○勝村政府
委員 お答えを申し上げます。
ただいまの御
質問の
内容でございますが、一、二点だけコメントさせていただきたい点がございます。
各国通貨の中で日本円だけが米ドルに対して高くなっているということは必ずしも事実ではございません。ただいま御
指摘のありました米ドルが各国通貨に比較して実質的に余り引き下げられていないのではないかというのは、アメリカの貿易量をウエートといたしましてその取引先との通貨の関係を平均してみますと、最近までで三%かそこらしか引き下がっていない、こういうことであります。対欧通貨に対しましては、御
承知のとおりマルク、それからEMSの中に含まれております各国通貨に対して米ドルはかなりの率で切り下がっておりまして、日本円だけが何かねらい撃ちをされたというような見方は当たらないだろう。米ドルが実質的に下がっておりませんのは、アメリカの貿易量、取引の多い発展途上国及びNICS等に対しまして実質的にほとんど切り下がっていない。御
承知のとおりに韓国ウォンあるいは台湾ドル等は基本的に米ドルにリンクいたしております。それから中南米のクルゼイロでありますとかペソでありますとか、こういうのはむしろ大幅に対ドル切り下げを行っているわけであります。したがって、そういうものを平均いたしますと実質的に切り下がっていないということでありまして、日本円及び欧州通貨に対しましてはかなりの率で米ドルは切り下がっているわけであります。
それから、対外資産の考え方につきましては、この前一度基本的な考え方を
お答えしたことがあったかと思いますが、これにつきましてもやはり一、二申し添えますと、何か政策の
対象として円とドルとの関係だけが意図的に動かされてその結果日本国民が
被害をこうむったという見方は当たらないのではないだろうか。ただいま長官の
お答えにもありましたように、G5以来の国際的な為替に対します政策変更、これはそれまでのドルの異常な高値評価というものが国際的な不均衡あるいは各国の国内政策に非常に大きなひずみを残してまいりました。そういう
状況は続けられないということでああいうような政策協調が行われまして、これも一度この前申し上げたかと思いますが、それまでの資本市場が
中心になって動いていた為替レート、それが基本的にはファンダメンタルズに基づくレートの動きの方に引き戻されたというのが基本的な動きであろうと思うわけであります。
ただ、そういうような政策協調と申しましても、為替市場の動きというのは、御
承知のとおり自由市場でもありますし、かつ、非常にボランタリーな市場でもある。したがって、ターゲットゾーンというようなものではございませんから、大体ドル何円ぐらいを目指して協調介入をしようというようなことは実際上政策的に不可能なわけであります。したがって、その資本相場主導型のレート、通貨の相互関係からファンダメンタルズレートの方向に引き戻したという過程で、レートに急速な変動がありましたし、また場合によっては水準がやや動き過ぎるという
状況も当然生じたかと思うわけであります。したがいまして、何か円だけがねらい撃ちをされてそれでアメリカあるいは日本の為替政策が間違った
対応をしてそのために日本国民が損をしたのではないか、ちょっと御
質問を私が誤解しているかもしれませんが、仮にそういうような御意見であるといたしますと、そういう考え方というのは私
どもはとるべきではないのではないだろうかというふうに考えております。
では実際にどうなっているのかということでありますが、この前申し上げましたように、仮に一番ドルが高値でありました、これはたしか昨年の九月でありましたか、一時二百六十円というときがございましたが、その二百四十円あるいは二百六十円というときから現在の百六十円のところまでだけの差をとりまして日本の対外資産を円に戻して評価をするという単純な計算をいたしますればそれはどれだけ損失があったという計算はできるわけでありますが、これは毎度申し上げておりますように必ずしも
実態を反映いたしておりません。その理由は前から何度も申し上げておりますので繰り返しませんが、
一つだけ追加させていただきますと、実は日本の対外資産、特にドル建ての資産の資産価額というものを見ますと、これは二、三年前から非常な値上がりをいたしております。特にここ二、三年は金利の低下の過程で債券
価格が相当な上昇をいたしまして、日本の企業がどういう種類の債券を幾ら持っていてそれがどうなったかという計算はできないのでありますけれ
ども、例えばアメリカの国債の十年物の動きということを見てみますと、これは過去二年間に相当な資産評価益を生じております。確かに昨年の秋からのドル安傾向ということがございまして、その
部分の為替利益というものを取り出してみますとこれは確かにマイナスにはなっておろうかと思いますが、債券がどの時点で取得されたのか、それからドル高の過程あるいはアメリカのドル建ての資産がどういう値上がりをしてきたか、そこら辺の問題、さらにはクーポン収益の内外の差の問題そういうことを全部考えてみますと、日本の対外資産が莫大な損失をこうむったというような結論は出てまいらないのではないだろうかというふうに考えております。