○村上弘君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、
国鉄関連八
法案に対する質問を行いますが、まず最初に、去る二十二日の自民党
全国研修会において、総理は、アメリカには黒人とかプエルトリコとかメキシカンとかいうのが相当多くて、平均的に見たら非常にまだ低いと述べ、絶対に許されない人種差別、べっ視の発言を行っております。総理は部分だけ引用されたとして釈明をしておりますが、全文を読んでも、例えばアメリカでは今も黒人で字を知らないのが随分いますねなどと言っているように、人種差別発言はむしろ一層明白であります。さきの藤尾発言については文相を罷免されましたが、総理自身は釈明をするだけで、あくまでも
責任を回避するつもりでありますか。はっきりと伺っておきたいと思います。(
拍手)
さて、
我が国は今、
国鉄の
経営危機をどう打開するかという問題をめぐって、百十五年の歴史を持つ
日本国有鉄道を解体し、利潤第一の営利企業に変える
分割・
民営化の道か、それとも公共性と安全性をあくまで貫き、国有
鉄道として真の再建の道を進むか、重大な選択が迫られております。
政府は、
分割・
民営化こそが唯一最良の
危機打開策であるとし、これさえやれば赤字や
長期債務は解消し、ローカル線も守られ、サービスなどもよくなるかのごとき幻想を盛んにばらまいております。だが、果たしてそうでしょうか。以下、ただしていきたいと思います。
まず第一にお伺いしたいのは、
政府が膨大な
国鉄の
長期債務を口実に
分割・
民営化を推進しておきながら、なぜ
分割・
民営化をやった後も、これをなくすどころか逆にふやし、しかも長期に放置さえしておくのかということについてであります。
政府の計画によれば、いまだに雨ざらしになっている成田新幹線の
建設など、浪費の典型と言われてきた鉄建公団や本四公団などの借金まで、何もかも
国鉄に押しつけ、総計三十七兆三千億円に水膨れをさせられた
長期債務は、その大半、二十三兆一千億円が
清算事業団という名の旧
国鉄に移しかえられるだけではありませんか。その中で、
国鉄の用地売却の見通しがつくまで約十年間放置されることになる
国民負担分十六兆七千億円は、これからも毎年一兆円以上利子がふえ続けるのであります。仮に国庫から今年度並みの年三千億円程度の助成があるとしても、十年後の借金は単純に計算しても約二十六兆円、現在より十兆円も膨れ上がるわけであります。
政府はこの借金を一体どうするつもりですか。結局は、亀井監理
委員長が直間比率の見直し、つまり間接税の増税と述べたように、増税で
国民に
負担させるつもりですか。解決策を先送りしない答弁を求めます。(
拍手)
さらに問いたいのは、
政府は、一日列車を走らせると六十七億円ずつ赤字がふえ続けますと大宣伝をやってまいりましたが、この
内容について
説明を求めます。もともとこれは、列車を走らせることから生ずる赤字ではなく、ほとんどが押しつけられた借金の利払いではありませんか。一体何のための赤字宣伝だったのですか。
分割・
民営化をやれば、赤字すなわち
長期債務が解消できますと
国民に思い込ませるためではなかったのですか。正直に答えていただきたいと思います。(
拍手)
さらに重大なことは、
長期債務の大半を
国民に押しつけて身軽になったはずの新設民営
会社さえも、北海道、四国、九州のいわゆる三島
会社は
経営が成り立たないことが関係者の言明でも明白ではありませんか。
貨物会社のごときは、いまだに収支見通しさえ示せないのはなぜですか。各
会社発足後、少なくとも十年間の収支見通しとその根拠を示されるよう求めます。およそこのような
状況は、大赤字を理由に
分割・
民営化を進めてきた
政府の宣伝と全く相反するのではありませんか。
だが、この食い違いを解くかぎは簡単であります。
分割・
民営化は
国鉄の
経営形態を根本的に変えることでありますが、
経営形態を変えたからといって、
長期債務が生まれた原因もその結果もなくすることにはならないからであります。なぜなら、
国鉄の
長期債務は、外地から引き揚げた
職員の膨大な年金や
全国の新幹線等の莫大な
建設費等を
政府が無理やり上から
国鉄に押しつけたためにできたのであって、公営であろうと民営であろうと、どんな
経営形態であろうと、こんな
債務を
償還することは到底不可能だからであります。(
拍手)
政府は、自分が押しつけ、累積させた大借金を、
国鉄の
経営形態の問題にすりかえ、
分割・
民営化すれば赤字がなくなるかのごとく思い込ませてきたわけでありますが、これは二重、三重に
国民を欺くものではありませんか。
責任ある答弁を求めます。
長期債務の原因をつくり、
責任を
国鉄に転嫁し、その上これを
経営形態の問題にすりかえてきた
政府・自民党は、その
責任を今こそ
国民の前ではっきりすべきであります。
なお、あわせてお聞きいたしますが、
政府・自民党は、最近になって、
整備新幹線の
建設については
国鉄には
負担をかけないナショナルプロジェクトとして進めると言い始めております。これは少なくとも、今日まで新幹線の
建設費を
国鉄に押しつけてきたことが誤りであったことを認めたことでもあると思いますが、総理の見解を伺います。それとも、今でも、
国鉄は大赤字を出してもよいが、民営
会社には赤字を出させてはならないという考えであるならば、親方日の丸であぐらをかいていたのが
国鉄であったのか、
国鉄に無理難題を吹っかけてきた
政府・自民党であったのか、これは
分割・
民営化必要論の最大の口実にされてきた問題でありますので、明確な答弁を求めるものであります。(
拍手)
第二の問題は、
政府は、
分割・
民営化をしても
運賃は上がりません、ローカル線は守られますと盛んに宣伝してきましたが、これも全く逆ではありませんか。
まず、
基本運賃は九月に上げたところでありますが、来年以降も毎年三ないし五%、五年間で最低一一%から二四%も上がることが百四
国会での監理
委員会答弁でも明らかであります。これは、
民営化後の
運賃が
鉄道事業法案第十六条によって「適正な利潤を含むもの」という利潤原理で決められている以上、長距離逓減制の後退とともに避けることはできません。そうならないというどんな法的、
制度的保障がありますか、明確な答弁を求めます。(
拍手)
さらに重大なことは、ローカル線がどうなるかという問題であります。
国鉄再建監理委員会の最終答申によりますと、
鉄道特性の発揮できる分野、つまり
経営の成り立ち得る路線は、
全国二万三千キロの中のわずか五千キロにすぎません。すると、残る約一万八千キロ、全体の五分の四は、第一次から第三次までの特定地方交通線三千三百キロを含め、いずれは赤字路線ということで廃線の運命にさらされるのではありませんか。よく私鉄並みと言いますが、私鉄の歴史は廃線の歴史であります。この二十年間に二千九百キロから千五百五十キロに、五割近くも廃線になっております。
提案されている
鉄道事業法案二十八条によりますと、
運輸大臣は、「公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあると認める場合を除き、」営業や路線の
廃止を
許可しなければならないということになっています。今強行されている特定地方交通線のように、バスさえ走っておれば、
鉄道がどれだけ重要な
役割を果たしていようとも機械的に路線の
廃止を認めようということになるのではありませんか。このようなローカル線
廃止自由化法ともいうべきこの
分割・
民営化法のもとで、近い将来、幹線も含めて
全国的に不採算路線の大規模な
廃止が日程に上ってくることは確実であります。その際、
国民の
利益を守ろうとするならば、民営
会社の再国有化さえ要求されることが予想されるのでありますが、絶対にそうならないと断言できますか。
責任ある答弁を求めます。(
拍手)
ローカル線を守り、
国鉄経営を改善、
発展させる道は、何よりも
国鉄の公共性を貫き、国有の公共交通機関にふさわしい財政
制度を確立することが必要であります。レールや路盤
建設などは、道路、港湾、空港などと同様に公共
事業として国が
責任を持ち、
国鉄を基軸とする総合交通政策に基づき、計画的な財源配分を行うべきであります。こうすれば
長期債務の生まれる余地はなく、
国鉄は今でも黒字
経営ができるのであります。
また、地方ローカル線や学割、身障者割引など赤字の発生が避けられない分野は、西ドイツなど西欧各国もやっているように年度ごとに
政府が国庫から補てんすべきであります。さらに、幹線や大都市圏など、
基本的には
運賃収入で
経営を行う分野については、
国鉄が
国民に全
責任を負って
運営すべきであります。これこそ官僚的
経営の克服とあわせて、
国民が求めている真の抜本的な
国鉄再建策であると確信をするものでありますが、
政府の真剣な答弁を求めます。(
拍手)
第三に、九万三千人の大量の人減らしと安全、サービスの関係についてであります。
実はこの問題は、一人乗務や無人駅、無人ホームの激増、
人材活用センターへのベテラン労働者の収容などによって、サービスと安全が現実に危険にさらされるという事実となって、回答は既に出ているのであります。例えば、毎日三百二十五万人の
国民が利用している東京・山手線では、ほとんどの駅で朝夕のラッシュ時以外ホーム要員が
廃止されているため、線路に転落したりドアに手を挟まれたりしても、客の救出さえできなくなっているのであります。昨年八月、五百二十人ものとうとい犠牲者を出した日航ジャンボ機の墜落事故が、利潤追求の人減らしや
整備費の切り下げなどによる
検査の手抜きなどに起因していたことは各方面から指摘されているとおりであり、日航機事故はあすの
国鉄の姿であると言われているのであります。
今、無理やり余剰人員にさせられた
検査、修理、運転、保守、保安等のベテラン
国鉄労働者一万五千名が
全国千三百カ所の人材つぶしセンターに
入れられて、草むしりなどをさせられております。その後に北海道や九州などから広域配転させられたふなれな労働者が配置されているために、
検査ミスや運転ミス、過密長大踏切での列車緊急停止などの事態が各地で引き起こされております。このように安全を脅かす利潤第一の余剰人員づくりや労働組合つぶしの不当労働行為は、直ちにやめるべきであります。我が党は、人活センターを直ちに
廃止し、安全第一の立場で
所要人員を見直し、本来の
業務に配置して、安全に万全を期すことを強く要求し、真剣な答弁を求めるものであります。
また、サービスを口にするのであるならば、例えば出札改札要員の削減によって行列が日常化しているような
状況をこそ直ちになくすべきではありませんか。人減らしとサービスと安全の関係を
政府はどのようにとらえているのか、答弁を求めます。(
拍手)
第四に、
国鉄の
分割・
民営化は、以上で明らかなように、
国民にとっては百害あって一利なきものであります。では一体、だれが何のためにこんな無謀なことをあえて強行しようとしているのでしょうか。それは言うまでもなく、自民党中曽根内閣と財界、大企業であり、そのねらいは大きく言って二つあります。
一つは、
分割・
民営化によって
土地だけでも時価七十兆円もの膨大な
資産、とりわけ
国鉄本社を初めとする都心の超一等地を三菱、三井、住友などの財界、大企業がただ同然で分け取りできるようにすることであります。
分割・
民営化は、財界、大企業にとっては百害どころかまさに宝の山であります。
政府は、
国鉄の全
資産、
全国二万三千キロの
鉄道施設、日本最大の第二電電となる通信・コンピューター設備、琵琶湖の面積に匹敵する六万七千ヘクタールの
土地など、その価値を再評価をし、その全容を所有者
国民に明らかにすべきであります。それは、同日選挙中、
国鉄を売りに出すと演説し続けた総理にとっても最小限度の
責任であります。五兆八千億円で売りに出す二千六百ヘクタールの用地の所在及び算出根拠とともに、資料を
国会に
提出すべきであります。答弁を求めます。(
拍手)
政府、財界、大企業のもう一つのねらいは、
国労、全動労など臨調路線に反対したり抵抗したりする労働組合を一挙につぶす上で、
国鉄の
分割・
民営化にまさるものはないということであります。
政府提出法案によれば、新
会社発足に当たって
国鉄労働者全員を一たん解雇し、新
会社への
採用は、一方的に決めた基準や条件によって二重、三重のふるいにかけ、選別していく仕掛けになっており、労働組合との団体交渉は完全に排除されています。
国鉄職員局次長は、この新規
採用というのは非常にいいわけです、新
会社が決める労働条件によって働きたいという人間を
採用するという画期的なシステムになっておりますと述べて、手放しで喜んでおります。これは、憲法第二十八条が保障している団結権や団体交渉権を一片の
法律で抹殺する前代未聞のファッショ的手法であり、事は
国鉄労働者の問題にとどまらない重大問題であります。これが総理の言う国際国家日本の
政府の労働組合に対する
認識であり、態度であるのか、はっきり伺っておきたいと思います。(
拍手)
最後に強調しておきたいことは、今
国鉄は一種の無法地帯と化しております。
分割・
民営化がまるで
国鉄を支配する最高の
法律であるかのように扱われています。
分割・
民営化に反対する者は、労働者の
権利どころか、
基本的人権さえ侵されているのであります。既に昨年来、六十名を超える
自殺者が出ています。総理、これほど深刻な事態を生み出している主権者無視、
国会無視が、あなたのしばしば口にしている謙虚にということの中身なのですか。明確な答弁を求めます。(
拍手)
今日本は、円高を逆手にとった経済構造の転換などで、いよいよ百万−二百万の大失業時代に入ろうとしています。確かに
国鉄の解体、組合つぶし、大量人減らしは、こういう総決算政治の新たな突破口となり、大量失業者づくりに一層の拍車をかけるものとなるであろうことは確実であります。