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1986-11-26 第107回国会 衆議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十六日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 愛知 和男君    理事 北川 正恭君 理事 高村 正彦君    理事 中村  靖君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 池田 克也君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    古賀 正浩君       佐藤 敬夫君    斉藤斗志二君       杉浦 正健君    谷川 和穗君       渡海紀三朗君    長野 祐也君       松田 岩夫君    渡辺 栄一君       江田 五月君    中西 績介君       馬場  昇君    有島 重武君       鍛冶  清君    北橋 健治君       石井 郁子君    山原健二郎君       田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   久保庭信一君  委員外出席者         人事院事務総局         任用局企画課長 竹澤 正格君         内閣総理大臣官         房参事官    坂東眞理子君         法務省入国管理         局総務課長   木島 輝夫君         外務大臣官房審         議官      久米 邦貞君         外務大臣官房外         務参事官    柳井 俊二君         外務省国際連合         局社会協力課長 金子 義和君         国税庁長官官房         人事課長    川上 壽一君         労働省職業安定         局業務指導課長 矢田貝寛文君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 委員の異動 十一月六日  辞任         補欠選任   石井 郁子君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     石井 郁子君 同月七日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     鳩山由紀夫君   井出 正一君     笹川  堯君   佐藤 敬夫君     藤波 孝生君 同日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     井出 正一君   鳩山由紀夫君     逢沢 一郎君   藤波 孝生君     佐藤 敬夫君 同月二十六日  辞任         補欠選任   青木 正久君     長野 祐也君 同日  辞任         補欠選任   長野 祐也君     青木 正久君     ───────────── 十月三十日  私学助成等に関する請願外三件(石田幸四郎紹介)(第六四七号)  同外三件(草川昭三紹介)(第六四八号)  同外三件(柴田弘紹介)(第六四九号) 十一月十日  義務教育費国庫負担制度改革に関する請願滝沢幸助紹介)(第六八七号) 同月十一日  私学助成等に関する請願海部俊樹紹介)(第九三五号) 同月十七日  四十人学級早期達成等に関する請願村上弘紹介)(第一二二二号) 同月十九日  義務教育費国庫負担金制度維持に関する請願小沢貞孝紹介)(第一五二四号)  信州大学大学院総合科学研究科設置に関する請願小沢貞孝紹介)(第一五二五号) 同月二十日  義務教育費国庫負担金制度維持に関する請願串原義直紹介)(第一六〇〇号)  同(清水勇紹介)(第一六〇一号)  同(井出正一紹介)(第一七四三号)  同(小川元紹介)(第一七四四号)  同(小坂善太郎紹介)(第一七四五号)  同(中島衛紹介)(第一七四六号)  同(中村茂紹介)(第一七四七号)  同(村井仁紹介)(第一七四八号)  同(若林正俊紹介)(第一七四九号)  同(宮下創平紹介)(第一八四〇号)  信州大学大学院総合科学研究科設置に関する請願串原義直紹介)(第一六〇二号)  同(清水勇紹介)(第一六〇三号)  同(井出正一紹介)(第一七五〇号)  同(小川元紹介)(第一七五一号)  同(小坂善太郎紹介)(第一七五二号)  同(中島衛紹介)(第一七五三号)  同(中村茂紹介)(第一七五四号)  同(村井仁紹介)(第一七五五号)  同(若林正俊紹介)(第一七五六号)  同(宮下創平紹介)(第一八四一号)  四十人学級早期達成等に関する請願有島重武君紹介)(第一六六七号)  大学院生・研究生学術研究条件改善等に関する請願江田五月紹介)(第一六六八号) 同月二十五日  私学助成等に関する請願外一件(佐藤観樹紹介)(第一九八九号)  同(沢田広紹介)(第一九九〇号)  同(野口幸一紹介)(第一九九一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 愛知和男

    愛知委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松田岩夫君。
  3. 松田岩夫

    松田(岩)委員 国の基本は、言うまでもなく、次代を担っていただく人づくりだと思います。そうした意味で、当委員会の果たす役割はまことに大きいものがあると思うわけでありますが、先般塩川文部大臣から承りました所信、まことに今後の日本文教政策基本を示すものとして適切なものだと思います。そうした中で、若干私の意見も交えながら、文部大臣所信を賜りたいと思います。  文部大臣もおっしゃったとおり、まさに今や我が日本の国は大きく変わり、経済社会の進展も著しいものがございます。追いつき型の近代化が終わって、そして今や世界の一割国家となり、また国内的には長寿社会へと大きく変わっていこうといたしております。二十一世紀を目指して、正直どのような日本人をこれから我々はつくっていかなければならぬのか、まさに今日ほどこのことが大きく歴史的な意味で問われている時期はないと思うわけであります。  そうした意味で、臨時教育審議会で御審議をなさっておられる教育改革はまさにこうした背景のためだろうと理解するわけでありますが、これからの日本人がどんな日本人でなければならないか。今申したような大きな歴史の流れの中で、この臨時教育審議会の第二次答申でも言われておりますように、一つは「ひろい心、すこやかな体、ゆたかな創造力」、一つは「自由・自律と公共の精神」、一つは「世界の中の日本人」、こうしたことが言われておるわけであります。私もほぼそうだと思うのでありますが、私にとりまして特に重要だと思われますことは、今日、日本の国が多くの外国の諸先輩からいろいろ教わりながらここまで来て、今や世界最先端の国の一つになろうとしておるわけであります。欧米先進国へのキャッチアップが終わりました。そういう意味では、今ほど我が国民に創意工夫が求められ、本当意味で創造性豊かな日本人にならなければならない、私はそのことを強く感ずるわけであります。  そうした意味で考えてまいりますと、先般十月にも教育課程審議会から初等中等教育教科基本を示しておるものと思うわけでございますが、必ずしも、こうした創意工夫に満ち、創造性豊かな人間子供のうちからつくり上げていくという面で果たして十分であろうかということを思うわけであります。  第一に、まずこの点について文部大臣基本的なお考え方を承り、あるいは現在どのように創意工夫に満ちた本当に創造性豊かな日本人をつくっていかれようとしておられるのか、その点を承りたいと思います。
  4. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は余り難しいことはわかりませんけれども、しかし、日本人は、その子弟教育というのにはもうあらゆる時代を通じまして非常に熱心に取り組んでまいりました。特に江戸時代以降、明治、大正、昭和と、それぞれ藩あるいは国あるいは地方自治体が懸命にその子弟養成ということに取り組んでまいりました。でございますから、日本は非常に教育熱心な国だと私は思うております。  しかし、時代の変遷に伴いまして教育内容も違ってまいりましたし、また、教育に求めるところの人間像というものも時代時代によって相当変わってきておることも事実でございます。特に戦後になりましてからは、日本は、要するに今までの日本民族固有の伝統ある教育の上にさらに新しい欧米的教育手法というものと内容をそこに盛り込まざるを得なくなってまいりましたし、これは政治、社会体制が変わったことに伴って当然のことでございますが、一時期混乱はございました。けれども、今日では、すべての日本国民は、自由主義民主主義体制の中で社会秩序維持していこうという、このことにつきましては全国民の一致した合意として形成されてまいりましたので、したがって、そういう社会体制に十分適応する人を養成していくということが教育目標として掲げられてきておるように思うのでございまして、そのためには、お話がございましたように、豊かな心を持ち、健やかな体力、そして自主的に自律して自分の行動がとれるような人間、そして創造性豊かな人間国際性を持った人間、こういうものを教育目標に私は挙げておるのでございます。これは学校教育だけではなくして、今やこういう教育目標を達成するためには社会も個人も家庭も全部協力する体制が望まれておると思うのでございまして、そこが今までと相当変わってきた教育体系をとらなければならぬところである。今までの教育体系中心は何としても学校教育だけでございましたけれども、これからはそうではなくして、そういう総合的な複合体制の中で教育の実効を上げていこうという時代になってきておるというふうに私は認識いたしております。
  5. 松田岩夫

    松田(岩)委員 まさに、豊かな創造力を持った日本社会を建設していくということは、大臣仰せのとおり、教育だけでできることではございません。まさに私も、ある意味で、社会における人間の評価のあり方企業の中での人の使い方、あるいは採用の考え方等、あらゆる分野にわたる一大社会改革であると思うわけであります。そうした意味で、ぜひひとつ、文部大臣としては教育の面から文教行政の面からなお一層御尽力を賜りたく思うわけであります。  さて次に、やはり何といっても、ここまで来た我が日本社会がいま一つ大きく求められておりますことは、もう諸先輩によって多くの議論がなされておりますが、まさに心豊かな人間をつくることだと思うのであります。ようやくここまで物質的な豊かさを達成できた我が日本の国は、ある意味では、ようやくここで本腰を入れて心の豊かな人間つくり出すゆとりもまたできてきたと思うのであります。そうした意味で思いますと、大臣おっしゃるとおり、家庭学校あるいは社会における徳育の問題を我々としては本当に今こそまた真剣に考えなければならないと思うわけでありますが、さしあたり学校教育における徳育の問題についてお伺いをしたいと思うわけであります。  豊かな心をつくり出すということは、正直、教科書であるいは理屈で学べるものではないと思うのであります。まきにこの徳育というのは子供たちの日ごろの生活の実感あるいは感動の中から体得されるものでありましょうし、また、子供たち実践行動を通じて初めて本当意味の心の豊かな人間がつくられるのではないかと思うのであります。  そうした意味で少しく具体的なお話を申し上げますが、例えば岐阜県でも文部省の御協力を得て道徳教育用資料をおつくりになっておられまして、今手元に持ってまいりました。これは昭和五十九年度から実施されておられます道徳教育用郷土資料研究開発、わずかな予算ではございますが、我がふるさと岐阜県も御協力、御援助を得て地域先生方が立派な教材をおつくりになられました。これを読まさしていただいてしみじみ感じましたことは、子供たちの住んでいる身近な地域社会での逸話やあるいはそこに住んでいた偉人の方々生きざまを書いておられるわけでございますが、こうしたものは正直、一般的に世界であるいは日本でこういう人がいたとかこんな逸話があったとかということに比べれば、幼い子供たちにとって、うちの近所のあそこでそんなことがあったの、ああ、そんな方が昔住んでおられた、すぐ隣の町内でそんな方がこんな生きざまをした、ああ、すばらしい生き方だな、そういうものを通じて恐らくはるかに多くのものを学ぶのではないかと思うのであります。  承りますと、とりあえずはこの道徳教育用郷土資料研究開発ということだけにおとどめになっておられる。私とすれば、こんな立派な教材地域の有識者の方々の総力を挙げてつくられたというのであれば、それこそこうした教材学校のみならず各家庭でも親子団らんの中でお互い語り合いながら読まれていく、そうしたことをなぜもっと進めていただけないのだろうか。予算の問題もありましょうが、この道徳教育用郷土資料研究開発というのは、一つ試みとして注目すべきものだと私は思うのであります。そうした意味で、今後の活用をぜひ考えていただきたいと思うわけです。  と同時にまた、今も申しましたように、この徳育というのはまさに実践行動を通じてであります。今そういう意味で、とりわけ徳育というものは、学校の枠内ではない、家庭も大事だが、まさに社会との連携をもっともっととるべきだ。例えば勤労のたっとさ、働くことのたっとさを学ぶために、教室の中で、働くことは大事だ大事だと言っておっても始まらない。早い話、むしろ学童諸君生徒諸君に、企業の中でお父さんやお母さんが一生懸命働いている姿をともに見ながら実際に企業の中で例えば働くといったようなことも、教育の中で十分取り上げていただいていいことではないかと私は思うのであります。  と同時に、今既にもう御議論になり取り上げられようとしておりますけれども、まさに人生を豊富に生き、経験豊かないろいろな苦しみあるいは楽しみを経験してこられた多くの社会人が、定年後といいますか、社会での活躍を終えて地域社会には大勢おられます。そうした長い間の人生経験を踏まえた方々お話をじかにいろいろ聞くといったようなことで、こういった方々をもっともっと自由に教育の現場の中に御活用なさっていく。  ほんの一、二の例を申し上げたわけでございますが、こうしたことが徳育ではまことに大事なことではないかと私は思うのでございます。そうした意味で、大臣、ぜひこうした面にもっとお心を払っていただけたらと思うわけでございます。御所見がございましたら承りとうございます。
  6. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 郷土資料副読本に採用いたしまして、非常に評価していただきましてありがとうございました。これは新しい試みといたしまして、その児童生徒が直接何かかかわり合いのあるものの中からそういう徳育教育の資材をつくったらということで試みたことが非常に評価されました。本当にうれしゅう思っております。  それはとりあえず六十一年に八県、八つの県において実施いたしましたが、六十二年でさらに六県、六つの県で実施いたしたいと思っておりまして、これをさらに拡大していきたい。それと同時に、今お話ございましたように、この副読本教材教育委員会等がうまく利用されまして、そういう地域社会活動資料の一端にしていただければさらに効果が大きい、私たちもそれを念願しておるものでございます。  今徳育の中でお話ございましたように、こういう教育の一番中心となるものでございますが、私は、こういう教育あり方として、確かに行動をすることとともに、そういうことをいわば体得していくということが大事だと思うのでございます。それと同時に、徳育情操教育をあわせて児童生徒教育課程の中に入れていく、こういうことが私は望ましいと思いまして、いろいろと関係当局並びに審議会で御相談していただいておるところでございますが、今まで若干おろそかにされてきた気味が確かにあるこの徳育科目を、今後とも非常に重点科目として我々も努力していく覚悟でございます。
  7. 松田岩夫

    松田(岩)委員 心豊かな人間をつくっていく、いつの時代でも大事なことでございますが、さらにそうした観点からもう少しく具体的なお話を申し上げたいと思うわけでございます。  教育基本というのは、やはりそれぞれの生徒、それぞれの子供成長に応じてさらに一歩一歩、一層の成長を引き出していく、そこに恐らく教育の最も理想的な姿があるんだろうと思うのでございます。一人一人の子供に最もふさわしい教育の場を保障していく、言うべくしてなかなか難しいことではありますが、しかし、豊かな社会における教育というのはまさにそういうものでなければならないと思うのでございます。そうした観点から、一般的ではないかもしれませんが、非常に大事な分野を取り上げてみたいと思うのであります。  それは言うまでもなく、普通の児童に比べれば知恵の発達がおくれ、あるいは障害を持った子供たちへの教育の問題であります。たまさか私自身もそういう子供を持ちましてしみじみ感ずるわけでありますが、この子供と一緒にアメリカに住む機会を得まして、そしてまた東京に住み、我がふるさと岐阜に住みと、いろいろなところに我が愛する子供とともに住んできたわけでございますが、そうした経験の中からしみじみ感じましたことは、私ども日本の国の教育というのは、果たして本当に一人一人の子供に最もふさわしい教育の場を与えるということになっておるだろうかということでございます。  例えて申しますれば、こうした子供たちはほとんどの場合言語障害を持っております。アメリカにおりましたときは、スピーチセラピストという、特別に大学教育を受け、資格を持った方々が何人も学校配置になっておりました。と同時にまた、こうした子供たちは精神的な問題をたくさん持っております。そういうことも手伝って、学校には必ずサイコロジストと言われる専門家配置になっておりました。と同時にまた、こうした子供たちは多かれ少なかれ体の発達、筋肉の発達が不完全であります。そういう特別の訓練のために、フィジカルトレーナーと申しますか、通常の体操の先生以上の、いわば今日的に言えばリハビリの専門家学校配置されておったのであります。  そうしたことを思い比べてみますと、これは一つ分野でございますけれども、しかしどんな子供であれ、よくできる子であればよくできる子なりに、あるいは絵が好きな子なら絵が好きな子なりに、それぞれの子供に応じてその子の発達にふさわしい教育を施していくということは、我が現実を見ますとまだまだ大きなおくれを感ずるわけであります。理想を求め、これからも一層ひとつ、ここまで来た日本の国でありますので、それぞれの子の能力に合わせてそれぞれの子の能力を一層引き出していくという、こうした教育教育基本だと思うのであります。そうした意味でも、一つ分野として、こうした障害者教育養護教育といった面にも、他の子供と比べればそれだけ障害があるだけに一層多くの個人的なケアが要るわけでございますので、現状を考えますと、我が国においてももちろん大変な進歩ではありますが、しかし、なお一層の充実強化のために文部大臣、御尽力を賜りたく思うわけであります。所見を承れればありがたく思います。
  8. 西崎清久

    西崎政府委員 先生指摘のとおり、心身に障害を持つ児童生徒教育の問題は、私ども文部省に課せられた大変大きな課題でございます。  御案内のとおり、昭和五十四年から養護学校義務化を行いまして以来、その面についても力を尽くしておるわけでございますが、今御指摘スピーチセラピスト言語治療士ににつきましては、我が国ではまだその資格についての明確な規定はございません。アメリカ等ではいろいろとあるようでございます。ただ、厚生省等においていろいろとその点の検討が行われているようでございますが、文部省関係で申しますと、教員養成課程における教科科目の中で言語関係についての単位をある程度取得するというふうな形でいろいろと施策を講じておるわけでございますが、現在の教員養成課程関係で申しますと、十八の大学関係言語治療に関する単位取得課程を設けておるというふうな実態になっております。ただしかし、この点についてはまだまだ先生指摘のようにこれからも充実していかなければならないというふうに思っておりますので、御指摘の点は十分踏まえてこの点についての努力をいたしたいというふうに思っております。  全体の問題といたしまして、特殊教育、特に養護学校関係についての施策につきましては、制度発足以来、五十四年以来の問題でございますので、私どもも今後とも十分力を尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  9. 松田岩夫

    松田(岩)委員 時間が参りましたので、質疑を終わらさしていただきます。ありがとうございました。
  10. 愛知和男

  11. 古賀正浩

    古賀(正)委員 このたびの総選挙で初めて出てまいりました古賀正浩でございます。委員長及び諸先輩の御好意によりまして、いち早く貴重な質疑の時間をちょうだいいたしましてありがとうございました。感謝を込めながら質問をさせていただきます。  明治維新以来、我が国近代国家に脱皮すべく急速な整備を進めてまいったわけであります。そしてまた、第二次大戦後は驚異的な経済成長を軸として我が国の発展を図ってまいったわけでございます。わずか三十七万方キロの狭い国土、あるいは目ぼしい資源も何もない我が国が、今日ここまで発展してこれた秘密は何か、それはすぐれて日本民族人的能力の発露に尽きるというふうに私は思います。我が国国民の資質に加えて、教育を重視してきた我が先祖、先人努力に負うところであると私は確信しておるところであります。  明治三年はいまだ新政府の基礎も固まらず、社会も混乱する中で、いち早く学校制度が施行されました。その時期は、先進欧米諸国に比べてもまさるともおくれをとるものではございません。また昭和二十二年、食うに職なく、住むに家なき戦後の廃墟と疲弊の中に、英断をもって六三制が施行されました。国家の大事に当たりあるいは国家百年の計に当たり、まず教育と考えてきた我が国先人からの伝統を、私どもは誇りと責任を持って引き継いでいかなければならないと考えておるところであります。  その意味におきまして、私は、このたび重要な文教委員会に所属させていただいたことを大変うれしく、また名誉に思っておるところでございます。しっかり勉強させていただきます。ただ、私は教育に関しては極めて門外漢であります。教育はだれにも語れると言われておりますけれども、私もそれ以上のものではございません。  かく申す私は、四人の子供を持っております。上は大学四年、下は高校一年、子育ての真っ最中でございまして、ちょうど第三コーナーあたりを回ったあたりかなと思っておるところでございます。また私は、昭和十六年、大東亜戦争が始まった年に小学校、当時は国民学校と申しましたが、入学をし、戦後学制改革によって新制中学の第一回に入った、ちょうど戦中戦後の激動の時期を子供時代経験してきた、そういう世代であります。そういう意味で、いわゆる戦前派の最後尾あるいは戦後派の最先端といってもよいかと思っておるところでございますが、そういう視点、立場から、教育の問題も考えてまいりたいと思っておるところでございます。  さて、大臣は、さきの所信表明におきまして、教育全般にわたる改革の推進を説かれ、当面する六つの主要な課題について言及されました。いずれもまことに時期を得た重要な問題ばかりであります。大臣の御手腕、御活躍を切に期待しながら、私どもも及ばずながらできるだけの協力を申し上げていきたいと考えておるところでございます。  そういう観点から、若干の項目について大臣のお考えを敷衍してお伺いしたいと思うところでございます。  その第一は、今日の教育の全般的現状に関してでございます。今日、我が国社会は、物こそ豊かにあふれておりますけれども、その反面、心のすさみが一層進行していると言わざるを得ません。特に教育については、親も子も学校もそして社会も、悩みと欲求不満を募らせているといっても過言ではないと思っております。子育ての親は、受験戦争あるいは言う事を聞かない子供、非行へのおそれ、塾通い等家計負担の増大などに悩んでおりますし、子供にあっては、偏差値だけの物差しでミカンの選果場のごとく機械的により分けられる悩み、あるいはいじめの横行等があり、子供の精神の閉塞状況が強まっているというふうに認められます。さらに社会にあっては、しつけも社会的訓練もなっていない、国のことも忘れ、物欲だけむき出しにしかねない青少年の横行があるわけであります。これらはほんの幾つかの例にしかすぎませんけれども、二十一世紀の日本を担う青少年が、はつらつと心豊かに育ってほしいと思いますときに、現在の状況はこれでよいのか、まことに心寒い思いがする次第でございます。  教育全般の改革を説かれます大臣は、この教育の現状をどう認識され、二十一世紀を担うべき青少年の教育にどうお取り組みになるのか。先ほど松田先生にお答えございましたけれども、さらに敷衍されるところがあればお伺いしたいと思います。
  12. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 今、世界各国とも教育改革というのが非常に大きい問題になってまいりまして、アメリカアメリカなりの教育改革に取り組んでおりますが、これはやはり日本と同じように教員の確保とその質の問題、これをやっておりますし、ヨーロッパ等におきましては教科内容等をもっと社会的、現実的に符合さすべきである、こういう意味における改革をやってきております。この前私は聞いたのでございますが、中国も昨年から教育工作者会議というのをやりまして、ちょうど日本でいいます臨時教育審議会のようなものを発足させまして、これまた教育改革に取り組んでおります。  そのように、世界各国がこの教育改革に取り組んでおるのは何が原因かということを私も考えますと、一つは、学校の中で教えておりますこととそれから社会の変化というものとの間に相当なギャップができてきておるのではないか、こういうことを私は感じるのでございまして、そこに教育とそれから社会との接点をもう一度見直していく必要があるのではないか、これが大きい改革の要点ではないか。  そういう意味におきまして、文部省は、先ほどお話ございました、明治初年発足いたしましてから学校教育教育体系中心に据えまして、この学校教育の改善を通じて日本教育制度全般を発展さす、こういう姿勢でやってまいりました。そして絶えず、その学校教育の現場に起こってくる問題、この改革には非常に熱心に取り組み時々適切に処理してきたと思うのでございますが、しかし一方、社会の進展が余りにも速いもの、技術革新からくるものが速いもの、そういうことを思います場合に、社会人から見た教育あり方というものがどうでなければならないか、こういう検討も必要になると思うのです。それをやっておるのが今臨時教育審議会だ、私はそう認識しておるのでございまして、社会人から見た教育改革学校の現場を担当しておる文部省の改革、これの相接点を求めて教育改革の方向をつけるべきだ、こう思うておるのでございます。  そして、一番基本はやはりもう少し社会的に即応した人物の養成ということ、これをもう少し心がけて教育改革を進めていくべきだ。そのためにやはり一番必要なのは、人間生涯全部が学習なんだ、こういう観点に立たなければならない。けれども日本はどうしても学歴社会がございまして、学校中心にその人物を評価してしまうという、そこらにも私は非常に大きい問題があろうと思うのでございまして、そういうことから見ると、これは単に文部省とか学校だけの制度改革、教育改善だけではなくして、社会の構造全体の問題と関係してくるということを思うておるものであります。
  13. 古賀正浩

    古賀(正)委員 大臣お話、極めて同感でございます。これは、社会も含めた全体の中での推進ということに相なるわけでございますが、やはりファイナルに責任を持たれるのは文部省であるというふうに思いますので、ひとつよろしく頑張っていただきたいと思う次第でございます。  時間の関係で若干はしょってまいりますが、次に教師の資質に関連した質問をさしていただきたいと思う次第でございます。  我が事で大変恐縮でございますが、私は先ほど申しましたように戦中・戦後、小学校時代を過しましたけれども、その六年間を通じて緒方三郎先生という大変すばらしい先生に恵まれました。全人格的な薫陶を受けたと思っております。私の今日あるは、ひとえにその先生のおかげであると思っておるものでございます。実に教育は人なりと申しますが、まさに私は我が体験を通じてそう確信をしておるところでございます。そこで、すばらしい先生によって、そして児童生徒一人一人に行き届いた教育を行う、そのような教育条件の整備ということが極めて重要であると私は考えるゆえんでございますが、そのためには、一つには、現在全くおくれております小中学校の四十人学級の着実な推進、これを大臣に強く御要望申し上げるところでございます。それとともにいま一つ、教師の資質につきましてでございます。  教師は日々子供に接し、その一生に少なからぬ影響を与える重要な立場に置かれておるわけでございます。したがって、教師には出発点、初任者からの力量及び社会経済、文化などの変化を敏感に感じ取り、研修等を通じて不断の力量の向上に努めるということが極めて大事になっておると思う次第でございます。そこで大臣にお伺いいたしたいのは、大臣の教師に求められる資質、能力についての御所見と、その向上のための施策について承りたいと思います。
  14. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、戦後学校教育が再開されましたあの当時、どさくさの中で、しかしよく学校を開いたと思うております。それはやはり日本人教育熱心だと思うのでございますが、しかし、あの当時は、とにかく食わなければならぬというので、そちらの方に皆関心が払われておった。したがって、一時期、義務教育における先生の確保というのが非常に難しい時代がございましたけれども、最近になりまして学校先生を希望されるそういう方々は、一人一人は資質はいいと私は思うておるのであります。つまり素材としてはいいと思うのでございますが、しかし養成して先生になっていただいておるのではなくて、ただ免許を取り、就職試験に合格したから先生になっておる、こういう格好に今なっております。そこで私はどうしても、就職されたときに一番初心忘るるべからずでございまして、一番最初にしっかりとした先生としての意識を持ってもらうことと、教え方のテクニックというものを十分に修得していただく必要がある、こう思うのでございまして、そういう意味から、現在行われております初任者教育というのは私は非常に不足しておると思っております。これを、現在やっております量のいわば簡単に言いましたら五倍程度の研修をしていただくことによって、つまり期間一年間でその程度のことをしていただいて、その間に、私は先生になったんだという責任感と意識を変えるということと、それから教え方、テクニックですね、こういうようなものを十分に修得していただいて立派な先生になっていただきたい、こういう希望を思いまして、初任者研修の拡大強化というものを心しておるところであります。
  15. 古賀正浩

    古賀(正)委員 このことに関連いたしまして、ひとつ文部省に二点ほど御提案をしたいと思います。  一つは、学校や教師の世界というのはどうしても閉鎖的なことになりがちなところがあるような気がするわけでございます。それは専門的性格上やむを得ないこともあるわけでございますけれども、これでは、生きて激動しております現在の社会に対して、ちょっと言いにくい表現ですが、世間知らずというようなうらみがあるのではないかというふうな気がするわけでございます。そこで、先生の研修の一環としまして、ひとつどしどし社会に出ていってもらってはどうだろうか。会社や工場や商店で体験的に働いてもらう、いろいろなことを経験していただく、そういうことが子供教育する上で大変意義深いことではなかろうかというふうな気がするわけでございます。  それともう一点は、実は先ほど松田先生の御提案にもございましたことでございますけれども、教師として、他の分野で活動している人あるいは活動していた人材をもっと活用するようにしてはどうだろうか。人生経験豊かなと松田先生言われましたけれども、まさにそのような人をひとつ学校先生としてどしどし登用する、活用する、そういうことにしてはどうだろうかということでございます。  その二点につきまして、大臣の御所見を承りたいと思います。
  16. 加戸守行

    ○加戸政府委員 学校の教員が社会的な体験を得ていただく、極めて大切なことでもございますし、そういう意味におきまして、ただいま六十二年度概算要求をしております初任者研修の試行の中にありましても、現在その具体的な内容等につきまして都道府県・指定都市教育委員会とも協議いたしておりますが、その内容として、教育センター等における研修というものを週一回程度想定いたしております中に、例えば養護学校等の他の校種への参観とかあるいは青少年教育施設を見ていただく、あるいは企業等の民間の活動につきまして実地体験を得ていただく、あるいは参観をしていただくというような工夫を各都道府県において凝らしていただきまして、そういった社会的交流を深め、体験を得ていただくということを一つ考えておるわけでございます。  それから、社会人の教員への登用につきましては、臨教審の第二次答申でも指摘されておりますし、それから文部省におきましても、一年三カ月かけまして学校教育への社会人の登用ということについて御検討いただきまして、本年七月に報告をいただいておりますけれども、その中では、例えば都道府県が一定の社会人につきまして特別の免許状制度を設けてはどうか、これは期間十年程度を想定いたしておりますけれども、そのほかに、特定の教科の一分野にわたりますものにつきましては、特別講師として、免許状なしでも担任できるような制度という御提言をいただいておりまして、これを現在教育職員養成審議会で御審議いただいておりまして、来年御答申をいただく予定でございますが、その方向での位置づけがなされると考えておりまして、その答申を受けて適切に対処したいと考えている段階にございます。
  17. 古賀正浩

    古賀(正)委員 最後に一つ、二年後に控えましたソウル・オリンピックに関連してお伺いさせていただきたいと思います。   二月前に行われました第十回アジア大会におきます日本選手団の不振は、正直言って国民に大きな衝撃と失望を与えたというふうに思っております。その成績は、国民のすそ野広きスポーツ水準のバロメーターということもあるわけでございまして、民族の精神と気迫の指標でもございます。青少年に根性と夢をはぐくむ、そういう性格も持つものであります。したがいまして、今回のアジア大会の成績、二位の韓国にも金メダル三十五個の大差をつけられたそういう成績は、単に韓国の躍進を称賛する雅量だけでは済まされないものがあると私は考えております。  つきましては、このアジア大会の反省に立ちまして、ソウル・オリンピックに向けてどのような競技力向上対策をお考えになっておられるのか、承りたいと思います。
  18. 國分正明

    ○國分政府委員 先生指摘のとおり、今回のアジア大会で、我が国の選手団は前回を上回るメダル数は獲得したわけでございますが、競技種目数がふえておりますことなどを考えますと、種目によっては頑張ったものもございますが、全体として見ました場合に、満足できるような成績ではなかったというふうに考えております。  この原因については、既にいろいろな指摘がなされているわけでございます。例えば選手強化体制の一貫性の問題であるとか、あるいは医科学的な、科学的な成果を踏まえたトレーニング方法でありますとか、あるいは指導体制の問題であるとか、いろいろなことが言われております。現在、選手の強化あるいは競技力の向上というのは日本体育協会を中心とします各競技団体がやっているわけでございますが、これは各競技種目によって随分事情が違っておろうかと思います。現在、各競技団体におきましてもそれぞれの分析を行っている最中でございますが、私ども、体協あるいは競技団体と十分話し合いもいたしまして、那辺に原因があるか、結局その原因を追求し解消していくということが競技力の向上にもつながるわけでございますので、今後とも体協と十分な話し合いをしてまいりたい。また、明年度の予算におきましても、ソウル・オリンピック対策として、選手の特別強化費等も増額要求をいたしております。あるいはまた、競技力向上のための一助にもなろうかと思いますが、体育の総合研究センターというものの基本設計準備調査というような要求もいたしておりますので、予算面でも努力をしてまいりたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  19. 古賀正浩

    古賀(正)委員 最後に、道徳教育の関連で一つお聞かせいただきたいと思います。  先ほど来大臣からもいろいろお話を伺いました。そういう中で私、思いますが、現状で非常に対応がおくれているものの一つに道徳教育というものがあるんじゃないかというふうな気がしているわけでございます。  これは又聞きの話で恐縮でございますが、何か、あるテレビ番組で「一〇〇人に聞きました」という番組があるそうでございますが、その中でたしか、韓国の中学生百人に聞きました、ちょっと正確にはわかりませんが、そういうのがあったそうでございます。あなたにとって最も大事なものは何ですか、という質問をしたそうでございます。そうしましたところ、その答えは、一位は祖国、二位は親という返事だったそうであります。つまり、かつて我が国でも当たり前であったことが韓国においてそういう青少年が育っているということだと思う次第でございますが、同じ質問を日本の中学生百人にしたそうであります。答えは何と出たか。あなたにとって一番大切なものは何ですか。一位お金、二位友達。そこには祖国も親も出てこなかったそうであります。こういう世代が担うあすの日本がどうなるか、これはもう繰り返しでございますけれども、私は大変危機感を持つ、戦慄を感ずる者の一人でございます。  そういう中で、道徳教育につきましては、親も学校もそして行政も、先ほど大臣お話がありましたように、力を合わせてみんなでやっていかなくちゃならぬというふうに思う次第でございます。  そういう中で、大臣は先般の所信表明の中で、「我が国の伝統や文化についての理解を深めるとともに、しつけなどの基本的生活習慣を確実に身につけさせることなど道徳教育の充実を図る」ということを述べておられます。まことに時期を得たものと思う次第でございますけれども、先般まとめられました教育課程審議会の中間報告においても提唱されておられるところでございますが、大臣に、道徳教育の充実とその進め方についてその具体策を最後にお伺いしたいと思う次第でございます。
  20. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、戦後一時期、道徳教育イコール日本の伝統イコール復古主義イコール軍国主義、そういうパターンで単純に考える人たちが相当おったと思うんです。そのことから、道徳教育が他の科目に比べておろそかにされてきた気配は確かにあると私は思うております。今これだけ世の中が落ちついてまいりまして、そして自由でおおらかで豊かなこの社会体制を守るということであるならば、その社会体制にふさわしい徳育をしなければいけないと私は思うのでございまして、先ほどお話しになりましたお金と友人というだけがすべてだという、そういういわゆる新人類という、こういう考え方はやはり社会体制には合わないと私は思うております。  そういうことから、やはり徳育を総合的な人格形成の一つとして力を入れていくべき科目だと私は思うております。
  21. 古賀正浩

    古賀(正)委員 ありがとうございました。終わります。
  22. 愛知和男

  23. 長野祐也

    長野委員 私は、カラオケ伴奏による音楽著作物使用料について質問をさせていただきますが、その前に、委員長初め理事の皆様方の御配慮で質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございました。  私がなぜ今この質問をさせていただくかについて、その理由を初めに申し上げておきたいと思います。  いわゆるカラオケに関する使用料の徴収につきましては、著作権協会とその対象となります飲食店等の全国団体である全国環境衛生同業組合中央会との間で、二年余にわたりまして折衝を重ねてきた結果、ようやく基本的な合意が得られまして、文化庁において、カラオケの使用料の徴収について所要の使用料規程の改正を認可し、来年四月一日から適用されることになると聞いております。  このカラオケの使用料問題は、従来の生演奏と異なり、その対象営業所が広範囲かつ膨大な数に及び、その上、業態から考えて零細業者が圧倒的に多いために、関係業界としてもその取り扱い実施について幾つか危惧をしている問題がありますので、その不安を解消していただく強力な御指導を文化庁にお願いをしたい、そういう趣旨でございます。とりわけ、この使用料の徴収業務が適正かつ公平に行われて、正直者がばかを見ないような適正公平な運用を図ることが最大のポイントでございます。  そこで第一の質問は、該当する営業所の見込みがどれくらいあるのか、またその該当営業所の把握方法をどのように進めておられるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  24. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 カラオケ伴奏を伴う歌唱にかかわる使用料、いわゆるカラオケ使用料でございますが、これにつきまして使用料の認可が出てまいりまして、それにかかわりまして、先生今お尋ねのように、どのくらいの対象があるのかということでございますが、この著作権の管理団体でございます日本音楽著作権協会におきましては、スナックなどの社交場につきまして約三十二万店を現在もう既に把握をしておりまして、ただ、これらがすべてカラオケを使用しておるわけでございません。カラオケを使用してないところもございますし、また、使用しておりましても使用料の徴収対象にならない零細なものもございます。そのようなものを除きますと約二十万店程度ではないかと推定をされておるわけでございます。同協会におきましては、既に把握しておりますこの三十二万店につきまして、趣旨の説明書でございますとか、また使用の状況の調査書でございますとか、契約する場合の契約書類等、これをすべての店に既に送付をいたしておりまして、また環境衛生同業組合の協力も得まして、同協会の実地調査が並行して進められておるところでございます。
  25. 長野祐也

    長野委員 対象店が約二十万店という御答弁でありますが、そこで、問題の契約作業の進め方についてでありますけれども、例えば組合員につきましては、組合がその実態を把握をしておりますので、その作業というのは比較的容易に進むと思うのですね。問題は、その膨大な数に上るアウトの業者に対してどういうような契約作業、対応をしていかれるのか、ここを明らかにしていただきたい。極端な場合、組合員の店だけがその使用料を徴収をされて、把握できないからということでアウトの大部分が放置をされるというようなことになるのではないかという組合員の不安でありますとか、不信、疑念、この問題をひとつきちんと文化庁として取り除いていただきたい、そういう意味で対応を明らかにしていただきたいと思います。
  26. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 先生お話のとおりでございまして、環境衛生同業組合の組合員になっております社交場等は全国の社交場等の一部でございまして、これらに加盟しておるところが、その組合の指導によりましてそこのところだけが契約が進み、その他の店について契約が進まないというようなことがございましては、公平かつ適正な著作権管理という上から大変遺憾なことと存じます。したがいまして、このたびの使用料規程の認可におきましても、そうした事態を招くことのないように、著作権の管理につきまして最大の努力をするように、日本音楽著作権協会に対しまして文書で指導しておるところでございます。  同協会におきましても、先ほど申し上げましたような三十二万店すべてに通知をいたしておりまして、全国四百カ所におきまして説明会を開くなど努力をしておるところでございまして、既に八十九カ所では実施をいたしたところでございます。ただいま先生の御意見もございますので、早速に同協会の関係者にさらに注意を喚起したい、このように考えております。
  27. 長野祐也

    長野委員 文書で指導をしていただき、またさらに注意を喚起するという御答弁に満足をしております。ぜひお願いを申し上げたいと思います。  そこで、同じカラオケも店によっては使用状況が非常に多様でありまして、例えば料理店、すし、中華、そういうところでは、例えば忘年会であるとかあるいは新年会であるとか、そういう一定期間しか使わないところもある。それが毎晩使うスナックと同様な扱いになるのかどうか。これらの使用料の適正化を確保するためにどういうような方法を考えておられるのか、教えていただきたいと思います。
  28. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 確かにカラオケ伴奏を伴う歌唱にかかわる使用料につきまして、いわゆるカラオケ使用料でございますが、これにつきましてどのような額を設定したらいいかということにつきましては、先生お話のようにその利用の状況というのは社交場等大変多様でございまして、それらから徴収をいたしますのにともかく無理のない額とするということにしております。  例を申し上げますと、オーディオカラオケの場合でございますと、十坪までの店で月額三千円、一日百円程度でございます。十坪から十五坪程度の店であれば月額五千円というようなことにしておるわけでございます。このように、カラオケをどの程度使っているかというその頻度でなく、お店の広さによりまして使用料を決めておるわけでございまして、比較的無理のない額になっておると思うわけでございます。  しかし、先生お話にございますように非常に使用の状況は多様であると思いますので、ある一定の季節に限るとかそのような場合には、その限られた季節についてだけ徴収するとか、弾力的な運用ということを考えるように、文化庁といたしましても、日本音楽著作権協会に対してそのように指導しておるところでございます。
  29. 長野祐也

    長野委員 弾力的な運用をしていただくということで結構だと思うのですが、JASRACの方の反応はどうですか。
  30. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 そのように対処していくというふうに私ども伺っておりますが、まだ実施には至っておりませんので、今後の課題と存じます。
  31. 長野祐也

    長野委員 最後の質問ですが、膨大な対象営業所、先ほど二十万店ということでありましたが、そうでありますだけに、的確に使用料が徴収された場合その徴収額が相当な額に上ることが予想されるわけでありますが、将来その額によっては零細店の負担の軽減を図るために減額等の措置が考えられないものかどうか、お尋ねいたします。
  32. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 先ほど申し上げましたとおりこの実施は来年の四月からということになっておりまして、先ほどから先生の御意見にございますようにいろいろな課題もあるわけでございますが、できるだけ順調に適切な実施ができるようにと私ども期待しておるわけでございます。今先生お話にございますようなことにつきましても、今後の実施の状況、徴収実績でございますとかまた使用者の負担感でございますとか、そのような実情を見まして適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  33. 長野祐也

    長野委員 最後に、要望をして終わりたいと思います。  冒頭に申し上げましたとおり正直者がばかを見ないような、かりそめにも組合に入っておるがゆえにマイナスになるというようなことがないように、適正公平な徴収業務が行われますように、きょうの答弁、私満足をしておりますが、今後の文化庁の一層強力な御指導を強くお願いを申し上げまして質問を終わります。ありがとうございました。
  34. 愛知和男

    愛知委員長 中西績介君。
  35. 中西績介

    ○中西(績)委員 文部大臣所信を先般の委員会でお聞きをしておりますと「教育改革の担当大臣として、」という文言があるわけでありますけれども、その中に「国民の期待に沿った教育改革の実現に全力を傾ける」という内容となっています。そのためには、大ざっぱに分けますと、一から六まで大体提起されておると思うのですけれども、時間的に十分ではございませんから、その問題につきまして数点にわたって質問をしたいと思います。  そこで、その質問をする前に、先般から大変な災害になっております伊豆大島、島民の皆さんには今大変な御苦労をおかけしておりますし、大変お気の毒に思っておるわけですけれども、その中でも児童生徒対策について、具体的に文部省としてはどのように指示し、そして各教育委員会に対して対応しておるかについてお聞かせください。
  36. 西崎清久

    西崎政府委員 先生指摘の大島災害に伴う児童生徒の問題でございますが、児童生徒を含む全島民が避難するという事態でございます。  まず児童生徒の数を申し上げますと、全体で千八百八十四名、小中高の児童生徒がおるわけでございますが、現在それぞれの避難場所に収容されておりますけれども、まず児童生徒の存在の確保と申しますか、把握をしなければならないわけでございます。この点につきましては、昨日の午後四時現在でございますが、小学生につきまして八百六十八名中六百七十二名、七七・四%が把握できている。それから中学校につきましては五百六名中四百六名、八〇・二%が把握できております。それから高等学校につきましては五百十名中四百五名が把握できておる、こういう実情がまずございます。  この児童生徒にかかわる就学の問題が一番大事な問題でございまして、文部省といたしましては、土曜日の段階で初中局から東京都の教育委員会の指導部長あてに連絡をとりまして児童生徒の就学対策についての万全の措置を講ずるようにというふうな措置を講じております。それから、文部省内の施設部の指導課長が災害対策の本部員でございまして、三原山の政府調査団の一員として現地にも参るというふうな措置も講じております。  そこで、児童生徒の就学の問題でございますが、まず小中学校につきましては、港区については十一月二十六日を入学日として措置をいろいろと講じておるというのが第一点でございます。それから千代田、中央、新宿、文京、江東、品川の各区につきましては二十七日を入学日として予定しており、いろいろな手続を関係教育委員会でとっておるわけでございます。それから高等学校につきましては、大島高等学校については都立紅葉川高等学校において、それから大島南高等学校につきましては旧新宿区立淀橋第二小学校において教育活動を開始するという方向で、これは二十七日以降というふうな予定になっておるわけでございます。  以上が就学対策でございます。  それから次に、やはり児童生徒がそれぞれ、言うならば着のみ着のままで避難しておるというふうな状況でございますので、教科書、文房具、通学用品等についてはこれを現物として支給できるように、関係機関と協議をし、それぞれの当局において至急に支障がないように手配をしておるというふうな現状でございまして、東京都の教育委員会は各区の教育委員会に指示を出し、それぞれの学校において適切な就学対策について全力を挙げておるというのが現状でございます。
  37. 中西績介

    ○中西(績)委員 今お聞きいたしますと、一応の対策なりあるいは入学日設定をいたしまして措置をいたしておるようでありますけれども、この後につきましては、長期的な傾向ということもありますから、ぜひこれらの問題につきましては、大変困難であろうと思いますけれども、十分状況を把握をしていただきまして、そごのないように措置していただくよう、特に最後に言われました、それぞれ学校が異なるわけでありますから採択されている教科書等についても違いがある、したがって、文房具はもちろん、教科書等につきましても手落ちのないように措置をしていただくよう要望いたしまして、終わります。  そこで、私は、大臣教育行政推進の基本にかかわる問題として、ぜひひとつ明らかにしていただきたいことがあるわけであります。  それは、前藤尾文部大臣が中曽根総理によって罷免をされました。大臣はこの前藤尾文部大臣の後任として任命されたわけでありますし、そうなりますと、この問題にかかわって大臣はどのようにお考えになっておられるのか。まさか藤尾文部大臣と同じ考え方ではないだろうと思うのですね。この点についての大臣の所感についてお答えください。
  38. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 藤尾前文部大臣は自分の所信を言っておられると思うておりまして、あの言動は信念を持って言動しておられると思うております。罷免の問題は、要するに総理と藤尾前文部大臣との話の中から出てきたことでございまして、文部省も私も全く関係のないことでございまして、私自身は私自身の信念に基づきまして行動するつもりでございますし、他の方々のまねをするというようなことは私はいたしません。
  39. 中西績介

    ○中西(績)委員 戦後になりまして、このように大臣を罷免されるということになりましたのはごく少数であるということは御存じのとおりです。したがって、このように罷免をされるということは、そこにはちゃんとした理由があるわけであります。私たちから見ますと、たとえ個人であっても、歴史の事実認識が間違っておるとか、こういういろんな多くの問題をこの中には秘めています。そして、一九〇五年の保護条約締結時における状況からいたしましても、具体的に言いますと、軍隊の王室圧制下の中でこれが行われたという状況等があるわけですね、日時等については随分違いがあるわけでありますけれども。こういう認識の上に立って、いろいろ歴史の事実を曲げることはできないということでもって、大臣のそうした信念に基づいて行動した、そのことが結局、時の、現在の中曽根内閣の方針なりあるいは対外的な関係の中でいろいろ問題があるということで、こうした罷免というのがなされたと思うのですね。  そうなりますと、このことに対する内閣総理大臣の罷免されるその考え方と塩川大臣の今お考えになっているその考え方は、どうなんでしょう、これを肯定されるのですか、否定されるのですか。
  40. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 歴史の解釈なりあるいはその評価というものは、現時点においてなかなか定まるものではないと私は思うておりますが、しかし、私たちは率直に、日韓間で一時そういう好ましくない悲しい時代があったということは、私はそれはそれなりで受けとめておるものでございます。
  41. 中西績介

    ○中西(績)委員 ちょっとわかりませんので、否定するのか肯定するのか、その点について簡単にお答えください。
  42. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、その事実について十分に自分自身が勉強しておりません。ただし、先ほど申しましたように、日韓間で悲しい事件であったなということは私は認識しておる、こう申し上げたのであります。
  43. 中西績介

    ○中西(績)委員 私がなぜこのことを聞くかといいますと、藤尾前文部大臣が、歴史の事実を曲げることはできない、こういうことで拒否し続け、その結果が罷免されたということに、あらわれてきている現象ではなっているわけですね。そうなりますと、みずからの事実認識のゆがみ、誤り、こうしたことに気づかずに、相手に事業を曲げることを要求されたとこう、錯覚したのかどうか知りませんけれども、お考えになっておられるというところに、一国の教育の最高責任者である文部大臣、この最高責任者としてこういうような態度のとり方というものが果たして妥当であろうか。なぜなら、今こうした評価については歴史的な経過があって評価されるだろうと言うけれども、事実は事実としてやはり認めなくてはならぬと思うのです。ですから、あくまでもこういう乱暴な歴史観を持って主張し続け、しかも大臣としての位置づけにある者がこのような措置をされたということに対して、私たちは非常に奇異な感を抱くわけであります。  したがって私は、韓国との関係一つ取り上げてまいりましても、言いたいことが言い合えるというその条件、前提は、少なくとも何が大事かということを明確にしておかなくてはならぬと思うのです。したがって、その点について大臣が、私を含めて、藤尾前文部大臣のようなそういう誤った事実認識、そうしたものを盾にとっていろいろ論議をしていき、そして指摘をされても、それは信念としてということですべてを排除していくというような感覚では、大臣としての位置づけはどうだろうか、こう私は考えるわけなんです。したがって、文部大臣でなければ私はここで今こうして論議をするつもりはありません。文部大臣であるがゆえに、この問題についてどうお考えかということを明らかにしてほしいと思うのです。
  44. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 先ほども申しましたように、私自身が、その歴史的事実というものを学問的に、そして事実を正確に把握するために、専らそれを勉学したことはございません。しかし、歴史の流れとして私たちは承知しておるということで先ほど申し上げた次第でございますが、藤尾前文部大臣はそれを自分の問題として、自分のいわば勉強として感じ、あるいはそういう考えを持って言動しておられるのでございまして、それをもって私と藤尾前文部大臣との関係をはっきりしろとおっしゃっても、これはできないことでございます。
  45. 中西績介

    ○中西(績)委員 藤尾さんの個人的な発言は発言としてあるでしょう。しかし、文部大臣をやめさせられたということは、文部大臣としての位置づけにあったからやめさせられた、こうなっているわけですね。ですから、後任の文部大臣はどうなんですか、こう聞いておるわけです。
  46. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 それは文部大臣と内閣との話でございまして、私は新しく文部大臣と任命されましたが、そのこととは関係なしに任命されております。そして私自身は、先ほども何遍も言っておりますように、あの日韓問題は日韓間にとって不幸な事件であったなという認識は持っておるということを申し上げておるものでございます。
  47. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、少なくともここで、これからちょっと外れますけれども、今大変教育内容の中で誤りを犯すのは、そうした歴史問題についても、近代史等については、受験ということが最優先されていく課程の中で、時間がないということでほとんど切って捨てられる、しかもその中身の中にはそうした問題にほとんど触れられてないというのが今の歴史教科書ではないでしょうか。だから、少なくとも国際化、これはそれぞれ固有の教育、文化というものを私たちは相互に認め合うという前提に立っての国際化であります。そうした際に、こうした問題について私たちがやはり触れておかないと、論議をしておかないと、このことは将来にとって大変不幸な事態になるのではないか、こういうことを私たち考えるがゆえに、特にこの点について今指摘をしたわけであります。  ですから、やはり何といっても、これから大臣に私はぜひ要望したいと思うのですけれども、今御存じないと言われましたが、だからそれでもってすべてを片づけるわけにはなかなかまいらぬだろう、こう私は思います。なぜなら、内閣という行政の最高責任、こういう中における一人として、これはやはり大臣として認めることができないということで罷免されたわけでありますから、少なくともこの問題については、これからどれぐらいなさるか知りませんけれども、文部行政を担当される最高責任者としては、ぜひこのことの認識を十分していただくように要請したいと思います。そして、今言われておるような逃げの姿勢でなしに、積極的にこの問題についてはやはり取り組んでいただきたいと思います。そうすることが、本当に今教育の是非を論ずる場合に大変重要ではないかと思いますので、これはもうこれより深くは入りませんけれども、ぜひこの点については勉強していただければと思います。  そこで、もう一つだけこの点についての所感をお聞きしておきたいと思うのですけれども、この問題が発生をいたしました期日をずっと見てまいりますと、私が非常におそれておるのは、文部大臣を罷免をするというような重要な事件になったその原因が、文芸春秋十月号、これに記載された記事だと言われています。しかも、それは九月十日に発売をするということになっておったわけでありますけれども、事前にゲラを入手し、そしてこれに対応したということであります。それで九月八日に文部大臣が罷免をされた、ところがここでこうした放言問題等を注意をされ、あるいは撤回をしてほしいということを言われたのだけれども、それをあくまでも干渉だとして拒否をしておるわけですね。それで、そのまま載っけたわけなんです。ところが、もし文芸春秋社に悪意があるといたしますならば、これをその部分を削除して発売をしたといたしますと、この問題はどのように発展をしたのでしょうか。それを考えると、事前にこういうものを手に入れて対応し、しかもあれは外務省の藤田アジア局長が参りまして二ヵ所の訂正、削除を申し入れしたと言われていますね。このことを考えますと、この部分をカットしてもし発売をしておったとすると、文相は罷免をしたわ、これは載ってなかったなどということになると、これはどうなるのでしょう。こうしたことを考え合わせていきますと、少なくともこの前の委員会なりの政府の皆さんの答弁ではあくまでも検閲ではない、介入ではないということを言い続けたんだけれども、検閲というのはそれじゃ何なのかということを考えてみなくてはなりません。個人的意見が公になる前に、政府あるいはマスコミなどの抗議かあるいは指摘によってこれを削除せよと言い、文部大臣を罷免するというような事態になってくると、これは前文部大臣内容がどうだこうだということは別にしまして、大変な問題ではないかと思うのですね。このことは今度は教科書問題とも連動していく。もう時間がありませんからこの点については触れませんけれども、こうしたことを考えると大変重要です。この点についての所感はありませんか。
  48. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、文芸春秋とそれからその情報をキャッチした官邸サイドとの関係は全く知りません。がしかし、検閲ですか、検閲をしたというようなことは私は恐らくないであろう、こう思っております。また、そういう検閲をするというようなことがあってはならぬと思うものであります。
  49. 中西績介

    ○中西(績)委員 じゃ、検閲とはどういうことですか。
  50. 西崎清久

    西崎政府委員 私がお答えするのはちょっと立場がいかがかと思いますが、先生、検閲とはとおっしゃいましたので、ちょっと検閲の解説をいたそうかと……
  51. 中西績介

    ○中西(績)委員 大臣所信を聞いて大臣と話をしているときに、私はあなたが出てくるのはどうかと思いますよ。
  52. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、検閲というのは、権力を行使して事前に私文書並びに公文書、文書を査閲することだと思います。
  53. 中西績介

    ○中西(績)委員 そのとおりだと思います。ですから、ゲラ刷りの段階でそれを入手して、しかも行政サイドにおる者が、藤田外務省アジア局長が出向いていって、九月三日の日に二ヵ所の訂正、削除を申し入れた。それを削れということですからね。このことをもってして私は検閲とは言わないのかということを言いたいのです。今の大臣の答弁からするとそれにぴったり当てはまっているのじゃないでしょうか。
  54. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 外務省の藤田さんにどういう経路で入ったのかは知りませんが、それならば私は逆に言いますと、だれがそういう原稿を持ち出したのだろう、このことこそ問題ではないかと思います。決して藤田さんが泥棒に入って原稿をとったのではなかろうと私は思いますし、だれかが出したのだろう、だれが出したのかというところ、そこを探求すべきだと思います。
  55. 中西績介

    ○中西(績)委員 問題をすりかえてはいけませんね。官邸サイドが入手をしたことは事実です。その入手した経路なり何なりはそれはいろいろあるだろうが、それが問題ではないわけですよ。それよりも入手をしたその後の対応について問題だと私はこう指摘をしておる。それが今あなたが言われる検閲と合致する、こう言っておるわけですから、少なくともこのような事態を絶対に起こしてはならない。そうしないと、これからもう言論の弾圧、封殺というのは、これを認めると次々起こっていきますよ。それがたまたま今の総理大臣に不利にならないから認めるとか、不利だから認めないとかいうことになってくるとなおさらのことでしょう。これがもし中曽根総理の訪韓だとかいろいろな点で、この後に迫っておるいろいろな問題とかかわりがなかったらどうされただろうかということを私は考える。なければやらない、あるからやるということになれば、内閣総理大臣なりあるいは官房長の意向を受けてやったということになれば、藤田外務省アジア局長が行かれたのは恐らくそういうところからの指示によってされたと思うわけですから、閣内における行動として起こっていますから、ですから権力がないなどということは到底言い得ません。したがって私は、このような先ほど大臣が位置づけされた検閲というのは絶対あってはならぬと思うのですが、その点はお認めいただけるでしょう。
  56. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 検閲なんというようなことは現在の社会ではできるもんじゃございませんが、今お話を聞いておりましても、決して検閲をしておらぬじゃありませんか。そうではなくして、だれかがそういう原稿を持って行った。印刷場にあるのかどこか知らないけれども、持って行った。それを見て、これは大変なことが書いてある、何とか訂正をしてもらえぬだろうかと頼みに行ったことでございまして、そんなものを検閲とはだれも認めるもんじゃないと思います。
  57. 中西績介

    ○中西(績)委員 今の言葉を聞くと、塩川さんまでおかしくなってくるのですね。本当ですよ。あなたたちは、みずからは権力を持ってないなどというそういう錯覚をしているんじゃないでしょうか、自分個人はと。そこいらが、絶えず個人とそういう位置づけとを交互に使い分けるところに大変な危険があるわけですね。私は、少なくとも行政の側に立つ者は絶対にこうした措置をしてはならない。その入手の経路、それはあなたが聞かれたらいいでしょう、どうされたんですかと。私は入手の経路よりも、このような措置をされたことに対して大変な問題がある。言論、出版の自由、少なくとも憲法で検閲については禁止をしておるわけですから、この点だけは明碓にしておかなくてはならぬと思いますよ。特に私は、大臣がそういう考え方でおられるということは大変残念ですが、この使い分けを絶対にしてはならぬということをここで強く指摘をしておきたいと思います。したがって、この点については、今後このような措置なりを文部省としては絶対にやらないということだけお答えください。
  58. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 文部省は今までそんなこともしておりませんし、今後もやらないと思います。
  59. 中西績介

    ○中西(績)委員 ところが、教科書問題でもってあるでしょう。私は教科書問題まで入りたくなかった。この前いただいた新しい歴史教科書の問題等についても、いろいろやらざるを得ない状況が出てきているじゃありませんか。無理をして通すものですから、指摘をされると今度はそれを無理をしてまた訂正をさせる、こういう措置が次々と出てくるでしょう。ですから文部省にそうしたことが皆無だということはあり得ない。したがって大臣、ぜひこのことについては明確にしておいてください。
  60. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 いわゆる検閲なんということは文部省はいたしません。
  61. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは、検閲等類似行為についてもやらないですね。
  62. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 類似行為というのは主観性が入りますから、何とも言えません。
  63. 中西績介

    ○中西(績)委員 それではあれですか、調査をして何十%以上かそれが類似行為だという認定か何かあれば、それはお認めになるのですか。
  64. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、こういう問題はそんな数字であらわせるものではないと思います。
  65. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから私は、主観が入ってのそうした措置になってくるだけに危険だ、こう言っておるわけですよ。このことはお認めになるでしょう。主観が入れば、類似行為というのは主観だから、例えば検閲ではないと自分は思った、このように言えば類似行為でないということになる。ですから、こういう本当に情けない論議をしなければならぬことを残念に思うのだけれども、いずれにしても、それだけにこれは重要だということを大臣としてもう一度勉強していただきたいと思います。  それでは次に、大臣所信の中に幾つか問題があるわけでありますけれども、私は二、三の点について指摘をし、ただしておきたいと思います。  大臣所信表明の中には、初等中等教育では教育内容の改善及び教育条件の整備が重要課題である、こういうように述べています。そこで、予算との関係で四十人学級問題についてお聞きしたいと思うのですけれども、六十二年度の概算要求におきましては、改善増で一万二千五十人、四十人学級で五千二百人、配置率改善で六千八百五十人、そして自然減が一万二千百人。この改善増にするに当たって五十人だけ自然減が余ることになるわけでありますけれども、このまま推移をしていきますと、六十六年までにこれは五年間で仕上げるということになっておりますけれども、さきの国会で、おおむね三年後見直しの国会附帯決議を私たちは決議をしておるわけでありますけれども、その計画期間の短縮を図り不均衡を早期解消すべきではないか、こう思うわけですね。ところが予算書を見ていきますと、六十一年の二月計画から、増加する人員の中に初任者研修指導教員の五百五十八人、指導主事の三十人というのを加えて、この一万二千五十人の中にこれが入っておるわけです。しかも自然減の一万二千百人から五十人残す結果になっておるわけですね。ですから、今私たちが早急にやり上げるべきことは、この五年間と言わずに短期間に計画期間の短縮をいかに図るかということが大変重要ではないか、こう考えます。ということになれば、今言う自然減の残人員あるいは初任者研修などというところにつけておる人員を、一刻も早く解消するためにはあるいは不均衡解消のためにはそのような措置が必要ではないだろうか、こう思うのです。この点について文部省はどうお考えですか。
  66. 加戸守行

    ○加戸政府委員 教職員定数の改善計画につきましては、十二ヵ年の計画で昭和六十六年度の目標達成のためにそれぞれ努力いたしておるわけでございます。  各年度におきます改善につきましては、当該年度の財政状況あるいは概算要求基準の範囲内におきまして、各年度におきまして重点とする政策的な選択というものもございますけれども、この総合的な計画を六十六年度までに達成するにはどういう形でやっていけばよろしいのかという、年次配分も考慮しながら教職員の自然減を勘案し、その枠内において支障なく計画を進めたいという視点で要求をさせていただいているわけでございます。  なお、六十二年度につきましては、いわゆる初任者研修の試行ということを重点課題として取り組んでおるわけでございますので、そのための所要措置を教員の自然減の範囲内におきまして要求させていただいているということでございます。
  67. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、国会における決議などというものはもう無視をしておるということですか。
  68. 加戸守行

    ○加戸政府委員 六十一年度の予算におきまして四十人学級の実現のために措置されました事柄が、児童生徒の減少市町村以外のその他市町村については、例えば施設余裕校が外され、あるいは中学校につきましては施設余裕校のうち十八学級以上のものが対象とされないというような繰り延べ分があるわけでございまして、そういったおくれも取り戻したいという考え方で、六十二年度におきましてはそのおくれを取り戻す要求をさせていただいておるわけでございまして、国会の御意思を十分踏まえながら各年度においての適切な対応を考えているわけでございます。
  69. 中西績介

    ○中西(績)委員 いや、私が言っているのは、不均衡を早期解消するという立場に立って、あくまでも計画期間短縮を図るということが大きな課題になったわけですね。そのために決議がされたわけです。ところが、行政側の判断によって重要施策でこういうものは入れますということで、そういうものについてはむしろ六十六年までかっちり年限の中でしかやりませんよ、こうなっているから、私は国会での決議を無視されたのですかと言っているわけです。
  70. 加戸守行

    ○加戸政府委員 行政的な対応といたしますれば、毎年度の予算編成はその時点におきます財政状況あるいは概算要求基準といったものがございますし、あるいは児童生徒の減少に伴います教職員の自然減、そういった状況を踏まえ、かつ、昭和六十六年度までの範囲内におきまして六十二年度においてどのような措置をすればよろしいのかという考え方で要求しているわけでございまして、当然ながら、先生今おっしゃいますような国会の御趣旨も踏まえつつ、その範囲内におきましての適切な対応を考えているということでございます。
  71. 中西績介

    ○中西(績)委員 よくわかりませんが、短縮をするということですよ。では、今のあれでいくと短縮するのですか。
  72. 加戸守行

    ○加戸政府委員 六十六年度までに達成をするその範囲内において、状況が許せばその方向への努力はしたいと考えております。
  73. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、これは既に、おおむね三年後見直しをするといういろいろな行政的な措置だとか約束事だとか、今まで随分長い間の経過がありました。これについては、私は指摘しようとしても時間がありませんからしませんが、それは御存じだと思うのです。そういう中で計画を短縮するということになったわけですよ。だのに、今あなたが言われるように行政側の主体を優先させてどんどんさっきのようにはめてきたら、短縮などということは到底できませんね。ですから私は、国会での決議を行政としては勘案もせずに無視をするのですかと聞いているわけです。はっきりしてください。
  74. 加戸守行

    ○加戸政府委員 当然国会での御趣旨も尊重しつつ、現制度の中で行政的に対応する範囲内においての努力をしているわけでございます。
  75. 中西績介

    ○中西(績)委員 少なくともこの問題については、努力をしておると言うけれども、どこが努力したか私らには見えぬわけです。このままでいったら六十六年までに短縮はできませんよ。今言うように例えば自然減だって余しているでしょう。五十人であっても余しているのですね。さらにまた、今言うようないろいろ文部省が考えておられるそういう措置については優先的にどんどんはめてきている。ということになると、かつて論議をしてきた経過なりそういうものがここでは無視されているのではないですかということを私はここで指摘をしているのですよ。そのあらわれが短縮できるかどうかにかかっている。ですから私は、このことを時間をかけて言っているわけです。今のような答弁では到底やる気はないですね。そうでしょう。
  76. 加戸守行

    ○加戸政府委員 繰り返しになりますが、それぞれ予算編成をいたします年度の財政状況あるいは教員の減少、そういった状況を総合勘案し、その予算編成年度につきましての諸般の状況のもとで、可能な限り前進し円滑に実現をしていきたいという考え方に変わりはございません。
  77. 中西績介

    ○中西(績)委員 くどくど言う必要はないですよ。今までの経過を本当に勘案して、そのあらわれてくる現象というのは短縮をするかどうかなんですから、そうなるのですかと言っているのです。今の答弁ではやらぬということを言っているのでしょう。そう確認してよろしいですか。
  78. 加戸守行

    ○加戸政府委員 法律では昭和六十六年度の姿が書かれているわけでございまして、それまでの間におきましては、政令において、どのような形で実現をしていくのかというステップが定められるわけでございます。そして予算の上でも、その政令のベースとなります措置が予算編成の内容となるわけでございまして、そういう意味におきましての、早いか遅いか、短縮かどうかというのは個別的な積算の内容等によって判断される事柄でございますし、国会の御意思を踏まえながらそういう努力をしていくということでございます。
  79. 中西績介

    ○中西(績)委員 いよいよわからぬようになってきました。私は極めて単純ですから、私たちにわかるように説明してくださいよ。くどくど言っているけれども、最後は中身が何かわからぬようになってくるんですよ。私ではちょっと理解できない。短縮をするのかしないのか、この点について国会決議を尊重するかどうか、はっきりしてください。
  80. 加戸守行

    ○加戸政府委員 あくまでもそういう方向への努力はいたしておりますけれども、それが具体的にどの程度の実現が可能かというのは、当該年度の財政状況等の諸般の事情によって左右されるということでございます。
  81. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなれば達成できないということをあなたは言っているんですよ。今の答弁でははっきりしているんだな。  それで、当該年度の予算をいじくるというけれども、それじゃ聞きますが、六十二年度の予算は六十一年度に比べて増額されますか。
  82. 加戸守行

    ○加戸政府委員 これは予算編成、今後の財政当局との折衝のいかんによって決定されるわけでございますが、私どもとしましては、要求しました額の実現に向けて最大限の努力を払うということでございます。
  83. 中西績介

    ○中西(績)委員 それだって伸び率はわずかでしょう。一〇〇%実現されたとしてもわずかですね。今国家財政が破綻状態になっている、その中でこれがどうなるかという見通しなどについても、あなたはお持ちですか。今のような答弁でごまかすから、これは国会における決議などというのはいつまでたっても、やったってやらなくたって同じだという格好になっちゃう。これは重大な問題ですね。  それから、もう一点私は指摘したいと思うのです。義務教育国庫負担法の問題について聞きますが、昨年から実施されまして教材費の二百二十一億、旅費の百三十三億、六十年度の最終結果を見てみますと、一〇〇%以上引き上げられたのが十七県だという文部省資料だけれども、昨年は二・八%引き上げられていますから、それで計算をすると、結果的には九県しか超えているところはありません。ですから八県は以下になっておる。九〇%台が二十九、九〇%以下が一、こうなっていますね。これはお認めになると思うのです。そうすると、私たちが国庫負担法から外す際に大変な論議になりました、総理も大蔵大臣文部大臣もあるいは自治大臣もこうした問題について随分論議を重ねてきて、文部省が我々に答弁をしたのは、一〇、一〇、一五%マイナスになっておる予算を二・八%増額することによってとめ得る、そしてこれからは上向きになるのです、だからこれを外すのだという言い方をしてきましたが、いや、違う、これは一般財源化されれば絶対に減額をされるよという指摘を我々は終始言い続けてきたが、その結果が出ていますね。  そこで、私は二つ聞きたいと思うのです。では六十一年度の当初予算でどうなったですか、それが一つ。もう一つは今言うように、いろいろな指導なり指示なりをしたと思うけれども、この事実はお認めになりますか。
  84. 加戸守行

    ○加戸政府委員 まず前段の、六十一年度の予算措置という御質問がございました。教材費につきましては、常に当初は低く抑えた予算が計上されておりまして、実態的には補正予算の計上によりまして数字が出てまいるわけでございますので、六十一年度分については現在補正予算の結果を踏まえまして調査中の段階でございまして、まだ数字は把握いたしておりません。  それから後段の御質問でございますが、先生が先ほど御指摘されましたような、例えば六十年度予算におきまして十七県が増額になっているとかその他の数字は多分そのとおりだろうと思います。ただ、ここで申し上げておきたいのは、先生二・八%の交付税上の措置のことを言及なさいましたけれども、それは小学校が十八学級といったような標準学級についての単位費用の積算が対前年度比二・八%増でございまして、このことは一つ学校単位としてはそうでございますけれども、総額的に見ますと、これは全国の学校すべてについての各市町村での措置状況でございますので、例えば児童生徒数が減少したために学級数が減少しているというような要素を全く外しまして総額の比較をしているわけでございますから、個別的に見ますれば、あるいはそういう内容を分析いたしますと、学校あるいは学級数が減っているにもかかわらず教材費がふえているというケースもあるわけでございますから、一概に総額だけの比較は必ずしも適切でないと考えております。
  85. 中西績介

    ○中西(績)委員 それほど言い張るなら、分析したものを資料で全部出してください。いいですか。  委員長、私は今の資料をこの委員会に提出を求めます。答弁は要りません。委員長が処置してください。あのように言い張るわけですから、その資料を提出させてください。  それと問題は、六十一年度の当初予算では、補正予算で組むから増額される可能性があるということを言っていますけれども、じゃ六十年度、あれほど問題にしておったにもかかわらずどれだけ増額されたのですか。この点についても詳細に資料提出をしてください。今私の指摘をした総額的な面から言いますと、必ずしも増額したとは思われぬ。わずかしか変更はあっておりません。ですからこの点は明確にしておきたいと思うのです。  そこで、私はこの点で一つ指摘をしたいと思いますけれども、この問題で地域でどのようにされておるかということについてあなたたちは御存じですか。例えば私は北九州でその調査をしたのですけれども、その結果はうんと減額されていますね。その減額をされておるがゆえにどういう現象が起こっておるかというと、今度は一般財源化されたために教育委員会の所管でなくなってしまったのですね。そうすると財政課か総務課の所管になるのです。そのために購入する教材の質の問題だとかいろいろな問題が、現場の人がいかに要求してもただ単に数合わせをするだけ、こういう事態が次々に出てきておる実態を私は聞いてまいりました。  ですから、私たちが一番注意をしなければならぬのは、大臣、ここだけはひとつ大臣に答弁してほしいと思うのですけれども、自治省の側はこのようにして財源を国庫負担法から外すということについては今は反対しています。しかし、実際にその財源が自治体のあるいは自治省が所管をする中に主体的なものとして入ってくるということになって、主体的にそれは使用できるということになりますと、むしろ現場ではそれに賛成をするという状況すらもあるわけですね。ですから、この国庫負担法から外すことの意味がどのように重要であったかということなんです。ですから、今言うように自治体が財源措置をやられる際に、このようにして一般財源化すればもうすべて総務課、財政課の所管の中でやるわけですから、学校現場のそうしたものとかけ離れた感覚で処理をしていくという現象が出ておる。そして実際に額が削られておる。じゃその額をどこに持っていったかということになると、一般財源化されていますから細かくわかりにくい、こういう現象が出ています。したがって大臣、こういう状況になっておるとしますと、義務教育をこのようにわざわざ措置をしてあったのに国庫負担法から外したということについて、いまだに文部省の長として正しかったとお考えですか。
  86. 愛知和男

    愛知委員長 先ほどの資料提出に関しましては、理事会で協議をしていただいて、可能な限りの資料提出を求めることにいたします。
  87. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 義務教育は国と地方と共同して行う事業でございますので、私もその当時、覚えておりますけれども、これを国庫負担制度から外すということには反対した一人なんであります。外してみますとそういう事態が起こるであろうと思いますけれども、しかし、義務教育を推進する意味におきまして文部、自治の間で十分に話し合いをし、そういう支障のないようにしておると私は承っておりますし、またその努力をいたしております。しかし、これはその市町村の各自治体の財政の組み方でいろいろな問題は出ておるのかもしれません。私はその実態を知りませんので論評し得ませんけれども、しかし、文部、自治の間においては互いに協力してそういう激変が起こらないようにする措置は十分に講じてきたと思うております。
  88. 中西績介

    ○中西(績)委員 何といっても前段のこうしたことに対して反対であるということ、ここが貫徹をされないと、これから後次々に出てくることは必至だろうと思うのですね。ですから、この教材費に見受けられたように、増額されるとか徹底した指導をするとか言ってみたって、文部省と自治省管轄下における各自治体との関係というのは、文部省が所管をする管轄下における教育委員会、そうした関係とは違うわけです。この点だけは十分考えておかないと、後になって、もう既に裏切られ始めておるという具体的事実があるわけでありますから、局長のようにあのような強弁をして、大した問題じゃないというふうな言い方をすると、これはなお拍車をかけることになるわけですから、この態度だけは改めなくてはなりません。これはぜひ肝に銘じていただきたいと思いますよ。  そこでもう一つ、六十一年度の共済あるいは恩給関係費補助率を二分の一から三分の一にしました。結局八百四十二億、これは給与改善費の千三百億を補てんする分に充てられた。今度は二・三一%ですから約七百億と言われていますけれども、この捻出はどうするのですか。
  89. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生今おっしゃいましたように、義務教育費国庫負担金の関係で申し上げますと約五百億、それから国立学校の人件費等で二百億弱、合わせて七百億程度の所要財源が六十二年度予算に必要になってくるわけでございます。今後の取り扱いにつきましては、財政当局と十分相談しながら適切に対応したいと考えているわけでございます。
  90. 中西績介

    ○中西(績)委員 もう近いうちに予算編成しなくちゃならぬわけですから、そのときに財政当局と——財政当局というのは大蔵ですか。
  91. 加戸守行

    ○加戸政府委員 主として大蔵省でございます。自治省その他とも関連する場合もあり得ると思いますが、基本的には今おっしゃいましたように大蔵省と折衝する話でございます。
  92. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなりますと、いまだに人件費問題が内容的に文部省としてはここでは答弁できない状況にあるわけですね。そうなりますと、私は、先ほどから申し上げておりますように、国庫負担法による財政措置というのは、戦後ずっと年次を追いまして、戦後教育行政の中で最も重要な位置づけとして措置されてきたと思うのですね。重要な位置づけをしたために、地域差も解消したり、最低保障することによって教育の機会均等、さらに水準の維持向上を果たしてきたと私は思います。こうなりますと、先ほどから申し上げたように教材費あるいは旅費、旅費の問題は申し上げませんでしたけれども、これについてもそれぞれ各県の段階あるいは市町村の段階における格差が大きく拡大され始めてきているということになる。この事実を考えますと、これから後、まだどのように人件費の財政措置をするかわからぬし、主たるあれは大蔵になるわけですけれども、相談をするというのだけれども、既に出ておる事務職員、栄養職員の問題については大臣はもう何回もあらゆるところで基幹職員として位置づけておるわけだし、大事だと言っておりますけれども、この点、大蔵の考え方はどうなんですか。
  93. 加戸守行

    ○加戸政府委員 いろいろ新聞報道等で伝えられておるわけでございますが、この負担金の取り扱い問題は今後議論になり得る事柄であろうと思います。私どもが受けております非公式の感触からいたしますれば、負担金のありとあらゆる分野について財政当局としては一応の検討の材料とするであろうと思われます。そういった点は、具体的にどの費目というような形での提示その他の御相談はございませんけれども、これから年末の予算編成にかけてすべての事柄が話題あるいは議論にはなり得るだろうと思っております。
  94. 中西績介

    ○中西(績)委員 議論になり得るだろうなどというのんびりしたことでこの問題はいいのですか。少なくとも年次別にこうした国庫負担というものが拡大されてきたその理由ですね。そうすると、必ず定着したということを彼らは言うでしょう。では定着とは何なのか。ここいらの議論になりますと全く一方的。先ほどの話じゃありませんけれども、主観的に定着をしたということでもって決めつけてくるわけですから、この点は何としてもそういう主観であってはならないですね。  少なくともこの問題は、先ほども申し上げましたように、戦後教育行政の中における最重要課題であったという、そしてなおこれを継続していくという、そこにどう私たちが最後までこれを維持し続けるか、来年はこれにかかってくると思うのです。ですから、この点について大臣はどう思われますか。人件費七百億捻出とあわせてどこかをあれしなきゃならぬわけでしょう。もう補正を組んでいるわけですから、別途予算を持ってくるわけじゃありませんね。そうするとどこかであれしなきゃならぬ。その腹決めもしていないのですか。そこいらを含めて大臣、どうですか。
  95. 加戸守行

    ○加戸政府委員 この問題は、人件費のベースアップに伴います所要財源をどのように確保するかという事柄でございまして、文部省単独では対応できない事柄でございます。そういう意味におきまして、財政当局と十分相談をさせていただきまして、文教予算の編成に支障のないようにしたいという考え方で対応を進めておるわけでございます。
  96. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 ちょうど十月のかかりだったかと思いますが、給与関係閣僚会議がございましたときにも、この点につきまして、つまりげたが高くなるからその分の財源補正を十分に措置をしてもらわなければということで、関係大臣、まあ私もその中の一人でございますが、これを強く財政当局に要望いたしております。  御心配あるその欠陥分の補てんでございますが、これは教育行政に支障のないように、全力を挙げてこの分の穴埋めをきちっとやるように、大蔵と懸命の努力をして確保いたしたいと思っております。
  97. 中西績介

    ○中西(績)委員 これを何としても維持していかないと、大臣、問題は人件費が七四・六%を占める文部省予算ですね。そして、枠の拡大はほとんどない。この数年間を見ましても、五年間あれしましても、伸び率はわずか二・三、四%ぐらいしか伸びていない。この二、三年は合計しましても一%にも、伸び率というのはほとんどない。だから、枠の中で全部操作しなければならぬというこの方式でいきますと、大臣、どこかをいけにえにしなければならぬという前提になっているわけです。  ですから私は、昨年でしたかことしの初めでしたかの討論の中でも、前々文部大臣、海部文部大臣のときに、文部省予算をどういう位置づけにするかということがここで大変な問題になるのじゃないかと言った。位置づけの仕方によって、例えば防衛費だとか海外開発援助費だとかいうものは別枠だという決めをしてどんどん伸ばしていくわけでしょう。そうすると肝心かなめの教育、口では国家百年の大計だとかなんとか言うし、皆さん全部が大事だ大事だと言うのですね。ところが実際にそうなのかということになってくると、精神訓話では教育はできないのですよ。問題は環境をどう整備するかという、大臣所信の中に述べられておるここが大変重要なんですから、この点で別途予算というぐらいの提案を、しかも人件費が膨大な額を占めておる特別な文部省予算だということを指摘をしていかないことには、到底不可能だと私は思います。ですから、予算配分なり予算を獲得するに当たっての基本姿勢をどこに置くかということが大変重要になってくるだろう、それによってこの帰趨は決定づけられるのじゃないかという気がするのですが、この点どうでしょう。別枠予算にするくらいの気概と要求を持って具体的にやるということをお考えですか、どうですか。
  98. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私が聞いておりますのに、概算要求の当時から文教予算の別枠扱いということを強く要求してきておりますので、私も引き続きこの要求は掲げていきたいと思うております。  確かに教育予算というものをどう位置づけるか、どう考えるか、これはおっしゃるとおりだと思います。まさにここが最大の問題点だ。ですから私たちも、概算要求時代から言っておりますことについて強く主張をしていきます。しかし、これは大蔵との間でどういうふうに裁定がつくかという見通しは全くありません、予測も立ちませんけれども、我々として主張すべきものは強く主張してまいりたい、こう思うております。
  99. 中西績介

    ○中西(績)委員 別枠予算でと要求されたということで、私はぜひそのお気持ちを継続していただいて、本当教育予算の獲得を実現していただきたいと思います。そうすることによって、大臣がずっと言い続けられておる事務職員なり栄養職員の学校における基幹職員としての位置づけが継続できるかどうかということをここでも立証できるわけですから、この点をひとつ十分お考えいただきたいと思います。  ただその際に、大蔵省の方が今打ち出しておるいろいろな方針なり、あるいはまだ国会では、内閣委では論議されておると思うのですけれども、これから後の行革審を継続するかどうかという問題等を含めまして、ここいらからまた強い要求が出てくると、何かすぐ天の声だとか神の声だとか言う人がおるものですから、それを聞かざるを得ぬという格好になってしまうわけですね。そうすると人間よりも神の声の方が大事になってしまうものですから、どうしてもこれらが押しのけられてしまうという弱さを持っています。したがってこの点は、神だとか天だとかいうことでなくて、人間を大事にするということを主張していただくことをぜひお願いしたいと思います。  そこで、教員研修の問題について、時間的に十分余裕がなくなりましたから私は簡単にお聞きしたいと思うのですが、教育職員養成審議会、具体的方策は答申を得て云々ということになっていますけれども、具体的にはいつごろになりますか。
  100. 加戸守行

    ○加戸政府委員 本年五月に教員の養成、研修、免許、そういった多角的な総合的諮問を申し上げているわけでございまして、当方が期待いたしておりますのは、来年中には教育職員養成審議会の答申をちょうだいし、それを踏まえまして行政的な対応を行いたいと考えておるわけでございます。
  101. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、その前に、概算要求を見ると試行的に二年間ということで要求している中身があります。これを見ますと、文部省から出された資料の二ページ目に新任者研修の部がございますけれども、この中に海外派遣研修というのが出ています。ほかにたくさん出ていますけれども、これを見ると八百人を十四日間というようなことで出ていますが、具体的には何か考えていますか。
  102. 加戸守行

    ○加戸政府委員 要求しました考え方といたしましては、八百人の新任教員を十四日間、主として、片道は船でいわゆる洋上研修を実施いたしまして、訪問地におきます教育事情を視察し、片道は飛行機でというような考え方で、二班編成の対応でございます。そして洋上研修におきましては、教育センター等で行います研修に相当するものを、もっと濃密度をもちまして、合宿訓練的な色彩で集中的に研修の成果を上げたいという考え方で要求しているわけでございます。
  103. 中西績介

    ○中西(績)委員 内容はわかりました。そうすると、ちょうど少年の船だとか青年の船だとかいう形式で、洋上に隔離をしてやるということですね。  私は現場の教師であったがゆえに、教育センターでやるような事柄について本当に研修になるだろうかという疑問を持っています。私は、この予算については内容的にどうするかということは、自後相当慎重に研究をしてほしいと思うのです。なぜなら、少なくとも各学校という一つ社会構成があります。その中での人間関係なり何なりが大事にされないで、こういうお上から伝達されることを大事にするようなことだけで研修が足りるというような考え方ですね、私たちそのことを官製の研修だと言っています。こういうことはもう一度教育職員養成審議会あたりで、どういう方々がなっているか知りませんけれども、本格的に改めていかないと、依然として荒廃した学校現場というものを、本当に私たちが期待をするような、先ほども自民党の方が質問をされておったような、本当に心豊かな子供たちを育てるなどということにはつながらないのじゃないか。私は、そうした意味でこの点についてはぜひ再検討をしていただきたいと思います。これはもう言いっ放しで終わります。  そこでもう一つ、教員採用選考試験の改善のための実践研究費として一千九百万円、概算要求の中に計上してありますけれども、これはどういうことですか。
  104. 加戸守行

    ○加戸政府委員 教職員の問題につきましては、養成、研修のみならず、採用に当たりましても適正に優秀な教員を確保する措置ということがかねがね言われているわけでございます。それを踏まえまして現在予算要求をしておりますのは、各都道府県におきます教員採用あるいは選考に当たりましての具体的な方法、その中で改善すべきものあるいは現にいい事例を挙げているもの、そういったものを総合的に研究いたしまして、各都道府県におきます考え方を全国的に一つのパターンを示すわけではございませんで、こういうような方向で教員採用方法の改善が図られるかどうか、その方向を模策するという意味におきまして、あるいはまたでき上がりました一つのいい方法があれば各都道府県で適宜御採用いただくサゼスチョンにもなる、そんな考え方で研究を進めたいということで要求をさせていただいているわけでございます。
  105. 中西績介

    ○中西(績)委員 それは公開をしますか。
  106. 加戸守行

    ○加戸政府委員 今後の教員採用あるいは選考に当たりましてのよりよき方法を探るわけでございますから、その成果は当然に公開をし、各都道府県教育委員会において参考にしていただくことを想定しているわけでございます。
  107. 中西績介

    ○中西(績)委員 これもそれぞれ主観がありますからなんですが、例えば現場の皆さん、今までそういう過程を経た人、そういうものを含めてこういう問題についての論議をするつもりですか。
  108. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現実的には、この問題に取り組んでいただきまして、ある程度の限られた人数になると思いますけれども、そういった連絡協議会等におきまして、いろいろな議論を積み重ねていくわけでございます。その際に当たりまして、過去の実践を踏まえた各般の検討は当然行われるだろうと予想いたしております。
  109. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、今、文部省が従来のとおり考えておられるようなことに合致しなければならないというお考えではないですね。
  110. 加戸守行

    ○加戸政府委員 よりよき教員に適した方々が教壇についていただく、そのためにはどのような選考、採用の方法であればよろしいのかということを初心に立ち返って御研究いただくというような考え方でございます。
  111. 中西績介

    ○中西(績)委員 それはまた、ある程度中間でも報告をしていただきまして、その中身について検討したいと思います。いずれにしましても従来のような選考方法というのは余りよろしくないのではないか、私はそう思います。したがって、この問題については今後またいろいろ意見を出していきたいと思います。  次に、学術研究の振興についてでございますが、大臣が申された点、確かだ、間違いないと私は思いますけれども、ただ問題は、先ほどから論議しております予算の面からいうと、大臣が言っているようなことは到底ほど遠いな、こう考えざるを得ないわけであります。その中で科学研究費を論議する場合に、日本の場合には諸外国に比べると研究費が本当に少額であるということ。また同時に、若手の研究者育成に際して裏づけを全くしてない。全くと言ったら語弊があるかと思いますけれども、これまた大変おくれておる。例えば奨学資金の問題ですね。日本だけでしょう、先進諸国で利子まで取っているというのは。これは無償かあるいは後退したとしてもせいぜい貸与ですよ。ところが、奨学金制度はこのようにだんだん悪くなっていく、あるいは大学院の問題を考えてみましてもいろいろ問題がある、それから予算の中に占める高等教育費の割合からいたしましてもこれまた低い、となりますとすべて劣悪であるとしか言いようがありません。  そこで私は、少なくともすぐれた研究者を養成するということになりますと、すそ野の広い、多数の人材養成をしないと不可能だと思いますし、特に日本で欠けておる基礎研究の充実なしにはだめだと私は思うのですね。これは予算面などからするとアメリカの三十分の一だと言われているでしょう。日本の場合には結果のみを重視するのですよ。ところが、基礎研究というのは直接目には見えぬわけですから、それなしにはいい結果は出ないということを忘れておる、こういう状況が一つありますね。  それともう一つ大事なことは、教育、学問、研究の自由がどう保障されておるかということ。伸び伸びとした中でやらなくちゃならぬ。  それと、もう言う必要がない財政問題があるということ。ところが、今の行革の方針というのは逆行しておるのじゃないでしょうか。この中から十分な人が生まれるとは思いません。したがって、大臣所信に述べられておるようなことを考えられるなら、まず第一に、国立学校の特別会計が、一般財源から補てんする分がだんだん少なくなっていく。その率は、私がここで申し上げるまでもなく、この六十二年度概算要求では六三・二%になっている。最高のときには八三%を超えておったのですけれども。こうなってまいりますと、詳細にその中身をずっと見ますと、本当に研究なり何なりをするような機構に対し財政的措置がされておるだろうかということを強く指摘をせざるを得ません。大臣、どうお思いですか。
  112. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 先ほどあなたがおっしゃいましたように、この問題は教育、研究という学校関係する予算というものをどう位置づけるかという、ここに終着点が来ておると私は思うております。  私も、非常にこの大学研究費が伸び悩んでおるということを実は憂えておりまして、そのためには、例えば大学自身の自助努力の中ででき得るものを確保する方法等も考えなければならないと思うて、いろいろと協議はいたしております。まだどういうことをと具体的には決まっておりませんが、財政当局との接触を図ったりいたしておるのでございまして、何はともあれ、私はこの研究費の増額を早急に図らなければだめだと思うております。つきましては、臨時教育審議会等におきましてもいろいろと御議論していただいておる、要するに社会人という立場に立ってみましても、この教育研究費の充実ということはどなたも異論のないことだと思うのでございまして、私はそのことを背に受けて、今度は一生懸命に研究費の確保に努力をいたす覚悟でございます。
  113. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、やっぱり一番問題は、行革といえば何だか国策だというような考え方であれしますけれども、結局五%定員減という枠を毎年どんどん当てはめていったら、これはもう研究などということはできなくなってしまうんですね。そこに人的素材を確保できなくて、何ができるかということになるわけです。だから、行革の本質というものを、もう一度大臣は閣議の中なり何なりで指摘をしながらこれを追及していただかないと、とてつもないものになってしまうのではないかと思いますので、この点はぜひ今言われた御決意とあわせて考えていただきたいと思います。
  114. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 行革をやったから教育予算を削るという発想では、行革はなかったと思うております。ですから私は、基本的に行政改革は時々刻々進めていくべきだ、この点につきましては中西さんとちょっと意見が違うかもわかりませんが、行政改革は進めていくべきだ。しかし、これからの将来を見通した場合、また現在抱えておる日本の重要課題を見る場合に、私は雇用対策と教育だと思うのです。そういうふうな政策の見通しを立てるならば、教育に対する特別の財政的な配慮といいましょうか、位置づけというものを当然すべきではないかということを私は強く主張しておるのでございまして、行政改革とこれとはそういう意味において明確に区分をして、行政改革はやるべし、ただし教育予算はどんどんと、別途に考えてでもつけてもらわなければ困る、私はこういうことを言っておるのです。
  115. 中西績介

    ○中西(績)委員 だからね、行革の中身ですよ。第一、行革からいろいろ出てきているものを見ていただくとわかるように、高等教育におけるいろいろなところでのあれを指摘しておるでしょう。そうすると何が出てくるかというと、画一的に人員を削減せい、こうなっていってしまうでしょう。だから、行革というものの内容が何であるかということで論議しないと、行革は全面的によろしい、こういうわけにはまいらぬですよ。大臣の答弁であったけれども、私はぜひその点を認識していただかぬと、最後には弱腰になるのじゃないかな、こう考えますので、この点は御留意いただきたいと思います。  そこで、もう一つはSDI参加の問題でありますけれども、聞くところでは、アメリカと参加二十一企業との間で契約されるらしい。これは例の渡辺審議官がそういうことを言っていますね。国立の研究機関が参加することについて検討されたかどうか、これはどうなっていますか。
  116. 植木浩

    ○植木政府委員 私どもの知る範囲では、SDI研究計画への参加につきまして、企業等の参加ということを円滑なものにするために現在米国政府と所要の措置について協議中である、このように聞いております。ただ、文部省関係は、大学あるいは文部省関係の研究所等につきましては、文部省政府部内の検討にも全く加わっておりませんし、それから、今申し上げましたような米国との協議にも全く関与をいたしてないわけでございます。具体的な要請等も全くない、こういう段階でございます。
  117. 中西績介

    ○中西(績)委員 この問題については、国の場合には設置法だとかいろいろな問題があるようでありまして、もし武器と認定をされるようになれば、設置法との関係だとかなんとかが問題になって、参加するかどうかという問題等を含めて、いろいろ政府としてどう対応するかということにならざるを得ないというようなことが言われています。したがって、今まだ要請もあっておらないということですから結構でありますけれども、もしあったといたしましても、これは検討課題ですから簡単に、これは閣議で決定しておるからというようなことにならぬように、この点を十分御留意いただきたいと思います。  時間がございませんが、最後に私学の問題であります。私学で私が特に指摘をしたいと思いますのは、多いときには約三〇%近くの財政的な助成措置が経常経費の中で占めておったのでありますけれども、六十年度では一九・二%となっています。ですから、恐らく六十一年度はさらに減額になる傾向は強まってくるでしょう。今のは大学ですけれども、あるいは高等学校以下の場合も、五十九年度では二八・一%とこれまた大きく低下をいたしております。これは各都道府県がある程度カバーしていますからこの程度でおさまっておるわけでありますけれども、依然として校納金がそのために値上げされなくてはならぬ。一時期、五十九年度あたりとまったのですけれども、六十年度、六十一年度と上昇ぎみになってきています。  そこで、大学の募集要項も決まったのですが、六十二年度の校納金引き上げ率などが大体どれくらいになっておるか、この点おわかりですか。
  118. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 六十二年度の授業料及び入学金の引き上げの割合がどのくらいだというのは、現在調査中でございます。
  119. 中西績介

    ○中西(績)委員 恐らくこの内容は決定的なものになってくるだろうと私は思いますので、大臣に要望だけいたしておきますけれども、こうした事態は、私学が今まで果たしてきた役割と、そして今度は大学の大変な増員になるわけですね、学生増、この時期に果たす役割は大変なものになってくるわけです。それなのにこういう傾向が起こり、しかも今度は入学される皆さんの場合にはまたたくさんの入学生によってマスプロ的なものがさらに拡大していく、こういう状況が出てくるわけです。それなのに校納金がまた増額をされる。これはあぶってたたかれるような問題ですから、この点もひとつ、先ほどからの問題とあわせお考えいただきたいと思います。この点についての御意見をいただきたいと思います。
  120. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは私も所信表明の中に言つておりますように最大限努力して、所要の獲得に努めたいと思っております。
  121. 中西績介

    ○中西(績)委員 終わります。
  122. 愛知和男

    愛知委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ────◇─────     午後一時四十三分開議
  123. 愛知和男

    愛知委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田克也君。
  124. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。塩川新文部大臣に敬意を表しつつ、初めて文教の諸施策についてお伺いをするわけでございます。  いろいろお伺いしたいことがあるのですが、冒頭、三原山の問題、大臣としてどんな点に気を配られて、特に千八百人に及ぶ子供たち、二百人の教職員が着のみ着のまま東京に避難をしておるわけでございます。義務教育は地方自治体が具体的には設置者として活動しておりますが、当然国としても何らかの対応があろうと思いますが、大臣のこの事件に対する認識、子供たちに対する配慮についてお伺いできればと思います。
  125. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は非常に重大な関心を持って、そして何とかお手伝いできるものがあればと思うておりますが、実はちょうど土曜日でございまして、二十二日の日に国民文化祭の開会式がございまして、その際に東京都知事の鈴木さんとちょうど一緒に話をする機会がございまして、そのときに知事も学校生徒のことを非常に心配しておりました。私はそれで、知事さんが非常に関心を持っていただいておるということを聞いて安心もしたのですけれども、そのとき知事さんはこういうことをおっしゃいました。  今、伊豆の方だとか東京だとか分散して収容、避難しております、それをひとつ東京都民であるから東京都へ全部集まってもらおうと思っておるのです、私は全力を挙げて努力をしたい、そしてそのついでに、これはなぜかといえば、やはり民生の安定ということもあって同じような対応をしたいということもありますけれども学校の問題が起こりますと一つ所に来ておいていただかぬと、こういうふうに言っておられたので、それはありがとうございましたと私はお礼申し上げたのですが、つきましては、その土曜日、実は教育委員会とそれから私の方の関係者との間で話し合いをしておりまして、いずれの状況になろうが対応する措置をとろうということでやっております。
  126. 池田克也

    ○池田(克)委員 先ほどの同僚議員の質問に対してもいろいろとお答えがありましたので、重複を避けるようにしたいと思います。  臨時に子供たち学校に通えるようになった、あるいは教科書、学用品の支給も具体的に行われたというふうに伺っておりますが、大学の受験期が迫っておりまして、一部の報道では、推薦入学の合格証が手に入ったと、大変明るい話題だといって報道されておりましたが、大学の受験期を迎えた子供たちにとっては大変なショックであろうと思いますし、仮に学校へ行けても、自宅での学習はほとんどできないような状況であろうと思うわけでございまして、これは東京都ともいろいろ協議をする必要があろうと思いますが、事は大学という問題にも絡みますと、国も何らかの手を差し伸べるべきではないか、こう考えて、実は昨日も次官のところにいろいろと提案に行ったわけでございます。  例えば、学校には行くものの日曜ということもありますから、こういう状況にある子供たちに、例えば国が持っている科学博物館とかあるいは千葉県の歴史博物館とか、そうしたいろいろな教育機関もあるわけです、あるいは図書館の利用等もあるわけですが、この際、目いっぱい国の持っているさまざまな管理機能というものを動かして、この子供たちにせめて、こういう状況でも何らかの教育効果が上がるように、また気持ちが晴れ晴れとして活動できるように配慮をすべきではないか。単に東京都だけにゆだねるのではなしに、都はさまざまの角度の対応に本当に忙殺されているような状況でして、文部省も特に教育的な観点からこの問題について取り組むべきではないかと、私は幾つかの提案をきのうは次官に申し上げたようなわけでございます。  これについて、現在の時点での対応を聞かせていただければと思います。
  127. 西崎清久

    西崎政府委員 昨日、先生が事務次官のところにいろいろな御要請ということでお見えになったことは承知いたしております。  先生質疑の点のまず受験の問題でございますが、高等学校の問題がございます。中学三年の子供たちにとっては来年の春はもう受験の機会でございます。それから、御指摘のように大学の受験の問題もございます。私どももその辺は大変気にしておりまして、東京都の教育委員会との協議の上でも、これがもし長期化した場合、受験の問題、特に三年生への配慮というものをどういうふうにするかという点についてはしかるべき配慮が必要であることも申し、それから都の委員会も、その点については特に中三の問題、高三の問題は我々も大変懸念しているところである、もう少し全体の事態の推移を見きわめながら、現在は就学問題に全力を尽くしている最中なので、もうちょっと時間が必要だ、こういうふうに申しております。  特に高等学校生徒につきましては、分散して収容ということは無理でございますから、都の委員会も、先ほど申し上げましたけれども、二つの場所に二校の高校生については集中的に収容するというふうな措置も講じておりますので、そのあたりにつきましては、高校生の配慮が適切に行われるかと思っております。  それから、小中は数も多うございますので分散ということはやむを得ないと思うわけでございますが、先生指摘の受験問題については、今後も我々としては十分都と相談をしてまいりたいと思います。  それから、国としての対策の問題でございますが、やはり義務教育、高等学校は都道府県が第一義的な責任ではございますけれども、できるだけ国として配慮可能な措置が何かないかについては、もう少し時間をかしていただきまして検討してまいりたいというふうに思っております。
  128. 池田克也

    ○池田(克)委員 もう少し時間をかせという御意見ですから、これは仕方がありませんが、事は急を要することでございますので早急に対策をお立ていただきたい。私どもいろいろと現場を見ておりまして、本当に気の毒でならない状態を感じております。  この問題はこれだけにさしていただきまして、いよいよ本論に入るわけでございますが、塩川大臣は非常に重要な教育改革の時期に大臣に就任をされたわけでございまして、教育改革は御承知のとおり非常にたくさんのテーマが上がっているわけでございます。大学の問題あるいは高校のあり方の問題、さらには小中学校におきます区割りの問題であるとか、先生方養成や研修の問題、あるいは社会教育全般の問題等非常に臨教審のテーマは多いわけでございますが、やはりどれか目玉と申しましょうか、塩川大臣の在任中にこの改革だけはどうしてもやるんだ、こういう目標をお持ちではないかなと私は推察をするわけであります。やはり教育問題大変難しいわけでして、特に政治的に中立の問題であるとかさまざまな問題を考えますと、臨教審の審議に私どももなるべく口を出すことを差し控え、答申をいただいてからこの委員会でも質疑をしておりますが、大変もどかしい思いをしております。もう既に、六年制の中等学校とかあるいは単位制の高校とか、大学における新しいテストとか、いろいろな問題が具体的に答申として出されていながら、その成り行きがいまだもって明確ではない。そうなりますと、何のために臨教審はあったのだろう。総理があれほど急がせて、逐次答申として、最終答申を待たずにできるものは具体的に実施して教育の改革に効果あらしめよう、そういう意図は私は大変結構だと思っていたのですが、今見ておりますと、どうもこの効果について、私どもの目から見ても国民の目から見てもいま一つだというふうな感じを持つわけでございます。  大臣は、この臨教審における改革についてどういう認識をお持ちか、どこからまず手をつけて、在任中に何をなし遂げようとされているのか、これをお伺いしたいと思います。
  129. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は全く素人でございまして、かえって素人のおか目八目が物を言うのも妙なことでございますけれども、しかしこういう役職でございますので、やはり自分なりに、これは天から授かった使命だと思って取り組んでおるわけでございます。  私は、臨教審の答申をずっと読みまして、確かにおっしゃるように、余りにも間口が広過ぎるなという感じがするのでございます。しかしこれは、社会人方々が現代の教育制度、学校教育というものを見た場合に、相当いいところに目をつけておられるという感じが私はいたしました。できるだけそれを尊重して改革実施に移していきたいと思っております。しかし、財政事情も一方においてございますし、これを無視してすることもできません。  そこで私は、お尋ねに率直にお答えしようとするならば、まず第一に、かねてから思っております学校先生ですね、先生がきちっとした意識を持ってより立派な先生になっていただきたい、こう思っておりますので、先生の研修、特に初任者研修というのはこれは私は何としても充実さしていきたい、これが一点でございます。それと大学の研究費というものが非常に少ない、それがために大学は、私は率直に申しまして停滞気分になっておる、という感じは私一人じゃないと思うのでございまして、そういう感じを持っております。ここに研究費をつぎ込んでやらなければ活気が出てこないし、また日本の国にとりましても、将来、大学の研究というものは非常に大事な政治問題だと私は思っておりますので、この二つは何としてもやっていきたいと思っております。同時に、私立学校でございますが、今私学が児童と申しましょうか学生の緩衝地帯になってもらっております。そして大学及び幼稚園等におきまして、高等学校もそうでございますが、私立学校の果たす役割が非常に重要になってまいりまして、人口の調整というようなものも私立学校におんぶされるところが非常に多いわけでございます。これであるならば、私立学校をもっと真剣にというか、今まで国も一生懸命にやってまいりましたけれども、どうも補助金の率がもう頭打ちで、むしろずり下がってきておりますので、これを何とか回復して私立学校にも十分な活動をしていただくようにいたしたい、そういうことを今考えておりまして、そういうことを私の重点としてやっていきたいと思っております。
  130. 池田克也

    ○池田(克)委員 今大臣から初任者研修のお話が出ました。これはいろいろ議論のあるところでございますが、お話の流れでございますので一言。  私どもが伺いましたところでは、初任者研修制度について来年度予算に概算要求をしていらっしゃる。そして幾つか部分的ではありますが、具体的な研修に取りかかろうというプランがあるようでございまして、これは局長から伺うことになると思いますが、どのくらいの人数で、どういう内容で、どういう積算基準で予算をはじいて概算要求をしていらっしゃるのか、この部分について明らかにしていただきたいと思います。
  131. 加戸守行

    ○加戸政府委員 六十二年度の概算要求におきましては、初任者研修の試行ということで三十県市、都道府県指定都市でございますが、三十の県市におきまして、対象教員は新採用教員のうち二千百九十名、約三万四、五千名の採用がございますが、そのうちの二千百九十名を対象にした研修を実施したいということで、一年間を通じまして当該教員が授業を担当しながら先輩教員によるマン・ツー・マン、個別指導を受ける。その考え方といたしまして、週二回程度を想定いたしております。と同時に、週一回程度教育センター等におきます集中研修を行うという基本的な考え方に立ちまして、これら先輩教員あるいは指導教官のいわゆる補充措置というものを定数上要求いたしておりまして、小中学校関係につきましては五百五十八名の定数増の要求を行っております。今申し上げました定数は二人ないし三人配置校についての措置でございます。それから、一人配置校につきまして非常勤講師の代替措置並びに教科指導員という教科別の指導員の代替補充措置、それから、いわゆる宿泊研修と言われます四泊五日程度の宿泊研修に要する経費とか、あるいは十四日問の海外研修、これは一部でございます。八百人を想定いたしておりますが、それについての必要な経費を予算要求をさせていただいておりまして、要求額は純増三十七億円でございます。  なお、このほか高等学校の部分がございまして、この二千百九十人と申しますのは小中高、特殊、すべて含んでおりますが、高等学校分につきましては都道府県においてそれぞれ財政措置を講じていただくということで、予算要求は、義務教育関係の教員の補充措置あるいは非常勤講師の補充措置あるいはその他宿泊研修等に要する経費といったものをひっくるめて三十七億円の要求をしておる段階でございます。
  132. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。約十分の一、十分の一ではないですね、十数分の一ですね。三万人に対して二千百九十人。それで三十七億円。いよいよ本番になりますと、三万人の初任者に今のような形といたしますと、一体毎年毎年どのくらいの予算がかかるということになるのでしょうか。
  133. 加戸守行

    ○加戸政府委員 これは、ただいま要求しております中で、経費的には、宿泊研修に要する経費あるいは海外派遣研修に要する経費が相当額ございまして、教員の代替措置部分のみに関して申し上げれば二十億程度でございます。  そういう意味で、この試行のとおりに教員配置というような穴埋め措置をするかどうかという問題はあるわけでございまして、試行の結果、さらには教育職員養成審議会の答申を受けまして具体的な措置にかかるとすると、その辺の見通しははっきりしないわけでございますが、仮定の話といたしまして試行どおりの措置をいたすとすれば、国費として年間要する経費は約三百億程度と見込んでおります。
  134. 池田克也

    ○池田(克)委員 大臣、先ほどから文教予算の別枠というお話が出ているわけですが、要するに私どもも、去年、ことしと予算委員会で総理あるいは竹下大蔵大臣にも申し上げたのですが、教育改革を志す以上は当然予算がかかる、これに対する財源はどうするんだということを再三伺ってまいりました。はっきりしないし、当時の議事録もここにありますけれども国民の世論が盛り上がれば当然予算はつくんだ、そう総理が答弁をされ、大蔵大臣も同様だという答弁をしておられたわけであります。国民の世論が盛り上がった、世の中がそういう方向に合意ができた、予算がつく。ところが、大蔵省にいろいろ聞いてみますと、とてもそんなものではない、文部省内でつじつまを合わせてどこか削って必要な新しい経費を捻出してもらいたい、こういう状況のようです。別枠を取ってきて、この三百億ですか、今大臣は初任者研修はどうしてもやるのだ、こうおっしゃっていらっしゃって、大丈夫だと思いますか。私はこれについての内容議論はいろいろあります。ありますが、それはさておきまして、予算を取ってくるという観点から見るならば、大蔵省が言っているようなどこかをスクラップしてビルドしていくというような考え方では、毎年毎年どこかが削られて地方の負担になっていく。これでは非常にぎくしゃくが絶えない。やはりこれについて別枠なら別枠というものをはっきり、あらゆる角度から見て必要だということであれば、これを確保して前進していかなければ、今の大臣のどうしてもこれだけはやりたいとおっしゃった目的も達せられないのじゃないか。この三百億、どうでしょうか大臣、政治的にこの問題について何か裏づけというものをお考えでしょうか。
  135. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 どの部分を裏づけに充てるかということは私はまだそこまで考えておりませんが、しかし、こういう制度の発足というものは、余り遅疑逡巡しておったのではその趣旨おくあたわずになってしまうと思うのでございまして、先ほど三百億円と言っておりますのは、それが本格試行になる準備として必要なものだ、こう思うております。来年度からとりあえず、試行錯誤ではあったとしましても、この制度について発足はしたいと思うております。  ちょうど私も思い出すのでございますけれども、人材確保法案というのが、昭和四十六年だったか七年だったか忘れましたが、あのときも同じような問題が出まして、人件費が高騰でどうにも文部予算が組めないといううわさがございました。しかし、あのとき自由民主党が強引に押し込んでいきまして、それでそれが逐年定着してまいった、それが今日非常に大きい教育的効果があったと私は思うております。そういうようなことで、非常に苦しいときでございますが、この衆議院の先生方も一致結束してこれを押していただいたら私はできると思うておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  136. 池田克也

    ○池田(克)委員 大臣の御決意はわかります。内容もいろいろまた問題があろうと思いますが、きょうは大臣所信についての質疑ですから、その御決意を伺ったところで次へ問題を移したいと思います。  次の問題は、いわゆる共通テストあるいは任意テストと総理が命名をされたかと思いますが、大学の入試改善の問題でございます。  新聞によりますと、昭和六十四年実施が難しくて六十五年にするということで中曽根総理にお会いになったと伺っておりますが、実は私もことしの二月十七日でしたか、予算委員会でこの問題を取り上げて総理と議論いたしました。総理、六十四年は無理ですと、私はその場ではっきり申し上げた。しかしながら、それを強引に押されて、そのときは無理だというお答えではありませんでした。海部文部大臣も、それを一つ目標として準備をするんだというお答えでした。今になってできないという答えが返ってきた。全国の校長さんの御意見だそうでありますが、国会での議論というのはどんな効果があったのだろうかな、私はなかったとは思いません。しかし、一番重要な文教に関する議論予算委員会でありこの文教委員会ではないか、ここでの話を突っぱねておいて、後で校長さんが集まって、いや、無理だという話が来た、ではやめましょうか、これはないだろう。少なくともまた文教委員会を開いて、実はこういう答弁をしたけれども、こういう実態だということを政府側もきちっと委員会にも諮ってそして修正するならする。これは私はおかしい手続ではなかろうかと思うのです。一生懸命私どもも研究し、だめですよということを申し上げた。そしてやはり、だめはだめなのです。私は、そういうふうな手順から見まして、何かむなしい感じがする。文教委員会あるいは予算委員会教育改革について一生懸命研究し、それについては決して党派性ではない、具体的にいろいろ手順を考えて無理ではなかろうかと申し上げて、結果はこのとおりのことなのですね。大臣、どうでしょうか。総理とお会いになって六十五年ということで合意されたのでしょうか。総理は何とおっしゃったのでしょうか。
  137. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 この問題は、池田さんはちょっと先走っておられるように感じまして、まだそこまで何も決定しておるものではございません。実は国会の議論等も我々は何も無視しているわけではございませんで、そういう議論もあるということはやはり心にとめておりますし、この制度を改革するについていろいろな諸条件を煮詰めてまいりました。しかし、いつの時点かに目標を置いて改善の準備をしていかなければならぬ、その目標が六十四年だという目標を置いたわけでございまして、そのことがやはり総理の答弁の中に私は出ておると思うのでございます。  ところが、いろいろと準備をし煮詰めてまいりましたら、まず第一点、この共通一次から新テストに切りかえるという中でねらっておるのは何かといいましたら、私立学校も入ってもらいたい、そして、それでランクづけをするのではなくして、高校生の実力をやはりそこで自身が認識してもらうようなことをやりたい、こういうことでの切りかえなのでございます。そうすると、その目的を達成するためには、特に私立学校等より、多くの学校の理解と協力を求めなければならぬ。これが、何と申しましても相手方が大学でございますし、こちらは高等学校、それぞれの考え方がございまして、その意見聴取等、合意を取りつけるのになかなか時間がかかってまいりました。  しかし、幸いにして、国立大学協会等も全面的に協力はしよう、新制度に切りかえよう、こういうことがございまして、ただし実施の時期については慎重にしてほしいと言うのです。高校長会議の方におきましても、大学の利用方法等についていろいろ意見があるけれども、我々もこの制度を支持したい、ついては実施について慎重に考えてもらいたい。なぜその実施の時期に慎重かということを見ましたら、来年から御承知のように国立大学がA、B二つのグループに分かれて二度試験を受けるような制度に切りかえておりますし、そういうこと等いろいろ改革がある、そういうのを見て、時期は慎重にという要請がありました。そのことを率直に私は総理に相談をいたしました。  総理は、結局、この実施の時期ということについての問題は、大学入試改革協議会というのを設置されてそこで議論してもらうことになっておって、そこで一応結論を出してもらおうではないか、それを早くやったらどうだ、そして結論が出ればそれに従って我々は準備を進めたらいいではないか、こうおっしゃったのでございまして、何年にしろとかあるいは時期が早いとか遅いとか、そういうことは総理はおっしゃっておりません。私も全くそのとおりでございます。したがって、この時期が一番問題になってまいっておりますが、この時期について、そういう専門家で構成されております協議会で議論をしていただいてそこで結論を出していただきたい、それは私たち最大限に尊重しよう、こういうことでございます。
  138. 池田克也

    ○池田(克)委員 いや、私が先走ったというより、私はことしの予算委員会でこういうふうに言っているんですよ。要するに「六十四年ということを具体的に念頭に固定したものとして置いてしまうとさまざまな難しい状況に追い込まれていく、本当にいいものができないで、ともかく法律を通して何とか形を取り繕うというようなことがあったのでは、悔いを残すことになるのじゃないか。」こういうふうに私は聞いているわけです。海部文部大臣は、要するに最終的に六十四年という一つ目標を決めて、そしていろいろ準備していく、こう答えているわけです。  今私がお伺いしたいのは、新聞などの報道を見ましても、六十四年という政府目標、これは海部大臣のときからも、全然無目標では準備も進まないではないか、六十四年という一つ目標、しかしながら目標といったって、それはいつでも変えましょうという目標では権威がないわけであります。そこに具体的に六十四年というものをセットして準備してきたのが今日までの姿だと思う。しかし、それがどうしても無理だとなって、じゃ一年延ばして六十五年という話が具体的に出てきて、けさの新聞なんかを見ますと、臨教審の部会でも、六十五年が適当だというふうなことだったという報道もあるわけで、世間では六十五年実施というふうに一年ずれたと受けとめているのですが、今の大臣お話を聞くと、六十五年も定かではない、いろいろ協議して決めるんだと言う。どっちが本当なんですか。目標というものは一切合財なくなってしまったのですか、慎重にやってその結果何か出てくるだろうという構えなんでしょうか、お伺いします。
  139. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 先ほどあなたがおっしゃったように、海部文部大臣は、一応六十四年を目標努力いたします、こう言っておりました。それは努力してまいりました。けれども、それぞれの、それを実施する側、受け入れる側、あるいはそれを利用する側、こういうところの意見が、集約するのに拙速に走ってはいかぬということもございまして、結論めいたことがなかなか出てこない、それはやはり慎重にしておられると思うのでございます。そういう経過がございまして、いたずらに六十四年にこだわることになって、それがために、制度は変えたけれども結果としてまずいことになってはいかぬという気持ちも我々ございます。しかし、六十四年実施をしようとすれば、まあこれからの準備としてできないこともないと思います。そういう無理をして目標に無理やり合わす必要も実はないではないか。そこらの判断は、私らの要するに行政側の判断だけではなくて、そういう入試制度の専門家方々がお集まりになっておるその協議会で実際に、冷静に、客観的に決めてもらうのが一番無難だし、一番スムーズにいく方法だ、私は実はそう思いまして、協議会の結論を尊重する、こういうふうに言っておるわけでございます。
  140. 池田克也

    ○池田(克)委員 ですから、協議会の結論を尊重するのは結構なんで、もう一度重ねて伺いますけれども、六十五年というめど、今までの六十四年というめどはわかりましたが、これが六十五年に一年めどがずれた、こう理解していいのですか。
  141. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 大体それは想像しておられると思うのですが、私も協議会の方はどういうぐあいに結論されるかわかりませんけれども、恐らく今まで準備をしておることはこれは協議会の方、委員方々も御存じでございますし、また協議会の方が各大学の当事者あるいは高校の関係者にいろいろ聞かれて、そういう無難なところに落ちつけていただける、実際現実的に実施しやすい時期に落ちつけていただける、私はこう思うております。
  142. 池田克也

    ○池田(克)委員 どうも、そこがいつもそうなんです。この大学入試改革協議会の方々は私も知っています。その人たちに会いますと、一体政府はどういう方針なんだ、中曽根総理は何をお考えなんだ、そう聞かれるのです。国会で聞いてくれと言われます、はっきり言って。  要するに、当初、総理は、六十三年実施とおっしゃったこともあったようです。文部省が一生懸命押して、六十四年になったと聞いております。確かに改革ですから早ければ早いほどいいという面もあります。しかし失敗は許されない。そういうことから私もるる、大臣もまた議事録をお読みだと思いますけれども、その議論は大変だったのです。総理は、共通テストも要らない、受けても受けなくてもいい、自由にしなさい、マークシートもけしからぬとおっしゃっている。びっくりいたしました。いろいろ調整というか一つの文言があって、二月二十四日でしたか、委員会で私に対して、こういうことだという答弁があったのですけれども、私はこれを見ていまして、総理がいろいろ指示されていることがわかりました。それがある意味では改革協議会の先生方を縛っておった。私は縛ることは余りいいことではないと思っておりました。しかし行政がかんでいることです。国の予算もあり、大学大学の自治ですが、高校の入試の準備あるいはそれに伴うカリキュラムの問題、さまざまなことが連動しておりますから、やはり文部行政が一つの時間的なめどとかある意味での手順とかいうものはある程度目安はつけてもよかろうと思って、私は見てまいりました。  したがって私は、決して大臣を責めているわけではございません。大臣の難しい判断であろうこともわかります。しかし、六十四年がだめということが報ぜられて、じゃ六十五年なのか六十六年なのか六十七年なのか、どこにめどを置くのか、その置き方によって、協議される方々も、実験をしたり試行テストをしたりいろいろな準備のやり方が違ってくるだろうと思うのです。私は、六十五年になるべきだとかこうすべきだとかいう固定的なものを自分で持っておりません。大臣にも何年ということを私は注文つけてない。どこかに線を引くべきじゃないか、それについて専門家に協議をゆだねて、その結論は多分そこへ落ちつくのだろうなということですが、文部省というより中曽根内閣としては、教育改革についてはもうちょっと主体性を持って、テストの改善をしていく時期はこの辺でやれ、そしてそれに向かっていろいろ準備しろということは、十分みんなの合意を得られるような時間的な余裕をとって物を言っていくべきじゃないのか。六十四年がだめになったから次は六十五年か、今の御答弁を聞いているとどうもはっきりしないのです。もう一遍このところを、六十五年を目標にするけれども、それにもちょっと自信がないのかな、伺っていてこう私は思うのですが、なるべくならば、大勢の関係者が聞いていることですから、今の時点で答えられる範囲で明確にお示しいただきたいと思うのです。
  143. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 なかなかうまいこと質問されるのでこちらも非常に答えにくい話ですけれども、先ほども申しましたように、私たちは準備を六十四年にいたしました。しかし、関係者の現状を見る場合に、これを無理押ししてはいかぬ、実はそういう判断が立ったわけでございます。そこで、この協議会に一度結論を聞こうということになりました。そして、結論が出ましたらそれを尊重する、こう言っておるのです。  しかし、おっしゃるように、現在の状況をずっと見てまいりますと、六十四年が無理だったら六十五年が現実的かなというような判断はおのずから、大学の入試を考える先生方でございますから、大体そんなことをお考えになっておるのだろう。ということは、それが決まりましたら、今度は不退転の気持ちで文部省は取り組んでまいります。
  144. 池田克也

    ○池田(克)委員 余りこの問題だけやっても時間の配分がありますから、きょうはこれぐらいで別の問題に移らせていただきますが、ともかく非常に大きな問題だと思います。そして、総理のああしたマークシートについてのお考え、あるいは私大参加あるいは共通テストを受けなくてもいいというふうな改革のお考え等出てきたことでもあり、この臨時会はこの委員会そう開く機会はないかと思いますけれども、途中経過をなるべく御報告いただいて、国民の合意の中で、子供たちの父兄も子供たちも関心を持っていることですから、どういう状況の中で進んでいくのか明らかにした上で前進をさしていっていただきたいと要望して、次の問題に移りたいと思います。  次の問題に移る前にちょっと一問だけお伺いしたいと思うのですが、実は自民党から要望が出ている、新テストに不満があるという自民党からの要望があるというふうに新聞が報じておりますが、これは文部省は聞いていらっしゃいますか。「入試方法の多様化」「大学入試の資格試験化」「受験で形がい化している高校三年三学期の″正常化″と入試時期の在り方」等についていろいろこれから研究をする、そして六十五年に延長する、こういう方針を自民党筋に了承を求めたけれども、いろいろと新しい多様化について注文がついた。見出しが「自民、新テストに不満」こういうふうなのが出ているのですが、文部省、聞いておられますか。
  145. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 入試の問題につきましては、自由民主党の内部のことを私がお答えするのは適当かどうかという問題がございますけれども、自由民主党与党の中でもかねてからいろいろな御議論がございまして、論議が重ねられてきているという経緯がございますので、そういった中での御意見が何らかの形で出たのではないか、こう思いますが、詳しいことは承知いたしておりません。
  146. 池田克也

    ○池田(克)委員 問題を移します。高校卒業生の就職の問題についてお伺いをしたいと思います。  私がいろいろと資料を集めましたところ、一口に申しまして、円高の不況を反映して高校生の就職が大変厳しくなってきた。とりわけ製造業において大変求人状況が悪くなってきている。ピークは昭和四十九年ぐらいでございましたけれども、その当時求人倍率が三・九もあったものが、このところ一・六とか一・七とかいうふうに減ってきている、こういう状況が報ぜられているわけでございます。  細かい数字にこだわるわけではございませんけれども、東京のある農業高校の例ですけれども、女子で就職希望者が百六人、十一月現在の内定者が十三人。大企業は減少し、特に女子が厳しい、製造業、販売業ともに苦しい、こういうふうなことが報ぜられております。  また、同じく都立の商業高校では、女子の就職希望者が求人千人に対して実際は三百九十人というような状況である。競争が厳しく十倍程度のところもある。大手企業は減少し、未定者の中には当面アルバイトを考えている人もいる。また、六月に七、八十人いた就職希望者が事前に専修学校、各種学校に進路変更した、こういうことも伝えられております。  また、国鉄余剰人員の影響で厳しくなっているということも伝えられておりまして、とりわけ東北方面で就職がなかなかうまくいかない。私のところへ来た話では、仙台で、仙台市だと思いますが、一万二千人の高卒の就職希望者の中で今現在七千人しか内定していない。もう少し時間があるからということでありますが、経済状況は非常に厳しくなってきているわけです。  そこで、そういう方々が就職がなかったらどうするか聞いてみますと、専修学校、各種学校等に行くということも具体的にはあるようでございますが、考えてみますと、就職希望者ですから余りそういう勉強について関心のない青年たちではないか。専修学校、各種学校は技術を教えはしますけれども、最近では一般教養もかなり強化してきておりますし、短大並みということを目指していろいろと整備が進んできているわけでございまして、そういう仕事がなかったから仕方なしに来たというのが専修学校、各種学校にも出てくるならば、やはり学習意欲の面でいろいろとばらつきが出てくるであろう。  私は前々から、教育改革を考えるときに一番大事なのは中学生、高校生についての考え方ではないか。いじめ、非行、暴行、いろいろ議論されたときも中学生でございました。今大臣から学校先生をしっかりというお話がありましたが、それもどっちかというと中学の先生あるいは高校の先生が一番難しい状況に置かれて、その指導力や指導技術が要請されているのじゃないかという気が私はしているわけであります。  そこで、私ども公明党では、早くから中学、高校については子供たちのニーズに合わせた多様な選択ができるような道を与えるべきだ、単位の互換などをして専修学校や各種学校とお互いに相互相乗りすべきだ、あるいは専修学校卒という肩書がどうもまだ社会になじんでいない面もあるので、普通の高校と専修学校単位を互換することにして、高校をもう少し拡大して職業教育などの選択をさして、専修学校で一時学んだものも高校の単位として認めてやる、卒業は高校卒というふうにしてみたらどうか、あるいは専修学校をもっと充実したらどうか、いろいろな試行錯誤の提案をしてきたわけでございます。  そういう点から考えて、今私が非常に心配するのは、就職が厳しい高校生が、学習意欲という面ではなしに、行くところがなしに、仕方がなしにみたいな形で専修学校、各種学校に来るということは、果たして教育上好ましいことなんだろうか。私は、就職を希望する高校生にはきちっと就職をさせていくべきだ。これについての対応が文部省としてもある意味でもっと望まれるところではないのか。これについて、今こういう不況の時期の中で、文部省での高校卒の就職指導、就職のあっせんと申しましょうか紹介と申しましょうか、そういう活動は万全なんだろうか。長い前置きでございましたが、事情を説明した上で、このことをお尋ねしたいと思います。
  147. 西崎清久

    西崎政府委員 先生指摘のとおり、高校生の進学の問題、就職の問題が円滑にいくことが、高等学校教育を充実する上には大変大事な点でございます。  御指摘の就職の問題でございますが、まず企業の方の採用計画の面とそれから実際の就職の内定の面と二つに分けて申し上げてみますと、六十二年三月の各企業の採用計画を私ども数字で関係庁からいただきますと、確かに御指摘のとおり、全体で申しますと、昨年に比べて高等学校関係は採用計画が三・五%減っております。特に事務系は一〇・一%減っておるわけでございます。そういう意味では、御指摘のような高学歴化とか産業構造の変化とかいろいろな面が影響していると思うわけでございますが、技能系も六・二%減っております。そういう面では高等学校の就職指導その他関係者が大変苦慮しておるわけでございますが、その点につきましては、文部省としまして、本年の四月九日付で初等中等局長名、前局長の名前でございますが、それと労働省の職業安定局長の名前、二局長の連名で、主要経済関係団体の代表者に対して、高校新規卒業者の就職のための推薦、選考開始の期日という表題ではございますが、「採用枠の拡大について格段の御配慮をお願い」したいというふうな文部省、労働省の関係局長の通知で関係企業にお願いをして、とにかく採用枠を広げてほしい、こういう作業をいたしております。  それから、第二点の現在の内定状況でございますが、内定状況は、これは私ども調査でございまして、十月三十一日現在で高卒者は六七・六%という内定率になっておりまして、昨年は七〇・六でございます。そういう意味から申しますと約三%減っておりますが、五十六年、五十七年、五十八年は六九%、六六%、六七%でございまして、昨年は七割ちょっと、一昨年も七割に達してはおりますが、六七・六%という数字は現在の内定率で申し上げれば過去のトレンドから著しく落ちているということではないような気がいたします。しかし、採用枠自体が減っておるということから申しますれば、私どもとしても今後、就職指導について、各学校の推薦その他、就職の安定のための努力をより一層促すということについては、関係者に十分これからも周知をし、私どもの指導を徹底したいと考えておる次第でございます。
  148. 池田克也

    ○池田(克)委員 去年と比べて三%減っている、しかしながら、ほかの年とも比べてみますとそう大きな変化ではないという御指摘ですが、特に国鉄の余剰人員の問題あるいは円高という新しい要素等が入っていまして、例えば北海道あたりでは十月末で内定率三〇%、全く異常だ、行政機関における指導の強化が望まれる、こういうふうな状況も伝えられておりまして、労働省お見えになっていると思いますが、この問題について労働省としてのデータはいかがでしょうか。
  149. 矢田貝寛文

    ○矢田貝説明員 御説明申し上げます。  数字的な面につきましては先ほど文部省の方から御説明のあったとおりでございますが、内容の点につきまして若干補足いたしますと、トータルな数におきましては今のお話のように、求人の倍率等もそうでございますが、特に円高等の影響もございまして、地域なりいろいろな面でばらつきがございまして、そういった意味で私どもこの問題につきまして深刻に受けとめておりまして、地元での就職機会の確保ということはもちろんでございますけれども、広域的な求人の確保といったようなことについても最大限の努力をするようにということで、先般の全国課長会議等でも指示したところでございます。  それからもう一点、専修学校等の問題もお話がございましたけれども、先ほどのお話のように、就職がないから専修学校というのじゃなくて、私どもやはり労働の立場から申し上げますと、私どもが持っております職業訓練短期大学校等も同様でございますが、専修学校等で必要な技能なり知識等を身につけられまして、そういった分野を生かしての就職をしていただくことも極めて重要なことだろうと考えておりまして、学校当局とも御連携しながらそういった情報なり指導をしていく。あわせまして、この委員会等でもあるいは御意見を賜ったかと思いますが、専修学校につきましても、今年度からはどういった企業の需要に応じて専修学校教育をやっていくかというようなこと、あるいは生徒を一番よく知った専修学校の方で就職あっせん等もしていただくのがよかろうというようなことで、いわゆる専修学校を職業紹介機関として位置づけてきちんとした職業紹介でもやっていただきたいというような方向でのあれもいたしておりまして、私どもも、技術的その他の援助といいましょうかそういった面での対策を講じていきたい、そういったような総合的な対策を講じていきたい、かように考えております。
  150. 池田克也

    ○池田(克)委員 先行きの見通しをお伺いしたいところですけれども、時間の関係で別の面からこの問題についてお伺いしたいのですが、それは就職を希望する高校生についてどういうふうな手順で就職がなされていくか、この問題なんです。確かに高校生は未成年ですし、社会の諸現象についてよくわからない面もある。そういう点からかいろいろかなり厳しくしておりまして、学校が推薦したところ、しかも大体一人について一社というふうな、いわゆる就職について併願の禁止ということが教育的な観点からなされているように聞いているわけです。また、一度内定したら取り消し変更しないというふうな状態もあるわけでございます。  言うならば、受験の場に輪切りというのがございます。偏差値で君はこの学校なんといって、最近大学の入試の段階でいろいろと問題になっております。私は、ぴったり同じではありませんが、大学への進学指導、高校における就職指導、かなり学校側の主体性を持った、偏差値を用いているわけじゃないと思いますが、会社のイメージ、会社の望んでいる人を先生が媒介となって、君はこの会社へ行きたまえ、それで一社しか受けられない、民間企業への受験は一度に一社のこと、二社受験できない、公務員は何カ所に申し込んでもよい、民間と公務員をかけ持ち受験はできない、これはある県の高校生用の進路指導の手引書なんですけれども、縁故採用による就職でも必ず学校に連絡すること等、いろいろと非常に厳しくしております。ある意味では、かつて青田刈りなんと言われて若い労働力が不足してみんなが取り合ったという時代一つの流れから、子供たちについてわっとみんなが殺到することを禁止しているような状態なんですが、それで子供たちが自由に会社をいろいろ聞いて歩いて自分で選ぶとか会社側からの就職についてのいろいろなPRとかが禁止されているわけです。これも私は大事だと思うのですが、みんなが殺到して取り合うというのも決していいことではない、何かいい方法はないものかなと思うのですが、そして、子供たちが就職してから三年ぐらいの間に四割ぐらいやめてしまっている。どうもぴったりしていない。これはなかなか一言でぴたっとこれを解決するのは難しかろうと思うのですけれども、しかし、十年から十数年前にいろいろと就職のルールをつくったままになってきていて、余り高校生の就職について改善とか改革とか新しい観点からこれを見直していこうとかということがなされていない。特にどうしても地元にこだわる、県内就職にこだわるというような面がありまして、こういう時期なだけに、本当に働きたいという子、本当に勉強したいという子がきちっとそれぞれの分野で伸びていくことが教育の面でいいのではないか。どうもそれがお互いに仕方なしみたいな格好で、親が言うから、ほかに行くところがないからという格好で、それぞれの上級学校に上がっていくことは余りいいことではない。  そういう点から、文部省としてもこの問題に取り組まれて、何らかの改善を一歩でも二歩でもなさることが国全体のあらゆる面について大事なんじゃないかなということを思って、きょうはお伺いしているようなわけなんです。この点についていかがでしょうか。
  151. 西崎清久

    西崎政府委員 大変大事な点を御指摘いただいておるわけでございますが、先生も御案内のとおり、昭和三十九年ごろに高校長協会の、これは内部の申し合わせで別に文書で決議したわけではないようですが、やはり就職に当たっては余りばらばらでも困るというふうなことからある程度、就職希望先への推薦というのは一社に限ってはどうか、合格した場合には他へ推薦しないというふうな、校長さんの協会の方でそういう話が行われた。そして各県におきましては、今先生指摘のような、推薦なり合格決定後の扱いについてはそれぞれ実情が異なるとは思いますが、私どももいろいろ調べてみますと二つ理由があるようでございます。  一つは、企業との信頼関係というのがある。推薦した子供はやはりその企業に入ってもらうということ、そして企業は、推薦を受けた生徒学校も保証してくれるし、その子供はちゃんと自分のところに来てくれる、そういう県内における企業学校との信頼関係、そういう形から、その企業が一人採るならば一人推薦とかいうようなルールをつくっている、これが第一点。  それから、もう少し調べてみますともう一つあって、やはり全体に就職が非常に厳しい状況にあるものですから、一人の子供が何カ所にも合格して、他の同級生の就職先を狭めるということになっても若干困る点が出てくる。そういう点から、合格したらそこは必ずその子が行ってきて、あとは受けないという扱いをしておるというのがどうやら平均的な実情のようでございます。  したがいまして、私どもも、各県高等学校の進路指導担当の先生方が、非常に一生懸命就職をやっていらっしゃる一つのプロセスとしてそういう考え方をとって、全体の生徒が就職できるようにと努力しておられる、これはやむを得ない点もあると思います。しかしその点について、生徒の個性が殺されて心ならずも就職をし、そして、小さい企業に入った子供たちはどうやら一年の間に三割か四割やめるというのは、先生指摘のとおりであると思います。そういう意味では、そうした不適性な就職の進路では困るわけでありますので、円滑な就職の事務を進めると同時に、生徒能力、適性に応じて就職の進路をマッチさせなければいけないわけでございます。そこを弾力的によく考えて就職前の進路指導をしていただかなければいかぬ。これは私どもいろいろ進路指導担当の指導主事の会議等持っておりますので、御趣旨を踏まえていろいろな機会に指導してまいりたいと考えております。
  152. 池田克也

    ○池田(克)委員 大臣、いかがですか。私が先ほどちょっと申し上げたのですが、中学、高校、ここが一番重要だ。この子供たち能力と学習というものを、きちっと進路を決めていって、働きたい者は働かせていく、勉強したい者は勉強させていく。その勉強も、科目の選択、将来の職業選択が、できる子はうんといろいろ手が打たれるのですが、どうも余り目立たない子や勉強の嫌いな子について多面的な能力を開発するように今の学校ができていないのじゃないか、ここにいじめや非行や暴行の原因があるのではないかと私たちのグループは考えまして、いろいろと問題提起をしてきました。単位制高校とかあるいは選択の機会の拡大で単位の互換とかということが、いろいろ臨教審にも上がっております。大臣教育については余りお詳しくないとおっしゃっていましたけれども、それは素人の方でも当然わかる議論でございまして、そういうところに着目をしてそこに大きな光を当てながら進んでいく、こういう教育改革考え方について何か御意見をお聞かせいただきたいと思うのです。
  153. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 おっしゃっておることは私も非常に賛成でございます。小学校のときにはそんなに非行がふえてないのでございますが、中学生になりますと、非行率、非行少年の率が一遍に上がる。高校になりますとまた非行少年の率が下がります。そして、中学から就職しましたらそれなりに非行はとまっていく。要するに中学生の時代が一番いらいらして非行に走る機会が多い。そこはやはり、皆普通の高校、普通校にどんどん行く、それに対して自分は落ちこぼれだということが非行に走らせておる大きい原因、それが中学生に多いのではないか、私はそのような感じを持っておるのです。したがって中学生のときから、卒業すれば義務教育は終わったのだから就職をするということを幅広く考えてやるべきだと思うし、また高校生になりましたら、そういう職業的な教育を施すべきだ。一般に高等学校を見ましたら、本当にほとんどが普通高校で、職業教育をやっておるのは本当に少ない。これはもっと多様化してもいいのではないかということは私はかねてから思うております。
  154. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。  関連して、今度は専修学校の卒業生の資格という問題についてお伺いしたいと思うのです。  臨教審の答申で最初に具体的になったのは、高等専修学校卒業生に大学入学資格を与えるということでございました。この結果、いろいろと効果も生んできているわけでございます。例えば、防衛庁関係の自衛官の採用等につきましては専修学校卒業生も資格が与えられた。あるいは労働省関係でも職業訓練短期大学校だとか職業訓練大学校等は資格が得られた。ところが、人事院が所管している海上保安大学校とか気象大学校とか海上保安学校、航空保安大学校等はいまだに専修学校卒業生というのを受験資格に入れてないわけでして、いろいろ御検討いただいていると思うのですけれども、希望が多く、自分たちは中卒ではないのだ、高卒なんだという構えで子供たちも期待を持っているわけですので、その道を開いていただきたいと思っておりますが、人事院はおいでになっていますでしょうか。
  155. 竹澤正格

    竹澤説明員 お答えいたします。  御指摘のように、専修学校の高等課程修了者につきましては、現在私どもが実施をいたしております航空保安大学校、海上保安大学校、海上保安学校、気象大学校受験資格というものは現時点では付与してないわけでございます。しかしながら、この点につきましては、専修学校関係者からの御要望も既にございますし、それからあわせて文部省当局からも御要望をちょうだいいたしております。したがいまして、私どもはこの御要望の趣旨を踏まえまして、かつ、これはある意味で特別の専門官を育成する試験、つまり学生試験でございますので、現実に採用いたします省庁の意向も十分聴取をいたしまして検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  156. 池田克也

    ○池田(克)委員 採用する側の意見を聞いて検討するということでございますので、ぜひ実現する方向でお願いをしたいと思います。  同じく人事院にお伺いしたいのですが、国家公務員採用試験に関して専修学校生の心を傷つけている。III種試験の受験申し込みに際して必要事項を記入させる欄がある。「学歴は最終のものを記入してください。(専修学校、各種学校等は記入しないでその前の学歴を記入して下さい)」と指示している。こうなってくると中卒と書くことになる。これは今の時代では専修学校、各種学校もいわゆる一条校並みと申しましょうか、大学への道が開かれて随分整備されてきたけれども子供たちから見ると随分と嘆かわしいことである、いかがなものかという指摘があるのですが、これはそのとおりでしょうか。今後も続くのでしょうか。
  157. 竹澤正格

    竹澤説明員 御指摘の点につきましては、専修学校といいますのは非常に多種多様でございまして、御案内のように修業年限一年以上、これは二年のものもあれば三年のものもあるというようなことで、言ってみますと従来の大学、短大、高校というような大ざっぱな区分で私どもは従来統計をとっておったということからそういう記載になっておったわけでございますが、御指摘の点は私どもも十分理解をいたしておりまして、来年度からは本件については記載を訂正いたすことに既に決定をいたしておりますので、どうぞ御安心いただきたいと思います。
  158. 池田克也

    ○池田(克)委員 同じような問題がいろいろございますけれども、税理士の受験資格の問題なんです。税理士の受験資格大学の教養課程修了以上または短大、高専の卒業生で、法律学か経済学を学んだ者には与えられる。ところが、専修学校にも簿記関係の専修学校がございますが、これには日商簿記一級合格、全経簿記検定上級合格でなければならない、専修学校を出ただけでは受けさせてあげない、こうなっているわけです。これもいろいろな事情があろうと思いますけれども、しからば日商簿記一級、全経簿記を免除されている普通の高専、短大生はこれだけの簿記の力があるかというと、私は短大とか高専の卒業生を知っていますが、日商簿記一級とか全経簿記検定上級とかをすぐとれる力があるとは思わない。ここにも、本当の実力というものを試すのであれば、もっと門戸を開放していろいろな子供たちに試験を受ける機会を与えるべきであって、そうした点からは専修学校生にも国税庁が受験の道を開いてもいいのじゃないか、私はこう思うのですけれども、国税庁はいらしていますか。
  159. 川上壽一

    ○川上説明員 お答えいたします。  税理士試験の受験資格につきましては税理士法の第五条で細かく規定されておるわけでございますが、学識に関する受験資絡といたしましては、先ほど先生お話しのとおり、大学、短大等、またはこれらと同等以上の学校を卒業した者で、これらの学校において法律学または経済学を修めた者、こういうふうになっているわけでございます。これは、税理士という職務が税務に関する高度の専門性を必要とされていること、そういうことによっておるのではないかと思うわけでございます。  それで、専修学校、まあ専門課程につきましてはその専門性とか学識の程度におきましてまちまちの面もあるというふうに我々聞いておりまして、今直ちにこれらを大学同等の学校と認めるわけにはいかないのではないか、かように考えておるわけでございますが、臨時教育審議会での御議論とか、それから文部省関係省庁のこのあたりの検討状況等も踏まえまして我々慎重に対処させていただきたい、かように考えております。
  160. 池田克也

    ○池田(克)委員 私、ずっと高校生の就職から専修学校へと、子供たちの職業に関するあるいは就職に関する問題を取り上げてまいりました。専修学校は、今盛んに話が出たように、ばらつきがあるということが一つの問題点とされております。  これは文部省にお伺いしたいのですが、専修学校大学入学資格付与、最初から少しふえた、たしか二回目の認可をなさったように聞いておりますが、これから先どんな方向でこれは進んでいくのでしょうか。概略で結構ですが、お伺いしたいと思います。
  161. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 高等専修学校卒業生に大学入学資格を与える問題につきましては、先生御承知のとおりに臨教審の第一次答申でその旨の指摘がございまして、それを受けて昨年文部省令を改正いたしまして、本年の四月から現実に大学入学資格を付与したということになっております。本年の四月の段階での短大あるいは大学入学者数は、夜間定時制を含めまして、一番いいと言っては恐縮でございますが、国立の東京芸術大学に一人入っておりますが、そういう人を含めまして百七十八名の方が高等専修学校卒業生で大学、短大に本年四月進学しております。  私ども、高等専修学校大学入学資格を与えることによりまして、中学校の高等学校への進路指導、言いかえれば中学校の進路指導がより実質的に活性化し多様化していくのではないか。要するに、無理やり高等学校へ行くのではなくて、適当な本人の能力に合った高等専修学校に進学指導をし、そして、高等専修学校に進学した後にやはり大学に行きたいという気持ちになったときに、改めて高等学校に入り直すのではなくて、そこで勉強し直してそのまま高等専修学校を卒業して大学へ進学できるという道が開けたということで、これからもそういう形で、高等専修学校を卒業した後に大学へ進学していく方がふえていくことを強く期待しているとともに、先ほど申し上げましたとおりに、中学校の進路指導がより活性化し多様化していくというふうなことを期待しているところであります。
  162. 池田克也

    ○池田(克)委員 この問題はますます重要になってまいりますので、ぜひしっかりと指導をお願いしたいと思います。  次に、スポーツの指導者の資格であります。スポーツも大変多様化してまいりまして、昨今、文部省ではスポーツ指導者に資格の制度を設けられた。かなり厳しい研修が課せられておりまして、この実情、そして現在でも子供たちを指導している数多くの指導者がいるのですが、こういう人たちが果たして今から研修を受けて資格を取らなければならないのか、経過措置があるのかどうか、この実情についてお伺いしたいと思います。
  163. 國分正明

    ○國分政府委員 社会体育指導者のいわゆる資格付与問題でございますが、これは文部省の諮問機関でございます保健体育審議会が五十八年六月から検討を開始しまして、約三年間かかりまして先般発表いたしました建議案という形でおまとめいただいたものでございまして、現在各方面の御意見を伺いつつ最終建議にまとめたい、こういうふうになっておるわけでございます。  御案内のとおり、現在ボランティア等々でいろいろな社会体育の指導者がいるわけでございますが、スポーツの振興には立派な指導者を養成し確保するということが何より重要でございます。こういう観点に立って、各競技団体等のスポーツ団体が現在自主的にいろいろな形での指導者養成を行っております。それはそれで大変結構なわけでございますが、実態を見ますとレベルが非常にまちまちである、あるいはまたその水準がおおむね低いというような問題がございます。そしてまた、現実の指導に当たりまして、極端な場合には指導技術が未熟であるということだけでなくて、スポーツ障害というようなケースも間々あるわけでございます、あるいはまた立派な指導者であるにもかかわらず十分社会的な評価が得られない。こういうことから、現在各団体が実施しておりますいわゆる指導者養成事業について、一定の基準に合致し、また奨励すべきものについては、これは文部省が認定して、レベルアップとレベルの統一をある程度図っていこう、そしてまた、社会体育指導者の社会的地位の向上にも資そう、こういう思想でおまとめいただいたものと理解しているわけでございます。  内容につきましては、かいつまんで申し上げますと、ただいま申し上げましたものを背景に、各競技団体がやっておりますものを、国が、文部省が認定し、認定する際に、一応分野といたしまして、地域スポーツの分野、それから競技力向上という分野、それから最近例えばスイミングクラブその他商業的なスポーツ施設がふえてきておりますが、そういう商業スポーツ施設、この三つの分野について、名前は各団体が適当に割り振っていただければいいわけでありますが、一応レベルとして初級、中級、上級と三つのランクを設けて実施しよう、こういう考え方でございます。  現在指導に当たっている方々につきましては、実施の問題でこれから各実施団体に御検討いただくことでございますが、現在各団体が検討している段階では、既に行いました各団体の指導者については、いわばみなし規定と申しますか経過的に改めて資格を取る必要がない、あるいはこの時期の人たちについてはこの部分が欠けていたから若干の補講を受けてもらおうとかというような一種の移行措置を考えているようでございます。  それからまた、現実にボランタリーで今活躍している方、これを禁止する趣旨ではもちろんないわけでございますが、この制度ができましたら、やはりできるだけ勉強していただいて資質の向上を図っていただきたいという気持ちを持っております。この方々の負担が過重にならないように、まあいろいろな職業を持つ傍らスポーツ指導に当たっていただいているわけでございますので、現在各団体でも例えば通信教育、座学などは通信教育でもある程度やろうとか、あるいは一回だけの受験でなくて何回かに分けて単位を取得してその積み重ねでもいいではないかとか、あるいは実技等につきましては過去の実績において一部免除しようとか、特にボランタリーの地域スポーツの分野、特に初級の分野についてはできるだけ取りやすい方向をということを現在検討しているようでございます。私どももそういう方向で指導してまいりたい、こんなふうに考えているわけでございます。
  164. 池田克也

    ○池田(克)委員 体育系の大学があるのですけれども、この大学の学生さんの就職先というのは年々狭まってきている。これは子供の数も関係ありますし、学校の教員というのはある意味ではだんだん狭まってきているのですが、体育系の学生さんたちの話を聞いてみますと、そうした競技力とかスポーツで鍛えられておりますけれども、いわゆる普通の入社試験はなかなかなじまないというふうに聞いております。しかし、その人たちの持っているそういう集団を統率する力とか、子供たちを指導していく力というのは捨てがたいものがある。そういう面で私は、今できたこういうスポーツ指導者等に、何も学校先生だけではなしに社会教育にもうんと登用していくべきではないか、ある意味では体育系の大学の卒業生には自動的にそういう今の研修の資格などを与えて、そしてそういうところで思う存分活躍をさせる、こういうこともいかがなものかなと思いますが、どんなものでしょうか。
  165. 國分正明

    ○國分政府委員 体育系の学部の卒業生でございますが、現在検討しておりますのは、例えば陸連であるとか水連であるとかというところが一応実施団体で、そこが講習をして資格を付与する、こういう形での内容が検討されているわけでございます。したがいまして、体育系の学部であっても、自動的に社会体育指導者、それぞれの分野資格が得られるという仕組みにはなっておりません。なっておりませんが、実態的に申しますと、例えば座学にいたしましても体育系の学部でそれぞれ勉強するわけでございます。あるいはまた実技についてもかなりな部分をその学部で勉強するわけでございますので、それぞれの実施団体が用意する講習というもの、これは個々の競技団体によって異なるとは思いますけれども、かなり大幅ないわば一種の受講免除みたいな形がとられると思いますので、実質的には非常に取りやすいということが考えられるわけでございます。  そういたしまして、この制度が仮に将来職業として成り立つというような定着を見てまいりますと、体育系の学部を卒業された方々が専門の指導者として進んでいくことが十分予想されますし、そういうふうになることを私どもとしても大いに期待しているところでございます。
  166. 池田克也

    ○池田(克)委員 問題を移します。  留学生の問題でございますけれども、留学生は国の施策として二十一世紀までに十万人という大きな目標を掲げているわけでありますが、実情を聞いてみますと、大臣も御存じだと思いますが、円高で日本での暮らしが非常に厳しくなってきているわけです。  中国の留学生などを例にとりますと、中国の給与にして四十九ヵ月分を投じて学資に充てる、国立大学で検定料、授業料等入れましてかれこれ二十一万円、これは中国では四十九ヵ月分の給与ということで、もう大変な出資をして来ているわけです。しかもアパート等の家賃たるや、東京においては外国の人たちから見るともう気が遠くなるような値段でして、四畳半で二万円という話を聞いて、私も東京におりましてそんなところがあるのかと思うのですけれども、仮にそれでも敷金などを入れて十万円なければ入れない、こういう状況だ。ちょっとましなところでは三十万、四十万がアパート代で費やされている。  こういう点を考えますと、私費留学生についての補助あるいは体制というものがもう一遍見直されなければ、日本が二十一世紀に向けて十万人、具体的には十万人の学生ということはもうほとんどが私費留学生でなければならないわけでして、この留学生に対する助成とかあるいは授業料の減免とか交通費の補助とか、さまざまな問題について文部省としては検討しているのかどうか、このままでやっていこうとしているのかどうか、その実情についてまずお伺いしたいのでございます。
  167. 植木浩

    ○植木政府委員 今先生指摘のように、日本で勉学しております留学生のうちの八割が私費留学生でございます。文部省としても従来から、私費留学生についての施策といたしまして、病気になったりけがをしたときに一番困られるであろう、そういった不慮の事故に対して医療費の八割補助、これは国費であろうと私費であろうとそういった八割補助制度を実施してきておるわけでございます。  それから宿舎の整備でございますが、これも国立大学等の宿舎を整備したりする場合には、国費留学生のみならず私費の留学生も収容しておるということでございます。  また、日本国際教育協会という財団法人がございまして、留学生のお世話をする団体でございますが、ここで学習奨励費ということで、私費留学生で特に勉学上必要な費用を奨励費として若干でございますが支給をするとか、あるいは優秀な私費留学生は国費留学生へ途中で切りかえて採用するというような制度も近年実施をしてきておるわけでございます。  なお、このほか、国の施策ということだけではなく、やはり民間の力も大いに活用して留学生交流を促進し充実する必要があるということで、文部省といたしましても、民間の留学生奨学事業をいろいろな形で発展充実することが望ましいということでやってまいりまして、現在三十二団体、千三百名に対して奨学金がそういった団体から出ておるということで、そういう留学生に対する奨学事業を行う団体も年々ふえてきておるわけでございます。  以上のようなことで、私費留学生につきましてもいろいろな面から施策の充実を図ってきているところでございます。
  168. 池田克也

    ○池田(克)委員 余り時間がなくなってしまいましたけれども、これは要望でございますが、大学院の研究生方々、特に中国に関しては大学院の研究生で入ってくる方がある。つまり中国政府大学の許可証を持たない者に対してビザを発給しないということがありまして、ともかく大学院の研究生という資格を与えて日本に入ってくる。ところが、研究生ですから制度上十分保護されていなくて、学割とかあるいは授業料の免除とかいう体制がとられていない。ぜひこの中国の留学生、研究生について配慮してほしい、こういうことを要望をしておきます。  それから、この問題について日本学校の問題が最近ニュースにいろいろ出ました。やはり留学生をたくさん入れていくには日本語を教育するのが一番重要な部分です。日本語はなかなか難しい言葉で、これを教育していくのは大変だと思います。国でも当然やっておりますが、民間でも日本学校ができてきております。ところがどういうわけか、私費留学生の一番接触する部分が日本学校であるということから、その相談相手になって、そしてそこにいろいろと入国管理局が問題として指摘するような問題が出てきた。私は全部が全部そうであるとは思いませんが、日本学校というものがもう少し留学生対策としてとらえられ、そこに文部省がきちっとした指導や監督をして日本教育というものがきちっと円滑に行われる。そこに何がしかのブローカーが介在するとか、余りよくない報道の種にされるようなことは留学生政策の観点から見て好ましいことではない。文化庁が所管していろいろと指導しているようでありますが、やはり留学生対策としてこれをとらえて日本学校を育成すべきではないか、私はこう思っております。こういうふうな日本学校を民間でやることについて、いい方向に育成したいと私は思っているわけですが、入管の方はこれはなかなか厳しい面を持っていらっしゃると思うので、短い時間ですが、実情だけ一言聞かせていただきたいと思うのです。
  169. 木島輝夫

    ○木島説明員 お答え申し上げます。  今先生指摘のとおり、日本語を修学する外国人の数がふえていくということは私どもにとっても大変結構なことであるというふうに考えております。ただ、いかんせん、最近新聞等でも御承知のとおり、本来の目的以外の活動を行っている、むしろ不法就労と申しますか、その労働面に主体を置いた在留を行っている外国人が多いということに注目いたしておるわけでございます。
  170. 池田克也

    ○池田(克)委員 どこの世界にもそういうよくない部類はあろうかと思いますが、大臣いかがでしょうか。この日本学校、今文化庁が所管しております。大臣の率いる文部省でありますが、いろいろと指摘をされておりますが、これは非常にすそ野が広がった結果として出てきておりますけれども、もう一遍これにライトを当て、何だか日本学校が悪の巣であるような印象が流れかねません。日本学校というものも、日本がこれから留学生を受け入れていくには非常に必要なものでありますので、いい方向に指導していくという新しい気持ちをひとつ文部省にも持っていただいて、そして入管と協力して、もちろん悪いものは締め出すのですけれども、全体としてのイメージアップを図っていく。そのために適切な指導と、あるいは所によっては認可処置と申しましょうかそうしたものを考えていってはどうか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  171. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 改善にこれからも努力していきたいと思っております。  この問題は、直接には入管上の問題でございますので、文部省としてもこれまで日本教育研究協力校というものを指定しまして、そこでいろいろと協議をしておりますが、同時に日本教育研究協議会の開催、こういうものを通じまして一般の日本学校教育水準の向上を図る。要するに、日本学校というものをどのようにきちっとしたものにするかという、ここが一番大事なところだと思っております。そういう指導とあわせまして、法務省と十分協議して進めてまいります。
  172. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間が参りましたので、まだほかにも、例えばアメリカから大学日本に分校を開設するというような話もありますし、これなども非常に今後の日本大学を考える上に重要な問題だと思います。しかし、時間が参りましたので別の機会にゆだねたいと思います。  きょうは、具体的な幾つかの事例を挙げて私、大臣所信をお伺いしたわけでございます。繰り返すようですけれども、臨教審、ここまで来た以上は一つでも具体的な実績を持って国民の改革の要望にこたえてほしい。そのためには国民合意ということが前提で、なるべく臨教審の幹部にも本委員会に来ていただき、忌憚のない途中経過も知らせ、お互いが認識し合いながら合意に持っていきたいと思っております。  最後にこの臨教審の改革、臨教審が提唱した、答申した改革について、大臣の最後の締めくりの答弁をいただいて終わりたいと思います。
  173. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 臨教審の提案は、確かに私たちもこれは尊重に値するものが随分出ております。  そこで、問題は、第一次、第二次の答申が出てまいりまして、第一次は御承知のように現状認識ということでございまして、第二次答申におきまして、生涯教育中心とした日本教育の体系そのものを一度根本的に見直したらどうだという提案でございました。確かに今までの日本教育体系学校教育中心として組まれておりました。これは私はすばらしい提案だと思っております。  そのほかに、実は間口が広過ぎましてどれを取り上げてということがここで申し上げる時間がございませんが、私は、この前に臨教審の運営委員方々、議会で言いましたら議運の理事さんみたいなものですね。こういう方々と懇談をいたしまして、第三次答申の目玉は、こういういろいろな教育改革に対する御提案をいただいたものを実施していくについて、財政上どうするかというこの提案をぜひ入れてほしいということをお願いいたしました。私はその改革はまずできるものから着手していきたいと思っておりますが、何といたしましても教育には莫大な金がかかるというこの認識を国民全体が持っていただいて、私は教育におきます財政的な裏づけというものをしっかりしてこの改革に取り組んでまいりたい、こう思っております。
  174. 池田克也

    ○池田(克)委員 終わります。
  175. 愛知和男

  176. 江田五月

    江田委員 大臣には長丁場でお疲れでしょうが、あと一時間半、ひとつよろしくお願いいたします。     〔委員長退席、町村委員長代理着席〕  まず最初に、きょうは外務省の方に来ていただいておりますので、技術的なことですが、文部省の検定済みの教科書とか地図とかのことについてちょっと伺いたいことがあります。  今月の十三日のことですが、実は東チモール問題を考える議員懇談会というのが衆参七十二名の超党派の国会議員により結成をされました。自民党もお入りくださっています。東チモールというのは余り知られてないところなんですが、インドネシアの東の方、小スンダ列島の東部、オーストラリア大陸の北方にあるチモール島のほぼ東半分の地域、ここはもとポルトガル領だったのですが、一九七四年にポルトガルで政変が起きて、世界じゅうのポルトガル領は自決権を保障する、こういうことになりまして、この東チモールも独立をする過程がずっと進んでおった。そこに一九七五年の暮れも迫ってからインドネシアが軍事進攻いたしまして、外部から東チモール住民の民族自決権を侵害をしてしまった。これは私どもの見方ですが、違う見方もないわけではありません。国連で今インドネシアとポルトガルの間の仲介の話し合いが進んでおりますが、その話し合いに民族自決権の当然の当事者である東チモールの人民が加えられていないのでこの皆さんを加えることが何より大切だと思っておるのですが、そこでいろいろ資料を集めたり我が国として何ができるかを研究しよう、こういう目的で懇談会をつくりまして私がその事務局長ということを命ぜられましたので、これは職責上ちょっと頑張ってみなければならぬというわけで、この地域教科書の記述あるいは地図の記述を調べてみました。  そうしますと、これは今手元にあるのは写しですが、帝国書院の社会の地図、小学校と高等学校の地図があるのですが、いずれもこの東チモールという地域は国境について破線で記されておる。つまりここは国境、国界というのでしょうか未画定のところである、こういう表示になっておりますが、これは検定済みのそのほかの地図でもこういうことになっておるのでしょうか。
  177. 西崎清久

    西崎政府委員 教科書における外国の国名等の表示につきましては、先生御案内のとおり外務省で編集していただいております世界の国一覧表、これによることにしておりまして、社会科地図の教科書等につきましては、東チモール地域がどの国の領土であるかは明示しないというのが私どもの原則でございます。したがいまして、先生指摘のように、教科書検定におきましては、チモール島につきましてはこれは明確にインドネシア領というふうには表示をしないで、東チモールという表現をし、そしてその部分については西と区別をするために破線であらわすというのがいわば正解というふうに私ども認識しておりますが、一部の教科書では、その部分が非常に小さくて技術的な面で破線等が入りにくかったというふうな経緯のものもあるようでございます。しかし私どもとしては、指導としては、技術的に可能な限り破線でその区分を表示することが適切であるというふうな方向で今後もやってまいりたいというふうに思っております。
  178. 江田五月

    江田委員 外務省にもお尋ねをしておきたいのですが、今の文部省のお答えですと、この地域はどの国に属するということは明示しないという、そこで他の地域と区別する意味で破線で境界を書くという、そういう扱いは外務省の認識とも一致をしておるということでよろしいのですか。
  179. 柳井俊二

    ○柳井説明員 お答え申し上げます。  東チモールの状況につきましては、我が国政府といたしましては、この地域がインドネシア共和国政府によりまして効果的に統治されているというふうな事実認識を持っているものでございますが、その帰属につきましては、先生からも先ほど御指摘ございましたように、インドネシアと旧宗主国のポルトガルとの間で話し合いが進められているわけでございます。この話し合いは国連の事務総長が仲介の努力をとっているということでございまして、私どもとしても事務総長の努力を高く評価しております。  こういう状況にございますので、私どもとしてはこの帰属の問題について判断を下す立場にないというふうに考えております。したがいまして、このような立場から、先ほど文部省の方からも御答弁ございましたように、外務省の外務報道官編集に基づきまして「世界の国一覧表」というものを財団法人世界の動き社というところから毎年出しております。この中の分類におきましては、いろいろな国を並べまして、その後に別途「その他の主な地域」という欄を設けております。この中で東チモールも取り上げておる次第でございまして、またこの冊子の中に収録してございます地図におきましても、この東チモールとチモール島のその他の部分の間には点線をもって区別をしているという扱いになっております。
  180. 江田五月

    江田委員 ただいまの外務省の御説明、きょうは外務委員会じゃありませんからそれ以上深入りをする場ではないのですが、インドネシアがこの地域を効果的に統治しているという外務省の認識、それはそういう認識であることはわかっておりますが、果たしてその認識が正しいかどうかという議論はまた別途ある。さらに、話し合いが本来の民族自決権の当事者である東チモールの住民を抜きに行われていることについては、これは確かに行われておるのですが、それでいいのかという大きな問題があるということを指摘するにとどめますが、いずれにしてもこの地域が紛争地域であるということは外務省もそういう認識でおるということですね。  さてそれならば、先ほどの文部省のお答えですと、教科書の場合には小さなところだから技術上なかなか難しくてというお話ですが、しかし、日本の印刷技術というのはかなり進んでおりますので、例えば色にしてもわかりにくい色じゃなくて、インドネシアとこの東チモール地域をもっとわかりいい色で色分けするとはっきりわかるのじゃないかとか、それから、ここに私も教科書の方についておる世界の地図のコピーを持ってきておりますけれども、もうちょっとこれも大きくできるんじゃないかとか思うので、技術上の困難というところに原因を持っていくのでなくて、やはり紛争がある地域、そこは一体どういうことで紛争が起きているんだ、ああ、そうか、第二次大戦後にいろいろな経過があって今なお独立するとかしないとかで争っておるところがあるんだな、そういうことも大切なことですから、ひとつ地図の方だけでなくて、教科書の方もそれなりのはっきりした明示ができるような努力をされるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  181. 西崎清久

    西崎政府委員 教科書の記述の問題でございますが、先生御案内のとおり、教科書において取り上げるべき事実関係あるいは内容でございますけれども、全体の分量との関係、バランスでどこまで取り上げられるかという点、若干いろいろ問題もございまして、本件が直ちに取り上げられるかどうか、まず著作者側の取り上げ方の問題もございますので、今にわかにその点についてお約束申し上げることはなかなか困難であろうかというふうに思うわけでございます。  それからもう一点の地図の方の問題でございますが、これは先生御案内のとおり技術も進んでおるわけでございまして、私どもは、この外務省で編集しておられる「世界の国一覧表」においても破線で表示をしておられるということに基づきそういう指導をしたいと思っておりますし、今後、改訂の機会等があればそういう指導については努力をいたしたいというふうに思っております。
  182. 江田五月

    江田委員 私が言いましたのは、教科書の中身の記述というのじゃなくて、教科書に印刷してある地図の部分、これはもう好むと好まざるとにかかわらず世界地図なら世界じゅう全部出るわけですから、そこを一色で塗りつぶしておればこれは紛争がないということになるし、ちょっと何か色が変わっておればこれは何だろうかということになるわけですから、記述をしないというわけにいかない、どっちかに記述してしまうわけですからね。その部分はひとつ御努力をお願いしても罰は当たらぬのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  183. 西崎清久

    西崎政府委員 失礼いたしました。地図プロパーの問題といたしましては、先生おっしゃるように、私どもは破線で表示するという外務省の文書に基づいてやっておりまして、現実に破線が入ってない地図があることも事実でございますので、先ほど申し上げましたように、改訂の機会等においては破線等を設けてその区分が明らかになるようにというふうな指導をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  184. 江田五月

    江田委員 さてそこで、もうちょっと突っ込んで議論してみたいのですが、まず外務省の方に伺いますけれども、西サハラですね。東チモールも余り聞いたことがないけれども、西サハラならサハラというのは砂漠のあるところだから多少は見当もつくのじゃないかと思いますが、こともやはり紛争地域ですね。西サハラの紛争をごくごく簡略に言うとどういう紛争ですか。
  185. 久米邦貞

    ○久米説明員 お答えいたします。  西サハラと申しますのは、モーリタニアとモロッコの間にございます面積が日本の約七割ほどの地域でございますけれども、これは一九七六年まではスペインの植民地でございました。ところが、そのスペインが七六年に植民地を放棄いたしまして、その後、その植民地時代に解放運動をやっておりましたポリサリオ戦線というのがございまして、そことモロッコの間に紛争が生じております。モロッコは、この地域がモロッコの領有に帰属する地域であるという主張をしておりますのに対して、ポリサリオ戦線は、西サハラ地域は独立した地域であるということで、スペインが植民地としての領有を放棄しました七六年の時点でサハラ・アラブ共和国という国家の樹立を宣言いたしておりまして、ただ事実上はモロッコが軍事的にはこの地域を現在支配しておりますので、ポリサリオ戦線はアルジェリアの支持を得まして、現在アルジェリアを基地にいたしましてモロッコに対する式力闘争を行っているというのが現状でございます。
  186. 江田五月

    江田委員 ということで、東チモールとよく似ているわけです。  そこで、この西サハラというのはどういうふうに書かれているかというふうに見ると、帝国書院の地図では、高等学校の方では西サハラ(旧スペイン領サハラ)、別の国であるという表示だと思いますね。それから小学校の方の教科書では西サハラ、これも国の表示をしてあるのではないかと思うのですがね。一方、地図ではない教科書の方に刷り込まれている地図を見ますと、活字が違いますから国という扱いではない、しかし独立した地域であるというイメージがはっきりするように西サハラとそれぞれ書いてあって、そしてその活字はよく見るとホンコン(香港)などと同じ活字で、香港の方には括弧してイギリス領ならイギリス領で〔イ〕というふうに書いてあるという。だから宗主国がない、しかしまだ独立しているというふうにはっきり判断もできない、そういう地域であるという感じで書かれているわけです。東チモールも同じことですから、西サハラと同じような扱いにされるべきではないかと思いますが、この問題、実はちょっと不意打ち風の質問になるので、お答えいただければ幸いなんですが。
  187. 西崎清久

    西崎政府委員 西サハラにつきましては、ただいまちょっと調べたところによりますと、外務省での「世界の国一覧表」の表記においては西サハラとして、やはり注記が入っております、チモールと同じように。「現在モロッコが領有を主張し、統治しているが、現地民族解放戦線は同地域の独立を宣言している」と注記が入っております。チモールと似たような注記があるわけでございまして、まだ国ではない。そういう意味では、帝国書院の高等学校社会科の地図では黒字で表示してありまして、赤字で表示いたしますと国名というふうになるようでございますが、黒字で表示して西サハラと書き、若干そのエリアを点線、破線で囲っておりますので、チモールと大体同じような扱いというふうになっておると理解いたしております。
  188. 江田五月

    江田委員 私のコピーは白黒ですので色がわかりませんで失礼いたしましたが、そうなんでしょう。ひとつ東チモールの方も同じような扱いを検討していただきたいと強く御要望を申し上げておきます。外務省、それではどうも御苦労さまでございました。ありがとうございました。  さて文部大臣、きょうは初めて衆議院文教委員会塩川文部大臣をお迎えをいたしたわけで、ひとつ塩川大臣教育というのは一体何だろうかというような、余り玄人の話でない、ごく普通の世間の常識として、教育というのは一体何が大切なんだろうかとか、どんな営みなんだろうかというような議論をちょっとしてみたいのです。実は藤尾前文部大臣ともぜひ議論をしたかったのですが、議論する前におられなくなっちゃったものですから残念だったのですが、塩川文部大臣、政治家の大先輩としてもあるいは人生の大先輩としてもぜひいろいろお教えをいただきたい。  自民党の皆さんの午前中の質問にもありましたが、明治維新以来日本は追いつき追い越せでここまでやってきた。そして今、世界日本も大きな転換の時期、情報化であるとか国際化であるとかいろいろありますね。日本も追いつき追い越せをひとまず達成をして、世界のGNPの一割を生産することになってきた。今までの教育では困ります、これからの教育はどうあるべきか、そういう議論が一方であります。それも非常に重要な議論だと思います。同時にしかし、これからの教育は、これからの時代にふさわしいこれからの教育はということと同時に、これまでの歩みの中で随分日本教育がゆがんできたというか、あるいは日本人全体の中でいろんなゆがみが蓄積されてきたという点があると思うのですね。臨教審もそういうことを言っておりまして、言葉遣いをちょっと忘れましたが、たしか負の蓄積といいますか、つまり我々いろんなものをずっとプラスの面で積み上げてきて今日のすばらしい日本をつくった。だけれどもそれだけではなくて、そこへ持ってくるについてはマイナスのものも随分積み重ねて今日に至っているんじゃないか。それが例えば学校教育で言うと落ちこぼれといいますか落ちこぼしといいますか、子供たちがついていけない問題あるいは非行の問題あるいは学校の中や家庭の中での暴力の問題あるいは学校へ行けないというような子供が出てくるといった問題、そして子供の自殺が随分あるといった問題、こんな問題になってあらわれてきているわけですね。それは何も子供だけじゃなくて世の中、社会一般にもいろんな形でいささかこの病理現象が行き過ぎているんじゃないかといったことがあらわれていると思うのですが、そういう過去のこれまでの日本教育の営みあるいは社会の進歩が逆に、進歩というといいものを積み重ねるわけですが、そうじゃなくて陰の部分も随分積み重ねてきておるというそういう意見について、大臣はどういう感想をお持ちでしょうかね。
  189. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 まず教育というのを、私も専門家でないので余り難しいことを知りませんが、私は昔から、教育というのは教える方に重点を置くんではなくして育てる方に重点を置くべきだと思うておるのです。教える方だけだったら例えば教導、教え導くというのがございますね。ところがはぐくむという方が、私はどうも最近、学校とか家庭を見ておりましてもはぐくむ方の行為といいましょうか、それがおろそかになってきておるように思うのです。  それと、今お尋ねの学校の中が非常に荒れてきたという、これはいろいろな要素があって荒れてきたと思うのであります。一つは、先生生徒との間がうまくいってない、これは確かに私はあると思うのです。だといってそれじゃなぜうまくいっていないかというと、やはり子供が十分に理解できないというところもある。といってそれじゃ教育の水準を落としていいかというとそうはいかないから、やはり時代に合った教育先生は授けていく、そこに落ちこぼれてくるという子供もできるだろうと思うのです。  ところが私は、もっと根本的な問題は、高度経済成長以降、極端に日本は学歴社会になってきたと思うのです。何でもかんでもが人間の評価を学校で決めていくような感じがしてなりません。  私は三人の子供がおりまして、三人育ててまいりました。私の趣旨として塾には一切入れませんでした。けれども塾に入れなかっただけに確かに差がついております。私はこれは率直に認めておるんです。塾へ入れて勉強させればよかったなと今になって反省はいたしますけれども、しかしそれなりで私はよかったと思うております。塾で教える学力というものと学校だけで教えている学力というものは私はやはり差があると思うております。そうすると、そういうことでいい学校をねらう、そのために学校の中で生徒同士の競争があらぬ方向に走ってしまいまして、これが学校の雰囲気を非常に悪くしてきたと思うのであります。  したがって私は、これから一番大事なのは子供をもっとのんびりさすことだろう、こう思うのであります。現に、勉強はできなかった、大して社会的評価のされない学校を出た子供でも、コンピューターをさわるようになってからもう見違えるように仕事を立派にやるような子供を私も知っておりますが、そういう価値の多元化といいましょうか、それをやはり教育の中にも導入していかなければいかぬと私は思いますし、第一、世間様がそういう気持ちになってくれなければ、どんなに教育改革を進めていっても世間、社会がそれをつぶしてしまう、そんな感じをしておるのでございまして、したがって、これからの教育改革というのは、文部省が力んでやりますが、それと同時に、社会もそういう価値の多元化を認めて、人間の多様性というものを見てやってもらうというそういう社会に持っていく。学歴だけですべて割り切っていく、こんな社会であったら恐ろしい時代になってくる。私は、そういう心配をしながら現在この文部大臣といういすに座っておるところであります。
  190. 江田五月

    江田委員 さすがに塩川大臣、なかなか教育に素人なんてことじゃないんで、教育の本質についてのはっきりした認識をお話しくださったと思うのですが、それでも今のお話の中で、例えば教育の水準を落としてはならない、ごくごく普通にはそういうことで問題ないのかもしれませんが、一体教育の水準というのは何だろうか、これはなかなか難しいですね。日本教育の水準は本当に高いんだろうかということになりますと、それは、やれ理科の点数をとったらアメリカと比べてどうだとかいろいろありますが、そういったものとまた違った教育の水準というものが考えられないと、今大臣のおっしゃった価値の多元化を認めるということにつながっていかないですね。ですから、本当に後半おっしゃったことをひとつしっかり踏まえてやっていただきたいと思うのです。  さらに、今大臣は、教よりも育の方だ、育てる教育というのが、教え育てるもあるけれども、共に育てるという「共育」が大切だという主張もあるのですね。親も教師も社会もみんなで子供を育てようという。しかし、いや、それもまだ違うのだ、共に育てるではなくて共に育つのだ、子供も育つ、親はもう育ち上がって親というのは別に何も育つ余地のないでき上がった人間で、これが子供を教えるんだなんというとおこがましい。親だってまだまだこれから一緒に育っていかなければいけないじゃないか、子供から教わることが実はいっぱいある、親が忘れていて子供なればこそまだ覚えている、そういう人間の大切さがいっぱいあるのではないかとか、そんなことも言われるわけで、ぜひひとつ、文部大臣というのは、文部省のお役人の皆さんやあるいはその下だか上だか知りませんが、つながる教育委員会とか先生方とか、こういう皆さんを叱咤激励して子供教育に駆り立てる役目、それも一つあるかもしれないけれども、それだけではなくて、今の大変に難しい、親も子も悩んでいる教育の状況の中で、子供たちに思いやりと愛を語る人であってほしい。子供が自殺をしようとしたときに強い心を育てろと叱咤激励することもさることながら、その自殺をする子供の弱い心に大きな愛を注いでやっていただける、そういう一言をかけてやれるそういう大臣にぜひなっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  191. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私も心がけてそのように努めてまいります。
  192. 江田五月

    江田委員 今、大臣教育改革のことにちょっとお触れになりました。世の中というのが教育についてもっと、あるいは教育というか人間の価値といいますか、価値の多元化という言葉で表現されましたが、こういう人間観を改めていかなければならない、学歴社会で染まった世の中ではうまくいかないということをおっしゃった。私もそのとおりだと思うのですね。ぜひひとつ教育改革を、単にどこかの役所のどこかの部署とかあるいは臨教審、今おやりになっているわけですが、臨教審とかそういうところにもう任してしまう、そういうところが教育改革をやるのだ、あとは我々はやってもらうところだというのでなくて、ひとつ国民みんなで今の教育を改めていく大きな運動を進めていってほしいと思うのです。  そうなりますと、ぜひひとつ大臣、大きな意味での教育についての議論を至るところで起こしていかなければいけないと思うのですね。前々から私は国民全員参加の教育改革だということを言っておるのですが、そうなりますと、今いろいろな部門で教育に携わっておる皆さんと、大臣は常に心を開いて虚心坦懐に話し合われる必要があるだろうと思うのです。一番教育に携わっている人というと、これは何といっても教師です。教師の集団である日教組、そのほかにも教師の集団がありますが、こういう皆さんとひとつ胸襟を開いて一日も早くとにかくは顔つなぎをする、いろいろなことを話す、あるいは話してもらう、そういう機会をつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  193. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 先生、教師の方々と話し合いをすることは私はちっともやぶさかではございませんし、そういう機会があればと思うております。  ただ、いろいろな教育問題を話します場合に、一億二千万人総教育評論家に現在なっておる、それは先生もよく御存じのことだと思うのです。ただし、その中で建設的な、建設的なといいますことは、公正にして客観性があって、そして教育的な効果のあるもの、こういうものを話し合うということについては私はもう大いに賛成でございますが、ただ評論をし、批判をするというだけで後ろ向きの話をしてみても前進にはならない、私はこう思います。  したがって、そういう建設的な、先ほど言いました意味における建設的な御意見であれば、私は幾らでも聞かしていただきたい、こう思うております。
  194. 江田五月

    江田委員 そうですね。本当に単なる批判に終わるとか評論に終わるとかではいけない。しかし、会ってみなければ、単なる批判に終わるか、評論に終わるかわからないわけですから、今の大臣お話は、そういう中身のお話をぜひ、日教組だけではありませんが、日教組の皆さんともやりたい、こういうお話だと受け取っていいわけですか。
  195. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 あえて日教組というそういう決めつけてかかられると、これはなかなか話はしにくいと私は思うのですが、先生と話をするということ、私はこれは望んでおるところであります。
  196. 江田五月

    江田委員 なかなか微妙にお逃げになるわけですが、本当大臣の方が心を閉ざしておると、やはり心を開くべき人も閉ざしてしまうということがあるので、教育ですからいいじゃないですか、いろいろなメンツやこだわりを捨てて大いにひとつ話をされたら、意見を聞いてみたら、どこからどういういい知恵が出てくるかわかりませんから。  それから、臨教審の皆さんともこの衆議院あるいは参議院もですが文教委員会の我々と大いに談論風発、いろいろな話をするような機会も前々からお願いをしているわけですから、持ったらいいと思うのですね。こういう委員会で集中審議、これももちろん必要ですが、ちょっとまた雰囲気を変えてお茶でも飲みながら、文教委員の我々と臨教審の皆さんとが余りかた苦しくない雰囲気で話をするなんというのもいいのじゃないかと思うのですが、大臣の方でそういうイニシアチブをおとりになる気はありませんか。
  197. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 臨教審は政府の、つまり総理大臣並びに文部大臣の諮問に答えて答申を出すというこういう機関でございまして、したがいまして、私は一度サウンドはしてみます、仰せでございますので。サウンドはしてみますけれども、恐らく私は、その委員会先生方は、私の立場というものはと、こうおっしゃるだろうと思うのです。これはですから臨教審の委員ということじゃなくて個人として話し合うということで、私はそんな機会があればいいなと思いますけれども、何と申しましても相手方のあることでございまして、相手方に聞いてみなければこれは何ともわかりませんが、国会でこういう発言があって、質問があったということ、これは担当を通じまして連絡さしてみます。
  198. 江田五月

    江田委員 ぜひひとつお願いしたいと思います。この委員会でも臨教審の皆さんをお呼びをして議論をする機会が随分長く途絶えておりますので、ぜひ集中審議とかを私はやるべきだと思っております。  さて、話はちょっと変わりますが、先ほど大臣、価値の多元化ということをおっしゃいました。臨教審は個性重視の原則という言い方をしましたね。以前は個性主義という言い方もあったのですが、これはちょっといろいろお考えのところがあったのでしょう、個性重視の原則ということになっておりますが、大臣の価値の多元化というのも同じような方向性のことだと思うのですが、一方でまた、これは大臣にお答えをしろというのはいささかつらいことになるのかもしれませんが、なかなか個性というものを認めようとしない政治家が多い、あるいは価値の多元化について理解の少ない政治家が多い。その最たるものがせんだっての中曽根総理の、日本教育が随分進んでいるが、アメリカはいろいろな人がおって知的レベルがまだまだ低いというような、その後同じ自民党の研修会で、女性はネクタイの色は覚えているが講演の中身は覚えてないとかいうようなことをおっしゃったり、この弁明で、今度は国会で、いや、日本は単一民族だということを言ったんだ、そうすると今度はアイヌ、ウタリですかの皆さんからおしかりを受ける、それにおわびのはがきを書いたら、どうも要領を得なくて、怒られたら今度は、いや、あれは女の子が書いた、また女性に大変おしかりを受けるようなことを言う。まるでツキに見放されたマージャンみたいなことになっておるわけですが、私はこれは基本的なところで総理は勘違いをされていると思うのですね。  単一民族であるかどうか、大体日本なんというのは多民族の混血なんですから、単一民族と言うのがそもそも変だと思うのですけれども、単一民族であるという認識は随分日本人の中に強い。そのことがいいんだ、単一民族だから教育もさっと行き届いて、一億打って一丸となってというのがやりやすかった。確かに今までは、そういう打って一丸となって日本アメリカ、ヨーロッパに追いつき追い越せがよかったのかもしれません。しかしこれからの世界はそうはいかないですね。もう国際化というのは、私たちが脱亜入欧でアメリカやヨーロッパのああいう一つの先進国世界に我々が入っていくというそのことを意味するのじゃないので、世界じゅうがいろいろな意味で、いろいろな形で、いろいろな価値を持って相互に共存し合っていくということでなければいけないので、先進国だけが世界をつくっているわけじゃない、発展途上国、非同盟、アジア・アフリカ、全部これは世界の構成国なんですね。そういう皆さんのそれぞれの考え方がそれぞれに大きく生きていくようにする。日本は、インドの皆さんは本当にかわいそうにインダス川で最期の寿命を終わってと、インドの方から見ると、日本人本当にかわいそうに最期は点滴のチューブに取り囲まれてと思うかもしれませんね。それはどちらがどうだというのじゃなくて、そういういろいろな考え方があるんだ、そういう多元性を我々は持っていかなければならぬ、認識をしていかなければならぬ。日本の国内でも、こういう多元的な価値あるいは個性というものを認め合っていかなければいかぬと思うのですね。アメリカなんかはああいう人種のるつぼですから、居ながらにしてそうした多元性というものを身につけること、体験することができる。日本はそれがなかなか難しいですね。したがって意識してこうした多元性を身につけていかなければいけない。その意味では、日本が単一民族意識を持っているということは日本の弱点だというふうにこれから先は思って、とりわけ学校教育の中などでは、こうした個性といいますか多元的価値といいますか、こういうものを意識的に身につけていく努力をしていかなければならぬ。中曽根さんの勘違いにそのまま乗っかっていってはえらいことになると思うのですが、いかがですか。
  199. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは難しい問題でございますね。しかし中曽根総理の発言からいろいろと解釈できますことは、総理が単一民族と言っているこの民族ということのとらえ方、何をもって民族と見るかということが私は非常にこれもまた問題だと思うのです。ただ単一民族じゃなくて、おっしゃるように日本はいろいろな民族がおると、そうはやはり私は解釈をいたしません。ルーツはいろいろあると思う。ルーツはたくさんあったけれども、今や民族というのは文化圏だと私は思うております。文化的に見ました場合に、日本民族はやはり一つの民族になっているのではないかなという感じがするのです。これはいろいろとありましょうけれども日本人を構成しておる人たちのルーツはいろいろあるということを私は言うのです。しかし文化的に見ました場合に、私は日本人一つになっておると思うのであります。  今、国際化というのは何も民族の壁を取り払ってまでということは言っていないので、国の境を取りなさいということで、私は民族と国家とはまた違うと思います。ですから国家という垣根を日本は取らなければならぬと思いますが、我々の持っておる固有の民族というものは大事にしなければならぬのではないか、そういうことを私は思うております。
  200. 江田五月

    江田委員 中曽根総理の発言が刺激的だったのか、どうもそちらのところに答弁がいってしまいましたけれども、もうちょっと個性重視の原則の重要性とかそっちの方があったんですけれども、それはいかがでしょうか。
  201. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は世の中はすべて集成の矛盾の中、経済学で言いますとその中にあると思うのです。皆さんもそうだと思うのですが、賃金を上げろ、物価を下げろ、税金を安くしろ、これは集成の矛盾なんですね。それと同じように教育の中におきましても、個性を尊重しろ、平等を図れ、公平にやれという画一主義というものがございまして、これは私はお互いに矛盾しておったと思うのです。  ところで、それじゃ教育のやり方で個性尊重にずっと突っ走ってしまっていいのかといいましたら、そこにはやはり義務教育として限界がございまして、やはり一定の社会秩序に適合した、現在社会に合った平均的な人というものに重点を置いて教育せざるを得ない。個性尊重だからということで個性ばかりを重点に置くということはできないと私は思うのです。しかし、私が言っております多元的価値というのは、すべてこれが絶対に一番いいんだという評価をしてはいかぬという意味において私は多元性ということを言っておるのです。  例えて具体的に申しますと、大学はどこそこ学校で、大学を出ていなければだめなんだ、その次は二番目なんだ、その次は三番目なんだ、こういう決め方で就職も結婚も友達選びも全部やってしまうということ、これは間違いだ。たとえ夜学を出ようが、二部を出ておろうが、その人は五年、六年という年数をかかってやっと夜学を出た、その学歴をしてきたということを認めなきゃいかぬと思うし、今放送大学文部省は開講しておりますが、放送大学を苦労して卒業してきた、その実力といいましょうかその努力というものは見てあげなければいかぬ、私はこういう価値の多元性というものを見ておるのであります。  個性の尊重というのと同時に、公平、画一的な教育というもの、これは相矛盾いたします。しかし、その片っ方に極端に走ってしまったらいかぬ、絶えずそのバランスをとりながら教育は進めていかなければいかぬということを私は思います。しかし、その人間を評価するのに多元的に評価すべきであるということを申しておるわけであります。     〔町村委員長代理退席、委員長着席〕
  202. 江田五月

    江田委員 話をちょっと戻して、日本というのはルーツはいろいろだけれども今は一つの民族、文化は一つとおっしゃったわけですが、さあ、今のアイヌの皆さんのことはどうしますか、これも文化は一つということに入れてしまいますか。
  203. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は、やはりルーツはいろいろあったと思います。しかし、私はアイヌの方と余り接触ないので十分知りません、誤解があれば訂正いたします。いたしますが、しかしその方々も今同じように自分らの伝統というものを守っておられる、これは私はよく承知しております。しかし、生活圏の中で見ました場合には、みんな一緒に同じ生活の中でおられると思うのです、暮らしというものは。しかし、その方々のルーツに持っておられたそういう伝統と習慣というものを尊重しておられる、これは私は十分に理解しております。これを、我々も一緒だとは言い切れないと思うのです。しかし、今現実に生活しておる様式というものは同じではないかな、したがって、最初から言っておりますように、民族とは何かといったら、文化圏としてのとらえ方なんだという点から見るならば、私はそれは同じではないかなという感じがするのです。
  204. 江田五月

    江田委員 余り水かけ論をやっても仕方がないのですが、恐らくそうじゃないよという声があると思いますので、ひとつまたよく勉強をしていただきたいと思います。  アイヌの皆さんのこともそうですが、例えば在日朝鮮人、韓国人の皆さんもいるのですね。うれしい縁、悲しい縁、いろいろな縁があって、この日本列島というところに一緒に住んでいる。しかし、この民族という、今の大臣のおっしゃる民族という意味でとらえてみても、民族は違う、だけれども我々は一緒にここで同じ一つの共同体として住んでいる、そういう皆さんが日本のこの国土の中にいるわけです。こういう皆さんもこの国土の中に一緒に住む以上は皆同じように住めるようにしようじゃないか、これはこれから先日本の国際化ということを考えたときにはどうしても必要なことです。  単に韓国人、朝鮮人だけじゃなくて、もっともっと門戸を広げてよろしい。だから、国の垣根というものはもっと取っ払っていかないといけないので、取っ払ったときにそういう違った言葉の人、違った宗教の人、違った価値観の人、違った肌の色の人、そういう皆さんもいろいろな機縁でこの国に一緒に住む以上は、皆同じ機会を持ち、同じサービスを受けという国際国家になっていかなきゃいけない。学校教育でもそういうことはこれから非常に重要になってくるのだと思いますが、どういう認識をお持ちですか。
  205. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 それはおっしゃるように、自分だけじゃなくて他を思いやるという、今おっしゃっていることは結局他を思いやるということだと思いますし、もっと露骨に言いますと、それぞれの生活とそれぞれの立場を尊重しろということ、これは当然必要なことだと私は思うております。教育の中にそういうことを入れていく、これが国際化だと言いますけれども、この国際化の中身をどう教えたらいいかということの一番わかりやすいのは、他人を尊重しろ、そして他国を尊重しろ、そしてその立場に立って物を考えろ、相手の立場に立って物を考えろ、これが国際化の一番わかりやすい教育だ、そう私は認識をしております。
  206. 江田五月

    江田委員 個性といいますと、もう一つこれはぜひ大臣にお考えをいただいておきたいと思いますが、それぞれ一人一人の個性というものもありますけれども、ペースの個性というのがあるのです。あるところまではどんどん早く進むけれども途中でとまってしまってという人もいるし、ゆっくりゆっくりだけれども最後はかなり高いところまで行ったぞという人もいる。高い低いもまた難しいですけれども、そういうこともあるのです。  ところが今の学校教育は、小学校の第何学年ではここまで、中学に入って第何学年はここまで、そして中学三年になると高等学校に入るだけの実力を必ず備えていなければならぬ、高校三年になると大学に入るだけの実力を必ず備えていなければならぬ。そういうときに途中でこぼれますね。そうすると、敗者復活戦というかもとに戻るパイプが非常に狭いのです。もっとそれぞれの個性的なペースを、個性的に歩む子供たちがつらい思いをしなくて済むようなことも考えなければならぬ。臨教審は個性重視の原則と言いながら、そこらあたりは抜けているように思うのですが、ぜひ考えていかなければならぬ点だと私は思うのですけれども、どうでしょう。
  207. 西崎清久

    西崎政府委員 先生指摘の、個々に応ずる教育の問題でございます。  今後の方向といたしましては、先生は臨教審の関係での御指摘もございますが、私どもは、教育課程審議会で一年余いろいろ御審議願いまして、先般その中間まとめを出していただいておるところでございます。その中で四つの今後の「基準改善の基本方向」を示しておられますが、第三番目に「基礎的・基本内容を重視し、個性を生かす教育の充実を図ること」として、教育課程審議会も大きな四つのうちの一つの柱として掲げておられるわけであります。具体には、義務教育でございますから小中学校は基礎・基本が必要である、しかし別の面として「一人一人の幼児・児童生徒の個性を生かすよう努めなければならない。」この両面を課程審においても押さえておられるわけであります。まだ若干、課程審は科目別の内容目標審議が続くわけでございますけれども、私ども先生指摘の点も踏まえて、課程審のこのような方向も重視しながら、今後の指導要領の問題には対処してまいりたいと思っております。
  208. 江田五月

    江田委員 先ほど私は在日韓国人・朝鮮人のことをちょっと申し上げましたが、外国人で日本学校に通っている子供たちをどういうふうに呼んでいるのでしょう。呼んでいるというのは、例えば韓国人、朝鮮人の皆さんの場合ですと恐らく三通りある。一つはキム・デジュンというのがあります。をれを日本流の字でそのまま読むと金大中(キンダイチュウ)ですか。さらに通名といいますか金田何がしという、金田に限らないかもしれませんが、三通りくらいあるのだけれども、どういう呼び名になっておりますか。
  209. 西崎清久

    西崎政府委員 日本人につきましては、学齢簿を編製し、それに基づく指導要録が作成され、そこで名称が記載され、呼称も決まる。これは当然のことでございますが、外国人につきましては学齢簿がございません。しかし、就学を希望する場合には小中学校が国際親善の立場でできるだけ受け入れるということになりまして、その指導要録への記載につきましては、学齢簿がありませんので、本人、父母、保護者からの申告に基づいて指導要録へ記載をする、こうなるわけでございます。  問題は、先生お話しのように持導要録で記載された名称とそれから実際の教場における呼称、この点につきましては、やはり現場における学校の担任教師等が保護者等と話をされて、具体的な呼称について先生方一つ考え方を持って呼び名を固めていくというふうな扱いに実際問題としてはなってまいる。そこのところを、指導要録に書いてあるものをぜひ呼称として使わなければならないというふうなリジッドな指導は私どもはもちろんいたしておりませんし、その場その場での保護者として先生方との間の問題というふうに考える次第でございます。
  210. 江田五月

    江田委員 国際化ということを考えますと、やはりそれぞれの、先ほどの日本民族の話じゃないけれども日本民族でない皆さんの文化とかあるいは民族の誇りとかそういうものも我々大切に考えてあげることが必要なのだろうと思うのですがね。そうしますと、例えばキム・デジュンと呼んでほしい、それが自分の誇りだという場合にはやはりそう呼んであげるべきだし、いや、いろいろな事情から自分はもう金田太郎と呼んでほしいということならそう呼んであげるべきだろうし、そこは本当に保護者と子供子供というよりも保護者でしょうが、その方々の希望を素直に入れたらいいのだと思うのですが、いかがですか。
  211. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘のとおりだと思いますし、現実にもそのような扱いがなされている、一々私ども全部調べたわけじゃございませんが、それが当然の扱いであろうと思う次第でございます。
  212. 江田五月

    江田委員 現実の扱いがちょっと違う場合があるようですので、あえて伺ってみました。  それから就学届、これは希望する者に就学を認めているということですが、就学通知は希望する者にだけ就学通知を出すということに今なっていると思うのですが、これは一体なぜ、同じように幼稚園へ行っている、同じように仲よく遊んでいる子供たちみんなに、同じように就学通知を出さないのですか。
  213. 西崎清久

    西崎政府委員 これは先生御案内のとおり、我が国の義務教育制度という形で、日本国籍を有する保護者、子弟という形で制度運用が行われておりますので、当該市町村区域内に所在する学齢に達した子弟については、学齢簿を編製する、これは日本国籍で就学義務を負う者について学齢簿を編製するわけでございまして、したがいまして、就学通知は学齢簿に基づき行われるということから、学齢簿が編製されていない外国人子弟については就学通知が行われていない。その外国人の子弟につきましては、日韓条約に伴いまして、その子弟の就学については、特に日韓の条約、協定に伴う配慮ということから、永住を希望する者についてはできるだけこれを受け入れるようにという通知は出しております。しかし、韓国人子弟以外の者についても、先ほど申し上げました国際親善の立場から、希望する者についてはできるだけ受け入れるようにという事実上の、私ども就学事務担当者会議等で指導資料を示しながら指導しておりますので、現実には希望すれば受け入れられているという実態であろうかと思いますので、その点は今後ともできるだけ、希望する者は受け入れるようにというふうな立場での扱いをしてもらうように考えてまいりたいというふうに思っております。
  214. 江田五月

    江田委員 希望すれば受け入れられるということをもう一つ超えて、就学通知はとにかく平等に出した方がいいのじゃないかと思うのですね。この就学通知というのは、親が子供教育させる義務を負っている、義務教育だから。その義務を親に知らしめる通知である、法的にはそれも恐らく正しい理解でしょう。しかし、何かそんなことを言うと、就学通知というのは赤紙みたいな感じがしますね。そうじゃなくて、やはり楽しい学校へ、やっと一年生になるんだ、こういう学校に対するインビテーションカードが就学通知なんで、これは同じように学齢に達した子供たちは、日本人も外国人も子供みんなに出して、そして、ただし注意書きでもして、自分は外国人学校へ行きたいんだとかあるいは私立の学校へ行くんだとかそういう場合にはぜひ通知をしてくださいということにしてあげないと、子供たちが同じように育ちながら、あるときはっと自分はみんなと違う、違うこともまたそれは大切といえば大切ですが、韓国人、朝鮮人の場合にはもっと違った歴史のいろいろな流れがありますから、ぜひ原則として、例外を逆にして、就学通知はとにかくインビテーションカードだからお出しをするということにした方がいいと思うのですが、どうですか。
  215. 西崎清久

    西崎政府委員 就学通知という通知の性格は、やはり義務教育学校に就学すべしというと言葉はきつうございますけれども、義務を負っている者について学校に就学してくださいというわけでありまして、これは日本人子弟については当然法律上の問題として義務を負うわけでございますが、外国人の子弟につきましては、先生御案内のように、今お話がございましたが、いや、アメリカンスクールに行きたいとか、いろいろそれぞれ保護者の意向によりまして必ずしも日本人学校に行きたいという方々ばかりではないというふうに思うわけでございます。したがいまして、厳密な意味での就学通知を同様な形で出すことはやはり私どもはいかがかと思うわけでありますが、現場の実態としては、私どもちょっと調べておるところでは、教育委員会において広報で在日外国人の就学について通知したりというふうな、一つの広報活動として当該市町村在住者の外国人子弟に、希望すれば入れるよ、入っていただくことは可能だというふうな形での広報活動等は行っておるところもあるようでございまして、このことは国際親善の立場からも必要なことですし、やはりそういう点についての配慮は必要ではないかというふうに思うわけでございますので、先生の御趣旨はそういうふうに受けとめさせていただいて、なお検討してまいりたいというふうに思っております。
  216. 江田五月

    江田委員 やはり義務の通知だとしても、就学通知にちょっとリボンでもかけて、どうぞと出してあげるぐらいな、そういうことが案外教育的配慮だというような気もするのですよ。  さて、もうちょっと話を進めまして、最近文部省、日の丸とか君が代について大分厳格に運用されようというような傾向があるようで、以前は、国民の祝日などにおいて儀式を行う場合に、児童に対して祝日の意義を理解させるとともに国旗掲揚、国歌斉唱が望ましいというようなことのようだったのですが、この六十年八月二十八日ですか、「入学式及び卒業式において、国旗の掲揚や国歌の斉唱を行わない学校があるので、その適切な取り扱いについて徹底すること。」今度教課審の中間まとめはもっとこれが徹底してきて、小中高校では「日本人としての自覚をもって国を愛する心を育てるとともに、国際社会の一員としての自覚を一層深める観点から、入学式や卒業式などの儀式的行事における国旗及び国歌の取扱いを明確にすることについて検討する。」まあこれは「検討」ですからこれから検討されるわけでしょうね。そういう方向に進んでいるかに見えるのですけれども、私も別に、日の丸とか君が代は実は何かちょっと君が代という言葉がどうもぴんとこないなという点はあるのですけれども、それは国旗とか国歌とかというのが必要ではないというふうにはもちろん申しませんし、国旗が日の丸である、国歌が君が代であるということをあえて否定をしようとも思わないのですが、しかしいろいろな儀式で、何か日の丸に正対をし国歌を斉唱しなければこの人間は愛国心がないんだという、そういうふうにまで決めつけていくということになりますと、愛国心の表現の仕方まで国によって決められてしまうのか、表現の自由は一体どこへ行ったのだ、愛国心の表現の自由だっていろいろな表現の方法があっていいじゃないかとちょっとすねてみたくもなるのですが、なぜ一体こうまで日の丸、君が代ということを一生懸命言われるのでしょうね。
  217. 西崎清久

    西崎政府委員 国旗、国歌に関して学校教育での扱いはもう先生御案内のとおりでございますが、その趣旨としましては、やはり日本国民としての自覚を子供たちが持ち、国を愛する心情を育てる、あるいは将来国際社会において尊敬され、信頼される日本人として成長していくためにはやはり国旗、国歌に対する正しい認識を育てることが大切だ、こういうふうな考え方で、これは先生お話しのような祝日とか儀式などの問題ではなくて、やはり各教科社会、音楽、特別活動等においても、いろいろ国歌、国旗についての正しい理解を深めるということは学校教育で従来から指導してきておるところでございます。  冒頭、先生から、昨年にわかにそれを強化したのではないかというお話でございましたが、昨年高石初中局長名で出されました通知は、特別活動に関する調査というのを五十九年度において行われましたところ、いろいろな特別活動の中で国旗掲揚等が非常にばらつきがあるというふうなことで、その点についてはさらに学習指導要領に基づく国旗掲揚、国歌斉唱について、学習指導要領に従った一つの実施について望ましい姿として慫慂するというふうな趣旨で出したわけでございまして、先生御心配の画一的ではないかという点については、学習指導要領には基礎・基本的な教育課程におけるあるべき姿というものを書いてあるわけでございまして、国旗、国歌に関する取り扱いもそういう姿として各学校でも実施していただくことが望ましい、こういうふうな考え方でやっておるわけでございまして、これは必要なことであるということで私どもは従来から指導しておるわけでございます。
  218. 江田五月

    江田委員 私は儀式というものの心を打つ力というのをときどき考えるのですが、私が大学の三年のころに東京オリンピックがありまして、三年といっても五年目の三年なんですけれども、閉会式の光景を今でも思い出すのです。  「東京五輪の幕閉じる 皮膚の色も国境も越えて」。今新聞の切り抜きを幾つか取り寄せてみたのですが、松沢一鶴という人、この人は実は私がずっとやっております神伝流の水泳の大先輩なんですが、この方が「会心の演出、男泣き 式典の神さま 報われた苦心」と書いてあるので、そのことは大変うれしいことなんですが、しかし実は、閉会式の成功というのは会心の演出ではなくて巧まざる演出であった。八列縦隊できちんと並んで入場するはずであったのが、主催者側の意図は全く無視されて、  第一団の選手たちは腕を組み「ウォー、ウォー」と、叫びながらトラックになだれ込んできた。こうもりガサをぐるぐる回す者、また、演奏中のブラスバンドの前で、カサを振って指揮のマネをする者、列から勝手に離れ、逆戻りする者、芝生にカメラをすえ記念撮影する者。たった一人だけランニングシャツでかけ込んできた黒人選手。「八列に並んでトラックに沿って行進して下さい」「それぞれのプラカードのあとに並んで下さい」の、英、仏語のアナウンスも一向にきき目がない。フィールドの真中で、円陣を組んで踊り出すのもいれば、満場の拍手に気をよくしてトラックを二周するのもいた。  この中で、日本の梯団だけがぴしっと並んで行進をしていたというのがいかにも奇妙だ。やはりそういう心の通い合い、これは儀式だからといって形式ばかりきっちりしていることによって心が通うのじゃないんで、逆にそういう形式ばかりきっちりすることによって面従腹背を助長することになると、一体これが教育的機能であるかということになると思うのですね。そのあたり、余り一つの固定化した儀式のやり方を、これだといって強い言葉になりますが押しつけるのでなくて、いろんな形があるんだ、あるところでは子供たちに自由にやらしたっていいじゃないかという、もっともっとそういう自由な儀式のあり方というのがあってもいい。私どもも、議員の仕事をしておりますといろんなところでいろんな儀式に出ますね。どうも外国での儀式と比べると、日本の儀式は随分固いんじゃないかという気がして仕方がないですよ。そういうことを考えますと、日の丸、君が代というのも、国旗、国歌の論争はひとまずおいておいても、余りかたくなになられない方がいいという気がして仕方がないのですよ。  これは大臣のお考え、まあ大体わかっているようなものですが、私の今のような主張にどういうふうにお答えになりますか、答弁してみてください。
  219. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 御意見として承っておきます。
  220. 江田五月

    江田委員 話をかえます。教育課程審議会家庭科の男女の共修について大きな方向が打ち出されました。この家庭科問題、私も前々からこの文教委員会でも何度も申し上げてまいりましたが、大臣にもひとつぜひ御理解をいただいておきたい。  これからの時代、やはり男は外で仕事、女は家庭を守って、そういう役割分担というのはだんだん変わってくると思うのですね。あるいは女子差別撤廃条約批准という世界の大きな風潮もこれありで、変わってくるようにしていかなければいけない。それだけではなくて、次第に家庭というものが核家族になって、子供たち家庭なり生活なりを毎日の家庭生活の中で受け継がしていくという機能が家庭に薄れてきているという点もあるだろうし、あるいは今度逆に家庭生活というものが昔と比べて非常にいろんな要素が入ってくることになりましたね。  例えばクレジットカードがある。どういうふうにクレジットカードを使うかというような素養もなしに、これは持っていけば幾らでも買えるというので、買い過ぎて家庭が破産して夫婦が別れてというような悲劇も少なくはないですね。あるいは子育ての問題にしても、児童心理学の基本くらいなことはどこかでちゃんと覚えておかなきゃならぬという時代になってきているとか、食品の問題、家の中で赤や黄色でまことにきれいな色のついたものばかりがいいわけじゃないぞというようなことを覚えておく。ごみの問題、下水の問題あるいはしつけの問題、今なかなか難しいセックスの問題、そうしたさまざまな生活の知恵、人間の自立していく基本的技術、これを学校教育の中で男女ともに、しかも一緒にきちんと教えるべし、そういう主張が随分強くなって、そういう声を受けて検討会議ができて、その結果を受けて今回教課審で中間まとめの中にも一つの方向が出されておるわけですが、ひとつ大臣、そういう家庭生活というものを学校教育の中で、男女ともに、男性の生き残りのためにもちゃんと教えておかなければならぬという主張に対する大臣の見当みたいなものでいいですから、感想を伺っておきたいと思います。
  221. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 今回の中間まとめによりますと、男女ともすべての生徒家庭に関する科目の中から一科目単位にする、こういうのですが、これを必修させるという方向が示されております。  仰せのように、今日家庭の中で男女の果たす役割というものは、以前のように「おい、お茶持ってこい」という式のものではない。これはもう若い人は自然に体得してきておると思うのでございまして、それを要するに教育的効果のあるように教えていくということ、これが学校教科だと思いますが、一科目につき四単位必修にするということでございますから、おっしゃっている趣旨は大体学校で実現されておるのじゃないかと思います。
  222. 江田五月

    江田委員 学校で実現されているんじゃなくて、学校で実現するようにしようということですからね。ぜひこれは大臣、後退しないように、前へ進めるようにお約束をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  223. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 最終的には教育課程審議会の結論が出るわけでございますが、私たちもそれは進めていきたい、こう思います。
  224. 江田五月

    江田委員 そこで、この家庭科の問題については女子差別撤廃条約の批准との関係もあって動きが出てきたわけですが、外務省は女子差別撤廃条約の国内における履行といいますか実現の実態をつかんでいかなければならぬと思いますが、この教課審の中間まとめの内容については文部省から報告とか説明とかを受けておりますか。
  225. 金子義和

    ○金子説明員 お答えいたします。  十分に連絡を密にしてやっております。
  226. 江田五月

    江田委員 中間まとめですと、高等学校家庭科の見直しについては女子差別撤廃条約の関係についての記述がありますが、中学校の技術・家庭科の部分にはこの条約についての記述はないけれども、これはなくても当然女子差別撤廃条約との関係でこの条約に違反しない、この条約に適合するような方向で実現をするんだというふうに外務省は理解されていていいんですか。
  227. 西崎清久

    西崎政府委員 先に文部省の方からお答え申し上げます。  中学校の技術・家庭科の現在の指導要領では、女子はこの領域、男子はこの領域という若干領域についての科目の指定がございまして、先生御案内のようにいささか問題があるということも我々留意いたしまして、いろいろ課程審等でも御検討いただきまして、中学校の技術・家庭科につきましても、今示されておるのは十一領域、木材加工、金属加工等でございますが、この十一領域の中から、男女を区別しないで相ともに四領域についてはすべての生徒に履修させるというふうな扱いに変えようというふうな教育課程審議会の方向が出ておりますので、こういう方向で行いますならば、高等学校と相ともに、決して問題になることはないというふうに理解いたしております。
  228. 江田五月

    江田委員 外務省もそういう理解でいいんですか。
  229. 金子義和

    ○金子説明員 お答えします。  我々もそのように理解しておりまして、外務省としては中学、高校ともに教育課程についての機会が男女同一となることが予定されていると承知しております。
  230. 江田五月

    江田委員 もう一度念を押しますが、この中間まとめ、これは教育課程審議会の最終結論を待たなければわからぬわけですが、中間まとめの方向で結論が出されますと、外務省としては当然中学校と高等学校については家庭科は男女が一緒に必修で学ぶことになる、こういう御理解ですね。
  231. 金子義和

    ○金子説明員 そのとおりでございます。
  232. 江田五月

    江田委員 文部省ももちろんそれでよろしいですね。
  233. 西崎清久

    西崎政府委員 そのような方向で対処をしてまいるつもりでございます。
  234. 江田五月

    江田委員 高校の家庭科は、この中間まとめですと「家庭一般」それから「生活技術」 「生活一般」と三つもあるのですが、「家庭一般」だけですとまずいんですか。「生活一般」「生活技術」というのが同時並行的になければうまく動いていかないのか。さらに、その「生活技術」の中に電気、機械、情報処理、園去という技術科のような内容がありますけれども、これは高校家庭科の中に技術科が入ってくるということなのか。それともそうではなくて、あくまでも家庭生活ということが貫かれた限りでの電気とか機械とか情報処理とか園芸とかいうことなのか。つまり技術科の先生が教えるんじゃなくて家庭科の先生が教えるということなのか。ここのところを聞かしてください。
  235. 西崎清久

    西崎政府委員 今回の教育課程審議会の中間まとめの考え方の問題でございますが、男女とも家庭科を必修にするという前提に立ちまして、もう一点、家庭生活に関する基礎的な知識という押さえ方をしたい、これが基本でございます。  そういたしますと、家庭生活に関する基礎的な知識という押さえ方をした場合には、従来の「家庭一般」は食物あるいは被服、調理というふうな事柄が主でございましたが、それだけではいささか狭い。もう少し広く、先生指摘のような技術的なものとか園芸的なものとか、そういうふうなものもやはり家庭生活に関する基礎的な知識のカテゴリーに入る、こういう考え方があると思うわけでございます。そうしますと、一つは「家庭一般」についても教育内容を組みかえる、中身を改訂しよう、それ以外に「生活技術」という科目あるいは「生活一般」という科目を設けて、それぞれの教科科目内容は今申し上げました家庭生活に関する基腱的な知識という前提で少し組んでみよう、こういうふうな前提であろうかと思います。  その中身につきましては、これから課程審の分科会でいろいろ御検討いただくと思うわけでございまして、まだ私たちもその最終的な方向はこれからということで承っておりませんので、全体の姿あるいは考え方は以上のような考え方であろうというふうに理解しております。
  236. 江田五月

    江田委員 時間が大分迫ってまいりましたが、「生活一般」の場合には二単位を「生活一般」で、あと残り二単位は他の科目でかえることができるようにすることについて検討する。これは実際に例えば教室を整備するとかあるいは教師を養成するとかということがすぐに間に合わない場合があるからということだろう、したがってあくまで例外であって、当分の間で、必ず四単位になる方向で努力をされると期待をしたいと思いますが、それでよろしいかどうか。  それから、今の家庭生活に関する基礎的知識と技術ということでこの三つの教科をくくってみて、「生活一般」の最初の二単位家庭生活に関する基礎的な知識と技術に集中される、さらに今の「家庭一般」もあるいは「生活技術」もその部分については共通した内容にする、二単位分については。そういう知恵もあるかと思いますが、いかがでしょう。
  237. 西崎清久

    西崎政府委員 碓かに教育課程審の中間まとめにおきましては、御指摘のとおり「生活一般」につきまして四単位のうち後半の二単位についてはいろいろと「生活一般」の科目関係が深い、例えば技術とか情報という科目、あるいは体育等の履修をもってかえることができるようにするというふうなこと、これも課程審としてもそういう方向について検討するというふうにおっしゃっているわけでございまして、それらの扱いもこれからでございます。  「生活一般」の中身でございますが、家庭社会、消費と経済生活、健康と食生活、結婚と育児というふうなものが前半。それから後半は、調理、服飾、住居、児童心理、消費生活、家族関係家庭看護というふうに、若干前半と後半について現段階でも区分をした扱いを考えてはどうかというふうな中身になっております。今後、これらにつきましてはさらに検討を加えて、方向性を見出しつつ考えていかなければならないというふうに思っております。
  238. 江田五月

    江田委員 先ほど私は、家庭生活というものについての国民考え方も随分変わってきている、大臣もそういう趣旨のことをお答えくださいましたが、一方で総理府の家族・家庭に関する世論調査というのがありまして、男の役割は生活費を得ると考える人が八七%、掃除、洗濯、食事の支度、後片づけ、家計管理などは男女いずれも九〇%前後が妻の役割と考えていたとか、どうも男と女、夫と妻、役割分担がいいんだというふうに考える人が随分多かったというふうに新聞で報道されたりしているわけです。だからこそ家庭科の男女共修を進めなければならぬと言えるかもしれないとも思いますし、しかしこんな調査なのかな、もっと何か世の中、人の意識というのは変わってきているのじゃないかなという気がするのですが、総理府の方でこの調査について、実はこういう調査でございましてということがございましたら、ぜひひとつ釈明をしていただきたいと思います。
  239. 坂東眞理子

    ○坂東説明員 先生が今おっしゃいました調査、私どもといたしまして聞きましたのは、お宅では次に挙げるような日常的な役割は主としてどなたの役割ですかという実態について聞いたものでありまして、だれがするべきだとか将来こうすべきだとか、そういう価値判断にかかわるものを聞いた調査ではございません。
  240. 江田五月

    江田委員 どうも価値判断にかかわる調査であったかのようにいろんなところで引用されておりますので、ぜひこれは坂東さん、何か機会を見つけて、そういうものではないんだ、総理府としてはもっと違った家庭生活のあり方を考えているんだというようなことを大いにPRをしていただきたいと御要望申し上げます。  時間がもうちょっとだけあるので、最後に著作権法の問題ですが、(発言する者あり)特別許諾の関係のことが大変にこじれてしまっているようですが、文化庁の皆さん、せっかく去年あんなに努力をして、この寡作レコードあるいは新作のレコードについても権利の集中的処理機構をおつくりになっておるのに、これが崩れてしまっているというのはまことに残念なこと、ざんきにたえぬことではないかと思いますが、どうするおつもりですか。
  241. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 昨年春から一年間、貸しレコード業者及びレコード製作者の間で合意が成立いたしまして、貸しレコードについて円滑な運営が行われたことは評価しておりますが、その後、一部のレコード製作者が一部の貸しレコード業者を相手取りまして貸与禁止仮処分申請が提出されまして、これにつきまして去る十一月二十日に東京地裁の仮処分申請についての決定が下されたところでございます。この決定に基づきましてまだ当事者間で争いのあるところでございまして、私どもとしての見解を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、私どもはこの制度が当事者間の円滑な合意に基づきまして運営されることに強い期待を持っておるわけでございまして、必要があれば指導もしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  242. 江田五月

    江田委員 私は三時十五分から質問を始めまして、質問を終わったのが四時四十四分で、ただいま答弁が終わったのが四時四十六分ですので、答弁が一分長引いたことについては自民党の理事さんにおわびを申し上げますが、それは私のせいではないので、今後ともよく事実を確認して不規則発言をいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  243. 愛知和男

    愛知委員長 次回は、来る二十八日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会