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1986-12-17 第107回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十七日(水曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 大塚 雄司君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 熊川 次男君 理事 保岡 興治君    理事 稲葉 誠一君 理事 中村  巖君    理事 安倍 基雄君       逢沢 一郎君    赤城 宗徳君       井出 正一君    稻葉  修君       上村千一郎君    江藤 隆美君       宮里 松正君    小澤 克介君       坂上 富男君    冬柴 鉄三君       吉井 光照君    安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 遠藤  要君  出席政府委員         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務省民事局長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省矯正局長 敷田  稔君         法務省人権擁護         局長      野崎 幸雄君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君  委員外出席者         警察庁長官官房         審議官     根本 好教君         警察庁刑事局鑑         識課長     石尾  登君         警察庁警備局外         事課長     笠井 聡夫君         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       熊代 昭彦君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         査証室長    木村 光一君         外務省アジア局         北東アジア課長 高野 紀元君         外務省国際連合         局人権難民課長 堀村 隆彦君         運輸省地域交通         局陸上技術安全         部技術企画課長 松波 正壽君         自治大臣官房文         書広報課長   石川 嘉延君         法務委員会調査         室長      末永 秀夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 大塚雄司

    大塚委員長 これより会議を開きます。  この際、申し上げます。  本委員会に付託になりました請願は三件であります。各請願の取り扱いにつきましては、理事会において協議、検討いたしましたが、いずれも採否の決定を保留することになりましたので、さよう御了承願います。  なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、外国人登録法の改正に関する陳情書外三件であります。念のため御報告申し上げます。      ────◇─────
  3. 大塚雄司

    大塚委員長 閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件 並びに  国内治安及び人権擁護に関する件 以上各案件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  5. 大塚雄司

    大塚委員長 法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤克介君。
  6. 小澤克介

    小澤(克)委員 本日は、実はさきに本年十月二十二日に当委員が当委員会におきまして、裁判所の執行官が執行補助者として暴力団員を用いたのではないか、この件について引き続いて最高裁にお尋ねしようか、こう思っていたのですが、質問時間が一時間ということでちょっと無理なようでございますので、これはまた他の機会にさらに質問させていただきたいと思いまして、本日は、外国人登録法関係につきまして種々お尋ねいたしたいと思います。  最近、外国人登録法違反ということで指紋押捺を拒否している者に対する逮捕等強制捜査が幾つか新聞紙上などをにぎわしているようでございます。  そこで、まず法務省当局刑事局の方にお尋ねをしたいと思うのです。  まず、根本のところですけれども、捜査は、任意捜査が本来原則であって、強制捜査は必然的に人権侵害を伴うものですから、必要やむを得ない場合に限られる、これが捜査原則ではなかろうかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  7. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そのとおりでございますが、ただ、出頭に応じないとか罪証隠滅のおそれがあるとか逃亡のおそれがあるとか、こういうようないろいろな事情があるわけでございまして、そういう場合には必要に応じて強制捜査を行うわけでございます。
  8. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、今出ました、まず逮捕要件なのですが、これは逮捕理由と必要ということなのでしょうけれども、理由の方はさておきまして、必要性についてですが、本人は、取り調べには応ずる、しかし場所警察署以外にしてくれという指定をしている、あるいは弁護士立ち会いをつけてくれというようなことを言っている、こういう場合には逮捕必要性ありというふうに判断されることになりますか。
  9. 岡村泰孝

    岡村政府委員 私、先ほど申しましたようないろいろな事情逮捕必要性判断されるべきものであると思っております。
  10. 小澤克介

    小澤(克)委員 ですから、本人が、任意取り調べに応じますということをわざわざ内容証明郵便でその被疑者が送りつけている。ただし、場所としてあるところを指定している、警察署ではなくてですね。それから立会人として弁護士立ち会いを要求している。これは証拠隠滅あるいは逃亡のおそれありというふうに判断されることになりますか、一般論で結構ですが。
  11. 岡村泰孝

    岡村政府委員 結局、具体的な事件につきまして、具体的な事情のもとにおいて逮捕必要性判断されるわけでございますので、一般的に申し上げるのは非常に難しいと思うのでございます。
  12. 小澤克介

    小澤(克)委員 それでは、今度被疑者捜査機関によって取り調べを受けた場合に聞かれるであろう内容陳述書を作成いたしまして、しかも公証人による、本人陳述に間違いないという認証を得てこれを捜査機関に届けてある。このような場合にでも、本人出頭を要求し、出頭に応じない場合には逮捕する、これはやはり逮捕必要性ありというふうに判断されますでしょうか。
  13. 岡村泰孝

    岡村政府委員 これも今申し上げましたように、いろいろな事情逮捕必要性判断の基礎となってまいるわけでございまして、一つだけの事情をとらえてどうこうということにつきまして、一般的にはお答えいたしがたいのでございます。
  14. 小澤克介

    小澤(克)委員 いずれにいたしましても、警察に限らず捜査機関からの任意出頭に応じない、ただ応じないのではなくて、いろいろ条件をつけたりしているわけですけれども、あるいは供述書をつくって届けるというようなことをしているわけですけれども、ただ出頭に応じないということだけで、それだけで逮捕必要性ありと判断される、こういうことにはならぬでしょうね、その点いかがでしょう。
  15. 岡村泰孝

    岡村政府委員 一般的に申し上げますと、出頭に応じないということが必要性判断の重要な資料にはなるだろうと思います。
  16. 小澤克介

    小澤(克)委員 出頭に応じないということから自動的に逮捕必要性あり、すなわち証拠隠滅及び逃亡のおそれあり、こういうことにはならぬでしょうね。他の要素をいろいろ勘案して総合的に判断するということになろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  17. 岡村泰孝

    岡村政府委員 諸般の事情を考慮して必要性判断することになるわけでございますが、やはり出頭に応じないということは、必要性の大きな判断資料になるものと思っております。
  18. 小澤克介

    小澤(克)委員 次に、被逮捕者について指紋採取ということがなされるようですが、これはどういう要件があれば可能なのでしょうか。
  19. 岡村泰孝

    岡村政府委員 これは刑訴法の二百十八条によりますと、身体拘束を受けている被疑者指紋採取につきましては、令状によることを要しないということになっているのでございまして、この規定に基づいて指紋採取ができるのであります。
  20. 小澤克介

    小澤(克)委員 刑訴法二百十八条の一項は、「必要があるときは、」「令状により、差押、捜索又は検証をすることができる。」もちろん身体検査もできる。これを受けて二項で、既に身体拘束を受けている被疑者については、改めて身体検査に際して令状が要らない、こういう構造になっていますから、当然身体検査についても、必要があるときに限られる、こういうことになろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  21. 岡村泰孝

    岡村政府委員 被疑者特定するということ、これはやはり捜査の上で必要なことであるわけでございます。そういう意味指紋採取とか身長、体重の測定、写真の撮影、こういったことが被疑者特定の上で必要でございますので、通常やはり必要性は認められるものと思うのでございます。
  22. 小澤克介

    小澤(克)委員 質問は、身体検査をするのはあくまで必要性、必要があるときに限られる、これが条文構造から見て当然じゃないかと思うがどうかと、こう聞いたのですが、必要性判断が先立つのではないか、前提になるのではないかということです。
  23. 岡村泰孝

    岡村政府委員 必要性があるという場合に行うわけでございまして、その必要性が、先ほど申し上げましたように、被疑者特定指紋採取等が必要になる場合が通例である、こういうことでございます。
  24. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうすると、あくまで必要ある場合に限られる、それでその必要性被疑者特定のためである、こういうことですね。身柄の拘束されている者、すなわち逮捕されている者についてはもう当然に自動的に身体検査をするというのが法の建前ではない、これはこう伺ってよろしいですね。
  25. 岡村泰孝

    岡村政府委員 まあそういうことであろうと思いますけれども、先ほど申しましたように、必要性という意味においては被疑者特定上必要なことをここに記載してあるわけでございまして、必要性があるのが通例だということでございます。
  26. 小澤克介

    小澤(克)委員 必要性があるのが通例だとおっしゃいましたけれども、聞いているのは、要するに必要性判断抜きに被逮捕者については当然に指紋採取をする、こういうことではなかろう、法の建前はそうではないというふうに思うのですけれども、それで間違いないかと、こう聞いているのですがね。
  27. 岡村泰孝

    岡村政府委員 法の建前はそうでありますけれども、被疑者特定するのに必要であるのが通例だ、こういうことになるわけでございます。
  28. 小澤克介

    小澤(克)委員 同じことを聞いて同じことを答えているように思いますが……。  それじゃ指紋採取について、必要があるときは指紋採取が、しかも令状なしにできるということでしょうけれども、この際に何らか用具を用いるというようなことは、これは法令上は根拠があるわけでしょうか。
  29. 岡村泰孝

    岡村政府委員 令状なしに指紋採取ができるわけでございまして、この二百十八条の場合刑訴法百三十九条の規定が準用されてまいりますので、指紋採取につきまして拒否する者に対しましては必要な限度での強制を行い得るということになるわけでございます。  その強制中身としてどういうものがあるか、今御質問ありましたような器具が用いられるかどうか、こういう問題になろうかと思うのであります。
  30. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで刑訴法百三十九条において、過料に処してもあるいは刑を科してもその効果がないと認めるときは即時強制ができる、こうなっているわけですね。それは承知しているのですけれども、その際に道具を用いる、これはどうなんでしょうか、法文根拠があるのでしょうか。
  31. 岡村泰孝

    岡村政府委員 道具を用いるということについての法文上の根拠はないと思います。しかし、先ほど申し上げました刑訴法百三十九条で「身体検査を行うことができる。」という規定が準用されておりますので、その限度で、必要な限度強制的に行い得る、その強制的な中身としていろいろなものが考えられるということであります。
  32. 小澤克介

    小澤(克)委員 今お答えよくわからぬのですが、そうすると、百三十九条で強制が可能である、したがって、その百三十九条で許容されている限度において強制の一態様として用具の使用もあり得よう、こういうふうに今のお答えは解釈すればいいですかね。
  33. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そういうことでございます。
  34. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、しかしながらこれ、何らかの強制を伴うということは、その反面必然的にその被疑者の自由あるいは人権侵害されているわけですから、したがって必要最小限度にとどまらなければならぬ、こういう原則は当然法の精神からあろうかと思いますが、それはいかがでしょうか。
  35. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そのとおりでございます。
  36. 小澤克介

    小澤(克)委員 大体法務省刑事局のお考えは一応大筋だけは明らかになったかと思いますので、今度は、警察の方においでいただいておりますので、警察庁当局お尋ねしたいと思います。  ことしの十一月五日でしたでしょうか、兵庫県の尼崎北警察署、こちらにおいて、在日外国人金成日さん、この方が指紋押捺をしなかったということを被疑事実として逮捕されているわけですが、この件について逮捕必要性はどのように判断されたのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  37. 笠井聡夫

    笠井説明員 本件につきましては、昨年の三月尼崎市役所におきまして再交付申請に際して指紋押捺を拒否した事案に関するお尋ねかと思いますが、本件につきましては、被疑者に対しまして累次五回にわたって任意出頭を要請したものでありますけれども、任意出頭に応じずという状況の中で、事件全般の背景、特殊性等にかんがみ逮捕必要性ありと認められる状況になりまして、裁判官の令状を得て通常逮捕したという事案と報告を受けております。
  38. 小澤克介

    小澤(克)委員 任意出頭に応じなかったというのは事実のようでございますが、任意取り調べに応じなかったということではないわけですね。本人内容証明郵便で、取り調べには応じます、ただし場所としてみずから経営している喫茶店、それから指定する弁護士立ち会い、この二つの条件をつけて、取り調べにはいつでも応じます、こういうことを通知をしていたのではありませんか。
  39. 笠井聡夫

    笠井説明員 内容証明の詳細につきましては十全に承知いたしておりませんが、さような経緯も十分考慮した上で、なおかつ兵庫県警察におきましては、逮捕必要性ありと考え令状の請求をしたというふうに聞いております。
  40. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこがわからないのですがね。本人取り調べには応ずると言っているわけです、逃げも隠れもしないと。また、指紋押捺拒否したことはもう明らかな事実ですので、隠滅すべき証拠というのもちょっと思い当たらない。何ゆえにこれは逮捕の必要ありというふうに判断したのか、そこのところがどうしてもわからないので、もう少し詳しく言ってください。
  41. 笠井聡夫

    笠井説明員 本件につきましては、先ほども申し上げたとおり、累次にわたって出頭を要請する、それからその過程で御指摘のような通知もあったということでございますけれども、捜査の公正な進捗あるいは真相究明という上で逮捕必要性ありと認めたというふうに理解いたしております。
  42. 小澤克介

    小澤(克)委員 捜査の公正及び真相究明というふうにおっしゃいましたが、弁護士が立ち会っていればこれほど捜査の公正さが担保されることはないですね。それから真相究明といったって、本人はもう押捺を拒否したということは周囲に明らかにしているわけですから、何で警察にしょっぴかなければ、しょっぴくというのは変ですけれども、警察署で調べなければ公正あるいは適正な捜査にならない、こういう考え警察にはあるのでしょうか。
  43. 笠井聡夫

    笠井説明員 取り調べ場所等につきましては、通常警察署を使用していることは御承知のとおりでございまして、これはまあ被疑者取り調べの環境あるいは被疑者立場等も考慮いたしまして、通常警察署が適当な場所である、こういうことで行われているわけでございます。本件につきましても、通常事案と同様に警察署で調べるということで再々警察署への出頭を要請したという経緯と承知しております。
  44. 小澤克介

    小澤(克)委員 警察署取り調べるのが通常だというふうにおっしゃいますけれども、そもそもその発想自体おかしいですよ。これは任意捜査ですから、警察の方であくまで任意事情を聞かしてもらうわけでしょう。この世の中で、用がある方が出向くのが常識ですよ。そうでしょう。そう思いませんか。
  45. 笠井聡夫

    笠井説明員 被疑者側の希望といたしましては、自宅といいましょうか、先ほど先生も御指摘のとおり喫茶店を経営しておられる方でございますけれども、そういったいわば公衆の場では取り調べ場所として適当ではない、こういう判断で、尋常行われておる警察署取り調べ場所指定して出頭を要請したということでございます。
  46. 小澤克介

    小澤(克)委員 喫茶店が、公衆といいますか、他の人も立ち入るような場所だからぐあいが悪いというのであれば、他の場所指定すればいいじゃないですか。どこでもいいですね。現にそういうことはよくありますでしょう、政治家なんか引っ張るときはこっそりどこかのホテルで調べたりするじゃないですか、これは検察庁だろうと思いますけれども。警察署で調べなければいけないなんという原則を、どうしてそんなことを考えるのか、私は不思議でしょうがない。  私はこの件は、党の調査団ということで尼崎北警察署などへ行きまして、あるいは兵庫県警にも行きまして、いろいろ調査をさせていただきました。調査する方が出向くのが当然でしょう。だから私もそうしました。そうでしょう、行って事情を聞かしてもらうのですから。任意なんですからね。当然警察署に出てこい、出てこぬやつは逮捕だ、こんなことは常識じゃ考えられぬのですがね。それが通常だとおっしゃっているとすれば、警察のその通常というのが世間常識とかけ離れていると思いますよ。他の場所指定するというようなことは試みたのでしょうか、逮捕する前に。その喫茶店が適当でないとすればですね。
  47. 笠井聡夫

    笠井説明員 場所につきましては、他の場所指定をいたした経緯はございません。
  48. 小澤克介

    小澤(克)委員 だからおかしいのですよ。喫茶店が相当でないと判断するのなら、それでは他の場所、余りほかの人が立ち入らぬような場所でどうか、そこまで手を尽くして、それから逮捕必要性について判断すべきじゃないですか。とにかく警察に来るのが当然だ、通常だ、だから警察に来ないのは逮捕だと、もしそういう発想を持っておられるのであれば、この際ぜひ改めていただきたい。いいですか、世間常識では用がある方が出向くのが当然なんです。そうでしょう。警察に限って、ちょっと来い、来んければ逮捕、こんなばかな話ないです。ぜひ改めていただきたい。  次に、被逮捕者についての指紋採取について。本件では、なぜ指紋採取が必要だと判断されたのでしょうか。
  49. 石尾登

    石尾説明員 お答えいたします。  指紋は、個人識別上絶対的な信頼性一般に認められておるところでございまして、被疑者特定個人識別を行う上で指紋採取が必要であったということでございます。
  50. 小澤克介

    小澤(克)委員 一般論を聞いているのじゃなくて、本件でなぜ指紋採取が必要と判断したかと聞いたのです。
  51. 石尾登

    石尾説明員 本件におきましても、個人識別の万全を期するという捜査上の必要性から指紋採取したものでございます。
  52. 小澤克介

    小澤(克)委員 そもそも本件において指紋採取が必要かどうかという判断を行ったのでしょうか。それとも自動的に逮捕者だから指紋採取したということじゃないのでしょうか。どうなんですか。
  53. 石尾登

    石尾説明員 被疑者身元確認及び犯罪経歴を明らかにすることは捜査上常に必要なことと考えておりまして、したがって、すべての逮捕被疑者について、刑事訴訟法二百十八条二項の規定によりまして、個人識別上絶対的な信頼性のある指紋採取し、これによる身元確認等を行っているところでありまして、本件の場合におきましても、被疑者特定個人識別の万全を期する意味採取を行ったものであります。
  54. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、警察の見解としては、被逮捕者についてはすべて全件指紋採取する、こういう方針なのでしょうか、今のお話だと。
  55. 石尾登

    石尾説明員 一般に、被疑者指紋採取いたしますのは、当該事件証拠固めに資するほか、指紋照会によって被疑者身元確認するとともに、その犯罪経歴を明らかにするためであります。事件証拠固め指紋を必要とするのは必ずしもすべての事件について言えることではございませんが、身元確認及び犯罪経歴を明らかにすることはすべての事件について必要なことでございます。すなわち、被疑者身元を確かめることは、被疑者特定のために必要であるばかりでなく、公訴提起の要否の判断をするについても量刑に当たっても必要なことでございますし、さらに、犯罪経歴に関する事項を明らかにしておくことは、累犯加重要件常習性の認定に当たっても、量刑に当たっても不可欠なことだというふうに理解しております。
  56. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、本人特定のために、被疑者特定のために全件指紋採取している。それからまた前科等調査のためにもそれが必要だ、こういうお話でしたが、本人特定するためには、それは指紋が最終的な確実な方法だということは私も否定はしませんけれども、そうまでしなくても大部分は特定できるじゃないですか。  すなわち、逮捕されて連れてこられた者が令状に指し示されている被疑者と同じ人かどうか、同一性があるかどうか、それは何らか確認しなければならぬだろうと思いますけれども、それは写真等によって幾らでも確認できる、また本人立ち居振る舞い等から総合的な判断幾らでもできるわけです。何かわざわざ替え玉がすりかえて出頭しているというような合理的な疑いがあればともかくですけれども、そうでない限りは本人特定するのに全件指紋が要るなどということは、これは全く合理性がない、そう思いませんか。
  57. 石尾登

    石尾説明員 先生指摘のように、写真その他の方法身元確認する方法もございますが、やはり個人識別の万全を期するという意味では、個人識別上絶対的な信頼性一般的に認められている指紋によって行うということでございます。
  58. 小澤克介

    小澤(克)委員 それは間違いだと思いますよ。何らか強制する場合には常に必要最小限度といいますか、必要十分な範囲内で行うべきです。なぜならば、強制はその反面必ず自由あるいは権利の侵害——侵害といっても違法な侵害とは思いませんが、常に違法とは思いませんけれども、何らかの侵害を生ずるわけですから、したがって必要かつ十分な範囲にとどめるべきだ、これが原則でしょう。だから何も指紋採取しなくても十分に本人特定できる。  そうであれば、万全を期するために指紋採取する、これは明らかに間違いです。刑訴法の解釈としても間違いです、必要あるときには指紋採取ができる、こう書いてあるわけですから。国家公安委員会規則犯罪捜査規範の百三十一条、それから同じく国家公安委員会規則ですか指紋等取扱規則三条、これらを読みますと、あたかも、逮捕したときは当然に指紋採取するというふうなことになっている。これは明らかに間違いです。改めるべきだと思います。そう思いませんか。
  59. 石尾登

    石尾説明員 逮捕した被疑者指紋採取につきましては、刑事訴訟法二百十八条二項を根拠採取しておるわけでございますが、今御指摘内部規則国家公安委員会規則犯罪捜査規範及び指紋等取扱規則に、そのような逮捕被疑者指紋採取についての規定が置かれておりますが、やはり全般的にはその必要性ということを判断しつつ、やはり個人識別身元確認犯罪経歴を明らかにするという捜査上の必要性があれば採取をするということでございます。
  60. 小澤克介

    小澤(克)委員 必要性判断前提にあるというふうに今お答えになりましたけれども、そうなっていないのですよ、この犯罪捜査規範あるいは指紋等取扱規則を読みますと。被逮捕者について当然に採取するとなっているのです。おかしいじゃないですか。必要性判断がまずあるべきです、法律上そうなっていますから。これはおかしいですよ。答えは要りません。おかしいということを指摘しておきます。  それで、その点大変問題があるのですけれども、仮に指紋採取の必要ありと判断したときに、何らか道具を用いる、こういうことはよく行われているのでしょうか。
  61. 石尾登

    石尾説明員 今回御指摘事案以外には、器具を使用した事案については聞いておりません。
  62. 小澤克介

    小澤(克)委員 今回御指摘といいますと、私は今尼崎北警察署の件を指摘したのですが、ほかにはないですか。
  63. 石尾登

    石尾説明員 先生指摘兵庫尼崎北警察署における器具使用の指紋採取と、神奈川県警察において器具使用の事例がございますが、そのほかには報告を受けておりません。
  64. 小澤克介

    小澤(克)委員 こういう道具使用ということについては、警察庁としてはどういうお考えなんでしょうか。先ほど法務省刑事局の方からお答えいただきましたが、同じと聞いてよろしいですか。
  65. 石尾登

    石尾説明員 身体拘束されている被疑者についての指紋採取につきましては、二百二十二条一項により同法百三十九条が準用されておりまして、直接強制が可能でありますが、指紋採取の目的を達するため必要最小限度の有形力の行使ということでございまして、直接強制を行うに当たりまして、被疑者の自傷防止という観点から必要最小限度の有形力の行使の手段として使用したものと聞いております。
  66. 小澤克介

    小澤(克)委員 自傷防止のための必要最小限度道具の使用が可能である、こういう見解だということですね。尼崎北署で使われたもの、これは写真ですけれども、これは間違いないですね。
  67. 石尾登

    石尾説明員 はい。
  68. 小澤克介

    小澤(克)委員 間違いない。これは寸法が入っていますので同じものをつくらせてみたのです。こういう代物ですよ。アルミニウムの厚い板でできている。これは私はつけてみました。これは同じものじゃありませんよ。写真を参考に寸法も全部同じにつくったのです。このマジックテープのつけ方が若干違いますけれども、機能としてはほぼ同じです。これは私はつけてみたのです。このひじの関節から先全然動きませんよ、ぴったり固定されて。これは拘束具ですよ。責め道具です。これが必要最小限度の自傷を防ぐための道具だ、こういうふうにおっしゃるわけでしょうか。
  69. 石尾登

    石尾説明員 先ほど申し上げました必要最小限度の有形力行使の範囲内で指紋採取を、直接強制を行うわけですが、有形力行使の中で被疑者が不意に抵抗するということで不測の傷害を与えてはいけないというところから、そういうけがを与えないということで考案した器具というふうに聞いております。
  70. 小澤克介

    小澤(克)委員 これはやってごらんなさい。大変なものですよ。指まで全部固定されるのです、ひじから先。これは拷問じゃないですか。指までとめている時間はありませんけれども。何でこんなことまでして、指紋押捺を拒否した者に対してこんな道具を使って、捜査ということで別の法規でもって指紋採取する。これは報復以外の何物でもないじゃないですか。これが文明国で行われることですか。どうですか。
  71. 石尾登

    石尾説明員 あくまでも被疑者の不意の抵抗とか、あるいは暴れて不測のけがを与えてはいけないということで、安全を考えて考案されたものと聞いております。
  72. 小澤克介

    小澤(克)委員 いいですか。警察庁の方で言うだけでも五人の警察官が、本人の話ではもっと多かったそうですが、寄ってたかってこれを本人につけて、そして指紋をとったのですよ。  これが自傷防止のための補助具ですか。ここから先ぴったり固定されるのですよ。これは今、自分でつけたからちょっと緩いですけれども、こんなものをつけられて五分もたったら手がしびれてきますよ。大臣、大臣は人権擁護についても重要な職掌とされているわけですけれども、これをごらんになってどう感じられますか。——通告してありますので、大臣どうぞ。
  73. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 強制指紋をとる場合には最小限度必要性があると思いますけれども、それはどうかと言われますると、素人の自分としてはなかなか判断がつきがたいといいますか、何分、先生のおっしゃるように過剰的な道具はできるだけ排除すべきだ、必要最小限度でいくべきだ、こう感じております。
  74. 小澤克介

    小澤(克)委員 人権擁護局の方にも来ていただいておりますが、この件について人権擁護の申し立てがあったと聞いておりますが、受理しておられますでしょうか。
  75. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 申し立てがあったと承知いたしております。
  76. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは模型ですけれども、アルミの板ですよ。こうやって固定して、そうして墨をつけて指紋採取したのだそうです。これは人権擁護の観点からどうでしょうか、どんなふうに思われますか。
  77. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 刑事訴訟法規定に基づきまして、一定の要件のもとで被疑者指紋強制的に採取することができる場合があるということ、及びこのような場合であってもその有形力の行使というものは必要最小限のものに限られるべきであるということは、これまでの御議論で明らかになったとおりであると考えております。  したがいまして問題は、その強制力の行使というものが必要最小限度範囲にとどまっていたかどうかということになるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、既にこの件につきましては人権侵犯であるということで申告がなされておるようでございますので、その調査を待って慎重に判断をしてまいりたい、かように考えております。
  78. 小澤克介

    小澤(克)委員 申し立てがあったということで調査はもう着手しておられますでしょうか。これは模型ですけれども、現物などを調査しておられますでしょうか。
  79. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 既にいろいろ事情聴取をいたしておるというふうに承知いたしております。
  80. 小澤克介

    小澤(克)委員 強制力の行使は必要最小限度でなければならないという大原則、これは皆さんお認めのところでございますので、ぜひ慣重な調査をお願いしたいと思います。  時間が余りありませんので、もう一件。  若干旧聞に属しますが、ことしの五月二十六日、川崎の臨港警察署において外国人の朴大偉さんがやはり逮捕されている。このケースでは、先ほど一般論としてお尋ねしましたが、陳述書を作成して公証人の認証を得たものを捜査機関に送り届けている。通常捜査において聞かれるような身上関係とか、それから拒否した事実、全部みずから先に陳述をして、陳述書をつくって送っている。それにもかかわらず逮捕されている。これまた逮捕必要性について全く重大な違法があると私は思います。それから指紋採取が当然のように行われている。これも必要性判断ということを全く欠いた、指紋採取として法にかなっていない、そう考えます。  その点については時間がありませんので指摘するだけにとどめますが、この朴さんの場合にはこういうものを使って採取をしたと本人から聞いておりますけれども、これは間違いありませんか、警察庁。
  81. 石尾登

    石尾説明員 ただいま写真で拝見したとおり、間違いないと思います。
  82. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは神奈川県警で聞きましたら、五十七年と五十八年でしたか二年度にわたって業者から購入して全署に配付した、三本ずつの三点セットだそうですが。これはほかの都道府県警察でもこういうものを購入して配っているのでしょうか。
  83. 石尾登

    石尾説明員 御指摘の神奈川県警察のような器具につきましては、今回調査をいたしましたところによりますと、二十道府県警察において購入しているというふうに聞いております。
  84. 小澤克介

    小澤(克)委員 二十道府県というと、かなりの数になるわけですが、これは何か、どこかの業者がこういうものをつくって売り込んだのでしょうかね。何か見たところ医療器具か何かに類似していますので、医療器具メーカーか何かがつくったのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  85. 石尾登

    石尾説明員 指紋採取するに際しまして指を真っすぐに伸ばして安定的に固定するという器具がつくられて、指紋採取の補助器具としてということで各府県がそれぞれ県費で購入したところがあると聞いております。
  86. 小澤克介

    小澤(克)委員 いや、質問の答えになっていないのですけれども。それで、指を真っすぐ伸ばすための補助器具だというふうにおっしゃいましたけれども、実はこの川崎のケースでは、こぶしを握って指紋を拒否している者に対して、この先の部分を指の先端にかぶせまして、そして、てこのようにしてこじあけているのですよ。真っすぐ伸ばして固定するというあなたのおっしゃる用法とは全然違った使い方がなされているわけです。そういうことまで容認してこういうものが警察では使用されているのでしょうか。
  87. 石尾登

    石尾説明員 御指摘の当該器具についての使用については、警察庁としては承知しておりませんでした。
  88. 小澤克介

    小澤(克)委員 この件も人権擁護の申し立てがなされていると聞きますが、人権擁護当局としては聞いておられますか。
  89. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 承知いたしておりませんが、一度調べてみたいと思っております。その申告がなされているかどうかについてよく調べてみたいと思っております。
  90. 小澤克介

    小澤(克)委員 これも先ほどのこれに比べれば道具としてはやや小さいのですけれども、しかし、私は現物を見ましたけれども、ステンレスか何かでぴかぴか光っておりまして、あたかもメスや何かのような、医療器具のような印象を与える。これはこれで怖いものですよ。本人の話によりますと、警察官が箱をあけて、さてどれにしようかなと言ってがちゃがちゃやって、そのうち一本を選んで、使いたくないんだがなと言いながら取り出して、そしてこぶしを握っている本人の指に当てて、てこでこじあけた。これはやはり人権の観点から非常に問題があると思います。人権擁護局の方で慎重なお取り調べを願いたいと思います、申し立てが多分もうあったと聞いておりますので。この件についても、大臣恐縮ですが、御感想をお願いしたいと思います。
  91. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先ほどお答えしたとおりでございまして、最小限度必要性ということから十分配慮していくべきだ、こう思います。
  92. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは写真しかありませんけれども、これは模型ですので、大臣、何だったらつけてみてくれませんか。そして、必要最小限度かどうか、大臣の御感想をぜひ聞かしていただきたいと思います。  外登法の改正作業が進んでいるというふうに聞いておりますけれども、これに関しまして十二月七日付の共同通信系の各新聞に、改正案の骨子がまとまった、その一つは、永住者に限らずすべての外国人登録証をカード化する、それから自治体の告発義務を強化する、あるいは指紋のないカードに法的効果を持たせない、それから指紋押捺拒否は継続犯とする、こういうことが報道されているのですが、これは事実でしょうか。
  93. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 改正法案の骨子は既に総理の訪韓の際に明らかにされたとおりでございまして、すなわち、永住外国人を対象とする証明書のカード化、及び一人の外国人については一回限りの指紋にとどめるという、この二点でございます。その他の点につきましては、詳細その後鋭意検討を進めてまいっておるところでございまして、なお具体的な法案の取りまとめが完了するには至っておりません。  先ほど先生指摘の新聞報道につきましては、新聞の取材によるところと存じます。その内容について現在お答えを、あるいは御説明を申し上げる状況にはなっておりません。
  94. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、この報道は必ずしも正しくはない、こういうふうに伺っておきたいと思います。  この外国人登録事務に関しまして、ことしの九月二十五日に通達が出されているようでございます。これについていっぱい伺いたいことがあるのですが、時間がございませんので、一つだけ。  押捺拒否者については、刑訴法百九十七条二項による照会があったときには「一層積極的に協力するよう、あわせて指導願いたい。」こういう内容があるのですが、これはそもそもどういう立場から書かれたのでしょうかね。刑訴法百九十七条二項による照会というのは、これは機関委任事務の内容とは別ではなかろうかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  95. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 法改正の作業が進められている点は、先ほど御説明申し上げたとおりでございます。しかしながら、法改正を進める上に、政治的、社会的な環境という観点から、現行法に違反して押捺を拒否している者が存在する、その数がいまだかなりの数に上るという状況は決して好ましいものではございません。こうした状況をいささかなりとも改善する、是正する措置を講ずるということは、法改正を進めております当局の立場からしても極めて望ましいことでございます。そういう意味におきまして、警察当局の捜査に、機関として事務の委任を受けておる地方公共団体が刑事訴訟法に基づく義務に従って協力するということは必要かつ望ましいという観点から指示を行ったものでございます。いわば刑事訴訟法に基づく義務を指摘したということがその本質であると申し上げることもできるかと存じます。
  96. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、この照会に応ずるかどうかは地方公共団体、その首長の権限でありまして、機関委任事務の委任者である入管局としてはそのことをただ指摘しただけだ、委任者としての指示、上命下服の関係にはない、このように理解してよろしいわけですね。
  97. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 この刑事訴訟法に基づく義務の履行ということは、入国管理局の所管しております諸問題、特に外国人登録法、その改正にかかわる問題に密接な関係を持っておりますので、その観点からその義務の履行について指摘し、これを求めたということでございます。先生のおっしゃったような機関委任事務そのものではないという観点につきましては、そのとおりであろうかと存じます。
  98. 小澤克介

    小澤(克)委員 この照会に応ずるのが法的な義務なのか、それとも単なる訓示規定なのか、これは法解釈上争いがあるところですので、刑訴法内容についてきょう立ち入る時間はございませんけれども、要するにこの部分については、いわば指摘をしたにとどまる、先ほどからおっしゃっておられるとおりだろうと思います。  そこで、時間的にはこれよりさかのぼるのですが、昨年の十二月二十六日付で登録課長名義の回答というのがあります。これは「指紋押捺事件の為、外国人登録原票の指紋欄、写真欄は消去することなく回答願います。」という照会に対して、これに応じて差し支えないという趣旨の回答がなされているわけです、ちょっと言い回しが複雑になりましたけれども。これの意味がよくわからないのですけれども、応じて差し支えないというのは、要するに許諾ということであって、応じてもまさに構わないというだけのことであって、応ずるかどうかの権限は首長にあり、こういう前提のもとの回答だ、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  99. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 応じて差し支えないという表現は用いましたが、その意味するところは、応じてもらいたいということであります。その表現が、応じてもらいたいという意味に比して緩やかではないかという御疑問がおありかと存じますが、これはまず第一に、その通達あるいは回答の発出先が国の直接の下部機構ではなくて、機関委任事務の対象となっております地方自治体の長であるという観点にかんがみて、従来の慣行上そういう表現を用いておる、いわば儀礼的な意味も持っております。第二に、その回答の内容あるいは通達の内容が、先ほど申しましたように、機関委任事務そのものではなくて、刑事訴訟法に基づく公務所等の長の義務であるという観点から若干間接的な言い回しを用いた。  その二つの理由からそういう表現を用いたということでございまして、その意味するところは、先ほど申しましたように、照会に応じてもらいたいということでございます。
  100. 小澤克介

    小澤(克)委員 応じてもらいたいという、先ほどから何度もおっしゃっています指摘であるということでしょうね。これが何らか委任者として受任者に対する指示を意味するものではない、これは理論的にそうなろうかと思いますので、そう伺っておきます。  先ほどから照会に応ずるのが義務であるとおっしゃいますけれども、六十年五月十四日通達でも、その六のところで「指紋について照会があった場合には、法令上の規定に基づくものであっても原則としてその照会に応じないこととする」、こういうふうになっているわけですよ。ですから、法令に基づく照会があれば当然にそれに応じなければならない、そういう義務があるということではないということはこの通達自体が前提としているのではありませんか。
  101. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 そのとおりでございまして、五月十四日付の通達で、原則として指紋の取り扱いについては慎重を期するということを明らかにいたしております。具体的に申しますれば「照会に応じないこととする」という部分がございます。先ほど先生指摘の回答は、この通達によって課された制限をその特定の場合に関して解除する趣旨でございます。
  102. 小澤克介

    小澤(克)委員 それはおかしいのですよ。この五・一四通達はこういう構成になっているのです。もう時間が終わりましたので指摘だけしておきますけれども、登録事項についての照会があったときは指紋欄をコピーしないようにして回答しなさい、しかし、指紋そのものについて照会のあったときには、「外国人の同一人性を確認し身分事項を確定するため特に指紋を必要とする等の理由を明示して照会があったときは」入管局長に照会して「指示を求めることとされたい。」こうなっているわけです。ところが、昨年十二月二十六日のこの回答は、押捺拒否という容疑事実についての照会についての回答なんですね。ずれているのです。そのことを指摘しておきたいと思います。  さて、時間が終わりましたので、最後に、大臣に一言お答えいただいて、おしまいにしたいと思います。  新聞報道等によりますと、ことしの九月二十日中曽根総理が訪韓されまして、それには入管局長も同行しておられるそうですが、そして全斗煥大統領に、指紋押捺制度を一回限りにする、それから外登証をカード化する、こういうことを約束されて、全斗煥さんは一定の評価をした、こんなふうに報道されているのですけれども、これが事実であるとすれば、まだ国会の審議も何もなされていないものを一国の総理が一国を代表して他国に約束をするということ、これは国会無視も甚だしいと思うのですけれども、入管事務を所管される大臣としての御見解を賜りたいと思います。
  103. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 お答えいたします。  総理が韓国においでになって、大統領に対して、ただいまの先生のようなお話をされたというようなことは私も新聞報道では承知をいたしておりますけれども、そのような約束をされたかどうかということは、私は確認はまだいたしておりません。ただ、先生御承知のとおり、かつて韓国大統領が日本においでになって、この改善方を要請され、政府側もそれに対してこたえておるというような点で、恐らく総理としてはそういうふうな方向で今努力しているというようなお話が、そうなったような印象を与えているのではないかと思いますけれども、これも私の想像でございまして、確認はいたしておりません。
  104. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間が来ましたので、終わらせていただきます。
  105. 大塚雄司

    大塚委員長 稲葉誠一君。
  106. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 きょうは四つばかり通告はしてあるわけですが、中心は刑事訴訟法の基本的な問題をやりたいと思っておるのですが、その前にちょっとプライバシーの保護に関連をして、今大臣は、自分は専門家ではない、素人だというようなお話がありましたけれども、素人でいいわけでして、一番平均的な、平衡感覚を持った国民としていろいろフランクにお答え願いたいと思うのです。  このごろプライバシー保護の問題が非常にやかましくなってまいりました。これは当然のことですが、そういう中で例えば写真の週刊誌がたくさん出てきまして、私も、めったに買いませんけれども、汽車の中で時々買って読んで、そのままにしてしまうのが多いのですが、そういう一つの雑誌社に集団で暴行というか、殴り込みというのですか、それをしたということがあったわけですね。こういうふうなことに対して大臣としてはどういうふうにお考えなのか。極めて普通の日本人ならこういうふうに考えるだろうということで結構なんですが、余り専門的なことを聞くわけではありませんが、大臣、一体どういうふうにお考えですか。
  107. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 今先生お尋ねでございますけれども、最近写真週刊誌等で個人のプライバシーを侵害する云々ということで一般国民からの批判も大分厳しいということは承知をいたしております。私はこの問題については、個人の自由ということを中心としてプライバシーの尊重といいましょうか、そういうような点をもっとやはりはっきりさせておきたいな、こう思っております。  さらに、私はお願いしたいのは、報道関係の方々にも自主的に、いろいろ協会や何かもあることでございますので、いま少し一般から批判や何かの出ないような規制をしていただくということも大切なことではないか。ただ、こちらで報道の自由とかいろいろの問題に係る問題で余り法的に規制するということもどうかな、こう考えておりますが、しかし、個人のプライバシーをもっとやはり保護していかなければならぬというようなことも考えますると、なかなか割り切ったお答え、すっきりしたお答えができない。繰り返して申し上げるようですが、できるならば報道関係の方々に自主的に限度というか一線をつくっていただければなということを期待しているということでございまして、果たして先生お尋ねお答えになるかどうかわかりませんけれども、我々は我々として、私は私として何としても個人のプライバシー、私生活や何かについてはもっと自由ということを大切にしてあげたい、こういうような気持ちは持っておりますが、その結論としてどうしたらいいかということになると、今なかなか割り切ったお答えができないという現状でございます。
  108. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私は二つのことを聞いているので、片方の面と片方の面を聞いているのです。あなたのお答えは片方の面だけについてのお答えなわけです。仮に侵害されたとして、侵害されたんでしょうけれども、それで集団で殴り込んだり何かして、そういうことについての大臣のお答えは全くないわけです。忘れてしまったのかどうか知りませんけれども、私はその面でも聞いているので、その点についてのお答えがないというのはちょっとあれだと思いますね。
  109. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先般の集団で暴行を加えたとか押しかけていろいろやったという話は承知をいたしておりますけれども、これはやはりちょっと行き過ぎだ、やはり集団であのような問題を起こすということは、またいかなる事情があるにしてもちょっと過度なやり方だな、こう思っております。
  110. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣として、あるいは一平均人として、どっちが悪いというふうにお考えなのですか。
  111. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 今警察自体が捜査中でもございますので、どっちがいいか悪いかという判断は私は残念ながらまだ申し上げるわけにはいきません。よろしくお願いします。
  112. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 きょう、このことがあれじゃないものですから、実は警察は呼んでないのですよ。このことについて私が疑問に思いますのは、一体現行犯逮捕なのか、準現行犯なのか、あるいは任意同行なのか、どういうふうになっているのですか。  それから、地検へどの程度の報告があったのか。わからなければいいです。そこまで通告してありませんから。
  113. 岡村泰孝

    岡村政府委員 本件につきましては、警察判断いたしまして逮捕いたしたようでございますので、詳しい状況は私承知していないところでございます。
  114. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから現行犯ですか、準現行犯、あるいは任意、どうなっているのですか。問題は、それが法律的に一つと、もう一つは全然地検へ報告がない、あるいはあったかもしらぬけれども、そこはどうなっているのですか。
  115. 岡村泰孝

    岡村政府委員 地検の方が報告を受けたとは聞いておらないわけでございますが、現行犯に当たるような緊急の場合でございますと、やはり地検に一々報告する余裕もない場合もあろうかと思いますし、報告がないからどうのこうのということは言えない面もあろうかと思います。
  116. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あなたのお話を聞いていると緊急逮捕のようにも聞こえるし、地検へ報告がないというのは、逮捕したときは報告がないかもわからぬけれども、後から釈放するについて、任意取り調べなら釈放ということもありませんけれども、ちょっとよくわからないのです。  きょう警察の方を呼んでいませんから私の方が連絡が不十分なんであれですが、そういう釈放をするというなら、それについて地検の意見が全く入ってないのですよ、これはちょっと、私はどうもよくわからないところなんです。地検の意見は全く入ってないでしょう。刑訴の百九十三条との関係で一体どうなるのですか。
  117. 岡村泰孝

    岡村政府委員 いろいろ事件があるわけでございまして、あらゆる事件につきまして検察が警察から報告を受けて身柄の逮捕あるいは釈放について協議するということではないわけでございまして、必要な事件については、もちろん身柄の逮捕なり釈放について協議し、あるいはこちらが指示する場合もあろうかと思いますけれども、一般的に申し上げますと、警察も第一次捜査機関といたしまして捜査を行う権限を持っておるわけでございますので、警察判断逮捕し、あるいは釈放する事件というのもあるわけでございます。
  118. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこに問題があるのですよ。これは何でというか、刑訴の百九十三条との問題で、検事と警察官の関係とか指揮権の問題、いろいろ出てくるでしょう。これは刑訴の問題の中で後で入ると思うので、今ここでは申し上げませんけれども。ですから、逮捕と釈放が四十八時間の中で極めて恣意的に行われる危険性があるのですよ。ここに一つの問題点があるというふうに私は考えるのですが、それはそれとして。  あれだけやって、その日のうちに帰ってきてしまうのでしょう。そうすると、今後こういう事件の模倣が起きてくる危険性ということも考えられるのじゃないですか。それについてどういうふうに思われますか。どういうふうに対処したらいいのですか。
  119. 岡村泰孝

    岡村政府委員 同じような暴力事犯が発生いたしますれば、やはり警察はこれに対しまして適正に対処するものと思っております。
  120. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、警察任せなところに問題があるのですよ。ここに刑訴法の基本問題があるのじゃないですか。捜査構造全体との問題にも絡むわけですけれども、これは後からいたします。  そこで、今のプライバシーの保護ということについて、現在はどういうふうな形でプライバシーが保護をされているわけですか。イギリスなどではプライバシー保護の単独立法などもできているという話もあるのですが、そういう点についてはどういうふうに考えられますか。それは不法行為の理論を拡充し、うまく使っていけばいいという理解もありますけれどもね。
  121. 千種秀夫

    ○千種政府委員 プライバシー保護の民事的な側面での現在の検討状況という御質問かと存じます。ただいま先生指摘のように、今一般的には実務において、特に裁判所の判例において不法行為の理論を応用してその保護に当たっておりますし、さらに最近は、不法行為に該当するようなプライバシーの侵害があった場合、それを予防する、あるいは差しとめる方法はどうかということが問題になっておりまして、最近、判例の上でそういう道がだんだんと開け、固まりつつありますので、特に立法ということを今私どもは考えてはおりません。そういう状況でございます。
  122. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、肖像権という権利が具体的にあるのか、ないのか。あるとすれば、一体どういう権利の一つの態様なのか。ここら辺をどういうふうに理解したらいいのでしょうか。
  123. 千種秀夫

    ○千種政府委員 人格権というような言葉が使われておりますが、民法には権利というような言葉が抽象的にあるだけでございますので、運用の上ではいろいろな側面から解釈されてきたと思います。  ただいまのように肖像権という言葉もその人格権の一つとして言われてまいりましたけれども、同時に、例えば名誉という面からいいますと名誉権というようなことも申しますし、いろいろと権利として社会的に類型化されていくものはいろいろな権利というものが名づけられてきたわけでございますが、プライバシーに対する権利ということも最近は使われておりますけれども、権利の面から見たというよりは、プライバシーという言葉は、そっとしてもらいたいというむしろ消極的な面からとらえた言葉でございますので、積極的に権利を構成するには時間的なずれがあったというふうに思います。  そういう意味で、歴史的な過程の中では、プライバシーの中に名誉権があったり、あるいは肖像権というものがあったり、最近はそういう積極的なものでなくても何にもしてもらわない方がいい、そういうものを特にプライバシーというふうにだんだんと境界がはっきりしてきたというような感じを抱いております。
  124. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 では、この点はこの程度にいたしまして、私が常々感じておりますことは、刑事訴訟法が施行されて三十八、九年たつわけですね。そういう中で、いろんな問題が発生しているのではないかと私自身は思うのですよ。  一番の疑問は、刑事訴訟法ができるときに、例えば法制審議会にかかったのですか、これは。当時、法制審議会というものがなかったからかからなかったのかな、どういう経過でできてきちゃったのですか。そういう中で、どうしてドイツ法的なものが取り入れられて残っているわけですか。
  125. 岡村泰孝

    岡村政府委員 刑事訴訟法が制定されますときに、法制審議会の関係がどうであったのか、私、ちょっと古いことでございますので、今ここで申し上げるだけの正確な知識がないわけでございます。  第二点でございますが、戦前の刑事訴訟法は予審制度を採用いたしておりましたし、要するに大陸法系の職権主義的な面を打ち出しておりました刑事訴訟法になっておったわけでございます。戦後、やはりいろいろな面でアメリカの影響が大きかったわけでございますので、アメリカ的な当事者主義的な構造というものが刑事訴訟法に取り入れられることになったわけでございますが、やはりそこは従来からの大陸法的な刑事訴訟法になじんできておりました日本の特殊性と申しますか、その他いろんな事情がありまして、完全にはアメリカ的な刑事訴訟法にはならなかったということであろうかと思うのであります。
  126. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、今言われた当事者主義ということが一体何を意味するかということですよ。これが人によって違うわけです、使い方が。当事者訴追主義ということを言う人もあるだろうし、いろんな言い方があって、今あなたがお答えになった当事者主義というのは、厳格に言うと一体何を言っているわけですか、そこら辺のところをはっきりしないと議論が進まないのですよ。
  127. 岡村泰孝

    岡村政府委員 非常に難しい問題でございまして、学術的にお答えすることになりますと、これは相当難しい問題でありますが、大方のところで申し上げますならば、例えばアメリカでは当事者主義というものが徹底いたしておりまして、例えば被告人がアレーンメントで罪状を認めれば、それで証拠調べを省略して有罪の認定がなされるというような制度もとられているわけでございます。  ところが、日本では簡易公判手続というものがありますけれども、これは決して立証を省略するということではなしに、立証方法につきまして一部簡易化しておるということでございますので、仮に被告人が公判の冒頭で罪状を認めたといたしましても、やはり証拠調べが必要である、こういうような点があるわけでございまして、完全な意味の当事者主義にはなってないということが言えるであろうと思うのであります。
  128. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 アレーンメントを認めたからそれが当事者主義だというふうに、それだけで言えるのかどうか、その一つの類型ではあるか、こう思いますけれどもね。  刑事訴訟法の実際の立案者は、小野先生なり、法務省関係では横井大三さんですわね。裁判所関係ではだれになっているのですか、横川さんと栗本さんが中心になられたんじゃないかと思いますけれども、そういうふうな方。  殊に、小野先生が責任者になって書かれたものを読んでみると、「新刑訴が施行されたのは昭和二四年一月一日からであるが、いろいろの不便が訴えられた。その改正が問題となり、昭和二八年法律一七二号によってかなり基本的な一部改正が行われ、その後昭和二九年および昭和三三年にも一部改正が行われた。」こうなっていますね。  これはそのとおりでしょうが、これはやはり法制審議会にちゃんとかかったのですか、この改正は。これが第一ですね。恐らくこの当時は法制審議会ができておったからかかったんじゃないかと思うし、あるいは基本にかかわってなければかかってないのかもわかりませんが、どういうふうになっているのか。  それから、こう言っているのですよね。「わが刑事司法の伝統およびわが国民生活の現実に鑑みてさらに重要な改正が要求されているが、他方刑事科学の発展によって当事者主義、弁論主義そのものの批判が必要となってきている。」こういうように書かれているのです。これはどういう意味でしょうかね、ちょっとよくわからないのですが。これは立法者がそういうふうに言っておられるのだと思うのですけれども。  まず、一の法制審議会との関係、それから二の問題。
  129. 岡村泰孝

    岡村政府委員 昭和三十三年の一部改正のときには、法制審議会の諮問を経ているように思いますが、その以前がどうであったか、ちょっと正確なことはわからないのであります。  第二点でございますが、この注釈刑事訴訟法にそういうことが記載してありますが、私もこれがどういう趣旨なのか、余り具体的なことを今ここで申し上げるほどの知識は持ち合わせていないわけでございます。
  130. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今ここであれは別として、ゆっくり研究しておいていただきたいのですね。  具体的な問題に入ってまいりますと、この証拠の開示の問題だと思うのですね、当事者主義の一つのあらわれ方が。現在においては、検察官は手持ちの証拠を開示しないでいて、必要な段階で起訴したものについて立証するということだけでしょう。これについては、別な形の当事者主義というのは、だから検事の持っている手持ちの証拠は全部開示しなくちゃいけない。同時に、被告弁護人も持っている証拠は当然開示すべきだ、そういう形の中で裁判が進んでいくのがその真実の発見——まあ真実の発見、実体的真実の発見なのか形式的真実の発見なのか、よくわかりませんけれども、やはり裁判の公正なり、あるいは人権の保障なりに合致するのだというように私は考えているのですけれども。  その考え方だというと、あなた方はそんなこと言ったって、被告人や弁護人の持っている証拠を開示しろといったって、そんなもの担保がないじゃないか、そんなものありませんと言ったらそれでおしまいじゃないか。だから、それは結局そうなってくれば、検事側の持っている証拠だけ開示させられて、一方的になってきて当事者主義に反してくるのではないかというような、私は恐らくあなた方の反論がそこに出てくるのじゃないかと思うのですが、そこら辺のところもよく研究しておいてもらいたいのです。  今のような状況の中で、通告しておきましたけれども、松尾浩也教授が「最近の刑事訴訟法の諸問題」というので、昭和六十年度に日弁連で特別研修しているのですが、その講演が相当詳しく書いてあるのです。  アメリカでは証拠開示の問題にいろいろ経過がありまして、「やっぱりよい裁判を実現するためには開示が必要だということになりました。そうなるとまた日本と違って、開示の対象や方法についてどんどん条文が作られ、法規制が進みます。我が国は昭和四四年の判例一つで、」これは最高裁の第二小法廷の昭和四十四年四月二十五日の決定をいっているのですが、その「判例一つで、まだ今日に至っておりますが、非常な違いです。そして、証拠開示問題の進展に伴なって、刑事訴訟はお互いに対立してやり合うだけがすべてではないとして、当事者性の緩和ということが言われるようになってきております。」  こういうように講演しておられるのですが、その前の事実ですね。アメリカでは「開示の対象や方法についてどんどん条文が作られ、法規制が進みます。」というふうにここに書いてあるのですが、これは具体的にどういうふうになっておるのですか。これはどの程度お調べができておられますか。これは、ことし夏休みのころに法務省の政府委員室にこの講演について十分研究しておいてくれと私は言っているのですから、できていると思うのですが、どの程度ですか。
  131. 岡村泰孝

    岡村政府委員 御承知のように、アメリカは、連邦の法律もございますし、各州によって違う点もございますので、なかなかその運用の実情といいますか、連邦あるいは州の法律手続がどうなっているかということにつきまして正確に調査することが難しい点もあるわけでございまして、ただいま御指摘の点につきましてはもう少し調査をさせていただきたいと思います。
  132. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 運用の実情を聞いているんじゃないですよ。いいですか。それは、条文があってもそのとおりに行われてない場合が多いわけですよ。これはアメリカでもそうですし、ヨーロッパでもそういう傾向があるわけですね。それが運用の実情ですわ。率直に言って、これはなかなかわからないですよ、そこに行ったってわからないのですから。そこに二年か三年住んでいて初めてわかるということになるわけですけれども、あなたの方は、ワシントンの大使館にアタッシェが行っているし、ベルリンにも行っているし、それからロンドンにも行っているわけですし、その他にも行っているわけだから、当然ある程度のことはわかっていなければいかぬわけですよ。これは一番の大きな問題なんですよ。  そこで、その次の問題は、そういうふうに運用は別として、まずその法なりなんなりというものがわかって、それから運用の問題でしょう。だからその法律がどういうふうになっているか。もちろん、連邦もあり州もあるけれども、その中でこういうふうに言われておる、このことによって一体どのものが日本の刑事訴訟の中に取り入れられるべきものであるか、あるいは日本とは全然異質のもので取り入れられないものであるか、これは分類しなければいけませんわね。これは評価しなければいかぬわけでしょう。それをすぐしてくれということを私言うわけじゃないけれども、そこまでの評価をしないと問題は進展しないんじゃないですか。それを私は、今すぐというわけにいかなければ今すぐでなくても結構ですけれども、そういう方向に進まなければ議論は進展しないですよ。そういうふうに考えるのですがどうでしょうか。
  133. 岡村泰孝

    岡村政府委員 松尾教授が論文でも指摘されておりますように、我が国におきましては昭和四十四年の最高裁決定があるわけでございまして、これも非常に一般的な状況のもとで訴訟指揮権に基づく証拠の開示を命ずる場合あるいは命じない場合という一つの基準というものをつくっておるわけでございますが、あくまでこれは諸般の事情のもとにおいてというような記載になっておるわけでございます。  そこらが具体的にどういうような基準で運用されていくかということは、一つにはやはり我が国の場合は最高裁判所の判例の積み重ね、こういうものによってさらにその基準が具体化していくだろうと思いますが、それはそれといたしまして、また別途、諸外国のいろいろな問題につきまして、法務省といたしましても検討する必要性はまさに御指摘のとおりであろうかと思います。
  134. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 一般的というよりも、しかし具体的な大阪での事件に伴って、殊に刑訴の二百二十六条の裁判官の証人尋問調書でしょう、これを開示しなかったということによって出てきたあれですよね。だから、一般的というよりもむしろ具体的だ、こう思うのですが、これは議論は別として、諸般の事情ということももちろん出てくるわけですけれども、諸般の事情というのじゃ、これは問題の解決にならないので、私の言うのは、最高裁の判例の積み重ねも、それはそうでしょう。しかし、いわば母法として考えられるアメリカなどでは法律なら法律というものができているんだ、こういうことが事実とするならば、その法律の中で取り入れられるべきものと異質であって取り入れられないものと分けて、取り入れるべきものであるならば、それは法の中でしっかり取り入れて、そしてその証拠開示の問題についても、これだけはできるんだ、それが一つの公平というかなにから言って当然なんだという理解の仕方のもとに進んでいかなければいけないんじゃないか、私はこういうふうに考えるわけです。  だから、これは基本問題になるわけですからいろいろな議論が出てくるかと思いますけれども、今のようなやり方では、これはとても被告人側はかなわないですよ、全部検事が持っているんですもの、持っていて出さないのですから、出さなくて当事者だ、当事者だと言っているんで、当事者主義だから平等なんだということで、出さないのが当たり前だと言っているのですから。一々訴訟指揮だって裁判官の個性によるので、それはそういうふうなことに非常に理解のある裁判官ならいいけれども、失礼な話だけれども、そうでない方になったら全然訴訟指揮しないわけですから、そういう不安定な個人的な差によるものじゃなくて、しっかりとした立法の中でやっていかなければいけないんだ、こう私は理解するのです。こっちが立法府だと言いながら行政府に対して立法しろ、立法しろとかなんとかいうのは何か変な議論なので、私はいつも内心じくじたるものがあるのですよ。だけれども、実際、そこまでいってないからしようがないのですけれども、そこら辺のところが問題としてあるというふうに思うのです。  それからまた、わからないのは、証拠法の規定ですよ。読んでみてもわからないですよ。読んでみてもわからないと言っては悪いけれども、それはわかるのでしょうけれども、私は余り読まないからわからないのですが、三百二十条以下の証拠法の規定、これの中で「三二〇条以下の規定自身が、はじめからアメリカの証拠法の規定とは相当に違っています。」と、その松尾教授は言っていますね。さあ一体どこが違うのですか。どこが違うので、違うとすれば、その違っているものを日本が刑事訴訟法に採用しなかった理由は一体どこにあるのですか。
  135. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ただいまの伝聞証拠に関しまする規定でございますが、例えば刑訴三百二十三条には戸籍謄本とかその他一定の書面につきましては、伝聞法則の適用がなく証拠能力が認められているところでございまして、この点はアメリカでも同じであります。ところが、三百二十一条等におきまして、捜査官すなわち警察あるいは検察官の作成いたしました供述調書について、一定の場合、証拠能力が認められるという規定になっているところであります。この点はアメリカではいわゆる陪審制度というものが裁判の一般的といいますか基本的な制度としてあるわけでございまして、そういう意味で弁論主義といいますか口頭主義といいますか、証人によって立証を行うということが一般化しているところでございます。  したがいまして、例えば供述調書の内容を法廷に顕出するに当たりまして、日本の場合では、三百二十一条に当たれば三百二十一条の要件に従いまして調書それ自体を証拠調べいたすわけでございますが、アメリカにおきましては、その調書を録取いたしました例えば捜査官が法廷におきまして、いわゆるメモの理論に基づきまして録取したメモといいますか調書といいますか、こういったものの内容を証言する、こういうことでアメリカはやっておるわけでございます。そういう点に若干の違いがあろうかと思うのであります。
  136. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは若干ではないんじゃないですか。えらい違いじゃないですか。全面的に違うじゃないですか。そう思いませんか。言葉はどうでもいいけれども、若干じゃないでしょう。基本的に違うでしょう、それは。
  137. 岡村泰孝

    岡村政府委員 私、若干と申し上げましたのは、例えば三百二十三条は同じだ、こちらは違う、こういう趣旨でございます。
  138. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 アメリカに戸籍謄本があるかどうか知りませんけれども、それはあるのですか、そんなのないでしょう。別のものがあるかもしれませんけれども、どうでもいいですけれども。だから、それは全然基本的に違うということで、今の点が採用にならなかったという、それは陪審制度だけの問題ですか。僕はわからないのですよ、わからないから聞いているので、それだけに限定していいのですか。
  139. 岡村泰孝

    岡村政府委員 これはやはりいろいろ捜査構造から始まる日米間の相違というものが一つはあろうかと思うのであります。アメリカの場合は、調書を警察がとるといいましても比較的簡単な調書をとっているようでございます。ところが日本の場合は、従来は予審制度でございましたけれども、かなり詳しい供述調書を作成するという一つの違いがあるわけでございまして、松尾教授もその論文で指摘されておりますように、日本は精密司法であると言っておられるわけでございますが、要するに事実の認定が非常に事細かくなっておる。そういうことが立証として要求されておる。こういう違いも一つはあろうかと思います。
  140. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今精密司法という言葉がありました。そのとおりなんですよね。日本の場合は有罪率が九九・九九九ぐらい、そこまでいかないか、とにかくそうですね。それは確かに立派なのであって、それを今変えろと言っているわけじゃありませんけれども、しかしそのことから出てくるのは、こういうことがあるわけです。有罪になる見込みがないのは事件を捨ててしまう。みんな嫌疑なしか、とにかくそういうことで捨ててしまうわけで、危ない事件は取り組まないわけです。危ない事件をやって無罪になったら検事が責任をとって飛ばされてしまうことになる。今は上申書を書くのか何か知りませんけれども、結局あの検事は成績が悪いということで現実問題として飛ばされてしまうでしょう。一生烙印を押されてしまうわけだ。烙印でもないけれども、とにかくそういうようになってしまうから、危ない事件は起訴しないでしょう。そういう弊害がまた生まれている。それから、一たん起訴したら何とかして有罪にしなければと、自分の成績にかかってしまうから、とにかく徹底的にやって、証人偽証で引っ張ったり、今は余りやらないかもわかりませんけれども、証人に対して帰りにちょっと来てくれなんというのも昔はいたけれども、そういうことは別として、そういう形で起訴したら、今度何とか有罪にしろという形になってくる。そこに弊害が出てくると考えられるのです。  そうするとそれは問題なんで、では精密司法にかわるべきものは何かというと、アメリカのような形にしろということは、これまた日本に合っているか合っていないかということで根本問題がありますし、そんなになったら犯罪がどんどんふえてしまうということも考えられる。だから検挙率が減ってしまうとかなんとかいろいろな問題になってきますから、問題があるのです。  私はこの間矯正局長にもちょっと話したのですが、一番大事なことは、例えば刑事施設法を改正するとかなんとかいったって、捜査の段階のところが一番大事なところでしょう、今の日本のように代用監獄が現実にあるのだから。そうすると、捜査のあり方全体を変えなければならないといったときに、問題になってくるのは検事と警察官の関係でしょう。それが一番大きな問題ですよ。私は、イギリスでも今検事と警察の関係を変えなければいかぬという動きがあるということをこの前ちょっと聞いたのです。これはロンドンの空港で会ったときですから大分前ですけれども、立ち話程度の話なのでちょっとはっきりしなかったのですが、そういう話もあるのです。この前アメリカに勉強に行ってきた人に聞いてみると、アメリカの場合は、検事というのは警察から回ってきた書類をほとんど右から左へ回すだけということを言う人もいるので、どれが正確かわからないのですが、捜査機関がどういう形であるのが一番正しいかということを検事と警察との関係で考えなければいかぬと私は思う。  そこでさっきちょっと言った刑訴の百九十三条の問題が出てくるでしょう。一体百九十三条をどういうふうに理解したらいいのですか。指揮権の問題をどういうふうに理解したらいいのか。実は僕は、新刑訴になって検事の警察に対する指揮権はなくなったなと初め思っていたのです、そういう説明を受けていたものですから。そうすると、そうじゃなくて百九十三条がありますということで、一体どういうふうにこれを理解したらいいのだろうかということになってきたわけです。これはどういうふうに理解して、どういうふうにあなた方は解釈するのですか。検察官の司法警察職員に対する指示、指揮が一体旧刑訴と新刑訴とで違うのですか、違わないのですか。どうなんですか。
  141. 岡村泰孝

    岡村政府委員 新刑訴におきましては警察官が第一次的な捜査権を持つという形で規定されているところでございまして、検察官と警察官とは一般的には捜査について協力関係にあるわけでございますが、この百九十三条にありますように一般的な指示ができますし、また個々具体的な事件について、具体的指揮権と申しておりますけれども、「司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。」という規定になっているところでございます。したがいまして、具体的な事件につきましては、その必要に応じて事前に警察が検察官に協議を求めてくる、検察官も必要に応じて指示を行うあるいは指導するというような関係になっておるわけでございます。
  142. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、そうすると旧刑訴とは違うのですか違わないのですか。
  143. 岡村泰孝

    岡村政府委員 旧刑訴におきましてはいわゆる予審制度を採用いたしておりまして、予審裁判官に対して予審請求を行って一つの証拠保全を行うという形のものがあったわけでございますが、それが新刑訴ではなくなったというようなところから、やはり違いはあるわけでございます。
  144. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、予審制度のことを聞いているのではなくて、検事と警察官の関係が旧刑訴と新刑訴とで違うのかと聞いているのです。
  145. 岡村泰孝

    岡村政府委員 旧刑訴におきましては、警察官は検察官の捜査の補助者といいますか検察官が捜査の主体ということになっておったわけでございます。ところが、新刑訴は警察が第一次捜査機関である、捜査の主体であるというふうになっているところであります。
  146. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 警察捜査の第一次主体であるなんということはどこに書いてあるのですか。
  147. 岡村泰孝

    岡村政府委員 百八十九条で、警察官は「司法警察職員として職務を行う。」「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠捜査するものとする。」という規定があるわけでございます。
  148. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは旧刑訴だって同じような規定があったのではないですか。
  149. 岡村泰孝

    岡村政府委員 旧刑訴の条文を持っておりませんし、正確なことは申し上げかねます。
  150. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 実はざっくばらんな話をしますと、この百九十三条というのを私も余りよく知らなかったのです。余りじゃなくほとんど知らなかった。そうしたら、ある人から指摘されたわけです。百九十三条というのがある、これを本当に使ったら捜査の主体はやはり検事ということになるのじゃないかということもありまして、この理解の仕方が広い理解の仕方と狭い理解の仕方があるでしょう。あなた方はどっちをとるのですか。これが意見の分かれるところですよ。だから、事件の送致ということをこれから聞きますけれども、事件の送致ということは一体何を意味するかということ、これはそれに関連してくるのですよ。そう思いませんか。  それでは一緒に聞いてしまいましょうか。事件の送致というのは警察が検察庁へ何を送るのですか。事件といったって何だかわからない。何を送るのですか、どういうふうになっているのですか。
  151. 岡村泰孝

    岡村政府委員 まず第一点の検察官の司法警察職員に対する指揮権について広く解釈するか狭く解釈するかということでありますが、これは非常に難しいわけでございまして、検察官といたしましては適正な指示、指揮を行うように努めているところでございます。  それから第二点でございますが、何を送致するかということであります。刑訴の二百三条では、警察官が逮捕した場合「身体拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。」こういうふうに規定されておるところでございます。
  152. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 「書類及び証拠物とともにこれを」——「これを」というのは何だか知らぬ、被疑者という意味かと思いますが、現実には警察が第一次捜査権を持っているということから、東京と大阪でやり方が違うとかなんとかいろいろな説があってよくわからないのですけれども、記録から何から全部送らないところもあるというじゃないですか。一たんは持ってくるけれども、代監だとすぐ記録もみんな持ち帰ってしまう。今はどうしているのですか、四十八時間たって代監のような場合に。そのときは検事のところへ今まで調べた記録は残るのですか。場所によってそれを持っていってしまうんだという説もあるのです。全部警察に持っていってしまうので、検事は何も受け取らないという話がある。
  153. 岡村泰孝

    岡村政府委員 東京では従来から一件記録とともに被疑者の身柄の送致を受け取りまして、それを警察官が持ち帰るというような取り扱いはしていないところでございまして、現在でもそうだと思っております。ただ、一時大阪では何か送致記録を持ち帰ったことがあるような話も私耳にしておりますが、現在ではそういう扱いではないのではないか、ちょっと正確ではございませんが、そのように思っております。
  154. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 時間が来てしまったのでこれでゼミナール——ゼミナールじゃない、質問を終わりますけれども、もう一つの大きな問題は、さっき言った中で出てくる供述調書です。供述調書の証拠能力の問題は、公判廷で否認する、結局検察官の面前調書を出す、それで任意性がある、信用性があるということで採用されるということになれば、裁判官が有罪の認定をしているということが見ている方からわかってしまうわけでしょう。採用したんだからこれはもうというふうに思ってしまう。  そこで、問題は調書のとり方になってくるわけです。この前あなたも答えておられたでしょう。前の法務委員会で、前の刑事局長の答弁についていろいろ聞いたときに、あれはこういう質問がありましたのでそれに対するお答えでございますと言っていましたね。質問によって答えが違っておるわけでしょう、当たり前の話なんです。質問を抜きにして答えだけがだらだら進んでいるのではなくて、それがまた作文になって出てきているわけでしょう、今の供述調書というのは。ここに問題があるわけですよ。これを直さなければ真実の発見なんということはあり得ないというふうに私は前から言っておるのです。これとさっきの証拠開示の問題。それからアメリカのミランダ判決もありますけれども、これはまた実際にどういうふうに行われたのかよくわからないのです。弁護人の立ち会い権なんていっても、そんなことを言ったら涜職罪や選挙違反なんかできなくなってしまうということもありますし、ここら辺のところはよくわかりませんけれども、いずれにしてもいろいろな問題がある。  殊に供述調書のとり方には問題があるので、今後研究しておいてもらいたいのは、あなた方は反対だと言うかと思いますけれども、そのために三百二十一条がちゃんとあるじゃないか、大体名前を書いて判こを押すのが悪いんだということを言われるかもわかりませんけれども、札幌高裁で梅田事件の再審のときに関与された裁判官が今北海道大学の教授になっておられますが、この方がいろいろ論文を書かれて、イギリスの殊に録音のことや何かを中心に書かれたりしています。いろいろな反対や議論はありますけれども、ここら辺のことはやはりここら辺のこととして議論をしていく必要があるのじゃないか、私はこういうふうに思っておるのですが、きょうは時間があれですからここら辺にしておきます。  せっかく矯正局長が来ておられるので……。刑事施設法の改正というのは出ないでしょうけれども、刑事施設法というのはその前の段階、捜査の段階との関連が出てきているわけですから、本来は刑事訴訟法の改正になるのだというのが私の理解の仕方なんです。そこまで行かなければだめだという理解の仕方ですから、これはなかなか難しいですけれども、それはそれとして、あなたは去年ミラノで開催された第七回犯罪防止、犯罪者処遇国連会議に出られて、「日本からも検事総長を首席とする強力な代表団が出席して特記すべき貢献があったのでありますが、」こう言っておられますね。どういう貢献があったのか、御説明を願いたいのです。  もう一つ、少年司法運営最低基準規則等数点の重要規準を採択して国連で国連基準として可決成立しておるということを言っておられますね。何が成立したのか、それについて、ほかの省はいいですが、法務省としては一体どういう態度を今後とっていくのか、そういう点を御説明願いたいと思います。
  155. 敷田稔

    ○敷田政府委員 今のは私のあいさつ状の一文でございまして、私、当時国連の職員としてその会議の事務局長を務めておりまして、私の目から見た日本国の代表団を考えますと大変大きな貢献があった、このように理解したわけでございます。  貢献の内容を一、二申し上げますと、第二の御質問と関係するわけでございますが、国連の少年司法に関する最低基準規則の最初の原案をつくりましたのが日本でございます。既にその五、六年前でございますが、国連との協定でつくりましたアジア極東犯罪防止研修所でそれをつくり、それからさらにそれに関する専門家会議を国連と共催いたしまして、そのようにしてつくり上げたたたき台が国連で採択されたということでございます。それから、代表団の一人が会議の総括報告者となり、会議の報告書の取りまとめに非常に大きな貢献をした。いろいろございまして、結論としてそのように貢献があったということを私自身理解したわけでございます。  第二の点でございます。六つの重要規準を含む三十二の決議を採択しておりまして、世界における刑事政策の進展にとりましては画期的なものであったと私は理解いたしております。その中で重要規準といたしましては、犯罪防止及び刑事司法に関する指導原則、先ほど申し上げました国連の少年司法最低基準規則、それから外国人受刑者の移送に関する模範協定などがございます。決議の内容も多岐にわたるわけでございますが、総括して申しますと、日本国が行ってきております刑事司法の運営について、総体としてその適正さを確認するような内容のものが多いわけでございます。しかしながら、なお一層の努力を尽くすべきことを要求する点もないわけではございません。私の所管する矯正の分野で申しますと、その中で受刑者の地位と題する決議がございました。その決議には国連の被拘禁者の処遇に関する最低基準規則の一層の充実を求めるという規定がございまして、その点からいたしますと、やはり監獄法だけでは十分な充実ができておりませんので、一日も早く刑事施設法の改正を期さなければならない、それによって国連のそういう議決に本当に命を吹き込むことができる、このように理解いたしております。
  156. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今矯正局長が言われた点などについては、これはまた別の機会に幾らでも出てくるので、これ以上お聞きをしませんし、きょうは時間の関係もあってこれで質問を終わるわけですが、今言った中で、ちょっと前に戻りまして、松尾教授が答えておられるのですが、「アメリカで当然とされておる起訴便宜主義は、捜査の段階から弁護人が入っております。たとえば被疑者逮捕された人は二回、ただで電話をかけられる。」云々と言っておられますね。果たしてこういうことが事実なのかどうか、これはよくわからないものですから、よく調べていただきたいのです。  それから「捜査の段階から弁護人が入っております。」というこの意味がよくわからないのですね。どういうことを言っておられるのか、ちょっと意味がわからないのですが、ここら辺のところやなんかずっと調べておいていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  私も、刑事訴訟法の問題については、これは率直に言うと、どうも条文そのものが翻訳臭が非常に強いものですから、読んでみてもよくわからない点がありまして、まあよく勉強さしていただきたいというふうに思うわけですが、きょうはこの程度で終わらせていただきます。
  157. 大塚雄司

    大塚委員長 午後一時十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ────◇─────     午後一時十一分開議
  158. 大塚雄司

    大塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村巖君。
  159. 中村巖

    ○中村(巖)委員 本日私は、まず同和問題からお聞きしていきたい、こういうふうに思っております。  同和の問題は大変ややこしい問題でありますけれども、同和関係の差別はまた、いわゆるアイヌの方々の差別と同じような問題でありまして、こういうような差別というものが依然として残っているということであっては日本は人権大国にはなり得ない、こういうことになるわけでありまして、何としてもこの同和の差別というようなものをなくさなければならないわけでございます。  まず最初にお伺いをしておきたいことは、最近法務省の方では、えせ同和問題のキャンペーンというものを強くやられているようでございます。確かにえせ同和というのは、それだけぽつんと考えますと、同和をかたって利権をいろいろあさるというか利権的な行動をするわけでありまして、こういうようなものが横行したのでは大変困るわけでありますけれども、どういうことでこの時期にえせ同和問題キャンペーンというものを始められたのか、それは現在どういうような方法で行っておられるのか、そのことを伺います。
  160. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 法務省の人権擁護機関はこれまで、部落差別の解消を目指して、部落差別というものが封建時代の身分差別に由来する全くいわれのないものであり、また、同和は怖いという意識は間違ったものであるということにつきまして、懸命の啓発をしてまいりました。しかるに、最近、同和は怖いという意識に乗じて利権をあさるえせ同和行為の横行というものが目に余るようになり、大きな社会問題になりつつあります。同和は怖いという意識をこのえせ同和行為は増幅するものでありまして、私どもが長年にわたって努力してまいりました啓発の効果を根底から踏みにじるものであります。そこで私どもは、これを到底放置することはできないというふうに考えまして、えせ同和行為排除のための啓発を強力に展開することといたしたものであります。  この問題につきましては、委員も御承知のとおり、地域改善対策協議会が昭和五十九年六月十九日に政府に対しまして行いました意見具申「今後における啓発活動のあり方」の中で、えせ同和団体の横行が目に余り、これを排除しなければ同和問題啓発の効果は期待できないということを指摘しております。私どももこれと全く同様の考えでございましたので、この意見具申がなされまして以来、事あるごとに機会をとらえてえせ同和行為排除の啓発を行ってまいりました。幸いに本年度はそのための予算措置を得ることができましたので、さらに積極的に取り組むべく、本年十月九日、全国の法務局、地方法務局に対して人権擁護局長通達を発しまして、全国の人権擁護機関の組織を挙げてこの問題に取り組んでまいっておるところであります。  その具体的な取り組みの方法といたしましては、これまで、企業に対するえせ同和行為の実態把握のためのアンケート調査を実施し、また、企業、行政機関等へのポスターの張り出し、雑誌広告などを行ってまいりました。また、この問題を抜本的に解決してまいりますためには、官庁間や関係諸機関との協力を密にすることが必要でございますので、これまで、総務庁、警察庁、日本弁護士連合会と連携を密にして、いろいろえせ同和行為排除のための施策について協議を重ねており、今後これに基づき、企業や行政機関に対してさらに強力な啓発活動を行いたい、かように考えているところであります。
  161. 中村巖

    ○中村(巖)委員 えせ同和の問題というのは最近になって突如として起こってきた問題ではなくて、かなり前からこのような行為が目に余るということがあったわけでありますけれども、結局、最近になってこの問題に法務省が取り組むということになったのは、今年度から予算が得られたから、こういうことなんですか。
  162. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 先ほども申し上げましたように、地域改善対策協議会が昭和五十九年六月十九日に行いました意見具申の中で、このえせ同和団体の横行という問題を解決しなければ同和問題啓発の効果は期待できないということを指摘いたしております。  私どもも、これは今後の啓発活動のあり方についての意見具申でございまして、その中に取り上げられた問題については逐一、我々はどう対処するかということを検討してまいりました。私どももかねてより、えせ同和行為の横行というものが目に余るようになってきておるという現状を認識しておりましたので、この意見具申がなされましたのを機会に、これについて一生懸命取り組もうということで一昨年からこれに取り組んでまいった、かような次第でございます。  先ほど申し上げましたのは、幸いこの啓発につきましては本年度の予算が認められましたので、本年度はさらに積極的にこれを展開しよう、かように考えて一部実施をしておるという状況でございます。
  163. 中村巖

    ○中村(巖)委員 えせ同和行為というか、これは非常にあいまいもことした概念で、同和団体というのも何百というたくさんの同和団体があるわけでありまして、非常にややこしい問題でありますけれども、えせ同和という概念をどういうふうに把握をされているかということと、えせ同和行為の実態というのはどういうことであるか、どういう把握をされているかということについて、次に伺います。
  164. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 先ほど申し上げました地対協の意見具申では、「えせ同和団体の横行」というふうにとらえております。御承知のように、同和を名のる団体は四百に余るというふうに言われておるのでありまして、しかもそのほとんどが、極端な言い方をされる方からいいますと、えせ活動をやっているのではないかというような御意見もあるほどでございます。  しかしながら、私どもの立場といたしまして、ある団体がえせ団体であるかどうかということを認定する、あるいはそれを排除するといったことは極めて問題があるわけでございまして、到底できることではないと考えられます。そこで私どもは、いかなる団体に属する者であっても、あるいは団体に所属しない者であろうとも、同和が怖いという意識に乗じて不当に利権をあさる行為については、その行為そのものをえせ同和行為というふうに考えて、排除のための啓発をするというふうに考えてはどうかということで検討を進め、その方向で啓発をすることにしたものであります。  恐らく委員が御心配の点は、その外延をどこに置くのかということであろうと思います。しかし私どもは、えせ同和の不当な要求は断固断りましょうというキャンペーンをするわけでありまして、決してこれを犯罪行為ととらえて処断するというわけではないわけであります。のみならず、現在のえせ同和の行為の現状を調べてみますと、ゆすりたかり以外の何物でもないような行為が多いわけであります。  そこで、私どもとしましては、だれが考えても問題がないであろうゆすりとか、たかりとかというものを中心に置きまして、これをまず排除していこう。具体的な行為そのものがどうなるかという問題については、これから問題が出てきたときに考えていきたい。しかし、今はその典型的なえせ同和行為にターゲットを絞って、これの排除のための啓発を展開していきたい、かように考えているところであります。
  165. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今お伺いをした中で、えせ同和の実態というようなものを法務省としてはどういうふうにどれほど把握をされているのかということについてのお答えがなかったわけですけれども、その点はいかがでございますか。
  166. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 えせ同和の実態につきましては、いろいろ言われておりますけれども、これまで実際に調査をしたところはなかったわけでございます。しかし、それでは今後えせ同和排除のための啓発活動を展開するに当たって決して十分ではない、かように考えましたので、先般、全国の企業を対象にえせ同和の実態に関するアンケート調査をいたしました。これは現在まだ集計中でございまして、その内容自体が十分には数字が上がっておらないわけでありますけれども、全国で五千余のアンケート調査をしたのに対しまして約七割の方から回答をいただき、その中の二六%に当たる企業からえせ同和の被害を受けたというアンケートの結果を得ております。  また、その態様といたしましては、融資に絡むものが約二〇%で一番多く、そのほか機関紙の購入、物品の購入に関するものが約一九%、示談金の支払いに関するものが一三・六%、契約締結や寄附金、賛助金に関するものがそれぞれ約九%といったような内容になっており、また方法としましては、執拗に電話をかける、糾弾をするといっておどかす、官公署を使って圧力をかけると言っておどかす、現実に官公署から圧力をかけさせた、暴力団との関係をほのめかす、社長のところに押しかけた、あるいは押しかけると言っておどかしたといったようなものがアンケート調査では明らかになっております。私どもは、これを参考にして今後の啓発をやっていきたい、かように考えておるところであります。
  167. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今アンケート調査においても相当のパーセンテージの企業なり個人なりというものがえせ同和によっておどかされている。弁護士会なんかでも、民事介入暴力がえせ同和団体によってやられているんだ、こういうことが言われておりますけれども、こういうえせ同和行為というものが今日横行するようになったのはどういう原因に基づくのか、その辺のことが同和問題とえせ同和問題とを峻別する基本になるのではないかと思いますけれども、その辺の原因についてどういうふうにお考えになっておられますか。
  168. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 えせ同和行為は、先ほど来申し上げておりますように、同和は怖いという意識に乗じて不当に利権をあさるものでございますが、これがやすやすと成功をいたしておりますのは、そういう不当な要求を受けた企業や行政機関等が、同和問題に対する正しい理解を欠いておるために、同和は怖いという意識を非常に有しておる。そのため、不当な要求でも安易に解決をしてしまう。また同時に、これらの企業などは、できればお金で解決をつけたい、お金で解決がつくものであればそういう解決を図りたいという事なかれ主義的な体質もあるようでございまして、この両者が相まってえせ同和行為の横行の大きな原因になっておるのではないか、我々はそのように考えておるところであります。
  169. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そうなりますと、実際問題としては、本当にこういうえせ同和行為というものをなくするためには、部落の方々、同和の方々に対する差別というものがなくなればそういうえせ同和行為は勢いなくなってくるわけで、そういう意味ではえせ同和キャンペーン云々よりも、本当の同和差別をなくす啓発というようなものが非常に必要ではないかと思われるわけでございます。  それと同時に、先ほどお答えにもありましたとおりに、えせ同和と真の同和というか部落出身者との区別をつけることがなかなかできない。この団体はいいんだとかこの団体は悪いんだと言うことはできないということになるわけです。そうすると実際問題としては、ただ単にえせ同和におどかされて金を払ったりするのはやめましょうというキャンペーンだけではそういう問題が解消するというふうには思われないわけで、やはり本当のえせ同和であって、同和とは全く無関係というものについてはそれ相応の強い処置が必要になるのではないか、またその場合にどういうふうにそこを峻別していくかということについても、法務省として十分お考えにならなくてはならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  170. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 確かに御指摘のとおり、同和は怖いという意識のあるところにいろいろおどし文句を使っておどかして、利権をあさろうというものが横行しておるわけでありますから、ただそれに勇気を持って応じないようにしましょうと言うだけでは事の解決にならないことは、御指摘のとおりであろうと思います。  そこで、私どもといたしましては、これまで多くの企業に直接当たりまして、えせ同和の実態と、どうしてこれを峻拒できないのかということについて調査をしてまいりました。一つは、先ほど申し上げましたように同和は怖いという意識が強過ぎるということでありますが、同時に、これまでこういった事件について警察申し出をしても必ずしも来てくれなかった、あるいは来てくれないのではないかと考えていたというのが一つの原因になっております。もう一つは、えせ同和行為のいろいろの態様を見てまいりますと、必ずしも刑事事件を構成するものばかりではないわけであります。これは、委員も先ほど御指摘になりました民事介入暴力なども、同じ問題を抱えているわけであります。  そこで、私どもといたしましては、まず同和問題を総括しております総務庁にお話をいたしまして、このえせ同和行為の暗躍を手助けしているものの中には、例えば金融機関にターゲットを絞っていったときに、その金融機関が応じてくれないといったような場合には、監督官庁にプレッシャーをかけて、その監督官庁から何かを言わせる、それによって目的を達するというような事案もございますので、まず総務庁と協力して各官庁に対してえせ同和行為の実態というものを明らかにするとともに、何げない行為がえせ同和行為を誘発しており、またそれを容易ならしめておるということになるのであるから、そういったことのないようにしてもらいたいという啓発をしていきたいと考えております。  それから、これまで警察庁といろいろ協議をしてまいりました。そして警察庁の方でもえせ同和行為の横行というものは到底許すことはできないということで先般捜査要綱を改正されまして、えせ同和行為というものも徹底的に排除するための方針をお立てになり、既に捜査課長会議等も開かれまして、それを示達されました。  また、日弁連ともいろいろ協議をいたしまして、これを民事介入暴力の一環として、刑事事件に係らないものについては、例えば仮処分を求めるといった方法指摘されておりますので、こういったことを各地の弁議士会に連絡をしてやっていただきたいというお願いをいたしました。日弁連の方でも先般、今申し上げたような趣旨の通達を各地の弁護士会にお出しになったようでございます。  そこで私どもといたしましては、こういう連携、連絡体制が確立しているのを踏まえまして、各地の法務局単位で官庁及び弁護士会の連絡協議会をつくりつつあります。これによっていろいろな角度からえせ同和の排除を図っていきたい。その中で法務省としては、啓発機関でございますので啓発を担当していきたい、かように考えておるところであります。
  171. 中村巖

    ○中村(巖)委員 私もえせ同和行為は何とかしなければしようがないというふうに思うのですけれども、一つにはそういうえせ同和ということの反対というか、えせ同和に乗ぜられないようにというキャンペーンというものは、ある意味では同和は非常に怖いんだよという意識を醸成をすることに手をかすことになるんじゃないか、こういうふうに考えられる点があるわけですね。世間の人は、えせ同和といいましても、これも同和問題の一環なのか、こういうふうに思いまして、同和というのは怖いものだなというふうにより一層強く思うというようなことがあるので、えせ同和行為の排除ということをそういうキャンペーンを通じてやるというのは果たしていかがなものかというふうに思っているわけですが、その点についてはどうですか。
  172. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 委員もえせ同和行為の横行ぶりが目に余るということは既に御認識いただいておるようでございまして、まことに心強く感ずるものでありますが、ではこういったものをそのまま放置しておいた方がいいのかということになりますと、それはこのまま放置していく方がよほど害を流すものであるということは明らかであろうと思います。  私どものアンケート調査の結果によりますと、このアンケートでは、えせ同和行為を働いた同和団体あるいはその人の名前というものをもし差し支えがなかったら教えていただきたいということを申し上げましたところ、私たちが予想しておりましたよりもはるかに多くの方がそのアンケートに応じてくださいました。五千三十ばかりのアンケート調査の結果、実に四百を超える団体から不当な要求があったということが明らかにされておるわけであります。こういった団体のまことにけしからぬ活動をこのまま放置しておくことこそ、むしろ円満な同和問題の解決というものを妨げるものであろうかと思います。  私どもは現在の状況を踏まえたときに、これをこのまま放置することはまさに臭い物にふたをするということになってしまうものであり、これを今一生懸命やることは、むしろまじめに同和問題に取り組んでおられる同和団体のためになるものであると考えておるものであります。したがいまして、私どもといたしましては、まじめに同和問題に取り組んでおられる団体も私どもと歩調をそろえてえせ同和排除のキャンペーンに取り組んでいただきたい、かように考えておるものであります。
  173. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それでは今度は総務庁にお伺いをいたしますけれども、現在地域改善対策特別措置法、いわゆる地対法というものが効力を持っておるわけでありますけれども、この地対法そのものは今年度の年度末、来年三月末をもって、時限立法ですから失効をするということになるわけですけれども、これについて今総務庁としてはどういうふうに対処をしようとしているのか、そのことをお伺いいたします。
  174. 熊代昭彦

    熊代説明員 地域改善対策法につきましては、先生指摘のように三月三十一日に五年間の期限が参りますので、過日、十二月十一日でございますけれども、地域改善対策協議会から意見具申をいただきまして、今後の方向に対する御提案をいただいたところでございますので、その提案を踏まえ、関係各省とも協議しつつ今後の方策を決めるということで、鋭意検討しているところでございます。
  175. 中村巖

    ○中村(巖)委員 従来、この地対法によって多くの事業が行われてきたわけでありまして、地対法の施行令等でもって事業が指定をされて、それぞれについて地域改善対策のために、もちろんそれは差別解消の啓発の事業とかそういうものも含めてずっとやられてくるわけでありますけれども、地対法が失効してしまうということになると、この事業というものは今後どうなってしまうのか、こういう問題が生ずるわけでございます。  今この地対法によって行われている事業というのは具体的にはどういうような事業があるわけでしょうか。
  176. 熊代昭彦

    熊代説明員 地対法の現在実施されております事業でありますが、地域改善対策特別措置法に基づきまして、具体的には政令で四十四項目の事業が決めてございまして、住宅地区改良事業、小集落事業等物的事業、それから啓発事業、非物的な事業等が四十四項目として定められているところでございます。
  177. 中村巖

    ○中村(巖)委員 現在までそれらの事業が、地域改善対策特別措置法の前にも同和対策事業特別措置法というものがあって、同対法の時代が十三年くらい続いて、その後に地対法になってきているわけでありますけれども、どのくらいの事業量というものが今日までやられてきているわけでしょうか。
  178. 熊代昭彦

    熊代説明員 昭和四十四年から五十六年の同和対策事業特別措置法、それから地域改善対策特別措置法が五十七年から六十一年度まででございますが、これらの法に基づきます予算の総額でございますけれども、約一兆六千億円でございます。
  179. 中村巖

    ○中村(巖)委員 これらの事業は今日まで継続をされてきたわけでありますけれども、これらの事業の成果というものもありましょうし、まだまだ不十分なところもあるだろうというふうに思うわけで、地域改善対策協議会の意見等にもいろいろ盛り込まれておりますけれども、総務庁としてはこれらの事業の継続というものが必要であるというふうに今お考えになっておられましょうか。
  180. 熊代昭彦

    熊代説明員 十一日にいただきました地域改善対策協議会の意見具申でも現状につきましての認識を示されたところでございますが、総務庁といたしまして、これまでに推進してこられました事業につきまして真に必要なものは今後とも実施していくべきであるということは従来から申し上げているところでありますけれども、いかなる方法によりましてそれを実施していくか、現行法の延長、新法あるいは全く一般法及びその措置ということにつきましては、先ほど申し上げましたように意見具申等を踏まえ、関係各省庁とも相談しつつ、現在鋭意検討中でございます。
  181. 中村巖

    ○中村(巖)委員 だから具体的には、地対法をこのまま来年三月三十一日で失効させてしまっていい、こういう考え方ではないわけですね。何らかの立法を必要とする、あるいは現在の地対法の延長措置を必要とする、こういうお考え方であるわけですか。
  182. 熊代昭彦

    熊代説明員 さきの意見具申におきまして、平均的な水準としましては、特に物的事業の関係につきましては全国水準に非常に近づいてきたという御指摘がございましたが、今後なすべき事業もあるというようなことでございまして、一般法だけで実施いたしますと、財政的な特別措置等、財政力の弱い地方公共団体が困る面があるという御指摘もございまして、それに基づきまして事業の適正化を図るとともに、厳しく事業を見直した上で新規立法の措置を講ずるのが適当であるという意見具申をいただいたところでございます。この意見具申を踏まえまして鋭意検討しているところでございます。
  183. 中村巖

    ○中村(巖)委員 鋭意検討をされているということ、それは事実でしょうけれども、その方向性がどうなるのかということについてはまだ何にも言える段階ではない、こういうことですか。
  184. 熊代昭彦

    熊代説明員 現在、関係各省とも協議しつつ政府としての立場を、ということでございますが、いずれにいたしましても昭和六十二年度予算を確定するまでには方針が固められる必要があるということで、時間的にも限られておりますので、鋭意検討をしているところでございます。
  185. 中村巖

    ○中村(巖)委員 地対法がどうなるかということについてはいろいろな観測というものもあるわけでありますけれども、いずれにしても、従来継続してまいった事業というものもあるわけでありますし、また、今お答えにもありますように地対協の御意見でもまだまだやらなければならない事業もある、こういうことになっているわけでありますから、何としても、かなりまだ非常に差別を受けているこの部落の方々に対する法的な対応というものが必要なのだろうというふうに思っているわけでございます。  一つは、地対法というのは言ってみれば一定の事業をやるためにつくられた法律でございますけれども、基本的には部落差別があるというそのこと自体によって生じますところの多くの問題があるわけでございまして、ただ単に物的な事業をやればいい、あるいは啓発活動だけをやっていればいいというものでも必ずしもないわけで、現実には教育の上であるとかあるいは社会生活のいろいろな側面において、あるいはまた就職とかそういったような面において差別というものがなされているわけで、これらの差別を根絶するために、そういうただ地域改善対策というような主として物的な側面だけではなくて、部落差別を否定をするような基本法というようなものは必要ないのかということでございます。部落解放同盟等におきましては部落解放基本法を制定しろというようなことを言っているのでありまして、こういうような総合的な、地域改善対策よりも一歩進んだ差別対策法というか、そういうものをおつくりになる考え方はないのか。この点について総務庁と法務省にお伺いをしておきたいと思います。
  186. 熊代昭彦

    熊代説明員 地域改善対策協議会におきましても、団体に属する、部落問題解決のために尽力しておられます有識者の御意見等をお伺いする機会を委員会で設けられまして、それらの意見も踏まえて意見具申をいただいたところでございますが、基本的には差別問題につきましては粘り強い啓発で心理的差別をする土壤というものを変えていく、そういうことが教育、就職問題にも非常にいい影響を及ぼすし、実態的面でも具体的必要な施策はしていくということでございますけれども、基本的には粘り強い啓発をということでございまして、そういうことを踏まえまして現行の地対法の事業を見直して、しかも同和問題の解決という観点から厳しい見直しをしまして時限立法としての新規立法をという御提言をいただいたところでございます。政府といたしましても、意見具申を踏まえまして検討をいたしたいということで現在鋭意検討しているところでございます。
  187. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 先ほど総務庁からお話がございましたように、地対法以後のあり方につきましてはごく最近地対協が意見具申を出しました。それに基づきまして現在政府部内で今後のあり方を具体的にどうしていくかということが検討されておるところでございます。したがいまして、その場合の法律が限時的なものになるのかあるいは永久法の形になるのかということにつきまして、私どもが今意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。ただ、私どもは心理差別解消のための啓発機関として、部落差別解消のために努力をしてまいったところでございます。私どもといたしましては、地対法以後の法制というものがどのような形になるといたしましても、部落差別というものを一日も早く根絶することができるように一層の啓発努力を続けていきたい、かように考えているところでございます。
  188. 中村巖

    ○中村(巖)委員 部落問題については粘り強い啓発を含めたいろいろな差別解消のための手段がとられていかなければ、長年にわたってでき上がっているものでありますから、なかなか簡単にはいかないのだろうというふうに思うわけでございまして、やはり何といっても、でき得ればこういうものを禁止をする差別禁止の基本法というものが必要なんではないかというふうに考えるのでございます。その辺は私の意見でありますけれども。  そこでもう一つ、別の問題でありますけれども、部落差別の問題と非常にかかわりがあるわけでございますが、外務省に伺います。  一九六五年、昭和四十年に国連で採択をされました人種差別撤廃条約、この関係でございますが、既にこの条約に加入をしている国も非常に多いわけでありまして、国連自体においてこれが採択をされるについては、反対する国はどこもなかった、こういう状況でありますけれども、日本はまだこれを批准していないというのでございます。人種差別撤廃条約への加入の世界の状況はどうなっているかということを伺うと同時に、なぜ日本が批准をしていないのか、また批准の見通しはどうなのかということをお伺いいたします。
  189. 堀村隆彦

    ○堀村説明員 今委員から三点の御質問があったかと思いますが、第一点の各国の批准状況でございますけれども、現在私どもが承知しております限りでは百二十四ヵ国が締結しております。  それから第二点目の批准の見通しでございますが、私どもとしてもその条約の趣旨にかんがみまして引き続き注意深く検討中でございますけれども、現段階におきましては、その具体的な批准の見通しについては申し上げられる段階にないということで御理解を賜りたいと存じます。  それから第三点目でございますが、問題となっております点は種々あるわけでございますけれども、最も大きな問題としましては、この条約の四条関係でございますが、ここで諸般の処罰立法義務というものを締約国に求めておるわけでございます。人種差別思想の流布もしくは人種差別団体への参加等々につきまして締約国に国内法に基づいて処罰立法義務を課しているわけでございますが、この点につきまして日本国憲法の基本的な原則、特に基本的な人権と言われております思想の自由もしくは集会、結社等々の自由との関係で、国内立法義務といかに調整するかという点が非常に重要な、かつ慎重な検討を要する問題であろうかというふうに考えております。
  190. 中村巖

    ○中村(巖)委員 ちょっと外務省の見解を伺っておきますけれども、この人種差別撤廃条約というものが批准をされたという段階においては、この条約の中身は先ほど来私が申し上げております同和問題あるいは在日外国人の問題に適用されるというふうにお考えでしょうか、いかがでしょうか。
  191. 堀村隆彦

    ○堀村説明員 御指摘の点も含めまして、これは条約の解釈の問題にわたる問題でございますけれども、その点も含めまして現在鋭意検討中ということで御理解いただきたいと思います。
  192. 中村巖

    ○中村(巖)委員 法務省に今の人種差別撤廃条約の批准上の問題点について伺うわけですけれども、法務省としては、やはりこの問題について外務省からいろいろ協議を受けているわけでしょうか。
  193. 岡村泰孝

    岡村政府委員 そのとおりでございます。
  194. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今外務省から障害として、これは前から言われていることですけれども、条約の四条の処罰立法の問題が非常に大きな障害なのだという御説明でございますが、このことについて法務省としてはどうお考えでしょうか。
  195. 岡村泰孝

    岡村政府委員 人種差別撤廃条約の四条は、人種的な優越または憎悪に基づく思想のあらゆる流布等を法律により処罰すべき犯罪行為とすること、また、人種差別を助長し扇動する宣伝活動等を違法と宣言して禁止することのほか、人種差別を助長し扇動する団体への参加そのものにつきましても法律により処罰すべき犯罪行為とすることを求めているのであります。ところで、我が国の憲法では、委員既に御承知だと思いますが、思想及び良心の自由あるいは集会、結社、表現の自由というものを保障いたしておるわけでございまして、こういったものとの関係でただいま述べましたような行為を処罰することは非常に大きな問題があるわけでございます。  また、そのほか第四条が処罰すべき犯罪行為として挙げているものの中に人種差別の扇動を独立罪として処罰するということが挙げられておるわけでございますが、こういう扇動罪を処罰するということにつきましては、現行の刑罰法体系全体から見ましていろいろ問題があるわけでございまして、こういった点につきまして法務省といたしましてもいろいろな角度から検討を続けておる、こういうことでございます。
  196. 中村巖

    ○中村(巖)委員 大変大ざっぱな質問で恐縮ですけれども、今御答弁を伺っていると検討している、検討している、こういうことなのですが、そういうような四条の関係については、日本の今の法体系のもとではその種の処罰法規は絶対立法ができないみたいな話になってしまう、そうなれば永久的に人種差別撤廃条約の批准というのはあり得ないということになってしまうわけで、法務省としては、その種の条約と調和をするような、しかも現行法体系に合うような立法というのは可能だとお思いなんですか、それとも全然不可能だということなんですか。
  197. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ただいま委員指摘のありましたように、他の何らかの処罰規定というものをつくることが可能であるのかどうか、こういったことも含めましていろいろ検討をいたしておるわけでございますけれども、四条が要求しておりますことをそのまま国内法として処罰規定をつくるということは、先ほど来申し上げておりますように、法務省刑事局の立場といたしましては、国内法全体の体系から見まして、また憲法との関係もありまして非常に困難である。だとすれば、ほかに条約を批准する道があるのかということになりますと、これは刑事局の立場からやや離れていくことではないか、かように思うのであります。
  198. 中村巖

    ○中村(巖)委員 その辺は、百二十四ヵ国も諸外国が批准しているわけでありますから、何らかの措置が可能であるはずであろうと思うわけで、この問題の最後に大臣に、人種差別撤廃条約の批准についてどうお考えになっておられるか、お伺いしておきたいと思います。
  199. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 一つは人種差別、批准の問題ですが、自分としては、第四条を除いて批准がどうかという点を今検討させておるわけでございまして、人種差別の問題については七月以来大分いろいろ華やかな議論が出されているので、できるならば批准をさせたい、こういうような心境であることを御理解願いたい。  それから同和問題について、えせ同和等の問題ですが、根は同和問題の解決だと私は思うのです。そういうような点で、これからも部落差別を生み出す土壌を改めていかなければならぬ。それで、今先生おっしゃるような人権思想啓発のみで同和問題が解決できるかというと、ちょうどオーバーの上から背中をかいているような格好で、なかなかそれだけでは解決できない。何としてもやはり融合されるような形をとっていくには、各省庁とも連絡をとって、そして先生お話しのとおり、就職問題、教育問題、日常生活問題、そういうような点にまでもっとメスを人れて積極的な形で進んでいけば、同和問題が解決すればえせ同和というのはなくなるわけでございます。しかし、現実には、今お話し申し上げたように、えせ同和での被害者も大分多いので、これはひとつ何とか一掃させたいということでございますけれども、できるならばどっちも一日も早く解決することに今後努力したいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  200. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、同和問題とちょっと離れまして、最近新聞紙上で大変やかましくなっております日本への入国者の資格外活動というか、その問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。  近年、東南アジアを中心として大変に日本への入国者がふえたという状況であることが報ぜられておりますけれども、最近の入国者の増加の状況はどうなっておりますでしょうか。
  201. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 入国者と申しますと、外国人の入国者または日本人の入国者、双方がございます。  外国人の入国者につきましても手元に詳しい数字がございますが、口頭でございますので概数で申し上げますと、昨年一年間の入国者、外国人入国者は二百三十万人、日本人の出国者、日本人の場合には入国に先立って出国がございますので出国でとらえておりますが、日本人の出国者は五百万というふうに御理解いただいてよろしいかと思います。  この数字が何を意味しているか、いかなる増加を意味しているかと申しますと、外国人の場合二百三十万という数字は十年前の三倍でございます。また、日本人の五百万という出国者数は十年前の二倍でございます。そのように御理解いただければよろしいかと存じます。
  202. 中村巖

    ○中村(巖)委員 二百三十万の外国人の入国が日本にある。これは純粋な観光とかいろいろなこともあるのでしょうが、これらの外国人二百三十万のうちどこの国の方が多いのか、最近の状況ではその辺はどうなっておりますでしょうか。
  203. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 昨年一年間で統計を一べついたしますと、最も多いのは米国でございまして、全体の二〇%余りでございます。次いで台湾人でございまして、これが全体の一六%弱でございます。三番目が韓国で、全体の一三%ほどでございますが、韓国の場合には半分ほどが日本から出国した再入国者でございまして、したがいまして、日本における在住者がその半分を占めておるということでございます。四番目が英国人でございまして、二十万人足らずということでございます。
  204. 中村巖

    ○中村(巖)委員 最近新聞に報ぜられるところによりますと、いろいろ問題になって強制退去になるような事例、資格外活動によって強制退去させざるを得なくなったようなケースの方々というのは、大体フィリピンとかあるいはパキスタン等の中近東の方、そういうものが多いようですけれども、これらの国からの外国人の入国はどうなっておりますでしょうか。
  205. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 昨年一年間で統計を見ますと、フィリピンの場合には六万六千人ほどでございます。タイの場合が四万四千人余りということでございまして、全体に占めるパーセンテージから申しますとそれほど多いわけではございません。ただ、違反の面でとらえますと、これが極めて目につくということでございます。
  206. 中村巖

    ○中村(巖)委員 中近東からの入国状況はどうなっておりますか。
  207. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 国別で申しますと、手元にブレークダウンがございますのはイランでございますが、イランの場合には二万四千人弱でございます。その他の中近東諸国についてはブレークダウンがございませんので、もし御必要であれば後で詳しい数字をお届け申し上げたいと存じます。
  208. 中村巖

    ○中村(巖)委員 他の国もいろいろあるわけですけれども、とりあえず今お話しのフィリピン、タイあるいはイランからの入国者、それだけでもかなりの、十何万かになるわけですけれども、これらの国からの入国者の滞在資格というものは大体どういうことになっておりましょうか。
  209. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 ただいまバングラデシュとパキスタンの数字を承知いたしましたので、一言御説明申し上げます。  パキスタンの場合には一万人弱、バングラデシュの場合には二千人余りということでございます。  在留資格の方は、これは各国を通じて言い得ることでございますけれども、九割以上が観光その他の短期滞在資格でございます。法律上の用語といたしましては、法律上と申しますか、私どもの執務上の用語といたしましては四−一−四という名称を付しております。
  210. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そういった形で大半の方が日本に入国されるわけでありますけれども、現実問題は、新聞紙上その他で報ぜられておりますように、例えば女性であれば遊興施設で働くとか売春をするとか、あるいは男性であればいろいろな工場そのほかで働くというような形で、いわゆる資格外活動というものが非常に行われているようであります。それは最近特に目につくようで、私どもの地元、選挙区の北区、板橋区とか、そういったようなところの工場では、そういった中近東の人が非常に働いているという状況になっているわけでございます。これらの資格外活動の状況につきましては、法務省としても鋭意こういうものを取り締まるというか、おやりになっておられるようでありますけれども、最近の、まず例えば本年なら本年のこれらの活動に対する退去強制等の状況はどうなっておりますでしょうか。
  211. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 昨年一年間の摘発件数は七千六百五十三件でございます。このうち、先生指摘のような資格外活動絡みの不法残留件数を見ますとその大半を占めておりまして、約五千六百件を数えております。この傾向はことしに入っていよいよ顕著でございまして、恐らくことし一年間を通じて見ればこの資格外活動絡みの不法残留案件のみで七千件に達するのではないかというふうに考えております。
  212. 中村巖

    ○中村(巖)委員 このような状況をどうしたらいいのかという問題があるわけでございます。根本的な問題を含んでいるわけでありますけれども、とりあえず、入国に際してどういうふうな手続で日本に来るんだろうかということをまず考えてみたいと思うので外務省に伺いますけれども、入国に際して査証、ビザを必要としない、外国人が日本に入国する場合にビザを必要としない国、それから必要とする国があるわけでございますね。それは相互免除取り決めがある国は査証を必要としない、こういうことになるわけですけれども、どういう国が入国に際し査証を必要とする国になっているのか、それから査証を必要とする国の人間が日本へ来ようとした場合に、どういう手続を経て日本に入国が可能になるのか、この辺をお伺いをしたいと思います。
  213. 木村光一

    ○木村説明員 お答えいたします。  委員の御質問の第一の点でございますけれども、御承知のとおり、原則といたしまして、我が国に入国しようとする者は国籍のいかんを問わず査証が必要であるということでございます。ただ、御質問の中で委員が御指摘のとおり、国際交流の拡大等というような見地から査証免除取り決めというものを各国と結んでおります。現在ではこれが計五十ヵ国に達しておりまして、特定の入国目的に限りまして相互に査証取得の免除をいたしております。この免除取り決め国でございますけれども、地理的には欧州地域で二十三ヵ国ございます。それから御質問に関係いたしますアジア・大洋州諸国で六ヵ国でございます。それから北米・中南米で十五ヵ国、それから中近東・アフリカ諸国で六ヵ国でございます。  それから御質問の第二点でございますが、査証を必要とする者に対する発給の手続でございますが、委員も御承知のとおり、査証には入国目的の違いによりまして七つの区分、言いかえれば種類でございますけれども、ございます。実際の具体的な査証申請手続というのは査証の区分、つまり入国目的の違いによりましてそれぞれ取り扱いが違っております。ただ、簡単に申し上げますると、査証申請書にそれぞれの渡航目的に応じて提示または提出していただく関連資料をつけていただいて査証申請をしていただく、そういう手続になっております。
  214. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今お話しいただいたわけですけれども、具体的に台湾、韓国、フィリピンあるいはタイ、イラン、こういうような国について査証は必要なのでしょうか、どうでしょうか。  それからもう一点は、それらの査証を必要とする国の人たちが日本に入国するために査証申請をする、こういうときに、観光ビザということであれば極めて簡単に得られる、こういうことになるんでしょうか。
  215. 木村光一

    ○木村説明員 委員質問の中で御指摘になりました国につきましては、いずれも査証取得が必要でございます。  特に観光につきましてでございますが、一般に観光査証の場合には一番簡易な査証申請手続によることとされております。ただし、先生が御指摘になりましたいろいろと好ましからぬ、一部の諸国からの観光を目的とする入国申請につきましては、一昨年ごろからこういう傾向が目立ち始めましたので、特に観光等を含む短期滞在の査証にいたしましても、通常の簡易な査証申請手続よりも厳格な手続を要求いたしております。  具体的に申し上げますと、入国目的を確かめるために提示または提出してもらう書類の数がふえる、またそういう書類審査に基づきまして具体的にインタビュー、面接いたしまして、簡単な質問をいたしまして入国目的をさらに確かめる、その結果、場合によりましてはその場で申請を受理しないとか査証を拒否するとかという措置をとることにいたしております。
  216. 中村巖

    ○中村(巖)委員 ところが具体的には、実際的には先ほど入管局長からお答えいただいたように、殊にフィリピンの女性が日本に大量に入ってきて、あるいはフィリピンだけでないですけれども、それが日本でもってバーやスナックで働いて、さらには売春をやっているというような状況があるわけですね。やはり査証段階ではその辺のチェックというものはなかなか難しいわけですか。
  217. 木村光一

    ○木村説明員 確かに委員が御指摘のとおり査証審査の段階ですべてこういった人たちを審査の上で排除するということは、正直に申し上げまして限界に来ているというふうに申し上げられるかと思います。ただ、これ以上の厳格化ということが果たして可能かということでございますけれども、私どもの現状を先ほど申し上げましたけれども、今の査証発給手続の厳正化、その状態におきましても、いわゆる善意の、本当に観光または知人訪問とかそれから短期の商用で入りたいという善意の方々に、余り手続が厳しいものでございますから迷惑がかかっておりまして、そういう点で若干苦情なども申し越している例がございまして、正直に申し上げまして査証審査上これ以上厳格化というのはかなり難しいのではないかというふうに考えております。
  218. 中村巖

    ○中村(巖)委員 あとは入国審査、こういうことになるわけですけれども、入国審査の段階でもやはりそれが不法目的で、不法という、まあ一種の不法ですが、不法の目的で入国をしてくるということで在留資格を認めないというようなことはあり得るんでしょうか。
  219. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 ただいまの点にお答えする前に、先ほど先生が査証免除協定があるのかないのかということに関連して御指摘になった国の中にパキスタンあるいはイラン、バングラデシュという国が入っておりましたかどうかは私失念いたしましたが、もし入っておったのであればこの三国については査証免除協定があるわけでございます。したがって、観光目的で日本に来る場合には無査証でやってきてしまうという問題があるのでございまして、この点は私どもとして問題と考えております。  また入国に関する審査、まず査証段階がございまして、次に入国時における審査がございます。また入国後における取り締まりということもございます。入国時におきます審査で、査証を持っておりながらその査証に基づく入国目的が真実ではない、したがって目的詐称、このサショウの漢字が違いますけれども、偽って称しておる詐称の方でございますね。その目的詐称ということで上陸を拒否されるケースが成田だけでも毎日十件ほど起こっております。事ほどさように入国審査に際しても審査は厳しくいたしておりますけれども、しかし査証の際の審査以上に入国の際の審査に充当し得る時間的な余裕が極めて乏しいということは、延々と続く行列を御想像いただければ御理解いただけると思うのでありますが、そういう観点からも外務省側で、種々問題があることは承知いたしておりますけれども、在外公館における査証審査の段階でこのスクリーニングを厳しくしてほしいということを外務省側に申し入れをしておる状況でございます。現に空港に来てから上陸を拒否するということになりますと、既に本人は往復の旅費を支出することになりますので、その負担あるいは影響が極めて大きいわけでございますから、そういう意味におきましても査証申請の段階でスクリーニングをする方が本人のためにも、不要の負担を少なくするということにもなるわけでございます。また入国後におきます摘発につきましても、関係省庁と協力しながら最大限の努力をしておるということでございます。
  220. 中村巖

    ○中村(巖)委員 観光目的で入ってきてしまう、そして資格外活動をするということも非常に問題であります。殊に、今局長お話のように査証免除協定のある国の方々が査証という段階を経ないで観光目的で入国して、観光という四−一−四の資格を与えられている、ところが働いておる、こういうこと。殊に、私が先ほどお話しいたしました、男性が中近東からやってきて工場なんかで労働者として働いている、この部分については非常に問題があると思っておるわけでございます。  それと直接関係はないのですけれども、いわゆる四−一−六の留学生問題についても、留学生と称して日本にやってきて、実は学校へ行かないであるいは学校へ登録もしないで、実際は資格外活動であるところの売春や接客業をやっている、こういうことがあるわけです。これについては、きょうあたりの新聞にも日本語学校の経営者の協議会みたいなものができたようなことが書いてありましたけれども、この四−一−六の場合に、結局どういうようなケースについて従来在留資格を与えてきたのかという点はいかがでしょうか。
  221. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 最近の新聞をにぎわしております学生絡みの資格外活動の案件は、実は四−一−六を与えられた外国人については割に限られております。と申しますのは、四−一−六といいますのは留学生でございまして、大学の学部であるとか短期大学の学科であるとか高等専門学校だとか、かなりしっかりした教育機関に入学を認められたケースに限られておりますので、これらの人々がキャバレーやバーのホステスをするということはほとんどございません。問題となっておりますのは、私どもが留学生とは区別して就学生と言っておるケースでございまして、専門学校ではなくて、日本語学校といったようないわゆる各種学校に入学を装って働いておるケースでございます。これは四−一−六を与えられておるということはございません。四−一−四を与えられて日本語を短期に勉強するとかあるいは一六−三という、その他という種類の資格を与えられて入ってきて、結局はそういう稼働をしておるというケースが主でございます。その種類に属する人々のことが現在の大きな問題になっておるということでございます。
  222. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それで、ちょっと伺いたいのですけれども、四−一−一六−三、これはどういう場合に与えられるわけですか。
  223. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 一六−三と申しますのは、一口で申しますとその他という種類でございまして、極めて多岐にわたるわけでございますが、大体その半分はいわゆる就職ケースでございます。あるいはほかの種類の在留資格でございますと在留期間が定まっております。十五日とか三十日とか定まっておりますので、それ以下の例えば三日とか四日とかというような場合には、一六−三という仕留資格を利用いたしましてその実情に合わせた処理をいたしております。したがいまして、一口で申しますと、内容は極めて雑多である、しかし半分ぐらいはいわゆる就職ケースであるというふうに御理解いただいてよろしいかと存じます。
  224. 中村巖

    ○中村(巖)委員 だから、先ほどの日本語学校の学生だ、学校に学ぶんだと偽って入るようなケースというのも四−一−一六−三で来るということになるわけですか。
  225. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 一六−三という資格を与えられて入ることもございます。あわせて四−一−四の資格のまま日本語の勉強をするというケースもございます。両方にわたっております。
  226. 中村巖

    ○中村(巖)委員 接客業はともかくとして売春をやるというようなことは我が国の国法にも反しているわけですからこれは論外ですけれども、それ以外、外国人が日本で働きたいという希望が非常に今世界的に強くなっている。だからそれが入国管理行政を乱す原因になっているわけでございまして、接客業であれあるいは工場労働者であれ、今の入国管理法制の中では外国人がそういうものに就業するための入国というものを一般的に禁止をしているという状況になっているわけでありますけれども、こういう人たちの入国を認めないというのは一つの労働政策かもわかりませんが、これはどういう理由によるものなんですか。
  227. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 外国人が日本で稼働することを原則として認めないということではございません。現に我が国で稼働をしておる外国人、例えば商社関係の雇用者、被用者あるいは多くの製造関係、サービス業関係の企業における被用者は極めて増加いたしておりまして、その種類も多様化いたしております。我が国が原則として入国を認めないと申しておりますのはいわゆる単純労働者でございます。この種類に属する人々につきましては、確かに私ども当局といたしましては入国を認めない原則を固持いたしております。その理由は、我が国内における労働需要というものが外国人の単純労働者の導入を認める状況にはないということであるわけであります。  しからば最近におけるそういう不法就労はどう考えるのかという御質問かとも存じますけれども、現在外国人が周辺諸国から単純労働者として入国し、稼働しているケースは、いずれも極めて低賃金で、極めて不利な労働条件のもとで働いておるわけでございまして、これらの人々がもし合法的に入国を認められるとすれば、その賃金は当然我が国における最低賃金を下回るものであってはならないわけでございますから、言いかえれば日本人と同等の労賃を払って働いてもらうということが前提になるわけでございます。したがって、そういう低賃金による労働需要というものは正常な意味での労働需要とは私どもは考えておりませんので、現在こういう人々を雇用している企業が、日本人と同等の賃金を払ってもなおかつこれらの人々を雇用するだけの需要を持っているかということになりますと、これは極めて別の話ということになるわけではないかと存じます。そういう点を見きわめまして、私どもとしては国内各方面、経済界及び関係官庁との協議を進めながら将来に向かっての施策を考えていきたいと考えておるわけでございます。
  228. 中村巖

    ○中村(巖)委員 先進諸国の中では、単純労働者、今局長が言われる人たちを導入をして自国の中で働かせている国々もあるわけでございまして、日本と同じようにその点について大変に厳しく規制をしている国もあるわけでございます。いろいろであると思いますけれども、こういうような単純労働者の入国を認めないんだという政策というものが今後も継続可能なものなのかどうか。これが諸外国から、発展途上国等々からも何か外交的にも言われるところがないのかということについて法務省並びに外務省の御意見をお伺いをいたしたいと思います。
  229. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 欧米諸国の状況を一べついたしますと、移民導入国におきましては、移民という形で結果的には単純労働に従事する人々が導入されるということはございます。しかしながら、移民を除けば単なる一義的な出稼ぎ労働者の導入を認めている国は移民国といえどもないと言ってよろしいと思います。またヨーロッパ諸国、これは移民導入国ではございませんが、見ますと、一九六〇年代のいわゆる高度成長期におきまして、特に西独のようにかねや太鼓で周辺諸国から労働者を導入したという事例はございます。しかしながら、一九七三年のオイルショック後におきます経済停滞の中でその労働者の処遇に大変な社会的な問題を生じておる。例えば西独におきましては、帰国の旅費まで払ってお引き取り願うという施策をとっているにもかかわらず思うように帰国がはかどらない。百万人を超えるその当時導入された労働者とその家族がいまだに定着して大変な社会問題を生じているという状況でございまして、少なくとも現段階について言えば、我が国に対して低賃金労働者あるいは単純労働者の導入を求める国際的な世論が高まってくるということは到底考えられないというふうに判断いたしております。
  230. 木村光一

    ○木村説明員 委員質問の第二点、後半の方についてお答えいたします。  御指摘の種類の単純労働の受け入れ態勢につきまして、今までのところ特に明確な形で非難等というのが寄せられたとは承知いたしておりません。ただ、今後この種類の労働の受け入れの現在の規制につきまして、将来これが緩和の方向に向かうということを期待する向きがあるということもまた承知いたしております。
  231. 中村巖

    ○中村(巖)委員 時間ですので、終わります。
  232. 大塚雄司

    大塚委員長 安倍基雄君。
  233. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 前回の法案審議の際に若干積み残した話がございまして、主として暴走族の関係の問題でございますけれども、その前にちょっと一言。  今非常に騒がれておりますビートたけし事件というのがございます。この中身は一々口にして言うことはないと思いますけれども、「フライデー」にいろいろ書かれたことを問題として殴り込んだ。なかなか甲論乙駁、たけしがいいと言う人もいれば「フライデー」がいいと言う人もいる。これは、暴力を振るったことは絶対にいいとは言えないわけでございますけれども、また反面、一部にはいささかそういう取材も過熱状態じゃないのか。ちょっと妙な言い方をすれば、「フライデー」に「フラッシュ」されて「フォーカス」されたら「エンマ」様に「タッチ」されたというようなもので、ウイークエンドもろくろく休めないというような人間もいるのじゃないか。  こういったことはこれからどういうぐあいに動くかわかりませんけれども、非常に微妙な問題を含んでおりまして、一方においては言論は自由である、一方においては個人個人、たとえそれが事実であっても表になっては嫌だという人々もいる、一つの言論の自由と人権との接点かと思いますけれども、これについて法務大臣、どういうぐあいに考えるか。これはいろいろの人が言いますけれども、基本的には法務大臣がどう考えるかということが非常に重要な話でございまして、冒頭でございますけれども、このビートたけし事件についてどうお考えになるかということをお聞きしたいと思います。
  234. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 ただいまの御質問でございますけれども、この問題は今警察捜査されておる問題でございまして、法務大臣としてどう考えるかということになりますると、いま少し結果を承知しないと何ともお答えができないということで御理解を願いたいと思いますが、先ほどもお話し申し上げたのですけれども、人権の問題と報道の自由との問題については、できるならば法的に報道がここからここまでとかあそこまでというようなことでなく、報道関係で自主的にルールをつくっていただけたらばなというような感を深めておりますけれども、そうすればこんな事件も惹起しなかったのではないか、こう思います。法務大臣の考えということになると、いま少し時間をおかし願いたいと思います。
  235. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時々私は判決とかそういう案件についての御質問をして、三権分立でございますから余りそれを突き詰めて追い込むようなこともしたくはないのですけれども、ただこの問題、自主規制に任せるという弁ももちろんあると思いますけれども、私たち、国民の皆さんの名において聞きたいのですけれども、こういう案件はいわゆる刑法における名誉棄損に当たるのか当たらないのか。個々のケースもあると思いますけれども、それぞれ非常に違うよということかと思いますけれども、この名誉棄損のあれを見ますと、事実の有無にかかわらずという話がありまして、ただ公益のために必要であるという場合で、しかもそれが事実であった場合には免責されるというぐあいに刑法に書いてございます。私は何もここで刑法を適用せよと言っているわけではないのですけれども、ああいった話が名誉棄損の構成要件の中に入り得るものかどうか、これはいわば一般人はよく知りませんから、その辺についての御解釈を聞きたいと思います。
  236. 岡村泰孝

    岡村政府委員 名誉棄損罪が成立するかどうかということにつきましては、具体的事実関係が明らかになりませんと申し上げにくいのでありますが、ただ一般論として申し上げますと、人の社会的評価を害するような行為、これが名誉棄損でございますので、まず、それを公然と摘示したような事実があったかどうかということが問題であろうかと思います。  その次に、そのような行為が認められたといたしましても、ただいま委員指摘のありましたように、公共の利害に関する事実でありまして、その目的が専ら公益を図る目的であって真実性の証明がなされた場合には処罰されないということが刑法二百三十条ノ二に明記されておるわけでございまして、こういう要件に当たるか当たらないか、ここらがやはり具体的事実関係のもとにおいて判断されなければならない、かように思っております。
  237. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は別にああいった芸能人を弁護する意味でもないのですが、例えば愛人がいましたというようなことがある、その写真をばっと公表するという話になりますと、こういった関係の場合には当たるのでしょうか、当たらないのでしょうか。
  238. 岡村泰孝

    岡村政府委員 ただいま申し上げましたように、そういうことを記載されたことが社会的評価を害するような行為であったか、被害者の立場から見まして社会的な評価を害され、名誉を傷つけられたというふうにまずもって認定できるかどうかという、そこにかかわってくるものと思っております。
  239. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、ここでどっちの肩を持つというようなことをするつもりもないし、そこでまた今から裁判なんかが行われるときに予断を与えようとする気持ちは毛頭ないのですけれども、これはなかなか庶民感情としましても、それは事実かもしれないけれども、暴き立てられてはという人もいるわけですね。芸能人なんかになると、これは一つの名誉税みたいな話ということもあるかもしれませんけれども、その相手方あたりになりますと、事実であってもみんなの前にさらけ出されちゃ嫌よという気持ちも出てくるかと思うので、この辺が人権の問題と考えるのか、名誉棄損の問題と考えるのか。  私は、行政的に抑え込むというようなことは、言論の自由という問題があるからそういうことは余り感心しないけれども、法的にそういった個人がどう救済されるのかということは重大な問題かと思うのです。その意味で、これからいろいろな案件が裁判になるかならないか別としまして、そういう個人が救済される道が開かれているのかどうか、その辺を含めましてお聞きしたいと思います。
  240. 岡村泰孝

    岡村政府委員 刑事事件としての立場から申し上げますと、名誉棄損は親告罪になっているのでございまして、被害者が名誉を害されたというふうに主張して告訴をいたしますれば、捜査機関捜査を遂げまして、名誉棄損に当たり、かつ起訴する事情があるならば裁判にかける、刑罰を科するということによって被害者の救済と申しますか、それができる道が刑事事件としてはあるわけでございます。
  241. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 刑事、民事、両方とりあえずやるかと思いますけれども、そういうことで大臣に、これはなかなかデリケートな問題ですけれども、やはり今後、個人の権利と言論の自由の接点という意味で非常に慎重に御検討願いたいと思います。いかがでございますか。
  242. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先生の御趣旨のとおりであろうと思いますので、十分検討させていただきたいと思います。
  243. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 次に、前回お話ししかけてまだ中途、中断しておりました問題ですが、この間、和歌山の暴走族に材木を投げつけて殺しちゃったという判決が懲役三年でしたかな、執行猶予がついたものであるというぐあいに記憶しております。  もう一つ、私があのときに挙げたのは、ストリッパーが酔漢に絡まれてホームでこうしたら死んじゃった、これもまた起訴されている。私は別にお涙ちょうだい式の記事に流されるわけじゃない、その事実関係がどのくらいどうであったかということを必ずしも把握しておりませんから、こういったことが起訴され、あるいは刑を受けたということが、そういった司法の方向に何ら妙なことを言うつもりはございませんけれども、ただ、例えば酔漢などが弱い女性に絡んできて、それを押し返したから、その結果死んじゃった、そこに過剰防衛であったか未必の故意があったかという問題はあるにしても、それがまた厳しい刑などを受けたら、自己防衛というか、一体その辺はどうなるのだろうという気がいたします。  これも、特にそのストリッパーの方は裁判中でございますから、法務大臣がこう言ったなんというとまたそれが影響しちゃう、それはいいことじゃないわけでございますけれども、そういった立場を離れて、直観的にどうなんだろうなというようなことを、特にさきの方の暴走族については裁判も終わったわけですから予断を与えるわけじゃないわけなので、ちょっと御感想をお聞かせ願いたいと思います。
  244. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 今先生お話しのとおり、公判中でもございますのであれですが、これも一つの交通事故と似たようなもので、どっちも災難だったな、こういうふうに理解をいたしております。
  245. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 余り追い詰めるのは嫌ですけれども、それはどっちも交通事故だったなというような感じでは、ちょっと答えにはなっていないと思うのですよ。私は、時間がございましたら陪審制のことに触れたいと思いますけれども、ちょっと正当防衛というか庶民の自衛というものに対して、それなりのいわば感情を持つべきじゃないかなという気持ちがいたします。  これと関連しまして、先回時間がなくて、我々どうも本当に時間が四十分ぐらいしかないものですから、聞きたいことはたくさんあるのですが、さっきの暴走族で結局は殺人罪、傷害致死になったケースというのは、ある意味からいうと、警察の取り締まりが不十分なことに対するいわば怨嗟の声というか、一番の原因はやはりそういう取り締まりが不十分なところにあるのじゃないか。  私どもも、住んでおりましてそのそばを安眠妨害というか、真夜中すごい音で毎日毎日走られますと、この間も言いましたけれども、殺してやりたいぐらいの気持ちになるのですよ。殺してやりたいなんということを代議士が言ったら問題になるかもしれませんけれども、そういう気持ちはわかるわけですね。そうなると、暴走族というのをこのままにずっとしておいていいのだろうか。いろいろ話を聞きますと、暴走族というのは年齢が若い連中が多い、年をとってくると自然にやめちゃうからいいのだ、いいのだという言い方は悪いですけれども、しかし次々と後続部隊があらわれてきて、いわば同じようなことをやる、後が絶えないわけですね。  これは警察庁にほかの国はどうだという話を聞きましたら、ほかの国にもある、ところがアメリカあたりは、この前、「マッドマックス」なんという映画がございましたが、ごらんになったかわかりませんけれども、麻薬に絡んだ犯罪組織の一部で、犯罪の手段としてそういったものを使っているというようなものが多い、日本みたいに若い子ががあがあ都会のど真ん中を駆けずり回るというものは比較的少ないという話もございました。欧州もそんなことのようでございます。  そうなりますと、日本の暴走族というのは特殊日本的と申しますか必ずしも外国の例とマッチしない。ただ、日本人というのは割合と今の酔っぱらいにしても寛容な面がございまして、そのうちどうにかなるわいというような感覚が非常に強いような気がしますけれども、暴走族についての規制がどうなっているのか。この間、ちょっと免許の話、そして改造車の話という点の二つをお話をしました。そのお答えは、免許も一時的に停止するけれども後で返してやる、返してやるというか期間は限られておる、また改造車も直せばそれでいいのだというような話でございました。  ちょっと運輸省の方にお聞きしたいのですけれども、ああいった改造した車両、それを改造した業者、これに対してどのくらい厳しい、要するに制裁手段を講じているのかということと、これは法務省にお聞きしたいのだけれども、場合によっては没収して構わぬのじゃないかという、これは今のところは、私の聞いているところによりますと、現行犯をつかまえてそこでしょっぴいていくというだけの話でしょうけれども、改造車が見つかれば、それそのものが既にそれをやるために準備しているものですね。そういったものはむしろ、たとえ走ってなくても見つけたらそいつを持ってきちゃうということも許されるのじゃないかなということを私は考えるのですけれども、その点について運輸省、法務省の御見解を承りたいと思います。
  246. 松波正壽

    ○松波説明員 お答えいたします。  暴走族対策の推進につきましては、運輸省としましては、いろいろな車両の不法改造の防止というのを重点対象といたしまして、いろいろな機会をとらえまして関係機関とも密接な連携のもとに指導をいたしているところでございますが、今先生指摘の整備工場に対してはどのようなことをしているか、こういう御質問かと思いますので、その点に絞ってお答えを申し上げたいと思います。  整備工場に対しましては、普通ユーザーがそこへ依頼する可能性があるわけでございますけれども、まず一つは、従来から自動車ユーザーから依頼を受けても不法改造を絶対に行わないというような指導の徹底を図ってきておりますし、さらに不法改造の禁止の徹底を図るため、先般、道路運送車両法の一部改正等を行いまして、自動車整備事業者の遵守すべき事項の一つといたしまして不法改造の禁止規定を新たに定めております。  具体的にはどうかという点もございましたので触れさしていただきますが、そういうような暴走行為を助長するような不法改造の絶滅を期するため、自動車分解整備事業者に対し立入検査を実施するなどいたしまして、当該不法改造にかかわる違反事実が明らかになった場合には、当該自動車分解整備事業者に対しその違反の内容に応じまして事業の停止を行うなど、厳しく行政処分を行っておりまして、六十年度におきましても、このようなケースといたしましては二十三件ほど処分をいたしております。  以上でございます。
  247. 岡村泰孝

    岡村政府委員 犯罪行為を組成した物件あるいは犯罪に供した物件につきましては、刑法十九条で没収することができるのであります。しかしながら、これは必要的没収ではなくて任意的没収、すなわち没収することができるという規定になっているのであります。したがいまして、実務の運用といたしましては、犯しましたところの犯罪の内容あるいは態様、こういったものと犯罪の用に供した物件あるいは犯罪行為を組成した物件、それがどういうものであるか、両者の比較考量の上で没収すべきかどうかを判断いたしておるところであります。  一般的に申し上げまして、暴走族の関係でオートバイ自体を没収するという例は、絶無ではないと思いますけれども、そんなに多い例でもないように思います。むしろ没収してない方が多いのではなかろうか。これは正確ではございませんが、そういうところでございます。
  248. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は警察庁にお聞きしたいのですけれども、これから暴走族を抑えていくというか、こういったものをはびこらせないというためには今後どういうことをお考えになっておられるか、いわばこれからの方向と申しますか、その辺についてちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  249. 根本好教

    根本説明員 警察といたしましては、交通安全等を図る観点から道路交通法の所要の改正を行い、共同危険行為等の禁止規定、これは昭和五十四年でございます、騒音運転等の禁止規定、昭和六十年、こういった規定を新設整備いたしまして、また罰則の引き上げ、これは六十二年の四月一日から施行予定でございますが、こういった措置を逐次講じてきたところでございまして、暴走族の取り締まりにおきましても、これらの規定を中心として諸法令を適用して厳正な取り締まりを実施してきたところでございます。  しかし、暴走族の各種違反行為はなかなか根絶しにくいものでございまして、警察といたしましては、現行法令を駆使して根気よく、より一層強力な取り締まりを継続的に実施していくほか、関係機関とも連携いたしまして総合的な諸対策を積極的に推進してまいりたいというように考えております。
  250. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も、議事録を見ますと、ことしの三月二十五日ですかその問題を取り上げて、善処しますというような話でございましたけれども、どのくらい善処されたのか、まだはっきりしていないものですから。これは取り締まりの面とともに、いわば法制の問題なんですね。この辺について、新たな立法と言っては大げさかもしれませんけれども、法的にこれからどう考えていらっしゃるか、法務省ないし法務大臣の御意見を承りたいと思います。
  251. 岡村泰孝

    岡村政府委員 暴走族に対する取り締まりにつきましては、検察当局といたしましても、刑法あるいは道路交通法等の刑罰法規を活用いたしまして、これまでにも厳正な処理をしてきたところでございます。  今後の問題でございますが、もし現行法令で賄い切れないような問題がある、立法の必要があるということになりますれば、所管の省庁におきましてそれぞれ適切に対処されるものであろうと思うのでありまして、そういう場合には法務当局といたしましても十分御協力を申し上げる所存でございますが、今のところ刑法あるいは道路交通法の活用によりまして厳正な処理が可能であるというふうに思っておるところであります。
  252. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ということは、別に新たな改正というか、これは今の警察庁関係の改正ですかな、新たな立法みたいなことは法務省では考えてないということですね、法改正。
  253. 岡村泰孝

    岡村政府委員 暴走族の取り締まりに関連いたしまする法律は、法務省所管ということではないと思うのでございまして、いろいろ他に所管があろうかと思います。だから、そちらの諸官庁の方でいろいろ御検討されれば法務省としても十分御協力申し上げるということを申し上げたわけでございます。とともに、それじゃ現行法令で非常に不備かと言われますと、刑法あるいは道路交通法等を活用して厳正な処理をしておる、こういうことでございます。
  254. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにしましても、ああいった自己防衛的にというか、自己防衛というのか過剰防衛というのか、そういった事件が起こること自体、現行法で十分であるかということの逆の証拠なわけですね。やはり庶民は非常に迷惑をしておるのが随分多い。どのくらい警官が出動しておるのかと聞きましたら、またべらぼうな数が出動しているようでございまして、これは本当にいつかだれか言わなくてはいけない話であったし、たとえ少年だから年をとってくればだんだん減るよといっても、これはどのくらいみんなに迷惑をかけているかということを考えますれば、少年法をどうのこうのしろとは言わないにしても、相当厳しい態度で臨まなくちゃいかぬと私は思っております、これは立法的にも、取り締まり的にも。大臣、いかがでございますか。
  255. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 単なる交通違反とは異なっておるというような認識のもとに、今の先生の御意見等を参考にして、関係省庁と協議をさせていただきたい、こう思っております。
  256. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大臣からひとつ本格的に取り組んでみようというお答えを得ましたもので、その結果を待ちたいと思います。  まだ幾つもありますけれども、これはある同僚から一遍聞いてくれと言われた案件なんでございます。これは法務省、自治省の関係だと思います。最近、自治会がいろいろ不動産を取得したり、あるいは行政補助の活動、つまり市や町村のいわばパンフレットを配ったり、いろいろな行政補助の活動をしている。例えば不動産を取得すると、登記の上で、結局任意団体ですから、個人の代表者の名前で登記せざるを得ない。今度どんどんと代表者がかわっていきますと、前自治会長と後の自治会長の間ですったもんだが起こるというので、登記法上何か便法がないのか。要するに自治会というような形で登記できないのか。ちょっとその話は突っ込んでいけば、そういった中途半端な団体ですから、中途半端と言っては言い方が悪いけれども、そういうことをやり出したら線引きがなかなか難しいだろう。だけれども、法人あるいは組合に近いようなものとして自治会をとらえるのか、グレーゾーンがある。これを何か特に今の行政補助の活動をやっているとするならば、この実態は時間があれば自治省からもお聞きしたいのですけれども、ちょっと時間的にないかと思いますので、現状登記法上改善の余地があるかどうか、これは同僚議員からのいわば依頼というような話で持ち出しているわけでございますけれども、ちょっとお聞かせ願いたいなと思います。
  257. 千種秀夫

    ○千種政府委員 御指摘のように、この法務委員会におきましてかつてそういう御質問を受け、前民事局長お答えをしたこともあるわけでございますが、そのときに、何かいい方法はないか検討するようにというお話がございましたが、今、現状ではなかなかそれが難しいということをまたお答えしなければならないわけでございます。  というのは、結局は、そのことだけを見ますと、何か書いておけばわかりそうでございますが、これはそういうものを悪用するというような反面がございまして、結局登記というものは全部だれに対してもそういうことを公に証明する制度でございますから、必ず印鑑証明も理事の証明もみんなつけて権利の移転が行われるわけでございますが、そういうものをつくりましたときに、そういう名義で登記をいたしまして、さあ今度は権利を移転しようとしたとき、他の関係において権利関係がいろいろ起こったときに、その町会ですか自治会ですか、そういうものの証明をするところがないということになりますと、今度それをまたまねて、そういう名前で人のものを横領しようとするような者も出てまいりましょうし、税金が安いということになると個人がみんな資産を団体名義にするということも起こってまいりましょうし、制度をちょっとゆがめることによって生ずるいろいろな問題を検討しないと難しいわけでございます。そこで、もし必要があるとしますと、公益法人でなくても、そういう任意団体について法人化を認める法制を検討すればいいわけでございまして、実はそういうことの検討も進行中ではございます。
  258. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 自治省にお聞きしたいと思うのですけれども、今の自治会というのがどの程度そういう行政補助的な役割をしているのか、一言お聞きしたいと思います。
  259. 石川嘉延

    ○石川説明員 自治省におきましては自治会の活動の全貌を現状では把握しておるわけでございませんので、詳細申し上げかねるわけでございますが、今までに私どもが承知をしておる範囲では非常に活動範囲が多岐にわたっておりまして、集会所の維持管理、地域の清掃とか美化、募金、献血への協力、文化、スポーツ活動等がその主なものと承知をしております。また、市区町村の広報紙の配布等、市区町村との連絡とか市区町村に対する要望、陳情等、市区町村の行政とも密接な関係を持っておりまして、市区町村からも自治会に対して運営補助金とか事務委託料等を支出しているという事例も見られております。  以上でございます。
  260. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 千種さんからお答えがあったのは、たしかある程度そういうグレーゾーンについて法人あるいは組合というようなものがあり得るかどうかということについては今後検討してみるというぐあいに理解してよろしゅうございますね。
  261. 千種秀夫

    ○千種政府委員 おっしゃるとおりでございますが、要するにグレーゾーンといいましても、それを法人化できるものはなるたけしていくように、そういうことは検討中でございます。
  262. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、そういったことでこの問題は、ありがとうございました。  最後に、ちょっともとへ戻るようになりますけれども、さっきの暴走族の例にしましても、ストリッパーの事件にいたしましても、もちろん私どもは公正な裁判が行われることを期待しておるわけでございますけれども、反面、庶民感覚というものもある程度考えるべきじゃないか。かつて陪審制度が大正の末期くらいに論議されて、昭和の初めに導入されて十八年くらいにやめたということを聞いております。これは、私、日本人の場合には割合と感情的な人間が多いから、陪審制度がいいか悪いかと一概には言いづらい面がございますけれども、一応は一時期そういった制度があったかのごとく聞いておりますけれども、それをおやめになったのはどういうことなのか。また、逆にそういったことももう一遍検討する余地があるのかなという気がするのでございますけれども、この辺を法務当局、最後に大臣のお考えをいただきたいと思います。
  263. 岡村泰孝

    岡村政府委員 我が国におきましては、大正十二年の陪審法によりまして陪審が一時期行われたのでございますが、昭和十八年にこれが停止されて今日に至っているところであります。最近また陪審を採用してはどうかという意見も出ておるところでございます。  そこで、陪審の採用ということについてどういうような問題があるかということを考えてみますと、まず我が国におきましては、陪審制度が採用されましても、現実に陪審にかかる事件というものは年々減少してまいったわけでございまして、例えば昭和十六年には年間一件、昭和十七年には年間二件、それ以前も十件足らず、あるいはそれよりもう少し前は十数件、このような程度の数であったわけでございます。こういうような点から見まして、果たして我が国の国民感情から見まして陪審制度というものの採用を望んでいるのであろうかという点、ここに一つの問題があろうかと思います。  二つ目の問題といたしましては、陪審制度のもとでは一定期間陪審員を外部から遮断するということが必要でございますし、また犯罪報道等が陪審員に与える影響も排除しなければならないと思うのでありまして、こういったようなことが現実に行い得るであろうかというような問題もあろうかと思います。  また、現在の職業裁判官によります裁判制度あるいは三審制度になじんだ我が国の国民が職業裁判官でない、いわば素人の人の陪審裁判というものになじんでくるのであろうか、あるいは一審だけで終わりということになるのであろうか、なじむのであろうかというようないろいろな点が問題としてあるわけでございます。
  264. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今件数が非常に少なかったとおっしゃるのですけれども、それは本人のいわば希望によって陪審制をとる、とらないという話になるのですか。利用が非常に少なかったとおっしゃるが、こういった刑事案件は大体陪審にするんだとしておけば、そんなに少ないはずがないので、特に利用されないというのは、本人が希望したときだけそれを使うという話で利用が少なかったのか。ちょっと少ないという理由が、昔の話ですから、今急に聞いた話ですからあれですけれども、何か利用度が少ないというのが理由になっているようですけれども、こういった案件は陪審に付するんだとしておけばそんなに少ないこともないんじゃないかと思うが、それはどういうことでしょうか。
  265. 岡村泰孝

    岡村政府委員 陪審につきましては、長期三年を超える有期の懲役または禁錮に当たる事件で地方裁判所の管轄に属するものにつきましては被告人の請求があったときに陪審の評議に付するというのが日本の陪審法の規定でございまして、被告人の請求に基づいて陪審が行われるということになっておるわけでございます。  諸外国でもやはりこれは被告人の意思といいますか、そういったものを無視してまで陪審はやっていないのではなかろうか。例えばアメリカでは陪審の裁判を求める権利は認められておるわけでございますし、またアメリカでは一般的に陪審が行われておるわけでございますが、国情の違いと申しますか、そういったものが一つはあるのであろうと思います。
  266. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにせよ、本人がそれを請求するかしないかによってやるから、日本の場合は請求しなかったということですな。  陪審の問題につきましてはいろいろ利害得失もあり得ると思いますから、今ここで右から左へどうのこうのではないのですけれども、かつて一時導入されてそれは行われた。ほかの国でも行われている。ほかの国でやっているからいいかどうかという問題ではないので、私がさっき言ったように、日本もマスコミが発達してすぐに動揺するということもありますから、プラス・マイナスはあると思いますけれども、それなりにこういった暴走族の問題にしても、さっきの過剰防衛と思われる問題にしても、あるいはさっきの言論と人権の接点という面でもいろいろデリケートな問題が起こりますので、そういう陪審制度の一つの見方かなという気がしてきたので、これもちょっとプラスかマイナスか一応考えていただきたいなと思うのです。最後に大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  267. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 十分検討してみたいと思います。
  268. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 質問を終わります。
  269. 大塚雄司

    大塚委員長 安藤巖君。
  270. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、まず最初にいわゆるジャパゆきさんの問題についてお尋ねをしたいと思います。この問題につきましては、先ほど同僚委員の方から一部お話がありましたので、できるだけ重複しないようにお尋ねをしたいと思うのです。  日本へ東南アジアの方から入国をして資格外活動をしているという人たちの数が、先ほどのお話ですと、七千件に達するのではないかというお話がありました。これは十一月二十三日の新聞の報道ですが、十一月二十二日に法務省がまとめた入国管理法違反者の実態調査というのが報道されておるのです。この調査は、ことしの一月から八月までの入国管理法違反事件、これを分析したところ、摘発総件数が六千五十六件で、前年同期に比べまして二三・四%ふえた、そして、そのうち目立つのが、短期の観光ビザで入国した外国人が資格外の活動をしたり、不法に残留するケース、これの摘発件数は四千五百六十七件、前年同期比二六・四%増ということで、急増しているという状況になっておるわけですが、これは新聞報道ですから、念のためにそのとおりかどうかということと、そういう急増している原因はどういうところにあるというふうに見ておられるのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  271. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 たまたま手元にございます資料のベースになっております期間が先生指摘の統計の期間と多少異なりますので、正確には私の持っている数字がそのまま当てはまりませんけれども、先生指摘の数字は間違いないところと存じます。  そこで、こうした急増ぶりの背景でございますけれども、これは第一には、それぞれの国におきます、出身国におきます経済的な困難ということであろうかと思います。第二に、従来それらの国々が単純労働者を大量に送り出しておりました中近東諸国におきます経済状態が石油価格の低迷とともに後退いたしまして、その状況が改善されないために従来の職場が失われて本国に逆流しておるということがございます。逆流した人々が職を求めてあふれてきておるということであろうかと思います。第三は、最近の我が国におきます経済状況、すなわち円高のために我が国における稼働が本国の通貨との対比において極めて効率的になってきておるというような、その三つの理由が最近の大量の単純労働目的の不法稼働者の増大に結びついたものと存じます。
  272. 安藤巖

    ○安藤委員 今いろいろ急増の理由についてお答えをいただいたのですが、大臣は、こういうふうに観光ビザで入ってきて資格外活動、まあ就労というのが多いのですが、そういう人たちが、もともとこれは相当な数に上っておったのですが、特に急増しておるという状態についてどういうふうに考えておられるのですか。
  273. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 この問題については私も心配しておるわけでございまして、先般の閣議においてもこの話を実は率直に申し上げている。やはり働く場があれば来るようになるし、その働く人も、先ほど入管局長お話しのとおり、正当な賃金を取ってのことならば、これまた別の問題があろうと思います。正式に日本に来て働くという場合と、そういうふうにやみ的に入ってきて働いて、そして低賃金で、その低賃金も、いろいろ情報をとってみると、まともに自分の所得になるのではなく、どこかの組織や何かにある程度の金額がピンはねされてわずかの金が懐に入るというような状態は、将来の日本国としての信用にも関する問題でもある。そういうような点で、各省庁ともこういうような点があるので十分配慮してほしいというような一応要請をいたしておったわけでございますが、その後に突然このような騒ぎがどんどんマスコミ等からも取り上げられているというようなことで、何としてもこの対応だけはすっきりさせておくということが日本国の信用の問題にも関係してくるし、国内の労働の均衡ということにも大きく関係があろうか、こう思っております。
  274. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、先ほど入管局長の方から急増の背景についてお答えをいただいたのですが、そういう状況を踏まえて、今大臣もおっしゃったように、日本の国内でもそういう受け入れる問題についていろいろやっている人がおる。だから国内の関係でいえば、暴力団の、そういう就労あっせんをして資金源になるとかいうようなこともあると思うのです。これは日本の国内でもあるいはタイ、フィリピンなどが多いということなんですが、そちらの方でも常習的といいますか組織的といいますか、先ほどおっしゃったような背景を踏まえてそういうことが行われているということじゃないかと思うのですけれども、その辺のところはどういうふうに見ておられるのでしょうか。
  275. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 フィリピン、タイあるいはパキスタン、バングラデシュから男女の別はございますけれども急増しておる不法稼働者の背景として、それを組織する機関あるいは個人が介在しておるということは間違いないところでございます。むしろ最近におけるこうした事案の急増は、そうした背後にあるブローカー的な組織がネットワークをいよいよ充実させてきたということが有力な原因として存在するのではないかと存じます。すなわち、フィリピンならフィリピン国内におけるネットワークあるいは日本国内における就労先あっせんの経路の組織化、そういったことが進んでこういった事象がいよいよ目につく状況になってきているものと了解いたしております。
  276. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、就労あっせんあるいはそういう人たちと知りながら就労させたという場合は、日本の国内法に準じて処罰の対象になるわけですが、そうですね。
  277. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 不法に在留する外国人を雇用することそれ自体を正犯として処罰する規定はございません。しかしながら、入国管理法に基づく違反行為を教唆あるいは幇助するという観点から、共犯としてこれを処罰することは理論的には可能でございます。
  278. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほどもネットワークの話がありましたが、これも新聞の報道ですけれども、マニラの繁華街にフィリピン政府公認の海外就職あっせん会社の事務所が数軒ある、そして若者であふれているというような報道もあるのです。この会社がそうかどうかは知りませんけれども、こういう業者あるいは個人が常習的にそういうネットワークをつくっているのじゃないかと思うのです。  日本の国内では今おっしゃったようなことで取り締まることができるわけですが、外国の場合、今大臣も日本にとってもまことに不名誉なことだ、何とかせにゃいかぬというふうにおっしゃっておられるのですが、これは何か外交ルートを通じてでも、こういう状態なんだ、おたくの方からこんなにたくさんお見えになるのは結構だけれども、資格外活動をやっておられるのだ、これは何とか取り締まってほしいのだが何とかならぬのかと言うような対策を講じるということは考えられないのでしょうか。
  279. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 特にアキノ政権が成立いたしましてから旅券関係あるいは入国管理関係の政府の高官が日本へ参った機会もございまして、私どもも直接接触をしたことがございます。そういう機会に私どもの問題を説明して、フィリピン政府としての協力を求めたという経緯もございます。これに対して先方も前向きの回答をいたしておりましたけれども、フィリピンについてのみ申し上げれば、海外渡航は憲法に保障されたフィリピン国民の権利である、したがって旅券の発給をむやみに制限するわけにはいかないのだということを言っておりました。私どもも、その点はそうでしょう、しかしながらフィリピンの場合に困りますのは、一遍退去強制された者が他人の名前で容易に真正な旅券を入手してまたやってくるということがあるのです、したがって少なくとも他人の名義で容易に真正の旅券を入手することを抑えてもらいたいということを申し述べておいたわけでございます。  しかしながら、その後いろいろ状況を聞いてみますと、フィリピンには日本のような戸籍制度あるいは住民登録制度がないので、旅券の発給をその意味で厳格化することは大変難しいという技術的な事実があるようでございます。しかしながら、何とかしなくてはならぬという意識だけは持っていてくれるものと信じております。
  280. 安藤巖

    ○安藤委員 たまたまアキノ大統領が来日された機会を利用してというふうにおっしゃったのですが、それ以外にも外交ルートはあるわけですから、そういうようなことを、今おっしゃったようなフィリピン国内の事情があろうかと思うのですけれども、これはタイもありますし、そのほかの国も資格外活動をしておられる人たちが相当おるわけですから、フィリピンも含めて、フィリピン以外の国にも外交ルートを通じて引き続いてしっかり言ってほしいと思うのです。  そういうふうに観光ビザで入ってきて日本で資格外活動をしたので退去してもらいましたという名簿、リストをその当該の国の政府に対して送った、あるいは通告した、こういうようなことはございませんか。
  281. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私どもは、退去強制された外国人のリストは、在外公館には送付いたしております。これはいわゆる入国審査リストと言っております。しかしながら、相手国政府にこれを渡して何らかの措置を求めたことがあるかどうか、私は記憶いたしておりません。
  282. 安藤巖

    ○安藤委員 今のは通告以外に今思いついて質問させていただいたのですが、それも一遍調べておいてください。といいますのは、これは後でお尋ねする件と関連があるものですから。  そこで、一九七四年、昭和四十九年、日本人の統一協会の関係の人たちが観光ビザでアメリカへ入国して、そして滞在期間が切れたので伝道修習というようなことで資格変更申請をした、ところがもう資格外活動をやっておった、花売りをやっておった、募金活動をやっておった、伝道活動をやっておったということで、観光ビザで入国して資格外活動をやっておったということを理由にしてその資格変更申請が却下されて、そしてアメリカ国外への退去を求められた、強制されたということがあったのです。これは統一協会の関係者二百七十九名で相当大量に帰されたということなんですが、前に、昭和五十二年五月に私どもの正森議員が質問いたしましたときは、まだそのごく一部しか帰っていないという話でした。それで、その結果はどうなっておるのかということをお尋ねしたい。  それから、さらに二年後の一九七六年、昭和五十一年、統一協会関係者百七十名が、そのうち百六十五名が日本人で、やはり同じように観光ビザで入って資格外活動をやっておった、そして先ほど申し上げましたような資格変更の申請をして審査中という状況だったのですが、その後それはどのようになったのか、お答えをいただきたいと思います。
  283. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 お尋ねの件に関するその後のフォローアップを裏づける資料が手元にございません。と申しますのは、日本人の帰国に際しての手続は、これは許可にかかわるものでございませんので、入国管理法上、単に帰国を確認するという手続にとどまっております。したがって、外国から我が国に退去強制されて帰ってきた者と正常に帰国した日本人とを区別する手段が法的には全くないわけでございます。  そこで、そういう事例を私どもが承知いたしますのは、その人たちを送り返してきた航空機の関係者がこれを我が方に通報する場合、あるいは本人が帰国の際の確認手続においてその事実を申告する場合の二つのいずれかでないと、入国管理当局としては、本人が正常に帰国したのかあるいは退去強制されて帰国したのかということを確認する手だてがないわけでございます。そのために、先生指摘の点につきましても、その後何人がそういう措置の対象となって帰国したものであるかということを確認することができなかったのではないかと推測いたします。
  284. 安藤巖

    ○安藤委員 その当時の吉田入管局長は答弁で、先ほどの前者の方ですが、二百七十九名のうち九十三名がことしの四月二日までに帰国している、これは調査の結果そうなっているというふうに答弁しておみえになるものですから、やはり把握される方法があってちゃんと把握しておられるのではないかと思ってお尋ねしたのですが、これはちゃんと人数、端数まで入れて答弁してみえるのですよ。だから、今おっしゃったような事情はわかるのですけれども、何か確認する方法はないのかな、あるのじゃないのかなというふうに思っておるのです。その二百七十九名というのは、そのときの、これは外務省アジア局北東アジア課長の遠藤さんの答弁ですと、アメリカの方から二百七十九名のリストを受け取った、渡された、こういうふうに言ってみえておるのですが、そういうことは、結局アメリカの方から、これらの人たちが観光ビザでアメリカへ入国して今回資格外活動をしておったということで強制退去になりましたという通告を受けた、こういうことになるのですか。
  285. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 当時の事情に必ずしも詳しくない点があろうかと思いますが、私の了解するところでは、たまたま先方からそういう名簿の提出を受けたということで、名簿の提出、特に氏名と生年月日がありますと、これは記録がございますので、電算機にかけることによって、そのうちの何人がその後帰国し、出国しているということを確認することは可能でございます。そこで、たまたまそのケースにつきましては、そういうリストを入手した上で電算機にかけて何名が今までに帰国しておるということを確認したのではないかと存じます。したがって、たまたまそのリストが手に入ったということによってそういう捜査ができたのではないかと存じます。
  286. 安藤巖

    ○安藤委員 たまたまとおっしゃるのですが、そのリストが手に入ったということは、やはり強制退去をした人たちのリスト、これはアメリカの移民何とか局というのが握っておるわけなんですが、そこから日本の外務省に対して、あるいは在外公館を通じてだろうと思うのですけれども、手渡された、まあ行ってとってきたわけじゃないから手交されたのじゃないかと思うのが普通だと思うのですが、その点どう思われますか。
  287. 高野紀元

    ○高野説明員 お答え申し上げます。  今の御質問に関連いたしまして、私どもが、先生からの御質問があるということで最近時、米側の当局に対しましてこのような統計を有しているかという形で照会を行った経緯がございます。これによりますと、現在不法に残留したり違法な活動に従事している統一協会のメンバーがいることは承知している、しかし、メンバーを基礎とした統計はとっていないということで詳細は不明である、しかしその数は減少しているというふうに承知している、こういう回答がございました。
  288. 安藤巖

    ○安藤委員 今外務省の方から答弁をいただきましたように、統一協会関係者がそういう活動をしているということはアメリカの方でも把握しておられるようです。  そこで、私のところへもこの統一協会、これは原理運動ともいうのですが、自分の息子、娘がその会員になって、そしてアメリカへ観光ビザで行かされて、そこでいろいろ資格外活動をやらされて所在不明だ、早く帰してほしい、もう強制送還の対象になればよいと思っているというぐらいで、たくさんあるうち、ごく最近十名近くの相談があるのです。これをちょっと、もちろん全部ではありませんが、読んでみたいと思うのです。結局、観光ビザで行ってレストランあるいは魚屋さんなんかに働いているらしいのです。レストランの名前は「リトル東京」「将軍」「ハイランド・シーフード」「庭の花」、こういうことらしいのです。手紙をここに一応持ってきたのですが、名前と所在地は申し上げるわけにいかぬのです。というのは、なかなか怖い団体でして、そういうことを安藤巖議員に言うて、そこで国会でこういう話が出たなんてなったらもうえらいことになるものですから、現物はここにあるのですけれども、ごく一部それを読ませていただいて、きちっと対応していただきたいということでお願いするわけです。  これはAさんの手紙なんですが、   毎日忙しく活動しています。先日の日曜日(三月三十日)には、こちらではイースター……そんな日は必ずバラの花が売れるので近くの街まで花売りに行ってきました。一日で日本円にして、十万円ぐらいですね。もっとも自分のためだけではありませんから、なんのことはないわけです。 こう言っているわけです。同じAさんで、これはことしの三月の手紙ですが、   週のうち、三日は街に出ていって、伝道をしています。自分がそうされたように、いろんな人に会って、今ここでやっている活動を紹介して参加するようにすすめるわけです。それから、あとの三日は、行商人をやっています。英語もろくに話せないでと思うでしょうが、あまりそんな事には関係なく売れるものです。いろんな物を売っています。 これは写真もついておりまして、仲間の写真です。一緒に住んでいる人たちと写したのだと裏書きがありまして、本当はもっと多いと、こういうふうに集団的に寮みたいなところに泊り込んでやっているのです。  それからこれはBさんの手紙ですが、   毎日、僕は魚屋で働いています。具体的には、街には日本人がたくさんいるので、その日本人を対象に、まぐろ、ひらめのさし身とかを車で直接家までくばっています。これを英語でいうとホームデリバリーというのですが、今はそのようなことをしております。この魚の仕事は、もちろん教会に属しております。 これもやはり写真があって、ワシントンの「庭の花」で働いている、こうなっているのです。  それからこれはCさんの手紙ですが、   毎日、「ハイランド・シーフード」のお店を手伝っています。普段、行っている仕事はキッチンヘルパー。アメリカ風のサラダをつくります。……そしてスープを昼間温めます。……そしてハンバーガー、サンドイッチ、魚の揚げ、これも全て日本人がアメリカ人の為に作っています。 こういうことでやはり仲間と写した写真があるのです。  こういうふうに、まさに集団的に行っているわけですね。こういうようなことは明らかに資格外活動なのですね。こうなると、前の事例でも申し上げましたが、アメリカの法律に従えば強制退去の対象になる、これははっきりしておるのですが、その点はどうなのでしょうか。強制退去の対象になるかどうか。
  289. 高野紀元

    ○高野説明員 まず外務省といたしましては、先ほど申し上げましたように、米国内においていわゆる統一協会の活動について詳細を把握しているわけではございませんので、報道等を総合いたしまして申し上げたいと思います。  例えばニューヨークにおきましては、統一協会は以前は活動資金調達のために協会員が街頭で花売り等を行っていた模様でございますが、最近ではそのような行為は以前に比べて少なくなっている模様でございます。他方、レストラン、トラベルエージェント、自動車修理工場等の設立、経営という格好で資金調達を行うようになっているというふうにも言われております。  そういう中で、今の御質問に関連いたしますと、日本人協会員の中には、伝道師、永住者等として米国に合法的に滞在する者のほかに、いわゆる不法滞在の形で滞在している者もあるということもまた情報として承知しております。  米国内の法律との関係でこれがいかなる関係になるかという点でございますけれども、米国内法でございますので、その解釈について我々が云々するという立場にないということについては御理解いただきたいと思いますが、例えば留学生について申し上げれば、花売りや新聞売りをした場合においては、そのこと自体は違法とはならない。自己の学資や生活費を得るための就業は許可されるということを前提として、これは認められることになっております。他方、得た金員を協会に納めることを目的として稼働することは違法とされる、あるいはまた、もちろん無許可の労働とか観光ビザでの稼働は資格外活動になるというような事情になるというふうには承知しております。
  290. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、だからそれが強制退去の対象になるかどうか。これは私も勉強さしていただいたのですが、イミグレーション・アンド・ナショナリティー・アクト、出入国及び国籍法、これの全部は言いませんよ、全部は言いませんが、第五章二百四十一条aの九項なんかを見れば、そういう在留資格を犯した者は、あるいはその期間を経過した者は強制退去される、ちゃんとうたってあるわけですから、これははっきりしていることだと思うのです。  そこで、先ほど私どもの方へ親御さんの方からこういう依頼があって、何とかしてほしいということで、私どもの方も外務省の方にお願いをしまして、いろいろ具体的におる場所とか名前なんかは特定できるものですから、領事館あるいは大使館の人たちを通じて本人に会っていただいて、あるいは連絡をとっていただいて、そして話をしていただく、そして親元へ、日本へ帰ってもらったという事例も幾つかあるのです。こういう事例は恐らくこれからもまだたくさんありますので、だからそのときにはまた引き続き御面倒を見ていただきたいということをお願いをしておきたいと思うのです。  そこで問題は、先ほど申し上げましたように、はっきりこれはアメリカの出入国及び国籍法に違反した違法行為を、統一協会関係あるいは原理運動関係のそういう人たちが集団的、組織的にやっているわけなのですよ。何とかこれを食いとめる方法、阻止する方法あるいは今アメリカでそういう資格外活動をやっている人たちを早く日本へ帰らせる方法、何かこれ考えないとと思うのです。先ほど二つの集団的な退去強制をされた事例をお話を申し上げたのですが、またそういうことになる可能性が今非常に濃いと思うのですが、そのようには考えておられないのでしょうか。  これはどこに答えてもらおう。外務省じゃないの。
  291. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 米国の入管法は基本的には我が国の入管法と軌を一にいたしておりますので、当然資格外活動あるいは不法残留、恐らくは不法残留のケースが多いのじゃないかと思いますが、ということを理由にして随時退去強制の対象になるということは大いにあり得ることであると考えます。
  292. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、何とか事を考えないとということを今お尋ねしておるのですが、大臣、今いろいろお尋ねをして、具体的な事実も明らかにさせていただいたのですけれども、また集団的にリストを渡されて、これだけの人たちが、しかも統一協会関係の人たちが不法在留をしておる、だから退去強制をしましたというような通知を、あるいはリストを渡されるということは、これまたまことに不名誉なことだと思うのですね。だから、これは何とか考えなくちゃいかぬと思うのですが、まず、そういう状態に今あるという点について、先ほどは東南アジア関係の人たちが日本でそういうことをやっているという点について御見解をお伺いしたのですけれども、日本人が、しかも統一協会の関係の人たちが集団的にそういうようなことをやっているということについて、大臣、どういうふうに思ってみえますか。
  293. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 御指摘のような問題があるとするならば甚だ遺憾だ、しかし、これはアメリカの法律で規制すべき問題でもございますが、ただ、法務大臣として何らかと言われましても、所管が、これは先生御承知のとおり法務省所管ではございませんので、その点御理解を願っておきたい。大臣としては、遺憾である、こういうような気持ちでございます。
  294. 安藤巖

    ○安藤委員 所管外とおっしゃるから、これはようわからぬのですね。法務省所管の出入国管理局、ここは日本人の出入国について管理するところなんですよ。統一協会の人たち、日本人がそうやって観光ビザで資格外活動をする目的を持って出ていくわけですよ。そしてアメリカで退去強制をされるような不法在留をしているということになったら、これは所管外ということで横を向いているわけにはまいらぬのじゃないかと私は思うのですよ。だからお尋ねしておるのです。だから、遺憾なことというのは御答弁いただきましたが、何とか方法を一遍考えてくださいよ。どうですか。
  295. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 いずれこの問題は、私も頭に入れておいて、外務大臣と相談をしてみたい、こう思います。今ここで承知しましたということになると、次の委員会で、どうなったということが先生からありますから、いま少し検討させていただきたいと思います。
  296. 安藤巖

    ○安藤委員 しかるべく御検討いただきたいと思うのです。これはパスポートを渡さないというわけにもいかぬだろうし、ビザの関係はアメリカの方が出す問題だし、しかしやはり統一協会がやっているということははっきりしているのです。これは、日本の国内でも高いつぼを売ったり印鑑を売ったりとかいうことは、前に私もこの法務委員会でいろいろお尋ねをしたこともあるのですけれども、そういう不法行為もやっているのです。そして娘さんや息子さんを、それは本人の意思とはいいながら、やはり連れていって、親元へ三年も四年も帰さぬ、あるいは集団結婚もやるとか、こういうことをやっている団体なんですから、だから、例えば統一協会に対して、そういうようなことを組織的にやるというようなことはどうか、御遠慮願いたい、やめなさい、いずれでもいいですが、何かそういうことを言う、意思表示をする、こういうようなことはできぬものでしょうか。
  297. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 法務省が出入国管理行政の担当官庁として出入国の管理に当たっているということはそのとおりでございまして、入国管理法も、すべての人の出入国についての管理を行うと書いてございますから、当然日本人もそれに入るのでございますけれども、その管理の内容は、外国人と日本人の場合には大きな違いがございまして、日本人の場合には、有効な旅券を持って出国の確認を受けるということが入国管理法上の唯一の要件でございます。したがって、有効な旅券を所持して、そしてしかるべき渡航の手続を明らかにする限りにおきましては、これを差しとめることは入国管理局としての権限を越えるものでございます。  そこで、今先生のおっしゃったように、統一協会全体の活動に対して何らかの意見を述べることはできないかというお尋ねでございますが、それは恐らく、人権侵害といったようなことに結びつく面があるのであれば、その観点から人権擁護の責任にある部局から何らかの措置をとるということは考えられないことではないという気がいたします。ただ、所管の局長がおりませんので、その局長にかわって措置について具体的に申し上げることはできませんけれども、そういう観点が唯一の視点ではないかと、法務省の立場から申し上げますと考えられる次第でございます。
  298. 安藤巖

    ○安藤委員 せいぜい御努力をお願いしたいと思うのです。  最後に一点。その統一協会の教祖と言われ、本人も自任しておられると思うのですが、文鮮明は今アメリカへは入国できない状況にあることは間違いないんですね、有罪の判決を受けて入獄したわけですから。そして出国したのですが、まだ入国できないという状況にあることは間違いないのですが、文鮮明を日本に、もちろん入国申請があった場合の話ですが、入国させるかどうかという点についてはいかがなものでございましょうか。
  299. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私どもの承知しておるところによりますと、文鮮明は米国の所得税法違反ということで禁錮一年六ヵ月の刑を言い渡されまして、既に刑が確定し、服役をしておるということでございます。したがいまして、この点から、我が国の入国管理法五条に定める上陸拒否事由に該当するわけでございますので、我が国への入国は原則として認めることはできないということになるわけでございます。  ただ、もちろんその場合にも、法務大臣の上陸特別許可という手続はございます。しかしながら、法律の建前からいえば入国を認める余地はないということでございます。
  300. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
  301. 大塚雄司

    大塚委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十二分散会