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1986-10-30 第107回国会 参議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

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  1. 労働問題に関する調査 (会議録情報)

    昭和六十一年十月三十日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十月三十日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     柳澤 錬造君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         佐々木 満君     理 事                 岩崎 純三君                 田代由紀男君                 糸久八重子君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 千葉 景子君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君                 沓脱タケ子君                 佐藤 昭夫君                 藤井 恒男君                 柳澤 錬造君    国務大臣                   労 働 大 臣  平井 卓志君    政府委員        労働大臣官房長  岡部 晃三君        労働省労政局長  小粥 義朗君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        労働省職業能力        開発局長     野見山眞之君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        運輸省海上技術        安全局造船課長  小川 健児君        労働大臣官房政        策調査部長    清水 傳雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (昭和六十二年度労働省予算要求基本方針等に関する件)  (最近の雇用失業情勢雇用対策に関する件)  (男女雇用機会均等法及び労働者派遣法の施行をめぐる諸問題に関する件)  (心身障害者雇用対策に関する件)  (勤労者財産形成促進制度に関する件)  (我が国の労働者賃金生活実態に関する件)  (造船業不況下における雇用対策に関する件)     ─────────────
  2. 委員長(佐々木満君)(佐々木満)

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 大臣、就任おめでとうございました。  大臣は、瀬戸内海の不況地域の御出身でございますから、当面する労働行政では相当関心を持っていらっしゃると思いますので、しっかりひとつ雇用対策等立派な労働行政をやっていただきますようにお願いしたいと思います。  私は、きょうは、労働省の六十二年度の予算関連の問題と雇用問題などにつきまして質問をいたしたいと思います。  まず最初に、大臣に伺いたいと思いますが、六十二年度の労働省予算要求基本方針並びに六十二年度労働行政重点、それからその背景になるような内容について、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  4. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 経済情勢が非常に大きく変化してまいりますと、当然のことながらそれを取り巻く労働情勢労働環境にも変化が出てまいる、それに的確に対応していかなきゃいかぬということでございますが、御案内のように現在の経済社会、何と申しましても非常に大きいのがこの対外貿易不均衡、言うなれば為替の切り上げによる円高と言われておるわけでございまして、この円高基調の中でさらには産業構造の転換を迫られておる。  これに加えて急激な高齢化進展、さらにはME等中心にした技術革新ですね、これの進展、さらには女子の職場進出への増加、こういうふうに環境が非常に大きく変化しておるわけでございまして、これらを背景にきめ細かく適切に対処してまいらなきゃならぬということでございますから、やはり勤労者の何と申しましても雇用の安定、福祉向上を図るとともに、さらには労使関係の安定を維持していくことが今後の労働行政に課せられたまさしく重点課題であろう、かように考えております。
  5. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 先般、六十二年度の概算要求をなさいました労働省予算要求の中で、特に目立ちます個々政策課題につきまして順次お尋ねをしていきたい、かように思っております。  まず最初は、精神薄弱者雇用対策の問題でございますが、この政策を取り上げて考えてみますと、すべての面で立ちおくれておるというふうに思います。  労働省の方もそういうことを感じられまして、六十二年度の予算では、精薄者雇用を促進するための条件整備対策を拡充するために、六十一年度予算に比べますると二億八千万円程度の増額をされておるように見受けられますが、その中身についてお答えをいただきたいと思います。
  6. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今、先生指摘のように、六十一年度に比べまして概算要求額二億八千万の増額要求をいたしておりますが、それで予算要求総額は百九億七千四百万でございます。  精神薄弱者の問題、いろいろ先生指摘のように難しい面がございまして、我々としてもいろいろ努力をいたしているわけでございますけれども増額の主な内容としましては、心身障害者職業センターにおきまして精神薄弱者職業生活に必要な労働習慣等を付与するための精神薄弱者等職業準備事業の実施、これ六カ所に必要な経費として一億四千三百万の増額、それから精神薄弱者を雇い入れる事業主に対して支払った賃金の一部を助成する特定求職者雇用開発助成金に必要な経費として一億三千百万円の増額を図って、合わせて先ほどの額になっております。
  7. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 またこの中身を拝見しますと、精神薄弱者を新たに法定雇用率にカウントすると同時に、雇用調整金あるいは奨励金支給対象とする法的整備を図るというふうに見受けられるわけでございますが、私といたしましては、精神薄弱者については雇用率制度の適用を事業主に義務化すると同時に、障害者職業リハビリテーションども法的に明確化する等を内容とする身体障害者雇用促進法改正などについて既に検討する時期ではないかと、かように思いますが、その点、いかがでしょうか。
  8. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  身体障害者雇用促進法の問題、さらに今先生指摘の、その中での精神薄弱者の問題につきましては、長い間いろいろと各関係方々及び審議会において検討を進めていただいていたわけでございますが、先般、身体障害者雇用審議会におきまして意見書の提出を見たわけでございます。  まず第一点、先生指摘雇用を義務づけるという点につきましては精神薄弱者実態把握その他いろいろと問題点もあるわけでございまして、この意見書におきましては直接雇用率として義務づけることはまだ時期尚早である。しかしながら、精神薄弱者雇用を促進するために、精神薄弱者が雇われた場合にその実雇用率の算定に当たってはカウントをしていく、それから調整金報奨金支給対象に加えるべきであるという意見書が出されたわけでございます。  労働省といたしましてはこの意見書の趣旨を十分踏まえまして、次期通常国会において、先ほど先生指摘リハビリテーションの問題も含めまして、改正案が提出できるように現在準備を進めているところでございます。
  9. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 全体的に精神薄弱者でありますとか、それから身体障害者等雇用対策、それから職業訓練等あらゆる面で立ちおくれがあるようでございますので、今答弁されましたように、これからもひとつ積極的な政策を進めていただきますように要望をしておきたいと思います。  それから次は、中途障害者雇用対策の問題についてお尋ねするわけでございますが、まず資料として伺いたいと思いますのは、在職中に労働災害を受けた人あるいはまた交通事故障害者になった者はどのぐらいおられるんでしょうか。
  10. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  最近の調査はなかなかないわけでございますけれども、我が方で把握いたしておりますものによりますと、昭和五十五年に行われました厚生省の調査で、労働災害原因障害者となった者が十七万七千人、また、企業在職中の者とは限りませんが、交通事故原因身体障害者となった者は九万二千人となっております。それからもう一つ、これは五十八年の労働省調査でございますが、労働災害交通事故、その他原因を問わず、企業在職中に障害者となった者のうち継続して常用雇用されている者は七万七千人と推計されております。常用雇用されている身体障害者三十一万四千人の二四・五%を占めております。
  11. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 継続雇用の数も後で伺おうと思ったんですが、答弁がありましたので、そういう条件であることがよくわかりましたんですが、今回の労働省予算要求内容を見ますと、中途障害者雇用安定等を図るために雇用継続助成金制度を設けるということなんでございますが、具体的にはどういうことをお考えになっておるんでしょうか。
  12. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  中途障害者の問題につきましては、企業に採用された後に労働災害交通事故等のために障害を有するに至った者になるわけでございますが、この継続雇用は従来から公共職業安定所におきまして指導を進めていっているところではございますけれども企業の負担が非常に大きくなるというようなことから、離職を余儀なくされている場合が少なくないと見受けられます。  このために今回考えましたのは、事業主がこれら中途障害者継続雇用するに際しまして、作業施設、設備の改善を図るとか、それから職務開発能力開発等職場への適応を促進するためのいろいろな措置を行う、そういうような場合に必要な費用の一部を助成することによりまして、中途障害者継続して雇用されるようにしていくということで、中途障害者雇用継続助成金新設を新規に検討いたしているところでございます。
  13. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 今までよりも政策が前進したことですから、私は評価をいたしたいと思うんですが、少しやっぱり落ちている点があるんじゃないかと思いますので、その点を申し上げたいと思います。  これは特に大臣要望を兼ねて申し上げたいのですが、その場合でも問題になりますのは、重度障害者でございます。重度障害者は、今お答えいただきました制度ではその恩典に浴することができないんじゃないかという心配がございます。その点、重度障害者にも積極的な政策をとる必要があると思うのでございますが、大臣、いかがでしょうか。
  14. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 障害者方々に対するこういう援助方針と申しましょうか、一口に申し上げて、こういう方々社会復帰、さらには経済活動に対する参加というのは、これはあくまでも大原則は社会的連帯において行われなければならぬということでございまして、何も現行制度がすべて私は十分だとは考えておりませんが、順次進んでまいっておると理解をいたしております。  今御指摘ございました重度障害者については、従来より障害者雇用対策の最重点課題として取り組んできたところでございまして、今回の中途障害者雇用継続助成金新設に当たりましては、職場適応助成については重度障害者のみを対象とするなど、特段の配慮を払うことといたしておるところであります。  労働省としましては、重度障害者雇用継続が図れますように公共職業安定所において十分に指導してまいりたいと考えております。
  15. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 私が思いますのは、せっかく労働省中途障害者雇用安定策を今回打ち出されたわけなんでございますが、これを一歩さらに進められまして、労働者災害補償保険法とかあるいは身体障害者雇用促進法などの中に積極的な政策を明文化するというような措置を講ずる時期に来ておるんではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  16. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  この中途障害者雇用継続助成金は、現在六十二年度予算要求として大蔵と折衝中でございますので、この新設ができるように努力してまいりたいというふうに思っているわけでございますが、その中身が確定いたしました場合には、現在、身体障害者雇用納付金制度に基づきまして、先生御存じのとおり、身体障害者雇用促進協会から障害者の新規雇い入れに際しまして助成金を支給いたしております。これと非常に類似いたしております制度でございますので、身体障害者雇用促進協会支給業務を行わせ、さらに必要な経費は国から協会に対して交付金として支給するというような方法を検討しているところでございます。  そのような制度、手続に持ってまいりますには法律上のしかるべき規定も必要だというふうに考えておりますので、先ほどいろいろお話に出ました身体障害者雇用促進法改正案の中にできれば盛り込んでまいりたいというふうに検討いたしているところでございます。
  17. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 来年度、私どもが期待する方向の法律改正があるようでございますから、大変期待をいたしております。  次は、中小企業で働く労働者労働対策について伺うわけなんですが、日本の全体の労働者の中で、中小企業で働く労働者は八〇%を占めるんじゃないかというように言われておるわけでございます。したがって、この中小企業で働く労働者に対する対策は非常に重要であろうと思います。労働省労働行政中心になってもよろしいんじゃないかと思っております。そういう意味かどうか知りませんけれども労働省の六十二年度の重点政策の中で若干中小企業の問題が取り上げられておるようでございますが、その中身について説明をしていただきたいと思います。
  18. 政府委員(小粥義朗君)(小粥義朗)

    政府委員(小粥義朗君) 御指摘のように、中小企業に働く労働者が八割に達するような数になっておるわけでございます。特に私どもが問題として見ておりますのは、大企業中小企業を比べた場合の労働条件の面でのいろんな格差、例えば賃金面であるとか、労働時間であるとか、あるいは退職金その他の福利厚生面、そうした面の格差が従来からも存在すると言われてきておりましたが、その格差が開く傾向にあることに一つ問題意識を強く持っておるわけでございます。と同時に、一方で、労働組合組織率を見ましても、大企業の場合はそれなりに労働組合があって労使でいろいろ話し合いを進めているわけでございますが、中小企業の場合には、そうした労働組合も組織されていないいわゆる未組織労働者が大半を占めるといった中で労働条件改善はなかなか難しいといった面もございます。  こうした点を考えまして、従来から労働行政全般がむしろ中小企業対策と言ってもいいぐらいな形で展開をされてきているわけですが、今申し上げた格差拡大傾向といった点を見ますと、さらにこうした中小企業対策をもっと強く進めていかなければいけない、こういう観点で来年度もそのための幾つかの施策を考えたいというふうに思っております。  具体的な内容としましては、最近大企業中小企業格差問題の中でも、特にいわゆる福利厚生面格差が広がっているというふうに言われております。退職金もその一つでございますが、それ以外に従業員がけがあるいは業務上、外を問わず休んだ場合のいろんな対応策についても、大企業でしたら健康保険組合を通じていろんな給付がなされるけれども中小企業の場合にはそうしたものもないといった面もございます。  また、一方で大企業中小企業格差の根底にありますのはやはり生産性格差があるわけですが、それをカバーしていくためには何といってもすぐれた人材中小企業で確保できるようにしていかなければいけない。そのためにはいわゆる中小企業における人事労務管理についてもっときめ細かい配慮が加えられなければならない、こういった点に着目しまして、いわゆる福利厚生対策人事労務管理改善と、二つの面に力を入れて中小企業労働対策を進めていきたいと思っております。
  19. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 今福利厚生面と、それから人事労務管理の面で積極的な政策を進めるというお話がございましたが、中身はどういうことになるんですかね。
  20. 政府委員(小粥義朗君)(小粥義朗)

    政府委員(小粥義朗君) まず福利厚生面でございますが、現在民間保険会社でいろんな共済制度をつくっているケースがあるわけでございますが、個々中小企業ごとにはスケールメリットがありませんので、必ずしもそうしたものが活用できないといった面がございます。そのために現在、従来から労政行政として都道府県中小企業集団に対する育成事業をやってまいりましたが、そうした集団連合組織が各都道府県において今つくられつつございます。こうした連合組織を核にしまして、いわゆる一定のスケールメリットが持てるわけでございますから、それを単位としてのいわゆる福祉共済制度的なものを中小企業に幅広く広げていくための福祉推進員、あるいはそういう企業に対する福利厚生面指導事業、こういったものを考えていきたい。  また一方、人事管理労務管理の問題としてはやはり中小企業経営者にこの人事労務管理の問題の重要性というものを知っていただかなくてはなりませんので、そうした企業に対する講習会の開催であるとかといったようなことも新しく企画をしているわけでございます。
  21. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 多分そのためだろうと思うんですが、労政局労政課の中に中小企業労働対策室というのが設置されておるんですが、そうだとすればこの対策室はどういう陣容で、どういう目的の、あるいはどういう業務を遂行されようとしておるのか、もうちょっとその辺詳しくひとつ説明してもらいたいと思います。
  22. 政府委員(小粥義朗君)(小粥義朗)

    政府委員(小粥義朗君) 正式にはこの十月一日から中小企業労働対策室が発足を見ているわけでございます。定員事情が厳しい中ですから陣容は必ずしも十分とは言えませんが、二つの係を設けて業務を進めることにしております。  その主たる役割と申しますのは、一つには労働省の各局で所管しております業務の中でいわゆる中小企業労働対策にかかわる事項の調整を図っていく、同時に都道府県中小企業労働対策を進めておりますから、そちらに対する窓口としての役割を持つと同時に、もう一つは、関係省庁中小企業対策をいろいろ進めておりますけれども、そうしたところへのむしろいろんな要請をしていく問題もございましょうし、他省庁からのいろんな要請を受けて、我が省の中小企業労働対策をまとめていくといった役割もまた必要なわけでございまして、それらのものをこの中小企業労働対策室で推進していこうということに考えております。
  23. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 次は、今度新しくどうも出ておるようなんですが、ハイテクカレッジというんですか、そういうものが何か新設されるという計画になっておるんですが、確かに考えてみますと技術革新進展に対応いたしまして、高度の技術訓練を行うハイテクカレッジというのは当面必要ではないかと思っております。特にホワイトカラーの高度の職業能力開発システム検討というふうに文書の中には言われておりますから、私は大変結構だと思っておりますが、なおその内容について説明をしていただきたいと思います。
  24. 政府委員(野見山眞之君)(野見山眞之)

    政府委員野見山眞之君) 最近におきます技術革新進展が非常に目覚ましく進んでおりまして、これに伴いまして労働者に必要とされる職業能力もかなり大きく変わってきている。特にマイクロエレクトロニクス化ですとか、あるいは新素材の導入といった面で現場におります労働者にとっても幅広い知識あるいは適応力あるいは情報等に裏づけられました技能が必要になってくるということでございます。こういう技術につきましては、現場におきまして新しい技術が次々と入ってまいりますので、入職するときに技術を覚えればいいということではなくて、入職した後、在職中に計画的に技能を磨いていかなければいけないという状況であろうというふうに思っております。  また一方、現在の技能開発センター等におきましても、在職労働者に対するME中心とする向上訓練等も行っておりますが、最近の技術は特にまた変化が激しい、あるいは高度なものが要求されてくるということでございますので、私どもとしては従来の訓練に加えまして、特に企業の中核的な人材になっております中堅技術者あるいは高度な技能者、私どもテクニシャンと申しておりますが、こういう人たちに対して急速な技術変化に対応して必要となってきた技術技能中心に高度な訓練を専門的に行う施設が必要ではないかというふうに考えまして、このたび高度の技術を専門的に行う高度技能開発センター、私ども通称ハイテクカレッジと申しておりますが、こういう構想を実現していきたいということを考えているわけでございます。
  25. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 役所がおやりになる場合に、えてして大企業好みであるとか、要するに企業好み訓練が行われるのではないかという心配があるわけなんですが、私が心配するのは、むしろ中小企業零細企業で働く労働者皆さん、それから高年齢者皆さん、それから離職者皆さん訓練を含んだハイテクカレッジでなくてはならぬ、かように思いますが、そういうものも対象にされておるのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  26. 政府委員(野見山眞之君)(野見山眞之)

    政府委員野見山眞之君) 最近のこの技術変化、必ずしも大企業だけではなくて中小企業にも広く浸透していることは事実でございます。こういう関係から企業現場で中核的な人材として働いている中堅技術者高度技能者につきましては新しい技術の付加が必要でございますが、大企業におきましては比較的自前施設あるいは自前の力で教育訓練が可能でございますが、中小企業におきましてはそのノーハウが必ずしも十分でないとか、あるいは指導する人がいないといったような組織体制が欠けていることは事実でございます。  したがいまして、私どもとして今度考えておりますハイテクカレッジにおきましては、むしろ中心中小企業で働く中堅技術者技能者、こういう人たちに対する高度教育訓練をやりたい、そして大企業との技術格差、最近広がっている各種の格差の中でも技能面における格差も広がってきておりますので、これをぜひ私どもとしても中小企業中核労働者に対する教育訓練をしていきたい、かように考えているわけでございまして、そういった意味中小企業労働者に対するハード及びソフト面における技術技能の付与をしていくというための訓練をしていきたいと思っております。  と同時に、今先生指摘高齢者あるいは離職者等につきましても、もちろんこの高度な技術訓練についての対象にはなるわけでございますが、同時に離職者等につきましては、もう既に従来から技能開発センターあるいは職業訓練校におきまして、最近特にME関連技術訓練も導入しておりますし、そういった面の訓練もさらに強力に進めていきたいと思いますし、特に最近の厳しい雇用情勢の中でございますので、これらの離転職者に対する新しい技術適応するための訓練についてもさらに努力をしてまいりたい、かように考えております。
  27. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 労働省も少ない予算の中でいろいろ知恵を出して、当面の情勢に対応する政策もやられようとしておることはわかるわけでございます。しかし、労働省が国民のために、構造不況円高不況という深刻な雇用問題、失業問題が起きておるときに、初めて本来の労働省の力を発揮してもらわなきゃならぬと思いますので、六十二年度の予算はもちろん、引き続きひとつ労働行政を積極的に展開していただけるように努力をしていただくことを要望いたしまして、予算関連に対する質問は終わりたいと思います。  それから次は、最近の雇用失業情勢に関連する諸問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、失業情勢の基本的な性格についてお尋ねをいたしたいと思います。  先般、労働省の方から資料をいただいた中に、八月の労働調査というのがございましたが、それによりますと完全失業率が二・九%、対前年同月に比べまして二十一万人ふえまして、完全失業者は百六十九万人というふうになっております。このうち、非自発的離職者というのが五十二万人、前年同月に比べまして十一万人ふえて、全体の失業者の約三一%という数字になっております。それから、有効求人倍率も〇・六一倍。さらにまた深刻に思いましたのは、新規求人数、それから有効求人数とも前年同期に比べ減少幅というのが広がっておるように見受けておるわけでございます。  こういう状況になっておりますのは、最近の構造不況に加えまして円高不況、そういう中で雇用失業情勢に本格的な影響が、陰りが出ておるためではないかと思っております。しかも、その影響というのは構造的、長期的なものになっておるのではないかという心配がございます。私どもはそういう心配を持っておるんですが、この問題についての労働省の基本的な認識について伺いたいと思います。
  28. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  最近の雇用失業情勢は、今先生指摘のように円高進展等を背景にいたしまして生産活動が停滞しているところから、昨年の後半あたりからまず製造業中心に求人の減少が見られまして、それから、ことしに入りまして失業者の増加が見られるというようなことで、数字的にも先ほどおっしゃったとおりの悪化の動きが見られます。さらにその上に、特に輸出関連産地や、造船、非鉄金属などの構造不況業種における解雇等の今後幅広い雇用調整が実施されるというような状況にございますので、これらの業種、地域を中心としまして雇用失業情勢は厳しさを増していくものであろうというふうに懸念をいたしているところでございます。  構造的な問題かどうかということでございますが、雇用失業の状況というものは経済の動きに非常に関連するわけでございまして、これはもう言わずもがなのことでございますが、しかし経済の動きから若干タイムラグをもって推移いたしますので、今後景気浮揚施策その他図られたといたしましても、一定のタイムラグでやはりことしの暮れから来年にかけては深刻な状態ではないかというふうに考えているところでございます。  ただ、構造問題かどうかということにつきましては、最近の労働市場全体の状況では、まず労働力の供給の面から見ますと非常に高齢化してきているという問題がございますし、それから雇用労働者の三分の一以上が女性労働者ということで、女性の職場進出が非常にふえてきている。一方、技術革新産業構造変化等を伴いながら、需要の面では出向とかパートとか派遣というような多様な雇用形態が見られますように、多様な需給面での要求があるということでございます。  このような面で、短期的な就労もふえてまいっておりますし、労働市場への出入りまたは需給面でのミスマッチを伴いますいろんなマッチの問題等ございまして、一般的には高度成長期に一%台または二%そこそこであった完全失業率というものは労働市場全体の構造としましてはそれよりやや高いところで今後推移していくのではないか、決してこれは失業が深刻な状態でふえていくというものではなくて、構造的にそういうふうな背景があるのではないかというふうに考えている次第でございます。  しかし、現在の状況はそれに加えまして円高、その他経済の停滞に伴います失業者が出てきているということで、これに対する雇用対策はもちろん重要なわけでございまして、そういうものがそれに加わっているというのが現在の状況だというふうに考えております。
  29. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 性格をはっきりさせるために、これからのことは深刻になるだろうという見通しが今答弁されたわけですが、過去にもいろいろな経験がありますので、例えば昭和三十年前後と昭和六十年、今日の状態ですね、これを比較してお答えをいただきたいと思うんですが、例えば昭和三十年ごろは完全失業率が一・九から二・五、それから三十年後半の高度成長期には一・一から一・四、それから五十年代の石油危機時代は二%ぐらい、それから六十年前後になると二・六、二・七というふうに推移しておるわけなんですが、三十年ごろの一・九とか二・五、それから今日の二・六とか二・七、今は二・九ということなんでしょうが、この二つの時期を比べまして失業率の構造的な背景で、あるいは要因でもいいんですが、同じようなこととあるいは異なることがあるのじゃないかというふうに思うんですが、何か比較してもう少し性格がはっきりわかるような材料はございませんか。
  30. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先ほどちょっと構造的な問題にも触れてしまったわけでございますが、今先生指摘の三十年前後と現在の状況でどうだということでございますが、昭和三十年前後は我が国経済が、これはもう言わずもがなですが、戦争による生産能力が非常に低下いたしまして、ようやく戦前の水準に向かっていこうという時期でございます。まずそこに戦後の復員、引揚者等が非常に増加いたしまして労働力供給面で非常に圧力があった、需要が十分な水準ではなかったということが言えるのではないかと思います。このために二・五%という三十年の失業率でございますが、さらに労働力過剰な状態の中で、こういう失業者のみならず低い労働条件で就業している不完全就業者が多かったのではないかというふうに考えております。  その間、それ以後高度成長期に入りまして完全失業率も一・一%と非常に低くなってきたわけでございますが、これは日本が本当に求人難に当たったのは開闢以来、歴史始まって以来じゃないかというように思うわけでございますが、初めてそういう求人難という状態になってきたというふうに考えるところでございます。  しかし、石油ショック以後安定成長に入ってまいりまして、最近の状況では失業者が増加してきているという状況になってきているわけでございますが、これは先ほど申し上げましたように、現在の状況は円高等に伴います生産活動の停滞から労働力の需要が供給の伸びに追いつかないという面もあると思います。さらに構造的には、先ほどこれも申し上げましたけれども労働力の高齢化、女性の職場進出、それから技術革新進展産業構造変化等に伴います労働力需要の方の雇用形態その他の変化、そういうようなことで両面にわたりまして多様な変化をしてきている。したがって、日本経済が安定成長の普通の状態にあっても、労働力の需給という面で、短期雇用、それから就業形態のいろいろな多様化ということの中で、失業率はやはり構造的に高い状態で推移するのではないかというふうに考えている次第でございます。
  31. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 構造的な問題の中で特に私が気にかかることが二つございます。それは若年労働者の失業率が非常に高くなっておるということと、それから高年齢者の失業率が非常に高くなっておるということでございます。  まず若年労働者の失業問題について、過去の実情を思い出しながら現状について申し上げますと、四十八年ごろは十五歳から二十四歳までのいわゆる若い人の失業率が二・二%だったように思います。石油ショックを越えて五十五年になりますとそれが三%になり、五十六年が四%、五十九年が四・九%、六十年も四・八%というふうに、大体若年労働者の失業率が五%に近くなっておると思います。これはさっき局長が言われましたように、産業構造変化というものが大きな影響を及ぼしておるということはよくわかるわけでございます。しかし私は、若年労働者の失業率が高くなったというのは、第三次産業やサービス業で働く労働者雇用不安というものが相当深刻になっておるのではないか、またそれらの企業労働条件の整備というのが立ちおくれておるところに大きな原因があるのではないか、こう思うわけでございます。  そこで、若年労働者の失業率を改善するためには、雇用改善するためには、第三次産業、サービス業等の雇用不安を解消し、労働条件の整備の立ちおくれを改善することが非常に重要な事柄ではないか、こう思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  32. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先生指摘のように、若年層の労働調査によりますと、十五歳から二十四歳層の完全失業率でございますが、御指摘のとおり上がってきております。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 その若年層の失業の中身を見ますと、これも御指摘の中にございましたが、非自発的な離職と自発的な離職に分けますと、その中心は自発的な離職中心とした失業の割合が高いということでございまして、自分の意思で離転職を、よりよいところを求めていく、いろいろな原因があると思いますが、図っているということでございます。これはそれぞれいろいろ原因があると思いますが、今いろいろ御指摘なさいました地域、職種等におきます労働力需給の不均衡の問題、またサービス産業等におきます雇用拡大分野の雇用環境改善の立ちおくれ、またこの非常に豊かな社会、情報化社会になりまして、若年労働者の勤労観や価値観の意識の多様化というようないろいろな原因があるかと思います。  これらに対応いたしまして、労働省としましては、職業情報の提供や職業指導の充実を図りますとともに、全国的に見ますと、Uターンの希望者その他が非常に多いわけでございますが、それらを公共職業安定所のネットワークを通じまして公共職業紹介の実施をいたしますとか、それから新規学卒者を対象としました養成訓練の実施、能力開発に重点を置きますとともに、また具体的には職業ガイダンスセンター等を設けまして若年労働者に対する職業選択、職場適応のためのカウンセリング等専門的な援助等を実施いたし、先ほど中小企業対策でもございましたが、サービス産業等における雇用環境改善指導等を総合的に図っているところでございます。  今後、若年労働者のそういういろいろなニーズを把握しながら、非常に変化の激しい経済社会情勢に対応いたしまして、これらの本当に適する職業に安定して就職できるように努力してまいりたいというふうに思っております。
  33. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 高齢者の失業率の問題なんですが、昭和四十八年ごろは五十五歳以上の失業率は一・三%であったという数字があるんですが、五十八年、五十九年になりますと、三%を超えて三・二、三%に悪化しておるわけでございます。最近労働省指導や、それから労使関係の交渉の中で定年がだんだん延長される傾向にあると思うのでございますが、にもかかわらず高齢者の失業率が悪化しておるという傾向は一体どういう背景なんだろうか、調査してもしおわかりになっておればお答えをいただきたいと思います。
  34. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  昭和四十八年の失業率が五十五歳以上一・三%でございましたが、このときの全体の失業率も一・三%でございまして、高度成長期最後の求人難の年にこの四十八年、四十九年等は当たっているというふうに思います。  そういう経済全体の状況も雇用失業情勢全体の状況もございますし、最近の状況は非常に急速に労働力の高齢化が進んでいるということは、これはもう先生御存じのとおりでございまして、高齢者の失業率の上昇は全体の失業率の上昇の中で、さらに一つには労働力の高齢化進展して五十五歳以上の労働力人口が非常に増加している。それから、こうした中で二度の石油危機を経まして経済成長率が低下して高齢者労働力需給がさらに緩和してきているというようなところで高齢者雇用環境が悪化していることが原因ではないかというふうに考えております。
  35. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 四十八年ごろが完全失業率も一・三、高齢者も一・三でほぼ同じようだったと、今も全体の完全失業率が三%前後、高齢者もその程度だから余り高齢者が特別に多いとは思わぬという意味の話に僕はとれたわけなんですが、もしそうであったとするとこれは大変なことになるわけでございます。  もう既に年金も六十五歳から支給開始にするという法律もでき上がって、暫定的に六十になっておるような状態でございますので、高齢者の失業率が高くなればそれだけ生活の不安、ひいては社会不安に通ずることになると、かように思いますので、高齢者の失業問題についてはもう少し労働省も真剣にひとつ取り組んでもらうように希望しておきたいと思うんですが、何かありましたら……。
  36. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  いや、ちょっとそういうふうに受け取られたとすれば私の答弁が舌足らずだったわけでございますが、経済情勢全体の背景を申し上げたのでございまして、高度成長期の一・三%と六十年の三・二%はまず背景にはそういうものがあるということでございますが、高齢者問題が非常に深刻化してきているということはもちろん我々も十分認識しておりますし、その原因としましては、高齢化がますます進んできている、それから高度成長期以後二度の石油危機を経まして経済成長率が低下する中で、高年齢者労働力の需要が非常に減少して需給が緩和してきているということを深刻にとらえているわけでございます。  それで、先般の通常国会におきましても高年齢者のための雇用安定の法律先生方全体、各党の御賛成を得まして通させていただいているわけでございますので、これは十月から施行されておりますが、六十年定年を柱としながら、さらに六十歳代前半層の就職促進、それからシルバー人材センター等の活用によります後半の過程のいろいろな就業に対する援助措置等を柱としているわけでございまして、これらの法律の施策を十分活用しながら高齢者対策に懸命の努力を進めてまいりたい、またそういうふうに決心いたしている次第でございます。
  37. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 ひとつ高齢者の問題は特に力を入れて政策を推進していただきたいと思います。  それから、次は円高不況等の問題についてお尋ねするんですが、先般中小企業庁が発表いたしました資料によりますと、円高の影響がたくさんの企業に出ておるということが報告をされておりました。産地にも企業城下町にもいろんな形で円高不況の影響が出ておるという報告があるわけでございます。そういう深刻な状態の中で、恐らく雇用の面でも失業の面でも重大な事態が発生しつつあるのではないかと、かように思います。  そこで、労働省の方で、例えば雇用保険の受給者がどの程度ふえておるか、雇用調整給付金の支給状態がどうなっておるか、解雇者はどういうふうな数字になっておるかというような点について説明してもらいたいと思います。
  38. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  中小企業庁の現地調査ももちろん承知いたしておりますが、それらの調査も参考にしながら、労働省としましては、円高の影響を受けやすい輸出比率の高い産地を四十一産地とらえまして、少なくとも毎月、随時その状況を把握いたしているところでございます。これらの産地の状況は、雇用の面からは、円高に伴います雇用調整は現在はないけれども雇用の先行きはまだ不明確であるというような産地、これは七産地ございますが、それから現在調整はないけれども、先行き非常に雇用に影響を受け得ると見られるというような産地十二産地、それから主に円高による雇用調整を実施しているケースの産地が十三産地、従来から構造不況的要因その他でその産地が非常に困っているけれども、さらに円高が加わって雇用調整を実施している産地、そういう産地が九産地というふうなとらえ方で、四つの区分にしながら産地の状況をとらえております。  現在のところ、雇用に影響のございますのは、先ほど挙げました四つのうち終わりから二つのケースの産地でございますが、これらの産地に相当するものが二十二産地ございまして、ここでの解雇者数は約二千六百七十二名、それから残業規制を行っている事業所が百三十八事業所、それから一時休業を行っている事業所は百四十九事業所というふうに八月時点でとらえております。  さらに、雇用調整金雇用保険の受給の問題でございますが、これはこの産地を含めましてそのほか造船、鉄鋼その他に伴います業種での企業もとらえておりますので、全体の数で申し上げたいと思いますが、雇用調整助成金につきましては、六十一年四月から八月まで約四十五億円、対前年に比べますと二・二倍の支給の決定をいたしております。  それから、雇用保険受給者実員につきましては、六十一年度に入りまして、それまで横ばいないし低下傾向であったわけでございますけれども、八月で七十一万五千人、七十万台になっております。  それから、雇用保険の被保険者資格を喪失した者のうちの解雇者について見ますと、六十一年八月で約四万人ということになっております。
  39. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 今、局長から伺いましても、もうこれは相当深刻な状態であるということがよくわかるわけでございます。  もう一つお尋ねするんですが、まだ雇用調整給付金であるとか雇用保険の受給者ではないけれども、あるいは解雇されてはいないけれども、例えば石川島播磨造船所のように既に希望退職を募っておる造船企業であるとかいうようなものも相当あるんではないかと思うわけでございます、これは炭鉱は除きますが。特に造船だけで言えば、造船企業なんか特に今は解雇されていないけれども、解雇が予定されておるような企業があるんじゃないかと思いますが、その点もし把握されておれば御報告願いたいと思います。
  40. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  これは個々企業での情報等はいろいろとらえておりますが、個別に一つ一つ申し上げるのも時間の都合その他ございますので、業種別に申し上げますと、今まず御指摘になりました造船業につきましては、大手を中心に一万六千人を超す余剰人員が発生しているというふうに見ております。そして、配転、出向その他行っておりますが、六十一年の状況でも六千人近い人が離職者として発生しているというような状況でございます。しかし、これは今後二〇%の設備廃棄を伴います措置が行われますので、    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 その場合にはさらに一万人の余剰人員が見込まれるのではないかというふうに思います。  それからもう一つ、非常に構造不況業種として打撃を受けております非鉄金属につきましては、鉱山、製錬所の閉鎖等が見込まれ、全国的には千五百人程度の希望退職者の募集が予定されるというふうにつかまえております。それから、合板製造業では今後二千人程度の離職者の発生が予定されております。さらに海運業におきましては、円高その他の影響を受けまして、明確に把握されるものでも二千人程度の離職者の発生が懸念されるというような状況になっております。  石炭は別にいたしまして、その他の問題としましては、漁業で約三千五百人の離職者が今後見込まれるという状況でございます。
  41. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 今局長から報告いただいただけでも、これは相当な数の失業者ということがわかるわけでございます。将来の問題は、これは積極的な対策を講ずる以外に方法はないと思うんでございますが、とりあえず今まで行った労働省対策について伺いたいんですが、例えば円高不況対策などいろいろ実施されたと思うんですが、労働省で実施された不況対策内容と、それからその効果はどういうふうになっておるでしょうか。その点説明していただきたいと思います。
  42. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  労働省としましては、そのような状況を踏まえまして、業種、地域の雇用の実態を的確に把握しながら対策を講じているわけでございますが、対策としましては、今先生も御指摘になりましたけれども雇用調整助成金制度について業種の指定基準の弾力化等を図りながら、業種の範囲を広げて機動的な活用を図る、こういうことによって失業の予防を図っていく、また、特定不況業種、特定不況地域対策を積極的に推進していく等の対策を図っているわけでございます。さらにまた、先般決定されました総合経済対策におきまして、これらの雇用調整助成金の率の改善等を行ってその運用を強化いたしているところでございます。  これらによって早急な実施を図るということで、十月二十日からこれを実施いたしておりますが、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、雇用調整助成金の利用が急増しているというような状況、それによって失業の予防が少なくとも図られているのではないかというようなことでございますし、機動的な雇用対策の実施を今後とも進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  43. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 きょうのテレビでもちょっと拝見をしたんですが、炭鉱のことなんですが、第八次答申を目前にいたしまして、長崎県の三菱高島炭鉱が閉山をする、それに反対する炭鉱労働者がストライキに入ったという報道がございました。これに類似することも他に何かいろいろあるようにも伺っておりまするし、炭鉱労働者離職状況について何か把握しておられることがあれば御報告願いたいと思います。
  44. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  離職状況というのは、今まで長い経緯でいろいろと炭鉱離職者離職状況その他ございましたが、今先生が御指摘の、今回の第八次計画が出るだろうという形での離職というものは、いろいろと今予想されてはおりますけれども、現在のところはっきり確定した状況にはなっておりません。現在二万四千人の炭鉱離職者がいるわけでございますので、この第八次のいわゆる国内炭の計画がどういうふうになるかというようなことが今後影響してまいるというふうに考えております。
  45. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 二十八日の中央紙の夕刊に載っておったんですが、今後炭鉱の閉山などが予想されるので、労働省雇用対策本部を設置いたしまして、通産省とも緊密な連絡をとりながら具体的な対策を進めていくんだという旨の新聞報道があったわけですが、通産省とどういうふうなことを御相談なさろうとしておられるのか。また、労働省が考えられておる炭鉱の閉山問題等についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  46. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今の新聞報道につきましては、大臣が二十八日の日に、今後炭鉱の閉山などに伴い特定地域に多数の離職者が発生する場合には、労働省対策本部を置きまして所要の措置をとって、その雇用対策に万全を期していくということをおっしゃったのが新聞記事となったものでございます。  それから通産省との問題は、事務的には現在の八次計画につきましていろいろと折衝を進めておりますし、炭鉱に限らず全体の問題といたしまして、事務次官レベル以下の会合を開いたりするような形で、常に連絡を取り合っているところでございます。
  47. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 いずれにしましても、炭鉱の問題は単に炭鉱の閉山ということにとどまらず、そこで働く労働者の解雇問題も、しかも大量に出るということでもあるし、またその地域の経済にも重大な影響を及ぼすということでございますので、通産大臣労働大臣でよく御協議をしていただきまして、問題の起きないように対処をしてもらいたいということを希望しておきたいと思います。  次は、地域の雇用対策の現状についてお尋ねをするんですが、労働省が実施しております四つの地域雇用対策内容について簡単に御説明いただきたいと思います。
  48. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) 現在実施している対策でございますか。
  49. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 はい。
  50. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) 地域対策といたしましては、労働省におきまして現在までいろいろな対策を講じてきてまいっているわけでございますが、一つは非常に基本的な地域対策といたしまして、職業安定法の十九条の二というのがございますが、職業紹介は一応はなるべく居住地域に近いところへ紹介するという原則になっておりますけれども、非常に雇用情勢の悪い地域はこれを指定いたしまして、広域的な職業紹介に乗せていくという広域職業紹介のための指定を行っております。  それから特定不況地域につきましては、これは昭和五十年当初の特定不況業種、特定不況地域の問題がオイルショック以後問題になりましたときに、特別の措置法として特定不況地域を指定して、ここで所要の対策を講じていくという施策を行っております。  それから三番目には、これは予算措置でございますが、昭和五十七年度からモデル事業としまして地域雇用開発推進事業というのを実施いたしておりまして、毎年地域指定をふやしながら、現在五十カ所、各都道府県一カ所程度の地域を指定いたしまして、ここでいろいろな市町村中心の計画を練りますとともに、地域雇用対策の推進を図っていただくという措置、それからそれに対する援助措置等を講じているところでございます。  主なものは以上の三つだったと思います。
  51. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 これは広島県でも適用されておる地域があるんでございますが、実は実情に合わなくなっておるんではないかと思うところがございますからちょっと申し上げますが、例えば呉地区でございますが、これは最近鉄鋼並びに造船等が不況になりまして、深刻な不況地域だと私たちは考えておるわけなんです。ことしになりまして、先般石川島播磨造船所が千人前後の希望退職者を募るんではないかという情報が伝わっております。しかし、現在の基準からいえば、不況地域に指定されていないという状況になっております。また、同じく不況地域として指定されていないところが、三原地区というのがあるんですが、ここも大きい造船所がございまして、今大変不況な状態になっておるわけなんですが、二つとも適用地域になっていないというので、地元の方たちは大変不安に思っておるわけでございます。どういう点が基準に照らして指定されないのかということをまずお伺いいたしたいと思います。
  52. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  特定不況地域は、現在三十幾つ指定されているわけでございますが、中央職業安定審議会に諮って定めました基準によりまして、特定不況業種の集積度の高いところで事業規模縮小の状況、さらに地域全体の雇用状況を配慮して行うこととされております。  御指摘の呉、三原両市につきましては、現在のところ特定不況地域の指定が行われておりませんが——呉は一時行われていたわけでございますけれども、再指定、継続のときに指定が外されたわけでございますが、これは、これらの指定の基準に合致しないということであったわけでございます。これらの要件、その他についてはそういう要件で進んでいるわけでございますけれども、現在の実情その他を考えながら弾力的な措置がとれるところは十分にとってまいりたいというふうに考えておりますが、当該地域につきましても造船業等の事業規模の縮小等が懸念されていることは十分承知いたしておりますので、今後それらの指標の動きを十分注意深く見守りながら検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  53. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 何か聞くところによりますと、六十二年度の労働省の新しい政策として四事業を統合的に、雇用開発を中心とした総合的な地域雇用対策の整備充実ということで整備をされる予定だということを伺っておるわけなんでございますが、それはどういうふうに整備されたらどういうふうに条件が変わるわけなんですか、その点ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
  54. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) 条件等につきましては今現在検討中でございまして、その条件がどういうふうに変わるかということは現在のところ明らかではございませんが、先ほどのいろんな地域対策等を含めまして、これらの地域対策が全般的に継承できるように、さらにそれに加えて対策が強化できるように、現在検討を進めているところでございます。
  55. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 検討を進められておる内容の文章もいただいたわけでございますが、これで大臣にちょっと要望しておくんですが、今申しましたように、不況地域といたしましては、今日の不況を非常に深刻にとらえておりまして、積極的な政策を望んでおるわけでございます。ですから、恐らく次の通常国会に提案されると思うんでございますが、中身のいい政策を提案をしていただきまして、不況地域方々に安心をしてもらうような労働行政をやっていただきたいということを第一に要望しておきたいと思います。  それからその次には、今局長からも答弁をいただいたわけでございますが、これまで不況地域として指定されておりました呉地区が、基準に少し足りないというので外されたと。新しい政策の中では必ずひとつ不況地域に指定していただきまして、皆さんに安心をしてもらうようにぜひ努力をいただきたいと思いますが、この二点について大臣の決意を伺いたいと思います。
  56. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) この当面の不況対策、また雇用の確保という問題は、日本経済に非常に大きな課題であろうかと思っております。私は、各委員会でも申し上げておるんでございますが、やはり抜本的には内需を拡大して雇用の増加を図るという基本政策、総合政策がございませんと、御案内のように労働省として現行制度の中であらゆる細かい対策を講じたといたしましても、それだけで雇用の確保は非常に難しい。しかしながら、現在の内閣も既に総合経済対策、これを決定いたしたわけでございまして、ここで内需の喚起を徹底的に図っていかなけりゃいかぬ。  そこで、労働省として当面非常に深刻化しておりますのが、今先生指摘の特定地域の非常に不況が深刻化してまいるということでございまして、それらに対する手当てとしてやっぱりきめ細かい施策をやっていかなけりゃいかぬ、かように考えております。言うなれば、地域の雇用の促進であり開発であるということでございまして、まあ現在のところ、ただいま御指摘いただきましたけれども、中央職業安定審議会等の意見を踏まえまして、成案ができましたらできるだけ早く御提案をまた申し上げたい。  また、今御質問のございました三原、呉、この両市の今後の不況地域の指定というふうな将来の問題でございますけれども、この新たな地域雇用対策につきましては中身を今詰めておりますけれども、どのような地域について所要の施策を講ずる対象とすべきかという問題も含めまして、ただいま審議会の意見も聞きながら検討を行っておるところでございます。  いずれにしましても、地域の実情を的確に把握して、状況に有効に対応するものでなければ意味がございませんので、そういうことを勘案しながら雇用の安定に努めてまいりたいと、かように考えております。
  57. 浜本万三君(浜本万三)

    浜本万三君 時間が来ましたので、最後に一つだけ要望しておきたいと思いますのは、今後の失業、雇用の問題ですが、先ほど局長も、これから深刻になるんじゃないかというお話があったんですが、私が考えてみましても非常に深刻になることが予想されます。今でも完全失業率が二・九%ということなんですが、日本の経済成長もお話があったように二%台に終わるのではないか。その上、季節的な失業者が増加する来年の一—三月等を考えますと、完全失業者は二百万を超えるんではないかという心配もあるわけでございます。それから、少し長期的な見通しで言えば、貿易摩擦で日本の企業が諸外国に積極的に進出をする、それで失う雇用の量も相当大きくなるんではないかと思いますと、この失業、雇用問題というのは非常に重要な局面を迎えようとしておると思います。  そういう意味で、労働省の方でもこういう問題についてさらに詳細に事情を分析していただきまして、状況に対応するような施策を積極的に展開してもらいたい、かように思いますので、そういう点について大臣の決意を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  58. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) ただいまも申し上げましたように、非常に雇用情勢は厳しくなるだろうという予想、これはもう御指摘のとおりでございます。労働省としても、どうしても基本的に雇用の安定ということに全力を挙げなければならぬ。先ほど申し上げましたように、一つの総合政策としてはもうあくまでも内需喚起を中心にした景気浮揚、総需要量をふやして雇用の増加を図る。それに対応すべく労働省は諸般の施策をきめ細かく進めていかなければいかぬ。先ほど来局長が答弁申し上げましたように、当然現行の雇用調整助成金等々の助成率の拡充また弾力的適用、出向等の活用による産業間の労働移動の促進、対策の充実強化、あらゆることを総合的にきめ細かく今後詰めてまいりたい。  いま一つ、先ほど私ちょっと御答弁申し上げなかったわけでございますが、全般的に産業政策をやっております通産省ともさらに連携を密にいたしまして、雇用不安が大きくなりますとひとり労働省のみですべての対策ができるというわけでございませんので、関係省庁間とも十分な意見の交換、調整等をしながら全力を尽くして万全を期したい、かように考えております。
  59. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 労働大臣御就任おめでとうございます。御活躍を期待いたしております。  きょう私は、ことしになりましてから施行されました男女雇用機会均等法労働者派遣法に関連をして質問をさせていただきたいと存じます。  最初に、男女雇用機会均等法についてなのですけれども、本法律が施行されて半年、六カ月経過をいたしましたが、実際の施行状況はどうなっておりますでしょうか。改善とか反省すべき点とかがあれば、そしてまた今後の運用方針等も含めて御説明をいただきたいと思います。
  60. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) ただいまの御質問でございますが、機会均等法施行後約半年を経過したわけでございまして、現状を今の時点で確定的なことを申し上げるのはいかがかと思うわけでございますけれども、この法律施行前よりもさらに周知徹底に全力を挙げて取り組んできてまいったわけでございまして、その結果、現在雇用管理を法の趣旨に沿って改善した企業が多数見受けられるところでございます。また、この法施行を契機に女子労働者の職業意識の向上、さらには女子の就業に対する社会全般の理解、さらにはコンセンサスの進展が見られる、言うなれば法の趣旨が着実に浸透してまいったのではないかと評価をいたしております。  労働省としましては、職場における男女の機会均等の実現に対する社会的機運の醸成が図られるよう今後とも法の周知徹底に、適切な運用に努めてまいりたい。一言付言すれば、まさにこれから中身の充実したものにしていかなければならぬ、かように考えております。
  61. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 均等法元年での労働省職場の中、その中での対応とかそれから取り組みとか職員の意識などその辺につきましてはいかがでございましょうか。
  62. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 労働省はこの雇用機会均等法をつくるために特に婦人局は局を挙げて努力をいたしてきたわけでございますので、この法律が施行される前から周知徹底には非常に力を入れてきたわけでございますし、また施行されましてからも雇用機会均等月間というのを設けまして、労働本省だけではなくて各部道府県の婦人少年室でも非常に多くの回数、説明会ですとか企業に対する指導、相談その他を行ってきておるわけでございます。  大臣からも申し上げましたように、おかげさまでまだ半年しかたっておらないということを頭に置けば、かなり企業での対応は進んできておるというふうに考えておるわけでございまして、今後ともさらにこの法律の趣旨、内容が正しく理解され、雇用の場での機会均等が進みますように努力していきたいと考えております。
  63. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 均等法施行後の第一期生であります来春の学卒者、これらの人たちに対しての募集とか求人、それは法施行によってどのような影響がありましたでしょうか。また、四年制とそれから短大生につきましてそれぞれ御説明をいただきたいと思います。
  64. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 御参考までにこの法律が施行されます前、私どもで実施いたしました女子労働者雇用管理に関する調査というのをちょっと御紹介させていただきたいと思いますけれども、均等法が施行される前、四年制の大学卒業者に対する募集につきましては、企業の中で男子のみ募集したという企業が六四%ということで約三分の二でございまして、男女とも公募したというところは三三%と、三分の一ぐらいだったわけでございます。  これと直接比較できるような調査はまだやっておらないわけでございますけれども、来年春の四年制大学卒業者の採用計画につきまして幾つかの新聞社がいたしました調査の結果を見ますと、男子のみ募集というところは非常に減ってきているという状況でございますので、この法律が施行されましたことが契機となりまして四年制大卒につきましては改善が進んでいるというふうに受け取っております。  それから短大につきましては、ことしは四年制大卒と短大とで解禁の時期がちょっと違っておりまして、短大生の方が遅かったために出足等につきましては一部に四年制大卒に比べて自分たちのところへの募集が遅いとかあるいはまだ本調子でないというような心配をしておられるところもあるやに受け取っておりますけれども、まだ最終的なまとめはできておりません。
  65. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 短大生についての最終的なまとめ、いつごろまでにできますか。
  66. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 募集、採用につきましてということでなくて、私ども最終的に数字が一番正確にわかりますのは、四年制大卒、短大それぞれにつきまして就職状況がどのようになったかということがわかるわけでございますけれども、それはもうちょっと先の時期になると思います。
  67. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 機会均等法は、三条で女子労働者の自主的な能力開発を、そしてまた二十三条で国や都道府県雇用促進事業団での職業能力開発の促進を定めておるわけでございます。男性に伍して働く女子は自分の職業能力、専門性を高める努力が必要不可欠でございます。国はその努力に対応した環境づくりをする必要があると思われますけれども、女子の職業訓練の拡充に向けての労働省の具体的な対応についてお伺いをさせていただきます。
  68. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 職業能力の開発が非常に重要だというのは先生のおっしゃるとおりだと存じます。教育訓練につきましては、公共職業訓練とそれから大きく分けますと企業で行う教育訓練とに分けられると思いますけれども、公共職業訓練につきましては従来から男女全く均等な機会が開かれておるわけでございますので、これからも女子がそうした教育訓練の機会を活用するようにしたいと思っております。  それから、民間につきましてもこの法律が施行されましてから、新入の社員への教育その他につきまして新たに男女均等にした企業が多いわけでございます。それから、地方公共団体等でも例えば女子に特殊なものにつきましては能力開発のためのいろいろなコースなどを別途組んでいるところもございますので、そういうものにつきましては、今後私どもとしても積極的に援助をしていきたいというふうに考えております。
  69. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 先ほども御答弁の中にございましたけれども、毎年六月に男女雇用機会均等月間を設けていらっしゃる、またそのようにお伺いしているわけですけれども、ことしの均等月間の行事とか活動内容、そしてその効果とか反省点とか、お伺いさせてください。
  70. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 雇用機会均等月間、ことしから初めて設けられたわけでございます。私ども、この法律が円滑に施行されるために最も重要なことは、企業労働者がこの法律の趣旨、内容を正しく理解する、そして企業において雇用管理の改善が進むということが最も重要なことだと考えまして、この月間中一番力を入れましたのは広報活動でございます。マスメディアを使いまして、一般の方たちの関心を高めるということと、そのほかに企業をお招きして説明会をやる。それから、労使、もちろん使用者団体それから労働団体でもさまざまな研究のためのコースですとか、あるいは説明会というようなものを御自分たちでも自主的に設けられまして、私ども招かれてそういうところで御説明するということもございました。  それから、この月間には労使からたくさんの相談、質問が室に寄せられておりまして、こういう質問を契機として、労使の間に立って、室でいろいろ御相談あるいは指導どもさせていただきまして、結果的に雇用管理の改善に結びついたという例もたくさんございます。
  71. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 来年の月間の活動内容、スケジュール策定に当たりましては、女子の労働者の意見を十分に反映させるようにしていただきたいということを要望をさせていただきたいと思います。  次に、機会均等法や改正労働基準法の施行が婦人の生活にどのような影響を与えているかにつきまして、日本婦人団体連合会、これが八六年度版の婦人白書をつくりまして報告をしておるわけでございます。この中身を見ますと、男子も女子も長時間労働傾向が見られて、そして生活時間の確保がますます難しくなってきているという状況報告がされておるわけでございますけれども、男女とも労働時間を短縮すべきであるということの内容が書かれておるわけでございます。このような実態について、労働省調査の必要があるのではないかなと思うのですが、その辺はいかがでございますか。
  72. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 先ほどからたびたび申し上げておりますが、この法律ができましてまだ半年しかたっておりませんので、今先生おっしゃいました労働時間の問題も、雇用機会均等法が施行された直接的な結果であるかどうかについては、もう少しその数字等も見まして検討しなければならないと思いますが、私どももこの雇用機会均等法が施行されました結果、企業でどのように雇用管理の改善が進んでいるか。また、その他どのような影響があるかということについては関心を持っておるわけでございます。ただ、余り早く調査をいたしましても十分に結果が出てこない、反映されないということもございますので、もう少し様子を見まして、企業での対応それから女子の方の意識と、その他ある程度熟成したところでそういう調査ということも考えてみたいと存じます。
  73. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 浜本議員の質問の中にもございましたように、構造不況業種とか円高不況業種等に属する問題で大変今失業状況等も進んでおるわけですけれども、そういうようなところで採用とか配置とか訓練とか解雇等の面で女子差別が行われているのではないかなと、こう危惧するわけですけれども、その辺の状況はいかがでございましょうか。
  74. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 円高その他で日本の各地で企業が大きな影響を受け、その結果、雇用労働者がいろいろ御苦労なさっているということは聞いておるわけですが、それは女子だけではなくて、どちらかといいますと男子が非常に多くついている企業でむしろ問題が起こっている。今のところは、そういう状況にはあるわけでございますが、もちろんそういう中で女子にもいろいろな影響が起こってくるということは十分あり得ることだと存じます。ただ、これまで婦人少年室等に御相談においでになったものでは、直接的な円高その他の最近の経済情勢の結果というようなものはそれほど見られない。むしろ、これまでの雇用の場での管理の仕方についての御相談、御質問というものが圧倒的に多くなっております。
  75. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 今の御答弁の中にもございましたけれども、それに関連いたしまして、都道府県の婦人少年室とか機会均等調停委員会に対する訴えの問題なんですが、全国的にどういう状況になっておりますでしょうか。何か新聞の報道によりますと、東京婦人少年室などにはかなりの件数が寄せられているということが書かれておるわけですけれども
  76. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 先生おっしゃいました東京だけでなくて、全国的にこの法律が施行されましてから、質問、相談の件数は飛躍的にふえてきております。その相談の内容は非常に多岐にわたっておりまして、もう募集、採用、入口のところから出口である定年退職に至るまでさまざまでございますけれども、比較的多く見られるのは定年の年齢の差というようなところが多くなっておりまして、そういうものは私ども御相談がありましたときには、もちろん女子労働者がもうこれ以上やってほしくないというときは別でございますけれども労使の間に立ってできる限り円満に解決するようにいたしておりまして、解決に至ったものも数多くございます。
  77. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 冒頭に大臣の御決意は伺ったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、本法律を円滑に施行していくためにはかなりやはり行政的な指導も大事だろうと思いますけれども、そういう意味での大臣の御決意をお聞かせください。
  78. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 確かに御指摘のように、この均等法の今後の円滑な施行という面をとらえますると、婦人局長からも御答弁申し上げましたように、やはり一人でも多くこの法律の趣旨を御理解いただくという広報面と、そのための行政体制の整備が必要ということはもう御指摘のとおりでございまして、本年四月からのこの機会均等法の施行に伴いまして、婦人少年室では法の周知徹底を図るための事業主等への集団指導、また労使からの相談への対応、女子労働者事業主との間の紛争の解決のための援助等の業務を新たに行っておるところでございます。  これらに適切に対処するために同法の円滑な施行を図らなけりゃいかぬということで、婦人少年室の充実強化が不可欠だということで、まず本年度におきまして婦人少年室に十七人の増員を行いますとともに、職員の資質の向上のための研修の充実を図ったところでございまして、今後とも婦人少年室の体制の整備を図るため一層の努力を続けたい、かように考えております。
  79. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 どうぞ円滑に施行されていくようによろしく御努力を願いたいと思います。  続きまして、これまた施行されてからまだ日が浅いわけでございますけれども労働者派遣法につきまして二、三お伺いをさせていただきたいと思います。  まず、許認可件数でございますけれども、施行時の七月一日の時点で一般労働者派遣事業の許可、つまり登録があったのが四百三十一事業所、また特定労働者派遣事業の届け出受理件数というのが千九百三十一事薬所と聞いておるわけでして、その後両者合わせまして月間千件ペースぐらいで業者がふえ続けているということをお伺いしているわけですけれども、十月一日現在の許可、届け出の状況につきまして教えていただきたいと思います。
  80. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えをいたします。  労働者派遣法に基づきます労働者派遣事業を行うものにつきましては、当該事業所の派遣労働者がすべて常用の場合は届け出、これを特定労働者派遣事業。それから、それ以外の場合は許可を受ける必要があるので、これを一般労働者派遣事業というふうに許可を行っておりますが、これは先生おっしゃったとおりでございますが、十月一日までに一般労働者派遣事業として許可を行った事業所は七百六十三件、それから特定労働者派遣事業の届け出を受理した事業所は四千四百七件となっておりまして、合わせて五千百七十事業所が労働者派遣事業を開始しているところでございます。
  81. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 施行時の対象業種が十三業種でございまして、その後十月一日からテレビ番組の制作とか編集とか、それからプラント機器などの設計、製図も加わったように伺っております。今の五千百七十件数を業種別に見た場合、特徴点とかその背景とかどうなっておりますでしょうか。
  82. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今先生指摘のように、十六業務になっているわけでございますけれども、許可事業所または届け出事業所、それぞれ一つ業務だけではなくてダブった業務を届け出または許可というふうになっておりますので、個別の事業所ごとの件数はなかなか難しいわけでございます。  今御質問の、業務別に見ますとどういう関係になっているかということで申し上げますと、一般労働者派遣事業、先ほどの許可を受けるべき事業でございますが、この関係では事務処理関係のものが多くなっております。それから、特定労働者派遣事業、届け出のものにつきましては情報処理関係のものが多くなっているのが現状でございます。
  83. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 企業の減量経営とか、それから技術革新など専門的な仕事が非常にふえているわけですけれども、即戦力としてこの派遣労働者というのは脚光を浴びているわけですね。それぞれの事業所で働いております派遣労働者の実数ですけれども、どのくらいと把握されておりますか。
  84. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) 今届け出それから許可で、実数につきまして一応各事業所別には出ているわけでございますが、現在集計を行っている段階でございまして、ちょっと手元に数字がございませんので御了解いただきたいと思います。
  85. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 それでは、また後ほどそれはお知らせ願いたいと思います。  コンピューター関係の派遣労働者は一月大体百から二百時間程度の残業を余儀なくされている、非常に疲れているという指摘もあるわけですけれども、この辺の実態は把握されていらっしゃるかどうか。それからまた、コンピューター派遣労働者は三十五歳定年と、こう言われているわけですけれども、非常に激しい労働条件のもとに置かれているわけです。これらのコンピューター関係の派遣労働者労働条件改善のために特別に対策を講じていかなければならないのではないかと思うわけですけれども、これらについてはいかがでしょうか。
  86. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  これも甚だ申しわけないのでございますが、七月一日から施行いたしまして、現在その事業所の届け出の内容、許可の内容等で事業所の許可、届け出を実施している段階でございまして、個々の業種別での労働条件の状況その他については、現在のところ十分把握をいたしていないところでございます。  いずれにしましても、現在のところ、私たちのところに上がってきているのでは、個別的にはそういう問題が起こっておりませんが、この法律の趣旨も、労働力需給システムとしての派遣業の性格を規定するとともに、そこで働く労働者の保護を図っていく、労働条件向上を図っていくということが法律の目的でございますので、それぞれに照らしまして今後十分に実態を把握しながら、もし御指摘のような点があれば検討指導をするべく処置してまいりたいというふうに考えております。
  87. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 情報処理には男性の常勤型が多くて、事務処理には登録型の女性が圧倒的に多いと言われているわけですけれども、その実態はどうなっておりますか。  また、常勤型に男性が集中して登録型に女性が集中するようなことになれば、雇用機会均等法の目的や精神から見て好ましくない事態ではないかと考えますけれども労働省の見解はいかがでございましょうか。
  88. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今先生指摘のとおり、情報処理につきましては、先ほど申し上げましたように常勤型が多いわけでございますので、常用雇用が多い。届け出でいいわけですから常用雇用が多いということが言えると思いますし、それから一般の労働者派遣事業の事務処理の方につきましては、これは許可が必要でございます。  しかし、ここで、これで女性が多いか男性が多いかという点については、現在のところ十分把握はいたしておりません。ただ、それぞれ女性なり男性なりの向き向きの仕事の問題もあると思いますので、それが多いからといって均等法に反するとは我々全然考えておりませんが、いずれにしても、特に許可の事業所につきましては厳重な事業所の許可要件があるわけでございまして、労働者の保護は十分図られるものというふうに考えております。
  89. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 大手商社が系列グループ間に人材を送り出すために派遣会社をつくったり、また構造不況に陥っている造船会社などが余剰人員の再就職先を確保しようと参入するケースがあると聞いているわけですけれども労働者派遣事業がこのように利用されることは派遣法の趣旨に反するのではないかと思うわけですけれども、その点いかがですか。
  90. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  いずれにしましても労働者派遣事業の許可に際しましては、いろいろと御審議いただきましたように、常用労働者の代替促進とかそういうようなことが起こらないように、法律の第四条におきまして、専門的な知識、技術、経験を必要とする業務、それからまた就業形態、雇用形態等の特殊性により特別の雇用管理を必要とする業務、このいずれかに該当する業務のうちから、中央職業安定審議会の意見を聞いた上で、政令で定める業務以外の業務については労働者派遣事業を行ってはならないというふうに処理いたしているわけでございますし、    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 その法律の目的に沿いまして実施されていくということで、許可、届け出制を通じてその趣旨の徹底を図っておるところでございます。さらにその業務の適切な運営につきまして、今先生がおっしゃるようなことにならないように、趣旨の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  91. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 法制定以後、類似請負といったもぐりの派遣事業というのはなくなっておりますでしょうか。このような違法な事業に対しては、行政処分とか司法処分を含めた、厳重に、厳正に対応していくべきではないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  92. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  労働者派遣事業は、政令で定められた適用対象業務の範囲内で、先ほども申しましたように、許可を受け届け出を行って、そういう事業所のみが実施することができるというものでございますので、類似請負という形で違法に労働者派遣事業が行われるようなことがあればこの法自体に反する、また法自体の制定の意味が失われるということであるというふうに考えております。このために関係事業主団体を通じて現在個別指導を強化しているところでございまして、今後、労働者派遣事業適正運営協力員の協力等も得ながら、これらの類似請負等の御批判がないように努めてまいりたいというふうに思います。実態としては、法施行間もなくでございますし、現在のところそこまでの情報その他は把握していない状況でございます。
  93. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 電話番号の二一二—六六三七、これは派遣一一〇番でございます。派遣労働者の悩みや相談に応じる相談室が法施行と同時に開設をいたしまして、現在まで五十件の悩みや相談があったと聞いております。コンピューター関係のものが主で、内容は、派遣の途中で打ち切りをされたとか契約と労働条件が違うとかというような、労働条件に関したものが多いとのことでございます。  労働省は今週をめどに労使団体代表から成る派遣事業適正運営協力員を全国で千名募集し、そして人材派遣業の監視を強めるとともにもぐり業者の摘発を進めると聞いておるわけですけれども人材派遣業の監視体制強化についてお伺いをさせてください。
  94. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今の電話番号は総評がつくられたものだと思いますが、労働省の方には何も御連絡はございません。今おっしゃいました労働者派遣事業適正運営協力員につきましては、十月二十日付で全国で九百三十二名に対して委嘱を申し上げたところでございます。  協力員の方には、派遣労働者派遣先等に対する相談、援助等を行っていただくほか、労働者派遣制度の運営上の問題についての要望等につきまして述べていただく。そして、行政機関が行います指導、相談、援助の補完をしていただくということでこの協力員制度を十分活用してまいりたいというふうに考えております。
  95. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 派遣法の目的は、労働力の適正な需給の調整と派遣労働者の保護及び雇用の安定を図るとあるわけです。本法が適切に運用されない場合は、派遣労働者の保護や雇用の安定が図られないで、むしろ逆に常用雇用労働者の代替を促すことにもなりかねないと思います。  大臣のこの法律についての基本的な考え方をお聞かせいただきまして私の質問を終わらせていただきます。
  96. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 先ほど来安定局長からも御答弁申し上げましたように、労働者の派遣法自体、これは自分の希望する日時等に合わせて就業したいとする労働者の増加、また企業内における専門的な知識、技術、経験を必要とする業務分野の増加等の労働力の需給のニーズに合致するものとして制定された、一口に申してやはり時代の要請にこたえた法律かなというふうな理解もいたしておるわけでございますが、先ほど来御指摘のような問題が生じないように、就業の許可、届け出制によって適切な事業運営の期待できるものに限って労働者派遣事業を認めると同時に、対象業務の限定、派遣期間の制限等の規定を設けておるわけでございます。  そこで労働省としましては、御指摘のような事態が生ずることのないように、我が国におけるいわゆる終身雇用などの従来の雇用慣行や他の労働力需給調整制度との調和に十分に留意をしながら、法の規定を有効適切に運用していくことによって労働者派遣事業が労使双方のユーズにこたえる有効な労働力需給システムとして、また派遣労働者のみならず労働者全体の保護及び雇用の安定が図られる制度として育っていくよう最大限努力をしてまいりたい、かように考えております。
  97. 糸久八重子君(糸久八重子)

    糸久八重子君 ありがとうございました。終わります。
  98. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 私は、雇用に関しまして二つ、三つのことをお尋ねしたいと思っております。  まず初めに、男女の雇用機会均等法がことしの四月一日から施行されまして、先ほど糸久委員の御質問も聞いておりましたので、この法の施行によりまして法の性格が浸透しつつあるということを伺いまして、よかったなと思うわけでございますが、日時がまだ余りたっておりませんのでこういうことを聞くのがおかしいかもわかりませんけれども、雇う側、例えば従来は男子のみと書いてあったのが減ってきたとかというようなことも聞きますが、この雇う側と雇われる側にどのような変化が今起きつつございますのか、その辺おわかりでございましたら聞かしていただきたいと思います。
  99. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 機会均等法が施行されまして、雇う側つまり企業の方では、これまでいろいろな新聞ですとか民間の調査機関が調査をいたしましてその結果を発表いたしておりますけれども、そういうもので見ますと、企業では募集、採用から配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年退職、解雇に至るまでさまざまのステージで雇用管理のあり方を見直しまして、女子にも男子と均等な機会を与えるようにしているところが多くなっております。このほかに、初任給の額が今まで違っていたところを同じにしたというところも相当数あるわけでございますし、先ほども御質問の中にございましたけれども、この秋に行いました募集、採用につきましても男子のみというものが相当数減ってきているという状況になっております。  それから、雇われる方の労働者、特に女子の問題でございますけれども、これはなかなかまだ調査結果等も特にございません。私どもがいろいろな会合でお目にかかる方たちとかあるいは婦人少年室へおいでになる方たちの対応からの感想でございますけれども、女子労働者の方でも新しい法律ができたということで、この法律の趣旨が生きるようにということで、言ってみれば機会が均等になっても女子自身が自覚して努力しなければ女子の雇用の場での地位は上がらないわけでございますが、そういう意味で積極的に対応しておられる方もおられますし、趣旨はそうなんだけれども、なかなか女性の場合には家庭責任、育児責任を負っているために、気持ちははやるけれども、なかなかそこまではいかないのでという方と、さまざまなのではないかというふうに感じております。
  100. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 こんなふうに理解していいんでしょうか。機会均等ということを含めまして長い過去を振り返りますと、大体女子の場合は割合単純な労務といいますか、軽い職種に配置されたと思うんですけれども、専門性を持って就職する人もおりますから、そうした意味におきまして、配置される職種の場が広がりつつある、あるいは広がったというふうに理解してよろしゅうございましょうか。  それから、もう一つお聞きしたいと思いますのは、深夜業務がほとんど開放されましたですね。この時点を通しまして、職種の中では、従来深夜をやりたいと思うけれども女子はできないということで嘆かれた場所もあったように思うんですが、そういう問題はほとんど解決されましたか。
  101. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 石本先生おっしゃいますように、今までは女子はどちらかというと単純補助的な仕事についている場合が多くて、なかなか基幹的な仕事あるいは専門的な仕事、管理職的な仕事につく機会がなかったわけでございますが、この雇用機会均等法施行後は、先ほども申し上げましたように、雇用管理制度改善されまして、そちらの方にも門戸が開放されるということで女子が出ていく条件も整いましたし、まだ始まって半年でございますけれども、徐々にではございますけれども、そういう方向に女性を登用しようということで努めておる企業も多いように見受けております。  それから、深夜業の方でございますが、先生御承知のとおり、深夜業につきましてはごく限られた専門職の方々と、それから指揮命令者といいますか、管理職的な仕事をしている女性につきましては深夜業の規制が外されたわけでございますが、必ずしも専門的な仕事をしている方たちすべてに解除されているというわけではございませんので、解除された方たちから、非常にやりよくなって男性と十分競争できますという御意見もありますし、それから、私のところは解除されなかったんだけれどもだめなんだろうかというような御相談もかなり来ております。
  102. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 この法律があろうとなかろうと、やっぱり女子の就業に対しましての能力の開発、これはもう過去にもしてこられたと思いますし、これからもますます環境の整備を含めてこれは助長されていかなければならぬと思うわけでございます。  それからもう一つは、この法律関係がないのかわかりませんが、雇用の場における女子労働者がうんとふえましたですね。既婚労働者もどんどんふえてきております、パートタイマーの面を抜きにしましても。そうすると、非常に仕事が多様化してきておりますので、そのための働く人々の環境の整備という面ではどういう点に今一番気をつけておられるんでしょうか。
  103. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 先生おっしゃいますように、確かに女性の働き方も多様になり、つく仕事もさまざま広がってきております。雇用機会均等法ができまして女子に対する機会は男子と均等に開かれるようになりましたけれども、やはりどうしても男性と女性で働き方が違ってきてしまいますのは、女子の場合には子供を産む、それから家族を持っている場合には働いていても家事、育児の責任をかなり重く負っている女性が多いために意欲があってもなかなか男性と同じように働けない、あるいは休まなければならない。時には育児のためにやめて、子供が大きくなってからまた職場に出ていきたいという女性もまだまだ多いわけでございます。  そこで雇用機会均等法では、御承知のとおり、育児休業制度あるいは女子の再雇用制度につきまして使用者に努力義務を課して、その導入を促進しようといたしているわけでございます。また国もこうした使用者の努力に対して援助をしようということになっておりますので、私どもとしても、雇用の場での機会均等を促進するということと車の両輪のように育児休業制度とか女子の再雇用制度がさらに普及していくように努力をいたしたいというふうに思っております。
  104. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 これは人の言われる言葉でございますが、深夜業が廃止になった、そうなりますと、母性ということから出てきている言葉だと思うんですが、家庭の中に両親ともが働いている、そしてお母さんが夜間の勤務もしなければならない情勢が出てきた、これはよいことか悪いことかわからぬ。これは一男性の声だと思って聞いていただきたいと思うんですが、そうすると子供はほったらかしじゃないかと。やはり産み、育てるというのは母性というものの視点から考えるべきじゃないかというような声がこの前ありまして、私ちょっと反論したんですけれども、そういうふうないろんなことを考えますときに、母性の尊重ということ、ただ妊娠とか、それから分娩とかあるいは産後休暇とかいうことだけじゃなく、これは両親の問題になりますけれども、私はこの機会均等法、もちろん必要でございましたし、施行されましてよかったと思うんですが、やはり育児休業法というものもどこまで実現方に向かって考えておられますのか、労働省の所管だと思いますのでお聞かせいただきたいと思います。
  105. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業につきましては、この雇用機会均等法につきまして労使、公益の三者構成の審議会で御審議いただいている中でも大きな問題でございました。育児休業請求権という権利として法律の中で認めるべきではないかという御意見もあったわけでございますが、いろいろ御議論ありました末に、御答申としては、多数意見としては、まだ育児休業制度の普及率が余りにも低く、請求権ということで法定するには時期尚早であるので、まず育児休業制度がもっと企業の中で広まっていくように努力すべきで、もう少し広まってからという御感触だと思いますけれども、まずもう少し普及を進めるようにという御答申がありました。  私どもとしては、雇用機会均等法の中に育児休業制度を導入するように使用者に努力義務を課しますとともに、国の指導、援助措置についても定めたところでございますので、私どもとしてはもっと普及が進みますように全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
  106. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 大臣に御所見を承りたいと思います。  今私が言っておりますことは、機会均等法ができまして、そして女性の職域も広がってまいりますし、それから処遇につきましてもだんだん向上していく。これは当然なことでありますけれども喜ばしいことでございますが、そうしたあらゆる条件の中で母性というものが絶対に尊重されなければならぬと私は思っている一人なんですが、こういうことにつきまして大臣はどういうふうにお考えでございますか、一言で結構ですからお伺いします。
  107. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) この問題、私決して余り詳しくないわけでございますけれども、今先生指摘の機会均等法という中で、やはり女子本来のかけがえのない使命でございますこの母性ということ、これはもう法律以前の問題として特に尊重されなければならぬし、そのことが機会均等法の今後の施行について決して差別になってはなりませんし、そういう意味から考えますと、この法律の趣旨全般で一番重要なところは、やはり職場における男女の機会均等の実現に対する社会的な機運と申しましょうか、社会的コンセンサスと申しましょうか、その中で、前段で申し上げましたように、母性と申しましょうか、これは特に尊重されなければならぬものだと、かように考えております。
  108. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 それでは女性の問題はまたいずれ機会がございましたら。  次は心身障害者雇用に関することでございますが、先般、新聞を読んでおりましたら、身体障害者雇用率昭和六十三年からですか、〇・一%ふやしましょうと、ふやしますというようなものが出ていまして、ああよかったなと思っておりますし、それから職業訓練等に参りましても、かなり身体障害者のための訓練体制が拡充強化されてきておりますので、これも私は本当にうれしいと思っております。  問題は、さっきも浜本委員も聞いていらっしゃいましたけれども精神薄弱者あるいは現在でございますと精神障害者、精神病が寛解して社会復帰した、職業がない、そういう問題が大きな声になって今出てきておりますが、お話を聞いておりますと、この人々のための法律の制定も考えておりますというような声もございましたけれども、この精神障害者に対する雇用対策についてどのような、さっきお聞きしましたけれども、全部総括しましてどのようなお考えを持っていらっしゃるのかちょっとお聞きしたいと思うんですが。
  109. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  身体障害者雇用の問題につきましては、労働省としましても重点施策の一つとして最大の努力を図っているところでございますが、最近の状況は重度身体障害者及び精神薄弱者等に対する対策ということで、援助の手を差し伸べなければなかなか進んでいかないというような難しい対応が迫られております。それらにつきましても逐次、精神薄弱者に対する雇用対策につきましては、例えば能力開発の促進、職場定着、指導の強化等条件整備の強化を図りますとともに、第三セクターその他いろいろな施策を進めているところでございます。  我々のとらえ方としましては、精神薄弱者と今先生がおっしゃいました精神障害者、この二つはそれぞれ別個のものだというふうに考えております。それぞれ対応、施策、援助の手を差し伸べなければならない点では同じでございますが、その対象として把握するには異なった要素が必要ではないかというふうに思っております。その中の精神薄弱者につきましては、先般身体障害者雇用審議会から提出されました精神薄弱者雇用対策に関する意見書をいただいておりますので、この意見書を踏まえまして、精神薄弱者雇用された場合には実雇用率算定に当たりカウントする、それから調整金報奨金支給対象に加えるというものを内容といたしました法案を次の通常国会に提出したいというふうに考えております。これは現在のところ、特別の法律を別個につくるんではなくて、身体障害者雇用促進法改正の中でそれを進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  110. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 身体障害者法律ができますときに、心身と、心というものも入れてくださいと随分主張した一人でございますけれども、それはならなかったわけでございますが、福祉という面から考えましても、精神薄弱者とか精神障害者、これは非常に大きな問題だと思うんです。労働省とされましては、雇う側、そういう障害を持っている、心の障害を持つ人を雇う側に対する対策ですか、そういうところに重点を置いていきたいというふうにお考えを持っていらっしゃるんじゃないかというふうに私は思うわけですが、その辺だけちょっと一言で結構ですからお伺いしたいと思うんです。
  111. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  もちろん雇う側の理解と協力がぜひ必要でございますのでそちらの方へ重点を置いておりますが、先ほど申し上げましたように、最近の重度身体障害者精神薄弱者の就職、雇用の場の確保等につきましては、障害者そのものの職場適応、また生活に適応するというような施策も重要でございますので、そちらの方にも力を注いでいるつもりでございます。
  112. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 人間が生きていく、ただ寝て食ってというこれはもう動けない人だけの問題でして、少しでも動くことができて少しでも何かできるのなら、生活という面をも含めまして、生きるということへの条件整備というのは全部の関係の人が皆思っているわけですが、やはり労働省が働く者という意味におきましては先頭に立っていただきたいと思うわけでございまして、この問題、本当に厳しい雇用条件の中でさらに厄介な問題でございますけれども、十分に御検討いただきたいと思うんです。来年度の予算など見ておりましてもかなりいろんな意味配慮をされておりますけれども、今後を含めまして真剣に御検討願いたいことをこの機会に要望しておきます。  続きまして、今度は全般の問題になりますが、さっき浜本委員もいろいろ詳しくお聞きになりましたので私はもうあれやこれや聞く必要はないんでございますが、基幹産業は本当に落ち込んでしまいました。そして今度は、技術の革新といいますか、進展、そういったようなことを含めまして産業構造が大きく変革といいますか、変貌してきておりますし、それから雇用形態もこれは大きく変わってきておるわけでございます。それからさらには円高によります不況といいますか、そうしたものを含めまして、最近といいますか、近時と申しますか、大企業の中でも人減らしが出てきております。それから中小企業におきましては、さっきの円高等のことを含めまして倒産が相次いでおります。また、これは新聞紙上などで拝見しているわけですが、相次ぐ炭鉱の閉山といいますか、それからまた反面、今度は長寿化社会を迎えまして、そして定年延長を含めました高齢者雇用促進問題も出てきておるわけでございます。  それからさらには、これは別の視点になると思うんですが、やっぱり大きな問題だなと思って見ていますのは、大臣もしばしば御答弁に立っていらっしゃいますが、国鉄の分割・民営化を含めましての余剰人員の対策問題、あれこれいろんなことを考えますと、平和で豊かな国だと私も思っておりますし、皆思い込んでいるかわかりませんが、何やらハチの巣を突いたような状況が今労働界の中に雇用の問題を含めまして出てきているように私は思えてならぬわけでございます。雇用率がどんどん高まってきて完全失業者もふえてきているというさっきのお話もございました。  こうしたてんやわんやの中で、労働省のお立場でどれもこれも優先するというものはない、あれもこれも全部手をつけていかなきゃいけないわけでございますが、現在ただいま、もう既にいろんな手は打っておられますことは承知しておりますけれども、どこに重点施策を持っていこうとしておられますのか、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  113. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今先生全般的に集約しておっしゃいましたように、雇用失業情勢は非常に厳しい中でいろんな要素を抱えております。労働力の高齢化、女性の問題その他いろいろございますが、それらを総合的に進めていきますとともに、しかし、何はさておいても、全体の雇用失業情勢、特に失業者の雇用が安定するということが重要なわけでございまして、この円高不況に伴います失業者の発生その他につきまして、失業の予防をまず図りますとともに、個々の失業者につきましてその職業の安定を図っていくということが労働省の施策、当面する施策の中で最重要な施策だというふうに考えております。
  114. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 局長のおっしゃることわからぬわけでもございませんけれども、もちろん中央官庁ですから一つ政策、方針を打ち出しなさって、それを何といいますか、地方といいますか、労働省関係でございますと職業安定所などなど、末端の事業体においてこの仕事を進めていかれるんだと思っておりますけれども、反面また、労働時間の短縮なんということが出てきまして、これもまた当然だという気がするんですが、週休二日制の促進というようなこともいろいろ出てきておるわけでございます。それからもう一つは、零細企業の場合、未組織といいますか、労働組合などに入っていない未組織の企業がたくさんあると私は思うんですが、これらも含めましてどういうふうに今後歩いていったらいいのか。  それで、これは労働省だけの問題ではございませんけれども労働省が働く条件というものを整備していかれるわけでございますし、雇用の促進もしていかれるわけでございますが、大臣いかがでございましょう。大変あれやこれやわけのわからぬことを言いまして、素人考えでただ心配になるものですからこういうことをお尋ねしているわけでございます。
  115. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) たびたび雇用問題について私なりに御答弁を申し上げておるわけでございますが、今後予想される雇用問題を考えました場合、やはり当面する日本経済の最大の課題だと、かように考えております。  それで、しからば雇用対策をどう行うかということになりますと、やっぱり全官庁挙げて内需の拡大に取り組みまして、どうしても体質を変えて、かつ総需要量をふやしていかなければならぬ。そうしませんと、労働省現行制度の中でやっておりますのは、御案内のように失業の予防、できるだけ失業者を出さないという、そういうことに対する助成策、さらにはやむを得ない離職者に対する給付、援助、そしてまた全国的なシステムでの情報の収集、職業の紹介、あっせん、さらには今後地域対策を強化して、能力開発も片や行う、非常に今後重要になってきますのが職業の訓練であろうかと。  御案内のように、一口に申し上げますと、私の理解では徹底的に内需の振興を行いまして、片ややはり労働省中心になりましての、今後非常に就業が高度化、多様化しておりますので、それに対応できるような職業訓練、これはあらゆる分野にわたりますけれども、ここらあたりに重点を置いて徹底的にやらなければならぬ。ただ、残念ながら労働省政策だけをもって雇用の決定的な増加、パイの増加というのはなかなか図れませんので、このことも私今までの経済構造調整の会議なんかでも申し上げたわけでございまして、今後、あらゆる産業政策の推進、さらには事業官庁等の今後の事業の執行について、特に雇用問題に御理解を賜るようにお願いもしたところでございまして、やはり基本的には総合政策をもってこれはもう徹底的に力を入れてやらなければならぬ。  そのために労働省としては、あらゆる受け皿、その準備、失業を出さないための対策、これもあらゆる知恵を出して、また相当の予算折衝をした上で万全を期してまいるというのが私の当面の考え方であります。
  116. 石本茂君(石本茂)

    ○石本茂君 大臣の御所信を承りまして、本当にそうだと、ぜひそのように進んでいただきたいと思っております、雇用の安定即それは生活の安定につながっていくわけですから。  それで、何といいましても、やはり平和な社会、平和な国家、平和な世界ということを考えますと、生きる条件が整備されていることが第一条件だと思うんです。婦人労働の問題も今後ますます厳しくなっていくであろうと思いますし、若年労働者の問題もありますし、老人の雇用の促進問題もありますし、いろんな問題がございますが、どうか労働省の持っておられます業務、任務、私は物すどい重要な役割を持っておられる役所だと前々から思っておりますし、今もそう思っておりますが、大臣、ひとつこれは企画等を含めまして、本当に御苦労でございますけれども、もう本当にそうだと、労働省の企画、そしてその推進してくださる条件、本当にそうだということで、我々国民が安心できる行政といいますか、そういうものを、今もしていてくださいますけれども、今後に向かいましてさらに一層推進していただきたいことを心からお願いいたしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  117. 理事(岩崎純三君)(岩崎純三)

    ○理事(岩崎純三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩をいたします。    午後零時二十八分休憩      ─────・─────    午後一時三十二分開会
  118. 委員長(佐々木満君)(佐々木満)

    委員長佐々木満君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、藤井恒男君が委員を辞任され、その補欠として柳澤錬造君が選任されました。     ─────────────
  119. 委員長(佐々木満君)(佐々木満)

    委員長佐々木満君) 休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  120. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 午前中の質問と多少重複する面もあろうかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。  去る九月十九日の経済対策閣僚会議におきまして、総合的な経済対策を実施することが発表されましたけれども、あれから一カ月余り経過しております。労働省としてはどういう取り組みをなされようとしているのか。特に顕著なものが、あるいはまた近年まれに見る失業率の増加傾向がある今日、新たな対応というものがあるならばお示しいただきたいと思います。
  121. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 御指摘のように、非常に雇用失業情勢厳しいものがございまして、懸念をいたしておるわけであります。そういう中で雇用の安定を図っていかなければならぬということでございまして、基本的には午前中も種々御答弁申し上げましたように、一番にはやっぱり内需の関係、これを徹底的にやらなければいかぬ、そういう中で総合経済対策は決定されたわけでございます。  その中で、労働省としまして雇用対策につきましては、一つには雇用調整助成金、まあ従来の制度でございますけれども、この助成率の改善と各種助成制度の拡充ですね、これを図っていこうと。さらには出向等の活用によりまして、これは失業前の問題でございますが、産業間、企業間の労働移動の推進、こういう対策の充実強化を図っていきたい。さらに、今申し上げましたこの助成金制度の拡充はとにかく急がなければならぬということでございまして、十月二十日から既に実施に移したところでございます。  さらにまた不況業種、不況地域中心として離職者の増加が見込まれるわけでございまして、今回の補正予算におきましても約七百九十三億円の失業給付費を計上しておるところでございます。  さらに、いま一つは、今後産業構造の転換に伴いまして、特定の地域において雇用の悪化が懸念されるわけでございまして、雇用機会の増大を図ることを中心にした総合的な地域の雇用対策、地域の雇用促進、雇用開発ということについてただいま検討を進めておるところでございます。  非常に先行き厳しい情勢が続くものと考えられますので、とにかくその動向を少しでも早く正確に把握いたしまして、それに対応して機動的な対策を講じて、全力を挙げて雇用の安定に努めてまいりたいと考えております。
  122. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 今も大臣からお示しいただいたように、当面する雇用悪化というものは輸出依存の製造業、とりわけそういったような面が深刻でございます。その中でも造船大手では構造的な不況も加わっておりまして、既に一万六千人を超す余剰人員が発生しておりまして、配転、出向、その他、六十一年に入ってからだけでも六千人近い離職者が発生しておりますし、三割の人減らしを計画している企業が軒並みであるということが報道されております。また、合板、製材業でも今後二千人程度の離職者が発生することが懸念されているとか、あるいは海運業においても二千名程度の離職者が発生するとか、また従来好況であったはずの自動車製造業でも季節工の不補充等の動きがありまして、今後製造業についても、構造不況業種以外の広範な産業においても次第に基幹雇用への影響が及んでくることが懸念されております。  また、今大臣もお示しになったような輸出比率の高い地域においてはいろいろな影響が出てきておりますし、漁業もまたしかりでありますが、こういったような実態を本当に労働省としてどのように把握しておられるのか、お伺いいたします。
  123. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今個々の業種別の問題につきましては、先生いろいろと数字を挙げてお話しになりましたように、ほぼ同じような実態を我々としては把握をいたしております。  まず、全体的に申し上げますと、最近の雇用失業情勢は、先ほど大臣が申し上げましたように、円高背景といたしまして非常に厳しい状況になっておりまして、雇用調整を実施する事業所が増加し、求人の減少、失業者の増加等が見られます。まず、有効求人倍率につきましては、六十年後半以降低下傾向にございましたが、六十一年八月では〇・六一倍ということになっております。完全失業者は前年水準を上回る傾向で、六十一年八月には百六十九万人、失業率二・九%ということになっております。  それから、産業、地域別に見ますと、今の造船、非鉄等、それから円高の加わりましたその他の産業は、個々には先生のおっしゃったとおりでございますが、特に輸出関連地域につきましては、労働省調査では、調査対象四十一地域で、これにつきまして先ほどもちょっと御説明申し上げましたがっ四つのグループに分けて調査いたしておりますが、そのうちで雇用調整を行っているグループが二十二地域に及んでおりまして、昨年の十月以降八月までに約二千七百人の解雇者が出ております。特にことしの五月までは約千人ぐらいの解雇者であったわけでございますが、五月以降千七百人ふえておりまして、解雇者が増加傾向にあるということが言えると思います。  今後も造船業等の不況業種や特定地域等で雇用調整が進んでいくというふうに思っておりますので、雇用情勢の把握につきまして万全を期してまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  124. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 先ほど大臣からも御答弁がありました、これからのそうした失業率の増大に対する対策というものをお聞きしておりましても、ややもすれば労働省のとってきた施策というものが雇用調整助成金対象業種の拡大だとか、あるいは指定基準の緩和だとか、そういったようなことに非常に力点が置かれているというような感を深くするわけでありますけれども、そもそも雇用調整助成金というものがどういうようなことをねらいとして設けられたかということを今ここで殊さらにお尋ねするまでもございませんけれども、これは要するに文字どおり雇用調整のためのものでありまして、つまり景気の上昇期、沈滞期、すなわち山と谷の調整のためである、こういうように理解しております。  ところが、決して今おっしゃっていたようなことでは、先の見通しを持たない解雇につながるというようなものでは、これは意味がないんじゃないかと思うわけです。そういうことではかえって安易に、雇用調整助成金があるから、だから休業者を出すといったようなことにもなりかねない。そういう意味で、やはりこれらに対する対策、対応も抜本的に考えていかなかったならば、企業の将来の見通しを明らかにしていくということでなければ、これは意味を持たないものになってしまうのじゃないかと私は懸念するんですが、その点いかがでしょうか。
  125. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  雇用調整助成金制度の趣旨等につきましては、もう先生よく御存じのとおりのことでございますが、あえて申し上げますと、ちょうど高度成長期が終わりまして安定成長期に入るときになりますと、従来いろんな経済の波の山、谷の中で、谷に差しかかって解雇者その他失業者が出てきた場合には、高度成長期にはこの失業期間につきまして、失業給付を行うことによりその間に就職を促進していくということが可能であったわけでございますけれども、安定成長期に入ってまいりますと、成長率も落ちてまいりますし、一たん離職しますと、なかなか就職は困難な面もあるというようなことで、失業をなるべく発生させない、失業の前に企業において次の山をねらっての雇用の確保を図る、また失業する前に教育訓練等を受けて他の企業へ移っていくというような制度が必要であるというようなことで、雇用調整助成金制度が失業の予防というような趣旨を抱えてでき上がったわけでございます。  そういうことで、雇用調整助成金は、当初でき上がったときには繊維その他造船も含めまして、非常にこれが活用されまして、年間五百億からの資金が出ていったわけでございますが、その後いろんなこの十年間の経緯を経ながら山や谷の間で年によって支出その他も動いてきております。  そういうことで、これは雇用安定資金によって山の間に資金を確保しながら谷のときに出していくというような制度になっているわけでございますが、最近の円高の問題その他経済の下降の中で、雇用失業情勢に対応するためにこの制度を有効に活用していく時期に現在あるというふうに我々は判断いたしているわけでございます。  そういう立場から先ほど大臣が申し上げましたように、総合経済対策の中でも業種の指定基準を弾力化していく。従来は三カ月前の状況を見ながら行っていたわけでございますけれども、それを一カ月の実績と二カ月の予測をもって業種の指定を行っていく。それから、助成金中身につきましては、出向等に係る助成については対象期間を一年から二年に拡大していく。それから、休業再就職あっせんに係る助成金助成率を引き上げていく。それから、教育訓練離職訓練等に係る助成金につきましては、訓練費の増額を図っていくというようなことで、その中身の充実を図りながらこの雇用調整助成金が本来の趣旨で有効に雇用失業情勢の非常に悪い時期に活用されるようにその措置を図っていったところでございます。  これらの措置を通じまして、失業の予防その他雇用の確保につきまして有効に活用してまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  126. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 次に、先ほどからだんだん失業率が今後高まっていくということを申しておりますけれども、だんだん高まる失業率これ自体が非常に問題ではございますけれども、午前中にもちょっと話がありました。既に二・九%、百六十九万人、こういうような数字が示されておりますけれども、これらの数字をはじき出すところの我が国の労働調査、これ自体にも多少問題があるような気がするわけでございます。つまり今の労働調査では、調査期間一週間の間に何らかの意味において求職活動をしている者が労働力人口の中に入り、それで就職できなかった者が完全失業者として定義されている、こういうことにも多少問題があるのではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  127. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今の労働調査は、確かに先生のおっしゃるとおりになっておりますが、この調査自体はいろいろ分析すれば先生のおっしゃるような面もあるかと思います。しかし、この調査ができましたのは戦後でございまして、アメリカの失業率をとらえている調査と類似したものでございまして、国際的に見て決しておかしな調査ということではないというふうに思います。  それからもう一つは、調査自体というものは長い経過の中で前年比その他系列を把握する必要があるわけでございまして、そういう傾向数値を示すものとして完全失業者の問題、完全失業率の問題等はそれなりに我が国の雇用失業情勢を示す指標として役立っているものではないかというふうに理解いたしている次第でございます。
  128. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 これについて少し具体的に申しますと、最近の失業率の統計を大きく左右しているものの一つにパート、アルバイト、派遣といった、いわゆる常用雇用でない労働者の求職活動があるわけですけれども、すなわちこういう階層の方々は求人が余りないときには求職活動をしない。家庭の主婦といった方々が多いわけですので、求職活動をしてもどうせいい働き口なんて余りないだろうといったような、あきらめのためでもあるかと思いますが、余り求職活動をしない。こういった層が最近我が国の雇用構造が急激に変わってきて大きなウエートを占めているんじゃないかと思うわけですが、こうした方々がどの程度存在すると認識していらっしゃるのか。  また、労働調査の上で、先ほどもお話がありましたけれども、その調査方法の改善、つまりこうした今日の現状にかんがみ、終戦直後のときとはかなり構造が変わってきておりますので、何か改善されるおつもりはないのか、その点お尋ねいたします。
  129. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  現在手元に正確な数字を持ち合わせておりませんが、いわゆる短時間勤務の労働者約三百万というふうに記憶いたしております。これらの短時間労働者がだんだんふえてきているということは事実でございますし、これは午前中いろいろ議論ございましたが、女子労働力の増加または高齢者の増加等でそういう供給面でのニーズもございますし、逆に需要面からのニーズもあるということでふえてきているわけでございます。これらが労働市場にいろいろ構造的に影響を与えているということは事実でございまして、短時間に労働者が動くわけでございますので失業率が高くなっていくという傾向はあるというふうに思われます。  しかしながら、この調査自体が悪いかと申しますと、そういう要素を含みながら失業率というものは出てくるということでございまして、先ほども申し上げましたように現在の労働調査の中で失業率がどう動いていくか、それに対する影響が、これらの層にどういうふうに影響しているのかということをいろいろ分析してまいることによって、現在の調査自体を改正するというようなところの必要性まではどうかというふうに我々は考える次第でございます。
  130. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 そうするとこの調査方法、多少考慮して見直しをしてみる、こういうお考えはないわけですね。
  131. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  この調査自体は労働省じゃなくて総務庁の調査になっておりますので、私がこの調査をどうこうするというわけにはまいりませんが、この調査先生のいろいろな御指摘の趣旨はまた別途の調査がいろいろあるわけでございまして、この労働調査そのものについての今のようないろいろな御指摘が、改正すべきものであるというところまでの問題ではないのではないかと私は考えている次第でございます。
  132. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 なるほどおっしゃるように労働省直接の問題ではないとは思いますけれども、今度は労働省としてこれをいろいろ今後調査されるときに、こういったようなことも一応考慮の中に入れてひとつ再考をお願いしたいと、こう思います。  少し長期的な雇用への影響という面からいろいろ今後のことを考えてまいりますと、先ほどから申しております円高基調が長期にわたって今後続いていく、こういうようになってきますと、自動車あるいは電機のような産業では盛んに今報道の中でも言われておりますように、海外工場建設に拍車がかかってまいりまして、海外で雇用を増加する形になりまして、いわゆる国内における産業の空洞化、こういうことが非常に懸念されるわけですが、この一年の急激な円高基調というものは、これはもう本当にだれも予測しなかった事態でございまして、想像をはるかに超えて、より日ごとに深刻になっておりますが、企業の海外進出による雇用減というものをどのように認識されておりますか。
  133. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 今言われました俗に言う産業の空洞化の問題でございますが、最近の傾向として、大企業のみならず中堅企業に至るまで一応今後の海外進出を社内で予定されておるというところはかなりふえてまいっておるというふうに聞いておりますが、現状の中でどうかと申しますると、やっぱり海外における生産というのは国内生産に比べまして今のところ占める率が二%前後でございましょうか、そう大きい数字では現在のところないと私は理解しております。しかしながら、今後における問題を考えました場合、海外の直接投資に伴う雇用問題というのはやはりこれは相当深刻に考えなきゃいかぬ重要な問題だと考えております。したがって、先般も労使を初め各界の代表者から成る雇用問題の政策会議を開催いたしまして幅広い視点から議論をいただいたところでございます。  今後はこの会議におきまして、企業労使からのヒヤリング等を通じてやはり専門的な検討をいただきまして、海外投資に伴う雇用問題へどのような対応をするのが的確な対応であるかということについてコンセンサスの形成を図ってまいりたいと考えております。
  134. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 この雇用の減少というものは、産業構造変化の中でこれは避けられないことだと思います。特に本年二月の産業構造審議会において「21世紀産業社会の基本構想」の中間の取りまとめが発表されておりますけれども、今後海外直接投資が一二%の率で伸びていった場合、二〇〇〇年における雇用機会の減少は約五十六万人、これが年一五%で伸びていった場合にはさらに四十一万人と試算されておりますけれども、これをこの産業構造審議会では第三次産業、すなわちサービス産業あるいはソフトの関係で吸収し得るであろうと楽観視しているような中間取りまとめの発表がなされておりますけれども、果たしてそういうようなことであろうかどうか、私はいささか懸念または疑問視するわけですが、この点いかがでしょうか。
  135. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今先生指摘の数字は、ことしの二月に産業構造審議会が「21世紀産業社会の基本構想」の中でまとめられたものでございます。恐らくそのときの為替の状況というのは現在の円高の状況とはまた違っていたというように思いますが、直接に投資の結果、雇用が減少するという面の計算で今のような計算になっているわけでございます。しかし、二十一世紀までにらみまして日本の産業構造変化の中でそれを吸収、解消していくという形になっているわけです。  確かに従来までの海外投資につきましては、貿易の摩擦の緩和とかそれから海外諸国の輸入規制に対応した現地市場の確保を図るというようなことで我が国の海外投資は行われておりまして、その投資生産額の面で直接の雇用の減少というのはあるわけでございますけれども、全体的に見ますとこれら先進国向けの投資が活発化してまいりました自動車や電機、機械について見ましても、海外現地生産に当たって国内での解雇が行われたというような事例はほとんどございませんし、また両産業とも昭和五十五年以降現在までのところは雇用の増加傾向に推移しているのでございます。したがって、全体的に見ました判断としては、この答申そのものも間違っていなかったと私は理解いたしております。  しかしながら、先ほど大臣申し上げましたように、急速な円高の中でいわゆる国際競争力の低下の観点から、生産拠点を国外に設けるというようなことで海外投資が急速に広まっていく、また、今後広まっていく可能性があるということは非常に産業の空洞化、また雇用の空洞化の面で憂慮すべき事態が考慮されるわけでございまして、それらの面につきまして最近の状況、それから今後どういうふうに動いていくかというようなことを、先ほども申し上げましたように専門的な立場から検討を早急に進めていただこうということを我々としては今考えているのでございます。
  136. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 ちょっと私の質問に対していま少し具体的にわかりやすくお聞かせいただきたいと思いますが、私が一番お尋ねしたいことは、そういうようないろいろな二〇〇〇年前後における失業者の試算がはじき出されているわけですけれども、それらを第三次産業でもって吸収し得る、このように楽観視された発表がなされておるわけですから、大体吸収するであろうと言われるからにはそれだけの何か根拠がなくちゃいけないんですけれども、そういうような見通しあるいはそういうようなものが何かお示しいただければと、こういうことを言っているんです。
  137. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) 吸収する産業につきましては、この産業構造審議会の中では技術革新分野、サービス業の分野でそれぞれ一定の計算をしながらはじき出しているわけでございます。例えばコンピューター、ME関係その他の発展によりまして、もちろん機械化、処理化が進む直接の生産工程では雇用の省力化が図られていきますが、それに関連する産業分野の発展、それから今後いろいろな形で現在も進んでおります事業所サービスとかいろんなサービス面での雇用の拡大、それらを計算しながら二十一世紀に向けての雇用機会の計算をいたした上で雇用の拡大で吸収できるという計算をこの審議会としてはしているわけでございます。
  138. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 なかなか抽象的でちょっとわかりにくかったんですが、第三次産業をどういうように編成し、どういうところを伸ばし、どういうところを抑制していくかという政策がやはり一番重要な意味を持ってくるわけですが、しかし新しい業種ができてくると同時に、新しい労働形態が多様に広がっているのに対して、政策の方がやや後追い、つまりおくれているんじゃないかという感がするわけですが、この点いかがですか。
  139. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  サービス業の場合にもいろいろなサービス企業があるわけでございまして、ある先生の分析によ りますと、一つは従来第二次産業の中にあったいわゆる間接部門、そういうものがサービス化されていくというような面が一つある。それからもう一つは、先ほど申しましたように事業所サービスとかいろいろなサービスを必要とする部門でのサービスの拡大がある。それから第三部門としましては、今後拡大されるべきサービス部門があるというようなことでシルバー、いわゆる高齢化現象、それから労働時間の問題、その点いろいろ問題になっておりますが、余暇問題、これらを抱えまして、例えば寝たきり老人に対するサービス、そういう面での社会福祉面と申しますか、及び余暇の活用の面でのサービス、これらは政策的にあるいは拡大していくべき部門かもわかりませんが、そういうようなサービス部門というものを拡大していく必要があるというような、大体三つぐらい分類していろいろとサービス面での拡大のお話をしておられる先生もいらっしゃるわけでございますが、そういう面での今後の対応をいろいろと進めていかなければならないというふうに我々は考えております。  雇用の面からももちろんそれは重要なことでございまして、雇用政策の面からどうあるべきかというようなことを従来から検討いたしておりますし、例えば昨年の国会で通過さしていただきました派遣業法などというものも、そういうような新たなサービス業に、サービス業だけではございませんが、その部門での労働力需給システムのルール化というようなものを図らしていただいたところでございます。
  140. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 いずれにいたしましても、産業面あるいは労働面、流通の面、もうすべての面でこの数年の間に今状況はかつてとさま変わりしようとしているわけですけれども、こうした今後我が国の産業構造変化に対応して雇用のミスマッチという問題が産業別かつ地域別にこれは起こってくると思います。つまり企業の海外進出を促進し、またある意味では応援しようとするならば、国内における雇用のミスマッチをどのように解決するのか、どういう取り組みをするのかという問題が起こってくるわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  141. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) この急激な円高または構造不況の深刻化に伴いまして、我が国の産業が今後知識集約化と申しましょうか、さらに高付加価値化を一層進めながら内需主導型へと産業構造の転換を図っていかなきゃならぬということでございまして、御指摘のとおり今後の雇用問題の解決にはいろんな広範にわたる能力の開発、さらには職業訓練というのは非常に大きい政策の柱になろうかというふうに考えております。  そうした中でこの転換を円滑に進めていかなければなりませんので、労働者の配置転換、さらには産業間移動に際して必要となる職種転換訓練を的確に実施しなきゃいかぬ。また技能のミスマッチが生じないように配慮することは極めて重要である。したがって、労働省としましては、今後雇用の拡大が期待される分野への円滑な職種転換を図ることを目的として、公共職業訓練の機動的な実施、企業における計画的な職種転換訓練に対する援助、助成などの対策を積極的に講じてまいる所存であります。
  142. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 今おっしゃったように、この産業の構造転換が今後ますます急激になっていくと思いますが、そういったような意味から通産、労働両省がおくればせながら去る七月に初会合を行ったということを聞いておりますけれども、当面する雇用不安に両省がどのように連携して対応をしていこうとされているのか、その辺お聞かせいただきたいと思います。
  143. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) 七月に労働、通産の会合を持ちましたのは、従来から定期的に持っていたわけでございまして、特にこの円高に伴いますその後の産業構造変化、またそれに対する雇用失業問題等を踏まえまして今後の問題について会合を持ったわけでございます。  従来から特定不況業種、特定不況地域の問題、いわゆる企業城下町の問題、それから地域の問題、それから中小企業におきます産地の問題等については緊密な連携を持ってきたわけでございまして、今後とも新しい事態に対応して連携をさらに深めていこうというために会合を開いたものでございます。
  144. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 今後新しく雇用をつくっていくというのは、これはこれから先非常に難しいわけですけれども、当面労働時間の短縮あるいは内需拡大のためにも余暇の増大が必要であることが非常に叫ばれております。ところが、我が国の賃金構造というものが基本給が低くて残業手当が大きい、こういう仕組みになっておりますけれども、とにかく残業をしないとなかなか生計が成り立たないというのが現実でありまして、労働時間短縮のための労働基準法の改正がそろそろ必要ではないのか、こういう気もいたしますけれども、同時に基準内における賃金をもっと厚くすることが必要じゃないかと思いますが、この点についてのお考えをお尋ねします。
  145. 政府委員(平賀俊行君)(平賀俊行)

    政府委員(平賀俊行君) 先生指摘のように、我が国の勤労者賃賞金の中で残業に基づきます所定外の給与の割合が比較的高いということもございますし、率直に申し上げまして全体の給与の中でやはり多少残業の要素を考えて生活設計をしているということも確かに否定できません。  しかし、生産性が上がっていく、あるいはその生産性労働者に配分するについて全体の給与をどうするか、あるいは労働時間をどうするか。特に労働時間を短縮し、あるいは所定外の要素を減らして全体の労働条件のバランスをどうするか。主として労使で決めることでございますけれども、今日労働時間の短縮の必要性がある、その中で所定外を減らすことも大事なことである、そういう観点に立って労使で適切に御決定をなさる、あるいは従来の考え方を変えてどうするということを決めていただくことも必要ではないかと思っております。
  146. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 もちろん時短の推進に当たってはそうした法制度上の枠組みだけではこれは不十分でありまして、最近の産業就業構造の変化の結果、現在では多様な労働時間制度が出てきております。業種や職種ごとにこうした労働時間の基準を打ち立てていく必要があるのではないかと私は思うわけですけれども、今の御答弁の中にあったように、ただ労使間の協議に任せているだけでそれでいいのだろうかと私は思うわけですが、その点いかがでしょうか。
  147. 政府委員(平賀俊行君)(平賀俊行)

    政府委員(平賀俊行君) 労働時間の問題につきましては、基本的には重要な労働条件として労使が自主的に決定するというのが建前であると思います。しかし、そのほかの労働条件もございますが、労働時間の問題につきましても実は労働基準法で最低基準を決めております。  この点に関しましては、昭和五十七年以来学識経験者の方々労働基準法研究会という組織でいろいろ御検討をお願いをいたしまして、昨年十二月にその結果が出てまいりました。その中にただいま御指摘がありましたように各業種のいろいろな実態などもあって、労働時間の決め方を弾力的にしてはどうかとか、あるいはもちろんその所定労働時間をどうしたらいいかというようなことも含めて労働基準法の問題についての研究結果を御報告いただきましたので、その結果で今審議会において御検討を進めているところでございます。
  148. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 次に、職安の問題についてちょっとお尋ねしますが、最近いろいろな職業紹介のメディアが野方図に出てきておりまして、安定所のシェアがややもすれば労働市場において小さくなってしまっている、こういう現象が起こっております。したがって、安定所が把握している雇用情報というものがごく局部的になって、非常に劣悪なものになってきておる。そのために逆に安定所を多くの人が次第に見放していくというような悪循環が起きているんじゃないかという気がいたしまして、ここにも時代の流れに立ちおくれている行政の一端を見るような気がいたしますけれども、現在の安定所の雇用市場における役割をどのように認識していらっしゃるか、また今後雇用情報を把握していくためにどのようにしていく考えか、さらに雇用開発のためにどうした努力をなされるつもりか、その辺をお尋ねいたします。
  149. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  安定所の利用状況についてはいろいろ言われるところでございまして、最近の就職情報誌等のいろいろ普及等もございます。公共職業安定所としてはいろいろサービスの強化に努めているわけでございますが、一般的に申しまして、この情報誌の活躍範囲その他は特に大都市の労働市場において行われておりまして、地方都市ではまだまだ安定所の利用の割合は非常にシェアは高いものだと、業務量の問題は別にいたしましてそういう状況ではないかというふうに思っております。  一般的に全国の求人、求職の安定所の利用状況を見ますと、年間五百万近くの求人、求職がそれぞれあるわけでございまして、労働調査によりますと、完全失業者のうち公共職業安定所を利用した者の割合は四四%に達しておりますし、さらに中小企業団体中央会の調査によりますと、中小企業公共職業安定所の利用率は五七・五%という高率になっております。そういう数字等を見ましても、全体的に見て必ずしも安定所が利用されていないというふうに我々は考えていないわけでございますが、労働力の需給構造の変化やそれからいろいろなマスメディアの状況等を考えますと、今後安定所の利用率を高めるためにいろいろな措置をさらにとっていかなければならないというふうに思っている次第でございます。  このために公共職業安定所では窓口体制の整備をここ十数年図ってまいっているわけでございますが、多様な求人、求職者のニーズに対応するためにさらに人材銀行やパートバンク、学生職業センター等専門的な施設の設置を行って、専門的な職業紹介、職業相談等も実施いたしております。さらに加えまして職業紹介機能の一層の強化を図るために、最新のコンピューター技術の活用によりまして全国の公共職業安定所をオンラインで結び、求人、求職等に関する豊富な情報を即時に提供をする総合的雇用情報システムの導入も図っておりまして、この十月から首都圏で実施いたしますとともに、六十二年秋には全国的に導入を図る予定にいたしております。これもコンピューターの技術が非常に進んでまいりまして、従来片仮名と数字でしか出なかった情報が漢字または地図まで含んだ形で出てくるという技術の開発に負うところもあるわけでございますが、これらを利用しながら十分に情報が把握できるように努めてまいりたいというふうに思っているわけでございまして、これら全体を通じまして、公共職業安定所が地域におきます真の総合的な公共サービス機関となるように努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  150. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 次に、勤労者財産形成促進制度についてお尋ねいたしますが、これは勤労者の資産形成に重要な役割を負っているものでありまして、今後さらにその制度の充実を図っていくべきものであると考えますけれども、この財形制度の現状と今後の方針をお尋ねいたします。
  151. 政府委員(平賀俊行君)(平賀俊行)

    政府委員(平賀俊行君) 勤労者財産形成制度は、昭和四十六年に創設をされました制度で、特に勤労者が持ち家などの、住宅などの所有が非常におくれているということなどにかんがみまして、当初から住宅の取得などを主たる目的に、利子非課税の優遇措置を講じて天引きで貯金をする、そういう形で普及をしてまいりまして、現在約千八百万人の勤労者がこれに入っております。それから貯蓄の残高も約十兆円ございます。それから昭和五十七年に個人年金の仕組みをこれに導入をしていただきまして、その結果、この年金の残高も七千億円になっております。そして持ち家のための融資も、最近、特に五十七年の改正で当初利子補給を導入していただいたものですから、最近ふえまして、二千六百億円の融資累計になっております。  しかしながら、私どもといたしましては、特に福祉の面で、大企業では企業内の福祉が大分充実しておりますけれども、実際に大企業中小企業労働条件格差よりも福祉面の格差が非常に多いものですから、こういう財産形成制度についてもできるだけ中小企業で利用していただく方向で、利用促進のための改善を図る。あるいは最近導入いたしました年金制度につきましても、こういった中小企業などにつきまして、できるだけ御利用いただくような形で制度の充実を図ってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  152. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 次に、今税制改正検討たけなわでございますけれども、財形貯蓄の利子非課税措置というものは、これは勤労者の財産形成促進制度の根幹をなすものでありますし、今後ともこれを維持していくのはこれは絶対必要だと、こういうように思いますけれども労働省としてはこの点はどのようにお考えですか。
  153. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) これはまさしく委員指摘のとおりでございまして、最近一連の税制論議の中での利子非課税制度の見直しということが行われておりますけれども、やはり今御指摘になった今後の社会保障政策に対する自助努力、これの上積み、さらには勤労者の自分の努力による住宅問題も含めましての資産形成、そういうふうに積極的な政策目的を持って行われております。  まさしくこの非課税問題はこの制度の根幹でございますので、いろんな批判がございますいわゆる限度管理につきましても、もう不公平性というものは全く問題ございませんし、労働省としましては、今後利子非課税問題につきましては、ぜひとも堅持してまいりたいということで、関係方面とも常時接触をいたし、その方針を貫きたい、かように考えております。
  154. 中野鉄造君(中野鉄造)

    ○中野鉄造君 終わります。
  155. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 それでは、婦人労働者の実態についてお伺いをしていきたいと思います。  簡単にお聞きをしていきたいんですが、先月発表されました政府の婦人白書、「婦人労働の実情」というのによりますと、婦人労働者の数が千五百四十八万人、雇用者全体の三五・九%に上っており、まさに日本経済を支える重要な役割を担っているという点が明確にされております。そうして、婦人の役割が一段と高まっておりますが、一方、賃金を見ますと、女子労働者の二割強というのがいわゆる労働条件の悪いパートタイマーですから、男女の賃金格差というのは年々拡大をしておるようでございます。一カ月給与の男女格差を見ますと、男子を一〇〇として五一・八%に女予がなっている。私、少しずつ上がっていると思っておったんですが、昭和五十三年にはその格差が五六・二%というところまでやっと上がっていたのに、それがまた五一・八%というふうに下がっているということで、年々格差が拡大をしております。こういった男女の賃金格差というものは、欧米諸国と比べましても大変我が国が劣悪でございますから、早くこの男女格差を縮めていくというのは非常に大事な課題だと思うわけです。  かねがね労基法の四条あるいは現行の均等法の趣旨、こういうものを考えましても、積極的にこれは労働省として対応していただかなければならない基本問題だと思うのですが、この課題を推進する上でどうですか、労働省のお考え、どんどん下がっていくというのは非常に残念だと思うんですね。
  156. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) この均等法施行後における男女の賃金格差に関するデータというのはまだ正確にないわけでございますけれども、従前の所定内給与の男女間の格差の要因として言われておりますのが、女子の勤続年数が短いとか男子に比べて就業分野が非常に限定されておる、さらには管理職についておる女子が少ない等々が挙げられておるわけでございまして、この均等法の施行によりまして、今後におきましてはこの女子の就業分野の拡大、さらには昇進機会の拡大等が期待されるところでございまして、労働省としましては今後とも女子労働者労働条件向上が図られますように均等法の趣旨の周知徹底、さらには労働基準法第四条に基づく同一労働同一賃金の履行確保に努めてまいりたいと考えております。
  157. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 午前中も同僚委員から御質疑がありましたが、雇用機会均等法が四月に施行された。これによって、午前中の御答弁を伺いましても、募集、採用等で若干の前進面が出てきている。しかし、一方ではまた労基法の改悪部分によって残業だとか休日労働の規制緩和、こういう問題で広範な職場労働条件の低下あるいは悪化、そういったものと直結をするなどということでいろいろ問題が一方では出てきているというふうに思います。  時間の関係もございますので、私はきょうは均等法施行に伴って、婦人労働の現状の中で新たな問題として出てまいっておりますコース別人事管理制度の問題についてお伺いをしたいと思います。  均等法の施行に伴いまして、四月以降、いわゆる男子事務職、女子事務職というふうな賃金の決定方法というのはやっぱりやれないということになっておりますから、新しい人事管理制度としてコース別人事管理制度というやり方ですね、総合職と一般職と言っているところ、一般職と事務職というふうに分けているところ、あるいは基幹職と補助職というふうに分けているところ、それぞれの企業によって言い方は違いますが、管理職コースと平コースというふうに区分をして賃金体系や昇進、昇格、こういうところを分けようというタイプのものが出てきておりますね。銀行だとか商社あるいは損保だとか生保、証券、こういうところでは大変広がってきている実態は私どももよく承知をいたしておりますし、その他、建設企業だとかスーパーだとかかなり広く行われているというふうに承知をしておりますが、普及の実態ですね、そしてこの制度の特徴をどういうふうに把握しておられるか、簡潔にお伺いをしたいんです。
  158. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) この法律が施行されましてからまだ半年ということでございますので、私どもも実態を全国的に調査するというところまではまだいっておらなくて、都道府県の婦人少年室等を通していろいろ見聞しているものをまとめているという程度でございますけれども、確かにおっしゃるとおり、定型的な業務で転勤を伴わないようなコースと、企画的、管理的な仕事、基幹的な仕事をして転勤を伴うコースというような、先生お言葉のように平コースと管理職コース、そういうふうに分けておられる企業もあるように思っておりますが、ただ、これがどの程度の広がりを持っているかということについてはまだ詳細には承知をいたしておりません。
  159. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 これは新しいやり方なんですがね、このコース別人事管理制度の分け方の大きな特徴、今局長もおっしゃいましたが、転勤ができるかどうかというのを踏み絵にしてこのコースを決めるという、コースを分けるというやり方をしているのがちょっと特徴的なんですね。  例えば銀行の場合、総合職と一般職というふうに分けているんですがね。銀行名は控えておきますけれども、例えば総合職というのは昇格は参与まで昇格する、勤務地は国内、海外の全営業地域、業務は銀行の基幹業務。一般職、いわゆる平コースは昇格なし、平のまま、勤務地は転居を必要とする転勤なし、業務は営業、事務の分野で定型的一般業務。この銀行は、このほかに地域を限って転勤ができるということで主任ぐらいに上がれる特定職という三つのコースをつくっているようです。  同様に、商社の場合も一般職、事務職というふうに分けて、一般職は基幹的業務、対外折衝だとか企画立案の業務、それで国内外全域への転勤あり。一方、この商社の場合は、平コースを事務職と言うんですけれども、平コースでは事務的、補助的作業で転勤なしと、こういう分け方なんですね。  ここで共通をしているのは、転勤が条件になっているというのが一つの特徴なんですね。これはいろんな実例を私いっぱい持っておりますけれども、こういう転勤ができるかどうかということで、平コースにするかいわゆる総合職、管理職コースにするか、こういうやり方というのはこれはどう思いますかね。
  160. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 今お話ございました商事会社とか銀行とかというのは、支店が全国に散らばっておりまして、国内だけではなくて外国にもあるというような大きな企業ばかりでございまして、それぞれ労働者は転勤というものが不可欠なものという面もあるのかと思います。私どもが把握しています限りでは、単に転勤のあるなしということだけではなくて、やはり転勤のあるような仕事というのは、仕事の内容そのものもハードであり、また高度の判断その他を必要とする、知識も必要とするものだというふうに理解をいたしておりまして、転勤だけがそのコースの分け方の基準というふうには私どもは理解しておらないわけでございます。
  161. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 労働省は、施行後間がないということで十分な御調査ができていないという状況もありますが、私ども見ているのは全部そうですね。その平コースと管理職コースという二コースになっているか、さっき申し上げたように間に一つあるかという。その条件というのはどれも、これは時間の関係ありますから全部申し上げませんが、これもやっぱり一般職という管理職コースは国内外の全地域を担当、それから平コースは原則として同一地区に勤務する従業員ということでコースを分けているわけですね。  商社の実態も調べてみたんです。これは商社では女性というのはかつては職場の花と言われた時代があったんですけれども、今は学歴が高度化し、また勤続年数も延びてきておりますから、非営業部門では実質的な課長の役割を果たすというふうな人たちも出てきておりますし、営業部門でも従来男性がやっていたような領域へもどんどん進出をしてきているわけですね。  例えば、商社の女子職員というのはどういう仕事をしているか、幾つかの商社の話を聞きましたけれども、ある商社では、大学で中国語を勉強してきたのでその商社に入ってからは月の大半は中国へ出張している。出張中は夜昼の区別なく仕事をして、出張手当は男女平等ですけれども、しかしコース別の選定では事務職、いわゆる平コースなんですね。だから給料では格差が出てきていると、こういう問題。あるいは別の商社ですが、これまで管理職がしていた税務関係の仕事をやっている。上司は、君は経理部長だなどと言ってくれますけれども、給料は同期の男性の五三%です、そして平コースだと。みんな最近コースを決めていますからね。  それからもう一つの例は、海外から輸入をする商品に保険を掛ける仕事をしている。商社の中では非営業部門ということにはなっているけれども、損保会社の立場から見たら営業部門、つまり営業マンと日々商売の交渉をしているということになる。これも平コースになっている。それからもう一つは、アメリカ向けの繊維の営業部門で働いている方ですが、毎日テレックスを見てバイヤーと契約を決めたりメーカーに商品を注文したりしている。一方、事務処理においては君がいなければ課が成り立っていかないなあなどと言われているけれども、やはり平コースに置かれている、こういう状態なんですね。  ですから、今申し上げたような方々、ほんの一例でございますけれども、こういう方々は事務的、補助的業務を行ういわゆる平コース、事務織なんですね。  ところが、商社というのは大体どういう職場かというのは、申し上げなくても皆さん御承知だと思いますけれども、職種の差というようなものはないところなんですね。OA化が進んで取引形態も非常に多様化して、男女とも区別できないような仕事をそれぞれが担当して、非常に厳しい営業をやっている。いわば一つ職場の中で二人と同じ仕事の形態を持っている人はいないと言えるような状態になっているんですね。だからコースに分けようがないんですよね、どっちが平コースなのか、どっちが管理職に向いている仕事をしているのか。同じ職場の中で一人として同じ仕事をしていないという非常に多面的な仕事をこなしているわけですからね。これでやっぱりコースを分けられているんですが、その場合に、国内外の転勤ができるかどうかという転勤の可否が昇進昇格あるいは労働条件を大きく左右すると、こういうことになっているわけですね。現実にやられているんです。  こういうことはちょっと不合理だとお思いになりませんか。おかしいでしょう。同じように仕事をしていて、コースだけ分けたら賃金も違う、昇進の可能性もある人とない人とに分かれていくということになったら、ちょっと不合理じゃありませんか。
  162. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) コース別の振り分けが商社等に行われておるという御指摘、私、実態をよく存じませんけれども、均等法から見ますると、女子に対してもそれぞれ均等に門戸が開かれておるということが求められておるわけでございまして、仮にコース別の雇用管理を男女に公平に適用した、その結果として総合職の大部分が男子となったということでございますと、これは女子に対する差別と申しましょうか、そういうふうな取り扱いとは私一概に言えないと思うわけであります。ただ、コース別人事管理制度において均等法に抵触するようなことが生じるようでございましたら、これは適切に対処しなけりゃいかぬと、こう考えております。
  163. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 新しく踏み出して間がないときですからね。私は、とにかく発足して半年だからというので、労働省の御意見をずっと午前中から伺っているんだけれども、初めが大事だと思うんですよ。発足とすぐに起こってきている新たな形態ですので、それでちょっと申し上げているんですが、国内外への転勤に応じるかどうかでコースを分けるということになりますと、当然家庭責任を負っている婦人としては、仕事と家庭とどっちを選ぶのかというようなことを迫られて、結局は平コースを選ばざるを得ないということになるわけですよ。  そういう点で、私、均等法がせっかく発効しているわけだから、均等法の第一条では職業生活と家庭生活の調和ということが基本に位置づけられているんですね。職業生活と家庭生活の調和を保ちながら、女子の持っている能力を発揮させていくということなんですね。今日の日本の社会では、特に家庭責任というのは女性の側に多くかかってきているというのはもう客観的事実ですよね。だからそういう点では、いわゆる均等法の第一条でうたわれている「調和」を崩さなかったらもう泣く泣くでも平コースしか行けないというふうな状況というのは、これはちょっと均等法の精神にも外れてしまうのではないかというふうに思うんですね。これはILO条約の百五十六号勧告なんというのを持ち出さなくても、私は均等法が発足して今まさに発動されて動きつつあるときなんだから、この点は均等法の精神から外れると思いませんか、転勤によって平コースにするか管理職コースにするかというようなことを選ばせるというのは。
  164. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 転勤の有無だけがその後のコース分けの理由になっておるとは私理解いたしておりませんので、やはり先ほど局長も答弁申し上げましたように、転勤も含めて業務内容さらには責任内容もコース分けの当然重要な要素になっておるというふうに私は理解しておるわけでございまして、そういうことでございましたら、企業雇用管理の必要上そういうふうなことを要素としてコース分けを行うということも特段の問題はないんではないかと、私はそういうふうに理解しております。
  165. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 私は、転勤ができるかどうかということだけが踏み絵になってコースを選ばせるというようなことが定着しますと、新しい男女差別の固定化につながっていくであろうと思うので、特に取り上げて問題にしているわけです。  それで、しかしこの制度をやっている銀行でも商社でも損保でも、大体はもう女性は平コースやと、男性は出世コース、いわゆる管理職コースと頭から決めてかかっているんですよ。これ少し実例を言わぬと、そんなことあらへんやろと、大臣も不思議がられるのは当然だと思いますので、少し具体例を言いますが、例えばある都市銀行ですが、総合職に残ったというのは関西ではたった一人です。ここでは名前を言いませんが、ある大きな都市銀行です。そこの銀行では総合職を希望した女性のほとんどが、海外支店でも頑張れますか、北海道のような寒いところでもよろしいか、御主人を残して単身赴任できますか、こう言うて面接で詰められて、泣く泣くみんな平コースを選んでいる。  これもある都市銀行ですが、ここでも四月一日に全職員に対して個人面接で本人の意思にかかわりなく、全部平コースと管理職コースを決めて通告しているんです。そして各コースに異議のある者は十日以内に申し出なさいと、こういうふうになっているんですね。  これは幾つも言うと大変なんだけれども、例えばある銀行ではこう言っているんですね。コースは本人の希望によって自由に選べること、銀行も希望を十分尊重して発令するということが言われた。しかし、面接が開始されて、総合職、管理職コースを選んだ婦人に対しては連日長時間にわたる説得が繰り返され、そして一般職、平コースへ変更するように強要をされている、こういうことなんですね。この強要の仕方は、すぐ九州へ転勤せよと言われて行けるかとか、外国へ転勤せいと言ったら行けるかとか、ひどいのになったら、あなたの身上報告を見たら三歳、七歳、九歳の子供さんがいるけれども、家庭を破壊してでも転勤しますかとか、そういう詰め方をして平コースを選ばせるということがやられているんです。ところが男性に対しては同じ銀行でどうかと言ったら、ある男性はやっとのことで土地を買うて自分の家を建てた。だから定年まで自分の家から通いたいと思って一般職を希望した、平コースをね。三十九歳の男性です。ところが支店長から呼び出されて総合職の選択を大変強く勧められて、不安ながら総合職を選ばざるを得なかったとか、こういうことが非常にたくさん出てきております。私、今ごく少数を申し上げているわけですが、随分たくさん出ている。  こういうやり方というのは、均等法の八条では配置、昇進についての均等な取り扱いを言っており、総合職のような基幹的な業務への配置を強引に男子のみにしようとするというようなことになれば、これは「指針」に言う事業主努力義務に違反するということにならないかなという心配さえ起こるわけでございます。その点はどうですか。
  166. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 先ほどから、転勤というのはなかなか大変なことで、それを女性に押しつけるという形でコースの選別がなされているのではないかというお話、いろいろあったわけでございますが、転勤というのは確かに女性にとってなかなか重荷なことでございますが、男性にとってもなかなかつらいことのようでございます。ただ、転勤というのはいずれにしてもだれかが負わなければならないことでございますし、また、転勤というのは場所が変わるということだけではなくて、そういう中で職場経験も豊富になり、また人のつながりも広がっていきまして、結果的には仕事をしていく上では非常なプラスになる側面もあるわけでございます。  コースをつくりますときには、やはり転勤にもたえるという方たちについては仕事もハードであり、知識、経験、その他について要求基準も高いというコースになるわけでございますけれども、そのコースにつきまして男子にも女子にも均等な機会が開かれておれば、そのこと自体を均等法違反と言うことはできないと思います。ただ、形としてはどちらにも行けるような形にしておりながら、事実上、女性には全く管理職コースの方に、まあ管理職という名前かあるいは総合コース、いろいろな名前があると思いますが、そういうハードなコースの方には行けないような形になっている、そういうことがもしあれば、そのことについては、私どもは男子も女子も均等な機会が与えられるような方向に持っていくように努力はいたしたいと思います。
  167. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 まあこれは努力義務ですし、局長おっしゃるのも御無理はないんですけれども、しかし、一人ずつ面接して、長い人は五時間も六時間も、何回も何回も説得をされて、おどされたりすかされたりして、そして総合職、管理職コースにつけない、配置しないなんというのは、そこまでいったら私、行き過ぎではないかと思うんですよね。  それで、例えば、女の子たちだってやっぱりなかなかしっかりしていて私驚きましたが、これはある銀行ですが、八人の女子職員たちが、いかにもひどいということで、頭取に対して内容証明で、私どもは一般職しかやらしてもらえないけれども、どうしても総合職に——管理職コースですね、総合職を選びたいということで出しておるんですね。それを強引に一般職に変更されたというのは、こんなのはもうたまらないと。とりわけ、銀行というのは、自分たちは家から通うという条件で探用されてきたんだ。そして、この二十年間自宅から通勤をし、まじめに仕事をして、結婚をして自宅を構え、子供を育てて仕事も一生懸命やってきたんだと。だのに、転勤ができるかどうかということだけでコースの選び方を左右されるということについては、均等法の精神からいってもこれは理解できないということで、頭取に内容証明を出したんだそうです。そうしたら、それまで平コースを強引に言われていたのが全部総合織、幹部職のコースに変更されたというふうな事例も出ているんです。  こういう勇敢なケースはいいんですが、大部分は、あなたもう転勤できないでしょうと言われて、みんなちょっとおかしいなと思いながら平コースに女の人は行かされている。そういうやり方というのは、けしからぬとかなんとかという、罰則があるわけでもないし、どうだこうだと言わないですけれども、均等法が施行されてわずか半年の間に、既に新手の男女差別の固定化につながるような、あるいはもっと言えば、これが長期化したら基本的人権とかあるいは職業選択の自由、こういうものをじゅうりんしかねない、こういう重大問題につながるようなことが起こってきているという点は見過ごすわけにはいかないなと思うんですよ。  これは労働省としてもできるだけ実態を把握していただいて、そういう新たな男女差別につながるようなやり方というものについては対処をしていただきたいと思うんです。その点、まずお伺いしておきたいと思います。
  168. 政府委員(佐藤ギン子君)(佐藤ギン子)

    政府委員佐藤ギン子君) 私どももこれから時間がたっていきます中で、雇用の場でどのようなことが起こっていくかという実態の把握につきましては十分努めたいと存じますし、実質的に女子が男子と均等な機会が与えられるようにしますように努力いたしたいと存じます。
  169. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 その辺をやはりしっかり踏まえていっていただきませんと、冒頭に申し上げました男女賃金格差というのも基本的に片づかない、解決の道が進まないんですよね。  例えば、これは一例ですが、ある商社で、四十二歳の方で勤続二十四年の女子労働者ですが、同期に入社した同学歴の男性との差は年収で四百十三万円、男性はもちろん管理職ですから、管理職手当をのけても五三%にしかならない。仕事というのはほとんど差のない仕事をしているというふうな問題も出ておるわけで、これが男女コース別になりますとこの差は開いても縮まらないわけですね。そういう点がありますので、特に大事な点ではないかと思ってお伺いをしたわけです。  わずか半年でこういう問題が出てきておるわけでございますし、もっと言えば、平コースにおればいいのにやいやい言うて管理職コースを選んだ人にはちょっと見せしめかと思えるほど国内でも転勤をさしているんですね。そういう事例も出ている。これは会社の名誉もあるでしょうから会社名は言いませんけれども、私どもはどこの会社だということを知っています。だから、そういうことで転勤を余儀なくさせられて、結局は総合職に行ったけれども、やたらに転勤やらされてやめざるを得ないところへ追い込まれるとか、そういう事例もあるんです。  私は、この点はひとつしっかり押さえていただきたいなと思いますのは、このことが男女格差を新たに定着さしていくという新手の戦法であると同時に、これが男性同士の中でも新たな差別と格差、これを持ち込んでくるというふうなことになるのではないかという点で非常に心配をいたしますし、その点で特に女子の問題を中心に考えておりますけれども、ここでやっぱりきちんと歯どめをしていっていただくということが非常に現状では大切だなと思いますので、特に大臣、発足間もない均等法ですので、その精神が十分生かされるように、いろいろと出ている事態についてはひとつ十分把握されて対処していただきたいと思います。御見解を伺っておきたいと思います。
  170. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) ただいま委員の方から関西某都市銀行の例等をお引きになりまして御指摘ございましたけれども、やっぱりこのコース別の雇用管理とかないしは転勤の有無によって総合職への登用、選別するとかいうかかる実態については詳細に私存じませんけれども、これは明確に一般論から申し上げて、施行になりまして半年、やはりお互いにこの法律を浸透せしめ、さらにこれを大事にしていかなければならぬというところでございますので、今後そのような、何と申しましょうか、この均等法に反するような事例がございました場合には的確に対処してまいりたいと考えております。
  171. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 ちょっと問題を変えますが、午前中も問題になりました労働者派遣法ですね、七月から実施をされております。午前中の質疑をいろいろとお伺いをいたしましたが、一般事業、特定事業の許認可の状況ですね、これは急速にふえているようですが、現状はどうなんでしょうか。
  172. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  午前中もお答え申し上げましたように、十月一日現在で両者合わせて約五千事業所が出てまいっておりますが、今先生御質問の急速にふえているかどうかという点につきましては、今後月を追って出てくるとは思いますが、この七月施行以降七、八、九がある意味では当座のピークじゃないかというふうに考えております。
  173. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 これも新しい法律が発足をいたしまして、本来の法律の趣旨に基づいて円満な運営がなされることが望ましいわけですが、ちょっとこれは大変やなあという感懐を持つような事例がいろいろと出ております。  一般事業として許可されました派遣会社の中で、日立造船という会社が一〇〇%出資で、大阪に本社を置いて全国に五つの事業所を持っております株式会社クリエイティブという会社があります。これは、日立造船は御承知のように昨年秋以来大合理化を強行してまいったわけでございますが、その一環としてこのクリエイティブという派遣会社を本年の一月に設立をして、当初は、計画では八百六十名ということになっていたんですが、日立の職員を現実には七百六十名、この派遣会社にことしの春出向さしているんです。そして、出向させられた社員のほとんどが、逆にもとの日立の職場へ派遣をされた形で従来どおりの仕事に従事をしている、こういうケースがあるわけですね。  私ちょうどいなかった時期に法律は審議されたんですが、法律審議の過程でも大問題になったというのは、正規の常用雇用労働者を派遣労働者に転化することにならないかということが随分懸念されて、再三論議をされたように伺っております。クリエイティブに日立造船から出向させて、その人たち全部をまた日立造船のもとの職場へ派遣をして仕事をさしている。いわば雇用能力があるわけですね。雇用能力がありながら正規職員を派遣労働者にさしてもとの仕事をさせるというふうなこと、これは大変重大問題ではないか。こういう派遣労働法の乱用があらゆる企業でやられ出したらこれはひどいことになるんじゃないかなと思いますが、こういう派遣労働法の乱用というのはよろしいんですか。
  174. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) ただいま御指摘になりました日立造船一〇〇%出資のクリエイティブですか、ここにおいて日立造船の労働組合との合意に基づきまして日立造船からの出向者を受け入れて、そのうちの一部が日立造船で業務を実施しておるというふうに聞いておるわけでございますが、この労働者派遣法におきましては事業主の都合により一方的に派遣労働者となるようなことを避けるために、許可、届け出制を通じて法の趣旨に則した事業の適切な運営を図ると同時に、正規職員を派遣労働者とするためには個別の同意を必要とするというふうな規定が設けられておるわけでございます。  労働省としましては、これらの規定を適切に運用しまして随時適切な指導、取り締まりを行うことによって我が国の雇用環境に悪影響をもたらすような弊害の発生を防止する、そして労働者の保護及び雇用の安定を図ってまいりたい、こう考えておるわけでございまして、現段階、御指摘の問題、伺った範囲ではあえて違法とは言えないんではないかというふうに考えております。
  175. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 罰則をすぐに適用せよとかなんとか言ってないんです。だって、自分のところが一〇〇%出資して子会社あるいは派遣会社をつくって、そして自分のところの、特に女子は四百人ほどが六、七人残して全部出向しているんです。その人たち全部日立のもとの職場で仕事をしているんですよ。そういうことが横行するということになったらこれは大変でしょう。私はすぐに罰則を適用せいとかなんとかそういうつもりで言っているんではないんです。  いろんな企業がそんなことをやり出したら常用雇用労働者というのはなくなって、全部派遣会社へ出向さしてそしてもとの職場へ連れてきて仕事をさせる。今度の、先日発表された整理では三千五百人の人を減らすんですが、同時に出向の人たちは今度はクリエイティブに全部移籍するという問題が出てきているという、雇用問題ではいろいろ問題点はあるんです。時間がありませんから、そんなことはきょうは触れるつもりはないんですが、とにかくそんなことをどこの会社もやり出したら、何千人会社の社員がおろうとその中の本当の直用の社員というのはほんのわずかで、あと全部どこかの派遣会社の労働者ということになってしまうわけですね。だから、法律をつくるときに衆参両院で大変心配をされていた状況が現実にもう動いてきているという心配をするので、こんなことを許しておいたら、そうでなくても雇用不安が非常に広がっている中で、不安定雇用が無制限に広がるんじゃないかという点で大変心配な現象だと思うんですよ。それで問題に取り上げたんですがね。  さらにもう一つ問題だなと思いますのは、日立造船はこのクリエイティブへの移管業務として、従来の日立造船がやっていた所掌業務を総務関係人事関係、経理関係、資材関係、社長室、営業関係、製造関係、設計などということに分けまして、業務を八十七業務に分割をして、同社の一般業務のほとんど全部をクリエイティブに業務移管をした。これはちょっとおもしろいんですよ。これも大丈夫かなと思うんです。私も初めてのことで余り判断つかないんで具体的に聞いてみますがね。大体業務内容というのは、専門的な知識とか技術や経験を必要とする業務として、派遣会社の業務というのは限定しているんですね。  ところが、この八十七業務、これ移管業務一覧表を私持っていますが、判断してみてください、こんなの。ちょっと読みますからね。例えば総務関係では、法規事務、登記登録、株式社債、印章事務、社則管理補助、広報、それから社報・工場報発行、広告、一般庶務、図書購入、設備・什器・備品運用更新、こんなものがずっと書いてあるんです。これを見たら、例えば印鑑を保管しているというような仕事、こんなのは高度な技術や専門知識が要る仕事とだれが考えても思えないでしょう。そうじゃありませんか。こんなのは高度な専門技術や知識が要りますか、一般庶務とか、あるいは印鑑の保管とか、広告とか図書の購入とか。こういうことが移管業務になっているんですね。どうなんですかね。
  176. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  派遣業の場合は、先ほど先生おっしゃいましたように、業務の限定がなされておりまして、現在十六業務が指定されております。その指定は、先ほど先生がおっしゃられましたように二つの趣旨から、専門的な立場、また特別の雇用管理を要するというような趣旨から選定されたものでございます。したがって、今先生が挙げられたような業務は、一つ一つ細かくとらえていけばその業務に当てはまらないものももちろんあると思いますし、ただ全体的にどういう業務を、一人の人がただ判とを保管しているだけで一日座っているわけでもないでしょうから、ほかの業務もやって、ちゃんと業務に当てはまるものもやっているのかもしれませんし、その辺はちょっと先生お話だけではわかりません。  それからなお、派遣業法に基づく派遣が適正かどうかということは、今申しましたように限定された業務の派遣を行うことが適正であるわけでございまして、そのほかの仕事をやっている場合には、それは請負契約によって全体の請負を行うということで契約が実施されなければならないわけでありまして、その辺をどう区分しているのか、実態的にどうなっているのかということを判断しなければならないというふうに思います。派遣業法があるから悪いということではないわけでありまして、派遣業法がなくても請負契約になっているかどうかという問題もあるわけで、その辺を判断しないとわからないというふうに思います。
  177. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 それで私、だからいかにも理解しにくいと思いますし、適用対象業務以外の業務もたくさん含まれている、この移管業務の中には。そういう疑いがあるので、これはやはり厳重に調査をしていただきたいと思うんですよ。いわば本当に法律違反であれば、この法律は罰則もあるわけですから、その点ではそういう罰則を科すということが中心ではなくて、そういう脱法的なやり方というものが横行するということを防ぐことが非常に大事だと思いますので、その辺についてひとつ十分厳重な御調査をいただきたいと思うんですね。  だから、やり方もおかしいと思うんですよ、さっき冒頭に言ったように。だって自分のところが一〇〇%出資で人材派遣会社をつくって、自分のところの職員をぼんと行かせて、それでそれが派遣労働者といって前と同じ仕事をしている。給料はまだ今は前の給料と大体一緒だそうですよ、そのうちに下がるらしいけれども。そういうことが現に横行している。しかも、その移管業務法律の適用対象業務外というふうになってくるとこれは放置できないし、法律が歩き出して七月からですからまだ三カ月ですね。そんなわずかの間にそういうことが私どもにも見つかるということは、実際にはいっぱいあるに違いないという心配をするんですよ。そういう点で厳重な御調査をいただきたいと思うんです。  そういうふうにしていただきませんと、人材派遣会社が今やっているようなことを黙って横行させるということになったら、やっぱり一定の時期になったら法律違反だということで問題にしなければならないということになりますからね。その辺は発足後間もなしですから、ぜひ厳重に御調査をしていただきたい。  これはちょっと気になるので、これもついでに調査してほしいなと思いますのは、この人材派遣会社では、例えば日立造船なら日立造船のための人材派遣会社ということになると、専ら特定の者に供与、提供するということを目的にして行われるという場合にはよくないということになっていますね。その心配もある。どうもそうじゃないのかなという心配もします。ですから、その点も含めてひとつ御調査をいただきたいんです。  この辺では、どんどん人減らし合理化が行われておるという最中ですし、会社の方は産業構造変化に対応するために大胆なやり方をどんどんやって、しかし生き延びるための努力をしますけれども、その犠牲というのはみんないろいろな形で労働者へ来ているんですよ。ですから、こういう労働者派遣法も、もともと非常に危ないと思っていた制度法律によって制度化されたんですから、本当に日本の労働慣行を踏みつぶさないような歯どめというのをかけることができるのは労働省しかないんですね。その辺で冒頭からこういうことを申し上げなければならないというのは私も残念だと思っておりますので、ぜひ詳しくあるいは厳重に調査をしていただいて、不安定雇用が野放しに広がるというふうなことにならないように、歯どめをかけていただきたい。そのことを要望申し上げます。御見解だけ伺っておきます。
  178. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先生指摘の、いろいろなお話がございましたが、本当にそれが先生の言われるように悪いことなのかどうかというのは調べてみないとわかりませんし、一概に悪いこととは言えない面もあるんじゃないかと思います。先生が御質問なさるのは一週間前に御指摘があったものですから、大阪にその状況を十分調査して適切な指導を行うように既に指示いたしておりますが、なお、きょうの御指摘の分も含めまして調査してまいりたいというふうに思います。
  179. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 もうちょっとしか時間がないけれども、最後にそれじゃ気楽なことを聞かしてもらいます。  我が国の労働者賃金生活実態、この関係について、ちょっと大臣の御見解も聞いておきたいと思います。  今、賃金の国際比較、幾らになっていますか。ちょっと御当局から。
  180. 説明員(清水傳雄君)(清水傳雄)

    説明員(清水傳雄君) 賃金の比較につきましては各国で公表をいたしておるものがございまして、これは現時点におきまして比較可能なものは一九八五年のものでございます。賃金の国際比較というのは、なかなか実際問題といたしましてそれぞれの事情、定義等が異なりまして、公表ベースだけでストレートに横並び比較するというのは非常に難しい問題がございます。  公表ベースだけで見てみますと、日本、アメリカ、西独、英国、フランス、こうした主要な国を比較いたしますと、アメリカが一番当然高うございまして、日本を一〇〇とすれば一七三、八五年段階でございます。それで、西ドイツと日本は並ぶという状況でございますが、定義等違いがございますので、そこら辺を調整をいたしまして、事実上本当に比較できるベースに置き直して見てまいりますと、日本はアメリカ、西ドイツを下回り、それからイギリス、フランスを上回っておる、そういった状況になっております。
  181. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 そんなに慎重に言ってもらわぬでも、簡単に言ってもらったらよろしいんです。  大臣、ちょっと、難しく考えないで、我が国の国民総生産というのは世界第二位でしょう。賃金水準だって二位か三位、今の話だと三位と言ったけれども。これまあ円高でちょっとまた段取りしたらどんなに変わるかわからない。この間の夕刊では、日本の先生の給料はアメリカの二倍だといって夕刊にも出ていましたけれどもね。円高問題も含めて、何位というのはいろいろあるんだけれども、しかし国民総生産は世界第二位ですか、それで賃金水準は三位と言われている。我が国の労働者生活実態から見て、世界で二位か三位ぐらいの豊かさというふうに、これが豊かさなんだなというふうに思われますかね、感じとして。
  182. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 賃金の比較というものは今調査部長がるる御説明申し上げましたし、各国でもなかなか定義も違うので一概に横並びの比較は難しかろうと。ただ、今委員お尋ねのまさしくGNP世界の一割、順番で二位、世界一の債権国、こういうふうにすべてその面での上位ランクということで並べてみますと、その実態に即して果たして生活水準もどうか、これはなかなか生活水準の比較というのは非常に難しい面がございまして、やはり近代化の中の民族の歴史、すべての経過がございまして、率直に言えとおっしゃいますけれども、まあ感触を申し上げたらかなりの程度によくなったのではないかという実感は持っております。
  183. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 いや、難しいことを言わして申しわけないですが、そこが問題なんですがね。GNPは世界で第二位、賃金水準は世界で二位、三位と言うけれども、余り豊かになったなという、私らも一つも豊かにならぬものですから豊かさというものを感じないんですね。私どもがいろんな形で諸外国を訪問した場合に、やっぱりもっとゆったりしていて豊かな気分がしますね、ドイツへ行っても、イギリスへ行っても、フランスへ行っても。  私何でこれを言っているかというと、この間十月二十一日の競売と毎日の夕刊に、世界百都市の生計費番付が出ていたんです。最も住みにくいのは東京なんで、その次は大阪なんです、世界じゅうで。なぜかなと思って見たら、いわゆる生活必需品や交通費、レクリエーション費などという国際的なそういう指標ですが、これには家賃だとかローンは含まれてなくて、生計費ですね、それがニューヨークを一〇〇として東京は一八九、大阪は一八三、パリは九九、ロンドンは九〇というふうになっているんです。住みにくさ世界一ということになっておりますね。  私はこれを見て思ったんです。やっぱり労働省で本当に労働者の生活水準というものを考える場合に、諸外国との賃金比較、まあ確かに複雑で難しいとおっしゃったんですけれども、単純にやるんではなくて、そういう点でのいわゆる生活実態の国際比較というようなものをもう少し出せないものかなと、白書などにも。これは検討していただいたらいいんではないかと思うんですよ。それはどうですか。
  184. 説明員(清水傳雄君)(清水傳雄)

    説明員(清水傳雄君) 生活実態の国際比較、ある程度ことしの国民生活白書でも検討されておるようでもございますし、私ども自身も非常に大事な問題でございますので、かつてはいわゆる購買力平価の比較というふうな形で検討いたしたこともございます。ただ、いずれにいたしましても、同じ品目を見ましても質の問題とかいろいろこれは異なりまして、単純な比較というのは非常に難しい問題でございますが、できる限りそうした面も十分に検討しながら、そうしたものが比較できるような努力とともに検討作業を進めてまいりたいというふうに思っております。
  185. 沓脱タケ子君(沓脱タケ子)

    ○沓脱タケ子君 最後に大臣、難しいんだけれども、世界有数の高給取り、最高賃金水準、それからGNP世界第二位、何しろめちゃくちゃ豊かだというふうになるんですよ、指標だけ見たら。しかし、現実には失業者がどんどんふえてきている。あるいは内需拡大をやらなくちゃならないと言うけれども、物を買う力がだんだんなくなっている。そういう中で、労働省労働者の生活水準の引き上げについて考えなくちゃならないのはやっぱり賃金水準の引き上げの問題だと思うんですよ。本当に内需拡大を実のあるものにしていくためには、労働者自身の購買力が大きくならないとこれは実現できないと思うんですよね。  そういう点で、後藤田官房長官が勧告制度について五%云々というようなことを言ったりしておりますけれども、こんなのは労働大臣のお立場では労働者の生活水準の向上のためにやっぱり従来どおりやるべきだと思うんですが、そういうことだとか、来年の春闘等で本当に賃金水準を引き上げていくという立場を労働大臣が堅持してもらうということが非常に大事じゃないかという点をあわせてお伺いをして終わります。
  186. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) ただいま生活の実態に即しての豊かさとは何かというふうな御指摘でございましたけれども、なかなかこの豊かさの中身というのがこれは一口に言えませんで、生活費等の事例も挙げられましたけれども、概して先進諸国の中で通貨の強いところは平均物価が高いということもございまするし、賃金のみならず、さらに特に今後配慮をしなければいかぬのが住宅問題であろうかと。さらに中小企業に働く勤労者にとりましては、福祉問題の環境整備等々もあわせてやっていかなければならぬということでございます。  賃金問題というのは、これはいろんな見方がございますけれども、やはり基本的には労使間において十分に話し合っていただくということが原則でございまして、ただいま、労働大臣として後藤田官房長官の発言の趣旨についてどうかということでございますが、これは民間の厳しい状況を配慮した場合における公務員賃金の決定原則である民間準拠と、このあり方についての一つの意見として理解できるわけでございます。ただ、公務員給与につきましては、国家公務員法第六十四条において民間における賃金を考慮して定めることとされておりまして、昭和五十七年七月の臨時行政調査会の基本答申においても、「民間賃金準拠を基礎とするのが適当である。」とされております。したがって、官房長官の御発言も民間準拠の原則それ自体を否定したものではないというふうに考えておりまして、基本的には人事院のお考えであろうかというふうに思っております。
  187. 柳澤錬造君(柳澤錬造)

    柳澤錬造君 大臣は大変なときに労働大臣になられて、御苦労のほどお察し申し上げて、敬意を表したいと思います。それだけに、今のようなこういう産業不況のときに労働省役割が大変大切なんですから、どうか労働大臣頑張っていただきたいと思います。  きょうは時間もございませんから、造船産業に絞って若干お聞きをしてまいりたいと思うんです。  造船産業は、昭和五十四年のときにかなり厳しい不況で、平均三五%の設備カットをする、それから希望退職でもって五万人からの人減らしをする、さらには昭和五十年から六十年までの十年間では十万四千人から人を減らしているわけなんです。それでやってきても、最近はもうどうにもこうにもならない。特に、円高でもってほとんど輸出船は韓国とか第三国に持っていかれてしまって、日本ではもう注文もとれないような状態になって、ことしはさらにまた設備カットが二〇%、それから相当な人減らしをやらないととてもじゃないけれどもやっていけないというような状態で、白井局長がこの七月ごろに新聞記者のインタビューで答えているような状況から見ても、かなり悪くなっている。  ある会社の、しかも大手なんですけれども、合理化案を申し上げますと、昨年の十月に一万七千名おったわけです。ことしの七月にはそれが一万六百名という大変な人減らしをしているわけなんです。退職金はといえば、決められた退職金に四十五歳以上で二カ月分を加算する、四十五歳未満は一カ月分の加算をする。今審議をしている国鉄の場合には十カ月の加算ということでこの間からやっているわけですけれども、そういうものから見るとけた違いです。さらに、残った人たちもことしの暮れから一〇%の賃金カットをする、来年のベアも定昇もゼロだと。ボーナスは夏、冬一緒に年間でともかく一・五カ月分の支給というんです。容易ならない情勢にあるわけです。そしてまた、造船所というのは、よく城下町と言われるほどに、その地域のいろいろの関連の企業がそこにつながっておりますので、そういう点では地域産業に相当大きな影響力を持っている。そういう状態である造船が、全国的に非常に不況な中に落ち込んでいるわけです。  したがって、幾つかの点で私がお聞きしたいというのは、特定不況業種・特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法、これでいろいろの援助措置があるわけですけれども、その適用というか、運用というか、その辺を業種指定というものから企業指定というふうに幅を広げて運用することを考えてもらえないのかどうかということなんです。  なぜこういうことを言うかといいますのは、結局、今はもう造船所といっても重工業でいろいろのものをつくっておるわけですから、そういう中で造船が全く落ち込んで、造船を半分にするからといって、その造船の職場の連中だけ半分やめさせてしまうというのでは余りにも不公平になるから、全体の職場の中で、平等というか、希望退職を募るという方法をとられるわけです。だから、その不況業種に指定されないような職種の中からも、その造船の不況による影響でもって希望退職を募り退職をしてもらうというのが出てくるわけなんです。いわゆる全社的にそういう退職を募るという方法をとりますから、職種なり業種なりでの指定では不十分なものですから、企業指定というのも表現がよくないからあれですが、その辺、幅を広げたそういうものの範疇に入るような運用ができないかどうかということをまずお聞きをしてまいりたいんです。
  188. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  造船業界は今非常に御苦労なさっているわけでございますが、全体の雇用失業情勢造船業界に限らず非常に悪くなってきているということで、今の先生のような御指摘の問題も出てまいるかと思うわけでございますが、原則的に申し上げますと、これはもう釈迦に説法でございますが、業種指定を企業指定にするということは、特定不況業種のとらえ方から申しまして、好況業種の中でも、もし経営者の経営が悪ければ倒産その他していくわけでございまして、そういう点で企業指定に限っていくということはなかなか判断の基準が難しいわけでございます。  しかしながら、今、先生がおっしゃいましたようなことで、現在指定業種の中の事業所別にとらえているわけでございますが、例えばある大手で造船と鉄鋼と両方やっていて、現在の基準ではちょうど今先生がおっしゃられましたような問題がありまして、片方ずつ適用していくということになりますと、いろんな内部での人事配置その他を行う面で、他の事業所が必ずしも好況ではない特定不況業種にもかかわらずその事業所の雇用者がふえていくというような問題等がございまして、それは従来の基準では当てはまらないわけでございますけれども、これを何とか救っていく方法はないかというようなことで検討をいたしまして、弾力的な措置をとるというようなことを考えているわけでございますが、そういうようないろいろ個々のケースをとらえて、できれば先生の言われるいろんな趣旨に当てはめていきたいというふうに思っております。  ただ、希望退職者を募ったら好況の方からも出てきたということになりますと、退職金については雇用調整助成金の支給はないわけでございますが、それがずばりそういくかということについてはちょっと難しい面もあるかというふうに思います。
  189. 柳澤錬造君(柳澤錬造)

    柳澤錬造君 局長は私に釈迦に説法と言ったけれども、私の方が釈迦に説法で……。  それで、五十四年のときに、法律をつくるときにはかなりシビアなあれがあって、これはにっちもさっちもいかなくなって、法律ができた後でもってそれの拡大解釈ができるように、労働省からそういう通達を出して各末端に徹底さして運用していただいたのはおわかりだと思うんです。あのときにもそういうことがあってそれやっていただいたので、ですから好況の中云々じゃなくて、例えば今ここで、さっきも言ったように、三千人、五千人という大きいところはもっと減らすわけだけれども、例えば三千人なら三千人となると、それを平均にいろいろの職場に全部を割り振って、造船なら造船だけから三千人といって半分にしちゃうんじゃなくて、こちらの鉄鋼の方からもということでやるわけですから、一つ企業体の中の人たちをそれだけ減らすについては公平にやめてもらおうではないかという措置をどうしてもこれはとらざるを得なくなるわけです。そういうぐあいでもって、今言ったようなことを弾力的措置をおとりいただくということで理解をして、それでその辺の点をもう少し詰めてやっぱりお考えいただきたいと思うんです。実態はどこかお調べになるとすぐこれはわかりますから。  次に、五十四年のときと違って、今度の合理化案を見ておりますと、もう会社が明らかに——明らかにという言い方はおかしいですけれども、四十歳以上に集中をしてそしてやめてもらおうというようなことをやっているわけですよ。五十四年のときは全くの希望退職の募集で、希望退職を申し出なければ幾つだろうがそれはもう全然残れたわけだけれども、今度はその辺がやや首切りに近いような考え方で、もう四十以上はといって無理押しをしてやろうとしている気配があります。  それで、雇用保険のことです。今までも特例としてこの不況業種というふうな人たちというのは、一定の条件を満たしておれば四十歳以上の人たちには九十日分が延長して給付をされてきたわけなんです。従来九十日分の延長給付をしてきたのを、なかなか再就職というのは難しい状態にありますから、そういう点でこれを百八十日分まで延長給付するという、そういう考え方がおとりいただけないかどうか、その点はいかがですか。
  190. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  最初の問題に関連いたします弾力的適用の問題でございますが、先生のおっしゃるとおり五十三年から五十四年にでき上がって、制度の発足に伴いまして実態に沿うように弾力的措置をとってまいっているわけでございます。当時私雇用政策課長をしておりましてそういう措置をとられたということを記憶いたしておりますが、その後も実態に合うようにいろんな業種指定、いろんな形で弾力的措置をとってまいっておりますが、全体の基準を緩めただけではなかなか個々のケースは救えない面があるわけでございますので、先ほど申し上げましたように個々のケースをよく把握しながら、そして全体の基準に何とか運用が弾力的にできるという形に沿って先生の趣旨が生かせるように、個々努力してまいりたいというふうに思います。  それから今の雇用保険の問題でございますが、これももう従来からいろいろ言われておりますけれども、従来三百日プラス特に一定の理由で再就職が困難な者については六十日の延長給付を行うということで原則きているわけでございますが、それに加えましてこの特定不況業種、特定不況地域についてはさらに三十日を加えて九十日の延長ということにして、一般に比べますと非常に手厚い措置を講じているわけでございます。  最近の状況、全体との比較その他からまいりますと、なかなか先生の御趣旨に沿うわけにはまいらない点でございますが、しかし、公共職業安定所長の指示によりまして公共職業訓練等を受講する場合には、その所定給付日数にかかわらず、訓練終了まで失業給付が受けられるという措置がとられているわけでございまして、三百プラス九十、三百九十日も就職活動をのんべんだらりとやられているわけではないと存じますが、再就職のために職業訓練、腕等をつけて再就職をしていくというような場合には、その訓練期間中すべて失業給付が受けられるということにもなっておりますので、これらの措置を適切に利用しながら再就職の促進に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  191. 柳澤錬造君(柳澤錬造)

    柳澤錬造君 働かないで金をもらおうなんて言うんじゃないんです。  次にお聞きしたいのは、労働省の方で産業雇用安定センターですか、今のところ仮称でそういう構想をお持ちなんですが、これを一日も早く発足をして運用することをお考えいただきたい。それでもう、とてもじゃないけれども息切れがしてしまって、ぶっ倒れそうになっているような状況にあるわけなんですから、先ほど言った雇用保険とも裏腹になるわけだけれども雇用が確保されてどこかに就職口が見つかって再就職ができれば、もうこれはそれで結構なんです。再就職がなかなか難しいというところで先ほど言ったようなことを申し上げたんですから、そういう点から雇用安定センターを来年なんて言っていないで、それこそあしたからでも実際に労働省の中にそういうものを設けて動くようなことをしていただきたい。  それで予算的なことは、それは今度の補正予算なりあるいはさらには来年の予算のときにもっとうんと確保すればいいんだけれども、実際にセンターとしてのそういう仕事を速やかにやっていただきたいということを申し上げるんですけれども、その点はいかがですか。
  192. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) ただいま御指摘になりました、仮称でございますが、産業雇用安定センターの問題でございます。もう委員御承知でございますから内容についてはくどくどしい話は申し上げませんけれども、やはりここで私の感触として申し上げますと、最も重要なことはできるだけ早くやるということと、いま一つはできるだけ多くの業界の方に参加していただくということで、労働省といたしましても大変結構な構想であると考えております。  これはあくまでも民間主導でございますが、早期に設立されることが望まれるわけでございまして、当然、このような法人ができました場合には運営、助成、情報提供、これは全面的に御協力を申し上げなければいかぬと考えております。一日でも早くというこれは非常に重要なポイントでございますので、そのように内部も指導してまいりたいと考えております。
  193. 柳澤錬造君(柳澤錬造)

    柳澤錬造君 ぜひこれは大臣にお願いしたいと思います。  それで、造船工業会ではもうどうにもならなくなって、自分らでやれることはやるかといって、そういう動きもしているくらいですから、全体的に、こういうセンターでもっていろいろと雇用確保のことを御努力いただきたいと思います。  それから、こういうときですから、再就職が非常に難しい、しかも、先ほども申し上げましたように、ことしの合理化の対象者というものが四十歳以上の人が多い。言えば、住宅ローンのあれも残っておるわ、子供もちょうど学校が上の方になってお金もかかるわ、そういうときですから容易ならないことなんです。したがって、この四十歳以上の人たちに対しての就職促進手当、これは五十四年のときにはいろいろやっていただいた経緯があるはずなんですが、その辺が、今度もお考えがいただけるかどうかということですが、いかがですか。
  194. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) 先生指摘のとおりでございまして、二〇%の船台廃棄につきまして運輸省は今、次の通常国会に立法措置を用意いたしておりますが、五十四年のときと同じような措置をこれに伴いまして労働省としても行っていきたいということで、今運輸省と密接に連絡をとりながら進めているところでございます。
  195. 柳澤錬造君(柳澤錬造)

    柳澤錬造君 運輸省の方もぜひこれはお願いしたいと思います。  それから労働省にもう一つ、これは来年の六月で期限が切れる、先ほども言いました特定不況業種・特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法、これは当然延長なさるんだと思うんですけれども、念のためにお聞きをしておきます。
  196. 政府委員(白井晋太郎君)(白井晋太郎)

    政府委員白井晋太郎君) これは一応、指定するには指定期間を設けるということになっておりますので、最近の造船業の実情をよく我々は把握しているつもりでございますので、今後の推移を見ながら適切に、先生のおっしゃる方向で適切に対処してまいりたいというふうに思います。
  197. 柳澤錬造君(柳澤錬造)

    柳澤錬造君 それで、時間もなんですから、運輸省においでいただいているのは、造船業界の状況がどうだとか、それから海造審の答申がどうだとか、そういうことはもうよろしいですから、現実に、先ほども若干、ある大手会社の例を挙げて申し上げたように、五十四年のときには考えられないような、いささかもって、私に言わせれば、合理化でもって人減らしをやるにしても、こういう内容でということはいかがなものかと文句を言いたくなるような条件を出しているわけなんです。したがって、これはほっておいたら造船産業はぶっつぶれてしまいますし、何だかんだ言っても昭和三十一年から世界一の生産をやってきて、今日の経済大国日本を築き上げる大変大きな役割を果たしてきた基幹産業だと思うんです。  ですから、そういう点を考えて、所管官庁としての運輸省としては、どういう政策をお持ちで、どういうことをお考えになっているか。ともかく、危篤になってしまってからだとどんなにいい薬を与えたってこれはもう役に立たないので、危篤になる前に何らかの手を打たなければいかぬのですから、その辺で、運輸省の方のお考えはいかがですか。
  198. 説明員(小川健児君)(小川健児)

    説明員(小川健児君) 先生指摘のとおり、我が国造船業は現在非常に困難な状況に置かれておりますし、また今後の見通しも非常に厳しいものとなっております。このような状況の中にありまして、造船業界は、ことしの六月に出されました海運造船合理化審議会の答申を踏まえまして、二〇%程度の過剰設備の削減とか、あるいは集約化等によります産業体制の整備といった抜本的な対策を実施することになっております。  運輸省といたしましても、これらの対策が効果的に円滑に実施されますように、設備等の買い上げそれから債務保証、生産体制整備のための特別融資、そういった措置を講ずることとしておりまして、六十二年度予算といたしまして所要の経費を要求しているところでございます。それからまた、当面の受注環境が非常に厳しい状況にありますので、造船業の仕事量の確保という観点から、関係方面にもお願いいたしまして需要の創出に努めているところでございます。
  199. 柳澤錬造君(柳澤錬造)

    柳澤錬造君 運輸省の方は、きょうは時間もないから今そのことだけで、そして産業の性格ということは、もうこれは所管官庁だから十分わかっているから申し上げないけれども労働大臣の方に聞いておいてほしいと思うのです。  造船というのは、きょう受注しても、それを今度実際に工場の中で工事に着手をするまでには少なくとも半年はかかるわけです。設計をしていく、資材の発注をしていく、そういうものが全部工場の中へ入ってきてから建造にかかるわけですから、そういう点では相当な長期間かかるわけなんです。今これだけ仕事をしているじゃないかと労働省のお役人さんがよく言われることがあるんですけれども、今も言ったように、きょう完成して船を引き渡した、それであした受注が契約できて注文がとれたといっても、それの資材が全部入ってくるまで、設計ができるまでの半年間というものは完全なアイドルになる。  だから、手持ち工事量が幾らなんということをよく新聞なんかでごらんになるときに、そういう点でごらんになっていただきたいのは、そういう点からいくなら六カ月間はなかったらもうやっていけない。さらには、一年とか幾らとかいったって、もう八〇%でき上がっているのも含めて手持ち工事といって、完成しなければその中へ入っちゃうわけです。だから、そういう意味でもって非常にああいうふうな大きな仕事というものは小回りがきかない。それから注文がとれないと、どかんと大きなアイドルが出て、にっちもさっちもいかなくなる、結局ぶっ倒れてしまうというようなことになります。  きょうは造船のことしか申し上げませんでした。それから、鉄鋼の方でもほかの海運の方でもいろいろ今はみんなそういうのがあって、労働大臣は大変御苦労なさると思うんですけれども、しかし、きょうはそういう点で、造船産業という産業の性格というのはそういうことかというようなことを頭の隅にも入れておいていただいて、それで不況対策について一層の適切な手を打っていただきたいということだけお願いして、終わりたいと思います。
  200. 国務大臣(平井卓志君)(平井卓志)

    国務大臣平井卓志君) 確かに、重厚長大構造不況と申しましょうか、やはり長年の日本経済の牽引力でございました企業一つでございまして、今後、造船業界の展望がどのように開けていくかということはなかなか難しいわけでございますけれども、何はともあれ、当面のでき得る対策については、御趣旨を踏まえて十二分に万全を期してまいりたい、かように考えております。
  201. 委員長(佐々木満君)(佐々木満)

    委員長佐々木満君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時一分散会