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1986-12-09 第107回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月九日(火曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 大塚 雄司君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 熊川 次男君 理事 保岡 興治君    理事 稲葉 誠一君 理事 中村  巖君    理事 安倍 基雄君       逢沢 一郎君    赤城 宗徳君       井出 正一君    稲葉  修君       上村千一郎君    金子 一義君       木部 佳昭君    佐藤 一郎君       佐藤 敬夫君    塩崎  潤君       宮里 松正君    伊藤  茂君       小澤 克介君    坂上 富男君       山下洲夫君    山花 貞夫君       冬柴 鉄三君    吉井 光照君       滝沢 幸助君    安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 遠藤  要君  出席政府委員         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務省民事局長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省訟務局長 菊池 信男君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君  委員外出席者         警察庁長官官房         審議官     根本 好教君         警察庁長官官房         企画課長    金田 雅喬君         警察庁刑事局刑         事企画課長   国松 孝次君         警察庁刑事局捜         査第一課長   小杉 修二君         警察庁刑事局捜         査第二課長   古川 定昭君         警察庁刑事局鑑         識課長     石尾  登君         警察庁刑事局保         安部経済調査官 緒方 右武君         警察庁警備局外         事課長     笠井 聡夫君         総務庁行政管理         局管理官    太田 省三君         環境庁自然保護         局施設整備課長 井上 昌知君         大蔵大臣官房企         画官      杉井  孝君         大蔵省銀行局中         小金融課長   鏡味 徳房君         厚生省援護局庶         務課長     大西 孝夫君         農林水産省食品         流通局企画課長 茶谷  肇君         林野庁業務部業         務第二課長   石寺 隆義君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局人事局長  櫻井 文夫君         最高裁判所事務         総局経理局長  町田  顯君         最高裁判所事務         総局民事局長  上谷  清君         最高裁判所事務         総局刑事局長  吉丸  眞君         最高裁判所事務         総局家庭局長  猪瀬愼一郎君         法務委員会調査         室長      末永 秀夫君     ───────────── 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     金子 一義君   小澤 克介君     山下洲夫君   塚本 三郎君     滝沢 幸助君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     加藤 紘一君   山下洲夫君     小澤 克介君   滝沢 幸助君     塚本 三郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二七号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二八号)      ────◇─────
  2. 大塚雄司

    大塚委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長櫻井人事局長町田経理局長上谷民事局長吉丸刑事局長猪瀬家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 大塚雄司

    大塚委員長 内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。
  5. 坂上富男

    坂上委員 ただいま質問の御許可をいただきました坂上富男でございます。新潟県第三区から出てまいりました新米でございまして、社会党に所属をいたしております。  二時間にわたりまして二法案質問をさしていただきますが、初めてでございまするので、あるいはピントの外れた質問、あるいは非礼にわたることもあろうかと思いまするが、お許しを賜りたいと思います。また、本日質問に当たりまして関係皆様方から大変な御協力をいただきまして、本当にありがとうございました。  大塚委員長に少し申し上げたいのでございます。  お祝いを申し上げるとでも申しましょうか、この日曜日に私の宿舎に新聞が配られまして、その新聞を見ますと、大塚先生が六日に大パーティーをなさいまして、五千名近い人が立錐の余地もないほど盛会であったそうでございまして、大変おめでとうございます。私なんかせいぜい五十名か百名程度集めるのに精いっぱいでございますが、まさにけた違いで、大変敬意を表しておるわけであります。  この中で先生が、何か世間を騒がすような論文になるかもしれないというようなお話がありまして、どんなものであろうかと思って期待をしておりました。そういたしましたら、月曜日の新聞に「「中曽根民活地価上げた」月刊誌議員寄稿 自民内の批判、表面化」、まことに見事な内容の先生論文の御紹介がありまして、これがあした十日発売の中央公論に発表されるそうでありますが、大変期待をしているところでございます。  実は、先生にまさに同調をいたすのでありますが、十月二十九日に建設委員会がございまして、私は、建設省や国土庁がいかなる施策をもってして地価値上げを抑制をしても、狂乱の地価はそれを乗り越えるであろう。その原因はどこにあるか。私は、この国会の中にあるのじゃなかろうか。中曽根首相施策の中にあるのではなかろうか。特に四全総、秋出すべきものを来年の春に、しかもこの東京現実を踏まえて、この現実をそのとおり生かして、東京の票を今度自民党がみんな集めるのだから、こんなようなことがありまして、そのことが大きな原因になって、東京はやっぱりいいやということで人がたくさん集まってくる、そんなようなことが大きな原因なのじゃなかろうかということを国土と建設の両大臣に御質問を申し上げ、私の意見を申し上げたわけであります。大塚委員長、具体的にこういうことを書かれておるそうでありまして、全く賛成でございます。  この法務委員会というのは、社会正義の実現と人権擁護委員会だと私は思っておるわけであります。だものでありますから、よその委員会のように雑音だとか品位を害するなどというようなことなく、本当に紳士的に熱烈なる討論と真摯な議論結論が出されるのだろうと思っておるわけであります。そんなような意味で、党派を超えてひとつ委員長の手腕を期待をいたしておるわけでございます。ぜひ頑張っていただきますことをまず冒頭お願いを申し上げ、あわせて敬意を表しまして、一言何か御意見があったら承りながら、本題に入らしていただきたいと思っております。——よろしゅうございますか。ひとつ頑張ってください。  さて、法案関連をいたしまして、ひとつ裁判所の取り扱いに関連をいたしまして、せっかく大蔵省からお出かけをいただいておりまするので、そこからまず質問をさしていただきたいと思っておるわけでございますが、ちょっとその前に、例えば強制和議あるいは和議法による和議、これは大体民事局長、あれでしょうか、四分の三の債権額同意等が基本になって、その上に立って裁判所が認可するかどうか、あるいは会社更生法、これも八割あるいは九割近い賛同、あるいはまた会社整理、これもやはり最低七、八割ぐらいの債権額あるいは人数の賛同があって裁判所が許可するというふうに条文では書かれているわけでありますが、大筋だけの質問でございますが、前提としてお聞かせをいただきたいと思っています。——イエスかノーかで結構ですから。恐縮です、これは予告してなくて。
  6. 千種秀夫

    千種政府委員 私ども法律の建前だけしか存じません。実務のこと、必ずしも存じませんけれども先生の御指摘のとおりであろうと考えております。
  7. 坂上富男

    坂上委員 さて、そこでございますが、この間私、弁護士さんたちがたくさん集まった会合に出てまいりましたら、こういう意見が出てまいりました。和議を成立させれば大体三割ぐらい配当できるというのに、どうも銀行は、地方、都市、相互、信用金庫含めてでございますが、なかなか賛成してくれない。何で賛成してくれないのだろうかといろいろ聞いてみたら、大蔵者監査が大変うるさい、だものでありまするからなかなか賛成ができないのであります、こういうような話があって、こういうような和議案に対する賛成がなかなかないそうでございます。  三割配当があるのに、銀行の御賛同がないと、定数が、条件が成就しませんと破産ということになるわけであります。三割の配当が、破産になりますと五%程度に落ち込むと言われております。債権者がみんな、何とかしようじゃないかというようなことでお互いに譲り合って協力をして、せめて三割ぐらいもらおうじゃないかと言っておるのにかかわらず、金融機関であるところの今言った銀行等反対をいたしまして、和議の成立あるいは会社整理、そういうものが今なかなか困難を来しているというのが実情だそうです。大蔵省の方では実情御存じなくて、いろいろ銀行に対して和議賛成するようなことに反対をなさっているのじゃなかろうか、どのような指導をなさっているのだろうか、こんな意見弁護士仲間の中から出てまいっておるわけでありますが、どのような御指導をなさっておるか、お聞きをしたいと思っております。
  8. 鏡味徳房

    鏡味説明員 先生質問金融機関個別債権処理の問題でございますけれども、これは金融機関の自主的な判断に基づいて行われておりまして、個々ケースによってその態様は異なってございますが、ただ、大蔵者がこの問題について個別に指導をしているという事実はございません。
  9. 坂上富男

    坂上委員 具体的にその都度起きた問題について指導しているとかどうとかと言っているのではないのであります。後で、今度は監査のとき、検査のときと申しましょうか、そういうとき随分突っ込まれて、このことに対して一々弁解するのが嫌だから否認をするんだ、こういう声が多いそうでございます。だから、そのときのことを言っているのじゃない。後から監査検査のとき、皆さん方が大変強い意見をおっしゃるから銀行の諸君が怖がって、あらかじめ賛成できませんという対応になるんだそうでございます。  余り議論を加えたくないのでありまするから、そういうような方針でなかったら、ぜひそのように各銀行を御指導いただきたい。私たち弁護士が、大体一万一千人ぐらいが日常生活の中でそれを感じておるわけでありまして、三割配当を受けられるのが五%で終わるなんというのは、今倒産がばったばったと出ている中で、特に銀行やあるいは政府系金融機関がせっかくの和議をつぶすようなことがあってはならぬ、こう思っておるものでございまするから、そういう指導について、もしなかったならば、そういう声が法曹関係の中に強くあることをひとつ御認識をいただきまして、調査をしてくださいまして、そうしてそのことをひとつ御指導いただきたいと思っておるのでありますが、もう一度ひとつどうぞ。
  10. 鏡味徳房

    鏡味説明員 一般的に、金融機関預金者のお金を預かって、それを運用して貸し付けに回しているわけでございますので、その債権確保最善努力をするというのは、これは当然のことでございます。したがいまして、その債権処理につきまして、その自主的な判断でいろいろと行っていることは事実でございますけれども、その個々ケースについて、そういう個別の債権処理について大蔵省指導をするというようなことはございません。ただ、一般的にその債権確保最善努力をするというのは、金融機関として当然の行為であろうと考えております。
  11. 坂上富男

    坂上委員 私の質問をよく聞いてください。今、個々的に起きた現象について指導がどうなっているかと聞いているのじゃないのです。銀行が怖がっているのは、決算検査のとき、これはどうしたんだ、ああしたんだと言われるから、そのことが嫌で否認をするのです、賛成をしないのです、こう言っておりますと、こう言っているのです。そのことを聞いているのです。今の状態じゃなくして、決算検査調査のときそのことを言われる、こう言っているのです。その点、ひとつよく御理解をいただきたいと思っています。  この間、やはり国民金融公庫賛成できないと言って意見があったそうです。私のところへ仲間から連絡があって、どうか本部へ行って頼んでくれないか、こういう話だから本部お願いをいたしました。実情を話をしました。わかりました、賛成させますと言って賛成していただいたそうです。国民金融公庫、ありがとうございましたが、やはりそういうことがしょっちゅうあるんですね。私も体験したから言っているのです。おたくさんの方は市中銀行あるいは相互銀行等の監督かどうかわかりませんが、そういうことのないようにひとつお願いをしたい、これが論旨でございまするが、もう一度ひとつ。
  12. 鏡味徳房

    鏡味説明員 一般的に、今申し上げましたように、金融機関につきましては、その個別の債権処理の問題については、その他の金融機関等のバランスも考慮しながらその債権確保を図りつつ、その債権処理を迅速に行うということで個々に、ケース・バイ・ケース判断しながら行われているところでございますので、そういうことの中で債権者債務者との関係をよく考えながら、その全体の債権処理がスムーズに行われるように配慮が行われている、そのように考えております。
  13. 坂上富男

    坂上委員 余りこれ以上時間をとりたくないから、ひとつ私の意見をよく聞いて御検討してください。  それから、大蔵省がおられるからついでにお聞きをしたいのですが、例の抵当証券の問題。二ヵ月ぐらい前でございましたか、一般質問抵当証券法務委員会で随分議論されました。毎日のように抵当証券被害者新聞に載らない日がない。法務省大蔵省がこれについて御協議をなさっている、こういうお話でございますが、いつその効果があらわれるのか、その対策が発表されるのか、これに対する防止策というのはあるのかどうなのか。もしこのまま抵当証券被害が続くようだったら、抵当証券法そのもの改正しなければならぬ問題にまで到達しているのじゃないかと思っておりますが、大蔵省なり法務省、これに対する対策はまだお決まりにならぬのでありましょうか。
  14. 杉井孝

    杉井説明員 抵当証券の問題につきましては、現在行われております取引仕法が、抵当証券そのものを売買しているという形でなくてモーゲージ証書による、あるいは預かり証による売買という形をとっておりまして、それに関連いたしまして各種の問題を生じていることは重々承知しております。  私どもといたしましても、投資家保護を図る観点から検討が必要と考えておりまして、先生御案内だと思いますが、法務省と共同いたしまして抵当証券研究会を十月にスタートさせまして、先生指摘のような法制の整備も含めまして検討を依頼しておりまして、現在その研究会検討が進められているという状況にございます。
  15. 坂上富男

    坂上委員 もうちょっと見通しを聞きたいのです。研究ばかりしていたって、倒産で毎日のように被害者が出ているのだから。
  16. 杉井孝

    杉井説明員 十月にスタートした時点で、私どもとしても検討を急いで結論を急ぎたいということで、各先生方にはできるだけ検討を急いでいただくようお願いしているところでございます。
  17. 坂上富男

    坂上委員 これは、泥棒を捕まえて縄をなうというような何か格言があったんでございませんか。そんなようなことで被害者が続出しまして、皆さん方がおつくりになったときはもうそれを適用する対象物がなくなるようなことが起きるのでございませんかね。早急にひとつ被害者防止のために、あるいは被害者救済のために何らかの手を打っていただきたいと思っています。ぜひひとつお願いをいたしたいと思います。  さて、きょうは中心的に御質問申し上げたいのは、外国人登録法についてお聞きをいたしたいと思っております。大蔵省、結構です。  まず、これは法務省に聞くのでございましょうかね。一体この外国人登録法目的は何でございましょう。外国人の「管理」と書いてあるのですが、この「管理」という意味、どうですか、第一条の条文
  18. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、外国人登録法第一条は、外国人登録在留外国人の公正な管理に資するために行われるものであるということを明らかにいたしております。「管理」という言葉は、私ども承知するところによれば、物を管轄し処理する、あるいは取り仕切るというような意味であると承知いたしております。  この場合におきまして、外国人登録法の場合におきまして「管理」の意味するところは、外国人にかかわる諸行政を包括的に指すものであるというふうに理解いたしております。すなわち、外国人出入国在留その他福祉、教育、労働全般にわたる外国人にかかわる行政を包括的に意味する用語であるというふうに理解いたしております。
  19. 坂上富男

    坂上委員 日本人管理している法律は何でございますか。外国人管理はこれでわかったです。日本人管理している法律というのは何かありますか。
  20. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 私ども外国人出入国在留管理を所管をいたしております局でございますので、法律制度全般について御説明を申し上げる立場に必ずしもございませんけれども、「管理」という言葉がその他の法律に出てくるかどうかという点につきましては、遺憾ながら直ちにお答え申し上げることはできません。あるいはあるかと存じますけれども、一般的に直ちにお答え申し上げるような知識は持っておりません。
  21. 坂上富男

    坂上委員 私は、外国人登録法第一条の最後の「管理」というところ、外国人管理する、これに対応する、日本人管理するという法律条文でもあれば納得するのでございますが、どうも外国人日本人管理するなんというような、こういう条文のところに外国人登録法の大きな問題があるのじゃなかろうか、こう思っておるわけです。この「管理」というところからいろいろの問題が出てきているのじゃなかろうか、こう思っておるわけです。  さてそこで、この間の法務委員会小林さんの方からは、外国人登録法刑罰法規である、こういう御答弁があったわけであります。御存じのとおり刑罰法規というのは、刑罰を科することを目的とした法律刑罰法規というわけであります。例えば刑法暴力行為等処罰ニ関スル法律、そういうようなものを指すのだろうと思うのでございます。商法なんというのは、やはり罰則はありまするけれども刑罰法規と言いません。一体外国人登録法というのは外国人を処罰するための法律ですか。まずこれをお聞きをいたしたいと思います。
  22. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 私が当委員会におきまして御質問に答えて外国人登録法刑罰法規というふうに御説明申し上げましたのは、罰則を含む法律であるという意味で申し上げたのでございます。と申しますのは、そのときの御質問が、外国人登録法改正について警察庁協議をするのは何ゆえであるか、何ゆえ警察庁がこれにかかわりを持ってくるのであるかという御質問でございました。そこで、外国人登録法罰則を含む法律であるという意味刑罰法規であると申し上げたのであります。  すなわち、罰則の適用は刑事裁判手続による必要がございます。刑事裁判手続案件持ち込むためには、司法警察職員としての警察官の捜査が前提となるのが通例でございます。その意味におきまして、罰則を含む法律警察庁とのかかわりは極めて深いということを御説明するために申し上げたのであります。すなわち、刑罰法規というのは刑罰を科することを目的とする法規であると私ども理解しておるわけではございません。
  23. 坂上富男

    坂上委員 私は、外国人登録法に関する議会の質問、全部読んでみました。そこで、この間の小林政府委員の御答弁が大変なことを含んでいるのだ、このことの思想が今登録法改正の方向に走っているなと思うから、こういう質問をするのであります。  小林さんがこういう答弁をしているのです。「外国人登録法につきましては、これは刑罰法規でございます。」こう言っている。刑法と同じと言っているわけであります。「入国管理法と並んで出入国管理在留管理上の主要な柱となっております。」こう言っておるわけです。そして、入国管理法出入国に対する管理刑罰法規、この二つを持っている、それから外国人登録法は多分在留管理並びに刑罰法規、こういう御答弁のようでございます。  したがって私は、法務当局、殊に出入国管理立場に立っておられる政府皆様方は、ここに象徴されるように、外国人登録法というのは外国人管理刑罰目的とした法律なんだ、こういうふうな思想が今までの運用に出ており、また、これからの改正の中にもこの原則だけは曲げないでなされているのじゃなかろうか、こう思っておるわけです。  その前提に立って、私は、私の今申しましたことを事実をもって立証しながら御答弁をいただきたいと思っております。  これ、まず大臣、ひとつ見てください。大臣は一番のあれでございますから。また委員長に一枚。それから出入国管理の方に一枚。官房長もひとつごらんになりますか。まあうちの方の理事にもひとつ。先生どうですか。それから今度、ちょっとコピーが足りませんでしたが、これ、ひとつ。こちらの方です。どうぞ大臣ごらんになって。委員長、ひとつごらんになって。あと、コピーが足りませんで恐縮ですが、うちの理事も見てください。  これは実物大のこういう道具でございます。それからこれは警察庁の方からいただいた写真であります。約十センチの代物でございます。  さて、この現物を私は本日の質問のためにお持ちをいただきたいと——国政調査権に基づいて持ってきてくれとは言いませんでした。任意にお持ちをいただきたいということをお願いをいたしたわけであります。早々とお願いしていたわけであります。私の質問に立つ日にこのことを御質問申し上げたいから。特に警察側では、新聞等によりますと、こういう物件保護物件だからとこうおっしゃっているから、保護物件ならば大変結構なことでございますから、ぜひ実物に手を当てて、見て説明をいただいた方がいいと思っております。  しかし私は、以下に述べる理由によりまして、これは強制物件である、強制物である、まかり間違いますと拷問の道具になる、人権侵害の疑いのある道具である、こういうふうに理解をしております。我が党もこの理解の上に立って、私がこれから質問をするわけであります。でありまするから、できるだけ実物に即して、一目瞭然、大臣以下はめてもらって、これは人権侵害になるかならないか、まかり間違いますると憲法違反になるかならないか、重要な問題を含むと思うから、お持ちいただきたいとこう言ったわけであります。もちろん国政調査権に基づいての要求でありませんのでそれは勝手でございましょうけれども、冒頭申しましたとおり、法務委員会というものはまさに社会正義の実現と人権擁護委員会でございまして、いずれも御出席の皆様方が真摯な討論をなさる場所でありまして、いかなることがあっても人権侵害があってはならないというふうなことで、政党政派を問わず真剣に討論にご参加をいただいておるわけでございます。  そんなような意味におきまして、よその委員会のようにどなり散らして国対の問題になったり議院運営委員会の問題になったような先生方は一人もおりません。それだけに私たちの責務は極めて重大だと思い、かつ誇りに思っておるわけでございます。いかなる理由で任意にお持ちいただけないのか、ひとつお聞きをいたしたいと思います。
  24. 石尾登

    石尾説明員 お答えいたします。  都道府県警察が保管している資器材につきましては、短期間といえどもこれを第一線から引き上げることは、第一線の警察活動に支障が生ずるおそれがありますので、差し控えることといたしますので、御理解いただきたいと思います。
  25. 坂上富男

    坂上委員 これを議論してたら、国政調査権と刑事訴訟法、公益のために委員会が取り寄せすることができるという規定があるのであります。この中に物件を含むかどうかという問題でありますから、今これを議論したって始まりませんので議論しませんが、本当に警察が言うように保護物件であったならば堂々と人の前にお示しいただいたらいいと私は思うのでございます。そんなようなことがあるものでございまするから、私はこうやってわざわざ実物大につくって、本当は現物をつくって持ってくる予定だったのでありますが、間に合いませんというお話でございましたので、仕方がないのでこうやって、実物大でございます。  これをもとにしてお聞きをいたしますが、まずこれでございます。これは、私の聞くところによりますと、尼崎北署におきまして指紋採取のためにおつくりになり、使用なさったそうでございますが、事実でございましょうか。
  26. 石尾登

    石尾説明員 先生お話しのように、兵庫県の尼崎警察署で指紋を採取する際に、被疑者本人にけがを与えない配慮から使用したと聞いております。
  27. 坂上富男

    坂上委員 今度はこれでございますが、これは川崎臨港署で指紋採取の際に使用された物件だと聞いておりますが、間違いございませんでしょうか。
  28. 石尾登

    石尾説明員 先生指摘のとおり、神奈川県臨港警察署において、指紋採取の際に指を伸ばす補助具として使用したと聞いております。
  29. 坂上富男

    坂上委員 今お話を聞いておりますと、けがをさせないためにこれを使ったと、こう言っているんですよ。けがさせるようなことを警察でやっているんですか。お答えください。
  30. 石尾登

    石尾説明員 逮捕した被疑者の指紋の採取につきましては、刑事訴訟法二百十八条二項によりまして……
  31. 坂上富男

    坂上委員 そういうことを聞いているんじゃないの。そういうことは別途聞くから、時間がないから、結論だけ、けがさせるほどの捜査をやっているかどうか、それだけでいいです。
  32. 石尾登

    石尾説明員 有形力の行使につきましては、指紋採取という目的を達成するために必要最小限度の範囲内にとどめておりまして、私どもとしましては、けがを与えるというほどの有形力の行使については考えておりません。しかしながら、そのような場合でありましてもなお、被疑者が不意の抵抗による不測のけがを与えないという配慮のもとに器具を使用したものでございます。
  33. 坂上富男

    坂上委員 これもまた、一体強制的に指紋を採取できるかどうか、この議論をするとまた時間がかかりますので、別の日にさせてもらいます。きょう私は実は十数項目にわたりまして質問書を持ってきているので、これだって余り時間がとれないものでございますから、今政府委員がおっしゃいましたことは、刑事訴訟法の問題といたしまして十分な議論はいずれかの日に各論で論議さしてもらいます。さしあたり私は素朴な質問をしているのです。  このお話を聞きますと、それから神戸の新聞を見ますと、けがをさせないためにこれをつけさせるのだと、こう言っているから聞いているのです。そんな難しいことを聞いているのじゃない。ひょっとするとけがをするおそれのある指紋のとり方をしているからこれが必要になってくるのじゃないですか。どんなに抵抗しても暴れてもけがをしないためにこれをつける、これがこの物件の任務なのじゃないですか。もう一度お聞きをいたしましょうか。
  34. 石尾登

    石尾説明員 先ほどお答え申し上げましたように、指紋を採取するに際しまして、これを拒否し抵抗する被疑者に対しましては、必要最小限度の有形力を行使して慎重にこれを行っておるところでございますが、しかしながらその場合であっても、被疑者が不意に抵抗したり、そういう安全ということを考えますと、けがを与えないというためには安全な器具を添えるということで使用したものでございます。
  35. 坂上富男

    坂上委員 法律条文に、必ず指紋をとらなければならない、とらなければ職務違反になる、捜査上の違反になる、こういうことが書いてありますか。お答えください。
  36. 石尾登

    石尾説明員 そのような規定は承知しておりません。
  37. 坂上富男

    坂上委員 御存じのようでございます。これは無理してとるなと刑事訴訟法に書いてあるのです。どういうふうに書いてあるかといいますと、指紋を採取することができると書いてあるだけなんですね。せよとは書いてないわけです。皆さんのお話を聞いていますと、指紋を採取しなければ職務違反になる、法律違反になるという理解の上に立って、けがをしないようにとか、あるいは不測の事態に対応するためとか、こう言っているわけです。何で不測の事態が起きるのかおわかりですか。嫌だ嫌だと言って排除しようとして不測の事態が起きるのでしょう。不測の事態じゃないのです。最初から拒否している者を押さえつけてやるから、皆さん方にとっては不測の事態が起きるのです。いかがですか。
  38. 石尾登

    石尾説明員 指紋採取に当たりましては、事前に指紋採取が刑事訴訟法二百十八条二項に基づく処分である旨を十分説得をいたしまして、その上でなおこれを拒否する場合には直接強制で、間接強制をもって効果がないと認める場合には直接強制で、必要最小限度の措置をとっておるところでございます。
  39. 坂上富男

    坂上委員 大体いいところまで詰まったと理解をいたしますので、その分はやめますが、いかがですか。今言ったこれは兵庫県警でおつくりになったそうでございますが、これは幾つつくったのですか。幾つあるのでございますか。これはまあ疎一にでもしておきましょうかな。疎明の疎です。これは疎二と言わせていただきます。これは警察署独自におつくりになったのか、神奈川県警でおつくりになったのか。どれくらいおつくりになったのか。いつごろから使用なさっているのか。神戸のものもあわせてひとつ一括してお答えいただきたい。
  40. 石尾登

    石尾説明員 兵庫の器材につきましては、五十九年の末ごろに兵庫県警察鑑識課において指紋採取の際に被疑者にけがを与えないという配慮から作成した一つだけでございます。神奈川県の御指摘の器具につきましては、五十七年ごろ神奈川県鑑識課において市販の指伸ばし器を購入いたしまして各警察署に配付したと聞いております。
  41. 坂上富男

    坂上委員 これは警察庁で御指導なさっているのですか。それとも独自につくられたのですか。——ちょっと待ってください。余り行ったり来たりしてもお互いに時間がもったいのうございますから、固めてやります。  私は、実はこの現物をはめてみませんでした。疎一です。弁護士であり私らの仲間である小澤議員が尼崎北署に行ってはめさせていただいたそうです。これはこうなるのです。そこで大臣大臣も外登法に関係するからひとつぜひお願いしたいのですが、これはとめるのです。それから、これはブリキか何かの金属のもので上へとめるのです、三つ。だものですから、これははめると手が回らぬそうです。そういう代物なんだそうでございます。はめてみると大変な圧迫感だそうでございます。ここにかいてありますが、指が出るわけであります。こういうのだそうでございます。  それから今度は疎二でございますが、これはなかなかまた、簡単に言いますと、ここをこう挟んでこうしようというのだ。引っ張りますと、これは特に拷問の道具になると私は思っております。  さて、これはもう大変なことだろうと私は思うのです。今言ったように、この道具を使用する必要性があるのかないのか。それから全国の警察がこういうのを持っておられるのか。たまたま兵庫で一個、神奈川では全署に配付をしたというのか。今後どうされるつもりなのか。あわせまして、大事なことでありますが、私はこれは強制具あるいは拷問の道具として使われているのではなかろうか。憲法何条かわかりませんが、規定がありまするけれども、これに違反する道具でないかと、いささか法律を勉強した立場において感ずるわけでございますが、いかがでございますか。
  42. 石尾登

    石尾説明員 最初にお尋ねいただきました器材の関係でございますが、これは兵庫県警察が独自に考案をしたもので、先ほど申し上げたように、器具は一つでございます。神奈川県の器材も、先ほどお答え申し上げましたが、これはそれぞれ県費によって必要な器材として購入して配備したというふうに聞いております。  この器具を使用する必要があったのかどうかということでございますが、先ほど申し上げましたように、再三の説得にもかかわらず指紋の採取に徹底的に抵抗しておるという状態から見まして、やはり指紋を採取するに際して被疑者本人にけがを与えてはいけないということでございまして、あくまでも警察の責務を遂行する過程におきましても、なお被疑者に不測の傷害を与えてはいけないという配慮から器具を使用したものと聞いております。  この器具について今後どうするかということでお尋ねでございますが、本事案につきましてはあくまでも指紋採取を拒否する被疑者の自傷防止の目的から、必要最小限度の有形力の行使の手段として使用したものでございまして、今後も有形力の行使の態様につきましては、そのときどきの具体的状況に応じて慎重に判断してするように指導してまいりたいという所存でございます。
  43. 坂上富男

    坂上委員 全国的にはないのですか。
  44. 石尾登

    石尾説明員 この器具は全国的にすべての警察が所有しているものではございません。
  45. 坂上富男

    坂上委員 警察の方でこれは拷問の道具だとか強制具だということは言えないことはわかりますけれども、きょうの論戦をお聞きになってどうですか、法務大臣、やはりそういう疑いが濃厚でしょう。これはいずれかの司法機関で判断があるかもしれません、今何か民事裁判をなさっておるようでございますから。これはやはりこのとった指紋を外国人登録法の方に、登録証明書の方に利用しているのと違いますか。いかがですか。
  46. 石尾登

    石尾説明員 あくまでも犯罪捜査の必要上採取したものでございまして、外国人登録法関係はございません。
  47. 坂上富男

    坂上委員 念のために聞いておきます。外国人登録証明書には警察でとった指紋は決して使っておらない、間違いありませんか。もう一遍。
  48. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 警察庁の方から答弁されたとおりでありまして、間違いございません。
  49. 坂上富男

    坂上委員 これはまた後で問題が出たら私が申し上げさしていただきます。  さて、この間の法務委員会で、中曽根さんが韓国との共同声明の中で一回ぐらいというような大臣のお言葉だったのでありますが、韓国の大統領とお話をなさって、それを実行するために外国人登録法改正を、一つはこう言っておるわけであります。この間、中国に中曽根さんが行ったのでございますが、中国ではこういう話はあったのでしょうか、どうでしょうか。大臣、お聞きになっていませんか。
  50. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 総理が中国を訪問された際にこの問題が取り上げられたという話は伺っておりません。
  51. 坂上富男

    坂上委員 この話は、私はなぜこういう質問をしたかといいますと、日本に在留しておる中国人の方が、韓国の大統領と話し合った、そして一回の指紋だ、こういうようなお話があるのだが、うちの首脳の方は中曽根さんが行ってこれは話をしたのかどうか、先生、ひとつ委員会で聞いてくださいよ、こういう質問なんです。韓国とお話しになったならば、せっかく中国に行かれたのですから、あなた方に言ってもしようがないのですが、これはやはり中国の意向というのだってついでにお聞きになったらいかがかと私は実は思っておるわけでございます。これは私の意見でございます。  さてそこで、この間の御答弁によりますと、指紋は一回だけ登録法上の関係でするような改正の方向に行っている、こういうことであります。そうしますと、書きかえをするとき——今書きかえをする人たちが拒否をしているわけです。これをもし皆様方が言うように、外国人登録法がいわば政府の言うような形ででき上がったら、書きかえのための署名押印というのは、今度は犯罪にならぬわけでございます。法律で言うところの刑の廃止に当たるわけなんでございますが、刑の廃止に当たると思っているのですか、いかがですか。
  52. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 改正法が現在の作業の方向どおりに成立いたしまして施行された場合には、指紋は各人が最初の一回押捺すれば足りるということになりますので、二回目以降の指紋押捺ということは原則としてなくなるわけでございます。したがいまして、改正法施行以後におきましては二回目以降の指紋押捺拒否ということもなくなることになるわけでございます。  しかしながら、先生がおっしゃっておられますのは、現行法において二回目以降の指紋押捺をしない人々の取り扱いがどうなのかという御質問であろうかと思いますので、その点につきましては、これは現行法令に基づきます違法行為でございます。したがって、その違法行為を不問に付するということは改正法施行後におきましても適当ではないと考えておりますので、これに対処するためのしかるべき経過措置をとる予定でございます。
  53. 坂上富男

    坂上委員 そこなんですがね。刑罰法規かどうかということ、社会党の方からはこういう刑罰法規であることをやめさせなさい、刑罰でなんか臨みなさんなということを法務者の方に申し入れをしているわけです。外国人管理するとか刑罰を加えるなどということは、本来、外国人登録法というのは刑罰法規じゃないのだから、こういうことをしてはいけませんよと社会党は強く申し入れをしているわけであります。  しかし、御存じのとおり、今法務省が考えておられるように、今外国人皆様方が登録の書きかえの指紋を押さないから犯罪が成立しているんだ、これを野放しにするわけにいかないから経過措置で処罰できるようにしよう。一体刑法刑罰のための法律ではないということは、私は外国人登録法はそうだと思っているのです。小林さんがおっしゃるように刑罰法規だったら、あるいはそうでないかもしれません。  昔の話で恐縮ですが、政令二百一号事件のことについて御存じですか。占領政策違反なんです。マッカーサーの指令によって二百一号事件というのが全国各地に起きたんですよ。それで、講和条約で独立をしたものだから政令二百一号は廃止になった。刑の廃止に当たって免訴にするのか棄却にするのかということが裁判上議論になったわけであります。講和条約の際においてもずばっと刑の廃止をしたわけであります。  皆さん方お話を聞いていますと、刑の廃止にしないで経過措置をつくってこれまた罰しよう、こういうわけであります。一体こんな改正法を皆さん、何でやっているのですか。韓国の大統領と仲よくしましょうと言ってお話になった、韓国大統領は賛成したと大臣おっしゃった。違いますよ、外国人登録法というのは刑罰法規だから、やった者は必ず処罰しなければ承知、勘弁できませんよ、これが法務省のお考えですか、お聞きしたいと思います。
  54. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 先ほども答弁申し上げましたとおり、刑罰法規という言葉を使いましたのは罰則を含む法令という意味で用いたにすぎないということでございます。また刑罰法規という言葉があるといたしましても、それが刑罰を科することを目的とした法律であるという定義が存在するとは私は寡聞にして承知いたしておりません。したがって、その前提に立ちます御質問でございますので、まずその前提について私ども立場とはあるいは見解とは食い違いがあるということにならざるを得ないと存じます。
  55. 坂上富男

    坂上委員 今私は、政令二百一号ですら違反をした者について免訴しているんですから、それぐらいのことは、外国人登録法というのは刑罰目的じゃないのだからやったらいかがですかと、こう言っているのです。もちろん指紋をとることは最初も反対なんですよ、我が党は、私も。まさに皆様方が日本にいる外国人皆様方を敵視をしていると冒頭申し上げましたことは、このことも一つあるから私は言っているわけであります。あるときはこういう強制具を使う、あるときはもう刑の廃止に当たろうとするのに経過措置をつくってどうしても処罰しなければならぬ。  さて、今度は川崎の話でございますが、川崎臨港警察署、神奈川・川崎警察署、今一斉に呼び出しをかけていますね。私のところの報告だけで十六ぐらい毎日のように呼び出しがかかっているわけであります。しかもこの中には十八歳の学生、高校生四、五人に呼び出しがかけらえておるわけでございます。これは外登法が改正になる前に一斉に任意出頭をかけ、出頭しないからといって逮捕をし、処罰をする。改正になったら大変だというようなお考えがあってやっているんでございますか、ちょっとお聞きしたい。
  56. 笠井聡夫

    ○笠井説明員 指紋不押捺事犯につきましては、不押捺後相当の日時を経過し、それぞれ捜査が進行いたしまして、関係者から直接事情を聞かなきゃならない、こういう経過を経て現在、第一線の警察署におきまして捜査を進めておるところでございまして、一斉に呼び出しをして改正との絡みで捜査を急いでおる、こういう事情にはございませんので、ご理解を賜りたいと思います。
  57. 坂上富男

    坂上委員 これは全く私の推測です。尼崎市の市長というのは革新の市長ですか、何か川崎の市長とか、どうも革新の市長のところへこうやって集中的にやっているというようなうわさもあるのです。これはうわさですから、私の推測ですから、あるいは前提が間違っているかもしれませんけれども、どうもいろいろの観点から見てみましても、余り純粋に、違反があるんだから違反を取り調べるだけだと言う以上に、今もうあすあす外登法が改正になろうとしておるとき、その改正の成就まで、成立まで一斉に調べてしまわなければならぬなんていう理由は、運がよければ刑の廃止になって、その行為も処罰の対象にならないかもしらぬわけであります。その辺が、法の弾力的運用、こう言われるものだと思っているんですが、少し外登法に関するやり方がせっかちであり、時にはこのような道具を使ったり、時には一斉に呼び出しをかける。なかなか素直にこのことをまじめに受け取るわけにはいかないんじゃなかろうかと私たちは思っておるわけでございます。どうぞ、今外登法が問題になっておる事情というものをよく御理解をいただきまして、捜査の上におきましても慎重な対処をひとつ期待をいたしておるわけでございます。  さて、そろそろ外登法の問題は終わりにしたいと思っているんでありますが、最後に一言だけ申し上げておきたいと思います。  関西大学の教授で刑事訴訟法の先生で森井という教授の先生がおられるわけなんです。「刑事訴訟法の二一八条二項の規定は身柄を拘束されているという大きな法益が侵害されているので、ことさら指紋を採る際、令状を必要としないとした内容。道具を使うなど物理的侵害を与えることは、違法といえる。警察の話ではけがをしないようにという理由から道具を使ったらしいが、けがをするような採り方をするのがもともといけないのであって、指紋採取は説得によって行うのが当然。特に、今回の場合のような指紋拒否者に対してこのような行為をしたことは限度をこえている。」  そしてまた、新聞社の状況報告なんでありますが、「同署」、尼崎北だと思いますが、「の捜査員の中には、別の署で、指紋を拒否した逮捕者にこの道具を見せると、素直に押捺に応じたという話を聞いたことがあると話す人もあり、心理的圧力をかけるためには利用されたこともあるようだ。」と評論しておられるわけであります。でありまするから、今私が挙げました数々の問題点、ぜひ皆様方から御配慮をいただきたいと思っておるわけでございます。  そして、最後でございますが、数日前の新聞に「登録カード化 全外人に拡大 押なつ拒否は即逮捕 法務省が法改正へ」、こういう新聞が出ておるわけであります。私は、これは要綱が決まったんだろうと思いまして、法務省の方に、こういう新聞が出ているんだから改正案の骨子だけでも文書化したのがあったらいただきたい、こう言ったら、何か記者会見とか新聞社の方の質問があって答えたのである、こうおっしゃっているわけでありますが、今法務省外国人登録法をどのように固めつつあるのか、この新聞との関係においてもお話をいただきたいと思っておるわけであります。  特に、私の問題点は三つあります。今言ったように、登録カード全外人に拡大、捺印拒否即逮捕、それから市区町村長に義務づけられている押捺拒否者の告発実行のことについて、「告発義務を強化する手段を講ずる。」この三点についてどういう方向に御検討になっているのか、お聞きをしたいと思います。
  58. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 外向人登録法改正法案につきましては、なお事務当局におきまして関係省庁と協議しながら作業を進めておるところでございまして、具体的な法案の形で取りまとめに至っておりません。したがって、報道機関に対しましてもこれを公式に説明し、あるいは発表したという事実はございません。先生が御指摘の報道は、報道機関が独自の立場で取材し執筆したものと承知いたしております。したがいまして、その報道の内容につきましていまだコメント申し上げる立場にはないのでございます。
  59. 坂上富男

    坂上委員 どうですか。独自の立場で取材なさったと。間違いでもないんでしょう、この取材の記事の内容は。いかがですか。
  60. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 ただいま申し上げましたとおり、いまだ検討中あるいは協議中の問題でございまして結論を出しておりませんので、その報道内容が事実に即しているか否かということについてもお答えし得る立場にございません。
  61. 坂上富男

    坂上委員 最後です。最後というのは外登法の最後でございます。  これはどう読むんでしょうか、韓国人の金明植と書いてある方ですが、私、正式の読み方わかりませんが、この方は、六月に東京入国管理局に在留期間更新の許可申請が出されたんでありますが、押印を拒否したということで在留期間更新が却下された、不許可となったというような状況にあろうかと思っております。この人は入国後三年を経過したのみで、もともと留学生であるから我が国に生活の基礎があるものでなく、この人に日本人妻がおられるそうでありますが、ついては留学生として韓国在学中に本人と結婚し、その後も引き続き韓国で生活していた事情もある。こういうようないろいろな点から見てみても、この在留期間更新許可申請の不許可というのは、押印しないという理由でもって拒否するのはどうもおかしいのじゃなかろうか、こう考えられるのですが、いかがですか。
  62. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 御指摘の人物は、指紋押捺制度そのものに対する反対を表明する手段として指紋の押捺を意図的に拒否した者でございます。したがって、その押捺拒否という行為の内容を在留の状況の評価と結びつけて私ども判断したのでございまして、この観点から、単に事は指紋の問題ではないというお考えと承りますけれども、一国の制度に対する反対を表明する手段として法的な義務に違背する、これを遵守しないという行為は、そのこと自体極めて深刻に判断せざるを得ない事象であろうかと私どもは考えております。
  63. 坂上富男

    坂上委員 これもまた水かけ論になるおそれがありますから議論を進めませんが、現在の外登法によりますと、指紋を拒否すれば処罰の対象になる、拒否したからといって在留延長拒否の理由にならないと思っておるわけです。もう答弁は結構ですが、そういうような問題がいっぱいあるわけでございまして、この人は計画的に拒否をしているのだから許しがたいというのが小林さんの御答弁のようでございますが、これはこのまま法律どおりにいきますと退去せざるを得ないという状況でございます。どうも外国人登録法出入国管理法の運用に、今言いましたような問題点は、いろいろな矛盾と事実にそぐわない点が相当あるのじゃなかろうかと私は思っておるわけであります。  大臣、これからもいろいろと、外登法に対する改正問題をめぐり、また現行法の実施をめぐり議論がたくさん行われると思うのでありますが、今改正努力をなさっておる法務当局、それから現行法の実施をなさっておる法務省の長といたしまして、今の議論をお聞きをいただきまして、私の言っていることが無理なんだろうか、あるいは政府当局がなさっていることがいささかどうも問題があるのじゃなかろうか、どんなように御感想をお持ちでございますか。
  64. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 お答えいたします。  今までのいろいろな先生の御意見、また法務省答弁、第三者的なことを申し上げて大変恐縮でございますけれども先生の御意見法務省の考えというのが異なっている点は、やはり外国人に対するあれで第一条の「管理」という言葉から出てきたような感じがいたしますが、「管理」という言葉は、字句は果たして適当かどうかは別として、登録させておくということは、やはり日本の国、政府自体が外国人を保護していくということが中心であって、刑罰が主ではございません、こう率直に申し上げ、今後もそのような方向で進めさせていかなければならぬ、私はこう考えております。入国した限りは、やはり日本国政府がその人を保護する責務がある、こういうふうな感じでございます。  さらにまた指紋の問題については、今いろいろ議論もございますけれども、できるだけ簡素化したいということでございまして、先生のお尋ねからいくと、何か疑いのまなざしですべてやっていくような印象にとられますけれども、一回限りの指紋ということは、私自身の解釈としては、それは間違いなくその人の登録証だという確認をさせるためであって、例えばの話で失礼でございますけれども、自分の金を銀行に預金していても、自分が行って引き出そうとしてもやはり届け出の判がなければ銀行が出さぬというようなことと同じことに御理解を願って、それを変な方向に利用するとか何かという意図は法務省としては全然考えてない。そういうような点で、先生からもいろいろお話がございますけれども、できるだけ外国の方々にも不快な印象を与えないようにということで、逐次改善していきたいという方向で進めているということを御理解願いたいと思います。  以上でございます。
  65. 坂上富男

    坂上委員 外登法の問題はこの程度で打ち切らせていただきますが、大臣外国人が不快の念というだけじゃないのです。留置場の中にぶち込まれ、そういうような日本の生活をせざるを得ないという状況に追い込められているということもひとつ御理解をいただきまして、おっしゃるように刑罰目的法律じゃないのだ、外国人保護の法律なんだということを基本的な命題にいたしまして法改正というものが行われなければならぬ、私はこう思っておるわけでございます。私たちからも案が出ておるわけでありまするので、できるだけひとつ御採用いただきますことをお願いしたいと思っております。外登法関係の皆さん、御苦労さまでございました。  それからもう一つ大事なことでございますが、ちょっと私が連絡をしておかなかったかもわかりませんが、帝銀事件の平沢氏のことについてちょっとお聞きをしたいのでございますが、もし関係者がおられましたら残っておっていただきたいのでございます。  いろいろ平沢氏のことに対する法務委員会等の議論をずっとこれまた調べさせていただきました。再審の申し立てが十九回ぐらい、恩赦の申し立てが五回ぐらい、いずれも同時になさっていた。現在の状況からいいますと、再審は却下になったまま今出されておらない、今かかっているのは恩赦だけだ、こういう話でありますが、こういう状態に立ったのは平沢氏は今が初めてなんじゃなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。法務当局、おわかりでございましょうか。
  66. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 正確なことは申し上げかねるのでございますが、再審の申し立てもなく、また恩赦の出願もなかった時期が、非常に短い期間ではございますが、あったように記憶いたしておるわけでございます。
  67. 坂上富男

    坂上委員 前に若干そういうとぎれたときにあったそうでありますが、あとはもうほとんど、恩赦だけを出して再審が出されていないという状態は今初めての状態でなかろうかと思っておるわけであります。  そこでお聞きをするわけでありますが、これも皆様方からお調べをいただきましたら、日本における死刑執行の最高年齢は七十一歳。七十一歳以上の方に死刑の執行をしたことがないそうでございます。今平沢氏は九十四歳でございましょうか五歳でございましょうか、相当な老齢でございます。さてこれを外国の例に当てはめてみますと、八十歳以上ぐらいで死刑の執行をした例があるかどうか、国立図書館から法務省からあらゆるところを調べてもらったのでありますが、そういう事実は見当たらない。では、死刑の宣告を受けて死刑執行のために留置されたまま刑務所の中におる期間が三十年以上の世界の例を探してみたけれども、これもまたないそうでございます。  いろいろ平沢氏救出のために社会党の先生を初め、自民党の先生方も御努力をなさっておるようでございます。社会党、どういう因縁だか平沢氏のために一生懸命やりますとこの次は落選というような歴史もあるようでございまして、私もそうなりそうな運命にもなるかもしれませんが、事はやはり命にかかわる問題でございますから、今、平沢氏にとりましては、法律上の地位において初めての状況に立ったわけであります。恩赦だけが継続をして、再審をしないという状態にある。そういう状況にあることは間違いないのでありまするが、しかもこれは、法務大臣の権限は、法務大臣が平沢氏に判を押すかどうか、これしかないようでございますが、もちろん温厚篤実な大臣はそのことは見送られておるのだろうと思います。私は、さらにそれを一歩進んでいただきまして、中央更生審査会というのが恩赦をやるのだそうでございますが、今言ったような状況にありまするし、御存じのとおり八王子の医療刑務所のところで、万一のことがあっては大変だということでそちらに今おるのだそうでございますが、年齢のこと、老衰のこと、そして長期間にわたっていること、一番大事な、もう再審を今の段階でやっておらないという状況、こういうような状況を踏まえられまして、ひとつ大臣、この際少し前進のお考えを法務当局でも事務上御検討賜りたい、これは要請でこざいますが、いたしたいと思うのでございますが、ひとつ感想などお聞きをいたしたいと思っております。
  68. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 温厚篤実な法務大臣としては、法務省内といろいろこれから先生お話も頭に入れて十分検討してみたい、こう思っております。
  69. 坂上富男

    坂上委員 この委員会でこれだけの御答弁をいただくこと、大変ありがたいと思います。なぜ私はこの問題を取り上げるかといいますと、私が学生時代にこの事件が起きました。そしてこの当時こういううわさを私は耳にしたのであります。平沢氏が捕まった、けれどもこれは犯人でないかもしらない、したがって刑務所の中にそのまま死刑を執行しないで置くんだろうという話はもう町じゅうあったものです。私の年代の方は、まあ幾らもいないようでございますが、うわさでお聞きになったこともあるだろうと思います。私は司法修習生になりましたのが二十五年、このとき高木一検事が捜査検事だったのであります。平沢の捜査のお話を聞きました。間違いない、こうおっしゃいました、検察の立場ですから。それで私は別の教官に、こういううわさがあるのだが、どうも死刑の執行はしないで、刑務所の中で寿命が尽きるのをお待ちになるというような話があるんだが、いかがでございましょうか、さすが教官は、そんなこと坂上君ありませんよ、こうおっしゃる。だけれども、私はもう三十年ぐらいこのことが頭を去らないわけでございます。  偶然私は国政参加の栄誉を与えていただきまして、殊に法務を担当させていただきまして、しかもあらゆる観点から私は議事録等を勉強させていただきまして、今こういう状態にあるわけでございますので、どうぞ遠藤大臣、これはぜひひとつ遠藤大臣の時代において何らかの前進をお願いしたいと思っておるわけでございます。  私だけが質問して、大変恐縮でございますが、今度狭山事件に関連をいたしまして検察当局にお聞きをしたいと思っております。  狭山事件の石川一雄君が再審の申し立てをしておりまして、証拠提出命令申し立て書が昭和六十一年十一月十二日に出されているわけでございます。そこで、ルミノール反応検査をしたところが二ヵ所あった。一つは殺人現場、それから一つは殺人現場から何百メートルか離れておる芋穴と言われる場所、この二つにルミノール反応検査が行われたと聞いておるわけであります。そこで、昭和六十年二月二十二日の衆議院の法務委員会におきまして横山議員が質問したのに対しまして、当時の刑事局長は、殺人現場のルミノール反応検査報告書の存在は認めると言っておるわけであります。そしてまた、芋穴のルミノール反応の検査もなされたとしておるわけであります。これらについて実体的な真実発見のために場合によっては提出してもいいというような御答弁がこの法務委員会の中にあるわけであります。  その後私が調査をし、本日の質問のために準備をしてみたら、検察当局は、法務委員会答弁は少し正確を欠くようだというようなお話があるわけであります。しかし私は幾ら読んでみましても、法務委員会答弁は正確を欠くということはないと思います。万一正確を欠いて、殺人現場のルミノール反応検査をしたことがないとするならば、少なくとも国会において答弁なさったのでございまするから、その裏づけといたしまして、証拠の標目を記載した書面、例えば警察から検察庁に送致いたします、あるいは追加として証拠資料を送致されます、それをひとつ提出していただきまして、果たして一体、ルミノール反応検査をしたのは芋穴だけであって、殺人現場はしたことがないとまだおっしゃるのか。しかも芋穴のルミノール反応検査もまだ提出命令がなされておらないわけでございます。  時間がありませんのであわせて御質問いたしたいと思いますが、どうぞ責任ある御答弁を賜りたいと思います。
  70. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 御指摘のとおり、昭和六十年二月二十二日のこの法務委員会で筧前刑事局長がルミノール反応検査報告書があるという趣旨の御答弁をされたところでございますが、このルミノール反応検査報告書が殺害の現場というわけではございませんで、殺害の現場あるいは死体の隠匿現場という広い意味の犯行現場についてのルミノール反応検査報告書がある、こういう趣旨で述べられたものであるというふうに聞いておるのでございます。したがいまして、殺害現場についてルミノール反応検査報告書があるかということになりますと、この点につきましてはいろいろ調査いたしましたが、見当たらないわけでございます。  また、送致書類の目録を提出、開示できないかということでございますが、御承知のように捜査というものはいろいろな関係人の協力を得て行うわけでございまして、そういった関係人の方々のいろいろな意味の保護も必要でございますし、また将来の捜査に対しまして国民が協力をしていただくということも必要でございまして、そういう点からいたしましてこの送致書類の目録につきましては公にすることができないというふうに思っておるところでございます。
  71. 坂上富男

    坂上委員 目録の中にいろいろ参考人の名前が書いてあって、今後の捜査の協力関係上もこれは見せられないというお話のようでございますが、事は、私が犯人でないと言って獄中から必死の叫びをしておる石川君でございます。でございまするから、専門家の弁護士、検察当局お話し合いの上で、そういうのは紙を張って見せないようにしながら見せる方法は幾らでもあると私は思うのでございます。もっと工夫というものがあっていいのではなかろうかと私は思っておるわけであります。  検察といたしましても、もちろん無辜の人を処罰することはなさらぬわけでございまするので、どうか本当に必死の雄たけびをお聞きをいただきまして、一つ一つこの証拠を見せてくれないか、これが私の無実のあかしであると言っておるわけでございまするから、単に人の名誉、人の協力というだけで解決できる問題ではないと思っておるわけでございますが、いかがでございますか。もう少し工夫はございませんか。
  72. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 先ほど申し上げましたとおり、送致書類の目録につきましては公にいたしかねるというのが検察の考えでございます。
  73. 坂上富男

    坂上委員 芋穴のものはいつ出す子定です。
  74. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 昭和六十一年十一月十二日付の証拠の提出命令の申し立てには、この芋穴の関係のルミノール反応検査報告書は記載されていないように私思っておるわけでございます。開示の申し出がございますれば、その段階で検察庁におきまして検討いたすものと思っております。
  75. 坂上富男

    坂上委員 殺人現場、死体遺棄現場、検察の方は二つの区分をなさっておるようでございますが、死体遺棄現場が芋穴の場所、それのルミノール反応はある、検査はあるというふうに理解をし、手続がなされておらないからそれについては今言及をしない、こういうふうに聞いていいわけですか。どうぞ手続なされましたら、しかるべく御協力をいただきますことをお願いをいたしたいと思います。  私の質問が大変下手で時間ばかり食って恐縮でございますが、別の問題でございます。  これは警察庁にお聞きをしたいのでありますが、その前にひとつ法務当局に聞きたいのでありますが、人の命について最高裁判所はどう言っているかおわかりですか。人の命の評価、判例で。
  76. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 突然の御質問でございますし、非常に抽象的な御質問でございますので、何と申し上げるか私も困っておるわけでございますが、地球より重いという言い方もあるわけでございます。
  77. 坂上富男

    坂上委員 最高裁判所は、今一つおっしゃいましたとおり、人の命の評価について地球よりも重いと言っているわけであります。しかも、人の命は尊貴である、こう言っている。尊貴というのは、とうとい、とうといというのです。そのとうとい命がことしの九月でしたか、十月でしたか、新潟県の清津峡という風光明媚なところが国立公園になっております、国立公園の道路を歩いておりましたら、山のてっぺんから枯れ木が落ちてまいりました。御夫婦が枯れ木に当たって五十メーターくらいの谷に転落をいたしまして、お二人が死亡なさいました。警察庁当局、この捜査の状況、ちょっと皆さんの関係もあるものですから、私だけ一人でわかって質問したって、皆さん退屈だと悪いから、ひとつお聞きいたしたい。
  78. 小杉修二

    ○小杉説明員 お答えをいたします。  御質問の事故は、今ちょっと日時はなんですが、十一月三日でございます。十一月三日の午前十一時半ごろ、今おっしゃられるような清津峡というところで事故が発生をしたわけであります。上方二十メートルくらいのところと推定されるわけでありますが、枯木が落ちてまいりまして、被害者の御夫婦が直撃されまして二十五メートルほど下の岩場に転落をして、お二人ともお気の毒に死亡なさった、こういう事故でございます。  警察といたしましては、当然事故の通報を受けまして、所轄十日町警察署でありますが、死体の見分、あるいは目撃者がございますので、事故発生時の状況等を事情聴取するほか、現地に関するこれまでのいろいろな管理の状況、内容等についても調査をいたし、現在まだ刑事責任というものが那辺にあるのかどうか、あるのかないのか、そういうことについて捜査、調査をしておるところであるというふうに報告を受けておるところであります。
  79. 坂上富男

    坂上委員 今警察庁の方がおっしゃいました事案でございますが、私の地元の新聞で「枯れ木 紅葉狩りの列直撃 沢に飛ばされ夫婦即死 清津峡」「紅葉狩り夫婦 転落死 新潟の清津峡 突風、倒れたブナ直撃 遊歩道から三十メートル谷底へ」、こんなことがずっと新聞に書いてあるわけであります。  これは国立公国でございますので環境庁の管轄でございますが、この御夫婦には全く過失はありません。新潟県がつくったのか中里村がつくったのか、遊歩道をもみじ狩りで歩いていたわけであります。上から枯れ木が落ちてきたわけであります。まず私は、第一義的に環境庁が責任があろうかと思いまして、環境庁から私のところにお出かけをいただきまして、御夫婦が亡くなられたことに対して民事責任があると思うが、いかがでございますかということを言っておるわけでございます。突然のお話でございますから、上ずっておっしゃったかもしれません。枯れ木が落ちてきたので林野庁でございますというお話です。よろしい、林野庁来てくれというわけで林野庁から来てもらいました。そうしたら林野庁さんが、たしかこうおっしゃったんじゃないか。それは先生、突風でございますから天然災害でございます。こういうようなお話でございまして、そうでございますか、それでは自治省から来てもらいまして、中里村と新潟県は、これについての責任はいかがかと。また自治省の方も、先生、そういう関係では自治省としては指導監督することはできないのです、国立公園については環境庁が管理をしておるものだから、環境庁の指導監督が新潟県や中里村になされているのでありまして、自治省としては直接的な指導権限は国立公園についてはありません、こんなような話であります。なるほどなと思ったわけであります。  さてそこで、私は林野庁も環境庁も中里村も新潟県も連帯して責任がある、きちっとこの弁償をしてくれないかと要請をしたわけです。いずれも返事がありません。返事がありませんものでございますから、法務委員会では質問しますよ、この事件、私も頼まれているから、私がやるか他の弁護士がやるかわかりませんが、四庁を相手にして損害賠償の裁判を起こす。もしこの裁判で私らの方が勝ったら、だれがこの責任をとるか。林野庁、環境庁、行政の継続性という意味から、大臣なんというのはいいところ一年か一年半だから、これはよろしい。事務次官がとられるのか、どなたがとられるのか。負けた場合、責任の所在だけ明らかにしてくれ、これを法務委員会答弁してくれ、こう言ったわけであります。  ひとつお聞きをいたしますが、環境庁、これについて環境庁の責任はございませんか。林野庁、これについて責任ございませんか、まず御答弁いただきましょう。
  80. 井上昌知

    ○井上説明員 先生質問の自然遊歩道につきましては、新潟県が設置をいたしまして管理をしているものでございます。  本件につきましては、何びとも予測できない自然現象によるもので、設置管理に当たる新潟県にも瑕疵はなかったと環境庁では考えております。したがって、国が補助金を出しておりますけれども、国としても責任はないものというふうに考えておるのが、現在の環境庁の考えでございます。
  81. 石寺隆義

    ○石寺説明員 お答えいたします。  先ほど先生からお話がございましたように、今回、この事故の原因につきましては、突風によって倒された立ち木が衝突して生じた、したがいまして、お話がありましたように、これは全く不可抗力であると判断しております。  なお、その問題の風倒木でございますが、これは後で調べた結果では、半分腐っておったということがわかったのですけれども、半生木である、枯れ木ではございません。外見上は全く普通の木と変わらない。したがいまして、まさかかかる事故が発生するとは予測できなかったということでございまして、林野庁といたしましては、林野庁の管理に瑕疵があったとは考えておりません。
  82. 坂上富男

    坂上委員 こういう態度だ。  さてそこで、議論してもしようがないから議論しません。責任の所在だけ私は聞いておきますが、まずこれについてどうお考えなのですか。東京高等裁判所、昭和五十六年九月三十日の判例だ。道路上で立ち話中、隣の神社境内のイチョウの大木の大枝が折からの台風並みの強風により折断、落下して頭部に当たった事案だ。これは生木ですよ。普通であれば折れるものではない。突風で生木が折れた、これはもういかなることをしても不可抗力だ、こういう判例なんだ。  これは枯れ木なんです。林野庁、とんとんとやってみれば、ああ、これは風が吹けば落ちるな、折れるなということぐらいわかるわけであります。  環境庁だってそうだ。これは突風で天然の災害だからというのが環境庁のあれですが、環境庁はこの道路の費用負担をしたのでしょう。費用負担者として国家賠償法の対象にあること、御存じでしょう。  そうだといたしますと、林野庁、この判例についてどうお考えです。環境庁は道路の費用負担者としての責任があろうと思うのですが、これはどうお考えなんです、御答弁
  83. 井上昌知

    ○井上説明員 設置管理者である県に、国が補助金を出した場合の費用負担者としての責任につきましては、いろいろの考え方があろうかと思いますけれども、本件につきましては先ほども申し上げましたとおり、新潟県そのものに瑕疵がない、こういうふうに考えておりますので、補助金を出した場合の国の立場議論以前に、国には責任はないと考えております。
  84. 石寺隆義

    ○石寺説明員 林野庁の国有林の立木の管理につきましては、巡視等の通常業務の範囲内でこれは行っているものでございますが、先ほど申し上げましたとおり、この木はかなり急傾斜のがけっ縁に立っておったということもありまして、外見上は全く普通の木と変わらないということで、全くこういう被害が起こるとは予測し得なかったということでございます。
  85. 坂上富男

    坂上委員 これもまた議論してもつまりませんので、法廷でひとつ議論をやってみましょう。  さてそこで、万一皆さんの方で裁判で敗れたら、どういう責任をとるのですか。私は前からこうやって皆さんにお聞きし、わざわざこの委員会質問しているわけです。私がやるか別の弁護士さんがやるかわかりませんが、負けたらだれが責任をとるのか、はっきりしてください。
  86. 井上昌知

    ○井上説明員 本件につきましては、先ほども申し上げましたとおりですが、新潟県そのものに瑕疵、過失がないと考えておりますので、本件事故が個々の公務員の責任に関する問題ではないと考えておりまして、仮に裁判となりまして判決が確定いたしましたら、国としてその判決に従うことになる、かように考えております。
  87. 坂上富男

    坂上委員 ひとつ大臣、お聞きのとおりでございまして、ここの家族、どうなったかおわかりですか。娘さんが一人です。もう一人で生活できないから親戚に身を寄せているんです。そして、おわびに行ったのが中里村だけ、あと、こうやって天然災害だの何だのかんだのと言ってその責任を免れようとしているわけです。先生方、ここにいるのはみんな弁護士だ。私の方が話を聞いて、こんなのはみんな常識ですね、国家賠償法の対象になり義務があるというのは。  新潟県に責任がないまで環境庁、言う必要はない。自分のことも管理もできないで、失礼な話だけれども、あらゆる判例を調べたって責任があるんです。私は証明をします。証明するうちに私がここへ出てこれなくなるかもしれませんが、だれかかわりが出てくるでしょう。  大臣、本当に、この法務委員会というのはまさに正義の実現と人権の擁護なんです。皆様方が、責任がない天然災害だとかなんとか言ったって、これはもう理由にならぬことは私にはよくわかっておるから、声を大にして言っておるのです。  仮にないといたしましても、冒頭申し上げましたように、御両親を一度に失ったところのこの一人のお嬢さん、娘さん、余りにもかわいそう過ぎる。しかも、国会の答弁がこういう答弁。皆さん怒りを感ずるでありましょうよ。これに関連する判例なんかいっぱいあるわけで、こんなのは天然災害じゃありません。  大臣、こういうような法の施行の方法に、私はやはり問題があると思っております。これはまさに御感想で結構でございますが、ひとつもう少し法務省を中心にしてこれに対する、裁判までする必要はないと思うのです、何らかの形で出てこないか、ひとつこの御感想なりあるいはその方向が、何らかの形の道が開けてくるならばお待ちをいたしますがね。お聞かせいただきたいと思います。
  88. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 このような事件、全くお気の毒なことで、何と申し上げたらいいか、その言葉すら承知をいたしておりません。  しかし、今先生がいろいろお取り上げになった問題についての賠償問題等については、私としても今ここで突然お聞きをしたのみでございますが、事故で亡くなられたことを考え、また後に残った家族、お嬢さんが一人だというような点を考えると、私も先生と同じような心境で、何らか方法がないのかなというような点を感じております。しかし、今ここで、こういうふうな方法でこうしたいということまでは頭に浮かんでまいりませんが、いずれ自分なりに考えてみたいと思います。
  89. 坂上富男

    坂上委員 最後でございますので、今度法務局の増員に関する要請書に関連をいたしまして、総務庁の方からもお見えのようでございますし、もう時間がございませんので急ぎます。  この要請書によりますと、こう書いてあるわけです。「地方公共団体・公社・公団の職員、司法書士、土地家屋調査士など年間約七〇万人以上の部外の人に半ば強制的な応援を受けて、何とか業務を処理しているという変則的な状態に落ち入っています。」これは私たち法務局に行ってみまして、本当にこれらの人、病気にならぬかと思って心配をするくらいの重労働でございます。これをやむを得ず手助けをしなければならないということで、まさに半ば強制的な応援をしてもらわなければ法務局の業務、特に登記業務が進行しないという状況にあるわけであります。  さて、そこで総務庁、法務省の定員はこれだけといって、あとはおまえら適当にやれ、いろいろ調べてみるとどうもそういうやり方でございます。こういう実態を御存じなのでございましょうか、お聞きをしたいと思います。
  90. 太田省三

    太田説明員 先生指摘の点でございますが、御案内のように現在行政改革を政府は鋭意推進しているところでございまして、まずいわゆる共通役務業務につきましては、民間委託などの推進をお願いしているところでございます。その結果、各省庁につきましては、例えば電話交換業務であるとか庁舎の清掃等の役務業務につきまして、民間委託をやっていただいておるということは承知しております。  それから、今先生指摘法務省の地方法務局の登記事務につきまして、一部部外者の応援を受けておられるという事実については総務庁の方でも承知いたしております。ただ、先生お話しのように、ほかの省庁についてもそういういわゆる部外者の応援が行われておるということは、総務庁としては聞いておりません。
  91. 坂上富男

    坂上委員 もう時間がありませんが、総務庁というのは本当に定員がこれだけ、あとおまえら、しかるべくやれ、それでみんなこうやって困っているわけです。これは掃除は除いて公務の執行だ。法務省、例えばコピーを焼いてもらう。これ、執行妨害したら公務執行妨害になるの。それとも業務妨害になるの。何ですか。
  92. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 公務執行妨害に関しましては最高裁判所の判例がございまして、公務執行妨害におきます暴行、脅迫は必ずしも直接に公務員自身に対して加えられることを要しないものでございまして、公務員の指揮に従い、その手足となり、その公務員の職務の執行に密接不可分の関係において関与する補助者に対してなされた場合にも公務執行妨害罪が成立するということでございます。この判例の趣旨に合致するような状況のもとにおいて公務員でない者に暴行、脅迫が加えられ、公務の執行が妨害された場合には公務執行妨害罪が成立する、こういうことになるものと思っております。
  93. 坂上富男

    坂上委員 法務者では登記に関する人員の不足、特に公権力行使を基本とする、掃除とかそういうのは別といたしまして、ずばり言ってどれぐらいの人数が足りないという御理解をしておられますか。  それからもう一つ、刑務所も本当に大変でございます。これは団結権がないものだから、要求がどこへ出ているのかわかりませんけれども、この間私は青森、盛岡へ行って、私は新潟だから新潟も時々見るのでありますが、なかなか大変だ。皆さん方の意思でない、じゃんすかじゃんすか送ってくるものだから、もうこれで勘弁してくれと言う権利は刑務所はないのですね。手が足りなくて大変お困りのようです。この二つだけでいいですが、どの程度の不足なのでございますか。
  94. 千種秀夫

    千種政府委員 法務局についてお答え申し上げますが、まず、法務局の職場について御理解をいただきましてまことにありがとうございます。私ども代々どのぐらい人が欲しいかということで、ここでも前局長も申しておりますが、私ども立場でも三千人ぐらいは欲しいということを申しております。
  95. 坂上富男

    坂上委員 刑務官を含めてですか。
  96. 千種秀夫

    千種政府委員 法務局だけでございます。
  97. 坂上富男

    坂上委員 刑務の方はどうですか。わかりませんか、大体でいいですから。
  98. 根來泰周

    根來政府委員 刑務所関係につきましては、現実に人員が幾ら不足かという点については十分研究いたしておりませんが、さしあたり六十二年度予算におきまして、刑務所について百二十三人を要求しております。
  99. 坂上富男

    坂上委員 時間がありませんので打ち切らざるを得ないのでありますが、定員はこれだけである、あとはよろしくやれというやり方で、もう本当に下はこういうしわ寄せが行っているわけであります。私は法務省に癒着があるとは申しませんけれども、まかり間違いまして、刑法上公務執行の保護があったといたしましても、仕事の上でいわば私人からの応援を、例えば司法書士さんから、例えば土地家屋調査士さんから応援をいただくなんというのは、今度は裁判所の方は弁護士の方が応援を出さなければならなくなる。国会の方は一体だれが応援を出したらいいのかね。そんなようなことが次から次へと私は起きてくると思うのです。ですから、どうぞひとつ総務庁の方といいますか、本当に大変な実態を見ていただいて、ましてやこれから国鉄の登記が出てきたらこれは収拾ならぬだろうと私は思っておるわけです。そのしわ寄せがどこへ来るかといいますとやはり国民に来るわけであります。そうしてまた、法務の職員の皆様方が職業病になったりあるいは休職をしなければならぬという状態が相当の数でございます。  これはお聞きをしたいのでありますが時間がないからやめますけれども、そんなような状況にあることをひとつ御理解いただいて、ましてや、冒頭申し上げましたような私たち法務委員会でございます。法務、刑務、まさに正義の実現をする、人権の擁護をするという大事な場所でございまするから、まさに与野党一致をいたしましてこういう点に対する職務の遂行をしたいと思っておるわけであります。ひとつ期待をいたしまして、きょうは三分の一しか質問できませんでしたが、大変ありがとうございました。終わらせていただきます。
  100. 大塚雄司

    大塚委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  101. 大塚雄司

    大塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉井光照君。
  102. 吉井光照

    ○吉井委員 私は、裁判官報酬等改正案、また検察官俸給等改正案につきましては後ほどお伺いをすることといたしまして、まず最初に、警察庁にグリコ・森永事件に関してお尋ねをしたいと思います。  まず、昭和五十九年の三月十八日にグリコの社長拉致に端を発しましたこのグリコ・森永事件は、既に三年近くを経過しようとしているわけですが、この間犯人との接触は昨年の八月十二日のいわゆる二十五回目の挑戦状以来切れている、このように言われておるわけですが、現在までの捜査の状況、また現在どういった点に重点を置いての捜査が行われておるのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  103. 小杉修二

    ○小杉説明員 お答えをいたします。  捜査が事件発生以来二年九ヵ月近くになっておりますことは議員御案内のとおりでありまして、現在捜査といたしましては、近畿の四府県を中心にいたしまして、全国の警察が当面の重要課題として捜査を継続中でございます。現在捜査中でございますので、内容については詳しくは答弁を差し控えさせていただきますけれども、例えば似顔絵の捜査だとかあるいはタイプライターの特定であるとかあるいは遺留通信機等、その他遺留品の捜査であるとか、そういうことで鋭意捜査を継続中でございます。
  104. 吉井光照

    ○吉井委員 この件につきましては、山田長官も非常な執念を持って当たっていらっしゃるわけですが、この三年間に、今御答弁いただきましたように、大阪、兵庫県警を中心にして、警察当局は人員とかそれから経費の面で相当膨大なものを投入して犯人逮捕に努力をしていらっしゃるわけですが、現在なお犯人逮捕とまでには至っていない。犯人逮捕のために投入されたこうした人員や経費は相当なものと考えられるわけですが、こうしたいわゆる予算とかまた人員について十分なのかどうか、警察当局としては現状で乗り切れると考えていらっしゃるのか、まさかその捜査体制を縮小するということはないと思うのですけれども、ここらあたりはどうでしょう。
  105. 小杉修二

    ○小杉説明員 最初に申し上げさしていただきますれば、今の議員の御質問については、私どもの捜査の体制等について大変御心配、御激励をいただいているものであるというふうに受けとめさしていただき、ありがたいことだと思っております。  その捜査の人員とか経費とかというお尋ねでございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、全国の警察組織を挙げて広域にわたって捜査を行っているところでありまして、その活動の実態と申しますと、他の一般事件の捜査との区別というものが判然としないわけであります。したがいまして、お尋ねの点につきましては数量的には把握をいたしかねるというふうに申し上げさせていただきますが、発生当初から鋭意捜査を続けておるところでございまして、御心配いただいておりますように捜査体制の縮小とか、目下のところそういうことはございません。
  106. 吉井光照

    ○吉井議員 そこで、このグリコ・森永事件は、ただ単に関係業界の経済的損害を生んだだけではなくして、国民の食生活にとっても最も基本となるところの食品に対して国民の大きな不安を生んだわけです。さらに、見逃すことができないのは、食品関係企業に対する類似の恐喝事件の続発、ついに去る七月にはロッテが恐喝に屈して三千万円を支払った、こういう事件まで明るみに出ているわけです。このようなグリコ・森永事件のいわゆる模倣犯罪は事件発生以来急増しておる、このように言われているわけですが、この現状はどのようになっておるのか、また、それらのうち犯人が逮捕されたのは何件で何人なのか、また、このような事件の犯人逮捕が非常に困難であると言われておりますけれども、どうした点にこの困難性があるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  107. 小杉修二

    ○小杉説明員 まず第一点のお尋ねであります類似事件の件数等でございますが、ことしは、昨日現在で二百十四件発生をいたしております。そのうち百十五件、百十四人を検挙しておりまして、検挙率を数字ではじき出しますと五三・七%という数字になっております。今お話ございましたように、この種事件は、本年七月に例の大手食品会社の裏取引が発覚されたということで非常にふえてまいりまして、七月、八月、九月と激増いたしました。ところが、十月以降ここのところ減少の傾向が見えてまいりまして、十一月一ヵ月をとってみますと、ピーク時の三分の一に発生が減っておるところでございます。  それで、二点目のお尋ねの、この困難性の理由でございます。これはいろいろの見方があるかと思うのでございますけれども、例えばグリコ・森永事件について申しますと、犯人が要求をして指示をした現場にあらわれないということ、あるいは先ほど遺留品捜査について申し上げましたが、いずれにしても、大量生産、大量販売の品物でありますからいわゆるブツからの追及というものが大変困難になっているということ、あるいは先ほどおっしゃられたように昨年八月十二日の最後の挑戦状以降犯人グループに動きがない、こういうような状態からいろいろこの捜査が難航している理由として挙げることができるのじゃないかと考えておるわけであります。また、この類似模倣事件については、まあ内容は詳しくは申し上げられませんけれども、発生事件の中には単なるいたずらと思われる事件もかなり含まれておりまして、本気で企業を恐喝しようとした事件についてはその大半を検挙しているという状況でございます。
  108. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで警察庁は、このロッテの裏取引発覚後に全国銀行協会に対して、ルーズなキャッシュカードの交付が悪用されないように、カードの安全基準の徹底を申し入れて、また農水省に対しては、犯人の要求に応じることなく捜査に協力するよう食品業界への行政指導の徹底を要請をされているわけですが、農水省がどのような食品業界に対する行政指導を行い、またそれに対する回答はどうであったのか。それから警察庁は、銀行や食品業界が申し入れの趣旨に沿った対応を十分行っていると考えていらっしゃるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  109. 小杉修二

    ○小杉説明員 お答えをいたします。  御案内のように、この種事件は大変社会的反響の大きい重要事件でございますので、何にしても犯人を検挙するということが一番封圧、防止につながるわけでありまして、そのためには、被害を受けた企業が犯人の要求に応じたりすることなく速やかに警察に通報して協力をしてもらいたいということで、八月十九日に食品関係行政を管轄する農水省に対しまして、業界を指導願うように要請を行ったところでございます。  例えば、その後業界から私どもの方に要請がございまして、いろいろ話をしてくれぬかということがございました。それで、私自身が出かけてまいりまして、大阪で一回、東京で二回、三回ほど業界のそれぞれの幹部に対して、この種事件の現状と企業の対応策ということについて講演をいたしたりしておりまして、私どもとしては反応があったんだなというふうに考えているところでございます。  それから金融機関に対しましては、全国銀行協会連合会等に対しまして、今御質問にありましたように銀行口座の開設またはCDカードの交付に当たっては本人確認を徹底してくれ、判こや通帳だけじゃいけませんぞということを徹底してもらいたい、それから店頭における防犯カメラとかテレビの工夫、改善をして下さい、こういうふうに申し入れをいたしてまいったわけでありますが、この末端の支店窓口等に徹底するにはなかなか時間がかかるのはある程度やむを得ないことかと思うのでありますが、徐々に徹底をし協力をいただいているという現状でございます。
  110. 茶谷肇

    ○茶谷説明員 お答えを申し上げます。  一昨年三月に発生をいたしましたグリコ・森永事件に端を発しました食品企業に対する恐喝事件につきましては、その後も類似の事件が後を絶たない状況にございます。この種の企業恐喝事件は、食品流通秩序に大きな影響を及ぼすおそれがあり、警察に置かれましてもその検挙につきまして格別の御尽力をいただいているところでございますが、犯人の早期検挙のためには、警察の捜査に対しまして被害者立場から企業が協力することも重要であると考えております。  そこで、警察庁から今ほどもお話ございましたように、八月の十九日に捜査の協力の要請がございましたので、農林水産省といたしましても、食品流通秩序に対しまして、この種の事件の影響の重要性にかんがみまして、直ちにその趣旨を関係業界に徹底をし協力を求めたところでございます。  今ほど先生の御質問でどういう業界であるかというお話でございますが、食品関係業界というのは非常に種々ございます。重複いたすのもございますけれども、それをできるだけ、重複してもすべてに行き渡るようにという趣旨から、財団法人の食品産業センターを初めといたしまして、百貨店協会でありますとか日本チェーンストア協会、日本セルフ・サービス協会、そのほかスーパーマーケットの業界などにお願いをいたしております。
  111. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、さきのロッテ事件は、総会屋事件などに見られるように、企業経営に伴う小さなトラブルやミスをいわば捨て金で乗り切ろうとする経営者の風潮の延長線上にあるとの見方もあるわけで、このような風潮にも乗って、今後企業犯罪は要人誘拐であるとか製品脅迫、またコンピューター犯罪が主体になっていくもの、このように考えられるわけですが、グリコ・森永事件やその後の類似事件は既にこうした性格を持つものであると思うのですが、このような新型の企業犯罪に対して、警察の捜査技術の向上やまた防止対策の充実がないと捨て金の傾向をとめられない、このように思うわけです。  そこで、まず製品脅迫についてでありますが、この点についてはどのような対策が講じられているのか。また、去る十一月中旬には食品犯罪についての議員立法によるところの法案の今国会への再提出があったやに聞いております。食品犯罪の法規制は早急にすべきではないか、このように思うわけですが、この点については農水省からお考えをお伺いしたいと思います。
  112. 茶谷肇

    ○茶谷説明員 お答えいたします。  食品企業恐喝事件は、食品流通秩序に大きな影響を及ぼすおそれがございます。流通秩序維持のためには、立法措置を含めまして諸対策が進められますことは意義のあることと考えております。
  113. 吉井光照

    ○吉井委員 ロッテ事件の背景には、今申し上げましたいわゆる捨て金の風潮のほかにも、グリコ・森永事件でグリコ、森永がこうむった莫大な経済的損害のおそれも多分にあったと思うのですが、さらに、グリコ・森永事件の捜査が長引いて犯人逮捕に至らないという警察に対する一つの不安感、また不信感というものがなかったのかどうか。また、それが企業といえども犯罪に遭ったら警察に届け出をして協力するという我が国の常識を崩し始めているとするならば、これは大きい問題ではないかと思います。社会の安全にとって大変危険な兆候とも言われるわけですが、かねてから公安警備警察に比較して刑事警察の弱体化ということが指摘をされてきているわけですが、この際、刑事警察の強化策が必要になっているのではないか、このようにも思うわけですが、いかがでしょう。
  114. 国松孝次

    ○国松説明員 近年、大変激動する社会情勢を反映いたしまして、各種の新型犯罪が発生するなど、犯罪の質的な変化が見られるところでございまして、刑事警察としても新たな対応を迫られているところでございます。御案内のように、私ども刑事警察はそういう新しい情勢に的確に対処して国民の期待にこたえるという使命を帯びておるわけでございますが、その一助といたしまして、警察庁では本年十月に「刑事警察充実強化対策要綱」というものを制定をいたしまして、押しなべて刑事全般の捜査力の向上をしなければならないという問題意識のもとに第一線とともに捜査力の充実強化に努めておるところでございます。
  115. 吉井光照

    ○吉井委員 去る十一月二十五日に発生をしました東京有楽町の三億円強奪事件は、国民の警察に対する信頼を回復するという意味でも早期解決というものが強く望まれている事件であるわけですが、これも残念なことに今もって解決に至ってないわけです。グリコ・森永事件でも犯人に関するところの情報というものを早期に公開をして国民の協力を求める警察の姿勢というものが指摘をされておりましたけれども、この事件では白昼の事件で目撃者も多いところから犯人像も明確と思われるし、また遺留品も数多く残っている、こういうことでございます。であるならば、こういった目撃者の記憶がまだ鮮明なうちに関連の情報を早く公開して国民の協力を求めて解決に努めるという姿勢が必要ではないか、このようにも思うわけですが、いかがですか。
  116. 小杉修二

    ○小杉説明員 お答えをいたします。  御指摘の事件は、先月の二十五日に発生をいたしまして、きょう三週間目に入ったところでございまして、捜査本部を設置して八十余名の体制で所要の捜査を進めておりますが、目下のところではまだ基礎捜査という段階でございまして、それぞれの地取り捜査、あるいは遺留車両が発見されました西銀座の駐車場における車の出入りとか、駐車車両に対する捜査であるとか、あるいは犯行に使用した車両の盗難状況に対するいろいろの捜査、こういうことで基礎捜査として滑りのないように幅広く捜査を進めているところでございます。  御指摘のように、できるだけ公開をして国民の協力を求めるべきではないかという御質問でありますが、一般論としてはまことに当然のことでございますけれども、やはり捜査の常道といたしましていろいろ検討もしなければならない。何でも公開をすればいいというものではございませんので、捜査機関として責任を持って捜査を進めていく過程で、必要かつ有効と認められる状況があれば公開をすることにやぶさかでない。むしろ国民の皆さんの御協力を得ていかなければならぬというふうに考えているわけでございまして、そういう意味ではいろいろの資料について検討中というところでございます。
  117. 吉井光照

    ○吉井委員 それにしてもロッテ事件の再発を防ぐためにも、またグリコ・森永類似の企業恐喝事件の増加防止のためにも、またさらに国民の警察への信頼の回復と捜査への協力を得るためにも、最も必要なことはやはりグリコ・森永事件の犯人を一日も早く逮捕することではないかと思うわけでございます。  数ヵ月前も地行委員会にいますときにいろいろこの問題につきまして私も質問をしたわけですけれども、非常に目の前が明るくなったような答弁もいただいたこともありますし、また新聞報道等によっても峠を越したのではないか、こうしたことがいろいろ取りざたをされたわけでございますが、非常に難しい質問とも思いますけれども、犯人逮捕の見通しはどうなんでしょう。
  118. 小杉修二

    ○小杉説明員 御指摘のように大変難しい御質問でございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、近畿の四府県を中心に全国の警察が当面の重要課題として取り組んでおるのでありますが、正直のところ、現在、捜査は難航しております。しかしながら、警察としてはこれまでの捜査状況を再検討しながら、さらに捜査の重点を絞りながら検挙、解決を目指して捜査の進展を図っていく所存でございます。
  119. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、コンピューター犯罪についてちょっとお尋ねをしておきたいのです。  カード犯罪ですけれども、最近首都圏や北陸、九州などで連続発生をしました盗難クレジットカードの不正使用事件の背後に、カードを広域的に売りさばく大がかりな地下シンジケートがあることが警察当局の十一月四日までの捜査で明らかになった、このように言われているわけですが、それによりますと、盗んだカードの売り値は最高一枚が八十万円もする、このように言われておりますし、中には横流しルートによって複数の暴力団まで介在しているようですけれども、その被害総額は少なくとも五億円を超える、このように見られているわけです。さらに数百枚のカードがやみ市場に出回っておる可能性が非常に強い、こうした新聞報道もあるわけですが、このような犯行の全容はどの程度まで解明されているのですか。
  120. 古川定昭

    ○古川説明員 お答え申し上げます。  お尋ねのことにつきましては新聞報道で承知しておりますが、いわゆるクレジットカード使用によります詐欺事件については現在警視庁、千葉、富山、大阪、福岡の各都道府県警察におきまして捜査中でございます。  これまでに判明しました検挙件数と被害額でありますが、警視庁におきましては二十件、約二百八十三万円、千葉県におきましては九十一件、約七百三十八万円、富山県におきましては二百八十五件、約千二百三万円、大阪におきましては二十三件、約八十六万円、福岡におきましては五十件、約三百十五万円の被害額ということでございます。  また、これらの犯行に使用されたクレジットカードの入手経路、あるいはその使用等につきましての組織性といいますか組織活動の状況の有無等につきましては、関係都道府県警察におきまして現在捜査中でございます。  なお、警視庁、千葉、富山、大阪、福岡の各都道府県警察におきまして捜査中のクレジットカード使用詐欺事犯につきまして、その犯行に使用されたクレジットカードはいずれも主として大阪におきまして盗難あるいは強盗等の被害に遭ったものがそのほとんどを占めているという報告を受けておる次第でございます。  以上でございます。
  121. 吉井光照

    ○吉井委員 またキャッシュカード、クレジットカード等のカード犯罪は、警察庁によりますと、六十年度に約一万七千件で前年比二〇%増、被害総額九億七千万、五年間で五倍増、このように言われているわけですが、こうしたカード利用はコンピューターを前提にしているわけですが、コンピューター犯罪は非常に発覚しにくい、また一たん発覚すると社会的影響も極めて大きい。昭和六十年六月の警察庁のコンピューターの防犯実態調査によりますと各企業のコンピューターの安全対策が全くお寒い状況にある、こういうことです。  先日、十二月二日に発表されたコンピューター利用者についての警察庁の意識調査結果、これによりますと、何と回答者の九割以上がシステムへの侵入など不正行為が増加すると見ておる。また三割強が無断閲覧の経験者。教育や処罰法令でも不正防止の効果はないと見る人が三割から四割も占めたという実態が浮き彫りにされたわけです。  そこで、警察庁のコンピュータ・システム安全対策研究会は本年一月、コンピューター犯罪を処罰する新たな法制度の整備を提言したわけですが、警察庁はコンピューター利用者のモラルも含めたコンピューター犯罪の防止について今後どのような対策を持っておられるのか、この点はいかがですか。
  122. 金田雅喬

    ○金田説明員 先般、御質問のように意識調査をいたしましたが、私どもといたしましては、当面はコンピューターシステムの利用者が自主的に安全対策を講ずるように指導をしていく方針をとっております。  立法措置につきましては、まだその実態が必ずしも把握されておりませんので、その必要性を含め関係省庁で連絡をとりながら検討を進めていく考えでございます。
  123. 吉井光照

    ○吉井委員 時間が参りましたが、最後に法務大臣にお尋ねをいたします。  コンピューター犯罪に対する新規立法については、去る九月十九日に法務大臣が、当面の課題として刑法の国際化、近代化を目指すため新しいコンピューター犯罪への対処などを目的とした刑法の一部改正を法制審議会に諮問をされた、このように聞いておるわけですが、その答申を待って次の通常国会に刑法改正案を提出する、このように報じられているわけです。こうした問題については、いずれにいたしましても早期に立法化する必要があると考えるわけでありますが、ひとつ法務大臣の御決意のほどを最後にお伺いをしておきたいと思います。
  124. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 ただいま先生の御指摘のとおり、コンピューター犯罪というのが最近急増しているというような点を考えると、今法制審議会の方に諮問をいたしておりますけれども、できるだけ早急に答申をちょうだいいたして善後処置を講じたい、そのような決意でございます。
  125. 吉井光照

    ○吉井委員 質問を終わります。
  126. 大塚雄司

    大塚委員長 冬柴鉄三君。
  127. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、十月二十二日当委員会において質問の機会を与えられましたので、当時社会問題となりかけていた抵当証券問題に焦点を専ら絞りまして質問をし、その中で、この審議の瞬間においても御老人等社会的弱者と目される方たち被害を受けつつあるのではないか、このような危惧をすると述べ、法務、大蔵両省に対して早急なる対策を求めました。これに対し法務大臣から、何とか処置を講じなければならない、このような旨の前向きの答弁をいただき、その後、新聞報道によりますと、大蔵、法務両省は十月二十九日早速にも学者などで構成する抵当証券研究会を設置され、三十日には初会合を開いた、このような報道に接しました。私はこれを高く評価するものでありますが、この研究会の構成、目的、現在までの進捗の状況及び今後の見通しなどについて、簡単で結構ですが、お伺いしたいと思います。
  128. 杉井孝

    杉井説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように十月三十日に抵当証券研究会の第一回会合を持ちまして、研究先生方に依頼をしたわけでございます。最終的には投資家保護を図る観点から法制の整備の問題も含めまして先生方検討を依頼したわけでございます。現在までのところ既に三回研究会を開催いたしておりまして、経済的な意義でありますとか取引の法的な問題でありますとか、あるいは抵当証券会社からのヒアリング等を行っている段階でございまして、今後も引き続きできるだけ早く検討をいただけるよう急いで検討をしていきたいと考えているところでございます。
  129. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いずれにいたしましても事は急ぐ問題であると思いますので、早急なる報告とそれに伴う施策を求めておきたい、このように思います。  続きまして、いわゆる独立系と言われる悪質業者と申しますかそのようなものの摘発が進んでいるという新聞報道がございますが、その後現在までの摘発の状況及びそういう休廃業をした会社の数とか、あるいはそれに対する未償還の債務額とか、そういうものについて、概略で結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  130. 緒方右武

    ○緒方説明員 お答えいたします。  警察で摘発した抵当証券会社でございますけれども、十月十五日以降現在まで日証抵当証券、中国抵当証券、信組財形、千代田抵当証券、東洋抵当証券、合計五社をそれぞれ詐欺罪等で検挙または検挙に着手しております。なお、社長等八名を逮捕し、うち二名につきましては既に起訴されている状況でございます。  摘発状況は以上でございます。
  131. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その際も私は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反に当たるのではないかという指摘をいたしました。新聞あるいは抵当証券について書かれているものを読みますと、貸金業の届け出さえすればだれでもできる、そういうようなことが書かれているのですが、私はこれは間違いであって、それは抵当権を設定するためにお金を貸す場合に、貸金業を業とする場合には届け出が要ります。私が問題とするのは、モーゲージ証書、いわゆる抵当証券の表章をする抵当権と被担保債権というものが移転しないのにするように藉口して、一般大衆から、不特定多数の人から多くの金を集めるということが、出資の受け入れを取り締まるあの法律の少なくとも二条違反になるのではないか、このような観点から質問したわけでございますが、今の御答弁によりましても詐欺罪等でと、いわゆる捜査における罪名がそのように述べられましたが、私が述べたような観点からの捜査はなされないのかどうか、この点についてのお答えを最後にいただきたいと思います。
  132. 緒方右武

    ○緒方説明員 お答えします。  警察では各会社の実態等を調べたりして、現在までやっているのは詐欺罪。出資法については関係省庁もいろいろ協議しているのですけれども、一番罪名に当たる詐欺罪というか公正証書原本不実記載で捜索したりして行っている状況でございます。
  133. 冬柴鐵三

    冬柴委員 抵当証券につきましてはこの程度にいたしますが、何しろ早急に対策を講じられることを強く要望いたしておきます。  裁判官報酬等に関する法律九条、あるいは十一条に「裁判官の報酬その他の給与」、こういうふうに報酬というものと給与というものを別々に意義づけていられるわけでございますが、これはどういうふうにして区別されるのか、そこの点についてお尋ねをしたいと思います。
  134. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官の報酬につきましては、裁判官報酬等に関する法律、まずこの第一条で「裁判官の受ける報酬その他の給与については、この法律の定めるところによる。」という定めがございまして、そして第二条で「報酬月額は、別表による。」というふうに定まっております。この報酬月額が、この第二条関係で別表として裁判官の受けるべき毎月のその報酬月額として定まっているわけでございまして、これが憲法で申しております、裁判官は「定期に相当額の報酬を受ける。」とされている報酬額というふうに考えられております。「その他の給与」といいますのは、第九条に定めがございまして、裁判官それぞれ、例えば最高裁長官、最高裁判事等のグループ、判事のグループあるいは判事補等のグループというように分かれて、それぞれが受けるべき報酬以外の給与というものが定まっているわけでございます。
  135. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのとおりだと思うのですけれども、それは、こう決められているものが報酬であり、こう決められているものが給与である、こういう説明ですが、もっと実態的に報酬というものの定義をすればどうなるか。例えば物の本によりますと、報酬は「定期に受ける定額(俸給月額)のもののみを報酬といい、諸手当(たとえば期末手当)などと併せたものを給与といっている」、そのようなことが説明をされたり、あるいは「一般に報酬という場合は、給与と同じ意味に用いられるが、裁判官については報酬と給与を区別し、定期に受ける定額のもののみを報酬といい、」それ以外のものを給与という、このような説明をしているようですが、そう理解していいのでしょうか。
  136. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 この裁判官報酬等に関する法律第一条で定めておりますところによりますと、「報酬その他の給与」という表現をいたしておりまして、給与の中には報酬とそれから報酬以外の給与、こう二つのものがあるということになると思います。  その報酬が何かということを考えますと、これは実質的には裁判官がその職責に基づいてその地位に相当するものを受ける、これが実質的に報酬というふうに考えられ、そしてそれが毎月毎月支給されるというふうに考えられるわけでございます。俗に申します本俸ということになろうかと思いますけれども、そういう意味で、ただいま委員指摘されましたように、結局報酬というのは、支給の面から考えますと毎月定期に受けていくものが報酬であるというふうに考えられると思います。そして、その報酬以外の給与というものが別の条文で決まっている、このように理解いたしております。
  137. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのように理解しまして、裁判所法五十一条では「裁判官の受ける報酬については、別に法律でこれを定める。」このように規定されていますが、この法律というのが今審議の対象になっている裁判官報酬等に関する法律、このように理解してよろしいでしょうか。
  138. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、「別に法律でこれを定める。」と裁判所法でされております法律裁判官報酬等に関する法律であると理解いたしております。
  139. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうすると、報酬は法律で決めるべきであって、例えば裁判所規則、そのようなものでは決められない、特に法律で授権をすれば別ですけれども、そのように理解してよろしいでしょうか。
  140. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 この点につきましても、裁判所法の第五十一条の文言によりますと、報酬につきましては法律で定めるべきものというふうに解すべきものと考えます。
  141. 冬柴鐵三

    冬柴委員 先の国会で裁判官の初任給調整手当に関する規則が四十六年以来初めて改正されたようでございまして、これは規則で決められているわけですが、ここに、初任給調整手当は手当とはいうけれども毎月一定の時期に定額を与える、このような仕組みになっております。これは、報酬とその他の給与と分けた場合に、先ほど来検討いたしましたように報酬に当たるのではないか、このように考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
  142. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事補の初任給調整手当に関する制度は昭和四十六年に初めてできたわけでございます。この手当は確かに毎月一定の範囲の判事補に対して支給されるべきものでございます。ただ、これは、その支給時期という点におきましては毎月支給されるものではありますけれども裁判官報酬等に関する法律で言うところの報酬には当たらないものと考えております。裁判官の初任給調整手当は、裁判官の報酬というよりは、将来判事補になる者あるいは弁護士になる者あるいは検察官になる者、いろいろ統一的に現在修習を受けているわけでありますが、その統一的な修習を終えてそれぞれの方面に分かれていくときに余りに大きな収入の格差があってはその進路の決定等に支障があるということから、そういった実情から設けられた、ある意味では臨時的と申しますか、そういう必要から設けられたものでございまして、そういう意味でこれは裁判官報酬等に関する法律第九条に言います「報酬以外の給与」の方に入るものというふうに考えております。
  143. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうすると、憲法八十条二項で「下級裁判所裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」御存じのようにこのような規定がありますが、では、この初任給調整手当は減額することができる、このように考えていいのですか。
  144. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 減額することができるかという形でお尋ねになりますと大変お答えしにくいわけでございますけれども、少なくともただいま御指摘条文で定めております報酬の中には入らない、そういう性質の給与であるというふうに理解いたしております。
  145. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は、立法政策としましてはこれはやはり本法の中に授権規定を置くべきであろう、そして当時、四十六年に設けたときには金額が二万三千円と非常に低い金額でございましたが、過日の改正では七万何千円、これは本俸の三分の一に相当するような大きな金額でございます。したがいまして、これは、公務員の場合に初任給調整手当というのが医療従事者について規定がありますが、そのように少なくともアッパー、最高額を法律の中で決めて、そしてその範囲内で最高裁判所の規則によって定める程度の方法が妥当ではないか、このように考えますので、御一考願いたいというふうに思います。  先ほど修習終了者の平均給与等を勘案して、こう述べられましたが、日弁連等で、例えば今年度でも来年度でもいいのですが、弁護士になる人の平均給与額など調べられたかどうか。もし調べられたら、そういうものがどれぐらいになっているか、その点についてお答えいただきたい。
  146. 根來泰周

    根來政府委員 昭和六十年の四月一日現在で日弁連に調査を依頼いたしまして、その結果、いわゆる初任弁護士、これは事務所に勤務する弁護士でございますが、平均いたしまして二十九万六千円ということになっております。ただし、この調査対象というのは大体東京、大阪などの大都会に限られておるようでございます。
  147. 冬柴鐵三

    冬柴委員 現在判事補十二号というのは、今回の改正案によりますと報酬が十七万七千三百円、それから初任給調整手当、これが七万三千六百円ということになると思うのですが、これと今官房長がお答えいただいたものと照らして、任官者を採用することに支障はないのかどうか。その点についてはいかがでしょうか。
  148. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の判事補十二号の報酬、これと初任給調整手当を加えました金額、これを合わせましてなおかつ若干の格差はございます。ただ、裁判官の場合は弁護士の場合と違いまして、例えば住居費等についてはかなりの程度官舎が整備されておりまして、そちらの面での、ある意味での補充のようなものが考え得る。そういったことを考えると、判事補の初任給はおよそ現在のところ弁護士の報酬と均衡を保っているのではないかというように私どもとしましては考えております。今後の判事補の採用という点ではまだこれから、すべてこれからの問題で、どのようになるか、これはわかりませんが、まあ何とか必要な人員を確保するようにいたしたいというように考えております。
  149. 冬柴鐵三

    冬柴委員 官舎の問題が出ましたので、その根拠法等についてお伺いいたしますが、判事補として判事補十二号という給与を受ける人は、一応行政一般職では六級に相当すると考えるのですが、そのように考えた場合に裁判官の宿舎ですね、これはいわゆるc以下ということになると思うんですが、そういう理解でいいかどうか。その点についてお尋ねしたい。
  150. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございまして、c型以下の宿舎に入れることになっております。
  151. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私の調査によると、c型というのは五十平方メートル以上六十五平方メートル未満という、比較的狭いといいますか、官舎のようでございますけれども御存じのように、修習を終えて任官する人は相当高齢者になっておりまして、もちろん家族が、既婚者が多いと思われるんですが、この宿舎で十分と言えるのかどうか。特に裁判官の執務の内容が、判決起案等自宅でする仕事が多い実情にかんがみまして、このような一般職の方々と特別扱いせいという意味ではありませんけれども、執務の内容から見てそのような一律的な扱いでいいものかどうか。その点についてお尋ねをしたいと思います。
  152. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 希望だけを申し上げますと、委員指摘のとおり、広ければ広いほどということも言えようかと存じますが、一般社会とのバランスもございます、あるいはほかの各省庁の方々とのバランスもございます。そこら辺を考えますと、今の程度でやむを得ないところじゃなかろうかと考えております。
  153. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は最高裁、もう少し前向きに考えてやってほしいと思うんですね。じゃあ、これはいいか悪いかは別として、修習を終了しまして任官される方の平均年齢は幾つなんですか。また、修習終了後、初めて判検事、弁護士になる人の平均年齢ですね、そういうものはどれくらいになるのか。それは大学を出てからどれくらいになるのか。そこら辺についてお尋ねしたい。
  154. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 昭和六十一年、今年度で見てみますと、修習終了者の平均年齢は三十・三歳でございます。それから判事補に任官した者の平均年齢は二十七・八歳でございます。二・五歳ほどの差がございます。今までも大体似たようなところでございまして、修習終了者の平均年齢は大体三十歳から三十一歳までのところ、それから判事補に任官した者は大体二十七歳代ということになっております。したがいまして、判事補に任官した者の中には、結婚をして、そして子供も二人ぐらいいて、家の中が騒がしいというものももちろんございますが、多くの者は新婚早々ぐらいか、子供がいてもごくごく小さい段階か、あるいは独身かというあたり、これは別に統計的に申しておるわけではございませんが、今まで若い判事補諸君と接しました感じでは大体そういうところであろうと思っております。したがいまして、もちろんそんなに広い官舎ではございませんけれども、官舎に入って、そして、家で全く仕事ができないくらいに子供にめちゃくちゃに妨害されるというほどの事態は、そういう人もあるかもしれませんが、常にそういう状態だというほどのものでもないと考えております。
  155. 冬柴鐵三

    冬柴委員 もう随分前の経験ですからそのように言われるのだと思いますけれども裁判官の場合いわゆる自宅起案。判決起案など役所ではできません。深夜、家族が寝静まってから自宅で書かれる、物を調べる、このような生活の連続でありまして、やはり少なくとも作りつけの書棚のある書斎ぐらいは、この職務の特殊性からそのような配慮はなされるべきではないか、このように私は強く思っているわけですけれども、そのような発想は今までなかったのでしょうか。必要性はどうだったのでしょうか。
  156. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、裁判官は自宅で起案あるいは記録、調査ということをやるわけでございますから、そういった書斎があることが望ましいことは当然でございますし、私どもも許される範囲で、宿舎を設置いたします場合に書斎部分を確保するように努めてまいっておる次第でございます。
  157. 冬柴鐵三

    冬柴委員 しかし、官舎についての根拠法は国家公務員宿舎法及びそれの施行規則等によって一律に、行政、司法の区別なく定められているのではありませんか。
  158. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 根拠法ということで申しますと、御指摘のとおり国家公務員宿舎法によりまして一般職、特別職を問わず、常勤の国家公務員の宿舎につきましては一律に定めてございます。
  159. 冬柴鐵三

    冬柴委員 裁判官ばかり聞きましたけれども検察官も同じなのですが、我々修習終了時、給料が上がればいいというものではなくて、転勤が非常に多い。引っ越し三回すれば一回火事に遭ったのと同じだというぐらい費用もかかるし、大ごとでございます。せめて転地において十分な宿舎がある、裁判官であればその執務に即応した、狭くてもいいから少なくとも書斎ぐらいは完備している。それからもう一つは、大量の本をお持ちです。例えば最高裁判例集とか白表紙、こういうものがびっしり廊下まで置かれているというのが我々の年代の裁判官の家をお訪ねしたときの感想でありまして、これは僕は異常だと思うのです。やはり作りつけの書棚等あるいは判例集等をそこに備えつけるような配慮はないのかという点も考えるわけですが、これは裁判官あるいは検察官の人材を確保するという点からも、前回の初任給調整手当の額を増額したのと同じ発想からお尋ねしているわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
  160. 町田顯

    町田最高裁判所長官代理者 裁判官の職務の実情をよく御承知の委員からの御指摘、まことにごもっともでございます。ただ、c型と申しましても、先ほど御指摘いただきましたとおり五十平米以上六十五平米未満ということでかなりの差がございます。その間でなるべく大きいものをつくり、その中に書斎部分を取り込むように今後とも努力いたしたいと存じております。
  161. 冬柴鐵三

    冬柴委員 つまらぬことかもわかりませんけれども東京高裁長官それからその他の高裁長官、七庁あると思うのですが、これに報酬の差が設けられておる。これはどういう理由によるのでしょうか。また、検察についても東京高検検事長とその余の七つの検事長との間に差があるというのはどういうことなのでしょうか。
  162. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 東京高等裁判所長官の報酬は、東京以外の高等裁判所長官の報酬の一ランク上になっております。これは戦後の制度発足以来このような差がついているわけでございます。  これは、東京高等裁判所は、人的、物的に申しまして、庁の規模からいってその他の高等裁判所と比べて格段の差があるわけでございます。それからまた事件数からいきましても、東京高等裁判所は断然他にぬきんでているということ、それから東京高等裁判所では、例えば独禁法とか海難審判法、そういった特別の法律によって特別の権限とされている事件を扱うということもございます。そういうことから東京高等裁判所の長たる高裁長官は、それだけ他の高等裁判所長官より職責が重いものとされており、それに応じた報酬の差というものがあるものと理解いたしております。
  163. 根來泰周

    根來政府委員 検察庁の方もただいまのご説明と同様の理由でございまして、規模が大きいということとか、他の高等検察庁と異なりまして、独占禁止法事件の捜査、公訴の提起、逃亡犯罪人引き渡し請求事件における拘禁、審査の請求、引き渡しなどの特別の事務がございますので、東京高等検察庁検事長については特別の給与を与える、こういう仕組みになっていると思います。
  164. 冬柴鐵三

    冬柴委員 大きい、小さいは余分じゃないかと思うのです。特別法でいろいろな権限が与えられているから高いというのは僕はわかると思うのです。もう言いませんけれども、それじゃ大阪はどうなのか、小さいところは聞きませんけれども、大阪と小さいところと比べたらどうなのか。そうするとそれは全部一律ですから、やはり特別の、独禁法とかそういうものについての管轄権を持っているということがその立法理由かと考えられますけれども、じゃ高裁長官と高検検事長との間に差がついているのはどういう意味か、そこのところもお尋ねしたい。
  165. 根來泰周

    根來政府委員 この点につきましても、高等裁判所は刑事事件のみならず民事事件、海事事件を管轄されておるわけでございます。検察庁につきましては刑事事件でございまして、管轄する職務の範囲が高等裁判所の方が大きいといいますか広いといいますか、そういう感じでございます。  もう一つの理由は、検事長と高裁長官の定年が違うというのが一つの理由だと思います。御承知のように、検事長は六十三歳に達したときに定年に達し、高裁長官は六十五歳に達したときに定年に達する、こういうことになっております。その差によって違うのではないかと考えております。
  166. 冬柴鐵三

    冬柴委員 我々修習終了者としましてはびっくりするようなことでございまして、私はこれは一緒であるべきだと思っておりますので、そういう意見もあるということをお含みおきいただきたい。  それから、簡易裁判所判事一号から三号に相応する副検事の俸給が存在しない。これはどういうことなのでしょうか。
  167. 根來泰周

    根來政府委員 この点についても十分御承知のことと思いますけれども、副検事と簡易裁判所判事の任用資格が若干違います。端的に申しますと、簡易裁判所判事は高裁長官からもなりますし、判事からもなるわけでございますが、副検事はそういうことはないわけでございます。なおかつ、定年の点につきましても、簡易裁判所判事は七十歳、副検事につきましては六十三歳という違いによって三号上積みになっている、こういうふうに理解しております。
  168. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、判事に特号がありまして検事にないというのは、どういう理由によるのですか。
  169. 根來泰周

    根來政府委員 これも、端的にいいますと定年の差だというふうに理解しております。検事の場合は六十三歳、判事の場合は六十五歳ということで、その二年の差が特号を積ませる理由になっているのではないか、こういうふうに理解しております。
  170. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この説明はちょっと大き過ぎると思いますので、一応こういう点も一つの問題点として考えていただいたらどうか。  それから、特号、条文では「特別のものに限り、」と書かれておりますが、この法律からは何が「特別のもの」なのかわからないのです。例えば、判事についての「特別のもの」とは何か。それから、簡易裁判所判事についての「特別のもの」とはどういう人を指すのか。副検事についての「特別のもの」とはどういう人を指すのか。その点についてもそれぞれお答えいただきたいと思います。
  171. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事の特号といいますのは昭和三十四年に設けられたわけでございますけれども、ただいま根來官房長の方から説明がありましたように、裁判官の定年の長さということもあり、また現憲法下での裁判官の職責の重要性ということから、検察官との間に一定の格差を設けるという考えもあって設けられたものと理解しております。ただ、その場合、裁判官検察官というのは、当初の任用資格は同じでございます。そういうことから、裁判官検察官の受けるべき報酬額についてある程度の均衡を図る必要がございます。そういうことで、この特号報酬というものが設けられても、裁判官でこれを受けるのは「特別のもの」に限るというように定められたわけでございます。  現実にどういう人に給されているかと申しますと、相当大きなポストにつけられて、判事の一号報酬で遇するには不足であるという方、具体的には、例えば高等裁判所の裁判長であるとか、大きな地方裁判所あるいは家庭裁判所の長である所長であるとか、そういう人たちに給されているのが通常でございます。それから、簡裁判事の特号でございますが、これは昭和四十八年に設けられたものでございまして、やはり簡裁判事の一号報酬を超える額をもって遇するのが適当であるというような人、具体的には、その判検事の定年退官者等を遇するために設けられた報酬でございます。そういうことから、これも「特別のもの」に給するということになっておるわけでございまして、現実にどのような方に給されているかといいますと、例えば判事特号をもって遇されていたような高いポストについていた人が簡易裁判所判事になってその報酬を受けるというときに、簡裁判事の特号を受けるという運用になっているところでございます。
  172. 根來泰周

    根來政府委員 副検事の場合でございますけれども、極めて抽象的に申し上げますと、経験豊富であり、老練であり、勤務成績が優秀であるというような者でございますが、運用といたしましては、例えば副検事の経験年数が十五年以上だとか、勤務成績が極めて優秀だとか、あるいは年齢が五十八歳以上だとかいうようなことで選考いたしまして運用いたしております。
  173. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、定員と欠員のことについて若干聞いておきたいと思います。  調査いたしましたところによりますと、昭和六十一年六月三十日現在、検事の定員が千百七十三人のところ、欠員が三十人生じている、このように聞いているのですが、それはいつからそれだけの定員を欠くことになっているのか、それからその理由、定年とか死亡、あるいは勧奨とかいろいろあると思うのですが、それはどういうことによるのか。
  174. 根來泰周

    根來政府委員 仰せのように、本年の七月一日現在で、検事につきまして三十人の欠員があることは事実でございます。  大体の傾向を申しますと、年度当初に修習生が任官しましたときには欠員が若干生じておるというような状況でございますが、その後退職、その中には勧奨退職もございますけれども、そういうことで欠員が生ずる、こういうことでございますが、ことしに限って申しますと、御承知のとおり任官者が若干少なかった。毎年五十人少し切れるくらいでございますが、ことしは三十四人でございましたので、その差が少しあったのではないか、こう思っております。
  175. 冬柴鐵三

    冬柴委員 法務大臣、給料は、このように初任給調整手当七万何ぼ上げたわけですね。ですけれども、やはり修習生からの任官志望者が少ない。それには、今言ったように住環境が整ってないとか転勤が多いとか、それから仕事が非常に忙しいということで人数が少ないのですね。非常にベテランの検事が退官をされて弁護士になられるという方が年間相当数になっております。すばらしい職業でありますだけに、これをなお魅力あるものにするためにも、住環境の整備あるいは給料等の改善、それから自己都合退官というのが多いわけですけれども、それはどういう都合によってやめていかれるのか。それを防止する手だてはどういうことなのか、そこら辺を十分御調査の上、非常に大切な検察行政に支障のないようにお取り計らいを願いたいと思います。よろしくお願いしたいと思うのです。  それから、裁判官の方もやはり同じようなことでございまして、六十一年九月に日本弁護士連合会で第十一回司法シンポジウムをやりました。もう時間がありませんので詳しくは述べませんが、この中で、裁判官単独でやる事件の手持ち事件が一人当たり二百件強ということが指摘されております。これは大変な数で、二百件を越えますとほとんどこれを、例えば一カ月半に一回ずつ開廷させよう思えばどれだけやらなければいけないか計算すれば、どれくらい忙しいか。例えば、午前十時から二十件ぐらい、午前中二時間の間に期日を入れてやらないとそれは処理ができないという事件でありまして、この司法シンポジウムでも、民事を担当する裁判官が全国で三百人足らないのではないか、そのような提言もありました。  そのようなことから、本件は裁判官の報酬及び検察官の俸給についての審議でありますけれども、その付加給ともいうべき住宅環境の整備とか、あるいは定員をもっとふやしてほしい、そういう点について格別の配慮をいただきたいと思いますので、最後、法務大臣に、検事に関することで結構でございますが、その点についての所感をお伺いしたいと思います。
  176. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 ただいままでの先生の御質問裁判所も検察庁も法務局も法務省も全く同じような状態でございまして、先生の御質問はこれからの裁判所なり検察庁なりの行き方等に御心配をいただいている結果で、我々大きくしりをたたかれたような感を深めております。  自分もまだ法務大臣、日が浅いんですけれども、非常に驚いている実情でございまして、先生指摘のとおり、転勤が多い、子供の学校、お年寄り、そういうようなのを抱えておると、今の待遇で果たして弁護士さんや何かと比較するとどうなるかというような点も考えると、しかし、判事といい検事といい、御承知のとおりすばらしい天職だと私は信じております。そういうような点、やはりもっと魅力ある環境づくりを、これはきょうの先ほど来の答弁者ではあくまでも事務的なお答えきりできなかったと思いますが、そういうような点については法務大臣としてもっと頑張っていかなければならぬという決意を新たにいたしておるということを申し上げて御了承をちょうだいいたしたいと思います。
  177. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  178. 大塚雄司

    大塚委員長 安倍基雄君。
  179. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今度の法案関連いたしまして、私の持論といたしましては、法務、裁判官検察官、警察とか、私自身大蔵におりましたけれども、税務署員とかそういった者に対しては、やはりそれ相応の報酬は出すべきだ、しかも特に、いわば司法官の場合に、これが腐敗しては大変なことでございますからということで、身分というか、安んじて職務にいわば精励できるような給与は当然出すべきだと私は考えております。  まず先にお伺いしたいんですが、裁判官あるいは検察官、海外と比較してどの辺のレベルであるかなということと、また、海外、なかなかそれぞれの職分というか、必ずしもパラレルに考えられない場合がございますから、通常のいわゆる一般公務員に比べて何割増しとかどのくらいいわば優遇されているかというのを日本とほかの国と比べてみた場合どうであろうかということをまず御質問したいと思います。
  180. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 まず、国内での比較の点から申し上げます。  裁判官につきましては、その社会的地位あるいは職責の重要性等から行政官よりは給与上高い格付がなされているわけでございます。その裁判官の受けるべき金額というのはこの法律案にあるとおりでございますけれども、それが行政官との関係でどのような比率になるかと申し上げますと、大体のところ判事補につきましては、判事補、つまり裁判官になって最初の十年間につきましては、行政官に比べて一・二倍から一・五倍程度の報酬額になっております。それからさらに、判事になったとき、大学卒業後十二、三年目でございますけれども、そのあたりで行政官の一・七倍程度になります。その後も大体行政官の一・四倍あるいは一・五倍程度の格差がずっと維持されているというふうに考えております。  それから諸外国との比較でございますが、これは諸外国の制度が我が国とそんなにパラレルな関係になっているわけではないということもございますし、また、それが諸外国の行政官あるいは民間の給与水準の違いといったような点もありまして、一概に日本の裁判官の報酬と外国の裁判官の報酬を比較するというのはできにくいわけでございますけれども、一応昨年、昭和六十年の資料がございますので、それに基づいて、そして昨年の為替レートに基づいて申し上げますと、昨年の日本の最高裁判所長官の報酬月額は百七十二万五千円でございます。  西ドイツとアメリカについて申し上げますと、西ドイツは連邦憲法裁判所長官、これが西ドイツにおける裁判官の一番高いランクを占める裁判官でございますが、これが百三十五万六千七百三十九円となりまして、日本の最高裁長官の八割程度でございましょうか、その程度の金額になっております。それからアメリカは、連邦最高裁判所長官が最高のランクの裁判官でございます。昨年の為替レートで百七十六万八千五百五十八円、日本の最高裁判所長官とほぼ同額、日本より若干多いという程度の金額になっております。  そうして、諸外国でのその長官の行政府の長との関係で見ますと、西ドイツの連邦憲法裁判所長官は連邦首相に比較して八割程度の報酬額ということになっております。それから、米国の連邦最高裁判所長官の報酬額は合衆国大統領の五割程度の報酬額ということになっておりまして、そういった点を比べますと、日本国の裁判官の報酬額は諸外国の制度と比較しても高い報酬額を保障されたものとなっているのではないかというように考えております。
  181. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは検察の場合も大体そうでございますかな。簡単でいいですよ。要するに、非常に簡単に答えてください。
  182. 根來泰周

    根來政府委員 国外のことはむしろ先生からお聞きした方が早いと思いますけれども、大陸系はやはり検察官裁判官は採用を同じくしておりますので、給与も同じぐらいだと思います。ただアメリカ系は、何といいますか、検判官の地位が格段に高うございますので、検察官の給与はずっと劣るのではないか、そういうふうに理解しております。
  183. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、さっきの換算率が大分円高になりつつある状況でございますから、これから円高がどの辺に定着するかという問題はございますけれども、円ドルレートが前の状況においては必ずしも高くなかったと言えるわけでございます。いずれにいたしましても、この点について、各国とそれぞれの中身は違いますからパラレルにできないにしても、それなりの優遇措置というものは当然必要じゃないか。私がそういうことを言いますと、平等とかいうことを言う人がいますけれども、出すべきものには出す。私よく、この前の大蔵委員会なんかでも言ったのですけれども、公務員といっても地方の登記所あたりで判こをつく人間と国家公務員というのは、税務署の人間とか検察の人間とは密度が違う。やはりただただ平等というのはおかしいという意味で、本当に司法関係は優遇してもいい。私自身十年前に、国有財産第一課長というのがございましたけれども、そのときに水原君でしたか、検事宿舎あるいは裁判官の宿舎の問題を取り上げまして、私は要求どおり、むしろそれ以上にしたつもりでございます。これは私の持論でございますが、それは、一つは本当にいいことをやってほしい、公正な裁判をしてほしいということでございます。  それとの関連——その前にちょっと一つ、今訴訟案件がだんだんとふえつつある、これから日本の場合も割合と、以前より泣き寝入りじゃなくていろいろな訴訟をしてくるというときに、今の人数で足りるのかということと、いわゆる通常の審理期間がほかの国に比べてどうかということの二点について簡単にお答え願いたいと思います。
  184. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 最初にお尋ねの事件数でございますが、地裁の民訴事件は、昭和五十六年が十三万五千件ぐらいでございまして、六十年は十三万二千件でございます。それから地裁の刑事訴訟事件、これは五十六年が八万九千ぐらいでございまして、六十年も九万件でございますので、ほぼ横ばいでございます。簡裁の民訴事件は、五十六年が九万件でございましたが、六十年には二十三万件ぐらいになりました。これは非常にふえております。簡裁の刑訴事件は、昭和五十六年が二万七千件、昭和六十年は二万五千件ぐらいで、これは漸減傾向にございます。簡裁の民事訴訟事件が非常にふえておりますが、これは御承知の消費者信用に伴いましてクレジット、サラ金等の事件が急激に増加したわけでございます。これは非常に定型処理が可能なものでございまして、いろいろ事件処理上の工夫をするとかあるいはポケットコンピューター、パーソナルコンピューターを活用するとか、そういうふうな工夫によりまして大体順調に処理できているわけでございます。  今後の傾向といたしましては、やはり委員指摘のとおり、事件数は徐々にふえていくのではないかと思います。現在の人員で十分かと申しますと、私ども決して十分であるとは考えておりません。したがいまして、来年度の概算要求におきましても所要の増員措置をお願いしているわけでございます。  先ほど御指摘の審理期間でございますが、これも四十八年当時と比較いたしますと、四十八年前後では地裁の民事第一審訴訟、これは約十七ヵ月かかっておりました。既済事件でございます。これは昭和六十年には十二・四ヵ月というふうに短期化しております。それから、刑事の通常事件につきましても、四十年代後半は六ヵ月台でございましたが、その後だんだん短縮化してまいりまして、昭和六十年におきましては三・四ヵ月というふうになっております。簡易裁判所につきましても、やはり短縮化の傾向を示しておりまして、昭和六十年には三・四ヵ月というふうになっております。これは民事通常訴訟でございます。簡易裁判所の刑事通常訴訟では、昭和六十年は二・六ヵ月、こういうふうになっておりまして、徐々に短期化の傾向を示しております。未済事作の平均審理期間につきましても、同様短期化の傾向は示しております。  諸外国との比較でございますが、これはやはり司法制度、それから訴訟手続のありよう、訴訟事件の性質あるいは国民の訴訟に対する物の見方、こういうものが複雑に絡まっておりますので単純に比較することはできませんけれども、例えばアメリカと比較してみますと、アメリカの連邦地裁におきましては、民事の通常訴訟の場合、半数の事件が七ヵ月以内に終結しておりまして、我が国の場合には六ヵ月以内で約五二%処理いたしておりますので、ほぼ相違がないように思われます。  比較的制度が似通っております西ドイツとの比較をいたしますと、我が国の地方裁判所に相当いたします州の裁判所におきましては六ヵ月以内に既済となる事件は七一・七%でございます。我が国のそれは五一・九%でございます。それから刑事の場合は六ヵ月以内に既済となる事件は七八%、我が国の場合は九二%でございますから、民事は若干時間はかかりますが、刑事の方は速く処理している、こういう状況でございます。  民事の通常訴訟事件の処理が西ドイツの場合、比較速くなっておりますのは、実は西ドイツの場合、我が国の三倍ぐらいの事件を処理しているわけでございます。比較的裁判所に事件が持ち込まれやすい。それに引きかえ我が国の場合は比較的こじれた形で裁判所に提起される。そういうことから人証の取り調べ等に時間をある程度費やさなければならない、そういう状況があるのではないかと思われますので、単純に比較することはできないであろうというふうに考えております。
  185. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 やはり我々が望むのは、間違っては困るけれども、できるだけ短期間に審理が行われるということと、いわば公正な裁判が行われるということでございます。  それと関連いたしまして、もちろん司法、行政、立法それぞれ独立でございますから、いろいろな判決なんかについて批評したり予断を与えたりすることは避けるべきでございますけれども、かねて私は、この三月でございましたか、質問いたしました、和歌山で暴走族が走っておったところを角材か何かを投げ込まれて死んじゃった。これは殺人罪というか、それでいわば起訴されたという裁判がございました。そのときは審理中でございましたけれども、その後はその判決がどうなったか、ちょっと教えていただけますか。
  186. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 お尋ねの事件でございますが、本年三月二十八日、和歌山地方裁判所におきまして、傷害致死及び傷害の二つの罪名で懲役三年、執行猶予五年という判決が言い渡されまして、この判決はそのまま確定いたしております。
  187. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう一つ、これは最近ちょっと週刊誌あたりで騒がれたのですけれども、ストリッパーが、ストリッパーというのは後からわかったのですけれども、駅で酔漢に絡まれて、ちょっと押したらホームから落ちちゃった、そうしてひかれちゃった。これはやはり起訴されているという話がございますけれども、その裁判はどうなっておりますか。
  188. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 お尋ねの事件でございますが、昭和六十一年一月十六日に千葉地検が警察から傷害致死という罪名で送致を受けまして、勾留の上捜査を遂げまして、二月四日、千葉地方裁判所に対しまして傷害致死で公判請求いたしまして、現在裁判中でございます。
  189. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、暴走族のときにお話ししたのでございますけれども、私自身も夜中に騒がれて随分うるさい思いをしたことがございますし、私の家は浜松にございますけれども、夜中になるとまとまってわっと駆けずり回っておる。実際上、その暴走族に毎晩毎晩さらされた人間にとっては、飛んでくるところをともかく実力でもってとめてやりたいというくらいの気持ちが起こるのが当然じゃないかと思うのです。もう一つの今度の要するに突き飛ばしたというストリッパーの話も、私も電車の中でつい最近、ある変な若い男が女の子をいじめておりまして、なかなか勇敢な男が出てきてその胸ぐらをつかんで、私もとめにかかったのですけれども、殴りつけた。そういう市民のいわば自衛行為というか、そういうのが時々あるわけですね。私自身細かい事情はわかりませんけれども、ある程度裁判で——もちろん人命というのは非常に大切であることはわかります。けれども、やはり暴走族的なものに対して自分自身で守ろうという行動もあり得るわけで、それはたまたま走っている直前に材木を投げて未必の故意があったろう、今度の突き飛ばしたことも未必の故意があろう、法的にはその可能性もあるのだけれども、何か我々は、そういった判決で非常に厳しい判決あるいは殺人になりますと、うっかり手は出せないな、本来被害者たる者が加害者のような形になる、これはなかなか見きわめが難しいと思います。私は、個々案件、詳しく知りませんから、それを批評する資格もないし、委員会で取り上げたとなるとかえって裁判の独立を侵すのかというような話が出てくるかもしれませんけれども、しかし、やはり市民の自衛行為的なものに水を差すというか、逆にうっかり手が出せないな。日本というのは酔っぱらいなんかに対して非常に寛大でございまして、そういったことに対しては、アメリカなんかでは酔っぱらいなんかに対しては非常に厳しい。そういうときに私はもう少し社会のモラルというか、そういうところに重点を置いた考え方を持つべきじゃないかなという気がいたします。  それとの関連で、実は私は暴走族の問題につきましてどうも規制が緩いんじゃないかなという気がいたします。私、三月二十五日のときも一応お話ししたのですけれども、はっきりした答弁がなかったままで私は過ごしたような感じでございました。現在の暴走族、例えば暴走の行為があったときに免許の停止とか物品の押収とか、その辺はどの程度のものになっているのか、もう一遍はっきりとお聞かせ願いたいと思います。
  190. 根本好教

    ○根本説明員 暴走族による暴走行為は著しく危険かつ迷惑を及ぼす反社会的な行為でございまして、道路交通の場から早期に排除する必要がございます。暴走行為をした者に対する行政処分は特に迅速かつ厳しく行っているところであります。集団で道路を走行して著しい交通の危険等を生じさせる共同危険行為等禁止違反をした暴走族に対しましては、一回の行為で免許を取り消すことにいたしておりますが、本年は九月末現在、これによって免許を取り消した件数は千二百六十四件でございます。
  191. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 取り消した後どうなるんですか。免許はずっともらえないのですか。それとも何年かたつと、もとへ戻るのですか、取り直せるのですか。
  192. 根本好教

    ○根本説明員 免許を取り消した後でございますけれども、免許を取得できない期間がございまして、暴走族の場合、これは平均でございますけれども、一年ないし二年間免許を取ることができないということでございます。
  193. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 その暴走に使った車はどうなりますか。
  194. 根本好教

    ○根本説明員 これは、押収処分をいたすことになっております。
  195. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 押収した後、後で返すことになるのですか。
  196. 根本好教

    ○根本説明員 証拠品として押収いたしまして、後に返すことになります。
  197. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 きょうはゆっくりとお聞きしたいと思っておったのですけれども、私ども人数が少ないものですから持ち時間が少ないもので、十七日に一般質問があるそうでございますから、その際に、ある程度繰り返しになるかと思いますけれども、この問題を取り上げまして、今後の警察庁の方針あるいは法務省の考え方をお聞きしたいと思っております。  さっきの懲役三年になった人なんかというのは、ある意味からいうと、警察あるいは法務の取り締まりが不十分であることの犠牲者であると言えないことはない。しかも、どこまでが正当防衛かというのは、過剰防衛という考えもありましょうけれども、さっきのストリッパーの問題にしても、判決がもし軽かったとしても、一遍捕まって裁判にかけられると、その人間の生活はめちゃくちゃに壊れてしまうわけです。そういう面から社会に対する影響といえば、私どもの庶民感情としては、むしろこういったものは正当防衛と考えるべきじゃないか。その個々ケースがあるから正当防衛と考えられなかった要素があったのかもしれませんけれども、一般的にはそう考えられるのじゃないか。その範囲を司法の運営においてもう少し考えるべきじゃないかという気が私はいたします。  暴走族についてはもう一遍お聞きしますけれども、法務大臣にこの件についての、例えば、私は別に裁判に影響を及ぼそうとは毛頭考えておりません。ストリッパーの女性の問題、何というか、その女性が例えば閣僚の奥さんだったらそんなことなかったかもしれないし、そう思いたくないですけれども、私は、庶民の気持ちとして、そういうモラルとかという面で考えるべきじゃないかと思います。  この件に関連しまして、陪審員制度というのもそれなりの意味もあるのかな、今すぐ陪審員制度をどうのこうのということはないと思いますけれども、公正な裁判をしてもらいたいと同時に、私は何も雑誌社が書いたから、お涙ちょうだい式にどうのこうのしようというのじゃなくて、庶民感情的な気持ちもやはりあるし、いわば一罰百戒という要素もある。一罰百戒が逆に、被害者が何かやったら罪になってしまうというのはおかしいのじゃないかという気がいたします。これは別に立法が司法に介入するという意味ではなくて申し上げたのでございますけれども、法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  198. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先生のおっしゃること、一々ごもっともだ、こう申し上げておきたいと思うのですが、私は現場はよく承知いたしておりませんけれども、いろいろ例えば、何かいたずらしたり、何か暴行を起こしたり、騒ぎを起こそうというときに、それを全部が現況のままですと、見ても見ぬふりするような形になってくるんじゃないかな、そういうような点も考えられますので、今後我々としてももっと社会環境をよくするにはどうすべきかというようなことで検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
  199. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、一般質問に話を残しまして、終わりたいと思います。
  200. 大塚雄司

  201. 滝沢幸助

    滝沢委員 委員長さん、御苦労さまです。大臣初め政府委員の皆さん、御苦労さまです。  貴重な時間をおかりいたしましてまことに申しわけありませんが、今ほどの安倍議員の質問関連いたしまして、議題であります裁判官並びに検察官の給与等の案件ということからいささか拡大させていただきまして、私からは戸籍法、特に五十条の人名用の文字というものにつきましての政府の御見解を二、三承らせていただきたい、このように考えます。  実は、人間にとりまして名前というものは大変に重いものでありまして、昔、武士は、命にかえて名こそ惜しけれ、自分の命よりも名を惜しんだというわけであります。啄木なんかも   己(おの)が名をほのかに呼びて   涙せし   十四の春にかへる術(すべ)なし ということを言っておりまして、名前というものを特に日本人は非常に重んじたものであります。御存じのとおりであります。  ところで、戦前のことはさておきまして、戦後、二十一年十一月十六日に文部省が当用漢字の千八百五十字というものを決めました。これは漢字を制限することのよしあしは別として、戦後の政策としてこのようになったのでありました。これを受けまして、法務省におきましては、二十二年の十二月二十二日に公布されました戸籍法の五十条におきまして、当用漢字千八百五十字以内で名前をつけなさい、こういうふうにされたのでありました。  しかし、その後改正もありまして、おいおいと字数はふえてくるのであります。例えば二十六年にはさらに九十二の人名用漢字という制度をお考えいただいたわけであります。また五十一年にはそれに二十八字を加えていただきました。五十六年に根本的に手を加えていただきまして千九百四十五字の常用漢字、それに百六十六字の人名用漢字を用いよ、合わせて二千百十一字、ほかに平仮名、片仮名で名前をつけなさい、こういうふうにされたのでありました。  しかし、この改正の発想は、文部省がこれよりもいささか先に、今まで千八百五十字でありました当用漢字を改正して常用漢字と名前を変えまして千九百四十五字にふやしたことにあるわけであります。  文部省の政策は、最初の当用漢字というものは制限である、これ以外の文字は教育でも生活の面でも使わないのがいいんだという制限でありました。ところが、五十六年の文部省の改正は、いささか文字をふやしただけではなくて、これは生活の目安である、決して国民生活を制限するものではないと言っているわけであります。  ところが、法務省の方では依然として、これはいわゆる制限であるというのでありまして、この二千百十一字以外の文字は使えないわけであります。ここが両省の政策の整合性を欠く。一体国家としては、政府としてはどう考えておるか。私は、このことについてやはり文部省と法務省が歩調を合わせた姿勢になっていただくのがいいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  202. 千種秀夫

    千種政府委員 先生のただいまの御説明、かねがね伺っておるところでございますけれども、この戸籍法の規定は戸籍制度というものを前提として考えておりますために、目安ということでは制度としては境目がわからないというやむを得ないことから来ておりまして、実際人の名前というのは社会生活の上で私的にも公的にも使われております。例えば芸術、文化の面でも人の名前というのは使われるわけでございますから、戸籍を離れた人の名前というのは別に制限はないわけでございまして、雅号などでも難しい字を使っておられる方もおりますし、私どもも目安と言いながらいろいろ難しい字を好んで使っておるわけでございます。  ただ、戸籍ということになりますと、やはり戸籍吏というものがおりまして、戸籍官吏が窓口で、この字でいいかどうかということを考えておったのでは行政が成り立たないものでございますから、仕方なしに一つの基準というものをつくっておるわけでございまして、文部省と法務省の見解の違いというようなお話もございましたが、これはおのずから制度の目的が違うところから来た違いであろうと理解しております。
  203. 滝沢幸助

    滝沢委員 今おっしゃるのは詭弁でありまして、戦後、最初制限をしたときは文部省と同じ思想に立っての制限でしょう。ところが、文部省の方は世論に指導されて、これは一つの目安であると後退したにもかかわらず、今になって法務省は、それはもう発想の次元が違う、こうおっしゃっているのだけれども、今基準とおっしゃいました。基準ならいいですよ、制限だから問題にしているわけです。  そこで、むだな努力をしていらっしゃるということを申し上げたいのでありますが、名字、姓氏には手がつけられないのでしょう。二万ほどあると言われている名字には全然手を加えることはできない。人間の名前というのは、八十年時代かどうか知りませんけれども、生まれて生きていらっしゃるうちだけではないのです。このごろ、私は母親の十七年忌をしました。十七年忌になろうが五十年後になろうが、神武天皇の名ですらも、足利尊氏の名も乃木希典の名も我々は接しなくてはならないのです。人間の名前というのはそんな簡単なものじゃありませんよ。ですから申し上げているわけです。長く長くおつき合いをするわけです。ですから、今名前だけを制限してもだめです。むしろ読み方がいろいろだということが苦労なんでしょう。いいですか。  それに一つ申し上げたいことは、法人はどんな難しい名前を使ってもいいのですよ。株式会社法というものでどんなに難しい名前の株式会社だって登録になるのです。ですから、わずかに、人間の名前の名字はさておき、名前の方だけを制限するのは何の意味もないじゃありませんか。仮にこれを拡大して自由な文字を使ってくださいと言っても国はいささかも欠損しないじゃありませんか。迷惑しないじゃありませんか。おっしゃるような難しい名前を親御さんにつけられて一生不幸になる、ありません。どこの世界に自分の子供によりもっと難しい嫌な名前をつけて苦労をさせましょうという者がありましょう。  大臣、お子さん何人です。夫婦が子供を持つ。そして、この子が丈夫に幸せに育ちますように名前を幾日も幾日も字引を引いたり、参考の文献をあさったり、おじいちやん、おばあちゃんに相談したりして名前を選びますよね。その親が仮に電話をよこしまして、田舎のおじいちゃんに、おじいちゃんのお名前のこの字をおかりして、あした届けに行ってきますと言われたときのおじいちゃん、おばあちゃんの喜びはどんなでしょう。しかしお昼過ぎにまた電話が来まして、あの文字だめだったの、それでこの文字に変えたわと言われたとき、どうですか。政治は人情でしょう。私はせめて名前くらいは、国民の皆さんが子供のために選んでくださるその名前を自由につけさせてあげたい、こう思うのが政治の原点だと思うのですが、大臣いかがですか。大臣からお答えを願いたいと思います。
  204. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先ほど法務省民事局長のお答えを聞いていてそうかなと思っておったら、今度先生お話を聞くと、またなるほどなというような点で、まだこの点については勉強不足でございますので、今少し勉強させていただいてからにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
  205. 滝沢幸助

    滝沢委員 前の法務大臣鈴木省吾先生、私が県議会におりましたとき議長さんでして、そのときも御質問申しました。そうしましたら全く同じお答えをいただきまして、どの程度御勉強なさったのか、その結論が出ないうちに交代なさったのでありますが、謙遜して勉強してとおっしゃいますけれども、どうかひとつ国民の切なる願い、これはもう十人集まってくださる座談会等でこの話を私申し上げますと、必ず、ああそういえば私の孫が、いやそういえば私の嫁が嫁いでくるときの話だけれども、というのが必ずありますよ。  私のところでも幸いに、おととし花嫁さんを長男に迎えました。道子というのですが、しかし最初、お父さんがお考えになったのは由という字にしんにゅう、迪です。それを市役所に行って道路の道と直したというのです。ところが、こういうことはさせるべきじゃありません。特に家によっては、私の家は代々この文字が上に男の子はつくのだというような家はたくさんありますよ。そういうものを私は尊重してやろうじゃないか、こう言うのですよ。  役所というのは、一たんなさったことをなかなか、それは間違っていました、やめますとは言わないのですよ。どうかひとつそこを我々が政治の場でリードして、これは政党政派の議論ではありません。押しなべて親としての立場で、私は結婚式の祝辞のとき、お二人に子供さんができまするころには名前はどの文字を使ってもよくなりますよと言うと、もう会場全部拍手ですよ。それが皆さんの願いですからね。どうかひとつ御理解いただきまして……。  そこで、局長いろいろとおっしゃいますが、二千百十一字といったって、これは全部使えるのじゃないのですよ。御存じのように死ぬなんという名前。そうしましたら、いつかどなたか役人さんが、だって秋元不死男という人がいますよなんて、雅号ですよね。めったにないことです。あるいはまた、殺すという字とか泣く、これも何か、何とか泣菫なんという詩人もおりましたが、雅号は別です。あと仏、没するという字、悩む、変。  そして、私は子供ができましたときに全とつけたのです。なぜかというと、いろいろ理由がありますが、交通安全という人を集めてやれると思ったら、どうしてもしかし、福島県じゅう全部調べさせても交がないのですよ。それなら安全運転はどうだといったら、転がないのです。  そのように名前に使えない文字というのがあるのですよ。ですから二千百十一字といったって使える字は二千字ですよ、そういうことです。  そこで大臣検討される、このぐらいのことはおっしゃった方がいいと思うのだけれども、いかがですか。
  206. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先生御承知のとおり、法務省という役所は入ってみて大変窮屈だなと思っております。できるだけこれから勉強して、弾力を持つような方向で仕向けたいと思っております。
  207. 滝沢幸助

    滝沢委員 時間がなくなりますが、実は大臣、私の政治に入りました動機、私の政治の父は鈴木義男初代の法務大臣、法務庁長官であります。ですから法務省の苦労はよくわかります。  そこで、局長、コンピューター時代、今もパソコンのお話がありましたね。今は何も役場に行って、お互い書いたり何か苦労は要らないのですよ。ぽんぽんぽんと押してみて、それにはみ出すのは、これはだめだ。幸助の幸という字にしんにゅうをつけた字なんかないよみたいな話で、これはいいのですよ。ですから、コンピューター時代なんですからね。何か聞きましたら、六千字というのがコンピューターによってほとんど最低の線だというのですね。六千字まではコンピューターでちょんちょんちょんと受け付け可能になるのですよ。そうしたら三倍になりますからね。このぐらいのことは検討されていいのじゃないですか、いかがですか。
  208. 千種秀夫

    千種政府委員 おっしゃるように、字というのは名前とかかわりなく一つの文化の問題でございますから、その時代によって大変変わってくることがございまして、人名漢字につきましても、先生先ほど御指摘のように既に三回ほど追加されてきた経緯もございます。ただいまのコンピューターの字数の問題もございますが、これは確かに五十六年の臨時行政調査会のときにもその話が出ておりまして、その当時に比べますと、コンピューターはずっと発達してまいりました。したがって、その時代によって人の字の好みも違ってまいりますので、人名漢字につきましては、その時代に即応してやはり変更していくべきものだと考えております。
  209. 滝沢幸助

    滝沢委員 貴重な時間、ありがとうございました。また大臣政府委員の皆さん、ありがとうございました。  終わります。
  210. 大塚雄司

    大塚委員長 安藤巖君。
  211. 安藤巖

    ○安藤委員 裁判官検察官の報酬並びに給与の法案に対する質疑に入る前に大臣に一言お尋ねしておきたいのですが、十月二十二日に当法務委員会におきまして、その前日、総理大臣が衆議院の本会議でなさったアイヌに対する差別発言について、大臣は私の質問に対して、総理に対して閣議においてアイヌの人たちに対しての差別的な言動は御遠慮願いたいというふうに要請をしておきたい、こういうふうに御答弁になった。御記憶に新しいことと思いますが、その約束は守っていただいて実行していただけたのか。そうでないとすると、近いうちに実行していただけるのか、お尋ねしたいと思います。
  212. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 お答えいたします。  この十月の先生の御発言について閣議の前に、先生も御承知だろうと思いますけれども、次の日、新聞紙上に大々的に報道されております。そういうような点で総理自身も、その後のいろいろの会合においても答えが変わってきているのではないかなと思っておりましたし、先生お話が総理自身にもよく御理解願えたなというように承知をいたしておったので、それに重ねて何か月おくれの週刊誌みたいな話を閣議で一週間後にやるというのもどうかなと思って伝えておりませんでした。しかし、改めて、どうしても一言言っておけということになれば、またお伝えしたいと思いますけれども、効果は一〇〇%あったのではないかな、こう承知をしているので、かえってまた言ってというような懸念もございましたので、御了承願いたいと思います。
  213. 安藤巖

    ○安藤委員 大臣はそのように考えておられるようですが、私はまだちっとも効果があったというふうには思っておりませんので、やはりないしょ話をしたわけではございませんので、約束は守っていただきたい、改めて御要望させていただきたいと思います。  そこで、給与法の関係ですが、「裁判官検察官の報酬・俸給月額改定対比表」というのをいただいたのですが、これは大まかに申し上げると、この前の人事院勧告による給与改定、平均二・三一%増、こういうことになっておるわけです。ところが、特別職相当の方、それから指定職相当の方々の増率が二・四%になっておりまして、平均を超えているわけですが、判事補の人たちの改定率を見ますと、全部とは言いませんが、ほとんどが二・三%増、こういうことになっておるわけですね。これはまさに上の方に厚く下の方に薄い、上厚下薄ということになっておると思うのですよ。だから私は、特別職相当の方々、もちろん最高裁長官あるいは高裁長官、最高裁判事の方々ということになるわけですが、こういう方々は増額を遠慮されるか、あるいはもっと低い率の増率にして、そしてかえって判事補の方々の増率を高くするということをお考えになってしかるべきではなかったかと思うのですが、そういうことはお考えにはならなかったのでしょうか。
  214. 根來泰周

    根來政府委員 裁判官あるいは検察官の給与につきまして、従来は一般職の給与というのをにらみまして、それの増額につきまして人事院勧告がございますので、それに応じてそれを上げておるという状況でございます。認証官につきましては、提案理由説明の中にございますように、特別職の給与をにらみまして、それに応じて上げているというのが実情でございます。それがいいかどうかというのは別問題といたしまして、そうしますと、人事院勧告あるいは特別職の給与の改正案がどうだということにさかのぼるわけでございますが、人事院勧告を見ますと、非常に下の方でも二・四%のところもございますし、あるいは二・三%のところもございます。ですから、一概に上に厚く下に低いと言うわけにもいかぬかと思います。  それから、例にとられました、例えば最高裁長官の場合でございますが、これは従来から三権の一方の長ということで内閣総理大臣と見合う給与ということになっております。また、最高裁判事あるいは検事総長は国務大臣の給与と見合う給与ということになっております。  ところで、御承知のように、内閣総理大臣はあるいは国務大臣というのは、昭和五十三年から五十七年まで据え置きになっております。一般職の給与はこの間一年を除きまして上がっておったわけでございますが、据え置きになっております。ですから、細かく申しますと、例えば昭和五十二年には内閣総理大臣の給与というのは指定職の一番上を一〇〇といたしました場合に一九一ということでございましたが、昭和五十七年には、指定職の最高号俸を一〇〇といたしました場合に、内閣総理大臣の給与は一六八ということで相当落ちておるわけでございます。この一六八という数値をにらみましてセットしたところがこの特別職の給与法の改正案ということになっておるわけでございまして、従来から申しますと、内閣総理大臣、すなわち最高裁長官の給与は一般職の給与に比して格段落ちておるわけでございまして、それをにらんでこの俸給表をつくっておるわけですから、ごらんのとおり、この表で見ますと二・四%の増ということで、若干高率かと思いますけれども、全体的に見ますとむしろ低いのではないかというふうに考えております。
  215. 安藤巖

    ○安藤委員 一般職との並びということを強調されたのですが、もちろん最高裁長官を初めとして、裁判官の地位というのは憲法に保障された独立の官署としての重大な、そして立派な地位があるわけです。だから、それに見合った報酬というのがあってしかるべきだと私は思うのです。だから内閣総理大臣と並び、あるいはその上であっても僕はおかしくないと思うのですが、一般職との並びというようなことを強調されますと、例えば人事院勧告が出ても、これは凍結、値切りということになってくると、一般職の並びで凍結されちゃったから裁判官も、値切りされたから裁判官も、こういうことになってはいかぬのだということを私は強調したいのです。だから憲法上に保障された、それから報酬も憲法にちゃんと規定されておる、午後にもお話がありましたけれども。そういう意味で安定的な報酬というものをきちっとつくるべきだということを考えておるのですね。  それから、先ほど申し上げましたように、下に厚く上に薄いというよりも格差を縮めるということで、今で言うと判事補の十二号の人たちなんかと上の人たちとの格差を縮めるというようなことをやるべきではないかというふうに考えておるのです。ですから、例えば、今ちょっと昔の話もおっしゃったのですが、新憲法ができて間もなくの、これは国会の数で言うと第二回国会から第十八回国会まで、昭和二十三年から昭和二十九年までは判事のところだけで申しますと五段階だったのですね。ところが、今は判事特号から八号だけで九段階になっておるわけです。だから、こういうような小刻みでなくて前の五段階ぐらいに戻して、そして、ああ一号上がった、ああまた一号上がった、こういうようなことにちっとも気を使わずに安定的に職務に専念していただける、こういうようなことを考えていただく必要があるのではないかというふうに思っておるのですが、その点についてはどうでしょうかね。
  216. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 ただいま委員指摘のような判事の報酬の刻みが少ない時期というものがあったのは事実でございます。  今までのお話に出ておりますように、憲法の定めにより裁判官は「相当額の報酬を受ける。」ということが保障されているわけでございます。ただ問題は、その「相当額の報酬」というのは、そのほかのさまざまなファクターから一切遊離して宙に浮いたものとしては存在してないわけでございまして、裁判官の置かれている社会全体、さらには裁判官も国家公務員の一員でございます、その裁判官の置かれている公務員の全体の水準、そういったさまざまな経済状況あるいは生活水準といったものすべての中で「相当額の報酬」というものが出てくるのであろうというふうに思うわけでございます。  そういうことから、先ほど根來官房長からも説明がございましたように、裁判官の報酬につきましては、それぞれの裁判官のランクに対応する行政官の報酬というものを置きまして、そしてその行政官の報酬の増額に対応して裁判官も増額していくというようなシステムが長い間とられてきているわけでございます。そして、裁判官の仕事といいますのは、例えば判事は判事として同じ仕事をするというのは事実でございます。しかし、我が国における判事と申しますのは、若ければ三十五歳ぐらいで判事になるわけでございまして、定年六十五歳まで三十年間という長い期間を過ごすわけでございます。その三十年間の間に経験も積んでいき、力量も上がっていくというようなことがございます。そうすると、判事の職に従事する者を、ただ担当している仕事の同質性ということだけではなかなかその報酬額を決めることはできないわけでありまして、そういった現在の裁判官の任用制度、そういうものも前提に置いて現在の報酬の刻みというものができてきているものではないかと思うわけでございます。  それにいたしましても、現在の判事の報酬、先生指摘のとおり九段階でございまして、三十年間というものをその九段階でもって報酬を順次受けていくわけでありまして、一般の行政官に比較した場合にはその刻みは随分少なくつくられていると言えるのではないかというふうに思っているわけでございます。
  217. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろおっしゃったのですが、私の言っている趣旨が全然わかっておらぬなという印象を受けました。やはり憲法に保障された独立した官署としての安定した地位、それから安定した生活ということが送れるように、ある程度の基準というものは必要かもしれませんが、一般職の並びということでいかないで独自なものをつくっていただきたいということを要望しておきます。  次に、中国の残留孤児問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  現在第十四次の肉親捜しの訪日が行われているわけですが、もちろんこの肉親捜しも重要ですが、永住帰国後の自立と定住の問題も重大な問題になってきていると思います。きょうは、そのうち特に身元の判明してない身元未判明孤児の帰国と定住の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  これは厚生省にお尋ねするわけですが、埼玉県の所沢にあります中国帰国孤児定着促進センターが拡充整備されまして、今月の十五日、もうすぐですが、落成式が行われると伺っております。拡充されることによって受け入れの世帯あるいは人数はどれくらい広げられるのかということと、それからその拡充計画の内容。そういうふうに計画をされるについては、帰国をされる人がそういう人数になるだろうということを予想されておると思うのですが、そういう点と、その中で、身元未判明孤児の人たちが大体どのくらいと予想しておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  218. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおり、この十二月十五日に所沢のセンターが収容能力を倍増いたすわけでございます。一応、従来の九十世帯から年間百八十世帯に収容能力がふえるということであります。人員的には、世帯によっていろいろ違いますので一概に申し上げられませんが、平均的な世帯は、従来一世帯四・五人でございます。したがいまして、大体その世帯数に四・五を掛けていただければおおむねの人数になろうかと思います。  このように私ども、所沢のセンターも倍増させますし、実は来年度予算におきましてもサブセンターを全国五カ所に設置いたしまして、年間百五十世帯の受け入れを可能にしたいと考えております。  このように受け入れ能力の増加を図っております背景は、先生今御指摘のとおり、今後重要な課題は、帰国を希望する孤児をいかに早くお迎えして自立、定着していただくかということでございまして、そういう意味でもその受け入れ態勢の整備が必要です。しかし四十年にわたって中国で暮らした方々でございますので、日本語が話せないし、日本の習慣を全く存じない方が多いということもございまして、そういう方々をトレーニングといいますか、オリエンテーションという意味でセンターに入っていただく必要があるということで、このセンターでの受け入れ能力を広げる必要があると考えているわけです。  そこで、私どもの見込みですと、実は二千百三十五人というのが日中両方でこれまでに確認した孤児でございまして、現在の十四次、次の十五次の調査がすべて終わりますと一応全員の肉親捜しが終わるということで、今年度中にこの肉親調査が終わるのですが、その二千百三十五名の方々のうちの、大ざっぱでございますが六割から六割五分の方々が帰国されるであろうと見込んでおります。安全ということを含めまして、一応六五%の方々が帰ってもいいようにということで、そういう方々を今後三年以内に受け入れたい。こういうことで、大ざっぱには千世帯が今後帰国されるだろうと見ておりますので、三百三十世帯を年間受け入れられるような態勢づくりを来年度目指しているわけでございます。  そのうち今未判明の方々がどの程度かということは、実は判明した方々それから未判明の方々それぞれについての帰国希望というものが、過去、どちらかといいますと判明者の方が低く未判明者の方が高いという傾向がございます。これは一つには、判明した方々の場合は一時帰国でとりあえず帰られて、もう一度中国に帰った後改めて永住帰国ということもありますので、そういうこともあろうかと思います。ですから過去の趨勢だけで今後をはかるのはちょっと危険かと思いますが、ごく大ざっぱに申しまして、先ほど千世帯と申したのですが、そのうちの七割強ぐらいが未判明孤児になるのではないかと推測いたしております。
  219. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、中国残留日本人孤児というのはどういう人たちだと厚生省では見ておられるのですか、帰国の手続をしたりいろいろ面倒を見ておられるわけですが。
  220. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  いわゆる中国残留日本人孤児と言われる方々は、終戦直後の混乱で両親と生き別れになって、その後中国の方々に育てられて今日を迎えた方々ということで、日本人を両親として出生した者であるということで、日中両国政府が資料によりその旨の確認を行った者という位置づけをいたしております。したがって、この方々について永住帰国する際にいろいろな援護措置を講じておりますが、いわゆる引き揚げ援護の一環ということで行っているわけであります。したがって、国籍がなくても国籍を有する日本人と同様に引き揚げ援護の対象にしているということでございます。
  221. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、日本人を両親として生まれた者だ、おっしゃったとおりだ。そして戦争終結後もなお中国大陸に残留しておる。そうすると、日本人の未帰還者ということになるわけですか。
  222. 大西孝夫

    ○大西説明員 未帰還者と申します場合には、帰国の希望を持つ方でまだ帰らざる方ということでございますので、厳密に言いますと戦前向こうに渡ってまだ帰っていないが帰りたい方ということになります。孤児の場合は、現地で生まれた方も含めてその後成長されておりますので、ごく形式的に言いますと未帰還という概念にはなかなかはまりにくいわけでございますが、一応戦前渡航した方々の子弟ということもございますので、広い意味の未帰還者。ただし、その場合は永住帰国する意思がある方を未帰還者と同等視するような考え方でこれまで援護措置を講じているわけでございます。
  223. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、今おっしゃった内容については中国政府もそういうような認識を持っておられるだろうと思うのですが、その点はどうですか。
  224. 大西孝夫

    ○大西説明員 御指摘のとおりでございます。  そこで中国側がはっきりしておりますのは、現地に残る方はあくまで中国人である、日本に帰られる方は日本人として扱う、そういう線ははっきり一線を引いておるように受け取っております。
  225. 安藤巖

    ○安藤委員 これは一九八四年、昭和五十九年三月十七日の日中両国の交換した口上書、その中国政府の口上書なんですが「中国残留日本人孤児」、普通今言われている言葉なんですけれども、「日本人孤児」というふうにちゃんとうたってあるわけです。だから今おっしゃったようなことだと思います。  ところで、この未判明孤児の人たちが帰国をして永住をする場合に、これは午前中もちょっと問題になったのですが、日本の戸籍に就籍をするということが問題になると思います。就籍をする方法としては、いろいろあれこれ聞いたり勉強もしたりしたのですが、家庭裁判所への就籍許可申請をする以外に方法はないわけですか。
  226. 千種秀夫

    千種政府委員 就籍ということになるとそういうことになりますが、ほかに日本国籍を取得する方法ということですと帰化があるということでございます。就籍の場合は家庭裁判所の審判を経なければならないということになっております。
  227. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、これまで家庭裁判所へ就籍許可申請をして、そして実質的な審理が行われて結論が出されたという場合ですが、これは百件あって、九十九件が就籍許可が出て、却下が十月の東京家裁の李鳳琴さんの件一件だというふうに聞いております。それは間違いありませんか。
  228. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 私どもが把握しているところでは、残留孤児関係の就籍事件は昭和五十七年一月一日から本年九月末日まで総計二百五十二件ございまして、そのうち既済になった事件が百四十二件、未済が百十件となっておりますが、既済事件の百四十二件のうち認容が百二十四件で却下が四件、取り下げが十四件となっております。却下四件は、申し立てが不適法であるという手続上の不備で却下になったのが二件、身元が判明したということで却下になったのが二件でございます。  委員指摘のとおり、その後十月十三日に日本人の子であるという事実が認定できないという理由で却下になったのが一件ございますが、ただいま御紹介申し上げた統計にはまだ出ていないわけでございます。
  229. 安藤巖

    ○安藤委員 家庭裁判所へ就籍許可の申請をして結論が出るまでに、大体でいいですが、ならしてみてどれくらいの期間を必要としておるようですか。
  230. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 既済事件全体のこれまでの平均審理期間は九・二ヵ月でございます。なお、未済事件の平均審理期間は七・二ヵ月となっております。
  231. 安藤巖

    ○安藤委員 就籍許可の申請をすると大体今お聞きしたような審理期間がかかるわけですが、審理中はまだ許可になっていない場合ですから当然それも含むと思うのですけれども、就籍許可にならないで九十日間たった、あるいは何か特別な事情でさらに六十日間延長したというようなことがあったとして、この期間を過ぎたらその人たちはどういうような扱いを受けるわけですか。
  232. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 先生が御指摘になりました九十日間あるいは六十日間という期間の経過は外国人登録の問題であろうかと存じますが、外国人登録法の規定によりまして特別のやむを得ざる事情がある場合という条項を適用して、通常の九十日間という猶予期間をさらに延長し六十日間、合計百五十日間の猶予を認めておるわけでございます。これは国籍等に関する調査のために時日を要するということが一般的に認められますので、その点を考慮したわけでございます。  しかし、百五十日間すなわち約五ヵ月を経過してもなお国籍について状況が確認されない場合におきましては、外国人登録の義務を生ずるわけでございます。しかしながら、外国人登録ということはその帰国された方々の生活に密接にかかわる問題でございまして、例えば子供が就学をする、あるいは生活保護を受ける、あるいは医療保護を受けるというような福祉関係、教育関係の面におきましても登録が行われるということが前提になっておりますので、これを登録もせず住民登録もできない状態で放置いたしますとその方々の生活そのものに不利なかかわり合いが生ずるということから、むしろその期間を経過する前であってもとりあえず外国人登録をして、そしてその後の手続を進めていただくということもしばしば行われておるわけでございます。
  233. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろ事情あるいは理由をおっしゃったのですが、身元未判明孤児の人たちは就籍許可申請をしている間にも外国人登録をしなければならぬというような状況になっておるわけですね。子供さんの入学の場合あるいは病気になったときの医療の問題等々理由をおっしゃったのですが、これは考えようによってはほかにもやり方があるのじゃないかと思うのです。外国人登録をするということになると、これは明らかに外国人として扱うということになるわけです。午前中も問題になりましたけれども、現在の制度でいえば指紋押捺もする。そういうことで外国人としての扱いを受けるということは、先ほど厚生省の方で言うておられた中国残留孤児の人たちに対する見方、取り扱い方あるいは考え方とえらい食い違っているなという印象を受けるのです。  今もテレビで対面調査の問題、親捜しのことをずっとやっておられます。御案内のようにこれまで何回も行われて、日本国民の非常に大きな関心になっておるところです。ところが、その人たちは未判明孤児として日本に永住希望をして帰国しても、日本人として扱われないで外国人として扱われるということになったら、これは日本の国民の世論としても一体どうなっておるのだ、こういうふうに思うのじゃないかと思うのです。だから、念のために先ほども中国政府の口上書というのをお示ししたのですけれども、中国政府もやはり中国残留日本人孤児ということで、日本人を両親として生まれた子供だ、日本人だという認識なんですね。ところが、日本へ帰ってくると外国人扱いされるということになったら、これは中国との間の外交問題の上からもどえらいことになるのじゃないかということを心配するのですが、この点は何とか考える方法はないのですか。
  234. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 中国政府の称する「日本人孤児」という言葉意味するものは法的な地位では必ずしもございませんので、帰国後国籍に関する調査が行われるということは、その方々の法的な地位を確認するあるいは確立するための手続でございます。法的な関係におきまして日本国籍の補充あるいは就籍が確認されるまでは日本国民として扱うということはできない現在の法制度上の建前になっております。これはその方々に対する国民感情あるいは個人としての感情を離れた取り扱いでございまして、そのゆえにこそ一刻も早く確認を行い得るように周辺が協力をして努力をするということがそういった感情と整合せしめる道であろうかと存じます。
  235. 安藤巖

    ○安藤委員 国民感情と離れたというお話ですが、厚生省当局が中国残留孤児の日本への帰国とその永住の関係についてはいろいろ御努力をされておられる。そして、中国残留孤児に対する見方というのは先ほどお聞きしたとおりだ。中国政府が言うておるのは法的な地位ではないというおっしゃり方をするけれども、やはり日本人として、そして帰国を希望するのだから帰すのだ、こういう扱い方なんですね。大臣、ここのところをよく聞いておいてくださいよ。先ほどから答弁もいただいておるのですが、厚生省、中国政府の考え方は先ほど申し上げたとおりです。そして家庭裁判所への就籍許可申請をして、その就籍許可が出る確率は非常に高い。九九%というところにあるわけですね。そして、孤児の皆さん方にとってみれば、幼いときに、あるいは何が何だかわけのわからないうちにとんでもない状況の中で親御さんから離れさせられてしまって、非常に苦労しながら日本へいよいよ帰れるということで帰ってきた人たちなんですね。だから、こういうような人たちに対しては、やはりきちっとした日本人としての扱いをしてあげるべきではないかと思うのですね。それを、外国人登録をしなきゃいかぬ、午前中問題になったように指紋の押捺、こういう外国人扱いをさせるというのは、これは問題だと思うのですね。  そこで、これは一つの方法ですよ。例えば、これは外務省の方はそんなことできませんと、もう全然首を縦に振っていただけなかったのですが、帰ってこられる希望の人たちには、今、渡航証明書とか中国のパスポートの護照とか、これを持ってみえるようなんですが、日本政府発行のパスポートも渡すとか、そうすれば日本人として来るわけですからいいわけでしょうね。それから、あるいはこれは戦後間もなくのころによくあったのですが、引き揚げですね。外地から引き揚げる。そのときは、引き揚げ証明書というのを発行して帰ってみえたのです、ちゃんと日本人として。だから、これは樺太とか朝鮮とか台湾とかからも帰ってみえたのです。それとちょっとニュアンスが違うということもおっしゃるかもしれませんが、そういうことも一つの方法として考えられるのではないか。あるいは帰ってこられてから、先ほど子供さんが入学する場合あるいは病気になったときに医者にかかるときの保険の関係ということもおっしゃったのですが、それだったら、仮に住民登録ということをさせてあげて住民票をお渡しになるというようなことだって考えられるのではないかと思うのですよ。その点について、やはり外国人扱いというのはひどいと思うのですよ。だから、これは大臣にひとつ大いに片肌、両肌脱いでいただければもちろん結構ですが、しっかり脱いでいただいて、そして厚生省、外務省、それから自治省等とも交渉していただいて、住民票のことも絡みますから、一遍御努力お願いしたいと思うのです。  この問題について、これは衆参両院の附帯決議もあるのですが、第一〇一国会で衆議院社会労働委員会、それから参議院の社会労働委員会、それから一〇二国会でも同じように附帯決議がなされておって、中身は「帰国を希望する孤児の受入れについて、関係省庁及び地方自治体が一体となって必要な措置を講ずること。」これは何回も行われておるのですよ。だから、こういうような附帯決議もあることですので、ひとつ大臣にもろ肌を脱いでいただいて、何とか日本人として扱う方法を勘考していただきたい、このようにお願いをしたいのですが、いかがでしょうか。
  236. 遠藤要

    ○遠藤国務大臣 先生お話よくわかるのですけれども、その決議も、日本人孤児ということがはっきりしておれば、何も先生もそんなに御心配されなくとも関係省庁で配慮することになっておるわけですが、そこがはっきりしないから、こういうふうな今のような問題が家裁において就籍のあれができないというようなことになっておるのではないかなと思います。しかし、本人自身が日本人孤児だと言っておるのですけれども、やはりその点が一体どうやればいいのかということで、今、先生から突然法務大臣に両肌脱いでということになっておるわけでございますけれども、いま少し勉強させて、両肌脱ぐべきか、素っ裸になって頑張るべきかということを、ひとつ時間をおかし願いたいと思います。
  237. 安藤巖

    ○安藤委員 何か歯切れが悪い答弁をなさったのであれですが、先ほどの家庭裁判所への就籍許可申請の申し立てをして、そして許可になる確率は非常に高い。許可になりますと、その前に外国人登録をしておって外国人登録が抹消されるわけね。それを逆に住民票をつくってあげておけば、もう抹消しなくてもいいんですね。だから、抹消する方がもう本当に少ないかゼロに近いわけです。こういうようなこともやはり考えていただきたいと思うのです。  その辺のところは、今聞いていただいたように、とにかく日本人扱いじゃないんですから、外国人扱いされるんですから、これは大変な人権上の問題でもあると思いますので、御努力お願いしたいと思うのです。  このことを要望して、私の質問を終わります。
  238. 大塚雄司

    大塚委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  239. 大塚雄司

    大塚委員長 これより両案について討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。安藤巖君。
  240. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、討論を行います。  我が党は、両法案に対し全体として賛成するものでありますが、しかし、不十分な点や問題点が少なからず含まれていますので、それらの諸点を指摘して我が党の考え方を明確にするため、あえて討論をする次第であります。  まず最初に、両法案賛成する理由であります。  本改正案による報酬、俸給の引き上げ水準は極めて不十分でありますが、人事院勧告に基づいて公務員一般職職員の給与引き上げを行うのに準ずるものであり、その点で、勧告の完全実施を一日も早く実現することが妥当であると考えるからであります。  次に、問題点であります。  問題点の第一は、本改正案が大臣など特別職相当部分を含んでおり、これらについても一般職職員と同様に引き上げようとしており、これは一般国民の生活水準、国民感情、深刻な財政危機などを勘案すれば、もろ手を挙げて賛成するわけにはいかないのであります。  第二は、上厚下薄の給与体系の改善という我が党の従来からの主張に対し、わずかではあるがこれに逆行する増額率となっていることであります。この点は審議の中でも指摘したところでありますが、戦後、現憲法発足当初は、最高裁長官と最下級判事の報酬格差は二・五倍であったのに、順次格差が拡大し、現在では四倍強になっているのであります。  我が党は、引き続き上厚下薄の給与体系を早急に改善することを強く求めつつ、両法案に対し全体として賛成する態度を表明し、討論を終わります。  以上です。
  241. 大塚雄司

    大塚委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  242. 大塚雄司

    大塚委員長 これより採決に入ります。  まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  243. 大塚雄司

    大塚委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、検察庁の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  244. 大塚雄司

    大塚委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  246. 大塚雄司

    大塚委員長 次回は、来る十七日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十九分散会