運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1986-12-16 第107回国会 参議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十二月十五日     辞任         補欠選任      久世 公堯君     石本  茂君      抜山 映子君     田渕 哲也君  十二月十六日     辞任         補欠選任      松浦 孝治君     小野 清子君      田渕 哲也君     抜山 映子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         佐々木 満君     理 事                 岩崎 純三君                 田代由紀男君                 糸久八重子君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 小野 清子君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 松浦 孝治君                 宮崎 秀樹君                 千葉 景子君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 高桑 栄松君                 沓脱タケ子君                 佐藤 昭夫君                 抜山 映子君    国務大臣        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君    政府委員        厚生大臣官房長  北郷 勲夫君        厚生大臣官房総        務審議官     長尾 立子君        厚生省健康政策        局長       竹中 浩治君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長  黒木 武弘君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       坂本 龍彦君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        社会保険庁医療        保険部長     内藤  洌君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        文部省体育局学        校保健課長    下宮  進君        労働大臣官房政        策調査部産業労        働調査課長    池田 克忠君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告老人保健法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十五日、久世公堯君委員辞任され、その補欠として石本茂君が選任されました。     ─────────────
  3. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 先般、当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員報告を聴取いたします。岩崎純三君。
  4. 岩崎純三

    岩崎純三君 老人保健法等の一部を改正する法律案についての仙台における地方公聴会のための委員派遣について御報告申し上げます。  派遣委員は、佐々木委員長田代糸久理事及び宮崎千葉高桑沓脱、勝木の各委員と私、岩崎の九名であります。  会議は、十二月十二日午前十時からホテル仙台プラザにおいて開かれ、四名の公述人から一人十五分程度、忌憚のない意見が述べられた後、派遣委員から質疑が行われ、滞りなく議事を終了いたしました。  以下、各公述人意見の概要について申し上げます。  まず、全国市長会相談役仙台市長石井亨公述人からは、国民健康保険現状について、国保には構造的に高齢者が多く、老人医療費負担増高国保財政を圧迫している一方、低所得者層あるいは所得の安定しない層を数多く抱え、総体的に保険料負担力に乏しいため、被保険者保険料負担限界に来ており、保険料収納率も年々低下してきていること、これらの制度上の要因から国保運営は既に限界に達していること、仙台市においても、昭和六十年度の決算においては、借入金の償還も合わせ、二十億六千万円もの財源が一般会計から投入されていること、国保財政の悪化は、一般会計財政運営地方の行財政全体に極めて重大な影響を与えており、さらにこの状態が続くと、国保制度は崩壊しかねないことなどについて述べられ、こうした国保現状のためにも改正趣旨賛成であることが述べられました。特に、加入者按分率の改定については、保険制度間の負担と給付の公平化のために制度的、財政的仕組み整備が必要であるという観点からも按分率一〇〇%の早期達成をお願いしたいこと、一部負担改正については、世代間の負担公平等観点に立つと、今回の改正程度負担はやむを得ないのではないかと考えていること、中間施設整備については、高齢化社会に向けて住民ニーズが十分反映されたものとなるよう期待すること、国民健康保険料については、今後とも、収納率の向上のために努力を続けていくが、悪質滞納者対策はぜひとも講じてほしいなどの意見が述べられました。  次に、塩竈市立病院医療福祉科医療ソーシャルワーカー山本邦男公述人からは、反対立場から、老人保健施設重点を置いて、医療機関からの退院患者に対する地域での受け皿としての保健事業、中でも訪問指導機能訓練事業実施に大幅なおくれがある状況のもとでの老人保健施設創設は、老人保健事業のおくれによって生ずる老人社会的入院を追認し、合理化することによって、現行の事業のおくれを補い、老人保健事業充実課題が覆い隠される危惧があること、また、現在示されている老人保健施設運営、スタッフの配置基準では老人の多様なニーズにこたえられないばかりか、寝たきり老人をつくり出しかねないこと、地域の実情に応じ、地域患者家族を支える社会システム、ネットワークを確立することこそ緊急の課題であり、そのためには自治体及び公的機関の役割を重視すべきこと、老人保健法目的の実効を上げるためには、地域中核病院及び保健所を中心地域医師会と連携しつつ、保健医療システム整備在宅患者に対する訪問サービス機能訓練実施積極的対応がなされることが必要であり、財政面での効率化が最優先されるだけでは目的を見失う危険があることなどの意見が述べられました。  次に、岩手県国民健康保険団体連合会専務理事小原重雄公述人からは、国保事業関係している者として、法案趣旨賛成立場から、現在国民健康保険財政は、ここ数年来の老人医療費の重圧により制度発足以来最大の危機に瀕していること、その原因は、各保険者間の老人加入率の格差による医療費負担の不均衡であり、国保財政の窮状にかんがみ、法の理念である公平負担の原則のために、一〇〇%の早期実現をお願いしたいこと、老人保健施設創設については、特別養護老人ホーム収容能力の限度、社会的入院現状から、趣旨に賛意を表していること、一部負担改正については、今後の老人医療費増高世代間の負担の公平という見地からすれば、この程度負担はやむを得ないのではないかと考えていること、国民健康保険税滞納者に対する措置については、国保財政健全化見地から必要と思うことなどの意見が述べられました。  最後に、宮城県医師会長沖津貞夫公述人からは、一部負担金の増額については、老人平均所得老齢福祉年金の額、老人有病率受診率等から見て負担が大きく、また受診抑制となることから反対であること、特に、入院一日五百円、期限なしという急激な負担増は容認しがたいこと、加入者按分率一〇〇%については、国民全体としての負担公平化という見地から賛成であること、老人保健施設については、医療法で正しく位置づけるべきであること、施設療養費は、中央社会保険医療協議会に諮って出来高払いとすべきこと、施設管理者医師であるべきこと、老人保健施設ベッド数地域医療計画で定める病床数に算入することは、他の一般病院老人病院病床数と比べ不公平であること、老人保健審議会の権限の拡大に伴い、委員の構成について、現在二名の医療担当者を、少なくとも半分まで増員すべきことなどの意見が述べられました。  以上の意見が述べられた後、派遣委員から、国保保険料収納率低下現状対策老人保健事業推進に当たっての具体的施策医療関係者資格制度確立老人保健施設に要請される地域ニーズ老人保健施設医療法における位置づけ、老人保健施設療養費定額制老人保健施設における自己負担国民健康保険制度抜本的見直しなどの質疑が行われました。  以上で地方公聴会についての報告を終わりますが、詳細につきましては、別途文書をもって委員長に提出いたしますので、本日の会議録に掲載されるようお取り計らい願いたいと存じます。  以上で報告を終わります。
  5. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  なお、岩崎君の報告中御要望のありました報告書につきましては、本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  7. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 老人保健法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、老人保健法案について質問をさせていただきます。  まず最初に、きょうは厚生大臣にも御出席いただいておりますので、厚生大臣の方に第一点目お伺いしたいと思います。  老人問題というのは、高齢化社会に向かう中で国民の一部の者だけの問題ではなく、押しなべて老年を迎える国民全体の問題でございます。そういう意味で国民の多くが将来を危惧している、それが現状ではないかと思います。  昭和六十一年一月の総理府の世論調査によりますと、自分老後に不安を感じている者は全体の四五・四%、特に働き盛りの四十歳代では五〇%以上が老後の健康や経済、介護等について不安を抱いていると言われております。しかし、国の高齢者対策を拝見いたしますと、もっぱら財政上の理由によって福祉見直し論が考えられているように思われます。国が社会保障に果たすべき責務を家庭地方自治に転嫁させようとしているのではないか、こういうことが危惧されるところでございます。  しかし、本来、老後は一人一人が地域の中で、できれば家族との関係などをスムーズに保つ中で暮らしていきたい、こういうのもすべての者の願いでありますし、またそうなりますと、できるだけ病気にかからないような予防リハビリ整備ども必要な対策ではないかと思います。また、老人になってまいりますと、いわば病気とともに生きていくということが現状じゃないかと思いますけれども、これからの予想といいますか、将来に向けて厚生大臣としてこういう老人問題、とりわけ老人福祉についてどういう観点施策を進められていくか。外国などでは在宅サービスなどが主流を占めているという時代でございますので、その辺を含めて御見解をお示しいただきたいと思います。
  9. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 本格的な長寿社会を迎え、我々人類が念願でありました長寿を達成しようといたしておりますが、同時にそれは、健康で健やかな明るい長寿を全うしていかなければ何にもならないわけでございます。そのために、今御指摘のように、大変厳しい財政事情の中ではありまするけれども、優先的に予算等を配分し、そして明るい豊かな老後が送れるような社会保障水準を低下させない努力を積み上げてまいらなければならないというふうに考えております。  また、御指摘の要介護老人等につきましては、いろいろな事情でやむを得ず施設に入所せねばならないお年寄りに対して、その施設をなお一層充実拡充をいたしてまいるということは必要でありますとともに、ただいま御指摘をいただきましたように、基本的にはお年寄り老後も住みなれた地域生活をされるというための在宅福祉サービスというものに重点を置いてまいらなければならないと考えております。そのために、これまでもやってまいりましたが、家庭奉仕員とか、またデイサービスとかショートステイとか、保健婦訪問指導とかいうような事項について一層拡充をいたしてまいりたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  10. 千葉景子

    千葉景子君 今、厚生大臣から御見解をお伺いいたしました。今回法案の中に示されております老人保健施設、これもこのような基本的理念のもとに多分設置されようとしているのだと私は思いますけれども、そうなりますと、内容を見たところいろいろな問題点があるかと思いますので、きょうは老人保健施設中心にしまして質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、さきに私の方にいただきました厚生省の「要介護老人数等の見通し」、これによりますと、六十一年度六十万人が七十五年度には百万人程度になる、こういう数字が示されております。これは、現在の発生率五%程度のままを基本にして推計されておりますけれども、しかし、予防リハビリ整備医療内容適正化を徹底するなどのことによって、この発生率というのを引き下げることが必要ではないかと思います。これは発生率現状のままと仮定して、老人保健事業リハビリ充実の効果というのを見込まずに見通しを立てていらっしゃるのかどうか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  11. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御指摘いただきましたように、要介護老人数の現状は六十万人程度、それから七十五年度で百万人程度になるというのは、私どももそのように見込んでおるわけでございます。  この見込み方でございますけれども一つ、私どもは、御指摘のように、今後老人保健事業中心として、特に脳卒中その他循環器障害を持つ方の発生率を抑えていく、あるいはリハビリを強化するということで寝たきり老人発生率をこれからも下げる努力を続けていくということが前提でございます。しかし、反面、これからの人口の高齢化に伴いまして、いわゆるオールドオールドと申しますか、八十歳、九十歳という方もこれからますますふえてくるであろう。そういうことのプラスマイナスをいろいろ勘案いたしまして、確かに難しい推定でございますけれども、一応現在程度の五%の発生率、減らす努力はするけれども、またふえる要因もあるということで、現在の発生率程度で七十五年度を見込むことが現時点では適当ではなかろうかということで、百万人というふうに見込んでおるわけでございます。
  12. 千葉景子

    千葉景子君 この見通しによりますと、在宅の要介護老人は六十一年度で二十三万人、要介護老人のうちという趣旨で三八%、これが七十五年度にはほぼ三十三から三十七万人ということで三六%前後と、わずかですけれどもむしろ要介護老人の中で在宅の占める割合が減ってくるような傾向にあるんです。そうなりますと、施設福祉から在宅福祉へという理念厚生省でも目指していらっしゃる理念と相反するんではないだろうか。むしろ要介護老人の中で見れば施設収容よりも在宅者の方がふえていく、そういう方向に行かなければいけないのではないだろうかと思うんですけれども、この辺の見通しについてはいかがでしょうか。
  13. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 在宅サービス対象者シェア考え方でございますけれども、六十一年度は、六十万人のうちの二十二、三万人ということで在宅サービス対象者シェアがあるわけでございます。これを七十五年度におきましては三十三ないし三十七万人程度と見込んでおりますけれども基本的には在宅サービス対象者シェアは変わらないという大胆な推定をいたしているわけであります。  これは、一つには、これから在宅サービス対象者に力を入れていくということはそのとおりでございまして、今回の老人保健施設も、入院治療の終わった方をこの中間施設リハビリその他を施しまして、行く行くは在宅の形で地域社会なり家庭老後を暮らしていただきたい、こういうことから、社会局関係在宅サービス、それから中間施設機能としても在宅サービスに私どもがウエートを置いていることは事実でございますけれども現時点での六十万人の中の二十二、三万人というシェアが、また反面、これは特養待機患者が相当おられる、あるいは社会的入院という形の方がおられるというようなこと等々から見ますと、現時点在宅サービス対象者というものがやはり国民ニーズからいったらまだ少な目なのではなかろうかという要素もありまして、これもプラスマイナスになりますけれども在宅に力を入れていくということと、やはり現時点でもこれから施設に入りたいという希望の方が相当おられる、こういうことも勘案いたしまして、このシェアというのも非常に大胆な推計でございますけれども、七十五年度におきまして、現時点在宅でおられる要介護老人の方をそのシェアで伸ばすことが一つの判断として適当な見込みの仕方ではなかろうかということで、私どもは七十五年度時点で三十三ないし三十七万人程度在宅サービス対象者ということで見込まさしていただいておるということでございます。
  14. 千葉景子

    千葉景子君 今お話をお伺いしておりますと、将来にわたってのかなり大胆な、何といいますか、見通しであるということでございます。また、七十五年度の数字を見ましても、三十三から三十七万程度とかなり幅広くとっていらっしゃるわけですけれども、この辺は今後の在宅サービス充実、こういう中でこの見通しをさらに在宅中心見通しに毎年考え直していく、こういうようなことは考えられますか。
  15. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもの七十五年時点推計見通しでございまして、御指摘のように、国民ニーズなり、あるいは私ども在宅福祉サービスのこれからの強化の方向等々の兼ね合いを見ながら、私どもは当然その国民ニーズ、それから私ども施策の用意等々を見ながら七十五年の数字というものを見直す、そういう努力を続けながら、やはり要介護老人にそれぞれがふさわしいサービスを施していくようにしていきたいというふうに考えます。
  16. 千葉景子

    千葉景子君 この問題につきましては、今後も老人福祉問題は続いていくわけですので、その都度、厚生省の方からも見通しなどについての新たな展開といいますか、そういうものをぜひ期待したいというふうに思います。さもないと、せっかく在宅中心に、目標にといいましても、現状維持ということにもなりかねませんので、ぜひこの点については委員会開催の都度などにもまた御見解をお聞きしていきたいというふうに思っております。  ところで、現在の老人に対しては幾つかの施設がございます。老人病院特養、そして今回、老人保健施設というものが新たに加えられようとしておりますけれども、この三つについて入所対象者状態制度的に、こういう場合にはここに該当する、こういう場合にはこちらに該当するというようなことを明確に区分をしていただけますでしょうか。
  17. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設対象者中心にどういう状態の方がそれぞれの施設に入るのかと、こういうお尋ねだと思います。  私どもは、端的に申し上げて、病院対象者というのはもとより入院して治療を必要とする人、ある病気を治すために入られるわけでございますから、例えば脳卒中が起こったと、当然病院でございまして、そこで急性期治療が施され、そして何と申しますか、回復期に至るまでの間のいろんな恐らく治療が行われるわけでございますけれども、そういう治療が終わった方で、さらに家庭復帰までの間においてリハビリあるいは医療のケアあるいは生活お世話を必要とされる老人がおられるわけでございまして、そういった方をこの老人保健施設で受けとめるということでございます。特別養護老人ホームは少し色合いが違うわけでございまして、寝たきり老人等家庭介護困難な方を受け入れるわけでございますから、家庭がわり機能を発揮するということでございます。  したがいまして、病院治療を必要とする程度病院を持った寝たきり老人がここの対象、それから老人保健施設は病弱な老人と言ったらいいのでしょうか、先ほど言いましたように、一応治療を終えたけれども引き続きリハビリテーションを必要とするような老人中心でございますが、さらに申し上げますと、例えば骨折によりまして家庭寝たきり状態療養しておられた老人の方がいろんな病気持病等が悪化しまして、家庭療養が難しくなったというような方ももとより対象になるわけでございます。  したがいまして、この老人保健施設病気持ち老人といいますか、病弱な老人と私は説明さしていただいているわけでありますが、この方が対象になる。それから、特養家庭がわりでございますから、病気あるいは入院治療を必要とする程度病気でない方で、かつ家庭介護ができない方を家庭がわりにしてあげる施設だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  18. 千葉景子

    千葉景子君 一応、形式的にはそういう御説明である程度理解はできるんですけれども、実際の現状を見ておりますと、必ずしも入院治療が必要な方が老人病院にお入りになっているとは限らないようでありますし、またそれから、本来家庭介護では困難だという方でも特養に入らずに別な施設に入っていらっしゃる方がいるなど、老人とか家族などにとっては必ずしもこれがはっきりした区別の上に収容されていないという現状があると思います。その上に、今回また老人保健施設という新しい制度が加わることになりまして、家族や本人にとっては、一体自分はどこに行ってしまうんだろうという不安なども大変出てくるかと思います。むしろ、これまでの制度充実、そしてその辺を明確にする、こういうことが先決ではないだろうかというふうに思いますけれども、その辺の問題点はいかがでしょうか。
  19. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもといたしましては、病院体系特養体系以外に、ぜひ中間施設のタイプでございます老人保健施設をやはり要介護老人処遇体系の中に組み入れたいということでございます。これは社会保障制度審議会等からも御意見が出されておりますけれども、やはり要介護老人ニーズあるいはそれを持たれる家庭ニーズというのは、医療だけのニーズあるいは生活お世話だけのニーズではなくて、その両方あわせ持ったサービスを受けるという、そういうニーズが非常に高く出ているのではないかということでございまして、高齢化社会先進国であります諸外国にはナーシングホームとかハーフウエーハウスとか既にあるわけでございますけれども、私どものやはり要介護老人等処遇なりサービス体系として、医療それから福祉的な機能を持った施設と、その両機能をあわせ持った中間施設がぜひとも必要だという認識なり考え方から今回お願いをしておるわけでございますから、病院充実あるいは特養充実だけでは要介護老人処遇はこれからの高齢化社会にとっては不十分であるというふうに考えて、今回御提案を申し上げているわけでございます。
  20. 千葉景子

    千葉景子君 どうもこの三者の関係が明確にならないんですけれども懇談会報告などでは、入院治療を要しない程度ということで老人保健施設、これを考えているようですけれども、その程度の軽い医療ニーズということになれば、むしろこれまでの介護施設について医療充実させるというようなことの解決も可能ではないかと思います。また、入院を要する医療ニーズならば、これも医療の部分で対応されればよいわけですので、安易にこの医療ニーズ生活ニーズというものを結合して新しい施設をつくるということは、これまでの介護サービス充実などの必要性、こういう政策を解決しないままに、むしろ現状を固定化するような一面を持つのではないかという気がいたしますけれども、そのような危険性というのはないでしょうか。
  21. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 医療ニーズ生活ニーズをあわせ持つ、そういう方がふえてくるということから、私どもは、先ほど申しましたように中間施設がぜひ必要だというふうに考えておりますけれども、御指摘のように、在宅なりあるいは生活ニーズを満たすような福祉サイドの施設充実ということの解決がなされない、そういう施策方向というものが示されないままに、さらに第三のと申しますか施設をつくることは問題だというような御指摘でございますけれども、私どもはやはりこれからの高齢化社会、世界に類を見ないスピードで我が国に高齢化の波が押し寄せてくるわけでございますけれども、したがって、そういう意味では、いろいろ施策体系を御指摘のように検討して進めていくという方法もあるでしょうけれども一つのまた逆の考え方として、そういうニーズ、両方のニーズをあわせ持つ老人の方もふえているというこの現実に着目いたしまして、やはりこの種の施設を用意してあげるというのが非常に緊急を要する政策課題ではないかというように考えておるわけであります。  別途、私どもの社会福祉サービス体系では、在宅型を中心とした施策を大いに伸ばそうといたしておるわけでございますから、それはそれで伸ばしながら、この中間施設もあわせはめ込んだ形で、これからの高齢化社会を乗り切っていかなきゃならないのではないかというのが私ども考え方でございます。
  22. 千葉景子

    千葉景子君 そういう現在のニーズにこたえていこうという御見解のようですけれども、そうなりますと、試案として示されているスタッフなどの面で十分であるかどうか、大変疑問視されるところがございます。スタッフの中で要介護老人生活を本当に充足することができるか、百人規模の施設で看護婦が七から十人程度と、これは老人病院の十七名に比べてかなり少ない数になっております。また、介護職員につきましては老人保健施設では十五から十八人程度ということで、これは逆に特別養護老人ホームの二十二人ということからするとこれも大分少ないと、こういう数になっておりますけれども、こういうスタッフで十分に生活ニーズあるいは医療ニーズにこたえることができるものかどうか、その辺、大変疑問に思われますけれども、いかがでしょうか。
  23. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設のスタッフの問題でございますけれども、確かに看護婦を病院と比べれば少ない、あるいは介護職員を特養に比べれば少ないという御指摘になるわけでございますけれども、私どもとしてはやはりそういう観点ではなくて、この老人保健施設が例えば医療面では特養に比べてどうであろうかということを考えますと、医師については特養は非常勤のお医者さんでいいわけでございますけれども、必ず常勤のお医者さんを置くように考えておりますし、看護婦につきましては特養ホームに比べまして、看護婦さんが特養は三人であるものに対しましてこの老人保健施設は七ないし十人程度と、こういうことでございますから、医療機能特養と比較いたしますと、お医者さんも看護婦も私どもは格段に手厚いスタッフになっているのではないかなという考え方でございます。  今度はお世話する介護職員をどうかと比較します場合に、これは病院の方と例えば比較してみますと、病院の方が十三人の介護職員に対しまして私どもは十五ないし十八人と、こういうことでございますし、さらにOT、PTなり、あるいは相談指導員なり等々の生活面の職員等も配置するというふうなことで、中間施設でございますからどっちと比較するかによっていろいろな御意見は出るでしょうけれども医療面については特養よりも手厚くなっている。  それから、生活お世話介護面等を含めまして、老人病院と比べると手厚いスタッフの形になっているということでございますので、物は見方でございますけれども、そういう意味で、私どもはこの対象に考えております要介護老人の寝たきりの処遇にふさわしい体制にスタッフを考えておるわけでございますけれども、さらに今後モデル実施の状況あるいは関係専門家の御意見を聞きながら、この辺の人数あるいは職種等は固めていき、要介護老人にふさわしい万全の人的スタッフをそろえていきたいというふうに考えております。
  24. 千葉景子

    千葉景子君 今のお話ですと、どうも何か両方の中間をとって中間施設と言うんだか、中間というような感じもしないわけでもないわけです。現状老人病院あるいは特養などでも今の数字が必ずしも最善の数ではないわけですから、それを前提に片方よりもこうだ、片方よりも多いという考え方はどうも大変安易に過ぎるのではないか。本来の中間施設というものを考えるのであれば、それに適したスタッフなり、それを独自にやっぱり考えられなければいけないというふうに思います。  また、とりわけ治療が終わった御老人というのを中心とするのであれば、リハビリなどについてかなりの充実が必要ではないかというふうに思いますけれども、本施設についてPT、OT等の職員配置ですね、これは考えられてはいるようですけれども、必ずしも必須なものというふうに位置づけられているわけではないようでございますけれども、この辺のリハビリ充実、こういうところについてはどんなふうにお考えなのか、御見解をお示しいただきたいと思います。
  25. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設リハビリ機能でございますけれども、御指摘のように、最もこの施設で重要な機能だと私どもも考えておりまして、したがいましてOT、PTの方については、私どもは原則的にどの施設にも配置をしていただくという考え方でございます。
  26. 千葉景子

    千葉景子君 そうしますと、リハビリについての訓練のための要員というのは必置といいますか、必ず置くというふうに考えてよろしいわけですか。
  27. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 結構でございます。
  28. 千葉景子

    千葉景子君 それじゃ、ぜひその点は明確に置くということを明示して今後進めていただきたいというふうに思います。  また、衆議院の方の審議の中で、保健施設の要員としましては、全体で三十五から四十名ということが適切であるというような厚生省からのお答えをいただいているようですけれども医師、看護婦、介護職員、最大の数値をとりましても三十名弱の数にしかなりません。そうしますと、その残りの要員といいますのは一体どういう方々が含まれると考えてよろしいでしょうか。
  29. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 百人の施設での人員の配置として、先般三十五ないし四十人というふうにお答えいたしたと思いますけれども、私ども現時点で考えております職種及び人数を申し上げますと、医師が一人、看護婦が七ないし十人、介護職員が十五ないし十八人、OT、PTが一人、相談指導員が一人、薬剤師一人、精神料医一人、栄養士一人。この薬剤師、精神科医、栄養士というのは、非常勤ということも検討の今課題となっておりますが、そのほか事務職員が三人、調理人が三人と、こういうことで先ほどのような数字でお答えをいたしているわけでございます。
  30. 千葉景子

    千葉景子君 先ほどこの施設リハビリなどがかなり重要なポイントになるということでございましたけれども、今の数字でいきますとどうもOT、PT一応一人というような考え方に立っておられるようですけれども、この辺、これで十分なやっぱり施設運営といいますか、療養あるいは社会復帰、こういうものに向けてのサービスができるものかどうか、さらにこれを充実させていくという方向には考えられないんでしょうか。
  31. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 専門的なリハビリはOT、PTの方が一人おられまして、あとお医者さんなり看護婦さんなり介護職員の方とチームワークを組みながらリハビリを展開していくということに相なろうかと思っております。そのほか、もとより生活指導的なリハビリも大事でございまして、家庭に帰られた場合の日常的な訓練も必要でございます。あわせて、相談指導員の方等がレクリエーションその他もろもろのこの施設におきますスケジュールと申しますか、行事等を組み込みながら、やはり医学的なリハビリあるいは社会的なリハビリあるいは日常生活訓練といったようなものも含めまして、私どもは重要な機能としてこの老人保健施設が社会復帰の機能を果たせるように、これから考えてまいりたいと思っております。
  32. 千葉景子

    千葉景子君 先ほど老人病院との関係をお聞きしたんですけれども、ここで言うリハビリ、また老人病院入院が必要な治療ということになります。治療の中には当然リハビリというのも入ってくるかと思いますけれども、この保健施設で行われるリハビリというのは、一体どの程度のことを考えていらっしゃるのか。老人病院でもある程度のところまでの機能訓練などはやはりなされると思うのですけれども、どうもこのスタッフでいきますと軽易なといいますか、本当に日常の運動訓練ぐらいなものしか予想できないんですけれども、この辺の区別はいかがでしょうか。
  33. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 病院リハビリとこの施設リハビリ関係でございますが、病院急性期治療が終わると、後、当然のことながらリハビリが行われると思います。主として残存機能をどういうふうに維持回復するかといったような点から、医学的なサイドに立ったリハビリが展開をされるわけでございます。そういうことで、一応病気治療が終わり、そしてできるだけその患者が持っておられる残存機能と申しますか、身体的な機能を維持した段階で、それから回復期あるいは慢性期の病気の方のケアが始まると思いますけれども、私どもはやはりこの段階においては老人保健施設におきますリハビリテーションとして、社会復帰のためのリハビリとして、家庭に帰られた場合にいろんな日常動作を含めました機能が発揮されて、地域及び家庭で、何と申しますか、生活ができるような観点に立ったリハビリをして差し上げると、こういうことになるのではないかと思います。
  34. 千葉景子

    千葉景子君 今までお聞きしている内容から見ますと、やはりどうもむしろこれまでの介護体制あるいは今後の在宅サービスあるいは派遣サービス、そういうものを充実させていくことによって解決すべき問題ではないかという気がいたしますけれども、これについては意見の相違になりますのでこれ以上質問はいたしません。ぜひ社会内で、在宅サービスなどの充実によって効果を上げられるような方向で考えていただきたいというふうに思います。  ところで、老人保健施設が今お答えいただいたような施設であるとすれば、できるだけ住まいの近くといいますか、また家庭に復帰しても社会生活がうまくできるような、そういう観点施設が考えられなければいけないだろうというふうに思います。そうなりますと、例えば小学校の区に一つぐらい考えるとか、あるいはデイサービスなどを考えるとか、また派遣制度をその保健施設中心拡充する、こういうようなものが大変重要になってくるだろうというふうに思いますけれども、この中間施設の範囲あるいはデイサービス、看護者派遣制度拡充、こういうものなどについてどういう方向性を持っていらっしゃるでしょうか。
  35. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設在宅サービス関係でございますけれども、私どももこの施設在宅支援的な機能を発揮することは非常に重要だというふうに考えておりまして、したがって、できるだけ身近なところに設置されることもまた望ましいだろうというふうに考えております。  ただ、この施設におきます在宅サービス、デイサービス等の考え方でございますけれども基本的には地域におられるお年寄り在宅サービスあるいはデイサービスというものは、やはり一般的な福祉行政として、住民に対する市町村の行政として在宅サービスが展開されるのが適当であろうというふうに考えておりますけれども、この施設もそれを補完するといいますか、あわせ充実するという意味で、ショートステイとかあるいはデイケアとか、そういう形で住民の方に対する在宅サービスを展開していくという考え方でございます。  くどいようでございますけれども基本的な在宅サービスの姿勢は、やはり福祉サイドが一般住民サービスとして行われる。しかし、この老人保健施設におきましても、在宅支援というサービスというものは非常に重視をいたしておりまして、この施設でもショートステイなりあるいはデイサービスという形で展開できるようにいたしたいというのが私ども考え方でございます。
  36. 千葉景子

    千葉景子君 今ちょっとお聞きした中で明確なお答えはいただけなかったのですけれども中間施設の設置の範囲ですね、どのくらいな人数なりどのくらいの区域の中に一つといいますか、そういう設置の範囲、それについてはいかがでしょうか。どの程度のものを今後考えられていらっしゃるのか。
  37. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先ほどお答えいたしましたように、この施設については七五年を目途に二十六、三十万床程度整備を図るというふうに考えているわけでございますけれども、まだ具体的に規模別あるいは地域別にその整備計画の当てはめをやっているわけではございません。しかし、私どもとしても、やはり再三これは国会の審議でも御指摘を受けているわけでありますけれども施設の規模についても小規模施設と申しますか、小さい規模の施設でも認めるべきであるという御意見もあるわけでございまして、その辺もこれから十分検討をしていかなきゃいけないなと思っております。  いずれにしても、私ども施設の規模につきましては、開設者なり地域事情に応じて、大規模のところが必要なところ、あるいは中、あるいは小規模というような、地域地域でやはり規模別のニーズも違うだろうというようなことを考えておりますから、要は地域の実情に合った施設規模として、それぞれの地域でそういう状況を踏まえながら開設者が判断をしていってもらいたいものと考えております。  なお、私どもとしても融資の制度とか補助金の制度も考えておりますので、その辺も念頭に置きながら、適正な規模のものが適切に配置されるよういろいろ指導をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  38. 千葉景子

    千葉景子君 今、地域の実情に応じてある程度は大規模のものもあれば小規模のものもあるというようなことですけれども、その地域の実情などはもう現在でも調査を開始されているというか、ある程度厚生省の方でも、こういう地域にはこういうものが最適ではないかというようなことは検討はされていらっしゃるわけですか。
  39. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 七十五年目途の二十六、三十万床ということで、毎年毎年二万床程度平均になりますか、整備をしていくことになるわけでございますけれども、まだ残念ながら、どういう地域にはどの程度のものを何カ所というところまでは実は私どもの作業は進んでおりません。仮に一カ所五十床という場合で平均して申し上げますと、先ほどの二十六ないし三十万床というのは、一カ所が五十床平均で老人保健施設ができますという仮定をしますと、五千二百ないし六千カ所が全国に配置されるということでございまして、五千ないし六千の老人保健施設をどういうふうに地域地域に応じてふさわしいものにしていくかということは、これから真剰に考えながら、適切な指導をしながら、適正な普及を図ってまいりたいというふうに考えます。
  40. 千葉景子

    千葉景子君 実情を知らずして方策を立てるというのはいかにも机の上の議論のようなところがございますので、ぜひ実情をよく調査をされた上で、もう一度検討を重ねていただく、あるいは再検討していただくというような柔軟な姿勢をお持ちいただきたいというふうに思います。  ところで、これは簡単で結構でございますけれども、現在痴呆性の老人といいますか、病気にかかっている老人の問題もかなり大きな問題になっているかと思います。これについては、現在かなりの数が精神病院などにも収容されていたり、あるいは十分な治療も施されないままに放置されているという状態もあるようでございますけれども、今後この保健施設などでもこういう痴呆性の老人問題あるいは老人をある程度収容していく方向にあるのか、あるいは現在精神病院などに収容されているような御老人に対してどういう考えをお持ちなのか、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  41. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 痴呆性老人でございますが、私ども現在推計しております数字は、在宅の方が約五十五万人、それから特別養護老人ホームに約四万人程度、それから精神病院に三万人というふうな推計をしております。精神病院に入っておられる方は、異常行動が著しい場合でございまして、行動制限でございますとか、いわゆる専門的な治療が必要な方はこちらへ入っていただくということでございますし、異常行動がそれほど著しくない場合で常時介護の必要な方については特別養護老人ホーム、あるいは老人保健施設では、先ほどもいろいろございましたように看護、介護サービスが必要な身体症状を持つ方で医療のケアも必要な方ということの振り分けになろうかと思います。
  42. 千葉景子

    千葉景子君 精神病院に入っている方、特養に入っている方、さまざまいらっしゃるようでございますけれども、これも老人保健施設で対応するとなると、やはりスタッフの点で、痴呆性の場合にはかなり問題になるのではないかというふうに思います。また、現在の精神病院状態を見ても、本来入るべきでない方が入っているというふうな現状もあるかと思いますので、この辺十分調査され、やはりこれに対応できるような施策をぜひとっていただきたいというふうに思います。この数字などの調査についてもまだ十分なされていないようでございますので、これからの課題として取り組みを続けていただきたいというふうに思います。  ところで、今回モデルケースというのを実施されて、その中で今後の老人保健施設について検討を加えられていこうということですけれども、このモデルケースについて具体的にどんなものを考えられているか、お答えをいただきたいと思います。
  43. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) モデルの実施でございますけれども、私どもは法律をお認めいただければ直ちにこの実施に入りたいというふうに考えております。  このやり方でございますけれども、本格実施に備えまして、病院あるいは特養併設の設置タイプ別、あるいは地域別等の種々の条件別に試行的に実施したいというふうに考えておるわけでございまして、一応十カ所程度予算に計上さしていただいておりますけれども、この予算の中で私どもは選定に当たりましては、先ほども言いましたように、設置タイプ別あるいは地域別等のほかにやはり小規模のもの、三十床程度が適当かなと思っておりますが、そういう規模あるいはショートステイなりデイケアという通所サービスも行う施設、そういうものもモデル実験の中でいろいろのタイプなりあるいは機能なり、そういうものを組み合わせながら実験をしていきたいというふうに考えております。
  44. 千葉景子

    千葉景子君 このモデル実施については、具体的に例えばこういう地域実施していこうとか、そういう具体案などは検討されていらっしゃるわけでしょうか。
  45. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 法律の成立を待って実施に入りたいというふうに考えておりますので、今いろいろと内々では検討なり調査なりその他続けておりますけれども、しかし、私ども現時点でどこの地域にこのモデルをお願いするということは、まだ現段階では申し上げかねるわけでございます。
  46. 千葉景子

    千葉景子君 このモデルケース実施に当たって、例えばさまざまな分野の方の意見を聞くとか、現場で働いている方、専門家の意見を聞く、こういう機会は設けられる予定がございますか。
  47. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) もちろんモデルをやってもらうわけでございますから、その実施過程において、あるいは終了の段階において、そこでの問題点なりいろんな御意見があろうと思いますから、そういうものは全部お聞かせ願おうと思っております。さらに、そういう声をこれから検討願います審議会にもお諮りをして、適正なものにしていきたいというふうに考えております。
  48. 千葉景子

    千葉景子君 さらに、モデル実施を踏まえて本格的な保健施設実施ということになるかと思いますけれども、その際に、多くの国民にモデル実施の結果とかそれから内容、今後の方針、こういうものを国民に広く知らせる機会、こういうものはぜひ設けていただきたいと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。
  49. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今、老人保健施設の各論にわたっていろいろ御質疑がございました。私どもとして考えております基本的な部分について答弁をさしていただいてまいったところでございますが、こういった基本的な考え方をもとに法律を成立さしていただきましたならば、モデル事業実施し、そしていろいろな御意見を踏まえ、これをまた老人保健審議会等で具体的に御協議をいただきまして、具体的な基準や内容等について御決定をいただくわけでございます。  そういう際に、国民的にこれを何といいましょうか、発表していくかどうかというお話でございますが、その場といたしましてはやはり国会ということになろうかと思いますが、議員の先生方からの御質問があったり、また委員会での御要請があったり、国会の御要請があれば、当然それは御報告申し上げるべきものであるというふうに考えております。
  50. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひ今後、多くの国民の注目している問題でございますので、国会などへの報告ども含めてそれは検討をしていただきたいというふうに思います。  ところで、老人保健施設の場合について、ちょっと細かい点でございますけれども、保険給付の方式、これについてはどのようになっているんでございましょうか。ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  51. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設を利用された方に対する保険の給付でございますけれども施設療養費ということで、本人に対する一種の家族――健保にも家族療養費というのがございますけれども、現金給付の考え方に似せて制度はつくっておりますけれども、これを老人保健施設側が代理受領できる、つまりその費用については支払基金から直接その施設療養費病院がかわって代理受領するということの制度にいたしまして、国会にその制度を今御提案をしているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  52. 千葉景子

    千葉景子君 老人保健施設療養費というのが、現物支給ではなくて療養費の支給ということであるけれども、この煩わしさといいますか、事実上現物給付と同じような形態になるということでございます。  そうなりますと、これは同じ療養費の支給でも、例えば非基準看護病院で付添看護を置いた場合とか、それから柔道整復師会に所属しない施術所で治療を受けた場合とか、あるいは高額療養費の支給など、同じ施術なり性質のものでも、患者が一たん療養を受けて療養費の支給を受けるというような煩わしい手続をしなければいけないものが幾つかございます、これまでの制度の中でも。こういうものについて、老人保健施設でも、実際は療養費の支給だけれども現物支給と同じような形態がとれているわけですから、ほかのものでもぜひ患者負担というのを減らす意味で、現物給付的な支払い方法をとっていただけないものかどうか。この辺の検討はいかがでしょうか。
  53. 下村健

    政府委員(下村健君) 療養費の支給は、保険者が行うべき医療給付を事後的に現金によって給付をするというのが原則でございますが、今話が出ましたように、家族療養費でありますとか、今回の老人保健施設療養費のようなもので実質上本人に対する療養の給付と同じというふうなものについては、現物給付を認めているということでございます。  したがって、現在現物給付になっていないものについては、保険者が、実際に費用を支払った患者本人の申請に基づきまして、医療保険として給付する必要があるかどうか、内容的に保険としての給付をすることが適当かどうかということを個別に判断するものについては、原則どおり償還払いにしているということになっているわけでございます。  あんま、はり、きゅう、あるいは付添看護、柔道整復というふうなものについては、比較的個別ケースの判定を必要とするというふうなこともございまして、また高額療養費につきましては、その月中の支払いが一定額に達した場合というふうなことが支給の条件になってまいりますので、技術的に事後的な対応でないとできないというふうな事情のあるものもございます。そういうことで、柔道整復のような場合も個別的な判定を要する、また、その技術の内容等につきましてもいろいろの問題がございますので、限定した範囲で便宜措置を講じているもの以外は原則として療養費払いの原則によって支払う、こういう格好になっているわけでございます。
  54. 千葉景子

    千葉景子君 どうもいろいろな事情が背景にはあるようでございますけれども、支払う側、療養を受ける側といたしましては、同じ性格の治療を受けても、片方へかかると後から療養費を払い戻さなければいけないというような手間、そういうこともありますので、ここも技術的な問題は解決できることでもありますので、ぜひ患者側の公平といいますか、負担を軽くする意味でも検討をさらに加えていただきたいというふうに思います。  それでは、時間がございませんので、最後に厚生大臣にお尋ねをしたいと思います。  現在、老人病院そして特養、今回また老人保健施設というようなことになりますけれども、こういう三者の間でも負担の仕方といいますか、支払いの方法、負担について非常にそれぞれの制度によって特有なものがございます。本人の経済、所得などに応じて支払うというものもあれば、定額というものもあれば、それから非常に不公平といいますか、それぞれに入ったところによって支払いの方法が違うということもございます。  また、現実の厚生行政といいますか、こういうものも見ておりますと、病院は健康政策局でしょうか、それから特養が社会局、診療報酬は保険局、老人保健などは保健医療局の老人保健部というような形で、かなりそれぞれの制度がいろいろなところにまたがっている、こういう現在の実情かと思います。これは行政の側からはそれぞれのいろいろなお立場があるとは思いますけれども、それを利用する側においては非常に不便を強いられる、あるいは政策の統一性に欠けるというようなことも出てまいりますので、ぜひ今後、例えばそれを統一的に考えるような部局を設置するとか、老人保健福祉法のようなものを考えるとか、そういうことを検討してみてはいかがかというふうに思いますけれども厚生大臣、いかがでしょうか。
  55. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これまでも申し上げてまいりましたように、老人保健施設の入所者は、病院での入院治療は必要はないが在宅での療養が困難である方々に対して、在宅療養者とのバランスを考慮して、在宅でも必要な食費とかおむつ代とか日常生活に必要な最小限の費用を御負担いただく、こういうような仕組みにさしていただいておるわけであります。また、特別養護老人ホームの場合には、在宅介護できない方に対する措置という形の中から生まれたことでありまして、利用料というよりも所得に応じて費用徴収を行うという仕組みになっておるわけでございます。要介護老人等を収容するいろいろな形態の施設として、老人病院や、また今御審議をいただいておりますこの中間施設、また特別養護老人ホーム、こういうような施設を今後三本柱として整備をいたしてまいるわけでありまして、これらが定着をしてくる将来においては、こういった費用の問題についてもなお検討を要する課題であろうかというふうにも思っておりますが、現在のところはこういうことでスタートをさしていただきたいというふうに思うわけであります。  また、いろいろなこういったお年寄りの問題を所管する組織といいましょうか、の面についての話でございますが、これも今後、将来在宅福祉を推進いたしてまいります場合に、福祉と医療と保健というこの三者一体になった総合的な施策を推進いたしてまいらなければならないというふうに私どもは考えておるわけでありまして、これにつきましても将来にわたってそういう方向でひとつ検討をいたしてまいらなければならない課題だなというふうに思わしていただいているところでございます。
  56. 千葉景子

    千葉景子君 特養などは、もともとは生活困窮世帯対策のような形で出発いたしましたけれども、現在は福祉問題として統一的に考える時期に来ているというふうに思います。  そしてまた、行政の問題というのは、行政側のさまざまな事情がございますけれども国民の側から見ますと、一本化して利用しやすい、わかりやすい制度にしていただくというのがやはり国民ニーズにこたえる方向かと思いますので、今の厚生大臣のお答え、ぜひ近い将来ということで取り組んでいただきますようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  57. 浜本万三

    ○浜本万三君 今回の老人保健法改正につきましては、政府の財政対策のためにお年寄りとサラリーマンを犠牲にするという内容になっておりますから、私は今回の改正法案は極めて遺憾な法律案だ、かように思っております。そういう立場から、きょうは一部負担の問題、按分率の問題、中間施設の問題、悪質滞納者の問題、さらに比較的審議をされておりません医療適正化の問題などについてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず第一は、一部負担の問題でございますが、先般衆議院におきまして原案千円を八百円に修正をされました。しかし、八百円ということでも現行の二倍でございますから、お年寄りにとっては大変な負担になるわけでございます。また、年をとりますと大抵二つや三つの病気を抱えておりますから、それを考えますと、なお大きな負担が要請されるというふうに思います。したがって私は、衆議院の修正案をさらに修正する必要があるんではないかということを第一に考えておりますが、いかがでございましょうか。
  58. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の一部負担改正につきましては、特に外来についての御指摘でございますけれども、私どもとしては、どうしても増高する医療費、毎年五千億ないし六千億程度増高老人医療費は見せておるわけでございますけれども、これはやはり国民が公平にみんなで負担していくという、そういうシステムを今構築をしないと、これからの高齢化社会は乗り切れないと思っているわけでございます。そういう意味で、今回提案をいたしました一部負担の引き上げにつきましては、ぜひお認めをいただきたいというふうに考えております。
  59. 浜本万三

    ○浜本万三君 中でも矛盾のあるのがございます。例えば、老人歯科医療などを拝見いたしますと、医療費が七百七十円というようなものもございます。そういたしますと、一部負担の八百円よりも少ない。少ないということは、一部負担ではないということであります。全額負担ということになるわけでございまして、物の考え方からいえば道理に合わないわけなんであります。しかも、歯科、耳鼻、それから眼科というようなものは、比較的少額の医療費が多いというふうに伺っております。殊に、一万円以下の医療費を支払う度合いも多いというふうに伺っておりますから、そういう方々の生活条件等を考えますと、やはり少額のものについては今回の八百円を五百円程度に引き下げる、つまり一万円以下の医療費負担分については五百円程度に引き下げるというような考え方は出ないものか、そういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  60. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今の御指摘の、八百円以下の診療の場合にはその額が一部負担になるわけでございますので十割負担ではないかという御指摘でございますが、御承知のように、これはその月の月初めに一部負担をしていただくものでありまして、その後のその月内における診療がどの程度になるかということは予想されないわけでございます。結果として一カ月間の診療の全体の額がその八百円に対して何割になるのかということは、なかなかこれは難しいわけでございます。  それでは、定率でこの一部負担を願う方がいいではないかという御議論も一方に出てまいろうかと思うわけでございますが、この老人保健制度におきましては、お年寄りが月一回、定額でお払いをいただくという方がお年寄りの支払い方法について非常にふさわしいのではないかという方法をとっておるわけでございますので、どちらかというと政策判断といいましょうか、いずれかの判断をとらなければならないというような問題であろうというふうに思うわけでございますので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  61. 浜本万三

    ○浜本万三君 とにかく矛盾があることは間違いないと考えますから、したがって何らかの機会にこの問題についてはひとつ検討をしていただくように要請をしておきたいと思います。  次は、入院の一部負担の問題でありますが、この点については現行三百円を五百円にされて、その徴収期限二カ月という制限を撤廃されるという案になっておりますが、この点につきましても私は非常に不満を覚えております。例えば、先般修正されました衆議院の外来千円を八百円というものと入院の現行据え置き、つまり五百円をそのままにしておるということについて、何ら矛盾はございませんでしょうか。
  62. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の入院の一部負担につきましては、私どもは三百円を五百円に、それから期限の二カ月を撤廃させてほしいということでお願いをいたしておるわけであります。  特に、入院の一部負担につきましては、入院費用の割合から見ますと、現行の入院の一部負担は非常に少額になっておるわけでございまして、特に在宅療養されておる方とのバランス、あるいは老人ホームに入っておられる方もエンドレスで費用徴収されるといったようないろんなバランスから見まして、今回の引き上げにつきましては、金額及び期限撤廃の考え方は私どもはどうしてもお願いしたい事項でございますので、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。
  63. 浜本万三

    ○浜本万三君 新聞等を拝見しますと、何か入院の一部負担については五百円を四百円にするんだというような報道がなされておるようであります。それに対するどんずばり答えをもらおうとは思いませんが、新聞報道に対する印象はどういうふうにお持ちでしょうか、お伺いしたいと思うんです。
  64. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 我々といたしましては、いろいろな角度から検討をいたしまして総合的に判断をいたし、入院については五百円にしていただき期限を撤廃していただくのが今回最良であろうという判断をもちまして提案を申し上げておるところでございますので、この考え方でございます。
  65. 浜本万三

    ○浜本万三君 期限の撤廃の問題でございますが、これもまたまことに考え方の悪い法案だと私は思っております。  そこでお尋ねをするんですが、現在の平均在院日数は九十四・七日だと伺っております。そうすると、老健法が制定されました五十八年二月の段階と余り変わってないと思うんです。老健法を説明する中で当時の吉原老人保健部長は、四カ月の期限をつくるということについての一定の見解は示されておると思うんでございますが、老人を取り巻く環境というのは、入院日数も変わってない、それから老人を取り巻くその他の環境も余り変わってないと思いますが、何か変わっておる特徴がございますでしょうか。
  66. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 入院の期限撤廃のお話でございますけれども、私どもは、確かに当初の原案は平均在院日数を念頭に置きながら当時の御提案を説明をいたしたと思うわけでございます。その私ども下敷きになりましたものは、やはり健保本人が一カ月限りという入院の一部負担のあったことが非常に重要な政策判断の要素であったのではないかと思います。もちろん、入院についてどうするかは、定率にするか、あるいは原案ですと、当初いろんな案があったわけでございますけれども、結論的には健保本人の一カ月限りの入院負担というものがやはり大きな要素になったのではないかと思っております。  そういう意味から言いますと、先般の健保法の改正によりまして、それまで一カ月になっておりました健保本人の入院の一部負担につきまして、それが一割負担ということで事実上期限が撤廃をされたわけでございまして、一定期間を経過すれば負担がゼロという制度は、私どもはこれをもってなくなったというふうに考えております。したがいまして、老人保健制度につきましても、他の制度とのバランスも考えながら、そして先ほど申し上げましたように、在宅療養されておる方とのバランス、あるいは特別養護老人ホームに入っておる方とのバランスをも考えまして、やはりどうしても期限撤廃はお願いをせざるを得ない。  そして、お尋ねでございます何か変わったかということでございますけれども医療費の増高傾向その他状況はかなり一段と深刻になっておりますけれども、大きな変更があったものはやはり健保法の改正ということではないかというふうに考えております。
  67. 浜本万三

    ○浜本万三君 今お答えのように、確かに被用者保険の制度は変わりました。それは認めます。ですけれども、私が申し上げるのは、お年寄りの病人を取り巻く環境というのは全然変わってないではないか。例えば、入院食と普通食との質的な相違とか、あるいは多くの患者病院の給食だけでなしに自分の費用でたくさんの補食をしておるとか、あるいはまたいまだに保険外負担が非常に多いとか、所得が少ないとか、そういう条件、いわゆる老人を取り巻く環境でございますが、それは全然変わってないわけなんであります。変わってないとすれば、期限を撤廃するということは病気で苦しんでおる年寄りに過酷な条件を与えることになる、かように思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  68. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 確かに、老人を取り巻く環境というものは三年前とそう大差があるとは思っておりません。ただ、私ども考え方といたしまして、これからの老人医療費を見ます場合に、やはり入院医療費を中心としてこれから増高を続けていくだろうというのが一つの前提にあるわけであります。これを、避けられない老人医療費国民がどういうふうに負担をしていくか。もちろん避けられない老人医療費を適正にしていく必要があるわけでありまして、その適正な形でもやはりふえ続ける老人医療費をどう国民負担をしていくか、そこに私どもの今回の改正をお願いしている中心的な課題があるわけでございます。  したがって、これからふえ続ける老人医療費、これをどう国民が今後とも負担をしていってもらうか。そのためには、この時点で新しく若い人もそれからお年寄り負担していくシステムをつくらせていただきたいということでございまして、一部負担の引き上げ、それから加入者按分率によります公平な負担の仕組み、いずれをとりましても、やはり国民老人医療費を公平に負担する仕組みをこの際構築をさせていただいて、制度の長期的な安定を図らせていただきたいということからでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  69. 浜本万三

    ○浜本万三君 いずれにいたしましても、長い間日本の経済発展のために働いたお年寄り病気になって非常に苦しんでおるわけでございますから、その病気になったお年寄りに対して、国は、あるいはまた国民全体は、安らかに療養をしていただくような措置を講ずる必要があると思います。そういう見地から、再度入院の一部負担の引き上げなどにつきまして、ひとつぜひ御検討をいただくように希望をしておきたいと思います。  それから次は、低所得者の範囲の問題でございます。低所得者の範囲という規定はいろいろ考え方があると思うんでございますが、私は少なくとも非課税世帯にはこれを適用していただきたい、こういう希望を持っておりますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  70. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 一部負担の金額につきましては、外来は八百円、それから入院についても月一万五千円でございますから、現在の老人世帯の所得なりあるいは年金の水準からいって、私ども基本的には無理なく御負担いただける水準だというふうに考えております。しかしながら、衆議院の御審議あるいは附帯決議におきまして、低所得者の方に対する特別の配慮ということで御議論なり附帯決議があったところでございます。したがいまして、私どもとしては、その対象なりあるいは制度の運用なりを現在検討いたしておるところでございます。  御提案のように、市町村民税の非課税というものを対象にするというような考え方ももちろん一つ考え方と思いますけれども、少なくとも現在の一部負担の減免の制度につきましては、風水害等の災害とか失業等の特別の事由によりまして、生計維持者が市町村民税非課税となった方を対象にしているものでございまして、このような方との、現行の減免対象の方とのバランスをやはり考えながら検討していかなきゃいけないということで、なお慎重に検討しているところでございます。
  71. 浜本万三

    ○浜本万三君 それでは、参考のためにちょっと数字を伺っておくんですが、全体で大体何人で、非課税世帯を適用する場合にはおおむね何%になるか。それから、福祉年金受給者を適用すれば何%になるか、あるいは何人になるでもいいですが、その程度のひとつ資料だけは提供してもらいたいと思います。
  72. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 対象者でございますけれども、主たる生計維持者が市町村民税均等割非課税の老人でございますけれども、三五・八%と推計をいたしております。老人福祉年金受給者の数でございますけれども、二三・二%という推計を持っております。
  73. 浜本万三

    ○浜本万三君 そういうふうに困っていらっしゃる方が非常に多いわけでございますから、できるだけ範囲を拡大するように希望をしておきたいと思います。  以上で一部負担の問題に対する質問は終わりまして、次は按分率の問題に入りたいと思います。  これはまず大臣に伺った方がよかろうと思うんですが、五十八年に老人保健制度創設がありました。老人加入率をもとにいたしまして調整をいたしまして、六十年度で大体一千億円程度の国庫負担を削減されました。そして、五十九年十月からは退職者医療制度に拠出させるために本人給付の引き下げ、また基礎年金制度の導入の名のもとに、被用者側から約五千億円近い額が負担をさせられております。こうした毎年の国庫負担の被用者負担への転嫁があるわけです。これは、取りやすいところから取るという極めて安易な政府の考え方であると思います。さらにそれに追い打ちをかけまして、今回の老健法の改悪ということになったわけであります。これでは被用者側の皆さん、特に健保組合の納得を得るということは非常に難しいのではないか、かように思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  74. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この老人保健制度創設いたしますときに、増高する老人医療費をどのように国民全部で負担をしていくかという観点に立ってこれが考えられたものでございまして、国民皆保険という中に国民のだれもがどれかの保険に所属をしているという観点から、その所属している保険者から拠出をしていただいて、そして国民全部が等しく老人医療を支えていこうという考え方に立とうといたしたわけでございます。しかし、創設当初でございまするので、老人の使用した医療費の率と加入者の按分率、この二つを五対五ということで始めた方がいいのではないかということを国会で御修正をいただいたわけでございます。その後、参議院におきまして老人人口の増加以下に抑えるという修正が行われましたので、いわゆる加入者按分率については現在四四・七%というふうになっておることは御承知のとおりでございます。  今回の改正につきましては、その後の老人医療費の動向、また、その後の各保険者間の老人加入率の格差というものが非常に広がってまいっておる。こういうことを考えますときに、当初考えましたような、いわゆる加入者按分率一〇〇%に段階的にお願いをすることによって全面的な公平な負担をお願いするということで、今回法律改正をお願いをいたしておるところでございます。  これと国庫負担との関係でございますが、いわゆる今まで一番老人加入率の高かった国民健康保険が、その結果として拠出率が低くなるわけでございますので、それに伴って国民健康保険に国庫補助をいたしておりました分が国庫補助として軽減をされてまいる、こういう結果になるわけでございます。逆に、御承知のように、政管健保につきましては国庫負担はふえるということになるわけでございまして、必ずしも国庫負担を減らすためにこのようなことをいたしたというよりも、当初申し上げましたように、老人医療費国民全体で負担を等しくしていただくという究極の理念に到達をさしていただくということが、今回の改正の眼目であるわけでございます。
  75. 浜本万三

    ○浜本万三君 それは大変虫のいい話なんでございまして、他人の懐を当てにいたしまして国の責任を逃れる、これが今大臣が答弁された内容であります。私はこれは非常に不満でございます。  今大臣がおっしゃいました過去の経過なんでございますが、これは、申されましたように、国会における合意が形成されましたのは、医療費と加入者按分率はそれぞれ半分だ、こういうことであります。将来これを修正するといたしましても老人の増加の範囲内でやりましょう、こういうことが当時の国会における合意事項であったわけです。それを今度は一挙に八〇、九〇、一〇〇というふうに大改革をするわけでありますから、これは国会の合意とは全然違うわけです。確かに当時見直し規定というものはございましたけれども、この見直し規定は、先ほど私が申したような内容で見直そうということなんでありまして、一挙に八〇、九〇、一〇〇というように加入者按分率を引き上げるという合意はなかったと思いますが、その点いかがですか。
  76. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 確かに、そのときの合意ということの中に、今回の見直しが含まれていなかったであろうというのは推測できるかもわかりません。ただ、申し上げたいのは、大臣から申し上げましたような経緯で五〇%が決まり、そしてまた五〇%以下で政令というのが決まったわけでございます。そのときに今後じゃどうするのか、五〇%以下で政令という形での修正が参議院で行われたのですけれども、今後はじゃ三年後どうするのかというのは、私どもの承知している限りでは、まあそのときになったら考えようやということで、必ずしもそこに明確な今後の方針についての合意なりあるいは意思はなかったものと承知をいたしております。  この見直し規定は、三年間の特例の見直しというふうに書かれておりませんで、本則の五〇%を三年後に見直すというふうに書かれておるわけでございます。したがいまして、私どもは三年後の見直しに当たりまして、諸般の情勢の推移等を検討いたしまして、やはり先ほど来申し上げておりますように、これからの高齢化社会を見据えて老人保健制度を長期的に安定させるためにはどうするか。そのために、やはりこの法律の基本理念でございます国民が公平に負担するという理念に立ち返って、もう一回制度を再構築し直す必要があるのではないかということで、今回の提案をお願いいたしたわけでございます。  この点については、老人保健審議会にも前広に御相談を申し上げまして、老人保健審議会でも私どもが諮問する前に前広に聞いたわけでございますけれども、多数意見として一〇〇%目指して検討すべしという御意見もいただいたわけでございますから、新しい事態に即して私どもはやはり一〇〇%にすることがこれからの制度の長期的安定に必要であり、かつ法の理念にかなうものということで御提案を申し上げたということでございます。
  77. 浜本万三

    ○浜本万三君 審議会でどうあったか、それは知りませんよ。知りません。それから、あなた方が現状時点に立ってこうしなければならないという考え方が出たことも、それは承知しておりますよ。しかし、国会の我々が決めたことを、そんなことはなかったという答弁は、これは絶対に許すことはできませんよ。それはそういう話では許すことはできませんよ。国会の合意は合意として、こういうことがあるのでこういう案を出しておりますという言い方なら僕は許しますけれども、国会で合意した医療費と老人加入按分率を半分、半分だと、そして老人加入率の範囲内でこれを是正していこうという考え方があったということを否定するのじゃ、私はこれ以上質問を続けませんよ。どうですか、それは。
  78. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 舌足らずで申しわけございませんでした。五〇%に国会の合意でなったというその事実は否定を申し上げているわけではございません。確かに五〇%という考え方がその当時正しいということで国会で合意がなされ、あのような形の法案になったと承知をいたしております。しかし、三年後の見直しの後どうするかという点については、私は必ずしも合意はなかったのではないか。私どもの担当者の物の本によりますと、それはそのときに、三年後の見直しのときに考えればというような記述もあるわけでございまして、そういう点から申し上げているわけでございまして、五〇%、五〇%で国会の意思決定がそのときになされた、そのことを尊重しなければならないということはそのとおりだというふうに考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  79. 浜本万三

    ○浜本万三君 だから、後で考えついたことを前にさかのぼって言うような答弁はやっぱりよくないと思います。それは訂正してもらいたいと思います、今後。これ以上追及しませんが、そういうことです。  それからもう一つ、大臣のおっしゃいました老人加入率の格差が出た、公平論の立場からこういう措置を考えたんだというお話でございましたが、その際に組合健保の財政問題について御判断をなさったと思いますが、それはどういうふうに判断なさいましたか。
  80. 下村健

    政府委員(下村健君) 健康保険組合の財政状況は、現状で見ますと、全体といたしましては大変安定的に推移いたしておりまして、かなりの黒字が出ているというのが一般的な状況でございます。そのような状況、並びに今後の医療費あるいは保険料の推移等を考えまして、今回の按分率改正は健保組合の運営にとってさしあたり支障はない、このように判断いたしたわけでございます。
  81. 浜本万三

    ○浜本万三君 組合健保の財政状態がいいという話なんですが、組合健保の財政問題についてちょっと話を進めてみたいと思うんです。六十年度で約三千億黒字が出た。その六十年度に三千億出た黒字の背景はどういうものがありますか。
  82. 下村健

    政府委員(下村健君) 黒字の原因といたしましては、いろいろ考えられるわけですが、健保組合そのものの標準報酬が政府管掌健康保険等に比べると高い、あるいは老人加入率が低いというふうな構造的な原因が一つはあると思います。それからまた、健保組合自身の医療適正化あるいは収支均衡のための経営努力といった点も当然無視できないところでございます。  その辺が背景にあるわけでございますが、特に最近の財政状況の好転につきましては、五十九年の健康保険法改正の影響によりまして、医療給付費がかなり見込みを下回った、それから標準報酬の上限、下限の改定ということによりまして保険料収入がかなり増大したということが、直接的には寄与しているというふうに考えているわけでございます。
  83. 浜本万三

    ○浜本万三君 正確に僕から言いますと、五十九年の法改正で標準報酬の上限を四十七万円から七十一万円に引き上げた。その結果、約八百億円の増収になったということです。第二は、同じく五十九年の法改正によって一割負担が導入された。そのために千七百九十五億円の支出が削減されたということですね。つまり、合わせて二千五百億円は五十九年の法改正の結果出ているわけです。この法改正の性格というものは何かというと、上限を上げるのもサラリーマンの負担でしょう。一割負担もサラリーマンの負担でしょう。つまり、サラリーマンの負担によってそれだけの黒字が出たということなんですよ。  それからもう一つ言いますと、皆さんの厚生省の指導で健保組合は黒字が出るようになっておるわけですよ。例えば五%の予備費をとってもそうでしょう。五%の予備費というのは、健保組合全体からいいますと千四百数十億円、約千五百億円ですよ。つまり、そういうふうにあらかじめ十分ゆとりのある予算を編成するように指導し、それにこたえなければ認可しないんでしょう。そういうことをあなた方がやっておいて、黒字が出るというのは当たり前のことですよ、それは。その影響というものが、六十一年以降ずっと医療費が高騰しない限り続くんですよ。そういう点をはっきりしなければ、サラリーマンの負担でそういう結果が出ておるということをあなた方はっきりしなければ、問題の焦点は出ないんじゃないですか。それを、いつも局長の答弁のように何かわからぬような答弁をしてごまかそうとするから、健保組合の理解が得られぬと思うんですが、それはどうですか、そういう点。
  84. 下村健

    政府委員(下村健君) 数字はただいまちょっと持ち合わせておりませんが、御指摘のように、五十九年改正が非常に現在の財政状況に寄与しているということはそのとおりでございます。  それからまた、健保組合の運営に当たりまして、政府管掌健康保険等に比べるといずれも規模の小さい、医療保険の運営だけを事業としている組織でございますので、それぞれがかなりの程度財政の健全性を重く見て運営をさして指導している、その点も御指摘のとおりであると考えております。
  85. 浜本万三

    ○浜本万三君 ですから、サラリーマンの犠牲でこれだけの黒字が出るようになっておるのだということだけははっきりひとつ認識をした上で、次の質問に入りますよ。  今回の改正によって、健保組合の負担増はどの程度になるんでしょうか。  あわせて、健保組合存立の危機を招くような心配はないかということもお答え願いたいと思います。
  86. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 六十一年度衆議院の修正ベースでございますけれども加入者按分率八〇%、外来八百円で十二月実施ということで、六十一年度の健保組合の負担増は二百七十九億円でございます。六十二年度は、同じく衆議院ベースで試算いたしますと千二百三十億円でございまして、両年度合計で千五百九億円というふうに見込んでおります。  さらに、健保組合の財政運営に支障がないかというお尋ねでございますけれども、私どもは健保組合全体の財政状況から見まして、総じて申し上げれば、全体的に申し上げれば、現在申し上げた負担増程度保険料等を引き上げなくても運営ができるのではないかというふうに考えております。
  87. 浜本万三

    ○浜本万三君 それだけではちょっと全体を理解する説明になりませんので、さらに次のことを説明をしていただきたいと思います。  まず第一は、一人当たりの保険料とそれから一人当たりの拠出金額、その割合、これが第一です。  第二は、年次ごとの平均的料率の変化、この二つをひとつ示してください。
  88. 下村健

    政府委員(下村健君) まず被保険者一人当たりの保険料でございますが、六十一年から六十五年まで年度ごとに逐次申し上げますと、六十一年度が二十六万一千円、六十二年が二十七万一千円、六十三年が二十八万三千円、六十四年が二十九万四千円、六十五年が三十万七千円というふうに見ております。  それから、被保険者一人当たりの拠出金額でございますが、六十一年度が四万円、六十二年が五万四千円、六十三年が六万円、六十四年が六万五千円、六十五年が七万六千円でございます。以上の数字は、一人当たり保険料と申しましたのは、事業主の負担分と本人負担分の合計をした額でございます。  保険料率でございますが、必要保険料率が六十一年度で六九・六、六十二年が七三・四、六十三年が七四・七、六十四年が七五・四、六十五年が七七・七というふうに推計いたしております。したがいまして、現行の保険料率が六十五年の七七・七とほぼ均衡いたしておりますので、六十五年ごろまでは、今後の医療費の推移にもよるわけでございますが、おおむね現行料率の範囲内で運営ができる。これは健保組合総体としての状況を眺めた場合の数字でございます。
  89. 浜本万三

    ○浜本万三君 健保連から出ております資料と若干一人当たりの保険料、拠出金の額が違います。つまり厚生省が見ておる方が一人当たりの保険料収入が約一万円高くて拠出金の支出額が二、三万円安い、こういう材料になっておると思います。  そこで、健保組合から出されたほんの少し違う資料なんでございますが、それで六十一年度の一人当たりの保険料とそれから一人当たりの拠出金は、大体割合を見ますと、一六・一%が六十五年になりますと約三〇%に膨らむわけでございます。六十六年になると三七%になるわけなんであります。つまり、保険料の中に占める拠出金の額というのが非常に多くなるということになるわけなんでございます。平均でそうなんでございますから、保険財政の悪い健保組合は相当拠出金の比率が高くなるということが予想されるわけでございます。つまり、そういう数字から推定をいたしますと、非常に拠出金の負担が健保組合に多くなってくるということが判断できるわけでございますが、その点いかがでしょうか。
  90. 下村健

    政府委員(下村健君) 確かに、健康保険組合連合会の推計でございますと、先生御指摘のような格好になっているわけでございます。これは医療費の一人当たり伸び率が私ども推計より約二%程度高い、それから一方、標準報酬の伸び率の方が私どもより〇・二か三ぐらいではないかと思いますが低目に見ておるというところから、そのような差が生ずるわけでございます。それにしてもかなりの、私どもの状況で見ますと六十五年で約二四・七%の拠出金の負担割合になってくるということでございますが、これは総体として高齢化が進展する結果、それに伴って老人医療の割合が総医療費の中でそれ自体が膨らむわけでございます。健保組合だけが膨らむわけではなくて、国民健康保険その他を通じまして老人医療費の割合が相当に上がってくるというふうな状況を背景にいたしまして、それを公平に負担するというのが今回の状況でございますから、ある程度は公平な負担である限りはそれに耐えていただかなければならないというふうに私ども考えているわけでございます。  組合の方は、全体としては以上のような状況でございますが、個別の組合ごとに当然差が出てくるわけでございまして、それらについては特別の対策が必要であろうというふうに私ども考えております。今回提出をいたしました法律案におきましても、そのための経過措置等も考えているわけでございますが、それらを含めまして個別の組合については対策を講じていく必要がある、こんなふうに考えております。
  91. 浜本万三

    ○浜本万三君 まだそこまで質問をしてはいないんですが、要するに保険料率の問題で言いますと、二つ僕は指摘したいと思いますのは、今あなたがおっしゃった数字とは相当健保組合の数字が違うわけでございます。  例えば、健保連は一定の前提を置いて試算をされておるわけでありますが、それによりますと、平均料率が、六十六年、最後のところを見ますと平均千分の九十五となると、そういう説明をされておるわけです。また六十四年には三分の一近い五百を超える組合が、また一〇〇%になると八百八十、これは自民党の修正案では七百七十ぐらいになるらしいんですが、の組合が最高料率になると説明をしております。政府の方では、先ほど局長が申されましたように、健保組合を一つにして黒字なんだからしたがって負担能力があると、こういう言い方なんですが、これはやっぱり承服できないと思います。  また、六十二年度の按分率が九〇%になりますと八つの県で保険料率が上限に行ってしまう、こういう資料も健保連からは出ておるわけでございますが、こういう判断についてはどうお考えですか。
  92. 下村健

    政府委員(下村健君) 推計の基礎が違いますので、かなり結果においても違った予想が出ているわけでございますが、私どもの場合は六十五年までしか推計いたしておりませんけれども、私ども推計で見ますと、法定給付費のほかに事務費でありますとかその他必要経費を五パーミル程度見込みまして、六十五年度で全体の健康保険組合の約一割程度が上限に達するというふうに推計をいたしております。
  93. 浜本万三

    ○浜本万三君 だから数字が相当違うというふうに思います。  そこで、特に悪い組合の例を申し上げますと、これももう一〇〇%になった時点の方がやっぱり健保組合の財政を見るのにいいと思いますから申し上げますと、北海道のA組合といたしましょう。被保険者数が七千八百二十三名おるところなんですが、そこの組合は六十六年になって一〇〇%の拠出金を出すことになりますと、保険料が千分の百二十二になると言っています。拠出金が十億五千七百万円、料率九十五を超える額が六億五千九百万円、そういう膨大な負担をしなきゃならぬという数字が出ております。そうなってまいりますと、A組合の場合には一人当たりの保険料に対する拠出金の割合が三七・七%、約四〇%近い数字になってくるわけでございます。  それから、ここにいらっしゃる自民党の先生方の出身県もちょっと申し上げますと、秋田県、これは委員長のところですからよく覚えておいていただきたいんですが、委員長のところで、B組合としましょう。被保険者が千五十一人。ここは六十六年になりますと、保険料率が百十七になって、拠出金が一億三千七百万円、九十五を超える拠出金が八千百万円、こういう数字報告をされております。したがって、この組合は一人当たりの保険料と拠出金の割合が三二・二三%になる。これも大変な負担になっております。  それから、東京を例に申し上げますと、東京の場合には七万八千人の組合であります。この組合が、六十六年になると料率が百十一、拠出金が約百億、九十五を超える拠出金の額が五十一億という膨大な数字になっておるわけでございます。その場合には保険料と拠出金の割合が二八%。  それから、一番悪いのは熊本でございますが、五千六百人の被保険者を擁する組合。ここの場合には料率が百二十一、それから九億円の拠出金、料率九十五を超える額が四億九千万、保険料と拠出金の割合が約四〇%という数字になっておるわけでございます。  そういうたくさんの拠出金を負担せざるを得ないということになってまいりますと組合は崩壊すると、こうなります。組合が崩壊するということは、これは大変なことだと思います。例えば、七万八千人の組合が崩壊すれば、社会保険事務所の一つや二つは要るわけでありますからこれは大変なことになると思います。そういうふうに保険組合は財政が困難になって崩壊するという事実もやっぱり保険組合の資料から出ているわけなんでありますから、これを我々は無視するわけにいかないと思います。局長、どうされますか。
  94. 下村健

    政府委員(下村健君) 確かに、個々の組合を取り上げてまいりますと、地域的な事情等いろいろな背景もありまして、現在既にかなり財政が窮迫している組合もあるわけでございますので、今回の改正によりましてさらに財政面でいろいろ問題が生じてくるという組合は出てくることは予想されるわけでございます。それらにつきましては、私どもとしては、制度全体としては今回の形で進んでいくといたしまして、個々の組合についての個別的な対策は必要であろうというふうに考えているわけでございますが、そういう個別の組合に対する対策によりまして、何とか安定的にそれぞれの組合が存立していけるような努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  95. 浜本万三

    ○浜本万三君 ちょっとその個別の対策の援助政策、どういうことがあるのか具体的に示してください。
  96. 下村健

    政府委員(下村健君) 一つは、今回の按分率の変更によりまして負担が急増する組合については、その急増を緩和するための経過措置をとることにいたしております。これが第一点でございます。  第二点としては、現在も財政窮迫組合等に対しては国の助成措置を講じておるわけでございますが、それを六十二年度予算におきまして相当程度増額するということによりまして、きめの細かい対策を講じてまいりたいと考えております。これが第二でございます。  それから第三は、現在も健康保険組合連合会におきまして、共同事業という形で健康保険組合相互間の相互援助のようなことを行っておるわけでございますが、その共同事業のあり方について、健康保険組合側とさらにそれが効率的に運用できるような対策を相談してまいりたいと、このように考えておるわけでございます。
  97. 浜本万三

    ○浜本万三君 それで、一つ一つ申しますが、今、法五十五条のやつを一番最初言われたんですね、あれは。これは国保との関係がありますから、私はこれはできるだけ触れぬようにしておきたいと思います、ほかの方が触れると思いますので。  もう一つは、国の助成措置の問題ですが、たしか私の記憶では、六十一年度の予算では十三億、六十二年は頑張ると、こうおっしゃるんですが、今の大蔵省の渋い状態から見ると、これが三けたになるようなことは恐らくないのじゃないかと思うんですが、どこまで大体予算獲得ができるんですか。これは見通しはどうですか。
  98. 下村健

    政府委員(下村健君) 六十二年度予算につきましては、これは全体的な予算編成の前提条件もまだ私どもに示されていない状況でございまして確定的なことはまだ申せない状況でございますが、老人保健法成立後の状況を十分検討いたしまして、万全の措置を講じたいというふうに考えております。
  99. 浜本万三

    ○浜本万三君 だから、答弁がそこまでになるとなお不安になるんですね。結局どこに来るかというと、保険組合の共同事業に入るんですよ。今は、もう御承知のように、保健組合の共同事業というのは千分の一・二取っておるわけですね。ですから、大体四百八十億円ぐらい財政の窮迫した組合に補てんをしておるわけですよ。その健保組合の共同事業にまた足をかけられるわけですね。ですから、健保組合の理解が得られないとこういう問題はできないと思うんですよ、私は。先に法律をつくって、法律ができたんだから健保組合理解せいと、こういう論法が今のやり方でしょう。それでは健保組合は私は理解しないと思います。どうですか、その点は。
  100. 下村健

    政府委員(下村健君) 確かに、現在の状況で申しますと、老人保健法按分率自体について健康保険組合には反対意見が強いというふうな状況もございまして、共同事業について具体的な中身を今のところですぐに詰めてまいるということもなかなか難しいかと思いますが、法案成立後に速やかに具体的な相談に入りたいというふうに考えております。
  101. 浜本万三

    ○浜本万三君 法案が成立すれば監督官庁だから押し込んでしまうという、そういう従来の考え方なんですが、それは非常にまずいと私は思うわけですよ。そうすると、健保組合は仕方がないから厚生省の言うとおりになりましょうと、これが今までのやり方だし今回もその方式をとろうとされておるんですが、そういうことは僕はやめてもらいたいと思うんですよ。いけないと思いますよ。厳重にこれは反省してもらいたいと思います。  話題を変えますが、そういうふうに組合健保の自主的な運営ができないということになってまいりますと、他から援助をもらわなきゃならぬ、他から援助を仰ぐのも何となく困ると、こういう組合は結局解散の道を選ぶしかないと思います。それに対して厚生省はどうされるわけですか。解散をすぐ許すわけですか。それとも今申されましたように、国の援助をどんどん出して解散をしないでくれと、こういうふうに説得をされるわけですか。その対策、措置について伺いましょう。
  102. 下村健

    政府委員(下村健君) 確かに、自力で存立することが難しい組合をいつまでも置いておくということも問題であろうかと思いますが、実際問題といたしましては、組合側でも何とか努力をしていきたいというふうなところが多いわけでございます。そういうこともありまして、私どもとしてはどうしてもやむを得ないというものについては従来も解散を認めた例がございますが、できるだけ組合の関係者の意向も尊重し、また一時的な事情によって組合の存立が困難というものについては適切な援助を与えるというふうな形で、できるだけ組合解散といった事態は避けてまいりたいというのが従来からの基本方針でございまして、今後もそのような考え方で対処をしてまいりたいと思っております。
  103. 浜本万三

    ○浜本万三君 答弁は非常に不満なんですが、時間が過ぎますから次に移らせていただきたいと思います。  国保の経営努力についてお尋ねをしようと思っておりました。被用者保険から拠出する以上は、その拠出を受ける国保も経営努力をしてもらわなきゃならぬと、こう思っておりますが、これは時間がないので質問をやめまして、今言われた公平論の問題について少し質問をしてみたいと思います。  加入者按分率が一〇〇となると、健康保険組合は平均で保険者負担額の二・四倍となるということが試算をされております。また、最低の一%の組合は、全国加入率六・九だとすれば六・九倍になりますね。現行の三・六倍になるわけであります。一方、国保の方は平均で保険者負担額の五五%程度の拠出金、老人加入率二〇%の組合では、現行の七〇%から三五%に引き下がるのではないかという数字が出ております。そういうことになりますと、国保側はレセプトの審査を初め医療適正化対策は一層ルーズになってくるんではないか。公平論の問題で私が言えばそういうことになるんですが、いかがですか、その点。
  104. 下村健

    政府委員(下村健君) 確かに、今回の改正老人医療費負担公平化を図るということでございますので、老人の加入割合が高い国民健康保険負担が大幅に軽減されることになる。おっしゃったような点は事実でございます。ただし、加入者按分率が一〇〇%になりましても、各制度の経営努力というものはそれぞれの老人医療費をもとにして拠出金を算定するというふうな仕組みもございまして、負担すべき拠出金の額に反映されるわけでございますので、それぞれの保険者努力が拠出金に反映するという形で、それに対する仕組みは一応考えておるわけでございます。しかし、一方において、負担が軽くなったところがそのために努力を怠るということがあってはなりませんので、国保については歳入面それから支出面、それぞれ両面にわたる適正化努力を大いに強化してもらおうというふうに考えているわけでございます。
  105. 浜本万三

    ○浜本万三君 ちょっとそれ、公平論ではなかなか問題があるんですがね。  もう一つ公平論の問題について申しますと、政府の方では各制度が千人で六十九人のお年寄りを抱えることになるから公平だと、こういう論理なんですね。そういう説明があるんですが、ところが地域差による高低、疾病発生率による高低、こうした差というものが全く助成されていないということ。また、同じ加入率で同じ医療費のグループでも、平均標準報酬が低いグループは高い率の負担をしなければならないということ。これは所得再配分の機能に反するということになるわけですが、そういう点は公平論から見てどうですか。
  106. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 現行の老健法の加入者按分率考え方でございますけれども老人の加入率の格差のみを調整しようという考え方でございます。老健法創設のときにいろいろ検討はいたしたわけでございますけれども医療費についての格差是正、あるいは医療費についてのでこぼこをならすとか、それからまた所得についての要素を入れる、つまり各保険者財政力の影響を入れる、こういうことについては、いろいろ検討はしたようでございますけれども医療費についてはいろいろな要素が考えられるということで、例えば地域格差では経営努力とか医療費の適正化努力とか、そういう要素もある。所得については、制度を横断的に仕組む以上はやはり俗にいうトーゴーサン、クロヨンの問題等の所得の捕捉の問題もこれありということで、やはり医療費の格差なり所得に着目した調整というのは合意が得られにくいのではないかということで、老人保健制度老人の加入率の格差のみに着目した調整という制度になっているわけでございます。  そういう意味からいって、御指摘のように医療費の地域格差とかあるいは発生率、あるいは所得の標準報酬の多寡等による調整というものはなされていないわけでございますけれども、これはやはりそういう要素まで調整の対象にするということは、横断的な制度をとる以上、非常に困難であるということで現行の制度ができているということで、ぜひこれは御理解をいただきたいと思います。
  107. 浜本万三

    ○浜本万三君 だから、公平論も都合のいいところの公平論であって、全般的な、普遍的な公平論ではないということなんですよ。  最後の詰めの方に入りますが、今回の加入者按分率の本則一〇〇%は、発足時の老人保健制度医療費財源の拠出の理念を根幹から否定するものになると思います。被用者保険の財政基盤を根本から崩壊させ、なし崩し的に医療保険の統合一本化を目的とするものであると言わざるを得ないと思います。しかも、それは将来の一元化の際の財政調整の先取りとも言うべきやり方であります。財政調整方式のみ先行させることは全く不当なことだと言えます。しかも、こういった完全調整を被用者保険側の十分な理解と納得を得ずして強行することは、将来に重大な禍根を残すことになると思います。  そこで、私は次のような考え方を示して、厚生省のお考えを伺いたいと思います。つまり、健保組合からいえば拠出金のウエートが高まって組合財政が悪化して、しかも組合健保は自主性を失って単なる拠出金の徴収機関の役割を担う、こういう不安があるわけでございます。そうなると、先ほど申したように、組合をつくっておっていいものか悪いものかわからないような状態になっております。  したがって、もうここら辺でわかりやすい老人医療費の負担方法を考えたらどうかということなんですよ。もうわけのわからぬようなやり方で他人の懐を当てにするようなやり方でなしに、老人医療費負担方式を別に考えて法制化したらどうかということを私は思うわけでございます。特定財源を老人医療費に導入することを検討する気はありませんか。
  108. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人医療費の財源をどういうふうな形で国民負担を願うかという問題でございます。  現在の老人保健制度は、御案内のように、各医療保険制度の上に乗っかる形で、いわば各保険者の共同事業という形で実施しているわけでございまして、そういう意味からいうと、その負担のあり方というものは、やはり私どもは現行の形の公費と各保険者の拠出金による負担というのが最も現実的であり、かつふさわしい方式ではないかと考えておるわけでございまして、さらに、これを例えば特定財源等に求めるということも考え方一つではありましょうけれども、やはり各保険者の経営努力という点も非常に重要な要素かと思います。  拠出金制というのは、再三御説明いたしておりますように、各保険者医療費をベースに算定する仕掛けをとっておるわけでございます。各保険者医療適正化、健康管理等の努力自分の拠出金に反映されていくという仕組みにもなっておるわけでございますから、私どもとしては、やはり現行の費用負担の方式あるいは財源調達の方式というものが最も現実的であり、またふさわしい方式ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  109. 浜本万三

    ○浜本万三君 最後にもう一つ私の考え方を申し上げるんですが、按分率を一〇〇%にするということは、先ほど申したような健保組合の財政状況、また国会での合意内容、将来の老人医療費負担のあり方等から申しまして、どうしても私は了承することはできません。しかし、現行の厚生省考え方で言うならば、せめて一〇〇%にならないような歯どめはかける必要があると思うんです。その方法は、最高料率千分の九十五を徴収するような組合が一定割合以上になった場合には見直すというような措置を講じまして、健康保険組合の不安を解消し、健康保険組合の健全な運営に力をかしてもらいたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  110. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 何回も申し上げて恐縮でございますけれども老人医療費負担老人加入割合が高い保険者ほど負担が重くなっておりますので、加入者按分率を一〇〇に引き上げることによって、どの保険者も同じ割合で老人を抱えるようにすることが、老人医療費負担のあり方として最も公平ではないかというふうに思っております。  しかし、健康保険組合の運営に支障がくるような、また不安をもたらすようなことがあってはならないという御指摘でございます。先ほど来、保険局長が答弁をいたしましたように、三点から成る救済策といいましょうか、援助策をもちまして、健康保険組合が円滑な運営のできるように最善を尽くしてまいりたいと考えております。  ただいま御提言のような問題につきましては、それなりの御見識とは思いますが、私どもといたしましては、何にも増して全力を挙げて健保組合の運営が円滑にいけるように努力をいたしてまいるということといたしたいと思います。
  111. 浜本万三

    ○浜本万三君 午前の質問は終わります。
  112. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ─────・─────    午後一時三十三分開会
  113. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、老人保健法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  114. 浜本万三

    ○浜本万三君 午前中、一部負担按分率の問題について質問さしていただきましたんですが、午後はまず国民健康保険滞納者の制裁措置の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に伺うわけですが、対象範囲はどのようにお考えでしょうか。また、その対象範囲に入る人数はどの程度をお考えでございましょうか。
  115. 下村健

    政府委員(下村健君) 今回の措置は、国保滞納者につきましての悪質なものを対象にしてということでございます。悪質の内容がどんなものかということでございますが、失業でありますとか、その他明確な理由があって滞納ということではなくて、負担能力がありながら保険料を故意に支払わない、あるいは支払いを回避しようとするというふうなものが悪質というふうに考えているわけでございます。したがって、その数がどのぐらいになるかということは、実は私どもとしては明確な推計はちょっと困難ではないかと考えております。
  116. 浜本万三

    ○浜本万三君 大体国保収納率が五十九年で九三・六%、そういう数字報告されておるわけですが、こういう措置をとって九三・六%という収納率がどの程度改善されるとお考えですか。
  117. 下村健

    政府委員(下村健君) 御指摘のように、国保保険料収納率でございますが、五十九年度の数字で見ますと約一千四十三億円、率にいたしまして九三・六%ということになっているわけでございます。ただし、五十九年度の例について見ますと、その千四十三億円の約半分は翌年度におくれて収納されているというような格好になっております。したがって、私どもとしては少なくともその半数についてはどのぐらいというふうに考えるかという点はございますが、ある程度早く納めてもらうこともできるんではなかろうかというふうなことを考えているわけでございます。  収納率向上の全般的な対策といたしましては、各市町村ごとに計画を立てて、休日とか夜間訪問をやるというふうな収納努力をやらせるというふうなこともやっているわけでございまして、今回のこの措置ということだけではなくて全般的な収納率向上対策をさらに強化してまいりたいと考えております。
  118. 浜本万三

    ○浜本万三君 この前、六十一年十月三十日の衆議院における社会労働委員会ではもうちょっと具体的な話をされておるんですが、そのぐらいの話はできないんでしょうかね。
  119. 下村健

    政府委員(下村健君) 収納率向上対策につきましては、従来から収納率向上三カ年程度の計画をつくれということで、三カ年計画をつくらせるというふうなことで推進をしているわけでございます。その中身といたしましては、ただいま申し上げました休日あるいは夜間訪問等の格別の収納努力を行っている市町村につきまして特別の助成措置を講ずるということをやっております。  また一方で、収納率が一定水準以下の市町村につきましては調整交付金の面で減額措置を講ずるということで、収納率が高い市町村が優遇される措置をとるという形にいたしまして収納率の向上を促進いたしております。それに加えまして、今回の措置をあわせまして保険料収納率の向上策を推進してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  120. 浜本万三

    ○浜本万三君 国保財政をよくするためには、健保組合や政管のように収納率をよくいたしまして、現在のような一千億も累積が起きないように努力をすることが必要だと思います。国保がそういう努力をなさらないと、結局拠出する側の被用者保険の方は大変不信感を持つというふうに思います。  もう一つ不信感を持つ中でよく言われることなんですが、市町村の方で現在の標準報酬を引き下げておるというところはございませんか。
  121. 下村健

    政府委員(下村健君) 本年の八月末現在の調査では、国民健康保険料の上限額を三十七万円と、これが法定になっているわけでございますが、これに設定いたしております市町村が二千九百二十四ということで、全体の九〇%になっております。したがって、大多数の市町村におきましては上限は限度額まで引き上げられているわけでございますが、それ以外は三十七万円までは行っていないわけでございます。  ちなみに三十五万円以上という市町村数をとりますと三千百七十三ということで、全体の九七%まではおおむね上限に近いところに行っているわけでございます。それ以外の市町村は残念ながらそれ以下ということで、高額所得者の負担増ということに対しての配慮もあるかと考えられるわけでございますが、厚生省としては、被保険者間の負担の公平という観点から法定上限額に合わせることが望ましいと考えておりまして、できるだけこれにそろえるように指導をいたしているところでございます。
  122. 浜本万三

    ○浜本万三君 そういうふうに、やはり保険料の徴収につきましても、いわゆる厚生省が指導しておる基準の納入をお願いすることも一つの方策だろうというふうに思います。またそのほか、健保組合に対しては医療費通知制度の奨励でありますとかレセプトの点検を厳しくやるとか、こういう経営努力もさらに要請をしていただく必要がある、かように思うわけでございます。しかし同時に忘れてならないのは、政府の方も、国庫補助をとにかく削減することだけでなしに、現在の国二割、地方自治体それぞれ〇・五ずつということになっておるようでございますが、これも増額をするような方向で保険財政の健全化を図っていくように、これは希望いたしたいと思っております。  それから、もし滞納者の制裁措置をやるとどうなるかということを考えてみますと、若干心配があります。二つあります。その一つは、国民保険制度趣旨に反しないだろうかという問題が起きるわけです。それから第二は、国民医療の機会を奪われることにならないだろうか、こういう心配がございます。したがいまして、悪質な滞納者の範囲につきましては相当厳しく指導をしてもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  123. 下村健

    政府委員(下村健君) 今回の措置は、その対象をただいま申し上げましたように合理的な理由がなくて故意に保険料を滞納している悪質滞納者に限定してやるということが趣旨でございますので、この制度ができましたならば厳正な運用に十分配慮をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  124. 浜本万三

    ○浜本万三君 先ほど申したように、二つの心配がないように指導してもらえるように特に希望しておきたいと思います。  それから次は、中間施設の問題について質問をいたしたいと思います。  この中間施設の問題でございますが、私も、寝たきり老人がだんだんふえていくという老齢化社会の最近の現象、それから就業人口を見ましても、今まで大体寝たきり老人介護は女性ないしはお嫁さんがなさっておられたわけですけれども、だんだん就職の機会がそういう方々も多くなってきたという状況がございますので、よくわからないけれども、何か中間的な介護、看護、リハビリの機会を与えるような施設が必要なんではないか、こういう気はしておるわけであります。そういう気持ちを持って質問をしたいと思うわけであります。  ただ、九日、本日と、あるいはまた参考人などの御意見を伺っておりまして、厚生省考え方がもうちょっと何かしっくりしないという印象を受けるわけでございます。例えば私の理解では、この中間施設というのは、厚生省の言われるように医療と福祉の中間施設というふうにとらえますと、非常に混乱をしたことになると思います。それはそういう法律はないわけでございますから。  したがって私は、この問題のとらえ方としては、一つの流れとしては、病院から自宅へという生活ですね、福祉のラインがある。これは恐らく福祉関係法によって措置されるというふうに思っております。それからもう一つのラインは、病院特養の診療所という、医療行為を行う医療のラインがあるというふうに思います。  それで医療のラインを考えてみますと、特養の診療所よりは医療サービスを行う能力が大きいわけでございますから、当然、診療所が医療法に言う医療施設ならば、中間施設と言われておるこの施設医療法の適用を受けなきゃいかないんじゃないかという先般来の同僚議員のお話、これは私もわかるような気がするわけであります。ところが厚生省の方はどうしてもそういう点をはっきりなさらない。何かやっぱり奥に秘められたものがあるんじゃないか、こういう気がするわけなんですが、私の印象に対しましてはどういう御感想をお持ちですか。
  125. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 中間施設の性格につきまして、私どもは、新しいタイプの中間施設でありまして、医療法に言う病院、診療所でもなければ、あるいは社会福祉立法に言う社会福祉施設でもない、新しい文字どおり中間施設創設させていただきたい、こういうふうにお願いをいたしておるわけであります。  裏に何かあるんではないかというようなお尋ねでございますけれども、私どもは、ここの施設医療も行われるし生活お世話も行われるということから法律体系を仕組んでおるわけでございますけれども、特に医療につきましては医療法を初めとして他の関連法規があるわけでございまして、この辺との調整を十分配慮しながら今回の制度を御提案申し上げているわけであります。したがいまして、医療法の適用は受けないわけでございます。病院でもなければ診療所でもないわけでございますけれども医療がその中で行われるのは事実でございますから、したがって医療法の規定との調整をとりながら、例えば営利目的の禁止だとかいろんな管理者の規定その他、医療法の規定とのそご、矛盾を来さないように制度を設計しながらこの場で医療が行われるという道を今回選択さしていただいたということであります。  特養は、特養全体が医療できる場ではございませんで、したがって技術的に、特養の中に医務室を置きまして、そこで医療が行われることがあり得べしということで、診療所という医療法の規定を持ってきているにすぎないと言ってはおかしいんでしょうが、そういうものでございまして、学校の中に医務室を置き、これも診療所になっているところがあると思いますけれども、そういう形のものと、施設全体が医療生活サービスあわせ持つ機能をやるということで、この施設全体が医療が行われる場として制度を提案をしているということでございますので、大変複雑な制度にはなっておるかと思いますけれども、別に他意はないということで御理解をいただきたいと思います。
  126. 浜本万三

    ○浜本万三君 なかなか苦しい答弁なんですね。だれが考えましても、医療行為を行う能力が特養の診療所よりも高いわけでしょう、中間施設というのは。高い方が医療法医療機関としての適用を受けずに低い方が受けるというのは、これは一年生でもわかるんじゃないですか。そういう点を僕は申しておるわけなんですよ。ですから部長の答弁もなかなか苦しい。だから何か裏があるんではないかということをお尋ねしておるんですよ。どうですか、それは。
  127. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 今、特養の中の一部分である診療所と、それから中間施設である老人保健施設の比較でお話がございました。  先ほど来老人保健部長が申し上げておりますように、特別養護老人ホームのごく一部が診療所になっておる。その一部の診療所というものそれだけを取り上げますとこれは一〇〇%医療でございまして、医療以外のものは何もないというのが特養の中の一部である診療所でございます。それに対しまして中間施設でございます老人保健施設は、施設全体がどうであるか。施設全体について言えば、これは医療の部分とそれから生活サービスの部分が混在をしておる。そういう意味で、高い低いというお話がございましたが、診療所は一〇〇%医療である、中間施設は何%か、これから議論があろうと思いますが、いずれにしろ部分的に医療以外の生活サービスが入っておる。したがって、今直ちに医療法に取り込むのは難しいということで整理をいたしておるわけでございます。
  128. 浜本万三

    ○浜本万三君 整理をされたのはわかるんですが、やっぱり答弁としては不合格ですね。僕はそう思うんです。だから裏にあるんじゃないかと。  私そのことをちょっと申しますけれども、私が考えてみますと、二つのことを厚生省はねらっておられるんじゃないかと思っておるんですよ。一つは、亡くなりました吉村さんが、病床の数が多い、六十万床ぐらい削減せにゃいかぬと、こういうことをかねて言っておられたのを私覚えておるわけですよ。そこで、病院から自宅へというコースの中で、病床減らしのための施設として考えておるんではないか、こういう疑いが一つ。もう一つの疑いは、医療費が現在の出来高払いではもう高くなってしようがない、そこでどこか定額制を導入いたしたい、そのためにこういう制度をお考えになった。こういう二つの想像ができるんですが、それは肯定されますか否定されますか、どうですか。
  129. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 中間施設につきましては、病床減らしという面があるのかというお尋ねでございますけれども、私どもは、一つには、現在いわゆる社会的入院という形で、お年寄り治療が終わったにもかかわらずまだ入院をされている、そのことが反面老人医療費を押し上げているという面があるわけでございます。  その老人の方々はどういうニーズなりどういう施設サービスがふさわしいかと考えてみまするに、やはり生活サービスも兼ね備えながら医療ケアをやる施設がないために入院という形で病院におられるという面があるということでございまして、そういう新しい老人の多様なニーズにこたえまして、そういう生活の世話と医療ケアができる施設を提供することによって社会的入院を是正するとともに、お年寄りにもふさわしいサービスができる施設を用意することが必要である、こういう観点から制度をお願いしているわけであります。  なお、ただ、確かに日本の病床は世界に比較しまして多いわけでございます。直接的にこの削減をねらったわけではございませんけれども、やはりこれから老人保健施設をどう整備していくかということを考えまするに、関係審議会からも御指摘をいただいておりますけれども医療資源なり社会福祉資源の有効活用ということで、そういう別途転換という道も大いに考えなさいということでございまして、そういう意味では御指摘のような面が接点として出てくるかなというふうに考えております。  それから定額でございますけれども、これは私どもとしては、ここで行われます施設療養サービスというものが、看護なり介護なりその他の必要なサービスを見ても、非常に定型的な、症状安定期の老人に対するサービスですから、その費用の支払いは定額の形でお支払いするのが最もふさわしい費用の支払いではないかということで、これも御提案を申し上げている次第でございます。
  130. 浜本万三

    ○浜本万三君 大体肯定的な御発言のように承りました。  それではさらにその答えを受けまして質問をさせていただきたいと思いますのは、もし病床減らしだということになりますとちょっと心配があるわけですね。どういう心配があるかというと、俗に言う安かろう悪かろうということで、うば捨て山のような施設になるおそれはないかということです。それからもう一つは、一部負担療養補助費という形で入れるけれども、ところが各界の御意見があって、その他の疾病に対してはどういう医療サービスを行うか、弾力的に行ってくれ、こうなってまいりますと、定額制にして一応安くしたけれどもプラスアルファの出来高払い医療サービスというものがかさみまして、結局医療費を抑えるという結果にはならないんじゃないか。結局もとのもくあみになるのじゃないか。  こういう二つの疑問があるんですけれども、何かそうじゃないという御意見があれば例を挙げてひとつ説明してもらいたいと思います。
  131. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設がうば捨て山的になるんではなかろうか、安かろう悪かろうというお話でございますけれども、私どもは、この費用の支払いは定額の施設療養費ということでお支払いをするわけでございますが、このサービスの質をどういうふうに確保していくかというのは、反面非常に重要なことだと考えております。  そのために私どもとしては、一つは十分な人員配置を確保しなきゃならない。お医者さん、看護婦さんあるいは介護をしていただく人その他、やはりその人員の配置基準をきっちり決めまして、この施設の要員というものをきっちり確保させていくことが一つ医療その他のサービスの質の低下につながらない方途ではないかということで、そういう運営の基準をぜひ定めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  そのほか、施設運営全般につきまして、寝たきり老人にいろんなサービスが提供されるわけでございますけれども寝たきり老人にふさわしいサービスが提供されるような運営基準をぜひこれもつくりまして、この施設が明るくて、できるだけ病院からここに入っていただく、そして家庭復帰をなさる、あるいは短期に御利用いただく、あるいは在宅を支援いたすということで、明るいイメージの施設になるようにこれからも検討を重ね、実施後は必要な指導を重ねていきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、定額払いとの関係で、突発的な医療がこの施設で起こった場合にどうするかということでございまして、これも再三御指摘のように、答弁の形でお答えをいたしておるわけでありますけれども、突発的な医療が起きました場合には、まず他の病院に転送するとかあるいは往診を受ける形になるわけでありますけれども、そうしてもなおその施設のお医者さんが緊急に手当てを必要とされる場合が生ずることはもう当然だと思っておるわけであります。この場合の費用の支払いをやはり定額の形での一律は無理ではないかという御指摘等々がございまして、やはり定額の中でも加算方式その他を工夫いたしまして何らかの別途の評価ができないものかということの検討をするという旨をお答えしているわけでございます。  そういう制度を組み入れましても、緊急の対応を必要とする事態に対する費用の支払い方式でございますから、これが再三起こることではございませんので、御心配いただいたような医療費の高騰にこのことがつながっていくというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  132. 浜本万三

    ○浜本万三君 それからもう一つ心配な点がありますのは、最近厚生省も予算がないから特養老人ホームはできるだけ補助金は出さぬようにしておる、そういううわさがあるわけですよ。厚生大臣はそうじゃないと思うんですが、これは特養をふやさないというために行う施設ではございませんでしょうね。特養はやはり依然として増加しますか。
  133. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 人口の老齢化が進みまして寝たきり老人も当然ふえると思います。それに伴いまして特別養護老人ホーム整備もさらに進めなきゃならないというふうに考えております。  私ども、この数年来を見てみますと、大変厳しい財政事情のもとではございましたけれども、毎年度平均しまして大体百二十カ所、定員八千名程度整備を進めてまいりました。今後もこのペースは従来ペースを落とさないように整備を進めていくつもりでございます。その結果、昭和七十五年の目標年度には現在の倍程度の定員を確保したい、このような計画を持っているわけでございます。
  134. 浜本万三

    ○浜本万三君 大臣、ひとつその点についての決意のほどを伺います。
  135. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま社会局長から答弁を申し上げましたように、今後の寝たきりのお年寄り介護を要するお年寄りの収容施設として老人病院やまた老人保健施設、そして特別養護老人ホーム、こういうものを一体的に整備いたしまして、三本柱として充実整備をいたしてまいる覚悟でございます。
  136. 浜本万三

    ○浜本万三君 次の問題に移るんですが、今回の厚生省法案の出し方を見ておりますと、多少私ども気にくわぬ点がございます。それは、まず法案を提案して、中身はこれから審議するわけですから余りまだしっかりしていないのに、とにかく法案を提案して成立させてください、設置基準であるとか運営細則については後で決めてやります、こういうことなんですね。こういうやり方は国会の審議権を侵害することにならぬかと私はかねてから思っているわけなんでございます。したがって、今後こういうふうな法律の提案については検討をしていただきたい、かように思います。  そこで申し上げるんですが、この法案の審議の状態を見ておりますと、中身がこれから具体的に決められるということ、同時にまた、この中間施設をめぐりましてさまざまな賛成反対意見があるわけですね。そういう状態中間施設でございますので、私は重要な時点時点で国会の方に報告をしてもらいたい、かように思うわけです。特に希望といたしましては、いろんなケースでモデル実施をやりまして、その結果が大体つかまれた時点で国会、まあ社会労働委員会にその内容報告していただきまして、社会労働委員会ではしっかり審議をする、そして立派なものを全体の合意の中で実施するということにしなければならない、かように思いますが、いかがでしょうか。
  137. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老人保健施設につきましては、私ども基本考え方を申し上げさせていただき、これについていろいろと御議論をいただいておるところでございます。こういった御議論を十分参考にさせていただき、またこの法律が成立をいたしましたならばいろいろな角度からのモデル事業実施し、その結果を踏まえ、そして老人保健審議会において細則等についていろいろお決めをいただく、こういうことでできるだけよりよきものをつくって多くの皆様方にこたえていきたいというふうに考えております。  そういう時点におきまして、国会の御要請がございますればこれについて十分御報告をいたすということといたしたいと思います。
  138. 浜本万三

    ○浜本万三君 国会報告は快く大臣が御了承いただいたので、これ以上言うのはどうかと思いますけれども、しかし現在の時点では国民の合意が形成されておりませんので、法案の附則でも結構ですから、モデル実施の状況等を勘案して必要な措置を講ずるんだというような規定も挿入していただきまして、まだこれから立派なものを完成するために国会や政府はいろいろ検討して努力するんだな、こういう印象を皆さんに与えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  139. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 修正をして法案の中に附則ででも盛り込んだらという御意見でございますが、私どもは原案提出をいたしておりますので、原案がいろいろな角度から一番いいと信じておるところでございます。しかしながら、国会の御審議でございますから、各党間のいろいろなお話し合いによってそういった修正がなされれば、もちろんそれに従うことは当然のことであろうと思っております。
  140. 浜本万三

    ○浜本万三君 ひとつぜひ慎重の上にも慎重に行うために御検討をいただきたいと思います。  それから、前回の委員会でも御議論がございましたが、厚生省在宅医療サービス充実させるんだ、こういう御答弁がございます。私ども在宅医療サービスはより強化しなきゃならぬというふうに思っておりますが、その点どのような方針をお持ちでしょうか。
  141. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人の診療報酬につきましては、老健法が成立するときに、老人の特性にふさわしい診療報酬をつくるようにということで御審議をいただき、そして附帯決議にもその旨が盛り込まれたわけでございます。その私ども老人の特性にふさわしい診療報酬という考え方は、入院治療よりもお年寄り家庭で、在宅療養されるというのを促進する方向、あるいは薬とか検査よりも相談とか指導を充実する診療報酬の方向、そういうものを重視した診療報酬が中医協の御意見を承りながら決められておるわけでございますが、それを先般の改定ではさらに一層改善をした形に今なっておるというふうに理解をいたしております。
  142. 浜本万三

    ○浜本万三君 それから、この施設に入所した者は、五万円の生活費といいましょうか負担金といいましょうか、徴収することになっております。五万円程度というんですか、徴収することになっております。この問題について若干心配があるので、心配な点を申し上げますから、それに対してどのような対応をなさるか、お答えをいただきたいと思います。  まず第一に、五万円程度内容老人保健審議会の専門委員会で協議されるということでございますが、例えば食事代はどの程度になる、理美容はどの程度になる、その他の費用はどの程度になるというような内容をまず明らかにしてもらいたい。それから第二は、たとえ程度という標準金額を決めるにいたしましても、入所者の過分の負担にならないような配慮をしてもらいたい、これが第二。それから第三は、入所する方々の中にはいわゆる低所得者の方もいらっしゃると思います。それは恐らく福祉関連の法令で措置されるんではないかと思いますが、その内容について、三つお伺いしたいと思います。
  143. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設の利用者負担の点でございますけれども、まず老人保健審議会で当然御審議を願おうと思っておりますが、具体的な金額というよりも、私どもは、当該老人保健施設の利用者負担についてのガイドラインと申しますか、指導する基準をそこに諮ってつくってまいりたいというのが一つでございます。そういう意味から老人保健審議会で御議論を賜りたいと思っております。  それから五万円の内訳を示せということでございます。本当に私どもは粗い試算をやっておるわけでございますけれども、食費が一応三万四千円程度と見ておるわけでございますし、おむつ代については、必要な人と必要でない人がいるわけでありますが、平均すると九千円程度。それから諸雑費、これは理美容代とかレクリエーションの経費とか、電気製品の使用料等とか、その他石けん、ちり紙のたぐいの日用品費等も含めまして諸雑費として七千円ぐらい。これが現時点での私どもの利用者負担の経費を、現時点における相場と言ってはあれですが、いろんな面から総合的に足し算をしていきますとこの程度になるということでございまして、非常に粗っぽい積み上げを現時点ではやって考え方としてお示しをさしていただいているということでございます。  それから低所得者の老人が利用する場合の関連でございます。この施設の利用料は、先ほど申しましたように在宅でも通常必要な食事等に相当する額でございます。いわば家におられてもかかるそういう生活費をこの施設に入られても引き続き出していただこうという考え方でございますから、先ほど申しました経費の必要額でございますからその程度の金額はどの世帯でも御負担を願えるんではないか。ちなみに、高齢者世帯の一人当たりの消費支出額、五十九年度の家計調査で調べますと、今高齢者世帯の消費支出が七万円程度になっておるわけであります。平均すると七万円程度家計でもお年寄りが一人当たり消費支出をされているということでございますから、この施設に入った場合の五万円程度は利用者負担ということでお願いできるんではないかという考え方でございます。  さらに、どうしてもこれが払えないという方は生活保護の受給者になるわけでございますが、利用者負担については、生活保護の受給者の場合には生活扶助で見る形でこの施設が利用できるということでございます。なお、社会福祉法人が社会福祉事業として行う老人保健施設につきましては、無料または低額で運営する仕組みも今回の改正法の中に盛り込んで提案をしているわけでございますから、その辺を総合的に活用しながら、低所得者に対しては私ども十分念頭に置きながら運営をいたしてまいりたいと思っております。
  144. 浜本万三

    ○浜本万三君 繰めくくりの意味で最後に私の意見を申し述べるんですが、先ほど申し上げましたように、病床減らし、また医療費に定額制を導入したいというお考えがあるとすれば、中間施設のようなそういう施設の設置にまつわる議論でなしに、そのことを国民の前に堂々と厚生省は出してもらいたいと思うんですよ。  医療費を削減する方法はどうするのか、病床が多いんなら病床をどういうふうにして削減するのかということを堂々と出してもらいたい。そして国民全体が医療費の負担をできるだけ抑えていこうという合意を形成せにゃいかぬと思うんですよ。何か本当のことを言わずに別な方から物事を提案してその目的を達成しようというやり方はよくないと思いますよ。そういう方向で堂々とやっぱり国民の前で議論をする方向をこれからとってもらいたいと思うんです。大臣、いかがですか。
  145. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今後の医療費の適正化というお話と存じますが、これまでのように、医療費の審査、また適正な医療が施されているかという監査等、これも十分に今後ともやっていかなければならないと考えております。  また、医療法改正が行われましたが、地域医療計画等を策定して、今後必要な医療地域計画というものをつくっていくということも大事でありましょうし、また、今後の医療供給体制等についても幅広く見直していくという必要もあろうと思います。また、老人保健事業などを推進することによってできるだけ病気にかからないような方途を講じていくということも大事でありましょうし、いろいろな角度からこれを総合的にこれから進めてまいりたいというふうに考えておりますが、今おっしゃられますように、医療費の適正化を行うためになお私ども力強く施策を推進いたしてまいる覚悟でございます。
  146. 浜本万三

    ○浜本万三君 それでは、医療適正化問題につきまして今から若干お尋ねをいたしたいと思います。  今回の改正は実際は、先ほども申し上げましたように、国庫負担減らしの対策に私はほかならぬと思っております。しかし政府の方では、そういうことじゃないんだ、これはあくまでも負担の公平を図るためだと説明をしておられます。しかし、たとえ公平化が実現したといたしましても、負担そのものが今後も際限なく重なるようではこれは国民としてはぐあいが悪い、かように考えます。  国保保険料も将来とも少なくならないし、また健保組合の拠出の負担金も継続してこれから増額をしていくということになると思います。そうすると、先ほど申したように、健保組合の存立の危機は直面するし、同時に制度の意味が失われてくる、かように思います。  負担の公平ということになりますれば、根本的には、医療費の自然増にまつわる新たな負担増にはもう断固として歯どめをかける、こういう仕掛けや工夫が絶対に必要である、こう私は思います。こういう配慮のないままに今回の負担公平論を強調されることは、これは国民を愚弄するようなものじゃないかという気持ちを私は持っております。そういう認識をもちまして医療費の適正化対策について若干の御質問をしてみたいと思っておるわけです。  まず最初に、厚生省は、一番新しいのでは昭和六十一年四月二十六日、参議院の補助金特別委員会で社会党の同僚議員の質問に対しまして、「医療費の伸びというものを国民所得の伸びの範囲内にとどめる」ということを「政策目標として」おるんだ、こういう御回答がございました。この方針に変更はないかどうかお伺いいたしたいと思います。
  147. 下村健

    政府委員(下村健君) 医療費の国民負担を適正なものとするためには医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内にとどめる、これはもう大変理想でありまして、これを政策目標として厚生省としては医療適正化努力をいたしているところでございます。  高齢化の急激な進展あるいは経済成長の定着、経済が低成長ということが定着してきたというふうなことを考えますと、この政策目標を達成するためには、今後とも健康づくりあるいは医療の供給面を含めました総合的な医療適正化対策を一層推進していくことが必要になってきているというふうに考えております。
  148. 浜本万三

    ○浜本万三君 最近の円高デフレによる国民所得が低迷する一方で、人口の高齢化が進みまして医療費が大幅に伸びつつある。こういう状態の中で、今局長から答弁をされましたような政策目標の実現は、これはよほど努力しなければなかなか困難だ、かように思います。そういう意味で若干の内容について質問をさしてもらいたいと思います。  まず、老人医療費の動向について、老人保健制度創設の前後と比較いたしましてどうなっておるか、御説明を願いたいと思います。
  149. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健制度創設前後の医療費の増の状況についてのお尋ねでございます。  創設前の五十七年八月から十二月の時点でございますけれども医療費の伸び率が一四・二%でございます。このときの人口増が四・四%ございますから、これを除きますと創設前は九・四%が自然増という形で伸びていたわけでございます。  創設後の五十九年の状況でございますけれども医療費の伸び率が八・四%でございます。この年度には二・三%の薬価改正が行われておりまして、それから四・四%の老人人口の増がございますので、その辺を差し引きいたしますと六・三%の自然増があったということでございます。  六十年度でございますけれども医療費の伸び率は一二・五%とかなりの伸び率をこの年度は見たわけでございます。この間一・二%の医療費改定が行われておりまして、それから受給者増、人口増が四・二%ございます。これを引きますと六・七%が六十年度の自然増かなということでございますが、いずれにしても制度創設医療費の伸びはじりじりと増高傾向にあるということでございます。
  150. 浜本万三

    ○浜本万三君 その老人医療費の伸びの原因としてどのようなものが考えられますか、具体的に御説明を願いたいと思います。
  151. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人医療費につきまして他の医療費と最も違う点はやはり老人人口の伸びでございまして、年々四%程度がほかの制度と違いまして増高要因の背景にあるということでございます。老人医療費はそういう形で人口の伸びを背景にしながら伸びておるわけでありますけれども医療費の額につきましては若い人と五・三倍ぐらいの一人当たりの医療費の差になっております。これは受診率が高いということが一つでございます。若い人に比べて入院では五倍、外来では二倍という受診率の高さが一つございます。それからもう一つは長く入院されるということでございまして、平均在院日数がお年寄りの場合には九十四、五日となっておりまして、若い人のこれも二・五倍ぐらいでございます。外来につきましての日数も若い人に比べまして、若い人が二・六日平均なのに対して三・七日ということで、外来日数も五〇%程度高いということでございます。  なお、入院患者数も私ども推計では四十八万人ぐらいおられるんではないかなと思いますが、年々入院患者数も四、五万人程度増加を見ておるわけでありまして、しかも六カ月以上の長期入院患者が半数以上おられるというようなことから、老人医療費については人口増の背景と受診率等の伸び等が加わりまして高い増加傾向を示しているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  152. 浜本万三

    ○浜本万三君 ちょっとそれではまだ自然増の内容が不明確なんですよ。世の中では自然増の内容というものは例えば薬づけであるとか検査づけであるとか、そういう言い方をされる人もおります。何か自然増というものに対してもうちょっと具体的にわかるものはありませんか。
  153. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人医療費は先ほど申し上げたとおりの内容でございますけれども増高の寄与率から見ますと、六割以上が入院によって増高の寄与率と申しますか増高の背景にあるわけでございます。この中身は、お年寄り入院がふえている、入院にお年寄りがシフトしているということがやはり医療費増の、これは自然増の原因ではなかろうかと思いますが、そのほかもちろん、いろいろ言われますように医学医術の進歩だとか、俗に言われるいろんな意味での自然増の要因というのが背景にあるんだろうと思います。老人の場合には、やはり入院医療費というところに自然増の最大の特徴があるんではないかと見ております。
  154. 浜本万三

    ○浜本万三君 どうもやっぱり遠慮して、どこへ遠慮しておるのか知らぬが、余り言うてないので困るんですが、それはしようがないと思います。  それでは話題を変えまして、次に移りたいと思います。  かつて厚生省は、適正な医療が確保されるよう努力するということで、臨時行政調査会から指摘されるより先にこの社会労働委員会でスケジュールを示すというお約束をなさっておるわけです。  その内容は、指導監査の強化、それからレセプト審査の充実改善、それから薬価基準の適正化、検査の適正化、それから高額医療機器の共同利用、それから医療費通知の充実、そういう内容についてスケジュールを示す、こういう約束があるわけです。改善の内容についてのスケジュールを示すと。それぞれ努力はされておると思うんですが、その約束は今どうなっておるかということを御報告願いたいと思います。
  155. 下村健

    政府委員(下村健君) 第一点が審査の充実というふうなことでございますが、現在、一定点数以上のものにつきましては特別審査委員会というものを設けまして高額のレセプトについての特別審査を実施するようになっております。  それからレセプト点検、医療費通知につきましては、おおむねほとんどの保険者実施するという形になってきております。これは国民健康保険も通じまして医療費通知、レセプト点検についてはほとんど一〇〇%の保険者実施しているという形には整ってきたわけでございますが、その内容等を見ますとまだ不十分な点がございますので、今後は、単にレセプト点検を実施するということではなくて、その中身についてさらに充実を図るという方向で指導を強化してまいりたいと考えておるわけでございます。  それから薬価につきましては、五十七年にそれまでの薬価の改定方式を改めまして、毎年薬価調査をやって薬価の改定をやるということで薬価差の縮小という点に努力を払ってきているわけでございます。その結果、薬剤費率、一時は四〇%というふうなことも言われていたわけでございますが、現状でおよそ三〇%まで薬剤費率が下がる、薬価差の方もそれに伴って相当程度改善されてきているというふうに考えております。  それから次は検査の問題でございますが、検査につきましては、これも毎年度特に外部に対する委託検査の実情調査のようなことをやっておりまして、診療報酬改定の都度その合理化ということで、最近の検査は検査機械の高度化、性能が非常に向上するということがあるわけでございますが、その性能の向上による成果を検査料の面で保険の点数の設定に反映させるという形でその検査料の合理化に努めているわけでございます。
  156. 浜本万三

    ○浜本万三君 共同利用。
  157. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 高額な医療機器の共同利用の問題でございますが、私ども、現在各都道府県で医療計画の策定を急いでおるわけでございますが、その中身といたしまして、ハード面以外にソフト面の一つといたしまして、各医療圏ごとに医療圏内にある大型の医療機器の共同利用計画を具体的に設定するように都道府県を現在指導しておるところでございます。
  158. 浜本万三

    ○浜本万三君 医療費通知。
  159. 下村健

    政府委員(下村健君) 医療費通知につきましては、これもほとんどの保険者実施しておりますが、その頻度とか内容の点で今後さらに充実を図ってまいりたいというふうに考えております。  なお、監査の問題がございますが、監査につきましては、その人員の充実ということで毎年、現在非常に苦しい定員事情でございますが、定員を増加いたしまして監査体制を強化するということで、実施面で手厚くしているという格好でございます。
  160. 浜本万三

    ○浜本万三君 伺いましたけれども、まだまだどうも不十分なような印象を受けました。さらに一層努力をしてもらうように希望をしておきたいと思います。  それから次は、老人保健制度創設の際に、老人医療費負担増の歯どめとして診療報酬の見直しが不可欠であるとの見地から、さまざまな論議が行われたことを私どもよく承知をしておるわけでございます。老人医療の診療報酬も、我が党の同僚議員が提案いたしました、主治医による生活指導料が新設されるなど、老人の心身の特性等を踏まえたものと言われていますが、この点数表が老人医療にどのような影響を与えたのか、わかればお知らせをいただきたいと思います。
  161. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御指摘のとおり、老人の診療報酬につきましては、いろいろ御議論を踏まえまして新しい診療報酬をつくったわけでありますけれども、その端的な在宅の方への生活指導料というものが特徴的な点数かと思うわけであります。  この点数の構成比と、それからそのことによる、例えば投薬、注射がどういうふうに変わったかということを申し上げますと、点数中の構成でございますけれども生活指導料につきましては五十八年の二・九%が五十九年には三・四%と、割合は低うございますが伸びております。  反面、投薬と検査の割合は少なくなっておるわけでありまして、投薬が二四・六から二二・四%へ、注射が一五・三から一二・九%というふうに構成比率を低めておりまして、そういう意味では、私どもの当初目的といたしました投薬、注射等よりも日常生活の指導を重視した、老人にふさわしい医療の確立という面では進歩していると申しますか、進んでいるんではないかというふうに思っております。
  162. 浜本万三

    ○浜本万三君 それから、当時森下厚生大臣は、これまた私どもの同僚議員の質問に対しまして、主治医の登録制については前向きに検討する旨の答弁をしておられるわけでありますが、その後の検討はどうなっておるのか、お答えをいただきたいと思います。
  163. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 主治医ということでお話しでございますが、私ども地域におきますプライマリーケアの充実を図りますために、住民の日常の健康管理、健康相談、それから日常的な疾病と申しますか、コモンディジーズの診断治療を十分に行う。さらに、必要に応じて専門医療機関等へ患者を紹介するなど医療の継続性を保ち、地域のプライマリーケアの中心となるものとして家庭医というもののあり方を、実は現在懇談会を設置いたしまして鋭意御検討をいただいておるところでございます。来年の三月をめどに御結論をいただくということにいたしておるわけでございます。  お話しの主治医の登録制の問題でございますが、これは今申し上げました家庭医のあり方の問題と大変密接な関係がございますので、家庭医懇談会の検討結果を待ちまして慎重に対処してまいる所存でございます。
  164. 浜本万三

    ○浜本万三君 主治医の登録制につきましては、今般の改正でも一度もまじめに検討をされた形跡が残念ながら見当たりません、今のお答えはあったけれども。法薬を通すための口約束だけでは誠意を見ることができないと思います。本当に約束をしたことはやってほしい、かように希望をしておきます。  さらに、老人医療費の高騰に対処するためには審査、指導監督等医療保険全般における医療適正化対策が必要であると思います。そこでまず、お話のあったレセプトの審査でありますが、この審査委員会の構成メンバーのうち、公益代表に医師の利益を代表する立場の者がなっていると言われておりまするが、その実情はいかがなものでございましょうか。また、どうも医師の方が中立に入るというのはおかしいんじゃないかという気持ちがございますので、改めるお考えはないか、お尋ねをいたしたいと思います。
  165. 下村健

    政府委員(下村健君) 支払い基金でありますとか国保連合会の審査委員は、学識経験者、国保の場合は公益を代表する者という形になっております。それから診療担当者を代表する者、それから保険者を代表する者というその三者の構成になっているわけでございます。その三者構成をとっているという趣旨にかんがみますと、学識経験者あるいは公益を代表する者という中に、診療担当者を代表する者でありますとかあるいは保険者を代表する者のそれぞれの推薦母体の長でありますとか、そういうふうな方がなるということは適当でないと考えているわけでございます。  しかし実際には、実は御指摘のとおりに、各推薦母体の長などの職にある方が学識経験者として審査委員に選任されているという例がございまして、これらにつきましては、関係者とも十分意見調整をしながら、遅くとも次回の改選時までには改善を図るように指導を行っているわけでございます。次回改選というのは、支払い基金でございますと六十三年の六月ということになっております。
  166. 浜本万三

    ○浜本万三君 次に、同一の県において社保と国保の一件当たり医療費に格差がありましたり、さらに医療費の西高東低といった傾向は依然として続いております。この原因については、幾度となくこれまた同僚議員が追及しておるところでありますが、当局の方ではいつも明快な回答ができないのが実情でございました。その原因は、もちろんこれだけというようには断言できないと思いますが、審査のあり方が大きく左右しておるのではないかと私は思います。  そこでこの際、例えば主たる疾病ごとの審査マニュアルを専門家である医療グループに作成してもらって、各部道府県の支払い基金及び国保連の審査はこれに沿って審査を行うとか、都道府県段階の審査とは異なった立場で審査への機会をふやすため中央審査の内容充実するなど、審査の地域格差や支払い基金と国保連の審査格差を是正するため審査のあり方を根本的に見直してはどうか、かように思いますが、いかがでございましょうか。
  167. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいまの御提言は一つの御意見として非常に何といいましょうか、傾聴に値するといいましょうか、大変結構なことだと思います。関係の皆様方とも十分協議をいたしまして私どもも検討をいたしたいと思っております。
  168. 浜本万三

    ○浜本万三君 それからまた、地域の健康保険組合等の責任者などに伺ってみますと、レセプトの審査をやっておるんでしょうが、これは専門家でないとなかなか審査が困難だと、こういう話がございます。そこで、たくさんの審査をする専門家を養成したらどうか、かように思うわけであります。審査をする専門家を多数養成して統一的な審査ができるような体制づくりをしたらどうか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  169. 下村健

    政府委員(下村健君) レセプト点検を各保険者が行うということになっているわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、一応やっておりましてもなかなか効果的なことができない。その原因の一つとしては、レセプト点検については相当専門的な知識でありますとかいうふうなものが必要だということが考えられるわけでございます。したがって現在、小規模の保険者でありますとかいろいろ問題がございますので、保険者のレセプト点検をなお効果的に行うための方策について検討しているわけでございます。  専門要員の確保という点につきましても、御意見を踏まえましてひとつ具体策を検討してまいりたいと思います。
  170. 浜本万三

    ○浜本万三君 指導監査の問題なんですが、指導監査の徹底のためにはこれまた要員の確保が必要だと思います。最近の確保状況はどうなっておりますか。
  171. 下村健

    政府委員(下村健君) 御意見のとおり、確かに指導監査のための要員の確保ということは、それを行うための不可欠の前提になってまいるわけでございます。年々増員をしているわけでございまして、この五年間で国と地方合わせまして、五十六年度百六十五名であったわけでございますが、六十一年度には二百六十七名ということで約百名程度の増員を行っております。
  172. 浜本万三

    ○浜本万三君 それから、チェーン病院というのですか、何か最近そういう言葉で呼ばれておりますが、そういう病院など複雑な構造を持つ医療機関の指導監査、これまた難しいのじゃないかと思います。それ相応の知識と能力を持った人が当たるべきだと思いますが、その養成確保はどのようになっておりましょうか。
  173. 下村健

    政府委員(下村健君) 確かにチェーン病院の存在がいろいろ問題になるところが多いわけでございます。こういう大組織の指導監査を行うというふうなことになりますと、それ相応の知識なり資質を持った者でなければならないというふうに考えておりまして、そのための特別の要員の確保をでき得れば行いたいということで、目下その具体化について検討しているところでございます。
  174. 浜本万三

    ○浜本万三君 医療費の適正化は、医療保険サイドからの対応ばかりでは不十分だと思います。そもそも医療には、供給が需要を生み出すという性格があるということが言われておるわけでございます。そこで医療供給体制の面から適正化を考えなければならない点も多いのではないかと思います。そういう点について、若干厚生省のお考えを伺いたいと思います。  ここ数年、地域医療計画の規制を逃れるという目的かどうか知りませんけれども、駆け込み増床の傾向にあると伺っておりますが、その実態をどのように把握されておるのか。また、地域医療計画においてこうしたベッドは排除する考え方なのかどうなのか、残しておくのかどうなのか。そういう点、お伺いいたしたいと思います。
  175. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) ここ数年間の病床数の増加傾向の推移でございますが、実は昭和五十五年が増床の数といたしましては一番ピークでございまして、年間約五万床の増床がございました。それ以後だんだんと増床が減ってまいりまして、昭和六十年には年間で三万床を少し超える程度の増床があったということでございます。  昨年の暮れに医療法改正をしていただきまして、それ以後地域医療計画についての関心が大変高まってきておるわけでございますが、現在のところ、ことしの一月から七月までの増床分、これを前年の六十年の一月から七月、同月分で比較をいたしてみますと増加率が三五%増、つまり前年に比べまして一三五%ということで、三割半ばかりふえ方が多いわけでございます。  その増床の増加につきまして、要因としてはなかなか分析は難しいわけでございますが、今お話がございました医療計画の策定をにらんだ駆け込みというのもやはり否定できないのではなかろうかと思っております。  こういう駆け込みというようなことが多くなってまいりますと、来年の末には各県で医療計画の策定を終わってほしいということでお願いをいたしておりますが、せっかくつくっていただきました医療計画の効果がかなり減じられるということでございますので、実は先月でございましたか、私どもの方から指導通知を出しまして、こういう医療計画をつくった際に、病床過剰地域になると思われるような地域でこういう駆け込みといったような現象があれば、それはひとつぜひ強力に行政指導をして、場合によれば増床申請の取り下げをしてもらうとか、いろいろの点で強力に行政指導をいたしまして、医療計画がその効果を十分発揮するように現在指導をいたしておるところでございます。
  176. 浜本万三

    ○浜本万三君 よくわかりました。  その次に、もう時間がございませんので一、二まとめてお尋ねをいたしたいと思います。  病床の整備計画なんでございますが、病床整備地域偏在が甚だしいと思いますので、大都市及びその周辺での大病院の配置を適切にするとか、お医者さんのいないところにもお医者さんを配置するとかいうような、地域医療計画に基づいた適切な配置を早急に実現してもらいたいと思うがどうか。  その次は、医師の数及び将来の養成数はどうなっておるか。  また、医師が大病院に集中する傾向にあるが、この適正配置を促進すべきであると考えるが、その対策はどのように考えられておるか。  三点について伺いたいと思います。
  177. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 病床の整備でございますが、これは地域医療計画の中で最も重要な問題として取り扱っておるわけでございます。一般病床につきましては、二次医療圏ごとに必要病床数を定める。そういたしまして、過剰地域につきましては増床を抑え、過少地域においてはそれぞれ整備を待つということでございます。あわせまして、地域的な偏在でございますが、僻地等についての医療機関あるいは医師等々につきましての拡充整備対策は、これはこれとしてこれからも力を入れて進めてまいる考えでございます。  それから医師の養成数でございますが、現在医科大学の定員は一年間で約八千三百名でございます。現在のままで養成をしてまいりますと、昭和百年にはいろいろのことを考えましても約一割はオーバーになるということでございまして、私どもの方の検討委員会で、それを昭和百年の時点においてバランスをとりますために、昭和七十年における新規参入、新しいお医者さんの誕生の数を一割減らす、そういうことによりまして昭和百年で医師の需給のバランスをとるということで、今文部省等にお願いをして進めておるところでございます。  それから病院間での医師の偏在の問題でございますが、やはり特に大学病院医師が偏在をしておる、あるいは大病院に集中する傾向があるということでございます。これはなかなか複雑な問題が入り組んでおりまして、その対策は非常に難しいわけでございますが、先ほど例えば家庭医の問題というようなことを申し上げましたが、若いお医者さんの勤務医志向あるいは大病院医師志向、そういったものに対応いたしますために家庭医の検討、開業医の復権というようなことを検討いたしておるところでございます。  それからまた、医療法の中で医師数の標準というものを定めておりますが、こういった面につきましてもさらに検討を加えまして、必要がありますれば、数年後に予定いたしております第二次医療法改正において検討結果を反映していきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  178. 浜本万三

    ○浜本万三君 時間が来ましたので、またの機会にしたいと思います。
  179. 中西珠子

    ○中西珠子君 日本は先進諸国に例を見ないほどの急速なスピードで高齢化社会に突入しようとしております。  そこで、本年六月の閣議決定で「長寿社会対策大綱」というものを決定されましたけれども、その大綱の中には、基本政策の中で、「社会的公正を確保しつつ、生涯のどの段階においても安心して生活できる体制を整備するとともに、健康で充実した生活を過ごせるよう基礎的な条件の整備を図る」、こう言っているわけでございますが、現在の円高不況、また構造不況などの経済的な非常に安定のない状況の中で失業もどんどんふえておりますし、国民は、生活は今はできても将来どうなるかという不安を非常に持っていると思うんですね。また、総理府の世論調査などによりましても、殊に老後の健康がどうなるか、また病気になったときにはちゃんと医療が受けられるか、また生活保障が、どうも年金が低いけれども何とか暮らしていけるのだろうかとか、いろんな不安を持っているわけでございます。  それで厚生大臣としては、この人生八十年時代の、殊に国民の健康とか福祉という面、また医療の面で責任をお持ちになっているお立場でございますから、厚生大臣高齢化社会に対応する政策ビジョンというものをまずお伺いしたいと思うわけでございます。
  180. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま御指摘をいただきましたように、これから迎える長寿社会、そして人生八十年時代というものが本当に長生きしてよかったと言っていただけるような、そういった社会的環境といいましょうか、総合的な施策を推進をしていく必要があるというふうに考えます。  政府といたしましても、六月に「長寿社会対策大綱」というものを、それぞれの制度を横断的に総合的に取り組むような形で、その指針というようなものを決定いたしたわけでございますが、厚生省といたしましては、社会福祉を担当いたしてまいりますその中心になる官庁といたしまして、豊かな老後社会を送っていただけるような、そういった長寿社会をつくり出すために全力を挙げて努力をしなければならないと考えております。特に、そういう中で医療と保健と福祉というものが一体的に連携を保ちながら政策が推進されていくということが非常に必要なことであるというふうに考えておるところでございます。
  181. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生大臣のお考えを今承ったわけですけれども、ここ数年の間、殊に中曽根内閣になりましてからは、どうも財政再建の名前のもとで年金とかそれから医療関係社会保障の給付の切り下げが行われたり、また、いわゆる福祉の切り捨てと言われるほどに社会福祉関係の補助金がカットされたり、とにかく国庫負担を減らすための施策というものがどんどん行われているような気がしてしようがないわけです。  それで、ただいま議題となっております老人保健法改正案というものも、例えば個人負担の大幅な引き上げとか加入者按分率の急激な引き上げとか、そういったものも含んでおって、財政調整、国庫負担削減というものが目的となっているのではないかと感じざるを得ないわけでございます。例えば自己負担の引き上げというものを考えてみましても、老人というのは加齢に従って所得は下がるわけでございますね。一方病気というものは多くなると聞いております。  まずお伺いしたいのは、年齢階層別の有病率ということをお伺いしたいわけです。そしてまた、有病率に対応してどのくらい受診受療をしているかという率ですね、こういうものをお聞きしたいわけでございますが、いかがでしょうか。
  182. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 年齢階層別の有病率でございますけれども、人口千対で申し上げますと、平均が百三十でございますけれども、ゼロから四歳が九十四・九、五歳から十四歳が六十三、十五歳から二十四歳が最も低くて三十八・三、二十五から三十四が五十三・六、三十五歳から四十四歳が八十一・六、四十五歳から五十四になりますと百台になりまして百五十二・八、五十五から六十四歳は二百五十六・〇、六十五歳から七十四歳は四百三十七でございます。それから七十五歳以上が四百九十八・五でございますが、老人保健の対象の七十歳以上ということをとってみますと四百九十二ということでございまして、平均の約三・八倍ぐらいになりますか、それぐらいの七十歳以上の有病率になっておるということでございます。  それから受療率でございますけれども、人口十万で出ておりますけれども、総数が七千二百六十六でございます。主なところだけ申しますと、例えば十歳から十四歳が四千二百七でございまして、低い方でございます。それから二十歳代、例えば二十五から三十四をとりますと四千八百四十二でございます。それから四十歳代、例えば四十五から五十四は七千九百九十一と増加してまいります。五十歳代、五十五から六十四が一万五百五十になります。それから七十歳から七十四をとってみますと一万九千二百二十七、八十歳以上をとりますと二万九百六十二、七十歳以上の再掲で申し上げますと二万四百七十三という数字が出ております。
  183. 中西珠子

    ○中西珠子君 率で言うとどうなりますか。
  184. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 有病率と受療率との率でということで申し上げますと、これは有病率に対する受療率の割合でございますけれども、十五歳から二十四歳が九七・七でございます。六十五歳以上を見ますと、有病率に対します受療率の割合でございますけれども、三九・七ということになっております。
  185. 中西珠子

    ○中西珠子君 六十五歳から七十五歳、とにかくそれ以上の人たちというものは大体三九・七%、すなわち四〇%近くが病気を持っていても受療していないということでございますね、これにはいろいろな理由があると思いますけれども。  七十歳以上のお年寄り生活実態というのはどうなっているのでしょうか。余りお医者様にかかるとお金がかかるからやめておこうという人が多いのではないかと思うんですけれども、どういうふうになっておりますか、その点をお聞きしたいと思います。
  186. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 統計調査の中身で直接比較できない部分もありまして、先ほど老人保健部長からお答えいただいたのでございますけれども、受療率というのは一日の調査でございまして、その日に診療所、病院にあらわれた患者さんについての率でございます。それから有病率というのは、世帯をとらえまして、そこでその当日病気であったかどうかということでございますので、先ほどの九七%と三九%というのは、数字として比較すればこうなりますけれども、直ちに病気の人のうち九割はかかっている、四割しかかかっていないというふうな言い方には統計技術上からはならないということでございますので、一応私の方から答弁させていただきたいと思います。
  187. 中西珠子

    ○中西珠子君 雑誌の「世界」というのがありますね。あれの最新号、一月号です。あれに、経済学者なんですが都留重人さんが、「医療の内実と外延」という論文を書かれているんです。その中で、六十五歳以上の階層ではとにかく有病率は非常に高いのに四〇%ぐらいの人しかお医者様にかかっていないらしいということをおっしゃっているわけなので、それでお聞きしたわけなんです。それは厚生省の統計情報部の患者調査と国民健康調査と両方を調べてみた数字だと、こうおっしゃっているわけなんですね。  それはそれとして、国民生活実態調査によりますと、七十歳以上のお年寄り生活実態というものはどうなっておりますか。
  188. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先ほどの件、もう一回補足させてもらいますと、確かに「世界」で都留先生が御指摘になっているわけでございます。私が素人なりに考えまするに、要するに若い人は、けがをした、病気の人は病気の間じゅうお医者さんに例えば三日かかる、それで三日でけがが治るということでございますから受療率と有病率関係は一〇〇に近くなるわけでございますが、お年寄りの場合には、ずっと慢性の疾患でございますから、例えば一週間に一遍とかあるいは一週間に二遍という頻度で受療されますので、受療率対先ほど申し上げました有病率関係というのは疾病構造からくる差ではなかろうかなというふうに考えているわけでございます。  それから老人生活実態でございますけれども、まず所得について申し上げますと、これは厚生省国民生活実態調査でございますけれども、五十九年で申し上げますと、高齢者世帯では一人当たりが一月、十一万四千円でございまして、全世帯平均では十一万五千円ということでほぼ同額だということでございます。このうち、高齢者世帯の所得の内訳でございますけれども、全平均で年金、恩給が五万九千円ということで五一・四%を占めております。そのほか、稼働所得が三万九千円で三四・五%、財産所得が一万円で八・七%、その他が六千円で五・五%になっております。  消費についてでございますけれども、これは総務庁の家計調査によりますれば、六十年での一人当たり一月でございますけれども、世帯主が六十五歳以上の世帯でございますが約七万五千三百円ということで、全世帯の平均が七万三千六百円ということで、これも所得と同じように消費もほぼ一人当たりで見ますれば同程度の額ということでございます。  貯蓄について申し上げますと、総務庁の貯蓄動向調査によりますと、六十年度一人当たりで、世帯主が六十五歳以上の世帯の場合には約三百九十九万円でございます。全世帯平均が百五十四万円でございますから、これは高齢者世帯の方が約二・六倍貯蓄は多いという数字が出ております。  したがいまして、こういった高齢者生活実態から見まして、私どもは今回の一部負担の引き上げは無理がなく御負担いただけるものではないかということでお願いをしているわけでございます。
  189. 中西珠子

    ○中西珠子君 高齢者世帯の中で年金と恩給受給者というのは大体九三・二%ぐらいあるわけですね。その中で年金とか恩給の収入が所得の全部だという世帯は四一・九%ぐらいあるわけです。それで年金の平均は五万九千円だと今おっしゃったわけですが、年収百万円未満の高齢者世帯というのはやはり相当あるわけでしょう。何%ぐらいありますか。
  190. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 二八・七%でございます。
  191. 中西珠子

    ○中西珠子君 国民年金の老齢年金の平均額というのは二万七千八百円ですね。この国民年金の老齢年金を受けている人の数、それから老齢福祉年金というのは六十一年度で二万七千二百円ですね、この老齢福祉年金を受けている人の数をお教えいただけますか。
  192. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 数についてのお尋ねでございますけれども、福祉年金で二百十二万人、年金受給者総数で六百六十万人でございますが、年金の制度ごとの数字をちょっと持ち合わせておりませんので、その程度のお答えで御勘弁いただきたいと思います。
  193. 中西珠子

    ○中西珠子君 私の部屋に毎日毎日お年を召した、殊に男性の老人の方が多いんですけれども、おいでになります。その人たちは年金生活者なんです。それでいろんな年金に入っている人がいまして、例えば私学共済なんかに入っている、かつては大学の学長をやったとか教授だったなんという人たちもおいでになるわけでございますが、終戦直後からずっと余り高い給料でもなくて教育の復興、普及というものにもう一生懸命に挺身してきた。しかし年金の額は非常に少ないから、今度の一部負担の引き上げというものは本当に困る、もうこれから先が不安でしようがないと、こういうふうにおっしゃる方が多いわけです。  それで、これは私学共済とかそんなところばかりでなくもういろいろ、殊に国民年金の老齢年金をもらっていらっしゃる方、それから老齢福祉年金をもらっていらっしゃる方は、これは生活費にも満たないような低い年金なのですから、今回の老人世帯の一人当たり所得が約十一万四千五百円である、それから一人については七万三千六百円ぐらいで、若い人の世帯と余り違わないからこの一部負担の増は無理なく負担できるのではないか、こう厚生省ではおっしゃっておりますけれども、ちょっとこれ急激な大幅な増加と思うんですね。  外来一カ月四百円というのを、政府原案では千円だった、これが衆議院で八百円ということに修正されましたけれども、とにかく一カ月たった一科行けば済むという老人は少ないので、やっぱり二科、三科と行かなければならない。そうすると費用もかさむ。  それからまた入院の費用につきましては、三百円が五百円に、そして今まで二カ月の限度というのがあったのを取り除いてしまったために、一応この案によりますと月一万五千円かかる。そして、二カ月の限度がなくなったから年間はどうしても十八万円ということになってしまう。これは十倍でございますね。外来の方は四百円ということにしたってこれまでもなかなかそれが払えなかった方もいるのに、衆議院の修正で八百円になったとはいえなかなかこの負担は難しいという方が、老人クラブの代表の方からも、もういろんな方から出てきているわけでございます。  社会保障制度審議会答申、六十一年二月十日のものでございますが、この答申の中で、「受診の抑制にならないよう急激な負担の上昇を避けることが望ましい」、こう言われているわけです。それで、受診の抑制にきっとつながるであろうということは医師関係の方も大変御心配になっておりますし、私の同僚議員の高桑先生もお医者様の立場から大変受診抑制につながるということを心配していらっしゃるわけでございますが、老人保健審議会からの答申を得たからと、こうおっしゃっておりますけれども、その答申は全会一致だったわけではないわけでございましょう。  それで、例えば医療団体関係の方だとか労働団体関係の方だとか福祉団体関係の方、そういった方が委員になっていらっしゃる。その委員の方々からは、結局老人有病率とか受診の状況、患者負担の実情とか生活実態から見て多くの問題があって反対だという意見が出されているわけでございますね。これは事実ですか、御確認願います。
  194. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健審議会意見として、そういう意見になっていることは事実でございます。
  195. 中西珠子

    ○中西珠子君 それで、とにかく外来と入院をそのように大幅に引き上げるということを提言なすっているほかに、いわゆる保険外負担というものがございますね。これは入院時にどうしてもいろんな名目でお金がかかる。私のところには老人病院入院させながら働いている女の人たちがたくさん来るわけです。働く婦人の会というのがございまして、独身で母親とか父親の面倒を見ながら自分も働いて一生懸命生活費を得ているという人だとか母子家庭の人だとか、そういう人がいるんですけれども、その人たちが、自分の親を老人病院とかいろんな病院に入れたりなんかして、その実態についていろいろ訴えに来られるわけでございます。その人たちが言われるには、既に保険外負担と言われているものが大変大きくて、一月十万とか二十万とか取られてしまう。そういう中でまた引き上げられるのはとても耐えられないということなんですね。  保険外負担につきましては、厚生省としてもやはり調査なすっているわけでしょう。どういう調査結果が出ておりますか。
  196. 下村健

    政府委員(下村健君) 保険給付に関連する保険外負担の一般的な状況につきましてまず私から御答弁いたします。  第一が、一人部屋あるいは二人部屋というふうなところへ入られた場合の差額ベッドの問題でございますが、従来から三人室以上の場合は差額ベッド代を解消するよう指導を行っているわけでございます。その結果、総病床数に占める三人室以上の差額ベッドの割合は、昭和四十九年には六・六%ございましたが、六十年には〇・八%というふうに相当程度低下しているわけでございます。負担額は、差額ベッド全体を平均いたしまして一日当たり三千三百円程度になるというふうに推計いたしております。  それから第二が、付添看護でございますが、基準看護病院以外のいわゆる普通看護の病院におきまして付添看護がついた場合、その付き添いに要した費用については患者に償還払いをしているわけでございます。この償還払いをする額、看護料と慣行料金との間に大都市の場合基本給において一日当たり約千円程度の開きがございまして、これが患者負担になっている。  この二つが一般的な保険外負担ということでございます。
  197. 中西珠子

    ○中西珠子君 まだそのほかにいわゆるお世話料というのがありますでしょう。それについて調査なすったことがありますか。
  198. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) お世話料についてでございますけれども、昨年の十二月に全国の老人病院対象にいたしまして実態調査を行ったわけでございます。  その結果について御説明申し上げますと、まず金額でございますが、入院患者一人当たり一月で見ますと、お世話料として、保険外負担の額でございますが、平均二万七千五百円という数字を得ております。地域別に見ますと、東京近郊等の大都市圏で高く地方では低いという傾向が見られるわけでありますけれども、かなりの地域差があるということでございます。その負担の内訳でございますけれども、四割以上がおむつ代あるいはおむつ代関連の経費でございます。そのほかに電気製品の使用代といったものがございますが、いずれにいたしましても、お世話料の実態を見ますと、通常家庭においても必要とされる費用が実費徴収的な形で徴収されているということでございます。  このようにお世話料につきましては、名目はいろいろございますけれども、通常家庭で必要とされるおむつ代あるいは電気製品の使用代あるいは理美容代あるいは日常雑費というようなものでございますので、これはどうしても保険でカバーできない医療以外の経費でございますから、私どもは、やはり病院でその経費が必要になればこの経費が実費徴収されるというのは原則的にやむを得ぬではないかというふうに考えております。  しかしながら、いわゆるお世話料と称して、保険の給付と医療と重複する部分として医療の中の一部を例えばお世話料という形で費用徴収してはならないことはもとよりでございまして、かねてからこの面の指導を行っているところでございまして、今後とも、都道府県を通じましてお世話料の指導につきまして是正方を含めまして徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  199. 中西珠子

    ○中西珠子君 今度入院の費用が一日に五百円ということになりますと、それが一カ月だと一万五千円ですね、三十日として。それから差額ベッドが今おっしゃった一日当たり三千三百円ということですと、これがほとんど十万円になります。それから付添料の差額、償還支払いをされる額と慣行料金との額には千円の差があるとおっしゃいましたから大体これは三万円ですね。それからお世話料が東京付近、首都圏ですと四万九千四百円ですか、そうするとほとんど五万円です。そういうものを加えますとやっぱり相当の費用になるわけでございます。それが今度どうしても払わなければ退院してくださいというふうなことになってくるわけですから、老人を抱えた家庭、そして老人病気になっている患者さんにとっては大変何か不安のもとになっているということが言えると思うんでございます。  それで、世代間の公平化というふうなことをおっしゃっておりますけれども、結局老人所得が低いんだから、本人に貯金があれば本人の貯金から出すけれども、一緒に住んでいる家族、そういった若い人たちが出すということにもなるんじゃないかと思うんです。例えば東京都の中野区が調べた結果というものが出ておりますけれども、これは昭和六十年四月から六月にかけての付添看護料を請求に来た区内の六十五歳以上の方の入院費というものについて調査したそうですが、付添看護料を除いて一カ月の入院費というもの、保険外のものが十万円以上かかった人は全体の五〇・四%、二十万円以上が二六・六%、こういったものを含んだ八六・六%の人がとにかく三万円以上は病院に払っていたというわけです。  そうすると、やはりこういった保険外負担というものもどんどん少なくなるような方向厚生省が御指導いただかない限り、そしてまた、今度のように自己負担が上がりますと結局家庭の崩壊、家庭経済の破綻ということにつながってくるのではないかと思うわけでございますから、やはり急激な引き上げというのはこれを何とかしていただきたい。修正できるものならしていただきたいし、できれば撤回していただきたい、このように考えているわけでございますが、衆議院でちょっと修正がありまして外来は千円が八百円になったわけですが、入院費の方は一日五百円を四百円にするとか、そういうお考えは全然ありませんか。  これだけみんなが反対している。賛成しているのは市長会、市町村の長の方々とか、それから国民生活の中で国民健康保険というふうなものを扱っていらっしゃる方々、市町村の方、それから国民健康保険中央会の方々、そういった方々だけで、それ以外の方々はこの老人保健法改正法案に対して物すごい反対で、毎日私の家に電報がどんどん来ます。手紙も参ります。それから議員会館の部屋には朝から晩まで次から次へと陳情にいらっしゃるわけです。あそこに座っていると次から次から皆様にお会いしなければならない。委員会に私が来ておりましても、その間にどんどんいらっしゃるから秘書が応対しておりますというような状況でございまして、これだけ国民の皆様方が反対していらっしゃるということを厚生省としてはどのように受けとめていらっしゃるんでしょうか。そんなものは全然平気と、我々の考え方が正しいからあくまでもやるというふうにお考えでいらっしゃいましょうか。これは大臣にお聞きしましょうか。
  200. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 患者負担の軽減を一層図るようにという御趣旨のことでございまして、差額ベッドや付添看護料、またお世話料といったような点について、ただいま御答弁申し上げたような方向で今後とも全力を挙げてその適正な状況に持っていくように努力をいたしてまいるということが一つであろうと思います。  また、今御指摘入院の今回の改定の件でございますが、先ほど先生がおっしゃられましたように、戦前、戦中、戦後と日本の非常に難しい時期を乗り越えていただいたお年寄りの皆様でございますので、過剰な負担にならないよう配慮をいたしてまいらなければならないということはもとよりでございます。しかしながら、今回のこの法律の改正をお願いをいたしておりますのが、医療費を国民全体で御負担をいただく、同時にまた世代間の公平という観点からも一部負担について見直さしていただくということであります。  そして健保本人の方々では一割負担をしていただく、また健保の家族の方については外来においては三割、入院においては二割の負担をしていただく。また国民健康保険につきましてはすべて三割の負担をしていただく。もちろん高額療養制度というものがございまするけれども、そのような負担をしていただく中で、全体としては、衆議院で修正になりましたので四%程度負担でなかろうかというふうに思うわけでございますが、そういうような、老人以外の方々から見れば相当程度低い負担をお願いをするということでお願いをいたしておるわけでございます。  私ども原案提出者といたしましていろいろ総合的に検討した結果、このようなことをお願いをいたしておるところでございますので、どうぞひとつ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  201. 中西珠子

    ○中西珠子君 戦時中また戦後を通じて苦労をなすって、そして戦後の日本の荒廃の中から経済を復興させて、今経済大国というものに発展させていただいた、本当に骨身を削って働いていらしたお年寄りの方々が、やはりこういう自己負担の引き上げとか、それからまた、後にお伺いいたしますけれども老人の診療報酬を別建てにされているとか、そういったことのために本当に報われない、何のためにこれまで一生懸命やってきたかというふうな気持ちをお持ちになっているのは確かだと思うんですね。  その点は大臣もお認めになっていると思いますが、やはりこれは老人いじめ、弱者への過酷な負担を強いるというふうに考えますので、重ねてこの自己負担の額については何とかこれをもう少し下げていただきたいということをお願いいたします。  それで、若い人との均衡とおっしゃいますけれども、結局老人は、貯金もうんとある人もいるし収入のある人もいるけれども、大多数が年金で細細とやっているという人が多いわけでございましょう。そうすると、若い人の負担にこれはなってくるわけですね。加入者按分率というものを引き上げられると被用者の入っている保険料も上がるでしょう。それも一つの変わった形の増税ではないかと言われているくらいですね。それが上がらないにしても、実際において、自分の親が病気になった場合に若い人は自分の貯金なり自分生活費を削りましてそして払っていくということになると思うんです。ですから、やっぱりこの自己負担はもう少し何とかお考えいただきたいということを重ねて申し上げます。  それから、例えば厚生省の先輩でいらっしゃる太宰さんという方が朝日新聞にお書きになっていますね。この方は老人クラブ連合会の副会長さんを今なすっていらっしゃるらしいんですけれども厚生省の皆様方の先輩でいらしたと思うんです。この前老人保健法が制定されましたときには、老人クラブの方々、またこの太宰さんも、一部負担はまあ仕方がないだろうということで何も反対なさらなかったんだけれども、今度は御自分から投稿なすって、「自己負担を強化すれば、なるほど医療費の増加は抑制されるかもしれないが、それはひっきょう、老人をいや応なしに医療から遠ざけんとするものであって、弱者へのいじめであり、福祉の切り下げである。これを、制度の恒久的安定と言うのであろうか」、こうおっしゃっているわけでございます。  とにかく全国老人クラブ、労働組合、経営者団体、健保、保険医、婦人団体、もうすべてと言ってもいいぐらい大多数の国民の方々、またマスコミも批判的な論調であったり反対を表明しているという方が多い中で、やはり急激な負担というものは避けるという方向を少し探っていただきたいと思うわけでございます。これは何回言っても同じことの水かけ論になりますからやめますけれども。  その次にお伺いしたいのは、この法案のもう一つの中身でございます老人保健施設です。これについていろいろこれまで御答弁になっていますけれども、どうも私にはよくわからないわけですね、どういうふうなことをなさるおつもりなのかということが。生活サービス医療サービスを兼ね備えたものとかいろいろおっしゃっておりますけれども老人保健施設老人病院とそれから養護老人ホーム、これも特別養護老人ホームの方ですね、これとはどういうふうに違うのか。今まで御説明になっておりますけれども、どうも余りぴんとこないところがありますので御説明いただきたいと思います。
  202. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設についてのお尋ねでございますけれども、この施設医療サービス生活サービスあわせ持つということからなかなか御理解をいただけない面があるんではないかと思います。  何度もお答えをしているわけでございますけれども、この発想の原点と申しますか、私どもが下敷きにしましたのは社会保障制度審議会の御提言でございます。これは特養機能とそれから老人病院機能をあわせ持つような、そういう中間施設を新しくつくったらどうだ、こういう御提言でございます。したがいまして、両方の機能を仮に持つとしますと、なかなかそちらとこちらの区別というのがわかりにくい面が出てくるんじゃないかと思いますけれども、それはなぜかというと、現在の要介護老人なり要介護老人を抱える家庭ニーズを見ると、生活の世話だけのニーズでは足りない、医療だけのニーズでは足りない、両方のニーズを満たしてやる必要があるんではないかという御提言でございます。  したがいまして、両方欲張った施設にいたしておるためにややわかりにくい点があろうかと思いますけれども、これからの高齢化社会を乗り切っていくためにはどうしてもそういう新しいタイプの中間施設が必要ではないかということで私ども制度の御提案を申し上げているということで御理解をいただきたいと思います。
  203. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人保健施設というのはいつまでに幾つぐらいおつくりになるつもりですか。そしてあわせてお聞きしたいのは、特別養護老人ホームは今幾つくらいありまして、収容人員は何人ぐらいかということなんです。
  204. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設の今後の整備見通しでございますけれども昭和七十五年時点、二十一世紀の初頭におきまして私どもは二十六万から三十万床程度つくりたい。この時点の要介護老人数、寝たきり老人数を百万人程度見ておりますから、私どもの考えは三割程度老人保健施設で引き受けるように設計をし、整備を進めていきたいということでございます。
  205. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 御質問の後段の特別養護老人ホーム施設数と収容人員を申し上げます。  昭和六十年十月現在の施設数で申しますと、千六百十九カ所、定員は十一万九千八百五十八人となっております。
  206. 中西珠子

    ○中西珠子君 入所希望している、待機させられている人が大変多いと聞いたんですが、それは何人ぐらいいますか。
  207. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 大体二万人と把握をしております。
  208. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは年々ふえているわけでしょう。
  209. 小林功典

    政府委員(小林功典君) ちょっと今、年度の推移を持っていませんが、ここ数年来かなり大きな規模で定員をふやしてまいっておりますので、年年ふえているということはないと思います。大体毎年八千人程度整備をここ数年間続けてまいりましたので、年々ふえているということはないと思います。
  210. 中西珠子

    ○中西珠子君 東京都あたりでは年々ふえているらしいですね。二、三年前は一千百幾らとかという数字だったのが、最近はもう二千四百ぐらいになっているとかって聞いていますけれども、とにかく養護老人ホーム、殊に特別養護老人ホームというものはやはり非常に需要がある、入りたい人が多いと思うんですけれども、これをふやすというお気持ちは全然ないわけですか。
  211. 小林功典

    政府委員(小林功典君) かなり大幅にふやさなければならないと思っております。ただいま申しましたように、この数年来箇所数で百二十カ所、定員で申しますと八千人程度の規模で整備を続けてまいりましたけれども、このペースを落とさないで将来もふやしていきたいというふうに考えております。
  212. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人病院というものが、この前の老人保健法の審議の過程では出てこなかったのが、法律が制定されました後で老人病院というのが出てきて、そしてその中には特例許可老人病院というのと特例許可外老人病院というのがあるそうなんですが、この違いはどういうところにございますんですか。
  213. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) まず特例許可老人病院でございますが、これは六十五歳以上の慢性疾患患者を七〇%以上収容している病院でありまして、医師等の要員配置についての医療法上の特例の承認を受けたものでございます。一方特例許可外老人病院でございますが、特例許可の承認を受けていない病院でございます。要員等が不足しているために承認が受けられない状態にある病院が主でございますけれども、一定期間に七十歳以上の老人患者を六〇%以上収容している病院、もちろん基準看護等の承認を受けた病院を除くわけでございます。  いずれにいたしましても、特例許可病院は特例的な医療法上の承認を受けたもの、特例許可外病院は一定以上の患者を収容していながらその特例の許可を受けてない病院、そこで特例許可病院と特例許可外病院というのが二つ存在をしているということでございます。
  214. 中西珠子

    ○中西珠子君 診療報酬も変わっているわけでしょう、特例許可老人病院と特例許可外老人病院と。
  215. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) お答えいたしましたように、特例許可病院と特例許可外老人病院は要員についての差があるわけでございます。許可外病院の方が要員の配置において許可病院に劣っているわけでございます。そういう意味から、私どもの診療報酬におきましてもその実態に見合った診療報酬を設定いたしておるということでございます。  特に、端的に申し上げまして、検査とか入院とかそういった診療報酬について、特例許可外病院につきましてはかなりいわゆる丸めをきつくいたしておるわけでございますが、この考え方は、そういう要員が不十分なままの病院がいろんな検査なりいろんな投薬その他の医療行為というものに行き過ぎがあるというのはやはり老人患者にとって適当ではないんではなかろうかということで、入院、検査等について丸めを強めております。  もちろん老人立場というものは重要でございますから、入院されております老人にとって医療上必要があります場合には、先ほど丸めと言いましたけれども、必要な医療はやってもいいという形をとっておりますので、私どもは、診療報酬に差をつけておりますけれども老人医療にとっては支障がないと思っておりますし、それぞれの病院の実態に合わした診療報酬でございますから、それぞれの病院としての運営も十分やっていけるものというふうに判断をいたしております。
  216. 中西珠子

    ○中西珠子君 今おっしゃいましたいわゆる丸めですね。この丸めのために月に一回しか注射してもらえないとか、それからいろいろの検査、それも月に一回しかしてもらえないとか、そういったことが患者の側の不平不満としてあるわけですね。  そしてもう一つ困ったことは、患者の方からいいますと、自分が入った病院もしくは入れられた病院が特例許可病院なのか特例許可外病院なのかわからないわけですね。ですから、入ってみたら、何だか知らないけれどもここの病院はとにかく注射も数が限られているし、それから検査というのも数が限られている。ひどいところは月に一回ということなんだということで、これはどうしたことかといろいろ訴えに来る方もあるわけでございます。私は素人だからわからないんですけれども、そういう訴えが非常にあるわけですね。  そしてまた、特例許可の病院というのは、毎年一月一日から三月三十一日までの間に七十歳以上の人が六〇%いると特例許可外病院になっちゃう、だからとにかくその間に一回外へ出てもらって、またその後入ってくればいいんだということで、病院を出されてみたりまた入ってきたりなんていう人も随分いるようですが、そういう実態は厚生省の方はどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  217. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 特例許可外病院につきましては、先ほど申し上げましたように、むしろ要員をきちっと整えていないところに問題があるわけでございまして、私どもは一刻も早くその特例の承認基準、許可基準に合わしたお医者さんなり看護婦さんの配置をしていただいて、老人の診療に、医療に万全の体制をむしろとっていただきたいと思っているわけでございます。この特例許可外病院はたしか年々数字的には減少いたしておりまして、私どもは、老人病院と申すものはやはり特例許可病院の方でございまして、許可外病院というのはやはり問題がある病院だなという印象でございます。  しかし、お年寄りがその中での医療に問題があってはなりませんので、先ほど申しましたように、点数は丸めている部分がございますけれども、どうしても医療上必要があれば何回算定をしてもいいという形になっておりますので、お年寄り医療には支障が生じないような診療報酬にしてあるということで、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  218. 中西珠子

    ○中西珠子君 そうすると、老人患者が必要なときは、丸めだけじゃなくて、何回も検査をした、何回も注射したというときには、出来高払いで加算されるわけですか、そこのところは。
  219. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 診療報酬上は、ただし「特別の事情のある場合を除き、一月につき一回に限り」というような表現をしておりまして、「特別の事情のある場合」というのは除外をいたしまして、その他について一月に一回に限っておりますので、特別の事情があればそれにふさわしい医療をやっても結構であるということでございます。
  220. 中西珠子

    ○中西珠子君 そのふさわしい医療をしても結構ということは、出来高払いで、後から足してあげるということですか。けれども、月一回と書いてありますと、どうしても月一回になるらしいんですね。私は表を持っているんですけれどもね。それで、患者の方からいいますと、特例許可外とか特例許可というのが表に看板として出ていないわけだから、わからないわけです。だから、入っちゃったら特例許可外であったというふうなことで、大変困る人がいるわけなんですが、ですから特例許可外はもうなるたけなくなすという方向で一層の御努力を願わないと困ると思うんです。  また後で診療報酬の問題なども時間がございましたらもう少しやらしていただきたいと思いますけれども、それでは特別養護老人ホームに入る人と老人保健施設に入る人というのはどういうふうに区別なさいますか。老人保健施設に入る人は、とにかく入院していたときのお医者様が必ず入りなさいと言った人が入るということですか、それとも自分の意思で入っていいということですか。特養の方は措置ということで社会福祉事務所が措置するわけでしょうが、老人保健施設の方の対象になる人はどういうふうにしてお決めになりますか。
  221. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御提案申し上げております老人保健施設は、いわゆる利用型の施設でございます。病院と同じとお考えいただいていいと思いますけれども、いわゆる保険証を持って入院をしたいというのと同じようにこの施設を利用したいという形で、当該施設の方でオーケーが出れば、また患者さんも同意されればそこで入所が決まるという形になっております。  そこで、病院老人保健施設の区分けをどうするかということでございますけれども、観念的には病院入院治療をしてもらうために入られるところでございますし、この老人保健施設入院治療が終わった後、家庭復帰までの間のリハビリ医療ケアをやっていただく施設でございますから、恐らくそういう制度理解された上での患者側の御希望と、それからそこに勤務されているお医者さんが寝たきり老人の病状その他身体的な状況等を総合的に見て、その患者さん側と施設側で利用の契約がなされる、そういう形で入所が決まっていくんではないかというふうに考えております。  特養は、先生御指摘のとおり、福祉事務所が措置という形で入所を決めますので、この点は問題はなかろうというふうに思っています。
  222. 中西珠子

    ○中西珠子君 老人保健施設の方は、入院が終わって、そして家庭復帰との間で、いわばハーフウエーハウスのようにするのだという御答弁でございましたけれども入院していなかったんだけれども家庭ではもうとてもとても面倒が見切れないし、もう少し医療的な介護をやった方がいいということであって、そして入りたいというときはどういうふうな手続になるんですか。
  223. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 在宅寝たきり老人が病状が悪化しまして、しかし入院治療するほどの必要はないけれども、やはり医療ケア等を受けながら、そして療養される必要があるというケースについてのお尋ねだと思いますが、もちろん恐らくそれを診られております主治医の方と、それからこの施設の管理医師の間で御相談があって、当該施設に受け入れることがふさわしい、そういう寝たきり老人だということになれば、もちろん家庭におられる老人も、何も病院に行って治される必要がない程度病気だということであれば、この施設の入所は可能でございます。
  224. 中西珠子

    ○中西珠子君 これの費用なんでございますが、先ほど生活的な面は本人の負担ということで大体五万円を考えているということでございましたね。そしてその内訳は、食事が三万八千円、おむつ代が九千円、それから諸雑費は七千円というふうなお答えでございましたが、それじゃ、老人保健施設に入りまして、必要な医療を受けるということに対しては施設療養費というものが出るのだと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。  そうすると、その施設療養費の決め方でございますが、これは二十万円ぐらいというふうなお答えが前回にあったというふうに記憶しておりますけれども、この施設療養費の決め方でございますけれども、平均的なところをとったのだということで、また法律の中にもそのように書いてございますが、二十万円というのが平均的な療養の費用とお考えになって、そして例えば老人保健施設に百人いるとすると二十万円掛ける百ということで施設にお払いになる、こういうことですか。
  225. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 利用者負担の点は御指摘のとおりでございます。  療養費の方でございますけれども、私ども医療サービスについては全額給付をしようということでございます。したがって、利用者負担五万円とそれから医療サービス療養費二十万で、合計二十五万でこの施設の経営ということになるわけでございます。私どもがこういった形で説明をお願いしているのは、一つはやはり老人病院とそれから特別養護老人ホームの中間的な機能を発揮するという面に着目している面もあるわけでございます。  老人病院が現在長期入院患者は一月約三十万ぐらいかかっておるわけでございますし、特別養護老人ホームは二十万円程度かかっているという中で、まあここの運営は二十五万程度あれば運営できるんではなかろうかという見通しでございまして、この点は病院関係の人とかいろんな方々にも非公式に確認等をいたしているわけでありますけれども、その程度あればというお答えも多いわけであります。  いずれにしてもこの点は、これからの例えば要員、看護婦、介護人、その他人員配置をどうするのか。人件費が中心施設になりますから、何としても職種なりあるいは人員数なりという、そこのところが確定をしていかないと正確な私どもの方の見積もりなり金額というのは出ないわけでありまして、現時点ではまだ看護婦は七ないし十人とか、介護職員は十五人から十八人程度ということで、まだ幅を持ってお答えさせていただいておりますけれども、これからモデル実験等を重ねながら必要な要員見込みというものをきっちり見積もって、先ほど申しました金額等は審議会にもお聞きしながら確定をしてまいりたいということでございます。
  226. 中西珠子

    ○中西珠子君 それで、その施設療養費というのは大体今は二十万ぐらいと考えていらっしゃるわけですね。ちょうど特別養護老人ホームの二十万とそれから老人病院の三十万の間の、五万円の生活自己負担を足すと大体間ぐらいと、こう考えていらっしゃる。そのことでも中間施設という意味かもしれませんけれども、とにかく平均的な費用を基礎として厚生大臣がお決めになる、こういうことなんでございますが、一応二十万というふうな、これは仮に二十万としたような定額になすっている理由というのはどういうことなんでしょうか。
  227. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設で行われます医療ケアでございますけれども病院と違いまして、病状安定期の寝たきり老人に対しますところの看護とか介護とかリハビリとか、その他定型的な医療中心ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  したがって、この費用の支払い方でございますけれども、個々の患者さんごとに、あるいは症状ごとに、例えばアスピリンを飲ましたから幾ら、抗生物質を与えたから幾ら、こういう包帯をしたから幾らというようなことではなくて、そういうサービスを平均的に金額を出さしていただきまして、その中で定額の形で払う方がこの施設にふさわしい医療費の支払い方ではなかろうかということで、今先生が御指摘のように、平均的な費用を基礎としてはじくという考え方で御提案を申し上げているということでございます。
  228. 中西珠子

    ○中西珠子君 この四十六条の二の4に、平均的な費用を基礎としてと書いてありますから、今のところは二十万とお考えなのかもしれないけれども、定額で平均的な費用ということにつきましては、私どもの同僚議員の高桑さんから大変反対が出まして、まるで請負のようだと言われたわけですけれども、私はお医者さんじゃないんですから患者の側から考えますと、一応この施設療養費は平均的に一人二十万ということで施設に支払われるわけですね。そうすると、大変良心的な施設であれば丁寧にその場その場で必要なものはお薬もくれるし注射もするということで治療をして、いわゆる定型的な安定した状態に対する医療なんだとおっしゃいますけれども、時には風邪を引いたりおなかを悪くするとかいろいろありますね。そういったときに自分はちゃんとした医療、ちゃんとした看護をしてもらっていないという感じを受けることがあるかもしれないと思うんです。  施設によって良心的で丁重に扱ってくれるところはいいかもしれませんけれども、余り丁重にやったり余り一生懸命医療というものをやれば赤字になるという心配もある。どうしても施設の方は採算をとらなきゃならないから少し差し控えてやろうではないかという気持ちにならないとも限らないんじゃないか。それで、定額にするということによって医療内容が低下してくる、介護内容も低下してくるのではないか、これは患者の側から感じるわけですけれども、そういう心配はないのでしょうか。
  229. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 定額払いとそれからサービスの質の低下の関連についてのお尋ねでございます。  私どもは定額だからサービスの質が低下するとは考えておりません。もとより、個々の中に行われますいろんなサービスが、私どもの考えておりますように、老人にふさわしいものとなりますようにするためには、いろんな方途があろうかと思いますけれども、やはり一つは、現在の保険医療と同じように、施設療養の担当の指針みたいなものを定めさせていただきまして、これを運営基準で定めたいと思っておりますけれども、やはり医療の場合の提供の指針みたいなものはぜひつくりたいということでございます。  それから、その他のサービス面についてもやはり運営基準でガイドライン等を示しながら指導してまいりたいと思っておりますが、いずれにしても、個々の施設サービスのかぎを握っているのは、やはり要員をどういうふうに配置をするかということだと思います。先ほどの特例許可外病院ではありませんけれども、要員が不十分なままということですとそれはいろんな面でサービスの質の低下を来しますので、人員の配置基準というものはきっちり運営基準で定めまして、もとよりそれは運営基準でございますから、それに違反しておりますと改善命令もかけられますし、それに従わなければ取り消しというところまでできる運営基準の形でございますから、そういうような基準をきっちり定めながら、先生御指摘のように、定額払いということも十分頭に置きまして、個々の施設サービスが低下しないように、老人にふさわしくない形でのサービスが行われることのないように、最善の基準その他、今後の指導を図っていかなきゃいかぬというふうに考えております。
  230. 中西珠子

    ○中西珠子君 その要員の基準も定める、これは後ほど老人保健審議会などに審議してもらって、そして厚生大臣がお決めになるということらしいんですけれども、現在はお医者様は一人と考えていらっしゃるんでしょう。それで、その医師施設療養の管理をやる、施設療養に対しては責任を持つけれども、ほかの老人保健施設そのものについては、やはり経営とかそのほかの面では全然タッチしないということなんですね。ですから、その施設の管理者ではないわけでしょう、お医者様は。施設療養についてだけ責任を持つということなんですね。確認ですけれども
  231. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私ども考え方は、施設療養についてはこれは医療でございますから、医療法との関係もこれあり、きちっと法律的にその管理責任を明記して御提案をしているということでございます。もとより、特養その他にも施設長についての基準等が示されておりますけれども、私どもとしてもこれも運営基準等で施設長についての望ましい資格要件等を定めまして、その方が全体的な施設の管理に当たられる。しかし、医療については、法律で書いてございますように、お医者さんが責任を持ってやってもらうという中で、私ども運営適正化を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  232. 中西珠子

    ○中西珠子君 しかし、この老人保健施設医療法の適用がないわけですね。ですから、この施設療養を請け負う――請け負うという言葉は悪いかもしれませんけれども、一応請負のような形で定額でやってくれということでなさるお医者さんというのもとてもやりにくいと思うんです。それから、とにかく医療法の適用もないことだから、幾らガイドラインをおつくりになって、そして改善命令も出せるとおっしゃっても、やっぱり寝たきり老人の簡易収容施設というふうなものになる危険がないわけではないと思うんです。昨日の参考人の御意見を伺いました中にも、うば捨て山になる危険があるなんていうことを指摘された人もあったわけですけれども、そういうことが絶対ございませんように、やはりちゃんとしたガイドラインをおつくりになってやっていただきたいと思うわけでございます。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕  それで、結局私は患者の側から一つ疑問なのは、例えばこの老人保健施設に入っている患者は、老人として病気は持っているけれども病状が安定しているから定型的な医療でいいんだということで、療養費が定額ということになっているわけですね。しかし、急に何か発作が起きたとか、どこかから転げ落ちて足が折れちゃったとか、そういうふうな緊急の事態というものも起きる可能性はございます。そういったときにはどうなさるんですか。その施設にいる一人のお医者様がそれで対応ができるときはいいけれども、対応なさったときは結局包括的にお払いになる定額の中ではカバーできないわけでしょう。そうすると、別途そのお医者様に対して謝礼の意味で加算したものをお払いになるのか。  それから、外部から来ていただいたとき、これはもう出来高払いで診療報酬できますね、ちゃんとお払いできますね。そうしたら、今度は外部から往診したお医者さんが入院しなさいと言ったとき、そうすると入院させた場合、病院への支払いというのは患者の方はどうなるんでしょうか。こちらの外来で往診してくださったお医者様に対しては保険から払えますね。だけれども入院した場合、やっぱり自己負担ございますでしょう。その自己負担プラス保険外負担入院ですから保険外負担。差額ベッド、それから看護婦の付添料、それからまたおむつ代とか、そのほかの保険外負担、いわゆるお世話料というものも含まれて、患者がやはり負担しなくちゃいけないということになるんでしょうか。そこのところはちょっと詳しくお聞きかせいただきたいんです。これは患者立場から一体どういうことになるだろうと心配なものですから。
  233. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 緊急の場合と老人の方が病院に転院される等の取り扱いでございます。  基本的には、私どもはこの施設で症状安定期の療養サービスはお願いいたしたいと思っておるわけでありますけれども、しかし、症状が急変した、突発的に医療が必要になったという場合も、もちろん想定をする必要があるわけでございます。そのために、私どもはぜひ協力病院というものを老人保健施設はやはり決めておくというような形での指導もしておきたいと思っておるわけでございまして、基本的にはそういう病状急変等の突発的な場合には協力病院に転院していただく、あるいは協力病院から往診をしていただくという形で対応がなされるものと考えております。  その場合の費用でございますが、もちろん保険医療機関としてお年寄り医療が往診の形ないしは病院への収容の形で行われるわけでございますから、出来高払いで保険医療の形で費用がお支払いされるということでございますから、先ほどのお尋ねの、じゃ患者負担はどうなるかということでございますが、病院に入られたときからそのお年寄りは、今回ですと、一日五百円をその時点から払っていただくことになるということでございます。  それから、老人保健施設のお医者さんがやった場合にはどうなるかということでございますけれども、これは私どもは一律定額ではなくて、やはり定額制の中で何らかの個別的な、あるいは別途の評価をその場合にはする工夫が要るんではないか。突発的な場合に往診を求める、あるいは転院させるんではなくて、当該施設のお医者様が応急的な手当てをされたというケースでございますから、そこのところは、大臣も答えていますように、何らかの工夫を今後検討していきたいというふうに考えております。
  234. 中西珠子

    ○中西珠子君 この法律をとにかく通してほしい。そうすれば、モデルをつくって試行してみて、施設、設備の基準、また人員配置の基準、運営の基準などを老人保健審議会に諮って決めるということなんでございますけれども老人保健審議会のまだ権限が拡大されていない段階でそれをお諮りになったときに、いろいろの意見があったらしゅうございますね。  それで、老人保健審議会の権限を法改正によって明確にした上で審議を行うべきであるということを、老人保健施設に関する事項については言われた委員もある。これは大体労働団体の委員らしいんですね。  それからまた、新たな施設体系創設であるので、所期の目的を達するためにはもっと時間をかけた慎重な検討が必要だと、慎重な検討を加えて、当審議会でも十分審議を尽くした上で法の制定を図るべきであるし、法制定はもっと検討を重ねた後の方がいいという御意見の方が随分あったらしい。被用者保険の拠出者団体関係委員とか、福祉団体関係委員とか、まあ相当あったらしいですね。  それから、老人保健審議会の権限の拡大は反対だし、改組というものにも反対だという御意見の方もあったらしい。それは医療団体の関係の方々だったらしいということが報告されておりまして、そしてまあ定額の老人保健の施設療養費、それから老人保健の施設、設備の基準とか、人員の基準というものは中央社会保険医療協議会でむしろ審議すべきものであるという御意見もあったというふうに伺っておりますが、これは本当でございますか。
  235. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健審議会の答申を引用されての御指摘でございますけれども老人保健施設に関する事項につきましては、こういうふうにまず書かれております。「今後増大する要介護老人の多様なニーズに応えるため、老人保健施設の導入が必要であり、その趣旨については、大方の理解が得られた。しかし、」各論においていろいろと「意見がわかれた」ということで、先ほど御指摘になったような問題点が、いろいろ関係団体それぞれの立場から御意見があり、それが答申の形で書き込まれているということでございます。  必ずしも全部の委員が時期尚早とかあるいは問題が多いということじゃございませんで、やはりこれからのお年寄りニーズにこたえるためにはその導入が必要であるし、やはり今回の改正原案については賛成するという方も多くおられたわけでございますので、その点は答申がいろいろな意見も出ておるということの前提の上に、先ほど申しましたように、大筋においては理解が得られているということでございますから、私どもはこの答申をもとに今回国会に改正案を出させていただいたということでございます。
  236. 中西珠子

    ○中西珠子君 これからモデルをおつくりになって、いろいろ試行実施してごらんになるわけですね。まあいろいろ疑問のところとか問題だなとか、あいまいなところがあるわけで、そういうモデルを実施してごらんになる段階でまたこれが解明されて、その解決に向かうということもあると思うんでございますが、そういう具体的な問題に関するデータというものをもっとお集めになった上で、法案として提出なさるべきではないかと思うんです。  中間施設というものは大事だと思うし、必要だと思うんです。ですけれども、何だかはっきりしない面が非常にあるわけで、ですからもう少しモデルをやってみて、それからその後のデータを集めて国会で審議するというふうなことにならないでしょうか。あんまり漠然としたはっきりしないものに対して、やってもよろしい、やってみなさいということを言うのは、やはり国民から信託を受けている国会議員としては責任が十分に果たせないのではないかと思うわけです。  昨日の参考人の御意見の中にも、老人保健施設に関しては非常に重要な点はみんな省令委任というふうになっているし、もちろん老人保健審議会その他の意見を聞いてお決めになるんでしょうけれども、それにしてもやはり国会の審議軽視ではないかという御意見が鋭く指摘されたわけでございまして、私どもも本当にこのままでやっていただいて、果たして国会審議を十分に尽くしたと言えるのかしらという心配も大変あるわけでございます。  ですから、少なくとも附則の中にでもモデル実施の後データを入れて、もう一度国会で審議するというふうなことを入れていただくとか、それとも、もう少し老人保健施設に関しては法案として提案なさるのを延ばしていただくとか、そういうことが望ましいと思うわけなんですが、いかがでしょうか。
  237. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設につきましては、いわゆる中間施設ということで、ハーフウエーハウスなりナーシングホームということで呼ばれていたわけでありますけれども、四十年代から既にこの施設の検討をという答申等があるわけでございまして、やはり私どもとしては長年の懸案であった事項だというふうに一つは受けとめております。  それが、先ほど申し上げましたように、制度審議会の提言、中間施設の懇談会、老人保健審議会意見、答申というような形でだんだんとその必要性なり、その制度化というものが急ピッチで要請されてまいりまして、私どもとしては、やはり制度基本というものは検討の上、こういうことではないかということで御提案を申し上げておるわけでございまして、それ以外の実施の細則、政省令事項等につきましても、できる限り私ども考え方というものは審議を通じて明らかにしてきたつもりでございます。  したがって、どうしても具体的な金額なり平米数などまではやはり法律では無理でございますので、ぜひ政省令事項に委任をさしていただきたいと思うわけでありますけれども、その考え方は御説明をできるだけしてきたつもりでございます。その具体的な決定についてこれからモデルをやって、関係審議会で御議論をいただいて、最終的に具体的な実施の細則を含めまして、コンクリートな成案を得たいと思っておりますが、それまでの過程におきましても、あるいはその結論が出た段階におきましても国会に報告せよと、こういうことでございます。私どもは、国会としてあるいは委員会としてその報告の要請があれば、もちろん当然報告をして、説明を申し上げるべき事項だというふうに考えておる次第でございます。
  238. 中西珠子

    ○中西珠子君 先ほども申し上げたように、中間施設は必要だと思っているんですよ。それで、殊に在宅介護というものを非常に強調されて、それに対する公的サービスもこれからはふやしていくとはおっしゃっていましても、やはり老人介護をやっているのは女の人が多いわけですね。ほとんど九割近い人が女性であるということで、寝たきり老人介護をしていて、そしてしかも中高年になっている人も多い。一方また、働きながら老人の面倒を見ている人もいるわけですね。ですから、これは必要だと思っているんですよ。  しかし、これは全く新しいものですから、中間施設のようなものに対する要望というものはもう前からあったことも私はよく存じておりますし、私自身も必要だと思っているんですけれども、でも全く新しいものをつくるわけですから、それでいろいろ御説明をいただいたということでございまして、またモデルをつくって試行してみて、それから具体的な基準というものをつくっていく、ガイドラインもつくっていくとおっしゃいますけれども、モデルをつくって試行するのは法改正しないとできませんか。
  239. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは、一つは国会との関係で、この制度が認められない前にモデルの実施をするのはいかがなものかなと考えておりますのが一つでございますし、もう一つ医療法との関係、あるいは保健診療との関係等、いろいろ難しい法制的な面がございまして、私どもはやはり法律をお認め願った以降にこのモデル実施、試行的実施はすべきものというふうに考えております。
  240. 中西珠子

    ○中西珠子君 これはいつまでも延々とやっていると水かけ論になりますから、少なくともモデルを実施した後でデータを出して、国会と相談して国会審議を経てから二十六万床、三十万床というその計画的な実施の段階に入っていただきたいと思うわけです。  これがまた医療法の適用もないのに、この老人保健施設で何人収容ということは医療法の中の病院ベッド数としてカウントするわけでしょう。そうすると、やっぱり少し慎重にやっていただかないと困るのではないかと思うんですね。それからまた、大変変な言い方だけれども、うば捨て山になるんじゃないかとか簡易収容施設になるんじゃないかといういろいろな心配をしている向きもあるわけですから、ぜひモデル実施のデータというものは国会に出していただいて、そして長期的な計画で本当に着手するときには国会の承認を得るというふうな方向にいっていただきたい、これは要望いたしておきます。それはもう絶対無理ですか。
  241. 岩崎純三

    理事岩崎純三君) 要望ですか。
  242. 中西珠子

    ○中西珠子君 無理ですかと聞いているんです。
  243. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) モデル事業実施し、そしてこれらを踏まえ、また国会での御審議のいろいろな御意見を踏まえ、そして老人保健審議会でいろいろな細目についてお決めいただく、そういう際に国会に報告するかと、こういうお話でございますが、各委員の御要請、御質疑やまた委員会の御要請、国会からの御要請があれば、当然御報告をさせていただきたいと思っております。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕
  244. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでちょっとお伺いしたいんですけれども、この老人保健施設というのを段階的に整備なさっていくということですね。総医療費というものは減るんでしょうか。どういうふうになりますでしょうか。
  245. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設を段階的に整備していった場合の総医療費につきまして、非常に大胆でございますが、私どもは一定の試算をいたしております。  老人医療費につきましては、現状のまま推移いたしますと年率一〇%程度で伸びていくだろうと見込んでおりますが、その場合、昭和七十五年度では十五兆五千億程度になるというふうに見込まれるわけでございます。一方、老人保健施設昭和七十五年度を目途に二十六ないし三十万床を計画的に整備しまして、あわせて老人保健施設在宅支援機能その他在宅対策の強化を図ることによりまして、いわゆる社会的入院が是正されるというような効果を織り込みまして試算いたしますと、老人保健施設が計画的に整備された場合は老人医療費の伸びが年率で約二ポイント低下するんではないか。その場合の昭和七十五年度の医療見込みとして、先ほどの十五兆五千億が十二兆五千億程度、約三兆円程度が縮減するんではないかと見込んでおります。
  246. 中西珠子

    ○中西珠子君 総医療費の削減に大変役に立つということですね。  次に、加入者按分率関係質問をさせていただきたいと思います。  いろんな保険制度における老人加入率の推移、これの過去と将来の見通しについて伺いたいと思います。
  247. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 各保険制度における老人加入率の過去と将来の推移でございます。  主な制度で申し上げますと、政管につきましては、五十七年度が四・〇でございますが、これが五十八年度四・一、五十九年度四・一、六十年度四・三、六十一年度四・三、六十二年度四・三、六十三年度四・四、六十四年度四・四、六十五年度が四・四ということで、ほぼ四%の前半を推移するんではないかということでございます。  もう一つの組合健保について申し上げますと、五十七年度から五十九年度までが二・八で推移し、六十年度から二・九、六十一年度も二・九になりまして、六十二年度が三・〇というピーク時がありますが、六十三年度以降また二・九が六十五年度まで続くんではないか。本当に細かいところの変動でございまして、おおむね二%の上の方で推移するんではないかということでございます。  国保でございますけれども、五十七年度が一〇・七でございます。五十八年度が一一・〇、五十九年度が一一・六、六十年度が一一・五、六十一年度が一二・五、六十二年度が一三・四、六十三年度が一四・三、六十四年度が一四・八、六十五年度には一五・六ということでございまして、国保については老人加入率が年々高まっていくんではないかというふうに見ております。
  248. 中西珠子

    ○中西珠子君 今、老人加入率の過去と将来の推移というものを伺ったわけですが、国保は絶対的に老人加入率が高いわけですね。ほかの政管それから組合健保、これはもう本当に余り変わりがなく低いところで推移しているということなんでございますけれども国保財政が赤字というのは、老人加入率が高いからそれで老人医療費が非常にかさばっているということだけが理由ではないんでしょう。いかがなんですか。  退職者医療制度の加入対象者見込み違いというふうなことから国保の赤字が発生したということを言う人もいますし、また、そういう赤字の救済のために今回加入者按分率を引き上げるのではないかというふうなことを言う人もいるわけですが、ここのところは、国保財政状態が非常に緊迫しているという理由についてどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  249. 下村健

    政府委員(下村健君) 国保の赤字の原因といたしましては、ただいまお話がございましたように、退職者医療が非常に大きな影響を与えているんではないか、こういう御意見もございます。  ただ、退職者医療につきましては、確かに私どもが予定したような効果が出ませんで、五十九年度で約六百億、六十年度で千四百億、六十一年度が約千五百億というような影響がある、こう見られているわけでございますが、それにつきましては、六十年度は千四百億の影響額に対して約千三百七十億ばかり、それから六十二年度につきましては、今回の老人保健法の影響等も見込みまして千五百億に対してほぼその満額に近い財政措置、金目の方からいいますと約一千億の措置をとりまして、これと老人保健の見直しの影響によりましてほぼ退職者医療の影響はないものと見ているわけでございます。  そういう経過から見ますと、これを超えてさらに国保財政が悪化しているというのは、五十九年度の六百億という影響が残っておりますが、これを六十年度の保険料を先食いする、例えばそういうふうな形で国保が対応しておりますと、六百億の影響が今日まで丸々残っている、こういう見方もできるんですけれども、各市町村でかなりいろいろ、一般会計からの繰り入れ等、相当の努力をしたという面があるわけでございます。五十九年度はそれなりの対応をしているわけでございまして、それらの事情を考えあわせますと、国保の赤字要因としては、ただいま老人保健部長が申しましたような老人の加入率の格差というふうなところに見られるような、また他方、低所得者が多いというふうな構造的な要因が一番基本的な原因としては大きいというふうに私どもは見ておるわけでございます。
  250. 中西珠子

    ○中西珠子君 保険料収納率はどうなんですか。
  251. 下村健

    政府委員(下村健君) 保険料収納率は、五十年当時が九五・九%あったわけでございますが、その後、五十四年には九四%台、それから五十六、七、八、九年と最近は九三%台に下がってきているわけでございます。ただ、同じ九三%でも五十八年から九年にかけては、五十八年が九三・四%から五十九年の九三・六%に、やや市町村関係者の努力が実ったというふうな格好もございまして、今後とも保険料収納率の向上につきましてさらに努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
  252. 中西珠子

    ○中西珠子君 都市と農村地帯とか、そういう収納率の差というのはあるわけでしょう。どういうふうになっておりますか。
  253. 下村健

    政府委員(下村健君) 一般に都市部の方が低いというふうなことが言われているわけでございますが、市の方の平均で申しますと、市の平均収納率が五十九年度で九二・四四%、町村が九六・四一%という格好になっております。市の中で規模別に見てまいりますと、五万人未満のところが九三・四四、五万人以上十万人未満が九一・五八、十万人以上が九二・二一ということで、必ずしも規模に比例いたしておりませんが、一般的に言えば、市の方が町村に比べて収納率が低いという格好になっております。
  254. 中西珠子

    ○中西珠子君 この収納率を高めるための努力は、厚生省はやっていらっしゃるわけでございましょう。どういう指導をしていらっしゃるんですか。
  255. 下村健

    政府委員(下村健君) 対策といたしましては、保険料収納率の向上三カ年計画、これを五十九年度から六十一年度でつくりまして、これの推進ということをやっておるわけでございます。  具体的には、休日あるいは夜間訪問ということで、特に都市部が低いということはなかなか加入者の把握が困難という事情があるわけでございますので、こういう形で収納率向上の努力を行うというふうなことを指導いたしておりまして、そういうふうな収納率向上のための事業を行う市町村に対しまして、特別の助成措置を講ずるということをやっているわけでございます。  また、財政的な面におきましても、保険料収納率の高い市町村を優遇するという趣旨で、収納率が低い町村につきましては財政調整交付金の交付の上で減額措置を講ずるということで、保険料収納率の向上のためのインセンティブを与えるというふうなことを考えているわけでございます。  今後とも、引き続きこのような措置を推進するということで考えているわけでございますが、これにあわせて、現在御審議いただいております老人保健法等改正法案におきましても、悪質滞納者につきまして保険給付の一時差しとめ等の措置を内容とする国民健康保険法の改正をお願いいたしておるところでございます。これらをあわせまして、今後とも保険料収納率の向上に努力をいたしてまいりたいと考えております。
  256. 中西珠子

    ○中西珠子君 先ほど、国保財政の赤字の原因として、加入者に低所得層が多いという構造的な原因もあるということをおっしゃいましたけれども、年間所得百万円未満の世帯というのはどのくらい入っていますか。
  257. 下村健

    政府委員(下村健君) 四四・三%でございます。
  258. 中西珠子

    ○中西珠子君 年間所得二百万未満の加入者はどのくらいですか。
  259. 下村健

    政府委員(下村健君) 百万から二百万の間に属する者の割合でございますが、二八・六でございます。
  260. 中西珠子

    ○中西珠子君 そうすると、二百万以下が大体七二・九%ぐらいいるということですね。  それから、非常に国保財政が赤字になったについてはいろんな理由があるでしょうけれども、殊に退職者医療見込み違いということを盛んに言う人が多いわけですが、厚生省の方は余り影響がなかったとおっしゃって、そしてそれはもう既に補正予算その他で措置済みというふうにおっしゃっておりますけれども、市町村はやっぱり国保財政の赤字というものを非常に困ったことだと考えて、どうしても国保料というものを上げているわけですね。昨日の参考人の御意見の中にも、もう既に過去三年間において三六%上げたところが非常に多くて、それが平均になっているというお話を聞いたわけでございます。  現在、地域によっては円高不況とか構造的な不況というふうなもので悩まされている業種も多いし、そういう業種の自営業者というものは、保険料が高くなったらなかなか払いにくいということもありますでしょう。また、今お聞きしたお答えにもあったように、年間所得二百万円以下というのが非常に多くて、七二・九%を二百万円以下の人が占めているという状況の中で、やはり支払えなくて滞納する人というのはふえていると思うんですね。  今度は、滞納している人に対する制裁的な措置というものをこの法案の中で提案なすっておりますけれども、災害その他特別の事情ではない事情で滞納をしているいわゆる悪質な滞納者というのはどういう人をお考えになっていますか。
  261. 下村健

    政府委員(下村健君) 悪質滞納者とは、ただいまお話にも出ましたように、災害、失業あるいは長期入院というふうな特別な理由がない、合理的な理由がないのに故意に保険料を滞納している者ということで考えておるわけでございます。一時的な、単に一回だけ滞納したということではなくて、長期間の滞納をしているというふうな事情がある、あるいは財産の名義の変更を行うというふうな措置を行いまして、保険料の納付を回避する意図が明らかに認められるというふうな者が悪質な滞納者であるというふうに考えております。
  262. 中西珠子

    ○中西珠子君 国保の加入者の中で、非常に所得が低くて国保料が払いたくても払えない人がいるわけですね。そういう人には減免措置があるわけですね。そうすると、幾らぐらいの所得の人に対して減免措置があるわけですか。
  263. 下村健

    政府委員(下村健君) 国保保険料の軽減につきましては、六割軽減という対象と四割軽減と二種類ございまして、六割軽減の場合は二十七万円以下の場合、それから四割軽減の場合は、二十七万円に世帯員一人につきまして二十万円をプラスいたしまして、それ以下の場合が保険料の四割を軽減するという措置をとっているわけでございます。
  264. 中西珠子

    ○中西珠子君 その六割軽減の場合、二十七万円というのは前年度所得ですか。
  265. 下村健

    政府委員(下村健君) これは前年の所得を基準にして行っております。
  266. 中西珠子

    ○中西珠子君 前年度所得が二十七万円に満たない場合なんというのは、もう本当に所得がほとんどないような人だけですね、減免措置がとられているのは。四割軽減というのは二十七万円プラス家族の中で一人二十万円あればとか、そういうのでは本当に減免措置と言えないんじゃないかと思うんですけれども、どうなんでしょうか。何人ぐらいいますか、減免措置をとられている人が。
  267. 下村健

    政府委員(下村健君) 軽減対象が六十年度で約二四%ございまして、実人員にいたしますと三百八十二万四千世帯でございます。
  268. 中西珠子

    ○中西珠子君 減免措置はとられていないけれども所得が非常に低くて国保料を払えない、払いたくても払えないという、そういう人たちが結局滞納したことによる制裁措置を受けまして、そして被保険者証を返還させられて、被保険者資格証明書というのを発行されるわけですね。そうすると、今度は療養の給付とか、特定療養費の支給というのはストップするわけですね。そういう貧しい人たちでそういう措置を受けた人は、窓口で一たん全額自費払いをしなくちゃいけないわけですね。その後は現物給付相当分を療養費として償還されるということなんですけれども、これはもう滞納保険料を完全に納付するまではそういう療養費その他の現金給付も支給しないと、差しとめということですか。
  269. 下村健

    政府委員(下村健君) ただいま申し上げました軽減措置のほかに、個々の事情に応じまして個別の減免制度国民健康保険はとっているわけでございます。低所得の方でありましても、個別の事情をお伺いして合理的な理由があると認められる場合はその軽減措置を適用する、あるいは延納措置をとる。その場合に、どういう形で保険料を納めていただくかという個別の計画を立てて、それを誠実に実行していただくということになると考えているわけでございます。  したがって、滞納しているのを全部納めなければ制裁措置を解除しないのかというお尋ねでございますけれども、特別な事情のある方の場合にはその事情に応じて支払う計画をつくっていただくわけでございますから、それを実行される限りにおいて制裁措置の対象にはならない、こう考えているわけでございます。  それから逆に、制裁措置をとられましても、話し合いの上で自分の条件に合った措置を適用するということになれば、これも制裁措置は当然解除されるということになるわけですから、低所得の方で払えない方が必ず今回の措置の対象になるということにはならない、こんなふうに考えているわけでございます。
  270. 中西珠子

    ○中西珠子君 悪質な滞納者と、それから全く貧困でどうしても所得が低くて払えないという人と、区別するのはなかなか難しいと思うんですね。ですから、一方的に呼び出して、保険証を返せ、そして資格証明書を与えて、それから療養の給付は差しとめというふうになさらないで、特別の事情にある方は支払い計画をつくったりして、何とか制裁措置をとられていても解除するようにすると今おっしゃったけれども、初めからそういう制裁措置を一方的にとらないで、やっぱり長期の滞納者というのは、面倒でもそれぞれ呼んで事情を聞くというふうなことをやっていただけますか。  そうしないと、やはり貧困でどうしても払えない、だけれども病気でお医者様にかかりたいという、かからなければならないという人も出てくると思うんですね。ですから、そういうボーダーラインで何とも救いがたいようなケースというのは、減免措置もできないけれども保険料を滞納しちゃったために制裁措置がとられるというふうなことになると非常にかわいそうでもあるし、命にかかわる問題でもありますし、国民皆保険の精神にも反するという事態も起きてくると思いますので、何かそこのところを一方的にやらないで、御相談でやるとか、指導、相談というのはおかしいかもしれないけれども、一種のコンサルテーションをやるというふうな、ワンクッションを置いたやり方をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  271. 下村健

    政府委員(下村健君) 今回の措置は、あくまで個々の悪質滞納者について個別の事情を判定して法律の適用をやっていくという形になるので、いずれにせよ個別の事情をお伺いしながら、この条項の適用を図っていくという形になると考えておるわけでございます。  私どもといたしましても、保険料を納めていただくというのは皆保険制度を維持していく上での最低の条件だと考えておりますので、皆保険の趣旨を損なわないよう、厳正な執行を図ってまいりたいと考えております。
  272. 中西珠子

    ○中西珠子君 今言われたように、国民皆保険の趣旨を損なわないように、うまくやっていただきたいと思います。そうしないと、この問題について大変心配している方が多いわけでございますから、個別の事情をよく聞いて、そして制裁措置をとらなければならない、本当に悪質な者だけを見きわめてとっていただくことをお願いしたいと思います。  私の時間、もうあと一分ですか。もっともっと加入者按分率の引き上げについてもお聞きしたいと思いましたけれども。  それから保健事業ですね、これは第一次五カ年保健事業計画というのをおつくりになって、そして健やかに老いるための保健事業ということが老人保健法制定時から老人保健制度の大きな柱になっているわけですので、第一次保健事業の五カ年計画を終了して来年度からまた五カ年計画をなさるということですけれども重点目標というものはどういうものをお考えになっていますか。
  273. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 五十八年度から五年で第一次保健事業を終わるわけでございまして、私ども引き続き第二次計画を実施してまいりたいと考えておりますが、重点の目標といたしましては、胃がん、子宮がんの死亡率を三〇%減少させる、脳卒中発生率を半減させる等、いろいろ保健事業の目標を明示するとともに、健康相談ですとか、訪問指導充実等によりまして、きめ細かな保健事業実施する体制を確立してまいりたいと考えております。  さらに健診等につきましては、循環器疾患、肝臓の疾患のスクリーニングの強化でございますとか、肺がん、乳がん検診の導入でございますとか、いろいろ住民の方が受けやすいような、あるいは魅力ある健診づくりに心がけると同時に、寝たきり老人対策でございますとか、痴呆性老人対策も引き続き強化してまいりたい。それから、地域におきまして福祉サービスあるいは医療サービス、職域サービスといろいろ連携をとって、さらに第一次計画を伸ばしてまいりたいと考えております。
  274. 中西珠子

    ○中西珠子君 もう時間が来たのでだめだと思いますけれども、マンパワーの確保が非常に大事だと思うんですね。現在まだ保健婦さんのいない市町村というのがあるんでしょう。三百三十一あるというふうに聞いたんですけれども、これは確かですか。もちろん保健婦さんだけじゃなくお医者様とか看護婦さんとか、そのほかマンパワーの確保ということが必要だし、養成も必要だと思いますが、私はきょう時間がなくなったので、この次それについてお聞きしますし、そのほかきょうお聞きできなかった問題につきましては、また審議の時間もあることと思いますので、次に譲ります。  どうもありがとうございました。
  275. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 我が党は、本法案について当初から一人五時間の十分な審議を要求し、そのうちの一部を前回沓脱委員質疑をいたしました。  沓脱委員は、一つ老人の一部負担を外来で二倍、入院に至っては年十倍にも引き上げることは断じてやめて、病気の早期発見のためにも、何よりもお年寄り医療を保障するために老人医療を無料化すべきであるということ、二つ目に老人保健施設、いわゆる中間施設等は、老人本人からは高い負担を取り上げながら、老人が受けられる医療や福祉の内容老人の人権とか尊厳からはほど遠い低い水準のものにならざるを得ないということ、三つ目に国保料のいわゆる滞納者に対する制裁措置は、拡大解釈の危険が極めて大きく、国民保険制度を崩すものであることを強く指摘をいたしました。  私は、きょうは角度を変えまして、一つ老人保健事業について、二つ目に老人医療費負担は本当に公平なのか、三つ目に真の老人対策といいますか、リハビリ対策問題について、以下順次質問をいたしたいと思います。  本題に入る前に一、二問、大臣に基本的な考え方をお尋ねをします。  国民全体の健康促進のためには、公害の発生の防止など社会環境全体の改善が必要でありますと同時に、重要なことは国民の多数を占める労働者の健康状態を改善するということであります。労働省の五十七年の調査によりますと、慢性的病気を持っている労働者が二〇・四%、薬を常用している者が二四・九%、疲労を翌日に持ち越す者が四七・二%、半数近くあるわけであります。また、同じく昨年十日は労働省が発表しましたストレス問題の調査、これによりますと、ストレスが発病の原因になっていると強く考えられるもの、三十一種類病気があるという発表であります。また、日本生産性本部が上場企業について調査をしたところ、今日全社員の一〇%が心の病気に落ち込んでいる、こういうことも発表されておるわけであります。  大臣、このような労働者の長時間労働、その結果病気になっておるその側面も非常に大きいわけであります。この労働者がやがて老人に移行して重症になり、医療費を押し上げていくということにもなってくる。こうした点で、施策の根本として週休二日制や労働時間の短縮、深夜労働の規制など、こうしたことを今こそ重視をする必要があるのじゃないかと思うのでありますが、国民の、働く者の健康という点で厚生大臣の御所見どうでしょう。
  276. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) お年寄り医療費をどのように将来にわたって安定的に確保してまいるかということと同時に、お年寄りになってもよく言いますところの健やかに老いるというようなことで、できるだけ病気にならないように、壮年期からのそういった対策というものが非常に大事であるというふうに考えております。この老人保健制度におきましても、一つの大きな柱といたしまして老人保健事業というものを取り上げておりますのも、そのゆえんであるというふうに考えております。
  277. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは、具体的に老人保健事業の問題について質問をしてまいりますが、この事業老人保健法の二本柱の一つとされておりますが、我が党は老人医療費無料化とともに、早くから国民の健康促進のために病気予防、早期発見、早期治療、こうした角度からのヘルス事業拡充を要求してまいりました。  この立場から以下質問をするものでありますが、改めて言うまでもなく、この老人保健事業は四十歳以上の者を対象に、健康教育、健康相談、健診、訓練、これらの事業を行うものであります。この事業の第一次計画、五十七年から六十一年にかけて、健康教育、相談事業、これらは除きますと、主な事業として一般健康診査、がん検診、これらがあるんですが、それぞれを六十一年までに五〇%、三〇%と、その計画を打ち上げました。今やこの第一次計画の最終年度を終わろうとしているわけでありますが、ごく簡単に言ってこの老人保健事業全体でどういう効果があらわれてきているのか、どう見ていますか。
  278. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 六十一年度を最終年度といたしますが、現在までのところ、全国的に数字が集まっておりますのはまだ五十九年まででございますが、それまでの実施状況を見ますと、老人保健法によりまして初めて市町村の事業といたしまして老人保健事業を位置づけたわけでございます。  初めての経験でもございますので、なかなか実施が順調に行われたというふうには言いがたい部分もございますけれども、全体といたしましては、ほぼ全市町村でこの老人保健事業が行われているというふうなこと、あるいは数字はまだ全部そろっておりませんけれども、年々受診者数も増加しておる、あるいは結果といたしましての死亡率の減少でございますとかいう傾向も見られておりますので、私どもとしては、いわゆるヘルス事業の成果というのがたんだん出てき始めておるというふうなことで把握しておるところでございます。
  279. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私も厚生省の資料をちょっと調べてみたわけでありますけれども昭和五十九年度の受診者千人以上の市町村に関する国保医療費調査でありますが、最も高い二十市町村平均で三十八万五千八百五十八円、最も低い二十市町村平均で四十六万五千百五十六円、こういうことで明らかにこうした事業医療費の抑制にも役立っていくということが一つ数字として示されているんじゃないか。当然、それが医者にかからなくても済む、国民の健康にも役立っているということかと思うのであります。  ところで、この第一次計画、五十九年度までしかまだ数字がつかめていないということですが、受診率ですね、これはどういう状態ですか。
  280. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 一般診査について申し上げますと、五十八年で二〇%、五十九年で二三・三%という数字になっております。胃がん検診につきましては八・六%、子宮がん検診については一一・三%という数字を集めております。
  281. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 五十八年で約二〇%、五十九年度で二三%、一体このテンポでいったら第一次計画が終わる六十一年度でどこまでいくのかという点を感ずるわけでありますけれども、しかし、それにしましても五十九年度の二三・三%。実際の受診率はもっと低いんじゃないですか、この二三・三より。
  282. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) これは分母のとり方によりましておっしゃるようなことが起きるかと思いますが、私どもといたしましては、いわゆる一般住民と申しますか、その地域の中の健康保険の本人を除いた人口を分母として算出した数字が二三・三%ということで考えております。
  283. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 分母というか、対象者数は何人ですか。
  284. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 五十九年度で約三千万人が分母でございます。
  285. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 正確に言うと二千九百七十万人ですね。
  286. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) そのとおりでございます。
  287. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 何で私がかわって答えなきゃならぬかよくわからない。  そこで、この二千九百七十万人という対象者数ですけれども、このとり方がそもそも狭いんじゃないですか。
  288. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほど一部お答えいたしましたが、いわゆる健康診査の対象者は四十歳以上の者で健康保険各法の保険者が行います成人病健診等の保健施設活動でございますとか、安全衛生法に基づきます事業者の行う健康診断等の保健サービスであって、この保健事業に相当するものを受けた者につきましては対象から除外しております。そういう関係でこの数字になっていると私ども考えております。
  289. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 対象者をどうとるかということについて、厚生省の五十七年十一月十七日付の局長通達があります。非常にわかりにくい文章ですから、この文章はこういう意味ですねということで確認を求めますけれども、いわゆる自営業者や農民など、この保険で言えば国保加入者だけを対象とするものじゃなくて、健診を受けていない労働者やその家族ども対象にする、これが通達の立場ですね。
  290. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) そのとおりでございます。
  291. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、この対象者、分母は二千九百七十万人どころか、三千万人をはるかに超えるというふうに私は思うんであります。この二千九百七十万人、これはいわゆる市町村からの積み上げをしたというさっきの御説明でありますけれども、これはちょっと考えるだけでもおかしいんじゃないですか。  例えば四十歳以上の国民健康保険加入者、これは政府の方からいただいております資料、その数字を拾っていきますと二千三百四十二万人です。政府管掌保険加入者千百八十九万人、組合健保加入者八百八十四万人、その他五百十三万人。そうしますと合計各種医療保険加入者の総加入数は四千九百二十八万人、厚生省五十九年九月末現在と、こういうことですね。
  292. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 四十歳以上の保険者本人のトータルは、五十九年度で申し上げますと約四千九百万人でございます。
  293. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 端数はいいとして、四千九百万人。そうしますと、先ほど申しました御確認になった通達、それでいきますと国保加入者の二千三百四十二万人、このほとんどは対象になります。それから政管健保など被用者保険加入者等二千五百八十六万人、その半分が家族だと、こう見ますと、すなわち千二百九十三万人となりますね。しかし、共稼ぎがあるから半分というとり方はちょっと多いということで、三分の一というとり方をすると八百六十二万人。そうしますと、国保の二千三百四十二万人、それプラス家族半分と見た場合の千二百九十三万人足すと三千六百三十五万人。それから国保二千三百四十二万人にさっきの三分の一対象とした場合の八百六十二万人足すと三千二百四万人、これが本当の対象者になってくるのじゃないか。どっちをとったって三千万人を超えるし、三千六百万と三千二百万の真ん中あたりをとるにしたって三千五百万ということになる。  そうしますと、分母が変わるんですから、それを分母にしたら受診率は五十九年度で二三%どころか一九・七%、二〇%を受診率は切る、こういうことになるんじゃないですか。
  294. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 私ども市町村の方から分母人口を集めまして先ほどの数字を申し上げたわけでございますが、今先生の御指摘数字でまいりますと、正確にはただいま私ども計算しておりませんが、例えば政管健保でも総数のうちの扶養率等がまた多少そこで、先ほど三分の一あるいは二分の一とかおっしゃいましたけれども、詳しく計算をしてみないと直ちに今先生の数字がどうこうと申し上げるわけにはいきませんが、私どもが今考えております数字は、各市町村が先ほど申し上げましたような数値で積み重ねた数字ということで理解しておるわけでございます。
  295. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 だから、私は一つの断定的な数字を言わずに、多目に見てこう、少な目に見てこう、真ん中とったらこの辺ということで、幅を持って私はこの数字を申し上げているはずです。そういう幅を持った見方をしても最低三千万は超える、三千五百万ぐらいという対象者数になるんじゃないか。そうすれば受診率は下がるということになるんじゃないかということで、大臣、私これでは発足に当たって鳴り物入りで宣伝をして、そして今日二三%の実施率になってきております、順調によく進んでおりますということで手放しで自賛をされても、これは国民や国会を欺瞞をする論法じゃないかというふうに私は思わざるを得ないのですよ。  片一方ではこの市町村、自治体からの報告を単純に積み上げて集計した数字だと、こうおっしゃるんですけれども対象者をどうとるかという国の指導基準がはっきりしていませんから、抽象的な通達文書ですから、私京都の状況を調べたんですよ。そうしたら、京都府が京都府下の市町村に指導をしておる方程式と指定都市としての京都市が使っておる方程式と違うんですよ、全然違うんです。京都でさえこういうことですから、全国で見たらまちまちの状況が起こってきておるんじゃないかと思う。そういう状況で、やれこの保健事業がこういう計画を立てて実績がここまで進んでと、こういうことを幾ら言われても、これは国民を欺瞞するものだ。  しかも、この対象者二千九百七十万人と言われますけれども、五十九年度の対象者が二千九百七十万人、一年前の五十八年度が二千九百八十万人で、これだけ速い速度で高齢社会へどんどん向かっているというんだけれども、前の年よりもかえって十万人対象者が減っておる、こういう押さえ方になっておるわけですよ。大臣、ちょっとこれはおかしいなと、もっと一遍きちっとせんといかぬなと、これでは国民から疑問が起こるというふうにお思いになるでしょう。
  296. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 受診率の計算の基礎になります全体の数字でございますが、保健事業対象外となる被用者等についてのそのとり方等につきまして、地域に最も実情を把握をしている市町村によって把握をしていただくということが適当であろうということで尊重いたしてまいっておるわけでございますが、今先生御指摘のように、その数字もいろいろと確実でない向きがあるという御指摘でもございます。  厚生省といたしましても、職域保健サービスとの連携の強化を図るために、市町村における保健事業関係者から成る協議の場を通じて対象者の正確な把握等に努めていくよう、指導を強化いたしてまいりたいというふうに考えております。
  297. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私はこの事業にけちをつけるという、そういう意味でこの批判をやっているんじゃないんです。本当にこれが正しい方向で発展をしていくことを望めばこそ、数字をごまかすようなそういう宣伝というのはやってもらいたくない。恐らくこれは与党の議員さんも大臣も、こんなことになっておったかということで、顔色を見ておったってそういうふうに感じておられますわな。  問題は厚生省の行政当局ですよ。もう少し通達まで出してなにして、しかしこの通達は、私京都市とか京都の幾つかの自治体を訪問して、厚生省から何か具体的な方程式についての指導がありますかと聞いたら、ないと言うじゃないですか。このさっきの半ぺらの通達だけなんです。こういう状況は、行政当局としてまじめに行政責任を果たそうという態度じゃない。ぜひこの点はひとつもっと襟を正して厳重にやってもらいたい。特にその長としての大臣の指導性発揮をお願いしたいと思いますが、どうですか。
  298. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいまも御答弁申し上げましたように、正確な数字を把握するよう指導をいたしてまいりたいと思います。
  299. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私はさらに重大なことを指摘をしたいと思います。  労働者の保健対策についてでありますが、これについて政府レベルでの善処改善をされるよう、厚生大臣としての特段の努力をお願いしたいということでありますが、大臣も御存じと思います。国民保健事業は、基本的には三つの分野、学校、職域、地域と、これで全国民的に把握ができる。したがって、そのそれぞれをどう充実強化をするかという、これが国としての施策基本になる、そのとおりですね。そうですと答えてください。
  300. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) そうだと思います。
  301. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それで、学校保健の分野ですが、これはかなりずっと改善をされてきたと思うんです。今や児童生徒の受診率ほぼ一〇〇%と言っていいでしょう。さらに一層の充実のために全国的にも要望が出されておるんだと思いますが、きのう京都の学校保健連合会、ここから要望書が出されておりまして、当面の四つの重点要求ということで書かれています。  一つは、小中学校一年生全員を対象とした心電図による心臓検診の実施。二番、学校環境衛生検査器具の市町村単位における整備充実。三番、学校管理下における傷病者の輸送費の確保。四番、心の健康問題に対応できる体制の確立、こういうことでありますが、文部省はどういうお考えでしょうか。
  302. 下宮進

    説明員(下宮進君) お答え申し上げます。  学校におきましては、児童生徒の健康管理につきましては、学校保健法の規定に基づき毎学年定期にあるいは臨時に健康診断を行いまして、その結果に基づいて適切な事後措置を行うことなどによりまして健康の保持増進に努めているわけでございます。  先生のお尋ねの件について順次申し上げますが、心電図による心臓検診の実施につきましては、文部省では昭和五十九年度に全国調査をいたしましたところ、全国の小中学校の七割を超える学校で心電図検診を実施いたしているという状況が把握できましたことから、文部省におきましては、昭和六十年度から心電図検診の実施率が低い僻地学校の設置者に対しまして、その費用の一部を補助することなどにより心電図検診の促進に努めているところでございます。  二番目の学校環境衛生検査器具の整備充実の問題につきましては、従来から地方交付税の中におきまして積算しておるわけでございまして、例えば人口十万人あたりの市でございますと、毎年二十万円程度の積算をしております。  さらに、先生お尋ねの心の健康の問題などにつきましても、例えば養護教諭を対象にいたしますカウンセリングの研修会、さらにはそういったカウンセリングをいたします指導資料を作成するなどして、学校保健の充実に努めているところでございます。
  303. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この学校保健分野での一〇〇%受診に比べまして、職域と地域ではかなりおくれておるし、矛盾さえあります。  さきにも触れました厚生省の保健サービスに関する通達、この中で、労働安全衛生法六十六条に定めるいわゆる職場労働者の定期健康診断、これを受けた常用労働者は、この保健事業から除外をする、こういうことになっていますね。
  304. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) そのとおりでございます。
  305. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 常用労働者は別にやるからと、こういう考えだと思うんでありますが、ところで、私は、労働省にお伺いをします。この労働省の「定期健康診断実施結果」、きれいな本にもなっていますけれども、これを見てびっくりしたんでありますが、五十九年度の受診労働者数千六十一万人、一方五十九年の雇用労働者数は四千二百六十五万人でありますから、そうすると、その差し引き残り三千二百万人の労働者は一体どうなっているんですか。
  306. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 安全衛生法に基づいて健康診断の受診結果の報告を義務づけられているのは五十人以上の規模でございます。御質問の四千何百万というのは全体の労働者の数で、そのうち約六割強は五十人未満の、報告を義務づけられていない規模の事業所に雇用されている労働者。したがって、五十人以上の規模のものにつきましては、もちろん全部ではございません。約千七百万ぐらいが五十人以上でございまして、そのうちの一千万人余りが報告されている、こういうことでございます。
  307. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく労働省としてきちっと報告を求め、掌握をしているのは五十人以上の企業だけだと、そしてそこの企業の労働者数が五十人以上で約千七百万人、この千七百万人のうち報告が出ているのは千六十一万人、そうしますと何と六二%ということじゃないですか、どうですか。
  308. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 確かに、報告によって受診結果を把握しているものが一千万人余り、先ほどお答え申し上げましたように、計算上といいますか、事業所統計その他によって、五十人以上の規模に雇用されるものが千七百万というのは、これは統計上把握されている数字であります。したがって、その間に開きがあるのは事実でございます。その原因などを見てみますと、もちろん中には全く健康診断を実施していないものもあろうかと思いますが、別途私どもの方で行った統計調査では、五十人以上の規模について言えば、例えば製造業などではほとんど一〇〇%近く健康診断を実施したという調査結果が出ております。したがって、多くのものは健康診断を実施しても報告をしていないというものであろうと推測をしております。  しかし、おっしゃるように、報告をするということも規則の上で義務づけられているものでございますので、私どもとしては、適正に健康診断を実施させると同時に、やはり適正に報告をさせるということに今後とも努力したいと考えております。     ─────────────
  309. 佐々木満

    委員長佐々木満君) この際、委員異動について御報告いたします。  松浦孝治君が委員辞任され、その補欠として小野清子君が選任されました。     ─────────────
  310. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 労働省、余り想像で発言をしてもらいたくないと思うんですね。何しろこの報告制度というのはもう十年以上、罰則つきで事業主に報告を求める、こういうことでやってきておりながら、それが、八〇%以上報告がずっと入って、掌握ができているというんだったらまだしも、六二%というんでしょう。こんなものを行政として言いわけが立つかというふうに私は思うんですよ。そういった点で、労働省の行政上の怠慢、これは免れない。一体これからどうやってその点の徹底を図るのですか。目に見えてこういうふうによくなってきますという方策はありますか。
  311. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 確かに、法律上の義務を履行していないということは事実でございますが、私どもとしてまず重点的に考えますのは健康診断を実際に実施させるということでございます。その上で手続的な義務についてできるだけやはり履行を確保させなければいけないという立場をとっております。  現実にどのぐらい健康診断を実施しているかどうかということを把握するために、別途臨時的に調査をやっておりますところでは、先ほどお答えいたしましたように、この規模におきましてはほぼ一〇〇%の健康診断を実施しているという結果が出ております。健康診断を実施しても例えば受けない労働者がいたり、そういうこともあろうかと思いますし、報告をしていないというところもあろうかと思います。いずれにしても、報告を受けているものは、おっしゃるように、六十何%でございますが、私どもとすれば、まず第一の行政目的である健康診断を実施するという点ではほぼ一〇〇%に近く徹底していると思っています。  ただ、繰り返して申し上げますけれども報告を受けるということも、これまたその手続を義務づけておりますので、やはりこれも理想を言えば一〇〇%実施させなければいけない、こういう格好で引き続き努力していきたいと思っております。
  312. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 法律が厳重に行政面で執行できていない、守られていないというこのことは、しかと確認をしておきましょう。  そこで、こういう不十分な調査でも、しかし、重大な点がこの報告書の中から発見をされるわけです。すなわち毎年着実に疾病の発見率というのがどんどんふえている。昭和五十年、受診の六・七%、五十五年八・八%、五十六年八・九、五十七年九・二、五十八年九・三、五十九年九・一ということで、毎年疾病がどんどんふえているということを如実にこの数字は示していると思うわけであります。この要因に人口の高齢化、労働者の総体的高齢化、この問題があるというふうに考えていいでしょう。  そういった点で、この定期健康診断というのは、労働者、国民の健康を守る上で非常にその意義は重要でありますし、ぜひ大臣としても、そういう国民の健康を守るという見地から、ひとつ、それは労働省のことだというふうに見ないで、受診の徹底そして報告の聴取、これがもっと前進をしていくように、厚生大臣としても努力をしてもらいたいというふうに思いますが、どうでしょうか。
  313. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 労働安全衛生法は、それはそれなりのいろいろな目的を持って健康診断等の事業を行っていただいておるものと思うわけでございますが、厚生省といたしましても、国民の健康を守るという観点から、また、先ほど申し上げましたように、保健事業を推進するということが病気にならない、もしくは早期発見できるということにつながるわけでございますので、両々相まって国民の健康を保持していくために非常に重要なことであるというふうに思います。  そういう観点から、労働省の所管事項でありまするけれども、ひとつ頑張ってやっていただきたいと私も念願をいたすものでございます。
  314. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 さらに、労働者問題とのかかわりでもう一つ重大な問題があります。労働安全衛生法六十六条に定める労働者の定期健康診断の健診項目は何でしょうか。
  315. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 既往症それから業務歴の調査、それから自覚症状及び他覚症状の検査、それから身長、体重、視力及び聴力、それに胸部のエックス線検査及び喀たん検査、それから血圧測定及び尿中の糖及びたんぱくの有無の検査、こうなっております。
  316. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 厚生省、今労働省の方から説明のありました健診項目は、老人保健事業実施をしようとする一般健診の健診項目より成人病の発見という点では内容が低い、そのように思われますね。
  317. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 労働安全衛生法に基づきます健診、診査項目は今お答えになったようなことだと考えておりますが、私どもといたしましては、老人保健法に基づく健康診査には、それ以外に総コレステロールと肝機能検査を加えております。したがって、直ちに比較するのは非常に難しいのではないかというふうにお答えせざるを得ないと思います。
  318. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 成人病の発見に非常に深い関係を持つと言われている総コレステロールや肝機能検査、これが労働省の方の検査項目にはないという、ここが大臣、私は重大だと思うんです。  実は、先ほどから何遍も引用しております厚生省のヘルス事業に関する通達ですね、この中でこういうふうに書いてあるんですよ。「労働安全衛生法に基づき事業者の行う健康診断等の保健サービスであつて保健事業に相当するもの」というのはこれは厚生省の言うヘルスですね、「を受けた者又は受けることができる者については、」対象から除くと、こう書いてある。そうしますと、厚生省のやっているヘルスには、このコレステロール、肝機能検査が入っているわけでしょう。労安法に基づいて職場でやっておるやつには入っていない。そうなると、これはそもそも相当する健診を受けた者というふうにはみなし得ないという、こういう問題さえ出てくるんです。私は何もそのことだけで言うつもりありませんけどね。  そういった点で、この問題は六十一年度から厚生省のこのヘルスの項目追加がやられたわけでありますけれども、それに先立って今までも何回か国会の場で、我が党議員からはこの労働安全法、労働省のやっている職場労働者に対する健診項目の、もっと現代に見合った改善をやるべきだということを何回か提起してきました。しかし、今回依然として、今もなお職場の労働者の関係については改善ができていない。こういった点で、五十九年八月二日、参議院の社会労働委員会ですけれども、当時我が党の山中郁子議員が質問しまして、当時の渡部厚生大臣が、今提起の問題は、「私は先生のお考えに同じような思いもいたします」以下云々と、こうありまして、縦割り行政で労働省の仕事であるかは知らぬけれども、今のお話を聞いておって、私としては同感でありますと、こういう趣旨の答弁をやられておるわけですね。ずっと今の議論お聞きになっていて、斎藤厚生大臣、どういう感想でしょう。
  319. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほども申し上げましたように、労安法には労安法のそれなりの目的というものがあろうかと思うわけでございますが、そういう中で保健事業を行っていただき、また私どもが考えているような成人病に向かっての保健事業充実をさしていただけるということになれば、大変結構なことだというふうに思っております。  なおまた、もう一つは、被用者保険におきまして、健保組合や政管健保におきましてもこの保健事業を行っておるわけでございますので、そういったような点との兼ね合いというものもよく精査をしてみないといけないのではないかというふうにも思っております。
  320. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 さっき通達を読み上げて申し上げましたように、厚生省のやっているヘルス健診と見合うものがなされている場合には対象から除くと。ですから、見合うものになっていないときにはヘルス健診の対象に入れなくちゃならぬという、こういう問題さえ起きかねない非常に矛盾が今日出ている。早くから私どもは提起をしてきた。  それで、この五十九年八月二日の社労委での当時の労働省の局長答弁もありましたが、労働省はどういう検討をやっているんでしょうか。いつ結論が出ますか。
  321. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) そのときもたしか御答弁申し上げましたと思いますが、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目、その義務づけられた項目というのは、どんな規模の事業所、一人を雇う事業所でもこれを守らなければいけない、こういう意味での義務づけでございます。したがって、そこに種々の必要事項を追加するということはなかなか難しい問題もございます。  しかし、先ほど先生の御質問にもありましたように、最近この健康診断を通じて疾病を発見する割合というのは高まっております。特に高まっているというのは、成人病関係病気の発見がやはり定期健康診断を通じてできたということでございます。言いかえれば、これは最低限の義務づけではありますけれども、各事業所においてその義務づけられた項目のほかに健診をやったり、あるいはそれに加えて再健診を行ったり、そういう形でいろいろな検査をやりながら、従業員の病気の早期発見に努めておられる結果であると考えております。  そういう意味では、全体として高齢化社会の中で、各事業所における従業員の健康確保、これは事業主としての義務であり責任であると考えておりますが、そういうものについての自覚なりが高まって、法による最低基準以上のものをやっている、こういう結果であり、それが私どもとしては必要なことだと考えております。  もちろん、先生おっしゃいますように、だんだんと日本の働く人たちの年齢が上がっていくいわゆる高齢化時代に即して、私どもとしても長期的に見て最低限の義務づけである健康診断の項目を今のままで、絶対それでやっていくということではありませんし、今までもだんだんと変えてきたところもございますし、これからもそういう意味ではその時代の要請に即して、かつ小さな規模の事業所も含めて、どういうことを義務づけるべきかにつきましては、私どもとしても将来とも研究し、かつ検討してまいりたいと、こう考えております。
  322. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうも何かもう一つ意欲が感じられない今の答弁ですね。それはそうでしょう。労働省として何か大事な問題があるとすぐ専門家会議をつくるとか、大臣の諮問機関をつくるとか、こういう形でいろいろ検討作業をやるものですけれども、この問題についてはそういうようなものは設置をしておりませんね。だから、私は本当にもっと熱意を入れて、速度を速めて、この問題をぜひ検討してもらいたいという、そのことを言っている。その点に答えてください。
  323. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 労働安全衛生の問題につきまして、いろいろと時代の変化に即して問題が出ていることは事実でございます。特に高年齢者の疾病の予防等について、重要な将来において私どもとして重視しなければならない施策であると考えておりますので、その問題について特別の委員会を設置するということではありませんが、その問題を担当する行政機関として、将来を見越して適切な対応をしていきたい。そういう意味では、小さな事業所にも義務づけるということの可否も含めて、どの程度にこの健康診断の基準を改善していくかについて、私ども行政機関の責任において検討してまいりたいと思っております。
  324. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうも健診項目をふやすとそれに伴う費用、企業の側の負担になるからという、そこがどうも頭にあるんじゃないかという気がしてならないんですけれども、労働者の問題というのは国民の大部分を占める問題でありますから、そういった点で本当にもっと熱意を持って、急いでこの問題の検討をやってほしいと思います。  それと、厚生大臣ね、さっきから何回も言っていますけれども、あの通達によって厚生省のヘルス事業並みの健診を受けた者または受けることができる者は除く。そうでないと、それはヘルス事業対象として含まれるということになるでしょう。職場には四十歳以上の労働者というのはいっぱいいるわけでしょう。そうしますと、厚生省の言っているヘルス事業内容についても、これは当然要らぬ金が要るようになりますよ、厚生省。だから、あなたの方から労働大臣に一遍篤と言うて、せっかく厚生省がこういうことでやろうとしておる、労働省の怠慢から要らぬツケをこっちへ持ってくるなと。ある意味では厚生省に労働省はなめられておるようなことにもなるわけですよ。ということで、大臣、ひとつぜひ決意新たに労働省側とよく話をしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  325. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 一度相談をしてみたいと思います。
  326. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この問題での最後に、一般健診についていろいろ厳しく批判すべき点を問題にしたわけでありますけれども、先ほども言いましたように、ぜひこの事業を名実ともに国民的意義のあるものにしたいという立場から、いろいろ言ったわけです。  そういった点で、自治体関係者からいろいろ聞いておりますと、幾つかの要望が出ています。一つは、受診率がなかなか進まぬというのも余り魅力がないからだという点で、この事業内容をもっと魅力のあるものにする、健診の内容なんか。それから、受診率を高めていくために通知を徹底する、その通信費、はがきなんかで出すとやっぱり効果があるというわけですね。せめてそんなようなものを国から援助してもらえぬかということとか、大都市が特になかなか対象者の捕捉が難しいことによる困難がある、その問題とか、国からの補助金の単価、これが低いから超過負担がいろいろ出てくる、こういう問題について私ももっともとも思うわけでありますけれども厚生省、前向きのひとつ努力をしてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  327. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 魅力ある健診づくりということでの御指摘でございますが、例えば一次健診を受けた後、精密検査にいらっしゃいと言っても、日にちを変えますとドロップしていく率が多いのはほかの健診でも同様でございますので、例えば一般診査と精密診査を必要な方に対しては同時にできるような、いわゆる基本健診と申しますか、そのような制度を来年度の要求で考えておりますし、肺がんでございますとか乳がんでございますとか、最近ふえておりますがんを標的疾患にいたしまして検査項目に加える。あるいは子宮がんと今まで言っておりましたけれども、これは子宮頸がんでございまして、日本の場合にはまだ多くはないんですが最近極めて多くなっております子宮体部、子宮体がんについても検診をするようにしたらどうかというふうなことで、いろいろ、おっしゃいますように、魅力ある健診体制といいますか、健診の中身というのを私どもさらに工夫していきたいということで、今予算要求をしているところでございます。  それから、個別通知の徹底でございますが、これは先ほどの受診率の向上とも非常につながる部分がございますので、私どもとしてもそのようなことでできるだけ個別に通知が出せるようなことを、予算上もできるだけ考えてまいりたいと思っております。  それから、補助単価のお尋ねもございましたけれども、私ども今後ともさらに適正な補助単価、実勢単価に近づけるような補助単価を予算措置してまいりたい。  このようなことで、おっしゃいますようなヘルス事業につきまして、住民の多様なニーズにきめ細かく応じられるような質的な改善、充実を今後とも図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  328. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 保健事業の問題はもう大分時間かかりましたのでこれで終わります。  次は、政府は今回の法案の提案の理由に、負担の公平論を唱えておりますけれども、これをめぐる問題というか、真の公平な負担とは何かという問題について幾つかただしてみたいと思いますが、とにかく、今度の法案で一部負担、外来二倍、入院は年十倍にもなる、そして拠出金の按分率を変更して、現役労働者の負担も急速にふえてくるだろうというその理由として、現役もOBも世代間公平に負担してもらうんだと、こういうのでありますが、何のことない、これは国民の痛み分け論であります。  それは厚生省が提出をしております老人保健制度見直し、今回のいわゆる改正に伴う影響額の試算ですね、これを見れば非常にはっきりするわけでありますけれども、要するに現行八六年度、八七年、八八年、八九年、九〇年と資料をいただいておるんですが、もう時間の関係老人医療費総額について、それから患者負担というか本人負担、それから被用者保険、それから国庫負担、こういうふうに分けて、現行八六年度に比べてそれぞれが九〇年度で何倍になるのか、それを言うてください。
  329. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 西暦でお尋ねでございますが、昭和で申し上げますけれども、六十一年度法改正なしという場合の数字と、それから六十五年度の法改後の数字について端的にお答えをいたしますけれども、ただ倍率については六十一年度法改ベースしかちょっと計算をいたしておりませんので、お断りをいたしておきます。  六十一年度法改なしの被用者保険の金額でございますが、一兆四千五百八億と見込んでおります。これに対しまして六十五年度で二兆八千百億になるわけでございまして、六十一年度の私どもの法改後のベースから比較しまして一・八七倍ということでございます。
  330. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 一・八七ね。一・九四じゃないの。
  331. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) ただいまのは法改後の六十一年と六十五年度の伸び率の比較を申し上げましたけれども、お尋ねは六十一年度法改なしということで仮定して倍率をということでございます。一・九四倍ぐらいになろうかというふうに考えております。  それから国保でございますけれども、六十一年度法改なしということで一兆五千五百九十一億円と見込んでおりますが、これが六十五年度で一兆四千億に相なります。六十一年度法改があった場合に比べまして〇・九六倍でございますけれども、法改なしの場合についてはちょっと倍率を出しておりません。  患者負担でございますけれども、法改なしで六百十億でございますが、これが法改後で約二千三百億になります。倍率で二・六倍でございますが、法改なしの六十一年度ベースと比べますと三・七倍か八倍程度という感じでございます。  それから医療費トータルでございますけれども、法改なしのベースが医療費トータルで四兆三千六百十億でございます。これが法改後の六十五年で計算しますと六兆二千四百億でございまして、六十一年度の法改後ベースで一・四四倍でございます。法改なしのベースではこれも約一・四三ぐらいになろうかと思っております。  国庫負担総額でございますが、法改なしで一兆八千三百四十三億が、六十五年度で二兆一千九百億ということで一・二五倍になりますが、これは法改なしベースと比較しますと一・一九倍ぐらいいくというふうに計算できるわけでございます。
  332. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 わざとわかりにくく説明したんじゃないかと思いますが、今の数字の倍率がもう如実に示しますように、患者負担は三・七七倍になる。被用者保険、行く行くはこれも労働者、国民にツケが来る。一・九四倍になる。国庫負担は一・一九倍ということで横ばい、こういう形で、国庫負担を抑えるそのツケが一体どこへ回ってきておるのかということは、この数字でもって明瞭なんですね。  老人本人と労働者、国民、この負担は確実にふえるし、国の負担は極力抑えていく、こういうことで、結果としてこの国保の国庫負担はもとへ戻さない。それで、トータルとして軍事費がふえる。こういう形になっているわけでありまして、前回も沓脱委員が言いましたように、またきのうの参考人の御意見にもあらわれておったように、各界からの反対がこぞって強いわけであります。こういうやり方で一体どうして負担の公平というふうに言うのか。国民負担の押しつけられっ放しじゃないですか。  きのうの参考人で総評の前川さんも言っていましたけれども、現役の労働者の中から、負担が今不公平だからこれを変えてくれというような意見はいささかもないという、きのうもそういう発言があったわけですね。こうした点で、この負担の公平論、政府がしきりに言っている、これは私は詭弁だと思うんですけれども、大臣、どうでしょう。
  333. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これはたびたび申し上げておりますように、この老人医療費国民全体がいかに公平に負担をしていただくかという観点に立ちまして、今回の加入者按分率一〇〇%へ段階的に引き上げていただくということをお願いいたしておるわけであります。現在、それぞれ拠出をしていただきます保険者間において、老人加入率の非常な格差があるわけでございまして、この格差を是正し加入者按分率を一〇〇%にしていただくことによりまして、どの保険者におきましても千人について六十九人のお年寄りを抱えていただくというように、負担の公平を図らしていただくということでございます。  これと今御指摘のございます国庫負担との関係でございますが、その結果として、国庫負担全体として見ると、これが削減をされておるわけでございますが、しかしながら、この老人保健制度、この制度に対する国庫負担のあり方というものは二〇%の負担でございまして、県、市町村が五%ずつで、公的負担として三割ということについては、いささかも変わっていないわけでございます。ただ、どこで変わるかといいますと、御承知のとおりでございますけれども国民健康保険に対する国庫補助というものが他の保険制度と比べて違った状態にあるということから、通常でありますと五割の国庫負担、この拠出金につきましては五五%の国庫負担をいたしておるわけでありまして、その老人加入率の非常に高い国保が全体として負担が軽くなるということによって、国保に対する国庫負担の分が軽減をされるということに結果としてなるわけでございます。ちなみに、政管健保につきましては一六・四%の国庫負担をいたしておるわけでありまするけれども、政管健保に対する国庫負担はこれは増加をする、こういうことでありまして、国庫負担を削減するがためにこれをやるということではなく、今申し上げましたように、当初負担の公平を図るという観点、そしてその結果として国保に対する国庫負担が減ったので全体として国庫負担が減ったように見える、こういうことであるわけでございます。
  334. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 相変わらず聞き飽きた論法が繰り返されておりますけれども、この按分率の変更というのは、必ずそれは加入者、労働者の負担に結びついていくということはもう自明の問題であって、今大臣もちょっと触れられたのであれですが、国庫負担の額はああいう形で変遷するとしても、国庫負担の欄は年々減額である。六十一年度六百十四億、六十二年度二千六百六十三億、六十三年度三千七十一億、六十四年度三千三百六億、六十五年度四千三百四十六億、こういうことで国庫負担が年々減っていくということは明瞭でありますので、国庫負担はもう着実に減らし、国民負担、そうして片や一部負担という形での老人本人の負担は今度どんどんとふえていくという、ここの本質をすりかえることはできないと思うのであります。  そこで、本当にこの財源対策ということを問題にするのであれば、私は一つの重要な問題があるだろうと思う。きょう冒頭にも触れましたけれども、現役の労働者の二〇%以上が慢性的な病気になっている。翌日に疲れが残るというのが半分近い四七・二%という、ここまで長時間労働、過密労働によって労働者の体をすり減らしているわけでありますけれども、しかし、こういうもとで大企業が、これはもういろいろな決算報告なんかを見ても明らかなように、大幅に利潤をふやしているということで、こうした大きな利益を上げてきた大企業に今日こそ一定の負担を要求する、こういう方向を大臣としては検討の俎上に上せてみる気持ちはありませんか。
  335. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 我が国の社会保障の費用としましては、全体としては政府、そして本人、事業主という三者により、ほぼ均衡した形で現在負担がなされているというふうに私は承知をいたしております。そういう形の中で、現在の保険制度の中における事業負担のあり方等々についても、この制度で現在定着をいたしておるというふうに私は考えておるところでありまして、今直ちに見直すというような考えはございません。
  336. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いわゆる社会保障費の財源負担割合、使用者と労働者の間の負担割合というのは、アメリカや西欧の先進国と比べてみても我が国はずば抜けて労働者の側に重いわけですね。逆に言えば、使用者負担が一番軽いということは今日明瞭だと思うんでありますが、念のために社会保障費の労使負担割合、日本の場合をほぼ労働者一、使用者一として、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、スウェーデン、どういうことになりますか。
  337. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) お答えをさせていただきます。  社会保障におきます本人負担事業負担、それから国庫負担の比率でございますが、アメリカは、本人負担が二一・一%に対しまして事業負担が三二・〇になっておりまして、公費負担が三九・二という比率でございます。イギリスは、一七・八に対して二三・八、公費負担が五五・九という形でございます。西ドイツは、本人負担が三五・五、事業負担が三四・〇、公費負担が二七・六。それからスウェーデンは、本人負担が一・〇、事業負担が四三・八、公費負担が四六・〇でございます。イタリアは、本人負担が一〇・八、事業負担が五四・八、公費負担が三一・九という比率でございます。
  338. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 西ドイツの数字については、ちょっと私はいささかもう少しよく調べてみる必要があると思う。片やILOの統計で、一九七七年で、労働者一、使用者一・三、こういう数字の出ている文献もありますので、それはいいです、答弁求めません。  それで、今言われましたそれぞれの負担のパーセント、これを労働者一としますとアメリカは使用者一・五、イギリスは一・三、フランスが二・五、イタリアは五・〇、スウェーデンは四三・八、こういう倍率で使用者側が負担をしている。いわば、使用者側がうんと負担の割合を広げていくというこのことは、今や世界の先進国の常識になっていると思うんであります。にもかかわらず、大臣、検討の俎上に上せる気もないと言い張られますか。
  339. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 長尾総務審議官
  340. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いやいやちょっと、余りもう時間がないんですよ。
  341. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) ちょっと御説明をさせていただきます。
  342. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 簡潔に。
  343. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) ただいま先生がお話しになりました事業負担、本人負担の比率でございますが、これは一つの統計数字を今申し上げたわけでございますけれども、この数字が出てまいります前にいわば制度の仕組みがあり、それからその仕組みの上に立ちました運営の実態があるわけでございます。  先ほど大臣がお答えいただきましたのは、我が国におきましては医療保険、年金保険の二大社会保障制度におきまして社会保険方式をとっておりまして、この上において本人、事業主の折半負担という形で長らく運営をやってきたわけでございます。こういったことを踏まえますと、現在のこの制度が社会の中に大変定着しておるということを前提としてお答えをさしていただいたということと思います。
  344. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣、繰り返して言いますけれども、世界の趨勢はそういう状態だということで、そのことに着目して我が国でも一遍検討の俎上に上せてみる必要はお感じになりませんか。
  345. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほども御答弁申し上げましたように、現在の日本の負担のあり方は、それぞれ三者ほぼ均衡した形で負担がされておるというふうに認識をいたしております。そして、そういう形に形成されてまいりますまでにはいろいろ歴史的に経緯もあり、また労使の関係の中においてそのようなことが実績として積み上げられてまいったということもあろうかと思います。また、諸外国の例をお引きになられましたけれども、諸外国のそれぞれの制度等について詳細にもう少し検討をいたしてみませんと、それが全く同じように当てはまるのかどうかということはあろうかと思うわけでございまして、全体といたしまして、先ほど御答弁申し上げましたように、今の仕組みというものが日本のこれまでの長い歴史の中で定着をしてまいっておるというふうに考えておるところでございます。
  346. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく発展途上国はおろか大臣の思想は後進国的思想ですね。  別の角度から申しましょう。  今はそういう社会保障費の負担割合を問題にしたわけですけれども、企業規模別に見て負担の状況はどうでしょうか。大企業と中小企業と比べて、例えば賃金に占める法定福利費の割合、これは企業規模別、例えば五千人以上の企業、それから全産業について、それから規模三十人から九十九人の企業、どういうことになりますか。
  347. 池田克忠

    説明員(池田克忠君) 昭和五十九年の賃金労働時間制度等総合調査によりますと、現金給与総額に対します法定福利費の割合は、全産業平均で八・九%、五千人以上規模企業で八・四%、千人から四千九百九十九人規模企業で八・五%、三十人から九十九人規模企業で九・六%となっているところでございます。
  348. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 中小企業の方が負担が強いということはこの数字から見て明瞭です。だから、大企業に負担を求めようというこの方向というのは無理な話じゃないという一つの論拠であります。  もう一つ、企業規模によって不公平がある例を挙げようと思いますけれども、そもそも我が国では社会保険料は賃金総額掛ける保険料率、こういうことで算定をされるわけでありますが、通産省の工業統計表、昭和五十九年度、これによりますと、従業者規模千人以上の大企業は従業者数で全企業の一四・三%、一方、例えば製造品出荷額等で全企業の二六・六%。一方、中小企業の代表例として、十人から十九人の企業をとったとしますと、従業者数で一一・一%、出荷額は五・九%だと。こういうことから何が言えるかといいますと、出荷額すなわちそれはもうけに相当をしていく額になると思うわけですけれども、それに見合う形で社会保険料負担を大企業はやっていない。というのは、賃金の支払い総額掛ける一定の料率ということでありますから。  そこで、しかし、賃金の格差があるから、大企業、小企業ということでごく大まかにそれが三対二だと、企業規模によって、こう置いてみても大企業は小企業の四三%の割合でしか社会保険料負担をしていない、こういう計算になるんです。簡単な計算です。この点でも中小企業と大企業の間にある社会的不公平、これが正されてしかるべきではないかというような問題があります。  さらにもう一つ、最近の生々しい問題でありますけれども、大企業の人減らし合理化、急激な海外進出、これによって雇用の空洞化が大きな問題になっていますが、十二月十四日の新聞にも大きく報道されましたが、既に海外生産を実施、目下検討中、既に実施しているところ、それから目下検討しているというのが大企業の五二%に達している。このために国内の既存部分を縮小したのが二一%、検討中が二六%。こうして海外進出が急増し、雇用の空洞化が進むほど、企業の社会保険料等の負担は、国内企業の雇用がどんどん減るわけでありますから、その分だけ減っていくという、一体これで真の公平と言えるかという、その方向というのが野放しになっているという問題であります。  大臣に再度求めたいと思うわけでありますけれども、いろんな角度からこうした問題をどうしても検討に上せる気は全くないということでなお言い張るつもりですか。
  349. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) それは、検討は幾らでもいろんなことをして悪いことはないと思っておりますが、ただ、今の日本の、先ほど来申し上げましたようなこれまで積み上げてまいりました社会保険制度の中で、この負担割合というものが定着をしてきている。また、その制度の仕組み方といたしましても、社会保険制度というもので仕組んでおるというような観点から見まして、私は現在のところ適当なことではないかというふうに思っております。
  350. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは三つ目の問題、最後に、真の老人対策リハビリ問題について質問をいたします。  まず、厚生省寝たきり老人の現在数、そしてそれが将来的にどのように推移をしていきますか、ごく簡単に数字的に答えてください。
  351. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 昭和五十九年の数字で申し上げますと四十七万八千人でございますが、今後、昭和七十五年には七十八万六千人、昭和九十年には百七万六千人と百万人を超えるのではないかという数字を持っております。
  352. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 今月の初めに日本大学のこの研究所の発表したあれでいくと、もっと早いテンポでふえるだろう、こういう報告なんかも出ているわけですが、急速に高齢化そして寝たきり老人が急増するということであります。  そこで、問題は、こうした寝たきり老人に対する対策でありますが、例えば十二月五日の朝日新聞の社説で書いていましたように、「寝たきり老人の多くは実は寝かせられ老人である」「日本の寝たきり老人のかなりの部分は”つくられた寝たきり老人”である」という批判が今日多々出ていると思うのです。実際に一般病床の平均在院日数を見ますと、一九七〇年度には三十二・五日。この日数が一九八〇年には三十八・三日、この十年間で五・八日も在院日数が増加をしているわけであります。したがって、寝たきり老人対策中心は、リハビリテーションによる治療によって、一日も早くこれらの方々が家庭や社会に復帰できるようにすること、そのためにリハビリ治療が特に大事になってくるというふうに思うんでありますが、そこの位置づけについて大臣の基本的なお考えはどうでしょうか。
  353. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先生御指摘のように、長寿を全うされましても、毎日が健康で健やかな、そして生きがいのある生活をしていただかなければならないと思っております。寝たきりで長寿を全うしたということは好ましいことではないというふうに思うわけでありまして、そういう観点から、今御指摘のように、リハビリの重要性というものは私どもも大きく認識をいたしておるところでございます。  これからは、医療におけるリハビリ、また老人保健事業における機能回復訓練事業、また今回お願いをいたしております中間施設等におけるリハビリ事業、こういったようなものを総合的に推進をいたしまして、寝たきりで長寿をするというよりも、元気でぴんぴんして長寿をしていただくというふうに持ってまいらなければならないというふうに思います。
  354. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 放置をしていれば全く寝たきりになってしまうという、そういう人たちにリハビリ治療を徹底させるとどれだけ家庭や社会に復帰できるのか。また、そのことを通してどれだけ医療費が軽減できるのかという、こういう問題について何か厚生省、調査なり研究をしたことありますか。
  355. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 寝たきりにならないようにする努力でございますとか、いろいろ脳卒中その他の疾患によっての治療の後、リハビリテーションをやるというふうなことの必要性については私ども十分承知しておりますが、それが数量的に医療費にどのようにいい影響を与えるかということについて、私どもとして直接推計をしたことはございません。
  356. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、率直に言って、厚生省としてそんなことの研究もしていないのかなということで、いささか失望を禁じ得ないのですね。  一九八〇年七月号の「病院」という雑誌に、東京の大田病院の沢浦美奈子さんというドクターだと思いますが、みずからの体験から、リハビリ治療によって脳卒中患者の七割がつえ、歩行異常で退院できた、八割以上の患者家庭復帰をしたということで、いわゆるリハビリ治療というのは大変有意義なんだということの報告が出ているわけでありますけれども、もう少し詳しく見ますと、日常生活能力の回復状況では、スプーンで食べる、コップで水をくむ、はしで食べる、腰かけ便器の使用、和式、洋式便所の使用、前あきの上着を着る、ズボンをはく、靴を履く、顔を洗ってふく、浴槽の出入り、タオルを絞る、字を書く、これらの一つ一つの過程を通して、入院時にはほとんど全介助を必要としていた寝たきり老人が、退院するときには八割以上の人が自立して家庭や社会に復帰しているというふうに述べているわけであります。  また、医療費の軽減問題では、前代々木病院リハビリ科の二木先生、この方が「医療経済学」という本の中で、リハビリ治療によって四八%の節減ができる、百人の患者を例にして平均四カ月の治療一般病院だけでいく場合と、それから脳卒中医療リハビリ施設と連携して治療を行う幾つかのケースを組み合わせて比較して、今の四八%節減されるという試算も出ているわけですけれども、実際に厚生省の科学的な施策を確立をしていく上でも、一遍これらの問題について研究をやってみる気はないでしょうか。
  357. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 公衆衛生審議会の中の専門部会で、この機能回復訓練に限らず、私どものやっておりますヘルス事業についての、今おっしゃったようなコストベネフィット的なことを研究をしてみるということで、私ども今準備を進めておるところでございます。
  358. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 次は、リハビリ治療におけるリハビリ担当の医師の養成の問題であります。  既に昭和五十二年五月二十三日に、日本学術会議は「リハビリテーションに関する教育・研究体制等について」ということで勧告を内閣総理大臣あてに提出をしております。その中で幾つかの提言をしているわけでありますけれども、「1 大学医学部ないし医科大学の教育において、リハビリテーション医学を必須課目とすること。2 専門医養成のための卒後教育の体系整備すること。3 上記1、2を実現するために大学医学部ないし医科大学にリハビリテーション医学の講座を設置すること」、こういうことを挙げておるわけでありますけれども厚生大臣、この日本学術会議の勧告をどういうふうに受けとめておられるんでしょうか。
  359. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 今先生がお挙げになりました三つのうち、アンダーグラジュエート、大学の中での教育、それから大学にリハビリテーションの専門講座を設置するということにつきましては、これは直接的には文部省の所管であろうかと思いますが、そういう点を踏まえまして、私ども一つ医師国家試験の出題基準の中にリハビリテーション医学につきましての知識、技能を十分習得しているかどうかをチェックすることにいたしております。  それからもう一つは、医師免許取得後の臨床研究カリキュラムにおきまして、リハビリテーションの実際を指導するということで、カリキュラムに組み込んでおります。  それから専門医の問題でございますが、リハビリテーション医学会が認定制度を設けておりまして、その資質の向上に努めておるところでございまして、現在まで、昭和六十一年六月現在でございますが、百七十七人の医師が専門医または認定医としてリハビリテーション医学会の認定を受けておるということでございます。  専門医認定の問題につきましては、このリハビリテーションの問題を含めまして、私ども現在日本医師会と合同で懇談会を設置して、検討を進めておるところでございます。
  360. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 しかし、今いろいろ言われましたけれども現状は非常に不十分であります。大臣もよく聞いていただきたいのでありますが、文部省の調査によりますと、全国五十の国公立大学のうち、リハビリを独立した科目にしている大学はわずか五分の一の十大学、リハビリ関係の講座については一つもないということであります。  講座というのは、日本学術会議の勧告でも述べてますように、医学教育の中心となるものであります。でありますから、リハビリテーション医学会でも、昭和五十七年の八月に文部大臣あてに、早急に国立大学医学部においてリハビリテーション医学の講座及びリハビリテーション診療科の設立に関する要望書を出しているところです。  今回こうした法案の審議をやっておるわけでありますけれども、お年寄りが寝たきりになる、痴呆性老人になる、それをいかに収容をして、きれいな言葉で言えばいろんなお世話をするか。しかし、結局、何というか、処理をするとも言うべき非常に条件の悪いそういうところへお年寄りが、たびたび出ていますように、うば捨て山のような形で送り込まれるという、それをどうするかというここらが問題の基本じゃなくて、お年寄りが一日も早く健康を取り戻し、家庭生活や社会生活にもう一回復帰できるような、そういう方向でのいろんな援助を、国としてもまた関係の諸機関としてもそこに大いに力を入れていくという、こういう点で、この法案の審議をしておりますこれを機会に、厚生大臣としても決意を新たにしていただきたいというふうに思うわけであります。  そういう見地からひとつ文部省に、このリハビリテーション医学の講座の新設、これをぜひひとつ急ぐようにという特別な働きかけをやってもらいたいと思いますが、どうですか。
  361. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 高齢化社会を迎えまして、リハビリテーションの重要性は先生のおっしゃるとおりでございます。  講座の設置等々につきましては、文部省の所管でございますので、なかなか具体的に私どもが言うのはどうかと思いますが、先ほどから申し上げておりますように、医学教育の中で、アンダーグラジュエートの教育の中でリハビリテーションをもっと重要視して力を入れてもらうように、これは従来も言っておりますが、これからも文部省にお願いをしていきたいと考えております。
  362. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 次は、リハビリの専門職員である理学療法士、PT、作業療法士、OTの現状はどうかということでありますが、昭和五十七年度から進められてきた老人保健事業五カ年計画、これによりますと、六十一年度までに合計四十九人を確保しようということで進められてきているんでありますが、そもそもこの計画自身が、全国の保健所数八百五十五カ所、これに比べて、これを考えてみたときに、計画そのものが極めてわずかだという問題があるのですが、加えて、実際の配置をされてきている実績を見ると、昭和五十九年までにわずかに六人と、こういう状況になっています。これはもう極めておくれているという、何かの理由をつけて合理化できるような、そういうような姿ではさらさらないというふうに思うんですが、どうですか。
  363. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) OT、PT、これは保健所におきますOT、PTの確保でございます。現在のところ、今お話がございましたように、五十七年度から五十九年度までに六人OT、PTを保健所で採用いたしておるわけでございます。なかなか保健所に確保するというのはいろいろの点から実際上難しい点がございますが、問題の重要性にかんがみまして、私どもといたしましては、OT、PTの確保に一層力を注いでいきたいと考えております。
  364. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 しからば、特別養護老人ホームの場合、このOT、PTの確保の状況はどんなふうになっていますか。
  365. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 特別養護老人ホームにおきましては、日常生活動作の訓練を行うということで、各施設機能回復訓練指導員というのを一名置いております。ただ、これは理学療法士等の有資格者に限定しておりませんし、また非常勤でもよいということになっております。リハビリの重要性は十分認識しておりますけれども、何分にも特別養護老人ホームというものが家庭にかわって生活の場を提供する、いわば家庭がわり施設の性質を持っておりますために、こういう配置になっているわけでございます。
  366. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 有資格でなくてもいいとか、非常勤でもいいとか、それは有資格者を置けないから、常勤者を置けないから、やむを得ずそういう形でもカバーせざるを得ないという問題なんでしょう。聞いているところでは、有資格のOT、PTはほとんどいない、補助的職員の常勤が七%、非常勤で二八%ぐらいになるというふうに聞いておりますけれども、これも極めて不十分な状況であります。  でありますから、日本理学療法士協会、ここでは特養老人ホーム一施設について二名、老人福祉センターは一施設に一名は必要だというふうに言っています。そうすると、合計で四千人以上必要だということで、広大な計画が必要になってくる。それに比べて、実際の施策現状というのはもう全く情けない姿になっているということであります。  全国福祉協議会、それから老人福祉施設協議会、ここの連名で「老人福祉施設のあり方に関する要望書」というのが出ていますので御承知のはずでありますが、四項目の要望、決議でありますが、その第一項目に、特別養護老人ホームにおける痴呆性老人寝たきり老人など重介護老人の増加にかんがみ、医療、看護、リハビリテーションの機能の強化を図られたい。二、老人福祉施設在宅福祉サービスのセンターとする方向機能強化を図られたいという、こういう要望も出ているところ、御承知のはずであります。こうした点で、ぜひ厚生大臣特別養護老人ホームにはリハビリの専門職員を必ず配置をするという、この方針をきっぱりひとつ確立をしてもらいたいと思いますが、ちょっと大臣に聞きますか。
  367. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほども申しましたように、特別養護老人ホームというものはそもそも家庭にかわって生活の場を提供するという性格の施設でございますから、先生今おっしゃるように、その特養にすべてリハビリの専門家を置くことがいいかどうか、この辺はよく考えなきゃいかぬことだと思います。  私どもはむしろ日常生活動作の訓練ということに主眼を置いてやっておりますから、より高度といいますか、医学的あるいは専門的な見地からのリハビリテーションということであれば、病院なりあるいは今お願い申し上げております中間施設、そこでやっていただく、その方向で進みたいというのが我々の考え方でございます。
  368. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 中間施設の言葉が出ましたから確かめておきたいわけでありますけれども、同様の趣旨からこの中間施設にもリハビリ専門職員は必ず置くという方針ですか。
  369. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設におきましては、入院治療が終わった人の家庭復帰を目指す施設でございますから、私どもとしてはこの施設リハビリテーション機能というのは一つの大きな柱だと思っております。したがいまして、当然ながら、OT、PTの職員を配置し、そして機能訓練室も備えた施設にしていきたいというふうに考えております。
  370. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろ言われます。口では頑張ってやる、またそういうものをきちっと置かなくちゃならぬ、こう言われるんですけれども、本当にそのことをやっていこうとすれば、昭和五十八年に医療関係者審議会理学療法士作業療法士部会がまとめたあれが出ていますね。それで、この内容は、今日の時点に立って政府として当然新たな見直しをやるべき課題があるというふうに受けとめていますか。
  371. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 今お話しの医療関係者審議会理学療法士作業療法士部会でございますが、昭和五十八年に今後の理学療法士、作業療法士の需給の問題について意見書に記載をされておるわけでございます。その御意見によりますと、昭和六十年代後半、六十七年前後に理学療法士につきましても、作業療法士につきましても、現在の養成状況でいけばほぼ需給が均衡するということを意見書の中で言っていただいておるわけでございます。  ただ、お話もございましたように、現在、老人保健あるいは老人医療をめぐるいろいろの問題、非常に急激に変化をいたしておるわけでございます。私ども、これから地域におきます医療機関機能分担のあり方とか、あるいは老人保健事業等の地域保健サービスの今後の方向、こういったものを踏まえまして、理学療法士、作業療法士等のマンパワーの需給見通しを検討していきたいと考えております。
  372. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 最後でありますので、これはぜひ大臣に答えていただきたいと思います。  以上、いろいろな角度から質問をしてまいりましたことを通しても明らかになりましたように、寝たきり老人が一日も早く健康を取り戻し、家庭や社会に復帰できるようにするためのリハビリ治療が極めて重要であるにもかかわらず、実際に政府が今日までやってきておる施策というのは大変おくれておる。というよりは、本当は老人対策基本的視点をどこに置いておるんだろうかということで疑問、批判を持たざるを得ないような施策の弱さが露呈をしてきておると思うんであります。  いわば戦前、戦後、大変な苦労をして日本社会を支えてこられた老人を厄介者扱いをして、いかに安上がりに老後のいわゆる面倒を見るかという、こういう立場しかない。まさに逆立ちをした老人対策と言うべきものだという点で、これが苦労をされてきたお年寄りに対する思いやりのある政治というふうに言えるかというふうに私は言わざるを得ないわけであります。  こうした点で、こういう冷酷な政治、無慈悲な政治、こういうものはぜひ転換をするために、厚生大臣は、この法案とはかかわりなく、一体どういうふうにやるおつもりかということを最後に聞いておきたいと思います。
  373. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 冷酷無慈悲な政治というお言葉でまことに遺憾に存じておりますが、佐藤委員も御指摘になられましたように、また私も答弁をいたしましたように、これからのリハビリテーションに対する必要性というものは非常に大きく認識をいたしておるところでございます。  医師につきましても、高齢者特有の病態やリハビリテーション医学についての適切な知識と技術を十分備えていただく必要があるし、また具体的に実行していただくOT、PTの方々の養成ということについても、心していかなければならないと考えております。  これまでにも、養成計画に基づく需給体制を決めてやってきておるわけでございますが、これからなお一層需要が増してまいるわけでございますので、一度その需給計画につきましても見直しをいたしてまいりたい。これまでのOT、PTのまだ歴史的な浅さというようなものがあろうかと思うわけでございます。そういうハンディを克服して、ひとつ養成体制をしっかりし、そしてリハビリが重要であることに対応できていけるようにいたしてまいりたい、こう考えております。
  374. 抜山映子

    抜山映子君 老人医療費は、昭和四十八年に老人福祉法により無料化されてお年寄りに大変喜ばれたわけですが、十年後の老人保健法創設により有料となりました。このときには、無理のない範囲でごくわずかな一部負担を導入するんだ、老人保健法創設によりそういうことになったわけです。  ところが、老人保健法が施行されて三年十カ月しか経過しておらないのに、今回一部負担の方も加入者按分率の方もドラスチックに引き上げてしまう。これは余りにも唐突であって、国保の赤字や国庫負担の削減を目的とする財政対策としか考えられないわけですが、今回の改正に対する基本的な考え方を大臣にお伺いしたいと思います。
  375. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 人口の高齢化に伴い、増加の避けられない老人医療費を適正なものとし、またお年寄りも含め国民全体で公平に負担するシステムを確立することが、これからの本格的な長寿社会の到来を控えてどうしても必要なことであるというふうに考えるわけでございます。  今回の老人保健制度改正は、このような課題にこたえ、世代間の負担の公平の観点から、お年寄りに無理のない範囲で一部負担の引き上げをお願いするとともに、加入者按分率を段階的に引き上げ、各保険者間で老人医療費の公平な負担をお願いいたそうというものでございます。  同時にまた、医療サービス生活サービスを兼ね備えた老人保健施設というものを創設いたし、要介護老人やまた寝たきり老人の方々のための施設として新しくこれを発足させよう、こういうことでございます。  このようなことによりまして、制度を長期的に安定を図り、二十一世紀においても安心して老後を託せる制度の確立を目指すものでございまして、どうかひとつ御理解をいただきたいと思う次第であります。
  376. 抜山映子

    抜山映子君 法律や制度というものはみだりに改廃してはいけない、朝令暮改というのは悪政の最たるものだと古来言われておるわけです。特に負担増を伴うものにつきましては、予測可能な範囲でやるのが法律の改正のあり方です。  ところで、大臣、今度のようなドラスチックな、急激な改正を三年十カ月前に大臣は予測しておられましたか。
  377. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 私は、その当時も社労委員でございましたが、その当時から、老人医療費国民全体で負担をするという観点に立ってこの老人保健制度ができたものと、そしてでき得れば、理想としては、今で言います専門的用語になります加入者按分率一〇〇%というものを実現することがいいというふうに考えておりました。それが証拠に、政府提出の原案におきましても、五〇%から一〇〇%へ向けて政令で決めさしていただくというのが原案であったわけであります。  急に新しい制度を導入し、急激に一〇〇%にするということはなかなか難しいことがあり、制度創設時であるので加入者按分率五〇%ということにしてはどうかというような観点から、国会で修正をされたというふうに考えておりますが、そういったことから考えまして、公平な負担の理想を実現をしていく、その理念の徹底を図っていくということから考えれば、加入者按分率一〇〇%に段階的にお願いをしていくということは、この制度の一番発足当初からの考えであるというふうに私は考えております。
  378. 抜山映子

    抜山映子君 それでは、一部負担の方はどうですか。このような大幅な改正を三年十カ月前に予測しておられましたか。
  379. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今回の一部負担の引き上げは、負担の公平を図るということとともに、世代間の公平というものも図っていく、お年寄りも若い者も皆それ相応に負担をして老人医療費を支えていく、こういう観点からのお願いでございます。  当時は、健康保険におきましても一部負担というのがございました。その後、健康保険法の改正によりまして、本人の場合一割負担、こういうことに相なり、また、家族負担は外来で三割、入院で二割、また国民健康保険におきましてはすべて三割負担、こういうことでありますので、そういうことから考えますると、今回一部負担の改定をお願いいたしておりますトータル額といたしますれば、これまでの一・六%の負担を衆議院の修正によりまして四%程度負担ということになろうかと思うわけであります。そうなりますと、お年寄り以外の負担のあり方から、相当程度低い中での負担をいただく、お年寄りはお年寄りなりの負担をいただくということに今回お願いをいたしておるわけでございます。
  380. 抜山映子

    抜山映子君 えんきょくに答弁をお避けになっているようですが、もっとはっきりお聞きいたしましょう。  四百円を今回衆議院の修正で八百円としましたけれども、こういう二倍になるということを予測しておられましたか。あるいは、入院の場合に、半年にすれば五倍の金額になる、一年にすれば十倍の金額になる、こういうものを予測しておられましたかどうか。イエスかノーでお答えください。
  381. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほども御答弁申し上げましたように、加入者按分率の一〇〇%ということとともに、今回の一部負担の改定をお願いをするということでございます。イエスかノーかというお話でございますが、正直言ってその当時私は八百円とか千円とか、もしくは入院五百円という額そのものを想定はいたしておりませんでした。しかしながら、それなりの一部負担の改定はお願いしなければならないであろうなということは考えておりました。
  382. 抜山映子

    抜山映子君 ただいま正直にお答えいただきました。予測していなかった、こういうお答えでございました。それにつけ加えまして、それなりの増額はあってもしかるべきだと考えていたと、こういうことなんです。  大臣、そのとおりなんですよ。それなりの増額ならばいいんですけれども、今回の場合には大臣も予測できなかったような大幅で急激なアップなんですね。ですから、これは国民にとって予測を超えた本当にびっくりするような改悪なんです。  そこで、お伺いいたしますけれども、特に低額所得者については、このような急激な改正というものは致命的なものになるおそれがあるわけです。そこで、低所得者に対する特別の配慮を考えなくちゃいけないと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  383. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の一部負担の引き上げに伴いまして、低所得者が過重な負担にならないようにという観点からの御質疑は再三受けたところでございますし、衆議院からもそのような観点から附帯決議という形で示されたところでございます。  私ども考え方としましては、今回の引き上げ程度の額であれば、現在の年金の水準なり高齢者世帯の所得の状況からいって、どなたにもお支払いいただける額ではないかというふうに判断をして御提出を申し上げているところでございますし、かてて加えて定額制を維持する、あるいは月一回の支払い方式を堅持するというようなことで、お年寄りの方が負担していただける、無理ない範囲でお願いをできるものだというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、先ほど申しましたように、附帯決議等で示された点を踏まえまして、所得が低くてどうしても支払いができないような事情のある方についての配慮を考えなきゃならないということで、種々の観点から今検討をいたしておるということでございます。
  384. 抜山映子

    抜山映子君 それではお伺いしますけれども、前回の一部負担によって老人の受診がどのようになったのか、最近どうなったのか、推移も含めてお答えください。
  385. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 受診率の推移でございますけれども、まず入院の受診率から申し上げます。  五十八年度は伸び率が鈍化をいたしまして、受診率は千人当たりで七十ということで前年並み、伸び率は〇・一%でございました。五十九年度以降は上昇に転じまして、六十一年度の三月―八月の平均では千人当たり七十八となっておりまして、これは医療保険全体の約五倍の数値でございます。なお、伸び率は年々若干低下をしておりまして、最近六十一年度の三月―八月の平均では二・二%、医療保険全体の伸びをやや下回っている状況でございます。  入院以外の受診率でございますけれども、五十八年度に受診率が若干減少いたしましたが、五十九年度以降は年々漸増いたしておりまして、一・七%でございますけれども医療保険全体とほぼ同様の伸びを示してございます。六十一年度の三月―八月の平均でございますが、千人当たりで九百九十七件でございまして、医療保険全体が千人当たりで四百三十六件でございますから、約二倍を超えているという状況でございますが、これは法施行前の水準、千人当たり九百七十六でございますので、この水準を上回っている状況になっております。
  386. 抜山映子

    抜山映子君 外来が五十八年度には減った、こういうことですね。お年寄りの中には、これが四百円のときであっても月がわりまで待つという老人も現にいらっしゃることは事実でございます。一部負担により老人の受診が抑制されるとすれば、人権という面から見て大変重大な問題だと思うわけです。  先ほど、この程度の一部負担であれば大した負担にはならない、こういうように言われたんですけれども、例えば今回入院も期限が撤廃されたわけですね。そうしますと、半年入院すると九万円である。今までだったらこれの五分の一であったわけです。これぐらいならとおっしゃいますけれども、御存じのように、老人入院した場合、一部負担のほかに多額の保険外負担がかかるわけですね。厚生省の調査によっても、お世話料と言われるものがある。先ほど同僚議員の質問によりましても、全国平均で二万七千五百円かかる、関東では五万円となっている、こういうことになっておるわけです。  今までの議事録なんか読んでみますと、この五万円は家にいたってかかるものだ、こういうように言われたわけですが、入院いたしますと生活費が膨張することは、これ明々白々なんです。幾ら日常にかかるものといいましても、入院することになりますとやはり皆さん新しい物をお持ちになる。あるいは、家族で共用の物は別途新しい物を洗面器一つにしても買わなければいけない。あるいはテレビなんかでしたらやはり自分一人が見るための経費が必要である、こういうことになってくるわけでございまして、お世話料は家でもかかっているんだから同じことだと、こう言うのはまことに暴論にすぎないと思いますが、これはお認めになりますか。
  387. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の引き上げ額につきましては、私どもとしてはやはり無理なく御負担願える額じゃないかと申し上げているわけでございますが、これは厚生年金ですと月十二万円ぐらいになっておりますし、最低の福祉年金でも二万七千円でございます。それからまた高齢者世帯の平均的な一人当たりの所得状況が全世帯と余り変わらないというような状況から見まして、私どもは若い世代に比べまして例えば健保本人ですと六分の一、それから国保の場合ですと十四分の一という現在の一部負担を今回引き上げさせてもらうわけでございますから、そういう意味では御納得いただける引き上げではないかというふうに考えおりますし、額についても先ほどのような判断から御負担をお願いできるんではないかと考えているわけでございます。  なお、保険外負担でございますけれども、確かに保険外負担医療サービスとは関係のないと申しますか、医療の給付としては見られない経費が病院においてかかるわけでございます。これは何度も御説明いたしておりますように、私どもとしては、おむつ代だとかあるいは理美容代だとか、あるいはその他の生活の諸費みたいなものでございまして、これはやはり家にいて療養されておってもかかる経費ではないか、こういうことから、入院されても同じようにその面は負担していただくべき筋合いのものではなかろうか、こう申しておるわけであります。  このお世話料が医療の一部をお世話料と称して取るとか、その他の老人に過重な負担を強いるようなものはびしびし指導していくと申し上げておるわけでございまして、そのことと私どもが一部負担で今回医療の中の一部を負担してもらうという考え方とは相矛盾をしないと申しますか、私が繰り返し説明しているようなことではなかろうかなというふうに考えているわけでございます。
  388. 抜山映子

    抜山映子君 回答が明白でないと思います。お世話料は家にいればかかるものである、こういうように極言することは間違いじゃありませんか。お世話料は、病院に入ったがために生活費が膨張して、購入を余儀なくされた物がかなり含まれるのじゃありませんか、これについてはっきりとお答えください。
  389. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 確かに、入院ということで、委員指摘のように、新しく例えば衣類を買われるとか、あるいは洗面器を買われるというのは、新しい出費というふうに考えられるわけでございますけれども、しかし、そのことは今回の私どもが一部負担で考えておりますこととのバランスで見ます場合に、やはり家庭療養される、あるいは家庭病気になられた場合の何がしかの出費増というのは、日常生活上どうしても避け得ない出費増でございますから、その面ではやむを得ないものとしてお年寄りも御納得いただかなければしようがない経費ではなかろうかなというふうに考えるわけでございます。
  390. 抜山映子

    抜山映子君 もうこれ以上深追いはいたしませんけれども、明らかに入院すれば生活費が膨張することは、もうこれ明々白々と言えると思います。  ところで、年金だけで生活していらっしゃる方のパーセンテージを教えてください。
  391. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 高齢者世帯における年金、恩給のある世帯の割合は九三・五%でございますけれども、年金、恩給の総所得に占める割合が一〇〇%という世帯の割合は四一・九%でございます。
  392. 抜山映子

    抜山映子君 老齢福祉年金の受給者はそのうち何%ですか。
  393. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 二百十二万二千六百十八名でございますが、これは六十年三月末現在の数字でございます。
  394. 抜山映子

    抜山映子君 そうしますと、老齢福祉年金は二万七千二百円ですね。仮に半年入院しますと九万円ですね。一年入院しますと十八万円ですね。それにお世話料とか、もろもろその他の諸経費を入れますと、こんな老齢福祉年金なんか一遍にすっ飛んでしまうじゃないですか。これでも老人にとっては大した改悪ではない、このようにおっしゃいますか。
  395. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもとしては、こういうお答えをするとおしかりを受けるかもわかりませんけれども入院された場合には逆に食費とか助かる経費もあるわけでございます。入院されました場合には、医療ということで文字どおり食事から住居からすべてが給与される形をとっておるわけでございますから、そういう面も加味しますと、私どもは、老齢福祉年金の二万七千余から老齢福祉年金受給者はぜひとも老人医療費の一部負担ということでお出し願って、そういう中でやはり若い世代もお年寄りも力を合わして老人医療費、急増してまいります老人医療費を支えていただくということが大事じゃなかろうかというふうに考えるわけであります。  何も福祉年金から出せと言っているわけじゃありませんで、その他の収入があればもちろんそれをお使いになるということは結構でございますが、仮に福祉年金に限って申し上げれば、私どもはどうしてもそういうお願いをいたしたいということでございます。
  396. 抜山映子

    抜山映子君 収入がゼロの人はどれぐらいありますか。
  397. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 収入がゼロというのは私ども数字では出ておりませんで、三十九万円以下というのが高齢者世帯では五・一%でございます。  なお、念のために申し上げますと、老人の二人世帯で生活保護のレベルが六十一年度で十二万円、老人単身世帯では八万六千円程度でございますから、収入ゼロあるいは先ほど申し上げました数字というのはかなり低いレベルでございまして、私どもはこの申し上げました数字ではとても生活できない数字であろうというふうに思います。
  398. 抜山映子

    抜山映子君 保護をもらわないという人もいるんですよ。そういうことは非常に気恥ずかしいことだと言って、もらっていない人もいるんです。そういう数字は把握していませんか。
  399. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 生活保護を最初から申請なさらないというケースでございますから、私どもでは把握のしようがございません。
  400. 抜山映子

    抜山映子君 子供と同居をしておって、子供も働いているんだから、これは申請するのは気恥ずかしいし、しないという方もいるわけです。そういう方につきましては、やはり病院に行ってお金がかかると非常にお嫁さんに気兼ねをする。嫁に気兼ねで病院に行けない、こういうのはしばしば耳にする話です。ですから、本当にそういうところまで把握しないと、これは大した金額増でない、こういうような乱暴な議論が出てくると思うんですね。  そこで、加入者按分率の問題に戻ってちょっとお伺いいたします。  先ほど大臣は、一〇〇%は自分は予測しておったんだ、こういうように言われたわけですけれども、五〇%が一〇〇%でしょう。普通、家賃でも何でも値上げは大体二年ぐらいたって二割ぐらい値上げするのがもう最高限度ですよ。それで、それにもかかわらず大臣は五〇%が一〇〇%になることを三年十月前に自分は予測しておった、そういうように判断された根拠を明らかにしてください。
  401. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほども申し上げましたように、この老人保健制度というものを創設いたしましたときに、老人医療費国民全体が等しく負担をしよう、こういう発想から始まったわけでありまして、かといって、いきなり一〇〇%というのはなかなか問題ではないか、こういうことでありますから、いずれ一〇〇%になる、またしていくべきであるというふうに私は当時から思っておりました。
  402. 抜山映子

    抜山映子君 いずれというのはどれぐらいの期間ですか。
  403. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この原案が加入者按分率五〇%から一〇〇%へかけて政令でそれを定める、こういうことに当初なっておりまして、それが激変緩和とでもいいましょうか、冒頭、当初から加入者按分率の余り高いのはいかがかということで、五対五ということに衆議院で修正をされ、また参議院におきまして老人人口の増加率以下に抑えるという修正がなされ、同時にまた、三年後の見直し規定というのが修正で同じように入ったわけでございます。こういうようなことから考えますと、三年後に見直さしていただいたというのもおわかりをいただけるかなというふうに思うわけでございます。
  404. 抜山映子

    抜山映子君 被用者保険と国民健康保険の間においては、構造的な差異も大きいし、運営の実態にも隔たりがあるわけですね。これを一〇〇%加入者按分率にするんだ、こういうことになりますと、国庫補助と事業負担を同視するのが政府の考え方なんでしょうか。
  405. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御指摘のように、国保と被用者保険、いろんな面で構造的な隔たりがあるわけでございます。私ども制度はそういう構造を持った各保険制度に上に乗った形で、市町村に共同事業の形で各保険者がお願いをしている形をとっているわけでございます。  按分率考え方は、老人のそれぞれの構造から持つ加入率の格差を調整しようということからこの制度が成り立っておるわけでございますので、そういう意味でそれ以外のいろんな構造的な要因、例えば所得の問題あるいは医療費の問題あるかもわかりませんけれども、各制度のいろんな要素を捨象して、少なくとも各制度で明確な基準でわかる老人の加入率、そういうことの格差を解消するということをこの按分率考え方は持った形で制度ができたということでございまして、その制度をさらにより公平の理念で徹底をしていただきたいというのが今回の引き上げの理由でございます。
  406. 抜山映子

    抜山映子君 政府は事あるごとに自助自立が大切だ、こういうことを言われるわけです。そこで、この被用者保険は自助自立で経営効率を高めて、非常にレセプトの厳しい審査とかもろもろの経営努力を行ってきたわけです。その結果が老人を平等に分担するんだと言って、構造も運用も全く違う別個の制度であるにもかかわらず一〇〇%を押しつけてくる、これは余りにも私はおかしな考え方と思いますが、いかがですか。
  407. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健制度は、経営努力の結果黒字が出たから、その黒字分を困っているところに持っていこうということではございません。先ほどから申し上げましたように、黒字があるから調整をしよう、あるいは財政力に格差があるから調整しようということではございませんで、老人の加入率の格差をならそうということが制度創設のねらいでございますし、それを徹底させるわけでございますから、    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 委員指摘のように、健保組合が必死に努力して黒字が出た、したがって今回引き上げをお願いするということではございません。  何度も申し上げておりますように、老人医療費増高が避けられないわけでありまして、この増高する医療費をやはり世代間も、それから若い人の中の、保険者間同士の被保険者グループも相助け合って公平な負担にしていく、そういうシステムを今つくることが制度の安定につながっていく、そのことが究極的には老人医療の確保につながるんではないか、こういうことでお願いをしているということで御理解をいただきたいと思います。
  408. 抜山映子

    抜山映子君 余り無理な議論はなさらない方がいいと思うんです。それでは、健保の方に黒字がなければどうなんですか。やはり同じことをやったんですか。
  409. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) そのとおりでございまして、私ども制度創設のときにも御説明をいたしておりますけれども、黒字、赤字ということではございません。そういうことですと、創設のときに既に赤字で悩んでいる健保組合なりもあったわけでございますし、もちろん国保は悩んでいたわけでございますが、そういうそれぞれの黒字、赤字というものを調整しようということではなくて、何度も申し上げておりますように、各制度間でやはり納得、合意のできる老人の加入率の差、それに伴います負担の不平等と申しますか、不公平をならそうということが目的でございますから、黒字があるから、赤字があるからという問題とは別に、やはり負担の公平という理念からお願いをしているものでございます。
  410. 抜山映子

    抜山映子君 これ以上は申し上げませんけれども、結論は明白だと思います。  ところで、厚生省高齢者対策企画推進本部報告においては、医療保険の一元化に関して、これを「昭和六十年代後半のできるだけ早い時期に実施する」として、給付と負担公平化について次のように述べておるわけです。「被用者保険制度国民健康保険制度との間の調整は、加入者の年齢構成の相違に着目し、老人保健法による共同事業を拡大し、格差を是正することにより公平化を図る」。  この加入者按分率を一〇〇%とすることは、ここに言った共同事業を完璧に行うに等しい。これは、一元化の際の財政調整策の先取りになるのではないかというところが一点。もし一元化対策の先取りと考えるのであれば、これ以上に被用者保険と国民健康保険の間に財政調整を行うことはないということをここで明言されたいと思います。
  411. 下村健

    政府委員(下村健君) 私ども医療保険の一元化というふうなことを言っておりますのは、高齢化社会に備えてそのための費用負担を公平にやっていこう。どうしても高齢化社会になりますと、医療費の負担の問題にいたしましても、ほかに年金もございますが、負担が高まっていくということは避けがたい。その場合に公平な負担でないと、その負担を行っていくということができなくなるんではないか、こう思っておるわけでございます。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕  そういうことから一元化を言っているわけでございますが、一元化自体については関係者の御議論もいろいろございまして、これから関係者の御意見を伺いながら決めていかなければならぬわけでございますが、その際の一つの手段としては、財政調整というのが有力な考え方であると思っているわけでございます。したがって、まだ検討も始まっていない段階で、これ以上の財政調整をやらないということは、ちょっと私どもとしては申しかねる次第でございます。
  412. 抜山映子

    抜山映子君 財政が窮迫する健保組合には、先ほど助成措置、それから健保連の共同事業の強化で対応するというように答弁されましたけれども、各組合が押しなべて急激な拠出金負担増の影響を受ける上に、ほかの組合の援護のためにさらに共同事業を強化するための負担増を受け入れるような、そんな組合はないんじゃないですか。
  413. 下村健

    政府委員(下村健君) 確かに、按分率が変わることによりまして、健康保険組合の負担はふえてまいります。したがって、そのような状況の中でさらに負担をふやすというふうなことについて、喜んでいるというふうなところはなかなかないんではないかとは思います。それはそのとおりだと思います。  一方において、共同事業というのは、健康保険組合が健康保険組合の存続、発展を図っていくというための自主的な努力として始まって現在既に行われているわけでございます。  私どもとしては、最終的には健保連とよく相談をしながら、その共同事業運営を決めていくということになるんではないかと思っておりますが、今回の老人保健法が成立いたしますと、共同事業の前提になる健康保険事業自体が変わってくるわけでございますから、当然それに対応した共同事業のあり方があるだろう、こんなふうに思っているわけでございます。  その場合にどの程度負担がふえるか、ふえないかということは、老人保健法成立後の健保組合全体の状況を見て、その後の状況に即応して決めていけばいい。私どもも好んで負担がふえれば直ちにそれでうまくいくというものでもない、現在の枠内でもやる方法もいろいろあるんではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  414. 抜山映子

    抜山映子君 その後の状況に即応してという表現をとられましたけれども、要するに健保連の共同事業の強化というのは非常に難しい、こういうように理解してよいと思うんですね。  そこで、参考までに数字を申し上げますけれども、県平均保険料率が法定最高料率の千分の九十五以上になる都道府県がどういうように推移していくか。これは加入者按分率が六十一年八〇%、六十二年から六十四年九〇%、六十五年一〇〇%を想定して試算したものでございますけれども、六十五年には千分の九十五を超える都道府県が二十六も出る、こういう試算数字があるわけなんです。こうなりますと、もう健康保険組合の中にはこれ以上やっても仕方がないと、恐らく解散してくる組合も出てくるだろう、このように思うんですけれども、これの受け入れ態勢はありますか。
  415. 内藤洌

    政府委員(内藤洌君) 確かに、個々の組合について見ました場合に、財政状況のよくない組合というのが出てくる可能性はございますけれども、先ほど来答弁がございますように、政府の行います国庫補助の拡充、また健保連で行っております共同事業の効率的な実施といったような努力を重ねることによりまして、解散の健保組合が急激にふえるというような事態には立ち至らないのではないかというふうに考えておりますが、仮に健康保険事業の継続が困難な健保組合が出てまいりました場合には、これは当然政府管掌健康保険に引き継ぐこととなっております。健保組合以外、健保組合に属さない被保険者対象といたします健康保険事業は政府管掌健康保険の役割でございますので、そのような場合が仮にあれば、政管健保でこれを引き継ぎまして適切に対応していきたいと考えております。
  416. 抜山映子

    抜山映子君 政管健保側の事務処理能力はありますか。
  417. 内藤洌

    政府委員(内藤洌君) 政府管掌健康保険は、全国に祉会保険事務所を持っておりまして、現在、中小零細企業が中心でございますけれども、九十万余の事業所を対象といたしまして、約千五百万人の被保険者対象として事業実施を行っておるわけでございます。中小企業が中心なものでございますから、非常に多数かつ零細な事業所が多いわけでございますが、現在そういう形で事業実施運営に当たっておるわけでございます。  健保組合の解散が仮にある場合には、これを引き継いで事業運営を継続していくということについては何ら問題がないものと考えております。
  418. 抜山映子

    抜山映子君 政管健保の国庫負担が増加するため、解散の認可をしないということはないでしょうね。
  419. 下村健

    政府委員(下村健君) 現在でも毎年幾つか、企業の倒産でありますとかいろいろの事情で、解散を余儀なくされる組合はございますが、それにつきまして財政事情によって左右するというふうなことはやっていないわけでございます。今後もその点については変わりございません。
  420. 抜山映子

    抜山映子君 国保税の課税限度額が昭和六十年度から三十七万円とされているんですけれども、ここまで限度額を引き上げていない保険者はどの程度ありますか。
  421. 下村健

    政府委員(下村健君) 三十六万円以下、大体一万円刻みで限度を決めている市町村が多うございますので、一万円刻みで三十六万から下のところ、こういうことになるわけでございますが、六十一年度の状況で申しますと、三十六万、三十五万が七・五二%、三十四万以下が二・九七%で、合計いたしまして一〇・四九%でございます。
  422. 抜山映子

    抜山映子君 せっかくこの限度額まで保険税を賦課することが公正だと、こういうようにされているのに、これを守らない保険者においては結局所得の低い人にしわ寄せがいく、こういうことになると思うんですが、こうしたことが重税感につながって保険税の滞納を生じる一因となっているんではありませんか。
  423. 下村健

    政府委員(下村健君) 国保の場合の財政の健全化というのは、私どもとしては毎年度の保険料の賦課総額は、医療費に見合った額が総額として賦課されているということがまず大前提でございます。あとは、各市町村の状況に応じまして、これは条例等で保険税あるいは保険料を決めているというところが多いわけでございますので、その市町村の個々の事情にある程度はゆだねているわけでございます。  市町村によりましてそれが極端になりますと、おっしゃるような問題も生じますので、私どもとしては、限度を引き上げた場合にはできるだけそれをそろえて上げるようにというふうな指導をいたしておりますが、市町村によりましては三十七万円と、一方において低所得が多いというふうな状況でございますから、非常に低い保険料の方も出てまいります。保険料の納める額が百倍も違うというふうなことが国保の場合には起こってくるわけでございます。その辺は各市町村の状況判断によりまして、所得階層間の保険料配分をどうするかというのはある程度市町村の実情にゆだねられているという状況にございますが、私どもとしては、できるだけそろえるような指導を今後もやってまいりたい、このように考えておる次第です。  ちょっと余計でございますが、したがって、三十七万円以上に、これは税の場合ですとそれができないわけでございますが、三十七万円以上にやっているところも幾つかございます。
  424. 抜山映子

    抜山映子君 それでは、老人保健施設のことについてお伺いしたいと思いますが、医療法によりますと、この医療法対象病院、診療所、助産所と、このようにあるわけなんですけれども、この老人保健施設医療法対象から外したことは、助産所のような病気ではない、言うなればノーマルなことですね、そのような助産所も対象にしているのとの均衡、その点から老人保健施設をわざわざ落としたことについて私は理解がいかないんですが、この理由をお聞かせください。
  425. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 助産所と老人保健施設の比較でございますが、助産所は医療法の中で規定をいたしておりますのは、非常に広い意味の医療ということで考えますと、助産所は助産行為を行う場所でございますので、そういう観点から見れば助産所全体が広い意味での医療に該当をする。つまり助産所というものを取り上げれば、一〇〇%広い意味での医療に該当するというようなことから、助産所を医療法で規定をしておるわけでございます。  しかし、一方で老人保健施設でございますが、老人保健施設はもちろん医療サービス医療を行う部分もございますけれども、同時に生活サービス実施するところである。つまり老人保健施設というものをとらえた場合に、一〇〇%医療であるということにはならないわけでございます。そういった意味で、今回老人保健施設医療法に規定をしないで、老人保健法に規定をするということにいたしたわけでございます。
  426. 抜山映子

    抜山映子君 老人保健法の第七条に、老人保健審議会は「保険者の拠出金等に関する重要事項を調査審議する」、こういうように書いてあるんですけれども、今回の老人保健施設老人保健審議会から出てきたとすれば、これは所掌事項を拡大したということになりませんか。
  427. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健審議会につきましては、「拠出金等に関する重要事項」ということになっておるわけでございます。私ども老人保健施設の原案を固め国会に出すに当たりまして、いろいろと懇談会その他には意見を聞いてきたわけでありますけれども、どこに諮問するかという場合に、やはり老人保健審議会が最も適当ではなかろうかということで、「拠出金等」の「等」の中に読み込みまして諮問をし、御答申をいただいたわけでございます。  老人保健審議会は、主として按分率関係で、御指摘のように、拠出金についての御審議を専らお願いをしていたわけでございますけれども、この老人保健施設も財源は専ら拠出金に仰ぐわけでございまして、そういう意味では非常に密接不可分の施設体系である、こういうことも判断をいたしまして、老人保健審議会から御答申をいただいたということでございます。  今後は、なおこの権限規定を改正させていただきまして、今回提案を申し上げます改正案では老人保健審議会の権限を明確に拡大させていただきまして、この老人保健審議会老人保健施設のことが審議できますように、はっきり明記の形で改正をお願いしているということでございます。
  428. 抜山映子

    抜山映子君 ただいま「拠出金等」とあるから老人保健施設もこの中に入ると考えてしかるべきなんだと、こういう御意見でございましたけれども、このような老人保健施設というものは医療法と大いにかかわってくるわけですから、これを「拠出金等」に含めるんだという議論は少し乱暴だと思うんですが、いかがですか。
  429. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもが原案を提出します場合に、御指摘のように、老人保健審議会に御諮問を申し上げたわけでございます。これは他にこの老人保健施設を、中間施設を審議する正式の審議機関がないということでございまして、どの審議会が厚生大臣として意見を聞くのに最もふさわしい審議会かということを考えまするに、やはり老人保健審議会が、先ほど申し上げましたように、拠出金を財源に充てるということの関連からいいましても関係が深いんではないかと思いますし、かてて加えまして、今回の老人保健法改正を行うに当たりまして、前広に老人保健審議会にも御意見を聞いたわけであります。三年後の見直し規定が法の附則で定められておるわけでございますから、いかように厚生省としては考えるべきかということを聞いたわけでございますが、その際の意見具申という形で、やはり中間施設についても積極的に検討すべしという意見も事前にいただいていたわけでございます。  そういうことを総合的に勘案をいたしまして、提出時においては老人保健審議会に御諮問をし、答申をしていただいたわけでございます。今後は、この拠出金等をもう少し幅広に改めさしていただきまして、この老人保健審議会で専門的に御審議を煩わすことにいたしたいと考えております。
  430. 抜山映子

    抜山映子君 老人意見とか診療サイドの意見、すなわち中医協の意見とか、そういうものの意見は聴取されなかったわけですね。
  431. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設を提案いたします場合に、私どもがどういう関係者の意見を聞いたかというお尋ねでございます。  もとより、社会保障制度審議会という専門の審議会から総理大臣あてに提言がなされ、中間施設をつくるよう提言をなされたことが一つ。それから、それを受けまして厚生省中間施設懇談会をつくったわけでございまして、ここには医療関係者、福祉関係者、この中間施設をめぐる各方面の関係者に入っていただいて御議論をいただいたわけであります。その上で、老人保健審議会に御諮問したわけでございますけれども、その審議会には老人クラブの代表の方、そして医師の方ももちろんおられまして、各般にわたる御意見をちょうだいしたということでございまして、それを踏まえて原案を提出させていただいておるわけでございます。
  432. 抜山映子

    抜山映子君 終わります。
  433. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十六分散会