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1986-10-30 第107回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月三十日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 河上 民雄君    理事 青木 正久君 理事 伊吹 文明君    理事 二階 俊博君 理事 牧野 隆守君    理事 小野 信一君 理事 伏屋 修治君    理事 塚田 延充君       川崎 二郎君    熊谷  弘君       小杉  隆君    渡海紀三朗君       穂積 良行君    谷津 義男君       奥野 一雄君    森田 景一君       岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    田中  努君         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君  委員外出席者         国税庁間税部消         費税課長    大前 繁樹君         厚生省保健医療         局健康増進栄養         課長      松田  朗君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 大澤  進君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 内山 壽紀君         農林水産省食品         流通局消費経済         課長      樋口 久俊君         食糧庁管理部企         画課長     日出 英輔君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       鴇田 勝彦君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     清川 佑二君         運輸省航空局航         空事業課長   平野 直樹君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 河上民雄

    河上委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野一雄君。
  3. 奥野一雄

    奥野(一)委員 最初に、一昨日ですか、石油製品流通あり方を検討しておりました石油審議会揮発油流通問題小委員会中間報告を出しておりますが、報道などを見ておりますと、通産省としては次の通常国会に法案を出す準備をしている、こういうようなことが書かれているわけでございますけれども、この点についてはどういうふうになっておりますか、まずそこからお尋ねをしておきたいと思います。
  4. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 ただいま先生の御質問がございましたように、一昨日、石油審議会の中にございます揮発油流通問題小委員会から、これは去る六月以来十二回にわたって揮発油流通あり方、今後の対策の立て方について御審議をいただいておったわけですが、中間取りまとめという形で中間報告をいただいております。  報告中身といたしましては、御案内のとおり、品質確保問題、流通構造問題、市場秩序問題、構造改善問題等々のポイントにつきまして、今後の対策方向性についていろいろ示唆に富む御指摘をいただいておるわけですが、今後通産省といたしましては、この中間報告を受けまして、最大限報告の趣旨を生かすよう、また諸般の状況も見きわめながら、具体的な対策内容を検討してまいりたいと思っております。何分にも一昨日いただいたばかりの報告でございますので、具体的に報告のどの部分についてどういう問題があり、具体的な実行に当たってどういう技術的な問題があるか等についてはまさに今検討を開始したところでございまして、御質問にありますような揮発油販売業法改正まで至るのか否かにつきましても、今後早急に対策内容を決定いたしまして、その絡みで必要があれば法律を出すということを考えております。
  5. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私は急いでもらいたいと思っているわけであります。それは確かに一昨日報告が出されたばかりだ、こういうことでありますけれども、途中の議論の経過とかそういう点については当然御承知おきではないのかな、こう思うのです。そういう点からいきまして、法律改正するか行政指導でやるかいろいろあると思いますけれども法律改正といったってこれも行政指導の一部分だというふうに思いますが、今までのいろいろな施策というものを見ておりますと、例えば豊田商事の事件の問題とか今の円高対策とか、どうも行政対応というのが少し後手になっているのではないか。もちろん行政の場合には先取りをしてやることは非常に難しいということは私も承知をしておるわけでありますけれども緊急性を要するとか、あるいは報告内容を読ませていただきますと、やはり漫然としているというわけにはいかない部分があるように思われるんですね。そういう面では可及的速やかに態勢をとるように、これは御要請を申し上げておきたいと思います。  それで、書かれていることについて若干お尋ねをしておきたいと思うのですが、この中間報告中身を見ますといろいろなことが書かれております。そのうち一つは、品質の問題もあるわけでありますけれども粗悪品流通ということについても書かれているわけであります。これは具体的にどういうことなのかお知らせをいただきたい、これが一つでございます。それから、これは、恐らく揮発油販売業法第一条の「目的」あるいは第十三条、こういうものに違反をすることになるのではないかと考えられますが、この点についてはどうであるのか。それからまた、品質保全とか品質検査体制というものについての対応、これは恐らく従来からもやられてきているのだろうと思うわけでありますけれども、その辺のところを教えていただきたいと思っているわけでございます。
  6. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 お答えいたします。  先ほど、答申一つの柱としまして品質確保対策、これが緊急であるということでございまして、先ほどの御質問にも関係するのですが、法律改正を伴わないで実行できるものは、省令改正等でやれるものにつきましてはできるだけ早くやりたいと思っております。  品質確保対策が問題になってきました経緯といたしましては、先生御存じのように、ことしの夏愛知県を中心にしまして千件以上のエンジントラブルが起こるような粗悪ガソリン販売事件被害がございました。従来、現行法では揮発油灯油をまぜる場合には四%を超えてはいかぬという規定がございますが、今お話をいたしました愛知県の経緯で申し上げますと、具体的に混入されたものは灯油ではございませんで、ガム質といってガソリンの中に通常は混入されておるものなんですが、これが一定量を超えますとエンジン目詰まりを起こして突然エンジンがとまってエンストを起こしてしまう、そういう問題でございました。したがって、本答申の中でも、ガム質については緊急に規制対象に加えなさいという具体的な提言がございます。  我が方の行政対応といたしましては、去る七月のガム質に起因します事故につきましては、規制物質として対象としておりませんでしたので、通常考えられます販売店業務停止命令とか最終的には登録の抹消という強硬措置はとれなかったわけですけれども、名古屋の通産局長の方から具体的に販売店の方に警告を発しておりますし、各元売支店長等にも指導をいたした経緯がございます。今後は、ガム質、それに加えてメタノール審議会では指摘されておりますが、これらの混入につきまして、具体的な規制値といいますか、技術的な値を決めまして早急に規制できるようにやっていきたい、そう考えております。
  7. 奥野一雄

    奥野(一)委員 業界紙なんかの報道を見ますと、今お話がございましたように特に東海地方中心にして随分たくさんのトラブルが起きているようでありますが、全国的な状況というものについても把握しておられるか。それから、事故車に対する補償状況。また、これは販売店の方でやられているのではないかと思うわけでありますけれども、あるいはまた元売あたりにそういう問題がなかったかどうか、そういう点も含めてお尋ねをしておきます。
  8. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 全国的な被害状況ということになりますと、一般論で申し上げますと、どちらかというと過当競争地域ではどうしても安値乱売合戦競争になりますので、そういった税金のかからないような灯油とかメタノールとかガム質を加えまして価格競争力をつけるということで時々見られておりますが、具体的にこういう固まった形で登場いたしてきましたのは、ことしの夏の愛知県、これが一番大きいケースになっております。我が方にもちろんちらほらと消費生活センター等に対する苦情とか通産局に対する苦情とかは出てきておりますが、それは押しなべて大きな固まりとはなっておりません。  それで、先ほど若干申し忘れたのですが、先生指摘のように、販売店が具体的に被害事例に当たって賠償をやっておられたわけですが、先ほどの愛知県のケースで申し上げますと、約七百件ぐらい、これは通産局が調べた情報ですが、いろいろな被害請求賠償請求販売店の方へ出てきております。私ども承知しておるところでは、その七百件につきましては、金額の多寡等についていろいろ問題があるかもしれませんが、一応全数処理されている、前向きに対応されていると聞いております。  それから元売責任といいますか対応の問題なんですが、現実問題といたしましては、元売さんから出ておるガソリンそのものに、これはJISを守っておりますし、品質的に問題のあるケースというのは非常に少なくて、どうしても末端で混入されるというケースがほとんどでございます。ただ、今回の中間報告でも、販売店だけを相手に消費者賠償請求をするというのは、経営体質の非常に悪い業界でございますので、消費者保護最大限の配慮をするという観点から、ちょっと不十分じゃないかということで、元売さんにも何らかの意味で問題が起きたときには補償責任を持たせるような仕組みを考えてみたらどうかという御提言がございまして、これは行政指導でやれるのかあるいは法律でやるのか、先ほどの最初の御質問にも絡んでくるのですが、できるだけ早く対応できるように元売責任についても対応してまいりたいと思っております。
  9. 奥野一雄

    奥野(一)委員 先ほど聞いていてお答えがあったのかどうかちょっとうっかりしておったのですけれども、それはまた後で聞きますが、実際には販売店の方で、末端の方で粗悪ガソリンというものを混入してやっておるというのが多いようでありますけれども元売というのですか、これはいずれも有名な名前になっておるわけですけれども、こういう元売業者というものはもう当然自分の系列販売店に対してはそれなりに指導や何かもしているのじゃないかというふうに思うわけです。やはり有名な元売系列というと看板がかかっているわけですから、そこの信用を傷つけるということになりますね、そういうことをされれば。だから、そういうことについては元売業者だってただ黙って手をこまねいているということは通常ないのじゃないかと思うのですけれども、各元売業者というのは、そういう販売店や何かに対しての指導とか、検査ということにはこれはならないかもしれませんが、そういう体制というのはどういうふうにして日常やられているのか。  それから品質の問題については、先ほど、品質保全の問題あるいは品質検査体制の問題、そういうのが従来から行われてきていたんではないのかな、こう思っているわけですが、その体制について何かお答えがなかったように思っているのですが、その点を含めてまたひとつお尋ねしておきます。
  10. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 お答えいたします。  元売チェック体制といいますか指導体制、これは当然のことながら、各日石なら日石コスモならコスモサインボールを掲げておりますので、我々消費者の方も当然そこでは日石の物が一〇〇%売られているという前提で信用して買っておるわけです。したがって、被害を生じた場合には当然元売も何らかの責任があっていいだろう、これは先ほど申し上げた委員会からの御指摘でもございます。  ただ、実態は、元売販売店さんの契約というのは、よその系列の物を買っちゃいかぬよというところまでは独禁法の絡みがございまして規定し切れないところがございまして、最終的には指導はしておるのですが、末端で何かまぜ物があるというケースも間々起きやすい。特に過当競争地区なんかでは起こりやすいというのが実態でございます。これは従前から我が方も元売を通じて指導をしておりますが、若干の限界がございますので、今後対応策を考えようと思っております。  もう一点の審査体制の方ですが、先生御存じのように、現在SS販売店レベルで十日に一回自己分析自主分析義務を課しております。ところが、これがSSさんにとっても非常に負担になるものですから、石油協会という社団法人を使いまして委託で分析するという便法もとっております。それからさらには、試買検査といいまして、石油協会従前ですと二万六千件年間に試買検査をしてチェックをする。今年度からは幸い予算がつきまして五万九千件全数チェックできるような体制になってきております。
  11. 奥野一雄

    奥野(一)委員 品質管理の方のものは、法律上にもそういう条項があるわけですから、きちんと守れば問題は起きないということになるわけです。  それで、なぜそういうようなことになるのかということを考えてみると、一つは、石油製品の場合には課税になっているのと非課税の物とがあるわけでありまして、課税ガソリン非課税灯油とかナフサ、こういうものをブレンドして売るということになるともうかるというのですか、そういうことになるわけだと思うのです。そういう点からも始まってきているのではないかと一つは考えられるわけでありまして、そういう業者が実際にはおるからこういう事故事件が起きる、こういうことになると思うのです。そういう面で、国税庁の方ではこうした脱税ガソリン摘発を行ってきているわけでありますけれども一つはその状況と今後の対応についてお尋ねをしておきたいと思います。  それから、今申し上げましたように、これは品質管理というのがきちんと行われているとこういう脱税という行為も出てこない、こう思うわけであります。一昨日中間報告が出されたばかりでありますから、これに対してどうのこうのということはまだないというふうに思いますけれども、実際に今言いましたように品質管理というのがきちんと行われておればこういう脱税行為や何かということにもならないと思うのであります。そういう面では国税庁としてエネ庁あたりに何か要望されるようなことがあったら、ついでにお聞きもしておきたいと思うわけです。
  12. 大前繁樹

    大前説明員 お答えいたします。  最近の五年間におきます脱税ガソリン摘発状況につきましては、おおむね合計で十二件摘発をいたしました。これに基づきます揮発油税及び地方道路税逋脱税額は約六億六千万円ということになっております。国税庁としましては、従来から市販ガソリンを買い上げましてこれを検査いたしまして、そういうところを端緒にしまして的確な情報収集を行っておりまして、脱税ガソリンの発見に努めておるところでございます。今後も同様の方針で脱税ガソリンの捕捉と厳正な処理に努めていきたいと考えております。  また、いろいろな分析体制も長いことやっておりますが、エネルギー庁にも分析の知恵をいろいろおかりしながらやっていきたい、かように考えております。
  13. 奥野一雄

    奥野(一)委員 これはどっちの方になるのかということはちょっと今わからないのですけれども通産の方は品質管理というようなことについて当然やられますわね。それから国税の方は、何かそんなような気配があるということに対して調査に入る、こういうことになるのだろうと思うのです。あるいはまた、何にもないのに、何にもないのにと言うのは変ですけれども、例えば通産がやられるような、あるいは業界が先ほど言われた試買でもって品質検査を仮にやる、それとの関係はどういうふうになるのか。お互いに全く連携なしでやられるというような仕組みになっているのでしょうか。それとも何か連携を取り合いながらやられるというようなシステムになっているのでしょうか。
  14. 大前繁樹

    大前説明員 国税庁の行います調査は二種類ございます。一つ任意調査といいますか質問検査権に基づく調査でありまして、これは犯罪調査のためのものとは解されておりませんで、いわゆる帳簿検査的なものになるわけであります。もう一方の調査国税犯則取締法に基づくものでありまして、これは犯罪捜査であります。脱税犯摘発ということになります。したがいまして、あくまでも脱税に関する調査でありますので、私どもの方で内部で分析をしております。  また、国税庁には鑑定企画官室というのが置かれておりまして、各国税局にも鑑定官室というものがありまして、一応の専門の分析体制を持っております。ただ、常に業界等の動向を我々も情報収集しておりますし、少しお互い目的が違うと申しますか、私どもの方は課税目的ということでありますので、そこは情報連絡がありますが、我々には守秘義務が課せられておりますのでぴったりと同じというわけにもいかないのですが、そこはお互い連携をとりつつというような感じでございます。
  15. 奥野一雄

    奥野(一)委員 わかりました。国税庁の方は結構でございます。  次に、この報告によりますと、安値による乱売が激しい地域は、国が指定して一定期間規制を続けるが、そのかわり構造改善を義務づけるというような感じになっているわけでありますけれども過当地域というものの判断基準、これはどういうものを過当地域と称するのか、それからまた一定期間というのはどのくらいのことを想定しているのか、それから構造改善基準、それからそういう構造改善をやらせるということにしておいても履行しない場合どういう措置をとられることになるのか、わかる範囲内で結構でございます。過当地区のものは、私もいろいろ考えてはみたのだけれども販売店の数によって過当地域であるとかそうでないというふうに決められるのか、あるいは乱売状況というのですか、そういうものによって判断をされるのか、その辺のところをちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  16. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 指定地区指定基準でございますが、指定地区制度というのは現行揮発油販売業法に既にございます。大まかに言いまして三点基準がございます。第一点は、販売数量基準と申しまして、通常考えるところでは過当競争地域というのは一SS当たり販売数量というのはどうしても過当競争を反映して全国平均あるいは当該都道府県平均を下回る可能性があるだろうということで、著しく全国平均等を下回る場合にはまず該当するだろう、これが第一の要件でございます。第二の要件が、経営状況基準と称しているのですが、経営状態が非常に悪い。簡単に一例で言いますと、営業利益率が二年間続けて赤ないしそれに相当するような状態である。もうかってないということですね。三点目の基準といたしましては、実際上競争状況基準と称しますが、ガソリン価格全国平均等に比べてやはり著しく低くなっている、実際に安値になってしまっているという三つ基準現行基準でございます。ですから、先ほど先生が御指摘になりましたSSの数がどうなのか、これは間接的には販売量等々に響いてくると思います。  そういうことで、具体的基準は三点でございますが、今回の答申の中で指摘されておりますのは、第一の販売数量基準というのは実態に合っていないのじゃないか。といいますのは、過当競争地域というのは郊外の街道沿いとかこういうところが中心になっているわけですが、ここは過当競争いたしますと安値廉売販売量全国平均より結構多かったりするわけですね。そうすると、この基準がございますと第一のハードルで落っこちてしまうわけですから、ここを直したらどうかという御指摘が具体的に出ております。他の、価格が安くなっているとか経営状態が悪いとかといった基準は、当然存続して指定要件にすべきだろうと考えております。  それから、第二の御質問にありました指定期間の長さでございますが、現行は一応三年間ということになっておりまして、延長が可能でございます。ただ、限界といたしましては、一応五年間を最長とする、その間に過当競争地域から脱皮していただきたいという基準をとっておりますので、もしその新たな基準に基づいて指定地区をつくるという場合にも、この現行期間というのはある程度参考にせざるを得ないと考えております。  それから、構造改善義務を課して、実際その構造改善計画の中に入る内容あるいはその審査基準でございますが、これは、この業界は既にことしの四月から中小企業近代化促進法に基づきまして構造改善事業を始めております。情報化とか集約化とかあるいは業務多様化、いろいろなメニューが既に出ておりますので、当該指定地区につきまして、その地区の特性に応じまして、最も早急にやるべきであるというメニューについてチェックしていくということになると思います。  それから、指定地区として指定いたしまして、例えば三年間指定地区のメリットがいろいろ受けられるということになりますが、もし構造改善事業を実施していないときにはどうなるのかという点につきましては、委員会でもいろいろ議論がございまして、例えば一年後とか二年後とかにレビューをして、実施状況が悪い場合には勧告をしてしりをたたくとか、そういうスキームを考えてみたらどうだという御指摘もございます。もちろん答申の中には具体的な内容が書いてございませんので、先ほど申し上げた具体策を早急に講ずるという中身として検討していきたいと思っております。
  17. 奥野一雄

    奥野(一)委員 この報告に基づいて今何とかしなければならないなと思われる過当地区というのは大体どのくらい存在していますか。
  18. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 先ほど申し上げましたように、第一の販売量基準を外しますと今までと大分数が変わってくるわけですが、現在、現行のその三つ基準指定されておりますのが約四百強の市町村。単位は市町村及び特別区でございますが、先生御存じのように全国的には三千三百ぐらい市町村がございますから、一割強が今指定されている。新基準に基づいてどうなるかというのは、統計的に最新の数字を選ばないとわかりませんので、現在ちょっと申し上げられない状況です。
  19. 奥野一雄

    奥野(一)委員 この報告の中では、従来一店の進出に一店を廃止するというスクラップ・アンド・ビルド、この規制を撤廃してガソリンスタンドの出店自由化、こういうことを図るということになると思うのですけれども、きのうの朝のテレビか何かを見ておりますと、結局は自由競争をさせて自然淘汰によって減らしていくのだというような意味の解説をちょっとしておったわけなのですけれども、この考え方で、国が指定をする過当地区以外については原則的に出店規制というのは今度はやらないということですから、仮にそういうふうになっていくというと、自然淘汰というような形の中でうまくいくということになるのか。そこの視点というのですか、この辺のところが私ちょっとわからないわけなのですけれども、むしろ逆に過当競争になっていくのでないのかな、こういう感じ一つするのと、それから、もし自然淘汰ということを基本に考えておられるということであれば、販売業者についての対応ということはそれでいいのだろうかなという感じがするわけですね。現在全国で約五万九千くらいの給油所があって、皆さん方の調べでは、そのうちの四八・八%、業界は、もう全く一〇〇%だ、こう言っておりますけれども、四八・八%が赤字経営ということになっているわけですね。そういうような状況の中で、自然淘汰というものをねらうような形の中で、指定した過当地区以外については、出店規制を取り払って、どんどんおやりなさい、そういうようなことで現在の販売店の経営安定というのは図られるのだろうか。そういうような点についての見通しについてはどうお考えになっておられますか。     〔委員長退席、小野委員長代理着席〕
  20. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 昨日マスコミでいろいろ書かれたりあるいはテレビで報道されたりしましたが、若干答申の真意を伝えてないところがあるのじゃないかと考えております。  スクラップ・アンド・ビルド制、出店規制そのものにつきましては、従来揮発油需要というのが非常に低迷しておりましたので、過剰と思われる給油所総数をこれ以上ふやさないという観点から、たしか五十四年度からやってきておる行政指導ベースの規制でございます。法律に特に根拠はございません。  本小委員会の中では本件についていろいろ議論がございまして、市場メカニズムをできるだけ活用してガソリンの効率的な供給流通構造というものを、文章をかりますと、早急に構築する必要があるということを言われておるわけですが、同時に、それをやる場合については当面の混乱は絶対回避しなければいけませんよということで、方向性を示していただくと同時に、混乱回避策も一緒にやりなさいという書き方になってきております。  先生が先ほどおっしゃいましたように、自然淘汰をねらっているのか、その場合に経営状態が非常に悪い零細スタンドはどんどん消えていけということなのかという御指摘なのですが、委員会議論されていた考え方を御紹介いたしますと、全国一律に出店規制をかける必要性というのはないのじゃないか、特に、現行法に基づきますと、一応指導ベースでやっておりますので、そのマイナスがいろいろ出ておるのじゃないかということで、問題地区といいますか、そういった出店規制をかけなければいかぬところはきちっと機動的にかけるという前提で、その外側につきましては問題は起こらないという前提で出店規制を緩和してみてはどうかという考え方でございます。  したがって、先ほど申し上げたように、指定地区については、従来必ずしも実態を反映してない傾向もありましたので、基準を直すとかあるいは運用を直すとかいうことで対応いたしまして、全国一律の出店規制というのはやめる方向で考える。その場合も、一つは時間的な問題といたしまして、すぐやるというのはとても無理でしょうから、ある程度の期間を置いて、構造改善の方向とか、あるいは政府としてもいろいろな面で中小企業者に対する助成策を考えながらやっていくという指摘でございます。したがって、その数を減らすということを目的にして出店規制を取っ払うということは考えてございません。  さらに、指定地区制度答申にございますようにうまくワーク、機能いたします場合には、指定地区外につきましては、そういった過当競争でスタンドがつぶれていくというようなことはなかなか起こり得ないであろうという見通しを持った答申でございます。
  21. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私はその辺のところがちょっとわからないのですけれども過当地区については当面すぐ出店規制自由化するということにはならないで、国が指定してそこはある程度の規制はする、しかし、規制はするけれども、先ほど言ったように構造改善なんかを当然やらせていく、こういうことで、そっちの方はわかるのですが、そのほかのところについては、今までやっておったような全国一律の出店規制についてはやめる方向である。だから、それは自由ということに当然なると思うのですね。その自由ということになった場合に、今でもスタンドの系列化というのですか、奪い合いというような形のものが結構激しく従来行われてきたという経過もあるわけですが、今度は、そんなことをしなくたって、車の走る道路であればそこへどんどん進出をしていくということが可能になってくるわけですから、そういうことができるということになるのは大手系列だと思うのですね。だから、そういうものが野放しのような状況になっていくおそれがあるのではないかというように私は思うわけなのです。そうすると、今でさえ全体的に約半分ぐらいのスタンドの方々は経営が悪化をしておる。そういう経営が悪化しているのは本当に過当地区乱売をやっているところだけが赤字経営になっておるのかというと、そうでもないような感じがするわけですね。ガソリンだけではなかなかやっていけないということだから、いろいろな附属品なんかも一緒に販売をやったりいろいろなサービスなんかをやってお客さんを呼ぶように、零細なスタンドの経営者は苦労しながらもやっておるわけなのですが、その出店規制というものが全部外されてしまうということになった場合に、そういう人方に影響を与えていくのではないかな、このおそれが一つあります。  それから、なぜ業者が安売りをするのだろう。まあ商売ですから、一つ価格のものに多少割引ということはあり得るとは思います。その点についてはまた後でお尋ねしていきますけれども、この安売りをする原因は、たくさん売りたいということなのか、もうけたいということなのか、それはわかりませんけれども、これは単に販売店だけの責任責任という言葉が正しいのかどうかわかりませんけれども販売店だけの責任ということになるのか、あるいは元売の方が何かそういうようなことについて指導しているなんていうことはないのか。普通、商売をやっていれば、損しても一遍きりならいいですよ。特売なんていうことをやって一遍きり原価を割っても安く売るとか、あるいは目玉商品を持ってきてそれを原価割れしても安く売ってほかのもので何とかカバーしようという商法なら私もわかるわけです。しかし、ガソリンなんかの場合、一たん値下げして幾らですと店頭に掲示してしまったら、今度は上げられないわけでしょう。そうすれば、先行き経営が悪化することはわかり切っているということになると思うのです。そういうものの原因だとか責任というのは一体どこにあるのでしょうか。本人が悪いということになるのですか。その辺の把握の状況はどうなのでしょうか。
  22. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 先生指摘の後者の方についてお答えしたいと思うのです。  御質問の趣旨はなかなか回答の難しい問題でございまして、この業界が、法律をつくってからもう十年たっておりながら、なかなかその過当競争体質から抜け出られない一つの原因も、その過当競争のよって立つ原因というところが非常に複雑に絡み合っているものですから、解決策が行政といたしましてもあるいは業界といたしましてもなかなか適切な処方せんが見つかっていないというのが現状でございます。  ただ、一般に言われておりますところあるいは私自身が感ずるところでは、販売店及び元売さん両方ともそれなりの安値乱売については事情をお持ちのようでございます。  具体的に申し上げますと、販売店さんの場合でいいますと、売り上げコストに占めます固定経費の割合が非常に大きいものですから、できるだけ消費者の、ドライバーの数がふえればふえるほど石油製品以外の売り上げ、油外商品と我々言っておるのですが、サービスを含めれば洗車だとかあるいはタイヤを売るとかバッテリーを売るとか、こういったメリットが非常にございますので、商品差別化のされていないガソリンについて顧客を呼び込むためには一円でも二円でも安くする。一説によりますと、五円下げると営業が一時的に売り上げが三倍くらいになるという効果があるものですから、どうしても販売店さんといたしましてもそちらに走りやすい状況一つございます。  それからもう一つ元売さんの方の立場でいいますと、ガソリンというのは、原油から精製いたしまして幾つか石油製品が出てくるわけですが、ほぼ唯一と言ってもいいようなある程度採算性のある商品でございまして、できるだけ揮発油ガソリンの販売というものはふやしたいという希望、これは民間企業ですから当然の発想なんでしょうが、それとも相まちまして、例えば我々が一昨年十一月ですか公正競争ルールというのを四つの柱について打ち上げたわけですが、その一つに、事後調整をやるのはやめなさい、禁止するという条項を入れております。     〔小野委員長代理退席、委員長着席〕 これは先生御存じだと思いますが、系列販売店が顧客を引きつけるために安値販売をする、これは例えば仕切り値というか仕入れ価格を下回る価格で売った場合にその系列元売さんが事後的に採算に合うような形で仕入れ値を低く調整してやるという事後調整のような、普通のほかの業界では考えにくいような商慣習も多々ございますので、これは先ほど申し上げた二点が絡み合って生じてきている点でございます。したがって、中間報告の中にも具体的には書いてございませんが、哲学的には、そういった元売さんがみずからの仕切り値について事後に動かしたりするようなことをなるべく差し控えてもらうというようなスキーム、これは指導でやるのか法律でやるのかまさにこれから詰めないといかぬのですが、そういうことをする必要があるという指摘もされております。
  23. 奥野一雄

    奥野(一)委員 時間の関係もありますから、次の部分も今のことに関連をしておりますので、一緒にお尋ねをしていきたいと思います。  一つは、今のガソリンの小売価格というのはどういうふうになっておりますか。大体、平均と極端に安い値段、それがおわかりだったらお知らせいただきたいと思います。
  24. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 お答えいたします。  民間の調査機関に財団法人経済調査会というのがございまして、主要都市、具体的には東京、大阪、名古屋でございますが、月末のレギュラーガソリン、店頭現金売りということなんですが、販売価格チェックしております。それによりますと、最新時点、今月下旬になりますが、二十日以降の値段として百十五円、レギュラーで百十五円という値段、これがこの三地域の平均でございます。ただ、先ほど来お話にこざいますように、この業界安値競争乱売競争等もございますので、地域的に見ますと、高い方の値段といたしましては、東京でいいますと、土地の非常に高いところになりますが、港区とかこういうところは百三十円台とか維持しているところもございますし、低い方からいいますと、最近乱売合戦が起きて頭を痛めたわけですが、福岡とか沖縄あたりで百円を切るような値段も出ております。
  25. 奥野一雄

    奥野(一)委員 揮発油販売業の倒産なりあるいは廃業、転業、こういうようなものを見ますと、まだ結構数が多いわけですね。これは原因は何なんだろう。なぜこういうたくさんの数、六十年だと九百六十六件、こうなっているわけですけれども、なぜこういうふうにして揮発油販売業というものから撤退をしなければならないのだろう。その原因については何かお確かめになったことがございますか。  それからもう一つ、今平均価格が三大都市では大体百十五円。極端な乱売は余り対象にならないと思うのですけれども、この価格についてはどうお考えになっておられるか。今の百十五円なら百十五円という三大都市の価格、大体全国平均はこれに似通った状況だと思っているわけですけれども、じゃこの価格であれば販売業者の方が正常な経営のできる価格だというふうにお考えになっているかどうか。  それというのは、申し上げるまでもございませんけれども、揮販法の十九条には、当該給油所における事業の継続が困難と認められる販売価格、こうなった場合には何とかしなさいというふうに書いてあるわけですね。また、石油業法の十五条の方には販売価格の標準額というものもあるわけですけれども、これに照らしてみて、大体どの程度の価格が適切である。今の原油の輸入状況もありましょうし、消費動向もありましょうし、そういう面から考えて、仮に発表しなくても、おたくの方で、例えばこのくらいの価格以下になっていったらこれは揮販法に言うところの当該事業所の継続が困難と認められる価格になっていくおそれがある。そうなれば経営悪化ということになって、先ほど申し上げましたように、それは一つの原因になっていくのではないかと私は思うのですね。  なかなかその辺のところは、政府が石油業法に言うところの標準額とかなんとかということを決めたりなんかするというのは非常に難しい要素があると思うのですね。一面においては難しい要素がある。しかし、仮に内部的にもある程度のものを持っていないと、指導できないということになるわけでしょう。今まで例えば勧告やなんか出したという事例というのはないように実は私は思うわけですけれども、それだったら何もひどい乱売だという形にならないと思うのですよ。やはり乱売だ、このままの状態ではうまくいかないぞということになってくるから、こういう流通委員会の方でもいろいろな検討をされるのではないかと思う。そうすれば、事前にそのことについては勧告をして、これは余りにも不当過ぎるんだ。それは消費者にすれば安ければいいということになりますけれども、産業というものを扱う官庁ということになりますと、単に安ければいいということだけにはならないのではないか。そういう面で行政指導という問題もあると思うので、そういう面も含めてお尋ねしておきたいと思います。
  26. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 今先生指摘の点は非常に回答の難しい質問でございまして、ガソリン価格は、特に時間の経過とともに、幾らであるあるいは幾らの幅であれば適正な価格であるのかということでございますが、もちろん我が方としてもそういった尺度、物差しが持てれば非常にやりやすいのですけれども、これはガソリンに限らず他の商品ももちろんでございますが、価格というのは、観念論になるかもしれませんが、需給関係というのを反映して適正なところに落ちついていく。これは正常な競争条件が整備されていればという条件は当然あると思いますが、そういったことから、例えば百十五円が採算に合う価格であるかないか、これは各事業者販売業者ごとにコストもかなり違っております。例えば、これは一説でございますが、全国的にいいますと、十五円のマージンがないとやっていけないと言っておられる業界の方もいますし、かなり合理化を進められている方は五円ぐらいでもやれるという方もございますので、一概に原油から積み上げていきまして流通コストあるいは販売店のコスト、それに適正マージンで幾らになるかというのは我々としてもなかなかコメントしにくい立場にございます。  ただ、我々の認識といたしましては、いずれにいたしましても過当競争が存在していることは事実である。揮発油の市場も非常に混乱しておりまして、販売業者の過半が赤字経営をしているという実態にございますので、こういった点については、まさに今度の答申を踏まえて、例えば構造改善、多角化をさせる、商品差別化のないガソリンだけに頼るような販売構造を少し避けて改革をしていくというような形で対応していこうというのが姿勢でございます。  それから、最初にございました転廃業者の数がかなりあるではないか、それについて原因は何なのかということですが、これは公式には調査をいたしたことはございませんが、我々が推測する場合には、五年間続いて営業利益率が赤字とかあるいは悪化してきておりますのでたまたま次の世代に引き継がれるときにもうやめられるとか、そういった自然減少分というのも相当入っていると思います。今後これはぜひ調査をしてやっていきたいと思っております。
  27. 奥野一雄

    奥野(一)委員 今申し上げている点は、先ほど申し上げたように、今度原則自由ということになれば、大手系列というのを私は大変恐れているわけですけれども、そういうところが、政府が指定した過当地域の中ではもうそれ以上当分の間は出店ができないということになる、そうすると、ガソリンの場合とにかく国道を車さえ走っていれば場所はどこでもいいわけですよ、道路沿いであれば大体どこでもいい、こういうことになっていくわけですから、規制のかからないようなところに、解除されるようなところに出ていく可能性がある。それは必ずその沿線の他の方に影響をもたらす。全然影響をもたらさないということはないと思うのです。そういうようなことを頭の中に考えているものですから、そうすると、価格という問題についても、それは行政的に指導するというのはなかなか難しい要素があると思うのですけれども、何らかの指導をしていかなければならない。あるいは何かの品物のようにこの価格はこうなんだと決めるという手もあるのですが、それはなかなか難しいと思います。しかし、そういう配慮をしておかないと、全く零細な販売業者が結果的には自然淘汰をされてしまう運命に陥るのではないかという心配も私はしているわけなんです。  ですから、そういうものがないと、じゃ過当競争というのは何なんだということになると思うのです。過当競争というのは何を基準にして過当競争というのだ、この辺が出てくると思うのです。これはほかの業種だってそういう面ではたくさん過当競争みたいなものはあると思うのです。何が一体過当競争なのか。例えば激安とかいうチラシなんかたくさん入ってきますね。電化製品であろうが生鮮野菜であろうが、そういうものについての安売りというのはどんどん始まっているところがあるわけです。そういうようなものを称して過当競争というのか。この過当競争基準というものが私にはなかなかのみ込めない。  例えば、価格をとにかくどんどん下げるということが過当なのか、たくさんの業者が集まってきて物を売っていくのが過当なのか、そこのところをやはり価格と関連をさせて考えていかないと、指導上万が一誤るということになった場合に、結果的に一番大きな痛手を受けるのは零細の販売業者にならざるを得なくなっていくのではないか、そういうおそれを私は持っているわけであって、そういう面から適正な価格については内部的に業界指導されるとか、いや自由競争なんだからそれはどんどんやっていいのだということになるとこれはまた別な問題になってくると思うのですけれども、それだったらこういう中間報告なんか出される必要もまたないのではないかと思うので、その辺のところをもう一回だけちょっと聞かせていただけませんか。
  28. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 先生指摘過当競争の定義ということなんですが、独禁法上もちろん不当廉売というのがございまして、原価プラスアルファを下回って売る、つまり営業利益の上がらないような形での商売をするというのは商慣行からしても異常であろうという法律的な手当ては別途ございます。  我々の解釈といたしましては、ある営業期間をとって、一期、二期例えば営業利益が赤字になっているという場合、それのみをもってはきっと過当競争とは言えないだろう。営利企業として事業を継続していくという観点からしますと、その事業継続をもうあきらめざるを得ないような期間にわたってあるいは程度において損失が続くような状態、それが過当競争状態なんだろう。だから、販売スタンドの数が今五万九千軒ございますが、一説に多くて半分にしろとかなんとか無責任なことを言っておられる方がおりますが、あれは全くの誤りである。私どもの発想からすれば、五万九千軒皆さんが残っていただいて全然構わない、そのかわり皆さんがある程度の利益は得ながら残っていただくという形にすべきだろうということで、構造改善の柱の一つにも、情報化に加えまして、例えば先ほど申し上げた業務の多角化、ある一定数量以下の販売数量でも生き残っていけるような効率の高い商売をやっていただきたいということをお願いとしております。  ですから、もちろん営業利益が上がるか上がらないか、一つ価格の問題ですし、一つはコストの問題ですし、もう一つ残りますのはガソリン以外のものの販売、これが現状私の持っておる数字では半数以上、五〇%を超えております。ですから、ガソリンだけで価格を幾らに決めて、それによって営業利益を確保するというような発想はとるべきではないのではなかろうかというように私どもは考えております。
  29. 奥野一雄

    奥野(一)委員 この辺のところはきのう担当者の方々といろいろと打ち合わせしたのには含まれていないような感じがしてちょっと申しわけないと思うのですけれども、ひとつ教えていただきたい。  普通の物をつくって売るという場合には自分で価格を決めますね。コストが幾らで原価が幾ら、それにマージンを乗せて売ります。それははっきりするわけですね。ガソリンの場合、これは販売業者が自分でマージンを決めるわけにはいかないのでしょう。だから、元売の仕切り値というものはどっちが中心になって決めているのですか。これは元売の方が決めているわけですか。例えば、先ほど言われた百十五円という中でマージンが一体どのくらい取れるものか。これは販売業者の方が自分たちの販売コストをできるだけ下げてその中からマージンを生み出していくということをやらなければならないわけでしょう。ところが、百十五円でありますというと、税金が五十三円八十銭ですから、実際の価格は六十一円二十銭ということになります。そのうちから一体どのくらいのマージンが取れていくのか。そうすると、先ほど言われましたように、合理化をうんとやって五円くらいのマージンがあればやっていけますというところと、いや十五円のマージンがなければやっていけないというところと出てくる。だから、そういうところは、例えば構造改善しなさいとか多角経営しなさい、いろいろなことをやって、マージンの幅が仮に少なくても経営できるような体制をつくるということが必要になってくるのだろうと思うわけです。思うわけなんだけれども、私が先ほど言いましたように、販売業者の方があらかじめ例えば元売の方に、おれのところはマージン幅がこれくらいなければ困るよというようなことで交渉できる仕組みになっていれば、ガソリン価格が多少の変動があってもマージン幅はそんなに大きく動かないということであれば、長期的な経営安定の見通しというのは立てられる。しかし、先ほどから何回も言っておるように、今度出店規制というものが特定地域を除いて緩和されるということになって、そこへ例えば大手系列のスタンドがどんどん入り込んでくるというようなことになった場合に、対抗するためにガソリン価格を一円でも二円でも下げようか。そうなれば、これは当然マージンの幅が縮まるということになる。そのことがまたみずからの経営を悪化さしていく。そんなことにならないかという心配があるものですから、そのあたりはどうお考えですか。
  30. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 マージンの話なんですが、販売店というのは当然仕入れ値というのがございまして、当業界では仕切り値と申しておりますが、これは元売さんとの関係で千差万別いろいろな形で数字が決まってくるというのが実態でございます。さらに、ポイントは消費者に対する末端価格、先ほど全国平均で百十五円程度であろうというお話をしましたのは、これは元売が決めているわけでもなく、販売店が決めているわけでもなく、結局消費者販売店との間の接点で価格が決まっていっている、結果的にわかっている数字ということでございます。したがって、そういった元売、もちろん流通の中間の者もいますが、販売店消費者、三者の間で、かつ、最終の価格は絶えずマーケットを反映して動いていくというときに、マージンをどの者がどの程度取るか、これは消費者も含めてですが、これについては、ある者が固定的にマージンを取るというのはなかなか難しいでしょうし、それが競争原理に基づかずに固定的なマージンを確保するということになればまた独禁法の問題にもなりましょうしということで、販売店が一定のマージンを決めてそれを元売に押しつけるかあるいは消費者価格の方に転嫁するかというのは、ひとえに販売店の立場の強さ、弱さということになると思います。ですから、お答えになっているかどうか、あるいは先生の御質問に十分満足いく答えになっていないかもしれませんけれども、そこのところは実績的、結果的に出てくるものでございます。  それからもう一つ、先ほど先生が御心配になっておる、出店規制指定地区外については緩和してしまう、やめてしまうということが大型店の出店を野放しにすることになって既存のスタンドが立ち行かなくなるのではないかという点につきましては、これはもちろん我々も非常に心配しているところの一つでございます。ただ、いろいろな話を聞いておりますと、指定地区制度というのをある程度きちっと運用した場合には、指定地区外で、今数億円という出店のコストがかかるわけですけれども、こういった点について、例えばそういった採算性を重要視する大型店が野方図に出ていくか、それだけのマーケットが全国の中にどれだけあるだろうかという議論も別途ございました。もちろん数がふえるかどうかというのは神のみぞ知るで我々は今申し上げられないのですけれども、その点については、現在の指定地区制度、それから構造改善対策、特に中小企業者向けには手厚い助成をしたいと思っておりますので、そういったものを絡み合わせて対処していけるのではないか、そういう判断をしております。
  31. 奥野一雄

    奥野(一)委員 後で質問される小野先生の方の時間を少し食い込んで、これで終わりでございますけれども、最後に、この前この委員会灯油問題について若干触れたときに時間の関係でお尋ねできなかったことなんです。業転玉ですね。灯油の場合には、この業転玉は、元売仕切りが一リットル大体四十円台のものが二十五円ぐらいで取引されている、こういう実態があるわけですけれどもガソリンの場合は一体どのくらいになっておるか、御承知であったらお示しをいただきたいと思っているわけです。  それから、数量は大体二百五十万キロリットルからあるいは三百万キロリットルでないか、こう言われているのですが、もし実態を把握しておったらお知らせをいただきたい。  大体この業転玉が流通する原因は何なのかということについて、業界の方では、精製と販売のギャップにあるのではないか、スタンドの移籍は禁止するんだけれども業転玉の流通というのを傍観しているのはおかしいのではないか、こんなようなことを言っているわけでありますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  32. 鴇田勝彦

    鴇田説明員 業転玉、いわゆる業転物が存在しておるということは我々も承知していますし、非常に関心を抱いているところなんですが、具体的な物の流通実態というのは極めて複雑多岐にわたっておりますので、詳細な把握は残念ながらできておりません。ただ、推計によりますと、ただいま先生おっしゃったように、年間二百五十万キロリットル前後に達していると言われております。これは量の方の話でございます。  価格の方なんですが、これは当然のことながら、地域間あるいは季節的な需給の変動に応じて敏速に動く、原油で言えばスポット的なものでございますから敏感に反映して動くわけでございますけれども、現在、日本経済新聞がこの調査を継続的にやっておられまして、その数字によりますと、リッター百三円前後であろうという数字を我々ももらっております。  業転物の存在というのは、一つには、市況攪乱の原因になっているではないかという指摘があるわけですけれども、先ほど申し上げたような、地域的にあるいは季節的に需給アンバラが生じた場合にそれを速やかに埋め合わせていくという観点からはバランス調整的な役割もしておりますので、一概にこれは悪と決めつけることはできないだろう、また、それがすべてガソリンの市況に影響を与えているというのも言い切れないのではないかと思っております。  最後に御質問のございました業転物の発生原因は何か、おっしゃったように、精販ギャップと称していますが、精製と販売能力のギャップが業転玉をつくっているのではないかという点でございますが、これは、さまざまな要因がございまして、これだけに特定できない、あるいは困難な状況にございます。
  33. 奥野一雄

    奥野(一)委員 わかりました。それでは、いずれはこの中間報告に基づいてそれぞれ対応策を考えられるということになると思うのですが、これは、もちろん消費者の利益保護というのは当然でありますけれども、同時に、揮発油販売業法には業者の健全な発達及び品質の確保、これが御案内のとおり第一条の目的に書かれているわけでございますので、この辺のところもひとつお忘れにならないで総体的な対応策を立てられるように御要請を申し上げまして終わります。  どうもありがとうございました。
  34. 河上民雄

    河上委員長 次に、小野信一君。
  35. 小野信一

    ○小野委員 先週二十三日の私の質問の際には大臣が留守だったものですから、同じ質問の趣旨を繰り返して大臣の所見をまずお伺いしたいと思います。  第一は世界経済に対する認識ですけれども、先進国と言われる国の不況の長期化、失業率の増大、開発途上国の累積債務の増大、まことに大変な事態だと言われておりまして、ある人々から言わせれば、一九二九年、あの大不況の前夜と非常に条件が似ておるのではないだろうか、こう危惧しておる人たちも大勢おります。これらの経済の実態について大臣はどのような御判断をお持ちになっておるのか、まずお聞きいたします。
  36. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生が御指摘のような主要先進国、といってもより具体的にはアメリカでございますが、財政赤字、そして貿易収支の赤字の増大というよりは継続ですね、そしていわゆる発展途上国累積債務の増加、ヨーロッパ等の失業率の高さ、そういった世界経済のいろいろな現象というのは確かに憂慮すべき問題ではあるというふうに私は考えます。しかし、先生指摘の一九二九年と今と、私、基本的に違うと思いますのは、経済政策、財政金融政策の各国間の協調といいますか、相互協力というか、努力というものが、戦後いわゆるガット体制そしてIMF体制というものを軸にいろいろな経験を積み上げながら進んできた、こういうことだと思いますし、特にいわゆる先進国間の政策協調というのが進んでまいりまして、さきの東京サミットにおける各国間の経済政策についてのサーベイランスというものが行われておりますし、また昨年の九月のG5における協調的な為替政策というものも、これもいろいろお考え方はあると思いますが、しかし基本的な方向としてはその主要先進国間の中で世界経済を何とか協調裏に進ませていくための政策協力をしよう、こういう考え方のあらわれと思いますので、おっしゃるようにいろいろな問題は世界経済に内在しておりますけれども、それに対する各国間、特に先進主要国間の政策協調の体制というものが非常に進んでいるのが現状である、かように理解をしている次第であります。
  37. 小野信一

    ○小野委員 アメリカのある有名な経済学者が、大恐慌前夜と現在の世界経済の類似点を挙げております。  一九三〇年代の大恐慌前夜のときには、やはりGNPが実質的には伸びなかった。一九八〇年から八二年までの三年間、アメリカの実質GNPは伸びておらない。これを第一に挙げております。  それから第二に挙げておりますのは、株価が一九二九年から三三年までの間に八五%暴落した。一九六八年から八二年までには、実質には株価は六五%低落しておる。  三つ目は、大企業、倒産することがないだろうと言われた例えばハント・ブラザーズ社あるいはクライスラー社が倒産する。大恐慌にもやはり同じような兆候が前夜にはあった。  四つ目には、農民所得が低落した。一九八一年、アメリカ農民所得は四四%低落している。  五番目には、最も安定した健全経営をすると言われる銀行が倒産しました。過去五カ月間で九十九倒産いたしておるようです。  六つ目は、農地価格が低落している。住宅価格が低落した。やはりアメリカも現在そのような傾向にある。  七番目に、失業率が当時二五%、昨年アメリカは九・五%と言われておりますけれども、当時の失業率の算定方法で算出をいたしますと一五%になる、こう言われております。  八つ目は、今大臣がおっしゃっておりますけれども、当時の恐慌の原因とそれに対する対策が、経済学者なり政府の関係団体、関係者に意見の一致を見ることができなかった。現在でも、例えばケインジアン、マネタリスト、サプライサイダー、この人々の現在の不況に対する原因とその対策についてなかなか一致した意見が成立しないために、一国の経済政策として世界的にそれを統一していくことが難しい、こう言われております。  今、サミットによって世界の協調が非常に当時とは違う形であると言われましたけれども、前のサミット、ベルサイユ・サミットになりますが、あのときに、本来現在の世界恐慌、世界の不況に対してサミットに集まった国々の人々が協調して政策を樹立して先進国としての先導的な役割を果たさなければならなかったと思うのですけれども、一国というのですか、ナショナリズムに凝るというのですか、そういう形で大きな成果を上げることができなかった、私はそう考えます。したがって、大臣がおっしゃいますように、当時とは情報も政策協定のかたさ、それは随分違うとは思いますけれども、やはり同じような道を歩んでいるんじゃないだろうか、そういう気がしてならないのですけれども、もう一度大臣の所見をお伺いします。
  38. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生も御指摘のような類似点というのは確かにある程度はあるかもしれませんが、しかしそれに対する処方せんとして、おっしゃるように経済学者もいろいろな考え方が分かれているよ、こういう御指摘がございますけれども、私は必ずしもそうとは思いませんので、まず一九二九年の恐慌を契機として経済学の思想の中で出てきたのはいわゆるケインズ経済学でございまして、これはやはり先進国間の失業をなくすためには政府が積極的な財政政策をする、公共事業を行うことによって景気の回復を図り失業を救済しよう、こういうことであるわけでありますが、戦後の世界経済の運営というのはアメリカを中心とし多少ケインズ的な財政政策によって行われてきた、こういうふうに思うわけであります。  ただ、そうした形の財政政策に過度に依存することが、これが財政の赤字の累増を招いて、そして財政運営に対して非常な困難性といいますか硬直性を与えてきておるのではないか、こういうような反省から、そうした財政政策に頼らないでもうちょっと競争というものを中心にして経済の活性化を図っていこう、だから、大きな政府よりも小さな政府で、できるだけ政府のコントロールを少なくしてむしろ自由競争でやろう、金融政策も同じように、自由な金融政策、金利政策でいこう、こういうような考え方がその後出てきて、そして、いわゆるケインズ学派と非ケインズ学派とに大ざっぱに分けて、そこでいろいろな議論が行われたわけであります。その中でマネタリストの考え方とか最近のレーガン政権のもとにおけるサプライサイダーの考え方とかが出ているわけであります。  しかし、いろいろな議論があっても、マネタリスト、サプライサイダーといっても、完全に財政政策は必要がないと言っているわけではないし、逆に、いわゆるケインズ派と言われている人たちも、いろいろな経験から、何でもかんでも財政でやるということではなしに、もうちょっと自由な競争原理を進めていくとかという考え方も当然あるわけです。やはり私の考えでは経済政策に対する考え方がいわばらせん状的にだんだん深まってきているのであって、各国間の政策協調というのがかつてないぐらいに深まってきて、よく国際金融で、国際金融マフィアと言われるようなものが、例えば日本の大蔵省の国際金融のトップとアメリカ、イギリス、フランス、ドイツの大蔵省なり通貨当局幹部が電話一本で意見を交換する状況が出ているわけであります。それが完全だとはなかなか言い切れないと思いますが、経済の動態は非常にダイナミックに変わっておりまして、そうしたお互いのサーベイランスなりセーフガードのシステム等が大変進んでいるのが現状であって、信頼し得るに足る、私はかように考えている次第であります。
  39. 小野信一

    ○小野委員 次に、我が国の経済の現状についてお伺いいたします。  この一年間の円高で、輸出商品がドル建てで五〇%以上値上がりしました。したがって、今後も輸出が鈍化する、こう言われております。鈍化するということになりますと、在庫投資や設備投資などで国内経済の停滞が当然予想されるだろうと思います。したがって、このままほうっておきますと深刻なデフレになるだろう、こう心配する人々がおります。  一方では、円高デフレの効果というものは徐々にあらわれてくるだろう、長期的には、輸入物価が下落して個人消費が増加していくから自律的に回復するだろうという、非常に経済を楽観する意見もございます。  しかし、実際に輸出産業に従事し、あるいはその下請あるいは企業城下町と言われるところの人々にとっては大変な事態であることは間違いないわけですので、どちらの意見がというか、現在どういう形で日本経済を認識したらいいものなのか、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  40. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 御指摘のように、輸出価格が上がらなければ、すなわち円高分だけ上がらなければ円ベースの輸出収入は減るわけでございますが、五割も円が高くなってまいりますとなかなかもとへ戻せない、せいぜい半分ぐらいがドルベースで上げられるのが限度ではないかというようなことが言われております。現実に、貿易収支統計の円ベース輸出額というのを六、七、八、九とずっと見てまいりますと、大体二割前後減っているわけです。ですからそれだけ円収入が減になっているわけでありますが、先生も御指摘ございましたように、輸入の場合は、今度は同じドルで物を買っても、少ない円でそれだけのドルが買えるわけでありますから支払いが減っておりまして、これも七、八、九の統計を見ますと、大体三割から四割ぐらい輸入支払い代金が減っている。それだけ手持ちのキャッシュバランスが楽になった、こういうことだと思うわけであります。  ただ、御指摘のございますように、輸出のデメリット、すなわち円ベースの輸出からの受取代金の減少というのは、二割ぐらいずつ減っているということは、その分がもろに輸出業者の収入減になっている。その収入減をカバーするためには下請やいろいろな方たちに影響を与えておりますから、これがよく言われます輸出を中心とした製造業の不況、業界の低迷、停滞ということだと思うわけであります。この円高デメリットというのは、そういう点で、例がいいかどうかあれだけれども、非常によく効く下剤といいますか、本当に末端までぐっと効いてくるのですね。だから非常に強力な効果を持っている、こう思うわけであります。  しかし片っ方で、この円高からくるメリットは、例えば水際で円高のメリットが生まれても、それが現実に末端まで行くには、消費物価の低落だとか、それから、企業が例えば九月決算で帳簿を締めてみると、思ったよりも現金が残っておったな、利益が上がったな、そういうことで、十月か十一月に株主総会を開いてそして配当をふやす、またボーナスを出す、月給を上げる、こうなってくるわけでありますから、この円高メリットというものが現実に末端まで浸透してくるのは、経済企画庁でもいろいろ検討しておりますけれども、半年から場合によっては九カ月もかかるんじゃないか。  だから、デメリットは見事に即時効いてくるわけでありますけれども、メリットの方はじわじわじわじわ出てきている。多分私の家庭でも、電力料金が減ったものだから、月千五百円ぐらいになりますけれども、一年間で一万八千円だ。そうすると、暮れにうちの家内が家計簿を締めてみると、あれっ、思ったよりもお金が残っちゃったわということで出てくる。だから、そういう点で私は、片っ方が強力な下剤だったら、円高メリットはいわば栄養剤みたいなもので、じわじわじわじわと体内に浸透しているというふうに考えるわけであります。  ただ、そうした余裕バランスが本当に消費支出なり投資支出になって経済を押し上げるためには、いま一経済の将来に対する見通しが明るくないと、周りで企業がだんだんだんだん悪くなって今度は失業がふえるみたいなことだとどうも困る、これはしまったということになってまいります。だから、経済の将来に対する明るさがないと、円高メリットが具体的な、積極的な投資需要や消費需要になって顕在化してこない。そうするとデメリットだけ効いてきてメリットが効かなくなって経済全体がマイナスに引き込まれますから、そういう点で、今度の総合経済対策においても、政府の積極的な経済対策によって何とか景気をよくしていこうということで、民間の方々にも強気の経済行動をお願いできるような状況をつくろうというのが私どもの意図でございます。
  41. 小野信一

    ○小野委員 春ごろだったと思いますが、中曽根総理が、円高メリットは数兆円の減税の効果と同じようなものを秋までには発揮するだろう、したがって秋口には景気は回復するだろう、こう声高らかに宣言いたしましたけれども実態はそのようにはなりませんでした。ある人に言わせますと、円高によって自国の通貨が急激に価値を高めることによって円高メリットが出てくる、そのことによって景気が回復した例は世界にない、極端な話、そう言う人さえございます。  私も小さい会社を経営しておるのですけれども、例えば円高メリットが出てきた場合には、過去の赤字をまず消すことに努力をする、それから法律で許された内部留保のための資金蓄積を行う、そして税金とバランスを考えて価格を下げる、こういう順序で動くのが経営者の感覚だろうと思うのです。ですから、円高メリットが出たから直ちにそれが価格にはね返るというようなものにはならないのじゃないだろうか。その意味で、大臣が考えるように半年なり九カ月で円高メリットが直ちに国民生活に返るということにはならないのではないだろうか。したがって、やはり一年なり二年なり長期に及ぶものではないのだろうか。その意味で、総合経済対策が出されたことは私は賛成であり、今後も続けてもらいたいと考えるものですけれども、それがことしだけの総合経済対策では、さっき大臣が言ったように、経営者、企業家に将来の明るい見通しを与えるものではないだろう。少なくとも二兆円なり三兆円規模の特別なる不況対策を本予算以外に五年なら五年やりますよ、こういうプラスアルファを明らかに示すことによって経済は気持ちとして上向いていくのではないだろうか、私はそう考えるのです。その意味で、円高メリットの還元、経済に対する影響はもう少しおくれるような気がしてならないのですが、もう一度大臣の所見をお伺いします。
  42. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 まさに先生おっしゃるように、円高メリットは、これまでの借金の返済とか財務構成を改善するとかいろいろな形で使う。これはいわば自分たちの努力によって得た利益ではないわけです。ウインドフォール的に、外部要因で、気がついたらコストが安くなっておった。だから、積極的に合理化をして生産性を高めたものでもなければ、マーケットの拡大でどんどん売り上げが伸びて利益が上がったものでもない。じっとしておったけれども気がついたら原材料費が安くなったということですから、その点はさっき申しましたようにアイドルバランスだと私は思うのです。余裕金ですからね。だから、デメリットは見事に効いてくるけれども、アイドルバランスみたいなものが残っている。そこからゆっくり考えていこう。  だから、経済全体の雰囲気がマイナスだとこのアイドルバランスがさらにアイドル化してしまうわけですね。だけれども、経済見通しが明るければこのアイドルバランスがアクティブバランスになっていく。こういうことでございますので、実は私は先般の補正予算の閣議においてもあえて発言をいたしまして、三兆六千億円余の総合経済対策の具体的柱が一兆四千億の公共事業でありますから、これを何とか年度内に消化できるような対策を大蔵大臣も考えていただきたいし、建設大臣もそのためにまたいろいろ事務的なやりくりもしようということでございますので、ぜひ関係各省年度内消化に全力を傾けていただきたいということを申し上げた上で、しかし、それは今度の補正予算でございますけれども、問題は、ことし補正予算でふやしても来年またもとへ戻るということではいわゆる経済学的な乗数効果もマイナスになってくるんですね。だから、考えると、ことしの補正予算だけではなしに、六十二年度も少なくとも内需を中心にした景気拡大ということを予算編成の基本的な柱にしていただいて、引き続いて景気拡大を図るということを政府の姿勢として示す必要があります。それができれば、民間の方々も、補正予算だけではどうもと思っておっても、十二月の本予算でさらに景気拡大の方向が出てくれば、いよいよ政府の成長政策へのコミットメントも本物だな、こう思っていただいて、設備投資も消費も伸びてくると私は思うわけであります。だから、そういうことが実現できるために、財政政策、税制も含めて、また金融政策の機動的な運営も総合経済対策に書いてございますけれども、財政、金融、総合で内需拡大をこれから断固進めるということがどうしても必要であると思っておるわけであります。
  43. 小野信一

    ○小野委員 不況のための経済対策あるいは補正予算、明年度まで継続いたしまして日本の経済に対する確信を与えてもらえるような方策を十分とっていただきたいことを希望いたしておきます。  次に、G5に対する評価であります。昨年の九月二十二日の会議、竹下大蔵大臣が成田で胸を張って高い評価をうたい、帰ってまいりました。しかし、その後の経過を見ますと、御存じのように果たして胸を張って誇れるような会談内容だったのだろうか、少なくとも日本国民にとっては大変な約束をしてくれたものだな、こういう感じがいたします。特に、これは今だから言えるのかもしれませんけれども、G5で円高・ドル安の方向を協調一致して進めるということであるとすれば、日本の経済に大きな影響が及ぼされるということは、当時当然予想しなければならなかったと思います。予想されるとすれば、直ちにそれに対する対策が立てられなければならなかったのではないだろうか、その対策の樹立が非常におくれたためにより大きな不況に今日日本の経済が落ち込んだのではないだろうか、こういう気がしてなりません。  その意味で、中曽根総理が数兆円の減税に匹敵する円高メリットが秋口には出るだろうと発言したことは、私は中曽根総理が考えたことではなくて経済企画庁が考えたことなんだろうと思うのです。その意味でやはり政府の責任は重いのではないだろうか。今、経済企画庁とすれば、G5の評価は何だったのだろう、反省しなければならないものは何だったのだろうか、今後の政策樹立のための反省材料としてやはりしっかりと国民の前に明らかにする必要があるのではないか、私はそういう気がしてならないわけです。揚げ足をとって責任を追及しようとするつもりは毛頭ございませんが、やはり反省点なりを明らかにしていただきたいと思いますので、もし専門家で長期にわたってこの対策に関係しておる局長がございましたら、御意見を聞かしていただきたいと思います。
  44. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 G5というのは、結局アメリカの経常的な国際収支の赤字を解決するためには、購買力平価というか、アメリカの生産性に見合ってドルの国際価格を調整する必要があるのではないかということが一つの思想であったと思うわけであります。私どもも、円ドルレートの関係を言いますと、どこが適正かというのはなかなか難しいのですが、少なくともかつての一ドル二百四、五十円というのは日米間のいわば生産力といいますか購売力平価というものを示したものではないんで、やはりそれはアメリカの高金利で日本から円が流れてそれがドルに対する需要になって相対的にドル価格を上げておった、こういうことだと思うのです。だから、これはアメリカにとっても不利な状況だし、日本にとってもむしろ輸出に対してはボーナスがつくような状況であったという考え方をみんな漠然と持っておったわけであります。  そこで、前のリーガン財務長官時代には強いドルはアメリカの威信の象徴みたいなことでなかなか踏み切れなかったのだけれども、今のベーカー長官にかわって、あの人はなかなかドライな割り切った人で、ばっと切りかえて、そしてG5でまさにドル安政策に切りかえたわけでありますので、方向としては間違ったことではなかったと思うわけであります。ただ問題は、それが大変に急激で、しかも私たちが予想した以上の速さでドルが落ち込んできた、私たちが対応するのがおくれてしまった面もあるくらいスピードが激しかったということが一つあると思うわけであります。これが第一点。  それから第二点として、もともと意図するところはそういう意味のアメリカの貿易収支の改善でありまして、ある意味じゃ日本の黒字の解消でありますから、国際収支の改善というものは結局輸出を減らすか輸入をふやすかですね。もしくは両方でしょう。だから輸出を減らす場合も輸入をふやす場合もどちらも国内経済に対してはデフレ効果を持つわけですね。早い話、例えば一千億ドルの赤字を仮に減らすとすれば、十五兆円です。今はそうですね。だから、輸出が減るか輸入がふえるかということは、十五兆円分だけ日本の国内的にはマーケットがへっこむことになるわけです。だから、円高政策による国際収支の改善政策というものは、他の条件にして等しければそれだけでデフレ政策である、こういう基本的な認識がなければならないと思うわけであります。だから問題は、他の条件にして等しければ、そのへっこむ分だけ積極的な内需政策を国内で実行すれば国際収支の改善と国内的な成長政策が両立をしていく、こういうことでございますので、そういう内需政策が、私たちが現在発表し実行している総合経済対策の少なくとも柱であるというふうに御理解を賜りたいわけであります。
  45. 小野信一

    ○小野委員 三兆六千億の補正予算が一・五%GNPを押し上げるのではないか、こういう意味で高い評価を私はするものですけれども、現在の不況をそれならば通常ベースの経済まで確信を持って経営に当たれるような、経営者に自信を与える補正予算だろうかということになってまいりますと、まだ不足なんじゃないだろうか、規模が小さ過ぎるんじゃないだろうか、そういう気がしてならないわけです。  特に、G5の結果、ドルの諸外国に対する価値は下がっておらない。日本だけに対して下がっておる。アメリカの一千数百億ドルの貿易赤字に対する日本の黒字は外国の中では最も高い数字を示しますけれども、日本だけじゃないわけですね。カナダもあれば、西ドイツもあれば、ECもあるわけですから、もし貿易赤字と黒字の関係でドルが安くなったり高くなったり、そのレートがG5の精神で決まるとするならば、日本円だけではなくて、カナダも、フランも、マルクも下がらなければならないのに、向こうは下がっておらない。そうなってまいりますと、G5の政策協調というものは日本の円だけをねらい撃ちする効果しかなかったのではないか、私はそういう感じがしてならないわけです。  そういう感じの中で日本に二つの影響があったのではないか。それは、何といっても開発途上国にドル建てで日本が莫大な債権を持っておる。そのことが、先ほど大臣に聞いた、世界の経済不安の中で日本の労働者が、経営者が営々としてドル建てで積み立てた価値がこのドルの暴落によって大きく目減りしておる。しかも開発途上国への債権の累積はますますふえておる。そうなってまいりますと、日本はこの二つの意味で大きなリスクを背負っておる、国内経済不況を加えますと三つのリスクをしょってしまった、こういう感じがしてならないわけですけれども、このドル建ての外債のリスクに対して企画庁はどういうお考えをお持ちになるのでしょうか。
  46. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問内容でございますが、一、二点だけコメントさせていただきたい点がございます。  各国通貨の中で日本円だけが米ドルに対して高くなっているということは必ずしも事実ではございません。ただいま御指摘のありました米ドルが各国通貨に比較して実質的に余り引き下げられていないのではないかというのは、アメリカの貿易量をウエートといたしましてその取引先との通貨の関係を平均してみますと、最近までで三%かそこらしか引き下がっていない、こういうことであります。対欧通貨に対しましては、御承知のとおりマルク、それからEMSの中に含まれております各国通貨に対して米ドルはかなりの率で切り下がっておりまして、日本円だけが何かねらい撃ちをされたというような見方は当たらないだろう。米ドルが実質的に下がっておりませんのは、アメリカの貿易量、取引の多い発展途上国及びNICS等に対しまして実質的にほとんど切り下がっていない。御承知のとおりに韓国ウォンあるいは台湾ドル等は基本的に米ドルにリンクいたしております。それから中南米のクルゼイロでありますとかペソでありますとか、こういうのはむしろ大幅に対ドル切り下げを行っているわけであります。したがって、そういうものを平均いたしますと実質的に切り下がっていないということでありまして、日本円及び欧州通貨に対しましてはかなりの率で米ドルは切り下がっているわけであります。  それから、対外資産の考え方につきましては、この前一度基本的な考え方をお答えしたことがあったかと思いますが、これにつきましてもやはり一、二申し添えますと、何か政策の対象として円とドルとの関係だけが意図的に動かされてその結果日本国民が被害をこうむったという見方は当たらないのではないだろうか。ただいま長官のお答えにもありましたように、G5以来の国際的な為替に対します政策変更、これはそれまでのドルの異常な高値評価というものが国際的な不均衡あるいは各国の国内政策に非常に大きなひずみを残してまいりました。そういう状況は続けられないということでああいうような政策協調が行われまして、これも一度この前申し上げたかと思いますが、それまでの資本市場が中心になって動いていた為替レート、それが基本的にはファンダメンタルズに基づくレートの動きの方に引き戻されたというのが基本的な動きであろうと思うわけであります。  ただ、そういうような政策協調と申しましても、為替市場の動きというのは、御承知のとおり自由市場でもありますし、かつ、非常にボランタリーな市場でもある。したがって、ターゲットゾーンというようなものではございませんから、大体ドル何円ぐらいを目指して協調介入をしようというようなことは実際上政策的に不可能なわけであります。したがって、その資本相場主導型のレート、通貨の相互関係からファンダメンタルズレートの方向に引き戻したという過程で、レートに急速な変動がありましたし、また場合によっては水準がやや動き過ぎるという状況も当然生じたかと思うわけであります。したがいまして、何か円だけがねらい撃ちをされてそれでアメリカあるいは日本の為替政策が間違った対応をしてそのために日本国民が損をしたのではないか、ちょっと御質問を私が誤解しているかもしれませんが、仮にそういうような御意見であるといたしますと、そういう考え方というのは私どもはとるべきではないのではないだろうかというふうに考えております。  では実際にどうなっているのかということでありますが、この前申し上げましたように、仮に一番ドルが高値でありました、これはたしか昨年の九月でありましたか、一時二百六十円というときがございましたが、その二百四十円あるいは二百六十円というときから現在の百六十円のところまでだけの差をとりまして日本の対外資産を円に戻して評価をするという単純な計算をいたしますればそれはどれだけ損失があったという計算はできるわけでありますが、これは毎度申し上げておりますように必ずしも実態を反映いたしておりません。その理由は前から何度も申し上げておりますので繰り返しませんが、一つだけ追加させていただきますと、実は日本の対外資産、特にドル建ての資産の資産価額というものを見ますと、これは二、三年前から非常な値上がりをいたしております。特にここ二、三年は金利の低下の過程で債券価格が相当な上昇をいたしまして、日本の企業がどういう種類の債券を幾ら持っていてそれがどうなったかという計算はできないのでありますけれども、例えばアメリカの国債の十年物の動きということを見てみますと、これは過去二年間に相当な資産評価益を生じております。確かに昨年の秋からのドル安傾向ということがございまして、その部分の為替利益というものを取り出してみますとこれは確かにマイナスにはなっておろうかと思いますが、債券がどの時点で取得されたのか、それからドル高の過程あるいはアメリカのドル建ての資産がどういう値上がりをしてきたか、そこら辺の問題、さらにはクーポン収益の内外の差の問題そういうことを全部考えてみますと、日本の対外資産が莫大な損失をこうむったというような結論は出てまいらないのではないだろうかというふうに考えております。
  47. 小野信一

    ○小野委員 内容につきましては理解することができます。ただ、円高差益がこの一年間で十兆四千億円出た、そのうち還元されたものが、消費財三兆三千億円、投資財で一兆二千億、合計四兆五千億だ、あとの五兆円か六兆円はまだ還元されておらない、こういう形の説明が何度もなされておりますので、その裏側として当然円高差損というものも計算されていいのじゃないだろうか、こういう気がしてならないのです。内容は十分わかっておりますけれども、単純計算としてそういう計算をしたことがありますか。計算しても意味がないからしませんということになりますか。
  48. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  厳密な意味での計算は私どもはやっておりませんし、恐らく国際金融担当の他の省庁でもそういうことはやっていないと思います。これは一つはやることの意味がどうかということでございます。それから、実際やろうと思いますと技術的に大変に難しい。しかも、先ほど申しましたように、日本の各企業がどういう種類の債券を、またどういうタームの債券をどの通貨建てでどれだけ持っているのか、それぞれの債券がどういう値動きをしたのか、そこら辺につきましては、やろうと思いましても統計的に把握すること自体非常に困難恐らく不可能に近いのではないだろうかと考えます。
  49. 小野信一

    ○小野委員 円高・ドル安によって金が非常にダブついてまいりました。そこで、貯金額、金融資産残高を調べてみました。日銀の資料で調べてみますと、昭和六十年の一世帯当たりの貯蓄額は七百三十一万、前年度に比較して六・三%の増加だ、こう書いてありました。別の日銀の調査統計局国際比較統計の金融資産残高を見ますと、昭和五十八年が四百四十八兆円、五十九年が四百九十兆円、この一年で四十二兆円伸びております。したがって、この割合で六十年度も伸びたといたしますと五百三十兆円になります。日銀の貯蓄増強委員会の発表である七百三十一万に対して日本の世帯数の三千九百万戸を掛けますと二百八十五兆円になります。ですから、日銀の金融資産残高五百三十兆円と余りにも違い過ぎるわけです。  この金融資産の莫大な伸びというものは、国民が将来の不安のために貯蓄しているとか老後の保障とか勉強とか、こういうことが言われますけれども、このごろの異常な蓄積の増大は、それではなくて、上層階級というのですか、要するに金のたくさんある人々により大きな金が集まった結果、国民の所得格差が開いた結果の貯蓄ではないだろうか、私はそういう感じがしてならないのです。  ですから、日銀を呼んで聞くのが本当なのかもしれませんけれども、この同じ日銀の資料で二百八十五兆円と五百三十兆円では余りにも違い過ぎますので、経済企画庁だってこの資金残高は日本の経済の不況、景気をよくするためには必要な資料なんですから当然この差を十分検討しておると思うのですけれども、それに対するお考えがございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  50. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えいたします。  一つは、先生指摘の二百八十五兆円という数字自体がそのままでは私どもちょっと見つからなかったのでありますけれども、いろいろな統計を総ざらいして調べてみましたので、簡単に結果を申し上げます。  日銀がつくっております資金循環勘定というのがございます。これは金融機関サイド及び個人・家計サイド両方からのデータを総合いたしまして個人部門の貯蓄総額がどれだけあるかという数字であります。これは六十一年三月ことしの三月の段階で総額が五百三十九兆、約五百四十兆円となっております。ただ、これは資産の部でありまして、同時に家計の負債が百九十六兆円ございます。したがいまして、家計部門のネットの資産といたしましては三百四十三兆円ということになります。これを仮に国勢調査の三千八百万世帯ということで単純に平均で割りますと、一戸当たり約九百万のネットの残高という形になります。  それから、同じ日銀資料でも個人貯蓄統計、これは数字がやや異なっておりまして少し低いようでございますが、これはちょっと株式が入っていないというような点もあろうかと思います。  それで、経済企画庁といたしましては国民所得統計を含みます国民経済計算の中で金融バランスについての試算をいたしておりますが、これは大体日銀その他の資料をもとにいたしまして計算をいたしております。これは一昨年度末で五百十八兆円。残念ながら昨年度末の日銀と同じ時期のものは現在計算中でございましてまだ数字が発表されておりませんが、額は大体似たようなものでございます。負債を差し引いてネットにいたしたものも大体同様な額になっております。  それからもう一つ、総務庁統計局の方で調査をいたしているものがありますが、これは家計サイドから家計に幾ら貯蓄を持っているかという形で聞いておりまして、これはやや額が少なくなっておりまして、資産総額で三百二十四兆円、ネットにいたしますと二百二十兆円という数字になります。これも、株式等の評価というものが十分含まれていないということもございますし、やや低目の数字になっておるかと思いますが、私どもといたしましては、日銀の資金循環勘定並びに先ほど申しました国民経済計算の数字というものがほぼ現状の個人部門の貯蓄ではないだろうかというふうに思っております。  それから、一点だけ申し添えますと、先ほどどういう層が持っているのかという御質問がございました。これにつきましては、日銀の個人貯蓄動向調査並びに総務庁の貯蓄動向調査等がございますが、ちょっと今その資料は手元にございませんので、大体の感じだけ申し上げますが、これは日銀調査ですが、昨年度末での個人貯蓄の一世帯当たり平均貯蓄額が大体七百三十万円ぐらいだったと思います。これは負債を引いてない分でございますが、七百三十万円ぐらいだったと思います。しかし、これは分布がいわゆる正規分布ではございませんで相当偏った分布になっておりまして、統計上のいわゆる中位数、世帯を並べてまいりまして一番真ん中の中位数ということでとりますと、これがたしか資産として四百四十万円ぐらいの貯蓄だったのではないだろうか。ということでありまして、単純平均と一番世帯数の多いあたりの貯蓄額というのはややずれがあろうかと思います。
  51. 小野信一

    ○小野委員 二百八十五兆円という計算は、今局長が言った一世帯当たり七百三十一万円に日本の世帯数三千九百万を掛けますと二百八十五兆円になるわけです。ですから、日銀の金融資産残高五百兆円前後とはかなりの格差があるわけです。やはり経済企画庁とすれば、金融資産残高の方を基準にして考える、計算するということになるようで、それは結構でございます。問題は、単純計算して、一世帯当たりの貯金が七百三十一万、そうは言っておりますけれども、単純計算であれば五百兆円を三千九百万世帯で割ったものも出てくるわけですから、随分大きな差があるのだな、そういう感じを持っております。  この次に、そういう過剰流動性といいますか資金残高、資金がどんな形で日本経済に影響を及ぼしたのか、地価の高騰などは端的な例だと思うのですけれども、その質問をしていきたいと思います。  最後に大臣にお伺いしますけれども、七月十五日に、日米の経常収支不均衡を是正するためには、米国の財政赤字削減とともに我が国も財政再建を一時棚上げすることが必要であるという調査報告を経済企画庁自身が発表いたしました。私はある意味で賛成なのです。政策としてあらわれるかどうかは別にして、この七月十五日に発表した経済企画庁の考え方について、今でも変わりがないのか。できればそうしてほしいのだけれども、大蔵省なりは、国家財政を考えるとそんなわけにはいかぬ、そういうことなのか。これからそういう基本的な考え方が経済企画庁の不況対策に対して大きな底辺の力になるだろうと私は思うのです。大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  52. 及川昭伍

    ○及川政府委員 事実関係についてだけ最初に説明させていただきます。  経済企画庁が委託調査をいたしました経済構造の調整あるいは対外不均衡是正のための方策の研究の中で、日米の対外不均衡是正のために最も効果があるのはアメリカの財政赤字の削減であるという調査結果が出ておりますし、学者の多くもそれを支持し、アメリカ自身の経済学者も大方それを支持していることだと思います。ことしの経済白書におきましても、我が国の経常収支不均衡拡大の原因を三つに分けて分析しておりますが、第一が内需の成長率の日米間格差、これはアメリカが財政赤字を拡大して内需を非常に広げた、日本の内需成長率は余り大きくなかった、これが全体の四割を占めておる。それから、ドル高・円安であったことが三割の比率を占めておる。それから、日本の経済構造の問題に起因するのが三割という分析をしておるわけでありますが、同じような系列でそのような研究報告がなされておるわけであります。  ただ、そのときに、日本が財政再建を棚上げすることが有効であるという結論は出していないはずでありまして、むしろ日本の内需の拡大が経常収支不均衡是正に寄与する割合は非常に少ないということを結論として出しているのではないかと思うわけであります。もちろん日本が内需を拡大することには相応の効果はありますけれども、アメリカで財政赤字を削減することの効果に比べれば非常に少ないと、比率を出して報告をしているわけであります。同じような考え方はOECDの研究レポートでも出ておりますが、そのような考え方は現在でも変わりません。経常収支不均衡是正は、我が国の努力だけではなくて、アメリカとの政策協調、特にアメリカの財政赤字の削減、経常収支赤字の削減と合わせてやらなければ、日本の経常収支黒字の是正は非常に困難であるというふうに認識をしております。
  53. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 内需拡大のために国債を発行することによって公共事業その他政府の支出をふやしていこうという考え方が、先生も御指摘のあったいわゆるケインズ経済学の基本的な財政政策でございます。この政策の効果というものも私どもは認めるにやぶさかではないわけでありますが、しかし、これに過度に依存することのマイナスも同時に私たちは十分に理解をしなければならないと思っておるわけであります。特に、現在のように国債残高が百四十兆円を超えるという状況の中で、こうした国債発行による財政の拡大に内需拡大の中心を求めることについては、私たちは警戒的でなければならないと考えておるわけであります。  私、よく申し上げているわけでありますけれども、国がやるべき責任はある、しかし国はしょせん公共事業でいいますと六兆円程度のものでありますから、これをこれからどうふやすかということで、やはり財政再建を考えればそんなに多くふやすわけにいかないわけであります。一たんふやしちゃうと次減らしたらまたマイナスになるということですから、ふやした以上は継続的にふやさなければならぬのですね。これは大変なことだということであります。  ただ、GNPを見てみますと、例えば民間の設備投資はGNPの構成要素の中で五十五兆円になっているのですね。民間の消費は、国民消費は百九十兆円でありますから、例えば民間消費がたった一%ふえることで一兆九千億の支出がふえる。二%ふえればもう三兆八千億です。政府が考えておった三兆六千億の総合経済対策を上回るような内需拡大になるわけでございますから、結局は、国もやることはやるが、しかしそれはあくまでも一つのリードオフであって、そのことによって民間の企業の経済に対する成長期待というものを醸成して設備投資を誘発する、そして将来の国民生活に対する安心感、向上感をベースにした奥さん方の消費意欲が増大する、こういうことが正しい内需拡大政策ではないか、私はかように考えておりますので、国がやるべき責任はやるべきこととしてきちっといたしますけれども、しかし民間の投資意欲、そして消費意欲というものが一体になって目的とするしかるべき経済成長を達成することが本来のありようではないかと思っておる次第であります。
  54. 小野信一

    ○小野委員 終わります。
  55. 河上民雄

    河上委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ────◇─────     午後一時五十四分開議
  56. 河上民雄

    河上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伏屋修治君。
  57. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私は円高差益の還元についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず最初に長官にお尋ねをしたいと思いますけれども、昨年のG5以来円が急騰をいたしまして一年になるわけでございます。その間に十兆を超える円高差益が生じておるわけでございますけれども、そういう差益が消費者の皆さんに実感が伴っておらない、そういうのが実態ではないか、そういうふうに考えるわけですけれども、その辺の御見解をお尋ねしたいと思います。
  58. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御指摘の中にもございましたが、昨年九月以来の円高が全体のマクロで考えてどれぐらいの差益を日本経済にもたらしたかということを経済企画庁が先般計算をしたわけでございますが、為替による円高とそして原油価格の値下がりを合計いたしますと、十兆四千億とか五千億とかそういった数字になっておるわけでございます。  それの還元でございますが、御案内のように、ことしの四月、五月と総合経済対策、そして当面の経済対策というのを政府がいたしまして、その中の大きな柱は、いわゆる原油価格、そして円高による原料石油の輸入がどれぐらい電力料金に影響するんだ、こういうことで計算いたしまして、約一〇%ぐらい、全体の金額で一兆一千億弱の電力料金の値下げ、ガス料金値下げという形で還元をしたわけでございます。ただ、これは一家庭に換算して計算をいたしますと千五百円で、年間ずっと集めても一万七、八千円、こういうことでございますから、家庭の奥さん方の感じでも、千円ちょっとということでは大したことがないかな、こういうことかもしれませんが、全体を合わせますと一兆円を超える金額でございますから、相当な割合の、相当な金額であるというふうに私も考えているわけであります。  ただ、十兆より余計あったらどうなるんだということでございますが、なお物価の計算もいたしますと、本来ですと上がるべき物価がここ一年間安定をしておりますので、そうした物価を安定化させた効果として考えてみますとこれも五兆円ちょっとぐらいの計算になっておりますので、物価の安定という形では還元をしている、こういうふうに私ども解釈しているわけであります。
  59. 伏屋修治

    ○伏屋委員 経企庁の方が円高結果調査をしまして三十六品目について調査をした、そういうことは一応評価できるわけでございますけれども、それでもなおやはり、円高差益が生活に返った、こういう実感はないわけでございます。とりわけ政府の許認可にかかわる十八品目の調査等を見ましても、それぞれ、国際電話料金を除きましてあとの十七品目につきましては円高のメリットがある、そういうような結果が出ておるにもかかわらずその差益が生活に実感として伴ってこない。こういう円高差益が本当に消費者の実感としてなかなか進まないのは、やはり政府主導の公共料金、そういうものをもっともっと差益を還元することによって多くのものを連動させる、そうして初めて消費者に差益の恩恵というものが行き渡っていくのではないか、このように考えるわけでございますけれども、けさ方の長官の答弁におきましても、六カ月ないし九カ月後にその差益の影響が出てくる、こういうような御答弁がございました。はや既に一年を経過しているわけでございますので、その辺のところを、政府の許認可にかかわるそういう十八品目のうちのメリットあるところに対してどういうような政治姿勢で臨もうとしておるのか、その辺もお聞かせいただきたいと思います。
  60. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 個々の品目については物価局長が来ておりますので説明をさせますが、ただ、政府の許認可にかかわる価格、例えば農産物関係の価格などは、これはもう先生も御案内のように、例えば牛肉価格にいたしましても畜産振興事業団が中に入っているわけでございますが、円高による差益は二百四十億だったか、それぐらいの計算になっておるわけでございます。これは牛肉価格の売り渡し価格を下げることでこれまでやってまいって、一応計算上は還元した形になっているわけでございますが、ただそれは差益分だけでございますので、実際、海外の安い牛肉を買ってそれで国内に高く売って、その差額で畜産振興のためのいろいろな対策を講じていくことは残っているわけですから、その上積み分の差益分は還元いたしましたけれども、全体としての輸入価格と売り渡し価格の差というものは残っているわけでございますし、食管会計の中で例えば小麦なんかもことしは国内産がふえたものですから、それを買い上げるために余分の資金が必要である、そういう形の中で円高差益が使われてしまっておりますので、なかなか小売価格まではそうすぐには影響しないような面もございますが、しかし、できるだけのことはするように、農林省その他関係各省を通じて要請をし、また指導もしてまいっておる次第でございます。
  61. 伏屋修治

    ○伏屋委員 長官の、一層の各省庁にわたる御努力をお願いしたいと思います。  消費者物価、卸売物価にも大きな影響を持つと言われております電力料金の問題について、お尋ねをしてまいりたいと思うわけでございます。  先ほど長官のお答えがありましたように、大型の値下げをした、こういうようなお話がございましたけれども、それは暫定措置として六月からの値下げという形でございますが、それに充てられたお金としましては、九千七百億ぐらいのお金でございます。そのときの根拠というのは一ドルが百七十円レート、そして原油価格が一バレル十九ドルということでございまして、今日現在までにはもうかなり原油価格も下がっておりますし、そしてまたレートも円が急騰しておるという状況でございますが、そのときに電力会社は大体どのくらいの差益を見込んでおったのですか。
  62. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 それぞれの担当省庁から出てまいっておりますので、その者に説明をさせます。
  63. 清川佑二

    ○清川説明員 お答え申し上げます。  本年の五月に決定いたしまして六月から実施をいたしました差益還元対策におきましては、先生指摘のとおり、為替レートにつきましては百七十八円、原油価格につきましては一バレル当たり十九ドル、それとLNG価格でございますが、原油価格に換算いたしまして一バレル当たり二十三ドルというような前提を置きまして差益額を計算いたしましたが、その時点におきましては、九電力の合計では一兆三千四百億円程度、それから三大大手ガス会社では千六百三十五億円、合計一兆五千億円程度でございます。
  64. 伏屋修治

    ○伏屋委員 暫定措置を講じたときよりもさらに差益は出ておるわけでございますね。九千七百億以上で手当てした、それから円が急騰しておる、原油価格も下がったということで、その差益というのは一体どれぐらいだと見ておるわけですか。
  65. 清川佑二

    ○清川説明員 お答え申し上げます。  この差益につきまして、その後、先生指摘のとおり、為替レートにつきましては例えば九月の平均では百五十六円とか、あるいは原油価格につきましては九月に約十一ドル程度に下がってきております。あるいはLNG価格などは余り下がっておりませんが、ただ、これが問題といたしましては、いろいろ変動しております。為替レートあるいは原油価格その他についても変動しておりますので、これが全体として一年を通してどのあたりでおさまるのかというところが、実は大きな問題かと思うわけでございます。そういうわけでございまして、御指摘のように円高、原油安は当時に比べて進んでおりますけれども、そこの、どの程度にさらに差益があると考えるとかいうことにつきましては、なかなか答えが出せないという状態でございます。  ただ、私どもなりに、非常に機械的な計算の前提のようなことは考えておりまして、どの程度に落ちつくのかということは問題なんでございますが、一ドルにつきまして一円の円高が一年続けば、約九十億円程度の差益は生じるであろう、あるいは原油、LNG分も含めまして一バレル当たり一ドル、これが値下がりするということで一年間続けば七百億円程度の差益が生じるであろう、機械的な計算の諸元というものは大体こんなところでございます。
  66. 伏屋修治

    ○伏屋委員 それをトータルすると、どれぐらいになるかということはわかりますか。
  67. 清川佑二

    ○清川説明員 お答えいたします。  トータルの問題なんでございますが、まだ現在、為替レートも十月の二十七日あたりでございますが、急に百六十二円五十銭とかいうように随分変動しておりますし、あるいは原油価格につきましても、先ほど申し上げましたように、まだまだOPECのカルテルその他で変動しておりまして、一体どこへ落ちつくのかということの見きわめが困難でこざいますので、それのトータルの計算ということは難しい状態でございます。
  68. 伏屋修治

    ○伏屋委員 けさの長官の御答弁の中にも、十一月末に大体九電力会社の決算がまとまってくる、そのあたりから差益の額がはっきりするのだ、こういうようなことも答弁があったようでございますが、けさの新聞等々を見ましても、そういうような予想される差益額というのは報道されておるわけでございます。経企庁はその辺を何か濁しておるようでございますが、その辺、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  69. 海野恒男

    ○海野政府委員 電力、ガス以外の幾つかの公共料金ございますけれども、それぞれの項目につきましてはそれぞれの事情がございますけれども、原則として、この前の九月十九日の総合対策でも政府のスタンスを明確に示しましたように、公共料金につきましては原価を反映した適正な料金水準であるべきである、そういう観点から可能な限り引き下げるというのが基本原則であるということを明示いたしておりまして、今後ともそのスタンスは引き続き維持していくということでございます。
  70. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういうスタンスを維持していくということは大事なことだと思います。しかし、その差益の総額がわかってくればやはり需要者に対して還元することは当然のことだ、再引き下げをするようなことは。その再引き下げをする根拠は、差益額がどれだけになったかという総トータルがわからないといつやるのかということも決まらない、こういうことになるわけでございまして、きょうの新聞を見ますと、電力九社の九月中間決算内容がほぼ固まる中で、円高、原油安による六十一年度差益の合計額というものが明示されておる、新聞には出てきておるわけですね。その差益額を見ると、大体四千億ないし五千億を上回るだろう、当初差益を計算したのは、一兆三千四百二億ぐらいの差益だというふうに計算しておったところが、その後のレートの進行、原油安ということで、四、五千億は見込まれるだろう、こういう報道があるわけでございます。  トータルは、経企庁の方は余りはっきり申されませんけれども、そういうような下限を見ても、四千億というものの差益が生ずることはまず間違いなかろう。まだ十一月に決算発表ですから、今経企庁としては、その総トータルはつかんでおらないという立場から数字を明確にしないのだろうとは思いますけれども、まあ当事者の九電力会社がそう言っておるのですから、まず、ほぼ間違いなく四、五千億の差益が生ずるだろうということでございますし、またそれは、暫定措置を決められたのは六月ですから、その前の年の差益というものは含まれておらないというふうに考えますけれども、昨年の差益というのは一体どれくらいあったとつかんでおられるわけですか。
  71. 清川佑二

    ○清川説明員 お答え申し上げます。  昭和六十年度の決算における差益額というのは、約二千三百億円というふうに考えております。
  72. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そうすると、新たに生じた四千億とそれから昨年の二千三百億、こういう差益をうまく料金引き下げの方向へ持っていかなければならない。そういうことは、電力大口需要業界等々が政府の方にそれぞれ陳情しておるわけでございますね。日本化学工業協会とか日本鉱業協会、これらがそれぞれ要望書を政府に提出しておる。それに連動しまして、大口電力需要者もそれに同調しておるということで、電力は早く引き下げてもらいたい、これが電力大口需要者の願いではないか、そういうふうに考えるわけでございますけれども、引き下げる意思について経企庁長官、どういうふうにお考えでしょうか。
  73. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 電力会社が新しい料金を採用いたしましたのがこの六月からでございますので、私どもは、その後の原油価格の動向そして為替の動向を見ながら、引き下げ得る余力があればそれは引き下げる方向で検討をしてもらいたい、こういう主張をしているわけでございます。  ただ、先ほど資源エネルギー庁の課長の方からも説明がございましたが、国際的な原油の動向について必ずしもまだはっきりした見通しがつかないので、今後OPEC等の動きを見ていく、上がる予想もあるし、また円レートにつきましても、昨今多少戻ったようなこともございますし、どういう方向に今後推移するか、もうちょっと様子を見たい。  やはり電力料金というのは、一律に変えますとボリュームが相当あるわけですね。ですから、ちょっと電力料金を動かすことで相当電力会社の収入に影響するものだから、自分たちとしては、むしろ資源エネルギー庁としては慎重に事を図っていきたい、こういうことでございますし、そうした担当官庁の考え方も私どもは理解できないわけではないわけであります。ただ、物価局長も申し上げましたように、国民生活を預かる経済企画庁としては、その性急な結論を出すことは控えるべきだとは思いますが、やはり方向として円高差益、そして原油価格の低下が進めばそれは国民生活に還元すべきである、こういう基本的なスタンスで臨んでまいりたいと思います。
  74. 伏屋修治

    ○伏屋委員 現実にそれだけの円高が生じておるわけでございますので、今経企庁長官の方に、引き下げをするということを、通産省にそういうような話し合いをする考えがあるか、こういうようにお聞きしたわけでございますが、昨日の商工委員会におけるいろいろ円高の問題についてのやりとりの中でも、やはり暫定的に引き下げていかなければならないというような御意思は底流にはあるようでございますね。そういう面で、再引き下げを何としてもやっていかなければならない、今日現在においても四千億を超える差益があるわけでございますから。  商工委員会における答弁は、料金体系というのはさわらないけれども暫定的に引き下げる、今の六月からとられた暫定措置というものは来年の四月ぐらいまで維持して、それからその動向を見てまた暫定措置を講ずる、こういうような答えでありますけれども、その辺のところは経企庁長官はどういうふうにお考えになっておられますか。
  75. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 ただいま申し上げましたように、いろいろな不確定な要素もございますので、そうしたものの動向について慎重に見ていく必要があるとは思いますが、先ほど申しましたように、基本的には円高差益、そして石油価格がさらに下がるというようなことがあれば、それは電力料金を下げる方向で行政的にも指導してまいりたい、こういうことでございます。
  76. 伏屋修治

    ○伏屋委員 午前中にも長官の御答弁がありましたように、この差益というのは企業努力によって生じたものでない、いわゆるつかみ取り的な利益であるだけに、それを一日も早く料金体系とかあるいは引き下げの方向へ持っていって、いわゆる政府の許認可にかかわるそういう円高差益がリードする中で、やはり消費者に円高差益の実感を伴わせるような行政指導というものは必要ではないか、こういうように考えるから私は申し上げておるわけでございます。  今の電力料金の体系というのは、昭和五十五年につくられた料金体系でございまして、既にもう六年たっておるわけでございます。しかも、その五十五年の料金体系の根拠というのは、一ドルが二百四十二円、そして原油価格は三十二ドル、これを根拠にしての料金体系である。今の国際経済社会の動きを見ましても、ここまで円が安くなるということは考えられないと私は思うわけでございますが、経企庁長官はどうお考えでこざいますか、不透明ということでございますけれども
  77. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 円対ドルレートが将来どの水準に落ちつくかということについては、これはなかなか難しい問題でございまして、私どもは、G5以前の二百四、五十円というものは日本にとって円安であって、実勢を下回るものである、こういう理解をしておったわけでありますが、今の段階でどうなるかは、これはいろいろな条件がございまして、円高で影響を受けている企業の立場でいいますと、今のようなレートはとんでもないことであって、できれば二百円ぐらいに戻してもらいたい、何とかならないかというような要望を切実にする業界もあるわけでございます。  ただ一方、アメリカとの日米貿易収支、そしてアメリカの対外バランス、またそういったいろいろな状況を考えてまいりますと、なかなかアメリカの国際収支も改善しそうもないし、また日本の貿易収支も、Jカーブ効果もあってのことでございますが、昨年からことしにかけてむしろ経常収支の黒字が増大しているというのが現状でございます。数量的には輸出数量が弱含みで、輸入数量はむしろ大幅にふえておりますから、このJカーブ効果がだんだんなくなってきて国際収支の改善が、黒字幅の改善がなされると思いますけれども、それがいつ、どうなるかについては、明確な見通しが立たないような現状でございますので、それを考えてまいりますと、いわゆる円高がさらに進むような要素を全く否定もできない。ですから、実際は輸出関連業界が大変だという切実な叫びと並行して国際収支の黒字というものを考えていく、さらに円高を求めるような声も御案内のようにアメリカの一部でいろいろあるわけでございますから、そうしたいろいろな問題を見てまいりますと、なかなかここで明確に円高がどの水準上で落ちつくかということについては、申し上げられるような状況では残念ながらないことを御理解いただきたいのであります。
  78. 伏屋修治

    ○伏屋委員 長官の言われる先行き不透明ということは、私もわかるわけでございます。しかし、現実につかみ取り的な差益が生じておるわけでございますので、商工委員会等では、来年の四月まで今のままの暫定措置で進めていきたい、そのとき、新料金体系というのはさわらないという答弁があったようでございますけれども、五十五年に料金体系ができてはや六年でございますし、不透明とかいろいろなこともございましょうけれども、やはりそれをもう見直すときが来ておるのではないかなということを思うわけです。料金体系ができないとするならば、せめて、四月まで今の暫定措置でいくというのではなくて、四千億以上の差益が生じておるわけですから、それを何としても引き下げの方向へ持っていく。新聞のいわゆる電力関係者等々の発言を見ましても、一月ぐらいからは再引き下げされる可能性もある、こういうような考えを持っておるところもあるわけでございますので、何としても新料金体系ができないということであるならば再引き下げをできるだけ速やかにやるべきだ、このように私は考えるわけですが、どうですか。
  79. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生のおっしゃるお気持ちも、私も理解できないわけじゃこざいませんが、重ねて申し上げておりますように、いま一、円レートの推移そして原油価格のこれからの動向について確定できない面もございますので、そういった動向を慎重に検討していくと同時に、全体の料金、そして料金水準と体系の問題についても、これは電力多消費型産業から、先生の御指摘もございましたようにいろいろ要望もございますので、そのあたりを総合的に勘案しながら検討を進めてまいりたいと思います。
  80. 伏屋修治

    ○伏屋委員 何回やりとりしましても、何か円レート、原油価格が不透明だということで、どうもはっきりしたお答えをいただけないようでございますけれども、電力当事者だってそれだけの差益を認めておるわけで、一月から引き下げられる可能性はあるのだ、こういう考えを持っておるわけでございますからね。先ほども申し上げましたように、政府の許認可にかかわるそういうものがリードすることによって円高差益が還元されていくということから考えれば、せめて一月からでも今までの四千億以上の差益を還元する。一月までの間というのは、もう十一月、十二月ですから、不透明だ、不透明だと言ったってそれほどの変動はないと僕は思いますよ。  だから、その辺でとにかく、今国民の皆さん、また電力の大口需要家の皆さんは、一日も早いそういう電力の引き下げを願っておるわけですから、その辺の国民感情にこたえる意味においても再引き下げを一月から実施する、それぐらいのことは経企庁長官のお答えをいただきたいわけですが、どうですか。
  81. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 私ども物価を預かる立場として、また国民生活を預かる政府部門の立場としては、繰り返して申しておりますように、円高の差益にせよ、また原材料価格の国際的な低下にせよ、いずれにしても利益が出た場合には、それは国民の皆さんに還元をできるだけしていただくということが基本的なスタンスでございます。
  82. 伏屋修治

    ○伏屋委員 再引き下げできるように経企庁長官の、通産省との強力な指導、交渉、そういうものを期待して次の問題に移ってまいりたいと思います。  先ほど長官も、政府関係の許認可の中に肉もある、小麦もあるということでございますが、まず最初に小麦の方からお尋ねしてまいりたいと思います。  小麦のいわゆる輸入価格レートをどれだけと見込んで、どれぐらいの総量を輸入し、どれだけの差益が生じたのか、お答えいただきたいと思います。
  83. 日出英輔

    ○日出説明員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、政府が国内産の麦とそれから外国産の輸入麦とを一緒に一体的に管理をしまして、米と並びます国民の主要食糧であります麦を管理しておるわけでございます。今数字をお尋ねでございますが、食糧用で輸入麦を年間約四百万トン輸入をいたします。それから国内麦につきましては、これはことしの買い入れ量でいいますと八十万トン弱でございます。  そこで、円高の関係でございますが、政府が物を輸入したり外国から物を買いますときに、いわゆる支出官レートという一般会計全体でのレートがございます。これがことし六十一年度でいいますと、二百九円ということで予算の編成をしておるわけでございます。したがいまして、二百九円の水準からどの程度円高になるかということで円高差益を計算するわけでございますが、六十一年度の輸入麦の円高差益、いろいろ計算してみますと、まだ不確定要素があるわけでございますけれども、今後為替レートが今のような状況ぐらいで推移をいたしますとすれば、約二百五十億円程度の差益になるというふうに一応試算してございます。
  84. 伏屋修治

    ○伏屋委員 先般政府が決定しました総合経済対策の中で、小麦のいわゆる円高差益還元というものが盛られておらない。これはどうしてなんですか。
  85. 海野恒男

    ○海野政府委員 先般の総合経済対策におきまして、確かに、小麦だけが具体的な項目として外されておりましたのは御指摘のとおりであります。我々も農林省と随分議論をいたしましたけれども、ただいま農林省の方からも御答弁がありましたように、小麦は、いわゆる食管会計の中で政府から国民に売られる売り渡し価格は、輸入麦のコストそれから内麦のコスト、米の価格等総合勘案しまして、その食管制度の中で決定されるという仕組みになっておりますので、円高によって差益が生じたからといって、直ちにそれを還元するといったような制度になってないということもございまして、その時点で、つまり九月の中旬時点でどういうふうにすべきかということについて、米価の動向あるいは国内麦の生産量並びにコストといったようなものが不明確であったというようなことから、最終的な結論を得られなかったということで、一応そこの対策の中からは外したということでございます。
  86. 伏屋修治

    ○伏屋委員 先ほど、小麦の輸入量とその買い入れのレート等々で二百五十億程度の円高差益が生じた、それに加えてまた、いわゆる主要小麦生産国の在庫がふえたことによっての国際価格も下落しておるわけでございまして、それを合わせると、そこにまた上積みの差益が生ずるはずでございますが、それはいかほどですか。
  87. 日出英輔

    ○日出説明員 ただいま手元に詳しい数字を持っておりませんが、私二百五十億円と申し上げましたのは、円高の部分だけを取り出して申し上げたわけでございます。そのほかに当初予算で見込みました国際相場が、その後先生おっしゃいますように大分下落しております。約百億以上の相場による益というのが一応計算はされると思っております。
  88. 伏屋修治

    ○伏屋委員 二百五十億の差益に、はっきりした数字は言えないけれども百億くらいの差益はあるのではないか、こういうふうに見ると三百五十億という差益があるわけでございますが、先ほど総合経済対策でそれが取り上げられなかったというのは食管会計の問題がある、こういうような御答弁もございました。  そうすると、いわゆる消費者は、小麦の二次製品というものを日々の中でとっておるわけでございますが、そういう二次製品を見るに全然値段は変わらない、一体円高はどこへ行ってしまったのか、こういうのが消費者の実感ではないかと思うわけでございます。このように三百五十億も円高があっても、食管会計という一つの壁があってそこに全部吸収されてしまうということになると、消費者は指をくわえて見ておれ、こういうことにならざるを得ないということでございますし、食管会計というのは今ひとり日本の国だけの問題ではなくて、国際的にも食管会計というものは注視されておるわけでございます。最近でも農産物の十二品目をガットで取り扱う、こういうことになりましたし、また、米の自由化等々も世界各国から言われておるわけでございますので、食管会計はもう見直されなければならない時期が来ておる、こういうことを考えるわけでございますけれども、その辺の長官のお考えはどうですか。
  89. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 食管会計ができましたのは昭和十七、八年ではなかったかと思うわけでございますが、その当時はまさに戦時経済に日本が突入して、必要な国民の主食である米を農家の方々にお願いをして適正な生産者価格でつくっていただく、そしてそれを配給ルートを通じて適正な消費者価格で国民の皆様に均てんをしていただく、こういうのが食管制度の基本的な枠組みといいますか、考え方だったと思うわけであります。  その制度がずっと戦後も維持されてまいったわけでございますが、私は食管制度というものが、戦後の米の安定的な生産の向上に大きな役割を果たしたと思いますし、また現在においても生産者に適正な生産費を補償し、そして、消費者に安定した価格で米の流通を、配給を確保しているという面はあると思います。しかし、同時に、かつての米の足りなかった時代から米の余っておる時代に変わったわけでございますので、そういう実情を踏まえて、食管制度のさらに現実に即した改善というものを考えなければならない時期にあると私は思っておるわけでございます。  しかし、ともかくこれまで日本の農政を支えてきた大きな枠組みでございますし、これは慎重に改善を図っていかないと日本の農業、米だけではなしにいろいろな意味で日本の農業に大きな影響を与えますし、そして、日本の農業に混乱を与えるということは日本の農村に対して混乱を与えて、それが日本の経済の運営に対しても大きな影響を与えざるを得ないぐらいの問題だと思うわけでございますので、食管制度があるから例えば米の値段なり先生の今お話しの小麦の値段が硬直化するんじゃないかというような御意見もわからないではありませんけれども、そうした御意見を踏まえながら、しかし、これはいろいろな角度から慎重に検討していかなければならない問題であると考えておる次第でございます。
  90. 伏屋修治

    ○伏屋委員 もう時間がありませんので最後になりますが、あと一つ、二つまとめてお尋ねしたいと思います。  中小のパンメーカーでつくっておるところの全日本パン協同組合連合会というのがありますけれども、その方々はいわゆるパンを売買する最先端の方々でございまして、そこへ消費者の方々の苦情は全部集中していくわけでございます。円高になってもパンはちっとも安くならぬではないか、うどんとかそうめんとかスパゲティもちっとも安くならぬではないかという攻撃を一手に受けることはどうにもならぬということでその連合会は、米の方の赤字にその小麦の差益を流用できるならば、せめて今評判の悪い学校給食のパンの小麦粉の品質をアップする、またそれと同時に、そのことは父兄負担の軽減をするという方向へほんのわずかでもいいからそういう差益を回してくれ、こういうような苦境に立ったところからの知恵を出して、そういうようなことを言っておるということも聞いておるわけでございます。  これは農水省と文部省もかかわってまいりますので、そういうような考えが消費者の生活の中からも出ておるということを経企庁長官もよく認識をしていただきまして、農水省、文部省の方にもそういう働きかけをしていただきたい、こういうことを思います。それについてのお考えをまた後ほどお聞かせいただきたいと思います。  もう一つは、いわゆる小麦を原料としてつくられた二次製品、それが海外から輸入された製品、これが日本の国内でつくっておる業者に大きな脅威を与えておる。向こうでは非常に安い小麦でつくった製品ですね。ですから対抗しようがないということで、非常に業者は困っておるわけですね。そういう面で、それと対抗できるだけの考えをやはり行政の中に持ってもらいたい、そういう声もあるようでございますので、その二点お聞きいたしまして質問を終わりたいと思います。
  91. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 学校給食問題は、先生の御指摘については私もいろいろ検討させていただきたいと思いますが、これはなかなか難しいことでございまして、私などは米作県の代表でございましたので、これまでは学校給食を通じて米の消費拡大ということもひとつ大いにやれということを農林省や文部省に言ってまいった立場でもございます。なかなか大事な点の御指摘がいろいろございましたので、検討させていただきたいと思います。  それから、やはり高い日本の小麦を使ってパンやビスケットやそうした二次製品をつくっているメーカーの方々が、輸入の自由化につれて大変な御苦労をしていらっしゃるということもわからないではありません。ただ、この問題は、単に小麦とパンとかビスケット、ケーキという問題以外にも同じような問題が実はたくさんございますので、こうした問題なかなか難しいことでございますが、いろいろ今後とも知恵を出させていただきたいと思うわけでございます。
  92. 伏屋修治

    ○伏屋委員 終わります。
  93. 河上民雄

    河上委員長 次に、森田景一君。
  94. 森田景一

    ○森田(景)委員 最初に、円高差益の還元状況についていろいろと論議が交わされておりますが、私も一点だけお尋ねしておきたいと思います。  経済企画庁の試算によりますと、円高、原油安による差益額がことし九月までの一年間で約十兆四千億円である、そのうち今年度中に四兆五千億円が還元される見込みである、こういう発表があるわけでございます。しかし、この数字で見る限り、円高差益の還元は不十分であると私も思いますし、経済企画庁の方もそういう御認識のようでございます。  そういうことで、これからの差益還元について一体どのように取り組んでいかれるお考えであるのか、御決意であるのか、経済企画庁長官の見解を最初お尋ねしておきたいと思います。
  95. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御指摘のように、経済企画庁で試算いたしますと、円高差益で六・四兆円、そして原油価格の低下で四兆円で、合計十・四兆円でございまして、その還元の状況につきまして消費支出と投資に分けまして、それぞれ物価が安定をしておりますので、本来円高で安いものが入ってこなければ上がったであろう物価の上昇率を掛けて計算いたしますと、合計で四・五兆円ということになるわけでございます。こういう形で、四・五兆円分は消費物価または投資物価の安定という形で還元をしたわけでございますが、それ以外残っているのは計算上は約六兆円あるわけでございます。しかし、これは私どもの考えではまだパイプの中に入っておって、漸次これが末端まで影響してくる、吐き出されるであろうという考え方であります。  同時に、こうしたものをもっと進めるために、輸入製品、輸入商品が各段階で価格の上でどういうふうに影響しているか、そういう価格動向調査を積極的にしてまいっております。また同時に、並行輸入を推進する形で、競争条件を整備することで末端価格がさらに低下していくように、その他いろいろな措置を通じて円高差益の末端へのできるだけ大きな還元を実現してまいりたいと思っておる次第でございます。
  96. 森田景一

    ○森田(景)委員 ただいま長官の御説明のとおり、まだ還元されない部分が六〇%ぐらいあるということでございますから、これが還元されれば国民はかなり大きな利益を得ることになるわけです。私が申し上げるまでもありませんが、円高にはデメリットとメリットがあるということでございまして、デメリットの方は輸出関連産業でかなり大きな影響を与えているわけです。少なくともこのメリットの方は国民が一日も早く受けて、メリット、デメリットのバランスをとっていくようにしなければいけない、こういうことだと思うのです。  私、いつも申し上げるのですけれども、私がかつて千葉の県会議員をしておりました当時、当時の千葉県知事、自民党の公認の知事でございましたが、与党の自民党の県会議員からこういう話がありました。千葉県の仕事のやり方というのは、「検討三年、やります二年、始めましたはぼちぼちと」、これは与党からそういう話がありました。非常に大きな話題になったわけでございますが、こういう難しい状況の中では、やはり検討と言っているうちにどんどん日にちがたってしまう、国民が円高のメリットを享受しないうちにまた変化が起こってくる、こういうことも当然予想されるわけでございますので、どうかひとつ、検討なさらなければ仕事が進まないのは当然でございますけれども、その検討が早く進むように長官の格段の努力をお願いしたいと思うわけでございます。それはそれで要望しておきます。  きょうは、関連しまして、航空運賃の問題についてお尋ねしたいと思っているわけでございます。これは運輸省の担当になろうかと思いますが、経済企画庁も関連ございますのでお聞きいただきたいと思うわけでございます。  この円高、原油安によります航空運賃の差益の還元につきましては、運輸省は国内線普通運賃の引き下げを見送ることにしたというのですね。一方、国際線の運賃は、円高に伴う運賃の方向別格差を是正するために、日本―アメリカ、日本―ヨーロッパ線以外の路線についても日本発の運賃の引き下げ、外国発の引き上げを検討する、こういうことになっておるわけでございます。政府の総合経済対策の中に盛り込まれているわけでございます。  日本の航空三社の円高、原油安の差益額から見ましても、国内線普通運賃を引き下げて、そして国際線の運賃も利用者に円高メリットが反映されるよう早急な対策を講ずべきである、これは私だけではないわけでございまして、そういう考え方が強いわけでございます。これに対してどういうふうなお考えをお持ちになっていらっしゃるのか。  あわせて、日本の航空三社の六十一年度の収支見通しについても、御説明をいただきたいと思います。
  97. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  いわゆる円高に伴いまして、このメリットというものが航空に関しても生じておるのは事実でございます。ただし、円高そのものにつきましては、日本の円建ての経費と収入、逆に言いますと外貨建ての収入と経費が同じような割合になっておるものですから、そのこと自体からは直接のメリットは出てまいりませんけれども、主として原油の値下がり、これはかなりのものでございまして、これによってメリットを受けているのは事実でございます。  私どもといたしましても、政府の方針を受けまして、何とかこのメリットを還元できないかということで検討してまいったわけでございます。この四月におきまして、いわゆる国際運賃におきます方向別格差の是正ということで、例えば太平洋線におきまして日本発の運賃を引き下げる、あるいは欧州線につきましても日本発の運賃を引き下げる、同時に外国発の運賃を若干上げるというようなことで、その方向別格差の是正をとったというようなことがございます。  しかしながら、その後さらに九月にも経済対策閣僚会議があったわけでございまして、この段階でも検討したわけでございます。私どもといたしましては、気持ちとしては今申し上げたとおりでございますが、航空会社の経営状況を見ますと、六十年度におきましては日本航空は赤字を出しておる、全日空は一応黒字を出しておりますけれども、これはどうしても何とか配当を出さなければいけないというような民間会社としての資金繰りの事情その他もこざいまして、かなり無理をして出しておるというような事情もございまして、非常に苦しい状況でございます。  六十一年度の収支につきましても、これは現在の段階での見通しでございますけれども、諸経費の上昇、それから昨年八月の日本航空の事故を契機といたしまして非常に需要が伸び悩んでおるというようなことがございまして、現段階では六十一年度の経営状況も非常に厳しいものがあるということでございます。  そのような状況の中におきまして、何とか対策がとれないかということで打ち出しましたのが国内運賃におきます割引の拡大、それから国際航空運賃につきましては方向別格差をさらに是正するということで、オセアニア線につきましてこれを是正する、あるいは東南アジアについても、アペックス運賃というような運賃を導入することによりまして是正を図りたいということでございます。国際航空運賃につきましては相手国との関係がございますので、両方の国が認可をいたしませんと発効いたしませんので、まだその手続はできておりませんけれども、一応ただいまのような措置は十二月一日から実施したいということで進めているところでございます。
  98. 森田景一

    ○森田(景)委員 各航空会社が非常に経営が厳しいという話でございまして、先般運輸省の方も、日本航空がたしか百億円、全日空が五十億円、東亜国内航空が五十億円赤字になる見込みだ、こんなふうに発表なさいましたね。
  99. 平野直樹

    ○平野説明員 そのとおりでございまして、これはその時点におきます一定の前提で推定をしたものでございます。
  100. 森田景一

    ○森田(景)委員 五月末の各航空会社の収益見通しでは、日本航空は本年度六億円の黒字である、全日空が百二十三億円の黒字である、東亜国内航空が二十六億円の黒字である、こういう見通しを発表しまして、三社合計で百五十五億円の黒字になる見通し、こういう発表になっているのですが、これは数字に間違いありませんか。
  101. 平野直樹

    ○平野説明員 そのとおりでございます。
  102. 森田景一

    ○森田(景)委員 運輸省の方は三社合わせて二百億円の赤字だと言うし、会社の方から見れば年間で百五十五億円黒字になる。どっちの数字が本当なのか私よくわかりませんけれども、なるべく円高利益を還元したくないという方向で数字の調整をしているのじゃないか、率直に言うとそんな気がするわけなんですね。国民の前にはやはりこういう問題はガラス張りにして、経営が悪いなら悪い、いいならいいという状況に立って、やはり円高、原油安の利益というのは確かにあるのですから、それを国民に還元しようという努力を重ねていただくことが大事だと私は思うわけでございます。  それでまた、参考のためにお尋ねいたしますけれども、国際線の航空運賃について若干お尋ねしたいのです。例えば、東京―ニューヨーク間の往復運賃、東京―ロサンゼルス間の往復運賃、それから東京―ロンドン、東京―パリ、これの往復運賃についてひとつお尋ねしたいと思います。
  103. 平野直樹

    ○平野説明員 ただいまのお尋ねお答えします前に、先ほどの御質問に対しまして補足をさせていただきますが、私どもの推計も実は航空会社の資料をもとにしてやったものが大部分でございまして、ただし燃料油の見方につきましては、どうも実態がはっきりしないものですから私どもの推定値を使ったという事情がございまして、五月の時点と九月の時点とでやはり時点の違いがあるというようなこと、それから五月の時点と申しますのは決算を発表する時期でございますので、こう言っては語弊があるかもしれませんが、少し景気のいい発表をしたがるというようなこともございましたので、若干そういった差ができておるのではなかろうかと考えております。ここら辺につきましては、今後とも経営の状況について十分見守っていきたい、このように考えております。  そこで、ただいまの運賃についての質問でございますが、東京―ニューヨークにつきましては日本発の往復運賃は二種類ほどございますが、安い方の運賃で申し上げますと四十五万五千百円、相手国発は、これは一ドルを百六十円というふうに換算をいたしますと、三十五万三百円でございます。それから東京―ロサンゼルスにつきましては、日本発が三十一万五千六百円、相手国発が二十五万六千九百円。東京―ロンドンは、日本発が七十一万三千三百円、相手国発が四十一万一千二百円。東京―パリは、日本発が七十一万三千三百円、相手国発が五十六万七千六百円。以上でございます。
  104. 森田景一

    ○森田(景)委員 ちょっと数字がはっきりしないというか、私の聞き取りがはっきりしないのですが、ニューヨーク往復がビジネスクラスで四十五万五千百円、ロサンゼルスの往復が三十五万七千三百円、ロンドンあるいはパリの往復が七十一万千三百円、私の資料でこうなっているのですが、これは間違いないでしょうか。
  105. 平野直樹

    ○平野説明員 日本発ニューヨークは、先生のおっしゃられましたように四十五万五千百円でございます。日本発ロサンゼルスは、ただいま先生がおっしゃいましたのはY1というクラスの運賃でございまして、今のニューヨークの運賃と並びになりますのは三十一万五千六百円でございます。それからロンドン、パリは七十一万三千三百円。以上でございます。
  106. 森田景一

    ○森田(景)委員 東京―ロサンゼルス間の往復を、私の言ったのがY1ですか、そのY1じゃなくて今のお答えの三十一万五千六百円に対応するクラスで、ドルで幾らになるのでしょうか。
  107. 平野直樹

    ○平野説明員 東京ーロサンゼルス、Y2という運賃でございますが、ただいま申し上げましたように三十一万五千六百円でございます。これに対して向こう発の往復運賃につきましては、ドルでは千六百二ドルでございます。これを百六十円で換算をして二十五万六千九百円、先ほどこういうふうに申し上げたところでございます。
  108. 森田景一

    ○森田(景)委員 最近輸入航空券というのが、かなりかどうかわかりませんが出回っておりまして、海外旅行者に非常に人気があるんだそうですね。どういうことかといいますと、香港とかソウルで切符を買うのだそうです。そして切符の買い方は、例えば香港を例にとりますと、香港―日本、日本―ロサンゼルス、こういう形で往復ですから今度はロサンゼルス―日本、日本―香港、往復で四枚の券になっているのだそうです。日本で旅行者がその券を購入する場合には、代理店というか業者から、香港の部分だけ切符を取って買っているのだそうです。今御説明いただきましたように、これが十数万から二十万も格安な値段で往復できる、こういうことなんです。また私の聞いた話では、日本からアメリカへ旅行する人に頼んで向こうで切符を買ってきてもらって、こちらから行く。今のような形で非常に割安な運賃で海外の旅行ができる、こういう話も聞いているわけなんですけれども、運輸省としてはこういう実態を把握していらっしゃるのでしょうか。実態についてお尋ねいたします。
  109. 平野直樹

    ○平野説明員 私どもといたしましては、もちろんエアラインその他から情報収集には努力をしておりますけれども、こういう実態についてはなかなかつまびらかにならないというのが事実でございます。
  110. 森田景一

    ○森田(景)委員 これは運輸省がつまびらかにしますと、いろいろと航空会社の方が問題があるようでございますので、後でまたお尋ねしたいと思っておりますけれども、なかなかつまびらかにはなりかねる問題だと思います。そういう事実があるということは認識していらっしゃるのでしょうか。
  111. 平野直樹

    ○平野説明員 そのような事実が時々見受けられるということは承知をしております。
  112. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで念のためにお尋ねしておきますけれども、結局この航空券というのは、航空会社が代理店を通じてか何か、とにかく航空会社が正規に発行している航空券に間違いありませんね。
  113. 平野直樹

    ○平野説明員 私どもが聞いている範囲では、正規の航空券であるというふうに承知をしております。
  114. 森田景一

    ○森田(景)委員 そうすると、正規に発行された航空券で途中乗船というのでしょうか、飛行機は乗船だと思いますね、途中乗船しても、これは違法行為ではないわけですね。
  115. 平野直樹

    ○平野説明員 ただいま先生の御指摘の航空券といいますのは、例えば香港発、東京でストップオーバーをいたしましてアメリカに渡るというような航空券であるわけでこざいますが、こういうものにつきまして香港で乗機いたしまして東京でおりる、あるいは東京でまた乗ってアメリカに行く、これはそういう航空券でございますので、何ら問題はこざいません。
  116. 森田景一

    ○森田(景)委員 それでは、もう一遍念のためにお尋ねしておきたいと思いますけれども、この輸入航空券が出回る理由は、運輸省としてはどういうふうに考えていらっしゃるのですか。
  117. 平野直樹

    ○平野説明員 ただいま先生の御指摘になっております点は、輸入航空券につきまして、香港―東京間を乗らないで東京から乗るというような実態を御指摘ではないかと思われますが、そういう実態が生じますのは、香港からアメリカに行く運賃が日本からアメリカに行く運賃よりも安くなっておるというのが事実でございまして、いわばこういった逆転現象というものが為替変動によってある程度不可避的に生じてくるところがあるということでございます。そういう現象に伴って、ただいま御指摘のような事象が出てくる可能性、余地があるということではないかと理解しております。
  118. 森田景一

    ○森田(景)委員 要するに、飛行機を利用する方々は、円高のメリットを受けて海外に安く旅行に行かれる。海外旅行にたくさん日本から行かれるということは航空会社にとってもプラスだし、プラスのはずですね、それから、日本のいわゆる貿易摩擦の解消にも寄与することになるのですから、これは喜んでいいことじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  119. 平野直樹

    ○平野説明員 確かにお客さんがふえるということ自体は、もちろん経済的、人的交流が活発になることですから、それなりの評価をすべきだと思います。私どもといたしましては、もし、ただいま認可しております運賃よりも安い運賃で運送できるならば、もちろんその方が望ましいということでこれを認可するのにはやぶさかではないわけでございますが、ただいまの現状では航空会社の経営状況は非常に厳しいということで、確かに運賃を下げますと、それによって需要が創出されるという効果はございます。もちろん、下げた分だけ収入が下がるということではないわけでございますが、一般的には運賃を下げれば収入は減るということでございますので、ただいまの現状ではなかなかそういうことに踏み切れないということでございます。
  120. 森田景一

    ○森田(景)委員 私も大変勉強不足で申しわけないと思っているのですけれども、私の判断では、こういう輸入航空券は何も外国の航空会社ばかりが発行しているのではなくて、日本の日航でも香港で航空券というのを販売していると思うのですね。あるいは、ソウルでも販売していると思うのですよ。これはどうなんですか。
  121. 平野直樹

    ○平野説明員 いわゆる輸入航空券につきましては、香港発のものであれば香港で発売するというのが原則でございます。
  122. 森田景一

    ○森田(景)委員 だから、これは要するに日本航空を利用する航空券を香港なりソウルなりで発行できるのでしょう。
  123. 平野直樹

    ○平野説明員 航空券は国際的な取り扱いがございまして、例えば最初に別のエアラインの航空券を発行してもらったにしても、それがほかのエアラインに乗りかえる、例えばストップオーバーをいたしましてほかのエアラインに乗りかえるということも可能でございますし、あるいはただいま御指摘のように、最初からストップオーバーとして東京からは日本航空に乗るというようなことも可能でございます。
  124. 森田景一

    ○森田(景)委員 ですから、日本発の料金を下げると採算が合わない、こういうお話なんですよ。いろいろな航空会社がありますから、とにかく日本航空なら日本航空一つに絞ります。日本航空で日本から乗ると料金が高い、だけれども、香港で買って日本経由でアメリカとかヨーロッパへ行くと安い、同じ飛行機を使ってそういう矛盾ができるわけです。だから、日本からの運賃を下げたって採算が合うじゃないか、こういうことなんですよ。
  125. 平野直樹

    ○平野説明員 国際航空運賃につきましては、各国とも発地国通貨建て運賃という制度をとっておりまして、日本発でございますと日本の円で表示されます。その際に、考え方といたしましては日本のエアラインの経営ということを考えるわけでございまして、香港発でございますと、確かに経費の構造その他で日本の航空企業と違っておるというようなことで、日本よりも安い運賃というのが可能になる場面があろうかと思いますけれども、これはそういう国際航空運賃の立て方になっております。したがいまして、私どもとしては、日本発の航空運賃を認可する立場として経営の問題というものを考えざるを得ない、こういうことでございます。
  126. 森田景一

    ○森田(景)委員 経営の問題を考えるのは航空会社が考えるのでしょう。運輸省が考えちゃだめなんですよ。それは、この間衆議院を通過した国鉄民営・分割法案だってそうじゃないですか。運輸省が関係しちゃうから会社のもうけが出てこなくなってしまう。今民活ということで、中曽根総理以下皆さん一生懸命頑張っていらっしゃるときに、政府の方が会社の運営のことを考えるから親方日の丸だということになるんじゃありませんか。長官、どうですか、どう思いますか。
  127. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御指摘大変興味深く聞いておったわけでございますが、ただ日本の航空会社は、円高になっても国内的な経営や労賃は変わっていないわけでございますし、外国の航空会社は、全く同じ状況でも円レートの変化だけで実質的には安くなるわけですね。ですから、石油価格ガソリン価格の現象というのは相当影響を与えると思いますけれども、それぞれ経営の主体が日本にある会社と海外にある会社とで、ほかの条件が全く変わらないでまさに為替レートだけでコストが違ってくるわけでございますので、なかなかそれをうまく適切に航空料金の値下げという形であらわしにくい経営上の問題もあるのかなという感じがいたします。  そうはいっても、私は門外漢、部外者でございますけれども、経営努力によって運賃を下げる要素もあるのではないかという感じもいたしますので、こういう国際的に厳しい状況でございますから、なお一層の努力を求めたいと思う次第でございます。
  128. 森田景一

    ○森田(景)委員 とにかく、航空会社がたくさんあるからそういう話が出るのですけれども、日本航空一社だけに絞って考えてみて、香港から東京経由でアメリカを往復する人が、日本から――日本からですよ、香港まで行かない、日本から往復する人よりも二十万円も安く行けるというわけですね、換算すると。それは利用者にとっては矛盾じゃありませんか。そういう点を、国際協調の中で十分対応できるような仕組みをつくるべきじゃないかというのが私の趣旨なのです。それをやっていると時間がなくなりますから、後で時間がありましたらまたやらせてもらいますが、ひとつ、三年ではなくて早い時期に検討の結果が出るように要望しておきたいと思います。  ところが、最近そういう輸入航空券を締め出す動きが出ているわけですね。これは成田などでポスターが出ておりまして、日本乗り入れの航空会社は二十七社と言われておりますが、この輸入航空券は航空法違反だから日本で乗る人は差額運賃を払えとか、それを払わなければ搭乗お断りだ、こういうことをやっているのですね。そういうことはやるべきじゃないだろうと私は思うのです。先ほど申し上げましたように航空券は何ら違法性はない、そういうことでございます。どこから乗ったって航空券で乗れるわけですから、それを搭乗お断りなんということはやめて、航空券に記載してあるとおりやっていけば問題ないのであって、それをそんな動きをするとまた早く日本の円建て運賃を安くしないとだめだ、こういうことになるわけですから、その辺のところは緩やかにしていいんじゃないのでしょうか、どうでしょうか。
  129. 平野直樹

    ○平野説明員 先ほど申しましたのは、例えば香港発東京ストップオーバーでアメリカに行くという航空券につきまして、そのとおりに乗られる方について、もちろんこれは正規の航空券でございますということを申し上げたところでございまして、あくまでも日本で途中降機するお客という前提でございます。それに対しまして、日本発のお客様につきましては別の運賃というものが認可されておりますので、最初から日本発という明確な意思でお乗りになる方については、この運賃をお払いいただきたいということでございます。     〔委員長退席、小野委員長代理着席〕
  130. 森田景一

    ○森田(景)委員 今説明がありましたけれども、日本から乗る人については規制があるのだ、こういうお話なんですけれども、その根拠法について御説明いただきたい。
  131. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  根拠といたしましては、航空法の百五条というところに運賃、料金の認可の制度がございまして、「定期航空運送事業者は、旅客及び貨物の運賃及び料金を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様である。」こういう規定がございます。これの罰則といたしまして百五十七条というところに、定期航空運送事業者、不定期航空運送事業者、いろいろございますが、定期航空運送事業者が次の行為に該当するときは五万円以下の罰金に処するということで、何号か各号列記がございます。その中にただいまの百五条第一項を引用しておりまして、「第百五条第一項の規定による認可を受けないで、又は認可を受けた運賃若しくは料金によらないで、運賃又は料金を収受したとき。」こういう規定がございます。
  132. 森田景一

    ○森田(景)委員 そういうことですけれども、輸入航空券については何ら規定がないわけですね。ただ、これを無理に適用させようという。しかも、罰則は航空会社が罰せられるのですね。お客さんが罰せられるのじゃないのです。だからその実態がつかみにくいのです。実態を明らかにすれば、航空会社が罰金五万円を払わなければならないわけですから、明らかになるわけがないのです。  だからそれはそれとして、とにかくこういう円高のときに、円高メリットを日本人が受けられないというのがおかしいというのです。しかも同じ日本航空が、香港からロサンゼルスなら、ロサンゼルスまで東京経由で行けばうんと安いのに、日本人は二十万円も高い運賃で行かなければならないというのは随分不合理な話でしょうというのです。だから、それをきちんとしていくのがやはり政府の責任だし、そういう対応が早くできてこそ政治の信頼が回復できるんだ、こういうふうに私思うわけでございます。時間が参りましたから、ひとつ長官のその辺のところの決意のほどをお聞かせいただきまして、終わらせていただきます。
  133. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先ほど申しましたように、日本に本拠を置く航空会社は日本の円で全部支払っておるわけでございますから、日本にある会社、例えば日本航空として円高というのは、全く条件が変わらないでガソリン価格が下がっただけのことでありますから、全体の料金を下げることは難しいと思いますが、といっても、日本航空に例をとりますと、世界各国に支店も営業所もあるわけでありますから、そちらの経費は円で換算すると安くなっているはずでございますので、そのあたりも考えながら経営の合理化努力をすることで、さらに航空運賃を下げることは可能ではないのかなというように、私は今先生お話を承って感じますので、いろいろまた研究をさせていただきたいと思います。
  134. 森田景一

    ○森田(景)委員 では、時間が来ました。終わります。
  135. 小野信一

    ○小野委員長代理 次に、塚田延充君。
  136. 塚田延充

    ○塚田委員 昨年九月二十二日のいわゆるG5以来急激な円高となりまして、昨今ではいろいろな産業界から悲鳴に近いような苦しみの声が満ち満ちているわけでございます。この円高の直撃的かつ致命的に近い打撃をこうむっている個別産業を具体的に列挙していただきまして、それぞれの実態について経企庁として把握といいましょうか、認識している範囲内で御説明いただきたいと思います。
  137. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 具体的な産業につきましては調査局長が参っておりますので、調査局長から説明させていただきます。
  138. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  経済企画庁といたしましても地域の動向には絶えず注意を払いまして、この夏には幹部以下手分けをいたしまして各地域に直接出向きまして、地元の産業の状況をいろいろヒヤリングをいたしました。また、その後関係各機関の情報を絶えず集めまして、地域動向の分析をいたしておるわけでございます。現在段階、手元にありますのは大体九月ごろの状況でございますけれども、特に円高の影響ということで、輸出部門でいろいろ影響が出ておるわけです。  例えば鉄鋼業、これは世界的な需要の減少ということもございますし、それから特に円高によりましてNICS等との競合関係が非常に激化をしている。数量の減少、収益の悪化をもたらしている。  それから化学でありますが、これは特に海外との競争で、製品価格の下落等が非常に目立っているということがあります。  それから繊維等は、これは従来からの構造問題に加えまして円高ということで、これも物によって違いますけれども全般に非常に厳しい状況にありまして、地域によりましては転廃業の動きさえ出ているような状況があります。  それから、従来は比較的好調でありました電気機械、こういうものも円高、それから特にNICSからの競争ということがありまして、市場の状況も相当厳しくなっております。ただ、一部には、逆に韓国、台湾等への輸出がふえているという面で、多少カバーされているものもあるわけであります。  それから、家電等も似たような状況でございまして、特に電機関係では、比較的早い機会に海外に生産をシフトさせるという動きが目立っているようであります。  それから自動車、これは御承知のとおりでありますが、十分なドル建て価格の引き上げが必ずしもできておりませんために、円建て手取りが悪くなっている。それから、市場によりましてNICSとの競合が非常に激しくなっている。さらに従来からの輸出規制、それからことしになりましての対欧の自主規制というようなものもございまして、数量面で乗用車も伸び悩みになっておりますし、それから商業車等は全般に輸出が不振であるという状況がございます。  造船等は言うまでもないことでありますが、これも構造的な問題に加えまして、円高によります一層のコスト面での競合が激しくなっているというような状況だろうかと思います。  ほかに細かく申し上げますといろいろございますが、大体のところはそういうことだろうかというふうに考えます。
  139. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは同様に、産地及び企業城下町と言われているようなところでそういう致命傷を受けておられる状況、これについて御説明いただきたいと思います。
  140. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 全般に今申しましたようなことで、特に中小企業の輸出企業が集中しているようなところでは非常に厳しい状況が出ておりまして、例えば北陸地方の合繊織物、それから中国地域、瀬戸内沿岸で造船関係が集中しているようなところ、あるいは中部地区の陶磁器、近畿等の織物の地域、こういうところで相当な影響が出、かつ地域的に広がっているという状況があろうかと思います。  なお、私どもではありませんが、中小企業庁でこの九月に調査いたしましたものを九月末に発表いたしておりますが、これも全体五十五地域対象に調べておりますが、売り上げの減少、これが相当多地域にわたっておりますし、それから収益の減少、それから一部には転廃業が必要となっているような地域、これは中小企業庁の調査によりますと、休業の出ている産地として十七産地ほど挙げられておりますが、全般にそういうような状況であろうかと思います。
  141. 塚田延充

    ○塚田委員 円高不況の厳しさについて、産業ごと及び産地の状況をお聞かせいただきましたけれども、しかし、一方で円高というものは、マクロで見ればマイナスばかりではないはずでございます。一部の経済学者によれば、日本経済にとっては差し引きむしろプラスであるという説もあるくらいでございます。  そこで、経企庁にお尋ねいたしますが、昨年九月当時の二百四十二円くらいのレートから現在の約百五十五円に至るまで、この一年間の理論的差益を幾らと見積もって計算しておられるか、具体的数字を示してください。
  142. 海野恒男

    ○海野政府委員 円高差益というものの定義でございますけれども、私どもは一応この一年間、つまり昨年の十月からことしの九月までの一年間にどれだけの差益があったかというその定義に対しましては、それよりも一年前、つまり五十九年十月から六十年九月までの一年間に我が国に輸入されたものが、数量的に全く同じ状況価格だけがこの円高によって変動して、それによって得たメリットを円高差益、こういうふうに定義いたしまして毎月計算して総合いたしますと、先ほどの御議論でも大臣の方から御説明いたしましたように、原油で約四兆、それからその他で六兆四千億ということで、合計十兆四千億の円高差益が発生しているという計算をいたしておるわけでございます。
  143. 塚田延充

    ○塚田委員 この差益が国民経済に正当に還元されていれば、企業にとってのコスト減とかまたは消費拡大とかによって産業連関を経まして、タイムラグもありましょうけれども、先ほど御説明を受けたような特定の非常に大きな打撃を受けた産業のショックの度合いも、かなり和らいでいたはずだと思います。  そこでお尋ねしますが、円高差益がきちんとといいましょうか、かなりの部分国民に還元されている具体例そしてその具体的なものの累計額が一年間でどのくらいに上っているのか、御説明いただきたいと思います。     〔小野委員長代理退席、委員長着席〕
  144. 海野恒男

    ○海野政府委員 先ほど大臣から御説明をいたしましたけれども、マクロで見ますと、大体本来の基調的なインフレ率と申しますか物価上昇率を考慮して計算いたしますと、消費者物価の下落による部分が三・三兆円、具体的には個人消費支出に若干の政府支出を加えました百九十三兆に下落率一・七%を掛けて算出いたしました三兆三千億、これが個人消費並びに政府消費の消費関係のいわばメリット分でございます。それから、投資財関係でございますが、これが約一・二兆で合計四・五兆となるわけでございますが、これはマクロ的な数字でございます。  それでは、具体的にどんなものが下がっておるかということでございますけれども、まず電力及びガスは御存じのように合計で一兆二千億になりますが、この差益の還元をいたしております。その他の公共料金関係で約八百億ございます。それから、政府が比較的行政指導しやすい、あるいはこれまで価格の動向を極めて注意深く注視してきたガソリン灯油あるいはプロパンガスといったエネルギー関係が、それぞれガソリンで七千四百億それから灯油で三千三百億、プロパンで約一千億ということで、合計二兆四千億は一応重要な品目として我々はとらえることができる。その他の残りの部分は、個々の非常に細かい商品のいわば値下げ、もしくは投資財の値下げによる民間設備投資の分野で浮いた差益が、そういう形で物価の下落を通じて還元されておる、こういうふうにつかんでおるわけでございます。
  145. 塚田延充

    ○塚田委員 今御説明いただきましたものは、ほとんどエネルギー関連、すなわち原油の値下がりに関連したものばかりのように聞きおいたわけでございますけれども、国民の立場からすると、先ほども出ましたが、パンがたった一円でもいいから下がったとか、ウイスキーがこうなったとかいうような具体的なこと、いわゆる気は心、この心が差益還元に全然あらわれていないというところにもどかしさといいましょうか、大きな不満を感じているのじゃないかと思うのです。そういう面について、額じゃなくて気持ちであるということが消費者にわかるような形で、個別商品に対してももっと丁寧な指導をぜひいただきたいと思うのです。  そのような指摘を前提といたしまして、経済企画庁の方として、あの商品だったら本来このくらい下がるはずだとありありとわかっているけれども、それが還元されていないというような個別具体例はございませんか。そういうものについて指摘していただき、さらにそれをどのように指導するつもりなのか、ひとつ個体名を挙げて、今のウイスキーとかパンとかいう言い方で言っていただけないでしょうか。二つ三つで結構です。
  146. 海野恒男

    ○海野政府委員 先般の九月十九日の総合経済対策におきましても、中曽根総理から特に強い指示もございました。特に、そばとかタクシーとかそういうたぐいのもので、具体的に目に見えるものが下がるように指導しろというような強い指示がございまして、私どもも農林省を通じて、いろいろ具体的に引き下げていただくように指導をお願いしております。  ところが、中身を特に調べてみますと、例えばてんぷらそばのようなものは、いわば日本の極めて古典的なものと申しますか、昔から、江戸時代からあるような食料品でございますけれども、水を除いてすべて外国品であるということでございます。したがって、私どもが原価計算いたしてみますと、一つ六百五十円のものが、食材費が約三割ということで約二百円ある。それが、四割程度輸入原材料が下がったわけですから、八十円ぐらいは下がるはずであるということを私どもは主張したわけでございます。しかし、いざ、小麦はどうか、エビはどうか、しょうゆはどうかということで、それぞれ一つ一つ細かく追っていきますと、エビはせいぜい十円ぐらいしか下がらない、あるいはしょうゆは途中で豆かすの値段が少しも下がっていない、あるいはてんぷら粉は小麦が下がっていないというようなことで、そば屋さんは十円ぐらいしか下げられないという答えが出てくるというふうなことで、私ども非常にもどかしい思いをしたわけでございます。  ただ、農林省の御努力もございまして、レストランその他の業者に対して強い要望、指導をしていただきまして、業者の方からは、みずからの発案でできるだけ差益が還元されるようなメニュー等をつくって、国民に少しでも還元したいというふうなことを発表されておりますので、そういった個々の細かい分野にまで行政指導なり要請等を行いまして、できるだけ差益が還元されるような施策を、マクロの施策とともに並行してやっているということでございます。
  147. 塚田延充

    ○塚田委員 冒頭列挙していただきました例えば鉄鋼とか造船とかは、このたびの円高になる以前から、内需の鈍化であるとか中進国とのコスト競争力で劣位に立たされるなど、いわゆる産業構造の変化という大波にさらされていたことも事実でございましょう。さらに、とどめを刺すがごとく今度の円高が作用してきたわけですから、ひとたまりもなくなったわけでございまして、最近のマスコミをにぎわせておるような、個別の名前を挙げれば、新日鉄の高炉を三つぐらいとめるかもしらぬとかいうような悲惨な状態が生まれてきているわけであります。  そのような情景を背景といたしまして、日本の各生産企業は海外生産に目を向け、心も移してしまい、そしてそれを実行しようというような動きがあることは、経営者の意識調査などをしてももう周知の事実と言われているわけでございます。これがいわゆる産業空洞化懸念ということでございまして、これは今や単なる杞憂ではなくて現実化しつつある、このように私は受けとめているのですが、経済企画庁としましては、このような傾向ないしは懸念に対しましてどのように認識し、また対策しようと考えておられるのでしょうか。
  148. 及川昭伍

    ○及川政府委員 御指摘のように、最近、企業の海外直接投資が非常にふえているわけであります。ただ、この傾向が相当長期続くというふうに仮定しまして、一二%ないし一五%の伸び率で直接投資が続き海外生産が拡大していくという仮定で二〇〇〇年展望をいたしてみますと、現在海外で生産している割合は日本は二、三%程度でございますが、二〇〇〇年時点で二〇%程度になるのかなというふうに考えております。  この状況をいわゆる空洞化と認識するかどうかということでございますが、例えば、現在時点で既に西ドイツにおいては製造業の海外生産が二〇%になっておりますし、アメリカでは一七%程度になっているわけであります。過去、製造業が日本経済の中でどのような状況であったかということを申し上げますと、一九七〇年、国内総生産のうち三五%が製造業で生産しておりましたが、十年後の一九八〇年には二八%に、約六%ポイント、シェアは落としておりますけれども、決して空洞化現象でシェアを落としたのではなくて、むしろ他の高成長産業にシェアが移っていったということであろうかと思うわけであります。これを二〇〇〇年まで延長してみますと、私どもの試算では、これから先二十年くらいで一九%ぐらいまで、あるいはシェアを落とすことになるかもしれないと思っておりますが、実質ベースで見ますと、むしろ逆に、現在三二%程度の生産シェアであるのが、実質額では三九%程度にシェアを上げるというふうに考えておりまして、空洞化現象というよりは経済の高度化、成熟化過程の一つのあらわれであるというふうに思っているわけであります。  ただ、今回の円高によりまして、その速度が非常に急速にあらわれてきていること、製品輸入が増加し、輸出が停滞し、海外生産の動きが特に急速化しておりまして、産業構造の急速な調整が進行しつつあり、雇用の確保が大きな問題になっているということは御指摘のとおりであります。  このような状況対応するためには、対外不均衡の是正過程で内需の拡大に努めるとともに、円滑な労働力の移動の促進、職業訓練の充実など、総合的な雇用対策に取り組んで雇用の安定を図るとともに、円滑な産業調整が進む「そして、高度技術産業等の国内における育成等とあわせて、産業の空洞化が起こらないように配慮していくことが非常に大事であるというふうに考えております。
  149. 塚田延充

    ○塚田委員 私の認識としては、もっと厳しい状態にあるのじゃないかと思うのです。確かに、円高が起こらなくても、やはり需要構造の変化による産業構造の変化ということで、海外に生産拠点を移すという動きが前々からあったことは、私も産業界におったものですからよくわかっております。しかし、今の百五十円から六十円の円レートが五年続いたならば、超優良企業と言われる自動車の何とかさん、電機の何とかさんとかいうような、本当に五本の指に入るところ以外は全部真っ赤っ赤の赤字で、いわゆる企業倒産になるといいますか、それまでは少し土地を売るだの、また含みを大変持った株を売るとかいうことでどうにかなるかもしらぬけれども、私は、経常利益ベースでは九割以上の上場会社は全部赤字になる、このようにおどかされておるといいますか、聞いておるといいましょうか、経営者と話しておるとそういうふうな厳しい実態があるわけです。ですから、これが百八十円とか二百円に戻ればそんなことはないと思うのです。  ということで、この産業空洞化についてはもっと、一般で言う空洞化じゃなくて、僕は、百五十五円ベースでいったらば全部倒産してしまうよというような意味で、警告を発しておきたいと思います。  さて、今生産拠点を海外に移すということですけれども、それ以上に困った動きとしては、本社機能そのものを海外に持っていこうという、冗談ともつかぬ、思いつきともつかぬような動きが経済界の中にはあるということを知っていただきたいと思うのです。これはタックスヘーブンを利用して云々とかいうような、そんな非道徳性に基づくものではなくて、やはり法人税といいましょうか、税負担が欧米諸外国と比べて割高であるということが今や明らかになっておるというような見地から、そういうような検討が水面下で行われ始めておる。となりますと、このたびの政府税調の最終答申でも法人税率の低減というものが提案されておりますけれども、私は必要じゃないかと考えておりますが、経済企画庁長官としては、国民経済の立場すなわち国益から考えて、この税調の法人税に関する最終答申に対してどのようなお考えで今後対処しようとしておるのか、お伺いします。
  150. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 その前に先生のおっしゃった産業空洞化でございますが、私も先生と同じように心配をしております。ただ、率直に言いまして、従来からの海外投資の流れはさらに増加してまいると思いますし、また、経常収支のバランスというものをそう短期的に達成できない現状においては、ある意味では、海外投資によって経常収支の黒字を資本収支の面で相殺するといいますか、そういうことも必要ではないかと思います。といっても、どんどんこれから日本産業が高度化してまいりますと、やはり非常に重要なハイテク部門は国内でつくってということにどうしてもなるのではないか。私もいろいろ海外の工場を見てまいりましたが、本社の大事なものは国内でつくって、多少流していいものは外へつくるということになってくるのではないかなと、だから、労働力の高度化を進めれば、産業構造の空洞化というものは、ある程度以上はそう進まないのじゃないかと、どのレートも、円レートなんか関係ございますけれども、私は考えておるわけであります。  ただ問題は、今のような法人税の体系では、そうはいっても、国内では大変だというお気持ちも十分わかりますし、先生指摘のように、今般の政府税調の答申にもそのことが書かれてございますし、日本の大事なセービング、貯蓄をやはり日本の国土に再投資しながら、日本の国内の経済の活性化を図るということがどうしても必要でございますので、そういう観点からも法人税の軽減については、政府税調の線もこざいますが、大いに検討し、推進をしていきたいと思っておる次第であります。
  151. 塚田延充

    ○塚田委員 さて、円高は、昨年九月二十二日、G5によってそれまでの極端なドル高を調整することにより世界貿易の不均衡を是正する、このことを目的として国際政治上の政治的な決定として始まったことは周知のことだと思います。これは、今の円相場というものが経済的相場ではなくて政治相場であり、それゆえに、行き過ぎた支障などが起きた場合には、政治的に解決し得るという暗黙裏の政治的合意があったものと理解していいのではないかと、私はG5を解釈しております。その後、予期せざる現象として原油ががくんと下がってしまった。さらに、米国の景気が大幅に下降したことによって、思った以上に円高が急加速してしまった。そして本年二月には、あれあれと言ううちに百八十円に達してしまって、それまでは事態を見守っておった我が国産業界も、もうこれではお手上げだというような悲鳴を上げたわけでございます。  それを受けるように、中曽根総理もこの当時国会答弁などにおきまして、協調逆介入の必要性と申しましょうか、その意向を発言したわけでございます。実際、総理は前川レポートを携えて訪米したわけですが、その目的は、協調逆介入をG5の経緯からして当然やってもらえるというふうに踏んでいたんじゃなかろうか、このように私は推察しているわけでございます。ところが、結果的にアメリカの協力は得られなかった、そのまま引き下がってしまった。これは、国益擁護の主張が不十分であったということであり、中曽根内閣、政府の怠慢であると私は指摘せざるを得ないのでありますし、外交の中曽根という宣伝とは裏腹の実績に終わってしまったのじゃないかと言わざるを得ないわけでございます。そしてさらに、同様のチャンスが五月にめぐってきた。これは東京サミットでございましたけれども、結局このチャンスも逃してしまった形に終わっております。しかし、その東京サミットでは、相互サーベイランスをしようという合意ができております。  そこで、経企庁にお尋ねいたしますが、この相互サーベイランスの合意を即刻発動する形で、すなわち我が国の産業界が破滅的打撃をこうむっていることを経済企画庁そのものが立証することによって、G5合意の精神に立ち戻って、協調逆介入によって円レートをしかるべき水準に引き戻す交渉努力を政府全体としてすべきだと思いますが、いかがでしょう。
  152. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生指摘のように、G5以降のいわば円高というものは、このことによって日米間の国際収支の不均衡を是正しようという意図を持ってなされてまいったわけでありますが、そのいわゆるJカーブ効果や原油価格の値下げによって、現実に日米間の貿易収支の黒字は改善されるどころかむしろふえているような状況でございますので、私ども、今の為替水準が適正であるとは思ってない。先生お話のようないろいろな産業界の声を聞きましても、大変な状況を与えているということはわかりますが、片一方で国際収支の改善が、理由はともかくとしてなされてない段階で、どの程度までこのレートを戻すことができるかというのは、これはもう政治の姿勢だというお話もございますが、なかなか現実としては難しいと率直に思っているわけでございます。  ただ、こうした国際収支の改善というのは、当然、輸出を減らし輸入をふやすという意味では、国内経済の規模が変わらない限り明らかにデフレ政策ですね、その分だけ輸出がふえない、輸入がふえるわけでありますから。だから、国際収支改善策というのは、その手段が何であれ実現を見れば、それはデフレ政策なんだという基本的な理解に立って、その減った分は国内の需要を拡大することによってカバーしていこう、そうすることで国際収支の改善とそして国内の安定成長が並行して実現できるであろう、こういうことで我々が内閣を挙げて取り組んでまいったのがいわゆる九月十九日の総合経済対策であり、それを何とか実効あらしめるものにしたいということで、これも内閣を挙げて取り組んでいるということでございます。
  153. 塚田延充

    ○塚田委員 G5の前提とも言うべき協調逆介入による円レートの適正水準引き戻しがアメリカの抵抗に遭ってできないのは、アメリカから我が国に要求されている公定歩合をさらに引き下げろということを我が国が受け入れないからであるということは事実だと思います。しかし、我が国としては、これ以上の公定歩合の引き下げが経済運営上マネーサプライに大きな変化を生じさせて、インフレを引き起こすかもしらぬとかいうような面から問題があることは私は承知いたします。となると、アメリカが要求しております効果、目的である内需拡大のための実のある政策の実行こそが保証されれば、アメリカもG5合意に基づく協調逆介入に協力してくる可能性があるんじゃないかと私は考えます。  そこで、長官にお尋ねしたいのですが、内需拡大を担保する政策としては、私は三つあると思います。まず第一は、補正予算での公共事業の追加がほぼ確定されておりますけれども、これをきっちりと行い、しかも早急に消化することが第一でございます。第二には、先ほど出ました円高差益の還元、これが徹底すれば五兆円の需要増大とも言えるわけでございます。また三つ目には所得税の大幅減税、これができればまた消費拡大につながる。このようなことをはっきりやる。そしてそれを担保として、タイムラグが出るけれども、内需拡大はまず間違いないんだからという交渉カードを手にして、アメリカと交渉してほしいと私は考えるのですが、経済企画庁の立場として、私のこの推論もしくは政策的な考え方についてどのように受け取られるか、見解をお伺いしたいと思います。
  154. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生のおっしゃることは基本的に私も理解できることでございまして、三兆六千億の内需拡大の中核が一兆四千億のまさに政府の直接関係する公共事業でございますので、この補正予算を政府で編成いたしまして早急に国会で御審議いただいて成案を得たい、こういうことでございますが、この一兆四千億の内訳も、もう時間がございませんから多く申しませんが、災害復旧、それから年度内に完全にやるもの、それから年度内に前金を払うもの、そして年度内はいわゆる債務負担行為でやれるものということに分けておりますが、実は大蔵大臣や建設大臣等々と話を進めながらその金のやりくりができるような、今金融緩和の時代でございますから、国が金などを出さなくても民間の金融機関の融資で何とか年度内着工、そして年度内に実施を図っていきたいということで、これも私たびたび閣議等で発言をして関係各省に要求したことでございます。  差益の還元につきましては先生のお申し越しのとおりでございまして、これもさらに進めてまいります。同時に、結局キャッシュバランスで差益が出ているというか、さっき申しました十兆四、五千億という円高というのは、末端まで還元できなくても、どこかパイプラインで企業とかどこかに入っているわけですね。だからそういうものが、国が積極的な成長政策を進める形の中で迷っている資金が前向きの投資に誘発されてくるであろう、かように考えますので、そういう意味の差益バランスの積極化、積極的な投資化もしくは消費化というものを進めていく必要があると思っておるわけであります。  所得税の減税につきましては、我が国の所得税は欧米諸国と比較いたしまして非常に過重である、こういうことでございますので、法人税と並んで今度政府税調の中でもこの軽減の提案がなされてございますので、私どもも、これを積極的に内閣として取り組んでいく方向で進めていきたいと思っておるわけであります。  そういうことで国が直接やる仕事もございますし、またムードをあおっていくという点もこざいますし、また総合対策の中には、いわゆる規制緩和で民間活力を積極的に活用していこう、こういう線もございますし、また金融政策の弾力的運営という形でもっと弾力的な金利政策を進めていく、場合によっては金利をさらに下げていく形で民間の投資意欲、消費意欲を促進していこう、こういうことも十分考えながら、もういろんなことを考えて効果ある政策を実行してまいりたいと思っているわけであります。
  155. 塚田延充

    ○塚田委員 内需拡大が経済摩擦解消のために極めて重要な課題であるということは、今の論議で大体明らかになったと思うのですけれども、この内需拡大を阻んでいるものに、勤労者の可処分所得がほとんど伸びておらない、だから消費も伸びておらない。全国消費実態調査によりますと、五十四年から五十九年までの五年間でたった〇・二%しか伸びていない。すなわちゼロ成長である。そしてその原因を突き詰めていけば、結局は賃上げがほとんどなされておらなかった、すなわち、不当に低く抑え込まれていた結果ではなかろうかというふうに私は承知いたします。  その賃上げというのは労使間のマターでございますから、政府は関知し得ない。これは、原則論としてそのとおりでございますけれども、内需拡大が政治課題となっておる現今の情勢のもとでは、この賃上げ問題も完全に政治問題そのものである。政府が重大な関心を持って国家の危急のときを救うためにも、これについてある程度の指導をしなければいけない、このような理論が出てくるわけでございます。これは結局は、経営側に対して積極的に指導をするという形をとらざるを得ないのではないかと思いますけれども、この辺、賃上げが不十分なことが経済摩擦の遠因となっており、これが円高に関連し、ひいてはそれを解決しようとする、そのカードにもならないで困っておると私は思うのですが、長官はいかがでしょうか。
  156. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 内需の拡大が賃金アップによる所得の上昇かという、これ、先生、なかなか難しい問題で、鶏が先か卵が先かみたいな議論にもなるわけでございますが、やはり景気が拡大して、会社の利益が上がって、所得が上がってという、こういうまさに前向きの循環がすごく望ましいわけでございますので、方向としてはそういう方向でこれから日本経済の内容が上がっていく、こういうことだと思います。ただ、先生の御指摘もございましたように、これは政府が云々ということよりも、個別個別、いろんなケース・バイ・ケースがございますから、やはりその関係の労使でお話をしていただくことだと思うわけであります。  ただ、円高について申し上げますと、結局円高で日本の商品が高くなるわけですね。だったら、賃金を上げておいて、そして国内ではコストが高くなって、そしてドル価格が高くなっておってもよかったのじゃないかという、そういうお話じゃないかと私は思うわけでございますが、よくわかる議論であります。  ただ問題は、そういうことができる企業とできない企業とがあって、値段を上げても売れた企業と、値段を上げて売れないような企業がある。したがって民間の賃金も、一つの水準としての議論じゃなしに、各産業ごと、企業ごとの体系になってくる。やはりそういうことも、労使間の具体的なその企業、その企業の話し合いでお決めいただいて、しかし全体としてはよき循環に経済が回っていくということではないかというふうに思うわけであります。
  157. 塚田延充

    ○塚田委員 この賃上げのことにつきましては、鶏が先か卵が先かと言われておりますけれども、昭和六十年八月に企画庁自身がお出しになりました「昭和六十年度世界経済レポート」、これによれば、はっきりとどちらが先だというふうな記述があるのです。これは私の解釈ですけれども、昭和五十九年の日本の製造コストはアメリカと比べ七〇%程度であり、特に労働コストは六〇%であるというアメリカのDRIの試算を示して、これが日米経済摩擦の原因じゃなかろうかと遠回しに分析しているわけでございます。もし、労働コストが異常に低い、すなわち賃上げが不当に抑えられたということなかりせば、経済摩擦イコール円高もこんなにひどくはならなかったのじゃないかという仮説が成り立つ。すなわち鶏か卵か、これはもう順番がはっきりしているのじゃないかと思うのです。  このDRI試算と円高の相関関係、そしてさらには、最近各審議会においても、もう立て続けと言っていいでしょう。例えば六十年十二月経済審議会、六十一年二月産構審、六十一年四月いわゆる前川レポートで、経済発展の成果を賃金と労働時間の短縮に適切に配分せよ、このように審議会指摘しておりますし、また企画庁自身も「昭和六十年経済の回顧と課題」というレポートにおいて、実質賃金の改善を図る余地があるとはっきり指摘しておる。ですから、これは当事者間の問題だとか鶏が先か卵が先かじゃなくて、私ははっきりしていると思うのです。  いわゆる不当に労賃を安く放置してしまった、これは労使間のあれだったか知らぬけれども、結果から見ると、それが大きな経済摩擦の遠因になっておるということを御承知おきいただき、これらの問題について、単に白書とかレポートでもって提言するのみならず、もっともっと理論的な整備をし、しかも、当事者交渉といわず、労働省なり通産省なり、しかるべきところにその重要性を訴えていただきたい。これが経済政策全般をリードする企画庁の役目だと思うのですが、最後に長官の御意見を伺います。
  158. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生、アメリカの国際的な競争力を考えてまいりますと、必ずしもアメリカとすぐ比較して云々ということじゃない。ただ、だからといって、日本が現状でいいというのでは毛頭ないのであって、そこは、望ましいのは賃金が上がることであると基本的には思っておるわけであります。実は、先般の人事院勧告につきましても、給与関係閣僚会議等々で議論がございましたけれども、私は一貫して、人事院勧告どおり完全実施をすべきだという主張をしてまいりましたし、そういう形で、公務員の皆さんの給与でありますが、適正にする形で、そしてこれも内需拡大を含めてそういう主張をしてまいっておることも、御理解賜りたいわけであります。  ただ、こういう厳しい状況でございますから、そういっても、日本の先端を切るような企業ですら今回はもう減益で大変ひどいということでありますので、そのあたり難しいのでありますが、私は、さしあたっては所得税の減税を来年度何とか実施をするという形で、お話のございました実質可処分所得をふやすということがまず最初かな、こんなことを考えておる次第でございます。
  159. 塚田延充

    ○塚田委員 終わります。
  160. 河上民雄

    河上委員長 次に、岩佐恵美君。
  161. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 きょう私は、食品の安全と表示の問題について伺いたいと思います。  当委員会で厚生省の政務次官が、物質名表示をできるだけ早く実施すると約束をされたのが一九八一年です。そして、一九八三年には食品添加物の全面表示を実施すると約束をしておられます。ことしの一月に食品添加物表示検討会の中間報告が出ておりますけれども、このことに関連して、全面表示の作業がどうなっているのか、それからどういうふうな基本的な考え方に基づいて進めているのか、お答えをいただきたいと思います。
  162. 内山壽紀

    ○内山説明員 お答えいたします。  今、先生の御質問の件につきましては、食品添加物表示検討会におきまして、食品添加物の表示について国民の皆様が理解しやすい有用な情報をより多く提供するという基本的考え方で検討会の意見がまとめられております。この内容といたしましては、食品添加物の表示を充実すること等、消費者の皆様に理解の得られやすい、わかりやすい表現で行おうとする内容になってございます。
  163. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 消費者にとってわかりやすいというのが表示の基本でありますけれども、例えば当委員会で私が食添の個別表示が必要だということを申し上げ、政務次官がその実現を約束された、その問題のときにはプロピレングリコールという保存料が問題になっていたわけです。プロピレングリコールという物質名だけでは、消費者には何のことかわからないわけですね。また、逆に保存料と書いただけだったら、一体何のために使われるのかということもわからない。消費者にとって一番親切な表示というのは、物質名と用途名を併記することが必要だというふうに思います。  また、おせんべいなどから、おせんべいの業者は使用していないのに保存料が出てくるということで、東京でも消費者のセンター等でこうしたことがよく問題になっているわけでありますけれども、一体なぜ保存料が出てきたかというと、おせんべいに使用したおしょうゆに保存料が含まれているということであるわけですね。今のままでいくと、保存料と書いてない場合には表示違反になるわけです。いつもそのことが問題になっていたわけでありますけれども、これから新たにまた全面表示という考え方に立ってこの問題を考えたときに、私は、当然こうした原材料に使用してある添加物についても原則表示をすべきだというふうに考えますけれども、この二点についてお伺いをしたいと思います。
  164. 内山壽紀

    ○内山説明員 まず、前段の御質問でございますけれども、今回の中間報告では、添加物表示の原則は物質名表示によるということになっておりまして、そのうち特に今先生から御指摘のありましたようなものにつきまして、食品の取り扱い及び選択の観点から表示の必要性が高い保存料、酸化防止剤などにつきましては、一般消費者が理解しやすいよう用途名と物質名の併記をするという形で検討会の内容はまとめられてございます。  それからもう一点、後段の御質問の件でございますけれども、今回の中間報告では、食品添加物のうち表示の必要性の高いものを表示対象といたしてございまして、今先生が言われましたおせんべいのようなケースは、食品添加物の中ではキャリーオーバーというような分類に入るものでございますけれども、このキャリーオーバーに該当するようなものにつきましては、表示の必要性はないという形の整理がされてございます。この考え方につきましては、一応今私ども承知している限り、国際的にもそうした共通した認識のもとに作業が進められておりまして、私どもの方としましては、このようなキャリーオーバーというものについてまで表示を求めるということについては、やや無理があるかというように考えてございます。
  165. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 原材料としてかなりの量の添加物が使用されている場合には、当然これは表示をさせるべきだというふうに私は思いますし、消費者もそういう希望が強いわけですので、私は当委員会で強く要望をしておきたいと思います。  それから、全面表示の実施の際に厚生省は一貫して、天然添加物について成分規格を整備して実施をしていきたいという答弁であったわけでありますけれども、この問題等は一体どうなっているのか、この点についてお伺いをしたいと思います。また、全面表示は一体どのような日程でおやりになるのか、その辺もあわせてお伺いをしたいと思います。
  166. 内山壽紀

    ○内山説明員 まず、後段の今後の日程でございますけれども、この食品添加物の表示検討会の中間報告は、先ほど先生から御指摘もありましたように、本年の一月にまとめられまして、現在食品製造業者あるいは消費者団体等においてさまざまな意見が寄せられております。こういうような問題につきまして、個別の食品に対しまして具体的な表示のあり方につきまして、今食品製造業者の間で自主的な検討が進められている状況にございます。そういうような検討がまとまった段階で、厚生省といたしましては、消費者の考え方なんかも入れまして表示検討会に再度お諮りいたしまして、最終的な結論を得ようという形で今お願いしている段階でございます。最終的には、早ければ六十二年度中には一応実施に踏み切りたいという作業日程で進んでございます。  天然添加物の件につきましては、これは大変数も多うございます。私どもが調べた段階でも数百に及ぶというような形になってございまして、私どもの方でも現在天然添加物の規格、基準の整備ということを順次進めてございます。そうしまして、そのような規格、基準が整備された段階で、順次天然添加物につきましても表示をさせるという方向で検討を進めたいと考えております。  以上でございます。
  167. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 天然添加物については二百五十とかそれ以上とか、いろいろ数え方にもよるのでしょうけれども、かなりの数になるわけです。そして、毒性があるのではないかとかいろいろ指摘をされているものもかなりあるわけです。それで、順次順次と言われますけれども、やはり食べ物の安全ですから、日程を持ってこれは進めていかなければいけないと思うのですが、一部から始めるということなのか、もしそうであるならば、その一部は一体いつごろから始められるのか、そういうことについてもう少し具体的に伺いたいと思います。
  168. 内山壽紀

    ○内山説明員 私どもの日程といたしましては、現在中間報告としていただいております表示検討会の表示を、まず最終的な政策に持っていきたいということが第一点でこざいます。それから、同時並行的に、先ほど申し上げましたように、天然添加物について規格、基準の整備を図りまして、規格、基準の整備が図られたものがある程度まとまりましたら、そうしたものについて表示の方の検討に入りたいということでございます。
  169. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、六十二年の全面表示はそういう日程でやる、しかし、六十二年が終わってから天然添加物をやるよというのではなくて、並行して天然添加物の表示の問題も作業を進めていくということなんでしょうか。
  170. 内山壽紀

    ○内山説明員 今お答え申し上げましたように、まず中間報告でいただきました表示検討会の表示を行政施策にのせていただきまして、同時並行的に天然添加物につきましての規格、基準の整備を図りまして、これは大変数が多うございますから、ある程度まとまりましたらこの表示検討会の内容の方に入れていきたいというふうに、御理解いただければと思っております。
  171. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いつごろ、ある程度まとまるという見通しをお持ちで作業をされているのですか。
  172. 内山壽紀

    ○内山説明員 今の段階で、いつごろという時期を明示するというのはなかなか難しいかと思っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、早い段階でまず、早ければ六十二年度じゅうにこの表示について行政施策に移させていただきまして、その後なるべく早い機会に天然添加物について規格、基準がまとまったものについて、この表示の義務を負わせていくというような方向で検討を進めているところでございます。
  173. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 何か、ちっともはっきり作業の日程をおっしゃらないので、そんなに出し惜しみをしないで、天然添加物については非常にこれは国民の関心も高いし、それから早急に進めなきゃならないということを何度も認めておられるわけですから、やられることを切に要望をしておきたいと思います。  最近、輸入食品の件数が年々ふえていると思いますけれども、八三年から前年対比でどのぐらいずつふえてきているのか、八四年が八三年に対してどれだけふえているのか、八五年が八四年に対してどれだけふえているのか、それについてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  174. 大澤進

    ○大澤説明員 八三年からの輸入食品の実績でございますが、八三年は昭和五十八年でございますが、総数で約三十三万五千件、それで五十九年が三十六万四千件、したがいまして約二万件、五十九年は五十八年に比してふえている。さらに昭和六十年におきましては約三十八万五千件と、これも対前年、すなわち五十九年に比較して約二万件ちょっとふえている、こんな状況で推移しております。
  175. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それで、この輸入食品の検査率についてあわせて伺いたいのですが、厚生省のいわゆる行政検査、自主検査がそれぞれ五十八年、五十九年、六十年、どういうぐあいになっているか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  176. 大澤進

    ○大澤説明員 最近、過去三年間の検査状況でございますが、これも昭和五十八年は、検疫所及び国立衛生試験所が行う行政検査、これが一万六千百件、厚生大臣が指定した検査機関で行うよう指示した自主検査が一万九千六百二十三件、その比率が行政検査は約四・八%、合計で九・七%。昭和五十九年は、行政検査につきましては一万六千七百六十二件、指定検査機関で行うよう指示した自主検査が二万二千二百六十三件、その比率は行政検査が約四・六%、合計で九・七%。さらに昭和六十年の検査でございますが、行政検査は一万四千八百九十二件、指定検査機関で行う自主検査が二万六千五十四件、割合でございますが、総数に対して行政検査が四・四%、合計では九・九%、こういうぐあいに推移しておるところでございます。
  177. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 輸入件数が非常にふえているのに、行政検査が〇・二%ずつ毎年毎年落ちてきているという感じになっているわけですね。  それで、そのうちちょっと六十年の違反件数、これが何件あるのか。  それから四条違反、食品が腐敗したり変敗したりカビや有害物質による汚染、異物や昆虫の混入、病原微生物による汚染などによる違反件数、四条違反ですね、これが何件あるか。  それから六条違反、これは添加物の指定外使用ですね、それの違反、それから七条違反、添加物の使用基準違反、これがそれぞれどのぐらいあるか、答えていただきたいと思います。六十年だけでいいです。
  178. 大澤進

    ○大澤説明員 先ほども申しました検査状況、その結果昭和六十年分でございますが、違反件数は合計で三百八件あります。そのうち、いわゆる腐敗、変敗等衛生上問題のある食品の違反として四条の項目があるわけでございますが、これは百八件、さらに六条違反といいまして、指定外の添加物の使用、これにかかわる違反件数でございますが、これは五十五件、さらに食品衛生法第七条違反で、これは食品添加物等の規格、基準違反でございますが、これは全体で百八件、以上のようになっております。
  179. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この違反の中身、各国別に見てみますと、六十年では北アメリカ州の四条違反というのが三六%、南アメリカ州では四・六%、そしてヨーロッパ州で一一%、合わせて五〇%以上がアメリカ及びヨーロッパになるわけですね。  それから六条違反になりますと、ヨーロッパで六〇%、北アメリカで三四%以上ですね。九〇%以上。  それから七条違反がやはりヨーロッパで二八・七%、北アメリカ州で二五%、合わせて五〇%を超える、こういう実情になっているわけです。  前からも当委員会でも何度も指摘をしているのですが、輸入食品がふえるのにその検査率が落ちてきている、違反件数というのは依然として減らないという状況にあるわけです。輸入毒入りワインみたいなああいう事件が起こって、非常に国民がショックを受ける。笑い話みたいに、国会議員は高いワインを飲んでいるだろうから一番被害が出たのではないか、そういうような話もあるぐらいですけれども、そういう毒入りワインの問題等、とにかく思いがけない事故が起こることがこれからも予想されるわけですので、やはり検査率を上げることが重要ですが、それには人をこき使うということではなくて、人をふやしていかなければいけないと思うわけですね。  まず厚生省に伺いたいのですが、検査検査員をふやす、そういう予定があるかどうか、それを伺いたいと思います。
  180. 大澤進

    ○大澤説明員 先生指摘のように、輸入食品の検査あるいは監視、指導というのは、国民の食生活あるいは健康上非常に重要な問題だと私どもも受けとめておりまして、全国の検疫所において検査体制をとっておるところでございますが、現在全国で七十二名の食品衛生監視員が従事しているわけでございます。最近の過去三年間の監視員の数は、御参考までに申し上げますが、五十八年は六十一名で、五十九年が六十七名、六十年六十七名で、六十一年から七十二名と、過去およそ三年の間に十一名ふえているわけでございますが、私どもといたしましては、この監視の重要性にかんがみて、今後も監視員の増員等に努めてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  181. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大臣、結局年々二万件ずつ輸入件数がふえているわけですね。そして加工食品も、本当に私たちにとってよくわからない、過去に経験したことのないようないろいろな添加物あるいは異物が入り込んできている実態というのがふえているわけです。今の厚生省の課長お答えもとても自信がないみたいで、厚生省も本当にふやしていかなければいけないと思っておられるのでしょうけれども、なかなか思うようにいかない、そういう実態にあるわけですね。消費者の立場に立つ経済企画庁として、大臣として、政府として、ぜひこれを真剣に考えていっていただきたい。検査員をふやすなり、こうした体制をきちっととっていくなり、その点をお願いしたいと思うのです。
  182. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御指摘の趣旨はよくわかります。ただ、まさにアクションプログラム以来、日本の検査制度が、むしろ日本のマーケット拡大に対する関係者側の抵抗みたいにとられている面もございます。ですから、おっしゃるような検査が適切に行われることと、それが国際的に不用意な摩擦といいますか、そういう言いがかりにならないようにも、そこは賢明かつスマートにしていかなければならないのではないか、こう思うわけであります。  人員をふやせというお話でございますけれども、こういう御時世でございますので、厚生省としてもいろいろ努力をしてくれていると思いますが、十分に考えさせていただきたいと思います。
  183. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大臣、かつて物価問題特別委員会でも横浜の検査所を視察したことがございます。そして今申し上げたように、自主検査を合わせても大体一〇%の検査率なんですね。これは貿易摩擦に関係なく、要するに、入ってきた荷物を国内でもって決められた基準、決められた検査方法によってチェックをするわけですから、いわゆる非関税障壁だとか国内の添加物の基準が厳し過ぎるとか、あるいはいろいろあれに使ってはいけない、これに使ってはいけないとかという問題があるとか、そういうこととは違って、国内の基準にのっとって、入ってきたものがどういうものかという検査をするということでありますから、これはまさに国民の健康を守る最前線のチェックの仕事をするだけなのですね、今の検査員というのは。  検査員が現地でも言っておられましたけれども、今自主検査を合わせて一〇%ちょっと、本当は倍ぐらいにしたい。要するに、厚生省自身の検査だって五%に満たないわけですから、それの倍ぐらいに上げたいということは現場でも切実な願いなんですね。  私が申し上げましたのは、貿易摩擦とは関係なく、国内の基準に照らした検査をどうやるかという問題ですので、そこのところはぜひ分けて考えていただきたいと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  184. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御指摘はよくわかりますので、そういうように扱うようにさせたいと思います。
  185. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それから次に、食塩のとり過ぎということで、添加物の一部、ナトリウムをカリウム、カルシウム、マグネシウム等に置きかえるという作業を進めておられるということでありますけれども、添加物からくるナトリウムは、食塩としてとるナトリウムの何%に当たるのでしょうか。
  186. 内山壽紀

    ○内山説明員 ナトリウムに換算いたしますと、一番多く見まして一〇%、通常の計算ですと七ないし八%程度かと思っております。
  187. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まさに大臣が言われた貿易摩擦問題なんですけれども規制緩和食品添加物の要求リストがあります。アメリカから百二十八品目、それからECから五十四ですか、これはちょっと数字を言っていただきたいと思いますけれども、このアメリカとEC関連で、今こうしたカリウム、カルシウム、マグネシウム関連の品目はどのぐらいあるのでしょうか。
  188. 内山壽紀

    ○内山説明員 先生、そこのところ、誤解のないようにちょっと私どもの方で説明させていただきたいと思っておりますけれども、現在、アメリカとかECから、五十七年にそのようないわゆる要求リストというようなものが出てまいりまして、それは一応五十八年の段階で決着がついている形になってございます。  それで、その後私どもの方としましては、五十八年の三月、それから昨年の七月に、アクションプログラムでいわゆる食品添加物に関する姿勢というものを示しまして、科学的に個別に審査するという方向、それから、各国の衛生当局から要請のあったときには十分協議する、その際には国際的に安全性の評価されたものを対象とするというような方針が決まりまして、私どもの方としましては、米国それからECとは科学的専門家の会議を持っております。  その際に私どもは、このアクションプログラムの内容を正確にお伝えいたしまして、こういうような要請をするときには、やはりきちっとした科学的データをつけた上で要請という形にしていただきたいということを、それぞれの向こうの方の衛生当局の方に御説明いたしました。それについては、向こうの専門家の方々に御納得いただきまして、私どもの方の段階では、ECそれから米国から、個別に具体的な要求というものは、現在の段階ではまだ出てきておりません。そのように御理解いただければと思っております。
  189. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 依然として、ECリスト五十九品目、A(1)リスト百二十八品目は一体どうなのかということで、消費者の側からすれば、厚生省はこれから順次、またまたふやしていくのではないかということで見ているわけです。  ナトリウムのとり過ぎ、そういうことで、今食品添加物を指定しようというような動きを厚生省はしておられるというふうに伺っておりますけれども、一体どういう品目、何品目ぐらいそういうことを考えておられるのか、ちょっと伺いたいと思います。
  190. 内山壽紀

    ○内山説明員 先生の言われましたものについては、いわゆるナトリウムの過剰摂取の問題というものにつきましては、高血圧などの循環器系疾患をもたらす有力な要因として多くの注目を集めているところでございまして、一方、現在我が国で認められている食品添加物の塩類は、圧倒的にナトリウム塩が多いという状況にございます。  そこで、食品添加物の指定の実情を見直すために検討会では、こうした現状等問題点について検討を行った結果、「食品添加物についてナトリウム塩の分散化を図ることは、ナトリウム摂取量の低減化に役立つ。これにより電解質バランスの改善が図られ、総体的にみて、国民の健康に寄与することとなり、公衆衛生上の観点から望ましいものと考える。」という報告が取りまとめられたものでございます。  それで、今言われましたような形で私どもは、現在ナトリウムに偏っております食品添加物の指定実態を見直しまして、これをカリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩あるいは有機酸そのもの、そういうようなものの指定をしていって、なるべくナトリウム摂取を少なくしようということを考えているわけでございまして、この内容につきましては、国内、国外のそれぞれに広く今広報をしている段階でございまして、実は今これについて個別具体的に要望等はまだ出てきておりません。しかしながら、私どもが調べた段階では、いわゆるカリウム塩とかカルシウム塩とかマグネシウム塩という塩の違いで国際的に評価がきちっとしているものは、二十品目弱の数はあるのかと思っております。けれども、これについても、まだデータ等がそろえられて出てきている段階には至っておりません。  以上でございます。
  191. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういうナトリウムのとり過ぎという名目のもとに食品添加物の指定が拡大されていくことについて、消費者の皆さんは、これは一体どういうことなのかということで非常に不安を持っているわけですね。今も、全体のナトリウムのうちほとんどが食塩で、食品添加物からくるものは七%から一〇%ということであるので、これではほんの名目にしかすぎないのではないかというような批判の声があります。  一方で、カリウムが腎患者、それもかなり重い患者の方にとってとても悪いというようなことが指摘をされているわけであります。それから、人間ではありませんけれども、ネズミの実験でもここ三年ぐらい毎年、日本栄養食糧学会等におきまして幾つか指摘をされているということが言われているわけです。このように、ナトリウムをカリウム、カルシウム、マグネシウムに置きかえることが健康にいいのだということで食品添加物をふやしていくということは、ゆめゆめあってはならないと思うわけでありますけれども、この点はいかがでしょうか。
  192. 内山壽紀

    ○内山説明員 今回の検討会におきましては、今先生の御指摘のようないわゆる腎疾患の問題とかいろいろある関係で、腎臓とか腎疾患等に関する日本でも有数の臨床の専門家にも御参画いただきまして、多角的な検討が行われまして報告が取りまとめられたものでございます。その結果といたしましては、我が国のカリウムの摂取の現状は過剰と言える状況にはなく、ナトリウム・カリウムバランスを図る必要性が指摘されておりまして、今回、いわゆる電解質バランスを図るという形でナトリウムの摂取の低減化を図るという方策をとりましても、食品添加物の分野においてカリウム塩の過剰供給がなされるというような状況になるとは考えておりません。
  193. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういう上に立ってナトリウムとかカリウムとかカルシウムとかマグネシウム、そういうものを一まとめにして塩類ということで何か一括許可をする、そんな話も出ているのですけれども、その点いかがですか。
  194. 内山壽紀

    ○内山説明員 先生ぜひ御理解いただきたいのですけれども、今回の報告では、いわゆる塩の違ったものにつきましてもそのそれぞれにつきまして、マグネシウム塩とかカリウム塩、いわゆる塩の違いのそれぞれにつきまして有用性、安全性に関する必要な資料を提出していただきまして、そのものについて個別に科学的な検討を行う。それで、ナトリウム塩と比較してその有用性、安全性が遜色ないということになったときには、そのような食品添加物については、用途は同じでございますし、そういうような塩が置きかわっても当該食品添加物の摂取量がふえるということはないものですから、私どもの方としましては、一括した取り扱いで実施したいということを考えているわけでございます。
  195. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ますます大変な問題だと思うのです。一九七二年の国会の附帯決議では、食品添加物については極力これを抑制するというのがあるわけですけれども、それに反して一九八三年には十一品目ふやされ、それに引き続いて今度、どうも今の話だと減塩というような名目で、二十品目以上あるのですか、そういうものをまた少なく見せかけるために塩類という形で一括する。一つ一つ個別に安全性を確かめるとかということはあるかもしれないけれども、少なく見せるということで塩類にまとめるということになると、これはもう食品添加物をどんどん野放しにふやしていく、そういう道につながっていくのではないか。一九八三年のときにも当委員会で私は、そういうことがないようにということで、一九七二年の国会の附帯決議を守るべきだということで言ってきているわけです。これは私はとんでもないというふうに思うわけでありまして、絶対に納得できることではないということを申し上げておきたいと思います。  このこととあわせて、今食品添加物で使用していないものあるいは問題視されているものは外していくべきだ。これも同時に当委員会で言ってきているところです。ふやすときに外すということで、全体の総量は変わらないようにという形で今までやってきているわけでありますけれども、こうした作業について、例えば緑色三号とか赤色二号レーキとかこういうほとんど使用されていない添加物、赤色レーキについてはここ十年間生産量はゼロということでありますから、そういう点ではほとんど使われていないものです。それから臭素酸カリウム、これはやはりここの委員会で私が質問したのですけれども、文部省は今学校給食用のパンには臭素酸カリウムは使わせておりません。そういう措置をとっているわけですね。こういうものだってもう外していくべきだと思うし、BHA、サッカリン、いろいろありますね。  特に、BHAについてはいろいろいきさつがありました。そういう中で、なるべく使わせないという行政指導が生きているかのようなことが言われています。しかし今、煮干しにはBHTよりもBHAの方がいいということで、これは業界誌ですけれども、「煮干業界でBHA見直しの動きが高まっており、荷受業者の中に「BHAを使った煮干の方が高く売れる」とBHAの使用を指定してくるケースも増えており、BHA復活の兆しも見られ注目される。」こういうこともあるわけです。ですから、野放し的にどんどんふやしていくのではなくて添加物を減らしていく、そういうことを考えるべきだと思いますけれども、時間の関係もありますので簡潔に答えていただけますでしょうか。
  196. 内山壽紀

    ○内山説明員 順不同になるかもしれませんけれども、まず今回の報告でございますが、これは添加物指定審査に当たりまして、塩の異なる個別の食品添加物ごとに、既存のナトリウム塩と同等以上の有用性、安全性があるか否かを科学的に確認していくというものでございまして、国民の健康確保に寄与するものと考えてございます。したがいまして、昭和四十七年の衆参社会労働委員会での安全性の確保を最重点とするという附帯決議の趣旨には反するものではないというふうに考えてございます。  それから、既に指定されている添加物についての問題でございますけれども、既指定の食品添加物につきましては、その安全性の確保から常時再評価ということをやっておりまして、安全性が科学的に否定されたもの及び使用実績等から必要性が認められなくなったものにつきましては、私どもの方としましては今先生指摘のように、必要に応じましてその指定の見直しということはやっていきたいと考えてございます。
  197. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ナトリウムを減らすなら食塩の摂取量を減らすのが一番早いわけですから、そういう点ではこれは説得性がないというふうに思っています。  その問題に関連して、以前当委員会で塩分、糖分のとり過ぎの問題を指摘をして、そして厚生省がその表示をやります、制度化をしますということで答弁をされて、作業が進んでいると聞いているわけでありますけれども、それが聞くところによると制度化にならない。アクションプログラムで新しい基準・認証制度はつくらない、そういうことでこれがひっくり返ってしまって、業界の任意に任せるということになってしまったそうでありますけれども、この内容について表示の具体的な、何を表示をさせるのかということ、それからどういう日程になるのか、また任意でどれだけの実効が上がるのか、将来これを制度化をするということについて厚生省の基本的な考え方、ちょっとたくさんありますけれども、伺いたいと思います。
  198. 松田朗

    ○松田説明員 お答えいたします。  まず、加工食品の栄養成分を表示する制度についてでございますが、先生指摘するように、厚生省といたしましても長年検討してまいりました。これは、消費者が栄養成分の組成につきまして情報を望んでいるということ、あるいは国民の健康づくりの上からも、成人病の予防対策を推進する上で加工食品に含まれている栄養成分の情報は不可欠である、こういう考え方に立ちまして検討してまいったわけでございます。  具体的には、厚生省は五十二年以来、この制度化につきまして調査研究を重ねてまいりました。最近になりまして、五十九年以降予算化いたしまして調査をいたしまして、最終的にはこの結果を踏まえまして栄養成分の表示を制度化したいと考えたわけでございます。  御指摘のように、アクションプログラムによりまして新たな基準・認証制度は原則として設けない、こういうことになりましたので、この政府の方針に基づきまして、厚生省といたしましては、我が省の認可団体である日本栄養食品協会を認定団体といたしまして運営を行ってもらうことにしたわけでございます。この制度、非常に重要な意味を持っておるわけでございまして、民間団体にこの仕事をお願いしたといたしましても、厚生省といたしましては、この運営の方法等については厳正かつ消費者の期待にこたえるものとなるよう指導を徹底していきたいと思うわけでございます。  では、具体的にはどういうものを表示するかということでございますが、これはいろいろ議論しまして、欲を言えば切りがないわけでございますけれども消費者にとりまして、あるいは栄養指導をする面で不可欠なものから始めようということで、具体的には総エネルギー量、たんぱく質、脂質、糖質、食塩、この五つの要素を表示することとしたものでございます。  将来、これを制度化しないのかということについてでございますけれども、御承知のように、現状まだアクションプログラムということが進行中でございます。また、ただいま申しましたように、民間に委託した制度でございますけれども、この制度も、運用を徹底することによりまして国の制度に劣らないものにしていきたいということでまず対応したいと思っております。しかしながら、今後のもろもろの状況を見守った上で考えていきたいと考えております。
  199. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 実効性は何割ぐらい。
  200. 松田朗

    ○松田説明員 これにつきましては、十一月一日からこの制度を施行するということで、十一月一日までにあるいはそれ以降、どういう製品がどのくらいこの制度に乗っかって出てくるかまだ未定でございますけれども、私どもではいろんな機会を通じまして業者にPRを図りまして、できるだけ多くの品物がなるべく早い時期にこの制度に乗っかってもらうように努めてまいりたいと思います。  以上でございます。
  201. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間がなくなってきたので大変申しわけないのですが、今農水省からも来ていただいているのですが、お答えをいただいていると時間がなくなってしまいますので、私の方からちょっと説明をしたいと思うのです。  大臣、農水省も同じように、今の栄養成分について作業を進めているわけですね。お互いにし合って、そして消費者の啓発をして表示制度を促進させる、そういう考え方もあるかもしれませんけれども、しかし今回の場合、農水省も五つの栄養表示ということなわけですね。それで糖質というのが厚生省で、炭水化物が農水省でございます。そうすると、同じものを両省が表示が違ってくるということになると、これは消費者が混乱するし、それから業界側からも、二通りあるというのは困るというような意見も出ているのですね。やはり塩分とか糖分とか、こういう表示は国民の健康を守る上でも非常に重要でありますので、この表示については調整をしていく必要があるというふうに思っておるのです。消費者にとってわかりやすい形で調整をしていただきたい。これは最後に大臣、答弁をいただきたいと思うのです。
  202. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生お話よく承りましたので、そういう線でひとつ調整を図っていきたいと思います。
  203. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  204. 河上民雄

    河上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十六分散会