運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1986-12-18 第107回国会 参議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十八日(木曜日)    午前十時十分開会     ─────────────    委員異動  十一月二十七日     辞任         補欠選任      佐藤栄佐久君     桧垣徳太郎君  十一月二十八日     辞任         補欠選任      桧垣徳太郎君     佐藤栄佐久君  十二月八日     辞任         補欠選任      松浦 孝治君     森下  泰君  十二月十七日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     安永 英雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         前田 勲男君     理 事                 大木  浩君                 下条進一郎君                 福間 知之君                 市川 正一君     委 員                 佐藤栄佐久君                 杉元 恒雄君                 中曽根弘文君                 松尾 官平君                 松岡滿壽男君                 向山 一人君                 守住 有信君                 梶原 敬義君                 小山 一平君                 田代富士男君                 伏見 康治君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       近藤 鉄雄君    政府委員        公正取引委員会        事務局取引部長  柴田 章平君        経済企画庁調整        局長       川崎  弘君        経済企画庁調整        局審議官     田中  努君        経済企画庁物価        局長       海野 恒男君        経済企画庁総合        計画局審議官   冨金原俊二君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省通商        政策局長     村岡 茂生君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省基礎        産業局長     鈴木 直道君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        資源エネルギー        庁長官      野々内 隆君        中小企業庁次長  広海 正光君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        労働省労政局労        政課長      澤田陽太郎君        労働省職業安定        局雇用政策課長  廣見 和夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (日本EC間の貿易不均衡問題に関する件)  (本年度の経済成長率に関する件)  (雇用現状と今後の動向に関する件)  (産業構造調整雇用調整に関する件)  (為替レート適正化に関する件)  (第八次石炭政策に関する件)  (円高関連倒産に関する件)  (経済運営方針の転換に関する件) ○水力発電施設周辺地域交付金交付期間延長に関する請願(第七〇号) ○円高不況回復地場産業救済に関する請願(第九四号) ○第八次石炭政策に関する請願(第一五六号) ○円高対策内需拡大政策推進に関する請願(第一五七号) ○水力発電施設周辺地域交付金交付期間延長に関する請願(第二〇〇号) ○悪質商法の防止・規制に関する請願(第二六三号) ○円高差益の国民への還元に関する請願(第二六四号) ○独占禁止法強化に関する請願(第二六五号) ○製造物責任法制定に関する請願(第二八七号) ○中小企業信用補完制度堅持のための財政援助強化に関する請願(第五七六号外二件) ○円高差益還元し、灯油・電気ガス料金の値下げに関する請願(第一三一一号) ○鉄鋼産業危機打開に関する請願(第一四〇五号外二〇件) ○円高差益還元に関する請願(第二一五〇号外七件) ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 前田勲男

    委員長前田勲男君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十二月八日、松浦孝治君が、また昨十二月十七日、本岡昭次君が委員辞任され、その補欠として森下泰君、安永英雄君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  3. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 福間知之

    福間知之君 先日ブラッセルで開かれました日本EC閣僚会議田村大臣出席をされました。大変体の調子も思わしくないということのようにお伺いしていましたけれども、御苦労さんだったと思います。  ECとの貿易、通商問題、昨今は何か陰にこもったような印象を私は受けておるのでございますけれども、そんな気持ちを持ちながら、今回の合意に関しまして二、三冒頭にお伺いをしたいと思う。  最初に、この閣僚会議におきまして、懸案になっている貿易上の問題を中心にして一体両者で何が合意されたのか、あるいはまた合意ができなかったものは何なのか、これをひとつお伺いをしたい。  それから、あわせまして、それとの関連ですけれども、アルコール飲料問題がEC側から声高に聞こえてくるんですけれども、ECが言うように、仮にアルコール類関税引き下げだとかあるいは酒税そのものを仮に我が方が改正したと仮定しても、今年度、日本EC間で我が方が百八十億ドルぐらいのインバランス黒字が予想されているわけです。定かに言えませんが、昨今では百五十億ドル前後の黒字になっているようですから、年度内ではさらに三十億ドル以上ふえるんじゃないか、こういうふうに思われています。そういう我が方の黒字EC側の赤字、これの緩和に酒類の関税あるいは酒税等を考慮したとしても、なかなか効果としては上がらないんじゃないか、こういうふうに思われるのであります。  ところが、ECの方は代表的な商品だということで、かねがねアルコール類についての関税引き下げ等その他を求めてきているんですけれども、それがそんなに大きなインバランス改善に役立つとは思えないということから、何かEC側としては、我が国に対してもっと不平や注文というようなものがあるのではないか、そんな感じがするわけです。冒頭申し上げたように、何となく陰にこもったような感じで釈然としない面を感じてきていますので、大臣は今回あちらへ行かれて、いろんな場面を通じてそういう点をどういうふうに感じ取っておられるかいなと、このこともあわせてお伺いをしたいわけです。  まず一つは、何が合意できて、何ができなかったかというふうなこと、今は全体としてEC日本側に対してどういう面持ちでもって対応してこようとしているのか、この二点ですね。
  5. 田村元

    国務大臣田村元君) まず、合意もしくは解決をいたしました問題は、通産省関係は大体個別はほとんど皆合意もしくは解決ということであります。インバランス問題だけが残った。  具体的に申しますと、スキーSGマーク、それから日・EC産業協力センターの設立、それから核融合協力協定正式交渉開始についての合意、それから電気用品基準認証については、相手方が非常に前進したと高く評価をしたというようなことであります。  一方、これはまあ通産省の所管というわけではありませんけれども、アルコール飲料問題につきましては、私が出発します直前に、閣議で中曽根総理大蔵大臣に対して強く指示したということで、この基本方針が立てられたということについては非常に前進したと評価しておりますけれども、しかし彼らはやはり、我々は答えを求めているんだ、こういうようなことであって、この問題に対してはなお疑心暗鬼ということだと思います。  残る問題としては、基本的な貿易インバランスの問題、それから個別問題では関西新空港の問題等、引き続き懸念を表明しておりました。  ただ、今回は、私はECとの接触は、ポルトガルのシントラにおける四極貿易大臣会議、それからウルグアイのプンタ・デル・エステにおけるガット閣僚会議、それから今回と、三度EC側接触をしたわけです。最初に九月の上旬にブラッセルを訪問したときに、ドロール委員長以下と個別に会ったときには、非常に険しいものがありました。率直に言ってもうののしりに近いようなことでありました。こちらが何か言っても、我々は言いわけを聞こうとは思わない、答えを聞きたいんだ、こういうことであった。フランスのノワール以下いろんな人にも会いましたが、非常に厳しかった。貿易会議でも厳しかった。それからガットでもそうでありましたが、ドイツのバンゲマンまで非常に厳しい態度でありました。  ところが、今度行きましたら、非常に明るいムードで、私は冒頭のあいさつというか演説で、こういう表現をしたんですが、九月にお伺いしたときはまだ暑い、秋の始まりであったにもかかわらず、この建物はまことに寒々とした雰囲気で私を迎えた、ところが今回は真冬であるにもかかわらずほのぼのと暖かい雰囲気で私を迎えてくれておる、という言い出しをしたわけですが、それをドクレルクが恐らくドロールに言ったんでしょう、ドロール委員長が翌日の会議で、冒頭発言で、ミニスター田村がこういう、ポエティックと言って、叙情的な、詩的な発言をしたと言って、にこにこしておりましたが、今度は本当によかったです。わずか三カ月でこんなにも変わるものかという感じがしました。それは結局、私の以前の、どうこうという批判じゃなくて、そういう意味じゃなくて、従来日本側はその都度逃れのことを言ってきたわけでしょうね、恐らく。それに対して彼らは不信感を非常に募らせておった。今回はどんどん解決したものを持っていったということで、大変御機嫌がよかったということだろうと思います。  それからアルコール飲料、確かにおっしゃるとおりで、アルコール飲料問題でもスキーSGマークでも、金額からいえばそんなに大したことはないと思うんです。ただ、アルコール飲料に関しましては、ヨーロッパシンボルなんですね、まさにヨーロッパシンボル。ですから、彼らから見れば金額じゃない。そして日本市場開放の実績をこれによって見ようというわけですから、だからこれはなかなか並み大抵でありません。と同時に、アルコール飲料、特にウイスキーなんかでもそうですが、アメリカやカナダまでが、バーボンやカナディアンまでが一緒に、向こう連合軍ですから、だからなかなか大変なことであります。これは新聞が書いておる程度じゃありません。会議に臨んで、その厳しさというものはこれは特別でございました。そういうことでありまして、日本に対して一種の踏み絵を迫っておると言ってもいいんじゃなかろうかという感じがいたします。  ただ、向こうとこっちとの税の立て方というのは全然違うわけですね。ですから、我々がヨーロッパ式酒税を導入すると、泡盛やしょうちゅうが一番高くなるというような妙なことになるわけなんですが、しょうちゅうも入れて日本酒日本酒として、洋酒という場合にやはり何らかの解決をしないと大変じゃないか。そこへもってきて、日本が対米貿易というものに中心を置いておる、はるかにアメリカよりヨーロッパの方が人口が多いにもかかわらず、貿易量は対米は対欧の三倍ですから。そういうこともあろうと思います。ヨーロッパには、何もアメリカ中心というわけじゃないぞ、世界経済ヨーロッパアメリカ日本と三極で動いているんだという彼らのプライドもありますし、そういう点で非常に難しい。そこへもってきて十二カ国の集まりですから、ですからこれはEC事務局が我々に対応するのはなかなか難しいと思うんですよ。自民党の派閥じゃないが、なかなかこれ本当に難しい話だと思うんです。でありますから、そういう点でも我々はやはり厳しい対応を強いられる。ですから、これから前向きにいろいろな面で対応していかなきゃならぬ。  もう一つは、自動車を初めとして、アメリカにやっつけられて締め出された分をヨーロッパへ売りつけたものだから、そこで、グローバルな面ではヨーロッパ黒字ですけれども、そういう面での不満やあるいはジェラシーやいろんなものがうっせきしておるということは事実だと思います。いずれにしても非常に厳しい姿ですから、我々としても真剣にこれに取り組んでいかなきゃならぬということを実感として肌で受けとめてまいった次第でございます。
  6. 福間知之

    福間知之君 今の御答弁で、今回の会議の中身あるいはまた雰囲気が多少感じ取れた気はいたしております。ところが、お酒の問題一つとりましても、確かにヨーロッパ勢にとってはシンボル的な商品という意味で、もっと日本は大量に買ってくれて、より安く国内で売れるようにしてほしいという向こう気持ちが非常に強いわけですね。  けさの報道によりますと、大臣ももちろんですけれども、外務大臣も早速関係大臣相談をして、中曽根総理自身も大改革をやるんだ、こういう意向表明があったと報じられていますけれども、具体的に今党税調も与党さんいろいろ議論をされていますので、当然これは避けて通れないだろう、こういうふうに思うわけです。だから、ぜひ我が国で可能な最大限のひとつ引き下げを私は要望しておきたいと思います。現に並行輸入というふうな手法でもって随分安く入っているという事実もあります。これは自動車なんかもその一つなんですけれども、ベンツが総輸入代理店の価格よりも二百万円以上も安く市場に出回ったというふうなこともあったわけですね。お酒についてはそんなに高い商品じゃありませんけれども、それでも末端での値下がりというのは、円高にもかかわらずそんなに大きいものでもありません。これはやはりこの機会にぜひひとつ考えてみるべきだろう、そういうふうに思うんです。  時間、ちょっと急ぎますので、次に、先ほど大臣も触れましたインバランス、基本的な問題としてインバランスをどう改善するのかということに関して、当局としてはこの現状ECとの関係インバランスをどのように見ていられるか、八一年以来百億ドル前後で推移してきたのですが、ことしは十一月までに百五十三億ドル余り、こういうふうに予想をしているんですけれども、この黒字伸びというものがECとしては対日批判一つの大きな根拠になっているんじゃないか、そういうふうに思っていますが、ことしの黒字額をどのように見通しておられますか。
  7. 村岡茂生

    政府委員村岡茂生君) ECに対します貿易黒字というものを通産省といたしましては正式に試算しているものではありませんが、今仮にここで一つの前提を置いて、例えば十一月までの対前年同月の伸び率というものをそのまま用いまして十二月も計算いたしますると、ドルベースで申しますと百七十六億ドル、百八十億ドル弱、こういう計算になります。前年比で申しますと五十二・六億ドルになるわけでございます。しかしこれを円ベースで申し上げますと約二兆九千億円ということで、対前年比七・〇%の伸びということで、それほど大きな伸びではないのではないかということが言えるのであります。  過般行われました日・EC閣僚会議の場におきましても、通産大臣からこの点は非常に強く指摘いたしまして、日本EC貿易の実態を見ると、ドルベース取引しているというのは全体の八%にしかすぎないじゃないか、円建て取引しているのが全体の五二%に達している、残りの約四〇%はヨーロッパ各国通貨建て取引が行われている。したがって、我々としては日・EC貿易インバランス議論する場合に、円ベースもしくは現地通貨建てあるいはECUというEC共通通貨がございますが、それで議論すべきではないかということを強くおっしゃいました。先方ドクレルクは、これに対して、それは全くそのとおりだ、我々は円ベース議論をしてもいいんだ、こういうような議論を展開したところでございます。
  8. 福間知之

    福間知之君 おおむねそのとおりだと私も思っておるわけでございまして、ドルだけの国じゃないわけですから、それ以外の国なんですから、ドルベースでの判断というのは余り当を得ないと思っています。しかし、ドルベースで換算して六〇%足らずの伸びである、円ベースでは今おっしゃったように七、八%の伸びでしかない、こういうことでありまするから、そんなに目くじらを立てられるほどのことはないわけでありまして、確かに我が国インバランス世界的な全体の金額では大きいですけれども、ECもことしの経常収支はほぼ五百五億ドルぐらいだと予想されているわけでありまして、仮にそうだとすると、この五百億ドルは対前年比実に三・五倍という大きな伸びになっているわけであります。したがって、先ほど答弁された数値で比較しても、そう目くじらを立てられるほどのものではない、こういうふうに思うわけでございまして、こういう点をやはり我が国も言うべきことは言うということで、会談の中では必要であれば主張してもらわなきゃならぬと思っています。  さらに、新聞で見ますと加賀美EC大使が一定の発言をされておるわけです。ECとの貿易問題について、EC側は、事態の推移によっては不満が暴発するという少し際どい発言までしておられるようですけれども、それは国内に対する一つのよい意味の牽制という趣旨が込められているのかもしれませんけれども、やはり冷静に事態については本国側相談を十分していただいて、本国側時々刻々ECに対して市場開放という基本姿勢改善を進めていっているわけですから、そういうことについても、駐EC大使としては、相手側説得性のある努力を十分果たしてもらうようにしてもらわなきゃならぬ、そういうふうに思っているわけであります。  それから、先ほど大臣がちょっと触れられましたけれども、私の方もEC日本に対する姿勢の背景に、どうも日本の対米偏重姿勢EC側には映っているんじゃないか。例えば先ほどアルコール飲料の問題も触れておりますが、日米半導体協定というものが先般結ばれまして、EC半導体メーカーがそれによって悪影響をこうむる、こういう被害者意識を持っているんじゃないか、こういうふうにも考えられるわけでございまして、日本側としては、必ずしも半導体日米協定ECを差別扱いするというようなことはみじんも考えていないはずでございますけれども、EC側から見ればどうもそんな受け取り方をしているんじゃないか、こういうふうに思っていますが、大臣はそんなことについては今回お感じにはなりませんでしたか。
  9. 田村元

    国務大臣田村元君) 確かに、個別にドクレルクに会ったときにはその話が出ました。出ましたが、私から冗談じゃないよと言ってモニタリングの話もいたしまして、それに対しては割合にさらりと彼は聞いておりました。  さっきちょっと申し忘れましたが、おれはここまで努力をしたんだから、だからもうこれから再びバランス・オブ・ベネフィットというふうなことを言うなよと、ガットというのはあくまでも管理貿易あるいは保護主義から自由貿易を守るための国際ルールをつくる場なのであって、結果として得た利益バランスを問うところではない。それを結果として得た利益まで文句を言う、それじゃ働き者はばかを見ることになるので、だから再びそれは言わぬでもらいたい、こう言ったら、君と二人だけで言ってもいかぬかと言うから、それはだめだ、再び言うなよ、こう言いましたら、そのように努力すると言っておりましたが、今度の会議では、ついにBOBといいますか、利益の均衡問題は彼らは触れませんでした。それだけでも非常に対日感情がよくなったということが言えるかもしれません。  それでも向こう新聞記者質問も相当辛らつでありまして、今度は日本側ECを押し切ってしまったような印象を受けたんでしょう、柔道の試合と違うのか、日本お家芸柔道ECはやられたんじゃないのか、こういうような質問新聞記者からありまして、私から、柔道は確かに日本お家芸かもしれぬが、オランダのヘーシンクは日本の選手を全部ぶん投げていったぞと言って、言い返したわけですけれども、今おっしゃったように、いろいろ問題はありますけれども、非常に好転したということは言えると思います。  率直に言って、国際貿易の問題なんかは、言うべきは言うと、あの例の、検討するとか善処するとかいうような言葉ではいけないのであって、言うべきは言う。私は机をたたいて九月もどなり合いしたんですけれども、今度向こう新聞に私のことをパワフルなんというふうな表現で書いておったようですけれども、言うべきは言う。そのかわり一たん約束したことは守るという行き方がいいんじゃないかというふうにしみじみ思いました。
  10. 村岡茂生

    政府委員村岡茂生君) 先ほどお尋ねEC経常収支五百五億ドルぐらいに達しそうだ、まさに御指摘のとおりでございます。  先ほどの円建てあるいはECU建て議論しようということに加えて、通産大臣は非常に強く主張なさいましたのは、日・EC貿易量というのは、日米貿易量に比べると三分の一にしかすぎないじゃないか、人口割合から見るとやっぱり少な過ぎると思いませんか。したがって、これを大きくしていくというそのプロセスの中で貿易インバランスを徐々に改善していくべきじゃないかというような訴えかけをなさったわけでございます。向こう様も、この貿易インバランスの問題については、残された問題ということで彼らは表現いたしましたけれども、しかしこの問題はやはり先生御指摘のように、冷静にかつ現実的に考えていこうという空気はあったと思います。  それに引きかえ、やはり日本市場が閉鎖的である、あるいは場合によっては差別的でさえある、こういう構造を何とか直してほしいということは強く主張しておりました。これは耳を傾けるところもあろうかと思います。  それに加えまして、このトータルなインバランスについて、先方、特にドロールさんが強く言っておられました点は、日本ECインバランスというよりは、日本のグローバルな巨額かつ継続的な黒字の問題でございます。これが巨額かつ長期に継続いたしますと、どうしても保護主義というセンチメントを各国から生じせしめること、これは必定である。したがって、世界貿易制度自由貿易主義というものを守るために日本は何かすべきではないかというアピールを強くなさっておられました。この点に関しましては、私どもとしてはやはり聞く耳を持たなければならないと思うのであります。何となれば、自由貿易主義というものは日本経済安全保障にとってやはりかけがえのない重要なポイントだと私ども理解しております。  そういう意味に立って、市場開放であるとか、あるいは内需拡大であるとか、あるいは中長期的に目を見据えて構造改善を図っていくというようなことが重要なのではないかと、かように考えておる次第でございます。
  11. 田村元

    国務大臣田村元君) ちょっと三十秒だけ時間をかりますと、ECというから割合に簡単に聞こえるんですが、具体的に申して十二カ国、ヨーロッパ十二カ国全部足した貿易黒字の倍近い黒字日本一国で得ておるということは、やっぱり彼らから見ればゆゆしき一大事ということじゃないでしょうかね。
  12. 福間知之

    福間知之君 ゆゆしきことだということでまた過ごされるわけじゃないんで、我が方もそれだけの対EC黒字を達成したということは、これはそれなりの努力はあるし、それなりのEC側の条件というようなものがやっぱりあって、必要なものだから買ってもらえたと、こういうことでもあるわけですが、トータルとして見れば、今局長の答弁のように、結論的にはさらに我が方での輸入をふやしていく方策を種々講じていく必要があると、こういうことだと思うんです。  ところで、私たちは何もECだけを疎外して考えているわけではなくて、積極的に対応して、したがって黒字も怒られるほど出しちゃったということになっておるんですけれども、全体として一つの傾向を見ますと、やはりもっとECとの関係では貿易量をふやすと、輸出、輸入をふやす、特にこの際輸入をふやすということが主眼にならなきゃならぬのでしょうけれども。一つの傾向として、昨今はカナダ、アメリカ、そしてオセアニア、東南アジア、東アジアを含めた環太平洋地域における貿易数量というものが金額も含めてかなり伸びてきている。これは日本だけじゃなくて、アメリカもかつての環大西洋圏の交易よりも環太平洋の方に目を向け、力を入れ出してきている、こういう傾向が一つあるわけですね。  ちなみに、八〇年の時点では、この環太平洋の貿易のシェアは、我が国としては四八・八%であった、統計が残っておるわけですけれども、それから八一、八二、八五、昨年度でこの四八・八が五七・八にシェアが拡大している。ことしはさらにこれがコンマ何%かはさらに拡大するんじゃないか、こういうふうに見られておるわけであります。ところが、ECとの関係におけるシェアは、八〇年がわずかに五・六%なんですね。八五年で六・九%、約七%水準にとどまっておる。これは間違いならば別ですけれども、大臣おっしゃるように、十カ国が十二カ国にふえた今日のECとの関係で七%程度のシェアしか占めてない。今年度はどうやらこの倍以上になりそうですが、これはいろんな経済条件の変化がもたらすところですけれども、そういうふうに見られておるわけであります。  だから、ECとの関係だけで律するわけにはいかぬのだけれども、特にECとの関係アメリカと並んで大事に我が国もしていかなきゃならぬわけですから、ここは意を用いて相手側の言い分にもこたえるように努力国内的に非常にすべきだろうと、今申し上げた数字からいってもそれが言えるわけです。趨勢として、二十一世紀に向けてやはり環太平洋というものの済経的な力がついていくことは間違いないんですよね。そういうことで、特に身近な日本としては、この環太平洋諸国との関係もこれは重要視していかなきゃならぬのですけれども、単なるシェアの数値だけじゃなくて、一応経済的なあるいは外交的な努力の私たちのこのウエートは、これはECに向けても決しておろそかにしていっちゃならぬ、こういうふうに思っているわけであります。  時間がないので、ちょっと先を急ぎたいと思いますが、大臣先ほど申された合意事項の中の産業協力センターについてでございますけれども、通産省当局の資料によりましても、このところ日本企業の対EC製造業投資というものの合計が二百四十一件あるそうであります。そのうちの百四十一件は八〇年代に入ってからのものでありまして、近年において特にその伸びが顕著でございます。顕著に最近直接投資が伸びているというこの背景あるいはその影響をどのように当局としてお考えになっているか。  あるいはまた、この産業協力ということを考えます場合に、そのメリットは相手国における雇用の増大あるいは当該産業の再活性化という点にあると考えられるわけですけれども、現在までの日本の直接投資というものは、必ずしもそのような目的に合致してないのじゃないか。むしろ貿易摩擦を回避するねらいで、現地生産に日本企業が切りかえているというふうな性格が強いんじゃないか、EC側がそのように見てるんじゃないだろうか。だとすると、結果的に日本製品がEC域内でシェアを伸ばすだけになってしまう。そういう批判が最近出ているんじゃないだろうかと思われるわけです。そして、だとすると、そういう批判の中からは、これからの日本企業の対EC直接投資というものに対しては、かなり選別をするというふうな傾向が、動きが出てくるんじゃないか、こういうことが懸念されているわけであります。  私流に言わせれば、昨今産業の空洞化が国内における問題としてクローズアップしていますが、確かに傾向としてそういう姿が見られるわけで、そのことは、より具体的に言うならば、国内に失業者を増大すると、こういう犠牲を払うことにも通ずるわけですけれども、そんな上で、あえて批判のあるECに対する直接投資というものをこれからも積極的に続けていくべきかどうかということが一つの問題ではないかと思うんです。二、三問題点を含めてお聞きをしましたけれども、どうお考えでございますか。
  13. 村岡茂生

    政府委員村岡茂生君) まず、第一点の直接投資の増大した背景でございますけれども、特にEC経済は第二次オイルショック以降非常に弱化したということは否定できないことだと思います。  失業というのは非常に増大し、最近少し改善の兆しが見えてまいりましたけれども、なかなかこれが減少しないというようなこと。特に技術面で申しますと、エレクトロニクス等の分野におきましての研究開発あるいはその製造業化ということがかなりおくれたために、アメリカあるいは日本に対して相当技術面でも立ちおくれたということ。第三点には、やはりこのEC国内における産業構造の調整あるいは改善という問題におくれたと。リジディティーというようなことで表現されておりますが、非常に硬直的な構造のままに推移してきたというようなこと。さらにこれに加えまして、政府、各国政府並びにEC委員会ともどもでございますが、諸外国からの投資を歓迎し、これらのおくれないしはゆがみ、これを取り戻そうとかなり精力的に動いているというようなことも相まちまして、この八〇年代に入りましてから、日本のみならず各国からの直接投資というものがECに対して行われている、こういう現状にございます。この八〇年代に入りましてから今日まで、先生御指摘のとおり百四十一件の製造業投資が行われたわけでございます。これによりヨーロッパ各国において創出されました雇用効果というものは大体七万人ぐらい、こう想定されているわけでございます。  それから、第二点の、EC側における選別投資の動きがあるんじゃないか、あるいはシェア拡大のための直投だというような批判があるのではないかという御指摘でございます。  確かにヨーロッパの一部の国においてはそのような動きがあるということは事実でございます。しかし、総じて見ますと、まだまだヨーロッパ経済体質というのは不十分な面がありまして、どちらかといいますと、日本から、あるいは外国からの直接投資を心から歓迎するということであることには変わりありません。ただしその際に、一部の国においてはローカルコンテントを引き上げてくれませんかとか、先端技術をぜひ持ってきてほしいとか、あるいは輸出比率をなるべく上げてくださいというような、投資を誘致する際の援助条件との引きかえにそのような条件を課するということが徐々にふえつつあるという状況でございます。しかしながら、先生がおっしゃるほどの根本的、基本的な拒絶反応では全くない、やはり日本経済体質あるいは世界経済構造、さらには世界貿易体制、これを考えまする場合に、我々としても、今後ともこういう直接投資、特に製造業の直接投資というのは推進していくべきではないかというのが私どもの考え方でございます。  それに伴って国内において一部空洞化とか、あるいはレーバーフォースのミスマッチの問題、いろいろの問題が生ずるのはこれまたある程度現実の問題でございます。これにいかに対処していくかというのが私どもに課せられた課題だと心得ております。
  14. 福間知之

    福間知之君 先ほども、ちょっと大臣のお話にも触れておられたようですけれども、産業協力センター、通産省の方の資料を見ましても、来年度の設立を目指して準備は進められておる、こういうふうに承知しているんですけれども、この内容は、中身というのはある程度具体化されておるんでしょうか。
  15. 村岡茂生

    政府委員村岡茂生君) 今回のECとの閣僚レベルの会合におきまして、この内容も含めましてほぼ合意に達することができたわけでございます。この活動内容につきましては、日・ECの産業協力の中核機関としてワークするような内容のものを考えたいということでございます。  主な事業内容、二点ございます。  第一点は、EC企業の対日貿易、特に対日輸出の問題、さらには対日投資の問題、この促進に資するために、日本の事情に精通いたしましたところのスタッフをヨーロッパ人、日本人の二通りから成ります構成にいたしまして、ECのビジネスマンが日本市場において感ずるところの諸困難、これを支援していこう、アドバイスしていこう、こういう機能でございます。一言で申しますと、彼らはへルプデスクの設置というような言葉で表現しておるわけでございます。  第二点は、将来のEC日本の間の産業協力、これを担う人材を育成しようではないか、特に日本が得意とするところの工場における現場の管理と申しますか、そういう日本の得意とするところを十分よく知得していただきまして、一層日・EC関係の発展に資していこうというような趣旨で、ECの中堅ビジネスマンあるいは技術者を対象といたしまして、現場研修に力点を置いたトレーニングを実施する、このための要員を受け入れていこうではないか、こういうような構想でございます。後者の点について彼らはワーク・フォア・フロア・トレーニングというような言葉で呼んでおります。  いずれにいたしましても、このような機関を通じまして、日・EC間の関係あるいは産業協力というものがより一層高まるということを私どもは強く期待しているわけでございます。
  16. 福間知之

    福間知之君 私、これ非常に重要視しているんですよ、非常にこれ珍しいことですからね。EC側もまた今のお話を伺うとかなり積極的な姿勢のようだし、期待も大きいようですね。ここへ来てEC側がそういう態度をとっているということについても非常に興味をそそられるわけです。今申された具体的な中身、それ以外にもどうもあるようですけれども、合弁企業等も将来考えていくということも考慮されているようですし、その他の技術の共同開発、こういうこともエネルギーを含めて考えておられるようです。いろいろそれはあると思うんですけれども、今後これはまた当委員会でも具体化が進めば議論をしていかなきゃならぬかと、こう思っております。まあこれはちょっと皮肉を言いますけれども、基盤技術研究促進センターのように、あのときに天下りの場をつくったんじゃないかという批判が一部にありましたけれども、そういうことのないことを望みます。  それから、時間がありませんのでちょっと不十分なんですけれども、企画庁の方に少し質問を申し上げたいと思います。  今次百七臨時国会の中で、参議院の本会議でも予算委員会でも、いわゆる六十一年度の経済成長の見通しについて、これは各党が質問を申し上げ、政府の答弁も行われてきたんですが、中曽根総理関係大臣の答弁は、いずれも言うならば四%成長を何とか達成したいというものでございました。私の十月三十一日の本会議代表質問でもそのような答弁でございました。しかし、これはどうなんですか、今経企庁は、やはり四%成長ということを目指して、かなり可能性を持っているんだというお考えだと信じてよろしいんでしょうか。
  17. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) この十二月の初めでございますけれども、七—九月期の国民所得統計速報が出ましたんですが、これで見ますと、実はこの七—九月期のGNPでございますが、実質GNPは前期比で〇・六%という低い伸び率になりました。これを内需外需別に見ますと、内需は〇・九%増、年率に直しますと約四%になるわけでございますが、外需の方がマイナス〇・三%ということで、足を引っ張った形での〇・六%でございます。まあこの内需が堅調に伸びて外需がマイナスになるというのは、対外不均衡の是正という点におきましては意義があるわけでございますが、全体としてのGNPの足を引っ張るということは事実でございます。  これを前年度同期に、昨年の七—九に比べましての比率で申しますと、大体内需は四・三%ぐらい伸びておりますけれども、外需が一・九%マイナス、つまり内需の中の半分は実質ベースでは外需の方に向かっているという形になっておりまして、こういうふうな経済の状況から見ますと、率直に申しまして四%成長はなかなか困難な状況でございます。  実は、現在来年の経済見通しの策定作業を行っておりまして、それとあわせまして、この本年度の実績見込みも御提出するということになるわけでございます。こういった今回のQEの発表を踏まえまして現在作業を進めております。年内を目途に結論を得たいと、そういうふうに考えております。
  18. 福間知之

    福間知之君 責任のあるお立場で、総理自身が国会で四%成長を言明していた。そして先月の上旬に補正予算が成立するや、その直後に、まず経企庁を皮切りにして「4%成長やはり無理」、こういう報道がなされました。これは読売新聞十一月十二日です。さらに十三日の日経新聞では、政府首脳「4%成長目標下方修正へ」と、こういう表現で報道されました。さらに二十一日には、安倍総務会長「4%成長断念を」と、こういう記事も出されました。こういうふうに、政府首脳の四%についての達成が難しくなったというふうな発言が相次いできているんですね。そして今の御答弁のように、内需と外需の見通しがやはり狂ってきているという事実がありますが、どう判断したらいいんでしょうか。四%はやはり無理ということなんですか。
  19. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 四%成長ができるかどうかにつきましては、現在作業中でございますので確たることは申し上げることはできない段階ではございます。これは来年度の見通しとあわせてお示ししたいということで考えておるところでございますけれども、七—九の数字を見た段階でなかなか困難だということを率直に申し上げました。  ただ、私どもといたしましては、やはり内需の持続的な拡大努力というのが非常に内外にわたって重要であるということで、先般補正予算を含めまして総合対策というのをとっていただいたわけでございます。補正予算の効果、あるいはやはりこの円高というのは、一方において製造業を中心に極めて厳しいデフレ的な効果を持っておりますが、一面におきましては、物価の安定ということを通じましてやはり実質所得の増加効果というのも生み出してきております。こういった効果がこの十—十二、一—三というところにあらわれまして、経済が底がたい成長を遂げてくれるものと期待はいたしておりますが、何分にもやはりこの実質ベースで見ました外需への流れ出しと申しますか、そういったものが大きくなってまいっておりますので、なかなか四%は困難ではないかというふうに現段階では見ている次第でございます。
  20. 福間知之

    福間知之君 大臣が後ほど出席されるようですから、同僚議員の質問大臣に直接これを当たってもらいたいと思うんです。  私は腹が立って仕方がないんです。この議事録を取り寄せて全部見ていますけれども、本当に、実態を知ってか知らぬか、率直な意見を出さないんです。私への答弁でも、これは対外公約からそう簡単におろせないということなんですかというところまで言っているんですけれども、まともな答弁がそれでもないということですね。だから、きのうちょっと耳にしましたところによると、天野建設大臣が閣議で、やはり無理なものは無理だと言えと、今こちらの方から一言ありましたけれども、同じようなことをおっしゃったと耳にしたんですけれども、大体政府の経済見通しというのは民間のそれとは性格を異にしておりまして、やはり財政やら金融やらその他産業の諸場面に政策として大きく反映されていく基礎になるものでございますので、民間のいわゆる産業、経営活動に大きなインパクトを与えるものだということを申し上げておかなきゃならぬと思うのでございます。  けさの新聞でも、民間の金融機関等民間の調査機関では、来年度は押しなべて二%水準の見通しのようだと。近藤長官は、それは低過ぎると、三・五以上を目指せと、こういうふうに指示されたと報じられております。今の御答弁でも来年度との関係ということをおっしゃいましたね。しかし、私が聞いているのはそれじゃないんですね。やっぱり今年度の見通しということで、今まで議論がかしましくなってきたわけでございますので、私はそういう意味で、今年度、来年三月で終わるこの見通しというものは、もうここらでやはり無理であれば無理だということをはっきりすべきじゃないかと。いたずらに幻想を内外に与えるということはよろしくない。しかも、来年度が際立って好転するんならいざ知らず、どうもそうでもなさそうだということですから。  やはり国会ももうじきに幕を閉じようとしているこの時期に、私は今までの一連のほおかむり的な答弁は許せない。はっきりとすべきだ。そうでないと国会というのは全く権威がなくなってしまいますよ。大臣の答弁だって役人の皆さん方がいろいろと研究されて、調査されて答弁つくっていられるわけですからね。大臣だけ責めたってこれは意味がないのでございまして、やっぱり役所の姿勢がこれ問題だと思うんです。そういう点は、私は時間の都合上言いっ放しですけれども、注文をつけておきたいと、こういうように思うんです。  次に雇用問題についてちょっと通産と労働の側にお聞きをしたいと思います。  なお、局長、ここにことしの二月の東洋経済に、四十六調査機関の経済見通しの記事がある。これは棒グラフ。(資料を示す)そこからも大体白と黒で見えると思うんですが、こっちの一番背の高いのがこれ政府ですよ、四%。ずっとあとこれみんな民間です。四十五機関、民間です。大体もう三%以下。ずっとことしの当初からですよ。ことしの当初からこういう見通しなんです。だから、来年度だって高目のやつを決めるというなら、それはまあ私たちも個人的には高目の方が望ましいんですけれども、無理なことを決めたってまた二の舞三の舞になるんですね。そこからでもよう見えるようにこれ持ってきたんです。  まず労働省にお聞きしたいと思うんです。  十一月の労働経済動向調査の結果によりますと、円高の影響を受けて、製造業を中心雇用過剰感が高まって、残業規制やら中途採用の削減ないしは停止、臨時雇用者の再契約停止あるいは解雇などの雇用調整が行われて、それは五十七年の前回の不況期を大きく上回っていると、こういうふうに報じられておりまして、この調査は十一月一日現在、全国の製造業、卸売・小売業、飲食店、サービス業の常用労働者三十人以上の民間事業所約四千百を対象として調べたものだと。円高の影響が著しいのは製造業で、過剰な雇用を抱えていると考えている事業所は二六%。五月の調査のときは一七%でした。八月の調査のときは二〇%でした。今回は二六%です。このように、急テンポで常用過剰雇用を抱えていると答えている企業があるわけであります。  実施事業所の割合は十月から十二月期の実績予定、来年一月から三月期の予定とも、それぞれ三八%。前年同期はいずれも二一%でございましたが、これも前回不況期五十七年の水準、すなわち三一%を七%も上回っております。このように雇用情勢が悪化の傾向にあることは数字の上からでも明らかでございますけれども、今後の動きについて労働省としてはどういうふうに見ておられますか。
  21. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) お答え申し上げます。  今の先生のお尋ね、今後の見通しということでございますけれども、最近の情勢の動きにつきましては、今先生、労働経済動向調査の結果等をいろいろ御説明になりましたので申し上げるまでもないかと思いますが、私どももそういったような情勢、大変厳しく受けとめております。  それで、基本的に雇用、失業の動きは、当然のことながら今後の経済動向あるいは景気の動きにかかわってまいるわけでございますが、ただ、雇用そのものの動きといたしましては、これまた通常、経済の動きとは若干のタイムラグがあるということもございます。そういうようなことを考えてみますと、昨今の厳しい情勢、特に製造業を中心といたしました雇用調整の動きがこれからますます本格化してくるおそれもあるということで、雇用失業情勢は当分厳しいものとして動いていくであろうというふうに私ども考えておるところでございます。
  22. 福間知之

    福間知之君 通産当局にお聞きをします。  十一月二十七日にまとめられた主要産業の景気雇用動向の調査でございますが、通産省所管の鉄鋼、自動車半導体など主要二十業種の大手企業だけでも過去一年間に約二万人の人員削減が進んだ。ちなみに鉄鋼の場合八千人、合成繊維二千人、綿紡二千人、石炭千六百人、半導体千二百人、アルミ製錬五百人、造船は除いています。そのように人員削減が続いた。今後数年のうちに、さらにこの人員削減は大きなものになる可能性がある。見方によれば、七、八万人の人員削減が予想されるということでもあるわけです。  今回の通産省雇用動向調査の特徴というのは、今申し上げた基幹産業部門の人員削減に見られるように、かつての下請関連企業における合理化、削減のみにとどまらず、大手企業に、本体にも及んでいるということでありまして、しかも構造不況業種にとどまらないで、好況業種とも目されてきた自動車とか半導体、ここにもパートタイマーや臨時工の削減が進んでいる、こういうようになっておるわけでございます。通産当局はかなりこれ今深刻な状況だと見ているんですけれども、これからどう対応していこうとお考えでございますか。
  23. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいま御指摘のように、私どもが行いました十一月下旬の主要産業の景気動向調査、お話のように、これまでの構造的不況と言われておりました例えばアルミ製錬のようなもの、さらには最近の円高の急速な進展に伴います国内経済の不振に伴う例えば鉄鋼業等の素材産業、こういった分野におきます雇用調整にとどまらず、いわゆる加工組み立て型産業の分野におきましても次第に雇用調整の動きが広がりつつあるという点に特徴を見出しておりまして、そういう意味で全体としての雇用問題について極めて問題がある、こういうふうな受けとめ方をしているわけでございます。  こういった事態に対応いたしまして、今回はとりあえず主要な不況地域におきまして、九月十九日の総合経済対策に盛られました補正予算に伴います公共事業につきましてその重点配分をお願いをいたしまして、各省庁できる限りの努力をしていただいております。  また、特定地域中小企業対策臨時措置法ほかの法案を成立させていただきまして、最近四十三地域を指定地域といたしまして、この施行にも入っているところでございます。  こういった当面の対策のほか、やはり全体としての経済をできるだけ活気あるものにしていくということが必要でございます。先ほど来の御質問の中にもございましたように、今年度の我が国経済については、なかなか四%の成長ということが難しいような状況になってきているわけでございますが、たまたま予算編成の時期も迎えておりまして、現在、各省庁の間で来年度の経済運営の問題について話し合っております。限られた財政事情のもとではございますが、できるだけいろいろな知恵を出しまして、活気のある経済運営を少しでもやれるように努力をしていきたいと考えておるわけでございます。  それから、先ほど申し上げました雇用調整の動きと申しますのは、いわゆる産業構造転換、経済構造調整に伴う面が非常に大きいと考えておりますので、こういった面に対応いたしますために、来年度の予算要求の中におきまして私どもは経済構造調整基金の設立を要求をいたしまして、産業構造転換の過程に伴って生じてまいります雇用問題、地域問題といった問題に、より容易に対応できるような金融上の措置を講じ、また今、党の税制調査会で御審議をいただいております六十二年度の税制改正におきましても、こういった産業構造転換をより円滑にするための各種の税制措置の要求等もいたしているところでございまして、できる限り雇用問題の円滑な解決ということを通じまして、産業構造の転換をスムーズに進めていくべく努力をいたしておるところでございます。
  24. 福間知之

    福間知之君 再び労働省にちょっとお伺いしたいんですが、先ほど申した調査の結果、雇用の空洞化という側面もあらわになってきているように思うんです。海外での生産拡大を行った企業が、その調査の中で一四%と出ていまして、実施を検討しているところが一五%、合わせてほぼ三〇%となっております。殊に大企業、すなわち常用労働者千人以上という大企業ほど著しく、実施した企業と検討中を含めると五二%が海外への進出ということを考えている、海外生産拡大を考えている、こういうことになっています。さらに、この海外での生産拡大に既に踏み切った事業所のうちで、国内の既存部門を縮小したところ、これは二一%という数字に上っています。国内の生産を縮小することを検討中というのが二六%、こういう数字はなっているわけです。  このように、海外子会社の拡大、進出といった、いわゆる直接投資の増加によって懸念されているところの国内雇用の空洞化が数字の上で明らかになりつつあると思うんです。これは、二十一世紀の産業ビジョンということを策定された通産省のそのビジョンの中身よりも、現実は前に出ておるというふうにも思われるんですけれども、これらの対策をひとつしていく必要があると思うんです。今、先ほどの通産省局長のお話にも合わせて、これはもう労働、通産両方で、あるいはまた政府全体で対応しなきゃならぬというところに、これらの調査の結果からも私は来ていると思うわけであります。  そこで、労働省に対応をお聞きすると同時に、これは通産省にもお聞きをしたいのでございますが、削減された人員を吸収するところのいわゆる受け皿といいますか、雇用確保の場面を考えますと、一般にサービス産業初めいわゆる第三次産業が雇用吸収の場として期待をされてきているんですけれども、これまた十二月一日に経済審議会構造調整特別部会中間報告で発表した中は、サービス産業等第三次産業のウエートの増大が吸収先として指摘されております。しかし、サービス業界自体からは、そういうふうな声は余り上がってきていない。すなわち、既存の第三次産業に強力な吸収力があるとは必ずしも言えない。また、第三次産業側が求める人材に、製造業その他から吐き出された人員が必ずしも合致しない、いわゆる先ほどもちょっと出ていましたように、労働力のミスマッチという問題もそこには存在をしていることは明らかであります。したがって、それは早急に解決するということはできないけれども、一定の対策を講じなければ、右から左へ労働者を移動してというわけにはちょっといかない、こういうふうに思うわけですけれど、その点を通産と労働両側に二問目としてお聞きしたい。  最後に、労働省にお聞きしたいんです。  きのうの日経新聞に、「海外への進出企業 労使トラブル防止 労働省が指針検討」、こういうふうに載っているんです。これは私も関係しておりましたIMF・JC、金属労協を初めとする労働側の要請もこれありということのようでございますが、私が議員になる前にも実際経験したことで、アメリカ進出企業に労働組合ができることに関連してトラブルがございまして、相手側日本に来て、ある著名な電気メーカーの経営者にも私会わせたりしたことがあるんですけれども、先ほど来から、海外進出がもう全世界、地球的に拡大をしている今日でございますので、必ずやこれは放置すればトラブルが発生して、そのことが日本の海外生産そのものを大きく揺さぶるということにもなりかねません。既に争議が発生しているところもございます。したがって、この記事の真偽のほどと、労働省のこの中身に指摘されているような問題意識を持ってどう対応されようとしているか、その点三番目にお聞きして、時間が来ましたので質問を終わります。
  25. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) それでは、最初に私どもの方からお答えをさせていただきます。  構造調整に伴う雇用問題については、通産、労働のみならず、政府挙げて対応すべきと、こういう認識に立ちまして、既に御案内のとおり、十二月八日には総理大臣を本部長といたします政府・与党雇用対策推進本部というものを発足させております。また、それより以前に通産、労働両省の連携を円滑にするという意味におきまして、両省の事務次官をヘッドといたしますハイレベルの協議会を設けまして、既に二回ほど会合も持っておりまして、両省の間のできるだけ円滑な連携に努めていくという考えでございます。具体的な対応については、先ほどの御答弁の中で申し上げましたが、構造調整に伴います雇用問題の解決というのをより重点に、通産省といたしましても金融、税制面を中心といたしましていろいろな支援をやっていきたいと考えております。  また、サービス業での雇用調整についてのお尋ねがございました。  これまでの実績で申しますと、一九七五年から八四年までのおよそ十年間に、我が国の就業者総数は約四百九十万人ふえておりますが、そのうちの三百七十万人をサービス業の分野で吸収をいたしてきております。今後の経済成長をどう見込むかといったような問題はございますが、基本的には国民の需要というものが物離れ、サービスへと、いわゆる経済のソフト化と、こういう大きな流れもございますので、その中においてこれからサービス業が相当の大きな雇用吸収の場になってもらえるということについては十分期待できるんではないか。  ただ、御指摘のように、その間におきます職種的な問題として労働の流動性が十分確保されるかどうかというのは極めて大きな問題でございまして、恐らく労働省からこの後御提言があると思いますが、労働省ではこういった点に重点を置いていろいろ対策を進めていかれるというふうに承知をいたしております。その中では、これまでのような職業訓練でなくて、企業に対する訓練の委託というようなこともお考えのようでございまして、そういった労働省の施策に対しましては、産業を所管する通産省といたしましても産業サイドに向けてできるだけ御協力をするような、そういう指導もいたしてまいりたいと、かように考えております。
  26. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 労働省といたしましても、海外直接投資が雇用に与える問題、影響につきましては、重大な関心を持ちまして、非常に重要な問題であるというふうに考えて対応をしようということにいたしております。  それで、今先生からもお話ございましたように、私どもの調査によりましても、最近の円高等の影響によりまして、確かに海外投資が雇用は与える問題につきまして新しい動きが出ている可能性がございます。私どもといたしましては、こういったような実態につきまして十分きめ細かく把握していく必要があるだろうというふうに考えております。  また、そういう把握をもとにいたしまして、この問題につきまして関係者のコンセンサスを図っていく必要があるのではなかろうかということで、現在、労使を初めといたします各階の代表者に来ていただきまして雇用問題政策会議というのを開いております。本日もちょうどこの雇用問題政策会議の小委員会を現在開いておるところでございまして、ここでいろんな問題を討議する、あるいは今後いろんな実態を含めてヒアリング等も行っていきたいと、かように思っておるところでございまして、一定のコンセンサスを目指して検討をお願いしていると、こういうところでございます。  それからもう一点、今後の問題といたしまして、労働の移動ということで第三次産業をどう考えていくかという点、今、産政局長からもお話ございましたとおり、私どもといたしましては、今後やはり中長期的ほ見ました場合に、第三次産業が雇用を吸収していくということを中心に考えざるを得ないのではなかろうか。その場合にはやはり労働のスムーズな移動ということが重要になってまいりますので、やはり一つの柱といたしましては、能力開発を図る、職業訓練を積極的に進めるということではなかろうか。ただ、これも従来のような職業訓練ばかりではなく、非常に実態に即した訓練を行えるように、現場実習等に重点を置いた形で考えていきたいと。そういう意味では杉山局長申されたように、私どもといたしましては、企業にも実際の訓練のできるような形で委託訓練を重視していきたい、かようにも思っております。  また、労働移動をスムーズにするためには、いろいろ情報機能を強化していくことも必要でございますし、職業安定機関の職業紹介機能を強化していくことも非常に重要な問題だというふうに思っております。こういうふうな面に向けてもまた一層努力をしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。  なお、具体的な海外直接投資の問題に伴いまして、第三点の問題につきましては所管の労政課長からお答え申し上げたいと思います。
  27. 澤田陽太郎

    説明員澤田陽太郎君) お答えいたします。  日本企業が海外の事業展開先におきまして労使関係等労働問題で紛争を生じます背景といたしましては、現地の労働法制、労使雇用慣行、あるいは労働組合について理解が十分でないという面が影響しているものと思っております。したがいまして、私どもとしては、現在、日本企業が多数出ております東南アジア九カ国及びアメリカにおきまして、現地の労使団体、研究機関の協力を得まして委託調査員というものを配置しておりまして、そこを通じて当該国の日本企業を含めた労働事情を継続的に収集し、国内の企業に情報提供しておるということをやっております。  また、先生御指摘のように、この問題につきましては、経済団体それにIMF・JCを中心とする労働団体も大変重大な関心を持っておりまして、それぞれの立場で啓発、相談活動等をされておりますが、私どもといたしましては、関係者の意思疎通と申しますか、協力がより一層進むように、一つは政府、委嘱団体、労働団体の三者で多国籍企業労働問題連絡会議というものを開催しておりまして、ここで各側の情報を持ち寄り、意見交換を行っております。  それからもう一つは、労使団体と研究者を加えました調査団を東南アジア等に派遣しておりまして、現地の労働事情の詳細な把握、あるいは日本の労使慣行の紹介等をやっております。  以上が現在の対応でございますが、先生御指摘の日経新聞関連で申し上げますと、国際機関におきまして一九七六年、七七年当時、多国籍企業の行動指針あるいは多国籍企業に関する三者宣言というものが採択されておりまして、この内容は、雇用、労使関係について幅広い一般原則がうたわれております。これを我が国内におきましても周知するようにということで、先ほどお話ししました連絡会議の場等を通じてその周知に努めております。  さらに、先生先ほど御指摘になりましたように、この問題は、今後海外投資が活発化いたしますと大変重要になるというふうに私どもも受けとめておりまして、問題意識は十分持っておりますが、国際機関の宣言ないし指針との関係を含めましていろいろ検討すべき問題がございます。したがいまして、関係団体と十分意見調整を図っていくことが必要だろうということを思っておりますが、私どもとしては、関係団体の問題意識が煮詰まっていくように、いましばらく努力をしてまいりたい、かように思っております。
  28. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 労働省の課長、何か会議が入っておるようですから、先に労働省にお尋ねをします。  私の経験からしますと、私はいろいろこういう関係や労使問題なんかにタッチしたのが昭和三十六年ぐらいからですが、この今日の雇用情勢の厳しさというのは、私の経験では今度ほどこういう厳しい状況というのはないというのが実感なんです。  したがって、私はタクシーに乗ればタクシーの運転手さんに聞きますし、歩けば、人と会えば、大概今の状況を聞いておりますけれども、どうしても非常に厳しさを感ずるんです。地元では、例えば学校を出て、就職やなんかで、どこかへ口をきいてくれないかといって依頼をされますが、それもなかなか、ことしは非常に厳しいんですね。それから、私のところは鉄鋼とか造船とか、自動車、電機の関連部品会社もありますし、半導体をつくっているところもありますし、繊維あるいは紙パルプ等々もありますが、どれをとっても雇用調整といいますか、そういう段階です。下請はもっと厳しいんですね。こういう状況になっておる。  それでは、第三次産業の銀行とかデパートはどうかといいますと、ここらももう新卒者の物すごい競争率なんですね、大変な状況です。だから、試験を受けてもなかなか狭き門です。では、県庁とか市役所とかそういうところはどうかといったら、これも人数を絞っておりまして、またそれに国鉄の関係もありまして、これもどうにもならない、こういう状況なんです。  それでは先はよくなる見通しがあるかというと、製造業は全般にもう悪い、まして中小企業はそういう状況ですから。農業も悪い。政府の皆さんの数字、あるいはお考えになっているよりも、これはブロック別の地域の差はあるかもわかりませんが、非常に厳しいんです、厳しいと思うんです、これが実感です。  それで、労働省は労働経済動向調査というのを十二月八日に発表されまして、これは新聞でも読みましたが、そこで、円高の影響を受けて製造業の生産はマイナス一九ポイントと一段と落ち込み、常用雇用の減少基調が続く中で雇用を過剰とする事業所は急速に増加し、八月の二〇%に対して十一月は二六%。それから雇用調整の実施事業所割合は五十七年前回不況期を上回り、十—十二月期実績見込みで三八%、特に機械関連業種では進展が著しく過半数。こういう数字が出ておりますし、またその後に、産業の空洞化の問題も出ております。  ブロック別の失業率の状況、これはイギリスやあるいはアメリカの失業率の統計のとり方と日本のとり方というのは、日本はやっぱりちょっと甘いんではないだろうか、こういうことも言われておりますが、ブロック別の失業率あるいは有効求人倍率の大体の状況、この点について最初にお伺いをいたします。
  29. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) お答え申し上げます。  今先生のお尋ねの失業率の一つは、地域別、大きなブロック別の状況でございますが、例えばことしの七—九月の失業率を見てみますと、全国平均では二・八%ということになっておりますが、地域別に見ますとやはりかなり差がございます。  ブロックでざっと申し上げてみますと、北海道は三・七というふうに高くなっております。東北は二・四、南関東が二・七、それから北関東・甲信、これは低くなっておりまして一・八でございます。北陸が二・〇、東海も二・〇、近畿が三・二、中国が二・八、四国が三・三、九州はやはり高くて四・〇、こういうような状況になっておりまして、北海道と九州でかなり失業率が高くなっている。これは個別の状況を見ましても、北海道、九州では大変厳しい雇用失業情勢にあるということから、そのような実態を反映しているものであろうというふうに考えております。  それから求人倍率の動きでございますが、これも景気の動向とともにかなり変動がございますが、昨年後半から有効求人倍率が低下してきております。ここ四カ月、七、八、九、十月はいずれも〇・六一倍ということで、低い水準で推移しているというような状況になっておるところでございます。
  30. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 先ほどから、通産省もサービス業への労働力の移転の問題を言われておりました。ただ、製造業の場合というのは、これまでは比較的雇用が安定しておりまして、要するに就業規則、労働協約、その中には退職金等もあるような比較的恵まれているというか、安定をしておったのが、今やっぼり労働力が移動している第三次産業、サービス産業というのは、非常にそういう面では問題のあるところにどんどんどんどん移っておると思うんですよ。そういう点では、確かにそういう状況だからトータルしますと、まあまあ雇用は確保されているような感じを受けないこともないんですが。  特にそれはこの東京周辺でもそうでしょう。第三次産業の中にはいろんなものがあって、何でもとりあえず食えればいいと、そういうような形で労働力が移行していると思うんですが、この点について労働省はどのように把握されておりますか。
  31. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 確かに業種別に見ますと、また産業別に見ますと、基本的には今先生お話しのように、第三次産業で雇用がふえているという状況になっておるわけでございます。例えば労働力調査で見てみますと、建設業では、大まかに言って最近ほぼ横ばい、製造業では、ここ落ち込みが大きくなっておるという状況になっておりますが、これに対しまして卸売・小売業あるいはサービス業ではかなり雇用伸びている。ただ、七、八月ぐらいまでは三十万から四十万ぐらい対前年卸売・小売業、サービス業では伸びておったわけでございますが、十月になりますとその伸びは若干確かに鈍っております。でございますが、雇用伸びておるという状況にはなっております。  ただ、先ほども申し上げましたとおり、今後の雇用の動きあるいは雇用政策ということを考えた場合には、やはり第三次産業を中心に考えざるを得ないということではございますが、それへの対応はかなりきめ細かなものが必要になるだろうというふうに私ども考えておるところでございます。
  32. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 時間がありませんからお願いをしておきますが、やっぱり就業規則とか労働協約とか、労働基本権のうち、年次有給休暇とか、そういうものがないところにどんどんどんどん労働力が今移動していると思うんですよ。労働省、その辺一度調査をしていただけませんか、私もまた何かの形でお伺いをしたいと思っておりますが、よろしくお願いをいたします。  それから、これは通産大臣あるいは経済企画庁長官はお願いしますけれども、鉄鋼労働者、鉄鋼においても今日のような状況ですし、韓国の追い上げも非常に厳しいし、あるいはブラジル。これはどうしても百五十円とか百六十円で日本の企業が本当に本格的に対応できる製造業というのは一体どういうところがあるのか、私は考えつかないんです。もしあるとすれば本当に本格的な雇用調整をやって、結局、人の犠牲によって、あるいは下請、中小の犠牲によってこれは切り抜けるしかないと思う。そんな異常なソーシャルダンピング、そういうような形で切り抜けるような状況というのは異常だ。やっぱり百八十円とか二百円とか、円相場を正常な位置に戻さないと、これはさっきから出ておりますように、どうしても雇用問題というのは解決をしないと思う。これは大変な事態にいくんではないでしょうか。その点について、ひとつ両大臣から御意見を承って次に進みたいと思います。
  33. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 円レートがどの水準が適正かということについては、理論的に決めることもなかなか難しい。いろんな計算の仕方がございますが、なかなか難しいわけでございますけれども、先生の御指摘のように、現在の百六十円程度では、これまで日本の輸出を支え、日本経済を支えてきたような代表的な企業においても厳しい状況にあるということは、私ども十分に理解をしているところでございます。  ただ、あえて申しますと、現在のような経常収支バランスが依然として、Jカーブ効果はあっても、日本の大幅な黒字であるという状況を踏まえますと、なかなか現在のレートをさらに円安の方向に持っていくことは難しい状況でもございますので、私どもは、最低今の百六十円台前半を何とか維持して、できればそれを幾らかでも円安方向に進めるようなことをいろいろ配慮していきたい、こういうことでございますけれども、市場が決めることでございますので、なかなか政府としても苦慮しているというのが実情でございます。
  34. 田村元

    国務大臣田村元君) 率直に申し上げて、百五十円、あるいは現在、きょうあたり百六十三円どれだけというところでしょうが、こういう状態で日本の産業が健全な姿で移行していくということは僕は不可能だと思う。と同時に、これを雇用調整という過酷な方途によって解決するということは、これはできるものじゃないんです。またすべきでないと思うんです。  それで、我々は外為市場の自由なる取引によって今後円相場を決めていこうというわけでありますが、それには、内需の拡大であるとかあるいは外国への投資であるとか、あるいは黒字の発展途上国への、しかも累積債務国への還流を図るとか、それには輸出保険の改正を必要としますけれども、そのようにするとか、いろいろな方途を講じて、日本の円というものを安い方向に導かなければならない。今、企画庁長官は基本的な考え方を述べたというふうに聞きましたが、私どもは言うなれば仕事師の方でございますから、そのためにあらゆる努力をしていかなきゃならぬ、そして市場効果を上げていかなきゃならぬ、このように考えております。
  35. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 企画庁長官、時間ないようでありますから、一つだけお伺いをしたいと思います。  先ほど福間議員からも質問出ましたが、経済成長率四%達成について、これは私も先般ここで質問をいたしましたが、一体、四%達成に向けて、私は、その努力をして本当に四%達成をしてもらいたいんですが、その努力をするのかしないのか。そして、どうも下方修正の動きが出ておりまして、来年度経済成長見込みとあわせて見直し改定をやろうという、先ほど局長からの答弁があった。この点について、少し、前の長官の私に対する先般の答弁もありましたので、あわせてお聞きをして、どうぞ……。
  36. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 既に国民所得統計は、四—六月期とそれから七—九月期、したがって上半期の数字が出ているわけでございますが、この六十一年度上半期の実績をもとに、現在、六十一年度の実績見込みを経済企画庁でいろいろ検討作成中でございますけれども、GNPを構成する各要素にわたって見てまいりますと、国民消費は当初見通しよりもずっと、傾向でいいますと、若干でありますが、伸びるんではないか、こういう感じでおります。個人住宅の建設でございますが、これは昨年は百二十万戸年率の着工件数が、ことしはもう最近は百四十万台を超える、こういう状況でございますから、これは当初見通しよりも相当の伸びを予想していいんではないか、こう考えております。  ただ、いろいろ御指摘もございますように、輸出産業を中心として製造業の設備投資は、これは当初見通しよりも明らかにダウンでございますが、非製造業分野ではむしろ予想よりも伸びている、こういうことでございますけれども、まあ総体として設備投資は、これは相当下方修正をやらざるを得ない。ただ、今年度初めからいわゆる公共事業の前倒しをやってまいりまして、さらに秋に総合経済対策を実行し、またこれに必要な補正予算も国会で御承認いただきまして現在事業を進めておりますので、これはもう当初の見通しよりも相当な増を期待できると、こういうふうに考えております。  そういたしますと、内需だけを考えますと、少なくとも当初見通しぐらいの伸び率、わずかだけれども多少の上積みも期待できるのかなとこういうことでございますが、問題は外需要因でございます。これはまさに円高によっての輸出の伸び悩み、減少、そして大幅に輸入増でございますが、これは輸入増というのは当然GNPに対してはマイナスファクターでございます。これが当初は〇・二の寄与度でございますけれども、考えておったのが相当大幅にふえるんじゃないか。国際経済調整というのは一つの私の政策課題でございますから、これ自体は進めるべきことだと思いますが、しかしGNPの計算の中では、これは明らかに大きなマイナスファクターでございますので、したがって内需は私どもの政策でむしろ民間の設備投資の減、下方修正を補って余りあるぐらいの内需の創出には成功してまいったというふうに考えておりますが、外需の要素で落ち込んでくる、そんなことで今の現状をずっと考えてまいりますと、当初の政府の見通しの達成は極めて困難な状況であることをここで御報告をしなければならない状況でございます。
  37. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 通産大臣おられますから、私は、中曽根さんもおられて、ちょっと言いにくいんでありますが、中曽根内閣の経済財政運営というのは、やっぱり大変問題が次々に出てきているわけです。結局あげくの果ては急激な円高で、今日もうどうにもならないような状況なんです。そういう状況の中で、昭和六十五年財政再建を掲げておられますが、私今回も質問したんですが、やっぱり木口小平と一緒で、最期までラッパを放さぬと。それから増税なき財政再建はやらないと言ってこれもやる。大型間接税もやらないと言ってこれもやった。要するに今度のこの経済成長率四%問題につきましても、先ほど福間議員が言いましたように、本会議質問したけれども、いや、それはやると。やるならやるでいいんですが、結果的にはできない。しかし国民や国会に非常に幻想を与える、そういうやり方が次々に続いてきているわけです。一番責任ある人が、そういう結局国民を煙に巻いて焦点をごまかして、そのときそのときに格好のいいようなやり方をするという経済財政の運営のあり方というのは、早く改めていただかないといけないと思うんです。  したがって、今度の四%成長については、ついこの間まではやるとこう言われてきたんですから、これはやらない、やれなくなった、あるいは財政再建もできなくなった。これはやっぱり本当に手をついてまではいかないけれども、結局率直に国民にそのことは知らせる、あるいは政府の方針としてはこうだったのだけれどもこうなったんだと、いいことばっかりでなくて、悪いところは悪いところのように国民にはっきり言ってもらわなければいけない。この点については下方修正するならするように、大臣そのところはそうしてもらわないといけない。私は、努力をするんならするように、もう少し本格的に、政府を挙げて、民活とかなんとか言わないで、本格的に財政投入してやるならやるように、どっちかしてもらわないとこれはどうにもならない。いかがでしょうか、この点について。
  38. 田村元

    国務大臣田村元君) 経済というものは、実際には長期的に決めつけていくべき筋のものじゃないと僕は思うんです、非常にフロートの大きなものだし。ですから、やはりある意味においては基本方針基本方針として、言葉はちょっと表現がうまくないかもしれませんが、ときにはその場その場の対応をしていかなきゃならぬことも多かろうかと思うんです。  でありますから、ちょっと微妙なお答えになって、具体的に御想像いただく以外にないのですが、例えば財政再建という旗を翩翻と翻し、そして内需の拡大というものと両立できるんだろうかというような意見がやっぱり出てくると思うんです。ですから、今の下方修正ということが果たしていいのか、あるいは下方修正をしないでもいいような財政対応をした方がいいのか、そこらの問題はやっぱりこれからの選択だと思うんですね。ですから、私は下方修正ということについての主たる権限を持った大臣ではありませんから、企画庁を中心に財政当局等がこういう目標と言えばそれを達成する、あるいはそれに近づける努力をする仕事師というのがこれは我々の立場でございますから、そこらは弾力的に我々に対してもひとつ見ていただかなきゃならぬと思いますけれども、下方修正ということを考える前に、私は財政当局に対して下方修正をしないでもいいような財政対応をしろと、率直に言いたいような気持ちでございます。  総理もその点で悩んでおると思います。でございますから、通産大臣という立場からいっても、何とか中曽根総理の従来の発言批判を受けないような結果になるように、これから御協力あるいは努力をしていきたいと、このように考えております。
  39. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ちょっと私、時間がなくなりましたから、最後は一つだけ経企庁、通産大臣にお願いをしたいんですが、四全総の関係で中間報告を読みましたら、どっちかというと東京、首都圏を中心にウエートが移っているような気がしてなりません。先ほど労働省言いましたように、北海道にしても九州にしても大変厳しいんですよね、数字以上に厳しいと思います。そういう状況ですから、四全総においては定住圏構想をもう少し、なぜ定住圏構想が実際に生かされなかったのか、それをもっと生かすためには一体どうするのか、この点についても積極的に意見を述べていただきたいと思いますし、お願いをしたいんです。  これは、いや余り関係ないぞと、こういうことかもわかりませんが、あわせて申し上げますと、民活を導入するということは、確かにそれは東京周辺というのは需要ありますからね。これはまだ事務所、オフィスが足らないとかなんとかいうような時期ですから、住宅も足らない。ところが地方へ行って民活とかいっても、そんな民間の経営者は、今でも赤字企業がたくさんあるのですから、金出して何かをやるような状況ではないんです、地方では。だから、そういうような状況ですから、四全総の関係については、さらにまた東京、首都圏中心にものをやっていこうというような、国の将来を決めるときにこういうような方向が出ようとしておりますので、この点については大臣、積極的に地方のことも考えていただきますようにお願いをいたします。もし何かあれば……。
  40. 田村元

    国務大臣田村元君) 確かにおっしゃるとおりだと思うんです。私どもは、四全総というものを見る目と、そして現在の緊急避難という対応と、両方やっぱり考えなきゃいけないと思うんです。と同時に、太平洋ベルト地帯に対する考え方と、それ以外の地方に対する考え方というものもまた弾力的に考えていかなきゃならぬと思うんです。  今、私、実は衆議院の石特に十二時十分に行かなきゃならぬものですから、いろいろと申し上げたいこともございますけれども、そういう点で一汗も二汗もかいていこう、同時に率直に言って悩んでいこうというふうに考えております。
  41. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  42. 前田勲男

    委員長前田勲男君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  43. 田代富士男

    田代富士男君 最初に、私は日本EC貿易についてお尋ねをしたいと思います。  日本EC貿易につきまして特に強い要望が出されておりました酒税の改正については、これまでどのような経緯があったのか、まず最初に簡単に御説明をいただきたいと思います。
  44. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、アルコール飲料という言い方でEC側から非常に強く一本化、いわゆる従価税、つまり等級の廃止というものを求められておりました。また、ワインも同じように障壁をなくしてくれということでありました。午前中にお答えしましたように、金額ではそれほど大したことはないんですけれども、ワインとかスコッチ、アイリッシュというようなものは、これは言うなればヨーロッパの象徴と言ってもいいようなものでありますから、なかなか向こうは強くて、これを一つの試金石、踏み絵というような形で日本に強く迫っておるわけであります。  いつでありましたか、私が閣議で発言をいたしまして、この問題は真剣に考えないと、ECは言いわけやあるいは将来への検討というものを求めておるのではない、答えを求めておるんだ、だからこれは真剣に検討すべきじゃないのか、こういうことを発言したわけです。それで、中曽根総理大蔵大臣に対して、これは後日でありますが、また閣議の席で大蔵大臣に対して、等級制の廃止等々諸懸案、大蔵大臣一汗かいていただきたい、こういうことを指示されて、それで政府の基本的な考え方、これはもう国会で申し上げるのは大変失礼ですけれども、我々には党税調というのもありますから、そこで政府の基本的な考え方、つまり極めて近い将来に可及的速やかにこれを改正する、つまり国際的な整合性を持たせるものにするということをすり合わせをして、文書もつくりまして、そしてそれを携行して先般ブラッセルへ行ってその説明をした、こういうわけであります。それに対してEC側は、前進をしたことは評価はしましたけれども、しかしこれは前進であって答えではないということで、なおも非常に厳しい態度をとり続けておる、こういうわけでございます。
  45. 田代富士男

    田代富士男君 ただいま田村大臣からお答えいただきましたとおりに、この問題は検討ではなくして答えが求められている問題であるということで、中曽根首相から大蔵大臣にも御指示があったようでございまして、今回ヨーロッパへお行きいただいて交渉されたけれども、前進は認めるけれども答えが出ていないというようなことである。国際的整合性を持つために努力された点は評価するわけでございますが、現実の問題として、今この酒税改正が端緒についたところであるわけでございます。  そこで、これどこまで示していただけるかどうかということを、私自身もその点を考えておりますけれども、現在示し得る改正の方向性とタイミング、つまり今政府が取り組んでおる税制改革と一体化して改正案が出されると私は考えたいんですが、そのような考え方であってよいのか。また改正に際しては、国民負担、つまり増減税につきましては酒税限りにおいて考えるのか、それとも何といいますか、間接税全体の中でとらえるのか、あるいは所得税減税を含んだトータルとしてとらえようとするのか、これはどうなるのか、今後の問題、ここらあたりについて示していただける範囲内でお示しいただきたいと思います。
  46. 田村元

    国務大臣田村元君) いや実は、私は貿易担当大臣でございますので、アルコール飲料の言うなれば矢面に立たされておるということでございますけれども、実は私には何の権限もないのでございます。これは大蔵省の問題でございます。でございますから、私からとかく予言めいたことを申し上げる、予測めいたことを申し上げることは控えなきゃならぬと思いますが、問題点としては三点あると思うんです。  その一つは、関税の問題であります。いま一つ酒税の問題であります、これは国内法の問題。それからいま一つはマージンの問題であります。このマージンというのを調べてみますと、ばかにでかいんですね。あれでどんどん売れるものなら本当に私も代理店やりたいなと思うぐらいマージンがでかいんですよ。そういう問題がございます。でございますから、まあ私どもは貿易担当大臣として強くアドバイスをし、また要求をしていく、こういうことになろうかと思います。今、党税調でも取り上げておるようでございますけれども、取り上げるというか、取り上げようとしておるようでございますけれども、私からその内容についてどうということは差し控えたいと思います。
  47. 田代富士男

    田代富士男君 次に、EC経済並びに日本ECとの貿易現状についてお伺いをしたいと思います。それと同時に、ガットにおけるECが主張しているところの権利と義務の均衡の問題、いわゆる通称日本問題ということでございますか、これについてお伺いをしたいと思います。  いわゆるこの日本問題として提起された問題は、御承知のとおりに、一つはただいまもお話がありましたとおりに、アルコール飲料問題、こういう問題と、二番目にはスキーSGマークの問題、三番目には関西新空港問題、四番目には医療機器、自動車基準認証の問題、五番目には金融市場自由化等々があったようでございますけれども、特に通産省所管のこのスキーSGマーク問題についてはどのような経過と結論を得られたのか、午前中にもちょっとこのことに話が触れられましたけれども、あわせてお尋ねをしたいと思います。
  48. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) スキーSGマーク問題でございますが、ECを初め欧州諸国は、昨年の秋以来我が国の製品安全協会が定めて実施しておりますスキー用品のSG基準が国際規格に合っていないということで、とりあえずこの日本におけるSGマーク制度の運用を一時停止して、その上で国際基準の整合化を図ってほしいということを主張してきておりました。  一方我が国内におきましても、昨年七月のアクションプログラムの決定以来、この種の制度について簡素化できるものは簡素化すべきであるという考えに基づきまして、私ども内部では見直しの作業を進めていた事情がございます。そういった背景のもとに私ども鋭意交渉を続けてまいりました結果、今般の日本EC閣僚会議におきまして、スキー用品につきまして現行SG基準を来年一月中に国際規格に整合化させる、また制度の運用につきましては、ヨーロッパ等の適切な外国検査機関の活用を図るということで合意をした次第でございます。
  49. 田村元

    国務大臣田村元君) 先ほどちょっとお触れになりましたので、利益の、つまり権利義務のバランスの問題、これについてちょっと申し上げておきたいと思います。  この利益の均衡論、まあ俗に日本問題と言っておりますが、これはもう我が国にとりまして、さきのガット閣僚特別総会の最大の争点でございました。その前に、ガットの閣僚総会に臨む打ち合わせという意味四極貿易大臣会議がポルトガルであったわけでございますが、このときにも大変な争点になったわけでございます。特にECが非常に強くこれを新ラウンドの開始宣言の本文に入れるように求めたわけです。四極貿易大臣会議のときには、アメリカ、とりわけカナダのカーニー大臣が、これは女性ですが、特定の国を攻撃することはよせと、こう言ってかばってくれた。  ガットの閣僚総会におきまして、やはりECがこれを出してきたんです。それに対して私どもの反論は、ガットというのはあくまでも自由貿易国際ルールをつくる場である、いわゆるルールの場である。保護主義管理貿易から自由貿易を守る、その意味のルールをつくる場である、こういうことでありまして、結果として得た利益に対してとかく論及すべきものじゃないと。つまり、共通の利益を一層増大せしめることは結構だけれども、しかし国というものはそれぞれ事情があります。国の大きい小さいもあります。また、経営の方針あるいは労働事情、いろんなもうさまざまな問題がありますから、これを一律に論じるということは、これはおかしいわけです。  それでございますから、私どもはあくまでもガットの意義と定義というものを盾にとって頭張る、最後は徹夜をいたしまして、そして結局ECの提案に、つまりバランス・オブ・ベネフィットという問題について賛成をしたのはわずかにセネガルとマダガスカル、あとは日本についてくれたということでございましたが、まあ中にはマレーシアのように、日本ECでけんかしておれと、こっちには関係ないわというのもありましたけれども、まあ我々の肩を持ってくれた。しかし、それは日本の肩を持ったんじゃないんです。我々は日本の肩を持ってくれたと思ったら大きな間違いなんで、彼らは日本貿易インバランスに対して実に不愉快な思いをしながらも、管理貿易保護主義に陥らないためにこのBOBというものを排除したと、こういうわけでございます。  結局、結論としては議長総括におきまして両論併記という形で、開始宣言の本文には入りませんでした。その点では非常に成功でございましたけれども、今言ったように、日本の肩を持ったんじゃない、管理貿易保護主義を排除しようと彼らはしたんだと、その結果が日本を守ったことになったんだということを考えれば、我々が今後このような巨大な貿易インバランスというものを解消するための、つまりいろいろな産業構造改善も必要でしょう、いろいろあるいは内需の拡大も必要でしょう、いろんな輸入の促進とかあるいは対外投資とかあるいは累積債務の途上国への黒字の還流とか、それに伴う当然のこととしてリスクに対応する輸出保険の改善とか自主的にいろんなことをやらなきゃならぬが、そのようにして国際分業の一翼を担っていくということは必要だろうと思うんです。  くどいようでございますが、日本の肩を持ってくれたんじゃない。それを日本の肩を持ってくれたという思い上がりを我々は抱いてはならない。それはそういう幻想に陥ってはならぬというふうに私はつくづく感じて帰ってまいりました。こういうことでございます。
  50. 村岡茂生

    政府委員村岡茂生君) 田代先生、EC経済の状況並びに日本EC貿易動向について御質問がございましたので、一言触れたいと思うのでございます。  EC経済現状につきまして、一言で申しますと、ドロール委員長の言葉をかりますと、いわゆるヨーロピアンペシミズムというのが消えつつある、明るさが非常にふえてきた、こういうような表現をとっておられました。私ども見ますと、EC経済は原油価格低下というのは非常に大きな効果がございまして、このところ物価が大変安定してございます。八五年で五・六%の物価上昇率でございましたが、ことしの見通しは三・七%に低下をするということでございます。そのようなことによりまして堅調な成長の過程にあるということが言えるのではないかと思います。昨年二・三%、ことしの見通しは二・五%を超えるのではないか、このように言われておるわけでございます。  また、EC経常収支、グローバルで見ますと非常に著増をする予定になっておりまして、本年は約五百億ドルを超える大幅な黒字が見込まれていると。失業率についてはやや明るさを見せたというところではございますが、ほかの要素につきましてはかなり明るくなりつつある、このような評価ができるのではないかと思います。  なお、日本ECとの貿易関係でございますが、貿易収支ベースで見ますと、八一年以降大体百億ドル強というレベルで推移してまいったのでございますが、ことしに入りまして日本側黒字ドルベースで見ますと五二・七%、非常に大きな増加ということになっております。これを円ベースで評価し直しますと二兆九千億円程度の黒字、昨年比七%の増加にとどまっておるわけでございます。  輸入は、最近ECから着実に増加しております。これもドルベースで見ますと、一月—十一月の平均値でございますが、四九%とかなり輸入は著増する傾向にあるということが言えましょう。なお、これを円ベースで見ますと三・四%程度でございます。  特に私ども強調いたしたいのは、十月、十一月、この二カ月ではございますが、輸入の増加傾向と輸出の伸びの鈍化傾向というのがはっきり読みとれるわけでございまして、やや黒字が著増するというパターンから少々基調が転化してきたのではないかと私ども観察しておるわけでございます。
  51. 田代富士男

    田代富士男君 今お答えいただいたとおりに、いろいろ努力をしていただいていることに対しては評価をいたしますが、日本ECとの間で、今もお答えいただきましたとおりに、一応の決着を見たスキーSGマーク問題、これに限らず今後とも前向きに取り組んでいかなくてはならないものが非常に多いんじゃないかと思うんです。  通産大臣、御苦労しておいでいただいたと思いますけれども、まだ残っていると思うわけなんですが、その残っている中の一つが日・EC産業協力センターの設置問題ではないかと私は思います。このセンター設置の目的とセンターの法的性格といいますか、日・EC協議のそういう進捗状況について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  52. 村岡茂生

    政府委員村岡茂生君) 日・EC産業協力センターの目的でございますが、基本的には、私ども世界経済の活性化という見地から考えますと、先進国同士の間で、日米、日・EC並びに米・EC、この三極の関係を考えますときに、その一つの辺でありますところの日・EC関係というものが相対的に非常に弱いということは否定できない事実でございます。この関係を強化していく、貿易量においても、投資面においても、技術移転の面においても強化していくということが必要であるということは言うまでもないわけでございます。このような見地に立ちまして、日・EC経済関係というものをより密接に、強固なものにするために構想したのがこの日・EC産業協力センターでございます。  事業の内容は、大きく分けて、特にECの対日貿易及び対日投資の促進、それと将来のEC日本の間の産業協力を担う人材のトレーニングをしていく、人材の育成を徹底してやっていこう、その他もろもろの事業が含まれておりますが、それが主な事業でございます。  この構想につきまして、昨年以来いろいろ日・EC双方で検討されてまいったわけでございますが、つい先ごろ開催されました日・EC閣僚会議におきまして、通産省EC委員会との間でこの構想を推進していこうということにつきまして基本的に合意したわけでございます。  なお、進捗状況でございますが、六十二年度はパイロットフェーズということで、規模はそれほど大きくありませんが、試験的に事業を実施していこうということでございます。本格的な事業開始は六十三年度になる予定でございます。
  53. 田代富士男

    田代富士男君 ただいま法的な性格あるいは進捗状況について御説明をいただきまして、あくまで世界経済の活性化のための三極の中で、特に日・EC関係が弱かったためにこれをやったという御説明でございました。  そこで、今の御説明の産業協力ということになりますと、今の御説明のあったことだけが産業協力のすべてではないのではないか、私はこのように思うんですけれども、この点について通産省としてどうとらえていらっしゃるのか、もう一度お尋ねしたいと同時に、このような産業協力センターの構想というものが日米、日・EC、米・EC、この三極ということで発足されておりますけれども、この日・EC間の合意を見たと同じように、今のところそれだけに限られておりますけれども、その他の地域ではこの種の構想は今のところあるのかないのか、まずこれが試験段階のところでございます。六十三年から本格的な事業というものが始められますから、それを見てからこれは質問すべきことではないかと思いますけれども、それも踏まえた上でそういう構想はないのかどうかあわせてお答えいただきたいと思います。
  54. 村岡茂生

    政府委員村岡茂生君) この日・EC産業協力センターの構想そのものは、先生御指摘のとおり、日・EC間の産業協力を徹底的に推進していこうというものでございます。かなり幅広い構想のもとにでき上がっておるということが言えるかと思います。産業協力というのはかなり幅広い概念でございます。投資の交流であるとか、技術の交流であるとか、さらには第三国市場における協力といったようなもろもろの側面も包括する概念でございます。私どもは、先生御指摘のとおり、行く行くはこの事業を、先ほど主な事業二つとして挙げましたけれども、これを拡大していくという方向で考えたいと思っております。  それから、第二の問題でございますこのEC以外の地域においても同様の構想を適用したらどうかという御意見でございます。これについても、私ども基本的には先生の御意見に賛成なのでございます。ただしこれは、御存じのとおり、相手側の要望ということもございますし、かつまた相手方の資金負担というようなものもございます。  このECとの間の協力センターの構想を聞きまして、幾つかの国が、この構想がどのように実現されていくのか、どのような内容のものであるか大変興味を持ち始めている国が幾つかございます。今後パイロットフェーズを経て明後年実行段階に入った段階ぐらいには、関心がある諸国からいろいろ申し入れが来ることも予想されております。私どもは可能な限りこのような諸国の御要望にも応じていけるような弾力的な体制をとっていきたいと思っておる次第でございます。
  55. 田代富士男

    田代富士男君 経企庁長官もおいでになりまして、またすぐお出かけにならなくちゃならないということでございますから、経済動向等についてお尋ねをしたいと思います。  最初に現在の経済動向につきまして、経済企画庁から概況をお伺いすると同時に、経常収支についてどのように判断していらっしゃるのか、いわゆるJカーブ効果についてどのように見ていらっしゃるのか、最初に、簡単で結構でございますが、お答えいただきたいと思います。
  56. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 先生も御案内のように、我が国経済はいわゆるG5以来の急激な円高で、輸出を中心として部分的には非常な低迷状況にあるわけでございますが、私ども経済企画庁で国民所得統計をずっと作成して、先般も七月—九月期のものを発表いたしました。その前、四月—六月期と発表いたしまして、一応六十一年度の上半期のデータがそろったわけでございますが、これを見てまいりますと、消費は私ども一月の見通しどおり、場合によってはちょっと上回るぐらい進んでおりますし、住宅建設ではこれはもう昨年よりも十数%アップして着工が進んでおりますので、この点はよろしいんですが、問題は民間の設備投資が、これが輸出を中心に落ち込んでおります。非製造業部門の設備投資が、これは依然として強くはございますけれども、合計いたしますと見通しよりもダウンしていると、こういうことでございますが、ただ、四月以来の公共事業の前倒しに秋口からの総合経済対策を実行してまいりましたので、政府関係の支出は見通しのときよりも大幅にふえてございますので、内需全体で考えますと、若干でありますが、これは今実績を入れていないので実績の見込みでございますけれども、当初見通しよりはわずかながらふえると考えていいのではないかと思っておるわけでございます。先生からのお話がございました問題は、国際収支の面でございます。これは輸出が数量で減っておりますが、それよりも輸入が、これは数量で前年同期比、最近なんかは三四、五%もふえておる、こういう状況でございます。これはGNPに対しては大きなマイナスファクターでございますから、全体として見て、GNPの成長率で考えますと見通しの線よりは相当後退せざるを得ないのかなと、こういう判断をしております。  御質問経常収支でございますが、現在の水準で一年間推移いたしますと、やはり貿易収支では九百億ドル、九百数十億ドル経常収支でまいりましても九百億ドルちょっと割るぐらいのことになるのではないかと、こういうふうに推測をしております。
  57. 田代富士男

    田代富士男君 雇用の情勢について、経企庁としてどのように見ていらっしゃるのかお伺いをしたいと思います。  この問題については、午前中も同僚議員からちょっと質問が出ておりましたが、経企庁としての立場からお答えをいただきたいと思います。特にこの問題につきましては、御承知のとおりに、去る十一月の二十日の商工委員会におきまして、労働省に対して私少しばかりお尋ねをした問題でございますが、そのときには雇用調整、すなわち企業の過剰雇用、言いかえれば企業内失業とも言うべきこの雇用調整の対象者の実施事業所割合というのがその時点では三一%という、こういう数字でございました。ところが、今新しい資料によりますと、これが三八%に達しているという、こういう現状でございまして、このように企業内の失業とも言うべき雇用調整の対象者がその後もふえ続けておるという、このふえ続けていく勢いというのは衰えないのではないかと思うわけでございまして、経済企画庁の説明に、表にあらわれない雇用情勢について、経済企画庁としてどのように見解をお持ちかお答えをいただきたいと思います。
  58. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) 現在の雇用情勢でございますが、御指摘のとおり、マクロベースの数字だけで見ますと、例えば雇用者の伸びは比較的高うございますし、それから失業率は現在二・八で大体横ばいで推移をいたしております。また、有効求人倍率等もこのところ余り大きな動きを示しておりませんで、そういうマクロベースの数字だけを見ますと、特に雇用情勢がここで悪化しているということはないように見えるわけでありますが、やはり雇用の内容ということを申しますと、輸出関連産業あるいは構造問題を抱えた産業を中心にいたしまして雇用調整の動きが非常に激しくなっております。  私どもはマクロベースの数字だけを見ておりましたんでは現在の雇用情勢というのは判断できませんので、例えば労働省の雇用調整実施企業の割合でございますとか、あるいは事業主の都合によります解雇者の動向でありますとか、あるいはこれは余り公的な数字じゃございませんが、先ほど御指摘になりました企業内の過剰雇用の状況等等、それからまた、地域別の雇用の状況、こういうものをできるだけ把握をいたしまして、どういう部分でどういう雇用の問題が発生をしているのか。またそれに対しまして、やはりこれは基本的には構造調整の中での問題だと思いますし、簡単に解決がつくような問題ではない。あるいは景気が上向いてまいりましても、どれだけ早急にその吸収力がふえてくるか、その辺についても非常に問題があることだと思いますし、一般に景気におくれまして雇用問題が表面化してくるという従来の経験から申しましても、恐らく来年度にかけまして雇用情勢の厳しさは続くんではないだろうか、こういうふうに判断をいたしております。  それで、これは企画庁だけではございませんが、政府といたしまして雇用対策本部というものを設置いたしまして、関係省庁と連絡をとりながら、地域別、部門別に雇用問題にどのように対処していくのか、その対策を現在真剣に進めているところでございます。
  59. 田代富士男

    田代富士男君 ぜひこの問題についてやっていただきたいと思います。私ども近々また雇用問題について現地視察をする予定をしておりますから、それが終わりましたら、改めてこの問題に対しては質問をしたいと思います。  次に、企業倒産についてお尋ねをしたいと思います。これも単に表にあらわれる数字だけを見ますと、倒産件数というのは減少しているようでございますが、実情はもっと厳しいはずであります。私も大阪でございまして、中小企業の実態を帰るたびごとに聞いておりまして、実情は厳しいというのが実感でございます。細かいことは省略をいたしますが、例えば負債総額の大きさは、現時点において既に史上第三位に達しているという、こういう数字が出ておりまして、この点経企庁長官どのようにお考えになっていらっしゃるのか。あわせてこのように経済情勢の明暗の二面性については、雇用情勢や倒産に限らず、いろいろな面にあらわれておりますけれども、特に暗の部分については一段と政策努力が必要ではないかと思うんですけれども、経企庁長官の御決意をあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  60. 勝村坦郎

    政府委員(勝村坦郎君) 現在の倒産の状況並びに判断につきまして、まず私からお答えをさせていただきます。  それで、御指摘のとおり、倒産件数、これは銀行取引停止処分あるいは民間機関の調査等によりましても、現在、昨年に比べましてまだマイナスの状態がずっと続いております。それから御指摘の負債総額でございますが、これはことしの四月に非常に高い数字が出ました後、比較的落ちついた数字でございまして、今一番最近のものは十一月の、これは民間機関のものでございますが、これは昨年に比べまして二〇%ほど負債金額では減少いたしております。ただ、御指摘のように、企業経営が、特に輸出関連あるいはその下請部門で非常に苦しい状態が出ている。あるいは操短、場合によりましては休業に追い込まれるようなところが出ているということはもちろんあるわけでございます。  ただ、倒産と申しますのは、これは定義にもよるのでありますが、従来の動き、景気との関係を見ますと、必ずしも景気が悪くなってすぐ倒産がふえるというようにはなっておりません。むしろ景気後退期にいろいろ企業の中に無理が生じてまいりまして、それが結果として、景気後退が長引きますと、景気後退の終わりあるいはむしろ景気回復の初期に倒産件数がかなりふえる。これは金融との関係も影響があろうかと思っておりますけれども、そういうような状況でございますので、現在倒産件数が多い少ないということだけではなしに、企業の中の状態がどういうふうに推移しているか。相当苦しい状態が部分的には出ているわけでありますけれども、それが今後どういうふうに積み重なってまいりまして、しばらくたちますと件数にもこれが出てくる可能性が十分あるわけでございます。そういう意味で十分注意をしながら成り行きを見ているところでございます。
  61. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 実は私も総理の御質問がございまして、最近不況地域の視察をしてまいっておりますが、先週は釜石へ参りまして、その前の週は金沢市とそれから能登半島の機業地帯を見てまいってございますけれども、大変皆さん御苦労していらっしゃるわけでございますので、こうした下請中小企業対策としては実は四月、五月、二度にわたる経済総合対策、そして当面の経済対策、そして九月の総合経済対策の中で、それぞれ中小企業対策としていろいろなことを政府として配慮させていただいてございますが、倒産という非常に深刻な面に対する対応と同時に、企業転換をして新たな雇用機会を創出できるのがむしろ中小企業の分野ではないか、かように考えておりますので、倒産を防止すると同時に、新たな雇用調整の受け皿としても中小企業というのは非常に大事な役割をこれから担うのである、こういうことでございますので、通産大臣ともいろいろ御協議しながら、できるだけの措置を講じさせていただきたいと思っている次第でございます。
  62. 田代富士男

    田代富士男君 長官が時間の関係がありますから、ちょっとまとめて御質問いたします。  経済成長についてお尋ねしたいと思いますけれども、本年度の経済成長率が、政府の当初見通し四%より相当低いところにとどまりそうでありますけれども、当初見積もり、見通しよりも大きく外れた原因というものは何であるのか。午前中の質疑のときにもちょっとお答えをいただいて、内容等聞いておりますけれども、改めてお尋ねをしたいと思います。  それで、あと残り約三カ月です。この間に国際公約達成のために政府として取り組んでいかねばなりませんし、その場合、現時点において最終的には何%を達成し得ると考えていらっしゃるのか。現時点では四%達成という決意を披瀝されるけれども、現実にはどのくらいなのか。見通しの改定といいますか、実績見込みはいつごろ出されるのか、こういうところもあわせてお答えをいただきたいと思います。  それと、来年度の経済見通しについてお答えいただきたいと思いますけれども、最近の民間金融機関や経済調査機関の予測では、いろいろな資料が出されておりまして、我々も目を通させていただいておりますけれども、大半が実質二%台の低成長で、中には一%台という見方もあるようであります。九月ごろに出した予測についても近々下方修正する機関も出始めておりますが、こういう傾向である。その理由として、円高の定着と米景気の不調に伴う輸出といいますか、外需の減少と、設備投資の不振からくる内需の盛り上がり不足が挙げられているという面が、すべての面で強調されております。  そこで政府の来年度経済見通しについてもこれは出さなくてはならない時期に来ております。そういう意味から、経済成長に関して経済審議会の審議の動向などを見ましても、四%程度の中成長を維持する必要を認められております。そういうことが記事として出されておりますが、政府としても、本年度に引き続きまして来年度も少なくとも四%を掲げたいという考えであるかと思うんですけれども、こういう点あわせてお答えいただきたいと思います。
  63. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 先ほどちょっと申しました、経済企画庁で四半期ごとのQEを発表してございますが、六十一年の第一・四半期は、対前期比一・九%実は内需が伸びたわけでございますけれども、外需要因で一%マイナスで、差し引き〇・九%同期比伸びでございまして、最近発表いたしました七—九月期は内需だけでは〇・九%伸びているわけでございますが、外需で〇・三マイナスになって、〇・六%の伸びと、こういうことでございますので、こういう状況でさらに今度は下半期に四%達成を目途といたしますと、相当な前期比の伸び率が実現できなければ達成が不可能だと、こういうことになっていくわけでございます。  ただ、先ほど申しましたように、今六十一年度実績見込みを検討中でございますが、その中でも内需だけをとりますと、見通しでは内需四・一に、外需がマイナス〇・二で、端数切り上げで四・〇%の経済成長、こういう見通しをつくっておったわけでございますけれども、内需だけで申しますと、実績見込みの段階で四・一%が、政府の前倒し、そして総合経済対策の実行によって四・一が、場合によったら多少ではございますけれども、ポイント一ぐらいは上がるのかなと、こういう感じでございますが、外需の経済調整が、輸入が非常にふえたということから、このマイナスがどこまでなるかでありますけれども、このマイナスのぐあいによっては四・二マイナスどうか、こういうことで、三%前後ぐらいまで落ち込んでしまうのかなと。これは今検討中でございますから、いずれきちっと出た段階でまた数字としては正確に御報告しなきゃならないと思っている、そんな感じで今作業をしていることを御理解いただきたいわけであります。  来年度でございますが、来年度は依然として内需は伸びるとは思います。特に消費支出は、これは今お話のございました雇用調整がどう進むか、さらに春闘でどれぐらい賃金がいくのかなということと消費は密接関係がございますけれども、一応伸びが期待できますし、住宅投資もこれはもう百四十万台の投資が、これもさらに上積みをする。どの程度の上積みかということはあるけれども、多少勢いはそがれてもいい線いくんではないか。  それから民間設備投資は、この百六十円のレートが最低将来維持できるという前提で考えますと、金利が安くなったことでありますから、二年間、G5以降二年たてば来年の後半には投資が動いていくんじゃないか、こういうふうに考えますし、在庫もプラスファクターでもう調整済んだと、こう考えますと、問題は公共事業を初めとする政府支出がどれぐらい期待できるか、こういうことでございます。ことしは前倒しに総合対策は上積みをしたわけでございますけれども、来年はどうか、これが実は議論の分かれるところでございますが、いろいろ大蔵省とも相談して、何とか政府においても内需拡大の役割を担ってもらいたい。実は昨日も通産大臣といろいろ御相談いたしまして、政府として対策に苦慮している、配慮していることでございます。  問題は、今度はやはり対外経済要因をどう見るかでございますので、これがなかなか先生難しいですね、相手のあることでございますが。私どもは「展望と指針」の中でも言っておりますけれども、その中でもというか、今度の、きょう実は経済審議会でこれから発表いたしますリボルビング計画の中でも、大体百億ドルぐらいは国際経済調整をしていかにゃならないかなということを考えますと、百億ドルは円で言うと一兆六千億でございますから、GNPで言うと〇・五%ぐらい、すなわち〇・五%ぐらい切り込むことになりますので、この内需拡大と対外経済調整との絡みで来年の経済成長率をどれぐらいに考えるか、実は今いろいろ関係者が集まって議論をしているというのが現段階のことでございます。
  64. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、まとめてもう一度御質問を——もう時間ないですか、ではちょっとだけ。  それで、今から経済審議会へ御出席になるということでございますけれども、経済審議会の中間報告が出されましたけれども、主なポイントは何であるかお答えいただきたいと思います。  それと、この経済審議会の中で、中成長ということで言われているのは大体四%と言われておるわけでございますけれども、現在の政府の財政政策で果たしてそれが可能であるのか、中成長を保証するのは何であるのか、今もちょっと中身の一部をお答えいただいたんですけれども、もうちょっと明確にお答えいただけたらと思うんです。  それと土地対策についてでございますけれども、中間報告では、「特に土地供給の促進が不可欠である。」、このようにされておりまして、土地供給の必要性について、中間報告を待つまでもなく、これまでにこの問題は提言されたことでございますけれども、これらの提言が今日まで実現になかなか至らなかった、そこにメスを入れなければ実効は期待できないのではなかろうかと、私はこのように思うがどうであるのか。  それから、通称空洞化ということが今まかり通っておりますけれども、新聞報道などによりますと、「「産業空洞化」恐れず」という、こういう見出しが躍っていたんですが、驚かされましたけれども、政府としても、産業の空洞化を恐れないほど我が国に余裕はないと思いますけれども、これは長官の御認識をお伺いしたいと思いますし、この空洞化の行くところは、今さっきから私が質問しております雇用不安ではないかと思うんです。こういう意味から、この中間報告では、具体策もまだまだ具体的でなく、実効性も乏しい面があるんじゃないかと思いますし、特に私は雇用というものをどのように確保するのか長官の所見をお聞きしたいと思います。
  65. 近藤鉄雄

    国務大臣(近藤鉄雄君) 時間もあれでございますから、私ポイントだけ説明させていただきまして、あとは政府委員から詳しく御説明をさせます。  まず空洞化でございますけれども、私どもは空洞化を恐れずということではなしに、空洞化の懸念はあるというふうに認識をしておりますが、ただ国内の需要が、これからの経済成長を続けてまいります場合に、新たなソフトやサービスの分野やその他細々としたたくさんな需要の機会もあるし、需要がふえておりますし、これに対しての産業転換というものの必要もますますふえてくるのではないか。したがって、御指摘のように円高でございますから、海外に企業を持っていくという傾向は確かにふえてくるわけでございますが、その分、それが直接アメリカなどに輸出をすることで日本の輸出が代替されてくるという形で、非常に国内需要が冷え込むということは確かに重大問題でございますけれども、しかし、それを相殺するに余りある雇用機会の創出というものはこれから政策のよろしきを得れば可能ではないか。  したがって、空洞化するから国際的な経済調整を、空洞化のゆえに、空洞化のおそれのゆえにそれを抑制するとか、産業構造の転換というものをそのゆえにおくらさすんじゃなしに、その空洞化要素に対していかに国内的な対応をして、これを新たな生産機会、新たな雇用機会をどうつくるか、その可能性、その対応は十分にある、こういうことで空洞化を恐れずととられるような表現になっているわけでございますが、そういう趣旨でございますので御理解を賜りたいわけでございます。  そういう意味で、まさに輸出主導型から内需主導型への構造転換というものが、それこそ日本の空洞化を防ぐといいますか、空洞化傾向を克服する大事な政策方針である、こういうふうに御理解賜りたいのであります。  以後のことは政府委員から説明させたいと思います。
  66. 冨金原俊二

    政府委員冨金原俊二君) 時間もございませんので、ポイントを手短に御説明をしたいと思いますが、特別部会の中間報告のねらいは三つございます。  一つは、御承知のとおり対外不均衡の是正ということでございます。これを為替レートの調整だけでやりますと、当然国内の問題、いろいろ経済にダメージを与えるとか雇用の問題、御指摘の点いろいろ出てくるわけでございます。国民の生活を豊かにするためにどうしたらいいかという対外不均衡とのバランスを図りながら、国際収支の黒字を是正していくということがポイントでございますが、もう一つ、やはり世界的に我が国がGNPの一割を占めるような大きな国になっております。世界経済社会にどういうふうに貢献したらいいかということをねらいにしておるわけでございます。  それを達成するための手順、道筋というものを特別部会では示しておりますけれども、何といっても供給面ではいろいろ問題が出てきているわけでございますが、これを需要面、特に内需を高めながらそれに見合った供給構造をつくっていくということをいかにしてやっていくかということを議論したわけでございます。  その際に、大事なことは、構造調整の摩擦をできるだけ小さくするためにはどうしてもできるだけの成長をしなければいけないということを考えたわけでございますが、そのためにここで言っておりますのは、中成長、まあ高成長は無理だろう、しかし低成長では困る。まあ裏としては、四%程度の成長はやはりいろいろ工夫すればできるので、それは何とかやってやっていきたいということを一つうたっておりまして、その需要項目についていろいろ議論をしたわけでございますが、先ほどちょっと大臣の方からも申し上げましたような消費の問題、住宅の問題、社会資本の問題、それから民間の設備投資の問題、こういった問題についてどういうふうにしたらいいかということをいろいろ議論をしたわけでございます。もちろんいろいろ難しい問題もあるわけでございますが、やはり思い切った対策をしなければ構造調整をうまくやれないということは非常に痛感をしながら中間報告が出されているというふうに理解をしております。  四%成長が可能かという御指摘でございますが、これは現状の中で簡単に達成できると私ども考えておるわけではございません。しかしながら、先ほど御説明しましたように、何とかできるだけの成長を図りながら構造調整をしなければ、経済自体非常に大きなダメージを受けるだろうということで、あらゆる工夫をしていきたい。そこから考えられておりますのは、一つは、限られた財源の中で思い切った重点配分をしたらどうだろうかということをうたっておりますし、例えば金融資産の重視から実物資産の重視に向かって政策を思い切って転換したらどうか。あるいは、先ほど御指摘がありました土地問題、いろいろ議論してきますと、お金だけつけた場合には、それは回り回って地価の高騰にはね返ってくるという問題もございますので、既に過去に何回か議論はされておりますけれども、この土地の問題は改めて根本的にもう一回見直して、やるかやらないかという腹固めをしていただく必要があるんじゃないかということも一つ言っているわけでございます。  それから、空洞化の問題でございますけれども、空洞化の定義、なかなか難しい問題はありますけれども、確かに個々の産業、企業にとっては非常に大きな問題でございますし、そういう分野については懸念がないということを言っているわけではございませんけれども、製造業全体が空洞化してしまうんではないか、そのために構造調整を少し待ったらどうかというようなことであるならば、これは回り回ってまた日本貿易黒字が減らない、円高になるというようなことになって、結果的には日本経済全体が困るわけでございますから、個々の産業、企業には問題はあろうけれども、方向としては構造調整を進めなければいけないという意味で、新聞なんかでは空洞化を恐れずというような言い方をされましたけれども、私どもはそういう方向で物を考えていくべきじゃないか、そのためには必要な施策や雇用問題についての対策はちゃんと打たなければいけない、そこはよく考えてほしいということを報告は言っているというふうに御理解いただければと思います。
  67. 田代富士男

    田代富士男君 時間が来ていますが、もう一問だけ、申しわけございません。  最後に、石炭問題についてでございますけれどもお尋ねいたしますが、十一月の二十八日に石炭鉱業審議会の「今後の石炭政策の在り方について」の答申が出されましたが、今回の答申では、エネルギー政策の一環としてだけでなくして、産業構造調整の観点からも検討されておるわけでございます。  そこでお尋ねをいたしますが、答申の政策期間が五年となっておりまして、これは石炭の円滑な生産体制の集約に要する期間ととらえているようでございますけれども、もう一方の視点である産業構造調整の観点からするならば、他産業との調整上五年程度が適当かどうか、また五年とする根拠は何であるのかお尋ねしたいと思いますし、その場合、石炭における激変緩和が基本と考えるわけでございますけれども、例えばどういう場合を指して激変となると考えているのか、また言われるようななだらかな閉山は本当に可能であるのかどうかお伺いしたいと思いますし、政策期間の五年を過ぎたときに、我が国の石炭鉱業というものは、生産量が一千万トンになることはわかりますが、全体としてどのような姿になると考えておるのか。  それから、離職者対策についてもお答えをいただきたいと思います。今最も力を入れなくちゃならない問題ではないかと思いますし、雇用不安の解消でありますけれども、今進行中の国鉄の民営・分割に伴う雇用対策並みの取り組みをやらなければならないと思いますが、これは特に通産大臣のお考えをお聞きしたいと思います。  以上でございます。
  68. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 御指摘のとおり、今回の八次策がエネルギー政策としての一面と構造調整としての一面という二面性があろうかと私どもも考えておりまして、答申もそういう形で取り扱っております。  それで、五年が適当であるかどうかというのは、これは難しい問題であろうかと思いますが、最近の急速な日本経済構造あるいは対外環境の変化を考えますと、できるだけ早くという要望もございますが、しかし御指摘のとおり激変を緩和するということがこういう構造調整には非常に重要であろう、特に一時的に閉山あるいは失業が集中して起こるということは何とか避けなきゃならぬという考え方に立ちまして、今回五年という期間が設定されたものでございまして、私どもとしましては、なだらかな閉山ということが非常に重要であろうかというふうに考えておりまして、それには五年という期間が必要であるというふうに思っておるわけでございます。  その場合に、なだらかな閉山にとって非常に大事なことは、生産の縮小のテンポと需要の縮小のテンポ、この間に当然ギャップが予想されますので、このギャップを何らかの形で埋めるというこの過剰在庫対策が最も重要であろうかというふうに考えておりますので、今回概算要求を差しかえて大蔵省に要求いたしますその中で、新たに貯炭の管理機構を設置をしたいという要求をいたしておりますが、ここで何とかその予期せざる過剰在庫を調整をし、急激な集中的な閉山を避けるという手を打っていきたいというふうに考えております。同時に、閉山あるいは生産縮小に伴います地域対策、雇用対策についてもできるだけ手を打ちたいと考えておりまして、労働省、建設省、各省とも御相談をしながら可能な限り手を打っていきたいというふうに考えております。
  69. 田村元

    国務大臣田村元君) 大体今、エネ庁長官から御答弁を全部申し上げたと思います。  雇用問題で若干ちょっと私からつけ加えて申し上げますならば、この離職者対策というのはよほどきめ細かい対応をしなきゃいけないだろうと。それには企業、特に親会社に対しまして雇用対策について万全を期するように指導しなきゃならぬ、また指導しておりますが、産炭地域振興関係各省庁等連絡会議というのがございますが、これを活用することによって関係省庁や地方自治体等と密接な連携をとって運んでいかなきゃなるまいか。それから、先般も労働省のいわゆる特定不況業種地域雇用安定法、いわゆる特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法というのがございますが、これに基づきまして石炭鉱業が指定されたところでございますけれども、今後とも関係省庁等と十分に連携をとりながら離職者対策を講じていきたいと思っております。  御承知のように、労働省へ私参りまして、労働大臣にお目にかかって御懇請申し上げた。私は、まあいつもよく申し上げますように、労働政務次官のときに緊就というのを手がけて、労働大臣のときに石炭の離職者問題と取り組んで、今度はまた逆に労働省にお願いする立場でございますが、もう労働政策というものは、今労働大臣でもありませんが、前官礼遇で物を言わしてもらうならば、労働政策というものは、特に離職対策にしても、もうそのときに対応していくという時代は過ぎたと思うんですよ。そのときに対応すると同時に、予測というものをして予防措置を講じていくという労働政策というものが必要である、私はそう思うんです。特に、いかにこういう不況というものが来たりといっても、世界で最も安定した経済情勢下にある日本の国でございますだけに、なおさら労働政策というものはもっともっと先を見通し、また奥の深いきめ細かい、そういうものになっていかなきゃならぬのじゃないだろうかとしみじみ痛感をいたしております。  いずれにいたしましても、関係省庁、とりわけ労働省とは十分の連絡をとりながら、時にはお願いも申し上げて万遺憾なきを期していきたいと、このように考えております。
  70. 市川正一

    ○市川正一君 田村通産大臣は、日本EC閣僚会議出席されて先週の末に帰国されたばかりでありますけれども、実は私も参議院から派遣されまして、八月の下旬に、林ゆう前労働大臣を団長としてEC諸国の経済実態を調査してまいりました。その際に、日本からECに進出しております企業の実態、そこに生じている問題等々も調査テーマの一つでありました。スペインにおけるバルセロナのヤマハ発動機、イタリアにおけるミラノのYKK、吉田工業ですが、なども直接視察してまいりまして、いろんな意味で示唆に富むものであったと思っております。  今日、事態は、そのECだけではなしに、去年の九月のG5以来の異常な円高で、我が国企業の海外進出が際立って進みつつあります。きょうはそういう背景のもとに、本年の掉尾を締めくくる論戦として、来年以降の展望において重大化することは必至と考えられる日本経済のいわゆる空洞化問題を取り上げたいのでありますが、まず大臣にこの空洞化問題についての基本的な認識、先ほど経企庁長官は何か「恐れず」と言って勇ましくお帰りになりましたけれども、通産大臣のひとつ基本的認識を伺いたい。
  71. 田村元

    国務大臣田村元君) 海外への直接投資というのは、これは避けて通れない問題であることは、これはもう申すまでもございません。また、産業構造調整の面からいっても大きな柱の一つであることは間違いないことでございます。  ただ、だからといって、私はやはり雇用問題と空洞化問題というものは非常に恐れております。それだけに、その対応というものはよほど慎重に、よほど真剣にやっていかなきゃならぬ、このように考えております。
  72. 市川正一

    ○市川正一君 少し立ち入ってお話を進めさせていただきたいと思うんですが、もともとこの空洞化論というものの火つけ役ですね、一体これはだれかということで、洗ってみますと、産業構造審議会の企画小委員会がことしの二月にまとめました「二十一世紀産業社会基本構想」というのが御承知のように出ております、この中間報告だというのは、もうこれは定説になっております。この構想三十九ページによりますと、西暦二〇〇〇年までに毎年平均一二%の海外投資の伸びが予想される、これによる雇用減少五十六万人だと。もしこれが一五%の伸びになると約百万人の減少になる。この点について、これは日経でありますが、十二月七日付に、通産省は、この急速な円高の進行で、日本企業の海外直接投資が西暦二〇〇〇年までに年平均一四%伸びると国内雇用機会の減少は八十万人に拡大する、こう予想しております。特に、自動車、電機などの大企業は、円高を利用して海外投資の促進、部品の海外調達あるいは製品輸入の拡大等々、大きな利益をこれによってこうむっておるんですね。  ここで私伺いたいのは、最近の海外投資や海外での部品調達の実態について、業種別にどうなっているのか伺いたい。もし簡潔な資料があるとすれば、昨年のG5以前と以降とを比較すると、それ以降の方が急速に拡大していると思うんですが、そうした特徴についてのデータがあれば伺いたい。しかし、時間がかかるようだったら後で伺います。
  73. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 海外投資につきましては日銀の統計がございます。  これで眺めてみますと、昭和五十五年度末には、我が国からの海外直接投資の残高が三百六十五億ドルでございました。六十年度末でその数字をとってみますと八百三十六億ドルでございますので、この五年間に約二・三倍にふえたということでございます。これは全業種でございますが、そのうち製造業だけについて見ますと、五十五年度末の残高が百二十六億ドル、六十年度末のそれが二百四十四億ドルでございまして、これは一・九倍でございますので、我が国全体の海外直接投資の伸びの比率よりはちょっと低いところでございます。  お話は、昨年のG5以降どうなっているか、こういうことでございます。ところが、この日銀の統計には月次の数字がございませんので、昨年のG5以降の動きというのをこの統計からうかがい知るわけにはいかないわけでございますが、その後のいろいろなデータから見ますと、やはり最近までの急激な円高によりまして、我が国からの海外直接投資というのはかなり加速化されているという様子がうかがわれます。  例えばということで申し上げますと、日銀の短期経済観測というのがございまして、最近は十一月の調査が発表されております。これで我が国の対外投資、これは日銀の短観の対象企業の回答でございますが、ドルベースでいきまして、前年度に対して約五〇%増という数字でございます。十一月の前に調査をいたしました——たしか八月であったかなと思いますけれども、この段階では三〇%増でございますから、この数カ月のうちにまた若干企業の海外投資計画が加速化されているような感じを受けます。  それから、私どもの産業構造審議会産業資金部会の調査というのがこの九月時点で行われておりますが、やはりドルベースにいたしますと、前年度比三〇%増、これは約一千社の企業を対象にした調査でございますので限定はございますが、三〇%増と、こういうような数字がございますので、G5以降の円高によりまして、申し上げましたように若干海外投資が加速化されているということがうかがい知れるかと思います。
  74. 市川正一

    ○市川正一君 私どもの調査も杉山さんの今の答弁とマッチいたしております。  そこで、大臣は先ほどやっぱり恐れているとおっしゃいましたけれども、ところが、神を恐れず民を恐れず、これでぼろもうけをたくらんでいるのがいるわけですね。  伺いたいんですが、日本経済新聞の海外製品調達額のランキングによりますと、上位十社のうち九社までが電機と自動車で占められております。通産省伺いますが、この電機とか自動車は、機情法、この法律自体はもう今廃止されておりますが、この機情法に基づいて部品の高度化のために国の助成の対象になっていた業種であると思いますが、間違いございませんか。
  75. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) ただいま市川先生お尋ねの件でございますが、機情法、これは特定機械情報産業振興臨時措措法でございまして、昭和五十三年の七月から六十年の六月まで存在しておりました。その中で、仰せのように自動車部品それから家電製品の部品が、それぞれ安全性とかあるいは関連技術の向上といったことを目的として高度化計画が策定されていたのは事実でございます。
  76. 市川正一

    ○市川正一君 そこで、このランキングは、ベストテンのトップにある日立を取り上げてみたいんですが、この日立製作所は、今年度は韓国からの部品調達を従来の四十二倍から五十五倍にも拡大する方針だと言われております。ところが同社は、今年度の予算だけを見ましても、六十九億五千八百万円、約七十億円の補助金や委託費を国から受け取り、技術開発を進めております。そして、今申しました機情法からも手厚い助成を受け、そして今なお政府から膨大な研究費を受けながら、それを国内経済の振興に役立てるんではなしに、海外へ進出して外国企業と結んで部品をつくらせ、それを日本へ逆輸入する。そのため、国内関連下請中小企業は仕事がなくなる、あったとしても単価を買いたたかれる、労働者は賃下げあるいは解雇される、こういう大企業の横暴な行動をほしいままにしておるのであります。  私たまたま日立の例を挙げたんですが、各業種、各大企業にあまねくこれは広がっておるんです。私は、こういう大企業の企業行動については国から補助金や委託費を受けているという点から見ても適切な規制が必要だと思うんですが、いかがでしょうか。
  77. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) ただいまお挙げになりました例につきましては、私どもも具体的な数字は把握しているわけではございませんけれども、この機情法に基づきます政策目的と申しますのは、御承知のようにオイルショックの後、低成長時代になりまして、電子、電機産業も新しい環境変化に対応しなくてはならないという状況になった。加えて、ソフトウェア等の新しい情報産業分野の規制も必要だというふうなことで、金融、税制面での措置を講じたものでございます。これらの措置によりまして、関連産業の部品につきましても、新しい経済環境の中でどうにか実力もだんだんついてまいりまして、やっていけるようになったわけでございます。  そういった企業が、やはりそのときそのときの経済情勢の変化の中で、例えば貿易摩擦への対応でございますとか、最近では、先ほどから話題になっております円高等への対応といったようなことで、環境変化に対しましてどうやって生き延びていくか、どうやって雇用を確保していくかというふうなことでいろいろな工夫をしているというのが現状であろうかと思う次第でございます。
  78. 市川正一

    ○市川正一君 そうしたらなんですか、国から、政府から金引き出して、今でも、日立について言えば、日立がたまたまトップやから言うているんですけれど、日立だけやおまへん。これは七十億円も政府から補助金や委託費もろうて、それでいろいろ国内経済振興に役立てたらいいんやけど、そうじゃなしに、それを踏み台にして空洞化に打って出る、そういうことが結構やとおっしゃるんですか。
  79. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 今、市川先生のおっしゃいました研究開発その他についての国の助成でございますけれども、これは私どもこれから二十一世紀に向かいまして我が国経済社会を支えていく大事な分野というのは、情報あるいは機械関係、特に先端技術の分野であろうと思っております。そういったものが将来力を蓄えていくための研究開発に対する支援をいたしているわけでございまして、やはり将来の日本の産業経済を考えますと、そういうことは必要な政策であろうかと思っております。
  80. 市川正一

    ○市川正一君 日本経済に役立たぬ言うているんやがな。それで稼いで、それでどんどんどんどんよそへ行って逆輸入してきて、それで空洞化するそのお手伝いを政府がやるというふうなことは、これは国民としてはほうっておけぬ、許せぬということを言うているんです。  具体的に聞きますが、そのほか、円高に伴ういろんな海外進出は問題を引き起こしているんですが、雇用問題がそうです。下請中小企業問題がそうです。それから地域経済の問題がそうです。  まず、雇用問題で聞きますが、私どもの調査では、新日鉄で五十九年度から六十一年度中に七千五百人の人員削減、十二月一日からは延べ二万五百七十人の一時帰休、日本鋼管も総数一万五千人の削減、いすゞは六百人の削減、日産自動車は五千人の出向、そのほか、日立にしろ三菱にしろ富士にしろ、あるいは私どもも先日参りましたが、住友金属もそうでありますが、全体として一時帰休とか首切りとか、大規模な事実上の首切りが計画されております。  通産省はこういう実態を把握していらっしゃいますか。調査結果があれば、どういう規模、どういう内容なのか教えていただきたい。
  81. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 私どもも、最近の急速な円高に伴います国内経済の不振というものが、各企業におきまして雇用調整という結果になっているという状況に着目をいたしまして、この十一月の初めの時点で約二十業種、そのうち鉱工業につきましては十七業種、第三次産業が三業種でございますが、合計百十社ほどの企業に当たりまして、特に雇用の問題に焦点を合わせた調査をやっております。  これの調査の業種別の内容については、時間もございませんので差し控えさしていただきますが、全体として見ますと、これまで構造不況業種と言われておりましたアルミのような産業、さらには石炭、非鉄といったような業種から、最近では製造業の段階では鉄鋼、造船、それからさらにはこれまでは非常に好調だと言われておりました加工組み立て型の業種、例えば自動車等におきましても臨時工の数が若干減る、それから生産現場から販売部門への出向がふえるというような格好での雇用調整の動きが出始めているということについては十分把握をいたしておるところでございます。
  82. 市川正一

    ○市川正一君 そこで、その雇用問題でありますが、午前中も議論がございました。幸いここに労働政務次官もいらっしゃるので、本来ならばお聞きした方がいいのかもしらんのですが、既存の産業分野で雇用が減少しても第三次産業や先端産業で吸収するからそれほど深刻にならぬ、こういう見解が午前中も表明されました。しかし、人員削減が地方都市で進んでおる。そういうことからいうと地域経済ではとても吸収できないという事態も、これはもう深刻です。さらに、企業内での再就職のための教育や訓練をやることになっている。それ自体もちろん重要です。また大切なことでありますが、しかし人員削減が高齢者から進行している現状から見ると、こういう労働者が現実の問題として対応できるかどうかという問題も実際に起こっておるわけです。  具体的に私、国鉄の問題を特別委員会で取り上げましたが、来年の四月に民営化される国鉄の場合、政府が盛んに再雇用の保障をPRしておりますけれども、実態は進んでないんですね。そして採用条件も三十歳代が中心だということから見ても、そのほか炭鉱があります、雇用問題の深刻さは私は想像を上回る実態だと、こう認識しております。  ここに私、「エコノミスト」を持ってまいりましたが、ここでも新日鉄の古賀憲介専務は、サービス化とハイテク化で雇用の肩がわりができるかどうかという疑問を提起されております。また、ウシオ電機の牛尾治朗会長も同様の疑問を提起すると同時に、産構審が失業者五十六万人の根拠にしている実労働時間の二千百八十時間、それを千九百時間にするという、一五%の時短が本当に実現するかどうか、実現しなければとてもあんな小さい数字ではおさまらぬ、こういう牛尾さんも指摘をされております。  こうしてみると、私は雇用問題の解決のための一つの重要な柱として、文字どおりヨーロッパ並みの労働時間になるように、時間短縮の問題に本格的に取り組むということが大事な柱になるというふうに思うんであります。  議論を時間の関係で前へ進めますが、そういう立場で、恐れていらっしゃる大臣はこの問題にお取り組みになる決意でしょうかどうか、お伺いしたいと思います。
  83. 田村元

    国務大臣田村元君) 今の私が、労働政策で指導的な発言をすることはいかがなものだろうかと思います。でございますから、まあ余り先走ったことは御遠慮申し上げますが、ただ、空洞化対策にしても、あるいは雇用対策にしても、私は、基本的に通産省が立てております考え方、労働省が立てております考え方が間違っておるとは思わないんです。  ただ、私はたまたま運輸大臣をしましたときにオイルショックでございました。大変なときでございました。そのときにいろんな議論がありましたが、結局、日本はその後すぐに立ち直って繁栄いたしました。同時に、私は今でもこれ言えると思うんです。今、大震災が来ておるときだと。関東大震災の日にお生まれになった先生の前で申し上げるのも恐縮ですけれども、今、大震災が来ていると思うんです。でございますから、今、見た目には確かにおっしゃることが恐れられなきゃならぬと思うんです。これわかるんです、僕も。けれども、基本的な考え方として、政策として我々の政策が間違っていない、だからいかに整合性を持たしながら事を進めていくかということであろうと、このように思っております。  労働時間というのは、それは少ないにこしたことはないんですが、私から何時間がいいとか悪いとかということを申し上げるということだけはちょっと御遠慮を申し上げたいと思います。
  84. 市川正一

    ○市川正一君 きのう大臣交渉いたしましたとき、大臣が政治家の誕生日をえらい詳しく覚えていやはりましたんですが、私ごとで恐縮ですが、私は大正十二年の九月一日の関東大震災の日に生まれましたんで、どうぞその点は御遠慮なくおっしゃっていただきたいと思います。  問題は、私は今のやはり政策が正しくないから事態は深刻なんだということを申し上げておるんでありますが、もう一つ具体的にお聞きしたいのは下請中小企業の問題です。  先ほど田代委員とのやりとりの中で、経企庁の勝村調査局長は、昨年の倒産よりことしは低い、少ないということを非常に甘い調子でおっしゃったんですけれども、事態はそうじゃないんですね。  ここに私東京商工リサーチの調査表を持ってきましたけれども、去年十一月からことしの十一月までの十三カ月間の円高倒産は五百六十件です。この規模は、前回五十二年から五十四年にかけての調査、二十九カ月間の合計四百三十五件をはるかに超えておるんです。言いかえれば、円高倒産はふえておるんですよ。ここに今日の特徴があるんです。経企庁長官は仕事があるからというので帰っていただいたんですけれども、あんなことの認識では困るんです。円高倒産が今があっとふえているというところに事の深刻さがあるんです。これは間違ってないでしょう、そうでしょう。議事録に残すためにそうだとおっしゃってください。
  85. 広海正光

    政府委員(広海正光君) 私の手元にある資料で申し上げますと、今回昭和六十年十月から六十一年十月までの十三カ月間におきます円高関連の倒産でございますが、四百九十四件でございます。それに対しまして、前回の円高のときでございますが、五十二年の七月から五十三年七月までの同じ十三カ月間で百九十八件ということになっております。
  86. 市川正一

    ○市川正一君 だから、結論から言うと私の言うとおりやということになるわけです。  そこで、倒産の業態別に見ても、輸出関連の下請メーカー型の企業が四割近く占めておるんです。そして下請企業に犠牲を転嫁しているという事態にいわばその一端がうかがわれるんです。自動車産業を見てみましても、例えばマツダの場合、下請企業に対して六十年十一月から六十一年四月にかけて平均二・七%の単価の切り下げ、六十一年五月から六十一年の十月にかけては四・五%の単価の切り下げを出しております。さらに十一月からはV—五〇作戦と呼んで、半年で一〇%、二年半で五〇%の単価切り下げを目指して、当面さらに四・五%の切り下げを要求しております。こういう要求を受け入れられる状況はとても今の下請企業にはありません。  そこで公取にお聞きしたいんでありますが、こういう厳しいコストダウンの要求というのは、不当な買いたたきに該当するおそれがあるのではないかと思いますが、見解を伺いたいと思います。
  87. 柴田章平

    政府委員(柴田章平君) 今先生からお話がございました具体的な数字については、まだ私ども承知はいたしておりませんけれども、一般論として申し上げれば、親事業者が発注単価を一律、一方的に切り下げ、あるいは通常支払われる単価に比して著しく低い額に定めることは下請法第四条第一項第五号、いわゆる買いたたきの禁止というふうに言っておりますが、この規定に違反する行為だというふうに思います。  我々といたしましては、下請取引を公正化するとともに下請事業者の利益を保護するために、下請法に基づきまして毎年親事業者それから下請事業者に対しまして書面調査を実施いたしておりまして、違反行為が認められた場合には所要の是正措置を行うということでございまして、下請取引違反行為に対する監視体制の強化には現在そして将来ともに努めていきたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  88. 市川正一

    ○市川正一君 マツダの問題はぜひ調べていただきたいんです。  この機会に、十月二十一日の衆議院の商工委員会で、我が党の藤原委員が、丹後を初めとして福井、石川の繊維産地で横行している、俗に難引きというふうに言われておりますけれども、不公正な取引について調査と指導を要求いたしましたが、その結果はどうなっておるか。
  89. 柴田章平

    政府委員(柴田章平君) 今御質問のございました北陸地方の繊維取引における下請法上の問題点でございますけれども、関係団体から事情を聴取いたしまして、それによりますと構造的不況に加えまして、昨年来からの急激な円高もございまして、平均の工賃が大幅に下がっております。  それから今難引きというふうにおっしゃいましたけれども、検査基準が明確でないために、返品の取り扱いが不明確であるというふうな事実は認められました。私どもといたしましてはさらに実態の把握に努めまして、具体的な違反行為が認められれば、法の規定に従い厳正は対処する、こういうことにしたいというふうに考えております。
  90. 市川正一

    ○市川正一君 どうも調査不十分のようなんで、資料その他渡しますから一緒にはっきりしましょう。  時間がもう参りましたので、最後に、私この空洞化に関連して、雇用の問題を第一に取り上げました。第二に中小下請企業の問題を取り上げました。第三に、最後でありますが、地域経済の影響の問題を取り上げざるを得ないわけであります。  円高を利用して海外進出が進んでいる一方で、国内では地方自治体が誘致した工場が操業の中止、立地の取りやめなどが続出しております。これは日本地域経済研究所の調査でありますが、昭和五十八年四月以降地方に進出または進出を決めた企業で、ことしに入ってから操業を中止したのが七社です。立地を取りやめたのが十社です。そして、操業開始を延期したのが二十三社、合わせて四十社に及んでおります。通産省も御承知だと思います。  操業開始を延期した二十三社を調べてみますと、その中に十五社のエレクトロニクス関連工場があります。これは山梨に立地予定だった日立製作所、島根県への富士通、広島県への日本電気等々の大企業が含まれております。こういう企業は、ではもうバンザイしているかというと、そうじゃないんですよ。一方では海外直接投資や部品の輸入を拡大して、そういう意味でもうけて万歳しているんです。しかし、国内では立地を取りやめて平然としておる。地方自治体は誘致するために必死にさまざまな助成措置をとりました。それも中止されれば全部パアです。期待しておった雇用も全部パアです。こういうふうな事態がいわば象徴的に起こっておるんです。  私は、地域経済の振興にとってもまことに事態はゆゆしき状況にあると思うんですが、こういう勝手な企業行動はやはり規制する必要があると思うんでありますが、大臣いかがでしょう。
  91. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいまお話のございましたような立地を予定している企業が立地を取りやめたと申しますのは、背後にいろんな事情があろうかと思うわけでございます。こういったものに対しまして、政府として直ちにどうこうということはなかなか申せないということにつきましても御理解をいただけるのかと思いますが、ただこれから産業構造調整等が進んでまいりますと、既に円高で影響を受けております地域に加えまして、また影響が加速されるというような事態も憂慮されます。  そういう意味では、最近御案内の中小企業の地域対策法を成立させていただきまして、四十三地域を対象に既に指定をいたしまして各種の施策をやっておりますし、私どもが六十二年度予算の中で要求をしております経済構造調整基金もその業務の一環といたしまして、御指摘のような地域経済の疲弊の問題に対するてこ入れということを重要な業務として考えておりますので、こういったことを通じましてこれからの構造調整に伴う地域経済の問題については、大臣も申し上げました雇用の問題と並んで大きな関心と努力を払ってまいりたい、かように考えるところでございます。
  92. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りましたので、残念ながらこれで終わります。
  93. 井上計

    ○井上計君 まず冒頭に、大臣に敬意を表します。朝から同僚議員の質問の中で、特に先般のEC閣僚会議出席された大臣が、病を押して大変御努力されました。いろいろと難しい状況の中で、かなり改善の方向に向かって成果を上げてこられたこと、心から敬意を表するわけであります。  私も、きょう質問通告しましたのは、海外投資に伴って起きる国内産業の空洞化、また雇用不安、特に鉄鋼あるいは造船等々の基幹産業の不況対策等々について、大臣から、あるいはまた局長さんたちから御答弁いただきたい、こう考えておりましたが、もうけさほどから、きょうはまるで集中審議のようでありまして、同僚議員からもうすべて質問が出尽くしております。大臣初め政府側の答弁を聞いておりましてもう理解を十分いたしました。また、時間が大分おくれておりまして、三時十五分から大臣は次のエネ特の委員会に御出席のようでありますから、私は質問を短縮します。大臣に心置きなく次の委員会へ御出席願わなくちゃなりません。  そこで、せっかくでありますから、質問通告をしておりませんが、先ほど来いろいろと同僚議員と大臣との質疑の中で私自身が感じますこと、一、二点意見として申し上げたい、こう考えます。  一つは、私も八月の末に参議院から派遣をされまして、イギリスとフランスのエネルギー事情並びにハイテク産業等々の調査に実は行ってまいりました。イギリスに参りましたときに強く感じたことでありますけれども、ロンドンの約八十キロほど北西の郊外にミルトン・キーンズという市が新しくできました。これは、イギリス政府が二十年前に計画した新しい産業都市というのが建設されておりまして、今計画途中でありますけれども、ほぼ完成に近づいておるということですが、何しろ九千ヘクタールという大変大きな面積で、文字どおり産業都市というふうなものが建設をされつつあります。  ここでは、非常に交通の便がいい。幹線交通網あるいは通信網、さらには空港等々とも非常に近いわけでありますから、恐らくこのままでまいりますとヨーロッパで一番の新工業都市になるであろう、こういうふうなことを感じました。またそういう説明でありました。既にそこへ日本企業が十九社進出をしておって、イギリス当局もまた同時に開発公社も積極的に日本の企業誘致をしようということで、日本部長を置いて、そうして日本語のパンフレットその他をつくりながら、何か何回も日本にこれからも来るんだというようなことでありましたが、さらにいろんな状況説明を聞きまして、そこへ進出する日本企業に対する優遇策というのが大変な、ちょっと我々の常識では判断できないほど大変な優遇策をとっておる。一例を挙げますと、希望する社屋を建設しましょう、それについては買収でなくてリースです、そのリースもびっくりするほど安い家賃で、保証金は一年分の家賃でよろしいということですから、国内で新しい工場を建設する何分の一か、何十分の一かでそこへ進出できる、こういうふうな条件であった、こう思います。  したがって、海外への企業の進出については先ほどから大臣のお考えも聞きましたけれども、進出することはいけないと言うわけにはいきません。といって積極的に進出を奨励するということはもちろんできませんし、文字どおり忠ならんと欲すれば孝ならずというふうな問題であろうと思いますが、そういうふうなやはり進出企業を歓迎する政策をイギリスにおいてもとっておるということは、残念でありますけれども、企業の進出がどのような理由が、あるいはまた不安材料があろうとも進出することやむを得ぬという、今後そういう傾向間違いないと思うんです。日本も同じような条件を、優遇政策で引きとめるということはもちろんできませんけれども、国内で企業を各地に分散——先ほど市川議員から、各地での地方への進出企業の中止が多いというお話もありましたが、できるだけ税制面あるいは金融面等でさらに今後対策を考えて、言えば企業が海外進出をしなくても、国内でやはり今後の円高あるいは貿易摩擦等に対応できるんだというふうな政策を、若干考え方を変えてつくっていく必要があるんではないか、これを特にまた、先ほど来質疑を聞いておって、それを感じましたのが一つであります。  それからもう一点は雇用の創出であります。  これまたけさほど来雇用問題についてはいろいろなお話がありました。特にこれからふえる失業者を吸収するのは第三次産業である、これはもう当然であろう、こう思います。第三次産業が一番雇用の拡大として標的になっておりますし、また三次産業の拡大からしてかなり雇用の吸収ができるわけでありますが、ところが、ただ三次産業にうんと行っても、これまたなかなか難しい問題があります。  そこで、かねがね感じておりましたことは、我が国は余りにも規制やあるいは許認可によって三次産業の拡大を阻害をしておるというふうなことが相当多いんではないかな、こういうふうに感じます。思いついたふうなことを申し上げますけれども、東京でもそうでありますが、特に私の地元名古屋、あるいは大阪その他地方の県庁所在地等等へ行きましても、夜八時過ぎたら全くゴーストタウンですね。目抜き通りというのは人通りがろくすっぽない。ほとんどのところがシャッターをおろしておる。人が通りませんからなかなかサービス業も夜まで商売できない、そういうふうなことが随分とある。  その原因は何かといいますと、ほとんど目抜き通り、いい場所に店舗を占めておるのは金融と証券です。最近特にその傾向強いですね。現在の銀行法からいうと、銀行の建物には、他の業種を同居さすとか、他の業種と同じ入口であってはいかぬとか、何か非常にやっかいな規制があるようでありますが、できれば私、銀行だとか証券等々のそういうふうな業務は、何も一階を使わぬでもいいわけですから、二階でいいわけですから、一階は言えばいろんなサービス業あるいは販売業等々に開放するぐらいの、そのようなことを今後考えていく必要があるであろう、こう思います。まあ大体三時以降になるますとシャッターをおろしますから、それぞれの中心都市の目抜き通りというのは非常にさびれておりまするから。  それからもう一つは、二十年ほど前まで各地にありましたけれども、目抜き通りにありました露店といいますか、そのようなものは現在ほとんど見当たらない。見受けない。それは、食品衛生法の問題から、大体露店は食料品販売等についてはかなり厳しい制限がある。もう一つは、道路使用条例等々によってほとんど認めないというふうなことから、大体大都市どこでも露店がなくなりました。それらのことも、規制を緩和することによって、あるいは目抜き通りの証券、銀行等のシャッターをおろした前は、特定のそういうふうな露店を認めるとかというふうなことも、これまたそういう意味での内需の拡大、あるいは雇用の拡大というふうなことにも通じていくんではなかろうか。だから、今後労働時間の短縮もちろんやらなくちゃなりませんし、そういう方向に行くでありましょうけれども、企業の言えば営業時間あるいは開業時間というものを長くして、しかしその中で二部制という形で労働の配分をしていくというふうな方法に、これは政策としていかざるを得ないであろう、こんなふうに考えます。  それから、大店舗法の問題でありますけれども、大型店、百貨店等々が大体かなり営業時間が規制をされております。営業時間長いこと必ずしもいいとは言いませんけれども、たとえていいますと、百貨店、大型店の営業時間が夜、閉店時間が九時だとかあるいは十時だとか仮になった場合、人の流れは全く変わるわけですね、そのかわり開店時間をおくらしてもいいわけですけれども。その現実にいい例は、銀座、数寄屋橋かいわいの百貨店が一時間閉店時間をおくらしたことによってあのかいわいの人の流れが変わった、こう言われておるわけですけれども、これもやはり雇用の拡大、内需の振興ということに役立つんではなかろうかな、こんなふうに思います。  そういうふうなことを阻害をしておる十年前、二十年前の法律だとか、あるいはそれぞれの都市の条例だとかあるいは許可、認可というふうなものをこの際見直して、やはりいろいろな形で雇用の拡大、三次産業の発展あるいは内需の拡大というふうなことに役立つものが随分あるんではないかなという感じが前々からしておりましたが、特に最近また改めてそういう感じがしておるということであります。できますればひとつ通産省中心になって、各省にまたがる問題でありますから、そういう面についてひとついろいろと御検討いただけぬであろうか、これは提案をいたします。  それからもう一つ、これは中小企業対策とかねてでありますが、中小企業の言えば事業転換というふうなものをこれから急いでいかなくてはなりませんが、その一つに、野菜の水耕栽培、これがかなり最近活発になっております。愛知県に大体パイオニア的なそういう人がありまして、先日見学してまいりました。文字どおり野菜工場です。我々が従来考えている野菜という概念と全く違っておるわけでありますから、特に都市近郊で野菜の水耕栽培、野菜工場がもっとふえることが消費者のためでもあり、同時に私は、中小企業の事業転換に対する一つの有力な方法ではなかろうか。これもまた内需拡大というふうな、雇用の拡大ということにも通じていくんではないか、こんなことも実は考えております。  あれこれ申し上げましたのは、たまたま思いつきの意見でありますけれども、通産省中心になって、各省庁のそのような実務者を集めてそういう問題をひとつ検討していただくということをお願いをして、私の質問、意見提案は終わりまして、大臣からお答えがいただければそれで終わることにします。
  94. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は私のお答えが、今、井上議員の突然の御質問であったものですから、内容としては、あるいは抜けておるところがあったらお許しを願いたいのですが、私は政府の許認可というものは全面的に見直すべきだという意見を前々から持っておる一員です。  例えば、私は運輸を担当しておりましたときに、許認可というものを全部一遍洗い出せというので、ところが必要でないもの何千とありまして、あれは二千だったか三千だったかちょっと記憶ありませんが、それを全部整理したことがございました。もっともあの省は、特別許認可の多い省でございますが、そういうこともございまして、今おっしゃったように、通産省もどちらかといえば許認可の多い省だと思うのです。これはやはり一遍再検討する必要があるんじゃなかろうかというふうに、私はもう全く同意見でございます。ただどれがいいか悪いか、露店なんというのが銀座で復活したら私は本当にうれしいと思うけれども、それがいいか悪いかは別として、これは本当に結構なことだと思います。  それから営業時間、とりわけ大店舗の営業時間の問題、これは地元との調整さえできれば、問題は商調協の問題だと思いますけれども、これがうまくいけばそれは結構なことだと思いますが、地元の商店会との絡みからいって簡単ではないかと思いますけれども、基本的に特に私は異を唱えるものではございません。  それから、今の野菜の水耕栽培なんか、要するに中小企業なんかの転換の問題等確かにいろいろと考えさせられる問題が多いと思んです。先般も申し上げましたが、夕張が石炭でもう行き詰まったというので夕張メロンというのをつくり出した。これを私、先般九州で、鹿児島で夕張メロン食ったのですよ、驚きましてね。そうしたら今度は夕張がメロンでブランデーつくりましてね、先般飲みましたところ大変おいしいのですよ、いい香りで。そういうことで、今の中小企業のみならず不況業種等の転換というものは、やはりあらゆる角度から検討する必要があるんじゃなかろうか。実は水耕栽培というのは、私は我が家でもやっておりますけれども、結構ミツバなんかでもおいしく食べておりますが、いろいろと考えなきゃならぬだろうと思うんです。特に空洞化対策等は、内需の拡大というのはやっぱり必要だと思うんですね。  先般、たしか十一月の二十二日の土曜日だったと思いますが、私は母校の慶応義塾の三田祭というのがございまして、それの経済学部の講演を頼まれまして、行って、教授以下が並んでおるところで講演するのも体裁の悪い話でございましたが、一時間半ばかり講演してまいりました。その後で某教授が私にこういうことを言いました。今君は政府側だから何とも言えぬだろうけれども、本来いえば、国会が——これは私が言ったのじゃないですよ、教授が言ったので、本来言えば国会が財政再建というものの凍結を宣言して政府に免責を与えて、そうして思い切った不況対策をやるべきじゃないのかと、後ろを向いて前へ走れというのと同じような今の姿じゃないのかということを言いまして、だからといって今国務大臣である私が、国会の決議の問題でとかく言うわけもいきませんから、複雑な気持ちで聞いて帰ってきましたけれども、そういう意見を経済学者が私に言っておりました。  いろんな考え方あるんでございましょう。今おっしゃったことは、もちろん私どもが答弁でも反論するいわれは何もない問題で、むしろ井上議員に指摘をしていただいたというようなことでございますけれども、早速許認可の問題、一遍各局長に命じまして再検討させてみます。
  95. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は今の大臣のお話の続きをやりたいのですけれども、その前に委員長ひとつお願いがあるのですがね。  このところ商工委員会で、我々しんがりの方はしょっちゅう時間短縮しなきゃいかぬですね。きょうも十五分までですから、この次にひとつこの埋め合わせに時間を与えていただきたいということをお願いしまして、それで質問を進めます、十五分までということですから。  そこで、今大臣が言われたことをそのまま受けたいのです。それは私がこの円高不況の問題について、前回の委員会でも申し上げましたけれども、来年は大変なことになるのじゃないか。そういう認識については朝から各同僚議員の意見も全部一致しておりますし、政府側、大臣の意見も一致しているわけですね、現状大変なことになると。それで来年先行きどうなるだろうという危機意識も皆同じだと思うんです。そこで問題はやはり具体的にそれではどうあるべきかということなんです。 私、結論的に申し上げますと、今大臣が、慶応大学の何とかという教授がおっしゃったように、私はこの際十年間ぐらい財政再建というのを凍結して、それで不況対策やらなきゃいかぬじゃないか。私は結論的にこの金額がいいかどうかわかりませんけれどもね、百兆円ぐらいの赤字国債を出して景気てこ入れをしなきゃいかぬじゃないかと思うんですよ、百兆円がいいか八十兆円で済むか、これはわかりません、計算してみなきゃいかぬですけれども。  私は今まで健全財政論者だったのですけれども、これは三原山の噴火みたいなもので、緊急事態ですから、健全財政ということをもう言っていられないんじゃないか、そうしないと失業の問題、倒産の問題その他もう日本経済が大変なことになるんじゃないかという気がするわけですね。したがって、先ほどおっしゃいましたように、財政再建というのはひとつ凍結して、思い切って赤字国債を出して、そして経済を刺激するということが必要な時期になっているんじゃないかと思うんですね。これを、今ここを大臣に答弁していただきたいとなると、これいろいろ差し支えあると思うんですけれども、所感というか、感想をお聞かせいただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  96. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は私は、これちょっと答えようがないわけです、立場上。ないわけでございますが、赤字国債というふうに限定して御意見が出ましたので、答えようがないわけですけれども、少なくとも建設国債は思い切って発行すべきではなかろうかというふうに思います。赤字国債の場合はいろいろと議論ございますけれども、だからといって、建設国債といえども、後世に財産を残すものだからということで建設国債は許容されておるが、政府から言えば国債なんで、結局借金には違いないんで、道路や橋に市場性があるわけでもないんですから、結局は社会資本というものの考えようでは同じものと言ってもいいのかもしれませんけれども、しかし今厳密にこれを区別されておりますから、私からとかく申し上げる筋のものでもないと思います。  しかし何らかの方法で今景気を刺激しなければ大変なことになるかもしれぬということで、私どもは、さっきも申しましたように、四全総とそして今の緊急避難的な景気対策というものとは、やはりそれはそれ、これはこれというふうに考えていかなきゃならぬのじゃないかと申し上げましたけれども、ちょっと答弁は御遠慮申し上げますが、御趣旨のほどは傾聴に値するものと思います。
  97. 木本平八郎

    木本平八郎君 今建設国債と赤字国債というなにがありまして、私はそれは建設国債でうまくやれればそれでもいいと思うんです。しかし、私が申し上げたいのは、もうこういう事態になってきたら建設国債とか赤字国債とか、ネーミングだとか名前とか、そういう定義づけのことにこだわっていると打つ手がおくれてしまうんじゃないか。したがって、最悪の場合として、赤字国債でももうやむを得ないという腹を政府も国会も決めて取り組まなきゃいかぬ時期になっているんじゃないかと思うんですね。  私はこの不況対策については、前回からも商工委員会で申し上げておりますけれども、あらゆる手を打たなきゃいかぬと思うんです。輸出の問題、それから失業対策だとか倒産対策だとか、空洞化の問題からいろいろなことを、あらゆる手を打って、今、井上議員がおっしゃったように、そういう許認可を外すとか、もうあらゆることをやらなきゃいかぬと思うんです。しかし、それをやっても、ちょっと今回我々が今当面している円高不況は手に負えないんじゃないか、もっと問題は大きいんじゃないかという気がするわけですね。  例えば輸入を完全に自由化しまして、米から何から全部自由化しても、ふえる輸入額というのは、まあ計算いろいろあるでしょうけれども、私の知っている範囲では三百二十億ドル程度だと。そしてどんなにやっても日本構造的に三百億ドル貿易黒字というのはもう避けられないというわけですね、今の現状では。そうすると、今九百億ドルとすれば、三百億ドルで六百億ドル減らすわけですけれども、それも先ほど言ったように、米まで全部輸入自由化しても三百億ドルしか減らないわけですね。それをまた三百億ドル減らしても、せめて三百億ドルぐらいの黒字に減らさないと世界が承知しないと思うんですね。  そういう状況になっているときに、普通のことじゃやっぱりだめなんで、この際は政府も国会も、本当に状況を分析して認識するということがまず大事だと思うんですけれども、そこで腹をくくって取り組まないとえらいことになる。ほっておきますと、必ずこれはまた為替レートで百円とか百二十円とかになってきますからね、そうなるとめちゃくちゃになりますので、そういうところをさあどういうふうにやるかということで、私は、実はきょうは問題提起申し上げて、通常国会が始まった時分に、この問題がもう大変な世論で沸き起こってくると思うんで、そのときにじっくり議論もさしていただきたいと思うんですけれども。  それで、まず経企庁にお伺いしたいんですが、これは非常に質問通告があいまいだったから難しいかもしれませんけれども、一つ伺いしたいのは、先ほどから中成長だと、四%だということが言われていましたね、長官も。私は四%ではもう、ちょっとだめなんじゃないかと思うんですよ。といって、百兆円の赤字国債を出してばっとやった場合、景気刺激した場合に、どこまで行くかわからないと。それでこれが悪性インフレになっちゃうと、これまた大変なんですね。しかし、もう悪性インフレぎりぎりのところまで成長を図らなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。  私の感じでは、日本の今の国力といいますか、国富というのは、これもまあ頼りないんですけれども、千七百兆円ぐらいですね。千七百兆ぐらいの国富があるから、これGNPの五、六倍ですか、そういうだけの力があるんで、私は一〇%近い超高度成長をやっても、悪性インフレにはならないんじゃないかという気がするんですがね。この辺は見通しとか計算とか、責任ある回答、答弁というのはできないだろうと思うんですけれども、何というんですか、所見的な感触で経企庁の意見をお伺いしたいんですが。
  98. 冨金原俊二

    政府委員冨金原俊二君) なかなかお答えしにくい御質問でございますし、先ほど通産大臣の方からもお考えを述べられまして、いろいろな見方、考え方は当然あると思います。  確かに、これから経済構造調整を進めていく過程で、非常に大きな問題を日本経済がはらんでいるということは御指摘のとおりですし、そのためにどういうふうに経済構造調整を進めたらいいかという問題が非常に大きいわけでございますが、先ほど田代委員にお答えを、長官あるいは私から申し上げましたように、構造調整を進めるために、できるだけ摩擦を減らすためには成長をしなければいけないという点については、私どもの考え、先生の御指摘のとおりでございます。  問題は、じゃ今の段階で高度成長ができるんだろうか、これは大いに議論のあるところでございますし、無理に背伸びをいたしますと、そのはね返りというのは当然大きくなってまいります。思い切って赤字公債を含めて建設公債をどんと出したらどうかと、これは一つの方法かもしれませんけれども、いつまでも続けるわけにはいきません。その反動がまた大きくなってしまうということも否定できないわけでございます。私ども現段階で考えておりますのは、低成長ではいけない、何とか中成長は、これも簡単ではないと思いますが、何とか達成をしたいということで、いろいろ頭をひねり、あるいは関係各方面省庁と御相談をさしてもらっているというのが現状でございます。  先ほど国債の問題が出たわけでございますが、一つだけ事実を申し上げておきたいのは、歳入に占めます公債の依存度は、昭和五十四年第二次オイルショックのときにやはり機関車論ということで思い切って出すという話から、あのときは三四%、つまり三分の一ぐらいは公債で賄って経済運営をしたわけでございます。確かにそれによってある程度経済は浮揚したわけですが、結果的に財政の赤字が残ってしまったということも事実でございまして、その後いろいろ行財政改革の中で相当苦芳して、現段階では約二割ぐらいになったわけでございますが、一方で残高がふえるものですから、歳出の中での国債費の方がどんどんどんどんふえてまいりまして、恐らくことし、来年あたりは二割を今度は超えてしまうんじゃないか、これは確実にふえてまいります。その辺の非常に狭い道をとりながら、何とか構造調整を円滑にしなければいけないということではないかと思います。  ちょっと十分なお答えではないかもしれませんが、一応。
  99. 木本平八郎

    木本平八郎君 確かにおっしゃるとおりだと思うんです。それで、前回オイルショックのときですか、西独が機関車論をやって、それで赤字国債を出したと。ところが結果的にはインフレを起こしただけで、余り世界経済に貢献できなかったという苦い経験、前例があるわけですね。したがって、不用意にやると同じ失敗をする可能性は十分にあると思います。  ただ、私は個々の現状を考えてみますと、産業の構造転換とか業種転換とかいろいろやるにしても、前回にも申し上げましたように、その行き先の業種自身がもう満杯なわけですね。そう簡単に入っていけないわけです。そういうことになると、やはり全体の経済を膨らまして、入っていけるスペースもつくらなきゃいかぬということ。それから、今のような五十兆円ぐらいの規模で今の国債を償還していこうと思ったら、これはもう大変なんで、やはりそっちもふやして、税収もふやして、経済の規模をもう一遍大きくしなきゃいかぬじゃないかという気がするわけですね。そういうことを、これはいいか悪いかの問題がありますし、相当慎重にやらなきゃいかぬことは確かなんです。  ただ、慎重論ばかりをやっていると、そのうちに自然に行き詰まってしまって、気がついたときにはもうどうしようもないということになっちゃ困るんで、ぜひこの議論は政府部内あるいは国会の中でも高めていかなきゃいかぬと私は思うわけです。  それで、実は大臣がおられなくなったんで、ちょっと要望だけして、議事録に残していただきたいと思うんですがね。  私が実は大臣に申し上げたかったのは、今のこういうふうな非常に大きな政策転換ですね、今まで財政再建優先で中曽根内閣ずっとこられたと。ところが、もうこういう非常事態、いわば大島町における三原山の噴火みたいなもので、もう今緊急避難させなきゃいかぬと、地方の財政なんか言っていられないと、とにかく金借りてでも何でも避難させなきゃいかぬ状況と同じだと考えるわけですね。  そうしますと、やはりこのところは、財政再建というのは一応凍結して、そういう景気刺激をやるということになると、やっぱり中曽根内閣、中曽根さんではおやりになれないんじゃないかと思うんですね、今までのずっといきさつがあって、それを政治生命としてこられたわけだから。そうすると、やっぱりそれやるためには、私は同じ自民党の中での政権交代で、ニューリーダーの方が、どなたかが総理になって、そうしてこういう私の言った、極めて乱暴な政策かもしれませんけれども、やるとすればそういう方法しかないんじゃないか。それをやっぱり従来の行きがかりがあるからやれないとかなんとかとひっかかっていると、一番ひどい目に遭うのは国民じゃないかという気もするわけです。  したがって、私が大臣に申し上げたかったのは、こういう事態になってきたら、行きがかりだとか、いろいろの状況とか、いろいろあるけれども、それをばっとひっくり返すような発想の転換をしなきゃいかぬじゃないか、ぜひ自民党さんにお考えいただきたいと。そうでないと、まあ私は来年はえらいことになるんじゃないかという気がするわけです。  それを実は大臣に所見をお伺いしたかったのですけれども、大臣がおられなくなったもんですからどうしようもないんで、一応私の要望だけ会議録に残していただいて、私の質問を終わります。
  100. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  101. 前田勲男

    委員長前田勲男君) これより請願の審査を行います。  第七〇号水力発電施設周辺地域交付金交付期間延長に関する請願外四十一件を議題といたします。  これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第五七六号中小企業信用補完制度堅持のための財政援助強化に関する請願外二件は採択すべきものにして、内閣に送付するを要するものとし、第七〇号水力発電施設周辺地域交付金交付期間延長に関する請願外三十八件はいずれも保留とすることに意見が一致いたしました。  以上理事会の申し合わせのとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  104. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 前田勲男

    委員長前田勲男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会