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1986-10-29 第107回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十九日(水曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第七号     ─────────────   昭和六十一年十月二十九日    午前十時 本会議     ─────────────  第一 日本国有鉄道改革法案旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案新幹線鉄道保有機構法案日本国有鉄道清算事業団法案日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案鉄道事業法案日本国有鉄道改革法等施行法案地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案日本鉄道株式会社法案(参第一号)、日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案(参第二号)及び日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案(参第三号)(趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 藤田正明

  3. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 日本国有鉄道改革法案旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案新幹線鉄道保有機構法案日本国有鉄道清算事業団法案日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案鉄道事業法案及び日本国有鉄道改革法等施行法案、以上七件につきまして、その趣旨の御説明を申し上げます。  初めに、日本国有鉄道改革法案につきまして御説明申し上げます。  日本国有鉄道は、昭和二十四年日本国有鉄道法施行によりいわゆる公社として発足し、自来我が国輸送の大宗を担い国民生活の向上と国民経済発展に大きな役割を果たしてまいりました。  しかしながら、昭和四十年代のモータリゼーションの急速な進展、航空輸送網の飛躍的な発達の中で、国鉄の担う鉄道輸送我が国交通体系の中で次第に独占的地位を失い、これとともにその経営も極めて厳しい環境に置かれるに至ったのであります。すなわち昭和四十年代から国鉄経営は年々悪化を続け、これに歯どめをかけるべく四次にわたり策定された再建計画も十分な効果を上げることができず、その結果昭和六十一年度末における累積欠損額は十五兆八千億円もの巨額に達する見込みである等その事業経営が破綻するに至っております。このため、国鉄事業体制国民期待にこたえ得る体制に再生することが喫緊の課題となっているのであります。  このような状況を踏まえ、昨年七月国鉄再建監理委員会から「国鉄改革に関する意見」が提出されました。この「意見」では、現行公共企業体による全国一元的経営体制のもとにおいては事業の適切かつ健全な運営確保することが困難であるとの認識のもとに、いわゆる分割民営化基本として国鉄改革を実現することとし、そのための具体的な方策を提言しております。  政府としては、この「意見」に示された方向こそ今日の国鉄事業危機に対処し、国民期待にこたえる最善の道であると信ずるものであります。  本法律案は、以上のような認識のもとに、国鉄経営している鉄道事業等に関し輸送需要動向に的確に対処し得る適切かつ健全な運営体制を実現するべく、これら事業経営形態について分割民営化基本とした抜本的な改革実施するため、その基本的事項を定めるものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、日本国有鉄道による鉄道事業等に関し効率的な経営体制を確立するため、その経営形態の抜本的な改革についての基本的な方針に関し、まず、六の旅客鉄道株式会社による旅客鉄道事業引き継ぎ新幹線鉄道保有機構による新幹線鉄道一括保有及び貸し付け、日本貨物鉄道株式会社による貨物鉄道事業引き継ぎなど日本国有鉄道事業等をそれぞれ適切な法人に引き継がせること、次に、北海道、四国及び九州の各旅客鉄道株式会社経営の安定を図るための基金を置くものとすること、また、日本国有鉄道日本国有鉄道清算事業団に移行させ、資産債務等処理及び職員の再就職促進のための業務を行わせること、さらに、国は、日本国有鉄道清算事業団債務償還等の円滑な実施に関する基本的な方針を策定するとともに、これに従って必要な助成等措置を講ずるものとすること、及び、国は、日本国有鉄道改革実施に伴い一時に多数の職員が再就職を必要とすることとなることにかんがみ、再就職機会確保及び再就職援助等のための特別の措置を講ずるものとすることなどについて定めることとしております。  第二に、日本国有鉄道改革実施のため、運輸大臣による日本国有鉄道事業等引き継ぎ等に関する基本計画の策定、日本国有鉄道による実施計画作成承継法人職員採用日本鉄道建設公団からの資産債務日本国有鉄道への承継等について所要規定を設けることといたしております。  第三に、日本国有鉄道改革昭和六十二年四月一日に実施するものとし、同日において日本国有鉄道法及び日本国有鉄道法施行法廃止することとしております。  なお、本法律案につきましては、衆議院における修正により、「政府は、国会に対し、昭和六十二年度以降五箇年間の各年度における日本国有鉄道改革に関する施策実施状況を報告しなければならない。」こととされております。  次に、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、日本国有鉄道改革法に定める方針に従い、六の旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社設立し、鉄道事業に関し、輸送需要動向に的確に対応し得る適切かつ健全な運営体制を実現しようとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、北海道旅客鉄道株式会社東日本旅客鉄道株式会社東海旅客鉄道株式会社西日本旅客鉄道株式会社四国旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社は、旅客鉄道事業及びこれに附帯する事業経営することを目的とする株式会社とし、日本貨物鉄道株式会社は、貨物鉄道事業及びこれに附帯する事業経営することを目的とする株式会社としております。  また会社は、運輸大臣認可を受けて自動車運送事業その他の事業を営むことができることとしております。  第二に、東日本旅客鉄道株式会社東海旅客鉄道株式会社西日本旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社について社債発行限度特例を設けるとともに、会社社債権者会社財産に対する先取特権を認めることとしております。また会社監督等に関し、新株の発行社債の募集、長期借入金代表取締役及び監査役選定等決議事業計画、重要な財産の譲渡、定款の変更等決議等について運輸大臣認可を受けなければならないこととしております。  第三に、北海道旅客鉄道株式会社四国旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社経営安定基金を置くこととし、その管理及び取り崩しの制限等について定めることとしております。  第四に、会社設立に際して発行する株式の総数は日本国有鉄道が引き受けるものとし、会社の成立は日本国有鉄道法廃止のときとしております。  また政府は、会社設立後五年間を限り、国会議決を経た金額範囲内において会社社債について保証契約をすることができることとし、当該保証契約をした社債資金運用部資金等を運用することができることとしております。  次に、新幹線鉄道保有機構法案について御説明申し上げます。  本法律案は、日本国有鉄道改革法に定める方針に従い、新幹線鉄道保有機構設立し、旅客鉄道株式会社経営基盤均衡化及びこれらの施設に係る利用者負担適正化を図るため、新幹線鉄道に係る鉄道施設を一括して保有し、これを旅客鉄道株式会社に貸し付けることとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、新幹線鉄道保有機構は、新幹線鉄道我が国基幹的輸送機関として国土の均衡ある発展に果たしている役割にかんがみ、新幹線鉄道経営する旅客鉄道株式会社経営基盤均衡化利用者負担適正化を図るため、当該新幹線鉄道を一括して保有し、貸し付けることを目的とする法人とし、新幹線鉄道に係る鉄道施設旅客鉄道会社への貸し付け、大規模災害復旧工事実施及びこれらに附帯する業務を行うこととしております。  第二に、機構はその保有する新幹線鉄道施設旅客鉄道会社に有償で貸し付けることとし、会社はこれを借り受けるものとしております。また貸付料の年額及び貸付期間については、この法律及び運輸省令で定める基準、方法によることとしております。  第三に、旅客鉄道株式会社は、借り受けている新幹線鉄道施設について大規模災害復旧工事を行うことについて機構に申し出ることができることとしております。  第四に、政府は、国会議決を経た金額範囲内において機構長期借入金または債券に係る債務について保証契約をすることができることとしております。  第五に、機構監督等に関し、事業計画借入金業務方法書作成利益及び損失の処理償還計画、重要な財産処分等について運輸大臣認可を要することとしております。  第六に、機構は、東日本旅客鉄道株式会社意見を聞いて、東北新幹線の建設中の区間の建設を行うこととしております。  次に、日本国有鉄道清算事業団法案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、日本国有鉄道改革法に定める方針に従い、日本国有鉄道日本国有鉄道清算事業団に移行させ、その資産債務等処理するための業務等を行わせるとともに、臨時に、その職員の再就職促進を図るための業務を行わせることとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、日本国有鉄道清算事業団は、旅客鉄道株式会社等による日本国有鉄道からの事業等引き継ぎ並びに権利及び義務承継等の後において、国鉄長期債務等償還日本国有鉄道資産処分等を適切に行い、もって改革法に基づく施策の円滑な遂行に資するとともに、臨時に、その職員のうち再就職を必要とする者についてその促進のための業務を行うことを目的とする法人としております。  第二に、事業団資産処分審議会を置き、資産処分業務に関する基本的な方針、重要な資産処分等についてその意見を聞かなければならないこととしております。  第三に、事業団は、その目的を達成するため、国鉄長期債務等償還資産処分、その所有する土地に係る宅地の造成等業務及び臨時職員の再就職促進のための業務等を行うこととしております。また事業団は、主務大臣認可を受けてその業務の円滑な遂行に資するために投資することができることとし、さらに、その土地処分について公正かつ適切な実施確保するため、一般競争入札方法に準じた方法等によらなければならないこととしております。  第四に、政府事業団債務償還等の確実かつ円滑な実施を図るものとし、このため、事業団債務償還等に関する基本的な方針を定め、これに従い予算の範囲内において補助金等を交付し、またはその他の援助をするものとしております。また事業団債務償還等を確実かつ円滑に実施するための償還実施方針を定め、運輸大臣の承認を受けなければならないこととし、また資産効果的処分その他の措置により必要な資金確保に努めなければならないこととしております。  第五に、政府国会議決を経た金額範囲内において事業団債務について保証契約をすることができることとし、また事業団監督に関し、事業計画借入金等について運輸大臣認可を要することといたしております。  第六に、日本国有鉄道日本国有鉄道法廃止のときにおいて事業団になるものとするとともに、この法律施行に伴う経過措置に関し必要な事項について定めることとしております。  次に、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、日本国有鉄道改革法規定による日本国有鉄道改革を確実かつ円滑に遂行するための施策実施に伴い、一時に多数の再就職を必要とする職員が発生することにかんがみ、これらの者の早期かつ円滑な再就職促進を図り、その職業の安定に資するため、当該改革前においても日本国有鉄道職員のうち再就職希望する者について再就職機会確保等に関する特別の措置 を緊急に講ずるとともに、当該改革後において日本国有鉄道清算事業団職員になった者のうち再就職を必要とする者について再就職機会確保及び再就職援助等に関する特別の措置を総合的かつ計画的に講ずることとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、国鉄退職希望職員に関する措置として、まず国は、再就職促進方針を定めるとともに、国、特殊法人等及び地方公共団体による職員採用、国による事業主団体に対する協力要請日本国有鉄道による関連事業主に対する雇い入れ要請等の再就職機会確保に関する措置を講ずること、また公共職業安定所による職業紹介等及び国による日本国有鉄道に対する助言、指導等国鉄退職希望職員の再就職援助等に関する措置を講ずることを定めることとしております。  第二に、清算事業団職員に関する措置として、まず国は、再就職促進基本計画を、三年内にすべての職員の再就職が達成されるような内容のものとして策定するとともに、清算事業団において、毎事業年度、再就職促進基本計画内容に即して、実施計画を策定すること、  次に、国、特殊法人等及び地方公共団体による職員採用、国による事業主団体に対する協力要請清算事業団による関連事業主に対する雇い入れ要請等清算事業団職員の再就職機会確保に関する措置を講ずること、さらに清算事業団による教育訓練職業紹介等業務実施国等による職業訓練職業紹介等に関する措置及び清算事業団に対する援助並びに雇用促進事業団による援護業務実施等清算事業団職員の再就職援助等に関する措置を講ずることを定めることとしております。  第三に、本法律案は、昭和六十五年四月一日限り、その効力を失うこととしております。次に、鉄道事業法案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、国鉄改革関連法案の一環として、日本国有鉄道分割民営化されることに伴い、現在日本国有鉄道の行っている鉄道事業民営鉄道事業となることから、地方鉄道法廃止し新たに鉄道事業に関する一元的な法制度整備することにより、鉄道等利用者利益を保護するとともに鉄道事業等の健全な発達を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、日本国有鉄道改革後の新体制に対応するとともに、鉄道に対する投資を円滑にし、鉄道事業の今後の発展を期するため、鉄道経営と所有の分離を認め、免許の種別を第一種鉄道事業、第二種鉄道事業及び第三種鉄道事業に区分して定めること等鉄道事業免許について所要規定を設けることとしております。  第二に、安全面に十分配慮しつつ現行地方鉄道法と比較して大幅に規制の緩和、手続簡素化を図った上で、工事施行認可、列車の運行計画届け出等について所要規定を設けることといたしております。  特に技術上の規制については鉄道事業者一定の要件を満たす設計管理者を選任した場合には、工事施行認可及び車両の確認について、認可制届け出制にする等大幅に簡略化された手続によることとしております。  第三に、運賃及び料金について認可を受けること、一定範囲の割引については届け出をもって足りるものとすること等について、所要規定を設けることとしております。  第四に、運輸に関する協定の届け出運行管理業務等管理の受委託、事業の譲渡譲り受け、事業休廃止等許可または認可事業改善命令免許の取り消しまたは失効等について、所要規定を設けることとしております。  第五に、索道事業経営許可専用鉄道等の設置の届け出等について所要規定を設けることとしております。  第六に、運輸大臣が行う鉄道施設または索道施設検査の全部または一部を、指定検査機関にも行わせることができるものとすること等について所要規定を設けることとしております。  最後に、日本国有鉄道改革法等施行法案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、日本国有鉄道改革法等六本の法律施行に関し必要な事項を定めるとともに、これらの法律施行に伴う関係法律整備等を行い、国鉄改革の円滑な実施改革後の新たな法体系整備を図ることとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一に、日本国有鉄道改革法等施行のための措置として、旅客会社及び貨物会社日本国有鉄道から引き継いだ鉄道事業その他の事業について関係事業法に基づく免許等を受けたものとみなすこと等会社日本国有鉄道からの権利及び義務承継に伴う所要経過措置を設けることとしております。  第二に、日本国有鉄道法廃止に伴い、日本国有鉄道昭和六十一年度の決算の処理に関する事項その他の事項について所要経過措置を設けることとしております。  第三に、日本国有鉄道改革法等施行に伴い、会計検査院法等計百五十二件の関係法律について廃止または規定整備等を行うとともに、これに伴い所要経過措置を設けることとしております。  以上が日本国有鉄道改革法案旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案新幹線鉄道保有機構法案日本国有鉄道清算事業団法案日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案鉄道事業法案及び日本国有鉄道改革法等施行法案趣旨でございます。(拍手)     ─────────────
  4. 藤田正明

  5. 葉梨信行

    国務大臣葉梨信行君) 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案趣旨について御説明申し上げます。  この法律案は、日本国有鉄道経営形態改革及び鉄道事業法の制定に伴い、地方税制について所要改正を行うものであります。  以下、その概要について御説明申し上げます。  第一に、地方税法改正であります。  日本国有鉄道経営形態改革の円滑な実施に資するため、旅客鉄道株式会社等日本国有鉄道から承継した固定資産に係る固定資産税課税標準特例措置等を講ずるとともに、日本国有鉄道清算事業団の本来の事業の用に供する不動産に係る不動産取得税非課税措置等を講ずることとしております。  第二に、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律改正でありますが、日本国有鉄道有資産所在市町村納付金及び日本国有鉄道有資産所在都道府県納付金に係る制度廃止することとしております。  以上が地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。(拍手)     ─────────────
  6. 藤田正明

    議長藤田正明君) 村沢牧君。    〔村沢牧登壇拍手
  7. 村沢牧

    村沢牧君 私は、日本社会党代表して、ただいま議題となりました日本鉄道株式会社法案日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案並びに日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案について、その提案理由概要について御説明申し上げます。  今、百十余年、国民とともに歩んできた国鉄が、二十一世紀を展望して、国民共有財産としての公共交通として維持発展ができるのか、それとも採算性を第一義として、公共交通役割を否定した分割民営になるのか、重大な岐路に立っています。現在、国鉄が深刻な危機にあることはたれしもが共通に認識しているところであります。それだけに重要なことは、その危機内容、よって来る原因を正しく分析し、それをどう打開すべきかということを慎重かつ徹底して審議をし、国民合意再建案をつくることであります。かりそめにも目先の政治的日程を優先させ、国民の疑念に答えず、多数の力で政府案を強行成立させようとするようなことは、国家百年の計を誤らせるものであり、絶対に容認することができません。  国鉄経営機能雇用の三つの極めて重大な危機に陥った経緯を見るとき、歴代自民党政府政治的責任は免れません。政府自民党は、国鉄危機の主たる原因を、人格を持たない公社制という制度になすりつけていますが、政府は、国鉄経営健全化のための責任を果たしてきたのか、このことの反省がなくては真の国鉄改革はできないのであります。  先ほど提案された政府提出法案内容に対して、今国民の皆さんから、完全民営化による公共性の喪失について、また退職職員雇用対策や年金問題について、旅客会社を六社にすることを初め国鉄を二十以上もの事業体分割すること、長期債務処理について巨額国民負担の行方、資産処分のあり方、運賃安全性地方線への不安等々、数多くの批判や疑問が出されています。そしてそのことの解明を見ぬまま、衆議院で我が党が慎重審議を強く要請したにもかかわらず強引に採決し、本院に送付されたことは全くもって許しがたいのであります。  さらに問題なのは、この間関係法案等審議も見ぬ前から、来年四月一日の国鉄分割民営化が既成事実化され、特に全国国鉄の現場では異常な事態になっていることであります。客観性を欠いた判断で職員人材活用センターに配置し、人権無視首切り対象者の選別、国労つぶしが行われ、多数の自殺者さえ生んでおります。このような職場環境の中からは、決して明日に希望を持ち、職員が一体となって国鉄改革に邁進する情熱は生まれません。これを打開することこそ、国鉄改革の前提であり、緊急課題であります。このような意味から我が党は、政府案に強く反対し、国鉄危機を打開し、真に国鉄国民共有財産として再生させる、いわば国民の側からの改革プログラムとしての最善法案提案するものであります。  次に、我が党の提案基本的な考え方を六つの重点として申し上げます。  第一点は、国鉄が担ってきた公共的機能維持発展させるために、国の責任でその機能を果たす新事業体設立することであります。公共性の堅持を抜きにして国鉄の将来を考えるのは根本から誤っているからであります。  第二点は、分割ではなく、地方交通線を含む全国ネットワークを維持すること、そのために新事業体国鉄資産事業のすべてを引き継がせることであります。このことによって分割によるデメリット、国民の不安をなくすことになります。  第三点は、国鉄危機原因となってきた政府の干渉、制約、無理な計画負担の押しつけを排除し、経営自主性と健全な経営を全面的に確保し、事業分野の拡大を保障するために株式会社形態をとるとともに、国民各層代表で構成する経営委員会を設置することであります。  第四点は、公共性確保をするために必要な費用は基本的に国が負担あるいは補助することとしたことであり、多くの諸外国で現に行われていることを当然我が国でも実行しようとするものであります。  第五点は、累積債務処理について、国の政策の失敗によって生じた債務は新事業体と切り離し国の責任処理することであります。  第六点は、国鉄職員はすべて新事業体引き継ぎ、労使協議によって適正人員を定め、退職希望者の生活と職業確保するため、新事業体と国の責任において必要な措置をとることとしております。これは政府提案改革法二十三条による選別、差別の方法とは全く逆であり、職場の異常な状況と失業の不安を解消し、安定した労使関係と雇用確保を目指すものであります。  次に、各法律案概要について御説明申し上げます。  まず、日本鉄道株式会社法案について御説明いたします。  第一に、日本鉄道株式会社は、国鉄事業承継し、全国的な鉄道事業並びにこれに関連する自動車運送事業及び連絡船事業を本来の業務として経営することを目的として設立する株式会社とし、これらのほか必要な事業を営むことができることといたしております。  第二に、会社は、我が国基幹的輸送機関である鉄道全国ネットワークによる輸送その他の公共的輸送を担う企業体として、国及び地方公共団体が中心となって進める総合交通体系の整備確立に寄与し、もって公共の福祉の増進と国民経済発展に寄与する責務を有することといたしております。  第三に、会社には、本社のほか、全国七ブロックにそれぞれ支社を置き、各支社ごとに、地域の輸送需要に適切に対応した効率的な事業運営が行われるようにするため、支社に対して大幅に権限を委譲する分権化を図ることといたしております。  第四に、政府は、会社発行済み株式総数の十分の七以上を保有していなければならないものといたしております。  第五に、本社に経営委員会を置き、会社経営基本方針及び事業計画等の業務執行に関する重要事項は、経営委員会議決を経なければならないこととするとともに、支社にもそれぞれ地方経営委員会を置き、業務区域内の重要事項をそこでも議決することといたしております。  第六に、政府は、会社債務に関する保証契約及び事業資金の無利子貸し付けをすることができることとするとともに、鉄道新線の建設費、災害復旧費を補助することができることといたしました。また政府は、当分の間、国民生活にとって必要である地方鉄道営業線であって、収支均衡を確保することが困難であると認められるものについて、その運営費の一部を補助することができることともいたしております。  第七に、運輸大臣に対する事業計画届け出等必要最少限度の政府監督について所要規定を設けることといたしております。  次に、日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案について御説明申し上げます。  第一に、日本国有鉄道は、日本鉄道株式会社の成立のときにおいて解散することとし、解散のときに有するその一切の権利及び義務のうち、長期の資金に係る債務で政令で定める特定長期債務以外のものは、国鉄解散のときにおいて、会社承継することといたしております。  第二に、会社の成立の際、現に国鉄職員である者は、会社の成立のときに会社職員となるものといたしております。  第三に、国鉄は、解散した後も清算の目的範囲内においてなお存続することとし、政府は、この清算中の国鉄に対し、特定長期債務の返済が完了するまでの期間中に、債務償還計画を定めて資金の交付等を行うことといたしております。  最後に、日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案について御説明申し上げます。  第一に、この法律は、日本国有鉄道から移行した日本鉄道株式会社希望退職者について特別給付金の支給及び再就職促進に関する特別の措置を講じ、もって退職希望職員等の職業及び生活の安定を図ることを目的といたしております。  第二に、退職希望職員等の再就職促進に関する国及び会社の責務を定めるとともに、特に会社は、この法律に定める措置実施するに当たっては、退職を希望する職員の募集に応ずること等を強要し、または職員が労働組合の組合員であること等を理由として差別的取り扱いをしてはならないことといたしました。  第三に、退職希望職員等の再就職促進について、国は再就職促進基本計画及び採用促進計画を、会社は再就職促進実施計画をそれぞれ定めるものといたしております。  なお、これらの計画作成に当たっては、会社は、労働組合と協議をしなければならないことといたしております。  第四に、退職希望職員等の再就職先の確保についてでありますが、国は率先して退職希望職員等を採用するとともに、特殊法人等及び地方公共団体に対し、退職希望職員等を採用するよう要請するものといたしております。また国は、退職希望職員等を雇い入れる一般事業主に対し、退職希望職員雇用助成金を支給することができることといたしております。  第五に、希望退職者に支給する特別給付金についてでありますが、現在、今年度に限った特別措置として支給されている特別給付金を五カ年間にわたって支給することとし、このため、日本国有鉄道経営する事業運営の改善のために昭和六十一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律について所要改正措置を講ずることといたしております。  以上のほか、国の体制整備雇用促進事業団援護業務等、退職希望職員等の再就職促進援助、関連企業労働者等への配慮等に関して、必要な諸規定を設けることといたしております。  以上、各法律案提案理由及びその内容概要について御説明申し上げました。  最後に、政府案については、先ほど申し上げたように広範な国民から数多くの疑問や批判が寄せられており、また我が党が具体的な対案を提示しているにもかかわらず、これらを一顧だにせず、短時日のうちに強引に政府案の成立を図ろうとするような姿勢は、極めて遺憾であります。国民の負託を受けた立法府として、将来に禍根を残さぬよう、両法案の慎重かつ徹底的な審議を行い、真に国民の納得が得られる国鉄再建策を確定できるよう、お互いに努力し合うべきであります。このことを強く訴えて、私の提案理由説明を終わります。(拍手)     ─────────────
  8. 藤田正明

    議長藤田正明君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。赤桐操君。    〔赤桐操君登壇拍手
  9. 赤桐操

    ○赤桐操君 私は、日本社会党代表して、ただいま議題となりました日本国有鉄道改革法案外七法案につきまして、中曽根内閣総理大臣並びに関係大臣に質問をいたすものであります。  私は冒頭、本院において国鉄改革の本格的な審議に入るに当たり、中曽根総理の本法案への取り組み姿勢を伺っておきたいのであります。  衆議院における本法案審議において、中曽根総理並びに政府側の答弁は、国民を十分納得させようとする姿勢に欠けているばかりか、我が党の建設的な諸提案には一顧だにせず、国会における国民合意の道を切り捨ててきております。しかも、慎重かつ徹底した審議の要求があるにもかかわらず、不十分な質疑のまま審議を打ち切った中曽根内閣は、参議院の審議においてもこうした強硬姿勢を貫くおつもりですか。強引に政府案を押し通せば、将来に重大な禍根を残すことは必定であります。国会審議における総理の対応方針を確認し、本題に入ります。  質問の第一は、何ゆえ政府国鉄経営危機に陥れたみずからの責任国民国鉄労働者に押しつけ、分割民営に持ち込むのかという点であります。  国鉄危機が、赤字体質のもとで借金による新幹線や貨物の輸送力増強等の投資を行ってきたこと、国鉄が終戦時に雇用吸収に努めた結果、今日異常な年金負担国鉄財政を圧迫していること、交通輸送の変化に政府国鉄当局の経営が的確に対応できなかったことなど、政府の失政によって引き起こされていることは衆目の一致するところであります。  しかるに政府は、これを公社形態全国一元的運営現行体制こそが経営危機原因であるとし、百十四年の国鉄を安易に分割し、民営化するために論理のすりかえを行っているのであります。その意味するところは、政府の過去の責任所在をあいまいにし、義務履行の回避をねらい、国鉄経営危機処理を一切合財国民負担に押しつけ、国鉄労働者に過酷な犠牲を強いる以外の何物でもありません。まさに悪乗りそのものと言わざるを得ません。  政府の悪乗りはこれにとどまらず、この際一気に、鉄道建設公団の建設施設にかかる資本費負担や将来の年金負担までも一緒に国鉄債務にひっくるめ、三十七兆五千億円もの巨費を国鉄改革にかかわる長期債務として処理しようといたしているのであります。  中曽根総理、まず国民国鉄経営危機政府責任を謝罪するところから国鉄改革を出発させるべきではありませんか。財界が期待するところの民営化する旅客会社貨物会社などの新事業体国民共有財産が引き継がれ、借金のツケや合理化のしわ寄せがすべて勤労国民国鉄労働者に押しつけられていることを納得せよということは、余りにも筋の通らないことではありません  国鉄の再建は、これら政府の失政で発生している長期債務や年金の異常負担分など構造的欠損部分を除けば、六十年度において早くも三千百億円もの黒字が計上できるのであります。なぜ分割する必要があるのでありましょうか。総理から納得できる答弁を求めます。  また、全国ネットワークの分断を含め、現行国鉄を二十以上もに分割することでありますが、これは余りにも問題が多いと言わざるを得ません。欧米における鉄道は今や統合の方向であり、我が国におけるこのような手法に対しては、各国に極めて奇異に映っております。また当然のことながら、我が国の交通専門家の多くが厳しく批判をいたしているところでもあります。  政府は、分割民営化と一体であり、地域住民のニーズに合った事業運営をするためにも分割は不可欠であるとの認識をしているようでありますが、一方における分割のデメリットについての克服については明確な説明をいたしておりません。各会社間の利害の調整は簡単にできるのか、事故発生時の緊急対策などについて的確に行い得るのかなど、多くの問題があるわけであります。これらについてどう対処するのか、各事業体にすべてを任せるのか、政府は何らかの調整機能役割を果たすのか、国民が納得できるような答弁を求めるものであります。  質問の第二は、政府分割民営路線は早々に破綻のおそれがある点であります。  政府の提出した旅客会社経営収支によれば、輸送量が年々低下するのに、運賃を六十三年度以降毎年三ないし六%も値上げすることによって、かなりのスピードで収入が増加していくことが予定されております。これはいたずらに客離れを加速させるだけで、所期の収入達成は難しいことは自明のところでありますまいか。ハイペースの収 入を必要とせざるを得ない背景には、要員の大幅合理化に引きかえ、物件費が増加していること、利払い費が監理委員会の計算より膨張しているためにつじつまを合わせているのであって、机上の空論と断ぜざるを得ません。運輸大臣の納得できる説明を求めます。  経営収支の破綻が分割会社のうち一社でも発生すれば、政府の推し進める分割民営体制の諸機構は崩壊することとなり、国民生活初め国鉄労働者の生活に一層の負担を押しつけることは明らかであります。中曽根総理は自立経営に強い自信をお持ちのようでありますが、信念だけでは経営は成り立つものではありません。わけても北海道、四国、九州三島の旅客会社貨物会社、それにバス会社経営は、率直に言って無理ではありませんか。  政府は、三島の鉄道とバスの維持を国民負担による経営安定基金に頼り、政府は一切の助成の手を切ってしまうことにしておりますが、早晩、三島地域内の幹線、地方交通線を問わず、その多くが鉄道廃止に陥るであろうことは火を見るよりも明らかであると思うのであります。まさに政府自民党がこれらの地域を切り捨てる証左と言わざるを得ません。具体的に国民が納得できる説明を求めます。  特に、関係住民が懸命にその存続を願って努力している地方交通線についてであります。  政府は、国鉄の営業線の各線について、一方的に地方交通線並びに特定地方交通線の基準を決めて、その合理化やバス転換を強引に推し進めていますが、余りにも国民生活を軽視したやり方ではありませんか。今、関係自治体や地域の住民は、その存続のためにあらゆる努力を続けておりますが、このことに対し政府はもう一度真剣に考えるべきではないでしょうか。これまで協議の調わなかった特定地方交通線についての再検討を初め、地域住民の求める公共交通の系統的整備について、関係自治体の役割をも含めて新たな制度化を図ることこそ重要であると考えますが、いかがでありましょうか。あわせて御答弁をお願いするものであります。  さらに、新幹線保有機構のリース期間を三十年と設定し、新幹線の優位性に長期的に依存する経営方法をとっておりますが、二十年前、青函トンネルを着工する際、将来青函トンネルが経営の荷物になることを一体だれが予想したでありましょうか。本当に新幹線に長期的に依存できるという確信を政府はどういう理由でお持ちになっているのか、答弁を求めるものであります。  その上、整備新幹線に対する自民党の強い着工要請は、経営採算を一変する重大な課題でありますが、本法案では、既に旅客会社は着工に意思表示したことになっており、その法体系には問題なしといたしません。政府分割民営化は、仮に短期に経営が成り立ったといたしましても、長期的には経営の先行きは不透明な要素が山積しているのであります。今さえよければという安易な政府の発想は、国民に対して再び無責任の上塗りをするだけではないでしょうか。運輸大臣の真意をお伺いいたすものであります。  質問の第三は、国鉄労働者に関する問題であります。  政府計画では、六十二年度当初の新事業体の要員規模は二十一万五千人とされております。前国会から本院においてただされてきた要員規模の算定は、どのように積算されたのでありましょうか。人件費は、営業収入に対する割合で見ますと、六十年度において既に三三%の水準に低下しており、四〇%前後の大手私鉄に比べるならば、大幅に合理化が進んでいるのが現下の実態ではありませんか。新事業体が一部長期債務負担する重圧を人件費の圧縮で逃れるというやり方は、それは政府の失政を労働者の不必要な首切りと安全輸送の放棄に置きかえるもので、到底看過できるものではありません。要員合理化計画の見直しについて、中曽根総理大臣並びに運輸大臣の見解を求めるものであります。  さて、現下の国鉄労働者は、政府の「初めに二十一万五千人ありき」による強引な合理化推進により、五十四年度以降二十万人もの労働者が国鉄を去っております。その上、さらに分割民営化目的にした労働者の選別が強いられており、労働者一人一人、労働組合の別によって差別的な振り分け作業が公然とまかり通っているではありませんか。口を開けば、政府並びに国鉄当局は差別は行っていないと言いながら、それは表向きであって、実態は陰湿な選別、強要が行われていることは事実ではありませんか。とりわけ、人材活用センターへの配置転換を特定の組合役員経験者や特定の国鉄労働組合員を対象とするやり方は、本人の希望を尊重するという政府方針に全く反するばかりでなく、憲法に保障された労働基本権の侵害、不当労働行為そのものと言わざるを得ません。  しかも、人材活用センターへの配転は解雇宣告ではありませんか。最近の自殺者の多発は、こうした政府並びに国鉄当局の人を人とも思わない合理化の推進の犠牲とも言えるのではないでしょうか。労働大臣、直ちに中止の指導を行うべきではありませんか。御所見を伺いたいと思います。  政府はまた、国鉄労働者を一人たりとも路頭に迷わせないと言葉巧みに退職を強要しております。そうして、既に五万七千人分の採用申し出があるので雇用対策は半ば達成できたかの発言をいたしておりますが、問題はその具体的内容であって、数が達成したから十分ではないのであります。円高不況で一般産業界の雇用情勢は極めて深刻であり、自社の労働者の雇用維持すらおぼつかなくなってきております。政府は、一体採用申し出数がどのくらい集まることを目標として望んでいるのでありますか。一人も路頭に迷わせないなら、その趣旨をきちっと法律に明記すべきではありませんか。労働大臣、運輸大臣の御答弁を伺います。  質問の第四は、長期債務処理問題についてであります。  衆議院における政府の答弁では、本年一月二十八日の閣議決定の内容を繰り返すばかりで、一歩も前進ある答弁は伺えませんでした。論議の進展を政府は回避していると断じても過言ではありません。  まず、長期債務処理のうち、旅客会社など承継法人処理する債務は十四兆五千億円とされており、この結果、新事業体は元利償還費が経営を圧迫するばかりか、償還のため多額の借金に依存しており、六十二年度における旅客、貨物会社、新幹線保有機構償還利子に対する借金は六千五百億円に上り、借金返済を新たな借金に依存しているさまは国鉄の現状とどこが改善されていると言うのでありましょうか。これら新事業体償還計画はありますか。具体的に説明願います。  同様に、清算事業団の実質的に処理する債務は二十三兆一千億円にも上り、六十二年度には一兆五千億円もの元利償還が求められているのに対し、その財源手当ては未定であります。大蔵大臣、一般会計からどのくらい繰り入れるつもりですか。結局は借金による借りかえで、これが借金を雪だるま式に膨張させることは明らかではありませんか。こうした債務処理方法国鉄改革だとすれば、どこが改善されたのか、ここにおいても理解に苦しまざるを得ません。少なくとも国民負担を求める以上、清算事業団引き継ぎ債務償還計画清算事業団の収支計画の提出は必須条件と言わざるを得ないのであります。明確な前向きの答弁を求めます。  長期債務処理をいかに行うかは、今次再建策についての大きな柱であります。二十五兆円の長期債務は三年後には三十二兆円に膨張し、対応す る国民負担は放置すればするだけ増高してまいるのであります。したがって、政府は当然そのことについての責任ある具体策を示すべきであり、再就職対策の目途がつく三年後に具体的な処理方法を固めるという説明では到底納得できるものではありません。御所見を伺います。  さらに、国民負担と用地売却収入の問題であります。  用地売却収入が七兆七千億円と当初より上乗せされ、国民負担は十四兆七千億円となっております。用地売却収入が高まれば国民負担分が減少しますが、反対に収入が予定どおり入らないと国民負担は増加してしまうのであります。国民負担十四兆七千億円はこれ以上負担増にはならないという下限でありますか。この際、明確にしていただきたいと存じます。  また、用地売却に当たり、政府は適正価格による売却を表明しておりますが、最近の異常な都心部の地価高騰は極めて問題であります。中曽根総理の民活のかけ声、国鉄用地大量放出のかけ声が一層土地投機に弾みをかけていることは明らかであり、土地高騰フィーバーをあおり、放置する中曽根総理の政策は無責任きわまりないと断ぜざるを得ません。一定期間の転売禁止等の措置を設定すべきですが、政府の決意を伺います。  こうした地価の高騰で地方公共団体の用地の入手が困難となり、一方で国民が切望する都市環境整備が行えない事態に立ち至ることが心配されます。地方公共団体には随意契約を含む安価な売却の考えがあるのかどうか、用地の適正価格による売却の実施方法とあわせてお伺いいたしたいのであります。  質問の第五は、国鉄共済年金の扱いについてであります。  百十四年の伝統を持つ国鉄において、これを支えてきた人々の老後対策に万が一にも手抜かりがあっては人道上の問題として許されません。老後の生活保障は国鉄改革を意図する政府が最優先に、かつ全面的に責任を持って処理しなければならない事柄であります。しかるに、この法案のどこにもこの保障が見当たりません。総理大臣並びに運輸大臣、余りにも非人道的なこうしたやり方は、国鉄を支えてきた人たちへの仕打ちとしか言いようがありません。こんな血も涙もない法案にはどうして賛成ができるでありましょうか。  今日の国鉄共済の実情は、六十年度末で年金成熟度が一五七・四%となっており、このため既に共済機能を果たせなくなっていることは周知のとおりであります。しかも現行国鉄共済は、国鉄職員三十二万人体制を前提にしているのに対し、改革後は職員数を二十一万五千人と大幅減員を計画しながら、その対応の手を打とうともいたしておりません。一体、二十一万五千人体制における成熟度はどのような数値になるのか試算されておりますか。その際の掛金をどこまで引き上げたら年金給付が可能になるのか、ぜひ明らかにしていただきたいと存じます。  そもそも、共済年金受給者がふえるのに、他方、掛金をする労働者諸君の大幅首切り強行が共済破綻を招き、かつて年金を掛け老後の保障に期待権を持っていた五十万人を超える国鉄退職者に政府はどういう責任を感じ老後保障を行おうとしているのか、明確に御答弁を願います。  昨年、共済年金法の改正が行われたものの、その運用実態は決して国鉄共済のあすが安心できる状態にないことは、だれよりも政府が一番よく知っているはずであります。しかるに、改正時の政府統一見解の趣旨である共済年金支払いに支障のないよう六十一年度中に結論を出すという約束は棚上げではありませんか。政府は、口を開けば共済年金の統合とか公的年金の一元化とか言っておりますが、共済組合相互間の利害調整すらできない現実を前に、だれが政府のこうした言い分を信ずるでありましょうか。こうした何の役にも立たない空念仏の答弁は認められないのであります。国鉄退職者の生活に不安のない老後保障をどうするか伺うのと同時に、ぜひこの改革法にその保障条項を盛り込むことを強く求め、政府責任ある答弁をいただきます。  政府に対する質問の最後に、私は、ただいま政府分割民営改革案がいかに脆弱なものであるか明らかにしてまいりました。そしてこの改革案自体が一握りの、しかも全くの密室審議の中でまとめられた国鉄再建監理委員会の答申をそのまま採用したものであり、政府みずからが真剣に検討したとは言いがたいもので、このようなやり方は余りにも問題があると言わなければなりません。国鉄百十有余年の歴史に終止符を打つというこのような大改革を進めるに当たり、政府はもっと各界各層の声を聞き、慎重にも慎重を期すという姿勢をとれないのか、全く理解に苦しむところであります。  とりわけ、中曽根総理は、国鉄改革政府分割民営化によっても国民経営安定基金の形で補助を仰ぐなど、借金依存やもろもろの規制に頼らざるを得ない面があることを国民に対し十分に知らせるべきではありませんか。都合の悪い面を国民に隠し、強引に分割民営を推し進めることについては、我々は強く反対であることをこの際強調いたしておくものであります。  次に、私は、村沢牧君外提出の三法案に対し若干の質問をいたしたいと存じます。  まず第一は、これら三法案国鉄公共性を重視いたしております。そして改革後の組織と運営については、国が株式の十分の七を保有する民営会社とするとともに、分割をせず、全国一社制のもとで地方交通線を含む全国鉄道ネットワークを維持する会社設立することになっておりますが、これは分割しかつ完全民営化する政府案とは大きく異なっております。これら法案に対しては、なぜ国に株式保有を義務づけているのか、また全国一社制で果たして経営収支は均衡するのか、もとの赤字体質に戻ってしまうのではないかなど国民の心配があるのでございます。この点どのような考えなのか、発議者からわかりやすい説明を求めるものであります。  第二は、全国一社制であると、政府案がメリットとする地域密着型サービスが後退することになったり、現在の鉄道管理局の組織体制がそのまま延長されて、地域交通の役割が薄れがちになる心配はないでしょうか。また、地方においては地方交通線の維持が保障されているのかという点も非常に心配なところでありますが、政府案のように経営安定基金もなく、地方交通線の存続維持が果たして保障されるのかどうかお尋ねしたいと存じます。  さらにあわせて、現在転換が進められている特定地方交通線及び未承認の第三次特定地方交通線はどう扱われるのか、発議者から説明を求めたいと存じます。  第三は、国鉄が現在の経営危機に陥った経緯は、既に政府案に対する質問で述べてきたところでありますが、国鉄経営危機原因となってきた政府の干渉、制約、無理な計画負担の押しつけを排除することは、民営化の最も重要な点だと考えます。その点においても、これらの公的介入の抜本的改善を図るべきものと考えますが、どのような体制経営自主性と健全経営確保しようとしているのか、お尋ねしたいと存じます。また国民各層で構成する経営委員会を設置することとしておりますが、経営委員会役割についてもあわせてお尋ねいたします。  第四は、国鉄労働者の問題であります。  政府案に対しても指摘しましたが、政府案は、国鉄労働者を大量に首切りに追い込むために、六十二年度の要員規模を二十一万五千人と決めつけて大量の職員国鉄職場から吐き出してしまうほか、分割民営の新事業体に選別して職員の再雇 用を行うなど、職員の選別や強制的に退職の圧力をかけるほか、労働組合の分断まで行おうといたしております。こうしたやり方に私は大きな憤りを覚えるものでありますが、新会社における現在の国鉄労働者の扱いはどのように講じられるのか、篤と承りたいと存じます。  第五は、長期債務処理は、改革をするしないにかかわらず避けることのできない課題でありますが、政府案では具体的にこれをどうするのか。強いて言えば新幹線保有機構のリース料による返済以外当てのない状況であります。償還計画も不明であります。よって、この点について対応策を説明願いたいと存じます。  最後に、中曽根総理は社会党案を一蹴して一方的にこれを葬り去ろうといたしておりますが、発議者のお考えを承っておきたいと思います。  以上をもって政府並びに村沢君に対する私の代表質問を終わりたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  10. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 赤桐議員にお答えいたします。  まず、審議の問題でございますが、国鉄改革関連法案は重大法案でございますので、慎重な御審議の上、可及的速やかに可決していただきたいとお願い申し上げる次第でございます。  次に、国鉄経営破綻の責任の問題でございますが、これはいろいろの要因があると思います。しかし基本的には、輸送構造の変化に対応した業務運営の効率化が適切に行われなかったなど公社制度及び全国一元の巨大組織による運営及びモータリゼーションの進行等客観情勢の変化、そういうような諸般の問題があると思うのであります。  この国鉄の再生を図るためには、過剰な要員の合理化、調整、巨額長期債務による過重負担の除去、これを行った上で分割民営化を行いまして、民間的手法を取り入れ経営形態に転換すること、労使が自主的に責任を持って相処理し合うという責任体制を確立するということ、こういうような点が非常に重要であると考えておるわけであります。またこれを行うについて必要な雇用対策債務処理の問題については、政府としても一連の閣議決定に基づきまして適切に対処してまいる所存でございます。今回の改革実施は、国民負担の増大を防ぎ、真に利用者の利便にこたえられる新しい鉄道として国鉄を再生せしめるものでありまして、国民の最終的な利益につながるものであると認識しており、責任を持って改革を断行する所存でおります。  次に、三島会社及び貨物会社経営の問題でございますが、旅客会社及び貨物会社については、業務運営の最大限の効率化などの措置を講ずることにより、健全な経営の基盤を整備することといたしております。特に、三島旅客会社については、長期債務を一切引き継がない、それから経営安定基金を設定している、こういう特別の措置を講じております。  これらによる収支の試算等については、いずれ委員会等においてお示しすることとなると思いますが、三島旅客会社及び貨物会社は長期にわたり安定的な経営を図っていくことができると考えております。  また、今次改革を断行することによって、現状のまま推移する場合に比べて、より多くの路線を維持することができることを確信しております。国鉄事業を真に住民の期待にこたえ得る鉄道として再生することができると考えております。  要員合理化計画の見直しでございますが、新事業体職員数としては、効率的な鉄道事業運営に必要な要員に加えて、新事業体への移行に伴う整理業務、関連事業の展開のための要員等を見込む必要があること等を踏まえまして、新事業体が健全経営を図る上で過重な負担とならない限度で所要の要員を上回る二十一万五千人とすることが適当と考えた次第でございます。  私鉄との人件費割合の比較の問題については、新事業体と私鉄では、業務運営、収入構成等において異なる要素も多く、単純に営業収入に占める人件費の割合を比較して論ずることは適当でないと考えております。  用地の売却の問題でございますが、国民の貴重な財産でございますから、公正かつ適正に行われることは当然であります。それと同時に、国民負担をできる限り軽くするために、公開競争入札というものを基本として適正な時価による方針で行いたいと考えております。  具体的な売却の方法については、国鉄清算事業団において第三者機関の意見も聞きつつ適切に対処する考えでおります。  地価への影響につきましては、投機による不当な地価の上昇につながらない処分方法がないか等も含めまして、慎重に今検討しておるところでございます。  地価への影響については、有用な土地が相当数供給されることによりまして土地の需給関係が緩和され、地価の安定にも資するという側面もあると考えております。  分割案の評価の問題でございますが、国鉄再建監理委員会の「意見」におきましては、二年余の各般にわたる慎重な審議を経た上で、旅客の流動にも十分配慮した分割案が提示されておりまして、これは国鉄の再生を図るための抜本的な改革案として高く評価したところでございます。  政府もこれと基本認識を同じくいたしまして、分割民営化基本とした今回の改革法案を提出したところでございます。  国鉄改革に伴い新会社を発足させるに当たっては、三島会社経営安定基金を設定するなど、安定的な経営基盤確保するための諸措置等も講じているところであります。また企業の資金繰り上必要な資金の借り入れを行うことは当然であり、新会社に対する規制は必要最小限なものにとどめております。このような措置については、国会の御審議の場等を通じまして十分説明してきておりますが、国民の皆様にも十分御理解いただいているものと確信しております。  次に、五十万人を超える国鉄退職者の老後の生活保障の問題でございます。  国鉄退職者の生活を支える国鉄共済年金の問題にもかかわると思いますが、これは国鉄改革を推進する上に当たって極めて重要な問題であると認識しております。国鉄職員や年金受給者等に不安を与えることがないようにすることが大切であると考えておりまして、このため、昨年十一月の政府統一見解を踏まえて、国鉄共済年金の支払いの維持ができるよう十分配慮しておるところでございます。  なお、保障条項を挿入せよという御質問でございますが、結局、これは年金支払い保障条項の問題であると思います。年金については、国鉄改革の有無にかかわりなく、独立した法体系をもって将来の年金支払いを保障する制度となっておりまして、改革法にことさらに保障条項を規定することは必要ないと考えております。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  11. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず、政府の収支試算についてでありますけれども、今回の改革実施に当たりまして、新会社は効率的な経営を前提といたしまして健全な経営基盤確保し得るよう配慮することといたしております。具体的には、新会社発足に際し、現在の過剰な要員体制を改めるなど業務運営の最大限の効率化を図ること、また国鉄長期債務等につきましては、新会社の健全な経営に支障が生じない範囲承継をさせることといたしましたこと、特に北海道、四国、九州の三島会社につきましては、国鉄時代の長期債務をすべて免除することと同時に、三会社を合わせまして一兆一千八百億円の経営安定の基金を設 けることなどの施策を講じまして、収支の均衡を確保したところでございます。  このような措置によりまして、各会社の健全経営の基盤が整備され、安定的な経営が行われる見通しが得られたものと考えております。  なお、後刻提出をさせていただきます今般の収支試算につきましては、収入は従来の実績を踏まえて確実なものを見込み、費用は効率的な経営を前提に必要十分な額を見込んでおり、確度のあるものと考えております。  また、分割により大きなデメリットを生ずるのではないかという御指摘をいただきました。  しかし、分割案は旅客流動を十分考慮して作成されており、会社間をまたがって乗車いたします旅客は大変少ないわけでありますので、基本的には会社間の調整で十分対応できると考えております。  また、新幹線の長期的な経営見通しについてのお尋ねであります。  我が国では、欧米諸国と比べまして都市への人口集積度が大変高い、また狭隘な国土に都市が鎖がつながるような状態で分布しておるという地理的な特性がありますために、大量の旅客を高速で移動させる、かつ定時に輸送し得るというすぐれた特性を有しております鉄道の果たす役割は大変大きいと考えております。  従来の交通機関別の旅客輸送量の変化を見ておりますと、三百キロ程度までの近距離におきましては自動車のシェアが大変高くなってまいりました。また七百五十キロを超えるような長距離になりますと、航空輸送のシェアがだんだん増加し、千キロを超えると大変著しいものになります。しかし同時に、中距離都市間の旅客輸送の分野におきます三百キロから七百五十キロの中距離帯におきましては、既設新幹線を中心に鉄道が五〇%を超えるシェアを堅持しておりまして、今後ともその方向は変わらないものと考えており、したがって中距離都市間輸送の分野におきましては、新幹線は今後とも基幹的交通機関として、経営の効率化と一層のサービスの向上を図ることにより、十分収益性のある事業として長期的に存続していくものと考えております。  また、整備新幹線につきましては、今回の全国新幹線鉄道整備法の改正におきまして、新幹線鉄道の営業主体及び建設主体は、それぞれ運輸大臣があらかじめその同意を得て指名する法人としておりますが、整備新幹線につきましては、これまでに各種の手続などが行われておりますこと、旅客鉄道事業旅客会社が引き継ぐこととしておること等にかんがみまして、関係旅客会社が営業主体の指名を受けたものとみなすなどの経過措置を設けております。しかし、この場合におきましても、営業主体とされました旅客会社運輸大臣に対し整備計画の変更を申し出ることができることといたしておりまして、その意向が反映し得るような仕組みとしておるわけでございます。  また、整備新幹線の建設が関係旅客会社経営負担となることも考えられるわけでありますので、政府・与党間に設置されております整備新幹線財源問題等検討委員会におきまして、現在財源問題など着工の前提条件につき検討しているところでありまして、適切な結論が得られるように努めてまいりたいと考えております。  また、特定地方交通線を含めまして、地方交通線につきまして御指摘をいただいたわけであります。  現在、国鉄再建法に基づいて行っております特定地方交通線対策は、既に鉄道特性を失った路線につきましてバス転換などを行うものでありまして、本来なら現在の国鉄のうちに完了すべきものであります。しかし、なお地元との協議が済んでいないものなどがございますので、一定期間この制度を延長するものでありまして、これを中止する必要はないと考えております。  次に、要員規模二十一万五千人という点であります。  国鉄におきましては、再建監理委員会の「意見」を踏まえまして、可能な限りの要員の効率化に取り組んでまいりました結果、新事業体としては十八万六千人の要員規模で運営可能という見込みが立ったところでございます。  しかし、鉄道事業運営に必要な要員のほかにも、新事業体への移行に伴う業務の整理あるいは関連事業の展開などの要員が見込まれること、また雇用対策の観点から、監理委員会の「意見」を踏まえまして、新事業体におきましては健全経営の過重な負担とならない限度において所要人員を上回る二十一万五千人の職員を引き受けることとしたところでございまして、こうした点を踏まえ、新事業体職員数は二十一万五千人が適当と判断いたしたところであります。  なお、私鉄との人件費割合の比較の問題につきましては、先ほど総理がお触れになりましたので、私からは省略をさせていただきます。  また、政府の要員合理化計画についても御指摘をいただきました。  政府と申しますよりも、この法律案内容でございますけれども、これによって安全輸送についての御指摘があったわけでありますが、国鉄経営の現状から見まして最大限の効率的な要員体制とすることは当然のことでありますけれども、その場合にも、安全というものは鉄道本来の使命でありますから、要員の合理化を進めるに当たり安全を脅かすことのないよう当然配慮いたしております。  次に、国鉄を去っていただかなければならない方々に対しての採用の申し出数につきまして御指摘がございました。  昨日の夕刻現在でちょうど六万六百名の採用のお申し出をいただいております。そのうち一般産業界につきましては、一万人の目標に対しまして既に一万九千七百名の採用の申し出をいただいておりますが、職種あるいは年齢、地域などの問題もありまして、この一万人の民間で御採用いただきたい方々を本当に完全に就職させていただくためには、さらにより多くの求人をいただけるよう関係者にお願いを続けておるところでございます。  また、国鉄職員雇用対策のための立法措置といたしましては、昨年末閣議で決定をいたしました「国鉄余剰人員雇用対策基本方針について」に基づきまして、公的部門等各分野における国鉄職員等の雇用の場を確保すると同時に、職員に対しまして教育訓練職業指導、職業紹介など再就職促進のための施策を進めることとしておりまして、そのための特別の措置を定めた日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案を御提案申し上げているわけであります。  次に、旅客会社などの新事業体処理すべき債務処理方策。  国鉄長期債務につきましては、国鉄事業承継いたします旅客会社などの新事業体の健全かつ円滑な事業運営を阻害しない範囲で引き継がせることとしておりまして、引き継がれた国鉄長期債務等につきましては、それぞれ約定に従って償還をされることとなります。  なお、引き継ぎました国鉄長期債務等に係る利子の支払いをし、及びまた一部の所要資金を借り入れましても健全経営が可能なことは、後刻提出をさせていただきます予定の政府の収支見通し試算においてお示しをいたすところでありまして、中長期的に見て、私どもは安定的な経営のもとに債務償還は行えるものと考えております。  また、清算事業団償還計画、収支計画についてでありますが、同事業団長期債務償還利払い計画及び昭和六十二年度の収支計画につきましては、今後順次資料を提出させていただきたいと 考えております。また清算事業団の長期収支計画につきましては、用地売却、政府助成等不確定な要素が多いので、これ自身をお示しをすることは困難であろうと考えております。  用地の処分は、私どもは公開競争入札の手法によることを基本として行うわけであります。そのため、処分収入はその時点にならなければ算定できません。また用途によりまして、処分の価格が変動するなど不確実な要素が大変大きいわけであります。先般明らかにいたしました用地処分収入に関する仮定計算は、昭和六十年の公示価格を基礎とし、再建監理委員会の評価の考え方を参考にして推計いたしましたいわばまさに推計値、仮定値でありまして、政府処分予定額あるいは期待額を示したものではございません。  いずれにしても、用地の処分に当たりましては、適正な時価により公正かつ適切に行うこととし、できるだけ国民負担を軽くするように努めてまいりたいと考えておるところであります。  その処分方法に当たりましては、公正を確保すると同時に、いやしくも国民に疑惑を受けることがあってはなりません。また国民負担をできるだけ軽くするため、公開競争入札を基本とする適正な時価によるべきものであると考えております。しかし、例えば地方公共団体が道路用地にするなど公共公益目的に非常にはっきりと利用が限定されておりますような場合には、例外として随意契約による売却を認めることも検討はいたしております。しかしこの場合にも、適正な時価によることは当然のことであると考えております。  また、国鉄の退職者の生活を支える国鉄共済年金につきましては、この国鉄改革を推進するに当たり極めて重要な問題であると認識いたしておりまして、職員また年金受給者に不安を与えないことが大切であります。そのため、内閣が発足をいたしましてから閣内に関係四閣僚による年金の話し合いを連続して持っておるところでありますが、基本的には、昨年十一月の政府統一見解を踏まえ、国鉄共済年金の支払いの維持ができるよう十分配慮していくつもりであります。  そして、改革法に保障条項をという御意見につきましては、先ほど総理がお答えになりましたので、重複を避けて省略をいたします。(拍手)    〔国務大臣平井卓志君登壇拍手
  12. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) お答えいたします。  まず第一点でございますが、現在国鉄におきまして、人材活用センターの設置等諸般の余剰人員対策を講じてきておりますが、その際に不当労働行為といった問題が生じないよう従来から国鉄に対し指導してきたところであります。人材活用センターへの配置につきましては、一定の合理的な基準に基づきまして行われております。特定の組合員に特化させるということはないと承知いたしております。憲法に保障された労働基本権の侵害とか不当労働行為とかの問題はないものと理解いたしております。  今後とも、不当労働行為といった問題が生じないよう当局に対して指導してまいりたいと考えております。  お尋ねのいま一点は、一般産業界の雇用情勢の非常に厳しい中で国鉄職員雇用確保はどうかということでございますが、最近の雇用情勢が非常に厳しいことは議員御指摘のとおりでございまして、労働省としましても、当面の雇用対策につきましては、さきの総合経済対策に基づきまして雇用調整助成金制度の拡充等の施策を早急に実施してまいります。また積極的に全般施策に取り組んでおるところでございます。  国鉄職員雇用問題は、もう既に御案内のように、国鉄改革のまさに成否のかぎを握る重要な問題でございまして、そのために政府としては、去る十月二日に総理大臣から業界団体に対し厳しい経済情勢の中においての協力を要請するなど、一般産業界における雇用の場の確保に努めておるところであります。同時に公的部門、国鉄関連企業における就職促進をも一層図っておるところでございまして、今後とも雇用の場の確保につきましては万全を期してまいる所存であります。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  13. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 長期債務の点につきましてお尋ねがございましたが、御承知のように、本年の一月に閣議決定をいたしておりまして、まず、国鉄の持っております用地をできるだけ最大限に処理いたしまして、それによって国民負担をできるだけ軽減いたしたい。そういたしまして、本格的な処理といたしましては一定の将来の時期に、用地の処理あるいは雇用対策等々に見通しが立ちましたときに、そのときの歳出歳入の問題も含めまして新しい財源措置を決定いたさなければならない、こう考えておるわけでございます。  そこで、さしずめ昭和六十二年度になりますと清算事業団の予算の問題が出てくるわけでございますが、これに対しましては、財政の許します範囲で国の助成を行い、あるいは金融の円滑化を助けなければならないわけでございますが、この国の助成の金額につきまして、ただいまのところ、運輸省からの概算要求には要求が未定になっておるわけでございます。それは情勢が流動しておりますので、もう少し見きわめてからという、そういうお考えは無理もないところでございます。したがいまして、この運輸省の考え方がまとまりました段階で予算編成全体の中で助成の枠を決めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。  それから、将来の問題として、国鉄再建のために目的税のようなものを考えておるかというお尋ねでごさいましたが、ただいまのところ、そういうことを考えてはおりません。  なお、年金の問題につきましては、総理からも運輸大臣からもお答えがございましたが、さしずめ昭和六十四年度までの問題につきまして、昨年の統一見解に基づきましてただいま関係四閣僚が協議をいたしております。年齢構成等いろいろ難しい問題がございますけれども、これは間違いなく今年度じゅうに結論を出しまして、支払いに支障のないようにいたしたいと思っております。(拍手)    〔村沢牧登壇拍手
  14. 村沢牧

    村沢牧君 赤桐議員にお答えします。  私の提案した法案政府案との違いについては、趣旨説明で申し上げたので御理解をいただけたところでありますが、一口に言うならば、両案の基本的な相違は、事業体経営形態について分割か、一社制か、純然たる私企業にするのか、公的性格を持った企業として発展させるかということであります。以下の答弁においても、具体的な相違については申し上げたいというふうに思います。  第一点は、国の株式保有と全国一社制における経営採算性についてであります。  政府案によって設立される会社は、営利追求を優先する性質を持つ事業体であり、鉄道事業公共性を放棄し、その結果、不採算路線の切り捨て、老人や子供などの交通弱者を痛めつけ、地域格差の拡大など地域経済や国民生活に大きな影響を与えることになります。社会党案のように、国が七割以上の株式を保有する株式会社にすることによってこそ、鉄道公共性と企業性を調和させ、国民利益を保障しつつ企業の活性化と効率化を図ることができるのであります。  採算性の問題でありますが、議員御指摘のように、現在の国鉄においても、政府の失政で生じた長期債務や構造的欠損部分を除けば、六十年度においても黒字が計上できるのであります。我が党案は、長年にわたって築き上げてきた全国ネットワークという貴重な遺産を維持発展させ、長期債務処理及び雇用対策を講じ、株式会社としての経営自主性事業範囲を拡大し、サービス改善 をすることなどによって安全経営を軌道に乗せる措置を講じておりますし、決して赤字体質に戻るということはあり得ない仕組みといたしております。  第二は、地域密着サービスと地方交通線の存続に関してのお尋ねでありますが、我々は全国ネットワークを有する新会社に七つの支社制を組織し、支社に大幅な権限を委譲することとしておりますので、現在以上の交通サービスの向上ができると考えておりますし、また全国一社制のもとで、地方圏と大都市を結ぶ列車体系にも配慮した運営を考えております。鉄道公共性確保するために地方交通線の維持は当然のことであり、我が党案は、西欧諸国のように国の責任で助成を行うなど、もろもろの施策規定いたしております。ただし、国の助成は無制限に行うのではなくて、適切な経営努力がされてもなお赤字が出るような場合、一定の限度内において行うことといたしている次第であります。  また、特定地方交通線の転換につきましては、現在協議中の線区については、鉄道として存続できる道を残しつつ十分な協議を行ってまいります。  第三は、政府介入の排除と経営自主性についてであります。  いやしくも民営化した場合、国の株式保有があるなしにかかわらず、従来から指摘をされてきたように、政府の公的介入が排除されなければならないことは言うをまたないところであります。我が党案は、政府監督は最小限度にするとともに、会社経営委員会を設け、この経営委員会は本社と支社に置かれ、そうした公的介入をチェックするとともに、地域交通のあり方、国民鉄道を維持するための責任と参加を背景に置いた自主性を持った会社組織として機能させようとしているのであります。  質問の第四は、国鉄労働者の新事業への引き継ぎ問題であります。  我が党案は、国鉄労働者を一括新会社承継することとし、五年間の特別退職制度と自然退職でもって要員の縮減化を進めようとするものであり、退職希望者に対しては、諸般の対策を会社及び国の責任で講じなければならないという規定をしておりまして、政府案のように一たん全員を解雇し、新会社への採用とその条件については、使用者が一方的に決めるというような労働組合の団体交渉権を否定するやり方は絶対にいたしません。  また、国鉄当局は差別、選別によって職員人材活用センターに隔離し、雇用にまで差別を結びつけようとする異常な労務管理、不当労働行為を行っていますが、我が党案による改革案ではこのようなことは絶対に生じません。国鉄雇用問題は、まず、できる限り国鉄内部で事業分野の拡大や、その経営努力、正常な労使関係のもとで解決を図るべきでありまして、我が党法案で十分労使満足のいく対応が図られるものと考えておる次第であります。  第五は、長期債務処理についてであります。  長期債務については、国の責任処理すべきものと新会社負担すべきものとを仕分けして処理することにいたしております。新会社国鉄の有する一切の業務承継しますが、長期借入金鉄道債券などの債務のうち、国の責任で生じた借金については国の責任処理すべき特定長期債務として別枠にし、この特定債務については、今の国鉄を清算法人として存続させ、清算法人債務として残した上で国の責任において計画的に解消します。  なお、新会社事業に活用しない資産を売却した場合には、その対価の一部を清算法人に納入することにいたします。  最後に、中曽根総理は、衆議院の答弁で、社会党案では「親方日の丸、赤字垂れ流しは直らない、」と大変失礼なことを言っていますが、親方日の丸、赤字垂れ流しは、今まで歴代自民党政府がやってきた対応の仕方ではありませんか。社会党案については、先ほどの提案理由説明及びただいまの答弁で申し上げたように、公共性と企業性を調和させ、経営自主性民営的手法を発揮させることによって、将来は政府助成を必要としない自立経営を目指すものであって、総理の言う親方日の丸、赤字垂れ流しという批判が政府の助成に依存していることを指しているとするのであれば、我が党の法案の中身を知らないまさに暴言、中傷そのものと言わざるを得ません。したがって、本院においてはそのような姿勢を改め、不見識な言葉は絶対に使わないよう強く要請しておきます。  我が党は、国鉄改革について五年前から特別委員会をつくり、全国一千カ所以上の討論集会を開催し、また全国三千五百万人の国民から政府案に反対する署名をいただき、国鉄改革最善の案として本法律案を提出しているのであります。総理は、公党の対策を軽々に論評するのではなくて、まじめに受けとめる姿勢こそが求められております。そして、我が党案について徹底的な審議を行い、真に国民のための国鉄改革を本院において煮詰めることを要望し、議員各位の御協力をお願いする次第であります。  以上をもって私の答弁といたします。(拍手)     ─────────────
  15. 藤田正明

    議長藤田正明君) 鶴岡洋君。    〔鶴岡洋君登壇拍手
  16. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 私は、公明党・国民会議代表して、ただいま議題となりました日本国有鉄道改革法案を初めとする国鉄改革関連法案について、中曽根総理並びに関係各大臣に対して質問を行います。  今、国鉄財政は約二十五兆円に及ぶ巨額債務を抱え、実質毎年二兆円の赤字を出す危機的状態に陥っております。このままでは人件費の支払いや安全投資さえ不可能となり、事業運営にも大きな支障を来すおそれがあります。またその債務と赤字の増加は、やがて国民に過大な負担となってはね返ってくることは明白であります。そうした状況から、国民の大多数の人々は国鉄改革の必要を認め、その再生を強く望んでいるのであります。  私は、国鉄経営が破綻した主な原因は、経営自主性、主体性を欠いた公社制という経営形態にあると考えます。さらに、国鉄の抱える構造的欠陥を今日まで放置し、その上、四回にわたる国鉄の再建に失敗した歴代政府責任も厳しく問われなければならないと考えるのであります。  私は、国鉄を再建し再生させるためには、現在の経営形態改革し、政治や行政による経営への介入を排し、社会の変化、経済の変動にも柔軟に対応できる自主的、主体的経営の行える企業とし、鉄道事業を中心とした多角経営が可能な企業体に改める必要があると思います。すなわち、現在の国鉄の赤字体質を抜本的に改めるには、国鉄民営分割し、改革を進める以外にないと認識いたしております。この考えは多くの国民もまた同じであろうかと思うのであります。  しかし、このたびの国鉄改革は、過去百十余年にわたる鉄道史の中でも初めての歴史的改革であり、日常国民の足として親しまれてきた交通機関の大改革であります。したがって、失敗は二度と許されないのであります。と同時に、将来の我が国の交通体系のあり方を展望しつつ国民の求める改革を進め、その理解を得、協力の得られる改革実施しなければなりません。  そうした観点に立って今回の国鉄改革案を見ますとき、果たしてこの改革がベストであるか、我が国の交通体系の将来を展望した上でつくられたのかどうか、懸念を持つ人々も少なくありません。そのためにも政府は、改革に対し、国民の合意の形成に十分配慮し、懸念を取り除くためにも いたずらに政府案に固執せず、正すべき点があれば正す、瑕疵があればそれを直すという姿勢を持つべきと考えるのであります。これは国鉄改革を進めるに当たって極めて重要なことであり、まず総理にその基本姿勢を伺っておきたいのであります。また、我が国の交通体系の将来に対する展望及び鉄道の将来についてはどのように認識されているのか、その見解もあわせてお伺いしたいと思います。  次に、改革を進めるに当たっての幾つかの課題について質問いたします。  まず、重要課題の一つである長期債務処理についてであります。  国鉄改革実施時点における長期債務は約三十七兆五千億円とされており、用地売却、株売却の収入及び新幹線保有機構からの収益を除く約十四兆七千億円が国民負担とされております。ただ債務の総額は、改革実施の際の承継計画を立てる時点で変わり、また用地売却収入、株売却収入によっては国民負担が変わってまいります。しかし、国民は果たしてどの程度の負担をしなければならぬのか明らかにしてほしいと望んでおり、また債務処理のため国民に何らかの負担を求めざるを得ないという以上、国民負担の明確な数値を明らかにする責務、さらに国民負担を可能な限り少なくするという責務もあると思います。単に用地処分収入を上乗せし、処理すべき債務を圧縮するというあいまいなことでは国民の納得を得ることはできません。総理並びに運輸大臣の明快な答弁を求めます。  次に、政府は、債務処理のために必要な新たな財源、措置については、雇用対策、用地売却等の見通しがおおよそつくと考えられる段階で、歳入歳出の全般的見直しとあわせ検討、決定するとしておりますが、ここで言う新たな財源とは具体的に何を指すのか、新税等の創設、導入なのか、国債などの発行を考えているのか、それともそれ以外の財源確保措置をとるのかどうか、国民負担とのかかわりもあり、明確にされるよう求めるものであります。総理、大蔵、運輸大臣の見解をお伺いします。  続いて、長期債務処理にかかわる用地売却についてお尋ねいたします。  我が党は、用地の売却に当たっては、用地の有効利用を図るため、特に大都市及びその周辺における大規模なものについてはその利用計画をまずつくり、その計画に基づき売却を行うべきであると主張し、用地計画策定の機関の設置を提唱してまいりました。その結果、清算事業団にその趣旨に即した部会が設置されることになったことは多としたいと思うのであります。ただし、全国約七千カ所と言われる売却対象用地と売却収入は、当初の国鉄再建監理委員会の約二千六百ヘクタール、約五兆八千億円から、その面積は約三千三百三十ヘクタール、金額は七兆七千億円に上積みされておりますが、多くの国民は、政府の試算したこの七兆七千億円の用地売却収入が、十分精査された精算根拠による正確な土地評価額であるのかどうなのか、疑問を持っております。  確かに、土地それぞれの個別価格の公表は、公表すれば公開入札に無用の予断を与えるという政府答弁のとおりでありましょうが、用地売却収入の正しい試算は、債務処理国民負担額を設定する重要な要素である以上、正しい土地の実勢価格を考慮した総枠についての試算を国民に明示すべきであります。政府にそうした試算を改めて提出する考えがあるのかどうなのか、総理並びに運輸大臣の答弁を求めるものであります。  さらに、一般公開入札を原則とした用地売却を行うに際し留意しなければならない点は、周辺地価の高騰の防止であります。既に国鉄売却対象用地の周辺において実勢価格をはるかに上回る価額での土地取引が行われており、いわゆる地上げ行為が横行するなど、極めて憂慮すべき事態が起きております。早急に地価抑制策を講ずべきであります。国鉄用地の処分がそうした事態に拍車をかけ、地価高騰の引き金となるようなことがあってはなりません。  さらに、この土地売却に当たって、公開入札は地価をつり上げるとして地方自治体等から意見が出されておりますが、あわせてこの点についても政府はどのように対処するのか、総理と運輸大臣、また国土庁長官にも具体的施策について答弁を願いたいのであります。  次に、改革の重要課題の一つである国鉄離職者の雇用対策について伺います。  今回の国鉄改革によって国鉄を離れる職員は、約六万一千人と言われております。既に退職した人もおり、雇用対策の対象者は減っているものの、その規模の大きさから雇用問題は極めて重要であります。我が党は、六万一千人の離職者がいれば、その数と同じ六万一千通りの雇用対策が必要であると強く指摘をしてまいりました。その理由は、雇用の問題は、ひとり職員雇用の場を確保すればそれで事足りるものではありません。職員の後ろには妻や子供があり、そして父母があり、それぞれの家庭を抱え人生を歩んできたことを考えるならば、その状況をも考慮しながらのきめ細かな対策であるべきと思うからであります。  鉄道には、なぜか不思議に、人をしてロマンや郷愁を抱かせるものがあります。その鉄道に将来を託した鉄道マンが、時代の変化とはいえ、その職を離れるのはいかにつらいことか、私たちは皆その胸中をいかばかりか察してあげるべきであります。ともかくも、離職せざるを得ない職員雇用確保とともに、その家族に生活不安を与えては断じてならないのであります。  ところで、政府が再就職先の確保責任を持つとの公約にかかわらず、まず率先して努力すべき公的部門の国の受け入れ態勢におくれが目立つのはどうしてでしょうか。また応募条件を見ると、若年層に偏り、四十代、五十代の中高年齢者の雇用受け入れ数は極めて少ないことや、職種の選択の幅が狭いことも明らかであります。さらに、離職者の受け入れが関連事業などの現職員に玉突き解雇の雇用不安を与えていることも事実であります。総理、運輸大臣は、対応のおくれているこの公的部門に対する受け入れをこれからどのように促進されるのか、また中高年齢者の雇用確保をどのように進めるのか、さらに玉突き的解雇への不安をどのように解消される考えなのか、明確な答弁をお願いしたいのであります。  なお、職員はこれからの数カ月、新会社入れるのか、それとも離職せざるを得ないのか、不安を抱きながらの日々を送らなければならないのであります。仮に離職することを選択するとしても、再就職先の労働条件や勤務先がはっきりしなければ決断を下すことはできません。政府は、そのためにも受け入れを表明した公的部門、関連事業、民間企業のそれぞれに対し、早急に労働条件や職種、勤務地についての可能な限りの雇用情報、受け入れ状況等を明示するよう求め、依頼し、そして職員にそれを明らかにしてあげるべきであると思います。どのように措置されるのか、お考えをお示し願いたいのであります。  政府は、国鉄改革関連法案審議に当たって、各旅客会社貨物会社の今後五カ年間の収支見通しを示し、そのいずれの会社も初年度から黒字が計上されることになっております。しかし、北海道、四国、九州の三つの会社については赤字を穴埋めするための経営安定基金を監理委員会の答申よりも上積みして一兆一千八百億円とするなど、その経営見通しが厳しいことを政府みずから認めているのであります。また貨物会社に至っては、当初予定よりも職員数を減らし、人件費を抑えることで収支のバランスをとり、なおかつ回避可能経費という、コストに一%の法定料金を加えることによって収支バランスをとるなど、かなり無理 をして黒字計上の試算を出しているのであります。  私は、収入見込み、経費内容などから、改めてこれら収支見通しは試算をやり直す必要があると考えます。百歩譲って、この試算を認めて改革を進めたとして、今後何年か先に当初の見込みどおりの業績が上がらなかった場合に、経営安定基金の積み増しなどの措置が可能なのかどうか。さらに、経営が非常に厳しいと思われる貨物会社に対しても、三島会社と同じような経営安定基金を設けるべきではないかと思うのでありますが、この点については総理と運輸大臣から答弁を願いたいと思います。  また、収支見通しの要件として、旅客会社運賃を一年目は据え置くとしても、二年目からは三島の会社は年平均で約五ないし六%の連続値上げを、本州三社においても同じく三ないし四%の値上げを見込んでおります。しかし、こういうことになると、これでは何のための改革かと言わざるを得ません。私鉄各社は企業努力によって値上げの抑制に努めております。政府の、国鉄時代に比べて決して高率とは言えないとの答弁を受け入れるわけにはまいりません。企業努力によって値上げ抑制に努めるべきと考えますが、この点についても見解を求めたいと思います。  次に、国鉄年金についてお伺いします。  国鉄共済年金の成熟度は約一五〇%に近づき、改革後は二〇〇%に達するとされております。これは職員一人が二人の年金受給者を支えるという極めて異常な事態であることを示しております。このままでは、来年度以降毎年度約三千億円の財源不足が生ずることが確実となっております。こうした事態が予測されているにもかかわらず、政府からは国鉄共済の財政再建対策の具体策は何一つ示されておらず、ただ六十四年までは政府責任処理するという政府統一見解だけでは年金財政の再建ができるわけがないのであります。また大蔵大臣の言う用地売却の上積みもあるという答弁は、余りにも安易と言わざるを得ません。既に国鉄共済は自助努力に限界があり、また他の年金と統合すればよいというものでもありません。この国鉄改革審議の中で、国鉄共済の再建の具体策を示されるよう強く求めるものであります。総理、運輸、そして大蔵各大臣の具体的な答弁を求めます。  最後に、国鉄改革基本方針をまとめた国鉄再建監理委員会の答申、そして政府案、さらに衆議院における審議の経過の中でその内容に部分的な修正が加えられてまいりました。私は、国鉄改革目的国民のための改革でなければならないと考えます。国鉄改革を進めるに当たって解決すべき課題は少なくありません。私のここにただした問題以外にも、技術、安全対策、地方交通線対策、公害対策などの問題があり、将来に絶対に禍根を残すことのないよう慎重かつ十分な審議の上に国鉄改革に対処すべきであります。そのことを政府に強く要望し、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  17. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 鶴岡議員にお答えをいたします。  まず、国鉄改革基本姿勢でございますが、国民の皆様の御理解と御協力をいただき、各党のまた御協力もいただきまして、今次の抜本的改革をぜひとも実らせたいと念願いたしております。  そのゆえんは、モータリゼーションや社会の大きな変化に対応することができなくなってきたいわゆる公社制度というものをここで抜本的に改革して、分割民営化によりまして国民利益に沿うより新しい時代的な国鉄に再生せしめよう、そういう考えに立ちまして明年四月一日から発足させる、そのために全力を注いでまいるつもりでおります。  交通体系の将来展望の問題でございますが、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」という政府の決定、五十八年八月の閣議決定にありますとおり、各交通機関の競争と利用者の自由な選択が反映されることにより、全体として効率性、整合性が保たれるような交通体系にいたしたいというのが基本でございます。  そのような体系は、各交通機関が効率的な経営のもとにその特性を十分発揮する、そうして調和力を発揮するということが前提であると考えております。  鉄道については、将来にわたり中距離都市間輸送、都市圏輸送などの分野においてその特性を十分発揮し得るものと考えております。  長期債務の問題でございますが、去る一月二十八日の閣議決定において明らかにしましたとおり、最終的に残る長期債務等については、用地売却の上乗せ等によりその額を極力圧縮することにいたしたいと思っております。なお、用地売却収入についての仮定計算結果等を踏まえ試算してみますと、最終的に残る長期債務等は十四兆七千億円程度になると見込んでおります。  長期債務処理の財源、措置の問題でございますが、本年一月の閣議決定の趣旨に沿いまして処理したいと思います。まず、国鉄用地売却の上乗せ等によってできるだけ国民負担等を少なくするように努め、最終的に国民負担を求めざるを得ない長期債務等の額はできるだけ圧縮するということがまず第一であります。    〔議長退席、副議長着席〕  本格的な処理のために必要な新たな財源、措置等については、雇用対策、用地売却等の見通しのおおよそつくと考え得る段階で、歳入歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定いたしたいと前から申し上げておるとおりでございます。  いわゆる国鉄再建税などというような新鋭あるいは増税によることは現在検討していることはございません。  国債発行による処理につきましては、厳しい財政事情のもとで安易にはとり得ないものであると認識いたしております。  国鉄用地の売却収入でございますが、用地処分収入については、昭和六十年度の公示価格を基礎として、一定の前提のもとに仮定計算を行った結果を先般明らかにしたとおりでございます。  用地の売却につきましては、公正かつ適正に行われるべきことは当然でありますが、国民負担をできる限り軽くするためには、公開競争入札を基本とする適正な時価による方針が正しいと思います。  なお、国鉄清算事業団において、第三者機関の意見も聞きつつ具体的な売却方法を決定するということでございます。  地価への影響については、投機による不当な地価の上昇につながらない処分方法はないか等も含めて今検討しておるところであり、土地が相当量供給されることに相なりますので、土地の需給関係が緩和され、地価の安定にも資するという側面もあると理解いたしております。  雇用の場の確保の問題でございますが、公的部門における国鉄職員の受け入れについては、去る九月十二日に国鉄職員就職計画を閣議決定し、目標数及び採用のための手続促進について決めたところであります。雇用対策の重要性にかんがみまして、私自身が本部長として各省庁にその取り組みを指示しておりますし、先般はまた地方公共団体代表にもお願いをいたしたところでございます。  現在、三万人の目標に対して約二万人の採用申し出が行われており、今後とも再就職を必要とする国鉄職員の公的部門における円滑な受け入れがさらに促進されるよう、引き続いて各省庁に指示し努力いたしたいと思います。  旅客会社等の収支見通しでございますが、旅客会社及び貨物会社の収支見通しに関する政府試算 は、収入は従来の実績を踏まえて確実なものだけを見込み、費用は効率的な経営を前提に必要十分な額を見込んでおりまして、相当確度のあるものであると認識しております。  三島旅客会社の発足に当たっては、長期債務は引き継がせない、多額の経営安定基金を設置する、こういう措置もとっておりまして、今回の試算でお示ししておりますとおり、三島旅客会社は長期にわたり安定的な経営を行っていくことができると確信いたしております。しかも、民営化趣旨から見て国に依存する体質は改むべきであるという考えに立ちまして、会社の発足後において基金の積み増し等のための措置を講ずる必要はないと認識いたしております。  また、貨物会社におきましても、民間的手法を導入して、効率的な輸送体制の確立、要員の適正化等によるコストの大幅削減、安定的収入の確保等を図ることにより、将来とも安定的な事業運営を行っていけると認識しております。したがって、経営安定基金を設定する必要はないと考えております。  新会社運賃につきましては、効率化、合理化を図ることにより、運賃及び料金を適正な水準に維持するものと認識しております。  具体的な運賃改定の申請に際しましては、鉄道事業法案規定などに基づき厳正に審査をして認可を行う所存でございます。  共済年金の具体的対策でございますが、四閣僚による懇談会を開催しておりまして、六十四年度までの具体対策については、政府統一見解に述べられているとおり、六十一年度中に結論を得べく鋭意検討を進めております。  六十五年度以降の対策についても、六十四年度までの対策に引き続き、できるだけ速やかに検討を行いたいと考えております。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  18. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私に与えられました第一の御質問は、長期債務処理についてでございます。  政府の試算によりますと、清算事業団において処理すべき長期債務などは二十五兆九千億円になるものと見込まれておりまして、これに用地売却等の自主財源を充てましても、なお十四兆七千億円程度のものが残る見込みであります。この最終的に残ります長期債務は、ただいま総理からも御答弁がありましたとおり、用地売却の上乗せ等によりましてこの額を極力圧縮することとしておるわけでございます。  この場合の、努力をいたしてまいりましても最終的に残ってしまう長期債務というものにつきましては、これは国が処理をすることになるわけでございますが、その本格的な処理のために必要な新たな財源、措置につきましては、雇用対策あるいは用地売却等の見通しがおおよそつくと考えられる段階で、歳入歳出の全般的な見直しとあわせて検討、決定をいたすこととしております。  今、その用地売却に当たりまして、実勢価格を考えてというお話をいただいたわけでありますが、私どもは、用地の処分はあくまでも国民に疑惑を受けないためにも公開競争入札という原則を崩したくありません。そのためには、処分収入はその時点にならないと算定できないというわけであります。また用途によりまして処分の価格も変動するなど、不確定要素が大変大きいわけでありまして、実勢を考慮した総額算定ということは極めて困難だと考えております。先般明らかにいたしました用地処分収入に関する仮定計算は、昭和六十年の公示価格を基礎といたしまして、再建監理委員会の評価の考え方を参考にして推計した数値でありますので、政府処分予定額あるいは期待額を示しておるものではないことも御理解をいただきたいわけであります。  その場合に、その国鉄用地の処分が周辺地価の高騰の引き金にならないようにという御注意をいただきました。しかし、まず第一に、私どもとしては、この用地売却というものが公正かつ適正に行われるべきという点を考えます。そしてその公正を確保すると同時に、国民負担をできるだけ軽減する、そのためにも公開競争入札という手法をとり、適正な時価によってこれらを処分したいと考えておるわけであります。  これらの用地の売却に当たりましては、清算事業団に設けられます資産処分審議会におきまして、大規模用地についてその利用に関する計画を策定した上、具体的処分方法を定めることにするなど適切に対応することとしております。  また、地価への影響につきましては、投機による不当な地価の上昇につながらない処分方法がないか等々を含め現在検討いたしておる最中であります。  しかし、有用な土地が相当量供給されるということから、私どもとしては、需給関係が緩和され、地価の安定に資する部分もあると期待いたしておるわけであります。  また、御指摘のように、用地売却に当たりまして、地方自治体から随意契約によって売却をしてほしいという御要望があることは私も承知いたしております。これは地方自治体が道路等公共公益施設の用に供する場合には随意契約により売却することを検討はいたしておりますが、その場合においても適正な時価によるべきが当然であると私は考えております。  殊に、ちょうど衆議院におきまして審議の最中に、国鉄の用地で地方自治体に随意契約で売却いたしましたものが、そう期間を経ずして他に転売をされるというケースが発生いたしましたために、この点については特に私どもとしては厳重に考えたいと考えておるわけであります。  また、清算事業団の用地、特に大都市及びその周辺地域に所在する大規模用地の処分に当たりましては、清算事業団に設置いたします資産処分審議会において、それぞれの地元における土地利用にも十分配慮しながら進めてまいりたいと考えております。その場合には、地元の地方自治体からもいろいろな御意見が出されると思います。これらの意見は十分踏まえて、有効かつ適切な処分が行われるように努めてまいりたいと思います。  また、雇用問題につき総理の御答弁を多少補足をさせていただきますと、現在、先ほども申し上げましたように、各分野を通じ六万六百人の採用の申し出がされておるわけであります。そして、このうち中高年の職員についての採用の申し出は、国鉄関連企業、また一般産業界が主体となっております。国鉄職員を受け入れようとする場合、採用側にもいろいろな事情があると考えられまして、それらの点も踏まえて、求人開拓また教育訓練等について、できる限りきめの細かい配慮を払うことによって、中高年齢層の職員の再就職が円滑に進むよう努力してまいりたいと考えております。  また、確かに御指摘のように、この再就職対策を進めるに当たり、関連企業に対して積極的に国鉄職員を受け入れていただくように国鉄当局が要請いたしておることも事実でありますが、今日の国鉄の置かれている現況にもかんがみ、玉突き解雇といったような事態は決して起こしてはならないことでありますけれども、関連企業側にも十分な理解と協力を得ながら円滑な推進が図られることが望ましいと考えております。  また、再就職先の雇用情報の明示につきましては、再就職を必要とする国鉄職員に対し具体的な雇用情報を提供することは円滑な再就職を進める上で極めて重要であり、国鉄において各分野からの具体的な採用条件が提示された場合、その情報を各職場に掲示するなど職員への周知徹底を図っているところでありますが、今後とも雇用情報の 提供が適切に行えるよう引き続き国鉄を指導してまいりたいと考えております。  また、三島会社経営環境は大変厳しいものがあることは間違いがありません。そのため、三島会社の発足に当たりまして、効率的な事業運営を前提として国鉄時代の長期債務を一切引き継がせないこととしたわけであり、また再建監理委員会の試算に上乗せをし、経営の安定を図るため多額の経営安定基金を設定することにしたわけでありまして、私どもとしては、これらの経営基盤整備を図ることにより、これらの施策の積み重ねと努力によりまして長期にわたって安定的な経営が可能になると考えておりますことは、後刻提出予定の試算の中でお示しをいたすとおりでございます。また同時に、民営化という趣旨から見て、国に依存する体質を改めていくことも考えなければなりませんので、会社発足後において基金の積み増しのための措置を講ずる必要はないものと考えております。  また、貨物会社につきまして民間的な手法を講じ、コンテナ輸送及び石油、セメントなどの大量定型輸送に特化するなどの徹底した輸送の効率化と、要員の適正化、物件費の縮減等を行うことによるコストの低減、またコンテナ輸送などにつきまして、通運あるいはトラック事業者等の物流事業者との密接な提携による収入の安定的な確保を図ることにより、将来ともに私どもとしては安定的な事業運営ができると考えております。したがって、経営安定基金を設ける必要はないと私どもは考えております。  また、新会社運賃について御指摘をいただいたわけでありますが、新会社は当然経営の効率化、合理化を図ることにより運賃及び料金を適正な水準に維持していくと考えております。  政府の収支試算としては、確かに御指摘のように、人キロ当たり運賃、料金の支払い額を六十二年度から六十六年度まで三ないし六%の平均上昇率と見込んでおりますが、これは議員の御質問の中に触れられておりましたとおり、過去十年間の国鉄の年平均上昇率あるいは大手民間私鉄十四社の年平均上昇率に比べて決して高いものを推定しておるわけではございません。  しかし、具体的な運賃改定の申請がありました場合、鉄道事業法案第十六条の規定に基づいて厳正に審査して認可を行うことといたしております。  また、国鉄共済につきましては総理からも御答弁がありましたところでありますが、直接主管ではありませんけれども、極めて関係の深い立場として、殊に今後の雇用問題等を考えます場合に、この共済問題の今後の検討が極めて大きなものであることは認識をいたしております。全力を尽くして努力をしてまいりたいとのみ申し上げて御答弁にかえます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  19. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 長期債務の最終的な処理につきまして、先ほど総理大臣、運輸大臣からも答弁を申し上げたところでございますが、結局、御指摘のように、この用地がどれだけに処分できるかという問題に大きくかかってまいります。何分にも将来にもかかることであり、また兆という単位の問題でございますからかなりそれは振れが大きい、正確な予測が今から困難であると思われます。ばかりでなく、その将来の時点における国の財政がどういうことになっておりますかということもまた、やや未知数でございますから、その時点で全般の状況を見ながら判断していく、財源、措置をしていくということにどうもならざるを得ないかと。これは御指摘はごもっともでありますし、私自身も容易ならざる問題だと思っておりますけれども、どのぐらいな金額になるか、それをどう処置するかということを、したがって、今から具体的に申し上げることがどうもできないという事情を御理解いただきたいと思います。  それから国鉄共済年金でございますが、これは結局、政府の昨年の統一見解は、昭和六十四年度までにつきましては国鉄の自助努力、国の負担を含めて諸般の検討を行いまして支払いに支障がないようにするということでございますが、そこで今関係閣僚が四人、年度末までに結論を出そうと努力いたしておるところでございます。そこで財政調整をいたしましてもかなりの赤字が出る。しかし、六十四年度までのことになりますと退職者の年齢構成によりましてその幅がまた違ってまいるというような事情がございます。それから積立金につきましても流動性がどのぐらいあるかといったようなこともございまして、それらのことを含めまして年度末までには結論を出しまして、いずれにしても支払いに支障のないようにいたさなければならない、こう思っておるところでございます。(拍手)    〔国務大臣綿貫民輔君登壇拍手
  20. 綿貫民輔

    国務大臣(綿貫民輔君) 国鉄用地の処分をすることによりまして周辺の地価高騰に拍車をかけるのではないか、またそのようなことがないようにしろということでございますが、先ほど来総理、運輸大臣からもお話がございましたように、大量の用地を放出することによって地価の鎮静化に通ずるのではないかという説もあるわけでございます。また従来、国公有地の処分に当たりましては、国土庁は、地方公共団体の利用構想との調整あるいは地価高騰が予測される場合には、その利用計画を含めまして条件の設定等いろいろと要望してまいっております。  今後とも関係省庁と十分連絡をとりまして、周辺の地価が高騰しないような処分方法を研究してまいりたいと考えております。(拍手)     ─────────────
  21. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) 小笠原貞子君。    〔小笠原貞子君登壇拍手
  22. 小笠原貞子

    ○小笠原貞子君 私は、日本共産党を代表して、国鉄関連諸法案について質問をいたします。  本法案は、百十四年にわたる国鉄の歴史に終止符を打ち、百兆とも二百兆とも言われる国民共有財産を大手企業の手にゆだね、利潤優先の民営化、そのもとで鉄道事業公共性安全性を脅かし、国鉄労働者の大量解雇、組合つぶしを行うなど、どれをとっても戦後最大の重大問題であります。にもかかわらず、衆議院ではわずか十二日、実質九日間のみの審議で採決が強行されたことは極めて遺憾と言わなければなりません。我が党の村上議員の国鉄赤字の歴代自民党政府責任に関する質問、また東中議員による国鉄職員振り分け名簿に関する質問などへの答弁は不能となったし、一般新聞でも長期債務処理方針、用地売却、職員雇用確保など数え上げれば切りがないほど問題は多いと指摘するように、衆議院審議不十分さは明白であります。今こそ参議院では慎重審議を行い、国民に対する責任を果たすべきだと考えますが、その意思がおありかどうか、総理・総裁としての見解を最初に伺います。  質問の第一は、分割民営化の最大の理由として挙げられている長期債務二十三兆五千億に上る驚くべき借金は、いつ、だれが、どうしてつくったのか、これらは一夜にして生まれたわけではありません。まず挙げなければならないことは、国鉄の設備投資規模を十年間三兆七千億と抑制することを決めていた一九六九年の閣議決定を御破算にし、日本列島改造計画に基づく七三年の田中内閣の決定によって一挙に三倍近くも拡大したことです。国鉄は既にその年、単年度赤字四千五百四十四億円、長期債務を四兆三千六百七十九億円を抱えていたのですから、収入の五五%に当たる利子のつく借金での投資規模七千億円を考えれば、いかに無謀なものであったかを指摘しないわけにはいきません。これは政府の政策によるもので あったことは明白ではありませんか。  これがなぜ経営形態による問題なのかとの我が党村上議員の質問に対し、政府は事実上の答弁不能に陥りましたが、政府責任でなくてなぜ経営形態責任なのか、改めて答弁を求めます。  その上、引き続く福田内閣は、石油危機で一時凍結していた設備投資を次々と復活させ、アメリカと財界の要求による七%成長のために、その当時年間八千億から一兆円の赤字を抱え収入は二兆五千億円規模の国鉄に対し、毎年一兆円ものこれまた無謀な設備投資を行わせたのであります。国鉄当局の再三にわたる出資などの要望を無視し、借金による資金調達を国鉄に押しつけ、雪だるま式に借金を増大させた自民党政府こそ今日の国鉄財政破局の原因をつくった張本人ではありませんか。それでも政府責任はないのか、明確にお答えください。  そもそも国鉄は、日鉄法第一条に明記されているとおり、利潤追求を目的とするものではなく、公共性が求められているのです。最近五年間の国鉄に対する国の助成割合を見ると、ドイツ連邦鉄道、フランス国有鉄道は日本の三倍以上、イギリス鉄道公社は日本の二倍以上にも達しています。それでもなお欠損が出た場合には、一ないし二年で処理してきたのです。こうした措置をとらずに放置して今日の膨大な赤字、借金をつくらせた日本政府の実態は、ヨーロッパ諸国と際立った対照をなしています。政府はもともと公共性責任を負うという認識責任感などなかったのではないか、お答えください。  また、戦後復員した満鉄などの職員国鉄に抱えさせたのも政府の政策によるものであり、それら特定人件費の総額は今日四兆二千億もの巨額に上り、これまた国鉄財政をここまで圧迫したのです。  以上の歴史的事実が明らかなように、いわゆる国鉄財政の危機原因は、まさに歴代自民党政府責任であります。それを公社という経営形態原因をすりかえることは、国鉄百十四年のうち九十二年間も黒字であった歴史をまともに見るならば、全くの詭弁と言わなければなりません。総理、公社という経営形態原因ではなく、正すべきは政府の政策の誤りではないか、重ねて伺います。  さらに重大なことは、国民がなぜ十六兆七千億円もの負担をしなければならないのかということです。中曽根内閣の無責任な先送り政策によって国民負担は十六兆七千億にとどまらず、十年後には実に二倍に確実に膨れ上がります。その上、使う見通しのないまま全国に放置されている成田新幹線や広大な貨物ヤード跡地など、莫大なむだ遣いまで国民負担させる理由をはっきりとお答えください。  第二に伺いたいことは、日常的に鉄道を動かして人と物を運ぶという国鉄本来の業務で見るならば黒字なのに、なぜ分割民営化なのかということです。つまり、専ら政府責任に属する設備投資に伴う利子負担、特定人件費などの過去のしがらみを取り除いた一般営業損益は三千二百億近い黒字であります。これは一九八〇年の経営改善計画による目標黒字額二百億円の実に十六倍も超過達成しているのです。つまり、国鉄にかけられたしがらみを取り除くことこそが具体的な国鉄再建の道であり、国鉄事業を継続させるために必要な措置なのです。だからこそ、分割民営化するに当たってこれまでの国鉄助成金の四倍も出し、このしがらみのほとんどを取り除いているではありませんか。民営会社には出せて国鉄に出せないのは何なのか、お答えください。  第三に伺いたいことは、国鉄を利用する国民の受ける重大な被害についてであります。もともと民営では、利益を追求する原理から見て、その利潤の上がらない事業はやりません。政府答弁によっても、運賃は毎年三ないし六%の値上げ計画が明らかにされています。もうけが上がらなければ、ローカル線はもちろん幹線についても廃線にできるのがこの法案なのです。最もひどい打撃を受ける北海道では、鉄道は明治時代に逆戻りすることになります。バス転換するといっても、利用者は、例えば通勤、通学定期は国鉄の三ないし四倍の負担をかぶせられるのです。その上、人減らし合理化により、検査、修繕の手抜きなど数々の事例が物語るように、安全は脅かされていくのです。  政府は、民営分割で元気になりますなどという宣伝を国鉄にやらせていますが、元気になるのは大企業であって、鉄道はやせ細っていくのです。監理委員会答申によると、地方住民の足は全く無視され、将来の鉄道は都市間輸送、大都市圏輸送、地方都市圏輸送の三分野しか残りません。これでは都会に住んでいようと地方に住んでいようと、安全で安くて快適に移動する国民の交通権を根本から否定することになります。フランスでは、日本とは全く逆に、交通基本法を制定し、国民の交通権を明記したのでありますが、このような国民の交通権を認めるべきではないか、お答えください。  第四に、分割民営化国民共有財産である国鉄資産の財界への大盤振る舞いだと言わざるを得ません。例えば一坪わずか八千二百円で東京駅用地を、また年間五百億円の利益を上げている山手線を七百億円で民営会社に引き渡す計画などは、鉄道事業を継続するためという答弁で納得できるものではありません。驚くほどの超安値で譲り渡された資産を活用して民営会社に参加する財界は、莫大な利益を得ることは私鉄の駅ビルを見るだけでも明らかではありませんか。  国鉄の膨大な財産は、国民が百年以上の歴史をかけて、何銭、何円という運賃の積み上げによって築き上げてきたものです。この国民共有財産を勝手に処分することは絶対に許されません。しかも国鉄用地の公開入札と言ってみても、参加し得るのはそのほとんどが大手企業であります。国民共有財産を大手企業の手に移すことについて国民は絶対に納得するものではありません。答弁を求めます。  第五に伺いたいことは、分割民営化のもう一つの目的である国鉄労働者の大量指名解雇と労働組合つぶしについてです。  衆議院で我が党の東中議員は、本法案国会審議されてもいないにもかかわらず、既に国鉄当局が指名採用及び指名解雇のための会社別の職員振り分けリストを作成していた物的証拠を示しましたが、存在しないとの答弁の繰り返しでした。あれから一週間もたっています。調査されましたか。またそこに記載されている職員についても、存在しないと言われるのかどうか、明確な答弁を求めます。  新会社承継する鉄道事業は、列車や線路だけではできません。これを動かす労働者があってこそ鉄道事業ができるのです。ところが法案によれば、国鉄労働者を一たん全員解雇し、二重のふるいにかけて気に入る者だけを採用し、六万一千人は事実上の指名解雇を国の機関みずからが行うという驚くべき内容であります。  しかも、労働者の憲法に保障された団体交渉権、団結権を否定し、分割民営化賛成を強要するという許すべからざる行為が国鉄当局によって行われているではありませんか。安全告発をするな、不当労働行為に対する訴訟を取り下げろ、分割民営化支持路線に転換せよと迫り、これを口実に雇用安定協定の締結を拒否しているのです。このような憲法違反の不当労働行為を直ちにやめさせるべきであると思うが、答弁を求めます。  以上、指摘してきたように、分割民営化国民にとって百害あって一利なしと言わざるを得ません。先ほど提案された社会党案は、民営化ということによって、国鉄危機を今日に至らしめた原 因は経営形態にあるとする政府案と結局同じ立場に立つと言わざるを得ません。また利潤追求の民営会社公共性とは両立し得ないものであります。世界の国鉄の歴史を見れば、民営・分立から統合、そして国有化の道へと進んできたのであります。これが世界の趨勢であり、これに逆行する本法案は世紀の大悪法と言わなければなりません。  日本共産党は、歴史に取り返しのつかない重大な汚点を残すこの分割民営化法案の徹底審議を要求するとともに、廃案を実現すべく奮闘することを申し述べて質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  23. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 小笠原議員にお答えいたします。  まず、本法案につきましては、衆議院段階において長期債務処理、用地売却、国鉄職員雇用対策等の問題も含めて、慎重な審議が尽くされた上で可決されたものであります。参議院におきましても、政府提出の法案について十分な御審議をいただいた上、一日も早く成立させていただくようにお願いをいたします。  次に、田中内閣時代において策定された第二次再建計画においては、従前に比べ多額の設備投資を見込んでいましたが、実際の投資は輸送施設の維持更新等の安全投資に重点を置いて実施しておりまして、当時の国鉄状況においては必要な措置であったと認識されております。当時の投資による債務負担については、昭和五十一年度債務棚上げ措置も講じておりまして、今日の赤字の基本的な原因ではないと理解いたしております。  福田内閣時代におきましても、一兆円台の設備投資が行われたことは事実でありますが、これについても昭和五十五年度債務の棚上げ措置を講じておりまして、政府としても債務負担の軽減に努力してきたところであります。今日の国鉄経営が破綻いたしました原因は、設備投資に起因するというよりも、基本的には国鉄輸送構造の変化に対応した業務運営の効率化が適切に行われなかったなど、公社制度及び全国一元の巨大組織による不能率、そして労使関係の責任体制の欠如という、そういう経営形態及び運用によるところの欠陥が多いと、そう考えております。  次に、助成のあり方でありますが、ヨーロッパ諸国においては各国鉄道に対する助成がそれぞれなされていることは承知しております。我が国も、実情に即して、国鉄の公共輸送における役割も踏まえて、従来から種々助成措置を講じてきたところでありますが、これらの助成措置を講じることによって、真に国鉄経営健全化を達成することが不可能であることは、過去の経緯より明らかになってきたのです。効率的な経営形態の確立、刷新が行われなければ、これはとても解消することはできない。このため、政府としては、今回分割民営化基本とする抜本的な改革実施して再生を図ろうとしておるわけであります。  赤字の原因につきましては、基本的には輸送構造の変化に対応した業務運営の効率化が適切に行われなかったことなど、公社制度及び全国一元の巨大組織による運営という現行経営形態そのものに内在していると考えております。  そのような国鉄経営形態の変革を行わないまま再建を図っても実効を上げることはできない、これは過去の経緯から見ても明らかであります。  交通権の法定の必要についてお話がございましたが、今日においては利用者である国民の自由な選択に応じて鉄道、自動車、航空等がそれぞれの特性を発揮し得るような交通体系の形成及び維持を図るべきものでありまして、御指摘のような交通権の法定は必要がないと認識いたしております。  次に、国鉄改革は、真に利用者の利便にこたえられる鉄道として再生させよう、むだのない立派な効率的な経営形態改革しようという考えで、国民の求める効率的な交通体系形成のために抜本的な改革を行おうと、そういう考えでおります。このためにも、必要最小限度の鉄道事業資産については旅客会社等に簿価で引き継がせております。  また、非事業用用地については、公正を確保するとともに国民負担をできるだけ軽くするために、公開競争入札を基本とする適正な時価により売却して、長期債務等の円滑な償還に充てる所存であります。  これらの措置を講じて改革実施することが最終的には国民利益にかなう最善の道でありまして、一部の大企業の利益に奉仕するという批判は全く当たらないものであると考えております。  残余の答弁は運輸大臣がいたします。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  24. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 長期債務につきましてでありますが、膨大な長期債務原因は、基本的には、国鉄公社制度及び全国一元の巨大組織による運営のもとで輸送構造の変化に適切に対応できず、経営の効率化、重点化を図れなかったことに起因することが大きいと理解をいたしております。このため、分割民営基本とする改革実施し、国鉄の再生を図ることとしているところであります。  なお、国鉄国民生活の安定と向上及び我が国経済の発展に寄与してきたこと、今回の改革により、より良質な鉄道輸送サービスを国民に提供することが可能になることを考えますと、最終的に国民にある程度の御負担をお願いすることもお許しを願いたいと考えております。  また、国鉄の一般営業損益では、借入金に係る利子負担を全く除外するなど、経常的な事業活動を適正にあらわすものとは言いがたいと私は思います。鉄道の再生を図るためには、分割民営化施策により国鉄をむだのない効率的な経営形態改革することが必要であり、現形態のままで助成を行うことによっては赤字体質は改まらず、国民の理解も得られないものと考えております。  また、新会社職員採用手続は、そもそも今回御提案をいたしました法律の成立後、新会社設立委員が提示する採用の基準に従い行われるものであり、御指摘の振り分けリストが国鉄において作成された事実はなく、したがってリストについて調査する必要性はないと判断している旨報告を受けております。  また、不当労働行為というお話がございましたが、この問題は国鉄内部の労使関係に関することでありまして、基本的には労使間で解決すべきことであると考えております。労使が国鉄の置かれた厳しい経営環境について共通の認識を持ち、その事業再生のため努力されることを期待するものであります。(拍手)     ─────────────
  25. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) 田渕哲也君。    〔田渕哲也君登壇拍手
  26. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、民社党・国民連合を代表し、日本国有鉄道改革法案並びに関連法案に対して質問を行います。  国鉄の六十年度末の累積赤字は十四兆円を超え、長期債務は二十四兆円にも達しようとしております。その上、毎年二兆円近くの赤字を積み重ねつつあります。このような現状はもはや一日たりとも放置できないことは明らかであり、その抜本的改革は焦眉の急となっております。  私は、国鉄が破綻に至った今日までの経緯について考えるとき、その分割民営化を進めることは当然の方針だと思います。むしろ政府措置は遅きに失したと言わざるを得ません。しかしながら、現在政府が進めようとしている分割民営化についてつぶさに検討してみると、本当にその趣旨が貫かれ、国鉄が再生できるのか若干の疑問を抱かざるを得ません。  その第一は、今日の国鉄の破綻を招いた原因責任が必ずしも明確になっていないからであります。  国鉄再建監理委員会の答申には、その原因の第一として、極めて非採算な路線が各地において建設されるなど、経営を無視した政治の干渉が行われたこと、また重要事項について経営者の当事者能力がなく、その自主性を損ない、責任の所在があいまいになったことが挙げられております。ところが、政府趣旨説明においても答弁においても、この点は素通りされ、全国一元的経営の非効率等に力点が置かれているにすぎません。総理は国鉄破綻の原因となった政治の介入についてどう考えられるのか、まずお伺いします。  また、経営責任についてでありますが、国鉄債務土地資産の売却によっても処理し切れず、結局十四兆円を超える多額のツケを国民に押しつけねばならなくなりました。また六万一千人もの国鉄職員が離職を余儀なくされるなど、まさに史上最大の倒産と言うべきでありましょう。この責任は一体だれがとるのか。今までに国鉄総裁の更迭は幾度か行われましたが、総裁の当事者能力は制約されております。国鉄経営政府監督下に置かれ、投資、役員人事、資金計画財産処分、新線建設等、経営の重要事項はすべて政府許可を受けねばなりません。国鉄経営責任は内閣にあることは明らかであります。  国鉄処理すべき長期債務等の中で、国民負担分に上積みされる分として次のものが含まれております。  まず、青函トンネルの建設費一兆八百億円であります。これはまだ建設中で使用されていない施設でありますが、これを国民負担として損金処理同様のことをしなければならないというのは一体どういうことですか。また工事を凍結している鉄道施設千六百億円は、つくりかけたけれどもめどが立たずやめてしまったというものでありまして、全くのむだ遣いではありませんか。また本四公団建設施設に係る資本費負担六千七百億円についても同様であります。  いずれもつくりかけたが採算のとれないもの、利用のめども立たないもの、すなわち経営政策の失敗をどさくさ紛れに国民にツケ回しをしようというものではありませんか。他にも建設途中で、営業開始に至らぬうちに廃止されることになった特定地方交通線は二十二線にも上っております。これらは全く政府責任であり、その見通しのなさ、ずさんさは言語に絶するものと言わねばなりません。  これらを含め、今回の史上最大の倒産の責任はだれがどのようにしてとるのかお伺いしたいと思います。もし権限を持つ者が責任をとらないとするならば、どうして赤字の穴埋めを十四兆円余りも国民に押しつけることができるのですか。どうして六万人を超える国鉄職員にしわを寄せることができるのですか。私は理解に苦しみます。総理の責任ある答弁をお願いします。  第二の問題は、分割民営化によって本当に政治の介入を排除できるかということであります。  国鉄再建監理委員会の亀井委員長は、政治の介入が国鉄をスポイルし、また労使関係をむちゃくちゃにしたと言われております。総理は、民営化により政治の介入はなくなるとお考えですか。  私がこの点について疑念を禁じ得ないのは、整備新幹線をめぐる政府並びに自民党の動きであります。再建監理委員会の答申には、今後の新線建設については「一般の私鉄と同様、旅客鉄道会社経営者の判断により行うべき」である、整備新幹線については、「現在の計画によれば膨大な投資を必要とし、また新会社経営に大きな影響を及ぼすことが予想される」ので慎重に判断すべきであると述べてあります。ところが、現在政府自民党が進めようとしている整備新幹線建設のやり方は、全くこの趣旨を無視したものと言わざるを得ません。  五十九年六月、自民党は党議決定として、整備新幹線の建設は公共事業方式とすることを決めております。六十年八月には、政府と与党の申し合わせとして、遅くとも六十二年四月の国鉄分割民営化のスタートまでに着工のめどをつけることとし、また本年八月には、自民党整備新幹線建設促進特別委員会プロジェクトチームは、一、六十二年度予算に整備新幹線着工初年度として必要な額を公共事業費として確保すること、二、限りなく公団に近い性格の特殊法人として鉄道総合開発整備機構を新設すること、三、鉄道総合開発整備機構法案は早急に準備し、可及的速やかに成立を図ることを決定しております。また既に国鉄は、東北新幹線(盛岡—新青森間)、北陸新幹線(高崎—小松間)、九州新幹線(博多—西鹿児島間)の工事実施計画認可運輸大臣に申請中であります。以上の動きは、国鉄分割民営化とは全く無関係に整備新幹線の建設を政治主導で進めつつあるものと言わざるを得ません。  政府自民党は、既に古くなった国鉄は民間に払い下げ、新時代の鉄道である新幹線は政治主導でやろうというのですか。もしそうだとするならば、政府の進めようとする分割民営はまやかしと言わざるを得ません。新幹線は、将来民営化された新旅客会社事業の枢要な部分となるべきものであり、また既存の鉄道経営にも大きな影響を与えるものであります。その建設運営をどうするかは新会社の命運を左右する重要問題だと思います。したがって、新幹線の建設運営は、基本としては、民営化された新会社の創意工夫とその責任において実施すべきものと思いますが、総理の見解をお伺いします。  また、現在出されている新旅客会社の収支見通しは、整備新幹線の建設を前提としてはおりません。もし来年度から着工するのであれば、それを前提とした収支見通しに基づいて審議を行うべきだと思いますが、いかがですか。  第三の問題は、国民負担についてであります。  国鉄債務のうち、国民負担分十四兆円余りは三十年で返済するとして、金利を含め毎年一兆円を超える負担が必要です。それに加えて整備新幹線の建設費用、さらに将来新幹線網を拡充するとなれば膨大な資金を必要とすることになります。これを自民党の党議決定のごとく公共事業として行うことになれば、財政の負担ひいては国民負担は限りなく増大することになります。これでは何のための分割民営化かわからなくなるのではありませんか。この点についての将来の見通しはどうなるのか、政府責任ある答弁をお願いします。  以上の諸点について明確な答弁をお願いし、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  27. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 田渕議員にお答えをいたします。  まず、国鉄破綻の原因認識の問題でございますが、根本的な原因としては、公社制及び巨大組織による全国一元的な運営という経営形態そのものに内在するにあった、このように申し上げているとおりでございます。  また、責任の所在の問題でございますが、根本的には国鉄再建監理委員会の「意見」においても述べられておりますように、輸送構造の変化に対応した業務運営の効率化及び設備投資の重点化などが適切に行われなかったことなど、公社制度及び全国一元の巨大組織による運営という現行形態そのものに内在すると考えております。  次に、債務負担と要員合理化の問題でございますが、鉄道の再生を図るためには、要員の合理化と巨額長期債務の過重負担を除去した上で、効率的な経営に持っていくということが大事であると思います。今回の措置は、そのような考えに基づきまして分割民営化実施し、地域に密着し た効率的な経営を行うことができるようにするという認識で行っております。これに伴う雇用対策債務処理の問題等については、政府としても一連の閣議決定等に基づきまして対処してまいる所存であります。  今回の改革実施は、国民負担の増大を防ぎ、真に利用者の利便にこたえられる鉄道として再生させるという点にありまして、この点につきましては、国民利益にも最終的にはかなうものであり、責任を持って改革を断行してまいりたいと思うところでございます。  次に、政治の介入の問題でございますが、今次改革は、国鉄事業について輸送需要動向に的確に対応した効率的な輸送が提供できるように分割し、かつその事業が明確な経営責任のもとで自主的に運営されるよう、経営株式会社としようとするものであります。  これにより、他からの介入を排して、しかも他に依存することのない自主、自立の企業精神のもとで、活力ある経営を実現していくということができるものと認識いたしております。  整備新幹線の問題でございますが、再建監理委員会の答申においても、慎重な取り扱いが求められていることは御存じのとおりでございます。このような状況下にあって、整備新幹線の取り扱いについては、政府・与党で構成する整備新幹線財源問題等検討委員会において、昨年八月以来諸般の問題、すなわち財源あるいは在来線との関係、あるいは地元負担との関係等々、いろいろな問題について検討を進めておるところでございます。  新幹線の建設運営等につきまして、今回の全国新幹線鉄道整備法の改正においては、新幹線鉄道の営業主体及び建設主体は、それぞれ運輸大臣があらかじめその同意を得て指名する法人とすることといたしておりまして、国鉄分割民営化趣旨に沿ったものと認識しております。  また、整備新幹線については、これまで予算の計上、工事実施計画認可の申請等、各種の手続、行為が行われている等にかんがみまして、必要な範囲内でみなし規定も設けるとともに、営業主体としての新会社の意向が反映し得るように措置してあります。  次に、収支の問題でございますが、整備新幹線の取り扱いについては、検討委員会において検討しているところでありますが、その結論が得られていないので、整備新幹線の建設を前提とした旅客会社の収支見通しをお示しすることは不可能でございます。いずれにしても、この検討委員会において、旅客会社経営の健全性の確保にも十分配慮して検討が行われるものと理解いたしております。  整備新幹線による国民負担の見通しでございますが、整備新幹線の建設財源については、輸送需要建設費、新会社の収支に与える影響等を総合的に勘案して決定すべき問題でありまして、現在これらの点について検討委員会において検討を行っているところでございます。  残余の答弁は運輸大臣がいたします。(拍手)    〔国務大臣橋本龍太郎登壇拍手
  28. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 田渕議員のお尋ねに総理の御答弁を補足させていただきます。  まず第一点、青函トンネルのように、国鉄がその資本費を負担した上で経営することを前提として鉄建公団が建設してまいりました施設に係る債務について、昨年七月の国鉄再建監理委員会の「意見」では、国鉄自身の長期債務とあわせてその処理を行うよう提言をされておることは御承知のとおりであります。  今回の国鉄改革におきましては、その再建監理委員会の「意見」に沿いまして、青函トンネルのようにその施設を完成後運営する旅客鉄道会社に資本費の負担能力のないものにつきましては、施設が完成し供用される段階で債務清算事業団承継し、清算事業団処理するとしているものでありまして、適切かつ妥当な措置であると考えております。  また、確かに国鉄が資本費を負担することを前提として鉄建公団が建設を進めてまいりました鉄道施設の中には、成田新幹線や京葉線の一部の区間などのように、社会経済情勢の大幅な変化などにより工事を凍結しておるものがあります。これらの鉄道施設建設をもしそのまま継続するとすれば、これが将来さらに大幅な経営収支の悪化をもたらすことは予想されることでありまして、このようなことから、これらの鉄道施設については工事凍結はやむを得ないものと考えておりまして、工事の再開、継続は困難と考えております。これらの施設に係る債務については、再建監理委員会の「意見」に沿いまして、施設とともに清算事業団承継し、事業団によって処理することと考えております。  また、本四備讃線及び本四淡路線は、いずれも基本的には国鉄が資本費を負担した上で経営することを前提として本四公団が建設してきた鉄道施設であります。  このうち、本四備讃線は、完成後、旅客鉄道会社鉄道として経営することにより有効活用を図ることが適当なものでありますし、また本四淡路線は、本四備讃線同様、道路鉄道併用橋として計画されたものの、諸般の情勢により五十四年度以降、鉄道分の建設投資を行っておりません。  これらの本四公団建設施設に係る資本費につきましては、これらの施設建設の経緯や旅客鉄道会社負担能力等を考慮し、清算事業団において処理することとしておるものでありまして、現時点において考えられる措置としては、最も適切、妥当なものであると考えております。(拍手
  29. 瀬谷英行

    ○副議長(瀬谷英行君) 質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会