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1986-12-12 第107回国会 衆議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十二日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 愛知 和男君    理事 北川 正恭君 理事 高村 正彦君    理事 鳩山 邦夫君 理事 町村 信孝君    理事 佐藤 徳雄君 理事 池田 克也君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    古賀 正浩君       佐藤 敬夫君    斎藤斗志二君       谷川 和穗君    渡海紀三朗君       松田 岩夫君    渡辺 栄一君       沢藤礼次郎君    中西 績介君       馬場  昇君    鍛冶  清君       北橋 健治君    石井 郁子君       山原健二郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   久保庭信一君  委員外出席者         外務省アジア局         中国課長    槇田 邦彦君         大蔵大臣官房参         事官      森田  衞君         厚生省援護局庶槇         務課長     大西 孝夫君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 十二月十二日  義務教育費国庫負担制度現行水準の維持に関する陳情書(第一九一号)  義務教育施設等整備促進に関する陳情書外一件(第一九二号)  私学助成に関する陳情書(第一九三号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 愛知和男

    愛知委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬夫君。
  3. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 秋田一区の佐藤敬夫でございます。  教育改革は票にならないと言われながら、しかし、一生懸命十年間苦節の努力をいたしまして、やっと国会議員になることができました。きょう初めて、しかも思いがけなくも早く質問機会を与えていただくことができまして、関係諸各位の皆様方に本当に心から御礼を申し上げたいと思います。ただし質問の時間はわずか三十分でございますので、大臣とは日ごろいろいろ御指導もいただいておりますし、簡潔にしかも明確にお答えをいただければ大変ありがたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初質問でありますが、臨教審が発足して来年の八月で大体終了されるということになっておるようであります。ただ、これまでの臨教審審議というものを私なりに強い関心を持ち、深い興味を持ちながら見てまいったわけでありますが、その結果、何か自分自身気持ちの中でももう一つ物足りなさというのでしょうか、そういうものを感じているわけでございます。何か期待にこたえていない、そしてまた、国民全体の中からも何かもう一つ突っ込みの不足というものを感じておるのではないかな、そういうふうに思っております。  この答申に対して大臣はどんなお気持ちを持っておられるか、あるいは感想でも結構でありますが、お答えをいただけたらと思います。
  4. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 御承知のように第一次、第二次と答申が出てまいりまして、その答申の出る前に経過報告その一、その二、その三と出てまいりました。まだ最終的な答申が出ておりませんので、臨教審のおっしゃっておられる教育改革の全体を把握することはできませんけれども、我々としては臨教審に対してこういう考えを持っております。  今まで長年にわたりまして文部省教育の現場を中心にして改善を進めてきましたけれども、今日の社会の変革というもの、これはそれを飛び越えて非常に早い勢いで変化してきておる、その場合、社会人が見た教育改革はどうあるべきかということを臨教審がとらえて改革提案をしておられる、こう思うております。  そこで、おっしゃるように何か割り切れないものがあるというのは、私もそのとおりだと思うのでありまして、それはなぜかといいましたら、今いろいろと答申が出ておりますことをどういうふうなことで実施していくかという、そういう財政的なものあるいはこれを進めていくための制度改正への提言、そういうようなものがまだ一体となってきておらない。これは第三次でそれがされるものだと私は思うておりますが、その場合にこそ初めてその提言具体性を持った改革案として生きてくるものだ、こう思うておりまして、それを期待しておるところであります。
  5. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 実は、そういう意味で、次に私が御質問申し上げたいなと思うことの答えが大臣から少し先に出てしまったのでありますが、来年の三月と八月にもう二回の答申がございます。そうすると、その答申に対して大臣としてはどういうことを予想されるのか、今のことをもう少し具体的に国民がわかりやすくとらえるというならば、どんな答申というものを予想されるのか。予想されるということにお立場お答えにくかったら、どんなことを期待されてその二回の答申を見守るのかということについてお答えいただきたいと思います。
  6. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 その期待一つは、要するに、改革といいますけれども、現在あるものを改革して、このように新しくやり直したらどうだということになるわけでございますから、当然そこには、現在やっておる制度よりは改正する方がこういう点においていいではないか、またこういう点において重大な意味があるではないかという、そこの簡単な言葉でいいましたらメリット、デメリットとでも申しましょうか、それをひとつ明確に分析をして答申の中へ盛り込んでもらいたいということが一つと、それを実施するについて裏づけとなる財政的な、あるいは社会が受け入れていくような環境づくりについての一つの御提言も私は期待しておるものでございまして、そういうようなものがセットになって、ああ、なるほどこういうことになってこうすればできるのだな、それだったらこの答申を積極的に進めていこう、これは国民の合意もとりやすいと思いまして、そういう点も期待しておるわけであります。
  7. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 この二、三日の委員会の、社会党や公明党の委員皆様から御質問がありまして、戦後、諸先輩のいろいろなお力によって日本教育設備的条件というのが、もう前の時代と比べたらこれは段違いの差でよくなってきている。日教組が、政治教育に口を出すな、介入するな、設備だけつくっていればいいのだというなら、その期待に十分こたえてきた、私はこう思うのですね、わずかな財政の中の運用を本当に確かめ合いながら。しかし、教育そのもの、あるいは社会全体における民族としてのなにが何か軽くなっていく、十分に教育が行き渡っていながら、何か民族としての世界から見た人格形成というものは国民的にないなという感じがだんだん強まっている。  先日のビートたけしさんの質問にありますように、マスコミというもの一つとらえてみても、我々の学生時代から伝統的な栄光ある出版社といえども、やはり大勢の感覚というのですかそういうものに迎合して、公的機能というものを忘れてしまった、営利的な指向だけで物事を選択されている。とても残念なことだ。そして、出版するものを見てもエログロ・ナンセンス、最後になれば見せたくないものまで全部裸にしてしまうというようなことに、だれも問題を感じていないとすら受け取られるようなことが続いているわけでありまして、私は行き着くところまできたのかな、それこそ本当に戦後教育の見直しを、ここで文部省も我々もしっかりせなければいかぬなという気持ちを持っているわけであります。  そんな意味で、時間がありませんので簡単にお答えをいただきたいのでありますが、中曽根内閣の中には臨調というものと臨教審というものと二つ、これは大臣は、この位置についてどっちが上で、どっちが下なのか、あるいはそれは並列なのだということについて、どうお考えを持っておられるかちょっとお答えいただきたい。
  8. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 お答えいたしますが、これはなかなか難しい質問でして、臨時行政調査会のあの延長として臨時行政改革推進審議会、これと臨時教育審議会と並列し、あるいは比較するということは、私はやらないのであります。  それはなぜかと申しましたら、行政改革というこの精神は、あらゆる行政に共通だと私は思うております。ですから、行政改革をやらなければならぬというのはもうこれは一般論として当然のことだ。それと、それでは臨時教育審議会が矛盾するか、全然矛盾しておらないと私は思うておるのです。  それはなぜか。教育改革というのは教育ソフト改革でありまして、要するに教育行政改革とは看板を上げていないのであります。教育改革と上げておるのです。ですから、教育行政行政改革は当然やっていかなければならない。文部省だってその対象の一つだと私は思うておるのです。しかし、佐藤さんがいみじくも質問されたように、もうそういうハードの面はできてきた。これはまさに行政改革していかなければならぬ、そのハードの面は。しかし、おっしゃるようにこれからもっと精神的なもの、ソフトの面、これについては積極的な改革をしていかなければならぬ、私はそう思うのです。  それで、臨時教育審議会というのはまさにそういうソフト面における改革提案であって、教育行政についてはやはり行政改革の路線というのは生きてくるものだ、こう私は思うのであります。  したがって、昭和六十二年度の文部省予算におきましても、重点ソフトに置いております。例えば大学研究体制をやるとかあるいは私立学校研究体制を強化育成しようというような、そういうソフト面重点を置いてこれから文部省の活路を開いていこう、こういうことでございますので、私は、行政改革推進審議会臨時教育審議会お互いに矛盾し合うものではないという解釈の上に立って処理しておる、こういうことでございます。
  9. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 私は、臨教審というものの存在考えますと、もう少しはっきり割り切った、しかも教育文教に我々が今後一生懸命努力していくというなら、大臣がおっしゃったように、臨調行政改革を言うんだ、そして六年間その方針に基づいて、文部省予算とてゼロシーリングあるいはマイナスシーリングとして耐えに耐えてきたわけですね。しかし来年の一月には、きのうの朝日新聞でありますが、「今度は「教育中曽根」前面に」、世界教育家を集めて教育サミットを開催する、こう出ておる。これは大臣ももう計画になっているのでしょうが、こういうものを国際的に本当に臨教審を頭に置いて二十一世紀に向かう教育といったときに、臨調行政改革だけをやるんだという枠の中で臨時教育審議会というものの位置をとらまえて、財政背景が何もないという状況でいったら、語ることをする教育であっても実行する教育の二十一世紀にはなりませんぞ、こういうことではないかというふうに思うのですね。だとすれば、例えば六十二年度の概算要求中身を見ましても、じっとしているだけで七百億の人件費が黙って加わっていくわけでしょう。これじゃ一体文部省はどこを切り詰めろというのですか。大臣政策としてこれ以上切り詰められるものがあるのですか。その辺について大臣は、その七百億の人件費の上乗せになっていくようなものについて、新しく教育政策の中で切り詰められるものに何があるか。時間もありませんので、簡単にお答えいただきたいと思うのです。
  10. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 お尋ねのポイントは非常に厳しいところをついておられるので、この点につきましては、我々は当初概算要求をいたしましたときには、ベースアップはね返り分なんていうのは予想しないでやっておるわけでして、ベースアップはね返り分が来たからといって政策的経費を削ってこれに充てるということは、まさにおっしゃるように新しい文部省の行き方としてしてはならない、我が身を削って人件費を使っていくということは許されません。そこで、このはね返り分大蔵省責任において処置してもらえ。政策的経費文部省が持っております一般物件費と申しましょうかそれを含めて、そういうようなものを削り込んでそれに穴埋めするということは許さない、これはもうはっきりと申しております。ただし、ベースアップ分は何かで処理しなければなりませんので、これは大蔵省知恵でやってもらいたい。  そして、もう一つ条件をつけておりますのは、文部省が今まで既存の制度として持ってきておる、義務教育責任者としての文部省の持っておるいろいろな制度があります。この制度権限であるとか実態に傷つけるようなことをして穴埋めをされては困る、この条件をつけておるのです。これはひとつ自民党の皆さん方も応援していただきたいと思います。
  11. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 要するに、今大臣からそういう大蔵省との関係お話もいただきましたが、例えば、これ以上どこも切り詰められないから自治省地方負担の中から、地方自治体にもう一度しわ寄せしようなんということがこれ以上行われていったら、教育自治省でやってくれというようなことになりはしないか、本当にそんな心配まで気になるわけでございます。  時間がありませんので急ぎますが、ですから臨教審位置づけというのはもっと明確にして、臨教審教育改革をやるんだ、そして、先ほど言いましたような中曽根内閣の手で行われるところの世界じゅうの教育者を集めてやる教育サミットの中では、日本で開催されるということでありますから、二十一世紀に具体的にこういう財政背景を持って行っていくのだという、例えば、いろいろ厳しいと言われながらも国の予算の中で防衛費だとかODAなんというものはやはり特枠としてどんどん上がっている、表現の仕方はいかぬのかもしれませんが、しかしそうであるわけです。それなら、本当に二十一世紀に向かって教育サミットを行うんだ、それを行って、その目的どおり国際社会の中で日本教育界を改善するんだというなら、私は文部大臣に、総理に向かって、文部省のこれからの二十一世紀に向かう教育費特枠にせい、こう言いたいのでありますが、こういうお気持ちがありやなしや、お尋ねしたい。
  12. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 いろいろな表現の方法はあると思うておりますが、おっしゃっていることと同じことを私は総理にもお願いしておるわけであります。それはどういうことを言っておるかといったら、確かに教育行政の中で合理化をしなければならぬものは努力いたします、しかし新しい時代に向かっての文部行政なり教育行政で必要な措置費対策費といいましょうか政策費といいましょうか、そういうものは新規のものとして要求しておるものを全部認めてもらいたい、これは文部省の財源の中のやりくりによって認めるのではなくして新規に認めてもらいたい、こういう要求をしておるのであります。そこで、一番障害となってまいりますのはベースアップはね返り分、これは文部省の手には負えない、大蔵省で処置してもらいたい。ただし、この処置について、義務教育制度であるとか、今まで文部省権限あるいは責任としてやっておる制度を傷つけるようなものを持ってきてこれを処置されては困るという原則は打ち出しております。
  13. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 ぜひそういう努力を、文部大臣を先頭に政府委員皆さんも、文部省皆さんもよろしくお願い申し上げたいと思うのであります。  これまで五カ月、政治家として各委員会、各会合に出席さしていただきまして、お役人側皆さん方は、なぜできないかという書類はこんな山積みに持ってきますけれども、どうすればできるのかという書類はわずか二、三枚しか出さない。どうしてもその傾向から、もっとエキサイティングする文部省というイメージをつくっていっていただきたいと思うのです。御期待を申し上げたいと思います。  最初に、臨教審臨調という枠の中から十五分のお話をちょうだいいたしました。物足りないのでありますが、後の質問でせっかく御用意いただいたところもあると思いますので、御質問を変えさせていただきたいと思います。  実は、愛知委員長も参加をされております、二階堂先生中心とします日米貿易拡大促進委員会というものがございまして、アメリカの上院、下院の議員中心としまして、かなり数多くの方々と日本の政財界の皆さんとで、十一月二十日ごろにその委員会を開催されて、中身が出ました。その中に米国の大学分校日本につくりたいという話が出た。これは、過疎化している現象を持っている地域が、我も我もということで、いろいろ準備は新聞あるいは文部省が想像するよりもはるかに早く進んでいるようでありまして、アメリカでも五十七校が進出を打診してきております。既に準備局もできておりまして細かな打ち合わせをされている。これは私は高く評価するもので、ぜひそういう形で新しい日米交流機会というものが始まってほしい。ただ文部省として、どなたがお答えいただくのか、これはできれば文部大臣お答えいただきたいのですが、これは教育的立場誘致をされるのか、全く教育とは関係なく、貿易摩擦解消のためのいわゆる企業誘致のような意味で呼んでくるのだという位置づけに思っておられるのか、文部省としてはどんなお考え方を持っておられますか。
  14. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私、これは非常に重大な問題だと思いまして、実はまだ具体的な相談が文部省にも来ておりませんのでとやかく論評することはできませんけれども、これが今のような貿易摩擦解消一環といいましょうか、貿易摩擦関係してこういう問題が出てきておるということではなくて、将来においてこの実態がだんだんと明確になってまいりましたら、日米間で非常に悪い影響をもたらすと思うのです。  文部省考え方というものは、あくまでも学問の交流であり、文化交流であり、そしてお互い学生を通じてそういう文化交流を進めていこうというのが本意であって、企業誘致であるとかあるいは貿易摩擦一環として学校存在を決めていくというようなことは大変な誤解ではないか、私はこう実は思うておるのでございます。アメリカ側日本提案に対してもし何か期待的なものを持ってくるとするならば、そういうことがあるとするならば、事前に私はぜひ一回アメリカ側文部省に照会をしてもらいたい、こう思うておるのです。
  15. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 私は決してこの問題に水を差すのではなくて、できればそういう形が何らかの形で、文部省とのかかわり合いの中で進んでほしいなと思うものであります。というのは、何がアメリカ大学の特色なのかということは、明確にその打ち合わせの中で、アメリカ教育制度に準ずる大学である、こう言っているわけですね。そして入抜方式というのは、日本大学に入れないような子供たちはだめですよ、全部英語でやるんですよというのですから、相当レベルの高い部分の学生期待しておられる。そうすると、そういう過疎のところで誘致をしてみたところで、そういう生徒が果たしているのだろうか。せっかく条件を詰めて、しかも自治体は土地を無償でお貸しします、建物はリースにしますと、膨大な自治体からでの予算組みを一応していくわけでありますから、それが日本の公立の学校教育予算の中に影響を与えはしないだろうか、日本のいろいろな教育予算の中にまた悪い影響を与えはしないだろうか、あるいは六十八年から十八歳の年代が大幅に減ってしまう、何ぼ入れようと思ってもその世代が少なくなっていく、そんなとき、せっかく条件が合って進出してきたアメリカのその分校に、出ていってくださいななどという現象になりはしないだろうか。これはもうこれ以上質疑をするつもりはございませんが、でき得れば文部省とのかかわりの中で、どこかの位置で、専修学校とかあるいは何かの意味文部省かかわりを持って、日本のこれから二十一世紀型の教育制度の中のどこかにかかわりを持っているのだということで、丁寧に日米間の交渉を積み上げていただきたいものだという御期待を申し上げておきたいと思います。  質問を変えます。  実は、藤尾前文部大臣のときに、学校教育の中における国歌国旗の問題について御提言がありました。今そのことはもう塩川文部大臣になったから打ち切られたのか、あるいはもしそのことがあれだけはっきり言われた文部行政一つ指導の中であるとすれば現状どうなっておられるのか、今後どうしていかれるのか、お答えいただきたいと思います。
  16. 西崎清久

    西崎政府委員 子供たち日本国民としての自覚、そして国を愛する心情を養うことでございますね。それからやはり国際社会日本人としての育成をしていく。それを学校教育でいろいろ培う意味で日の丸、国旗でございますか、それから国歌についての正しい理解を求める。これはもう歴代大臣もそうでございますし、文部省も一貫して学校教育においては大変大切なことであるということでの行政をずっとやってきておる、これは一貫して変わっておりません。
  17. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 公的なさまざまなものができているわけでありまして、やはり民族というのは、教育もそうでありましょうが、教育はむしろそうでありますが、民族存続性とか歴史、文化、伝統というものを大事にしながら、国際的に日本人というのはどういう人間なのかということを見ていくときの一つ気持ちの統一をする、その中でやはり国家という像が見えてこなければならぬ。少なくともこれからはより積極的に、公式行事における国旗掲揚あるいは修業時における卒業式や何かにおけるときも、やはりきちんと緊張感のある国旗に対する子供たち気持ちをまとめ上げていっていただくような努力をいただきたいと思います。  それから、時間がありませんので、今度は共産党の方のように新人でも九十分ぐらい時間を与えていただければもっといろいろな細かな御質問を申し上げたいと思っているのですが、どんどん前へ進ませていただきます。  幼児に対する教育についてはいろいろ大きな問題をこれから抱えてくると思いますし、でき得れば日本教育制度も、高等教育も大事でありますが、幼児教育が一番大切だと私は思うのです。そして、新しい教育を受けた世代文化の伝承ということがだんだん薄れていって非常に問題が多い。そういうところから、しかし、教職を退職された立派な先生たちが、六十五歳で退職されて地域社会の中でいっぱい遊んでおられる、そういう人たち幼稚園の仕組みと組み合わさして「老稚園」というような、何か新しい幼児教育に対する、勉強を教えるんじゃなくて、日本人が生きてきた文化というものをしかと小さいときに教えていく、そんなことを初等教育あるいは幼児教育の中に盛り込んでいくという発想は現在文部省の中にないものですか。
  18. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘のとおり、幼児教育は大変重要でございますし、現下の大きな教育課題でございます。したがいまして、昭和三十九年に制定された幼稚園教育要領を二十年ぶりにこれから改定して幼児教育の充実をしよう、これが今の段階でございます。  それから、お話にございました「老稚園」という問題、恐らく先生の御趣旨は、地域社会の問題として幼児教育が非常に密接であるので、老人の知恵幼稚園教育にも大いに活用してはどうかという御趣旨に理解するわけでございます。  私どもも、確かに老人の方々が、その地域の昔話とか民話でございますか、それから地域社会における伝統的な遊びとか、そういうふうなものを幼稚園において幼児たちに折に触れていろいろな機会に接触して伝えるということは意義のあることだと思いますし、そういう点について各地域幼稚園幼稚園の運営において配慮されるということは大変に意味のあることではないかというふうに思っておる次第でございます。
  19. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 時間が残り少ないわけでございまして、幾つかの項目を外させていただきますが、ただ、教育のさまざまな、入学試験の問題だとかいろいろなことが、総理大臣お話しされて入学試験が伸びたり縮んだり、文部大臣お話しされて、また皆さん打ち合わせして伸びたり縮んだりするのですが、やはり子供たち立場考えてあげるという気配りが必要なんじゃないだろうかなという気がするのです。私も浪人の受験生の男の子を一人持っている立場なんですが、総理大臣が言ったから来年にはこう変わるのかとか、その一つのことによって、非常に緊張している子供の心情が大きく揺れるわけですね。私はやはり、入学制度改革とかそういうものについては、総理がどんなことをおっしゃろうが、文部大臣が、新しい区切りのいい世代のところできちっとこう変えて、このときからこうしますよとやる。そんなに教育が日がわり模様みたいな形で変わったりなんかするということは本当によくないのじゃないかな。ぜひ子供の心情に立ったそういうものをこれから御理解いただき、あるいは高校生ぐらいになったら、教育現場の方で、受験校として国立大学という機能もあるわけでありますから、そういうものへ向かって少し子供たちの心情のアンケートをとって、どうなんだ、子供たちはこの問題について一体どういう考え方なのかという資料を蓄積しておくぐらいの配慮が必要なんではないかと思いますが、最後の質問になりますので、ひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
  20. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 大学入試というのは、高等学校以下の教育に大変重要な影響を与えるということでございます。先生御指摘のように、受験生の立場に立って考えていくということは大事なことだと思っておりますし、私どもそういう気持ちで対応してきているつもりでございます。  受験生を預かっているのは高等学校でございますので、そういう意味で、高等学校長協会等の御意見というのを私どもは大切にするという精神でこれまでも努めてまいりました。今回の入試改革に当たりましても、今度のやり方というのは高等学校教育をかなり尊重してくれるいい制度だということで、高校長協会の方からは、いわば全面的に賛成である、ただし実施の時期については子供に不安を与えないように十分考えてくれ、こういうような御要望もございましたので、今回一年延期ということを決めたというような経緯もあるわけでございます。  今後とも、先生御指摘のような子供たち気持ち等もできるだけ把握するように努め、高校側と十分連絡をとりながらこの問題に対処するように努めたい、かように考えております。
  21. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 ありがとうございました。ちょうど三十分の時間でございますし、物足りなさがたくさんあるのでありますが、次の機会にまた御質問させていただきたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。
  22. 愛知和男

    愛知委員長 佐藤徳雄君。
  23. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は、一昨日質問をやりまして、特に高校受験の問題をめぐる、いわき市にあります中学校の有料補習の問題について触れてお答えをいただきましたが、前回申し上げましたとおり、本日若干継続して質問をすることにしておりましたから、冒頭私はこの問題に触れてお尋ねをしたい、こう思っているところであります。  いわき市立の中学校長会が、あの問題が提起をされて以来何回か会議を行いまして、教師は謝礼を受け取らないなどの市教委方針を校長会が確認をいたしまして、現場で徹底させることを決めた模様であります。しかし、高校受験の問題は、本質的な問題をたくさん解決しなければ、局部的な解決をしてもまたもとに戻るという危険性といいましょうか、心配があるわけであります。そういう意味で、後ほどお尋ねはいたしますけれども、高校受験のための補習授業の全国的実態というのは一体どういうふうな傾向になっているのか、もしおわかりでしたらお答えいただきたいと思います。
  24. 西崎清久

    西崎政府委員 端的に申し上げまして、学校教育における補習の実態についての調査は私ども行っておりませんので、恐縮でございますが、お答えの内容がないわけでございます。  それからもう一つ先生おっしゃいました補習につきまして、やはりいろいろ、中身の問題といたしましては個別指導の問題として、一斉授業ではなかなか生徒に定着しない教育中身を補充的な意味でさらに深めるという補習もございましょうし、その目的が進学というふうになっているかあるいはより重点を置いた指導をすると申しますか、そういうふうな補習もあり、補習にもいろいろな形態があるような気がいたすわけでございますが、調査としての結果は私ども持っておりませんので、恐縮でございます。
  25. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は補習というのはあっていいと思います。ただ、その補習の目的が何であるのかということを明確にしないまま、単に高校受験の過熱の中で意識的にそれを行うということになりますと、かなりの問題が起こるわけであります。補習授業というものについての考え方について先ほどお答えをいただきましたが、区別して考えるべきだと判断をいたしますけれども、いかがでしょうか。
  26. 西崎清久

    西崎政府委員 補習の目的、内容の問題でございますが、補習につきましては、先ほど申し上げましたような個別指導の問題として、仮におくれた子供たちがいればそれを補充的に深めるという補習もあろうかと思います。それから、先生おっしゃいました、進学のためのはよろしくないという御意見でございましょうが、中学校教育において、能力、適性に応じた高等学校に進みたい子供たちのためにそれに見合った教育をするということも、やはり中学校教育における一つの役割であろうか。しかし、それが過度のものであるとかあるいは激化された進学競争とか、いろいろ程度の問題もあろうかと思うわけでございます。したがいまして、一義的にこの補習はいけない、この補習はいいというふうな区分をすることは実態から見てなかなか難しいというふうに私は考えております。
  27. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私の経験からも、補習の経験がありますから、条件は違いますけれども、一概に否定できるものではないし、おっしゃるとおり、まさに、理解が深まらない子供たちを引き上げるための個別指導ということはあってしかるべきだと私も思っているわけであります。  それで、特に中学校の場合、福島県のいわき市立で起こったあの有料補習の問題は特異的な存在かもしれませんけれども、しかし、私は、謝礼をもらえるからとかあるいは謝礼をもらうために補習授業をやっている教師は一人もいないと信じたいのです。そうだと思います。しかし、過熱をした受験競争の中で子供たちを希望する高校に上げてやりたいという親の気持ち、そしてどうしても目指す高校に入りたいという子供の気持ち、その上に立って現場教師がこれを受け入れて、同時に、教育に対する情熱から課外の中で補習授業をやってきたのじゃないのか、こう善意に理解をするわけであります。ですから、今まで継続をされてきて、そして既に来年、と申しましても来月でありますが、受験期に入ってくるわけでありますから、子供たちに余り動揺を与えてはいけないし、そして、今まで勉強してきたその積み上げを入学試験にぶっつける、そういう冷静さがあってよいのではないかと私は思っているわけであります。  したがいまして、そういう親や子供の気持ちは痛いほどよくわかるわけでありますが、そうだとすれば、これは単に福島県のいわき市で起こった問題だけではない、根本的には偏差値教育から発生をした高校受験そのものにあると言わなければならないと私は思います。  幸い元文部大臣の森さんがおいでになっておりますけれども、森文部大臣時代のときにも、私はこの問題で何回かやりとりをさせていただきました。基本的な問題でありますから、ひとつ大臣の見解をお伺いをいたします。
  28. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 塾の実態は、先ほども局長が答弁しておりますように、まだ十分把握しておりません。しかし、その塾が厳然として存在してそういう補習をやっておる。ところが一方、親の方にしましたら……。いや、ちょっと最後まで聞いてくださいよ。最後まで聞いてからにしてくださいよ。それに対抗する手段として、学校学校の自主的なものとしてやろうとして、これはやられたのです。ですから私は、この謝礼の問題の性質と、それから、どこでどうしてこの金をだれが集めてどういうふうに謝礼としてやっておられるか、この実態調査して、これが問題がないということであるならば、学校における補習というものをもう少し合理的にやられるように、むしろいい方に指導していったらいいだろう、私はそう思いまして、きょうの朝も局長会議をやりましたときには、そのことを指示しておるのです。  ですから私は、このいわき市で起こりました問題というものは、これは塾対策補習、そして偏差値問題、こういうものを一体として考え一つのいい教材として文部省は徹底的に検討してみろ、こういうぐあいに指示しておるところであります。
  29. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 最後の段階のお答えに私は期待をしたいと思います。十分な検討をお願いいたしますが、いわき市における、まあ問題になっておりましたからいわき市に絞っての話でありますけれども、中学浪人の数はどのくらいになっているかおわかりですか。
  30. 西崎清久

    西崎政府委員 いわき市は大変大きな市のようでございますし、中学校もたくさんあるわけでございます。高校もかなり多いようでございます。ちょっと私どもで調べさせていただいたところによりますと、高校進学にかかわりまして次年度高校進学予定という形での数字があるわけでございまして、六十年度が六百七十人余、それから六十一年度、ことし三月でございますが六百十七人、六百人台の数字があると聞いております。
  31. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 お答えいただきましたように、いわき市は大変広い地域でございまして、県立高校が十四校ございます。そして、私立高校が二校あります。かなり多くの高等学校存在をしているわけでありますが、今お答えをいただきましたように、多くの学校がある割合に中学浪人が県内一という実態なんであります。例えば福島県にありますところの福島市あるいは郡山、会津若松、いわき、これらを抽出して中学浪人の数を調査をした資料があるわけでありますが、いずれも大きな市なんでありますけれども、今申し上げた地域を一〇〇として割り出せば実に五〇%をはるかに超しているのですね。恐らく全国でも非常に高い中学浪人じゃないかと私は思っているところであります。  それで、こういう多くの高等学校があるにもかかわらず、大量の中学浪人を毎年出さざるを得ないという実態があるわけですけれども、よって来るその原因は何だとお考えになりますか。
  32. 西崎清久

    西崎政府委員 お答えの前にちょっと恐縮でございますが、先ほど申し上げました数字は福島県全体の数字でございます。申しわけございません。いわき市の数字はその約半分、したがいまして六十年度が三百五十人余、それから六十一年度が三百人というふうなことでございまして、おわびして訂正をいたします。  それから今お尋ねの件でございますが、高等学校につきまして各県はいろいろ工夫をされて学区制等を設けておられるという点があるわけでありまして、その点において、いわき市の状況としては、いわき市としての学区の中には十校ぐらい含まれておるという実情のようでございます。ただ、そのいわき市の十校の中には戦前からの世の中の、保護者の評価の高い学校が二校ぐらいあるというふうにも私ども聞いておりますし、どうも保護者、子弟の傾向としてはそういう学校をぜひというふうなことがあって、それらに入りたいということが中学浪人がいわき市において非常に多いという結果にもつながっているという見解も聞くわけでございまして、いわき市がかなり中学浪人が多いという点はそういういろいろな特殊な事情もあるやに聞いております。
  33. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 特定の地域を出してお答えいただくのは私もまことに恐縮に思っているのです。しかし、このまま中学浪人を、しかも県全体の五〇%を上回るような数字を毎年出すということにつきましては、何か問題があろうと私は判断せざるを得ません。何らかの改善策をとらないと、そのしわ寄せは子供たちに全部いくということになると私は思います。今臨教審教育の自由化の問題がかなり論議されているようでありますが、現実からいって、それとの絡みからいうとまた複雑多岐にわたる議論になるだろうというふうに想定もできるわけであります。  それで、改善しないとこれは悪循環なんでありまして、恐らく県の教育委員会もそういう点については頭を悩ましながらそれぞれプロジェクトチームをつくって検討を始めると言っておりますけれども、改善の方法はありますか、もしあるとすればどのような改善が望ましいと思われますか、お答えください。
  34. 西崎清久

    西崎政府委員 高校入試過熱の問題につきましては、一つは、高校入試制度の改善の問題があろうかと思います。この点につきましては、一昨日も若干触れさせていただいたわけでございますが、昭和五十九年に私どもが各都道府県に通知した内容としては、複数受験の問題、あるいは入学試験における複数の資料による入学の判定の問題とか、推薦入学の問題とか、入学試験そのものについての改善の問題が一つあろうかと思います。  それから第二点としては、これは一般論で申し上げたいわけでございますが、学区制の問題として各都道府県、これはすぐれてそれぞれの地域教育的な問題として、地方の教育の問題としては非常に大きいわけでございますけれども、学区制と入学者選抜とのかかわりを、例えば中学区、大学区、いろいろございますけれども、これらを総合選抜にするとか、都市部と郡部との志願の状況について一部流入を認めるとか、一部限定的な区域を緩和するとか、学区制そのものについての工夫というものも、これは各都道府県がいろいろな工夫をし、工夫をしながら改善をしたりまた改定をしたりというふうな歴史的な沿革があるわけでございますが、そういうふうな問題が第二点。  それから第三点としては、中学校における進路指導の問題。高校入試の問題とのかかわりもございますけれども、中学校における進路指導も適切に行い、その進路指導を適切に行うという中には、過熱した受験競争が起きないようにというふうな問題への配慮も含まれるわけでございます。  そういうもろもろの施策を講じながら高校入試の過熟状況を解決していくということが、それぞれの都道府県に課せられた一つ政策課題であろうかというふうに思っているわけでございます。
  35. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大分重要な部分にさわっていただきまして、私どももこれから検討するのに非常に参考になるお答えだと理解をいたします。  ただ問題は、これは全国的にそうなんでありますが、現実にどういう状況で行われているかというと、子供たちの偏差値、点数によって希望しない学校であってもその学校に入学させられる、試験を受けさせられるという傾向があることは否定できないと思うのです。それは点数で割っていくわけです。ですからよく言われる輪切りだということを言うのであります。しかし、これは教育機会均等から明らかに反するものではないかというのも、国会あるいはこの文教委員会の論議でも今日まで皆さんがかなり主張されております。私もそうだと思うのです。  そこで、点数で学校を選ぶのではなくて、機会均等の上に立った子供たちの入学選抜を重視しなくちゃいけない。そうでないと学校間格差がどうしても出てきます。優秀な子供たちはAという高校に行って次のランクがBという高校に行ったと仮定すれば、それは高等学校の中に学校間格差が生ずるということは明らかなんであります。そこが今問題になっているところなんです。  それに、学区制の問題が出ました。地元の新聞でこのいわきの問題が大分取り上げられて、新聞投書もたくさん出されておりまして、私も関心を持って読んでまいりました。そこで指摘されるのは学区制の問題なんです。非常に広い地域の中に県立高校が十四、私立高校が二、合計十六ある。私立はわきに置いたとしても、県立が十四校あって、しかも中学浪人が県下一、あるいは極端に言えば日本で最高ランクに位置づけられるほど数字としてはあらわれてきているわけです。そうなりますと大学区でなくて、もっと縮める、例えば中学区であるとか小学区であるとかということが検討される時期に来ているのじゃないかという感じもいたします。これにも、そうすると希望する学校に入れないじゃないかという議論も子供たちや親の中から出てくるに違いありません。いろいろ複雑多岐にわたりますけれども、しかし、今日の状況は単にいわきで起こった問題だけではなくて全国的にそういう傾向があるわけですから、それについては、先ほどお答えいただいたような高校選抜の改善の問題を含めまして、学区制の問題についてきちんと文部省は見解を明らかにすべきだと思うのです。いかがでしょうか。
  36. 西崎清久

    西崎政府委員 学区制の問題につきましては、従来から、文部省としても、これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律に学区制の根拠規定があるものでございますから、その根拠規定に基づく指導通知が出ておりまして、この点は三十八年以降、学区制としてあるべき姿という意味での通知がございます。内容といたしましては、一つの通学区域内に数校の高等学校が含まれるようにすることが適当である、しかし、この場合においても、生徒の通学の便や地域の要望等を考慮して通学区域の広さやその中に含まれる学校数を適切に定めるようにする必要がある、これが基本的な形での通知でございます。  現状で、私どもも調べておる次第でございますが、小学区は、一区で一校というのはちょっと問題でありますが、数校が含まれるようにということでございまして、中学区としては、一学区について二校から六校という押さえ方をしております。それから大学区としては、一学区に七校以上、こういう押さえ方をしておりまして、現在各都道府県、いろいろございますが、中学区と大学区を併置しているという県が一番多数で、約半分、二十一県ぐらいございます。福島県もそのようでございますが、やはり基本的には、先生もお触れになりましたように生徒が全く選択の機会がないというのはよくない、したがって一区一学校というのはちょっと避けてくれ、これが基本でございます。それ以上に何校含まれるのが適切かというのは、その県の事情にもよりますし、県によっては中学区と大学区を併用しているところがありますから、これはもうすぐれて各地域の問題として私どもはとらえざるを得ない。  ただ、そこで、先生御心配のような中学校の進路指導において偏差値輪切りということは、私どももこれはいかぬということは従来から言っておりますし、やはり適切な進路指導がそこにあるべきだとは思いますが、そういう中学校教育との関連におけるいろいろな形での通学区域が適切に定められるべきではないか、これは県の事情によりますので、国がある県についてこうあらねばならないという指導をするのはなかなか難しい、こういうふうなところが現状でございます。
  37. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 これは論議の多いところでありまして問題点も含まれているわけでありますが、しかし、今日、日本教育の荒廃の現状を考えましたときに、過熱した受験競争から子供たちを開放してやらなければいけない、これは私は政治責任であり行政責任であるというふうに考えているわけであります。これから私どももいろいろな実態調査を行ったりあるいは勉強させていただいて次の国会でも幾つか問題の提起をさせていただきますから、どうぞひとつ十分検討いただくと同時に、やがて来年に入りますともう目の色を変えて子供たちが受験に取り組むわけであります。そういう気持ちを大事にしながらも、そしてもっと本来の教育の本質に立った、高校の選抜はどうあるべきかということをぜひ打ち出すことを期待いたします。  次に移ります。文部大臣、今度は塾の問題についてお尋ねをさせていただきます。  兵庫県の西宮市に浜学園という進学教室、つまり塾がございます。関係者の皆さんが私のところへ資料をいっぱい持ってきました。これは新聞にもかなり大きく取り上げられて私も驚いたわけでありますが、ここに資料を持っております。その中身と申しますのは大変な中身であります。「中学受験 浜学園セブンポリシーズ」という表題をつけまして、入塾を希望する父兄を集めまして渡して説明したのですね。後で大臣にお見せいたしますけれども、その中身はこういうことなのです。  「小学校五年・六年の算数や国語の授業は全く役に立たない。理科・社会についても殆ど役に立たない。六年二学期以降は拷問に等しい取扱い(知的優秀児にとっては、身体を拘束され精神の自由を奪われたことになる。憲法第十一条基本的人権保障規定違反と)」こう書いてあります。そして、これを受けに行くこと、つまり小学校に通うということをできるだけやめること、これは子供にとっての正当防衛であると書いてある。ちょっと、ちょっとどころではなくて全く理解ができない。つまり学校へ行くなということですよ。だから塾に来て勉強しなさい、そうしないと有名私立校には入れませんよということです。御承知のとおりあそこは幾つか有名校がありますけれども、私も調べさせていただきましたが、例えば私立の有名な灘中学校に入る、そしてそこから灘高校に行く、そして東大、東大の合格率が非常に高いことは御承知のとおりだと思うのです。あるいは甲陽中学校、これは私立であります。同じようなケースがある。有名校志向の弊害がこんなところに来ていると思いますけれども、公教育をまさに否定するようなこういう宣伝、これには私は驚いているわけであります。  そこで、まずお尋ねしたいのは、これは基本的な問題ですから文部大臣に、公教育とは一体何ですか、そして公教育のあるべき姿というのはどういうものですか、お考えを聞かせてください。
  38. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 公教育という表現、ちょっと私もわかりませんが、そこで言っておる公教育というのは義務教育であって、しかも公立の学校のことを名指しておるのではないかと思うております。
  39. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 初中局長に伺いますが、公教育についての考え方を示してください。
  40. 西崎清久

    西崎政府委員 公教育につきましては、ただいま大臣が申されましたとおり、まず一つ義務教育がございまして、これは憲法、教育基本法に基づきまして、国と地方公共団体が責任を持って実施するという内容でございます。それからもう一つ、その上の段階、高等学校、それから学校教育法に定める一条学校、高専も入るわけでございますが、それらについて、国等が基準を定め、そして内容を定め、学校の設置基準等を定めて、それぞれの学校についての教育の実施内容について公に責任を持っていく、そういうふうな点でやはりそれらのものをも公教育というふうにとらえられると考えております。
  41. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 塾といってもやはり教育産業、教育企業だというふうに私は受けとめざるを得ません。先ほど塾の問題について若干大臣の方から触れましたけれども、塾そのものを私は全く否定するものではありません。いろいろな塾がありますから、それに適合した対応をすればいいのでありまして、ただ問題は、浜学園で現在起こっているような実態、後で詳しくその実態を申し述べたいとは思いますけれども、塾の問題についてはかなりいろいろな提起がございます。ひとつ大臣、あるいは局長、どちらでも結構でありますから、塾についての考え方をお示しをいただきたい、こう思います。
  42. 西崎清久

    西崎政府委員 塾につきましては、その設置形態その他、いろいろ多様なものがあるわけでございますが、一つ申し上げられることは、学習塾を含めまして塾というものは一つの私教育である、先生おっしゃいます公教育に対しましては私教育である、それが一つございます。それから、その私教育に子供を託するかどうかということは親の判断にゆだねられているという点がもう一つあろうかと思うわけでございます。したがいまして、私ども文部省立場から申しますと、行政の法律により与えられた文部省権限からは及び得ない分野である。それからまた、都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会立場からしましても、塾というものが私教育であり、そこへ通う者が親の判断によって行っておるということからいえば、やはり地方の教育行政機関も及び得ない分野である、現状としてはそういうふうな存在になっておるというのが事実であるというふうに理解しております。
  43. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そんなに時間があるわけではありませんから、多くのことを申し上げることはできませんが、特に大学教育高等教育の問題についてはよく議論をされるのは、今日の日本高等教育というのは七割ないしは八割が私立でその役割を果たしている、それは私もまさにそのとおりだと思います。だから、その面では、高等教育をもっと充実強化をさせるためには国の助成金が必要ということは、関係者のみならず国民全般的に、その補助金の引き上げについての要請もあることも御承知のとおりだと思います。だが、塾と違いまして、私立学校というのは大学も含めましてみんな建学の精神を持っているわけです。その建学の精神に沿って、そして理想を追求しながら子供たち教育していく、これはもう当然だと思います。ところが塾というのは全然違うのですね、そういう意味では。一定の方針は資料にもあるようですが、しかしそれは私立のような建学の精神、歴史的伝統を持つものとは違う、明らかに有名校志向を助長させるような、そういう仕組みの中で塾が開催されているという実態なのですね。  若干資料をもとにして申し上げますと、この浜学園という塾は生徒数が何と八千九百人なのだそうです。それで、うち五千人が小学校の児童であります。小学校の五年生ないしは六年生が学校を休んで塾に集中して有名私立校に行くための準備をするというのは、全国でも珍しいのですね。私は今高輪宿舎におりますけれども、ときどき仕事の関係で、あるいは会議関係で、午後九時ないしは九時過ぎに帰るときがたまたまあります。電車の中ではやはり小学校子供たちがランドセルをしょって、そのころ帰るのか一たん帰って塾に行ってまた帰るのか知りませんけれども、何人か見受けます。どうなっているのかなあ、そんな疑問を抱きながら子供たちを眺めてきた経験が何回かあるわけでありますが、小学校の児童であるだけに、これは少しゆゆしい問題じゃないかという判断を私自身しているわけであります。授業時間は週三回行って計六時間、そして、これは報告によりますと、全部が全部ではないでしょうが、毎年十一月から学校へ行かずに自宅学習をする、そして大手の進学塾に通う、こういう状況のようであります。  それで、浜学園の教育基本方針というものをいただきましたが、これは文部省の徹底批判ですね。必要だったら後でお見せいたしますけれども、臨教審に対する批判なんというのは物すごい批判をしております。そして文部省批判、教育の現状についての批判、こうなければならない、だから我々の教育を受けるべきだ、こういう主張なんですね。ところが、親の気持ちからいいますと、それをうのみにするかどうかは別にいたしまして、自分の子供がやはり有名私立高校に、市立高校に、中学校に入れたい、そしてさらにその上の高等学校に入れて大学に入れたい、この気持ちはやはり共通しているようであります。ところが、子供たちの状況は、現実に学校へ行かなくなってしまっているのですね。そして現場の教師も困っているようであります。とめろといってもとめるわけにはいかないでありましょうけれども、冒頭申し上げましたように、基本的人権の侵害であるかどうかは別にいたしまして、一つの塾がパンフレットにして学校に行くべきでないという指導をしているということについて問題があると私は思うのでありますが、それについての見解をひとつお尋ねいたします。
  44. 西崎清久

    西崎政府委員 お答えの前に、先ほど私、私教育と申し上げましたが、先生おっしゃいます私学はそういう意味では公教育でございますね、その分類で申しますと。私学はやはり設置認可なりいろいろな設置基準等がございますから、私学は立派に役割をその時点で果たしており、公教育である。私学を含んだ公教育という概念で私は申し上げておる次第でございます。  それからもう一点、今御指摘の点でございますが、やはり公教育の否定ということで浜学園が教育方針を打ち出しておられるという点は、もちろん浜学園に私どもが直接物を申し上げる立場にはございませんが、私どもの立場としても極めて遺憾であるという感じを持っております。そこでやはりこの公教育の否定、出席をしないでいいという方針について、地域学校子供たちが通わなくなるという事態があればこれはゆゆしいことである。これは地域の都道府県教育委員会、市教委も大変憂慮しておりまして、私どもが聞いておる範囲では、十月十四日付で教育委員会に対して、教育事務所の学校課長会などでの指導をして、学校が児童生徒にとって魅力あるものにするとともに、このような塾等が出現しておるということで欠席などがあるかないか、あってはならないことだから、十分学校が状況把握をするようにというふうな指導を早速、県あるいは市の教育委員会はやっておるようでございます。私どもも最近の状況をつまびらかにしておりませんが、恐らく学校が現在その辺について調査をしておるというふうに聞いております。現実に先生が御指摘のようにそのために休んでいる子がいるのかいないのか、まだ私ども報告を聞いておりませんが、現地ではそれぞれの学校でいろいろ調査中であるというふうに聞いておりますし、県の教育委員会等では、もし現実にそういうふうな事態が事実として起きた場合にはどのような対策をとるかについていろいろ考えなければならぬというふうな気持ちでおるようでございまして、私どもはそういうふうな地域における教育行政機関の対応を見守ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  45. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大体考え方はわかりました。多くのことを引用する気もありませんが、私は現地調査に入ったわけではありませんから、報告をもとにしての話ですけれども、例えば、三学期に入りまして、特に一月から二月にかけてインフルエンザを理由にして学校を休み、そして私立中学校の試験を受けに行くという子供が非常に多いという実態、あるいはこれは一月か二月の段階で、月によって一週間ぐらい集中するのだそうでありますが、学級閉鎖せざるを得ないというような状況に立ち至っているところもあるという報告もあります。あるいは体育の時間は体調が崩れるからという理由でそれに参加しないという事例も報告をされています。余り考えられないような事態でありますが、現実に起こっているようですね。現在調査中だということでありますが、これにたまりかねて、県教委と市教委から、有名塾に対して、児童生徒を休ませないように何回も申し入れがあったそうであります。ところが、最近は困り抜きまして、県の教育委員会だといっておりますけれども、有名私立学校に対して、出席日数を合否の判定の基準にしてほしいということを申し入れたという報告であります。まさに公教育を何と心得ているのだろうか、私はこう思わざるを得ません。有名私立高校に入るために学校を休んで塾にばかり行っているというのはまさに異常な形態でありますが、そこにはいたたまれない親の気持ちも入っているのでありましょう。しかし、行政機関である県の教育委員会や市の教育委員会がこのようなことを申し入れなければならない事態にまで来ているという報告が事実だとすれば、私はほっておけない重要な問題だ、こういうふうに思うわけであります。先ほどお考えいただきましたが、大臣いかがでしょうか。
  46. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 浜学園の問題は昨日の参議院文教委員会においても取り上げられまして、私は、見せていただきました資料が本当であるとするならば、セブンポリシーズというそういう考え方は非常に間違った考え方だと思うております。まさに行き過ぎておると私は思うておりまして、実態調査を一回やるようにということを当局に申しております。
  47. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ぜひひとつお願いをいたします。  次の問題に移らしていただきたいと思います。塩川文部大臣の所信表明を、印刷物もいただきましてきのうまた読み返しをいたしました。その所信表明の中で、最後に触れておりますのは、「教育、学術、文化の国際交流の推進についてであります。」その中で文部大臣は、「留学生及び研究者の交流、国際共同研究、外国人に対する日本教育の推進等を図る」ことを御承知のように強調をされております。私はこの点に絞りまして、留学生問題についてお尋ねをしたいと思います。  昭和六十一年四月に文部省学術国際局留学生課が出しました「二十一世紀への留学生政策」という本があります。これは皆さんの方で発行されましたから十分御承知のはずであります。その中身を見ますと、昭和五十九年六月二十九日の「二十一世紀への留学生政策の展開について」という部分と、昭和五十八年八月三十一日、二十一世紀への留学生政策懇談会による「二十一世紀への留学生政策に関する提言」が詳細にわたって載せられています。全部読ませていただきました。特に、留学生政策につきましては、冒頭に強調されておりますように、五十八年六月に中曽根総理の指示によって二十一世紀への留学生政策懇談会が設置をされた経緯があります。これは御承知のとおりであります。特に「留学生政策は、その文教政策、対外政策中心に据えてしかるべき重要国策の一つであるといっても過言ではないであろう。」こう指摘をしているわけであります。そこで、政策の展開なり提言の内容を見てみますと、なるほどよく整理されております。よく書かれていると私は思います。  だが、果たして実態が伴っているのかどうかとなりますと、これからの推進ですから、この本の重要な部分はたくさんありますけれども、現状を見たときに、後で申し上げたいと思いますが、私は幾つかの疑問を持ちました。何かお昼の時間帯に大臣は留学生と懇談するようなお話を聞いておりますので、その意味では私も非常にタイミングがよかったなと思っているわけであります。  それで、細かいことになって恐縮でありますけれども、現時点における国費留学生と私費留学生の数はどのぐらいになっておりますか。国別でいいますと何カ国になっておりましょうか。もしおわかりでしたらお答えください。
  48. 植木浩

    ○植木政府委員 国の数は今大体百三十カ国ぐらいだということでございます。数にいたしまして一万五千人ほどの外国人留学生が今日本大学等で勉強しておりますが、そのうち国費留学生が二千五百人、私費留学生が一万二千五百人、こういう状況でございます。
  49. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 留学受け入れの地域分布はどうなっておりますか。
  50. 植木浩

    ○植木政府委員 出身地域ということで申し上げますと、やはり何といってもアジアが大変多うございまして八五%ぐらいになっております。次に北米地域からが五・七%、さらに中南米、ヨーロッパがそれぞれ三%台、あとは中近東、アフリカ、オセアニアが一%ぐらいずつ、こんな分布になっております。  また、国内での受け入れという意味で申し上げますと、やはり東京を中心とした首都圏、それから大阪、京都の関西地域が数が多うございます。
  51. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 細かい部分になって恐縮でありますが、国費留学生の奨学金の月額は幾らになっておりましょうか。
  52. 植木浩

    ○植木政府委員 大学院レベルで約十七万円、それから学部レベルで十三万円ということになっております。
  53. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 正確には十七万五千円、さらに十三万二千円でしょう。概数を申されたと思うのでありますが、この中に書いてあります。  それで、その他の待遇等はあるのですか。
  54. 植木浩

    ○植木政府委員 もちろん往復の渡航費を日本政府が支給しておることは申し上げるまでもございませんけれども、日本に着いた当初、衣類を買うとか書籍を買うとか、そういう渡日一時金も若干支給しております。それから、国費留学生につきましては授業料は免除をいたしております。さらに、宿舎費の補助を出したりあるいは病気、けがをしたときに医療費補助ということでその八割を補助したり、また研究旅費を支給したり、いろいろな待遇をいたしております。
  55. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 国費留学生の場合、受け入れる宿舎があると思いますが、これは幾つありますか。そして、どこにあるのでしょうか。
  56. 植木浩

    ○植木政府委員 宿舎につきましては、まず国立大学に、全部ではございませんけれども、留学生数の多いところに付設宿舎がございます。それから、民間団体で日本国際教育協会というものが文部省から補助をいたしまして特に留学生の世話をいたしておりますが、ここも東京と関西に留学生の宿舎がございます。このほか、一般の大学学生寮に入っている留学生もございますし、また、数は多くはございませんが、民間の団体で宿舎を経営しているところもございます。  大体、こういった特別な宿舎に入っております留学生が二十数%、残りは一般の民間に下宿をしておるということでございまして、やはり宿舎は東京地区とか京都とかが割合と多いという状況でございます。
  57. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今お話がありました日本国際教育協会のことについてちょっとお尋ねをいたします。ここに従事している職員数はどのぐらいでしょうか。
  58. 植木浩

    ○植木政府委員 日本国際教育協会は本部が東京の駒場にございまして、ここで五十六人の職員の方々が留学生のお世話に従事しておるわけでございます。
  59. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ここに従事しております職員の皆さんの勤務態様はどういうふうになっておりますか。
  60. 植木浩

    ○植木政府委員 勤務態様という御質問で非常に包括的でお答えしにくいわけでございますが、やはり留学生の世話をするという仕事でございまして、もちろんその中枢的な管理部門の事業に従事している人もございますし、そのほか留学生会館で直接留学生に触れるという仕事をしておる人がございまして、近年留学生の数等がふえておりますので、随分努力をして留学生のお世話に従事をしている、このように私ども承っております。
  61. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 当然のことですけれども、労働基準法に基づいてそれぞれ勤務態様を決められているのが常識でありますから、そのように私も理解をいたします。  このいただきました本の八ページを見ますと「留学情報センター機能の充実」ということが書かれております。そして、「海外に居住する留学希望者に対して適切な情報を提供しうる体制を整備する。」また「情報の収集提供能力を高めるために必要な方策を講じ、在外公館と協力し、現地に居住する留学希望者への情報提供を充実させる。」と書いてあります。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、留学情報センター、例えばどういう仕事なのでしょうか、もし説明できれば教えてください。
  62. 植木浩

    ○植木政府委員 基本的には今先生がおっしゃいましたとおりでございまして、近年日本から海外へ留学を希望する人が非常に多いわけでございますが、そういう人への情報の提供、これが第一でございます。それからさらに、外国から日本留学を希望する人がこれまた近年大変急増いたしておりますので、これらの人々に対する情報の提供、こういうことで、いろいろ電話なり郵便なりでのお問い合わせが最近非常にふえておる、これの応対をいたしております。さらに、日本留学への情報が必要だということで、例えば英文の日本大学案内等をここでつくりまして、在外公館等を通じて海外にこれをお送りしておるという大変重要な仕事を行っております。
  63. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そういう重要な仕事に従事している職員の数は、ここは何人でしょうか。
  64. 植木浩

    ○植木政府委員 現在、留学情報センターの所長以下、合計で八人でございます。
  65. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 この情報センターに従事している職員は八人ですか。八人、間違いありませんか。
  66. 植木浩

    ○植木政府委員 八人のうち、兼任をしておりますのが三人で、あとの五人が専任をいたしております。合計八人でございます。
  67. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今お答えがありました、依頼または問い合わせが相当あるそうですね。それで、外国ないしは国内別に、その依頼もしくは問い合わせの件数はどのくらいになっておるでしょうか。
  68. 植木浩

    ○植木政府委員 海外からの問い合わせは昭和六十年で合計七千件近くでございまして、郵便で来るものが三千七百件、電話が二千二百件、来訪が九百件くらいということでございます。  なお、国内からも問い合わせがいろいろございまして、国内についてはちょっと正確な数字がわかりませんが、かなり問い合わせが多いという状況でございます。
  69. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 さらに、前段のお答えの中に日本国際教育協会には国から補助金を出しているというお話がありましたが、補助金は幾らくらい出されて、そして全経費の何割、その割合はどういうふうになっておるでしょうか。
  70. 植木浩

    ○植木政府委員 国庫補助金の金額が十億八千八百万ということでございまして、ここはほとんど自己収入というのはございませんので、全体のほとんどの部分を国庫補助金でカバーをしておる、こういう状況でございます。
  71. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 「二十一世紀への留学生政策」の中にいろいろ書かれておるのでありますけれども、「二〇〇〇年における十万人の留学生受入れ」ということを発表されておるのですね。その受け入れの構想はどういう構想でしょうか。
  72. 植木浩

    ○植木政府委員 先ほども先生からお話がございました「二十一世紀への留学生政策の展開について」、あるいは二十一世紀への留学生政策に関する提言」ということで、いろいろと学識経験者の方に御審議をいただいたわけでございますが、これらによりまして、二十一世紀、紀元二〇〇〇年には十万人ということで、そのうち私費留学生が九万人、国費留学生が一万人、こういった推定をいたしております。
  73. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 圧倒的にというか、九〇%が私費留学なんですね。いい悪いは別にいたしまして、ちょっと前に進ませていただいて、後で私の見解なども申し上げて、大臣の見解をお尋ねしたいと思います。  この本の十四ページには、「大学の留学生宿舎及び一般学生寮の整備」という部分があります。そして「留学生日本人学生が一緒に生活することを予定した学生寮の整備方策を検討し、」云々、こう記載をされておりますけれども、私は非常にいいことだと思います。現状は一体どうなっているんでしょうか。
  74. 植木浩

    ○植木政府委員 一部の大学では、ここに書いてございますように、日本人学生と同じ宿舎に留学生を受け入れているという状況になっております。ただ、大部分の大学等におきましてはまだまだ留学生受け入れの宿舎状況が極めて厳しい状況でございますので、残念ながら留学生宿舎を建てて外国人留学生だけをそこに住まわせているという状況でございますが、将来の我々の課題といたしましては、今先生が御指摘になりましたように、この提言の中にもございますように、日本人学生と外国人留学生がまじり合って同じ宿舎に住むというのが大変よいことであろうと思って、将来の努力課題でございます。
  75. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大臣は、文部大臣に就任されてからそう日がたっておりませんから、なかなかお忙しい方なので、あそこを見に行くことも時間的余裕がないと思いますが、行かれた経験ありますか。そこだけでなくても結構です。
  76. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私も関西の方は知っておりますが、東京の方はまだ見たことはございません。一度時期を見て行ってみたいと思うております。
  77. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ぜひお勧めいたしますから中を見ていただきたいと思いますが、関西の場合についての設備の状況はどうでしょうか、ごらんになった感じで。
  78. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 いや、もうそれは非常に悪いと思うております。
  79. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は関西で見たことありませんからわかりませんけれども、非常に悪いというのではどの程度なのかなと思っているのでありますが、私は先般、日本国際教育協会を視察をしてまいりました。大平総理大臣が一度行かれたりあるいは海部文部大臣がお訪ねしたというお話を聞いてまいりましたけれども、その他の方は余りいらっしゃらないという状況だそうであります。そこで、これはぜひ塩川文部大臣時代に改善するものを改善してやってほしいなという期待を込めて申し上げるのでありますが、留学生の生活実態は非常に悪いと言わざるを得ません。  部屋を見せてもらったんです。三畳間ですね。そして最初ベッドが入っておったそうですが、勉強できないですよ、あれじゃ。だからベッドを出しちゃうわけでしょう。それでいろいろ自分の身の回りの物も置かなくちゃいけない。あるいは六畳が少しありますけれども、広くて六畳ですよ。表現はよくありませんけれども、収容所並みなのかなという感じを実は受けまして、大臣が非常によくないと言ったのは大体類似しているのかな、こう連想をしてみたわけであります。  つまり私から言わせれば、中曽根総理が国際化を強調されておる、あるいは文部大臣も方針の中で冒頭私が申し上げたように強調されておる。まさに世界は狭くなったという感じをみんな受けていますから、その意味で国際化を否定する人は私はいないと思いますけれども、ただ日本を知ってもらう、そして留学生を受け入れる、日本で学んだものを自分の国に持ち帰って中枢的な役割を果たしていただきたい、どこの国の人もあるいは受け入れる日本の側もそう思っているに違いないと私は思うのです。ところが、私はあの現状を見たときに、本当に恥ずかしいなという一語に尽きました。行ってみられればわかります。私は文教委員皆さんにお勧めをいたします。もうあんな状況の中によくもあれだけの人数を入れておく、こう思ってきたわけでありますが、特に肩書のついている人なんか行きますと、三階を見せないで二階を見せるんだそうですね。なるほど二階というのは廊下に何もありません。行かれるのだから掃除もきれいにするのでしょうが、私は二三階と三階を見たのです。三階を見ましたら、歩くのがやっとです。それはそうでしょう、三畳間やあるいは広くて六畳間で、物を置き切れない。我々の今日の日本人の生活は、夏になれば冷蔵庫が必要、あるいはテレビがない家がないというほどでしょう。テレビがあったかどうかわかりませんけれども、私の見た限りではテレビがありませんでした。だが、冷蔵庫を中へ置けないあるいはそのほかの道具が置けないから、みんな廊下に出すわけですよ。これは惨たんたるものですね。そして消防署が来まして注意をされたり警告されるそうです。これは当然だと思いますね。一たんは片づけるけれども、帰ってしまうとまた出さざるを得ないという悪循環のやり方。私は恥ずかしいの一語に尽きると言いましたけれども、あそこでお世話をして一生懸命働いている皆さん、私は本当に大変だなと思いました。だから、こんな収容所みたいなところに住めないと言ってその日のうちに飛び出してしまって、自分でアパートを見つけて住んでいるという留学生が何人かいるそうですね。今日もそれが絶えない、こういう状況だそうであります。  大変な重要な役割をあそこの皆さんは果たしておられるし、留学をしてきた若い人たちが本気になって勉強している姿も見てまいりまして、感服もいたしました。しかし、国際社会を強調している日本の政府が、ああいう環境の中で留学生を受け入れるということは非常に恥ずかしいというふうに思うのでありますけれども、表現の悪さを含めまして申し上げて大変恐縮でありましたが、大臣、ひとつ考え方と同時に、これからの展望についてもお聞かせいただければありがたいと思います。
  80. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、この八月の末でございましたが、マニラでASEAN留学生の連合会の総会がございまして招待を受けて参りました。そのときに、日本に留学した学生でそれぞれの母国へ帰りまして活動しておる者、約百人ほど集まっておりました。そのときに出ました日本での印象は、一番最初に出ましたのはやはり宿舎でございました。  私は、留学生政策、十万人政策を打ち出しましたが、これに対して政府としても基本的な方針をきちっとしておかなければならぬと思うのです。例えばアメリカでございますが、アメリカ世界各国から三十五万人の留学生を受け入れております。お金はそれぞれ奨学資金だとかなんかを出したりしておりますけれども、宿舎だとかそういう世話はしておらないのです。またヨーロッパにおいてもそういう国が多いんです。日本のは、お世話するようなことを言って実際はおっしゃるように本当に惨めなことしかやっていない。私はここの政策をきちっとする必要があると思うのです。期待だけはされるわ、期待して来たわ、それに沿うてないというところ、これは私はもう問題だと思うのです。ですから、国費留学生はどこまでお世話するのかということをきちっとして、受け入れるべきだ。私費留学生に対してはこういうことをいたします。こういうことはきちっとしてもらいたいと思うのです。  それと同時に、日本の習慣といいましょうか、そういうものも全然知らないで来ている人も随分あるんです。例えば民間に下宿いたしましたら、そこでまず第一に問題となってきますのは料理場なんです。料理が全然違いますから、日本人の普通の老人夫婦が受け入れた場合、食事の問題でいつでもトラブルが起こってきてしまう。そういう問題がございますので、留学生を受け入れるについてのそういう宿舎、待遇、そしてそれに対する日本人の受け入れの態勢、向こうに対する認識をきちっとしてもらうということ、そういう基本をまずきっちりしなければいけない。きょうこれから留学生の懇談会がございますが、私はそういう問題の基本をはっきりしてもらいたい、これをひとつお願いしたいと思うておるのです。  それから、先ほどお話がございました国際教育協会の話でございますが、これも特殊法人みたいになっておりまして、この責任が外務、文部省際が非常に複雑になっております。こういうことの責任体制をやはりきちっとやらなければいけませんし、そして、そういう国際教育協会を担当してもらう者は情熱を持った人にやはりきちっと当たってもらわなければいけない。そういう人事配置等も私は重要な問題だろうと思うのでございます。せっかくあるものでございますから、これを充実していかなければならぬことは当然でございます。  そこで、今あります施設を少しでもよくするということ、財政がこんな時代でございますから、そう大きい資金を単年度で投入することはできません。徐々にでございましょうけれども、今ある施設を改善していくことをまず図っていきたい。しかし根本は、私が先ほど申しました留学生政策に対する、いろんなそれに附帯した留学生を受け入れる環境整備という基本問題をきちっと整備をして、留学生を受け入れる政策を推進していく、こういうことをやっていかなければならぬ時期に来ておると思うております。
  81. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 非常に大事なお答えをいただきました。期待をいたします。大臣、ぜひあなたが在任中に、そういう方針が確立されて、日本は恥ずかしいというような気持ちを抱かないような状況をつくってほしい、こう私もお願いしておきますし、期待をしているところであります。  さて、留学情報センターであります。専任が五人だとおっしゃいましたが、私が行ったときは三人しかおりませんでしたけれども、いろいろな仕事の配分があったのでありましょう。あそこにいる人たちは非常に優秀な人ですね。皆さん全部そうですけれども、特にこの情報センターに従事される方は二ヵ国語か三カ国語を話せないと外国人との応対ができないのですね。非常に重要な仕事だと思います。ところが、依頼件数あるいは問い合わせ件数は、先ほどお答えありましたが、外国からは八千件、国内で一万二千件だとここでは言っていました。大変な件数だと思います。これではちょっと職員の皆さんがかわいそうだ。本当に大臣が、今おっしゃるような留学生を受け入れるべき基本政策をきちっとこれから確立をされて、日本に来てよかったという印象を与えながら勉強してもらうためには、そして重要な留学情報センターの位置づけでありますから、もっと充実強化をしなければいけないと思うのです。それで十億円の補助金でしょう。補助金が九〇%ぐらいですね。ほとんど国の金でやっているわけですよ。もっとこの機能を強化する。広報活動の不足もあるでしょう。この充実強化についての考え方文部省の担当の方からお聞かせください。
  82. 植木浩

    ○植木政府委員 ただいまお話のございました留学情報センターにつきましては、先ほど申し上げましたように、特に近年内外からの留学情報の需要が急増いたしておりますので、大変厳しい状況の中ではございますが、私どももかなり努力をしておるつもりでございます。例えば、留学情報センターは今年度は定員を一名ふやしたり、さらに最近は、とても通常の仕事では間に合いませんので、電算機処理ということで、電算機処理に必要な経費を措置するなどのことをやっております。  確かに、先生が御指摘のようにこういった事業が今後とも非常に膨れ上がってまいりますし、また、留学情報センターのみならず日本国際教育協会あるいはそういった留学生関係の事業がますます需要が多くなってまいりますので、私どもといたしましても、今後ともさらにこういったものの充実につきましては十分配慮していかなければいけない、このように考えております。
  83. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 働いている皆さんの勤務の実態等についても見てまいりましたし、そしていろいろお話も聞いてまいりました。先ほど私は労働基準法に基づいてという話をいたしましたが、それは当然なことなのでありまして、ところが実際は平均一ヵ月八十時間も超過勤務しているのですね。一ヵ月八十時間、大変な超過勤務ですよ。留学生のことを考えると帰るわけにいかぬというわけですね。それは当然だと思うのですけれども、しかしそれにしてもむちゃくちゃだなという感じであります。  それで、超勤支給の予算というのは時間で切っていますか。つまり実際に超過勤務をした時間数だけ支払っておりますか、それとも途中で限定して切っていますか、どっちです。
  84. 植木浩

    ○植木政府委員 ちょっと残念ながら、そこまでは私も存じておりません。
  85. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 金をもらうためにということではないと思います。もう大変な心労でしょうね。後で調べていただきたいと思いますけれども、超勤した分を全部支払ってもいないし、支払える能力もないというように私は思っています。  問題は、この重要な留学情報センターを先ほどのお答えのように充実強化するというなら、人をふやすべきだと私は思いますね。人をふやさない限りは解決できない。予算が伴いますから即答はできないかと思いますけれども、そういう状況をつくり出していく、検討するという考えはありますか。
  86. 植木浩

    ○植木政府委員 こういう厳しい行財政状況下でございますので、人間をふやすことも簡単ではないわけでございますが、過去におきましても私ども及ばずながら充実はしてまいりましたし、先生御指摘のように留学生事業の重要性にかんがみまして、今後ともそういった点にも十分に配慮をしていきたい、このように思っております。
  87. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 限定された予算でありますからなかなか難しいのだろうと思いますが、塩川大臣の先ほどのお答えをいただきましたから、政治的にも政策的にもひとつ十分やっていただきたいということをお願いしておきます。つまり、献身的に働いていらっしゃる、あるいは貢献をされている職員の皆さんの犠牲の上に立って、あそこの経営なり運営をすべきじゃない。もっと働いている人たちも大事にしながら、そして留学生に対する万全な対応をすべきだ。私の方からこの点について意見として申し上げておきたいと思います。  役員の皆さんにもお会いして、いろいろお話も伺ってまいりました。やはり金が足りないというのですね。金があったらな、こう言っています。冗談まじりかもしれませんけれども、提言をしているのですけれどもなかなか受け入れてもらえません、例えば円高になって外国旅行に行けば御承知のとおりなのでありまして、そういう円高還元というものを留学生の施設設備などの充実の方に向けてくれたらなというようなお話もしておりました。その気持ち、私は十分わかると思います。  大臣から先ほどお答えいただきましたように、国柄によって食事も違うのには大分参っているようです。食堂の施設も、何人かあそこで一生懸命働いておりますが、決していい方だというふうには思いません。そして食べ物も、ちょうどお昼の時間でしたから少し見させていただきましたけれども、これも少し考えなくちゃいけないと思うのでありますが、そういう点について、関係者の皆さん文部省の担当の皆さんが改善するために話し合いをしながら一つ一つ整備をしていっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  88. 植木浩

    ○植木政府委員 駒場の日本国際教育協会の留学生会館などでも、今先生おっしゃいましたように、食べ物につきましても随分工夫をして、肉を食べない方のための食事であるとか、そういうようなものも十分気を使ってやっているわけでございます。  確かにおっしゃいますように、留学生日本で勉学生活をする際には、大学の受け入れ態勢はもとよりでございますが、そういった生活環境というものが非常に重要でございますので、今後とも日本国際教育協会ともよく連絡をとりまして、留学生のそういった生活基盤がさらに充実をするように努力をしてまいりたいと思います。
  89. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 あと十分を切りましたから大体締めくくりたいと思いますが、国柄によって豚肉を食べられない留学生もおりますね。そうだとすれば、それにかわるような何かメニューがないかどうかということも検討の一つだし、親切な対応の仕方だと私は思います。あるいは、通しではありませんが、ある一定の期間、食べ物や飲み物を口にしてはいけないというような国柄もあるようだし、さらには、決まってお祈りをしなければならない時間がある。これは本当に多くの国から集まっておりますから、それぞれの習慣を持っておりますので一概には言えないと思いますけれども、しかし今お答えがあったとおり、私は生活習慣に合った施設設備に改善する必要があるということを特に強調しておきたいと思います。  最後に、日本教育の問題なんです。大臣はどういうお考えで先ほど申し上げられたのだかわかりませんが、各省ばらばらですね。そこでちょっとお尋ねいたしたいと思いますのは、各省でそれぞれ日本教育をやっているわけでしょう。どの省とどの省ですか。
  90. 植木浩

    ○植木政府委員 まず、留学生につきましては、これは文部省の方で留学生に対する日本教育ということで、例えば東京外国語大学であるとか大阪外国語大学であるとか、それからいわゆる留学生の数の多い大学等で日本教育センターを設けるなどして、留学生に対する日本教育をやっております。それから一般の日本教育でございますが、文部省の場合は、特に大学におきまして日本語教員養成関係の学科を、近年日本教育の需要が非常に高まっておりますので、筑波大学などを初めとして、そういった日本語教員の養成の学科を増設しておるということをいたしております。  また、日本語の教育内容といいますか教育方法といいますか、あるいは教材の開発、こういった点につきましても、国語研究所の日本教育センターあるいは東京外国語大学に今年度から留学生のための教材開発センターをつくったりして、そういった角度からもやっております。  なお、今お話がございましたほかの省庁でございますが、もちろん技術研修生などを受け入れる場合に各省庁でそれに即応しました日本教育は行っておりますし、また、外務省は特に外国における日本教育の普及振興という角度から日本教育の施策を行っておる、こういう状況でございます。
  91. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 同じ文部省の所管の中で文化庁もやっておるでしょう。文化庁の中身は何ですか。
  92. 植木浩

    ○植木政府委員 国語研究所を文化庁が所管をいたしておりまして、これは通常国語政策として行っておりますが、同時に、外国人のための日本語という点から、日本教育センターというものを国語研究所の中につくりまして、そういった教育方法あるいは教育内容、そういったものの研究を行っているわけでございます。
  93. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 実態はもっと調べなくちゃいけませんけれども、例えば学部留学生の場合四年間でしょう。大体は半年ぐらいは日本教育に費やされるといいますね。日本語を覚えてくる人は別です。しかし大半はそうではないということになれば、これは日本語を覚えないと、一定の建物だけなら生活できますが、一たん表に出るということになるとなかなかできないというのは御承知のとおりであります。そうなりますと約半年かかる、本人にしてみればそれだけロスになるわけであります。ただ、一概に言えないのは、技術関係なり農業関係なりはそれぞれ専門用語が使えますから、必ずしも一つにまとめてということにはならないかもしれませんが、基本的、基礎的な日本教育をする場については一本化してもいいじゃないかという考えを私は持つのです。そうでないと、今お答えいただいたようにばらばらになっていて金が分散してしまいますね。充実強化しようにも予算が不足している。ところが、一つに集めて基礎教育をやっていったとすればもっとよくなるのじゃないですか。いかがでしょうか。
  94. 植木浩

    ○植木政府委員 ただいま申し上げましたように、留学生政策としての日本教育というと、これは文部省大学あるいは関係の団体の日本学校、こういったところを充実するということでやるのがよいかと思います。  また、外務省は主として海外におきます日本教育の普及という角度からの施策を行うというものでございます。  また、先ほども申し上げましたように、各省が行う技術研修で非常に短期間の日本教育を行う場合には、やはりその研修の授業と密着して即応して行う必要があるということで、一見ばらばらにやっているようには見えるかもしれませんが、それぞれの政策目的に応じて一番やりやすい方法、効果のある方法でやっていくのがよいのではないか、このように思いますが、そういった全体のいろいろな意味での連絡、連携等はさらに十分にとっていかなければいけないと思います。
  95. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 文部省ですから、他省のことまで関連して口出しをするということにはなかなかいかないのでしょうし、しかし実際の問題ですから、政治的にも一定の改善と前進を図るべきだ、私はこう思っているわけであります。  留学生問題で大変時間をとりましたけれども、いろいろなやりとりの中身、あるいは大臣答弁、そして私の意見なども踏まえまして、最後に大臣の締めくくり的な見解をお伺いいたします。
  96. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私も約十二、三年、主としてASEANの留学生でございますが、これのお世話をしておりまして、またその団体の理事として世話役もやっておりまして、今痛感いたしますことは、先ほども申しましたように、日本の留学生政策というのが本当はまだ確立しておらないと思うのです。数字だけ先に出てしまいまして、ああもしたい、こうもしたいということは言っておりますけれども、政策的なプライオリティーから見ましたら、数字の方が優先してしまって、本当の環境整備のプライオリティーが全然下なんだ、ここの矛盾を解決しなければだめなんです。  今回、私は、留学生の懇談会を文部大臣の私的諮問機関としてつくってもらいました。きょう発会式をやるわけでございますが、留学生に目を向けたい、こういう考えから発足したものでございまして、そこでそういう基本問題をきちっと詰めていきたい。  私が申し上げたいのは、日本が支給しております奨学資金あるいは留学生に対する待遇というものは、他の先進諸国に比べて日本の方がむしろいいのです。いいのでありながら、それがいろいろと問題を起こしておるというのは一体何なのか、この根本。彼らも生活者として日本へ来ておるのでございますから、この生活者としての留学生をどう解決してやるかということに私はもっと重点を置くべきだ、こう思うておりまして、それは実はただ単に文部省だけの問題ではないわけであります。こういう点からも各省庁に協力を呼びかけてやっていきたいと思うております。あくまでも文部省がキーステーションとしての役割を果たしていきたい、こういうことでございます。
  97. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ちょうど九十分であります。これで終わります。
  98. 愛知和男

    愛知委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時七分開議
  99. 愛知和男

    愛知委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中西績介君。
  100. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、先般教材費などについてやったわけでありますけれども、さきの質問の際の二、三の残っておる点についてお聞きをしておきたいと思います。  一つは、「児童数の減等のため、学校数又は学級数が減少したため」教材費の額が減額されたんだということを理由にしています。二つ目に、「こにれまでの努力で、教材整備が進んでいるので抑制したため」というのがある。それから「教材以外の設備の整備に重点をおいたため」、四つ目に「学校建設その他による財源不足のため」、そして五つ目に「その他」、こうなっています。  ところが、「児童数の減等のため、」云々というこの部分については、この前から言っておりますようにどれぐらいの額になるのか、きょうはわからなければ後でも結構ですから、言う以上、やはり数字の上で明確にしておいていただきたいということが一つです。  それから、二つ目の「教材整備が進んでいるので」、少なくなったというんだけれども、全国的には五〇%を超えているかどうかということは大変疑問です。これは文部省が立てた十年間にわたる計画に基づいても不足していることは事実です。それなのに、「教材整備が進んでいるので抑制したため」減額されたところが出たんだという言い方は、もう一度科学的に調査なりしていただいて、果たしてそうなのかということを具体的に示してほしいと私は思います。  そして、三つ目に「教材以外の設備の整備」、学校建設などに回した、こう言っていますけれども、果たしてそうなのかということなのです。  なぜ私はこのように教材費について徹底的に言うのかといいますと、きょう私は自治省財政局長に会いました。先般は大臣に会いましていろいろ話をしておりますと、交付金として増額しておるということで胸を張っているのですよ。ですから、教材費の内容などについて云々ということにはならないわけなんですね。実際に自分の手持ちとして交付する金額はそれでふえているじゃないかという、こうした姿勢の中での物の言い方が一つある。そのことによって今度は、自治省としては財源的に拡大できれば省としてのメンツは立つ、こういうことがその底にはあるんじゃないかということを私は特に心配をしておるわけであります。それから、もう一つ大蔵省大臣にお会いしたり主計局長とお会いして、特に主計局長が主張しておるのは、自治省から提出をされた資料によれば平均三・六%上積みをしておるじゃないか。結局単純平均によってしか物をとらえておらないという中身があるわけであります。ですから、私たちの認識しておることと大蔵省なり自治省が認識をしておる点との間においては、大きな違いが出てくる可能性があるわけですね。ですから、特に自治省財政局長あたりが言っておるのは、国の負担を地方財政に切りかえることが間違っておるから徹底的に抵抗はする、しかし栄養士あるいは事務職員、これを論議の対象にしないということではないんだというような認識が一つあるんですね。ですから、今私が主張するようなそれぞれの違いがあり、そしてしかも自治省においてすら論議の対象になり得るというような感覚があるとすると、この前から私たちが心配をしておる面が、非常に今度は文部省孤立という体制になる可能性が強くなってくる。  したがって、私は、少なくともやはり①の「児童数の減等のため、」云々だとかあるいは②の「教材整備が進んでいるので」云々だとか、こういうことが果たして減額される理由として文部省が挙げることができるかどうかということについて、もう少し内容的に詰めなくてはならぬのではないか、こう私は思うところであります。きょう答弁できなければ、これは改めてでも、内容的に詰めていただきたいと思います。
  101. 加戸守行

    ○加戸政府委員 五十九年度から六十年度にかけましての教材費の整備状況、予算措置状況ということで、文部省調査をいたしましたその結果としましては、全体的には対前年度比三・八%の増になっておりますけれども、県単位で見ますと、増額になっている県が十七県、一方減少している県が三十県もあるわけでございます。それから市町村ごとに見ますれば、ふえている市町村もあれば減っている市町村もある。その減少している市町村の中で、どのような理由で減らしたのかということを書いてまいりました。報告してまいりました具体的な例の多いものが、ただいま先生おっしゃいましたように、児童生徒数の減のために学校数または学級数が減少したもの、その他幾つかの理由があるわけでございます。これは市町村でなぜ減らしたのかという、市町村のある意味の釈明的な言葉でございますので、その中を精査しておるわけではございません。ただ減った理由を、当市町村としてはそう考えたりあるいはそういう理由で減 らしたのだという形で、文部省への報告が出ておるものだと承知いたしております。  したがいまして、そのことが本当に真意としてそうであったのかどうか、各市町村ごとの精査をすることは非常に難しいわけでございますけれども、例えば学校数、学級数が減少すれば、もちろん学校がなくなれば教材費は要らなくなるわけですし、学級数が減少すれば給貸の教材費も要らなくなることは機械的には言えるわけですけれども、その他の理由といいますのは、じゃお金はどちらへ回ったのかというのは、予算書を見て精査するということも難しゅうございましょうし、個々の市町村ごとの状況であるというぐあいに思っているわけでございます。  ただ、文部省といたしましても、全体的にふえたからいいということではございませんで、減少した市町村は確かにたくさんあるわけでございますから、従来から、地域学校実態に応じましてその所要の経費を確保していただくということと、教材費に係る事務事業については水準の低下を招くことがないようにと、十分な指導を行っているわけでございますし、また今後ともそのような指導に努めてまいりたいと思います。先生の御指摘の点につきましては、そういった計数上に反映できる要素があるかどうかをなお検討させていただきたいと思います。
  102. 中西績介

    ○中西(績)委員 このことは将来的に、これから迫ってくる十二月末までの期間にいろいろ問題になるところですから、先ほど私が申し上げたように両省とも、いわば自治省なり大蔵省の認識というのはそういう状況になっておる。したがって、今度はいよいよ本丸である人件費にまでこれが及ぶということになりますと大変ですから、ひとつそういう点もお含みおきをいただきたいと思うのですね。  そこで私は、先般質問を取り残しておりました二、三の点について質問をしたいと思います。  私学の果たす役割の重要性については、私がここで申し上げるまでもありません。ただ、大臣の所信表明の中に、「引き続き教育条件の維持向上に努めてまいる」という文言があるわけでありますけれども、私学の場合に、現状の助成の中で教育条件の維持向上に努めるというけれども、このことは内容的にはどういうものを指して言っておるのか、お答えください。
  103. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 「教育条件の維持向上」という場合の「教育条件」とは具体的にどういうことであるかということでございますが、私学振興助成法の系列の中で、論理必然的にこれが教育条件であるというような結論は出てこないわけでございまして、結局私どもがふだん言っておる教育条件、言いかえれば人的な問題、生徒数に対して教員数がどのくらいであるかとか、あるいは物的なもの、それは校舎面積がどうであるかとか設備がどうであるかとか図書がどうであるとかあるいは校地、そういう児童生徒にあるいは学生教育を実施していく上に必要な人的及び物的諸条件をすべて含めて、私ども教育条件というふうに理解しているところでございます。
  104. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなりますと、確かに今あるものにある程度補助金がいくわけですから、それにある程度上乗せすれば、人的あるいは環境整備等含めまして維持向上ができる、こういう言い方だろうと思うのですね。ところが実質的には、伸び率を大学で見ましても、既に六十年度は高いときには三二%までいっておったんですけれども、経常経費の中で六十年度は一九・二%にまで落ち込んでおるわけですね。ですから、六十一年度はまだはっきりしないと思うのですけれども、これもどれだけになるかというと、これよりパーセントが上がるということはあり得ない、こう考えなくてはならぬわけであります。そうした点で、私はこの前校納金の引き上げ等についてもお聞きしましたけれども、まだ十分でないのでありますけれども、必要経費というのはどうしても必要なんですから、そのためにますます父母の方の負担になっていく可能性というのが非常に強くなってくるわけですね。そのことは十分おわかりであろうと思います。  さらにまた、高等学校で申し上げますと、福岡で助成のための七十万の署名が集まっているんですよ。全国で二千万の署名が集まっています。大変な数ですね。これを見てみましても、私、きょうはいろいろとずっと聞かしてもらったんですけれども、例えば福岡では「私立高校に通わして現在どのように思っていますか」、「私立に入れてよかった」というのが約六〇%近くなっています。ただ問題は、私立学校の学費について安いか高いかという問題で、圧倒的に「高い」というのが約七〇%で、「やや高い」というのが二五%近くありまして、九四・四%に達するわけですね。そして、今や校納金が公私立間の格差というのが六倍近くになっておる。このことはもうおわかりだろうと思います。ですから、私は入れてよかったけれども、この点は何とかしてほしいという願いが非常に強いということですね。父母の経済的負担が余りにも大き過ぎるというのが圧倒的な数で出ておるわけであります。したがって、この格差を何とかなくしてほしいという要請が最終的なまとめで七五%に上っています。ですから、何とかしてこの点を私たちは考えなくてはならぬのではないか。  ですから、内容的に見ますと、どういうことで家庭の経済面に変化が起こったかというと、生活を切り詰めておるというのが五一%、それから貯金を使いやりくりしているというのが二三・六、残業をふやした、母親が働き始めたなどなど、こういうように家庭のあれが大変さま変わりしてくるという状況があるわけです。ですから、こうしたことを考えますと、何としても――高等学校におきましても何とか校納金、授業料を現状維持を図っていっておるのは、県が減額分については負担をしていくという措置を今までとってきたわけです。そうすると、今度問題になるのは交付金とのかかわりが出てくるわけですね。裕福だからということを指摘をしてその分をペナルティー的に減額をする、こうしたことだって出てきかねない。ですから、今依然として、二八・何%かを個々の場合には維持するということができていますけれども、ますますそうした点で横ばいではあるけれども、来年度の概算要求は十一億円ぐらい増額をして一・何%かになりますが、しかし依然としてこの引き上げは、大学でようやく三・九ぐらいに抑え込んでおったものが今度はまた上昇するという傾向が非常に強まってきている。それから、高等学校の場合におきましてもやはり上昇傾向が目立ってき始めたという。そうなると、今までの家計内における教育関係費、平均が六・八%ぐらいですか、文部省が調べた中でも出ているわけですね、これはもう七%をはるかに超える、こういうことすら出てくる可能性が強まってきています。  ですから、こうしたことを考えてまいりますと、この六十二年度の概算要求、何としても要求を通さなくてはならぬし、減額をさせてはならぬ。そして県段階における交付金の問題等についても、これをやはり減額させるなどということになってくるとこれはもう一大打撃を受ける。こういう状況が出てくるわけですから、こうした問題についての対応策、これから後も論議していくわけでしょうが、この点どうなっているのか。
  105. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先生御指摘のとおり、六十二年度の概算要求では、高等学校につきましては一・五%増、十一億増の要求を今大蔵省財政当局にぶつけているところでございます。財政状況がこういうように大変厳しいということで、財政当局も今の段階では厳しい対応をせざるを得ないというようなことを、非公式ではありますが私どもに言っております。私どもとしましては、先生方の御後援、御協力も得まして、出した概算要求はぜひ満額取りたいという気持ちでこれからの概算要求予算折衝に臨んでまいりたいというふうに考えているところでございます。  それから高等学校以下は、先生御指摘のとおりに、県が一般的な経費で補助をした場合に国がやや財政補てん的にその一部を補助することができるという、私学振興助成法の規定に基づいて補助を行っているわけですが、先生御指摘のとおり、ここ数年間横並びないしは本年度は四億ばかり増しましたけれども、それにしても国庫補助金がそう伸びないにもかかわらず、一般交付税の措置の上ではかなり増を自治省の方で財政措置をしていただきまして、本年度も交付税と補助金の増を含めまして百二十六億の増を財源的には措置をすることができました。その結果、高校以下の経常費助成の各県の一人当たり単価につきましてはほぼ全国的に恐らく軒並み上がっていくだろうというふうに考えているところであります。各県の一人当たり単価をある一定水準以上に上げることにつきましては、私ども七百二十億の補助金を交付する際にある一定水準以上のものでなければ補助をしないという執行の仕方をしておりますので、このやり方は今後とも維持していきたいというふうに考えておりまして、そういう意味では交付税で積算された金額以上に各県が高等学校以下の経常費助成を行うようにさせていきたい、今後もそういう努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  106. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですからそうした点、横ばいでも経常経費の中に占める割合からいたしますとどんどん低下するわけでありますから、この点はぜひ押さえておいていただきたいと思います。  それに加えてもう一つ、過疎地域の私立高校の場合、特別助成制度をとることによって、経営困難校に対する特別融資制度があるわけでありますけれども、新潟だとかの農村地域、あるいは福岡地域などにおきましての過疎においては、これが適用されぬわけですね。ところが、この県名はもう伏せておきますけれども、されておる地域では、例えば高校で二千人以上生徒を確保しておってもその助成措置がなされておるという矛盾が出ています。ですから、こうしたことはやはり地域的に、今出ておる不況地域だとかいろいろなことを指定すると同じように、県単位の指定でなくて地域的にある程度特定するような形か何かしないと、そういう矛盾というのが出てくるのではないかということを私は感じます。きょう来られた中で特にそのことが主張されておりましたので、この点どうでしょう。
  107. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 過疎地域の指定につきましては、私の記憶ですと、昭和四十五年の就学人口と六十四年の就学人口を比較いたしまして、そしてそれが七五%未満、言いかえれば二五%もこの二十年間で減るというようなところにつきまして、県単位だけではなくて地域も含めて、ある大きなブロックで地域を含めて私ども算定をして指定しているところでございます。したがって、県だけではなくて、県単位で指定しているところもありますし地域で指定しているところもあるということでございまして、その条件として、四十五年度から六十四年度までの二十年間の生徒の減が二割五分を超えるところにつきましてはそういう形で指定をしているところでございます。したがって、もしかそういうような事情があるような場合には、御相談に来ていただければ、基準の四十五年度から六十四年度までのその基準に合って、かつ、二五%以上生徒の減があるというような場合には、私どもその対象にできるというふうに考えております。
  108. 中西績介

    ○中西(績)委員 いずれにしましても、二十年間のそうしたものをとっての話のようでありますけれども、そうしますと、今申し上げるように、例えば県を指定すればその県の全域にわたるわけですから、そこでは今言うように、地域的には落ち込んだところもあるでしょうが、ところが今度は逆に、地域的には維持できているところだってあるわけですから、大体八百から千人を超えると高等学校の場合には経営維持というのは可能なんですよ。それが二千人おるということになれば大規模校ですよ。そういうところだってそうしたものが助成されているということになると、しかも今度はその条件が、例えば今指摘のあった二五%に達せず二〇%では支給されないということになるわけですから、これとの差はもう歴然たるものが出てくるわけです。ですから、そうした点をもうちょっときめ細かにやった方がいいのではないか、こう考えますので、この点はもう一度調査なり検討していただければと思います。これは答弁は要りません。  そこで、六十一年度の大学に対する助成金額はいつごろ決まるのですか。
  109. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 六十一年度の大学に対する助成金は、先生御承知のとおり基礎数値というのは毎年十二月三十日在職職員、在籍学生数等を基礎にして最終的な補助金を算定しているところでございまして、毎年会計検査院から、ケアレスミステークで若干事実の確認を怠ったために補助金が余計にいっておるのではないかというような御指摘を受けるわけでございますので、十二月三十日以降、事実関係を把握するためにかなり日時を要しますので、最終的には三月の半ばぐらいに六十一年度の大学の最終的な交付決定がなされるという運びになろうかと思います。毎年大体三月の中旬ごろでございます。
  110. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、六十年度分についての一覧表を見てみますと、四年制で九校、短大で十校、合計十九校、これは申請のないものと問題のある学園等に対して停止していますね。私は、申請のない大学が小規模であってもなぜ経営できるのか、きょうは答弁は要りませんけれども、そうした点についての細かい検討をある程度しておく必要があるのではないか、それは今後の助成金問題を検討する際に一つの指針とすべきではないだろうか、こう考えるわけです。  それともう一つは、九州産業大学、中村産業学園などを初めとするいろいろなところにまだ問題が残っておるわけです。したがって、こうした問題については中途半端なことで助成措置を認めるなどということは絶対にしてはならぬと私は思うのです。ですからこの点はひとつ厳格に、そして的確に指導していただきたいと思います。これはするだろうと思いますから信頼をして、答弁は要りません。  次に、所信の中にも出ておるわけでありますけれども、「我が国の伝統や文化についての理解」云々ということから始まっていろいろありますが、私は、やはり地方における文化というものを重要視しなくてはならぬと思います。その際に言えますことは、今一番地方で困っておるのは何かというと、郷土史会などの指導者あるいは活動する人たちが高年齢化いたしまして、後継者難に陥っておるというのが実情のようです。年配からいうと大体我々の年配ぐらい、若くても昭和の初期ぐらいの人に年齢が上がってきておるという状況が今あるわけです。ですから、こうした状況を考えるときに後継者の育成が大変重要だろうと思うのですけれども、これについての見解はございますか。
  111. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 先生のお言葉のように、地域社会に伝承されている民俗文化財等を保存いたしまして次の世代に伝承していくということは、まことに重要なことでございます。  実は、文化財保護法では、昭和五十年に法改正をいたしまして、民俗文化財についての規定を新たに設けたわけでございまして、それからこの指定に入っておるわけでございます。件数といたしましては、重要無形民俗文化財の指定はまだ百二十九件ほどでございまして、現在鋭意各地の調査を行いながら指定をふやしておるところでございますが、指定をいたしながら、ただいま先生のお言葉にございましたように、これを次の世代に伝承していくということにつきましては、補助事業をもちまして後継者の育成等についても努力をしておるところでございます。
  112. 中西績介

    ○中西(績)委員 なぜ私がこのことを取り上げたかといいますと、今までは地域では小中高の教師、それから神官だとか僧侶の皆さん、こういう人たちがボランティア的にも随分やっておったのですね。そしてまた後継者の指導なりということをやっておったのですけれども、それが近ごろは、管理面が強化されることによって、そういうことに没入したりボランティア的な活動をするという人がだんだん少なくなってきたということなんです。これは非常に残念です。今まで我々の仲間、年配が非常に多いのですけれども、それから以降のそういう人たちが育たないという現状があるのです。  教育文化というものは、地域における博物館的な役割を果たすものだとか図書館だとか、こういうものが中心になって、社会教育的にも郷土史などを中心にしながら発展するものだと私は思うのです。それが地域文化を維持するためにも、あるいは教育を向上させるためにも大変重要だということを私は感じています。ですから、これは大臣にお願いですけれども、学校教師に管理管理ということでなしに、これこそ自由にやらせるということが大変重要ですから、これからぜひそうした面にも気を配っていただければと思います。この点ぜひお願いを申し上げたいと思っています。  それと同じようなことで、定時制なんかにおきましても、今までは企業訪問あるいは就職打開策などを教師が自由にできておったものが、勤務時間をやかましく言い、拘束時間云々ということで、午後一時から学校に来てじっと座っておれ、こういう状況ができて、出ていくということになるとどうなるかといったら、旅費が必要なんです、そしてその旅費がないという、こうした悪循環が次々に出てきています。勤務時間も確かに重要でしょう。しかし、校長を締め上げればそれが直ちに教師に、そしてそうした面での融通性が全くなくなってしまうという状況が出てきておる。この点について、もう時間がありませんから一言だけ担当の方からお答えいただきたいと思うのです。
  113. 加戸守行

    ○加戸政府委員 定時制高校の教員の勤務問題につきましては、一昨年でございましたか全国中央紙に、ある定時制高校のルーズな勤務ぶりというのが取り上げられたことがございまして、参議院の文教委員会でも御議論があったわけでございますが、そういったような問題等もあるいは影響しているのかもわかりませんけれども、定時制高校の教員の勤務時間の適正な管理ということが認識されているような状況であろうかと思います。もちろん勤務時間の管理は必要でございますけれども、弾力的、機能的な運営ということが学校現場の実情に応じて当然必要でございますし、また、今後ともその適正な管理については努力してまいりたいと思っております。
  114. 中西績介

    ○中西(績)委員 私がこのことを申し上げたのは、かつての同僚などちょうど退職していく時期になっていますので、集まって話をしたり、伝統文化の問題等について指導者なり活動者と話したり、ある人の祝賀会などに行きますとちょうど同年齢の連中がみんな来ていまして、その連中が異口同音に、ぜひ国会でこれを取り上げてほしい、そうした問題があったものですからこの点について申し上げたわけです。  最後に一つ、六年制中等学校の問題でありますけれども、これはもう申し上げるまでもなく、現行の中等学校教育と高等学校教育を統合いたしまして云々ということから始まりまして、地方公共団体、学校法人などの判断によってこれが設置できるようにするというようなことが第一次答申の中に出てきています。その特色としては一から五までありますけれども、しかし私が大変問題があると思いますのは、六年制の中等教育は前期三年が義務教育です。義務教育の複線化ということは戦前でもないことだし、あるいは学校制度を根本的に変える、こうした視点から考えますと、憲法からいたしましてもあるいは教育基本法の理念からいたしましても、破壊と空洞化が起こってくるのではないかということを私は心配します。二つ目に、公立の中等学校進学段階で選抜が行われ、エリート化されていくのではないか、受験競争がさらに低学年化していく。ところが、私立では既にあるということを言う人がいますけれども、これだってエリート的な性格を持つものだし、進学のためにそれが利用されておるというのが非常に強く出ておるわけですね。  私は、そうした意味で、去年これが発表されましてから後に有田第三部会長が発言をしましたことを引用しますと、大変なことを言っておるわけなんです。これはぜひお気にとめておいていただきたいと思うわけであります。それはこういうことです。  まず一つは「一般的には芸術や職業系のコースが中心だが、普通科を設置してもいい。特に大学進学率アップに熱心な地域では、受験勉強にポイントを置いた普通科六年制が登場する可能性は否定できない。その場合は確かに受験エリート校に陥る心配があり、好ましくはないが、それも自治体の選択であればやむを得まい。」エリート校を認める、こういう発言があります。  それからもう一つございますのは、これは中日新聞で、やはり同じ有田部会長の発言ですけれども、他方私立については、「私立で進学専門の六年制中等学校ができて進学競争が早まり、十二の春で泣く人が多少は出ても仕方がない」、こういう、最も強硬に六年制中等学校を主張した有田第三部会長の発言があります。  そうすると、今度それを受けてどうなっているかというと、名門私立中学に生徒を多数合格させている大手進学塾の経営者はこう言っています。「各地に公立の中高一貫校ができれば、授業料も安いから成績の良い小学生がどっとそちらに流れるかもしれません。そうしたら、塾はまた一層繁盛しますよ。これからが楽しみです」ということを言っています。  ですから、こういうことを考えてまいりますと、さらにこのハイタレントづくりだとかいろいろなことを考えあわせていきますと、私は、前回指摘をいたしましたように、臨教審答申における初任者研修制度などを含め、またこういう六年制中等教育等を含めて、かつて中教審で打ち出されたものが実現されずにたなざらしにされておるものを、一つずつ取り上げていくような感じがしてならぬわけです。文部省は、こうした点について、本格的に内容の検討などについてやるべきではない、先ほどから私がずっと指摘をしたような環境づくりだとかこうした問題についてのみ今こそ手を加えていかないと、逆にこうした問題で押されっ放しにされて、肝心かなめのことが消えてしまうのではないかということを一番おそれています。そうならないことを私はお願いを申し上げて、時間が参って恐縮です、超えましたのでもう答弁は要りませんが、ぜひこの点について大臣、今後とも検討し、そして慎重に対応していただきたいと思います。  以上で終わります。
  115. 愛知和男

    愛知委員長 井出正一君。
  116. 井出正一

    ○井出委員 自民党の井出正一であります。新人の私に対しまして質問機会を与えていただきましたことを、委員長初め理事皆様に感謝いたします。ただ、大変出席が寂しくていささか残念でございますが、大臣にお伺いをいたしますから結構です。続けます。  私、国会に出てまいりましてまだわずか五カ月なんですが、本委員会だけでなく、予算あるいは国鉄等いろいろな委員会に出席をしたわけですが、政府側の答弁の方々がなぜ一つのマイクの前に一々出てきて答弁をされるのか、質問者や委員の我々に敬意を表してくださってもらえるんでしょうが、どうも時間のむだじゃないか、あるいは御高齢の方なんかでは体力の消耗にもなるんじゃないかな、こんなふうに思えてなりません。  それともう一つ、実は先ほど同僚の佐藤敬夫議員も訴えていらっしゃいましたが、どうも与党議員質問時間が短くなるとか、これまた残念でなりません。  以上二つ、答弁は要りませんが、委員長に申し上げておきます。  まず最初文部大臣に伺いますが、御就任後、地方あるいは都内の小中学校あるいは高校でも構いませんが、学校で児童生徒たちに何か講演をされたようなことはもう既におありでございましょうか。
  117. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 講演はしたことはございませんが、話し合いは何回もやっております。
  118. 井出正一

    ○井出委員 私の郷里の信州の片田舎なんですが、母校の校長室兼応接室ですが、そこには天野貞祐元文部大臣の「正直勤勉」という額がかかっています。当時私は小学校の五年か六年生でございました。しかし今でも、天野先生が、「新しい時代の少年少女たちに望む」というような題だったんじゃないかなと思います、ちょっとあいまいですが、こうしたテーマで講演してくださったときのことを記憶しております。もう三十五、六年前のことでございます。  どうか文部大臣、御多忙でしょうけれども、全国各地へお出かけください。そして、児童生徒に生涯印象に残るような話をしてやってください。同時に、現場の教師あるいは父母の皆さんの生の声も聞いてください。恐らく子供たちの脳裏にはそれは末永く残るでありましょうし、教育というものにみんなが親しみ、関心も高まるはずであろうと思いますが、いかがでしょうか。
  119. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 できるだけ心得ていきたいと思っておりますが、なかなか国会の方が多忙でございまして、その時間がなかなかできないもので、努めて努力してまいりたいと思います。
  120. 井出正一

    ○井出委員 さて、現在中国残留孤児の皆さん、今回は第十四次の訪日調査の一行だと思いますが、夢にまで見た祖国の肉親との対面を期待して来日していらっしゃいますが、実は私、去る十月二十二日の法務委員会で、帰国永住に伴う戸籍の就籍に関しまして質問をいたしました。大体こんな内容です。  ことしの六月、身元未判明のまま中国人の夫と子供三人を伴って永住帰国した葛飾区に住む李鳳琴さんという女性ですが、日本戸籍を取得するため東京家裁に就籍申し立てをしておったんですが、十月の中旬、証拠不十分のためという理由で初めて申し立てが却下されたわけです。そのことについて、中国政府の調査の結果、日本人であると認め、厚生省の孤児名簿にも登録されているにもかかわらず、司法と行政の不一致という、私は裁判の是非を言っているわけではございませんけれども、この事実をどう考えたらよいのか。今後李さんと同様、いや、それ以上に証拠、手がかりの薄い方が続々と申し立てをすることがこれから予想されるわけであります。  そもそも、残留孤児の大部分は、昭和十一年の帝国議会の承認のもとに推し進められた満蒙開拓という国策の犠牲者でありますし、昭和二十年の敗戦の犠牲者でもあります。かつまた、いかなる理由があったにせよ、戦後四十年、国家によって異国に放置され続けてきた犠牲者であること。したがってその責任は国家としての日本にあることを忘れてはならないと思うわけであります。政府の責任極めて重いと言わざるを得ません。としますならば、かような緊急を要する孤児問題は、間もなく孤老問題になると言われております。この複雑な問題を厚生省の援護局だけに任せておいていいはずがない。政府一体となって取り組むべきだと申し上げまして、遠藤法務大臣も検討を約束してくださいました。  所轄外のことかもしれませんが、政府一体となって取り組んでいただきたいという意味で、所見を承れれば幸いでございます。
  121. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私もちょうどこの春でございましたか、「終わりなき旅」という、あれはたしか井出先生のおじさんでしたか、あれを読みまして、残留孤児の問題、十分認識したつもりでございます。  ついては、文部省としてどこまでのことができるかわかりません、私も十分知りませんが、もしそういう問題、例えば日本語の習得というのが帰国されたときでも非常に問題になっておるようでございまして、そういうようなことでいろいろと御相談があれば、文部省としても十分な手助けをすべきだと私は思いますし、具体的にまだそういう問題が私のところへ持ち込んではこられませんけれども、もしございましたら、どうぞ言っていただきましたら努力いたすつもりでおります。
  122. 井出正一

    ○井出委員 ありがとうございます。  有言実行の中曽根内閣のことでありますから、私は大いに期待しております。よろしくお願いします。  そこで、本日はその一環として、帰国者を含めて、特にその子女たちの日本教育について若干お尋ねして、また御要望もいたしたく思います。  ところが、構想を煮詰め、資料を集めていくうちに、大先輩の佐藤徳雄先生が昨年の四月あるいは十二月ですか、本委員会で大変詳しく、かつ、貴重な御質問をされていることを知りました。会議録も拝読させていただきました。先生に敬意と感謝を申し上げたく思います。そういうわけで、正直のところいささか困ってしまいました。でも、私なりに昨年の十二月のこの委員会審議を少しでも深められたならと思いまして、質問を続けさせていただきます。よろしくお願いいたします。  まず初めに、帰国者の子女の学校教育への受け入れ方についてお尋ねいたします。  昨年の五月に文部省は、「公立学校における帰国子女在籍状況等に関する調査」を実施されています。その報告書は手元にありますし、時間もございませんから御説明は結構です。要するに全国で小学校三百九十六、中学校三百七十二、高校二百六十三、計千三十一校に二千三百十二名の者が就学しており、その地域分布は、東京二五%を筆頭に首都圏に四〇%、阪神地区に一〇%のほか、長野、福岡、愛知の順に、全国各地に散らばって入学しており、一学校当たりの平均在籍者数は小、中、高とも二人強であることが、その調査からわかりました。要するに全国各地に散らばっており、この散らばっておるところにまた大きな問題があるわけだと思います。  これは厚生省の原籍主義というのでしょうか、帰国者の場合、身元判明者はその出身地あるいは身元引受人の場合は引受人の居住地という、いわゆる原籍主義の結果でありまして、この原籍主義がこれから続く限り、定着センターで研修終了後、今後とも全国各地へばらばらに散っていく可能性が高いわけであります。ところが、現在もこれは生きているという、昭和二十八年三月の文部次官通達「中共地域引揚邦人児童生徒転学および受入要領」の中には、言語が不自由な場合、一定期間、特設の学級を設けて収容するのが望ましい云々と、こう書いてございます。要するに子女たちをまとめる方向という考え方であったことがうかがえるわけであります。  この違いをどう理解したらいいのでしょうか。千三十一校の中に中国語のできる先生、教師がどのくらいいるのかもおわかりでしたら、あわせて文部省にお尋ねいたします。
  123. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生今おっしゃいましたような昨年の調査状況、そのとおりでございまして、全国各地の学校に在籍する引揚者子女の方々の数は極めて少なく分布しておるという状況でございます。しかしながら、都心部等におきましては、地域によりましては人数の多い学校も少数でございますがあるわけでございまして、そういった学校等につきましては、今後例えば特設学級というようなものも含めまして、現在来年度の予算要求を行っておりますけれども、そういった重点的な施策は講じたいと思っております。  しかし、全国的な状況から申し上げますれば、中国語を理解し、そして、その子女に対しまして日本語を教えるというような意味での適した教員がいるというぐあいには状況を把握しておりませんで、多分、恐らく各学校ともにそういった適切な教員は置かれていないのが実情ではないかと承知いたしております。
  124. 井出正一

    ○井出委員 その子女たちによって望ましい対策としては、理想的には中国語のわかる仲間とかあるいは教師がそのそばにいることでしょうが、現実はなかなかそうはいきません。せめて中国語のわかる人が周辺にいる環境が必要じゃないかな、こう思うわけであります。ところが、ばらばらに散ってしまっている結果、彼らにとってはまだ言葉もよく通じませんから、口、耳あるいは目だって読めませんから、半分はもぎ取られてしまったような状態なわけで、そういう環境の中で、生活せよあるいは勉強せいということは大変残酷なことではないかな、こう思うわけでございます。その結果、子供たちはいよいよ寡黙になりあるいは孤独になり、そしてまた孤立化し、場合によってはいじめられ、中には落ちこぼれる、あるいはおかしな方向にいってしまうという例も聞かないわけではございません。このことはその周囲のほかの子供たちにとっても決していいことではございませんし、おかしな影響を与えるのじゃないかとおそれるわけであります。したがって、ばらばらに散ってしまっている現況でございますから、日本語学級的なものを都道府県に最低一カ所ぐらいは設置する必要があるのじゃないかな、こう考えるわけですが、ここでまた問題となってくるのは学区制の壁でございます。しかし、これは壁があってもこういう場合は特例を考えていただくべきじゃないかな、こんなふうに思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  125. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在、各地で受け入れられております引揚者子女の就学の問題につきましては、いわゆる現行のような学区制にリジッドにこだわるようなことはなく、弾力的に学区を超えて適切な学校へ就学できるような取り扱いをしているところでございます。  それから、先ほどの答弁で一つ落としておりましたけれども、各学校には中国語を理解できる教員がいないわけでございますけれども、文部省といたしましては、こういった引揚者の子女に対します教育指導協力者派遣制度というのを設けておりまして、引揚者子女担当教員の教育指導に協力するために、中国語を理解できる人たち、ボランティアが多いわけでございますけれども、そういう方々を教育委員会指導協力者として委嘱をして、学校を巡回して指導するというシステムをとっておりまして、これまた、来年度予算要求におきましてもその五割増の要求を行っている段階でございます。
  126. 井出正一

    ○井出委員 帰国子女の教育のためには、局長さんのおっしゃいましたように、都道府県教育委員会が例えば教員定数の加配も行っているわけですが、その基準といいますか条件、あるいはその実際の配置状況、学校数、教員数なんかを教えていただけますか。
  127. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在、引揚者子女教育研究協力校という制度を設けまして、文部省が指定をいたしております。六十一年度の実績といたしましては二十二校でございます。これらの学校につきましては、一人ないし二人の教員の特別加配を行っておりまして、国がいわゆる義務教育国庫負担の関係上定数配置をいたしておりますのが二十四名、そのほかに都道府県単独で加配を行っておるのが十三名だったと思いますが、合計三十七名がそれぞれの学校に配置をされているという状況でございます。
  128. 井出正一

    ○井出委員 その先生方はすべて中国語は話せるのですか。
  129. 加戸守行

    ○加戸政府委員 こういった加配をされました教員は、教育困難校ということで特に加配をしているわけでございまして、その方々が中国語を理解できるわけではございません。
  130. 井出正一

    ○井出委員 その教育研究校というのですか、これはすべて特設クラスというような形になっているのですか。
  131. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在はそういった特設学級は持っておりません。現在、先ほど申し上げましたように、来年度の予算要求におきまして特設学級を開設するという形でのものを含めました要求を行っておりますけれども、今の指定校以外に、例えば東京都でございますが、特殊なケースとして特設学級を持っている学校もございます。
  132. 井出正一

    ○井出委員 この加配された先生方は、複数の学校をかけ持って持っていらっしゃるということもあるわけですか。
  133. 加戸守行

    ○加戸政府委員 複数の学校をかけ持っているというような形にはなっていないと思います。
  134. 井出正一

    ○井出委員 それでは次に、成人、大人に対する日本教育についてお尋ねします。  その前に、学齢を過ぎてしまった人たち義務教育学校へ入りたいという方もいらっしゃるわけですが、その受け入れ状況は、その報告書を拝見しますと、どうも各市町村教育委員会任せみたいになっているような気がしてなりません。そのほかに、これは大部分大人のはずですが、学校に入れない皆さん、この人たちは子女たちに比べて年をとっておりますから、社会への順応力あるいは語学の習得力も劣っているわけですが、こういう皆さんに対する対策、ボランティアの皆さんが大変やっていてくださることは私も知っておりますが、それだけで果たして十分なのかなと思います。所沢の定着促進センターが本年度は今までの倍ぐらいに増強されることになっているはずですが、その進行状況と、また都道府県への委託事業として、先ほど局長さんが少し触れられましたが、六十年度までは月四回だった派遣回数を本年度から七回にふやして、ふえた分三回は日本教育に充てることになっているという、いわゆる自立指導体制の状況、またあわせて来年度の中国孤児対策についての計画並びに、要求で結構ですが予算について、厚生省から教えていただけますか。
  135. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  まず、所沢の促進センターの拡充計画の現状でございますが、今年度三億四千万ほどの予算を計上させていただきまして、年度当初から着工いたしたわけでございますが、この十二月五日に幸い完成をいたしまして、来る十五日に竣工式を行いたいと思っておるわけでございます。これは、従来九十世帯しか入れなかったものを百八十世帯に受け入れ能力を倍増しようというものでございまして、このために、国立の身体障害者リハビリテーションセンターの敷地を一部お借りいたしまして、そこに宿泊棟という形で新設をいたしまして、従来のセンターを専ら研修棟にするということで、この拡充計画を進めてまいったわけでありますが、そのうちの宿泊棟がとりあえず完成いたしまして、既に入居が始まっているところでございます。  それから二番目に、いわゆる自立促進体制の充実ということで、生活指導員の関係お話がございました。御指摘のとおり、今年度からいわゆる生活指導員の派遣回数を四回から七回にさせていただきまして、その三回分を主として語学指導に充てていただくということで、これは孤児の世帯の所在状況によりまして、ばらばらにいるところへは家庭に出向いていろいろしていただくし、一カ所にまとまっている場合には、一カ所に集まっていただきますと同じ回数で何回分もできるという運用もできるわけでございますので、そこは都道府県の状況に合わせて有効にお使いくださいということで委託をしているところでございます。  それから、来年度の予算につきましては、やはり何といいましても、調査が今年度でおおむね終わりますので、最大の山はどうしても早期に帰国したい方々を早く受け入れるということであろうというふうに考えておりまして、今後私どもの見込みで千世帯がおおむね帰国されるであろう、こういう前提で、所沢が今回の倍増ということで百八十世帯を受け入れるにしましても、それだけですとまだ六年ぐらいかかってしまう話でございますので、私どもとしては、せめてその半分の三年でお帰りいただける体制をつくろうということで、全国に五カ所、所沢センターより小さな規模のサブセンターというものを既存の施設を活用するという形でつくらせていただきまして、それによって年間百五十世帯の受け入れ可能にしたい。所沢と合わせまして三百三十世帯ということで、おおむね三年で千世帯が受け入れられる体制づくり、これを第一の柱に掲げているわけでございます。  それから、そのほか、帰ってこられたときに差し上げております帰還手当というものが、やや名称が古いことと同時に、やや少人数世帯に非常に不利になっておりますので、少人数世帯が世帯道具を買えるような実質的な中身にしたいということで、特に少人数世帯中心に帰還手当の改善を図りたいということを考えております。  それから、先ほどちょっと話に出ました生活指導員でございますが、生活指導という名前をもう一歩、自立指導という形に実は名前も変えさせていただこうと思っておるのですが、派遣期間も一年というものを少し延長させていただいて、一応三年に延長するということで予算要求をさせていただいております。  そういうことと、もう一つ調査でございますが、おおむねことしで終わるわけでありますが、なお孤児と考えられる方々が一名でも残っておれば、これは最後までやりたいということでありまして、一応来年も引き続き調査を継続していきたいと思っているわけでございます。  以上でございます。
  136. 井出正一

    ○井出委員 先ほど佐藤先生の御質問の中に留学生の数の問題がありましたが、現在日本に留学している中国人の学生数はおわかりですか。
  137. 植木浩

    ○植木政府委員 現在、中国の留学生日本で二千七百三十人が大学等の高等教育機関で勉強いたしております。
  138. 井出正一

    ○井出委員 実は、私の地元にこの夏、日中友好青年の家という施設ができました。これは、昔軍人だった方で中国の皆さんに大分迷惑をかけたということで、私財をなげうって施設を村へ提供してくださったわけで、夏休みなんか、郷里へ帰れない中国人の留学生皆さんが一週間交代で何十人かずつ見えて、しかも、その村の農家の民宿なんかも併用しながら、大変好評でございました。私も接しましたけれども、日本語が既に大変上手であります。この皆さんと中国から帰ってこられた皆さんと接触というか、交流するようなことは考えられないものでしょうか。あるいは同郷の方も中にはいるかもしれませんし、文部省としてお考えいただきたく思うのですが、いかがなものでしょうか。
  139. 植木浩

    ○植木政府委員 現在中国から引き揚げてこられた方々、あるいはその子女の方々が日本人たち交流する場をつくることがぜひ必要であるということで、今年度からでございますが、地域住民と中国引揚者の交流の場を提供します、これは社会教育関係の事業でございますが、中国引揚者地域交流事業というものを実施しつつあるところでございます。  今先生からお話ございましたように、確かに中国から来ている留学生の方もその中に入って中国からの引揚者と交流していただくと非常にいい面があると思いますので、こういう事業の中で中国の留学生も加わっていただくということは大変よい御提案かと思いますので、社会教育関係の方にも早速よく伝えたいと思います。
  140. 井出正一

    ○井出委員 お願いいたします。  外務省の方にも来ていただいておりますので、ちょっとお聞きします。  昨年十二月のこの委員会佐藤先生から、中国の現地に日本語の学校を政府の手でつくって日本へ帰ってこられる前に少し日本語を覚えるようにしたらどうだ、という御提案がございました。あの時点ではまだ政府間のレベルではそういう話がないということでしたが、その後の進展はおありでしょうか。
  141. 槇田邦彦

    槇田説明員 委員御指摘の件につきましては、その後特に進展があるわけではございません。私どもといたしましては、日本に孤児の方々が帰ってこられる前に日本語を習得しておられれば定着、定住において非常に便利であろうという御指摘は、それなりに非常によくわかるのでございますけれども、いざ現実に目を転じてみまして、果たして中国において新たな施設をつくるといす戸とが本当に実行可能あるいはその効果を上げることができるものであるかどうか等については、やはり慎重に考えていかなければならないと考えております。
  142. 井出正一

    ○井出委員 それならば、とりあえずですが、せめて日本語学習の教材、例えば教科書はもちろんですが、カセットテープあるいはビデオテープなんかを希望者に提供したりすることぐらいは、文化交流の上からいっても可能かつ必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  143. 槇田邦彦

    槇田説明員 おっしゃるとおりだと思います。現に国際交流基金を通じまして、政府といたしまして、中国の大学あるいは語学の研修の場所等に日本語の教材を提供したりあるいはさらに日本語の教師を派遣するというふうなことによって、中国にいる方々、中国人の日本語習得の助けになるような努力をしてきておるつもりでございます。
  144. 井出正一

    ○井出委員 三番目に、帰国子女の高校進学の問題をお聞きしたかったのですが、これはちょっと時間がありませんから飛ばします。  最後に、いささか抽象的になりますが、教育の本質にもかかわることだと思いますので、若干申し上げさせていただきたく思います。  文化、いわゆるカルチャーは結局のところ心であります。帰国子女の片親は大部分中国人であります。日本と中国の文化は当然異なっております。となりますと、帰国子女たちは言葉だけでなく心が通じない中にほうり込まれているわけでありまして、この立場考えてあげなくてはならないと思うわけであります。また、日本社会になじむことと同化すること、同化させることはイコールじゃないと思います。同化させることは、中国語だけではなく固有の文化をも彼らに忘れさせることにもつながりかねません。彼らをして日本的なもの一色にしてしまっていいのか、彼らのこれから持てるであろう異文化の抱合という可能性をつぶしてしまっていいのか、国際社会にいや応でも対応していかなくてはならない日本のこれまた一つの試練じゃないかな、こう思うわけであります。  帰国子女たちが日本学校について一番驚いたこととして、中国では弱い者がいたら助けなければならないと教えられてきたのに、日本人は弱い者をみんなでいじめたり、見て見ぬふりをすることだと言っているのを聞いたことがあります。私は日本子供たち、いや、日本教育あるいは日本社会に今一番欠けている点をぐさりと突かれた思いがいたしました。学校教育法では第一番目に協調性を持つ子供に育てるとうたってあります。大臣、いかがなものでしょうか。
  145. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 お説のとおり、全くそのとおりだと思います。
  146. 井出正一

    ○井出委員 それでは、最後の最後に、中国の帰国子女の教育ですばらしい実績を上げているところが幾つかあるそうです。例えば江戸川の葛西小学校あるいは中学校、埼玉県の東岩槻小学校など、私も聞いておりますが、文部省のどなたか、そこらを視察されましたでしょうか。
  147. 加戸守行

    ○加戸政府委員 例えば江戸川区の葛西中学校につきましては、文部省の方からも昨年参りまして、実情をつぶさに承知いたしております。
  148. 井出正一

    ○井出委員 私は冒頭で大臣に各地へ出かけてほしいとお願いを申し上げましたが、そこらもまた視察先の中へぜひ入れていただきたいと思うわけでございます。  時間ですから終わりにいたします。どうもありがとうございました。
  149. 愛知和男

    愛知委員長 池田克也君。
  150. 池田克也

    ○池田(克)委員 先日もここでお伺いいたしましたが、その折に時間の関係質問できなかった部分も含めてお尋ねしたいと思います。  最初に、臨教審についてです。先般の私の質問の最後に、大臣臨教審の運営委員の方々とも懇談をされたというふうにおっしゃっておられました。率直に申しまして、中曽根内閣における教育改革への熱意が当初より少し冷めたのではないかというふうに巷間言われているわけでございますが、私もそんな気がちょっとする。先般の例の新しいテストの問題で、総理大臣がお会いになっていらっしゃると思います。六十四年ということだったのが六十五年ということになったわけですが、総理もそれを割とすんなり受け入れていらっしゃるようでございますし、そのほかにも、臨教審から折々いろいろと報告をすることについても、総理から従来のような具体的な指示は余りない。少しはしゃぎ過ぎということを昔指摘した側としては、着々とやっていらっしゃることは結構なことだと思いますが、反面、言うならばトーンが少し下がったのじゃないかな、これはいろいろやってみてもなかなかしんどい、教育改革というのは間口も非常に広いし、具体的に一つ一つ手をつけてみるとなかなか金もかかるし、効果がそうすぐ出てくるものではない、そういう大前提というものは、率直に言ってこの教育改革については最初からあったと思うのです。  今お尋ねしたいのは、所管をしておられる大臣として、臨教審の進め方あるいは臨教審における状況について、苦しいなら苦しい、難しいなら難しいと国民に対して状況を率直に述べられて、その中で、もう少し絞っていこうとか財政についてもう少しこうしようとかいう大臣としての、政治家としての、先般もこの席でマスコミの問題について政治家としての大変すばらしい御意見を拝聴して、私はなるほどなと思って伺っておりましたが、所管ということあるいは責任立場ということも当然おありでしょうけれども、一政治家という立場も含めて今の臨教審が進めてきた状況についての御所感をまずお聞かせいただければと思うのです。
  151. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 まず最初に、総理教育への熱が冷めたのではないかというお話でございますが、私はそう思っておりません。総理教育に相当深い関心を持って、今でも指導しておられると思うております。  しかし、最近の新聞記事、マスコミの報道、テレビの報道等を見ましたら、確かに外交問題、特に米ソの問題もありますし、また国内におきましては、経済摩擦というようなものが大きくクローズアップされてきておって、教育に対する記事が少ない、それが一つのバロメーターになっておるといたしますならば、私は見方をちょっと変えていただきたい。総理は、行政改革は外科的手術で教育臨調というか教育改革は内科的処置だということをしょっちゅう言っておりますが、私もそのようなつもりで、やはり自分の任期中には一つだけでも何でもいいから路線だけきっちりしたい、こういうつもりで取り組んでおるようなことでございます。  それから二番目の、臨調との関係をどうするかということでございますが、私は再三申しておりますように、臨調のいろいろ御審議いただいておるその討論の中身が大事だと思うのです。一つ答申が出てまいりますのに、その議論の経過がございまして、その結果として答申が出てくるわけでございまして、どういう議論をされたのかということが大事なんだ。その中から文部省として採用していけるものを具体化していくということ、ここが私は大事だろうと思うております。同時に、臨教審が第三次答申あるいは四次答申になるかもわかりませんが、これからまだ最終答申をお出しになる段階でございますので、私は、その段階にあって臨教審の今までの議論というものに対してどうこう言うべはじゃなくて、ただ大きい期待をかけて答申を持っておるということなんです。  たまたまきょう岡本会長、会長代理の石川忠雄一先生、それから中山素平さんの二人が総理にお会いになって、約三十分話をされたそうでございます。それは、経過報告その四を取りまとめをされたので、その概要を総理に説明したということでございます。ところが総理に、経過報告とあわせてより以上に、臨時教育審議会としては財政問題に対して非常な関心を持っておるんだ、さしずめ臨教審として実現を期待しておるものの一つに初任者研修があるんだが、この予算などは、文部省の固有の財源の中からスクラップしてビルドするという考えではなくしてこういうようなものを優先的に認めてくれ、こういうぐあいに臨教審の会長がみずから言っていったということで、臨教審考え方はだんだん私なりに理解できてきたように思うのでございます。そういう今努力しておられる最中に、私から臨教審に対して差し出がましく、ああだこうだと言うことは差し控えるべきだと思うております。しかも、臨教審の方々がそういう現実問題をいろいろ提案をされてまいりましたし、答申も出てまいりました、そしてそれを実行するとするとどうするのかというその問題がこれからの第三次答申にかかって山場に差しかかってきた、こういう気持ちで私は見ておりますので、もうしばらく期待を込めて静観いたしたいと思うております。
  152. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。きょう、そういう財政と申しましょうか予算措置について、臨教審の幹部が総理のところへ行かれた。私はそうあるべきだと前から財政財政ということは繰り返し申し上げてきました。  関連してお伺いしたいのは、来年の九月には臨教審三年を経て、法律は三年ということになっておりました、この法律上設置された一つの機関が幕を閉じるわけです。その後どうするんだろうか。行革審なんかはもう一つの機関をおつくりになって、その成り行きをきちんとチェックしていくというふうな体制でございます。     〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕 私がちらっと聞いたところでは、臨教審ももう少し期間を延ばすとかあるいは答申後の具体的な進め方についてきちっとチェックをしていくというふうな機関をもう一つつくろうか、そんな議論が出ているようにも聞いたのですが、法律であれば今から用意しなければならぬ、あるいは具体的に話題にしていかなければならぬ。九月に一たん閉めれば、再来年の国会にかけていくとすれば、その間空白期間ができてしまうのじゃないかと思っておりまして、このまま臨教審の幕を閉めるか、あるいはその後どうするか、この辺はどうなっているのか、あるいはどういうお考え大臣の頭の中にあるのか、お漏らしいただければと思うのです。
  153. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 まだ最終段階は来ていないのでございますし、私から予断をするということはかえって不都合だと思いますけれども、これは文部大臣ということではなくてお聞きいただきたいのですが、文部行政を預かっておりながら私一個人として見ました場合に、臨教審は、一応三次答申を終わりましたらそれでもって総括答申でやはり締めくくっておいてもらいたい、実はそう思うております。それは、行政改革と非常に違うところがあると私は思うのです。行政改革は、要するに行政の不合理性を是正するということにおいて意味があって、したがってその不合理性が実際に是正されておるかどうかということは不断の努力、と同時に不断の監視といいましょうか、審査ということは必要だと思う。したがって、行政改革審議会というのがその後の後追いとして出てきたと思うのです。ところが、教育に関する提言と申します答申は、要するにこうする方がいいのではないかという一つの御意見であって、しかも、その御意見を客観的に見てこれは妥当であるというものはやはり実行していかなければならぬ。それと、先ほど申しました議論の中で行われておったいろいろな新しい発想とか我々が気のつかなかったところ、こういうものを行政のベースに乗せていって改革していけばいいのであって、これは役所が不断に今後も努力すべき課題である、こう思うております。  ですから、教育改革というのはやいのやいの、けつをたたいてやるべきものではない、私はそう思うのです。それはなぜかといいましたら、教育には一つの決まった合理的な価値判断というものは決めにくいと思うのです。片方の人から見たらこれはすばらしいものだと思うておるだろうけれども、片方から見たらそれに対する疑義というものは当然起こってくる。したがってこの改革には長い議論が必要だろうと思うのです。したがって、答申を十分に尊重して、それを十分かみしめて、改革責任を持って進めていくのは文部省自身の努力に今後かかってくる、こういう判断をしておるのでございまして、答申をいただきましたらそこが一つの締めくくりとして、以降は我々の努力でそれを実現していく、こういう気持ちでおるようなことであります。これは文部大臣としてではございませんで、御寛容いただきたいと思います。
  154. 池田克也

    ○池田(克)委員 大臣ということより一人の政治家としてのお話を伺ったのですが、実は私もこの問題に関心を持って、中教審の答申というのを調べたことがあるのです。去年の予算委員会に、中教審の答申を調べたのと、それから当時まだいろいろと議論のやかましかった臨教審と、項目を拾って表にしたことがあるのです。実は予算委員会に提出しまして、こういう小冊子にして持っているのですが、こういう表なんですが、後でまた大臣のところにお届けしますけれども、非常に似ているのです、そのテーマのあり方なども、試補制の問題だとか、初任者研修の問題だとか、あるいは大学のあり方として研究院を創設するだとか。比べてみますと、項目としては、昭和四十六年に出ている中教審の答申とかなりぴったりだなと私は当時思ったくらい似ているのです。この教育の政革というのは既に一つ答申を得た、中教審のこの答申はかなり立派なものだと言われております。これは総理にも私は予算委員会で伺いまして、総理も、内容は立派なものだったと言う。なぜこの中教審が思うように進まなくて、今日臨教審をつくらねばならなかったのかということをくどくど総理に伺ったのです。私の認識の中では予算が十分に伴わなかったと思っておりましたのですが、総理は、予算もさることながら世論が十分に熟してなかった、こういうふうに総理は答弁をしておられたのですね。私はそれを否定するつもりはございません。もちろん世論もそうだったと思うのです。  やはり、今日まで教育についての議論ということは随分あった。率直に申しまして、中教審答申でも今日の臨教審の御議論でも、共通する部分はかなりあろうと思います。問題はやはり、特に教育の問題というのは政治的中立性ということが法律にもうたわれておりまして、こうやって国会で審議していても、ほかの役所を相手にするのと違いまして非常にもどかしいものを感ずるのですね。あるいは予算の問題にいたしましても、特に大学教育などにおきましては大学の独立性と申しましょうか、自治というのが建前ですし、いろいろな財産の処分についてもやはり大学の意向というものは重要だし、入学試験一つをとっても大学先生方、教授会の意向というものが中心だし、我々がここで議論するのは、本当に教育については参考意見ということなのかなと現実にそう思うのです。そうしますと、教育というのは国民の非常に関心の深い改革テーマなのですが、それを一つの目標を持って改革していこうとしますと、さっき大臣お話のように、何か一つの御議論をして答申ができ上がった、さあ、これをひとつ研究して皆さん方が御自分の良識で改革を進めてくださいと言うだけでは、どうもまた中教審の二の舞になってしまうのではないかというふうに実は思っているわけです。  この中教審の答申というのについて、私は失敗だったとあえて断定はしませんが、ことしの二月に総理とやりとりしたときには、総理も、率直に言えば君の言うとおりだなと、失敗を認めていらっしゃった部分もあるのです。そうしますと、今度は失敗できないな、少なくとも出てきた議論については、国民がなるほどなと思う程度の改革の実を上げていかなければならない。確かに長くかかるものもあると思います。かなり早くできるものもあると思うのですね。ですから、そういう意味では、これは大臣の個人的な御見解ですので私はこれ以上申し上げるつもりはありませんけれども、何らかのこの改革の後をあれする、文部省だけではやはり立場上もありましょうし、いろいろな諸官庁との絡み合いも出てくると思うのです、そうした問題で文部省を超えた何かの機関というものが必要なのかなという気もしているのですが、これも私の個人的なものです、うちの党内でこれを議論したことはまだないのですけれども、少なくとも、今日まででも一次、二次と答申が出ておりますが、それの実行などについてもこれからお尋ねしたいと思いますけれども、かなり面倒だ、時間がかかるというのが実態だと思いますので、これは言うなれば第三者から、さっきのお話にちょっと反論するようですが、多少はおしりをたたくくらいのものがどこかになければいかぬのじゃないかなという気持ちを私自身としては持っている。臨教審の設置法が出てきたころからずっとこの問題をやってきた者として、そんな長い経験者ではありませんが、私はそういう気持ちを実は持っておりますので、どこか念頭に置いていただければと思うわけでございます。そんな状況で、今私が申し上げたことについて何か大臣、御発言があればお伺いしたいと思います。
  155. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は貴重な意見だと思います。確かにそういう考え方もある、どこかけつたたきがという、これは私はあると思うのですが、実はこれは非常に言いにくい言葉でございますけれども、一般論として聞いていただいたらと思うのですが、教育の議論というのは、私の見ておりますのに、公式の議論になります場合はどうも建前論が多いのです。しかし、教育改革とかあるいは教育の実施問題というようなものを建前論でやってはいかぬと僕は思うのです。本音でやはりやらなければいかぬ。だから率直に物を言うということが教育改革で一番必要なのではないか。したがって、臨教審答申なんかでも相当本音で言っておられることもあると思うのですけれども、しかし、答申を受けまして、これを本音で一回議論をし直して検討する必要は私はあると思うのです。それはどこがおやりになるのかといったら国会ではないかと私は思うのです。  今、教育問題が政治の最大の課題になってきておる。今、日本の内政で雇用と教育だと私は思うのです。その国会が、教育の議論が本当に真剣に本音でされるかどうか、そのことが最大の教育改革へのインパクトになる、私はこう思うておりまして、私は、この臨教審答申を受けました後、国会の方が、つまり各政党もございましょうし、これがどう対応されるかなということに非常な関心を持っておる、こういうことでございまして、その点、池田さんとちょっとそのけつたたきのあり方が違うかもわかりませんが、私はそういう感じを持っております。これも文部大臣ということじゃなしにしていただかないと、本音のことが言えませんので、ひとつよろしく。
  156. 池田克也

    ○池田(克)委員 おっしゃるとおり、教育を議論するための教育国会なんという、本当にこれに総力を挙げてやっていくということも私は必要だろうと思っておりますが、大臣のそういう気持ちは、私もまたさらに機会を改めてお伺いしていきたいと思うのです。  さて、臨教審の一次答申あるいは二次答申と見ておりまして、六年制中等学校というのが、さっきも同僚の方から御質問が出ておりました。これは答申が出たときには、いわゆる三年刻みで試験に追いまくられる子供たちという目から見ますと、新しい教育の観点かなと、先般も私は大臣にこの席で申し上げましたが、私ども公明党は、教育改革は中等教育、つまり高校のあり方あるいは中学のあり方をまず手をつけたい、そこから連続するところの大学の入試、そして大学教育、それから初等教育というふうな手順を考えて、一番問題なのは、難しい年ごろでもありますし、また先生方、教員養成という問題も、戦後の新しい制度の中で難しかったなという感じが中学校先生にあったのじゃないかという感じを持っていまして、そういう点からは、この六年制中等学校という従来なかった新しい学校というものを教育制度の中に取り込んでいくことについて、確かに私学はございますけれども、やはり私学は都市に集中しているような傾向もありますし、またいろいろと、私学の経費なども父兄の負担から考えますとかなり重くなってきている、入学金とか月謝とかを見ますとかなり重くなってきているのが実情ですし、そうした点では、広く国民に中学、高校が一貫して教育できる、場合によっては六年間あっても五年でカリキュラムを終えて、あと一年は何か別の一つの目標を持った教育あるいは課外の活動というものができるだろうということで、この六年制中等学校というものを考えたときに、かなり希望をいろいろ抱いたのです。しかし、見ておりますと、どうもなかなかいろいろな協議が進んでいない。これはやはり大胆に政治が動いて、政治が余り動いちゃいけないという思いもあるのですが、しかし改革ですから思い切ったものもあってしかるべきだと思いますし、もう少し動かないかな、こう思っているのですが、まずは文部省内ではどういうことになっているか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  157. 西崎清久

    西崎政府委員 六年制中等学校の問題は、先生御指摘のとおり第一次答申臨教審から提議されておるわけでございます。私どもは臨教審答申を尊重する立場でこれに前向きに取り組む努力を現在重ねておりまして、その努力のあらわれとしては二つやっておるわけでございます。  一つは、文部省内に中等教育改革推進に関する調査研究協力者会議というものを設けまして、これはもう約半年近くやっておるわけでございますけれども、その協力者会議には中学関係者、高校関係者、公私立の関係者、それから教育委員会等の関係者も入っていただきまして、まず制度面の問題を中心として、設置形態等の議論を十分これから詰めていただくという問題が一つあります。  それからもう一つは、教育課程審議会、昨年九月からやっておりますが、六年制中等学校の問題につきましても、教育内容の面で教育課程署としても御検討をいただく、こういう面での前向きの努力をしておりまして、この点についても私どもは臨教審答申を生かすべく努力をいたしてまいりたい、こういうふうな考えでおる次第でございます。  ただ、先生御指摘のように、六年制中等学校につきましては、臨教審自体もメリット、デメリットを内容としても御提案の上で、最終的にはその推進というふうに言っておられるわけでありまして、それらについてデメリットがないような姿でメリットを生かして中等学校を六年制で実現するにはどうすべきか、これは行政に課せられた大きな課題でございますので、私どもとしてはデメリットが生じないような姿で実現できるような慎重な対応を検討していっておる、こういう段階でございます。
  158. 池田克也

    ○池田(克)委員 この六年制の学校に並んで答申されているのが、単位制高校ということなのです。単位制高校という名前はいろいろこれから考えていくのでしょうが、これは意味をあらわしているのだと思うのですが、今の単位制という考え方は戦後取り入れたものと私は理解しているのですけれども、随分定着をいたしました。しかし、この単位制という考え方がどこまで国民全体に支持されるか、私自身としては微妙なものを持っているわけですけれども、問題は、非常にニーズの多様化している今の社会の中で、臨教審の一次答申だったと思いますが、選択の機会の拡大ということが強くうたわれておりました。学歴社会の是正と選択の機会の拡大、この二つは非常に大事だ。  学歴社会の是正ということを青年の側から見てみますと、一つは資格社会です。一つの何かの資格をきちんとみんなが持って世に出ていく。逆に言いますと、今の高校を卒業した段階で、高校まで出たんだけれども特段の資格がない、これで社会に出ていって何ができるだろうかという思いの中で、じゃ大学まで行こうかという親も子もあるというのが実情だと思うのです。ですから、大学を目指している人たちの中で、いわゆる研究する大学あるいは学問の最高峰を目指して勉強しようという気持ちの人はどれだけいるだろうか。私はいないとは言いません。しかし全部の大学受験生というものを見たときに、まあ、せめて大学はなんというものがなきにしもあらずだろうと思う。高校の十七歳、十八歳のレベルで一つの資格をきちんと与え、職業を持って世の中に出ていける、そして、出ていったら、そこでもっと学ばなければ自分の仕事が全うできないと思ったら、またどこかで大学に入れるという形のあり方が正しいのだろう。そのときには親の負担ではなくて自分の働いた中から、ある一定期間休職したりあるいは就学のための休暇をもらったりしてやることもいいだろうし、そういう意味で私たちは放送大学等に関心を持ってきました。ですから、この単位制高校というものは私どもの考え方では放送大学などと連動しております。  ともかく小学校で何かの資格、私はそろばんということをこの場で言ってきました。せめて小学校六年出るときにはそろばんの何級かの資格は持たして出すべきだとか、中学校を終えたころには、英語もある程度手をつけるのですから、英検の何級かは取れるようにしてあげたらどうかとか、高校を出るときには何か職業に関連した資格というものを一つは持って出ていけるようにするべきだ、そうすると大学位置づけも随分変わってくるだろう、私はそういうふうなことを考えながら単位制高校というものを見ております。したがって定時制、通信制という位置づけとはまた違った観点で非常に選択の幅が広い。普通高校であっても単位制高校と相互互換していけるような、現在の職業高校は種類はたくさんとまでいかないと思いますので、もっと種類の多いものを用意して、あるいは専修学校とも単位互換したりして、これなら子供たち社会に就職しても何とかやっていけるだろう、こういう場をつくっていくのに単位制高校というのは効果があるのじゃないだろうか。  専門家の議論をいろいろ伺いますとなかなか面倒なようですが、これは新しい発想ですから、かなりパイロット的にやってみるしかないのではないか。中教審にもパイロットスクールという案がありました。これについても随分と腰が重いような感想を持っておりますが、この六年制中等学校、単位制高校というのが一番最初答申として出てきたのは、やはり中教審答申以来の流れをずっとくんでいてのことではないか。こういう考え方が中教審答申にもあるのです。昭和四十六年からですから、十数年たってまた出てきたということは、この考え方関係者の間では根強く支持されていたのだな、それをまたいろいろ議論を繰り返していらっしゃるのですが、かなり早いところでパイロット的にでも芽を出すべきなんじゃないかなということを思いながら、私はこうやってお伺いしているわけなんですけれども、単位制高校の実情についてまず当局から伺って、その後大臣から、私が考えているそういう高卒の人たちのあり方についての御所見を伺えればと思うのです。
  159. 西崎清久

    西崎政府委員 先生の御提案は、大変大事な点が二つ含まれておると思うわけでございます。  一つは、学歴社会より資格社会へという御提案だろうと思います。この点は私どももまことに御提案のとおりだと思います。高等学校もそうでございますが、大学卒にしても、どの高校、どの大学を出ても資格が重視される、先生お話にもありましたが、英検一級を取ればどの大学、高校を出たということは問わないで、私の友人も企業にたくさんおりますけれども、英検一級を持っているだけで文句なしに採るというようなこともよく聞くわけでございまして、英検一級に限らず、そういうふうな資格が社会で重視されることは大変大事なことだと思っております。     〔鳩山(邦)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で、私どもとしては、まず職業高校の活性化を図る意味においても、職業高校の教育の内容と、そしていろいろな資格がそこについて、その資格が社会で重視されるようなリンクの姿を何とかやりたいということで、ことしから少しずつ研究していまして、もしそれが可能になれば、来年から職業高校関係でも資格問題を少し本格的にやりたいというふうな気持ちを持っております。  それから第二の点は、その問題とまたリンクをするわけでございますけれども、単位制高校についてはどうかという問題でございます。これは実は先ほど申し上げました中等教育改革推進の協力者会議で既に結論を出してもらいまして、先生今御指摘のように定時制、通信制の課程の一つの形態として早くこれを実施に移そう、私どもも来年三月ぐらいまでには、省令を新たにつくることになろうかと思いますが、省令改正して実施に踏み切りたいと思っておりますし、各都道府県との相談におきましても、各都道府県は単位制高校についてはかなり前向きでございます。そういう点で、中教審以来という御指摘でございますが、この点については私どもも制度面での整備をし、都道府県は実施面で努力をする、こんな姿をとりたいと思っております。  それから、つけ加えて申し上げますと、単位制高校の発足について、定時制、通信制課程の問題、全日制課程の問題の関係はどうかという御指摘もあろうかと思うわけでございますが、この単位制というのは履修形態の問題でございまして、それから全日制か定時制、通信制かというのは課程の問題でございまして、若干違うのでございます。全日制は今昼間のフルタイムという性格がございまして、全日制のフルタイムでは単位制での履修形態は無理である。つまり土曜、日曜だけ出ても卒業できるようにしたいとか、月曜日と水曜日だけ高等学校に通っても単位が修得できるとか、やはりパートタイムという姿が単位制とつながるものですから、今のフルタイムの全日制で単位制を導入することはなかなか難しい、こういうふうなことから定時制の位置づけをした経緯があるわけでございます。ただ、先生おっしゃいますように全日制と専修学校との併修の問題とか、これはまた別個の問題として、全日制自体の検討課題として、先生の御提案の点を含めて今後私どもが勉強してまいらなければならない点かと思うわけでございますが、とりあえず単位制についてはそういう形で始めさせていただきたい、こんなふうに考えております。
  160. 池田克也

    ○池田(克)委員 大臣、いかがですか。
  161. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 今、局長が答えましたので、私も同意見でございますが、しかし六年制中学、それから単位制高校、こういうのが出ましても、それから放送大学の話が出ましたが、私は終始一貫思うておりますのは、今の価値観が余りに画一的で、これが学歴社会をはびこらしておる、こう思うのです。ですから、価値観の多元化が世の中に実際にそれが浸透してくるといいましょうか、そういう社会がつくられていくことを考えなければいかぬだろう。そうすれば、今御提案の単位制高校なんて本当にそういう社会においてこそニーズになると私は思うし、六年制中学も、職業教育なんかこれでやったら目に見えていいと思うのですよ。それが、現在のような社会であれば普通科ばかりできてくる、こう思うのですね。結局職業中学としてつくってもしょせんは普通科へ行ってしまう、切りかわってしまう。そうするとこれは受験にドライブをかけるということになってしまう。根本は何かそこらにあるような感じが私はいたしまして、価値観の多元化、そういう社会をつくることにやはり我々も努力しなければいかぬという感じでおります。
  162. 池田克也

    ○池田(克)委員 難しい問題ではありますけれども、二つのうち一番最初に出た答申ですので、パイロットスクールという考え方、試行錯誤ですけれども成功させなければなりませんが、今おっしゃるようにやはり目に見えて、国民が見てなるほどというふうにしていかなければ、議論だけしていたのではなかなかこれは進まない。それから、育てるのであれば徹底的にみんなが育てないと、中途半端ではだめになってしまう。ですから、例えば飛行機の操縦士の方々の学歴なんかを見ておりますと、普通の大学ではございません、非常に専門の教育を受けたそうした航空大学校とか、もちろん航空自衛隊の方も随分いらっしゃるようですけれども、あれだけの高度なそしてみんながあこがれるような職業でも、その道をきわめて、その技術が堪能であれば、どんどん就職していけるし、社会でみんながそれになりたいなと思うようになっていくと思うのですね。ですから、国の制度教育だけじゃないとさっきも申し上げたのですけれども、やはり雇用の問題、あるいは顕彰、みんなで盛り上げていくという問題、さまざまな観点から、この学歴社会の是正という問題について取り組んでいかなければならない。就職の専門家などに聞きますと、学歴社会というのは随分変わってきていますよと言う。親が思うような、この学校だ、昔はこうだというのが随分変わっている。中学も高校も、親の代ではこうだったということが今は当てはまらない。かつてはそんなふうにすごいとは思わなかった学校でも、ぐんぐん力をつけて偏差値なんかすごく高いんだというところも実はあるわけで、学校の値打ちとかあるいは学歴とかというものも移り変わる、生きたものだというふうに私は思っております。ですから、今大臣がおっしゃるような意識の改革というのは、まず政治の場で一生懸命になって力を入れれば、そんなに時間がかからないで変えられる要因はあるのじゃないか。ここで余り言いたくないのですが、やはり中央官庁の公務員の採用などもそこら辺で風通しをよくする、文部省はその点は風通しがいい方だと思いますけれども、他の役所などにおきましてはまだやはりそうしたエリートのとりでであるという指摘を受けるところもありますし、非常に時代の変化というものを取り込んだものにしていかなければいけないのじゃないかと思います。  その関連でちょっとお伺いしておきたいのですが、修学旅行のあり方なんです。これは私、前にこの委員会でも取り上げたことがあるのですけれども、資格の問題、語学の問題と若干絡むと思うのですが、要するに、普通の子供たちが普通に修学して世の中へ出ていく場合、大学進学率は四割くらいとして、あと六割の子供たちは高校まで行っているわけですから、高校までの間に一度は海外に足を踏み入れたことがあるという経験は貴重だろうと私は思っているのです。どうも伺いますと、公立学校における海外への修学旅行についてはかなり慎重な態度がとられている。もちろんその判断は教育委員会にあるようですが、どうもかつて文部省として指導したことがあるようで、これについて一遍再検討なさるおつもりはないか、こういうふうにお伺いをしたいのです。
  163. 西崎清久

    西崎政府委員 高校生の修学旅行の問題につきまして先生御指摘でございます。確かに高校生が学校の外に出て人間的触れ合いを広め、いろいろな社会的体験を得るというのは大事なことでございます。  従来の文部省指導の問題でございますが、これは若干古いのでございますけれども、昭和四十三年に教育委員会あてに初中局長通知が出ておりまして、小中高一括しまして遠足、修学旅行にかかわる通達が出ております。その中では、海外旅行は禁止というふうな表現はございません。ただその中で、例えば経費については父母の負担の問題もあるからなるべく経費を低廉にすること、それから事故防止については配慮をしてほしいとか、交通機関の問題としては新しい経路、交通機関を選ぶ場合には細心の注意を、こういうふうなスタンスでの注意事項を書いておるわけでございます。  一方、各都道府県の実態でございますけれども、昭和四十三年にそういう通知を出しました以降でございますが、やはり各都道府県で小中高の修学旅行についてある程度の基準みたいなものをつくっておりますから、やはりその当時から比べれば、今世の中変わってきておりますが、当時からの傾向としては、海外旅行については、経費を伴うとか航空機とか事故の問題とか生徒の把握ということで、各都道府県が慎重であった、これは事実でございます。現状としては四つの県、富山、福岡、山口、長崎、この四県が条件つきではありますけれども海外旅行を認めておる、こういうことでございます。  私どももこの点についてはいろいろと考えなければならないということもございまして、先般、十二月に入りましてから指導主事を集める機会がございました。全国の指導主事でございます。この指導主事を集めた機会に、これは指導課長さんにお話をするという趣旨で聞いてほしいということで、海外旅行等を含む修学旅行の問題、世の中も随分変わってきているから、今までの基準その他にとらわれないでもう一遍修学旅行の基準については各都道府県で検討してみられたらどうであろうかというふうなサゼストをいたしました。そして、その趣旨を酌んで各都道府県で一度、海外旅行にかかわる基準については今の世の中に即した扱いができるようにしてはどうかというふうなことを指導主事さん、各都道府県の人たちに言っておりますので、各都道府県も少しその点については前向きに検討してくれるのではないかというふうな期待を持っている次第でございます。
  164. 池田克也

    ○池田(克)委員 修学旅行、そういうことでぜひ新しい時代に向けて子供たち教育に効果があるようにお願いをしたいと思います。  それに関連して、アメリカ大学日本分校を開きたい、こういう話をしばしば耳にいたします。かれこれ五十を超える大学が、しかもアメリカのそうそうたる一流大学が、ハーバードとかエールとかプリンストン、スタンフォードというふうな大学が、日本で二年くらいの課程を開きたい、しかも英語で教育をする、土地は日本の都道府県、場合によっては企業もあるようですが、土地の提供をして、そこにアメリカから建築会社を連れてきて、そこでキャンパスをつくる。まあいろいろと案があるようですが、日米貿易摩擦解消を促進するメンバーの方々がこれに関心を持っていらっしゃる。  私は、このニュースを見ましていろいろな感想を持ちました。アメリカ大学日本に来るということは、アメリカ大学教育は非常にそうした点では先進的な要素を持っておりますし、日本は高校レベルまでは世界一だと言われますが、大学についてはいろいろな御意見があるところですし、それからまた、大臣がこの間から指摘をされているような学術研究の予算などの問題もあり、そうした刺激が与えられるということはいいことではないかとか、いろいろなことを考えるのですが、なかなか難しい面もあるだろうと思います。現時点で、アメリカ大学日本に進出してこようとするこういう事情をどう受けとめておられるか、お伺いしたいと思います。
  165. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 御質問にございましたアメリカ大学分校設置問題でございますけれども、先生お話にもありましたように、現在、日米両国の民間レベルで種々協議あるいは接触等が行われていると聞いておりますけれども、個々の構想が、特にアカデミックプランと申しますか、分校というのはそもそもどういう内容のものなのかというあたりのところが、具体的な構想としては必ずしも固まってきておらないというような状況のようでございます。  私どもといたしましては、日本と諸外国との間、特に米国との間で、高等教育あるいは研究といった面での国際化と申しますか国際交流の推進というような点から、一つの有意義な構想であろうとは思っておりますけれども、また他方、そのあり方のいかんによりましては国内の教育にも甚大な影響が出てくるということも考えられるわけでございますので、現在民間レベルで行われていることでもございますので、その進捗の状況を見守り、そしてある程度構想が具体化をしてくる段階において必要があれば文部省として助言等も行っていくということを考えたいということで、現在その状況を見守っているという段階でございます。
  166. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。  同じようなケースで、今度は日本からアメリカに行くという話はどんなものか。私はこの話を聞いたときに、同じように日本語の教育をする大学アメリカにあっていいのではないか。学生の中ではそうやって、日本教育をメインにしながら生活はアメリカでするうちに、次第にアメリカというものを肌で感ずる。これは二年でなくても一年でもいいかもしれない。ともかく日本で四年間過ごすよりはアメリカでの生活というものを、いわゆる留学という形ではいろいろと問題もあろうと思いますし、言うならば国内の大学を引っ越して、ある課程をアメリカで過ごすというのもいいかもしれない。お互いに、アメリカ大学考えてきた考え方というのは日本大学に当てはめて考えてみても関心の持てるテーマじゃないかなという気がしたのですが、そういうことを考えているところはないものでしょうか。
  167. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 ただいま手元に具体の資料を持っておりませんけれども、幾つか、例えばハワイ等に、分校という言葉が適当かどうかわかりませんが、ある施設を持ちまして、そこへ学生を一定期間派遣をして、現地での生活とかあるいはその地方のその地域における外国人との交流というような経験を積ませる、こういうことをやっておるところが私学には幾つかあるということを記憶をいたしております。  なお、国がやっている制度といたしましては、例えば現在、教員養成学部の学生を一定数でございますけれども一年間外国の大学へ、留学でございますけれども外国の大学へ行ってくる、帰ってきますと、その分おくれますので一年余分に大学教育を受けることになりますが、これまた将来の教員になる者が外国経験を得ておくということも必要なことだろうということで、そういった特別の留学制度等も組んでおるわけでございます。  今後また、そういう点についてはいろいろ御意見等伺いながら充実策を考えてまいりたいと思います。
  168. 池田克也

    ○池田(克)委員 私、これはパンフレットで拝見したのですが、大阪で、ある市が大変熱心にアメリカ大学誘致を計画していらして、市議会等がことしの夏でしたか、視察団と申しましょうか、それをいろいろと協議するための団を派遣して打ち合わせをしている。全国の市町村の中でも約二十くらいの市町村が非常に関心を持って動いていらっしゃる。こういう土地があるといって、その土地は地方自治体の土地ではないのですが、特別な予算を組んでいらっしゃるのかわかりませんが、それを取得されて、そこにアメリカ大学誘致する。そうすることによって、そこに一つの新しい国際的な価値というものが生まれてくる。東京ばかりじゃありませんが、だんだんと大都市に収れんしつつある人口の移動という点からも、あるいは企業などもその研究所とか外国人の研究者とか外国人の学生とか、そういう人たち日本に招き入れて、そこで機会があれば日本に定着をさしていく、そういういろいろな期待感というものが地方の自治体にある。その各地方新聞を私は全国にお願いいたしまして取り寄せてみましたけれども、なかなか熱気盛んなものがあるわけなんです。これは民間のやっていることであって、うまくいけばいいけれども、どうなるものやらというふうに見過ごしていいものだろうか。文部省としても、これからの大学改革にいろいろ取り組んでいく過程の中から、調査をし、その真意というものをいろいろ調べ、これを日本教育を改めていく一つの何らかのてこと申しましょうか、そうした役目に生かせればいいと思います。また逆に言うと、それは全然だめになってしまうことがあるかもわかりませんが、しかし、少なくともこのムードというものについて重大な関心を持つべきじゃないか。大阪御出身の大臣でいらっしゃるし、たしかその都市などはかなり大臣のお近しいところにもあるように私はパンフレットで見たりしましたので、何か情報を得ていらっしゃるのじゃないかなと思ってお伺いするわけです。これも大臣としてでなくて結構ですが、御感想をお伺いできればと思います。
  169. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は全く聞いておりません。したがって、えらい申しわけないのですが、答弁にならないと思います。
  170. 池田克也

    ○池田(克)委員 実はそれはあるのです。後ほどまた必要があれば資料を差し上げますけれども、かなり熱心なんです。例えば富山県のある市などでは、これは企業がかんでおりますが、企業が熱心に誘致していらっしゃいますし、千葉県では鴨川という房総半島の先の町ですが動いている。あるいは仙台の隣の泉という町でも動いている。各市議会などの議事録なんかをいろいろ見てみますと、各地方は相当期待を持っているのです。しかし、大学のあり方はほとんど国が所管して動かしておりますから、その点情報不足もあろうかと思いますが、そういう市町村などから、大学が来るというけれどもどういうことなんだろうかと聞かれ、私はその関係者に会ってみましたら、日本の既存の大学にも協力してもらわなければならない、特に工科系のところは研究所であるとかあるいは実験設備であるとかそうしたものについては日本の既存の大学の助けがなければうまくいかないのだ、こういう話もあるくらいで、諸所方々にこの話は行っているわけですね。ですから文部省にも当然そういう相談はあってしかるべきなんですが、余り具体的な相談は来てないと伺っていますが、その辺は阿部局長、いかがですか。
  171. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 先ほどお答えいたしましたように、これについては文部省としても重要な関心を持っているということで、私どもの方からでもしばしば連絡をとりまして実情を聞くように努力をいたしておるわけでございます。  ただ、具体のプランが、いろいろ伺いますと、米国の大学それぞれがいろいろなことが念頭にあるのではないか、あるいは必ずしも固まっていないのではないかと思われるのですが、例えば必ずしも学部段階ということでなくて、大学院レベルのものを本当は考えたいんだという御意向があるケースとか、あるいは専ら研究交流の方を中心考えたいんだというようなケースでございますとか、いろいろなケースがどうもまざり合っているという感じでございまして、こういうものに一律に対処していくというのは大変に難しいことでもございます。  そういったこともございましていそれぞれの構想がある程度具体的なものになるという状況を見ながら対応したいということで、先ほど来お答えしておりますように、非常に重要な関心を持って連絡をとりつつあるということでございます。
  172. 池田克也

    ○池田(克)委員 今度の税制改正の問題と教育ということなんですが、私どもは、今度の税制改正については重大な関心あるいは警戒心を持っているのです。大型間接税というのは、選挙のときに総理がおやりにならないということで来たものなんですが、先般の国会でのお話を伺いますと、すれすれだけれども公約は違反をしていないと総理は答弁をしていらっしゃるようで、具体的な動きがあるわけでございます。  売上税とかあるいは新型間接税とかいう税がどうなのか、これの賛否はさておきまして、話題となっております教育というものは、何がしかの理由により課税の対象としないと報道されている。さて、大蔵省教育はそれから外すとおっしゃるのですが、それが事実かどうか。何か七項目ある中の一つだというふうに報ぜられておりますが、そこら辺から、大蔵省がお見えになっておりましたら、売上税とは何か、そして何と何を課税対象から外そうとされているのか、お答えをいただければと思います。
  173. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  先生お尋ねの売上税についてでございますが、十二月五日に自由民主党の「税制改革の基本方針」が決定されまして、その中で売上税の概要が決められておるわけでございます。簡単にポイントを申し上げますと、一つは、限られた物品、サービスにつきまして特別の税負担を求めております現在の間接税という制度を改めまして、売上税というものを導入いたしまして、これを六十三年の一月一日以降の取引から適用するというのが一つのポイントでございます。二つ目のポイントは、この売上税と申しますのは、我が国の取引慣行になじむよう工夫されました簡素な税額控除票というものによりまして、前段階税額控除方式を採用するというものでございます。三つ目のポイントは、課税売上高一億円以下の中小零細事業者を非課税とするものでございます。四つ目は、特定の物品、サービスに係る取引を非課税とする。五つ目は、税率は五%以下とする。  以上のように決定されているわけでございます。  先生お尋ねの非課税取引の範囲につきましては現在検討されているところでございますが、政府の税制調査会の答申では、新しいタイプの間接税につきまして、その非課税範囲に関しましては「基本的にはできる限り設けないことが望ましい。」ということとされておるわけでございますが、その中で、例外的に非課税を認めるものといたしまして三つございます。一つは「消費税としての性格上、課税対象とすることになじみにくいもの」、例えば土地の購入でございますが、これはどうも消費するものでもないということで土地は外れる。それから株とかのたぐいの有価証券でございますが、これは資本の取引、資本の移転ということでございますので消費とは言えないだろう、そういうことで外れてくるのが一つ。二つ目は、「特別の政策的配慮から課税することが適当でないと認められるもの」でございます。三つ目の範疇でございますが、「現行の個別消費税との調整の結果、新しいタイプの間接税の課税対象とならないもの」、この三つを例外的に非課税とするのもやむを得ないという答申になっているわけでございます。  その場合に、間接税の持っております逆進制の問題でございますが、この逆進制を緩和するという観点とか、さらにまた社会政策的観点から非課税とするものも当然あるわけでございますが、その範囲につきましては、この答申では食料品、さらには社会保険医療、先生御指摘の学校教育、さらには社会福祉事業、この範囲内にとどめるべきであるとしておりまして、極めて限定された形になっているわけでございます。  以上でございます。
  174. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。  ここで、学校教育というふうに今お話が出たのですが、これは社会政策上という意味でしょうか。なぜ学校教育というものが課税対象から外されたのか。これは重要な日本のお金の出し方、父兄における出し方で、好むと好まざるとにかかわらずかかるというくらい教育が普及して、税負担については大変な方もいらっしゃるわけでしょうし、私どもはそれを外すことは大変結構なことだと思うのですが、なぜ学校教育、しかも伺いますと、学校教育の中でかなり狭い範囲というものを限っていらっしゃる。新聞報道ですが、学校教育法の一条校として定められているものに限るというふうになっておりまして、それ以外のものは税金を払いなさい、こういうことになっているわけですが、なぜ一条校になっているのか、そう決まったのか、あるいはまだ決まっていないのか、そこも含めて、関心のあるところですのでお答えいただければと思います。
  175. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  学校教育につきましては、先生御指摘のように、その持っております国家におきます重要性等々にかんがみまして、政策的に非課税とするのが妥当であるということで(答申に非課税とされているというふうに私は理解しております。その場合の学校教育の範囲でございますが、先般の答申では学校教育法一条校に限るということになっております。これにつきましては現在私ども文部省といろいろ折衝しておりまして、一条校に限るべきではないのではないかというような御主張に対しまして、そのお話を十分聞いておるところでございます。  ただ、私どものこの税に対する基本的な考え方を申しますと、この税は、今まで個別の間接税制度をとっておりまして、いわば特定の物品とかサービスにつきまして負担を求めるというような制度だったわけでございます。ところが、その制度が次第に行き詰まってまいりまして、これからの日本の将来を考えますと、安定的な財政構造を確立することには欠けるのではないかということで、この際思い切ってすべてのサービス、すべての物品につきまして税負担を求めるというふうな、いわば今までのポジの世界、つまり課税される物、税負担を負う物が法律に規定されておりまして、それだけを追っておったという世界から、すべての物、サービスが税負担を負う世界に転換いたしまして、みんなが、すべての人が物を買う、サービスを買うという行為によりまして国家に貢献していくという世界に入るわけでございます。したがいまして、私どもの基本的な考え方は、非課税とするものが極めて例外である、つまりポジの世界からネガの世界に入りましたから、そこから、すべての税負担を求める物から落ちていくものにつきましては極めて限定いたしませんと、この税の持っております哲学、さらには経済社会に与えます中立性というものを害しますので、基本的にはできる限り例外は認めないというような哲学を持っておるわけでございます。  そういうような哲学から、私どもは、学校教育法第一条に限るべきかどうかということにつきまして、現在いろいろとお話を伺っておるところでございます。したがいまして、まだ確定したというものではございません。
  176. 池田克也

    ○池田(克)委員 その哲学なんですよね。私が先ほども議論したのは、学歴社会の是正、あるいは資格社会へ次第に移行していかなければならないという観点からいきますと、みんながみんな一条校、つまり幼稚園あるいは小学校、中学校、高等学校大学、短大あるいは聾学校、盲学校ですか、一条に明記されている学校にみんなが行っているわけですね。それに殺到し、そこに過密がある。あるいは自分の能力的にぴたっといかなくてもそこへ行かざるを得ない。そこに非行とか暴行とかいうものがあり、いじめがあり、学校が荒廃する。先生方もいろいろと努力されているけれども、先生方も手に負えない場合もある。子供たちの幅広い能力というものを開発し、それがそれぞれ成人して社会に貢献できるようにしていくためには、非常に幅広い教育というものが与えられて、選択の機会の自由というものがあっていいだろうということも今一生懸命臨教審でやっている際中なんですね。そういう際中で、教育というものをすそ野の広いものにしよう、しかも生涯の教育、どこかで教育を受けるようにする。十八歳というところにみんなが殺到して、押しくらまんじゅうで受験が過密になる、そこに詰め込んで、そしてマークシート、総理のマークシートの話ですけれども、機械的に物を見て、ある時期で判断をする、それはよくないじゃないかという総理の指摘もあったわけです。  そういうことを一生懸命議論している者の一人としては、この一条校は、さっきおっしゃったように非課税というものはなるべく少なくしていこうとおっしゃるその趣旨趣旨としておきましても、教育というものを、広い中からここだけ区切って、ここについては面倒を見てやろうという考え方は、私は、今の教育を変えていこうとしている日本の、さっき大臣もおっしゃった、中曽根内閣中心的な政治課題である教育改革とは逆行するんじゃないかというふうに、今のお話を伺っていて心配をするわけです。  確かに、税金を納める納めないという問題もさることながら、一条校がそういうふうな指定をされるということは、国民生活にとって必要欠くべからざるものであるという一つの認定にもなるわけでして、学生を子供に持っていない親までがそういうふうな認識を持つということはいかがなものか。少なくともこの件に関しては、それ以外の、それに準ずる、あるいは次第次第に大学入試資格まで与えていこうとしている専修学校等についてもやはり加えるべきではないかというふうに強く思っているわけで、結論を出したわけじゃないとおっしゃるんですから大蔵省からの御答弁は必要ないわけですが、むしろ文部大臣が、この問題について、政治的な判断から大蔵当局に、文部省所管のこれからの改革を担当されるお立場として御主張なさるお考えはないかとお伺いしたいわけでございます。
  177. 古村澄一

    ○古村政府委員 今度提案されております売上税というのは大変新しい税でございまして、私たちもいろいろな点で勉強すべきことが多いわけでございます。先ほど大蔵省からお話がありましたように、非課税範囲等についてはまだ決めたわけじゃないということでございまして、私たちも、教育行政を預かる立場として、その税の適否というものについては十分勉強した上で、大蔵省と御相談申し上げていきたいというふうに考えております。
  178. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは先ほども官房長が言っておりますように、中身もまだ決まっておりませんで、もちろん今おっしゃったような趣旨をわきまえて、教育に関する物品に至るまで非課税扱い、どんな方法でもいいから非課税、かけておいて返すというのもありますし、どんな方法でもいいからこれの適用をやってくれということを要望いたしております。
  179. 池田克也

    ○池田(克)委員 大蔵省がせっかくいらしているので重ねて伺いますが、文化教育については話がありましたが、文化ですと例えば入場券、この入場券については入場税というものが徴収されているわけですが、これについて撤廃運動というものが激しくあって、近年その限度額が改定されたという経過があるわけでございます。舞台芸術は幾ら、あるいは映画等については幾らというふうになっておりまして、これは長年の運動があるわけでございます。今日、日本はどっちかというと文化後進国だなんと言われますように、すぐれた舞台芸術についてはむしろ海外から来演を仰いでいるというようなこともありますし、それはそれで結構なんですが、日本のそうした固有の舞台芸術というものも育てていかなければなりません。これからは心の時代だというふうにさっき別の委員からの御指摘もありましたし、子供たちに生の芸術を見せることも大変重要なことだ。子供だけじゃなくて、大人も当然だ。余暇の時間がふえて、労働省なども、働く日の数あるいは時間をなるべく少なくし、そし雇用の機会をふやそう、そしてあいた時間はそうしたもので、文化的な暮らしというものをしていかなければならない、こういう時代を迎えるに当たって、一説によれば、入場税というものは撤廃されて、そしてそのかわりに、入場税の万般にわたって、サービスの供与として新しい形の売上税が課せられてくるということを心配する声も高いわけですが、これについて大蔵省はどんなお考えを持っているのでしょうか。
  180. 森田衞

    ○森田説明員 入場税の関係でございますが、現在、入場税をこの売上税との関連におきましてどのような形に考えていくのかということにつきましては検討中でございます。したがいまして、これからの具体的な中身につきましてここで御説明することはできないわけでございますが、考え方といたしまして、先ほど申しましたように、入場税というものにつきましては、現在では入場いたしましてもろもろの文化的なサービスを受けるということに対します対価、その対価は課税してもいいのではないかということで、個別に法律に掲げまして税負担を求めているのでございますが、新しい売上税の世界になりますと、すべてのサービスにつきまして税金が課されるということになってまいりますので、基本的には、現在のサービス税、物品税も含めましてすべての個別間接税は吸収されていくというのが基本的な考え方でございますので、先般の政府の税制調査会の答申におきましては、入場税については新しいタイプの間接税に吸収することが適当である、こういうような御答申をいただいているわけでございます。  以上でございます。
  181. 池田克也

    ○池田(克)委員 わかりました。これは従来までの体系から抜本的に変わってくるわけですね。ネガからポジ、ポジからネガというふうなお話もありました。となりますと、本当に国民がこれについて深い理解を示し、それぞれ賛成、反対もあるでしょうけれども、こういう短期間に結論を出し、これから明年度の予算審議が始まるわけですが、非常に大きな影響と議論を巻き起こすだろうと思うのですね。  もう一点お伺いしたいのですが、書籍の流通です。これは特異な形を持っておりまして、流通してきたものがまた還流していく、つまり返品制度というものがあるわけです。そんなようなことでして、一たん渡った品物がかなり長期的な期間を経てまた戻されていくという、こういう返品の制度を持っているわけです。これは関係者も非常に心配をしておりますし、また、それによるところの言うならば大衆に渡っていく価格というものも、いろいろと変化が予想されてくるというふうに考えられるわけです。普通の消費財とは違った、言うならばかなり文化、学術的なもので、必ずしも利益だけを目指したものではない、言うならば独自の文化というものを形成している部分だろうと思うのです。  時間がありませんので、書籍の流通等についてはどんなお考えを持っているか、それはお考えの範疇にあるのかないのか、お伺いしたいと思うのです。
  182. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  書籍の流通につきましては、その書籍が物の購入というような形に当たりますと当然課税ということになるわけでございますが、先生の御指摘のような返品とかいろいろと取引形態に複雑なものがあるということでございますが、返品の場合には、この税の仕組みから申しますと、返品されたときにその売り上げから控除していただきましてそれに税率を掛けるという形でございまして、いわば計算自体としては非常に単純な形になっておりますので、かなり複雑な流通形態でも納税事務の負担は避けられるのではないかと思っております。しかしながら、なるべく納税の方々の事務負担をさせないような形でこの制度を仕組まなければいかぬと考えております。先生の御指摘を踏まえましてまたいろいろと勉強していきたい、このように思っておる次第でございます。
  183. 池田克也

    ○池田(克)委員 関連して、例えばレコードが貸し出されているのですね、レコードレンタル業というのがありまして、この委員会でも随分と議論をして法律をつくった、そうした経過があるのです。こういうレコードレンタルなどは物を渡してしまうのではないのですね、その対価を得てそして返してもらうのですが、これは音という無形なものを、それだけを扱って人々が楽しむという一つ文化活動なのです。入場税のように中へ入ってというようなことではないのですが、これについてはどうでしょう。
  184. 森田衞

    ○森田説明員 レコードのレンタルでございますが、レコードのレンタルを受けるというサービスの提供に対しましてレンタル料をお支払いされるわけでございますから、サービスの提供の対価という意味では当然課税になるということでございます。
  185. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間がなくなってしまいました。まだまだお伺いしたいことはたくさんあったのですが、きょうは、最後に大臣に、教育にかかわる売上税の問題については特段の御努力を重ねてお願いしたいと思います。  またいろいろと機会があると思いますけれども、教育予算の別枠問題につきましてもぜひこれから御検討いただいて、毎年毎年予算委員会でやってまいりましたが、塩川大臣は、予算は別に用意して教育改革をしなければならない、こう答弁された初めての大臣です。松永大臣にも海部大臣にも執拗に私はお伺いをしてまいりました。そうした点におきましては、この間の御答弁にありましたように、臨教審に計算をしろ、そして財源の問題について答申に含めてほしいということをおっしゃっているそうですが、非常に重要なことだと思いますし、ぜひこれは進めていただきたい。  最後にこの問題についての御所見だけ伺って、終わらしていただきたいと思います。
  186. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、教育は非常に重要であるだけに財政投資も十分すべきだ、金がなくて教育は充実しないという信念を持っておりますので、今後も努力を続けてまいります。
  187. 池田克也

    ○池田(克)委員 終わります。
  188. 愛知和男

    愛知委員長 北橋健治君。
  189. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋健治でございます。大臣並びに政府委員各位におかれましては長丁場の委員会質疑で大層お疲れだと思いますが、ひとつよろしくお願いを申し上げます。  冒頭、臨時教育審議会の第一次答申の中でも目玉とされました学歴社会の打破という問題について、そこから質問を始めさせていただきたいと思います。  まず大臣に御感想をお伺いいたしますが、臨教審のたたき台、すなわち第二部会メモの段階においては、今日、学歴による格差は減少ないし解消しつつある、そういう認識が書かれておりましたが、各界の論議の結果、答申においては、依然として現在も有名校重視の風潮が残っている、やはり学歴社会の弊害はあるということを強調した文面に変わったと聞いておりますが、大臣は、率直なところ、今日の日本社会において学歴社会といった弊害が根強くあると認識されておられますでしょうか。
  190. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私はやはり学歴社会という意識が現存しておると思うのです。しかし産業界は大分変化が起こってきておる。それはコンピューターが仕事の中心になってきたところ、情報化社会関係あるいは金融関係、こういうところが学歴というものを余り重視しなくなってまいりまして、それよりも技能重視になってきた、そういう傾向が若干出てはおりますけれども、学歴社会の意識はやはり依然としてあると思うております。
  191. 北橋健治

    ○北橋委員 その学歴社会の弊害を是正していくために、臨教審第一次答申におきましてはこれからの改善策を幾つか指摘されておりますが、その中の一つに、企業、官公庁における採用人事の改善という項目がございます。  ちなみにお伺いしますが、文部省の採用人事においては学歴その他、一切そういった弊害はございませんでしょうか。
  192. 古村澄一

    ○古村政府委員 文部省の採用人事におきましては、一定の国家公務員試験を受験していれば、その他の要素を入れるようなことはやっておりません。
  193. 北橋健治

    ○北橋委員 承知しました。  そこで、臨教審の認識においても、青田買いあるいは指定校制度の弊害というものがかなりある、したがって今後の課題として指定校制を撤廃する、あるいは有名校の重視につながる就職協定違反の採用を改めるということが書かれたわけでございます。この問題については文部省のみならず他の官庁においてもかかわってくる問題でございますが、文部省としては、臨教審答申後、この二点について実際に改善が進んでいると考えておられますでしょうか。
  194. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 就職におきます青田買いの問題あるいは指定校制度の撤廃の問題につきましては、文部省といたしましてもかねてから、労働省に御協力をいただきましていろいろな形で経済関係の団体に働きかける等々の措置を講じてまいったわけでございます。このたび、昨年臨教審の指摘をいただきまして以後も、昨年九月に文部、労働両大臣が経済四団体の方々と直接お会いして、この問題についての御協力をお願いするというようなことをいたしました。そういったことの一つの結果として、今年度の就職協定につきましては、企業側の方々の大変な御努力がございまして、会社訪問日を八月二十日というふうに改めましたけれども、この八月二十日の訪問日という新しい就職協定がかなりよく守られたというような状況は出てまいっておるわけでございます。  また、指定校制度につきましても、最近具体の調査はいたしておりませんけれども、さきに調査をいたしたところによりますと、過去十年間ぐらいで、皆無にはなっておりませんが、比率において相当数減少してきているというようなデータもあるわけでございますので、今後とも引き続きいろいろな機会に、こういった方向で、企業関係者の方々あるいは官公庁の方々の御理解を仰ぎ、この方策が実質的に実を持ってくるように努力をいたしたいと思っております。
  195. 北橋健治

    ○北橋委員 産業界への改善努力の要請を初めとして、文部省がこの問題について鋭意御努力をされてきたことを率直に評価するものでございますが、依然として一部には残っているという事実もあるやに聞いております。これを根絶していくためには、単に政策目標ということに終わらせないためにも、そういった青田買いなり指定校制度を行った企業に対して大学側も就職あっせんについては何らかの措置を講ずるとか、あるいは官公庁においても特定大学あるいは学部の採用数を制限する等の措置を講ずるとか、具体的な措置がそれにあわせ講ぜられるとかなり効果を持つと思うのですが、それについての必要性をお考えになりませんでしょうか。
  196. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 例えば、青田買いなどの協定違反の行為に対してどういうふうに対応するかというようなことは、かねてからいろいろな場で議論はされてまいった事柄でございますけれども、ただ事柄が、いわば紳士協定というような形のものであり、お互い努力をしてこれを守っていこうという性格のことである。しかもまた、就職そのものは個人個人の卒業予定者である学生と各会社との私的な関係であるというようなこと等もございまして、形式的ないわゆる懲罰制度というのは大変難しい面があるわけでございますが、関係者の間でも何らかの、お互いの紳士協定を守ろうという今回のような努力がかなりの成果を挙げたということを踏まえまして、来年度以降に向けましてもまた、この協定をどうするかということを既にことしの秋から真剣に御議論が始まっているというような状況でもございますので、そういった企業関係者等の方々の真剣な御努力期待をし、お願いをしていきたいと思うわけでございます。
  197. 北橋健治

    ○北橋委員 了解いたしました。それでは、文部省がそういうお考えでございますれば、もうしばらく社会の成り行きを見守らしていただきまして、また改めてこの問題について議論させていただきたいと思います。  その次に、臨教審では第一次答申においてそれに加えまして重要な提言がなされておりますが、これは質問通告の中にはっきり申し上げておかなかったので恐縮でございますけれども、例えば大学入試の問題についても、今の共通一次テストを廃止する、そしてそれにかえて共通新テストを創設するということでございますが、現時点において文部省のお考えとしては何年ぐらいをめどにスタートさせるお考えでしょうか。
  198. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 臨教審答申に基づきます従来の共通一次にかわる新しいテストでございますけれども、当初文部省といたしましては、昭和六十四年度の入学者選抜からこれを実施したいという目途を掲げまして、そのための準備等を重ね、関係者の理解を得る努力をしてまいったわけでございますけれども、最近の諸般の実情から見て、よりよいテストを実施をするためにはこれを一年延期をすることが適当であろうというような判断に立ち至りました。これにつきましては、入試改革会議と申します、文部省内に設けております、国公私立の大学あるいは教育委員会、高等学校等の代表者の方々の会合がございますけれども、その会合にお諮りいたしました結果、そのようなお話に相なったということで、私どももそういった関係者の御意見を尊重いたしまして、当初の目標を一年延期するということで六十五年を考えておるわけでございます。
  199. 北橋健治

    ○北橋委員 実施時期につきましては、当初政府首脳から六十二年度スタートあるいは六十三年度スタートという発言があったために、父兄、学校関係者の間に非常な混乱を招いたということもございました。そういうことで、大学受験を間近に控えている子弟並びに父兄にとりましてはこれは大変大きな問題でございまして、今お話ございましたけれども、大臣として現時点で六十五年度、これで明確に言い切られますでしょうか。
  200. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 六十五年実施、間違いないと思うております。
  201. 北橋健治

    ○北橋委員 その次に、臨教審では六年制の中等学校の御指摘がございます。私も、兵庫県西宮市の甲陽学院、きょう午前中、社会党の先生から御質疑のあった私立学校の卒業でございまして、六年制一貫教育で育ちました。確かに臨教審の指摘にございますように、中学と高校の接続を円滑にする、落ち着いた安定的な学校生活を過ごすことができるようにという御趣旨でございますけれども、確かにそういうメリットはあると思って、率直に評価はしたいと思っておりますが、ただこれは、既存の中学、高校はさておき、新しく地域の実情に応じてゴーサインが出るところについては自治体学校法人の判断で創設ができるということでございますけれども、これがうまくいくような状況になりますれば、今現在あります中学、高校、そういったものを包括した六年制一貫教育というものを将来目指していってはどうかと思うのですが、文部省考え方をお伺いします。
  202. 西崎清久

    西崎政府委員 六年制の中等学校の具体的な実施の問題を見通しました場合には、都道府県におけるいろいろな施策の問題として生徒数の問題がございます。先生も御案内のとおり、高校生のピークが昭和六十四年でございます。従来から高等学校の増設等に都道府県は非常に力を注いできておりまして、都道府県が六年制の中等学校を市町村立の中学校等と接続で考えるのか新設で考えるのか、いろいろな形態を考える場合には、高校生の数の問題として、その辺の六十四年のピークの時期の前後というのが一つの判断の目安になろうかということで、都道府県もその点については時期的な問題としていろいろ検討しなければならないというふうな考え方を持っております。したがいまして、時期の問題としては生徒数との関係でそういう問題があるということと、もう一つ制度的な問題として、合併というような中高の問題で考えるのか、高校と中学をワンセットにした新設という問題で考えるのか、教員の給与の国庫負担の問題とか、いろいろ副次的な問題がございますので、私どもはなおいろいろな面を検討して対処してまいりたいと考えておりまして、今こういうふうな仕組みでいくということにつきましては、まだ現在考え方を示す段階にはなっていない次第でございます。
  203. 北橋健治

    ○北橋委員 文部省としては、今後、臨教審提案されましたように、六年制の中高一貫教育学校の創設に向けてかなり積極的に取り組んでいかれると理解してよろしいでしょうか。
  204. 西崎清久

    西崎政府委員 そのとおりでございまして、この点につきましては、制度趣旨からしまして前向きに努力すべきものと考えております。
  205. 北橋健治

    ○北橋委員 学校を新しくつくるということはいろいろと難しいこともございますが、この答申趣旨、つまり十代の前半のときに高校入試のために非常につらい受験勉強を強いられるということが、精神形成上いかがなものかというところから出発しているんだろうと思います。そういった意味では、現在九四、五%の方が高校に進学されているという状況からしまして、すぐに中高一貫の学校が創設できないにしても、このあたりで思い切って全入制といいますか、希望する生徒さんは高校に進学できるような、そういった発想に向けて制度改革に取り組まれるお気持ちはございませんでしょうか。
  206. 西崎清久

    西崎政府委員 六年制の中等学校の問題と高校全入の問題は私どもは若干区別して考えておりまして、高校全入と申しますと、限られた地域の高校生は限られた一つの高等学校に行って、全員が無試験で行く、こういうふうになるわけでございまして、中等教育の中で高等学校への発達段階になった場合に、学校選択の余地をなくするという点についてはいかがという問題が一つございますし、やはり能力、適性の問題で高等学校教育が多様でなければならないということになれば、それぞれの高等学校が画一でなく特色あるものでなければならない、こういう点もございます。それから、全入という場合には公立と私立との関係でいろいろ振り合いの問題も難しい点がある。そういう点から考えますと、従来から私どもとしては高校全入という考え方はいささか問題があるというふうな考え方を持っておりまして、その点については若干消極でございます。  ただ、中学校と高校とを一貫した教育でやる六年制の中等学校というのは、それとは別個の問題として前向きに取り組みたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  207. 北橋健治

    ○北橋委員 承知いたしました。  それでは、次の質問に移らせていただきたいと思いますが、私学の助成の問題についてちょっとだけ触れさせていただきます。  私は福岡県二区、北九州の出身でございますけれども、同地におきましても、私学助成の問題について世間の耳目を引くような事件がございました。考えてみますと、それは今回初めて起こったことではなくて、これまでにもそういったケースは全国にあったわけでございます。もちろん文部省の私学所管の課とされましても今まで鋭意予算の適正執行に努力されてきたことは承知しておりますけれども、また今後起こらないとも限らないのではないかという不安も感じます。  そこで、これまで何件かそういった私学助成の不正な取り扱いについて事件があったという経緯にかんがみまして、今後そういった再発を防止するためにどのように政策考えておられるか、お伺いします。
  208. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 私学助成補助金の取り扱いに当たりまして、例年、会計検査院から、間違いがあったではないか、過大に交付したではないかということで若干の指摘を受けていることはまことに私ども遺憾に思っております。  通常の場合指摘を受けるのは、例えば先ほどもほかの委員先生の御質問お答え申し上げましたが、私学助成をする場合の基礎数値は十二月三十日の学生数、それから職員数等を基礎にするわけでございますけれども、たまたま冬休み中、十二月前に退学してしまったという学生数をちゃんとカウントし損なって、そして、何人か十二月三十日現在では退学しているにもかかわらず、翌年度の公式の申請に当たってその数値をカウントしてしまった結果、若干の過大交付になってしまったというような、事実の把握が非常に不正確であったということで、ケアレスミステークであるわけですが、そういうことで補助金の返還を求めるという事例が大半でございます。この辺の問題につきましては、学校法人がまず正確な事実関係を把握して、私学振興財団にその数値に基づいて事実に基づいた補助金の申請をしていただきたいということを、私どもかねてから、各学校法人に対する業務説明会とか補助金担当者の研修会などを通じまして指導してきているところでございます。  しかしながら、そうではなくて、今先生が御指摘になりました福岡県の例で申し上げますと、故意に事実を隠ぺいする、言いかえれば明らかに事実をごまかそうということで、甚だしい例で申し上げますと、文部省や私学振興財団に提出する学生便覧とそれから学生に直接配る学生便覧を、わざわざ上質紙で印刷を全然別にいたしまして持ってくる。そして、私どもに持ち上げてきておる学生便覧については教員数をかなり余計に水増しした学生便覧を示し、学生に示すものについては、これは当然すぐ学生に知られてしまうものですから、ちゃんとした正しい教員数、教員名で学生に配る学生便覧をつくっておるというような形で、全く悪質な形でごまかされますと、私どもとにかく事実関係は第一次的には私学で正確につかんで私学振興財団に出していただきたいということで指導をして徹底しているわけですが、それを一々、そもそも私学は悪をするものである、本当にこの学生便覧は正確であるかあるいはこの数字はごまかしてないだろうなということを、すべての私学に対して私どもが全部物を言い、チェックするというのは非常に難しいのではないかという気がいたしております。  いずれにしましても、しかしケアレスミステークということがないように今後十分指導をしていきますが、一方、故意に補助金を詐取した、ごまかして取ったというところにつきましては、私ども、昭和五十八年度から補助金を全面カットした上に、しかも五年間原則として補助金を交付しない、そういうかなり厳しい措置を講ずることにいたしております。しかし、このこと自体は大変悲しいことでして、私どもとしましては、少なくとも故意に補助金を詐取するなどということは私学がするはずがないという信頼関係で補助金の執行をしたいわけですけれども、やむを得ずこういう強い制裁措置を講じているわけでございます。  いずれにしましても、私学が補助金を申請する場合には正確な事実関係を把握して、それに基づいて私学振興財団に申請をしていただきたいということを今後とも強く指導をしていきたいというふうに考えておりますが、万一福岡県に過去にあったような非常に不幸なあるいは極めて悪質な事例がございましたら、私ども今申し上げましたような制裁措置を厳正に適用いたしまして対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  209. 北橋健治

    ○北橋委員 理解できました。私学に通っていらっしゃる父兄の負担、本人の負担というのは非常に重たいものがございます。そういった意味で、こういう不祥事が発生いたしますと、私学助成費を確保していく上におきましても世論の支持を得ることについて若干マイナスになると思いますので、ぜひともこの問題については厳正に処置されていただきたいと思います。私学部長さん、ありがとうございました。  さて次に、いじめと非行問題でございますけれども、そもそも臨教審が発足したときに国民臨教審の議論に期待をしたことは、やはり荒れる学校、いじめ、非行、登校拒否、そういった問題について思い切った具体的な改善策を提示していただけることにあったと私は思っております。そういった意味で、臨教審におかれましても鋭意検討された結果、具体的な改善策が指摘されておりますけれども、あれから今日までの経過を見ましても、いじめ、非行の件数は減ったものの、少々それが外に見えなくなってきたということで、依然として学校の中においてはいじめ、非行の問題が深刻な問題として継続しているやに聞いておりますが、文部省としてはどのような認識を持っておられますでしょうか。
  210. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘のいじめあるいは校内暴力等の問題行動でございますが、私ども従来から大変深刻に受けとめそれへの対策に努力しておるわけでございます。実態の推移につきましては、先生御指摘のとおり、校内暴力につきましてもいじめにつきましても数としては減ってまいったということはございますが、見方によりますれば高原状態ではないかという見方もあるわけでございます。私どもとしては一昨年、昨年と、あらゆる対策を講ずるべく都道府県教育委員会との協議を重ねておるわけでございますが、要点として申し上げますれば三つございます。  一つは、学校において校長先生以下全教職員がそういう問題行動に対して一致協力的な体制で取り組むこと、これが第一点であります。それから第二点は、問題行動を起こす児童生徒の実態を十分把握する、そして個別的な問題としてそれに対処することが必要である、これが第二点でございます。それから第三点としては、学校地域、家庭、その三者の連携協力によっていじめなり校内暴力等の問題行動の根絶を期すべく努力しなければならない。この三つを中心といたしまして、都道府県教委、学校が全力を挙げてやっておるということでございます。  端的ないろいろな例といたしましては、先年いろいろ話題になりました都下の町田の中学におきましても、先般文部大臣にも御視察いただいたわけでありますが、立派に立ち直って本当にいい学校になっておるというふうなケースもあるわけでございまして、こういうふうなケースが全国的にも随所にあらわれるように私ども今後とも努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  211. 北橋健治

    ○北橋委員 来年度の概算要求の中でいじめ対策の一環と思われるものがありますが、例えば教育関係の相談、電話での夜間電話相談事業というのですか、これも新しく要求されているようでございますが、千二百万円というふうに出ておりまして、十二億円の間違いじゃないかと思ったのですが、やはり千二百万円でございまして、これも、学校で言えないときに夜電話をして相談に乗ってもらおうということは悩んでいる子供たちにとっては朗報だと思いますが、これぐらいの予算規模で、全国津々浦々でいじめや非行の問題で苦しんでいる子供たちの相談に応じ切れるのでしょうか。
  212. 西崎清久

    西崎政府委員 小中学校学校教育の運営につきましては、先生も御案内のとおり、市町村の教育委員会が設置者として、そして学校長が中心になって、地域における学校教育の問題として実施されておるわけでございます。  生徒の問題行動に対する対処も、先ほど申し上げましたように、学校なり教育委員会地域の問題として責任を持ってまず対処してもらうというのが一つの原則でございまして、今御指摘の電話相談等の事業につきましても、やはり教育委員会等が地域の問題としてこれに対処するというのがあるべき姿かと思うわけでございます。現に地域において電話相談を既に実施しておるところもあるわけでございますが、私どもの予算要求の姿としては、国もこの電話相談事業が非常に意義のあるものとして取り上げ、そしてこれを全国的に普及する、そして各市町村においても都道府県においても積極的に努力してもらうという一つのあらわれとして、国の予算としての計上をし、それを全国的に及ぼしたい、こういう次第でございますので、額の多少の問題は先生御指摘の点がございますけれども、その意味合いとしては、以上申し上げたような線で、私ども、各市町村、都道府県で実際に実施できるような体制を整えていくための一つのあらわれとして努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  213. 北橋健治

    ○北橋委員 この問題について第二次答申の中では具体策が幾つか出ているわけですが、例えば難しい問題を抱えている学校に対しては教員の配置をふやすとか、あるいはカウンセリングの体制を充実する、市町村教育委員会教育相談の機能の整備、項目的にはよくわかるのですけれども、具体的にもう実施されていると理解してよろしいのでしょうか。六十一年の第二次答申は四月の答申でございますのでまだ間もありませんけれども、もうすべて具体化に移っている、軌道に乗っていると理解してよろしいでしょうか。といいますのは、地元の中学生、高校生の子供を持っていらっしゃる御父兄の方から見まして、こういったことが父兄あるいは本人の耳に入ってきて、そして、これは期待できるということで早速相談に行こうというぐらいまで、周知徹底はなされていないようなお話を私も多々承っておりますので、お伺いいたします。
  214. 西崎清久

    西崎政府委員 先生御指摘の学校におけるカウンセリングというのは大変大事な問題でございます。一番望ましい姿といたしましては、個々のホームルーム担任の先生なりがカウンセリングの技術を心得ていて、そして、自分のクラスの生徒の問題行動等の悩みについて直接に対応するというのが姿としては望ましいわけでございますが、やはりカウンセリングにも専門的知識と技術が要るということで、その点に関しての専門的な教員の加配が必要ではないかということで、これは教育助成局の方で教員定数の問題として加配教員、苦しい中ではございますけれども、いろいろと毎年度考慮しておるという経緯はございます。  ただ、その数につきましては限度がございまして、それぞれの学校に全員ということにはもちろんまいらないわけでございますし、それからもう一つ文部省が算定いたしますそのような加配教員の数というのは県単位で、ある枠内での数でございまして、どの学校にそのような教員を配置するかは県の方の判断になる、優先順位の問題もあるわけでございまして、そういう意味から申しますと、現時点では必ずしも必要とする学校に直ちに加配の教員が行っていないという実態もあろうかと思います。こういう点につきましても、今後の学級編制の四十人の問題とあわせて、今十二カ年計画が走っておるわけでございますけれども、そのプロセスでいろいろと拡充の問題で努力をしなければならない課題であろうというふうに思っております。
  215. 北橋健治

    ○北橋委員 この問題についての文部大臣の率直な御所見を承りたいのでございますけれども、いじめ、非行の問題、子供を持つ親のひとしく憂うるところでございまして、現実には、いじめ、非行の問題について臨教審でも具体策が最近指摘され、そして現場でも皆様方が鋭意努力されている中で、なかなかそれが解決をしないという難しい問題になってきております。大臣としてこの問題をどのように認識され、そして今後、大臣の任期中にどのように解決されていこうとするか、決意のほどをお伺いしておきます。
  216. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは現在、学校の最大の悩みでございますので、私も、何か手だてがあれば、一生懸命幾らでも手だてを講じてでもこの解決、解消努力してまいりたいと思うております。
  217. 北橋健治

    ○北橋委員 よろしくお願いを申し上げたいと思います。私も具体的な学校名を挙げて指摘をすればそれなりに質問としての迫力も出てくるのだろうと思いますが、しかし名前を挙げますとなかなかいろいろな問題もございますので。実は、私の同級生なんかも、学校先生になって新しくできた学校に行ってみますと、本当に荒れる学校で、ノイローゼになって苦しんでいる、こういう学校があります。しかし、その学校では、先生の定員がふえるだとかあるいはそこの町の教育委員会人たちが一生懸命やっているという気配は今のところないのであります。具体的な市と学校名を挙げればわかるわけでございますが、ぜひともこの答申に指摘された事項が本当に緊急課題として現場で実施されていくように、今後ひとつ督励をお願いしたいと思います。その成り行きを見まして、また改めて質問させていただきます。  さて次に、国旗国歌の問題について文部省の見解をお伺いしたいと思います。  六十年のときに文部省調査をされまして、国旗の掲揚並びに国歌の斉唱について、中学、高校がそれぞれどれぐらいのところで実施されているかというデータは私も承知しておりますが、一部においてはなかなかそれについて理解と協力を得られない現場の職員の方もいらっしゃるということで、必ずしも私どもの期待するような状況にはなっていないと思っております。  文部省の方も、昭和六十年九月には初中局長の通知という形で、この国歌国旗の取り扱いについて文部省の基本方針を伝達されて周知徹底を図ってこられたと聞いておりますが、直近の調査でどれぐらい国歌国旗の取り扱いについて実施状況が改善されたでしょうか、お伺いいたします。
  218. 西崎清久

    西崎政府委員 直近の調査として全国的な姿としましては、先生今お触れになりましたように、六十年五月に行ったものがその内容なのでございますが、五十九年度の卒業式国旗掲揚をした学校につきましては、小学校で九二・五%、中学校で九一・二%、高等学校で八一・六%、国旗につきましては今申し上げましたような数字で、小中高の各学校国旗掲揚については卒業式等でかなり徹底が行われておるということが言えると思います。しかし国歌につきましては、小学校で七二%、中学校で六八%、高等学校では五三・三%でございますから、この点についてはなお努力が必要であろうと思っております。  国旗につきましては一〇〇%を若干切れておるわけでございますが、この点についてはやはり県の実情に応じて若干差があるわけでございまして、沖縄等においてはなかなかその実施が難しかったというふうな状況でございましたが、いろいろこういう点についての私どもも通知等での指導をいたしまして、沖縄等でも国旗掲揚については各学校における実施がだんだん上がってきておるというふうな実情はあるわけでございます。なお以後、私どもも折に触れて指導を徹底してまいりたいと思っております。
  219. 北橋健治

    ○北橋委員 私どもはやはり日本国民である以上、国旗を掲揚し、そして国歌を斉唱することは当然のことだと理解をしておりますが、まだまだ学校教育の現場においては一〇〇%そのようになってはいないということは、極めて遺憾であると私は率直に思います。  そこで、文部大臣の所見を承りたいのでございますが、まだ一部において、国歌並びに国旗について文部省が意図されているような現実になり切っていない、理想に近づきつつはあるもののまだ完全にはなっていないという現状に対して、どのようにお考えでしょうか。
  220. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは一つは、学校先生が反対しているというのがあるのです。特にこれは日教組が反対しておるのです。これは非常に困ると私は思うのです。国旗国歌というものは国の一つのシンボルとしてといいましょうか、これを自分らが愛唱し、敬愛する念をぜひ持ってもらいたい。しかも、もう大部分の国民の方々が国旗に対して敬礼をするということは日常生活の中で溶け込んだものでありますし、何かの儀式の初めには国歌を歌うということも国民の中で広く行われておることでございます。学校でこれをやらないのはおかしいと私は思うのです。  ですから、できるだけ早く、この際、教育委員会等が学校に対して、行事のときには国旗国歌をそれぞれ掲げて愛唱するということをぜひ一層努力してやってほしい。私は教育委員会にもやかましく要求しているのですけれども、一部の学校の中で反対がある、非常に残念でございます。これは非常な考え違いであると私は思っております。
  221. 北橋健治

    ○北橋委員 そこで、大臣もそういうお考えでございますが、現在のところ文部省の対処方針としては六十年のときの局長通知でございますね。私は何も局長立場からのあれをどうのこうの言う気持ちは毛頭ありませんが、せっかく臨時教育審議会という、各界の代表から成る、立派な学識経験者の先生方から構成される審議会がある。そこで教育改革についての国民的合意の形成に向けて鋭意努力をされている。まさにそういう場においてこそこの問題について臨教審としての見解を示すということで、従前の文部省局長通知と相まって国民への周知徹底がより生きてくるのではないかと思うのでございます。  大臣にお伺いしますが、例えば臨教審、権威ある国民的各階層から構成される審議会、そういったところにおいてこの国歌の斉唱と国旗の掲揚について一定の統一的な見解が示されるということを期待されますか、あるいはそのように臨教審に要望されますでしょうか。
  222. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私はこれは当然答申の中に出てまいると思っておりますし、また、そういう国民的意見を反映していただけることだと思っております。
  223. 北橋健治

    ○北橋委員 それでは臨教審答申を見守りたいと思います。  時間も限られてまいりましたが、ひとつ主任制度の問題についてお伺いしておきたいと思います。  文部省の見解を最初にお伺いしますが、制度発足以来今日まで、この制度をめぐるいろいろな経緯を振り返ってみて、制度発足のときの政策意図は達せられつつあるとお考えでしょうか。
  224. 加戸守行

    ○加戸政府委員 主任制度と申しますのは、校長、教頭先生指導のもとに、学校内の業務につきましての連絡調整、指導助言に当たるということによりまして、全教職員が挙げて教育活動を展開していくという意図で設けられたものでございますし、また、それに見合う給与上の措置といたしまして教育業務連絡指導手当を支給いたして処遇の改善を図り、また、その主任の職務の重要性に着目した給与改善を行いその労苦に報いるというような考え方でスタートしたものでございます。  主任制度自体は昭和五十一年度にスタートいたしまして、主任手当の制度昭和五十二年度からスタートいたしました。当初、大多数の県では御協力いただいたわけでございますが、一部困難な県もございまして、全国的に四十七都道府県が全部完全に実施ができ、かつ、主任手当も支給されるようになりましたのが昭和五十七年の初頭、沖縄県をもって全国的に完成したわけでございます。  この間におきまして、各種の反対運動等もございまして、相当程度の県におきましてはその実効を上げるのは難しい状況もございましたが、各都道府県教育委員会の必死の御努力によりまして、主任制度が定着し、かつ、実効を上げつつあると私ども理解しているわけでございます。
  225. 北橋健治

    ○北橋委員 制度が定着し実効を上げつつあるという見解でございますが、聞きますと、一部の先生方の中には、支給される主任手当を組合の方に拠出をして組合活動の一環として使われているやに聞くのですけれども、その辺の実態はどのように把握されておられますでしょうか。
  226. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在支給されております主任手当につきまして、日教組の方では、これが教育の国家統制につながるという観点から主任制度に反対し、また、主任制度を形骸化する目的をもちまして主任手当拠出運動というのを展開しております。これは先ほど申し上げました五十二年度の主任手当の支給以来続いている運動でございまして、私ども正確には十分把握し切れておりませんけれども、県からの実情報告あるいは日教組等の発表によります資料等で推測いたしますと、全支給額の約二〇%に相当する金額が拠出されているという状況を把握しておるわけでございます。拠出されたものにつきましては、大部分が積み立てたままの状態でございますけれども、一部分は各種目的等に使われているような状況もございますが、その比率は極めて低いと理解いたしております。
  227. 北橋健治

    ○北橋委員 この問題について文部大臣の所見をお伺いいたします。  主任制度発足以来大分たつ中で、日教組のそういった運動もあって二〇%ぐらいは拠出されている。それはそれで一つ社会の動きなのかもしれませんが、主任制度発足のときに文部省政策意図として掲げたものもあったと思うのです。そういった趣旨からすると、果たしてこういう状況でいいのだろうかという疑問を率直に私は持っております。大臣としてはこの主任制度、この状態でいいとお考えか、それともこれが本当に定着し実効を上げていくためにこれから何らかの新たな措置をお考えになるかどうか、お伺いいたします。
  228. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私の記憶しておりますのには、人材確保法案が成立いたしまして、まず一般の先生、一般の給与基準が上がりまして、それから教頭、校長という管理職に対する配分もいたしましたし、最後に主任制を実施して主任に対する給与の割り増しをやろうというときに、ちょうどこの主任制が日教組の反対で一大紛争になったことを私は記憶しております。それ以来、鋭意各教育委員会等は努力してまいりましたけれども、まだ完全な状態になっておらない。私は、こういう制度をつくった趣旨をやはり正確に理解してもらいたいと思うのでございまして、それが何か曲解されて、そしてまた、組合活動に非常に害があるというだけの理由で主任制度に対して根強く反対しておられて、制度的にゆがめられているということは非常に残念だと思うのです。これはできるだけ早く正常化の状態に持っていってもらいたいと思っております。それぞれ努力しておられますのを、その成果を一刻も早く完全なものに定着するようにしてほしいと私は思っております。
  229. 北橋健治

    ○北橋委員 了解いたしました。今後とも御努力をお願いいたします。  きょうは授業内容をもっとわかりやすくする必要があるという観点から幾つかお伺いしたかったのでありますが、時間が限られてまいりましたので一点だけ、教育現場で使われている副読本について、御要望を兼ねた質問をさせていただきます。  といいますのは、学校の教科書については検定制度というものがありますけれども、現場では、私も学生時代に家庭教師をしたり塾の教師をしたりして自分の体験でもよくわかるのでございますが、実際教科書を余り使わない。そして、自分の好きな編集者の書いた副読本のようなものを使って講義をする。そして、子供たちは教科書を持っておりますけれども、試験に出るのは先生の話から出るわけでございますから、教科書と違ったその副読本とかそういった教員の好みのものから出題されるということで、どうしてもそっちの方に勉強の焦点がいってしまうという現状にあることを私自身の体験でよく知っております。  そういった意味で、例えばの話でございますけれども、高校の理科の副読本の中で、原子力発電に関しまして、私もその現物をまだ手にしたことがないのでまた改めて質問させていただくことにいたしますけれども、原子力は悪魔の火であるというような内容の、明らかに反原発の思想が色濃く表に出たような副読本を使っている学校もあるやに聞いております。そういうことで、教科書のみならず副読本についても、やはり公平な見地から、子供たち教育の知識を与えていかなければなりませんので、副読本についても細心の注意を払っていく必要があろうと思います。  文部省の方にお伺いいたしますが、私もその現物を持ってくればよろしいのでございますが、また改めてそれは探し出すとして、そういった例えば原子力発電の問題で明らかに客観性を欠くような内容を記載した副読本が出回っているというような認識は持っておられますでしょうか。
  230. 西崎清久

    西崎政府委員 副読本の問題でございますが、学校教育においては教科書が主たる教材でございまして、やはり教科書を主として使って先生方が教えていただくというのが原則でございます。先生御指摘のように、教科書はちょっと横に置いて副読本だけで授業を行うということは決して望ましい姿ではないわけでございます。  副読本につきましては、現在主たる教材の教科書を補う従たる教材として学校で使用することは認められるわけでございますが、その際は教育委員会へ届け出かまたはその許可を得る、こういう仕組みになっておるわけでございます。したがいまして、その学校で使われる副読本がもし不適切なものであれば、教育委員会がちゃんとチェックしなければいけない。もちろん、校長先生がその前に自分の所管の先生方がどんな副読本を使っているかはチェックすべきであり、指導するべきであります。そういう意味で、現在、先生御指摘のような原発に関して不適切な副読本が使われているという実態はまだ私ども承知いたしておりません。また、そういう副読本があれば先生から具体に御提示いただきたいと思います。いずれにいたしましても、副読本はそういう性格でございまして、やはり従たる補充としての教材という性格で適切なものが使われなければいけない、これが原則だと思っております。
  231. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が参りましたので、それでは、その反原発のものについては数冊出回っているという話を聞いておりますので、それを今度は持参いたしましてまた改めて質問させていただくことにいたします。どうもありがとうございました。
  232. 愛知和男

  233. 山原健二郎

    ○山原委員 最後の質問者になりそうな状況でございますが、遅くなりまして、大臣以下御苦労さまでございます。いろいろ申し上げたいこともあるのですが、ただいまの質疑応答、特に文部省の答弁につきましても随分この委員会で論議をしてきたものもありまして、いろいろ申し上げたいことあるんですけれども、きょうは時間の関係で、特に予算問題が目前に迫っておりますので、これについて幾つか、文部大臣を時には激励もし、時にはその決意も伺いたいと思います。  最初私学助成の問題でございますが、きょう私学関係の方がたくさん請願署名を持ってこられておりまして、お聞きしますと、きょうは千八百五十万の署名を集められたそうです。これは、例えば私学に通っている人のお母さんが買い物に行くときにも、買い物かごの中に四点セットといって、署名用紙あるいはボールペン、それから印肉ですね、それから拇印を押したときの手をふくためのティッシュペーパー、そういうものを持って署名を集める。あるいは先生が教え子に手紙を出して署名を集めるとか、父親は会社で署名を集めるとかいう話を聞きまして、毎年のことでございますけれども、ちょっと身につまされるような思いがしているわけでございます。例えば愛知県の場合は、請願署名をされた方が県民の六〇%という数字ですね。非常に運動が盛んなところのようです。また私学も多いところですね。それから、大臣の御出身であります大阪では三百万の署名を集めておられるということを聞きました。  今度の概算要求大学では一%の増、二千四百六十三億、それから高等学校以下の場合は一・五%増の七百三十一億円、こういうふうになっております。けれども、今から十一年前に私学振興助成法が出ましたときに、経常費の二分の一ということが論議の中心になりまして、法案として「二分の一以内」という、「以内」という言葉がつきましたために大分委員会が荒れまして、しかし結果として、参議院におきまして附帯決議の中に、経常費の二分の一に近づけていくということが各党一致してできているわけでございます。ところが、その経過を見てみますと、ピークになりましたのがたしか一九八〇年の二九・五%ですね。それ以来下がり続けまして、ことしで一八・八%、来年は、数字が出ていないと思いますが、一五%そこそこになるのではないかというような心配をしておりますけれども、その辺を文部省はどうつかんでおられるか、簡単にお答えいただきたい。
  234. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 私立大学の経常費、今先生が数字を挙げましたのは大学関係でございますが、私大関係の経常費助成とそれから経常費との割合でございます。先生御指摘のように五十年度は二〇・六%、それからその後鋭意二分の一を目途に私ども増額に努めてまいりまして、先生御指摘のとおりに昭和五十五年に二九・五%、これがピークでございます。その後臨調答申で、総額を抑制するというような臨調答申も出てきた、あるいは財政状況も御承知のように非常に厳しいということもございまして、総額が抑制されてきた結果、徐々に経常的経費に対する私学助成の割合が減少してまいりまして、六十年度で一九・二%でございます。  先生、本年度一八・八%ぐらいだろうというふうに数字を挙げましたが、まだ本年度の決算、六十一年度の決算は出てきてないということもございまして、私どもまだ六十一年度につきましては正確な数字はつかんでおりません。ただ、前年度の一九・二%よりは少なくともダウンすることは間違いないというふうに考えているところでございます。
  235. 山原健二郎

    ○山原委員 この法律のできる前ですね、前の年の七四年度でありますが、そのときが一七%ですから、まかり間違えば振興助成法ができる前の姿、文部省のいわゆる予算措置でやっておった時代に返りかねないということになると、これは法律の趣旨からいいまして随分思いどおりにはなっていないということになるわけです。同時に、この比率の低下がやはり父母負担に影響いたしまして、父母負担というのはもう限界に来ているのじゃないか。また、私学経営にしましても深刻な状態にあるということは私学関係者から出ておるわけでございますが、同時に来年のことを考えますと、既に私学の学費の値上げが随分たくさん出ておりまして、これは一昨日いただいた学生諸君の調査でございますが、十二月十日現在で調査対象の三百二十校についての結果ですけれども、値上げを決定しているのが二百二校、値上げの方向で検討中が三十一校、結局七二・八%の学校が値上げを検討中あるいは値上げを決定している。しかも値上げ幅は、一部で五万六千七百六十二円、二部で三万八十七円ということでございまして、私立大学の初年度納入金が八六年度で九十四万三千百九十円、実に百万円台に上るという事態だという報告を聞いたわけですが、文部省の把握も大体そんなところでしょうか。
  236. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 来年、六十二年度入学者にかかる学納金の値上げ状況については現在調査中でございますので、まだ私ども最終的な集計に至っておりません。それから六十一年度現在で申し上げますと、初年度納入金の平均は、私立大学は九十四万三千円でございます。
  237. 山原健二郎

    ○山原委員 調査の結果がいつ出るかわかりませんが、いずれにしてもほとんど値上げをせざるを得ないというところへ置かれておりまして、しかも金額も、今おっしゃったように随分、九十何万というところへ来ていますね。これは本当に深刻な話だと思いますし、授業料の平均年額も八六年度で四十九万五千八百二十六円という数字が出ておりますが、大体五十万ということですね。これでいきますと、教育機会均等という憲法、教育基本法の精神からいいましても、また、高等教育においてもやはり無償化の方向へ次第に進んでいくといういわゆる国際人権規約の精神からいいましても、日本の私学対策というのはだんだんそこと離れつつある、遠ざかりつつあるという事態、これはお互いに深刻に反省しなければならぬと思うのでございます。  いよいよこの予算編成を前にしまして、私は文部大臣にこれはぜひ頑張っていただかなければならぬと思いますが、その辺のお考えをちょっとここで伺っておきたいのです。
  238. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、ことしの、つまり六十二年度予算編成に際しまして、文部省大蔵省要求しておる重点の中に私学助成の増額を強く打ち出しております。現状は先ほど御質問の中にあったような状況でございますから、私はこの際たとえ一円でも対前年度たくさん取りたい、そういう意欲を持って一生懸命努力しておるところであります。
  239. 山原健二郎

    ○山原委員 これはもう時間の関係で省略したいのですが、経営状態につきましても、私学振興財団の発表によりましても、「今日の私学財政」によりますと、大変危機感を持っておりまして全く不安だ。それからこれは埼玉県の例ですが、アンケートをとっておりますけれども、五百九十世帯を調べましたところ、九割が家計を圧迫している。それからこれは高等学校以下の場合ですけれども、七割の人が生活費を切り詰めなければならぬ。それから入学期には借金をしています。五百九十の世帯の中で五十の御家庭が、平均四十七万円の借金をして入学に当たって払いをしているというようなことまで資料として出ております。  ところで、大蔵省は、臨教審に出したメモですが、これも前に私がいろいろ申し上げましてこの委員会でやったことですけれども、例えば初任者研修制度の創設あるいは大学院の充実などをビルドとすれば、高等学校私学助成あるいは私立大学の助成のあり方をスクラップ部分として考えなければならぬというふうに言っております。また行政改革審議会の方でも、私学助成の総額仰制を掲げておりまして、情勢は決して文部省にとっても甘い情勢ではないということを考えます。これが今後ますます強くなってくる可能性がないとは言えません。そうすると、よほどの決意を持たないと概算要求、さらには今後に向かって増加させていくということはいよいよ困難になってくるという感じを抱くわけですが、その辺の危機感というものですか、それは文部省としては持っておられるのか持っていないのか、その辺どうでしょうか。
  240. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 それは私たちも同様であります。非常に厳しいだけに、今度はもう必死になって政策関係予算は獲得しなければならぬと思っております。先ほどお話の中にございましたビルドするならばスクラップしろという、そういう考えも確かに大蔵は言っておりますけれども、だからといって私学の助成金をスクラップの一つに入れるというそんなことは全然考えておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  241. 山原健二郎

    ○山原委員 ここで、毎年積み上げ方式で財政状況によって左右され、つまり法律成立以前の状態にまで経常費に対する比率は下がりかけている、こういうことを考えますと、この時点で私学助成のあり方について検討する必要があるのじゃないかという気がするのです。経常費に対して二分の一の補助を義務づけるというようなことにしないと、もう対応できない、毎年毎年これで振り回されるということがあり得ると思うのです。そういう意味においては私は、文部省、政府としても、そういう立法措置といいますか、あるいは政府ができなければ各党話し合いをしまして議員立法といいますか、そういった立法化も今や必要になってきたのじゃないか。これ以上、父母の財政負担が大きくなってまいりますと、これはもう本当に教育機会均等は失われていくということを考えますと、そこまで今から準備をし、考えておく必要があるのではないかという気がするのでございますが、その辺はいかがでしょうか。
  242. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、法律をもって義務づけるというようなことは今のところ考えておりません。それはなぜかと申しまして、教育に対する助成というものは、義務教育でない限り、やはりその場合には学校努力ということもある程度政策の中に加味していかなければなりませんし、また特に、私学に対する助成というのが国の法律で助成率を決める、そうなれば、財政資金をそれだけのものを使うのでございますから、今度は逆に、私学に対して行政がどのように介入するのかという問題とも関連してくると思います。私はそれが非常に危険だと思う。私学はやはり私学建学の精神を尊重して自由な活動ができるように、教育ができるように保障していくことが大事だと思います。そういう意味において、あくまでも助成という措置で私は十分とれると思っております。
  243. 山原健二郎

    ○山原委員 私学の努力というのは、これはもうかなり深刻な努力が続けられておりまして、例えば高等学校の例ですけれども、四十一歳の先生が十六万円ですね。それで子供たちを日夜教えている、しかも大変な努力をしている、そういうところまで来ておるわけですね。だから私はあえてそういうことを言っているわけでございますが、もちろん私学に助成をする、同時に私学に対しては口は出さない。金は出すが口も出すというのがあの当時問題になったわけでございますけれども、そういう意味では、これはもうここでこれ以上申し上げませんけれども、何らかの措置を講じないと、やはり毎年この問題で私学関係者は財政事情によって左右されるという不安感がつきまとうわけですから、あえてそのことを申し上げたわけです。  もう一つ、過疎私学に対する特別助成でございますが、ことしも来年度の概算要求の中で出しておられます。これは結構なことですが、これも延長をしていただかないと、これを打ち切られれば学校をやめろということにそのままつながっていくわけですから、特に北海道、東北、九州、その他、これは大変な恩恵もこうむっているわけですが、これは続けていくというお考えでしょうか。
  244. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 続けていくという前提で概算要求をいたしております。
  245. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、問題になっております事務職員、栄養職員の問題ですが、今年度の人勧は二・三一%ですね、これに見合う来年度の文部省の所管のベア財源は大体幾らでしたかね。
  246. 加戸守行

    ○加戸政府委員 義務教育費国庫負担の関係で申し上げますと約五百億円でございますが、文部省予算の中にはその他国立学校の教職員の人件費がございまして、それが二百億円、合わせて約七百億円ほどであろうかと承知しております。
  247. 山原健二郎

    ○山原委員 この財源は文部省はどこに求めるのか。先ほど文部大臣が他の委員の方にお答えになりましたのでわかっておりますけれども、概算要求に積み上げるのか、この辺もう一回伺っておきたいのですが、いかがでしょうか。
  248. 加戸守行

    ○加戸政府委員 私どものこれからの財政当局との折衝の結果によるわけでございますけれども、具体的な予算編成の過程の中で、文部省としての主張をできる限り申してまいりたいと思っております。
  249. 山原健二郎

    ○山原委員 大蔵省は、概算要求の枠は決めておりますから、そうすると手っ取り早く言えば、どこかからひねり出していらっしゃいということになりかねませんわね。そうすると、事務あるいは栄養職員のカットの問題がちらちらするわけですが、そういうことは絶対にやらないということは確認してよろしいでしょうか。
  250. 加戸守行

    ○加戸政府委員 義務教育国庫負担金の見直しの問題というのは常にあるわけでございますし、そういう意味では当然議論の対象になり得る事柄であろうと想定はいたしております。ただ、これからの折衝の過程におきまして、文部省としての最大の努力を傾けたいと思っております。
  251. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣に伺いますが、事務・栄養職員は学校における基幹的職員である、基幹職員であるというお話をしばしば申されましたね。これを国庫負担から外すということは絶対にしないということを断言されますか。
  252. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 断言ということになりますとこれはまたえらい意味が違ってまいりますけれども、私はもう再三申しておりますように、事務職員並びに栄養士、この制度を改正して文部省権限を他に移すというようなことは、私は見るに忍びないんです。これはやはりちゃんと、文部省がこの制度をつくりました趣旨を地方自治体あるいは学校当局、それらも了解してくれておりますので、この制度はぜひ維持していかなければならない、絶対維持していく、この一点でございます。  したがって、先ほどからいろいろお尋ねでございますが、これは応援の意味もあってと私は思うておりますけれども、ベースアップはね返り分でございますが、これは文部省の中でどこかから削減して持ってこいといったって、これはもう無理な話だ。人件費を七五%も抱えておる役所で、さらにベースアップ分七百億出せといったって、それはもう出す知恵はございませんで、だから、どうぞ大蔵省でひとつ知恵を出してほしい、私は率直にそれを言っておりまして、まだ何も聞いておりません。大蔵から何も聞いておりませんけれども、我々であれもこれもと言ってペーパーを出すよりも、大蔵の方で一回その措置を考えてくれ。そして条件があるよ。一つは、文部省義務教育責任者として執行していく上において、やっていく上において、権限に及ぶようなことは絶対しないでくれ。それからまた、私学助成であるとかあるいは大学の研究育成というような政策的な経費と申しましょうか物件費と申しましょうか、こういうようなものを削って、それで人件費に充てるということは許せない。私はその方針は堅持していきたいと思うております。
  253. 山原健二郎

    ○山原委員 人件費との関係文部大臣のお考えはわかりました。  同時に政策遂行、例えば臨教審答申は三十六項目ほど出ておりますし、また初任者研修制度三十七億という数字が出ておりますが、これをやるためにどこかをスクラップせよということになりますと、これはまあ随分問題なわけで、自民党の皆さんの中にもこれについては反論しておられる方がたくさんいらっしゃるわけでございますが、私は、臨教審答申に基づく政策実行というのも、やられるならばこれは別枠でやっていただく必要があるんじゃないかと思うのですね。例えばそんなのが今度は四十人学級の遂行に影響してくるというようなことになりますと、国民が今まで合意をし、苦労して一緒にやろうじゃないかと構えたものまでここでスクラップされるということはこれはまた耐えがたいことでして、そういう意味では、臨教審答申中身をやるとするならば、やはり合意していかないものはまず削除していいんじゃないかというぐらいに私は思っているのです。そのことを申し上げて、次へ移りたいと思います。  ところで、学費の問題ですが、読売新聞の九月二十八日に大きくトップ記事で出ました。「国大入学金・授業料上げへ 六三年春入学から 大蔵方針 均一制見直し 理科系は高く」という、学費の格差導入といいますかそういったこと、あるいは入学金は三万円値上げをして十八万円、入学検定料は二千円値上げして二万三千円、既に文部省と協議をしているというふうに出ておるわけでありますが、文部省はそういう協議をしておられるのかどうか、伺っておきます。
  254. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 国立大学学生納付金の関係でございますけれども、これにつきましては、これまで過去におきましてもいろいろな場面で議論の対象になってまいりました。そういうことで、今後予算編成の時点にかけてまた議論が出てくるということはあり得ることだとは思っておりますけれども、現在の段階で具体の議論をしているということではございません。
  255. 山原健二郎

    ○山原委員 授業料、入学金がこの十数年ずっと値上がりをしてきているわけですね。そういった意味で、もうこれ以上値上げは本当にやめるべきだ、これはぜひそういうお考えになっていただきたい。特に格差導入については、まだだれもこんなことに対して論議をしたこともありませんし、またそういう合意もないと私は思いますが、この格差導入のことにつきましてはどうお考えでしょうか。
  256. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 国立大学の授業料等の納付金の問題でございますが、これにつきましては、社会経済あるいは財政の状況、あるいは私学とのバランス、いろいろな事情を総合的に勘案して判断していかなければならない事柄でございますけれども、やはり国立大学というものが教育機会均等に資しているとか各専門分野の教育研究の均衡ある発展のために役立っているとかいう、国立大学の使命ということを基本に置いて考えていかなければならない性格のものだと思っておりますので、そういう点につきましては十分慎重に対応していくべき事柄であろうと私どもは思っておるわけでございます。  ただいま御指摘の授業料の学部間格差云々という考え方につきましても、ただいま申し上げたような考え方をもとに考えますと、にわかに賛同しがたい考え方のように思っております。
  257. 山原健二郎

    ○山原委員 次に共通テストの問題ですが、これは全くわかりにくいことでございまして、新しいテストを一年延期して六十五年から実施するということが突然出てきたわけですが、六十四年に実施を決めたのはいつ、だれが決めたのでしたかね。
  258. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 六十四年実施という目途につきましては、昨年の十月だったと思いますけれども、文部省としてそういう方向を目標として定め、これを教育改革関係の閣僚会議に御報告をしたというようなことでございますので、昨年十月の時点で文部省がそういう方向を考えたということでございます。
  259. 山原健二郎

    ○山原委員 この閣僚会議では、まず、昭和六十年七月から大学入試改革協議会を設け、大学入試改革について検討を進めており、昭和六十一年七月を目途に報告をまとめることにしている。三番目が、この報告に基づき、新テストの実施機関の設置に関する法令上、財政上の所要の措置を講じ、昭和六十二年四月から新テストの実施機関を設置することを目途とする。二番目に、昭和六十二年春に昭和六十四年度からの新テストの実施を予告することを目途として、昭和六十四年度入学者から新テストの実施を目指す。こういうふうに言っております。そして大学入試改革協議会が設置され、まだ何の報告もまとまっていない三カ月後に実施期日を決めてしまうというやり方が正しいかどうか。これはどうですか。
  260. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 昨年の臨時教育審議会の第一次答申におきまして、いわば全体的な教育改革についての御答申が出てまいります前に、まずは第一次答申ということで、国民的な関心の深い大学入試のあり方についての御提言があったわけでございますので、文部省としては、その具体のやり方については大学入試改革協議会において御検討いただくという方向をとりましたけれども、その中で、実施の時期につきましては諸般の状況を判断した上で可能な限り早い時期にということから、六十四年度実施を目途とするという方向を定めたものでございます。
  261. 山原健二郎

    ○山原委員 目途でなくて実施する、これは学生にとっては重大な問題です。文部大臣の私的諮問機関として大学入試改革協議会をつくって、その協議会の論議がどうなっているか、あるいは大学入試についてどういう実施の仕方があるかというようなことはまだ出ていないように私は思うのです。それが実施期日が決まってしまうというようなことになる。今度の共通テスト・入試問題についての動きそのものが、私どもにとっては非常に不明朗です。全くわかりません。共通一次テストをやるために八年もかかり、この委員会で小委員会までつくって二年もやって、そしてそれを実施してみて誤りがあれば、ここが間違った、ここが悪かったということをこの委員会にも報告するという決議もあるわけです。それもなしに、共通一次はだめだから次は共通テストだ。その中身は何だと言ったら、これもわからぬ。本当にこんな無責任なことはないと思いますよ。どこに欠陥があって、そして、共通テストにしたらその欠陥が改善されるのかどうかの科学的な立証も教育的な説明も全くないのですからね。これは余りにもずさんなやり方ではないか。そして期日をまた一年延期するということも決められるということで、これは中曽根内閣にとって、学生諸君を不安の状況に置く重大な動きですよ。もっと文部省でも検討して――大体入試というのは大学が自主的に決めるべきものなんですね。それを飛び越して、この委員会の何の論議もなしにぽっぽ、ぽっぽと決まっていく。しかもそれが欠点、欠陥を克服する内容なのかどうかも全くわからないでしょう。これはいかにも不思議な動きでございまして、この辺を一体どう考えているのか、率直に聞きたいですね。どうなんですか。
  262. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 先ほど来お答えしておりますように、こういう緊要な課題ということからできるだけ早く実施をしたいということで、こういう目途を一応定めまして、それに向けて関係者の御議論、御努力等をお願いしてまいったわけでございますけれども、そういった作業を続けて今日まで参りました段階で、このテストをよりよいものとして実施するためにはなお若干の時日をとった方がいいというような関係者の御判断も固まってきたということから、入試改革協議会におきまして意見の一致を見まして、一年延期が適当であるという御方針をいただいたわけでございます。文部省としてもその御方針を大事にいたしまして、入試改革協議会の御意見を尊重して、それに沿った形で一年延期ということを決定いたしたということで、御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  263. 山原健二郎

    ○山原委員 僕は局長も納得していないと思いますよ、おなかの底では。よりよいものをと言ったってわからぬ。比較してこっちの持っている欠陥が――マークシート方式で、私ども共通一次に賛成したわけではないけれどもいろいろ論議しました。そして欠陥が出てきたら今度は共通テスト。この共通テストならばこの欠陥を補って余りがあるとか、本当によくなるとかの立証がなくて、期日を決めるだけでしょう。なぜもっと、こういうふうに変えればここが改善されるとかということが論議されて、それが固まって、では何年からやりましょう、学生の諸君、それに対して準備をしなさいよということにならないのか。中身がさっぱりわからない。私学がどうなるのかもわかりませんし、わかっているのは、何がわかっているのですか、期日がわかっているだけですか。
  264. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 この新しいテストの構想は、先生も御承知のことでございますけれども、臨時教育審議会の中で議論をされて出てまいったわけでございます。これは従来国公立大学について共通一次試験というものが行われてまいりまして、国会でいろいろ御議論があったことも私、前に傍聴して承知いたしておりますが、やはり大学入試の改革の問題は国公立だけではなくて私学も含めて全体の問題として議論をされ、いろいろな方法が提案されてくるということが望ましいことは当然のことでございまして、そういった意味で、これまで国公立中心であったテストを、考えを組みかえまして、私学も含めた入試改善策ということで考えるべきだということが一つの点でございますし、またあわせて、現行の共通一次が、当初ねらいにしておったものも相当実現を見つつあると思いますけれども、副産物的に、このテストの利用の仕方いかんによって、大学の序列化の問題でございますとか輪切り現象と呼ばれるような問題点が出てきたというような点がございます。それらについての改善を図るという観点から、各大学の利用を、従来の共通一次が五教科七科目全部必ず共通にと言っていた方式を改め、各大学が自由に弾力的に利用できる方式にしようということを提案されたわけでございまして、大学入試改革協議会もその方向にのっとりまして新しいテストの構想を考えているというところでございます。
  265. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題は、恐らくすべての委員皆さんがいろいろお考えを持っておることと思いますので、きょうはこれでおきます。  もう一つ、これは文部大臣に先日御要請申し上げたのですが、実は私もこの委員会で取り上げまして、それからまた調査にも参ったのですが、長い年月がかかっている問題です。  十二月四日に鳥取の地方裁判所、それから東京地方裁判所から、退職勧奨の男女差別の問題につきまして初めて不当だという判決が出ました。これは中身は申し上げる必要ないと思いますが、随分長くかかった裁判の結果でございます。そして今、鳥取県におきましては、鳥取県教育委員会がこれを控訴するかどうかということになっております。実はこれは女先生の方が勝訴されまして、損害賠償金の請求も鳥取県に対してなされるという判決でございまして、いわばこの四月から始まりました男女雇用均等法の精神に基づいて、東京地裁と鳥取地裁がそういう大変前進的な判決を下されたものと思います。  鳥取県の方では、この問題につきまして、県議会で、県側としては文部省側と相談をして控訴するかどうかを決めたい、上告の問題を決めたいというふうに言っておるそうですけれども、今の情勢、あれだけ男女雇用均等法の問題で、男女差撤廃の問題で国会でも論議をなされた段階を踏まえまして、これは上告すべきでなくて、やはり過去におけるこういう男女差別というものはこの際きっぱりと決着をつけるべきであるという意味で、もし相談がございました場合には、文部大臣とされまして、それについてはぜひ適切な助言をいただきたいと私は思いますが、この点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  266. 加戸守行

    ○加戸政府委員 十二月四日付の鳥取地裁の判決につきましては、内容自体が鳥取県の独自の事情によります事柄に関することでもあり、また当事者は鳥取県教育委員会でもございますので、現時点におきまして控訴するかどうかを県内で検討中であるというぐあいに聞いておるわけでございますので、現段階におきまして文部省がとやかく申し上げる段階にないと考えております。
  267. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣、言いたいですか。何か御答弁がありましたら。―――聞いても、今以上には出ないかもしれませんね。これは文部省としても前は明文化しておったわけですね。だからそういう明文化については、たしか文部省としても、私の質問に対してそういう差別は好ましくないという御返事をいただいておったと思うのです。あれからずっと尾を引いて今度判決が出たという経過でございますから、この点は認識しておいていただきたいと思います。  最後に教育基本法の問題ですが、文部行政の基本に教育基本法があるという、これはもう間違いないことだと思いますし、歴代の文部大臣もそういうふうにお答えになってきたわけでございますが、いよいよ来年の三月三十一日、教育基本法が制定をされましてちょうど四十年を迎えるわけでございますが、この四十年に当たりまして何らかの記念の行事その他が考えられているかどうか、これを最初に伺いたいと思います。
  268. 古村澄一

    ○古村政府委員 教育基本法は教育の基本を定めた法律であり、大変重要な法律であるということは認識いたしておりますが、来年の四十年ということで記念行事をするということは考えておりません。
  269. 山原健二郎

    ○山原委員 教育基本法というのは大事なものでございまして、やっぱりちょっと、教育基本法あるいは憲法に対する文部省側の態度が私はずっと変わっているんじゃないかという、そういう一つの証明ではなかろうかという気が、憶測ではいけませんけれども感じております。  そして、教育基本法に対して誤った解釈が私はあると思うのですが、例えば臨教審の専門委員をされております高橋史朗さんですが、最近出されております「総点検、戦後教育の実情」によりますと、こう書いてあります。「また、臨教審は「基本法にのっとり」審議を進めているが、この「教育基本法の精神」が教育勅語の擁護を大前提としていたことは疑う余地のないことであり」云々と書かれております。このような立場でまさか審議をしておられるとは思いませんが、この教育基本法が教育勅語を大前提にしているというような認識はこの方個人の問題かもしれませんが、まさか文部省としてはそういう基本認識に立っていないと思いますが、どうでしょうか。
  270. 古村澄一

    ○古村政府委員 教育勅語を前提として教育基本法ができているというふうには考えておりません。
  271. 山原健二郎

    ○山原委員 教育勅語の失効決議あるいは排除決議というのは衆参両院で御承知のように行われておりますから、それと教育基本法がつながるということになってきますとこれは大変なことでございますし、また臨教審の専門委員を構成する方々もですね、――これは実は、いろいろ私は自分の経験を申し上げて恐縮でございますが、今回私の県で、高等学校の生徒に対して、教育委員会、そしてそれがつくっております入試問題協議会というのがございまして、これが国語の試験を出しまして、その中で実は、専門委員をされております渡部昇一さんの文章が国語の試験に出ておるのです。ところがこれに、実はこれがごく最近の十一月二十三日に実施をされまして、六百名の高校生が受験をしているんですが、その国語の試験に、ちょうど当時は国鉄法案が審議をされているさなかでございましたが、こういう文章が生徒たちに配られたわけです。  これは保全経済会の献金問題がかつて問題になりまして、保全経済会の伊藤何がしという人物が、裁判の結果、いわゆる贈賄罪で、判決では裁判で罪に問われているわけですが、この人物と国鉄労働者のストライキの問題、スト権ストというのがありましたが、あれとを比較しまして、伊藤氏のやったのはいわゆるこそ泥的なやり方である、しかし国鉄労働者のスト権ストというのは白昼強盗と同じものであってより悪質であるという、これが出てきたんですね。生徒たちはそれに対して、答案を幾つか用意されておるのに丸印をつけてやるわけですが、実は私の県で非常に労働者あるいは関係者の間から問題になりまして、県の教育委員会はどうしてこういう偏向したものを子供たちのテストに使ったんだということで、県の教育委員会側としてはこれは適切ではなかったということになっておりますが、こういう使い方ですね。子供たち教育に対して、最近非常にいわゆる教育の理念あるいは教育基本法の理念というものから逸脱して、いわば偏向的な思想性を持ったものが盛んに使われるような情勢があります。  ほかにも例があるのです。これはきょうは申し上げません。例えばある方は、教育委員会の講師として高等学校の新採用教員の講習会へ行きまして、こう言っている。戦後教育は理念がなかったということをはっきり言って教育基本法を攻撃していく、こういう動きが顕著になっております。これはこんな短い時間ではやることはできませんけれども、私は、文部省としましてはやはりその辺はきちっとした指導性を持つ必要があると思いますので、これは皆さんに資料をそのまま見せておりませんからお答えがしにくいと思いますけれども、この辺のことは、やはり教育については教育基本法の精神というものをゆがめない教育というのを絶えず考えておかなければならない問題だと思いますので、この点についての御見解を最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  272. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 いずれにしても偏向は私はいけないと思うのでございます。だから、右の方の偏向もいかぬし、また左の偏向もいけません。そういう教材は余り感心しないと思います。そのかわり、また左の方も、デモが最高であるというようなそういう偏向もこれまた困る話でございまして、どちらも、右も左も偏向しない客観性のあること、そして公正なこと、それがやはり教育効果として一番大きいものだ。そういう偏向については、十分我々も注意をして対処してまいります。
  273. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうはこれで終ります。
  274. 愛知和男

    愛知委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会