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委員以外の議員(
村沢牧君) 私は、日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
日本鉄道株式会社法案、
日本国有鉄道の
解散及び
特定長期債務の
処理に関する
法律案並びに
日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案について、その
提案理由と
概要について御説明いたします。
国鉄経営が危機に陥ってから既に久しく、五回にわたる
政府の
再建計画がことごとく失敗したことは周知の事実であります。急激な交通と経済情勢の変化に適切な対応を欠いたこと、
日本国有鉄道法を初め多くの
経営上の制約があり、
経営の自主性が保障されなかったこと、官僚的
経営に終始し、政治の介入が絶えず、加えて、国が政策的に
国鉄に
建設させ
経営させた地方交通線などの経費について、国が必要な補償を行ってこなかったことなどに原因があることも
国民周知のことであります。
国鉄の財政はまさに破綻状態であり、かかる状態を招いた原因と責任を明確に踏まえた上での対策であり
改革でなくしては単なる
国民の交通権に対する行政の責任放棄にすぎないと考えます。
社会党案はこうした立場から立案し、その立案の背景には
政府の
分割・
民営化策に反対する三千五百万人の
国民の声が反映されております。
今ここに、
政府案と我が社会党案が並んで
議題となり、今後百年にわたる
鉄道のあり方について、広く
国民の前で、また世界に対してその是非を問うことになりますが、我が党案に対して親方日の丸等のいわれなき中傷を加えつつ、十分な
審議も行わず、示された疑問の数々に対しても満足に答えもせず、
衆議院において強引に
政府案を通過させた
政府及び与党に対し、改めて遺憾の意を表明いたします。
申すまでもなく、両案の
基本的な相違は、新
事業体の
経営形態については、
分割か一社制か、純然たる私企業にするのか公企業として
発展をさせるのかということであります。
国鉄再建監理委員会の答申は、
国鉄経営の危機的
状況を招いた最大の原因は公社
制度と全国一元の巨大組織にあるとして、
国鉄事業を再生するには速やかに
分割・
民営化を断行するしか道はないと強弁しています。しかし、その根拠につきましては、
衆議院の
審議を通じても明確に論証されなかったことは明らかであります。世界の巨大企業を考えるまでもなく、日本国内においても、
政府みずからNTTの組織については
分割せず、
政府はひたすらみずからの責任で生み出された
国鉄の赤字をその
理由に挙げるだけではありませんか。
政府・自民党は、臨調行革路線に基づいて、
国鉄百年の歴史と伝統を無視し、
国鉄を含む今後の総合交通体系の展望もないまま、先ほど
提案理由説明のありました諸法案を提出し、その成立に腐心しているのであります。
我が党は、
国鉄を解体し、公共性を企業性に置きかえ、また、希望という名をかりた配転や退職の強要によって組合つぶしを進め、自殺者さえ生んでいる労働者とその家族に犠牲を押しつけ、他方では、サービスの低下や格差運賃あるいは累積赤字を
国民に押しつけることによって
国鉄の再建を図ろうとする
政府案には、強く反対いたします。 同時に、
国民の共有
財産を守り、
国鉄が真に
国民の
国鉄としてその機能を発揮し得るようにするためには、現在の
国鉄の抜本的
改革を
実施することが必要であると判断し、必要な
法律案を
政府案への対案として提出した次第であります。
以下、我が党の対案の
基本的な考え方について御説明申し上げます。
第一に、
国鉄が担ってきた公共的機能を維持
発展させるため、
国鉄にかわってその機能を担うべき新たな
事業体を国の責任で
設立することであります。第二に、新
事業体には
国鉄の
資産及び
事業のすべてを引き継がせ、地方交通線を含む全国ネットワークを維持
発展させることであります。第三に、新
事業体は、今日までの
国鉄にみられるような、不当な制約や政治介入、
経営を度外視した
負担の押しつけなどを排除し、
経営の自主性と健全な
経営を
確保するため、
株式会社の形態をとるとともに、
事業分野の拡大を図ることであります。第四に、
国民の需要に応じた
事業運営を
確保するため、新
事業体の内部組織として
国民各層の代表で構成する
経営委員会を設置することであります。第五に、公共性を担保するために必要な費用は、
基本的には国が
負担あるいは補助することであります。第六に、膨大な累積
債務のうち国の政策の失敗によって生じた
債務については、新
事業体とは切り離し、国の責任で
処理することであります。第七に、
国鉄職員については、すべて新
事業体が
引き継ぎ、労使協議に基づき適正人員を定め、希望退職者の
職業と生活の安定を
確保するため、新
事業体と国はその責任において必要な
措置を講ずることなどであります。
次に、各
法律案の
概要について御説明申し上げます。
まず、
日本鉄道株式会社法案について御説明いたします。
第一に、日本
鉄道株式会社は、
国鉄の
事業を
承継し、全国的な
鉄道事業並びにこれに関連する
自動車運送事業及び連絡船
事業を本来の
業務として
経営することを
目的として
設立する
株式会社とし、これらのほか必要な
事業を営むことができることといたしております。
第二に、
会社は、
我が国の
基幹的輸送機関である
鉄道の全国ネットワークによる
輸送その他の公共的
輸送を担う企業体として、国及び
地方公共団体が中心となって進める総合交通体系の
整備確立に寄与し、もって公共の福祉の増進と
国民経済の
発展に寄与する責務を有することといたしております。
第三に、
会社には、本社のほか全国七ブロックにそれぞれ支社を置き、各支社ごとに地域の
輸送需要に適切に対応した効率的な
事業運営が行われるようにするため、支社に対して大幅に権限を委譲する分権化を図ることといたしました。
第四に、
政府は、
会社の
発行済み株式総数の十分の七以上を保有しなければならないものといたしております。
第五に、本社に
経営委員会を置き、
会社の
経営の
基本方針及び
事業計画等の
業務執行に関する重要
事項は
経営委員会の
議決を経なければならないこととするとともに、支社にもそれぞれ地方
経営委員会を置き、
業務区域内の重要
事項をそこでも
議決することといたしております。
第六に、
政府は、
会社の
債務に関する
保証契約及び
事業資金の無利子貸し付けをすることができることとするとともに、
鉄道新線の
建設費、災害復旧費を補助することができることといたしました。また
政府は、当分の間、
国民生活にとって必要である地方
鉄道営業線であって収支均衡を
確保することが困難であると認められるものについて、その
運営費の一部を補助することができることともいたしております。
第七に、
運輸大臣に対する
事業計画の
届け出等必要最小限度の
政府の
監督について
所要の
規定を設けることといたしております。
次に、
日本国有鉄道の
解散及び
特定長期債務の
処理に関する
法律案について御説明申し上げます。
第一に、
日本国有鉄道は、日本
鉄道株式会社の成立のときにおいて
解散することとし、
解散のときに有するその一切の
権利及び
義務のうち、長期の
資金に係る
債務で政令で定める
特定長期債務以外のものは、
国鉄の
解散のときにおいて
会社が
承継することといたしております。
第二に、
会社の成立の際現に
国鉄の
職員である者は、
会社の成立のときに
会社の
職員となるものといたしております。
第三に、
国鉄は、
解散した後も清算の
目的の
範囲内においてなお存続することとし、
政府は、この清算中の
国鉄に対し、
特定長期債務の返済が完了するまでの
期間中に
債務の
償還計画を定めて
資金の交付等を行うことといたしております。
最後に、
日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案について御説明申し上げます。
第一に、この
法律は、
日本国有鉄道から移行した日本
鉄道株式会社の退職希望
職員及び希望退職者について、特別給付金の支給及び再
就職の
促進に関する特別の
措置を講じ、もって退職希望
職員等の
職業及び生活の安定を図ることを
目的といたしております。
第二に、退職希望
職員等の再
就職促進に関する国及び
会社の責務を定めるとともに、特に、
会社は、この
法律に定める
措置を
実施するに当たっては、退職を希望する
職員の募集に応ずること等を強要し、または
職員が労働組合の組合員であること等を
理由として差別的取り扱いをしてはならないことといたしました。
第三に、退職希望
職員等の再
就職促進について、国は再
就職促進基本計画及び
採用促進計画を、
会社は再
就職促進実施計画をそれぞれ定めるものといたしております。
なお、これらの計画の
作成に当たっては、
会社は労働組合と協議しなければならないことといたしております。
第四に、退職希望
職員等の再
就職先の
確保についてでありますが、国は、率先して退職希望
職員等を
採用するとともに、
特殊法人等及び
地方公共団体に対し退職希望
職員等を
採用するよう要請するものといたしております。また、国は、退職希望
職員等を雇い
入れる一般
事業主に対し、退職希望
職員等雇用助成金を支給することができることといたしております。
第五に、希望退職者に支給する特別給付金についてでありますが、現在、今
年度に限った特別
措置として支給されている特別給付金を五年間にわたって支給することとし、このため、
日本国有鉄道の
経営する
事業の
運営の改善のために
昭和六十一
年度において緊急に講ずべき特別
措置に関する
法律について
所要の
改正措置を講ずることといたしております。
以上のほか、国の
体制の
整備、
雇用促進事業団の
援護業務等、退職希望
職員等の再
就職の
促進、
援助、関連企業労働者等への配慮等に関して必要な諸
規定を設けることといたしております。
以上、各
法律案の
提案理由及びその
概要について御説明申し上げました。これらの
法律案は、さきに述べたように、三千五百万署名者を初めとする広範な
国民の
期待に十分こたえ得る現実的な
改革案であります。
政府案の早期成立を焦る余り、
衆議院の
国鉄改革特別委員会では我が党の反対を押し切って強引な採決が行われましたが、本院においてはかかる轍を踏むことなく、我が党案につきましても徹底した御
審議をいただき、速やかに可決されるよう心からお願いいたしまして、
提案理由説明を終わります。