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1986-12-18 第107回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十八日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  十二月十六日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     及川 一夫君      浜本 万三君     田渕 勲二君  十二月十七日     辞任         補欠選任      小野 清子君     松浦 孝治君      及川 一夫君     対馬 孝且君      田渕 勲二君     浜本 万三君      高桑 栄松君     中野 鉄造君      抜山 映子君     田渕 哲也君  十二月十八日     辞任         補欠選任      中野 鉄造君     高桑 栄松君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         佐々木 満君     理 事                 岩崎 純三君                 田代由紀男君                 糸久八重子君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 松浦 孝治君                 宮崎 秀樹君                 千葉 景子君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 高桑 栄松君                 中野 鉄造君                 沓脱タケ子君                 佐藤 昭夫君                 田渕 哲也君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君    政府委員        内閣法制局第四        部長       大出 峻郎君        大蔵大臣官房審        議官       尾崎  護君        大蔵省主計局次        長        篠沢 恭助君        厚生大臣官房長  北郷 勲夫君        厚生大臣官房総        務審議官     長尾 立子君        厚生省健康政策        局長       竹中 浩治君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長  黒木 武弘君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省保険局長  下村  健君        社会保険庁医療        保険部長     内藤  洌君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○老人保健法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○建設国保組合改善に関する請願(第二号外一五件) ○暮らし福祉、失対事業費高齢者公的就労制度予算拡充に関する請願(第四三号外一件) ○労災年金と他の年金との完全併給に関する請願(第五〇号) ○重度身体障害者の無年金者救済に関する請願(第五一号) ○重度身体障害者労働者災害補償保険法改善に関する請願(第五二号) ○車いす重度身体障害者健康保険法改善に関する請願(第五三号) ○重度身体障害者の脊(せき)髄神経治療技術研究に関する請願(第五四号) ○車いす重度身体障害者終身保養所設置に関する請願(第五五号) ○車いす重度身体障害者の雇用に関する請願(第五六号) ○車いす重度身体障害者に対する身障福祉行政に関する請願(第五七号) ○国民健康保険財政健全化確保に関する請願(第六九号) ○療術の制度化促進に関する請願(第八〇号外一件) ○身体障害者更生援護施設に係る費用徴収実施反対に関する請願(第八四号) ○老人医療費患者一部負担増額に反対し、老人保健法等改善に関する請願(第九六号外九九件) ○老人医療患者一部負担増額に反対し、老人保健法改善に関する請願(第一〇〇号外一〇件) ○老人医療患者負担増額反対健康保険等給付改善に関する請願(第一〇一号外四件) ○国立医療機関切捨て国立病院等の再編成に伴う特別措置法案及び老人保健法の再改悪反対に関する請願(第一〇五号外二二三件) ○国立福知山病院経営移譲計画を中止し、存続拡充に関する請願(第一一〇号外一件) ○老人保健国民健保改悪等反対国民医療充実に関する請願(第一一一号外一六件) ○国民健康保険制度改善に関する請願(第一六〇号) ○退職後の生活安定等に関する請願(第一六五号外一件) ○保育予算増額等に関する請願(第一七八号) ○老人医療患者負担増反対に関する請願(第一八二号外六件) ○老人保健法国民健康保険法改悪及び国立医療機関統廃合移譲反対等に関する請願(第一八三号外七一件) ○患者負担を増大させる老人保健法改悪反対保健事業充実老人医療無料制度復活に関する請願(第一八五号外一二八件) ○国立療養所比良病院統合廃止に反対し、充実強化に関する請願(第二四一号外一件) ○国立篠山病院加古川病院岩屋分院移譲国立明石病院国立神戸病院統合計画をやめ、地域医療充実に関する請願(第二四三号外三件) ○国民の命と健康、暮らしを圧迫する老人保健法改悪等反対に関する請願(第二四四号外二件) ○老人保健法国保法等改悪反対国民の健康を守る医療保険制度に関する請願(第二五〇号外一五件) ○老人保健法国保法等改悪反対国民の健康を守る医療保険制度に関する請願(第二五一号) ○人工甘味料アスパルテームの再審議に関する請願(第二六〇号) ○基準・認証制度の廃止・縮小反対輸入食料安全確保に関する請願(第二六一号) ○国立療養所小樽病院国立療養所西札幌病院国立療養所札幌南病院統廃合計画をやめ、単独整備拡充に関する請願(第二七三号) ○国立十勝療養所国立療養所帯広病院統廃合計画をやめ、単独整備拡充に関する請願(第三四六号外一件) ○国立弟子屈病院経営移譲計画をやめ、機能強化充実に関する請願(第三四七号) ○老人医療患者一部負担反対老人保健法改善に関する請願(第三五一号外九二件) ○国立泉北病院移譲に反対し、地域医療充実に関する請願(第三九四号) ○保育所制度充実に関する請願(第四〇一号外一四件) ○老人保健法改悪反対に関する請願(第四五一号外一八〇件) ○老人保健法改悪反対に関する請願(第四五五号外六件) ○あん摩・マッサージ・指圧の保健事業導入に関する請願(第四六七号外一四件) ○国立習志野病院経営移譲に反対し、国立としての存続に関する請願(第五〇六号外一件) ○老人医療費患者自己負担増大反対国保への国庫負担増額健保本人十割給付復活等医療改善に関する請願(第五六三号外九件) ○中国残留日本人孤児援護に関する請願(第五七四号外二件) ○老人保健法改悪国立病院統廃合反対健保本人十割給付復活等国民医療充実に関する請願(第六二七号外一八件) ○老人医療自己負担引上げ反対等に関する請願(第七〇〇号外三件) ○保育制度の維持、充実に関する請願(第八〇一号外五八件) ○老人医療への自己負担引上げ反対等に関する請願(第八〇六号外一七件) ○老人保健法等の再改悪及び国立病院療養所統廃合移譲に反対し、国民医療改善に関する請願(第八〇七号外一一件) ○老人医療費患者一部負担増に反対し、老人保健法等改善に関する請願(第八五六号外四五件) ○国立医療機関切捨て国立病院等の再編成に伴う特別措置法案反対に関する請願(第九六一号外一件) ○国立篠山病院経営移譲をやめ、充実強化に関する請願(第九九二号) ○老人医療国保健保等医療保険制度改善に関する請願(第一〇六六号外九件) ○国立明石病院国立神戸病院統合計画をやめ、充実強化に関する請願(第一〇七九号外二件) ○福祉充実に関する請願(第一一〇六号外一二件) ○静岡県内国立病院療養所統合移譲計画を取りやめ、整備拡充に関する請願(第一二〇八号) ○老人医療健保本人患者負担増反対等に関する請願(第一二〇九号外四件) ○国立病院等の再編成の促進に関する特別措置法案反対等に関する請願(第一二一〇号外二件) ○暮らし福祉充実に関する請願(第一二一二号) ○患者負担を増大させる老人保健法改悪反対保健事業充実老人医療無料制度復活に関する請願(第一二一三号外八件) ○健保本人への二割負担をやめ、十割給付復活等に関する請願(第一三〇九号) ○国立福知山病院移譲に反対し、国立医療機関切捨て特別措置法及び老人保健法改悪反対に関する請願(第一三一〇号) ○老人保健法国民健康保険法改悪及び国立医療機関統廃合移譲に反対し、医療福祉改善に関する請願(第一三七六号外一九件) ○老人医療患者負担増額反対等に関する請願(第一三七八号外八件) ○老人保健法の再改悪反対に関する請願(第一三七九号) ○老人保健法改悪反対等に関する請願(第一三八〇号) ○老人保健法改悪国立病院統廃合反対健保本人十割給付復活等国民医療充実に関する請願(第一三八一号) ○高血圧・脳卒中患者医療福祉後遺症者社会復帰に関する請願(第一三八二号) ○老人保健国民健康保険法改正案に反対し、国民健康保険制度改善に関する請願(第一三八三号外七件) ○心身障害者対策基本法の一部改正に関する請願(第一四九四号) ○医療保険改悪国保補助金削減をやめ、命と健康を守る医療制度充実に関する請願(第一六五一号外一件) ○看護婦夜勤制限等に関する請願(第一八一三号外一五件) ○パートタイム労働法(短時間労働者保護法)の早期制定に関する請願(第一八七八号) ○老人保健法改悪反対無料化復活等に関する請願(第一九〇三号) ○老人保健法国民健康保険法改悪反対に関する請願(第一九〇五号外二〇件) ○愛知県内国立病院療養所整理統廃合に反対し、充実強化に関する請願(第一九八一号) ○中小業者国民の命と健康を守る国民健康保険制度改善に関する請願(第二〇一〇号) ○全国民の命と健康、暮らしを圧迫する老人保健法改悪等反対に関する請願(第二〇三九号外五件) ○老人医療患者負担増額をせず、国保への国庫補助増額健保本人十割給付復活等に関する請願(第二〇八一号) ○老人保健法改悪反対保健事業充実老人医療無料制度復活に関する請願(第二〇八三号外一五件) ○国立母性小児医療センター(仮称)に関する請願(第二一五八号) ○老人福祉に関する請願(第二一五九号) ○高齢者医療の保障に関する請願(第二二一七号) ○社会福祉医療等への補助金カット反対に関する請願(第二二三五号) ○継続調査要求に関する件     ─────────────
  2. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十七日、高桑栄松君が委員辞任され、その補欠として中野鉄造君が選任されました。     ─────────────
  3. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 老人保健法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 対馬孝且

    対馬孝且君 これまで当委員会におきまして老健法のそれぞれの立場で質疑が行われてまいりました。私は、特に重点問題に絞って、確認意味も含めて幾つかの問題を申し上げて政府側との確認をしっかりしてまいりたいと思うわけであります。  まず、今までも議論されておりますが、今回の老健法改悪に伴うねらいというのは一体どこにあるのかということが数字的にも極めてはっきりしているんじゃないか。それはどういうことかといいますと、国庫負担減額が、百三国会、百四国会を通しまして私が掌握しております数字を今から申し上げまして、間違いであれば間違いだと御指摘をしていただいて、一つ一つ確認をしていきたい、こう思うわけであります。  それは、今回の政府原案、百四国会の当初の予算では本年度は千九百六十三億の減、こういうことを予定していました。しかし、今国会の提案で十一月実施の場合は八百七十三億円、国庫負担減額が。衆議院修正の十二月実施、外来四百円を千円、それが八百円に修正されたわけですが、これがトータルで六百十四億円に減額になります。そこで大事なことは、六十一年度途中でありますから、六十二年度も含めて満年度にどういう影響があるのか。この額は私の方ではっきり申し上げますと、二千八百五十八億円になる、国庫負担減額は二千八百五十八億円になる。一方、我々被用者保険の側の拠出額というのは二千九百七十五億円、こういう負担増になるわけでありますが、この数字誤りがありますか。まずそこを第一点確認します。
  5. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 当初の国庫削減見込み額及び御指摘のように再提案いたしました場合の見込み額、それから修正後の見込み額、それから両年度合計国庫負担見込み額が具体的には先生指摘のように二千八百五十八億であり、それから被用者保険が二千九百七十五億ということでございまして、先生の御指摘のとおりでございます。
  6. 対馬孝且

    対馬孝且君 政府側もこの額を認めているわけでありますが、それを中長期的に六十五年度までこの数字を展開してみますとどういうことになるか。これは非常にわかりやすいことでありまして明瞭なのでありますが、それは老人医療費に占める国庫負担割合というのが、六十二年度からスタートいたしまして四二・一%、したがって六十五年度の場合は三五・一%に国庫負担割合が引き下がるという数字が出ます。それから被用者保険保険料拠出額割合は三〇・六%から四一・七%になる。したがって一一・一ポイント増加することになる。  こういう額になるわけでありますが、結果的にはいろいろな政府側説明はございますけれども、私の展開のこの数字誤りがあるかないかをまず確認したいと思います、第二点目として。
  7. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) そのとおりでございます。
  8. 対馬孝且

    対馬孝且君 そのとおりということになれば答えは明瞭であるわけでありまして、今回の改正はまさに国庫負担減額をねらったものである。この数字をもって六十五年までの中期的展望は極めて明瞭でありますから、どう説明されようと、これは被用者保険に転嫁をしたものである、こういう判断に立たざるを得ないのでありますが、政府側はどうお考えになりますか。
  9. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回の老人保健制度改正は、世代間や制度間の負担の不均衡を是正して、長寿社会にふさわしい公平な負担のシステムを確立しようというものでございまして、老人保健法の長期的な安定に資するための改正をしていただく、こういうことでございます。  これは、それぞれ拠出をしていただいております保険者間におきまして老人加入数の格差が非常に大きくなってきております。特に国民健康保険におきましては老人加入率が非常に高い。これをどの保険者も同じ一定割合で、すなわち千人に六十九人という割合負担をしていただくことによって公平にみんなが老人医療費を支えていただく、こういうことにしていただくためにこのような結果となるわけでございます。  御指摘の、国庫負担が減るではないかという点につきましては、老人保健制度そのものに対する国庫負担は二〇%でございまして、これは変わっていないわけでございます。今の御指摘は、国民健康保険負担をいたしております国庫負担が、この拠出金については全体の五五%負担をしているという点におきまして、その結果として国民健康保険に対する負担が軽くなるということでございます。ちなみに政管健保につきましては一六・四%の国庫負担をいたしておりますが、政管健保分についての国庫負担増額をするという実態もあるわけでございまして、その点をひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  10. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、今の答えは私も承知しているんです。これは私も五十七年七月六日、参議院社会労働委員会で最初の老人保健法案に三時間七分質問しているんです。会議録をここに持ってきています。  私がなぜそれを申し上げたかというと、少なくとも百歩譲ったにしても、政府側負担額拠出額がほぼ並行していくというならまだわかるんだ。しかしこれは明らかに逆転でしょう、今数字が間違いないという局長答弁ですから。どういったって、これ端的に国民皆さんに聞いてもらうと、やはりおかしいと言うよ、どう考えてみたって。それは世代間の負担割合といったって、政府の方も大体フィフティー・フィフティーだ、被用者保険拠出額も大体フィフティー・フィフティーになるというならこれまた百歩譲ってわかるんだ。ところがこれは明らかにどなたが見たって、今私が指摘したように、国庫負担の方が四二・一%から六十五年度には三五・一%に引き下がります、そのとおりですという答弁でしょう。それで我々被用者保険拠出額は何ぼだと言ったら、三〇・六%から四一・七%になります。まさに一一・一ポイントの増額であります。これは小学校六年生でもわかることであって、こういうやり方に問題があると私は言うんだ。  今、世代間の公平云々と、後からこれは言いますけれども、私はそういう認識を、そういうことにならないようにということで六十年四月三日に、これからを展望した場合にそういうことにならないかと、ここでも私は質問しているんだ、時の増岡厚生大臣に。そういうことにならないようにこれからの展望というものを配慮いたしますとなっているんだよ。正直言って今の答弁当たらないんだよ、私率直に申し上げるけれども。それは世代間の公平という原点は皆さん方方針ですからそれはいいんだけれども、そういう逆現象にならないような点は十分に次の検討課題にいたしてまいりますというちゃんと答弁になっているんだ、これ。時の増岡厚生大臣対馬孝且発言に対してちゃんと答えているんだ。だから大臣はそういう点では今の答弁当たってないんだよ。私が言っても、もしそうだとするならば、せめて国庫負担額被用者拠出額フィフティー・フィフティーぐらいのところで落ちついたというならわかるんだ。そうでないから私指摘しているんです。  大臣は一応そういうことで、世代間の公平で均等にと、こういうお答えでありますから、それなりに私は考え方としては一応聞いておきますけれども、これはそういうことにはならない。少なくとも当時の精神をさかのぼって考えるならば、こういう数字的な逆現象を生むようなことにはならない。このことをひとつはっきり指摘しておきたいと思います。  そこで、時間もあれですけれども、私はなぜこれを冒頭申し上げたかというと、これから長期的なビジョンは一体どうあるべきかということを申し上げるために言ったんです。ところが四年前にこういう議論をしていながら、やっぱり結果はこういうふうになってしまった、逆現象が起きたということを私は申し上げるんでありますが、今回の政府医療政策は、やっぱり私が考えても、今申し上げたように場当たり的な非常なやり方ではないか。国庫負担の役割を担っていくべき点についての提言というものはどうも全くはっきりしない、整合性はない、こういうことを私は指摘せざるを得ないわけであります。  そこで私が申し上げたいのは、五十九年の健康保険大改革のときに私も三時間半これまた質問しているんでありますけれども、このときに衆議院段階で、医療政策中長期ビジョンがなければならない、こういった我が党の同僚議員の質問に対しまして、どうも審議が進まないということで出てきたのが実は後ほど申し上げます厚生省医療改革基本方向、こういうものが出されてきた。これは事実であります。したがって、その点は厚生省が当時出されました医療改革基本方向というのはどういう内容であるのか、これをまず説明を願います。
  11. 下村健

    政府委員下村健君) 五十九年四月のビジョンのことを言っておられると思うわけでございますが、五十九年に決めましたビジョンでは、来るべき長寿社会に向けて今後医療保険制度を揺るぎないものとするためには、給付負担公平化を図ることがぜひとも必要だということを基本的な考え方といたしまして、制度一元化を図るには国民健康保険制度安定強化を図ることが必要であり、医療保険制度全体を見渡しながら、一元化について、六十年代後半のできるだけ早い時期に医療保険制度一元化を行っていくという方向を明らかにしたものでございます。
  12. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは立法機関との関係はどういうふうに認識していますか。この改革方向立法機関との関係はどういう認識を持っていますか。
  13. 下村健

    政府委員下村健君) 当然そのような方向になるということになりますと、幾つかの法律改正ということが前提になるわけでございますから、厚生省において具体案関係者との協議を経て決まりましたならば、国会での御審議を仰ぐことになるというふうに考えております。
  14. 対馬孝且

    対馬孝且君 したがって、端的に言うなら、厚生省はその後の基本政策については一定拘束をされる、こう理解していいですね。
  15. 下村健

    政府委員下村健君) 政府としての考え方を決めた上で国会での御審議を仰ぐという意味ではそのとおりでございます。
  16. 対馬孝且

    対馬孝且君 わからないよ。濁したらだめだよ。拘束受けるなら受ける、拘束すると理解しているというんならいいんだよ。
  17. 下村健

    政府委員下村健君) これは厚生省としての基本方針を決めたわけでございますから、その基本方針に基づきまして具体的な法律改正の中身が決まりましたならば、それを国会に提出して御審議を仰ぐということでございます。
  18. 対馬孝且

    対馬孝且君 いや、だから拘束を受けるかと聞いたのは、私持っていますよ、「今後の医療政策基本的方向厚生省試案)二十一世紀をめざして」、これには段取りがずっと書いてある。  なぜそれを申し上げるかと申しますと、このときの時点で厚生省はある程度一定の討議をし改革を積極的に出すべき考えでおった。しかし結果的にこれ、時間がないからはしょっていきますけれども、結論を言うならば財源対策ということだけが前面に出てきたのではないのか。だから、なぜこの基本改正方向というものに、ここに出ているでしょう、この順序が間違いであれば別だけれども、あなた方がチェックしているんだから間違いないと思うんだけれども、第一点は、「給付負担の見直し」「被用者保険本人の九割給付(五十九年度)」「退職者医療制度の創設による退職保険者及びその家族の入院の八割給付(五十九年度)」「被用者保険本人の八割給付(六十一年度)」「高額療養費制度の仕組みの改善(六十年度以降)」「全制度を通じる給付負担公平化措置一元化)(六十年代後半)」、こういう順序でやっているんでしょう。どうなんですか、この順序はそのとおり進めるという計画じゃないんですか。間違いないんでしょう。これが誤りがあれば別だけれども、そういうふうに書いているから。
  19. 下村健

    政府委員下村健君) これは医療保険制度の分野に限っての一元化の構想を明らかにしたということで、特に六十年代後半に一元化に向けての措置をとるということを明確に打ち出したというふうに考えております。
  20. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで私が申し上げたいのは、こういうプロセスで一応計画を進めていこうと、こういうふうに私は理解しているから、何もそんなに悪くとっていないんだ。相当理解をしています。  そこで申し上げるのは、そうだとするならば、この五十九年度—六十一年度と、こうありますね。この中で、私に言わせれば、老人保健改革という問題の提起はなぜなかったのか、出されるのが当然じゃないか、そこを私は言いたいんだよ。しかもこれは五十九年の健康保険法改正のときに議論しているんだから。老人保健のそういう財政的措置を含めて改正の動向はどうなんだという議論をしていますよ、はっきり申し上げて。だから私は聞いているんだよ。  それに対して、さっき時間がないからはしょったけれども、私に言わせれば、当時退職者医療制度ができ上がった。当初は四百六万二千人だった。ふたをあけてみたら結果は二百六十七万しかいなかった。六十年度に至ってはこれまたここにあるように四百二十三万九千人を見込んだ。ところがトータルは六十一年三月まで二百九十六万六千人しかいなかった。これを五十九年、六十年で合わしてみると二千八十億の影響が生じた、その間補正をやって、結果は六十一年度千五百億影響額が出た。そういうことでしょう。それが財政的な行き詰まりから、今回の老人保健法改悪につながった。答えは簡単なんだよ。  だから、私の言うのは、そういう一つの基本計画を持っているとするならば、当然我々国民に対して親切、親身を持って、大体こういう方向に行かざるを得ないと、これは健康保険のとき議論しているんでしょう、五十九年に、そういう方向に行かざるを得ないということは事前にやっぱり国民にある程度予測、展望を与えるべきだ。そういうことを議論していきながら一定の結論を見出していくのが一つの民主的なやり方ではないか、こうなっているんだよ。だから、せつな的に財政措置が苦しくなったから今回医療改革を出してきたということだけでしょう、こんなものは。私に言わせれば何の展望もないんだよ、これは。せつな的厚生省の解決なんだよ、はっきり言って、この点をどう考えますか。
  21. 下村健

    政府委員下村健君) 確かに今の時点でこれを眺めてみますと、ここに老人保健制度改革の問題も書かれてあってもよかったかというふうにも思うわけでございますが、一つは、老人保健制度についてはこの中では公費負担医療の問題が実は余り書いていないわけでございます。医療保険以外の分野の話が実はここでは余り書いていないわけでございます。老人保健制度医療保険とも深く関係しているわけでございますけれども、反面、純粋の医療保険とは違った性格も持っておりますのでここでは触れられなかったというふうに考えております。  また、その当時におきまして、三年後の見直しというのは法定されておりまして、非常にはっきりしていたということで、この時点におきましては、医療保険制度改革、特に一元化に向けての構想を明確にしたいという趣旨でこのビジョンをつくったというふうに記憶しているわけでございます。  それから、国保との関係で財政対策を主眼としてやったのではないかということでございますが、国民健康保険の財政状況は確かにいろいろな原因で窮迫をしておりますが、私どもとしては、国民健康保険の財政事情の窮迫というのは、何と申しましてもやはり退職医療等の影響もございますが、老人の加入率の差というのが財政問題の基本に一番大きく影響している、このように考えておりますので、その不公平を是正するという意味で今回の法律改正をお願いいたしておるわけで、財政事情だけで老人問題を考えているということではございません。
  22. 対馬孝且

    対馬孝且君 今あなた率直に認めたでしょう。五十九年度のあれからいけば、老人保健法改正方向というものはある程度触れておけばよかったなとあなた言ったね、今。そこを言っているんだよ、私は。そういう親切とかそういう配慮が厚生省にはないんだ、僕ははっきり言うけれども。こういうものは今あなたもいみじくも認めたでしょう。私はそれを言っているんだよ。  医療基本方向計画だからといったって、医療基本方向計画の中に老人を外して論じることができるかね。あなた方の一貫した方針でしょう。医療を語るに老人医療を外して論じることはできないと言っているんだ。これまで答弁ではしばしば出てくるけれども、この中には出てきていない。だからその点は、素直にあなたがよかったなと、こう言うから、よかったなじゃなくて、そういうことはそうあるべきであったと。しかし、医療全般の問題ということもあったので、一応そういう点が欠けた点はあったにしても、そういう配慮というのは当然出してしかるべきだったということを私は聞いているんですよ。どうですか、率直に答えてください。
  23. 下村健

    政府委員下村健君) 今の時点でこれを眺めてみますと、医療保険制度だけではなくて、医療保障全般について触れるという形のビジョンの方がより適当であったかと思いますが、その点については先生指摘のとおりでございますが、このビジョンでは医療供給体制と医療保険の分野に限って書いてあるという点は、お話のとおりでございます。
  24. 対馬孝且

    対馬孝且君 そういうふうに素直に認めればいいんだよ。謙虚に認めるのは認めてこれから直せばいいんだから。それを官僚的に固執するからこっちは頭にくるんであってね。  それで、これは今言ったとおりでしょう。その裏づけになるものはどういうことかといったら、これはこういうことです。五十九年四月の発表では、翌年の二月だけれども、老人保健審議会の小委員会で検討を始めているんだよ。その小委員会審議の過程は全部ここにありますけれども、こういう時点の中で何らこのことについての議論がされていないんだよ、小委員会の中で。五十九年の暮れから六十年度にかけて議論を始めたんだ、はっきりしているんだ、これは。  だから私はあえてこれの裏づけを言わないのは、あなたがそう答えればいいと思って言わなかったけれども、現実を言うと、五十九年小委員会の時点ではこの議論はされていない、はっきり申し上げて、老人問題は。たまたま五十九年の暮れにかかって六十年に入ってからこの議論が始まったんだ。厚生省の内部討議だよ、私言っているのは。本来なら小委員会の場に、今回六十一年度改正したいと、こういう審議は何もしていないでしょう、はっきり申し上げるけれども。将来のビジョンをどうするとか、六十年代の後半については世代間の公平云々あった。小委員会で議論されましたか、はっきり言って。私が聞いている限りでは、そういう議論の提起はなかった。これははっきり出席者が聞いているんだからね。
  25. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の改正につきましては、老健法の附則で三年後に見直すという検討規定が盛り込まれまして、六十一年度改正予定年次になることから、私どもは六十年の三月から老人保健審議会に前広に御相談申し上げまして、八回にわたって御議論をいただいたわけでございます。  その結果として、中間意見を同年の六十年七月にいただいているわけでございますけれども、按分率の引き上げはもとより、現下の老人医療費の増高傾向にかんがみまして、一部負担についても言及され、それから中間施設、診療報酬のあり方、ヘルス事業のあり方を含めましてこの際総合的な検討をやるべきであるという御意見をいただいたわけでございまして、そういう意見を踏まえて私どもは政府案をつくり、さらに老人保健審議会に御諮問申し上げて国会に提出をしたというのが経緯でございます。
  26. 対馬孝且

    対馬孝且君 私が言っているのは、五十九年四月の健保法審議の時点で、先ほどお認めになったように、この基本方向を出す時点でその方向の中になぜ今回の老人保健改革方向というものを出さなかったか、入れておけばよかったと、今まさにそのとおりでございますと言ったでしょう。私言ったのは、そのときの小委員会構成の基本的方針を打ち出すときに何も入っていなかったと私問いているんだよ、小委員会に臨むときの態度に何も入っていなかったと。これは間違いないんでしょう、僕が聞いているのは。
  27. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御指摘のとおり、五十九年に老人保健審議会に小委員会をつくりまして按分率の検討をやったわけでございます。しかしながら、先ほど申しましたように、そのときは確かに検討はしたわけでありますが、そのことがまたビジョンにも書かれていなかった。確かに保険局長から申し上げましたように、言及すべきであったかと思いますけれども、その小委員会の按分率に関する検討に加えまして、六十年三月から、先ほど申しましたように制度全般についての御審議が始まった、こういうことでございますので御理解をいただきたいと思います。
  28. 対馬孝且

    対馬孝且君 これだけやっているわけにはいかぬから、今のやりとり聞いておってわかったでしょう、大臣。  そこで、私はなぜこれを申し上げるかということは、財政上行き詰まって、せつな的に老人保健法改悪あるいは改正するというような乙とはやめた方がいい。そこで冒頭言ったように、これからの長期的なビジョンは那辺にあるか、ビジョンをどう描くかということが大事なんだと、こういうことを私は主張するために今触れたわけだ。そっちがお認めになったから私は結構だけれども。  そこでこれからの問題として、長期ビジョンとして、世代間の公平と大臣もお答えになったけれども、結果的には政管健保あるいは健康保険全体を一元化、まあ一元化という言葉も出てきたり一本化という言葉も出てきていますけれどもそれは別にして、その場合は、単にそういう構想だけではなくて、私の言うのは特別財源も含めて、何らかの対応をしていくということも含めて、長期ビジョンというものを、せつな的に出してくるということではなくて、ある程度展望を見通してやっぱり出す体制を考えた方がいいんではないか、こう私は考えるので、大臣として、そういう方向についてひとつ将来を見通しての積極的なビジョンづくりと改革方向についてこれから検討し、考え方を出していく、こういう積極姿勢があるのかないのかということを大臣にお伺いしたいと思います。
  29. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 私どもといたしましては、今後の医療保険の負担給付の公平ということを念頭に置いて、六十年代後半のできるだけ早い時期に一元化を目指していくという考えを持ち、そういう中におきましてはおおむね八割給付程度の統一を図り、また財政的にも調整をして一元化いたしてまいろうという考えを持っておるわけでございますが、この老人保健制度改正を今回お認めいただきましたならば、その後できるだけ早い機会にこの検討の作業に入り、国民的な合意をいただけるような幅広い検討の場をつくってそして臨んでまいりたい。次の大きな課題であるというふうに私は考えておるところでこざいます。
  30. 対馬孝且

    対馬孝且君 積極的な取り組みはいいんだけれども、八割というのは、そういうことを狭い時点でビジョンを描くんではなくて、私はなぜ特別財源と言ったかというと、広範なそういう国民的立場でこういうものは長期的視点に立つべきだ、そういう意味での長期ビジョンということを描くべきだ、こう言っているんであって、そこは誤りのないようにしてもらいたい。  そういうことを踏まえてひとつ積極的に取り組んでいきたいと、こういうふうに理解していいですか。
  31. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 幅広い検討をし、そして国民的な合意をいただけるような進め方をいたしてまいりたいと申し上げました中には、今申し上げましたような特別な財源を求めるとかいうようなことも当然検討の一つには入ろうかと思います。
  32. 対馬孝且

    対馬孝且君 ただ、長期展望という立場に立つ場合は、これからも申しますけれども、やっぱりある程度中長期を見通しての基本的姿勢ということになっていかないと、さっき言ったように、国庫負担だけを減らしていって被用者の保険だけがどんどん負担が上がっていくというようなこういう逆立ちしたやり方ではなくて、私が言っているのは、国民サイドの立場で長期的な視点に立ってもらいたい、このことは特に一つ申し上げておきます。そういう観点でやるということだから。  そこで申し上げたいのは、国民所得に占める医療費の将来のあり方についてひとつお伺いをしたいと思います。  私どもは、政府に高齢化社会に対して社会保障制度の問題の長期展望ということはいかにあるべきかということをしばしば議論してきました。私も社会保障制度審議会を約二年間やったことがございます。当時、有沢会長さん時代にも勉強させていただきました。  そこで、私はこれから申し上げたいことは、五十九年の長期ビジョン、先ほど申しました今後の医療政策基本的方向、また本年発表になりましたけれども、高齢者対策企画推進本部の報告にせよ、当面提出した法律案を成立させることに精いっぱい厚生省はやったようでありますけれども、私は、これからの一つの物差しとして考えてみたいというふうに思いますのは、租税と社会保障の負担を合わせた国民負担国民所得の比は現在昭和六十一年度何%になっていますか、これちょっとお伺いします。
  33. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) お答えをいたします。  昭和六十一年度の見通しでございますが、社会保障負担は一一・〇でございます。租税負担は二五・一でございますので、両方合計いたしまして三六・一ということでございます。
  34. 対馬孝且

    対馬孝且君 そのとおり、六十一年度三六・一%ですね。  そこで私は、これからの高齢化社会のピーク時がいつかということが問題になるわけでありますが、これはことしの、昭和六十一年三月十四日参議院予算委員会で我が党の高杉君の質問に対しまして答えていますが、これを見ますと、六十一年度から昭和百年までの、二〇二五年を展望して一応一八%という数字答弁になっています。これ間違いありませんか。
  35. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) そのとおりでございます。
  36. 対馬孝且

    対馬孝且君 そのとおりということですから、それじゃ私がお伺いします。  それは、現行制度を前提にしてその程度の割合になるというのか、あるいはその上限を抑えるための一定の指数ということで考えていいのか、あるいはまた政策的意図が含まれてこの数字に相なったのか、この点どうですか。
  37. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 昭和百年という時点でございますが、これは今先生お話しのように、人口推計で老齢人口の絶対数、また比率がピークになりますのが九十年代後半でございますので、一応そういう意味で昭和百年ということかと思います。  この間におきまして、今先生が御質問になりました社会保障の制度自体をどう持っていくかという問題、それから国民所得がどういう形で伸びていくのかという問題、それから社会保障のそれぞれの給付の基準となっておりますいろいろな指標、例えば年金が非常に大きなウエートを占めてまいりますけれども、雇用者所得がどういうふうに伸びていくかと、いろんな不確定な要素がございます。  昭和百年ということでございますので、なかなかそれはある意味で非常に大胆な推計をさせていただいておるということを御了解いただきたいと思うのでございますが、今の先生の御質問に沿って申し上げますと、年金につきましては、前回御了承いただきましたいわゆる昭和五十九年財政再計算ベースの将来におきます年金の費用の負担の伸びというものを前提といたしまして、それに国民所得の伸び、雇用者所得の伸び等につきまして一定の仮定を置いておるわけでございます。したがいまして、年金につきましては現行制度というものをおおむね前提としておるというふうに申し上げられるかと思います。  次に医療等でございますが、医療等につきましては、年金のように制度の仕組みが決まりますと給付の額が決まっていくという要素よりも、若干何といいますか流動的な要素がございます。そういう面では現行制度、まあ老人保健法の今回改正をお願いいたしておりますものを含んでおりますけれども、現行のおおむねの仕組みを前提としつつ、その中での医療費のある程度の動向、過去の医療費の動向等を参考に推計をさせていただいたということでございまして、制度がこうなるから絶対にこうなるということじゃない部分が医療等にはあるということは御了解いただきたいと思います。
  38. 対馬孝且

    対馬孝且君 それはあるが、しかしこれ指標だからね、一つの目標として出しているわけですから、そこへ到達するためのやっぱり政策目標、基本目標と理解しなけりゃなりませんから、それは答弁わかりますけれども、この点どうなんですか。  私は、今あなたがおっしゃった医療年金、各制度ごとの割合がどういう見通しになっていくかということについて私なりの数字を持っているわけですけれども、これ間違いがあれば指摘してもらって結構です。年金制度でいきますと、六十一年度国民所得比でいくと六・三%、昭和百年のときはちょうど一二%程度に所得比で伸びていくという数字になります。それから次は医療制度、今あなたが言った医療関係で言いますと、六十一年度が四・七、それから昭和百年、二〇二五年には一応これでいきますと六%程度、こういう数字になるわけでありますが、この点いかがですか。
  39. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) そのとおりでございます。
  40. 対馬孝且

    対馬孝且君 そのとおりということですから。  そこで私は、これいろいろ医療機関の方々からよく聞くんです。これはお医者さんもそうですけれども、今何といってもがんが我が国の病気の一番問題点になっているわけですが、高齢化社会では脳腫瘍、脳血栓あるいは心臓病という病気が多いわけですけれども、だんだん医学が進歩してそして医学医術が発達すれば、これは高度な医療機械というものがどんどん入っていきますね、CTなどもどんどん入っていますから。そういう点からいくと、この六%という判断というのは一体いかがなものかという点はどうなんですか、医学医術、医療科学の進歩に対応していって。  これ端的に言うと、素人的に見ても、今私が申し上げました四・七がとにかく昭和百年に六%に一応達する、程度でよろしいという、これはどうも医学者に言わせると、そんな数字で大体医学が進歩するわけはない、むしろ医療技術進歩を後退させることだ、こういう見識者の見解もあるわけでありますが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  41. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 昭和百年、これから四十年後でございますが、それまでの間、医学医術がどういう変化あるいはどういう進歩をたどっていくか、あるいはまた今おっしゃいました医療機械等々がどういう発展を遂げていくかというのはこれはなかなか予測は難しいと思います。  ただ、先ほどの数字はこれまでの推移を踏まえて今後の伸びを考えておるということでございまして、医療機械あるいは医学医術の進歩も過去二十年、三十年というものをとりましてもかなりのスピードでそれぞれ進歩をしておる。大体それと同じようなスピードで進歩をしていくという仮定のもとにそういう計算が行われると私考えておりますので、それ以上にあるいはそれ以下にどうなるかというのは現段階ではとても推測は難しいんであろうと思います。
  42. 対馬孝且

    対馬孝且君 難しいんであろうと思いますと評論家みたいなことを言ってもらっても困るんだ。この数字はそっちの方から出ているんであって、私が出したんじゃない。私は確認して、六%程度というのはそのとおりでございますと、厚生省の方が言っているわけですから、あなたが非常に難しいんでありますなんて評論家みたいなことを言って答えてもらっては困るんです。私はそれだから聞いているんだから。  むしろ見識者の意見からいえば、六%というのは到底そういう数字にはならないと。これは名前は避けますよ、北海道大学の、たまたまこのことで意見を交わしたときに、そんなものにはならない、私はこれは倍以上になると思うという見識者のあれなもんだから、厚生省側が六%程度と出ているのに対して、いや、とてもそんなもんでおさまるものではないと、こういう見識者の、名前は私は避けますけれども、これは北大の相当権威者ですからね。これ実際に癌研の相当な権威者の医師の方が経験して言っているんですから。これどうなんですか。
  43. 下村健

    政府委員下村健君) 実際問題として見ますと、先生指摘のように、医療の分野に対する先端技術と申しますか、いろいろな高度化の要素というのは非常に速いテンポでいっておりますので難しい面があるんではないかという御指摘は、そのとおりではないかと思います。ただ私どもとしては、一方負担面の問題もありますので、国民所得との関連においてその医療費の伸びを適正な範囲にとどめるような努力を一方においていたしているわけでございます。  それから技術革新という要素は、計数的になかなか評価が難しゅうございますので、ただいま健康政策局長が申しましたように、一応従来程度の高度化要素を見込むということで、従来の実績をもとにして将来の医療費を推計しているということになっているわけでございます。
  44. 対馬孝且

    対馬孝且君 そういう、今あなたが答弁したこれからの、まあ見識者に言わせればこんなものではないと。しかし、政府として政策的なやっぱり医療目標という意味では六%が望ましいと、こういうことでしょう。そういう受けとめでいいんでしょう。
  45. 下村健

    政府委員下村健君) そのとおりでございます。
  46. 対馬孝且

    対馬孝且君 それならわかりました。  そこで、この場合の老人医療費の占める割合でありますけれども、どういう伸びになるというふうにお考えですか。
  47. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人医療費については、私どもで粗い試算をいたしておるわけでございます。  この際申し上げますと、六十五年で六兆二千億程度。それから七十五年で十五兆程度と見込んだ数字は既に出しておるわけでありますけれども、百年まででどのぐらいか、こういうお尋ねでございますけれども、これは非常にいろんな要素があって難しいわけでございますが、一定の仮定計算で行いますと百兆円を超えるであろうということでございまして、百年の時点におきます七十歳以上の人口は約二千五百万人ぐらいになるだろうということでございます。そのときの老人医療費が百二十兆円程度になるかなという試算をいたしておりますけれども、これは非常に粗い試算でございまして、一人当たりの医療費が現状と同じように五・九%伸びる、それから人口の増が六十一年度から百年度にかけまして年平均で二・八%七十歳以上の方が伸びるという、そういう仮定で粗っぽい計算をしたただいまの数字でございます。  それを老人医療費の対国民所得比を見ますと約四%程度になるわけでございますが、医療費が国民所得の四%ということでございますが、老人医療費保険料負担は約半分だというふうに見ますと二%程度が保険料負担かなということでございまして、非常に粗っぽい数字で恐縮ですが、そういう推計をいたしております。
  48. 対馬孝且

    対馬孝且君 今粗っぽい数字だという前提で話をしていますから、そのとおりだと思います。  問題は、私はなぜこれを取り上げて、そういう長期展望の中に検討する必要があるかと言ったのは、やっぱり先ほど議論を展開しましたように、財政的な面だけが前面に出てくる、こういう改正やり方ではなくて、ある程度医療とそれから国民的生活のビジョンというものがタイアップして医療方向というものが出ていく、その中に老人の医療のあり方はこうあるべきものなんだ、こういう出し方、こういう方向を見出していくようなビジョンというのをつくる必要があるんだと。  その基本は何かと言えば、社会保障の所得再分配、こういった機能から見ても、国庫負担というものを減らして社会保険の負担を増大さしていく、こういうことは望ましいとは言えないわけですけれども、そういった問題について、そういう方向に一つのビジョンとして組み立てられるような考え方があっていいのではないかという議論もあるんだけれども、それは別にして、私はそういう意味で、今議論したのは、これも大臣先ほど答えていますけれども、将来的展望の中に、私が今申し上げましたのは、国民所得に占める医療の将来展望ということもかみ合わせたビジョンづくりというものをぜひやってもらいたい。そういう意味でひとつこれを浮き彫りにして、昭和百年を展望して私今議論をしたわけであります。  そういう問題提起をしておきますので、これらを含めてひとつ将来のビジョンを描いてもらいたい。いかがですか、この点は。
  49. 下村健

    政府委員下村健君) 厚生省といたしましては、先ほど来先生指摘のとおりに、五十九年に出しましたビジョンは、医療政策の分野に限定するということで、福祉面でありますとか公費負担の面でありますとか、その辺が五十九年のビジョンでは欠けておったという点もありますので、高齢者対策企画推進本部というものをつくりまして、これはいわば事務当局としてのまだ今後詰めるべき点もありますが、一応粗い素案の形で企画推進本部報告というものをことしの四月につくったわけでございます。これは前の厚生大臣のもとにそういう格好で提出したということで、これをもとにしてさらに先生の御指摘のような方向も踏まえてもっと完成した形のものにつくり上げていきたい、こういう努力をいたしておるところでございます。
  50. 対馬孝且

  51. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今保険局長から答弁をいたしましたように、できるだけ将来のビジョンというものを踏まえつつ、国民的合意が得られるような改革方向へ向かっての検討をいたしたいと思います。
  52. 対馬孝且

    対馬孝且君 今議論したことを踏まえてこれから詰めていくということですから、そういう方向でぜひひとつやってもらいたいと思います。  そこで私は、北海道の老人医療と健保の経営の実態をこの機会に洗い出しにして政府側の見解を求めていきたいと思います。  それは、政府は五十八年度以降健康マップを発表しています。これは市町村の保健事業の諸指標を発表しておりますけれども、これは一体何をねらったものであるか、そこから何を学びとって行政指導に役立てようとしているのかという点を明らかにしてもらいたい。  それはどういうことかといいますと、これは北海道の場合、私の調べによりますと、北海道の一人当たりの老人医療費はどのようになっているかと申しますと、金額で四十七都道府県順位の対前年度伸び率からいいますと北海道は第一位であります、医療費の高いのが第一位。これは厚生省統計でも出ております。六十年度だけ見ましても七十五万七千三百三十二円、対前年度伸び率は八・九%、こういう数字がありますが、これ間違いございませんか。
  53. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) まず健康マップのねらいでございますけれども、私どもは、老健法の重要な柱でございます老人保健事業を積極的に推進いたしたいということで、毎年毎年審議会の御意見も聞きながら、こういうマップの形で各県別、市町村別の医療費あるいは健康関係の諸指標をつくって都道府県、市町村の担当者に役立たせようということで出しているものでございます。肺がんとか乳がんの状況とか死亡率とかいうのを出しておりますけれども、老人医療費の各県別のマップも出しているところでございます。  北海道の数字を挙げられました。五十九年が一人当たりで六十九万五千二百四十三円、六十年度が七十五万七千三百三十二円というのを出しておりまして、伸び率が八・九%でございまして、これは先生指摘のとおりでございます。
  54. 対馬孝且

    対馬孝且君 四十七都道府県のデータを私も持っていますが、北海道が八・九。一番低い静岡県が三十六万三千八百九十一円で、順位が四十七位であります。四十七都道府県の一番ラストが静岡県、第一位が北海道で八・九、こういう数字が出ているわけであります。  そこで、今も健康マップの考え方説明がございました。健康マップによると、全国平均で五十万七千九百二十円ですから大体一・五倍ということになりますね。したがって、この原因は一体どういうところにあるのかという点をちょっと解明してもらいたいと思います。
  55. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 北海道の医療費がなぜ高いかということでございまして、いろんな要素がたくさんあると思いますけれども、端的に申し上げて、私どもは、北海道の場合は入院の医療費が高い、それも入院の受診率と申しますか、入院されるお年寄りの方々がウエートとして非常にほかの地域に比べて高いということが、いろんな要素がございますけれども、北海道の医療費が高い理由ではないかというふうに見ております。
  56. 対馬孝且

    対馬孝且君 入院費が高いと端的に今局長言ったけれども、そういう言い方ではこれは私は納得できないですよ、ただ入院費が高いと、そんな一般的なことを言ったって。  私はどういう意味で聞いたかというと、私が北海道出身だから申し上げるわけじゃないが、なぜ医療費が高いかということについては、北海道へ行かれてわかるでしょう、いわゆる広域性だということですよ。非常に広いということと同時に、これは医療の、老人ホーム、病院の配置が都市に非常に偏在をしている、だから入院率が非常に高いということですよ、これ。それとやっぱり寒さが厳しいということですよ。寒さが厳しい、それから非常に広域性があって、そこに過疎過密の現象がある。今北海道二百十二市町村ありますけれども、はっきり言って過疎地帯が七〇%ですよ。こういう状態と季節的な情勢というのが北海道の医療費が非常に増高している理由である、私はこれははっきり申し上げなきゃならぬ。  それを裏打ちするように、これはいいか悪いか見方がいろいろありますが、社会保険旬報の中で出てきますけれども、この先生の解説をかりますならば、日本病院管理学会で発表された安西将也先生の研究結果を読みますと、こういう現象が出てきているんですよ。医療費の高い県というのはどういう趨勢が出るかと申しますと、いわゆる電話加入数が高い、それから公共事業が比較的高い位置にある県。マイナス面では新聞の購読量が非常に少ない、それから自動車の台数が非常にマイナス現象できている。こういう現象的な、これは学者の説ですからいいか悪いかこれはそれぞれ判断があると思いますけれども、私はそういう点からいきますと、いみじくもこの安西将也先生の言っていることに北海道を当てはめて、北海道に六十年住んでいるわけですから私なりの実感を申し上げますと、これは当たっているんです。それの証拠に、これはいまだに、きょうここに山口先生来ておりますけれども、道東地域というのは現実に無医村地区というのがまだ四十三もあるんです。結局、入院を一たんしてしまえばなかなか郷里に帰るということはできないんです、無医村だから。そういう意味では、この先生の説がいいか悪いかは別だけれども、私はこの説はやっぱり当たっていると思う。  こういう感覚からいけば、北海道の医療費が高いというのはただ入院費が高うございますという一般論じゃなくて、ある程度医学的根拠を持った厚生省側の態度があっていいんじゃないか、こう思いますので、その点どういうふうにお考えになりますか。
  57. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 北海道の医療費が高いということで、入院医療費が高いからだと申し上げましたが、これもまた先生指摘のように、確かに雪国の厳しい気象条件あるいは非常に広いためになかなか通院できないというような事情も私はあるものと思っております。  さらに、今大変ユニークな御指摘をいただいたんですけれども、私どもは、医療費がどういうふうな形で高低にあらわれてくるかというのは専ら医療的な観点から、病院がどうだとかあるいはお医者さんの数がどうだとかいうようなことで分析をいたしていたわけでございますけれども、確かに医療というのは社会的な面、社会的な活動の面と切り離せない面があるかなという気もいたします。確かにその地域の気候、風土なりあるいは社会的な、いろいろ文化的な要素から含めまして、やはり医療も社会であるということから申し上げれば、もう少し私どもも医療費の分析の手法を広げてみる必要があるかなということを痛感いたした次第でございますが、これからよく勉強いたします。
  58. 対馬孝且

    対馬孝且君 大変謙虚にお答えいただきましたので、まさにそういうことで、単に一般論で入院患者が多いんだなんてそんな科学的根拠のないことを言わぬで、私はなぜあえてこの安西先生の研究を発表したかといいますと、そういうことで言っているわけですから。いみじくも私は生活した実感からもやっぱりぴたっとしているということを考えるものですから、今局長言ったようにぜひひとつこれからもそういうことを行政指導を含めて積極的に対応してもらいたい。いかがですか、その点。
  59. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは、医療費の高い都道府県については、特に私どもに特別な室がございましてそこを中心に指導しているわけでございますけれども、その指導の際に、もう少し幅広い見地からいろいろ都道府県にアドバイスができるように、いろいろ研究なりあるいは私どもなりの見解をまとめていきたいと思っております。
  60. 対馬孝且

    対馬孝且君 私は今回の老人保健法改正の按分率の問題は絶対に容認できない。そこで私は申し上げなきゃならぬ。北海道健保組合の実態はどうなっているか。私はなぜ医療費が高いかということを今厚生省に論じたかというと、これから申し上げることにつながるから私は言うんですよ。  それはどういうことかといいますと、北海道の健康保険組合というのは今言ったように全国一医療費が高いという実態を今確認したところでありますけれども、健保組合が二十五あるんですよ。ところが、もし按分率が——後から全国を申し上げますけれども、全国を先に言った方がいいと思うんですが、私の調べによると千七百四十三、この間も健保連の代表者から私は陳情を受けましたが、千七百四十三健保組合がある。現在健保組合に加盟している者は何名かというと、千二百七十四万二千二百十五人、六十年度現在で実は加入しているわけです。これが被保険者の一人当たりの保険料が何ぼかといいますと、私もびっくりしているんでありますが、二十四万五千七百五十六円になるんです。全国の老人人口の伸び率は三・八ですね。今最高料率千分の九十五。この按分率が八〇、六十二年から六十四年まで九〇、六十五年から一〇〇%、こう衆議院修正でいった場合これ大変なことになるんです。  だから、私は今回の老人保健法改正は絶対反対であるということを申し上げなきゃならぬわけだ。これを見ますと、これは全国で、最高料率千分の九十五以上の組合はこの修正した按分率でいきますと八百八十三、全組合の約二分の一相当が赤字になります。これは健保連の数字ですから、これが間違いであれば指摘してもらって結構。  そこで、私は北海道のことをタイアップして申し上げるのでありますが、北海道の場合現在何ぼになっているかといいますと、六十二年度九〇%の按分率適用でいったとしても千分の九十九・七の試算になるんです。そこへもってきて法定最高料率の千分の九十五を取る、これからこの按分率の改正で取られるわけだ。これは納めるんじゃないんだ、取っていくんだから泥棒と同じだと思うけれども、それは別にして。したがって、二十五の組合のうちの十七の組合が全部千分の九十五になっちゃう。もうこの数字出ておるんだ。北海道の数字全部持ってきていますからお見せしますけれども。  私はこのことをお伺いしたいんだ。こういう実態をどのように判断していますか。こういう実態分析を判断すれば、按分率が九〇とか一〇〇とかという数字は出てこないんだよ。余りにも実態を知らな過ぎる。厚生省というのは官僚的な発想で按分率を出してきている。ただ国保とのつじつま合わせで、穴埋め合わせをして、トータルでこれだけだと。こういうやり方では地域医療は守られないよ。地域の老人の医療は守られない、また地域の健保組合はパンクする、はっきり言って。こういう状態についてどういう認識を持っておりますか、まずお伺いします。
  61. 下村健

    政府委員下村健君) 御指摘のような状況は確かにあるわけでございます。  私どもとしては、健康保険組合全体として見ますと、財政状況は相当安定いたしておりますので、総体として見ますと、今回の按分率の改定によって深刻な事態が起こるようなことはないと思っておりますが、御指摘のように、個々の組合をとりますと、組合によりまして相当の格差がございますので、特に北海道の場合には、二十五組合のうちに医療費が一つは高い、それからまた一方で不況業種に属するようなものが多いというふうな事情もありまして、かなり深刻な状況にある組合も多いわけでございます。  したがって、これらの組合につきましては、私どもとしては、一つは今回の法案の中の経過措置によりまして負担の急増を避けるという措置考えておるわけでございますが、これにあわせまして、現在財政窮迫組合に対する補助事業のようなことを行っておりますけれども、これの増額によりまして個々の組合の状況に応じたきめ細かい対策を考えてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  62. 対馬孝且

    対馬孝且君 きめ細かい対応を考えていくというのはそれは結構だよ。結構だけれども、そんなちゃちなもので一体健康保険組合の健全化ができるかという問題なんだよ、はっきり申し上げると。私も知っていますよ、毎年厚生省交渉、私も社労委に十年いるんだからわかっていますよ。去年は十三億だったんだ、予算助成として十三億やっていただいたんだ。そんなちゃちな段階で手直しして、今のこの按分率でいった場合には健康保険組合がもたないというんだ。  あなたも知っているとおり、これ二十五組合みんな分析してみなさい。まず炭鉱でしょう、全部、いずれも上がっているところ。加盟している組合で炭鉱、造船でしょう、鉄鋼、それから今度は農林漁業。いいところで銀行なんだ。今私が言ったとおりなんだ。この按分率になった場合にはまさしく、これ今既にはっきり名前言ってもいいんだが、固有名詞挙げるのは失礼だから言わぬけれども、四つの組合は解散させてくれと言っているんだ、厚生大臣、これ本当に。健康保険組合を解散してもらわなければいかぬと、こういう深刻な危機の状況に来ているんですよ。これあんたのところにも来ていると思うんだ。  だから、少なくともそういう危機的状況にあるんだから、それは予算助成をやらないよりやった方がいい。せいぜい一億か二億でしょう、ふえたって。これどうやってやるんですか、こんなもの。だから私が言っているのは、この機会に按分率を直すべきである、はっきり言って。八〇、九〇、一〇〇というようなことをやったんでは、これはもう全く最高料率だ。千分の九十五、これ以上取られないでしょう、法的に。取られますか。取る方法ありますか、千分の九十五以上。取る方法ないでしょう。これ以上最高限度額を取って、なおかつパンクをする。そこで確かにきめ細かい対策をしますと言ったって、そんな何億かの金をべたべた張ってみたって、こんなもので労働者が健康保険組合を守っていくことができるわけないじゃないですか。そういうことを考えあわせれば、この機会に、私が申し上げるのは按分率の手直しをすべきだということが一点。  それから、もちろん個々の組合の地域差がありますから、それはそれで現行どおり、今保険局長がおっしゃるとおり手直ししてもらえばいいんだ。しかしそういうものの手だてだけでは根本的にはこれはできない、はっきり言って。だから私言っているんだから。ここでどこまでの答弁が出るか別にして、そういうことをいま一度検討してもらいたい。これはむしろ保険局長もさることながら、大臣に最後にお伺いしておきたい。
  63. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 何回も申し上げまして恐縮でございますけれども、今回の老人保健法改正をお願いいたしておりますのは、負担公平化を徹底していただきたいという観点から、段階的に一〇〇%に加入者按分率を引き上げさせていただく、こういうことでお願いをいたしておるわけでございます。  今御指摘のように、個々の組合においてはこのことによって非常に大きな打撃を受けるではないかという御指摘でございます。私どもも、全体としては黒字基調にある健保組合においては負担をしていただけるものと思いますけれども、それぞれの個別の組合におきましては厳しい組合もたくさん出てくることかと思うわけでございます。  それにつきましては、ただいまも保険局長答弁をいたしましたように、まず第一には、この法律にもございますように、急激に負担がふえる組合に対しては激変緩和の措置が講じられることとなっております。そして第二番目には、補助事業によりまして救済ができるようにいたしたい。今これまで十三億円というような御指摘がございましたが、これからはこれを大幅に拡充をして補助事業を進めるようにいたしたいというふうに思います。また第三点は、これは健康保険組合の皆さん方との御協議なり、また御理解をいただいてのことでございますが、共同事業を推進していただくということによって救済をしていくようにいたしたい。いろいろな手だてを行ってまいりたいというふうに考えます。  今御指摘がありましたように、解散に追い込まれる組合も多々あるではないかという御指摘でございますが、解散というのはこれまでにも毎年幾らかの解散が出ておるわけでございますが、それぞれいろんな理由があろうかと思います。それぞれの理由によって解散を決意されるということもあろうかと思いますが、この加入者按分率の引き上げのみによって解散をするというようなことは少なくともないように私どもは全力を挙げて努力いたしてまいりたいというふうに思っております。
  64. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、最後の答えが、そういう健康保険組合の赤字組合が出た場合の最善の措置あるいは手だて、またはそういう按分率によって組合が解散することのないように措置をいたしてまいりたいと。答弁はいいんだけれども、問題はそれでは解決にならないんだ。按分率というものが上がるから最高率千分の九十五いくんで、そこの根元を直さない限りどうしたって、十三億がそれは大臣、お目にかかることも、十三億が百億にもなるわけないでしょう、予算折衝して。せいぜい何十億かでしょう。そういう暗幕をぺたぺた張ったような解決ではできないんだ。根本はやっぱりこの按分率の、今度老健法改正の基本のところを踏まえて対応しないとこの問題は解消しない。私は北海道だけ言っているんじゃないんだよ。全国千七百四十三ありますと、そのうちの最高料率千分の九十五の該当する組合は八百八十六になりますと、これは健保連から出ているわけだから、そのとおり。  だから、私の言っているのは、今の段階でそれ答弁できないとすれば、それは最善の努力をするということはいいんだけれども、だめだと言っているんじゃない。基本は、もっと按分率に踏み込まない限り、按分率を見直さない限り問題の解決にはならない。これは明確に言っておきます。その解決がないとするならば、私はもう重大な決意をせざるを得ないということをここではっきり申し上げなきゃならぬと思う。  そういうことで、特に北海道の問題については今大臣から言葉がありましたから、最善の予算補助、それから激変緩和五十五条ですよ、言っていることは。五十五条の激変緩和による措置ということは、北海道については最大限の措置を講じてもらう、そこよろしゅうございますか。もう一回ひとつ確認しておきます。
  65. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  66. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、基本の問題は今申し上げたとおりでありまして、北海道のいわゆる赤字組合の減少対策はわかりました。ただ基本の問題はあくまでも私は絶対に譲ることはできません。これだけは明確に申し上げておきます。按分率の改正なくして健保組合の真の再建の道はない、これは明確でございますので、この点明らかにしておきたいと思います。  そこで次の問題に入りますが、地域医療の、今回の改正に伴うことにもなりますけれども、この地域差という関係は、先ほどもちょっと北海道の実態を申し上げましたけれども、これも申し上げなきゃならぬわけですね。どういうことかといいますと、この点ひとつこの機会にお伺いしておきたいと思うんでありますが、先ほどのにちょっと関連してこれだけ聞きます。  解散権はどうしても認められないですか。解散権は厚生大臣に権能があるんだけれども、本当にやむにやまれず解散したいという場合にどういう処置をとりますか。ちょっとこれ参考までに聞いておきたい。それと、認可はそっちに権限あるんだから、お認めにならないということになるわけだから、そこだけちょっと最後の決定打を聞いておきたい。
  67. 下村健

    政府委員下村健君) ただいま大臣からも申し上げたとおりでございますが、これまでも大体事業所の閉鎖とかというふうな理由によるものが多いわけでございますが、事業所の閉鎖でありますとか会社更生法の適用でありますとか、いろいろな事情によりまして毎年幾つかの組合が解散しているわけでございます。したがって、組合をどうしていくかということについて、その存続の見通しが立たない、しかも関係者が解散をしたいという場合には、これは一般的に申しましてやむを得ないということで、これは個別の事情を十分に審査した上で解散を認めるという方針で従来対処してきておりますので、今後においてもその点については変わりはないというふうに考えております。
  68. 対馬孝且

    対馬孝且君 今の答弁は、そういう態度であるということだけ確認しておきます。  そこでもう一つ、老人保健施設の設置と既存の老人病院との地域格差の是正問題についてちょっとお伺いをしたいと思います。  今北海道の問題も触れました。これを機会にひとつはっきりしておきたいと思うんでありますが、北海道の場合は、病院は老人病院を含めて札幌に集中していて、無医村地区は道東、道北に多いんです。非常にアンバランスになっているんだ。札幌一点集中みたいになっちゃって、非常に地域間の格差があって問題が生じているわけです。これは私の調べなんでありますけれども、病院数は全道で六百あります。そのうちの三分の一が今言ったように札幌周辺に集中しているわけです。中でも老人病院は全くそうですよ。ところは別にして、老人病院は三分の一は札幌圏に集中している。そこで北海道の地理的状況をさっきも申しましたけれども、道東の無医村地帯、私も道東中心に何回も行っていますけれども、根室から札幌まで、北大病院だとか医大病院に来るといったら大変な苦労して来なきゃならぬわけですよ。そういう状態が地理的に実はあるだけではなくて、精神的なまたこれ苦痛でもあるわけですよ。  だから、私の一貫した方針は、この前から丸五年間しゃべり続けてきているんだけれども、予算委員会でもやりましたけれども、道東に国立病院をつくれというのを私五年間、ずっと歴代の大臣をさかのぼっていけば園田厚生大臣時代もこの問題をひとつ前向きにと、すぐ言葉では政治用語で前向きにと、こう言うんですけれども、前向きになってから五年もなるけれどもさっぱりできていない。その原因はもちろん幾つかあります。それは定数の問題もあるし、いろいろありますけれども、それは別にして、私が申し上げたいのは、北海道の地理的状況ということを考えた場合にどういう解決策があるか、どういう形態があるかという点はどういうふうに認識されておりますか。
  69. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) お話がございましたように、北海道を道央、道北、道南、道東と分けますと、道央が、これは一般病床でございますけれども、人口一万対で百六、それに対しまして道東が最低で九十二という数字になっております。恐らくはその道東の中でもお話ございましたようにやはり偏在があるのではなかろうかというふうに考えております。いずれにいたしましても、私どもは、僻地その他病床不足地域につきましては従来から公的な病院に対しまして所要の国庫補助を行う、それから民間病院に対しましては社会福祉医療事業団による融資を行うというような措置を講じてまいっておるところでございます。  一方で、御承知のように、本年の八月に施行されました改正医療法によりまして、都道府県が現在医療計画の作成、推進を図っておるところでございます。北海道ではかなり作業も進んでおると聞いておるわけでございますが、その医療計画の作成後にはそれによりまして地域の実情に応じた病院病床の整備あるいは適正配置、こういったことを進めていきたいと考えておるわけでございます。
  70. 対馬孝且

    対馬孝且君 一応考え方はわかりましたけれども、私の手元に都道府県別の六十五歳以上の十万対の病床数、特養、養護老人ホームの定員数を調べた表がございます。これが全国平均で見てまいりますと、これも大変な数字になっているんでありますけれども、都道府県六十五歳以上の人口十万対病床数及び老人福祉施設の定員数として全国特養、養護老人ホームの定員数が千五百八十六、これに対して北海道が三千百六十七、それから病院一般病床数、診療所病床数一万三千四百九十九、これに対しまして北海道が二万一千百十八と、こういう数字、これ参考データでそちらにお渡りだと思いますけれども、出ています。  これは大変な数字になっておるわけでございまして、そういう点で今それなりの対応をしているということなんでありますが、こういった北海道の全国比に対する施設の定員数あるいは老人保健施設の実態というのがあるわけでありますけれども、今お答えによるとそれなりの整備をしていきたいということを言われていますが、私はここで申し上げたいのは、厚生省は口を開けば老人保健施設の病床数は二十六万から三十万床を昭和七十五年までに設置する。それは地域的にどういう基準をもって整備されようとしているのか、ちょっとお伺いします。
  71. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 将来計画数は御指摘のとおりでございますけれども、それを各県別あるいはさらに地域別に張りつけ等の計画はまだ持っていないわけでございます。しかし考え方といたしましては、私どもは老人保健施設については特に適正配置が必要であろうと思っておりまして、都市部にも、それから山間部と申しますか、都市化してない地域にもやはり全国的にあまねく普及していきたいというふうに考えておりますが、例えば三十万床で、五十人定員が一カ所というふうに考えますと約五、六千カ所の箇所数になるわけでありますけれども、それは例えば高等学校の数ぐらいの数というふうに七十五年時点でなるわけでございますけれども、それをどういうふうに今後配置していくかという考え方は適正配置の方向でございます。  そのために私どもは、例えば融資の際にあるいは今要求いたしております国庫補助制度が認められれば、それを配分する際に、そういう手段を使いながら適正な配置ができるようにぜひとも誘導していきたいというふうに考えております。
  72. 対馬孝且

    対馬孝且君 今そういう整備計画で進んでまいりたいという答えはわかりました。  そこで私はこの機会に、北海道だけでなくて中間施設のことをお伺いするんですが、今言ったように北海道の場合は札幌圏に集中している、道東との偏在がある。将来に向けて、今あなたがおっしゃったのは二十五万から三十万床ということに向けて、そういう一定の基準を示しながら整備をしていきたいと、考え方はわかるんですよ。ただ問題は、そこで中間施設のことを言わなければいけないわけだ。  中間施設を今度やるのは、言うならば既存の特殊老人ホームなり老人病院の施設を利用するわけでしょう。問題は何かというと、そうなった場合に、一定枠がある、北海道で仮に三万なら三万と、結果として、中間施設ができ上がれば既存の老人ホームなり病院の病床というのは一定枠を減らしていくことになるでしょう、減少していかなければならないんじゃないですか。僕はそういう問題はどういうふうに組み立てるんだと言うんだ。  はっきり申し上げると中間施設は私は反対ですよ、こんなもの。私に言わせたら、将来的にはどうか知らぬけれども、まだ煮詰まっていないんじゃないか。何回も議論しているから僕は多くを申し上げません、時間がないから。これは医療法の適用も受けない、生活サービスなんだ、だから中間と言うんだと、何も根拠ないんだ。私は特殊老人ホームを現に北海道で見てみてわかりますよ。現に、老人ホームだって診療所を置いて常駐の医師を置いてやっているんだから。それ以下だというわけでしょう、この間から議論を繰り返しているけれども。  私なりに結論を言えば、これは間違いなら指摘してもらってもいいけれども、老人一人当たりの医療費が大体今最低が三十五万円だ。今度は、政令や基準には出ていないけれども、二十万円で結局やるということでしょう、答弁聞いていると。二十万円でいきたいと、中間施設を。何のことはない、ねらいは安上がりのうば捨て山をつくるということになるんじゃないんですか、結果論として。三十五万の老人の医療費を二十万に下げて、本人から五万生活費を取って、医療の分だけは面倒見るけれども生活費は本人五万出せよと、そういうことでしょう。こうなったら、既存の老人ホームなり既存の老人病院の病床枠の合理的再編成は一体できるのか。これは共倒れするよりも、老人病院は今でも大変な危機でしょう。札幌圏で言うなら、今老人病院が倒産寸前にあるところが札幌で三つあるんだ、はっきり言えば。  そういう問題が、この中間施設の結合というか、整合性という問題からいくならば、結果的に厚生省のねらいは、老人の命を大切にするとかあるいは予防医学だとかと言葉では言っているけれども、二十万の安上がりの老人のいわゆるうば捨て山の施設をつくってそこに全部入れてしまう。こうなったら既設の老人ホームからどうやって入るんですか。老人病院のベッド数はどうなっていくんですか。こういうことの整合性が一体できるのかということと、実際これが医療法上の適用もならない、こんなばかげたことを一体、中間施設なんてどこから引っ張ってきたか知らぬけれども、何の医学的根拠もないものをやるんだ。これも答弁聞いてから申し上げますけれども、この点の認識と対応をどうするかということをちょっと聞かせてください。
  73. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) まず老人保健施設の整備あるいは設置形態でございますけれども、特養あるいは病院の併設というのももちろんございますけれども、私どもは新設の形で新しい老人保健施設がつくられるということも十分想定し、そういうものもやはり相当なウエートとして考えているわけでございます。  それから運営面でございますけれども、確かに一人二十万ということで御説明申し上げておるわけでございますけれども、これは端的に医療費削減というものをねらっているわけではございません。老人にふさわしい形での処遇をすることによって、結果的には医療費が安く済むことになるということでございます。  なぜかと申し上げますと、現在、入院治療が終わった段階で生活のお世話もしてもらいながら医療ケアを続けられるという施設がないわけでございます。したがって、社会的な入院という俗に言われる言葉の形で患者さん方が多く病院で入院をされていると、病院はいろんな面で重装備の施設でございますからそこの経費は高くかかるわけでございます。  それを今回新しく老人保健施設をつくりまして、老人のニーズにふさわしい、つまり介護だとか看護中心のケアをして差し上げながら家庭復帰のリハビリをして差し上げるというような施設をつくることによりまして、さらにその効果として家庭復帰が促進されることによって、私どもはこれからどうしても避けられない老人医療費の適正化に少しでも役立つんではなかろうかというふうな発想で考えておるわけでございます。  したがって、決してこの施設が安上がりとかそういうことではございませんで、寝たきり老人、しかも病弱な寝たきり老人にまことにふさわしいような中身のものにしていって、これからのそういった方々のニーズ、あるいはそういうお年寄りを抱える家庭のニーズにこたえていくことがこれからの高齢化社会に向かってのぜひ必要な施策なり施設ではなかろうかというふうに考えております。
  74. 対馬孝且

    対馬孝且君 もう時間も来てしまってあれなんですけれども、局長、そういう詭弁を言ったってだめだ。この間も医師会の代表あるいは老人クラブの代表の方々が参考人として陳述したでしょう。二十一世紀の在宅老人あるいは痴呆性老人の医療のあり方はどうあるべきなのかという議論をしている。この間の陳述を聞いてもそのとおりだと思いますが、これは同僚の千葉委員も質問しておりますけれども。  むしろこれからの二十一世紀を展望した場合、老人病あるいは寝たきり老人、痴呆性老人対策というのは在宅ケア、在宅療養というものに中心を置くべきだ、そういう趨勢であると、こう言っているんですよ。やるならきちっと、特殊老人ホームのように、あるいは老人病院のように医療法を適用して、本当にお年寄りに対して誠心誠意、医療も生活も暮らしもきちっと守るようなこれからの施設なり管理をしていくべきだ、むしろ在宅老人に対する手当てというのが大事だ、こういうのが陳述の方々の意見じゃないですか。切実な訴えというよりも貴重な御意見ですよ。  しかし今厚生省考えているのは、どんなことを言ったってこれ安上がりですよ。三十五万かかる老人の医療を二十万に抑える。だから、何のことはない、入院料金の一部負担の問題だって、今までは二カ月まで一日三百円、今度は五百円だというわけでしょう、それも今度は青天井だと。なぜ青天井にしたかといったら、二カ月とか三カ月に抑えれば、現行どおりやれば中間施設にだれも行く者なくなるから、だから青天井にするというわけでしょう。そんな詭弁言ったってだめだ。政府厚生省のねらいは、中間施設にどうやって持っていくかということで、入院の一部料金を二月限度に抑える、これをエンドレスにするんだ、青天井にするんだと、こう言っているじゃないか。そういう詭弁言ってもだめです。  ただ私はここで言いたいのは、今出されている中間施設というのは、これは医療法の立場から見ても、それから生活のサービスの面から見ても不十分である。もう一度老人保健審議会で見直すべきである。老人クラブも言っておりましたよ、老人クラブの方々はこの問題について一回も厚生省から意見を求められたことがない、こう言っている。だからそういう意見を聞いて老人保健審議会でもう一回見直すべきである、それからもう一回提案をすべきである、こういう私の考えをこの機会にはっきり申し上げておきたい、こう思いますので、大臣から最後に一言お伺いしたい。
  75. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほど老人保健部長から答弁を申しましたように、私どもは安上がりの悪かろうの施設を目指すというようなことには決して考えておりません。また、今先生が御指摘になられましたように、まさに在宅においてお年寄りが介護されるということが一番いいんだというお話がございましたが、その在宅へ向けて病院からそのつなぎ目をしていくという側面が非常にあるわけでございまして、まさに今先生がおっしゃるような目的を私どもは考えておるわけでございます。  今後、非常に要請の強いといいましょうか、各方面から期待をされているこの老人保健施設というものを、その期待にこたえられるように私ども全力を挙げて努力をいたしてまいる覚悟でございます。
  76. 対馬孝且

    対馬孝且君 これをもって終わりますけれども、大臣から今答えがありましたが、やっぱりまだ生煮えですよ、率直に言って、この施設の中身というのは。もうちょっと老人保健審議会あたりで深く掘り下げて、将来誤りのない、今在宅のつなぎだと、こう言うけれども、つなぎなら、そんな真ん中のあいまいなものをつくらないでどっちかにきちっと、老人ホームをふやすとかあるいは老人病院を完備するとか、そうすべきものであって、何かつなぎだと言って、つなぎに安物をおっ建てておいて、そこへ全部流し込んじゃうという、それはどんな答弁をしたってだめですよ。それは考え方の一つだから結構なんだけれども、私はこれは生煮えだと。  だからそういう意味で、もう一度この問題については検討し直す。今検討していてもさらに検討して、今後二十一世紀の展望と、在宅老人と老人病院なり既設のものとこれからどういうふうにタイアップしていくか、将来老後に不安のないあり方をぜひひとつ求めてもらいたいということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。
  77. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君)ちょっと答弁を漏らした部分もございますが、今御指摘のように、今後の老人保健施設を実際に運営していくに当たりましては、国会での御議論、またこれからモデル事業として行っていきますことから得られましたいろいろなデータ、こういったものを踏まえて老人保健審議会において最終的に御検討いただき、御審議をいただいて、そして実施をいたしてまいるという考えでございます。
  78. 千葉景子

    ○千葉景子君 今同僚の対馬委員の方から、二十一世紀に向けてしっかりとした医療対策、老人医療福祉対策が必要だ、ビジョンづくりが必要だというお話がありましたけれども、私もそれには全く同感でございます。二十一世紀になりますと実は私も老人といいますか高齢の部類に入っていくわけで、多分厚生大臣はそれより少し前にその中にお入りになっていくんじゃないかというふうに思いますけれども、そういう意味でもこの問題は、自分自身の問題でもございますので厚生大臣にも大いに頑張っていただきたいというふうに思います。  それで、まず一つ考えていきたいことがございますが、老年、高齢者となりますと、例えば子供には小児科といいますか、そういう分野がございますけれども、今後は高齢者を対象とする総合的な医学分野の確立、こういうものがやはり求められるんではないだろうかというふうに思いますが、この辺まず基本的に厚生大臣いかがでしょうか。厚生大臣に一言御答弁いただきたいと思います。
  79. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) おっしゃるとおり、そういったような観点からのいろいろな検討が必要だと思います。現在、医療法の改正等についてもいろいろ幅広く検討していただいておりますが、そういう中におきまして、お年寄りを中心とした医療、保健のあり方というようなものについても御検討をいただいておるというふうに承知をいたしております。
  80. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうなりますと、高齢者という人間丸ごととらえるような老年医学といいますか、そういうものの確立が必要になってくるだろう。その中には身体的側面もあれば精神的な側面もあるだろう、また生活面に関連するような問題もあるだろうというふうに思いますけれども、こういう総合的な分野の確立をぜひ推進していただきたいというふうに思います。  ところで、こういう問題ですけれども、現在大学の医学部などでも、なかなかこういう老年医学科というものを設置しているようなところはまだまだ少ないようでございます。また、公的な研究機関とか医療施設でこういう老年科といいますか老人医学科といいますか、こういうものを設置しているようなところはどの程度ございますか。
  81. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 老年病学でございますが、医学界におきましてもその重要性が急速に認識をされてきておりまして、老年病学会の会員数なども、今ちょっと手元に具体的な数字はございませんが、年々急速にふえておるということでございます。  それからまた、これは文部省の関係でございますが、医学教育の中で老年医学を十分教えてもらいたい、あるいはまた大学の中に例えば老年病学教室、講座というようなものの設置というようなことも学会から非常に強く要請をされております。現在私の知っておる範囲では、国立大学がたしか東大と京都大学、それから私立大学になお一、二老年病学教室があろうかと思っております。  それから老人病と申しますか、老人を全人的にひとつ研究をし医療をしていこうというようなことで専門にやっております病院として、歴史も長く、そしてまた有名なものに浴風会の病院がございますし、また東京都の養育院の中に附属病院、あるいはその敷地内に老人総合研究所というようなものも設置をされておりまして、今後ますますそういう形が推進されていくのではないかと考えておるわけでございます。
  82. 千葉景子

    ○千葉景子君 ますます推進されていくのではないかというような受け身の形ではなくて、今後のこういう公的な医療施設あるいは研究機関などの設置について検討されているのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  83. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 私どもといたしましては、現在の段階では、むしろ臨床に従事をする医師あるいは開業をするお医者さん、そういった方々に老年病と申しますか、あるいは全人的な医療、総合的な診療、そういったものの技術なり考え方をもっともっと持っていただくというようなことが一般的に必要ではなかろうかということで、その面での医学教育の改善でございますとか、あるいは卒業直後の二年間の臨床研修、その中に総合臨床方式を導入するとか、あるいはまた家庭医ということで全人的な診療、あるいは家庭を基盤にした地域プライマリーケアの担い手というようなことで、家庭医に関する懇談会を設置いたしまして今鋭意検討をいたしておるところでございます。
  84. 千葉景子

    ○千葉景子君 現在の段階では、そういう研究段階といってもまあ過言ではないかとは思いますけれども、入院するといいますか、医療を受ける老人なりの立場、家族なりの立場といたしますと、非常にあちらこちらの医療機関にかからなければいけない、また自分がどこがぐあい悪いと言われてもすぐ判断つきかねるものもあるわけで、そういうときに老人医療、老人科というようなものが確立されることによって非常に受診がしやすくなるという面もあるかと思いますので、ぜひこれは推進していただきたいと思います。  現実に例えばよくあることなんですけれども、御老人ですと骨折などの事故などがよくございます。そうなりますと、数カ月の入院後骨折の方は治ったけれども、すっかりもう精神的にぼけといいますか、そういうものがきてしまったとか、あるいはずっと寝ていたために内臓の機能が低下してしまったとか、かなりそういう事実を私も知っておりますし、私も九十になる祖母を持っておりまして、現実にそういう経験もしております。そういう意味では御老人を一つの総体としてとらえていただかないと、こういう問題は解決しないだろうと思います。  また、先ほどから医療費の問題が出ております。できるだけ医療費の増大を抑えていきたい、予防医学という問題もあるかと思いますけれども、こういう面でも総合的に治療ができるあるいは判断ができるということになれば、医療費などの面にも大きな効果が出てくるんではないかと思いますけれども、盛んに医療費の問題が出ておりますけれども、その辺はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  85. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) お話しのとおりでございまして、老人、まあ慢性的な疾患を持つと同時にまた病気と同居しながら生活を進めていかなきゃならぬというような実態もあるわけでございまして、老人を全人的に治療していくということは非常に重要で、そのことがやがては結果的に老人医療費に好影響をもたらすということは十分考えられるわけでございまして、私どもといたしましても、お話しのような老年医学、老年病学の振興、あるいはまた老年病を専攻したお医者さんが病院の中で例えば、言葉は悪いんですが、振り分けですね、各科にどういうふうに振り分けていくかというような形のものができていくことを私ども期待もし関係の学会にもいろいろそういう御相談もいたしておるところでございます。
  86. 千葉景子

    ○千葉景子君 先ほど、現在医療法の第二次改正の問題が検討されているということでございますけれども、そういう中でこういう老年医学、老人科というような問題について体系を整備するおつもりはございますか。
  87. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 医療法の改正の中で直接老年病学、これは医学医療のまさに中身になるわけでございますが、直接的に医療法として触れ得るかどうかいろいろ問題はあろうと思いますけれども、ただ、一つ今議論になっております診療科名の標榜というような点で老人病科あるいは老年病科というものもひとつ検討対象になっておるわけでございまして、これは標榜科名等の表示に関する検討会、現在進行中でございますけれども、この中で検討いたしまして、必要があれば第二次医療法の改正に盛り込むというようなこともあろうかとも考えております。
  88. 千葉景子

    ○千葉景子君 それはぜひ名称の問題としても検討していただくことは当然かと思いますけれども、それは中身のない名前だけのものであっては意味がないわけでございますので、ぜひそれに十分内容のある老人科というものができますように、研究を重ね、また体制整備を推進していただきたい、そういうふうに思っております。  ところで今回の老人保健施設でございますけれども、先ほどからといいますか、この委員会審議を一貫して聞いておりますと、入院、治療などはもう必要ない、そして家庭へ復帰するその中間といいますか、その間を埋めるものであるということが言われております。とりわけそうなりますとリハビリというものが重要な内容になるということですけれども、言葉はリハビリ、リハビリと出てきますけれども、老人の医療にとってのリハビリというのは一体どういうものを基本としていらっしゃるんでしょうか。
  89. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 大変難しいお答えになるわけでございますけれども、病院でもリハビリが行われますし、それからこの中間施設でも考えておりますし、それからまた社会福祉の体系でもいろんな訓練、日常生活訓練等が行われていまして、広い意味ではリハビリと言えるかとも思います。  私ども、老人保健施設で考えておりますリハビリはやはりOT、PTと専門家がやっていただくリハビリでございまして、いわば本格的なリハビリでございますが、病院では、急性期の治療が終わって、そして残存機能をどうして維持したり回復するかというような意味でのリハビリが中心になると思いますけれども、老人保健施設では、いろいろお答えいたしておりますように、家庭復帰なり地域社会への復帰というものを考えたリハビリが中心になりますので、医学的なリハビリの要素を加えながら、かつ日常生活が家庭でできるような訓練に重点を置いたものになろうかなというふうに考えております。
  90. 千葉景子

    ○千葉景子君 どうもはっきりわからないんですけれどもね。基本的には機能回復といいますか、そういうリハビリというのはある意味では医療の面でしっかりと行っていただくということが必要なんじゃないかと思うんです。そうしますと、老人の場合というのは、ここまでやったからリハビリが終わって家庭に復帰できるというものではなくて、生活そのものがリハビリといいますか、常にリハビリを一定程度しながら生活していくというのが老人の生活ということになるんではないかと思うんです。  そうなりますとむしろ、先ほどから話がありますように、現在の在宅サービスなり家庭でも機能訓練をするためにいろいろデイケアとか通所とか、そういうものをむしろ充実させていく、こういうことが必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。施設としてそういうものをつくる必要性といいますかね。
  91. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 老人のリハビリテーションに関しましては、御指摘のように、一般の若い方と違いまして、治ったからもう何もしないというわけにはいかないのは事実でございます。それから、老人保健施設におきましても、特別養護老人ホームにおきましても、家庭においても、もちろん病院でもいろんな形のリハビリテーションが行われておるわけでございます。  したがって私どもとしては、例えば老人保健事業でも機能回復訓練をもっと進めていこうということで、それも重要な要素に入れておりまして、今おっしゃいましたような市町村保健センターでございますとか特別養護老人ホームとか老人福祉センターとか、そういうところでも通いながらリハビリテーション、ADLの訓練を含めましたいろいろな形のリハビリテーションをどんどん拡大してやっていくという方向考えているわけでございますし、第二次の老人保健事業の五カ年計画でもそのような方向考えております。
  92. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひそれは強化していただかなければいけないわけです。そうなりますと、先ほどからどうもこの中間施設といいますのが何かこれまでの施設を縮小といいますか、さらに医療は少し弱め、介護の面も訓練の面でも人員的にも余り十分でない施設ができる、そこに今老人病院などに収容されている方がたまってしまうという危険性をどうしても私などは感じてしまうわけですけれども、そういう危惧に対してどうお考えになっていらっしゃいますか。
  93. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設でリハビリが行われて家庭復帰ができるということで、家庭復帰を願った後もどういうふうにアフターケアをするかというような点だろうと思います。  私どもも老人保健施設にはぜひ在宅支援的な機能も持たせたいというふうに考えておりますので、先生の今おっしゃいましたように、ここでリハビリが功を奏して、ぜひそうありたいと思っておりますけれども、家庭に帰られる、しかし家庭に帰られてもまだリハビリを続けられたい、あるいは一週間程度またショートステイの形で入所されてリハビリその他のケアを受けたいというような方をこの施設がいわば在宅支援という形でショートスティなりあるいはデイケアサービスというようなものもぜひこの老人保健施設でできるようにいたしたいと思っておりますので、この点は先生考え方と私の考え方は全く一致いたしておりますので、そういう機能にこれからもウエートを置いた形での設計というものもぜひしていきたいと思っております。
  94. 千葉景子

    ○千葉景子君 それではちょっとお聞きするんですが、今養護特別老人ホーム、これが不足しているということはお認めになられますね。
  95. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 特別養護老人ホームの御質問と思いますが、おっしゃるとおり、現在というかこの数年来随分急ピッチで整備を進めてまいりましたけれども、なお二万人程度の待機者がいるということで、現在不足していることは事実でございます。それからさらに、これからやはり老齢人口がふえますのでそれに伴って寝たきり老人もふえるということを考えますと、かなりこれからも大幅な整備を行わなきゃならないという点は考えております。
  96. 千葉景子

    ○千葉景子君 こういうことになりますと、むしろ今急がれているのは、特別養護老人ホームの充実、中途半端な中間施設というのではなくて、在宅ケアでは難しい老人のための施設、こういうものを充実させる。さもないと、やはり施設ができれば今どうしても手に余っているような方が施設に収容されがちだ、これはもう施設ができれば必ずそういうことが起こるというのはこれまでの歴史でも示されているところですけれども、この特別養護老人ホームの充実ということで、今お示しになられた計画で必ず実行はされるわけですね。
  97. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 特別養護老人ホームの数の確保、それから適正配置という面もあるかもしれません、そこら辺はこれからもやっていきたいと思いますが、ただ、特別養護老人ホームに期待する機能という面を考えてみますと、私どもは、たびたび申し上げておりますように、あくまでこの特養というのは家庭にかわって生活の場を提供し、生活サービスを行うという施設でございますから、やはりそこに医療と生活と両方の面をあわせ持つということはこれは困難だし、それはまた別の体系、具体的に言えば中間施設でございますけれども、そういったもの、また医療の面については病院、こういう仕分けをするのが一番現実的な対応ではなかろうか、このように思うわけでございます。
  98. 千葉景子

    ○千葉景子君 機能が違うというお話でしたけれども、今回中間施設ということで、これまでになかった生活と医療と両方のニーズにこたえるという施設をつくろうとされているわけですから、むしろ現在ある特別養護老人ホーム、こういうものの医療充実ということもできないことではないんじゃないでしょうか。
  99. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 確かに医療機能充実というのは一つの方法ではあろうと思います。ただ、医療の面がなくて現在どおり生活の場の提供で済む方々もいらっしゃるわけでございます。だからどういう仕組みにするのが一番現実的かという面で者えるべきだろうと思います。そうしますと、先ほど申しましたように病院、中間施設、時養という仕組み、これが一番現実的ではなかろうかというのが私どもの考え方でございます。
  100. 千葉景子

    ○千葉景子君 むしろ一番現実的といいますか、素朴に私などは考えますけれども、医療の面、老人病院のリハビリを含めた充実、そして医療面も兼ね備えた特別養護老人ホームの充実と、そして在宅ケア、これに向かっての積極的な推進、これが一番すっきりした姿ではないだろうかと思うんですけれども、この辺は見解の違いかと思いますけれども、中間施設が先ほど出ているようなうば捨て山にならないようにそれはぜひ今後も検討やあるいは改良、そういうものを積み重ね、御報告をいただきたいというふうに思っております。  それから、特別養護老人ホームの話が出たところなんですけれども、現在どうしても施設というのはサービスをする側の面からいろいろな機能とかあるいは便利さ、こういうものが追求されているように思います。むしろそこにサービスを受ける側の面、その人権といいますか、個人の尊重、こういうものが叫ばれるところだと思うんですけれども、特養の現在の内容ですね、居室、個人部屋あるいは最低基準、その辺はどんなようになっておりますでしょうか。
  101. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 特養の居室の状況でございますが、今手元にございますのは東京都の例がございます。三人室以下のものあるいは四人室、これを合わせますと約六八%、七割でございます。五人室以上が三二%でございます。  最低基準は、細かな規定がございますが、いかがいたしましょうか。
  102. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっと時間もありませんので、細かい点は後ほど資料としていただきたいというふうに思いますけれども、三人室、四人室以下が六八%ということになっております。五人室以上がまだかなりの部分存在しているということでございますけれども、やはり老人といえども個人の生活とか個人のプライバシーという側面があるわけですけれども、これを今後どのように改善されていく御予定があるか。
  103. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 確かに入所者のプライバシー、これは大変重要な問題でこざいます。そこで私どもは、養護老人ホーム、まあ比較的元気な御老人の施設でございますが、これにつきましては個室か二人部屋ということを目標に年々その整備を図っておるところでございます。特別養護老人ホームの方は、御案内のように虚弱な寝たきり老人でございますから、かなり手厚い介護を必要とするわけであります。そういった介護を主な役割とする施設であるということでありますから、確かにプライバシーも同時に重要でございますけれども、そこら辺の兼ね合いというものがひとつありますので、そこで私どもは、特養につきましては四人部屋を基準にして整備を進めようということで指導をしておるところでございます。
  104. 千葉景子

    ○千葉景子君 兼ね合いというふうに言われますけれども、個人の問題というのは兼ね合いでよくなったり悪くなったりするという問題ではないんじゃないかというふうに思うんですね。やはり一人一人が普通の生活をしていれば、個人の部屋を持ったりあるいはひとりっきりになるような時間を持ったりするわけですから、寝たきりといっても、重介護が必要な方だといっても、やはりその個人の尊厳といいますか、そういうものを守っていく必要は当然あるかというふうに思います。  そういうことも前提としまして、四人部屋を原則ということでございますけれども、さらにこれをよりよい方向にされていくというおつもりはございませんか。
  105. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 寝たきり老人に対する介護、これは介護する側の問題ももちろんありますけれども、どのようにしたら手厚い看護ができるか、そういう面があるわけであります。必ずしもお世話する方だけの側の事情でもございません。しかしそうはいいましても、確かにプライバシーは大変大事な問題でございますので、例えばよく言われますのは、おしめの交換なんかございます。これは寝たきりの方でも確かにプライバシーの面で問題がありますので、四人部屋ということは基準にしておりますけれども、例えば中にカーテンを引いて仕切りをするとか、そういった意味の配慮、これはするように従来から指導しているところであります。  四人部屋の基準をさらにという点については、現段階でそういたしますと言うわけにはちょっとまいらないのでございます。
  106. 千葉景子

    ○千葉景子君 養護老人ホームの方はいかがでしょうか。
  107. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 養護老人ホームにつきましては、先ほど申しましたように個室または二人部屋ということで、これは年々そういうことで進んでまいっております。シェアもそれが広がっておりますので、現在の段階では個室または二人部屋というところに全部がシフトするように努力をしたいと思っております。
  108. 千葉景子

    ○千葉景子君 この点も、施設ができますと必ず施設を管理する側といいますか、それを運営する側の都合、こういうものが強くあらわれることがしばしばでございますので、ぜひそういうことのないように今後もより個室化、こういうものを推進していくような方向考えていただきたいというふうに思います。  ところで、今一番問題になっている、そしておくれている問題として私は、言葉は余り好きではございませんけれども痴呆性老人、この介護の問題があるのではないだろうかというふうに思っております。その点についての基本的な今後の政策といいますか施策、いかがでしょうか。
  109. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 従前から私どもといたしましても痴呆性老人の問題は非常に重要な問題として考えておりましたし、若干の施策も行ってきたわけでございますが、今後さらに長寿社会の到来を控えましてこの問題というのは非常に重要であるという認識をいたしまして、ことしの八月に厚生省の中に痴呆性老人対策推進本部を設置いたしまして、総合的な施策の推進を図るということで検討を進めておるところでございます。  内容的に申し上げますと、痴呆性老人対策につきましては、調査研究の推進でございますとか、発生予防対策の充実でございますとか、在宅対策をどのように確立するか、施設対策としてはどういうふうなものを推進すべきか、マンパワーはどういう職種をどのような量を確保すべきかというふうな重点の項目を掲げまして、その対策本部の中に部会を設けましてそれぞれ検討しておると同時に、専門家会議というものを設置いたしまして、有識者の御意見を伺いながら私どもの検討の参考にさせていただきたいということで考えております。  この推進本部の今後のスケジュールでございますけれども、私どもといたしましては、来年の夏ごろまでに基本方針について一応の結論を得たいということで現在作業をしておるところでございます。
  110. 千葉景子

    ○千葉景子君 その作業でございますけれども、どの程度進んでいらっしゃるんでしょうか。
  111. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほど申し上げましたように、来年の夏ごろをめどに私どもとしては一応の結論を得たいということで作業を進めておりますが、現在、専門委員会が昨日もございまして、五回開催をしていただいておりまして、いろいろの面について専門的な御意見を私どもとしては伺っておるところでございますし、各部会につきましては数回ずつ部会を開催しておるのが実情でございます。
  112. 千葉景子

    ○千葉景子君 専門家部会ということでございますけれども、この専門家といいますのはどういう方々、個人的な名前は別といたしまして、どういう分野の方々で構成されていらっしゃるんですか。
  113. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 厚生省のOBでございます方を、技官でございますけれども、座長にいたしまして、国立精神・神経センターの精神保健研究所の方とか、東京都老人総合研究所の方とか、保健所の方とか、臨床心理の関係の方とか、看護の方あるいは精神医学の専門家、国立病院の院長、それから社会福祉法人の特別養護老人ホームの園長さんなどが入っておられます。
  114. 千葉景子

    ○千葉景子君 これについては来年の夏をめどに作業を進められているということでございますけれども、その内容については広く公開をされるという御予定でございますか、作業が終わった段階で。
  115. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほど申し上げましたような五項目と申しますか、大きな柱を中心に基本方針というものを私ども取りまとめる予定にしてございますので、それができました段階では発表することになろうかと思います。
  116. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひこれも広く多くの意見を取り入れた検討をしていただきたいというふうに思います。  ところで、この痴呆性老人、現在では在宅であるとかあるいは病院あるいは養護老人ホーム、特養などにお入りになっている方もいらっしゃると思いますし、また精神病院などに入っていらっしゃる方もあるかと思いますけれども、精神病院などに入院させられているといいますか、している痴呆性老人の方についての実態などは調査されたようなことはございますか。
  117. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 全国網羅的に実態調査というふうなことをやってはおりませんけれども、私どもの推定では、精神病院に約三万人の痴呆性老人の方が入院しておられるというふうに推計しております。
  118. 千葉景子

    ○千葉景子君 三万人というかなりの人数の方が入っていらっしゃるようですけれども、現在の精神病院の実態などはもうよく御存じかと思いますけれども、その点でも、厄介払いのような形で精神病院に入れられているというケースもかなりあるのではないかと思いますので、その辺の実態をぜひ調査をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  119. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 痴呆性老人がどういう、まあ原則といたしまして私ども在宅で家族に介護されるのが一番いいと考えておりますけれども、家庭環境その他でいろいろの状況に差があろうかと思いますので、今おっしゃられましたような精神病院へ収容されておられる方、今後できます老人保健施設へ入っていただく方、あるいは特別養護老人ホームでお預かりいただく方等、いろいろの処遇の対応は分かれるかと思います。これもまだ学問的な開発とかあるいはいろいろの問題がおくれている部分もありまして、こういう方たちに対します処遇の問題というのが、的確に学会あるいは医療施設等でもまだうまく把握されていない面もあるわけでございますので、そういうところも私どもとしてはさらに研究を進めて、原則としては在宅で家族に介護していただくようなことで考えておりますが、個々の患者さんについてすべて実態を調査するということは、現在のところ直ちには考えておりません。
  120. 千葉景子

    ○千葉景子君 個々の患者さんのすべてを実態調査するということはかなり困難をきわめると思いますけれども、今いろいろな精神病院での不祥事とか不当な拘束、こういうものが叫ばれているときですので、ぜひこの面だけでも調査をして、不当に入院をしているような御老人、こういうものに対しては適切な処置を講ずるように私は要望いたしますが、いかがでしょうか。
  121. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 精神病院に入っておられる患者さんの人権の問題を含めまして、私ども現在精神衛生法の改正作業を進めておりますし、公衆衛生審議会でもいろいろ御検討いただいているところでございますので、そちらの専門家の御意見も聞いてみたいと考えております。
  122. 千葉景子

    ○千葉景子君 改正問題の前提としてこういう実態をぜひ把握していただきたい。実態を知らずしてその処遇とか改善というのはあり得ないわけですから、ぜひそれも積極的に行っていただきたいと思います。  もう質問時間がありませんので、最後に厚生大臣に一言お伺いしたいんですけれども、私は、福祉行政、福祉というのは非常に手間といいますか、いろいろな困難をきわめ、そして基本的にはお金もかかるものだというふうに思います。そういう意味で厚生大臣に、福祉に十分に金をよこせと、まあ何かおかしな飛行機を買うよりも福祉に回せぐらいな意気込みでぜひ頑張っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  123. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これから予算編成に入るわけでございますけれども、例年大変厳しい財政状況の中で予算編成が行われるわけでございますが、何といいましても、いろいろな工夫をいたしたり、また福祉の水準を下げないように、下げないというよりも、今後長寿社会へ向かってその福祉の基盤を充実させていく、そういう点に重点的に配慮をして頑張っていきたいというふうに考えております。
  124. 千葉景子

    ○千葉景子君 ぜひ厚生大臣も体を張って頑張っていただきたいというふうに思います。  終わります。
  125. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時二十分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ─────・─────    午後二時二十四分開会
  126. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、老人保健法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  127. 中野鉄造

    中野鉄造君 本法案に対する質疑ももうほとんど言い尽くされたような感じがいたしますが、そこで私も、事新たな質問ではないと思いますけれども、少なくとも私は初めてお尋ねするわけですから、ひとつ親切にお答えをいただきたい、こう思います。  そこでまず初めに、本法案の重要な柱の一つであります中間施設についてお尋ねいたしますが、私はこの必要性については、本会議でも述べましたように、現今の急速な長寿社会、核家族化の進む中で、こうした社会情勢の中ではこれは是といたしますけれども、政府案を見聞する限り、内容不明確な点がまた多々ありますし、これをこのまま発足させた場合に、医療システム上種々の問題点が指摘されております。このことについては同僚委員から繰り返し質疑が行われておりますが、そこで改めてお尋ねいたしますが、現在の老人病院、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、そして今回の中間施設、この四つの定義というものを改めてお聞かせいただきたいと思うんです。
  128. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人病院なり特別養護老人ホームあるいは今回新しく創設いたします老人保健施設についての明確な区別等についてのお尋ねだと思っております。  まず機能面から申し上げますと、老人病院の方は治療機能が主でございます。それから老人保健施設につきましては、家庭復帰機能と申しますか、それがメーンでございまして、あわせて療養機能も兼ね備えるわけでございますし、それから生活のお世話の機能ということでかなり多岐的な機能を持っているわけでございますが、主眼点は家庭復帰機能、療養機能ということでございます。それから特別養護老人ホームは、家庭と同じ機能ということで家庭がわりの機能を発揮するということでございます。  対象者でございますけれども、老人病院は、症状の急性期あるいは慢性期の治療を必要とする人ということで、いわば病気の治療をそこで行う場が老人病院だということでございます。老人保健施設につきましては、これもいろんなサービスがあるわけでございますけれども、リハビリテーション機能、それから介護あるいは看護の機能ということでございますので、私どもはこの対象者につきましては、症状安定期にあり入院治療をする必要はないけれども、リハビリ、看護、介護を必要とする寝たきり老人等がこの対象だということでございます。特別養護老人ホームは在宅での介護が困難なため、生活の場を必要とする寝たきり老人が対象者であるということでございます。  その他入院あるいは処置の要件につきましては、老人病院は、療養が必要で治療が重点でございますけれども、家庭の事情というものは考慮されないわけでございます。老人保健施設もその点は同様でございますけれども、リハビリ、介護、看護等、施設療養の必要な方が入るという要件でございます。特別養護老人ホームは常時の介護が必要な場合でございまして、居宅での介護が困難ということが要件になろうかと思っております。  そのほかいろいろ特徴的な点はあるわけでございますが、例えば開設の許可につきましては、病院も知事の許可、それから老人保健施設も知事の許可で開設が認められるということになります。特別養護老人ホームもその点は、設置については社会福祉法人等は知事の認可ということになっておりまして、この辺の手続は同じでございます。  あといろいろと財源の問題、費用の支払いの仕方、それから利用の手続等それぞれ施設ごとに制度が異なっておりますけれども、詳しくなりますので、端的な機能とか対象者についてお答えを申し上げました。
  129. 中野鉄造

    中野鉄造君 今回の中間施設に入ってくるお年寄りという方々はほとんどの方が病院から転送されてくる、こういうように考えてよろしいんですか。
  130. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) そのとおりでございますけれども、ケースによっては家庭で療養されていた方が、どうしても家庭では病状が少し重くなって療養ができなくなったということでございますが、これが従来ですとそのまま病院に入院ということだったと思いますけれども、これからは入院治療が必要でないという方の場合にはこの中間施設に入っていただいて、さらに病気をよくした上でまた家庭に復帰するというケースも出てこようかと思いますけれども、主たる流れから申しますと、やはり老人病院等で入院治療を終わった方がこの施設に入られてリハビリ等を受けて家庭に復帰される、そういうことに相なろうかと思っております。
  131. 中野鉄造

    中野鉄造君 そうしますと、今まで病院に入っていた人が、数カ月そこに入院していて、ここが居心地がよいというか、もうそんなまた新しいところに行きたくない、自分はここでいいよと、こういうようになった場合にはどうなんですか。
  132. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 結論からいうと、なかなかやむを得ない面があるわけでございますけれども、私たちの考えは、先ほどから申し上げておりますように、家庭復帰を目指す施設を考えております。したがって機能訓練のための設備とかOT、PTといったリハビリの専門職種を配置しますとともに、さらに特徴的なのは、家庭復帰のためのケースワーク等をやっていただく指導員の方も置く予定でございます。  したがいまして、この施設を卒業されて家庭復帰が望ましいのにさらにこの施設におられるという場合は、強制的とかそういったことはできませんけれども、そのケースワークをしていただく職員等が御本人なり家庭とよく相談をし連絡をとり合って、私どもはできるだけお年寄りは家庭で生活できる人は家庭なり地域社会で生活を送っていただくのがいいと思っておりますので、そういう機能を十分発揮しまして、この施設に、今老人病院等に社会的入院で多くお年寄りの方がとどまっておられる事態と同じような事態がここでもできないように、機能面それから設備面、それからいろんな手だてを尽くしていきたいと思っております。  特に私どもとしては、施設みずからも、漫然とケアを続けるということでなくて、一定期間ごとに、例えば施設の管理者としてこのお年寄りはもうこのままでいいのか家庭に帰るべきかというようなやはりケアについての一つの判断を定期的にやっていただくというようなことも運営基準等で、ガイドラインの形で示しながら、施設みずからもそういう努力なり評価なり判断をしていただくとともに、また家庭にもケースワーカー等が協力をしていただきまして、できるだけ家庭で生活ができる方はそのような方向に、それぞれのお年寄りがふさわしいところで処遇されるように考えていかなければいけないんではないかというふうに思います。
  133. 中野鉄造

    中野鉄造君 くどいようですけれども、なるほど今お答えになったようなそういうケースばかりあればいいんですけれども、現実にはなかなかそうはいきませんで、いろいろな家庭の事情等もありまして、御本人ももう家には帰りたくない、またどうかすると家族の方も今退院させてこられてもかえって困る、こういったようなことが現実にあるわけなんですね。そういったようなときに、本人も退所するのを拒む、十分に家庭に帰れるような状態には今はあるかもしれぬけれども、それをもし帰した場合にはまたぞろ悪化するというようなことは当然考えられるわけですけれども、そういったような場合に、いわゆる社会的入院といったような方々が今後こういう施設を増設するとそれだけ正比例してふえてくるんじゃないか、そういうことも考えられるんですけれども、その点についてのお考えをただしたいと思います。
  134. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先ほど言いましたような方向で私どもは健全な運営を行いながら、この施設の目的であります家庭復帰の機能がフルに発揮できるように運営その他の面で行っていきたいと思います。極端な例として、ほとんどこの施設におられるのがもう明らかに不適当である、例えば非常に元気がよろしくて毎日外に出かけられて、歩き回られて元気に何か外で生活をされて、また夜だけここに帰ってくるというような極端な人がここで発生した場合には、この規定にもございますように、この療養の給付というのは市町村長が必要と認めた場合に行うことになっておりますから、私どもとしては、そういう極端な本当にぴんぴんした元気な老人がここにおられるというようなことがはっきりしますれば、それはもう給付は差しとめさせていただかざるを得ないだろうというふうに思います。
  135. 中野鉄造

    中野鉄造君 次に、午前中にもいろいろ保健事業についての質疑がなされておりましたけれども、私もこの点についてお尋ねいたしたいと思います。  国民皆保険のもとでの保健事業の重要性、これはもう老人保健法によるものだけの問題ではありませんで、人間はもとより生きとし生けるもの必ずやがては死を迎えるわけでございます。これはもう例外のない厳粛なる事実でもあるわけですが、どうせ死を迎えるならば、病を得て何年も何カ月も病床で呻吟するというようなことではなくて、なろうことなら枯れ木が朽ち倒れるような形で余り苦しまずに天寿を全うしたい、こういうように思うわけです。またそうでなければ本人もこれは苦しい思いをするのはもとよりのこと、肉親の人、周囲の人、そしてさらには間接的には若い世代の人たちに財政的にも非常に負担をかけるというようなことになるわけです。  そういうことを少しでも少なくするために、少しでも長く健康でありたい、少しでも周囲の迷惑を少なくしたい、そういったところから我が党は、二年前の五十九年の健康保険法改正の際に、予防医学の観点から保健事業の重要性を主張いたしまして、被保険者等の健康の保持、増進を促進するため、保険者による健康教育、健康相談、健康審査等の事業に関する規定を明確にするという修正を取りつけたわけでございますが、この健康保険法の改正の重要性をどういうように政府は受けとめておられるのか、その後の行政にどういうふうに反映されているのか、その辺のところをお尋ねいたします。
  136. 下村健

    政府委員下村健君) お話にありましたように、五十九年の健康保険法改正の際に、保健施設事業を積極的に推進するということでお話のような規定が設けられたわけでございます。その後、したがいまして各健康保険組合に健康管理事業の推進委員会のようなものをつくれというふうな指導をやっております。またそれにあわせまして、保健婦さんのような専門職員の配置をする、あるいはそういうふうな方々を有効に活用していく。それからもう一つは、健康教育、従来から健康審査等は比較的よくやっていたわけでございますが、健康教育あるいは心の健康づくりといった精神面の問題等も取り上げるようにというふうな指導を行っております。  それからまた一方で、昨年の二月から健保連と共同いたしまして、各分野の専門家から成ります保健施設事業研究会というものをつくりまして、疾病構造あるいは国民の健康観の変化等があるわけでございますが、それらに即応して、今後健康保健組合が行うべき保健施設関係の事業について検討をいただいておりましたところ、大体その結果がまとまりましたので、この研究会の検討結果を踏まえて、近く健康保険組合の事業運営基準、健康関連の事業についての基準を示しているわけでございますが、その事業運営基準を改正いたしまして新しい事業運営基準に基づいて今後とも積極的な活動が行われるように指導をしてまいりたいと考えているところでございます。  また、国民健康保険につきましても、お話しのように、国民健康保険法の八十二条でしたかで、健康教育、健康相談等の問題を取り上げたわけでございますが、国民健康保険の分野につきましては、ヘルスパイオニアタウン事業とか、あるいは健康管理のデータバンク事業でありますとかといった形の新しい事業も行わせまして、そのほかにまたコンピューターによる健康調査事業等の新しい事業も取り上げるというふうなことで、各市町村の特色を生かして積極的に取り組むよう、これもまた積極的な指導を行っているところでございます。
  137. 内藤洌

    政府委員(内藤洌君) 政府管掌健康保険におきましても、成人病予防検診などの健康管理対策を実施いたしておりまして、五十九年の法律改正を受けましてこの事業の重要性にかんがみましてその拡充を図ってきておるところでございます。  政管健保でやっております具体的な方策といたしましては、一つは、今申し上げました成人病予防検診でございまして、成人病の早期発見のために近年特にその充実を図ってきておるところでございます。また、その拠点となります病院等への検診用の機器の整備あるいはその他の施設の整備につきましても力を注いできておるところでございます。そのほか、被保険者あるいは事業主に健康管理に関する知識の普及啓蒙を行うために健康相談室を設けるとか講習会を開くとかというようなこともやっておりますし、また、被保険者の方々が自分の健康は自分で守るという意識を強めていただくために、健康管理手帳の配付といったような事業も実施をしておるところでございます。特に成人病予防検診につきましては、近年重点的に拡充を図ってきておるところでございます。
  138. 中野鉄造

    中野鉄造君 ところで、老人保健事業における一般健康診査というものも三〇%を超えておりますけれども、これはやはり今後年次計画を立てて将来目標をせめて五〇%に近づけると、こういったような努力をすべきじゃないかと思いますが、その辺はいかがですか。
  139. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 老人保健法に位置づけられております老人保健事業は、おっしゃいますように、健やかに老いるという観点から非常に重要な事業として私ども位置づけておりますが、五十七年度から行われておりますこの事業も、初めて市町村が実施するということでまだなれていない面もございましたこともございまして、第一次計画では非常に低い受診率の市町村もございました。しかしながら、私どもとしては、今後この事業の重要性ということにかんがみまして、おっしゃるように、現在一般健康診査については五〇%ということで目標を掲げておりますが、いろいろ実施計画等に工夫を加える、あるいは健診の内容を質的に向上させるというふうなこと、さらには地域住民が積極的にそういう事業に御参加いただくというふうなことを含めまして受診率の向上をさらに図って、できるだけ五〇%に近づけるように全力を挙げたいと考えております。
  140. 中野鉄造

    中野鉄造君 午前中の質疑の中にもありましたように、過般発表された健康マップを見ましても、受診率の低いところほど成人病の罹病率が高いという、そういう相関関係があるわけですが、そうした受診率がなかなか上がらない、これは政府予算を十分にとれないというところから、抑制ぎみに働いているのではないかという気がしてならないんです。そしてさらにいま一つは、健診内容をもっと魅力ある充実したものにしていくべきじゃないか、こういうように思うわけです。  それと健診に係る一部負担をできるだけ少額にして、健診を受けやすいようにしていかなくちゃいけないと思うんですが、健診内容、一部負担金、この二つについて、今どういうふうになっておりますか。
  141. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 六十一年度をもって第一次五カ年計画が終了するわけでございまして、御指摘のように、いろいろの御批判もございましたこともございましたが、それからこういう集団健診的な事業でございますので、学問的な研究の成果をこういうものに入れるという時期の問題もございましたけれども、私どもといたしましては、第二次五カ年計画におきましては、おっしゃるように、いろいろ新しいものを加えていったらいかがかということで現在予算を要求しておるところでございまして、肺がん検診でございますとか乳がん検診、それから従前やっておりました子宮がん検診は子宮頸がんに対する検診でございますが、子宮体部のがんも、日本で、外国ほどではございませんけれども非常にふえてきておりますので、そういうものを取り入れるというふうなこと等をいろいろ工夫いたしまして、住民の方たちに受けるにふさわしいといいますか、魅力のあるような健診内容に質的に高めていくということをいろいろ工夫してまいりたいと考えております。  それから健康診査の一部負担の問題でございますが、これは健康に対する自己責任の確立という点も考慮いたしまして、健康診査の実施に当たっては、従来の経緯を踏まえまして健診単価の三分の一から四分の一程度の一部負担をお願いしておるわけでございますが、その額は据え置いたままでございます。第二次五カ年計画においては、健診の内容をただいま申し上げましたような方向充実、あるいは質的な向上を図っていくこととしておりますが、一部負担については、従来の考え方を踏まえまして、おっしゃるような方向で適切に設定してまいりたいと考えておるところでございます。
  142. 中野鉄造

    中野鉄造君 現在、一般成人病予防検診の一部負担というのは三千五百円ということになっておりますけれども、この一部負担というのはどういうような考え方で決められるんですか。
  143. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 私ども、健康に対する自覚をお持ちいただくということで、受けることにみずから一部を負担していただいて、自分の健康を将来的にも管理していただくような自覚の一助としたいということで、何でもただはよくないという考えでございまして、多少ではございますけれども、一部負担を導入しておるわけでございまして、健診単価の三分の一から四分の一程度ということで考えておるところでございます。
  144. 中野鉄造

    中野鉄造君 次に、健保法二十三条の改正を受けて、政管健保で従来行われていなかったことが最近はだんだん実施されるようになったということは評価いたしますけれども、健保組合にはどういうような指導が行われておりますか。
  145. 下村健

    政府委員下村健君) 一般的な状況については先ほど申し上げたとおりでございますが、保健施設事業の内容といたしましては、健康管理に関するものとしては健康の自己管理及び増進についての教育指導。それから保健婦等による職場または個別訪問による健康相談。それから健康診査でございますが、成人病検診に主体を置きまして、これは一般的に実施をいたしております。そのほかに、健康管理センター等の設置運営等も行っているところでございます。  それからあとは、保健施設事業で行っておりますのは、高額医療費に係る貸付事業等も行っているわけでございますが、一般的な成人病検査の中身といたしましては、一般の健康診査のほかに、成人病関係の心電図でありますとか検尿、血液検査、それから婦人科の子宮がんに関する検査。そのほかに人間ドック等を一部これは本人の負担をいたしている場合もございますが、人間ドック等の奨励というふうな形で積極的に取り組むように指導いたしているわけでございます。
  146. 中野鉄造

    中野鉄造君 その組合のメリットとして、従来は付加給付考えられてきましたけれども、私は、その財源を保健施設事業の充実に向ける方が中長期的に考えたときに加入者のためにもなるんじゃないか。また、健康保険組合の円滑な運営にもこれが役立つんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  147. 下村健

    政府委員下村健君) 最近の私どもの方針といたしましては、付加給付を奨励するというよりも、むしろ保健施設事業に力を入れるようにというふうな観点からいろいろ指導しているわけでございます。  付加給付につきましては、各組合の判断が基礎にあるわけでございますが、受診者と健康な者との負担の公平を図る、あるいは財政状況に配慮いたしまして、付加給付に余り多きを置くよりは、一定の範囲内で行うようにということで指導をいたしております。  現在、六十年度で保健施設費の保険料収入に占める割合が大体六・九%程度になっておりまして、付加給付に要している財源よりも、金額的に申しますとおよそ倍ぐらいが保健施設関係の方に振り向けられている状況だというふうに見ております。
  148. 中野鉄造

    中野鉄造君 それでは次に、国民健康保険における保健施設事業としては先ほども御答弁がありました。第八十二条の改正以後、いろいろとヘルスパイオニアタウン事業だとかあるいは健康管理データバンク事業というものが進められていると思いますけれども、私の調べたところでは、六十一年度において全国でこれが行われたところは五百九十二町村でしかないと、こういうように思いますが、午前中の質疑にもありましたように、健康マップによって市町村別老人医療費その他のもろもろの指標を掲げておりますけれども、そういったようなものから見ても、医療費節減、そして健やかな老後を迎えるためにも、もっともっと町を挙げて村を挙げて行政と住民が一体となって取り組まなければならない、こういうように思うわけであります。  何も医療費節減ばかりでなくて、同じ金をかけるならば、もっともっと予防に回すべきがより先決ではないかと思うんですけれども、そういったような観点から、政府厚生省としても、今後医療費の大きな市町村をむしろモデルとして指導に取り組むべきだと思いますけれども、いかがですか。
  149. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 御指摘のとおりに、私どもといたしましては、保健事業が長期的に老人医療費の適正化にも資するということで考えておりますけれども、今おっしゃいましたようなモデル的な事業を医療費の高い市町村で積極的にやってみたらいかがかというふうな御指摘だと思いますが、そのような、市町村でいろいろ先駆的、モデル的な事業を行う体制のあるところは、私どもといたしましても、その点に着目していろいろ工夫をして実施をさせていただきたいと考えます。
  150. 下村健

    政府委員下村健君) 国民健康保険関係でございますが、ただいまの一般的な方針等も頭に置きながら、各市町村の国保予算編成に際しましては、少なくとも保険料収入の一%以上を保健施設に計上してはどうかというふうな指導を行っているわけでございます。六十年度の実績で見ますと、全保険者三千二百七十のうち、三千九十までは何らかの形で保健施設を計上いたしましてその事業を行っておるわけでございます。  国が助成を行っておる数は、先ほど先生お話しになりました六百足らずの数でございますが、これに対して約十二億余りの助成を行っておるわけでございます。私どもとしては、さらに今後もこの額の増加を図りまして、今後とも保健施設活動の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  151. 中野鉄造

    中野鉄造君 私は、先ほど申し述べました五十九年のこの健保の規定の改正が、官民挙げての健康づくり推進に役立つならば、医療保険の将来にこれほど喜ばしいことはないと思うわけでございます。  そこで、最後に大臣にお尋ねいたしますが、健保事業に取り組む今後の姿勢、そしてその決意をお伺いいたしますと同時に、これから始まる六十二年度予算編成に当たりまして、健康づくり対策予算の要求満額確保にひとつせっかく努力されるようお願いしたいと思います。
  152. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほど来中野先生が御指摘をいただきますように、長寿社会を迎え長寿を全うされるに当たりましては、ただ長生きをしていればいいということではなくて、元気に明るく健やかに長寿を全うしていただくということでなければならないわけでございます。そのためには若いころからの保健事業を推進し、また、お年寄りになられましても、できるだけ病気にならないようにしていただく、そのためにヘルス事業を一層活発にいたしてまいらなければならない、これから取り組むべき非常に大きな課題であるというふうに考えております。  各保険者において行っていただいております保健事業の一層の推進を図りますとともに、それぞれの保険者に属さない方々を対象とする、この老人保健制度に基づく老人保健事業の推進についても力を入れてまいりたいと思います。これまで五カ年、本年までやってまいったわけでございますが、その間には相当な予算を計上し、他には例を見ないぐらいの力を入れて進めてまいったわけでございますが、なお不十分な点もあり、また今後も一層推進をいたしてまいりたい。  今後におきましては、予算額もさることながら、内容の改善、特に受診率のアップ、そのための魅力ある健診とか、また、今後の成人病に対する循環器疾患だとか、また、がんだとかということに対する検診というようなことなど、また、その他のいろいろな相談事業等の事業の拡大、こういった内容の充実ということを特に図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  153. 中野鉄造

    中野鉄造君 終わります。
  154. 中西珠子

    ○中西珠子君 前回の質問におきまして、老人保健法改正案の中の問題点と思われます患者の一部負担の大幅引き上げの問題、また老人保健施設の問題、また国保保険料滞納者に対する制裁措置の問題などをお聞きいたしました。それで、答弁に満足しているわけではございませんので、時間がありましたらまた重ねてお聞きしたいと思いますが、この間の質問の中で時間切れとなってしまって、大変しり切れトンボになりました保健事業についてお伺いいたします。  ただいま同僚委員保健事業につきましてお伺いいたしましたけれども、私は、第二次五カ年計画の重点目標達成のためには、要員の確保と施設の整備が急務と思っておりますが、まず、マンパワーの確保についてお聞きしたいと思います。  保健事業の中で保健婦の果たす役割というものは非常に大きいわけでございますが、現在、保健婦が一人もいない市町村というのは幾つありますか。
  155. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) ヘルス事業を進めます上で保健婦は非常に重要な役割を占めておるわけでございまして、私どもも、その増員に大いに努力をいたしておるところでございます。  昭和五十六年現在で保健婦未設置の市町村が四百二十一ございましたが、それ以後減少に努めてまいりまして、昭和六十年には未設置市町村が二百一に減少してまいっております。
  156. 中西珠子

    ○中西珠子君 まだ保健婦さんが一人もいない市町村が二百一もあるということで、これはもうなるたけ早い時期に保健婦さんを置いてもらうように御指導をいただきたいと思いますが、一人しか保健婦さんがいないという市町村は幾つありますか。
  157. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 一人設置の市町村でございますが、これが昭和五十六年で一千三十六、昭和六十年には八百九十六ということでございます。
  158. 中西珠子

    ○中西珠子君 同僚委員からも御指摘が前回の質問のときにございましたが、やはり一人しか保健婦さんがいないという市町村も大変困るわけでございますので、これも一人ではなく複数にするように早期の御指導をお願いしたいと思います。  第二次五カ年計画の目標年度であります六十六年度には、どのくらいの必要数を見込んでいらっしゃいますか。また、その達成のためにはどのような努力をなさるおつもりですか。
  159. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 第二次五カ年計画終了期が六十六年度でございますが、六十一年度から六十六年度までの常勤の保健婦の増員でございます。六十一年度までに二千七百七十人を増員してまいりましたが、それを含めまして六千七百七十人、したがいまして六十二年から六十六年までに四千人の新規増員を考えております。それ以外に雇い上げの保健婦、これが六十一年度末で三千三百九十九人を予定しておりますが、それを含めまして昭和六十六年度には一万七百三十七人を確保したい。それから、それ以外に従来からおります常勤の保健婦が二千二百二十九人でございますので、それを全部合計いたしますと、六十六年度末には約二万人、一万九千七百三十六人の保健婦を確保したいと考えております。
  160. 中西珠子

    ○中西珠子君 現在の保健事業に対する費用負担のあり方、国が三分の一、都道府県、市町村それぞれ三分の一ずつというこのあり方の中で、この二万人の要員確保達成は可能とお考えになっていますか。
  161. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 今申し上げましたこの二万人の確保でございますが、そのうち常勤の保健婦につきましては、市町村、保健所それぞれの交付金でもって、それぞれ市町村、都道府県に補助をしていきたい。現在の交付金制度を活用して進めていきたいと考えておるわけでございます。
  162. 中西珠子

    ○中西珠子君 交付金制度の活用その他いろいろな方法でぜひこれは確保していただきたいと要望いたします。  それから、理学療法士、作業療法士、いわゆるPTとOTという人たちの確保でございますが、この第二次五カ年計画におきますと非常に少ないんですね。六十一年度は第一次五カ年計画の最終年度で四十九人ということですね。それで、六十二年度、第二次五カ年計画の初年度は、保健所に配置されるPT、OTは六十人ということですが、目標年度におきましてはその倍の百二十人ぐらいというものを配置なさる御予定と、厚生省が発表なさいました案によりますと拝察されるわけでございますけれども、これでは余りにも少ないのではないか。やはり機能訓練というものを保健事業の重要な柱となさり、リハビリの重要性を考えましたときに、これはもう少しふやす必要があるのではないか。まあ同僚委員の中には四千人は必要という御意見の方もいらっしゃいましたけれども、とにかく早急にこれはふやす必要があるのではないかと考えますが、どうでしょうか。  それからもう一つこの関連で、老人保健施設へもやはりPT、OTを配置する予定でいらっしゃいますか。あわせてお伺いいたします。
  163. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) OT、PTでございますが、これは保健所でございますけれども、お話しのとおり、六十一年度の第一次計画の最終年度では四十九人、それ以降、六十六年度の目標年度までに約百二十人を確保したいということでございます。  ヘルス事業の機能訓練事業でございますが、これは市町村が中心に行ってもらうわけでございますけれども、それに対する技術指導等々のために保健所にも配置をする。同時にまた、地域の専門病院等の協力も得まして、そこにおられるPT、OTも活用をしたい。それらを含めて市町村の機能訓練事業の支援、技術指導を図っていきたいということでございます。
  164. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設につきましては、機能回復訓練、リハビリテーション機能を非常に重要視いたしておりまして、OT、PTを配置することを考えております。
  165. 中西珠子

    ○中西珠子君 最近、テクノストレスその他いろいろなストレスの原因が高まっているものですから、精神衛生上の問題は大きくクローズアップされてきております。また、老人性痴呆の問題も非常に重要な問題となってきておりまして、痴呆性老人の発生率というのは非常に高まっていると思うわけでございますが、そういった面から見ましても、精神衛生相談員という人たちの役割は非常に重要であるし、また、その配置というものが非常に重要で、早くそれを実現していただかなければならないわけでございますが、目標年度ではどのくらいを予定していらっしゃるわけですか。
  166. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 第一次の目標年度、つまり六十一年度までに三百八十人、それから第二次五カ年計画の目標年度、六十六年度までに約八百五十人の確保を目標といたしております。
  167. 中西珠子

    ○中西珠子君 痴呆性老人の発生率、出現率、これはどうなっておりますでしょうか。現在、それから将来の見通し。
  168. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 痴呆性老人につきましては、定義の問題でございますとかいろいろ難しい問題が専門家のお話を伺いますとあるようでございますが、現在のところ、私ども一応推計数として持っておりますのは、在宅の方が約五十五万人ではないか。特別養護老人ホームに約四万人、精神病院に約三万人が収容をされておるというふうに推計しております。恐らく今後御老人がふえれば痴呆性老人の方もふえますし、お年寄りのうちでも特にお年寄りの方たちは痴呆の発生率も高いということのようでございますので、恐らく今後ふえると想像しておりますが、私ども、現在一応手持ちとして持っております将来の痴呆性老人の推計でございますけれども、昭和七十五年で九十一万七千人ぐらいではないかというふうなことで考えております。  ただし、これは先ほども申し上げましたような定義の問題ですとか、そのお年寄りの中の高齢者割合等の推移によりまして恐らく変わってくる可能性があると思いますが、これは、ただいま専門委員会にもいろいろそういうことでお聞きをして作業をしていただいているところでございます。
  169. 中西珠子

    ○中西珠子君 七十五年には九十一万七千人ぐらいになるでしょうと、また現在、在宅の痴呆性老人の数は五十五万と伺いましたが、この痴呆性老人の問題は、もう家族の介護では手に負えない問題であると考えますので、この痴呆性老人の対策というものは早急にやっていただきたいと思いますが、施設への収容ということに関しては、厚生省はどのような対策、政策をお持ちでいらっしゃいますか。
  170. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 痴呆性老人と一口に申しましても非常に幅があるわけでございまして、私どもとしては、基本は家族が介護していただくというのが一番いいのではないかと考えておりますけれども、例えば異常行動でございますとか精神症状の強い方、例えば幻覚とか妄想とか徘回、火の不始末とかいろいろのことで問題を起こす方については、やはり精神病院で専門的に治療をしていただく、こういう異常行動も一時的な場合も非常にあるようでございますので、病院で治療していただくというふうなことがそういう方の場合には第一義だと思います。  そのほか、老人保健施設でございますとか家庭の状況によりましては、特別養護老人ホーム等にも収容をしていただいて、痴呆性老人の処遇に欠けることのないよう私どもとしても努力してまいりたいと思いますけれども、私ども、そういうふうなことを含めまして、来年の夏ごろまでに痴呆性老人対策についての基本方針をまとめまして、従前の施策に加えまして、さらに長期的な展望を持ちまして痴呆性老人対策についてさらに充実した方向で実現を図るよう努力してまいりたいと考えております。
  171. 中西珠子

    ○中西珠子君 一日も早く充実した対策を考えていただきたいと思いますが、現在の段階では、老人保健施設には痴呆性老人は入れないというおつもりですか。
  172. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設につきましては、主として寝たきり老人等を対象とする社会復帰施設と考えておりますけれども、現下の痴呆性老人問題は非常に重要な緊急問題でございます。やはり痴呆性老人の方にも、病弱であられるために医療ケアを行いながら生活上のお世話もして差し上げる痴呆性老人の方もおられるわけでございます。しかしながら、そのうち非常に異常行動等のあられる方は無理があるのではないかと考えますけれども、この老人保健施設の医療スタッフあるいは設備それから生活サービス面から見て、無理のない、あるいはふさわしいサービスができる程度の痴呆性老人の方であれば、私どもはこれから受け入れる方向考えていきたいというふうに考えております。
  173. 中西珠子

    ○中西珠子君 異常行動が非常に激しい痴呆性老人は無理でしょうけれども、やはり軽度な痴呆性老人というものは今行き場がないわけですから、できればその老人保健施設に受け入れが可能であればいいし、また、そういったセクターというか、部分を施設の中におつくりになるのも一つのアイデアではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  174. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 痴呆性老人をその他のお年寄りの方とどういうふうに区別して処遇をするかという難しい問題はありましょうけれども、そのために、今先生指摘のようにセクターをつくるということもありましょうけれども、いずれにいたしましても、この施設で受け入れ可能な痴呆性老人は、いろんな工夫を施しながら受け入れ可能な方向でこれから前向きに検討してみたいと思っております。
  175. 中西珠子

    ○中西珠子君 御説明によりますと、老人保健施設は、大体において入院を終わって病状が安定した人が家庭に復帰する前の中間の施設である、結局、家庭復帰ということに重点を置いていらっしゃる。そして、とにかく厚生省はなるたけ入院を長くしないで、病院で治療を終わった人はいわゆる社会的入院という形は避けて、老人保健施設のようなところに受け入れ、そして老人保健施設では定型化した医療をやるというふうなお考えで、できれば早く家庭に復帰させたいということで、結局、在宅福祉というものに重点を置いた政策をおとりになろうとなさっているらしいと考えられるのでございますが、老人の在宅療養というものは、非常に本人にとっても介護者にとっても困難なもので、例えば、最近は病苦に悩む老人の自殺率も上がっておりますし、また、介護者が心身ともに疲労の極致に達して寝たきり老人を殺してしまうなどという極端なケースも出てきているわけでございます。  そして、その介護者の九割近くが婦人である。それも中高年になってしまった嫁の立場の人が多いわけですね。そういう人たちは、やはり中高年の人たちというのはしゅうとめやしゅうとに仕えなければいけないという良妻賢母教育をたたき込まれているから、もう自分がへとへとに疲れ果てても一生懸命になってその介護をするわけですね。それで、私が住んでおりますところの近くでも、御主人の出張中に、寝たきり老人のそばに介護していたお嫁さんが息絶えて、死んでしまっていたなんというのを帰ってきた御主人が見つけたというふうな、そういうケースもあったわけでございます。  いずれにいたしましても、在宅療養をしている御本人のためにも、また介護をしている人のためにも、いろいろな公的サービスというものをお考えになっているとは思うのですが、もっともっとスピーディーに拡充していただく必要があると思うわけでございますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  176. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 長寿社会におきまして、お年寄りが本当に健康で健やかに過ごしていただく、それはでき得るならば住みなれた御家庭で、また地域で御生活をいただくということが一番最善でありますが、今、御指摘のような、介護をしなければならないお年寄りについての御家庭の負担というものも非常に大きいものがあるということを認識いたしております。  私どもとしては、それをできるだけ軽減できるような、そういった在宅福祉サービスというものを一層推進いたしてまいりたい。それについては、やはり福祉と保健、そして医療というような三位一体となったような取り組みというものが非常に大事であるというふうに考えておりまして、これからも、例えば家庭奉仕員と保健婦の方が一緒になって巡回サービスをしていただくとか、また、市町村に医療や保健や福祉のセクションの方々が一体になっていろいろ打ち合わせ、相談をしていただけるような、そういう場というものをつくって、そしてそのサービスを有機的に結合をさしてまいるというようなこととか、そういったようなきめ細かいことを推進いたしてまいりたいというふうに考えております。
  177. 中西珠子

    ○中西珠子君 今大臣がおっしゃいましたように、私も、医療と保健と福祉のサービスが有機的に一体化して機能するように、また、そのような施策をとっていただきたいと心から願うものでございますが、現状はどうかと申しますと、医療も保健も福祉もそれぞれ窓口が違いまして、同じ市町村の役所の中でも、あそこの窓口に行かなければならない、こっちへ行かなければならないと、こう言われまして、何回も何回も足を運ばなければ、例えば訪問看護とか入浴サービスとか、そういうふうなこともやっていただけない。また、本当にまだ少ししか実現していないけれども、ディサービスとかショートステイの事業も、もうあちこち駆けずり回らなければなかなか利用ができない、また、手続も煩瑣だということもございますので、どうぞその点はきめの細かい御配慮、御指導をしていただくようにお願いいたします。  それから、ちょっとまた違う観点から老人保健法改正案の問題点をお聞きしたいのでございますが、これはもう同僚委員が何回もお聞きになったことでございまして、また数字などを並べ立てたり、お聞きしたりして何回も聞くのもあれだと思いますので、私は、本当に今回の加入者按分率の引き上げというものは、現行四四・七%が六十一年度は八〇%、六十二年度から一〇〇%という政府の原案でございましたが、衆議院で修正されまして六十二年から六十四年までは九〇%、それ以降は一〇〇%ということになったわけでございます。  そして、厚生省の御説明では、医療保険制度間の老人加入率の不均衡の是正、また負担公平化ということのためにこれはしなければならないということでございまして、まあわかるような気もいたしますけれども、しかし、被用者保険の実情というものを余りお考えになっていない、余りにもドラスチックな財政調整案であると思うわけです。  そして、これは健保の保険料の引き上げにつながるのではないかと心配している国民が多いし、また、サラリーマンの実質増税になるものではないかと心配している方が多いわけでございます。殊に健保組合の方々は、財政事情が悪化するということをお考えになって、健保が一生懸命経営努力をしていたにもかかわらず、国保の財政悪化を救うために我々の負担を大きくしなくちゃならないのはもう理解できないと、こうおっしゃっているわけですね。  それで、国保の財政悪化は、これまでの審議過程ではっきりいたしましたように、老人加入率の増加による老人医療費の急騰ばかりが原因ではないと考えます。原因としては、国保の構造的な諸要因のほかに、退職者医療制度創設時の政府の見込み違いというものが挙げられておりますが、これは政府の失政によって生じた赤字でございますから、国が責任を持って処理するべきものであると思いますが、地方自治体への財政補てんも極めて不十分だという状況でございます。こういった失政のツケを老人患者自己負担強化被用者保険拠出金増大ということによって肩がわりをさせようとなさるのはちょっと筋違いではないかという気もいたしますが、大臣の御見解をお伺いいたします。
  178. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回お願いをいたしております老人保健法改正につきましては、今後増高することのやむを得ない老人医療費国民全体でいかに公平に負担をして、そして安定した老人保健制度を確立していくかという観点からお願いをいたしておるものでございまして、今、先生がいろいろと御指摘をいただきました問題点もあるわけでございますが、これらの問題点をできるだけ乗り越えて解決をしていくことによって、将来、揺るぎない老人医療の確保ができるように努力をいたしてまいりたいと考えておりますので、御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。
  179. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、ちょっとまだ時間がございますので、この前もいろいろとくどくどお伺いいたしました老人保健施設の問題でございますが、老人保健施設におきましては、やはり定額の療養費の施設への支払いというものが、入所者の側から見ると適切な医療が提供されないのではないかという心配があるわけでございます。そして、食費その他の生活費の定額の自己負担というものも、収入の少ない老人には支払いが困難という問題もあると思いますが、これは利用施設であるから払えない人は入らなくてもいいのだということになりますと、これはやはり、現在全国で二万人も入所待機者のある特別養護老人ホームの方をもっと増設して、医療のサービスももう少し充実させていただく必要があるのではないかと考えるわけでございますが、これはどうでしょうか。この点について。
  180. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設についていろいろお尋ねでございます。  まず一つは、定額と医療の質の確保の観点でございますけれども、老人保健施設に入っていただくお年寄りの方は、症状の安定している方が入られるということを想定いたしておりますので、そういう症状にふさわしい医療のサービスを私どもとしては、いろいろと検討の上でございますけれども、それにふさわしいものの費用を平均的な形でお支払いしようと、こういうことでございます。したがいまして、それと医療の質の低下とは必ずしもつながってこない問題でございますが、さらにいろんな各種の基準をつくりまして、例えばスタッフの基準についてどういう職種の方、どういう人数というようなことを決めまして、その点について施設に遵守させまして、質が劣らないようにしますとともに、運営面についても、いろいろガイドラインその他で運営の指針を定めまして、それに沿ってやっていただくことによってお年寄りにふさわしいサービスが展開されるというふうに私どもは考えているわけでございます。
  181. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 老人保健施設よりもむしろ特養の機能を充実したらどうかという御質問が後段にあったと思います。  再三申しておりますように、特別養護老人ホームと申しますのは、家庭での介護が困難だという、そういう寝たきり老人に対しまして、いわば家庭にかわって生活の場、あるいは生活サービスを提供すると、こういう施設でございます。したがいまして、その場合の、お年寄りですから虚弱でありますし、ある意味での、狭い意味での医療というものが必要な場合もあろうかと思いますが、その場合には、やはり現在やっておりますような非常勤の嘱託医を置く、それで、何かあった場合に通院できるような協力病院を事前に契約しておく、この程度が限界でございます。おのずから一定の限界があるということでございますので、より濃いといいますか、より高い医療考えます場合には、やはり特別養護老人ホームではなくて中間施設的なものが必要だろうというのが我々の考え方でございます。
  182. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人保健施設は、特養とそれから病院との中間施設であり、また、病院と家庭との中間施設というふうにいろいろ考えられるような気がするんですけれどもね。まあ医療サービスと日常サービスの両方を提供するところだというふうに御説明になっていますが、そして、六十二年度にはモデルを使って試行実施してみる、そして施設設備、人員の配置、運営の基準というものは老人保健審議会に諮って省令で定めるということになっていますけれども、これは私は、国会審議を軽視しているものであり、また、国民の代表として信託を受けている国会議員といたしまして、余りよくわからないのに、いいですいいですと賛成して、大枠だけ法律で決めてくださればいいんですと、あとはもういたしますと、こうおっしゃっても、厚生省を御信頼申し上げないわけではない、厚生大臣を御信頼申し上げないわけではないのでございますけれども、どうも不安がありますね。  それで、本格的実施の前にモデルで試行実施なすったデータを国会に報告なすって、もう本格的実施をしてもいいという国会のゴーサインですね、承認と言いましょうか、そういうことを得るようにお考え願えませんでしょうか。これは私は本当に、全然信用しないということではないんですけれども、やはり国会の中で大体こういうものだという具体的なアイデアが浮かばないんですね、いろいろ御説明いただいても。ですから、やはりちゃんとしたモデル実施のデータというものをおそろえになって、そして本格実施の前にそれを国会に御報告いただく、そして国会のゴーサィンというものをおとりになるということを考えていただきたいと思うんですね。強い言葉で言うと、要求しますと、こういうことになるんでしょうけれども、その点、いかがでございますか、大臣
  183. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この老人保健法等の一部を改正する法律案の御成立をいただきましたならば、直ちにモデル事業の実施を行いまして、いろいろな観点からのデータを集め、そしてまた、国会でこのようにいろいろと御議論をいただきました点を踏まえ、老人保健審議会に御相談を申し上げまして、いろいろな細かい点についてお決めをいただくわけでございます。そういった際に、国会における御質問や、また国会からの御要請がございましたら、これに対して十分な報告をさしていただきたい、こう思っております。
  184. 中西珠子

    ○中西珠子君 終わります。
  185. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、私、与えられた時間をいただきまして、質問をしたいと思います。  老健法等の一部改正案審議の全経過を通じ、また、参考人やあるいは公述人の主張をずっと聞いてまいったのでございます。その結果、今日高齢化社会を迎えるに当たって、この法案というのは、国民の要求、とりわけお年寄りの願い、つまり、健やかに安心して過ごせる老後、こういう老後の大きな願いにこたえるものになっておるかといいますと、大変大きな不安をもたらすものであるということを全審議の経過を通じまして改めて痛感をしているところでございます。  厚生省が無理なく御負担がいただけるんだと言われております老人の一部負担の引き上げでございますが、これはもう全く説得力がないということは審議の過程で明らかになっております。つまり、月に三万円以下の年金受給者が六百万以上もおられるのに、外来八百円、そして入院一カ月一万五千円、これは老人保健部長のお話によりますと、老齢福祉年金だって一カ月二万七千二百円だから一万五千円の御負担はいただける、こういうことをおっしゃいましたけれども、いかにも酷だと私は思います。  もう一つは、加入者按分率の一〇〇%引き上げ、こういうことによって、現役で働いておられる勤労者の皆さん方に、健康保険、組合健保あるいは共済その他で現役で働く被用者の皆さん方に新たな大きな負担を押しつけるという結果になることも非常にはっきりいたしました。  もう一つは国民健康保険ですね。負担に耐えられないような高額の保険料あるいは保険税の滞納者に対して制裁措置を加えて、六カ月滞納したら保険証を取り上げるなどということが今度の法律では改正をされようとしておるわけでございますが、これはまさに人の命にかかわるような大変ひどいやり方でございまして、これらの問題は、本当にどの一つをとりましても、その反国民的な性格というものが審議によって一層明らかにされたと思うわけでございます。  時間の都合がありますから一つ一つ繰り返しは質問いたしませんけれども、そして一方では世代間の公平負担だとかあるいは老人保健制度の長期的安定化だとか、なるほどきれいな言葉で言われているんですけれども、この老健法等の改正の中身は、総じて言いますならば、まさに専ら財源対策、財政対策だ。しかも、その財政対策というのは、まさにお年寄りや国民には負担を押しつける、しかし国の負担をどんどん減らすという財政対策だということがいよいよ明確になったと思うわけでございます。  その論拠として、もう言わずもがなでございますけれども、しかしひどいなと思うのでちょっと申し上げておきたいと思いますが、老人医療費の総額というのが、八六年度、ことしから九〇年度までの比較をいたしますと、これはざっと一・四倍ふえることになっていますね。これは厚生省でいただいた統計数字ですよ。その中で患者負担増というのは一体どうなのかというと、この四年間の間に三・七七倍になるわけですね。だって、現在六百十億でしょう。それが九〇年になりますと二千三百億になるわけですからね、一部負担金が。だから三・七七倍になるわけです。被用者保険は、つまり現役で働いている健康保険や組合健保の皆さん方はどうなるかというと、この四年間に一・九四倍になる。ざっと二倍近く上がるんですからね。これはもう新たな税金負担と同じようにのしかかるのは明らかです。  ところが、そんなにふえるのに、それじゃ国庫負担は四年間にどうなるのかというと、これはわずかに一・一九倍ですね。一・二倍なんですね、繰り上げても。この数字を見ましても——これはもう時間の関係がありますから金額は申し上げませんけれども、この率を見ましても、明らかにこれは患者負担が、お年寄りである患者さんの患者負担が三・八倍になり、そして現役の労働者の皆さんの掛金の負担が、いずれははぬ返ってくるところの按分率による拠出金が約二倍になり、そして政府は一・二倍しか分担をしないというわけですから、まさに政府負担額を減らしていくということを中心とした財政対策だということがいよいよ明らかになってきたと思うわけでございます。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕  私は、きょうはとりわけ、今回新たに提案をされております老健施設ですね、この老健施設というのは、今申し上げました政府の姿勢の基本を一番端的に示しているものだと思うんです。そこで、この問題について聞いていきたいと思っております。だって、三年前に外来を無料から四百円にした。そうしたら外来の受診率は下がった。ところが、翌年からは入院費がどんどんふえるということで、入院費が急増したので、今度は老人の入院費を圧縮するということが中心的なねらいだというのがこの老健施設の問題では端的に出ていると思うわけです。  そこで、お聞きをいたしたいところですが、昭和七十五年ですね、寝たきりのお年寄りの実態と処遇はどういうふうになるか、ちょっと厚生省の試算、推算、そういうものをお聞かせをいただきたいと思います。
  186. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設でございますけれども、先生おっしゃいますような単なる財政対策ではないわけでありまして、むしろ国民の最も望んでいるニーズにこたえたいということでございますので、まず御理解をいただきたいと思います。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕  昭和七十五年時点におきます寝たきり老人等の処遇状況がどうなっているかというお尋ねでございますが、その時点の、私どもが要介護老人百万人程度と、こう見込んだ上での推計でございますけれども、新しくお願いしております老人保健施設で二十六万ないし三十万人、それから病院、老人病院等における長期入院患者の形で十ないし十四万人、それから特別養護老人ホームで二十四万人、在宅療養をされているという形で三十三ないし三十七万人ということで、百万人の処遇状況になるのではないかというふうに見込んでおります。
  187. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうして、今までの審議の中で言われておりますのは、七十五年までに三十万床の老健施設を整備するというんですね。それじゃ、この三十万床の老人保健施設の建設で老人医療の入院医療費というのはどのくらい圧縮できますか。
  188. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは、老人保健施設という制度を組み入れた場合と、組み入れずに現状のまま推移した場合の両方で、そういう推計をやっているわけでございます。昭和七十五年時点で、現状のままの制度で推移しますと、約十五兆五千億程度に達すると見込んでおりますけれども、老人保健施設を昭和七十五年度を目途に約三十万床計画的に整備したという場合におきましては、老人医療費の伸びが年率で二%程度低下をいたしまして、昭和七十五年時点では十二兆五千億程度にこれが縮小をするものというふうに見込んでおります。
  189. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、厚生省の試算によりますと、昭和七十五年に三十万床が整備をされたら、十五兆五千億のうちの大体三兆円が節減ができるであろうという推算ですね。これは率にしたら大体何ぼになるか。二割七分、三割近いですね。そうすると、老健施設をつくることによって十五年間に三割近い老人の入院費用をとにかく減らすことができるということなんですね。  そこで私、ここでお聞きをしておかなきゃならないのは、老人の入院医療費が十五年ほどの間に三兆円削減していけるという理由は一体何なのかという点ですよね。そこが非常に大事な点だと思うので、それはどういうふうにお考えですか。
  190. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 現在、老人医療費は四兆円を超えているわけでございますけれども、その四兆円が一〇%程度の伸びを示しておりまして、年間五千億ないし六千億という巨額な増加を見ているわけでございます。一口に五千億、六千億と申しましても、例えば特養が五億でできるとしますと千カ所整備できるというぐらい、まあ千カ所といったら現在の特養のスケールでございますが、それぐらい老人医療費は大変な勢いでふえているわけでございます。そのふえている原因の背景には、六割以上入院医療費の伸びが寄与しているわけでございます。これを我々いろいろ分析をいたしますと、もちろん老人の人口がふえる、ふえるだけではなくて入院の受診率もふえるというようなことがございますために、老人医療費の増高になってはね返っているわけでございます。  それからさらに、入院医療の実態を見てまいりますと、いわゆる長期の入院の方が非常にたくさんおられまして、老人病院で調べますと、六カ月以上が半数以上という形でございます。私どもは、この方々がすべて社会的入院とは申しませんけれども、やはり病院というのは入院治療をする機関でございますから、かなりの方が治療を終えてもまだ入院されているという状態が続いているということもうかがい知れる数字ではないかと思っているわけでございます。そういう意味で、いわば私どもは、現状程度の入院がふえ続けるということをこの老人保健施設ができることによりましてこちらに引き受けてくるという、そういう流れのもとで社会的入院が是正されるという、そういう表現をいたしておりますが、入院されている方が老人保健施設へ移られるということによって、先ほど申しましたような効果があらわれるとともに、さらに、その方が社会復帰なさっていくということを加えまして、三兆円のスケールの医療費の縮小見込みを出しているわけでございます。
  191. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 とにかく十五年ほどの間に三兆円、約三割も、しかも老人の入院の分だけ減らすというんですからね、これは大変関心が深いわけですね。その結果、お年寄りの処遇が安かろう悪かろうということになったら、これはえらいことだというふうに思うんですよ。私どもは、医療費が無制限にふえさえすればよいなんて考えておりません。しかし、この三兆円が比較的短い時期にひょっと減るということになると、安かろう悪かろうというふうなことになったんじゃえらいことになりはしないか。というのは、だって、今だと入院をいたしますと、これはいろいろなデータがありますけれども、六十年ベースで大体一カ月三十五、六万ですね。老人病院というところでは大体三十万余りということでしょう。とにかくそれよりも減らさないと、三兆円、約三割の入院費用というのは減らすことはできないわけですね。  だから、そういう点で、御提案になっておられるように二十万円——二十万円決まったのかどうか知りませんが、今までのお話の中では二十万と言っていますから、とにかく二十万で済むということになったら、三十五万かかるものを二十万で済ませるということになったら、これは安かろう悪かろうになりはしないかという心配が国民の中にやはり広がってきているわけです。  そこで、私は前回の質問の中でも申し上げたんですが、老人保健法ができて、その後老人病院がつくられて、そうしてさらに老人特掲診療料というようなものができて、年齢による医療差別というものが今日の医療の中に持ち込まれているということを申し上げましたね。これをもっと、一番端的に圧縮したものが、二十万のつかみ金でとにかく寝たきりのお年寄りを入れるというふうなことになると、これは大変なことになりそうだなということを、まあ非常に平たく言えばそう思うんです。  といいますのは、私は、前回も申し上げたんだけれども、お年寄りというよりも、私も医療担当者の一人ですから特にそのことが強く感じられるんですが、医療というのは昔から貧富の差があってはならないというのが私ども医師になってからの鉄則でございました、これは。ところが今日、戦後の努力によって健康保険制度充実がなされ、国民皆保険がやられ、そして貧富の差なく今日の医療の最高水準が享受できる、すべての人たちが享受できるという水準にまできたわけでしょう。そういう中で老健法がつくられてから初めて、年齢による差別が医療の中に持ち込まれたという点が、これは新しい変化なんですよね。  前回申し上げたように、私は、一般の病院の中でも、六十九歳までのお年寄りの治療をしても、七十歳以上の方々に同じ治療をしても、同じように入院をしていただき、同じ治療をして、注射をし、薬を上げ、そして検査をしましても、約三万円七十歳以上の方々の費用が安いということを御指摘申し上げましたね。それで、もう一つ、これが一般病院の中でその差があるというだけではなしに、老人病院と比べますともっと大きく差ができているわけですね。それで、その点について、まあ余り時間とれないと思いますから細かくは言えませんけれども、現行のそういう年齢差別あるいは病院差別によって、同じ人間なのに年が七十過ぎたからいうて、保険のお金が少ないということで医療差別が起こるというふうなことというのは許されないと思うんです。  私は、前回も申し上げたんだけれども、老人病院、つまり老人特例病院ではもっとひどいんですね。これは私どもは一般病院と老人病院と同列にしなさいということを言おうとしておりません。入れるべき患者さんが違うと思いますからね。同じようにしろとは言いませんけれども、前回も申し上げましたけれども、例えば部長は、老人の特性に見合って診療方針、診療報酬を決めていったんだと、これは附帯決議に基づいてやったとおっしゃった。確かに附帯決議に書いてある。あの附帯決議は私ども共産党は反対しているんですよ。賛成していない。改めて調べてみたんです。まあそんなことはどうでもいい。そうじゃなくて、老人の特性に見合ってということは、安くするということだけが老人の特性に見合うやり万なのかどうかという点が問題なんです。これは前回も申し上げましたでしょう。例えば、お年寄りが寝たきりで、介護も行き届かなくて全身床ずれ、褥瘡になっている人は、これは一般病院だったら百九十点ですから千九百円。老人病院へ行ってみなさいな。何ぼや思ってますか。初めから二百十円ですよ。床ずれが一つであっても、体じゅう何カ所あっても二百十円ですよ。こんなやり方というのは老人の特性に見合った診療報酬かと言いたいですよ。  私は、お年寄りに年齢の差別によって診療上の差別をするということは、私は、お年寄りの人格の尊厳というものを守れないと思うんですね。そういう点で非常に我慢のならない点なんですが、この前も申し上げたけれども、これは一般病院での一年未満と一年以後の患者さんの比較を申し上げた。ところが、一般病院でじゃなしに、一般病院と老人病院と比べたら、老人病院というのは入ったときからそうでしょう。これは処置も注射も皆そうですね。これはもう老人病院へ入ったらえらい目に遭いますよ、これ。大体処置なんというようなものは、目の処置をしてもろうても、耳の処置をしてもろうても、鼻も口も見てもろうても、老人病院へ入ったら、どこをやっても一日百円ぽっきりですわ。それで入院されたお年寄りに十分いくだろうか。これはもう本当に胸が痛い思いがしますよ。  検査だって同じでしょう、前にも申し上げたけれども。申し上げたのは、一般病院の中の差を言うたんです。しかし、老人病院は初めからですよ。検査なんて、百二十五点ですよ、一般病院では。最初の検尿とか血沈とかあるいは検便とか簡易循環器機能検査とかいうようなところ、それを合わしたら百二十五点になるんだけれども、老人病院は、入ったらとにかく五十五点ですわ。これ、やってもやらなくても五十五点。何ぼやっても五十五点ですよ。そしたら十分なことがやってもらえるだろうかということになると思うんですね。  こういう例を挙げていきますといっぱいあるんですけれども、今だって、一般病院でもそうだ。一般病院でも、一年以上入院したらがたんと差別をされる。そして、それが老人病院へ行ったら初めからそういうひどい差別をされるということになっているんですね。その老人病院が、月に三十万余りかかるからというんで、二十万でとにかく何とかしてもらうんやと言われたらね、これはひどいことになるのと違うかというふうに考えざるを得ない、その点は。  だからその点は、私は、お年寄りに年齢によって医療上の差別を持ち込むということは厳に戒めるということが大事です。それで、特に老人の特性に見合うような診療報酬を決めるというんなら、若い人は床ずれなんてできないんですわ。よっぽどの人やないとできませんね。しかしお年寄りは、床ずれというのは、本当にちょっと介護の手が抜けたらできますよ。特有の状況なんですからね。こういうものはちゃんと改善するとか、そんなことをしないと、それはあれですよ、老人の特性に見合うなんというのは、安くするということだけが老人の特性に見合うものではないんだという点をはっきりしてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  192. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先生から、多項目にわたって随分御質問をいただきましたので、少し長めの答弁をさしていただきます。  まず第一に、老人保健施設の老人医療費に対する効果でございますが、再度申し上げますけれども、十五年で三割ではなくて、二割程度の減少ということで、二割弱の減少だということでございます。私ども、やはり老人医療費はいずれにしても国民負担するものでございますから、できるだけ適正な形にしていくということが大事な観点だろうと思っておるわけでございます。そして、その適正化と、老人医療費を適正なものにするという発想は、何も無理に低目に抑え込むということではなくて、老人にふさわしい形のサービスをすることによってそれが可能だからこういう政策選択をしているんだということで御理解をいただきたいと思います。つまり、もう入院治療の必要でない方は、むしろ介護、看護面を中心としたケアを必要とされるお年寄りがたくさんおられるということでございますから、それにふさわしいサービス体系にし、それにふさわしい費用を支払うことによってそういうことが実現をいたす、結果的にそういうことが実現をするということで御理解をいただきたいと思います。  それから、老人病院のお話でございます。確かに附帯決議、共産党の反対ということも御指摘いただいたわけでありますけれども、私どもは、やはり老人には老人の特性に見合ったそれにふさわしい診療報酬が必要だと考えておりますし、この点は中医協でも御議論をいただいたわけでありまして、その当時の事例としては三郷病院事件がございましたけれども、その当時、例えば中医協で御議論されたようなものを拾ってみますと、七十歳以上の一件当たりの注射点数で見ますと、若い人の一・五倍も注射点数が七十歳以上の人にかかっている。特に老人病院の例では、平均十五万も注射料がかかっているとか、点滴が一月三十回、毎日点滴をやっているとか、いろんな事例も報告されまして、やはりお年寄りには薬づけ、検査づけという批判もこれあり、何かふさわしい診療報酬体系に変えなきゃならないということで御議論をいただいたわけでございます。  その結果、現在の診療報酬ができているわけでございますけれども、先生何度も御指摘になっておりますが、若い人の点数とそれから老人の点数を当てはめてみるとかなり差があるということでございますが、若い人に対します医療行為をそのまま当てはめますと、確かに老人の場合の点数表で計算しますと差があると思います。しかしながら、例えばそこに老人診療報酬の特徴でありますリハビリの点数、これはかなり充実したものをつけてございますが、それをとれるようなリハビリの機能をお持ちになる、あるいは介護人を充実されまして介護加算がとれるような体制になっているというような、いろんな形の老人にふさわしい医療が展開される前提ではじきますと、恐らくそう大差のない診療報酬になっているものと私は考えております。  それから、入院時医学管理料のお話も出ましたけれども、私どもの考え方は、やはり一般病院は急性期の治療でございますから……
  193. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まだ入院時医学管理料は言うてない。
  194. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 失礼しました。では、これは省略をいたします。
  195. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ、言うといてください、せっかく原稿があるらしいから。
  196. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 褥瘡の点でございますけれども、私どもの考え方は、やはり現状を見ますと、傾向として入院期間が長くなりますと褥瘡の処置の頻度が増加するというふうに見ておるわけでございます。つまり、褥瘡につきましては、体位交換とか清拭等の十分なケアが行われれば予防治療が可能であるわけでございまして、したがいまして、十分なケアを行って褥瘡を予防した場合よりも褥瘡ができて高い点数がとれるというのもいかがなものだろうかということで、私どもは一年以上たってその褥瘡の処置という場合には点数を低めているわけでございまして、したがって、褥瘡ができてそしてそれに対する処置が施されればされるほど収入がふえるという出来高払いの欠点も防ぐことによって、やはり褥瘡ができないようなケアをしていただく場合とのバランスも考える必要があるのではないかということで現行の診療報酬をつくっているということでございます。  いずれにいたしましても、私どもは老人保健施設で二十万で今考えておりますけれども、先生指摘のように、安かろう悪かろうということで劣悪な医療ケアなりサービスをこの金額でお願いをするという観点ではございません。寝たきり老人にふさわしい医療ケアが、そしてまた生活のお世話ができるようなものにしていきたいということでいろいろ検討をしているわけでございます。国会審議等も踏まえて、さらによりよきものにしていきたいと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  197. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それはなかなか理解できない。何でいうたら、リハビリの点数は少々上げておるから褥瘡は安うてもええというたって、患者の一人一人によって違うんですよ。リハビリもやってもらいます、褥瘡もやってもらいますという患者がおったら、丸まって、トータルで余り違いがありませんという話なら通りますよ。一人一人違うんだから、患者というのは。  それで、私は老健施設がもっと悪くなるということの心配をしているのは、老人病院でさえもこれなんでしょう。例えば一般病院だって年齢によって注射の金額の違いをこの前指摘したけれども、例えば点滴をやって同じ薬を同じように注射しても、六十九歳以下の患者さんなら一日について七百五十円ですね、七十五点だから。七十歳以上のお年寄りに同じ薬を同じように点滴したら二百円ですよ。これは一般病院でそうなんです。それ、老人病院だったらこれはもう全部二百円ですわ。私は、老人の特性に基づいてと言うんなら、もうちょっと考えてほしいなと思うんです。それは特殊な病院で何か一カ月に三十本も五十本も点滴やったと言うけれども、病状によってはやらなきゃならないときもありますよね。お年寄りは脱水症状を起こしやすいし、それは点滴もやらなくちゃならないというときはしばしばあります。  それで、注射の手技料、技術料ですね。一般の六十九歳以下の人には七百五十円で、七十歳以上になったらとにかく二百円。老人病院も二百円というけれども、何でそんなことを考えるのかな。お年寄りになった方が血管がもろくて、本当に常時監視をしていないと、すぐ漏れたりいろいろするんですよ。若い人なら脂肪でちゃんと血管が固定されていますからね、そんなに常時監視せぬでもいいんですわ。しかし、お年寄りだから余計手間暇かかるのに、同じ薬を同じように注射しても五百五十円も差をつけるというふうなやり方というのは、私は何でこんなひどいことをやるかと思うんですよ。点数を改めろという問題の以前です。同じ人間じゃないか、少なくとも。  だから、何もかにも一緒にしなさいと私は言うてない。特にお年寄りに必要なところを本当に面倒を見ているのかどうか。老人の特性に見合うというのは、全部安うするというだけになっているから問題にしているわけですよ。  大臣どうですか。私、我慢ならぬと思うんです。みんな七十以上になると思うんですが、本当に年齢によってこんな差別されるということは我慢ならぬと思いますが、その点について、大臣の見解聞かしてください。
  198. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人の診療報酬と若い人の診療報酬を比較されていろいろ御指摘いただいているわけでございますけれども、何度も申し上げておりますように、老人にふさわしい診療報酬にしておるわけでございますから、その老人にふさわしい診療報酬というのは、やはり検査、注射、投薬、そういうことよりも指導だとか相談とかリハビリとか、そういうところに重点を置いた診療報酬体系にいたしておるわけでございます。したがって、病院全体としては、注射なら注射、処置なら処置で比較されるとそれは高い低いがございましょうけれども、病院全体としては、適正な運営ができるようにバランスをとった診療報酬全体としてなっているものでございます。  特に、例えば入院外ですと、寝たきり老人の訪問指導料というのは若い人にはございませんし、お年寄り特有のものでございますし、デイケア料とか、いろんな形で、退院患者の継続看護料、指導料とかいろいろ工夫をして診療報酬を老人にふさわしいものとしてつくっておるわけでございますから、全体として評価をしていただきたいと思うわけでございます。  重ねて申しますが、処置、注射等については、何度も申し上げましたように、非常に行き過ぎた老人病院における医療が展開されまして、これは先生と御意見が違うかもわかりませんが、お年寄りに注射注射、薬薬というのは、やはりお年寄りの一般的にお持ちになっている慢性疾患等の病気から見て、そう適切ではない行き過ぎた医療が誘発されないようにいろいろ工夫をしてつくったらどうかという御意見で今の形ができているわけでございます。そのかわり、老人にふさわしいところにめり張りをつけて重点的に評価するということで診療報酬ができているわけでございますので、これもまた御理解をいただきたいと思います。
  199. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣どうですか。
  200. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 医師の免許をお持ちの沓脱先生から、非常に専門的な御質問がたくさんございました。また厚生省側も、専門の者からお答えをいたしておるところでございます。残念ながら、私はそれほど医療上の専門知識は持ち合わしておらないわけでございますが、この診療報酬の点数を決めていただきましたのは、より専門的な医療の代表の方々がおられます中医協でお決めをいただいたということも御理解をいただきたいと思います。
  201. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 中医協で決めたからというて別に鬼の首とったような顔せぬでいい。それは中医協だってね、与えられたパイを分けるのにどないして分けるかというて、あんたのところのパイの与え方が悪いから、いろいろと苦労をしているわけです、中医協の先生方は。  そういうことをたくさん申し上げてもしようがないんですが、今でもこういう区別が年齢によって行われているので、さらに老健施設という形で、しかも二十万でつかみ金と、こうなったら、これは安かろう悪かろうになってしまうじゃないかと思う。たって、三十五、六万かかるのを二十万でやらせようというんだからね、えらいことになりそうだなと思うのは、これは私が思うだけではなしに、国民皆さんも心配をしておられる。  そこで私は、この前もちょっと触れたんですが、二十万じゃできないということで、御飯代を自分で持ってもらうとか、おしめの人はおしめ代を出してもらうので、月に五万円ぐらいは自分でお金を負担してもらうといって、合わせて二十五万ぐらいにするという話だったでしょう。私たまたまこれを見てみて驚いたんですがね。これは無理もないなと思ったんだが、多摩市の天本病院ですか、これ有名な本だから御承知だと思いますけれども、天本病院の院長さんがこう言うておるんですね。「老人医療を行うと、実のところ、いくらかかるのか。天本病院では、保険外負担、いわゆる「お世話料」を入院者から一日二千五百円とっている。これにおむつをしている人は八百円が加算される。だから、ざっと月に十万円。病院側からみると、その保険外収入が、病院総収入の二五パーセントを占める。つまり老人入院費一人平均月に四十万円也である」。これは、だからここは老人病院の基準より看護婦さんの数も介護人の数もふやして、とにかく床ずれは絶対つくらない。そうして、寝たきりの人をちゃんとリハビリをやって、自分で立ち居ができるようにして必ず家庭へ帰すということを目標にして、特別におやりになっておるんですね。  そういうことが既に言われておるということになりますと、二十万だけ老人医療費から出してあとは自己負担。しかも、それは自由契約ということで罰則もないから、今の話じゃないけれども、人手をたくさん雇うためにはお金が要ります、おいしい物を、ごちそうを特別に与えるためにはたくさん食事代をいただきますというようなことになったら、五万円じゃなくて十万円になるか十五万円になるかわからぬということが心配になるわけです。それでも、そんなのあったって罰則はないんです、これも。だから、天本先生、病院の存立にかかわるからそういうふうにやっておられる。それをいろんなものを請求したら、リハビリでも請求したら、ばっさり削られていますな。これ、削られた実例が書いてあります、時間がないから言いませんけれども。これは、診療報酬としてやったことを診療報酬の請求としたらばっさり削られた。削られたらしようがないから患者さんの自己負担に転嫁をしているんです。同じことになりはしないか。二十万ぽっきりしかお金を出さぬ。しかし、あれこれ人手もいる、食事も病人食にしていかないかぬ。いろいろ出てくるということになったら、請求できないんだから、全部患者負担になるということになりかねない。  私は、一番心配するのは、これは安かろう悪かろうで大変な施設になりはしないかということと、お年寄りの患者さんの負担が本当にたえがたいところへくるんじゃないかという点を非常に心配しているんですが、そういうことにならないようにどういたしますか。
  202. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 二十万あるいは自己負担を入れて二十五万では非常に粗悪な医療あるいはサービスの内容になるというお話でございますけれども、例えば特養については恐らく総経費二十万円で立派に褥瘡その他床ずれもなしにケアができているわけでございます。もちろん、生活のサービスだけではなくて医療ケアも行う施設でございますから、それ以上の経費が要すると思いますけれども、私どもとしては現時点では総経費二十五万で立派なサービスが展開できるのではないかというふうに考えるわけでございます。もちろん、経費は多ければ多いにこしたことはないわけでありますけれども、これから試行的な実施等も重ねながら、そして関係者の意見等も聞きながら、必要かつ十分な施設療養費の額等を決めていきたいものと思っておるわけでございます。  したがいまして、先生いろいろ御心配をいただいておるわけでありますけれども、いいかげんに二十万でつかみ金とおっしゃいますが、合理的に科学的にいろいろこれから積算をいたしまして、二十万と現時点では考えておりますけれども、その程度の額でやっていけるという意見も随分聞いております。天本先生の論文も引用されましたけれども、その先生にもまたいろいろお聞きしながら、よりよきものにしていきたいというふうに考えております。
  203. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間が思わずたってしまいましたので少し問題を進めますが、私は老人保健施設というのは大分苦肉の策だなと思うんですよ。だって、これはもう同僚委員からもあるいは参考人からも大変指摘を受けておりますね。例えば、医療法の適用についての問題ですよね。施設は医療法に適用しない。ところが、地域医療計画には医療法のベッドカウントには適用する。これはどう考えても筋が通らぬですわ。こんな法律政府厚生省が自分の都合のいいように使い分けるというようなやり方、これは全く御都合主義というのか、法律の乱用だと思うんですよ。だから、これはちゃんと統一するべきですよ。少なくとも医療法に適用される施設にするということにしたらいいですね。ベッドカウントかて、何や係数掛けると言うたでしょう。係数掛けるというのもまたこれわからぬ。そんな中途半端なことってあるやろうか。係数はどのくらい考えていますか。
  204. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 何度も申し上げておりますとおり、老人保健施設は医療サービスを行うのは当然でございますが、あわせて日常生活サービスも提供をする、その二つを提供するということでございます。現在の医療法は医療オンリーでございますので、現在の時点で医療法に老人保健施設を直接持ち込むのは非常に困難であるということで、老人保健法上の施設といたしておるわけでございます。  一方で、老人保健施設は医療機能、医療を行うわけでございますので、その点に着目すれば病院病床の補完的機能を果たすわけでございます。したがって、それを評価いたしまして医療計画において一定の係数を掛けて既存病床数に算定をするということにいたしておるわけでございます。そこで、一定の係数と申し上げておりますのは、これはこれからモデル実施をやっていくわけでございますが、モデル実施の結果も踏まえ、そして医療審議会にお諮りをして決めるということになるわけでございます。  いずれにしろ、病院そのものと同じ機能は持たない、病院よりも医療機能という観点から見れば機能が低いわけでございますので、一未満である、ゼロ以上一未満、〇・五とか〇・七とか〇・三とか、そういったところに落ちつくのではなかろうかと考えております。
  205. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それもおかしいんだよね。ベッド数を〇・五か〇・七か〇・三にするというのは、本当に都合よう医療法を使い分けするというふうに思うんですね。私はこういうやり方というのは国民納得できないと思うんですね。もう時間がありませんからくどくは申し上げませんし、御説明もできるだけ簡潔にしてください。ずっと審議は拝聴しておりますので、皆さんのお話はよく伺っております。  大体これは医療法に適用しない施設だから、保険診療は適用しないんですね。どうなんです。
  206. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 病院、診療所ではございませんので、保険医療機関でもございません。したがって、いわゆる保険医療の保険点数と申しますか、診療報酬の点数表も適用されません。
  207. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから、病人を収容するんだけれども、医療法の決めた施設でないから保険診療は適用しません、だからつかみ金ですということになるんでしょう。だから、そこはぐあいよう医療法を外しておる。ところが、地域医療計画へいったら今度は医療法に基づくベッドカウントにする。全く筋が通らぬ。これは、こういう法律の、乱用と言うたら言い過ぎになるでしょうが、御都合主義的な法律の使い方というのは、やっぱり国民の納得を得られないと思うんですよ。  保険の診療報酬じゃないから一括二十万やということについては、これは日医の参考人も言うておりました。こんなことをやったら医療制限に通ずるということの鋭い御批判がありましたけれども、私もそうだと思いました。現行医療行為というのは、保険診療という診療の担当規定に基づいて診療がやられるという、この原則を崩すものになりますよね。どないしてもええんやということになりそうなんで、これは制度的に大変危険なものを持っているなと思うんです。  もう答弁を聞いていたら長くなりますから、私お聞きをしたいところをまとめてちょっと聞きたいですね。  こういう医療法の使い方だって都合のええように、御都合主義的に使うというふうなこと。あるいは要員だって職員だって、医師は一人というのははっきりしておる。看護婦さんは百人に対して七人ないし十人、介護人は十五人ないし十八人。まあ言うたら百人の患者さんに看護婦さんが十人と七人では随分違うんですね。こんなふうに決めるということは、上限をとっても下限をとってもよいのかということになりますしね。どういうことをやるのやろなと。だって、特養と違って生活サービスもやります、医療サービスもやりますと言うけど、看護婦さんが七人では特養と比べても幾らも変わらぬ、介護人に至っては特養より少ない、こういうことになってくるでしょう。その辺はどうするんやわからぬ。  施設の整備については、この前もちょっとこれは聞いたんやったかな、もう時間がたってあれですけれども、施設整備は来年は二十五億円から組んでいるけれども、あとはどうするんですかな。やっぱり低利融資でやるんですか。
  208. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 三点ぐらいお尋ねだと思いますけれども、なぜ医療法を適用しないかというのは、もうるる御説明いたしておりますように、この施設が医療と生活の世話という両方を目的とする施設ということで定義をいたしておるために、現行の医療法では無理があるということでございますが、立派にこの施設で医療ができるように法体系は整備をいたしておるわけでございます。  それから、二つ目の人員配置につきましては、私どもは、この施設の特徴から申しまして、やはり特養よりも看護スタッフは多くしなきゃならぬだろうということで考えておりますし、それから病院よりも介護職員は多くしなきゃならぬだろうということで設計をいたしておるわけでございます。現在、波を持たして書いてございますけれども、その範囲で自由だということではございませんで、まだ決めかねている面があるわけでございまして、モデル実施等をやりながら、最終的には必要な人員数というものを確定していきたいというふうに考えております。  それから、三点目は補助金でございます。現在財政当局と折衝中でございまして、六十二年度できるだけ実現をしたく努力いたしておるところでございます。六十三年度以降につきましては、六十二年度の状況を見ながら、さらに検討したいと思っております。しかしながら、御説明申し上げておりますように、この施設はまあ基本的には融資の形で、低利融資の道を開きながら融資の形での整備を基本に考えております。
  209. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、参考人の方々からも、このわけのわからぬ姿のままで審議をするというのは国会審議の軽視だというふうに言われておりましたし、多くの出版物にもそういうふうに指摘をされている。私はやっぱり国民の代表として、本当によくわからないような姿のままで安かろう悪かろうになりはしないかということが心配な状況というものを解決しないままで決断を下すというのは、非常に困難だなと思うんですよ。そういう点で、これは少なくともモデルケースをやって、そうして検討して出直すというやり方というのが一番当を得ているし、国民も安心をなさるんではないかと思うんですね。その点では、そういう御見解、お考えは持てませんか。しゃにむにやりますか。
  210. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) この中間施設と言われる老人保健施設につきましてはもう四十年代からナーシングホーム、ハーフウエーハウスの形で検討せよ、あるいは早期実現にという話がずっと続いておったわけでございます。その間、寝たきり老人等の方がたくさんふえられているという状況から、大きな社会問題になっているわけでございます。したがいまして、私どもは、そういうお年寄りの方あるいは家族の方のニーズを受けまして、急ぎこの施設体系を整備したいというふうに考えております。  このために、私どもは法案の形で制度の骨組みはお示ししたつもりでございますし、さらに、実施に当たっての実施細則というものもでき得る限り私どもは審議の過程で御説明をしてきたつもりでございます。したがって、これから法案の成立をお認め願えれば、さらに万全を期すためにモデル実施をやり、そして審議会等にもかけ、御意見を賜りながら、実施細則につきましても、老人の方がそこで医療ケアと生活のお世話をするにふさわしいものにしていきたいというふうに考えておりますので、ぜひ御提案を申し上げております原案でお認めを願いたいというふうに考えております。
  211. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、ちょっと問題を変えますが、老人福祉法の第十条の二の改正をやるんですね。これ一緒に御提案になっていますね。この改正の理由は何ですか。
  212. 小林功典

    政府委員(小林功典君) お話がございましたように、老人福祉法の第十条の二というのを追加したいという改正をお願いしているわけでございます。十条の二と申しますのは、「この法律に基づく福祉措置実施に当たっては、前条に規定する老人保健法に基づく措置との連携及び調整に努めなければならない」と、こういう規定でございます。(「自民党やかましいぞ」と呼ぶ者あり)
  213. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御静粛に願います。
  214. 小林功典

    政府委員(小林功典君) これは我々も考えてまいりましたし、本委員会でも随分御質問もありました。御意見もありましたように、やはりこれからは特に福祉と保健の連携というのが大切だということでございますので、この際、老人保健施設が創設されることでもありますし、この機会に法律にはっきり明記をしたいという趣旨でございます。
  215. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これ、改正を見ますと、「老人保健法に基づく措置との連携及び調整に努めなければならない」というふうに変わっておるわけね。それで、これは特別養護老人ホームの入所者の実態の中で、特養ホームに入っている人の中で、今おつくりになろうと思っておる老健施設にはどのくらいの人が行けますかな。どのくらいの人は入れると考えますか。全然別やということじゃないでしょう。
  216. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほども老人保健部長からお答え申しましたように、今度創設したいと思っております老人保健施設は、主として病院から移るというケースが主体だと思います。特別養護老人ホームにつきましては、確かに入所者の方の中で、その後入所後に病状が変わるというようなケースもありますから、そういう方が中間施設の方がより適切だというケースはあろうかと思いますが、一般的には、特養から保健施設へあえて移るというケースはまあ考えなくてよろしいんじゃないかなという気がいたします。
  217. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、特養に入っている人が行くということはないかもわからぬけれども、しかし、特養は数が少なくてたくさんの待機の人がおるから、そうしたらこれ、老健施設ができたら、特養があいてないから、老健施設ならあいていますよというようなぐあいにいけるということになるんですか。
  218. 小林功典

    政府委員(小林功典君) そういう意味でしたら、そうではないと思います。といいますのは、これも再三御説明していますように、この数年来随分急ピッチで特養を整備してまいりました。毎年平均八千名程度を増設してまいりました。これを将来ともこのペースを落とさないでいくということも、お答えしたとおりであります。  これも先ほど先生の御質問で、七十五年度にどうなるかというお答えをしましたときに申し上げましたように、七十五年で申しますと、特養二十四万人の収容予定者を確保するということでございますから、特養はこれからも整備を進めてまいりますから、特養に入れないから保健施設ということではないと思います。
  219. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、特養ホームは並行してどんどんお建てになるということですか。
  220. 小林功典

    政府委員(小林功典君) そのとおりでございます。
  221. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、しかし、本当に建つんかなという心配をしているんです。時間がありませんからちょっとまとめて言うておきたいなと思っているのは、だって特養ホームというのは施設整備費は二分の一が国庫負担でしょう。四分の一が地方負担ですわね。本人負担というのは四分の一で施設整備がやられる。ところが、老健施設は、さっきも言うていたけれども、細かく聞く余裕がなかったけれども、二十五億円で五千人分つくるとかいう話だから、これはもうほんのわずかの金になる。しかも、それは補助金なのか何か知らぬけれども、六十三年からはどうなるかわからぬということになったら、施設をつくる上でも特養ホームをつくる方が大分国のお金がたくさんかかるなと思うんですね。  そして、運営費ですよ。運営費の場合に、特養ホームだったらこれは措置費として法律では八割国庫負担ですね、今は特別の状態になっていますけれども。本人はいわゆる徴収金全国平均では一万九千円ということになっておるんでしょう。ところが、老健施設やったらこれは老人医療費で賄うわけだから、政府はその老人医療費の中では二割負担でしょう。それで本人は五万円以上の自己負担ということになるわけで、これはほんまに特養ホームちゃんと建ててくれるのかなという心配が起こります。いや、数が足らぬ、もう詰まってますから老健施設へ入れてあげられますよと言ってどんどん誘導されはしないかという心配をしますが、そういう心配はありませんか。
  222. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 特別養護老人ホームの施設整備、これは社会福祉施設整備費、補助金を毎年予算で確保しております。これの動きもごらんいただければおわかりだと思います。我々としては毎年増額を図っております。措置費につきましても同じように確保を図っていますので、今先生おっしゃったような心配は御無用かと思います。
  223. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣、本当に建ちますか、特養ホーム。ちょっと心配ですな、この傾向をずっと見ておると。国の出費をずっと減らすということを中心の施策が実に巧みに組み合わされて出てきておるように思いますので、そうなると非常にお金のかかる特養ホームはだんだん足が遠のくんじゃないかという心配がありますので、特にお伺いをしておきたいと思います。
  224. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 現在、要介護老人と言われる方々をおおむね六十万と見ておりますけれども、これが今後、将来百万にふえていくであろう、昭和七十五年ごろには。そういう中で、おおよそ三分の一強の方々は在宅で介護されるであろう、その残りの三分の二弱の方々を特別養護老人ホーム、そして今回お認めをいただきます老人保健施設、そして老人病院というようなところにお入りをいただくことになるであろうという推定をして、その目標に向かって進んでいこうと、こう考えておるわけであります。  特別養護老人ホームも、そういった今申し上げました三つの施設の一つの大きな柱として、これからともどもそれぞれの役割を果たしていかなければならないわけでございますので、そういう観点に立って、ただいま申し上げましたように、昭和七十五年には二十四万人ぐらいの方を収容できるような特別養護老人ホームの整備へ向かって着実に進めてまいろうと、こう考えておるところでございますので、御安心いただきたいと思います。
  225. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう時間がありませんので、最後に大臣にちょっとお願いを兼ねて聞いておきたいと思うのは、先日我が党の佐藤委員が御質問になりましたが、保健事業については既に質疑が済んでおりまして、私触れる暇がなかったわけですが、ヘルス事業というのが非常に大事だということは、岩手県の沢内村の例を見るまでもなく、非常に大事だという点はもう明らかになっておりますが、特に労働者ですね、将来の老人になるべき予備軍である労働者、現役の労働者の定期健康診断という問題の非常な重要性を我が党の佐藤委員指摘をなさったんですが、そのときに私聞いておってあっと思ったんです。老健法の検査の内容と労安法六十六条の定期健診等の内容が違うんですね。老健法の方がいいわけですよ。だから、労安法が残念なことに、まあ古く決まっていたということもあるんでしょうが、いわゆる総コレステロールとか肝機能検査、こんなのは専門的ですが、血液検査というのが一緒にやられることになっていない。これは今日の医学ではまだ、せめてこのぐらいはやらぬといかぬなというふうに思いますし、この前には労働大臣に御相談をいただいてやってもらいたいということを佐藤委員も御指摘になっておられました。  私はあのとき聞いていて思ったんです。今までのいわゆる労働者の健診というのは、そのときそのときの労働力確保ということが中心であったんですよ。今日ではそういうことをやっていたのではだめなんで、本当に一人一人の生涯の健康を目的とした労働と生活の側面から健康のゆがみを直すということの努力、これが従来は乏しかったということ。これは私の意見じゃなくて、大阪府立大学教授の奈倉先生の論文にそういうことが言われているんです。一般市民健診と同時に、現役の労働者に対するそういった点での充実というのは極めて大事だと思いますので、あわせてそのことをぜひ大臣に忘れぬようにきちんとやってもらえるように、やっていただけますか。
  226. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この前も御答弁申し上げましたように、労安法は労働省の所管であり、また労安法は労安法なりの目的を持ってそれなりのことをされておると思っております。そういう中で、老人保健事業と同じような健診ができ得るならば、この対象外にするということで進めておるわけでございますが、そういう中で労安法における健診事業との連携といいましょうか、等についていろいろ相談をしてやってまいりたいと思っております。
  227. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間が参りましたので、終わります。
  228. 田渕哲也

    田渕哲也君 まず、福祉負担ということについてでありますけれども、この場合の負担というのは私的負担ではなくて、公的負担あるいは国民負担という考え方でとらえていきたいと思いますが、これの水準というものをどう設定したらいいか。例えば高福祉負担か、あるいは低福祉負担か、適正福祉適正負担、これもどのような水準にすると一番望ましい社会のあり方なのか。それから、あるいは公的負担国民からの取り方とか、国民にどういう負担の仕方をしてもらうか、こういうことについては、私はやはり長期的な一つの目標なりビジョンを持たなくてはならないと思うんです。したがって、こういう問題は経済成長率とかあるいは財政展望と同じように長期的な計画を持って示していただかないといかぬ。  けさほども我が国の社会保障負担率ということが問題になっておりました。六十一年度は税で二五・一%、社会保障負担が一一%、合計三六・一%。これは、先進諸国に比べれば、アメリカを除いては一番低い数字であります。しかし、将来はそうはいかない。だんだん老人もふえてくるとなれば、当然この社会保障負担は上がっていくわけでありまして、一番ピークのときには大体これは一八%ぐらいになるだろうということも言われております。また、行革審の小委員会の報告においても、二十一世紀初頭において国民負担は税、社会保障合わせて四五%、税を仮に今の負担率としますと、社会保障関係は大体二〇%程度、こういうことも言われておるわけであります。  こういう長期ビジョンに基づいて、この福祉負担のあり方というものを考えていかないといかぬだろう。この点について大臣は大体どういう、基本的な考え方ですけれども、どういう考え方を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  229. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これからの本格化する長寿社会の中で、社会保障における福祉負担のあり方というものはどうかという御質問でございますが、ことしの六月に政府といたしまして決定をいたしました「長寿社会対策大綱」というものがございますが、この基本的な方向に沿って総合的な政策を推進いたしてまいりたいというふうに考えております。  長期的にどのような見通しか、こういうお話でございますが、なかなかこの負担をはっきりとここでお示しするということは非常に難しいかと思うわけでございます。強いて言えば、今先生も御指摘がございましたように、国民負担率というものが現在三六%、これを将来、昭和百年という時点を想定いたしまして、現在の欧米先進諸国の五〇%前後というものからできるだけ低い水準でやっていってはどうか、大体四五%を上回るぐらいのところかなというふうに理解をいたしておるわけでございまするけれども、これからの社会経済の動向、また医療の水準の動向といったようなものを加味いたしながら、年々の国民の皆様方の合意の赴くところ、合意の形成のされるところに従いつつ進めていくということにならざるを得ないのではないか、今聞かれればそういうことではないかというふうにお答えいたしたいと思います。
  230. 田渕哲也

    田渕哲也君 やはり福祉負担というものは相関連するものであって、高い福祉を実現しようと思えば、やっぱり高い負担が必要である。ところが、余り国民負担、公的負担の率を高めると今度は負担する側が大変になるし、社会そのものが活力を失う。だから、どの辺で決めるかというのは、これは非常に重大な問題だと思うんです。それに、さらに将来はこの国民負担率というのは余り高くならない方が望ましいけれども、人口構成からいうとこれは避けられない。そういう観点から見て、どういう負担のあり方がいいかという基本的な論議をもっとしなければならないのではないか。何となく、政府の今回の法案にしてもそうですけれども、目先の財政問題という現実的な問題に振り回され過ぎておるのではないかという気がするわけであります。  そうなると、国民の間に社会保障というものに対する信頼感が失われていくおそれがある。今まで続いてきた社会保障機能、例えば年金にしても健保制度にしてもそうでありますけれども、将来そういうものが一体どうなってしまうのか。年金そのものについても、最近は年金を積んでもその財源が果たして還元されるのかどうか、危惧を持つ人が若い人にはふえておる。健康保険についても、私は、これから老人がふえてどんどん医療費がかさむとどうなるかという、そういう社会保障機能がこれから破壊されていくのではないかという不安を感じざるを得ないのであります。  特にこの人口構成を見ましても、先般発表された日本大学の人口研究所の推計では、厚生省の推計に比べたら、将来寝たきり老人とか痴呆性老人は厚生省の試算より約倍になるというようなショッキングな見通しを出しておりますね。それから、それに基づきましてまた年金保険料率でも、厚生省は二八・九%を最高だと言っておるけれども、とてもそんなものではおさまらない。昭和百年には四三・四%払わないといかぬようになる、こういうことが出ております。それから、医療費についても、現在の医療費の総額は十七兆円余りですけれども、これが毎年一兆円を上回る勢いで伸びていって、昭和百年にはいわゆる老人医療費医療費に占める割合はその三分の二を占める、こういうことが言われておるわけであります。  もしこれが本当だとすると、将来一体どのようにしていくかという、できる限り正確な推計とそれに基づく長期ビジョンというものがないと、私は国民は不安で仕方がないと思うんです。この点はいかがでしょうか。
  231. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先生のおっしゃることも十分私ども理解をいたすわけでございますが、先ほど申し上げましたように、今直ちにその水準を明確に数字であらわすということはなかなか困難なことも、先生御理解をいただけることと思うわけであります。  これまでに年金制度の抜本的な改正を行い、また健康保険制度改正も行い、また今回こうして老人保健制度改正も御審議をいただいておるわけでありますが、これらにつきましては、私どもといたしまして、二十一世紀を見定めた上でこのような改正をお願いいたしておるわけでありますし、またこの改正が終わりましたならば、医療保険の一元化へ向けての幅広い検討をいたしてまいりたいと思っておりますが、そういう際には常に将来のビジョンを頭に描きつつ、やってまいるべきであるというふうに考えております。ただ、幾らの数値ということを今示せということはなかなか困難であるということも、御理解をいただきたいと思います。
  232. 田渕哲也

    田渕哲也君 これからいわゆる超高齢化社会とも言うべき時代を迎えるわけですけれども、この超高齢化社会というのはただ単に財政面、財源の問題だけではないと思うんですね。例えば保険財政の問題、これも大変な問題ですけれども、それだけの問題ではない。寝たきり老人とか痴呆性老人がどんどんふえていく。それから、現在では、そのお世話をするのはほとんどが家庭の主婦である。ただ、この日大の研究所の報告によりましても、昭和百年には面倒を見るべき専業主婦の数より寝たきり老人や痴呆性老人の数が上回ってしまうというようなことも出ておりますけれども、私はまさにこれは社会問題として取り組まなければならないと思うんです。現在でも、ひどい場合には、それによって家庭機能が破壊するというような悲惨な例も少なくありません。  したがって、単に保険財政とかそういう面のみならず、もちろんこの保険と福祉サービスあるいは社会保障、それだけでなくて、やっぱり住宅とかほかの各制度間の総合的な政策というものが立てられなくてはならない。だから、超高齢化社会に取り組むのは、単に厚生省にとどまらず、政府全体として各部門がそういう統合のとれた政策を持つことが必要ではないかと思います。  特に、老人の場合介護ということが非常にこれから重大になるわけですけれども、例えば介護福祉五カ年計画というようなものをつくって、ほかの諸政策ともバランスをとりながら、やはり家庭機能の健全化を図っていくということが大事だと思いますが、いかがでしょうか。
  233. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 御指摘がありましたように、介護を必要とするお年寄りというのは非常に多様なニーズを持っております。それに対応しまして、どうしたら効果的、効率的なサービスの供給ができるかということは、真剣に考えなきゃいかぬ問題だと思います。  そこで、確かに保健、福祉、あるいは住宅といったいろいろな施策の連携を図ることが、まことに重要な課題であるというふうに認識をしております。そういった意味で、従来から例えばホームヘルパーと保健婦が同行して訪問するとか、そういう連携、それから省をまたがる話といたしましては、建設省と厚生省が共同しましてケアつき住宅の検討を進めるといった実績もあるわけでございます。こういう面で、これからも各施策の連携強化という面で努力をしてまいりたいと思っております。  また、寝たきり老人などを抱えておられる御家族の御苦労、これは先生のお話のように大変なものだと思います。何とかその負担を軽減しまして、老後を住みなれた地域社会でお年寄りが暮らせるように、各種の在宅サービスをとっておるところでありますが、中身は省略させていただきます。  そこで、最後に介護福祉五カ年計画という御提案がございましたけれども、要介護老人に対します施策としましては、特に在宅サービス、これが重要でございますけれども、これについては、第一義的にはやはり地域の実情に応じて各市町村がきめ細かくやるべきだというふうに思います。国としましては、市町村が計画的な整備を図ることが容易になるようにいろいろなお手伝いをする、こういった観点で努力をしてまいるつもりであります。そういった意味で、例を申しますと、今年度におきましてもデイサービスあるいはショートステイというものについての補助率を引き上げましたし、いろいろ箇所数の増というものも図って、補助金の増額も確保しているところでございますので、そういった面で国としては努力を続けていきたいと、このように思います。
  234. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから、予算のことについて質問したいんですが、社会保障予算というのは、年々やっぱり当然増という部分があるわけであります。ところが、最近はマイナスシーリングということが続きまして、当然増分が丸々予算がつかない。削られるわけですね。その分どこかにしわ寄せせざるを得ない、こういうことが続いておるわけですけれども、政府計画は、これは実現されるか、できるのかどうかは別として、一応六十五年度に赤字国債ゼロと、まだこの方針は堅持されておるようでありますけれども、そうするとマイナスシーリングがそれまで続くのかどうか。もしそうとすると、社会保障予算についてそういうことがこれから耐えられるのかどうか、この点はいかがですか。
  235. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) なかなか難しい御質問でございます。六十二年度におきます当然増は、私どもとしては八千億程度というふうに見込んでおるわけでございますが、現在のシーリング方式によります概算要求基準の中におきまして、若干の経費につきまして別枠が認められておるわけでございますが、本年度はその部分が四千百八十八億という形で認められておるわけでございます。しかし、ほかの部分につきましては、今先生指摘のように、いわば中の合理化、節約という形で対応をせざるを得ないわけでございます。  今後ともこのような当然増経費、人口の高齢化に伴いましてある程度の規模の当然増が生ずることは避けられないというふうに考えておりますので、率直に申し上げまして従来のような手法で予算編成を行ってまいりますことは大変困難になってくるのではないか、一層困難になってくるのではないかと考えております。  何年まで耐えられるのかというお尋ねにつきましては、今後どういった経済情勢、社会情勢が推移するのかということを見守る必要があると思うのでございますので、現時点ではお答えを勘弁させていただきたいと思うのでございますが、私どもといたしましては、社会保障の水準を維持していくため、その具体的な方策については関係当局と十分相談しながら、幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。
  236. 田渕哲也

    田渕哲也君 経済情勢等の変化もあるわけですが、私は、これから数年先を見ても、かつてのような高度成長なんということはまず期待できないと思うわけでありまして、むしろだんだん厳しくなりつつある。こういう中で、私は社会保障関係予算というのは非常に厳しくなってくると思うんです。そして、現行の一律削減のような、マイナスシーリングのような予算方式は、社会保障に関する限りはもう限界ではないか。  そこで、社会保障特別会計というような構想も出されておるわけでありますけれども、これはどうなんですかね、来年は税の大改革も行われるということを聞いておりますが、大体いつごろからこういう構想を実現されるのか、お伺いしたいと思います。
  237. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 社会保障特別会計の構想でございますが、これは今先生お話ございましたように、毎年巨額の当然増が生じます社会保障の関係予算を一般会計と区別して処理するということでございまして、社会保障の経費をどういうふうにして賄うかという、こういった問題認識から出てきたものでございます。しかしながら、御承知のように、社会保障の予算、つまり厚生省が所管いたしております一般会計予算は十兆という規模でございます。それから、この特別会計を設けました場合に、その財源をどういうふうに考えていくのかということを検討いたしますと、今後の社会保障の進め方をどうしていくかというような非常に基本的に大きな問題にもかかわってくることでございます。いわば国の財政制度、今後の私どもなりの所管しております社会保障の進め方自体に大きくかかわってくる問題でございますので、なかなかに難しい問題だと思っております。なお少し検討させていただきたいというふうに考えております。
  238. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、按分率の問題についてお伺いします。  これはいろいろもう委員会で論議されておりますので、簡単に、絞ってお伺いしたいと思いますが、結局国保の財政の窮状というのは、最近の原因はやっぱり退職者医療制度の対象者数の見込み違いということが言われております。退職者医療制度国保財政が助かると思って、政府国庫負担率を引き下げた。ところが、予定したほどの数に上らないがために、国保が財政的に非常に苦しくなった。これはいわゆる五十九から六十年度、この間に二千八十億円の穴があいた。ところが、これが六十年度の補正予算で埋められたのが千三百六十七億円にすぎない。それから、六十一年度中もこれに匹敵する影響が出るはずでありますけれども、政府予算は二百三十億しかない。六十二年度はどうかというと、これのための特別交付金は概算要求でも要求されていない。それで、結局その分を按分率の引き上げによって埋めようとする。結果的にはこうなるわけですね。これは非常に問題だと思うんです。  本来、国庫負担で埋めるべきものを被用者保険サイドの勤労者とか企業の負担増で始末しようとしておる。だから、この按分率に対する反対は非常に強いわけでありますけれども、この点はいかがですか。
  239. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 加入者按分率の引き上げでございますけれども、既に何度もお答えいたしておるところでございまして、各保険者、老人の加入率がさまざまでございますけれども、これを等しくしようと、どの保険者に加入されておっても、老人医療費拠出金を公平にしようという観点から行っておるわけでございます。  したがいまして、大きく見れば被用者保険の方が老人加入率が少ないということで、国保の方に公平の結果として負担がかかっていくわけでございますけれども、しかし、中には都市国保というようなところをとりますと、逆に負担が重くなる国保もあり、あるいは健保組合の中でも、老人が多いところは負担が助かるというような現象も一部にはあるわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもは御指摘のような退職医療の見込み違いということではなくて、これからふえ続けます老人医療費をお年寄りも若い人も、世代間の公平でということの一部負担の引き上げと同じように、どの保険者におられても同じ割合の老人を抱えた形での拠出金を出していただくという、完全な公平の形に加入者按分率を持っていきたいということからお願いをしているわけでございます。  そういう結果として、国保制度に対しまして負担が減になるということから、予算上その他はそれに見合った結果の措置として整理をいたしておりますけれども、今回の加入者按分率の引き上げは、ただいま申し上げましたような観点から行うものであるというふうに御理解をお願いしたいと思います。
  240. 田渕哲也

    田渕哲也君 六十年代の後半に予定されているという健保一元化ですね、これの構想はどうなんですか。大体何のために一元化をするのか。
  241. 下村健

    政府委員下村健君) 高齢化社会ということで、だんだん老人の割合がふえてくる。それに伴いまして、年金給付費それから医療費についても相当な負担が高まってくるわけでございます。したがいまして、医療費の中身を見ますと、現在医療費総体として見ますと大体七%程度の伸びでございますが、国民健康保険の部分をとりますと八%台、老人をとりますとそれが九%台あるいは一〇%というふうな伸びの状況になっているわけでございます。  現在の保険制度をそのままにしておいて、それに見合うだけのこれを保険料で賄っていく、あるいは国庫負担で賄っていくということになりますと、国民健康保険等に非常に過大な負担がかかってくるということで、今回の老人保健もそのあらわれでございますが、老人の部分以外についても高齢者負担一般が当然ふえてまいりますので、それを負担給付の両面にわたってならしていきたい。そのことによって負担が高くなるわけでございますが、高くなる負担を公平に国民各階層の間で分担をしていただこう、そうすることが今後の高齢化社会での負担を可能にするための一つの方策だと、このように考え一元化ということを考えておるわけでございます。
  242. 田渕哲也

    田渕哲也君 負担給付をならすという考え方はよくわかるわけですが、一元化というのは制度そのものを一本にしようということですか。
  243. 下村健

    政府委員下村健君) 一元化の具体的な内容については、まだ私どもも確定的な構想を決めているわけではございませんが、現在の皆保険体制、その基本的な枠組みを維持しながら、財政面である程度の給付なり負担の面で公平化措置をとっていくというふうな考え方を、四月に決めました高齢化社会対策大綱では決めているわけでございます。  具体的な内容については、関係者の間で一元化ということについてはそれぞれ意見が出ておりますが、かなりかけ離れた面もありますので、さらに関係者の御意見を伺いながら、今後その具体的な形というものは検討してまいるということになろうかと思います。
  244. 田渕哲也

    田渕哲也君 財政調整という観点からいうと、この加入者按分率を一〇〇%にすると財政調整はほぼ完全に調整されたという状態になるのではないか。退職医療もできたし、それに加入者按分率が一〇〇%になれば。あと、じゃ一元化で残っていることというのはどういうことですか。あと給付をそろえるということですか。
  245. 下村健

    政府委員下村健君) 給付面も残っておりますが、現在の老人保健制度による調整というのは、老人の加入者数だけの調整で、実際にこの形のままで負担をしていきますと、それぞれの保険制度の間で、財政力というものは一応別にいたしまして、加入者数だけを調整するという形でございますから、先ほど健康保険組合の問題等もちょっと触れられましたけれども、健康保険組合総体としては余力があるといいましても、その間には格差がそのまま残っている。現行のその体制というものを前提にして一〇〇にして、それを長く続けていくということはやはり問題が出るのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。したがって、どこかしかるべき時点で一元化ということで、それぞれの財政力も考慮した調整をもう一段行っていく必要があるのではないか、これが私どもの考え方でございます。
  246. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは両面があると思うんですね。それぞれの団体の自主性を尊重することによってより効率的な運営が行われる面と、一方ではアンバランスを是正していくという面とあるわけです。アンバランス是正に力を余り注ぐと、自主性が損なわれて効率的な運営ということが損なわれる、どこでそのバランスをとるかというのが非常に重要だと思うんです。そして、現在はまだいろいろな健康保険のあり方がばらばらに分かれておりまして、それぞれの歴史もあれば運営の仕方の相違もあるし、それから運営の効率化の格差もある。さらに、国庫負担率の格差もある。そういう段階でこの老人保健の加入者按分率を一挙に一〇〇%にしてしまうというのは、ちょっと私は急激過ぎるのではないか、乱暴ではないかという気がするわけです。  例えば健康保険組合でも、もし一〇〇%になる六十五年度をとってみると、組合数の半数以上は財政的に成り立たなくなる。つまり、健康保険組合制度がそうなれば崩壊ですね。制度そのものが成り立たないということになるわけですね。そういうようなことが予想されるのに、一挙に一〇〇%に引き上げるというのは非常に乱暴ではないか。むしろいろんな面で、保険組合の運営の方法とかあるいはいろいろな面での格差をなくしながら、徐々に加入者按分率もならしていくということでないといけないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  247. 下村健

    政府委員下村健君) 確かに、限定された範囲内での、この場合は老人の加入者数についてだけの調整をやるという制度でございますので、そこだけでとどまってそれを永続するということには無理があろうかと思っております。したがいまして、私どもとしては、ただいまも申し上げたわけでございますが、六十年代後半のできるだけ早い時期に一元化というふうなことを考えてまいりたい。それまでの期間は、現在の提案いたしました加入者数だけの調整という形で、健康保険組合の財政面等も総合的に判断いたしまして、六十年代前半は現状から見ますと大丈夫運営ができると、こんなふうに判断をいたしておるわけでございます。
  248. 田渕哲也

    田渕哲也君 現在が四四・七%ですから、私は本来なら徐々に引き上げてその間にこの一元化の構想もどんどん進めていく、そして将来は一元化の中で加入者の率も同じようにしていくというべきであって、やや財政、老人の加入者按分率だけが先行しているような気がするわけです。  それから、大臣はこの按分率の変化によってつぶれる、解散する健康保険組合はないようにしたいということを言われましたけれども、その方法というのはやはり国の助成事業という意味でしょうか。
  249. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回の加入者按分率を段階的に一〇〇%に引き上げていただくことにつきまして、健康保険組合全体としては黒字基調でございますので、これでやっていっていただけるものと思っておりまするけれども、それぞれの個別の健保組合をとってみますると、必ずしもそのようにいかない組合も出てこようかと思います。そういう非常に厳しい組合に対しましては、まず第一には、この法律にもございますような、急激に拠出金がふえるところにつきましては激変緩和の措置が図られておりますし、そしてその次には、政府が行います補助事業を現在よりも相当程度拡大をいたしまして補助事業を行ってまいりたいと考えますし、また健保組合の方々との十分な御相談が必要でありますけれども、共同事業などの活用をしていきたい。  こんなようなことで、厳しい組合についてその救済に全力を挙げてまいりたいと思っておりまするが、健保組合が解散に追い込まれるのではないか。いろいろな事情でこれまでにも解散された組合があるわけでございます。しかしながら、この加入者按分率を引き上げたということのみによって解散に追い込まれるというようなことのないように、ひとつ全力を挙げて努力をいたしたいと、こう考えておるところでございます。
  250. 田渕哲也

    田渕哲也君 終わります。     ─────────────
  251. 佐々木満

    委員長佐々木満君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま中野鉄造君が委員辞任され、その補欠として高桑栄松君が選任されました。  暫時休憩いたします。    午後五時十一分休憩      ─────・─────    午後六時五十一分開会
  252. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、老人保健法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  253. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生大臣に質問を申し上げます。  退職者医療制度の見込み違いによる財政影響を、老人保健法改正を通じ被用者保険負担で穴埋めするのは筋違いであり、あくまでも国の責任で完全補てんを行うべきではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  254. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 退職者医療制度の創設に伴う市町村国保への影響につきましては、従来より極めて厳しい国家財政のもとで、国としても最大限の努力を払い補正予算等を通じてできる限りの措置をとってきたところでありますが、今後とも市町村国保の運営の安定化が図られるよう誠意を持って対応してまいる所存でございます。
  255. 糸久八重子

    糸久八重子君 お世話料、差額ベッド、付添看護料等に見られる保険外負担を解消するよう努力すべきと思いますが、いかがでしょうか。
  256. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 御指摘の保険外負担の問題につきましては、従来からその負担を適正な範囲なものとする等指導、是正に努めており、今後ともその徹底を図ってまいる所存でございます。
  257. 糸久八重子

    糸久八重子君 一部負担金についてできるだけ低額に維持し、受診抑制にならないよう配慮すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  258. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回の一部負担の額は、高齢者世帯の所得、消費の水準から見て必要な受診は抑制しないものと考えておりますが、さらにこの点に十分配意しながら適正な水準にしてまいりたいと考えております。
  259. 糸久八重子

    糸久八重子君 例えば保険料率九五%の健保組合が一定割合、二〇%から二五%になった場合、加入者按分率見直しの一つのメルクマールになるのではないかと思います。このような場合には法改正により按分率を見直すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  260. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 改正法施行後の老人医療費の動向、各医療保険制度の運営の状況等を総合的に勘案して、必要な場合には拠出金の算定方法について検討を加えてまいる所存でありますが、御指摘のような点は健保組合の運営状況を見る場合の重要なポイントとして重視して対応すべきものと考えております。したがって、そのような場合には状況によって按分率の見直しが必要となることが考えられます。
  261. 糸久八重子

    糸久八重子君 今回の加入者按分率引き上げにより健保組合の拠出金は非常に激増いたします。昭和六十二年度については附則の激変緩和措置があるといいましても、将来のことを考えると大変不十分であり、みんな、国民全体が心配をしております。とりわけ円高不況等の環境下におきまして、組合によっては財政破綻に陥るものも出てまいります。これらについては将来にわたって十分な財政援助措置をとるべきと考えますが、いかがでしょうか。
  262. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回の按分率引き上げによる健保組合の拠出金の急増に対応して、まず財政的に窮迫する組合に対する助成を拡大し、さらに、今回の改正に際して負担が急増する組合に対して、激変を緩和していくという観点から、健保組合に対する補助を行うこととしております。将来にわたる健保組合の運営に当たって、財政的に破綻するなどということのないようできる限りの措置を講じてまいります。
  263. 糸久八重子

    糸久八重子君 国保事業につきまして四点、大臣の御見解をお伺いいたします。  まず一点目は、国保制度の抜本的改革を図ること。二番目は、国保サイドの経営努力を推進すること。三番目は、国、都道府県知事の市町村に対する指導の強化を図ること。四番目、今回の改正案における悪質滞納者の定義を明確にすること。  以上について御答弁ください。
  264. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 医療保険制度一元化を図るためにも国保制度の基盤強化が不可欠であり、そのための改革の検討に着手する所存であります。  国保における経営努力については、保険料収納率の向上やレセプト点検、医療費通知等の医療費適正化対策の推進など、歳入歳出両面にわたる対策を積極的に進めてまいる所存であります。  また、国保事業の運営が健全に行われるよう、国及び都道府県知事の市町村に対する指導の強化を図ってまいる所存でございます。  また、悪質滞納者の定義につきましては、合理的な理由がなく故意に保険料を滞納している者、具体的には、一、災害、失業、長期入院等の特別の理由がなく長期間滞納をしており、二、財産の名儀の変更を行うなど保険料納付を回避する意図が明らかである者を想定しております。したがって、このような悪質滞納者を除いては、医療の現物給付を受ける機会を失うことになるものではございません。
  265. 糸久八重子

    糸久八重子君 円高不況で倒産企業がたくさん出ております。この中には、事業主が保険料未納のまま倒産してしまうケースが多くなるものと思われます。このような倒産企業の被保険者に対して温かい取り扱いをしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  266. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 御指摘のような場合には、通常、そこに使用されていた従業員の被保険者資格は喪失となりますが、このような場合には、個人で引き続き加入のできる任意継続被保険者制度や、資格喪失時に受けていた療養についての継続給付制度の活用を図るなど、被保険者医療の受給機会の確保について配慮してまいる所存でございます。
  267. 糸久八重子

    糸久八重子君 在宅対策の充実と在宅療養者に対する給付改善を図るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  268. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老後を住みなれた地域で家族とともに暮らしていけるよう、在宅福祉サービスの一層の推進を図ってまいる所存でございます。
  269. 糸久八重子

    糸久八重子君 医療費適正化の徹底を図るために、次の四点を積極的に進めるべきと思いますが、御見解を承ります。  一番目、例えばレセプト審査のガイドラインの策定等によりまして、審査の社会保険、国保の格差、あるいは地域格差を解消すること。  二番目、高度医療を行っているとはいえ、高点数の傾向にある大学病院について中央審査を拡充すること。  三番目、いわゆる社会的入院をなくすために、長期入院患者について個別に入院の必要性をチェックするとともに、長期入院が傾向的に多い医療機関を重点的に指導すること。  四番目、都道府県の医療計画を早期に策定するとともに、いわゆる駆け込み増床を排除すること。  以上四点にわたって御見解を承りたい。
  270. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 御指摘の審査の充実、大学病院にかかわる中央審査の拡充、長期入院の適正化につきましては、御趣旨に沿うよう前向きに対処する所存でございます。  医療計画につきましては、各都道府県に対し、その早期作成の指導を行っているところでありますが、さらにその指導を強めてまいります。  また、いわゆる駆け込み増床については、医療計画の趣旨にのっとりその排除に努めているところでありますが、今後とも指導の徹底を図る所存でございます。
  271. 浜本万三

    浜本万三君 おとといは厚生大臣に全般のことを質問させていただきましたので、きょうは総理がお見えでございますから、総理に若干の問題について質問をさせてもらいたいと思います。  総理、五十七年度以降の予算編成を見ますと、人口の急激な高齢化によって社会保障予算の当然増が一割程度見込まれており、これからもますます増大するものと考えられます。したがって、現在のような単年度予算編成でつじつまを合わせようとすると、どうしても財政の影響を受けてしまい、安定した社会保障制度ということにはならないのではないかと思います。この点についていかにお考えでございましょうか。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 社会保障政策は、内閣の重要な政策でありまして、大変厳しい財政状況のもとでも今まで極力配慮してきたところでございます。特に高齢化社会を迎えまして、政府としても「長寿社会対策大綱」をつくりまして、これを推進しておるところでございますが、今後ともこれを一つの基準にいたしまして、いろいろ経費関係等についても配慮いたしまして、財政全般との調和を考えつつ、その中でも社会保障等については重点を入れて対策を講じてまいりたいと思っております。  今まで経費捻出等のために社会保険関係につきましていろいろ御無理をお願いした点もございますが、これらは大体その程度は耐えていただけると、そういうような考えを持ちましてやった点もございます。やはり我々の政府の政策につきましても、国民の皆様方が納得いけるような政策をやらぬといかぬと思っておりまして、そういう点につきましては、非常に細かい配慮をしながらやってまいりたい。特に難病とか、そのほかのややもすれば目の届かない方々に対して努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  273. 浜本万三

    浜本万三君 今申しましたようなつじつま合わせの予算編成、またそれからくる法律改正を避けるためにも、中長期の医療福祉一体となったビジョンの策定を本日の午前中の質疑でもお約束されました。総理もリーダーシップを発揮されまして関係省庁を督励していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  274. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御趣旨を体しまして政府といたしましてもできるだけ努力いたしたいと思います。
  275. 浜本万三

    浜本万三君 総理は五十八年度予算編成から携わっておられるわけでございますが、五十八年度から六十一年度までに事項別にどのような予算の伸びとなっているか御存じでございましょうか。六十二年度予算編成に立ち向かうに当たって、そういった概括的な説明ぐらい財政当局からお聞きになる必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  276. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) いろいろな数字は総理に御説明をしておりますが、私から数字を簡単に申し上げますと、五十八年度から六十一年度までの間、社会保障関係費は七・六%の伸びを示しております。四年間の累計で七・六%伸びております。文教及び科学振興費は一%伸びております。恩給関係費が二・一%減っております。防衛関係費が二一・四%の増となっております。公共事業関係費が六・五%の減となっておりますが、別途事業費確保方策を講じております。経済協力費は二三・六%の伸びとなっております。中小企業対策費は一五・五%の減となっております。エネルギー対策費は五・四%の増となっております。食糧管理費が三四・七%の減となっております。主要な経費はそういうことでございます。このほか国債費が三八・二%主要経費として伸びております。全体といたしましては、一般会計は七・三%のこの間伸びとなっております。  以上でございます。
  277. 浜本万三

    浜本万三君 今御説明になりましたような伸びでございまして、結局歳出総予算は七・四%、社会保障関係はそれとほぼ同じ伸びを示しておりますけれども、お話のように防衛費その他は大幅に伸びておるわけであります。こういった実態を見ますと、中曽根内閣の政治姿勢が如実にあらわれているものと感じないわけにはまいりません。こういった事実を国民にどのように説明して納得を得ようとされようとしておるのか、総理の御見解を承りたいと思います。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国政の問題は、総合的な視野に立ちましてバランスのとれた予算編成を行う。それと同時に、各そのときそのときの重点項目というものは出てくるわけでございます。その中には国債関係を処理するためにも必要なものが出てまいる場合もございます。そういうような諸項目等につきましては、党とよく相談をいたしまして、また国民の皆様方の御要望等も酌み取りまして、そして調和あるように配慮しつつ予算編成をしてきたところでございます。  今後もそのような考えに立ちまして、国民の御納得を得るような予算編成をやってまいりたい、経費の重点的な配分を考えてまいりたい、そのように思っております。
  279. 浜本万三

    浜本万三君 先ほど私の方から指摘いたしましたように、防衛費などの伸びに比べまして社会保障の伸びが非常に少額であると、そういうことを申し上げました。今議題となっております老人保健法改悪もそういうものと軌を一にしておるものだと思います。病に苦しんでいるお年寄りの一部負担を増大させるとか、また取りやすいところから取るというサラリーマンに対するしわ寄せがなされておるのでございます。総理はそういう内容を御承知でございましょうか。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 老人医療の問題は政治の大きな問題の一つであると思います。今回も、そういう意味におきまして今の政策を法案をもって御審議願っておる次第でございます。やはり何といっても長期的に安定した制度を持続していく、そして世代間の公平を確保していく、こういうことが大事であると思います。そのような考えを持ちつつ、老人に対してできるだけの手当てを尽くしていけるように今後も努力をしてまいるつもりでおります。
  281. 浜本万三

    浜本万三君 今申しましたことをもう一回数字を挙げて説明してみますと、満年度実施を見ますと、六十二年度に例をとりますと、患者の一部負担制度改正のない場合の七百億から千九百億円に増大をするわけであります。また、被用者保険側の負担は一兆六千三百億円から三千五百億円も増大いたしまして、合わせて一兆九千八百億円になるのであります。これに対し国庫負担は三千三百億円も減額になるのであります。これを弱い者いじめ、負担の転嫁による実質的増税と言わずして何と言うことができるでしょうか。負担しないとかすべきでないと言っているのではございません。国民の納得の得られるような方法で、しかも段階的に実施すべきだと思うわけでございます。  本法案が、総理、心からベストだとお考えになっておられるわけでしょうか。
  282. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これから増高いたします老人医療費国民ができるだけ等しく負担していこうということで、それぞれ所属していただいております保険者においてこれを公平に負担していただく。これにつきまして今回の改正でその負担の公平を、その理念の徹底を図らしていただくという意味におきまして、段階的に一〇〇%に引き上げさせていただくものでございます。  これによって国庫補助が削減されるではないかという御議論でございますが、これは老人保健制度そのものに対しては国費として二割、そして都道府県五%、市町村五%という三割の公費負担は変えていないところでございます。ただ、これまで老人加入率の非常に高かった国民健康保険負担が、このたび保険者間におきまして等しい老人の数だけを負担するということに相なりますことによりまして軽減される、そして国保に支出しております国庫負担がその結果として軽減されるというものでございまして、このような各保険者の共同事業で老人医療費を支えていくという考え方は、私は現在のところベストなものであるというふうに考えさせていただいておるところでございます。
  283. 浜本万三

    浜本万三君 総理は、この改革案の拠出金の算定方法については多分十分理解をしておられないと思うのであります。そのためにちょっと申し上げておきたいと思います。  現行は加入者按分率と医療費按分率を五〇対五〇といった原則的な考え方に立ってつくられておるわけでございます。そういう算定方法を加入者按分率一本で財政調整をしようというのが今回の案でございます。国民は、自分が自分の保険単位に加入していないお年寄りのためにどれだけの負担をしているのか、必ずしも理解できるようにはなっておらないのであります。  老人医療費国民全体の中でどのように負担していったらよいか、この際抜本的に検討する用意が必要であろうと思うんでございますが、そういう用意がありますでしょうか。例えば老人医療費に一部特定財源を導入するといった考え方もあると思うのでございますが、総理の御見解を承りたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 老人医療の財源につきましては、創設当時からいろいろ議論のあったところでございますが、各保険者の共同事業であることとそれから医療費適正化の推進といった観点から、現在の公費三割、保険者拠出金七割の負担方式が最もふさわしいものではないかと考えております。  これに対して特定財源云々というお考えがあるようでございますけれども、やはり予算編成という面を考えてみますと、目的税とかそういうような特定のものを充てるという考え方は、保険制度という面から見て我々は今のところはとっておらない考え方でございます。
  285. 浜本万三

    浜本万三君 保険制度ならば自分のことを自分で保障するということなんでございまして、今の総理のお考えは全くこれは逆な考え方だと思います。しかし、それはそれとしておきましょう。  次の質問に入りたいと思います。  今回の加入者按分率の引き上げによりまして財政的に危機に瀕する健康保険組合については、国の財政的援助も図ると従来の答弁でも説明してきておられるわけでございますが、これについては予算編成に当たって特に配慮することを内閣として約束願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  286. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) できるだけの努力を私も重ねてまいりたいと考えております。
  287. 浜本万三

    浜本万三君 厚生大臣、もう余り社会保障予算を削られるようならば自分は職を賭しても抵抗すると、そのぐらいの気構えでぜひやってもらいたい、かように希望しておきます。  では、次の質問に入ります。  国民皆保険制度の根幹であります国民健康保険制度について、財政的見地から来年度予算編成において、国庫負担の一部、七%、地方公共団体に肩がわりさせようとしておられるようでございますが、これは制度の根幹にかかわる問題であり、十分な検討期間も置かずツケ回しをすることは絶対に避けるべきだと、かように考えます。総理のリーダーシップによりまして、こうした糊塗策を中止させていただきたい。しっかりひとつ約束してもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか。 ○
  288. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民健康保険制度につきましては、さまざまな問題点が現在指摘されております。その財政基盤の強化ということも重要な課題であると認識しております。御存じのように、市町村におきましては多大の困難を抱えておるところもふえてきておる状態でございます。行革審からも国保運営における都道府県の役割のあり方等について検討を進めるよう答申をいただいておるところでもあり、今後関係者の御意見を伺いながら、さまざまの角度から幅広く検討を進めていくべき課題であると考えております。
  289. 浜本万三

    浜本万三君 そもそも現在の国民健康保険は、加入者四千五百万人の約六〇%が百五十万円以下の低所得者ということになっております。果たして社会保険制度として、独立したものとして今後も存続させることができるだろうかという疑問を私は持っております。  老人対策、低所得者対策として社会保障の概念も持ち込む必要があると思いますが、この点いかがでございましょうか。
  290. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この老人保健法等の一部改正案を御可決いただきましたならば、できるだけ速やかにこれから将来の医療保険の負担給付の公平という観点に立った一元化に向かっての検討を進めてまいりたいと考えておりますが、そういう中でまず第一に取り組まなければなりませんのは、国保の安定的な運営、財政基盤の強化というような観点からの国保の見直しだと心得ております。  そういった国保の見直し等についていろいろな御意見があり、それらの御意見を幅広くお聞きをさせていただき、できるだけ国民的なコンセンサスを得てまいりたいと考えておりますが、そういった中で今先生の御指摘のようなお考えも検討の一つの課題になろうかと思っております。
  291. 浜本万三

    浜本万三君 五十九年の十月から施行されました退職者医療制度の加入者見込み違いから生じました財政影響額は、政府説明を伺いましても六十二年度で約千五百億円になると思います。これは今後も尾を引く問題であります。なし崩しに拠出金国保側の減額でカバーするのでなく、国の責任で補てんしなければ理屈に合わないのではないか、かように私は思います。さもなければ、補助率を戻さなければ市町村側も納得できないと思うわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  292. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 退職者医療制度の加入者の見込み違いによります影響額につきましては、先生も御承知のとおり、五十九年、六十年につきましては千三百六十七億円、また本年度につきましては当初予算で二百三十億円、この老人保健法の成立のおくれなども含みまして七百四十億円の予算措置をいたしたところでございますが、現下の大変厳しい財政状況の中でできる限りの努力をいたしまして、このような措置をいたしたところでございます。  しかしながら、なおかつこれでも不十分であるということは私どもも承知をいたしておるところであり、国民健康保険関係者の皆様方に格別の御努力をいただいておることも承知いたしております。また、私どももなお引き続き国保の財政の推移なども十分考慮しつつ、誠意を持って最善の努力を今後とも続けてまいりたいと思っております。  また、国保に対する補助率を戻すべきではないかというただいまの御指摘でございますが、現在国保には御案内のように給付費の五〇%という現下の状況の中では相当な高率の国庫補助負担をいたしておるわけでございまして、そういう中でなかなか困難な問題と思う次第でございます。
  293. 浜本万三

    浜本万三君 老人保健事業の目玉は保健事業であろうと思います。現在でも二百一市町村において保健婦がまだ設置されておりません。それから、八百六十九市町村で一人だけ配置されておるのであります。現在の市町村の財政の苦しさをあらわしておると思うわけでございます。国の補助を現行の三分の一から二分の一ないし三分の二に引き上げることを考えなければ、保健事業の第二次計画の達成はおぼつかないと私は思います。やはり病気をたくさん発生させないためには、保健事業を積極的にやっていくことが望ましいことだと思いますが、その点いかがお考えでございましょうか。
  294. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老人医療を長期にわたって安定的に確保してまいるということとともに、壮年期からの保健事業を推進をすることによりまして、いわゆる健やかに老いるということでヘルス事業を推進してまいるということは非常に大事なことであると認識をいたしております。  ただ、この保健事業の前身でございました健康診査に関する事業におきましても国庫補助が三分の一であった、こういうことを受けて今国庫補助三分の一で行っておるわけであります。この保健事業が効果を上げてまいるということによって、国もまた県もそして市町村も、それぞれの地域がこの効果を上げてまいると、こういうことになるわけでございまするので、三分の一ずつの負担というのは適当ではないかというふうに私は考えております。  これまで第一次五カ年計画ということで、本年まで特に量的な拡大ということに心して進めてまいったわけでございまするけれども、来年度以降第二次五カ年計画をスタートさせたいと考えておりますが、そういう中におきましては、予算の確保もさることながら、それぞれの事業を拡大するとか、またそれぞれ魅力ある事業、質の改善、こういうようなことに特に重点を置いて発展させてまいりたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
  295. 浜本万三

    浜本万三君 今の問題について、もう一つ厚生大臣に希望しておきたいと思うんですが、先ほど糸久委員の質問にもございましたように、第一次計画で目標は発表されておるんでございますが、その目標に対して年ごとにどういう成果があったかということについては一向に発表されていないんであります。  成果がわからないままに第二次計画を策定するということは、非常にこれまた問題があると私は思います。したがって、目標に対して年ごとにどういう成果があったか、どういう程度目標を達成しておるか、そういう点を発表いたしまして、真剣に実施計画の内容を検討すべきであると、かように思いますが、いかがでございましょうか。
  296. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回のこの法案の審議を通じましても、昭和五十九年までの実績等につきましては申し上げさせていただきながら、いろいろと御議論をいただいたところでございます。今後、六十年そして六十一年の実績等発表をさせていただき、またいろいろと御批判をいただきながら改善し、そして充実をさせてまいりたいと思う次第でございます。
  297. 浜本万三

    浜本万三君 もう一つ、時間がもう一分ほどありますので総理に伺うんですが、総理は先般いわゆる国鉄民営・分割法案を成立させられまして、国鉄問題に取り組んでおられたわけでありますが、この一番大きなねらいは、大きいところにはとかくむだがあるんだから、したがって分割をいたしまして、活力のある企業をつくっていこう、国鉄をつくっていこう、そういうお考え方があったと思うんです。  この健康保険組合の事業につきましては、それぞれの被保険者が自分たちの健康保険組合をつくって、そして自分たちの助け合い運動を、やろうと、こういうことなんでございますが、その財源を他の制度に活用しようというのが今回の法案の趣旨でございます。できるだけ小さいグループで活性化をさせるということが国鉄法案のねらいであったとするならば、六十年代の後半に保険事業の一元化を図ろうとすることは総理の考え方と逆行するのではないかと思いますが、この点いかがでございましょうか。
  298. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国鉄のようなああいう事業体と、健康保険のような国民医療に関する大事な仕事と性格は違うと思うのでございます。ですから、国鉄は国鉄、健康保険は健康保険、それぞれの理論と哲学によって処理していくべきものであると考えます。
  299. 浜本万三

    浜本万三君 終わります。
  300. 中西珠子

    ○中西珠子君 与えられた時間が大変短いので、まず厚生大臣確認質問をさせていただきたいと思います。  老人保健施設におきましては施設療養費が定額で施設に対して支払われることになっておりますが、この施設内におきまして急性疾患などの緊急事態が生じて施設の医師が対応した場合に、これを適正に評価する必要があると考えますが、いかがですか。
  301. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 急性疾患等の緊急の事態が生じた場合には、協力病院からの往診または協力病院への入院で対応することとなりますが、緊急の措置として施設の医師にも対応していただくことが必要であると考えております。  この場合については、その医師の行った医療を個別に適切に評価する方向で今後検討する考えであります。
  302. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人保健施設の入退所が適正かつ円滑に行われるためには、何らかのガイドラインを設けることが必要だと思いますが、いかがですか。またこのほか、施設の運営の適正化を図るため種々の規制を設けるべきだと思いますが、いかがですか。
  303. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 運営基準におきまして入退所のガイドラインを設け、その適正化を図る考えでございます。  また、この基準において、入所者のニードに適切に対応したサービスの確保を図る観点から、施設療養や日常生活サービスの取扱方針などを定めていく考えでございます。
  304. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人保健施設の利用は、施設と利用者との間の私的契約になるわけですから、利用料金が高くなってしまうおそれがあります。そのために、やはり利用料金の歯どめ措置を図るべきだと思いますが、いかがですか。
  305. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老人保健施設は寝たきり老人のための施設でありますので、利用料のガイドラインを定め、適正な料金体系の確保を図っていく考えでございます。
  306. 中西珠子

    ○中西珠子君 今回の改正案老人保健審議会の権限が拡大され、新たに老人保健施設についても審議することになるわけでございますが、老人保健審議会の構成を見直すべきであると思うのでございます。特に医療とか福祉関係の方の代表、そういった方を入れるばかりでなく、婦人の声も反映されるように構成の見直しをやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  307. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老人保健審議会におきましては、老人保健施設について専門的に検討願う部会を設け、医療及び福祉関係者の参画をお願いし、その意見が反映されるようにしたいと考えております。  また、婦人の意見が反映されるような方途についても考えてまいる所存でございます。
  308. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人保健法の重要な柱の一つである保健事業について厚生省は第二次五カ計画をおつくりになりましたが、この達成のためにはマンパワーの充実や施設の整備を図ることが大事でございます。また、健診の受診率の目標達成も含めて完全実施に努めるべきであると考えますが、いかがですか。
  309. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) マンパワーの充実や施設の整備は、保健事業推進の基盤でありますので、計画的にこれを進めるとともに、健診内容の充実等により受診率の目標達成に努めるなど第二次計画の実現に全力を挙げてまいります。  なお、各年度の達成目標に対する成果を明らかにするよう努めてまいる所存であります。
  310. 中西珠子

    ○中西珠子君 総理に少し質問させていただきたいと思うのでございますが、十一月二十日の衆議院の社会労働委員会におきまして、総理は「本格的な長寿社会を迎えまして、国民が健やかで充実した老後を送ることができるような社会を建設することは、最も重要な課題である」とおっしゃっております。全くそのとおりだと思いますし、老人対策は総合的かつきめ細かく立案、実施されなければならないと思うわけでございますが、ただいま審議中の老人保健法改正案はどうも国民、特に老人に対して負担を押しつけ、国庫負担削減を図ることを究極の目的にしているような感じを受けるわけでございますが、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  311. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 老人対策につきましては、我々の方では「長寿社会対策大綱」をつくりまして、これを計画的に推進しつつあるところでございます。公明党が既におつくりになっておるトータルプランも我々大いに参考にさせていただいた次第でございます。  御指摘のように、やはり総合的にこれは行うべきものであると思います。また、特に高齢者の多様なニーズにこたえるためには、そのきめ細やかな配慮のもとに保健、医療福祉の連携を図りながら総合的なサービスを提供する、そういうことが非常に大事であると思いまして、そのような点について今後とも努力してまいる所存でおります。
  312. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいまお話しになりました「長寿社会対策大綱」、これを拝見いたしますと、どうも病気の老人は入院とか施設療養よりも在宅療養をするべきだという考え方が貫かれているような感じを受けるわけでございますが、老人の在宅療養というものは本人にとっても介護者にとっても大変に困難なものであり、最近病苦に悩む老人の自殺率が高まっており、また一方介護者が心身ともに疲労の極致に達して、長年にわたって介護してきた寝たきり老人を思い余って殺してしまったなどというケースもふえているわけでございます。  寝たきり老人の介護者の九割近くが女性であり、しかも中高年になってしまった嫁が多いということも総理は御承知のことと思いますが、老人の在宅療養と介護に対する公的サービスはまだまだ不十分だと思うわけでございます。もっと拡充して、老人本人のためにも、また介護者のためにも援護措置考えていただくことが緊急に必要だと思いますが、総理の御所信を伺います。
  313. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は全く同感でございまして、在宅寝たきり老人等の場合には大体お嫁さんがこれに当たられて、そしてほとんど心身くたびれてしまうという、そういうケースが少なくないのでございます。そういう点も考えながら、ホームヘルパーの派遣とかあるいはショートステイあるいはデイサービス等の在宅対策をさらに充実していく必要があると考えております。また、施設の充実につきましても今後努力していくべきであると考えます。
  314. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいまのをお約束と受けとめますから、どうぞ在宅介護、また在宅療養をしている人たちのためにも公的サービスをもっと拡充していただき、また施設もふやしていただきたい。また、老人病院なども質をよくしていただきたいということを心から要望いたして、私の質問を次の高桑委員にバトンタッチいたします。
  315. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは質問をさせていただきますが、最初に総理大臣にお願いをしたいと思います。  私は予算委員会でも、あるいは社会労働委員会でも再三指摘をしたところでございますけれども、この老人保健施設というものについての疑問が多々あるわけで、一番重要な問題は、この施設が医療法の適用を受けないということが非常に重要なポイントだろうと思うんです。  この原案によりますと、この施設は医療法に規定する病院でも診療所でもないと、こういうことになっております。しかし、内容は医療が主でありまして、この「施設療養」というのは「看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療」となっておりまして、非常に医療ということが強くうたわれている、主体が医療でございます。しかし、病院と診療所の間の中間施設であるというふうな概念規定がなされているわけです。  ところが、特別養護老人ホーム——特養ホームと老人病院の中間というんですが、特養ホームの医務室というのは医療法に規定する診療所ということになっております。それから、例を挙げますと、助産所というのはお産を取り扱うところでありますが、お産というのは正常な場合はこれは病気ではない。しかし、ここは明らかに医療法の適用を受けているということでございます。  どう考えても、この老人保健施設が医療法の適用を受けないということは、我が国の医療制度の根幹に触れるものではないかという疑いが非常に強く持たれるわけであります。私は、再三本施設が医療法の適用を受けるべきであるということを申し上げてまいりました。総理大臣、これに対していかがお考えでございましょうか。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の法案、老人保健施設は、病弱な老人に対しまして医療サービスと日常生活サービスをあわせて提供することを目的としたいわゆる中間施設でありますので、医療法ではなく、老人保健という方面に位置づけたものでございます。もちろん、であるからといって、お医者さんや医療法という立場を無視していいというものではなく、両者連携して行うべきであるとは考えております。  詳細につきましては厚生大臣から御答弁申し上げます。
  317. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 医療法につきましては、ただいま第二次とでも申しましょうか、過日御審議をいただきました医療法の改正に加えて、次の医療改正の検討をしていただいております。  そういう中におきまして、これから予想されますその他の中間施設と称せられるものなども含めまして、いろいろ御検討をいただいてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  318. 高桑栄松

    高桑栄松君 今の大臣の御答弁伺っていますと、医療法の適用を検討するということを今言われたわけでございますか。
  319. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これから予想されます中間施設全体のあり方、またそれが医療法にどのように規定されるか、また医療法全体をそれにふさわしいように根本的に直していくか、そういうようなことについても御検討をいただいてまいり、そしてその結論によって適切な措置をいたしたいというふうに考えております。
  320. 高桑栄松

    高桑栄松君 先日の参考人質疑でございましたが、日本医師会の常任理事の吉田先生が見えて、私が質問をいたしましたときにこういうお答えが返ってまいりました。医療法の適用を受けない場における医療については健康保険が適用されない、つまり健康保険指定医療機関ではないということでございまして、そういうことですと、突発的な何か診療を必要とするときに行われた医療については健康保険が適用されないことになるのではないかという疑いを私は持っているわけです。大臣、いかがですか。
  321. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) その問題につきましては、今回の老人保健法改正の条項の中で、保険による療養費払いができるように規定をいたしておるところでございます。
  322. 高桑栄松

    高桑栄松君 それであれば、やはり健康保険指定医療機関としなければいけないんじゃないか、つまり、そうであれば医療法の適用を受けなければならないのではないかという論理なんですが、いかがですか。
  323. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設は老健法上の施設でございまして、病院、診療所じゃない、したがって保険医療機関ではないわけでございます。  大臣からお答えいたしましたように、老健法上の給付が施設療養費という形で出ますけれども、これはいわゆる健保法上の診療報酬に基づく費用の支払いというふうなことじゃなくて、施設療養費という形で別途のものがこの中間施設に出るということでございます。したがいまして、保険医療機関あるいは老人病院もそうでございますけれども、そういった体系と別の中間施設に対する給付が出るというふうにお考えいただきたいと思います。
  324. 高桑栄松

    高桑栄松君 今のお答えがもしそのまま仮にいいものだといたしますと、そうするとちょっと申し上げたように、まとめ医療というんですか、定額医療以外の処置を必要としたときに健康保険の適用が受けられないのではないかと申し上げているわけです。そうすると、それは自由診療になりますか。
  325. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 病状急変の場合には、大臣からも先ほど申しましたけれども、保険医療機関から往診していただくあるいは保険医療機関に入院していただくという場合には、もちろん保険医療扱いでございます。しかし、この施設のお医者様が救急に対応されたという場合には、先ほど申しました中間施設に対します給付費であります施設療養費、この中で工夫をいたしまして一律定額ではなくて何らかの加算といったような形で個別評価をいたしたいということでございます。
  326. 高桑栄松

    高桑栄松君 それを私、前に質問したんですよ。つまり、定額医療というまとめた医療、請負医療の中でしかやれないとすれば、医師の医療責任は果たせないのではないか。例えばいわゆる医療事故というふうなことが起きたときに、責任の所在はまとめ医療の中でやることであるかどうかということにかかってくると思うんです。したがって、私はやっぱり健康保険の指定機関であって、つまり医療法の適用を受けなければいけないのではないかということを申し上げたわけです。いかがですか。
  327. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは、費用の支払いとそれから医療とは関係がないというふうに考えておるわけでございます。費用の支払いは療養の定型的なサービスに着目しまして平均的な費用でお支払いする。その平均的な費用の中で医療を思う存分やっていただきたいということでございますけれども、それにふさわしい定額の療養費を設定いたすと申し上げておるわけでございますが、それでは無理なような場合の、病状急変の場合の医療が必要な場合には別途の形で評価して費用をお支払いいたしたいというふうにお答えしているわけでございます。
  328. 高桑栄松

    高桑栄松君 ちょっと観点を変えまして、施設の管理責任者はだれかということなんですが、原案を見ますと施設療養の責任は医師が負うと書いてあるわけです。これは医師免許証というものは医療の責任を負っているわけでございまして、医師免許証を持っていない人が負うわけにはいかないので、わざわざこれを書き込んだ理由というのは何でしょうか。
  329. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の改正法案におきましては、施設医療の管理は医師としております。施設全体の管理者につきましては各施設の状況に応じて定められるものと考えまして、特に規定することはしなかったところでございます。いずれにいたしましても、施設療養というのは医療サービスでございますから、医療は医師が管理をするということはもう医療法との関連でも明らかでございますので、そういう規定を整備いたしたということでございます。
  330. 高桑栄松

    高桑栄松君 私申し上げたとおりを部長言っておられるわけで、医師免許証というものは医療の責任を負っているから明記する必要がむしろないので、私は大変意地悪くとれば医療の責任を医師が負うけれども、施設責任は医師でなくていい、こういうふうに言っているように見えるわけです。  これはこの前の私の質問には医師がやってもいいとおっしゃったんですが、それでは先ほど申し上げましたように、特養ホームというのは、今中間施設が特養と病院の中間だとおっしゃったから特養をあえて比較に出しているわけですが、特養ホームの医務室でさえも、医務室自身の施設の管理者は医者なわけです。この老人保健施設においては医療の責任は、というのは先ほどくどく申し上げましたが、書く必要ないんです、医者です、医者しかないんだから。ですから、それを書かないで、施設の管理者は開設者でも医者でもいいというのは大変おかしいし、助産所の例を挙げましたが、助産をするところでも施設の管理者は助産婦なんですね。ですから、そういうことを考えると、しかもここは、特養ホームの医務室は非常勤医でいいということになっていますね。ここは専任者を置いているわけですよ。そうしておきながら、施設管理者が医師でないというのは、私はこれも納得がいかない。論理的に矛盾があるのではないかと、こう申し上げているのですが、いかがでしょうか。
  331. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設はまさに中間施設でございまして、医療サービスと生活上のお世話の両万をあわせ目的といたしておるわけでございます。  御指摘の特養ホームにおきます医務室、それは診療所でございますが、そこの医務室、診療所は医療のみを行う場所でございまして、それはもちろんしたがって医師が管理するわけでございますが、この老人保健施設は両万の機能を持っているということでございますから、その中で、医療を行う業務について医師が管理するということを明記したわけでございます。
  332. 高桑栄松

    高桑栄松君 やっぱりそこに矛盾があるんじゃないでしょうかね。つまり特養ホームというのは、第一義的に病院じゃないわけでしょう。病人を入れるんじゃないんです。入った人が病気になったときに医務室で診る。こちらは最初から医療が必要な人を入れることになっているわけです。しかも、原案によれば、医療費を大ざっぱに二十万と見ておられたようだし、生活費が五万なんですから、全費用の五分の四は医療なわけで、何としても医療というものが非常にウエートが高いと先ほど来申し上げているんで、これはフィフティー・フィフティー医療サービスと生活サービスではないんです。しかも、フィフティーであろうとなかろうと、医療に関しては特養ホームと同じようにその施設の管理者は医者でなければなるまいと思うんです。  私は、ですから生活サービス部門の施設の管理は別にしても、医療を行うための施設はあるわけでしょう、まさか廊下でやるわけじゃありませんから、特養ホームよりももっと立派な施設がなければ継続的医療はできないと思います。継続的医療をするからにはそれだけの施設が要るわけです。その施設の管理を医者がしないでいいものでしょうかと、医療責任は全うできない、こういうふうに僕は申し上げている。いかがでしょうか。
  333. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 何度も申し上げて恐縮でございますけれども、この施設は医療のケアとそれから生活上のお世話の両面を一体的に寝たきり老人等に提供しようといたしているわけでございます。  したがいまして、その機能の中には、医療の部門もあるし、生活の部門もあるわけでございまして、その医療の部門については、当然のことながらお医者さんが管理をするということでございますが、施設全体については、例えば特養に併設された場合には、特養の施設長が施設全体を管理されることがふさわしい場合も当然あり得ると私どもは考えておりまして、そういうことからいって、その施設長はそれぞれの施設の判断にゆだねることにいたしまして、少なくとも医療のサイドは医師が管理しなければならないということを法律的に明記をして、御審議を煩わしているわけでございます。
  334. 高桑栄松

    高桑栄松君 老人保健審議会のメンバーのことを中西委員も質問されましたけれども、従来の所管事項と異なって、必要な医療審議するという言葉が加えられたわけでございます。それに対応して大臣はメンバーを加えて新しく審議をなさるとおっしゃったと思うんですが、そうすると今までは不適当なメンバーで審議をなさったということですね。大臣、いかがですか。
  335. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これまでの老人保健審議会は、専ら加入者按分率の問題について御審議を賜るということでございましたので、そういう規定になっておったわけでございますが、今度は中間施設という新しい施設を設けるに当たりまして、その人員の配置やまた基準といったもろもろのことについて御審議をいただき、またそれに見合ったような療養費のあり方につきましても御検討をいただく、こういうことでございますので、今回改正をさせていただいておる、こういうことでございます。
  336. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは時間になりましたので、まとめて私の主張をもう一度申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。  一つは、今の老人保健審議会のメンバーが不適当であったと思われますので、つまり現在二十名のうち二名が医師であるけれども、この間の参考人質疑でも伺いましたが、これは医師としての資格ではない、学識経験者であるというお話でございました。したがって、医師はいないというふうに、医療サイドはいないというふうに考えられるわけです。したがいまして、いずれにしても早急にメンバーを加えるなりチェンジなりなさって、新しく医療内容について、そして定額医療というものが本当にそれでいいのかどうか等について御審議をしてもらいたいと思います。  もう一つは、医療法の適用を受けない医療というものは我が国の医療制度の中ではないんだから、これは何としても医療法の適用下でこれを動かしていただきたい。私は中間施設の必要性は認めているんです。ですから、医療法の適用をしないような医療医療ではないということを私は申し上げたい。したがって、医療施設については医師が管理者でなければならない。この点を申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  337. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、総理にお伺いをいたします。  総理、当たり前のことですけれども、政治というのはやはり民主的な手続というのが必要だと思うんですよね。ところで、この老健法改正手続なんですが、大変遺憾なんです。というのは、これは老人本人の一部負担の増高を大変大きくやろうという問題なんですが、私は本会議の質問でも、この一部負担の増が貧しいお年寄りほど重荷になると、本来、より厚い福祉医療が必要な所得の低い方ほど、お年寄りほど打撃は大きくなると指摘をしてまいったわけでございます。  一部負担の増について、これは自民党のパンフレットにも、厚生省も、老人世帯の平均所得というのは十一万五千円であるから無理なく負担できる額と言っておられるわけです。総理もそう思われるでしょうか。実態はそんな簡単なものじゃないんですね。何しろ三万円以下の年金だけの所得のお年寄りの皆さんが六百万人を超しているんですよね。だから、実態が大変簡単ではないから衆議院でも参議院でも一部負担修正をしたわけです。  私はそういう中で厚生省に聞いてみたのですが、無理なく負担できる額かどうかということを直接被害を受けるお年寄りや老人団体にお聞きになりましたか、こう言ってお聞きをしたところが、聞いていないというのですね。総理、これでは政治の民主主義から見てどうですかね。  私、これいっぱい資料はありますけれども、尼崎の医師会が直接お年寄りや介護をなさっている御家族の御意見を聞いたデータを見ましたけれども、それによりますと、値上げには反対だというのが五六%です。もとの無料に戻してほしいというのが二六%、合わせて八二%のお年寄りが一部負担の引き上げに反対だとお答えになっているのですね。このお年寄り本人の声と、一方では厚生省や自民党が無理なく負担できるという認識というのは大分隔たりがあるんではないかと思うんですね。参考人質疑のときにも老人クラブ連合会の代表は、私たちの声は一度も聞いてもらえなかったと言って怒っておられましたよ。  総理、やっぱり国民の意見、とりわけその一番被害を受ける老人の意見を聞かなかったというようなやり方というのは手続として遺憾と思われませんか。私は、こういうことを今後繰り返さないということが大事だと思うんですが、それについて総理の御見解を伺いたいと思います。
  338. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回の老人保健法等の一部を改正する法律案国会へ御提出申し上げるに当たりましては、老人クラブのお年寄りの代表も入っていただいております老人保健審議会にもお諮りをいたしましたし、また各界の代表の皆様方が社会保障について御協議いただきます社会保障制度審議会にもお諮りをいたし、民主的な手続をとって御提出させていただいておるところでございます。
  339. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間が短いから、大臣、ちょっと御遠慮ください。  総理、今大臣そうおっしゃったけれども、この間全国老人クラブの代表が参考人としておいでになって、前回の老人保健法をつくるときは何回も意見を聞いていただいたけれども、今回は意見も聞いていただけなかった、今後はそういうふうな意見を聞いていただける機関をつくってほしいという御要望まで出たんです。ですから、やはり民主主義の政治というのはそうすべきであると思いますので、ぜひ総理の御見解を伺いたいと思うんです。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回は、今の厚生大臣の御答弁のように、老人クラブの代表が含まれる老人保健審議会でいろいろ御審議いただいたということでございますが、御趣旨を踏まえまして今後できるだけ幅広く皆様方の御意見を承るようにいたしたいと思います。
  341. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 次にまいりますが、今日、国の財政を見ておりますと、軍事費はどんどん膨れてまいります。防衛庁長官は、来年は一プロ枠は突破だと公然と言い始めておるわけでございます。その一方で、この老健法等の改正というのは、名目は世代間の負担の公平だとかあるいは老人保健制度の安定維持のためだとか、なかなかもっともなことを言いますけれども、結局は人口の高齢化によって増加する老人医療費を専ら財政的視点から見直すものでしかないと思うわけでございます。財政的な視点というのは、国庫負担を減らしてその分は老人と国民負担増国民にツケ回しをする、つまり国民に対しては痛み分けで負担をさせる、こういう結果になっていると思うのです。  これは厚生省の資料を見ましても明白でございます。六十一年、ことしですが、ことしを基点にいたしまして六十五年の五年間を見てみますと、老人医療費の総額というのはざっと一・四倍になるんですね。その中で患者負担というのは何と三・七七倍になっている。これは今日、六十一年度は六百十億円の老人の一部負担金ですね、それが六十五年度には二千三百億になるわけです。そして、被用者の保険の拠出金は、ことしを基点にいたしまして六十五年には一・九四倍になる、約二倍近くになるわけですね。ところが、国庫負担はどうかといいますと、ことしを基点にいたしまして六十五年は一・一九です。一・一九倍、切り上げて一・二倍というところになるわけでございますから、この資料から見ましても明確でございます。  私は、中曽根総理が総理大臣になってからやってこられた医療とか年金などの社会保障の改悪の本質、大体同じ手法で進めてこられたと思うんですね。こんな手法に関して既に自民党の中でもいろいろと大きな御意見が出ているということは、社会部会等の御意見等を伺ってよく存じ上げておりますが、自民党の中でさえも問題になっている。これはだから当然国民世論も厳しい批判が続いているわけでございます。老人保健法の一部改正も、これは先ほど申しましたが、老人クラブの代表も大変強い反対をお述べになっておられましたが、本法案に対しましては各界から大変強い御反対の意見が出ております。  私は、総理に考えていただきたいと思うのは、重大なことというのは、こういう財政的な視点から社会保障制度を乱暴に総決算するというやり方、こういうやり方をどんどん進めますと、結局、憲法二十五条の空洞化あるいは老人福祉法の原点の空洞化につながるものだと思うのです。老人福祉法では第二条に「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする」というふうに基本理念を明記しておりますけれども、こういうことが空洞化されていくものだと思うのです。  総理、あなたはこういう点について痛みをお感じにならないのか。とりわけ、戦前戦後、本当に苦労して今日の社会の進展に寄与をしてこられたお年寄り、この方々に申しわけないと思いませんか。御見解を伺いたいと思います。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 老人は長い間国家、社会のためにお働きいただいた方々であり、その晩年に当たりましては、我々国民といたしましても、敬愛され、かつ温かい待遇を受けて余生を送られるようにすべきであると思っております。  また一方におきましては、老人保健制度等々の制度としての問題というものがまた出てきておるわけでございます。それは一面におきましては、この制度を長期的に持続的に安定的に維持していかなければならない。一面において国家財政の窮乏という問題もございます。また一面においては、そのような老人の待遇という問題もございます。そういうものの両万も考えながら我々は政策をやっていかなければならぬ立場にあるわけでございますが、老人保健法や老人に対する国の政策の基本を失わないようにしながら調節をしていく、そういうことが正しいと思っております。  世代間の負担の公平とか、あるいは長期的な持続的な安定という面は、これは制度としての面から要請されるところでございますが、そういう面もこういう段階になりますと多少は考えていただかないといけない。というのは、急速な高齢化社会、長寿社会の出現ということによりまして、これが対応については非常に政府としても苦心をしておるところなのでございます。  日本ぐらい、このように急激に高齢化社会が現出してきた国はないと思います。そういう面からも、これに対処するために、一面、御老人にも耐えられると思われる限度においては、まことに恐縮でございますが御負担も願う。また、ほかの保険者におかれましても、この制度を持続的、安定的に持っていくためにもまた御協力も願う。そういうさまざまな措置を講じまして、今のような調和を心がけてやっておる次第なのでございます。
  343. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ところが、結果としてやはりこの基本理念が空洞化の方向に向かいつつあると思うんです。私はやっぱり老人保健法というものを財政的な視点だけから改悪するという発想というのは逆だと思うんですね。やっぱり老人医療というのをどう保障するかという立場から、そういう視点から発想が求められているんではないかと思うんですね。もちろん、私どもも財政的視点を全面的に否定するというふうなものではありません。しかし、発想が逆転をいたしますと、その犠牲は全部老人と国民にしわが寄ってくるわけですよ。  時間が余りありませんから十分申し上げられませんけれども、結局そういうことが次々出てきておりますから、これは委員会審議でもたびたび申し上げておるんですけれども、今日、年齢によって医療に差別が持ち込まれるという事態が起こっているわけです。例えば一般病院で六十九歳以下の人を入院治療した場合と七十歳以上に同じ治療と同じ内容の待遇をした場合でも、七十歳以上の方には三万円も診療報酬が少ない。それだけではありません。同じ注射をしても、六十九歳以下の方にはその技術料は七百五十円支払われているのに、七十歳を超す方々には二十円しか支払われない。あるいは床ずれだってそうです。一般病院では千九百円を払うところを、老人病院では二百十円しか払わない。こういう年齢による差別ということを通じてお年寄りに大変低医療がしわ寄せをされているという点が出てきているわけでございます。  こういうやり方、年齢によって医療に差別が持ち込まれるというふうなこと、こんなところにどうしてお年寄りの人権あるいは人格の尊厳が保障されると言えますでしょうか。長年社会の進展に寄与してきた人として敬愛をされると言われておりますが、その実態が守られていると言えるでしょうか。  しかも、こういうやり方、いわゆる老人の入院費の圧縮ということでもって、これを徹底したのが老人保健施設なんです。寝たきりのお年寄りの介護の問題、対策ということの世論を逆手にとって、一カ月二十万ぽっきりで医療福祉も行え、あとはお年寄り本人が負担せよと言うんでしょう。今までの審議で明らかになりましたけれども、厚生省の基準でも五万円の本人負担だと言うんですね。老人の入院費が一カ月三十五万かかるのを二十万ぽっきりで老健施設に放り込んで、足りない分は自分で負担しなさい、こういうことになっているわけですね。  私は、この老健施設がいわゆるお年寄りの入院費の圧縮の一番端的なねらいを明らかにしているということを申し上げておりますのは、厚生省では昭和七十五年までに老人の医療費、特に入院費を今日と比べて約三兆円削るんだということで計画をしておられるんです。これでお年寄りが十分な医療や介護が受けられると思いますか。私は、そういう事態になっているということを御理解いただいて、総理の御見解を伺っておきたいと思うんです。
  344. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 年によって医療給付が差別されるという今のお話でございますが、この点につきましては、先ほどの御質疑の中でお年寄りはお年寄りにふさわしい医療をという観点から一つ一つの項目をお挙げになられましたけれども、全体としてはお年寄りにふさわしい医療の点数を決めていただいておるという御説明をるる申し上げたところでございます。  また、今回の老人保健法改正も、その発想はまさに、これからの長寿社会におきましても、安定的に長期的な視野に立ってこの老人医療費というものをしっかりと支えていけるというための改正をお願いする、そうすることによりまして、長寿社会になりましてもお年寄りが安心して老後を託していただけるようなそういう制度を構築しようとするものでございます。これはまさに先生が御指摘になられました健康で明るい老人福祉を構築していくという老人福祉法の基本理念にも合致するものでありまして、ひいては憲法第二十五条に沿ったものだと私どもは考えておるところでございます。  また、老人保健施設につきましては、御説明申し上げておりますように、医療ケアの部分とそして生活サービスの部分を兼ね備えた新しい中間施設として創設をするものでございます。これまでも御説明をいたしてまいりましたように、この施設をスタートさせるに当たりましては、寝たきりのお年寄りにふさわしい人員の配置やまた施設の配置等十分検討をいたしまして、これからの期待される中間施設として立派なものにつくり上げていきたい、こう考えておるところでございますので、御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。
  345. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がないので、総理、御理解をいただきたいのは、老人にふさわしい医療ということは安上がりの医療だということじゃないんだという点だけは私、はっきりしておいてほしいと思う。そのことを申し上げておる。お年寄りになったからというので、年齢によって安上がりの医療を持ち込むということが意識的にやられるということになれば、お年寄りの人格の尊厳も認められないということになるじゃありませんか。そのことなんです。  時間がありませんから最後にお伺いをいたしますが、総理にこれはお聞きしたいと思うんです。  老健法では、お年寄りに大変不安を与え、お年寄りいじめをしてきているわけです。ところが、さらにその上に大増税で今度は追い打ちをかけようとされているという点でございます。マル優の廃止というのは、低所得者やお年寄りには大変打撃が大きいんです。特例措置をやるんだという御方針のようですけれども、大きいんです。総理、売上税という名による大型間接税、これはお年寄りや低所得の方々を直撃しますよ。  今、政府や自民党が実施しようとして検討しております税制改革なるもの、どんなことになるか。これは、大蔵省の試算の方式を用いて私どもは試算してまいりましたが、何と九百万円以上の年収の人だけが減税になる。それ以外は全部増税ですよ。サラリーマンのほとんどの人は増税になるんです。政府関係に近い学者の方々の試算でも、年収六百三十万までは全部増税だというふうに指摘をされているとおりでございます。  問題なのは、これまで非課税世帯であった年収百五十万から二百万の階層にまでこの税負担担というのがのしかかってくるというところが大問題なんです。従来の非課税世帯の皆さん方へのこんな大増税は認められないですよ。ですから、低所得者や老人の皆さん方の大きな打撃、そのことを考えたら、特にお年寄りは老健法改悪負担が重なって重くなる、その上にまた大増税だということになったらたまらないわけですよ。この点についてはまとめて御見解を伺いたいと思います。  私は、老人保健法の本会議質問のときにも総理に申し上げたんです。アメリカのレーガン政権が核軍拡を進めていくために福祉の切り捨てを次々にやって、貧しい人たちが犠牲になっている。その中で、低所得の方の中に未熟児の出産が非常にふえているという例を挙げて御説明を申し上げました。中曽根総理もこの同じ道を歩いているんじゃないかということを御指摘したんですが、私は今こそ国民の生活、とりわけお年寄りの願いを実現していくというためには、言い古された言葉ですけれども、大砲かバターかを選ぶときだと思うんですよ。  総理にその点の決意と御見解をお伺いしたいと思います。
  346. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げましたように、自由民主党もまた我々も、「長寿社会対策大綱」をつくりまして、総合的に老人政策を充実させようと思って努力してきておるところでございます。しかし、一面におきまして急速な高齢化社会の出現ということで、これが対応に非常に今苦労しておるところなので、この制度を何とかして持続的に長期的に安定して維持していく、あるいは世代間の公平を図る、そういうような観点からいろいろ検討も加えまして今回のような提案をお願いしているわけなのでございます。  老人につきましては、今度の税法におきましても、我々の考えでは、例のマル優の問題につきましても母子世帯あるいは老人あるいは身体障害者、そういう方々については外すようにいたしております。そのほかのいろいろな社会政策的考慮ももちまして対象物品の選定、サービスの選定等もいろいろいたしているわけでございます。このような厳しい時代におきましてぎりぎりの努力をさせていただいて、そしてこれを長期的持続的に安定していこうと。そういう中に、今回中間施設のような考えも持ちまして、保健をまた強化していくというような点も考えてやっておる次第なのでございます。  税法のお話がございましたが、大蔵省が私のところへ持ってまいりました試算によりますと、大体実収入三百五十四万あるいは四百四十二万、五百二十六万、六百二十万、八百二十八万、こういうようなものを中心にして、そして所得税、住民税の減税、あるいは法人課税の減税、利子課税、あるいは今度のいわゆる売上税と、こういうものの増減関係をいろいろやってみますと、大体におきまして、三百五十四万の層におきましてはこれは大体プラス・マイナス・ゼロ程度であります。四百四十二万のところにおきましては一万二千円の減税になる、あるいは五百二十六万におきましては一万一千円、それから六百二十万になりますと二万八千円、八百二十八万になりますと約二十万ぐらいの減税と、こういう数字が出ておりまして、これは結局は、所得の多い人は税率がかかっていけば絶対額はやっぱり多くなる、これは当然のことなので、問題は率でありますが、そういうような観点からいたしまして、増税になるという考えを我々は持たないのでございます。  そういうようないろんな面からも考慮いたしまして、今後も努力してまいりたいと思っております。
  347. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんので、税の問題はまた別のところでひとつ論議をさせていただきたいと思います。  終わります。
  348. 田渕哲也

    田渕哲也君 税の問題が出ましたけれども、中曽根内閣は来年度において売上税の導入を初め大きな税制の改革をやろうとされておるわけであります。  総理の今の説明がありましたけれども、全民労協で試算しましたところ、組合員の九〇%は増税になる、こういうデータを出しております。今回は増減税同額ということを原則とされておるようでありますからどこも減税になるということはないわけで、組合員の特に一部の高所得者を除いては全部増税になる、この分が一体どこにいくのか。どこかにいくわけでありますが、金持ちにいくのかどこにいくのかわかりませんけれども、こういうことが言われております。  私は、そこへもってきて今回の老人保健法改正で按分率が一挙に八〇、九〇、一〇〇というふうに引き上げられる。これは結局、健保組合に所属しておる勤労者の保険料負担が上がっていくことは必至であります。増税に加えてさらに保険料までふえていくという、中曽根内閣というのは大体勤労者にしわ寄せをすることばかり考えておるのかというような声が勤労者の方や労働組合の方から頻々と出ておるわけであります。  そういう意味で、私は今回のこの按分率の引き上げは極めて問題だと思うのでありますけれども、総理は一体この点についてどう考えておられるのかお伺いをしたいと思います。
  349. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 健保の皆さんにいろいろ御迷惑をおかけすることで大変恐縮に存じておりますが、今のような状況で我々が老人保健制度というものを維持していくためには、まことに残念ではございますが、このような御協力を願わなければならぬと思っておる次第なのでございます。  ただ、今まで努力している健保というものの努力のしがいがなくなるようなやり方ではいけない、そういう考えも持ちまして、各健保の努力率というものが反映されるようなやり方で按分率というようなものも計算され、考慮されておるということを申し上げる次第でございます。
  350. 田渕哲也

    田渕哲也君 厚生大臣に重ねて御質問しますけれども、厚生大臣質疑の中で、加入者按分率が原因となって健康保険組合が破綻するようなことは避けたい。そして、そのために激変緩和措置とか補助事業等を充実する。さらに、先ほどの質問に答えて、それに加えて一定の情勢の中では按分率の見直しもする、こういう答弁をされましたけれども、私は、これは一歩前進だというふうに評価する次第であります。  やはり、健康保険制度一元化という抜本的な改正が六十年代の後半に予定されておるわけでありますから、それまで相互の財政調整をある程度進めることは大事ですけれども、それを行ったために健康保険組合という援助する方がつぶれてしまうようなことは私はやるべきではないと思うんです。  ぜひ、この按分率の見直しも含めて、健保組合がつぶれることのないようにされるよう、大臣の重ねての答弁をお願いしたいと思います。
  351. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先刻の御質疑で御答弁申し上げましたように、この加入者按分率を段階的に一〇〇%にしていただく、そういうことによって健康保険組合が維持できなく解散に追い込まれるというようなことがないように全力を挙げて努力いたしたいと考えておりまするし、全体としてはこれを御負担いただけるものと考えておりまするけれども、健康保険組合の制度そのものが非常に大きな状況の変化になるとか、医療保険全体の中で非常にひずみが出てくるとかいうような場合には、この加入者按分率の見直し等も検討をいたしてまいらなければならないと思いますが、そのようなことのないように努力をいたしてまいるつもりでございます。
  352. 田渕哲也

    田渕哲也君 総理にお伺いしますが、我が国の高齢化は急速に進行しつつあります。これは我が国にとっても、かつてない大きな試練の時代を迎えつつあるということも言えるわけであります。こういう中で、社会保障に対する国民負担というものが上昇していくということは、これは避けられないと思うんです。また、これはある程度国民もその覚悟は必要だというふうに考えるわけであります。  しかし、ここで大事なことは、これからの福祉の水準のあるべき姿、それに対応する国民負担率はどの程度が適正か、あるいはまたその負担の方法をどうするか、高齢者対策も含めて、こういう基本的な問題での一つのビジョンというものが必要だと思うのであります。そして、そういうものに対する国民の合意を得る努力というものが大事だと思うのであります。  ただ、政府の今までのやり方を見ておりますと、とにかく財政が苦しいのはよくわかりますけれども、それに従って社会保障予算の当然増まで無原則に切り込んでいく、これは非常に問題ではないかと思うんです。こういうことをしますと、なし崩しに福祉水準がどんどん低下をしていく、あるいは負担の一方的なツケ回し、押しつけということが行われる、そして制度にひずみを生ずるということになりかねないと思うのであります。  このような点については、やはり社会福祉やあるいはその負担についてのビジョンを示し、その大枠についてまず国民のコンセンサスをつくるということがないといけないと思いますが、総理の考えをお伺いしたいと思います。
  353. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 老人保健にいたしましても医療にいたしましても、あるいは社会保障政策にいたしましても、これは国民の皆様のためにあるものでございますから、国民の皆様方が御納得いけるような形で進められなければならぬものであると思います。そういう意味におきましては、いろいろ制度の改廃等に当たりましてもよく御理解いただけるように努力しなければならぬと思っておる次第でございます。  おっしゃいましたように、急速な高齢化社会の出現によりまして、政府としてもこれが対応に非常な苦労をしておる状況で、余りにも外国に比べて急速であり過ぎますがためにいろいろ改革も行わなければならぬということになって、御迷惑をおかけして恐縮に存じておるところでございますが、これは制度の長期的持続安定あるいは世代間の公平確保という面から、やはり今我々がここでやっておかなければ我々の子孫にも申しわけない、そういう考えもありましてお願いを申し上げている次第なのでございます。
  354. 田渕哲也

    田渕哲也君 社会保障というのは、医療福祉年金、非常にたくさんの問題があるわけですけれども、私はその中で、やっぱり国の役割、地方自治体の役割、そういうものもはっきりすることが大事だと思うんです。少なくともナショナルミニマムを確保するべき分は国の責任で行うべきではないか。もちろん、今後地方公共団体が社会保障の中で中核的な役割を担っていくということは必要だと考えますけれども、その場合、安易な負担の転嫁ということが行われてはならないと思うんです。例えば国保財政の都道府県肩がわりなどということも言われております、あるいは補助金の一括整理等において非常に無原則なツケ回しが地方に、自治体に行われる、これは非常に問題だと思います。  社会保障制度に関して、国と地方の役割分担、そして財政の責任の明確化ということが大事だと思いますけれども、総理の見解をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  355. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり社会保障制度という場合には、基礎部分あるいは基本的部分というようなものは、やはり国が責任を持つべきものであると思います。その上部構造というような形になりますと、これはいろいろさまざまなバリエーションがあり得ると思いますが、やはり何といっても基礎部分、基本部分というものは国の責任において進めるべきものである、そう考えております。  これから、いろいろ出てきておりまする二十一世紀に向かっての社会におきまして、老人の世界におきましてもさまざまなニーズも起こりましょうし、また老人側のいろんな事情も起こるであろうと想像されます。それらの問題に対しましても適切に対応できるように、やはり我々がっくりました「長寿社会対策大綱」というものを具体的に展開するように、毎年度年度予算編成等を通じましても努力してまいりたい。そして、老人の皆様方にできる限り御満足いただけるようなシステムを維持してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
  356. 佐々木満

    委員長佐々木満君) それでは、本案に対する質疑終局について採決を行います。  質疑終局に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  357. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 多数と認めます。よって、質疑を終局することに決定いたしました。  本案の修正について岩崎純三君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。岩崎純三君。
  358. 岩崎純三

    ○岩崎純三君 私は、ただいま議題となっております老人保健法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党提案に係る修正の動議を提出いたします。  その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。  よろしくお願いいたします。
  359. 佐々木満

    委員長佐々木満君) それでは、岩崎君提出の修正案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。岩崎君。
  360. 岩崎純三

    ○岩崎純三君 ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、一部負担金について、入院時一部負担金を四百円に改めること。  ただし、市町村民税非課税世帯に属する老齢福祉年金受給者については、二月を限度とし、三百円とすること。  第二に、拠出金関係について、政府は、この法律の施行後における老人医療費の動向等を勘案し、昭和六十五年度までの間に保険者拠出金の算定方法等に関して検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。  第三に、老人保健施設関係について、  一 老人保健施設等の法的位置づけ及びその適正な配置について検討するものとすること。  二 老人保健審議会の委員数を二十名以内から二十六名以内に増員すること。  三 施設療養費の額及び運営基準のうち、医療の取り扱いに関する部分は、中医協で審議するものとすること。  四 入所者の病状が急変した場合の緊急を要する医療以外の施設療養について、その平均的費用の額を基礎として施設療養費の額を定めるものとすること。  五 老人保健施設は、都道府県知事の承認を受けた医師が管理しなければならないこととし、都道府県知事の承認を受けて医師以外の者に管理させることができることとすること。  六 老人保健施設の許可の取り消しについては、都道府県医療審議会の意見を聞くものとすること。  第四に、その他の事項として、  一 厚生大臣の定める者が老人保健施設の試行的実施を行うこととすること。    老人保健施設に関する規定の施行に際しては、その試行的実施の状況及び老人保健施設の運営等に関する基本的事項について、国会に報告すること。  二 政府は、老人保健施設について必要があると認めるときは検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。  三 政府は、医療給付に対する外来一部負担金の額の割合が著しく高くなることがあることにかんがみ、必要があると認めるときは、外来一部負担金のあり方について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。  第五に、施行期日を昭和六十二年一月一日とすること等であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  361. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまの岩崎君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。斎藤厚生大臣
  362. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老人保健法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としてはやむを得ないものと考えます。
  363. 佐々木満

    委員長佐々木満君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  364. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっております老人保健法等の一部を改正する法律案について修正案並びに修正部分を除く原案に対し、反対の討論を行います。  今日、高齢社会に向かい、我々に課されている問題は、お年寄りに人間らしい健全で安らかな生活をいかにして保障していくかということです。しかるに、本改正案は、三年後見直しとの規定を奇貨として、今も疾病に苦しんでいるお年寄りと被用者、サラリーマンに過重な負担を負わせ、不安を増大させるのみであり、何ら課題にこたえるものとはなっておりません。  以下、具体的に反対の理由を申し述べたいと思います。  第一は、今回の改正が急速な高齢化の進行に伴う社会保障予算の当然増に対する財源的措置も行わず、病に苦しむお年寄りと被用者、サラリーマンを対象に負担を増大し、他方、国庫負担を大幅に減額している点です。  さらに、今回の見直しのきっかけの一つが、政府自身による退職者医療制度の加入者見込み違いからくる市町村国民健康保険の財政影響をこの改正によって補てんしようとした点にあることです。まさに国の責任逃れというほかありません。  第二は、患者の一部負担の増大が大幅で、所得の低下する高齢者負担に耐え得ないものとなっていることであります。  すなわち、外来の月々の負担は一挙に二倍に、長期入院の場合一年で実に十倍の負担を強いられることとなるのであります。こういった一部負担の増大は、各種の保険外負担の実情と相まって受診を抑制し、早期受診、早期治療を妨げることとなり、かえって医療費の増大につながることとなるのであります。  第三は、今回の加入者按分率の引き上げが大変不合理であることです。  これは、創設時の老人医療費財源拠出の理念を根幹から否定したサラリーマンへの実質的増税にほかならず、ひいては被用者保険の財政基盤の根本からの崩壊につながるものです。しかも、こういった極端な制度転換を被用者保険者側の十分な理解と納得を得ずして強行することは、将来に重大な禍根を残すものと言わざるを得ません。  第四は、老人保健施設の創設に対する疑問が十分解明し得ていない点であります。  本施設が試行的な実施も見ず、十分なデータの収集、分析もないままに安易に設けられることには、当委員会においても多くの疑問が提起されています。むしろ、今後目指すべき在宅中心のサービスの充実に逆行するものとの危惧を抱かせるものでございます。にもかかわらず、この制度の導入により医療費の伸び率は抑えられるのだという答弁を聞くと、一体だれのための何を目的とした施設なのかという疑問を抱かざるを得ません。  以上、原案に対し反対の理由を数点に絞って申し述べましたが、委員会における修正案に対しても、その内容は根本において原案と変わらず、我が党が審議を通じて主張してきたところとはほど遠いものであり、到底賛成することはできません。  本院における本案の審議が、限られた期限の中で、解決し得ない多くの問題があるにもかかわらず、議了しなければならないことはまことに遺憾であると言わざるを得ません。  以上で、修正案並びに修正部分を除く原案に対する反対討論といたします。(拍手)
  365. 田代由紀男

    田代由紀男君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案について、自由民主党提出の修正案及び修正案を除く原案に対し賛成の意見を表明いたします。  我が国は、これまで世界のどの国も経験したことのない速さで人口構造の高齢化が進んでおり、昭和百年には四人に一人は六十五歳以上の高齢者が占め、寝たきり老人、痴呆老人は現在の三倍という超高齢化社会を迎えると言われております。  本改正案は、本格的な高齢化社会の到来を控え、最近における老人医療費の急増に対処して、老人医療の適正化と国民負担の公平を図るとともに、寝たきり老人等の要介護人に対する保健、医療福祉を通じた総合的な施策の展開を図るものであります。  その内容は、一つは、老人医療費の現状から、世代間の公平を図るための無理のない一部負担金の引き上げであります。二つは、各保険者間の老人加入率の格差による老人医療費負担の不均衡是正であり、その三つは、今後増大が予想される老人等の要介護老人の多様なニーズに適切に対応した医療サービスと生活サービスを提供する老人保健施設を創設するものでありまして、これらはまさしく長寿社会への対応を先取りした時宜を得た措置であります。  さきに我が党岩崎君より、入院時の自己負担の軽減、老人保健施設及び検討規定等について修正案が提出されておりますが、これらは委員会審議の論議を踏まえ、国民的要請にこたえるとともに、老人保健制度の円滑な実施老人福祉の増進に資するものとして妥当な措置であります。  以上をもって私の討論を終わります。(拍手)
  366. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案並びに同法案に対する自民党提出の修正案に対し、反対の立場で討論を行います。  老人保健法改正案は、長寿社会に備えて医療保険制度の安定的な維持のために負担給付公平化を図る観点からの改正であり、安心して老後を託せる制度を確立しようとするものだと政府は言っています。  しかしながら、私はこの改正案は、法案審議の過程でも明らかになったように、国民負担を増加し、国庫負担削減を究極の目的としたものであり、国民の将来に対する不安感を高めるものだと断ぜざるを得ません。殊に、弱い立場にある老人の負担強化は、老人の基本的人権を脅かすものであり、容認できません。  現在老人となっている方々は、戦時中、戦後を通じてあらゆる辛酸をなめながら、敗戦の荒廃の中からこの国を復興し、経済大国にまで発展させた功労のある方々です。この方々に対し冷たい過酷な仕打ちとなるこの法案には断固反対いたします。  以下、簡単にこの法案の主要な問題点を指摘し、反対理由を具体的に申し述べます。  第一の問題は、老人の一部負担の大幅な引き上げであります。外来は一カ月四百円、入院の場合は二カ月を限度として一日三百円の現行の自己負担を、政府原案は外来一カ月千円、入院は一日五百円とし、二カ月の限度は撤廃としています。衆議院の修正で外来一カ月八百円、参議院の修正で入院一日四百円と提案されていますが、限度撤廃はそのままであり、遺憾であります。このような大幅な自己負担の引き上げは、収入の少ない老人にとって受診抑制になることは目に見えています。受診せずに病状の悪化する老人が多くなるのは明らかであります。  第二は、急激な加入者按分率の引き上げであります。これは医療保険制度間の老人加入率の不均衡の是正と負担公平化の名のもとに、被用者保険の実情を無視した、余りにもドラスチックな財政調整策であり、保険料の引き上げにつながり、サラリーマンの実質増税となるものであります。広く国民の理解と賛成が得られるとは思えません。  第三は、中間施設として提案されている老人保健施設のあいまいさであります。モデルをつくって試行的実施をしてみて、施設設備、人員の配置、運営の基準を老人保健審議会に図って省令で定めるということになっていますが、これは国会審議軽視であります。修正案によりますと、モデル実施のデータを国会に報告するということになっていますが、本格的実施の前に国会の承認を得ることを要求いたします。  以上の理由で、修正部分を除く政府原案には断固反対し、また自民党提出の修正案も十分ではないので反対を表明いたします。  高齢化社会に向けて、国民が本当に安心して生きがいのある老後を送れるように、老後の生活保障並びに保健と医療福祉のサービスが一体化して機能するように、総合的かつきめ細かな老人対策の立案、実施を強く要望し、私の反対討論を終えます。(拍手)
  367. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表して、老人保健法等の一部を改正する法律案及び修正案に対し、反対の討論を行います。  我が党は、本法案が衆議院より送付された段階で、当委員会での審議日数から見て当然廃案とすべきことを主張し、会期延長の強行で審議入りしてからも、本法案の持つ重大性にかんがみ、一人五時間の質疑等徹底した審議を行うよう求めてまいりました。にもかかわらず、要求時間の半分以下、わずか三日間の質疑をもって打ち切り、しかも、本日は採決は行わないとの公党間の約束をも踏みにじって採決が強行されようとすることに対し、私は冒頭に強く抗議するものであります。  以下、本法案に対する反対理由を述べます。  第一は、老人医療費患者負担を平均で三倍、一年入院の場合では十倍という、お年寄りの暮らしを直撃する大幅な引き上げを行うことであります。  医療負担を引き上げて受診抑制を図るやり方では、その犠牲は低所得者、特に医療を必要とする老人にしわ寄せされます。受診のおくれが病気を重症化させることは、四年前に老人医療費を有料化した結果でも明らかであります。早期治療がお年寄りの健康にも医療費削減にも最も有効であることは沢内村などの実例が示しています。労働者健診の改善を含めて保険事業を一層充実させ、老人医療費を無料に戻すことを強く主張するものであります。  第二に、老人医療費の費用負担に占める国の責任を一層後退させ、被用者保険拠出金を大幅に増大させることであります。  被用者保険負担の増大は各保険財政を圧迫し、労働者の保険料の値上げにつながるのは時間の問題であります。痛み分けの論理でお年寄りと国民負担を押しつけ、その一方で国だけが責任を逃れ、国庫負担を大幅に削減するようなやり方は到底納得を得られるものではありません。財源対策を言うならば、今こそ軍事費を削り、大きな利潤を上げる大企業の負担強化すべきであります。  第三は、低医療、低福祉、高負担老人保健施設を創設する問題であります。  安上がりの施設で、二十万円ぽっきりの質の低い医療サービスしか行わない。その上、日常生活費と称して最低五万円、しかし十万、二十万でも何ら制限のない青天井の自己負担を求める、これが老人保健施設の内容であり、老人への医療差別を一層拡大するものであります。  安心してお年寄りを預けられ、十分な医療、介護、リハビリを行う施設をもっとつくってほしいという国民の願いに逆行するやり方はやめ、特別養護老人ホームなどを増設、拡充するよう強く求めるものであります。  第四は、国保料の滞納者から保険証を取り上げ、医療給付を差しとめるという制裁措置を盛り込んでいることであります。  国保料滞納者の増加原因は、政府国保への国庫補助率を大幅に削減した結果、市町村国保が軒並み保険料を引き上げざるを得なくなったことにあります。この国の責任を棚上げにして、専ら低所得者によって占められている滞納者に制裁措置を強行することは、国民皆保険制度を崩すものとして、断じて許せません。国庫補助率をもとに戻し、国保財政の健全化を図ることこそ本筋であります。  以上のように、老人保健法改悪は、お年寄りと国民負担増を押しつけ、老人医療に対する国の責任を放棄して軍事費と大企業につぎ込むものであって、健康保険制度の根幹を崩す大改悪案であります。  自民党提案の修正案も、この法案の不当な根幹を何ら変えるものではなく、本法律案及び修正案に強く反対することを表明し、老人医療費の無料制度復活を重ねて要求して反対討論を終わります。(拍手)
  368. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま自由民主党より提案されました老人保健法等の一部を改正する法律案に対する修正案並びに原案に反対の討論を行うものであります。  今我が国は、かつてない大きな試練にさらされようとしております。世界に例を見ない急速な高齢化の進行がそれであります。こうした我が国の状況を考えたとき、社会保障負担が徐々に上昇していくのは避けられないことであり、それなりの覚悟が必要であります。しかし、その場合にまず必要なことは、高齢者医療年金、就労、住居など生活保障を総合的にどう充実させていくかの長期的なビジョンを明らかにし、そのためにどの程度の国民負担が必要なのかを示して、国民に理解を求めることであります。しかし、政府の諸施策を見るとき、将来の高齢化社会に対するビジョン予算の裏づけに対する見通しもありません。この点について、国民の合意を得ないまま、社会保障負担の引き上げのみを国民に求めるのでは、当面の財源対策のみを考えた安易な負担転嫁であるとのそしりを免れないと考えるものであります。  私どもがこの改正案に反対する理由を具体的に申し上げます。  まず第一に、老人の負担を増大させ、老人とその家族の生活を大きく圧迫するものだからであります。これは財政赤字のツケを老人にしわ寄せするものであり、福祉の後退にほかなりません。  入院時負担の引き上げについても同様であります。特に二カ月の限度を撤廃することは、低所得者層への配慮を加えたとはいえ、福祉の大きな後退であります。入院費の二カ月限度の設定は、長寿国家日本のよき規範として今後とも続けていくことがぜひ必要であると考えるものであります。  第二に、加入者按分率の引き上げであります。加入者按分率を急激に八〇%、九〇%、一〇〇%と引き上げることは、それぞれの健保制度の特色、独自性、国庫負担率の差などを無視するものであり、国の財政負担を減らす分を勤労者に押しつけ、実質的な増税を強いるものであります。このような措置は断じて容認できるものではありません。  第三の理由は、老人福祉施設、いわゆる中間施設について、極めて不明瞭かつ不十分な内容で提案が行われていることであります。老人に医療サービスと福祉サービスをあわせ提供するいわゆる中間施設は必要であると考えるものであります。しかし、この施設を推進するための財源、施設の数、規模、職員配置、構造、設備、費用負担の額などの肝心なところは何も明らかにされておりません。いきなり法律をつくって、それから内容を考えるというのでは、国会審議権の軽視と言わねばなりません。将来の高齢化社会を支える基幹的施設であればこそ、より幅の広い論議と試行期間を経た上で法律を制定すべきだと考えるものであります。  また、自民党が提案いたしました修正案につきましては、一歩前進ではあるにしても、基本的な部分で私が今申し上げました理由が改善されたとは考えられませんので、反対するものであります。  以上、私の討論を終わります。(拍手)
  369. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 以上で討論は終局いたしました。  それでは、これより老人保健法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、岩崎純三君提出の修正案を問題に供します。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  370. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 多数と認めます。よって、岩崎純三君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案全部を問題に供します。  修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  371. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 多数と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決定いたしました。  この際、糸久八重子君から発言を求められておりますので、これを許します。糸久八重子君。
  372. 糸久八重子

    糸久八重子君 私は、ただいま可決されました老人保健法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、各派共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     老人保健法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに適切な措置を講ずべきである。  一、超高齢化社会の到来に対応し、人生八十年時代にふさわしい社会保障システムを構築するため、総合的な対策を推進すること。  二、一部負担金の額については、今後の老人医療費の動向等を踏まえ、必要な見直しを行うこと。また、付添看護料、お世話料、差額室料等の不当な保険外負担を解消するよう一層努力すること。  三、老人医療費の増加により過大な負担を招かないよう、幅広い医療費適正化対策を強力に推進すること。  四、加入者按分率の引上げにより、健康保険組合等被用者保険の財政運営に支障が生ずると認められる場合、適切な措置を講ずること。  五、政府管掌健康保険の家族の給付率の改善について、一元化展望を踏まえ検討を進めること。  六、国民健康保険制度の財政基盤の強化を図るため、経営主体その他制度の在り方について抜本的な検討を行うこと。また、市町村は、収納率の向上、レセプト審査の強化国民健康保険事業の運営に関し、一層の経営努力を行うとともに、国及び都道府県知事は市町村に対する指導をより一層強化すること。  七、老人保健施設については、高齢化社会におけるその需要に緊急に対応する観点から、老人保健法上の施設として位置づけられたものであるが、政府は今後老人保健施設を含めたいわゆる中間施設の在り方について、医療法上における適正な位置づけ、及び、その適正配置に関する方策について速やかに検討を加え、必要な法制整備を図ること。  八、老人保健施設を全国的に速やかに整備するため、整備方針を早急に明らかにするとともに、税制、融資等所要の助成措置を講ずること。また、老人保健施設の施設、人員及び運営の諸基準については、寝たきり老人等にふさわしい医療サービス及び生活サービスが確保されるよう十分配慮すること。特に、医薬品の安全かつ適正な使用を図るため、必要に応じて医薬品の管理、調剤が薬剤師により行われるよう努めること。  九、疾病の予防、健康の維持増進のため、健康相談や健康教育を拡充し、特定年齢の者に対する重点的な循環器、がん等の検診を大幅に拡充実施すること。また、休日、夜間の検診体制を強化すること。  十、在宅の寝たきり老人や痴呆性老人の看護、介護を強化するため、福祉と連携した訪問看護・介護体制を速やかに整備促進する乙と。特に「巡回」健康相談や機能訓練を実施すること。  十一、保健・医療福祉サービスを総合的、効率的に提供できるようにするため、市町村に公私の実務者からなる協議会を設けるとともに、都道府県に連絡調整協議会の設置を検討すること。  十二、老人医療についての診療報酬は、老人の心身の特性を踏まえてさらに改善を図り、特に老人歯科診療報酬については、老人歯科医療の特殊性が十分評価されるよう特段の配慮をすること。  十三、長寿を明るく健やかに全うできるようにするため、老化メカニズムの解明や老年性痴呆等の老人問題に関する総合的な研究体制の整備を促進すること。   右決議する。  以上であります。
  373. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいま糸久八重子君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  374. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 多数と認めます。よって、糸久八重子君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、斎藤厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。斎藤厚生大臣
  375. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。
  376. 佐々木満

    委員長佐々木満君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  377. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  378. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 次に、請願の審査を行います。  第二号建設国保組合改善に関する請願外千二百七十九件を議題といたします。  これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第五三号車いす重度身体障害者健康保険法改善に関する請願外七十九件は採択すべきものにして、内閣に送付するを要するものとし、第二号建設国保組合改善に関する請願外千百九十九件は保留とすることに意見が一致いたしました。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  379. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  380. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  381. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、これら二件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  382. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  383. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後九時八分散会