○斉藤節君 私は、公明党・
国民会議を代表し、ただいま
趣旨説明のありました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に関し、
総理並びに
関係大臣に
質問いたします。
まず初めに、
世界の
核軍縮の行方のかぎを握ると言われていたアイスランド・
レイキャビクでの
米ソ首脳会談は全
世界注目の中で行われましたが、結果は既に報道されたとおりであります。しかし、かねてから
我が国政府は、
ソ連が
極東に配備している中距離核SS20の削除を主張し、
会談の際、
交渉の中に含めることをレーガン
米国大統領に要請していたと言われますが、この点も含めて今回の
会談をどう
評価されておられるのか、
お尋ねいたします。
また、
レイキャビクでの
米ソ首脳会談は、残念ながら次回
会談の日程も決まらなかったということでありますが、
我が国としては、ゴルバチョフ・
ソ連書記長の
日本訪問によって、行き詰まっている
日ソ関係の改善を図るよい機会だと思うが、
総理は、ゴルバチョフ・
ソ連書記長の
日本訪問の
見通しについてどのように
判断されておられるか、
お尋ねいたします。
米ソ間での
核軍縮交渉では、従来、
ヨーロッパ地域での核兵器
削減問題が大きな焦点になっていますが、
極東地域における核兵器
削減問題は、それに比べて取り上げられ方が少なかったのが現状であります。しかし、
ソ連のSS20、バックファイア等の
極東配備数の増加に対抗し、
米国は巡航
ミサイル積載艦船の
極東配備を実施し、その一番艦と言われている戦艦ニュージャージーが佐世保に入港するなど、
極東での
米ソ核配備競争はとどまるところを知りません。しかも、
原子力潜水艦の性能向上と搭載核
ミサイルの驚異的発達によって、北西
太平洋を
中心とする
日本近海は、
米ソ両国の核のしのぎを削る場と化しているのであります。
総理は
極東におけるこのような状況についてどのような
認識を持たれておられるのか、
お尋ねいたします。
核搭載巡航
ミサイルを積載している疑いの極めて強いニュージャージーの寄港を認めること自体、
我が国の国是である
非核三
原則に抵触することは明らかであります。
国民の中にはニュージャージーの母港化を心配する声も聞かれるのでありますが、
総理は、今後
米国からかかる疑いのあるニュージャージーの
日本母港化の要請があった場合、お認めになられるのか、それともお断りになられるのか、その点をしかと
お尋ねいたします。
先ごろ
ソ連の核
ミサイル搭載
原子力潜水艦が西大西洋上で爆発炎上し、沈没した
事故は、チェルノブイリ原子力発電所の爆発
事故の後であっただけに、その
影響は見過ごしにできないところであります。このような
原子力潜水艦の
事故は、
我が国としても無関心ではいられないところであります。特に近年、
原子力潜水艦の
事故が頻発しており、
日本海においても、五十五年八月の沖縄近海での
ソ連原潜の火災
事故など、明らかにされた
事故ですら四件もあり、目立って増加しております。
核兵器の運搬に関する
事故は、当初、核搭載戦略爆撃機によるものが多かったのでありますが、その後、戦略転換に伴い、
原子力潜水艦が重要な役割を果たすようになり、今や熾烈な核のしのぎ合いが海で展開されるに及んで、必然的に
原子力潜水艦の
事故につながっております。
我が国の近海が
米ソ両国の核のしのぎ合いの舞台となっている現実を直視するとき、今こそ北西
太平洋での
緊張緩和と
軍備管理、そして
軍縮こそ緊急かつ重大な問題であると
考えるものであります。海洋における
軍備管理がおろそかにされ、無視されてきたことによる
原潜事故の多発化は、海洋の放射能汚染という
人類生存の危機にまで発展しかねない問題だけに、放置できない
事態を迎えております。海洋国
日本として、海での
軍備管理・
軍縮の必要性を核保有国に訴えるべきであると思うが、
総理の御所見を
お尋ねいたします。
また、
極東における
ソ連のSS20はもとより、
極東における
核軍縮を推進するため、
我が国のイニシアチブによる
米国、
ソ連、中国の
首脳会談を
開催すべきであると
考えますが、
総理の御
構想がおありかどうか、お伺いいたします。
次に、外交、
防衛問題は
我が国にとって極めて重要な問題であることは、今さら指摘するまでもありません。ところが中曽根内閣は、この重要な問題に関してたびたび
国会決議を軽視あるいは無視する態度をとっていることは断じて容認できないところであり、まさに
国会軽視と言わざるを得ないのであります。
例えば、
我が国の平和政策の
原則の
一つとして重要な役割を果たしている武器輸出三
原則の厳正な実施を
政府に求めた
昭和五十六年三月の
国会決議を無視して強行したのであります。さらに、
SDIへの研究
参加の問題に際しても、
昭和四十四年五月の宇宙の平和利用に関する
国会決議を無視して強行したのであります。国権の最高機関である
国会の意思表明ともいうべき
国会決議の重みについて、
総理は
一体どのように
考えておられるのか、
お尋ねしたいのであります。三百七議席を占める自民党総裁という
立場から、選挙後において
総理は、謙虚に
国民の声を聞くという言葉を再三使っておられましたが、
国会決議の無視はおよそ謙虚とはほど遠いものと
考えます。
総理のお
考えをしかとお伺いしたいのであります。
SDIに関しては不明な点が多いところでありますが、その中でも一向に疑問が解消されていない問題があります。すなわち、
政府は
SDIを
非核兵器であると強弁しておりますが、
核爆発を一切利用するようなことはないと言い切れるでありましょうか。言い切れるというのであれば、
総理、その根拠は何なのか、明らかにしていただきたい。また、
SDIへの
参加は武器の共同開発ということにならないのか。特に
政府は、民間企業が
参加できる道を開いておくという点を強調しておりますが、実際的には武器の開発に
関係する分野が多く、たとえ
参加したとしても、その成果に関しては秘密のベールに覆われ、開発技術の使用が制限されることは明らかであります。それゆえ民間企業の
参加するメリットが乏しいとの指摘がありますが、この点についての
政府の
見解を
お尋ねいたします。
さて、
総理はスパイ防止法の成立に殊のほか熱心のようでありますが、
SDIへの民間企業の
参加と秘密保護の必要性という点との
関係についてはどのように
考えられているのか、
お尋ねしたい。具体的に
SDIへの
参加のためにスパイ防止法の必要性を
考えておられるのか、
お尋ねいたします。
次に、
防衛費の
GNP比一%問題についてでありますが、
防衛庁長官は今年度は一%枠を
突破しないとの
見通しを明らかにされております。本日、人事院勧告を完全実施することが閣議
決定されましたが、単純計算でも九十八億円
突破すると予想されています。一%枠内におさまるという具体的根拠をお示し願いたい。私は、
防衛費が一%枠内におさまる要因は、何といっても
円高差益と原油の値下げによる経費の節減が大きいことにあると
考えますが、武器購入費及び原油購入費の節減額はどのくらいと見込んでいるのか、明らかにしていただきたい。
また一方、
円高差益は、駐留
米軍経費の
日本側負担の増大問題として、
防衛費の増額要因となろうとしております。
防衛庁長官の訪米の際にも、
米国側からいわゆる思いやり予算の増額
要求があったやに言われておりますが、
米国側はどこまで
日本側に負担を求めているのか、明らかにしていただきたい。思いやり予算として基地従業員の給与の一部を
日本側が既に負担しているわけでありますが、現在の負担割合をふやすことは、地位協定を
改正しない限りできないとの
政府の
見解に変わりがないのか、その点について
外務大臣の
見解を
お尋ねしたいのであります。
防衛庁長官は、
米国側にこたえる解決法を研究中ということでありますが、具体的にどのような
方法を検討されているのか、
お尋ねいたします。いずれにしても、駐留
米軍経費の問題は今後の日米
防衛協議の焦点となることは明らかであります。思いやり予算についての
総理の率直なお
考えを
お尋ねいたします。
次に、最近の
自衛隊の相次ぐ不祥事についてであります。
航空機の
墜落事故、
ミサイルの爆発
事故、資料の横流し汚職
事件など、一連の不祥事は目に余るものがあります。規律の弛緩、綱紀の紊乱という以外にありません。
自衛隊の指揮監督権を持っておられる
総理はどう受けとめておられるのか、また、その
原因究明、再発防止についてどのように
考えておられるのか、
お尋ねいたします。
最後に、法案に関する問題について若干
お尋ねします。
今回、
航空自衛隊に関して
予備自衛官を新設することになっております。
防衛庁の
説明では、基地
防衛の要員ということでありますが、特殊技術あるいは技能を生かした
運用は
考えていないのでありましょうか。例えば、戦闘機のパイロット等の場合は別としても、その他特殊技術あるいは技能を生かした
運用を
考えた方がより価値的ではないかと思うのであります。この点について
防衛庁長官のお
考えはどうでありましょうか、
お尋ねいたします。
また、今回の法
改正により、
予備自衛官を全体で四万四千九百人にしたいということでありますが、
昭和三十五年当時、
予備自衛官は一万五千人でありましたから、今回の法
改正で当時の約三倍の数に達することになります。
防衛庁としては、
予備自衛官を
一体何人の体制まで増員しようとしているのか。すなわち、
予備自衛官の数の上限をどこまでと
考えておられるのか、また、陸上、海上、航空に分けて
予備自衛官の
整備目標をこの際明確にしていただきたいのであります。
マスコミ報道等によりますと、
防衛庁は
予備自衛官制度を抜本的に改革し、
自衛官のOBだけではなく、広く民間からも募集することも
考えているということでありますが、この点についても明らかにしていただきたいのであります。
また、本法案では国賓の
輸送について
自衛隊が担当することとされております。この問題に関し、
我が国が
総理の海外出張等に使う
政府専用機を取得した場合にも、
自衛隊がその専用機を保有し、
運用することができると
政府は
考えられております。そこで、具体的に専用機を購入する
考えを
政府は持っておられるのかどうか、
お尋ねいたします。
以上をもちまして私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕