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近藤国務大臣 為替レートがどの水準が適正であるかというのはなかなか難しい問題でございまして、まさに各
調査機関の
調査結果も多少の幅を持っている。ですから、
比較の対象にどういう物資を使うかによって計算の結果は全然違ってまいりますし、ある人が言うには、
日本はともかく住宅費がべらぼうに高い、殊に東京都のマンションとか住宅。ですから、住宅費指数でいわば購買力平価を
比較すれば、計算すれば、それはもう一ドル二百円なんてものじゃない、もっとはね上がってしまうよなどということを言う人もおりますから、それぞれなかなか難しい問題でございますが、私
どもは、G5以前の二百四十円レートというのは、少なくとも経常勘定のバランスを維持するんじゃなしに、やはり当時の
アメリカの高金利につれて
日本から大変な資金が流れておりました、だから、そういう経常勘定だけじゃなしに資本勘定も加えての当時のいわば
市場レートであったというふうに解釈しているわけでありますが、それは、経常勘定レートを
考えれば当然非常に円安・ドル高である、これを調整しようというのがG5、プラザ合意後の基本的な精神だったと
考えるわけであります。そして先般十月の末に宮澤・ベーカーの合意が発表されたわけでありますが、その合意の中で言っておりますことは、プラザ合意後の円ドルレートの調整過程が進んで、あの段階で達せられておる水準が日米両国
経済のファンダメンタルズを反映したものである、もしくは反映したものに近い水準であるという評価から、認識から、これ以上意図的な円ドルレートの調整は必要がないと
考える、したがってこれ以上意図的に
政策的にレートをどうこうすべきではない、したがって百六十円前半ぐらいのレートが大体いいのだと間接的に読み取れるような合意になっているわけであります。
問題は、今、民間企業の平均でも百七十円だから、なおかつ十五円ぐらい差があるんじゃないか、どうするんだ、こういう御
意見でございますし、私のところにもそういう御
意見が具体的な業界から、為替レートの安定と言うけれ
ども、今の百六十円のレートで安定されては困るので、できればもっと円安の方向で持っていってもらいたい、こういう強い御要望があることも事実でございます。
ただ、
先生、私心配いたしますのは、そうは言っても、現在の日米間の経常収支の黒字は依然として大幅なものがございます。いわゆるJカーブ効果があっても、それを引いても大幅なものがあって、これが近い将来に一挙に改善されるという
見通しは、いろいろ内需拡大、規制緩和、そして
市場アクセスの
推進とやっておりますけれ
ども、そう簡単にこの日米間の黒字幅が一挙に解決することがないとすれば、やはり対米黒字、そして累積債権がどんどんふえるという
状況の中で、仮にこの円安傾向が進んで百七十円、百八十円と行ったとしても、片一方で経常収支の黒字が続けば、やがて
円高圧力がまた再び対米
関係また
国際的にも強まってきて、せっかく下がったものがまた百六十円、百五十円、万が一百四十円などということに変動しないとも限らないわけです。そういう
円高是正も必要だけれ
ども、しかし、そのことによって逆に反動を招いて円レートが不安定な
状況になる、非常に急激な激変を続けるということは、まさに
日本の企業にとっても大変な
状況でございますので、
円高是正は望ましいものの、私はまず円の現行水準あたりの安定が当面必要最低限度の我々の
考え方である、こういうふうに思うわけでありまして、そこから後どうするんだということについては、多少長期的にいろいろ
考えをしていかなければならぬと思うわけであります。