○山下徳夫君 私は、
自由民主党を代表いたしまして、
内閣提出の
国鉄改革八
法案につき、
原案及び
委員会の修正に
賛成の
討論を行うものであります。
顧みまするに、一昨年の十月三十一日
運輸大臣を拝命いたしまして以来、ちょうど丸二年間でございますが、毎日毎日この
国鉄の
改革をひたすらこいねがいながら微力をささげてきた私にとって、きょうこうして
賛成の
討論をすることができますことは極めて意義深く、しかも深い感慨を覚えるものであります。(
拍手)
今回提出の八
法案は、昨年七月
国鉄再建監理
委員会が中曽根総理大臣に提出した「
国鉄改革に関する
意見」を最大限に尊重し、これに沿ってつくり上げた一連の
国鉄改革法案であります。この
法案は、
分割・
民営化という思い切った
経営形態の変革を行うことにより、危機的
状況にある
国鉄の
事業の再生を図るとともに、官業の簡素化、規制緩和、
競争原理の導入など、行政
改革の
理念を体したものであり、まさに時代の要請にこたえる
法案であると考えるものであります。我が
自由民主党といたしましては、最重要の
政策課題として取り組んでまいりました行財政
改革を大きく前進させるものとして、以下申し上げる
理由により、この一連の
法案に
賛成をいたすものであります。
まず、かつて
我が国の大動脈として
国民の信頼を得てきた
国鉄が今日の惨状に陥った根本的な
原因は、
公社制度のもとにおける
全国一元の巨大組織による
運営という
制度的な制約のもとに、時代の変化に適切に対応できなかったことにあり、その
経営形態の抜本的な変革がなされなければ
鉄道の再生は不可能であるとする点で、
政府と認識を同じくするものであります。
御承知のとおり、かつて
国鉄は、
我が国におけるほとんど唯一の大量高速
輸送機関として経済社会を支え、その発展に大きな貢献をしてまいりました。戦後復興期において
国鉄はまさしく
我が国の生命線であり、力強くばく進する機関車は、敗戦の痛手から立ち直り、自由で活力ある社会を
建設しようとする
我が国の象徴でありました。また、その後の高度成長期においても、
国鉄は
我が国の旅客貨物
輸送の大宗を担い、産業の発展、
国民生活の向上に大きな
役割を果たしてまいりました。
昭和三十九年開業した
東海道新幹線は、当時の
鉄道技術の粋を集めた世界にも誇る画期的な
輸送施設であり、その後の高速交通体系の
整備の契機となり、ハイモビリティー社会の幕あけを飾るものでありました。このように、
国鉄はかって我々
国民の夢と希望を乗せ、時代の先端を走るまことに頼もしい存在であったのであります。
その
国鉄が今日の惨状であります。
昭和六十年度の
国鉄決算では、赤字額は一兆八千億円、
助成金を除いた実質ベースでは二兆四千億円にも達し、実に一日当たり六十七億円の赤字が日々累積しているわけであります。そして借金の残高も毎年二兆円近く増加しており、民間
企業であれば既に破産の
状態にあると言わざるを得ず、このまま推移すれば
資金調達が困難となり、
事業の
運営にも支障の生じるおそれさえなしとしません。
一体何が
国鉄を変えてしまったのでありましょうか。いやむしろ、航空、自動車等他の交通機関の
発達や経済社会構造の変化といった
国鉄をめぐる
経営環境が大きく変わったのに、
国鉄自身がその変化に対応し切れなかったこと、すなわち
国鉄が変わらなかったことが今日の惨状を招いたのであります。(
拍手)何としても
国鉄は大きく変わらなければならず、思い切った変革を遂げなければならないのであります。さもなければ、過去に外部環境に適応できず滅亡の道をたどったあのマンモスのように、
国鉄は時代の流れから取り残され、衰退していってしまうと考えるのであります。
一部には、
鉄道は衰退産業であると言う人もおります。しかし私は、
鉄道は決して衰退産業ではないと考えます。なぜならば、
鉄道は本来、新幹線や現在開発されつつあるリニアモーターカーのように、技術の粋を集めた極めて高度の
輸送から、各地において成功しつつある第三セクターのように、地域に密着したきめ細かいサービスを生かした生活のぬくみのある
輸送まで、多様な
輸送サービスが提供可能であり、
公社制、
全国一元的
運営といった
制度的な桎梏から離れ、
国民の欲求を的確に酌み取り、これにこたえる地に足のついた適切な
経営が可能となれば、今後とも十二分に
国民生活に寄与し、大きな
役割を果たしていくことができるものと考えるからであります。
国鉄の現状は一刻の猶予も許されません。
鉄道がその本来の特性を生かし切れず、期待される使命を果たせないまま衰退の道をたどることを放置することは、将来に重大な禍根を残すでありましょう。今こそ英断を持って
国鉄の
分割・
民営化をやり遂げ、
鉄道の再生を図るべきであります。(
拍手)
政府案は、
分割については旅客流動等の
実態を十分配慮し、また、新
会社に対する規制も民間
鉄道並みを原則として最小限にとどめる一方、活力ある
経営が可能となるよう新
会社の
経営基盤の安定、確立にきめ細かい工夫を凝らしており、いずれの
会社も
分割・
民営化の暁には各地域の発展に大きく貢献していくことができるものと確信をいたしております。ここに示された
改革案は、
鉄道再生の処方せんとして現実性のある最善の方策であると考えるものであり、これが
国鉄改革八
法案に賛意を表明する第一の
理由であります。
第二に、いわゆる
長期債務等の
処理についてであります。
国鉄長期債務及び関連する諸
負担は膨大なものに上り、その
負担をすべて新
会社に負わせることは、
経営の維持が困難となり、不可能であります。他方、これを安易に
政府すなわち
国民の
負担を求めることも許されないと考えます。最終的に何らかの、それも相当額の
負担について
国民の理解を求めなければならないとしても、その前提として、自主財源の
確保のために
国鉄自身がぎりぎりの努力を尽くすこと、及び新
会社が赤字体質のもとで再び国の
助成に依存することがあってはならず、いわば今回限りの
負担であることが必要不可欠であります。
政府案は、この点において、効率
経営を前提として過重となる
負担は新
会社から切り離し、清算
事業団において
処理することとするとともに、同
事業団の自主財源として、
国鉄所有の売却可能用地をできるだけ生み出し、かつ、これを公開競争入札を
基本とする適正な
時価で売却して
国民負担の軽減を図ることといたしております。
分割・
民営化による効率的な健全
経営の確立と、用地の生み出しを初めとしたぎりぎりの自助努力は、膨大な
長期債務等の
処理について
国民の理解と協力を求めるためにまさに適切な
措置であり、これが
政府の
国鉄改革八
法案に
賛成する第二の
理由であります。
第三は、今回の
改革に伴う
国鉄職員の
雇用の
確保についてであります。
今次
改革では、
経営の効率化が求められ、その過程で多くの人が
国鉄の
職場を離れざるを得なくなります。これらの方々の生活の安定、
雇用の安定は十分な配慮を尽くさなければなりません。
政府案は、この点について特別立法のもとに最大限の支援を行うこととしております。また実際上も、中曽根総理を先頭に
政府、
国鉄一体となった
雇用対策が展開され、着実に成果が上がりつつあることを多とするものであります。
政府案は、
雇用対策についても十分きめ細かい配慮がなされていると考えるものであり、これが本
改革八
法案に
賛成する第三の
理由であります。
最後に、
委員会の修正について申し上げますと、
国鉄改革は
国民にとって最も深い関心を有する問題でありますので、それに関する施策の
実施の
状況を
国会に対し
報告することによって
国民に明らかにすることにつきましては、適切妥当な
措置であると存じ、これまた賛意を表する次第であります。
以上、
賛成理由を申し上げましたが、何と申しましても百有余年の
歴史を有する
国鉄を
民営化し、
分割いたすのであります。安全第一に、整々粛々とスムーズに移行がなされなければなりません。本
改革法案の成立後、
政府、
国鉄関係者は不退転の決意を持って事に当たり、今回の国家的
改革を立派に成就されんことを心より希望いたしまして、私の
賛成討論を終わります。(
拍手)