○
参考人(
竹内宏君) 御指名いただきました
竹内でございます。
私はこういう問題は素人でございますし、そんなことで、産業の面から
世界の情勢を述べょというような御指摘をちょうだいいたしましたので、そのようなことから御報告さしていただきたいと思います。
現在、
世界の
経済といいますか、産業は、オイルショックからの影響がはがれていく過程と、それから
世界の
経済システムといいますか、それが変わっていって、しかもその中で
技術進歩が余りないというような状態の中の混迷期ではなかろうか、こんなふうに思われるわけでございます。御案内のとおり、石油ショックのときには産油国に大量な資金が流入いたしまして、それとともに
世界経済が低迷いたしましたので、油が出ない一次産品国は致命的な打撃を受けたというようなことは御案内のとおりでございます。そのような致命的な打撃を受けた国に対してオイルマネーが還流していったわけでございますけれども、この還流するプロセスの過程で
アメリカあるいはイギリス、
日本などの金融機関が仲介の
役割を果たしたというようなことであります。つまり産油国は、
発展途上国の
カントリーリスクに対する判断とかあるいは金融手段についてのノーハウが蓄積されていなかった、こんなようなことで
世界の金融機関が活躍した時代である、こんなふうに思われるわけでございます。
現在、油が値下がりしてまいりますと、あの
発展途上国は
経済の実力にまさる、はるかに超える
工業化を実行してまいりましたので、いずれの国も資金がショートとして大打撃を受けているということでございます。現在、それらの
工業化を急ぎ過ぎた産油国と、それから
世界経済は依然として低迷しておりますので、一次産品国に巨額な累積債務がたまっているということが現在の
世界経済の第一番目の問題ではなかろうかと思われるわけでございます。昨年でございましても約七千億ドルの累積債務があるわけでございます。
日本円に直しまして約百兆でございますから、ちょうど国鉄の赤字の四倍の額があの
世界の累積債務としてたまっていて
世界経済を脅かしている、こういうようなことではなかろうかと思われるわけでございます。
ですから、現在この累積債務をそのままためておくといいますか、そのようなことをしておきませんと、ここで
世界の銀行が
一つでも引き揚げにかかるということになりますと、
世界の金融が乱れてまいりますし、あるいは事によると大変不幸な事態が起きるかもしれないというようなことで、累積債務を、累卵の危機のような状態でございますけれども、それをそっと何となくなだめておくというようなことが現在の重要な課題の
一つだと思われるわけであります。
ところが、このような累積債務を持った国の中でも、私、以下
言葉がやや、形容詞が針小棒大になって恐縮でございますけれども、まじめにやっていた国は見事に回復しているというような感じがいたします。ブラジルとか韓国とかスペインとかいずれも典型的な代表でございます。つまり、借りたお金を
資本流出させないで、そこでまじめに
工業化のものにとにかく使ってきた、そのような国はいずれも成果があらわれてきまして
貿易収支が見事に黒字に変わってきた、こういうことでございますけれども、その国の中でガバナビリティーがない国とかあるいは教育水準が極めて低いお気の毒な国とか、これらの国は依然として
経済が悪くなる一方だろうと思われます。メキシコのような国でございましても、ファイナンスされた資金がほとんどすべて
アメリカに流れていってしまう、このようなことでございますから、このあたりをどうしてしっかりなるようにするかというのが課題でございます。
それに対しまして、
世界国家はございませんので、御案内のとおりIMFがそこに介入いたしまして、いわば追加融資は、
経済のデフレ
政策なり財政をカットしないと継続的なファイナンスをしないというような形で、途上国といいますか
経済が破綻した国の
経済政策に介入していっているというようなことで、IMFがかつての
世界の超大国の一種のかわりを果たして何となくやってきている、このような感じがいたすわけでございます。
第二番目に、
世界で最大の問題は
アメリカ経済でございます。
アメリカ経済は、レーガンさんが登場した以後、それ以前から悪くなっておりますけれども、一層悪くなったのかなという感じがいたします。前に
予算委員会なんかでも一応御報告させてもらったことがございますけれども、簡単に図表で書かせていただきますと、
日本はGNPが三百三十兆でございます。四捨五入すると三百兆、そして貯蓄が八十兆で、毎年つくられた三百兆の物とサービスのうち二百二十兆がその年に食べられてしまい、八十兆が将来のために残されている、このような国でございますから、大変子供思いといいますか将来のためを考えた、我々はつましく生活し大量なものを将来のために残している、極端に言えばそんなことであります。現在十五兆円が住宅に使われ、五十兆円が設備
投資に使われて、十五兆円分が使い切れなくて余っているというような
経済でございます。
高度成長のときには
技術進歩によりましてどかどか工場が建てられましたので、この貯蓄がことごとく工場に使われて、
日本は見事
高度成長し豊かな社会が達成されたわけでございますけれども、現在は燃えるような
技術進歩もございませんので、その結果
投資がやや不足して過剰が生じているということであります。
この過剰分は、昭和五十年代の初めには政府はケインズが驚嘆するようなケインズ
政策を実行していただきまして、大量な建設国債や地方債を発行して、これを買い上げていただいていろいろな福祉施設をつくったということでございますけれども、御案内のとおり財政は見事に破綻したというような結果になったわけであります。
そのときに、ありがたいことにお隣にレーガンさんが登場いたしまして、ここで肝をつぶすような減税
政策を実行してくれたということであります。減税額六十兆に達するわけであります。
アメリカの
経済は六百兆でありますから、
日本規模で比べますと三十兆に及ぶ減税を三年間にわたってやった、こういうことでございますから、まさに肝をつぶすほどの減税であったということであります。その結果、レーガンさんは貯蓄がふえるとお考えになりましたけれども、貯蓄が余りふえませんで、しかも財政支出をカットされないので見事に財政赤字が拡大してしまった、このような結果で
アメリカの財政は大変赤字が続くわけであります。
その結果、金融をマネタリストなどが登場いたしまして引き締めぎみな運営をして高金利時代でやっていき、それに伴ってドルが上がってきた、円安の時代がやってまいりましたので、この余り物が見事に
アメリカに流れていった、このようなことで処分されたわけでございます。
日本から見ますと、レーガンの赤字のおかげで我々の貯蓄を取られた、このような感じになりますけれども、
アメリカから見ますと、おまえらの貯蓄が攻めて
きたおかげで大迷惑を受けた、このようなことで対立しているわけでございます。私も
日本人でございますから、
アメリカの財政赤字こそ悪い、このような立場に立たしていただいているわけでございます。
途上国も大変急
成長してまいります。貯蓄率が大変高い。燃えるような設備
投資が
アジア中進国では行われている。ここに向かって余り物が流れ、韓国、台湾でつくられた繊維機械やあるいは繊維であるとか、あるいはテレビであるとか、それが
アメリカなどに輸出されていってバランスがとれていった。その結果、韓国は例えば急
成長して、
アメリカへの輸出が伸びますから経常収支が悪化しなかった。
アメリカも結構財政が刺激され、円高でございますからインフレが抑えられて順調に
成長し、
日本は輸出が伸びることによって行政改革を実施しながら、つまり公共事業を抑えながら
成長してきた、このようなことでありますけれども、この結果見事に
アメリカの経常収支の赤字が耐えがたいほどの大きさになり、
アメリカの主要産業は競争力を失っていった。御案内のとおりでございます。
そこで円高の時代になってくるということでありますし、
アメリカは財政赤字を減らすというような決意を示して、そうなりますと金利が下がりますので、
日米金利差が縮小して円高の基調がつくられた、このように存じているわけでございます。この過程で
アメリカは、ドル高時代が続きましたので、
国内に
投資をするよりも
海外に
投資した方がはるかに利益が高いというようなことで、
アメリカの生産拠点が次々に
海外に移転していくわけでございます。韓国とか台湾などで自動車
工業とかあるいは電子
工業、部品
工業の基礎が与えられるのは、多分
アメリカのこのドル高のもとにおいて
海外投資がふえていった、このようなことが背景にあったというふうに思われるわけでございます。
ところが、
日本経済が逆に円高の時代になってまいりますと、
日本でございましても当然
経済力といいますか、力が
海外にオーバーフローしていくというような事態を迎えるわけでございます。
国内に
投資する場合と
アメリカに
投資する場合を考えてみますと、地価の価格は
日本の方が驚くほどの高さであるということであります。坪当たり
アメリカで買えば千円か二千円のところを、
日本では少なくとも七、八万円するわけであります。円高と申しますのは、一言で言えば
賃金水準が
世界最高になったというようなことでございますから、
賃金コストも高いわけでございます。
その上に
エネルギーコストが
アメリカに比べて圧倒的に高いわけであります。その上に、法人の実質課税率は
日本は地方税を含めますと五二%であります。
アメリカでございますと三十数%でございますから、当然
アメリカの方が収益期待が大きいというようなことで、しかも保護
貿易を超えるというような
戦略に立ちまして、
日本の
企業は
海外に進出していく力が強力に働いているというようなことでございます。昨年でございましても、百二十二億ドルの
海外投資、直接
投資が行われたということであります。もちろんそのほかに証券
投資、金利差を求めて
アメリカへ進出いたしまして、
アメリカの財政不足を埋めた、国債を大量に買いまして、
アメリカの資金不足を埋めたというような効果もございますけれども、直接
投資でございましても百二十二億、約二兆円のものが
海外に
投資されているわけであります。
日本の設備
投資に比べますと四%のものが
海外に出ていった、このような計算になるわけでございます。
その中では、ちょうど乗用車のように
アメリカの弱った部門を助けてやるというような効果もございます。鉄鋼なども
技術提携いたしまして支えていくということで、効果といいますか、
アメリカの再生のために力が発揮されているというような事態もございます。自動車
工業でございますと、現在は多分九百万台から一千万台つくっておりまして、
海外では約百万台ぐらいでございます。あと十年ぐらいたちますと、
日本の
国内生産は一千万台ぐらいになるでございましょうけれども、
海外生産は五百万台から六百万台になる
可能性がある。そういうようなことで、
国内に投入されればもっと
成長できる、ところが
海外に投入されていくような
仕組みが円高のもとにでき上がった、このように思われるわけでございます。
中進国群でございますと、通貨がさしあたってはドルにリンクしている、そういうようなことで輸出競争力は衰えません。その結果、既に韓国でも
アメリカに対する乗用車の輸出が順調に伸び始めたということであります。それは韓国の
国内で使われておりますポニーのような自動車でございますと、約九五%が部品は
国内製でありますけれども、輸出品になりますと約四〇%の部品が
日本製である、このようなことになるわけでございます。つまり、
日本の部品を買ったり、あるいは輸出用になりますと、外側の薄板でも
日本製品じゃなきゃ間に合わない。このようなことになりますから、それらのものを組み込んで輸出している。そういうことになりますと、
日本は先ほど
斎藤先生も言われたように部品基地になりつつあるのかなと、このような感じがいたすわけであります。
韓国の所得が順調に上昇していきます。御案内のとおりに、現在韓国は驚くほどの
高度成長を達成して、
経済が非常にうまくいっているわけであります。実質
経済成長率一二%、物価上昇率ゼロでございます。
貿易収支の黒字二十億ドルでございますから、
日本の昭和四十年代の前半のような驚嘆すべきうまい
経済成長が始まった、このように思われるわけでございます。
それに対しまして、
日本の部品とか機械設備などが輸出されているというような状態で、これを組み込んで韓国が
成長しておりますけれども、同時に
賃金が上がってまいりましたので、下級品はインドネシアなどから輸入し始めた。このようなことで
日本が
成長し、中進国が
先進国に伸び上がり、その結果、
発展途上国からの、
日本のみならず中進国群への低流通製品の輸出が伸びている。このようなことで、
アジア全体の
成長に
日本が寄与しておりますし、それから大げさに言えば、
アメリカの再生についても若干の寄与があったのかなと思われるわけでございます。
ところが問題は、既に
アメリカでございましても
日本企業があふれている。どんどん進出してまいりますし、ビルも
日本製、
日本がビルを買ったり、土地を買ったりいたします。そのようになりますと、
日本の
経済力のプレゼンスが余り巨大過ぎるというようなことで、反日運動が盛り上がる
可能性が既にあるということでございましょう。ヨーロッパ
諸国にも自動車とかテレビとかが続々工場を建設してまいりましたけれども、向こうの立場からいいますと、
日本企業は組み立て部門しか来ない、部品が来てくれないのじゃないかということで、ねじ回し産業だけやってくるということで、批判を受けるわけでございます。
日本の立場からいえば、
欧米の部品は物が悪くて使えないということになるわけでございますけれども、周りのレベルを上げるための努力をしない、このような御批判があります。
日本から見ますと、自動車
工業から部品
工業から鉄鋼業から、行ってしまったならば
日本経済は空洞化するわけでございますから、
欧米と
日本との対立は、向こうは
日本の空洞化を要求し、
日本はそんなに行ってもらっちゃ困るというようなコンフィリクションがあるのかな、このような感じがいたしているわけでございます。このままでまいりますと、多分円高になりますと
海外に出ていってしまう。一方、それらのものが輸入品として入ってくる
可能性もございますし、実際、円高のもとで輸入がふえ輸出が減退しているというような状況で、
日本の低生産産業はいずれも大打撃を受けているというような状態でございます。それらのものが玉突きの状態になって打撃を受けているというような気がいたします。
例えば造船業でまいりますと、現在の
日本の造船業は、船舶不況と中進国との敗退によりまして操業度は二〇%を割っている。韓国でございますとフル操業の状態にございます。来年からちょっと落ちるようでございますけれども、過去の注文
でフル操業の状態になっている。もちろん価格差が決定的に違うということであります。造船業がここから立ち直るためには多分厚板を輸入せざるを得ないだろう、二十数%安いわけでございますから。そうなりますと、鉄鋼業がただでさえも内需の不振と輸出の低迷によって参っているところが厚板の内需が失われる。こういうことになりますと、鉄鋼業も雇用調整やなんかをやらざるを得なくなり、そのうちの
一つで三倍高い石炭を買わないということになりますと、ちょうど石炭産業にまさに深刻な雇用問題がやってくるというような、だんだん玉突き状態になりながら、既に完成した重化学
工業の地位が下がっていくというような気がするわけであります。
そのかわりハイテク産業になりますと、これは
技術進歩がございますので、あるいは新しい製品が開発できる余地がたくさん残っているわけでございますので、既に百六十円でも大丈夫だとか、五年先に百三十円を計画して
戦略を立てているというようなことがあるわけでございます。そのような過程で
日本経済はぐんぐんとハイテク化していくという効果があるわけでございますけれども、一方、衰退していく産業は大変致命的な打撃を受け、衰退する分だけ中進国やその他の国の
経済的メリットが出てくることは御案内のとおりでございます。
このような枠組みが円高のもとにつくられて、
日本の特に輸出産業は不況にあえいでいるというのが現状ではなかろうかと思われるわけでございます。このような状態が多分しばらく続くという感じがいたします。ただ、さらに円高のもとでいきますと、先ほど申し上げましたように、
海外に出ていってしまう、これを防ぎますには何としても御案内のとおり、かつては国債の大増発によって埋めていた貯蓄
投資のアンバランス、ごく最近までは経常収支の膨大な黒字によって埋められていたこのアンバランスがそのまま残っておりますから、これを内需の拡大によって埋めるしか手がないという羽目に追い込まれたというふうに思われるわけであります。
もちろん、内需の拡大には、余分なことでございますけれども、
経済のシステムを変えないといけない。つまり現在
技術進歩もございませんし、人々は変化に挑戦するという
気持ちもなくなっておりますから、そのようなときになりますと、既にもろもろの国有
企業が民営化されて新しい
投資を呼び起こしていくとか、あるいはさらに
農業問題であるとか、非常に難しい土地問題というような政治的に大変難しい問題にチャレンジしていく過程で多分貯蓄過剰部分がなくなっていけば、つまり内需がそれだけ拡大すれば、まあまあこの産業転換による被害は少なくて済むかもしれない。こういうことでありますけれども、いずれにいたしましても、その被害は大きくなりながら周りの国は
成長するチャンスがある、このような感じであります。
日本の
海外に出て行く先は、言うまでもなく現在は
アメリカが最も多いということであります。それは
アメリカが大変
企業誘致に熱心だ。州知事もいつも何人か
日本に来られて、頭を下げて歩いていられるというような大変な熱心さでございますし、いろいろなフィーバーを与えておりますけれども、何といっても強大な市場があって、しかも取引とか制限がほとんどない、こういうところが大変魅力的であるということで、
アメリカに向かって最も直接
投資が進んでいるという状態でございます。
それで中進国群になりますと、大体、最近は変わってまいりましたけれども、
外資に対する
政策が猫の目のように変わるというようなことでありますし、特に
中国なんかになりますと、大変担当者が困りますのは、いろいろなことを向こうの担当者と決めてきまして、そのような約束になったかと思いますと、向こうの方が上部に行ったときに報告が変わってしまいますから、せっかく
日本の
国内で常務会に報告してそうなるよなんと言ったところが、偉い人が、社長さんか何か向こうに行ったら様子がすっかり変わっていたなんということで、部下は立つ瀬がないというようなことがしばしば起きるわけでございます。しかも現在、
中国になりますと、御案内のとおり開放
政策が進み過ぎて調整期にあるというような状況でございます。ですから、
日本の
資本進出とかいろいろな
経済協力についても
中国についてはフィーバーがおさまって一休み、このような状態でございます。そこで登場しますのは、韓国とか台湾とか中進国群が驚くべき
成長をしているわけでございますから、こちらに進出が向けられる
可能性が多分にあるというような感じがいたすわけでございます。
それにいたしましても、
海外の
企業は国境を越しましていろいろなところに
投資していっているわけでございますけれども、
日本の
企業はワールドエンタープライズ化している
企業も多々あります。本田自動車などは、
海外生産の方が間もなく多くなるというような状況でありますけれども、概して外国
企業のようにワールドエンタープライズになっていくテンポが一段階少ないというような気が大変するわけであります。と申しますのは、基幹部分は
日本に押さえておく、研究所とかあるいはハイテク、高
技術のものは
日本で押さえておいて、余分なところといいますか、別の大したところないといいますか、大したことないということはありませんけれども、ここほど重要でない部分が
海外に出ていくというようなことが多いわけであります。それは多分、そこまで
海外に行っては終わりだというような、一種の
日本の
企業の背後には経営者の中にもナショナリズムがあるわけでございますから、その面だめ
企業の
資本の精神からいきますと、
国際化すべきところが一種のナショナリズムによって抑えられているのかなという面もございます。
その背景は、
国際化していってもそれはことごとく英語であるというようなことでございますから、やはり
日本語が通用して
国際化していけばもっと出るはずでありますけれども、そんなようなことで、
アジアの体質みたいなものがその背景にあるのかな、こんなような感じがいたしまして、
海外に比べると一段テンポが遅いということが批判されているわけでございます。もっとも、最近になりますと
アメリカのような強大なマーケットで軍需の需要がございますときには、どうしてもここにハイテクが転がっておりますので、研究所も
アメリカに進出していくという例が多いような感じもいたすわけでございます。
多分、
日本経済はこれからは内需がうまく拡大してくれれば非常に結構でございます。現在のように、約九百億ドル近い経常収支の黒字があってそのほとんどが
海外に流出しているということは、
日本経済にとっては物と金があり余っているけれども、それを
国内で使い切れるメカニズムがない、このようなことでございます。しかも、それらの貯蓄が我々よりも
経済力が強大な
アメリカに流れていくということであります。比喩的に言えば、多分デベロッパーの
方々なんかは大変切歯扼腕されるだろうというふうに思います。つまり、箱崎から成田まで行くときに、あたりにウサギ小屋の群れを眺めながら
アメリカで宅地造成をやる、これまた大変悲しい出来事でございますけれども、実際には
日本でできるようなメカニズムがない、ここが内需が拡大できない理由でございます。内需を拡大し、つまり外に出していた貯蓄を
国内に投入すればもっともっと生活水準が上がり
経済が
成長するはずでございますけれども、これをいわゆるパイプをつけてやるというのは、まさに
経済の仕事ではなくて政治の仕事かなというような、口幅ったいようでございますけれどもそんな感じがいたすわけでございます。
でございますけれども、
日本も各地に
資本進出いたしまして、その結果
日本文化が
海外で理解されるようになったという成果がございます。ですから、一層協力しやすいような
体制になるのかな、つまり、例えば
アメリカの五万人以下の都市に行きますと、
日本料理屋がことごとくあるようになった。
アメリカで
日本語を習う人が大量にふえてきた、こんなようなことでございますし、日
本食はダイエットなんと言っておりますけれども、ダイエットというよりも一種の
日本食を食うことがファッショナブルになった、こんなようなことでございます。そういうことになりますと、文化が非常に輸出しやすくなってきたということであります。これは同時に、
企業も
国際化しやすい
条件が出てきたのかなという感じがいたすわけでございます。
その際、最も問題になりますのは
アジア諸国でございます。韓国に対する
投資もややおくれておりますのは、やはり多くの人が大嫌いだと言っている国には
技術が流れない、流れにくいわけであります。
日本も戦後、
アメリカに負けましたけれども、
アメリカが立派だ、民主主義で立派だとか、みんな
アメリカを非常に過大評価いたしまして、一生懸命習った結果
技術もスムーズに入ってきた。英語を習う方が格好がよく、しゃべれる方が格好よく見えましたので
アメリカの
技術の導入が楽であった、このようなことでありますけれども、韓国のように
日本語を習うことを数年前までは大変屈辱的なことであり、習えばかえって社会的にマイナスだというようなところになりますと、なかなか
技術が流れにくいということであります。このようなことも多分韓国の
成長率が高まるにつれて既に解消をされつつあるという気がするわけでございます。
そのようなことで、内外の文化の交流が進みながら
日本経済が多分徐々に
国際化していって、言ってみれば
日本に強力なハイテクの部門だけ残るといいますか、出ていかないで、他のものは幾分ずつ出ていくのかなという感じがいたすわけであります。その進むテンポは言うまでもなく、政府の内需拡大のシステムがうまくでき上がれば、
海外に
資本が漏えいしていかないで
国内に
投資される。外国にとって最も必要なのは
資本が出てくれることではなくて、
日本が
成長し輸入が拡大することだ。これが外国にとって最も必要なことだということを考えますと、対外
政策的な感じもよくわかりませんけれども、差し当たっては、内需を拡大して経常収支をバランスさせることが最も現在必要な
政策ではなかろうか、このような感じがいたすわけでございます。
甚だまとまりませんけれども、以上、御報告を終わらせていただきます。