効果的に運用するために国内体制の再編成に動くのは、今までの歴史が教えているところであります。
四十年前の
我が国の歴史はそれについて次のようなことを私たちに教えています。
国会審議の土俵をできるだけ狭くし、審議を形骸化する。首相官邸の権限を強化し、
政策の決定過程をトップダウン方式にする。国家
予算の策定に当たって、
軍事費関係を
聖域扱いにする。軍事、外交の重要部分を秘密扱いにする。
地方自治や教育の自主性を否定し、国家管理を強める。
国民の権利を守ることより軍事力の配置や行動を優先する。これはかつて
日本が大きな誤りを犯したときにとられた国内体制であります。私たちにとってはわずか四十年前の教訓であります。
今、この歴史の教訓を振り返りながら、この四年間、
中曽根内閣が
行政改革の名で進めてきた、またこれから進めようとしている諸
改革を見るとき、多くの事柄がその軌を一にしていることを指摘し、反対の討論を終わります。(
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