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1986-12-17 第107回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第4号 公式Web版

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  1. 参考人の出席要求に関する件 ○産業・資源エネルギーに関する調査 (会議録情報)

    昭和六十一年十二月十七日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十二月十一日     辞任         補欠選任      諫山  博君     小笠原貞子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         浜本 万三君     理 事                 川原新次郎君                 沢田 一精君                 宮島  滉君                 小野  明君                 飯田 忠雄君                 神谷信之助君                 橋本孝一郎君     委 員                 亀長 友義君                 工藤万砂美君                 沓掛 哲男君                 熊谷太三郎君                 鈴木 省吾君                 田沢 智治君                 田辺 哲夫君                 福田 幸弘君                 森山 眞弓君                 大森  昭君                 対馬 孝且君                 小笠原貞子君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君    政府委員        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省立地        公害局長     加藤 昭六君        資源エネルギー        庁長官      野々内 隆君        資源エネルギー        庁石炭部長    高橋 達直君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    説明員        労働省職業安定        局高齢者対策部        企画課長     木村富美雄君    参考人        読売新聞社論説        委員会委員長  河野 光雄君        社団法人日本経        済研究センター        研究主幹     並木 信義君        石炭鉱業審議会        政策部会長    向坂 正男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (産業構造審議会「二十一世紀産業社会基本構想報告に関する件)  (石炭問題に関する件)     ─────────────
  2. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十一日、諫山博君が委員を辞任され、その補欠として小笠原貞子君が選任されました。     ─────────────
  3. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) 産業資源エネルギーに関する調査を議題といたします。  本日は、産業構造審議会「二十一世紀産業社会基本構想報告に関する調査のため、読売新聞社論説委員会委員長河野光雄君及び社団法人日本経済研究センター研究主幹並木信義君の出席をいただいております。  この際、河野参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。河野参考人から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三十分程度意見をお述べいただきまして、その後一時間程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それではまず、河野参考人からお願いを申し上げたいと思います。
  4. 参考人(河野光雄君)(河野光雄)

    参考人河野光雄君) 時間が三十分しかありませんので、産業構造審議会が出した「二十一世紀産業社会基本構想」について概略を説明するという作業は、お手元にこれ通産省事務方がつくってくれた三枚か四枚のペーパーがありますからこれで代行していただいて、私は専らその基本構想を立案するについて中立系の一人の委員として参画した立場から、ジャーナリストとして参加したのですが、その立場からこの論議の過程において舞台裏でどういう判断の変化があったのか、今どういうスタンスで臨むべきなのかというようなことにつきまして私の考え方を述べさせていただきたいと思います。  そもそも二十一世紀のビジョンをつくろうと通産省が考えて、企画小委員会でこの議論を始めたのはちょうど今から一年半ぐらい前の話です。当時、日本円レートはまだドル高のもとで、たしか二百四、五十円の状況にありました。これは大変物を考える場合に基本になる点だと私は思います。  そこで、問題意識として持ったのは、その前の一、二年間通産省対外政策というのは主としてアメリカヨーロッパとの通商摩擦場当たり的な処理に追われて、一体これで、基本的な産業構造政策を進める上で、こういう場当たり政策だけをつなぎ合わせていっていいのかどうかという大変深刻な反省が通産省内部にありました。そういう発想から、当面個別の品目について摩擦解消のための努力をすることは必要ではありますけれども、同時にもう少し長期の、少なくとも十年、十五年の先を展望した日本の社会を考えて、その中で産業政策あり方日本産業構造をどう持っていったらいいかということについての基本的な視点をきっちり定めた上で個別の対応に臨むべきであるという方向で省内の意思統一が大体でき上って、産業構造審議会が動き出したというのが経過なんです。  ですから、そこで議論されたことは、当面のことはもちろん頭に置いてのことでありますけれども、かなり長期にわたって対外的な不均衡は続くだろうと。そのことが基本的に長期にわたって日本経済の対外的な摩擦問題を継続的に引き起こすことは間違いないと。しかし、それを大きなビジョンもなしに場当たりでやっていったときに、数年たってみて日本産業構造なり国民生活なりが非常にゆがんだ姿になったのでは困るという発想がありました。  ですから、議論が実質的に始まったのは去年の秋からことしの六月まででありますけれども、その過程で共通の問題意識としてあったのは、一番大きいのはやはり対外的な不均衡をどういう方法かでこれをかなり薄めていかなければならないと。そのときの薄める方法としては幾つかの選択肢があるわけです。  一つは、一番単純な考え方としては、財政政策を大転回して、内需を公共事業中心にして大拡大をして、それによって輸入の拡大を図ることによって貿易収支経常収支の黒字の縮小を図る。もう一つは、輸出を直接的に大幅に制限して強引に対外不均衡の縮小を図る。これも一つの方法として考えられないことではありませんでした。しかし、前二つ申し上げたことはいずれも問題が多過ぎると。むしろこの際、長期的な視点に立って日本産業構造というのを非常に国際分業的なところに持っていく方向の中で対外黒字を縮小するという路線を選ぶことが一番正しいのではないかというのが大きな議論の流れであったように思います。  その場合、国際分業型の日本産業構造をつくり上げる、そのための具体的な政策手段は何だということになったときに、共通の意識として上がってきたのが実は海外直接投資という問題なんです。これが今御承知のように日本産業空洞化論ということを巻き起こしておりますけれども、一年前からの議論の過程では、やはり海外直接投資ということを拡大することによって日本産業構造の体質を変え、対外的な投資先アメリカであってもシンガポールでもヨーロッパでもいいんですが、あわせて投資先における雇用の拡大あるいは地域の活性化、あるいは法人税納税を含めての出先各国への多角的な貢献ということが同時に行われることになると。  つまり、直接投資を拡大することによって生産現場日本から海外に移すわけですから、そのことが第一に日本貿易収支黒字幅を相当程度圧縮することになるし、と同時に対外的に投資先に大きな経済的なプラスを与えることができると。そういうことによって国際協調型の経済構造をつくり上げていくと。このときのキーワードは、世界各国産業構造と調和するということと、世界経済の各国の実態に貢献するというこの二つがキーワードだったと思います。  実は、この構造審議会が始まる前に、半年ぐらい時間をかけて通産省では別途それに先立って海外直接投資あり方ということについて検討しておりました。そのころは、冒頭申し上げたように今から考えれば非常に円安の時代で、その状況下企業に対外直接投資を求めるということになれば大変なリスクを冒すことを企業に要請するわけですから、直接投資論を展開するとするならば、税制、金融その他万般にわたって相当国が強力なる支援を打つべきであるという議論が主流であったように思います。  その流れを受けて企画小委員会では同じような議論をやってきたんですが、ことしに入って、たしかことしの一月元旦ごろの円レートは二百円をちょっとオーバーする程度のレベルでありました。その後また油が下がったということで急速に円高に向かうのですが、しかし、そういう急速な為替レートの変更ということを頭に置きながら、なおかつ基本的には、一年半前に考えた国際協調型の産業構造をつくる以外に日本の生きる道はないというその基本的な視点だけは変わらなかったんです。  それで、たまたま総理が例の前川委員会をつくって、同じような問題意識で対外不均衡の是正策いかにあるべきかということで検討を始めておりまして、ちょうど産業構造審議会の検討と私的諮問委員会懇談会の総理の検討とが同時並行的に進んでいる状態が起こりまして、実は我々はそれと内容をドッキングさせるために二月の段階で海外投資を中心にした答申の箇所だけを先にまとめまして、交渉して、前川レポートはその基本的な考え方をほとんどそのとおり踏襲したんです。それが二月の段階で、前川レポートはそれを受けて三月末ですかまとめて、総理がそれを持ってアメリカに渡った、こういういきさつがあるのです。  そういういきさつがあって、産業構造審議会ビジョン前川レポートというのは国際協調型の経済構造をつくろうということの意識において全く同じだったんですな。それが、今前川レポートが出てそろそろ半年、それから産業構造審議会レポートが公表されて、六月ですから四、五カ月になりますけれども、大分こういう考え方に対する世間の風当たり、批判というのが変わってきたんです。ゴルフに例えれば、ちょうど三月から六月にかけて二つのレポートが出たときには、政治的な批判はちょっと別にして、何で総理が私的諮問委員会を乱用して国の重要な政策を決定するかというその手法に対する批判はちょっと別にして、そこに打ち出された内容については、大方国内でもそういう方向が避けて通れない道であろうという見解の方が非常に多かったように思います。  ところが、それから半年たって今日どういう議論前川レポート並びに産業構造審議会基本ビジョンについて行われているかといえば、御承知のように、その方向は仮に正しいとしても、それによって付随的に起こるであろう国内産業空洞化という問題に対して真剣にこのレポートは考えたことがあるのか。それに対して、それに不安がないというならば、いかなる政策手段でそれを実行するつもりなのかという批判が非常に強く出るようになっているんですね。今新聞の経済面なんかを我々つくっていますけれども、本当に産業構造調整論だとか国内経済空洞化に対するおそれだとかという関連記事がない日はないぐらいなんですね、目下。  空洞化ということの意味合いは議論する学者だとか役人だとか政治家だとかによってそれぞれ違うんです。産業界の人も違うんです、視点が。これは私は今の日本空洞化論というのは、ジャーナリストを含めて各人勝手な内容をそれに付与している。何といいますか、これ日本特有の現象かもしれませんけれども、先の不安を非常に先取りした形で、ああでもない、こうでもないという議論を展開しているというところが随分あると思うのですよ。先生方の共通の関心事も恐らくはそこにおありになるんだろうと思って、ちょっとその点について個人的な考えを述べさせていただきますが、空洞化という場合、その内容をどう考えるかによって議論は随分違ってくるのです。  一つ考え方は、端的に言って雇用の問題なんです、その話は。国内製造業における雇用の減少という問題がそれが空洞化の一番端的なあらわれなんだという議論の立て方が一つあります。これは審議会の中でも労働組合の代表の人が終始一貫そのことを最初から主張されておりました。  もう一つ空洞化論というのは、生産現場が、しかもかなり先端技術産業海外に出る率が今高いですから、実際上は、そういう先端技術生産現場海外に出ていくときに一体技術開発という問題をどうするんだと。日本経済成長の基本がイノベーションであるとするならば、その生産現場海外へ出て日本技術革新というのが従来と同じようなテンポで伸びることが可能なんだろうかどうだろうかという、技術開発についての懸念を空洞化という言葉に託しておっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。これは産業界の中に随分いらっしゃるように思います。  もう一つは、もっと大きなとらえ方があって、日本は戦後加工貿易で、物づくりで今日この経済大国を築いたんだから、その基本になる物づくりの現場というのをそう大々的に海外に出していった場合に、雇用は確かにマクロ的に見れば第三次産業サービス産業で吸収されることは計算してみれば可能であろうと思うけれども、しかし、中核になる製造業というものがそんなに外にたくさん出て日本経済全体の活力がそれで維持できるのかねという発想があります。これは産業界の主たるリーダーの間で、しょっちゅういろんな方とお会いすると、六十歳から七十歳代で日本経済の戦後個別企業リーダーとしてやってこられた方の中には非常に強い共通の問題意識のように私には思われます。  もう一つは、これは先端技術開発空洞化論とちょっとダブるのですけれども、今日本海外に進出していこうとしている業種をよく見てみれば、日本に不要になったものが出ていくのではなくて、現在まで日本産業を引っ張ってきてこれからも牽引力になるべき業種が海外にどんどん展開することになるんではないか。それは随分怖いことを意味するんではないかという側面から議論を立てる学者の方もいらっしゃいます。  産構審でこの議論をやるときにも、たくさんの参考人の人から意見をお伺いして、それぞれの立場でいろんな議論があるものだということはよくわかっておりましたけれども、今レポートが出てからさらに進んだ急速な円高のもとで予想外テンポ産業構造調整が進みつつあるものですから、空洞化論が一気に我々の予想した以上に広い、しかも強い広がりをもって今我々の問題意識を占めているという状況になっていると思うのです。  これに対する考え方ですが、私はこれ二つに分けて物事は考えないといけないんじゃないかと思うのです。この急速な円高で、私は現在の円高レベルというのは正当だとは思いませんから、今百六十円ちょっとのところでボックス相場で安定しかかっておりますけれども、安定することが必要なんですが、基本的にはもう少し円安に戻ったところのあたりで安定することが短期的にも長期的にも望ましいと思います。思いますが、そのことはちょっと相場の話で簡単な議論ではありませんし、そこに誘導するということもそう簡単な話ではありません。  ですから、とにかく与えられた状況下でこれだけの度が過ぎた円高によって輸出関連産業が相当構造調整をその経営者たちが考えていたよりもはるかに速いテンポで、はるかに大きなスケールでやらざるを得ないように追い込まれたことは事実なんです。そのことが端的に失業の問題として、問題意識として皆さんの中に、我々の中に危機感を生んだことはこれまた紛れもない事実なんですな。このことは、しかし考えてみれば本当は三年か四年かかって進行すべきことがかなり速いテンポで進行したというだけのことであって、しょせんは避けて通れない道であったと思うのです。ですから、そのことによって生ずる雇用の問題というのは、それは労働省を中心にして通産省とよく協議しながら、地方自治体も協力して、国はもちろんのことでありますけれども、万全の対策をとるべきであると私は思うのです。  しかし、同時にもう一つ、これは空洞化論と誤解されているところが随分あるんですけれども、海外直接投資というものが行き過ぎると空洞化という議論があるんですが、現に実は起こっていることは、海外に対する投資というのは証券投資が中心でありまして、物づくりの現場を向こうに移すということは、自動車産業は別の理由で早く出ましたからちょっと別なんですが、円高になってこういうビジョンが出て、それに誘発される形で経営者の個別の判断において世界戦略を決めて海外に出るということを議論し始めてまだ半年ぐらいですが、これは実は議論だけが先行しまして、実態的に海外にそれならそんなにばたばた日本の大企業なり中堅企業なりが工場展開やっているかといいますと、量的には実際まだ大したことはないのですね。にもかかわらず構造調整はどんどん進んでいると。輸出関連産業競争力を失ったものが縮小するのはこれはある意味では当たり前だと。  しかし、海外に工場を展開するということについては、日々の報道は随分華やかに行われておりますけれども、実際の決定というのはそんななまはんかなやさしい話じゃないんですね、経営者海外に工場つくるということは。大体そんな工場をつくってそこで本当にコストが合うのかどうか、そういう国際的な事業をやるだけのスタッフを持っているのかどうかということから始まって、個別経営者が自分の判断で決定することは大変な決断を要する話であって、新聞で、あそこもこういうことを考えている、ここもそういう決断をしかかっているというニュースが出るほど速いテンポで物事は進んでいない、実態は。  なおかつ、私の考えでは、それは前川レポートもそうですし産業構造審議会レポートもそうですけれども、基本的に海外直接投資をあるレベルで行っていかなければ日本産業構造国際協調型にならないし、対外的な不均衡を圧縮することもなかなかほかの手段をもってしても難しいし、それは進めざるを得ないことだと思うのですね。問題は、さはさりながら、基本的にその線が正しいとしても、どういうのをどのぐらいのテンポで行ったらいいんだと。それによって派生するであろういろんな問題をどういうふうに政策手段でカバーしていくのかというところが一番今政策的には問われているところだと思うのです。  僕は、海外直接投資論については非常に単純に分けてしまうと三つのパターンがあると思う、政策的な基本スタンスにおいて。  一つは、一年半前から考えたように、相当いろんな手だてを政府が行って支援をして政策的にこれを推進する、個別経営者がなかなか決断できないならば、政府が、これは主として通産省ですけれども、いろんな角度から誘導して、どうだ、あなた早くアメリカに工場をつくりなさいよ、ヨーロッパにも工場を展開しなさいということを指導するという立場が一つ政策手段としてあると思いますね。  もう一つは、今のような円高状況下個別企業世界戦略を考える場合に、国内で物をつくっているだけではどうもならぬと考えて自分の決断で、自己責任海外企業展開をするについてやるのならばそれはどうぞ御自由にやってくださいと、政府特別支援もしなければ特別ブレーキもかけませんと。そのかわりそれによって起こるであろう国内の若干の問題は政府が面倒を見ますと、こういう立場が一つあると思います。  もう一つは、これは実は政治的には一番あるいは出かけている考え方かもしれないと思うのですが、一部、これはほかのことにもかかわる話ですけれども、大企業が自分の採算で勝手に海外に工場を建設するということはかなり危険があるから政策的にこれはむしろブレーキをかけるべきであると。基本的な発想は地域社会の崩壊だとか、全体の雇用の問題だとか、日本経済全体の活力だとか、議論の立て方はいろいろあってもいいんですが、ブレーキ通産省はかけるべきであると。中立的に物を見ているなんというのはけしからぬと、そんな甘い話でもないではないかと。雇用問題を抜きにして日本経済の安定ということ語れるかと、この三つのポジションが僕はあるだろうと思うのです。ひょっとするとこれから出てくる話は、一番最後の政策的に若干のブレーキを踏むべきではないかという議論が出てくる可能性があるように思うのです。  私の考えは、実は真ん中のところにあるのです。一年前は明らかに通産省の内部で、それからそこに参画していた委員人たちも大方八割は政策的に支援をしてもいいから強力に対外的な直接投資を量的にもどんどん進めるべきであるというスタンスの方が多かったんです。  今答申を出してから急激な円高が行われて、その中で構造調整が進んでいるという状況下で、やはりそれほど物事は単純ではなかろうと。とにかく円高状況下個別企業世界戦略のためにいろんなことをおやりになるのはそれはどうぞ御自由にやってくださいと、特別な支援はしませんと。そのことはまたごく全般的に言って、政府規制緩和という流れの中でそこに規制を加えるなんというのは間違っていると。それは結局、国際経済に対する日本の貢献という角度から見てそれは間違っていると。とにかく自由にさせましょうと、そのかわり問題が起こったならばそれは政府の責任だと、ある程度は、という立場に今大きな流れはなりつつあるように思うのです。  それは、やはり構造調整が急激に行き過ぎて雇用問題が眼前に発生した結果、一年半考えていた状況とは違いますから、当然のことながら役人の発想も姿勢も随分変わったということですね。私はそれが現実的な正しい対応、基本スタンスのとり方ではないかと思っています。  繰り返し申し上げますけれども、海外直接投資に対して陰に陽にブレーキをかけるということは、長期の国際的な日本経済あり方を考え、日本構造国際調和型に持っていくということから考えればそれは誤っているというふうに思うのです。個別企業経営者に会って、ある人がアメリカのある州に相当大きな直接投資をやろうとしていると。それについて、あなたはおやりになるのはそれはそれで、随分リスクもあるだろうけれども、しかしその決断をされるのはされるで結構だと、しかし、そのことによって地域に雇用問題が発生する可能性がないではないと。そのときあなたはそれをどう考えるかと言うと、それはしかし経営者が考えるべき話ではなくて、基本的には政府が考えてくれてしかるべきではないかと。しかし我が社は、自分の日立なら日立、静岡なら静岡にある工場を閉めて何百人の中の人間を首切って、それで向こうにそっくり別のものをつくるというのではないと。  大体、大企業は基本的には国内の雇用を確保した上で、何か新しいものをつくるのならそれは現場を海外に移すというのが普通なんです。中に極めてまれなケースでありますけれども、国内の工場を閉めて、そこで首切って、そっくり向こうへ行って同じものを向こうでつくるというのが出かかっていることもまた否定はできませんけれども、それは例外的な部類に目下のところ属するだろうと思うのです。しかし、これからはひょっとすると、今のようなレートがこれからやはり続くとするなれば、今例外に属することがもうちょっと実は広範に行われることがあるかもしれないと、それが本当に海外直接投資によって起こるであろう雇用問題なんですね。産業構造調整問題とは別に、同時並行的にではありますけれども。  それは確かに問題で、それについてはそう簡単に、それはそれまた大いに結構と、首切った連中のしりぬぐいは全部政府労働省がやるという話にするには経営者の社会的責任という問題があるだろうという気はします。しますから、そう個別経営者が考えているほどあとは、全部しりぬぐいはお国でよろしくというのは行き過ぎだとは思うのですけれども、しかし大きな流れとしてはブレーキはかけず、といってさりとて強力なる支援手段を設ける必要もないと。そのことはむしろマイナスの方が大きいと。あるテンポで十年、十五年先を展望しながら着実に大きな流れとしては海外直接投資を進めて国際分業型の経済構造に持っていくのが少なくとも日本としては賢明な道だと。  それに付随して一番私心配になるのは技術の空洞化という話ですけれども、これはしかし技術の専門家にたくさんの人に会ってお尋ねすれば、それは克服できる話だと。そんなことを日本経営者はやらないと。そんな技術の空洞化なんかを起こすようなことをやったら要するに個別企業の飯の食い上げでもあるし、将来展望が開けないということでありますから、そんな短慮な経営者日本には少なくともほとんどいないんだからその点は大丈夫だという答えが返ってくるので、その技術空洞化論に対して私はそんなに心配しないのです。  繰り返し申し上げますけれども、やはりこういう政策というのが、それを考えた時点と実際結論を出して実行する時点とでは状況が随分変わりますから、一番端的なのは、円レートが二百四十円から百六十円になったということによって、一年前に考えた構想を実行に移すんだったならば新しい事態に即応して柔軟にその政策展開をするのが一番賢明ではないかというふうに考えます。  以上、三十分でありましたので、私のお話をこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  5. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) どうもありがとうございました。  並木参考人には、本日御多忙中のところ、本調査会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。並木参考人から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また議事の進め方といたしましては、まず先生から三十分程度意見をお述べいただきまして、その後一時間程度委員の質疑にお答えをいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、御意見を承りたいと思います。
  6. 参考人(並木信義君)(並木信義)

    参考人並木信義君) 並木でございます。  私のきょうの発言項目というのは、お手元にお配りしてあると存じますが、三項目書いてあるわけであります。ここに書いてございます項目は、実は通常皆様方が新聞、雑誌、テレビその他では絶対ごらんにならない、そういう項目でございます。それは私自身、最近の議論、これは極めて根本的な問題に対して一過性の取り扱いをしておる、そういう感じがございますから、皆様方にいかに現在の議論の仕方がある意味で浅薄であるかということを御理解いただくために、現在いろいろな論壇等で絶対に取り上げられていないと思うような点をお話ししたいと思っているわけです。  第一の、「日本病(明治百年病)の原因、診断及び対策」という点でございますが、皆様方英国病という言葉はよく御存じだと思うのでありますけれども、現在の症状は、これはいわば日本病と言うべき症状なのであります。  英国病と日本病はどう違うかといいますと、英国病というのは、世界に先駆けて近代化いたしまして、その近代化した結果としまして、英国内の人的資源その他が産業界から離れまして文化面その他の領域に移ってしまったわけです。産業面、特に製造業から離れてしまいましてその他の領域に移っていった、それが根本的に英国病の原因である。一体それでは日本病と言っているのはどういうことであるかといいますと、これは全然別なんであります。  この日本病ということを御理解いただくために、私はここで明治百年病という言葉を使っておりますが、この明治百年病というのはどういう意味であるかといいますと、例えば明治維新の当初、日本の国際的な立ちおくれというのは一体何年であったかということをまずお考えいただきたい。明治元年において日本が近代国家をつくって近代化に乗り出した当初において、一体日本の対国際的な立ちおくれというのはどのくらいであったと考えたらいいのであるか。この点は恐らく皆様方御多忙で平素そういうことはお考えになる暇ないと思うのでありますが、私は今二千枚以上の大著を執筆中でございまして、その中で五十年のおくれである、そういう結論を出しているのであります。  その五十年のおくれであるというのはどういう意味であるかといいますと、これは例えば教育制度なんかをとりますと、意外なほどおくれていないのでございますよ。例えばオックスフォード、ケンブリッジに近代的な理工学教育が導入された時点と東京大学工学部発足の時点とを比較いたしますと三十年とおくれていない。それから、アメリカで有名なMIT、マサチューセッツ・インスティチュート・オブ・テクノロジーと比較いたしましても二、三十年とおくれていない。世界で最も最初に近代工学教育を実施したのはナポレオン戦争中に発足しましたフランスのエコールポリテクニックでございますが、これも実際に教育を開始したのは実は一八三〇年代でございまして、発足はもっと昔ですが、これと比較しましても五十年しかおくれていない。つまり、これは一つの比較の尺度でございますが、近代日本発足時点でまず五十年のおくれと見るのが適当なんであります。  この五十年のおくれということの意味はどういう意味であるかといいますと、例えば石油危機の前に日本が欧米諸国に追いついていたと仮定しますと、これは明治百年です。つまり百年間に百五十年分の仕事をしたということを意味するのです。明治百年にして出発点の五十年のおくれを取り戻してそれで追いついたということは、百年間に実は百五十年間の仕事をしたということを意味するのであります。これが現在の構造調整問題の基本認識であるべきなんです。  わずか百年間に百五十年分の仕事をこなした社会はそれなりにいろいろな深刻なひずみを持っているわけです。私はこの間、韓国経済新聞の社長と話しまして、韓国も韓国病なんだろうという話をしまして、意見は一致したわけでありますが、この日本病、韓国病というのは、英国病と逆に極めて短期間におくれを取り戻す大変急スピードな成長をやったそういう社会の問題点である。  これから申し上げますのは、皆さん絶対に通常の議論には出ていない論点でございますからよく御記憶願いたいと思うのでありますが、例えば百年間に百五十年分の仕事をする社会のひずみというのはどういうものであるか。第二次大戦前の日本政府として、国家としてやったことは、これは富国強兵だけですね、はっきり言いまして。国民生活なんというのは二の次である。間違いない。そうしますと、国民は老後は自分で面倒を見なければいけない。政府社会保障もへったくれもないわけですね。富国強兵で張り切らない限り帝国主義的な圧力下でつぶれてしまうわけです。だから、好むと好まざるとにかかわらず日本は国家としては富国強兵に奔走する。国民は自力救済である。ということは貯蓄率が高まらざるを得ないわけです。  皆さん、現代世界で先進国中貯蓄率が高い国はどことどこだか御存じでしょうか。日本より高い先進国があるのです。それはイタリアであります。イタリアの家計貯蓄率は日本より高い。なぜであるか。これは私時間がないからくどくど申し上げませんが、御想像をいただけるでしょう、イタリアの社会、イタリアの国家、イタリアの産業等々の状況考えますと。だから、貯蓄率が高いということは、マル優とかなんとかとは関係がないですよ。前川レポートは、まずマル優の廃止と石炭鉱業の縮小という二点を取り上げましたが、理由は、貯蓄優遇だから貯蓄率が高いんだ、だから黒字だ、こういうロジックでございますけれども、これは日本を知らざるも甚だしい意見でございまして、要するに貯蓄率が高いというのは日本病のせいなんです。  例えばヨーロッパは、これは利子所得課税がございますけれども、ヨーロッパは税務署が利子所得を捕捉いたしませんから事実上利子所得は課税されていないのですね。アメリカは利子所得課税がございますけれども、アメリカは貯蓄分は所得税を控除するという措置がございますから、したがって、マル優を廃止するということは、日本が実は一番厳格なことをやるということになるんでありますが、実はいろいろな審議会答申等におきましてはこういう冷静な国際比較なんというのは全然ないわけです。これはどうでもよろしいわけでございます。  もう一つの問題は、余暇文明の未成熟です。日本は百年間に百五十年分の仕事をいたしましたから余暇どころじゃないのであります。ですから、会社が休日社員を募集いたしますと定員の何十倍という応募がある。なぜか。これはやはり五十年のおくれで近代化を始めましたから蓄積がない、おまけに富国強兵下で貯蓄率を高めるという要請が極めて強かった社会であるから、現代日本人はこんな余暇を楽しむどころではないということが如実に出ているわけであります。これはだから今後の高失業下でワークシェアリングなんかを本当にどうやって進めるか、そういう問題を考えます場合非常に致命的な日本病の症状になります。  ここで、今の二点は恐らく皆様方もお気づきの点でございましょうが、お気づきでない日本病の症状を申し上げますと、それは例えば教育制度です。日本の教育制度がどういう点で日本病を表現しておるかといいますと、これは大学生の年齢分布なんであります。大学生の年齢分布はスウェーデンが一番幅がある、日本が一番幅がない、次はフランスであります。アメリカ日本に次ぐぐらいであります。一体これは何を意味するか。これは明治百年病でございますから、国民は一斉に教育課程をところてん式に押し出されて一直線に民間企業に就職し精いっぱい働くのである、こういうせかせか症状が教育制度に明確に出ているんです。  こういう教育制度で教育された人が民間、政府等に就職をいたしまして、それで日本社会を築いてきたのであります。この日本社会を築き上げた人が集まりましていろいろな答申をつくって、私に言わせれば病気を巣くった本人が病気の診断をして何か対策考えた、こういうわけでありますが、実はこれは診断が間違っておりますから対策も当然間違っているわけです。  それでは一体そういう教育制度をどうしたらいいか。臨教審は何か四月だ九月だと言っておりますが、これは全然問題とは関係のないところでございます。つまり、日本病であるということを冷静に認識いたしますと、これは産業界の調整だなんというそんな細かい問題じゃないのであります。  次の問題はどこに出ているか、これは医療制度です。医療制度の改革なんというのは山ほど議論はございますけれども、不思議なことに根本をついた議論一つもない。どういうことであるか。富国強兵日本が医療に力が注げただろうか、そんなことはありませんね。これは厚生省の人だって十分知っているはずでありますが、つまり戦前の日本は、政府は国立大学附属病院ぐらいをせいぜいやっておるだけでありまして、医療の出来は民間依存である。現在、国立精神病院が四つしかない、あとは全部民間病院である。これはつまり日本病の最たるものでしょう。  医療は政府なんかやっていられない、皆民間である。教育だってそうなんですよ。世界じゅうで日本みたいに私立大学依存の教育制度をとっている先進国というのはないのでありますよ。医療もそうなんです。日本みたいに私立病院依存の医療体制をとっている国は先進国には一カ国もありません。なぜか。それは日本病だからです。それでいわゆる宇都宮病院的なスタイルが横行しちゃっておる。これも日本病の典型的な症状でございます。ということで、明治百年病であるということを冷静に認識しませんと、産業構造調整の問題というのは出発点から失敗するに決まっているんです。これは小手先で海外投資がどうのこうのというふうな問題ではないのであります。  以上が私の日本病の問題に関する御説明でございます。  次に、産業構造の転換とは何かという問題でごさいますが、この点も実は皆さん方がお触れになります論調は次のような論調でしょう。輸出重点型産業構造を内需重点型に切りかえるのであるということを異口同音に述べるわけであります。これは先ほど河野さんがおっしゃっていたように、具体的な政策というのは全然附属していない。なぜそういう状況が生まれるのであるか。これは皆さんが産業構造の転換だなんということをあだやおろそかで口にしたり文字にしたりしてはいけないということを意味するのであります。産業構造が転換できるのであるか、産業構造というのはそんなコンニャクみたいなものであろうか、あるいはしん粉細工みたいなものであろうか、これはまずああいう議論をなさっている方は根本から考え方を改めないと、こういう人生と同じぐらい大きい問題をしん粉細工的に処理しようというのはとんでもない間違いである。  なぜ人生と同じぐらい大きい問題であると私は言うかといいますと、ここに産業構造の三命題というのがございますが、これは私が昔、産業構造課長というのを拝命しておりまして、産業構造長期ビジョンの第一回目をつくりましたとき、一生懸命考えまして発明した命題なんであります。  第一命題というのは、産業構造論は応用倫理学である。倫理学ですよ、エシックスである、アプライドエシックスである。第二命題は、一国の産業構造高度化の具体的レベルを決めるものはその国の文化内容である。第三命題は、産業構造はバランス感覚の問題である。この三命題はこれは私が脳漿を絞り上げて発明した命題でありまして、答申の最初の方に麗々しく掲げて日本政府役人諸君に拳拳服膺してもらいたいと思っていたのでありますが、不幸にして、私が役人をやめましてからこの三命題というのは完全に忘れ去られて、最近のような浅薄なる議論状況に陥っているのであります。  次に、産業構造転換の三条件というのがございますが、三命題というのはこれはちょっと難解でございますから、私は時間をつぶして皆様方を退屈させたくないので先へ行きますが、産業構造転換の三条件というのは一体何であるか。つまりしん粉細工みたいにこれは変わるものであるか。転換の第一条件は、これはニーズの変化なんです。人間ニーズの変化なんです。これが変わらぬ限り産業構造なんというのはびくともするものではないのでありますよ。輸出重点を内需重点に切りかえるなんて、書くのは易しい、言うのは易しい。  どうやって切りかえられるかといいますと、これはまず第一にニーズが変化しなければいけない。人間生活のニーズが変化しなければいけない。第二はテクノロジーが変化しなければいけない。第三は国際経済環境が変化しなければいけない。この三つのどれでもいいんですが、その三つのうちのどれか、または三つ全部でもよろしいわけでありますが、これが変化しない限り産業構造というのはびくともするものではありません。  そうなりますと、輸出重点型産業構造を内需重点型に切りかえる、こういう命題は私のこの三条件に照らしますとどういう条件で成り立ち得るのであるか。これは要するにニーズ、テクノロジー、国際経済環境、三つなんでありますが、一番大きい要因というのは最後ですね、国際経済環境です。ニーズとかテクノロジーの問題というのは私は今回はすっ飛ばして先へ行きます。  国際経済環境の変化というのは、中身は何であるかといいますと、第一にこれは比較生産費構造を通ずる輸出入の変化です。これは円高でやむを得ずそういう形で進んでおります。もう一つ海外直接投資であります。これは現在極めて盛大に論ぜられている問題でございます。海外直接投資である。要するにこの二つといいますか、つまり三条件のうちの第三条件、国際経済環境の変化、このうちの比較生産費構造の変化を通ずる輸出入の変化、それと海外直接投資ですね。それから技術提携等もございますが、要するに現在日本経済構造を変えるのに最も大きな影響を与えるのはこの第三因子である。その中でも特に海外直接投資であるということになります。  ところで、皆様方は恐らくいろんなところで数字はごらんでありましょうが、問題になっております産構審の計算をごらんになりますと、いろいろ海外直接投資残高何%かふえまして、二〇〇〇年にそれによって輸出が幾ら減るというような計算がございます。もし皆様方が注意深く数字をごらんになりましたならば、あるいは注意深く表現をごらんになりましたならば、そうした場合、日本経済摩擦はなくなるということが一言も書いていないという点に注意なさるべきであります。  例えば現在、日本経済が生み出しております経常収支黒字の大きさに比べまして、産構審で直接投資の結果代替される輸出額、しかもこれは二〇〇〇年ですよ、現在じゃないんです、二〇〇〇年で代替される輸出額というのが問題解決に足りる大きさであるかどうか。これはそんなことはないですよ。ということは、前川リポートもそうであり産構審のリポートもそうでございますけれども、私のような本当の専門家から見ますと、これはさっき三命題を忘れてもらっちゃったと言いましたが、数字づくりの点でもこれはかなりの問題があるというふうに御承知いただいた方がよろしかろうと思うのであります。問題はもっと深刻だというふうにお考え願いたい。  それじゃ一体どうするのであるか。直接投資もだめだとおまえが言うのだったら一体何があるんであるか。これは大変深刻な問題しかないとしか言いようがありません。じゃ何であるか。エンパイアステートビルの買収であるとか、つまり直接日本黒字海外資産を相当大規模に買い占めるとか、そんな段階の話だというふうにお考えいただいた方がよろしかろうと思うのであります。もちろん、これはアメリカからしましたら、核の傘のもとで日本は何をやりおるか、とんでもない国である。これは貿易摩擦どころじゃない問題に発展しがちですよ。これはですから、いろいろなリポートがございますが、ああいうリポートの数字を眼光紙背に徹して吟味なさればよくおわかりになるという点であります。  最後三番目が、中・長期成長率見通しと構造転換の諸問題というのがございます。これは皆様方が絶対にお聞きになっていない重要問題が一つあると私は信じます。それは何であるか。石油危機前の日本経済成長率は九・五%でございました。石油危機期間中、石油危機というのは私の定義では七四年から八四年でございますが、この十一年間の成長率は四%でございました。それで去年、八五年以降一体日本の成長率は何%になると考えられるか。私は、たまたま企画庁と意見が一致するというか、向こうが僕に合わせてくれたかどうか知りませんけれども、四%という説です。しかしこれは、論拠は企画庁と絶対違っておると思いますが。先進国がどうなるか。石油危機前は五%です。石油危機中は二%です。八五年以降は三%成長です。石油危機前に比べて、石油危機中の成長率は四掛けに低下するのです。四割にしちゃったのです。理由は、私は今時間がないから申し上げません。この理由については世界じゅうの経済学者が口を緘して語らない。だから皆様方も御存じない。だけれども、これは根本問題でしょう。八五年以降の成長率が私は日本は四である、先進国は三%であると申し上げます。  これは一体、石油危機前の九・五と先進国の五、これが日本が四であり先進国が三である。ではなぜ一体成長率レベルが今後がくっと下がるのであるか。これも天下の大問題ですね。これは米ソ軍縮なんかと並ぶ、あるいはむしろ人類社会全般に通ずる問題としてはもっと大きな問題かもしれない。これについても実は世界じゅうの経済学者は口を緘して語ろうとしない、それはなかなか語れない大問題ですから。ですが皆さん、我々が直面している明治百年病の解決というのは、実は数字的には甚だ心細い検討結果の上に認識が支えられている。これをまず申し上げておく。  その次、今後予想される成長率見通しというのは、今申し上げたようなレベルでいくと私は確信していますから、これは容易ならぬ見通しである。つまり石油危機前の高度成長、日本の場合は簡単に言って一〇である、先進国が五である。石油危機中は日本が四で先進国は二であった。つまり四掛けであった。これが今後は日本は四で、それで先進国は三%でいかざるを得ないのである。しかも一方においてマイクロエレクトロニクス革命は進行する。失業は多発する。これが現在の官製ビジョンと言っては悪いんですがハイテクの評価が完全に違うのです。私はここに、私の経歴の中に書いてある、「産業経済通説のウソとマコト」という中で書いてある。第一章は、ハイテクは成長しないと書いてあります。これは私の確信です。ですが、もろもろのビジョンはやはりハイテクに関しては成長率を上げるという前提で書かれております。これはとんでもない間違いなんです。だから、さっき言ったような、今後の成長率が日本は四で先進国は三でしかあり得ない。つまり過去の高度成長時代は夢のまた夢であるということを申し上げたわけです。  でありますから、まず我々は明治百年病であるということをもっとよく認識すべきであり、かつ、現在いろいろ検討のベースになっておる数字はずさん過ぎる、だからこれはもっとよく検討しなければいけない。  それから第三は、見通しが明確を欠き過ぎている。しかも見通しに与える主要要因の評価が間違っておる。こんなことでございますから、これはまず危なっかしくて見ていられないというのが忌憚のない現状評価であろうというふうに思われるわけであります。  ちょうど時間でございますから、私の発言はこれで打ち切りたいと思います。
  7. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) どうもありがとうございました。以上でお二人の参考人意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は会長の許可を得て順次御発言を願います。
  8. 福田幸弘君(福田幸弘)

    ○福田幸弘君 福田でございます。きょうはどうもありがとうございました。  並木参考人にお聞きしたいと思いますが、非常にユニークなはっきりとした論調で感銘を受けますけれども、この百年病の原因のところの貯蓄は同感でありますし、余暇利用の問題はそれもまた全体の百五十年を駆け足でやったという結果であろうと思うのですが、教育制度のところが、百年間でやったときにはところてん式で押し出していった、年齢層が集中しておるというのもわかりますし、医療制度、これについて百年間どうであったかという点、これ若干疑問がありますが、端的に申しまして教育制度が私立大学依存であるというのは、これちょっと解せない。むしろ百年間でやったのは国立大学依存の教育ではなかったか。ところてん式で送り出していった役人養成機関、これが百年間のやり方であって、むしろ私立大学依存ではなかったと思うので、これは戦後の状況を言っておられるのかどうか。  それから、病院関係も百年間においては軍関係ですから軍病院が中心である。これが国立病院であったわけでございまして、それにまた国立大学に附属病院がつくという国立中心であったということであって、私立病院依存というのも戦後の問題である、こう思うわけです。ですから、日本病というのが百年間の病気と、現在、戦後に起きた病気と、二つに分けないと、病院と教育の問題点はむしろ戦後の今の病気であって、百年間の要素はむしろ国の方に中心があった、こういうふうに考えます。  それから、成長率の今後の見通しのところで、ハイテクが成長要因にそんなにならないという点は私も同感なんですが、しかし、先生いろいろ御指摘を明確にされますが、今後どうしていいかという点についての御指摘がない。今後どういうふうに持っていけばいいか、産業構造をどうすればいいか。直接投資にも問題がある。しかし、エンパイアステートを買うというのは文化摩擦の最大原因ですから、その対案がないというのは、先生の明確な御指摘にかかわらず非常に矛盾しておるというか一貫しない、こう思います。  特に、私は日本病の最大原因は文化面であろうと思うのです。日本の伝統文化を忘れているし、今後の日本の文化がどうあるべきか、日本独特の日本人としての生き方、そういうものの考え経済面の構造だけに触れられますが、経済面をやはり支えておる、また経済面の上に立つ上部構造である精神面についてどういうお考えをお持ちになるか、その辺を、百年病の解決策としての経済面と精神面についてお聞きしたいと思います。
  9. 参考人(並木信義君)(並木信義)

    参考人並木信義君) 大変適切なる御質問をちょうだいしたと思います。  まず最初の教育と医療に関する私の発言でございますけれども、一番私にとって説明しやすい方から、つまり医療の方から御説明いたしますが、欧米諸国における病院制度の沿革というのは、これは御承知のとおり教会その他公共機関が病院をつくっているのであります。これは今さら申し上げるまでもないと思います。ところが、日本は明治時代を通じまして民間依存色が明確に強かったということは指摘できます。この場合の民間というのは、つまり欧米的な公共的な機関以外のもの、こういう定義でございます。つまり私立、いわゆる営利色の強い私立、この病院が日本では多かった、これは統計的には間違いなく立証できる点だと思います。  それで、それでは例えば欧米諸国のこういう公立的な病院というのはその後どうなっているかといいますと、アメリカあたりでございますと、これは一九六〇年以降、公立病院が非効率でございますという点から病院経営委託会社というのが出現したわけであります。病院経営委託会社というのはどういうことかといいますと、病院の経営を受託するわけですね。それでその病院を経営する。あるいはこれが発展しますと病院チェーンシステムをつくる。なぜそういうことが例えばアメリカのような国ではやったかといいますと、これはまさに病院が公立色が強かったからであります。公立色が強いという意味は、医者や看護婦の数が患者に比べて多いということであります。  これは、余り詳しいことは時間がございませんから申し上げませんが、アメリカの統計を見る場合注意しなければいけない陥穽があるのであります。これはアメリカの医師の数を教える場合の数え方がございますが、要するに、入院患者に比べますと医師と看護婦の数は、アメリカは公立でございますから非常にふんだんである。したがって非効率である。だから病院経営委託会社が出現して合理化をする余地があった。それが日本へ来たらどういうことになったか。  これは七〇年代になりまして、アメリカの経営委託会社が日本へマーケットリサーチに参りまして調べまして、日本へ上陸することを断念したのであります。なぜか。日本の病院が、これは昔からですよ、つまり明治時代から私立病院依存タイプで来ておりますから、余計な医者、余計な看護婦は使わないことになっております。ですから受託して合理化の余地がないんです。だから、日本へ上陸して収益を上げようと思っても上がらないということを発見して上陸しなくなった。ほかにいろいろ論ずべき点がございますが、これはやはり象徴的に日本の病院経営の一つの特質を示していると思うのです。合理化し抜いているんですよ、日本の病院は。それはなぜか、つまり私立であったから。  それから、次に教育制度でございますが、これは例えばアメリカの教育制度でございますと、ハーバードであり、エールであり、プリンストンである。有名な私立大学がいっぱいございまして、日本は国立大学が張り切ったんだ、こういう印象はございますでしょうけれども、これは印象でございまして実情ではないと私は思うのであります。なぜかといいますと、ハーバードであれ何であれ、これは実は根本は宗教ですね。実は、ハーバードなんというのはこれはプロテスタントの大学であった。日本の場合は、これはつまり国立大学がさっきおっしゃいました官吏その他国家枢要の人物を養成せにゃいかぬ。そこだけはやった。ところが、そこだけなんです、日本は。あとは私学に大体どんどんどんどん譲っていく形になって、戦後もですね。  ところで、それじゃアメリカなんかどうなっているかといいますと、ハーバード、エール、プリンストンどまりでしょう。その後は州立大学ですよ。つまりパブリックの大学です。州立大学の大規模な大学を次から次へつくりまして、しかもこれは規模だけじゃない、クォリティーもどんどん上がっておる。それでノーベル賞や何かをとる先生が州立大学等からもどんどん出ておる。これはやはり日本と全然違う傾向だというふうに言わざるを得ないわけであります。  それから、次の成長率見通しの問題でございますけれども、これについて今後一体どうするのであるかという、私が何も対策を申し上げなかった点を鋭く御指摘いただいたわけでございますけれども、これは私に言わせますと、対策があるとお考えでしょうかというのがむしろお答えに近いのですね。なぜかというと、今対策だと言われておるようなことは、私に言わせればこれは診断が間違っているのでありますから、だから対策みたいなものが論ぜられるだけでありまして、対策なんか論ずる前にまず診断をしっかりやるべきではないか。  例えば、さっきのところてん式教育、一斉に社会へ飛び出して一斉に働く。スウェーデンはそうではないと申し上げました。一番大学生の年齢分布が広いのである。なぜであるか。これは税引き後所得、可処分所得格差が小さいからですよ。日本アメリカみたいに、さっと社会へ出て年功序列制度的。アメリカでも年功序列なんですよ、実は幹部社員は。同期入社の四、五人は年功序列で頑張るんです。これは日本と同じですよ。転職が通例だなんてあれは間違いなんです。ですから、つまり一斉に就職して頑張って、同期をけ落として出世していくと収入がべらぼうに上がる。それで可処分所得の格差も非常につくという社会と、スウェーデンのように可処分所得格差は余りない、つまり、大学を早く出ようと遅く出ようと、それは名目所得の差はうんとつくでしょうが、税金をうんと取りますと可処分所得格差は非常に縮まってしまうんですから、そういう社会でございますとこれはいわゆる成人教育が成り立つんですよ。  ところが、日本の臨教審は、不思議でも何でもないわけですが、成人教育というようなことは言うけれども、だけれどもなぜスウェーデンで成人教育が成り立って日本でなぜ成り立たないかという根本問題はあえて避けて触れないでしょう。これは日本病でしょう、やはりこういう現象も、こういう議論の状態も。ですから、つまり私が対策がないという御指摘を受けたけれども、実はこの対策というのは、まず診断がコンセンサスを得ない限りなかなか対策なんか議論する段階に至らないでしょう。これは問題は、さっき言いました教育制度、医療制度全部絡んだ問題であるというので私は最初明治百年病だ、こう申し上げましたが、対策というのは、つまりその辺からひっくり返して日本の国全体、社会全体を国際経済社会とハーモニアスにする努力がない限り、経済面なんかの出っ張ったところだけで勝負しようとしたってこれは問題がただ先送りされて深刻になるだけなんですということを申し上げたいのです。  それで、さっきエンパイアステートなんという極論を申し上げたのは、実はなかなか日本人はそこまで根本的な議論なんかしないだろうという感じがございますし、もう一つは、根本的議論をしたからといってそれじゃ対策が急に出るというほど易しい問題でもないということがございますから、これはもう急場の措置としては海外直接投資は結構であるが、これは先ほど河野さんおっしゃったように、そう急に進みっこないのです。難しい。出ていってつぶれてしまっては意味ないからなかなか進めない。そうすると、やはり外国企業で生業中の会社を買収するかまたは資産を買収する。これは一番手っ取り早い黒字減らしですね。ところが、これはさっきも申し上げたように大変な問題だ、そういうことなのであります。
  10. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) それでは各委員の方に申し上げますが、できるだけ問題はひとつお一人少なくしてください。それから参考人の方も、質疑者が多うございますので、できるだけ要点をひとつお話しいただきたいと思います。
  11. 参考人(並木信義君)(並木信義)

    参考人並木信義君) それじゃむしろ皆様に最初に御質問を全部出していただいた方がいいのじゃないでしょうか。
  12. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) そうしましょう。わかりました。
  13. 飯田忠雄君(飯田忠雄)

    ○飯田忠雄君 それでは、先生のお話の中で産業構造の転換の三条件、まず輸出入の変化、それから海外直接投資の問題、それから成長率の問題、この三つがございましたが、この中で、海外投資経済摩擦をなくする直接の原因にはどうもなりそうもないということと、それから成長率は我が国の場合は四%でいかざるを得ない、先進国は三%なんだがと、こういうお話でございました。  そこで、輸出入の変化というものは、結局海外投資とは別に考えられておられると思いますが、その内容。それから、海外投資はだめになるということで、結局成長率が四%でいかざるを得ないというその根拠でございますね、先進国が三%で当方は四%。その理論的根拠はどこに置かれておるのかという点をひとつお願いをいたします。
  14. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) それでは、参考人の方に一通り皆さんからの一応御質問をまとめてお受けいただきまして、お答えいただきたいと思います。
  15. 沓掛哲男君(沓掛哲男)

    ○沓掛哲男君 私は河野参考人の御意見を伺いたいと思います。  今、対外均衡是正についてはなかなか特効薬はないというお話でございますが、しかし、海外直接投資というのは定性的なものとしてこれから私は進んでいく問題だというふうに思います。海外直接投資についての問題は、国内における空洞化ということで雇用の問題、それからもう一つ私はナショナルセキュリティー、資産でいえば凍結というような問題、これは今ごろ大変不穏当じゃないかということですけれども、軍備をやっている面から見ればそういうナショナルセキュリティーも必要じゃないかというふうに思います。  なかなか海外直接投資は進みにくいというお話でございますが、私は必ずしも日本人の性格等からいってそうでない面もあるんじゃないか。昨年ちょうどG5で、円安だった。それが円高に向けてG5でいろいろ合意が成った。それがこんなに早く短期間になろうとは夢にも思っていなかったわけですが、私はああいうG5のときも、円が高くなればなっただけいいというものではなくて、やはりどこかに一つの歯どめがあったはずで、その辺ぐらいまではひとつG5でみんな合意で上げていこう。それから上についてはある程度コントロールということも我が国としてはぜひ必要だったというようなことがやはりこれからのいろんな面での反省としても必要じゃないか。また、そういうことがうまくいくかどうかは別としても、勉強し研究する必要はあるんじゃないかというふうに思います。そういう点からも、この海外直接投資についても、これは証券投資は別としても、工場等をつくって向こうで生産をしていく、そして空洞化に直結するようなそういうものについては、一体どれぐらいまで進めていったらいろいろな問題が顕在化してくるのか、そういうようなことをよく勉強しておくことが必要じゃないか。  今、我が国の累積海外投資というのは、工場等ではGNPの三・何%ぐらいだと言われておりますし、ドイツの場合がGNPの六%とか何%とか言われているわけでございまして、そういう数値が実際的に意味があるかどうかは別としても、そういう勉強をする必要があるんじゃないか。我が国のGNPの一割も海外投資をして工場等をつくって海外でやっているというのは、これはだれが考えてもそれは行き過ぎたというふうに思いますし、今の三%台ぐらいはまだまだ行けるんじゃないか、そういう点で、どれぐらいのところまでが我が国としても諸外国の例等から見て海外直接投資としてのいろいろな問題をある程度大きくしないでとめられるそういう点か。そういうようなこともこれから勉強しておくことが必要ではないかというふうに思いますので、そういう点について河野先生の御意見を承りたいと思います。
  16. 工藤万砂美君(工藤万砂美)

    ○工藤万砂美君 主として河野参考人基本的な問題についてお伺いをしておきたいと思うのですが、産業構造審議会の総合部会の企画小委員会で大変御苦労なさったと伺っておるわけですけれども、その節に、前川リポートを作成する基本となったというふうに我々は思っておるわけですが、その小委員会でこういうことは論議できなかったのか、あるいはまたあったのかということについてお伺いしたいのです。  まず第一に、アメリカとの貿易摩擦でかなりな大幅な黒字が出たということで黒字減らしをしなきゃならぬということではございましょうけれども、過去の貿易摩擦の実態というものを考えてまいりますと、たしか昭和五十八年ころからわずか三年間か四年間が大幅黒字だと。その前は一貫して大体百億ドル前後の黒字だったと思うわけてす。ですから、わずか三年ぐらい大幅黒字になったからといって、直ちにこの貿易黒字は減らさなきゃならぬというような結論を出すというのは早急ではないかというふうに私自身は考えるわけでございます。  それから、輸出主導型を内需主導型に変えるということを口の上ではおっしゃっていても、日本の国の財政というのは非常に今厳しい財政にあることは御案内のとおりでございまして、それを簡単に内需拡大に置きかえられるのかということも論議をされたのかということが第二点目です。  それから三点目は、計画目標として経営収支の幅をどのぐらいにするかということについての期限を切った目標値と、それからその時期というものを全く明確にされないということが私は問題であったと思うのです。それで、計画の目標を策定しないものですから、たまたま今お話しのございましたように、昨年のG5のときにも百八十円までとか、あるいはまたアメリカ側は百五十円までやれというような話があったそうでございますけれども、そういう段階的な経過を経てこの産業構造というものを転換してまいりませんと、今日のような国内経済が混乱をしてくるということが当然私は想定できたと思うのですけれども、そういう段階的な言うなれば構造転換というものについてどうしてはっきり明確ないわゆる位置づけをしなかったのかと、非常に私は不思議に思うわけでございます。  したがって、そういう位置づけを明確にしないものですから、あるいは時期を明確にしないものですから、先ほど並木先生がおっしゃいましたように、例えばマル優の廃止の問題だとか一番弱いところ、石炭産業をつぶせとか、そんなような格好になってしまって、石炭産業を簡単につぶせと言いましても、これはもちろん石炭産業で生きている社会というものがある限りはそうは簡単になかなかいかないと私は思っているわけでございますから、そういうような御提言を前川レポートを作成するに当たって強く御提言なさったのかどうか。  私は、はっきり申し上げて、そういう位置づけとそれからはっきりした年次計画というものがない限りは、こういうものは例えば東京サミットあたりで各国の首脳にそういうものをばらまくなんということは、私は多少乱暴なことではなかったかというふうに実は思っておるわけです。しかも、あの当時は閣僚の方々も党の幹部の方々も余り御存じなかった内容でございますから、そういう意味では少し拙速ぎみだったと。それが今日のいわゆる日本国内経済の混乱を招いている大きなポイントだというような私は感じがしてならないわけでございます。  したがって、前川レポートといわゆる河野参考人が関係されました企画小委員会とのドッキングの方法はどういう方法でやられたのか、また、今私が申し上げたような意見が活発に取り交わされたのかどうか、その辺をちょっと教えていただきたいと思いますし、それから、できれば前川レポートを実施する上においては今後こうあるべきだというような御所見などがあれば承りたいと思いますけれども。
  17. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) それでは河野参考人お願いいたします。
  18. 参考人(河野光雄君)(河野光雄)

    参考人河野光雄君) たくさんの質問をいただいたのですけれども、まず、海外直接投資が現在は実は一般に議論されておるようなペースでいっていないんですが、しかし、いずれは日本経営者というか日本人の性格から見て一斉に出ていく時期が来るのではないかと。その一例が既にもう始まっている乗用車の対米巨大投資というものがありますからね。あれ見ていると、いずれほかでも同じ現象が起こるんじゃないか、そのことは巨大な問題が発生するだろうという御懸念だったと思うのですが、それは後、どうでしょうか半年ぐらいの状況を見ていると、今先生が御心配になったことがひょっとすれば特定の業種の中で起こる可能性が僕はあると思います、それは。それはやはり隣百姓というのか、日本人の持っている基本的なこれ――非常にすぐれた経営者も同じような判断をよくしますから、その可能性はあると思うのです。  ただ、さっきちょっと申し上げましたけれども、実は今まで、例えば日産自動車という会社がありますが、これは世界に膨大な、三千億を超えるような巨大投資をやっていますけれども、ほとんど全くもうかってないですよ、目下のところは。それもいろいろ調べた上で出ていくわけですからね。当時に比べれば円高ですから、もうちょっと決断はしやすいんですが。なおかつ経営者の身になってみれば、今の決断というのは、十年、十五年先の企業のひょっとすれば致命傷になるかもしれない決断をやるわけですから、私はそんな大きなスピードで、例えば年間二割とか三割のペースで伸びるなんということはちょっと考えられないと思うのです、経営者心理からして。  それから、もう一点申された、一体どの辺を目安にしてやったらいいんだというお話がありました。しかし、申しわけない話かもしれませんけれども、企画小委員会の中ではそういう議論はほとんどなかったんですね。少なくとも出発点において、さっき委員が説明されましたけれども、今日本国内製造業の売り上げに対して海外の小会社その他の売り上げの比率は四%弱である。アメリカとドイツはもう二割に達しつつある。だから向こう空洞化ということが相当当たっているかもしらぬ。日本はまだ一けた下のところにとどまっている、話題はたくさんありますけれども。  ですから、今のペースで、どうでしょう、一応実は共通の腹構えとして、明示的には議論しなかったけれども、お互いの了解としてあるのは、アメリカとドイツの現在の水準、つまり国内が十だったら海外が二という製造業の売り上げの水準、そこまで持っていくのはやはり問題があるんじゃないか、特に日本の場合には。いいところやはり一割前後ではないかというのが暗黙の了解だと私は思っています。  それから、あとたくさんの御質問をいただいたんですが、実は前川レポートと産構審の議論の中で、外部から一番致命的だと批判されることが一つあるんです。それは、最近三、四年間における膨大な対外黒字というものはこれは一時的なものではないのかと。しかもその一時性というのは、レーガンがやった、私に言わせればまことにある意味で無責任きわまるあの財政政策の結果生まれたアメリカ国内の一般消費需要の盛り上がりに日本が便乗しただけだと、その話は。うまく勝機をつかんだだけの話であって、今アメリカはレーガンがこれ第二期の中途半端にきていますけれども、いずれはその膨大なツケを、財政に残したものを、財政に全部しわ寄せているんですから、国防にしろ、減税にしろ、直さにゃいかぬということは去年から始まっているわけです。財政の均衡化へ戻す話から全部始まっているわけでしょう。  そうすると、アメリカがそういう態度を変えるのは正道なんであって、日本は何もそんな構造調整だとかフルセット主義の総反省だとか、そんなふうな自虐的な反省意識を持つ必要ないんじゃないか。レーガンの政策基本的に行き過ぎたんだから、それを向こうが直すなら、当然のことながらそれに付随して日本の今先生がおっしゃったみたいな貿易収支黒字も減るだろうと。減るのは自然だと。そのことは日本にとってはつらいけれども、それさえ耐えれば、日本の石炭産業をあんなに早くぶっつぶさぬだってよかったじゃないかという話は、外部の批判としては極めて強い批判としてあるわけですね。そのことは、僕は前川委員会の中に入っておりませんから、ただ同僚がたくさん入っておりますから聞いてみると、やはりそれは欠点として指摘されてしかるべきところだったと言うんですよ。  ただ、これは半分言いわけみたいな話ですけれども、余りにも円レートの上昇が早過ぎたということによって、あの前川レポートを書いた人たちに聞いたって、石炭山がこんな速いテンポでこんな早くつぶれるようなスケジュールをあの人たちは頭に描いたわけでは全然ないんです、そうじゃないんですよ。しかし、実際に円高が起こって鉄鋼資本が六月に支払い三分の一しかやらないよという実力行使に出た瞬間から事態が変わっていくわけですわ。それで全く役人考えなかったペースでぱあっと山の閉鎖が行われ、これからもいきそうな気配にあるわけでしょう。そのことはさっき先生おっしゃったみたいに、もうちょっと緩やかなプログラムをつくれ、アメリカに対してもはっきりと物を言えと。そのことは確かにおっしゃるとおりだと思います。  ただ、現実には緩やかなプログラムをつくるような状況に今あるかといったら、とにかく今の現実の円高の中で、個別企業が悪戦苦闘しながら現実にやっていることを半年たってみたら相当内容が変わったんだなということが後から確認されるだけであって、プログラムをつくってやるなんということは、石炭はやりましたけれども、あのとおりいくなんてだれも実は思っておりませんから、つくった役人も関係業界も。ということは、形式的にプログラムをつくってもなかなかそのとおり実行できない、したがって、実効性のないプログラムをつくることは、ある意味では安心かもしれないけれども、またいろんな問題を反面はらむことになるんです。  ですから、今先生がおっしゃった気持ちはよくわかるんですけれども、それを今また産構審でもう一回開き直してみてプログラムをもっとしっかりつくり直せということを言われても、それはなかなか難しい話ではないかと私思いますね。すべての答えになっているかどうか知りません。  もう一つだけお答えしておきますけれども、段階的に構造改善を進めろという話とあわせての話ですけれども、国際収支の黒字を削減するためのプログラム、一年間で何ぼ、二年間で何ぼ、五年たったらこれだけ。これは大来さんその他が内部資料として我々に随分説明もされたし、説得もされましたけれども、対外戦略としてそのことを採用することのよしあしということが随分議論されたんです。やはりマイナスの方が多いのではないかということで、みずからを相当縛り上げることになりますから、実行するのはこちらですからね。アメリカ責任は半分あると言ったって、向こうがやらなければ、日本政府が一方的にその目標数値に縛られるとするならばそれは輸出規制しか道はない、その話は、端的に言えば。そういう議論もありますよ。ありますけれども、それは自分のことを強く縛ることになるからもっと別な問題が発生する。したがって、そういう数値をやることは日本自身を縛るから賢明ではないという議論が随分あったように思います。
  19. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) ありがとうございました。それでは並木参考人お願いいたします。
  20. 参考人(並木信義君)(並木信義)

    参考人並木信義君) 私、実は前の先生の御答弁が一つ残っておりまして、文化面の問題は一体どうかというお話がございました。この日本文化の問題というのは、明治以降日本人は江戸時代までに達成しました日本人の精神文化の中身を全部忘れてしまったのであります。  例えば、夏目漱石が明治三十年前後に和歌山で講演をいたしまして、現在日本人は近代化で大多忙である、それで大車輪で働いて、上っ面を歩いて皆ノイローゼになっておる、こう言っております。これは明治の近代化の渦中にありました日本人の大変率直な印象としてよくわかる。しかも、それが夏目漱石のような大文化人がそう言っているということは非常に示唆的なのであります。しかし、この夏目漱石の認識は私は間違っておったと思うのであります。  どうしてかといいますと、江戸時代までの日本人というのは、実は世界の主要信念体系をほとんど全部導入済みです。まず最初に日本固有の要素がございます。古神道という要素がある。次に道教が入ってまいります。これは歴史の本は述べておりません。しかし道教が明確に入っております。それから仏教が入り、儒教が入り、それから習合神道が復活し、その次にキリスト教が入ってくる。キリスト教は当然禁教です、禁止されておる。  ところが、我々の先祖はキリスト教を我々よりはよほどまともに研究したのであります。どうしてそういうことがわかるか。それは上海で出版されました漢訳のキリスト教文献が全部輸入されておるんです。禁教下ではありますが、我々の先輩は一生懸命それを回し読みしたんです。そういうことは、書物は残っておりませんが手紙が残っておりますから、知識人の手紙からそういう事実が明確化するんです。  それで、最も驚くべき事実は、皆さん平田篤胤というのを御存じでしょう。本居宣長最後の弟子であると自称した国学者。かつ平田神道ですね、神学者。あの平田篤胤が何とキリスト教を真剣に研究していたのであります。それで、彼のマニュスクリプトが出てまいりまして、これは出版したら死刑ですから。そのマニュスクリプトの中にイザナギノミコト、イザナミノミコトという言葉に振り仮名をいたしまして、アダム、エバという振り仮名がしてあったんです。なぜ彼はキリスト教を一生懸命研究したのであるか、その理由は私は申し上げません。それから、その弟子が新約聖書を一生懸命研究しておるんです。愛の神ですね。明治になりまして政府が神道を政治的に利用して、せっかくのその試みが滅び去り、それで夏目漱石のノイローゼ時代に入ったのです。  何を意味するか。つまり日本人というのは世界の主要信念体系をみんな導入して、世界最高レベルでそしゃくしたんです。それは江戸時代のいろいろな文献を読んでみれば皆さんも否定しようがなく気づきます。これは仏教、キリスト教比較論なんというのを儒学者が一生懸命書いていますよ。それで内容は極めて正確です。例えば新井白石のシドッティの尋問書なんか見ましても内容は極めて正確である。  なぜこんなことを私は言っているかといいますと、日本病というのはあくまでも明治百年病だということを強調したいからなんです。つまり江戸時代までの日本人というのは結構世界最高の文化人だったんです。それが日本病で、夏目減石みたいな人でさえノイローゼで全部旧弊である、忘れてしまう。じゃ一体日本人の現在の精神状況にそういう日本人の精神文化の蓄積結果が残っていないか、残っていますよ。  ただ、日本学者が怠慢だから、それを調べて国民に知らせないだけだと私は思っております。例えば日本語を見てごらんなさい。日本語というのは文化記号論の方でいって日本語という文化記号の中には過去のいろいろな蓄積が皆畳み込んであるんですから、日本語を使っているということは、そのことを通じても過去の精神的蓄積がかなり伝わるんです。これはだけれども余り体系的じゃありません。  という意味で、つまり日本の精神文化というのは実は通常議論されていないような点で非常に重要なのであります。それが現在の貿易摩擦とか今後のいろいろな問題あるいは日本的経営の特質、日本文化の特質、こういうものを真剣に分析いたしますと、今言ったような日本の精神文化の蓄積内容というのは見直されるときが必ず参ります。  その次に、いろいろ御質問ございましたけれども、例えば成長率が四とか三とかいうのは一体なぜなんであるか。これは恐らく共通の御疑問だろうと思いますからこれを取り上げて申し上げますが、例えば日本で高度成長時代九・五であったのが石油危機の時代に四に下がった、それが今後も四である。なぜか。これはまず石油危機の時代になぜ四掛けに下がったか。先進国も同じです。四割に下がっている。五が二である。理由は三つございます。  第一は引き締めである、これは政策は徹底的に引き締めてきたんです。ただ銀行の調査部長クラスの本当のことがわからない人たちが調べては、この時期は緩和、この時期は引き締めなんて神経衰弱みたいな議論しますから一般の方にはわからなくなるんで、引き締め基調なんですよ。ただ選挙とかなんとかのとき政治的に多少緩める、そういうふうに理解すべきである。  第二は、民間の反応パターンがございまして、これは僕の言葉で言うストック調整パターンという反応を示しているんです。これは中身の説明は省略します。ストック調整パターンがございますとこれは成長率は下がらざるを得ないんです。  第三、これはハイテクは成長しないということが起こっているんです。つまり軽薄短小ハイテクあるいは技術革新新時代、新産業革命時代、情報通信社会化、これはみんな現在の情報化社会を象徴する幻影と錯覚の言葉でございまして、成長率を引き上げる力は弱いんです。ですから、この第三要因は非常にきついんです。  さて、それじゃ石油危機の時代が終わりまして、今後の成長率がなぜ低いままであるかといいますと、石油危機の時代の低成長要因の三つのうち引き締めはなくなっている。それから私の言葉で言うストック調整パターンの調整も終わっている。ところが三番目が残っている。つまりハイテクは成長しないというところは残っている。これは根本的な問題でございます。  最近はやりの三〇年代の大不況と石油危機の時代の比較論というような大変無責任な比較がございますが、ただ一つ共通するポイントがあるのはイノベーション不振期であるという点だけでございます。このイノベーション不振期は、しかし当時と、半世紀前と現在とは経済構造社会構造が激変しておりまして、現在は不況抵抗力が絶大でございますから、当時アメリカのGNPが三年間で一〇〇が七〇に三割も落っこちてしまったなんてことは事実起こっておりませんし今後も絶対に起こらない。ちょっとお話が長くなりますからこの程度にいたしますが、つまり根本原因は、三〇年代のイノベーション不振というのは現在も共通である。ただし産業構造社会構造の不況抵抗力が絶大に強まっているから当時のような不況の再現は絶対にあり得ない。ただし現在程度の成長率の低下、つまり石油危機前の一〇が石油危機中四、日本は今後も四、こういうことは不可避であろうということでございます。
  21. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) ありがとうございました。
  22. 神谷信之助君(神谷信之助)

    神谷信之助君 いろいろありますけれども、雇用問題は今日緊急の重要な問題になってくるし、これからさらに一層その重要性を増してくると思うので、それに関連してお伺いしたいんですが、まず河野参考人には、レポートの二十一ページに、今後の海外直接投資によってもたらされる二〇〇〇年度の貿易収支黒字の削減効果をアンケート等に基づいて二〇〇〇年度までの製造業海外投資累積額、これを年平均伸び率一二%として試算をすれば、雇用に対する影響は、雇用機会の減少が約五十六万人、それから一五%に引き上げた場合さらに四十一万人増大するというように出されています。  それで問題は、例えばこのアンケートですが、アンケートをやられたのが六十年の十月末の時点ですから、当時二百円前後のレートですね。ですから、現在の百六十円前後のレートになってくると相当事情は変わっていくんじゃないかという点が一つ。この辺はどういうようにお考えか。  それから同時に、これはエコノミストの八月五日号に通産省の大塚課長さんやウシオ電機の牛尾会長さんなんかの対談がありますが、そこで「昨年、実労働時間は二一八〇時間ぐらいでしたが、二〇〇〇年に向けて一九〇〇時間内にすることになっています。」というように課長さんがおっしゃっているんですけれども、それに対して牛尾さんは「それがほんとうに実現するかどうか、実現しなかったらあんな小さい数字では収まらない」というように言われているんですが、この試算のときに労働時間の短縮の問題については基礎材料として、前提条件としてどのようにお考えになっていたのか、この辺をひとつお聞かせいただきたい。その辺はあるいはもっと大きくなっていくんじゃないかと思うのですね、雇用機会の減少。  それから、並木参考人の方にお伺いしたいんですけれども、それはこのレポートでは、雇用機会が減少する、一方で技術革新の分野で二〇〇〇年には約百十七万人の雇用機会が創出されるという試算が出ています。  ところで、並木さんの「技術革新産業社会」という本を読ませていただきましたが、その中で、先ほどからおっしゃっているようにハイテクは成長しないという立場から、FA、OAは企業間競争で急速に進むけれども、大量の失業が発生をし、ワーク・シェアリング等による失業防止策が積極的に採用されない限り一九九〇年には失業率は九%になるだろう。それから、おそらく技術革新新時代の新時代たる所以はこの高失業の持続的存在、失業率九%という状態が持続的に存在するという点にあるんではないだろうかというように述べられておるんですけれども、ハイテクは成長しないという立場からいって、今答申の方では逆に技術革新の分野では百十七万人の雇用機会が創出されるという見解に対しての並木さんの御意見、それから、ここでおっしゃっている失業防止対策、これは具体的にはどんなことをお考えになっているのか、もしあればお聞かせ願いたい、こう思います。
  23. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) ほかにございませんか。――それでは、まことに恐れ入りますが河野参考人からお願いします。
  24. 参考人(河野光雄君)(河野光雄)

    参考人河野光雄君) ごく短くお話しをします。  まず最初の方のことですけれども、さっきもちょっと申し上げましたけれども、実は前川レポートも産構審も二つぐらい見込み違いが起こっているんです、あの議論をして書いた段階に比べれば。それは非常に重要なことなんです。  一つは、円レートがあんなふうにまでいくとは思ってなかったんです。もう一つは、これは二輪車で、内需拡大というのが相当のテンポで行われないとこの調整問題というのが大変なフリクションを雇用の問題で発生するという、当たり前の話ですけれども、そのことに対して、大きな願望はあったけれども、現実そうは、今までのところ補正予算を含めてそう大した手が打たれていない。民活も、言葉はあるけれどもどうも実態がまだ姿をそうはあらわしているとは思えない。この二つのことの結果何が起こっているかというと、調整が異常に早く進み過ぎて雇用問題が発生したということがあると思うのです。  私は、最近になってもう一度、産構審のあの基本方針に基づいて来年単独立法、新しい法案を出すんですが、そのための審議をやったときに、何を最後にみんなが共通願望として言ったかというと、委員会の中で、とにかく安定的なレートプラス適切なレートということを言ったんです。  つまり、今の百五十円ないし百六十円前後のレートは適切ではないというのがあらかたの、労働組合の人もそうだったし、学者もそうだったし、産業界の人もそうでしたが、皆さん共通の認識だったんです。といって、これがどういう手段でもとへ戻るかという議論は余りなかったんですけれども、今が適切なレベルだとは思わないと。今確かに安定はしていると、しかし適切なレベルかといったらそうじゃないんじゃないかと。このレートで二、三年引っ張っられたらえらいことになるんじゃないかという認識があったということを御報告しておきたいんです。  もう一つは、内需の安定的な拡大ということについては、これは僕は政権が変わらなければちょっとめどがつかない話だと思います、正直言って。思いますが、そうストレートに書けないからもっとあいまいな言葉で書いてありますけれども、もう少し積極的なことを財政面からも考えられる余地はないのかということが共通の声であったことも事実です。ただ、活字にするのはいろいろはばかることがあるからそうは強く出ていませんけれども、その二つがあったことは事実です。それが見込み違いです。そのことの集約的な結果が雇用問題だと私は思います。  二番目の、一体労働時間の短縮問題についてどんな議論をやったんだということですけれども、これは正直言って今度の答申というのは、国際的に産業構造を調整する、そういうみんなと余りフリクションを起こさない形態へ持っていきたいということがあって、そのときに国内空洞化が起こるときには技術革新でカバーしようと。この議論について、今並木先生はそんな可能性は余りないよとおっしゃったけれども、一応そういう議論があった。  もう一つ実はあったのは、これは産業構造はニーズで変わるとさっき並木さんはおっしゃいましたけれども、まさにそのことで、国民がもう少し豊かな時間を持って、金は相当あるんだから時間をくっつけてやればそれは相当余暇を利用するようなところにいくだろうと、それは内需の基本的な振興になるだろうと、それには労働時間短縮が必要だと。  つまり、そういうふうになることは望ましいということで言っただけであって、どういう手だてで、政府規制でやるのか、民間の経営者と労働者の間の本当の相互の話し合いでやるのかというようなところまで余り踏み込んでないですね。願望だとか、そういうことになるに違いない、なってもらいたいものだという観点が強くてあの議論が行われたんですよ。そこをたどる、どういう道筋でやるんだという法政策論というのはそれほど厳密にあそこで議論したんじゃないんです。これが本当の議論内容のことです。
  25. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) ありがとうございました。  並木参考人お願いします。
  26. 参考人(並木信義君)(並木信義)

    参考人並木信義君) 今、私が昔書きました本を御引用いただきまして恐縮でございましたが、あの本は円高不況予想以前の計算でございまして、それじゃ円高不況になりましたら当然もっと深刻化する、こういう認識でございます。  それで今、河野さんもおっしゃいましたが、ハイテクの評価が、これが非常に難しいんです。なぜ難しいか。それはつまり一つずつ吟味しないといけないからであります。一緒くたにハイテクといって吟味できるものじゃない。ハイテクの構成要素、例えばマイクロエレクトロニクスは一体どうであるか、バイオテクノロジーはどうであるか、新素材はどうであるか、光産業はどうであるか、航空宇宙産業はどうであるか。つまり一つずつ吟味していかないと答えが出ないんです。これは大学の先生にできることじゃありません、大変申しわけないが。というのは、今大学はそんなことをやっていないですから。そうなりますと、これはだれがやれるかというと、実はだれもやれないんです。そうするとだれかが一生懸命努力してやる以外手がない、こういう状況でございます。  私は、自分がやったという気はございませんけれども、私なりにやりますと、要するに一つずつ吟味しまして、みんな成長率を高める力はない。低めはしませんよ、もちろん。そのもの自体の成長性はあるんです。例えばマイクロエレクトロニクス自体は成長性はありますよ。だけれども今までもこんなに成長しているわけですよ、マイクロエレクトロニクスは。今後も同じぐらい成長するんです。ということは、今までのGNP成長率がこのまま同じにしかいかないということを意味するんです、上がりはしないんです。  ところが、通常の議論はそこが錯覚があるんですね。ハイテクのある要素の成長率はこんなに高いといいますと、今までだって高かったということを忘れてしまいまして、今までだってハイテクは高成長してGNPは低成長だったんですから、今後もハイテクが高成長だってGNPは低成長ということは十分あり得るわけです、これは、だれが考えたって。ところがここがやっぱり人間の錯覚でありまして、あるいは意図的な錯覚といいますか、自分議論に有利にするために無視してしまうんです。だから、今後ハイテクだから成長率が上がる、絶対そういうことはあり得ない。僕は一つ一つ吟味して本に書いてありますからここで申し上げません。  そういうわけで、つまりハイテクが幾ら頑張ったってGNP成長率が今までより上がるということはないんですよ。せいぜい今までと同じだと、こういうことでございます。それがだから四、四だと、こう言っているわけであります。  さて、それでは一体失業はどうなるか、この議論も皆さんはもっと怒るべきだと私は思うのですよ、実は、本当のところ言うと。例えば政府審議会、あるいは政府の息のかかった研究会、例えば労働省スポンサード研究会、それから財界スポンサード研究会、ああいうところの研究会の議論を皆さんは何で黙って見過ごすのであろうか。恐らく私だけでしょう、大きな声で非難しているのは。だけども私は大変非力だから全然効果がない。  どういうことかというと、ああいう議論のパターンを見ますと、個別業種では省力化効果でこんなに失業をする、こう言うんですよ。これは隠しようがないでしょう。ところが前文ないし結論の部分でそれをひっくり返すんです。どういうひっくり返し方をするか。考察部分では雇用の伸びは低まるが、その他の部分なかんずくソフトウエア開発等で雇用がふえる、こうやって逃げるんです。だから合計すると問題はないんだと。これが皆さん、議論のパターンなんです。  それじゃ前書きとか結論で逃げたところは実態判断があるか。ありませんよ。それでその実態判断がないところが実は現在の議論の混迷を生んでいるんです。例えば日電の社長と言っては悪いけれども、いわゆる情報産業関係でソフトウエアの開発なんかに携わっている人の発言は、ふえるふえると言うに決まっているんですよ。減ると言ったら商売上がったりでしょう。これは交渉上有利でしょう、ふえると言った方が。だから、ソフトウエア開発なんていうのは猛烈なソフトウエア要員が要ると言うに決まっているんです。それじゃ証明してみろ。できっこないですよ、はっきり言って。  ですから、従来の官製または官製的な見通しの議論というのは、前書きないし結論で実態的な議論を全部無視してオーケーだと、こういうパターンになっているんです。これはみんな私の友人諸君がそういう瞞着に手助けをしておるので何とも言いようがないわけであります。  それじゃ一体対策は何かとおっしゃいました。対策は、これまた通説は、私は、恐らく皆様方も通説病にかかっていらっしゃると思いますけれども、国債を増発し、それで公共事業をやり、要するに財政を通ずる景気刺激なんだと。これは恐らく通説ですから皆様方は通説病でお考えだと思います。  それで、私はこの間から実は経済閣僚の皆さん、それから経済官庁の幹部諸君にこういうことを言っておるんです。それでは世界でいわゆるケインジアンポリシーを実際にやった国とやった時期をあなたは御存じか。知らないでしょう。教えてあげるんですよ。それこそまさに福田、大平時代だったんですよと。三木内閣は二年間で国債を十兆円出しておりますよ、二年間。福田、大平内閣は四年間で四十八兆円出しておりますよ。これが恐らく先進国におけるケインジアンポリシーを具体化した唯一の例です。こんなに大規模にやったんです。十兆が、同じ二年間なら二十四兆、二十四兆ですから、大変なこれ大盤振る舞いですよ。そこがつまり経済の福田たるゆえんだったんです。  だけれども、その結果日本の成長率は何%上がったか。だれか分析した人はおりますか。だれもいないですよ。なぜそういうことを分析しないで経済政策議論するのであるか。それは通説だからです。迷信だからです。分析を要しないという前提ですよ。効果があったに決まっておるんだから、そんなものを分析するのはよっぽどばかだ。私は、だけれども慎重ですから分析します。  結論は、福田財政は日本財政を根本的に破壊して成長率を一%上げただけです。五・二%になりました。だけれども、三木内閣ばりにやっていたら一%低下して四ですよ。当時アメリカは三機関車国論、日米独三機関車国論はございましたが、それに乗ったのは日本の福田内閣だけでありまして、カーター政権、ドイツ政府は乗らなかった。それではアメリカの成長率とドイツの成長率はどうなったか。アメリカは四・四です。特段の措置をとらないで四・四。ドイツも特段の措置をとらなくて三・四でしたよ。日本は財政を破壊して五・二でしたよ。破壊しなかったらどうか。これは結論明確でしょう。アメリカが四・四、ドイツが三・四なんですから、日本だって四ぐらいいっています。  今年度の日本は何%であるか。明年度の日本は何%であるか。これはまず今年度は、まあ明年度も同じでしょう。今年度は二ないし二・五の範囲ぐらいでしょう。明年度も二・五ないし三・〇の範囲内ぐらいですよ、実は。だけれども大恐慌時代というのは、さっき言ったように一〇〇、九〇、八〇、七〇とGNPがそれだけ落っこちたんですよ。今回はプラスなんです。これはつまりケインジアンポリシーをケインズが唱えたころと全然環境が違うんです。それで財政を破壊して一%ぐらい引き上げてなぜ見合ったか。  これは、経済政策というのは一体何を考えておるのであるか、ちゃんと分析したらどうですかと私は勧めました。やってごらんなさい、あなた方と。答えが十一月二十日の日経新聞の「経済教室」に出ています。これは経済企画庁の人が計算をした答えですから、恐らく私の声が通じて試算したんでしょう。結論はどう出ているか。見出しは、今後の財政運営は中立にという見出しになっております。これはつまり事務当局が冷静に福田財政を分析した結論が出ているというふうに私は踏んでおります。  つまり財政政策というのは打ち出の小づちでも何でもないんですぞ。これはとんでもない錯覚です。それじゃ一体おまえは不景気のままほうっておけというのであるか。そんなことは私は全然言いませんよ。それは大変ですよ。それでは手はあるか。それはそんなことを一切言わないことです。むしろ政治家や評論家の言うべきことは、財界人に対して、おまえたちは一体何を言っておるか、景気をよくするのはおまえたちの責任ではないかと。  何で、土光何がしは昭和五十年四月八日に三木さんに対して、財政を拡大政府を大きくして景気対策をとれと言って、忘れちゃ困るんですよ、皆さん、福田、大平と政府を大きくして動きがとれない。鈴木首相になりまして動きがとれないから、外国ではもう三、四年前に廃れちゃったビッグガバメント反対論を日本は遅まきながら導入する。昭和五十六年三月十八日第二臨調発足である。三木さんに政府を大きくしろと言った土光さんが臨調の責任者でしょう。土光さんはそのとき何か言いましたか。政府を大きくしたのは私の責任である、だから私は今回鈴木内閣の要請に応じて罪滅ぼしのために政府を小さくするんですと言いましたか。それから臨調に参加した学者、評論家諸君は土光さんにそういうことを言うことを勧めた事実がありますか。全然ないでしょう。  私は、本日ここに出席して皆さん方に何か言う気は実は全然起こらなかった。だけれども、私は国民として義務だから参って、先ほどから言いたくないことをさんざっぱら申し上げた。これは締めくくりです。もっとまじめにやったらいかがですか、経済政策議論を。それはパターン化した迷信なんですよ。公共投資でどうのこうの、国債増発しなさい。分析した人は一人もなくて、なぜそんなことばかりがはびこるか。冗談じゃないですよ。  いや、ちょっとわき道にそれました。だから、我々が言うべきことは、財界に対して、経団連その他に対して、政府依存で景気よくするなんて言っちゃいかぬよと。おまえ方が自力でやるべきだ。民活というのも経団連タイプの民活だなんて言っているのはとんでもない心得違いだぞ。あんなものは建設省のまねをやっているじゃないか、経団連が。本当の民活というのはそんなことをするんじゃないんだぞ。おまえら夜も寝ないでしっかりやるんだと。  何をやるか。それは研究開発ですよ、先ほどから問題になっておる。研究開発を一生懸命やって新製品をつくるんですよ。そうしたら、例えばCDにせよVTRにせよ、消費者は黙って財布のひもをほどいて買うんです。つまり需要が出れば民活になるんですから。公共事業じゃなくても何だっていいんですよ、要するに需要がふえればいいんですから、だからこれが本式の民活である、こういうことを言うべきなんです。何でおまえら新製品を出さないで政府に対して何かくだらぬことばかり言うのであるか。民活というのはおまえ、東京湾へ何かすることだなんて思っていたらとんでもない間違いだ。新製品をつくって国民の財布のひもをほどくのが本当の民活なんだぞ。政府に何かしてもらいたいなんということは口が裂けても言ってはいかぬと言うべきなんですよ。  私だけですよ、実は新聞や何かにそんなこと書いて憎まれているのは。だけれども、そういう意味で大変口はばったいことを申し上げましたが、ちょっと一言だけ。
  27. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) ありがとうございました。  以上で参考人に対する質疑は終わりました。  両参考人におかれましては、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。調査会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。  本件に対する本日の調査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      ─────・─────    午後一時十分開会
  28. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を再開いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査のため、本日の調査会参考人として石炭鉱業審議会政策部会長向坂正男君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  30. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) 産業資源エネルギーに関する調査のうち、石炭問題に関する件を議題といたします。これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  31. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 きょうは、参考人としまして政策部会長の向坂先生に対しまして深く感謝を申し上げたいと思います。    〔会長退席、理事沢田一精君着席〕 時間も、当初これ二時間ぐらいと予定していましたが、四十分足らずということでございますので、せめて二時間ぐらいやりたいと思いましたが、時間がありませんので、一、二問だけ向坂先生にひとつ質問をいたしたいと思います。  第八次の石炭政策が、昨年九月以来鋭意努力されまして一定の答申をされました。これは労を多といたしますが、我々の念願する原料炭山を維持して存置してもらいたいと、こういう答申には残念ながら相ならなかったわけであります。時間もありませんから申し上げませんが、まさにこの答申案でまいりますとやはり雪崩閉山的な要素が多分にある、こう私は今危機的判断を持っているわけです。  そこで第一点は、第八次政策をもってこの国内石炭産業は終わりを告げるのかという問題です。五年間というサイクルの中ではわかりますけれども、この答申の中にありますように、私はこの点は評価をしているのでありますが、国内炭の一定の役割があるということを言っております限り第九次の展望なり十次の展望が将来あるのだ、こういう認識を持っておりますが、この点率直に部会長としてどういうふうにお考えになっているか、第一点であります。  第二は、これは何としても我々としては雪崩閉山にならないためには、常に田村通産大臣も努力を払われると言われておりますように、なだらかに何とか歯どめをかけてもらいたいという、そうしていきたいという大臣の所見もあるわけでありますが、そのためには政策として最大重要なこの八次答申における問題点として答申されたところはどこなのか。  この二つだけひとつ簡単にお伺いします。
  32. 参考人(向坂正男君)(向坂正男)

    参考人(向坂正男君) 先般提出しました答申におきましては、第八次以降石炭産業をどうするかということに関しましては、生産者側からはぜひ生産規模を継続してほしいという要請がございましたし、需要業界の方からは将来縮小を期待するというような御意見でございまして、その点に関しましてはいわば両論併記、政府に対して適切な時期にポスト八次どうするかということを検討するということを政府に勧告しているわけでございます。それ以降、八次以降どうなりますか、そのときになって決めることでございますけれども、私個人の立場として言いますならば、これから八次政策の間、石炭産業は非常に厳しい状況のもとで労使が協力して存続を図るという状況でございますから、存続を図った末、九次ではもういいよというふうに言われたのでは、生産者側としては耐え切れないだろうと思います。  また、石炭資源から見ましても、恐らく残存するであろうと考えられる炭鉱はまだまだ非常に豊富な資源を持っておりますから、そういう観点から八次策以降どうするかということを検討してほしいと思っております。  第二の問題に関しましては、審議会立場はなだらかに生産の縮小を進めてほしい、一時的に閉山が集中し大量の失業者が発生するようなことをぜひ避けてほしいという立場答申をしました。その後、通産省の予算の請求の状況を見ますと、答申に書きました過剰在庫の発生に対する対策、これを貯炭管理会社をつくると。NEDOも出資しましてそういうものをつくって過剰在庫の管理をして、その負担が石炭の会社の閉山、炭鉱の閉山に結びつかないようなそういう防止策を考えようという姿勢は十分評価できるのではないかと思います。  同時に、残存する炭鉱につきましては、これも炭鉱によってはかなりの規模の生産縮小を余儀なくされますから、その縮小に対する対策、これも一つ二つほどの対策が予算で出されておりますので、こういった方向をぜひ予算として実現していただきたいというように考えております。
  33. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 今、向坂政策部会長から答弁がございましたが、さらに石炭労働者、あるいは日本の安全保障という将来等からまいりましても、今個人的感想ではあるがという前提で、石炭の資源の展望というものはやはり持っていくべきであるという所見がございましたので、非常にそれなりに多といたします。そういう方向でこれからもぜひひとつ第九次、第十次の展望というものを、先生の立場からも最善の努力をしてもらいたいということを要望いたしておきます。  そこで、通産省の方に、政府側にお伺いしたいのは、今も向坂部会長からございましたけれども、「昭和六十二年度石炭対策費概算要求重点項目」というのを、第八次関連追加分を含めて一応いただきました。この中で、ちょっと確認の意味ではっきりしておきたいんですが、今もございましたけれども、答申政策中心というのは、一つはやはり貯炭買い上げ機構である、こう思います。第二は、残る山について少なくとも細く長く山を存置していくという意味では山の規模縮小に伴う政策的手だてが必要であるということだと思います。  第一点の貯炭管理会社の機構に対する出資、それから利子補給金という額が出ておりますが、これ、いま一度ひとつ確認の意味ではっきり答弁をしてもらいたいということが一点。  それから、残る山についても、前回申し上げました、私は例を挙げましたけれども、xという炭鉱がある、二つの坑口があって、一つは閉鎖をする、後は残された本坑で細く長く生き延びていくと。こういう残された山については、仮称私が名称を申し上げたのは、石炭合理化交付金もしくは減産交付金という形で何とか政府が対処してもらいたいと。誠意を持って検討したいということでございましたが、この点の対策がここで言う、「規模縮小交付金の創設」というのがございますが、そのことを意味するのかどうか。これに対する金額、また政策対応、この二点まずひとつお伺いしておきたい、こう思います。
  34. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 第一点の貯炭管理の問題でございますが、御指摘のように来年度の差しかえ要求におきましては、NEDOからの出資金として二億、それから貯炭管理会社に対しますNEDOの無利子融資といたしまして約三十億を要求しているところでございます。先ほどの向坂参考人のお話にもございましたように、答申の中でも貯炭管理については極めて重要な項目ということで位置づけておられまして、私どもといたしましてもこの問題に積極的に取り組む必要があると考えております。この貯炭管理会社の具体的内容につきましては今後また各方面の意見を聞いて固めることになるかと思うわけでございまして、とりあえずは資金面での予算を確保することに重点をおきたい、このように考えておるわけでございます。  それから、第二の御指摘でございますが、複数の坑口がある場合にその一つを操業上閉鎖することにより生産を縮減するような場合に閉山交付金のようなものを適用してはいかがと、それが今回差しかえ要求におきますところの規模縮小交付金に該当するのかというお尋ねでございますが、そのようなことも念頭に置いて要求をしたところでございまして、計画的に人員の削減を伴います縮減を行った場合に、人員の削減に伴って発生いたします賃金債務見合い額の一部をあらかじめ交付するということを趣旨といたします規模縮小交付金の制度を創設することを要求しているところでございまして、お尋ねの考えと同一の趣旨と考えて差し支えないと思います。
  35. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 今の石炭部長からの考え方はよくわかりました。  大臣、これは今大蔵段階の折衝はもちろん続けられていると思いますが、大蔵予算の見通しはことしのあともう残り少ない十二月の何か二十五日に内示をされる、こういうふうに聞いております。ぜひひとつ実力大臣として、出した最低線は、これだけは絶対確保して最善の努力をしてもらいたい。それは、もうこれがなければ最低の歯どめはかからないんじゃないか、こういう非常に私も危機意識を持っておるものですから、この点ぜひひとつ大臣のこれからの予算に臨む決意などについてお伺いしておきたいと思います。
  36. 国務大臣(田村元君)(田村元)

    ○国務大臣(田村元君) せっかく要求いたしておる問題ですから、これはもう簡単に譲るわけにはまいらない。しかも、今部長が説明しましたように、その項目項目一つ一つが閉山に伴うもの、減産に伴うもの、いろいろと極めて微細にわたって計算されておるわけですよ。これが狂いますとそれこそ大変なことになる可能性もある。私としては財政当局に対していいかげんな妥協をする意思は毛頭ありません。
  37. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 今、大臣から力強い考えをお聞きいたしましたので、我々も微力でありますけれども、バックアップをいたしたいと思いますので、これはぜひひとつお願いしたいと思います。  そこで、この間も申し上げましたが、局長には言っているが、現実の問題として私が一番心配しているのは、今資金ショートを起こす可能性があるんじゃないかと心配しているわけですよ。それはどういうことかというと、貯炭が、真谷地炭鉱でさえ二十二万トンの貯炭を持っているわけです。これはもう金を目の前に積んでおくようなものであって、現実は春闘がようやく解決を見たと。ボーナスも四%という世間の常識から外れたようなボーナスをもらっているわけですよ。これだってボーナスじゃないんだ。生活資金の一部ということだから、まさにこれ人間扱いにされてないという今の炭鉱の実態なんですよ。  そこで、問題は何かと言えば、私はこの前も申し上げたけれども、貯炭の緊急融資をしてもらいたい。この対策はもう緊急かつ早急に急いでもらいたい、こう言っているわけです、私は。それは経営改善資金とかいろいろなやり方で政府なりにやって対応しているようでありますけれども、一つは十二月の年末を控えて資金ショートでも起こすと大変なことになるのであって、言葉では雪崩閉山を防止するとか、なだらか閉山をするということを言ったって、対応しなければ、不渡り出したら大変なことになるわけですから。したがって、危機一髪の感がこれなしとはしませんので、この前から何回も申し上げますように、ひとつ超法規的にこの事態にぜひ対処してもらいたいというふうに考えております。  もちろん、これ各社全部とは申し上げませんけれども、緊急に対応すべき幾つかの山がある。一般的な野積みをされている貯炭、現にこのままでいくと三月末で四百十万トン、私の計算では四百十万トンの貯炭になるだろう、こう思います。平常出炭量を超えるわけですからね。だから、当面何といっても貯炭融資だけはやはり最善のひとつ緊急対策をしてもらいたいというふうに考えますが、この点いかがですか。
  38. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 会社の資金繰りの問題につきましては、基本的にはやはり石炭企業の親会社を含めましての自己努力で対処が基本でございますが、本年度の場合を見ますと、先生御指摘のように、いろいろと状況が困難なことになっているわけでございまして、特に需要の削減が昨年に比べて著しいというような状況もございますし、そういうことを勘案いたしますと、私どもとしてもこの資金繰りの問題については十分に支援をしていかなければいけないと考えておるところでございます。  NEDOの経営改善資金のお話もございましたけれども、これにはこれの当然の制約があるわけでございますが、先ほど申し上げました趣旨にのっとりまして、当面十二月の問題につきましては、御指摘のございました真谷地社の問題も含めて何とか各社手当てができるようにNEDOの経営改善資金の活用も考えてまいりたいと考えております。
  39. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 今、部長からそういう答えがありましたから、これだけはぜひひとつ対応してもらいたいと思います。御存じだと思いますけれども、真谷地炭鉱に残念ながら犠牲者が出まして、八次答申を受けて全く世の中は絶望であるということで実は自殺者を出しているわけです。こういう今日の現況ですから、これは第二、第三のそういうことにならないためにも、先ほど大臣も言われましたけれども、当面対策と恒久対策ということにぜひひとつ全力を挙げてもらいたい、特にこれは申し上げておきます。  そこで、最近これは社会をにぎわしておりますし、また政治の最大課題でございますが、自民党税制改革案というものが今自民党税調で議論されております。売上税については我が党としては反対でありまして、私はその次元を今論じようとは思いません。これはいずれ立法化した段階で、国会の場でひとつ新たに議論をいたしたいと思います。  その以前の問題でございますけれども、売上税問題について通産側の態度をお聞きしておかなければならぬと思いますが、私の試算でまいりますと、私なりにちょっとやってみましたけれども、仮に売上税が石炭に適用されたとした場合ですよ、されなければ、非課税になればこれは結構なんだけれども、適用された場合に、今原料炭でずっといって売り値が二万四千九百円ということになります、私のこれは数字ですけれども。これでもし五%売上税がかかったという計算でいきますと、ちょうど千二百四十五円実はトン当たり税金を取ることになるわけですよ。こうなりますと、もう大臣も御存じのとおりで、これ炭価千円下げるのでさえ今四苦八苦で、現実に世間ではボーナスもらったとかなんとかと言ったって、今炭鉱労働者はボーナスもらってないんですよ、現実の問題として。春闘さえまだ解決つかなかったんだから、結果的には。こういう状況で、世間から見たら片っ方はまたボーナスもらうとかなんとかと言っていますけれども、そういう状態じゃないんです。そこへもってきてトン当たり千円ということが結果的にそういう労働者にしわ寄せされてきているということになっているわけでありまして、さらにこれにトン当たり千二百四十五円、五%の売上税がかかるということになれば結果的に千二百四十五円が負担になる。こうなったらもう山はもたないんじゃないか、八次政策はできたけれどもむしろ売上税で山が全部つぶれちゃう、崩壊しちゃうということになりかねない経営の危機的状況に陥るのではないかということを私は心配するわけです。  したがって、この点今聞きますと現在はまだ検討されているようでありますけれども、学校教育、社会保険医療、飲食料品、社会福祉事業などはほぼ非課税品目だとニュースで流れて、新聞紙面で見る限りはそういうふうに言われているんだけれども、この点政府として、通産省としてどういう売上課税に対する態度をお持ちになっているのか。私はこれはぜひひとつ、最悪の場合でも自民党税制でまとまるとするならば石炭は非課税品目にすべきではないか、こう思いますので、この点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  40. 国務大臣(田村元君)(田村元)

    ○国務大臣(田村元君) 政府税調で出されたのも三論併記でありましたし、今党税調でやっておるというところで、まだ通産省が絡んでおる段階じゃないわけです。ですから、これに対してとやかく私から申し上げることは、これは避けなきゃならぬと思いますが、間接税というものに対して製造元あるいは流通機構というものを抱えておる通産省がありがたいと思うはずはないですわね、これは、率直なこと言って。ですから、それなりの意見というものはやはり十分述べていかなきゃならぬと思うのですよ。  何か、これは私も人づてに聞いた話ですけれども、税の対象から外すという要望が何百種類か来ておるとかというので大分大騒ぎしておるようですけれども、通産省としては通産省なりにセレクトして意見を述べるというふうに考えておりますが、まだ通産省に対しての話が出てきたわけでもなし、党の方で骨子が固まってきたわけでもなし、閣議でこの話が出たわけでもなしというわけですから、これは仮定の御質問に対して仮定の御答弁ということにしておいていただきたいと思います。
  41. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 今、大臣からそういう答えがございましたから、今もしそういうことになった場合と、私もこれ仮定のあれなんだけれども、大変なコストになるものですからね。千二百四十五円トン当たり課税されたらとっても山がもたぬという率直な叫びなものですから、大臣から仮定のあれとして答えをいただきましたから、ぜひひとつそういうコスト増にならないように、石炭政策を圧迫することにならないように最善の措置をしてもらいたいということを申し上げておきます。それでよろしゅうございますか、今の考え方。仮定の論議ですからそういうことを強く要望しておきます。  そこで、時間がありませんので、労働省来ていますか。――この間もちょっと平井労働大臣に申し上げておきましたが、特に高島炭鉱が既に閉山になっているわけです。したがって、今の就職対策と言っても、窓口を開いていますけれども、これという対策今そうあるわけでもない。それから、この問題についてはもちろん産炭地だけの問題ではないけれども、北海道における漁業問題、あるいは御案内のとおり国鉄の余剰人員、加えて今度造船が今これ出てきているわけです。函舘ドックにも再び減船何隻かありまして、そういうことで、全体像を見ると大変な雇用危機だと私は思っているわけです。  そこで、この間も平井労働大臣は、この前代表団の会見の際に私に対して、総合立法的な特別立法をぜひつくりたい、今不況離職者臨時措置法とか不況地域指定等もありますけれども、それだけではやはり限界が来ておる、何とかこれを合理的に整備をして、かつまた今の雇用の最大課題の地域性に重点を置いた対応をしてまいりたい、こういう平井大臣からの答弁をいただいているんですけれども、この点、そういう具体化なりそういう考え方で現在雇用対策労働省として進められているのかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  42. 説明員(木村富美雄君)(木村富美雄)

    説明員木村富美雄君) 先生からの御指摘ございましたように、特に現在の北海道においては不況の要因が重なり合って大変深刻な雇用情勢のもとにあります。労働省といたしましては、従来からこういった雇用情勢に対処する地域対策として、特定不況地域あるいは緊急雇用安定地域の指定を行うというようなことによりまして地域雇用対策を機動的に講じてまいってきたところでございますが、今後に予想されるところの厳しい雇用、失業情勢のもとでの新たな観点からの地域対策の必要性あるいはその拡充が必要ではないかといった観点から、去る十一月十日に中央職業安定審議会から、地域求職者の雇い入れに対する賃金助成制度の新設、あるいは第三セクターに対する援助等地域雇用開発を中心とした総合的な地域雇用対策の整備充実を図るべきであるという建議がなされたところでございます。  労働省といたしましては、この建議の趣旨を踏まえまして、総合的な地域雇用対策の整備を図るべく現在関係省庁とも協議を進めながら具体的な内容について鋭意検討を行っているところでございまして、次期通常国会には所要の法律案を提出し、御審議をいただきたいというふうに考えております。
  43. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 今、通常国会に特別立法として提出をする、こういう明快な答えがありましたから、それなりに評価をしたいと思います。ぜひそれはやるべきだ、こう思います。  そこで、この間から緊急対策ということで高島炭鉱を含めて考えられることは、緊急就労は余りこれ労働省好まないんだけれども、ただし産炭地にどうして雇用対策を求めるかとなれば緊急就労、開発就労以外にないと僕は思うのだ。これから企業誘致でもできて、あるいは何かした場合にはこれは一定の雇用対策の道は開けてくるが、産炭地地元で一定の雇用対策とは何か。  私が考えておりますのは、手っ取り早いところ夕張市でいえば平和炭鉱のあのズリ山を、一応あれを緊急就労開発する。これは市長のプランからいっても、仮にあれ三百人でやってあそこを工業団地もしくは宅地用団地に整備していくためには二年ないし三年かかる。三百人だとそれぐらいかかる。そうなればそれなりの、三百人なら三百人のまとまった雇用対策になる。しかも産炭地の地元で雇用開発が可能である、こういうことが出るわけですよ。これはぜひひとつ僕は、好まないと言ったって、これはないんだから、どういったって。現行法ある限りこれはやっぱりやらなきゃならぬしね。もちろん失対制度がいいか悪いかは議論ある。私はそのことを言っているんじゃなくて、緊急的に一定の三百人でも雇用ができれば生活が安定することになる。私の考えは、生活保護費をふやして、失礼だけれども、筑豊のようなああいうことは好ましくない。やはり働きながら生活をするというのが人間の原点だ、私はこう思っているから、それは労働省好まないといったって、これやらなければ雇用対策にならぬわけだ。この点、どういうふうにこれから対応することを考えているかということが第一点です。  第二は、これは私は三年前随分、社労におりましたから、今も社労ですけれども、社労で僕は主張をしまして、一村一品運動の充実強化ということとあわせまして、結局これも雇用対策の一環で、仮称特定地域雇用開発促進事業ということで、例を言いますと北海道は富良野でこれやりました。ことしは津別町でやっております。これはどういうことかといいますと、北海道の林業あるいは民俗製品、こういうものをやった場合に雇用主に対して一人二万九千六百円支給する。仮に十万円賃金払うとしたら三分の一は国が面倒を見てやるという制度をこれはモデル地区でやったわけですよ。今もやっています。  これをもう少し知恵を出すということなんですけれども、ここらあたりをもう少し、地域開発、これは私が提案したんです。これは五年前提案して三年前からようやく全国モデルで十カ所やるようになった。これは北海道もことし二年目でやっていますけれども、もう少しこれを質的に拡大したらどうだと、僕の案は。特定地域雇用開発促進事業の一定規模を二万九千六百円でなくて、これをやはり五万なり六万なりに引き上げて、もっと産炭地あたりでそういうものに対して雇用の道が拡大していけるというような措置をひとつ考えたらどうかと思う。  極端な例を言うと、夕張市長なんかは、この間話出たでしょう。あなたも聞いておったと思うのだけれども、産炭地地域に何十億の金をよこして、それで地域対策だからちゃんとおれがやると。そういうわけにはいかぬだろうから、法律をつくるとすれば一定の制約があることは当然だと言っておりますけれども、やはりこういったことをひとつ労働省は真剣に考え検討してもらいたい。これは今言った特別立法を来年の通常国会に出す時点で考えてもらいたいと思う。  それからもう一つは、私が考えておるのは、第三セクター的にやっておるわけだ、今北海道でも。産炭地域振興法の中で、例えば家具工場であるとかそれから額縁工場とかいうものをやっていまして、夕張でもやっているし、和歌山の一部でもやっていますわな、炭鉱離職者で。だから、こういうものをもうちょっと積極的にやって、つまり第三セククターのそういう雇用した者に対しても一定の手だてをする、こういうことなどを特別立法をつくる場合に、検討課題でなくて、ぜひひとつ積極的な活力ある雇用対策ということで立法の中に織り込んでもらいたいというのが私の考えでありまして、この点についても労働省のお考えを聞いておきたいと思います。
  44. 説明員(木村富美雄君)(木村富美雄)

    説明員木村富美雄君) 私ども労働省といたしましても、労働者の失業の防止あるいは雇用の安定を図っていくということが政策基本であるという認識のもとで各般の政策を進めておるところでございます。そういう中で特に産炭地の問題を考えてみますと、非常に地域的に他の雇用機会が少ない、非常に限定されておる、しかも一どきに大量の離職者の発生があるというような深刻な状況にあるということで、そういった状況を踏まえた再就職のための十分な施策を進めていくことが必要であろうというふうに考えております。  現在、炭鉱離職者臨時措置法に基づきまして求職手帳が発給され、その手帳のもとで三年間手当を支給しながら職業指導等の援助施策を講ずることによって民間企業等への就職の促進を図っていこうということでやっておるわけでございますが、今後、先ほど申し上げましたような、現在検討を進めております地域雇用対策に関する特別措置法の中でも、第三セクターに対する援助制度等の内容検討の対象としておるわけでございますが、そういったようなもの、あるいはまた職業訓練制度の活用といった点も含めてできるだけ民間を中心とした雇用の場への早期の再就職の促進を図っていくという観点から対策を進めてまいりたいというふうに考えております。  また、先生御指摘の地域雇用開発推進事業につきましては、昭和五十七年度からモデル的に実施をいたしております。地元の関係者の熱心な、積極的な熱意と協力によりまして現在相当の成果が得られつつあるというふうに私ども理解しております。今後の地域雇用対策の、あるいはそのための法律の検討に当たりましては、この事業の成果も踏まえて対策を講じ、また具体的な立法措置に当たってもそういったことを念頭に置いた検討を進めてまいりたいというふうに考えております。  それから、先ほど申し上げましたが、特に第三セクターの問題につきましては、先般の中央職業安定審議会の建議の中でも特に第三セクターに対しては手厚い援助措置を図り、それによって非常に厳しい中での雇用機会の創出を図っていく必要がある、雇用開発を進めていく必要があるという建議をいただいております。そういった点も踏まえて現在検討を進めておるところでございます。
  45. 対馬孝且君(対馬孝且)

    ○対馬孝且君 今、大臣に私も要望しようと思ったのですが、大臣はもう労働大臣の大ベテランの経験者でございまして、私は、これ来年度は恐らく日本雇用の一大危機になるのではないか。むしろ超重点対策を、政府も既にとっておりますけれども、このまま推移しますと三%失業率、百七十万は突破することはもう明らかである。むしろ通産側が言っているのが正しいと思うのですけれども、五%失業率時代が来ると私は非常に心配しているわけです。そういう意味で、炭鉱離職者対策はもちろんでありますけれども、通産の立場で、また労働大臣の経験の立場で総合的な雇用の中に大臣としてもぜひひとつ全力を挙げて対応してもらいたい、このことを申し上げ、大臣から所見をいただいて、時間も参りましたので質問を終わりたいと思います。
  46. 国務大臣(田村元君)(田村元)

    ○国務大臣(田村元君) 私は、どういうわけか炭鉱問題は御縁が深くて、今からもう二十数年前ですけれども、労働政務次官をやったときに緊就というのを手がけたわけです。それから労働大臣のときにも炭鉱離職者問題と取り組んだわけでございます。  私は先般、通産省の事務次官を連れて労働省へ行きました。労働大臣と職業安定局長に率直なことを言って手をついて頼んだわけです。役人にはセクト主義というのがありますから、だから自分のところの大臣が他省へ行って頭を下げるということに対しては耐えがたい気持ちがあったと思うのです、率直に言って。けれども私は、いいじゃないか、それによって炭鉱労働者が少しでも助かればいいじゃないか、こう言って、私は福川君に一緒に君来いよと言って連れて行ったんです。それは高い石炭をひいひい言っておる鉄鋼に無理に買ってもらったときに思いついたことなんです。  率直に言って、労働省というのは従来他省の所管の問題でおしりぬぐいばかりさせられてきたわけです。特に私が労働大臣のころ、あるいは政務次官のころ通産省のしりぬぐいが一番多かったんですよ。それは当然でしょう、産業の問題ですから。そういうわけでありますので、今度は事務次官を長とするハイレベルの常置機関を置いて、そして、単にしりぬぐいのみでなしに将来への展望あるいは予防、そういういろんな面を大いに話し合って濃密な議論をしていい結果を出していくように、あらゆる対応ができるように英知を出し合っていったらどうかということで常置機関をつくってもらってもう何回か会議をやったわけです。さすがにやはり労働省、プロがそろっておりますから、通産省から問題点を出して労働省からそれに対する対応の知恵を出していく、やはりそういう姿がいいと思うのですよ。  それから、高島の話が出ましたから申し上げますと、これは北海道に関係ないことで恐縮なんですが、やはり地方自治体ももっとしっかりしてくれなきゃ困ると思うのです。それはどういうことかといいますと、高島は気の毒にああいうことで閉山と。そこで六十二年度から出発します港湾五カ年計画、私は港湾局長に頭を下げて頼んだわけですよ。高島港、人がいなくなる港なんですから、本来言えば、経済価値という点からいえば全然だめになってしまうことはもう目に見えているけれども、緊急避難ですから、それと人道上の問題ですから、だから私は港湾局長に頼んで、八億円の枠で高島港の五カ年計画を組んでもらうことを約束してもらった、恐らく六十二年度には一億を超える予算がつくと思いますが。  これは、それでいいのですけれども、それ以外に三千万円の海岸事業、これもつけるという。そうしたら高島町が返上してきたんです。なぜか。返上してくるのは当たり前なんです。五%の地元負担をしょわせているわけですよ。恐らく条例でもあるんでしょう。私どもの三重県ではそういうことはないんですけれども、ここには橋本さんもおられるが、我々同郷なんですけれども、県によっては地元負担をしょわせるところがあるわけです。それはしょわせたって御随意にと言いたいところだが、高島という特殊のところに対しては、それに対して適切な対応があってしかるべきものですね。たった百五十万ですよ。だから私は知事に電話をして、私の大臣の歳費から百五十万送るからそれで裏負担に充ててくれ、血も涙もないようなやり方をするのなら私は裏負担出しますよ、何千万というならちょっと考えるけれども、百五十万なら出しますよ、こう言って私は開き直ったんです。そうしたら、よくわかりました、善処いたします、こういうことであったわけです。  例えば中小企業のこの間通してもらった二法案、特定地域。あれも、高島というのは随分離れ小島ですから、ところがあれと長崎の伊王島をくっつけたんです、で入れたんです。やろうと思ったらできるんですよ。あの特定地域というのは特定市町村とは書いてないのです、特定地域なんだ、あくまでも。ということは、少し弾力的に考えたらやってできぬことはないわけです。事ほどさように、あらゆる知恵を絞ってやるということが必要なんじゃないでしょうか。  先般も、夕張のメロンでつくったブランデーが大変うまかったので、電力の偉い人たちに飲んでもらって、どうです、うまいでしょうと。そうしたら、意外にいけますなという話。これは高くつきますぞ、将来、と言って笑い話をしたことでございましたが、本当にいろいろと知恵を出し合って、何といっても炭鉱労働者はかわいそうなんですから、これをみんなで救っていくということは必要なんじゃないでしょうか。そういう気持ちでございます。
  47. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 第八次の政策が出されまして、第七次に比べると目標は二分の一になる、そして国内炭が大幅な縮小路線をとらされると。私は、まず最初に、この路線は容認できない。そして、なぜならば、何度も今まで言っていますけれども、きょうの時点でまた申し上げたいと思います。  国内炭の保護と復興を図るということは、自主的なエネルギー、その基盤を確立する上からも、産炭地域の振興また炭鉱労働者の家族そしてその雇用、生活を守る上でも極めて重大な課題だと何度も申し上げておりますけれども、この時点でもう一度その点ははっきりさせて申し上げておきたいと思います。特に、大幅な縮小すなわち大幅な閉山を進めるということになる論拠になっているのが前川レポートでございます。その前川レポートの中でも、特に異常な円高、そして国際的エネルギー資源価格の低下などが、これは一時的な経済的要因だと言えるのではないかと思うのですけれども、こういうことによって起こる海外炭との格差が非常に大きな縮小せざるを得ない要因になっている、こういうふうになっているわけなんです。  そこで、お伺いいたしますけれども、海外炭の開発のために今までどれくらいのお金をつぎ込まれたか、これをお伺いしたいのです。実は、このことは実績をお伺いしたいと申し上げたんだけれども、お持ちいただきましたのはいろいろな項目についての五十二年度からの予算だけなんです。いろいろ今まで質問をすることやなんかで資料を要求いたしますと、大体予算があって実績は幾らというのが当然出てこなければならないのにこれは予算だけなので、各項目合わせて、予算はこれでわかります。三百十一億五千六百万というのが出ておりますけれども、おおよそで結構でございます、どれくらいの実績になっておりますでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  48. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 海外炭開発関係の助成、補助金等の実績についてのお尋ねでございますが、六十年度の実績で申し上げます。海外炭開発可能性調査……
  49. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 五十二年度からと私はお願いしたのです。五十二年度から六十一年度までということで、予算はいただきましたから、だから実績を合計幾らというふうに聞かせていただきたい。
  50. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 五十二年度から六十年度までの実績の累計で申し上げます。  海外炭開発可能性調査費補助六億一千七百万円。第二に海外地質構造調査費補助、累計十一億九千七百万円でございます。それから海外炭探鉱融資でございますが、この実績累計が六十四億四千一百万円。それから海外炭開発資金債務保証でございますが、これが五十二年度から六十年度までの実績が十一億九百万円という実績でございます。
  51. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 合計幾らですか。私計算機持っていないから合計できない。
  52. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 合計はおおむね九十億程度になっております。  なお、これには融資とか債務保証全体の金額がトータルになっております。融資及び債務保証が入ってトータルとして九十億ぐらいでございます。
  53. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 短い時間だからはっきりと端的にわかりやすく答えていただきたいと思います。  今、いろいろな項目でいろいろと御融資なさっていると、六十年度までに約九十億だとおっしゃいましたね。予算で見ますと六十一年度までに三百十一億も予算化されていたわけですが、今実績では六十年度までということでございますが、いろいろと後で正確なところ、六十一年度までこれに対比する正確な実績をいただきたいとお願いします。どうせわかっているのだから、言ったんだからちゃんとそれ出してくださいよ、これから。時間つぶすだけなんだから。ということで、具体的にその資料をいただくことにいたします。  ここで言えることは、大変なお金がいろいろ海外炭の開発だとか、融資だとか何だとかいう項目で出されているということだけがはっきりしたと思うのです。こうやって海外炭対象の費用が相当出されている。その一方で大幅に縮小していく国内炭。これを考えると、四十億トンもの実収炭量というのが今まで言われているわけです。これももう大体見込みなし。もうこれからとろうとしない。  それから、五十七年度から実施していた石炭資源炭量調査、これも私当委員会で質問いたしましたけれども、約百億からお金をかけて調査されていたけれども、第八次の始まる来年度からこれもやめちゃったよということになります。そして、国内炭使用目的で火力発電所設置に補助金五百六十億、これもやりましたよ、私当委員会で。というふうに、膨大な炭量があってたくさんの資源があるということを調査をしたそのお金も、国内炭を使うというために出したお金もみんなここでむだになってしまうということを私は申し上げたいと思うのです。それはもう否定できない事実。  そこで、具体的に今度は問題を伺っていきたいと思います。  今、幌内というのが非常に大きな問題で名前がよく挙がってまいります。幌内も事故を起こしたりいたしまして一時大変だった。だけれども、ちょっとよくなったかなと思ったら今また大変な状態になっております。現在、幌内鉱の借入金は二百九十億円もあるわけです。そのツケは一つの山だけではない、兄弟鉱である真谷地、空知鉱に及ぶことが私は今具体的に心配になってくるのです。  なぜと申しますと、真谷地は幌内鉱の債務保証を四百五十億しております。それから空知鉱は幌内の債務保証を三百二十億しているわけです、同じ北炭グループの山で。そして一方、今度真谷地炭鉱の方のサイドから見るとどうなのかと言ってみますと、原料炭が七〇%を占める山でございます。そして、六十一年度鉄鋼需要が四六%減っちゃったものですから原料炭として、その影響による減収分というのは四十億、こういうふうになるわけです。    〔理事沢田一精君退席、会長着席〕 来年度六十二年度からも漸減していくということになるとますます経営に大きな影響が出てくるということが大変心配になるわけでございます。そしてまた、幌内が真谷地に三百億の債務保証をしているわけです。三つの山がお互いに債務保証し合っている。我々の言葉で言えば、兄弟鉱が互いにたすきがけの債務保証を行っている、こういうことなんですね。連帯し合っているわけです。こうなりますと、どれか一つ閉山ということになりますと、これ三つがもう連動しちゃっているわけですから、雪崩閉山の可能性がここで何としても出てくるという私は心配があるんですけれども、それについてどういうふうにごらんになっていらっしゃいますか。
  54. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) ただいま御指摘のございました北炭グループの石炭各社が相互に債務保証をし合っておる、いわゆるたすきがけの債務保証をしているという状況については、私どもとしましてもまさにそのとおりであるというふうに認識をしておるわけでございます。したがいまして、それぞれの会社に対する影響が経営上存するわけでございますので、そのうちの一社が問題を生じた場合には当然な影響が出てくるわけでございまして、そういう意味で、いわば北炭グループについては一体となってその経営の今後を考えていかなければいけない問題というふうに承知をしております。
  55. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 ちょっともう一回最後のところを。
  56. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 相互に債務保証をしておりますので、北炭グループ全体の問題として経営の問題は考えていかなければいけないものと承知をしております。
  57. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 本当に、これもう三つが共倒れになっていくということが具体的に心配なわけなんです。  そこで、もし閉山にでもなれば、この三つの北炭、真谷地、空知そして幌内、この三社で退職金はおおよそ新たに、四千三百人、約三百ないし三百五十億必要となる、こういうふうに言われるわけですね、一人七、八百万の退職金と平均をとりまして。そのほかに既に退職してその退職金の未払い分というものが、これも何回もやりましたね、まだ残っていると。幌内、真谷地で千三百四十九人、八十三億四千三百万円というのが未払いの分として残っているわけです。これは労働省も認められている数字でございます。新たに退職する者、今までの未払いということを考えると、これはもう本当に大変な問題なんです。いつかとれるというのならいいんだけれども、つぶれてしまったらもうさようならで終わってしまうものだから、働く者にとっては非常に深刻な問題です。  今申し上げましたように、今の時点で考えると、この山々がどうなるかというのは、北炭夕張新鉱の閉山のときも大変だったけれども、あの時点とまた違う大変な事態に入っているという今の事態を御認識いただきたいと思うわけです。北炭夕張新鉱閉山のときには、北炭グループなども含めて労務債を、一部残っておりますけれども、大体支払ったというふうに言われている。  今、夕張新鉱閉山以上の厳しい中でどういう努力とどういう手当てをしていかなきゃならないかというと、これはやはり親会社しっかりしてもらいたい。そしてメーンバンク、ここもしっかりしてもらいたい。そして北炭なら北炭、三井のグループ、そういうグループなども含めて強力な指導を具体的に進めなければ、私はもう雪崩閉山に必然的になるという心配でしようがないわけですよ。労働省に対していつも労働者の退職金早く払え払えなんて言っても、労働省としては今度はメーンバンクだとかそういうところまで手が出せない、こうおっしゃる。そのとおりだと思うのです。  だから、ここでお出ましいただくのが通産大臣なんです。この辺のところでしっかりやってもらいたいということを私は申し上げたいと思うわけです。最後に御決意を伺いますから、通産大臣としてのお出ましの場なんですよ、いよいよ今が、ということを後でお答えの中に含んでおいていただきたいと思います。  こういうふうに第八次政策というのが出されたけれども、非常に大きな問題を抱えているわけなんです。第八次政策を遂行して一千万トン体制になる六十二年から六十六年の間に、最終年度までに閉山とか減産というような形をずっととっていくと思うのですけれども、閉山交付金というものを見込みとしてどれくらいと思っていらっしゃるかどうか伺いたい。
  58. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 今回の答申におきまして、最終年次の六十六年におおむね一千万トンということでございまして、現在が、六十一年度で約千七百万トンでございますので、六十六年までに七百万トン程度縮減をしなければいけないという状況になるわけでございます。これが生産の減産によるか、あるいは閉山によるかという組み合わせになるわけでございますが、来年度の予算におきましては、その両方を一応機械的に計算をしておりまして、百四十万トンが閉山にかかわるもの、それから六十万トンが生産の減産にかかわるものというふうに整理をしております。  一定の想定に基づいてやってまいりますと、大体閉山交付金では約二百億ぐらいを用意しなければいけないのではないかというふうに思っておりまして、また規模縮小に伴う交付金と申しますか補助金につきまして、今回、来年度から新しく要求をしているわけでございますけれども、その分としまして累計三十億ぐらいということで、合計で二百三十億ぐらい用意しなければいけないのではないかと思っております。
  59. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 ありがとうございました。私の方の計算は二百四十億だったので、だから大体そういうところだろうと思います。それでわかりました。  そして、閉山によるお金というのは、私に言わせれば後ろ向きなんですね、大臣。生産して育成していくというんじゃなくて、もうつぶしていってしまうというお金なわけなんです。それがこれからまた二百三十億くらいは出る、こうおっしゃった。そのほかに、伺いますけれども、新エネルギー機構、NEDOの債務はどれくらいになって、わかりやすい言葉で言えばどれくらい焦げついているかという数字、お聞かせいただきたいと思います。
  60. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 現在、各社に対しまして近代化設備融資ということで設備資金を出しておりますし、また運転資金として経営改善資金を出しておりますけれども、いわゆる不良債権という格好で認識しておりますのは、先ほど先生も御指摘のございました夕張社の問題かと思いますが、おおむね現在では三百億程度が貸し金として残っていると、更生計画の中に入っていると思っております。
  61. 小笠原貞子君(小笠原貞子)

    小笠原貞子君 これ、もう取れる見込みないですね、つぶれちゃったんだから。これ本当に焦げつきと言わざるを得ないですよね。将来的に取れるという見込みのないNEDOからの融資というのが三百億近くある、こうおっしゃったわけです。閉山交付金というのが夕張新鉱の場合三十億出される。NEDOからの今おっしゃったような資金というものが三百億焦げついていると。それだけではないんです。それだけでも大変なことです。もう何百億という夕張新鉱に対してとれないお金出しちゃったんだと、出ているわけです。それだけではなくて国税、地方税、これが払わない、未払いのまま残っているわけです。夕張市なんかもう大変な御苦労をなさっています。国税、地方税で八億六千万円焦げついている、これだけで。  それから、自治体に対して直接的に借金の転嫁された分というのをまたずっと調べてみました。そうしたら貸付金、住宅使用料というようなもので十二億四千万円という数字が出されてまいりました。それから閉山担保水道というのが十四億四千万円、それから炭鉱病院を北炭が切り離して市が買わなければならなくなったというので、これが九億出ている。それから老朽住宅の解体をしなければならぬというので、これも持ち出しているお金が二億五千万。土地をまたこれ買い上げなきゃならないというお金が二十六億四千万なんです。  だから、直接閉山交付金三十億だと、そしてNEDOからの焦げつきになっているのが三百億だと、これだけでは済まない、地方自治体にしてみれば。今いろいろ言ったのを合計いたしますと、国税、地方税抜かしましてこれで六十四億七千万円という莫大な金額というものが自治体に対してかぶさってくるということなんです。もう本当に、この暮れ控えて労働者の方々のことを考えたら私は胸が詰まる思いですよ。そしてまた、だんだん細っていく自治体のことを考えてもこれまたこれで大変な問題。  一つの山をつぶしただけで三百八十億も国や自治体に負担がかぶせられると。前向きに国内炭の開発と育成に使用するのではなくて、これ全部後ろ向きの資金だということ、私は大変残念なんです。そして、その影響というものを考えますと、町へ行ってみたらもう本当にひっそりして死んだような状態ですよ。これはもう中小企業から関連企業、商工業者、地域、この影響、そしてまた国家資金がつぎ込まれて焦げつくということになると、全国民の受ける被害というものも、大きな被害になっていく、こういう問題なんです。  今まで本当に大変だ、大変だと言っていたけれども、今この時点で八次答申が出されてこれからの先行き見ると、その影響の規模というのはもう本当にはかり知れないと私は思うのです。先ほども午前中参考人河野さんとおっしゃる方、並木先生とおっしゃる方からいろいろと率直な御意見伺いまして、本当に今、日本経済大変だということがよくわかったし、この炭鉱の問題考えただけでもこれは物すごい今という時期は深刻な時期を迎えているな、そう思ったわけです。  こういうときに当たって、それでは通産大臣としてどういうふうにこの深刻さを考えていらっしゃるか。そして、本当に御苦労なさっていただいたこともあると思いますけれども、これから本当にこの大事なときをどういうふうに考えて対処しようとなさるのか。また向坂先生の方にも、今申し上げました、今の時点でここまで来ているという大変な深刻な影響を前にしてどういうふうなお考えを持っていらっしゃるか、これを最後に伺って、終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  62. 国務大臣(田村元君)(田村元)

    ○国務大臣(田村元君) 私は、石炭問題は極めて深刻に受けとめております。それだけに、御存じの方もこの中に多かろうと存じますが、今日まで私なりに駆けずり回って一生懸命やってまいりました。これからも、私の行動がいささかでもお役に立ち得るならば一生懸命また走るつもりでございます。先生のお株をおかりして物を申せば、炭鉱の方も我々もみんなが面を大陽に向けてというようなそういうような気持ちで頑張りたいものと思っております。
  63. 参考人(向坂正男君)(向坂正男)

    参考人(向坂正男君) 大変難航いたしました八次策を答申して、私に対して友人たちは、ほっとしただろうということを言われますけれども、実はその検討過程で、この八次答申内容日本の石炭産業、そこで働いている方々にどのように重い負担をしょわせるのかということがよくわかっているだけに、ほっとしたというよりこれから大変だという気がしてなりません。答申にもございますように、石炭鉱業自身が労使を含めてこの事態を乗り切る、残存炭鉱、残るであろう炭鉱については合理化をしてぜひ残っていただきたい。大変苦しい、なかなか炭価も上がりませんし、苦しい状況だとは思いますけれども、勇を奮って生き残ってほしいという気がいたします。  また、そのためには需要業界もぎりぎりの協力をしていただきたい。特に鉄鋼業界あるいはセメント、紙パルプなどそういった業界、円高、国際競争のもとで大変苦しい状況であろうと思いますけれども、これからの石炭鉱業の状況考えてぎりぎりの引き取りの協力をしてほしいと思います。率直に申し上げまして、私どもが八次策の中間時点で考えておりましたよりは、鉄鋼業界初め一般産業の引き取り量は私どもが予想していたよりははるかに厳しい状態になりましたから、その穴を埋められるものは、つまりなだらかな生産の縮小、この路線を確保するために今の穴を埋めるものは私は政府支援政府対策であろうと思います。  過剰在庫対策、また減産を余儀なくされる炭鉱に対する対策、それをきょうの論議にありましたように、あれで必ずしも十分かどうか、なお問題があると思いますけれども、財源の関係からいっても政府も最大の努力をしようという姿勢だと思いますので、そのほか閉山対策地域振興対策を含めて政府支援をぜひここで来年度予算として実現していただきたいということを切に希望する次第でございます。
  64. 橋本孝一郎君(橋本孝一郎)

    橋本孝一郎君 八次答申の特徴を一口で言えば、いわゆる需要に見合った生産と、こういうふうに変化したところに一番大きな特徴があるんじゃないかと思うのです。需要はどのように変化するかまだわかりません。よくなっていくというふうなことは今の情勢の中では全く考えられない、むしろ悪くなっていくぐらいではなかろうかと思うわけです。そういう状況の中でなだらかな減産、あるいは閉山対策をとっていこうとする方策の一つとして貯炭管理会社というものが考えられ、予算化されようとしておるわけでありますが、私はこの点について特に二、三の要望を申し上げまして、所感があればお聞きしたいと思います。  まず第一点は、やはり貯炭管理会社の設立、十分各炭鉱の意見というものを取り入れていただいて、早急にひとつ設立をしていただきたいということが一つであります。  二番目の問題は、各炭鉱の減産に伴うコストアップ、売上税問題がどうなるかわかりませんけれども、売り上げだけでなくて仕入れの段階でも入るわけですから、コストアップというのは非常にまたこれ予期以上に出てくると思います。したがって、各炭鉱の不安を少しでも和らげるためにできる限り補助処置を行っていただいて、その処置もあるようでありますけれども、その運用について弾力的に炭鉱の実態に応じたようなひとつ運用をとっていただくようにお願いしたいということが第二点であります。  第三点でありますけれども、これは保安の問題、安全対策であります。従来からも継続されていることでありますけれども、苦しい経営ということになってまいりまして、経費節減というようなことから事故が発生してはならないと思うわけでありまして、その対策として政府としての補助対策、安全対策に十分ひとつ対処を願いたい。この三つの御要望を申し上げて、当局の方の所見があればお聞きしたいと思います。  以上です。
  65. 政府委員(高橋達直君)(高橋達直)

    政府委員高橋達直君) 過剰在庫対策といたしましての貯炭管理会社の問題と、それから減産対策の問題について私からお答え申し上げます。  初めの管理会社の問題でございますが、これは先ほど大臣からの御答弁にもございましたように、私どもとして当面予算の確保に全力を挙げたいと思っておるわけでございます。具体的な業務の内容につきましては、今後各方面の意見を聞いて、ただいま先生から御指摘のございました各炭鉱の意見も十分に聞いて早急につくってまいりたいというふうに考えております。いずれにいたしましても、過剰在庫対策として実効が確保できる機能を持たせるというのが眼目でございます。ただ同時に、無制限に貯炭を買い入れるというわけにもまいりませんので、その辺の適正量をどうするかという問題も一方にあるわけでございますが、各方面の意見を聞いて早急に検討をしてまいりたいと思っております。  それから、今後の減産に関連しての対策でございますが、今度の差しかえ要求におきましても、いろいろな観点から減産対策費を補助金のような格好で出すような手当てをしております。弾力的に運用せよという御指摘でございますが、補助金には御案内のとおり一定の基準がございまして、その基準に従って出していくわけでございますが、各石炭会社の経営の実態を十分認識しながら、適時適切に対処していくことといたしたいと思っております。
  66. 政府委員(加藤昭六君)(加藤昭六)

    政府委員(加藤昭六君) 御質問の第三点、保安確保対策でございますが、第八次策にも盛られておりますように、保安の確保、これは石炭生産の大前提でございます。今後、我が国の石炭鉱山は大変厳しい環境に置かれていくと思います。こうした中で保安対策に多少なりとも緩みが生ずることのないように万全の対策を講じていきたいというふうに考えております。このために、まず石炭企業みずからが労使一体となって保安対策に万全を期すことは言うまでもございませんが、政府といたしましても、石炭企業に対します監督指導、保安確保、事業への支援など適切な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  67. 会長(浜本万三君)(浜本万三)

    会長浜本万三君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時二十三分散会