○堀
委員 でありますから、きょう私は、この
委員会に御出席をいただいた方にいろいろと問い詰めるとかそういう気持ちは実は毛頭ないのでありますが、これは非常に重要な基本問題を含んでおりますので、そこに専門家がおられますけれ
ども、要するにこれから申し上げることをお聞きいただいて、一体
民営化とはどういうものか、
分割をするということは、資本主義というこの経済体制の中で一体どういうことを
意味するかということをちょっと申し上げたいのであります。
最初に、
昭和四十二年四月十九日、今から約二十年前でございますけれ
ども、ここで実は私は、水田大蔵
大臣と当時の磯崎副総裁に来ていただきまして、ちょっと論議をしております。ポイントだけをちょっと申し上げます。
ちょっと
国鉄のほうから
お答えをいただきたいのですけれ
ども、
昭和三十七年から四十年の間の
黒字線、それから
赤字線で直接費がまかなえる分と直接費がまかなえなくなった分というもののシフトの姿を答弁をしていただきたい。
それに対して磯崎副総裁は、私の方の
黒字線と
赤字線につきましては、
昭和三十七年度が
赤字線の赤をカバーしまして六百二十億円の
黒字、三十八年度は六百七十億円の
黒字、それから三十九年度に急激に悪くなりまして二百十四億円の
赤字、四十年度には千九十億円の
赤字というふうに、この数年間で非常に急激に悪くなりました。
赤字線から発生いたします
赤字の絶対額は、
昭和三十七年度は四百七十四億円、
昭和三十八年度には五百十五億円、
昭和三十九年度は千十三億円、
昭和四十年度は千四百四十億円になっております。この
赤字線の中にも、ただいま御
質問の中にございましたとおり、いわゆる直接費はまかなえる線と、それから直接費もまかなえない線とございます。一応一緒にして御答弁申し上げましたけれ
ども、大体
昭和四十年度には
赤字線から出ます
赤字の合計が千四百四十億円、
赤字線の数が二百三十一線、全体で二百四十二線ございますが、九五%も実は
赤字である、こういうことでございます。
昭和四十二年でございます。
そこで、いまのお話のように、
国鉄が言っています経費の中の直接費と間接費というのがあるわけですが、企業として見ると、ともかくもそこまではがまんができるというのは、
赤字であっても直接費はまかなえるということが企業というものの限界だと思うのですが、大蔵
大臣はどうお考えになりますか。
○水田国務
大臣 企業の限界は、直接費はまかなえるというのが限界、それがまかなえないということではもう企業にならぬ、こう思います。
こう水田大蔵
大臣は答えておられるのであります。
そこで私は、
私も同じだと思います。
そこで、いま
国鉄副総裁が答えられました直接費をまかなえない線、それが
昭和三十七年には線数で百二十二あって、
赤字が二百四十八億円だった
それが三十八年には百三十一線にふえて、
赤字が二百八十九億円、三十九年には百七十八線にふえて、六百三十二億円という
赤字になってくるわけです。
それが四十年になりますと、これは何と百九十九線——全部で二百四十二線の大体八二%の百九十九線というのが直接費をまかなえない線、こうなっているわけです。
赤字金額が九百二十八億円。企業というのは、いま
大臣が
お答えになったように、何にしても直接費をまかなえるところまででないと企業としてはおかしいわけです。しかし、その直接費もまかなえない線が八二%の百九十九線もあって、その
赤字が九百二十八億円も出ているにもかかわらず、
国鉄は依然としてそれを続けていかなければならぬというのは、なぜでしょうか。
それから、
三十七年に百二十二線で、全体の五四%しかなかったのですよ。
というように申し上げて、
直接費すらもまかなえない線、あなたの言う限界外のものが半分あった。
それがだんだんふえてきて、このトレンドというのは逆転しないと思いますと。
国鉄副総裁どうですか。いまのどんどんふえてきているトレンドが逆転しますか、この二、三年で。
○磯崎説明員 非常にむずかしい御
質問ですが、あらゆる
努力をいたしましても、全体の傾向としては逆転することはむずかしい、ただ
運賃を
値上げしていただきますので、多少の出入りはございます。
赤字路線だったものが
黒字線になることはございますが、それでも全体の傾向が全般的に変わるということはちょっとむずかしいのじゃないか、こういうふうに考えております。
それで私は、
運賃だけを上げたから収入がふえるということにはならない。それはさっき私が申し上げたように、独占企業であった時代と比べて、いまはバスが競争する、また、都会地へくれば自家用車で競争がある、私鉄電車その他の競争がある。あらゆるものがあるのですよ。片一方、飛行機もあるわけですからね。あらゆる競争の中でやっておる。この
国鉄のかつての独占企業としての性格がいろんなところにいまそのまま残されていて、
国鉄にすれば、制約というかっこうで、実は手かせ足かせがされていると思うのです。
こういうふうに私は申して、そしてその先で、
もちろん、企業が
黒字でずっといけるのなら、
利子の負担が幾らになろうと、それはあなたのおっしゃるとおりでしょう。
しかし、すでに副総裁が最初に答えておられるように、
国鉄というのは、すでに現在
赤字になっておるわけですね。運輸収入その他でまかなえない部分がすでにあるわけですから、
赤字になっている企業がさらに借り入れをしなければならぬ。資本主義の民間
ベースなら、こういうことは常識からいって私は銀行で金を貸さないと思うのです。水田さんどうですか。大体資本主義社会で銀行が——これは公共企業体、国だと思っているから別ですが、そうではなしに、民間企業で、ともかく毎年
赤字が出ます、そうして金を貸してください、
設備投資をやります、タイムラグが十年なり二十年あります、二十年先には何とかお返しできるでしょう、しかし、当分の間、十年から二十年は毎年
赤字でございます、そのうちにはともかく借金の
利子も借金でまかなわしてもらわなければまかなえません、こういう民間企業があったとき、あなた、銀行の立場に立って金を貸せますか。
○水田国務
大臣 私なら貸せません。
それで私は、
貸せないでしょう。資本主義というのはそういうものですね。
こういうことで、この中で私は、今の
国鉄というものが四十二年の段階で、もうこれは成り立たないところに来ていますよ、それをこれだけはっきり申し上げていたのですけれ
ども、実は
政府も運輸省もどこもこの問題に全然本気で取り組んでいない。これが四十二年でございます。
その次に、今度は五十一年です。ちょうど今から十年前であります。
昭和五十一年十月八日、運輸
委員会でございます。
本日、この
法律のわが党としての最後の
質問を私が行わせていただくわけでありますが、実は、私の感じでは、
国鉄の再建問題というものを
政府はきわめて局限された狭い範囲の問題として受けとめられておるような感じがしてなりません。政治というものは、確かに、経済あるいは国民生活の当面の問題に対処しなければならないのは当然でありますけれ
ども、さらに重要なのは、われわれがこれから二十年三十年先のわが民族の将来について現在やらなければならないことを行い得るかどうかということが政治上の重要な課題であるというふうに私は考えているわけであります。ですから、その観点に立って、今後二十年三十年の日本経済における長期展望の中における
日本国有鉄道のあり方はいかにあるべきであるかという問題について私はこれから少しお尋ねをしたいと思うのであります。
こういうふうに申して、要するに歴史的に
昭和二十四年に三つの公社ができました。一つは電電公社、一つは専売公社、一つは
国鉄です。ところが、専売公社と電電公社は実は今日に至るまで、
民営化になるまでは独占企業であったわけです、公的企業の独占企業。しかし
国鉄だけは、既に
昭和三十七年のこの
時点から競争の中で大変なダメージを受けつつあった。これが同じ公企業ということで今日まで放置されてきたというのは、私は率直に言って自由民主党
政府がそういう政策上のビジョンを欠いたし、本質を十分にわきまえていなかったのじゃないかということが感じられてなりません。
そこで、これは三木総理との論議でございます。
総理に申し上げたいのは、総理、言葉だけではだめなんですね。やはり言葉の裏づけになるものをあなたがここで
お答えをいただかないとだめなんです。再建の方向については自分もそうだということはそれは私も評価しますよ。しかし、それだけでは中身にならないのですね。
そこで、ちょっと中身の問題に入るのですが、総理は企業の独立採算という制度はどういうふうにお考えになりますか。
これを民間の企業で考えてみましょう。民間の企業がバスをやっているとしましょう。だんだんと乗り手が少なくなってきて、バス
事業としてはペイしなくなってきたとすると、民間企業というのは
利益を主体にしていますから、
利益の出ないところはやめますね。だんだんとやめてくる。ところが、もし都市バスが同じようなことをやっていると、都市バスというのは住民サービスのためにあるのであって
利益のためにあるのではありませんから、人が減ってきたからといってやめられませんね。要するに、
民営バスと都市バスとの違いはどこにあるかといえば、
民営バスはもうからないところはどんどん圧縮して、もうかるところだけで論議ができる。ところが、公営バスはもうからなくてもサービスしなければいかぬ。都市交通の責任者はやめたいと言うでしょうが、しかし、市は市民サービスのために残せと言う。そうなれば、やめたいと言うところが企業採算として合わないのなら、本来市が補助してやるということでなければ成り立たないのは当然でしょうね。
これは
国鉄も同じじゃないかと思うのです。民間ならやめたいというところをたくさん抱えておるのに、国は地方自治体の
関係もあるし、住民の
関係もあり、やりなさいと言う。言うなれば、企業として採算をはずれたものを強制しておるわけです。企業の採算を離れたものを強制するならば、それに対する何らかの対価がないと独立採算という原則は成り立たないと思います。これが第一点です。
第二点は、
赤字になっているにもかかわらずいろいろな割引やその他のことが行われておる、これが非常に大きな問題ですということであります。
三つ目は、大体イコールフッティングで競争しなければだめなのに、実は飛行機の場合は飛行場は国がつくる、トラックの場合は
道路は全部国がつくる、船の場合は港湾は全部つくる、
国鉄だけが
土地を買って、その上に道床を敷いてレールを敷いて全部自前でやらせている。既に競争条件で劣後になっておる
国鉄が依然としてこういうことをやっているのではどうにもならぬということで、
そこで私はちょっと
試算をしてみましたが、要するに
昭和三十九年から
赤字になって、それから後もし仮に
国鉄が求めておる地方交通線の
赤字と公共割引の
赤字分を国が全額持っていたとしたならば今日の
国鉄の損益勘定の債務の状態がどうなったか、五十年度末で計算をしてみますと、その累計はいま三兆三千二百五億あるのですが、もしこれを
国鉄が望むように、国が三十九年以後地方交通線の
赤字とそれから公共割引の負担部分を——これは
法律を越えた部分ですよ。それを入れてもらったならば、五十年度末で六千四百八十一億円しか実は
国鉄の損益勘定の
赤字はないのです。
これは、桜田
国鉄監査
委員長ですかね、桜田武さんが監査
委員長で、このとき成田
委員長に会いたいと言っておいでになりまして、私、政審会長でおつき合いいたしました。私はこの問題を、桜田武日経連会長でありますところの
国鉄監査
委員長に申し上げたわけです。要するに競争条件に既におくれておるものに対して、本来ならその部分を見てやらなければならないのに
赤字の企業にまだいろいろな負担をさせて、
赤字企業は知らぬぞ、おまえのところでやれ、累積
赤字がどんどん出ていく、これが今日の
国鉄を招いた問題だ。
これは五十一年の十月八日でございますから、今から考えるとちょうど十年前でございます。二十年前に問題を
指摘をし、十年前に問題を
指摘をしてなおかつ今日この状態になったというのは、私に言わせれば、今いらっしゃる皆さんは
関係ないのですけれ
ども、歴代自由民主党
政府がこの
国鉄問題については大きな怠慢と誤りをしてきた、こう思うのでありますが、これは
細田委員長に聞いた方がいいかもしれません、
委員長、いかがですか。