○
説明員(
川名英子君) 今
局長が
説明したのをもうちょっと詳しくお話ししたいと思います。
まず、第一章「
消費の
実態」のところ。
一節では「六十年度の
家計の
所得・
消費動向」ですが、三
ページからでして、六十年度の
家計消費は一般的には着実な
増加を示しました。けれども、
勤労者世帯では
消費性向が
低下幅を広げたために
伸び悩みを見せたわけです。そこをもう少し詳しくここでは
分析しておりまして、十一
ページのところからなんですが、十三
ページのI―1―4図を見ていただくとわかりますけれども、一番上にあります
平均消費性向は、五十七年をピークにしまして、
五十八、五十九、六十年と下がっております。特に六十年度は
低下幅を広げております。この
背景を探るために、
消費を
生活水準を維持するために必要な
必需的消費支出、それから
割合に
自由裁量度のあります
選択的消費支出の
二つに分けます。それから、
貯蓄も契約的・
義務的貯蓄、つまりこれは
住宅ローンがほとんどですが、こういう
貯蓄と、あと自由裁量的な
貯蓄、こう
二つに分けて見てみたいと思います。
まず、五十七年から五十九年を見てみますと、
必需的消費は
効率化を図っております。契約的・
義務的貯蓄は少しずつ上がっております。
自由裁量的貯蓄は横ばいかちょっと
増加ぎみといいますか、それから
選択的消費支出は高めております。
家計の
消費意欲をどういうふうに考えるかというのは、いろいろ意見もありますけれども、ここで
自由裁量的消費性向、つまり自由裁量的な
消費と自由裁量的な
貯蓄、それだけで
消費性向を考えてみて、これを
消費意欲と考えようとしているんですけれども、その
動きを見ますと、五十七、八、九年は
平均消費性向は下がっておりますけれども、
自由裁量的消費性向というのは上がっております。
ちょっと飛びますが、四十
ページのI―2―3図、これで見ますと、実線で書いてありますのが
平均消費性向で、これは七、八、九、六十年と下がっておりますが、
自由裁量的消費性向は五十七、
五十八、五十九と上がっておりまして、六十年は下がっております。この間
平均消費性向が下がりましたのは、契約的・
義務的貯蓄が上がったために下がったのでして、
生活の質の
向上につながる
消費意欲は五十九年までは下がっていなかったと考えられると思います。
それでは、六十年はどうかといいますと、ここでは
必需的消費支出の
効率化をもっと高めました。契約的・
義務的貯蓄は今まで上がっていたんですけれども、これが少し下がっております。
選択的消費支出も、これも上がっていたんですけれども、やや下がりました。それから一番大きく変わりましたのは
自由裁量的貯蓄が上がっています。そのために
消費意欲をあらわしております
自由裁量的消費性向というのは
低下しておりまして、これは五十九年度までとはかなり違った
動きを示しております。
この
変化の
背景としまして
所得を考えてみますと、六十年度は
所得は堅調に推移したんですけれども、その中で
変動所得が高い
伸びを示しまして、
恒常所得は低い
伸びだったということが挙げられるわけです。これの実
収入に占める
割合を見たものが十五
ページのI―1―5図でして、これで見てもわかりますように、
恒常所得というのは六十年はここ数年になく
割合を下げております。また
変動所得はここ数年になく上がっております。
それで、先ほど契約的・
義務的貯蓄というのが下がったと言いましたが、その
変動要因を見ますと、これは十六
ページの下のところですけれども、
恒常所得の
割合が減ったために契約的・
義務的貯蓄率が下がっているわけです。また、
自由裁量的貯蓄が上がったと言いましたが、これは上の(1)ですが、
変動所得が
伸びたためにこれが
伸びているということがあるわけです。
この
分析から、六十年度の
消費性向の
低下というのは、
変動所得の
割合が大きく
増加するという、ここ数年にない
動きがあったために
所得は
増加したんですけれども、その
増加分を主として
貯蓄に向けられた結果と考えられるわけです。つまり、
消費意欲というのは
低下したんですけれども、その主な原因は、
自由裁量的貯蓄が大幅に
増加したためです。ですから、ここでは
選択的消費支出は
生活の
向上を求めるものと考えておりまして、この
低下はほんの少しですので、
生活の
質的向上を求める
消費者の
志向に
余り変化はないと考えられるわけです。
消費性向が六十年度下がったんですけれども、それを
年齢別に見てみたものが十九
ページでして、五十九年、六十年を比べておりますが、これで見ますと、ほかの
年齢層でもそうですが、特に六十歳以上の
平均消費性向の
低下が大きいです。
また、ほかのところで言いましたように、
必需的消費支出の
効率化を高めまして
自由裁量的貯蓄を
増加させたのは、これも
年齢別に見たものが二十
ページにあります。これで見ますと、一般的にそうなんですけれども、やはり六十歳以上のところで今言った
特徴が顕著でして、
必需的消費支出もかなり下がっております。また、
自由裁量的貯蓄は五十九年は取り崩していたんですけれども、六十年は積み増しているというようなものがあります。
また、その
貯蓄の目的を見たものが二十一
ページですけれども、全体で見ますと六十年で
予備的動機というのがかなりふえております。これを
年齢別に見たものが②にありますが、
高齢者層で
予備的動機がかなり高くなっております。このように
高齢者を
中心として
貯蓄率の上昇、つまり
消費性向の
低下が見られるということは、必ずしも安定的な
家計運営が行われているとは言えないのではないかと思うわけです。以上が
一節の
ポイントです。
二節、三十五
ページぐらいからなんですけれども、ここでは「
消費構造の
変化とその
背景」で、
高度成長期以降の
消費構造の
変化を
分析しております。
消費構造の
変化、ここでは三つ挙げております。
必需的消費支出と
選択的消費支出がありますが、
選択的消費支出の
割合が大きく高まってきたことを挙げております。四十二
ページの表の一番下にあります
選択的消費支出、これは三十四年時点で
消費支出弾性値が一以上のものとしたんですが、これは三十四年で四五%、五割以下でしたが、五十九年になりますと六〇%以上になっている。つまり、選択的な
消費支出がかなりふえてきているということ。例えば
費目別に見ましても、
食料費の
割合は減ってきておりますが、下の方にあります選択的な
費目であります
交通通信とか教育とか
教養娯楽、その他の
消費支出、こういうものは
割合をふやしております。つまり、
選択的消費支出がふえてきたということです。
二つ目の
変化としまして、
選択的費目が
必需化傾向、
必需的費目になる
傾向があるということです。これは四十四
ページですが、これは各
年ごとに、五
年ごとですが、各
年ごとに
消費支出弾性値を計算したものですが、例えば
米類などは三十四年からずっと一よりも下ですので
必需的消費支出なんですが、
食料のところの肉類とか
乳卵類などを見ますと、三十四年ぐらいは一以上、つまり、これは選択的なもの、高
所得者層だけが買えたものなんですが、五十九年になりますと一を切りまして必需的なもの、かなり一般化したものとなっているわけです。
食料でいいますと、下から三番目の飲料などもその
傾向があるわけです。それから、光熱・水道のところで、
ガス代などは三十九、四十四、四十九までは選択的なもので、かなりぜいたくなものだったんですが、五十四、五十九になりますと一を割って、五十九になりますと〇・四三で、ほぼ
米類と同じぐらいに必需化したということが言えます。
それから、次の
ページの
被服、履物などはこれは昔も今も
選択的消費、特に和服は選択的な
傾向を強めているものと言えます。それから、一番最後のその他の
消費支出ですが、
交際費というのは前は選択的、ぜいたくなものでしたが、最近は必需的なものになっております。
仕送り金というのは相変わらず
選択性の強い
支出になっております。つまり、
二つ目の項目としましては、
選択的費目が
必需的費目に変わっているということが言えまして、これはかつて高価な、庶民には手が出せなかった商品が広く一般化したために
消費が
高度化した結果であると言えると思います。
次に、三番目の
構造変化としまして
サービス化がありまして、
サービス化の中が
高度化しているということですが、四十七
ページのI―2―4図でして、その①の方は
消費の中で
サービス消費がふえてきたということを示しております。また、その
サービス支出の
内容を見たものが②でして、その中で
被服関連ですとか地代、家賃という、こういう
サービスの中の必需的なものは減ってきておりますけれども、
サービスの中で選択的なものがふえている。外食ですとか
交通通信サービスとか
月謝類、こういうものはふえてきておりまして、つまり、
サービス化の中でもやはり
高度化しているということが言えると思います。
ここではこの三つの
消費構造の
変化を挙げておりまして、それではその
消費構造の
変化を担ったのはだれかが次のところですけれども、まず、その
消費構造を長期的に
収入階層別に見たものが五
十
ページにあります。先ほど必需的な
消費の
割合が減って選択的な
消費の
割合はふえたと言いましたが、その必需的な
消費の代表としまして
食料を見てみますと、その減り方は第一
階層、
所得階層一から五まででして、第一
階層、低
所得層で
食料費の
割合が減っていることが顕著です。また、その一番下の段の真ん中にあります
選択的費目であります
教養娯楽では、やはり第一
階層で、一番低
所得層でその
割合が
伸びております。つまり、低
所得層で
消費の
高度化の
動きがより大きいということが言えまして、そのために高
所得層と低
所得層での
消費構造の格差は縮小してきていると言えると思います。
次に、
単身者と
普通世帯とを比べてみたものが五十四
ページにありまして、先ほどの
選択的費目がふえたとか
サービス支出化しているというのを
普通世帯と
単身者世帯で見ますと、やはり
単身者世帯の方でその
割合が顕著です。例えば
必需的消費支出を見ますと、
普通世帯ではその
割合が五四%のところ、
単身者世帯では少なくて四〇%でして、特に若い人の
単身者で三八%ぐらいで、それが顕著です。また、
サービス支出がふえてきたんですが、
普通世帯では三五%ですけれども、
単身者では五八%とかなり多くなっておりまして、こういう
選択的消費支出の
増加とか
サービス支出の
増加という
消費構造の
変化は
単身者世帯が先駆けていると言えると思います。今はそれほど多くないんですけれども、今後
単身者世帯の
割合は高まると予想されますので、その
動向が注目されているところです。
三節、六十五
ページぐらいからですけれども、まず
多様化する
消費構造を
説明したいと思います。最近、
消費の
多様化が各方面で言われているんですけれども、それではどんな
費目で
多様化しているかを見まして、その後どんな
世帯で
多様化しているかを見ることにします。
ここでは
費目別に見ておりまして、それが七十三
ページ、I―3―2図に出ておりまして、このとき
多様化というのは、ばらつきというんですか、標準偏差で見ておりまして、この標準偏差が高い方が
多様化している
費目と考えますと、一番
多様化している
費目はその他の
消費支出、次が
食料、
交通通信、住居、
教養娯楽、この順序になっております。ですけれども、二番目の
食料というのはこれは必需的な
消費支出でして、これは家族の人数ですとか可処分
所得に関係がありまして、
世帯が
意識して
多様化させているものではないわけです。また、住居につきましても、家族の数とか持ち家であるとかないとか、それによっていろいろばらつきがあるわけでして、これも意思によって
多様化しているものではないわけでして、みずからの意思で
生活に
彩りを与えようとして
多様化させているものは、やはりその他の
消費支出とか
交通通信とか
教養娯楽のような
選択的費目で
多様化が行われていることだと思います。これが
費目です。
次に、どういう
世帯で
多様化が行われているか、それを
所得階層別に見ましたものが七十五
ページでして、これで見ますと、第一分位から第五分位でありまして、縦に
費目がありますが、この四角で囲んでいるところが
多様化している
費目というわけです。まず、第五分位を見ますと、四角で囲んでおるところは非常に多いわけで、高
所得層でやはり
多様化が進んでいると言えるわけです。ですけれども、第一分位、一番低い
所得層では全く
多様化していないかというとそうでもなくて、幾つか
多様化しております。ですけれども、その
費目を見ますと、冷暖房用器具ですとか履物ですとか、自動車を買うんじゃなくてその維持費ですとか、そういう
割合に手ごろな出費で済むもので
多様化させて
生活の満足を得ていると想像できるわけです。それから、
住宅ローンがある家とない家とを
比較しますと、ない家の方がずっと
多様化している。つまり、かなり
家計が余裕のある家で
消費の
多様化が進んでいるのではないかと思うわけです。
それから、
世帯別に見ましたのが七十六
ページでして、例えば若者
世帯と
昭和一けた
世帯を見ますと、縦に引いてある1のところが平均なんですが、それで見ますと、若者
世帯の方では、教育とかその他の
消費支出では
多様化しておりませんが、外食ですとか洋服とか自動車みたいなところで
多様化しております。また、
中年層では、外食などは
多様化しておりません。自動車も
多様化しておりませんけれども、教育など、これは私立に出すか公立に出すかで
多様化せざるを得ないというところで
多様化しているわけです。それから、その下にあります高校、大学生があるかないかですが、これは明らかに大学生のある家では教育にとられますのでここで
多様化しておりますが、それ以外のところでは
多様化できないというような感じがありまして、つまり
多様化というのはいろいろ行われていますけれども、高校、大学生のいる家とか
住宅ローンのある家ではほとんど
多様化が見られないということが言えると思います。
次に
高級化ですけれども、いろいろなものの
高級化の形態が見られますが、どういう家庭で
高級化が見られるか。ここではネクタイを例にとって見てみたんですけれども、それが八十四
ページにありまして、全体で見ますと可処分
所得の高い家とか、純金融資産、貯金のある家ですとか、ホワイトカラーですとか、大企業に勤めている家、こういう家で
高級品、高級なネクタイを買うということが言えるんですが、
年齢別に見ますと、若い方ではホワイトカラーで大都市に住んでいる人、そういう条件の人だけが
高級品を買っております。また、
中年層、五十代では可処分
所得が高いとかホワイトカラーの人が
高級品を買っておりますけれども、高校、大学生のいる家ですとか、配偶者が仕事をしている家では
高級品を買う
傾向が少なくなっております。
それからあと、
多様化のところで
消費ニーズが対極するものが同時多発的に起きているという
説明が
局長からありましたが、その
一つの例としまして手軽さ
志向と手間
志向というのを
説明してみたいと思います。
これは一般的には日常の作業を軽減させる方向にあるわけなんですけれども、特に最近女性が社会進出しましたり、核家族化してきましたので、家事
労働が軽減化したり、短縮化の
ニーズが強いわけでして、それが例えば百
ページですが、調理食品の
食料費に占める
割合がかなり上がってきておりますし、即席めん、即席ラーメンの生産量もかなり上がってきております。それとは反対にもっと手間をかけようという対極的な
ニーズもありまして、例えば
自分の家を
自分でつくるというような
ニーズでして、その道具、材料を売っておりますホームセンターの売り上げが
伸びております。また、毛糸を買ってきて
自分でつくろうというような
志向もありまして、毛糸の購入量もふえてきている。それ以外にも活動
志向とのんびり
志向とか、学習
志向と遊び
志向、こういういろいろな対極的なものが出てきていると言えます。これが
消費でございます。
次に、第二章
国際化のところを
説明したいと思います。
百十
ページからですが、まず
一節、ここでは
国際化の
現状を物、人、
情報について見ております。
まず物ですが、物は衣食住について見ております。
食
生活ですが、百十八
ページぐらいから書いてありますけれども、
食料品の輸入は年々
拡大してきております。ここ五年間の平均で見ますと、
日本は
世界最大の
食料品純輸入国となっておりまして、その結果、食用農産物の輸入依存度は五十九年で二九%にもなっております。それは百二十一
ページを見てもわかりますように、特に大豆、小麦の海外依存度は高くなっているわけです。また、野菜とか果物を見ますと、
外国品が
消費者の
ニーズに合ったことなどもありまして、国内で生産が始まっているものもあるわけです。
次に衣
生活なんですけれども、この輸入額もかなり
増加しておりまして、その内訳を見たものが百二十六
ページにあります。これはヨーロッパの方とそれから近隣諸国からの方とに分けてありま
して、つまりこれで見てもわかりますように、高価格品はヨーロッパから多くなっておりまして、一方近隣諸国からはファッション性が少なく低価格品が多くなっております。つまり、
我が国の衣料品輸入というのは二極化しているということが言えるんではないかと思います。
次に、住
生活ですけれども、木材の需要に占める外材の比率は六四%と、かなり高くなっておりまして、これは国内の森林資源が生育途上にあるために依存せざるを得ない
状況を反映していると思います。また、
住宅工法の面ではツーバイフォー工法というようなものが入ってきておりまして、まだ少ないんですけれども、
増加してきていると言えます。ですけれども、耐久
消費財の輸入は
日本の製品が優秀であることもありましてまだわずかになっております。
それ以外にライセンス生産の紙おむつとかカミソリみたいなものが入ってきておりますし、飲食業分野でも外資系の企業の進出が見られます。このようにライセンス生産や外食産業への外資系企業の参入は、合理的で簡潔ないわゆるアメリカ型の
生活様式を
志向する
国民の
ニーズに合致したために急速に
増加したものと思われるわけです。
これが物の
国際化でして、次に人の
国際化を見ます。
外国旅行者数を見たものが百三十二
ページ、II―1―10図にありまして、急激に
増加しております。このうち大半が観光目的なんですけれども、この中でも二十代を
中心とした若い女性の
増加が顕著です。最近では
高齢者の
海外旅行もふえておりまして、これは海外への観光旅行は
国民の余暇活用の
一つとして普及してきたんではないかと思います。反対に訪日
外国人数ですが、それは下の方にありますけれども、四十五年以前は出ていく人より入ってくる人の方が多かったんですが、最近はまだまだ出ていく人の方が多くて入ってくる人はその半分以下でして、
日本は人の面では出超
傾向、つまり出る方が多いということが言えます。
それ以外に企業の海外進出も活発化しておりまして、それに伴いまして海外在留邦人子女数とか帰国子女もふえておりまして、そのために教育とか就職が大きな問題になってきておりますし、また帰国子女もいじめの対象になることもあると見られております。
それから、就業している
外国人の数は十年前に比べれば
増加はしてきておりますけれども、まだ少ないものとなっております。あと、
留学生も
増加してきております。
受け入れはかなり
伸びてきておりますけれども、ほかの国に比べると低い水準にあります。
情報・文化ですが、文化を
生活様式としてとらえてみますと、
生活様式の
国際化というのはアメリカを
中心としたいわゆる「欧米文化」化であったと言えまして、そういう意味で
生活の洋風化という形で欧米の文化が暮らしの中に浸透してきておりまして、
生活様式は
国際化されていると言えるのではないかと思います。
これが
一節の
現状です。
あと
意識ですが、これは企画庁の
国民生活選好度
調査、ことしの六月にやった結果をもとにして
分析しております。
国際化の
進展に対する認識は、ほぼ現在の
国際化の
状況を反映したものとなっております。
国際化を
意識するときにどんな国を
意識しているかといいますと、西側
先進国とか、ソ連・東欧とか、アジア諸国、そんなものを例に挙げておりますけれども、圧倒的に西側
先進国を思い浮かべる者が多いということでして、アジア諸国との
交流は深まっていることを考慮しますと、アジアに対する関心は低いと言えると思います。どうして西側
先進国ばかりを
意識するかですが、まず考えられますのは、西側
先進国の物や人が我々の目につきやすいということ。第二には西側
先進国に
日本人がまだキャッチアップしようとする
意識が強くて、
日本人の興味が欧米に集まっているからではないかと思うわけです。
それでは、あと、
好意度とか
抵抗感なんですが、大体半分以上の人が
国際化の
進展に対して好ましいと思っております。ですけれども、項目別に見るとかなり違ったところがありまして、
情報ですとか観光客ですとか
旅行者、そういう短期の人の移動については好ましいとしている人が七〇%以上、七割以上になっております。それから、物の分野につきましては四、五割の人が好意を持っています。ですけれども、
外国の勤め人とか、
外国人と結婚するというような長期的な人の移動に関するものに好意的であるのは三割弱と非常に少なくなっております。それから、
日本社会は
外国人に対して閉鎖的であると思っている人はやはり五割以上おります。ですけれども、ほかの
調査と考え合わせますと、閉鎖的であることは認めておるんですけれども、それが
国際化の
進展に障害になっていることも認識しているということが言えます。
それからあと、
自分自身の
生活に関する
国際化に関しての
抵抗感なんですが、百七十
ページを見ていただくとわかりますけれども、老後を
外国で暮らすとか
外国人との結婚、子供を連れて海外転勤するというのがあるんですが、これで見ますとかなり高い抵抗を示しておりまして、老後を
外国で暮らすことに対する抵抗は八〇%以上ですし、子供を連れて海外転勤というのは七〇%以上になっております。また、男女で見ますと、女性の方が
抵抗感が強く、年齢では高い方が
抵抗感が強いということが言えます。どうして
外国で暮らしたり海外転勤するのを嫌がるかなんですが、ほかの
調査と比べますと、
外国は
日本に比べて
生活水準が低いからというんではなくて、言葉や習慣が違う未知の土地に対する不安が大きいというような結果が出ております。
以上が
意識のところです。
次に、百八十
ページからは
国際比較で見た
我が国の暮らしですが、ここではNSIという、ニュー・ソーシャル・インジケーターというものに基づきまして六つの分野に分けて検討しております。その結論が二百十五
ページの真ん中辺に書いてありまして、
日本が西側
先進国と比べて高い水準にあるものとしましては、健康全般ですとか安全度、
消費生活、物価の安定、失業率、教育水準になっております。例えば安全度、ちょっと前になりますけれども、百九十
ページで見ますと、
日本は殺人犯罪率は低いですし、検挙率は高くなっております。強盗犯罪率も低くなっておりますが、検挙率は高い。交通事故の死傷者数は少ないというように、
日本の安全度はかなり高くなっております。それ以外に、物価の安定もドイツに次いで低くなっておりますし、失業率も一番低いという
現状があります。
これはいい方ですが、西側
先進国に比べて低い分野としましては、
生活関連社会資本の
整備ですとか、
住宅の価格及び質、
食料品の価格、それから
労働時間、こんなものがありまして、例えば二百四
ページ、これは居住水準と
住宅価格なんですけれども、一室当たりの平均人員などで見ますと、フランスよりはいいですけれども、その次ぐらいに多くなって悪くなっておりますし、
住宅ストックのGDP比などは一番悪くなっております。また、新築
住宅一戸当たりの平均床面積、これも一番悪いというようなことになっております。それから
住宅価格の年収倍率も五・六で一番悪くなっておりまして、その原因と見られます
住宅地の地価はかなり高くなっておりまして、アメリカの二十倍ぐらい、西ドイツの十倍ぐらいになっているということが言えます。また、
所得水準は、購買力平価で見ますと中位になっております。
以上が
国際比較で見た
国民生活水準です。
次に、最後ですが、二百二十四
ページからですが、ここでは、
国民生活の
国際化の
現状についてまとめてありまして、まずそのために
国際化の
国際比較を行っております。
二百二十五
ページ。これは
国際化進展度と言いまして、国境通過量を国内流通量で割ったものを
比較しております。これで見ますと、一九七三年と八三年を
比較しておりますけれども、各国とも
変化が激しいのは
旅行者と印刷物です。
日本は、各分野とも五カ国平均を上回る
伸びを示しておりま
して、この十年間急激な
国際化が進んでいると言えそうです。ですけれども、一九八三年の数字を見ますと、すべての分野で五カ国平均を下回っておりまして、特に人の面では極めて低い
状況にあると言えます。これは入ってきたのと出ていったのを足したものですが、出ていったのと入ってきたもののバランスを見たものが二百二十七
ページでして、これで見ますと、
日本は物の分野では出る方が多いんですけれども、
食料では大幅に入る方が多くなってきておりまして、この十年間でも入超幅は
拡大してきております。それから、人の分野で
旅行者、
留学生とも出超なのは
我が国だけになっております。このような
特徴があると思います。
それ以外に、
食料品がかなり多く輸入されておるんですけれども、
食料・飲料の輸入に占める家庭用のシェアというのは、ほかの国に比べてすごく低くなっております。また、その家庭用の
食料・飲料の輸入を一次産品と加工品に分けますと、加工品のシェアが低い。つまり、一次産品の
割合が非常に高くなっておりますので、輸入品が多い
割合には食
生活において輸入品を強く
意識することが少ないということも
特徴の
一つと思われます。
それから在留
外国人ですが、これは
局長の
説明でもありましたように、
ヨーロッパ諸国では全
人口の七%とか、全
労働者の六、七%在留
外国人がいるんですが、
日本の場合には〇・七%でして、その約八割が韓国、朝鮮籍の人で、在留
外国人の
状況は欧米諸国とは大きな違いがある。これが
日本の
国際化の
一つの
特徴ではないかと思うわけです。
それでは、
国際化が
国民生活にどんなものをもたらしてきただろうかですが、二百三十七
ページからですが、まず第一に挙げられますことは、いろんな
外国品が入ってきまして
消費生活において多様な選択を可能にしまして、豊かな
生活をもたらしたということが言えます。それは物ですけれども、それ以外に文化の輸入、展覧会ですとか音楽会などが入ってきまして、これも
生活の中で選択の幅を広げて
生活を豊かにしたと言えると思います。
それから第二に挙げられますことは、
生活の欧米化、つまり合理化だと思います。欧米化というのは単に
生活スタイルにとどまらないで、価値観にも大きな影響を与えておりまして、余暇とか転職、それから家庭観、結婚観など広い範囲にわたって影響を与えておりまして、いずれにせよ欧米化というのは、
国民生活を合理的なものにして豊かな暮らしの実現に貢献してきたと思われます。
それから、
食料や
消費財の輸入が多くなってきまして、物の面では海外依存が
拡大してきておりまして、その結果、
国民生活は国際情勢の危機的
変化に対する脆弱性が指摘されているんですけれども、
生活基盤の安定を図っていくためには、安定した国際関係を築いていくことが一層重要になってきていると思うわけなんです。
それ以外に、
外国品が入ってきたことによりまして幾つかの
消費者問題も起きてきております。また、人の
国際交流に伴いまして、海外在留邦人子女とかその帰国子女の教育問題も起きてきていると言えます。
以上が
国際化ですが、ここで最後にまとめとしまして、今後の
国民生活政策の対応の方向を四つ挙げております。二百四十九
ページの下の方からですが、第一には、物価の安定を確保しつつ、内需
中心の持続的成長を図ることです。第二番目、二百五十
ページですが、
生活の基礎的
ニーズ充足の観点から安価な商品の安定的供給、良質な
住宅、
社会資本の
整備を図ることです。第三番目は国際的視野に立った
生活と行動により、国際的な相互理解、相互
交流のきずなを深めていくことです。第四番目は
消費構造の
変化、
国際化の
進展等に対応した
環境整備を図ることです。
国民生活をめぐる
環境は内外とも
変化してきておりまして、
意識も
変化しております。その
変化を正しく認識しまして
世界の人々と共通の基盤に立って適切な対応を進めるならば、より豊かな
国民生活が展開されると考えられると、こう結んでおります。
以上です。