○坂上富男君 私は、皆様の御
同意を得て、
日本社会党・
護憲共同を代表して、防衛二法一部
改正案に対し、
反対の
討論を申し述べたいと存じます。
その第一の
理由は、憲法第九条、戦争の放棄と戦力の不保持の条項に違反する、憲法違反の
法案であるからであります。
中曽根内閣発足以来今日まで四年間、日本の軍拡化はますますエスカレートしてきております。平和憲法の理念に反する
政府・自民党の外交防衛
政策は、今や完全に米国の対ソ戦略に組み込まれ、
我が国を核戦争の脅威にさらし、防衛費の突出は財政再建に逆行し、
国民生活に犠牲と
負担を押しつけるものであります。厳しく批判されなければなりません。今
国会においても、その犠牲はお
年寄りにまず向けられ、著しい高
負担を強いる
老人保健法案となってあらわれてきておるのであります。既に武器輸出三
原則、非核三
原則は形骸化し、GNP一%枠もその合理的な根拠がないとして、これを撤廃しようとする強い動きがあるのであります。我が党は、このような軍拡の野望を黙視するわけにはまいりません。軍事大国化を志向する歴代自民党政権に対し有効な歯どめ
措置としての役割を果たしてきたところに、一%枠の重要な意義があるのであります。
しかるに
政府は、昨年九月、実質的に一%枠を突破する新中期防衛力整備計画を策定しました。防衛計画大綱もまたしかりであります。大綱と別表は不離一体であります。しかるに、大綱の基調を見直すことなく別表改定は可能であるとして、基盤的防衛力構想を放棄し、所要防衛力構想への転換を画策しているのであります。このような
政府の姿勢は、アジアの緊張緩和を阻害し、これら近隣諸国に対し警戒と危惧の念を抱かせるものであります。同時に、米国の対ソ戦略の一端を担い、三海峡封鎖、北方前方防衛及び洋上防空など、戦略、作戦を遂行する危険きわまりないものであります。「平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」との憲法前文の崇高なる理想を軍靴をもって踏みにじろうとするものであります。断じて許さるべきものではありません。
警察予備隊時代の自衛官の定数七万五千人から法改廃十九回、そのたびごとに定数増が行われ、今回の二十七万二千七百六十八人は発足当時の三・六倍にも達するのであります。予備自衛官の員数もまた発足当時の一万五千人から
法改正のたびごとに増員し、今回の四万四千九百人は発足当時の約三倍弱の増加となるのであります。もはや、これらの人的、物的の防衛力の増強は、
政府の言う専守防衛をはるかに逸脱する憲法第九条第二項の「戦力」に該当するものであります。まさに憲法第九条第二項に違反する
法改正案でありますので、強く
反対をいたすのであります。(
拍手)
この際、我々は、憲法
制定の原点に立ち返り、
昭和二十一年五月十六日召集された第九十回帝国議会において、吉田茂
内閣総理大臣がこの壇上、この場所において、憲法第九条について「一切ノ軍備ト国ノ交戦権ヲ認メナイ結果、自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ抛棄シタモノデアリマス、従来近年ノ戦争ハ多ク自衛権ノ名ニ於テ戦ハレタノデアリマス、満州事変然リ、大東亜戦争亦然リデアリマス、」「故二我ガ国ニ於テハ如何ナル名義ヲ以テシテモ交戦権ハ先ヅ第一進ンデ抛棄スル、抛棄スルコトニ依ツテ」「全
世界ノ平和愛好国ノ先頭ニ立ツテ、
世界ノ平和確立ニ貢献スル決意ヲ先ゾ此ノ憲法ニ於テ表明シタイト思フノデアリマス」と、その決意を述べておられることを銘記すべきであります。(
拍手)
第二の
反対の
理由は、武器使用防護対象物に船舶、有線電気通信設備、無線設備を加えることは、「防衛の用に供する物」でないものを保護しようとするもので、いわゆる恵庭事件判決に違反する
法案であります。
すなわち、恵庭事件判決は、自衛隊用の通信線が
自衛隊法第百二十一条に言う「その他の防衛の用に供する物」に当たらないとして無罪判決が言い渡され、第一審の札幌地方裁判所で確定した事件であります。今回の
改正は、今
内閣委員会の
審議においても、防衛庁の友藤官房長は、防衛力を構成している物的手段が損壊されたり防衛力が低下することを防ぐための規定であると答弁しております。同法九十五条は武器による保護規定であり、同法百二十一条は刑罰による保護規定であって、その保護対象物は、いずれも「防衛の用に供する物」でなければならないのであります。
判決は、「防衛の用に供する物」とは、武器、弾薬、航空機とほとんど同列に評価し得る程度の密接かつ高度な類似性の認められる物件を指称するというべきであるとした上で、自衛隊の通信線は「その他の防衛の用に供する物」に当たらないと判示したのであります。したがって、右判決の論旨からすると、船舶や有線、無線の通信設備は「防衛の用に供する物」には該当しないのであります。「防衛の用に供する物」に該当しない船舶、通信は、第九十五条の武器使用防護対象物件となり得ないのであります。よって、本条文の
改正は、右判例上からも許されないのでありまして、強く
反対をいたすものであります。(
拍手)
以上述べましたとおり、自衛隊増強にとどまらず、日米防衛協力の一層の進展に伴い、在日米軍を初め米極東戦力はますます
強化されつつあります。具体的には、トマホーク積載艦のたび重なる寄港、F16の三沢配備、激化する日米合同演習、三宅島の米軍機発着訓練場計画、逗子の米軍
家族住宅計画及び沖縄における米軍用地二十年強制使用など、日米安保体制は軍事同盟の性格をさらに濃厚にしつつあります。そしてその行き着く先は、当然のごとくSDI研究参加という、米国の宇宙核軍拡への加担にあります。SDIに使用する可能性の高いエックス線レーザーは核爆発によるもので、現在行われておる核実験の大部分がSDIの研究用と言われております。SDIを非核と称することは、黒を白と言うがごとく、全くの詭弁そのものなのであります。
以上、明らかなとおり、日米軍事同盟のもと、日本が軍事大国への道を際限なく突き進んでいる状況を我々は断じて容認できません。ここに憲法及び法律違反の
軍事力増強の具体的
措置を盛り込んだ本防衛二
法案について強く
反対することを表明し、
討論を終わります。(
拍手)