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1986-10-09 第107回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月九日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────  委員氏名     委員長         宮澤  弘君     理 事         最上  進君     理 事         森山 眞弓君     理 事         松前 達郎君     理 事         小西 博行君                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 藤井 孝男君                 三池  信君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 田  英夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         宮澤  弘君     理 事                 最上  進君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 嶋崎  均君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 藤井 孝男君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  倉成  正君    政府委員        外務政務次官   浜野  剛君        外務大臣官房長  北村  汎君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局長  渡辺 幸治君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       中平  立君        外務省情報調査        局長       新井 弘一君    事務局側        常任委員会専門        員        小杉 照夫君    説明員        法務省入国管理        局入国審査課長  大久保 基君        外務大臣官房領        事移住部長    妹尾 正毅君        労働省職業安定        局雇用政策課長  廣見 和夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (外交基本姿勢に関する件)  (米ソ首脳会談に関する件)  (経済協力に関する件)  (日ソ関係に関する件)  (SDIに関する件)  (米ソ軍縮交渉に関する件)  (日米安保条約に基づく事前協議に関する件)  (朝鮮問題に関する件)     ─────────────
  2. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても国際情勢等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 次に、倉成外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉成外務大臣
  5. 倉成正

    国務大臣倉成正君) このたび外務大臣就任いたしましたので、外務委員会の冒頭に当たりまして一言ごあいさつを申し上げます。  御承知のとおり、現在の国際情勢は引き続き厳しい状況にございます。我が国自身アメリカ欧州との経済摩擦構造調整問題等、難問に直面いたしておることは御承知のとおりでございます。このような状況のもとで、我が国の平和と繁栄を確保していくために我が国外交に課せられた使命はまことに重大であると存じます。国際社会相互依存関係がますます深まる今日、我が国としてその国際的地位にふさわしい責任役割を積極的に果たしていくことが必要であると確信いたしております。  私といたしましては、このような認識のもとに、中曽根総理安倍外務大臣が築かれた実績をしっかりと引き継ぎまして、また、私が手がけてまいりました経済問題その他の諸問題をさらにこれに強くつけ加えまして、これらの問題を発展させていきまして、いわゆる倉成外交を全力で推進させていただきたいと思っている次第でございます。  この委員会に御出席の皆々様は、多年にわたり外交に関しまして格別の知識と御経験をお持ちの方々ばかりでございます。どうぞ今後とも皆様方の忌憚のない御忠告、御助言を賜りまして、日本の将来の発展のために皆様方とともに努力をさせていただきたいと存ずる次第でございます。  まことにふつつかではございますけれども外務大臣の重責を無事果たすことができますよう皆様方の御協力を心からお願いを申し上げましてごあいさつといたします。  ありがとうございました。(拍手)     ─────────────
  6. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 最上進

    最上進君 倉成外務大臣が御就任をされまして、きょうでちょうど八十日目を迎えたというふうに伺っております。就任早々、大変精力的に御活動いただいておりまして、安倍外務大臣に続きまして、国民の倉成外務大臣に対する期待というものは大変大きなものがあるというふうに考えております。  振り返りまして、三年八カ月続きました安倍外交を見てまいりますと、創造的外交というにしきの御旗のもとに、特に難題であります中東問題、イラク・イラン紛争等の問題につきましても積極的に解決に奔走された。側面からも大変な御協力 をいただいたわけでございますけれども、こうした面も含めまして、前任者安倍外交倉成外務大臣はどのように御評価されておられるか、まずお伺いをしておきたいと思います。
  8. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいまお話しのとおり、三年八カ月にわたる安倍外務大臣、大変精力的に努力をされまして、今日国際社会に横たわっている諸問題について精力的に取り組まれたということにつきましては、私も心から敬意を表している次第でございます。  したがいまして、安倍外務大臣が築かれた外交の諸実績、また、私が諸外国の外務大臣皆様とお目にかかりましても、よく安倍さんによろしくというお言づけを聞くわけでございますが、そういう人的な関係も非常に大切なものではないかと思います。したがいまして私は、安倍外交が築かれたもろもろの実績、こういうものを踏まえながら、これから後任者として私なりにひとつしっかりした哲学とそれから理念を持って、日本外交を進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  9. 最上進

    最上進君 安倍外交を踏まえて御努力をいただくという大臣お話でございますが、今日、内政即外交といわれております中で、日本外交経済問題とは切り離せない大変重要な段階に入っていると思います。倉成外務大臣経企庁長官も既におやりになっておられますし、自民党きっての経済通の方でもございますので、今後やはり政治経済をあわせた幅広い倉成外交というものを進めていただきたいと私ども大変期待をいたしているわけでございますが、今後やはり、安倍外交を踏まえての倉成カラーをどういうふうにして出していかれるか、倉成外交の真髄ともいうべき哲学と申しましょうか、お聞かせをいただければありがたいと思います。
  10. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私も就任早々でございますので、皆様倉成哲学というような口幅ったいことを申し上げるまでの準備がございませんけれども、私はやはり今日の日本外交基本は、世界の平和と繁栄のために、世界経済、GNPの一割国家となった日本がどのような役割を果たし得るかということを真剣に考えていくべきであると思います。  したがいまして、過去の日本外交歴史を振り返ってみますと、日本資源小国でございます。しかも防衛弱国と申しますか、防衛の面では御承知のとおり日米安保条約に頼って日本の安全を保障している国でございます。そういう立場を踏まえて考えてまいりますと、私は世界の中で日本が孤立しない。世界国々と絶対に孤立してはならない。いかなる超大国といえども、一国で自国の繁栄と安全を保障することは今日の世界ではできません。ましてや日本の置かれている立場考えてまいりますと、やはりそういう日本の今日置かれている状況ということを真剣に考えまして、世界の中で絶対に孤立してはならない。同時に、積極的に世界の中で日本がどのような貢献ができるのか。日本世界の中でなくてはならない存在である。そういうことをやはり世界方々認識していただくような努力を積み重ねていかなければならないと思うわけでございます。  したがいまして、私は余り派手な、きらびやかな外交というのは、日本でやるのはいかがなものであろうと。むしろ地道な一つ一つの小さな問題でもこれは大事に取り扱って、そして一つ一つの問題を誠実に、そして着実に実行していくべきだと思います。  さらに、今最上委員お触れになりました経済問題でございますけれども経済外交政治とは切り離すことのできないほど密接な関係を持っておることは事実でございます。しかしながら、私はちょうど国連に参りましたとき、アフリカ外務大臣皆様方四十名ぐらいにお集まりをいただいて懇談いたしましたが、口々にアフリカ外務大臣皆様方が私に対しまして、日本経済大国であるので、日本に対する経済あるいは科学技術、そういう問題のお話がございましたので、一つだけ皆様方に申し上げたいことがありますと私は申しました。それは、経済一つ手段にすぎない、結局、我々が平和と繁栄を求めるための手段にしかすぎない。したがって、日本経済だけでごらんになるのはひとつ認識を改めていただきたい。日本には美しい伝統もあり、歴史もあり、そして誇るべき文化も持っております。したがって、そういうものを含めてひとつ御理解を賜りたい。また、皆様方の国もそれぞれの民俗、文化歴史をお持ちになるように、我が日本においてもそういうものがある。したがって、経済はたまたま我々が技術革新において努力した結果、現在の時点において若干の成功をおさめているにすぎないことである。したがって、経済がすべてではありませんということをアフリカ皆様方に申し上げました。これが私の基本的な考え方でございます。  したがって、世界貢献をしていく、世界の中で役割を果たしていくということが、日本のできる範囲で最大限の努力をするということがこれからの外交の任務ではなかろうかと思う次第でございます。
  11. 最上進

    最上進君 世界の平和や調和に積極的に貢献できる我が国でなければいけない、派手なきらびやかな外交よりも、むしろ地道な外交一つ一つ小さな問題でも丁寧に解決をしていかれるという、これがまさに私は今後倉成外務大臣外交を進めていかれる責任者としての一番大事な姿勢であろうというふうに今伺っていて大変感じたわけでございます。特にアフリカ外務大臣皆様にも、日本経済だけではない、文化伝統を含めてすばらしい国であるという御理解を賜る御発言をされたということは、単にこれはアフリカに対してだけでなくて、アメリカに対してでもそうでありましょうし、ヨーロッパ国々に対してでもやはり私はそうだと思うわけでございます。日本が成金的な国であるというふうに世界国々から思われることだけは避けていかなければいけない。こういうやはり地道な努力をぜひ今後も続けていただきまして、これを倉成カラーとして定着をさせていただければ大変ありがたいと思っているわけでございます。  就任早々ガット閣僚会議あるいはまた国連総会に御出席をされまして、大変な精力的な御活躍をいただいたわけでございますけれども、私ども大変高く評価をさせていただいております。特にガット閣僚会議でのEC側から出てまいりました利益均衡論に対しましては、勇気を持って国益を守るために強くこれに反論をされたという報道を受けているわけでございますけれどもEC側利益均衡論日本を対象に考えたものではないと説明はしておりますけれども、そのままやはり受け取るわけにはいかないような私は気がいたしているわけでございまして、ECの今後の日本に対する動きと、これらの利益均衡論背景にありますその本音というものは一体どこにあるのか、その辺につきまして率直にお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま最上委員が御指摘のとおり、ガット総会におきましては農業問題とサービスの問題と今お話しのいわゆる利益均衡、バランス・オブ・ベネフィット、BOBという新しい言葉が実はガット総会の中で大変大きな話題になったわけでございます。私は、これは率直に申しまして一国が特に大きな貿易黒字を出すということについての大きな一つ批判、まあ世界全体から見ると、貿易はバランスしてもある特定の国が大きな黒字を出してばかりいるということについての批判というふうに受け取ってまいりますと、直接に日本は名指しておりませんけれども日本に対する批判と受け取ってもしかるべきじゃないだろうかと理解したわけでございます。したがって、これに私が反対したと申しますのは、ガットという場は多角的な貿易の協定の場でございます。いわゆるバイラテラルでなくてマルチの場でございますから、マルチの場でそういう利益均衡という問題を宣言の中に入れたりすることは理論的にもおかしい、やるべきではないという意味宣言の中にこれを入れたりするこ とについては反対をしたわけでございます。しかしながら、御承知のとおり、二カ国間で物を考えてまいりますと、アメリカに対して大きな貿易黒字ECに対する黒字、あるいはASEANの諸国に対する黒字、それはよいものを安く納期を確実に売っているからそうだといえばそれまででありますけれども、相手方の立場に立ちますと、やはりもう少し日本考えてほしい、市場を開放してほしいというような要求が出てくることは私は当然理由のあることだと思うわけでございます。したがって、ヨーロッパ側におきましてもこの問題につきましては総会宣言の中では外しましたけれども宣言の後の発言におきましてBOBの問題に関しまして若干の言及がございました。しかし、私はそれに対する反論はいたさないでそのまま傾聴したわけでございます。  なお、EC側としましては、今アルコール飲料の問題について非常に強い関心を持って日本に対して要求をしてきておるというのが現況でございます。
  13. 最上進

    最上進君 今世界の人々が最も関心を抱いておりますのはあさってから始まりますレイキャビクでの米ソ首脳会談の成り行きだと思います。  そこでこの問題についてお伺いしたいのでございますが、先日の報道によりますと、ソロビヨフ日大使倉成外務大臣との会談におきましては、ゴルバチョフ書記長から中曽根総理へのメッセージがその場で明らかにされたというふうに伺っております。それによりますと米ソ首脳会談成功のために日本協力というものが大変強く要請をされているということでございますけれども、これは日本としてどういう役割協力をしろということなのか、この辺の解釈についてお伺いをしたいと思いますと同時に、ゴルバチョフ政権になりましてから御承知のとおりペレストロイカ路線を打ち出しておりますし、従前の政権とはかなり違った印象を私ども持たざるを得ないわけでございます。国内問題もいろいろあるようでございますけれども、ここまでやはりソ連レイキャビク会談に大きな期待をかけている、意欲を持っておられるその背景というものを、我が国としてはどのように分析をしておられるのか、その辺につきましてお伺いしたいと思います。
  14. 倉成正

    国務大臣倉成正君) お答えいたしたいと思います。  ソロビヨフ日大使を私が招致いたしまして、ゴルバチョフ書記長の御来日を要請いたしました際に、確かにゴルバチョフ書記長中曽根総理に対する親書なるものをちょうだいいたしました。しかし、この内容については親書でございますから、私がとかく申し上げるべきものではございませんけれども、いずれにしましても、米ソ首脳会談、そういうものをソ連として成功させたいという意味中身のものであったと記憶しております。  そしてまた、第二段の、ソ連ゴルバチョフ政権になって大きな変化があったのではなかろうかというお話でございますけれども、確かにソ連の現在とられております政策というのは、従来の政策と比較いたしますと、御案内のとおり非常に柔軟な感じを持ってきておることは事実でございます。例えば、日本に対しましても、北方墓参の問題であるとか、あるいは文化交流の問題であるとか、あるいはいろんな問題について、ウラジオストクの演説等におきましてもいろいろ言及されておられるわけでございます。そういう意味において、従来よりも非常に柔軟な姿勢が一応見られるということは私は一歩前進ではなかろうかと思うわけでございます。ただし、ソ連が、軍縮軍備管理という点についてアメリカとの交渉に入っておる、そしてそういう面において努力をされておるということは高く評価をするわけでございますけれども、しかし、現実の例えば軍事力の増強であるとか、あるいは極東におけるいろいろな問題というようなことについて基本的に大きな変化があるとは私は認識をいたしておりません。  したがって、私といたしましては、米ソの超大国交渉というものがやはり世界の平和と繁栄に決定的な大きな役割を果たすと思っておりますので、この両大国交渉を見守っておるという次第でございます。同時に、米ソ首脳に対しましても、世界核廃絶を最終的な目標として軍備管理軍縮という問題と積極的に取り組んでいただきたいということを要望しているというのが日本政府基本的な考え方でございます。
  15. 最上進

    最上進君 理解できたわけでございますけれども、先ほど触れましたゴルバチョフから中曽根総理へのメッセージの中で日本協力を改めて強く要請しているという、これは今大臣お触れになりましたとおり、核軍縮についてこの会談の前に日本で何かやはり行動をすべしという意図が裏にあるのではないかと思います。申し入れるというお話もございましたけれども米ソ首脳会談という画期的な出来事にやはり日本として積極的に協力をするという何らかのアクションを起こすべきではないかというふうにも考えるわけでございますが、この点についてもう一度ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 先ほど親書と申し上げましたけれども、これは口頭メッセージでございますので、この点はちょっと訂正させていただきたいと思います。  これは、米ソ首脳会談決定後、ソ連側から申し出があったものでございまして、その際にゴルバチョフ訪日要請した、こういう経過でございますので、私が口頭メッセージを親善と申し上げた点は訂正させていただきたいと思います。  それから、日本が積極的にどういう役割を果たし、どういう申し入れをするかということにつきましては、アメリカに対して、御案内のとおりINFの問題につきましては、欧州におけるINF配備というのとアジアにおけるINF配備という問題は、移動性の問題も含めて極めて密接な関係があるので、この問題については十分な関心を持たれると同時に、具体的な中身のある交渉をお願いしたいということを申し入れしておるわけでございます。
  17. 最上進

    最上進君 特に核軍縮の問題が当然大きなテーマになるわけでございますけれども、けさの報道等を聞いておりましても、核実磯の禁止と申しましょうか、お互いに両国で監視制度を入れるというような話も出ているようでございます。これはソ連側がのむのかどうかわかりませんけれども、やはりこうした問題につきましてもかなり言及をされると思いますが、こうした核実験停止問題等につきまして、外務大臣としてはどういう御見解をお持ちでございましょうか。
  18. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 基本的には核実験が全部停止をしまして、そして核廃棄、核兵器というものがこの地球上からなくなっていくということが私は全人類の悲願であると思います。私自身もまた宮澤委員長も、それぞれ広島、長崎の出身でございますし、その思いはひとしおあるわけでございます。  ただ、今お話し核実験禁止、モラトリアム、一時的に核実験停止するということにつきましては、御案内のとおり相手国の安全の問題と基本的に関連する問題でありまして、どのような検証がされるか、本当にそれを信ずることができるかどうかという問題とも関連する問題でありますから、やはりこれは専門家十分納得のいく合意というものがなければ、ある時点だけで、核実験停止したからこちらがやめなきゃいけない、やめないとおかしいという議論は私は成り立たないと思うわけでございます。
  19. 最上進

    最上進君 今の話題にも出ましたけれどもゴルバチョフ書記長訪日要請外務大臣がされておられるわけでありますけれども、来年の一月までにと、その時限を切って要請をされたというお話を伺っておりますが、これは何か外交的意味合いがあるのでございましょうか。
  20. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私がソ連の駐日大使に十二月末か一月中と申し上げましたのは、全く日本側都合と申しますか、我が方としては国会その他の関係を申しますと、ゴルバチョフさんがおいでになるということになりますと、やはりできる だけ温かく、そして実りのある会談にしたいということもございまして、その時間が十分とれる態勢ということで日本側都合を申し上げたわけでございます。そしてボールを投げたわけでございます。したがって、これでなければ絶対ならないという意味じゃなくて、日本側としては準備都合があって、実りのある会談にするためには私ども都合としてはこれが望ましい、そしてまた東京でおやりいただきたい、これは四回ほど過去日本総理大臣弔問外交を含めて先方に参っておりますから、今度はそちらからおいでいただきたい、そして十二月末か一月中にというお話日本側の諸情勢を踏まえて申し上げたわけでございます。
  21. 最上進

    最上進君 大臣には大変御努力をいただいているわけでございますけれども、引き続きゴルバチョフ書記長訪日要請はぜひひとつ力強く続けていただきたいと思っております。  最後に一問だけお伺いしたいのでございますが、JICA不祥事が続出をしているわけでございますけれども、単なる汚職事件として片づけられない機構上の問題がいろいろ出てきているんではないかと思われるわけでございますが、この点につきまして、機構改革のお考え外務大臣がお持ちのようでございますけれども、こうしたやよりJICA不祥事の原因というのは一体どこにあり、またどういう機構改革をお考えになっておられるか、最後にお伺いをしておきたいと思います。
  22. 倉成正

    国務大臣倉成正君) まず第一に、JICA職員の汚職事件につきましては極めて残念なことでございまして、私としても深刻に受けとめておる次第でございます。JICAにおきましても、このような事件を再び引き起こすことのないよう原因を徹底的に究明するとともに、執務体制、コンサルタントの選定、管理、処遇問題を含む事業実施方法等についても再点検を行い、鋭意この改善策を検討中でございます。  と同時に、私はやはりJICAのあり方に対する有識者の懇談会、これはいろいろな行政改革の関係もございまして、正式のものではございません。有識者について部外の方の率直な御意見を聞くということは、案外我々が気づかないいろいろな問題がわかるという意味で、そういう方々にも御意見を聞いてJICA機構改革あるいはあり方について検討を進めているわけでございますが、まだ最終的な結論は出ておりません。ただ、基本的には、JICAに関して仕事をする者は使命感に徹する、モラルを持っておるということが一番基本的な問題である。したがって、それに基づいて人事体制であるとかというようないろいろな問題を技術的に検討していくことが大事であると思います。  なお、一言お願いを申し上げておきたいのは、このような問題がございましたけれども、カメルーンのあの災害に際しましても、一番真っ先にJICAの職員が先頭に立って参りまして、大変な努力をいたしました。アマゾンの地域におきましても、専門家やあるいは青年隊諸君が頑張っております。アフリカでもそうでございます。そういう第一線で頑張っている、努力をしている人たちの士気を阻喪しないよう最善の努力をしたいと思います。
  23. 最上進

    最上進君 終わります。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 外務大臣就任後最初の委員会だと思いますが、世界情勢もどうやら大きく変化をしようとしているように見受けられます。非常に変動が激しい情勢の中で、外務大臣としてこれから外交責任を持ってやっていかれるわけでありますから、これらについての御尽力に対して私ども期待をいたしておるわけでございます。  幾つかの基本的な問題についてお伺いをいたしたいと思います。  最初は、これは先ほど最上委員からも質問があった事項と同種のものでありますけれども米ソ間の首脳会談、これがアイスランドのレイキャビクで十一日から行われる、こういうことに急遽なったわけでありますが、やはりこの背景をいろいろ考えてみますと、ゴルバチョフ政権経済政策と軍事費の上昇ですね、こういったような二つの面での矛盾がどうもソ連の中にも出てきているように私は見ておるわけですが、いずれにしましても米ソ両スーパーパワーといいますか、超大国のみずからつくり出した地球規模の戦略対決といいますか、こういうものがどうやら行き詰まりになるんじゃないかというような気もしないではないわけであります。SDI等も出ております。またINFの問題も出てきておりますが、しかし、どちらかの国が優位に立って相手陣営を屈服させても、私はいわゆる世界征覇というそういう野望が恐らく今後は地球の上では存在しない、通用しなくなってくるんじゃないか。ですから、それよりも自分の国を対象とする国際的テリトリーをひとつ守ろうとか、あるいはそのテリトリーを拡大して自国の安定と繁栄を目指す、こういったような方向にどうも世界戦略というのが変わりつつある、こういうふうに思っております。  かつてアメリカがスローガンのようにして言っておりました言葉に「強いアメリカ」という言葉があったわけですね。ブッシュ副大統領の船の進水式での演説なども伺いましたけれども、明らかにそういう表現をいたしておりますし、アメリカ自身がどの国よりもぬきんでている国であるべきである、こういったような、これは国民向けの言葉かもしれませんが、こういったような考え方アメリカにもあることは間違いないわけでありますが、また一方、ソ連にしても、民族がたくさんいる国でありますし、また各地方の集団というものを連邦としてまとめ上げていくという大変な政治的な手腕というものが、中央政府といいますか、クレムリンには与えられている。こういうふうな状況の中で、やはり彼らとしても大変だと思うんですね。しかも最近になりますと、東欧圏の国々の方がソ連よりはどうやら経済的に発展をしている。ハンガリーなどもGNPが上がってまいりまして、かつて国営だった事業等も民営にどんどん移している。まあどっちかといえば西側のやり方というものが取り入れられつつあるというのが現状だと思います。  そうなってくると、ソ連としても衛星国の方が先にどんどん経済的に発展していってしまいますと、自分のところが取り残される、やはりここで考えなければいけない、いろんな問題について再考をしているような、そういう感じ、大まかに言ってそんなような感じで私は見ておるわけでありますが、そのような状況の中でレイキャビク会談、これが行われ、しかも核戦力といいますか、これらの問題も含めて恐らく討議をされていくんだと思います。恐らく、討議をされるのはヨーロッパの問題だけであるというふうに我々は見るわけにいかなくて、やはり世界全体の問題としてこれを見ていかなければならないし、日本ももちろんこれに大きな関係があるわけですから重大な関心を持たざるを得ないんじゃないか。これはもう先ほども御答弁の中でおっしゃったわけでありますが、もう一度、繰り返しになると思いますが、この会談について我が国外交との関連も含めて外務大臣の所見をまずお伺いしておきたい。
  25. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 大変御専門の松前先生からお話がございましたけれども背景として、今御案内のとおりソビエトもゴルバチョフという非常に行政的に有能かつ柔軟、若い指導者が生まれてまいりまして、そしてソ連経済問題というのがいろいろ多くの問題を抱えている、軍事費がやはり大きな圧力になっている。これはアメリカもまた同じことでございまして、財政赤字が二千億ドル、軍事費が三千億ドルということですから、そういう経済面から申しましても軍事費を減らしていくということは双方にとって望ましいということだと思います。もちろん、安全という問題がありますから、その問題を離れて経済が優先するわけにはいかないという前提はあるわけでございますけれども基本的には先生のお話があるということは私も同じ認識でございます。  それから、米ソ間でいろいろな問題を討議する場合に一番大事な問題は、やっぱり相互の不信感 という問題が一番大きな障害になっておると思うわけでございますので、相互の信頼関係を急に取り戻せといってもいろんな場面で問題があるわけでございますけれども、この問題が非常に大事だと思います。  したがって、私は、やはりゴルバチョフ書記長とレーガン大統領が会って、そしてお互いにフランクに世界の人類の平和、そして繁栄のかぎを握っている超大国の両首脳が率直に意見の交換をするということは大変意義のあることだと思うわけでございます。  したがって、その中で、御案内の各問題について討議がいろいろと進められてくると、これについてはいろいろ駆け引きもありましょうし、技術的な問題もあるかもしれませんけれども日本といたしましては、いずれにしても両首脳がフランクに、そして両国の利益を代表しながら話し合いを成功裏に一歩でも二歩でも前進させていくということを心から念願しておる次第でございます。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 前進するといいますか、やはり会談をせっかく持つ以上何らかの一歩前進がなければこれは意味がないわけですから、私自身もそれに大いに期待をしておるわけなんです。  さて、ちょっと話は変わりますが、日ソ間の問題で、国家レベルでの文化交流というのが始まるわけですね、これから。それと別に、民間レベルでの交流といるものも今日まで続けられてきているわけなんですね。米ソ関係が非常に進展をし、いい方向に進展をするということがもしかあれば、やはりそれなりに民間交流というのも盛んになっていくんじゃないか、こういうふうに思っておるわけなんです。  各方面で既にこの交流計画というのがいろいろと展開をされ、予定をされている、そういう状況であるわけなんですが、この民間交流に関して、大臣としての役割、これは相互理解にとっては決定的な役割というわけにはいかないかもしれませんが、少なくともプラスの役割は演じていると思うわけなんですが、その点、どういうふうにお考えでしょうか。
  27. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私は、今、松前委員がお話しの点について、前段の部分については全く同感でございます。現在も、竹中一雄氏を団長として、これは御案内のとおり、ソビエトは農業問題でいろんな問題を抱えておりますので、農業問題の専門家を中心にして今使節団が既にソビエトを訪れております。そのほか一、二の使節団が行って交流をしておることは御承知のとおりでございます。したがって、これは極めて意義深いことだと思うわけでございます。  ただ、基本的に長期的に経済交流をし、文化交流をし、そして日ソ両国が本当の意味協力をし合うためには、やはりそこに大きな障害がまだ残っておるということを私ども日本政府としては忘れてはならない。そのことがいわゆる北方領土の問題でございます。すなわち、日本政府は政経分離はしたい、政治経済と分離はしない。経済だけをどんどん進めていって最後の出口で問題を解決したらよいという考えも一部にあることも承知しておりますけれども、私どもはその立場をとっておりません。  御承知のとおり、戦後四十一年、移転のできない隣国であるソビエトと日本、これはどうしても仲よくしていかなければなりません。しかし、この両国が戦後四十一年たったにかかわらず平和条約が結ばれていないということは異常な状況です。これは私、ニューヨークにおけるシェワルナゼ外相との会談において率直に申しました。  御承知のとおり、平和条約についてはシェワルナゼさん、いろいろお話がございました。経済交流もしたい、科学技術の交流もしたい、ジョイントベンチャーもしたい、いろいろお話がございました。確かにその問題も大事な問題であるけれども、平和条約についての基本的な要件のエッセンシャルな一番重要な問題は三つである。一つは戦争の終結、二番目は賠償、三番目は領土問題。前の二つは確かに解決をしておるけれども、第三番目の一番基本的な問題である領土問題について我々は解決していないと認識をしておる。したがって、この問題についての前進がない限りにおいては、長期的な安定的ないろいろな交流あるいは協力というのは難しい。したがって、ゴルバチョフ書記長が御来日の際にはぜひこの国民感情、また我々の立場を十分踏まえて実りのある会談にさしていただきたいと、そういうことを申し上げた次第でございます。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 今の話と関連するんですが、今、北方領土の返還というふうな表現を我々は使っておるわけなんです。領土の返還という表現と、それからもう一つソ連側が言っている表現だったと思うのですが、国境の画定についてというふうな表現をソ連側が使ったこともかつてあったと思うのですね。ですから、北方領土返還という問題を国境の画定という問題に切りかえて考えながら、ソ連側としてこれに譲歩をし、どこまで日本側の主張を認めていくのかというふうな交渉、こういうものも恐らく将来始まっていくんじゃないか、こう思うんです。  というのは、国境線の画定というのは、ソ連の場合はどうも物すごい数の国境の問題を抱えているわけですね、何も日本との問題だけではなく。だから、そういう意味で国境の画定という言葉を使うのじゃないかとも思うんですけれども、領土の返還と国境の画定とどう違うかというと、これは人によって解釈が違うと思いますけれども、恐らく今後、北方領土返還問題、これを解決してからソ連との平和条約を結ぶという政府のお考えだと何回も以前からお伺いしておるんですけれども、どうもその辺が非常にひっかかって、にっちもさっちも、一歩も進まないという、そういう印象を私は抱いているんですね。国境の画定という問題を含めて平和条約を締結するとか、何かその辺を日本側としても少し知恵を働かしてやらないと、なかなかこの問題については前進がないのじゃないかという気がするんです。その辺はいかがでしょうか。
  29. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今松前委員が非常にデリケートなお話お話しになりましたが、事実関係、過去の経過等ございますので、政府委員からその件はまずお答えしたいと思います。
  30. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 事実関係と申しますのは、過去に先方からそういうお話があったということは私も聞いておりますし、そういう動きが一部の方々の間であったということも承知いたしております。  ただ、本件は、両者がどういうふうに違うのかというすぐれて法律的な問題にかかわるかと思いますので、むしろ条約局長から話していただく方がいいのではないかと思います。
  31. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 松前委員が今御指摘になった点につきましては、さっき松前委員もおっしゃいましたように、それをどういうふうに解釈するのか、あるいはどういうふうに実態が違うのかということについてはいろいろな考え方があり得るであろうと思います。  先ほど大臣からお答えいたしましたように、私どもとしては問題は実態でございまして、言葉の問題ではない。言葉でどうするかということよりは、日ソ間でこの北方領土の問題が解決されるということで、日ソの基本的な関係というものを本当に正常な状態に置いて日ソ関係の健全な発展を図る、こういうことでございますから、むしろ実態に着目をして考えていくべきではないか。実態に関しての我が国立場と申しますのは、先ほど大臣から御説明したとおりでございますので、そういう姿勢で話し合いをしていく、ソ連側がそういう実態について話し合いをしていくということが、この問題の解決の一番の重要なことではないかというふうに考えておるわけでございます。
  32. 松前達郎

    松前達郎君 実態というふうにおっしゃったんですが、これはもう日米貿易摩擦のとき、アメリカ日本に言っていることでして、言葉じゃなくて実績で示せということと同じだと思うんですが、実態といっても、その内容について日本側が、我々の方がこれだったらいいだろうというふうな提案が、ソ連から出てくる場合もあろうかと思うんですね。ただ、全部返還をしてもらわなき ゃ全然話にならないんだと、いつまでもそれを最初に条件として出すんだというんでは、なかなか僕は進展しないんじゃないかと思うんです。  実態といいますといろいろ解釈があるんですが、例えば、それじゃ北方領土についてソ連側が潜在的な日本の領有権を認めようとか、ただし、今は日米安保条約があるからソ連に使わしておいてくれとか、こういうふうなことは確かに考えられることなんですね。そういう提案がもしかあったとすれば、これは仮定ですから、別に私がソ連政府から聞いたわけでも何でもないんで、そういう一つの突破口というものができるような状況になった場合、やはり対応を考えていかなきゃならないんじゃないかと思うんですが、その点いかがですか。
  33. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今、松前委員がお話しのとおり、全く仮定のお話を御提起になったわけでございますので、これにお答えする立場にはないわけでございます。実はボールを向こうに投げておるだけですから、私ども立場を鮮明にして、そしてこのボールは、私ども立場を踏まえて御来日いただきたいということをお願いしておるわけでございますから、先方がどう出たらこうするこうするということを、私がここで申し上げるべき立場ではございません。
  34. 松前達郎

    松前達郎君 その問題についてはこのぐらいにしましょう。余りはっきりする必要は、ここの場ではないんじゃないかと思うんです。  それから、先ほど民間のレベルでの文化交流お話を申し上げて質問させていただいたんですが、私自身も民間交流団体の理事長もやっておりますし、いろいろと交流を今まで続けてきたわけです。これは何もソ連だけではございません。しかし、ソ連との問題は、特に今のような問題がありますので、なかなか政府レベルではやりにくかっただろうと思うんです。それを補佐するような役割もしたんじゃないかと私は考えておるんです。  これは細かい話なんですが、ソ連側からこちら側にお呼びする方を予定いたしまして会議とかシンポジウムとかいろいろなものを計画するわけなんですが、来たソ連の方に聞いてみると、ビザの発給が、飛行機が出る二時間前ですとか、あるいは早くても前日にしかもらえない。受け入れる側としても来るのか来ないのかさっぱりわからない。どうも大部分がそういうふうな現状なんですね。これについて、ビザの申請というのは大分前に行っているんだと思うんです。それをわざわざそこまで引きずっていくというのは、全くこれは嫌がらせにしか私ども受け取れないんですけれども、その点いかがですか。
  35. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 我が国ソ連、東欧との間の民間レベルにおいても交流が望ましいという点については、もう松前委員と私ども全く同じ考え方を持っているわけでございます。  ただし、ソ連、東欧からの来訪者を含め、外国人に対するビザの発給の基本的な審査方針は、その方の入国が我が国の国益上問題がないかどうかという観点から、ケース・バイ・ケースでこれを審査いたして、総合的な判断を下して発給の可否の結論を出しているような次第でございます。したがって、ゴルバチョフさんがおいでになりまして、またいろいろお話しになって、そういう問題についても前進することができれば幸せだと思っておる次第でございます。
  36. 松前達郎

    松前達郎君 ビザの発給については、例えば先端技術の直接の担当者ですとか、こういうものについてはある程度わかるんですけれども、そういう現場と余り関係ないような人でも制約を受けている場合が非常に多いんですが、何かルールを内部でおつくりになっておられるんでしょうか。
  37. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 手続上の問題でございますので、政府委員から答えさせます。
  38. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) お答え申し上げます。  ただいま大臣から基本的な審査方針について御説明があったわけでございますが、実際の審査というのは、申請の内容がみんな非常に違うわけでございますから、一概にこうだということは申し上げられませんけれども、ただいま大臣お話しのとおり、我が国の国益上問題がないかどうかという角度で考えるわけでございまして、それは政治的な問題があったり外交上の問題があったり、あるいは公安上の問題、経済的な問題、社会的な問題、いろんな問題がある、あるいは問題が全然ないというのもあるわけでございまして、問題によってそれぞれ違うところと、政府の部内でも相談する必要がございますし、審査にかかる時間も違うわけでございます。先ほど、非常に時間がかかって直前でなければビザが出ないというお話がございましたが、これもできるだけ早く審査をしようと思っておりますけれども、そういうことで問題によっていろいろ相談しているうちに時間がかかるのもあるということでございまして、一律に申し上げられないわけでございますが、私どもとしてはできるだけ御不便をおかけしないようにしたいと思っておりますので、申請される方もできるだけ早く申請していただきたい、あるいは御相談いただきたい、こういうふうに考えております。  ちなみに、問題が起こることがございますが、実は大部分の方が問題なく査証を発給されているわけでございまして、査証が問題になるのは、むしろ非常にケースが少ないということをこの機会に申し上げておきたいと思います。  それから、一定の方針、基準みたいなものがあって、それでやっているのかという御質問でございますが、実は、私どもといたしまして申し上げられますのは、先ほど申し上げましたいろんな意味の国益というものを総合的に考えまして、ケース・バイ・ケースに審査して判断を下すことにしているという以上のことは申し上げられないわけでございます。ただいま出し上げましたように、そういういろんな角度から総合的に検討をせざるを得ないわけでございます。それ以上のことは申し上げられないということでございます。  委員恐らく御承知と存じますが、少し理屈っぽく申しますと、国際法上、外国人の入国許可というものは、全くその当該国の主権事項として自由裁量というものが認められ、我が国も国内法上そういう体制をとっておりまして、我が国を含めまして各国ともこういうふうな基準で、こういう理由で査証を出している、あるいは断っている、出す方はともかく、断っているということは公表しないということになっており、従来からそういう方針でわが国も各国もやっておりますので、そういうことで御了承いただければありがたいと存じます。
  39. 松前達郎

    松前達郎君 ビザの問題は、今おっしゃったようなことで以前からそういうふうにやっておられますからわかるんですけれども、事務的手続等が促進できるものについてはできるだけ早く発給をするということでぜひお願いできれば、適当でないものは別ですけれども、適当なものについてはそれなひとつ要望をいたしておきます。
  40. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) 承知いたしました。
  41. 松前達郎

    松前達郎君 それから、核戦略の問題について、これはSDIの問題とも関連がありますのでお尋ねを申し上げたいと思います。  まず最初に、基本的な考え方として我が国の非核三原則、これについてはもう何回も大臣がおかわりになるたびに私は確認をいたしておるわけでありますが、倉成外務大臣といたしまして我が国の核に対する核戦略、核に対する基本的なお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  42. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私は先ほども申しましたように長崎の出身でございますし、国連の演説におきましても核廃絶、この地球上から核兵器という業の兵器が一切なくなっていく、そして世界の平和が保たれる、少なくとも核という兵器によって、核の均衡というような形で世界の平和が保たれているというようなことは望ましくないという基本的な考え方を持っておるわけでございまして、究極的な核の廃絶、そして核兵器をこの地球上からなくすということが最大の目標でございます。  ただ、どういうプロセスで、どういう手段でこれを達成していくかということが一番問題だと思 うわけでございます。したがって、一片の演説をしたり、あるいは宣言を出したり、あるいはいろいろなことで核廃絶をただ口で叫ぶだけではこれはいけない。やはり行動で、一歩一歩着実に具体的な方法を探究していくということでなきゃならないということを、あらゆる機会に私は被爆地の出身の者として申しておる次第でございます。
  43. 松前達郎

    松前達郎君 今の基本的なお考えをお伺いしたわけですが、私も全く同感なんですが、お手本を示すというわけじゃないんですけれども我が国の場合は非核三原則という立場を堅持していこうという国民の意思があるわけですね。ですから、そういったようなことから例えばニュージャージーみたいなのが、これは古い船ですけれども、改装してトマホークを積んでやってくるとか、あるいは潜水艦の中にもトマホークが入っていると思うんですが、これが核を積んでいるかどうかという問題がいろいろ議論になるわけですけれども、いずれにしても核搭載可能であるということは間違いないですから、こういった問題も含めて、今までのような何か言葉のやりとりでうまく逃げてしまうようなことじゃなくて、やはり少ししっかりした日本の態度をアメリカ側にも明確に言っておく必要があるんじゃないかという気もするんです。  これは、何もアメリカだけじゃないほかの国にもそうであろうと思うんですが、今ちょうどSDIの問題がいろいろと議論されておるんですが、ICBMによる核戦略に対応するのがアメリカのSDI構想である、SDI構想というのは後から言いかえた言葉なんですが、いわゆるスターウオーズですね。こういったような構想、これはアメリカとしてはICBMを封じ込むためのものである、それからさらに今後恐らく米ソ間で交渉が続けられるであろうINF、いわゆるもっと足の短いミサイルですね、核弾頭を積んだミサイル、こういうものはひとつ会談の中で削減をする方向で努力していこう、この両面作戦で恐らくアメリカの戦略対策が行われているんだろうと私は思うんです。  こういったような核の問題ですね、とりわけ日本の場合はかつてはICBMの核の傘の中にいるとよくおっしゃっておられたわけなんですが、中距離のミサイルがどんどん発展をして配備をされてくるし、トマホークみたいないわゆる巡航ミサイルまで出てくる。しかも核弾頭そのものが非常に小型で、しかも相当命中率もよくなってくればそんな大きなものは要らないわけです。ある意味で言うと、通常弾薬と同じように考えられてくるという時代になってきますと、核の傘という考え方がどうやら崩れてくるんじゃなかろうかと私は思うんです。今その変化の時期にあるんじゃないか。ですから、そういった面も十分我々は踏まえながら今後の日本立場というものをどういうふうに持っていくか、これを考えていくべきだと私は思うんです。この辺いかがですか。
  44. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私も松前委員と同じ考え方を持っておりまして、やはり核兵器を一方が使えばまたそれに対する報復をやるということで、現在地球上にあります核兵器の数は地球の人類を何十回も殺りくするだけの核兵器を持っているわけでございます。したがって、こういうばかげたことをできるだけ早くやめていくべきだということは恐らく米ソ首脳初め世界人類すべてが願っていることだと思うわけです。  したがって、今それとの関連においてSDIのことに御言及になったわけでございますけれども、いわば攻撃的な兵器があれば、矛があるとやっぱり盾というものが必要になってくる。ABM条約でも御承知のとおり、ABMの、これはアメリカの方はいわゆる一方的に配備をやめましたけれども、モスコー、首都周辺におけるミサイルを使っての防衛ということで一つの傘を持っているわけです。盾を持っているわけです。これをもう少し大きな、グローバルな形で持とうというのが私はSDIであると理解しております。もちろんこれについては世界アメリカあるいはヨーロッパあるいは日本を含めて賛否両論、こういうことは可能であるのかどうなのかというようないろいろな技術上の議論があることも私もよく承知をしております。しかし、いずれにしましても、このような核廃絶を目指してひとつ非核の手段においてこういう核兵器の攻撃を無力化するという構想、そういうイニシアチブの中の研究計画、研究というところに着目いたしまして日本がこれに参加することは意味のあることではないかということに考えておる次第でございます。
  45. 松前達郎

    松前達郎君 SDIに今お触れになったわけですから、SDIに関連してちょっとお伺いをしておきたいと思うんですが、研究参加を日本は決断をしたわけですね。大分時間がかかりました。安倍外務大臣の当時私もその点については慎重な検討が要るんじゃないか、あらゆる角度から検討すべきであると申し上げてきたんですが、ついに研究参加という線を打ち出された。  研究参加というのが一体どういうものなのか、これはただ言葉だけなのか、それでは実際にどういうふうにやっていくのか、いろいろな問題がこれから出てくると思うんですが、研究参加というのは具体的にどういうことを考えておられるのか、それについてお伺いいたします。
  46. 倉成正

    国務大臣倉成正君) SDIの研究分野については、もう松前委員御承知のとおり五つの大きな分野があることで、ここであえて詳しくいろいろなことを申し上げる必要はないと思うわけでございます。SATKAから始まりまして、運動エネルギー兵器あるいは指向性エネルギー兵器、あるいは残存性破壊力の問題、あるいはシステムアーキテクチャー等々の問題があることは御承知のとおりでございます。そういう中で日本の企業等がこれからアメリカ当局と研究に参加する道は閉ざさない、もちろん、これからどうやって交渉していくかという問題でございますからこれからの問題だと思っておるわけでございまして、企業等がそういう問題について参加する道は閉ざさない。それは国会決議もあることでございますから、十分その点も検討した上でそのような方針を決めた次第でございます。
  47. 松前達郎

    松前達郎君 企業の参加という問題が出ますと、やはりそれに関連して研究情報等の守秘性の問題といいますか、秘密の問題とか、あるいは開発をされた技術がそのSDI以外には一切使われない制約を受けていくとか、いろんな問題が出てくるわけです。果たして、そういう制約がある中で企業がそれに参加するかどうかという問題もあると思うんです。これは企業の皆さんに聞いてみるといろんな意見がありますが、日本の場合はどっちかといえば軍事技術で先端的な技術開発を行ってきたんではないわけですね。民需の問題でほとんどが行われてきていますから、それががらりと変わって、今度は抑えつけられていく。せっかく日本で開発しながらも自分たちが使えないというような、そういうふうな疑いが出てくるわけです。心配が出てくると思うんです。  これについては恐らく外務省としてもこれから詰めていかれるような報道もあったわけなんですが、本来ですと、これは西ドイツとかイギリスとかイタリーとか、そういった国がもう既に参加の表明をしながら条約まで結んでいるわけですね。その条約の中で、そういった制約事項が入っているわけですから、大体そういうような見当がついていたと思うんですが、その点いかがでしょうか。その分野を、今申し上げたような制約問題等は、今後どういうふうに進展さしていくのかですね。
  48. 倉成正

    国務大臣倉成正君) それでは政府委員から答えさせます。
  49. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ただいま御指摘の点は、いわゆる成果の帰属ということかと思います。まさにこの点につきまして、官房長官談話にのっとりましてアメリカとこれから話し合いに入っていくわけでございますので、この段階において詳細はいまだ明確にいたしかねる点でございますけれども、しかしながら、一般論として、委員御指摘のような危惧ももちろんあるわけでございます。  他方、アメリカがSDIにつきましてはお金と 技術を持ってくるわけでございまして、その結果開発された技術というものはある程度その成果の利用についてアメリカ側が発言権を持つということも、またこれ当然であると、その辺を一体具体的にどういうふうにしていくのかということでございます。それはまさにこれからアメリカと話し合っていくわけでございまして、その過程で、西独等の例も参考にしながら話し合っていくのは当然でございます。  ただ、一番基本的な問題は、参加ということは具体的には結局個々の企業などがアメリカの企業等と契約を結ぶ、それが参加でございまして、その具体的な契約、A社ならA社がアメリカのB社と結ぶその契約でございます。その中で、特定の技術についてどういうような成果の利用、自由度が与えられるかということが結局はかぎでございまして、その辺がどうなっていくかということはまさに個々の契約を見なければわからないわけでございまして、個々の契約を行うに当たりましては、これはあくまで当該企業が商業的に考えまして、自主的な判断で商業的によろしければその契約を行うということでございまして、それが決して当該企業に不利になるということを政府が期待しているわけではございません。政府としては、その環境をできるだけよくしてやるということが政府の役割と、そういうふうに存じております。
  50. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、SDIの研究参加というのはかけ声だけというふうにとっていいですかね。あとやるのは民間企業であり、恐らくこれは政府の試験研究機関はどうなるのか知りませんが、あとはもう民間が適当におやりください、その中でこれだけは絶対にだめだと言われたことはお守りいただけるならそれに参加してくださいと、こういうふうに解釈していいんですか。
  51. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 政府がSDIに関連しまして決定いたしましたことは二点でございます。  一つは、現行の国内法及び取り決め、その枠内でいわゆる参加問題を措置するということでございます。  それからもう一点は、アメリカ政府と協議を行っていくということでございます。そこで、この協議を行っていく目的は、日本の民間企業等がSDIにいわゆる参加する、特定の部門、局面に特定の契約を結ぶということでございますが、そういうことを自主的に容易にする、その環境をつくるための話し合いということでございます。その中に先ほどの成果の帰属などが入ってくるということでございます。
  52. 松前達郎

    松前達郎君 何かよくわからないんですけども。政府が参加を決定する。そうなりますと、当然政府としては政府の各試験研究機関がございますね。これも相当立派な技術、研究成果を持っているわけですね。こういうものは当然参加するんですか。
  53. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 政府の研究機関にはそれぞれの法律がございます。それを規制しております性格、活動等がございます。それから監督省庁の方針、それからそのときの人員の余裕、予算、いろんな制約がございます。その中で、それぞれに照らしまして、その状況におきましてこれは判断されていくべきことであるというふうに存じます。  ただ、現在のところ政府関係研究機関がSDIに参加するという話は全く聞いておりません。
  54. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると、かけ声だけということですね、結論は。いかがでしょうか。その先は全然決まっていないんですか。
  55. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) いわゆる日本政府のSDI参加問題、これは昨年三月、ワインバーガー国防長官が書簡を外務大臣に送ってきまして、それの対応、これがいわゆるSDI参加問題でございますけれども、これにつきましては先ほど申し述べましたように、官房長官談話におきまして二つのことを決定しておる、これが政府の決定でございまして、それに基づきましてアメリカとこれから話し合いを詰めていく、こういうことでございまして、そのエッセンスは、先ほどから繰り返しておりますように民間企業等が、そこにSDI関係の技術があるわけでございますから、自主的判断でアメリカ企業などと契約をすることが現在でも法制的にできるわけでございますけれども、それができやすいような環境をつくるということが政府の行為でございます。
  56. 松前達郎

    松前達郎君 くどいようですけれども、SDI構想のシステム開発等は含まれないいわゆる具体的な技術開発、例えば宇宙開発にしても、スターウオーズというぐらいですから、やはりSDIと関連するわけですね。SDIの基本的な情報というのは全部衛星から来るわけですから、この衛星を撃破すればSDIシステムというのは全部壊れてしまうんですね。  そういったようなものを考えると、やはりすべて宇宙開発に全部関連してくるわけなんで、わざわざSDIとかそういう名前をつけなくても、今まで民間企業同士で開発研究をやっている。例えばトマホークの先端に積んであるカメラは日本製だとか、いろんな問題があるわけですが、そういったようなそれぞれ個々の研究交流あるいは開発協力、これはもう既にやっているんですね。ですから、何もわざわざSDIなんて振りかざして言わなくても、もう既にそれはやっているんだからということになれば、政府がSDI参加というのを決めたというのは、アメリカとの政治的な駆け引きの中で行われたとしか私は考えられないんですけれども、いかがでしょうか。
  57. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今、るる政府委員からお答え申し上げましたけれどもアメリカ側がどのようなことを日本政府に、その研究参加について各企業について関心事を持っているかということについては何もまだ言ってきておりませんし、これからの問題だと思います。  今、ASATの問題について松前委員がお触れになりましたけれども、五つの大きな研究分野の問題について、それぞれ日本に対してこういう研究についてどうだという場合に、企業がその研究に参加するというのを円滑にやらせる、また研究参加しても成果が全然得られないということになると企業にとってはただ知識をとられるだけということになりますから、そういう場合に政府としてはできるだけ日本の企業に有利な形ができるような円滑なことをひとつ推進していきたい、そういう意味でのものでございます。
  58. 松前達郎

    松前達郎君 今大臣がおっしゃった、政府が全体を見ながらそういった円滑な提携ができるといいますか、技術的な開発ができるというふうになったら、SDIそのものの構想について私は反対なんですけれども、方法論としてはある程度理解できるわけなんですけれども。  さて、そこで率直にお伺いしたいんですが、御意見をお聞かせいただきたいんですが、SDI構想、これはスターウオーズにもう間違いないんですけれども、このSDIという構想が果たして実現できるものか。さっき私ちょっと申し上げましたけれども、例えば衛星破壊とか衛星捕獲の技術というのはもうほとんど完成に近いわけですね。もうスペースシャトルは捕獲もしましたし修理もした、ソ連ソ連でコスモスシリーズの中で撃破をするとかそういう実験を既にある程度やっているわけです。基本的にシステムはできたんだけれども大もとが全部壊れてしまう、例えば早期警戒衛星がめくらになってしまうとかそういうことは簡単にできるので、そういうことから考えますと、これは構想は一応何といいますか宇宙小説みたいな構想なんですが、私はどうも実現不可能な気がするんです。果たしてアメリカ側の説明のように、これが実現すれば核戦略が無意味なものになるからやらなくなるだろう、こういうふうに言っているわけですが、しかし、私はどうも実現不可能だという気がします。それが一つ。  それからもう一つは、こういうものを片方でやりますと、もう片方はシステムを壊そうという努力が当然行われますし、対抗上のいろんな措置がとられていくわけですから、今までの歴史を見るとみんなそうですね。ですから、逆にこれによっていわゆる軍事力の拡大といいますか、エスカレー トされていくような気がしてならないんですが、その点率直な御意見をちょっとお伺いしたいんです。
  59. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今松前委員からお話がございましたけれども、SDIという構想は一体できるのかと。いわゆるASAT、衛星を攻撃してしまえば全体が崩れてしまうじゃないかとか、その衛星の高度がどのくらいにあるのかとかいうようないろんな技術上の問題について難しい問題があることは、もう世界じゅうのいろんな人がいろいろ議論しております。したがって、反対の方がかなりあることも承知しております。しかしまた同時に、大変難しいけれども、この構想をひとつ実現したい、また実現できると思って考えている人があることも事実でございます。したがって、私どもは後者の人たちの考え方を支持して、そしてできるだけやってみる、可能かどうかやってみるという研究の段階に参加するということでございまして、それから先の問題について、立場は保留しているわけでございます。
  60. 松前達郎

    松前達郎君 ですから、SDIというのは構想ですからね、あらゆる総合的な先端技術の集大成みたいなものですね。だから逆に考えますと、技術レベルを向上させるという点ではこれはあるかもしれませんね。先端技術が日本の場合すぐれていると見られていますから、それなりに協力アメリカが求めてくるというのもわからないではないんですけれども。  そこで、さっきの話へ戻るわけです。そうなればなるほど、やはりその技術を国民にフィードバックできる、そういうことが制約を受けるという、諸外国の条約を見てもそうなっていますけれども、そこにまた返ってくるわけなんですね。SDIは構想で、どうやら実現できるかどうかわからない。だけれども、これに参加をしながら実現の努力をする。しかし、そこで生まれてくるのは何かと言えば、技術力の向上であり、その成果が出てくるんだと。しからば、その成果をいわゆるスターウオーズだけに、そこにその成果をアプライしていくというんじゃなくて、やはり国民の生活にフィードバックするという問題が出てくる、そのときの制約ですね。これは企業というのは、日本の企業は軍需産業だけの企業じゃないんですから、当然民需がほとんどなんですから、そういうところを考えると思うんですね、そういう問題までお考えになっておられるのか。あるいは企業にもう既に意見等を伺われて、そしてSDI参加を決定されているのか。あるいは将来、これから始まるSDIの制約についていろいろと交渉されると思いますけれども、すべてそういうものを含めて考えておられるのか、いかがでしょうか。
  61. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御案内のとおり、SDIの参加の問題に関しましては、技術調査団を現地に派遣いたしまして、それぞれ専門家が参りましていろいろ研究をして報告書を出していることは御承知のとおりでございます。したがって、今委員の御懸念のような点についてリーズナブルな、そしてできるだけ日本の企業にとって成果が活用できるような方向ということをエンカレッジするというのはやはり政府としてやるべきことじゃなかろうかと思います。しかし、個々の契約はやはりそれぞれの契約で決められることでございますから、その辺のところは十分注目していきたいと思います。  それから、先ほどちょっと御答弁漏れがございましたが、軍拡につながるんじゃなかろうかという問題でございます。これは御承知のとおり、SDIは軍縮軍備管理交渉と並行して行われる。そのための努力というのがやはり米ソ首脳会談あるいは米ソ軍縮交渉の場で鋭意行われておるわけでございまして、ソ連がジュネーブ交渉で、戦略核、中距離核あるいは宇宙兵器の対象等に戻った一つの大きな理由が、SDI研究を推進しているためであるということを西欧諸国は一致した意見として持っておる、ソ連がどういう評価をしたかは別でございますが、少なくとも西欧諸国はそういう評価をしているという事実。また、アイスランドでのいろいろな話、SDIという問題は既に出ているにかかわらず、米ソ両国がいろいろINF問題を含めて核兵器の問題について、軍備交渉その他軍縮の問題について話し合いをしているということを考えれば、やはりSDI即軍拡に通ずるという議論は当たらないというふうに考えております。
  62. 松前達郎

    松前達郎君 衆議院の方で委員会があると聞いております。
  63. 倉成正

    国務大臣倉成正君) それではちょっとお許しを得て行ってまいります。
  64. 松前達郎

    松前達郎君 それではもうちょっとだけ質問をさせていただきたいんですが、もうSDIの問題はこれでまた別の機会に譲りたいと思います。  大臣が衆議院の方へ行かれましたけれども政府委員の皆さんでお答えいただければと思うんですが、これはさっき最上委員からも質問の中にあったようですが、ODAですね。ODAと言うと嫌な顔をしないでいただきたいんですが、かつてマルコス疑惑もあったり、いろいろと疑惑問題が出てくる中で、汚職の問題とかいろいろ出てきたわけなんですけれども、このODAに関して行政監察を行うという話が突然出てきているわけですね。ODAというのは国民の税金ですから、私はこれについて監察があって国民としては当然であると、こう思うんですけれども、このODA問題、一体どこに欠点があったのか。これは皆さんなりのお考えで結構なんですが、その欠陥がどこにあるのか、いかがでしょうか。
  65. 英正道

    政府委員(英正道君) 先ほども大臣から御答弁申し上げましたように、こういうような問題が起きたことは大変遺憾なことだというふうに考えて、重大に受けとめておるわけでございます。  そこで、どこに問題があったかという点についてでございますが、一つは、やはり国際協力の実施機関でございます国際協力事業団の職員の綱紀の問題という点は、逮捕者を出している現在においてやはり問題があっただろうということで、この点につきましては大臣からも強く指摘をいたしました。また、そういう改善の方向を、従来からも事業団の内部において綱紀の維持については十分研修等で行ってはいるわけですが、重ねて総裁から職員に指示をする等、綱紀の粛正といいますか、措置をとっているわけでございます。それから規律に関する委員会も設けておりますし、またコンサルタント会社とのいろいろな関係についても、きちっとした関係を維持するようなチェックの委員会をやはりつくるということをやっております。  それから、事業団の経済協力一般についてでございますけれども、累次御答弁申し上げておりますように、これまで適正な実施という点については意を用いてまいりました。それなりの制度、仕組みというものでやってきているわけでございますが、改善すべき点がある場合には改善していこうということで検討をしております。その方向に沿いまして、外務大臣から事業団法に基づきまして若干の点について改善策を検討して報告するようにという指示をしております。
  66. 松前達郎

    松前達郎君 この際ODAに関して基本的に一遍洗い直しといいますか、やったことを洗い直すんじゃなくて、ODAのあり方ということ、こういう問題をやはり再検討してみる必要があると思うんです。  例えば、前から私は申し上げているんですが、物質的援助だけではなくて、一国の経済を発展させるための基本になるのは、やはりそこに教育というものがあって、これは中曽根さんじゃありませんけれども国民のレベルが上がっていく、これが大きな力となって効果を発揮していくわけです。ですからそういった面で、例えば教育援助みたいなものもODAの中に入れられないか、ODAのやる内容がもう決まっているからと言わずに、そういうことも含めてもう一遍考えてみる必要があるような気がしてならないんです。これはもう何回も申し上げたんで、余り繰り返しては申し上げませんが。  アメリカあたりも、よく考えてみますと日本に援助という形ではありませんが、日本の教育に対 して相当古くからてこ入れしているんです。もう御承知のように、例えば学院と名のつく大学がたくさんあります。これはほとんどアメリカの民間のレベルでの教育援助だと私は解釈しているんです。そういったような教育援助なども含めてこれは検討課題としてひとつ考えてごらんになったらどうかと私は思っているんですが、いかがでしょうか。
  67. 英正道

    政府委員(英正道君) 日本の経験についてお触れになられたわけでございますけれども、確かに国づくりの基本が人づくりということであるということはもう私ども十分認識しております。  経済・技術協力の実施に当たりましてはやはりその分野の協力という点については従来からも重点分野として努力しているつもりでございます。特に教育、御指摘のございました教育分野につきましても教育施設の建設でございますとか、教育器材の供与でございますとか、教育専門家の派遣というような形で各国の教育レベルの向上というものにつきましては積極的に協力してきております。しかし、松前委員御指摘の点につきましては私どもも全く同感でございまして、今後とも拡充ということで検討をさしていただきたいと思っております。
  68. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 午前の調査はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、休憩いたします。    午前十一時三十八分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  69. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  浜野外務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。浜野外務政務次官
  70. 浜野剛

    政府委員(浜野剛君) 開会前に一言ごあいさつさせていただきます。  このたび外務の政務次官に就任した浜野でございます。  これから、外務の先生方の御理解と御指導を得て、国会と外務省との連絡調整をやってまいりますので、よろしくどうぞ御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。     ─────────────
  71. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 休憩前に引き続き国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 広中和歌子

    広中和歌子君 広中和歌子でございます。  まず最初に自己紹介からさせていただきます。  私は、ことしの七月に参議院議員にならせていただいたばかりで、外務委員会出席するのもきょうが初めての体験でございます。私は決して外務の専門家であるから外務委員会に所属しようと思ったわけではなく、大いにこれからこの分野において勉強し、そしてさらに、私のかなり長くありましたところの海外体験が少しでもお役に立てばということで属させていただいたわけでございます。  そういうわけで、最初はこの会の雰囲気、委員会の雰囲気になじみ、そして徐々に質問をといったような心づもりでいたわけでございますけれども、昨日ですか、突然私に一時間という多くの時間を与えられ、そして質問をするようにということで、もうこれまでにない緊張を味わっております。ことに皆様方、本当にエキスパートの方を前にいたしまして、私の質問は非常にプリミティブ、非常に素朴なものであると思いますけれども、どうぞお許しを願いたいと思います。  私は長いこと海外におりましたんですけれども、一九五八年からずっとアメリカにおける日本人について考えてみますと、日本人の地位の向上というのは、もちろん本国日本経済的な地位の向上、その他さまざまなことが反映されて、海外における日本人の地位というのは向上したことは確かなのでございますけれども、しかしながら事アメリカに関します限り、黒人、プエルトリコ人たち、そしてもちろんアメリカの白人たちのいわゆる人種差別撤廃、そうしたことへの非常な努力、運動、そうしたものがありまして、その結果として非常に日本人、日系人、また在外日本人、アメリカにいる日本人がその恩恵を受けたと、そういったようないきさつがあるわけでございます。  そういうわけで、今、中曽根総理はこちらにいらっしゃいませんのにこのようなことを申し上げては大変恐縮なんでございますけれども、私はこのたび、総理のアメリカ人の知的水準についての御発言は、そうした在外の日本人の心情を代表いたしましても大変に残念なことだったと一言申し上げさせていただきたいと思います。その御発言がありましたときに倉成外務大臣はたまたまアメリカにいらしたわけでございますけれども、それをどのように受けとめられ、そして、一たん言われたことというのは、仮に弁明され、そして陳謝されましても、何かしこりとなって残るのではなかろうか。そうしたことを考えますときに、今後外務省としてはどのような御努力をなさっていこうとなさるのか、その御姿勢について伺いたいと思います。
  73. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいまの広中先生のお話でございますが、ちょうど私会議を終えましてアメリカを立とうとする前にいわゆる総理発言なるものを耳にいたしまして、これは御案内のとおり、今先生お話のとおり、非常にセンシティブな問題であり、また多民族が非常に融合し、そしていろいろな困難な問題を抱えながらもすばらしい社会をつくっているアメリカという国、この国に対して総理の真意はいかにあれ、非常にセンシティブな問題に触れられたと。そしてアメリカ人の心を傷つけたということを考えまして、この問題については早く対応しなきゃいけないという感じを持ちました。同時に、総理自身も率直にこの問題が非常にセンシティブな問題であった、不用意であったということで心からおわびをしたいという表現をされたわけでございまして、私も全く総理と同じ気持ちでおるわけでございます。  しかし、今お話のとおり、まだ大筋において議会筋その他関係の方で御了解をいただいたといたしましても、多くのアメリカの国民の中にはまだまだしこりが残っている、いろいろな問題があるということも考えられますし、ありますので、私はやはり松永大使以下関係の人たちに指示、訓令を発しまして、また毎日電話をいたしまして先方の状況がどういう状況かということの報告を受けるとともに、同時に一つ一つ丁寧に対応していくようにということを申し伝えておるところでございます。したがって、災いを転じて福となすと申しますか、この機会に私はこの問題を契機にしてこれらの問題に前向きに取り組んでまいりたいと思っておる次第でございます。
  74. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカにおける少数民族を対象とした日本側の特別の援助とか、それから何かプログラム、そういう計画はございますでしょうか。
  75. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 具体的にどうするという計画は今のところございません。しかし、お申し出もあったり、いろいろなまた御計画もあるようでございますから、それぞれよくお話を聞きながら検討さしていただきたいと思っておる次第でございます。
  76. 広中和歌子

    広中和歌子君 ヤングさんがお見えになりましたときに、何か具体的なお申し出みたいなのはあったんでございましょうか。前の国連大使です。
  77. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府委員の方からお答えしたいと思います。
  78. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) ヤング・アトランタ市長が総理にお会いいたしましたときに、今後ヤング・アトランタ市長、これは個人の考えと思いますけれども、できるだけ日本側アメリカの黒人との間での対話を強化していきたいという趣旨の話があったというふうに聞いております。
  79. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、今御説明いたしましたように、外務委員会は初めてでございまして、もう既に多くの問題が討議されたと思いますし、また午前中にもすばらしい御質問がございましたので、なるべく重なり合いを避けたいと念じているわけでございますけれども、知らないということのた めに重なる質問があることをお許し願いたいと思います。また午前中の質問で補足させていただくようなこともいたします。  冒頭に、倉成外務大臣には外交理念について御説明いただいたわけでございますけれども日本国際的地位にふさわしい責任役割ということを述べられたわけでございますけれども、もう少しその日本世界への貢献について具体的にお話しいただければと思うわけでございます。
  80. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御案内のとおり日本資源小国であり、東洋の一島国でございますけれども、GNPにおいては世界の一割を占めるに至りました。したがいまして、経済面で申しますと、これにふさわしい経済面における世界の諸問題について協力をしていく。特に日本国は平和憲法を持っておる国でございますから、そういう平和的な面において経済という問題を中心に協力をしていくということが一つでございます。  それから同時に、私は経済というのは一つ手段にすぎないということを先ほど申し上げたわけでございますけれども、やはり日本のやれること、アジアの国の一員として、一国として、日本アジアの中の国でございます。したがって、アジア国々と十分な理解、交流を図っていき、そしてその立場をまた世界方々にも十分お伝えするという役割も大事じゃなかろうかと思うわけでございます。しかし、考えてみますと我々と顔、形その他は大変似ておりますけれども、留学生の数をひとつ考えてまいりましてもASEANの留学生の数はアメリカヨーロッパあるいはオーストラリア、そういうところが多いわけでございまして、日本に対する留学生の数というのも非常に少ないということ、これはいろいろな原因があろうかと思いますので、御質問があればお答えしたいと思いますが、そういう問題も含めまして、さらにアジアとの連帯、交流、そして理解を深めながらやっていくということが一つの課題ではなかろうかと思うわけでございます。  そのほか、やはり日本は古い歴史伝統文化を持っております。したがってこの日本の我々の民族の誇るべき文化伝統歴史、そういうものを踏まえながらこれをひとつ十分世界方々にも知っていただく、相手の国のこともまた勉強さしていただくということでございます。その中で一つ私は特に考えておりますのは、国連での公用語、六カ国語が公用語で使われておるわけでございまして、これは人間の数、人口の数ということでいくのかと思いますけれども、できれば将来私は十年ぐらいの間に日本語が国際語として通用できるようなことができないものだろうか、世界各国の大学やその他に日本語講座が設けられて、それで日本語を勉強するようなそういうことができないだろうかと。現にブラジル等につきましては、ボランティアでかなりの資金がつくられまして、今そういう講座がつくられようとしておりますし、各大学にもまたそれぞれやられておりますが、それをもう少し組織的にやる必要があるんじゃなかろうか。また大量の留学生の交流というか、若人の交流ということをやはり考えていくことが必要ではないか。お互いに知り合っていく、相手の違いを知り合っていくということも大事なことではなかろうかということを考えておる次第でございます。
  81. 広中和歌子

    広中和歌子君 大変に結構なお話だと思いますけれども、海外からの留学生が日本に大変に少ないということの理由の一つといたしまして、まず、日本の新学期が四月であるということ。それに関しまして九月新学期も併用する。つまり入学時が二つあったっていいという考え方も例えばアメリカの大学などであるわけでございますので、日本の四月というのを変えられないのであれば四月と九月と両方にふやしていくといったような考え方が取り入れられるかどうかということ。  それからもう一つは、留学生がせっかく日本で勉強いたしましてもなかなか学位が取りにくいという問題、そしてさらには、せっかく学位を取りましても就職先の問題、それはもちろん本国に帰った場合のこともございますけれども日本で、就職したいといった場合の受け入れでございますけれども、そのことについてもちょっとコメントしていただきたいと思います。
  82. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 広中先生から大変適切なお話がございまして、私が日ごろから考えていることでございますけれども日本にやはり留学生が非常に少ないということの理由は、ただいまお話しの学期の始まりの時期の問題もあろうかと思いますが、そのほか宿舎等の問題もあろうかと思いますね。特に東京の住宅事情はなかなか留学生にとって費用もかかるし、また大変宿舎を見つけるのが難しいという問題もあろうかと思います。  それから学位を取りにくいという問題、これは大学の名前はちょっと私の所管でございませんから挙げにくうございますけれども、特定の大学でやはり学位をなかなかやらない。もちろん学位というのはそれだけの力がなくてやるべきものではないと思いますけれども、しかし、ある程度そういう留学生の方々が入学についてのハンディキャップを持っているわけですからそういうことも考慮し、またそういう学位というような問題についても配慮し、別にそれをいいかげんにしろとか易しくしろという意味ではなくして、外国の方の立場に立ってそういうものも考えていくということをやってしかるべきじゃないかと私は個人的に思っております。しかしこれは文部省の所管でございますから、私の個人の意見としてひとつお聞き取りいただきたいと思います。  それから卒業しました後のアフターケア、これは欠けております。日本で留学して仮に現地に帰りましても、あるいは日本に残りましてもなかなか外国人の就職については大変苦労というか難しい。風俗、慣習、労働条件等違う点があろうかと思うわけでございます。  実は、私はアメリカのある大学を出ました非常に優秀な学生を、日本のある銀行、しかも非常に国際的な感覚を持った銀行にお世話しようとしてお願いをしました。しかし、そういう国際的感覚を持った一流の銀行、今ニューヨークにも世界じゅうに支店を持っているところでもなかなかその人を採用するのについていろんな困難な条件があったものですから、私自身五回ほどその銀行に自分自身で、もちろん外務大臣になる前の話でございますが、足を運びましてやっとその学生を就職させることができまして、今ニューヨークの支店で仕事をしております。そういうことで確かになかなか就職が難しい。それから日本で医学を勉強しましてもなかなかそういう後のケアが難しいということもございます。  したがって、できれば私の希望としては、日本に留学した人について日本の企業がひとつある程度雇用する。それを義務づけることができるかどうかは別として、そういうようなことまで考えるというくらいの配慮がこれから国際国家の日本としては大切じゃないだろうかと思っております。しかし、これはもう全く私個人の意見でございまして、外務省の公式見解でもございませんし、また文部省等関係省と相談しなきゃならないこともたくさんございますので、せっかくのお尋ねでございますから率直に申し上げた次第でございます。
  83. 広中和歌子

    広中和歌子君 本当にありがとうございました。  日本から多くの留学生がアメリカに参りまして、その後現地の会社に就職ができた、そしてその体験を持って日本に帰ってきてまた日本で働く、そういうようなことが非常にいい交流につながったんではないか、そういうことを思うにつけましてもぜひ実現させていただきたいというふうに思うわけでございます。  外国人の就労につきましてでございますけれども、ビザの点で何か難しい点がありますでしょうか。その点についてお伺いしたいんでございますが、労働省または法務省いかがでしょうか。
  84. 大久保基

    説明員(大久保基君) お答えいたします。  今先生が御質問になられました点につきましては、現在我が国におきましては、いわゆる単純労働者のカテゴリーに属する外国人の稼働のための 入国は原則として認めておりません。他方、日本人で代替することが難しい特殊な技能、技術または専門的な知識等を有する外国人につきましては、その必要性を個々に検討いたしまして入国の許否を決定しているところでございます。
  85. 広中和歌子

    広中和歌子君 その個々に検討ということでございますけれども、その難しさというのは比較しにくいだろうと思いますけれども、諸外国と比べてどのようなものなんでございましょうか。例えば今まで日本の会社に就職はできたけれども、ビザの点で働くことが不可能だというようなことはあったんでしょうか。またはその基準でございますね。
  86. 大久保基

    説明員(大久保基君) ほかの国と比べて日本の就労が難しいかどうかということはいろいろな見方があるかと思われます。  先ほど倉成大臣からも御説明がありましたけれども、やはりこれは私どもがこの企業へ就職するということを指示するということではございませんで、各企業が各社の御判断で外国人を雇用するかどうかということをお決めになる問題でございます。私どもは、そういう決定をなされた会社からこういう外国人を雇いたいんだがというお話がございましたときに、例えばその会社の規模であるとか、それから外国との取引の状況とかそういうことをいろいろ考えまして、その上で当該の外国人が先ほど申しました基準、すなわち日本人で代替することが難しい技能を持っているかどうか、そういうことを基準といたしまして入国の諾否を判断するわけでございます。
  87. 広中和歌子

    広中和歌子君 これまで物の摩擦というんでしょうか貿易摩擦があったわけでございますけれども、これから先予想されることは人的交流の摩擦ということ、そういうことが問題になるんではなかろうかと恐れているわけでございます。こんなことを言っては大変失礼でございますけれども貿易に関しましては対応が後手後手に回ったというようなことも多少言えるんではないかと思いますけれども、人的交流に関しましては、いわゆる国際的なスタンダードの中でフェアな対応というのが必要ではなかろうかというようなことを思うわけでございます。  それにつきましても、関西新空港、そのほか東京湾横断道路、成田第二期工事などに関しまして、外国の入札ですか公開入札、外国企業の入札参加が非常に話題になっているわけでございますけれども、これはアメリカからの要請でこういうような方向に動きつつあるのではなかろうかと思いますけれども、結果といたしましてアジアの諸国、なかんずく例えば韓国などは建築の部門で非常にすぐれた仕事を東南アジア各地で、韓国以外のところでもしているわけでございますけれども、そうした企業が仮に参入するというようなことになりました場合に、つまり日本の単純労働者だけではなく現地の労働者というのか本国の労働者を使って作業をしたい、入札の見積もりなどもそうした安い労働力を使っての見積もりであるといったようなことになった場合の対応、大変先のことでございますけれども、どのようなものになるのかお伺いさせていただきたいと思います。
  88. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 今の先生のお尋ねの点でございますが、労働省といたしましては幅広い意味で外国人労働力の受け入れ問題をどのように考えていくべきかということで、従来対応してきておるわけでございます。  その際、外国人労働者あるいは外国人労働力と申しましても、いろんな方がおられるわけでございまして、貿易のために来られる方、あるいは事業活動でやってこられる方、長期商用者というような方、あるいはまた先ほど法務省の方からもお話ございましたように日本人では代替できないような技能、技術を持ってこられる方、こういったような方につきましては法務省の方で審査をしていただくということで、個別ケースごとに考えていただくということになっておるわけでございます。  ただ、量的な意味での非常に大量の労働力、これは主として言ってみれば単純労働力と言えようかと思いますが、こういうふうな人たちにつきましては、これをどうするかということでは原則的に我が国はこれを受け入れないということで、従来も対応してきたという経緯がございます。これは、雇用対策基本計画というのをつくっておりまして、閣議で決定していただくわけでございますが、こういったようなものを決定する際にも、外国人の単純労働者は受け入れないことを原則としていきたいという旨労働大臣から発言し、了解をいただいているということがございます。  現在、私どもはそれじゃそういうことをどのように考えていったらいいのか、今後に向かってということでございますが、基本的には私ども当面は現行の取り扱いによって十分対応できるのではなかろうかと思っております。  それからまた、現在の我が国の雇用情勢というものを考えてみますと、かなり情勢は厳しくなっております。昨今の円高の影響等により、経済活動が割合停滞している、そういうことを受けまして雇用情勢が非常に深刻になってきている、また、中長期的に労働力の需給という問題を考えてみましても、これは、我が国内で完全に労働力が有効に生かし切れるということに持っていくには、なかなか大変だという基本的な考え方を持っております。したがいまして、中長期的に見ましても、やはり単純労働者につきましてはこれを受け入れないという従来の方針を堅持していくことが必要なのではなかろうかというふうに、労働省といたしましては考えております。
  89. 広中和歌子

    広中和歌子君 諸外国、特にフランスとか西ドイツなどでは単純労働者を入れまして、そして今、不況の中で大変困っているわけでございますけれども、また、アメリカども移民を抱えて雇用問題ではいろいろ苦労しているわけなんでございますけれども、そういう中にありまして、日本の今までの労働省の御選択というのは大変賢いものであったというようなことも一方では言われるわけでございますけれども、それは国内で通用することであって、諸外国からのプレッシャーみたいなものはないんでございましょうか。例えば日本は単一民族、そして他民族に対して閉鎖的であるといったような評判、そういったものに対してどういうような姿勢をとられていくのか、外務大臣にお伺いいたします。
  90. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今労働省の方からお答えいたしましたように、極めて非常にデリケートな問題だと思います。  それは、御指摘のように、基本的には広中先生の御意見に私も賛成でございますけれども、御案内のとおり、カリフォルニア州一州に匹敵するようなところに一億二千万の人が住んでおるわけでございまして、これらの人たちが生活の場を求めているわけでございまして、この人たちがどこかに行って働くというチャンスがあればまた別でございますけれども、それがない限り、ほかの道を閉ざすという意味じゃなくて、現実の問題としてなかなか入ってこられるということが非常に困難な状況にあると思います。しかし、いろいろな特殊な技術を持ったり、あるいは特殊なそういう才能を持った方たちが、公平な参加のチャンスを持たれるということは十分考えていくべきだと思うわけでございます。
  91. 広中和歌子

    広中和歌子君 この問題に関しましては、どうも御答弁ありがとうございました。  それから、SDIにつきましてはもう既に多くの方がお尋ねなさったわけで、けさも問題になったわけで、多少の重なりがあるとは存じますけれども、私の考えを含めまして御質問させていただきます。  本会議、予算委員会などにおきまして野党側がいろいろ質問いたしたわけでございますけれども、総理のお答えは何か核心から外れ、国民側に納得がいかないようなものが残っているんではないかと思います。  まず、このSDIの構想における政府の御見解というのは、SDIは非核の防衛システムであり、究極的には核兵器の廃絶を目指すというものでございますけれども、その根拠についての御説 明は率直に言ってなされていないんではないか。つまり、レーガン大統領の説明をそのまま素直に受けとめていらっしゃるんではないかというような印象があるわけでございます。  SDIの構想につきましては、ソ連が宇宙軍拡として非常に反対しているわけでございますけれどもアメリカの国内においても、先ほども御指摘がございましたように、さまざまな意見があるんではないか、そういうふうな気がいたします。そういう中で、私は、アメリカの議会の反応でございますね、投票の記録というものがございましたらばお示しいただければありがたいと思うわけでございます。特に、この秋の中間選挙もございまして、また議席の数が変わったりというようなこともございますものですから、そのような多少長期的なアメリカのSDIに関する議会における動きみたいなものを知り得たらよろしいんじゃないかと思うわけでございます。
  92. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま広中先生お話しのとおり、アメリカの国内においてもかなり反対の意見がある。またヨーロッパの諸国においても日本の国内においても相当の反対の意見があるということもよく承知をいたしております。アメリカの国民がどう考えているかという問題について、ギャラップとかその他の調査というのは今のところ私の知る範囲ではございません。  ただ、御案内のとおり、アメリカ国会におきまして、SDIと関する全体計画は二百六十億ドルに対して、八五年度で十四億ドルの予算をつけました。それから、八六年度は二十七億五千万ドルの予算を議会で可決をいたしたわけでございます。来年度については政府の要求を若干削るという動きがございますけれども、いずれにしましてもアメリカの国民を代表する国会でこれだけの予算をつけたということは、やはりアメリカの国民が、その一人一人の御意見はそれぞれあるかもしれませんけれどもアメリカの国民を代表する国会がSDIの研究というものを是認したと、こういうふうに理解をしておるわけでございます。
  93. 広中和歌子

    広中和歌子君 その投票は絶対多数といったようなものだったんでしょうか、それとも非常に僅少差であったんでしょうか、おわかりになりましたら。
  94. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 例えば、本年八月十二日、下院本会議でべネット民主党議員の修正動議、SDI予算を八七年度でございますけれども、二十八・五億ドルに減額修正するという動議でございます。これが下院で二百三十九対百七十六で可決されておりまして、したがいまして二十八・五億ドルにするという動議が可決されております。
  95. 広中和歌子

    広中和歌子君 五年計画で二百六十億ドルということでございますから、五つに割ることもないかと思いますけれども、非常に割り振られている予算が少ないような気がいたしますけれども、そういうようなところでもアメリカ人のSDIに対する、何というんでしょうか、不確かな反応をあらわしているんではないかと思うんでございますけれども、いかがでございましょうか。
  96. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今お話しのとおり、確かに多くの予算をつけることについて国会が修正を行ったということは、今政府委員が答弁したとおりでございますけれども、結果として少なくともSDIの予算を八五年、八六年は既につけた、八七年についてもそういう結果を出しておるという事実は、やはり重みとして、国民を代表する国会がそういう選択をしたということは、私はそれだけの意味を持っておると思うわけでございます。
  97. 広中和歌子

    広中和歌子君 中曽根総理は、参加決定の理由の一つとして、SDIをアポロ計画と対比され御説明されているわけでございますけれども、つまりアポロで得られた民間レベルにおける技術の波及効果ということ。それは確かにアポロ計画に関しましては、エレクトロニクスとか通信技術とか素材産業その他さまざまな分野での進歩が見られたということは十分知られていることでございますけれども、アポロとSDIの根本的な違いというのは、アポロは平和利用を目的とするものでございますし、一方、SDIの場合には軍事目的である。軍事目的といった場合に、どこまでが、どの研究が軍事目的としてクラシファイされるかどうか、規定されるかということが非常にデリケートな問題ではなかろうか。  そこで、多くの科学者が、物理学者などがおそれておりますことは、軍事目的という理由をつけられて、自由にさもなければ使えるであろう研究成果が使えなくなるんではないか。つまり、そういう点では科学技術の進歩に反対な、マイナスの効果があるんではないか、そのような心配がされているわけでございますけれども、それについてお伺いいたします。
  98. 倉成正

    国務大臣倉成正君) SDIについては、先ほどもお答えいたしましたとおり、科学者の中にも賛成の方もございますし、また反対の方もあるということは御指摘のとおりでございます。  そこで、ただいまアポロの計画について御言及になりました。現在の平和は、御承知のとおり、核の報復力の脅威によって抑止を図るという相互確証破壊戦略、MADによって、これを前提とした、余り使いたくない言葉でございますけれども、恐怖の均衡という、そういう形で平和が保たれているというのは現実でございます。これに対しましてSDIは、米国がたびたび明らかにしたように、このような相互確証破壊戦略から脱却して、高度な科学技術の力を結集して、非核の防御システムによって弾道弾を無力化して、究極的には核廃絶を目指して行う研究計画であるということでございまして、私はこの計画の実現の可能性を含めて研究に参加するというところに意味があると思うわけでございます。  確かにアポロ計画を計画したときに人類が月に到達したいという夢、これは子供も、お月様で何をしている、おもちをついているんだろうかというようなお月様に対する夢というのはあったと思うわけですが、御案内のとおり月までの距離は三十八万キロでございますね。今レーザーで光の速度は一秒間に三十万キロです。もちろん大気圏の場合は別ですけれども。そういうことを考えてまいりますと、やはり月だって下手に利用しますと一つの軍事的に利用される可能性もあり得るわけでございますね、そういうことをもし将来考えようとすれば。  ですから、私はやはり物事というのは本当に難しい両刃のやいばがあり、汎用技術と軍事技術とどこで区別するかという問題があろうかと思うわけですけれども、SDIの計画の五分野、SATKA、それからKEWすなわち運動エネルギー、それから指向性エネルギー、DEW、また残存性の問題、破壊力あるいはシステム・アーキテクチャーというような分野その他あると思いますけれども、こういった分野の中の一つの分野、いわゆる指向性エネルギーの中でエックス線レーザーというのがございまして、これはもう御承知のことで申し上げるまでもないことですが、これが核の爆発、核エネルギーを利用しているんじゃないかというのについて議論がされておると思うんです。しかし、これは全体の中の一部分であって、それはソビエトの方がこれについていろいろな研究、こういうものをもし使うとしたらどういう対応があるだろうかということで研究されるということになれば、全体のごく一部分にすぎないわけでありますから、SDI研究計画そのものとしては、私は非核のそういう究極の平和の目的を追求するものだと、さように理解しているわけでございます。
  99. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカの場合でございますけれども、軍事関連研究であれば研究費が出るというようなことで、特に大学などで経済的に逼迫状態がありましたときに、多くの科学者が民事的な研究を離れて軍事研究に携わるというようなことがあったわけでございます。そういうようなことが日本でも起こらないようにということを願うわけでございますけれども、少なくとも今の段階におきましては政府が直接軍事のための研究費をお出しになるというようなこと、それからまたそのための予算をおつくりになるというようなことは 現段階ではございませんか。
  100. 倉成正

    国務大臣倉成正君) SDI研究計画に関して、新しい予算を組むという計画はございません。
  101. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  ODAについて、先ほど既にJICAの汚職の問題に関しまして、どこに原因があるか、そしてどういう対策をとられているかという御質問があり、今お答えがあったわけでございますけれども、私的懇談会のお話がございましたね。それは既にどの程度具体的になっているのか。  それからもう一つ、受注企業公表というようなことも出ておりましたけれども、それは九月十三日付の読売新聞でございます。具体的に何かしているんでしょうか。
  102. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 第二段のことは私実はまだよく承知しておりませんので、もし政府委員の方でわかればお答えしたいと思います。  ODAの問題につきましては、実は懇談会というほどのものではございませんが、有識の方々、やはり内部でいろいろ幾ら知恵を絞っても、やっぱり岡目八目と申しますか、かなり見識を持った方が外から見ると、どうもおかしいじゃないかとか、こうしたらいいじゃないかというような御意見がきっと出てくるということで、私は既に一回ほどそういう会合を持ちました。  結論的なものは出ておりませんが、私が特に印象に残ったその中での発言は、まず第一に使命感を持つことだということ。それから、モラルをしっかり高めること。それからまた、技術的には例えば専門性と、なれた人が長いところに一緒におれば便利であるに相違ないけれども、幾らなれておってもやはり長くその場におるといろいろ問題が起こるから、そういう人をある程度の時期には異動させるとか、その他有益な意見が出ました。そういうことをいろいろ参考にさせていただいて、思い切った機構の問題についてもひとつ検討しようと。もちろんJICAの内部においても総裁以下懸命に今いろいろ研究をしておるわけでございますが、外の意見もまた謙虚に耳を傾けたいと思っておりますので、広中先生も何か特別御意見がございますればひとつごちょうだいできれば幸いと思います。
  103. 広中和歌子

    広中和歌子君 JICAを初めODAに関する予算というのは毎年非常にふえているわけでございますけれども、それに伴いまして、つまり人間の数なんて失礼な言い方でございますけれども、働く人の数もふえているんでございましょうか。人手不足とか、そういうようなことはございませんでしょうか。
  104. 英正道

    政府委員(英正道君) 国際協力の実施機関の国際協力事業団につきましてお答え申し上げますと、事業団は現在九百七十名でございます。ちょうど十二年前の人員が九百九十四名でございましたので、設立十二年の間に三十四名減というのが実情でございます。
  105. 広中和歌子

    広中和歌子君 その間にOA機器その他省エネの御努力みたいなもので助かるといったようなことはあったんでございましょうか。
  106. 英正道

    政府委員(英正道君) 基本的に十二年前に国際協力事業団ができましたときに、技術協力をやっております事業団、それから移住を担当しております事業団、そのほかの機関を合体したわけでございますが、御案内のように、移住事業というものが戦後日本が予想したほど多数の移住者が出て行かないというようなこともありまして、移住関係の要員を国際協力事業団の中で、ほかの急速に拡大する部門、例えば無償協力の実施というような部門に移すという努力を鋭意行いました。それから、御指摘のように、合理化でいろいろなOA機器の導入でありますとか、そういう実施の面での合理化を図るということで対処してきたわけでございます。
  107. 広中和歌子

    広中和歌子君 審査機能を何かもっと確立するべきだといったような御意見が出ておりますときに、首相の御答弁、これは正しいかどうかわかりませんけれども相手国の主権を考慮しなければといった御発言があったように伺っておりますけれども、これはどのように受けとめたらよろしいんでございましょうか。
  108. 英正道

    政府委員(英正道君) 広中委員御指摘の総理の御答弁、ちょっと手元にございませんので、一般論という形になるかと思いますけれども日本経済協力は、基本的に開発途上国の開発のための自助努力を支援するという形で行われているわけでございます。したがいまして、日本から供与されます資金協力も、相手国が主体となって行う事業に、資金を相手国政府に供与するという形になっているわけです。いわば相手国が主体的に経済発展を行うというものを側面から支援する。したがいまして、当然相手の国の立場、権利というようなものは尊重されなければならない。そこで、日本が関与すべき点にはおのずから限界がある、こういうことで、従来から国会で御答弁申し上げておりますけれども、例えばそういう関連で、相手の国の援助の実施機関に対し、日本が会計検査をするというようなことは不適当である、こういうふうに申したことはございます。
  109. 広中和歌子

    広中和歌子君 ちょっと関連いたしまして、援助のあり方で、タイド、アンタイドというのがございますけれども、私がある会議に、環太平洋会議日本経済新聞の主催だったと思いますけれども、それにちょっと出ましたときに、発展途上国が最も求めているのは日本からの技術移転であるというようなことでございました。確かに相手国要請を主体として、相手の主体性を尊重し自助努力というようなこともわかるわけでございますけれども、これはまた別のところから聞いた話でございますが、技術移転というようなことを考えますときに、やはり日本の企業、日本の人材、そうしたものが現地で働く、現地の人々と一緒に働くといったような形も非常に好ましいんではないか。それであれば、また長期的にアフターケアもできるんじゃないかというような意見が出たわけでございますけれども、相手の要請が主体といったような場合に、お金の使い方というのは、我々の税金でございますから、非常に有効に使われたい、そして少々問題があっても長い目で見て日本が感謝されるような形で使われたいというようなことを望むわけでございますけれども、そのことについてちょっとコメントをしていただければありがたいと思います。
  110. 英正道

    政府委員(英正道君) 広中委員のおっしゃることに基本的に賛成でございます。  それで、現実に経済協力、技術協力、非常に広範な活動が行われておりますので、ここで余り一般的な言い方はなかなか難しいんでございますけれども、例えば技術協力の場合に、やはり技術移転をするという観点ではプロジエクトタイプの技術協力、これは現地に研究機関であるとか研修機関であるとか、そういう場を設けまして、そこに日本から専門家に行っていただき、それから機材を供与するとか、場合によってはその施設の建物を建造するということを行いまして、それで現地の要員の方にカウンターパートになっていただきまして、この方々に技術移転をなるたけ早く行って、そして相手国に引き渡して、その後は相手の国の中のそういう施設として運用してもらいたい。こういう形でやるタイプの技術協力がございます。ただ、問題はなかなか、国にもよりますけれども、思うように急速な技術移転が先方のカウンターパートに行われないで、当初の予定よりも延長するというようなことも起きておりますけれども基本的に技術移転というのは、相手の国の要員に技術が移転しなければ意味がないと思っておりまして、そういうような配慮はできる限りしてきたつもりでございます。  それから、お差し支えなければ先ほどちょっと答弁漏れがあったんじゃないかと思いますので、日本の企業の名前を公表することについて、新聞の記事の関連でどういうことであるかと。これは、先般のいわゆるマルコス疑惑のときの論議がございました。政府としても適正かつ効果的、効率的な援助の実施のためにいろいろな措置をとるということで引き続き鋭意検討しておるわけでござい ます。  それとともに、日本経済協力の実態について、国民にもっとよく御理解をいただくというためのやはり努力をもう少しすべきではないか。現地では——けさも倉成大臣から御指摘がありましたように、専門家の方であるとか、青年協力隊の方であるとか、大変いろいろ活動に従事されているわけでありますが、必ずしもその実態がよくわかっていないというようなことがあるんじゃないかということで、こういう努力をする一環としてやはり企業名の公表というような問題も含めて幅広くいろいろ検討を進める必要があるんじゃないかということを感じております。倉成大臣からもそういう面で何かできないかという御指示もいただいておりまして、現在検討しているところでございます。
  111. 広中和歌子

    広中和歌子君 これで私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  112. 立木洋

    立木洋君 大臣に、御承知のように、去年の一月の八日にシュルツさんとグロムイコさんが会談されて共同声明が発表になった。これからの交渉が最終的には核兵器の完全廃絶に至るということを確信するということで、三つの分野に分かれて交渉が開始されたわけですが、これまでの間に六ラウンドにわたって交渉がやられてまいりました。一つのラウンドが三つの分野に分かれて、それぞれ約一カ月半交渉されてきたというわけですから、相当の時間を費やされているわけですけれども、現実には明確な形で見るべき成果がまだあらわされていないという状態ですね。  この米ソ交渉が行われている間でも、言われているように一日六個に上る新しい核が配備されているという状況が進行しているわけですし、とりわけ海洋における核の配備というのは大変な状態になっているわけですね。これはソ連の事故にしても、あるいはアメリカの海洋上における原潜の事故等にしてもこれは大変な問題ですし、こういう一方で、交渉が十分な成果が上げられていない。しかし、その状況の中でも依然として軍拡が進められている。とりわけ海洋ですね。海洋国である日本としては核に囲まれる状態にまでなるというふうな大変な状態になるわけですから、こういう現状を大臣、どのようにお考えになっておられるのか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  113. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今立木委員からのお話でございますが、米ソ間の軍縮、また軍備に関する、特に核兵器に関する交渉がたびたびの会談にかかわらず、ある場合には少し進んだかと思うと退いたり、デッドロックに乗り上げたり、また先般のダニロフの問題を契機としてしばらく中断したりいろいろな経過がございます。  御指摘のとおり、もう細かい経過は専門家の先生ですから省略をいたします。しかし、いずれにしましても今アイスランドで、世界の人の注目の中で両首脳会談が、予備会談という形で行われて、各種の問題が話されようとしているわけでございます。したがって、私といたしましては、アメリカ側に対しましては速やかにその情報についてはひとつ日本側にも通報してほしいということを要請しております。またあらゆるチャネルを通じてこの会談の模様の情報を見守っておるというのが現状でございます。成功を祈っているということでございます。
  114. 立木洋

    立木洋君 米ソ交渉というのは、世界の最大の核保有当事国ですから、これの交渉自体が極めて重要な意味を持っているということは私も否定しませんけれども、しかし、核を保有していない我が国としても当然しかるべき努力がこれにおいて図られるべきではないかということも感じるわけです。  先般、戦艦ニュージャージーが日本に来た際、これが一つの大きな問題になりまして、大臣は直接マンスフィールド大使を招致されて申し入れをなさったということですが、このときには大臣がどういう目的でどういう点をマンスフィールド大使にただされたのか、その内容について、新聞は見たんですけれども大臣から直接お聞きしたい。
  115. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私ちょうど着任をいたしまして、マンスフィールド大使にニュージャージーの入港という話を聞きまして、御案内のとおりトマホークの問題がございまして、ニュージャージーがトマホーク問題についての、いわゆる核搭載能力を持っているということは伺っておったわけです。しかし、御案内のとおり八月十四日にちょうど在京の米大使から、ニュージャージーが乗組員の休養とレクリエーションのために八月二十四日から九月二日に佐世保に入港する予定だ、十八日にこれを公表する、そういう内報があったものですから、私はニュージャージーの寄港が具体化したことを踏まえまして、八月十六日に外務省にマンスフィールド大使を招致いたしまして、近年米国の抑止力維持強化努力の一環として新たな装備が進められている。特にかかるものの象徴として、戦艦ニュージャージーの本港の寄港との関連で、日本に核兵器が持ち込まれるかもしれないという懸念が国会等で表明されていたことにかんがみまして、私も予算委員長でいろいろ予算委員会の論議等を聞いておりまして、このような懸念を将来にわたって払拭したい、そういう観点から核持ち込みについての事前協議制度について、これは交換公文があることは御承知のとおりでございますが、確認を行った。  その際、私はマンスフィールド大使に対しまして、日本国民の中には核兵器に関する特別の感情が存在することを紹介いたしました。また、私も被爆地の長崎の出身であることもその際に申しました。したがって、日本政府としては非核三原則を引き続き堅持する。また、国会における答弁を含め、多くの場において米国政府が事前協議の枠組みの中で核持ち込みについて許可を求めてきた場合においては、政府としては非核三原則に従って対処する旨明確にしてきたことの説明をマンスフィールド大使にいたしました。さらに、戦艦ニュージャージーについては、これまでの国会論議を紹介しつつ、戦艦ニュージャージーの本港寄港についても、日本政府としては安保条約及び関連取り決めに従って厳格に対処する所存であるということを明らかにした次第でございます。  念には念を入れてということで、私も就任し、そういうことがございましたので、マンスフィールド大使に日本政府立場を伝えたわけでございます。これに対しましてマンスフィールド大使は、米政府は核兵器に関する日本国民の特別の感情を十分理解している旨述べられました。また、核の存否につき肯定も否定もしないというのが米政府の一貫した政策であることを指摘しつつ、米政府としては安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対する義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き誠実に履行する旨保証された次第でございます。  これが以上の経過でございます。
  116. 立木洋

    立木洋君 そこのところでちょっと突っ込んでお聞きしたいんですが、今大臣が言われた核の持ち込みに対しては事前協議の制度があるということを確認されて、事前協議がかけられた場合には御承知のように非核三原則で対処しますということを言われたわけですが、今回寄港する戦艦ニュージャージーに、核兵器は積んでありますか積んでいませんかということは、大臣、直接お尋ねになったんでしょうか。
  117. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 事前協議制度というのは、もう立木委員御承知のとおりあるわけでございますから、事前協議がない限りにおいては、私は日米の取り決めに従って対処しておるわけでございますから、それ以上のことを、日米安保条約というのは相互の信頼関係に基づいて成り立っておるわけでございますから、私はその必要はないということを考えておる次第でございます。
  118. 立木洋

    立木洋君 大臣も御承知のように、この問題は長い間の議論の経過がありまして、その事前協議の制度そのものが成り立っていないのじゃないかというのが私たちの見解で、ですからそこをやはりもう一歩突っ込んで核の存否そのものを確かめないと、本当の意味では確認されたことにならな いんではないかということがあるものですから、念のために、この問題を議論を蒸し返すつもりはありませんけれども一応お尋ねしておいたわけです。  それで、そのように尋ねられて大臣は、なるほど確かに戦艦ニュージャージーには核兵器を積んでいないということを確信されましたか。
  119. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 先ほどお答えしたとおりでございます。
  120. 立木洋

    立木洋君 嫌な質問かもしれませんけれどもぜひお聞きいただきたいんですが、実は先ほど言われましたように、マンスフィールド大使が、アメリカの政府としては核の存否を否定も肯定もしないというのが一貫した政策だというふうに今回も返事されたわけですね。だから核の存否を否定も肯定もしないというのが政策であるならば、核の存否を明確にして事前協議を申し込むというようなことがあるでしょうか。核を積んでいますから事前協議を申し入れますというふうなことを、アメリカがやってくるというふうに大臣考えでしょうか。
  121. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 事前協議制度の取り決めに従って、重大な装備の変更という場合には必ず協議があるはずでございます。したがって、その協議がなければ、私の方としては相互信頼に基づいて安保条約というのはできておるということを踏まえておるわけでございますし、また、核の存否を明らかにしないというのが米国の立場でございます。これは戦略上の問題もあろうかと思いますので、立木委員は十分もうそのことは御承知の上で御議論されておるわけでございますが、立場が違うということだけはっきり申し上げておきたいと思います。
  122. 立木洋

    立木洋君 やはり大臣もよくお考えいただけるとあれだと思うんですが、核の存否を明らかにしないというんですから、一貫して明らかにしないというのが政策だというんですから、核の存否を明らかにして、これには船に核を積んでいますが、事前協議の制度にかけるというようなことはこれはあり得ないだろうと思う。  ですから、考えてみますと、やはりこれは矛盾であって、核の存否を明らかにしないということが政策である限り、いわゆる事前協議の制度というのは実際には成り立たない制度であるというふうに私たちは考えるんです。  それで、次に去る七月三日にアメリカの国務省が声明を発表したのを大臣はごらんになったことがありますでしょうか、ニュージーランドの核積載艦寄港の問題についての声明。——ごらんになってなかったらちょっと私簡単に読み上げますが、アメリカの国務省が七月三日に、ニュージーランド政府によるアメリカの核積載艦寄港拒否に関する発表に対して行ったこの声明では、「他の同盟諸国は、このあいまいさの必要な認めており、どこの国も個々の艦船について核の有無を判定しようとは考えていない」ということが国務省の声明の中であるわけですね。そうすると、ここで言うこのあいまいさというのは、つまり核の有無を肯定も否定もしないということのこのあいまいさですね。だから、倉成大臣はいわゆる「他の同盟諸国はこのあいまいさを認めており」というふうに国務省が声明を発表しているんですから、日本もその他の同盟国に入る。そうすると、日本としてはいわゆる核も非核も、核の存否はこれの有無を明確にしないというこのあいまいさ、事前協議がない限り核が存在しないというふうに判断するという、こうした立場に固執するいわゆるあいまいさですね、倉成大臣もそういうあいまいさという立場をとられておるんでしょうか。
  123. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 核の存否を明らかにしないというのは戦略上の問題だと思います。したがって、この問題についてもう少し詳しくということになれば、少し政府委員の方から御説明申し上げたいと思います。
  124. 立木洋

    立木洋君 いや、政府委員の方と私は何回もやっていますからね、もうわかっているんですよ。それで、新しく着任されました大臣にお考えを聞きたいので、改めて聞いているわけです。
  125. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 戦略上の問題だと思います。したがって、そういう立場アメリカはとっておると思います。
  126. 立木洋

    立木洋君 結局、この問題でも、核を積載することが可能な艦船の寄港問題をめぐってニュージーランド政府が拒否した。それに対してアメリカの国務省が発表した。その中で、同盟諸国がこのあいまいさを認めている、あいまいさの必要を認めているということは、核の存否を明らかにしないというアメリカの核戦略、それが必要だということを認めている。必要だということを日本政府もやっぱり認めている、核の存否を明らかにしないという政策を認めているというふうに解釈していいんですか、その核戦略という意味では。
  127. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 一言大臣が申し上げたことを補足して申し上げたいと思いますが、大臣がただいま戦略上の要請だと思うということを申し上げましたのは、要するに、具体的なケースについてこの船は核を積んでおるとか積んでいないとかということがわかれば、核の抑止力という観点から、その抑止力というものが効かなくなるという意味においてそういうことを明らかにすることはできないというアメリカの戦略は、それなりに理解ができるということを申し上げたわけでございます。  他方、立木委員御承知のとおり、ニュージーランドがとっております現在の政策というのは、核があるかないかわからない、そのことがはっきりしない、逆に言えば、核がないという船以外は入港を認めない、こういう立場でございますから、そういうことから言えば今のアメリカの戦略とそこが真っ向から背馳することになるというアメリカ考え方は、アメリカ立場からすれば理解できるところであるというふうに申し上げられると思います。  我が国の場合につきましては、先ほど来大臣が申し上げておりますように、事前協議の制度というものがあって、その制度というものなアメリカは忠実に従来も履行してきたし、これからも履行する、こういうことを言っているわけでございますから、その限りにおいてそういう個々のアメリカのとっております戦略上の政策の問題とは別に、日米安保条約及び関連取り決めに基づく国際法上の約束として、アメリカはそれはきちっと履行しますということを言っているわけですから、それを信頼して日米の安保体制というものを維持していくのが日本考え方である、こういうことを申し上げているわけでございます。  先ほど立木委員から、そうは言っても、明らかにするかしないかということがはっきりしていない以上は、この約束というものが履行できないということになるのではないかというお尋ねがございましたけれども、これは立木委員御承知のように、従来からアメリカがはっきり言っておりますのは、そういう政策アメリカはとっておるけれども、他方、アメリカでは、日米安保条約に基づく事前協議に関する約束を、履行することを禁止したり妨げたりするようなアメリカの国内法は一切存在しません、こういうことを言っているわけですから、国際条約に基づく約束はきちっと履行できる、こういうことをアメリカとしてはここに確言しているわけであります。
  128. 立木洋

    立木洋君 局長、それ以上突っ込んだ議論もあなたとの間ではやってきましたから、これを繰り返しても同じなんですよ。ですから、私はもうあなたが答弁される内容は全部わかっているわけだけれども大臣にお尋ねしたかったわけで……。  今のお話大臣にこの問題もう一つ。核の存否を明らかにしないというアメリカ政策、戦略を、日本政府としては理解しているということと、核の存否を明らかにしなければならない事前協議の制度というのは、大臣、矛盾しないでしょうか。
  129. 倉成正

    国務大臣倉成正君) もうただいま政府委員から御答弁したことで尽きると思います。
  130. 立木洋

    立木洋君 これは、私が先般予算委員会でお尋ねしたことなんですけれども、神戸市で非核都市宣言をやりまして、御承知だと思いますけれど も、一九七五年の三月。それから以後、神戸市では外国の軍艦が神戸の港に入る場合には、この軍艦には核兵器を積載しておりませんという非核証明書を出して初めて神戸の港に入港できるという制度が神戸市でとられたわけですね。中曽根総理に聞きまして、この制度は、それは神戸市でやっていることですから、それはそれなりに私たちとしては判断、考えておりますというふうに言って、これをやめさせろだとかなんとかというようなことは中曽根さんも言いませんでしたけれども、そのようにやるまでの間、アメリカの軍艦は地位協定のもとで神戸港に四百三十二隻軍艦が入っていたんですよ。ところが、非核証明を出さなければならなくなった一九七五年以降今日まで十一年間たっていますけれども、ほかの国の軍艦は神戸の港に入っていますが、アメリカの軍艦はただの一隻も神戸の港に入っていないんですよ。この事実は大臣、どのように判断したらいいでしょうか。
  131. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府委員から。
  132. 立木洋

    立木洋君 いや、もういいよ。大臣のお考えをひとつ。
  133. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 推測でございますけれども、それはアメリカのNCND政策、すなわち核の存否を明らかにしないという政策上、当然のことかと思います。
  134. 立木洋

    立木洋君 なかなかいい答弁をしましたね。だけれども、それは事前協議の制度というのは、核の存否を明らかにしなければならない制度でしょう、事前協議の制度というのは。藤井さん、どうですか。事前協議の制度というのは、核の存否を明らかにしなくていい制度なのか、しなければならない制度なのか、その点だけをお答えください。
  135. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) 先ほど条約局長からも御答弁申し上げましたように、事前協議の制度におきまして、日本に核を持ち込んでいないということは明確でございますけれども、それと、それから特定の艦船が非核証明というような形で、証明というようなものを出すとかあるいは受け取るというようなこととは全く別の問題であると思います。
  136. 立木洋

    立木洋君 いや、非核証明関係なし。私が聞いているのは、日本が今アメリカ側とやっているという、核を持ち込む場合には事前協議制度がありますよという、この事前協議の制度というのは核の存否を明らかにしなくてできる制度なんですか。核の存否を明らかにしなければできない制度なんですか。実行ができない制度なんですか。その存否を明らかにするかしないかだけお答えください。
  137. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) これは、先ほど大臣がニュージャージーにつきまして、マンスフィールド大使との話し合い中身を御紹介なさったときの話から明瞭でございまして……
  138. 立木洋

    立木洋君 いや、明瞭じゃないんですよ。私は明瞭じゃないから藤井さんに聞いているんですよ。
  139. 藤井宏昭

    政府委員藤井宏昭君) その話から私は明瞭と存じますのは、アメリカ政府は、安保条約上の義務を守るということを明言いたしておりますし、同時にアメリカのNCND政策、これに基づきながら安保条約上の義務を守るということを明言しているわけでございます。
  140. 立木洋

    立木洋君 北米局長が答えにくいのなら条約局長の方ね、条約的に言って事前協議の制度というのは、核の存否を明らかにしなくても実行できる制度なのか、核の存否を明らかにしなければ実行できない制度なのか、法的に言って一体どうなんです。
  141. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) これは立木委員の御質問の意味がどういうことであるかということによると思いますが、御承知のように事前協議制度というのは、核を持ち込むときには我が国に事前に相談をいたしますということでございますから、そういう意味におきましては、事前協議をしてくるというときには、向こうとしては核を持ち込みたいという希望を日本に表明をしてくる、こういう意味であろうと思います。ただ、そのことと先ほど来問題になっておりますような核の存否を個々の具体的な艦船について公にするかしないかという問題とは、一応別の問題だというふうにお考えいただいていいだろうと思います。
  142. 立木洋

    立木洋君 そこのところちょっとごまかしたらいかぬですよ、あなた。  戦艦ニュージャージーが寄港する場合に、戦艦ニュージャージーが参りますが、いわゆる制度に基づいて事前協議をしましょうといったときには、戦艦ニュージャージーに核が積んであるから事前協議をしようということになるのでしょう。何もないときに事前協議をしましょうと言っても、何の軍艦が来るかわからないのにただ事前協議をしましょうなんということにはならないでしょう。そうすると、この軍艦には、例えば第七艦隊、何隻かの軍艦が寄港するとしますね。その軍艦のどれに積んでいるかわからないけれども、しかしいずれにしろこの軍艦の中に核を積んでいますよというから事前協議の制度がかけられるわけでしょう。そうしたらこの艦隊の中には核がありますよということは何らかの形で明らかにされなければならない、それが単数であるか複数であるかは別として。だから、事前協議の制度そのものというのは核の存否を一定程度明らかにしなければ成り立たないのではないかというのが私の考えですが、法的にいってどうなんですか。その一言だけでいいですよ。
  143. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 私の説明が若干舌足らずであって立木委員に誤解を招いたかと思いますが、私が申し上げたのはこういうことでございます。  先ほど申しましたように、事前協議の制度、少なくとも装備における重要な変更との関連における事前協議の制度というのは、核を持ち込みたいというアメリカの希望を日本側に伝えて、それについて日本に協議をしてくるということでございますから、その限りにおいて、そういうケースにおいては、核を持ち込みたいという希望の表明が日本の政府に対してあるというケースであろうと思うのです。  ただ、私が申し上げておりますのは、先ほど来大臣がお答えしておりますように、アメリカ政策としての核の存否を個々の具体的な艦船について公にしないというのは戦略上の考慮であるということを申し上げました。その戦略上の考慮というのは、例えば、この船が具体的に核な今持ってここにいるというようなことを明らかにすることが、万一の場合を考えたときに戦略的にまずい。戦略的にまずいということは、さらに申しますと、したがって核の抑止力というものが働かなくなる、こういう考慮に基づいてそういうことを言わないというわけですから、そういう意味において、核の存否を具体的なケース、具体的な艦船について個々の場合に公にしないという政策そのものと、事前協議制度に基づいて核を持ち込みたいというアメリカの意向とはそれは二つの別なことであって、例えばもうちょっと典型的な例で申し上げますと……
  144. 立木洋

    立木洋君 ちょっと今の点で質問します。
  145. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) もうちょっと補わせていただきたいんですが。
  146. 立木洋

    立木洋君 続けて答弁してもらっていいんですが、一言そこで。  アメリカが核を持ち込みたいという意向を表明するという場合には、具体的な状況下で意向を表明するわけですね、抽象的な状況下ではなくて。その具体的な状況下というのは、ある艦船が日本に寄港するということを、具体的な状況を踏まえてそういう意思の表明があるわけですね。どうです、それは。
  147. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) その点について今補足して申し上げようと思っていたわけでございますが、おっしゃるとおり、事前協議というのは、具体的なケースについて、装備における重要な変更を行いたいという意思表示を日本に対してしてくるという意味において、具体的な状況においてそれを言ってくるということであろうと思います。  私が申し上げておりますのは、この点だけちょ っとさっき誤解を招いたかと思いますので補足して御説明しているわけですが、いわゆるNCND政策、つまり具体的なケースについて核の存否を個々のケースについて明らかにしない、公にしないという政策のよって立っている背景というのは、今申し上げたような戦略的な理由が背景になっているのであるから、そういう戦略的な理由に基づく政策が必要がない場合、あるいはそういうことをさらに乗り越えて我が国に対して核を持ち込みたいというような希望が、アメリカにとって出てくるというようなケースについて、事前協議制度ということがアメリカ側から行われてくるということはあり得るであろうということを申し上げているわけで、したがって、その両者が矛盾して、事前協議制度はだから意味のない制度であるという御指摘は当たらないのではないかということを申し上げたわけであります。
  148. 立木洋

    立木洋君 もう時間がありませんからこれで最後にいたしますが、大臣、今条約局長が言われましたけれども、実際には核の存否を明らかにしないと事前協議制度というのは成り立たないんですよ、具体的によく考えていただけばわかりますように。これは今具体的にどういう状況が進行しているのか、意向の表明だというふうに局長は言いましたけれども、意向の表明というのは具体的に自分たちが今から核を持ち込みますよという意向の表明があって、事前協議制度がかけられてくるわけですから、それが何を指すのか。抽象的に今後核をいつ持ち込むかわからぬけれども、それを事前協議制度にかけましょうなどと、そんな漠然たる事前協議の制度なんというのは全く空文に等しくなる。今大変苦しい答弁を局長はしたんですよ。  これは私、今までこの問題を全部の大臣にお尋ねしてきた。みんなこの問題は本当にまともに答えてくださらないんですよ。今お考えになっておわかりのように、核の存否を明らかにしないのがアメリカの政府の一貫した政策だと。存否を明らかにしなくてどうして事前協議ができるでしょうか。できないんですよ。それはなぜできないのか。事前協議の制度そのものが寄港だとか通過の問題についてアメリカと取り決めがないからなんですよ。アメリカとの文書に一切この取り決めがないんですよ。通過の問題について、これが事前協議の制度にかかりますなんというような契約文書は一切ないんですよ。今まで審議官に聞いたって、松田さんもそのことは一切一つもありませんと答えた。  僕はきょうはもう時間がないからこれ以上言いませんけれども、せっかく大臣におなりになったんですから、日本の重要な先ほど言われた非核三原則の国是ですから、そして一番最初同僚委員が質問されたときに、核兵器をなくさなければならない、それが私の願いだと、長崎出身の代議士とされてもそういうことも言われたんですから、このことは真剣に検討していただきたい。どこに問題点があるのかよく検討していただいて、そして本当に筋道の通ったことになり得るように私ははっきりさしていただきたい。それでこのような非核三原則が完全に守れるように努力していただきたいということを最後に要望したいんですが、大臣、いかがでしょうか。
  149. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 立木委員の御意見、傾聴いたしました。十分私も勉強さしていただきたいと思います。
  150. 小西博行

    小西博行君 民社党の小西でございます。私もずっと文教におりましたので外務委員会というのは初めてでございますので、どうぞ皆さんよろしくお願いしたいと思います。  実はきょうは三十分の時間をいただいております。当初三つの問題点についてお尋ねしたいというふうに考えておりました。まず一つ米ソ首脳会談、この問題が一つであります。それと二つ目が今問題になっておりますODAの問題、これが二つ目です。それから三つ目は韓国の政治情勢についてちょっとお尋ねしたい、こういうふうに考えておりました。同僚議員の方が非常にこの一番の問題については細かく御質問がございましたので、できるだけもうダブらないような形で質問申し上げたいと思います。  米ソ首脳会談でありますけれども、特に私ここで気になるといいましょうか、問題点としてぜひ教えていただきたいと思いますのは、当然いろんな問題があって首脳会談が突然開催されるということになったんだろうと思うんです。その中で特に私はソ連の態度というのが何か大幅に変わったんだろうかというような疑問を持っておるんですが、その辺の情勢の判断はいかがでしょうか。これをまず一つお尋ねしたいと思います。
  151. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これは、少なくとも先ほどから各委員からお話がございましたように、米ソの両首脳世界の注目の中でアイスランドのレイキャビク会談をするという事実は、やはり何とかして世界軍備管理問題について話し合いを続けようという、そういう熱意のあらわれだと思うわけでございまして、両国のそれぞれ抱えている経済上の問題とかいろいろな問題があろうかと思いますが、さらにそれを乗り越えてやはり平和への希望を持っているというふうに理解しております。  しかしながら、そう簡単にこれが話し合いがつく問題ではない、いろいろな経過はもう先ほどから各委員からお話もあり、また先生御承知のとおりのことでございますが、簡単な問題ではないいろいろな問題があるのでございますけれども、しかし、いずれにしても両国の首脳が二日間にわたりまして世界注目の中で各種の問題について話し合いをするという事実は、私は歓迎すべきことだと思うわけでございまして、また日本の安全の問題に関しましても、世界の人類の平和という問題から考えましてもこれを注目しているところでございます。
  152. 小西博行

    小西博行君 先ほどもお話がございましたように、ゴルバチョフ書記長さんが来年あたりはやってくるのじゃないかと。特にアメリカとソビエトの関係が即日本とソビエトの関係に非常に大きな影響を与えるのじゃないかというような気持ちがいたしますので、特に私はそういう意味で、先ほどもちょっと質問がございましたが、どういう点を主に日本とソビエトの関係解決しなければいけないのか、もし書記長が来られた場合にはどのような対応をされるのか、その辺をもう一度詳しくお話し伺いたい。
  153. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 米ソ首脳会談の問題につきましては、御承知のとおり今日の世界のあらゆる問題、経済問題もそうですけれども、特に平和というか軍縮というか、軍備とかそういう問題に関しては、米ソ首脳の、米ソという超軍事大国、両国の話し合いというのが極めて大きな要素になるということは小西委員御承知のとおりでございます。そういう意味で私は注目をしている。そしてまた、これに関連しましてINFの問題に関しましてほ、欧州配備アジア配備、これは移動性があるということで極めて深い関心を持っておるということでございます。  それと同時に、ゴルバチョフ書記長の来日を御要請お話し合いをしたいということは、日本とソビエトは移転のできない隣国でございます。したがって、この両国の間において、私は安定的なやはり平和的な関係を築くということが我々日本国民の希望でもあり、あるいはソビエト国民の希望であると思うわけでございます。しかし、その前提としては大きな障害がある。その障害は何かと申しますと、戦後四十一年にわたっておるにかかわらず平和条約が結ばれていないという事実、すなわち我々が主張する北方領土の問題が解決していないという問題でございます。  したがって、私はゴルバチョフ書記長の御来日を御要請する際に、日本立場を明らかにいたしました。すなわち、政経分離はいたしません、日本としては領土問題の解決、これが最大の問題でございます。国民感情もまたそういう気持ちでございます。したがって、この問題に前進があることが、ゴルバチョフ書記長の御来日に当たって実りのある会談になると思いますということを駐日大使にも申しあげましたし、ニューヨークにおき ましてもシェワルナゼ外相との会談において、私から日本政府立場をはっきりと申し上げた次第でございます。
  154. 小西博行

    小西博行君 そういう意味で、多分中曽根総理も十一月には中国へおいでになるとかあるいはゴルバチョフ書記長が来年早々日本へ来られるということになりますと、その前にアメリカへ行きましていろんな調整もしなきゃいけないだろうと、そういうものが書かれておるわけですが、その辺の中身の問題は一体どういうふうになっておるんでしょうか。
  155. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 一連の外交日程の問題は今いろいろおっしゃいましたけれども、これは国会等の関係もございますし、まだ何も決まっていないというのが現実の状況でございます。
  156. 小西博行

    小西博行君 非常に領土の問題は国民の本当に願いだろうと思うんです。そういう意味で大変な仕事だと思いますが、ぜひとも全力で頑張っていただきたいというふうに考えます。  それでは、次のODA、それから在外公館、この問題についてかなり玉置総務庁長官の言葉がございますし、どうも最近問題点が非常に多いものですから、そういう言葉も当然ではないかなという感じがするわけであります。  これは十月八日の毎日新聞に出ておるんですけれども、外務省の方ですね。名前は具体的に出ておりませんが、JICAに関連して百万円以上の接待を受けたとかというのですけれども、また最近これは出ました。この実態調査はもうされたでしょうか。
  157. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ある新聞に今御指摘のような記事がございまして、私もそれを読んで驚いた次第でございます。  報道において実名は出ておりませんけれども、ほぼ名前が特定できますので、早速本人に電話で連絡をとり事情を聴取いたしました。ところが本人からは、業者との交際があり一緒に食事をしたことはあると述べておりましたけれども、その交際は公務員としての良識の範囲内のことであって、何らやましいことはないと述べております。自分としてもそれを信じたいと思っておる次第でございます。なお、引き続いて必要な調査をいたしているというのが現状でございます。
  158. 小西博行

    小西博行君 これは、本人は既にジャカルタの方におられるのでしょうか。外務省の同僚がやっているのと同程度のつき合いだ、良識の範囲だと思う、このように本人が言っているようであります。インタビューもしているわけです。  そういった意味で、ASEANにたくさん海外協力隊の連中が行っておりまして、そして非常に働いております。私も数年前に調査に参りまして、本当に大変だなというようなことで海外協力隊員の努力というものはすごいものだなというふうに思っておりました。そういう意味でこのJICAの問題とか、それからODA、それから海外協力隊、こういうような問題をもう少しやっぱり整理をしていただいて、というのは私もよく知らなかったんですが、こういうのが出ておるんです。去年の十二月ですか、「政府開発援助(ODA)の効果的・効率的実施について」というふうなものが既に出ておりますね。これは研究会でつくられたんですか。それを読んでみますと、かなりいろいろな面に触れられておるんですけれども、こういうようなものを具体的に早く実施していくということ、これが非常に私は大切だと思うんです。  と申しますのは、海外協力隊の件で調査に行ったときに、日本からいろいろな品物を送ってもらっているんだけれども、余り役立つようなものが来ないんだと。大型の機械だとかそういうものがどんどん来て、具体的にくわとかかまとか、実際に使えるようなものはなかなか来ませんというようなことが皆さんから意見が出てまいったんです。そういうことを含めて私はやっぱり外務省の方たちはいろんな情報を詳しくキャッチされているんじゃないかというような感じがするものですから、そういうものについては以前から随分改善されているんでしょうか。
  159. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 最初の点で、今新聞報道によりまして、同僚も同じようなことをやっていると述べているというお話がございましたけれども、当方で本人に聴取したところでは、そのような趣旨のことは述べていないと申しております。私はそれを信じております。  それから、今いろいろODAの援助に関しまして、くわとかかまとかあるいは現地の実情に即してもっとやったらどうかという非常に適切な御指摘がございまして、私もまた全く同じ意見を持っておるわけでございまして、それぞれの国の事情で違うわけですね。しかし、その途上国にしてみますと、やっぱりその国の威信のために近代的な工場をつくりたいとかいろいろ考えたりする。しかし、現実問題としては、農業とかそういうものについてかんがい施設をつくったりなどするのがもっと大事であるとか、そういう何というか、ギャップもあるかと思います。しかしいずれにしましても、やはりもっと具体的に一番役立つように、技術の移転を含めて、何といっても人の問題でございますから、ODAという問題については、このいろいろな問題が惹起されている機会に私は真剣に取り組んでまいりたいと思います。  ちなみに、ちょうど十年以上前になりますか、先進国と途上国との間で石油危機のときにCIECという会議がパリでございました。私は主席代表で出まして、途上国のというか産油国と、それから非産油国の先進国との会議であらゆる石油の問題について五日間ほど、二日間徹夜で会議をいたしたことがございます。それを思い起こすにつけまして、そのとき私はODAについてモア ザン ダブル イン ファイブ イヤーズ、五年間にODAを二倍にするということを初めて発言した一人でございます。したがって、そういうことを考えてまいりますと、ODAについては私自身、本当に真剣にこの機会にあらゆることを謙虚に耳を傾けて見直していくべきだと思っておりますので、またいろいろ御意見がございますれば、どうぞひとつ建設的な御意見を賜れば幸せだと思います。
  160. 小西博行

    小西博行君 この問題は余り通告はしておりませんのですけれども、たまたまこういう話になりましたから、さらに質問をさせていただきますが、大勢のそういう海外協力隊員の人に集まってもらって、一体何がどうなんだというお話をさせていただきました。  これは、もう大臣も既に御承知だと思うんですけれども、例えばわざわざ特殊技能を持って海外協力隊という形で向こうへ参ります。ところが、帰ってきた場合の身分保証というんでしょうか、これが非常によくないというようなことで、原状にとどまるというんでしょうか、せっかく海外へ行って経験してきたのにその分がプラスされないで、行く前の身分といいましょうか、そういうようなことで、張り切って行かれないんですというような話を伺っておるんですけれども、その辺はもう最近は全部改善されておるんでしょうか。
  161. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府委員からお答えさせたいと思いますけれども、私自身も今お話しの点は非常に大事な点だと思います。  一生懸命働いたけれども、帰ってきたらどうもさっぱり後のことは忘れられている、もうほかの人は昇進しているのに自分の身分は何かもとのままであるとか、冷遇されるということがあってはならない。したがって、やっぱりそういうアフターケアを含めて温かい配慮というのが必要だという点は、私はもう全く同感でございますけれども、事務当局でも何か考えていると思いますから、政府委員で補足することがあれば……
  162. 英正道

    政府委員(英正道君) 小西委員の御指摘の問題は、かねてからいろいろな機会に青年協力隊員の人からも出ておりました。いろいろな観点から検討してきておりますし、改善策もとっておるわけでございますけれども一つはいろんな背景の方がいらしていますので、そう一様に対応ができるということではないんですけれども、企業の方にもなるたけ休職で出れるようにしてほしいというようなことをお願いする。それから公務員の参加 につきましては、やはり関係の各省庁に対して派遣法の適用をぜひお願いしたいということをやっております。それから、地方公共団体に対しても休職条例等、関連制度の整備をぜひお願いしますということをやっております。  それで、確かに青年協力隊の方は貴重な経験を積んでお帰りになってくるわけなので、そういう方に御希望があれば、引き続き国際協力の面で働いていただくということで、希望の方は国際協力事業団に入っていただくというようなことも考えておりますし、やっております。それから、やはりお帰りになっての不安ということがもう十分あるわけなので、お帰りになる前に青年協力隊員の方に希望を伺って、そしてお帰りになった後カウンセリングをやるというようなことで就職のあっせんをするということも鋭意やっておるところでございます。
  163. 小西博行

    小西博行君 私は、これもまたいつも疑問に思っているんですが、さっき大臣も申されましたように、海外援助というのは、みずからその国が自助努力でもって頑張っていただきたい、そのための呼び水みたいなものだと、私もそのように考えております。ところが、現実はいろんなものを支給しても、それが呼び水にならないような、むしろかえって体質を弱くしているような、そういう分野も相当あるんではないかという感じがするんですが、その辺はどうでしょうか。
  164. 英正道

    政府委員(英正道君) 小西委員の御指摘の問題は、確かにこれは日本のみならず、国際的に開発援助というものの効率性といいますか、効果というものについては常に出てくる問題でございます。  それで、いろいろな議論がありまして、極端な意見は、かえってマイナスだというような御意見もあります。ただ、やり方を、現地の技術水準というものを漸次引き上げていって、やはり国際的にいわば競争力を持つような技術水準に持っていかなければいけない。それから、いわゆる適正技術のような意見もありますけれども、そういう配慮をすることも一方では必要ですけれども、じゃ国際的に競争力のない技術を移転して果たしていいのかというような議論もあります。なかなかこれは難しい問題でございますが、やはり効果的、効率的に、国民の税金を使っての国家活動でございますので、効率を高めていくということで最善の努力をしたいということで、いろいろ考えてやってきております。今後とも改善に努力したいと思いますので御支援をいただきたいと思います。
  165. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 政府委員から申しましたので、もうつけ加えることはございませんけれども、結局やはり相手国の人と日本の当事者と意思の疎通を図って、よく意見の交換をし合うということに尽きると思うんです。それをしっかりやればできると思いますから、そういうことを努力したいと思います。
  166. 小西博行

    小西博行君 私は、だから外務省の方が大勢、もちろん大使館とかいろんなところを通じてかなり情報が詳しく入っていそうな気がするんですね。ところが、数年前行ったときは、もう全く違うような、大型のトラクターなんかを送り込んでいるという実態を知りまして、やっぱりもう少しきめの細かい、国によって全部違うわけでありますから、相手に喜ばれるようなものを送らないと、かえって迷惑をかけるようなものでありますから、そこのところをよくやっていただきたいと思います。  もうあと時間がわずかしかございませんから、韓国の政治情勢についてちょっと一、二点お伺いしたいと思うんですが、アジアオリンピック大会も非常に成功裏のうちに終わったわけですが、いよいよ韓国の政治の方も動き出したわけです。これはどうなんでしょうか。これから先の、いわゆる大統領制をとるのかどうかというようないろんな問題点がございますが、外務大臣として、どのようにこれから先のスケジュールが動くのか、わかっている範囲をぜひとも教えていただきたいと思います。
  167. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今の小西委員のせっかくの御発言でございますけれども、他国の国内情勢について種々立ち入ったコメントをするのはいかがなものだろうかと思いますけれども、事実関係だけについて申し上げますと、韓国では八八年の政権交代をめぐり憲法改正問題を中心に与野党の対立が続いている模様であることは御承知のとおりでございます。本問題はついては、ことしの夏以来国会内において憲法改正特別委員会が設けられるなど、妥協に向けて鋭意努力がされておる、また、アジア大会も成功裏に閉会したということを伺っております。また、今後本格的論議がいろいろ行われると思いますが、他方、改憲の内容についても与野党の考えにはかなりの違いがあるということも伺っておるわけでございます。したがって、今後とも改憲が順調に運営されるか否かを含めて、私ども日本政府としてはその推移を注目しておる次第でございます。  韓国が安定し、そしてまた隣国である韓国との友好親善というのは、非常に我が国にとって大切なことでありますから、十分この推移についてはあらゆる情報を集め、それを見守っておるというのが現状でございますが、これ以上立ち入ったコメントはひとつ差し控えさしていただきたいと思います。
  168. 小西博行

    小西博行君 終わります。ありがとうございました。
  169. 田英夫

    ○田英夫君 私も、実は外務委員会は出戻りで戻ってまいりましたので、以前に十年ほどおりましたときに、大臣がかわられるたびに同じ質問をしてまいりましたので、倉成外務大臣にも同じ質問をしてみたいと思います。  といいますのは、現在の国際情勢全体をどう認識しておられるかという、大変これは大ざっぱな話なんで、例えて言いますと、中国は世界を三つに分けて、第一世界、第二世界、第三世界と分けている。一方で、いわゆるアメリカを中心とする自由陣営とソ連を中心とする社会主義陣営がある、東西対立だ、こういうふうに分析をした時代もあったと思いますし、また現在そういうお考えの方もあると思います。あるいは、今多極化の時代だというような学者の御意見もあるわけですが、大臣はそういう意味での基本的な現在の国際情勢をどういうふうにつかんでおられるか、大変大ざっぱで恐縮ですが。
  170. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま、田先生のお話にお答えを短時間でせよというのは大変無理な話でございまして、博士論文でもできるような話になるわけでございますけれども、ひとつ基本的に考えてまいりますと、私は米ソの超大国の対立という問題がやはり世界政治に大きな影響力を持っておるという事実は動かすことができない事実だと思います。それと同時に、第三世界の勢力と申しますか、その動きというのがやはりかなり大きな力を持ちつつある。御案内のとおり、アフリカのアパルトヘイトの問題につきましても、国連におきましてはこういう問題が非常に大きなウエートを占めてきておるということを考えてまいりますと、これらの問題を無視してこれから世界政治考えることはできないという感じがいたします。  また、御案内のとおり、ヨーロッパあるいは南米等々のいろいろな問題、ASEANの問題、太平洋の問題、あらゆる問題が非常に絡み合ってまいっておりまして、単純な米ソ対立の仕組みでは、なかなかかつてのようなことでは解決、解釈できないような問題がある。また、中東では御案内のとおり、泥沼のような戦争状態がまだ続いておる、しかも、それにあるいは宗教上の問題であるとかいろいろな問題が絡み合ってきておるということを考えてまいりますと、方程式が非常に複雑な方程式、微分、積分と申しますか、何というか、大変複雑に絡み合ってきている、単純に割り切った理論ではできないんじゃないかという感じを抱いておるわけでございます。  しかし、そうでありますけれども、やはり米ソの超大国の動向あるいは中国、こういうものの動向というのが今後非常に大きな世界政治に影響を及ぼしてくるであろうということはまごうなき事実であると思います。
  171. 田英夫

    ○田英夫君 大変大きな問題をいきなり御質問して恐縮なんですが、今のお答えは大変私は同感でありまして、私が、外務省のといいますか、日本政府外交をずっと拝見をしていて、安倍外務大臣のいわゆる安倍外交ども大いに評価をすることが多いわけです。ただ、一つ懸念しますのよ、レーガン大統領を初めとするアメリカ考え方の中に、もちろん今も御指摘の米ソ対立ということを非常にアメリカ自身が大きく考えざるを得ませんから、それに日本が引きずられますと、今言われた一番最初の米ソの問題が過大に影響をしてしまうということを懸念をするわけです。  そこで、そういう意味日本の周辺で最も懸念されますのは朝鮮半島の状況で、米ソ対立といういわゆるイデオロギー対立が私はもう過去のものになりつつあると思うんですが、残念ながら朝鮮半島という我々に最も近いところでこれが非常に色濃く残っている。朝鮮民族は、これは南北ともに一つになりたいというのが共通した願いだろうと思いますが、しかし、それについては非常に困難な状況、つまり、イデオロギー対立というものがもう長年、四十年間にわたって続いてしまっている。  そこで、大臣はこの南北の問題というのをどういうふうにとらえていらっしゃるか。つまり、一時期南北会談というものがスポーツを含めまして赤十字あるいは経済など相次いで行われていたんですけれども、ことしに入りましてから例のチームスピリットに絡めて北側が拒否をする、それが現在も続いている。一時期は両首脳会談さえ予想されたこともありましたが、現在はこれはなかなか難しいんじゃないかと思いますが、その辺はどういうふうにとらえておられますか。
  172. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今の田先生お話のとおり、朝鮮半島につきましては南北が引き続き対峙博しておる、依然として基本的には緊張状態が続いておると認識をいたしております。また、これに関連して、今お話しのように、本年一月、北朝鮮側が米韓合同演習、チームスピリットですね、これを理由として、昨年来進展しておりました各種分野における南北対話を中断し、それ以降、同演習終了後も再開に至っていないということは本当に残念なことだと思っておるわけでございます。アジア大会その他を通じて、いろいろまたソウルオリンピックというような問題もこれからあるわけでございますので、いろんな機会にこの南北の問題はうまくだんだん緊張の緩和ができるような方向にいくということが日本としても望ましいことであると思っておるわけでございます。  御案内のとおり、戦後の世界におけるそういう東西ドイツの問題もございますし、南北の問題もございますが、朝鮮半島で一つ特記すべきは、御案内のとおり、東西ドイツは戦っておりませんね。しかし、南北はいわゆる同じ民族の中で血を流したということで、相互の非常な、何というか、一つの憎しみというか、不信感というか、そういうものが出てきておるというのが非常な不幸な事態だと思っております。したがって、いずれにしましても、朝鮮半島の緊張緩和及び永続的な平和のために南北当事者の努力によって実質的な対話が再開されて、建設的な努力、対話が積み重ねられていくということを期待している次第でございます。
  173. 田英夫

    ○田英夫君 私が懸念しますのは、例えば、この九月一日から四日まで東京で日韓、韓日議連の合同総会、第十四次合同総会というのが聞かれたんですが、安保外交委員会というところで韓国側の、韓国読みして襄成東という議員がこういう発言をしているんですね。日本は朝鮮半島での友邦と敵国をはっきり区分し、その敵国が安全保障を損なう可能性に備えるべきである、つまり日本が北朝鮮を仮想敵国にしろというような意味のことを発言をして、これに対して日本側の方も答えておられるんですが、それは控えておきますけれども、こういう態度というのは非常に危険だと思うんですね。もちろん、日本と韓国の間の国交、こっちは国交があり、北は国交がない、したがって、政府間では当然韓国政府との関係が深いのは当たり前でありまして、これはこれとして私は認めるんですけれども、北を敵視しろというような——これは、私もこの間アジア大会の機会にソウルへ行ってきたんですけれども、まさに韓国政府の閣僚級の人とも会いましたが、本当に敵意を持って話すんですね。これにこちらが引きずられていくというようなことは大変よくないというふうに思うんです。  それからもう一つは、大臣国連でなさった演説を拝見いたしますと、大変立派な演説でありますけれども一つだけその朝鮮問題で私が気になりますのは、この朝鮮半島の統一に至る過程における一つの措置として、南北双方が国連に加盟することを考慮するのであれば云々というくだりがあります。同じような意味のことをもっとはっきりと実は中曽根総理が、東京サミットのときに南北の国連同時加盟ということを言われて、これが今北側が日本に対して非情に態度を硬化している直接の原因になっていると言われているわけです。事実、私も日朝議連の副会長をさせていただいておりますが、日朝議連の代表団が今度北朝鮮を訪問しようというような計画をしているわけですけれども、北側は従来に比べて非常に態度がかたいのですね。この問題がやはり二つの朝鮮を固定化するということで北側が最も嫌がる、この同時加盟ということはですね。この点も含めまして大臣の御感想を伺いたいんです。
  174. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員の御指摘になりました南北国連同時加盟、それからクロス承認の問題、これは特に今回の倉成大臣国連一般討論演説で新しく打ち出されたというものではございませんで、もう委員も御承知のとおり、朝鮮半島の平和達成のための一つの選択肢ということで考えられるんではないかということで我が国がいろいろな機会に表明してきた考え方だということはよく御高承のとおりでございます。それに対しまして、ただいま御指摘のとおり、北側は、北朝鮮はこれが南北分断の固定化につながるということで強い反対をしておられるということも御指摘のとおりでございます。  したがいまして、ただいま委員御指摘になりましたように、倉成大臣の一般演説でもこれが非常に適当だと思われる場合、フィージブルである場合にはというような文言が付してあるというふうに私、記憶いたしておりますけれども、そういう前提つきで一つの示唆として打ち出されているということで御理解いただければと思います。
  175. 田英夫

    ○田英夫君 北の方にも私は確かに問題があると思うんですね。北朝鮮に参りましたときに、もう大分前のことですが、今外務大臣になっている金永南氏と二人で二日間話し合ったことがあります。ちょうど北が非同盟諸国会議に参加を決定いたした直後であったものですからそのことに触れまして、我々は今回非同盟諸国会議に加入する決意をしましたという、通訳がもちろん入ったんですが。私は非常にそれをはっきり覚えておりまして、決定じゃないんですかと聞き直したら決意ですと、こういうことでありました。結局、向こうなりに一つの論理がありまして、つまり本来、東西対立ならば社会主義国家ですからソ連を中心とする社会主義陣営に加わるべきなのを、あえて非同盟諸国会議という第三のグループを選んだということを言いたかったんだと思うんですね。  これは北朝鮮なりの配慮、三十八度線といいますか、南北がそういう意味で東西対立になってはならないということを考えたんだろうと思うんです。それを私、評価するんですが、同時にこのことが非常に最近心配されておりますソ連との関係、北朝鮮とソ連との関係、あるいは中ソとの関係と言った方がいいかもしれません。一番最近に北を訪ねましたときに、北京から乗る飛行機の往復ともに周囲はアフリカの人たちばかりということに気がつきました。つまり非同盟諸国会議内での外交を展開しているわけです。非同盟諸国会議の中にはキューバを含めてソ連と親しい国もかなりあるわけで、それへの配慮から中ソ等距離論を非常にはっきり金永南氏は打ち出しておりました。以前よりもはっきりしている。最近はそれが むしろ軍事的にはソ連寄りではないかというふうな、南浦にソ連の軍艦の寄港を認めるというような。情報によりますと、そのことについて中朝間、中国と朝鮮の間でかなり激論が闘わされたということも聞いております。  こういうことは大変好ましいことではないんでありますけれども、したがって北朝鮮がもっと日本を含めアメリカへも目を向けるというような転換をすべきではないかということを私もその金永南氏に繰り返して話してはいるんですが、そうはなかなかならない。こういうことをやはり眺めながら、見詰めながら朝鮮半島の問題にぜひ対応していただきたい。これはお願いです。もう一つ朝鮮半島の問題について、今度は韓国のことについてのお願いですけれども、最近外務省が新民党の金泳三氏の秘書室長の金徳龍さんを招待された。一連の招待の中に彼を入れておられるようですが、これは大変私も評価をいたしますが、今までは余りにも韓国政府との間の関係、あるいは与党との間の関係だけに終始をしていたんじゃないかという気がするんですね。  そこで伺いたいんですけれども、皇太子御夫妻の訪韓ということが中止になったこのいきさつは新聞報道によるといろいろありますけれども、真相はどうなのかということがさっぱりわからないんですけれども、発表できる範囲の中でお答えいただきたいと思います。
  176. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これはもう別に真相はとかそういう問題ではございませんで、はっきりしているわけでございまして、皇太子殿下御夫妻韓国御訪問については、本年三月十一日に政府は推進する方針であるということで発表いたしたわけでございますが、その後、妃殿下の御健康の問題がございまして両殿下の御訪米が延期されたこともございまして、本年じゅうの訪韓は難しくなったという次第であります。これを八月二十二日に発表したということが事実でございまして、別に全然そのほかの要素はございません。ありのままを申し上げた次第でございます。
  177. 田英夫

    ○田英夫君 三月十一日にこのことが発表になりまして、私はすぐに実は金大中、金泳三両氏にそれぞれ電話をしまして、ほかのこともありましたけれども、この問題に触れて意見を聞きましたところが、両氏ともに絶対に反対だと、今の韓国の民衆の気持ちはそんな状態にはないということをるる話しましたので、まあ個人的に安倍外務大臣にこのことはお伝えをしました。そういう意味で、私は今回金徳龍氏を招かれたのは非常に評価するということを申し上げているわけでありまして、事前にもう少し外務省出先がそうした韓国の野党側なり反体制側の考え方というものを正確に把握しておられればあの三月十一日の発表はなかったのじゃないかとさえ思うわけですね。この点は一つのお願いということで、韓国内においてはそういう側に対しても接触といいましょうか、配慮をしてほしい。ただ金大中氏については現政権は極めて厳しく見ておるようですね。このことが今のいわゆる改憲問題の、金大中氏の復権ということが改憲問題が緒につくかどうかということの一つのバロメーターだとさえなってきているようです。  そこで大臣にお聞きしたいのは、アメリカの新しい駐韓大使のリリー氏が赴任に当たっての上院外交委員会の証言で、金大中氏の復権についてアメリカ政府は韓国政府に建議をしている、つまりそういう方向で要請をしているということを証言しているのですけれども、この点についての日本政府の態度はどうでしょうか。
  178. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 事実関係でございますので、一応政府委員からまず御報告をさせていただきたいと思います。
  179. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 若干他国の最も機微な内政にわたることでございますので、私どもが金大中氏の政治活動停止といいますか停止措置に対してどう考えているか云々ということについての発言は控えさせていただきますけれども、先生も御承知のとおり、私どもも大使館の公使が金大中氏と社交の席でいろいろお会いをしてお話をしたり、そういう会話のチャネルというものは絶やさないように努めております。ただいま前段でおっしゃいました韓国のいろんな方々の意見に虚心に耳を傾ける機会を持つべきではないかというような御意思かと思いますけれども、できるだけそういう方向で努力をいたしたいと思っております。
  180. 田英夫

    ○田英夫君 時間がなくなりましたので、フィリピンの問題を、アキノ大統領が十一月十日に国賓として来日されるということでありますので、若干伺っておきたいのですけれども、現在、アキノ政権ができましてから非常に多くの難問を抱えながらよく切り抜けてきているという状態だと思いますが、フィリピンはASEANの中でも非常に重要な国でありますし、日本との関係が非常に深い。そういう中でこれも他国のことですから立ち入ったことはということかもしれませんけれども、ひとつ今行われている新人民軍との停戦交渉という問題、これはアキノ政権の抱える一つの難問の大きなものだと思いますが、これはどういうふうに把握しておられますか、局長どうぞ。
  181. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま御指摘のとおり、アキノ政権が現在直面しております問題、一つは、最大の問題が経済困難の打開ということかと思いますが、いま一つが新憲法の制定、それから筋三番目がただいま御指摘の新人民軍との和平交渉ということかと思います。  アキノ大統領は、この和平交渉の問題にかなり御自身の内政面でのエネルギーというのを注いでおられるということが看取されまして、御承知のとおり閣僚、まあ農林大臣でございますけれども、ミトラ農林大臣、それから会計検査院長、まあ政府側の代表。先方は、ジャーナリストであったオカンポさんという方を代表にしまして、今まで二会談を行っておられます。事実上共産党側としては政府側の停戦提案というものにかなりネガティブな反応を、声明を出しておりましたけれども、特に、御承知のとおり先月の末に共産党の前議長だと言われておりますサラスという方が、病院で治療を受けられた直後に逮捕されたということがございまして、この釈放を先方は非常に強く要求している。アキノ大統領は、この釈放が交渉再開の前提条件であるという共産軍側の要求は拒否しておられるというのが今の状況でございます。かなりしかし忍耐強く交渉を進めようというお気持ちであるように感知されます。
  182. 田英夫

    ○田英夫君 このことを私取り上げましたのは、大臣にぜひ聞いておいていただきたいんですけれども、冒頭申し上げた、アメリカの影響を強く受け過ぎると間違うのではないかという一つの例なんですね。  実は、ことしの三月フィリピンへ行きましたときに、今局長からお答えになりましたいわゆる新人民軍側、新人民軍も入っておりますし農民の組織とか学生の組織なんかが入ってNDFという民族民主戦線というものをつくられていて、それが今交渉の相手になっている。その議長をしておりますアントニオ・ズメルという人と会ったんですが、この人は二年前にも会いましたが、いまだにつまり地下にいるわけですから、大変会いにくい状況の中で話を聞くことができました。このズメル氏の下にオカンポという人がいるわけで、両方ともジャーナリストの出身ですけれども、実は一週間ほど前ですか、NHKの放送、夜のニュースの中でこの問題を取り上げられておりました。むしろアキノ政権になってから新人民軍側からの攻撃がふえていて何千件になっているというような報道がありました。私は、大変気になりましたのですぐにNHKに注意をいたしましたら、その放送はアメリカのABC放送のやったものをそっくり、ABC放送の伝えるところによればともちろんコメントが入ったわけですけれども、そういうことなんですね。これがアメリカの間違いなわけですよ。  つまり、私はズメル氏自身に会って、アキノ政権になってからはむしろふえているということを三月の段階で聞きました。それは、政府軍側が攻撃をしかけてきているのが実態だということなんですね。これは、それぞれ戦っている相手の 言い分ですから、どっちが正しいかということはありますけれども、そこで思い出しますのは、あのベトナム戦争のさなかに南ベトナムに南ベトナム解放民族戦線というのがありました。同じような名前です。同じような性格だと思うんですね。つまりあれをアメリカはベトコンと呼んだんですね、ベトナム・コミュニストだと。私は、ズメル氏自身も、社会主義的な考え方を持ってはいますけれども、CPPというフィリピン共産党の党員ではないというふうに話を聞きながら感じました。  それから、最近、八月に人民党という新しい党をつくりましたシソン、ブスカイノという二人の若い指導者がいますが、この人たちは元CPPあるいは新人民軍の幹部であった人たちですが、それが今そこを離れまして、新しい合法政党といいましょうか、人民党というものをつくりました。議会にも人を送るという方向ですね。アメリカが、ベトナム戦争のときにあれをベトコンと呼んだ。ところがあの人たちは共産主義者の集団ではなくて、もちろん共産主義者もいましたが、共通しているのは民族主義者であったというふうに言わざるを得ないと思います。そういうことを、アメリカは自分に敵対する者はすべて共産主義者だというレッテルを張ってしまう、そういう傾向が強い。その意向を受けてフィリピンの軍は、エンリレ、ラモスというような人たちは、まさしくアメリカと同じようにこの集団を共産主義者の集団としてたたきつぶさなければならない、それが軍の役割だというふうに考えているわけですよ。そこのところをぜひ外務省は正しく把握をして対応していただきたい。  ちょうど、アキノ大統領が来日されるわけですから、直接そういう話は出ないにしても、アキノ大統領の最大の悩みのこの問題は、しかしアメリカ並びにフィリピンの軍の側の方向で解決しようとするならば大問題になってしまう。アキノ大統領は十分そこを理解した上で対応しているんだというふうに私は思っておりますので、時間が参りましたので御答弁は要りませんけれども、御配慮をお願いしておきたいと思います。ありがとうございました。
  183. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時二十一分散会