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1986-12-09 第107回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月九日(火曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  十二月八日     辞任         補欠選任      森下  泰君     松浦 孝治君      中野 鉄造君     高桑 栄松君      藤井 恒男君     勝木 健司君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         佐々木 満君     理 事                 岩崎 純三君                 田代由紀男君                 糸久八重子君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 松浦 孝治君                 宮崎 秀樹君                 千葉 景子君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 高桑 栄松君                 沓脱タケ子君                 佐藤 昭夫君                 勝木 健司君    国務大臣        厚 生 大 臣  斎藤 十朗君    政府委員        厚生大臣官房長  北郷 勲夫君        厚生大臣官房総        務審議官     長尾 立子君        厚生省健康政策        局長       竹中 浩治君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長  黒木 武弘君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省保険局長  下村  健君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        大蔵大臣官房企        画官       田谷 廣明君        文部省高等教育        局医学教育課長  佐藤 國雄君        自治省財政局準        公営企業室長   磐城 博司君        自治省税務局市        町村税課長    小川 徳洽君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○老人保健法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○連合審査会に関する件     ─────────────
  2. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨八日、森下泰君、藤井恒男君及び中野鉄造君が委員を辞任され、その補欠として松浦孝治君、勝木健司君及び高桑栄松君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  3. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  老人保健法等の一部を改正する法律案審査に資するため、来る十二月十二日、仙台市において現地の意見聴取を行うため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  老人保健法等の一部を改正する法律案審査のため、来る十二月十五日の委員会に、日本経営者団体連盟社会保障特別委員会委員長有吉新吾君、国民健康保険中央会理事長加地夏雄君、全国老人クラブ連合会常務理事見坊和雄君、全国町村会長茨城玉造町長坂本常蔵君、日本労働組合評議会生活社会保障局長前川哲夫君及び日本医師会常任理事吉田清彦君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 老人保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 トップバッターを承りましてこれからちょっとお伺いしたいと存じます。  厚生大臣、御就任早々老健法という大変大きな法案を抱えてここまで切り抜けてこられた御苦労をお察し申し上げます。大変大きな波でございましたが、これからもさざ波程度のことはあるかと存じます。  私現場医師として、昨日もお年寄り患者さんを二人ばかり入院さしてきましたし、また御老人のところへ往診も実はやってきたわけでございますが、そういう現場の声をひとつ反映していただいて、この老健法が円滑に活用されるようにしていただきたいと思うわけでございます。  特に、老人保健施設に関しましては、これは法案ができましても運営において円滑にこれが活用できないということになれば大変なことになると思うのです。そういう意味から、現場の声を今後も吸収して、よりよい老人医療を行うという趣旨について大臣はどういうお考えか、ちょっと御所見を承りたいと存じます。
  10. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 現場の声を十分聞くようにというお話でございます。私ども常にそのようにせねばならないというふうに考えておるところでございまして、特に老人保健施設の今後の運営等についてのお話でございますが、今回の老人保健法等改正一つの大きな部分は老人保健施設を創設するということでございます。  これは、医療サービス生活サービスを兼ね備えた新しい施設として、今後増大する要介護老人、また寝たきり老人方々に大きな役に立つ施設として展開をいたしてまいろうというものでございます。それだけに、今後のお年寄り施設の大きな柱をなしていくわけでございますから、御期待にこたえられるように適正に運営されるものにしていかなければならないと考えております。  そのためには、この法律が成立をさせていただきましたならば、まずモデル事業展開をいたし、それによっていろいろ分析をし、検討をいたしてまいりますとともに、老人保健審議会等におきまして関係方々のいろいろな御審議を経て細目について決定し、そして運営をいたしてまいるように心がけてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  11. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 大変御丁寧な御答弁ありがとうございました。  それでは、私、まず老人保健施設に関する現場からの声を申し上げたいと思います。  まず第一番目には、老人保健施設性格でございます。それと、次に老人保健施設施設管理者、それから施設のいわゆる責任者の問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。  ここに十一月二十日の衆議院社会労働委員会の御答弁がございます。これは黒木老人保健部長答弁でございますが、その中にこういうことがあります。これは何も言質をとってどうこうしようというわけじゃございません。ただ、これははっきりしておかないと大変な誤解を招くし、会議録に載りますので、その辺をちょっと私お伺いしたいと思うんです。  そこで、「病院治療、この施設治療が終わった」——「この施設」というのは老人保健施設でございますが、「治療が終わった人の社会復帰までの間の療養、それから特養家庭がわりの、介護中心サービスだ」、こう言っておるわけですね。ところが、この「療養」という言葉でございますが、これは療養所というのがございまして、結核療養所にいたしましても治療をするところでございます。でございますので、私はやはり、ただいま厚生大臣が言ったように、医療サービスも行うところである、医療を行うということは軽い治療も行うということでございますので、これはやはりここで明確にしておかないといけないということが第一点でございます。  それから、第二点の施設管理者の問題でございますけれども、今度の改正法案の第四十六条の七では、「老人保健施設開設者は、」「当該老人保健施設に係る施設療養に関する業務医師管理させ、又は自ら管理しなければならない」ということが規定されておるわけでございます。すなわちその管理者というものは、医療に対する管理者医療そのもの医療を行う場所並びに設備管理をするということでございまして、そうしますとこの老人保健施設の全部がこれに含まれるわけですね。  そしてまた、先ほど私が言いました衆議院の十一月二十日の社労黒木保健部長答弁の中でこういうことを言っております。ここへ入所するには、「お医者さん、そこの管理医師患者さん側の契約によって入所が決まるわけでございます」、そういうことを言っております。ということは、管理する医師と入所する側の老人なり家族なりとの契約でやる。そうしますと、管理責任者医師でない場合は、これは契約するということになりますと大変難しい問題が起きます。入所する人の状況を把握するということはやはり専門家医師でなきゃできないわけでございまして、ここに大変な問題が私あると思うので、その二点についてどういうお考えか御答弁願いたいと思います。
  12. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設性格につきまして私の答弁に関してお尋ねでございますけれども老人保健施設性格は既に答弁をいたしておりますように、入院治療を終えた方が主として家庭へ復帰するまでの間そこで施設療養していただくということでございまして、当然そこの中では先生指摘のような医療が含まれているわけでございますが、正確には入院治療という意味での治療ではなくて、医療ケアという程度言葉として療養という言葉を使わしていただいたわけでございます。なお、法律上はそういう老人保健施設で行われます医療につきましては施設療養と定義をいたしておりまして、そういう意味で私の答弁も御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それから、次に施設長の問題でございますけれども老人保健施設におきましては、入退所に係る医学的判断を含めまして、医療に関することは医師管理者として責任を持ってその任に当たってもらうことに法律上いたしております。医師以外の者が施設管理者となる場合にあっては、医療について医師判断にゆだねるという旨の基準運営規則上定めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、施設全体の管理者につきましては、多くの場合は医師が当たることになると考えておりますけれども老人保健施設は御説明いたしておりますように、医療生活サービス生活上のお世話、両方のサービスの提供を目的とする施設でございまして、そういう意味では医師以外の者が管理する場合も施設の態様によってはあり得るということで、法律では施設長医師に限定することにはいたしていないわけでございます。
  13. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 時間がございませんので、まだまだ突っ込みたいと思うんですが、ないことが幸いしていると申しましょうか、そういうふうに御理解しておいてください。私どもの主張はあくまでもその辺はお考えいただきたい。より円滑に動くということではやはり医師でなければ私はなかなかうまくいかないんではないかと思うわけでございます。  それでは次は、老人保健施設医療法との関係でございます。  老人保健施設の創設によりまして、初めて医療法以外の場所診療行為なり医療が行われるという道を開いた、こういうことでございますけれども、これはわが国におきましては医療基本法医療法でございます。このようなあり方は、医療の体系に混乱を生ぜしめるんではないかということで大変我々は危惧しておるわけでございます。この点につきまして、改正案については必ずしも明確にされておりません。医療法の中の適当な条文だけを引っ張り出して、そして老人保健法の中へくっつけたということでございまして、老人保健法の中でこの医療施設を固定化しようという考えのようでございますが、私はこれは早急に医療法改正を行って、この老人保健施設中間施設として正しく医療法の中で位置づけてほしいということを考え、また要望するわけでございますが、政府はどういうふうにこれをお考えですか、お答えいただきたいと思います。
  14. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 先ほど来何度かお話が出ておりますように、老人保健施設医療サービスも行いますが、同時に生活サービスも行う、いわゆる中間施設であるということで今回老人保健法に規定するということでお願いを申し上げておるわけでございます。その際に適正な医療を確保するために、老人保健法におきまして、医療法病院診療所に対して行っております規制に準じた規制を行うということにいたしておるところでございます。  なお、医療法でございますけれども、私ども医療法の基本的な性格を含めまして、また昨年お願いをいたしました医療法改正で取り上げなかった種々の課題につきまして、数年後を目途に抜本的見直しをしたいと考えておるわけでございます。その際、今先生お話ございましたように、老人保健施設につきましても難病患者あるいは身体障害者等々のための中間施設、あるいは場合によりますればホスピス等とともに中間施設の一類型といたしまして、医療法におきます位置づけをあわせて検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  15. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ただいま健康政策局長さんからのお話でございますけれども、数年後にほかのものとまとめてやりたいというお考えがあるように伺ったんですが、しかしこれは現在どんどんできてしまうということになると、これの規制勧告ということもございますから、できるだけ早くこれを切り離して単独ででも早くやっていただきたいということをお願い申し上げます。  それから、これは関連でございますけれども、今話が出ました、つくるときは別に勧告はしない、しかしでき上がったものについては病床数としてこれをカウントしていくんだと。これを病院のベッドの半分、〇・五でやるというお話もございます。これはやはりでき上がったときをカウントして、つくるときは手放しだということは、まことに私はおかしいと思います。それは適正配置の面でも言えますし、また補助金融資等を行うわけでございます。それからまた、今度の附帯決議にございましたように、年金福祉事業団によりますいわゆる厚年、国年積立金を活用しまして老人保健施設関係施設用地獲得のための土地取得事業というようなこともやるわけでございますので、これはお金を貸してしまった、でき上がったものはとんでもないものができてしまったということになると大変なことになると思うんですね。  ですから、これはやはりそこで行政指導をしっかりやって、そして医療法の中へ取り込むまではとにかく暫定措置としてでもこれの指導をぴしっとしないと、同じところに老人保健施設が五つも六つもできた、いわゆる適正配置が全くなされないというようなことにもなりかねないということでございますので、この辺につきましてはひとつしっかりした措置を講じていただくようお願いしたいと思いますが、これについてはいかがでございますか。
  16. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設適正配置についてのお尋ねでございますが、御指摘のとおりでございまして、全国的に適正な配置を心がけていきたいと思っておるわけでございます。  地域地域の実情に応じまして適正配置が図られるよう、補助金とか融資等に際しましてその運用を通じまして十分配慮していきたいというふうに考えております。
  17. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ぜひ、そういうふうに行政指導なり何かでしっかりこれはやっていただきたいと思います。  それから、老人保健施設は適切に配置される必要が今のお話のようにあるわけでございますが、これは地価の高いいわゆる東京都だとか、全く山の中とかいうところでは大変いろいろな問題もあるし、また住民の非常に近いところにこれはないと、お年寄りというのはやはりコミュニケーションがないところで隔離するということは、私は大きな精神的なマイナスになると思うわけでございます。  そういう意味から、施設規模でございますけれども、現在あるいわゆる中小病院なり診療所等を活用して、土地の高いところではそういうことをやって活用していかなかったら、なかなか投下資本というのは莫大なものになってできにくいということもあります。そういう規模についてはどのようにお考えかちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  18. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 都市にどういうふうに老人保健施設を設置、普及していくかというのは、大変重要な私ども行政課題だと認識いたしておるわけでございます。そのために小規模老人保健施設をという御提案だというふうに伺っているわけでございますが、この小規模老人保健施設につきましては、夜間の体制をどうするかといったような問題、そのために必要なスタッフをどう確保するかといったような難しい問題があるわけでございますけれども、そういう問題にも留意しながら小規模施設についても今後検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  19. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。  それから、今度の老健法改正案では、この老人保健施設において、いわゆる都道府県知事施設開設者に対しまして改善命令だとか業務停止、それから管理者変更命令、または開設許可取り消しなど、こういうことができるわけでございます。これは例えば、私ども老人保健施設の不正不当などということを決して擁護するような考えは毛頭ございませんけれども、こういうことをやはり行うということにつきましては、基本的権利を守るという立場から、都道府県医療審議会というものがあるわけでございますから、そういうところの一応意見を聞いて、これは処分なり、知事の権限でやるということについては私はいいと思うんですけれども、これを知事単独のいわゆる行政だけの考え方でやられますと、いろいろまた問題が起きるんではないかと思うわけでございます。これにつきましてはどういうようなお考えでございましょうか。
  20. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設許可取り消し等行政処分当たりまして、関係審議会意見を聞くかどうかというのは大変重要な政策判断であろうかと思いますけれども、私どもとしては現行医療法上、病院について許可取り消しをする場合に審議会等意見を聞くことになっていないという、そういうことのバランス、それからまた今回提案いたしています法律では、取り消し当たりまして当事者に弁明の機会を供与する等の手続を踏むというようなことの規定を整備しておりますので、審議会意見を聞くという形での私ども提案にはなっていないということで御理解をいただきたいと思います。
  21. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 それでは次に移りますが、老人保健施設におきますいわゆる施設療養費のことでございます。  医療サービスにつきましては、やはり一般の社会保険医療というものを活用してやるんだというお話でございます。そうしますと、社会保険医療というものとの整合性を十分考慮してやってもらわなきゃならないと思うわけでございます。  これは定額ということに一応今この法案ではなっておりますけれども、ここで問題がございますのは、いわゆる特養というのがございますね。ところが東京都の特養は、一人当たり二十九万三千円でございます。これは七万円を都が上乗せしまして、個人負担はそのうちの一万九千円ということでございますが、二十九万三千円。そして、老人病院というのは、これは御承知のように、社会保険診療報酬からその医療費を払っておるわけでございますが、これも平均は大体三十万円内外と、そのほか付き添いをつけますと一日大体全国平均が、これは看護婦でなく家政婦でも今一万円取ります。そうすると約三十万。大体六十万ぐらいかけてやっている。そしてこちらの東京都の方は二十九万三千円。  今度できます老人保健施設は、二十万円を補助しよう、それで五万円ぐらいは自分で持ちなさい、トータル二十五万ですね。そして入れる人はどういう人を入れるかというと、老人病院特養との中間の人を入れるんだということになります。それから人数につきましても、老人保健施設医師が常勤で一人、看護婦が七人から十人、それから介護職員が十五人から十八人、こうなっております。そうしますと、これは重介護を要する老人を入れますと、この人数でこの費用では絶対にこれはできないんですね。絵に描いたもちよりもっとひどいものになるんじゃないかと私は心配しているわけです。と申しますのは、非常に粗雑なものになってしまう。できないから粗雑になってしまう。  だから、やはり私はこれは出来高払い方式で、寝たきりの人を入れた場合には三十万ぐらいかかってもしようがないんだというふうに、しかし軽い人は十万円ぐらいであってもいいということで、施設に対して丸めでやるよりはむしろその人一人一人の状況に応じて、実態に即した方法をとらないと、私は運用できないと思うんですね。  私はそのことを申し上げると同時に、もう一つ設備の問題でございますが、これは老人病院のいわゆる一人当たりの平米、八・六平米というと一番大きくとらしているわけですけれども、今度の施設の場合、ひとつ少ない費用でやれと、そこへ押し込めるとなりますと、そこに百人寝たきりの人が入ったのと、元気な人を百人入れるのとでは全然変わってくるわけです。そうしますと、でき上がったものは、本当に入りたい重介護者が入れなくて軽い人たちが入ってきちゃう。仮に入ったとしても、中でそれが運営できないから大変なことになってしまうということでございますので、その辺はちょっと御一考をされないと、うまくいかないんじゃないかという、これは危惧でございまして、私決してこれがどうこうという、これをぶち壊すために言っているんじゃなくて建設的な意見を申し上げているんですから、その辺をひとつ御考慮願いたいということでございます。  これらについてちょっとお答えをしていただきたいと思うんです。
  22. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 東京都の措置の例を引用されながらのお尋ねでございますが、全国平均で申し上げますと、特別養護老人ホーム措置費は約十九万五千円でございます。それから特例許可老人病院の六カ月以上の長期入院患者の一月当たり平均医療費が約三十万円である、こういうことから、今回老人保健施設性格的には中間施設であるということで、その費用につきましては施設療養費が約二十万円程度、それに五万円程度生活費負担をしていただいて、合計二十五万円の中で一般的には適正なレベルのサービスが確保できるというふうに考えております。  なお、この定額につきましては、一律定例ではなくて、いろんな加算の道があるんではないかということで、これは今後関係審議会等において御検討をいただく事項だというふうに考えております。  その他この老人保健施設におきます医療なり生活サービスの質の問題につきましては、人員配置基準あるいは設備基準そのほか運営基準におきましていろんな細則を定めさしていただきまして、質の確保にも十分配慮するように運営していきたいというふうに考えております。
  23. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 とにかく実態に即してひとつやっていただきたいと思うわけでございます。  それで緊急時の病変でございますが、入所している方が緊急時にいわゆる気管切開とか骨折の整復手術ということもあり得るわけでございます。こういうことにつきましては、やはりこれは従来の出来高払い方式ということでやっていただきたいと思うわけでございます。  言いたいことはいっぱいございますが、時間がございませんので飛ばしていきたいと思いますが、それから先ほども話しましたいわゆる都心と地方との格差でございます。そういう地域格差ということがございますので、生活費なりいろんな面で変わってくると思いますが、そういうことにつきましては政府はどういうふうにお考えでございましょうか。
  24. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設におきます緊急時の医療のあり方でございますけれども、私どもとしては原則的には協力病院からの往診とかあるいは協力病院への入院で対応していただくことにいたしたいと思っておりますけれども、緊急の措置として施設のお医者様がみずから対応していただくことも必要であり、その場合には個別の定額加算といったもので評価する方向で今後検討いたしたいというふうに考えております。  さらに、地域差の問題でございますけれども施設療養費は個人に対する給付でございますので、地域差といった考え方というのはなじむかどうかという難しい問題もあるわけでございますけれども、同一の額では場合によっては地域によって経営面で格差が生じてくるということも考えられますので、療養費の額を設定するに際しまして、これも関係審議会で十分御検討を願う事項だというふうに考えております。
  25. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 緊急時におけるやつは、これは出来高払いでやっていただかないと非常に困るわけでございまして、定額という基準というものはなかなかこれは設けにくい。いろいろ老人というものは急変をするということを頭に置いていただきたいと思います。  それから、この施設療養費の中で、食費その他厚生省令で定める費用を除く施設療養費は、これはまさに医療費であるという観点から、この医療費の額の算定に当たっては、ぜひ中央社会保険医療協議会へ諮問して、その意見を聞いてから大臣が決定をしていただきたい。私はそれが原則だと思うんでございますが、これに関していかがでしょうか。
  26. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設につきましては医療と福祉サービスを一体として提供する施設だと申し上げておりますが、その施設の骨格をなします施設とか人員等についてどうするかということにつきまして、御指摘の中央社会保険医療協議会ではそういった施設基準、人員基準というものを御審議願うのはなじまないんではないかというふうに考えております。  そこでまた、施設療養費の額につきましても、そういう施設、人員等の基準と密接に関連する事項であるということから、私ども老人保健審議会で一体的に審議することが適当であるということで今回の改正法では御提案を申し上げるところでございます。
  27. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 医療費に関しましては、やはり中医協というのが筋だと私は思うわけでございます。  続いて、今老人保健審議会の話が出ましたのですが、この第七条におきまして老人保健審議会の役割が極度に拡大されておるわけでございます。従来按分率などを審議する場として設けられておりましたものが、「審議会は、厚生大臣の諮問に応じ、老人保健に関する重要事項」云々何々「を調査審議する」というふうに改めたわけでございます。  私は、このメンバーを見ますると、これは医療を担当している者が非常に少ないわけでございます。このメンバーの構成に関しまして、やはり私は一考を要するのではないかと思うわけでございます。委員構成が全く不適当と私は考えるわけでございまして、これはぜひ改めていただきたいと思うのでございますが、大臣いかがでございましょうか。
  28. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老人保健施設が創設されますと、この老人保健施設療養費の額とか、また施設設備運営等基準等について老人保健審議会で御審議をいただくわけでありますが、そういったことを専門的に御審議をいただく老人保健施設のための部会を設けて、そこに医療関係者の皆様方にもお入りをいただいて、そして十分な御意見映させていただきたい、このように考えておるところでございます。
  29. 宮崎秀樹

    宮崎秀樹君 ぜひどうぞ、そのようにして立派なものをつくっていただきたいと思うわけでございます。  それから、時間がございませんので、これはもう私言いっ放しになるかと思いますが、入院時の一部負担でございます。  これにつきましても今度は三百円を五百円にして、そして今まで二カ月だったものをエンドレスにしてしまうということでございますが、これは昭和五十九年の九月に調査いたしました七十歳以上の患者平均在院日数というのがございます。これは中医協に出ている資料でございますけれども病院は九十三・六日でございます。それから診療所は百一・一日ということになっております。これは平均でございますので、短い人、長い人があるわけでございます。しかしこれから見ますると、やはり四カ月から長くても六カ月というところで私は一応期限を設けていただければほとんどこれはカバーできるのではないかというふうに思うわけでございます。  やはりお年寄りは長く入院いたしますと精神的な負担、それからもろもろの費用がかさみまして、社会福祉医療ということを考えますときに、社会保障という概念からも、ある程度そこら辺で期限を設けていただいた方が、日本の高齢化社会に対する考え方、そして今後の長寿社会ということをどうしようかという中で、医療費抑制策ということだけでこれを考えていくよりも、むしろ国民全体でやはり老後を安心して過ごせるというようなものを持たした方が私はいいような気がいたします。これはいろいろフィロソフィーの問題がございますので、政府としてもなかなか難しいかと存じますけれども、私、現場の者としてこれはぜひお願いしたいと思うわけでございます。  時間が参りましたので、ここで終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。
  30. 関口恵造

    ○関口恵造君 今国会の最重要法案であります老人保健法改正案も、衆議院の方で修正可決されましたので、この機会に、歯科医師という立場からこの法案につきましての幾つかの質問をしておきたいと思います。  質問に入ります前に、老人歯科医療についての基本的な考え方を申し述べておきたいと思いますが、老人が健全で、かつ楽しみに満ちた日常生活を送るためには、食べられること、味わえること、話せること等の機能が維持されることが最も大切なことでありまして、もしこれらの機能が不幸にして失われることがありますれば、その後の老人の生きがいをも失うことになりかねません。したがって、老人の保健医療の中でこれらの機能回復と保持は極めて重要なことであり、ここに老人歯科医療の担う大きな役割があると思うのでございます。  そして、お年寄りが歯の機能回復と保持を図っていくためには、何よりも齲歯や歯周病等の早期発見、早期治療が必要でありまして、老人保健法のねらいは、歯科医療の立場に立つならばお年寄りに対しまして早期発見、早期治療の機会を提供することにあるといっても過言ではないと思うわけでございます。このような考え方に立ちまして幾つかの質問をいたしたいと思います。  まず、昭和五十七年の老人保健法制定の際、老人医療のうち、歯科における咬合障害を伴う欠損補綴に対しては、速やかに改善を図るとともに歯周病等の健診に努めることという附帯決議がなされておるわけでございますが、この決議に対しまして、その後厚生省としてどのような対応をしてまいられたか、お聞きしたいと思います。
  31. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 御指摘のように、老人生活をされる場合に歯の問題というのは非常に大きいわけでございます。当時の附帯決議におかれましてもそのような御趣旨が盛られたというふうに私ども理解しておりますが、この御趣旨を踏まえまして私ども老人の歯科診療報酬につきまして五十八年に歯科口腔疾患指導料あるいは有床義歯指導料等を新設いたしまして、その実現を図ったわけでございますが、さらにその後、本年の四月の診療報酬改定に際しまして、このような歯科口腔疾患指導料でございますとか、有床義歯の指導料等につきましての引き上げを図るなどいたしまして、改善に努めているところでございます。  また、老人の歯科保健につきましては、ただいまも先生の御指摘のように、非常に重要だという観点から、私ども従来、歯周疾患等につきましての歯科健診等の調査を行う地方公共団体に補助を行ってまいりましたが、このような調査結果を踏まえまして、保健事業の第二次五カ年計画におきまして歯周疾患予防を重点といたします健康教育事業、あるいは健康相談事業をさらに充実して実施してまいりたい、このように考えております。
  32. 関口恵造

    ○関口恵造君 ただいまお答えにございましたとおり、御案内のような点につきまして、殊に医療老人保健に対します歯周病等を本体事業に組み入れるということについては大いに敬意を表するものでございますが、また医療費改定等の問題等につきましては、四百円の一部手直しというような、状態としてまだ不十分ではないかというふうな考え方を持つものでございます。  さて次に、老人医療におきます歯科の実態について触れたいと思いますが、昭和五十九年の老人医療費状況、厚生省の老人保健部調べで見ましても、三兆四千六百四十五億のうち歯科はわずかに八百九十五億で、そのシェアは二・五八%にすぎません。一人当たりの診療費を見ましても、年間入院二十五万二千百四十七円、入院外十七万九千二百八十二円と比べまして歯科は一万一千四百三十五円と格段の差がありまして、一カ月当たりに直すと九百五十三円にすぎないというような統計もあるわけでございます。さらに昭和五十九年の中医協実態調査によりますと、歯科診療所の収支は昭和五十六年に比しまして一四・五%の減となっておるわけでございます。  ここで老人歯科医療状況、特殊性から見まして老人歯科の診療報酬の改善を図る必要があると思うわけでございますが、これについての厚生省のお考えを伺いたいと思います。
  33. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 歯科の医療費についての状況につきましては御指摘のとおりでございますが、医科の外来と比べまして一人当たりないしは一件当たりでそう大差はないものと考えております。  歯科の診療報酬の改善の問題でございますが、私どもは、老人方々につきましては先生指摘のように一般に歯の悪い方が多いわけでございますし、したがって有床義歯を用いる方も多いわけでございまして、こういう方々に先ほどの三原則のように、食べられて味わえて話せるというのは老人にとっての生きがいにつながる大事な問題だと思っております。したがって、その診療報酬は年々改善をいたしておるわけでございます。老人の口腔の状態等についての療養上の指導、それから有床義歯装着時の指導の充実を図る等、老人歯科診療報酬を特別に定めておりまして、老人の特性にふさわしい診療が行われるように努めておるところでございます。  先ほど局長からも申し上げましたように、本年四月の改定におきましても、これら指導料の引き上げのほか、寝たきり老人に対する有床義歯指導料の加算の新設、そういった改善を図っておりますし、今後とも中医協の御審議を踏まえまして適切な老人歯科診療報酬の設定に努めてまいりたいというふうに考えております。
  34. 関口恵造

    ○関口恵造君 次に、老人保健施設関係の質問に移りたいと思いますが、まず老人保健審議会には歯科代表が含まれておらず、従前より歯科代表を加えることを要望していたところでございます。しかし、本改正法案では、老人保健審議会の権限がいろいろと拡大されたにもかかわりませず、委員構成は全く改められておらないわけでございまして、同審議会の権限を拡大するのであればそれにふさわしい構成に改めるべきでありまして、歯科医療についての意見を反映できるよう同審議会に歯科代表委員を加えるべきであると思うわけでございますが、この点につきましていろいろの点につきまして大臣から御答弁をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  35. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほど宮崎委員にお答えをいたしましたように、老人保健施設について専門的に御審議をいただく部会を設置し、その際には医療関係者の皆様方はお入りをいただきたい、こう申し上げたわけでありますが、その医療関係者という中には当然歯科医療関係者を含ましていただいております。
  36. 関口恵造

    ○関口恵造君 また、高齢化社会における老人歯科対策は欠くことのできない福祉対策でございます。老人の歯科医に対するニーズに対応できるような老人保健施設に、歯科診療施設の設置あるいは歯科医師配置などきめ細かな配慮がなされるべきであろうと思うわけでございますが、これについての厚生省のお考えを伺いたいと思います。
  37. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設に歯科の診療設備なりあるいは歯科医を配置するかどうかというお尋ねでございます。  現在、特別養護老人ホームあるいは老人病院におきましても、歯科の診療設備あるいは歯科医師配置の義務づけは行われていないわけでございます。そういう点から考えまして、バランス上、老人保健施設にそういったものの義務づけというものは難しいんではなかろうかというふうに考えておるわけでございますけれども先生提案のように、老人にとっては歯科医療の確保というのは非常に重要でございますので、老人保健施設の入所者の歯科の医療をどう確保するかということにつきましては、例えば提携の歯科医院等をつくるとか、そういったところの連携をよくして歯科医療を確保するとか、いろんな方途があるんではないかというふうに考えておりまして、これも大臣からお答えいたしましたように、専門部会の中で歯科の代表者の方の御意見も十分聞いてまいりたいというふうに考えております。
  38. 関口恵造

    ○関口恵造君 いろいろ伺っているわけでございますが、こういうふうな点についても老人の皆様のお手助けになることができるようなことを我々も望んでいるわけでございまして、それに対して十分こたえるようないろいろな対応策をおとりいただきたい、かように考えるものでございます。  最後に、外来の一部負担金についてでございますが、衆議院の修正によりまして外来時一部負担金は八百円ということになっております。このように千円から八百円になったということについては大いに賛意を表するものでございます。  さて、お年寄りが例えば入れ歯に当たりがあって来院されるというような場合におきまして、再診月においては再診料と口腔疾患指導料の計七十七点、すなわち七百七十円となることがあるわけでございます。これは現場でいつも経験していることでございます。この場合、一部負担金として七百七十円を徴収することになりますが、その患者さんがその月にもう来ないということになりますと、その月の医療費の一〇〇%をその老人負担することになりまして、他の制度の負担率、被用者保険では本人一割、家族三割、国保ではオール三割というふうになっているわけでございますが、それに比べまして非常なアンバランスを生ずることになります。  このようなケースは、医科外来におきましても同様のケースが多々あるわけでございます。さらに歯科におきまして、月に七百七十円だけという場合はともかくといたしまして、相対的に月に八千円以下というような低額の診療のウエートが高いと想定されるわけでございまして、このような場合、低額の医療費だからといって一割、五割、十割といった高率の負担老人負担させることは問題があると思うわけでございます。厚生省でもおおむね五%程度が適当であるというようなことを言っておるというところでもあります。  そこで、このような低額の診療につきましては、歯科のみならず、医科歯科含めまして別途低い一部負担金を定めるというような取り扱いが必要だと思うのであります。この辺の検討をぜひともお願いしたいと思う次第であります。  老人をいたわるという精神は老人保健法の趣旨でもありますので、老人の立場を尊重するためにも何とかこれを実現していただきたいと思うわけでございます。この点を強く要望いたしまして、ちょうど時間となりましたので私の質問を終わります。
  39. 石井道子

    ○石井道子君 現在の財政再建、そして高齢化社会を迎えまして、二十一世紀を展望した長期的安定的な老人保健制度を確立するために、大臣を初めといたしまして皆様方が大変御苦労なさっておりますことに心から敬意を表したいと思うわけでございます。  きょうは、私の質問に関しましては、老人保健法の第四十六条の八の第一項と、それから同じく第二項に関する問題でございまして、この施設に関する事項と員数に関する問題、このことについてお伺いをしたいと思うわけでございます。  この施設介護を主体とした施設であるということでございますが、一方では医療サービスも行われるということでございまして、そこでは投薬、注射、検査、処置などが行われると、そんなふうに示されているわけでございまして、そこで行われる医療サービスの中の医薬品に関する部分について、その管理とそれから調剤に関して、これは当然薬剤師が行うべきである、そんなふうに思うわけでございますけれども、今回の法律の中には明記をされていないのでございます。その点についてのお考え方を伺いたいのでございます。  老人医療というものについては非常に慢性疾患が多うございます。そして、いろんな医薬品が使用されまして、長期服用によります副作用とか、相互作用というものが問題になりますし、またその安全性を守らなければなりませんので、薬を正しく使っていただくための服薬指導とか、あるいは薬歴管理指導ども大変必要になってくるケースではないかと思うわけでございます。それはやはり薬の専門家としての教育を受けた薬剤師が当然行うべきではないかと思うわけでございます。また、薬には毒薬とか劇薬とか、麻薬もありますし、医学の進歩、薬学の進歩によりまして新しい医薬品もどんどん出てまいりますし、数多くの医薬品の品質を確保して、そしてその有効性、安全性を保つためには、適正な使用に十分注意をしなければならないと思うわけでございます。  医薬品はほかの品物と異なりまして特殊なものでありますから、患者が自由に選択ができない品物でございます。それは、ほかにはそういうものがありませんから、唯一の特殊性を持ったものであると認識をしているわけでございますけれども、この有効性、安全性を確保するためには、やはりその医薬品に関する情報というものを的確に患者さんに適用しなければなりません。それを薬剤師が当然行うべきではないかと思うわけでございます。  最近アメリカで行われておりますことの中に、ゲット・ジ・アンサーという問題がございますのをご存じでございましょうか。このことはやはり三年前からアメリカで行われているわけでございますけれども、現代の医療が問題を多く抱えている中で、よりよい医療を実現するために処方された医薬品について医師とか薬剤師に積極的に患者が質問をすべきであるという、そういう運動でございます。アメリカの調査でございますけれども、これは処方された薬が間違った方法で使われているというものが約三〇から五〇%もあるということでありますし、また副作用についても説明を受けていないとするものが七〇%もあるとか、あるいは内容とか使用法について無関心で質問もしたこともないとかという方が九五%もあるということで、これは正しく薬が使われていないというような一つの証左ではないかと思うわけでございます。  日本の実態がどのようなものであるかということは、御調査がしてあればお聞かせをいただきたいと思うわけでございますけれども、このような問題は、やはりこれは医療従事者にとっても、また患者にとっても大変不幸なことではないか、そういうふうに思うわけでございます。このような問題を解決するためにも十分に医薬品の使用についての配慮をしていただきたい、そのことをお願いしたいと思うわけでございます。  医療サービスの主体はもちろん医師でございますし、その重要な役割を果たされているわけでございますけれども、やはり高度化、専門化し、また複雑化している医療というものが真に国民のためにその効果を上げるためには、それぞれの分野の専門家がその専門的な学問とか技術を生かして、そして医療従事者がチームワークをとって、そしてその専門性を発揮することが、やはりその医療の質を高めるというようなことに役立つのではないかと、そんなふうに思うわけでございますけれども、このようなことについての大臣のお考えをお聞かせ願いたいのでございます。
  40. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 総論的に申しますと、老人保健施設におきましても医薬品の適正な管理、調剤の確保ということは必要なことであろうと思っております。今後、老人保健審議会におきまして施設だとか、また人員の配置とかいろいろお決めをいただく際に、こういった問題も勘案して御検討いただけるものというふうに考えておるところでございます。
  41. 石井道子

    ○石井道子君 医療における医薬品の取り扱いとか、薬剤師の役割とかというふうなことにつきましては、さきの医療法改正におきまして非常に多くの改正が行われたわけでございますし、また本年四月から行われております診療報酬改定におきましては、調剤費については入院において調剤技術基本料が一部アップをされたことでありますとか、あるいは薬歴管理料が調剤薬局について一応設定をされたというような新しい展開を見ております。それだけ薬剤師の職能というものの評価が定められたというふうにも思いますけれども、それだけ責任があるわけでございます。  医療費の抑制、老人医療費をやはり抑制する余り受診率が低下して、老人保健施設においてその辺をかなりカットするというような傾向が見られるわけでございますけれども、これでは入所老人医療サービスの質と量の低下ということでございますし、入所者に対しまして、あるいは老後の問題について非常に不安を引き起こすことになるのではないか、そんなふうに思うわけでございまして、これからも長寿社会対策における医療はできるだけきめ細かな配慮をお願いをしたいと思うわけでございます。  この老人保健施設についての薬剤師の配置の問題、調剤する場所の問題について具体的なこともお聞かせをしていただきたいのでございますけれども老人保健部長いかがでございましょうか。
  42. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) この老人保健施設サービスにつきましては、何度も御説明いたしておりますように看護、介護、リハビリテーション等が主要なサービスでございます。しかし、御指摘のように、疾病管理等のための投薬も行われることは事実でございまして、その際、御指摘のように副作用とか、有効性、安全性あるいは使用についての配慮といったような形での専門的な判断が必要なことは私も理解できるわけでございます。  しかしながら、この老人保健施設に薬剤師の配置をどう考えるかという場合に、やはり医療法における病院診療所での取り扱いのバランスも考える必要があるわけでございます。そういたしますと、一般的には常勤必置ということはやはりバランス上いろいろ問題があるのではないかと考えておりまして、したがいまして、設置形態とか規模に応じた適正なものにしていく必要があるのではないかというふうに考えております。  なお、調剤所につきましては、いずれにしても薬剤師さんが常勤あるいは非常勤の形で勤務される場合には、薬剤師さんの勤務される場合の調剤所というのはどうしても必要になってくるわけでございます。しかし、薬剤師を常勤で配置するかどうかというのは、先ほど申しましたように、いろいろとバランス的に考える必要があるということでございます。
  43. 石井道子

    ○石井道子君 この施設規模とかいろんな問題については、いろいろと老人保健審議会審議をするというようなお話も伺っているわけでございますけれども、今後やはり薬剤師の職能を生かして少しでも長寿社会に貢献したいという、そういう薬剤師の心、希望というものをぜひ御理解をいただいて、格段の御配慮を賜りたいと思うわけでございます。  それから次に、老人保健審議会の問題がございまして、先ほども質問が出ておりましたが、今度その審議会の権限が大分拡大をされるということでございまして、専門部会をつくっていろいろと行うということでございます。その中に、医療従事者として薬剤師を委員の中に加えていただけるものでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。
  44. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほど来お答えをいたしてまいりました医療関係者の皆様方にお入りをいただきたい、こう申し上げておりますが、その中には薬剤師を代表するというか、薬剤師関係の皆様方も当然入るものと御理解をいただいて結構でございます。
  45. 石井道子

    ○石井道子君 ありがとうございます。  それから、先ほど管理者とか施設長の問題が出ました。医師が行う場合が多いというようなこともありますけれども、そうでない場合もあるということでございますが、その施設長となり得る条件とか資格とか、そういうものはどのようなものでございましょうか。
  46. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) この施設につきましては、医療については当然ながら医師管理することにいたしておりますけれども施設長につきましてはそれぞれの施設の態様に応じて医師以外にも施設長になり得る適格者があられるのではないかということで、それはそれぞれ開設者なり施設にお任せするということが私ども考え方でございます。  具体的には医師以外にはどういう基準施設長をと、こういうことでございますが、まだ具体的には決めているわけではございません。特養に併設した場合には、特養施設長がこの施設長を兼ねられるというのはもとより適当ではないかと思っておりますけれども、いずれにしましても老人医療なり福祉に理解があって、経験があられて、立派に施設経営ができる方ということを私どもは念頭に置いているわけでございます。
  47. 石井道子

    ○石井道子君 それからこの老人保健施設は、まずことしモデルの施設をつくって検討するというようなことでございます。六十一年度は余すところ何カ月もございませんけれども、今年度十カ所を一応決めていらっしゃるということでございますが、その具体的なことにつきましておわかりになる範囲でお答えをいただきたいと思います。
  48. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今年度モデル実施を予定いたしておるわけでありますけれども、御指摘のようにモデル実施の期間が窮屈になっておりますけれども、本法が成立し次第モデル実施に入りたいということでございます。  具体的にどういうことを考えているかということでございますが、病院とか特養併設等設置タイプ別及び地域別等種々の条件別に試行的な実施をしてみたいということでございます。その結果、データを収集いたしまして、私どもの実施に当たります実施細則のいろんな数値等を決めます場合のデータに活用いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  49. 石井道子

    ○石井道子君 それで、この老人保健施設の整備計画が六十二年、六十三年とあるわけでございまして、六十二年には百カ所をつくるというようなことでございます。この施設をつくることによって老人医療に対する経済的な効果、そのようなものはどんなことになりますか、わかりましたらお願いをしたいと思います。
  50. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 昭和七十五年を目途に試算をいたしておりますけれども、その七十五年目途に老人保健施設を二十六万から三十万床程度整備をしていきたいというふうに私どもは整備目標を立てているわけでございます。その関係から、医療費にどういう影響が出るかということも試算をいたしておりますけれども、それによりますと、もちろんその計画どおり整備がされたとして、そしてまた在宅対策の強化ということ等の効果も相まちまして、いわゆる社会的入院の解消が図れるということから、老人医療費の伸び率が現状のまま推移するとした場合に比べまして約二ポイント程度低下するんではないかという試算数値を出しております。
  51. 石井道子

    ○石井道子君 ありがとうございました。  以上でちょうど時間になりましたので、質問を終わらしていただきます。
  52. 糸久八重子

    糸久八重子君 今回の老人保健制度の見直しは、臨調・行革路線の中、毎年度マイナスシーリング予算編成の中で社会保障にしわ寄せされた財源捻出策として考えられたものであると私ども理解しております。そしてそれを国民連帯、世代間の負担の公平に名をかりて、狭い範囲の、しかも誤った公平論を振りかざして国庫負担の削減を意図しているものとしか考えられないわけでございます。本委員会では十分に時間をかけて論議を重ね、将来に禍根を残すことのないようにしていかなければならないと思っております。  まず、本法案提出の経緯、理由をおざなりの提案理由ではなくて、大臣、本音のところをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  53. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 日本も長寿社会を迎えてきておるわけでありますが、これから本格的な長寿社会へ向かってまいるわけでございます。こういった中で、年々お年寄り医療費の増高というものは、これは避けて通れない問題であり、それだけの大きな医療費をどのように負担をいたしてまいるか。そして、この長寿社会におけるいわゆる基礎的な社会保障としての老人医療制度というものが皆様方に安心し、信頼していただいて、そして安定した制度として今後展開をしていけるように今その基礎固めをいたしてまいらなければならない、こういう考え方から今回の老人保健法等改正お願いいたしておるところでございます。
  54. 糸久八重子

    糸久八重子君 さらりとお伺いいたしますと大変きれいな言葉で飾られているわけですけれども、大変この中身には問題点がたくさんございます。逐一ただしていきたいと思うわけですが、最初は退職者医療制度の問題でございます。  退職者医療制度の六十一年度の加入見込み数はどのようになっておりますか。
  55. 下村健

    政府委員(下村健君) 六十一年度の退職者医療の対象者は予算上三百十九万人、それに特定健保組合で行う退職者医療の対象者六万人を加えまして三百二十五万人ということでございます。それに対する実績が、十月時点で三百十九万人ということで、おおむね目標に近いところで推移いたしております。当初、二百六十万人ということで大変国保財政にいろいろな影響を与えたわけでございますが、その後相当に改善されてきておる状況でございます。
  56. 糸久八重子

    糸久八重子君 政府の当初の見込みの延長線で考えるといたしましたら、その数はどの程度となっていると考えられますか。
  57. 下村健

    政府委員(下村健君) 四百二十方程度でございます。
  58. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生省は五十九年度のスタートの時点で四百六万二千人、そして六十年度はそれを前提に四百二十三万九千人の加入を見込んでいたわけですが、大きな見込み違いを生じたわけですね。つまり、退職者医療制度の創設に伴って国保への補助率を引き下げたことが市町村へ大きな財政影響を与えたわけです。五十九、六十両年度の財政影響については市町村が満足し得る額ではないけれども、一定額の財政的な手当てがなされました。しかし、六十一年度についても国保補助率をもとに戻さない限りは、その見込み違いによる財政影響は尾を引いている問題であります。その額は一体どの程度のものになると見込んでおりますか。
  59. 下村健

    政府委員(下村健君) 昭和六十一年度につきましては、各市町村では実態に見合った退職者数を基準にいたしまして予算編成を行っておりますので、五十九、六十の両年度と同様に、見込み数値と実績数値の差からの影響額というものは、ちょっと現在となっては算出できないのではないかと思っております。  ただし、六十年度の影響額をもとにいたしましてラフな推計ということになりますが、大ざっぱな推計をいたしますと、六十一年度の影響額は千五百億円程度というふうに考えております。
  60. 糸久八重子

    糸久八重子君 その額の補てん措置はどのように図っていく考えですか。
  61. 下村健

    政府委員(下村健君) 退職者医療の加入者数の差によります財政影響の補てん措置でございますが、五十九、六十年度の影響額二千八十億に対しまして、六十年度の補正予算におきまして千三百六十七億二千五百万円の特別交付金を措置いたしたわけでございます。それから、本年度におきましては、当初予算に二百三十億円を計上いたしておりましたけれども、先般の補正予算におきまして、さらに七百四十億円を追加計上いたしまして、計九百七十億円の措置がとられたわけでございます。したがって、退職者医療の影響額、六十年度が約千四百億、これは対して、ただいま申しました千三百六十七億、それから六十一年度が、老人保健の実施による効果も見込みまして、千五百億に対してただいまの約九百七十億、それと老人保健の一月約百四十億というものを考えますと、六十一年度の影響額についての措置はほぼ十分にとられているというふうに考えております。
  62. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいま説明がございましたけれども、つまり、国民保険の退職者医療制度の創設、それに伴う国庫負担率の引き下げ、それが大きな見込み違いを生じた。だから、被用者保険側から支援してもらおうと。今回の改正のねらいの一つはそこにあったのではないか。そのことが何か明確になってきたような気がいたしますけれども、いかがですか。
  63. 下村健

    政府委員(下村健君) 私どもとしては、ただいま申し上げましたように、五十九年度が退職者医療の影響が約六百億、六十年度が千四百億、六十一年度が約千五百億と、こんなふうに見込んでいるわけでございますが、六十年度、六十一年度につきましては、満額とはまいらないまでも、これに対する措置はとったと。したがって、国保の財政は、五十九年度分の影響がどの程度の影響を後に残しているかという問題は残っておりますので、退職者医療の影響があるという点については否定はいたしませんが、国保財政逼迫のより大きな要因としては、老人保健法施行後もなお加入率についての格差が拡大するというところにより大きな影響があるというふうに考えているわけでございます。
  64. 糸久八重子

    糸久八重子君 国民健康保険の国庫負担率を引き下げたけれども、おいおいは加入がなされているとは言いますけれども、やはりそれに見合う制度が、その見込みどおりに加入者がなかった。この財政の影響について他制度の被用者側の拠出方法を改めて、負担額を増加させて補てんさせるという理屈はどこにあるのでしょうね、どこから来ているのでしょうか。
  65. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の老人保健法改正に盛り込みました加入者按分率の引き上げでございますけれども、これは老健法創設後三年後に加入者按分率の見直しを行うという規定に沿いまして検討した結果でございます。  老健法の基本理念は、老人医療費を国民が公平に負担をするということを理念として掲げておりまして、その理念に沿って今回の見直しをした結果、国保については負担減になり、被用者保険については負担増が生ずるということでございまして、公平の措置の結果として各保険者に負担の増減が生ずる、こういうことでございます。
  66. 糸久八重子

    糸久八重子君 増税なき財政再建を標榜する政府が、国庫負担率は引き下げて、一方では国保の見込み違いから生ずる国保財政の影響額を被用者側に押しつけるという道理がどうしても理解できないわけです。これは実質的な増税と見ても間違いではありませんね。
  67. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の改正は、どの保険者も、どの制度におられても等しい老人数で老人保健の拠出金を出してもらおうということでございます。したがいまして、私どもは、その公平の措置の結果に伴う被用者保険側の負担増でございますから、それなりに合理性のある今回の改正であるということでございますので、先ほど御指摘のようないわれなき増税あるいは隠れた増税という批判は当たらないのではないかというふうに考えております。
  68. 糸久八重子

    糸久八重子君 その辺も大変問題が残されておるわけですけれども、私はきょうはトップの質問でございまして、一応総当たりということでございますから、この中身の問題につきましては次の質問者に譲りまして、次に、一部負担の問題についてお伺いをしたいと思います。  まず、健康保険法制定当時、一部負担新設に抵抗しまして、患者負担分を肩がわりして従来どおり無料化を維持した市町村が法施行後一年で七十七あったと聞いておりますけれども、現状はどうなっておりますか。
  69. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 制度発足時、御指摘のように七十七市町村でございましたけれども、現在六十市町村になっております。
  70. 糸久八重子

    糸久八重子君 数が少なくなってきているというのは、厚生省の行政指導強化の中で肩がわり中止に追い込まれている状況にあるのではないかと思うわけですけれども、憲法の保障する地方自治と老人の健康権、そこから見るとどう解釈されますか。
  71. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは、この問題についてはかねてから御答弁申し上げているところでございますけれども、その上乗せを強制的にやめろといったようなそういう制裁措置なり強制的な手段で干渉する、言ってみれば、お尋ねのように自治体の自治権を侵害するような形で指導をしているわけではございません。  この老健法におきまして、一部負担金につきましては、老人方々に健康に対する自覚を高めていただくとともに、適正な受診をお願いするという趣旨から導入されたものでございまして、老人医療費を国民みんなで公平に負担するという趣旨からも一部負担の肩がわり措置というものは適切でないと考えておるわけでございます。こういった観点から、これら老人医療に関します地方単独事業につきましては、地方公共団体に対しまして、先ほど申しましたように制裁措置をとることは考えておりませんけれども老人保健法の趣旨につきまして十分理解を求めて、国の施策との整合性を考慮して適正な対応をとるよう指導をしているところでございます。
  72. 糸久八重子

    糸久八重子君 十分負担し得る額ということも今おっしゃったわけですけれども、現行の外来一部負担毎月四百円というのはどのような算定根拠なのでしょうか。
  73. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 現行の外来一部負担四百円の根拠についてのお尋ねでございます。これは老健法創設時の考え方になるわけでございますけれども、その前はいわば無料化制度で無料だったわけでありますけれども老人医療費につきましていろんな形で問題が生じてまいりまして一部負担が導入をされたわけでございます。その際は、健康に対する自覚を促し適正な受診をお願いするという見地から導入されたわけでございますが、その際の金額につきましては、当時の健保本人の外来の一部負担が初診の際は八百円とされていたこと等いろいろ勘案いたしまして、政府案では一カ月五百円として提案を申し上げたわけでございますが、衆議院において四百円というふうに修正されたものと承知をいたしております。
  74. 糸久八重子

    糸久八重子君 健康に対する自覚を持っていただく額、それが三年で二倍、衆議院で修正をされまして二倍になったわけですけれども、その根拠はどこにありますか。
  75. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは、今回の一部負担の引き上げは主として世代間の公平という見地からお願いをいたしているわけでございます。現在の老人医療費は四兆円を超えておるわけでございますけれども老人の方が窓口で負担していただいております一部負担は一・六%ということに相なっておるわけでございます。そういう意味では、大部分が若い世代が負担をしておるという現状に照らしまして、やはり世代間の負担の公平という観点が極めて重要であると判断をいたしまして今回の引き上げをお願いいたしておるわけでございます。  今回の改正当たりましては、老人が払いやすいように定額制をとっておりますし、外来の月の初めに一回だけ支払うという現在の仕組みは堅持いたしておるわけでございます。今回の引き上げは、諸物価あるいは医療費の増高にスライドして引き上げるというよりもむしろ世代間の負担の公平という観点から、一部負担の水準につきまして健保本人が八百円の定額負担だったのが先般の健保法の改正で一割負担に改められたということから、やはり世代間の公平という見地から考えますとその半分程度は御負担を願うべきではなかろうかという判断で御提案を申し上げておるところでございます。
  76. 糸久八重子

    糸久八重子君 老人保健審議会中間意見でも、「必要な受診を抑制しないよう慎重に配慮しながら、老人にとって無理のない範囲内で定額負担の増について検討すべきである」、そう言っているわけですね。そして具体的な数字は明らかにしていないわけですけれども、その辺についていかがですか。
  77. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 審議会の御意見はそのとおりでございまして、必要な受診を抑制しない範囲での引き上げということでございます。  私どもは、今回の一部負担につきましては、先ほど申し上げましたように世代間の負担の公平の見地から主としてお願いをしているものでございますけれども、そういたしますと、原案では月一回外来千円ということで御提案を申し上げたわけでございますけれども、その月一回千円が、現時点におきます老人の所得の状況あるいは年金の水準等から見まして、月一回千円、修正後では八百円でございますけれども、この金額がお年寄りに無理な負担、したがって必要な受診まで抑制するということにはならないんではないかというふうに判断をいたしたわけでございます。  さらに、先ほど申し上げましたように定額制を定率に直せという意見等もあったわけでございますけれども定額制を堅持する、つまりお年寄りが幾ら窓口で取られるかわからないようなことにならないように、老人医療につきましては、その一部負担定額制を堅持し、かつ月一回最初に払えば後は何回でもかかりつけのお医者さんに行っていただけるような、月一回最初支払い制というものも維持しているわけでございますから、そういうことを総合的に勘案いたしますと、今回の引き上げが必要な受診の抑制に私どもはならないというふうに考えておる次第でございます。
  78. 糸久八重子

    糸久八重子君 部長の御答弁は何か同じことばかりの繰り返しのような気がするんですけれども、今最後に月一回の負担なのだからということを力を込めておっしゃったわけですが、病気というのはいつなるかわかりませんが、例えば月の後半に病気になって病院に行った、そこで払った、月がかわるとまた払わなければならないわけですよね。これは一カ月三十日単位で考えるわけじゃないわけですから、そういう意味では大変負担が重くなるのではないか、そう私たちは主張しているわけです。  それから、先ほども答弁の中にございましたけれども、健保本人が定率一割負担となってそのバランスがあるからということをおっしゃいましたね。私たちの反対にもかかわらず、それも退職者医療に保険料引き上げもせずに拠出をさせるために被用者保険本人の一割時己負担をまず導入した、それを理由に老人の一部負担を重くするというのは矛盾があるのではないかというふうに考えるわけです。このような理由づけをしていったらもう際限なく負担はふえていくというふうに考えられます。もっとやはり説得力のある説明をしていただかないと、どうしてもこの部分は納得できないんですが。
  79. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 確かに若い世代の医療保険との関連において、今回一部負担改正お願いしているということでございますので、他の制度が動いたからということだけでは納得できないというのも一つの御議論かとも思いますけれども、私どもの方の考え方といたしましては、やはりこれからの老人医療費を見ます場合にその増加というものは避けられないわけでございまして、現に四兆円の医療費が毎年毎年一〇%程度伸びるんではないか、四、五千億程度の増加は避けられないわけでございます。この老人医療費の増加額というものは結局は国民だれかが負担をしなきゃならないわけでございます。  やはり老人医療費の増加は、今後適正化に努力はいたしますけれども、避けられないわけでありますから、その増大する医療費を国民に今後とも負担していってもらう、そのためにはやはり老人も若い人と力を合わせて負担する面というものが必要になってくるんではないかという考え方から、現在、老人医療費の一・六%の負担では私ども考え方ではやはりバランスがとれない、この際引き上げをぜひお願いすべきではないか、そういうことによりまして国民に今後とも増大する老人医療費を公平に負担していただくシステムをこの際確立させていただきたい。  それは老人世代間の負担の公平という意味での負担の公平化措置と相まちまして、若い世代間の負担の公平も、加入者按分率の引き上げということで、両方世代間も同一世代の中の負担も、今回の改正によりまして公平に負担するシステムというものをこの制度にビルトインさせていただきまして、これから二十一世紀に向かってこの老人保健制度を長期的に安定させていく、そのことがこの法の目的であります老人医療を確保していく、お年寄りにとって大事な医療を今後とも確保していくために非常に大事なことではないか、こういう観点に立ちまして今回の一部負担の引き上げをお願いをしているわけでございます。
  80. 糸久八重子

    糸久八重子君 世代間の負担の公平ばかりを前面に出していらっしゃいますけれども老人医療費がふえるということの理由はやはりもっと解明していかなければならない問題がたくさんあると思うんですよ。そういうことを積極的になさらないで、表立った医療費がふえるから、だから世代間の負担を頼むんだと、公平な負担を頼むんだというようなことはやはりどうしても納得できない部分があります。またこの医療費の問題につきましては、後で質問の中に織りまぜていきたいと思います。  現在の外来の場合の老人医療費は、おおむねどの程度の金額になっておりますか。
  81. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 一月当たりでお答えいたしますと、おおむね一人一万六千円ぐらいかかっております。
  82. 糸久八重子

    糸久八重子君 一万六千円から二万円というふうに言われているわけですが、政府原案の千円というのは五%の定率負担に等しいのではないか。修正で八百円になっておるわけですけれども、これも四%の定率負担である。  五十九年十月から被用者保険本人の医療費一割自己負担制度が導入されたわけですけれども、それは受診率にどのように影響を与えておりますか。
  83. 下村健

    政府委員(下村健君) 約一〇%ダウンいたしております。
  84. 糸久八重子

    糸久八重子君 それで、もし老人医療患者一部負担が倍増されたといたしますと、お年寄りはやはり早期の受診を控えたり、そして治療を受けていることによって病状が安定しているにもかかわらず治療を中断することによってさらにその症状が悪化する、そういう状況考えられるのではないかと思いますけれども、そうならない保証はありますか。
  85. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の外来の一部負担が早期受診なりあるいは必要な医療が中断されるという点で私どもとしてはやはり心配であるわけでありますけれども、先ほどから申し上げましたように、そういうことも十分念頭に置きまして、現在のお年寄りの所得なり、年金の水準なり、あるいは一部負担の仕組みなり、定額制とか、月の最初に払うとか、そういうものをあわせ講じまして、先生指摘のように、この一部負担の引き上げによって、お年寄りにとって必要な受診が抑制され、そのことによって病気が重くなる等のことが起こることはないであろうというふうに考えておるわけでございます。
  86. 糸久八重子

    糸久八重子君 老健法が施行されてから老人の受診率が減少しましたね。そして、五十九年度の厚生白書によりますと、老健法によって老人医療費の切り下げの効果がありと評価をしているわけです。しかし、治療費の一部自己負担並びに受診率の減少というのは当初予定した医療費の高騰の抑制には直結しないことが法施行後の二年を経て明白になっているではないですか。  つまり、受診を抑制することによって病状が悪化し、そして非常にたくさんの費用を要することがその原因と考えられるのではないかと思いますけれども、つまり法制定が医療費抑制に効果を上げていなかったと、そういうことがここから言えるのではないですか。
  87. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 確かに老人保健を創設いたしましたときに受診率に影響があったわけでございます。入院につきましてはほぼ横ばい程度であったわけでありますけれども、外来の受診率は低下を見たわけであります。  私どもはその際いろいろ分析をいたしておるわけであります。受診率は若干減少いたしておりますけれども、一方一件当たりの日数が増加しているということでございますから、一つ医療機関でじっくり腰を据えて治療を受けるような傾向のあらわれだというふうに私ども老人保健創設時の一部負担導入による影響を見ておるわけでございます。  つまり、一部負担を導入いたしました際には、いろいろ老人医療について、はしご受診あるいはサロン化等々の意見なり批判があったことも事実でございます。それがこの老人保健創設時の一部負担の導入のデータを見ますと、受診率は若干の低下があったものの一件当たりの日数はふえているということで、一つ医療機関でかかりつけのお医者さんにじっくり診てもらえるという形に変わったんではなかろうかというふうに見ております。  その後、この受診率は入院、外来とも増加をいたしておりますけれども、そのことが私どもは必要な受診の抑制にはなっていないとともに、逆に医療費抑制効果というものをもろに一部負担考えたわけではございませんで、やはり老人に健康への自覚なりあるいは適正な受診をお願いするという見地からお願いしたわけでございますから、現状の受診率等の推移は私どもとしてはとやかく問題にするべき筋合いではないというふうに考えております。  私どもとしては、最近の入院の受診率というものはかなり大きく伸びている傾向があるわけでございまして、これはやはり老人が入院される、しかし入院された後も長期に在院されるというようなことから老人医療費の押し上げの原因になっているわけでございます。  そういう意味から、今回中間施設というものを組み入れることによって、一部負担による抑制効果ではなくて、長期入院の方、俗に言えば社会的な入院をされている方に対しまして、その方々にふさわしい施設を提供することによって私どもは中長期的には医療費の抑制と申しますか、医療費の適正な水準にとどめていく方途の一つになるんではないかというふうに考えておりまして、今回老人保健施設提案を申し上げているのもそういう面があるからでございます。
  88. 糸久八重子

    糸久八重子君 受診率は減った。確かに窓口で一部負担しなければなりませんから、当然これはお年寄り本人がお医者さんに行くのをやめている方が多くなったのだと解釈しますし、また一件当たりの日数が増加したということなんですが、結局一件当たりの日数が増加した、一カ所でじっくりというふうにおっしゃったわけですけれどもね、日数が増加したということはやはりその病気が大変重くなった、したがって医療費がそこではふえるというような、そういう結果になってくるのではないかと思います。  老人に健康への自覚を持たせるようにということもおっしゃいましたけれども、そもそも政府は中長期的に考えてお年寄り医療費自己負担をどのように考えていくのか、何を基準にして考えていくのか、これを明確にしていただきたいと思います。
  89. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人医療費につきまして、お年寄りの自己負担がどの程度の水準であるのが適当かというのはいろいろ議論があるところでございますけれども、私どもの結論として一応五%程度が適当であるという判断をいたしておるわけでございます。もちろん、今後の医療費の動向等々でいろいろ御議論はあり得るところであろうと思っておりますけれども、現時点の私ども考え方は、老人医療費については五%程度負担、そういうものが適当な水準ではなかろうかというふうに考えております。
  90. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは次に、高齢者が入院した場合のいわゆる保険外負担についてお尋ねをいたします。  政府は、本年度予算委員会の段階で老人病院における保険外負担状況を公表しておりますけれども、そこには差額ベッド代及び付添看護料は含まれておりません。差額ベッド代及び付添看護料の実態についてどのように把握をされていらっしゃいますか。
  91. 下村健

    政府委員(下村健君) 第一が差額ベッドの問題でございますが、従来から三人室以上の差額ベッドを解消するように指導を行ってきているところでございます。この結果、総病床数に占める三人室以上の差額ベッドの割合は、指導通知を出しました昭和四十九年には六・六%ございましたが、昭和六十年には〇・八%というふうに相当程度低下しているわけでございます。患者負担額の方でございますが、差額ベッド全体を平均いたしますと一日当たり三千三百円程度というふうに推計いたしております。今後ともルールに反した不適切な差額徴収が行われることのないよう指導の徹底を図ってまいりたいと考えております。  第二が付添看護の問題でございますが、普通看護の病院におきまして付添看護がついた場合、付き添いに要した費用について患者に償還払いを行っているわけでございます。この償還される看護料と実際に支払われる慣行料金との間に、大都市の場合に基本給において一日当たり約千円程度の開きがありまして、これが患者負担になっているわけであります。付添看護料につきましては、これまで国立病院における看護婦の給与実態等を踏まえまして償還される療養費の額の改定を行ってきたわけでありますけれども、今後とも実態を十分に把握いたしまして適切に対処してまいりたいと考えております。
  92. 糸久八重子

    糸久八重子君 昨年、中野区が調査をいたしました高齢者の入院実態調査報告によりますと、報告書のうち六三%に当たる人が差額ベッド料を払ったと回答しております。負担額を見ますと、五万円を超えて十万円以下というのが四三%、そして十万円を超えて十五万円以下というのが一四%、すなわち五万円を超えて十五万円以下の者が約六〇%いるということでございますが、こういった実態についてどのように認識をしていらっしゃいますか。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕
  93. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 中野区の調査は私どもも承知をいたしておりますけれども中野区の調査は付添看護をつけられた人が東京都に対してその費用を償還する、その人たちに対するアンケート調査だと承知をいたしております。したがいまして、かなり重い方々にウエートのある調査であろうというふうに考えておるわけでございます。  なお、金額的には非常に高く出ておりますけれども、その内容につきましては、例えばお医者さんの謝金だとかあるいは差額ベッド等が非常に大きな割合を占めておりますが、いわゆるお世話料についてはおむつ代あるいは生活諸費でございますが、一万円程度のレベルではなかったかなというふうに考えております。
  94. 糸久八重子

    糸久八重子君 政府の調査の場合には病院を対象として調査をしたわけですね。中野区の場合には患者またはその家族からの聞き取り調査であったわけです。対象が病院よりも患者またはその家族の方がより本当の値が、実際に出たその値が出るのではないかと思うんですけれども、そういう意味患者対象の調査をする用意はありますか。
  95. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 厚生省としてなかなか患者を直接に調査するというのは難しいわけでございます。今回私どもは、いわゆるお世話料というものにつきまして全国の老人病院を対象に実態調査をいたしたわけでございますけれども、この調査結果につきましては個々の都道府県が承知をしておりますデータその他といろいろ突合いたしておるわけでありますので、私ども病院を対象にした今回のいわゆるお世話料の調査というものも実態を反映した数字として出ているんではないかなというふうに認識をいたしております。
  96. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生省がお調べになりました老人病院における保険外負担状況、どのくらいになっておりますか。
  97. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 昨年の十二月に全国の老人病院を対象に実態調査を行ったわけでございますけれども、いわゆるお世話料につきます状況でございますが、入院患者一人一月当たり平均二万七千五百円になっております。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕
  98. 糸久八重子

    糸久八重子君 平均が二万七千五百円。しかし大都市では違っていますね。どのくらいの金額になっておりますか。
  99. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 関東を一、二で分けておりますけれども、いわば東京、埼玉、千葉、神奈川という首都圏でございますけれども、四万九千四百円になっております。それから、近畿につきましては三万六千三百円になっております。
  100. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生省の調べでは、首都圏では約五万円、そして平均では二万七千円というわけですけれども、しかし中野区の調査でも見られるとおりかなり高額のものを払っている方がいる。やはりこの保険外負担行政としてどうしていかなければならないと思いますか。
  101. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 中野区の調査でございますが、先ほど申し上げましたように非常に高い、月額十万円以上が五割という調査結果が出ておるわけでありますけれども、その内訳を見ますと、差額ベッドが五万—十万という方が六二%、お医者さんの謝礼というのが五万—十万というレベルで五五・四%というような数字が出ておるわけでございまして、したがって私どものこの実態調査というものは全国レベルの数字としては実態を反映しているんではないかというふうに考えております。  これに対する指導でございますけれども、かねてからいわゆるお世話料につきましては、医療医療の給付と重複するものについてはお世話料というのは絶対に認められないということで、その是正を図るように都道府県を通じて指導をいたしておるわけでございます。したがいまして、医療として給付されるものについてさらに費用を徴収するということは私どもは認めないわけでありまして、その方針は今後とも徹底をさしていきたいというふうに考えております。
  102. 糸久八重子

    糸久八重子君 こういった保険外負担というのは、老人病院からしてみると取らざるを得ないから取っているんだということになると思うんですね。取らざるを得ないから取っている、その理由というのはどこにあるんでしょうね。
  103. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) いわゆるお世話料につきましては、一番重い大きなウエートを占めますものはおむつ料でございます。そのほか理髪代だとか貸しテレビ代等のいわゆる生活費サービスがこのお世話料に入っておるわけでございます。そういった生活サービスというのは医療の給付として保険の方が病院に払わない経費でございますから、そういう患者さんの身の回りの必要なサービスなりあるいは費用についてはやはり病院としてはその対価をお願いせざるを得ないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  104. 糸久八重子

    糸久八重子君 特例許可病院基準医療介護を行えば別にお世話料などを取らなくてもいいけれども、それでは入院している患者やその家族が満足するかと言えばやはり満足しない、また医療機関側の良心も許さない、それが実態だと思うんですね。例えば現場の声といたしまして、入院患者に対して入浴を一週間に一回でも入れてあげようとすれば、今の特例許可病院の人員配置ではとてもできない。また、給食でも時間をかけて介助して食べさせてあげたくてもできない、そうすると、結局本人が食べられる範囲でしか食事をとらないからやはりどんどんと病状は落ち込んでしまう、落ち込むから点滴をする、そういう悪循環になってしまうわけですね。  こうした悪循環を断ち切ってできるだけ食べさせようとすれば、もっと食べさせられる職員を入れていかなければとてもできない。そうするとその分だけ経済的にはみ出るから、経営サイドからお世話料という名の徴収といった理屈になるのではないか、そう思うわけです。  したがって、基準看護をとっている病院でも、看護婦とそれから准看護婦、看護助手が四、四、二という割合なんですが、それをもう四、四、四ぐらいに置かなければとてもやっていけないのではないか。この現実をどう認識されますか。
  105. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 特例許可病院の職員の配置につきましてお話がございましたが、御承知のように、特例許可病院におきましては、老人慢性疾患ということでございまして、比較的安定期が長い。したがって、一般の病院に比べまして、診療あるいは看護に比較いたしまして日常的な介護が重視をされる、そういうことで、この特例許可病院の職員の配置基準につきましては医師及び看護婦は一般の病院と比べて少なくていい、つまり基準を緩和するということにいたしております一方で、入院患者介護に当たる職員を置くということにいたしております。  したがいまして、今お話のございました患者療養上のお世話をする職員、つまり一般病院看護婦だけでございますが、特例許可病院におきましては看護婦プラス介護職員ということで、一般の病院看護婦数の基準よりも特例許可病院看護婦介護職員の合計数というのは多くなっておる、そういう基準になっておるわけでございますので、私どもといたしましては、この基準で適切な療養上のお世話ができるのではないかと考えているわけでございます。
  106. 糸久八重子

    糸久八重子君 私は、老人病院の人員配置は、正看、准看、助手というその要員をどういう比率で置くかということは別といたしまして、少なくとも三対一ぐらいで置かなければお年寄りの本来的な介護、それから看護はできないのではないか、そう思うわけですが、いかがですか。
  107. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 今三対一というお話があったわけでございますが、一般病院で例えば入院患者百人、百ベッドの病院ということで、その基準数は看護婦さんが二十五人必要ということになっておりまして、老人病院、特例許可病院におきましては看護婦さんが十七人、介護職員が十三人ということで三十人ということになっておるわけでございます。先生お話の三分の一、百人に三十人でございますので十人に三人というのが現在の特例許可病院基準でございます。
  108. 糸久八重子

    糸久八重子君 実は私の知人で、一般病院に入院をしていたんだけれども、非常に負担が余計でとても耐えられない、そこで身内の者が無理やりに老人病院に転院をさせたわけです。一般病院におりましたときには二十四時間付き添いの看護をつけていたわけでございますから、一年寝たきりでありましたけれども、大変十分な看護ができたと思うのですね。老人病院に参りましたところが、三月たちましたら床ずれができてきたということがわかったわけで、とても体の上に毛布をかけたり重いものをかけると大変だということで私も羽布団などを持ってまいりましたけれども、そういう実態があるわけですね。  だから、やはり老人病院の今の基準では十分にそういう介護の状態ができないということを私は本当に身をもって感じたわけなんですね。そういうことで、どうしてもこの基準というものはやはり変えていかなければいけない、このことがまた今提案されております保健施設介護人、看護婦等の基準にもかかわってくるのではないかと思いますけれども、そういう意味で私は今実情を申し上げたわけでございます。  いずれにいたしましても、老人の入院につきましては、老人保健制度に基づく一部負担だけの問題ではなくて、いわゆる保険外負担が非常に重くなっている、そしてそれが家計の負担にもなっていること、そのことをやはり多く直視すべきですし、特に長期に入院する者にとっては今回の改正は非常に過重な負担を強いる結果となるということを認識していただきたいんですけれども大臣、そのあたりはいかがでしょう。
  109. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいまの老人病院における基準の問題等、今答弁申し上げましたように、この基準からすれば先生指摘のような三対一に近い看護、介護人の配置を義務づけておるわけでございますが、実態としてこれが完全に守られていないという部分もあるわけでございまして、そういった面の指導を強めてまいるということも一つかと思うわけであります。また、今後将来にわたって病院診療所、また老人病院等におけるそういった人員の配置等について現在医療法の見直しを行っていただいておりますけれども、そういう中においての見直しもやっていかなければならないというふうに考えておるところでございます。  一部負担の点につきましては、先ほど来るるやりとりのあったところでございますが、現在の年金、またお年寄り生活実態等から見まして、全体としては無理なく御負担をいただけるものではないかというふうに考えておるところでございます。
  110. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ─────・─────     午後一時三分開会
  111. 佐々木満

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、老人保健法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  112. 糸久八重子

    糸久八重子君 加入者按分率の問題についてやはりここでお伺いをしておきたいと思います。  各保険者の拠出金を現行のような算定方法、すなわち医療費按分率と加入者按分率という二つの按分率が導入された理由はどこにありましたか。
  113. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人医療費をどう保険者にその費用を按分するかということでございますけれども、もちろんすべて老人の加入率を調整した上で、つまり加入者数に応じて按分する方式が一つありますし、もう一つ医療費実績そのものに按分してもらう方式があるわけでございますけれども、私どもの最初の提案いたしました法案で申し上げますと、五〇%から一〇〇%の間で政令で定めるところによって両方に按分したらどうかという形が私ども政府提案だったわけでございますけれども、それを国会の修正で五〇%按分ということになったわけでございます。恐らく初めての制度が創設されるわけでございますから、医療費実績を半分、それから加入者按分を半分にするのがその当時としては適当であろうということで五〇%に修正がなされたものと承知をいたしております。
  114. 糸久八重子

    糸久八重子君 今回、本則で加入者按分率を一〇〇とした理由はどこにありましたか。
  115. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先ほど申しましたような経緯で五〇%に衆議院で修正され、さらに参議院の段階で五〇%以下で政令で定めるようにということが再度修正されたわけでございます。その際に、同じく附則で検討条項が入りまして、その算定方法五〇%以下で政令と書かれた特例の算定方法及び本則の算定方法を含めまして、三年後に検討の上見直すようにということで検討条項が付加されたわけでございます。  私どもは、三年たちました時点におきまして、それではどういうふうにこの拠出金の算定方法を見直すかということで検討に入ったわけでございます。そこで、老人保健審議会に前広に相談を申し上げたところ、老人保健審議会中間意見として、一〇〇%を目指して検討するようにという意見が多数意見として出たわけでございます。  私どもは、やはり法の本旨が老人医療費を国民が公平に負担するという法の精神なり理念からいって、私どもとしては一〇〇%に加入者按分率をさせていただきまして、どの保険者も同じ老人を抱えるという形での拠出というものが最も望ましい公平な負担の方式ではなかろうかということで、今回御提案を申し上げたわけでございます。
  116. 糸久八重子

    糸久八重子君 どの医療保険も同じ割合でお年寄りを抱えることになって、それが公平になる。それならば、按分率五〇、五〇でスタートをした理念というのは何だったのでしょうか。
  117. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先ほど申し上げましたように私どもの当初の考え方は、五〇%から一〇〇%の間ということで五〇%になったらどういうふうに負担の増減があるか、一〇〇%にしたらどういう負担の増減があるかということを、政府の原案として出させていただいたわけでございますけれども、制度の創設ということもありまして、やはり急激な保険者の負担増等も配慮された上で、国会の方で御修正になって現行の按分の算出方法が決まっているものと承知をいたしております。
  118. 糸久八重子

    糸久八重子君 加入者按分率を引き上げることによって各保険者間の拠出金はどのように変わりますでしょうか。
  119. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは、今回の加入者按分率の引き上げに伴う拠出金の推計につきましては、六十一年度から八〇、それから六十二年度から六十四年度までが九〇、六十五年度以降が一〇〇%ということで、衆議院による修正があることを受けまして試算した結果の数字でございます。もちろんいろいろ前提がございまして、一人当たり医療費の伸び率を五・九%、老人人口の平均伸び率を三・三%という前提を置き、さらに一部負担につきましては、外来八百円、入院につきましては原案どおり五百円で期限なし、そういう前提で試算した数字でございますけれども老人医療費総額としては、六十一年度の四兆三千二百九十五億円から六十五年度には六兆二千四百億円ということで、約一・四倍に医療費全体が増加するものと見ております。  各制度の拠出金の増減でございますけれども、六十一年度政管健保につきましては、七千二百八億円が六十五年度には一兆二千九百億円、健保組合につきましては、六十一年度の五千二百三十九億円が六十五年度には一兆八百億円に。それから国保につきましては、六十一年度の一兆四千六百四十五億円が六十五年度には一兆四千億円になるものと見込んでおります。
  120. 糸久八重子

    糸久八重子君 午前中の質問の冒頭でも申し上げましたとおり、老人保健の拠出方式というのは、被用者保険から国民健康保険に対する援助ではないのか。そして、加入者按分率の引き上げというのはそれを一層助長するものであるのではないか、そう思うわけです。老人保健制度の中だけでの加入者数を同じにするということ、これが負担の公平と言えるものなのでしょうか。もっと広い視野で考えていくべきことが多くあるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  121. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健制度は各医療保険制度にいわば乗っている形で運営しているわけでございます。それぞれのお年寄りがそれぞれ政管あるいは組合健保あるいは国保という形で、本人ないしはその家族という形で入っておられるわけでございますけれども、そういう中で、私どもはそういうお年寄り医療費を各制度が持ち寄った形で拠出金を仰ぎ、それを市町村が各保険者に肩かわって共同事業という形で実施しておるわけでございますから、私どもとしての公平の措置という考え方は、やはりおのずから共同に拠出する負担金について、どの保険者もどの制度も同じ老人を抱えた形で拠出し合うというのが老人保健制度にとっては一番公平な負担の方法ではないかというふうに考えております。
  122. 糸久八重子

    糸久八重子君 現在、国民健康保険にはどの程度の国庫負担が行われておりますでしょうか。また、それは国保財政全体ではどの程度の割合になっておりますか。
  123. 下村健

    政府委員(下村健君) 国民健康保険に対する国庫負担の割合でございますが、国民健康保険事業全体に対しまして、まず割合から申しますと、国民健康保険の医療給付費の五〇%、それから老人保健の拠出金につきましては五五%、それからそのほかに助産費に対しましてその三分の一、それから事務費の全額という格好で国庫負担を行っているわけでございます。  金額を申し上げますと、六十一年度予算で国民健康保険の医療給付費に対する国庫負担といたしまして一兆二千五百八十二億円、老人保健の拠出金に対する国庫負担といたしまして七千三百五十億円、助産費に対しまして百二十一億円、事務費に対しまして七百五十八億円の国庫負担を計上いたしております。
  124. 糸久八重子

    糸久八重子君 国保財政全体から見ると大体五〇%程度ですね、そうですね。
  125. 下村健

    政府委員(下村健君) 大体五〇%とお考えいただいてよろしいと思います。
  126. 糸久八重子

    糸久八重子君 現在の所得税は税収全体の四〇・四%を占めている。そして、その所得税の八〇%近くは被用者が納めていると言われているわけです。これに法人税を加えますと、国民健康保険へ補助されている国庫負担のうちの七〇%程度は、被用者とそれからその事業主が租税という形で負担をしているということにはなりませんか。
  127. 下村健

    政府委員(下村健君) 財源に別に色があるわけではありませんので、正確にそういう言い方がいいかどうかはちょっと疑問が残りますが、財源構成からいえばそういうふうな言い方もできるかもしれませんが、必ずしも正確ではないと思いますが。
  128. 糸久八重子

    糸久八重子君 公平な負担というのは、こういった広い観点から国民の負担がどうなっているのか、租税、社会保険料の財源がどのように流れていくのか、そういったこともやはり考えていく必要があるのではないかと思います。そういう意味では、やはり重要な視点が欠落をしているのではないかと思いますけれども、これでも負担は公平と言えますか。
  129. 下村健

    政府委員(下村健君) 医療保険制度のこれまでのいろいろな検討の経緯からいいますと、政府管掌健康保険の財政問題等がありまして、医療保険制度全体を通じての財政調整というふうな議論もありまして、事実国会に本格的な財政調整案が提案されたことも四十年代においてはあったわけでございます。しかしながら、それは日の目を見るところまでまいりませんで、財政調整については比較的否定的な意見が有力になった時期がございました。  そのような経緯もありまして、老人保健制度を創設するに際しまして、現在の老人の加入者割合という点にのみ着目をして公平化の措置をとるという現在の案が成立したわけでございます。したがって、それのみで完全に公平化ということについてはなお問題が残るということになろうかと思うわけでございます。  したがいまして、私どもとしては今回の老人保健法改正案で、高齢化社会へ向けての医療保険制度の改革がすべて終結するという考え方ではありませんで、六十年代後半のなるべく早い時期に医療保険制度の一元化の努力をいたしますということを申し上げているわけでございます。したがって、これで全部給付と負担の公平化のための措置が終わったということではありませんが、老人の加入者割合という点から見た公平化については今回の措置で十分であると考えているわけでございます。
  130. 糸久八重子

    糸久八重子君 毎年度の予算編成との関連から、つじつま合わせのために国庫負担減らしをさせられているとどうしても思えるわけですね。医療保険における国庫負担というのは、一生を通じて各ライフステージでどのような位置づけ、それからウエートを持ったらよいかということ。そういう基本的な観点、そして一貫した物の考えといったものをやはり持っていかなければいけないと思うのです。  現在、医療保険における国庫負担がどのようなものになっているのか御説明をお願いしたいと思いますが、例えば政管健保で働く中小企業の被用者に対する現役の際の国庫負担はどうなっておるのでしょうか。
  131. 下村健

    政府委員(下村健君) 政府管掌健康保険に対する国庫負担の割合は、医療給付費及び老人保健拠出金等に要する費用の一六・四%ということで法定されております。
  132. 糸久八重子

    糸久八重子君 年金生活となって国民健康保険に移行し、退職者医療制度が適用されている期間はどのようになっていますか。
  133. 下村健

    政府委員(下村健君) 退職者医療につきましては、被用者保険制度の延長あるいは総体としての被用者保険制度の周辺部分ということで、これについては国庫負担は行っておりません。
  134. 糸久八重子

    糸久八重子君 退職者医療制度加入者が現役時代にどの制度に入っていたか分析しておりますでしょうか。現役時代に政管健保と組合との間には平均標準報酬にして二割を超える格差があるわけですね。さらに一人当たりの給付費にも格差があります。そういったことから、政管健保へ現役時代に国庫負担が出されていたものだ、そう思うわけですね。  そうすると、退職者医療制度では国庫負担がなくなっていることから、ここでも政管、組合間の調整がなされている、そう思われるわけです。現役時代国が負担していた部分を、組合や共済などで平均標準報酬総額の高いグループが転嫁させられるということになるのではないですか。
  135. 下村健

    政府委員(下村健君) 退職者医療については、現在の制度は現役時代の加入者がそれぞれ職場を変わる、あるいは一定の年齢に達すると大企業から中小企業へ移るとか、いろいろ職場の変更等がありまして、それぞれの制度別の加入期間はなかなか正確には把握できないというふうな状況がありますので、被用者保険の退職者全体を一括してとらえて、それを被用者保険全体の共同事業的なものとして考える、こういう構成になっているわけでございます。したがって、その費用負担も全体の各制度の標準報酬総額に対する割合で分担をする、こんな感じでやっておりますので、標準報酬に応じて負担をするという形でございますので、標準報酬の高い者が特に高額の負担をするということにはなっていないと考えております。
  136. 糸久八重子

    糸久八重子君 退職者医療制度から老人保健制度へ行くと医療費の国庫負担割合はどのように変わりますでしょうか。
  137. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 退職者医療制度につきましては、被用者保険の性格ということから国庫負担は入っていないわけでございますが、老人保健に移行されますと公費負担ということで二割が国費、それからあと五%、五%が県、市町村の負担ということで負担が入ってまいります。
  138. 糸久八重子

    糸久八重子君 どうもライフステージに合わせた医療保険の国庫負担に統一した考え方がないような気がするんですね。五十九年度予算で当初六千二百億円の国庫負担を削減するために被用者保険本人の給付率を引き下げて、そしてそこで浮いた財源を退職者医療制度に向けさせる。国保のお年寄りが退職者医療へ相当数行くから財政的に余裕ができる。その分、国保への国庫補助率を引き下げたというようなことで、まさに予算のつじつま合わせを行ったと言わざるを得ないと思います。  また、老人保健制度の按分率を改めることによって、そして国保の拠出金を減らして、それを通じて国保の国庫負担を減額させるという、まさにその場しのぎの国庫減らしではないか、どうしてもそう思わざるを得ないのですけれども、いかがですか。
  139. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の改正が国庫負担の削減をねらったものではないかというお尋ねでございますが、今回の改正趣旨はるる申し上げておるとおりでございまして、世代間の負担の公平とか、あるいは同一世代内の今度は制度間の、あるいは保険者間の負担の不均衡を是正するという意味お願いしておるものでございまして、こういう公平の負担のシステムを今回構築することによりまして老人保健制度の長期的な安定を図ろうというものでございます。  なお、先ほど申し上げましたように、老人保健制度に対します国の負担は公費ということで二〇%入れておりますけれども、これは改正後もこの負担割合は変わっていないわけでございます。全体として国庫負担が減少するのではないかということでございますけれども、これは患者負担や保険料負担が増加することになることに伴なうものでございまして、お年寄りの加入が多い国保の負担が軽減されるということを通じまして、その国保に対します国庫補助相当額がその国保の負担減に見合って減少するということからでございます。  なおちなみに、政管の方は負担が増加いたしますので、政管に対する国庫補助は増額となるわけでございますが、国保の方の負担減が多いということで、トータルとしては先生指摘のように国庫補助が減る形になるわけでございます。これは何度も申し上げて恐縮でございますけれども、世代間とかあるいは医療保険制度間の負担の公平を図る結果として国庫補助が減少するということでございまして、今回の改正はそういうものを直接的にねらって行ったものではなくて、やはり負担の公平を通じまして制度の長期的な安定を図ろうという趣旨からのものであるということを御理解いただきたいと思います。
  140. 糸久八重子

    糸久八重子君 老人保健法改正案政府原案どおりで見てみますと、六十二年度は国保財政は六千五百億円の支出減、そしてサラリーマンの保険は四千三百億円の支出増となるわけです。部長は世代間の負担の公平というきれいな言葉でいつも答弁をなさいますけれども、やはりどうしてもこの限りでは改正案は被用者保険による国保財政の救援策ということだと思うんですね。そうではないとおっしゃるんですが、一面、この改正案が国保の財政対策だとしますと、手助けをする被用者保険労使の立場からは次のような疑問が出てくるわけです。  それはどういうことかといいますと、まず第一に、それぞれの保険は制度内の相互扶助が目的であって、その他の制度を助けるために存在しているわけではない。したがって、例外的に救援出動を依頼する場合には、まず期限を切るとか、それから救援のための拠出額をだれでもがわかるように限定をするとかということが必要になってくるのではないか、そう思います。それから二番目に、助けられる側、この場合国保になるわけですけれども、その助けられる側の財政状況を詳細に公表するとともに、その助けがどんな役に立つのか、それを具体的に示すべきではないのでしょうか。これが当たり前の市民感情だと思うのですけれども、いかがでしょう。
  141. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 医療保険制度の目的が制度内の相互扶助にあるという御指摘でございますけれども老健法の理念規定でおわかりのとおり、やはり自助と連帯ということで、国民全体が連帯の精神で助け合うことが増高する医療費を国民が公平に負担していく手だてではないかということで老人保健制度が私どもは創設されたものと理解をいたしておるわけでありまして、今回の改正は、国民の連帯という、そういう理念に立ちまして、制度を超えてと申しますか、広く老人医療は分立いたしております各保険制度の上に共同事業という形で市町村が実施している事業でございますから、そういう形で他への、老人が多い保険者に対しまして老人を少なく抱えている保険者が公平の結果として拠出を通じて公平に助け合っていくということは最も必要なことではなかろうかというふうに考えております。  助けられる側の国保の財政状況等につきましては、私どもとしてはできる限り公表をいたしておるつもりでございます。
  142. 糸久八重子

    糸久八重子君 同じような答弁はさておきまして、大変私も質問する事項が多うございますから今後よろしくお願いしたいと思うのです。  国保財政の赤字は、資料をいただきましたけれども、五十九年度が一千六十四億円、そして六十年度の速報値で一千七百七十億円と報告されているわけです。この資料における単年度経常収支は、各市町村の一般会計からの繰入金がある場合、これを含んでおりますか。
  143. 下村健

    政府委員(下村健君) ただいま先生指摘になりました収支の赤字額千七百七十億円は、国民健康保険中央会が公表いたしました六十年度単年度の経常収支の速報値の数字でございます。この中央会の数値によりますと、大体こんな数字ではないかと思いますが、六十年度の市町村一般会計からの繰入金が千七百六十一億円含まれておりますので、これを差し引いての額ということになりますと三千五百三十二億円の赤字という数字も出るわけでございます。  ただ、市町村一般会計からの繰り入れを行う原因については、保険料の引き上げを抑えたいとか、いろいろ政策的な配慮もありまして市町村の判断で行われているわけでございまして、単純にこれを差し引いて収支を見るのが適当かどうかというふうなことは問題があると思っているわけでございます。  私どもとしては、国保の財政収支は繰越金でありますとか基金からの繰入金等を加えて決算の数字で見た方が適当ではないかというふうに考えているわけでございます。
  144. 糸久八重子

    糸久八重子君 そうすると、今の御答弁で一応市町村の一般会計への繰入金を含んでいる、そうおっしゃるわけですけれども、そうなりますと、これは国保制度の現状を間接的にしか示していないということになるのではないかと思いますね。  老人保健法改正で国保財政が助かるといいましても、従来一般会計から繰り入れていた部分が減るか、それともなくなるかという助かり方もありますし、そうでなくて保険料の引き下げにつながる助かり方もあるわけです。一体どんな財政効果をもたらすかを明確にした上でサラリーマン保険に支援を求めるのが筋ではないのでしょうかね。  そこで、一般会計からの繰り入れを除いた収支状況は御報告願えますか。
  145. 下村健

    政府委員(下村健君) まだ最終決算の集計が終わっておりませんので確定数値ではございませんが、ただいまの一応の速報の数字で見ますと、一般会計繰入金を除きますと三千五百三十二億円の赤字ということになるわけでございます。そのほかの繰越金あるいは基金からの繰入金というふうなものも加えまして決算ベースの数字で見ますと、国保中央会が集計いたしました数字によりますと、五十九年度が千三十億円、六十年度が六百五十八億円の黒字ということになっております。
  146. 糸久八重子

    糸久八重子君 国保の保険料には最高と最低の間に大きな格差があります。いただいた資料で見てみますと、一人当たりの保険料の最高が六万一千五百円、最低が八千百円、随分な不公平になるわけですけれども、この格差を少なくするというような方針はありますか。
  147. 下村健

    政府委員(下村健君) 御指摘のとおりの数字でございまして、最高が北海道網走市の六万一千五百円、最低が沖縄県粟国村の八千百円ということでございます。確かに相当開きがあるわけでございます。  私どもとしては、保険料負担に余り大きな開きがないように、財政調整交付金で市町村の財政力等に応じて保険料負担をできるだけ公平にするという観点からの財政調整をやっているわけでございますが、一方において保険料の高低は主として医療費の高低で決まるということになるわけでございます。医療費の低いところというのは、どちらかといえば僻地のようなところが多いわけでございますから、単純に保険料負担をならすという形での調整だけを行うというわけにもまいりませんので、こんな結果が出ているわけでございますが、私どもとしてはできるだけ公平な負担の確保という観点から、保険料負担の差をできるだけ縮小していくという基本方針は財政調整を通じて努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  148. 糸久八重子

    糸久八重子君 医療費でもって高低が決まってくるということなんですけれども、その場合に、例えば医療費を分析するとか、そういう原因の分析というのはなさいますのでしょうか。
  149. 下村健

    政府委員(下村健君) なかなか難しい面がございますが、私どもとしてはぜひともそういう努力もしてまいりたいというふうに考えております。
  150. 糸久八重子

    糸久八重子君 レセプトを統計的に処理することができるならば、医療費分析も可能になると思うのですね。  ところで、レセプトというのは支払基金扱いが今五億枚、そして国保扱いが約四億枚、合わせて九億枚近く人手によってチェックをしているわけですね。この不合理を正すには国としてはまず二つの施策に取り組まなければならないと思います。  その一つは、このように膨大な事務量を伴う点数出来高払い方式を改めて、もっと簡便な方式に転換することが検討できるのではないか。  それから、二つ目としては、とりあえず、点数出来高払い方式のもとでコンピューターによるレセプト処理を行うことなど改善ができるのではないかと思いますけれども、それぞれについて状況はどうなっておりますでしょうか。
  151. 下村健

    政府委員(下村健君) 先生指摘のとおりでございまして、現在の膨大な量のレセプトを適正に処理するための体制の整備あるいはそのためのいろいろな簡素化ということはかねてからの懸案になっておるわけでございます。事務の迅速な処理のためにはコンピューター化ということがぜひとも必要だと考えておりまして、そのレセプト処理システムを導入するための予算も計上いたしましていろいろ努力をしているところでございます。  それから支払い方式、現在の出来高払いをどうするのかというふうなことになろうかと思うわけでございますけれども、これについては単純に事務処理上の観点からだけ支払い方式を考えるというわけにもまいらないと思いますが、簡素化という観点からも現在の診療報酬あるいはその請求方式、支払い方式の簡素化ということについては現在の支払い方式の範囲内においてできる限りの努力はしていくというのが私どもの基本方針でございます。
  152. 糸久八重子

    糸久八重子君 レセプト処理システム経費というのは、今御答弁の中にちらりと出てきましたけれども、五十九年度からずっと予算がついて年々その予算がふえていっておりますね。六十二年度要求というのは十二億六千五百万円と聞いておるわけですけれども、こう予算がついていながら一向にそのシステムはできていない。それどころか、パイロットシステムと称して関東数県で実験的に実施してみる方針も何か棚上げになっているということを聞いているんですけれども、これは間違いございませんか。
  153. 下村健

    政府委員(下村健君) 御指摘のとおり、レセプト処理システムに要する経費として五十九年度以降支払い基金の予算におきまして、システム開発の経費と、それからそのシステムのための機器のレンタル料等の運営に要する経費を計上いたしておるわけでございます。六十二年度におきましては、お話しのように十二億六千五百万円の要求をいたしておるわけでございますが、残念ながらなかなか実行段階に至りませんで繰り越しているというのが実情でございます。  現在関係団体、特に医師会、歯科医師会というふうな診療側の団体との技術的な問題を含めてできるだけ早急に実施いたしたいということで努力をいたしているところでございます。
  154. 糸久八重子

    糸久八重子君 簡単に、そうかそうでないかということでお答え願いたいんですけれども、私の調べたところでは、昭和五十三年ごろ、当時の武見医師会長が支払い審査にコンピューター導入を提言をした。そして、厚生省は日本医師会の指示のもとに構想を練ったと伝えられておりますけれども、間違いございませんね。
  155. 下村健

    政府委員(下村健君) 別に医師会の指示というふうなことではございませんで、コンピューター化は現在のような情報化が進んでいる社会の中におきましては、医療においても一つの必然的な流れとして関係者みんながそういう認識をしているというふうなことはあると思うわけでございます。実際問題として、医療機関におきましてもコンピューターを導入していろいろな事務処理をやっている、あるいは請求事務についてもそれを行っているというところはふえているわけでございます。  そんな中で、それじゃ具体的にどうやるかということになりますと、例えば疾病名あるいはその請求のためのいろんな様式の規格化、それから既にいろいろな形のコンピューターが入っておるわけでございますから、それぞれの相互の間の接続をどうするかとかいろいろ技術的な問題がございます。また、それに伴って審査でありますとか実際の事務処理がどう変わるのかというふうな問題もございまして、なかなかこれを実行に移そうとするといろんな問題があって円滑にいかない。私どもとしてはできるだけ早くやりたいということで予算計上をして努力をしたんですけれども、まだ現実に動くところまでは行っていないというのが実情でございます。
  156. 糸久八重子

    糸久八重子君 簡単にお答え願いたいと申し上げたはずですけれども。  日本医師会は、六十年一月の理事会でこの問題についてはにわかにその態度が慎重となって、六十年十一月以来検討を続けてきていると聞いております。そして、だからそういう状況の中でこのレセプト処理システムの実施というのは昨年の十一月以来ずっと検討を続けている日本医師会の結果待ちと理解できるわけですけれども、かつて推進役を務めた団体が突然に反対に回ったことが原因で施策が進まなくなったということは大変おかしいと思うんですよね。しかも、予算が五十九年からずっとついているということですから、毎年度の予算がむだ遣いだと言われても仕方がないじゃないですか。  六十二年度の十二億六千五百万円を予算の中で要求をしておりますけれども、この見通しはどうなりますか。
  157. 下村健

    政府委員(下村健君) 六十二年度予算につきましてはこれからの問題でありますので、実情を見ながら必要額を計上するということで努力をいたしたいと思います。  医師会との関係でございますが、具体的にこの話が動き出しましてから別に医師会の態度が特に変わったというふうなことはないわけでございます。ただ、実際問題として私どもの方にしましても、予算を計上しているんだからそのままやれというふうな御意見のようにも承ったわけでございますが、支払い基金だけが独走いたしましても実際にそれを医療機関側で利用していただかないと非常に効率の悪い形で運用することになるという面がどうしても出てまいります。したがって、その辺の状況を見きわめながら、やはり動かす以上は効率的なシステム運営ができるような形で運営をしていきたいということで目下鋭意努力をしているという状況でございます。
  158. 糸久八重子

    糸久八重子君 国保の問題をやっておりましてちょっと話が横道にそれたわけですけれども、話をもとに戻しまして、国保料の平均というのは大体三万九千円と聞いているわけですけれども、この水準を超えた場合にその自治体に原因究明チームを派遣して、そして国及び都道府県が特別な財源対策を講ずる措置をすべきではないかと思うのですけれどもね。  そこで、市町村は、条例または規約の定めるところによって、特別の理由がある者に対して、保険料を減免または徴収を猶予することができるわけですね。これは国保法の七十七条にありますけれども。これは災害等によって生活を維持することが著しく困難となった者とか、これに準ずる者が対象になるわけですけれども、これは間違いございませんね。
  159. 下村健

    政府委員(下村健君) 国民健康保険の保険料につきましてはその軽減制度と減免制度がございまして、軽減につきましては低所得者の保険料負担を軽減する制度でありまして、全市町村が一応一律に実施するという形になっております。軽減の種類としては、毎年度低所得者の負担が重くならないように見直しを行いながら、六割軽減と四割軽減、この二種類の軽減措置をとっているわけでございます。  そのほかに、特別の災害等の原因により前年度の所得をもとに課された保険料が払えないというふうなことにつきましては、市町村の条例によって個別に実施しているわけでございますが、そのための減免あるいは徴収猶予制度というものを設けているわけでございます。
  160. 糸久八重子

    糸久八重子君 国民健康保険法七十七条に基づいて各自治体がどんな減免措置や猶予措置を採用しているのか、今災害というのがちょっと出てきたわけですけれども。そして、これらの制度の適用を受けているのはどの程度なのでしょうか。
  161. 下村健

    政府委員(下村健君) 一般的な軽減制度でございますが、軽減基準は六十一年度でありますと、二十七万円の基準所得の場合には保険料の六割を軽減する。それに、二十七万円に、世帯主以外の被保険者数に二十万円を掛けた金額を合算した額が基準になっておりますが、それだけの所得の方の場合には保険料の四割を軽減するということでございます。  それから、災害等の減免、徴収猶予制度につきましては大体条例で決まっているわけでございますが、大体地方税法の規定をおおむね準拠して決めておると思うわけでありますけれども、天災その他特別の事情がある場合において水利地益税等の減免を必要と認めるものというふうな規定で、これは災害等の場合に限定されるわけでございます。  それで、五十九年度の実績で申し上げますと、五十九年度におきましては三十八万五千世帯、全体の約二・四%の世帯が減免措置の適用になっております。
  162. 糸久八重子

    糸久八重子君 国保の保険料軽減の対象となる低所得者、これはどの程度のものですか。
  163. 下村健

    政府委員(下村健君) 軽減対象になります基準所得は、四人世帯の給与収入ベースで申し上げますと百四十五万円以下、年金収入の場合には二百二十三万円ということになっております。
  164. 糸久八重子

    糸久八重子君 六十一年度の所得税調税最低限度額が標準世帯で二百三十五万七千円、そして住民税の非課税限度額が二百十三万五千円、これと比較しますと今おっしゃった百四十五万という数字になるわけですか。これと比較可能な数字というのは百四十五万ということになるわけですね。そうすると、この二百三十五万七千円、それから二百十三万五千円、そして今の百四十五万、この違いはどう解釈するのでしょうね。  税と保険料では違って当然だと言うのならば、既に九割の市町村というのは国保税として徴収しておるわけですし、国保税というのは所得税や住民税と違って目的税だからと言うのならば、目的税は一般税よりも低所得者に負担をさせてよいとするその論拠というのはどこにあるのでしょうね。
  165. 下村健

    政府委員(下村健君) 医療保険制度は被保険者が相互に保険料を負担し合って、同一の疾病に対して同一給付を行うという考え方のもとに成り立っているわけでございます。したがって、被保険者はすべて保険料を負担するということが原則でありまして、これがなければ保険としての体をなさない、こういうことになってしまうわけでございます。こんな考え方から、国民健康保険の場合は、皆保険体制ということの中で生活保護の受給者以外は所得がたとえ低い場合でありましてもすべて加入するという考え方から、住民税に比較いたしまして広い範囲に保険料が賦課されるという結果になっているわけでございます。そんなことで、住民税の課税最低限と軽減基準とは同一レベルで議論はできないというふうに私ども考えております。
  166. 糸久八重子

    糸久八重子君 納税者個人の所得に着眼して免税点とか減税点をセットしているその税制というのは、所得税、住民税、国保税の三つであると思います。これらの制度がばらばらに低所得者対策を実施しなければならないという積極的な理由はないと思うのですけれども、そこで大蔵省にもお伺いしたいんですが、あるレベル以下の低所得者からは徴収しないとする線をナショナルミニマムラインとして設定すべきではないかなと思うのですけれども、大蔵省、厚生省、自治省、三つに関係があるのですが、いかがですか。
  167. 田谷廣明

    説明員(田谷廣明君) お答えいたします。  最初に所得税の課税最低限の考え方を御説明いたそうと思うわけでございますが、課税最低限の水準につきましては、昭和三十年代の後半までは最低生活費との関連におきまして議論がなされていたという経緯もあるわけでございますが、その後の改正によりましてその水準がだんだんと引き上げられてまいりまして、諸外国の水準から見ても遜色のない水準になった今日におきましては、税制調査会等におきます御調論におきましても、むしろ財政事情でございますとかあるいは所得水準の状況、あるいは税率との組み合わせといったさまざまなものによって形成されます所得税負担状況等を総合的に勘案してその水準が議論されているところでございます。  したがいまして、御指摘の課税最低限というものがいわゆる最低生活費といったものと密接な関連があるということには現段階としてはなってないのではないかというふうに理解しております。  ただ、いずれにしましても、御指摘にございました各種制度の間の問題につきましては、それぞれの制度の持っております趣旨あるいはさまざまな沿革等によりまして慎重に決定さるべきものであると考えております。
  168. 小川徳洽

    説明員(小川徳洽君) 住氏税について申し上げますと、住民税につきましては地域社会の費用を住民が広く能力に応じて負担する、こういう性格の税でございます。そういうことから、所得税と比較をいたしましてより広い範囲の納税義務者がその負担を分かち合うべきものである、こういうことで所得税の課税最低限と一致させる必要はないというふうに考えておるところでございますし、この点につきましては先般出されました政府税制調査会の答申においても全く同様の趣旨が述べられているところでございます。
  169. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 厚生省は御答弁ありませんか。
  170. 下村健

    政府委員(下村健君) 皆保険ということで保険システムをとりまして、その中で現在の国民健康保険というものは成り立っているわけでございます。したがいまして、被保険者はすべて保険料を負担するという考え方から、私どもとしては国民健康保険は生活保護受給者以外は所得が低くても保険料は負担をしていただくということで考えざるを得ないと思っております。
  171. 糸久八重子

    糸久八重子君 住民税は自治体固有のもの、そして国保税は団体委任事務だからこれについてはこのライン以上に非課税対象を広げる裁量を認めれば、統一的なナショナルミニマムラインと自治権とのバランスが確保できるのではないか、そう思っております。これは私の意見として申し上げておきたいと思います。  次に、家庭医問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。  厚生省の保健衛生基礎調査によりますと、かかりつけの医師がいると答えた者が約六五%、特に多いのは在宅療養中の者のいる世帯と高齢者でありまして、在宅療養者のいる世帯のうちの八六%、六十五歳以上高齢者のうち八〇%がかかりつけの医師を持っているとしております。  同じ調査で、かかりつけの医師として望ましい要件について聞いているわけですが、その答えの中で、病気の状態や治療方法を十分に説明してくれる医師というのが、夜間や休日でも診てくれる医師に次いで二番目に多くなっているわけですけれども、この基礎調査、間違いはございませんね。ある、ないで簡単にお答えください。
  172. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) お話のとおりだと承知しております。
  173. 糸久八重子

    糸久八重子君 六十年度に設置されました家庭医に関する懇談会の養成面に関する小委員会報告が十一月六日に出ているわけですが、これによりますと、「一般研修目標」のトップに「保健・医療の場での適切な人間関係の確立」をうたってありまして、その中で次の四つの具体的な目標を掲げています。簡単に言いますと、「医師患者・家族間に適切な関係を確立することができる」、次に「患者及び家族に対し納得のいく説明ができる」、三番目に「医師相互、他の医療提供者との適切な相談と紹介ができる」、四番目に「患者の立場に立つことができる」と。これらの目標は、現在の医学教育においてもやるべきことではないかと思うのです。国立大学の医学部については文部省、そして自治医大と公立大学医学部については自治省の見解はいかがでしょうか。簡単にお答えください。
  174. 佐藤國雄

    説明員佐藤國雄君) 先生指摘の、家庭医に関する懇談会の小委員会の報告で引用されました一般研修目標につきましては、私ども医師にとって基本的に必要なことだというふうに考えておりますし、現在もそれなりに対応しておるわけでございますが、今後とも十分な配慮をしていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  175. 磐城博司

    説明員(磐城博司君) 医学教育のあり方につきましては、直接には文部省あるいは厚生省が担当しているわけでございますけれども、私どもも、この懇談会小委員会報告に書かれております一般研修の目標として掲げられている事項につきましては、当然のことであり妥当であるというように思っております。
  176. 糸久八重子

    糸久八重子君 現在の医療は木を見て森を見ず、患部を診て患者を診ずだと思います。  厚生省が家庭医に関する懇談会を開催するに当たりまして取りまとめた趣意書によりますと、「現在、医学・医療は専門分化が進行し、「人間」から「疾病」さらには「臓器」をみる傾向にあるといわれており、また医師病院勤務を希望する者が多く、プライマリ・ケアの中心的な担い手である開業医は高齢化してきている。さらに患者に対して十分時間をかけた健康相談や診断・治療が行われにくく、患者も大病院志向が強いともいわれている」。このような傾向について改善の努力はしておりますか。いるかいないかでお答えください。
  177. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 今お話のございましたようなことが現在の地域のプライマリーケアにおいて大きな問題だということで、それに対応するために現在、家庭医に関する懇談会で検討をしていただいておるところでございます。
  178. 糸久八重子

    糸久八重子君 この家庭医に関する懇談会は、来年三月に報告書を取りまとめる予定と聞いております。この報告書を政策化するに当たって、文部省そして自治省の両省は積極的に協力することをお願いしたいと思います。  また、厚生大臣家庭医制度の創設に向けてはどういうお考えですか。簡単にお答えください。
  179. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 家庭医問題、先ほど来お話しございましたように、来年の三月に結論をいただくということで、今鋭意懇談会で検討していただいているところでございます。厚生省といたしましては、懇談会の結論が出ました段階で、その線に沿いまして今後の対応策を進めていきたいと考えておるところでございます。
  180. 糸久八重子

    糸久八重子君 学校法人の自治医大は過疎地域の医療に進んで挺身する医師を育てるとしておるわけですけれども、これこそプライマリーケアのプロを養成する場ではないかと思います。したがって自治医大は、別な言い方をすれば過疎地の家庭医養成大学と言えるのではないかと思いますけれども、四十七都道府県では毎年二、三名ずつ地元の学生を自治医大に入れて、卒業後、各部道府県指定の臨床研修指定病院またはこれに準ずる病院で二年間の臨床研修を行うと説明をされておるわけですけれども、ここで言う指定病院は、それぞれの県内にある病院考えてよろしいのですね。そういうことならば、自治医大の卒業生というのは、その臨床研修に当たって自治医大附属病院を利用しないで、出身県の研修病院を利用しているのがほとんどだと思うのですけれども、その辺は間違いございませんか。
  181. 磐城博司

    説明員(磐城博司君) 御指摘のように、大多数の県では、例えばそれぞれの県の県立中央病院等、卒業後の若いお医者さんを研修するに足る能力を有している病院で研修を行っておりますが、一部それにふさわしい病院を県内に有しないところでは、直接に自治医科大学の附属病院で研修を行っているのが実情でございます。
  182. 糸久八重子

    糸久八重子君 自治医大の卒業生というのは、六年間は栃木にある大学で過ごして、そして臨床研修医になってやっと地元に帰ってくる。やっぱりそれはどこか不自然だと思うのですね。だから、四十七都道府県ではもう既に医大とか医学部ができているわけですから、初めから自分の県内の大学に委託することが地域医療に適したやり方ではないかと思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  183. 磐城博司

    説明員(磐城博司君) 先ほどのお尋ねの中でもございましたように、自治医科大学は昭和四十七年に設立され、今日に至っているわけでございますが、そこでの設立の目標といいますか、ねらいといいますものが、何といっても一定期間、僻地に勤務していただく医師都道府県の力で確保していきたいということ。  それからもう一点は、現在の医学というものが大変日々進歩しているわけでございまして、こういうものに対応するために、多くのあるいは大部分の医科大学ではより高度かつ専門的な医師の養成に向かいつつあるわけでございまして、御指摘のような総合医といいますか、家庭医の必要性ということにつきましても、やっぱりそれはそれとして一つの大学の理念として掲げ、ともに総合医を養成していく、僻地に勤務する総合医を養成していくということはなお必要ではないか、このように考えております。
  184. 糸久八重子

    糸久八重子君 先般開かれました各県の衛生部長会議では、自治医科大学のあり方について見直そうということになったと伝えられております。席上で、各部道府県の定員割当数を見直し、必要に応じ自治医科大学における医師養成定数の削減を図るという旨のペーパーが配られたそうですが、学校法人が各県に定員を割り当てるということはやはりおかしいのではないかと思うのですけれども、この辺はどうですか。
  185. 磐城博司

    説明員(磐城博司君) 自治医科大学は形式的には一私学でございますが、実質的には各都道府県が共同して設立した医科大学でございます。したがいまして、その辺の各県別の定員の割り当てということにつきましても、全国知事会にございます特別委員会等で十分論議をした後に、それぞれが原則二名、多いところは時に三名ということでそれぞれ生徒を送るという仕組みにいたしているわけでございます。
  186. 糸久八重子

    糸久八重子君 制度はいいにいたしましても、いずれにいたしましてもこの自治医大というのは何か今のような中途半端なものではだめですし、特にお年寄りなどは地域の病院でぐあいが悪くなったら直ちに診てもらうというような、そういうやはり家庭医というのをたくさんつくる必要があるのではないかと思いますから、そういう意味ではこの自治医大というのは家庭医養成のセンターとなるべきではないか、そういう意見を申し上げさせていただきたいと思います。  一方でオールラウンドプレーヤーとしての家庭医が必要になり、他方では老年医学の専門家がこれまた求められているわけですけれども、総合化、一般化に対して専門分化の要請にどうこたえるかという立場から、もう二、三問お伺いしたいと思います。  それは、資格身分制度ができていないにもかかわらず医療現場専門家とみなされている各種の医療従事者の問題でございます。このような従事者には、言語療法士とか義肢装具士とかいろいろあるわけですけれども、どういうものがあってどのくらいの人たちがそれに従事をしていらっしゃるのかということを簡単に教えてください。
  187. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 現在、制度が確立していない職種ということで今いろいろと話題に上っておりますものに、言語療法士、義肢装具士、人工透析士、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー等々があるわけでございます。  これらの仕事に従事をしておられる方々の数でございますが、これはそれぞれの関係団体等の調べということでございますけれども、言語療法士は千人程度、義肢装具士は五千人弱、人工透析士は四千人程度、臨床心理士は二千人強、医療ソーシャルワーカーは三千人強と承知をいたしております。
  188. 糸久八重子

    糸久八重子君 これらの方たちは、いずれも多かれ少なかれ患者に直接接触をしてそして何らかの専門的な判断を必要とする技術者と考えてよろしいですか。
  189. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 現在多様化しております医療現場におきましてそれぞれの仕事に従事をしておられるということでございます。
  190. 糸久八重子

    糸久八重子君 医師以外の、既に資格身分制度のある専門職を拡大統合することによってこれらの技術を認知する方法はとれないものなのでしょうか。例えば作業療法士や理学療法士とそれから言語療法士を加えて機能回復訓練士とするとか、それから放射線技師にME技師とか人工透析技師などを加えて臨床工学技師とかとするような、そういうお考えはどうなのでしょうね。
  191. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 今お話しのございました特にリハビリテーション関係でございますが、OTとPT、まあ若干共通する面もございますけれども、やはりそれぞれ養成するには高卒三年が必要だということでございますし、ST、言語療法士ということになりますと、OT、PTと比べまして、同じリハビリではございますが、かなり分野も異なってまいりますので、OT、PT、ST全部ができる職種を養成するということが果たして現実的かどうか、かなり問題があるのではなかろうかと思っております。
  192. 糸久八重子

    糸久八重子君 先ほど幾つかの専門家とみなされる医療従事者を挙げられましたけれども、この医療関係職のうち医療事故に関与したことのある職種というのはありますか。
  193. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) これらのまだ資格制度を定めておらない職種につきまして、そのために直接医療事故が生じたということはまだ聞いていないところでございます。
  194. 糸久八重子

    糸久八重子君 実は透析技師と言われている方の中で問題が起こった例がございます。私の調べた範囲ですと、福島県で管の中に空気が誤入してしまって患者が亡くなってしまった。その方は業務上過失致死という形で有罪になっておるわけですね。それからもう一つは、これは栃木であったことなんですけれども、透析クリニックでもっていきなり警察官が作業中の透析士を無資格診療補助の嫌疑で拘束をしたということがあるわけです。  ですから、そういうわけで医療事故に関与するおそれの大きい者についてはやはり公的な資格や身分制度の確立を急ぐべきではないか、そう思うのです。それが不幸な事故を防ぐための社会的な責任だと思うのですけれども、積極的な姿勢をぜひお示しいただきたいのです。
  195. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 言語療法士とか医療ソーシャルワーカーにつきましてはかなり実は歴史が古いわけでございまして、特に言語療法士については何度か厚生省も身分制度を確立をしたいということで検討会をつくったりいろいろしてまいったわけでございますが、なかなか関係団体のコンセンサスが得られないということで現在に至っておるわけでございます。  それから人工透析等でございますけれども、これらにつきましても私どもいろいろ問題意識は持っておるわけでございますが、現在かなりの数に上りますこれらの職種についてどういう対応をしていくのか、この中で一つだけ取り上げるということもなかなか難しい面もございまして、全体としてどう対応していくのかという点についていろいろ検討をし、部内で議論をいたしておる段階でございます。
  196. 糸久八重子

    糸久八重子君 現代の病院はベッドつきのクリニックではないんですね。それがまるで精密電子機器群がひしめく科学工場と言っても言い過ぎではないと思いますけれども、そういう中では非常に高度な技術を駆使していかなければならない。そのためにはたくさんの医療を助ける人たちが働いているわけですから、これからも医学はどんどん進歩していくでしょうけれども、そういう意味でぜひともこれから早急に検討を進めていっていただきたいということをお願いしたいと思うわけでございます。  それでは次に、保健事業についてお伺いをさせていただきます。  老健法は健康で健やかに老いる高齢者づくり、そのための壮年期からの健康対策立法であり、疾病の予防の充実とか老人医療の質の向上が柱であって、目的がまずこれであったと思うわけです。だから、この保健事業というのは老健法の最も重要な柱であると思います。  確かに健やかに老いるための壮年期からの健康管理、そのためにどういうような点に注意をしていかなければならないとお考えでしょうか。これは、大臣いかがでしょう。
  197. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 今御指摘のように、この老人保健法の制定のときの大きな柱は、七十歳以上のお年寄り医療をどうしていくかということと、もう一つはまさに健やかに老いるという形の中で、壮年期からの保健事業を推進をしていくという、こういう二つの柱があったと考えております。  今回の改正案では、この点については改正をいたしておりませんけれども、この保健事業をなお一層推進をしていかなければならないと考えておりますが、この制度は創設以来五年がたつわけでございまして、その間、現下の非常に財政事情の厳しい中ではありまするけれども、予算額におきましては年々三割以上の伸び率を示す予算を計上し、初年度から五年間を考えてみますると四倍の予算に拡充をいたしておるところでございます。しかしながら、まだ十分というところに至っておらないことも事実でありますし、なお未達成の部分もあります。そういった点を考えまして、来年度以降第二次の五カ年計画というものを立てて、今後も一層推進をいたしてまいりたいというふうに考えるわけであります。  そういう中で、この保健事業をできるだけ多くの方に受けていただくという工夫をいろいろと凝らしていかなければならないと、今一番重点に思っておるところでございます。
  198. 糸久八重子

    糸久八重子君 保健事業を推進するためには、第一次基盤整備五カ年計画を立てまして、計画的整備を進めてきたわけですけれども、その計画目標の達成率についてお伺いします。  その前に、実施計画について私の手元に数字の異なる計画書があります。一枚は老健法審議の際に提出されたもの、もう一枚は後からいただいたものなんですが、例えば一般診査の人員を見てみますと、六十一年度で千七百五十万人が千三百十五万人と変わってきているわけですね。この辺はどういうことなのでしょうか。
  199. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 保健事業の一次計画は、先生おっしゃいましたように、五十七年の時点におきまして全国的に総事業量を厚生省の考え方としてお示ししたわけでございまして、その数字がただいまおっしゃいました例えば一般診査の対象人員といたしまして千七百五十万人という数字をお示ししたわけでございます。各年度の私どもの獲得いたしました予算、あるいは市町村におきます事業計画策定の際の指針としてこのような数字を私どもとしてはお示ししたわけでございまして、各年度ごとに予算の状況でございますとか、事業計画の策定等で事業の進捗状況等によりまして、この計画の内容が一部手直しをされておるということでございます。二つ目にお渡ししたという資料には、その五十七年から六十一年度にわたります各年度ごとの予算上あるいは事業計画上の数字としてお示ししたわけでございます。  結局、五十七年におおむね五年をかけて六十一年度にはそのような目標を達成いたしたいという努力目標として掲げたというふうに御理解をいただきたいわけでございますが、実際は一部の市町村ではかなり国の目標を超えてうまく実施をしておる市町村もございますが、例えば都会あるいはその周辺で特に受診率の低いところがございまして、トータルといたしまして最終的にお示しした数字は千三百十五万人というふうなことでございます。  したがいまして、ただいま大臣からもお答えいただきましたような方向で、私ども第二次の五カ年計画におきましては魅力ある健診づくり、その他基本となります保健事業をさらに推進していくような工夫を重ねていきたいというふうに考えております。
  200. 糸久八重子

    糸久八重子君 第一次五カ年計画は、計画と実績に相当数の乖離が見られますね。資料を拝見しているわけですけれども、例えば機能訓練事業、これ六十一年度の当初計画三千三百カ所に対して、国の予算上の見込み数を途中で二千四百五十一カ所に修正せざるを得なくなった理由というのはどこにあったのでしょうね。六十一年度も七百カ所増を見込んでおりますけれども、到底達成できる可能性はないではないのかと心配するのですが、いかがでしょうか。
  201. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 御指摘のように、機能回復訓練につきましては、このヘルス事業全体が市町村の実施主体ということでございまして、五十七年度を初年度といたします実績におきましては、御指摘のような問題が出ておるわけでございますが、私ども当初目標といたしました数字は三千三百カ所ということで計画を考えたわけでございますけれども、残念ながら実施の段階におきまして、市町村の能力あるいは計画その他の面から十分にその目標まで達しておらないということでございまして、六十一年度の目標は二千四百五十一カ所ということで見直しをしておるところでございます。  五十九年度の予算で申し上げますと、実は私ども予算上では千百四十カ所ということで考えておりましたが、実績は千二百三カ所ということで若干、五%程度でございますが、実績は上回っておりますので、五十七年度にお示しした当初の最終目標には及んでおりませんけれども、このような形で各事業につきまして着実に市町村も実施体制が整ってきたというふうに私どもなりに理解しておるところでございます。
  202. 糸久八重子

    糸久八重子君 六十一年度、新たに在宅寝たきり老人全員の訪問指導を打ち出しておりますけれども、五カ年計画の達成が目標の四分の一になっている原因と対策を明らかにしないまま新たな目玉づくりというのはただ目先を変えるだけではないかと思います。  全体として第一次五カ年計画のおくれを第二次五カ年計画の中でどこまで達成しようとしているのですか。そして、第二次五カ年計画も初年度と六十六年度の目標しか示されていないわけですけれども、やはり各年度ごとのきちんとした計画変更のないような、そういう数字を出していっていただきたいと思います。  さきに申しました達成が目標の四分の一にしかなっていないのにまたまた新しい目玉をつくり出した、その辺のところについてはいかがでしょうか。
  203. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 計画と実績に差があるのは問題ではないかということの御指摘だと思いますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導等につきまして、私どもが各年度ごとに予算その他から計画いたしましたものよりは一応上回っているというふうな実態の把握をしておるところでございますが、健康診査の一般診査とか、胃がん検診、子宮がん検診については、私どもが見込んだとおりの数字にはなっておらないところでございます。これにつきましては、先ほども申し上げましたような工夫をしながら受診率の向上に努めてまいるような工夫をさらに重ねてまいりたいと考えております。  寝たきり老人の訪問につきましても、私どもとしては現在、五十九年度で申し上げますと二十一万五千人分の予算でございますけれども、実績といたしましては六十二万八千人という実績を得ておりますので、さらにこの方向で引き続き努力を重ねてまいりたいと考えております。
  204. 糸久八重子

    糸久八重子君 訪問指導の未実施市町村もまだ見られるのではないかと思いますけれども、そういった市町村への指導はどういうふうにしていらっしゃいますか。
  205. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 訪問指導未実施の市町村は、五十九年度におきまして百三十六市町村、約四%というふうに私ども把握しております。私どもといたしましては、関係の課長会議でございますとか部長会議、その他機会あるごとに事業の実施を都道府県を通じて働きかけておるところでございまして、先ほどの百三十六市町村も、前年は三百六十六ということでございましたが、若干ずつではありますが減ってきておりますので、なおそのような方向で私ども引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  206. 糸久八重子

    糸久八重子君 そのような目標が達成できない最大の理由というのは、保健婦の絶対数の不足ではないかと思います。当初計画では六十一年度までに新規採用三千人、そして退職保健婦雇い上げ三千人に現員活用二千人の計八千人を確保するとしておりましたね。それで、六十一年度予算ベースで達成状況を見ますと、これは目標ですか、総数が八千人の当初計画というのは八千三百九十八人と約四百人ふえているわけです。これが必要数となっているわけですね。この内訳を見てみますと、現員活用二千人を二千二百二十九人へ、新規採用分三千人は二千七百七十人へ、それから退職保健婦活用が三千人を三千三百九十九人へということになっているわけですね。  これを見ますと、国の計画で増加したのは雇い上げ保健婦の活用部分だということになるわけですが、どうして常勤の職員の比率が少なくなって、雇い上げ保健婦の数が多くなっているのでしょうか。訪問指導業務というのはパートの手にゆだねてよいというお考えを持っているのでしょうか、いかがでしょう。
  207. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 私どもは、でき得る限り定員化された保健婦によって各種の事業が実施されることが望ましいという考えでございますが、地域の実情によりまして必ずしも定員化されていない場合には、退職された保健婦さん、その他在野の保健婦さんの雇い上げによって訪問事業その他を実施していただくということでございます。したがって、今後とも引き続き保健婦の定数化については努力を続けてまいらなくてはいけないというふうに考えておるところでございます。
  208. 糸久八重子

    糸久八重子君 国会審議の中で、当時の公衆衛生局長が、訪問指導は基本的には常勤者が行うべきだと、そう答弁をしていらっしゃいますけれども、現実的にはそのような方向にはなっていない。そこで、訪問指導事業に非常勤看護職員を雇用している市町村はどの程度の割合になっておりますか。
  209. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) パートの保健婦さんを採用している市町村の割合でございますが、昭和五十年度におきましては訪問指導事業に非常勤保健婦が従事しておる市町村数は六百二十七でございまして、その割合は二〇%でございます。
  210. 糸久八重子

    糸久八重子君 現場の声として次のような発言を聞いております。  正規保健婦をふやしても補助金がふえないから職員保健婦は事務に回され、訪問指導はすべて雇い上げ保健婦、看護婦に委託をされた。理事者にしてみれば、正規保健婦に訪問させても事業費補助はふえない。しかし、雇い上げで訪問すれば補助金がもらえると考えている。こういった事態は不合理なのではないですか。
  211. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 私どもといたしましては、先ほどもお答えいたしましたように、このようなマンパワーについては常勤化をしていただきたいということで考えておりますが、事業に見合いますような形で定員が得られない場合には、雇い上げで訪問事業をできるだけ早く実施していただくような形で予算化をしておるわけでございまして、もしそのような考え方があるといたしますれば、私どもとしてはむしろ常勤化をしていただく方向で働きかけをすべきではないかというふうに考えます。
  212. 糸久八重子

    糸久八重子君 指導要領によりますと、訪問指導というのは初回訪問指導は原則として保健婦が行うというように指導しているわけです。しかし現実は、今私申し上げましたとおり、初回訪問から雇い上げの看護婦さんに任せている例が多いわけですけれども、やはりこれは問題ではないかと思います。  それと、厚生省は公衆衛生審議会の五十八年十二月の「保健事業の推進方策について」という答申の趣旨を踏まえまして、五十九年版、六十年版と健康マップというものを作成いたしておりますね。そのねらいや地方公共団体の事業推進にこの健康マップがどのように役立っているというふうに認識をしておられるでしょうか。
  213. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 五十八年十二月に公衆衛生審議会から御答申をちょうだいしておるわけでございまして、その「保健事業の推進方策について」ということの一つといたしまして、「「健康マップ」等の指標化を行い、市町村関係者等の事業推進に当たっての目安を示すべきである」というふうなことで御指摘がございました。それを受けまして私ども健康マップというものを五十九年、六十年、六十一年とつくっておりますが、例えば受診率でございますとか、一人当たり老人医療費でございますとか、四十歳の平均余命とか、肺がんとか乳がんとか、その他の疾患による死亡の比率でございますとか、そういうものを地図として出しておるわけでございます。  これは一応一目で見れるということで、私ども一つの重要な事業として位置づけておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、事業の全体的な進捗状況を把握する、それによって市町村等の指導に役立てるということも考えておりますし、同時に実施主体でございます市町村につきましては、みずからの事業の進捗状況を客観的と申しますか、一応ビジュアルに把握できるということでいろいろお役に立っておるのではないかと考えておるところでございます。
  214. 糸久八重子

    糸久八重子君 健康マップをつくることによりまして各県、各市町村は受診率を高めるためにいろいろと努力をしている。もちろんその受診率は高めていかなければならないわけですけれども、その中で、従来保健指導を担ってきた保健婦が、老人保健法施行後は健診関連業務が増加して、本来の保健婦業務ができなくなったという現場の声も聞いているんです。  ですから、やはりこの健康マップ作成もあわせまして健診事業というのは、一番最初にも申し上げましたとおり、健康な老人づくりのためにどういうふうにしていかなければならないかという、そのやはり原点を忘れてしまっては本当に逆効果になってしまうのではないか、そういうふうに思うわけでございます。  健康保健事業の中の健康診査というのはあくまでも保健とか、それから予防活動の強化によって病院にかかることを未然に防がなければならない、健康なお年寄りづくりというのはそういうことだと思いますけれども、現実にはもう一つの部分がありまして、健康診査の結果どこか少しでも正常値から外れるところがありますと、直ちに病院治療とか、それから精密検査を受けなければならないというような判定と指導がなされる傾向が少なからずあると聞いているわけです。せっかくの健康診査がかえって病人をどんどんとつくり出す結果になっては何のための健康診査なのかと疑わしくなるわけですけれども、その辺についてはいかがでしょうね。
  215. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) いたずらに受診率を上げるために保健婦さんがもし本来の業務から離れてしまうということがありますれば、私どもとしても非常に問題だと考えておりますので、保健婦さんが本来発揮すべき機能は当然のことでございますから、そこら辺の工夫をぜひしていただきたいと考えておるわけでございます。  市町村が実施主体となって行います保健事業につきましては、そう言ってはあれでございますが、経験もまだ浅いという面もあるわけでございまして、市町村間に非常に格差が生じているのではないかと思いますので、例えば健康マップ等の数字を御活用いただいて、同じような財政規模で同じような自然環境に恵まれたところで格段の差があるとすれば、各市町村ではその実施体制等を十分に反省をしていただくなり工夫をしていただいて、本来の目的の健康事業を円滑に推進するようにしていただきたいと考えるところでございます。  それから、ただいま御指摘のございましたように、健康診査というのはもちろん早期発見、早期治療ということを目標にしておりますが、同時にその健康診査等に参加いただくということは、国民の一人一人の方々がみずからの健康に常日ごろから留意するということでございますので、もちろん早期発見ができて、健康が回復するにこしたことはございませんが、正常値から外れたから直ちに病人だというふうな指導の仕方はまことに遺憾だと考えます。  したがって、私ども保健事業といたしましては健康教育、健康相談というふうな事業も同時に行うようなことで組み立てておりまして、健康診断の仕方についていろいろ工夫をしていただいて、各地域地域にいろいろ特色があろうかと思いますが、住民のニーズも多様化しておりますので、そういうふうな保健事業の実施については、今後さらに工夫を凝らしていただく、いわゆるソフトウエアを開発していただくというふうなことで私ども言っておりますが、第二次五カ年計画についてはいろいろの魅力ある健診づくりという要素を加える一方で、実施体制にいろいろのバラエティーを加えて、住民がみずから喜んで参加していただけるような保健事業にしていきたいと思いますし、今後も引き続き指導してまいりたいと思いますので、市町村みずからも知恵を出していただきたいというふうなことで考えておるところでございます。
  216. 糸久八重子

    糸久八重子君 市町村が実施すべき事業のうちの健診業務について、どうしても市町村が実施できない場合は委託方式で行うことになっておりますね。この委託先については、第一が保健所、第二が公的医療機関、やむを得ない場合には民間医療機関になるように指導すると、国は我が党の質問に対してこの前の制度創設のときに答えておられるわけです。  そこで、その実施主体別数値、つまり市町村とか保健所それから公的医療機関、民間別、どうなっておりますか教えてください。
  217. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 保健事業は市町村が必要な要員、施設を確保してみずから行うことが原則として考えておるわけでございますが、これが困難な場合には保健所等の公的機関等にも委託できるというふうにしておりますのは変わっておらないわけでございまして、地域の実情に応じて実施体制づくりを各市町村が行っていただくようなことでございます。  しかしながら、そのようなことがみずから実施できない場合には、保健所が受託の機関として考えられるということで指導してきておるわけでございますけれども、一般診査について数字的に申し上げますと、保健所が関与している率は六・七%、それから集団健診等に委託をしておるところが五八・四%、医療機関等に委託しているところは三四・九%、五十九年度の数字でございます。
  218. 糸久八重子

    糸久八重子君 市町村とか保健所とか、公的医療機関とか民間別、そういうような委託順序の設定は、事業の営利化とか、それから制度管理の確保、プライバシーの保護、健診から事後指導の連係など考えると、健診経験豊かな保健所実施をまず優先させるということであったと思うのです。しかし、保健所実施が今おっしゃったとおり六・七%ということで非常に少ない。たしか厚生省の予算要求における保健所実施の見込みは全健康診査の二〇%であったと思います。  そこで、保健所がすべての健康診査に対しての関与率ゼロと関与率二〇%を超えている都道府県名がわかりましたら教えてください。
  219. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 二〇%という私どもの予算上のパーセンテージでのお尋ねだと思いますが、保健所が全然関与しておらない都道府県及び指定都市は十八でございまして、二九%、それから二〇%以上保健所が関与しておりますところは十都道府県及び指定都市でございまして、一八%という数字でございます。
  220. 糸久八重子

    糸久八重子君 保健所が期待どおり役割を十分に果たしていない状況があるわけですけれども、その原因は一体どこにあるとお考えでしょうか。そして、それらを改善するための具体的な方策をどう考えていらっしゃるのか、できるだけ具体的にお答えをいただきたいと思います。
  221. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 市町村がみずから行うというのが原則でございますので、二〇%というのは私ども予算上の積算ということで御理解いただきたいわけでございまして、必ずしも高い低いの問題と直接クロスしない部分もあろうかと思いますが、私どもといたしましては、実施体制が十分に整わない市町村に対しては保健所機能を活用するような方向で従前からも指導してきておるところでございます。
  222. 糸久八重子

    糸久八重子君 実施県ゼロが十八ですね。それに対して国は何か指導をなさっておりますか。
  223. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 十八といいましても、保健所の職員がほかの場所へ行ってこの健康診査に関与しておる場合もあり得るわけでございます。これは数字として把握できておりませんので、十八カ所がそのような形で全くゼロかどうかはちょっと掌握しておりませんけれども、私どもといたしましては、市町村がみずから実施するというのが原則というふうにしておりますので、その実情は地域地域で異なってくるのではないか。しかし、原則といたしましては先ほどのようなことで指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  224. 糸久八重子

    糸久八重子君 関与というのは保健所が何らかの形でかかわっているということではないんですか。
  225. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 御承知のように、保健所の中で健康診査を行った場合を言っておると思いますが、保健所の職員が広域的に、専門的あるいは技術的に指導するようなことも私どもとしては大いに今後は方向性として打ち出さなくてはいけないと考えておりますので、そういう場合は、数字としてはございませんけれども、先ほどのようなことでつけ加えさせていただいたわけでございます。
  226. 糸久八重子

    糸久八重子君 保健所で実施というのは保健所内でやったということであって、保健所関与というとやはり外に出ていってやったのも保健所は関与していた、かかわっていたというようなことではないかと思いますけれども、その辺もょっと言葉がおかしいんですけれどもね。やはり保健所が十分健康診査に対して機能していない、その理由があるんですね。というのは、県の方針として保健所が老人保健事業を受託しないと決めているところがあると聞いているんですけれども、この辺は把握しておられますか。
  227. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 市町村の保健事業を保健所が受託しないということを県が行っているというふうなことのようでございますが、私ども現在のところそういう事例は承知しておりません。
  228. 糸久八重子

    糸久八重子君 私の方の調査では、ここに四、五県挙げているんですけれども、なぜ県の方針として受託しないと決めたのか理解できないわけですけれども、どんな理由が予想されるでしょうか。
  229. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 一律に保健所が関与しないという指導を行っているかどうかちょっと私ども把握しておりませんが、もしそういうことがあるとすれば、いろいろ実情が異なっておる面もあろうかと思いますので、承知した範囲で調べてみたいと思います。
  230. 糸久八重子

    糸久八重子君 それに加えて、これらの県のほとんどは老健法施行以前の循環器対策に果たしていた役割をも後退させているということも聞いているのです。そして、そのような県ではますます保健所とそれから市町村とがこういう状況で遊離をしていく傾向が見られるわけですけれども、八一年十月の国会審議の中で、民間委託では法案の趣旨は生きないとの我が党の追及に対しまして、厚生省は、できればすべて保健所でカバーしたい考えだが、対象が非常に大きいからできるだけカバーしていく、そのために五カ年計画で保健所整価を行う、そう答弁をしていらっしゃるわけですが、五カ年計画の保健所整備の実績というのはどうなっておりますか。
  231. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 保健所の基盤整備でございますが、その中で特に健診等に役立つ設備の整備でございます。五十七年度から五カ年計画で保健所に対しましてそういう設備の整備の補助金を出しておるわけでございますが、昭和五十九年度末までで、そのうち眼底カメラにつきましては三百二十二台、血液自動分析装置につきましては百二十八台、胃がん検診機器につきましては二十五台等々の整備を進めておるところでございます
  232. 糸久八重子

    糸久八重子君 一方、市町村から委託を受けて健診等を実施している幾つかの県、これは保健所ですけれども、受け入れのための人員増や施設整備等の積極的受け入れ策はほとんどない、そう言っているわけです。このため保健所現場では継続について不安と危機感を訴えている県もたくさんございます。  六十一年度から一般診査に血液検査が導入されて健診内容の充実が図られてきたわけですが、保健所の機器整備とかそれから検査体制等の強化が図れなければ、健診内容が充実していくために受託できなくなるおそれもあります。現にこれを理由に保健所の受託の後退が検討されている県があると聞くわけですけれども、当初広域市町村単位に四百二十五保健所に健診機器等を整備するとしていたわけですね。先ほどの御答弁、これが入っていたのか、ちょっと数を聞き漏らしたのですが、この整備状況をもう一度教えていただけますか。
  233. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 先ほど申し上げましたのは、眼底カメラが三百二十二台、血液自動分析装置が百二十八台それから胃がん検診機器が二十五台ということを御報告申し上げたわけでございます。
  234. 糸久八重子

    糸久八重子君 それらを四百二十五保健所に整備することとなっていたけれども、その整備状況は何カ所の保健所にこれらが入ったということになるわけですか。
  235. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 整備をするということで補助対象にいたしております設備が六品目ございまして、それにつきましての整備保健所の数、これ延べ数でございますが、五十七年度から五十九年度までで四百三十一保健所でございます。
  236. 糸久八重子

    糸久八重子君 六十一年度はどうですか。
  237. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 六十一年度は、現在予算化をしておりますのは六十二保健所、これも品目がいろいろ、六品目全部のところあるいは二品目だけという保健所もございますが、そのトータルで六十一年度は六十二保健所分を予算化いたしております。まだ進行中でございますので、実績は把握いたしておりません。
  238. 糸久八重子

    糸久八重子君 保健事業は、市町村実施体制の弱さとか、それからそういうものが無原則な委託となって、結果的には事業の営利化とか質的低下につながっているのではないかというような気がいたします。このままの傾向が続くとすると、市町村は委託事業の管理事務が中心になることさえ予想されるわけでして、またこれに近い自治体も出現しつつあるわけです。早急に保健所による事業直営の原則とそれから制度管理について厳しい方針を示すべきだ、そう思うのですけれども、この辺はいかがでしょうか。
  239. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 御説明申し上げましたように、当初の計画に必ずしも設備整備の進行状況が追いついていない現状でございます。私どもそれを踏まえまして、六十二年度から始まります第二次五カ年計画の中で、できるだけ当初の目標に近づくようさらに努力をいたしたいと考えております。
  240. 糸久八重子

    糸久八重子君 民間委託が非常に多くなるという状況ですけれども、民間委託になった場合の問題点、例えば精密検査率が高くなったり、それから委託料が高いということとか、そういうような理由があって市町村によっては受診率を上げたくても財政負担が困難であるから力を入れ切れない、そういうような現状もあります。  委託料金については、国として標準的な委託料を考えるとしていますけれども、それはお考えになっていらっしゃるんですね。
  241. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 保健事業を委託する場合の委託先でございますけれども、保健所等の公的機関や公的医療機関を原則とするように従前から指導してきておりますし、今後もこのような方針はできるだけ維持してまいりたいと考えておるところでございますけれども、その他の医療機関等へ委託する場合と、私どもといたしましては、先ほどもお触れいただきましたような内容の質の確保ということが非常に大事だと考えておりますので、さらに質を確保する方向でその事業を特に見てまいりたいというふうに考えております。  今お尋ねの点は、恐らく予算の委託の場合の単価のことだと思いますが、私ども実勢に合わせるようにできるだけ毎年単価の増を財政当局に要求しておるところでございます。
  242. 糸久八重子

    糸久八重子君 健康診査につきましては、保健所の対応が非常に弱いということがはっきりわかったわけですけれども、第二次五カ年計画の実施に当たりましてぜひとも努力をしていただきたい点がありますが、大臣よろしくお願いいたしたいと思います。  そのうちの一つは、全保健所の実施体制の整備をまず図っていただきたいということです。第一次の計画では、計画の五〇%の整備でしかなかった。それから二番目は、一般健康診査については保健所優先受託の指導を徹底をしていただきたい。三番目といたしましては、一般健康診査の保健所実施について、全保健所の受け入れ、そして保健所実施の割合を当初計画どおり二〇%に高めていくということ。それから四番目といたしまして、保健所以外の健康診査事業を初めすべての保健事業の計画、実施、評価にかかわる市町村への指導、制度管理関係機関との調整に保健所を全力投球させる、そのための体制をつくる。以上のことについてはいかがでしょうか。
  243. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 保健事業につきましては、市町村がみずから実施するという原則でございますが、そういうような状態が整わない場合には、保健所その他公的医療機関等、先ほど申し上げたようなことで委託をするというふうなことを考えておるわけでございます。  保健所がすべてこの老人保健事業を実施するということはなかなか無理ではないかと考えておりますが、地域の実情によりまして、さらに事業の円滑な推進を図る目的でそのような委託をする場合には大いに進めていただきたいと思うわけでございますし、同時にその行われます事業の質的な内容の向上、あるいは先ほど申し上げましたような保健事業の魅力ある健診の工夫でございますとか、いろいろなことで私ども老人保健法に基づきます保健事業がさらに国民の間に定着して、国民みずからが健康を守り健やかに老いるというふうな方向で健康に対する自覚を高めていただくような努力をさらに続けてまいるような工夫をしなくてはいけないと考えております。
  244. 糸久八重子

    糸久八重子君 来年度予算編成の中で、再検討すべき問題点として指摘をしておきたいと思います。  それは、老人保健事業の充実に向けて市町村とともに重要な任務と役割を果たすべき保健所の運営費交付金、これがおよそ五十億円削減され、一般財源に回されるとしておるところです。このことは近い将来、保健所運営費交付金の全面的な一般財源化へのステップではないかと心配されるわけですけれども、国としてはいよいよ本格化する高齢化社会の到来に備えて改めて保健所機能の強化に向けた方針を明確に打ち出していくことが必要ではないかと思います。  今回の保健所運営費交付金の方針というのは、逆に保健所機能の弱体化ひいては統廃合を促進するものだと考えざるを得ないわけですが、この点につきまして厚生省に一層の努力をしていただきたいということをお願いするわけですけれども大臣の御見解をお願いしたいと思います。
  245. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 今お話のございました保健所運営費交付金でございますが、当面私どもといたしましては、先ほど来お話のございました老人保健につきましての第二次五カ年計画の推進、それから来年度から始まると予想されております精神保健対策の充実等々の面から保健所の関係職員をかなり大幅に増員をする必要がございます。その点について、一方で増員要求、増額要求をいたしておりますと同時に、行財政改革推進の趣旨に照らしまして現在いろいろの厳しい見直しが要請されておりますが、来年度の保健所運営費交付金の予算要求におきまして、その中で業務が十分定着したと考えられる一部につきまして一般財源化をするということで要求をいたしておるわけでございます。  この増員要求とそれから一部一般財源化ということで、その結果差し引きで五十億円の減ということになっておるわけでございますが、全体の考え方といたしましては六十二年度以降、一層保健所の拡充強化を進めてまいりたいということでございます。
  246. 糸久八重子

    糸久八重子君 あと残りの時間が十分足らずになってしまいまして、保健施設の問題まだたくさん残っているわけでございますが、大変半端になるわけでございますので、ここのところは残しておきまして、きょうの質問はこれで終わらせていただきたいと思います。
  247. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは質問に移らせていただきますが、私のこれから質問申し上げるのは、十一月七日の予算委員会の総括質問で質問をいたしましたのとやや重複いたしますけれども、あのときは時間も若干私にとっては足りませんでしたので、その辺足りないところを補わしてもらったり、あるいは細かいところをもうちょっと質問をしてみたいと思っております。  最初に、外来の一部負担の増加ということについては、私は予防医学の立場から受診を抑制することになるから私はこれは反対であるということを今度だけじゃなくて、健康保険法が改正されて本人一割負担——近く二割を予定しておられるようでありますが、そういったときにも私はこれを主張いたしました。今度も同じことを繰り返して申し上げたいと思うわけでありますが、今までの各委員先生方の質問を伺っておりますと、どなたもみんな一部負担増は受診を抑制することになるということを言っておられるので、この主張は私と同じでございます。  くどくなりますが繰り返して申し上げますと、昭和五十八年二月に老人保健の有料化をしたときに、札幌でそれまで年間五万件の受診者がおったのが、五十八年二月に百円を取ることにしただけで二万四千件に減ったというのが出ておりまして、私はこれびっくりしたんです、それだけでそんなに違うのかなと。私は予防医学の立場でやはりこれは大変なことなんだなと、お金にすればたかが百円でございましたが、びっくりしたのがこのときでございます。  その後、ことしの六月六日の朝日の「論壇」に載ったのを見ますと、老人医療の有料化に伴う医療費の伸びがどうなっているかという数字が出ておりました。これは、五十八年の施行前の老人医療費の伸び率がプラス九・四%である。ところが、一年後の五十九年にそれが三・九%と半分以下に医療費が落ちた。外来の受診はマイナス三・五%であるということで、一年目は明らかに受診が抑制され、それで医療も抑制を受けたということがはっきり出ていると思うんです。  それが二年後の六十年の四月になりますと医療費は一五・四%になったというんですが、これに対する解析というのが載っておりまして、私もこれは同感だから御紹介をするんですが、この解析をしているのは中川というドクターで、特養ホームの園長さんと書いてあります。これは明らかに受診が抑制されたことによる早期発見のおくれ、つまり早期治療のおくれである。したがって、重症化をするので、重症化が入院を長引かせてそのまま医療費に影響したのであると、これはもうほとんど断定をしておられるわけです。  こういったことを踏まえまして、私は政管健保の本人一割負担のときに受診率がどれくらい下がったか、このことを申し上げたと思うんですが、入院、外来ともに約一〇%低下した。これは厚生省、それでよろしゅうございますね、政管健保。
  248. 下村健

    政府委員(下村健君) そのとおりでございます。
  249. 高桑栄松

    高桑栄松君 これを私確認していただきましたのは、健康保険法の改正のときに本人一割負担をするのに受診率が下がるかどうかで実は前の事務次官をされていた吉村さんと論争をしたんですよ。そのときに吉村さんは下がらないと——当時保険局長をしておられた、下がらないと言っておられた。私は、そうじゃない、間違いなく下がると申し上げておったので、ちゃんと一割下がったということはここで出たわけです。これは予測ですからお互いに根拠があると違ってくるだろうと思うんですが、厚生省の挙げられた、長瀬式でしたか、あの辺で数式が出ておったわけですけれども。  そういったことで、私がこれを出したのは、政管健保と老人保健とは違うとはいうけれども、本人が一部負担を強いられるということはやっぱりこれはストレスである。ストレスというのはいろんな意味のストレスがありますね。経済的なストレスもありますし、生活にかかわることからくる精神的なストレスも私はあろうかと思うんです。  そこで、もう一度やっぱり予防医学の重要性というのを認識してもらいたいと思うので私が集めたデータを御紹介いたしますと、北海道でヘルスタウンと言うのかな、健康町づくりをもう二十年ぐらい昔から続けている町があるんです。私も関係をした町がございますが、鷹栖町、和寒町、中川町、この三つについて北海道から資料をもらいました。それによりますと、鷹栖町というのは健康管理情報システムというのを採用しているわけです。和寒町はヘルス・パイオニア・タウンと言っております。中川町というのは、これは私が教授時代にうちの教室員も応援にやったところでございまして、全町健康管理、コンピュータードックというのをやっているところであります。つまり、受診抑制どころか全員受診というのが建前でございます。  これによりますと、昭和五十九年度と昭和六十年度の老人医療費を含む一人当たり医療費が出ておりまして、それを北海道の全道平均と比べてみますと、鷹栖町で全道平均に対して八五%、和寒町八二%、中川町七七%で二、三割方一人当たり医療費が安いんですね。それから六十年度もほぼ同じ数字でありまして、鷹栖町八四%、和寒町八〇%、中川町七七%、やっぱり二、三割ぐらい医療費が安くなっている。一人当たり医療費ですから、これ医療費にはね返ることがかなり大きいんですね。  ですから私は、健やかに老いていくという、何も老いるだけを言わなくてもいいんで、健やかに働いて健やかに老いていくためにはやはりこういうような健康管理が要る。その最初が早期発見、早期治療でありますから、予防医学の立場からはどうしても本人一部負担というのはうまくないということを私は予防医学者として思っているわけであります。  それで、月に一回払えばいいんだとおっしゃっておられるわけですけれども老人は有病率が高いんですが、一人で平均幾つぐらいの機関にかかっているというデータになっておりますか、お伺いします。
  250. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人が一人平均どのぐらい医療機関にかかっておられるかというお尋ねでございますけれども、私どもの全国調査の数字によりますと一・五でございます。
  251. 高桑栄松

    高桑栄松君 私が聞いたのは二・四何ぼだったか二・五くらいだったかと思うんですが、だからもう少し多いんじゃないかと僕は思うんです。つまり一回ではない。今おっしゃったのは一・五ですね。機関という意味は科が違うという意味なんですけれども、例えば内科は内科、婦人科は婦人科というふうに、そういうつもりで聞いたんですけれども、一・五ですか、やっぱり。
  252. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは全国のレセプトから調査をいたしたわけでありますけれども、私どもはレセプト単位で見ているものですから、レセプトというのは一医療機関一つでございますのでその件数で洗ったわけでございますけれども、外来一人やはり一・五という数字が国保の調査あるいは支払い基金の調査からも出ておりますので、やはりお年寄り全体を通じますと、一月にお年寄り平均すると一・五の医療機関に行っておられる。したがって、半端な数字でございますので押しなべて言うと、全国のお年寄りが一ないし二の医療機関に行っておられる、こう言った方があるいは御理解願える数字かなとも思います。
  253. 高桑栄松

    高桑栄松君 数字のとり方はなるほどと今思ったわけですが、いずれにしても月に一回と思って千円というふうに聞いちゃうんですけれども、やっぱり千円ではなくて千五百円あるいは二千円ということになるんで、その倍率をよく考えてもらう必要があるんじゃないか、こんなふうに私は思うわけです。  つまり、有病率が高いということはそのまま受診をする今の回数も高くなってくるわけで、ですから一部負担というのも一回という考えではなくて、月なら二回あるいは二・五というふうな数字が上がってきていると私は思うんです。したがって、受診の回数というか、機関を変わってその分だけ受診回数が機関が多いから上がっていく、多いということは支払いの金額が大きくなる。そうすると、さっき申し上げたストレスということから、それじゃまあこれぐらいのところはカットしようかなというようなことで受診を怠るということが出てくると思うんです。  ですから、私はエコノミーで申し上げているのではなくて、やはり予防医学の立場で受診を抑制する措置は困るということでございまして、外来の負担に関しては、私はあくまでも一部増は撤回してもらいたい、大臣、いかがでございましょうか。
  254. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 予防医学のお立場から、いろいろ御見識のお話でございます。  この老人保健制度が創設され導入された際の、受診抑制等についていろいろ分析をいたしました結果、私どもといたしましてはそれによって受診抑制というものがなされたというふうには理解していない。必要な受診はそれなりにきちっと行われているというふうに理解をいたしておるところでございます。  今回のこの改正は、いわゆる老人医療費をどのように公平に負担をし、また世代間の公平を図っていくかというような観点から、応分の負担お願いをしたいという観点からのお願いでございますので、ひとつ何とぞ御理解をいただきたいと思います。
  255. 高桑栄松

    高桑栄松君 その必要な受診は受けているはずだというところが問題なんですよ。確かに、電車でも何でも値上がりしますと、しばらくは何となく乗らないとか、しかし必要な交通機関ですから、歩くわけにいきませんからやっぱり乗る。ただ、外出を控えるというのが少し出てくるわけです。  それは乗り物の場合ですと行かなければならないのは乗るわけですが、健康診断を一応念頭に置いていただくとわかるんですけれども、少しぐらいぐあいが悪くてもと、これは普通思うんですね、我々そうだと思うんです。ちょっと胃が痛いな、しかしまあいいやと、こう思うか、あるいはやっぱり医者に診てもらうかと。これは行きやすいか行きにくいかということの差でございまして、必要な受診というのは病気の場合は必要なんです。しかし、病気であるかないかわからないときには、必要であるかないかの判断があるわけだ。したがいまして、必要な受診とおっしゃるのは私は違うと思うんです。私は受診抑制のことを言っているんです。最初にかかるときの受診なんです。大臣、いかがでしょう。
  256. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 先ほども老人保健部長が答弁いたしましたが、五十八年一部負担を導入いたしました際には確かに当初の受診は下がった、伸び率が下がったわけでございますけれども、その反面、一つ医療機関にじっくり治療を受けられるというような結果も出ておるわけでありますし、またその後の外来と入院との関係等を見てみますと、入院が非常に多くなったということも出ておらないわけであります。  要するに、受診が抑制されたために症状が重くなって即入院になった、入院が非常にふえたというようなデータも顕著にはあらわれていないわけでございますし、そんな観点から、それほどの受診抑制にはなっていないのではないかというふうに理解をさしていただいておるところでございます。
  257. 高桑栄松

    高桑栄松君 この問題は、やっぱり推測の違いみたいなことでございまして、どうなるかというのはこれ以上どうにもならないかもしれませんので、私は予防医学の立場であくまでも、少なくとも外来は値上げには反対である、これは予防医学の立場で反対をするということをもう一度申し上げて、次の質問に移らせていただきます。  加入者按分率というので、何遍聞いてもすぐ忘れちゃうのですよ。はてな、どういうことだったかなと。ついこの間も承って、ああなるほどと思ったのですが、またここへ来てみたら何だかよくわからないので、加入者按分率の引き上げというのは何を目標にしておられるのか、ちょっと承りたいと思います。
  258. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 加入者按分率の説明でございますけれども、現在の老人医療費負担がどういうことになっているかからまず御説明いたしますと、老人医療費全体を公費いわゆる税で負担する部分と、それから保険料で負担する部分と、それから患者さんで負担する部分と三つあるわけでありますけれども、その老人医療費の中で患者さんが負担している部分、これは現行一・六%ですが、それを除きまして、その残りを公費で三割、その公費の内訳は二割が国、五%が県、市町村が残りの五%で、三割を公費で見ておるわけでありますが、その残りの七〇%、七割をいわば保険者が共同で面倒を見ておる、保険料を通じましてそれぞれの中から得られました保険者としての財源を持ち寄りまして、このあとの七〇%を見ておるというのがこの老人医療費負担の仕組みでございます。  これは申し上げて恐縮でございますが、そもそもこの老健法ができます前はそれぞれの保険者で老人を抱えていただいて、それぞれの保険者から医療費を給付していただいておった、健保組合に入っているお年寄りは健保組合から給付を受け、国保に入っているお年寄りは国保から給付を受けておったわけであります。  老健法ができましてその給付の事業、老人医療の事業を市町村の事業として肩がわりの形で、いわば各保険者の共同事業の形で肩がわりして市町村が事業を行ってくれるという仕掛けができまして、したがって、その市町村に対して各保険者はいわば受益者の立場に立ちますものですから、受益者負担的に拠出金の形で市町村に拠出金を出し合うという形をとったわけであります。  その拠出金を出し合うその出し方が問題でございますけれども、どういうふうに残りの七〇%を各保険者にその医療費を按分するか、これがいろんな考え方があったわけでございますけれども、制度創設のときにはいろいろ経緯がありましたけれども、最終的には五〇%は、加入者按分と申しますが、加入者数に応じて、いわば加入者数に応じて平等に老人を持ってもらうと、こういうことでございますし、片一方は実績、そこのそれぞれの保険者で必要とする医療費をそのまま出してもらうという部分と両方分けまして、つまり、公平に調整して出していただく加入者按分部分と、それからその保険者が必要とする実績そのまま出していただきます医療費按分部分と二つに分けまして、その比率を五〇%、五〇%にしようというのが老人保健創設のときの按分率の考えであったというふうに承知をいたしております。
  259. 高桑栄松

    高桑栄松君 そうすると今度引き上げを八〇%、ということは将来一〇〇%を目指すということのように承りましたが、これは保険の一本化というのか、そういうことを目指すということですか、どういうことでしょうか。一元化という言葉を使われたかと思いましたけれども
  260. 下村健

    政府委員(下村健君) 保険制度につきましては、今後の長期的な見通しは一体どうなるかということなんでございますが、医療費と一方における国民所得と申しますか、賃金と申しますか、そういうものの上昇率の相関関係で決まってくるわけでございますが、厚生省としては、医療費については国民所得の範囲内にとどめるように適正化の努力をしたい、こう言っているわけですけれども、人口の増という問題もありますし、高齢化ということもありますので、長期的に見れば、やや医療費の伸びの方がどうしても国民所得の伸びを上回るだろうと考えているわけでございます。特に現在のような経済がかなり悪い状況になってまいりますと、医療費の伸びと、賃金上昇率あるいは国民所得との間の乖離というのは非常に大きくなってまいりまして、これが長期間続くと、当面はともかくとして、いずれ保険料の引き上げ等によって医療費を賄っていくというふうな事態は避けがたいのではないか、こんなふうに考えております。  したがって、今の制度のままでそれをやりますと、現状で見ましても医療費総額の伸びは、一般の医療費の伸びは総体として七%程度ですけれども、国民健康保険が大体八%台、老人医療が九%台。それに対して、ことしの経済成長は二・六%、こういうことが言われているわけでありますから、賄えないわけでございます。あるいは、それを今の制度のままでやっていくということになりますと、国民健康保険だけは非常に高い伸び率で保険料を上げていく、あるいはそれに見合った国庫負担をふやしていくという運営をすることになります。これでは現在の皆保険体制を維持していくことが困難ですから、給付の面と負担の面と全体的に公平な形になるようにしたい、これが一元化の基本になる考え方でございます。  それをやる場合に、統合という問題はどうかというふうな話もございましたが、一番突き詰めた形でやれば統合ということも確かにあろうと思いますが、私どもとしては、給付と負担が一番公平になる形、それが目的でございますので、なおかつ、それで医療保険制度が効率的に運営されるということを目標にして考えますと、一元化ということで現在その具体的な形は関係者の間でいろいろ意見が分かれておりますので、広範な議論をやりながら一元化ということに持っていきたい。  さしあたりは老人医療費が最大の問題でございますので、その加入者按分率という形で全体の負担を公平な方向に一歩持っていきたいということで今回の老人保健制度の改革を考えた、こういう形でございます。
  261. 高桑栄松

    高桑栄松君 今、保険の方の蓄積と支払いのことが出ていましたけれども、そういえば、今思い出したのは、政管健保と組合健保が年間三千億くらいの黒字だったようですね。これはどういうプラス、マイナスで黒字になったんでしょうかね。推定なさるところは何でしょうか。
  262. 下村健

    政府委員(下村健君) これは先ほど来話も出ておりますが、給付費の方の伸びが当初の伸びを下回った、一方、保険料は長期的な安定運営を図りたいということで従来の水準をおおむね維持してまいっておりますので、その結果、双方ともに約三千億円の黒字が出たということではないかと思っております。
  263. 高桑栄松

    高桑栄松君 保険というのは相互扶助ということでありますので、非常に単純明快に考えると、相互扶助ならあえてここで老人の、特に私は外来と申し上げたいんですが、外来の負担を上げる必要はあるのだろうか、相互扶助の精神でここはやっぱりもとに戻せないのかな、こんなふうに思うんですが、これは御答弁願っても同じかな。
  264. 下村健

    政府委員(下村健君) 健康保険組合で総体として三千億あるいは政府管掌で三千億といいましても、それぞれの保険の枠内での保険料部分が主として余った、ということでございます。一方国民健康保険の方は、本日もいろいろお話が出たわけでございますけれども、相当財政状況は苦しい。健康保険組合の中でもそれぞれ個別の保険者が持っております個別の黒字を足すと三千億になるということで、もとに戻すということになるとそれを赤字のところに回すというふうな操作がどうしても必要になってまいります。それを個別にやらないで、老人の加入率というところで調整をして全体の財政状況をならすというふうなことを考えてまいりたいというのが今回の措置につながってくるわけでございます。
  265. 高桑栄松

    高桑栄松君 恐縮ですけれども、だんだんおもしろくなってきたものですからちょっとまた聞きたいんですけれども、そうすると、仮に千円にするとおっしゃったんですが、外来の部分のそこだけで見て、どのぐらい違うんですか。
  266. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 一部負担の今回外来部分の引き上げに伴う数値についてのお尋ねでございますが、六十年度で申し上げますと、一部負担総額が外来で四百六億あるわけでございますけれども、今回六十一年度でそれが、八百円の修正ベースで申し上げますと八百十億、満年度ベースでなるということでございまして、これは一部負担総額として入院外の四百六億が改正後、八百円の衆議院修正ベースの満年度ベースで約倍の八百十億が患者負担総額として大きくなるということでございます。
  267. 高桑栄松

    高桑栄松君 再度申し上げますが、私はエコノミーで論ずるだけの僕自身の内容がありませんのでエコノミーでの申し上げようはいたしませんが、やっぱり黒字が合わせて六千億あって八百億とかというんだと、何となく額が違い過ぎやせぬのかなという、そんな感じもするんですね。  そこで、健康保険の改正のときに一割本人負担を近い将来二割にするということがあって、これはいつになるのか知りませんが、多分そうなるわけだ。そのときの答弁であったか何だか忘れましたけれども、そのときには家族の負担も国保の自己負担も全部二割にするというふうに承ったような気がしているんだが、そんなふうに理解してよろしゅうございますか。
  268. 下村健

    政府委員(下村健君) 前回、五十九年に健康保険法の改正お願いしたときには、本人の給付を九割、次いで八割にしたい、その際に将来の構想、ビジョンとして一体医療保険制度はどうするのかというふうなお話が国会の方でいろいろ出てまいりまして、保険給付の対象になっている医療費に対する保険給付の割合を出しますと大体八割強でございます。医療に関する負担を余り値上げしない、あるいはそんなに大きくは引き上げができないということで考えると、将来目標としては八割程度にそろえていくという方法が一番現実的ではないか、こんなことを申し上げたわけでございます。
  269. 高桑栄松

    高桑栄松君 たしかそうだったなと思ったんで、今思い出して承ったんですが、私は長らく国家公務員をいたしておりまして自分で払うことはなかったわけで、いよいよ一割払わされるのかなと思ったときに国会議員になりましたので、国会議員になると国民健康保険になるんですね。それで、随分高く払わされることがわかったわけですよ。国保というのは随分高いですね、払う方が。ですからこれは大変なことだと思ったんですよ。それで私は医師国保、これはもっと高いようでしたけれども本人が払わなくてもいいようになっていますので、私は医師国保に加入をいたしました。  やっぱり国民健康保険というのは高いな。だからどうせいというのも僕はわからないんです。わかりませんが、高いなと思いましたね。そして自己負担が三割というのは大変なことで、これが二割になるんならそれもいいことだなあと、今そう思い出して伺ったんです。  話を伺っていますと一元化ということのようですが、武見太郎先生が二十年も昔、健康保険というものは統合一本化しろということを主張しておられました。あの先生の卓見というか、当時そんなのできるかいなと思っていたことがだんだんその方向に向かっているようでありますが、ここで大臣、やっぱりこの目標は健康保険の統合一本化ということなんでしょうね。それで、一体何年ごろこれを目指されるんでしょう。ちょっと伺いたいと思います。
  270. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 医療保険の負担と給付の公平を図る観点から一元化を目指して、この老人保健法を成立していただきましたならば、検討に入りたいと考えておるところでございますが、昭和六十年代の後半できるだけ早い時期と、こういう目標を置いておるわけでございます。
  271. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、老人保健施設の質問に移らしていただきます。  これまたいろいろ問題点があるようでございまして、この前の質問から私もちょっと調べてみたんですが、まず特養ホームのことを伺いたいんですけれども特養ホームの医務室というのは医療法に指定する診療所と同じである、要するに医療法の適用を受けるということになっていますね。
  272. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御指摘のとおり、特養には医務室というのがございますけれども、それは診療所の届け出ですか、それを得て……
  273. 高桑栄松

  274. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 診療所ということで特養の中に置かれていることになっています。
  275. 高桑栄松

    高桑栄松君 医療法の指定するという分ですよね。だから、医療法の適用を受けているという意味です。どうもそこがわからなかったんですよ。それで調べてみたらそう書いてありますから、これは特養ホームの医務室は医療法の言う診療所であるということで、医療法の適用を受けているということですね。
  276. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御指摘のとおりでございまして、ちょっと読んでみますと、「特別養護老人ホームは、被収容者の医療的処遇の万全を期するため当該医務室について収容施設を有しない診療所として医療法第七条第一項の規定に基づく都道府県知事の許可を得ること」ということで指導いたしておりまして、診療所の許可を受けております。
  277. 高桑栄松

    高桑栄松君 それで少し黒木さん、明快になったんです。それがよくわからなかったんですからね。  そうすると、この老人保健施設医師施設療養管理するとかというふうになっていますね。そして医療法の適用を受けていないんだな。そうですね。いかがですか。
  278. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設につきましては、その一角と申しますか、ある部屋を医務室として診療所の許可をとって医療が行われるということではなくて、施設全体が施設療養と申しますか、医療サービス生活サービスもそうですが、一体的に行われる施設として今回制度化をいたしたいということでございますから、病院なり診療所としての適用は受けていないわけでございます。
  279. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこですよね。施設療養とはというのは何か定義が書いてありますね。ちょっと読んでください。
  280. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 改正法の第四十六条の二でございますが、そこに「看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療(以下「施設療養」という。)」ということで定義をいたしております。
  281. 高桑栄松

    高桑栄松君 明快じゃないでしょうか。医療ですよね。生活は入っていないですよ。機能訓練はリハビリ、それから看護、医学的看護下における介護、必要な医療、全部医療なんです。どうして医療法の適用を受けないんですか。私はやっぱり疑問なんです。いかがでしょう。
  282. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) ただいまの定義は、給付のところで定義をいたしておるわけでありまして、そこで、入所された老人方々に対してただいま申し上げました施設療養を受けたときにはその者に施設療養費としてその費用を支給する、こういうところの条文を読んだわけでございます。  その前に、「老人保健施設」という定義がもう一つございます。そこを読んでまいりますと、「この法律において「老人保健施設」とは、疾病、負傷等により、寝たきりの状態にある老人又はこれに準ずる状態にある老人に対し、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療を行うとともに、その日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、第四十六条の六第一項の都道府県知事の許可を受けたものをいう」、こういうことでございまして、この施設施設療養としての医療サービスと、後段で御説明いたしました日常生活上のお世話、その両方を目的とする施設ということで制度を仕組んでおるわけでございます。
  283. 高桑栄松

    高桑栄松君 それは、施設療養管理するというのは医者ですね。そうですね。今のは「とともに」と言われた。施設療養の部分が医療法だと私は言っているんです。施設療養を医者が管理する。そして、これは御説明によると、病院特養ホームとの中間だと言っているんでしょう。中間だと言っているんだから、特養ホームの医務室でさえも医療法の適用を受けているのに、病院はもちろんでありますが、中間が受けないというのはおかしいではないかということです。  中間というのは病院寄りなんだから、特養よりも病院寄りです。医務室は医療法の適用を受けているわけだ。そして、医者が施設療養管理をすることになっています。そのとおり書いてある。施設療養とは必要な医療を言っているんです。生活は入っていない。したがって、それは医療法の適用を受ける場でなければならないということです。中間なら、医療法の適用をこっちとこっちが受けて、真ん中が受けないということはない。特養以前のものだということならいい。どうしてもここが私には納得できない。説明してください。
  284. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設医療サービス生活上のお世話という、いわば日常生活サービスをあわせ行うことを目的としておる施設でございます。その医療サービスの部分については、当然のことながら医療でございますから、医師管理しなければならないというふうに規定をいたしております。しかし、この施設全体としては、私どもはこの性格は新しいタイプの施設と言っておりますけれども、文字どおり医療と日常生活サービスができる新しい施設のタイプとして老健法上に位置づけておるわけでございまして、そこで、先ほど読み上げましたように、医療もできる施設として新しい施設を創設させていただきたいということでございます。  なお、医療法病院診療所についての規制、その他の所要の規定を設けておりますけれども病院診療所と違って、私ども老人保健施設という新しいタイプの施設をお認め願いたいということでございます。
  285. 高桑栄松

    高桑栄松君 ちょっと観点を変えてみますと、医療法第一条を見ますと、ベッドが診療所は十九以下で病院は二十以上でありますけれども、二十人以上収容しているのが病院ですが、病院というのは、科学的かつ適正な診療を受けることができることを主たる目的として組織、運営される、管理者は医者である、こう書いてありますね。それから、病院医師が医業をなす場所であると書いてありますが、医業とは継続して医療を行うことというふうになっています。  そうすると、診療を受ける場で継続して医療をするところが病院であるとすると、老人保健施設はまさに病院に近いものではないかということ、これはこの定義をもってくればまさに病院に近いですよ。特養よりもっと病院に近い。それをさっきから申し上げているんだが、どうですか。それでも特養よりも以前かな。どうでしょう。
  286. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 病院の定義は今先生お話のとおりでございまして、お願いをいたしております老人保健施設、この中には病院に近い、要するに医療を行う機能があるわけでございますけれども施設全体を取り上げてみますと、医療を行う機能と生活サービスを行う機能と両方混在をしておるということを先ほどから老人保健部長が申し上げておるわけでございます。
  287. 高桑栄松

    高桑栄松君 病院で医科と歯科と二つやっている場合に、主たるというのは何だと書いてあるんですよね。その主たるというのは、収容人員とか、それから収入額とか、それから使用しているスタッフとか、こういうのを入れて、そして総合的に判断をして医が主たるものか歯の方が主たるものかを決める、そう書いてありますよ。主たるというものを決めるときのその条件というのを見ると、収入だとか収容人員だとかなっているわけだ。  この保健施設は、収入の額で言うと二十五万ということでしたね。二十万が医療ですね。すると二十万が主たる——五分の四ですからもう主たるなんてものじゃないですね。大部分がこれであると言いたいぐらい主たるものですよ、収入は。ベッドは、地域医療計画の中のベッド数に入るんでしょう。そうですね。これでも病院じゃないんですか。おかしな話だと思うんですね。医業が主ですよ、これは。  二つとおっしゃるけれども、どんな病院でも生活は入っていますよ。食事も出す、洗濯もしなきゃだめなんです。ですからどんな病院でも生活は入っています。しかし、生活部分が非常に多いのが特養ホームだと思うんです。これは二十五万のうちの二十万が医療なんだから収入の八割は医療である、そうしたら主たる業は医業ではないか。継続して医療が行える、ベッドがある、地域医療計画のベッド数に入る、それでも病院ではないとおっしゃるのかと私は言いたいな。  ですから、新しいのを病院と言いたくないというのはわかった。それは保健施設とおっしゃるんでしょう。しかし、それが特養ホーム以前であって医療法の適用を受けないというのは論理的にどうしても合わないですよ。いかがですか。
  288. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) この施設は、先ほど来御説明いたしておりますように、医療生活両方のサービスをあわせ行うことを目的としているわけでございます。たまたま付随的に生活サービスを行うということではなくて、医療もそれから生活サービスも、そのものを寝たきり老人等に提供する、二つの機能を提供することを目的とする施設でございまして、したがって、定量的にというよりも定性的に両方の機能を持つというところに我々は主眼を置いているわけでございます。  したがいまして、そういう両方の目的を持っておりますところのいわゆる中間施設については医療法上なかなか規定しにくいわけでございまして、私どもは第二あるいは第三の老人病院をつくるということじゃなくて、ぜひ新しいタイプの中間施設として老人保健施設を創設をいたしたいということでお願いをしているわけであります。  なお、特養には確かに診療所が適用されておりますけれども、それは特義の中の医務室という一部分を診療所の許可を受けてそこで医療が提供されるという状態でございますけれども、この施設施設全体として医療ができる施設に構成をさしておるわけでございますので、したがって、この施設性格から見まして私ども老人保健法に規定をさしていただきたいということで今回お願いしておるわけであります。  老人保健法は、御案内のように、「目的」にもございますように、「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため」云々ということがありますように、まさしく老人保健法を規定いたしましても、この老人保健法の制度化というものが決して異質なものではないというふうに考えておりまして、私どもとしては、老人にとってこれから医療とともにこういう中間施設も提供しながら、老人保健施設としてのサービス等も提供しながらこれからの高齢化社会を乗り切っていきたいということでお願いをしているということで御理解をいただきたいと思います。
  289. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで伺いますが、産婆さんのいる助産所の施設管理者はだれですか。
  290. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 助産婦でございます。
  291. 高桑栄松

    高桑栄松君 助産所は医療を行っていますか、それとも何を行っていますか。
  292. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 助産所は助産行為を行うところでございまして、前段に出てまいっております医業、反復継続医行為を行うという医業には該当いたしておりません。
  293. 高桑栄松

    高桑栄松君 あそこは、お教えしますと、助産というのは二つあるんですよ。正常分娩は病気ではないんです。しかし、異常が起きればこれは医療にかかわってきます。そうでしょう。医療も入ってきますよ、これ。違いますか。
  294. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 助産所につきましては、先ほども申し上げましたように、助産婦が管理者でございまして、医師を置く必要はないということでございます。したがって、助産所において医業を行ってはならない。つまり、先生が御指摘のようなケースで医業に該当する行為をしなければならないということになれば、これは往診を求めるかあるいは病院に移すかということになろうかと思います。
  295. 高桑栄松

    高桑栄松君 医療法の適用を受けていますか、いかがですか。
  296. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 助産所は医療法によって規定をされておるわけでございます。
  297. 高桑栄松

    高桑栄松君 今のような御答弁の状態の助産所でも、あえて「でも」と申し上げますけれども医療法の適用を受けているんですよ。医療でないというところでさえも受けている。なぜか。それは突発事故が起きるからですよ。突発事故が起きたときにやっぱり医業を行わなきゃだめなことがある。それはお医者さんを呼べということですね。しかし、それだけの資格を産婆さんに与えてあるわけだ。医療法の適用を受けているんです。だからなぜ老人保健施設医療法の適用を受けないのか、不思議だな。もうとても不思議ですね、なぜここで医者を締め出すのかと。施設管理者は医者でないんでしょう。これは不思議ですね。もう一遍答弁してくれませんか。
  298. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) どうも日本語の発音が難しいので大変恐縮でございますが、助産所は、医業つまり反復継続の業の方でございますが、医業を行う場所ではない。しかし助産所は、助産所全体が医療法に言っております医療を提供する体制の中に包含をされますので、これは医療でございます。やや広い概念かと思います。それには該当するということであろうかと思います。  先ほど来申し上げておりますのは、老人保健施設という施設全体を取り上げた場合に、その全部が全部医療であるかどうか、それは医療の部分もあり、生活サービスの部分もある、そういう両方の機能が混在をしておる、そこのところが助産所とは若干違うのではなかろうかと申し上げておるわけでございます。
  299. 高桑栄松

    高桑栄松君 時間を見ながらなものですから、大臣、今のをちょっと念頭に置いておいてくださいね、大臣答弁をいずれいただきますから。  定額療養費の医療責任ということを、私はこれ前にも申し上げましたけれども、医者はもうければいいというんじゃありませんで、やっぱり患者を治すのが第一なんですよ。結果としてお金はいただくんだろうと思います。お金をおまえどれだけ払える、ああ、それじゃやめたわと、おれのところではやらぬとは言わないですよ。結果なんです、収入というものは。つまり、請負じゃないんですよね。この定額療養というのは私はやっぱり請負だと思うんだ。  言い方は悪いけれども、健康診断は項目を限定することがありますね。二泊三日のドックだとか日帰りドックだとか、それは請負です。間違いなく請負です。だから二泊三日で十万円出せない、出したくないとか、暇がないとかいう人は日帰りで五万円でやるとかということになるわけだ。しかし、病気の療養は請負ではできませんよ。そんなことできるわけがないです。もしそうだとすれば、医学の考え方を根本的に変えなきゃだめですよ。したがって、私は定額療養費の支払いということは非常に抵抗がありますね。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕  恐らくすべての医者、歯医者さんはみんなそう思っていると思うんです、そんなことでできるのかと。これはやっぱり医師の今までやってきた医療、それから歯科医療、あるいは医業なのかな、ちょっと言葉がわからなくなったけれども、どっらでもわかるでしょう。そういうことに対して根本的にどうするんだということだと思うんですよ。健康診断とは分けて考えてもらわなきゃだめですよ。健康診断は私は請負だと思う。医療というのは請負じゃないんだな。突発がありますしね。  そこで「必要な医療」というのが書いてありますけれども、「必要な医療」の内容は何なんですか。どんなのを必要な医療考えておられますかね。
  300. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設におきましては、私ども考えておりますいわば医療の内容でございますが、一つにはリハビリテーション、それから看護、介護サービスがあるわけでありますけれども、そのほか比較的安定した症状に対する医療サービス、こういうものがこの施設考えられる医療かなというふうに考えております。  具体的にどういうことが考えられるかでございますけれども、やはりここに入所される方は一応病院での入院治療が終わって、それから家庭復帰、社会復帰されるまでの間、ここでの施設療養医療ケアが行われていくわけでありますし、当然日常生活上のお世話もしていくわけでありますけれども、その過程における医療ケアが行われるわけでございます。  その際、どんな病気が主として考えられるかということでございますが、もとより循環器疾患とか消化器疾患、あるいは呼吸器疾患、筋骨格系疾患とか、そういうものが多いわけでございますけれども、    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 したがいまして、そういう疾患に対します一般的に行われる医療としましては、当然のことながら診察がありましょうし、あるいは血液、尿、心電図等の病状のチェックのための検査とか、あるいは疾患の管理のための投薬とか、そのほか褥瘡の処置とか目の処置とかいろんな処置行為等が考えられるわけでございます。  もとより、そこで風邪を引かれた場合とか腹痛等の一時的な疾病に対する対応も必要でございますし、それから先ほど来御指摘の、病状が急変した突発医療に対するそういう医療も行われることがあろうかと思いますけれども、いずれにしても、私ども考えておりますここで行われる医療は、一般的には症状安定期の患者さんに対する比較的定型的な、先ほど申し上げましたような医療サービスではなかろうかというふうに考えております。
  301. 高桑栄松

    高桑栄松君 その比較的安定という言葉は、素人はなるほどと思うかもしれませんがね、そうじゃないですよ。老人というのは、その病気自身はあるところで固定的になるように見えても、別な病気が突然起きるということがあるわけですね。  殊に、循環器のお話がありましたが、きょうの朝のNHKドラマで、心臓発作で倒れたまねをしたら本当になったというのが出ておりましたよ。突発ですよね。そういうのが老人であり、また老人でなくても循環器というのが入ってきましたが、循環器なんというのは突発があるから問題なんであって、突発がないのはほっておいてもいいんですよね。循環器は死ぬまで動いているのが循環器、心臓でございますから。突発なんですよね。ですから、安定ということはまあ特別なあるものなんでしょうね、それは。  ですから、そういうことでまとめて二十万という手はないと思うんです。それは症状に応じて何をどうするかということが出てくるのであって、まとめて二十万の中でやってくれという——いや、二十万と決まったんではないのかもしれませんが、新聞の伝えるところによりますと二十万となっておりますから申し上げるんですが、二十万でまとめた医療というのは我が国の医療の中でこれはもう画期的なものじゃないでしょうかね。初めてでしょう。ですから、そういうことをおやりになろうとしているにしては内容の審議がお粗末だと僕は思いますね。  ですから、まず医者を専任したんでしょう。特養との大きな違いですよね。特養は医務室があって、非常勤でもいいとなっている。こちらは医務室がないわけないでしょう。もっと立派な医務室がなきゃおかしいでしょう。ベッドを置いて、地域医療計画の中のベッドに算入されるんだ、計算に入るんです。そうですね。間違いない。それがさっきは特養は医務室でこっちは医務室でないような、何をするんですか、廊下でぶらぶらっとしていて診察するんですか。そんなばかなことはない。もっと立派な医務室があるはずだ。レントゲンの施設から何から全部持っていなきゃやれません。  ですから、そういうところに医師を専任しておきながら、くどいようですが、どうして医者を施設管理者にしないんですかということです。療養管理当たり前です。こんなことを書くことはない。医者が療養責任を持たないでだれが持つんですか。こんなことは書かなくてもいいぐらいですよ。医者は当たり前です。言われなくても当然だし、当たり前のことを施設療養を医者が管理するとは何事ですかね。別な医者があるのかと思いますよ。医師法でない医者がね。医師法にあらざる医師免許証を与えるなら話は別です。療養責任を持つのは医療法にそのとおり書いてある。  施設療養管理するんじゃなくて、療養施設管理する人間でなければ療養責任は医者としては持てない。しかも専任医師を置いているんだから、ウエートを高めていますよ。特養よりはずっとウエートを高めている。特養病院中間です。確かに人間配置を見ると、医師は専任、看護婦の数も多い、それで介護人の方は少ない、特養介護人が多い、看護婦は少ない、医者も非常勤、こうなりますよね。それでなおかつ医務室があるのかないのかわからないような答弁じゃ困るし、そしてそれが医療法の適用を受けないという理由はないわけだ。もう一度答弁してください。
  302. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 特養でございますが、先ほどからお話がございましたように、特養全体を相手にしないで、特養の一部を診療所としておる。したがって、施設全体から見ますと、医療を行う場所というのは極めて限定されておるというのが特養の場合でございます。それから病院は、もう申すまでもなく病院全体が医療を行う施設で、特に入院医療を行う施設である。  そこで、この老人保健施設でございますけれどもお話がございましたように、施設療養という医療が行われることは確かでございますが、あわせまして生活サービスが行われる。したがって、老人保健施設全体を取り上げました場合には、医療の機能もあり、それから生活サービスそのものの機能もある、それがお互いに混在しておる非常に新しい施設である。そういうことから、確かにこの施設の中で医療が行われ、この施設医療の機能を持つということは確かでありますけれども施設全体をとらえた場合には、やはり両方の機能が存在をする。  現在の医療法医療のみについて規定をするという構成になっておりますので、今申し上げました生活サービス、いわば福祉的な面、こういうものをあわせ持つ老人保健施設を現行の医療のみを相手にしておる医療法に直ちに規定するということは困難だということで、今回老人保健施設老人保健法に規定をするということでお願いをいたしているわけでございます。
  303. 高桑栄松

    高桑栄松君 提案者は新しい施設だとおっしゃっているが、新しい施設であろうとなかろうと、医療の対象であるかないかと私は申し上げているので、施設が新しいとか新しくないということを問題にしてないんです。医療が行われるのか、その責任はだれが負うのか。そうすると施設を含めて管理しなければいけないんですよ。もしそれだったら生活部門とそうでない部門を分けたらいい、医務室と同じようにね。分けて、管理者を置いた方がいい。医療管理者医師である、置いた方がいいと思います。でなければ、開設者の監督下に置かれることになる。  それは医師が専任であって、ベッドがその地域医療計画の中に入っているという病院に非常によく似た施設なんだから、それは医者が管理しなきゃおかしいですよ。これはプライドなんてものじゃないんだ。療養責任を負えるか負えないかということで申し上げているんです。医者というのはそういうつもりでいますよ、自分が患者をやらなきゃいけないと思ってやっているんだから。それを二十万の範囲でやるから途中でやめたとか、おれは責任者でないから後はどうせいとか、そうはいきませんよ。ですから、医療法の適用を受ける範囲がもし必要だったら、範囲を書いても施設責任者を置いた方がいい。それが専任医師を置く理由だと私は思います。  この辺で大臣ひとつ、私は医療法の適用を受けるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
  304. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) ただいま健康政策局長からかなり明快な答弁を申し上げたところでございますが、この老人保健施設はまさに医療サービスだけでなく、生活サービスをも提供する福祉的機能を持ち合わせた施設でございまして、そういう観点からこの老人保健法に規定をさしていただき、そして、おっしゃるようにその中には医療が厳然としてあるわけでございますので、医療法の必要な部分をこの老人保健法において規定をさしていただいておる、こういうことでございます。  それがゆえに、この老人保健施設につきまして、その基準法律成立後老人保健審議会等で御決定をいただきますけれども、私ども考えております基本的な考えの中には、その施設の中には例えば談話室とか食堂とか、今まで医療機関になかったそういった施設も兼ね備えたようなものにしていこうということでありまして、そういう意味におきまして福祉的機能を十分に備えた施設、こういうふうに考えるわけでございます。  これも健政局長からの答弁にもありましたが、現行の医療法は、医療供給体制の確保を図り、国民の健康を保持することが目的として制定されておるものでありまして、福祉的な面が考慮されていない法律でありますので、ただいまこの医療法に規定をするということは少し困難なのではないかと考えております。しかしながら、医療法につきましてさきに改正お願いをいたしたわけでございますが、その後、今後将来へ向かっての医療法のいろんな角度からの見直しを今検討をいたしております。  そういう中におきまして、将来考えられます老人保健施設につきましても、難病患者とか身体障害者等のための中間施設というようなものも考えられると思うわけでありまして、そういう中間施設一つ形態の中で、医療法の中にどう位置づけをしていくかということも検討一つの大きな課題であるというふうに考えておるところでございます。
  305. 高桑栄松

    高桑栄松君 際限なく同じ質問を繰り返しても困りますので、議事録に載っておりますからどの辺が明快であるかわかると思いますけれども、それくらいにさしていただいて、次の保健審議会の構成メンバーのことを五、六分やらしていただきたいと思うんです。  この前私が質問をしたときに、必要な医療というものの審議をこのメンバーでやったのか、医者は何人いますかと言ったら、二十人のうち二人だとおっしゃったわけだ。私も本当はびっくりしたんです、知らなかったんですけれども。そんなに少なくて何を審議したのかと申し上げたら、何か後で今度は専門の小委員会だか専門委員会だかをつくって十分検討したいという答弁でしたね。  逆に言いますと、今のメンバーがこの問題を審議するのに、つまり必要な医療というもの、経費二十五万のうち二十万でございますけれども、それだけの審議をするメンバーとして適切ではなかったと、数の問題ですけれども、適切ではなかったということをお認めになったことと私は解釈いたしましたが、いかがですか。
  306. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 改正法の中に老人保健施設を盛り込んで御提案いたします際に、老人保健審議会に御諮問を申し上げたわけでございます。その審議会には御指摘のように二人の医師の方がおられるわけでございますが、この老人保健施設について御諮問申し上げましたのは、いわば制度の骨格について申し上げたわけでございまして、こういう目的を持った施設をつくること、あるいはこの施設に対して医療費財源と申しますか、現在老人医療費に充当いたしております財源をこれは公費のみならず拠出金の形で財源として見ていくこと、そのほか、そういう制度の主たる内容について御審議を賜ったわけでございます。  したがって、これから医療との接点あるいはその額の決定に当たります、ここで行われる平均的なと申しますか、一般的な医療の想定その他についてこれから医療関係者のいろんな御意見を聞いてまいる場面が多くなるわけでございますので、これからはその実施に当たりました実施基準等を作成していただくために専門の部会を老人保健審議会の中に設けまして、そこで医療なりあるいは福祉なりの関係者、専門家に参画をしていただいて、老人保健施設が制度のねらいどおり今後立派に運営ができるような諸基準、実施細目を御検討願いたい、こういう意味で専門の部会をつくって御審議を今後賜りたい、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  307. 高桑栄松

    高桑栄松君 老人保健審議会のメンバーというのは、拠出金を出す方々の代表ということが構成メンバーの構成のあり方というふうに僕は伺っておりました。それを、医療というふうなものが入ってくるという根幹的に内容が変わるようなものについて、今までの拠出金関係の方で審議をして根幹を決めてしまって、細部にわたっては専門家の御意見をというのは、本末転倒というのはこういうことを言うんですよね。そう思いませんか。いかがですか。
  308. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) この制度を私ども検討するに当たりましては、かねてから各方面からハーフウェーハウスあるいはナーシングホームをつくるべしという意見はいただいていたわけでありますけれども、最近では社会保障制度審議会から特養とそれから病院中間的なと申しますか、両機能をあわせ持った施設をつくるようにという提言がございました。それを受けまして、厚生省に中間施設の懇談会をつくりまして、そこでももちろん医療関係者にも御参画いただいて御審議を賜り、その上で私どもの案を固めまして老人保健審議会に御諮問申し上げたということでございます。  その私どもの練りに練った案を今出させていただいて御審議を賜っているということでございますが、あわせて実施細目等これから詰める事項も確かに多いわけでありますけれども、そういった点についてもできるだけ私ども考え方を御説明してまいっているということでございます。
  309. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は、厚生省の出された「二十一世紀の我が国の医療」でしたか、あれはなかなか作文としては立派なものだと思うんです。まあ作文ですから立派なものだと、こう思って拝見しました。それで、中間施設に関しては私も本当は必要だと思っていますから、今回質問しようと思っていた。だからそれはいいんです。そういうことを言っているんじゃないんで、本当にやるときには周囲で幾らだれが言ったってだめなんで、保健審議会が決めるんだからここのメンバーをちゃんとしないでなぜ審議したか、それを申し上げているので、本末転倒なんです。  大臣、この辺でメンバーをかえてから出直すということはできませんかね、いかがですか。
  310. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この法律を成立さしていただきましたならば、いろいろな細目について老人保健審議会におきまして御協議をいただき御決定をいただく部分が非常に多いわけでございます。そういう中には、今御指摘がございましたように医療関係の専門的な知識に基づいていろいろ御議論をいただかなければいけない部分がたくさんあろうと思います。でありますので、老人保健施設に関する特別な部会を設けまして、そこに医療関係者の方々にお入りをいただいて、そして十分な御意見を賜り、御議論をいただいて結論を得ていただくようにいたしてまいりたいというふうに考えております。
  311. 高桑栄松

    高桑栄松君 同じことの繰り返しですからもうやめますけれども、本末転倒なんですよ。ちゃんと議事録に残りますので、読んだ人はわかると思うんです。後で検討したってまずいですよね。  それで、時間があと二十分ぐらいですので、この前からの続きで緊急にお話ししたいことがエイズについてありますので、ちょっとお話しします。  その前に、新聞によりますと、きのうの夕刊で見たんですが、熊本大学に入院しておった三十代の独身男性がエイズで七日に亡くなった。この人は中近東に滞在しておって、けがの際に輸血を受けた。多分輸血感染だろうという感じを受けますが、厚生省はエイズかどうか公式に検討中というので不思議だなと思った。十一月下旬入院と書いてありますから、献血検査体制が整っていたらこういう疑いのある患者はまず診たはずなんだが、調べていない、検討中なんですかどうなんですか、いかがですか。
  312. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) そのケースは厚生省に届け出がされておりまして、次回の調査検討委員会検討する事例にはなっておりますけれども、献血者ではございませんで外国で輸血を受けたというふうなことを聞いております。
  313. 高桑栄松

    高桑栄松君 いや、僕が聞いたのはそうじゃないんですよ。検討中といったって、まず抗体検査をすればよかったはずじゃないかということを申し上げている。その体制が整ったはずだということを言っているんです。
  314. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 病院ではエイズではないかということで私どもの方へ御報告をいただいているわけでございまして、御承知のように、エイズの患者か、あるいはアークのような完全なエイズでない者かということを私どもとしては調査検討委員会に御検討いただいておる、そのケースの一人に入るということでございます。
  315. 高桑栄松

    高桑栄松君 そうすると、抗体が陽性であるかどうかわかってない。いかがですかね。
  316. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 抗体は陽性でございます。
  317. 高桑栄松

    高桑栄松君 わかりました。それならそれでいいんです。もう間違いないでしょうね。それが聞きたかったんで、厚生省はまだはっきりしないのかいなと僕は思ったんですが、まあ慎重なんですね。慎重審議をしておられて、亡くなってからわかるというのが慎重な結果なんでしょうか。まあ、それはよろしいです。  それで実は私、これは三月の質問のときに出たと思っておったんですが、そのときは軽くあれしたんですが、今回私の非常に親しいあるお医者さんから、息子さんが歯医者さんを開業した、エイズが非常に心配だと言うんですよ。それで、ぜひ厚生省にこれをひとつ質問の形で頼んでくれと、こう言われたので、私もとつおいつ考えましたけれども、職場エイズ感染というのは非常に重要であると僕は思います。これはB型肝炎の感染ということを考えますともう明快なんです。大急ぎで調べたんですけれども、歯医者さんはB型肝炎の感染率は高い。非常に高いですよ。それは一般にみんな知っています。データも私持っていますけれどもね。  要するに、職場感染で、医者の場合だと外科医、 婦人科医がそうですね、それから血液をとにかく扱うお医者さん、看護婦、それから技術者、みんな入ってきます。それで、注射針をうっかり——うっかり自分のところに刺すんですかね。それでB型肝炎に感染しているのがいっぱいあるんです。エイズに置きかえたらすぐわかります、エイズと同じなんですから。ただ、エイズビールスは抵抗力が弱いからそう簡単にはと言うけれども、簡単にはうつらないということは、逆にうつりますよということなんだ、絶対うつりませんと言っていないんですから。  ですから、歯医者さんはもう毎日の診療で大変なので、歯医者さんに対しては緊急を要すると思うんです。普通の医者はB型肝炎感染率が一般の人の数倍高いんです。ところが、歯医者さんはさらにその倍近く高いんだ。それはやっぱり血液を扱うこと、だあっと飛ぶということですね。これは大変なんですね。何か指示をちゃんとしておられますか。そういったことはどうなっていますか、歯科医に対して。
  318. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 私ども厚生省といたしましては、エイズ患者からの二次感染防止措置の内容を盛り込みました「発生時点における留意点」ということで六十年の七月、これは毎年改めておりますが、都道府県に通知をいたしまして各地域の医療機関に周知を図るようにしております。この通知は、日本医師会のほかに日本歯科医師会にも提供しておるところでございますし、本年の二月十四日に都道府県等の担当職員を対象といたしまして、エイズ対策に関する指導者講習会を開きましたけれども、その際に日本歯科医師会の代表にも参加をしていただいております。  一方、歯科医師会といたしましても、六十年の十二月の日本歯科医師会の「日歯広報」で、アメリカ歯科医師会がまとめました「歯科医療職におけるエイズ感染防止措置と対応」というものがございまして、それを翻訳、御紹介をしていただいているほか、六十一年四月と六月に日本歯科医師会雑誌でエイズの問題を取り上げていただいておりまして、エイズ感染防止措置の周知、啓発を図っておるというふうに私ども把握しておるところでございます。  今後も引き続きエイズの発生状況でございますとか、感染、発症メカニズム等についてその成果が出次第、その都度関係各団体の協力も得ながら、そのようなことで感染防止の徹底に努めてまいるというふうにやってまいりたいと考えております。
  319. 高桑栄松

    高桑栄松君 具体的にどういう指示をされたか、何が必要かということを本当は伺いたいのですけれども、時間の都合もありますし、あと研究体制のことを伺いたいと思っています。  通知をされたということは承りました。しかし、末端では知らなかったということも今申し上げたと思うんです。知らないからそう言っているんです。  それから、私は北海道大学の歯学部の教授とディスカッションをいたしました。プロフェッサーも青くなっていました。私とのディスカッションをしてどういう対策が要るかということを、これは私と歯科の教授との間のディスカッションでこんなことが要るんだということを考えた項目を申し上げます。御参考にしていただきたい。  歯科関係は、急いでこれやっぱり講習会を開いてやった方がいいと思います。そして、これに必要な助成金は出してもらわないと困ります。というのは、一つはB型肝炎と同じ扱いですよね。そういうふうに通知しているはずです。B型肝炎と同じように予防措置をとれということです。ただ、B型肝炎は百二十度以上で熱しないと死なないけれども、これは百度ぐらいで死にますから、殺菌されるから消毒の内容が違いますが、消毒を怠ったら完全に危ないということです。それで、ディープキスでもうつると言っているのに、口の中をがあっとやって血が飛び出ているんですから、これでうつらないわけがないんです。ですから、B型肝炎の感染率が歯医者さんは高い。それでしぶきが、こうやるんですから、ドリルというのですかね、こうやるわけですから、だあっと飛んでいますものね。ですから、あれが歯医者さんに入ったらやっぱり一〇〇%うつらないということはありません。  これはどうするかということで、ウイルスですからマスクはだめです。ですから、そこで我々考えた。作業盤のプラスチックの透いて見えるやつを置いておいて、少なくとも直接のやつはみんなここにぶつかって、そういう操作ができる、これが要るんじゃないか。これが一つ。  それから、ドリルの消毒はしなきゃだめですね。そうすると、百二十度以上というのは西独製しかない。僕は見せられた。百三十と百五十と書いてあるのは、ここまでの度数がいいということを示している。乾熱滅菌です。そうすると、B型肝炎は死にますけれども、しかし、百度ならば普通のものでもいいという場合に、百度でも一回ごとに消毒しなきゃだめなんですから、五回やってからやめるなんというとだめなんですからね、誤解なさらないようにしてもらいたいんです。毎回やるんです、毎回。そうすると、百度の沸騰、例えば五分なら五分、安全率で見ますからね、エイズの場合は二十分入れたいと思うんだな。そうすると、やっぱり材質がだめになるそうですよ。だから、それならそのような材質を改良していかなきゃだめだ。すべての人に一回ずつ消毒することを確実にやらせなきゃ危ないということです。  そして、患者から医者にうつるだけじゃないんです。お医者さんがこれで、注射針も同じなんですけれどもね。今、医者側の針は全部使い捨てですから、針でうつるということはあり得ないんです。ただ、間違って刺したときに医者がうつっている、看護婦がうつっている、そういう事故というのはかなりあるんですね。数字見て驚いたです。かなりある。B型肝炎です。しかし、今度はエイズですから、針刺したらやられますよ。エイズ感染者から注射針を抜いて、自分がうっかり間違って刺したらうつりますね。これはうつる。ですから、歯医者さんの場合はそうでなくて最初からこうやっているんで血が出ているわけで、血だけじゃなくて唾液にもウイルスがありますから。  それから、もう一つは、全体の換気が要ると思います。だって、そこにいるお医者さん、看護婦さん、歯科衛生士、待っている患者にもみんな濃厚なウイルスの飛沫が飛んでいるわけだ。乾燥したらうつらないんじゃないかと思います、文献によると。しかし、生々しいしぶきが飛んだらどうかな。ディープキスと変わりないんじゃないですか。そんなことでもし万一ということがあって、一〇〇%うつらないと言わない限りは消毒もばっちり一本ずつ、一回ずつやるということです。それから、換気は上から空気を入れて下から抜けば、呼吸線のあたりはいい空気が入ってきて悪い空気が下へ行く分には感染の可能性が減りますから、それは全体ですね。  もう一つは、歯医者さんと患者さんのところの局所換気が要るんですよ。労働省でやっていますね。もうそこで粉じんが飛ぶところは、そこにカバーをかぶせて局所換気をやっていますから、そこから飛ばないようにしているわけだ。だから、患者さんをすっぽりかぶせて局所換気をやる。いや、それは私今冗談に言ったんですが、何か方法があると思います。そうやって患者さんから出てくる濃厚な飛沫は局所換気で取る。そこからはみ出たものがあるから、それは上から空気を入れて下から抜くという方式をとる。その空気を外へ出すわけだ。本当は心配ですけれども、多分外へ出て乾燥したらうつらないんだと思います。いわゆる空気感染はしないと言っているのはそういう意味です。でも、濃厚なしぶきは私はうつると見るのが本当だと思います。  そのあとはどういうことだったかな——例えば北海道ですと、上から入れて下から捨てていったら、もう毎回マイナス五度ぐらいの空気が入ってくるわけだから、暖房大変だと言うんです。暖房料を少し追加してもらわなければ困ると言っていましたよ、歯医者さん側は。うん、そうだなと思った。しかし、医者と患者の感染、それから患者から医者、医者から患者への感染を考えますと、これは職業病感染としては私は歯医者さんというのは緊急だと思います。非常に緊急を要するんではないかなと思うんですね。  ですから、これは私、今私の得た結論を申し上げましたから、それを参考にしていただいて、日本歯科医師会あるいは歯科の大学の先生方と相談をされて、緊急にできるだけの対策を立てていただきたい。  もう一つありました。ゴム手袋をアメリカでは何か歯医者さんにはもう指令を出して、ゴム手袋をはめさしているそうです。それは傷がついていたら歯医者さんにうつるんですから、歯医者さんが自分の感染防護のために手袋をはめる。それから、一遍ごとに捨てなければだめです、それを使ったら別な患者さんに今度うつすわけですから。ゴム手袋を一回ずつ捨てるわけだ。そうしますと、このゴム手袋というのはやっぱりコストになるわけですから、だから歯科の点数考えてもらわなければ先生方困ると思うんです、それはしかと申し入れますから。だから、それはやっぱりそうしてもらわなければ困る。  それから、ゴム手袋ではできませんと言っていた。私たちは非常に微妙な感覚なんですと言う。うまいこと考えたらいいと思うんですよ。非常に薄いやつね。非常に薄くてぴったりして、しかも破れないやつ、破れたらだめなんだから。コンドームだって同じですよ、破れたやつ使ったらだめなんですから。ですから、ああいう技術があるのだから、あれに匹敵する、〇・〇何ミリだか忘れましたけれども、そういうちゃんとしたゴム手袋を開発して、歯医者さんには特別にコンドームよりもっと薄くて、ちゃんと丈夫で、そして診療には間違いなく使えるというものを開発させて、そしてそれを使わした方がいいと思いますよ。大事なことなんです。それで、その手でまたほかの人をやったらうつりますから、全部捨てるということです。これはアメリカでは指示しているそうです。日本ではもうちょっといい手袋を開発した方がいいと思います。  この前、エイズ研究を急げ、治療を急げと申し上げたのは、感染をした人が、キャリアがいつ発症するかという不安を目の前に置いている、そして今は治療も予防もないと言われたんでは救いようがない。だから、せっかく権威の人の論文を読みますと、ワクチンはなかなか開発は難しいようだが治療には望みがなきにしもあらずだと。我が国は治療にやっぱり全力を挙げて研究に取り組んでもらいたい、こういうことを申し上げたら総理大臣は、金は幾らでも出す、ただ体制を整えろと言われました。これについて、これを受けてどう考えておられるのか。厚生省当局のお話と、厚生大臣、ひとつ締めていただきたいと思います。
  320. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 前回の予算委員会先生からも御質問いただいたわけでございまして、それを受けた形で、私どもとしてもエイズ対策についてはさらに前向きに体制を進めてまいりたいということで現在やっておるところでございますが、総理もお触れになった研究体制についてでございますけれども、私どもといたしましては、エイズの体系的な研究を推進していくということの必要性を十分認識した上で、今月中にもエイズの対策専門家会議という会議を持ちまして、エイズ対策全般についての見直し、さらには研究の方向についても御相談をするということで現在準備をしておるところでございます。  同時に、研究費でございますけれども、御指摘のように、治療法等の研究の緊急性は非常に高いということで私ども判断しておりまして、今年度内にも厚生省の研究費の増額を図る、あるいは各方面とも協議をいたしまして、緊急的な研究についての研究費の増額を図るように現在協議中でございます。  今後とも、御指摘のようなエイズにつきましては非常に問題のある疾患でございますので、十分な予防対策等について万全を期してまいりたいと考えております。
  321. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 高桑先生の所属されます公明党におかれましては、竹入前委員長を先頭に、党を挙げていろいろお取り組みをいただき、また参議院におきまして、高桑先生を中心に皆様方から大変貴重な意見をいただいたり、また御支援をいただいたりいたしてまいりましたことを御礼を申し上げたいと思います。おかげで、この十一月から全献血血液の抗体検査を行うという体制をしき、それなりの充実へ向かって努力をいたしておるところでございますが、今御指摘のありました歯科の問題等、いろいろお聞きをいたしますと、大変難しいというか、恐ろしいお話だと思います。しかと承りましたので、専門家方々にも御協議をいただき、これに対応できるようひとつ研究をいたしたいというふうに思います。  またこのエイズ全体にわたる研究につきましても、研究費の増額について、ことしは年度内でもう幾らもない時期になっておりますけれども、厚生省の研究費や、また関係省庁、科学技術庁や文部省等にもお願いをして、研究費を回していただくというような措置もとり、飛躍的に研究費をふやして充実をいたしてまいるという方向で最善の努力をいたしたいと考えております。
  322. 高桑栄松

    高桑栄松君 ありがとうございました。
  323. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、これから老人保健法等改正案について御質問をさせていただきたいと思います。  この老人保健法が制定をされました四年前の本委員会におきまして、私は老人保健法の基本的理念が持つ問題の重大性というものを論議をしてまいったのでございます。それは、憲法二十五条は、社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上及び増進に努めるべき国の責務を定めておるところでございます。また、老人福祉法は、第二条において「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする」と「基本的理念」でうたわれております。  ところが、四年前にこの老人保健法が出てまいったわけですが、老人保健法の基本理念というのは、自助と連帯の名目で、平たく言えば自分の健康は自分で守れ、老人医療費は国民が連帯をして負担をすべし、こういうことで、憲法二十五条も老人福祉法の理念もないがしろにするような理念を持ち込んできた。そして老人医療の有料に踏み切った。この点が四年前に論議をしたところでございました。  今回も、お年寄り医療費などの自己負担をさらに押しつける。それだけではなしに、一層国民に多額の負担を押しつけて、その一方では、国の負担は着実に減らすという今回の改悪の内容。まさに自助と連帯などという理念で進めてまいりますと、ここまでくるんだなということを示しているように思うわけでございます。大臣、どうですか。私四年前にこの問題の論議に参加をして、今回のこの審議に参加をして感慨無量の思いです。御見解を伺いたい。
  324. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 老人保健法は、ただいま御指摘がございましたように、その基本理念として、国民は自助と連帯の精神に基づいて、みずからの健康の保持増進に努めるとともに、老人医療費を公平に負担するものとしているところでございます。老人保健制度は、この基本理念に基づきまして、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図ることにより老人福祉の向上を図ることを目的といたしております。  今回の改正が、これから迎える本格的な長寿社会の到来を控えて、世代間や制度間の負担の不均衡を是正し、長寿社会にふさわしい公平な負担のシステムを確立をしようというものでありますので、老人保健制度の長期的な安定を図って二十一世紀において安心して老後を託せる制度を確立するというものであり、健全で安らかな生活を保障するという老人福祉法の基本理念にも沿うものと考えております。
  325. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣はそれを言わなきゃしようがないわけですがね。しかし、今回の改悪によってそれぞれの負担がどういうふうに変わるのかということを見ますと、お年寄り負担というのは、現行では六百十億円です。これが約二千億に引き上げられるわけでしょう、修正があって若干下がるでしょうけれども。それから被用者保険の負担増というのは、加入者按分率の変更ということで三千億余りですね、満年度にしたら。その一方で、国庫負担は二千五百五十億も軽減をされる。これは修正があって若干の細かい変化はありますよ。世代間の公平とか制度の長期的な安定などとなかなかうまく言うているわけですけれども、どんなに理由づけをしてみても、結局のところはお年寄りと現役の労働者である働く国民に負担を押しつけて、そして国の負担を減らす、これ以外の何物でもないということが数字は冷厳に示していると思うわけでございます。これが政府厚生大臣の言うまさに国民同士が支え合う連帯の姿だろうかと思うんです。  これは、大臣に聞いたら、また同じことを言うと思うから聞きませんけれども、本当にこんなことが、まさに世代間の公平だとか国民の連帯の姿などと言って押しつけて、国民が納得するだろうか。これはよく考えていただきたいと思うんです。御見解があれば簡単に聞きます。
  326. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) この老人保健制度というものが昭和五十八年の二月から発足をいたしたわけでございますが、その当初、創設をいたしますときの考え方は、これからのお年寄り医療費をどのように支えていくか、国民全員でこれを支えていく、そういう考え方に基づいてこの制度を発足させよう、こういう基本的な理念があったわけでございます。  それを実現するためには、国民皆保険という中で国民が分立します幾つかの保険に入っていただいている、その入っていただいている保険によってそれを拠出をしていただいて、そして負担をしていただくということがいいのではないかということで始まったわけでありまして、医療費按分率と加入者按分率という概念があり、これをまあ五対五ということで、国会の修正もあって発足をいたしたわけでありますが、当初からその理念の最終的な考え方としては、加入者按分率を一〇〇%にするということによってすべての国民が均等に負担をするという理念につなげていこう、こういうことであったと思うわけであります。今回、そういった形の中でその考え方の徹底を図っていただく、こういうようなことになるわけでございます。  ただ、御指摘をいただいております、国庫補助が削減をされているではないかという御指摘でありますが、老人保健制度に対する国庫補助は二割でありまして、県や市町村を足しますと、公的負担三割というものにつきましては変更をいたしていないわけでございます。ただ、これまでのその保険者の負担の中で、特に国民健康保険などはお年寄りの加入率が非常に高いというような格差があったわけでありまして、これを均等に負担していただくということによって国民健康保険の負担が軽くなる。その国民健康保険の拠出金につきましては五五%の国庫補助をしておりますので、その国庫補助が結果的に少なくなる、こういうことになるわけです。  一方におきまして、政管健保におきましては国庫補助がふえるということになるわけでございますので、単純に国庫補助を削減するためにこのようなことをしたというよりも、先ほど来申し上げておりますように、いかにして公平にみんなが負担をしていただけるようにするかということで、加入者按分率を一〇〇%に段階的に持っていっていただくということのお願いをいたしておるわけでございます。
  327. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、たまたま国の負担額が減っただけやとおっしゃるんでしょう。だから、私は客観的に、数字はこうなるじゃないかということを申し上げた。そんなことをやりとりしてもしようがないので、どんなにうまいこと説明しても、今度のこの老健法の改悪、国民の各階各層から今度ほど反対の強いことはないじゃないですか。例えばね、参考人なんかを選ぶいうたって、賛成の団体選ぶ方が難しいですよ、反対の団体はいっぱいあるけれども。まあそれは余談だけれども。だから、例えば老人クラブとか、日本医師会だとか、健保連だとか、経団連だとか、そういうようなところの反対理由何ですか、簡潔に言うてください。
  328. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これほど反対の強い法案はないというふうにおっしゃられましたが、すべての方がこぞってすべて反対をされているというものではないということも御理解をいただきたいと思います。  といいますのは、この改正の大きな柱といいましょうか、幾つかのポイントを挙げますと、加入者按分率を一〇〇%に持っていっていただくという点、第二点は一部負担を改定していただくという点、第三点は老人保健施設を創設さしていただくという点でございます。そういう三点について、ある団体は一つに対しては絶対反対だが、二つに対しては賛成だとか、ある団体はもう一つについては反対だが、一つについては賛成だというふうに、いろいろそれぞれのお立場の方によって賛成、反対が入り乱れているという表現が正しいかどうかわかりませんが、非常に複雑になっておるということは事実でございます。押しなべて、すべてに対してすべての方が反対しているということではないということも御理解をいただきたいと思います。
  329. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それは市町村長会賛成してますわな。国保中央会も賛成してますわな。しかし、賛成している国保中央会だって、国庫負担ふやせという御意見がついて出てきておりますわね。しかし、全国老人クラブの副会長の太宰博邦さんでしたか、厚生省の御出身の方ですね。その方でも、これは私は朝日の「論壇」で拝見したけれども、もっぱら国庫負担の削減をねらった今回の政府案は到底納得できない、こうおっしゃっているでしょう。まさに各界いろんな意見が、反対のニュアンスも、あるいは反対のお立場も、御意見の違いはありますことは私どもよく承知しておりますが、しかし国庫負担の削減のために国民各層に痛み分けで痛みを押しつけてきているというやり方をしているから、国民各層の反対が多いんですよ。  ここを受けとめなかったらだめだと思うんです。だって、経団連も反対、あるいは健保連も反対、そうでしょう。いわば各階層総スカン食らっている、そういうことなんですよ。それは私どもなんかにも賛成でお話しに来られるのは、確かに市長会などは来られます。しかし、国がもっとちゃんと補助金をもとへ戻してくれたらもっとやりやすいのにと、こう言うてますよね。だから、そういう点は、総スカンの形になってきているんだということをやっぱり考えてもらいたい。  お年寄りと国民にだけ負担かけて、国の方はたまたま減ったのか減らしたのか知りませんが、負担が減ってほくほくと、こういう結果をつくり出すということになったら、これはやっぱり財源対策をやっているとしか思えないです。財源対策を老人対策に押しつけるというんじゃなくて、むしろ老人対策を充実するためには、それは十八兆四千億も先取りをして決めておるような防衛費を削ってお年寄りに回すというようなことが考えられないだろうかということを感じますよ。どうですか、大臣
  330. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 賛成、反対のことでございますが、先ほど申し上げましたように、ある団体は三つの点について賛成をしていただいているところもあります。ある団体は一つは賛成だが、二つは疑問があるという団体もございます。ある団体は二つについて賛成だが、一つについては反対だというふうなことにもなっておるということでございます。  今防衛費との関係をおっしゃられましたが、私は防衛費の方の所管大臣ではございませんけれども、やはり国務大臣といたしまして、国民の生命と財産を守るためには防衛費も大事であり、また老人保健に対する医療費も大事であり、いずれも大事なものであるというふうに考えており、私は社会福祉なり厚生省を担当する大臣といたしまして、こういった社会保障関係予算の充実に全力を挙げて努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  331. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 長寿社会がどんどん進むと老人医療費はどんどんふえて、何とかしなくちゃならない。だから世代間の公平だとかいうようなことを盛んにおっしゃる。しかし、大臣を初め政府関係の皆さんの言い方を聞いていますと、まるで長寿社会になることが迷惑な感じ、長生きをしたお年寄りが肩身の狭くなるような思いがする。こんな言い分はやっぱりやめなきゃならぬと思いますよ。逆に言うたら、長寿社会の反対いうたら何ですか。短命社会ですよね。短命社会を生み出す原因というのは一体何です。これは、言わずと知れた戦争と貧困、そして病気。戦前の我が国の歴史を振り返るまでもなく明らかです。長寿社会を大切にするためには、戦争の準備にお金をどんどん使うというんじゃなくて、医療に回して社会進歩に寄与していくということが、やはり人間社会の社会進歩を保障していく道だと思うんですよ。  先日、これたまたま朝日新聞の「天声人語」に出ていたんですが、「世界の軍事費が年間で九千億ドル以上に達した」、「まもなく軍事費一兆ドル時代を迎えるだろう」と。一兆ドルというたら、日本の今のドル換算でも百六十兆ぐらいでしょう。さらに、その中にこう書いてある。「年間五億ドルあれば、とユニセフが訴えている」。五億ドルというたら日本のお金で約八百億ですね。「ハシカ、破傷風、百日ぜきなどの予防接種をうけられずに死ぬ約三百万人の子を救うことができるだろう」、こう言っている。しかし、「兵器文明は幼い命を切り捨てる」。これは「天声人語」の文言ですけれどもね。  私は、人間社会が本当に社会進歩と人間の幸せを考えていくためには、やはりこのことを考えることが論理にかなった道ではなかろうかと思うわけでございます。あんまり難しいことを言うてもろたら困るから、これは御答弁聞きませんがね。  そこで、次にお年寄り負担になります六百十億を二千億にも一部負担をふやそうということになっております、この一部負担についてちょっとお聞きをしておきたい。  国民生活実態調査によりますと、政府がおっしゃっておるのは、平均的な所得は十一万四千円もあって無理なく負担できるんだ。今度の一部負担の引き上げは無理なく負担できるんだと盛んにおっしゃるし、書いても宣伝をなさっておられます。本当にそう思っておられますか。
  332. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の引き上げが老人世帯にとって無理なく負担できるかどうかというお尋ねでございますが、私どもとしては現在の老人の所得の状況、これは統計ですから間違いなく正確に出ているものと思いますけれども、若い世帯もお年寄りの世帯も一月当たり約十一万幾らというぐらいのレベルでの所得の状況になっておる。あるいは年金の水準、そういうことから見ましても、今回の一部負担程度であればやはり無理なく負担お願いしていただける額ではなかろうか。そして、私どもとしては何よりもお年寄りに払いやすい定額制等を維持しておるわけでございますから、そういう中で老人医療費が年々増加をいたしております、四兆円台に今なっておりますけれども、毎年一〇%ぐらいの伸びを続けておりまして、四千億あるいは五千億の大きな増加額を示しておるわけでございますから、お年寄りも若い世代と力を合わせてこの伸びていく老人医療費を支えていただくという観点も大事であろうと思うわけでございます。  したがって、金額的にも、そういう世代間の公平という点も御理解いただいて、お年寄りにも今回の引き上げはぜひ御理解をいただきたいものと考えておる次第でございます。
  333. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 あなた方は、十一万四千円の平均所得があるから無理なく御負担いただけるであろうと言うんですが、同じ政府の統計でも暮らしが大変な老人世帯がたくさんあるということが出ていますね。  例えば、老齢年金の受給実態を見てみますと、これは国民年金の老齢年金をもらっている方が二万七千円台、これが六百五十二万人ですね。それから、老齢福祉年金は、これも二万七千円台で百八十四万人。厚生年金の通算老齢年金をもらっておられる方が百九十万人。この方々もやっぱり二万七千円台です。それから、国民年金の通算老齢年金をもらっている方が百三十万人おられますが、一万円台ですね。厚生年金の老齢年金で平均十二万円台をもらっておられる方、この方々は三百一万人です。  つまり、今申し上げた中の厚生年金の老齢年金の十二万円台、三百一万人を除きました千百五十万人が年金は三万円以下です。しかも、これは政府統計ですよ。千四百五十万人の今の年金受給者のうち四一・九%、六百十万人が年金が所得のすべてを占めているという実態が出ています。お金持ちを含めた平均では、確かにその数字で言うたら十一万四千円でうまくいきそうに見えますが、平均以下の暮らしのお年寄りたちがかなりたくさんおるということを忘れてはならない。  私は、本会議でも申し上げましたけれども病院に百円玉四つ、そのお金が温かくなるまで握り締めて持ってくるお年寄りの気持ち、こんな事態が起こっているというのが現実なんです。これは作り話じゃないんですよ、事実なんです。  私ども医者仲間が会って話し合ったときに、こういう意見が出ました。月末に百円玉四つをぎっちりと温かくなるまで握り締めて持ってやってくる。二回目お越しになったら、月がかわっていて、また四百円払わんならぬ。やっぱりもう一遍百円玉を四つ握りしめて持ってこられる。この姿を見たら、本当にこれをもらわなきゃならないんだろうかというふうに思いますよというのが、これはお年寄りの心情を察しての診療担当者の医師意見ですよ、私申し上げているのは。だから、こういう状態があるんだということを、厚生省やっぱり御認識にならなきゃだめですよ。  ところで、老齢福祉年金はこの四年間に何%上がりましたか。
  334. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 五十八年度から六十一年度で申し上げますと、八・四%だと承知をいたしております。
  335. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 国が支給する老齢年金、老齢福祉年金、四年かかって八・四%のアップでしょう。ところが、医療費の一部負担は、外来で今度の修正案だって二〇〇%、入院だと一年間入院したら一〇〇〇%、十倍の値上げ、これはどう考えても理解できない。私どもの身近におられるお年寄りがこう言いましたよ。もらう方はさっぱり上げてもらえないのに、取られる方はどうして一遍に二倍半にも十倍にも引き上げられるんですか、あんまりやり方酷じゃないですかというのがお年寄りの叫びですよ。  だから、六百十億の一部負担金を二千億まで引き上げるという、財政上の事情からだけの理由でお年寄りにこんな苦しみを押しつけるやり方、こんなことはやめるべきだと思うんです。  それで、関連して聞きますが、このような大幅な負担増を強いるに際して、厚生省は老人老人団体の御意見をお聞きになりましたか。聞いてないでしょう。
  336. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私どもは今回の引き上げに際しまして老人保健審議会というところに事前に意見を聴取をいたしたわけでありますけれども、その際はやはり定額でのある程度の引き上げはやむを得ないという御意見をいただいた上、さらに今回の案を固めまして老人保健審議会に諮問したわけでございます。当然その審議会老人クラブの代表の方もおられるわけでございますから、当然ながら反対の意見表明があったわけでございますけれども意見は聞いておるつもりでございます。
  337. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、審議会やら何かで聞いているけれども、厚生省がお年寄りにアンケートをするなり直接調査をして聞いたかと言っている。やってないでしょう、どうなんですか。
  338. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 直接老人の方にアンケートその他によりましてお聞きしたということはございません。
  339. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私はおかしいと思うんだな。関係者の意見をお聞きになるというのは当たり前じゃないですか。国民大衆、関係者の御意見も聞かずに厚生省がやりたいことを勝手にやるというようなやり方は、大体民主主義のルールに反すると思いませんか。反対が起こるのは当たり前やないか。それで全国老人クラブの代表で出ておられる太宰さんも御反対じゃないですか。さっき私申し上げたから繰り返しません。  これは御存じないと思うのでちょっと紹介しますが、尼崎医師会が市医師会として老人医療についてのアンケート調査の集計をなさっている。簡潔に言いますが、通院の老人を抱えている御家族と、寝たきり老人を直接介護している御家族の方にアンケート用紙を渡したというんですね。回収総数は九百十二人なんです。この一部負担についてはどうだというところで、毎月の治療代の支払いについてはどうかというと、全体の五八%は本人が払っていると。介護を要しないお年寄りというのは八〇%まで自分で治療費を払っているんだと。だから一部負担を千円に引き上げるということについては反対、困るというのが五六%で一番多いです。次いでもとどおり無料にしてほしいというの二六%で、合わせて八二%。どうしても値上げをするんでも、負担額は五百円が断然多くて七三%。それ以上はかなわぬ、こういうふうに答えられている。  ですから、こういう声を本当に率直に御調査されて、くみ上げられるということになれば、そう無理なく御負担をいただける金額でございますなんて、そんな単純なもんじゃないですよ。そういう点はひとつ十分つかんでもらいたいと思うんですね。  私、その問題に関連してもう一、二聞いておきたいと思いますのは、四年前の老人医療費有料化の論議のときに、四百円を一部負担にする理由にこない言われたんですね、お年寄りの健康の自覚料やと。もうありありと覚えていますけれどもね。お年寄りは自分の健康を自覚しないというようなことはないんですけれども、自覚料に四百円もらうんやと、こう言うた。今回は二倍半を提案されたんですけれども、お年寄りの健康の自覚は二倍半にも引き上げぬと進まないのか。そんなことになるやないですか、論法としては。どうなんですか。
  340. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健制度が創設されました際の一部負担考え方でございますけれども、健康への自覚を持っていただく、それから適正な受診をお願いする、あるいはもう一つはこの制度に老人も参加していただく、そういう意味で、大臣も三代ぐらいかわっておられるんですが、いろいろニュアンスの差はあるんですけれども、それぞれの御見識を述べられていると承知をいたしております。  今回の引き上げの考え方でございますが、もとより老人保健制度の一部負担というのは、創設の理念であります適正な受診をお願いする、あるいは健康への自覚を持っていただく、そういう観点も忘れているわけではございませんけれども、何度も申し上げておりますように、世代間の公平ということから、今回は主としてその観点から引き上げをお願いしているわけでございます。  設立の当初は、健保本人は初診時一部負担ということで八百円であったわけでございますけれども、その健保本人の負担も今は一割負担となっておるわけでございます。そういうことから、現在の老人負担老人医療費の一・六%ということになっておりまして、例えば健保本人の一部負担と比較しますと約六分の一、国保の一部負担と比較しますと十四分の一という形の負担の割合になっているわけでございますから、これからの高齢化社会を控えまして何としてもやはり若い世代とお年寄りの世代も力を合わせてこの制度を守っていくという、そういう観点でお願いをせざるを得ないということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  341. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それはあんた、御理解できへんがな。物価は何も一遍に二倍も十倍にも上がっておらぬですし、年金の引き上げ率は四年間で八・四%ですしね。健康の自覚料やいうて取るようになった四百円、一遍に千円やいうてみたところで、そない取らなんだら自覚が高まらぬのかと言ったら、いや今度はそれと違う。そんな勝手なことありますか、本当に。勝手過ぎるよ、あんた。そのときそのときで都合のええことばっかり言うて国民に負担を押しつけるというやり方じゃありませんか。  それから、適正な診療のためというのも言うとる。これは今度も言うとる。この問題は前回も相当論議をしたんですが、お年寄りが自分の健康に気を使ってない人ないです。これは私ども自身でもそうですわ。三十代、四十代のときに自分の健康に気を使った感覚と、今日六十になって、六十を超したら健康についての意識というのは全然違いますよ。これはすべてそうなんですよ。自分の体のことは年がいくに従ってみんな自分で気をつけていますよ。ちょっと頭が痛いから、ちょっとのどが痛いからいうて病院へ行っているかって言うんです。そんなもんじゃありませんよ。ちょっと頭が痛いけれども、ちょっと横になっておったら治るかなと。繰り返しどうもぐあいが悪いからやっぱり行こうかなということになるんですよ。私ども患者さん診ていても、ようこない、はしがこけた、茶わんが欠けたいうて病院へ飛んでくるなんて人はいませんで、ほんまに。そんな暇はないんやから、実際には。  そこで、厚生省の言う適正な医者のかかり方というのは一体何を言うているのかということを、きょうは大分たくさん傍聴の皆さんもおいでだから教えてあげてください。わからぬです。適正な診療、適正な受診、適正な医者へのかかり方というのは、厚生省の御見解はどういうことなのか、一遍お年寄り方々に説明していただけますか。
  342. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) それぞれの病状に応じまして最も適切と思われるお医者さんに診てもらうということだと思いますけれども、制度創設のときの私どもの申し上げました適正な受診のお願いというのは、制度創設のときにいろいろ御議論がありましたように、お年寄りが、ごく一部ではあったんでしょうけれども、やはりはしご受診あるいは病院にたくさん詰めかけられて病院がサロン化しているという批判がたくさん出ておったこともまた事実でございます。  そういうことから、私どもやはりお年寄りに適正な受診というのは、行き過ぎた受診はお控えいただきたい、こういうことから一部負担が創設されたと承知しているわけでございまして、適正な受診の内容というのは説明しにくいわけでございますけれども、やはり行き過ぎた受診というものは自覚していただいて、適正な受診のビヘービアにかかっていただきたい、こういうことだろうと思います。
  343. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 聞いていた人わかりましたかな。さっぱりわからぬ。いろいろおっしゃるけど、結局のところ財政対策で老人医療費を減らすためにお年寄りの受診を減らそう、お年寄り病院へ行くのをちょっと抑制しようというねらいがあって負担を引き上げるんやなというふうに思うんですよ。そういうことになると、貧しいというかな、やっぱり所得の低い人、そして中でもいろいろ病気を持っていて幾つかの病院へかからなくちゃならない人、こういう人に一番しわ寄せいくんですね。  こんなことをやったら、これは所得の低い人や体が弱くてあちこちかからなしようがない、どうしても内科へも行かないかぬ、外科へ行ってリハビリも受けないかぬ、歯科へも行かないかぬ、目もぐあいが悪い、そういうのあります。そんな人ほど行けなくなる。だから、こういう力づくの抑制ではあかん。厚生省もちゃんと方針出しておるんやけど、基本的な方針とやることが違うんですが、やっぱり疾病というのは早期発見、早期治療、このことが一番受診抑制になるんですね。受診はふえるかもわからぬけど、医療費は減るんですね。  これはさっき高桑先生も北海道の例をお出しになってお話がありました。これはよく言われる岩手県の沢内村の実例がそうですね。岩手県の沢内村では予防、保健活動を重視して医療をずっとやってきた。だからお年寄りがふえて、そして一人当たりの受診率はふえたんですね。あそこは三十五年以来無料なんやな。だから、それこそ調子が悪ければ病院へ行くから早期受診、早期診断、結局早く発見して早く治療をするということになって、だから医療費はどうなっているかといったら、一人当たり老人医療費は沢内村では二十九万六千円ですね。全国平均では四十六万九千円ですから三分の二以下になっているでしょう。冷厳な事実ですよ。  それは一千方も二千万もかかるような重症の手術、がんだとかの手術をするということじゃなくて、もっと早期に発見して早期に治療するということであればそんなに費用がかからなくても治療ができるということになるわけで、その方が結局村民の健康は守られる。そして医療費も安くつくということを沢内村の実例というのは明確に示していますね、長い歴史によって。  ですから、私は、この沢内村の例を一つ見ても、こんな一部負担金を引き上げてお年寄りいじめをするんじゃなしに、少なくとも医療費はもとの無料に戻すべきだと、それがあなた方が考えている健やかな老人の健康状態をつくっていく上での一番近道だということを沢内村の実例は示していると思うんですよ。どうですか。
  344. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 沢内村の例は私どもも十分承知をいたしておるわけでございまして、立派な業績を上げられていると承知をいたしております。ただ、非常に特殊と申しますか、一定の限られた地域の中でそこに占める公立病院が主として機能されているケースでございまして、それ以外の地域においてはああいう形でうまく健康管理ができるかどうかというのは大変難しい面があろうと思いますけれども、やはり予防なり健康管理を徹底すれば、おっしゃるような効果は上がるものだと思っておりまして、私どもとしても老人保健事業という形で、そういった健康診査なり健康教育なりを充実強化いたしておるところでございます。
  345. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから、話はわかっておるんやから、わかったとおりやったらいいと思うんだけれども、ヘルス事業はということになるんですよね。時間の都合できょうは遠慮します。  もう一つ、今度の老健法等の改正案の中で一番気になるのは老人保健施設なんですね。前回、四年前に老人保健法が制定をされた後でちょっと驚いたのは、これは国会に何にも相談せぬで、政令で老人病院というのがつくられたわけですね。さらに老人特掲診療料というふうなものが次々に出てきた。その結果どんなことが起こってきたかといいますと、本来どんな人でも保険の違いがあるから負担の違いはあっても医療給付には区別がなかった。それが日本の医療の水準であった。ところが、老人病院をつくり老人特掲診療料をつくり出して、年齢による老人差別、年齢による診療差別というのが持ち込まれるという事態が起こった。今具体的にどういうことが起こっているか。これは厚生省はよく御承知でしょう。私も調べてみて腹が立った。それほどひどいですよ。  どんなことが起こっているか知っていますか。老健法施行後持ち込まれた医療差別、一般病院の中でも六十九歳までの患者さんと七十歳以上の患者さんとでは部分的に診療報酬が違うんです。そういうことになっている。だからどういう結果になるかというのを少し説明しますがね。  私たまたまある患者さんの一カ月の入院、これは初診の月ですね。一カ月の入院の診療報酬を見て、それを七十歳以上の患者さんに置きかえたらどうなるかと調べてみた。そうしたら、同じ疾病で同じ検査をして、同じ注射をして薬を飲まして、三十日入院をさせたとしてみたら、六十九歳以下の患者さんだったら三十八万六千七百三十円なんですね。点数で言うたら三万八千六百七十三点。七十歳以上の患者さんは三十五万六千八百八十円、約三万円違うんです。これは不思議だなと思ってよく調べてみたら、年齢によって差別がやられている。これはひどいですね。注射から処置から検査からみんな年齢によって差別されている。これは七十過ぎたら怖いなと思っています。まともな治療をしてもらわれへんですよ。現実にそうなっているんです。  例えば、処置がどうなっているかと思って調べてみた。大体普通の処置は一般の人もお年寄りも一年以内やったら同じ点数ですわ。ところが、老人特有な褥瘡ね、床ずれと一般的に言う、その褥瘡の処置料を見てみましたら、あれはもういっぱいできるんですね。一カ所の人もあれば五カ所の人も六カ所も、その箇所数によって点数がみな決まっておるんです。十三点、二十一点、二十八点、五十六点、百四点、百九十点まで一般の処置料としては決まっているんですね。ところが、同じ一般病院でお年寄りが一年以上入院していたら、もうあなたは何ぼ褥瘡の処置をやってもろうても、一日二十一点しかやらぬと。二十一点というたら二百十円です。千九百円と二百十円の差別をするんですね。さっきから話の中で問題になっていた老人病院はどうかというたら、老人病院は初めから何ぼ褥瘡の処置を何カ所やっても一日に一回限りで二百十円。そういう差別をしている。  そして、もっとひどいなと思ったのは、目の処置だとか、耳だとか鼻だとか、口の中の処置をするというので、一般の病院の中で処置をしたら大体それぞれが百四十円、百円、百円、百円と処置料は決まっているんですわ。ところが、お年寄りが一年以上病院におってくれたら、これはもう何カ所やらはっても一日に百円しか渡しませんと、そないなっている。老人病院は初めからもう百円しか渡しませんと、こうなっているんですね。これはひどい。  それから注射もひどいんで、余り一つずつ言うていると時間がないんですけれども、とにかく同じ注射をやるのに、例えば点滴注射、一般病院で六十九歳までの人は七百五十円診療報酬が来ますね、病院へ。ところが、七十歳以上の人は一日に二百円。同じ薬を使うて、同じように注射をしまして、そないなっている。余りにひどい。老人病院ももちろん同じ。  検査もひどいです。検査は一般の患者さんで六十九歳までの患者さんなら、検尿も血沈も、便の検査も、簡易循環機能検査も全部含めまして百二十五点、千二百五十円払いますねん。ところが、お年寄りはどないつもりかしらぬけれども、これ何ぼやっても五百五十円しか払いませんと、こういうことなんですね。何でそんなことになってるのやいうて調べたら、いえいえ入院にはお年寄りの特掲点数というので優遇をしておりますから、これは丸めて五百五十円に減らしてますと言うんです。何ぼふやしているのかなあと思って、入院した日から二週間までの点数を見たら、一日三十円ふえておるのですね。二週間から一カ月までは一点ですから、一般の患者さんよりお年寄りの方が十円高い。一日三十円から十円高いので、検査は千二百五十円払うところを、同じようにやってもろうても五百五十円しか払いませんと、こないなってる。これはちょっとひど過ぎやしませんか。  これは言えばいっぱいあるんだけど、余り言うてると時間がなくなりますので、私はこういう医療という行為の中で年齢による差別を持ち込むというのは一体何だと。お年寄りを何と心得ているか。お年寄りの基本的人権も、尊厳も無視して、医療費の支払いということによって差別を持ち込んでいる。こういうことは断じて許せないと思うんですがね、どうですか。
  346. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人の診療報酬が一般の診療報酬と異なる点についてるる御指摘をいただいたと思います。老健法が創設されますときに、老人医療費老人の診療報酬をどうするかという点については、これはいろんな各方面からの御議論をいただいたわけでございまして、その結果として、創設時の法案が通りますときに附帯決議の形で国会の方で示されたわけでございます。老人の特性に応じて老人にふさわしい診療報酬をつくるべしと、こういう趣旨だったと思うわけでございます。  したがって、そういう老人の特性に応じた診療報酬をつくりたいということから、ただいま申し上げましたような老人特有の診療報酬をつくらさしていただいている点が一つ。それからもう一つは五十七年当時でしたか、いわゆる三郷中央病院事件というのがございまして、お年寄り患者を意図的に集めまして不必要な検査、点滴などの常識外の濃厚診療をしている、老人に薬づけあるいは検査づけをしているというようなことで大変大きな社会問題になり、国会でも再三取り上げられたところでございます。そういう諸情勢を踏まえまして、私どもとしては老人についてふさわしい、老人の特性にふさわしい診療報酬をということで中医協にお諮りして診療報酬を決めさしていただいておるわけでございます。  その考え方は、老人の診療報酬につきましては老人の心身の特性等を踏まえまして不必要な長期入院を是正し、できるだけ入院医療から地域及び家庭における医療への転換を促進するということが一つでございます。  二つ目には投薬、注射、点滴等よりも日常生活についての指導を重視した医療を確立する。投薬、注射、点滴よりも指導といったようなものを重視した診療報酬を確立するということでございます。  それから三つ目として主として老人のみを収容している病院、いわゆる老人病院でございますけれども老人病院につきましてはそれにふさわしい診療報酬を設定して医療の適正化を図る、そういった点を主なねらいにいたしまして老人保健の診療報酬が設定されておるということでございます。
  347. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 お年寄りの特性にふさわしい診療報酬とおっしゃるけれども、実際に私今申し上げたのは老人病院の話と違うのですよ。一般病院での差別を言っているのですよ。点数に開きがあるから、同じ病気で同じ治療をしても三万円からの開きがあるということを申し上げているんです。老人特有のものについてそれを削り上げるというようなことはお年寄り治療をさせないということじゃないですか。同じ病気であれば貧富の差による差別なんてなくさなくちゃならないということを理念として今日保険制度というのがここまで発展してきたんでしょう。それはやはり日本の医療保障制度の中の歴代の努力の水準がここまでやっと来たと思うんですよ。それを年齢によって特別な差別をするというふうなことは私はどうしても認めにくいですね。  これは長期に入院をされるというふうな方々で医学管理料を一年以上は減らすとかいうふうな問題とか、そういうところについては理解できないわけじゃありません。だけれども、入院して一カ月で六十九歳以下と七十歳以上を同じ治療をして違いがあるというようなことになったら大変です。病院治療していた患者さんが誕生日迎えたら、明くる日から七十歳になったということになったら変えないかぬ。そういうむごいことをやらしているんですよ。  私は老人の特性にふさわしい診療報酬だと言ってそれを振りかざしておられるけれども、現実にはこういうことになっておるということを申し上げたのはなぜかというと、こういうことが当たり前でまかり通ってしかも老人保健施設というものがやられていったら、これはきれいな建物かもわからぬけれどもうば捨て山のような扱いを受けかねないんじゃないかということを心配するから、今日でもこういうことが起こっているんですよということを特に申し上げておきたいわけです。  その点で、私はやはり今度の老人保健施設の問題は、前回の老人保健法が創設をされたときに国会に諮らずに政令で全部どかどかとつくった、実際。そうなんですよ、あれは全部政令ですわ。だから、審議していたけれども老人病院があんな格好になってくるというのは全然わからぬかった。わからぬのはあんたあほうや言われたらしまいですがね。本当にわからぬかった。今度も、これはもう衆議院以来各委員の御質疑を聞いておりますけれども、大事なところいうか具体的なところいうたら全部審議会の御意見を伺いましてと、さっぱりわからぬわけでしょう。審議会に諮って云々と言うけれども法律通してもろうたら相談してまた好きにやりますと言われたんでは、私ども国民を代表する国会議員の立場としては責任持てない。だからこの点についてはっきりしてもらいたいと思っているわけですよ。  時間の関係がありますから幾つかの問題についてただしていきたいと思います。  一つは、老人保健施設というのに高い自己負担がつきますね。入院料の一部負担の三百円が五百円になって、ずっと退院するまでやいうても大問題なのに、今度の老人保健施設では高い利用料を押しつけるんですね。だから医療の上で差別をされる。さらにまた、入院さしてもろうたらお金がたくさん要る。一体どのくらい取るんですか。
  348. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設につきましては、生活サービス相当と申しますか生活サービスにつきましては利用者負担ということで考えておるわけでございます。この考え方は、社会保障制度審議会の答申で、やはり生活費家庭療養しても必要な金であるから、新しく制度審議会提案しています中間施設においても生活費はやはり自己負担にするのが適当であるという見解が示されたわけでございますが、その方向に沿いまして生活費については利用者負担お願いをしたいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、在宅でもかかるような食費、おむつ代あるいは理美容代とか日常生活品費などについて利用者に御負担をいただこうと考えておりまして、そういう経費を平均的に積み上げますと五万円程度になるというふうに考えておるわけでございます。
  349. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間の都合があるから余り丁寧に答弁していただくとあれなんで、大概知っておりますので簡潔に御答弁お願いしたいと思います。  それで、その五万円というのは、法律で決めるわけやないんでしょう。施設の長が入りたい人と相談して決めるんでしょう。自由契約やというんですね。それなら青天井になるやないですか。それは青天井になるでしょう。だって、家はひとつええのを建てて、食事もちょっと上等のを食べさせます、だから、厚生省は五万円やと言うているけれども、うちは八万か十万やったらちゃんとやりますと言うて、結構ですと言うたら、それでええんでしょう。青天井になりますな。歯どめかけるんですか、かけないんですか。
  350. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先ほど申しました利用者負担につきましては、ガイドラインを示しまして、適正な利用者負担になるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  351. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ガイドライン決めたかて、そんな五万と言うているのに十万取ったから、十五万取ったからいうて罰則があるわけでも何でもないんでしょう。どないかするんですか。それはあんたのところ、ちょっと取り過ぎやと言うんですか。法律違反でもなかったら、ガイドライン決めただけで歯どめかかりますか。どないするんです。
  352. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 私ども考えといたしまして、そのガイドラインに沿いまして、利用者負担で求められる経費の対象はこの範囲であるとか、あるいは患者理解を求めるためのその利用者負担についてあらかじめ掲示をしているとか、十分説明するようにとか、至れり尽くせりのガイドラインをつくりたいと思っております。  青天井というお話でございますけれども、やはり対象経費、食費代とかあるいはおむつ代あるいは理美容代とかそういうものに対象を限りますわけでございますから、例えば医療費の一部を負担させるとかあるいは介護費なり看護費の一部を負担させるというふうなことは私どもは認めないつもりでございますから、青天井になるとは考えておりませんけれども、先ほど申し上げました経費について適正な利用料としてお取りいただくということでございまして、その適正な利用がさらに徹底するようにガイドラインで指導をしてまいりたいということでございます。
  353. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 罰則も法律違反もないんやからそれはとめようがない、実際はね。  例えば特養ホームへ入ったら、皆さんの先ほどからの答弁聞いても、調査資料見ても、平均一万九千円ぐらいの負担金でしょう。私の理解では、大体医療費の中での自己負担あるいは施設の徴収金というのは、大体徴収基準でちゃんと示されてもろうているんでしょう。取っているんでしょう。医療費の一部負担というのは我が国では法定制なんです。だから四百円を八百円から千円に上げるのに法律を国会へかけなんだら変えられへん。そうでしょう。それが原則です。それを勝手に何やらガイドラインつくって五万が七万でも構へん、それで十万になっても罰則もありまへんなんて、そんなこと、これは私こういう徴収基準とかあるいは患者負担の法定制の原則をつぶすものだと思うんですけれども、どうですか。
  354. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 大変答弁漏れをいたしまして失礼をいたしました。  ガイドラインの性格でございますけれども運営基準をつくることをこの本法に盛り込まさせていただいておるわけでありますけれども、その運営基準としてガイドラインをつくりたいということでございます。したがいまして、基準でございますから、それに違反しております場合には、もちろんいろんな改善命令とかあるいは最終的に取り消しの対象はなる、そういう性格のガイドラインだということで御理解をいただきたいと思います。
  355. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 書いてへんからわからへん。そこが問題や。私が言うた肝心のことを答弁せえへん。  その自己負担金、患者負担金、あるいは徴収基準というのは法定制なんです。その法定制をこんなガイドラインやなんやら言うて青天井にしてつぶしてしまうんですかと聞いているんです。
  356. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 医療につきましては、医療の一部負担でございますけれども、確かに法定でございます。これは医療の給付の一部を負担していただくという形で法定されておるわけでありますけれども、今回の老人保健施設につきましては、施設療養費という形で本人に医療費相当分を——医療費と申しますか、施設療養に要する経費を給付として全額見ましょうということでございます。したがいまして、その残りの経費については利用者負担になるということでございまして、そういう意味で法定をいたしていないということでございますが、その利用者負担については先ほどから申し上げておりますように、運営基準でガイドラインとして示しまして、適正な利用者負担になるように指導をしていくということでございます。
  357. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 さっきも大分やりとり、問題ありましたけれども老人保健施設というのはやっぱり医療の場なんでしょう。生活の場であると同時に医療の場なんでしょう。入れる人は寝たきり老人かあるいはそれに準ずる病弱な方を入れるんでしょう。それやのに何で食事は自己負担にしますのや。医療の中での食事というのはこれは治療食なんですね。だから、病院でちゃんと治療食としての経費の計算がなされているんじゃありませんか、診療報酬には。それに、今度は食事代は勝手に払えと言うんですか。これは医療の中の一部として位置づけるのかどうかということをはっきりしなくちゃいかぬと思うんです。どうなんですか。これはもう治療食と違うんですな。
  358. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 確かに病院でなされます給食サービス治療の一環という面があると思います。この老人保健施設につきましては、入院治療といったような性格医療を行うものではなくて、介護、看護面を中心にし、さらにリハビリを重視しながら医療ケアを行っていこうという思想でございます。したがいまして、家庭におられても必要である食費というのはこの施設においてもやはり出していただこうという考えでございまして、入院治療の終わった方がこの施設に入って家庭復帰を目指されるということでございますから、家庭におられても必要な経費でございますから御負担を願いたいものということでございます。
  359. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そしたらね、高血圧の患者さんも、あるいは脳卒中の後の患者さんも、肝臓が悪くて寝たきりに近い病気になっている人も、いろいろありますわな。それも食事の内容については一切知らぬと、施設では管理しませんということですか。減塩食を食べさせんならぬ場合もあるでしょう。糖尿のカロリーをちゃんと調整してやらないかぬ患者さんもおるでしょう。それはもう知らぬと言うんですか。
  360. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 食事サービスにつきましては、確かに治療という一環で出すわけではないわけでございますけれども、それぞれの入所されている老人にふさわしい給食がなされるように、私どもとしてはやはり給食面も生活サービスということでこの施設が提供していくサービスでございますから、その適正化はもとより指導していく事項だというふうに考えております。
  361. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうするとね、あんたとこは食事は家でも食べるんやから施設ではお金出してもらいますと。病人食あるいは治療食として出さなきゃならない患者さんについても、それらの食事を出したときには自己負担が、その手間代がかかるんですか。一般食で済まない入所者は食事代としてまた自己負担ふえるんですか。だれも管理してなんだらそういうことになるでしょう。やらぬのでしょう。家庭で食べている食事と一緒なんやから、みんな家でも御飯食べてんのやから、施設へ入ったかて御飯食べんのは一緒やから金取るというんでしょう。  病院では治療食だから、食事代はちゃんと入院料に含まれているんですよ。病状に従ってそれぞれの食事というものが与えられるようになってるんですね。病院に入院しておられる患者さんにも普通食の方もいますよ、普通食でない方もたくさんいますけれども。同じことなんですよ。どうするんですか。
  362. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 食事代を給付の形で見るか、あるいは本人に負担を願うかということと、その入所者のそれぞれにふさわしい給食が提供されるかどうかというのは必ずしも関係があるとは思っていないわけでございまして、むしろ食事代として施設側が申し受けいたすわけでございますから、それなりにやはり患者にふさわしい給食というものが行われる必要がある。  もとより家庭でも減塩食を食べたり、いろんな意味で栄養面の工夫はなされておるわけでございますから、それ以上にこの施設においては、もちろん費用としては御負担を願うわけでございますけれども老人にふさわしい給食サービスができるようにということで私ども考えておるわけでございます。
  363. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは答えになってない。そんなばかなことありますか。食事はとにかく金を出してもろうたら給食はします。しかし病人なんですよ。そうでしょう。寝たきりになっているか寝たきりに準ずるような御病人なんですよ。当然のこととして治療食というのは要るわけですよね。だから、これはどだいまともに検討されていないということのあらわれなんですよね。  さっきも高桑先生言っておられたけれども、私もどう考えてもこの施設医療法の適用施設にならないというのはわけがわからぬ。何ぼ熱心に聞いていましてもあれはわからぬ。だから、何でこない分裂したようなことをやるんかなと思うんです。施設は医者に管理させて、看護婦もおって、病人を入れるのに、生活の分野がありますので医療法には適用しません、しかし、ベッド数の勘定は医療法で勘定しますと。これも筋通らぬのですよ。給食の問題もそうですわ。医療法の適用の問題、ベッドカウントの問題、こんなもん全然筋通らへん。もう時間がないから詳しく言おうと思ったけれども、やれませんけれどもね。  それから、施設療養費をつかみで二十万渡すというのは、大体病人に入ってもらうのにつかみで二十万というのは一体何ですか。私も患者をさわってきた関係があるから我慢ならぬ思いがします。それは時によれば治療代の少ない人もいるかもわからぬけれども、うんと高い水準でつかみで渡すからその範囲でやれるようにやってくれというんならまだ話はわかりますよ。ところが見てごらんなさい、水準からいうたら、この二十万の根拠というのは、きょう午前中の質問の中で聞いていたら、老人病院が三十万、特養ホームが十九万五千円で、その間ぐらいで二十万渡して五万円患者さんからもらうんやと、そんなもの根拠になりませんで。何の根拠にもならぬ。こんなことで老人保健施設をやられたらこれは大変なことになるなという、私冒頭に申し上げたうば捨て山のようなことになりかねませんよと言うたのはここなんです。  とにかく財政対策でお年寄りの使うお金をずかずか減らすという、何とか知恵を働かして減らすということ以外の何物でもないじゃありませんか。だって、今老人医療費というのは大体一カ月三十四、五万ですね、老人病院でも大体三十万余りかかっているんでしょう。特養ホームだって二十三万ぐらいかかってますね。東京あたりでは手が足らぬからちゃんと人をたくさん入れてやっているから三十九万、都立の板橋特養ホームでは三十九万二千円かかっておる。それを二十万で同じことをやれ言われたらえらいことですよ。それはそれでほうり込まれたら働く人はやらなしようがない。しわ寄せは一体どこへいくんですか、全部お年寄りじゃないですか。  私我慢がならぬと思うのは、寝たきりになっているようなお年寄り、あるいは寝たきりに準ずるような病気になって弱っておられるお年寄りが、どんなことをやられても自分で主張し、文句を言えないんですよ。だからこそお年寄りの尊厳を守らなくちゃならない。文句の言えないようになったらとにかく何ぼでもいいからやらしておいたらええ。そんなむごいやり方というのはこれは認めるわけにいかぬですよ。  スタッフの問題にしても、面積の問題にしても私一つずつ聞きたいと思って実は調査をしてまいりましたけれども、時間がありませんからきょうはやめますけれども、それは看護婦さんにしたって介護人の皆さんの数にしたって、特養ホームより少ないでしょう。それから、施設だって安心してゆったり療養できる構造を確保するなんというようなことを言っているけれども、面積もはっきりせぬじゃないですか。今面積言えますか。病院は二人以上の床面積が四・三平米ですわね。特養ホームでは八・二五平米ですわ。今度の老健施設は幾らのゆとりある面積をお考えになっていますか。
  364. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) いろいろお尋ねの点は、これからモデル等をやった上で最終的には決めるわけでございますけれども、現時点で私ども考えている点を申し上げますと、一人当たりの床面積でございますけれども、八平米程度が必要ではなかろうか。そして一室の入所定員は原則として四人程度の部屋ということで療養室を考えたらどうかなというふうに考えておりますが、またいろいろこれは専門家の御意見を聞きながら最終的には確定していきたいというふうに考えております。
  365. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 具体的なことになったら専門家審議会の御意見でしょう。  私はやっぱりこれは全く財政対策だなというふうに思いますのは、例えば建設についてどうするんですか、来年度二十五億円の施設整備費を組んでいるようですけれども、百カ所で五千ベッドをつくるというんですね。そうしたら、平均割にしたら一カ所二千五百万円ですな。特養ホームを建設するときはどうかといったら、建設費というのは大体二億一千万から二億四千万ぐらい、国の補助というのは二分の一でしょう。四分の一は自治体の補助ですね。ところが、金額もこんなに違うんですが、この二十五億円というのは大体どのくらいの率で補助をするつもりですか。
  366. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今財政当局に概算要求中の私ども考え方でございますけれども、百カ所程度お願いしたいということで今折衝いたしておるわけでございます。  考え方といたしましては、整備費にやはり多様な形態があり得るということで、もちろん独立の新設もございましょうし、あるいはいろんなところから御指摘がございますように、病床転換等の形で内部改装程度で済む形での中間施設化というものはあろうかと思います。そういう国庫補助としては多額を要する場合と非常に少額で済む場合等々をアレンジしながら決めてまいりたいと思っておるわけでございますけれども、私どもの現在の考え方は、三分の一相当で定額で国庫補助を願えないものかということで財政当局と今調整中であるということでございます。
  367. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 三分の一補助をするというわけね。三分の一の補助ですか。それならついでに聞きたいんだけれども、来年だけなのか、これからもずっとそういうやり方を続けたいということなのか、それもあわせて。
  368. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) この中間施設の基本的な整備の方針は、私どもはやはりこれを低利融資の形で実現をしていきたいということが基本でございます。したがって、施設施設で融資を受けて整備していただくことになるわけでありますけれども中間施設は何しろ初めての施設でございますから、急いで全国的に普及する必要があるということで来年度の要求として百カ所お願いしたわけでございますけれども考え方としては三分の一補助するということじゃございませんで、三分の一相当額を定額でということでお願いをしておるわけでございます。  それから、引き続き今後どうするかということでございますけれども、これは六十一年度の予算化した補助のその執行状況、あるいは中間施設の整備状況を見ながら六十三年度の補助金については検討すべき事柄ではないかというふうに考えております。
  369. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから、施設整備もこれは低利融資で国が補助するというやり方は基本的には考えていない、来年はちょっと特別やと、こういうことですな。それなら特養ホームやったら二分の一補助金が出る、老人保健施設やったら将来は低利融資やと、借金でやってもらいますと。運営費だって、これもう時間ないから一つ一つ言うてもろうたらいいんだけれども、本来特養だったら国が八割でしょう。今五割になってるのかな、臨調行革でね。だけれども、八割国が負担、しかし残り分は一部負担の徴収金を除いて地方自治体ですね。ところが、老人保健費でやる場合は、国が老人保健医療費に出している二割、自治体が一割、あとの七割は拠出金と自己負担分と、こうなるんですよね。施設をつくるのでもあるいは施設運営する費用も、これまあ国はうんと減りますわな、がっぽり老人保健医療費に肩がわりということになりますね。  こういうやり方になりますと、これはちょっと大事なところはみんな審議会への御相談をしないと決まらない、さっぱりぐあいが悪いわけで、高齢化社会を迎えて本気でお年寄りのために対応していくということでやるならば、これは非常に大事なことですからね。こんな中途半端なことで国会の中でもあんじょうわからぬような話ではこれは我々も責任が持ち切れませんので、もっと私は検討をし直して、拙速なやり方をやるべきではないと思うんですが、その点はどうですか。
  370. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 運営費につきましては先ほどから御指摘のように、二十万円を給付としてお出しし、それから五万円を自己負担でということで一応私どもは適正なレベルのサービスが確保できると考えております。いろいろこの点については病院の方だとかこの種の施設専門家等にいろいろ意見を聞きまして、まあ二十五万円あれば運営できるんじゃないかという御意見もたくさんいただいているわけでございますけれども、さらに実験等を重ねながらこの施設運営が適切にできるような金額をセットしてまいりたいというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。  そのほか、いろいろ今後検討すべき事項はもちろん多いわけでございますけれども、私たちの考え方を現時点でできる限り御説明をいたしておるわけでございますから、その点これからの高齢化社会を控えまして諸外国にもナーシングホームなりハーフウエーハウスという形でこの施設が用意されております。我が国もやはりこれからの高齢化社会を迎えましてこの種の施設寝たきり老人等のために早く用意をしてあげて立派なサービスがその方たちにでき、そして寝たきり老人等を抱えられている家族の方が安心できるような形にぜひ持っていきたいものということで考えておりますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  371. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんのでね。まあしかし、今わかっている範囲でも本人や家族の負担は非常に高くなる、しかも医療の内容は大変厳しい、低医療やと。それから福祉もどうなるやらわからぬ。全く安上がりの施設をつくろうということになりそうだと思うんです。なぜかといったら、だって七十五年までに老人医療費三割減らすんやと——でしょう。一兆何ぼやら減すんでしょう、あなたさっき答弁してましたがな。老人医療を三割減らすんやという目標で入院費を抑えますんやということで、これをやっている限りはそれはもう患者の高負担、低福祉、低医療のとてもじゃないけれども安上がりのものにならざるを得ないというふうに思うんです。これはそんな答弁してましたがな。文書でも出ている。この問題については、これは私申し上げたように、この大事なことを拙速でやるのではなしに、やはりもっと十分検討をやって再提出をするべきではないかというように思います。  それで、時間がないので問題を変えます。国保の滞納者に対する制裁措置、これはちょっとゆっくりやりたかったんですけれども、時間がありませんので簡単に申し上げておきたいんですが、今度わざわざ制裁措置を法制化までしようというのは、滞納者の増加というのが広がってきたんですね。滞納者の増加というのは国保料の大幅な引き上げと無関係じゃないですね。しかも、滞納者というのは低所得者層ほど集中をしておるんです。私それを具体的に言おうと思ったけれども時間がありませんから。こんな実例も全国の自治体見たらいっぱいありますからね。低所得者ほど滞納者が集中をしてきていると思う。  そこで、この制裁措置を加える場合に、低所得者イコール悪質者ということではないでしょう。これははっきりしておいてください。
  372. 下村健

    政府委員(下村健君) 低所得者が悪質ということと直接に関係はないと思います。
  373. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ悪質者とは何なのかということをこれははっきりさせませんと、今申し上げた低所得者で滞納が非常に多いわけですから、低所得者が悪質者とイコールでないということを明確にけじめをつける必要があると思うんです。  私は、きょう時間があったらゆっくり言おうと思っておったんですけれども、昭和二十年代から三十年前後の、国民皆保険になる以前の国民医療の状態というのを非常によく知っているんです。それはどういう状態であったかといったら、これは雇用保険のない家庭で病人が出まして一カ月、二カ月とかかるような疾病が起こった場合には、医療費が払えないだけではなしに、一家の生活が成り立たなくなって生活保護に転落をするというふうなことが随所にあったんですね。そういう中で国民皆保険になり、やっとあの無保険の時代の嘆きというのは少なくなった。しかし、今度滞納者から保険証を取り上げるなどということをやったらそれと同じ状態が起こると思うんです。  そういう点で、悪質者と低所得者とのけじめをどうするのかということが非常に大事だというふうに思うんです。ここをはっきりしなかったら、病気だけれども保険証がないからというので病院へ行けなくて助かる命も捨てなきゃならないかもわからぬ。命にかかわるような重大問題だからこのけじめははっきりしなきゃいかぬということを申し上げておる。それはどうなさいますか。
  374. 下村健

    政府委員(下村健君) 国民健康保険の場合には滞納がふえているというお話でございますが、全般的な状況からいいますと、納付率が必ずしも一方的に下がっているということにはなっておりません。  私どもとしては、一般的にむしろ都市の国保で非常に滞納率が目立っているわけでございますが、都市部では住民の異動が激しいとか就業形態にいろんな形のものがあるとかいうことで、国民健康保険の運営者にとりましては被保険者との接触をする機会がなかなかつかめないというふうな点が非常に大きな原因であろうと思っております。  一方、滞納の実情を見ますと、合理的な理由がない。合理的な理由がないというのは、国保で入っておられる限りは低所得者につきましては一般的な減免制度もございます。それからそのときの事情に応じて個別の減免手続もとっておりますので、しかるべき手続をとっていただければそれ相応の保険料は納めていただけるものというふうに私ども考えておるわけでございまして、私ども考えておる悪質滞納者というのは、だれが考えても納得できるような合理的な理由がないのに故意に保険料を滞納している。私どもが理由があると考えているのは、災害、失業あるいは長期入院という一時的に家計が非常に困窮状態に陥るというふうな理由がないのに長期間滞納している。また、それについて手続をとっていただけない。それから、私どもが把握している状況でいきますと、財産名義の変更を行うというふうなことで保険料納付を明らかに回避するというふうなことが認められる場合に今回の措置を適用しよう、こういうことでございます。  被保険者証は差し上げませんが、被保険者証明のようなものを出しまして給付は受けられる。ただし、現物給付の形はとらないということで慎重に対応しようと思っておりますので、先生の御指摘のような心配はないと考えております。
  375. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後になりますが、これはゆっくり言えないのが残念ですけれども、けじめをつけていただきたいということを繰り返し申し上げておきたい。なぜかというと、行き過ぎがあった場合にこれはやはりちゃんと対応してもらいたいんです。  現にまだ法律が通っていないのに、東京の北区では滞納者に対する文書を出しているんですが、「国民健康保険法改正(案)要旨」として、「災害等の特別の事情がないのに保険料を滞納している場合は、保険証を返還していただき、資格証明書を交付します。資格証明書を交付されている間は、医療費は全額自己負担となります」というのを赤枠で囲んで、それで、「滞納理由をお聴かせ下さい」「表記のような事態を避けるため、滞納についてご事情を伺いたいので、下記によりおいで下さい」、こんなものを出している。今局長が言うたように、猶予の措置とか減免の措置とか、御相談ができますからおいでくださいと一言でも書いていますか。これ行き過ぎていると思うんですよ。  大阪の寝屋川では、「分割延納誓約書」というのを出している。これによりますと、「誓約不履行の際は、いかなる処分を受けても異議申し立て致しません」。法律ができない前から法律を振りかざして住民に対して、被保険者に対して強権的な扱いをやっているというところが現に出ている。これは行き過ぎでしょう。行き過ぎではありませんか。私は、やっぱり住民に対しては局長がおっしゃったように猶予の措置もあれば減免の措置もあるんだから、事態が変わったときには御相談においでくださいと親切に言うてやればいいものを、法律がこない変わりますからこんなことのないように早う来なさいと、そんなね。私はこういうやり方というのは行き過ぎだと思うんです。  こういう行き過ぎにならないように、こういう行き過ぎが起こったときには厚生省としてはこれは何とか必要な手だてを講じるというふうなこと、あるいは行政指導をするとかいうふうなことをやる必要があるのではないかと思いますので、特に、悪質者と低所得者とがイコールでないという点では、払いたくても払えないという低所得の人たちに対しては被害が及ばないような歯どめ、これをはっきりしておいていただきたい。行き過ぎがあった場合には適切に指導してもらいたい。この点についてお伺いをしておきたい。
  376. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 時間が超過しておりますので簡潔に御答弁願います。
  377. 下村健

    政府委員(下村健君) 国民健康保険の保険料は源泉徴収ではありませんので、被保険者の方で自発的にやはり協力をしていただくという姿勢がないとなかなか徴収できないわけでございます。したがって、現場では大変納付については苦労しているわけでございますが、この法律を制定さしていただきましたら、法律の厳正な執行につきましては、私どもとしては十分注意を払ってまいりたいと思います。
  378. 勝木健司

    勝木健司君 今国会の最重要法案一つであります老人保健法改正案につきましてお伺いいたしたいと思います。  まず、今回の老人保健法改正の背景には、急速に進む我が国の人口高齢化があるわけでありますが、高齢化そのものは人類の夢であります長寿の実現につながるものであり、祝福すべき事柄であります。にもかかわらず、政府は将来の社会をお年寄りばかりで活力のない、暗いもののように宣伝をして、財政的立場のみから福祉を後退させようとしているのは問題であります。高齢化社会の明るい面ももっと取り上げていただいて、それにふさわしい政策を打ち出していくべきだと思いますが、どうお考えかお聞かせいただきたいと思います。
  379. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) おっしゃるように、高齢化が進み本格的な長寿社会を迎えるということは、決して暗い面ではなく、大変喜ばしいことであり、また、この喜ばしいことを喜ばしいように実現をしていかなければならないというふうに考えております。  私どもは、決して暗い面を宣伝するというよりも、喜ばしい状態に向けていくために今しっかりとした基盤づくりをしなければならない、こういう観点から、社会保障制度としての老人保健制度についての改正お願いをいたしておる、こういうことであるわけでございます。
  380. 勝木健司

    勝木健司君 厚生省がまとめられました高齢者対策企画推進本部報告によりますと、高齢化社会へ向けての厚生省のプログラムということでありますが、内容は、自立自助、民間活力の活用などという言葉に名をかりて、公の責任を放棄し、国民に負担を押しつけようとする発想が随所に見られます。このような発想では、活力ある長寿社会を築いていくことはできないのではないかと思いますが、お伺いしたいと思います。
  381. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 先生お話のように、高齢者の方が自立をいたしまして、社会の一員として積極的に活躍をしていただくということは、今後の高齢化社会にとって基本的なことではないかというふうに考えておるわけでございます。  今回の高齢者対策企画推進本部の報告が、今先生指摘がございましたように、自立自助、民間活力の活用ということを言っておるわけでございますが、こういった今申し上げました観点から、今後の長寿社会の対策を進めるに当たりましては、国民の皆様の自立自助というものを前提といたしまして、それだけではもちろん十分ではないという面があるわけでございますから、これを支援する行政施策を適切に組み合わせをしていくということが重要であるという考え方に立っておるわけでございます。  国民生活の基本的なニードにつきましては、公的なシステムでカバーはしていくという点には変わりはございません。その上に民間の創意工夫を生かした適切なサービスを導入していくということが、国民全体の福祉につながっていくというふうに考えておるわけでございます。
  382. 勝木健司

    勝木健司君 また、この報告は、実施の手順というものが明確に示されておりません。今後どういう時期にどういう改革を行っていくのかを十分検討し、具体的なものとしていくべきではないかと思いますので、お伺いしたいと思います。
  383. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) この報告書は、省内の各分野の者が、高齢化社会に向かいまして総合的に施策がそれぞれ連携をとりながら、どういった対策をとっていったらいいかということを、二十一世紀の初頭をにらみまして横断的に検討をいたしたものでございます。  そういう意味では、今御指摘がございましたように、若干精粗を異にするものが含まれておることは御指摘のとおりかと思います。相当具体的に議論が詰まっておりますものもございますし、また基本的に相当長期間を見通して対策をやっていくことができるものもございますが、なかなか長期の見通しが困難な部分もあるわけでございます。いわば総合的な各分野が、どういった役割をそれぞれ関連しながら持っていくかということを考えたわけでございますので、この報告の考え方を踏まえましてさらに具体的な検討を加えまして、施策の具体化を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  384. 勝木健司

    勝木健司君 さらにまた、この厚生省の報告とことしの六月にまとめられました政府全体の「長寿社会対策大綱」というものはどういう関係にあるのか。また、政府全体の取り組みの中での位置づけを示していただきたいと思います。
  385. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 「長寿社会対策大綱」は、政府のさまざまな分野、長寿社会でございますので生活環境、住宅の問題、または社会教育、教育の分野、雇用の分野、そういった非常にさまざまな分野を各行政が分担をいたしておるわけでございますが、そういったそれぞれの分担の行政が本格的な長寿社会に備えまして、経済社会システムを基本的に考えていかなくてはいけないという認識から検討をしたものでございます。  厚生省といたしましては、この大綱の策定に当たりまして、先ほど来御質問がございます高齢者対策企画推進本部の考え方を踏まえて対処してきたつもりでございまして、大綱として示されました基本方針におきましても、私どもの高齢者対策本部の考え方が反映されたものというふうに考えておるわけでございます。
  386. 勝木健司

    勝木健司君 長寿社会に向けてのいかなる対策も、長年社会に貢献してこられましたお年寄りが尊重され、住みなれた地域で家族の方々に囲まれて暮らしていけるようにという哲学に基づく必要があると思いますが、このような観点からいわばお年寄りのノーマライゼーションという考え方の普及を図るべきではないかと思いますが、お尋ねしたいと思います。
  387. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 御指摘のように、今後の老人対策の基本的な考え方は、老後も住みなれた地域社会で家族とともに暮らせるということが最もいい方向であろうというふうに考えております。これはまさに今御指摘のありましたノーマライゼーションの理念に沿うものでございまして、こういう考え方に沿って老人福祉施策を推進をいたしてまいろう、こういうことで、例えばホームヘルパーの増員だとかデイサービスとか、ショートステイなどの拡充だとか、また保健と医療を組み合わせた福祉サービスというものの充実というようなものにこれから特に力を入れてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  388. 勝木健司

    勝木健司君 今回の老健法改正というものは、今まで申し上げてきましたように、長寿社会へ向けての長期的展望を欠くために国民に対して説得力というものを持たないものであるというふうに考えます。また、これは何だかんだと理屈をつけてみましても、退職者医療制度の見込み違いで国保が大幅に赤字になったために何とかしてこれを穴埋めしなくてはならない、そして、財政再建という名のもとの国庫負担減らしであり、急遽苦心して編み出されたのが今回の老健法改正であると思われます。  確かに高齢化社会の進行に伴いある程度負担は避けられないと考えますが、そのためには将来の老人医療についての負担と給付の明確な展望をまず示す必要があると思いますが、どうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  389. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) これからの本格化いたします長寿社会にありましても、老人保健医療というものが安定的に確保されるという必要性から今回の改正お願いいたしたものでございまして、そのためにこの老人医療費を国民がひとしく支えていこうという理念がもともとあるわけでございますけれども、この理念を徹底をさしていただく、こういうような意味で加入者按分率の一〇〇%へ向けて段階的な引き上げをお願いをする、こういうようなことでございます。  また、一部負担の引き上げ等もお願いをいたしておりますが、世代間の負担の公平という観点から、現在全体でお年寄りが自己負担をしていただいております負担率が一・六%程度ということでございますが、これを政府原案でございますと四・五%程度、今回修正をされましたので四%程度ではなかろうかというふうに考えますが、その程度負担をいただいて、そしてお年寄りもまた若い者もみんなで考え合い、力を合わせて老人医療を今後将来に向けて支えて、また老後を揺るぎないものにしてまいる、こういうようなことでお願いをいたしておるわけでございます。  今後、将来に向けて一部負担をどのようにしていくかというお話でございますが、将来いろいろな情勢の変化というようなものもあろうかとは思いまするけれども、健康保険の本人の負担、また国民健康保険の本人の負担、またそれぞれ家族の負担率というようなものを勘案いたしまして、お年寄りという特性から相当程度低い負担であるべきであるというふうに考えております。強いて数字で申し上げれば、五%程度というのが現在考えられるところではないかなというふうに思うわけでございます。
  390. 勝木健司

    勝木健司君 時間の関係で次に進ましていただきます。  老人医療費の一部負担引き上げについてお伺いいたしたいと思います。  今回の改正案は、政府原案では外来一月四百円から千円に、こちらは衆議院におきまして八百円と修正されました。しかし、これでもお年寄りにとりましては一気に二倍という負担増となります。お年寄りが幾つもの医療機関にかかった場合、当然八百円では済まないのでありまして、このようなお年寄りの受診の実態というものを無視したものと言わざるを得ません。先ほども年寄りは一月に平均して一・五カ所の医療機関に通院していると言われていますが、そのデータというものは信頼できるものでありますか、お聞かせ願いたいと思います。
  391. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 御指摘のように、お年寄りが一月に平均して一・五カ所の医療機関に通院しているという私どもの調査結果を持っているわけでございます。  このデータにつきましては、社会保険診療報酬支払基金、それから各都道府県の国保連合会が実際に医療機関から請求のありました実績に基づきまして、六十年十月分、六十一年一月分、六十一年四月分の三回にわたりまして延べ一千四十万人の老人医療受給者について調査した結果によるものでございます。平均で申し上げれば一・五ということで申し上げておりますけれども、さらに詳しく申し上げますと、医療機関に一回もこの調査期間においてかからなかった人の割合が三二%、一回だけ、一カ所だけと申しますか、一医療機関にかかられた人が四四%、二医療機関の方が一七%となっておりまして、一月に三つ以上の医療機関にかかった人は七%弱という結果を得ているわけでございます。  このように私どものデータとしては平均すると一・五カ所弱になるわけでございますけれども、直近の医療機関からのレセプト請求をもとにいたしました調査の結果であり、十分診療の実態を反映した信頼できるものというふうに考えております。
  392. 勝木健司

    勝木健司君 また、入院の場合に移りますが、一日三百円が五百円に、しかも二カ月の期限というものが撤廃されようといたしております。これは一年入院すれば十倍に、長く入院される方にとりましてはそれこそ無限大の大変な負担増となるものであります。  老人の所得の実態から見まして負担可能なものなのかどうか。さらに、前回の老人保健法制定時の附帯決議でも言及されました保険外負担の解消、こちらの方は遅々として進んでいません。この実態はどうなっておるのか、その対策はどうなっておるのか。あわせてお聞かせ願いたいと思います。
  393. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 入院の一部負担関係でございます。  先ほど来御答弁申し上げておりますように、四兆円を超えます老人医療費になっておるわけでございまして、そのお年寄りが一部負担いただいている額は一・六%になっております。したがいまして私どもとしては、やはりお年寄りと若い人の世代間の負担の公平という見地から、公平に負担していただくという観点がぜひとも必要だということで、今回の一部負担改正お願いしているわけでございます。  特に、入院の一部負担についてのお尋ねでごさいますけれども、入院の一部負担が一年、あるいは六月でも結構でございますが、負担増が急激になっているという御指摘でございますが、これは主として入院期限の撤廃ということから生じておると思いますが、この入院期限の撤廃の考え方につきましては、私どもとしては、入院した場合には食費等の生活費が要らなくなるというようなことで、在宅で療養している方とのやはり不均衡が生ずるのではないか。それからまた、老人ホーム等の入所者につきましてもその負担についての期限の限度はないわけでございますので、そういうことを勘案いたしまして、在宅で療養されている方との均衡あるいは老人ホーム等いろんな制度を見ましても、ある段階から無料になるというような制度がない状況等から、やはり老人保健制度も期限の撤廃をこの際お願いをしたいということでございます。  今回の入院の一部負担改正が無理がないものかどうかというお尋ねでございますけれども、私どもは高齢者世帯の所得あるいは年金の水準から見まして無理のない金額ではなかろうかというふうに考えております。  それから保険外負担についてのお尋ねでございますけれども、従来から、その負担を適正な範囲のものにするために指導、是正に努めております。各県から、例えばお世話料についてはこの医療機関について指導してやめさせたというような報告もたくさん受けておるわけでございますが、さらに今後とも保険外負担の適正化については、改善につきましては徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  394. 勝木健司

    勝木健司君 特に低所得老人というものが必要な医療から疎外されることのないように、何らかの措置をとるべきであり、そのための方策を検討しておられると聞きます。その内容を明らかにしていただきたいと思います。
  395. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 先ほど来申し上げておりますように、入院の一部負担については一般的には無理なく負担いただける水準であると考えておるわけでございます。しかし、衆議院の御審議附帯決議におきまして、所得が低く、どうしても支払えないような事情のある方についての配慮を考えるべきであるという御指摘を受けたところでございます。  現在、一部負担がいろいろな事情で払えない方の制度は既に本法にあるわけでございます。災害等の特別な事情のある方につきまして、この規定を運用いたしておるわけでございますけれども、そういう御指摘を踏まえまして、その運用面で何とかいろいろな改善ができないかということで、例えば収入が少なくて、その収入も家賃とか被扶養者の生活費に充当せざるを得ないというようなために、どうしても入院の一部負担を支払うことが困難だという方に、その負担の軽減が図れないかどうか、ただいま対象になる方の範囲とか、あるいは実施方法等につきまして検討を進めている段階でございます。
  396. 勝木健司

    勝木健司君 時間の関係で次に進みます。  次に、加入者按分率についてお伺いいたします。  先ほどもありましたけれども、今回の按分率の改定はどのような趣旨なのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  397. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 現在、各医療保険制度への老人の加入の状況を見ますと、やはりサラリーマンも退職すれば国保に加入されるといったような事情から、国保が他の医療保険に比べまして構造的に老人の加入割合が高くなっておるわけでございます。健保組合に比べまして四倍の老人を抱えて過重な負担になっておるという状況でございます。今回の加入者按分率の改定は、このような各医療保険制度間の老人加入割合を是正いたしまして、どの医療保険でも同じ割合で老人を抱えることによりまして、老人医療費の公平な負担という法の基本理念をより徹底させようということから今回の加入者按分率の引き上げをお願いをしているということでございます。
  398. 勝木健司

    勝木健司君 衆議院で修正が加えられましたとはいいましても、黒字の健保の力で赤字の国保を救うという本質に何ら変わるところはなく、実質的な増税にほかならないと思います。だとすれば、本質的な解決は国保制度の根本改革をおいてほかにはないはずでありますが、厚生省はどういう見通しと方針を持ってこれを行おうとしておられるのかお聞かせいただきたいと思います。
  399. 下村健

    政府委員(下村健君) 国民健康保険の財政状況については大変厳しいものがございます。その原因についてはいろんな見方もございますが、私どもとしては、退職者医療等の影響もさることながら、やはり老人保健制度ができましてもなお格差が拡大するということで、国保における老人の問題が非常に大きな影響を与えているというところからこれを解決したい。したがって、この改正案が通りますと確かに国保は助かるという結果は出てまいりますが、単にそれだけを考えているわけではないということでございます。  したがって、国保問題については国保問題としての取り組みが必要であるという御指摘はそのとおりでございまして、私どもは、今後の高齢化の進展あるいは産業構造の変化というふうな事情も考慮しながら、将来にわたる国保財政の安定化のための方策を老人保健法の決着がつきましたら引き続きまして検討してまいりたいというふうに考ております。
  400. 勝木健司

    勝木健司君 特に国保におきましては医療費の適正化や経営努力などに不十分な点があると指摘されておりますが、これらの点につきまして抜本改革までの間に何らかのとるべき方策があるのではないかと思います。できるものからすぐ手をつけていくことも必要だと思いますが、そのための具体的方策があればお聞かせいただきたいと思います。
  401. 下村健

    政府委員(下村健君) 国保の制度的な検討はやるとしても、それ以前になすべきことは直ちに行うべきではないかという御趣旨だと考えます。  この点につきましては御意見のとおりでございまして、歳入歳出両面にわたる経営努力を積極的に推進するという面から、一つは現在国保の医療費適正化という観点から医療費通知あるいはレセプト点検等を行わせておりますが、まだその充実を図る面があるということで、そういう面の強化を引き続き図ってまいりたい。それからまた、保険料の収納率向上につきましても、いろいろ特別対策事業等行っておりますが、さらにこの面からの努力も行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。  なお、御審議いただいております老人保健法改正案の中には、悪質な保険料滞納者に対する措置も含んでおるところでございますので、今後とも国保の経営努力は強力に推進してまいりたいと思います。
  402. 勝木健司

    勝木健司君 国保の経営というものを県で運営し広域化を図るというプランもあるというふうに聞いておりますけれども、厚生省としてはこの問題について現時点でどう考えておられるのかお聞かせいただきたいと思います。
  403. 下村健

    政府委員(下村健君) 国保の経営主体の問題あるいは経営規模の問題というのが従来から国保制度の上での一つの問題点として議論されていることは事実でございます。御指摘のように、保険者を市町村から都道府県に移したらどうかという問題につきましては、財政規模の拡大あるいは安定化というメリットもございますが、他面、市町村が実施主体になって行っております地域の医療保健活動あるいは福祉事業等との関連といった問題、あるいは果たして事業運営が県に移って効率的に行われるかどうかというふうな問題もありますので、今後の国保制度の検討課題一つとして、県がいかなる役割を果たすのが適当であるかということについては十分に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  404. 勝木健司

    勝木健司君 国保につきましては、長期的にしろ短期的にしろ早急に対策を講ずることが必要でありますが、だからといいまして黒字の保険者にその肩がわりを求めるのは筋違いであるというふうに思います。被用者保険の経営努力の成果というものは、その家族給付率の引き上げなど、加入者に還元するというのが本当の意味での公平だと思いますが、現段階での検討状況をお聞かせいただきたいと思います。
  405. 下村健

    政府委員(下村健君) 先ほどの繰り返しになりますが、単に被用者保険が黒字だからということで今回の改正お願いしているわけではございませんが、御指摘の被用者保険の家族給付などの給付のあり方につきましては、医療保険制度の一元化の展望を踏まえて検討を行っていきたいというふうに考えているわけでございます。  社会保険審議会の中に政府管掌健康保険の今後の運営をめぐりまして小委員会等もできておりますので、今後そのような場を活用いたしまして幅広く速やかに検討に着手してまいりたいというふうに考えております。
  406. 勝木健司

    勝木健司君 加入者按分率の引き上げというものは、国保対策としてはその場しのぎのものであるというふうに思います。限界が見えておるように思います。幾ら経営努力をしても、その努力の成果というものが赤字保険者のために吸収されてしまうという仕組みでは、被用者保険の経営努力のインセンティブというものを失うことになると思います。最終的に加入者按分率が一〇〇%になれば経営努力は反映されなくなるのではないかというふうに懸念をいたしますが、お伺いしたいと思います。
  407. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 今回の加入者按分率の引き上げでございますけれども、黒字であるから赤字の保険者にということではございませんで、老人の加入率を公平にいたしたい、加入率の格差を是正いたしたいということが今回の引き上げのねらいでございます。そのねらいの中で、加入者按分率を一〇〇%にした場合に経営努力のインセンティブはどうかというお尋ねでございます。  現在の拠出金の算定方法は、各保険者一人当たり老人医療費をベースにいたしまして、それから按分された形での老人数にそれを掛けた形で算出することにいたしておるわけでございます。つまり、老人医療費を加入者一人当たりで割りつけるということではなくて、それぞれの各保険者の一人当たり医療費をベースと申しますか、片一方の単価にいたしまして、片一方は抱えていただく老人数をそれに掛けるということで各保険者の拠出金が出る仕掛けになっておりますので、各保険者の一人当たり医療費がいろいろ健康管理その他の経営努力によりまして医療費が下げられますれば拠出金も下がるという仕組みになっておりますので、私どもとしては、一〇〇%になりましても各保険者の経営努力のインセンティブは失われないんではないか、従来どおりやっていただけるものというふうに考えております。
  408. 勝木健司

    勝木健司君 黒字であるからということで、より多くの拠出金を負担し得ると言われますけれども、五年後、十年後、さらにその先といった将来見通しではどうでありましょうか。  また、さらに組合健保につきまして、全組合では三千億近い黒字収支であるといたしましても、個々の組合を見てみますと、現在でも経営の苦しい組合は少なくありません。こうした組合にとりまして按分率の改定というものはまさにその運営を不可能にさせるものではないかと思います。その上、今回の按分率改定がなされますと、経営困難となる組合が激増すると思われますが、あわせてお聞きしたいと思います。
  409. 下村健

    政府委員(下村健君) 厚生省といたしましては、健康保険組合全体として見ますと当分の間保険料率を引き上げなくても組合運営は可能だというふうに考えているわけでございます。しかしながら、個々の組合について見た場合に財政状況のよくない組合が出てくるのは事実でございまして、これらの組合につきましては現在政府がある程度の補助事業を行っておりますが、その拡充を考えてまいりたい。また、関係者と協議の必要はございますが、健保連で行われております共同事業の充実あるいはそれの改善というふうな面も検討いたしまして、組合運営に支障が生じないようにしてまいりたいと考えております。
  410. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 健保組合の拠出金の負担が五年後、十年後さらにその見通しはどうかというお尋ねでございました。  拠出金の将来推計につきまして、老人医療費の推計の前提となります物価、賃金や医療費改定の動向等につきまして不確定の要素がたくさんございますために、十年後さらにはその先の見通しによる試算ということは非常に困難でございます。私どもとしては、今後五年間につきまして加入者按分率を引き上げた場合の試算を行っているわけでございますが、六十一年度の十二月以降に八〇%、六十二年度から六十四年度までは九〇%、六十五年度は一〇〇%に引き上げることを前提に、一定の仮定を置いて計算をした結果でございますが、それによりますと、健保組合全体の六十五年度の拠出金でございますけれども、一兆八百億円と見込まれるわけでございまして、これは六十一年度に比べまして約二・一倍になるものと見込んでいるわけでございます。
  411. 勝木健司

    勝木健司君 六十年代の後半に医療保険の一元化を行うとされておりますけれども、もうそろそろある程度の方向性というものを示して国民の幅広い意見を求める時期に来ていると思います。この一元化の内容、実施の時期についてお伺いしたいと思います。
  412. 下村健

    政府委員(下村健君) 六十年代後半のできるだけ早い時期にということで私どもとしては医療保険の一元化という問題に取り組んでまいりたい、これが高齢化社会に対応するための、給付と負担の公平を確保するための基本方策であるというふうに考えているわけでございます。  それを具体的にどうやっていくかという問題につきましては、先ほどお答えいたしました政府管掌健康保険の問題、その給付のあり方等について検討に着手したいというふうな意味のことを申し上げたわけでございますが、その検討は制度の一元化の展望を踏まえて当然やっていくことになる、こんなふうに考えているわけでございます。その検討を通じまして私どもとしても具体的な議論を進めてまいりたい、このように現在考えております。
  413. 勝木健司

    勝木健司君 若く元気に働いている間は被用者保険、年をとってから退職して病気がちになってから国民健康保険に加入してくるという、確かに国保が大変なのはわかります。しかし、問題はこうした保険制度の立て方にあるんじゃないかと思います。こうした根本的問題を抜きにして、単なる財政調整で片づけようというのでは納得がいきません。この点につきましてどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。  さらに、最近の厚生行政は、行革の優等生、国民の健康、福祉のためではなく、まず財政ありきということで進められているように思われてなりません。この辺につきまして政府の見解をお伺いしたいと思います。
  414. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 若い間は被用者保険で、年をとって退職すると国保という御指摘でございます。  確かに、御指摘のように現行の医療保険制度は幾つかの制度に分立をしているわけでございます。しかし、それはそれなりに小集団としての経営努力という点でメリットもあるわけでございますし、またそういう制度として国民の間に定着をしていると考えております。他方、このような制度の分立に伴いましてデメリットも生ずるわけでございまして、その例が各保険者の老人の加入割合による格差があるために、老人医療費負担の不均衡が指摘されているということとなって出てまいっているわけでございます。このために、老人保健制度におきましては、現行の医療保険制度のもとでこのような各保険者間の老人加入率の格差による負担の不均衡を是正して、老人医療費負担の公平を図ることにいたしておるわけでございます。  しかしながら、今回の加入者按分率の引き上げでございますけれども、単なる財政的な見地ということではなくて、こうした制度の基本的な理念に沿いまして、どの保険者も同じ割合で老人を抱えるようにすることによりまして老人医療費の公平な負担を図ろうという趣旨でございます。これによりまして、老人保健制度の長期的な安定を図り、長寿社会においても安心して老後を託せる制度の確立を目指すというものでございますので、財政対策よりも、二十一世紀をにらんだ長期的な施策であるということを御理解いただきたいと思います。
  415. 勝木健司

    勝木健司君 現在の円高不況のもとで、民間企業というものは大変苦労をしております。雇用情勢も極めて悪化しております。今後の高齢化の進展というものを考えますと、保険や福祉の分野というものは大幅な拡充が必要でありますが、このことは安定した雇用の確保という側面からも十分意義があります。  現在、福祉の分野で働いている人はどれぐらいおられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  416. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 社会福祉サービスに対します国民のニーズに対応するために、従来から寝たきり老人やあるいは重度の心身障害児者のための施設を中心に施設の整備を行ってまいりましたし、また在宅福祉の充実という面で家庭奉仕員の増員も図ってきたところでございます。そのようなことによりまして、社会福祉施設の職員は年年増加をしておりまして、昭和六十年度で見ますと約五十四万人、それから家庭奉仕員につきましては、昭和六十一年度でございますが、約二万三千六百人ということになっております。
  417. 勝木健司

    勝木健司君 今後の福祉施策の充実とともに、特別養護老人ホームなどで将来どの程度の人員が必要になるのか、見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  418. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 確かに、高齢化社会を迎え社会福祉サービスに対する国民のニーズは高まってまいりますから、これに対応しまして、特別養護老人ホームを初めとしまして社会福祉関係に従事する職員の量的な拡大が今後とも必要であると考えております。  そこで、社会福祉関係職員の将来の数字ということでございますが、なかなかこれを具体的にお示しすることは難しいわけでございますが、ちなみに過去五年間の平均をとってみますと、毎年施設職員は約一万三千人増加をしております。この中で、特に特別養護老人ホーム、これの施設増が多いわけでありますが、それの増員分がその中の四千人に当たります。我々は、特別養護老人ホームにつきましては、従来のペースを落とすことなくこれからも整備を続けていきたいと考えておりますので、これはふえる様相でございます。  また、在宅サービスの中心になりますホームヘルパー、これにつきましては、これも過去の平均で申しますと約二千人の増でございますが、これも同規模の増員をこれからも図ってまいりたいと考えております。
  419. 勝木健司

    勝木健司君 老人福祉の向上という意味からも、内需の拡大の意味からも福祉機器の開発、普及というものが重要であると考えますが、その方向はいかがなものか、お伺いしたいと思います。
  420. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 介護を要する御老人などの在宅生活を援助するということ、そしてまた、社会福祉施設介護能力を高めるという点から見まして、福祉機器の開発、普及は重要な課題であると我々は認識をしております。厚生省といたしましても、今後、福祉機器の規格化、標準化あるいは普及システムについての研究などの取り組みについて努力をしてまいるつもりでおります。
  421. 勝木健司

    勝木健司君 厚生省はシルバー産業の振興に力を入れておるようでありますが、適正な指導のもとにこれを広めていくということは今後の老人福祉の一つの方向であると考えます。現在のシルバー産業の動向と将来の方向というものをお聞かせいただきたいと思います。
  422. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 最近、年金制度の成熟などということを背景にいたしまして、例えば有料老人ホームなど民間企業による各種の福祉サービスの供給が次第に拡大されつつある、これは事実でございます。このような民間サービスが有効に供給されますように、その健全な育成を図るために、我々としましては省内にシルバーサービス振興指導室というのを設置いたしまして、そこを根拠にしまして、例えば有料老人ホーム設置運営指導指針というものを改正いたしましたり、あるいは有料老人ホームの市街化調整区域内での建設を可能にするといった、そういう振興指導に今努めている真っ最中でございます。  これから高齢者の多様なニーズに対応しまして、シルバー産業はどうしても拡大を続けていくと思います。そこで、そういうシルバー産業が節度ある健全な発展を遂げますように、我々としても十分注意をして育成を図ってまいりたいと考えております。
  423. 勝木健司

    勝木健司君 老人保健施設というものにつきましては、老人にふさわしい手厚い処遇を行うために十分な人員配置を行う必要があると考えますが、百人程度施設の場合全部で何人の職員が必要となるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  424. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設につきましては、寝たきり老人等に対しまして手厚い看護なり介護あるいは医療ケア、あるいはリハビリテーション、それから生活上のお世話、いろんなサービスの提供が必要であるわけでございます。したがって、このサービスを担当する人員についてもいろんな職種の方が考えられるわけでございます。医師看護婦介護職員、OT、PTの方、相談指導員、薬剤師、精神科医、栄養士、勤務の形態はこれから詰める点がございますけれども、そのほかに事務職員の方、調理員の方といったような各方面の職種の方を必要とするだろうと考えております。  私どもとしましては、これらの職種の方々を合計いたしますと、おおよそでございますけれども、最低で三十五人ないし四十人程度の職員の方が入所者百人当たりで必要になるんではなかろうかというふうに考えております。
  425. 勝木健司

    勝木健司君 次に、老人保健施設——中間施設、この構想自体というものは待望されてきたものでありますが、ところで、厚生省の考えておられる老人保健施設というものは、まさに老人病院特養老人ホームとの谷間、つまり病院より医療機能は劣り、特養よりも介護機能が劣るというものになるのではないかと危惧されます。  改めてお伺いしますが、そもそも老人保健施設とは何なのか、だれを対象とし、どういうサービスを提供するのかお聞かせいただきたいと思います。
  426. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 老人保健施設でございますけれども、私どもはその中心たる機能は、やはり入院、治療を終えた方々社会復帰のための施設であるというふうに考えております。  病院につきましては、入院して治療をしていただく機能でございますし、特別養護老人ホーム家庭がわり介護機能を中心にいたしておるわけでございますけれども、この施設は、文字どおり中間施設といたしまして医療ケア生活上のお世話、両方のサービスを相備えた施設にいたしたいということでございます。したがいまして、ここに入所される方は、入院、治療が終わった段階の寝たきり老人方々でございますけれども、私どもとしては、一口で言えば病弱な寝たきり老人がここの対象になるんではないか、こう申し上げておるわけでございます。  病気で治療される方は病院に、それから家庭がわり生活のお世話をしていただく方は特別養護老人ホームへ、その中間に位置しまして医療ケア生活サービス、両方を提供するまさしく老人のこれから多様化するニーズにおこたえできる施設ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  427. 勝木健司

    勝木健司君 では、特別養護老人ホームの対象者とどこが違うのでありましょうか。
  428. 黒木武弘

    政府委員黒木武弘君) 特別養護老人ホームは、いわば寝たきり等の状態になられて家庭でお世話ができないという方々でございまして、家庭がわり介護つまり家庭では介護できない方々特別養護老人ホームで収容されて、そこで生活のお世話をして差し上げる施設だというふうに考えておりますが、この施設は先ほど来申し上げておりますように、その主たる機能はやはり家庭復帰の機能でございます。したがって、脳卒中で倒れられたお年寄り方々病院治療を終えられる、それで家庭に帰っていただくわけでございますけれども、やはりその段階において家庭復帰のためのリハビリテーション等も必要でございますから、そういった形でのリハビリ、機能回復訓練等をして差し上げて家庭に復帰していただくということになるわけでございます。  したがいまして、そこでまた、家庭介護ができないということでございますれば、その方々特別養護老人ホームにも入られる場合があるわけでございまして、そういう意味では、病院とこの老人保健施設特別養護老人ホームがやはり機能面でお互い連携を取り合いながら、お年寄り医療なりあるいは寝たきり老人のケアという問題に取り組んでいくべきものではないかというふうに考えております。
  429. 勝木健司

    勝木健司君 時間も来ましたので最後になりますけれども、今回の改正で国保財政というものは楽になるといいましても、これから各保険制度とも高齢化社会を迎えて楽観は許されないというふうに思います。まじめに働く人たちが報われるためにも、また正直者がばかを見ないためにも、最後に老人医療に関するこれからの施策についての厚生大臣の決意というものをお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  430. 斎藤十朗

    国務大臣斎藤十朗君) 本格化する長寿社会に向かって、この老人保健制度の果たすべき役割というのはますます大きなものになってくると思います。  今回の改正をお認めをいただきますならば、これによって老人医療の確保というものを安定的に行っていくことができるというふうに考えておりますし、また、いわゆる健やかに老いるという観点からの老人保健事業を大いに推進をいたしてまいりたい。また、新しく創設をしていただきます中間施設老人保健施設につきましても、特別養護老人ホームや、また老人病院などとともに立派な成長、発展を遂げるように努力をいたしてまいりたいと考えております。  また、あわせて地域における福祉サービスというもの、医療や保健と組み合わせて、そしてきめ細かいサービスを推進をいたしてまいるということによりまして、冒頭先生がおっしゃられましたように、祝福される長寿社会を迎えられるように全力を挙げて努力をいたしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  431. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  432. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 次に、連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  老人保健法等の一部を改正する法律案について、地方行政委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  433. 佐々木満

    委員長佐々木満君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、後刻、理事会において協議の上決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十分散会