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1986-10-03 第107回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十一年九月十一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 砂田 重民君    理事 住  栄作君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       伊藤宗一郎君    宇野 宗佑君      上村千一郎君    小此木彦三郎君       小渕 恵三君    越智 通雄君       大西 正男君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    田中 龍夫君       西岡 武夫君    原田  憲君       福島 譲二君    細田 吉藏君       松野 幸泰君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       森  喜朗君    山下 元利君       井上 一成君    上田  哲君       大出  俊君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       山口 鶴男君    近江巳記夫君       神崎 武法君    正木 良明君       矢野 絢也君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    金子 満広君       寺前  巖君    不破 哲三君 ────────────────────── 昭和六十一年十月三日(金曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 砂田 重民君    理事 住  栄作君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 稲葉 誠一君    理事 上田  哲君 理事 川俣健二郎君    理事 近江巳記夫君 理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       甘利  明君    伊藤宗一郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       越智 通雄君    大野 功統君       海部 俊樹君    亀井 善之君       熊川 次男君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    志賀  節君       田中 龍夫君    中村正三郎君       西岡 武夫君    原田  憲君       平林 鴻三君    福島 譲二君       細田 吉藏君    松野 幸泰君       武藤 嘉文君    村田敬次郎君       村山 達雄君    森  喜朗君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    川崎 寛治君       菅  直人君    嶋崎  譲君       細谷 治嘉君    長田 武士君       正木 良明君    矢野 絢也君       渡部 一郎君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    米沢  隆君       石井 郁子君    寺前  巖君       不破 哲三君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 玉置 和郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ツ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣審議官   遠山 仁人君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         総務庁長官官房         長       古橋源六郎君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  勝又 博明君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         総務庁統計局長 三浦 由己君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁長官 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      西村 宣昭君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         科学技術庁長官         官房長     矢橋 有彦君         科学技術庁科学         技術政策局長  中村 守孝君         科学技術庁研究         開発局長    長柄喜一郎君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁計画・調         整局長     星野 進保君         国土庁土地局長 田村 嘉朗君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君         大蔵大臣官房総         務審議官    足立 和基君         大蔵大臣官房審         議官      新藤 恒男君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省理財局次         長       安原  正君         大蔵省理財局次         長       入江 敏行君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部省初等中等         教育局長    西﨑 清久君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         厚生大臣官房審         議官      川崎 幸雄君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局老人保健部長 黒木 武弘君         厚生省薬務局長 森  幸男君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁次長   松田  堯君         水産庁長官   佐竹 五六君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         工業技術院長  飯塚 幸三君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     林  淳司君         運輸省海上技術         安全局船員部長 増田 信雄君         運輸省航空局長 山田 隆英君         郵政省貯金局長 中村 泰三君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房総         務審議官    渡辺  尚君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房審         議官      森  繁一君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      三重野 康君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員異動 九月十一日  辞任         補欠選任   神崎 武法君     長田 武士君   二見 伸明君     渡部 一郎君 同月十二日  辞任         補欠選任   大出  俊君     井上 普方君   岡田 利春君     菅  直人君   佐藤 観樹君     嶋崎  譲君   山口 鶴男君     細谷 治嘉君 同月十六日  辞任         補欠選任   大西 正男君     志賀  節君 十月三日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     大野 功統君  小此木彦三郎君     甘利  明君   小渕 恵三君     熊川 次男君   越智 通雄君     中村正三郎君   奥野 誠亮君     平林 鴻三君   木下敬之助君     米沢  隆君   金子 満広君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   甘利  明君     亀井 善之君   大野 功統君     宇野 宗佑君   熊川 次男君     小渕 恵三君   中村正三郎君     越智 通雄君   平林 鴻三君     奥野 誠亮君   米沢  隆君     木下敬之助君   矢島 恒夫君     石井 郁子君 同日  辞任         補欠選任  亀井 善之君     小此木彦三郎君   石井 郁子君     金子 満広君 同日  理事二見伸明君九月十一日委員辞任につき、そ  の補欠として近江巳記夫君が理事に当選した。 同日  理事岡田利春君九月十二日委員辞任につき、そ  の補欠として上田哲君が理事に当選した。 同日  理事稲葉誠一君同日理事辞任につき、その補欠  として川俣健二郎君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事稲葉誠一君より、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任並びに委員異動に伴い、現在理事が三名欠員となっております。この際、補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  それでは       上田  哲君    川俣健二郎君       近江巳記夫君 を理事に指名いたします。      ────◇─────
  5. 砂田重民

    砂田委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ────◇─────
  7. 砂田重民

    砂田委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田毅君。
  8. 野田毅

    野田委員 まず予算関係質問に入ります前に、先般行われました自民党研修会における中曽根総理発言について若干お伺いをしたいと思います。  総理自身あの場において発言されたときには、まさかこんな大変なことになるというような御認識はなかったと思います。また、当日出席をしておった人たちから話を聞いても、まさかこんな大騒ぎになるということは考えなかったというのが実感だと思うのです。総理は今まで、確かに就任以来対米関係ということでは一番心を砕いてこられたところでありますし、そのアメリカに対して、しかもまた文脈から見ても、少なくともアメリカ社会を批判したりあるいは人種差別的な意図をにおわせようというような気持ちは毛頭なかったものだと思います。  しかし、現実にはアメリカ各界各層国民から非常に厳しい批判の渦が巻き起こったこともまた事実であります。また、世界じゅうのマスコミがこの問題を大きく取り上げて非常に厳しい論陣を張ったということもまた事実であります。このことは、残念ながら総理自身発言という個人の問題だけでなくて、下手すると日本人全体のイメージをも傷つけかねない非常に厳しい状況になったことも御承知のとおりであります。  私どもは、総理がこういった御自分発言でこういった事態になったことについてどう受けとめておられるのか、そしてまた当日の発言真意は一体那辺にあるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  9. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 過般の自民党講習会における私の発言に関しましていろいろお騒がせもいたしまして、まことに遺憾にたえないところでございます。  私が私の考えでも申し上げましたように、人種差別考えているとかあるいはアメリカ社会を批判するなどとは毛頭考えておりませんでした。私は就任以来、アメリカとの関係を最も重要視してきておりますし、また、アメリカがその多人種複合国家で非常に世界に対しても貢献もしておるし、また、あらゆる面において偉大性を発揮しているという点もかねてから申し上げてきておるとおりで、その心境は全く変わりございません。  しかし、ああいうような発言によりましていろいろ誤解も受け、あるいはアメリカ国民の感情を傷つけたということは申しわけないことでございますから、率直に申しわけないと申し上げた次第でございます。  今後ともいろいろ自粛自戒いたしまして、こういうようなことは起きないように、また日本人の名誉を挽回するように一生懸命努力してまいりたいと考えております。
  10. 野田毅

    野田委員 今、総理から真意をお伺いしました。真意はよくわかりました。その後、アメリカ政府も、総理釈明を是として額面どおり受けとめる、こういう表明をしておりますし、また米国の議会においても総理米国民に対する陳謝メッセージを評価し受け入れたわけであります。したがって、対米関係ということでは一応、個々のレベルでのしこりは残るとしても大勢としては鎮静化しつつある、こういうふうにも思えます。  ただ、我が国国民に対してやはりまだ問題が残る。今も国民に対して申しわけないというお話であったわけでありますが、少なくとも一つは、これは総理個人考えではなくて日本人全体の考えではないかという誤解をされたという、日本人全体のイメージを傷つけたという問題が一つあります。  そしてまた、総理自身はいやしくも日本の顔でありますから、少なくとも総理が外国で、国際社会の場で堂々と頑張っておられる姿を日本人は期待をしておるわけであります。その総理が御自分発言によって残念ながら陳謝をしなければならない、こういう事態日本国民としてはまことに残念な事態であります。このことについてひとつ反省をしていただきたい。  さらにまた、そういったことによって対米関係について非常に日本国民も心配をした、こういう三つの点で我が国国民に対しても、大変恐縮でありますが、不本意な発言であったと思いますが、少なくとも総理自身発言ということの結果でありますから、ぜひひとつ国民に対してもきちっとした釈明をお願いをしたい、こう思います。
  11. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの発言自民党講習会党員講習会におきまして党総裁として講演をした、それで私個人考えを申し述べた、そういうことでありまして、日本国民を代表してというような講演でも何でもないわけであります。しかし、ああいう結果が出ましたことにつきましては甚だ申しわけないことでございますから、私はいわゆるパーソナルメッセージメッセージという形でアメリカ国民に対して申しわけないということを率直に表明したわけでございます。これは日本国民を代表してという立場ではありません。私自体が起こしたことであり、中曽根個人のそういう考え心境を申し述べた、そういうことであります。  しかし、日本国民皆様方に対しても、こういうような結果を起こしましたことはまことに申しわけないことでございますから、率直に遺憾の意を表する次第であります。
  12. 野田毅

    野田委員 総理のお気持ちはよくわかりました。  あと一つは、去る九月二十五日の衆議院本会議で各党の代表者がやはりこの問題について質問をしておられます。その際、答弁の中では総理は今のような謙虚な陳謝めいたようなお話は一言もなかったわけであります。それがたった一日しかたたないその後において、二十七日の未明でありますが、対米メッセージを出しておられるわけであります。これは国会を全く軽視するものではないか、こういうような声が非常に厳しく出てきておるわけであります。この点について総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  13. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当初におきましてアメリカ側情報等もとり、あるいは在外公館からの情報も聞きまして、外務報道官の談話及び私の国会答弁というものを行ったわけでございます。  その中心は、あの中をよく読んでいただきますとわかりますように、主題は、日本はカリフォルニアぐらいのところへアメリカの人口の半分の人間が集まってアメリカの生産の半分を行っているという高密激動社会である、しかも非常に情報化されて、テレビやあるいはマスコミ情報国民の間にこんなに入っている国はそう多く例はないだろう、そういう高密激動社会の中において政治を行うについては、先手を打って、そしてテンポとリズムに合う政治をやらないとフラストレーションがたまってくる、だから注意を要する、それが私の趣旨であり文脈であったわけであります。そういうような考えで、アメリカを非難するとか人種の問題を論ずるとかという、そういうことは全くなかったわけなのでございます。  それで、アメリカ内部につきましては、外務報道官声明等によりまして、アメリカの国務省はその日本側釈明を受け付ける、そういうような声明がありまして、これはよかったな、そう思って推移を見ておったところであります。そこでああいう答弁をいたしたわけでありまして、私の真意を説明すると他意はなかったのでありますと、そういう意味で国会答弁をさしていただいたのであります。  しかし、その後アメリカ内部を見ていますと、だんだん広がってまいりまして深刻化してまいりました。それで、これは何か考えなければいかぬかな、そう思っておりまして、外務大臣がちょうど国連総会アメリカへ行っておりましたから、外務大臣日本に帰るのを待って至急直接本人から意見も聞いて対策を講じよう、こういうことで、新しい情報を持って帰った外務大臣並びに最近の情報在外公館からの意見等もよくしんしゃくいたしましてああいう決断もいたし、またメッセージも出したわけでございまして、事態の変化に相相応いたしまして私としての処置を行った、こういう次第でございます。
  14. 野田毅

    野田委員 よくわかりました。  同じ発言の中で、またちょっといろんなことがあるのですが、女性はネクタイの色はよく見るが何を言ったか覚えていないらしい、こういう発言があるわけであります。日本の女性は、しかし総理発言を大変よく覚えておりまして、その後大勢の御婦人の方々から厳しい抗議が相次いでおるわけであります。もちろん総理はジョークでおっしゃったと思うのであります。しかし、そういう抗議がたくさん来ているということもまた事実であります。  総理のお国は上州でありますから、かかあ天下の国でありますから、まさか総理が女性べっ視主義者とは思えないのですけれども、発言真意をお伺いをしておきたいと思います。
  15. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あそこの部分は要するにユーモアを込めて申し上げたので、近ごろは視聴覚時代になって女性の審美眼が非常に発達してきて、男性よりも鋭い審美眼を持ってテレビを見ている、だから男はよほど注意しないといけませんよと、そういう趣旨を込めて「らしい」という表現で、そうであると断定してないのはそういうユーモアの意味を込めて「らしい」と言っておるのであります。  私はしかし、女性というのは非常に大事であると前から申し上げて、男女差別撤廃条約を批准したのも中曽根内閣であります。そのために雇用平等法という法律をつくるのにも随分苦労いたしました。この長い間の男女差別撤廃条約というものを処理したということだけでも我々の誠意はお考えいただけると思いますし、女性の大臣を最近になって十数年たって任命したとか、あるいはこの間ウルグアイのプンタデルエステでガットの総会があって世界じゅうの大臣が集まりましたが、あの大事な国の大使は、女性の赤松さんを大使に任命したわけであります。ああいう大事な国の大使にも女性を任命する、そういうような考えにも立ちまして、女性の登用あるいは社会的進出、そういう問題については人一倍努力しております。  国会答弁でも毛沢東の言葉を引用しまして、女性は天下の半分を支えておる、そういうことも申したことを私は記憶に残っておりまして、女性をべっ視するとか、そういう考えは毛頭なかった。私の行動をぜひ御参照願いたいと申し上げる次第であります。
  16. 野田毅

    野田委員 いずれにしましても、総理発言日本国民だけでなくて、世界じゅうの人たちが注目をしているわけであります。総理発言はそいう意味で一個人発言ということだけにとどまらないで、いわば国益にかかわってくるわけでありますから、ぜひひとつ今後とも十分御自戒、御自重をお願いいたしたいと思います。くどいようでありますが、我々日本国民というのは、少なくとも総理が堂々と国際舞台で頑張っておられる姿を期待をしておるのであって、余り見苦しい格好は、みんなは悲しい思いで見ておるわけでありますから、ぜひ御自重願いたい、こう思います。  ところで、最近の一連の発言の問題、これは藤尾前文部大臣の発言あるいは今回の総理発言、いろいろ続いておるわけでありますが、いずれも日韓関係とかあるいは日米関係だけとか、そういった二国間だけにとどまらない、こういうことだろうと思います。  アジアの国々も、また世界の国々も注目をしておるわけであります。それは残念ながら日本の過去の行動を少し思い起こさせておるのではなかろうか、そして日本の将来への歩みについて何がしかの懸念を抱きつつあるのではないだろうか、そういうことを私どもは心配しておるわけであります。  我々政治家は少なくともそういった懸念を吹っ飛ばすような、払拭するような努力をしていかなければならぬと思います。しかし同時に、この問題は政治家だけの問題というだけでなくて、広く日本人の意識構造にも関係してくる話だろうとも思います。  この問題は、我々の考え方の中に、少なくとも日本人としての誇り、プライド、当然のことでありますが、ややもすればそれが度を過ぎて尊大な態度になっていったり、あるいはまた傲慢な姿に映りはしないか。特に経済大国ということがもてはやされるようになりましてから、そういう傾向は著しいような指摘もあります。求められもしないのにアジアの中のリーダーということを自任する向きもあります。  一方でまた、強大な相手国に対しては、ややもすれば謙虚を通り越して卑屈な姿になりやすい。謙虚であるべきであるが、卑屈であってはならぬ。そういった意味で、私どもは国家としてもそしてまた個人としても、少なくともプライドを保ちつつも、しかも謙虚でなくてはならぬ、こういう政治姿勢も必要であると思います。  最近アメリカのセイヤー教授、総理ともごじっこんの方だと思います。この人が指摘をしておるわけでありますが、アジアの国々の中で日本人を好かないという国は非常に多い、日本人が嫌いだという国が十七もある。大変残念な事柄であります。こういった事柄を一体どういうふうに受けとめておられるのか、そしてまたなぜ日本が好かれないのか、どうしたら改善できるのか、この点について御所見をお述べいただきたいと思います。これは総理もしくは外務大臣にお願いしたいと思います。
  17. 倉成正

    ○倉成国務大臣 野田委員にお答えいたしたいと思います。  今セイヤー教授のお話伺いましたけれども、セイヤー教授の論文またいろいろなお話、私もよく読んでおります。御案内のとおり、日本が経済大国になったということによって日本が非常に傲慢になったのではないか、そういうことがよく言われるわけでございます。しかし私は、日本が経済大国になったことは事実であるけれども、経済というのは一つの手段であって、やはり日本としてこれから求めていくべきものは、日本が世界の平和にまた人類の幸福にどうやって貢献していくかということが一番大事なことであると思います。  したがって、私はちょうどアフリカの多くの友人の方々、約四十数名の大臣あるいは大使の諸君と国連総会の機会にお目にかかりました。そのときに、経済大国である日本ということについて口口にアフリカ諸国の方々からお話がございましたけれども、私はそのときにこう申しました。私も皆様方意見は、確かに日本が経済大国になったことは事実であるけれども、一つだけ皆様方意見が違う点がある。経済は一つの手段にしかすぎない。日本には誇るべき文化もあり、歴史もあり、またいろいろな民族性もある。そういうことをやはり理解をしていただくことが必要であるということをアフリカの皆様方に申し上げました。それはそのまま、私は諸外国に申し上げるとともに、日本に対しても当てはまることでありまして、アジアの諸国は、文化、歴史あるいは宗教、また過去における日本の国とのいろいろな不幸な関係もございました。そういうことを踏まえながら謙虚に、それぞれの立場を考えながら対処していくということが大事ではないかと思うわけでございまして、経済は一つの手段にしかすぎない、したがって、経済で若干成功をおさめたからといって傲慢になってはならない、謙虚であるべきだということは、当然我々が考えるべき基本的な考え方であると思います。
  18. 野田毅

    野田委員 文部大臣にお伺いをするのですが、今、中曽根内閣の最大の課題の一つであります教育改革に取り組んでおられる、その中でも道徳教育を大変重視をする、こういうことでありますが、今までのお話でもわかったと思うのですが、今最も必要なことは、国際社会に通用するようなそういう人間教育をしてやってもらいたいし、そしてまた正しい歴史教育をしてやらなくてはならぬ、こう思います。この点についてしっかりとした決意の表明を願いたいと思います。
  19. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は思いますのに、どうも日本人というのは国際的な対応が受信型で、受ける方は何ぼでも受ける、しかし自分の意思なり思うておることを外へ伝える方法が下手であった、私はそういう感じがしておるのであります。したがいまして、これからの国際社会に向かっていくについて、もちろん義務教育は当然でございますが、そういう外の方との、いわば信頼をされる、そして正義感を十分に認識していただける、そうして物事を処するに正直である、そういうことを十分に心得て外とつき合うという、そういう人間の養成が大事だと思うております。  したがいまして、これからの徳目教育の中におきましてもそういうものを十分に盛り込んで教育の実施をしていかなければならぬと思うておりますが、同時にもう一つ大事なことは、国際社会において相手方を十分に理解するということも私は大事だ。最近、今お話しございましたいろいろな問題ございますのに、要するに相互における理解というもの、日本人日本人の立場に立ってだけの理解をしておったのではいかぬのであって、向こうの立場に立っても理解するという、そういう習慣づけを教育の中でやはり実施していくべきだ、こういうことを思うておりまして、文部省としての今後の努力を一層強めていきたいと思うております。
  20. 野田毅

    野田委員 SDIについてお伺いをしたいと思います。  SDIについては、先般の本会議の代表質問で我が党から、加藤政調会長代理からもいろいろ話があったわけであります。今日の安全保障の体系というのは、まさにそういう大量殺りく兵器、そういう核兵器が開発されることによって、それを相互が保持する、それが相互に報復を前提とする抑止力によって維持をされておるわけでありますが、今回のこのSDI計画というのは、むしろそういう大量殺りく兵器を、それが弾頭について飛んで来るそれを途中で撃ち落とす、いわば大量殺りくを目的とする兵器ではなくて、むしろそれを未然にその兵器を破壊する、殺傷を目的とするような兵器ではない、これがSDIのねらいであると我々は理解をしておるわけであります。そういう意味では純粋に防御的な手段であるわけでありますし、言うならばそういう核兵器をいずれは無用の長物にできるようなこともあるいは期待ができるかもしれない、そういうような性格のものだろうと我々は考えておるわけであります。  同時にまた、このSDIはあくまでまだ開発はされておりませんし、配備をするわけでもありません。今回やろうとしておるのは、まさにそういった、夢のようなと言うと語弊があるかもしれませんが、そういうような兵器の研究を共同でやろう、こういう段階であります。そしてまた、そのことが我が国が参加するとはいっても、我が国政府が参加するのではなくて、そういう研究に民間企業が参加したいという場合には自主的判断で参加ができるような道を開いてやろう、こういうことでありますから、私どもとしては、このSDI計画に日本が参加するということを何ら反対する理由はない、こう考えるわけであります。  特に日本は、少なくとも今日アメリカの核の傘の中にあって究極的な安全保障を全うしておるわけでありまして、そういう研究がアメリカにおいてなされようとしておる、それに我が国が、しかも民間の企業が参加したいという場合、これを阻止する理由は全く見当たらない、こう考えておるわけでありますが、外務大臣、このSDI研究参加についての見解、所見を伺いたい、こう思うわけであります。
  21. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  基本的な考え方については野田委員と私の考えは全く一致いたしております。私も長崎出身の政治家の一人として、また一市民として、核兵器をこの地球上から完全に廃絶する、なくするということが我々の目的でなければならない、人類共通の悲願であると確信をいたしております。  そういう意味において、私どもがそういう悲願を持っておる、あらゆる機会に努力をしておる、しかしこれは一片の演説とか宣言とかあるいはそういうことでは絶対に達成することはできない、どうやって、どういうプロセスでこの問題を達成することができるかということが我々政治家の課題であると思うわけでありまして、米ソ両大国がまた世界の非同盟の諸国の人たちが一生懸命になってこの問題に取り組んでおることは御承知のとおりでございます。  したがって、今SDI計画についてアメリカから種々の戦略的な防衛構想の基本的考え方について伺っているところでございますけれども、軍備管理、軍縮交渉などの努力と並行しながら非核による高度な防衛的なシステムについて研究をしたい。そして究極的には核兵器の廃絶をしようというのがSDIと心得ておる次第でございます。したがって、その研究計画に日本は参加をすると申しますか、いわゆる日本の企業等がこれに参加する道を閉ざさない、そういう意味でSDI計画に対する取り決めをアメリカといたしたいと思っておる次第でございまして、あくまで防御的なものである、そして究極には核兵器がこの地球上からなくなることを目指すものである、そういうふうな意味で我々はこの研究計画に参加したいと思っておる次第でございます。  同時に、また御案内のとおり、宇宙にはまだ非常に未開の部分がございます。これから宇宙の中では、真空地帯におけるいろいろな研究──少年たちの夢も宇宙にありまして、宇宙の中で実験をしたいというような新潟の青年たちもある。スペースシャトルを打ち上げたときに計画を出しまして、そしてその計画がスペースシャトルの計画の中にのせられたと聞いておるわけでございますから、そういうSDIの研究計画に参加することによって、我が国の技術水準の向上ということもあわせて考えていくことが有意義である、さように考えておる次第でございます。
  22. 野田毅

    野田委員 国民の中にはいろいろな誤解をする人がまだまだあるようでありますから、どうぞわかりやすく説明をするように心がけていただきたい、誤解を解くようにしていただきたい、こう思います。  先般、日中友好二十一世紀委員会の開会式が東京で行われました。あのときに、総理の冒頭のごあいさつが大変好評を博したわけでございます。私も当日、日中協会の理事長として出席をして、感銘を受けた一人でありますが、その中国側座長の王兆国さんから、日中青年交流センターの定礎式を機会に総理に訪中を要請された、こういうふうに聞いておりますけれども、この二十一世紀委員会そのものが、総理と、それから胡耀邦総書記の肝いりでつくられた大事な日中間の課題でありますから、それの一つの成果がセンターでありますから、国会の都合もあろうかと思いますが、ぜひ御出席されたらいかがだろうか、こう思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  23. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般、東京で第三回日中二十一世紀委員会が開催されました折に、王兆国代表から私に対しまして、北京で我々が胡耀邦総書記そのほか中国政府と相談しておった日中の青年の交流センターの定礎式を行うのでぜひ御招待したい、そういう御招待がありました。私は非常に感謝したところでございますが、何しろ国会開会中でもありますから、国会の皆さんの御意見やら国会の都合等もよく見きわめなければ返事はできませんので、よく検討いたします、そう言って検討しておる、まだ白紙の状態である、こういうことでございます。
  24. 野田毅

    野田委員 いよいよ米ソ首脳会談が目睫の間に迫ってきたわけでありますが、このゴルバチョフ・ソ連書記長の訪日の問題について、何かしら報道によるとかなりそういう早期実現の空気が出てきておるようにも思います。しかし、実際には事務的にはどういう形で進んでいるのか、いつごろその実現ができるのだろうか、こういう点についてお伺いをしたいと思うのです。  同時に、早期実現は大変好ましいことであります。大歓迎すべきことでありますが、あわせて、やはり領土問題について我が国としてのきちっとした立場がいささかも揺るがないということが大前提であるわけでありますから、この点についてもうやむやにすることがないようにぜひお願いをしたい、こう思います。この点について外務大臣からお答えいただきたいと思います。
  25. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えをいたします。  日ソ両国は移転のできない隣国でございます。したがいまして、この両国の間で安定的な友好関係を持つということは、私は日本の将来にとっても、またアジアの安定にとっても、世界の平和にとっても大切なことであると心得ております。  私は、ちょうど外務大臣就任した直後、駐日のソ連大使を招致いたしまして、ゴルバチョフ書記長が日本においでいただくように招聘の申し入れをいたしました。十二月末かあるいは一月中にお越しをいただきたい、これまで日本総理大臣がしばしばソビエトを訪れておるということもございますから、今回はぜひ東京にゴルバチョフ書記長がお越しいただきたいという申し入れをいたしまして、ボールをソ連側に投げた次第でございます。  したがいまして、先般、御案内のとおり国連総会の席上で私とソビエトのシェワルナゼ外相との間でこの問題を、でき得れば訪日の日程を詰めたいという考え方で会談をいたしました。しかし、ただいまお話しのように、私がそういう申し入れをいたしましたときにも、まず第一に我々と、日本とソビエトとの間に過去四十年の長きにわたって平和条約が結ばれていないというのは異常な状況である、この異常な状況を解消することによって初めて日本とソ連との関係の安定的な関係が生まれるという意味において、我々は、日本政府としては政経分離の立場はとらない、すなわち北方領土の問題を抜きにしては、我々はゴルバチョフ書記長の来日の意義をあらしめるためには、この問題についての前進が必要であるということを強くあらゆる機会にも申しておりました。駐日のソ連大使にも申しましたし、ニューヨークにおける会談においても強く申し入れたところでございます。  先方の答えは、ことしじゅうは来日は無理である、それと同時に米ソ関係の問題もこれあり、まだ日程を確定するわけにはいかないということでございました。したがって、私といたしましては、先方が米ソ関係のことを理由にしてのお話でございましたので、我が国としては我が国の基本的な立場をさらに述べつつ、すなわち領土問題のことをはっきりと述べつつ、準備の必要がある、ゴルバチョフ書記長が日本においでになったときに実りのある会談にするためには、それには相当の準備が要るからなるべく早く御返事をいただきたいということを申したわけでございます。  その後、御案内のとおり米ソ会談はダニロフの問題をめぐって大変緊張関係にございまして非常に難しかったわけでございますけれども、その問題が一応解決の糸口が見出されまして、そして先般アイスランドのレイキャビクにおいて米ソの首脳の予備会談と申すのがセットされたことは御承知のとおりでございます。したがって、これがどういう展開を示すのかということについてはまだ確たる情報を得ておりません。したがいまして、米ソの首脳会談のこれからの行方あるいは来日についてはまだ確たる情報を得ていないというのが実情でございますので、あらゆる機会を通じてその情報を得べく努力をしておる次第でございます。
  26. 野田毅

    野田委員 大事な問題でありますから、早く来てくれることは大変いいことだけれども、日本側が焦る余り領土問題が妙なことにならないようにということだけ、そのスタンスだけはきちっとしておいてもらいたいという趣旨で申し上げたわけであります。  もう大分時間が迫ってまいりまして、まだいろいろお伺いしたいことがたくさんあるわけであります。  大蔵大臣、きのうお帰りになったそうで、大変お疲れさまでございました。  先般、政府自民党と一体となりまして総合経済対策をつくったわけであります。この総合経済対策を大分あちらこちらで御説明になられて、日本の内需拡大の努力を大分宣伝してこられた、こう思うのであります。国際公約ではないにしても、これは国際公約するようなことはあり得ないと思いますが、しかし、少なくとも外国は日本の内需拡大について我々が思っている以上に非常に強い要請を持っておるということは肌でお感じになったことだと思います。  この前の経済対策、ポイントは二つ。一つは、内需拡大で三兆六千億以上の事業量を本年度中に追加をするということが一つであります。もう一つは、円高で非常にあえいでおる中小企業あるいは非鉄金属鉱山、こういったところに対する手当てをどうするか。一兆円規模の政策規模において、あるいは非常に困っておる産地について三・九五という超低利の融資をつくるとか、あるいは融資の弾力化を行うとか、あるいは一般的に中小企業、特に零細事業についてはマル経資金の金利を○・五%引き下げるとか、そういういろいろな中小企業関係の諸施策を進めておるわけであります。  その中で内需拡大ということで言いますと、私どもは、少なくとも今回の措置によって本当に実効が上がるならば、一%程度は今年度のGNPに寄与できるのではないだろうか、直接間接効果を入れるならば、そういう気持ちは持っておりますが、問題は、この補正予算で手当てをしなければならない事柄について、実効あるきちっとした手当てができるかどうかということに実はかかっておる、こう思うのですね。その点で、宮澤大蔵大臣からまず御決意のほどを、決してこれは空約束じゃないんだよ、必ず大蔵省は責任を持って内需拡大のための実効ある補正予算を組むんだということを述べていただきたい、こう思います。
  27. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御指摘のとおり、先般決定いたしました総合経済対策、我が国の今日の現状におきまして極めて大切なことでございますし、野田委員が御指摘されましたように国際的な期待も大きゅうございます。したがいまして、これを実効あらしめるために、財政におきましても、全力を挙げまして実効が上がるように補正予算をつくらせていただきたいと考えております。
  28. 野田毅

    野田委員 その中で何といっても一番の問題は財源問題だと思います。今の状況というのはまさに異例の事態であるし、特に一年間でこんなに五割も円が高くなるということは空前絶後のことであります。経済界で言うなら激甚災害に遭ったような問題ですね。ですから、これは、災害が起きているのに財政再建が大事だから災害の方は後回しですよというわけにはまいらない、こう思います。  そういう点で、そういう実効ある補正予算が組めるためには、少なくとも臨時、緊急の措置として、この際、必要とあるならば建設国債によって財源手当てをするということも考慮の外に置くわけにはいかない、こう思うのです。我が党としてもそのことを強く要請をしておるわけであります。この点について、今から、まだ財源計算が完全にでき上がっていない段階から、それを出しますとかいうことは言えないと思いますが、逆に言うならば、出しませんということも私は言い切れない、こう思うのですね。その点についてはいかがでしょうか。
  29. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総合経済対策を予算化いたしますための予算編成の作業は、大体今月の半ばごろから始めたいと思っております。  と申しますのは、歳出歳入両面におきまして、かなり大きな幅で不確定要素がございます。歳出で申しますれば例えば災害等々でございますが、また歳入で申しますと、ちょうど九月期の法人の決算あるいは三月期の法人の中間決算等々をやはり見てみる必要があると思っております。そういう状況でございますので、ただいま歳入歳出をどのようにということを具体的に申し上げる段階ではございません。同時に、財政再建というのは、どうしてもやってしまわなければならないかなり時間を要する仕事でございます。このことを放てきするわけにはまいりません。  しかし、そのような全部の状況の中において、ただいま野田委員の御指摘の問題は予断を持ちませんで対処をいたしたいと思っております。
  30. 野田毅

    野田委員 わかりました。意のあるところは十分酌み取ったつもりであります。ぜひひとつ実効の上がる姿をやってもらいたい。そのことがまた国際社会の中で日本が、なるほど言ったことはちゃんとやるんだという実績を示すことにもなると思います。下手すると、日本は言うばかりで実績を見てみると何もできていないじゃないかという不満が結構残っておるということをあわせて申し上げておきたいと思います。  次に、税制改革についてお伺いをしたいと思います。  まず、これは本当にシャウプ税制以来の大改革であるということで、中曽根内閣の大きな課題の一つであります。ただ、この税制改革は、少なくとも増減収ゼロでやろう、こういうことでありますから、個々人で見れば必ずどこかが減税になってどこかが増税になる。増税になる人たちからすれば、こんな税制改革はやらぬ方がいいという話になるのは、これは目に見えておるわけであります。しかし、これは、経済構造が変わっていく、社会構造が変わっていく、あるいは財政の問題、いろんな要素からしゃにむにやらなくてはならない。税の公平感を国民の中に持ってもらうためにもやらなくてはならない大事な課題であります。  だから、そういう意味で私は、具体案が出るときには、あるいは具体案を決めるときには、増税になるような人たちからの相当強い反発が出てくるのは、これは避けて通れない、こう思います。その点でひとつ、国鉄改革の問題あるいはNTTの民営移管の問題、いろいろ論議がある中で、やはり総理の強いリーダーシップ、そしてみんなが心を一つにしてやるんだという、この決意があったから初めてこういった事柄が乗り切られておるわけであります。税制改革についても、そういう意味でみんなの合意というものが必要だし、みんなの協力が必要だし、説得すべきは説得するんだ、そういうところが必要だと思いますが、総理、この税制改革における御決意のほどをひとつお願いしたいと思います。
  31. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 シャウプ税制というものが行われてから三十数年たちまして、この間に日本の経済、社会は大きな激変をしたわけです。その間に、例えばサラリーマンの重税感であるとかあるいは税間のひずみ、ゆがみというものもかなり出てきて、あるいはいわゆる不公平税制というものも叫ばれております。そういう全体を眺めまして、やはり現代社会に合うような、国民が納得するような税の体系に思い切って変える必要がある、そういう考えに立って税の改革を訴え、今、政府税調及び党税調において御審議を願っておるところでございます。そういう面から見て、かなり思い切った抜本的な改革になるだろうと思います。  しかし、この改革は増税を目的としてやるものではない、これは前から申し上げているとおりである。それから、やり方についても公平、公正、簡素、選択、民活、そういう原則も申し上げて、その趣旨に沿ってやりたい。もう一つつけ加えれば、国際性というものも必要になってきた。アメリカの税制改革を見まして、アメリカの方がいいからというので日本の会社がアメリカへ籍を移すようじゃまた困る。そういう問題も、アメリカの税制を見て最近出てきたと思います。そういう総合的な観点から、やはりプラス・マイナス・ゼロ、そういう関係で包括的な税制改革案を出してもらおう、そういうことで今鋭意努力していただいております。  私は、いろいろな案が出てきた方がいいと思うのです。そして、それを国民皆様方にお見せして、ああでもないこうでもない、これがいいあれがいい、結局まあこの辺がみんなの最大公約数だなというところへ落ちついて、それを採用する、そういうやり方で、今までのように、ややもすれば上から押しつけられた税制じゃなくて国民が選ぶ税制、そういう感覚に立った税改革をぜひ実現したい、不退転の決意でこれもやりたいと念願しております。
  32. 野田毅

    野田委員 まだいろいろ石炭の問題、農業の問題を聞きたかったのでありますが、時間がありません。  税制改革をやる上では、あと残っておる最大の問題は財源をどうするかという問題であります。できるかどうかは財源にかかっておる。その財源問題を提案をしないで減税だけ言うようなことは、私は政治家としては無責任だと思います。そういう意味で、いよいよあともう一ヵ月ぐらいというようなまとめる時期に入ってきている。  最大の課題は、一つは、安倍総務会長も発言をしておられるようでありますが、利子課税の問題もあるし、あるいはまた間接税の問題もあると思います。これらについてそれぞれ厳しい賛否両論があります。そういった中で、少なくともこれから約一ヵ月ぐらいの間に何とかして合意を取りつけてやっていかなくちゃならぬ、大変な作業だと思います。その点で、総理の不退転の決意で臨むということで、我々も期待をしておりますので、ひとつぜひ頑張っていただきたいと思います。  時間が参りましたので、いろいろ聞きたいことはありますけれども、以上で私の質問は終わります。
  33. 砂田重民

    砂田委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  34. 川俣健二郎

    ○川俣委員 過日の同時選挙以来、最初の国政調査、総括的な国政調査予算委員会でございますが、日本社会党・護憲共同を代表して、予算の出先の者として代表質問、こういうことなんですが、まず第一ですけれども、私が質問に入る前に、その同時選挙で中曽根さんの率いる自由民主党が圧勝されて非常にうらやましい。非常にうらやましい。それは、公約したことは何でもできるという、これほど幸せなことはない。何でも実現できる、五百十二名中三百七ですから、現在。したがって、そういうようなうらやましい夢を見ている。  ところが、けさ宿舎のボックスにポンと音がして入った新聞を見てびっくりしたのは、目を疑ったのは、「マル優廃止・間接税導入」こういう見出しが、しかもトップです。これは朝日を持ってきたのですが、毎日、読売、サンケイと全部トップ記事。これはどういうことかなと思って見ましたら、ちょうどきのうのことなので、これは総理初め皆さんも目に入ったと思うのですが、安倍総務会長、その方の責任者ですが、その安倍総務会長がきのう福岡に行かれて講演された一つの柱であります。  かいつまんで申し上げますと、「常識的には、残された増収の道はこの二つしかない」それはマル優廃止と間接税導入しかない。それしかない。しかもそれが総務会長です。今もお話が出たが、政府税調ではもう四兆五千億円に上る増減税案を出された。  しかも、そのマル優の廃止についてはこういうようにお述べになっている。「老人などに対する措置を別にすべきだとしながらも(マル優による節税額は)」本来取れるはずの節税額は「十三兆円に達しており、優遇措置が大きすぎると大変なことになる。」こういう言い方です。「さらに間接税の導入については」こういう言い方をされている。国民が反対し、自民党が支持しない間接税は導入しないと中曽根総理は選挙で公約されたが、問題は、総務会長の発言は「どう切り抜けていくか」何のことはない、国会対策だ、こう言わんばかりだ。  したがって、私は今、皆さんはいろいろと公約された、しかもその公約が思うようにできる大世帯になってうらやましいということを言いましたが、しかし、この総務会長、三役のお一人の、政策担当そして総務全体をやる総務会長が、これは中曽根さんを困らせるために、きょう予算委員会があることを考えてきのう言うたのかなと思いました。しかし、皆さんは、そこにお並びの実力者方が全部、今回の同時選挙で地方においでになった。私のところも、代議士の数が減って大変だというので皆さんが来られて、公約を私の軒の前でおやりになった。その際に、これは私は耳を疑わないのですが、政府税調その他から、自民党の方から上がってきても、この大型間接税の導入とマル優の廃止は絶対しない、こういう公約をされたと思いましたが、総理、その辺からお伺いしたい。
  35. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が選挙中に国民の皆さんに申し上げたのは、国民も反対し党員も反対するようないわゆる大型間接税と称するようなものはやりません、それからマル優制度につきましては、老人とかあるいは未亡人家庭とか社会の弱者については特別に配慮を要すると、そういう二点を申し上げてきたところです。  これは、政府税調にも私の考えとして大蔵省を通じてその考えを申し述べてあります。まあ、そういう考え総理大臣が言ったから参考にして審議してもらいたい。これは国会における与野党の論議は、議会が終わると大体政府税調に、あるいは途中でも大事なことは政府税調に、こういう論議がありましたと資料として伝えてきている、そういう一環であります。そういうことで、政府税調が今全力を振るってどういう案にしようかということを決めようとしている最中でございまして、政府はその成果を見守っておるというのが一貫している態度であります。  総務会長の発言は、恐らく総務会長個人としての感触を申し述べたのであろう。党の役員はよく、例えば建設国債はもう必須であるとかいろいろ述べておりますが、これは予算編成を大蔵省がやるときに確定して党と相談してやるということであります。そういうようなたぐいのものであるというふうに御理解願いたいと思うのであります。
  36. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そのようなたぐいであるという程度に聞いております、個人的な発言だと思う、こう言いますが、これはそれじゃ、きのうのことですから、しかと呼んで、党員の一人だから、あるいは言っちゃいけないことを言ってきたな、おまえ失言したな、こういうようなことなのかは後で申し上げますが、そうしますと、総理が約束した、同日選挙で公約した、演説をぶったというのは、間接税については国民も反対しない、党員も反対しない、こういうような間接税なら導入する──どういうものなんですか。
  37. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 反対解釈をするとそういうふうになりますが、しかし、どういうものが出てくるか、そういう出てきたものを見ないと何とも判定できない、実際は。しかし、少なくともこういうものはやらぬと、そういうことは言っておるわけであります。
  38. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、どういうものが出てくるかわからぬと言うが、今まで長年、間接税についてはいろいろこの場で論議されてきておる。したがって、A案、B案、C案、こういう三つの案で非常に論議されてきておる。これを一々やったのでは、それで時間をとられるのですが、それでは大蔵大臣、この間、減税案が税調の方から出ておりますが、あなたは担当大臣ですから、どういう間接税を考えておられるのか。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府の税制調査会におきましていわゆる専門委員会というものがつくられまして、御承知のように四つ、大きく分ければ三つでございますが、小さく分けまして四つの案をいわば検討のたたき台という形で調査会に提出をしたという事実はございます。これは、しかし技術的にどういう考え方があるかという、いわば専門家の意見でありまして、税制調査会といたしましては、先ほど御指摘のように、総理大臣が御発言になっておられることは十分念頭に置きました上で、この専門家たちの意見を今検討しつつある、こういう段階と承知をしております。
  40. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は、あなた以上の専門家はいないと思っている。しかも担当者である。  そこで総理、そうしますと、あなたが公約して歩いたという間接税、そしてマル優というのは括弧、条件つきだったのですか。その条件の方は余り言わないで、間接税は導入しない、マル優の廃止なんというのは毛頭考えていない、こういうことだったのですか。
  41. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いわゆる大型間接税というものについて、私は、さっき申し上げたように申し上げました。マル優制度については、これはいろいろ税調においても議論も行われるでしょう、しかし、少なくともこういう配慮はしなければいかぬ、そういうことを申し上げたのであります。
  42. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、いわゆる大型間接税というのはどういうことですか。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大型というのは何を意味するか、中型、小型というものとの分類がどういうふうに行われるか、これはやはり必ずしも明確でないのですね。ただ、私は国会矢野書記長や皆さんに御答弁申し上げたときに、多段階で普遍的、網羅的で云々と言って、そして包括的、そして一般消費税でしかも投網をかけるような、そういうような類のものは考えていない、そういう発言はいたしました。その発言には拘束されると思います。
  44. 川俣健二郎

    ○川俣委員 投網的、そういうようなことじゃなくて、具体的に、国民がわかりやすく言ってください。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この大型間接税という定義が、必ずしも学問的にもあるいは実務的にもはっきりはしていないと思うのです。しかし、大型間接税という御質問が野党からもお出になったと思います。そういう意味でまだ定義は明確でないが、私の解釈している限りはこういう考えでございますとそういうふうに申し上げたので、ほかの方々がどういうふうに解釈なさるか、あるいは税調がどういうふうに解釈なさるか、それは税調の考え方の提出を待って、私が申し上げたようなことに関してどういう関係になるかということも判定すべきものであると思っております。
  46. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、話を進める上で、大型間接税ということにはならない。じゃ、間接税にはなるのですね。一歩下がって、どういう間接税ですか。頭に、上に何がつくのですか。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点、ただいま政府税調が検討しておる段階でございますので明確に申し上げることはできませんが、間接税そのものを全部否定するということでないことはもうほとんど間違いないことだと思っております。
  48. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうは聞いてないよ、国民は。そうは聞いてないよ。大型というか、あるいは日本型というか、いろいろと言い方はあると思う、あなた方は。EC型というか、いろいろとあろうと思うが、少なくとも間接税という範囲の中に入るものはやると、こういうことですか。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 例えて申しますならば、ただいま私ども物品税というものをやっておりますけれども、これはもう間接税でございます。したがいまして、間接税全部を排除するかというお尋ねでございますと、それはそうではなかろうと、こう申し上げておるわけでございます。
  50. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、こういう論議もあったんですが、過去に。  製造業者の売り上げ全部にかける、全品目に、これは一つのA型だ。それからB型として、事業者間免税の売上税。ただし売上業者にはかけない、その前の卸をではかける。それからC案として、日本型付加価値税というのがこういうふうに出ましたが、自分の売り上げの税金。よそから買ってきた、例えばタイヤをつくるのにボルトなんかそういうものは買ってくるので、それにはつける。しかし、タイヤをつくったそのボルトその他を除いたものにかける、こういうC案もある。したがってA、B、Cというのはここで非常に論議された。やはりここではっきりしてもらわないと。というのは、国民が、今回は間接税はかけないんだ、こういうような公約をされたので私たちは中曽根さんに投票した、こういう者から見ると、ただし違うんだよ、こういう間接税はかけるんだよということをわかりやすく言ってくださいよ。
  51. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、いずれ税調の答申を待ちまして、最終的には法律案として御審議をいただくことになりますので、その段階になりませんと詳しいことは申し上げられませんが、ただいま仰せになりましたA、B、Cそのものは、先ほど申しましたように専門家が小委員会でつくりまして、総理がかねておっしゃっていらっしゃることと背馳しない形でどういうものが選ばれるかということを税調自身がただいま討議をしておる。で、一切の間接税はそこから出てこないのかとおっしゃれば、それはそういうわけにはまいらない。総理が言われましたことと背馳しない限りでの間接税というものはやはり考えざるを得ないというふうに税調としてはただいま考えておられるように見受けております。
  52. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、宮澤さん、あなたの盟友である安倍総務会長が、間接税は導入せざるを得ない、こういうように言うたことは、個人的な見解ではなくて総務会長がおっしゃったんですから。一党員じゃないですよ、一党員じゃない総務会長がおっしゃったのでは、総理が言うその程度の感じで言うたのか、個人的な考え方で言うたのかというのじゃなくて、やはり党全体の総意として、間接税導入とマル優廃止以外に、それしかないと言っているんだよ。はっきり言っているんだ。どうなんですか、その辺。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように、所得税並びに法人税につきましてかなりの軽減をしなければならないということは国民的な世論になっておろうかと思います。したがいまして、税調としてはそれを可能にするための税源をどこに求めるかということを検討しておりますことはもう事実でございます。  他方で、その問題と一応離れまして、現在の間接税体系というものがかなりいろいろなひずみを持っておる、ゆがみを持っておるということも事実でございます。それから、おっしゃいました利子配当課税についても、これが実際に公正、公平な結果を生んでおるかどうかについても疑問があるわけでございますから、間接税並びに利子配当課税そのものもやはり検討する必要があるということがございます。両方あわせまして、それらの問題を総理大臣が言われましたことと背馳しない範囲でどのように考えていくかというものを今税制調査会が考えておるところでございます。
  54. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると大蔵大臣、安倍さんのおっしゃることと総理が推定されておった発言とあなたの今の発言をこうやると、総理が公約したものの中でどの程度の、どういう形の間接税なら総理の公約を傷つけないでやれるかということですか。というのは、いかに切り抜けようかなとおっしゃっているところを見ればそういうことでしょう。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まさにどういう間接税であれば総理の言われたことと背馳しないかということを私ども勉強いたしまして、それで国会に御審議を仰がなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  56. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると総理、何か条件つけて間接税導入するかもしれないということですか、その辺ちょっと。公約したものは、外の演説だものですから、ただしこういうものはやりますよということを言う時間もなかったし、ちょっとここで解説すると、この程度の間接税なら入れるというのをはっきり言ってくださいよ。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことは、ですから政府税調でいろいろ御議論を願って御答申を待っている、そういう状況なので、私に関する限りは、こういうものはやりたくない、あるいはやりません、そういうことを申し上げてあるので、その範囲外でどういうものがあり得るか、いろいろ精緻な議論もあるだろうと思いまして、そして、やっておられる。  税調については、一般的に聖域は設けないで自由に濶達な議論をしてください、そういうことも申し上げておるので、いろいろさまざまな組み合わせあるいはアイデアというものが出てきておるし、議論も行われておると思います。そういうようなものの中で、最後に出てきたもの、あるいはいろいろ選択肢として出てきたものについて私たちは、私に関しては、私が選挙中申し上げたことにひっかからない範囲内においてよく検討する、そういうことであります。
  58. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっとこれに片つけようじゃないですか。大型に片つけようじゃないですか。こういうことなんですよ。私は、あなたがそう言った覚えがないと言うのならいいけれども、幾ら政府税調が持ってきても、大型間接税、こうおっしゃったと思うが、そういうものは取り入れない、こう言ったことは間違いありませんか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会等で答弁したことについては私は守りたい、もちろん守らなければいかぬ、そう思っております。ですから、私が選挙中言ったことに背馳するようなものが政府税調で仮に出てきた場合でも、私はそれを採用する考えはございません、そう申し上げておるのです。
  60. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、新たにひっかからないような間接税というのは、どういうふうなものが持ってこられた場合に出てくるのですか。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは恐らく政府税調で一番苦労しておるところではないかと思うのであります。したがって、その苦労の結果がどういうものが出てくるかよく見きわめたいと思っておる。
  62. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると、片つけるためにまた新聞に戻るが、やはり安倍総務会長がおっしゃるように、これしかないと言うんだ。マル優の十三兆円それから間接税導入しかない、したがって、ただ中曽根総理が選挙の公約として、国民が反対し自民党が支持しない大型間接税は導入しないと言っている、これをどう切り抜けていくかが問題だと言うんだ。それが今回の国会かい。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、安倍総務会長は私の発言に相当考慮しておって、配慮しておるわけであります。それで、その私の言ったことに触れないようなものがどういうものがあるか、これは苦心惨たんの結果つかみ出さなきゃいかぬ、そういう趣旨のことを言っておるのだろうと思います。
  64. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私も、さっきちょっと言ったけれども、総理心境を配慮して言われた言葉だと思う。あなたを困らせようと思って九州で言ったのじゃないと思う。しかし、あなたが言う、自分がこれは気に入ったなという、さっきA、B、C案と出したが、どのような間接税の型が出てきたら導入しますか。あなたは政府税調が持ってきたものは一切入れないと言ったものだから、はっきりしてくださいよ。
  65. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が国会答弁申し上げたような類のものは、私は採用する考えはございません。しかし、それ以外にいろいろさまざまなアイデアがあるでしょう。そういうものでどういうものが出てくるか、それは専門家がいろいろ検討しておるところでございましょうから、専門的ないろいろなアイデアを持っておられると思うのです。そういうものは、出てきた場合に我々としては検討したい、そういうことを申し上げて、そして私が申し上げたようなことに関しては私は考えてはっきり申し上げておりますが、それ以外のことについては私としてはこれは聖域としていろいろ制限申し上げたりなにかするようなことはしないで、自由に御論議願いたい、これは前からも申し上げておるとおりでございます。
  66. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は、きょうは一日ですから、さらっとさっと、こうやりたいところですが、国会答弁されておると総理は何回もおっしゃいますが、私はここに座っておるのですから、十年ぐらい。みんな知っていますよ。しかし、それじゃ一体、国会論議の問題よりも、同日選挙のときに公約した間接税は導入しない、政府税調が持ってきても取り入れないと、こうおっしゃったんじゃないですか。今政府税調で専門的にやっておるからそれを見てからということでなくて、どういうものなら取り上げる、これぐらい言ったっていいでしょう。どうですか、これ。だめだよ、これじや。
  67. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私としましては、少なくとも国会でもいろいろ御論議もあり、私自体も考えもありますから、今まで私が国会で申し上げた答弁について責任も持たなければなりませんから、少なくともこういうものは自分はやりたくない、また、やらない、そういうことも申し上げておる。しかし、それ以外についてはさまざまなものはあり得ると思います。この間出てきたA、B、C案というのも一つ考え方でしょう。しかし、その以外にまたいろいろな組み合わせというものもまた考えられるでしょう。そういういろいろなものが、どういうものが出てくるか、最終的な答申というものをよく見た上で判断をしたい、こういうふうに申し上げておるところでございます。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、これは各党、ほかの野党の皆さん方も取り上げざるを得ない問題だと思うが、専門の人方ですから。しかし、A、B、C案という問題を中心にここで論議されてきたのです。長年論議されてきた。  じゃ、A、B、Cのせめてどの型なら取り上げる。どれも取り上げないというのですか。
  69. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あれはまだ中間報告でありまして、小委員会からたしか税調自体に案として、一案として出されたものではないかと思うのです。税調で最終的にどういうものが出てくるか、それをよく見詰めていきたいと思っておるのです。
  70. 川俣健二郎

    ○川俣委員 こういう論議じゃちょっと、やはり理事会全体で予算委員会というものは運営されておるものですから、私はこれじゃ進まないと思いますよ。何らかの方向を示さないと、安倍さんが言うように、国会を切り抜ける、きょうの予算委員会一日切り抜ける、これだけですよ。だめですよ、こんなものは。(発言する者あり)  それじゃ、委員長のところで各党の理事の皆さん方に知恵を絞っていただいて、昼の時間で何らかの形でというようなお話でしたが、委員長から一言、その辺を……。
  71. 砂田重民

    砂田委員長 後刻、理事会で協議をいたしますから、御質疑を御続行お願いをいたします。
  72. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは非常に今、毎日のように反対行動も出ておるし、それから論陣も張られておるし、公約はどうした、これ一点ですよ、大型間接税、マル優にしろ。  もっと時間があれば、十三兆円で、マル優を優遇しておる、これはゆゆしき問題だ。どういうわけですか、このゆゆしき問題というのは。少額貯蓄の、一般庶民の皆さん方の貯蓄には税金かけないという御意見だったのでしょう。それを、悪用している一部の者がいるというのを一つの盾にしてやめちゃおう、十三兆円もあるのだ、どういう言い方かな。こういうように思うだけに、ひとつ慎重に結論を出してもらいたいと思います。  そこで次に進みますが、私は宮澤大蔵大臣に非常に期待したい。特に地方にいると非常にすがるように期待したい。それは、円高ショックで大変だということです。それはどういうことかというと、昨年G5、いわゆる先進五カ国蔵相会議からちょうど一年なんです。我が国の経済というのは物すごく揺れ動いておる。揺れ動いておるなんという生易しいものではない、それはめちゃくちゃだ。地方に行くほどひどいというのは、地方はどうしても第一次産業で暮らしておる。農畜産物だって木材だって鉱山の場合だって、すべて第一次産業で暮らしておるだけに、もろに円高ショックというのを受ける、それは御承知だと思うのです。  そこで、円高ショックを非常に受けておるというのは地方だけではない、中小企業は全部そうだ。大阪の場合は特に魔法瓶、バックミラー、水中ポンプ、こういう軒並みの中小企業、零細の皆様方が全部毎日のように倒産されている。だから、この円高ショックの補正予算を早くやらなければならぬということで、本来はこの予算委員会は六月二日だったのです。臨時国会を開く、円高ショックの補正予算をやりたいから集まれ、集まった、集まったら何のことはない、問答無用、解散だ、こういうことです。それから五カ月、これは大変なんです。一体その辺をどう皆さん方は考えておられるか。円高ショックをまず、では通産大臣の方から伺って、それから、補正予算をどのようにこれをフォローアップしていくか、責任ある政府の見解をひとつ示してもらいたいと思います。
  73. 田村元

    田村国務大臣 円高というのが九月から急速に進んでおる、余りにもドラスチックでありましたから、九十円くらい円が高くなったでしょうか、でありますから、いろいろな面で今おっしゃったとおり非常なショックが起こっております。つまり円高不況。でありますから、これに対応するために我々はあらゆる手を打たなければならない。もちろん中長期的な問題もありますけれども、当面の問題としてはやはり内需の拡大を充実させ、かつ急ぐということ、それからとにかく適時適切に政策介入をして円高を回避していくということ等々、いろいろあると思います。  今、具体的に業種を申し上げてもいいのですけれども、非常に時間がかかりますから……(川俣委員「いや、簡単でいいです。どういうものがあるか」と呼ぶ)それでは簡単に申し上げましょう。  まず素材型産業、これは鉄鋼、合繊等、比較的輸出比率の高いものですね。これでは、円高で輸出代金の円換算手取りの減少や、それから輸出量の減少が見られます。さらに景気の低迷や輸入の増加による需要の減少、国内価格の下落等によって企業収益が悪化いたしておるところは御承知のとおりであります。  また、アルミや銅、鉛、亜鉛等非鉄金属につきましては、国際相場商品であるために円高の進行によって国内市況が大幅に下落いたしております。経営状況は極めて悪化いたしております。  石油化学、紙など比較的内需の割合が高いものにつきましても、景気低迷による需要の減少あるいは輸入品の急増等が見られまして、今後も輸出関連産業を中心としたユーザーの需要の減退、価格引き下げ要請、あるいは安値輸入等によって経営環境はさらに悪化することが予想されております。  また、自動車や工作機械など従来景気を牽引しておったもの、いわゆる加工組み立て型産業につきましても、円高によって輸出代金の円換算手取りの減少が大きく、利益は大幅に悪化しております。設備投資を減少させる業種も多くなっておることは御承知のとおりであります。  日本経済全体で見ても、輸出は円ベースでは月を追って前年同月を大幅に下回っております。八月も前年同月比で二〇・九%の減であります。それから設備投資も製造業では減少しております。四―六月期で前年同期比三・二%減であります。これは法人季報であります。それから製造業を中心に、企業の業況判断には停滞感が相当強く広がっております。それから雇用情勢も憂慮される状態で、七月の失業率は二・九%でございました。  それから、このような先行き率直に言って楽観を許さない今日の経済情勢にかんがみまして、九月の十九日に御承知の内需拡大策と中小企業対策等を柱として事業規模三兆六千億強の総合経済対策が策定されたところでございます。この内需拡大策が功を奏して、産業界の経済活動を十分に浮揚せしめるためには、この対策の早期に実行されること、その内容が充実されること、これは申すまでもありません。私どもはそれを強く要望し、期待をいたしておるところであります。
  74. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、そもそもこの円高というのは、もう国際化時代に入ったのだから国際人にならなければならないという総理の諭し的な発言もあって、ずっとこの予算委員会でもやってこられたが、問題は米国の経常赤字、貿易赤字、それに比べて日本の貿易黒字は余りにも離れておる、この不均衡を是正するには、一番手っ取り早いドル高修正の市場介入に手をつけようという考え方だったと思います。したがってこれは、二百四十円だったと思いますが、今、百五十四、五円、こういうことなんです。そうすると、一年たってみたら、資料がありますが、一体、この目的はアメリカの経常赤字と日本の経常黒字の不均衡を是正する、これが目的だった。一年たって、我々はアメリカのために苦しんだ、しかし国際化時代なんだ、こういうことであった。  ところが一年たったら、それじゃ経常収支が変わったか、こうなる。ところが、六十年の見込みから六十年の実績が出た。貿易の黒字は十二兆一千億、日本の貿易は黒字になった、もうかった。一体この十二兆一千億というのはどこへ行ったのだろう。これは内需の問題に関係するわけですから、そして調べてもらいました。経済企画庁に丁寧に教えてもらいましたが、まず家計、会社を通じて家計に入る、六兆一千億。企業に入る、二兆五千八百億。それから税金になって国と自治体に入る、これが三兆三千九百億。十二兆一千億、これが円高をやる前よりもはるかに黒字貿易、いわゆる貿易で稼いだことになる。一体何だったんだろう。日本国民がめちゃくちゃにされて、しかし国際化時代だからやむを得ないのだ、こういうことにされて、それじゃ一体この円高というものをどう受けとめているのだろうか。  そこで、宮澤さんが非常に御苦労されて、しかもワシントンでIMF会議にも出ておられたのですが、さらに、さらにですよ、さらにやはり円高はまだ足りないと言わんばかりに、日本は内需拡大以外にないんだ、こう言われてきた。宮澤さんは非常に英語が達者な方ですから、ワシントンで一連の通貨国際会議をこなしてきた宮澤大蔵大臣の評判がなかなかいい。日本に宮澤あり、ここまできた。しかし、たばこもよろしくね、こう言われてきたわけですが。  そこで私が聞きたいのは、そういう論争そのものよりも、国民は、日本列島を走った円高ショック、倒産、減産そして解雇、雇用問題一切、そしてそれが、懐が減るんだから内需拡大にはほど遠いものになる。消費が減少する。一体どうするんだろう。したがって、今回の国会というのは一にも二にも円高ショックの補正予算だ。補正予算でしょう。そうすると、この補正予算というのはいつごろ――野党の方は早く出せ、早く出せ。早く出すから、出してから予算委員会を開く、こうおっしゃるけれども、待てない。どういう気持ちなのか。どんどんどんどん減税、大減税をやる。四兆八千億、びっくりした。四兆八千億、そんなお金どこにあるのだろうか。  減税の方、ぱっと出して、後でこそこそと言ったのは、大型間接税、マル優でかなり入る、マル優廃止でこのぐらい入る。こんなこと、ひとり歩きされていたんじゃ、国会をどう切り抜けるか知らぬけれども、三百七名の大自民党ですからどんなことでもやれるか知らぬが、しかし、やはり国民から言わせれば、いつ補正予算を出して、どのくらいの規模でどういう財源を求めるのか、その辺を話してください。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもといたしまして、予算編成の仕事に着手いたしますのは、大体十月の中旬と考えておりまして、作業は十月末までには完了いたしたいと思っておるところでございます。  それで、十月中旬と申しますと遅いではないかという御批判があるいはあろうかと思いますが、実は、歳出歳入両面にもう少し見きわめたい事情がございまして、例えば、歳出で申しますと、災害がまだまだあるいはあるかもしれないということは、従来の経験から考えておかなければならないところでございますし、歳入で申しますと、九月期の決算、あるいは三月期決算のものにつきましては九月の中間決算等を見ませんと税収の見通しが非常につきにくいという要素がございます。また、場合によりましては、電電公社の株式を売らしていただくわけでございますが、それがどのぐらいの値になるかということもかなり歳入には影響いたしますので、それらの事情を、十月の中旬になりますとほぼ明らかになりますので勘案いたしました上で作業をさせていただきたい、こう思っております。  したがいまして、どういう財源でやるかということは、ただいま申しましたような要素は歳入歳出とも振れがかなり大きゅうございますので、それを見まして決めさせていただきたい、かように考えております。
  76. 川俣健二郎

    ○川俣委員 今月いっぱいで、今月末に出すということですか。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもといたしましては、今月末にはすべての準備を完了いたしておきたいと考えております。
  78. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、今月中に予算委員会が開けるのですか。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、国会の御意向によることでございますので、私どもといたしましては、今月末までには準備は一切済ましておくつもりでございます。
  80. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、補正予算に印刷されて国会に提示できるのは今月末だ、こういうように理解していいんですね。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お求めがございますれば、それに間に合うように準備はいたしておくつもりでございます。
  82. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから、政府が過般出された総合経済対策ですが、これは非常に注目されておるし話題を呼んだものですが、公共事業の追加一兆四千億、その中身を少しお話しできればしてもらいたいと思います。特に私が関心があるのは、この一兆四千億のうち真水の量というのですか、大蔵省の方では。いわゆる国の負担、国費の分がどのぐらいになるのだろうか、こういった国費総額の問題、こういったところも話していただきたいと存じます。そういうのを一つにして、中に総合経済対策というのをひとつお話し願えませんか。
  83. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一兆四千億と見られます公共事業の内容についてでございますが、もう御承知のように、いわゆる道路でありますとか橋でありますとかいったようなもの及び災害でございます。したがいまして、災害の規模がどのくらいになるかということがただいま明確でございませんので、そういうものから成るということでございます。従来、五千億、五千五百億といったようなところが経験法則では災害の規模でございますけれども、今回のところはまだもう少し待ってみませんと明確に申し上げることができません。  そういうものをどういう財源でつくるかというお尋ねでございますが、その点が、先ほど申し上げましたように歳入側にも歳出側にもこれ以外に非常に大きく振れそうな要素がございますので、それらがはっきりいたしませんと、どれだけの財源をどのようにするかということが申し上げられない。ただ、先ほど野田委員がお尋ねになりましたように、ある種の財源措置についてはどうするか、私どもとしてはそれは予断を持たずに、実際に入り用な歳出、歳入の両面から予算を編成の作業を始めますときに判断をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  84. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、いろいろと財源がこれから月末までに計算されることだろうが、その中に、今非常に一つの話題ですが、NTTの株も入ってくるわけですか。
  85. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 NTTの株を売りますときのいわゆる値づけというものを十月の初旬にいたすわけでございますが、全体百九十万株のうち相当の部分をいわゆる一般売り出しをいたしますわけで、したがいまして、予算で当初一応見込んでおります二十一万円何がしより売り出される価格が高くなりますと、その部分につきましては増収になる可能性がございます。さようなことでございます。
  86. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、ついでで悪いんですが、NTTの、事務当局でいいんですが、どういう日程で、問題は一般の人方がいつ買えるんだろうということになるので、その辺のところをお話し願えませんか。
  87. 入江敏行

    ○入江政府委員 お尋ねのNTT株の売り出しのスケジュールということでございますが、政府といたしましては、この売却をどういうふうに進めるかということでいろいろ審議会に御相談をいたしまして、一部の株式につきましては入札に付す、その入札結果を見て値づけをいたしまして残りの株式は売り出しに付す、こういう入札と売り出しの二段階方式ということでやることにいたしております。  第一段階の入札につきましては、もう既に今月一日から入札の申し込みを開始しておりまして、七日までということでやっております。二十四日には落札結果が決定できる、こういうふうに思っております。  それから、第二段階の売り出しの方でございますが、売り出しの方のスケジュールにつきましては、今申し上げた入札結果、落札結果によりまして、国有財産中央審議会に幾らで売り出すかという値段につきまして御相談をいたしまして値段を決定した上、十一月の後半には売り出しの申し込みの受け付けができるのではないか、こういうふうに考えています。
  88. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで私たちも、財源その他については、この臨時国会もなかなか開かれない、そして予算委員会等も開こうとしない、補正予算も今のお話だと十月末である、こういうことで社会党、公明党、民社党といろいろ相談されて政策担当の方でつくり上げて、そして合意を得て、自由民主党を通じ、政府にお示しをいたしたのでございます。  それは六項目に分かれておりますので、総理に申し上げますが、総理には届いてはいると思いますが、一つは、まず何といってもこの予算委員会、三月四日の与野党の書記長・幹事長会談の合意、これは六十一年度の予算絡みだ、これをどう実現していただけるのですかと通告しておりますので、色よい返事をいただけると思います。  それから、先ほど論議になった、昼の時間にやっていただけるそうですが、総理の選挙公約された、名称のいかんを問わず大型間接税は導入しない、マル優制度は廃止しない、この二つの項目は少なくとも、信用しないというわけじゃないが、やはり国会を注目しておるだけに国会で決議すべきだ。これが二つ。  三つ目は、臨時国会で衆参少なくとも冒頭、きょう一日だということになったようですが、三日ずつぐらいは開くべきだ、こんなに大事な問題があるわけですから。  それから四つ目は、円高不況対策。これは内需拡大、これしかない。したがって、五兆円程度の補正予算を速やかに出すべきだ。一日も待たれない、円高ショックを。  それから五つ目は、政治倫理審査会。早速出ました。刑事の判決が出て、それでも国会議員のまま残っている。こういう場面を見せられると、国民政治倫理というものはどうなっているのだろうか、こう思うのは当然です。  それから六つ目は、後でお話ししますが、人勧、仲裁裁定、出ています。人勧も完全実施をしてほしいと人事院の方から出ておる。この六項目を皆さん方にお示し申し上げたところでございます。  そこで、私はここで特に予算の出先をずっとやらしていただいた責任者として、三月の与野党の合意問題、書記長・幹事長会談、偉い人方の会談ですから私たちが出る幕ではない。この偉い人方の与野党の合意メモというものは単なるかけつぎにして終わらせてはいけない。ちょっとざっと読んでみます。五つあります。  一つはまず所得減税、内需拡大のためにはこれが一番大事だ。したがって、「今国会中に合意を得るよう協議し、昭和六十一年中」年度じゃありませんよ、来年じゃないですよ。「六十一年中に成案を得る。」こういう文書を我々はいただいた。与野党書記長・幹事長会談で合意を得た。成案を得て実施することですね。新聞にも出た。ここでも確認した。これは大丈夫ですか、こう聞きたい。  二番目。政策減税、これは労働四団体の要請、国民の要請も強く出たが、「住宅、教育、パート等政策減税については、できるだけ速やかに実施できるよう今国会中に実務者間で結論を得る。」しかし、制度でもって住宅などは実施しておるのもあります。  三番目。内需拡大、これ以外にない。大蔵大臣も、内需拡大以外にないんだ、日本の国は。それをやってくれ。貿易ばかり黒字、外に物を売るばかりじゃないんだ、内需拡大以外にないんだ、こういうふうに言われてきた。「内需拡大については、民間活力、財政投融資の活用等各般の工夫・努力を重ね、予算成立後もその円滑な執行を図るなど一層適切な経済運営に努めることとし、」これは与野党で努力するのですよ、合意した、「経済・景気動向の著しい変動に対しても財政金融措置をとるなど機動的な運営をはかる。」  そして四番目は、「社会福祉の充実等については、引き続き福祉の充実や健康増進対策等にきめこまやかな措置を講ずる。」小手先だけの、こっちの健康組合は赤字だからこっちの健康組合から取り、老人から一月四百円だったのを今度は一月千円取る、こういうようなむごいことはやめなさい。こういうことで、与野党の合意で老人保健法は廃案になって国会は終わった。同時選挙に入った。  五番目。これは余り意味がないが、国を挙げて緑と花、、総理もよくおっしゃるのですが、「森林、林業の健全な育成と国有林野事業の経営改善方策については、財源措置を含め、」国が国有林の特別会計で木を切って売るということだけではだめだ、富士山ろくまで管理しなければならぬ。国定公園、国立公園、そろばんに上がらないものまで管理しなければならない特別会計、これはむごいじゃないか、こういうことで財政措置、一般会計から入れて「昭和六十一年中に結論を得るよう最善をつくす。」こういう大変な、大事な、重要な五項目をいただいてこの予算委員会というのは次の予算委員会に入り、五十四兆八百八十六億でしたか、この予算が通過したという経過があります。ところが、どうも所得減税なるものも考えると、一体どうなっているんだろうか、あれは単なるかけつぎだったんだろうか、こう思います。  そこで、ちょうどそこに与野党の書記長・幹事長合意の、実力幹事長であった金丸さんが副総理でお座りになっておるので――副総理というのは総理の隣かなと思ったら、担当大臣が隣なんだなと思いまして、予算委員会ですから。そこでこの問題は、まず今合意を得たものを私は一方的に読んだのですが、金丸さん、せっかくそこにお座りになっているので、これは大丈夫ですか。それから、お認めになりますか。
  89. 金丸信

    ○金丸国務大臣 所得減税につきましては、三月四日の与野党幹事長・書記長会談における協議の結果合意されたものであるが、その内容は、「今国会中に各党間で合意を得るよう協議し、昭和六十一年心に成案を得る。」というものであると承知いたしております。  なお、去る五月二十日の与野党政調・政審会長会談において、与党政調会長から引き続き協議する旨回答が行われ、また、今国会の開会に先立ち与野党の幹事長・書記長会談が行われた際には、与党の竹下幹事長から三月四日の与野党幹事長・書記長会談での合意事項は尊重する旨の回答があったやに聞いております。  現在私は閣僚の一員としてこの行方を見守っておるわけであります。
  90. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは副総理にもう一度煩わしたいんですが、私が先ほど読み上げた五項目はお認めになりますね。
  91. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、現在は閣僚の一員でありますから、竹下君にも十二分に伝えてあることでありますから、その成案を得ることを一日も早く望んでおるわけであります。
  92. 川俣健二郎

    ○川俣委員 お認めになっているので、竹下、次の幹事長に引き継いだということですね。これは空文じゃないでしょうね。
  93. 金丸信

    ○金丸国務大臣 成案を得て……(川俣委員「いやいや、全部」と呼ぶ)全部という――もちろん約束したことですから、その成案の内容について、その文章はどういうようになっておるか私も記憶は新たでないんですが、それは皆さん、そんな文章を一々覚えておられるほど頭のいい人もそんなにおらないだろうと私は思うんですよ。ですが、その文章どおりの状況であれば、政治家ですから、約束したことはやらなくちゃならぬ、こう思っております。
  94. 川俣健二郎

    ○川俣委員 頭がいい悪いは別として、文章ですから、重要なものでございまして、勧進帳でありませんから、ちゃんとした文章でありますから。  そこで、お認めになられて、そして次の幹事長にも送ってきたと。そうすると、今の大蔵大臣、内需拡大、積極財政論者として私も非常に大蔵大臣に期待しておるのですが、国民もあなたに期待していると思います。したがって、これはまさか来年のことじゃないですね。ことしやるんでしょうね。
  95. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまお話しの三月四日の文章につきましては、一部既に実現をいたしたものもあるわけでございますが、いずれにいたしましても、与野党間の最終的な合意ができましたときは、政府といたしまして誠実にこれを実行いたします。
  96. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは財源も含めて、手法も含めて所得減税をやるというんですから、大変な作業だと思います。いつ出してくれますか。いつ実施してくれますか。年末調整間に合いますね。
  97. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府の立場から申しますと、各党間の最終的な合意ができましたときはそれを誠実に実行をいたすというつもりでございます。
  98. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは三月四日のこの合意を得て予算が衆議院を通過する寸前の発言ですよ、今の発言は。もう与野党で得た成案を政府当局に投げられておる、ボールが。したがって、今になって与野党で話し合いがついたらということはどういう意味ですか。どういう意味です。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府といたしましては、「昭和六十一年中に成案を得る。」というのを与野党の合意と承知しておりますので、したがいまして、その成案ができましたときにそれを誠実に実行していく、政府はそういう立場でございます。
  100. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は長くここの予算委員会に世話になっていますが、委員長も八人か九人目でございますけれども、これをもらって予算委員会が動いたわけですね。したがって、「六十一年中に成案を得る。」という文章は、この予算委員会、新聞にも全部出ている。あるいは政策担当者の、ほかの野党もおっしゃるだろうが、これは来年のことじゃない。来年のことは鬼が笑うようなことじゃない。実施するなんですよ。どうなんですか。はっきり言ってくださいよ。――総理でもいい。
  101. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 与野党の合意というのは我々は誠実に実行いたします、と私も御答弁申し上げていると記憶しております。「成案を得る。」という状態が早く出てくることを政府としては待っている、こういう状態で、自民党及び与野党の折衝がどういうふうになるか、できるだけ促進して、この御趣旨に沿うように努力したいと思っております。
  102. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう十月ですからね。今は三月じゃないのですよ。もう十月なんですよ。ぼつぼつ年末調整の準備に入る段階なんだ。だから、無理な選挙をやってしまったのでごめんなさいという言い方もあろうが、しかし事務当局というのはあるわけだから、解散はないんだから、行政の継承というのはあるわけですから、したがって、何もかも与野党の成案を得なければだめだという解釈じゃなかった。実施するということだったでしょう。どなたでもいいですよ、やってくださいよ。  委員長、だめですよ、こんな言い方で。やはりこの国会というのは切り抜けるというだけの国会なんだ、こういうことですか。(発言する者あり)  そうしますと、政審会長の皆さん方もこの部屋におられるし、我が党の方の政審会長もおられるし、幸い当時の責任を持った幹事長、大幹事長も副総理でおられるし、これだけは確認したいのですが、「成案を得る。」という字面、文章にはあるが、ことしじゅうに実施するということを口頭で言うたので、それが一つの理由になって予算委員会が動いたんだ、こういうように私たちは思うのですが、それでいいですか。次の幹事長に送ったということは、この文章はこういう約束をしたよというのはいいけれども、実施するということは言明されたのですね。現在もそのつもりなんですね。金丸さん、どうです。
  103. 金丸信

    ○金丸国務大臣 先ほど申し上げましたように、「成案を得る。」という文章にはなっておるわけであります。しかし、私は、そういうことをやるということは、やらないということでそういうことをやったわけじゃない。やるという決心の中でやっておることは確かであります。
  104. 川俣健二郎

    ○川俣委員 金丸先生というのは大変に腹芸もおありだし、私も尊敬しておるのだが、そんなことではないんだな、私たち出先の者としては。出先の者としてはそうですよ、書記長、幹事長じゃないんだから、私らは。しかし、金丸信さんが幹事長で、今の副総理が、実施する、こう言明したということなんだから、もう一度それをはっきりしたいというならもう一遍やってもらおうか、書記長・幹事長会談なるものを。それしかないでしょう。実施するということを言われた、そして実施する、そういうことですか。
  105. 金丸信

    ○金丸国務大臣 その問題につきましていろいろ御意見もあるようでございますが、私は、働く者という方々に対して、国対委員長やあるいは総務会長、幹事長等やる中で、人勧の問題や仲裁裁定の問題等については、いつも本当に守る立場で発言政府の役員会等で申し上げておるわけでありまして、私がそういうことをその中にある文章の中に、それは気持ちの中では実施したいという、あるいはそのとき腹をたたいたかもしらぬが、そういうことで御理解いただきたいと思います。
  106. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは金丸さん、私とあなたとはこれ(腹をたたく)でやれるかもしらぬ。国民はそうはいかないからね。これじゃだめです。実施するのですね。
  107. 金丸信

    ○金丸国務大臣 実施するとかしないということは、私も閣僚になって、党には執行部もおることですから余りいろいろ、お話もわかるわけでありますが、確かに大腹をたたいたのではわからない。しかし、時の書記長・幹事長会談で、あうんの中にみんな理解したという点はあるだろう、こう思うわけであります。
  108. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ところが私たちとしては、「成案を得る。」と、あとはこれやった。だから、予算を動かせということの指示は受けてない。実施するとおっしゃったという。どうなんですか、これは。事実関係を明らかにしてもらおうか。やってくださいよ。やり直してもらおう。それまでは……(発言する者あり)
  109. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ただいまの問題につきましてお答えいたしますが、「成案を得る。」ということでありますから、ひとつ成案をつくっていただく、つくっていただいたら必ずやらせるということで御理解いただきたい、こう思います。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その点はあえて確認しなくたっていいと思うが、大蔵大臣の方が担当なんですね。大臣、どうなんですか。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま副総理答弁をされたとおりでございます。
  112. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから、ちょっと順番を変えて、総務長官にかかわる問題だけを先にやって、理事会では総務長官は午後は退席を確認しておりますので、ちょっとお伺いしておきたいと思います。  まず、行政監察は総務長官の管轄でございますので。食管法ですね。これはいろいろとこの場でも私も大分長いこと取り上げてまいりましたが、アメリカからもいろいろなことを言われておるようですが、食管法をどうするかという見直し問題ですね。  そこで、政府の方針としては、国際価格に比べて高い日本の米価とそれを支えておる食管制度を抜本的に見直し始める方針を固めた、これは私たちは報道で知る以外にないのでございますけれども、いい機会でございますので。これは中曽根総理の強い意向を踏まえて、後藤田官房長官、玉置総務長官、これは行政監察絡みの担当大臣だからだと思います、そして農協を行政監察するという含みもあって言われた。これは八六年体制ですから、自民党研修会総理も言われたかどうか、それははっきりしません。前川リポートにも、今持ってはきておりますが、その言の、これは決してあなたをとがめているのではなくて、政府全体として、今の食管制度というものはやはり昭和十七年のものですから、それも知っています、これはやはり与党、野党とかという問題よりも、検討するという時期ではないだろうかという意味であったのか、それとも農協そのものを行政監察しなければならぬ、農協は銀行みたいになってしまって、さっぱり農家の人を営農指導していないというような文字もマスコミにはあったが、その言のあれを少しあなたの気持ちを聞かしてもらいたいな。
  113. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 食管制度につきましては、中曽根内閣のもとの一閣僚でございます。総理が、食管制度は堅持する、こう言っておられます。ただし、総務庁においては臨調、行革審、この答申が非常に大事です。その中に盛り込まれておる一項目の中に食管制度の検討という、ずばりそのものは言っておりませんが、そういう項目があります。日本国のいろんな世論を見ても、この辺についてはそのままではいかぬのじゃないかなというのが私個人気持ちでありますが、中曽根内閣の一閣僚としては、総理があそこまで言っておられる限りにおきまして、食管制度の根幹は維持するという考えでいきたいと思います。  農協の問題につきまして、私自身いろいろ考えております。それは、だれよりもだれよりも農家の皆さん方を大切にしたい、これは国の大本であるということを考えまして、「協同主義を見つめて」という本を十二年前に書きまして皆さんの御批判を賜ったわけでありますが、協同主義でやっていくこの農協の本来のあり方からかなり外れておりまして、大分膨張してきたのじゃないか。  生意気なことを言って失礼でございますが、世の中に一つの転機というものがあります。危機です。クリシスとこう言いますが、これはもうだめだと思って奈落の底に落ち込むのと、まだ大丈夫、大丈夫と言って思い上がって膨張していってパンクするのと、この二つの型がありますが、農協は、私は、このまま膨れて膨れて膨れ上がっていったら、ついにパンクして、本当の農家の皆さん方、兼業農家の皆さん方に大変な御迷惑をかけるのではないか、こういう原点に立ちまして農協批判に出たわけであります。  行政監察につきましては、どこまでやれるか、今鋭意検討しておりまするが、とにかくあそこまで言い切った限り、粛々として監察、調査を進めていくということで鋭意準備しておるところであります。  以上でございます。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕
  114. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、もう少しお気持ちを聞かしてもらいたいのは、食管制度というのは昭和十七年、あの当時の一億国民精神総動員の物資不足のときにつくられた知恵だとは思うが、ただやはり農民が、生産者が再生産できるように所得、生産費を補償してやろう。しかし、そうなると非常に高くつく場合が往々にあるので、したがって、消費者との競合で、消費者には安く売ってやろう。それは社会主義だから嫌いだ、これなら別だが、食管制度の根底というのは、もともと高く買って消費者にやってやろう。ところが、いつの間にか、あなたがちょうど担当である行監の問題ですが、逆ざやというもの、いわゆる買うものと売るものとの差が生まれる。それを縮めるために消費米価をどんどん上げてきて、ついに農民が直接売ってもいいぐらいの価段になった。片や自主流通米、そうして百キロまでは自由に持ち込める、縁故米なら量を限度なく持ち込める、農林省がそういう改革をした。これは大変なことになるなということをここで再三私は言うてまいりました。  そういうような環境になったので、食管制度というのはいかがなものだろうかな、こういう消費者の保護、そんなに農民だけを保護しているのか、私たちはこれだけ高いものを買っているじゃないか、食管なんかなくたって、配給所なんか行かなくたって、農家に直接取引すればずっとうまくて新しくて安く買えますよ、途中の経費は一切要らない。こういうような空気が全国にみなぎってきたのでそういう気持ちになったのか、食管制度の根幹に触れないが、根幹にはさわらないが、しかし政府としては、責任のある政治政府としてはこれはやはり考えざるを得ないな、そうなったのかなとも思ったので、もう少しその辺は、根幹には触れないが手直しする、こういうことだけではちょっとわからないのですよ。もう少しお聞かせ願えれば……。  それから、もう一つですが、退席されるので、順次後で内需の拡大の方で話も出るが、国家公務員の四週六休というのが人事院の方から出されております。最近出されている。これは総務庁長官の方で、政府で実施する担当の大臣でございますが、人事院勧告の二・三一%、これもあるわけでしょうが、その辺の話も後でお話し願って、大臣の時間があるでしょうから、まず主眼は、食管というものをもう少しじっくり腹を割って話していただけませんか。
  115. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私は、今食管制度の問題を考えていく中に非常に恐れておるものは、日本の国は今金がだぶついておりますね。そして膨大な資金がいろいろな方面に、投機性のあるものまでやっておられる。そのときに、ある程度たがをはめずに緩めてしまったら、米の問題についてはどうしても日本国民は必要でありますので、そういうところに金が集中していくということになった場合に一体どうなるのか。一たん買い占めてまた非常に高く売るというような状態が起きないでもないということ、こういう具体的な事例をいろいろ考えてみましたときに、現在はもう少し知恵の出し方があるのじゃないか。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕  私、まだ中央会の皆さん、全農の皆さんにも話はしておりませんが、今考えておりますのは、先生御承知のように、米の集荷が今系統農協に任されておる、それから倉庫の預かり、これも任されておる。まあ意見の相違は農林省と私の間にもあると思いますが、こういうところにもし手をつけられれば、非常に構造不況に悩んでおる運送業者それから倉庫の関係者、そういうものに話をかけてみたときに合理性のある価格が出てくるのではなかろうかというふうな具体的なことまで考えて今やっておりますが、これとて私は、総務庁がああでない、こうでないと言う前に系統農協自身が、中央会が、全農が、全共連が、農林中金が自助努力をなさって、おれたちはおまえさんの言うものについてはこういうふうに考えていくよというふうにして自助努力をしてもらいたいというのが二十四日の会談でございまして、大体私の話をしておることも、向こうの話をしておることも、双方とも理解が得られたと思います。  それに基づいて大体今月の十五日から二十日にかけて、こういうふうに自助努力をやりますよという第一回の系統農協の文書が出てくるはずでございます。その中身を見ていただきますと、かなり改善をされておる。自助努力の成果は私はある程度認めていいのではないか、しかし、一回の会談だけではなしに、精力的にこの問題は在任中やっていきたいな。そしてなるべく、今国家も自治体も、人員についてもいろいろな問題についてもできるだけスリム化しようというて行財政改革ということで努力をしている最中でございますので、農協さんにおかれてもやはり一生懸命にやってもらいたい。  例えば、役員十万人、職員が三十八万六千人、合計してざっと五十万足らずでございますが、それを支えておる農家人口というのは五百五十万、そういうことを考えていきましたときに、公務員は一人に対して二十四・四人、これで支えておるのですね。だから、系統農協の場合には余りにも肥大化しているというのはそういうことでもわかる。本当に農家のために何をやらなきゃいかぬのかといったら、営農指導、生活指導です。それが五十万の役員、職員の中で何人おるかといったら、営農、生活指導両方合わせて三万人足らず。そういうところに系統農協の今の形に対して我々がいろいろ監察をする、調査をする。そして本当に農家のためになる系統農協であってほしい、原点の協同組合主義に返ってほしい、そこに私の力点を置いているところであります。  それから週休でございますが、四週六休制、これは私は先進国の中で当然だと思っておるのです。週休二日制というのは先進国で定着しておりますし、私はかねてからそのことを言っておりまして、この前閣議でも申し上げたのですが、ただ余暇という時間がとれればとれるほど、さて我々国民日本人としてどう考えたらいいのかということをやはり歴史に学べばいい。それは、余暇というのは、これはスコーレとこうギリシャ語で申しますが、ギリシャ語の語源というものがスクール、学ぶというドイツ語の方のシューレ、それになっていくのです。だから、本来余暇は心を学び、体を鍛えるという方向にぜひいってもらいたいものだということでありまして、四週六休制については、鋭意私たちが実現できるようにしっかりやっていきたいと思います。  人勧については、完全実施の方向で今鋭意努力しております。
  116. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総務長官のあれは終わりますが、ただ、言葉じりを取り上げるわけじゃないのですが、誤解しないで聞いてもらいたいのは、今日本国民に金がだぶついておるという問題です。これは後で減税財源のところで言おうと思いますが、この間、政府税調が四兆八千億の大減税をやるという花火を上げて、財源をどうするんだろうなと思いましてよく読んでみたら、こっちの方のポケットには減税を入れるが、しかしこっちからは出しなさいよという、何のことはない、こっちのポケットからこっちへ移すだけでポケット増減だなと思いました。  それだけならいいんだが、問題はどこから取るか。ずっと計算してみると、各紙も計算したものを丁寧に出してくれておりますが、ただ、言えることは、五百五十万円の年間所得者以下の人が結果的に増税になるなという計算は、これは私らが政策審議会で計算するだけではなくて、各紙もそういうふうに見ている、グラフもつくってね。したがって私らは、こういうところから取るべきではないかという、配当税とか、それから山持ちとか、いろいろとあるが、証券の株を多く持っているとか。  やはりだぶついているという感覚は、日本の国の今の借金というのは百四十三兆円ですから、建設、特例国債入れて。この二年半分飲まず食わずで返さなければならない借金、これはレーガンから借りているわけじゃない、サッチャーから借りているわけじゃない。日本国民の一部から債券で、その債券も利子が悪くないものだからお金を持っている人は買う。そうすると、日本の国に二年半分ぐらい債券を買うだけの金を持っている方、だぶついているというのはそういう感覚だと思うが、その人方に少しは、もう少し財源を協力してもらう、こういう感覚になぜなれないのだろうかな、こう思うのです。そういう感覚が、いみじくも総務長官が金がだぶついているな、こういうように言われたと思いますので、その辺をよくひとつ、今後農協とも話し合うと思うのですが、お願いしたいと思います。  それから四週六休ですが、やはり心で学び体を鍛えるという、こういうような指導、そして、この人事院の提示されたものは人勧の二・三一%も含めてやるという御意思を表明されたので、私は非常に我が意を得たりと思います。後で時短の問題も出てまいりますが、やはり働き過ぎるという言い方が、表現が適切なのか、海外から言われているようにやはり四週六休というものは内需拡大にかなりの効果がある、時短も全部あると書いてある。各企業も、なるほどある、こういうように言うているのもある。したがって、ぜひ今おっしゃったことを自信を持って、総務長官はこういう窓口なんですから、内需拡大の非常に大きなファクターを持っておられる御担当だな、こういうように感じただけにお願いしたいと思います。あとは結構ですから、どうぞ。  それで、時間の配分は、いろいろ中断もあるのですが、理事会でお決め願うと思いますが、ひとつ一連の政府の皆さん方の御発言、表現、失言というか放言というか、九月というのは随分いろいろと出た月でありますが、その問題でちょっと伺いたいと思います。  その前に総理に。やはり総理発言の中にあったわけですが、これは自民党研修会だ、公約でもないし、国民一般に対する演説ではない、こうおっしゃるが、これは自民党野田委員も取り上げておりましたが、まず、あの知的水準の発言の前に、こういうような文書が私のところへ来ましたのですが、これは総理御存じだろうか。  これは、国際婦人年日本大会の決議を実現するための連絡会、世話人は大羽綾子、中村紀伊、中村道子、このお三人の世話人の名前で、内閣総理大臣、そして婦人問題企画推進本部長中曽根康弘殿、一九八六年九月二十九日、つい最近です。官房長官にお願いしたのだけれどもどうしてもお会いできかねまして、したがって内閣官房審議官にお会いしてこれを渡した、こういうことでございます。  これはもうお目に入っているかどうか知りませんが、いわゆる「女性有権者に対する首相発言真意を明らかにする要望」。「去る九月二二日の自由民主党全国研修会における中曽根首相の発言が米国の強い批判をあび、二七日にはアメリカに対し陳謝メッセージが発表されました。 この首相発言の内容を読み、アメリカに対する陳謝では済まされない部分があります。」婦人団体として。「すなわち、私は」あなたがおっしゃった言葉どおりだと思います。「私は月に一回「総理に聞く」という(テレビ)番組があるが、非常に注意して出ておる。」何を注意するんだろうと思っているのですが、それは、「女性は「あっ、今度のネクタイはどんな色をしているか」と、そんなことを一番見る。何を言ったか覚えていないらしい。しかし、ネクタイがどうであったとか、服がどうであったか、とかは、よく見る、よく聞かれる。実際はラジオもやりたい。」ところだが、「テレビの場合は画面のほうにとられてしまって頭はすっからかんになっちゃう。」云々の発言であります。  これはお三人ですから三団体の代表かなと思いましたら、主婦連合会を初めとして、今ずっと読むと何と大変な五十一団体、日本女子薬剤師会、もちろん革新の婦人団体もある、自由民主党さんを正式に推薦しておる団体もあります。いわば、これは「女性有権者に対する首相発言真意を明らかにする要望」、こうなっておる。したがって、先ほど野田委員に対してユーモアの発言であったというようなことであったが、これはちょっとユーモアでは――こういうように総理が思っておられるのか。第一、これを御承知だろうか。もう少しその辺のお話を承りたいのです。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その報告は受けておりますし、その文章も私は拝見しております。  誤解を受けまして大変恐縮に存じておりますが、先ほど来申し上げましたように、私は決して女性をべっ視するというような考えでやったのではない。その証拠といいますか、ともかく男女差別撤廃条約というものを批准して、また男女雇用平等法という法律もつくったというのは、私の内閣がこの間やったばかりです。あるいは女性の大臣を任命するとか、あるいはこの間のガットの一番大事なプンタデルエステの大使は赤松さんという女性の方にお願いしておる。こういうような、いろいろそういう努力もしておるので、決して女性をないがしろにしているのではございません。  ただ、今時代というものが視聴覚時代に入って、テレビというものの重要性が非常に出てきた。そういう視聴覚時代における我々の心構えという意味において、我々の党員に対してこういう点を注意した方がいい。その趣旨は、女性の審美眼というものは非常に発達してきておって、そしてよく見られるよ、そういう意味で言ったので、女性がほかの点で能力がないとかなんとかということで言ったのではございません。それはそれだけ評価しているからこそ女性の大臣を任命したり、あるいは女性の大使を重要なポストへ配置したり、いろいろ努力しておるところでございます。
  118. 川俣健二郎

    ○川俣委員 誤解を受けたなどというものじゃないと思いますよ、「頭はすっからかんになっちゃう」と言われたんじゃ。これは、私は男性ですから、女性ではありませんのですが、女性党首を私たちもいただいたわけですが、そうすると舌足らず、むしろ舌余りかなと思ったのですが、じゃ、これは撤回しますね。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のすっからかんになってしまうという部分は、これはテレビとラジオとを比較して一般論として言ったので、女性に対してそれは言われておる部分ではないのであります。ラジオとテレビというものを比べた場合に、テレビは目の前へ映ってくるから目の方へうんと入ってくる、ラジオの場合は耳だけであるから、そういう意味で両方の比較を言った。そういう意味なので、女性に向けられて言った言葉ではないのでございます。  しかし、今申し上げましたように、私が今までやってきたことをごらんいただけば御理解はいただけると思っておりまして、それはユーモア的な発言で、我々としてはこういうことを注意しなければいかぬという我々みずからの自戒の言葉として党員に申し上げた、そのように御理解願いたいと思うのであります。
  120. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それがいわゆる百科事典にある詭弁ということだと思います。いわゆる知的水準の発言でも、最初はあなたはそういう態度だったのです。ところが、ごうごうたるアメリカの世論である。国内ももちろんそうですが、それで慌てて向こうにメッセージを送った。アイム ソーリーじゃ済まない。したがって、ここまで言われて何でこれが一般論なんだ。女性じゃないか。女性に対してでしょう、これは。テレビを見てネクタイや洋服しか見ていない、そうでしょうが、あなた。「すっからかんになっちゃう」というのは撤回しなさいよ。どこかで撤回しなさいよ。本会議でもいいですよ。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その文章にも書いてありましたように、「らしい」という言葉を使っておるのです。それはやはり私はユーモアを込めてそういうふうに言っておるわけなのでございます。私の真意は今のようなことでございますから、もし誤解を受けているとすればその点は私の真意でなかった、そういうふうに私は申し上げる次第でございます。
  122. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、わかりやすく言うと、弁解はするが、謝罪も撤回もしないということですね。(「そんなことはありませんよ」と呼ぶ者あり)ちょっと、今の言いなさいよ。
  123. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 誤解を受けたとすれば、遺憾であると申し上げる次第です。
  124. 川俣健二郎

    ○川俣委員 謝罪はそういう謝罪ですか、撤回しますか。この発言は撤回しますか。次の発言に影響するから。本会議陳謝なり謝罪なり撤回なり、いろいろあると思いますよ、私その方の担当じゃありませんけれども。予算委員会として、まずどうですか。
  125. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の真意は今申し上げましたように、非常に視聴覚時代にあって我々は心すべきことであると党員にそういう趣旨のことを申し上げたので、もし誤解があったとすれば甚だ遺憾でございますと申し上げる次第であります。
  126. 川俣健二郎

    ○川俣委員 誤解があったとすればなんという問題じゃ通らない。一連の次のあれを言いますが、これはやはり藤尾発言から整理していかなきゃいかぬ。この九月というのは日本政治家の発言が非常に諸外国から批判された月だったと思います、私ずっと見ておりまして。今までの内閣の歴史を見ると、このようなことが連続出てくると往往にして内閣の末期になっているのだね、こう歴史をいろいろと見ると。  そこで私は、総理に伺う前に外務大臣伺いたい。それは、九月十日日韓定期外相会議で崔侊洙、韓国の外務大臣ですね、チェ・グァンスと発音するのですか、遺憾の意を表明したというのです、藤尾発言非常に遺憾だと。どの部分が遺憾だったのですかね。
  127. 倉成正

    ○倉成国務大臣 十日に日韓定期外相会議がございまして、崔外務大臣日本においでになりました。その際、私は藤尾発言全体、藤尾発言いろいろなことをおっしゃっておりますけれども、その中で、いずれにしても大変屈折した不幸な歴史を持った韓国の国民に対して大変不快な念を与えたという点について遺憾の意を表したという次第でございます。
  128. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこをもうちょっと。いろいろじゃない、そんなにいろいろ言っていませんよ、文芸春秋のあれを見ると。そんなにいろいろ言っていません。どこですか、どういう失言なんですか。
  129. 倉成正

    ○倉成国務大臣 特定してどこと申し上げることではなくして、全体としていずれにしましても不快な念を与えたことは、相手の国民感情を考えると極めて遺憾であるということを申し上げた次第でございます。
  130. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなた外務大臣として、ちょっとどの部分ぐらいは、しかも歴史的な問題ですから。  では塩川さん、文部大臣に伺いますが、そんなに長く言っていませんよ、藤尾さんは。語っていませんよ。どの部分ですか。
  131. 倉成正

    ○倉成国務大臣 政府委員をしてお答えさせます。
  132. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 ただいま外務大臣から御答弁を申し上げましたように、当該問題になりました論文のどの部分が特にと申し上げるのはいかがかと思いますけれども、当該論文の中で韓国側が特に韓国側のマスコミ等を通じて韓国の国民感情を非常に傷つけたと申しております部分は、韓国の併合に関連した記述の部分であると承知しております。(川俣委員「どういうように言っているの」と呼ぶ)原文自体今所持しておりませんけれども、日韓併合の条約には韓国側も署名をしたわけであるのでそれだけの責任を、韓国側にも責任があるんだというふうに言及されている部分を非常に大きく取り上げているというのが私どもの理解しているところでございます。  ただ、どの部分に対して遺憾の意を表したのかという御指摘に対しましては、ただいま外務大臣がお答え申し上げましたように、どの部分に対して云々ということは申しておりません。この論文が全体として韓国側に不快の念を与えたというのは非常に遺憾であるというふうに韓国側に対しては御説明をしているという状況です。
  133. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっとだけ触れましたね、あなた。長いことしゃべったけれども、ちょっとだけ触れた。結局、日韓併合、正式には合邦という。国が二つ、会社の合併に対して合邦。この日韓併合に当たって、藤尾さんは、高宗、向こうだって署名したんじゃないか、向こうだって責任あるじやないか、こうおっしゃった。  そこで問題は、触れたくはないよ、触れたくはないが、昭和四十年の日韓の条約のときに、この国会を思い出すんだ、うちの方の石橋前委員長がやって、非常に問題をやって、私の記憶ではとうとう強行採決だったと思う。皆さんは、年輩の人方、知っていると思う。それを国立ソウル大学の歴史学科のある教授が、藤尾発言というのは日本人の保守的な気質と誤った認識をあらわした氷山の一角である、したがって、今罷免されてみたところで第二、第三の藤尾がいつでもあらわれる可能性がある、したがって藤尾個人を中曽根さんが罷免しても根本的に解決したものではない。  これはなぜかというと、その意見のあれをざっと言ってみますと、こういう条約法条約というのがあるでしょう。これは藤田さん方、専門だからね。あなた持っているでしょう。この五十一条、これをちょっと読んでみてくれませんか、皆さんに。
  134. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ウィーンで採択されました条約法条約の五十一条についてのお尋ねでございますが、五十一条は次のように規定しております。「条約に拘束されることについての国の同意の表明は、当該国の代表者に対する行為又は脅迫による強制の結果行われたものである場合には、いかなる法的効果も有しない。」以上でございます。
  135. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうです。そこなんです。第二、第三のあれが出るよと。  そこで、今のあれを取り上げて、日韓基本条約を日本の国で昭和四十年でしたか、やるときに、一番もめた問題というのは第二条である。いわゆる「千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。」これは日本文。オールレディー、「もはや」じゃない、あんなのは初めからなかったんだ、こういう韓国側の主張は、この五十一条で、今言われた、読んでいただいたことから、「代表者に対する行為又は脅迫による強制の結果行われたものである場合には、いかなる法的効果も有しない。」最初から無効なんだ、こういう認識に立たないと、それを私は、藤尾さんというのをかばう意味じゃなくて、理解して、これがわからないであの発言をされたとなれば、おれは、藤尾さんは失言じゃないと思う。だから、こういうものがあるために、初めから無効であったやつを──こんな言い方は、言っちゃいいかどうか知らぬが、銃剣を差し向けて、こら署名しろという状態の客観情勢で結んだ日韓併合条約というのはもともと無効だったんだ、こう向こうがおっしゃる、それを認識されて総理が藤尾さんをすぱっとやったのか、その辺を聞きたいな。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日韓両国国交回復のための条約につきましては、今御指摘のとおりの文章になっていることは私もよく知っております。この点につきましては韓国側と日本側でいろいろ協議もいたしまして、韓国側にもそういう主張が当時強かったということも聞いております。そして、両方でいろいろ協議の結果、既に無効になっているという事実を確認した、そういう形で両方の合意を成立せしめた、そういうふうに私は解釈いたしております。  恐らく、私の推察では、当時の歴史の本等も読んでおりまして、日本がかなりの威圧的な背景を持ってこの条約は締結されていると私は解釈いたしておりまして、そういう面から見ましても、藤尾発言というものは国際的に穏当を欠く部分がある、そういうふうに考えてああいう処理をしたものであります。
  137. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは触れちゃいけない問題に触れたな、これは塩川文部大臣がバトンを受けたわけですが、その辺の歴史を知らないと、向こうの方の国立大学の先生がおっしゃるように、第二、第三の藤尾が出てくるぞ、こう私も思うのです。したがって、鮮やかに藤尾さんがあのときに申しわけないことをしたなと言ったらそれで済ましたのか、あんなことを言って、おれは間違いない、やめないんだ、こう言ったからすぱっとやったのか、その辺がどうしても理解できないんだな。総理がこういう失言を海外にやったら、だれが首とる。まさかレーガンじゃないでしょうね。これは知恵のある副総理に聞きたいところですが、それは総辞職しかない。運命共同体だ。だけど、ちょっとだけ聞いてお昼に入りたいのですが、一体、触れちゃいけないところに触れてしまったから黙れ、閣僚の中から消した方がいい、こういうふうに思われたのか、謝らないから、悪いことをしただだっ子がお母さんに謝らないから、おまえ出ていけ、こう言ったのか、どの辺なんですか。その辺ちょっと聞きたいね、次の質問があるから。
  138. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、藤尾発言あるいは記録というものについて、やはり妥当を欠くものがあると私自体は考えました。向こうの政府の方からもそういう意思表示もあったわけであります。そういういろいろな国際関係考えて、やはり非は認むべきときは認めた方がいい、政府間のそういう話にもなってきておったわけであります。そういう意味において、日本の国際的地位やアジアにおける外交、大事な韓国との国交、そういうものも考えまして処理したわけであります。
  139. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あとは午後にいたします。
  140. 砂田重民

    砂田委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  141. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、中曽根内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根内閣総理大臣
  142. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどの川俣さんの御質問に対しまして御答弁申し上げます。  間接税の問題につきましては、税制調査会で御勉強いただいておる段階でありますので、答申をいただいた上、私の公約に沿ってよく検討いたします。
  143. 砂田重民

    砂田委員長 質疑を続行いたします。川俣健二郎君。
  144. 川俣健二郎

    ○川俣委員 理事会の確認で各党の質問時刻も確認して私の質問を許してもらっているわけですから、その中で私も理事会に入っていろいろと一時間の休憩時間を使って検討してまいりましたが、そうしますと、今言われたのは、非常に短い文章に短縮しておりますので、もう一遍しつこいようですが伺いますが、いわゆる総理が公約したのには違反しない、違反することは実施しない、こういうことだけは確認していいですね。
  145. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  146. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、午前中の発言につなぎますが、結局女性軽視なんという問題より、もうむしろべっ視というようなああいうような発言は、やはり誤解だとは言わせない。あるいはユーモア的な問題だという取り上げ方もあるかもしれないけれども、私は絶対取り上げない。そういう考え方じゃない。したがって、後で申し上げますが、これは陳謝に値する、撤回の上陳謝に値する発言であるということを、まず言っておきます。  それから藤尾発言については、これから文部大臣にも今後この問題は尾を引くと思いますし、きょうは時間的な制約がありますから、外務委員会なり内閣委員会等、いろいろ文教委員会でももちろんあると思いますが、問題は、歴史をもう一度みんなでひもといて、日韓併合条約がどういう形で行われたか。それからあれが有効か無効かということの条約法の条約もある。それに日本も署名しておる。それから第二条の、日本はもはや日韓併合は無効だ、しかし韓国の方は初めから無効だったんだ、こういうものとの大論争が国会にあっただけに、二十年前のことを思い起こしていただいて、そして国会で、椎名外務大臣だったと思いますが、強行採決までいって日韓基本条約を結ばざるを得なかった場面をもう一度思い起こしてもらって、第二の藤尾発言、第三の藤尾発言が出ないように要求して、さらに続けます。  それで、これでも陳謝という行為をとらないかということです。総理みずからの発言ですが、やはり藤尾発言というのは――先ほどちょっと言い忘れましたが、久保田発言というのは非常に有名になった言葉で、久保田発言から端を発した日韓基本条約であった。したがって、今度の中曽根発言を見ると、やはり池田さんの末期でしたか、こういう言い方はどうか知りませんが、貧乏人は麦を食えと言った池田大蔵大臣の発言を思い出してしょうがない。確かに当時はインフレで、金のない人は麦すら食えない時代であったのは事実であるが、麦を食えばいいという発言の中に一般庶民はショックを受けて話題になった。思いやりのない発言であると言うてもいいと思います。いわゆる麦を食えと言って麦を食わないで済んだ人方がそちらにおりますが、その流れをくむ中曽根総理は、東京大学を出て若くして国会議員になった。そして総理大臣にまでおなりになった。  日本にも、あなたのような人もいれば、貧しくて勉強すらできない人も数多くいる。しかし、この人たちも、自分たちの明るく楽しく立派な人生を送っている人たちも数多い。したがって、総理のような、いわゆる知識水準の高い物差しで論ずるべき問題ではないと私は思います。知識水準が高いんだ、まして米国では今でも黒人は字を知らない者が随分いるというような発言は、これは池田発言と同じように、アメリカの黒人に対して思いやりのない、全く無神経というか、どこに国際性があるんだろうか、こういうようなことを考えます。  まして日本人と対比することは人種的優越意識で判断することであって、これでは、米国はおろか、世界の人々が怒りを持つのは当然です。今、総理メッセージを出して、レーガンに何とかということでしょうが、いやアメリカは少し下火になったといったら、とんでもない、むしろヨーロッパの方で大変だ、これは。ヨーロッパの方で大変だ。ああいう考え方を持っているんなら、なぜ我々にも謝罪しないだろうか、陳謝しないだろうか。そうなると、日本国会という、本会議という場所がちょうどある。ちょうどある。それよりも、日本人にもおわびする発言だと思います。私は、おわびしなければならない発言だと思います。  なぜかというと、日本人というのはみんなそういうものだろうか、そういう人方なんだろうか、口ではうまいことを言っておいて、やはり根は全然違っておるんだな、本音と建前が違う民族かということをヨーロッパの新聞記者が書いておるのが紹介されています。特に総理の場合は、思い出すが、不沈空母に乗ってアメリカに出かけていった。そして運命共同体である、ロンとヤス、こういう――御自分も言われたから私も言いますが、何でもイエスマン、お言葉を返したことをまず私は聞いたことがありません。レーガンが提案したものにお言葉を返したことはない。何がお言葉を返したんだろうか、こう思っても、どうしても総理がお座りになった後、ない。いろいろひもといてみたけれども、ない。それが一国の総理だろうか。  向こうの方は向こうの立場で提案する。アメリカの農産物を何としてくれるのだ。だから、ドアをあけろ、もっと買え。ついには、この間なんかは、これも報道で知ったわけですが、たばこの配送車が日本のたばこの名前だけしか書いてないのはけしからぬ、アメリカのたばこも書きなさいというので、みんな塗りかえたというあれがあった。それから飼料会社が志布志湾に入ってくる。とうとう米まで自由販売にする。それで外務大臣も大蔵大臣もいろいろとそれの防戦に努めて帰ってこられた。こういうのが私は一国の総理だと思う。  何も、仲よくするということは、相手が言うたことに何でも結構です、イエスマンじゃいかぬと思う。ですから、全部あなたのおっしゃるとおりです、おっしゃるとおりです。とうとうSDIという、みんなが我々が全部反対するのに、こんなのに入ったらえらいことになるよ。まず金もかかる。普通の金じゃないのだから。入るということを決定しちゃった。  そこで、そういうような親米的というか、レーガンと仲がいいというか、そういう中曽根総理ですら、本音はああいう人なんだろうかな、これが当然だと思いますよ。だから、日米開戦前夜のことを考えてみると、あのときだって今まで以上に日本アメリカとは親近を深め、交流しておった時代なんです。昭和十六年十二月八日、パールハーバー、真珠湾攻撃。やはり日本人というのは、よほど仲いい人でも、仲よくなった、アメリカをよく思っている人だなと思っていても、殴る民族なんだな、油断のならない民族なんだな、こういうように考えると、私は、単にアメリカメッセージを送るだけではなくて、全世界というか、国民というか、そういう意味において近い将来に――近い将来というか、最も近い本会議陳謝に値する問題ではないだろうかな、こう思いますだけに、総理にこれだけは私はどうしても譲歩できない問題です。  特に、アメリカにも日本人がたくさんおります。それが今非常に背筋が寒いというか、我々の東北の言葉で言うと、背中さ冷ゃっこくなった、こういうようなことで、ついおとといですか、「事の重大さに背筋が冷えた」、これはロサンゼルスに住んでいる三十三歳の、自分でも名前を書いておりますが樋口さんという方の投書でございます。コロラドへ出張中の主人から電話がかかりました、今ニュースで、中曽根総理アメリカの知識水準が低い、こういうような発言をされて大騒ぎになっておる、そっちもそうか、そうだ、よく戸締まりして寝なさいよ、こういうことなんです。ロスはどういう都であるか知っていると思います。したがって、私は早くこの問題を処理したいが、何とか日本人全体にもおわびし、それからアメリカに住んでおる人方のことも考え、そしてヨーロッパの人方にも、全世界に。私は総理の名誉のために言っていますよ。総理がこのままアメリカに行って、今までのようにロンとヤスという体制になるだろうか。マンスフィールド大使が一番その辺は心配して、うちの方の土井委員長委員長就任のごあいさつに行ったら、この問題にやはり触れられた。触れられたというよりも、私は感じ取った。あなたならアメリカに非常に歓迎されると思う、ぜひ訪米してください。私たちグループで、委員長になる前ですが、日米を考える会でいろいろとマンスフィールドとは話し合いの場を持ってきましたが、そういうことを考えると、さっきのネクタイ論も含めて、誤解であったとか、国会に、本会議陳謝する必要はないとかということを考えないで、素直に、やはり本会議を開かれた場合には、そのような時期があったら、そのような舞台があったら、本会議というのは議院運営委員会ですが、私は陳謝する用意がある、このぐらいはおっしゃったっていいんじゃないですかね。どうですか。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど、野田委員の御質問に対しまして、私は国民皆様方にも申しわけない結果でありましたと申し上げた次第でございます。私の落ち度を国民に申し上げたところであります。各党間の問題等が国会に出てまいります場合は、これは各党間の折衝を政府として、私個人としても見守ってまいりたい、こう思っております。
  148. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、これ以上確認する必要はないと思いますが、各党間ということで本会議というのは開かれますから、それは場所としては本会議が一番適切な場所ではないかなと思いますので、その辺も含めて陳謝する用意があるというように感じ取っていいでしょうか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、この場をかりましていろいろ私の心境も申し上げた次第でございます。各党間の折衝につきましては、それを見守っていくと申し上げた次第でございます。
  150. 川俣健二郎

    ○川俣委員 見守るだけではなくて、各党間で話し合ってそういう場ができたら陳謝する用意がある、こういうように受け取っていいですか。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政党間のことでございますから、これは各党間の折衝を私個人ないしは政府としても見守る、こういうふうに申し上げた次第です。
  152. 川俣健二郎

    ○川俣委員 政党間に一切任せるということは、舞台ですよ。陳謝する場ですよ。しかし、その場合には当然陳謝する用意があるというように受け取っていいかと言っているのです。
  153. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の心境はただいま申し上げましたとおりで、野田委員のたび重なるいろんな御質問について正直に申し上げた次第であります。
  154. 川俣健二郎

    ○川俣委員 野田委員質問しているんじゃない。私が質問しているんです。だめだよ。
  155. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それと同じ気持ちでおります。
  156. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ここでまず陳謝する予行演習をやってみなさいよ。どういうように陳謝する。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げたとおりです。
  158. 川俣健二郎

    ○川俣委員 陳謝する用意があるんですね。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 さっきから各党簡の折衝を見守ると申し上げたとおりです。
  160. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、各党間のあれを見守るということは、各党の中に陳謝する必要がないというような党もいるであろうという予測なんだな。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかくどういう結果が出るか、その結果を見守る、そういう意味であります。
  162. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこまでおっしゃるのなら、何であんな謝罪のメッセージを送ったのですか。それとの絡みはどうです。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはアメリカ国内におけるいろいろな反応を見まして、こういうふうにやることが適切である、そう考えまして、虚心坦懐にメッセージを送ったわけです。
  164. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、反応が大きいからメッセージを出したのですね。日本の国内はまだ反応は大したことないということなんですね。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカにおける反応につきましては、それぐらい国民感情を非常に傷つけた、そういう点で非常に自分も反省しなければならぬと思いましたし、そういう行為も示す、そういう気持ちで申し上げたわけです
  166. 川俣健二郎

    ○川俣委員 アメリカだけですかね。アフリカのアパルトヘイトの話もこの予算委員会によく出ましたが、ヨーロッパ自体もそういうようになっているのですよ、今。アメリカだけに陳謝するというのはどういうわけですか。
  167. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはりアメリカの議会のいわゆるマイノリティーグループという議員の皆さんあるいはアメリカの民間団体、そういうものが行動を起こしておりますから、そういう意味において直接自分気持ちをお伝えする必要はある、そう思ったわけです。
  168. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、あなたの発言に対して行動が起きたからおわびしたいのですね。あなたの発言が主体じゃなくて、向こう側の行動があったのでメッセージを送ったのですね。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、そういうことによって感情を傷つけたということが具体的によくわかってまいりましたので、そういう措置をしたわけであります。
  170. 川俣健二郎

    ○川俣委員 感情を傷つけたというのはアメリカだけですか。
  171. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの言葉の内容がアメリカ国民の一部を指しておったから、そういう意味でやったわけであります。
  172. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、アメリカだけの問題を対象にして発言したから、その対象のアメリカだけにメッセージを送った、こういう意味ですか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ国民一般に対してあのメッセージは出したつもりで、またそのメッセージ日本の大使がそれぞれの関係皆様方にもお伝えしたわけであります。
  174. 川俣健二郎

    ○川俣委員 事実関係は違うのでしょう。アメリカじゃ大変なことになったということで、アメリカにいる日本大使から電話が来て、これじゃやはりメッセージを出さにゃいかぬな、こういうことになったんじゃないの。
  175. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり事の重大さというものを、そういうことによってよく認識したわけであります。
  176. 川俣健二郎

    ○川俣委員 とにかく連日、知識水準記事は出ています。もう各紙が全部──ここに持ってきてくれた方おりますが、外交問題に発展は当然だ、日本製品の不買運動まで起きておる、アメリカ黒人指導者が謝罪要求、もう毎日のように出ていますよ。反発、全米に広がる、ジャクソン、いわゆる黒人の指導者で有名ですが、謝罪を要求する、いっぱいあるんであります。もう毎日のように出ていますよ。政府は鎮静化を期待すると言ったって、とてもじゃないけれども、向こうの動きを見て動くというだけなんだ。そうじゃなくて、私は、あなたがやはり陳謝に値する発言だったのかということを聞きたい、どうなんです。それが一番いい方法じゃないの、日本国会で。その辺、どうです。「「嫌い」と感情むき出し ロンもかばい切れず?」政府間の了解では落着しない証拠、私もそう思いますね。あなたとロンとは話し合いがついたかもしらぬけれども、とてもじゃないけれども、さっき言ったように在留邦人が困惑して困っている、おわび一つぐらいあったっていいんじゃないか、こういうことですよ。それからさっき、ヨーロッパの方で日本人というのはそういうものだ、こういうように言われておる、それでも各党間の動きを見るだけですか。
  177. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカのそういう関係ある方々に対しましては、かなり丹念に私のメッセージをお伝えいたしまして、御了承いただいたわけであります。アメリカ政府の方は、この問題が起きたときからいろいろ説明申し上げて、これは了承する、問題にはしない、そういう通告も得たわけであります。それから、いろいろな議員の皆さんやあるいは諸団体、ヒスパニア・グループとかあるいは黒人の皆さんとか、そういう責任者、ジャクソン師も含めまして一々会いまして、我々の出先の者が私のメッセージを渡しまして、中には、非常に勇気のある発言である、これは了承する、そう言ってくれた方もかなりあったと聞いております。  そういうわけで、関係者につきましてはもう御了承を得ていただいた、そう考えております。
  178. 川俣健二郎

    ○川俣委員 勇気ある発言、それはちょっと……。そのメッセージを送ったこと自体が勇気ある発言だ、こういう意味ですか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いや、そう言った人もおる、そういうふうに私報告を聞きまして、今その事実を申し上げたのでございます。しかし、私自体はあのメッセージのとおりの心境でおる、そういうことでございます。
  180. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは改めて発言します。もう一遍結論的に言いますが、この予算委員会で私が今までずっと時間をかけてあなたの発言に対して質問してきたが、では最後に言ってくださいよ、どういうつもりですか。誤解であった、アメリカにおわびしたんだから済んだ、これだけでいいんですか、どうです。
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の心境は、きょう野田議員の質問に対して申し上げたとおりでございます。また、川俣さんにも申し上げたと思います。各党間の問題については、各党間から提起されるに従いまして各党で協議をすることになると思いますが、それを見守るということでまいりたいと思います。
  182. 川俣健二郎

    ○川俣委員 野田議員、野田議員と盛んに言うんですが、では私の質問に一応言ってみてくれませんか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同じ心境でありますと申し上げたとおりであります。
  184. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その同じ心境をもう一遍言ってくださいよ。議事録はそのようにならない。「同じ心境」と書かれるだけだ。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく、その言葉に出ました相手方の皆さん方の感情を傷つけまして、まことに申しわけないと思いました。そのことを率直にお伝えもした、そういうことであります。また、日本国民の皆様に対してもいろいろお騒がせもしたし、御心配もいただいたりして、また大変御迷惑をおかけして申しわけない、そう思っております、そういうふうに申し上げた次第であります。
  186. 川俣健二郎

    ○川俣委員 各党間のあれも見守るということもあるし、恐らく近く開かれる本会議で当然陳謝の場面があることを期待し、私もそう望んでおりますだけに、今の陳謝の表明は、やはり日本国の代表の最高議決機関の国会が一番いいと思いますので、あえてこれを要求して次に移りたいと思います。  防衛庁にちょっとお伺いしたいのですが、先ほど総務長官が人勧二・三一%──GNP一%の絡みもあって質問します。  そこで、GNPの下方修正、これは今日段階では見きわめが困難であろうが、給与の改定の実施、すなわち人事院勧告二・三一%のアップを実施することにより、国会との約束GNP一%を超えるとでもまさか考えてはいないだろうとは思いますが、栗原長官は二回目でベテランの防衛庁長官でございますから、私はGNP一%は、一つ質問は、GNPは一%を守ります、こう総理がこの予算委員会を通じて国会に約束してきたことを体しているんでしょうかというのが一つ。  それから、何か何となく気になるのですが、外で発言される言葉を見ると、結果を見なければわからぬよ、GNP一%天井を超すかどうか。それは人件費のアップもあれば、守りたくてもアップするためにはしようがないという場合もあるかもしらぬ。しかしながら、ちょうど幸いと言っては悪いが、防衛庁関係で海外から調達する物品二千三百五億、これは一ドル二百九円で予算単価を組んでおります、この予算委員会で論議したように。今度私が計算してみると、今百五十五円ですが、四月、五月は百七十何円等もありまして、平均百六十九円と見ても、この一年間のあれを百六十九円と見ても四十円の単価ダウンがあるわけです。したがって、これはざっと計算すると五百四、五十億の、いわゆる予算に組んだものより安く調達できるという結果になる。  そこで、もしもこのベースアップを全部吸収するとすれば、まだ余裕が二百三十五億あるが、一%の天井を超すのに二百三十五億あるが、一%というのは三兆三千三百億ですから三百三十三億。二・三一%を吸収するのに九十八億だけ足りないな、天井を破るなという計算にはなるが、物品調達で、円高のこの場合はおかげでですが、大分単価安になり、それに油代もかなり予定したものよりも低く決算が出るわけですから。この減はそういうように理解していいだろうか。この辺を少しお話し願いたい。
  187. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 一%の問題につきましては、総理大臣が言われたとおり、三木内閣のあの決定を守ってまいりたい、これは変わっておりません、この点は。  それから、GNP一%の問題について私がいろいろと話をすると言ってますが、私が一%の問題を言いましたのは「防衛計画の大綱」と一%の問題、あるいは一%を超えると軍事大国になるとかならないとかという、そういう質問がございまして、それに答えたことでございますから、この点は御理解いただきたいと思います。  それから、現実にことしの補正予算で防衛費がどうなるかということは、ただいま御指摘のとおりいろいろの要因がございます。まだ決定的なことは言えませんけれども、私の大ざっぱな感覚でいいますと、一%枠を強く突破する、そういう勢いにはないと考えております。
  188. 川俣健二郎

    ○川俣委員 二・三一%のベースアップがあっても十分にまだ余裕があるということだけは確認し、総務長官がおっしゃるように、人勧のベースアップをやったために天井が破れたという結果は出ない、さらにGNP一%は守りますというお話を承りましたので、次の質問に入ります。  ついでと言っては悪いのですが、ここで同僚の上田議員がいろいろと質問しておりました問題にちなんで、三宅島のいわゆるアメリカ空母ミッドウェー、これの艦載機の離着陸訓練飛行、NLPと言うそうですが、この建設の問題について村議会が大変な紛糾はするし、こういうのが選挙を前にして出たわけです。  ここで聞きたいのは、総理予算委員会で上田質問に対して、住民の意思を尊重し、力で強行するようなことはしない、こう言い続けました。この答弁は今でも変わりありませんか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この前答弁しました考えは変わっておりません。
  190. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると、まだ話し合いがついてないという実態、これは御承知ですか。
  191. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 実態はよく知っておりますが、できるだけ御理解を得て、そうしてあそこへNLPを実現したい、そういうふうにも申し上げておると記憶しております。
  192. 川俣健二郎

    ○川俣委員 栗原さん、まだ話し合いはついていないということを理解していますか。
  193. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 まだ話し合いがついている段階じゃございません。  それと同時に、先ほどの私の答弁について、GNPの一%にはるかに余裕がある、こういうお言葉がございましたが、私はそういうことを言うたつもりはございません。GNP一%を強く突破するような勢いにはない、これは誤解のないようにお願いいたします。
  194. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その後段の問題は、私がそう思うというだけで、あなたが答えたとは言ってないですよ。  それで、話し合いがついていない。そこで私が聞きたいのは、予算委員会ですから当然に気になるわけですが、あなたのところからNLP、離着陸訓練飛行、ミッドウェー艦載機の、それの予算が、調査費というか調査費の予算が三億五千万円、これが計上されておる。こうなると、これはアメリカのワインバーガー長官やブッシュ副大統領との会談において、NLPの建設を実施する、こういうような説明をされたということに話が結びつくものだから、その辺はどうなんですか、予算を先取りしておくということですか。後で石垣島の新空港の問題もあるが、まず、その予算の先取りの問題も含めてちょっと聞きたいのです。
  195. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 詳細は政府委員から御説明をさせますけれども、この調査費用をつけましたというのは、防衛施設庁の連絡事務所を島に置く、あるいは情報収集等の問題を処理しなければならぬ、そういう点がございまして、そういう意味の調査費でございまして、飛行場をつくるという、そういう建設費じゃございませんから。しかし、詳細につきましては政府委員から御答弁をさせます。  なお、ワインバーガー並びにブッシュとの間でそういう話をして、断じてやる、したがって予算を組む、それは全然関係ございませんから。
  196. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 六十二年度の予算要求をただいまいたしておりまして、大蔵省の方で審査をしていただいているわけでございます。  今、委員お尋ねの三億五千万円余の話でございますが、これは六十二年度の概算要求として要求している話、目下審査中の話でございますから、まだそれで政府として国会にお願いをするといった段階よりはかなり前の段階だということをまずお断わり申し上げておきます。  三億五千万円の内容につきましては、ただいま栗原大臣より御説明申し上げましたように、現地連絡所の事務経費、それから候補予定地におきます地質、地形あるいは環境調査等に要する経費でございます。建設費そのものではございませんので、先取りといったような問題にはならないかと存じております。
  197. 川俣健二郎

    ○川俣委員 しかし、私はこのような問題は余り詳しくはないのですが、ただ、予算の先取りだという感じはいたしますね。これは建設を前提にした調査費でしょう。
  198. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 建設ということになりますれば、建設費をお願いをいたしまして建設に着工いたすわけでございますが、その建設に至る前の状況で、いろいろな地形でございますとか地質でございますとか、先ほど申し上げましたような前提となるいろいろな事象につきまして調査を必要とするわけでございます。  このNLPの問題につきましては、御承知のように、ここ数年いろいろ私どもでも努力しておりますけれども、まだ島の方で御了解が得られていないわけでございまして、時間が非常にかかってございます。できるだけ早くこのNLPの訓練場につきましてはこれを実現したいという考え方でございますので、着工できる運びになりましたときに、もうできるだけ間隔を置かずに早い時間で現地の着工ができるようにいろいろな準備を進めたい、こういうことでございます。
  199. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間がないので……。  そうすると、まだ大蔵省に出している段階ですが、局長の方に聞きたいのですが――ちょっと待ってくれ。これはやはり先取りだと思うのですがね。局長、どうですか。こういうことをみんな許したら、もう全部先取りされる。まさか防衛費だけ特別扱いすると言うのかね、それとも。これがやれるんならもう大変だ。そこに建設大臣もおられますけれども、みんなやりたいと思うよ。どうです。まだ審査中だから……。
  200. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今、予算要求をいただいた段階でございまして、来年度予算の話でございますので、ぎりぎりまで十分に状況も判断し、意見伺いまして調整を図ってまいりたい。熟度が十分でないときに予算計上するということは、これは経費の性質にもよりますけれども、やはり熟度が相当にいったところで予算計上するのが自然な姿ではないかな、こういうふうに思っております。いずれにしましても、最後のぎりぎりまで調整を図ってまいりたいと考えております。
  201. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そのとおりだと思いますよ。やはりぎりぎりまで待ってはみる。しかし、ぎりぎりまで話し合いがつかない場合には、要求はあったけれどもあれだということを確認したので、私は次に進みます。  それから、時間がありませんのではしょっていきますが、廃案になって、また出してきた。それは老人保健法であり、さらに国立病院の統廃合。それで私はちょっと厚生大臣にいろいろ話があるのだけれども、時間がないのだが。今、全国の国立病院の統廃合、これが発表された。ところが、医療供給が非常にはんらんして、それがひいては医者が余っている。それから私の方は医者が足りない。韓国、台湾から医者に来ていただいているということの認識がありますか、皆さん。この話は別として、この国立病院の統廃合は、不要なところが非常に多い、医療供給が需要に対して多過ぎるということも根底にあるようですが。  そこで私の質問は、統廃合というのは、これは何も法律は要らないのだ。統廃合は、これは行政上の問題であって法律事項ではない。しかし、今回みんな反対して、私のところにもあるものですから、一回に五、六万人の署名運動が、これで四回目ですが、またやりそうだということで来ている。もちろん市も反対、町も反対、地域医療がなくなるわけだから。したがって、私の聞きたいのは、統廃合については何も国会に相談しなくてできることだ、こういうように思っているのか。ただし法律をお願いするのは、残った土地を売買しなければならない。できれば統廃合の廃止になった方にほかの医療機関が、民間あるいは公的な医療機関にも来てくれるのなら大変にありがたい。その場合には土地を七割引き、そして三割五分引きというように二段階だと思うのですが、提案しておる。そうすると、今法律を出しておるというのは、統廃合については何も法律のお世話にならなくたっていいんだ、こういう考え方なのか、それが一つ。それから私の分析だと、医師不足という問題が地方にある国立病院の赤字になる原因になっております。医者が思うように来ない。その辺を少しお話し願いたいと思います、厚生大臣。
  202. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御指摘のように、国立病院・療養所の今回考えております再編成そのものにつきましては、今提出をいたしております法律が必要がないものでございます。しかしながら、再編成をいたしますときに、病院の統合もしくは権限移譲を行います場合に、その医療機関を確保するために引き続き医療施設が必要とされる場合に、国立病院等の資産の減税譲渡などの特別措置を講ずることが再編成を円滑に進めていくということができるものでございまして、そのために再編成の特別措置法を今国会でお願いをいたしておるわけでございます。ひとつ早期に成立をさせていただきますようお願いをいたしたいと思います。
  203. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法律なく統廃合ができるのか、もう一度。
  204. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 再編成そのものは法律なしでできると考えております。
  205. 川俣健二郎

    ○川俣委員 統廃合、再編成というのは法律なんかの世話にならないでできるんだという考え方でやっているところに非常に無理がある。これは地域医療ですから、地方にある国立病院というのは。特に開業医、いわゆる通称町医者ができない問題などもやるところに国立病院のあれがある。したがって、まあいろいろ理屈は抜きにしてもうからない、研究的なものも非常に含まれているものですから。それはそうですが、医師が不足だというこのばらつき。時間があればやるのですが、医師が不足だというこのばらつきの是正を各自治体が、さっき言ったように秋田の場合は、特に台湾、韓国から非常に来ております。日本の医学の大学を出て、そのままいてもらっております。そういうように苦労しておる自治体から見ると、厚生省は、医者が余っているんだという発表もあるが、そういうような行政指導に十分に応じていただきたいものだな、こういう意味もあって質問しておるので、いかがですか。
  206. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 医師、歯科医師の需給につきましては、全体としては現在の養成制度をそのまま続けてまいりますと大幅な過剰状態になろうかと思いまして、それはそれとして対応をいたしておるわけでございますが、今御指摘のように、別途、ある地域によって医師の確保が困難であるということもございます。こういった点についても厚生省としては真剣に取り組んでまいっておるところでございまして、例えば昭和六十一年度、本年を初年度といたします第六次のへき地保健医療計画によりましても、僻地勤務医師の就職のあっせん、紹介等の確保対策を図り、また静止画像伝送装置を利用した僻地勤務医体制の強化等を進めておるところでございまして、今後とも非常に重要な問題であると考えて私ども努力をいたしてまいる覚悟でございます。
  207. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さすが斎藤厚生大臣、私はあなたのお父さんとも社労委員会でおつき合いしましたが、ぜひ医療問題についてはお願いしたいと思います。  それから、先ほど条約の問題のところで触れていこうと思いましたが、私もずっとここで取り上げてまいりました問題の一つに戦後処理、一昨年の十二月に懇談会が一冊の本に、日本の戦後処理は全部終わった、こういうように片づけようとした。しかしながら、これは片づくどころか、全然手をつけていないものが片づくなんという問題じゃない。それはなぜ手がつかないのか。その大きな一つにシベリア抑留者約五十万人、もう少しいると思います。それが今生存されておる。二年も三年もあの極寒のシベリアに強制労働の形でやってこられて帰ってきた皆さん方に何の補償もない。おかしいではないかということからぎくしゃくした問題に――昭和二十八年にいわゆるジュネーヴ条約に日本国も調印したわけです。国会で批准したわけですが、そのぎくしゃくしておる、補償しようとしない理由に、ジュネーヴ条約に、簡単な英語で「セッド・パワー」という英語の文章を当該国か抑留国かという論争で今裁判をやっています。三十日結審したことは御存じだと思います。政府の方の考え方は、代々抑留国と訳しているものだから、日本国はジュネーヴ条約に調印しても補償の義務はない。ところが、諸外国を調査してみると、年金方法、一時金方法あるいはほかの社会保障方法等々で全部ジュネーヴ条約に基づいて自分の国、当該国。戦勝国だから捕虜がいないとは限らない。お互いに捕虜が帰ってきたが、それぞれ戻ってきた祖国、この場合は日本の国、こういうようにジュネーヴ条約にはっきり明言しているのを、当該国か抑留国かという論争で、なかなか今まで、昭和二十八年以降ここで結論が出なかった。  そこで、私は忘れもしないが、この三月八日、本年度の予算委員会が採決されるかされないかという寸前でございましたが、時の外務大臣が、当該国が正しいのか抑留国が補償するのが正しいのかという解釈を半年待ってくれ。最初は数ヵ月ということでしたが、数ヵ月じゃだめだと、今まで待たされた、はっきり言ってくれ、あしたと言わないけれども。そうしたら半年だ、半年ということは、半年なのです。半年ということは六カ月後だな、こういうことになる。なるほど、三月八日の私の確認に対して、九月二日に閣議決定されて、間違いでした、やはり捕虜条約は間違っていた、こういうように報道された。  そうなると大変なことになります、これは五十万人以上いるわけですから。どういうようにするだろうかな、この補償の問題は後日に譲ります。  そうじゃなくて、条約というのは「セッド・パワー」で調印し、日本国会にかけるときには英語を日本語に直して批准される、そしてそれを天皇のところへお持ちになって公布される、こういうことになるが、おやっと思ったのは、九月三日に誤りであったということを発表したが、その誤りであったのを外務大臣の告示だということで官報に挙げた。あら果たしてこれでいいのだろうかな。本会議で批准を得た。単なる単語のミスではない。向こうに補償させるか、こっちが補償しなければならない。えらいことになる。なるほど、補償が滞留をしておった、今まで片づいていなかったというのはそこにあるんだなということを私も気がついて、そこで外務大臣、今おかわりになったばかりの外務大臣ですが、何とかこれははっきりしてもらいたいので、これは外務大臣の告示で、誤っておったという、間違いであったという告示で片づけられるか、こういうように思いましたので、あえて質問します。
  208. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  今、川俣委員がおっしゃったのは、外務省の告示第三百十二号で、私の名におきまして、第六十七条中の「抑留国」を「当該国」に改めた点を御指摘いただいたと思いますので、よく承知をいたしております。条約の締結は正文に基づいて行われるものということは御承知のとおりでございます。そしてまた、その正文について今「セッド・パワー」と英文でおっしゃいましたけれども、この条約は英文とフランス語と両方でできておるわけでございます。この正文テキストが表現している条約の内容に我が国が拘束されることを約束するという性格を持っておることも御承知のとおりでございます。  今回の訳語の変更は、その訳文である日本語テキストについて、その一部を正文に即した表現に改めるものであって、この条約の正文である英語及びフランス語のテキストには何ら変更があるわけではございません。したがって、条約の内容の変更をもたらすものではない。そういう意味で、今回の訳文の変更はこのような性格のものでございますので、政府としては条約の締結を所掌している外務省の告示をもってその内容を広く国民に知らせることが妥当であると考えて、この措置をとった次第でございます。
  209. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは補償が絡むだけに、決して今のような答弁で論議は終わらない。英語で、フランス語で判こを押してあるという、そのぐらいは知っている。だけれども、国会の批准は日本語なんだ、公布も日本語なんだ。だから、この補償はソ連なんだ、シベリアなんだ、こういうようなことで今までやってきたが、これは大変なことになるので、その辺のあれをさらに今後あらゆる委員会等でやっていきますので、おたくの方も補償も含めて、法制局の方もそうですが、今はいいですから、十分に検討しないとこの問題は片づいていきませんよ。したがって、戦後処理は終わった、こういう問題は違っておったということになりますので、一方的で悪いのですが、時間がないので、最後に質問します。  それは、円高ショックで先ほど通産大臣にいろいろとお話を承り、大変だという認識は私と一致しましたので、産業もそうですが、大体一致しましたので、先ほど申し上げられました中で一つ、二つだけ時間をとってやります。  一つは石炭問題です。いわゆる第七次石炭、二千万トン、今度第八次、問題になるわけですが、ところが、この一年間の急速な円高によって石炭の需要、いわゆる鉄鋼業界の収支の悪化に伴い、ことし六月以降、これまでの基準炭価の約三分の一、八千五百円、二万四千二百二十円のところを八千五百円、これを需要側、鉄鋼の方も苦しいわけですから、こういうことを言い出して、なかなか供給と需要側と話し合いがまとまらないで今日になっておる。ヨーロッパの方は、ずっと見ますと、国が価格差補給をやっておるのですね、価格差補給を。これは金属鉱山の方にも言えるのですが、価格差補給をしないと、少しぐらいの融資なんかしたって、とてもじゃないが、例えばメタルの場合には、三十四万円の銅の値段が三十年前なんです。ところが、値段そのものは、相場そのものは――相場というものは皆さん御承知のように、LMEといって、ロンドンの三十五人の相場師で毎日のように動きが決まるわけですが、三十四万円の三十年の値段が、今三十年後に二倍半の値段にはなった。ところが、メタルは全部ドル換算なんです。ドルで収入を建てるものだから、三十四万円が三分の二に当たる二十四万円になっちゃった。賃金が十倍。そうなると、価格差補給しかないぞ、こういうようなことを考える、それが二つ目。  それからさっきの一つ目の問題として、総理が特段に石炭政策で異例の指示をしたという報道があった。通産大臣と事務次官をお呼びになって第八次石炭政策づくりなどの報告を受けて、できるだけ早く結論を出してもらいたい、こういう指示もあったと思うが、その辺の話を田村通産大臣に伺って私の質問を終わりたいと思います。
  210. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるとおりのことであって、今八次審で結論を急いでおります。総理からも、早く結論を出すようにという指示ももらっております。私も、去る二十五日でありましたか、とにかく審議会に急いで結論を出していただこうということでお願いを申し上げて、三十日の日だと思いますが、向坂さんを座長として、鉄鋼と石炭それに中立というので第一回の話し合いをしていただいた。御承知のように、売る方も大変なんですけれども、買う方の鉄鋼もセメントもこれまた大変なことで、要するに鉄鋼なんか三分の一しか払わないのですから往生しております。しかし、何らかの結論を得なきゃならぬ、急がなきゃならぬということで、いま少しく当事者同士の話し合いをさせた上で、時には私自身が乗り出さなきゃならぬかなというような心境でおります。
  211. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも時間がオーバーして失礼しました。終わります。
  212. 砂田重民

    砂田委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、正木明君
  213. 正木良明

    正木委員 それでは、公明党・国民会議を代表して質問をいたします。  御承知のとおり内外ともに非常に難局に逢着いたしておりまして、質問することは山ほどあるのですけれども、予算委員会はきょう一日だけということで、私には二時間しか時間がございません。しかも、それは答弁を含めてでございますから、それにしては余りにもちょっと問題が多過ぎますので、総理以下大臣諸公にお願いを申し上げますが、できるだけ簡潔に要領を得た御答弁なお願いしたいと思うわけであります。  まず最初に、総理政治姿勢の問題について幾つか御質問をいたしたいと思います。  今、野田委員それから川俣委員の御質問を伺っておりまして、総理の函南発言といいますか、あの問題が非常に大きな問題になっております。が、特にアメリカに対しては釈明というか陳謝というか、コメントをされて、一応アメリカ政府、議会筋は鎮静化したようでございますけれども、まだまだアメリカ国民の、特に少数民族と言われる方々の心に受けた傷は全部いやされたとはどうしても考えられません。  実は、総理は国際化であるとか国際国家日本であるとかということをおっしゃっている。私はその御見識は立派な御見識だと思いますが、それが実体を少しも伴っていないのではないかというふうに考えますので改めて御質問を申し上げますけれども、総理のおっしゃる国際国家日本というのはどういう意味なんでしょう。例えば英語をしゃべる人がたくさんできてきた、そのほか外国語をしゃべれる人たちがたくさんできてきた、ないしはそれをつくっていかなければいかぬ、ないしは海外旅行をする人たちが随分ふえてきた、これが即国際化ないしは国際国家日本ということであるのか。恐らくそんな浅薄な意味ではないと思いますが、一応簡潔に御見解を承っておきたいと思います。
  214. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際間におきましてお互いの理解をよく進め、かつまたほかの民族や国家に対しても十分敬意と尊敬の念を失わずに、しかも各国各自が持っておる伝統や文化というものをお互いに尊重し合う、そういうことで立派なつき合いをお互いにしていきたい。それから、日本は現在の具体的問題といたしましては、いろいろ経済摩擦の問題あるいは輸出の突出というような問題が起きて、世界に対して一部迷惑をかけておる点もございますが、そういう点も国際間に調和のある国家の歩み方という方向に是正しまして、そして国際間の調和を図っていく。それと同時に、国際間の諸問題についてはむしろ積極的に役割を果たし、貢献していく、そういうような国家になりたい、またそういう自覚のある国民になりたい、そういう意味で申し上げておるわけでございます。     〔委員長退席、吹田委員長代理着席〕
  215. 正木良明

    正木委員 それなりに御立派な御見解であると思います。見識であると思います。私もそう思っております。私もしばしば、こういう仕事をいたしておりますので結婚式やなんかに招かれて披露宴へ参りますけれども、向こうで鳴っている音楽で一番嫌いなのは「二人のために世界はあるの」という歌でありまして、これほど傲岸な歌はないだろうと思います。しかし、思い思われてようやく結婚できたという二人はそういう心境であるのかもわかりません。それはまだかわいらしいところがあると思いますが、実は日本はこれと同じように「日本のために世界はあるの」という形で現在まで進んできただろうと思うのです。したがって、総理のおっしゃる国際国家日本というのは、歌を通じて言うならば「世界のために日本はあるの」という形で日本が世界に対して貢献を続けていかなければならぬだろうというふうに思います。そういう意味からいって、私は総理の御見解は非常に正しいと思いますが、ただ、これが実体を少しも伴っていないというところが問題であるだろうと思うわけであります。  同時に、川俣委員との質疑応答を聞いておりまして、私は恐らくこれまた日本の国内で大変なことになるんじゃないかというふうに思います。要するに、つづめて言うならば総理は何とおっしゃったかというと、日本は余り騒いでいないのだから陳謝をする必要がないんだというふうな意味にとられる。恐らく新聞はそういうふうに書くでしょう。そうすると、あすからの新聞というのは、女性はもちろんのこと、国民は、総理と同じように人種差別をしているような考え方が日本人国民考え方だというふうに誤解されはしないかということで、何とかそれを払拭してもらいたいという考え方がぐっと世論として起こってくるだろう。したがって、私は川俣委員が主張なさいましたように、私もやはり本会議等そういう機会を通じて日本国民にも、私の考え方は間違っていた、日本人全部がそういうふうに考えているわけじゃないんだという意味のことをはっきりとおっしゃる方がいいんじゃないか、このように考えるのですが、いかがでしょう。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は野田委員の御質問に対しても、また川俣委員の御質問に対しましても、日本国民の皆さんにも大変御迷惑もおかけし、まことに申しわけない、そういうふうに遺憾の意を十分表明したつもりでございます。ここで重ねて、そういう私の申しわけないという気持ちを表明する次第でございます。
  217. 正木良明

    正木委員 これは各党間の折衝にまってというふうにおっしゃいましたけれども、各党間の問題ではないのです。これは総理がみずからを反省して、それを国民にまで累を及ぼしておるということについて、それを払拭しようという考え方が総理みずからになければならない問題であって、各党間の折衝というふうにすりかえられるのは非常に私は納得のできない論理だと思うのですが、いかがでしょう。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私個人がやったことでございますから、ここで、これは国民の皆さんもお聞きになっているところでございますので、予算委員会におきましてそういうふうに正式に私の気持ちを申し上げた次第なのでございます。
  219. 正木良明

    正木委員 余り時間がありませんから次に進みますが、そこで私は、そういう非常に高邁な国際国家日本というお考えを持っていらっしゃるけれども、実際はなかなか日本の国内ではそうではない。まだまだ閉鎖的、排他的なところがございまして、そういう意味からいえば、どんどん制度なり意識改革ということをやっていかなきゃならぬ。しかし、これはなかなか国民の意識改革というのはそう簡単にはまいらないだろうと思います。したがって、少なくとも政府が率先をいたしまして、何といいますか外国人が日本社会の中で混在する──混在するという言葉は適当であるかどうかわかりません、一緒に住める、また心安く住めるというような社会をつくっていくことが大事だろうと思うのです。このことについて、どうですか。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点はしかし日本国民も非常に努力をしておりまして、洋の東西を問わず、外国から来る研修生や留学生やあるいは視察団等に対しましては、特に青年等に対しましてはホームステイを提供する家庭も随分ふえ、政府もそういう家庭については実費弁償で税金も免除しよう、そういうふうに積極的にも進めておるところでありまして、私は、日本国民はそういう意味におきましてはかなり世界性をも持っておるし、かつまた最近は視野もずっと広くなって、世界協調の実を上げていると確信いたしております。     〔吹田委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 正木良明

    正木委員 たまたま留学生の問題が出ましたので、私は一つの例としてこの留学生問題をここで論じてみたいと思うのですけれども、しかし総理がおっしゃるようにはなってないのです。今留学生の問題が非常に大きな、日本社会へ溶け込めない、溶け込ませないような状況が制度的にも存在しているということをひとつよくわかっていただきたいと思うのです。  総理は外国人留学生十万人受け入れということを発表なさいました。これはまあ実に御立派なことですが、具体的にどういうふうに発展をさせてこれを実現していくかというと、非常に心もとない面が随分あるわけなのでこざいます。そこらが私のきょうお尋ねしたい問題点の一つなのでございますけれども、要するに総理は、昭和六十七年以降、学生減というのが日本で起こってくる、したがって、その学生減というのを見込みながら外国人の留学生というものを大幅に受け入れることができるであろうというふうにお考えになっているようなのでございます。ところが、その学生減になる大学と学生減にならない大学がございまして、実は外国人留学生が留学したい大学というのは学生減にならない大学であるというふうに言われているわけなんですが、これは総理が御無理ならば文部大臣でも結構ですが、どうですか。
  222. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 二十一世紀までに十万人の留学生を引き受けるということでございますが、これにつきましては我々もその準備をいたしておりまして、十分な可能性がございます。すなわち、ここ数年間の留学生の増加数を見てまいりますと、年率大体一八%で伸びておるのでございます。一方、現在一万六、七千人おります留学生、これを十万人体制に持っていこうといたしますと、大体年に一四%の割で伸ばしていけばほぼそれに近づくと思うておりまして、したがって、現在伸びております年率一八%という線を維持することによって二十一世紀までには十万人体制がとれると思うております。  そこで、もう一つ先生お尋ねの、なかなかなじみにくいという問題がございます。そこで、これからの留学生を受け入れるに際しましては、できるだけ授業を英語でやるというようなことも一つ考え方だと思うのです。そして、現に日本で住んで生活はだんだん日本語になじんでいただいて、授業は当初は英語で受けて、だんだん日本語になじんでいくという、そういうことも必要ではなかろうか。現にこれは実験といたしまして埼玉大学なりあるいは新潟県の大学でやっておりまして、非常な成果を上げてきておりますので、そういう方向は伸ばしていかなければならぬ。  それともう一つは、学生減になるからその穴埋めに留学生という、そういう考え方ではなくして、それは教授あるいは学科の再編というものを通じまして留学生を受け入れる体制を整えていきたいと思うております。
  223. 正木良明

    正木委員 実は今の文部大臣の答弁の中に問題があるのです。あなたの頭の中にある外国人留学生というのは英語圏の留学生のことが頭の中にあるから、英語で授業をしたっていいだろうというふうな考え方になってくる。いいですか。ところが、最も近い中国の留学生であるとか韓国の留学生であるとか、東南アジアの留学生で英語圏でないところはどうするか。今その人たちが入学するために非常に困難なものを覚えているのは何かというと、要するに、中国人で言うならば母国語である中国語は当然できます。そして、日本で勉強するんだからというので日本語を習得してきている。ところが、今の日本の大学の入学試験というのは第一外国語が英語でありますから、英国ができないために全部はねられているというところがある。だから、あなたがおっしゃるように、英語圏の人たちはそれでいいでしょう。それならば、英語圏と同じように第一外国語を日本語にしてやるとかそういう考え方を持っていかなければ、そういう我々の近隣諸国の大学生なんというものははいれなくなってくる、そこに問題があるんですよ。だから、あなたの頭の中にはいわゆる英語圏の人たち、白人ばかりとは限りませんけれども、それが問題なんです、実は。これは考えてもらわなければなりません。これ、答弁を待っていると、僕は二十分しかこの質問に割り当てがありませんので、いいや、いいや。
  224. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私が申しておりますのは、要するに、その母国語がというのが東南アジア系では非常に実は英語が多うございます、御承知のように。英語を慣用語にしておる人が非常に多いものでございます。留学生の実態に合わしていきますと、そういうことになる。けれども、おっしゃるように、これは中国語で授業できる、あるいはそういう他のスペイン語で授業できるとかいうふうなことが、日本でそういうことができるならば、これはもう当然努めていかなければならぬ。しかし、一つの方向として、現在のものとしてとりあえずは、日本語は中心でございますが、英語でも授業ができるという制度を開いていった、こういうことでございまして、努力いたしまして……
  225. 正木良明

    正木委員 いや、いいですか、中国の場合を例にとりますと、中国人で日本へ留学している人はたった二百五十人、アメリカへ二万五千人です。ですから、日本へ留学する人が、日本語もできて英語もできる人はどこへ行くかといったら、ないしは日本語ができなくても英語ができる人がどこへ行くかといったら、アメリカの大学へ全部行っちゃうのです。日本へ来ないのです。しかし、日本にあこがれて日本語を習得して日本の大学へ入りたいという外国人留学生は英語はできないのです、中国人の留学生は。それを全部はねていくことを条件にしているというところに日本の大学の閉鎖性というのがあるから、これをよく考えてもらいたい。たくさんあるのです。これだけではありません。  それから、総理はホームステイということをおっしゃった。大変結構です。それで外国人の留学生を受け入れるアパートを建てたりなんかするということもあるわけです。ところが、アメリカの大学生だとかヨーロッパの大学生が日本へ留学する場合、それは可能なんですが、余りシャットアウトを受けないんだけれども、中国人の大学生だとか韓国人の大学生というのはこのアパートへも入れないという状況があるのです。これは食べ物の関係です。自分で自炊するときに、中国の人たちは非常に油臭くなってしまうとか、韓国の人たちはニンニク臭くなって、こんなことを言ったらまた差別することになるかもわからぬけれども、実態はそうですからね。だからといって断っている場合がある。だから、ホームステイといったって、なかなかそう簡単にはいかない。  同時に、何といっても外国人留学生のために大事なことはスカラシップの問題でありますから、この問題をどう解決していくかということをしなければなりません。  例えば中国の例を言いますと、中国人が日本へ来るためには中国を出国しなければなりません。そのときには日本の入学許可証がなければ向こうを出国できないわけです。だから、向こうを出国するために日本の大学のいわゆる入学許可証というものを持ってこなければならぬ。ところが、入学はどうなっているかというと、実態としては今申し上げたように英語ができなければもう日本の大学へ入れないという状況になっているから、中国人の留学生というのは来れなくなっている。したがって、そのほかの特殊学校とかそういう格好のもので入学許可証をもらって、それで出国してくるという場合もあり得る。そうでなければ、特定の大学の特定の教授のもとに研究生という形で入ってくるという場合もある。この場合、この研究生の場合には、学割もなければ授業料の免除もありませんから、しかも本当にささやかな経費しか使えないような状況でやってまいりますから、ほとんどその教授が自腹を切っているという場合もあり得るわけです。  こういうことからいうと、大学の研究生の身分保障の問題も考えなければなりませんし、もう一つ考えなければならぬのは、日本には悪いやつがおりまして、出国するために私の学校でいつでもその合格証を出しますよと言って大変な金を取っているやつが、詐欺行為が既に発生しつつある。だから、そう簡単に留学生を受け入れますと言ったって、そういう条件整備ということをやっていかなければ、とてもじゃないができないというのが実情なのであります。  大学を出、そして博士課程へ入って、そして大学院で勉強している。ところが、この博士課程というもので論文を出す、論文審査には最低六カ月か一年かかる、その間その人は身分を失ってしまう。これなんかどうするか、こういう大きな問題があるわけであります。  したがって、アメリカと同じように日本の大学教育というものについても相当緩和をしていかなければ、留学生の受け入れというのはできなくなってきます。したがって、日本へ留学をして、そうして勉強したいというまじめな気持ちで来るんだけれども、日本社会情勢がそういう形、また日本の制度というのがそういう形でありますから、日本での留学生活というものは決して楽しいものではない。悪い印象で帰っていってしまう。全部が全部とは言いませんけれども、相当反日家を育てているんじゃないかというふうな報告さえあるわけでありまして、総理が十万人の留学生をお受け入れになると言うならば、十万人の反日家を育てるための受け入れであるようであっては絶対ならぬわけでありまして、これがやはり国際社会日本、いわゆる国際国家日本というものをつくるための一つの例でありますが、そういうふうに考えていただきたいと思うのですが、答弁はまた後で固めてやってもらいます。  もう一つ非常に大きな問題があるのは、今度アメリカの大学が日本へ分校をつくろうという話がどんどんどんどんある。地方都市でも皆手を挙げて、うちへ来てほしい、うちへ来てほしい。ところが、アメリカの有名大学の日本分校をつくろうというので、ここにいらっしゃる林さんが会長で、二階堂さんが名誉会長で、あの農水大臣が名誉副会長、そういうふうにそういう問題について、アメリカの貿易拡大のための委員会なんですが、そういう分校問題についても一生懸命おやりになっている。  ところが、日本の大学の制度というものが、設置基準というものが全然違いますから、この分校がいわゆる日本の大学設置基準に適合するような大学にはできないのです。最も大きな障害になっているのが敷地です。大学設置基準でいうならば、その敷地というのは大学の所有でなければならぬのです。借地ではだめなんです。したがって、その条件に合わないために、全部特殊学校で分校がつくられることになります。  これは英語で教育するのか母国語それぞれでやるのかどうかわかりませんが、恐らく英語が中心になってくるでしょう。しかし、それは日本で二年修得して、本校へ帰って二年間修得するという形にならざるを得ない。これなんかでも、基準を緩和してやれば、日本で堂々とその分校が、大学としての分校が生まれてくる。日本で資格を取ることができる。ここらの問題を実はお考えをいただきたいと思うのです。これは一つ一つ答えを出してもらうと、とてもじゃないが時間が足りませんので、答えを出してもらわぬでよろしい。  そこで、総理と文部大臣にお願いしたいのだけれども、どうですか総理、文部省の中に、こういう外国人留学生を受け入れる、大学制度その他いろいろの問題について検討する、またそういう方面でいろいろな意見を持っている人たち意見を聞いて、これを改革していく準備を進めてもらうためのプロジェクトチームをつくっていくというお考えはありませんか。総理には、臨教審に対して、外国人の留学生を受け入れるという問題について何とか検討してもらえるような諮問をしてもらうというわけにいきませんか。これをお尋ねします。
  226. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 外国との学校交流の問題でございます。特に分校を日本に持ってこようという話、その話は民間ベースで相当各地で進んでおりまして、現在アメリカを中心といたしまして申し出ある学校数が約四十近くあるということを聞いております。それに対しまして受け入れをする側、自治体等を入れましてこれまた二十近くあるということを聞いておりますが、あくまでも民間ベースで今話を進めております。  しかし、これは非常に重要な問題でございますので、文部省が音頭をとりまして、近いうちに先ほどお話ございましたような推進会議のようなものを開きたい。それには、学校当局なり民間あるいは地方自治体、学界、そういう方々に入っていただいて、できるだけ早い機会に、私たちの予定しておりますのは年内にその推進会議を開きたい、こう思うておる次第でございます。
  227. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の大学の国際化、教育の国際化につきましては、臨教審におきましても大きな題目として実はとらえておりまして、検討をさしておるところでございます。臨教審でもいろいろな議論があるというふうに私聞いておりますが、せっかくの正木さんの御質問をいただきましたので、もう一回さらにこの検討を強化するように申し入れてみたいと思います。
  228. 正木良明

    正木委員 分校だけの問題じゃありませんからね、文部大臣。その前に申し上げたやつも全部含めてやっていただかないといけません。分校の問題も、民間ベースでやって特殊学校になっているというのは、先ほど申し上げた一つの例からいったって、大学の設置基準というものに対して手を加えなければだめだということであります。そういう意味で、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  同時に、今の問題でもう一つだけつけ加えておきたいことがございますが、もう一つは、要するに外国で実際学生を預かって体験のある人たち意見を聞いてくださいよ。(発言する者あり)ああいう人もいるから、反対だなんて言っている人も、何やわけがわからぬことを言うておる人もおるから、そういう点はひとつよろしくお願いします。  そこで総理、先ほどからも問題になっておりますけれども、ちょっと確認しておきますが、総理は六月十四日、東京都各種団体協議会総決起大会で、国民や党員が反対する大型間接税をやる考えはないということをおっしゃいました。また、臨時国会の代表質問答弁の中にもそれがあります。そうして選挙中、六月三十日、札幌の記者会見で、政府税制調査会が大型間接税の導入を答申した場合、その中身によるが、反対をする。恐らく国民、党員が反対するものになり、それは採用しない、こういうふうにおっしゃっておると報道されておりますが、これは確かにおっしゃった。そうして、それを今もそういうふうに思っていらっしゃる。確認しておきます。
  229. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのような発言をした記憶がございます。そのとおりの発言であるかどうかは別でありますが、そういう趣旨の発言をした記憶がございます。また、その考えは変わっておりません。
  230. 正木良明

    正木委員 したがって、この大型間接税問題というのは、先ほどの問答を聞いておりますと、大型間接税というものの実体がはっきりしないから、どれがいいとかこれがいいとかというようなことはなかなか言えない、こういうふうにおっしゃっておるように私は承りました。  そこで、ここで総理にお聞きしたいのですが、総理は答申をしても採用しませんよといったようなことを──一生懸命税調は答申づくりをやっておるわけです。それは総理が税制改正について聖域を設けないというところを頼りにしておやりになっているんだろうと私は思うのですけれども、それもありますが、政府税調の小倉会長はこんなことを言っているのですね。何が大型間接税なのか定義はない、それに首相も国民自民党の党員がいいというものまでいかぬと言っているわけじゃない。こういうふうにもうすりかえられておる。反対論がある。反対からいえばそうだということになってくる。  そこで総理、そう言いながら一生懸命検討を加えて、先ほどは中間報告だからというふうにおっしゃいましたけれども、中間報告でも一応具体的な案として出てきたこの三類型四方式というのがありますが、総理、これは全部否定された中に入りますか、どうですか。
  231. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、その考え方自体の内容を私はまだ直接税調の皆さんからお聞きしたわけではございません。したがいまして、今何ともお答えすることは難しいと思います。  それから第二に、その考えは中間答申でございまして、税調から最後にどういうものが出てくるか、最終案を待って正確に私たちは判定をしなければならない、そう思っております。
  232. 正木良明

    正木委員 もちろんそうですよ。もちろんそうだと思うけれども、現時点で現に具体的な案として出ているのですから。だから別な意味で言うならば、この四つの案というのは、あなたが二月の六日に約束なさった「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方でやることはしない、と申し上げてきていることは御指摘の通りであります。」こういうふうに政府の統一見解が出ている。それからどれが外れますか、現時点で。
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 午前中にも申し上げましたが、その三つないし四つの案というのは、専門の小委員会が税調に対して専門家の意見として出したものでございますが、したがって、税調がこれをとるかとらないかということは、実はこれからの問題になるわけでございます。  そこで、正木委員のお尋ねは、この出た形で、これが総理の言われるところのいわゆる大型間接税に当たるか当たらないかというお尋ねでございますけれども、実はその案自身が、例えばどういうものを例外にするとか、どういう税率でやるとか、そういうことについてほとんど言っておりませんものでございますから、それ自身だけからは、専門家の意見であるとしても、果たしてこれが背馳するものであるかしないものであるかというのは、ちょっとそれだけの段階ではお答えしにくいのではないかと私は思います。
  234. 正木良明

    正木委員 背馳しますよ、これは全部。ただ強いて言うならば、A案とB案というのは多段階ではありませんから、単段階ですからね、これは抜けるかもわかりませんが、しかし、EC型付加価値税タイプ、これを日本型付加価値税というふうに名前を変えておりますけれども、内容は少し違いますけれども、しかし、これだけは多段階でありますから、これは完全にひっかかるだろうと思いますよ。そうじゃありませんか。
  235. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 あえてお言葉を返すつもりはございませんけれども、例えばどういう取引を非課税とするか、どういう品目を非課税とするか、あるいはどれだけの大きさの、つまり仮に年間の取引が何千万円とかいうようなことでございますけれども、そういうことについても何も言っておらないものでございますから、いわゆるその網羅性とか普遍性とかいうものについて、それだけからはちょっと私は判断しにくいのではないかと思っておるわけでございます。
  236. 正木良明

    正木委員 じゃ、逆に聞きましょう。今の大蔵大臣のお話を聞いておると、この多段階、包括的、網羅的、そうして普遍的、それで投網でしょ。これから外れる極めて課税範囲の広い消費税的間接税というものは、それはどんなものですか。どんなものがありますか。これを抜けていくのはどんなものがありますか。
  237. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いえいえ、私が申し上げようとしましたのは、仮に多段階であっても、納税者と申しますか、その取引が年間幾らまでの小さい人たちは除かれるとか、そういう線の引き方、それから例えば食料品はどうするかとか、そういったようなことを具体的に決めてまいりませんと、いわゆる総理の言われる大型間接税なるものと背馳するかどうかということが、もう少し具体的に進めてまいりませんと断定し得ないところがあるのではないか。あえて反論を申し上げておるのではございませんけれども、そのままですぐに言ってみろと言われましてもちょっと難しいところがある、こういうことです。
  238. 正木良明

    正木委員 そうすると、これは裏返しますと、ここにたくさん、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税で投網をかける、これが全部充足された間接税、消費税は導入しないけれども、この一つでも欠けたらこの条件にははまらないというふうに私には聞こえるのですが、どうですか。
  239. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いやいや、そこまで厳密に申し上げておるわけではないのですけれども、これだけかなり具体的に出ているから判断ができるだろうとおっしゃいますと、いや実はまだかなり具体性を今のままでは欠いておる、もう少し見ませんと、と申し上げたかったのです。
  240. 正木良明

    正木委員 いや、その言葉がそうじゃありませんか。例えば大平総理が提案をなさった一般消費税は、生鮮食料品はこれの対象にいたしません、そうして年商二千万円以下についてはその対象にしません、こういうふうにおっしゃった。こういうふうになるのかならないのか。二千万円になるのか三千万円になるのか、それは物価上昇がありますから外すとすればもっと大きくなると思いますけれども、これは外せば網羅的、普遍的ではないという言葉に聞こえますよ。  ということになると、この幾つかの条件が全部充足されたような課税範囲の広い消費税というものは導入しないけれども、それは私の公約だからしないけれども、この一つでも外れたのならこの公約には該当しないのですよと聞こえますよ。それはどうなんですか。
  241. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、私の記憶に間違いございませんでしたら、国会が御決議になったようなものは税調としてはこの審議の対象とするのは適当でない、そういう前提があっておると思います。
  242. 正木良明

    正木委員 今、私は国会決議のことを言っていません。あれは仮称一般消費税というふうに言われているから、あなた方、一般消費税という名前じゃないからと、前の大蔵大臣もそんな言い方をしておったよ、これは極めて詐術的だと私は思うけれども。  しかしいずれにせよ、これはことしの予算委員会における政府の統一見解ですよ。だから、国会決議でないのです。この条件が全部充足されたのを私は導入しませんが、一つでも外れたものについては導入しますよというふうになるのじゃありませんか。こんなことで時間をとらぬでください。こんな、常識的な話じゃありませんか。
  243. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私どもの方もやはり常識的に判断をしてまいらなければならぬと思います。正木委員の言われるとおりだと思いますので、何か一つだけ条件が欠けておるから、これは実はもうこれではいれるんだ、これでいいんだというようなことは、それは申すべきでないんだろうと思います。一般的に見て、総理の言われることをまあまあ――一般的に考えましてまあこの程度なら背馳しないというような常識的な判断をそれはせざるを得ないだろう、一つでも欠けておればこれはいいのかとおっしゃれば、そんなものではあるまいと確かに思います。
  244. 正木良明

    正木委員 総理、どうですか。
  245. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり最終的に出てきたものが具体的にどういう格好をしておるか、どんな手足を持ってどんな顔をしておるか、そういうような具体的なものを全部見ないと判定はつけにくいと思います。一般的に申し上げるとすれば、私が申し上げたような多段階、網羅的云々、そういう表現になる、今のところはその程度の議論以上はなかなか出にくいと私は思います。
  246. 正木良明

    正木委員 いや、私が言っているのはそうではないのですよ。この条件というのは一つでも欠けたらこれに当てはまらないということにお考えですかと聞いているのです。
  247. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、それは出てきたものの顔や手足をよく見ないと、果たしてそれに当たるか当たらないか、そういう判定も難しい。ともかく我々は責任を持ってやろうと思っておる立場でございますから、やはりだんだん実行が近づいてまいりますと、よほど注意して慎重に発言しなければならぬ、そう思っておるわけでございます。
  248. 正木良明

    正木委員 いや、これはあなたがおっしゃったことですよ。それを、答申を見てみなければこれに当てはまるか当てはまらないかわからないというようなことではいけないのであって、私が出したこの条件というものは一つでも欠ければ要するに導入の対象になる、全部整備されたものでなければならぬ、そうではなくて、極端に言うならばこの一つにでもひっかかるものだったらもうだめだ、こういうふうにお考えになっているのか、どちらかということを聞いているのです。
  249. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、その出てきたものの手足や全貌を見まして、そしてそれがどういうものに当たるかどうか、その判定の上で、それは一つ欠けているのか欠けていないのか、半分欠けているのか、そういうような総合的な判定で物を考えていきたい、そう私考えておるので、ともかく出てきたものを見ないうちは、私たちは、あの私が申し上げたことにすっぱり合うか合わぬかということは申し上げにくいと思うのです。
  250. 正木良明

    正木委員 これはテレビで国民に中継されておりますから、国民は全部今の答弁を聞いていると思います。私は国民はがっかりしていると思いますよ。  NHKの放送討論会の中で、当時の藤尾政調会長がちらっと口を滑らせた。大型間接税を財源にしなければならぬ、マル優の廃止ということも考えなければならぬとおっしゃった。そのことで選挙中に私たちは、自民党はもう大型間接税の導入をもくろんでいる、マル優の廃止をもくろんでいるということを攻撃した。そうすると総理は、先ほど申し上げたように、導入しません、答申があっても採用しませんとおっしゃった。恐らく国民はそのことを信じて、自民党は野党が攻撃しているように導入はしないんだなというので恐らく票を入れたのだろうと思いますよ。  そういう意味からいえば、大平さんがおやりになったように、どうしてもあなたはこのいわゆる課税範囲の広い税金を、間接税というか消費税を導入しようとするならば、私は選挙をして、それを争点にして国民の意思を問うべきだと思いますよ。それが憲政の常道です。それをはっきりとしていただかなければならぬと思うのですが、いかがです。私は決して間違っているとは思いませんよ。
  251. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いや、私が選挙中に申し上げた公約は守ります。それから、選挙が終わりましてからも大蔵省を通じまして税調当局に、自分はこういう発言を選挙中も行ってきたから税調の皆さんにはよくお知らせして参考にしてもらうように、そういうことでわざわざ通達もしておるわけで、選挙中の公約は絶対守るつもりでおります。
  252. 正木良明

    正木委員 だから、その話だけだったら、今税調は大変むだ骨を折っているのです。採用もされないようなものを一生懸命審議しているのです。ところが、片方であなたは何を言っているかというと、税制改正には聖域はありませんからどんどんおやりくださいと言っているじゃありませんか。全く二律背反したこと、大矛盾なことを税調に言っているから税調は一生懸命やっておる。しかもそれ、答申が出てきたものを見なければわかりませんなんていうのは余りにも無責任過ぎます。少なくとも課税範囲の広い間接税なり消費税というものは、もう自民党は導入しないのだと国民は思い込んで、恐らく自民党に投票したと思いますよ。これは大変なことだと思うのです。  話は戻りますが、あの差別発言と言うべきか、函南発言と言うべきか、この問題を聞いたときに私は直感的に、あの長州藩の政治僧であった安国寺恵瓊が織田信長を評して、彼は必ず高転びに転ぶぞと言った、本当は人間は旭日昇天の絶頂期が一番危ないのです。私はあなたが高転びに転んでくれることを願っているわけじゃありませんよ。人の不幸を願うことはいけないと教えられておりますから。しかし、そういうものなんです。それが期せずしてあの発言になったのだなと直感的に思った。せめてこの選挙中に公約した大型間接税問題というものについて、選挙の当時と変わらない態度というものをはっきりこの予算委員会で見せていくべきだと思う。それが謙虚な姿勢だと私は思いますよ。どうでしょう。
  253. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから本会議でも、あるいは委員会におきましても何回も、選挙中の公約は守ります、また、新聞記者会見においても申し上げ、そして税務当局を通じまして税調の皆さんにも、選挙中こういう発言をしておるから御参考にしてください、わざわざそういうことも言っておるのでありまして、税調の方も私がそういう考えを持っているということはよく御存じであると確信しております。
  254. 正木良明

    正木委員 知っていてやっているじゃないですか、知っていて。それは、もしかしたらこの答申を出せば政府は採用してくれるかわからぬと思うから、むだ骨と思わずにやっているんじゃありませんか。そこらが問題です。私は、このことについては……(「もう少し詰めないとだめだよ」と呼ぶ者あり)だから簡潔にやってくださいよ、そんなの。そのとおりですと言ってくれたら、それですっと進むのだから。それをすったらもんだらすったらもんだら言うから、話がだんだん長くなる。  いいですか、私たちが反対する理由は、今資料として皆さん方にお配りしました。昭和六十二年度の抜本税制改正で所得税減税というようなものがどういうふうな形になるかわかりませんので、これは出しておりません。しかし、少なくとも世上言われているように五%の間接税を導入するということになったとするならば、これだけ大きな影響、逆進性の影響が出てくるということを表にしてみました。二ページ目には、それを数字であらわしております。しかも、これは「昭和六十年家計調査年報」という総務庁が調査した資料によってつくっております。  ひどいじゃありませんか。ケース1というのは、いわゆるEC型付加価値税という、何にも抜け穴のつくらぬものです、要するに年商幾らまでは課税の対象にしないとか、生鮮食料品を課税の対象にしないとか。全部一律に五%かけていくということになると、こうなる。ひどいでしょう。大平さんがおやりになったときのように食料品だけを除くということになってくると、この真ん中の線になってまいります。サービスを除く場合ということになってくると、サービスを除くというのは大体Aになってくるでしょう。いわゆる製造者売上税という形になってきて、これはサービスにはかかりません。かかりませんから、あの三類型四形式のうちのAに当たると思いますが、このサービスを除くとこういうふうになる。いわゆる庫出税的な間接税です。これを全商品にかける。  こうして見てまいりますと、この数字をごらんになるとよくおわかりだと思いますけれども、消費支出額に対して消費税額というのは非常に大きな額になってくるということ、これは一々、テレビを見ている人に私はパネルか何かつくってきたらよかったな、浜田先生みたいに。と思うけれども、これはしゃあないわいな、今ごろ言うても。数字でごらんいただければよくおわかりのとおりの大きな問題が残されたものであります。  しかも、総理もよく御存じの政策構想フォーラムが試算をいたしました。百貨店協会もそれをやっておりますが、百貨店協会というのはこの大型間接税に反対しておるから、反対しているところの資料なんか信用できぬなんて一蹴されたら困るので、極めて中立的な研究の資料を採用させていただきましたが、これではやはり相当、前提条件としては、今度六十二年度の所得税の抜本改正の一つの形式をここに適用して、所得税はどれだけ減税になるか、しかし大型間接税を導入されたためにどれだけ増税になるか、このことの試算がずっとなされているのはもうごらんになったことであろうと思います。八四%を占める中堅所得層から低所得層、年収六百万円では二万一千円の減税になる。また、五百五十万円以上の層では減税額が多くなりますけれども、年収四百万円の層では二万四千円の増税になる。全納税者数の二〇%で全税収の七割近くを占めている年収五百五十万円以上の層の負担はやや軽減される。結局、年収三百五十万円から五百五十万円の層にそれが集中して負担増になってくるという結果が出ているわけであります。  そういう意味から申しまして、この大型間接税というものは、片方で減税の恩典を与えるためにその財源として導入やむを得ずというような世論づくりをなさろうといたしておりますけれども、いわゆる八〇%を占める五百万円以下の中堅所得層ないしは低所得層というものは、この大型間接税を導入されたために減税分を上回る増税になって負担がふえてしまう。この事実、前提が違うから恐らくうんとはおっしゃらぬと思いますけれども、この前提がまだ決まっておりませんからって、大蔵大臣の言うこと大体わかるけれども、どうですか、大体これはこれなりのものだというふうにお考えになりますか。
  255. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも先にお答えいただいたようなことで恐縮なんでございますけれども、やはり一つは、まさに正木委員がおっしゃっていらっしゃいますように、この非課税取引をどういうふうにするかということで随分違ってくると思いますし、それから所得税の減税のいわゆる累進の緩和といったようなものがどういうふうになるかということでも変わってくると思います。  ただ、この表で、一般的にこういう税が逆進的な傾向があるではないか、年間収入に対する割合が逆進的であるということ、そのこと自身、私はこういう税の持っておる一つの性格であることは否定いたしません。
  256. 正木良明

    正木委員 したがって、悪税です。絶対やったらいけまへん。国民に負担を重くするような、低所得層や中堅所得層に負担をふやすような税制はやってはいけませんし、同時にまた減税だけの宣伝で、その財源となるべき負担増になると予想されるような大型間接税の導入なんということを宣伝だけで言うべき性質のものではありませんから、この点もよくわかっていただきたいと思うのです。大蔵大臣、わかりますか、意味。
  257. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、今お答えした限りでは、低中所得者に対して負担増になるということを肯定してお答えしたわけではございません、おっしゃいますように前提によっていろいろ違ってくると思いますし。それからまた、我が国のように、御承知のようにかなり所得の分布が平均して、しかもかなり高くなっておる、ある程度の社会保障政策もできておるという場合に、間接税が確かにやや逆進的な意味は持っておりましても、これが反社会的なものであるかどうかということになりますと、財政全体との関連もございますので、にわかには結論ができないのではないかというふうに私自身考えております。
  258. 正木良明

    正木委員 それはこの税と関係ないじゃありませんか。減税と増税を差し引きゼロにする、ニュートラルな問題だというふうにおっしゃっているじゃありませんか。もしあなたがおっしゃっているように、社会保障なんか充実しているんだから、さらに充実するためにはこの税を使っていくというのならあなたの議論はわかる。そうじゃないでしょう。そういうふうな逃げ方しないでくださいよ。
  259. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今、そう申し上げたのではないのでございます。社会保障の税源にするから、そう申し上げたのではありませんで、一つ社会のあり方といたしまして、かなり所得が公平に分配されており、かつその水準が高い、しかも国としてのいろいろな社会保障的な制度も持っておるという場合におきまして、こういう間接税を設けることが反社会的であるかどうかということは全体の問題として判断をすべきではないかということを一般論として実は申し上げたにすぎません。
  260. 正木良明

    正木委員 一番苦しい中堅所得層、低所得層、これは先ほど申し上げたように八〇%あるんですよ。それが増税になるんですよ。平均化なんかされておりません。事これに関しては負担増になるということは明確であります。どうかひとつその点をお忘れのないようにしていただきたいと思います。  そこで、えらい気の毒だけれども、金丸副総理。今、こっちにとって都合がええというか、あなたにとって都合が悪いというか、当時の幹事長さんが閣僚におなりになってこの席にお見えになっておるので、これ、避けて通るわけにいきまへんのや。  そこで、私は先ほどの川俣さんとの問答を聞いておりまして、あなたのここはわかります。人格的にわかります。そういう人であるということはわかります。ただ、あなたの閣僚をなさっているこの内閣は知恵者が多過ぎまして、どうこのすき間を逃げていこうかということに非常にお上手な方が、全部とは言いませんよ、全部とは言いませんが、お上手な方々が中にいらっしゃる。したがって、そういう方々は、私に言わせればどういう悪知恵をお出しになるかわからぬ。あの幹事長・書記長会談におけるところの六十一年中に所得減税をいたしますという合意、もう変わってきているのですよ。私たちは、金丸幹事長がおっしゃったからもうできると思っていた。ところが違いますねん。文章に書いてあるのは「成案を得る。」と書いてあるだけや、成案を得たらええんやろう、成案というのは減税案とは限らぬ、あきまへんという案かもわからぬというふうなニュアンスになってきているんです。  なぜそんなことを言うかというと、私はおやめになった藤尾さんに追い打ちをかけるつもりはありませんが、あの合意の後、政調会長・政審会長会談が何遍も開かれている。その何遍も開かれた中で、幹事長はそう約束したか知らぬが、六十二年度中に大幅な抜本改正をやるんだからそこでやろうよ、そこでやろうよで、もう全部逃げられてきたんです。ですから、あんたはこれでうそをつかぬ人やとはわかるが、ほかの人は必ずしもそうではないということなんです。  したがって、先ほど川俣委員にお答えいただいたこと、なかなか前進的なお答えでありますが、私は言葉をひっくり返してもらいたい。成案をつくり実施するということはあきまへんねん。あかんという成案で実施されたらあかんということになってしまうのや。減税を実施する成案を得る、こう解釈してもらいたいと思います。どうでしょう。
  261. 金丸信

    ○金丸国務大臣 この問題は、幹事長・書記長会談で、やらないを目的であのような会談をやったわけじゃない。やるという問題でやったわけでありますから、必ずやるという考え方の中で成案が得られれば実施する、こういうことでいかがでしょうか。
  262. 正木良明

    正木委員 大蔵大臣、今の御感想どうですか。
  263. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま副総理がお答えをされたとおりでございます。
  264. 正木良明

    正木委員 そうすると、六十一年中に減税をやるという成案をおつくりくださいますね。
  265. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は与野党の間で成案をおつくりになるというふうに承知しておりますので、それができますと政府は誠実にそれを実行いたします。
  266. 正木良明

    正木委員 あなた、与野党と言うけれども、野党は全部やれと言っておりますのや。もう腹は決まっておるわけです。与党だけの問題ですよ。だから、今、金丸副総理が当時の幹事長として政治責任を負われて、やるというふうにお考えになっているんだから、これで合意したことになるのです。実施するということに合意したのです。そうじゃありませんか。野党でやる必要はないと言っているところはどこもありませんよ。そこや。そこをどういうふうにお考えになりますか。
  267. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで与野党間で成案ができますと、政府といたしましてはそれを誠実に行うということでございます。
  268. 正木良明

    正木委員 この成案が、来るべき補正予算、今この中ごろから編成するとおっしゃっておりますが、それに間に合うたら補正予算の中へ入れてくれますか。
  269. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは与野党でそういうお話ができたらということでございますので、私は、その与党の立場に立ちましてそういう案ができるということを前提に申し上げるわけにはいかないわけでございますけれども、できましたら、それは政府は誠実に実行いたさなければならないと思います。
  270. 正木良明

    正木委員 こんな状態で、金丸さん、逃げて逃げて逃げまくってはりますねん。今ごろ減税をしたら昭和六十二年度の抜本改正に影響がありますからできませんてなことを、前の政調会長言いはった。恐らくきょうはそういうお答えがあるだろうと思って別の案をつくってきました、私。来年度の税制改正に全く影響がない、そうして六十一年に減税のできる方法というのを。ありますねん、それは。金丸副総理と大蔵大臣が今そういうふうにおっしゃったわけでございますから、できるでしょう。だからそんな案は引っ込めます。引っ込めますけれども、方法はあるんです。  どだい、先ほどもちょっと川俣さんが質問なさっておりましたが、六十二年度はどうなるかわからぬけれども、毎回毎回防衛費だけびゅっと突出するのでしょう。なぜあれができるか。ああいう突出させた形で、片方では国債を発行しなければいかぬという財政状況の中であれだけのものができるか。先取りするからです。防衛費をばっと取ってもらうからです。防衛費のどの部分が赤字国債でどの部分が建設国債、そんなこと全然関係ない。ばっと取るからです。本当に減税をやろうと思ったら、減税を先取りすべきです。これだけはばっと取ってもらう、その方式じゃないと絶対私はだめだと思うのですね。要するに、予算ができてから修正、絶対やらぬのやから。ようやく大平さんのときだけやったんですよ。それであなた、大騒動になったでしょう、あのときは。それでも結局は、できたけれども、しかし印刷はせぬと言った。私、あのとき歌をつくった。「印刷をするかせぬかの争いに敗れてしたたかに酒を飲む」という歌をつくりましたけれども、結局印刷せなんだ。要するに予算書の書きかえはせなんだ。  したがって、六十一年中に所得減税はできると、こういうふうに解釈してよろしいですね、大蔵大臣。総理でもいいですよ、言うてくれますか。
  271. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来、金丸副総理、大蔵大臣がお答え申し上げたとおり、与野党の成案を得るその結果を見守って、そして成案を得たら実行いたしたいと思います。
  272. 正木良明

    正木委員 そこで、住宅減税の問題がありますが、住宅減税の問題は後ほどに回します。政策減税の中に教育減税というのがあるのですが、この教育減税というのはずっと拒否されたままで今まで来ているのですけれども、相変わらずこの教育減税というのは拒否なさいますか。  例えば、これをごらんください。一番最後のページです。これも総務庁の資料です。この中で、家計調査を基準にいたしまして年齢別に、住宅ローンだとか教育関係費、どの辺が一番負担が重いかということが表になっているのです。これを図表にいたしますと、この左側のものになります。この点線が教育関係費負担の割合であります。政府の資料でやっているのですよ、私たちが勝手にでっち上げたものじゃありませんよ。住宅ローンのものがこの棒点の方です。実線で書いてあるのがそれの合計です。どうです、これ。  したがって、住宅減税の問題と教育減税の問題というものはいかに中堅所得層――いわば三十五歳から五十五歳くらいまでの人、一番重いのは四十五歳から四十九歳の人でございますが、何とかしてやらなければもう生活破綻ですよ。どうして教育減税できないのですか。  私たちの要求している教育減税というのは高等学校です、これは公立、私立を入れて。大学は入れておりません。それはまだ大学の進学率が五〇%そこそこだからであります。しかし、高等学校進学率というのは実に九四%を超えているのです。まあ全部の子供たちが高等学校へ行っていると言って過言でないでしょう。それを抱えている親たちがこの教育費のために大変な負担を感じておるという状況の中で、何らかの形で入学金だとかその他の教育関係費というものについて、税額控除とは言いませんから、所得控除の対象にしてやっていただけませんかということをお願いしているのです。どうでしょう。
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはたびたびのお話でございますのでいろいろ検討をいたさせておりますが、今私自身が思っておりますことを二、三申し上げることをお許しいただければ、例えば、これはいわゆる納税をしていない父兄にはこの恩典は及ばないということになるわけでございますね。それからまた、義務教育だけで社会に出て働いて現に納税をしておる人たちが相当おるわけでございますから、それに対して、片っ方でそれ以上の教育を受ける人が今度は減税を受けるということはどういうことであろうかといったような問題もございます。  また他方、正木委員の言われますように、これは大方の世帯がこれに当たるということでございましたら、それは一般的な所得税の軽減ということでむしろ考えるべきではないかといったような面もあろうと思いまして、いろいろ慎重には検討いたしますけれども、今直ちに、賛成でございますので実行いたしますということは急にはちょっと申し上げにくい、私自身はそんな気持ちを持っております。
  274. 正木良明

    正木委員 こういう実情であるということはお認めになりますか。
  275. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大変にそのような負担が、殊に中堅所得層において重いということはよく存じております。
  276. 正木良明

    正木委員 だんだん時間がなくなってきましたので、ちょっと進めます。  これは経企庁長官が中心になると思いますが、今度総合経済対策というのをお立てになりましたが、需内拡大、景気浮揚という意味で御苦労なさっただろうと私は思います。  しかし、私に言わせれば遅過ぎます。こんなこと言うたって老いの繰り言みたいになってしまうけれども、本当はあの同日選挙をやらずに参議院の選挙だけやっておいて、衆議院でこういう問題を検討して、参議院の選挙が終わった後というのは参議院の院の構成だけであって特別国会を召集することないのですから、そこでこの問題を具体化して打ち出していくべきなんです。なぜ、そうなさらなかったか。  私は、あくまでもそれは、いい言い方をすれば、政府の不況に対する認識が甘過ぎたということです。悪う言うたら、党利党略が先行したということです。それで、その後特別国会、その後お休み、その後臨時国会、いまだに補正予算、出てきまへんがな。いや、御立派なものをお立てになったと私は――御立派とは言えぬけれども、何とかかんとか、ないよりましな程度はできた。しかし、これは十月に、十月の下旬、十月ぎりぎりに補正予算が仮に出されたとして、それから国会で衆参で審議が行われて、もう十一月の半ばを越します。東北、北海道、もう雪が降っていますよ。どうするのですか。どんな公共事業をやれというのです。雪解けまでやれません。地方単独事業だって同じことです。災害復旧事業だって同じことです。道路工事であったって同じことです。  総理が本会議で代表質問に答えられて、四%実質成長に限りなく近づけるということを言明された。そうなると、それは六十一年度中での話になるんです、四%の経済見通しというのは六十一年度の経済見通しですから。こんなんでできるわけはないと私は思うんだが、そんなことだけ言われてへっこんでられぬでしょう、経済企画庁長官は。これをやったらどれだけ経済成長しますか、ことし。
  277. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 お答えいたします。  昨年の九月以来の円高は、確かに輸出を中心に我が国産業に大きな影響を与えているわけでございますが、これも何もしなかったわけではございませんので、去る四月の八日と五月の三十日に総合経済対策、そして当面の経済対策、二回にわたってまず今年度公共事業の大幅な前倒し、それから一兆円以上のいわゆる円高差益の還元を電力、ガス料金の値下げという形でしております。さらには中小企業対策等々やってまいったわけでございますが、最近になりまして、依然として消費や住宅を中心に需要は堅調でございますし、産業を見ましても、非製造業分野は堅調に推移したわけでございますが、やはり輸出を中心とした製造業の方で相当な停滞が見られますので、お話しのような総合経済対策を各省いろいろ寄り寄って集めてつくったわけでございますが、三兆六千三百六十億でございます。  それで問題は、これはかつてない大きな金額の対策でございますので、御説のように早くしなければ意味がないじゃないか、こういうことでございますので、実は関係各省にもお願いいたしまして、何とか年度内にこの三兆六千三百六十億をできるだけ消化するように契約を進める、そして実際の仕事も進めてもらう、こういうことで各省の協力を望みながら、さしあたって早急に補正予算の編成を政府としていたしたい、こういうことで努力をしている現状でございます。
  278. 正木良明

    正木委員 その前に大蔵大臣、補正予算のことをちょっと聞きたいのですが、この総合経済対策に基づいて補正予算が組まれていくだろうと思うのです、中心に。景気浮揚のためにね。この内容はまだわかりませんね。  それで、今度の補正予算に給与改定という問題がこの中へ入ってきますか。要するに、今回の補正予算を第一補正予算とするならば、第二補正予算というのはその次に、年度末なら年度末に考えているのですか。どうですか。
  279. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国家公務員の人事院勧告の問題でございますが、幾たびか閣僚会議を実は重ねておりますが、まだ処理方針を決定いたしておりません。しかし、もうかなり討議が進んでおりますので、やがていずれかに決めてもらわなければならないと思っておりますが、その決まります時期、態様等々まだ未定でございます。  なお、二度目の補正予算考えるかというお尋ねでございますが、それはできるだけ考えたくない、一遍の補正でやっていくべきものだろうと思っております。したがいまして、人事院勧告につきましての決定も、そういうこととの関連で考えてまいらなければならぬのではないかなと私自身は思っておりますけれども、なおまだ政府として正式な扱いを決定しておりません。
  280. 正木良明

    正木委員 同時に、相当税収減になるだろうというふうにうわさをされております。現に私のもらった資料の中でもそういうふうになっております。これは精密には出てこないかもわかりませんけれども、少なくとも相当額の税収減になっているわけでありますから、この税収に対する減額補正というものをおやりになって、大体どれぐらいになるという見通しを今お持ちになっておるか、どうですか。
  281. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一番大きいと思われます要素は、九月期の法人決算並びに三月期法人につきましては中間決算の状況でございまして、実はそれを待ちますために十月の中旬までと申し上げておるわけでございます。ただいままでのところ、法人税の収入は実はかなり悪うございまして心配をいたしておりますが、ただいま申し上げられますことは、予算に計上いたしました税収全部を確保することは難しいのではないかということを心配いたしております。ただ、仮にいたしますとしましてどのぐらいの減額補正が必要であるかということは、その時期になりませんと申し上げられませんので、いましばらくお待ちを願いたいと思います。
  282. 正木良明

    正木委員 法人税を中心として減額補正を行わなければならないぐらい税収減であるという事実がここではっきりしたのですが、企画庁長官、これで景気、いいの。
  283. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 今年度の成長率見通しでございますけれども、実は四―六月期の四半期の国民所得の速報が出た段階でございますので、どれぐらいになるかまだ計算ができる段階ではございません。ただ、三兆六千億といいますと名目GNPの一・一二%の大きさでございますから、現実に年度内に実際に仕事がなされれば、これはもう相当大きな効果を持つわけでございますが、ただ、国がやれることはやれることをいたしますけれども、例えば住宅建設等相手のあることでございますので、多少おくれるような面もあります。  ただ、一般に物価が非常に安定をしておりますので、そうした物価の安定と、それと関連していわゆる円高差益というものが、実は現実に国民の消費を刺激してまいりますのは円高差益、例えば四―六月期に起こって、半年から九ヵ月ぐらいの時差をもって実際に消費や投資にはね返ってくる、こういうような過去のデータもございます。そうしたことや、現在円高によって非常な影響を受けている産業分野も、いずれは新しい産業分野へ転進をしていかなければならぬ。産業構造の調整の問題もありますし、また合理化だとか研究開発だとか、実は私たちもいろいろ調査をしてまいりますと、潜在的に思った以上に投資需要が民間にございます。  したがって、政府が断固とした成長政策にコミットして、そして補正を組んでいろいろな対策を講ずるということがはっきりいたしますと、潜在的な投資需要を持った民間の企業が、今非常に金利も安いし、融資が簡単でございますから、そうした投資需要が出てくる、こう考えますので、国の施策だけですべて十分だということではないかもしれませんが、円高差益による消費の喚起や、そして成長政策への信頼から来る設備投資のこれからの増加、こういったことを考えてまいりますと、これから来年の初めにかけて、一―三月期にかけて相当な経済の回復が実現する、かように考えておる次第であります。
  284. 正木良明

    正木委員 選挙前もそんな見通しだったのですよ。  経企庁長官、差益還元の問題なんかで、この秋から冬だというふうにおっしゃったのだから、今まだそれがどうなるとかこうなるとか私も確証を持って言えませんけれども、そんな簡単なものやおまへんわ。来年の二月はここでまた予算委員会ですよ。そのときに、あなた大臣をおやりになっているだろうと思うが、あの補正予算のときに、臨時国会予算委員会であなたが言ったこととは全然違うやないかとまたやられるよ、よほど慎重に物を言わぬと。そんな楽観的なことばかり言っておったらだめです。また私、出てきますよ。  そこで、この成長確保のためには大前提があるのです。総合経済対策の三兆六千億というものが全部順調よく消化されたらという前提がついている。建設大臣、あなた、えらい足が悪いのに悪いけれども、公共事業、災害復旧費にどれだけ使うかということはわからぬらしいが、一兆四千億というのはもう決まっているんだ。この一兆四千億というのは、果たして消化できますか。恐らく、この中でどれだけあるかわからぬけれども、国庫債務負担行為が入ってくるだろう、財源的には。債務負担行為というのは、昭和六十二年度で銭を払うのですよ。こんなもの六十一年度に全然関係おまへん、発注できたとしても。雪のために工事が進まないということもあるでしょう。住宅金融公庫の三万戸の積み増しも、建てるのは民間ですから、手続や何やかやで、やはり二ヵ月や三カ月は浪費されてしまう。その人たちが建設業者に金を払うのは来年の昭和六十二年度ですよ。KDDや電力会社に設備投資の要請をしている。これだって問題です。そう簡単なものじゃありません。昭和六十二年三月三十一日までに銭を払うかどうか。  ここらを考えて――設備投資はいいですよ、あなたの所管じゃないから。どうです、公共事業は進みますか、道路工事も進みますか。消化できますか。  その後、地方単独事業の問題について、自治大臣答えてください。
  285. 天野光晴

    ○天野国務大臣 大変応援してもらうような発言をいただきましてありがたい幸せですが、一兆四千億の中身がまだ私たちには固定した格好のものに言い聞かされてはおりません。そうですから、その一兆四千億それ自体も問題があります。ここでその一兆四千億の問題について確たる答弁をすることはちょっと難しいと思いますが、できるなら来年の三月三十一日までに全部支払い完了できるようにしたいと思っております。  ところが、御承知のように北海道、東北、北陸のような公共事業を主体として経済の動きをしておる地域は、予算をいつ出すのか、今月の末ごろ出すと言っておるようですが、十一月になれば、先ほど話がございましたように雪寒地帯は仕事になりません。そういう点で、できることなら配るだけでもいいから早く配れるようにしたい。御存じのように地方負担という裏負担がありますから、地方議会の議決も経なければいけません。  そういう点からいくと、先ほど答弁のあるように、十一月の半ば過ぎなんというようなことでは果たしてこれは間に合うのかどうか、そこらあたりまだ結論が出ておりませんので答弁はできかねますが、いずれにしろやるというのですから、やるようにしていただきたいと思いますし、中身については完全に消化できる中身にしてもらうつもりでおります。その点御了承願えればありがたいと思います。今ここで責任のある答弁はできません。
  286. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 総合経済対策におきます地方単独事業費を八千億と定めておりますが、これはある程度地方団体の動向を把握した上決定したものでございますので、各地方団体で積極的な対応をしていただくならば十分に消化可能であろうと考えております。  また、これら地方単独事業の財源につきましては、経常経費を効率的に使用しながら必要な一般財源の捻出に努力をしておりまして、自治省といたしましても地方団体の要望に応じて必要な地方債を弾力的に配分していきたいと考えております。
  287. 正木良明

    正木委員 地方から単独事業としての希望を集めたのだから絶対できますというふうに私は聞こえているのだけれども、単独事業というのは地方自治体がもともと持っているのです。それも含まれて八千億ですよ。実際にこの総合経済対策で積み増された部分というものは半分近いだけです。要するに、従来計画を立てて単独事業をやろうとしておった、いわばそれが総合経済対策の中へ入ってきたというだけのものが相当部分あるということ、それを考えると八千億の経済効果なんて出てきませんよ。しかも地元負担予算というものを調達しなければなりません。  私は、本当はここで地方債の問題をやりたかったのだけれども、時間がありませんからやりません。だから、こういう意味からいうと、この総合経済対策というものについては、金額はずらずらずらっと並んではおりますけれども、三兆六千億にはようやくしたけれども、しかし実際に、私の言っているのは、少なくとも昭和六十一年度の経済効果というものについては、あなたが考えているように一%を超えるような経済成長の伸びを示すというふうにはどうしても考えられない。  しかも新しい事業は必ず新しい土地の取得をしていかなければなりませんが、この土地の取得は経済効果にはほとんど影響がないと見ていいです。建設省が考えているだけでも二〇%、全国平均で二〇%の用地費が必要なんですから、これは最初から天引きしなければならない。こう考えてくると、非常に薄ら寒い感じがいたします。したがって、この中小企業の深刻な不況の状態というものを何とかしていかなければならないというふうに私は考えておりますけれども、そのためには総体的内需拡大、景気浮揚ということを考えていかなければならぬ、個別の中小企業対策をやっていかなければならぬわけなんでありますけれども、これではますます、これは下り坂に入ったって上り坂に入るような要素というのは全くないと断定して差し支えないだろうというふうに私は思います。  しかも、あなた方が非常に関心を持ち、同時にまた期待をなさっておるところの円高差益の還元の問題があります。円高差益の還元の問題がありますけれども、しかしここで、三千百億円の電力、ガス、KDDが五百億円、四百億円開銀、北海道東北開発公庫、この利下げ、ぎょうさん入っているわ、いろいろと。しかし、電力、ガスと言いますけれども、この金、何の金ですか。円高差益として消費者へ還元すべき金じゃありませんか。それが設備投資の方へ回っているのです。どっちの方が経済効果が大きいかということで判断しなければなりませんけれども、しかし、当然本来ならば消費者に還元されるべき差益分というものがこの設備投資の方へ回っていくのです。こんなものを全部入れているわけですよ。そういう意味で、円高差益の還元の問題と、今の電力会社、ガス会社の設備投資の問題、通産大臣、どういうふうにお考えになります。
  288. 田村元

    田村国務大臣 円高差益の還元、随分いろんな各方面にわたるわけです。ですから、今おっしゃった以外にも、やれ百貨店だ、スーパーだ、いろいろにあるわけですけれども、電力、ガスを中心の今御質問がありましたから、これについて申し上げますと、六月までに、去年の十月と四月に設備投資で追加を出してもらったわけです。六月に一兆一千二百億円でしたか、電力、ガスで、これはもう直接還元をしてもらった。それからその後、第二回目の本年の設備投資の追加ということで一千億、それから六十二年度の契約分の前倒しで二千億の契約、いわゆる前倒し契約、こういうことで、今三千億という数字をおっしゃったとおりのことなんですが、それ以外にも差益還元が電力、ガスでできるかどうか。とにかく今非常に激しい勢いで投機的な為替の動きがあります。また、原油の動きがどこで安定するのか、そういうことを見きわめて対応しなければなりませんが、そこいらを十分横目でにらみながらこれから慎重に考えていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  289. 正木良明

    正木委員 余りはかばかしくないことでございますが、一応この総合経済対策の問題でさらに進めていきますと、今度地方民活の問題について補助金をお出しになるということで、私は賛成です。これが一つの誘い水になって地方民活がどんどん進んでくるということになればいいと思う。問題は、二年間に限っているあの補助金が恒常化されていくのではないかという心配がありますが、これは十分に御注意をいただきたいと私は思うのです。  そこで、景気対策の中でやはり一番重要な問題は額が足らぬということ、そして遅過ぎたということ、これは非常に致命的な欠陥だと私は思っているのです。同時に、遅過ぎたとか野党の言うことを聞かぬというのは結果的にマイナスですよ。  大蔵大臣、約一兆円だと言われて、またふえるかもわからぬ、減るかもわからぬけれども、歳入欠陥がありますね。大体六十一年度で予想されるわけでしょう。こういう問題についての政治責任、どう考えます。これは私たちが、矢野書記長も何遍かここへ出てさんざん言ったことはそうじゃありませんか。予算をぶった切ることは結構です、しかし、みそもくそも一緒にしてはいけません、行政改革を進めていくということで予算をぶった切ることは結構です、しかし、景気対策としては十分な手当てをしていかなければなりませんよ、これを両立させるような予算をつくらなければだめですよ、まして内需拡大、景気浮揚ということを考えなければ大変なことになりますよということはもう数年前から申し上げております。ことしの予算委員会で、私は鶏に卵を産ますという例えまで出してお話をした。数年前からこんな繰り返しじゃありませんか。予算を小さくして景気対策をおろそかにした。そのために景気が一向によくならない。今度は円高という大打撃を受けて大変なことになってしまった。昭和六十一年度当初予算において一兆円国債を減らしたけれども、今度歳入一兆円になるということになると、その穴埋めのために一兆円また増発しなければならないのじゃありませんか。そんなことではだめです。そんな繰り返しじゃありませんか。当初予算のときには、予算というものについては一見格好よくゼロシーリングであるとかマイナスシーリングであるとかということでやってきたけれども、実際問題としてはそれでは一向に景気はよくならないから歳入欠陥になってしまって、それを赤字国債で埋めていくというような、こんなぶざまなことを繰り返しているのじゃだめですよ。しかも、単にその予算編成の技術上の問題ではなくて、景気がよくならなければどんどんどんどん失業者がふえて、中小企業が倒産して、実は税金を納めている国民が苦しんでいるんだ。  そういうことから考えれば、今度これだけの、我々の皆さん方に対する提言を無視して強行された政治責任というものをはっきりしてもらわなければならぬと思う。どうですか、大蔵大臣。     〔委員長退席、吹田委員長代理着席〕
  290. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、私が財政の什事をやってみましてつくづく思いますことは、一般会計の中での国債費がもう二割になっておりまして、これはふえざるを得ないわけでございますから、極めてもう財政の弾力性が現実にないということでございます。したがって、いろんな事態に財政がなかなか十分に対応できない。この状態は何としても直していかなければなりませんから、それはどうしてもやはり財政再建ということをやっていかざるを得ない。この点は、もう実感として私はそう思っております。そうでありませんと、財政の弾力性がますます小さくなってまいります。  そのことはお認めいただけることだと思いますが、今回このような総合経済対策をいたしました。かなり大きなものでございますが、これは私はやはり昨年の九月のプラザ合意以来の為替介入の結果であると考えておるわけでございます。すなわち、二百四十二円から百五十三、四円までまいりました。一年たたない間の急速な変化でございますから、これに経済がなかなか対応し得ないということはもう想像にかたくないことでありまして、それだけ外需が減っていくわけでございますから、それを内需でつくらなければなりませんけれども、それだけのものがすぐに内需で出てくるということは、これも難しいことでございます。それには多少の時間をやはり御猶予をいただかなければならない。おまけに、いわゆるJカーブというものがございますから、アメリカの経済そのものにすぐこれが響いてこないという、そういういろんな複合的なことからこのようなこのたびの措置をしなければならなくなった、私はそういうふうな解釈をいたしております。
  291. 正木良明

    正木委員 あなたが大臣になってからの問題からいえばそうだと思いますよ、それは。しかし、それはもう何年も前から同じように私たちは主張し続けてきたんじゃありませんか。確かに国債の累積がどんどんどんどんふえてくるということは、この予算の中で占める利子だとかそういう問題で予算が食われてしまう。これは非常に困ることですから、それはできるだけやめた方がいい。しかし、だからといって、きびってはだめだ。  金の卵を産ます鶏がいたとしますよ。えさ代をけちって、えさを食わさないために卵を産まなくなってしまう。いいですか、少なくともえさを買う金がないならば、借金してでもえさを買って、えさを食わしてどんどんどんどん卵を産ました方が有利じゃありませんか。そういう議論を今年の二月やったのです、ここで。あのときだけは皆うなずいていたわ。あら、正木さん、ええこと言うなというようなことを言うていたけれども、全然それが実行されない。例えて言えばそういうことなんですよ。卵を産まないために、売る卵がないために、また別なところで借金しなければならぬという結果がずるずるずるずる続いているということを私は申し上げたのです。  一時的に国債負担というものがふえるかもわからぬけれども、そこで景気をよくしていく、あなたの持論である社会資本の蓄積というものをどんどんどんどん進めていく、それが景気を大きく支えていくという力になってくる。そのことによって景気がよくなってくるから、税収もふえてくる。そういう形で財政再建をやっていくというのが真っ当な話じゃありませんかということを申し上げた。  あなたに政治責任を追及するというのは問題かもわからぬけれども、おれは知らぬ、この間なったとこや、こういうふうになるかわからぬが、あなたは長いことおやりになっているのですから、これは政治責任を感じませんか。――総理総理。あんたはいいの。
  292. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一言申させていただきますが、私は最近やったので時自分の責任でないということを全然思っておりません。つまり、これだけ財政再建をしなければならないということの意味がむしろ私は今の方がよくわかっておるつもりでありまして、やはりそういう努力というものは放棄してはならないということを申し上げておきたいわけでございます。
  293. 正木良明

    正木委員 話を進めます。責任は感じてないということですから、結構な国ですよ、この国は。  そうして、内需拡大をするために今一番叫ばれていることは住宅の建設です。ところが、御承知のとおり東京の地価の暴騰。もう暴騰です。こういう状況というものは大変なことであります。東京都は地価抑制のための条例をつくりましたけれども、私は果たして効果があるかどうか問題だと思う。こんなものはやはり、私の考えから言うならば、素朴な経済原則にのっとってそうなっていくのですから、それはあくまでも需要と供給の関係だと思うのです。要するに宅地供給がふえてこない、需要がどんどんふえる、値段が上がる、当たり前の話なんです。だから、ここで宅地供給をもっとふやしていくという方策をおとりになりませんかと言っているのです。それは国有地だとか公有地の開放とかそういうものはたくさんあるでしょう。ありましょうけれども、都心にあるところは開放してもそれは物すごい値段になってしまう  そこで、私は、これは建設大臣と運輸大臣が所管になると思いますが、ことしの七月に公有水面埋立法の政令が変わりまして、今まで民間資金は半分以下であったやつが三分の二以下になったのです。私は民活というのはこういうところに生かすべきだと思う。     〔吹田委員長代理退席、委員長着席〕 もちろん配慮しなければなりませんよ。漁業問題であるとかその他の環境破壊の問題であるとか付近の住民の合意であるとかということは配慮しなければなりませんが、しかし、少なくとも大都市圏において公有水面の埋め立てということで進めていかなきゃならぬでしょう。二キロか三キロ離れた港区や千代田区やないしは中央区においては坪一億二千万もしている。ところが、この埋め立ては大体坪当たり三十万か五十万でできるのです。もちろん、漁業者に対しての手厚い補償もしなきゃならないでしょう。環境問題についても、アセスメントをきちんとしなきゃならぬでしょう。ここへは、それさえできれば民活の金が入ってくるのです。  それともう一つは、三大都市圏にある市街化区域内の農地の宅地並み課税という問題を見直す必要があるのではないだろうかということです。私たちはこのことを十年も前から主張してきました。しかし、先祖伝来の農業をやり続けたいという人たち、その人たちまで農業を奪ってしまうわけにいきません。したがって、少なくとも二十年間、選択制で私は農業で二十年間必ずやります、途中で農地を宅地に転換するということになるならば、その転換した以前の固定資産税は宅地並みでさかのぼって払います、これぐらいのことをしなさいと言うていたのに、政府は十年と限ってしまって、しかも五年ごとに見直しでありますから。私は別に農業を敵視するものではありませんよ。ありませんけれども、市街化区域内で農業をおやりになるというのは、市街化調整区域の方へおいでいただいた方が一番いいし、どうしても緑を残すという問題やないしは治水という問題で農業をやらなきゃいかぬ、水田を残さなきゃいかぬ、おれは農業をやるのだという人はそのままやってもらって、農地並みの課税でいいですよ。それを五年にしたから、見直しだから、五年間辛抱すれば、農地の税金を払っただけで五年たったら宅地転用できるのですよ。さかのぼりも何もないのです。こういう点をやはり考えていただかなければならぬのです。私は農業を敵視する意味ではなくて、農業をやりたい人はやらせてあげる。やらせてあげるというのは不遜な言葉ですが、やっていただいて結構。しかし、土地の、要するに地価の値上がりだけを待っているような農地というものについては、これはこの際解放していただくのが至当ではないか。これで宅地供給というのをもっとふやしていくことが大事なんじゃないだろうか、こういうふうに考えているのですけれども、公有水面の問題は建設大臣と、これは運輸省も港湾で関係あるみたいね。ないのか。ないんやったらええわ。それと農水大臣と自治大臣、宅地並み課税。
  294. 天野光晴

    ○天野国務大臣 ただいまの埋め立てに関する問題につきましては、東京湾沿岸ととりあえず考えていいんじゃないかと思っております。現在四百ヘクタールばかり使用されていない空閑地がございます。これを完全利用するためには、どうしてもそこに、その空閑地に対する交通問題の解決をしなければとても今のままにならざるを得ないのでありまして、これを完全に解決できるように、東京駅からあるいは新橋、銀座あたりから十分ぐらいの程度で必ず行けるような交通を確立しなければいけないと考えておりまして、この問題、今検討をいたしております。  それともう一つの問題は宅地並み課税でありますが、これは御承知のように今まで施行してきた問題でありますが、これは再検討をいたしたいと考えております。
  295. 正木良明

    正木委員 自治大臣、関係なかったら結構ですけれども。
  296. 加藤六月

    加藤国務大臣 漁業補償問題は事業主体と漁業者との間の話し合いでございます。農水省といたしましては、適正妥当に漁業補償がまとまることを期待しておるわけでございます。  宅地並み課税の問題につきまして、公明党さんから昭和五十四年以来御提言があり、いろいろおっしゃっておられ、また、今正木委員が二十年と政府の十年、そして五年の見直しという過程等についての御発言がございました。建設省の方から検討をし直したいとおっしゃるのでございましたら、農水省としてもその問題には応じて、十分な検討をいたしたいと考えておるところでございます。
  297. 正木良明

    正木委員 それで、もう一つの問題は、東京へ集中している政治、経済、文化の中枢機能というもの、これはやはり地価暴騰につながっていると思うのですが、総理、これの機能の地方分散なんということは頭の中にありますか。
  298. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 かつて関西、大阪の皆さんからそういう御陳情がありまして、そういう官庁機能の分散ということも検討したことはございます。造幣局なんかそういう面でいいんじゃないかという議論もございました。いろいろ検討しましたけれども、実際問題になりますといろいろ難しい問題等ができまして、まだ実現はいたしておりません。しかし、これは国土計画全体の問題としてやはり検討さるべき問題であると考えております。
  299. 正木良明

    正木委員 もう時間がいよいよせっぱ詰まってきましたので厚生大臣にお願いしたいのですが、老人保健法の改正問題に関連いたしまして、この老人保健法が目指す老人保健制度というものは、本来、高齢化社会に対応して健康な老人づくりということが主眼になっているわけですね。そのためには疾病の予防、早期発見、早期治療、こういうふうになっているわけなのでございますが、老人保健法のかなめである一般診査とか、がん検診、これはいよいよ六十一年度で五カ年計画が終わるのですが、全然達成できてないのです。要するに、できるだけ病気にならないように老人を保健制度によって予防していく、そして早期発見をしていく、そして老人の疾病に対する費用というものをできるだけ軽くしていこう。ところが、こういう気も肝心のことが全然――全然とは言いませんけれども、目標には達しないような非常に低調な形で今度負担だけどんと上げようとしているのですが、これは私たちは本末転倒だと思っているのです。そういう意味からいって私たちは、老人保健法の老人の負担がふえるということについては絶対反対です。これは細かい話をしていると切りがありませんからいたしませんけれども。こういう問題について、この中間施設において痴呆性老人を収容してもらえないということだとか、こういう施設が実は在宅老人との関係において非常に負担がふえてきておって、要するに在宅老人の方の福祉サービスというものが全然向上しないで、それとだけ比較をして負担がふえているという問題が幾つかあるのです。これも総括してで結構でございますから、お答えいただきたいと思います。
  300. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 ただいま先生御指摘のように、昭和五十八年二月から始まりました老人保健法の一つの大きな重要な部分は、保健事業を推進をいたしてまいるということでございます。五十七年から五カ年計画で推進をいたしてまいったところでありますが、この五年間の中で、当初の予算から本年の予算を比べて見ますると実に四倍の予算になっております。そしてまた、毎年毎年の予算増額も三〇%以上の予算増額をして、このような厳しい財政状況の中ではありまするけれども努力をいたしてまいったところでございます。  健康づくりは、もう御承知のように大変時間がかかり、また着実に進めていかなければならない問題でもありますので、来年以降、六十二年をスタートといたしまして第二次の五カ年計画をつくりまして、これにのっとって十分な保健事業を推進をいたしてまいりたいというふうに考えております。  第二点のいわゆる中間施設の問題でございますが、今回の老人保健法の改正の中で含めさせていただいておるものでございますが、これは御承知のように、毎日毎日の治療は不要であるが、医療のケアとともに、介護またリハビリ、また日常の生活ケア、こういったことの必要な、新しい、言うところの中間施設というものをつくろうというものでございまして、お話のございました痴呆性老人につきましては、その程度のかなり重い方につきましては、専門的な治療の必要のあります精神病院等に入院をしていただかなければならない場合もあろうかと思いまするし、また軽度の場合におきましては、これまでの特養で措置する場合もあろうかと思いまするし、また、今申し上げますように、日常の医療ケアと介護その他生活サービスが必要な場合に、この中間施設にも入っていただける、こういうふうな考え方をいたしておるところでございます。
  301. 正木良明

    正木委員 これはなお重ねてやりたいのですけれども、時間がなくなってしまいましたので、また社労委員会でもっと厳しくやっていきたいと思います。  国鉄問題について運輸大臣に通告いたしておりましたが、ちょっと時間がありませんから、国鉄の特別委員会でやっていただくようにいたします。
  302. 砂田重民

    砂田委員長 正木君、ちょっと申し上げますが、文部大臣から訂正発言がございますので、ちょっとそれを許したいと思います。文部大臣。
  303. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほど私から、年内にも推進会議を設置して進めると言いましたのは留学生問題のことでございまして、外国との大学の分校問題等につきましては、目下民間ベースで話し合いをしております。その話し合いの推移を十分見守りましてから、その上で助言なりあるいはその上の措置を考えていきたい、こういうことでございますので、御了解いただきたいと存じます。
  304. 正木良明

    正木委員 はい、わかりました。その問題もせいぜいやってください。  それで大蔵大臣、厚生年金の積立金、国民年金の積立金、これはある程度自主運用させるというわけにはいきませんか。要するに、私の手元の資料では、去年の十月まで七・一%であった金利がことしの三月末で六・〇五%になった。金利の低下で運用収益が今後五年間で累積一兆六千億、十年間で六兆二千億になる。この運用益の目減りが、六十一年度の厚生年金保険料総額九兆円、給付額八兆円として、五年で保険料の場合一七・八%、給付額では二〇%、十年では六八・九%、給付額は七七・五%ということになってしまうのです。それぐらい大きな影響を受けるのです。ところが、厚生省においてこの自主運用というものをある程度やらしてもらうと、厚生年金基金の利回りが八・七%ですから、ある程度、せめてこの積立金三分の一ぐらいは自主運用させてくれないかというのが厚生省の希望だろうと私は思うのです。私も、これから年金の財政ということを考えてまいりますと、できるだけ自主運用をして、そして、この積立金の利子というものがきちんと積み立てられていくようにしていくべきであろうかと思いますけれども、これで終わりますから簡単にお答え――いやいや大蔵大臣。あなたはやりたい方や、こっちはやったらいかぬと言うている方やから。
  305. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は正木委員もよく御承知のとおりでございますが、国の制度、信用を通じまして国の手元に集められております公的な資金でこざいますので、財政金融政策のもとに整合性を図りながら運用をいたしたいというのが私どもの従来の立場でございます。最近、新しい金融商品であるとか金利情勢の変化とかいろいろございまして、また関係省からそういう御要求がございますが、私どもとしては、何とかおわかりを願ってひとつ現在のままでお願いをしたいというふうに考えておるわけでございます。
  306. 正木良明

    正木委員 もう時間が来てしまいましたので、これで質問を終わりたいと思います。  まだまだ言いたいことがたくさんございますけれども、また別の機会にそれを譲りたいと思います。国民に対して約束したことは必ず守るという姿勢、これはどうかひとつ中曽根内閣も今後も一生懸命守っていただきたいと思うわけでございます。ありがとうございました。
  307. 砂田重民

    砂田委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  308. 砂田重民

    砂田委員長 この際、お諮りいたします。  米沢隆君の質疑に関し、本日、参考人として日本銀行副総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  309. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  310. 砂田重民

    砂田委員長 次に、米沢隆君。
  311. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、まず総理政治姿勢、そして、目下我が国の当面しております重要課題であります国際経済摩擦の問題、そして円高不況対策と為替安定化対策、そして先般発表されました総合経済対策の問題点、そして税制改革等々につきまして、時間の許す限り政府の所信をただしてみたいと思います。  まず最初に、総理政治姿勢について御伺いをいたします。  先ほど来、この問題はるる議論になっておりますから余りくどくどと申し上げたくはありませんが、先般の総理が述べられました人種差別発言の重要性にかんがみて一言申し上げたいと存じます。  この問題は、まさに発言されたときから全世界を燎原の火のごとく広がりまして、非難の合唱が始まりました。もちろんアメリカにおきましても大変大きな波紋を呼んだわけでございます。私は、この総理発言アメリカ国民を傷つけ、侮辱をするものであることは無論のことでありますが、同時にこれはアメリカ社会のタブーに触れるものであり、同時にまた、日米経済摩擦等で日本に対する反発の情が大変高まっておる中でのことでございますから、衆参同時選挙で総理が大勝されて、そのおごりの中にあるとはいえ、まあ大変なことを言ってくださったなという感じを私は持ちました。  一時は、御案内のとおりアメリカ国民の抗議と非難の中で、アメリカの下院がいわゆる総理発言の撤回と謝罪を求める中曽根非難決議案等が上程されるような動きもありましたけれども、大変政治問題化することを私自身も恐れた一人でこざいますが、しかしながら、あなたが非難なさった黒人の議員連盟とかヒスパニック議員連盟、そしてまた関係者の皆さん方の冷静な対応で何とか鎮静化しつつあることは不幸中の幸いだろうと私は思います。  私は、アメリカ国民のこの動きを見ておりまして、心の奥行きの深さというものに大変心から敬意を表したい気持でございます。しかし私は、この鎮静化しつつある背景は、決して総理がいわゆるアメリカ政府や議会に弁解された陳謝が功を奏してここにおさまりつつあるのではない、アメリカ民主主義の奥行きの深さだ、そう思わねばならぬと思うのでございます。こうした冷静な対応をされる国民と、このような許しがたい発言をされる者とで一体どちらが知的水準が高いのか、そのことが問われねばならぬのじゃないかと私は思います。  同時に、この問題は貿易摩擦を中心に厳しい状態の続いておるこの日米関係の中で、折に触れて相互理解を妨げる要因になる可能性は私はあると思います。在米邦人そして仕事でアメリカに行かれる皆さん、何か不都合なことが起こったならば必ずあなたの発言がまくら言葉になるのではないか、そういうゆゆしき事態を含んでおりまして、これは回り回って、ただアメリカ国民だけではなくて日本の国家と国民に大きな迷惑をかけた、そういう認識が必要だろうと思います。所信を求めたいと思います。
  312. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の発言に関しまして、アメリカ社会の皆さんから非常に寛大な処理をいただきまして非常に感謝しておるところであります。今のところ貿易摩擦と直接結びつけられてはおらないようでございますけれども、今後とも大いに自粛自戒いたしまして注意してまいりたいと思います。
  313. 米沢隆

    米沢委員 これはこれから先の総理の言動がすべてを律するものだと思いますので、ぜひそのあたりは御認識をいただきまして、今から誠意を示す努力をしていただきたい、こう思います。  次に国際経済問題についてお伺いをいたします。  特に先般行われました一連の国際金融・通貨会議の成果、そして今後その合意内容が日本経済にどういう影響を与えるかという問題を中心にしてお尋ねをいたします。  御案内のとおり、先般ワシントンにおきまして一連のIMF・世銀合同総会を初めとしてG5、G7、G10等々のいろいろな会議が行われました。またその機会を利用されまして、宮澤大蔵大臣とベーカー財務長官との会談、澄田日銀総裁とボルカーFRB議長との会談等々が行われまして、その都度ニュースでその内容等については日本にも伝わってきたわけでありますが、この一連の会談というものは、いわゆる一般的なIMF・世銀の総会で議論するマターとは別に、このところ例えば公定歩合をめぐってアメリカと日独がぎくしゃする、そういうものが鎮静化される方何に向かうのかどうか、そしてひいては世界のインフレなき持続的成長というものが各国の政策協調によってうまくいくのかという、そのあたりが一つの大きな注目点だと言われておりました。確かに、この合意内容いかんによりましては日本の経済が大変揺さぶられる要因もたくさんあるわけでございまして、そういう意味で我々も関心を持って見詰めていたわけでございます。  そこで、帰国なさったばかりの大蔵大臣でございます。今回のこの一連の会議で合意された内容と、そしてそれが今後我々日本の経済にどういう影響を与えるかということを総括的に御答弁を賜りたいと思います。しかし、総括的といいましてもいろいろと幅が広うございますから、四つだけその中に入れてほしい。  その第一は、アメリカ我が国に対する内需拡大要請をどう受けとめ、どう対応されようとしておるのか。第二点は、その関連で公定歩合の引き下げというものについてどう考えるか。第三番目に、為替相場の安定について合意はどのようなものになったのか。第四は、経済の相互監視、いわゆるサーベイランスのあり方についてどのような合意を見たのか。この四点を含めて総括的にお答えいただきたいと思います。
  314. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず第一のお尋ねは、今回の会議の一番中心のいわば課題であったわけでございます。米国の国際収支の赤字が非常に大きい、財政収支の赤字も非常に大きいという状況の中において、アメリカとしてやや内需を抑えなければならない、また輸出をふやさなければならないといたしますと、そのかわりに内需をどこかが伸ばさなければならない、またアメリカの輸出をどこかが受け取らなければならない、それは日本とドイツの務めであろうという認識は非常に強うございましたので、米沢委員が言われますように、そこから我が国の内需拡大への強い要請になっているわけでございます。  この点につきましては、総合経済対策をとった、しかも今の財政といたしましては最大限の努力をいたしたということは私はよく説明をいたしておるわけでございますけれども、それはそれとして理解しながら、なおもう少しのことができないかというのが多くの人の感想のようでございます。私どもとしては、今これに加えることは到底容易なことでございませんが、決められました対策を実効あるものとしてできるだけ早く有効に実施をしていくということが答えであろうかと存じます。  第二の公定歩合の問題につきましては、これは私からお答えを申し上げることは適当でないと思いますので、お許しをいただきたいと思います。  第三に為替相場の問題でございますが、これも確かに御指摘のように日独の経済刺激策との関連で為替相場についての議論があったわけでございますけれども、結論といたしましては、G7のコミュニケにございますように、今後とも為替レートの調整というようなことをやらないままでこの不均衡が是正されるように各国がおのおのの政策努力をすべきであるということで決着をいたしております。  第四にサーベイランスの問題でございますが、このたびサーベイランスの基本になるべき幾つかの指標、成長率、インフレ率、財政収支、国際収支等々でございますが、そのような主な指標につきましてほぼ緩やかな合意がございました。そしてIMFがそれにつきましてのいわばIMFとしての中立的な資料の提供あるいは事務上の援助を行うということになりまして、サーベイランスは東京サミットで決定されて以来、ここで初めてやや具体的な形をもってスタートをいたすことになった。もとよりおのおのが主権国家でございますので、そのようないわば指標から大きくずれがありましたときに、直ちにそれを修正することを強制されるということはあり得ないことでございますけれども、お互いの間でいわば政策協調ということで考えていこうではないか、こういうことでございました。  以上でございます。
  315. 米沢隆

    米沢委員 公定歩合につきましてはお触れになりませんでしたので、日銀副総裁の方から御答弁いただきます。
  316. 三重野康

    ○三重野参考人 本来ならば総裁からお答えすべきところでありますけれども、IMFから明日帰ってまいりますので、私からかわって……。  公定歩合の問題は、もちろん、最近のように円高デフレということで国内の景気がいま一つということでございます。これから先どんどん悪くなるというわけではございませんが、当面こういうような景況のもとに金融緩和を求める声があることは、私ども十分存じ上げている次第でありますが、金融の状態は今どういうことになっているかと申しますと、私どもことしの初め三回公定歩合を下げまして、現在公定歩合の水準は三・五%でございます。この三・五%というのは、戦後では最低でございますし、諸外国と比べましても、西独が三・五でございますが、貸し出しレートその他は日本の方が低い、こういう低いところまで下がってきておるわけであります。  一方、お金の量というのは十分出ておりまして、私どもはM2プラスCDというのでマネーサプライをはかっておりますが、ことしの初め前年比九%だったのが、逐次下がってきて八・五まで下がってまいりましたのが、ここに来て再び騰勢を強めてまいりまして、七月八・七、八月八・九というふうに上がってきているのに、これは非常に警戒すべきことではないかというふうに見ております。マネーサプライというのは、やはり将来のインフレの芽を育てるという意味で私どもが重視している指標でございます。  一方、金利がここまで下がってまいりましたので、預金金利が低いためもありまして、預金から金がいろいろなものへ流れていっております。先生御案内のとおり株、最近ちょっと急落しておりますが、それでもまだ非常に高い。土地の値段しかりでございまして、ゴルフの会員権、あるいは貴金属が最近非常によく売れている。ごく最近になっては絵画まで値上がりを示してきております。こういうふうな金余り現象が目につきます場合、もちろん今がインフレではございませんけれども、将来の潜在的なインフレの芽が育ちつつあるという意味で、私どもは極めて慎重な態度で金融政策を動かすべきではないか、こういうふうに考えておりまして、今のところは公定歩合は動かすべきではない、こういうふうに考えておる次第であります。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  317. 米沢隆

    米沢委員 今、日銀の方からのお話は、るる澄田総裁等が折に触れてお話をしておりますから、よく理解をいたしますが、いわゆる円高不況のさなかにある現状でございますから、いたずらにインフレ懸念を喧伝するよりも、機動的な利下げをやって、そして円相場の安定化と、実質的には高金利でございますから、実質高金利の是正を図って景気の回復を促すのが筋ではないか、こういう意見もたくさんあるのでございますが、そういう御意見に対してどのようにお答えになるか。  それから、もう一つ大蔵大臣にお伺いしますが、ベーカー長官あたりの話を聞いておりますと、何しろ日本も利下げをしろ、西ドイツも利下げをしろ、しなければもう一段の為替相場をいじめるぞ、こういうおどかしがずっと続いておりますね。そしてまた、レーガン大統領もIMFの暫定委員会ではそのような趣旨の演説をされたやに報道をされております。そういう意味で、我々が公定歩合を下げない、そして内需拡大も無理だ、こういうことになったときに、一体アメリカがどう出てくるだろうか、そのあたりは大変心配の種ではないかと思いますが、見通しはいかがお考えですか、大蔵大臣の御見解をいただきたい。
  318. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今回もごく少人数の会合がございまして、そういう点についてはお互いに自由で忌憚のない議論をいたしております。その結果といたしまして、やはり各国の政策協調というようなことで、だれも為替相場の不安定になることを望んでおるわけではございませんので、そういうことのないようにお互い協調していこうではないかというのがいわゆるG7の合意になっておりまして、そういう意味では問題は一応理解されたものというふうに私は考えております。
  319. 三重野康

    ○三重野参考人 先生のおっしゃる意味はよくわかりますが、私どもはやはり日本経済の最大の課題は対外不均衡の是正ということだと思いますが、その是正もインフレーションになれば結局元も子もないわけでございまして、もちろん単なるインフレを心配するだけでほかのことに目をつぶっているわけではございませんが、よく実態の推移を見てみたいと思います。  先生の御質問の為替相場あるいは実質金利との関係でございますが、確かに金利と為替相場はかなり密接な関係がございます。しかしながら、ここまで為替レートが強くなってまいりますと、マーケットは必ずしも金利差だけで動くわけではない、いろいろな要素によって動いておりまして、公定歩合を下げれば即為替が安定するということでもなくなってきているというふうに思います。  実質金利については、これはいろいろ問題がございまして、高い低いといろいろございますが、私どもは現在のインフレ期待率を、例えばGNPのデフレーターでとりますとプラス二%ということでございますので、それほど高いというふうには思っておりません。しかしながら、いずれにしろ大変難しい時期でありますので、いろいろな指標をよくウォッチして、先生のおっしゃったようなことも戒心しながら新金融政策を進めてまいりたい、こういうふうに思います。
  320. 米沢隆

    米沢委員 これからの先進国間の政策協調等々難しい問題、難題もたくさんありますけれども、ぜひ間違いのないように頑張っていただきたいと思います。  そこで、国内に目を転じますと、御承知のとおり、私は円高無策と呼びたいのでございますが、ここまで円が高くなったおかげで大変な円高不況でございます。総理の、いわゆる円高には悪いことばかりではない、還元もあって、それが徐々に経済に響いてきて、うまく景気は軌道に乗るというような、素人だましみたいな話では片づかない状況に来ておるのではないかと私は思います。  同時にまた、局所的には生き地獄さながらということが言われるほどに大変厳しい状況が続いておりまして、輸出産地の中小企業者はもちろんのことでございますが、このごろはもう輸出産業、大から小まで所構わず、まさに輸出の不振、生産の縮小、工場の閉鎖、倒産等々が続いておりまして、また、その企業がある地方におきましては、財源の不足あるいは地方の経済の疲弊というものが大きな課題になっておるわけでございます。  同時に、そうなったときにやはり一番被害を受けるのはまたそこで働いている労働者でございまして、特に円高に対応して海外進出等も広がってまいりましたし、部品を海外から調達しようという企業もかなりふえてきました。そうなりますと、下請企業の仕事はなくなって、またそこから雇用の不安が始まる等々、確かに全般的に平均的に経済を論議しますと、いろいろな見方はあるかもしれませんが、やはり我々は局所的なものにも目を向けて総合的な対策を打つ、局所的な対策を重々打っていくという姿勢が必要ではないかと思います。これからの総理の一挙手一投足を、まさに円高不況で苦しんでいる皆さん方はすがるような気持ちで見ていらっしゃると私は思います。  そういう意味で、まず基本的に、この円高という不況に対してどう対応するのかという決意のほどを総理にお答えいただきたい。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 円高不況に対しましては非常に心を痛めておる次第でございます。  特に、中小企業につきましては、地場産業とかあるいは城下町であるとかあるいは特殊のいろいろなもの等につきまして、できるだけの処理をしなければいけない、そういうことで通常国会の終わりにも特別立法していただきましたが、今回の臨時国会におきましてもそれを補強する法律の取り扱いというものをお願いいたしたい、そう思っております。  そのほか、金融面あるいはいろいろな相談や指導、そういうような問題につきましても、通産省に命じまして積極的に今努力しておるところでございます。これはもう地場地場、場所場所によって千差万別でございますので、地元の通産局等も動員しまして、親切にできるだけの誠意を持って当たらしておる次第でございます。
  322. 米沢隆

    米沢委員 通産大臣にお伺いいたします。  私どもは、かねてよりこのような円高不況の深刻な実態にかんがみまして、特に、深刻かつ集中的な影響を受けておる地域、特定地域における中小企業の経営の安定化対策あるいは地域振興対策の確立を急ぐべきである、こういうことを申し上げてまいりましたし、また、さきの通常国会におきまして成立いたしましたいわゆる特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、これは一ドル大体二百円ぐらいを想定してつくられたものでございまして、それからまた劇的に円のレートは高くなっておりますから被害は深刻になっておるわけでありまして、やはりそのあたりを加味して、円高対策の特別融資の拡充あるいは弾力的な運用の問題、特に貸付金利の引き下げあるいは償還期間の延長、貸付要件の緩和あるいは無担保、無保証の貸付制度の拡充、そして信用保証制度の改善等等をぜひ取り上げるべきであるということを申し上げてまいりました。  そして三つ目には、御案内のとおり政府系金融機関の融資の弾力化、特に一番中小企業の皆さんが困っていらっしゃるのは、高金利で借りたものをこんなに金利が下がったんだから借りかえたいと言うてもどうも相談に乗ってくれないという苦情が大変ありますね。そういう意味では、借りかえ措置の問題、返済猶予の問題等々もっと弾力的に配慮すべきであろう、あるいはマル経の金利の引き下げ等々、そのあたりについていろいろと皆さん方にも申し入れをしてまいりましたけれども、今度の総合経済対策の中にも一応そのあたりの芽はちょっと出しておるような気がいたしますが、実際、今度の補正予算でそれがどれぐらい組み入れられ、どれぐらい具体的に一つの形になりつつあるのか、そのあたり今知りたいところでございます。具体的に通産大臣の御見解をお示しいただきたい。
  323. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃったとおりでありまして、特に中小企業の約三分の二が下請企業であります。そうして、集中的にいわゆる地域的に輸出関連でやられておるもの、また、先ほど総理が申しました企業城下町等々につきまして手厚い保護を加えなければならぬことは当然のことであります。三・九五%という超低利資金も用意をいたしておるところであります。今おっしゃったことをずっと詳しく御説明申し上げてもよろしゅうございますけれども、時間の関係もありましょうから、大体今おっしゃったことがほぼ盛られておると言っていいと思います。  信用補完の問題につきましても、また借りかえの問題につきましても、またいわゆる零細企業の無担保の金融にしろ、いろいろと盛られておりますけれども、補正予算との絡みということになりますと今折衝中でございますから、具体的に私が突出した数字的な発言をすることはいかがであろうか。ただ、法律の改正問題もございます。また当然、今おっしゃった補正予算の、まあ私どもの言葉で言えば獲得の問題もございます。いろいろとまた御指導、応援を願いたいと思います。
  324. 米沢隆

    米沢委員 これはまさに生殺与奪の権を握っておるようなところもございますので、ぜひ大蔵省、かなりの踏み込みで中小企業対策等を考えていただきたいということをお願い申し上げます。  同時にまた、現在の雇用を取り巻く環境、先ほど申し上げましたような理由によりまして今大変厳しい状況の中にあります。特に石炭、造船、鉄鋼、海運、繊維、合板、紙パルプ等々を初めといたしまして、いわゆる円高不況産業あるいは構造不況業種というところからどんどん人が出てきておる、これはゆゆしき状況だろうと思います。その上、これから先、円高対策ということで産業が海外に出ていくということになりますと、将来的には相当の失業者問題というのがまさに社会問題に発展する可能性があるだろう、そういう認識をいたします。  しかし、今いろいろとそのようなことで出ております失業者あるいは雇用不安、そういうものに対して、当面労働省としてはどういう対策を考えられておるのか、具体的に御見解をお示しいただきたいと思います。
  325. 平井卓志

    ○平井国務大臣 お答えいたします。  この雇用の安定につきまして、やはりすべてに優先する政策というのはもう不可欠な内需の拡大、景気の刺激でなかろうか。このことは総合経済対策をもってでき得る限り積極的に実効あらしめねばならぬと考えておるわけでございます。  いろいろ不況業種、地域が出てまいりまして、非常な雇用不安が考えられますことは、これは委員御指摘のとおりでございまして、労働省としましては、現在その不況の業種また地域につきまして、でき得る限り継続的にヒアリングをいたしまして、実態をまず正確に把握しなければならぬと考えております。その上で、現行制度ございます雇用調整の助成金制度、これも機動的に弾力的に運営をいたしまして、フル回転をしなくちゃいかぬ。さらにまた、特別措置法ございますけれども、不況業種、不況地域対策の推進、これももう全力を挙げてやらなければならぬと考えておるわけでございます。  これで十分かと申しますと、労働省がやり得ますことは、さらに、先般決定されました総合経済対策におきまして、現行の雇用調整助成金制度の拡充ということで指定基準を緩和する、助成率も上げていこう。さらにいま一つは、造船工業会等大変な御理解をいただいておりますけれども、失業にかかる前の出向等の活用によりまして、企業間、産業間の労働移動ということを積極的に進めてまいりたい、できるだけ多くの産業界が御参加願って、できましたら本年度中に何とか発足にこぎつけたいと考えております。この対策につきましては運営費等の補助につきまして既に予算要求をいたしております等々で雇用対策の強化を図ってまいる所存でございます。  さらにまた、御指摘のございました特定の地域での雇用の悪化、これも地域別に非常に懸念されておりまして、さらに総合的な地域の雇用促進対策と申しましょうか、ただいま大急ぎで具体的に検討をいたしておるところでございます。  以上の諸政策をもちまして、労働省といたしましてはでき得る限り万全を期してまいりたい、かように考えております。
  326. 米沢隆

    米沢委員 事の性格もありますが、ともすると、そのような雇用対策は事後対策が大変多いということが問題だと思います。これからもう失業者は目の前にどんどんふえるであろうという様相がありますから、これからは、現在の失業者を一体どうするんだ、雇用創出という面に観点を変えて、ぜひ労働行政の遺憾なきを発揮していただきたいと思います。  さて、このようにして今我が国は大変な円高不況で苦しんでおるわけでありますが、もとはと言えば異常な円高ですね。憎きは円高なり、そんな感じがしておるのは私一人ではないと思います。昨年の九月、例のG5以来このような急激な円高になったわけでございますが、とうとう先般はこューヨーク市場では百五十一円、史上最高の円高を記録いたしました。単純に計算いたしましても約四〇%の切り上がり。IMF方式というのがあるのだそうでございますが、それによりますと大体五七%の上昇率。私は、この事態を見たとき、一体どうしてこんなになったのかと大変疑問を持っておる一人でございます。もとはと言えば確かに円高、なぜ円高にせざるを得なかったかといいますと、やはり貿易摩擦の解消が大きな宿題。なぜそういうことになったかといいますと、少なくとも外需と内需のバランスがどんどん崩れてきたにもかかわらず、お家の方ではただ緊縮財政一本やりで、内需を逆に冷え込ませ、外需に逆に依存するような形の経済運営なり財政運営があったという、その反省があってしかるべきだ、基本的にはそう考えるのでございますが、しかし、ここまで来た場合、一体この円高をどうするかというのが基本的には大きな課題であろう、私はそう思うのでございます。  考えてみれば、アメリカに対しても黒字、東南アジアに対しても黒字、欧州に対しても黒字、中国に対しても黒字でございますから、それにぼろくそに言われるのは仕方のないことだと私は思います。したがって、早急に円高誘導というものは考えねばなりませんが、いわゆる急激に過ぎる、あるいは短期間に切り上がり過ぎた、その結果、対応しようにも産業が対応できないというところでもう一つまた苦しみが加わっておるわけでございますから、私は、これから先の為替政策というものはもっと切り込んだといいましょうか、もっと効果のあるといいましょうか、我々が見ても頼もしくやっておるなという、そういうような為替外交というものが展開されてしかるべきだ、そういう感じがいたします。  御案内のとおり、ここまで切り上がりましたけれども、残念ながらアメリカの貿易収支はそうよくならない。やれJカーブとかなんとかいろいろな理由はあるかもしれませんけれども、少々は下がり始めておるとは開いておりますが、効果的な数字としては余り出てきていない。そして我々だけが円高で苦しんでおるわけでありますから、アメリカも苦しみ日本も苦しむという、こんな円高みたいなものはまさに改善していかねばならぬ、是正していかねばならぬ当面の最大の政治課題ではないか、私はそのように思います。  そこで私は、翻って考えたときに、昨年九月のG5のとき一体何をお決めになったのか、目標値も決めずにただ協調介入やろうなんて、ばかげた話をしたのかどうか、一回そのあたりを聞きたいのでございます。目標値はなかったのか。お互いに共同介入するにしてもやはり物差しがあってしかるべきで、そのあたりも何も決めずに、ただ、だらだらとやりましょうということで、あれよあれよという間に円高になったのか。そのあたり、基本的な問題として私は聞かせてほしいと思います。
  327. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が承知いたしております限りでは、昨年の九月二十二日の会議の後、大蔵大臣が所感を述べておられまして、それによりますと、このいわゆるプラザ・ホテルにおける会合の目的は、主要通貨国の通貨当局者による多角的サーベイランスの一環としての会合であったこと。次に、会合のポイントは、各国のパフォーマンスと政策の協調が順調であること、及び、他方それが現下の為替レートに正しく反映されていないことについて認識の一致を見た。したがって、結論といたしまして、経済政策の協調は一層進めるべきであるが、為替レートの適正化のため、より密接に協力すべきである。この最後の点が、ドルが高過ぎる、したがって、これを売っていかなければならないという各国のいわゆる介入になったわけでございます。これが大まかなプラザ・ホテルにおける合意であったと考えられまして、その後事務当局等の意見を聞きますと、いわゆるターゲットといったようなものは設けられていなかった、またこれは設けることは難しかったであろうと思います。そういう性格の会議であったと承知しております。  そこで、今日まで一年たちまして、このとき考えられておったことと幾らか意想外であったということがあるといたしますと、先ほども米沢委員がおっしゃいましたいわゆるJカーブというものが意外に長く続いておって、この為替調整がアメリカの国際収支の改善に現在までのところどうも目立った貢献をしていないというのが第一点。第二点は、石油の価格がその後意想外に急落をいたしましたために、ドルが下がりましてもアメリカの経済がそのことによってインフレになることを免れておる。つまり、石油が非常に安くなりましたので、アメリカの経済は比較的心配なく運営されておる。そういう点から、ドル安に対するもう一つ懸念というものが予想されたよりは少ない状況アメリカ経済が運営されておる。この二つのことがこの九月二十二日に十分予想し得なかった要素ではないかというふうに私は観察をいたしております。
  328. 米沢隆

    米沢委員 まあ相場は相場に聞けと言いますから、そう理論的に出てこないとは思いますね。しかし、皆さんは昨年九月のG5の後、共同介入に参加した当事者です。そして少なくとも、いろいろな予想されないものがあったかもしれませんけれども、為替を預かる大事な当局としては、やはりせめてこれぐらいが一つのターゲットゾーンだと、物は言わなくても心に秘めて機動的に出動したり引いたりするというのが本当の姿だろう。国民はそう見ていますね。しかし、一生懸命やっていらっしゃるかもしれませんけれども、そのことが全然数字に出てこない。そのあたり、何かわだかまりみたいなものをみんなが持っておるわけでございまして、私は、もっとめり張りのある為替外交あるいは為替介入のあり方みたいなものをやるべきだと思いますね。  御案内のとおり、購買力平価だとか、あるいは資本の流出入のバランスのとれるところで平価が決まるとか、経済のファンダメンタルズがすべての決め手だとかいろいろなことを言いますけれども、私はもう既に政治力平価だと思いますね。ベーカーさんが一言言うただけで物すごく為替相場には響くのでございますから。その割には日本の当局というのは余りにも口がかた過ぎて、余りにも秘密主義で、結局翻弄されっ放しだというのが私の感想ですね。この際、政治力平価であればあるほど皆さんも政治力を使ったらどうですか。経済的にはいろいろもてはやされるけれども、政治的にやはり劣等国だと見られておるのですか。そういう意味で、私は、これから先の為替相場というものはもっと機動的に、そして政治力を発揮しながら、もっと安定したものにしてもらいたい。これから為替相場は一体どうなるのですか。
  329. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 為替相場の推移を予想いたしますことは不測の事態を呼びますので遠慮しなければならないと思いますが、私自身、ただいまの円の相場というものは、非常に急激に起こりましたことを考えますと、明らかに円が高過ぎるというふうに考えております。アメリカの状態から申しますと、従来までのところ、先ほど申しましたように石油価格が急落したことと、国際収支がよくなりませんために、この辺で本当はアメリカとしてもドルが低過ぎるというふうに考えるべきところを意外にそう感じておらないというのが、ここまでのアメリカの現状であったと思います。  ただ、今回もいわゆる小人数の会合でいろいろ議論されましたことでございますが、これ以上ドルが急落するということについては、連邦準備制度理事会等々の中にもそれは必ずしも好ましいことでない、そういう点までもはや来ておるのではないかという考え方がかなり出てきておるようでございまして、そういう意味では政策の協調によって安定をさせていくことが望ましいという考え方が出てまいっておりますことは注目に値すると思います。
  330. 米沢隆

    米沢委員 三菱銀行の調査によりますと、大体G5以前においてはすべての業種で我が国製品が優位に立っていた。しかし、円高の進行とともにその優位が失われて、一ドル百七十円でなお強い競争力を持つのは電気機械、一般機械など一部の業種にとどまる、一ドル百五十円ではほとんどすべての業種で価格競争力を失う、こういう分析をされておりますね。  それは、いろいろな計算の基礎があるかもしれませんが、少なくとも現在の百五十円台というのは異常に高過ぎる。これでは、幾ら産業調整で軟着陸をやれと言われても、これは無理なところに来ておる、そういう認識をまず持っていただかねばなりませんね。そしてまた、でき得れば何も表に出さなくても、政府部内にもターゲットゾーンをつくって、そのターゲットゾーンに外れた部分には機動的に対処する、そういう決意を固めてもらいたい。できれば宮澤大蔵大臣の一言が円相場の安定化に向かうような相場をつくる、そのときあなたは大宰相だと言われる、こう思いますので、ぜひ頑張ってほしいと思います。  さて、次は石炭の問題でございます。  そのような円高のために今あらゆる産業が歯を食いしばって、何とかしてうまく現在のこのような円高に対応しようと汗みどろになって努力をされておる最中でございますが、その中で、やはり国際的な競争力という点からして宿命的に厳しい情勢にある石炭、農業、このあたりがこれからの大変な正念場を迎えるであろうと私たちは考えております。  そこで、石炭について一言お尋ねしたいと思うのでありますが、御承知のとおり、今石炭鉱業審議会におきまして第八次の石炭政策の検討が重ねられております。炭鉱をつぶすということは、地域経済あるいは雇用に大変大きな影響を持つ、あるいはエネルギー安保という観点からも何か将来禍根を残すのではないか、そういう議論が今多く出されておりまして、我々は、現在のこの石炭鉱業審議会が、どの山をつぶすかではなくて、どの山を生かすかという、そういう姿勢でぜひ取り組んでもらいたいな、こう思います。同時にまた、現在の国内炭の有効利用をするための内外炭価格是正措置あるいは石炭特別会計、このあたりに何か工夫はないのか、本当に工夫はないのか、そのあたりを真剣に議論されて、石炭政策というものをうまく進めてもらいたいと思うのでございますが、簡単に一言御答弁いただきます。
  331. 田村元

    田村国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、今審議会で御審議中でございます。私が予測を与えるようなことを今申し上げることはいかがかと思います。  ただ、先般、去る二十五日に作業を急いでいただきたいということをお願いしました。総理からも、なるべく早く結論を出すようにという御指示もございました。その結果を見て我々は対策を講じなきゃなりませんが、御承知のように鉄鋼の問題がございます。セメントがございます。売り手のみならず買い手までがお手上げだという状態で、大変難儀な時期を迎えております。今、八次審の答申を心待ちにしておるところでございますが、先般も石炭と鉄鋼と中立が向坂座長のもとで議論を始めました、三十日のことでございましたか、これから活発に審議会の審議が動いていくことを期待いたしておりますし、その結果を踏まえて、今おっしゃったようなもろもろの問題を検討していきたい、このように考えております。
  332. 米沢隆

    米沢委員 次に、農業の問題でございます。  御案内のとおり、農業を取り巻く環境もますます厳しくなっておりまして、いわゆる外圧も内圧もいよいよ高まってまいりました。振り返ってみますと、昭和三十六年でしたか、農業基本法という法律が制定をされまして、当時他産業に比べて比較劣位にあったこの農業というものをもっと近代的な産業にしよう、食える農業にしよう、後継者が育つような農業にしよう、そして生産性を上げて国際競争に耐える農業にしよう、こういう目標を立ててこの法律が制定されたと聞いております。そしてその農業基本法の具体化として、いわゆる農業近代化の促進あるいは規模拡大、選択的拡大、そして総合農政と、確かにきれいな言葉はたくさん出てきましたけれども、残念ながら、農民からは猫の目行政だといって強い非難を受けたことも事実でございます。  そしてその結果、この二十年にどういう変化をしたかといいますと、少なくとも、この二十年の間に我が国の食糧自給率というものは年々低下をいたしておりまして、結局約二〇%ダウンしました、その当時から。そして御承知のとおり、穀物の自給率に至りましては三二%と、先進国でも最低の部類に入っておることは御案内のとおりでございまして、食糧安保という観点からもゆゆしき問題だと私たちは考えざるを得ない、こう思っております。そしてしかも、農家経済は一戸当たり農業所得約百万円強、こういう状況でございまして、国際競争力を持つには極めて厳しい数値だ。そして米麦の値段はアメリカの約五倍前後と言われるごとくに、基本法農政が目標とした目標値とはほど遠い現状にある。私は、現在起こっております内圧にしても外圧にいたしましても、それに耐えられないということ自体、農業の停滞、不振、その一点にあると思いますね。  そういう意味で、この外圧にも内圧にも耐えられる農業は一体いつになったらできるのか。そのために一体何をしなきゃならぬのだ。そして政府は、今この経済摩擦のあらしの中で、あるいは産業構造の転換というあらしの中で揺れ動いておる農業というものに対してどういう産業の位置づけをするのか。そして、基本法の目指す農業というものの確立のためにどんなアプローチをされようとしておるのか。もういいかげんに農業に対するびしっとした視点を決めて、本当に食える農業にさせてやる、そういう意気込みと同時に、あちらにもまた努力を求める、そういう姿勢が農政に必要になってきたのではないでしょうか。農林大臣の所見を求めます。
  333. 加藤六月

    加藤国務大臣 御指摘の自給度の低下あるいはまたその間におけるいろいろな数字は、私の持っておる数字と同じでございます。  そこで、農業基本法が過去果たしてきた役割というのを見ますと、畜産物あるいは果樹、野菜等における国民のニーズに合った選択的拡大の役割は果たしてきておる、こう考えております。そしてまた、今も御指摘になりましたが、農外所得というものと農家所得の全体を総合したものは都市労働者にまさるとも劣らないところにまで持ってきたという効能はあったと私は思います。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕 しかしその反面、今御指摘されました、自給度が非常に高くなったものと極端に自給度が低くなったものと両極端化してきたという事実は率直に認めざるを得ない、こう思います。御指摘にありましたような穀物でありますとか飼料作物、こういうものはおっしゃるとおりでございます。そしてまた、その反面、米を中心とする過剰傾向というものも率直にあるわけでございます。そこで、生産力を高め、農業が産業として自立していく方法というのを私たちは真剣に考えなくてはならないときに参っております。  そこで、農政審議会に二十一世紀における農業ビジョンというものを今お願いしておるところでございますから、私がここから先をどう申し上げるか、余り出しゃばって申し上げるのもどうかと思いますが、要は生産力を高め、生産基盤を拡大していくという一点にあるのではないだろうか、そして、それをやっていく過程において内外の価格差というものを脳中に置きながらこれを解消していく必死の努力をしなくてはならない、こう思います。そしてまた、先ほど来おっしゃっておられます産業全般の大変な疲弊、こんぱいあるいは空洞化、雇用不安、こういうものをにらみながら我が国の農政のあるべきものをはっきり位置づけていかなくてはならないときが迫っておる、こう思っております。  いずれにしましても、今秋までには農政審議会の二十一世紀における農業ビジョンの御答申をいただきまして、それを十分参考としながら新しい農政を考えていこうと考えておるところでございます。
  334. 米沢隆

    米沢委員 アメリカからの米の自由化の要請あり、食管制度の是非についての議論あり、いろいろと今農業を取り巻く環境は厳しいものがございますが、基幹作物である米を自由化するということは、これは完全に食管制度をなくすということであり、同時にそれは農政の基本を問われるといいましょうか、食糧安全保障という観点からも大変重要な問題でございますから、そう軽々に議論するものではない、そう思います。したがって、安ければ安いものを買えばいいじゃないか、こう言われても、やはりそれは、いつまで我々が貿易黒字を保つことができるのか、あるいは将来の自給等の動向を見ますと、経企庁のレポートなんかを見ますと将来的には大変迫逼するであろうと言われる。そのときに、もし食糧というものを外国にすべて依存するような形になっておりますと、戦略物資として日本ののど元を突かれるであろう。そういうことを考えたときに、やはり将来を展望しながらこれから先の食管制度みたいなものは議論していかねばならぬだろうと思います。  しかしながら、だからといって、高い食料品でいい、都市の皆さん方の、消費者の皆さん方のニーズ、要求にこたえなくてもいいということではない。できる限り安い農産物をつくるという努力をしてもらわねばなりませんし、同時にまた、現在の補助金そのものが本当に生産性を向上させるために使われているのかどうかという、そういう厳しい目を一応持ちながらこれからの農政を議論していかねばならぬだろうと思います。  この前、うちの塚本委員長がちょっと発言をしましたら、その言葉が大変ひとり歩きをいたしまして、何か民社党はと言って大変おしかりをいただきました。しかし私は、農政も決して聖域ではありませんから、論を起こさねばならぬと思いますね。ともしますと今までの農業というのは、農村の農業者と都市の勤労者といいますか消費者と何か対立するような議論の中でしか議論されない。もっと農村が都市の勤労者の消費者物価みたいなものを理解をし、そうしてまた消費者も農村の実態を理解しながら合意する中で議論していくということが本当の農政を確立する道である。どうもそのあたりが欠けておったところに私は問題があるのではないかと思います。  そういう意味で、総務長官あたりがいろいろと問題提起されていることは全く結構なことでございまして、これからもどんどん論議を重ねていただきたい。時間がありませんので、総務長官にも質問しようと思っておりましたが、割愛をさせていただきます。  それから、時間がかなり切迫しておりますが、総合経済対策についてちょっと御質問をいたしたいと思います。  先般、三兆六千億という規模の総合経済対策をまとめられて発表されました。財政再建の路線を堅持しながら何とかかんとかやりくりしようというわけでございますから、御苦労には敬意を表します。しかしながら、今回の対策は景気対策としては戦後最大のものだ、こう言われておりますけれども、どうも評判はよくありませんね。評判よくない。そして、評判のよくない理由は後でいろいろと申し上げますけれども、私ども率直に言って、今度の対策は、先ほども正木委員の方から御指摘がありましたように、大体遅過ぎますね。そして、決めてから補正予算をつくるまでの時間がまたこれは遅過ぎます。一体何を考えておるんだという感じがしますね。もしこの対策をことしの初めに起こしておったらどうなるだろうか。衆参同日選挙の前に実行しておったらどうだろうか。それこそ衆参同日をやめて、あのときに本当に円高対策を初めとしてこんな対策を打っておったらどうだろうか。時期がおくれればおくれるほど金額は幾ら膨れても効果がない、こういう事実を賢い皆さんがわからないはずがない。ところが、残念ながら事実はそのようにして後送り後送りになっておるわけでございまして、その間まさに経済の実態とは離れた総額、離れた経済対策、そういうものが私は非常に問題である、こういうことを指摘しなければなりません。  こういうことでありますと、先ほど大蔵大臣の方から訪米報告等ありましたけれども、私はますます、まさに日本の国際責任とは何かということが問われて、円高を逆に高くしていくような状況になりかねないものではないかなと大変危惧いたしております。そのあたりを留意されまして、もう少し補正予算等を──確かに議論はありましょうね。国庫債務負担行為に何ぼするかとか、災害が確定できない。それは、お役所で何円何銭まできれいにするとなれば時間がかかりますわ。ところが、災害対策何ぼ要ったかなど、これが一兆円にも二兆円にもなるんじゃないのですから、少なくとも概略的な、建設国債どれぐらい発行しようかというぐらいのアバウトな議論は、政治家でしょう、できるはずですよ。ところが、数字が合わない限りそれはできないなんというのは逃げだな、こんなの。私はそういう意味で、もっとまじめに経済対策を考えてもらいたい。大蔵大臣、一言御所見を求めます。
  335. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうもおしかりをいただきまして恐縮でございますが、先ほども申し上げましたように、実際ここで補正をいたしますと、歳出歳入両方ともかなり大きく振れる要素がございますので、十月の半ばごろまでその作業の開始を実は控えておるわけでございます。その時点でわかりましたことは全部盛りまして御審議を仰ぎたいと思っておりますので、そのような事情のありますことはどうぞ御理解をいただきたいと思います。  なお、全体の問題をもっと今年早くに考えておけば有効ではなかったかとおっしゃることにつきましては、特に反論を申し上げることもございませんけれども、まあいろいろな事情でそれができずに今日に及んだということでございます。
  336. 米沢隆

    米沢委員 これも先ほど議論になっておりましたが、大体このような総額三兆六千億という、規模にして大変大きなことに見えますけれども、先ほどからるる問題点が指摘されておりますように、実際年度内に何ぼこれが実行できるのかという議論からしますと、まさに論拠薄弱、これではもう政府の公約の四%達成なんか、努力しようとおっしゃるのはよくわかりますが、まずここでギブアップしておる、こういうことになってくると思いますね。経済企画庁長官、一体どれぐらいの経済成長率を見込んでおるのですか。
  337. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先ほどもお話をいたしましたように、四月、五月と二回の対策をしてまいったわけでございますが、それ以後の円高がさらに急激に上昇いたしましたということもございまして、早急に九月十九日に対策を立てたわけでございますが、三兆六千三百六十億というのは名目GNPの一・一%でございますから、これを実は完全に消化いたしますと、私どもの計算では四兆九千億、率にして一・五%のGNPの上積みになる、こういうことでございます。問題は、それは一年ぐらいにわたっての計算をしておりますけれど、六十一年度GNPの伸び率を上げるということを考えれば、当然いわゆる前倒しといいますか、できるだけ年度内にこれを消化しなければならない、こういうことでございまして、実は大蔵大臣にもお願いして補正予算を大至急編成していただくことになっておりますけれども、けさも閣議で総理の御了解を得まして、関係各省がこの実施のスケジュール表をつくって、そして経済企画庁に示してほしい、私ども検討いたしまして、場合によってはそのスケジュールをさらに前倒しをしていただくということで何とか年度内に契約をして実行に移したい、こういうことでございます。  実は、先ほども申したのでありますけれども、現在は非情な低金利時代でございますし、資金が余っておりますので、いわゆる国庫債務負担行為ということにいたしましても、契約が済めば国が建設国債を発行して払うということではなしに、民間の金融期間で融資を仰ぐことは従来よりも非常に楽な状況でございますが、問題は、できるだけ早く契約を消化する。契約を消化すれば、民間金融機関も優良な貸し出し先を望んでおりますので、一つの大きな動きになってくるのではないか。  それから、お話もございましたけれども、大変な円高、これにこそ日本の産業は対応していかなければならない。そのためには産業構造を変換をする、また思い切った合理化をする、さらには研究開発に投資をする、そういうことで、いろいろ関係者に聞いてみますと、非常な潜在的な投資需要があるわけでございます。ですから、その潜在的な投資需要が具体化するためには政府の責任において成長政策に踏み切る、それが今度の三兆六千三百六十億の総合経済対策であると御理解いただきたいわけであります。  それからもう一つ最後に、円高差益ということでございますけれども、これも実はマクロで申しますと、毎月毎月前年度よりも二割ぐらいずつ円ベースの受け取りが減っております。これはまさにデフレ効果でありますけれども、逆に輸入の支払い代金、これも円ベースで見ますと前年同期より四割減っているわけでございます。ですから、差額が、相当の円が残ってくるわけでございます。ですから、そういったものが末端まで還元してまいりますと、暮れから来年にかけてさらに消費需要を増加させることができる、こういうことで、経済のことでございますが、国そして民間の企業と一般国民の皆さんが三位一体で前向きに対応していけば、私は相当のことがこれからできるんじゃないか、かように考えている次第であります。
  338. 米沢隆

    米沢委員 経済企画庁長官ですから余り先行きの暗いことを言っておりましても話になりませんから、努めて明るく振る舞われておるんだと思いますが、それは皆さん、本当の産業界、経済人はみんな深刻に見ておるのではないかと思います。そのことだけつけ加えたいと思います。  そのほか、いわゆる建設国債の発行だとか地方財政に留意してもらいたい等々、いろいろと問題はありましたが、余り時間もありません。結局、これから土地問題ですね。総理、私は、この前の土地の価格動向等が発表になって考えましたのは、やはり特に東京がひどかったですね。確かにこれからの将来の都市像を見たときに、東京にみんな集中するということはよくわかるのですが、東京に集中する都市づくりというのが結局東京の高土地価格に完全にもう先行投資として出てきておるというのが率直な話じゃないでしょうか。  私はそういう意味で、今国土庁の方が四全総というのですか、つくりつつありますけれども、その中にもっと地方分散というものを強力に入れて、それを内閣が全力を挙げてやるという、そういうことを示すような中身をつくってもらわねば東京の土地問題は絶対に片づかないだろう、こう思うのです。  それからもう一つ、民活民活というのは、もう中曽根さんのお得意の文句でございます。しかし、規制緩和をして果たして民活に結びついた事業が一体何ぼあるだろうか。特に地方に行きますと、これはもう大変、ほとんどないのではないかと言ってもいいのですね。確かに規制緩和については通達等が建設省から出されて、それぞれ努力されておる姿はわかりますし、少しずつ規制緩和も進んでおることは事実でございますが、しかし、笛吹けど踊らず、中曽根さんが幾ら民活を叫んで規制緩和をおっしゃっても、実際は規制緩和をする仕事は地方のお役人が持っているところがたくさんありまして、そこらがその気にならぬ限りこれはだめなんですね。  ところがどうしても、今まで規制しておったわけですから、それなりの仕事だと思っていらっしゃる、またそれを緩和することは問題だというふうなものもあるのでしょう、一向に進んでない。結果的には、地方において規制緩和をされることによって、それが草の根民活に結びついたなんというのはまだ皆無じゃないでしょうか。そういう意味で、私は、本当に民活を生かしていくためには、ただお役所の中央だけじゃなくて、地方のお役人も含めて、国民も含めてみんなで規制緩和をして民活をやろうという芽を育てる、醸成する、そういう機関まではいきませんけれども姿勢があらゆるところに出て初めて中曽根さんの民活は成功すると思うのですが、所見を簡単にお伺いしたいと思います。
  339. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 東京、大阪、そのほかの大都市の土地の地価の上昇の問題については、我我も非常に重要に考えております。基本的にはやはり供給をふやすということが、長期的な基本的な政策であると思います。それと同時に、やはり今の地方分散ということも考える必要もあると思います。いずれにせよ、四全総におきましてもこれは大いに大きく大都市問題として取り上げるように私からも指示したところでございますし、また現実問題といたしまして、土地の供給を増加させるという点についても民活とあわせて今いろいろ計画させておるところであります。  それから確かに、民活という問題について地方で動き出しているという問題はそれほどまだ多くないと思いますが、先般の民活特別法については大体五十五プロジェクトぐらいがあるということを聞いております。四省庁におけるいろいろな今のプロジェクトにつきまして、大至急これが稼働するように今積極的に努力してまいりたい。今回も法律の改正をやりまして、それに便なるように特別の補助金とかいろいろなそういう措置を講じておるところでございます。
  340. 米沢隆

    米沢委員 まだ総合対策、いろいろと疑問があったのでございますが、余り時間もありませんので、最後に税制問題について触れてみたいと思います。  さきの総合政策で画竜点睛を欠くのは、減税が入ってなかった、この一点に尽きると私は思います。これは先ほど来いろいろと議論になっておりますから、くどくど申したくはありませんが、三月四日の公党間の約束、これは所得減税については「六十一年中に成案を得る。」ということでございますが、公党了解として金丸副総理は、実現することですねと言ったら、うんと言った、そういうことが各党の目の前で行われて初めて予算委員会が立ち上がった、そういう経緯がありますから、少なくとも公党間の約束は実施するというのが最低限の議会制民主主義のルールだ、そういうことを申し上げたいと思います。  そしてまた、成案を得る努力はしますよ、だから政調・政審会談でやってくださいとおっしゃいますが、我々野党はもう既に減税案を出しておるわけです。そしてこれについてどういう御見解か、自民党の回答をくださいと言っておるところですね。ところが回答をくださらない、誠意ある回答を見せてくださらない、だからそれはデッドロックに乗り上がって成案を得ようがないのですからね。そういう意味では、みんなそちらに逃げ込んでしまって、政調・政審会長間でやってください、そこで成案が出たらやりますよなんという逃げはやめてもらいたいと思いますね。天下の自民党でしょう。選挙のときはちゃんと自民党に任せろとおっしゃるのです。そして中曽根総理自民党の総裁でもあるわけですから、ただ使い分けて、今は政府の方、今度はうまくいったら自民党と、こんなのやらずに、あなたは自民党政府内閣総理大臣という二つを持っておられるわけでありますから、もっと誠意を見せてもらいたい、このことを私は申し上げたいと思うのです。  それから、すべて来年の税制改革に逃げ込んでおるというのが実情ですね。ところが、私は来年の税制改革等につきましても議論の仕方に大変問題があると思っておるのです。それも、最初から大型間接税導入ありきですよ、議論の仕方は。我我は、例えば減税のときに、いわゆるおまえら野党は財源について無責任だとおっしゃる、だから財源について不公平税制こんなものがありますよ、もっと経済政策も変換してください、あるいいは執行体制はどうなんですかといろいろ申し上げた。そして少なくとも、全部は財源化できないにせよ、かなりのものはやろうと思えばできるはずだと私は思うのですね。  ところが、そんな議論はみんな横に置いておって、ただ大型間接税を入れなければいかぬので減税が始まったという、何かそんな論議の仕方にしか見えないのですね。そのあたり私は、中曽根総理、税制改正で今政府税調で頑張っていただいておるという議論はよくありますけれども、私は税制の議論のあり方としては非常に矛盾に満ちたといいましょうか、不明朗で、まさに国民をないがしろにする議論が始まっておるということを指摘しなければなりません。大型間接税の導入がまさに当初からありきという議論では、これは納得できませんね。  我々はそういう意味で、今度の減税を要求するのも、大型間接税を相手にしての減税をしてくれとは言っていません。少なくとも不公平税制、例えば非課税貯蓄の限度管理をもっと徹底してもらいたい、期限のやってきた租税特別措置の見直しをしてもらいたい、貸倒引当金の実態の見直しをしてもらいたい、キャピタルゲインについて本当に検討してくださったのですか、資産所得の課税等のあり方、有価証券取引税の適正化、譲渡所得の課税の強化、それから申告納税制度の整備強化、所得捕捉率をもっと高めてもらいたい、脱税の防止を一体どう考えておるのですか、そういう今申し上げたことを事細かに――それは難しいものもありましょう。難しいからやってないのですからね。しかし、やる気があってやろうとなされば、何も大型間接税なんか相手にしなくてもそれなりの減税の財源はできるのです。しかし、やる気がないからそれをしてくださらない。そういうところに私は大きな問題があるような気がしてなりませんね。  現在の所得税のいろいろな抜本の議論にいたしましても、もともと所得税は総合課税を追求しようという所得税体系ができたのですから、それからどんどん優遇税制が始まったり租税特別措置が始まってどんどん空洞化して、課税の浸食が始まっておる。なぜそんなのを抜本改正で議論してくださらないのですか。確かに、減税の規模を何ぼぐらいにしましょう、そのためにはもうマル優の廃止と大型間接税導入、なぜ短絡的にそこに行くのですか。そこに行く前に、大型間接税の導入がなくてもマル優の廃止をしなくても、それ以前に減税の財源として頑張ろうと思えば何ぼでも出てくるのだ。その議論を何もせずして全体的に抜本的な改正、言葉はありますけれども、こんなことでは何も抜本改正じゃありませんね。大型間接税が入れば抜本改正だ、そんな議論は通じません。  そういう意味でもっとまじめにその議論を、抜本改正とおっしゃるならば、シャウプ税制以来の改革だとおっしゃるならば、ただし減税のために大型間接税を入れるのではなくて、もろもろの議論をしてもらいたいな、本当にもろもろの議論を、執行体制を初めとして。そういう議論をしてもらいさえすれば、もう時期はちょっとおくれましたけれども、六十一年といってももうすぐですから。しかし、もっとこの議論を、昨年から、その先々年から我々は議論しておるのですから、そういう意味で私は非常に現在の政府税調の議論の進め方、それを操っておる大蔵省のやり方はけしからぬと言わざるを得ないのですが、大蔵大臣の見解を聞かしていただきたいと思います。
  341. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたびの税制改正の一つの大きなねらいが、いわゆる中堅サラリーマンを中心に所得税の大幅な減税をする、累進度を緩和いたしましたりあるいは控除を改善いたしましたり、及び法人税でございますが、そういたしますと、その財源をどこに求めるかという問題がございまして、今それが検討されておるところでございます。  なお、ただいま米沢委員がちょっとおっしゃいましたことでございますけれども、そういう過程の中で、確かに長い間に租税特別措置等の形でいろんなものが蓄積をいたしておりますから、これはできるだけ整理をいたしまして、税制を簡素にするとともに、そこから財源を探さなければならないということは、これは決して怠らずに一生懸命やらなければならないと思っております。
  342. 米沢隆

    米沢委員 時間が来ましたので終わりますけれども、私は本当に公正、公平を求めるという理念のもとに、現在の所得税体系の中からも組みかえで減税財源はできてくる、そう思う一人でございます。  時間がありませんので、また次の機会にお願いいたします。ありがとうございました。
  343. 砂田重民

    砂田委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  344. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、総理及び関係閣僚に質問いたします。  きょうは時間が限られておりますので核兵器、核戦争の問題に絞って御質問したいと思っておりましたが、それに先立って、さきの静岡の自民党研修会での首相の発言の問題について若干の質問をいたしたいと思います。  きょうも一日この問題でのやりとりを聞いておりましたが、なかなかわからないことが一つあるのです。一体総理アメリカへのメッセージの中で何をわびられたのかという点であります。つまり、総理があの研修会発言された内容について、そしてまたそこで展開された主張について、これが落ち度であり、間違っていたからわびられたのか、それともそれが引き起こした結果について、あるいは誤解についてわびられたのか、このことについてまず明確にお答えをいただきたいと思います。
  345. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカの皆さん方に対しまして、私の不用意な発言で非常に感情を害しました、そういうことについてわびたということであります。
  346. 不破哲三

    不破委員 そうすると、あの発言の内容を取り消されたと考えてよろしいですか。
  347. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 わびたという以上は、私の発言というのは私自体がある程度否定している、そう考えて差し支えないと思います。
  348. 不破哲三

    不破委員 それで、この発言について、私は、たまたまあらわれたものじゃないということが非常に大事だと思うのですね。実は私は、これは中曽根総理のいわば持論とでもいうべきものだ。総理がかつて拓殖大学の総長をやられていた当時、私はここに「拓大一高生に告げる」という当時の総理の演説集を持っておりますけれども、その中でまさにちょうどこれと同じことを総理が展開されているわけですね。  例えば、一九六八年の一月の演説では「日本人には、能力がある。日本はカルフォルニア一州ぐらいのちっぽけなところに、一億の民族が住み、世界最高の濃密社会となった。」まさに「日本民族は優秀なのであります。」ということで、日本民族優秀論という形で展開されている。  翌年の一月には、同じ日に「わが日本には、一億の人口があり、しかもみんな高い義務教育を受けており、愛国心に富んでいる民族であります。この一億人は、天照大神以来の大和民族と称しており、灘の生一本であり合成酒は入っていません。」つまり単一民族であっていろんな人種がないということを強調しているわけですね。そしてそのときにもアメリカと比較をして「アメリカでは、約二億人もいるが白人と黒人が同居していて、〝ケネデイ暗殺〝のような血なまぐさい争いをしているのであります。」と、やはりここでもアメリカ日本を比較して、いかに日本が優秀か、それでアメリカが優秀でないのは合成酒だからだということを、ケネディ暗殺に白人と黒人の対立が関係したということは聞いたことはありませんけれども、そういうことで議論をしている。  この二年分の演説をまとめてやられたのが私は今度の自民党研修会での発言じゃないか。これはまさに十七、八年前のことでありますが、それ以来同じ思想をずうっと持っておられてそのことを言われたんだとすると、これはやはり非常に重大な問題であって、ただそのときに舌が滑ったとか舌が足りないとかいうわけにいかない問題だ。そして中曽根首相の日本民族優秀論というものと不可分に結びついている。それだけに私は、この問題をただのことに済まさないで、そういう議論がアメリカ国民の感情を傷つけたと同時に、いわば日本国民への信頼を傷つけたという点ではまさに国民的な問題であります。ですから、結果として取り消したということじゃなしに、国会の場で明確にやはり撤回する発言をしてもらいたい。  それからまた、あわせて女性べっ視の発言についても、きょうはジョークだと言われましたが、あれは中曽根首相が政治家として、女性有権者を引きつけるためにはどうしたらいいのかというノーハウをいわば自民党の皆さんにお伝えした部分だと思うのですけれども、そうであるだけに、これは決してジョークだといって済ますわけにいかないわけで、私は、他民族べっ視と、それからまたそれと結びついた日本優秀論の展開、そしてまた、あの女性べっ視の発言については、明確な取り消しと、国会の場で国民への信頼を傷つけられた日本国民への陳謝を明確にしていただきたいと思うわけであります。
  349. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、やはり日本民族は同質性を持っている、ほかの国家も同質性を持っている国もありますけれども、日本はそういう面では同質性の強い民族の一つである、これはやはり客観的事実であろうと思っております。だからといって日本民族が優秀だという意味ではありません。これは多人種によってできている複合国家の場合でも、アメリカのように実にたくましい立派な国家もございます。だから、必ずしもそういう同質性が優秀であるということで私はそれを言っているのではない。ただ、日本にそういう特色がある、そういう意味で言ったのであります。  この間の発言におきましても、我々の方は言葉が一つだから非常に教育もやりやすいし、手も届きやすい、しかしいろいろ言葉が複雑なそういう国家の場合にはやりにくいだろう、そういう意味の趣旨のことで言った。それから、もう一つ私の頭の中に潜在的にあったのは識字率の問題がございまして、あの演説の中でも徳川時代の日本の識字率を引用しておるわけであります。それはやはり潜在的にはあった。そういうことでありまして、けさ以来ここで申し上げているとおりの心境であります。  それから、女性の問題につきましては、これも先ほど申し上げましたように、女性は非常に審美眼が強くなってきている、そういう意味で我々は大いに注意を要する、そういう意味のユーモアを込めた話で話したということであります。
  350. 不破哲三

    不破委員 総理発言の中身がどういう意味で総理の持論であったのかということは先ほど紹介しましたから繰り返しませんが、私たちは、やはりそれだけに重大な問題だと考えています。それに基づいて、あの発言の明確な撤回とそれから日本国民への国権の最高機関である国会の場でのきちんとした陳謝、これは最小限の責務だということを指摘し、私どもは引き続きこの問題についてそう主張してまいりますことを申し上げて、次に進みたいと思います。  それで、きょうもこの委員会で、総理の選挙中の言動とそれから選挙後の実際の行動とが相反するのではないかということについていろいろな角度から議論がありましたが、私は、この点で非常に極端な、しかも全く重大な問題の一つが平和と軍縮についての総理の選挙中の公約だと思うのです。それが実際に、特に選挙前でもそうですが、選挙後の行動にもあらわれていない。そういう問題を含めて、私は、核戦争と核兵器の問題についての今の政府の政策、行動、それから日本国民としてどう見るべきかという点について議論を多少いたしたいと思うのです。  これは有名な言葉ですけれども、アメリカの外交に深くかかわっていたケナン氏が、世界の中で核戦争の問題で発言する道義的権利を持っている最大の国民日本国民だ、歴史上ただひとり恐るべき核攻撃の犠牲となった国民だということを言ったことがあります。その点では、まさに核問題が世界と日本の中心問題になっているときに、日本国民日本政府が何を言うかということは、大いに世界が注目している。ところが、実際に中曽根内閣の世界に聞かれている声というのは、そういう期待にはこたえないわけですね。  先日、スイスに本部のある国際婦人団体で婦人国際平和自由連盟という団体があるのですが、そこの働いている婦人から日本の原水協に手紙が来ました。私たちは日本の広島、長崎を思い八月を迎えたんだが、その八月にスイスのジュネーブで行われた軍縮会議日本の大使がやった演説を聞いて大変悲しかったと、その演説のコピーを送ってきました。  私それを見たのですけれども、何が悲しかったかというと、彼女の手紙は、「特に憂慮すべきことは、過去四十一年間平和であったのは、おそらく核兵器のおかげである」という主張だというのです。それで、果たして日本の大使がそんなことを言うかと思って、私は送ってきたこの英文のコピーを読みましたら、確かにその中で「核兵器庫の膨大な増加にもかかわらず、あるいはそうした増加があったからこそ、世界は過去四十年間核の破局をなんとか回避することができた、ということが指摘されている。」指摘されていると書いてありますが、被爆国の代表である日本の国の大使が、世界の平和は核兵器がふえたおかげである、そういうことを軍縮会議の場で平然として言う。私はその発言には大変驚きました。本会議でもしばしば私自身中曽根首相と討論をして核兵器廃絶の問題についていろいろ伺っていますが、核兵器廃絶というのは、業の兵器をなくそうというのは私の一貫した主張だと言われている。ところが、その一貫した主張にふさわしい言動が日本政府としてとられていない、そういう疑惑が生まれている。ここに大きな問題があると思うのです。  それで伺いたいのですが、一体中曽根首相は、核兵器廃絶、それに向かう方法論は我々と違うということは何遍も言われました。方法論の違いはともかくとして、核兵器廃絶という声が日本の国内やあるいは世界に広がることについてどうお考えなのか、それはいいことだとお考えなのか、それとも余り思わしくないことだと考えられているのか、その点について伺いたいと思うのです。
  351. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器廃絶というものを最も叫んでいる政治家の一人は私だと思っております。これは、本会議でもあるいは国連におきましてもそういう趣旨のことを強く訴えてきております。日本在外公館の大使も我々と同じ政策を言っておるはずです。そして、しかしそれを現実的に行うためには、やはり検証の前進であるとかそういう安心できる措置を伴ってそれは進めるべきである、そういうこともあわせて言っておる。そして、次第次第に核兵器を削減して、最後にゼロにしよう、そういう段階的な措置もまた言っておるわけであります。
  352. 不破哲三

    不破委員 私が伺っているのは、そういう政治を進める傍ら、日本国民の世論としてあるいは世界諸国民の世論として、核兵器をなくそうという声が、運動が、あるいは世論が広がっていくことについて首相はどうお考えかという点であります。
  353. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器をなくそうという声が広がることは結構なことであると私は思います。
  354. 不破哲三

    不破委員 それなら伺いたいのですが、ことしの自民党の大会で昭和六十一年度党活動方針が決定されておりますが、その中で「革新勢力による「非核都市宣言」運動の根絶を図る」ということを書かれておりますね。これが党の大会として決定されている。中曽根首相は同時に自民党総裁でありますが、非核都市宣言というのは皆さん御承知だと思いますけれども、現在日本で千を超える自治体で決議されていて、内容は圧倒的に非核三原則の厳守と核兵器廃絶の声を広げること、世界各国にこれを要求すること、これが圧倒的内容です。その運動の根絶を図っていくということと核兵器廃絶の世論が広がるのは賛成だという立場とは私は両立しないと思うのですが、この点についていかがお考えでしょうか。
  355. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はその運動方針を細かく読んでおりません。前は読みましたけれども、まだそれほど深く記憶しているわけではございません。しかしその趣旨とするところは、これは私が今申し上げたような趣旨に沿ってやっておる。しかも、やはり現実に平和が維持されているというのは、残念ながら抑止と均衡によって平和が維持されておる。核兵器もそういう意味の抑止力の一つとして世界的には作用している。そういう現実を踏まえてやらぬといかぬ。  それから、地方都市におきまして非核都市宣言を行うということは地方都市の自由でありますけれども、国防とか外交という問題は、これは中央政府の専管的な所掌事項である。地方政府がおやりになることは御自由であるけれども、我々自体が中央政府として一生懸命やっておるので御心配に及ばず、そういう意味の話ではないかと思っております。
  356. 不破哲三

    不破委員 地方自治体の自由だと言いながら根絶を図るというのはどういうことですか。根絶というのは、自民党としてはやらせないということだと思います。しかし、千を超える自治体、今人口の過半数を超えておりますけれども、そこは別に革新議員が多数の自治体が圧倒的ではないのですね。そうであったら日本の情勢はもっと変わっているはずであります。自民党あるいは自民党系の議員が多数の自治体を含めて、中曽根さんの群馬県の高崎市を含めて、そういう決議がやられている。まさにここに核兵器廃絶を願う国民の声があると思うのですが、それを根絶しようということを党大会で決められる。私は、これは非常に重大だと思うんですね。  それで、今総理は、核兵器廃絶は言うがアメリカの核抑止力には頼るという立場だと言われましたが、この双方の関係ですけれども、核兵器廃絶の対象にはアメリカの核抑止力は入らないということですか、それは。
  357. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 世界の核兵器が入る、こういうことで、アメリカもソ連も入る。しかしそれをやっていくやり方については現実性と確実性がなければならぬ、そういう意味です。
  358. 不破哲三

    不破委員 方法論についてはいろいろ違いがあるということはさっき申しました。これから議論するつもりでありますが、今は目標を問題にしているわけです。  それで、核兵器廃絶の対象にはアメリカの核兵器も含まれるということを明確に言われましたが、この自民党の大会の決定には「われわれは、この運動の欺瞞をあばくため、昨年『「非核都市宣言」は日本の平和に有害です』・『反核運動の欺瞞と危険性』の二冊の資料を作成した」というふうに書いてあります。つまり、この資料は大会で確認されているわけですね。満場一致採択された方針だそうですから、読まれなくても中曽根さんも賛成の側に回ったんだと思いますけれども、これがこの二つの資料です。  ところが、この中には、核兵器廃絶には反対だということがもう非常に詳しく書いてあるわけですね。まず、このパンフレットの方からいきますと、結論は「「核兵器の廃絶」は、日本の平和を破壊します。」ただ今核抑止力に頼っているというのじゃないです。核兵器の廃絶という目標自体が日本の平和を破壊します、それで、核兵器の廃絶がやられたら「世界を戦争に巻き込みかねません。」ということまで書いているのがこの自民党のパンフレットであります。  それから、これの解説版だと思うのですが、この「反核運動の欺瞞と危険性」という自民党の大会で確認したパンフレットは「「核兵器の廃絶」は、日本を巻き込む大規模な戦争を惹起する効果のあるものです。核兵器の廃絶は、ソ連による勝手放題な通常兵器による侵略を許すことになり、かえって戦争のリスクを高めることになります。ソ連がその陸軍力を廃絶しない限り、米国の核兵器は世界の平和に不可欠です。」だから、ソ連が核兵器を放棄しても、廃絶しても、ソ連の軍隊がなくならない限りアメリカの核兵器は不可欠だというのが自民党が大会で確認をしたパンフレットの内容であって、しかも核兵器の廃絶の何が悪いかというと、核兵器の廃絶は同盟国である米国の核抑止力を全面否定する考え方だと、中曽根さんは日米軍事同盟に非常に忠実でありますが、この同盟を全面的に否定するものだという結論までここに書いているわけですね。  それから「日本を守る米国のトマホーク(良い核)と、日本をその射程内に収めた」ソ連のミサイル「SS―20(悪い核)とは、厳しく峻別されるべきものです。」こういうことが自民党の名前で主張されて、核兵器廃絶という目標自体に党としては反対だということが確認されている。そしてまたその立場から、核兵器廃絶の声を日本に広げ、世界に広げようという非核都市宣言を根絶しようという主張が展開されている。  私は、これは自民党の総裁として、細かく読まなかったで済まされない問題だと思うのです。それからまた、ここははっきりその目標に反対だと書いているわけですから、ただアメリカの抑止力に頼っているという現状を認識したものだ、叙述したものだというわけにいかないわけですね。この点について自民党の総裁としての明確なお答えを伺いたいと思うのです。
  359. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今お読みになったパンフレットまで大会で決めたということじゃないと私思います。運動方針は大会で決めましたが、運動方針の内部というものは、私はそのときは読みしたけれども、今そのとおり記憶に残っているというわけではない。しかし、我々の運動方針も、今私が申し上げたような趣旨に沿ってできているはずでありまして、アメリカの核は善でソ連の核は悪である、そういうような偏った考えはないだろうと私は思います。ともかく核兵器を世界から廃絶するということは我々人類の願いであり、特に日本国民の願いであり、自民党の願いであるということはここで確認しておきます。
  360. 不破哲三

    不破委員 そうすると、この私が運動方針で確認したというのは、ちゃんと運動方針の中でこの二つのパンフレットを出しましたということが記録されてそれが承認されているということは、普通の党でいえば大会が追認したことになるのですね、自民党の場合は知りませんけれども。ですから、そうするとこの二つのパンフレットに書かれていることは自民党の方針ではない、よい核と悪い核を区別する考えもないというふうに確認してよろしいですか。
  361. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が今まで申し上げたとおりであります。
  362. 不破哲三

    不破委員 じゃ、そのことを確認して次に進みます。  それで、次は核兵器廃絶にいかに進むべきかという問題ですけれども、総理はしばしば私たちと議論するときに、我々は科学的な廃絶論なんだ、共産党のように観念的廃絶論をとらぬということを言いました。私たちは、今日本でも世界でも核兵器廃絶という声を上げて、これを広げて、それが世界の政治に大きな影響を持つようにすることが大事だということを主張していたわけですけれども、そうではなくて、そういうやり方じゃなしに、だんだんだんだん核兵器を減らすんだ、これが目的だということを何遍も言われました。  それで伺いたいのですが、例えば去年の一月の本会議で私が質問したら、総理はそう言われましたが、実際には核兵器は減るどころか、世界政治の現状でもふえている一方であります。それからまた私どもの日本でも、核戦争、核兵器の疑惑は増大する一方であります。これは政府の方は御承知のことでしょうから、私はあえて詳しく言いませんが、例えば日本アメリカの原子力艦が入ってくる。原子力潜水艦というのは核攻撃能力をすべて持っているということはもう周知であります。中曽根内閣の四年間に原潜の寄港回数は百七回、中曽根内閣以前の四年間には四十六回でした。まだ中曽根内閣ができて四年間、数ヵ月残っていますけれども、それでももう前の二倍を超えているのですね。  それから日米共同演習でも、核の、核戦争に絡んだ共同演習ということが非常に疑惑が深まっておりますが、この合同の演習も、七〇年代には年平均三回程度でしたが、中曽根内閣の四年間では年平均二十回を超えるような演習がやられるようになっている。私たちは、だんだんだんだん科学的に核兵器の危険が減ってくるのではなしに、だんだんだんだんその危険が増大する、こういう事態に直面しているわけで、このことについて具体的に考えてみたいと思うのです。  時間もありませんから、端的にひとつ伺いますが、そういうエスカレーションの一番代表的な集中的あらわれが、私は、この秋に入港したアメリカの核トマホーク積載の疑惑がある戦艦ニュージャージーの寄港を政府が受け入れたことにあると思うのですね。今まで政府は、アメリカのそういう疑惑艦が入ってくると、これは核、非核わからない、両用だ、いわば灰色だということで非核三原則は守られているのだとこう言ってまいりましたが、私の見解では、戦艦ニュージャージーというのは灰色だという言いわけは成り立たない軍艦だと思うのです。  その点で、外務省になりますか伺いたいのですが、戦艦ニュージャージーについては、前に予算委員会で中曽根総理に私が質問したときに、これは別格だからこの軍艦については特別に非核の確認をするということを答弁したことを覚えておられると思うのです。その後で、ほかの議員への答弁のときに、あれは舌足らずだったと言って、舌足らずというよりは言い過ぎだったのでしょうが、取り消されましたが、しかし、そのときに総理がそう言わざるを得ないぐらいこれは実に特別な性格を持った戦艦だったわけですね。  外務大臣伺いますが、去年の二月七日のアメリカの下院の軍事委員会、ここでのレーマン海軍長官の証言、これは国会でも何遍も問題になっておりますから御存じだと思いますが、ここでこの戦艦こュージャージーの核トマホークに関連する問題でレーマン長官が何を言ったか。時間の節約でもっと言いますと、レーマン海軍長官がそこで核弾頭つきの海洋発射トマホークを、去年の二月ですが既に配備したと言っている軍艦を挙げていますが、そこで復役戦艦を挙げているわけですね。複数で挙げているのです。つまり、核トマホークを配備した復役戦艦というのは複数だ。その当時アメリカが持っていた復役戦艦は何隻あって何と何だかおわかりだと思いますが、お答え願います。
  363. 倉成正

    ○倉成国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  364. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 アイオワ級戦艦でございまして、アイオワとニュージャージーと理解しております。
  365. 不破哲三

    不破委員 ですから、去年の二月にレーマン海軍長官アメリカの議会で証言して、復役戦艦に核トマホークを配備したと複数で言っているということは、もうニュージャージーには配備済みだということを公式に確認したことなんですね。それで、配備の時期はいつかといいますと、これは一昨年の六月に実戦配備になったということが言われておりますから、一昨年六月以降であることは間違いないのです。つまり、去年の二月にはもう核トマホークつきのニュージャージーが作戦可能な状態にあった、これが第一点です。  それから第二点、同じアメリカ国会ですが、去年の三月の八日、上院の軍事委員会戦略戦域核戦力小委員会で、ホステットラー海軍作戦本部の統合巡航ミサイル計画局長が、「トマホークは複雑なシステムなので、いったん軍艦に載せたら、電気を接続したまま艦内に置いておく。発射するか、あるいは30~36月目に再点検のため戻すまでは手をつけない」こういう証言をしていることを私たち読んでおりますが、これは確認できますか。政府委員でいいです。
  366. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 その趣旨の発言をしております。
  367. 不破哲三

    不破委員 ですから、これはもう事は算術的に明確なんですけれども、八四年の、つまり一昨年の六月以降に核トマホークの配備が行われた。それで、その配備された核トマホークは、実際に発射するか、つまり戦争になるか、これはなかったわけですから、それから三十カ月ないし三十六カ月と極めて限定された期間があって、その期間に再点検するまでは絶対外さないんだ、これは、核トマホークというのは複雑なシステムだから外して非核に切りかえるわけにいかぬのだ、こういうことを言っているわけですね。  それで、今度ニュージャージーがやってきたのは、一番早く一昨年六月から考えてみても三十ないし三十六カ月以内であることは明白なんです。私は、戦艦ニュージャージーについては、あれだけのことを言われてた内閣ですから、そういうことは全部御承知の上で寄港を受け入れたんだと思いますけれども、この証言をもとにすれば、これは灰色の余地のない軍艦です。黒そのものです。それを非核三原則は守られている、非核だといって受け入れたのは何を根拠にしているのか、それを伺いたいと思うのです。
  368. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど御指摘になりました昨年二月のレーマン海軍長官の報告でございますけれども、ここにおきましてレーマン海軍長官が言っておりますことは、核搭載の能力を付与したということでございます。で、それにつきまして、戦艦につきまして確かに御指摘のように複数になっておりますけれども、それは能力を付与したということでございまして、実際にその戦艦が、現実にある時点におきまして核トマホークを所持しているかどうかということとは別の問題でございます。  それからさらに、御指摘の昨年三月のホステットラー氏の指摘でございますけれども、これにつきましては、絶対に三十カ月ないし三十六カ月取り外せないと言っているわけではございませんで、コストがかさむということだとか、それから、海岸におきましての兵たんの基地でなければ外しにくいとか、そういうことを言っておりまして、絶対に外せないということを言っておるわけではございません。
  369. 不破哲三

    不破委員 これは本当に詭弁だと思うのですね。大体、まずレーマン長官発言というのは「私たちは、昨年(84年)、戦域レベルの核抑止のために核弾頭つきの海洋発射トマホークの配備を開始した。」能力じゃなくて配備を開始したのです。「それらは攻撃型原潜、復役戦艦に載っており、」以下略しますが、複数の復役船に載っており、「現在、作戦可能な状態にある」配備可能じゃなくて作戦可能な状態ですよ。だから、もうまさにこれはどこから読んでも、どんな字引を持ってきても、これはニュージャージーに配備したということなんです。  それからまた、絶対に外せないわけはないと言いますが、ホステットラー局長が言っているのは、再点検のために手をつけるときだと言っておるのですね。すると、ニュージャージーは日本に来る前、そういう外すような場所に一体行ったことがあるのかどうか、それぐらいは確認したのですか。絶対行ってないはずですよ、これはもう。ですから、そういう極めて明白な戦艦について、総理がこの予算委員会で二度にわたって、後で取り消したにしても、これは特別な軍艦だからとりわけ非核を確認するということを言明した黒い戦艦について、そんなことはあり得ないわけではないというようなごまかし答弁で認めてしまう。私は、ここに核問題に対する日本国民の、核兵器受け入れに反対する国民気持ちやそれに対する責任を感じない政府の姿勢があると言わざるを得ないと思うのですが、その点について総理の明確な見解を伺いたいと思います。
  370. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は前から大出さんの質問が潜水艦等についてもありましたが、そのときの文書等でも、能力があるということと現に搭載しているかどうかということは別のことなのであります。それから、ニュージャージーにつきましては、外務大臣がマンスフィールド大使に会いまして非核三原則ということを確認しておるわけであります。
  371. 不破哲三

    不破委員 これが全く無責任だと思うのですね。私が言っているように、今までの原潜なんかは両用だと言って逃げる余地がこれは論理上あったのです。しかし、今度の戦艦ニュージャージーについては、アメリカ議会での証言に関する限り灰色だと言って逃げる余地の全くない戦艦です。しかも、北米局長が言うように、その間にどこかで戻したんじゃないか、そんなことをやる行動は、大体ああいう戦艦の行動はわかっているわけですから、日本に来る前にどこかでそんな処置をやったなんという形跡は全くないのです。それを黙って受け入れる。それで外相が大使に確かめたと言いますけれども、要するに灰色だと確認しただけなんですね。これがまたひどいと思うのです。非核三原則というのは、シロでなければ入れちゃいけないというのが非核三原則のはずでしょう。それをアメリカに確かめに行って、シロかクロかわかりません、灰色ですと言われて承認してくる、これが極めて重大な問題だということを指摘しておきたいと思います。  それで、この問題を引き続き追及したいと思いますが、時間もありませんので、次の問題に進みます。  もう一つの重大な問題は、政府がこの国会に先立ってアメリカの戦略防衛構想、SDIへの研究参加に踏み切ったことですね。私たちは、これは今までの、例えば日米安保条約に基づいて日本の安全にかかわって日米が共同することを一歩踏み出して、アメリカの核戦力の強化、核軍拡そのものに日本が加わる極めて重大な決定だと考えますが、この点についてSDI参加に踏み切った真意総理伺いたいと思います。
  372. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  累次御説明いたしておりますとおりに、昨年一月の日米首脳会談においてレーガン大統領から、SDIはより安定的な信頼性が高い抑止力を確保する方策を探求する必要があるとの認識に立って非核の防御的手段により弾道ミサイルを無力化し、ひいては核兵器廃絶を目指すものとの説明がございました。米側からその後も種々の機会に、軍備管理・軍縮交渉の努力と並行しながら、かかる基本理念のもとに同研究計画を推進していく旨の説明を一貫して伺っておる次第でございまして、我が国としてもそのようなものと認識しておる次第でございます。
  373. 不破哲三

    不破委員 今の政府の見方には私はたくさんの問題点があると思うのです。第一に、核ミサイルを無力化することで核兵器廃絶につながると言いますけれども、無力化されるのは相手側の核ミサイルなんですね。大体、核戦略というのは相手側の核攻撃を抑えて自分が核攻撃をやる、矛と盾でしょう。それで相手側に対する矛を無敵の強力なものにする、どんなミサイルが飛んできても撃ち落とせるようにするというのですから、これはもし完成すればアメリカの防衛は完璧だということになりますね。そうすれば、今よく総理は抑止、抑止と言われますが、お互いに核を使ったらやられるという心配で成り立っている抑止の基礎が壊れる。つまり、アメリカの方は相手からやられる心配なしに何でもできるということになってくると思う。私は、そういう点では、まさに核戦争の論理で言えば、アメリカは報復攻撃の心配なしに相手国を攻撃できる核の力を持つことになる、まさに抑止力さえきかなくなる世界をつくることになるんじゃないかと思う。ここに非常に重大な問題があって、例えばイギリスの国際戦略研究所などは、一方が戦略防衛力を持ち、他方が持っていないとなると、持っている方が第一撃戦略、先に核で攻撃をすることを考えるようになるから危険だと言っています。  それから、アメリカの元国防長官のマクナマラ氏を含めて、そういうことをやれば必ず、少なくとも相手側はアメリカが最初に核攻撃をやる力を持つということで、大変な軍拡になるんじゃないかというふうに批判をしています。この点について一体、これはもう戦争の論理とすれば当たり前で、ここの矛を無敵のものにするわけですから、そういうことに日本が加わることになると思いますが、いかがでしょうか。
  374. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいま不破委員の御承知のとおり、SDIはまさに盾に当たるわけでございまして、まあ核兵器は矛に当たるわけでございます。矛と盾とをどのように組み合わしていくかということが、これからの戦略的な米ソの間の交渉の中心であろうかと思います。したがって、今不破委員がいろいろおっしゃいました、いろいろな議論がSDIについてはございます。これは戦略の防衛の構想でございますから、全体の構想でありますからあるわけでございますけれども、我々はこの核兵器の廃絶ということを目標にいたしまして、非核のものでこの核兵器の廃絶のための防衛の手段を完成したいと、そういうレーガン大統領の構想ということを支持しておるという次第でございます。
  375. 不破哲三

    不破委員 政府は何遍も調査団を出したりしてSDIの研究をやってきたわけですから、ただ中曽根さんがレーガン大統領に何を聞いたかという短い話だけじゃなしに、このSDIがアメリカでどう説明されているかを全面的に調べる義務があると思うのですね。例えば去年出したホワイトハウスのレーガン大統領のSDIについての報告というのを見ても、もしソ連がSDIを持ったら、これは二十年来維持してきた抑止の基礎が破壊されるって書いてますよ。つまり、ソ連が持ったらこの抑止の基礎が壊れるようなものですから、これはアメリカが持ったらソ連がそう考えるのは当たり前ですね。アメリカの報告自体が、大統領の報告自体が書いているんです。  それから、私議会の証言を調べて本当に驚いたのですが、八四年二月一日にアメリカの下院の軍事委員会の公聴会で、SDIを大変金をかけて完成したらアメリカにどんな得になるんだ、今までの軍拡よりいいことあるのかと聞かれて、ワインバーガー長官が、アメリカが効果的でソ連の兵器を無力化できるとわかっているシステム、SDIですね、を手に入れれば、例えば米国がただひとりの核兵器保有国だった状態に戻れるだろう、つまりアメリカだけが核兵器を持っていて、核については世界に有無を言わせなかった時代に戻れるんだ、そういうのがこのSDIの目的なんだということを公然と言っているわけですね。まさに核の世界での軍事的な圧倒的な優位の確保を目指していると、国防長官自身がそう言っているわけですから、私は、これを核兵器廃絶の道だと言っていかにも平和めかして参加合理化するというのは絶対許せない理屈だと思います。
  376. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ政府は、ソ連に対して一方的優位を求めるものではないと、それで、もしそれを配備するという場合にはソ連と協議をする、そういうことを言って、この経過的なインバランスができることについて非常に注意深くソ連と相談するということを言っておるのでありまして、私はそれを非常に多としておるので、私自体がまたアメリカ・レーガン大統領と会いましたときに五原則の提議をいたしまして、一方的優位を求めない等々、あるいはABM条約の枠内でやる等々、また協議をする、我々にも情報を与える、そういうようなことを向こうに申し入れてレーガン大統領も承知している、そういういきさつもあるのであります。
  377. 不破哲三

    不破委員 しかし、幾らそう言われても、現にこれをソ連が持ったら大変だ、ソ連より先に持たなければいかぬといってやっているし、持ったらこれは圧倒的優位になるのだということを国防長官は言明している。それからまた、せっかくそうやって開発したものを、はい渡しますといってソ連に渡すなんということを考える人はいないですよ。それだったら、何で西ドイツなんかがSDIに参加するときに、あれだけ国防秘密だと言って個々の技術まで秘密保護の対象にするのか。まさにこれはSDIをオブラートで包むだけの美辞麗句のたぐいだと思うのですね。  それから、先に進みますと、もう一つ考えたいと思うのは、第二に、今言った非核兵器だということです。非核兵器による防衛だと言われる。じゃ、一体なぜこのSDIの開発のためにアメリカは核実験を続けているのですか。非核の兵器による防衛が主眼だったら、そのために核実験を行う必要は何にもないでしょう。SDIの開発に核実験が要るし継続しているということは、核爆発をSDIの中に組み込んでいるという何よりの実際的な証拠じゃないでしょうか。
  378. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまの不破委員の御議論はいただくわけにはまいりません。核実験の問題とSDIとすぐ結びつけていただくということは、いささか議論の飛躍があると思います。  SDIの構想というのは、まだまだいろいろな諸問題について研究をすべき問題をこれからやっていこう、そういう研究をしていこうという段階でございますから、それについて核実験の問題があるからSDIの構想が非核でないというふうに断定されるのはいかがなものかと思います。あるいは不破委員がエックス線レーザーの問題等をもし念頭に置いてお話しになっておるのであれば、まだこれは現在存在しない兵器でございますから、その点についてはまた機会を見て議論させていただきたいと思います。
  379. 不破哲三

    不破委員 そうすると、SDIのための核実験が行われているということを外務大臣は御存じないわけですか。
  380. 倉成正

    ○倉成国務大臣 全然知りません。
  381. 不破哲三

    不破委員 そういう状態で参加決定されるから困るのですよ。  これはやはりアメリカの議会ですが、四月二十一日のアメリカの下院の歳出委軍事小委員会の公聴会でワインバーガー長官が行った証言が七月になってから公表されているのですね。  それを見ますと、現在やっている核実験の中に五種類あるのだ、五種類挙げて、その中には核抑止の新しいシステム、すなわち戦略防衛構想、SDIに基礎を置くものが含まれているのだということを明確に言明しているのですよ。国防長官が明確に言明して、これはもう公表されているわけですから。相手側の核を爆発させて実験するなんてやりませんから、核実験をSDIのためにやるということは、核兵器を使ってのSDIを少なくとも構想の一つとして追求しているということの紛れもない証拠だと考えますが、いかがです。
  382. 倉成正

    ○倉成国務大臣 SDIはまだ全体の構想の段階であるということは御承知のとおりで、その研究計画にこれから入っていこうということでございますから、これについて、そしてしかも非核の手段によって核兵器の廃絶をもたらそうという考え方をアメリカ政府は明らかにしておるわけでございますから、大統領がそのように申しておることを我々は信じておるということを申してもおかしくないと思います。
  383. 不破哲三

    不破委員 今、宗教みたいなことを言われました、大統領の言うことを信じるだけだと。しかし、政府が行動を決定するときには、少なくともSDIに関してアメリカで事がどこまで進行していてどういう内容か、公表された資料ぐらいは調べて決定すべきだと思うのですね。  ワインバーガー国防長官が議会に提出した資料で「われわれの核実験計画は、」「信頼度実験、兵器効果実験、兵器化実験、高度開発実験そして実地の実験である。」と言って、これからの実験の幾つかは戦略防衛システムの創設に関連して行われている。これから研究するんじゃないんですよ。これから日本なんかは研究参加を求めているけれども、アメリカ自体はずっと研究していて、それでもう核実験なんかも現にやっていて進んでいるんですよ。それを明確にもう議会では答弁していて、これが問題になったのももう何年も前ですから、進んでいるわけですね。その中に明らかに核実験がある。それが明確なのに、エックス線レーザーは使わないんだとかいうことだけを何かの一つ覚えのように言って、非核だ非核だと言い張られるのは、これは余りにも国会に対する解明としては愚弄したものじゃないでしょうか。
  384. 倉成正

    ○倉成国務大臣 専門的なことでございますから、非常に不破委員よく御承知のようでございますから、政府委員からお答えさせたいと思います。
  385. 筒井良三

    ○筒井政府委員 SDIにおきまして核が使われているというようないろいろの御質問でございますけれども、SDIは非核ということを大前提としてやっております技術の研究計画でございまして、核を使うということでありましたら非常に易しいことになりまして、例えば一昨年実験いたしましたホーミングオーバーレイという陸軍がやった核弾頭の模擬を実際に直径四・五メートルのミサイルの傘のようなもので直撃した実験とか、大変な技術的な苦労をやっておりますけれども、核を使うということだったらこういう苦労は全く要らないと思います。  ただ、たった一つ、多くの計画の中で、核の爆発を利用しましたエネルギーを使ってエックス線レーザーの研究が行われているということは私ども聞いておりますけれども、そういうエックス線レーザーを使った全体構想というものはいまだに私どもは聞いておりません。  そういう段階でございますので、いかにして核を使わないでこういった要撃ができるかというところに一番の技術的な困難さ、難しさ、それを克服するための研究と了知しております。
  386. 不破哲三

    不破委員 今の答弁は、アメリカ政府アメリカの議会に公開で報告することさえ防衛庁にも日本政府にも説明していないということを示しているんじゃないですか。私が言っているのは、明確にSDⅠのための核兵器実験をやっているということを国防長官が言っている、御承知かと聞いたら、承知はしないがアメリカを信用しているということでしょう。やはり宗教のたぐいですよ、信仰の類ですよ、間違った。  それから、エックス線レーザーのことも言われますけれども、これは質問しませんけれども、エックス線レーザの研究費は本年度予算で激増していますね。ほかの全体のレーザー兵器の研究予算が少なくなっている中で核起動のレーザー兵器の研究予算が今年度予算では激増しているということもこれは関係しているんだということを申し上げておきたいと思います。  それから三番目に、中曽根総理アメリカもソ連も持てばいいじゃないかというたぐいのことを言われましたけれども、これはどちらに伺ったらいいんでしょう。今、世界で軍事費が非常に大きくなって問題になっておりますが、国連などで発表している世界の軍事費総額はどれぐらいか、どなたか外務省御存じでしょうか。
  387. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  昨年、国連で発表されました数字によりますと、約八千億ドルでございます。
  388. 不破哲三

    不破委員 SDIが今研究段階ですから予算二百数十億ドルですが、実際に配備になったらどれぐらいになるかといういろいろな試算が出ています、どれも政府発表のものじゃないですけれども。しかし、例えばシュレジンジャー元国防長官のように国防に非常に詳しい人が、少なくとも一兆ドルかかると言うのですね、実際の配備に。世界の総軍事費が米ソを含めて五千億ドルを一九八〇年に突破したというので、ここで大問題になりました。そういう浪費をしないでほかに使ったら何に使えるかということが問題になりました。今八千億ドルを超えたといいます。ところがSDIは、これがもし完成したとして、アメリカだけで一兆ドル以上はかかるだろうというのが元国防長官の推算です。アメリカもソ連もやることになったら二兆ドルを超えることになる。よく考えても、今アメリカの核軍拡予算というのがアメリカ政府の発表だと年間七百億ドル程度ですね。SDIに踏み込むということは、まさに宇宙まで含めたそういう途方もない軍拡に踏み込むことになる。一体そういう道に入っていいのかどうかという問題があると思うのですね。  それから、ちょっと時間がありませんので第四の問題を言いますと、第四には総理も外相も、これは核兵器廃絶への道だから賛成すると言われる。しかし、これは非常に危険な道なんです。なぜかといいますと、この道に踏み込んだら、これは完成するまで核兵器廃絶は棚上げですよということなんです。例えばアメリカ政府の代表の解説でも、SDIをつくるのに何十年もかかるだろう、ひょっとしたらできないかもしれない。しかし、これができ上がって、さっきの総理の話のように、ソ連もそうなれば踏み切るだろう、両方やるだろう、それでお互いにSDIを持った段階で核兵器廃絶を考えようというのがこの路線ですから、大変な浪費をする危険な道であると同時に、それに踏み込んだらSDIの完成まで、来世紀いつになるかわからない完成まで核兵器廃絶という日本国民の願いは棚上げにしようということになる。私どもがそういう道に踏み込むわけにいかぬと言っているのは、ここにも理由があるわけですね。  それで伺いたいのですが、例えば、政府中曽根総理は、私どもへの答弁の中で、共産党がすぐ核兵器廃絶の声を上げろと言うのに対して一歩一歩やっていくというのが我々の主張なんだ、一歩一歩の一番先に核実験全面停止問題を挙げられました。今国連でも、それから米ソ交渉の中でもこれは大問題になっていて、ソ連は一方的に実験を停止している。まさに日本政府のだんだんだんだん減らしていくという主張を実現するには絶好の条件が生まれているはずなんだが、この点について日本政府の見解がほとんど聞かれないのは私は残念だと思うのです。例えば、一方でSDIの道に踏み込みながら、今まで政府が一番大事だと言っていた核実験全面停止などについて一体どのような行動をやろうとしているのか、その点伺いたいと思います。
  389. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまの不破委員の御質問は二点あると思います。第一は、SDI計画を進めるととてつもない軍拡競争になるということで、二兆ドルとかいうような数字を挙げられたわけでございますけれども……(不破委員「一兆ドルと言いました。二兆まで言ってません」と呼ぶ)二兆まで言ってないということですが、いずれにしてもとにかく大変な額になるとおっしゃったわけですけれども、いろいろな人がいろいろな議論をしておることは事実です。私もよく承知しております。しかし、それが正しいかどうかということについては、だれもまだわからないわけです。したがって、私は、一九八三年以来INF及びSTARTの両交渉を一方的に中断したソ連が昨年三月の交渉に復帰した理由の一つとして、米国のSDI研究計画推進が挙げられております。このことからわかるように、SDIの研究計画自体が米ソの軍縮交渉の推進に果たした役割はこれは無視できないと思うわけです。やはりこれはお互いに交渉でありますから、また、SDIについてアメリカが研究しておると同時に、ソ連も黙ってこれを見ているわけではない。SDIと名前を使ってないかもしれないけれども、やはりそれぞれの研究をしておることは間違いないと思います。  そういうことを考えてまいりますと、私は、やはり米国がSDIの推進というのは軍縮、軍備の縮小とともに行われるべきものである、そして核兵器への依存を減らすものという立場をとっておるわけでございまして、不破委員とこの点については見解を異にするところでございます。  それからもう一つの核実験禁止モラトリアムの問題につきましては、やはりこれは御案内のとおり相手国の安全保障の問題と基本的にかかわり合いのあるところでございますから、各国の安全を損なうことなくして核実験の禁止をやっていくというためには、やはりその核実験禁止を必ず守る、その検証を明らかにする、そういう専門的な専門家同士の検討ということが極めて重要な役割を持っておると思うわけでございます。
  390. 不破哲三

    不破委員 SDIの予算規模もわからぬ。つまり、政府はわからぬままに参加決定したわけですよ。これが非常に重大だと言うのですよ。アメリカがSDIのための核兵器実験をやっていることも知らないで非核だと言う。それから、これがどんなに膨大な軍拡の道になるかということを歴代の国防長官がみんな唱えているのに、それは計算の一つでございます、まだわからぬことです、しかし参加はすると言う。そして、これがアメリカの軍事的優位を確保するものだということも明白なのに、これに目をつぶる。これが非常に重大だと思うのです。  核実験の問題について言いますと、さっきの四月の議会でワインバーガー国防長官はこう言っておるのですよ。「もし人々が核兵器の実験禁止を望むのであれば、できるだけ速やかにSDIを発展させるべきだ。」戦略防衛、SDIを成功させるまでは核実験をやめられないのだということをはっきり言っておるわけですね。ですから、日本政府が、これが一番とば口だと、去年国連総会で決議した、日本は賛成しましたけれども、すぐ核実験停止の条約交渉をやろうじゃないかと言っておるのに、アメリカはSDIが完成するまではこれもできないのだ。つまり、政府の言う一歩一歩科学的に減らしていくというのは、結局はアメリカの、日本の場合でも国際舞台でも、核軍拡に協力することにならざるを得ない、私はここに重大な問題があるということを指摘をして、質問を終わりたいと思います。
  391. 砂田重民

    砂田委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時十八分散会