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山田耕三郎君 私は、本年六月に報道をされました大阪府中央卸売市場問題に関連をして、今後における公設市場
運営のあり方、すなわち卸売市場は何を支えに
運営していかれようとしておいでになりますのか等についてお尋ねをいたします。
本件については、既に農水省及び大阪府は、立入検査による真相究明に当たられ、その結果、卸売会社に対しましては厳重注意、会社の支社長には一日の入場停止、会社の役員には減給等の措置がとられ、一応の決着を見ております。
中央卸売市場制度は、
我が国生鮮食品流通のかなめとして半世紀を超す歴史を持っております。近年、大型産地が量販店、生協等と手を結び、宅急便の普及で特産品は家庭と直結をする等、いわゆる場外流通の比重が高まり、卸売市場は受け身の立場に立たされておるとは言いましても、全流通食品の約八五%のシェアを持っておると言われております。それだけにこの問題について早急な真相の究明と不正の事実があった場合の厳然たる処分を期待する声は大きいものがございます。
そのような
関係か、一応措置が発表をされた後においても、心なしか流通の仕事にかかわられる方々の中においても歯切れの悪いのを感じます。一般的な受けとめ方もさめたものがあり、当局の発表どおり率直に受け入れがたい空気もかなりあるように思われます。
その原因について
考えてみますと、
一つは、証拠になる社内伝票の問題にいたしましても、保管
期間が極めて短く、しかも作為の入り得る条件は幾らもあるように思われます。特に、使用されたとされている会社の内部伝票がなく照合ができなかった、こういう発表であっては、証拠隠滅を否定する
決定的な説得力を持った報告とは言えないように
思います。
それでもう
一つの問題は、卸売市場では公正な競争を確保するという建前から、青果さらには水産の部門にそれぞれ二社
程度を認可しておいでになります。この会社の場合には北部支店という名称でございますけれ
ども、これは本店が他の卸売市場にあるであろうということを素人目にも連想をすることができます。公正な競争を確保するということと裏腹に、極めて寡占の状態にありますことがこのことでわかります。だから、もし何らかの理由で営業停止あるいは認可取り消しというような措置がとられるようなことがあったとすれば、短
期間であれば耐えられると
思います。けれ
ども、その
期間が
長期であったり、あってはならないことですけれ
ども、認可取り消しというような場合の流通業界における混乱を想像するときに、容易に踏み込み得ない聖域となってしまっておるのではないかとさえ思われるのでございます。
以上の点から、一般的には冷めた目で眺めておいでになっておると
思います。したがって、当局の御
調査の結果ではありますけれ
ども、産地側においても、さらにはまた消費者側に対しても不信感が完全に取り除かれた、このようには
理解できないと
思います。
さらに、これに関連をして、今回のような問題は生鮮食品流通業界における必要悪だという声もあります。今後も起こり得る問題だとも言われております。
その理由について少しだけ申し上げさせていただきますと、
一つは各市場間の激烈な集荷競争、販売競争であり、わけても卸売市場が集中をいたします近畿地区における競争は特に激しいと言われております。競り人は、あるときには集荷
対策のため産地に、またあるときには販売
対策のために仲卸とよくコミュニケーションを重ねなければなりません。それで、こういったことはあってはならないことでありますけれ
ども、癒着の落とし穴につきまとわれておるような状態でもあるようでございます。
さらにまた、競り人はやはり競りの現場のムードづくりにも腐心をしておいでになるようであります。例えば幾らから競り始めるか、そういう
価格決定はやっぱり競り人の勘に任されておるのが大体の一般的な現状であります。また、冷え込んだ市況に活況を呼び起こし、産地の期待にこたえる必要もあるようですけれ
ども、競り人はそういうムードづくりが必要な場合には、やはり仲卸の協力を求める根回しが必要と言われておりますが、こんなところにもギブ・アンド・テークの
関係が生じないとも限らないように思われます。
以上のように、競り人は、産地に対しても、卸売に対しても
責任を持つ立場に置かれます。競り値は神聖不可侵と言われておりますけれ
ども、競り値を形成するための
関係者間にはいろいろの
関係のできる
可能性は多分に存在しておるのでございます。場外流通の場合も含め、値決めの基準は御売市場の競り値であります。最も公正、厳正が要求される社会の公器の
運営に携わる者としての意識の高揚が何よりも大切であり、そういった立場から職場研修等も実施をされておるのでありますけれ
ども、残念ながら今日の拝金思想充満の社会的風潮の中でいかにも私は無力なように思われてなりません。
さらに、別の問題としてこういうこともございます。
一つは、事故処理の問題、すなわち傷み商品の値引きの問題でありますが、事故処理額が不当に出荷者に転嫁されることのないようにするために場長の認定を受けるシステムになっておりますが、卸売市場は
価格形成の場であると同時に、短時間で多量の商品をさばく集配センターとしての迅速性もまた重要な機能であって、規定の時刻までに処理の手続ができない場合、あるいは量販店等においては荷ほどきが翌日以降はずれ込む場合もあること等を
考えてみると、このように規定による手続がとれない場合があります。そういった場合は卸売業者や仲卸業者の負担になってしまうのでございまして、これらは無視できない問題を含んでおる、こういうようにも言われております。
また、もう
一つは残品処理の問題があります。市場に集荷されました品物が全部競り落とされるというわけではありません。残品も当然のこととしてできます。それで、この場合に集荷会社、すなわち卸売会社は仲卸会社に引き取ってもらう交渉をせなければなりません。仲卸の中でこういったものを引き取ります力を持っておる会社はそう多くはございません。通常四、五社だという
お話もございましたけれ
ども、そこでの
価格の
決定は相対であります。そういうようにして引き取られた荷物の一部がトラックで青空市場を開設をしておる場合に使用される格安の商品として活用をされておることもあるようでございますけれ
ども、こういったことで仲卸に無理を頼んだ場合には、卸会社としてはやっぱり借りになります。だとすれば、その借りはまた何らかの方法で埋め合わせをする必要があるのではないか、このようにも
思います。
その他にも、時間的な
関係で割愛をさせていただきますけれ
ども、競りの形骸化がささやかれます品物の先取り問題、さらには奨励金問題等もあります。
けさの新聞にも「鯨肉流通にメスを」という見出しで、鯨肉の流通については六大都市の中央市場経由で五五%の量を競りまたは入札で取引されることが取り決められておるのに、最近では中央市場に回される量が極端に減らされ、
価格決定という機能のみに利用をされているのは遺憾だということで嘆かれ、さらには、供給が絞られれば値段が高騰するのは当たり前であって、今や
生産者のコストを十分償えるはずの指し値よりも七〇%も高い値段でなければ買えない。このようにツケはすべて市場の業者や消費者に払わされるのですという不満が述べられてありました。
以上のとおり、余りにも問題が多く、きれいごとだけでは済まされない問題もあり、農水省とされましても、今回の立入検査でより多くの問題を学び取られたことと存じますが、法定の手数料だけでは処理できるものではありませんとの陳述もございました。
農林水産省は、今年から十カ年がかりで第四次卸売市場整備
事業に着手をされ、最新鋭の東京大森市場も二年後には稼働をする計画だと聞いております。設備が幾ら立派になりましても、そこでの競りが型だけのものになっておっては、いわゆる仏つくって魂入れずであり、大切なことは決められたルールを守るということです。必要悪という言葉を使いましたが、もしそのようなことがあったといたしましても、合理的な解決の手法を探求し、守れるルールを
確立すべきであると
思います。
そのためには、指導監督のお立場においでになります
農林水産省が流通現場の実態を熟知されるとともに、
生産者や消費者の声に耳を傾けられることであり、そのことができるような、可能なような人員配置が大切だと
思いますが、以上のことについて当局の御所見をまず承りたいと
思います。