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1986-10-07 第107回国会 衆議院 日本国有鉄道改革に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月七日(火曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 細田 吉蔵君   理事 小此木彦三郎君 理事 小里 貞利君    理事 佐藤 守良君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 井上 普方君    理事 嶋崎  譲君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       逢沢 一郎君    甘利  明君       新井 将敬君    井出 正一君       石破  茂君    石渡 照久君       臼井日出男君    江口 一雄君       小沢 辰男君    大島 理森君       片岡 清一君    亀井 静香君       亀井 善之君    北村 直人君       久間 章生君    古賀  誠君       古賀 正浩君    鴻池 祥肇君       佐藤 静雄君    佐藤 敬夫君       桜井  新君    笹川  堯君       鈴木 宗男君    関谷 勝嗣君       園田 博之君    高橋 一郎君       武部  勤君    武村 正義君       津島 雄二君    渡海紀三朗君       虎島 和夫君    中島  衛君       中村正三郎君    中山 成彬君       野中 広務君    野呂田芳成君       長谷川 峻君    穂積 良行君       増岡 博之君    松田 九郎君       宮里 松正君    村井  仁君       村上誠一郎君    森田  一君       谷津 義男君    山村治郎君       若林 正俊君    上田 卓三君       小林 恒人君    新盛 辰雄君       関山 信之君    戸田 菊雄君       村山 富市君    山下洲夫君       浅井 美幸君    石田幸四郎君       遠藤 和良君    大橋 敏雄君       柴田  弘君    阿部 昭吾君       中村 正雄君    工藤  晃君       中島 武敏君    村上  弘君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 玉置 和郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ツ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣審議官   中島 眞二君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第四         部長      大出 峻郎君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    吉田 耕三君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁長官官房         審議官     稲橋 一正君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局審議官  冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁土地局長 田村 嘉朗君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省理財局次         長       安原  正君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         運輸政務次官  柿澤 弘治君         運輸大臣官房長 服部 経治君         運輸大臣官房審         議官      井山 嗣夫君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     林  淳司君         運輸大臣官房国         有鉄道部長   丹羽  晟君         運輸省運輸政策         局長      棚橋  泰君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         運輸省貨物流通         局長      松村 義弘君         郵政省電気通信         局長      奥山 雄材君         労働大臣官房審         議官      佐藤 仁彦君         労働省労政局長 小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設省道路局長 萩原  浩君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房審         議官      渡辺  功君         自治省行政局公         務員部長    柳  克樹君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         日本国有鉄道常         務理事     岡田  宏君         日本国有鉄道常         務理事     前田喜代治君         参  考  人         (日本国有鉄道         再建監理委員会         委員長)    亀井 正夫君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ───────────── 委員の異動 十月七日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     高橋 一郎君   大島 理森君     村上誠一郎君   亀井 静香君     江口 一雄君   桜井  新君     虎島 和夫君   関谷 勝嗣君     中山 成彬君   津島 雄二君     逢沢 一郎君   中島  衛君     石渡 照久君   長谷川 峻君     渡海紀三朗君   原田  憲君     北村 直人君   山村治郎君     佐藤 静雄君   若林 正俊君     佐藤 敬夫君   山下洲夫君     新盛 辰雄君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     鴻池 祥肇君   石渡 照久君     武部  勤君   江口 一雄君     谷津 義男君   北村 直人君     石破  茂君   佐藤 静雄君     笹川  堯君   佐藤 敬夫君     若林 正俊君   高橋 一郎君     古賀 正浩君   渡海紀三朗君     園田 博之君   虎島 和夫君     穂積 良行君   中山 成彬君     武村 正義君   村上誠一郎君     大島 理森君   新盛 辰雄君     山下洲夫君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     原田  憲君   古賀 正浩君     村井  仁君   鴻池 祥肇君     津島 雄二君   笹川  堯君     山村治郎君   園田 博之君     宮里 松正君   武部  勤君     中島  衛君   武村 正義君     新井 将敬君   穂積 良行君     井出 正一君   谷津 義男君     亀井 静香君 同日  辞任         補欠選任   新井 将敬君     関谷 勝嗣君   井出 正一君     桜井  新君   宮里 松正君     長谷川 峻君   村井  仁君     小沢 辰男君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本国有鉄道改革法案内閣提出第一号)  旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案内閣提出第二号)  新幹線鉄道保有機構法案内閣提出第三号)  日本国有鉄道清算事業団法案内閣提出第四号)  日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案内閣提出第五号)  鉄道事業法案内閣提出第六号)  日本国有鉄道改革法等施行法案内閣提出第七号)  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第八号)  日本鉄道株式会社法案伊藤茂君外八名提出衆法第一号)  日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案伊藤茂君外八名提出衆法第二号)  日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案伊藤茂君外八名提出衆法第三号)      ────◇─────
  2. 細田吉藏

  3. 小里貞利

    小里委員 総理を初め閣僚各位、連日御苦労さまでございます。  長かった国鉄歴史も、抜本的な改革を前にいたしまして大きな変貌を遂げようといたしております。私は、ただいまから国鉄改革法、すなわち八法を中心にいたしまして、自由民主党を代表いたしまして、総理を初め関係閣僚基本的な問題につきましてお尋ねを申し上げるわけでございますが、何分にも限られた時間でございます。要点を簡潔に整理しながら質問を申し上げたいと思いますが、答弁もしかるべくよろしくお願い申し上げます。  さて、我が日本国有鉄道の原点は、時代をさかのぼること百十四年、すなわち明治五年九月十二日、新橋―横浜間の汽笛一声で始まったと言われております。文明開化の旺盛な意欲に満ちあふれた先人たちが、当時、厳しい財政事情のもと、国運隆盛を期して頑張った、その記念すべき一つの行事、その当日のいわゆる開通式一端が――ここに新聞があるのでございますが、すなわち明治五年九月十三日の新聞であります。そこには近代国家発展にかける民族的なたくましい躍動感がみなぎっております。  「聖上陛下御臨幸を仰ぎて 鉄道開通式挙行の大盛儀」というタイトルのもとに記されておるのでありますが、その一端を申し上げますと、「鉄道館内には、近衛兵一大隊を整列し、挙銃の式あって音楽を奏ず。館内無数旗章を翻し、紅白百千の提灯を掲げかつ烟火を揚げ、花木各種の装飾をなして時ならざる春を発するに似たり。」と書いてあります。このように日本交通史始まって以来のけんらん荘厳たる式典であり、この伝統的な主幹交通としての存在日本国有鉄道には今もなお脈々と伝承されていると私は信ずるのでありますが、総理、いかがなるものでございましょうか。  それから時がたつこと百十四年、星が流れるごとく過ぎ行く光陰まことに早いものでありまして、今やその百十四年の国鉄歴史を根本的に総括をして新しい鉄道再生を期してやらなければならないという、いわば画期的なこの国会審議であります。この審議に臨んで、総理は、基本的にどのような所感あるいは感懐をお持ちでございましょうか、まず一言お聞かせいただきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄が百十四年の歴史を閉じて新しい現代日本に適応した形に前進しようとするに当たりまして国会で慎重御審議をいただくことは、まことにありがたく、かつ感無量なるものがございます。  考えてみれば、国鉄は、今のお話のように、明治五年以来百十四年にわたりまして日本国民の大事な宝として、かつまた親しまれる国鉄として、日本経済や文化の担い手として大きな役割を果たしていただきました。この間におきまする国鉄職員皆様方の御労苦に対しまして、心から敬意を表するものでございます。  特に日本国鉄は、勤務の規律の厳格なこと、時間の正確なことあるいは事故率の少ないこと、特に時間の正確なこと等におきましては世界にも令名をうたわれた存在でございました。そういう点を考えてみますと、やはり立派な国鉄であったのだなとしみじみ思う次第でございます。  戦争前におきましては、その上に国家財政収入源として、国鉄は多大に日本財政収入貢献もしていただいたことでもございますし、戦後におきましては、外国からの引揚者を収容するという陰の大きな力もまた分担していただいたこともあるのでございます。しかし、時代を経るに従いまして、科学技術運搬手段道路交通体系の大きな、急激な変化に伴いまして、その時代に合うように国鉄変貌、変革しなければもう時代に合うことができないという情勢になりまして、国民皆様方の御支援をいただいてこれが改革審議会をつくり、その結論をいただき、そして法案化して今日国会提出さして御審議を賜っている次第でございます。  私は、この長い間の国鉄功績を考え、かつ現代における我々の行わなければならない処置を考えましてまことに感無量なるものがございますが、特に国鉄職員そのほかの先人皆様方にここで心から敬意と感謝の意を表明しておきたいと感ずる次第でございます。
  5. 小里貞利

    小里委員 長かった国鉄歴史を称賛し、そしてまた、これからの再生にかける決意をお伺いしなければならぬわけでございますが、私は、時間もありませんから直ちに本論に入らしていただきます。  ただいま総理もお認めのように、国鉄日本経済社会発展あるいは国民生活の向上に多大の貢献をなし遂げてまいりましたその功績を私どもは今ここに大事にかみしめながら、その基本的な一つの土壌の上に立ちましてこれからの再生国鉄を論究し、そして立派な国策を立てなければならないわけであります。  申し上げるまでもなく、経済産業高度化国際化あるいは国民所得増大等、それを背景にいたしました今日のいわゆるモータリゼーション発展あるいは航空輸送拡大等によりまして、交通市場におきまする鉄道の位置と申し上げましょうか、その役割は大きく変化をいたしておるのであります。言いかえますれば、今や国鉄は、現状のシステムでおくなれば極めて危機に直面をいたしておるということが言えるのであります。  これを立て直すために、臨時行政調査会は丹精を込めて検討を加えてまいりました。それを受けました内閣は、今やその方向をきちんと整理をいたしまして、今国会に、国民の前に審議を諮っておるのがこの姿であります。いわゆる民営分割方向以外に方向はないぞ、この基本のもとに今回の改革八法はでき上がっております。  改革そして前進の国策を決定するまでの経緯あるいはその背景等は、今までいろいろな機会におきまして耳しげく論及し、そしてまた政府の所信も伺ってまいったところであります。今や改革への選択肢は、まさに天賦の最後機会であると申し上げましても言い過ぎではないと思います。今お答えがございましたが、中曽根総理はさきの本会議におきましても、今回の改革は、最後の、いわゆる鉄道再生にかける最高、最良の手段であるから不退転の決意で臨みますということを明らかになさっておられるのでありますが、今この委員会審議のスタートにおきまして、改めてその基本的な姿勢を伺うものであります。  申し上げるまでもなく、中曽根総理は、行政改革には本当に正面から取り組んでおいでになったと私は高く評価をいたしております。かつて、故田中六助先生幹事長当時、「保守本流の直言」の中に記した一項があります。  それは、今、勇気と決断を必要とする重大な政局である。もう一つは、難局を切り開き、次の新しい時代の到来へとつなげる勇猛果敢な政治家をこそ今最も必要とする政局であるのだ。その背景には行政改革がある。中でも財政再建そして国鉄再建という、まさに史上空前の大きな課題を抱えておる。そのためには、中曽根さんをこの際日本政治の頂点に立たせることが、私は国民の大きな期待であると思うと書いておるのであります。まさに、故人、当時の田中六助幹事長が示唆したごとく、見事に行政改革におこたえをいただいた、またいただきつつある。そして、最後とは申し上げませんけれども行政改革のいわば最大の目玉である、ウルトラC版と申し上げても過言ではなかろう国鉄改革に、今あなたはいわゆる政治生命をかけておいでになると思うのでありまするが、そのようなことも含めまして、基本的決意を改めてお伺いをする次第であります。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 輝かしい歴史を有する国鉄ではございましたけれども、最近の社会経済情勢変化交通体系変化に必ずしも即応できなかった、そういうところで何回か改革案が試みられました。しかし、十分な改革は行い得ず、ついに臨時行政調査会あるいは国鉄再建監理委員会に諮問をいたしまして、その答申を得まして、その答申の趣旨に従った大改革案を今回国会提出さしていただいた次第でございます。  現在の状態から見ますと、この大きな時代変化航空モータリゼーションという大きな変化等を考えますと、やはり全国一元化の一律運営という点にかなり無理が出てきておる。管理能力を超える、そういう大きな事業体になってきておる。そして、今や完全にコマーシャルベースで動いている航空あるいは自動車、貨物、そういうものに対して対抗できるだけの民間的手法経営効率を持った経営体制に変えなければだめだ。もう一つは、労使関係でございますけれども、やはり労も使も自主性責任性を持って、お互いに団体交渉ができるという責任体制が必要である。労使ともに国に寄りかかるという体系ではこの改革はなし得ない、そういう大きな点に着目いたしまして改革案をつくった次第でございます。  いろいろ御疑問の点もあるかもしれませんが、政府といたしましてはこれが今日考えられる最善の案でありまして、この案を断行することがあしたの国鉄を開き、かつ国鉄職員皆様方生活を支える大きな方法であると確信いたしておるのでございます。そういう観点からも、ぜひとも慎重審議の上、可及的速やかに法案を成立さしていただきますようにお願い申し上げる次第でございます。
  7. 小里貞利

    小里委員 私は、昨今まれに見る重要法案の今回の国鉄改革関連八法を、一体各界各層国民は広くどのような観点から眺めているんだろうか、その関心度合い、あるいは政府及び与党が主体的に取りかかっておりまする今回の法案提出、この審議に臨んで、一体国民世論はどの方向にあるんだろうか、その辺も若干注目をしてみたのであります。  今ここに、国の関係のある、ある機関が調査をいたしました世論調査の結果があります。時間がありませんから、私の方から若干項目を分けまして説明してみたいと思うのでありますが、まず、この調査のねらいは、なぜ改革をしなければならないか、あるいはまた、その改革の目標はどこにあるか、この辺に一つの視点が置かれて設問がしてあります。  まず最初に、ただいま総理が御説明になった、提出をなさっておられるこの八法について、国民皆さん御承知でございますかという問いかけをいたしております。私は、率直に申し上げましてこの答えに驚いております。何と八三%の国民皆さんが、国鉄改革は知っておりますよ、こういう答えを出しておるということであります。主権在民世論政治でありますから、当然のことと言えばそれっきりでございましょうけれども、大変な関心度合いを示しておるのであります。  二番目には、改革が必要ですか、いかがですかという問いかけに対しまして、改革は断固必要でありますよという答えが何と七三%出てまいっております。改革は必要だ、言いかえますと、勇気を出して取り組んでみなさいという、いわゆる国政に対する国民の示唆でもあるわけであります。しかも、その七三%の改革をやってみなさいという背景、理由を大別いたしますと、例えば赤字、借金が多過ぎますよ、サービスが悪いですよ、あるいは余剰人員おいでであるんじゃないですか、非常に多いんじゃないですか、こういうような具体的な背景まで出てまいっておるということであります。  あるいは事業体の大きさについても、先ほど総理が御答弁になったように、全国一元の巨大な組織では経営管理の限界を超えているんじゃないか、こういうお話をなさったようでありますが、まさにそのことにつきましても、この世論調査答えで、大き過ぎますよというのが五三%も出てまいっておるのであります。  次に、いよいよその改革の根本である民営分割についてはいかがですかという設問に対しまして、またこれ四四%という数字が出ております。民営分割よろしい、四四%です。しかしながら、また逆に、民営分割はちょっと待ちなさいというのも、ここに申し上げまするなれば二五%ぐらいある。この国民の一部の意見にも私どもは十分留意しながら改革作業を進めなければならぬことは当然でありますが、何分にもいわゆる世論調査答え国民の四四%は、きちんと民営分割でよろしいということを断定して、推奨をいたしておるということであります。  今世論調査の結果の明るい点をちょっと三項目申し上げましたが、若干暗いところも申し上げておきたいと思うのでありますが、若干違った意味で一点注目すべきことが出ております。  国鉄改革よろしいぞ、やってみなさい、しかも民営分割、ここまでは断定するけれども、果たせるかな、民営分割を断行した場合、六つのいわゆる旅客会社、その中でも地方の三つの鉄道会社は、経営の健全性はいかがですか、不安がありますか、これに対して、不安があります、極めて不安がありますというのが何と三〇%あります。改革は進めるけれども、期待もするけれども、不安もあるのですよ、この不安を完全に払拭してくださいよと言わんばかりの一つの数字であります。  以上申し上げましたこの世論調査に対しまして、私は、一口で申し上げますと刮目するべき世論の国鉄改革に対する基本的な方向だ、こういうふうに考えるのでありますが、総理大臣、いかようにこれをお受け取りでございましょうか。そしてまた、橋本運輸大臣、この世論調査の結果は、私は大分重みがあると思いますが、どのように認識しておいでになりますか、お伺いいたします。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今次国鉄改革につきましては、国民皆さんが重大な関心をお持ちであるということは私も承知しておりますし、ただいまの世論調査あるいは各新聞社の世論調査等も子細に点検し、拝見もいたしております。そして、今御指摘のとおりの結果が大体どの世論調査にも出ております。  改革は断行せよ、しかし新しく生まれる諸会社については問題点も多い。特に国民皆様方のお考えは、全国的な連関性という問題、各分割された会社の採算性の問題、運賃の問題あるいは職員の身分の問題、そういうような問題について大きな関心をお持ちであります。そういう点につきましては、我々も国民世論をよく検討いたしまして、子細にそれに対応できるような案を今回つくって提出した次第でございます。いずれ審議の過程で国民皆さんの御疑問には十分お答え申し上げたいと思っておる次第であります。
  9. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今総理からもお答えがありましたが、私もこの調査を拝見いたしました。そして、殊に民営分割というものを支持される方々の中で、なぜ支持をしていただけるのか。これに対して、経営も合理化や効率化が図られる、そう期待をしていただいている、また、ほぼ同じぐらい、職員の働きぶりや接客態度がよくなるだろうという期待を持っていただいていること、これらは現在の国鉄に対するいわば国民の不満の裏返しのものとして、私どもは真剣に受けとめなければならないと思っております。  同時にまた、御指摘になりましたように、民営分割というものに対して不安をお持ちの方々のお答えとして、ローカル線が切り捨てられるのではないだろうか、あるいは異常に運賃が高くなりはしないか、そういう不安を漏らしておられる方々があることも、私どもとしては十分頭の中に入れてこれからを考えなければならない、そのように考えております。
  10. 小里貞利

    小里委員 次に、これからの新生鉄道役割と申しますか、同時にまた、分割民営についてちょっとお伺いしてみたいと思うのでありますが、申し上げるまでもなく、自動車及び航空の発達によりまして、鉄道事業というのは全国的に、世界的に後退の傾向にあることは御承知のとおりであります。殊に欧州方面等におきましては、鉄道旅客輸送のいわゆる衰退は、政府の責任において直接その事業体の財政を補完する措置などもとられておる、そういう国々もあることは御承知のとおりであります。我が国の場合は、そういうようなことについてはきょうはここで時間を割くことはできませんが、御承知のとおり、いわば地形も細長く、かつ都市が発達して連続をいたしております。言いかえますと、日本列島は長い、そして主要都市がずっと連結をいたしておるわけでございまして、鉄道旅客輸送に適した一つの条件のもとにあるとも言われておるわけであります。  今日、旅客輸送量が鉄道の場合はだんだんその地位が下がってまいりましたとはいうものの、今なお、統計をとってみますと、旅客輸送量の四〇%は依然として鉄道が担っておるわけでございますから、その役割は極めて大きい。したがって、そこに鉄道再生のいわゆる大きい可能性があるとも言えるわけでございます。私は、そのような観点からこそ国鉄改革八法をお出しになって、そして再生を期するのだという、その具体的方策を明示しておいでになると思うのであります。言いかえますと、赤字解消あるいは国鉄改革は、そのままいわゆる鉄道役割の後退を意味するのではなくて、新しい価値の創造をする意味を持ち、そしてそこにこそ鉄道再生の大きな原動力があるのだ、こういうふうに考えるわけでございますが、運輸大臣、いかがでございましょうか。
  11. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今お話がありましたように、ここに一つの資料がございます。昭和七十五年という時点を想定いたしました場合に、一体鉄道輸送のシェアというものがどうなるかということであります。  昭和三十五年に五一%国鉄は輸送のシェアを占めておりました。そして、この資料によりますと、昭和七十五年度には一八%までそのシェアが低下すると言われております。しかし、その中で私どもが非常に注意をしてみたいと思いますのは、実は都市圏の通勤あるいは通学輸送というものに着目をして百キロ以内の交通機関別の依存度を見てみますと、確かに自動車の輸送量はふえておりますけれども、依然として鉄道の占めるシェアは三九・一%であります。また、百キロから三百キロぐらいの間は二四・八%を鉄道が占めております。これが三百キロから五百キロの圏内になりますと、鉄道輸送のシェアはむしろ増大をいたしまして四五・二%を占めることになります。そして五百キロから七百キロの距離、この間におきましても六二・八%が鉄道輸送を使うであろう、求めるであろうという数字が出されております。これから七百五十キロあるいは千キロとなりますと、今度は航空機の占めるシェアが非常にふえてまいりまして、航空輸送というもののウエートは高まってまいりますけれども、まさに御指摘のように中距離の都市間輸送、そして都市圏における通勤通学というものにおいては、鉄道の占めるウエート、国民の寄せる期待というものは依然として低下をしておらない。将来において私どもはここに大きく着目し、分割民営の方針をとりました後の鉄道というものの使命をここに求めたいと考えております。
  12. 小里貞利

    小里委員 時間の関係で要点を整理して進めてまいりたいと思いますが、要するに、ただいまの運輸大臣の答弁の中の統計でも明確に出ておりまするように、また先ほど総理も触れておいでになりましたが、全国一元化のいわゆる巨大組織では経営管理に限界がある。もう一つは、画一的な運営形態というものでは地域の実情に即したサービスができなかった。これはもう本当に具体的な、しかも相当な比重を占める経験の一つだと私は思います。  先ほど一番最初に総理が触れておられましたように、日本列島は長いから、本当に各地域間あるいは旅客、貨物各部門間の依頼心、事業管理にかける旺盛な意欲、活力というものがなかった。また、本会議総理が触れておられたように、競争意識も余り目立つものは感じなかったということを言っておられたようでありますが、まさにそのようなところから今回の分割民営論というものは断行しよう、そして地域の実情に合った、地域の住民に喜んでいただける、安心して使っていただける、最も合理的で便利な地方鉄道をつくっていこう、こういうところに着想なさったわけであります。どうかひとつ、総理を初め運輸大臣、この分割民営化論の背景をよくお考えいただきまして、その可能性については、やれる、やらなければいかぬという一つの抱負と、同時にまた自信がおありだと思うのでありますが、今国民はこのテレビを見ておりますから、運輸大臣、一言でよろしゅうございますが、明快にお聞かせを願いたいと思います。
  13. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 なかなか一言と言われましても申しにくいことでありますが、今回の改革の実施に当たりまして、効率的な経営というものを前提とした上で、私どもは健全な経営基盤を確保するように配慮をし、諸般の施策を講じたつもりであります。その努力によって経営は安定し得ると考えております。
  14. 小里貞利

    小里委員 先ほどの世論調査に関連をいたしまして、地方の住民あるいは国民は、非常に明るく期待をしておる面もあるけれども、不安な面も相当あります。それを払拭しなければならぬ。その不安な面とは、赤字ローカル線は切り捨てられるのではないか、あるいは過分な切符代を払わなければならぬのではないか、いろいろな心配がありますよということを申し上げまして、さようなことには十分留意しながら地方鉄道を考えます、そういうようなお話でございますから、さておきまして、安定基金についてお伺いいたします。  一兆一千八百億円、それを分割後に、経営が厳しいのではないかと思われる北海道鉄道会社に六千二百億円、九州鉄道に三千七百億円、四国鉄道に一千九百億円、安定基金を交付なさる。これは、中身を構造的によく聞いてみますとなかなかの知恵だと私は思っております。この三島会社に、独立してやってみなさい、今まで背負っておる借金は三つの会社には一切責任は持たせません、これも結構です。一つ政治判断だと思います。のみならず、いささかスタートの当初において経営の不振が予想されるから、その点を補完してやろう、安定基金をやる、この基金のいわゆる運用利回りによって予想されるそのマイナス高を補完しなさいというのですから、これはまずその鉄道会社、すなわち地域住民、国民にとりましてはこの点もひとつ十分御留意を願いたいと私は思うのでありますが、同時に、せっかく安定基金を出す以上はその安定基金は一貫して、固定的に、安定して活用されなければならないわけであります。  そこで、多少込み入ったことをお伺いするようでありますが、運用利回りですから、いわばその利子が毎年毎年ついて回るわけです。いわゆる安定基金の基金そのものは取り崩してはならぬわけでありますから、いただきました三島会社おのおの大事に、これは聖域に置いておかなければいかぬ。その運用利回りでマイナス高を補完する仕組みになっておりますが、これは結構であるにいたしましても、毎年度の金利が国債利回り、いわゆる十年分の平均の七・五%前後を期待しておるかのごとく私は説明を受けておるのでありますが、この七・五、おおむねこの数字の前後は動かないのか。同時に、この安定基金はこれで一回限りのものなのか。私は恐らく一回限りのものだろうと思っております、そんなに気分を弛緩させるような措置はよくないと思いますから。  念のためお伺いするのでありますが、今お伺いいたしました安定基金の管理運用について、運輸大臣の方から簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  15. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 監理委員会から最初ちょうだいをいたしました数字に、私どもは精査をいたしました結果そのままでは足りないということから、今御指摘のとおり上乗せをした基金設定をいたしました。そして運用利回り等について私どもが期待をしておりますものも御指摘のとおりであります。また、積み増し等を考えないで済む状態を設定し得たと考えておりまして、これで将来に対しての保障はし得ると理解をいたしております。
  16. 小里貞利

    小里委員 安定基金については極めて明快にお答えをいただきまして、ぜひその方向で、これを基本にしてそれぞれの会社が安定した、しかも健やかな経営ができ得まするように期待をするものであります。もとより安定基金のみによって安定した運営ができるなんて、そういうことは考えておりませんけれども。  次に、今回の国鉄改革のいわば成否がかかっておるのではないかと思われるくらい重要な問題の一つでございます雇用問題について総理大臣にお伺いいたしたいと思います。  国鉄改革を断行することは国民の声であると先ほど申し上げました。それは私はしかりと思いますが、その際、長年にわたりまして、国家機関の一つであると申し上げてもいいと思うのでありますが、この国鉄の重要な一翼を担ってまいりました国鉄職員が志半ばにして本意あらずも再就職をいたさなければならない、あるいは円満退職をしなければならない、そういう緊急事態が発生をいたしておるわけであります。私は、この円滑なる退職あるいは再就職、これはまさに国鉄改革の成否を左右する重要な課題事項の最たるものだ、こういうふうに思っておりますが、総理大臣、そのことにつきまして基本的な認識をお伺いいたしたいわけであります。  政府は従来から職員の雇用の確保については万全を期すと約束をしてまいっておるところでありますが、いよいよ具体的にその実践のための八法を今ここにお出しになったわけでございますから、裏腹に責任をとってしっかりとやりますぞという総理大臣の基本的な一つのお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  17. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の国鉄改革の大眼目の一つは、やはり民間的、効率的経営に国鉄を改組する、そういう意味において六つの会社にこれを分割して民営化するということと同時に、スリム化して、いわゆる過剰であると思われる人員をできるだけ少なくして、そして一本立ちでいけるようにこの機会政府としても協力して行う、そういう点が大眼目であります。やはり破産に瀕しているような会社を立て直すという一番大きな場合は、大体どこでも職員、人員問題に手をつけておるわけであります。これは、今までできなかった点を思い切って今度はやろう、そういう考えに立ちまして、今まで国鉄当局も随分この人員の整理については努力してきて、その延長線の上に立ってさらにこれを思い切ってやろうという考えで、大体六万一千人を予想しておりますが、その人員については政府は責任を持っていろいろ努力し、また就職先を見つけようというので、今私が本部長になりまして、まず国鉄が約二万希望退職でとっていただく、その残りを政府関係あるいは政府関係機関、地方公共団体、それから経済界等々にそれぞれお引き取りを願う、こういうことで約五万七千人程度は今のところ大体応じてもよろしいという受け入れ側の数が出てまいりました。かなりいいところまで来ておると思います。ただし、中身を見ますと、まだ政府政府関係機関の努力が足りない、公的部門の努力が民間に対して足りない、そういうことを考えまして、私たちとしてもさらに積極的にやるつもりでおります。  しかし、いずれにせよ職員皆さんのお立場になってみますれば、やはり自分たちの身分がどうなるんだろうか、御本人のみならず家族や親戚、特に高校や大学に行こうとしておる子供を抱えておる御家庭の悩みは深刻なものがあると我々は考えております。そういう点もよく考えまして、一人一人について納得のいくような、安心のできるような措置を最大限講ずる、こういうことで今努力しておるところでございます。  それから、年金につきましても約五兆円のお金が必要でございます。これらにつきましても今回の改革に当たりましてそれぞれ手当てをして、年金もやめた方々が心配なしにいただけるような体制をこの際つくっていく、こういうことで努力もしておるところでございます。
  18. 小里貞利

    小里委員 総理もこの問題は具体的に内容に及んで大分検討いただいておるようでございまして、力強く存ずるところでございますが、今総理がお触れになりましたように、今日の段階で勤めておいでになる職員、二万人は円滑に御退職を願いたい、期したい、さらにまた四万一千人はひとつ転職を、再雇用を円滑に、しかも政府の責任においてやりますよ、今誠心誠意やっているところだ、言うなれば現在の国鉄職員をただの一人たりといえども路頭に迷わしめるようなことがあってはならぬ、私はこういう御心情だと思うのです。  そこで、その具体的な計画を運輸大臣にお伺いいたします。  まず、政府の体制としては、今総理の方からお話がございましたように、雇用対策本部長の席にみずから総理大臣がお座りになって、しかもしばしば雇用対策のための上級機関会議もやっておいでになるようであります。私も調べておるけれども、もうここで一々そういうことは言いませんが、なかなかきめ細やかに総理も踏み込んでやっておいでになるな、そういう実感でもございます。  そこで、運輸大臣にお伺いいたしますが、いわゆる一人も路頭に迷わしめないために、今の総理お話では、具体的に、例えば公的部門に対して三万人、国鉄の関連事業団体に対して二万一千人、あるいは一万人を一般企業に期待をいたしておる、その中身もかなり進んでおる、非常に期待の持てるようなお話でございますが、その辺を運輸大臣の方でまとめてお聞かせをいただきたいと思います。いわば再雇用の進捗状況であります。
  19. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今の総理の御答弁に補足をさせていただきますが、私の立場からは政府関係の努力が足りないなどということを申し上げるつもりはありません。これはお願いをする立場として、各省また関係機関に大変な御努力をいただいております。現時点におきまして、国で約五千名、清算事業団を含んで特殊法人関係で約四千八百名、そして地方公共団体で約九千六百名、以上合計いたしまして公的部門で一万九千四百名の求人をいただいております。また、国鉄関連企業で約二万一千人を御採用願うことになっておりますし、一般産業界からは約一万九千七百名現時点において求人をちょうだいいたしております。全体では重複分を除き合計五万九千五百人の採用申し出が現在参っておりまして、今後この調子で推移をしていくことを心から願っております。  政府関係の数が十分出ておりません。三万名に対して出ておりません原因は、去る九月十二日の時点におきまして再就職計画の決定を閣議でいたしました。そして、その時点で各分野別に確保すべき再就職先の目標数、各省庁が六十二年度以降受け入れていただく採用率、こうしたものを決定いたしましたために、現在各省で作業をしていただいておる最中でありまして、これから先、公的部門における目標数の三万に到達することは、私は確実にできるものと考えております。  ただ、ここで一言だけお願いをいたしたいのは、実は民間で採用をしていただきたいと考えております一万名につきまして、確かに今一万九千七百名の求人をいただきました。しかし、やはり私どもとしては職員にできるだけ選択の幅を広げてやりたい、そしてより自分の求める職場に行けるようにしてあげたい。この一万九千七百名の求人に対してなお数倍の求人がいただけないものか、総理からも経済団体を通じてお願いを申し上げております。この場を拝借して国民各位に対しても御協力をお願い申し上げる次第であります。
  20. 小里貞利

    小里委員 私は、希望退職にしてもあるいは再就職にしても、円滑に、しかも手がたく着実にこれを遂行しなければならぬ、処理しなければならぬ、そういうような念願のもとに今お尋ね申し上げたのでございますが、御披瀝のとおり各部門におきまして、率直に申し上げまして私は円滑な滑り出しだなという感じを受けます。これは、先ほども申し上げたとおり政府を挙げて、あるいは関係機関等々の努力の一つの成果でもあるわけです。  そこで、今大づかみに申し上げまして、六万一千に対しまして五万七千と……(橋本国務大臣「五万九千五百」と呼ぶ)五万九千五百ですか、そういうような数字で、極めてとは言わないけれども、いわば明るい方向に動きつつあるというお話。あるいはまた、今運輸大臣は希望退職の推移についてはお触れになりませんでしたけれども、これも私の調査によりますと、この前のいわゆる退職時の特別給付金等の法律も手伝ったかと思われるのでございますが、二万人の希望退職に対しまして、現在において希望者が大体一万四千人前後とも承りますが、その辺の数値。あるいはまた、他に国や地方へ転職をする人々の分野で四千人から五千人前後の希望者がもう既に出てきております、こういうお話も承るわけでございます。締めて申し上げますと、二万人の希望退職者に対しまして、いわゆる退職を期待するその数に対してもうその二万人を満たすのではないかと思われるぐらいの極めて良好な成果をおさめておられるやにも聞くのでありますが、これは非常に大事な問題点であるがゆえに、改めて簡潔に整理してお答えを願いたいと思います。
  21. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 お答えいたします。  今先生から概要の御指摘がございましたが、大事なことでございます。数字を申し上げたいと思います。  十月一日現在で調べますと、希望退職の申し出を受けました職員が一万三千六百四十四名になっております。このうち、各界の御支援をいただきまして就職をした者を含めまして四千五百五十人ばかりが既に職を離れております。さらにまた、今までに公的部門等に転出済みの人が約四千三百人ぐらいおります。それから、希望退職法以前に関連企業等に既に転職をいたした者が約千名おるわけでございます。そうした人数を全部合計いたしますと、いわゆる希望退職法による希望退職者を含めまして約一万八千九百人程度の人たちが既に転職しあるいは転職の見込みが立っておる、こういう状況でございます。
  22. 小里貞利

    小里委員 いろいろ複雑な、しかも一つの厳しい環境ではあるのですけれども、希望退職についての二万人の目標は、今明らかにされましたように、既に退職を円満にいたしましたあるいは円満に退職の見込みがきちんと立っておりますのが締めて一万九千人という数字でありますから、これは私は率直に言ってなかなか充実した一つの結果であると思っております。希望退職者のみに限らず、再雇用についても政府あるいは国鉄は挙げて今努力を積み上げておいでになるところでありますが、一段とこの機会に、この退職、再就職に関する雇用の問題は、政府を挙げて、全力を挙げて取り組んでいただきまするように、心から強く訴え、そしてまた期待を申し上げる次第であります。  最後に、有効求人倍率あるいは余剰人員、まあ余剰人員という言葉そのものも私は抵抗を感じますけれども、わかりやすく余剰人員と申し上げますが、この問題につきましてちょっと申し上げておきたいと思うのです。  いわゆる有効求人倍率の低いところ、これはもう申し上げるまでもなく北海道、四国、九州の各会社の地帯であります。この有効求人倍率の低いところは、逆に余剰人員の発生率が高い。これはもう数字の上で明瞭であります。どうかひとつ、この辺は円滑にこれから推進できるように、運輸大臣を初め関係機関で御配慮方をお願い申し上げる次第です。  時間がありませんから次に進めてまいりますが、長期債務の処理についてお伺いしてみたいと思います。  長期債務は、申し上げるまでもなく全体を締めまして三十七兆五千億、膨大なる数字であります。これを一体これからどういう形でどういうふうに処理していくか。しかも国民の理解も得なければならない、また具体的手法において納得もいただかなければならないわけであります。しかしながら、この三十七兆五千億の中身を見てみますと、ただ単純に率直に言いまして、切符を売った、そして人件費を払った、諸掛かりを払った、その後がこの膨大なる数字でありますというわけにはなっていない。本四架橋をつくったり、青函トンネルをつくったり、いろいろな仕事もしてまいりました。あるいは先ほど総理大臣がお触れになりましたように、国鉄共済年金にかかわる債務も五兆円になんなんといたしております。しかもその中身を見てみますと、細やかなことを申し上げるようでありますが、昭和三十一年の新国鉄共済法が始まる以前の昭和三十年まで、大正の始まりから四十五年間にかかわる、すなわち昭和三十年以前の旧国鉄共済法というのでありましょうか、それにかかわる借金も今、毎年度五千億円ずつ足りませんよ、これも補完しておりますし、またしなければなりませんよというような仕組みのものも含まれておるわけでございまして、私はその点も国民に御理解をいただかなければならない膨大な長期債務の中の一つの姿であると思うのであります。  このことについては時間がありませんから触れません。お答えをいただく必要もありませんけれども、私がここでお伺いをいたしたいのは、この処理につきましてこれからの、今回の国会に示されました国の計画であります。その中で特に留意して私ども国民の前に明らかにしなければならない幾つかの重要項目があると思うのでありますが、その一つが非事業用地の処分であります。わかりやすく言いますと、国鉄土地の処分であります。六万六千ヘクタール、琵琶湖の面積に匹敵しますよと言われておる、その中の五万八千ヘクタールでございますか、これは新しい鉄道会社で使いますよ、あとの八千ヘクタールは大体処分してもいいんだけれども、その中で三千三百三十ヘクタールは当面有効土地処分面積としてこの際国会に明らかにいたしましたというのが事実であります。  整理して申し上げますと、三千三百三十ヘクタール、七千カ所、これを処分して、先ほど申し上げました膨大な赤字を埋めるための一翼にいたします、こういう考え方であるわけでございますが、そこで、その土地処分のいわゆる規模あるいはこれからの推進策をこの際きちんと国民の前に明らかにしなければならぬ。まず第一に、先人たちが長い間を要して築き上げてまいりました、いわゆる国民資産であります。本質は非常に重大です。貴重な資産です。しかもその規模も、申し上げるまでもなく、ただいま言ったとおり、明治中期の官営工場を払い下げて以来初めての一大政府物件の放出ですよなんて新聞は書いている。空前絶後だ、私はそのとおりだろうと思うのです。いかにこの土地処分が重要な役割を、本質を持っているかということを私ども国民の前に明らかにいたさなければならぬと思うのでありますが、総理はそのような観点から、この土地をひとつ最大有効に活用する、あるいはその処分においてはいささかの疑惑も生じないように公明正大にやらなければならぬ、こういうことを言われておるわけでございますが、そのようなことを含めて総理大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。
  23. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄の資産処分の問題は、今次国鉄改革を成功せしむるための大変大事な項目でございます。また、それだけに厳正公平に行われなければならぬ、これは肝に銘じておるところであります。  そこで、政府といたしましては、運輸省の中にこの基本計画をどういうふうにしていくかという委員会をまずつくります。それから運輸省の中に、同じように国鉄が払い下げる財産土地等の評価を行うその委員会も正式につくります。国鉄内部におきましても、同じようにその処分に関する審議会をつくりまして、これは具体的処分等について公正に行うような保障措置をそれで行う、こういう三段階の委員会組織によりまして、一人の独断等によっては行われない、みんなが監視しながら行う、そういうシステムをつくり、それと同時に、いろいろな評価その他につきましても客観的な第三者の意見を用いてこれを行う。そして一般原則としては、これは競争入札というのが公正なやり方でございます。しかし、公共団体、市町村とか府県とかというものからの御要請がある場合には、これはある程度優先的に考える必要もございます。そういう場合には、これは必ずしも一般競争入札によらないという場合もあり得ると思うのです。しかし、いずれにせよいろいろな保障措置安全装置をつくりまして、不正が行われないように、そして厳正にこれが行われるように、しかも国鉄が所期の目的を達することができるような財産処分が行われるように、そういう緻密な配慮を持って実行してまいりたいと考えておるところでございます。
  24. 小里貞利

    小里委員 総理答弁で明快になりましたことは、最高に有効にこれを活用しなければいかぬ、そのために、二つ目には公明正大にこの土地処分を行います、こういうことでございます。国鉄改革の成否がこの一点にもかかっているという総理のお気持ちでございますが、まさにそのとおりでございます。  次に、私が先ほど申し上げましたように、この土地処分は、ただ単純に、平常時におきまして、ここに行政財産ないし普通財産があるから処分をいたしますよという行為とは全く違うと思うのです。最終的に十六兆何がしになる膨大な、あるいは土地処分高を引いて十六兆何がしになるという計算になっているようでございますが、そのいわゆる最終的な債務、言いかえますと国民負担、国民の税金というものをできるだけ減らすために、削減をするために土地処分も行うのですという論理が成り立つわけでございますから。実態上、そのとおりなんです。ですから、言いかえますれば、土地処分はできるだけ有効に、かつまたその国民債務高を、国民負担金をより削減することに直接的に役立つように処理をしなければならぬと思うのです。もっと言葉をかえて言いますと、できるだけ秩序正しい一つの仕組みでより高く売る、こういうことだと思うのです。今総理大臣は、これはそのためにも、同時にまた公明正大さを保つためにも公開競争入札で行いますと、大変明瞭なお答えをいただいておるところでございますが、そこで、その公正を徹底する制度、手続を私はよく研究しなければいかぬと思っております。  ただいま総理大臣は、運輸省にもいわばこの法律が通過したときには土地処分審査会なるものをつくって、その辺はきちんと省令で制度をつくり、そしてきちんと指導助言を完了していくということをお話しになった。また国鉄当局でも資産処分審議会なるものをつくって、その公正、適正を期してまいりますという総理お話のようでございますが、私は、一段とそのお考えを具体化するために、具体的に運用するために、その手続、制度というものに特にこの際研究、考察を加える必要があると思いますが、運輸大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  25. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から御指摘のありましたとおり、総理からお答えをいたしましたとおり私どもも考えております。そして、私は本会議等におきまして、同種の御質問に対して、例えば地方公共団体等が公共の用に供するという場合には随意契約もあり得るということを申し上げてまいりました。しかし、その場合でも適正な地価はちょうだいをするということを申し添えてきたわけでありますが、実は、昨日マスコミに報ぜられました中で、和歌山県において一件、京都府において一件、自治体に対して国鉄の所有地を払い下げをいたしましたものが、旬日を経ずしてとまでは言いませんけれども、極めて短い期間のうちに民間業者に転売をされたという例が現実に出てまいりました。  こうした実例を見ますと、地方公共団体の公共の用に供する場合におきましても、その事前のチェック等は厳正にいたさなければなりませんし、さらに、場合によりましては、こうした目的外の転用等をいたしました場合のペナルティーの措置あるいは一定期間の転売禁止その他の方法をもう一段厳しくしなければならないと考えておるところでありまして、あくまでも私どもは公開競争入札を原則にし、国民の目の前に明らかな状態でこの土地の処分をしてまいりたいと考えております。
  26. 小里貞利

    小里委員 総理あるいは運輸大臣の答弁ともども、公明正大にやります、そのための方策は徹底的に研究する、さらに一段と踏み込んで検討をいたしますというお話でございます。繰り返すようでありますが、私は、これは具体的に検討して、尋常一様な手続で、今までの経験がどうだ、慣例がどうだ、そういうようなこと等で処理されてはならないということをつけ加えておきたい次第であります。  ただいま運輸大臣の方からもお触れになりましたように、昨今、国有資産におきまして若干疑惑等が発生をしたりした一つの苦い経験もあります。私どもは、一切の疑惑を排除する、絶対にそういうことは発生せしめない、国民の資産であります、厳正な態度で臨んでいただきたいということを強くここに要請を申し上げておく次第でございます。  特に、ただいまもう一点お伺いしたいのは、運輸大臣が公共用地への提供の場合には随契云々の話もなさったやに過ぐる本会議等で私は感じておるのでありますが、この公共用地への処分についても、いわば通例的な表現で申し上げますと、いわゆる地方自治体、公益法人あるいは公益、公共の用に供する公共性を持った土地の場合には随契で差し上げますよという一つの経験があります、慣例があります。私は、この自治体、公益法人または公共性あるいは公益性を持った団体たぐいの契約に拡大解釈をしばしばされまして、その辺に国民の疑惑が注視された一つの傾向があるということを指摘申し上げたいわけであります。  どうでしょうか、いかなる公共自治体、いわゆる地方自治体と申し上げておきましょう、自治体の公共の用に供する場合でも、まず一つは適正な時価。それからもう一つは、その自治体が直営事業で行う土地に限定をする。もう一つは、今大臣も触れておいでになりましたように、当初の契約において、例えば土地の授受を受けた後二年たったら着工しなさい、特定の施設、設備、物件を着工しない場合にはこれは解除する、あるいは十年以内は転売はできないぞというような条件は最小限要件としてはめ込んでおくべきだと思うのでありますが、その辺のことについてもう既に検討なさっておられるものでしょうか、お伺いいたします。
  27. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員御質問の点でありますけれども、例えば、私は、道路をおつくりになるための敷地とか、まさに地方公共団体が公共目的に利用されるというものについてもおのずからのルールをつくりたいとは考えておりました。ただし、同時に、地方自治体の行政というものを否認するような形もしたくない。ですから、地方公共団体が公共用地として取得を求められた場合には、私は、本来は随意契約で対応して差し上げたいという気持ちを持っておったわけであります。  ところが、昨日報ぜられました事例は、調べてみますと、実はその土地を整備する費用を民間業者に支払わせておるようなケースもございました。これは、私は決して地方自治体不信論を言うわけではありませんけれども、幾ら地方自治体の公共用と言われる土地の御所望でありましても、こうした事例がある以上、そのチェックは厳しくさせていただかなければなりません。委員が御指摘になりましたような考え方もその一つだと思います。  また、少なくとも適正な地価はお支払いをいただくわけでありますけれども、適正な地価は随意契約の場合でも……(小里委員「時価と言って」と呼ぶ)はい、時価はちょうだいをすることは当然でありますけれども、その場合におきましても、転売を制限するあるいはその他の手法を抜け道のないように厳正にするため、目下工夫を改めていたしております。
  28. 小里貞利

    小里委員 くどいようでありますが、国民の貴重な資産であります土地であります。公明正大に適正にやった、これなればあえてあすの国民生活の向上に直接間接役立つ一つの土地処分を行ったのだと納得していただける、そのような一つの方式を、ただいま運輸大臣お答えのとおり十分御検討いただきますことを強く期待を申し上げておきます。  時間がありませんから、次に運輸大臣にお伺いいたしますが、先ほど申し上げました処分土地三千三百三十ヘクタール、この総代価、一体どれくらいで売れるだろう。ですから、今次の再建の財政計画の中ではこれぐらいを見込んでおるのですというのが今度、きのうですか、政府からお配りになりましたこの膨大な資料の中に当然出てくるだろうと私は期待をしておりましたけれども、これは出てきていない。いつでございましたか、監理委員会が出しました二千六百ヘクタールのときの五兆八千億という数字は聞いております。今次はそれが一千億円伸ばされまして五兆九千億という数字が、これは責任ある数字であるのかないのかわからぬような形で出てまいっておることも知っております。さらに、先ほど大臣が御説明になりましたように、処分する土地はもっとふえました、二千六百ヘクタールがかさ上げしまして三千三百三十ヘクタールになりました、こういうお話だけでございます。  私が先ほどからしばしば申し上げておりまするように、国鉄改革の重要な要素の一部を持っておるわけです。しかも、財政再建あるいは国の財政計画に何らかの形で直接結ばれておりまするこの債務償還計画の中で土地代価が明確に示されないということは極めて不明である、こういうふうに申し上げたいのであります。  時間がありませんから細やかなことはお伺いしませんが、大臣もいろいろな事情がありその辺を御配慮いただいておると思うのでありますが、一体、この三千三百三十ヘクタール、七千カ所の土地の大体の処分見込み高というものはどういうふうに押さえておいでになるのか。ちなみに申し上げますと、最近の土地騰貴の情勢、あるいは土地価格の趨勢と申し上げましょう、これも御承知のとおりであります。いたずらに土地騰貴を招くような方式はよろしくないと思うのでありますが、必ずしもこの土地を処分するから町の地価が上がりますよという論理にはつながらないという有力な説もあるわけでございまして、その辺も含めて、運輸大臣、どういうふうにその辺の処分の推移を見ておいでになるのか。時間がありませんからちょっと簡潔に御説明を願いたいと思います。
  29. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員からも御指摘がありましたように、国鉄の用地は公開競争入札の方法を基本として処分が行われるわけであります。ですから、せっかくの御指摘でありますけれども、実は金額は、やってみないと、その時点にならないと算定できないという要素がございます。さらにまた、その売却の時期あるいはその土地を付加価値を高めて処分する等々の場合におきましては、価格に相当な差も生じるという予測が成り立つわけでありまして、これは不確定要素が大き過ぎるものですから、金額を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うのです。
  30. 小里貞利

    小里委員 運輸大臣お話しのように、この土地は膨大なる土地ですから、処分をするにしても相当な年月を要します。大体今の計画では十年ぐらいを踏んでおいでになるようであります。したがいまして、物件ごとに土地の処分をするその時期にもよるだろうと思うのです。それから、土地そのものに道路をつくったり公園をつくったりそのほかの社会的な施設をして環境整備をして、付加価値を高めて売られる土地もあるでしょう。あるいはその用途によっても違うでしょう。いろいろあろうかと思うのであります。しかしながら、先ほども申し上げましたように、二千六百ヘクタールのときには五兆八千億を大体見込んでおりますよ、こういう数字が出てきたのです。その後の状況変化というのは七百ヘクタールをかさ上げしましたよというだけのことであります。したがいまして、その結果における一つの見込み高というものも、前段階における見込み高が出ておるわけでありますから、私はその辺は何らかの算定根拠、背景があったればこそと思うのであります。  そのような意味におきましても、また価格によって、先ほどから私が申し上げておりまするように、膨大なる国民負担というものが変動してくるわけでありますから、一定の――まあ運輸大臣が今ここで明らかにできないとおっしゃる理由もわかるのです。例えば入札価格の頭を教えるようなものだ、あるいは不要な一つの予見をあるいは予断を与えるようなものだ。だから、土地処分の契約行為を乱してはいかぬからという御配慮もあるでしょうけれども、また見方によっては、必ずしもそれは予断を与えるものではないですよ、公共用地を高く適正な価格で売るためのあるいは公正に売るための手段にもなるのではないかという説もあるのですから、私は、一定の仮定の条件のもとでもよろしいですから、地価公示の制度もあることでございますし、ぞのデータを使って先ほどの監理委員会の行った数値を伸ばしていった計算ぐらいは出せるのではないかとも思うのですが、いかがでしょうか。今すぐここでその数字をいただきたいということは申し上げませんけれども、今申し上げましたように、いわゆる地価公示の制度がちゃんとあるのですから、そのデータを使って、そして監理委員会が出しましたその数値を伸ばしていけば、私は推定数字というものは出てくるのではないかとも思うのでございます。大変くどいことを申し上げるようでございますが、運輸大臣、いかがでございましょうか。
  31. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変つらい御質問をいただいたわけでありますけれども、そうすると、今の委員の御質問を改めてちょっと整理をさせていただきますが、地価公示の制度もあるのだから、そのデータを使って監理委員会の行った数値を伸ばしてみる、そういう方法もできるじゃないか、そういうふうに整とんしてよろしゅうございますか。
  32. 小里貞利

    小里委員 そのとおりでございます。
  33. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 それでは、これはあくまでも仮の計算、仮定を置いた仮の計算という御了解をいただきまして、その前提で早急にやってみます。
  34. 小里貞利

    小里委員 ただいま運輸大臣の方から、おおむね私が要求をいたしましたものを、一定の条件はありますけれども明示するということでございますから、できるだけ早い機会にその数値を御整理いただきたいと思いますが、大体いつごろまでと期待申し上げてよろしゅうございますか。
  35. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、今事務方と相談せずに、やらせてみますということでお引き受けをいたしましたので、私も時間的にどれぐらいかかるかわかりません。しかし、この御審議に必要な数字としてできるだけ早く試算をさせるようにいたします。
  36. 小里貞利

    小里委員 時間もないようでございますから、ここで整備新幹線五線について総理大臣にお伺い申し上げたいと思うのです。  今心得ておりますことは、緊急性、重要性を持ちました国鉄改革八法に私どもは中心的に取り組んでおりますから、整備新幹線のことについて余り具体的にここで触れることはなじまないと思いますが、そういうような一つの考え方のもとに総理の考え方を若干お伺いしてみたいと思います。  過ぐる一月ぐらい前でございましたか、全国の知事会議が行われました。総理大臣官邸で行われたわけでございますが、その席におきまして、整備新幹線関係知事から挙げて、整備新幹線、いろいろ厳しい行財政状況下にあるけれども、これは政府の既定方針でもあるし、さらにまた政府の各機関で長年かかって積み上げてきたいきさつもある、既に方向は決まっておる、しかも我が与党はさきの選挙においても公約を打ち込んである、ぜひひとつ総理、一貫した姿勢を持って、厳しい一つの坂道であるけれども、何とか明るい曙光をきちんとキープしてくれぬか、曙光を与えてくれ、見通しをはっきりしてくれ、そういうような要望があったことは御承知のとおりであります。総理は、要約して申し上げますと、既定方針は尊重する、希望の灯は消さないよ、こういう明快なお話をいただきましたことは国民よく御承知のとおりであります。そのお考えにお変わりはないと信じておるわけでございますが、この機会に改めてお伺いをいたします。
  37. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 整備新幹線の問題については希望の灯は消さない、そういうことは申し上げたとおりであります。ただ、これを現実化するという場合については非常に慎重な配慮が必要でございまして、まず現在の法案が成立して、そして民営分割化が前進、進行する、その後の問題である。この法案が成立しないうちにいろいろ新しい仕事について申し上げることは必ずしも適切でない、そういうふうにやはり順序、段階というものも考える必要がある。それから、これを実施するにつきましては、党の首脳部あるいは内閣との間に交わした約束がございます。また、あのころ、三塚君が責任者で、該当の知事さんにおいで願って、御承認いただいたメモもございます。そういうようなものも我々としてはやはり重要視していかなければならない。現在、前からも御答弁申し上げているように、整備新幹線財源問題等検討委員会でこれを検討する、そういうことで検討の上これはどうするかということを決めていきたいと考えておる次第でございます。
  38. 小里貞利

    小里委員 要するに、希望の灯は消さない、これは基本、それから民営分割の段取りができたら考える、こういうふうに私は受け取っておきたいと思います。  そこで、ただいま総理がお答えになりました中で、財源検討委員会というのがあります。これは申し上げるまでもなく、財源をどうするか、あるいは新幹線の建設主体をどうするか、あるいは在来線の云々、そういうような基本的なことをひとつ検討してみよう、こういう段取りであります。  これは、端的にお伺いしますが、座長は内閣官房長官でございます。大体十二月、六十二年度予算編成、この時点までには整理されるものと内外の関係ある方々は見ておるのでありますが、そのように理解してよろしゅうございますか、お伺いいたします。
  39. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 党の方ともよく協議をしなければならぬ事項でございますし、今ここでいつごろということを決めているわけではありませんが、小里さんの今の御質問の中にあった御意見、これらも頭にしっかりとどめながら検討いたしたい、こう考えます。
  40. 小里貞利

    小里委員 どうもありがとうございました。  時間もありませんから、ここで国鉄総裁に一言お伺いいたしたいと思います。  結論から申し上げますと、先ほど総理大臣を初め運輸大臣等々、国鉄改革に取り組んでおいでになるあの厳粛な真剣な態度は御承知のとおりであります。また、あなたも劣らず大変な御努力を積み上げておいでになっておられます。私はここで、国鉄よ、杉浦総裁よ、今こそ心眼を開きなさい、正念場だ、こういう意味であなたの御所見を、もう最後の四コーナーを回った、いよいよ目前にその分水嶺が迫っておるんだ、あなたの御心境をお伺いしたいというのがこの質問であります。  最近、地方のいろいろな皆さんに聞いてみますと、いや国鉄もえらく変わったと、非常に好意的な明るい感覚で見ておるというのが実情だと思うのです。あるいは、本気だな、総裁以下使命感に燃えている、国鉄再建にかけているな、そういうような一つの声、あるいは声なき国民大衆があなた方を明るく見ておる、そういう一つのボリュームを感ずるのです。  今ここに私は、全国の、一部でありますけれども、鉄路に携わっていらっしゃる皆さんからも手紙をいただいた。あるいは東京や上野や新宿や横浜の駅長さんたちからも手紙をもらったり、文書をいただいたりしておりますが、いろいろなことが書いてありますよ。時間がないから一つ一つ申し上げませんけれども、杉浦総裁よく頑張っておる、一つの信念を持って段取りよく、そして国鉄本社の幹部と一体となって本当に苦心惨たんしておる、私どもももっと早く気づけばよかった、何とかお役に立たなければならないがというような手紙もいただいております。最初に申し上げました今日の段階、総理以下それぞれ取り組んでおいでになる、こういう一つの重厚味のある政府を挙げての取り組みの中におきまして、いわばその衝の責任者である総裁の一言をお聞かせいただきたいと思う。
  41. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 ただいま先生から私に対する温かい御指導をいただきました。大変心強く思う次第でございますが、諸先生並びに関係官庁の大変な御努力によりまして、本日ここに世紀の大改革である国鉄改革に関する法律案がいよいよ審議開始に至りましたことは、私といたしましてまことに感慨が深いものがあり、また身の引き締まる思いがいたす次第でございます。  私は、今回の改革案が、先ほど総理が申されましたように最後のものであり、最善のものであるというふうに確信を持っておるところでございます。しかしながら、総理初め小里先生のおっしゃいますように、国鉄は長い歴史を持ち、また役割を持ち、国民に大変親しまれた長い長い歴史がございます。そういう歴史のある国鉄をここに改革をしようというそうした大事業に対しまして、国鉄を愛するお気持ちだと思いますが、いろいろな意味で御批判、御叱正があるということも事実でございます。私どもは、政府の御指導をいただきながら、こうした国民全体の御意見に真摯に耳を傾け、また本委員会におきまして御審議を賜り、速やかに御審議が終了されることを心から念願するものでございます。  また、今先生御指摘のように、国鉄の内部におきましても非常に職員全体の気持ちが変わってまいっております。全国各地で改革のための運動が自発的に行われ、あるいはまた、労使関係で難しい問題がございますが、労使のそれぞれの立場からいろいろ真剣な討議が行われ、労使共同宣言等の問題も進展を見ておる状況でございます。こうした状況を踏まえまして、私ども今後の雇用安定という問題を最後まで関係皆様方にお願いをすると同時に、法案成立の暁におきましては、新生鉄道を目指しまして懸命の努力をする覚悟でございます。よろしくお願いいたします。
  42. 小里貞利

    小里委員 ただいま国鉄総裁も異常な決意を披瀝いただいております。  結びとして申し上げますが、先ほどから申し上げておりまするように、昨今まれに見る規模の大きい改革事業、すなわち国鉄改革であります。しかもこれが実施については明年の四月一日という一つの目標があります。これは内外のいろいろな改革案の持っておる諸条件、事情を見てみますと、なるほど明年の四月一日には周到に間に合わせなければならないなということが具体的に納得させられるのであります。私どもも真剣に前向きでこれに取り組んでまいるつもりでありますが、どうかひとつ、総理大臣を初め運輸大臣、関係大臣、そして機関挙げましてこの目標にぜひ成功するように心血を注がれんことを期待申し上げまして、私の質問を終わります。
  43. 細田吉藏

    細田委員長 これにて小里君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君。
  44. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表しまして、国民が注目をいたしております国鉄政府案、改革案に対しまして質問をいたしたいと思います。  先ほど運輸大臣との議論の中で、一定の世論調査についての御判断があったようでございますが、我が党もこの問題は極めて重大であると判断をいたしまして、全国的に五千万署名というのをいたしてまいりました。その五千万署名において、分割民営反対、その中には、分割には反対だが民営的手法はとってもいいという我が党の見解に近いものも含んでおりますけれども、今出されております政府法案に対しましては相当な批判が出てきているわけであります。  ちなみにその数字を申し上げます。  メモですと、今正確に数字は出ておりませんが、私たちが全国的に集めました分割民営反対の五千万署名の集まりは三千五百万を超えました。それは、前回の総選挙の投票率を前提にいたしましても四二%ぐらいです。有権者の五六%です。人口でいいますと二七%です。つまり、昨年の七月の監理委員会答申以来、百年にわたって国民が懐かしんでいる国鉄というものを分割して民営化する。国民の財産を安売りしやしないだろうか、分割したら不便なことになるんじゃないか、ひょっとしたら運賃もまた上がるんじゃないか、集団で旅行しようとすると、今までのようなサービスができにくくなるんじゃないか、多くの国民が不安を持ちながらいる中で行われた世論調査の結果は、皆さんのように政府が上から無作為抽出をやったのではなくて、私の仲間が一軒一軒それを説きながら集めた署名が三千五百万を超えたのであります。もちろん重複しているところが一部分はあると思います。あると思うけれども、有権者の半分以上の支持を得ているという観点に立ちまして、私たちは今度の国会に当たりまして、社会党の独自な案を提出する決意をいたしたわけであります。  したがいまして、先ほどの世論についても、私たちの観点から見ると、国民の側から見ると、世論の問題の立て方は違う。これだけ事が重大であるということを示していると思います。総理、いかがでしょうか。その意味で、我々の提出している法案政府案とを対決させながら今後議論を進めたいと思いますが、いずれにいたしましても、このような我々の努力について総理はどうお考えになりましょうか、まずお尋ねしたいと思います。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、国民皆様方国鉄の大改革をまず支持している、この支持は非常に強いと考えております。そして、具体的な内容については、分割民営化というものがやはり今一番適当である、それ以外には方法はないだろう、これも国民世論大多数が支持してくださっているところであると考えております。これは、いろいろな民間関係、ジャーナリズム関係世論調査を見ておりまして、先ほど申し上げましたような数値が、大体同じような数値がいつも出ておるところを見てそうであると思います。  政治的には、先般の総選挙におきまして、我々自由民主党はこの分割民営化の考え方、国鉄の大改革国民に正面から訴えて賛否を求めたわけでございますが、御存じのように結果は自民党が圧倒的な支持をしていただいた。我々は、これは公約でありますから、この公約を実現しなければ選挙を行ったことは意味もないし、国民に申しわけがない。そういう意味からも、この法案については不退転の決意で公約を実現する考えでおるのであります。
  46. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国民の世論というものと選挙の結果がすぐテーマごとに同じだなんということは成り立たぬのです。現代政治政治過程というのはそんなものじゃないです。ですから、私たちの側から見た世論調査でも、分割が圧倒的に過半数だなんということはあり得ない。皆さん方の仲間が、奥さんが、自民党の政治家の奥さんが署名しているじゃありませんか。(発言する者あり)名前を挙げてもいいですよ。だから、そういう意味では、一軒一軒とったときの世論調査というものの持っている意味を、権力の側から見た世論調査と野党の側が足を使ってやったということの意味を、国民の立場から、耳を傾けながらこれからの討論をしていただきたい、こう願うわけです。どうですか。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 社会党がおやりになった署名につきましてはそれなりの意義があるだろうとは思いますが、そういう署名の場合と、顔を表へ出さないでそういう一般的に行われる世論調査、どこの何のたれべえというようなもので、人が行ってお話をするという場合の世論調査と、それから一般的に行われる世論調査は大分性格が違うと思うのです。やはり毎戸人が来られて署名してくれと言われると、日本人は大部分はああいいよと名前を書く。それが日本人の特性であると思うのです。そういう意味におきまして、私は、今まで経験的に見まして、ジャーナリズムが、報道機関等がやっておる世論調査の方が、国民の世論というものは割合に率直に出てきているんではないかと考えております。
  48. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まあ世論調査論争をやるよりも、中身に入ることが大切ですから、この辺にいたしましょう。  さて、今の国鉄改革という政府案に対して賛成をとりながらも、最も反対の立場であっても、国鉄自身が今日まで経営について一定の努力をしてきたが、もっと努力をすべきであろうという期待がいろいろな形であることは世論調査において出ているとおりです。そして、今日までのような国の負担で事をやれば、何でも公的な負担で処理するというやり方をとっていたのでは借金が雪だるまになる、これもみんな国民はもう知っていることだと思います。また同時に、今国鉄で働いている職員分割民営で、後で次第に明らかにしていきますが、急速な人員減のもとで、職に対する大変不安な状態にあることは御承知のとおりであります。  職員の問題だけじゃないんです。例えば私の郷里の松任市を例にとりますと、松任市というのは、そこに松任の工場がありまして、その工場とそれに関連する下請企業の人でもっているわけです。ですから国鉄明治時代にスタートして以来、一定の時期に、大正の時代に入りまして、国鉄のおかげで私たちの地域の仲間は職を持つことになった、これからも国鉄のお力をかりて私たちの地域の職の御努力をしていただきたいということで、国鉄と市との間に交わされた古い文書もございます。こういう状態ですから、例えばそういう松任市にある整備の工場が消えてなくなることにはなっておりませんが、相当な人員減が行われようということになりますと、これは市にとっては一つの大きな社会問題であり、雇用問題であります。国鉄職員だけの問題じゃないんです。そういう意味で、国鉄職員の問題というのは地域の問題であり、社会問題化していくという可能性を持った中身であるということも御配慮いただきたいし、国民が注目している大切な点だと私は思うのです。  また、さっきから出ておりますように、整備新幹線というのは、便利になるから早く敷いてほしいという世論が一方にあるでしょう。しかし、その際に、整備新幹線を敷く敷き方についてどうなっているのかまだ一つもわからない、一方で期待を持ちながら負担ということになると待てよということもまた世論の重要問題であります。また同時に、今まで走っていたローカル線といいましょうか、英語で言うローカルというのは正確じゃない。本当はルーラルなんだ。基幹線がローカルなんでして、本当は英語で言うと違うのですが、わかりやすくローカルと言っておきましょう。今までなじんできたローカル線がなくなっていく。今まで病気のときには汽車でなら安心だと言っていたそれがなくなる。子供たちの通学に必要だったものがなくなる。年とった人はラッシュのときには汽車に乗りませんから、暇なときに乗って病院に行く。それが今までどおりに維持できるのだろうか。ローカル線の問題でも、今度の政府案で分割民営が進んだら残るのだろうかなという不安を恐らく持って見守っていると思います。  こういう一連の諸課題を、国民が持っている一連の国鉄に対する改革の願いというものをどう受けとめるかが我々国会政治家の任務であり、この受け方をもし誤ったら将来に大変な禍根を残すことになると私は思うのです。特に、そういう情勢でありますから、こういう一連の諸問題、今から審議に入りますが、確信を持って分割民営がよろしいというだけを言うのではなくて、我々の意見にも耳を傾けながら、今後とも国民のためになる国鉄が真に再建される道――私たちも国鉄は危機だと思っています。だから改革案を出したのです。その改革に当たっての政府・与党の道と私たちが提出した道と、そのいずれかについて国民の選択の場を与えるためにも一定の慎重審議の時間を要する、こう考えますが、慎重審議ということについて総理はどうお考えですか。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これだけの大問題を扱っていただくのでございますから、慎重審議はもとより大切なことであると考えております。
  50. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 慎重審議という場合には、最初総理にお聞きしますが、去年の監理委員会答申というのは、これは行政委員会答申ですね。今度政府はこれを受けとめて、政府の立場からこれを実施するというのが八本、先国会の一本を入れると九本を提出した意味ですね。監理委員会答申と今度政府が出された法律案、これとの関係について総理はどういう判断をなさっているか、まず前提として聞かせていただきたい。
  51. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府法律に基づいて国鉄再建監理委員会をつくり、監理委員会は、鋭意懸命な作業をしていただいて、これが最善なものであるという建言を出しました。政府はそれを検討いたしまして、この法律にも書いてありますが、やはり最大限に尊重して今回の法案をつくった、そういうことでございます。
  52. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 最大限に尊重したのですね。そうすると、答申の中身を政府がまず受け継ぐということには、大半のものを受け継ぐという前提がありますね。まずこれは確認できますね。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 重要な項目についてはそれを採用して法案をつくった、そういう考えでおります。
  54. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、答申が出したものについて、政府が独自に判断をして修正をした基本的な点について答えてください。
  55. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 基本的には、今総理からお答えをしたとおりでありますが、例えば貨物鉄道事業の具体的なあり方等、細部の検討をゆだねられておりますものは政府が判断をいたしております。また、バス事業等、監理委員会としては十三ブロック制を示唆しておられましたが、十ブロック制を採用することを考えております。
  56. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まだ橋本さんに質問してなかったのです。では、言った勢いであなたに質問しましょう。  橋本さんの誕生日に、大臣になられて、そしていよいよ国鉄改革を私が責任を持ちますと言って国鉄に行かれましたな。覚えていますか。八月二日ですよ。(橋本国務大臣「違います。七月二十九日です」と呼ぶ)そうだった。誕生日と新聞と間違えた。それが「つばめ」という国鉄の機関紙に載りました。そこにこう書いてあります。「私にとりましては、この答申を受けるということは大変辛いことでした。」「私よりはるかに辛い胸の内で、あの答申を受けられたと思います。」相手にそう言っているわけですね。橋本さんは「大変辛い」と言っている。私自身が大変つらいものだということを何度もおっしゃっている。最後にもおっしゃいましたな。一番最後に大臣は「辛い話ですが、みなさん明るくやりましょう。」と言って、その前に、大変つらいけれども頑張りましょうと言ったのですね。「辛い」「辛い」「辛い」、これは何ですか。どういう意味ですか。
  57. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 せっかくの御質問でありますからお答えをさせていただきます。  確かに、私は自分の誕生日に国鉄本社を初めて訪ねました。ここにおられる委員の方々が御承知のように、私はもともと交通問題全体については素人であります。国鉄の問題というものも、かつてマル生が崩れていったときの社労の理事としてその対応をいたした記憶があり、また、スト権ストのときに、何とかこれを回避できないかと努力をした当時の社労の理事でもありました。そして行政改革の責任者となりまして、国鉄問題というものを行政改革の立場から私は眺めました。当初は確かに私は国鉄の状況というものを十分に熟知しておりませんでしたから、いわゆる大変怠け集団であるとか、勤務時間中におふろに入る諸君の集団であるとか、そういうことばかりが頭にあったことも事実であります。  しかし、だんだん行政改革という視点から見てまいります中で、国鉄というものをこれから生かしていくためにやはり再建監理委員会方向しかないということを受けとめると同時に、この大きな改革に耐えなければならない国鉄職員のつらさというものも感じるようになりました。現に今も感じております。しかし、今これだけ巨大な赤字を抱えております国鉄がこのままの姿で存続できないということは、嶋崎委員もお認めになったとおりであります。そして社会党自身も……(嶋崎委員「いいよ、もう」と呼ぶ)せっかくのお尋ねでありますから、きちんと言わせてください。民営というものをお考えになる時代が参りました。しかし、この間に職場を去っていかなければならない職員も多数おられるわけであります。こうしたものを担当の責任者としてつらくないと言えば、それはうそであります。しかし、それを乗り越えなければならないことも事実であります。  せっかくのお尋ねでありますから、私のつらいと申し上げた意味だけはお聞き取りを願いました。
  58. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もともと分割に賛成でなかったということではなくて、つらいという意味で申された、こういうことですな。もう結構です。答えなくていいです。  さて、中へ入りましょう。総理、今度監理委員会答申に基づいて独自の政治判断で法案を出されましたね。前に確認したとおりです。それならば、この法案審議するには――この法案というのは、一口で言うたら分割民営の枠を決めたのは法律なんです。これは定型的性格、大枠を決めたのです。つまり分割民営という枠組みの中で、今後これをどう動かしていくかということについて一定の定量的判断が要りますね。今までたくさん資料を出していただきましたように、新会社ができると収支はどうなるのだろうということ、また、土地問題もあるでしょう、いっぱいありますね。こういう基本問題について政府が独自に法案として出されたのならば、この審議をするときにはそれに必要なデータは当然全部出すということで、私たちの要求にようこたえていただきました。何と九割以上資料提出いただいた。感謝いたします。ところで、一番大事な資料は何か。政省令なんです。わかりますか、この意味、大臣、総理大臣。基本的な問題だから総理大臣だ、これは。
  59. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変失礼でありますが、法律案がつくられて後まとめる政省令、その法律案の御審議をいただく前にその政省令はここに出せとおっしゃる方が御無理ではないでしょうか。
  60. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この法律は前国会に出ているのですよ。御承知ですね。そしてここにありますよ。「七法案に基づく政省令等の規定事項に関する検討状況」というのがありますね。ここに「政省令等に規定する事項」、こういう説明が入っている。  最初にちょっとお聞きしますけれども、政令をつくるときに各省連絡会議をやりますな。あの連絡会議をやるのは、その省に関連する法律の省がイニシアチブをとってやることは当然でしょうが、全体をマネージ、アレンジするのはどこが責任の省ですか。官房ですか。
  61. 林淳司

    ○林政府委員 お答え申し上げます。  省令は、これは各省独自でつくるものでございます。それから政令については、閣議で決定いたしますので、所管省が政令案をつくりまして各省に協議をいたしまして、これは連絡会ではございません、事実上協議をいたしまして、あと法制局の審査を得て閣議に出す、こういう手続でございます。
  62. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 わかった。政令は閣議で、協議ですな。省令は各省でつくるのですね。  では、ここに書いてあるように「政省令等に規定する事項に関する現時点での検討の状況」ですから、まだ何も決まってないんですね。「今後の検討、」と次に書いてあるのですから、また先で検討するのですな。「関係部門との調整等に応じ、」と書いてあるのですから、これもまだやってないんですね。「変更することもあり得るものである。」こう書いてあるのです。「変更することもあり得るものである。」これで審議できますか。  例を挙げましょうか。まずここで聞きたい。法律は前国会に出ているのですよ。今国会に継続したのですよ。そして途中選挙があって――継続でなく、廃案になって新たに出た。しかし、出ているわけでしょう。そして、いまだに政省令については検討、今後の検討、関係部門とはいまだに何もやっておらぬ、変更することもあり得る、こんな資料は党の資料要求に対する答えになりますか。まず答えてください。
  63. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御審議を受けて、その御審議の結果法律案が通過成立をいたしました後、その御意見等も参酌しながら決めていく部分があるわけでありますから、当然今の時点で全部出せとおっしゃる方が御無理でありまして、正直な検討状況を提出いたしたということであります。
  64. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そのぐらいの常識はありますよ。つまり審議するときに、政府法案を出したんだから、少なくとも基本的な問題については、政省令的なものはほぼ大綱はつくられておらなければおかしいですよ。  じゃ、例を挙げましょうか。まず一ぺージからいきましょうか。国有鉄道改革法案基本の十九条、これは法律では五つの項目を指定しているのです。三つ書いて「等」です。こんなものは骨子にもなりません。  二番目、二十四条第一項、これは鉄道施設というものについて特定化する条項です。これは幾つか書いてありますよ。わかってないのですか、まだ。外にはみんな出ていますよ。外には皆発表されていますよ。「日本国有鉄道」という雑誌の六十一年四月号に、ちゃんとここにはみんな特定されているのですよ。なぜ書かないのですか。第二番目。  今度は旅客株式会社及び貨物に関する法律案関係でいいますと、この附則の第七条、基金に充てるために必要な金額について、三島基金です。一兆一千八百億と決めたでしょう。決まっているのだよ。「検討中」というのは何ですか。青函の運営に必要な金額、これも決まっていますよ。「検討中」。そして最後に、政令の三項で、何年、期間、利率、これはまだ年のところはちょっとあいまいかもしれぬよ。決まっているのに何で書いてないのですか。それだから、これも提出資料としては全く無意味。これは無限にありまっせ。  もう時間がないからこれでやめましょう。こんないいかげんな政省令の提出の仕方でまともな審議をしようと思っているのか。政府は責任ある審議をやろうとしているのですか。どうなんですか。つくり直す必要があると思う。運輸大臣、つくり直す必要があると思うが、どうですか。
  65. 林淳司

    ○林政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、この法案について御審議をいただいて、成立してから正式に省令あるいは政令を制定するということでございまして、現段階ではその骨格しかお示しできないわけでございます。政令につきましては、これは事実上、関係各省と重要部分については御相談をした上でお出ししたものでございます。先ほど御指摘のありました「検討中」等の項目につきましては、これを提出、作成した時点等の違いによりまして、これを作成した時点ではまだそこまで至っておりませんでしたが、その後の検討により、ごく最近金額が確定したものもございますので、そういうのは別途資料でお出ししておる、それで補完させていただいておるというふうに私どもは考えております。
  66. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それでは答弁になりません。私たちが言ったのは先週の理事会なんですから。でも、何も決まってないのですよ。実際、裏にあるのじゃないの。さっきの土地の話じゃないが、基本はあるが、余り議論がややこしゅうなるからいいかげんなものを出したのと違うね。そんなことはないでしょうな。いずれにいたしましても、少なくともここに出てきているものは今の答弁では何にも答えになっていません。もうとっくに決まったものが――後でつくり直せる、すぐすっすっと数字を入れればいいものですから。入ってないのです。特定されているものは半分以上入っておらぬです。例えば定率なんかの重要な項目については何も書いてない。私は知っていますよ。運輸大臣も聞いたら知っているのじゃないですか。そんなことが、まず最低限基本になるものが一つも入ってないです。したがって、これはつくり直していただく、いいですか。
  67. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 理事会からの御指示がありましたならば、できるだけの努力はいたします。
  68. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 理事会に行く前に、こんなものはストレートに決められることじゃないですか、今挙げた大部分。したがって、理事会にかけるけれども、早急につくり直すということは約束できますな。
  69. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 できるものはいたします。
  70. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いつまでにですか。
  71. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私も、できるものとできないものと、その作業量がどの程度になるものか十分には存じませんので、事務方の諸君ができる限りの速さで提出をさせるようにいたします。
  72. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 じゃ、委員長のところで、理事会で早急に資料の再提出について検討していただくということを約束できますね。
  73. 細田吉藏

    細田委員長 理事会において協議いたします。(発言する者あり)御静粛に願います。
  74. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこでお尋ねします。国民の側から見ますと、国鉄は随分赤字でもうあかん、これは何とでもして早く改革しなければいかぬという世論があると思います。私も一市民としてそう思っていました。私は国鉄専門家でもありません。国鉄と職業的にも人間的にも何の関係もありませんが、一市民として国鉄の財政状況その他を見たときに、これはあかんなと思ったのです、改革せにゃいかぬと。その意味では一致しています。  さて、赤字赤字、解決せにゃいかぬ、これは共通している。問題は、どうしてそれを改革するかという方法と中身です。それを今から詰めます。  そこで、この間、私たちは理事会で資料を要求した。そうしたら、ばっと出てきた。ところが、明くる日の朝、新聞に一斉に皆さん方の説明が書いてある、分割したら本州の三つも三島も黒字だと。手品がここでわかるわけですね。物すごい借金で国鉄は動かぬな、みんなそう思って、何とか改革せにゃいかぬと思っていたら、開いてみたら、分割したらもうかる、ほれ見ろ、黒字になったんだ。国民にすれば、ああそうか、やっぱり分割すると鉄道は黒字になるんやなと思うでしょう。迷っていると思うのです。これだけでは僕はわからぬと思うのです。  僕も不思議だなと思った。いろいろな観点からいろいろな調査をしてみました。まず最初に国鉄の監査報告というのを、私はこんなもの日ごろ読んだことはありませんが、今度は一生懸命に読んでみました、古いところから。監査報告を読んでみたら――持ってきたのは、一番典型的なのは、六十年の監査が一番重要です。勉強してみたら、昭和五十六年から五カ年計画でもって一定の方針を出すという再建計画がありますから、六十年の監査が一番大事だ。それ以前の監査でいうと、五十七年の監査が僕は重要だと思うのです。五十六年から始まって五十八年。五十九年以降は分割民営問題が浮かび上がってきますから、客観的に国鉄が一定の独自の判断をしたのは五十七年の監査だなというのが私の感想です。  さて、国鉄のこの監査というのは、閣議に対して報告事項ですか、それとも承認事項ですか。総理
  75. 林淳司

    ○林政府委員 国鉄の監査報告は、国鉄から運輸大臣に提出をされまして、運輸大臣がこれを承認するということでございます。
  76. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 運輸大臣に出して、閣議には報告はないのですか。
  77. 林淳司

    ○林政府委員 閣議に対する報告はございません。
  78. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 しない。こんな重要な問題を運輸大臣は閣議に報告しないのですか。そんなことあるかな。していないのですね。報告事項ですから、簡単なことです。
  79. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 閣議に報告をすることにはなっておりません。今、私も心配ですから確認しましたが、間違っておらないそうです。
  80. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうですか、結構です。私も知らぬから聞いているのです、質問ですから。それならいいです。それなら、運輸大臣は報告を受けてあれを承認しているわけですね。  では、昭和五十九年度、つまり六十年の監査報告、それから六十一年に出た監査報告、六十年度監査といいますか、この二つには、国鉄の収支の考え方に二つの表が入っているということを知っていますか。
  81. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 一応存じております。
  82. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それならいいです。  じゃ、ちょっともとに戻りましょう。  国鉄が大変な危機的な状況になった、さあ何とかせにゃいかぬなということになって、御承知のように昭和五十五年に国鉄再建促進の特別措置法をつくりましたね。そして昭和五十六年に、これから五カ年でもって国鉄の経営基盤を確立しようということを方針化いたしましたね。それの一番最後に、収支改善の目標を立てました。  昭和六十年、いよいよ五年たちました。その五年たったとき――ここで使っている大事な表は一般営業損益という表ですよ、重要なのは。これは監査報告に皆入っていますから。一般営業損益でいくと、大臣、この目標は幾らもうかることになっていましたか。
  83. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 幾らもうかることになっていたかは私は覚えておりませんけれども、御指摘の点は、大変嫌なところにポイントを絞られたと感じております。
  84. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 五年前は、昭和六十年になったら二千七百億円黒字になるという目標を立てたのです。六十年の監査報告では幾らになりましたか。
  85. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 一般営業損益で三千百八十九億円の黒字を一応達成いたしております。
  86. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 三千八百億円の黒字です。目標を達成しましたね。(橋本国務大臣「三千百億」と呼ぶ)細かな数字はいいのです。達成したということが大事なんです。  ところが、私から判断しますとそれにも不合理があるのです、その決算の仕方に。なぜか。東北新幹線、上越新幹線、これは当時はこの損益勘定から外してあるのです。除いているのですね、御承知のとおり。もう今やこれは全国ネットワークですから、これの中の少なくとも減価償却費ぐらいは入れて損益勘定をすべきだと私は思う。それを入れて計算すると一千五十四億円の黒字です。今までの国鉄当局の監査のやり方を、現にネットワークになっている新幹線を全部入れてみて、そして減価償却費を算定に入れてみると、今の三千何百億が一千四十数億円になるのです。国鉄当局、そういう表をつくったことはありますか。
  87. 前田喜代治

    ○前田説明員 決算の表で御指摘のように二通りございまして、一つは経営改善計画の収支目標というものに対してその結果を示したものでございます。これは、一つの考え方は、幹線系それから地方交通線系等に分けまして、とりあえず六十年までにどのぐらいのことができるかということで示した表でございます。その間、東北新幹線等につきましては、まだ開業当時の大変な資本費の圧迫がございますので、それはとりあえずはちょっと別系だということで別に外しておりますので、中に取り入れた計算はいたしておりません。
  88. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで運輸省、大臣、昭和五十六年に五年間の再建目標、五年間の経営再建対策、経営改善計画というものを立てて、そして目的が達成した。これは六十年じゃないのです。五十九年にもう達成しています。五十九年から黒なんです。六十年になってぐっとふえたのです。このふえたというのに対して、私は特別に――特定人件費問題は除外しています。地方交通線は除外しているのです、これは政策的経費ですから。地交と特定人件費、それに今の二つの新幹線についてのけたのです。  地交線にかかわるのは国の政策的費用ですから、これはのけていいでしょう。それから特定人件費問題というのは、年金問題で我が党の委員が将来さらに詳しい議論をするでしょうが、これもよける理由があります。しかし、東北と上越の新幹線は現実に全国ネットワーク、まだ続いていない部分がありますけれども、これはもう全国ネットワークと見てよろしい。まだ足りない分は延ばさにゃいけませんけれどもね。だとすれば、少なくともこれは収支勘定の中に入れて、もう五年たったのだから、もうかるかもうからぬかぐらいのことは検討した方がいいと思う。  私が検討した結果、六十年は一千億円以上の黒字です。これは政府側も資料をつくってない、国鉄側もつくってない。国民は、国鉄は赤字だと思っているのです。赤字というのは、五十六年につくった国鉄経済財政の基本計画という観点でいくと目的は達成しておるのです。現在達成しておるのですよ。したがって、ここ数年間、国鉄皆さんが大変な努力をした。このごろはグリーン車に乗ったらお絞りが出るようになったですね。それから飲み物も出ますな。だんだん飛行機並みになってきた。それはもうかり始めたからできるのですよ。いずれにいたしましても、大変な努力をした結果、五十九年、六十年には黒字になったのです、一般営業損益という観点から予算の分析をすれば。一言で言えば国鉄はもうかるのですよ。一般営業損益と言ったら、国民が聞いてもわかりません。簡単に言えば、人が汽車に乗って動くのです。荷物は貨車で運ぶのです。それに伴って得た収入から人件費を払ってみたら黒字になったということですよ。そういう基本がきちんと監査報告の中で、今大ざっぱに私は言いましたが、正確な数字になって出ておる。  こういう実態だということになると、ただ赤字赤字という議論をしていていいのですか。問題は、これを認めた上で今後の国鉄再建をどうするか。そのとき分割の方法をとるという場合もあるでしょう。我が党の言っている全国一社制で、ちょうど三島にやるのと同じことを全国的にやろうというのが我が党案ですから、やり方いかんによっては、もちろん条件は幾つかつけなければいけませんが、選択の方法はあるのです。まだ結論は早い。  こういう状況だという意味で、まず総理でも運輸大臣でもはっきりしてほしいのは、この国鉄の五十九年、六十年の監査報告は単に運輸大臣への報告であり、運輸大臣はそれを御存じかもしれぬが、閣議の皆さんみんな知っておってもらわなければ困る。その上で、今の分割民営という手法がいいかどうかを含めて議論をしなければならぬと思う。そういう意味で、総理、この監査報告の分析の視角というものを政府は承認するかどうか。どうですか。
  89. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今お話のありました点の、決してその揚げ足をとるつもりではありませんけれども、一般営業損益につきまして、東北・上越新幹線の資本費に加えて利子負担というものを全く除外しておるというのは、これは私どもから見れば問題であろうと思います。こうした要素もありますし、また特定人件費を含めて国鉄の経営全体で見ますと、やはり六十年度も一兆八千億円余の赤字ということになっておるわけであります。これは、実は私はその当時関係しておりませんでしたのであるいは聞き間違いかもしれませんけれども、昭和五十五年の再建法の考え方というものが、同法の二条にもありますように、六十年度までに健全経営を確保するための基盤を整備すると同時に、引き続いて速やかに収支の均衡を回復するということをもとにつくられたと聞いております。そうした中から、今御指摘のように、幹線収支均衡、一般営業損益黒字という目標を掲げたと言われております。しかし同時に、これだけで国鉄経営の再建が達成されるわけではないということも再建法の第二条の趣旨から明らかにできることでありまして、引き続いて再建のための施策というものを実施する必要があることも、再建法自体でも予定をされておることであります。  この施策については、再建法においては特に具体的に触れられておらないことは事実でありますが、委員が御指摘になりましたように、確かに私は国鉄当局の、労使ともの努力というものを認めないわけではありません。そしてその成果というものを認めないわけでもありません。しかし、全体として膨大な赤字になお悩み続けておるという事実も、国民に御存じをいただかなければならないことであります。
  90. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そんなことはわかり切っている。今僕が聞いていることと違うことを答えている。僕の方の統計の第一番目の回答でいいますと、国鉄の監査報告の中の、汽車を動かした、物を動かした、そして経費をかけてみたら黒という中には東北、上越が入っていないのです。それを僕は入れるべきではないかというので、最低の基準をつくってやって黒字だと言っているのです。だから、僕のとり方がおかしいおかしいじゃないのです。いかに努力しているかという一つの側面を言っただけですよ。それが一つです。  二番目の問題は、今からですよ、長期債務問題です。営業外収支の問題をめぐって国鉄が大変なんです。それだけのことじゃないですか。営業外収支というものをどうするか、これが今の財政問題なんです。長期債務問題なんです。だから、分けて考えないと。私たちは分けないのですよ。うちの党は一本化で全国ネットワークなんですから。うちは全体を考えて、黒もあるが、今日の赤を一本にして、全国ネットワークを維持しながら財政再建する道はないか、こう考えたのです。いろいろ問題点があることはわかっている。批判されれば修正したって構わぬです、そんなものは。国民のためになることだ。だから、私たちは分割しないのですが、皆さん分割するのですから、はっきりしているんだ。  分割する以上は、分割して今度民営化される三島並びに貨物を含めての七社というのは独立に営業ができるかどうか、物、人を運んでみてプラスになるかマイナスになるかというのでしょう。この基準をひとつ今までの国鉄の財政を考えるときには基本にして整理しておいて、そしてそうでない部分を今度は清算事業団がかぶるのでしょう。新会社がそれを受けるのでしょう。十一兆何千億円、二千億円プラスするから十四兆円ぐらいと言ったね、たしか。新しい会社も受けるでしょう。仕分けをするのです。あなたたちの案でいくと分けるのですから。だから、あなたたちの案で分けるのなら、今までの国鉄の議論も分ける議論から始まらないと、一緒くたに議論しておるから国民はわからなくなるのです。そういう意味で言っただけです。これは答える必要はありません。この急速な五十九年、六十年の――おっしゃるとおり、共通しているところもあるのです。橋本さんの言うように、五十六年の再建計画というのは交通基盤の確立なんです。基盤の確立は大事なことだ。基盤の確立ができると将来黒字になるということだし、国民にサービスが可能になるということだ。そうでしょう。だからそのとおりなんです。そういう意味で答申のとおり、答申を説明しただけですから、そんなことは私もわかっていますよ。  さて、そこで聞きましょう。五十九年、六十年がなぜ黒字になったのですか。一般営業損益という観点から見てなぜ黒字になったと思うのです、大臣。
  91. 林淳司

    ○林政府委員 先生今御指摘の一般営業損益と申しますのは、これは二十数兆に及ぶ長期債務というものの資本費は全部除外してあるわけでございます。それから、東北新幹線、上越新幹線につきましても、償却費を含めて、あるいは先生今御指摘の償却費を含めても黒ではございますけれども、一応この一般営業損益の数字では、償却費を含めて資本費は全部除外してある。したがって、資本費を一切負担しない、借金が全くないという状態での収支でございまして、これについてはまさに営業上の努力、要するに増収努力あるいは効率化の努力ということで、努力は可能な目標でございます。そういう意味で再建法で、一つ国鉄自身で努力ができる目標、国鉄全体の再建という目標ではございませんで、国鉄自体が最低限努力できる目標ということで設定をしたのがこの一般営業損益というものでございます。したがって、これは確かに国鉄のその後のいろいろな経営努力というものがそれなりに効果を上げたということであろうかと思います。
  92. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今の説明は混乱させるために議論をしているのですよ。昭和五十八年まではそんなことになっていないのです。昭和五十五年の段階だってなっていないのです。だから、何回でも私の諸先輩も努力したのでしょうが、国鉄はうまくいかなかった。今度努力したらうまくいったのじゃないですか。うまくいったということの成果を認めた上で、どうするかを考えなければいかぬのですよ。そういうことを言っているので、あなたの説明じゃだめだ。まあいいよ、これ以上答えたってしようがない。時間がもったいない。  そこで、いきましょう。答えていないです。なぜ黒字になったかと言ったら、金をよけたからだと言うのでしょう。地交線の負担分をよけた、特定人件費をよけた、東北・上越新幹線の利子負担もよけた、それで黒字になったと言っているのでしょう。それだけ答えた。それじゃ答えにならないです。わかりますか、大臣。それは、つまり交通基盤の確立ということが前提になって、まず基盤整備をしよう、そして黒字の体制をつくろうという方針だったのです。だから、それでいいのですよ。何もおかしいことはない。ところが問題は、なぜ五十九年から六十年に黒字になったかという説明は何もしておらぬ。簡単ですよ、人減らしなんです。何人減ったと思いますか。昭和五十五年から六十年までの間に国鉄で働いている人たちは何ぼ減りましたか。
  93. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 昭和五十五年から五十九年度までですが、約十六万数千人でございます。
  94. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 約十七万やめているのですよ。かつて四十何万いたのが、今二十七万何ぼになった。ちょっと面倒くさいですから、正確な数字は言いません。十七万減った。特に、五十八年、五十九年に減ったのです。それが黒字の理由なんですよ。そこを言わなければだめです。  だから、そのことは何を意味していると思いますか。人を減らして今日黒字になったということは、現在の人で物を運び、人を運んでも、国鉄は民間と同じように黒字になるという例証だと思いますが、どうですか。
  95. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 むしろ私は、かつて現在よりも十七万も余分に抱えていたということ自体にびっくりいたしております。(嶋崎委員「今ごろ知ったのか」と呼ぶ)それは、私はこれからのことだけを覚えておりましたので、過去の数字までは覚えておりませんでした。これだけ余剰人員を抱えていれば、なるほど累積債務もふえたわけだとしみじみ思っております。ただ、それでもなおかつ民間の鉄道に比べて多いという指摘をされているのが実態でありますから、私はもっと努力をしていただく余地もあると思います。
  96. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だんだん核心に触れてきましたな。十七万というのは今初めて知ったって。これもまた大臣しっかりしてくださいよ。僕みたいな素人でも、監理委員会答申が出て、党の国鉄案をつくろうと思ったら、そのくらいの数字はちゃんと頭に入っている。十七万という人間ですよ。こんなたくさんいたのかって。あなたたちの政策でたくさん抱えたのじゃないですか、歴代の政府が。何も余剰人員なんという言葉を言わなくて、戦後帰ってきた人たちが国鉄を支えていったのです。あれだけの人間がおっても、国に大きな貢献をしたのですよ。多かったということは、あなた方の責任が問題になるのですから。それでもやっぱり民間並みに考えれば多いから減ってきたのでしょう、相対的に言えば。そういうことは言えるでしょう。うちの案も民営的手法を言っておるのですから。わかりますな。  さて、十七万の人間が減ってきた。そのことによって、今度の法律に基づいて、基本法でいいますと、まず定員の枠を決めて、枠を決めるのは十七条かな、そしてあとの中身をどういうふうに振り分けるかというのが二十三条一項二号、これは重要な問題ですな。法律論は、きょうは総論ですから後の委員皆さんに任せますが、いずれにいたしましても人が減った。そして今や物と人を運ぶ国鉄の本来の機能という意味では黒字になった。これを民間に売れば黒字になるのは当たり前じゃないですか。その部分だけ国鉄に機能させるのですから、黒字になるのは当たり前ですよ、しかも安く売るのですから。それは黒字になるのは当たり前。  さて、それなら、その人が減ったとして、今年の年度首二十七万数千ですか、この人間が多いという根拠は何に基づいていますか。
  97. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 根拠といえば、一つは監理委員会答申の挙げておる教字を申し上げなければなりますまい。しかし同時に、国鉄自身がそれよりも少ない人数で今後の業務が行えるという人数を設定しておることも事実であります。しかし、大量の職を離れていただかなければならない方たちを考えますと、その新たに生まれ変わります企業がそれぞれ関連分野に進出し得る余力等も見まして、一定数をなお抱えて新しい会社に発足をしてもらうという仕組みになっております。
  98. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今の僕の言わんとしているのは、まず何と比べて――もう先に言いましょうか、民間の生産性原理、生産性ですよ。回帰式方式というのをやりましたな。回帰式方式で定員のはじき方をやりましたな。それのデータとそのはじいたやり方、それを提出できますか。
  99. 林淳司

    ○林政府委員 適正要員数の計算につきましては、これは国鉄再建監理委員会が意見書を出す前に計算をしたものでございまして、私鉄並みという生産性を前提とすれば十八万三千人、これについては既に国鉄再建監理委員会の方から昨年の国会の方にその積算の根拠をお出ししてあるわけでございます。  それから、その後政府サイドでその意見書を受け取りまして、これについて種々検討いたしました。これはそういういわゆる回帰式方式ではございませんで、国鉄の方で現場の業務機関から一つ一つ全部積み上げ計算を行ったわけであります。その積み上げ計算を行った結果、ほぼ十八万三千人に近い数字が国鉄の方で出されておるということでございまして、大体その辺の数字が適正要員数であろうというふうに考えております。
  100. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、今の説明だと、かつて監理委員会でやった試算に基づく定数の試算の仕方と今のやつは変わったのですね。我が先輩の小柳先生が参議院でやったときに、あなた方の方式と同じ方法でやったら、うちは二十六万になったのですよ。おたくとは数字が違ったのです。だから、この算定の方式を明確にせいということをめぐって今変わったのと違いますか。
  101. 林淳司

    ○林政府委員 変わったということではございませんで、監理委員会のときにはそういういわゆる回帰式方式での計算をした、しかし政府は、それを受け取って以後、その回帰式方式での計算は一切しておりません。むしろその監理委員会の数字が本当にそれでいけるかどうかということについての現場の積み上げ計算をする必要があるということで、国鉄サイドの方で現場業務機関を一つ一つ全部積み上げを行いまして、その結果が現在のところ大体十八万六千程度というふうに考えられております。したがって、監理委員会の十八万三千、あるいは積み上げ計算の結果の十八万六千というのはほぼ同じ数字でございまして、大体その辺が適正な要員であろうというふうに判断をしておるところでございます。
  102. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、この間の理事会での我々の資料要求と今言ったことと違ってくるのです。今の議論ですと、監理委員会に出した定数の算定の方法とそのケース、具体的なエグザンプルのとり方はそれはそれ、それが客観性を持つかどうかを現場から積み上げてみて十九万五千になった、こういうことなんですから、だとするとそのデータは出せますね。今の積み上げたデータは出せますね。
  103. 林淳司

    ○林政府委員 監理委員会の回帰式方式というのは、線区を四百数十単位に分けまして、それによって積み上げ計算をしたのが監理委員会の計算方式であります。今回はそういう方式ではございませんで、これは現場の業務機関ですね、機関区とか駅とか、あるいは電車区とかございますけれども、業務機関ごとに積み上げをしておるわけであります。したがって、同じ業務機関でも電車の運転士は複数の線区を勤務しておりますので、これを線区に分けるということはやっておりません。したがいまして、業務機関ごとの積み上げ計算をしておるということで、その結果が監理委員会の方の数字と国鉄の方あるいは私どもの方で積み上げた数字とはほぼ同じ数字であるということでありまして、これはどちらかというと、監理委員会の数字を私どもとしては政府サイドで自主的に検証した結果であるということでございます。
  104. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうじゃないよ、今の説明だと。つまり、監理委員会のときにやった定数を前提にして、大いに尊重するのですから、政府は尊重した。さて、これが客観性があるかどうかやってみた。やってみたけれども、非常に国鉄の職場は複雑なんです。簡単にいかぬのです、おっしゃるように。  我が石川県で言うなら、金沢の保線と七尾の保線という場合、七尾の保線は一本の線路を担当しているんじゃないのです。幾つか担当するのですから、積み上げてみたって客観的にできないのですよ。そうすれば大枠の数字でしか計算できないのです。大枠の数字は皆さんからもらった資料にありますよ。これは結局監理委員会の数字に合わしただけじゃないですか。だから、要するに、独自な検討と言ってみたって、できもせぬことをしたと言ってごまかしただけですよ。我々はできると言って理事会で要求したのです。理事会もできぬと言っているのです。だから資料をしばらく検討してもらうと三塚さんも言っていますよ。できぬことになっているの。だからあなたの説明はうそなの。したがって、依然としてやはり監理委員会が出した数字と結果は同じなのです。そうでしょう。そうしますと、その監理委員会の数字をはじいた客観的基準というものについて、改めて再検討したものの内容も一定程度加えて、我々に要求の資料を出しなさい。いいですね。
  105. 林淳司

    ○林政府委員 監理委員会の方の回帰式を使った適正要員数の積算の資料というのは、先ほど申しましたように、昨年既に監理委員会の方から提出をされております。  それから、その後政府サイドの方で積み上げ計算を行ったのは、これは国鉄サイドで現場を一つ一つ積み上げておるわけであります。この十一月のダイヤ改正あるいは来年の四月に向けて現実にそれでもって業務を運営していくという積み上げの数字でございます。ただ、これについては業務機関ごとに計算をしておりますので、線区別には計算できないわけでありますけれども、これを若干ブレークダウンをして線区別に当てはめ計算を、これは全部ではございませんが、モデル的にやってみたい、こういうふうに考えております。
  106. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私は、国鉄の現場の職場はよくわからぬですからね。大まかな常識で、世の中の人が考える市民的常識でしか語れません。だから、これは専門家に再度議論してもらいますが、その資料を出すのに――今出てないのよ。我々のいただいたのに基づいてうちがやったら、数字が違っちゃった。うちは二十六万九千と出ちゃった。おたくでやったのは十九万五千になった。だから、その回帰式なる方式というものは、大変中身をお互いに検討しないと認識の共通性にならない。だからこそ改めてあなた方の結論である十九万五千体制に関する定数の客観的基準をまず出しなさい、こう言っているのです。出すのですか、出さないのですか、もう一遍聞きます。
  107. 林淳司

    ○林政府委員 適正要員数の積算根拠につきましては、たびたび申し上げて恐縮でございますけれども、監理委員会は監理委員会のやり方でやった。これはマクロ計算でございますが、これについては昨年既に資料が提出されておる。それから、私ども政府サイドの方といたしましては、国鉄においてその積み上げ計算をやっておりまして、これは業務機関別、会社別に要員数は既に資料として提出をいたしております。やり方が違うということで、それぞれ根拠となる積算の数字、それはお出しをしてあるということでございます。
  108. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 僕は、専門家の同僚議員が、疑問点は今調査中と言っていますから、資料として提出は引っ込めましょう。  さて、そこでいきます。  さっきから説明しているように、経営改善計画に基づいて五十九年、六十年をとったら、物を運び、人を運ぶんだって、経費を引いたらプラス・マイナスしてプラスになった。この収支均衡という観点からすると、民間企業における人の定数というものは人件費率というもので出すのですね。昭和五十九年、六十年の人件費率は何ぼになっていますか。二つとり方がある。収入に対する一般人件費の率のとり方、これが一つもう一つは、経費の中で人件費がどれだけ占めているか。この二つの方法がある。私鉄でも二つやっている。  私鉄では、人件費というのは企業の中でどのぐらいだというふうに運輸大臣は考えているの。
  109. 林淳司

    ○林政府委員 お答え申し上げます。  昭和五十九年度の数字でございますが、大手私鉄十四社の営業収入に占めます人件費の割合、これは四〇・六%でございます。
  110. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それは、今言ったのは何年。五十九年、そうですね。大体そんなものかな。大枠で申しましょう、国民にわかりやすいように。細かな数字を言ったってしようがない。四〇%なんです。国鉄はどうなっていますか。一般営業損益という、さっき物を運んだり人を運んだりして黒字が出たという観点から見た人件費率はどのぐらいになっていると思いますか。いや、もういい、時間がもったいないから僕が言う。三二、三%ぐらいになります。四〇%割っています。五十九年までは別よ。ちょっと待ってください。もう時間がないから結論だけ言いますが、大体民鉄並みに既になっています。  そうしますと、物を運んだり人を運んでいる国鉄の本来の業務という観点からすると、今の人は民間企業並みの人数で事を処理してもうかっているというふうに言わざるを得ない。これは承認せざるを得ないでしょう。どうですか。
  111. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 どうも大変雄弁にお話をされますと、あるいはそうかなと皆さんも間違われるかもしれません。しかし、現実の赤字の高が証明しておるとおり、公社として成り立たない状況にございます。
  112. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、運輸省。僕のところに民間の、私鉄のデータがあるのですが、改めてきちんとした公式のデータを出してください。二つのとり方があるのですよ。営業費に対する人件費、一般営業収入に対する人件費、この二つのとり方で昭和六十年、今までにもう決算をやっておるのですから、その決算に基づいた客観的なデータをつくる。これはつくれますな。すぐ出してください。
  113. 林淳司

    ○林政府委員 私鉄の方につきましてはちょっとデータが、恐らく現段階では作成不可能だと思いますので、その比較の意味での六十年度、これについては難しいと思います。
  114. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 あるのです。僕が教えるわけにもいきませんから、勉強して、そこらじゅうにありますから、しっかりそのデータと比較した表をつくってください、我々が持っているのに。  そこでお聞きしましょう。民間と比較してみても、経常外収支の問題は別ですよ、一般経常損益という観点から見たら、既に今の人員では、世の中の民間の経営という観点からすると、人件費率というのは何も多過ぎやしないのです、私のデータではもっと低いのですから。  さて、そういうことですから、政府側の決めた十九万五千体制というものと、収支均衡という世の中のしゃばで通っている商法上の企業は人件費というものがどのぐらいかということと、どっちを我々は選択肢として選ぶべきであるか、要員については。そうすれば当然収支均衡を前提としてその企業の持っている人数というものをはじき出す。同時に、国鉄という特殊な公共的な企業ですから、それにまつわるいろいろな作業現場に合わせてプラスしたりマイナスしたりいろいろあるでしょう。専門的なことはわからぬ。しかし、マクロに見た限りは今の人員を減らす意味はない、こう私は言わざるを得ないと思うのです。その意味でも十九万五千体制というのは、世の中で、何か国鉄というのは、ダイヤ改正をやるのにまだ人を減らそうなんて、そんなに多いのかいなとみんな思っているでしょうから、国民の前に明らかにしておきたいと思ったのです。人件費はそういう割合ですね。  そこで、この人件費があったのはさっき言った合理化の結果で、これはさっき省きました、十七万と言いましたけれども、五年間に約十七万、こういう事態になって今日に来ているということだけを確認した上で、もう一つ問題点があります。  今の人間を前提にして国鉄は黒字だということになるとすれば、いわば国鉄の収支というようなものや一般を考えるときに、仮に急速な人件費の減少が今まであったとして、その勢いを私は認めて言っておるんじゃないが、こんなのはなだらかにしていく問題ですから。最近、その人減らしのために――残念ですが、資料がどこかにあるのだけれども、時間がないから省きましょう。  さて、こういうふうに問題を整理してみますと、我々は、今後の国鉄問題の財政上の改革という問題は、もはや昭和五十六年に出した経営改善計画という観点からは事が処理できたわけでありますから、その目的の六十年に達したわけですから、この段階で、今の国鉄の本当に大変な赤字だと言われる背景の問題をもう一遍詰めなければなりません。これが営業外収支をめぐる問題点です。  午前中、もうあと二十分しかありませんから、ちょっと何か一つ……。  その前に、今国鉄で非常にいろいろな努力が行われておりまして、営業活動をやるために、一生懸命になって営業努力をやる、新しいものをつくって商品にする、いろいろな努力をなさっております。  ここに一つ写真があります。これを見ますと、EF五八六一、東京のお召しと書いたプレートの写真であります。これはお召し列車です。天皇陛下しか乗らないのです。このお召し列車につけるプレートというのは商品じゃありませんね。どうですか、総理
  115. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今のお召し列車のプレートでございますが、廃車になったその車両にかかわるものと現に使っておるものというふうに分けますと、廃車になって処分したものは、これはもう廃品でございますから売却可能対象だと思います。
  116. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 謹んでの話ですから、不穏当であってもならぬと思いますだけに……(「たまにはいいことも言うな」と呼ぶ者あり)我が党は護憲の党ですから、象徴天皇というのを支持している立場ですから、天皇というものの国民的な位置を承認しているだけに――こういうお召し列車のプレートは、人活センターで今つくらせているのです。つくらせているという証拠は一つだけじゃない。私は幾つかわかりません。それがどう処分されているのか。商品になったりしたら大変なことですよ。謹んで言わなければいけませんが、皇室を商品化するなんてことはあってはいけません。その危険性があるだけに、総理調査した上できちんと対処できますね。
  117. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 いろいろな意味で、経営努力の一環といたしまして努力をいたしておるわけでございますが、今おっしゃられました点につきまして、私どもちょっと今お答えいたしかねる実態がございますので、よく調べさせていただきたいと思います。
  118. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 人活センターで物をつくる、技能を磨くといっても、お召し列車のプレートをつくるようなことは、これは命ぜられた一つか二つの話です。幾つつくっているか、私知りません。しかし、一つでないことだけははっきりしている。皇室をよもや商品化するようなことがあってはならぬ、私はそう思う。それだけに、これは総理の責任において、これの実態について報告を願いたい。どうですか。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 商品化など当然すべきものではないので、そういうことは断じてないと私は確信しておりますし、そのように実行いたさせます。
  120. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大事なことですから、これ以上は申しませんが、断じてないという信用を確認するわけにいきませんから、調査をした上できちんとした対処をしていただきたい、このことは総理にきつく申し上げておきたいと思います。  さて、国鉄総裁、東京運転職場の管理者有志が出した文書が私のところまで届いています。怪文書だと言われるかもしれぬですが、僕のところに来ているのです。十二時まで十分ほどあるから、読み上げながらこの資料の意味を言いましょう。  九月の八日に出たものです。私のところに届きました。「現在の国鉄の現場におきましては、考えようによっては、このような暴力事件」、このごろいろいろなややこしい暴力事件が起きることを心配しているのですが、それ以上に「私共現場の管理者は、恐怖政治のような重圧のもとで、自分の良心と将来の生活の安定とどちらを選ぶべきか悩んでおります。」そしてその後に「我々現場管理者が職員に日々接し、公正に判断し局へ上申したものが、」つまり現場の管理者が上の方に上げたものが、「公正に判断し局へ上申したものが、最近差し戻しになる場合が次第に多くなり、職員管理とは何か考え込んでしまう毎日です。例えば、職員管理調書で前から管理者に反抗的で技量も不十分な職員がおり、評価を五で上申したところ、局から「この男は三にしておけ」と指示がおりました。」彼はある活動家でありました。「八月末になり局から国労組織を切り崩せとの具体的指示がありました。」国鉄改革を推進する国鉄幹部の姿勢や考え方が間違っていたことは私も認め、新たな課題があることはわかるが、「国民負担を含む大きな代償を払って行われる改革が台無しとなり将来に大きな禍根を残すことを大変心配しています。」現在の国鉄改革は、国鉄当局幹部と一部の人間によって全体が壟断されてしまうのではないかと思われる点があります。「現在の国鉄改革が真実のあるべき姿と如何にかけ離れて曲げられているかについて、公平な立場で見て頂き」我々管理者が公正に対応、実行できる職場に戻していただきたいという願いです。  そして、今の人活センターのことが書いてあるのです。「七月はじめに人材活用センターを作るよう局から指示がありましたが、」七月初めですよ。「その内容は「人材活用センターは実質的な選別であるから国労組合員で組合役員や職員管理調書の評価の悪いものから類に入れること」というものでした。」最初から選別です。「七月中旬になり局から①電車運転士→機関士②機関士→電車運転士の転換養成を行う。」という新たな課題の指示がありました等々です。  これ以上時間がありませんから述べませんが、そして最後に、「現在の国鉄職員局の人事労務政策は、我々のように現場で生の生態を熟知している者にとって、正義も愛社精神も何もない権謀術数でしかありません。」「いまや現場の管理者は部下を国労から何人脱退させたかが勤務評定となり、それをしない人は、「意識改革ができていない」と批判されています。」「こんないわば組合管理の恐怖政治のもとで心ならずも違法行為を強いられており、日々苦悩しているのが大多数の管理者の現実です。」「最近の当局の労務政策を見ていますと常識を逸脱しており、長年国鉄を支えてきた」国鉄マン、こうは書いてありませんけれども、「真面目な職員の心を切りきざむばかりで」「新しい怨念を生み出すことは必至です。」という文書です。途中幾つか飛ばしました。  これは管理者の文書ですよ。こういうのを総裁御存じですか。
  121. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 現場管理者一同というような形で今お読みいただきました文書を私見たことがございます。  ただ、その方々がどういう方々であるかということは全然書いてありませんし、その中身につきまして私よく見ましたが、少なくとも現場の諸君と話をしておる感じにおきましては、そうした感じを持っている人は一人もいないというふうに私は思います。むしろ逆に、今のやり方についてもっと頑張れというようなそうした意味での書面も私は受けておるわけでございまして、いろいろな意見が現場にあることはあるでしょうけれども、大勢といたしまして現場管理者は今改革方向に向かって一生懸命やっているというふうに私は確信を持っております。
  122. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 北陸で、金沢管理局で私は現地調査をやりました。私が入りましたら組織攻撃はとまりました。それ以前には相当なことをやっていました。それで私は管理者と話し合って、こういういい職場が仲間割れをして力を合わせるようなことがなくなるというのは国民のためじゃない、だから――皆さんは知らぬ存ぜぬと言うでしょう。やりましたなんて言えるはずはないですな。だからそういうふうにおっしゃる。よくわかる。だけれども、こういうことをやって職場に――その私の言う職場は非常にいい職場で、仲のいい職場ですから、圧倒的に組織された職場です、伝統的な職場です。その職場の仲間に、あっちこっち人を入れたりかえたりして組織を割ろうとするようなことが行われ、現に組織から分裂が起きてきております。  しかし、私は現地調査をいたしまして、現場には国鉄はこのごろ入れぬというのですから、これもおかしな話ですね。我々国会議員を国有鉄道の現場に入れないというのはどういうことですか、国政調査権というのは。それでも僕はいいと言ったのです、一歩妥協しましょうと。私が行くと言ったら門をつくっている。門をつくって何で入れないのですかね。僕はそんなのと、暴力とけんかしようとは思わない。だから、結構です。じゃ管理局へ行きましょう。管理局の幹部とやりましょう。それで現状をちゃんと説明しました、私の持っているデータに基づいて。やっているのかやっていないのか。それは知らぬ存ぜぬです。そのとおりです。  ところが、あなた方は今やっていることを、せめて国会審議が始まる――私は責任者なんですから、党の政策責任者だったのですから、私が国会で説明するまではやりなさぬなよ、具体的に例を挙げますぞと、おどしをかけたわけではないが、僕は紳士ですから、そうして話をした結果、とまったのです。現にあるということです。だから、総裁や上の方の幹部の人たちが下で何を行っているかわからぬというところがあるでしょう。だけれども、ここに書かれている文書というのは、現実にあると私は確信しています。それだけに、お互いに確信の違いなんですから、これは論争になりません。だけれども、こういう資料が出回っている。出回っているかどうか知りませんが、私のところに届いたのですから。封書で来ました、公に。人づてに来たのじゃないのです。マル秘で、ぴんと書留にしたのが私のところに届きました。何だろうかなと思って見たらこれでした。だから、それだけに、こういうものが現実にあることを含めて、今の職場について総裁自身が、ないと信じるという言葉だけではなくて、もう一度こういう事実がないかどうかを調査した上で我々に報告すべきだと思いますが、どうですか。
  123. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 私、じかに現地に行ったこともございますし、また現地の責任者は実態をよくつかんでおります。そうしたことから先ほどお答え申し上げましたような、今管理者層が一生懸命やっているという実態を申し上げた次第でございます。
  124. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 あと三分ぐらいですか、午後に入る段取りだけしておきましょう。  午後の議論のために、午前中の問題を整理して、結論だけを言っておきましょう。考えておいてもらった方がいいから結論だけ言っておきますが、午前中は、昭和五十六年から国鉄が決めた改革方針に対して努力した結果、その目標は達したというデータが六十年の監査報告の中に出ている。今の国鉄の大問題は、全体で見て国鉄の抱えているいわば収支問題、これは仕分けをすれば営業外収支にかかわる問題こそが国鉄改革のポイントである。だから、うちの党の案は、全国ネットワークでも、片一方の国鉄の持っているその成果を生かしつつ、民間化することによって、借金は同じように別枠で処理するという方式に基づいて株式会社の法案を出したのです。  総理、本会議で我が党案についての感想をおっしゃったことを今もう一度確認してよろしいですか。
  125. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はそのように感じております。あのとき申し上げましたのは、やはり全国一元化組織で今までのようにやる、人員の整理あるいはそのほかの問題についても、余りにもまだ自助努力が足りなくて国におっかぶさり過ぎる、国に負担をかけ過ぎる、だから親方日の丸、赤字たれ流しという体制は直らぬでしょう、そういうことを申し上げたのであります。
  126. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう一つ言いましたよ。親方日の丸案だと言いましたね、我が党案は。言いましたね。
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 親方日の丸、赤字たれ流し、そういうものは直らぬでしょう、そう申し上げた次第です。
  128. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 午後から議論しますが親方日の丸、赤字たれ流しというのは、今まで歴代政府がやってきた対応の仕方だ。そっちこそが親方日の丸だ。この点について、我々にも責任がある、先輩にも責任がある、国会にも責任があるが、その意味でもう一度午後から改めてその論争もしたいと思います。  以上です。
  129. 細田吉藏

    細田委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  130. 細田吉藏

    細田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。嶋崎譲君。
  131. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 六十年度の国鉄の決算報告があって、その後に総理は総裁談話というのを発表されておられます。その総裁談話は、「このまま推移すれば借入金の返済ばかりか、日々の列車運行を初めとする事業の運営にまで重大な支障を来しかねない。」全体の中の一番中心部分です。「このまま推移すれば借入金の返済ばかりか、」これが一つですね。「日々の列車運行を初めとする事業の運営にまで重大な支障を来しかねない。」こういう談話を発表されておられますが、ここで言っている「このまま推移すれば」というのは、午前の私の質疑を頭に置いてみて、どういう意味でおっしゃられたんですか。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしか六十年度においては一兆八千億円ばかりだと記憶しておりますが、国民の税金や国のお金を国鉄に入れて、国鉄をストップさせないように努力してきておる。それで、そういう状況が続いていることはもう許されない。たしか、一日に計算すると、一日たつと六十八億円でしたか赤字が出ている、そういうような状況。さらに年金会計を見ますと、たしか私がそのころ聞いた話では、厚生年金の場合は四人が一人をしょっている。国家公務員の共済の場合は二人が一人をしょっている。国鉄の場合は二人が三人をしょっている。こういう数字で、国鉄の年金会計というのはパンク寸前ぐらいになってきておる。そういうような状況はもう放置できない。これではもう国鉄のOBの皆さんの年金も払えなくなる、そういう意味のことを考えて言ったのであります。
  133. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 「このまま推移すれば」というのは、したがって、私が午前中御質疑を申し上げました一般営業損益と言われる、つまり実質的に基幹産業に携わっている仕事の収支だけではなくて、それ以外の営業外収支を含めて全体として見ると、年金、それから今までの長期債務ですね、こういうものを含めて見るとえらいことになるという趣旨の理解でよろしいですね。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 午前中、嶋崎さんの営業に関する御見解を承りましたが、私は国鉄の場合は若干違うんじゃないかと思うのです。というのは、民鉄、私鉄に比べて国鉄は長距離優等列車というのを出しておる。東京から九州へかけてとか東北にかけてとか、あるいは特急なんかも随分出しておる。つまり非常に資本費が多い。かなり大がかりの投資をしておるわけです。そういうような人件費以外の施設やその他に相当大がかりの投資もしていますから、人件費の比率というのは東京近郊とか大阪近郊を動かしている私鉄に比べればやはり少なくなっていく。東京とか大阪の近郊の私鉄の場合には、安全維持とかいろんな面で多少資本投資は多いでしょうけれども国鉄みたいに全国またにかけてあれだけ大がかりな投資をしているという場合になれば、当然人件費の比率は少なくなっている、そういうことも考えなければいかぬと思います。
  135. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ちょっと趣旨は違っている回答ですが、逆に言えば、全国ネットワークを維持する国鉄の機能が大事だということを逆に総理はおっしゃっているのであって、私の主張と一致している面があると思いますが、いずれにいたしましても、営業外収益という観点から今日の国鉄の現状というものについて、午後は問題点も多いですから、時間を少しはしょって、スピードを上げたいと思います。  そこで、今日の国鉄は、午前中のような経営分析をやってみますと、一つの側面は、交通政策を推進していく基盤が一方に確立しつつある。他方では、しかし膨大な投資、それから特定人件費、公共性を維持するための地方交通対策、ローカル線対策、そういうものを含めて大変な長期債務問題を抱えていることは事実だと思います。だから、我が党案におきましても、これをどうするかを重要視いたしまして、今までの長期債務の中で、政府の責任においてできたものは、政府というのは国民でありますからどうするか。国鉄自身の投資その他で必要なものでやったものは、それは国鉄が負担する。私のところは国鉄ですから、しかし新会社にしますから、そこが負担するというふうに仕分けをして長期債務の返済計画というものを立てるべきだ、こういう判断を持っております。ですから、親方日の丸じゃないのです。  片一方は、民営的手法を講じて、今の国鉄のように収益を上げるために最大の努力をしなければならぬ。片一方では、こっちは清算事業団と言っていますが、我々も特殊法人を設けますけれども、そこで財政再建のための方針をどうするかというふうに仕分けして、全体の改革をしようというのが我が党案でありますから。  そこで、長期債務の発生原因という点についてお尋ねをいたします。  国鉄の長期債務は、先ほど申しました六十年度の監査報告書によると、一般勘定で十八兆二千四百九億円、特別勘定で五兆三千二百一億円、合計二十三兆五千六百十億円。監理委員会はこれを受けまして、昭和六十二年首の長期債務を二十五・四兆円、こういたしております。しかし、監理委員会答申でこうした膨大な長期債務の累増の原因については何も分析しておりません。これは行政委員会の現状報告という客観的報告ですから。その原因は分析しないで、その債務処理を論じ、国民負担を求めるという結論を出しました。国民に大負担を求める以上は、その長期債務がなぜ起きたのか、その責任を監理委員会政府国民の前に明らかにする義務がある、こう私は思います。  それで、今日の長期債務の第一の原因は、もう長々時間をとれませんが、第一は、非採算、採算を度外視して、それを前提として行った設備投資、これについてはもう数字や何か申し上げません、時間がありませんから。二番目は、事業の運営資金、社会的な要請から来る学割とか通学の定期とか通勤の方々のパスとか、こういういわば社会的な要請に基づいて、法定割引を超えて国鉄の経営責任において行ってきたわけですが、これは国鉄の経営責任を超えたものです、政策的性格のものです。事業運営資金の不足。地方交通線で言いますと、昭和四十六年から五十八年までの間の国鉄の損益の合計は十一兆一千八百四十六億円。地方交通線にかかわる損失はその約三〇%、三兆三千二百十七億円となっております。これらは国の公共投資、とりわけ道路の投資、それから鉄道の投資等々、要するに、国鉄を走らせているが、一方で道路がよくなり、トラックが走る、バスや自動車を利用する。そういう意味で、競争的な条件で公共交通の中に割り込んできているという構造からくることは御承知のとおりであります。一口に言って、事業運営資金の不足のためにいろいろな政策的な対応をしてきた。それから年金の負担、先ほど橋本大臣申されましたとおり、これもまた大変なものであります。  国鉄の監査報告は、昭和五十年代ずっといろいろな提言も行ってきておりますが、五十八年、いよいよ五十九年、六十年を前提にして五十九年に一遍長期の計画を手直しをいたします。そして六十年に黒字になるための手直しをいたしますが、この監査報告の提言で五十八年をとってみますと――これは三塚運輸大臣の著書にも言っています。それからまた、その他の方々も多く発言をされておりますが、これを監査報告で要約して申し上げますと、国鉄の長期債務とその利子負担が経営再建の重要課題であるとした上で、この問題の解決について、その大部分が国鉄の企業採算を超える構造的問題であって、国鉄自身の努力のみでは到底解決しがたいものであると五十八年の段階で言っています。しかし、本来の業務では努力しますよ。六十年までには黒にします。しかし、今日までの国鉄の企業体全体を超える構造的なこの長期債務問題というのは、もはや国鉄の手に負えない。そういう意味で政策的な対応をすべきであるということをたびたび述べてきたし、ここには三塚さんの著書もありますが、三塚さんもこれと同趣旨のことを著書で申されております。これまでなされてきた助成費等では問題の解決になり得ないで、事態はますます深刻の度合いを加えていますよという警告も同時にしております。これは国鉄の監査委員会側の状況に対する認識です。  これに対して、監理委員会はこの現状をどう見ておるか。監理委員会報告は、「国鉄の経営が悪化した最大の原因は、公社という自主性の欠如した制度の下で全国一元の巨大組織として運営されている現行経営形態そのものに内在するという認識に到達した。」密接な関係はありますよ。関係はある。しかし、公社形態という形態それ自体は、日本は残念ながら戦後公社形態を採用して先進諸国のような社会化された公社形態を採用することができなかった。我が国の古い戦前からの官僚の体質、我が国の歴史的伝統がヨーロッパでモデルとした新しい意味の公社をやることができなかった、そういうことはあります。しかし、公社といえども、公社らしく運営ができればこれにならなかったかもしれませんが、公社であったことが原因だ、こう監理委員会は言っているのです。監査委員会の報告は、もはや国鉄の手に負えない政策的な問題だからそれを超えて早く対処してほしいと言う。これは公社だからできないんだというと、国鉄改革をちょっとやりさえすると何とかなるような話になってしまうわけです。二つの認識に私は大変違いがあるというふうに読んでいます。私自身の読み方かもしれません。  こういうふうに見ますと、私が国鉄の監査委員会報告で午前中にあのためわざわざ時間をかけたのは、六十年には黒にするだけの努力をしてきたというその立場から国鉄のあり方というものを監査してみると、構造的な問題は政治的に対処すべきである、政治家の判断において対処しなければだめだという問題を指摘したという意味では私は正当だと思います。したがって、国鉄が膨大な長期債務を抱えた原因について政府はどう見ているか、まず総理の見解を聞きたいと思います。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄の、先ほど午前中嶋崎さんがお示しになった五十七年―六十年にかけての監査報告、それは再建監理委員会皆さんあるいは臨調の皆さんがよく目を通されて、それでこういう状態になってくると、これはもう抜本改革しなければだめだ、そういうふうにして、今までの発想転換の一つのモメンタムにそれがなったのではないかと私は想像いたします。そして今のような抜本改革とは何ぞやということを考えてみた場合に、これは経営について民間的手法、民間的能率主義を入れなければだめだ、もう一つは、労使関係において両方が責任体制を持って、おのおのが団体交渉の責任者としてしっかりした返事ができるような体制にしないとはずみがつかぬ、励みがつかぬ、そういう二つの点に強く着目して民営分割、こういう形に踏み切ったのではないかと私は考えております。
  137. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 共通の認識の部分もありますが、ここで抽象的な論争をしてもしようがありませんから、まず事実の確認からいきましょう。  今日の債務額の確定。六十二年度首における長期債務は、監理委員会答申によると二十五・四兆円と推定をしております。にもかかわらず、同答申では処理すべき国鉄の長期債務として新たに三十七・三兆円を算定しております。ちょっと数がふえたりしていますね、修正していますから。その差は十一・九兆円。監理委員会では「可能な限りの手段を尽くし、そのうえでもなお残る長期債務等は何らかの形で国民に負担を求めざるを得ない」と言っていますね。しかし、最終的に求めざるを得ない国民の負担をできるだけ軽減しなければならぬと述べております。六十二年度首における長期債務の二十五・四兆円プラス十一・九、計三十七・三兆円、これは確定できますね。
  138. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 監理委員会報告としてそのとおりであります。
  139. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 政府もそれを確認したのでしょう。政府もそれを確認した上でいろいろな案をつくられたのでしょう。
  140. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 六十一年度末における残高は二十五兆八百億円と見込んでおります。
  141. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大枠はこれでいきましょう。国鉄の事業経営に伴ってこれまでに生じた長期債務はあくまでも現在のところ二十三兆五千六百十億円、六十二年度首において二十五・四兆円である、これは確認できますね。
  142. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 その意味においては結構であります。
  143. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、答申に言う負担の軽減と、本来の長期債務に債務等を上乗せすることになっているわけですね。
  144. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御承知のとおりであります。
  145. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、大蔵大臣、十二兆円近い水増し債務の四割を占めるのが年金負担であります。国鉄年金が改善されない限り国鉄再建はあり得ないと言われるほど重要な課題であります。にもかかわらず基本的な解決がなされないばかりか、逆に年金財政の悪化を促進せしめるような要員の削減を行い、国鉄そのものの首を絞める結果を招いている。人を減らしていくのですから積立金その他にみんな影響してきます。このため、先ほどあったように、今日、一人の職員で一・五ないし二人の年金者を支えている状況であります。近年における大量の退職者により、やめていきましたから追加せねばいけませんいわゆる追加費用は、六十年度四千五百八十一億円にも上っております。今後数十年は同程度の額が発生することになるが、監理委員会答申では、いみじくも述べているように、この追加費用は他の公的共済年金制度と同じように事業主負担としてとらえておる。しかし、新しい事業体が負担すれば経営が大きく圧迫されるとして、旧国鉄、つまり国民の負担にゆだねている。累積していく分は国民にゆだねている。そもそも新事業体でさえ困難性があるのに、現行国鉄自身に負担させていること自体問題と言わざるを得ない。それはもうおわかりのとおりです。年金財政悪化の原因が戦争中、戦後における国策に起因するという点から見ても、年金制度全般の中で解決すべき課題ではないかと私は思います。  そこで、今国会において国鉄改革審議の場を積極的にとらえながら、国鉄共済年金の救済に関する政府の統一見解の具体化を図ることが最大の課題であろうと考えるが、いかがですか。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましては、昨年官房長官の統一見解を申し上げたところでございますが、すなわち、昭和六十四年度までにつきましては国鉄の自助努力を待ち、また、国の負担を含めまして諸般の検討を加えて支払いに支障のないようにすることを目途といたしまして、六十一年度中に結論を得る、こういうことを申し上げております。  その後、関係大臣、すなわち内閣官房長官、運輸大臣、年金担当大臣、私、四人で既に会議をいたしておりまして、統一見解のように今年度中に具体的な結論を出したいと存じております。  なお、その後、昭和六十四年度後、六十五年からの問題は、実はさらに相当大きな金額が問題になってまいると思います。これにつきましては、六十一年度中に六十四年度までの結論を出しまして、その後鋭意政府で検討いたしたいと考えております。
  147. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 わかったようなわからないようなところがありますが、統一見解に基づいて、六十四年までの財源確保については閣議了解というのは御承知のとおりです。国鉄の自己努力、国の負担、諸般の検討により措置すべきであるが、特に国鉄の自己努力による財源確保については、国鉄共済年金が歴年に比べて四割弱と言われる実態になってきていることにかんがみて、長期にわたるスライドの停止や年金受給者への影響などを考慮して、掛金の引き上げやスライド停止の延長や給付の抑制など、個人負担方式は何としても回避しなければならぬと思います。  したがって、この年金の対応、財源確保に当たっては、資産処分や国の負担により財源を確保すべきであると思うが、どうですか。
  148. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 基本的にはそのとおりであります。
  149. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いずれにしても、六十四年度までの財源確保の問題は、今日まで関係する諸団体や共済年金の対策委員会など大変な御支援をいただいて政治的には解決したものでありますが、今後、統一見解に基づいて今年度に結論が出され、できるだけ早い時期に必要な立法措置が講ぜられることを期待しておりますが、いかがでしょう。
  150. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大蔵大臣からお答え申し上げましたような四閣僚の懇談会で検討をいたします。その検討の内容次第では、もしその立法事項がきちんと出てくるということであれば立法措置ということになると思いますし、立法措置を待たずして解決できる方法があればまたそういう解決方法にもなろうかと思います。いずれにしても四閣僚の御検討、これをまず精力的に進めていただきたいと事務的にも思っておる次第でございます。
  151. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大蔵大臣、今の対応でよろしいですね、四閣僚中心に精力的に対応することです。
  152. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、統一見解で述べておりますように、国の負担というものはどうしても私どもとして最小限避けられないという結論にあるいはなるのではないかと考えておりまして、それが法律を要するか要しないかは別でございますが、六十一年度中にきちんと結論を出すようにいたします。
  153. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国鉄で働いている人にとっての最大の課題は、単年度で三千億円、そして三千億円を超える不足金の発生が予測される六十五年度以降の財源確保というのが大問題であります。政府国鉄改革法は、国鉄共済について当面現行制度は維持する。同時に、長期債務総額三十七・三兆円の一三%に当たる四・九兆円を年金関係の債務として計上している。御承知のとおりですね。しかし、年金制度の安定なくして国鉄再建はあり得ないというふうに先ほど申し上げたように考えるわけですので、国鉄共済年金を危機に陥れた原因は戦中戦後における経済復興政策や国鉄再建による大幅要員削減等国策にあったことが明確でありますだけに、政府の責任において速やかに解決策を明示すべきであると思う。今までの回答でほぼその方向は出ていると確認はいたしますが、再度、確認できますね。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 六十五年度以降の問題につきましてはいろいろ不確定の要素がございますので、六十四年までの問題につきまして本年度中に結論を出しました後、さらに関係者でもって検討してまいりたいと思っています。
  155. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 こっちは私の財政経済にも関係がありますから。四・九兆円は、毎年の追加費用の見込み額を算定したものに十分になっているとは言えないと思いますが、しかし、この金額は予定利率を七・五%としております。大蔵大臣、所管ですが、最近の金利の低下というような傾向の中で、実勢の金利を現実に今はどのぐらいと見、これはしばらくはどのような傾向をとるであろうか。これは具体的に言いませんが、大蔵大臣、その感想はいかがですか、金利の動向についての。
  156. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 監理委員会が四・九兆円を出しましたときのベースとしては七・五%という数字を使っているというふうに理解しております。その七・五という数字は何かといいますと、過去十年の国債の応募者利回りの平均であるというふうに承っております。
  157. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 過去の平均でしょう。これから先、我が国は内外の経済情勢などを考え、アメリカが何と言うか、それをどう受けとめるかという話は別としても、七・五%の金利はかなり高いと私は想定をいたします。仮にこれが五・五%になった場合には、相当な財源が浮いてくることになるわけです。したがって、今後の金利問題というのは年金だけではありませんけれども、全体にかかわる大問題でありますが、少しずつ下がっていくという判断をしてよろしいですか。
  158. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何とも申しかねる問題でございますけれども、ただいまの金利、日本銀行の公定歩合にいたしますと三・五でございますが、これは我が国では歴史上最も低い金利でございます。また、将来さらにそれが非常に金利水準として割り込むということは、経験法則的には私は簡単には言えないのではないかというふうに思いますけれども、いずれにしても、これは将来の予測に関することでございます。
  159. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは予算委員会で、またいずれ財政経済のところでやりましょう。  要するに、この長期債務というものを考えるときに、大きな投資に伴ってきている負担や今のような年金負担、そしてもう一つは鉄建公団、本四公団建設に係る資本の資本費負担ですね、これまた大変な負担でありました。さらには、今回出ております新法の中にある三島基金、北海道、四国、九州の三島基金問題、これもまた新たな負担問題であります。そこへもってきて余剰人員対策と言われるもの、我々は余剰と言いませんが、それも新たなものになってきております。こうして長期債務を確定してみた上で、我々はこれらの長期債務に対してどのように今後処理していくかという点を考えなければならぬと思います。長期債務が二十五・四兆円、水増しされて三十七・三兆円、これは一人当たり約十四万円、四人家族では五十六万円ぐらいの負担になります。  さて、国鉄は確かに膨大な、こういう設備投資の過剰、社会政策的な観点からの年金、地交線、今度の新たな三島会計などを含めまして、新たな国民負担を頭に置いてきておる、こういう意味で、全体的に見ると大変な危機ではないか、赤字だ、赤字だという議論がここにあったわけです。こういう状態の中で今の国鉄の現状、これは簡単に破産とも言えないでしょうね。破産と言うておる人もいますよ。そうかといって民間企業の言う会社更生法を適用するのにも当てはまらない。いずれにしても、債務の処理方法については多くの問題が存在しているけれども、破産手続か更生手続かというようなことについても民間企業と違うという意味で、常識的にはなかなかいかぬ。しかし、会社更生法の第一条では「債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、」と書かれています。だから、今の国鉄の問題、関連する人間がお互いに力を合わせるという意味です。つまり、会社更生法は、ストレートに適用されるといっても、破産会社の再建、更生に取り組む場合には、債務の減免、言いかえれば債権者への債権の一部の棚上げなど、いろいろなことが民間の場合だったらやり得るわけです。  こうして見ると、長期債務にかかわる利率、さっきの問題ですね、利率を見ると、今まで例えば設備投資にかけたものを見ますと、鉄道債券十四兆六千六百十億三千万円でありますが、その利率は、下では四%、上から九%も数字がずらっと書いてある。しかも八%以上が三割。今まで借りてきた設備投資の借金、借入金のそれが、八%以上が三割を占め、七・五%以上が七割近くになっています。  昭和三十九年から五十九年までの国鉄が払った利子は何と七兆六千六百億。国鉄の長期債務二十五・四兆円と見て、年に一%率が下がったら二千五百億円節約になります。したがって、今のこの低利――非常に高い金利の時代に九%もするような金を借りてきて累積したものを今からどうするかというときに、たまっているんだから、みんなこれを、どう振り分けるにせよ、最終的に国民に転嫁しなければならない。ということであるとすると、民間とは違うけれども、政策的に起きてきた借金の重要な側面ですから、一%下がっただけで二千五百億も浮いてくるということになれば、百四国会で棚橋政府委員答弁しておりますけれども、この金利問題に対して早急に対処すべきだと思う。早急に実施すべきだと思うが、いかがですか。
  160. 林淳司

    ○林政府委員 今回の場合は公社を民営化するということでございまして、通常の会社の更生とは違います。そういうことでございまして、通常、会社の場合ですと、会社更生法あるいは破産法というものは、債権者が最大の利益を保全できるように、いわゆる債権保全という観点からの手続がなされるということでございます。したがいまして、金利カットあるいはその元本の棚上げということもあるわけでございますけれども、今回の場合は会社更生では全然ない、いわゆる債権を保全するということではございませんで、あくまで国鉄という事業を今後に向かって健全な事業体にしていくということが目的でございます。そういう目的がまず会社更生法と全然違うということであります。  それから、国鉄の場合、公的機関でございますから、公的機関が従来その信用でもって調達をしてきた、そういう資金につきまして金利の減免というふうなことをやりますと、これは公的機関に対する金融というものが非常に大幅に混乱をするということに相なります。  そういうことから、やはり今回の場合、そういう金利についての減免という措置はとり得ないというふうに判断をしておるわけでございます。
  161. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まあしかし、会社更生法第一条で言っているような民間会社並みにやれぬということはわかり切っていますよ。だけれども、今までの設備投資のやり方の中で国が、例えば新幹線一つとってもそうですが、新幹線整備法という法律には国の責任においてその財政措置をせいと書いてやっておるが、実際、空洞化してきたんだ、やらなかった。借り入れてやってきたんです。その結果、こういうことになって、しかも高い利息のものを借りてきて、今日雪だるま式の累積ができたんです。だとすれば、これこそ政府の責任において、今後国民に転嫁さしていく場合に、なだらかな負担ということを考えたら、当然金利対策というのは私はやるべきだと思います。これは政府の責任において処理すべきことだ、できることだと思います。この問題、借金の処理について。  そういう意味で、今の政府委員の説明では納得しませんが、問題点だ、今後の各委員の議論の中の一つの問題点としてこれをまず指摘しておきましょう。  二番目に、今度は国鉄が赤字、赤字、でかい借金を抱えている。その借金がくるくるだるま式になってふえている。早うどこかで切断しなければならぬ。これはわかり切ったことだ。国鉄というのは、普通の民間企業で言うときりきり舞いしていても、借金して汽車が走っていればこれは破産じゃないんです、民間でも。借金していたって、仕事が続いている間は破産でも何でもないです。したがって、今の国鉄は、けさも申し上げましたように、物も人も運んでいるのですから、そこでは完全に黒なんですから。経常外収支のところで、今までの政府の設備投資、国の政治的政策、そういうもののために累積債務がたまって大変な赤字になっている。  じゃ、国鉄というのは、民間に比べてみて、ぶっ倒れるか倒れぬかというときに基本になるのは何か。その会社の持っておる資産です。国鉄は今何ぼ資産がありますか、橋本運輸大臣。
  162. 前田喜代治

    ○前田説明員 六十年度末で国鉄の資産は十一兆九千億でございます。
  163. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 監査報告の中に土地のものもみんな入っていますから、今の答弁が――二十兆七千三十八億三千四百万。土地の資産は五千九百六十一億ですよ。総資産でいきますと二十兆です。この総資産の算定は、もちろんいろいろなものがある。現実にある建物だって評価は違いますし、変化するから、土地だけとりましょう。これはどういう算定に基づいて出ておる数字ですか。ちょっとわかりにくいですか。土地です。この六十一年の監査報告です。これの一般勘定比較貸借対照表、その土地、六十年、五千九百六十一億、これはどういう算定の基礎に基づいた資産ですか。
  164. 前田喜代治

    ○前田説明員 財務諸表に表示いたしております土地は、それぞれ取得年度別に取得した原価で表示いたしております。それから、財務諸表以外に建設仮勘定にも若干の土地がございますので、全部足しますと今の御指摘よりも多少ふえております。
  165. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、今現在、国鉄の資産で登記してないものはありませんか。
  166. 前田喜代治

    ○前田説明員 御指摘のようにまだ登記は済んでないのが事実ございます。
  167. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 未登記は何ぼありますか。
  168. 前田喜代治

    ○前田説明員 ちょっと計数を今調べますので、お待ちください。
  169. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私のところでは六百ヘクタール。そして、こういうのを調べて登記するとどれくらいでできるか、調べたことがありますか。
  170. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 六十一年九月末におきます国鉄保有土地の未登記でございますが、未登記の件数と面積について申し上げます。  件数は約二万筆、面積にいたしまして、推定でございますが、三百三十ヘクタールぐらいであるというふうに考えております。なお、これらの処理は、年度内に完成をすべく今鋭意進めているところでございます。
  171. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 仁杉総裁の時分に国鉄が内部で、四万カ所の未登記土地がある場合に、それを登記したり時価評価をやるのに大体三年かかると当時仁杉さんは言っていたのです。だから、今の国鉄用地のいわば未登記のものを登記するというのは相当な時間がかかるのです。三年どころじゃないです。恐らく七、八年くらいかかるのではないか。二十年くらいかかるかもしれません、わからぬけれども。  ということは、今我々は国会でこれを審議しようとしている。さあ国鉄が大変だ、分割民営だ、資産の処分を考えなければならぬというときに、国鉄の資産というものが確定できない。未登記もある。登記しようとしたら来年の四月一日までにできやせぬ。何もかもせいと僕は言いません。しかし、法律を上げることも大切だが、今の国民が、国民の財産である国鉄というものの資産がどのくらいあって、それに対してはどうしたらいいかということについての大枠の目安くらい立たなければおかしいじゃないですか。そういう意味で、私はこの土地の問題について二、三聞いてみたいと思うのです。  私のところで調べたところでは、あるところを調べて二十カ所やって、そして三兆二千六百億くらいのところまでいきましたが、土地の値上がりがあるものですから、ある時点をとってみてもなかなか確定はできないものだということがわかった。難しいものだなということが私はわかりました。資料を検討するには相当時間がかかるというものです。そういう意味で、四月一日、四月一日と力むけれども、その資産問題で国民を代表して我々がお互いに議論する際に、そういう資産の一定の方向の大枠ぐらいは、我々が審議しているうちに一定程度出していただかなければならぬと思うのですね。何もかもということはないでしょう。それは言えぬけれども、幾つかの点についてお願い申し上げなければならぬ点が出てくるということを前段に申し上げておきたいと思います。  いずれにしても、まず大枠としてこの資産という問題がある。この資産という問題を今後どうするかについて大いに議論をしなければなりませんが、一定の資料提出の努力ありや、どうですか。
  172. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 たびたび申し上げておりますように、私どもできる限り資料は提出いたすつもりであります。ただ、資産と申しまして土地の問題になりますと、個別の価格をどの程度に想定するかということについては、予断を与えないためにもやはり私どもとしては公表すべきではないと考えております。ただ、午前中の御質疑の中で、一定の前提を置いた仮の計算というものはいたしてみる、総額についていたしてみましょうということは申し上げておりますので、その程度以上のところまではお引き受けはできません。
  173. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 既に我が党の田邊書記長が――まずここで一つ前提を置きますが、我が党の党の案は国鉄財産を売れという案ではありません。今ある国鉄の資産や債務その他は新会社が一応承継する。承継した上でどう振り分けてどう返済するかという場合に、必要な限り不用地を売ってお金をつくるという方法を講ずべきであるというふうに道は全部開いてあります、うちの案は。だからうちの案は、国民の財産なら財産というものを、今借金ができたから、売ることによって一定程度カバーしようやという安易な考え方をすべきではない。むしろ有効利用を基本にしながら、しかしこの財政再建のためには売るものは売らざるを得まいな、こういう判断です。しかし、政府の場合は、分割民営して、新会社にも十一・四か、それに新幹線の評価分も二兆加えて十四・幾ら割り振りますぞ、残りは清算事業団に持っていきますぞという中で、土地売却について、今度はちょっと一千億ほどふえましたけれども五・九、そして残り国民負担、こういう割り振りをしているのですから、おたくのは分割民営でやるから、どうしても土地を売るということを前提にしなければこの問題は解決できないのです。うちの案とそこが違うのです。ですから、売るのならば有効な売り方でなければならぬし、地価の高騰を招いてはならぬし、大変な配慮が要る問題になってくるわけです。  そうした場合に、政府が出した最初の百五十カ所、今度はまた新たに随分ふえている膨大なものをいただきました。きのうもらって、まだとてもあちこち調べる暇はありません。しかし、既に出た百五十カ所分、第一次分だ、この百五十カ所分について、某新聞調査した限りでは約十四兆円だと言っています。新聞に出ています。この資料、データをいただけませんかとお願いしてみたけれども、やれぬと言った。だからしよがないです。十四兆円と公に出ています。こういういわば数が出ているときに、いや、政府の方は価格は出しませんと言ったって、だれも信用しないよ。  そこでお聞きしますが、百何十カ所の中の幾つかの点でわかっているものとわかってないものとの例だけ申し上げます。  これは私の方は場所もみんな確定しています。大阪の梅田北、これは皆さんからいただいた資料でいうと八十九番。この大阪の梅田北は、私たちが入手した資料によると、国鉄の調べで一平米当たり六十一万四千円、調によれば一平米四百万円です。これが大阪の梅田北の場合。それからもう一つ、名古屋の笹島というところ、これは皆さんからいただいたのでは七十八番。ここが国鉄の資料では平米当たり二十二万。ところが私たちの調査では、今日は九十万です。これはみんな公にされている。  さて、一つだけ聞きましょう。大変注目の的であります東京近辺の中の一カ所。これだけわかっておるのですから、大阪と名古屋のものだってわかっておるのですから、東京の一カ所、汐留というのはどのぐらいのものと御判断か、具体的数字を検討して出してください。
  174. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今いろいろな数字をお述べになりましたが、運輸省としてそういう数字を公表したことはないと存じます。そして、私ども、その市価がどうであるのか、また予定される価格がどうであるのかについて申し上げるべきではないと思います。  ただ、この機会に、先ほどからのお話に反論ではございませんけれども、私なりに感じたことを多少申し上げさせていただきたいと思います。社会党案、確かに拝見をいたしました。社会党案の方がすぐれているという前提で御論議をいただいておる部分がございましたけれども、私ども、実は全国一社制というものは、七つの支社を設けられるという形にはなっておりますが、その辺についての管理運営等には問題があると考えております。そういう仕組みでありますから、その新しい一つの会社に全部土地を持っていかれるということになっていることも、そのとおり私も承知をしております。ただ、政府提出し、現に御審議を願いたいとお願いをいたしておりますのは、旅客会社として六つ、それを中心としての分割をした案でありまして、その分割されたそれぞれの企業がより健全なスタートを切れるようにしますために、経営基盤の弱い三島会社には債務を負わせることなく、また本州の三会社におきましてもその資産に見合う債務を負わせるだけにとどめ、残りは清算事業団にまとめたわけでありまして、当然その売却すべき資産も清算事業団に帰属をさせるというやり方は、私は間違っておらないと思います。
  175. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 しかし、現実に皆さんがお出しになったいわば箇所は、国鉄当局であれ、政府じゃないにしたって、現実に調べて公になっているのですよ、大体こういうものよということが。そして片一方は簿価でしか出していないというときに、物すごい乖離があって、さて、これは、いわばこういうようなものを計算してみるとどのぐらい国民の負担が楽になるのかということの判断が、それがあれば出てくるわけです。そうでしょう。ところが、十六・八兆円なら十六・八兆円を国民の負担だと結論に持ってくる。これは変わるでしょう。監理委員会から一千億少なくともふえたんですから。一千億の根拠も聞きたいけれども。変わるかもしれないが、一定の国民の負担ということをお願いする定量の判断をしているわけですから、それをカバーするためのいわば資産の売却や譲渡について、国民の前に一定の判断を示すというのは当たり前のことじゃないですか。そのための努力をする資料をお出しくださいと言っているのです。
  176. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、資産として売却の対象にいたします物件につきましては、既にできる限りのものを御提出申し上げております。ただ、その価格をと言われますならば、これは私どもが付加価値を高めて売ろうとするものもありましょうし、また、まさに午前中の御質疑にもありましたが、例えば道路等のために地方自治体が適正な時価で買いたいと言われるものもありましょうし、さまざまなケースがあろうと思います。そして私どもは、国民の疑惑を受けないためにも公開競争入札という手法でこれらの資産を売却しようといたしております。予定の価格をお示しすることができないと申し上げているのはそういう理由でありまして、これは御理解をいただきたいものだと思います。
  177. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 しかし、先ほど申し上げていますように、大阪と名古屋の一つの典型を挙げてみた。それで東京の汐留を一つの例として僕は挙げてみた。そうすると一定の判断ができるわけです。何もかもと言っておるんじゃないです。配慮して言ってあげているんですよ。だから、大阪の梅田北や名古屋の笹島で問題になっているような箇所に相当する部分について一カ所だけ、現実の公示価格その他でどの程度の傾向を持っておるかということぐらいは調べて明らかにすることができるでしょう。
  178. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、公示価格とおっしゃいましたが、公示価格を知らせろと言われるのですか。(嶋崎委員「いやいや、実勢価格との乖離」と呼ぶ)ですから、実勢価格は、先ほどから私どもは、予断を与えることになりお示しができない、その理由を御理解いただきたいと申し上げております。
  179. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それなら公示価格を出しますか。
  180. 林淳司

    ○林政府委員 午前中に大臣から御答弁申し上げましたように、総トータルにつきましては一定の仮定の条件を置いて、これは金額をお出ししたいと思います。と申しますのは、ただいま御論議いただいております国鉄事業の再建というもので国民負担がどうなるかということの関連から考えれば、やはり総額がわかればそれで十分御判断いただけるのじゃないか、こういうことでございました。個々の価格については、公示価格あるいは実勢価格というものについては、これは個別の土地についてお出しするのは差し控えたい、このように考えております。
  181. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だって、百五十カ所、最初に第一次分で出したのです。それの上からとってみて……(発言する者あり)
  182. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  183. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 重立った地域等について、もう既に皆さんが箇所づけしていますから、十四兆という一定の数字が国民の前に明らかになっているのです。全部言っているのじゃなくて、明らかになっているのです。しかし、それについて政府側は、将来国民の負担もあるけれども、これだけ国民の前に明らかになっておるものについて何らの判断も示されぬ、そんなばかなことがありますか。
  184. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほどから繰り返し申し上げておりますように、運輸省としてそうした数字は提示をいたしておりません。国民の前に十四兆という数字が明らかになっているというお話でありますが、監理委員会から私どもが示されました数字、それにできるだけ上積みをして国民負担を減らそうと今考えておるわけであります。その監理委員会の試算は五兆八千億でありました。先ほどからいろいろな数字をお話しになりますけれども、私どもは、これから国会の御審議を得て法律案が通過成立をいたしました後に、所定の手続を経て公開競争入札に付して売却をしようとしておるものでありまして、そうした場合の予見を与えるような価格は、今までも提示をいたしておらないのであります。ですから、十四兆という数字があるとおっしゃいますけれども、私どもとしてその数字に責任を負える状態にはございません。
  185. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それでは、皆さんが配分しようとしているものについての判断は国民にやらぬまま負担だけを国会で決めるというのですか。こんなむちゃなことはないですよ。国民の前には一定程度の負担の根拠というものが出てこなければ、それは全然おかしいですよ。簿価の総額で出てきているもので、実際にはもっと先で入ってくるかもしれぬという話になれば、国民負担はそれだけ減るのだから。今の百何十カ所でいったら――我が党案は、全部売れと言っているのじゃないのですよ。あなた方の案で売るというのですから。それだったらもう国民負担はなくなるかもしれません。そうしたら負担の議論というのは変わってしまうのです。基本的な負担の議論が変わってしまうのです。それなら出さなければいかぬですよ。我々、国民の前でこれだけ議論して、みんなテレビに出ているのです。我々は、国民に負担をかけないようにする手だてはどうなんだろうか、最低の負担にしていくにはどうしたらいいか、それを今議論しているのでしょう。今膨大な資産と言われる国鉄資産なんです。べらぼうに大きいのですよ。こんな帳簿価格で言われるような金じゃないのです。やったことがないからわからぬけれども、物すごい金だと言われている。そういうものがあるのに、倒産みたいなことが言われ、赤字、赤字と言われ、分割民営だと言い、その長期債務の負担については国民にお願いしなければならぬと言っているのでしょう。バックデータを出しなさいよ。
  186. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、先ほどから申し上げておりますように、その三十七兆を超える負債の中で、長期債務の中でできる限り不動産の売却、資産売却によって、再建監理委員会では十六兆を超える国民負担と言われるものを少しでも私どもは圧縮したいと考えておるわけであります。そして今、嶋崎委員お話しのとおり、国民がこのテレビを見ておられます。その中でいわば公開競争入札という手法をとり、少しでも高い値段でこれを売却することによって国民の負担を減らすべく努力をしたいと申し上げておるわけであります。その場合に、入札価格の予断を与えるような数字を申し上げなければならないということは、私は、申し上げることの方が不見識ではなかろうかと考えております。
  187. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これはだめだ。だめですよ。今国会でこの法律を上げなければいかぬというのでしょう。この国会で、この法律は、私たちは少数派ですから、採決すれば負けるのです。これは決まるのです。今我々が審議をしておるときに、少なくとも政府の出されたる案について、我々自身が国民にどういう負担がかかるかについてただす義務がある。国民に対してたださなければならない。そのときに、法律は上げますわ、先でみんなが検討してみたら、負担があるかもしれぬ、ないかもしれぬという、そんなことは国会という場では許されぬですよ。私はそう思う、国民の財産ですから。それだけに、この資料については出せぬ、出せぬという話ではなくて、出すためにどう努力するかということを言わなければだめですよ。
  188. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、売却を予定いたしております三千三百三十ヘクタールにつきまして、総額の仮定計算はいたしてみますと申し上げました。しかし、例えば汐留という例示を挙げてその特定の地域の価格を求められましても、これは、私はやはりお答えをすることは控えたいと思います。それは、試算と言われましても、いわば一つの予見になります。国民に対して、逆に私は国民の資産に責任を持たなければならない立場としてこれをお示しすることはできません。(発言する者あり)
  189. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  190. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから、何もかもなんという話になっちゃならぬから、大阪と名古屋の個別的ケースを挙げたんだ。注目しているからです。東京で注目している一点について、どうでしょうか、それをやれば、それだけでもただしていけば一定の判断の基準になりますね、専門家に僕は聞いたんですから。何もかも出せと言わぬでも、あるところで一定の判断ができるのです。(「そういう場合は談合というのだよ」と呼ぶ者あり)何言っているのだ、調査権を発動したんだよ。だから個別に言ったのです。これだったら何も出さぬということですな。何も出さぬということになります、一カ所も出し切らぬというなら。
  191. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今お話しのとおり、確かにマスコミの毎日の報道を見ておりましても、東京の汐留の予想価格はいろいろと飛び交っております。そうした中で予見を与えるような数字を出すことは、国民の資産に責任を持たなければならない立場として私は控えさせていただきたいと申し上げております。しかし、売却予定地域全体の一定の仮定を置いた上での試算はやらせてみますということをけさほども答弁申し上げておるわけでありまして、個別の数字はお許しをいただきたい。
  192. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう少し僕の調査を言おう。北新宿アパート、北新宿三丁目付近。簿価では一千百万、今七百七十倍です。八十四億七千四百二十万。大久保寮は、簿価で言うと三百万、四百八倍、十二億二千四百六十万。高田馬場七号宿舎、簿価で坪二百万円、十二億二千四百十二万。一般に出ているのです。一般というか一定の中にはあるのです。これ以上やるなんてないですよ。場所に行って調べてごらんなさい。こういうデータが今や我々のところでも入るのです。それだけに……(「君のところで出した資料か」と呼ぶ者あり)そうじゃない。これは政府の出した箇所づけに基づいて特定のところをやったのですよ。こういうことが我々の手に入るときに、この情報社会の中で政府自身が……(「公式の場で言えないことじゃないか」と呼ぶ者あり)だから、僕は特定化しているのだよ。特定的な地域について出せぬはずはないでしょうと言っているのです。配慮しているのですよ、あなた方の立場を。それでもわからぬのですか。
  193. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 せっかくの御配慮でありましたら、もう一歩御配慮を進めていただいて、総額で御理解をいただきたい。(嶋崎委員「肝心なところがあかんな」と呼ぶ)
  194. 細田吉藏

    細田委員長 嶋崎君。――(「委員長、議事進行」と呼び、その他発言する者あり)橋本運輸大臣。
  195. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 午前中私は、地価公示の制度があるから、そのデータを使って監理委員会の行った数値を伸ばしてみるという方法は可能ではないかという御質問がありましたものに対して、これはあくまでも仮の計算という前提で試算をしてみますということを申し上げました。今御質問になりました内容、公示価格ということでありますならば、全国の公示価格の表をお届けいたします。
  196. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まあ、やや前進をしたということにしましょう。だけれども、私は……(発言する者あり)さあ次に入りますよ、時間も余りありませんから。  そこで、今の土地問題は、今後、公開入札の方法、それから公共企業体との関係の場合のいわば契約の仕方等々については幾つかの条件が要ると思うのです。つまり、価格騰貴にならない歯どめをどうするか。それから、例えば購入したものを販売を禁止するとか何年間か時間を置いてするとか、幾つかの歯どめがありますな。これはきちんと政令もしくは省令で生かさなければならぬ重要な項目です。僕はこれは法律事項だと思っているのです、基本だけは。基本だけは法律事項で、あとの運用は省令でいいと思うのです。このくらいに重要ですから、国有地という国鉄の土地を国民に開放していく際の歯どめについて、今後法律事項として起こす意思ありや。ないとしても政令、省令で明記すべきであると思うが、約束できますね。
  197. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、私どもとしては厳重にいたしたいと思います。殊に、昨日、随意契約で地方公共団体に譲渡をいたしましたものが他に転用されたというケースがマスコミでも報道されております。こうした事態を起こさないためには、今まで考えていた以上に厳しい制約を加えなければならぬとすら考えております。
  198. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 僕の言っているのは、具体的な対処として法律事項で処理するか、もしくは政省令事項で処理するか。ここは立法府なんですから、法律つくるところですから。その歯どめの基準だけははっきり答えてください。どっちかにするんでしょう。
  199. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 法律は、現在私どもが御審議をいただいている内容でまいりたいと考えております。(嶋崎委員法律には穴があるから」と呼ぶ)政省令においてきちんと対処したいと思います。
  200. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、今の問題はさらにいろいろな議論がありますが、問題は、そういう国有地を処分することによって得る利益というものを通じて累積債務の中のいわば一定の穴埋めにする、それが国民の負担にどう影響するか、ここが我々の今の重要なポイントですね。  さて、その国民の負担という場合に一番重要なのは、今度は皆さん法律にいきますと、分割民営するのですから、その清算はだれがやるのかというと清算事業団です。そうですね。来年度予算について、六十二年度予算との関連で、六十二年度の清算事業団の収支についてどのような判断を持っていますか。
  201. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 六十二年度の清算事業団の収支につきましては、今の見通しでは支出総額は二兆八千二百三十億円と見込まれております。その内訳は、清算事業団が承継する債務などに係る償還金及び利子として一兆五千八百八十三億円、雇用対策対象者の人件費、職業指導費等の雇用対策費三千七百二十九億円、追加費用等、年金等の負担金五千九百五十五億、売却用地に係ります付加価値を高めるため等々の基盤整備費四百九十六億円、また特定地方交通線の廃止の円滑な実施を図るために必要な特定地方交通線転換促進費として二百四十一億円、市町村納付金、管理費、予備費等千九百二十六億円であります。  一方、収入としては、新幹線保有機構からの収入を二千三百三十二億円見込んでおります。また、土地の売却収入を三千億円見込んでおります。市町村分担金受け入れ等の雑収入六百四十三億円を見込んでおります。また、国からの助成金として特定地方交通線交付金を二百四十一億円、計六千二百十六億円となりまして、収入と支出の差二兆二千十四億円につきましては、補助金、財政投融資あるいは民間借入金等をもって充てることといたしております。
  202. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今挙げた項目は本当は全部確認したいんだけれども、時間がありませんから確認しません。  そこで、六十二年度の清算事業団の支出項目、これを細かに全部出してください。いいですね。今幾つか挙がっていますが、項目を全部出してください。今度は収入の方、それの項目をずっと出してください。  そうすると、今ペンディングになっているのは大体二兆二千億になるんですね。そうですね。さあ二兆二千億。今各省全部概算要求をやっている最中。運輸省は概算要求を出し切らぬでもたもたしているということだけが情報で伝わっているが、運輸省の概算要求額は、この清算事業団に対する助成については幾らですか。
  203. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 もたもたしていると言われるのも困るのですが、確かに現在、具体的な助成の内容、あり方について未確定でありますので、未定要求をいたしております。今後の予算編成の過程において、財政事情等の各般の要素を総合的に勘案しながら、予算編成全体の中で最大限の努力をしたいと考えておるところであります。
  204. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大蔵省、今各省みんな概算をやっているのです。運輸省だけペンディングになっている部分がこの二兆二千億の中の問題の負担なんです、助成なんです。その助成について、運輸省の要求を大蔵省はチェックしているのですか。だから、よそはみんなやっているのに、いまだにペンディングになっているのです。大蔵大臣、見解はどうですか。
  205. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは六十二年の清算事業団のことでございますけれども、補助金につきましては今のところ未定要求になっておるわけでございます。それは、ただいまのお話のようにいろいろな要素がはっきりいたしませんものですから、もうしばらく様子を見ておりまして、その上で最終的にこの数字について決めようということで、今のところ未定にしておるわけでございます。
  206. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 財投は決まっているのですか。財投資金はお決まりでしょうか。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、たしか一兆五百億円でございますかそういうふうな収入を予定しておりまして、民間資金の方が未定でございます。
  208. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 財投は決まっている、大体一兆五百億です。二兆二千億のところ一兆五百億決まっているわけです。あと最低一兆数千億円要るわけです。その一兆数千億円を助成という形でやるとすれば、六十一年度予算で国が国鉄に助成した額と清算事業団に来年措置する額とではどっちが多いですか。
  209. 林淳司

    ○林政府委員 お答え申し上げます。  先ほど数字がございましたけれども一つ、財投につきましては一兆五百億で確定しているわけではございません。要求の段階で財投の額は補助金及び民間借入金等の額との関係で増加することがあるということで、一兆五百億プラスアルファという要求でございます。したがいまして、補助金の額と財投のプラスアルファと民間借入金の額、この三つが連動いたしまして、一兆三千億強の金額をこれまでに詰めていきたいということでございます。  補助金につきましては、これはシーリング等もございますので、従来の六十一年度の予算ベースから、現在のところは一応内々計上しておりますけれども、しかし、これについてはさらに今後、暮れの時点までに、今申し上げました補助金、財投のプラスアルファ、民間借入金、この三つを連動させてどのようにしていくかということを、大蔵省の方と十分相談をしたいというふうに考えております。
  210. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 肝心のことをまた答えていない。つまり、ことしの国鉄に対して行った一般会計その他の助成とプラスアルファ、民間借入金を入れた金がもし今までの単年度よりも多いということになったら、分割民営しても余計国民負担が多くなるということじゃないですか、簡単に言えば。一時的であれ、当初からですから。清算事業団には五年間の方針を決めることはできないのです。こんなことは予算的にあり得ない。分割民営して赤字の清算をするため新たな土地を今から売るというわけでしょう。土地の方は三千億しか見てないのですから。安い価格で見ていればそうだが、わずかなものがもっと高く入るかもしれぬ。そうでしょう。そうすれば、国の助成が少なくて済むことがあるじゃないですか。国民の負担というものを三千億という枠に決めて、さっきの土地問題に関係してくるのですよ。  皆さん、出さない、出さないと言う。金の値段はわからないと言う。来年度から発足する初めての清算事業団の当初予算で支出と収入を見たら、今までの国鉄の助成よりも多いじゃないか。これじゃ何のために分割するんですか。国民の負担はふえるじゃないですか。少なくとも当初予算では、それよりも少なくするためにどう努力するかというのでなければおかしいじゃないですか。それを大蔵省の方は、予算を組むのにペンディングにしておる。運輸省は出すのに怖がっている。どうか知らぬが、財政再建だから。それはそうでしょう。しかし、運輸省だけです、問題は。大法案を出しているこの国鉄分割民営法案の一番目玉である清算事業団の当初予算の収支がいまだに見通しが立たぬ。これまた国会審議できぬほどの問題ですよ。重大問題です。国民の負担をなくすために分割民営するんでしょう。私はわかりませんな。国民はわからぬと思いますよ。こういう問題をいよいよ今審議しようとしている最中に、いまだに六十二年度の清算事業団の支出と収入についてペンディングになっている部分の額というのは、わずか一兆数千億に見えても、事は重大なんです。私はそう思うのです。国鉄を黒字にしなければならぬ。財政再建に協力しなければならぬ。一切含めてみたって、今の国鉄改革はせなきゃならぬでしょう。これも理屈になってない、前提が全然できてないと言わざるを得ないのです。  僕は審議ストップしようとは思っていませんよ。だけれども、こういう問題があるということは、これからまた各委員の議論の中でもう一遍詰めてもらわにゃいけませんね。重大問題です。これは一つの論点なんです。しっかり聞いておきなさい。  さて、十六兆七千億円我々は負担するんですな、今のところ。監理委員会が言ったのを皆さん尊重しているんですから。そうすると、それを三十年月賦でいくと、一年間に一兆三千億円借金がかかる。これを当初予算に組むかどうかは別です。先で組んでもいい。平均したら一兆三千億円負担はかかるわけですよ。これは三十年間かかるのです。今ここに、そのほかに助成金の問題と民間借り入れが問題になるんです。そうでしょう。これは我々国民の側からいうと、分割民営しても国民の負担は減らぬ。ふえても、減らぬじゃないですかと現在の段階で言わざるを得ない。国鉄は赤字だ、長期債務で火の車、だから切った、別建てで方針を決めると言ったが、その方針は決まってない。今までより負担が多くなる。これじゃ国民は納得できませんね。これが一つです。  さあ時間がありません。次には、本当は分割をした場合の経営形態という観点を議論したかったのです。だけれども、これは時間がありませんから、もし後で時間が残れば、残った時間でやりましょう。  そこで今度は、最初に申し上げました国民一つの期待をしている整備新幹線問題についてお尋ねをいたします。  それで、整備新幹線問題の今までの閣議の扱い、それから政府がいろいろ諮問を求めた行革の委員会ですね、こういう一連のものと、その延長線上で来た今までの考え方と、中曽根内閣時代になってその方針は変わってきたと私は判断するが、いかがですか。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申をいただきまして、その臨調答申の中に、正確な表現は忘れましたが、しばらく見合わせる、そういう趣旨の答申がありましたので、それを尊重してそのような措置をとってきたところであります。
  212. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 監理委員会答申には何て書いてありますか。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 監理委員会答申に正確にどういう文章があったか知りませんが、その臨調答申を受けて、その政策は今も続いているということであります。
  214. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 何です、総理は監理委員会答申を読んでいないのかな。読みましょうか、時間がないから。簡単にいきまっせ。こう書いてありますよ。  「整備新幹線については、二十一世紀に向けての高速交通手段として地域住民の要望が極めて強いが、現在の計画によれば膨大な投資を必要とし、また新会社の経営に大きな影響を及ぼすことが予想される。したがってこの問題については、予想旅客需要と投資の均衡、在来線の収支に与える影響、財源問題、技術開発によるコスト低減の可能性等を考慮に入れて慎重に判断する必要があると考える。」こう書いてありますよ。総理答申を尊重されるのですね。ということで政府案はつくられたのでしょう。いかがですか。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大体そういうような趣旨がありますから、財源問題等検討委員会で検討する。党でいろいろ検討いたしましたときも、やはり財源問題とか、経費の問題とか、あるいはどういう主体が行うべきであるとか、在来線との関係をどうするとか、地元負担をどうするとか、そういうような問題がこれから究明さるべき問題で、その上で検討していく、そういうような趣旨の内容でもあったことを記憶しております。
  216. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 六十一年度予算には幾ら組みましたか。
  217. 林淳司

    ○林政府委員 総額で百十四億でございます。
  218. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 六十二年度予算には組むのですか、概算要求するのですか。
  219. 林淳司

    ○林政府委員 六十二年度予算では現在、整備新幹線については未定ということで概算要求の時点では対処しております。
  220. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 六十一年度つけて、来年度つけないということはないでしょう。  八月二十二日の自民党の合同会議では、今年十二月までに財源問題に結論を出し、六十二年度予算案に必要な経費を公共事業費としてつける、こう決めてあるんじゃありませんか、総裁。今度は総裁だ。
  221. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 そういう状況にありますので、未定要求をいたしております。
  222. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この法案が成立した後に、新幹線を建設する主体として、国鉄技術部門と鉄建公団とを統合した鉄道総合開発整備機構というものを早急に新設することになっていませんか。
  223. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 自由民主党の中でそういう御議論があることは私も承知をいたしております。政府としてはそういう結論を出しておりません。
  224. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それも御存じですね、そういうものをつくるという動きがあること。  九月三日の全国都道府県知事会議で、総理は「全国各地で強い要望がある。臨調答申などで計画は当分見合わせる閣議決定をしたが、希望の灯は消してはならないと考えている。財政、工事主体、国鉄改革の問題に検討を加えつつ、閣議決定を直してスタートする」と発言をしたと言われておりますが、そう確認してよろしいですか。
  225. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのときの発言は、希望の灯は消してはならない、そういうことを選挙でも演説した。自分もそう思っておる。ただし、今のような諸般の問題について検討を加え、その結論を得た上でこれは処理をする。前進する場合には、今までの閣議決定を変更して前進をする、そういうことになる、そういう趣旨であります。
  226. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは、まず行革の委員会があって、それを受けて命がけで行革の最後手段を講じているのが国鉄分割民営なんです。中曽根内閣基本なんです。その行革では整備新幹線ということについて慎重であれと言ってきて、そうだと一時閣議決定をしたことがある。ところが、その後、今度は答申が出て、もっと慎重に処理せいと言ったら、少しあいまいになった。そして今や自民党の内部では推進の方向に動いている。今年度予算がついた。来年度予算をまたつける。ということは、事実上整備新幹線が動き出す可能性が非常に強い。そのことを私はいい悪いは言わない、事実として。ところが、それと今度の国会に出された法律とは密接不可分なんです。わかっていますか、大臣。  今度出された施行法の中で、新幹線整備の法案についての一部改正案が出ています。一部改正案の改正のポイントは何ですか。大臣、言ってください。
  227. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 恐らく嶋崎委員がおっしゃりたいことは、今度の新幹線整備法の改正が、現行法に基づく計画決定の経緯等を踏まえながら、これから国鉄改革の実施に伴い措置をすることが必要となる事項について限ってこれを行うということにし、しかし、その中で、新幹線鉄道の営業主体及び建設主体は、それぞれ、運輸大臣があらかじめその同意を得て指名する法人とすること、あるいは運輸大臣は、整備計画の決定または変更について、あらかじめ営業主体及び建設主体の同意を得なければならないとすること、こうした部分に問題点を見出しておられての御質問ではなかろうかと思います。
  228. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今度のこの新幹線整備法の一部改正案は、今までとがらりと違う。がらりと違うんですよ。今までは新幹線をつくるときの建設の主体と営業の主体を分離したんです。建設の主体は国鉄並びに鉄建公団――いや、国並びに鉄建公団。しかし国はやらなかった。今まで新幹線に、法律ではちゃんと金を出せと言っているが、出さなかった。だから今借金がたまったんです。それはおくとして、国並びに鉄建公団ですよ。営業主体は国鉄。分離していたのです。今度これを一本にするのです。おっしゃるように一本にするのです。一本にして、今度は民営化するんですから、分割するんですから、東日本株式会社という民営会社が運輸大臣と話し合えば、営業主体でもあり、事業主体でもなることができるようになるのです。わかっていますね。そうでしょう。  こういう新たな改正案は何を意味しているか。民営化するのですから、民間に国は干渉してはなりません、本来ならね。そうでしょう。ところが、民間企業と国が新たな直通関係になる。今までは国鉄を介したのです。今までは国鉄を介していますから、公共企業体を媒介にしていますから、国が処理するときには国鉄という媒介を経てやってきたものが、今度は民間に直結するのです。事業主体と営業主体が一本になるんです。そういう新しい改正案だという意味で、新幹線整備法のこの法案基本は非常に重大な問題を幾つかはらんでいます。  つまり、事業のイニシアチブを国が一方でとる形をとりながら、民間企業がイニシアチブをとれるという仕組みになるのです。利権が絡まなきゃいいですがね。いずれにしましても、今までは歯どめをかけていたものを歯どめを外したんですから、新幹線は、内閣政府がやる気になりさえすれば、民間企業と運輸大臣と話し合えばすうっと動き出す仕組みになったのです。これは総理の腹次第ですぐ動くのです、運輸大臣の腹次第ですぐ動くのです。それだけ予算措置をして対応すると早くなるのです。  ところが、この新幹線建設についての財源はどうするか。大蔵大臣、運輸省、方針がありますか。
  229. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今疑惑云々というお話が出ましたけれども、これは大変心外であります。むしろ私どもは今、予算の計上、工事実施計画認可の申請など既に各種の手続行為が進行している新幹線問題、そして国鉄改革をいたすにしましても、これらを有効に断続することなく進める必要性があるということを考え、また、今回の改革に際して、国鉄が行ってきた鉄道事業は貨物会社等が承継するものを除きましては旅客会社が引き継ぐこととしていることから、整備新幹線の経過措置として、それぞれ関係旅客会社が営業主体の指名を受けたものとみなし、また、国鉄が建設の指示を受けたものについては関係旅客会社が、鉄建公団が建設の指示を受けたものについては同公団が、それぞれ建設主体の指名を受けたものというみなし規定を、みなすという考え方をとったわけでありまして、既にさまざまな手続が進行しており、大変地方で御要望の強い整備新幹線というものを、財源の見通しがつき、運営主体等々さまざまな問題点についての結論が出れば、それなりの対応ができるようにしたわけであります。ですから、私どもは、まさに財源問題等につきまして整備新幹線財源問題等検討委員会で検討を行っておるところでありまして、今のような御批判を受けないように十分に注意をいたすつもりであります。
  230. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私は午前中の議論で言ったでしょう。東北新幹線、上越新幹線について、全国新幹線ネットワークとして機能している、建設は意味があったと言っておるのです。財源措置については政府は別扱いしてきたのです。国鉄だって別扱いせざるを得なかったのです。そういう経緯から見て、整備新幹線についてもどういう財源方式でいくかということは、国民の負担になるかならぬかという問題です。公共事業方式なら丸々じゃないですか。民間資金との関連でどういう組み合わせをするのか。整備新幹線という構想をつくるつくり方についても、今のようにつくりやすくしたけれども、財源について国民に何にも示さないまま、ただ要望があるからつくればいい、つくればいいといってつくってみたら、その過程で、かつてよりもいいものができればいいが――できないことはないと思う、日本はこれだけの技術を持っているんだから。しかし、今までみたいに歯どめはかかりません。ちゃんと法律はみんな変わっちゃったんです。規制を緩和したんですから。条項を全部挙げている時間はありません。逐条審議してもいいですよ。僕はこれなら少し専門家ですから逐条審議してもいいけれども、やりません。規制緩和しているのですよ。  その規制緩和の中には幾つかの盲点があります。今度はかつてのように検査は厳しくありませんよ。それは自主的な民間との関係がでてきますから。今までみたいな官僚統制はよくないですよ。うちの法案でも、届け出制にしたり、いろいろ企業の自由というものを保障している法案をつくったのですから、おたくと考え方でその点は共通しているところがあるでしょう。しかし、それにしても今度出てきているものは、この法律は、僕が調べてみたところ、施行法だけの問題ではないのです。鉄道事業法というのは大問題なんですよ。これも後の委員に質問してもらいます、僕はきょうは時間がないから。  鉄道事業法というのは、本来ならば四本あるものを全部一本にしなければならぬのに二つ残っている。営業法は別にしてある。二つ別にして二本だけ一本にしている。そしてこの鉄道事業法というのは、今までの規制緩和、民活という名のもとに、かつてのような運賃形態じゃないのです、これからは。国民負担なんです。総合原価主義に変わるのですから。民間企業ですから、もうからなければ運賃を決めないということになったのですから、今までの国鉄とは違う。だから、今度の民間の新会社を見てごらんなさい。けさの新聞にありますように、みんな運賃を上げることになっているでしょう。これもちょっと後で時間があれば聞きますがね。いずれにしても、今度の整備新幹線に絡まる法律というのは、私の見た限りでは施行法の中の、新幹線整備法だけの単独の問題ではない。鉄道事業法における基本的な性格と密接不可分であるということを申し上げておく。ほかの委員にこれから追及してもらいますが、これが今度の新法全体の中に貫いている特徴なんです。そういう意味で、この新しい新幹線整備法の一部改正というのは、財源も決まっていない。新幹線という世界最高の日本の技術は持っていても、その安全性が問題になるもの、それについて今までよりも規制がずっと緩和される。そしてこの負担その他について明らかになっていない。申し上げたとおりです。こういう法律がいいのか悪いのか、大問題だと僕は思うのです。  いずれにしましても、この法案は、一口に言うと、今までよりも国鉄というものを媒介にしないだけに歯どめがかけにくい、ストレートになるのですから。そして民間活力という名のもとに企業の自由というものを前提とした国との関係ができますから、検査、設計その他について今までよりも相当綿密な歯どめをどうかけるかということは、これまた政令、省令問題なんです。よっぽどちゃんとしておいてくれぬといけませんぞ。  いずれにいたしましても、こういう新幹線整備法の新たなこの改正案というものについて、私は基本的性格だけを申し上げて、逐条審議をしませんけれども、今の段階では国民が期待しているから、整備新幹線というものにこたえる方向をどうするかは考えなければならぬが、その前に財源の方式というものを決めない限りはこの新幹線を動かしてはならぬ、こう私は思います。どう思いますか、総理、大蔵、橋本運輸大臣、それぞれ。
  231. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これも財源問題等検討委員会において検討した上で、いよいよやるかやらぬか、どういうふうにするか決めていくということになっているのですから、財源の検討を経ずして行われるということはあり得ない。
  232. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 暮れまでですよ。暮れということは、十二月の大蔵予算が上がって政府予算ができるまでの間にもう新幹線の予算がついて、それには一定程度施行の方向が位置づけられるのですよ。先の話じゃありません。今国会中にでかい法律を改正するのですから、この法律審議するに当たって、財源の問題について政府に確たる態度を示してもらわなければ国民に申しわけないと僕は思う、そのために法律審議をしているのですから。そういう意味で、財源について早急な結論を閣議で決めるか、党で決めたものをそっちへ持っていくかは別としても、国民の前に明らかにするということなしに、軽々しくこの法に基づいて新幹線整備にかかっては問題点が多いということを申し上げたいのですが、総理、運輸大臣、それぞれ意見を述べてください。
  233. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほどから何遍も申し上げておりますように、その財源等につきましては検討委員会の結論を得て判断をすることでありますから、検討委員会においての作業を精力的にやれという御指摘に対しては私ども全力を挙げます。  先ほどからの御質問で、恐らく大蔵大臣、来年度の予算編成時には相当程度運輸省の枠をふやしていただけるだろう、応援にお礼を申し上げたい気持ちでいっぱいであります。
  234. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大蔵大臣。
  235. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 財源問題等検討委員会では、建設主体、運営主体、あるいは御承知のように在来線の問題でありますとか、それに肝心の財源、この検討を進めておるわけでございます。幹事会は何度も開かれておりますが、そういう問題が一つ。それから、先ほどしばしばお話がございますように、これは新体制が発足をしてのことでございますので、そういうことも考えながら検討を続けてまいります。
  236. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この新幹線は、最初計画したときは、当初予算の見通しは八千八百億だったのです。それが結果的には三倍強の二兆八千億円ぐらいになったのです。今から整備にかかる整備新幹線というのは総額約二十兆円ぐらいと言われているのです。二十兆円ですよ。八千億から始まって、二兆八千億円に発展して、今や二十兆円になろうとしている。そういう計画の予算を動かすということになれば大変な国民負担です。公共事業費という形なら、その負担は国民ですよ。国鉄は赤字だから分割民営して、そして国鉄に対して債務その他についての対応を今からしようというので法律を出したのでしょう。今の法律を改正してまで規制緩和その他の手続について一定の方針を出したのでしょう。そして財源が、一番問題の国民負担の財源の方針が決まらぬままこういうものを早々と決めて、後で開いてみたら国鉄は赤字だ。まるで国鉄が悪かった。今度は政府のやり方が悪かったということに当然なるのだけれども、それは結局は国民負担になるのです。そういう意味で慎重に扱わなければならぬ課題だと私は思います。それをつけ加えておきたいと思います。  さて、ちょっとお聞きしますけれども、今度分割民営をやりまして新しい事業体の会社が、資料によりますと向こう五年間について東日本、西日本その他運賃を上げることになっておりますね。あの運賃の上げ方、これは我々がいただいたあの資料の表で、東日本が幾ら幾らというのが出ておりましたな。あれは、資料は我々のところに届いておりましたかしら。
  237. 林淳司

    ○林政府委員 新会社の今後の運賃値上げの予測値でございますけれども、これについては既に資料として御提出を申し上げております。  現在のところ、私ども推定しております数字では、六十二年度以降六十六年度までの人キロ当たりの運賃、料金の支払い額、これは運賃ではございません、人キロ、一人当たりの運賃支払い額でございますが、年平均で北海道、四国が大体六%程度、東日本と東海会社が三%程度、西日本会社が四%程度、九州会社が大体五%程度の年率のアップ率になろうかというふうに考えております。  それから、ちょっと補足させていただきますが、先ほど新幹線の問題で、現在の法制では国と鉄建公団が建設主体というふうに先生の方から御指摘がございましたけれども、現在の法制によりますと、国鉄と鉄建公団が建設主体である。そして、国は国鉄に対して指示を出してこれに建設をさせるという形になっております。それで、鉄建公団あるいは国鉄が建設したものにつきましては国鉄が義務的に経営をしていくということになっております。  今度の法制では、国鉄改革に伴って最小限の全国新幹線整備法の改正をしておるわけでありまして、鉄建公団は変わりませんが、国鉄はこれから新会社に変わりますので、したがって新会社のその地位を引き継いでいく。ただし、基本的には、原則としてはやはり新会社の自主性というものを認めなければなりませんので、新会社に、運輸大臣がその会社を指名する場合にはその同意が必要ということで、その自主性を尊重するという点だけが変わったわけであります。  ただ、整備新幹線については従来からの経緯がございますので、これは従来どおり新しい会社が義務的に整備新幹線の建設主体、運営主体になっていくというふうにしておるわけであります。これは従来の実態をそのまま継続させたわけであります。したがいまして、当然、新会社の健全経営ということを考えますと財源問題等検討委員会できちっとした財源対策が講ぜられる、それが前提でございまして、新会社の経営を不当に圧迫することはないというふうに考えて、今回の最小限の新幹線整備法の改正をしたということでございます。
  238. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 おっしゃるように、新会社が負担しないから国民が逆に負担しなければならないという問題だから、財源をどうするかというのが議論になっているので、今の意見でよくわかりました。  ちょっとお尋ねしますけれども、人キロか何か知りませんが、国民にわかりやすいことで言えば、運賃が上がる計画になっておりますね。その算定基礎は、例えば電気料金なんかですと、収益率のアップに従って、これ以上収益が上がらない場合にその運賃的なものを加算するという、いわばかつての公共企業体、それから電気料金その他と同じような仕組みの算定ですか。
  239. 林淳司

    ○林政府委員 ただいま申し上げました運賃の年率アップ率、これは、大体六十六年の時点で本州と北海道、四国、九州では一割程度の格差がつくわけでございますけれども、どういう計算根拠でそういう数字を出したかと申し上げますと、これは各六つの分割会社それぞれ平均的な輸送密度がございます。一方、私鉄の方にもいろいろな輸送密度の会社がある。したがって、その私鉄の輸送密度別のランクをつくりまして、そのランクに当てはまるような各会社について、昭和六十六年の時点で、あるランクにある私鉄の運賃水準におおむね近づくように、その時点ですりつくように、そういう計算をしたわけでございます。その結果が先ほど申し上げたような数字になるということでございます。ただ、過去の私鉄等の運賃値上げ率というものを見ますと、大体二年ローテーションでやっておりますが、一回につき一二、三%の改定をしておるということでありますので、年率にすると私鉄も大体六%程度、そうすると、先ほど申し上げました一番高い北海道とか四国というところでも、大体従来の私鉄の平均的な運賃値上げ率とほぼ同じであるというふうに考えております。  それから、計算方法で今御指摘がございましたが、原価計算をしてやっておるわけでございますけれども、ただいま申し上げましたようにそういう方法ですりつけております。恐らく先生の御質問はレートベース方式というものをどういうふうにとっているかということだと思いますけれども、結果的にレートベース方式に当てはめました場合に、運賃の改定率に上限をつけて実際の値上げ率を落としておるというところもございます。これは、今度の新会社では東海あるいは東日本というところは、レートベース方式を適用いたしますと運賃改定率は若干低くなる、試算についてはそういう試算で計算をしております。
  240. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 何かたくさん説明されて、専門家じゃないとさっぱりわからぬけれども、単純化すると、収益率のアップが一定の高さに到達しない際に運ぶ運賃について検討するという仕組みですか、一口で言えば。そこがわからないのです。というのは、それは同時に新幹線の経営見通しというものと密接不可分だからです。また同時にそれは、三島会計は一定部分を国民が負担するのですから、やはり国民負担問題として、公共的な助成なのか、別の資本の論理による動きで決まるのかという問題になってくるというふうに思うんだ。正確かどうかわかりません。だから、収益率と運賃が上がるということの関係は制度的にどうなっているのですかと聞いているのです。そういう関係ですか。
  241. 林淳司

    ○林政府委員 ただいま申し上げましたように、今回の試算では収益率を使ってはおりません。先ほど言いましたようにある一定の私鉄のランク別に従いまして、私鉄の運賃水準に六十六年ぐらいにすりつくように、大体同じようなレベルになるような形で計算をしておる。それは当然今後五年程度の各会社の収支というものを見た上で、そのリンク関係を見た上で、大体その辺のところですりつけていけば十分採算が成り立つ、こういう考え方でやっておるわけであります。ただ、そういう方法で計算しましたが、結果的に、収益率すなわちレートベース方式を当てはめてみますと、東海と東日本会社は収益率計算をしますと上限に達しますので、最初に申し上げた計算方法より低い改定率になっていくということであります。
  242. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 北海道には競争相手の私鉄はありませんよ。そうしますと、地方の方は、私鉄と国鉄関係国鉄の方がいいのです。都市圏はそうじゃないのです。私鉄というのは基準になりませんよ。だから、私はその専門家じゃないから言っていることがわからぬのかもしれぬが、どうも理解ができかねますな、今おっしゃった算定の意味が。よくわからぬ。
  243. 林淳司

    ○林政府委員 各地域ごとに私鉄と比較したのではございませんで、全国の、六十数社あったと思いますが、六十数社の私鉄につきまして、輸送密度の高いところ、中ぐらいのところあるいは低いところというふうにランク別に分けてあるわけですね。そして今度新しくできる東日本会社あるいは北海道会社というところがそれぞれの会社の平均輸送密度を出しまして、大体その輸送密度と同じようなランクの私鉄と運賃を比較して、五年後に大体同じレベルの運賃になるようにすりつけをした、こういうことでございます。
  244. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まだちょっと残っていますが、恐らく、私鉄関係の専門家の人たちや民間企業の側から見た運賃問題と今の議論は、どこかでまたしなければならぬ問題だと私は思います。もう時間がないですから細かな数字を挙げませんけれども、昭和六十年度決算で見た六社の営業収入、これは来年分割民営にするのですから、分割民営した初年度の営業収入が、六十一年度予算の国鉄並びに六十年度決算から見ても非常に低いです。分割民営して初年度から低いのか、それとも分割民営をしないでおればもっと収入が上がるのに、分割民営をやったら下がるのか、その差額というのはどう理解したらいいのですか。これは一テーマで僕は議論したかったのですが、時間がなかったから途中飛ばしちゃったのです。
  245. 林淳司

    ○林政府委員 ただいま御質問の六十年度実績六十一年度予算、それから六十二年度の新会社の見込みということでありますが、確かに営業収入で見ますと六十一年度は予算ベースは少し高いのです。ただ、六十年度の決算ベースと六十二年度の新会社のベースというものを比較しますと、新会社のべースの方が六百億ほど収入が多いわけでございます。ただ、六百億程度でございますからほぼ横ばいと言っていいぐらいかと思います。  これは輸送需要がほぼ横ばいということなわけでございまして、なぜかと申しますと、六十年度の実績に対して、私どもとしましては将来の空港整備あるいは道路整備というふうな状況を勘案しまして、非常にマクロモデルでモデル式をつくりまして、それでもって六十五年度の輸送需要推定をしております。その結果で六十年から六十五年までの間の中間値をとったのが六十二年度でございまして、将来は航空機あるいはモータリゼーションというものの影響をかなり受けますので、長い目で見ますと、鉄道輸送というのはやはりマクロ的には微減あるいはせいぜい横ばいという程度でございます。そういう見通しのもとに六十二年度も輸送需要を出しまして、それで単価を掛けて収入計算をしておる。したがって、六十年度の実績と、六百億ほど多いわけでございますけれども、ほぼ横ばいに近い収入を前提にして収支計算をしておるということでございます。
  246. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それは数字を挙げてやるとまた議論になるのですけれども国鉄の数字の営業収入の中には、一般営業損益の中には、例えばさっき言った特定人件費、そういう一連のものを除いているわけですね。さらに東北新幹線の資本、償却並びに利子を除いて計算してみると、つまり、片一方は民間になるのですから、民間との競争を見るのですから、そういうふうにしてみると国鉄の方がずっと生産性が高いです。運収は高いです。今よりずっと国鉄の営業収入は低くなっていきますけれども、それでも高いです。だから、今の国鉄分割民営ということをやらなくとも、国鉄の一般営業損益という観点から見た収益は民間に負けていない、これはさっきの人件費と同じように負けていない、これが六十年度決算に出ている数字だと思います。だから、分割民営をやって、それから私企業的な方向にいけば黒字になるという議論、これはもっと検討を要すると私は思っています。将来はわかりませんが、今のところ。  さて、こういうふうに見ますと、けさから議論したのをもう時間がありませんから整理してみますと、国民側からは、国鉄は赤字だ赤字だ、そして分割民営が必要だというふうに言われて、なるほどなと思ってきたが、きょうの議論でおわかりのように、本来の業務という観点からすれば黒字だが、基本的には、長期債務というものをどう国民が背負うか、今までたまったやつをどうするかというところが赤字問題なんですね、あなた方分割するのですから。しかも、分割する際に土地を売って国民の負担を軽くするということの中には、土地問題が非常に問題になっているように、今までの延長線でいくとひょっとしたら土地の売り方が安いかもしれぬという疑問が残っています。ということは、逆に言うと民間の負担は少なくて済んでいることにもなるんです。例えば資金ですね。今度の新会社の資金の収支というのを見たときに、資金は収入の二〇%でしょう。そういう考え方ですね。資金は何ぼでしたか、今度の新会社六社の総額資金。それは借金の分ですから。
  247. 林淳司

    ○林政府委員 ただいまの先生の御質問は多分資本金だと思いますけれども、新会社の資本金はトータルしまして六千四百数十億でございまして、これは、私鉄の資本金が平均しまして年間売り上げの大体二割程度でございますので、同じ鉄道業でございますから、それに準じた形で資本金を設定しておるということでございます。
  248. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 要するに、それが六社に売られる資本金になるわけです。これは株ですね。この株は、電電の場合ですと一年半で物すごく上がったが、国鉄の場合はいつまでも売らぬのでしょうな。国はこっちに対して借金がありますよ。民間は払い込まなければいけません。だけれども、売らぬのでしょうな。
  249. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 それこそ売って、本当に電電以上の価格をつけるようなすばらしい経営内容に早くしたいものだと思います。
  250. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私が言っているのは、いわゆる資金がそういう意味で収入の二割という程度に非常に低く持っているものですから、早く売りますとえらいことになるわけだ、後で高くなったりしたら。土地と同じことですよ。土地も早う売ると、後で値上がりしたときに、含み資産は国は損をする。資本もそれと同じです。だから、この株の扱いというのは僕は少し安いのじゃないかと思う。国鉄の資産というものを考えると安いのじゃないかと思う。もうちょっと高くていいのじゃないかなという気がする。これも客観性があるかはわかりませんよ。それとこの扱いというのは、そういう諸般の動向を見てかなり慎重な扱いをしなければならぬというふうに思いますが、どうですか。
  251. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 慎重に対応いたします。
  252. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 本当は経営形態の分割のメリット論、デメリット論というのをやりたかったのです。だけれども、もう時間がありませんから入れません。ただ、今度の法案の全体の中にある問題点だけ整理して、今後の審議基本に据えておきたいと思います。  第一点、新法が出た。八法の法案の中を貫いている特徴は、今までの法案と第一条が根本的に違います。日本国有鉄道法第一条、電電で言うところの公共企業体の第一条、我が日本社会党案の第一条、これに対して今度の第一条は何が欠けているか。公共性という言葉がないということです。今度の法案全体の中の特徴は、今までの国鉄の公共性は機能的にはカバーするんだよと抽象的に言っておるだけであって、第一条に交通機関の持っている――当面、とにかく四、五年はこれを基本にしていくにしても、今までのような公共性という言葉は法の体系では消えたということです。これは四条でカバーしています。基本法の第四条でそれをカバーできるかのような条項がありますが、四条は既に骨抜きです。新幹線をつくって国が財政援助をしなければいかぬと法律に書いてあるのにやってないのですから、それで借金ができちゃったのですから、そういう意味で、第一点、公共性というものが欠如している。  そのことは、地方交通線休廃止の手続を今までと違って簡略化しています。これは鉄道事業法案です。地方交通線の負債部門について休廃止の促進がしやすい条項が出ている。  今度は運賃。運賃は、今までは国鉄は民間と違う方式をとってきたが、今度は明確に鉄道事業法で総合原価主義というものをとることになりましたから、もうけを入れて運賃を決める、そういう意味で私鉄並みに常に運賃が上がっていく、いわゆる公的性格の運賃ではないというふうに変わった。これが公共性の問題の第二点。  安全規制というものについては、今までより緩和されています。これは規制緩和という問題、民活法の関連がありますが、鉄道の持つ公共性、これは私鉄を含めての観点からするとこれでいいかどうかというような疑問が残ります。  したがって、第一点は、公共性という問題が抜けているという点を今後この委員会における審議一つのポイントにしていただきたいし、政府側もこれに対する回答を準備しておいていただきたいと思うのです。  第二番目は、国鉄国民の財産という立場で見よう。国民の財産という立場で国鉄を見ると、十六・七兆円の国民負担について、その額についても処理方法についてもいまだ明らかになっていない。清算事業団法に見る限り出ていない。まだ方針が決まっていない。これが我々に審議せよと言っている法案ですから、つまり、形の枠はあるが、中身の定量的なものについての判断が決まっていないということを示しています。  同じく新しい事業体に引き継ぐ長期債務というものの内容、資産だとか土地だとかありますが、これについては、旅客会社法案にしても新幹線機構の問題にしても、答申で言われている以上のことは一つも出ていません、私の見る限り。だから、答申の中身をそのまま決めたにすぎないという意味で、国民の立場からいって一つの問題がここにもあると思います。  さっきから議論になっております非事業の土地の売却、これにとっても、さっきのような随意契約という道が残されているというものを含めて、今後の歯どめをかけるという点が法律条項としてはあいまいです。これらを含めて国民の立場から見ると、清算事業団法も新会社法も、それから新幹線保有機構などを含めて見ても問題点がある。これが第二番目、国民の側から見た問題点。  三番目に、この法案全体の中の一つの特徴は、基本法の第一条で、一口で言うと国民のニーズにこたえ、効率性で維持するとしか書いてないのです。今までの法律は全部公共の福祉なんですから、国民のニーズと公共性という観点から出てきた第一条の理念は、新幹線に関する整備法の基本理念やそれらの法と比べてみると法体系としては矛盾している。どうしてかというと、新幹線その他では全体、国土開発という総合的な観点で事をやらなければならぬという理念がうたわれているんだ、片一方の法律は。ところが、片一方の方では需要と効率なんです。ローカル線がどうなるというのは答申でもあいまいになっています。幹線は言っていますけれども、我々の言うローカルからルーラルの方、もう少し地方にいくことについてはあいまいになっています。  それと同じように、その理念の中に、法体系の中に矛盾がありはしませんか。その中で特に重要なのは、内部補助問題です。あれだけ監理委員会答申の中で、内部補助はいかぬ、片一方でもうけていて、片一方で落とすというやり方をやっているから限界があるんだ、こう言ったのですよ。分割したら解決できますか。東日本会社は青森、秋田を抱えるのでしょう。大阪は山陰、島根を抱えるのでしょう。同じ内部補助問題じゃないですか。だから、言われている理念と実際にやっていることとは、この法案にあらわれている性格は、答申の言う性格を受けとめても言われている中身としては正確さを欠いていると私は思います。  四番目、先ほど議論しました整備新幹線問題、これはまだまだ議論を精密に詰めなければいけません。来年度予算の収支を含めて詰めなければいかぬと思います。  五番目、きょうは時間がなくて触れられませんでしたが、雇用問題です。定数の決め方から始まり、例の十七条ですか、枠を決めて、二十一条でいわば選別する、これは今までの労働法制の体系から見ると異質ですから、国鉄改革法、清算事業団法、再就職促進法、全部関連がありますから、今後の論点として申し上げておきたいと思います。  以上がこの法案全体から見た、今後全体的に審議を深めて国民の理解を得なければならない課題だというふうに私は思います。  一連の問題を議論してまいりましたが、きょうの議論でまだ詰まっていない問題が山ほどあるだけに、今後当委員会における審議慎重審議であるべきであるし、短い時間で審議をやるというような焦ったやり方をやらないで審議をすべきだと私は思いますが、総理並びに運輸大臣の決意のほどを聞きたいと思います。
  253. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今嶋崎委員からお話のありました点、私は改めて論争をしようとか、そんな大それたことは思いません。ただ、一点だけ、今まで論議をしておらなかった部分でお触れになりました点、私の方の考え方を聞いていただきたいと思います。それは何かといいますと、公共性の部分であります。この部分は御論議をいただきませんでして、御指摘をいただきましたので、考え方だけ申し述べさせていただきたいと思います。  私どもは、鉄道以外を含めまして運輸行政全体の持つ公共性というもの、これは当然のことであると思います。ただしかし、社会党案に貫かれておりますように、強い公共性というものをこれからもこの新たに発足する会社に持たせることはいかがなものかという気持ちは確かにございます。と申しますのは、私鉄の事業者と質的に変わりがなくなるわけであります。その限りにおいて、他の交通機関と公平な競争をしていく状態になるわけでありますから、とりたてて、社会党案のように、これから発足する会社に法文上の公共性というものを強いてうたっておらない、公共性というものを打ち出していないという点、これは私鉄とも当然均衡をもっていくことでありますから、この辺についてはこれからの御論議をいただけるということでありますので、考え方だけ申し述べておきたいと思います。  また、慎重な審議ということですが、私どもも最善を尽くしてお答えを申してまいります。ただ、私どもとしては、これから先非常に膨大な作業を控えておりますだけに、できる限り早い議了というものをお願いしたいという気持ちは大変強く持っておることだけ申し添えさせていただきます。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 慎重審議の上、野党の皆さんの御意見もよく承り、来年四月一日発足を目途に、ぜひ早期成立を念願いたしております。
  255. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いずれにしましても、皆さんが先般の国会法案を提案されて、そして途中、総選挙というものをなさったのです。それで、途中政治的空白――政治的空白という表現は悪いですけれども、その間国会審議はとまったのです。そしていよいよ国会が始まって、国鉄改革法案に入った。きょう申し上げたのは、まだまだ全法案の問題点の中のほんの入り口ぐらいの問題でしかありません。そうしますと、国民の立場から見るとまだまだ審議をすべき課題が控えているだけに、資料の提出を含め、慎重審議というものを要求してまいりますので、我々の主張にも耳を傾けていただきますことを申し入れて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  256. 細田吉藏

    細田委員長 これにて嶋崎君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  257. 細田吉藏

    細田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の各案について、本日参考人として日本国有鉄道再建監理委員会委員長亀井正夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 細田吉藏

    細田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  259. 細田吉藏

    細田委員長 質疑を続行いたします。浅井美幸君。
  260. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、今国会重要法案でございますところの国鉄改革関連法案法案、この審議に当たりまして、総理並びに関係大臣に質疑をいたしたいと思うものであります。  そもそも、けさの自民党の委員の発言にもございましたが、国鉄歴史百十四年、栄光の歴史であったと言われております。確かに私ども子供のころから、日本の列車に対するあこがれあるいは信頼、そういうものに対しての期待感を持って日本鉄道を眺めてまいりました。ところが、この十数年、国鉄の経営がだんだんと怪しくなってまいりました。我が国の交通体系の大きな変化あるいは経済環境の変化ということで、モータリゼーションを初め、いろいろな航空機の発達が日本鉄道経営というものに大きな変化を与えました。さらに、公社形態ということで親方日の丸の体質と言われておりました。また、政府の財政援助といいますか、そういうものを国鉄に明確に与えてこなかった。そういういろいろの原因が国鉄の財政に大きな赤字を来しました。そのために借金財政に追い込まれ、その借金を支払うためにさらに借金という、まさにサラ金地獄と同じような状況になった。これを何とか改革しなければならないというのが私どもの大きな政治課題であり、また政府のやらなければならない政治問題でありました。  ところが、四次にわたる国鉄再建計画、これがいずれも失敗に帰しました。そして厳しい、毎年毎年二兆円という赤字を積み増していくような現況の中で、何としてもこれを改革しなければならないということで、民営そして分割ということが出てまいったわけであります。しかしながら、ここで、ただ単に国鉄の経営者あるいは職員だけの責任ではなくて、歴代自民党政府国鉄の経営改善に対して大きな寄与をしなかったという点を見逃してはならないと私は思います。この点について、まず総理に伺いたいと思います。
  261. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 百十四年に及びます国鉄歴史にいよいよ終止符を打ちまして新しい法案を御審議いただくことに当たりまして、国鉄を築いてこられました先輩方、職員皆さんに心から敬意と感謝を表明する次第でございます。  ただ、戦後、近年に至りまして、この急激なモータリゼーションに即応する力を失い、あるいは社会経済の諸般の原因等もございまして赤字が続出いたしまして、何回か改革を志しましたが、不首尾に終わり、今やこのような抜本的改革をせざるを得ざるに至ったことはまことに遺憾でございます。しかし、これを機に、国鉄が真に国民にさらに親しまれる、地元に密着した、そしてサービスのよい国鉄に生まれ変わるように、我々はこの法案改革を機に全力を尽くして国鉄を新しい民間会社に再生せしめたいと念願いたしております。
  262. 浅井美幸

    ○浅井委員 我が党は、このような巨額の借金を抱えている国鉄改革に当たって、まず民営分割ということについての必要性を痛感いたしております。その立場において、政府基本的な考え方と私たちの民営分割についての考え方は一致をいたしております。しかしながら、私どもはその改革案の中で、この審議を通して、この国会を通して、問題は問題としてただすべきものはたださなければならない、このように考えておりますので、幾つかの問題点についてただしたいと思うわけでございます。総理を初め率直な答弁をお願いしたいと思います。  まず、私どもの考え方は、国鉄民営化し、活力ある経営、効率ある経営を行わせ、今まで公社形態であった公共企業体という形の中で幾つかの制約がございました、それを除いて鉄道中心の多角経営を行える事業体にすべきだと考えております。この点について総理の認識はいかがでありますか。
  263. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点につきましては、私も今同感でございます。なるたけ法的拘束から解放して、民間的手法で思い切った弾力的な運営ができるようにするということが我々の考えの大きな要素でもございます。
  264. 浅井美幸

    ○浅井委員 今総理民間的手法とおっしゃいました。民間的手法というよりも、私どもはまず民営というものを本格的に志向していかなければならない、このように考えておりますけれども、ただ民間的手法というような安易なものではないと思いますが、いかがですか。
  265. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 従来の国鉄に対してそういう表現を用いましたが、もちろん民営分割、したがって民営ということでございます。
  266. 浅井美幸

    ○浅井委員 しばしば今まで、国鉄の再建の方策につきましては、分割民営あるいは民営分割、このような紛らわしい言葉があるわけでありますが、監理委員会答申につきましては、民営分割と言われるように最近はなっておりますけれども民営分割ではなくて分割民営では改革の視点が根本的に違うと私は思います。まず民営ありきと、まず分割ありきとではこの視点が狂ってくる、このように私は考えますけれども総理の考え方は、まず民営ですか、まず分割ですか、総理並びに監理委員長にもお伺いしたいと思います。
  267. 亀井正夫

    亀井参考人 お答え申し上げます。  私ども再建監理委員会の基礎になっております国鉄の事業の再建を推進する臨時措置法というものの中にはっきりと書いてございますのが、現在の国鉄の事業を効率的な経営形態に確立をしろ、そしてその経営形態のもとで適正なる運営を確保しろ、これが大命題でございます。そういう観点から私ども勉強いたしまして、現在の国鉄というものは効率的ではない、あるいは適正な運営がされてない、これは国会でそれをお認めになったことでございますから、それに基づいていろいろ検討いたしまして、そして問題点は、浅井先生もおっしゃいましたように、公社という一つの仕組み、ここに非常にいろいろな問題があるのではないか、これは私どもの「意見」に指摘をしておるところでございます。それからもう一つは、全国を一元的に管理する巨大な組織である、ここに非常に問題がある。この二点に絞りまして、結局私ども民営分割という結論を出したのでございますが、どちらが先でどちらが後かといっても、これは両者一体となって初めて効率的な経営形態が確立され、適正な運営ができる。ただ、私どもの意見書に分割民営化と書きましたのは、民営化・分割というとごろが非常にぐあいが悪い、やはり分割民営化、こう言った方がごろがいいんじゃないかということでやったわけでございまして、どちらにウエートを置いたわけでもなく、この両者の歯車、両輪によって本当の意味の国鉄の再建をやりたい、こういうのが私どもの考え方でございます。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は民営分割と同じ比重を持っていると思います。民営だけでもだめですし、分割だけでもだめだ、同じ比重でこれが行われて初めて我々の目的は達することができる、そのように考えます。
  269. 浅井美幸

    ○浅井委員 今御答弁のように、確かに民営分割、両々相またなければならないわけでありますけれども、私どもは、まず民営手法、先ほど総理が言われたように民営手法を取り入れる。すなわち、民営化ということによって経営の効率性あるいは経営の効果が出るような経営形態、これが必要だということでありまして、分割というものを前提に置くのではなくて、やはり民営ありきということを前提に置きたい、このように考えております。  それはなぜかと申しますと、私ども分割案というものをこれから皆さんに聞いていただきたいわけでありますけれども、最近の世論調査にもございます。先ほど世論調査の報告がございましたけれども、私もこの質問に当たって世論調査の資料を持ってまいりましたので総理にも見てもらいたいと思います。  この世論調査によりますと、まず第一の読売新聞全国世論調査、昭和六十年五月十三日、これは「分割民営化に賛成」が四一%、「民営化賛成・分割に反対」が一二・五%、「分割賛成・民営化に反対」が九・八%、「分割民営化に反対」が一七・一%。国労が民間調査機関に委託した世論調査、六十一年五月十九日、「国鉄再建監理委の「分割民営化案」をどう思うか」、これは「監理委の答申どおり実行」が一六%、「部分的に改めて実行」が五六%、「あくまでも参考、改めて検討」が二四%、「白紙にもどす」というのが二%。国鉄が民間調査機関に委託した世論調査、これは六十一年六月二十六日に実施しておりますが、政府案について「この通り実施すべきだ」というのが三九%、「一部改めて実施すべきだ」というのが三六%、「全く白紙にもどすべきだ」というのが九%、「その他」が一六%。この世論調査を見る限り、確かに分割民営化が一つの世論形成にはなってきています。しかしながら、唯一政府案だけでなければならぬということではなくて、一部手直し、あるいは問題点があればそれを改めて、そして通すべきだ、あるいはまた法案として実施すべきだということがこの数字であらわれてきておりますけれども、この数字についての御感想はどうでしょうか。
  270. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 それぞれの調査時点において、私は国民の世論を反映したものだと心得ます。
  271. 浅井美幸

    ○浅井委員 ですから、私が申し上げたいのは、問題点は問題点として指摘をするので、それについて政府におきましてもよろしく検討を重ね、正すべきは正すという姿勢で臨んでもらいたいということをまず最初に申し上げておきたいと思います。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕  そこで、この分割の案でございますけれども、先ほども述べましたように、改革民営基本とすべきでございまして、民営が前提。目的となれば分割数は六でもいいし七でもいいし八でもいい。ですから、監理委員会の「意見」、この答申を読んでも、旅客部門の分割は地域的になるべく小さい経営単位に分割すべきである、そして当初、管理局全国三十カ所を統合した形の分割案を検討されたということが出ております。さらに、線区別の事業体とする案が検討されたということもこの中に記されております。さまざまな角度で検討を加え、その結果として、旅客の流動実態や列車の運行実態との適合、分割に伴う技術上の問題やコストの最小化のため、二つ目には、安定的な経営基盤の確保等を考え、ある程度の面的広がりを持たせて分割することが望ましい、そのような理由から六分割案になったとしております。  このような再建監理委員会の理由では、本州を二分割とした我が党の考え方も今回の審議一つの選択肢に入ると思いますけれども総理並びに監理委員会の御意見を伺いたいわけであります。
  272. 亀井正夫

    亀井参考人 ただいま浅井先生から、旅客会社を全国六つに割るか五つに割るか、こういう長所、短所あるいは問題について御提起がございました。  私どもは、まず分割の場合に、貨物全国一本でする、そして旅客は旅客流動に合わせた形で、しかも適正なる管理運営ができるという観点から、ただいま御指摘のように全国を三十に割ってみるとスパン・オブ・コントロールという点からは非常にいい。ところが、経営基盤ということになると、収益力のいいところもございますけれども、収益力の悪いところもある、こういうことがございますし、それから旅客流動というものも相当重視する、こういう観点でいろいろ議論をいたしました。率直に申し上げて、私ども委員会の中でも本州二分割論の意見もございました。いろいろやりました結果落ちついたのが私どもの案の三分割という案でございます。  これにつきまして一つの基礎となりましたのは、将来の日本鉄道を考えた場合には、中距離都市間輸送というものが中心になっていくだろう。その場合、新幹線というものが本州において一つの骨幹になっておるわけでございますが、これが東北新幹線、東海道新幹線、山陽新幹線と三本ございますので、これを基幹にして、それに首都圏の交通、中京圏の交通、近畿圏の交通、そこへ集合していくであろう在来線、幹線、こういうものを総合した形が最も望ましい形ではなかろうか、こういう結論に達しまして、これに新幹線の保有主体をこしらえるとかいろいろなこともいたしまして、大体これでやれば経営基盤が確立できる。しかも旅客流動につきましては、東日本では九九%、西日本では九八%、東海だけが両方へ少し出ておるものでございますから、八五、六%というふうな充足もできるということになりました。それから、日本の本州の地図をごらんいただきますと、東京、名古屋、大阪という一つの拠点がある。そして、東日本、中日本、西日本というのが日本人の我々が持っております歴史的な、文化的なあるいは経済的な考え方からも適合するということで一般の御支持も得られるのではないか、こういう結論で本州を三分割という格好にしたわけでございます。
  273. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 亀井さんがただいま申し上げましたのと私同じ考えでございますが、やはり私自体も、答申をいただきまして検討を加えましたときに、本州二分割がいいか三分割がいいか、ここは非常に検討を加えた点でもございます。結論といたしましては、今亀井さんが申されたとおりで、やはり旅客の移動の完結性という点から見ますと、中部というものは一つの独立圏を形成していい場所である、そういうことと、もう一つは、分割をなぜするかということを考えると、競争させるという意味も一つある。その場合に、本州を二分して東日本、西日本というだけにした場合、あるいは三分割して中京圏、中部圏というものを中に入れた場合、どちらが刺激が多いか、どちらが競争が激しくなるか、どちらがサービスがよくなるかという面を見ますと、やはり中部圏というエネルギーに富んだところを独立に一つつくりまして、そして、東と西の場合は非常に離れ過ぎておりますね、下北半島から下関に至るまでという、そういうような間に割合に高密激動の中部圏というものを入れて、いろいろな創意や工夫や新しい発想も出させて、そういう三つが本州の中において競い合う、その方がはるかに分割の理想に近いだろう、そういう面も考えまして三つに踏み切ったということでございます。
  274. 浅井美幸

    ○浅井委員 今分割あるいは民営ということについて論議をしているわけでありますけれども、もう一遍また戻しますと、分割というのは国鉄改革の目的では本来ない。民営というものを主体に考えたときに、やはりもう少し考え方が、今のような考え方だけでいいのかということもございますし、また今の御答弁の中に営業路線、職員の数あるいは企業間の収益格差、そういうものが述べられましたし、地域性の問題も述べられました。しかしながら、私は私なりの考え方を述べるならば、今回いただきました法案関係資料集の四ページ、旅客鉄道会社の経営諸元、あるいは十四ページの旅客鉄道会社の経営見通し、こういう数字の上から見まして、東日本会社、そしてまた東海、西日本会社を一緒にした会社の方が企業間のバランスや経営見通しについて非常に適切に分かれているように私は思うわけであります。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕  この資料によりますと、東日本会社の職員数は八万九千六百人です。東海、西日本一つにした会社では七万八千六百人です。営業キロは東日本が七千五百キロ、東海、西日本が七千二百キロ、営業収入は、一兆四千三百八十三億円が東日本の営業収入であり、東海、西日本を一緒にした会社が一兆五千四百六十七億円の収入であります。資本金が二千八百七十七億、東海、西日本が三千九十四億円。このように見ますると、既にこの数字で明らかなように、企業規模はほぼ同じになります。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  275. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、この前、討論会の際にも、公明党案の二分割というものに一つの理屈があることは認めるということを申し上げました。そして、今委員から御指摘になりましたような形で対比をいたしました場合、確かに御議論のように、東日本会社と西日本会社、二分割のされた会社形態というものはほぼ規模的にそろってまいります。これは私も決して否定をいたしません。  ただ、現実に私どもが考えてまいります場合に、やはり日本全体の地域的なバランス等々を考えました場合、東日本と西日本という分け方をするには、中京経済圏の占めるウエート、またその中における輸送人員の完結度等、それなりに独立をさせるだけの一つのグループを形成しておると私は考えております。そうした視点から監理委員会としても、先ほど亀井委員長から御答弁がありましたように、さまざまな御構想の中で最終的に三分割案を示唆された、私どももそれを受けとめたというふうに御理解をいただきたいと思います。
  276. 浅井美幸

    ○浅井委員 経済圏の問題が今出ておりますけれども総理経済圏の問題をお答えになりました。  監理委員長にお伺いして、確認しておきたいのですけれども、あの監理委員会分割案のときには、経済圏の問題は分割の考慮の中に入っておりましたか。
  277. 亀井正夫

    亀井参考人 私どものこしらえました案においては、旅客流動ということ、これがやはり経済の実態をあらわしておるという考え方でございまして、先ほど申し上げましたが、首都圏、中京圏あるいは近畿圏、これが一つ経済圏でございまして、そういう経済的なファクターということをあの意見書の中に、そういう圏を中心にして新幹線あるいは在来線とをどう結んだ一つの旅客流動体系をつくるか、こういうことでございまして、経済ということは書いてございませんけれども、首都圏、中京圏、近畿圏、それの旅客流動という中に経済の実態を反映しておる、こういうふうに考えております。
  278. 浅井美幸

    ○浅井委員 企業規模というのは、この三つの会社の企業規模を後で私は述べたいと思いますけれども職員数や営業路線キロなどの大きさで検討して、企業間の収益格差、企業間の格差の是正、これはやはり考慮しなければならぬと思います。また政府案、いわゆる監理委員会案が原案になりました政府案が、東海、西日本一つにして東日本との企業間の格差を少なくする方がいいと考えたのは、監理委員会分割条件とした旅客の流動の完結度、利用者の流れが完結する度合い、これは三分割よりも二分割の方が完結度がいいということは決まっておりますし、本州一本の方がさらに完結度が高い、こういうことであります。  私たちは、北海道、四国、九州の三島は本州の新会社と異なるものであり、この三会社が経営努力を幾らしても赤字となる地域である、そしてこの地域の鉄道を維持するためには何らかの公的助成措置が必要な会社であって、本州と違う地域である、こういう考え方を持っております。ですから、三島分離という三島を分けた理由については、それなりの理由はあると思います。  しかし、本州につきましては大きな経営規模の違い、先ほどからいろいろとお話がございますけれども、東日本会社の経営収支、西日本会社の経営収支、東海会社の経営収支を見て、先ほどからのこの資料をごらんになっていただければおわかりだろうと思いますけれども、東日本会社の収支と東海会社の収支と西日本会社とではそれぞれが違います。東日本は営業収入は一兆四千三百八十三億、西日本は七千四百二十八億です。半分という大きな格差、新しい会社としてスタートするのに初めから大きな違いがあるではないですか。新しい会社を三つつくるのに企業間を同じような規模、同じような経営状態、これにそろえるというなら話はわかりますけれども、これが違うということについてはどういうお考えでしょうか。
  279. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御指摘の数字はそのとおりであります。その意味において浅井委員の御論議に私は異論を唱えるものではございません。しかし、現実に経済圏が存在をし、それなりの完結度を持つ地域があるとすれば、それを土台に置きながら分割案を考えた、それもまた私は一つの理屈として御理解がいただけるのではないかと思っております。
  280. 浅井美幸

    ○浅井委員 東日本は首都圏を抱えております。西日本は近畿、大阪を中心とはしておりますけれども、大阪の通勤線である環状線、そして山陽新幹線、山陽線あるいは山陰線、紀勢西線、この将来の見通しと東日本のように首都圏を抱えた会社のこれからの経済状態とは明らかに大きな収支の違いが出てくるわけであります。したがいまして、中京圏というお話ではございますけれども、東海会社の一番の黒字の原因は東海道新幹線であって、その東海道新幹線の基盤を、東日本の首都圏のこれからの、国鉄が新しい会社に生まれ変わった一つの大きな経営基盤にするように、西日本並びに東海を合わせた会社の一番の経済基盤にするのは、私は山陽新幹線の売り上げだろうと思いますけれども、この考え方は、総理、どうでしょうか。
  281. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 そうした点でのアンバランスは、実は他の、今委員が御指摘になりませんでした上越とか東北等々を考えました場合にも出てまいります。そうした点がありますので新幹線保有機構というものを設け、それによって企業間のバランスをとるという考え方を採用しておるわけでありまして、御指摘の問題点そのものはそのとおりでありますが、その上に立って新幹線保有機構というものを私どもは考え、その収入によってバランスを各社でとろうという考え方を持っておることも御理解をいただきたいと思います。
  282. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、今申し上げたことについては、分割の問題というのはあくまでも民営のための措置を考える、そしてその数をどのようにするかは、今申し上げた経済効果あるいはまたこれからの新会社の経営見通し、そういうものを考えて、影響や条件を考えた上で検討され、今回のこの審議の中で一つの選択の問題だと申し上げておきたい、このように思うわけでございます。  亀井監理委員長、大変お忙しい中を御出席いただきました。どうぞお帰りください。  そこで、次の問題に移りたいと思います。  貨物輸送でございますけれども、諸外国において鉄道をその国の貴重な財産として育てております。中でも、省エネ、無公害、交通安全などの観点から、鉄道貨物輸送を重要視しております。私は、日本貨物をこれからも育てたい、また貨物を温存しておきたい、こういう考え方は今でも持っております。総理も御承知のように、東名、名神あるいは中国縦貫道路、これを一遍、夜、総理、走ってみていただきたいと思うのです。大型トラックがそれこそ猛スピードで走っております。それも大量に走っております。あのような状況の中で、東名も名神もやがてパンクするであろう、第二名神が必要だという声も聞かれるような状況の中で、省エネ、安全確実、このようなレールの貨物輸送を確保することについてしっかりと政府もお考えいただきたい、このようにまずお願いしておきたいと思います。  政府改革案は、全国一社の独立した貨物会社を設立するようになっておりますが、その選択が最善かどうかは我が党には若干異論がございます。しかし、この件についてはこれからの審議に任せるということで、ほかの委員に後日詳しくこの点については質問をしてもらいたいと思っております。  貨物輸送は現在膨大な赤字を出しております。先般いただいた資料によりますと、客貨合計した赤字が一兆四千六百十九億円、貨物の赤字は六千十八億円、このようになっております。それが今回の貨物の収支見通しになりますと、逆に十六億円の黒字となっております。このいわゆる魔術的な数字の変化、これを見てにわかには信じがたい点がございますけれども、一体六千億近い赤字はどこへ消えてしまったのか、御説明願いたいと思います。
  283. 林淳司

    ○林政府委員 お答え申し上げます。  一つには、まず経費のとり方が現在の国鉄の客貨別計算と違うわけでございます。現在の国鉄の客貨別計算は、それぞれ旅客、貨物の個別費をまずとりまして、それから共通費についてはいろいろな輸送量その他の指標によりまして案分をしているわけでございますが、今回の新しい貨物会社案におきましては、回避可能経費と申しますか、いわゆるアボイダブルコスト、これを経費としてとっておるという点が大きく異なります。  それから、さらに個別に申し上げますと、人件費でございますけれども、要員規模、これはひとときの三分の一程度に、一万二千五百人でございますが、約三分の一程度に縮減をしておるということで、大幅な合理化を図っておるわけであります。  あと、諸経費についても節約を行っておるということでございまして、それらの結果が、最終的に試算をいたしましたところが十六億程度の黒字が出るというふうな結果になったということでございます。
  284. 浅井美幸

    ○浅井委員 アボイダブルコストという余りよくわからないような計算方式で出されるわけでありますけれども、これはまた次の機会にほかの委員にやってもらうことにいたします。  国鉄職員の進路希望アンケートがここにございます。その中で、国・政府関係機関、地方公共団体、国鉄関連企業あるいは一般産業界、旅客鉄道会社、貨物会社その他の新事業体、こういうアンケートが六十一年の一月三十日に行われております。これを見ますると、貨物会社の希望というのは非常に少ない。三十歳台では二・四%、そして二十九歳以下は一・四%。二十九歳以下、三十歳台、四十歳台、五十歳台ととっておりますが、全体で二・四%。この項目の中には研究所や病院も含まれているわけです。実質は貨物はかなりこれよりも低い。二十九歳以下は今申し上げたようにわずかに一・四%。これは、貨物会社は将来性がない、そういう企業だと職員は考えているのじゃないかと私は思うわけです。運輸大臣、どうでしょうか。
  285. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 実は私はその数字を存じませんでしたので、今拝聴して改めて驚いております。ただしかし、そういう見方というものはあるいは現在あるのかもしれません。そして今の国鉄における貨物の状態を前提にされれば、あるいはそうしたものが出てくるのもやむを得ないことかもしれません。しかし、新しい貨物鉄道会社がコンテナ輸送あるいは石油、セメント等の大量定型輸送にいわば特化するといったような徹底的な輸送の効率化を図っていき、同時に、要員の適正化、物件費の縮減等コストの低減に努めていただきながら努力をしていただく限りにおいて、私は将来がないとは考えておりません。ただ、そのためには、もちろん通運とかトラック事業者等物流業者との密接な連係プレー、そうしたことによる収入の安定的な確保を図るといった努力は必要になります。そして現在においてもピギーバック等を検討いたしておりますのは、そうした将来へ向けての布石でありまして、私の立場からするならば、貨物というものの将来にも夢を抱けるような図面をかきたいものだ、またかいてもらいたい、そのように考えております。
  286. 浅井美幸

    ○浅井委員 これから一万二千五百人の職員が予定されているわけでありますけれども、甘貝が進んでやる気の起きる会社、少なくとも旅客会社と同様な労働条件を貨物会社の職員にも整えるべきだと私は思うわけです。そうした環境となるような配慮が必要だと思いますけれども、この点について伺っておきたい。  もう一点。貨物会社の活性化のために営業の自由を認め、努力とアイデアが生かされる企業とすべきだと私は思います。今少し御答弁がございましたが、既存の業者との協調もいいし、路線、区域業者の自由な利用、またみずからの集配もできるようにする、そういうことも検討をさらに重ねてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  287. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 第一点の職員の処遇その他の問題につきましては、本来新たに生まれる会社の経営陣が考えるべき事項ではありましょうけれども、当初において今御指摘のような点を十分具備しなければならないというのは、私もそうだと思います。  また、これはむしろ浅井委員の方がよく御承知のように、英国におけるフレートライナーといったようなものも、私も御指摘を受けて勉強いたしました。そうした新たな考え方のもとに、商品開発等につきましても一層の努力を必要とするものであることは御指摘のとおりだと思います。
  288. 浅井美幸

    ○浅井委員 今運輸大臣も触れられましたが、イギリスのフレートライナーという会社は、国鉄から分離して、みずからトラックも船舶も海上コンテナも保有して、一方、既存業界の利用も促進させ、鉄道貨物を活性化させているわけでありますが、十分これらも参考にしていただきたいと思います。  そこで、貨物に関する最後の質問でありますけれども貨物運賃というのは後払いが通例になっています。旅客の場合は即払う。その後払いについて、貨物会社の当初の資金問題で、無利子の貸付資金等を用意することはできるのかできないのか。この運賃後払いの問題は重要な問題であり、いずれ改めて質問も重ねて行わなければならないでしょうけれども、何らかの具体的措置をとる必要はないか、御答弁願いたいと思います。
  289. 林淳司

    ○林政府委員 貨物会社の資金繰りについてのお尋ねかと思いますけれども、現在お出ししております貨物会社の法案でございますが、これは特殊会社でございますので、いわゆる財投の対象機関にはなりません。したがいまして、公的な資金ではなくて、一般の民間の金融機関との間でその辺の資金繰りはいろいろと御相談をいただくということになろうかと思います。
  290. 浅井美幸

    ○浅井委員 いずれにせよ、貨物の将来性というのは、余り楽な経営形態ではないわけです。貨物会社に対するところの温かい配慮というか、あるいは手足を縛ることのないように特段の配慮を私は特に切望しておきたいと思います。  そこで、次の課題でありますけれども、長期債務の返済の問題であります。  国鉄の長期債務については、五十七年七月の臨調の第三次答申において、国鉄改革についての提言がございます。その中に、経営形態移行に際しては、長期債務の処理を解決すべきであることが一つの柱として政府答申をされております。これを受けた再建監理委員会は、六十年七月、「意見」において、仮に二十五年または三十年で借りかえ等を行いながら処理すると、毎年一兆四千億ないし一兆三千億の財源補てん額が必要であり、新たな財源、措置を講ずる必要がある、国は総合的かつ全国民的な処理方策を検討、確立すべきである、このように言われておりますが、まずこの問題を先送りにしました今回の審議の中で、この問題について聞いておきたいと思います。  長期債務の償還計画の中で、処理方法は、用地処分で五兆九千億、株式処分で〇・七兆円、新幹線鉄道保有機構で二兆八千億、合計九兆五千億円ございます。そして残りは、十六兆四千億については六十一年一月二十八日の閣議決定で新たな財源、措置ということで述べておられます。この新たな財源、措置ということについて、先ほども議論がございましたけれども、一体新たな財源、措置というのは何を指し、何を考え、何を検討するのか、お答えいただきたいと思います。
  291. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これはもう浅井委員がよく御承知のように、私どもは、最終的に残ります十六兆何がしの金額を、国鉄の資産の処分、言いかえれば土地の処分をできるだけ量的にも多く、また資金的にも多く売却をすることによって最小限度にまで縮めたいと今考えております。  その中で、最終的に一体どの程度いわばその新たな財源、措置の対象になる金額が残るのか、今そうしたものについて現実には金額の算定ができない状況でございます。ですから、そういうもののおよその見通しがつく段階になりました時点で、私どもは歳入歳出の全般的な状況の見直しとあわせて検討、決定をするということにいたしておりまして、現時点において具体的にこういう方法というものを確定をいたしておる状況ではございません。
  292. 浅井美幸

    ○浅井委員 ただ、この問題は、長期債務の処理ということで先ほどから議論になっておるわけでありますが、国鉄改革に伴ういわゆる長期債務の処理、雇用の問題あるいは用地売却、こういう大きな幾つかの重要な課題の中で、この長期債務の問題については、国民にどのような負担になるのかということは、国民の方でひたすらこの問題に対して注目をし、心配もしております。用地売却あるいは雇用対策の見通しがおおよそつくと考えられる段階これはいつごろでしょうか。
  293. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 清算事業団自体の業務の内容から、またその任期からまいりましても、おおむね三年ぐらいは見なければならぬと思っております。
  294. 浅井美幸

    ○浅井委員 三年間、この新たな財源、措置というのはしないまま放置されるわけですか。
  295. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 そのころまでには、少なくとも雇用対策にいたしましても、また不動産の処分のおおよその方向等につきましても、ある程度のめどがつくと考えておりますので、その時点まで待ちたい、そしてできるだけ国民負担は少なくしたい、そう考えております。
  296. 浅井美幸

    ○浅井委員 新たな財源対策が決まらないままこの法案が通って発足していく、そして数年の間清算事業団がその収支の不足分を金利のつくお金を借りて、また資金繰りをしてやっていくということでありますが、雪だるま式に長期債務がふえていく今の国鉄の赤字体質、借金を払うために借金をするということをまたこれからも続けようというわけですか。この辺のことについては、私どもは少し納得いきかねると思います。まして国鉄改革にはなっても行財政改革にはなりませんよ。橋本さんは今まで行財政改革をやられていたんじゃないですか。この点はどうでしょう。
  297. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変意地の悪い御質問をされますが、これはお考えをいただきましても御理解のとおり、新たに民間の企業として発足をいたしますものと現在の国鉄のいわば清算部分を引き継ぐ清算法人というものでありますから、必ずしも行革に背くものではないと強弁をさせていただきたいと思います。  そして、一時的に確かにその赤字を清算事業団に全部集中するわけでありますから、もちろん分割された旅客会社のうち本州の三会社等資産の継承部分に見合う債務は持ってもらいますけれども、その大半は清算事業団に集中するわけでありますし、その間残念ながら他の職場に移っていただかなければならなくなる、現在の数字で言えば四万一千人の職員は、この清算事業団において職業の訓練等々の機会を持っていただかなければならぬわけでありますし、また三千三百三十ヘクタールに上る土地の付加価値を高めるための努力というものも事業団がいたすわけでありますから、その間において一時的な財政需要というものがあるいは生じるかもしれません。しかし、最終的にはこの形においてきっちりと清算をし、分割されてスタートをする企業というものがそれぞれ自分の足で立てる状態にしていきたい、そういうことで考えておるということも御理解をいただきたいと思います。
  298. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は一番最初に申し上げました。この国鉄改革のやらなければならないこと、しかしながら、今日の国鉄の財政状況が厳しくなった責任は政府にもあるんですよと。その政府が今いよいよ新たな財源をつくらなければならないときに、これから土地は高く売れるだろう、だから何とかその場はしのいでおけ、そしてまた、今の間は清算事業団がどこからか借りてきて借金にしておけ、金利はついてもしようがない、こういう長期債務の返済計画ですか。大蔵大臣、どうですか。
  299. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私はそうではないと思いますので、結局みんなに民間会社になってもらって、できるだけいわば荷を軽くして、そして市場経済のもとで一生懸命やってもらいたいというにつきましては、やはりその荷物をだれかがしょっていかなければならないわけでございましょう。それは、しょえるものは民間会社にも資産に見合ってしょってもらいますが、そうでないものはどうしてもしょってもらわなければならぬというのが清算事業団というものだと思います。それで、浅井委員の言われるごとく、早く清算事業団は清算をしてしまえとおっしゃるかと思いますが、これは先ほどから御議論のように、それなりの大きな資産を持つわけでございますから、できるだけこれをいわば上手に処分をしてもらって国民の負担を軽くしていただきたい。そのためには、今運輸大臣は三年ぐらいかなと言われましたけれども、その問題もあり、雇用の問題もありで、ある程度年月がたちまして、見通しを立てて、歳出歳入全体の中から、さてどれだけの長期債務が残りますか、残りませんか、そういうことを見きわめまして処理をいたしたい、どうもこれが私は一番合理的な方法ではないかと考えるのでございます。
  300. 浅井美幸

    ○浅井委員 まあ金利のつく借入金でしばらくの間賄えというようなやり方のように聞こえておりますし、新たな財源というものの性格もまだこの審議の中では明確に出てきていない、問題点を残したままの今国会のこの法案審議だと私は思わざるを得ません。  そこで、大蔵大臣にもう一つ伺いたいのですけれども、長期債務の処理方策の中に出資の株式売却収入を〇・七兆円計上しておりますけれども、その根拠と内訳金額を伺っておきたいし、またいつごろこの新しい会社の株式を売られるつもりなのか、御答弁をお願いします。
  301. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、評価の方法が実はないものでございますので、とりあえずと申しますか、やむを得ず額面金額で計上いたしてございます。
  302. 浅井美幸

    ○浅井委員 いつごろですか。
  303. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今の出資株式七千億円、〇・七兆円の内訳は、昭和六十二年度首における旅客会社等の資本金の額、その六千七百億円と帝都高速度交通営団に対する国鉄の出資持ち分の三百億円の合計でございまして、額面価額で試算したということであります。
  304. 浅井美幸

    ○浅井委員 もう一点、大蔵大臣に伺っておきますけれども、きのう政府は各旅客会社の予想配当率を五%ということで資料を出されました。仮に五%とすれば、資本金のことですが、旅客六社の総額六千三百九十四億掛ける五%は三百二十億になりますが、これが事業団に入る。十年で三千億、これが償還財源に組み入れられていないというのはどういうことか。財源として見逃しているように思いますけれども、どうでしょうか。
  305. 林淳司

    ○林政府委員 ただいま五%程度ということでございますが、これは一応その収支見通しを五年間やっております。最終年次である昭和六十六年、この時点では、各社ともとってみれば、税金を払った上で五%程度の配当が可能であろうということで、これは収支試算の数字をお出ししてございますけれども、その数字からも可能性は十分お酌み取りいただけると思いますので、そのようにお出しをしたわけでございます。  これにつきましては、そういう考え方で五%の配当が試算上は可能ということになっておりますが、当然それは株主に帰属をするわけでございます。それで、政府と申しますか、事業団が株を所有している間は事業団の収入になりますし、それからそれを売却するときには、当然その五%程度の配当が可能な企業、そういう企業価値というもので株が売却されますので、そういう意味でのいわば回収は可能であるというふうに考えておるわけでございます。
  306. 浅井美幸

    ○浅井委員 だから、新会社の株式はいつ売るのか、いつごろ売られるのか、これをお聞きしたいわけです。
  307. 林淳司

    ○林政府委員 これにつきましては、現時点ではいつごろというのはなかなか難しゅうございまして、この法律をお通しいただいた上で来年四月に新しい会社がスタートを切る、その会社の経営努力その他の経営状況というものを十分見きわめた上で、清算事業団、さらには政府の方でその辺の判断をしていくということでございまして、現段階では、いつというのはなかなか申し上げられる段階ではございません。
  308. 浅井美幸

    ○浅井委員 次に、国鉄再建監理委員会の債務処理の方針や、政府の一月の閣議決定に際しても、株式の売却益は〇・六兆円で、そしてあくまでも新会社の株式売却益だけであったはずですが、今回見ると〇・七兆円になっております。いつ、どういう理由で営団地下鉄への出資額を株式売却益として三百十億を追加することにしたのか、これをお答えいただきたいと思います。ほかの国鉄関連会社百二十一社の出資はすべて新会社に帰属しております。これは大蔵大臣運輸大臣にお答えいただきたいと思います。
  309. 林淳司

    ○林政府委員 確かに、国鉄再建監理委員会の意見書によりますと〇・六兆ということでございまして、今回、先ほど運輸大臣から御答弁申し上げましたように、精査をした結果、資本金の額が正確には六千七百億、さらには営団地下鉄の株式、これは国鉄の所有株式でございますが、これが三百億ということで、新しく主として営団地下鉄関係の株が、出資分がつけ加わったということでふえたわけでございます。これについては、再建監理委員会の段階では、営団の国鉄の出資持ち分の扱いについては政府の方に検討をゆだねておったわけでございまして、その後、そのような形で清算事業団に国鉄の出資分は移す、将来はその株式を政府が買い取る、こういう形に政府の方で検討の結果決めたということでございます。
  310. 浅井美幸

    ○浅井委員 今の答弁の営団地下鉄への国鉄の出資額は三百十億円。施行法の附則の第二十四条、出資分は「清算事業団から適正な価額で政府に譲渡されるものとする。」この「適正な価額」というのは一体幾らなんですか。大蔵大臣、これはわかりませんか。
  311. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、清算事業団に資産処分審議会というものをつくりますので、そこでその意見を求めて決定をするというふうに聞いております。
  312. 浅井美幸

    ○浅井委員 今私は長期債務の返還の話をしているわけです。ところが、先ほどから国鉄監理委員会の〇・六兆円の株式売却益がいつの間にか〇・七兆円になった。それは精査した結果だ。その中に営団地下鉄への出資額も入った。この営団地下鉄に入った三百十億。営団地下鉄は国鉄の新しい事業会社とは違って現に存在する法人なんです。評価しようとすれば、NTT同様理論的評価額が出るはずなんです。最低十倍の三千億ぐらいになるのではないかと言われております。私の方で試算しても三千億、ある人は十数倍、このような値打ちがあるんじゃないかと言われておるものが、ここの償却の試算では三百億しか見積もられていない、十分の一しか見積もられていないというのは、この長期債務の返済計画がずさんではないかということを私は申し上げたいわけです。なぜ時価に評価された金額がここの中へ出てこないのか、出資額だけでいいのかということをここで問題にしているわけです。
  313. 熊代健

    熊代政府委員 先生にお答えいたしますが、営団地下鉄は、御承知のように帝都高速度交通営団法という法律によりまして特殊法人になっておりまして、現在の形は国鉄及び営団の路線の存在する地域を区域とする地方公共団体だけが出資できるという形になっております。  先生おっしゃいましたように、一般に公開されておる株でなくて、今申し上げたように地方公共団体及び国鉄、この国鉄の部分につきまして今度の施行法で政府が肩がわりするという形にし、その手続的な問題として施行法の附則で適正な価額で譲渡する、当然その時点では額面額じゃなくて適正な評価を行った額で政府が引き取る、こういうことになります。  ただ、今申し上げましたように、一般の民間が持てる形になっておりません。それから累積赤がまだ少しございますし、補助金を長年にわたって国及び東京都から受けている、そういう企業の中身でございますので、今の時点で額面に対して何倍に評価できるといういろいろな評価の方法はあると思いますが、それが今の時点では明確にこれが一番正しいということが言えないので、当面他の旅客会社等の株と同じで額面額をもって一応見込んだ数字にした、こういうことでございます。
  314. 浅井美幸

    ○浅井委員 だから、説明に無理があるのです。株式の売却益として、なぜ適正な価額として評価額を計上しないのか。非公開の株式の評価は資産その他の指標から理論的に出てくる、このように言われております。六十一年度予算の中にも、NTTの株式会社の株式売却益が計上されているわけです。今回これをしなかったということは私は問題だろうと思いますが、大蔵大臣どうでしょうか。
  315. 林淳司

    ○林政府委員 これは、やはり先ほど答弁がございましたように、営団地下鉄については、現在の状況では現実の市場価格というものがなかなかわかりにくいという点がございますし、それから新会社につきましても、先ほど申しましたように、分割民営化してからしばらくの間その経営状況というものを見きわめて、配当の可能性、どの程度の配当ができるかということを見きわめないと実際の株価はなかなか推定しにくいということで、現段階ではその辺の推定は非常に難しいわけでございます。したがいまして、とりあえずこれは額面価額を計上してあるということでありまして、将来その辺のところを十分見きわめた上で現実の価格を算定し、当然適正な時価でこれを売る、その分だけ国民負担は軽減されるということになるわけであります。先ほどの三年程度の期間を見きわめてという中には、その辺の事情も含まれておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  316. 浅井美幸

    ○浅井委員 私ども、この長期債務の試算表の審議に当たって、含み資産あるいはまた時価の評価というものがそういうふうに変わってくる、なかなか計算しにくい、そういうことから、もっとわかりやすい試算表にしてもらいたいという意味からこのような話をしているわけであります。  ここで話は少し変わりますけれども、東京都は都営地下鉄と営団地下鉄を一元的に運営したい。この際、国鉄改革のこういう際におけるところの清算事業団から、もしこれが政府に入ってきた場合、これから営団地下鉄に当たっての処理といいますか、東京都の要望は受けられるのですか、受けられないのですか、その点をお答えいただきたいと思います。
  317. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今御指摘がありました問題は、私は今の時点では大変お答えのしにくい問題だろうと思います。なぜなら、二つの経営主体の利害に直接かかわる問題であるということ以外にも、現時点において両者の間に経営上かなりの差異がある、格差が生じている。また職員の処遇についてもさまざまな問題があるように聞いておる。むしろ今後とも地下鉄の整備を進めていく上で資金調達の多様化を確保していきたい。そうしたことから考えますと、今これを統合するというよりも、両者の経営の効率化、殊に都営地下鉄の経営改善というものを一層促進していただくと同時に、利用者の利便向上という視点から、総合的な情報案内の実施とか乗り継ぎの円滑化のサービスなど、むしろそうした意味での一体化施策を進めることの方が適切ではないか、そのように考えております。
  318. 浅井美幸

    ○浅井委員 きのう我が党の資料要求で、清算事業団の長期債務償還年次計画が昭和六十二年から昭和八十七年まで出てまいりましたけれども、この年次計画の中で支払いの計画、償還、利子、これが国鉄の長期債務、鉄建公団債務、本四公団債務等々のこういう形で出てまいっております。その年次計画は出ましたが、支払いの計画だけで、財源の計画がこの中にはございません。十六兆四千億という国民負担になってくるところの財源、この計画が年度ごとにないというのはどういうことか、お答えいただきたいと思います。ただ、これは確かに不確定要素はわかるけれども、おおよそどうならなければいけないかという資金計画は恐らく出せるはずであります。これをいつ出すのか。これは出せないということになると問題になると思いますけれども、どうでしょうか。
  319. 林淳司

    ○林政府委員 昨日提出を申し上げました償還年次計画昭和八十六年あるいは八十七年以降は一括してございますけれども、これは現在、清算事業団の方に持っていこうとしておる現実の債務、国鉄、鉄建公団、本四公団の現実の債務、これは鉄道債券でありますとか、あるいは財投でありますとかいうふうに具体的に特定できますので、そのような債務について、現在の支払い条件に従って年次的な償還計画を立てたものでございます。  したがいまして、清算事業団としては、毎年、この表にございますように、六十二年度であれば一兆四千六百億、六十三年度は一兆七千四百億というふうに元利が出てまいりますけれども、このほかに、先ほど来御議論いただいております追加費用でありますとか、あるいは三島の基金でありますとか、いろいろな清算事業団としての債務がございます。そういうものを現実に出して毎年の支払い額を想定することはできるわけでございますけれども、その財源については、先ほど来御議論いただいておりますが、三年程度の期間をかけて十分に、その辺の自己財源と申しますか、土地でありますとか、あるいは先ほどの株式でありますとか、そういうものについての見きわめをつけた上で本格的な償還財源というものを確定したいということでございまして、現段階ではこういう支払い計画は現実の約定に従った支払い計画というふうに御理解をいただきたいと思います。
  320. 浅井美幸

    ○浅井委員 これは先ほどから繰り返して問題になっているわけですけれども、財源というものの計画が一つも示されないまま、これから三年間ずっと経過をしていく。一体どうなるのか。利子を払うために清算事業団はまた借り入れて、さらに利子がふえるということになってきましたら、この償還計画も年次計画もまた変わってくるのじゃないか。  昭和六十二年度国鉄の長期債務の中で、償還が六千二百億、利子が七千八百億。昭和六十三年度の償還が七千二百億、利子が七千四百億の合計一兆四千六百億。六十四年で償還が七千八百億、利子が六千八百億円、合計一兆四千六百億。こういうような形で全部年次ごとに計画が出されていても、今言うように、ここで清算事業団に対して国家的な補助や、あるいは補助金という形や、あるいはまた無利子の長期貸し付けとかいう形でやらないと、今出されている長期債務償還年次計画というのは狂ってきませんか。
  321. 林淳司

    ○林政府委員 この償還計画、年次計画と申しますのは、これは現実に現在借り入れをしておる、あるいは債券を発行しておるものについての元利の支払い計画でございまして、したがって、約定どおり支払いをしなければならないものでございます。  そこで、これ以外の支払い要素も含めまして、六十二年度でいいますと二兆八千億程度になるわけでございますが、これについて資金繰りも考えながら長期にわたってこれを完全に解消していくということでございまして、そのためには、先ほど来たびたび申し上げておりますが、まず三年程度かけて十分最終的な額の確定を行う、その上で二十五年ないし三十年という長期にかけて、いわゆる国の負担としての財源をどういう財源をもって幾らぐらい補てんするか、当然その支払いについては毎年毎年でこぼこは出るわけでございますが、これについては短期的な資金繰りでもってこれを埋め合わせていくということになるわけでございます。したがいまして、この年次計画は約定に従った支払いということでありまして、これについての財源ということでありますと、それはとりあえずは借りかえでいくしかしようがないということになるわけでございます。
  322. 浅井美幸

    ○浅井委員 清算事業団のことについては、またもう一遍改めてほかの角度から述べてみたいと思います。  そこで、旅客会社の収支見通し、これに入りたいと思います。  政府から出された各会社の六十二年度から六十六年度までの収支見通しによれば、一応各社とも黒字になるとしております。しかし、今まで毎年二兆円に上る赤字を出してきた国鉄が、民営分割によって六十二年度からすぐ黒字になるということはなかなか厳しい状況じゃないかというのが私の率直な印象であります。どうもこの数字は、各会社が最初から黒字を出すことを大前提として収支のそれぞれの数字のつじつまを合わせているのではないか、そういう感じがしないでもありません。  そこで、政府の収支見通しはどのような理念とどのような将来予測に立ってつくられたのか、まずお伺いしておきたいと思います。
  323. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これはまさに今回の改革自身が、国鉄をむだのない効率的経営形態に改革をして、真に利用者の利便にこたえられる鉄道として再生することを基本にしてつくられたものであると私どもは認識をいたしております。ですから、当然新会社においては事業運営の最大限の効率化を行うと同時に、関連事業部門ももちろん含めさせていただきまして、民間の鉄道と同様、できる限りの増収努力を図るべきものと考えております。  ただ、新会社の発足に当たりまして、国鉄職員の雇用対策の問題もありまして、経営に過重な負担とならない範囲でできるだけ多くの職員を引き継いでもらうということから、職員数としては、旅客会社は適正要員を超える規模で出発すること、また関連事業の十分な拡大についてはかなりの日時を要するであろうということから、必ずしも民間鉄道並みの収入を確保し、会社自身も民間鉄道並みの体制で発足をすることにはいたしておりません。しかし、その理念と言われますならば、できるだけ早期に民間鉄道並みの効率経営を目指すというところにある、今の御質問についてはそうお答えを申し上げたいと思います。
  324. 浅井美幸

    ○浅井委員 新しい旅客会社は人員を減らし、長期債務や年金負担の軽減、こういうことで身軽になってスタートするから何とか黒字になるだろうという御答弁でございますけれども、その中で私は、この新しい鉄道会社で民間経営並みの経営努力がどれほど行われるのかという点について非常に疑問に思う。こういう民間経営と同様な経営努力がどこにあらわれているのか、具体的に示す数字はありますか。
  325. 林淳司

    ○林政府委員 具体的な数字というのはちょっと難しいのでございますけれども、例えば人件費を見ますと、これは先ほど大臣からお答えしましたように、人件費のもとになる要員数については二十一万五千人という数字にしてある。これは完全な民間並みの生産性よりは若干アローアンスを見てございますけれども、まあ民間に近い形での要員数、それによる業務執行体制というものを前提としておるということであります。それから物件費等につきましても、これはやはり民間のベースも参考にしながら、現実に鉄道としてぎりぎり必要なものを計上してあるということでございます。それから租税公課その他については、いろいろな政策減税はございますけれども基本的には民間並みのいわば経費が計上してある。そういうことでこの収支については、民間の企業の経営の仕方にほぼ近い形での内容になっておるというふうに考えております。
  326. 浅井美幸

    ○浅井委員 この際運輸大臣に確認しておきたいのですけれども、これは総理でも結構ですが、今回再建監理委員会答申を最大限尊重、この精神は今も変わっておりませんか。
  327. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 変わっておりません。
  328. 浅井美幸

    ○浅井委員 資料を配っていただけましたかな。「各旅客会社の物件費見通しの比較」、これをお願いします。  そこで私は、今回の新会社がそれだけ経営努力をする、効率化あるいは節約をする、そういうことの見通しを、余りよくないという点について申し上げてみたいと思うのです。  営業費用というものは人件費、物件費、k租税公課、減価償却。先ほど林政府委員が御答弁になったように、このことが経費の中でも最も節減されなければなりません。ところが、この資料をごらんになっていただいたらわかるように、国鉄再建監理委員会の物件費の内訳は、北海道会社は三百五十二億、東日本は二千八百四十一億、東海会社は千三百九十四億、西日本が千六百八十三億、四国会社は百十五億、九州は三百五十三億、こういう形になって、全国で合計六千七百三十八億円です。  このような数字が出ておるのにもかかわらず、国鉄監理委員会の六十二年度見通し、これは民間並みということで計算をした数字です。いわゆる民営鉄道といいますか民間鉄道は、このような動力費とか修繕費とか業務費で今運営をしてきているわけです。ですから、再建監理委員会の考え方は、このような数字において十分事足れり。それが今政府見通しでは、六十二年度では、北海道は三百五十二億から四百四十四億、業務費は百四十八億から二百五億にふえております。東日本だって二千八百四十一億から二千九百六十八億、東海は千三百九十四億から千五百三十四億、西日本だって千六百八十三億から千八百五十三億、このようにふえてきて、六千七百三十八億が七千三百五十二億、このようなふえ方をしてきております。このように見ますと、物件費合計では、六十二年度は監理委員会試算よりも六百十四億もふえております。これで経費の節減や効率経営を前提とした収支見通しになっていると言えるのかどうか、お答えいただきたいわけです。
  329. 林淳司

    ○林政府委員 これも先ほどの要員の関係と同じでございまして、国鉄再建監理委員会の計算では、これは完全に私鉄の現実の動力費あるいは修繕費、業務費というものにリンクした形でそれぞれの会社の必要経費を推計したということでございます。それを受け取った政府側といたしましては、さらにこれを現実にやはり落としてみなければいかぬということで現実にすべて落としまして、積み上げ計算を綿密にしたわけでございます。その結果、例えば北海道あたりでは雪の影響というようなことが、ある意味では監理委員会の計算では不足をしていたということで、そういう要素を加えたというふうなこととか、その他現実に私鉄と違う要素もございまして、積み上げ計算をいろいろした結果、このように若干それぞれふえてきたという結果になったわけでございます。  しかし、やはり現実に現在の国鉄が安全に運行されるためには、私鉄と違った要素というものはそれなりに加味していかなければいかぬ、こういうことであろうかと思いますので、その辺のところを加味した結果がこのような数字になったということでありまして、決してむだを中に包含しておるということではございません。
  330. 浅井美幸

    ○浅井委員 そういう答弁ではこれから、今出されている数字もまた信じられなくなりますよ、現実に精査すればこのように数字が変わるなんという言い方は。あなたも再建監理委員会にいたじゃないか、再建監理委員会の数字はずさんなのか、三分割だってずさんなのか。もう一遍答弁してくださいよ。
  331. 林淳司

    ○林政府委員 監理委員会で計算をいたしましたときには、やはり限られた期間でございましたし、かなりマクロ的な推計をいたしております。先ほどの要員もそうでございますし、それから経費もそうでございます。むしろ私鉄のいろいろなデータを分析いたしまして、それにリンクした形でマクロ的な計算をしたというのが監理委員会時代の計算でございます。したがいまして、監理委員会の意見書におきましても、これについては現実に精査をすれば変動することがあり得るということを委員会の意見書そのものにも書いてあるわけでございます。政府側といたしましてはむしろ、そのようなマクロ計算をもちろん十分念頭に置きながらも、異なる要素というものについては現実に積み上げていく必要があるということで、すべて現場からの積み上げを行いまして、もちろんその積み上げどおりをそのままうのみにしているわけでございませんで、それを十分精査した上で最終的な推計値を出したということでございます。
  332. 浅井美幸

    ○浅井委員 随分ずさんな監理委員会だったということで、あなたも証明しているわけですけれども、そういう言い方をするならば、数字は、今出されている六十二年度の数字も六十三年度の数字もまた精査すれば変わってくる、こういう状況が予想されるわけです。問題だと思います。これはまたもう一遍後で重ねて申し上げますけれども。  そこで、もう一つ問題点があります。この旅客鉄道会社の経営見通しの中で当然入っていなければならなかった費用の問題で、ここで損害保険料の問題を私は取り上げたいと思います。  国鉄というのは従来公社でございましたから、事故や災害に備えた損害保険というものは予備費あるいは国を当てにしていたので、大規模な災害とか大事故、こういう保険というものは今まで国鉄は入ってなかった。ところが、民間会社であれば、民間鉄道というのは全部こういう損害保険料を支払っています。損害保険料を払わなければならないことになっております。大手私鉄の方の損害保険料の支払い額、鉄軌道事業と全事業についての保険料の支払い額は御答弁いただけますか。
  333. 熊代健

    熊代政府委員 お答え申し上げます。  大手私鉄十四社の昭和六十年度の損害保険料の支払い額は、鉄軌道業で十一億八千百万円、全事業で三十億六千八百万円になっております。
  334. 浅井美幸

    ○浅井委員 大手私鉄の損害保険料は、東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京浜急行、名古屋、近畿日本、南海電気、京阪電気、阪急電鉄、阪神電気、西日本それぞれがこの損害保険料を支払っております。これは鉄軌道事業です。ほかの関連事業についても、やはりそれなりの損害保険料を払っております。  大手私鉄の全営業距離は二千八百七キロです。これが今損害保険料は十一億八千百万円です。国鉄の場合は、営業キロは二万七十キロです。損害保険料をこれに当てはめたら一体どうなるか。今回の九十億近くの本来掛けていなければならない、民間会社、民鉄がみんな掛けているこの金額が、今回出された政府の旅客鉄道会社の経営見通しの中に入っていますか。
  335. 林淳司

    ○林政府委員 今回の旅客会社の収支試算の中には、いわゆる保険料という形では入っておりません。例えば車両をとってみますと、これについては、現在国鉄におきましては保険という形ではなくて、自家修繕と申しますか、いわゆる修繕費によってその対応をしてきたということでございます。そういう形で、車両につきまして今回の会社で全体どれぐらいの額を見込んでおるかと申しますと、約九億円程度の額を見込んでおる。先ほど民鉄の場合十一億ということでございましたが、そのうち車両が大体五億というふうに考えますと、大体その倍近い額が従来のベースでの社内の修繕費という形で含まれておるということでございます。
  336. 浅井美幸

    ○浅井委員 今私の言っているのは、車両の修繕費も問題ですけれども、人身事故の問題なんです。人がけがをする。人がけがをした場合の保険料は一体どこで払うのかと言っているのです。修繕料に人身事故が入るわけはないでしょう。人命が失われて、何が修繕費なんですか。人身事故のことを聞いているのです。だから、こういう基本的なことが今回のこの経営見通しに積算されていないことはおかしいから、大臣、これは問題だと言っているわけです。人間がけがをした、死んだ、その補償費が修繕費ですか。
  337. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 損害保険という御指摘に対するとらえ方が車両ばかりを考えた点は大変申しわけなかったと思います。
  338. 浅井美幸

    ○浅井委員 だから、この収支見通しの点については、先ほどの問題とあわせて、これは二つ問題があることを指摘しておきたいと思います。  それからもう一点。六十一年度予算で、国は国鉄に対して鉄道防災事業費補助を八十七億七千五百万円、踏切補助金を十一億六千百万円出しています。今度の六十二年度の概算要求では、鉄道防災事業費補助八十五億六千万円と踏切補助金九億九千万円を要求しているはずですが、運輸大臣、これは御存じでしょうか。
  339. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 現在、国鉄に対して、防災事業費補助及び踏切保安施設整備費補助を行っておることは御指摘のとおりでありますし、安全運行、安全輸送というものが鉄道事業にとって最大限の役割でありますから、新会社になりましても、引き続いてこの助成措置は行いたいと考えて要求をいたしております。
  340. 浅井美幸

    ○浅井委員 この収支見通しの中に特別利益という項目があります。これは北海道会社に十二億ということで計上されております。「北海道会社の特別利益は青函航路と津軽海峡線の経常損益の差に係る青函航路の欠損補填額である。」こういう補助金の形で出てくる場合、国鉄の方の旅客鉄道会社の経営見通しの中にも何らかの形で、鉄道防災事業費補助あるいはまた踏切補助金の、安全対策のための特別利益という形であらわれないものかどうか、これはどうでしょうか。
  341. 林淳司

    ○林政府委員 ただいまの防災事業費補助でございますけれども、これは損益の問題ではなくて資本勘定、いわゆる投資的な経費でございますので、資金繰り表の中にはそれを含めて計算をしてございます。
  342. 浅井美幸

    ○浅井委員 これも問題点の一つではあるのです。  それから、私は次の問題について申し上げたい。建設大臣、大分お待ちでございますので、そこへ移りたいと思います。  道路整備と新会社の収支見通しでありますけれども、現在第九次の道路整備五カ年計画が進められております。五十八年度から六十二年度にわたる計画でありますけれども、この計画の中から、道路整備によって交通体系変化に影響を及ぼすと思われる国土基盤整備の施策項目に該当する、例えば高速自動車国道、都市高速道路、大規模幹線道路、本四連絡橋等に関する事業費は五カ年で約七兆五千八百億、六十一年度について見ても約一兆五千億の事業費が投入をされております。建設省にこの点について確認しておきたいと思います。
  343. 萩原浩

    ○萩原政府委員 先生御指摘の第九次道路整備五カ年計画におきまして、高速自動車国道等の国土の発展基盤となります幹線道路網の整備には、約七兆六千五百億円を充てることといたしております。また、その内訳は、高速自動車国道の建設に約四兆一千億円、首都高速道路等の都市高速道路に約一兆四千二百億円、湾岸道路などの大規模な幹線道路に約一兆三千七百億円、本州四国連絡橋に約六千六百億円となっております。
  344. 浅井美幸

    ○浅井委員 このような多額の金額を投入しての道路整備であります。このような道路整備が交通体系変化、いわゆる旅客や物流などに影響が出てくるのは明らかです。経済企画庁長官、この点についてどう思いますか。確認しておきたいと思います。
  345. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御質問は、総合交通体系と幹線道路の関係についてでございますが、幹線道路の整備と申しますのは総合交通体系の重要な要素でございます。しかし、これと並行いたしまして、例えば長距離都市間の交通の場合には航空網の整備とか、中距離の都市間の交通手段としては国鉄鉄道、また大都市圏内の交通機関としても陸上輸送の鉄道役割が非常に大きいと思うわけでございます。したがいまして、今回の国鉄改革案は、そうした総合交通体系の中で、国鉄鉄道が本来果たすべき役割がより適切に、柔軟に、実際に即して活用できるようなそういう体制を整備するものと考えておるわけでございます。
  346. 浅井美幸

    ○浅井委員 政府の出されている新しい会社の収支の見通しが、道路整備、これに伴うところの交通の変化鉄道から車に、道路へ、人的、物的の流れの変化というものがこの経営見通しの中に果たして加味されたのかどうかというところが問題点なんです。この経営見通しというものは、そういう道路、新しい幹線道路、新線の道路、新しい高速道路ができたことを全然加味していない。だから問題にしておるわけですよ。これから幾つかの道路ができます。この影響について今私は問うておるわけです。経企庁長官と運輸大臣、お答えください。
  347. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は細かい作業を熟知しておるわけではございませんけれども、新会社の収入を試算いたします段階におきまして、鉄道のネットワークはもちろんでありますけれども、高速道路あるいは空港等の整備見通しも織り込んだ需給予測をいたしたという説明を受けております。その中で、当然道路整備が新会社の収支に与える影響も考慮されたという説明を受けております。
  348. 浅井美幸

    ○浅井委員 それは違うんです。経済企画庁長官、この経営見通しに経済企画庁は参画しましたか。
  349. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 国鉄の作業でございますので、私ども直接は関係はしておりません。
  350. 浅井美幸

    ○浅井委員 経済企画庁は参画していないと言っている。運輸大臣、うそ言っちゃ困るよ。経済情勢変化、いわゆる人的、物的の動向の変化というものは当然この旅客の経営の見通しの中に入ってなければならぬ。どんどん営業収入がふえる、乗客がふえる、貨物がふえるという見込みはないわけです。当然減ってこなければならない。それなのに、この試算からいうならば、資料の中で出てくるのは、六十二年度、六十三年度、六十四年度、六十五年度、六十六年度、この五年間を見たら、北海道も収入はふえている、東日本も数字はだんだんふえている。こういうふうに数字がふえているのは、一体何の根拠で営業収入がふえていくのか。六十二年度の旅客の鉄道会社の経営見通し一つにしても、これから昭和六十二年度までに供用される高速自動車道は、本四架橋、児島―坂出ルート、北海道縦貫、岩見沢から美唄、東北自動車道は浦和から川口、常磐自動車道は日立北から平、近畿自動車道は吉川から丹南、福知山、四国横断は善通寺から川之江西、九州は小倉東から八幡と、このようにどんどんどんどん供用は開始されるのに、この旅客の流動が変わらない、あるいはまたそのことを計算しないというのは余りにもずさんじゃないですか、収入見通し。
  351. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今うそをついては困るという御指摘をいただきましたが、私はそういう説明を受けておりますと申し上げました。そして私は、事務方の諸君が私にうそを教えたとは思っておりませんので、恐れ入りますが、事務方の御説明をお聞きいただきたいと思います。
  352. 林淳司

    ○林政府委員 需要予測でございますけれども、運輸省では従来から総合交通モデルというのをつくりまして、これは相当大がかりなモデルでございますが、このモデルに空港あるいは道路整備の五カ年計画というものを全部加味したいろいろな各交通機関の指標を全部入れまして、交通機関ごとの分担関係、その他どのようにそれが推移するかということを全部含めて各交通機関の需要予測を出しております。今回の政府の収支試算に当たりましても、この総合交通モデルを使いまして、現実の道路整備五カ年計画あるいは空港整備五カ年計画というふうなものを織り込んだ形で需要予測をしておるということでございまして、そういう各交通機関の相互の影響というものは十分織り込んだ形で需要予測をいたしております。
  353. 浅井美幸

    ○浅井委員 総理日本政府の中では経済企画庁があるのです。なぜ運輸省と国鉄だけでやるのですか。こういうのはちゃんと内閣として、中曽根内閣としての全体責任の上において、経済企画庁というのはそういう経済予測をきちんと精査するところであり、専門なんです。その人たちの知恵もかりないで、勝手に運輸省と国鉄でやった試算じゃないですか。そういうやり方はいいのかどうかということを私は聞いておきたい。また、今の答弁では、精査をした、あるいは経済情勢だとか、貨物の状況だとか、航空だとか、交通体系だとか、そういうものを勘案したと言うが、なぜそういう政府の機関を使わないのか、私は問題だと思います。御感想はいかがですか。
  354. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、経済予測の基本的な部面は、当然今のモデルを使う場合には使っているだろうと思います。それは、経済企画庁がつくっておりまする見積もりがございます、予測が。あれはたしか成長率は大体実質四%程度でずっといくという、そういう幾つかの指標はございますが、ああいうような経済企画庁が中心になってつくりました五カ年計画あるいは八カ年計画でしたか、そういう経済予測の指標というものは当然使われているのではないかと考えます。
  355. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 総理の御答弁の中にあったわけでございますが、実は五十八年八月に閣議決定いたしました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、これは経企庁が中心になりまして、関係各省それぞれ検討して作成したものでございますが、この中で、総合交通体系の中で国鉄鉄道輸送の果たす役割について、それぞれ検討して前向きのとらえ方をしているわけでございます。  なお、総理からお話がございましたが、経済の見通し、実質四%の経済成長ということを前提として、いろいろ必要な数字の計算をしております。
  356. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は旅客会社や貨物会社の政府の試算が全くすべてでたらめだと言うんじゃありません。予測値であることは認めます。しかし、政府が新しい会社に対して行える債務保証期間、旅客会社法案は五年間だけとして、その期間は十年を超えることができない、こういうこととも考え合わせて、果たして新会社の経営が改革の目的どおりの成果が出ないという状況になってもそのままにしておくのかということを申し上げたいために、私は収支見通しの例を挙げて指摘しております。  今いろいろと強弁はされるわけでありますけれども政府提出した旅客会社の収支見通しについては、我が党が今指摘したように、いわゆる民営化による効率経営の成果が物件費の節約という形でこの試算表の中には、見通しの中には載せられておりません。また、旅客会社の損害保険に関する支出も車両だけで、人間の、人的の問題には触れられていない。支出の中で欠落しておる。収入は、今申し上げたように、具体的な増収計画に基づく収入増や道路整備によるところの収入減、そういうことも見落としがあるということを私は指摘しております。  こうやって見ますと、政府の出された今回の収支見通しというものは極めてずさんと指摘せざるを得ません。私はここで、この資料は再提出してもらいたい、この再提出がなければ審議はできない、このように思いますけれども委員長、お取り計らいを願います。
  357. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私どもは、委員会の意を受けて、理事会でお決めをいただいた資料要求について、最大限忠実に資料を提出いたしております。また、理事会の御決定等があり、なお精査の御命令があれば、できる限りの努力はいたします。
  358. 細田吉藏

    細田委員長 それでは、浅井君に申し上げます。  ただいまの資料の点は、理事会において協議をいたします。  質問を続行してください。
  359. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、今この問題について、物件費あるいは損保というか、損害保険というか、そういう問題が改善されていないということを指摘し、また収支の中に載せられていないということを指摘したわけです。それも、何もかもが、いやもうこれは精査したあれでございます、あるいは実態に即したあれでございますということで、政府案が唯一無二のようなやり方で押してくるやり方というのは、私は余りいいやり方ではないと思うのです。もう少し謙虚に物件費というものもその中に含めるべきだ。また今の損保の問題も、民間会社になるんだから、もし何かあれば、普通の人でも火災保険に入るあるいは損害保険に入っているわけでありますから、民間会社がこれから運営する場合にそういう保険を掛けておくというのは常識であります。今までの国有鉄道はそういうことをやらなかったから、そういうものが抜けておった。先ほどの監理委員会ではありませんけれども、時間の制約があって取り急いだから、そういうものが精査されてなかった、こういうことが後で出てこないように、私どもはこれを指摘しているわけです。  私たちは基本的に、分割することについて余り反対ではありません。もちろん民営について賛成であります。しかしながら、問題点は問題点として指摘しているわけです。一たんこれがスタートしたならば後戻りはできない。あれは悪うございました、あれは間違いでしたでは済まないし、また国民負担が起こってくることだから、この辺について旅客会社の経営見通しというものをはっきりしておきたい、こういうことで申し上げているわけです。  それでは、委員長お話でございますので、次へ進ませていただきます。それは用地売却について申し上げたいわけであります。  この用地売却も、長期債務の返済に大きなかかわりがあります。当初、五十八年度、再建監理委員会が、二千六百ヘクタールの国鉄用地を売却して五兆八千億の財源を生み出したい、こういうことで用地売却の計画が出てまいりました。ところが、これはいろいろと今問題を醸しております。今国会では、三千三百ヘクタールですか、七千件、五十八年度よりもさらにふえた面積、またさらにふえた件数、そういうものがありながら、わずか一千億しかふえなかった。これだけの大きな面積がふえ、五十八年度から五十九年、六十年、六十一年と三年も経過しておるにもかかわらず、わずか一千億の上積みで試算されておるということは一体どういうことか、まずお答えいただきたいと思います。
  360. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず、その一千億と言われる部分について御説明を申し上げたいと思います。  非事業用地売却収入は、監理委員会試算で、御指摘のとおり五兆八千億でございました。そして、監理委員会の試算におきましては三島基金の見合いとされておりました土地を、たしか北海道会社であったと思いますが、北海道会社に現金で給付をいたすことにいたしまして、それを一千億円上積みして五兆九千億という数字を監理委員会試算の数値として御提出を申し上げたわけであります。
  361. 浅井美幸

    ○浅井委員 五兆九千億、七千件の三千三百ヘクタールですか、この土地の五兆九千億になった根拠、積算基礎、何をもとにどれを計算してこの数字が出ているのですか、これをお答えいただきたいと思います。
  362. 林淳司

    ○林政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、まず五兆八千億は、監理委員会の数字をそのままこの表には計上してございます。あと一千億ふえましたのは、これはただいま大臣から答弁いたしましたように、三島会社に基金の一部として土地を提供するということにしておりましたのを、今回政府の方でそこを見直しまして、基金はすべて現金にする、そして土地については清算事業団の方へ持ってきて、これを売却対象にするというふうに方針を変えましたので、その部分について一千億上積みをしたということであります。根っこの五兆八千億は、監理委員会の数字をそのまま計上しておるわけでございます。
  363. 浅井美幸

    ○浅井委員 監理委員会は五兆八千億の積算の基礎はどこに置かれたのですか。
  364. 林淳司

    ○林政府委員 監理委員会の方では二千六百ヘクタールの時価の推定をしたわけでございますが、その方法としましては、公示価格を基準にいたしまして、それに実勢の状況を勘案して算定をしたというふうに聞いております。
  365. 浅井美幸

    ○浅井委員 この土地、監理委員会の場合のときでも、二千六百ヘクタールの七割は東京や大阪という大都市です。三年間に地価の上昇が目立つと言われている、狂乱地価とも言われているような状況の中で、土地は値下がりをしたことはない。そのような状況の中で、仮に五十八年度から三〇%の値上がりをしたというだけで一兆円以上の増収は見込める、こう言われている。そう言われているのに、監理委員会の五十八年度試算が五兆八千億、それが三年間たって面積はふえて一千億しかふえないというのは、だれが聞いたって、国民が聞いたって、みんなおかしいと言っているのです。こんなものを信じているものはだれもいないし、そんなばかなことを日本政府はやっているのですか、こうなっているわけです。なぜもっときちんとした実勢価格に近いものがこの中で出てこないのかというのが今問題になっている。あなた方は、言いくるめというか抗弁して、強弁して、あるいは予見を与えるとかどうだとかこうだとか言っておりますけれども、そんなことはだれでもがわかっていることです。  この間から国鉄の土地の公表をした。その公表したことによって、不動産業者だとか、土地業者だとか、民間デベロッパーだとか、あるいは大手企業だとかは、みんなきちんともう計算済みなんです。それで、こんな五兆八千億だとかいう金額なんというのは、何の数字なのか全然わからないのです。監理委員会が五兆八千億だから、我々も五兆八千億で信じろというわけですか。お上で決めたことはどれもが正しいという言い方ですか。五兆八千億の積算基礎というのは、公示価格に若干の現状を加えただけ、そんなものは全然わかりませんよ。公示価格なら公示価格、基準価格なら基準価格、はっきりしたそういう数字というものを出してもらわないと、何をプラスし、何を考えたのかわからないものを我々に納得させようというのはちょっとおかしいじゃないですか。
  366. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、再建監理委員会がどういう試算をしたかは、再建監理委員会委員ではございませんので存じませんけれども、今浅井さん自身がはしなくもお触れになりましたように、この国鉄の所有地の処分というものが世間の関心を大変集めておることは、これは間違いがございません。そして私どもは、国鉄の長期債務を今後処理していきます上で、当初監理委員会ベースでは二千六百ヘクタールと言われておりましたものを、国鉄自身の積み上げによって三千三百三十ヘクタールまで生み出してきたこの土地、これをできるだけ高い値段で処分をしたいと考えております。ですから、これはあくまでも五兆八千億プラス、再建監理委員会の当時には土地で北海道会社に渡すとしておりましたものを、土地ではなくお金で渡すことにしましたために一千億、これがふえた、不動産処分としての一千億がふえた。この五兆九千億という数字はまさに監理委員会の試算の数字でありますが、私どもとしては、これをできるだけ高く売却をして、最終的に残る、国民に御負担をいただかなければならない債務を少しでも減らしたいとしておるわけであります。  ずさんという御指摘でありましたが、今までの御質疑の中でもさまざまな角度からの御指摘をいただきましたが、私どもとしては、この売却を予定しておりますそれぞれの物件につきましてのいかなる予見も業者の人たちに与えたくはございません。そしてまた、その結果として国民の財産であった国鉄の土地というものを処分していく中で、国としても損をしたくはございません。そうした点から、資料としては全部御提出を――その土地や何かについてできるだけのお示しはいたしますけれども、金額的な面については御了解をいただきたい。先ほどから繰り返しお願いをしているわけであります。
  367. 浅井美幸

    ○浅井委員 運輸大臣が苦労しながら答弁していることもわかります。わかりますけれども、これは、こちらに座っておられる議員の皆さん方だって、これだけの値段、五兆八千億か九千億しかないと思っていらっしゃる人は一人もいないと私は思いますよ。それを今この審議の中で、長期債務の償還方法はこれでございますと出されている金額が五兆九千億ですから私は問題にしているのです。長期債務の返還の仕方が――今これはふえる話ですから、もっと値打ちがあるだろうから高く売れるだろうという話だから、やや問題の角度が違いますけれども、もし五兆九千億入らない、歳入欠陥が出るとしたらどうなんですか。だから、会計法上いえば、ふえても減っても問題はあるのです。あの収入というものは、十六兆四千億は国民負担になるかならないか、どういう形で負担になるのかということで今問題になってきている。今減りそうだから、割合話はまだ、あなた方の話でも我々がまあまあというふうになりますけれども、もしこれが歳入欠陥が出るようになったらもっと大変じゃないですか。そういうことからいって、減ってもふえても本来会計法からいえば問題なんです。  今、大阪の方で大鉄局の建物、大阪駅の北、梅田貨物駅、梅田コンテナヤード、こういうのは大阪では超目玉です。東京で汐留、東京の本社、同じように並び称されています。大阪だって甲子園球場の約七倍の土地だと言われているのです。これは、企業や不動産業界にいろいろと話を聞いてみますと、安くて坪が二千万、高ければ六千万から七千万、大鉄局の官舎の角地の部分だったら坪は一億だという声もある。現状は道路や水道等がない。このままでは安い払い下げになるだろうから基盤整備をしなければならぬ。払い下げて安値になる反面、基盤整備をされれば高い価格で売れる、こういう話があるのです。そんな話で沸いているんだ。それを我々が国会審議の中で、それは五兆九千億、これは予断を許すから値段の方は御勘弁願いたい、これだけ資料を出しました、売る場所は出しました。今売る場所の話じゃないのです。中身は何ぼかと、金額の話をやっておるわけです。その金額がどうだということで、その金額の積算の根拠は一体何なのかと聞いたら、公示価格にプラスアルファと。一体そのプラスアルファというのは何なのか、我々にも明快に、いや国民の前に明快に、この五兆八千億の積算の根拠を示す責任があなた方にあるんだと私は言いたい。それが言えない言えないというのでは、これはもう平行論なんです。それで数字だけ、収支の見通し、長期債務の返還計画、これを御承認くださいとあなた方は私たちに出してきている。これを承認しろと言う方が無理なんじゃないですか。おかしいと思いますよ。どうでしょう。
  368. 林淳司

    ○林政府委員 トータル額の五兆八千億円につきましては、先ほど申し上げましたように、国鉄再建監理委員会で個々の土地につきまして公示価格、それと実勢との関係を加味しまして、ほとんど現実に近い形で時価を推計したというふうに聞いております。ただ、その時点は五十八年の公示価格をベースにしております。今回はそれから時点が少しずれております。時期が少し変わっておるということが一つと、もう一つは、面積につきましても二千六百ヘクタールが三千三百三十ヘクタールに変わっておるということでございますので、そういう事情の変化というものを勘案しましてこの五兆八千億は見直す、すなわち監理委員会の計算方法を用いて、これを延長するという形で、そういう仮定条件のもとでこの五兆八千億の見直しの額を算定いたしますということを午前中に運輸大臣から御答弁申し上げたわけでございます。
  369. 浅井美幸

    ○浅井委員 答弁になっていないと私は思うのですね。五十八年に、現状に近い公示価格、基準価格、実勢価格に近いものを試算をした、それは信じましょう。それから三年たって地価が高騰してきている。それが面積もふえた。ふえて三年後の今日、今それが一千億しか上がっていないのですかと聞いたら、それしか上がらないと言うから、おかしいんじゃないか、こう言っているわけです。
  370. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いや、その一千億の点につきましては、もともと北海道会社に資産として提供されるべきでありました不動産を売却処分の対象地として、それに見合う金額を北海道会社には交付をいたしました。それがちょうど一千億円であります。それが売却予定地に加わりまして、ちょうどその時期の価格でいえば一千億分が上乗せをされて五兆九千億になったということであります。ですから、これはあくまでも再建監理委員会の土台の上における数値であります。  委員の御指摘のように、では、それは現在の価格ではないではないか、それ以降の地価の上昇その他を考えれば、しかもその二千六百ヘクタールに対して既に三千三百三十ヘクタールという量的にも拡大をしたものになったのならば、当然その金額は動くはずだという御質問は、私はその限りでそれが過ちだとは申し上げておりません。ただ、今金額をいかなる形であれ示すことは、これからの資産処分の上に大変さまざまな影響を及ぼす可能性があるということから、その数字はお控えをさせていただきたい、繰り返しお願いをしてまいりました。  ただ、午前中、あくまでも仮定を置いて、その五兆八千億に見合う数字というものを現時点に引き直してみてくれという御指示がございまして、ですから、総額については、私どもはあくまでも仮定の上の試算として計算をさせますという御答弁は申し上げております。その計算があしたのいつごろ――特に、まだ私ずっとここにくぎづけになっておりますから、事務方にいつまでにその試算ができるかということを尋ねる暇もない状況であることは委員が御承知のとおりでありまして、できるだけ早くその試算が終了すればお届けをいたすことになろうと思いますけれども、あくまでも仮定の数値でしか今お答えのしようがないということは御理解をいただきたい。
  371. 浅井美幸

    ○浅井委員 私は、仮定ということでありますけれども、今回の審議に当たって心配している点というか、何でもかんでも政府に白紙委任を下さいというようなやり方、言い方、これは問題だろうと思うのですけれども、今の仮定というのは一体どういう根拠の仮定なんですか。仮定の計算といっても、私たちは子供じゃないのですから、どういう計算をしてそれを出します、いつまでに出しますということをやはりはっきりしてもらわないと、私たちはこの土地の数あるいはまた面積を審査しているわけではないので、金額を審査しなければならないのです。ですから、その仮定なら仮定はどういう仮定に基づいて計算をします、この辺をお答えいただきたいと思うのです。
  372. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 たしか、これは小里委員からの御質問に対して、私はそういう数値はできないと申し上げましたところ、公示価格というものもあるではないか、これを引き伸ばして、その五兆八千億の上に立った推計をしてみることはできないか、そういう趣旨の御質問をいただき、首をひねっておりましたところ、ぜひやってみろということでありましたので、これはあくまでも仮定ということになりますが、それではそういう試算をいたしてみましょうというお答えを申し上げたわけであります。先ほども申し上げましたように、いつまでということを、事務方に作業の時間を聞く時間すらきょう私はないことは委員が御承知のとおりでありまして、この委員会審議が終わりましてから改めて事務方の諸君に、そういう仮定の試算をしろと事務当局に命じた場合どれくらいの時間でできるかということを聞いてみますが、少なくとも一両日のうちにお出しができるだろうと私は思っております。
  373. 浅井美幸

    ○浅井委員 この際、念のためにお伺いしておきますが、大蔵省の理財局、大蔵大臣でも結構ですけれども、地価は三年前から今まで、三年間たって大都市の一等地というのは一体どういうふうになっておりますか。国鉄の土地というのはまさに日本列島の中の貴重な土地なんです。貴重、重要な土地なんです。大蔵省の理財局か国土庁長官か、どちらでも結構です。
  374. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 十月一日に各都道府県で調査をいたしました地価の発表をいたしましたが、四十都道府県におきましてはほぼ二%程度、ほとんど横ばいでございます。東京を含む八都県で、多いところでは四〇%という極端な値上がりを見ておるところもあるということでございまして、先日新聞で発表したとおりでございます。
  375. 浅井美幸

    ○浅井委員 「売却可能用地の推計」で、五十八年度価格というのは、「当該用地の現況によってではなく、当該用地が商業地あるいは住宅地として最も有効に使用される場合を想定し、近傍における商業地及び住宅地の公示価格、標準地価格等を基礎として評価した。」こういうことですから、六十二年度初めの価格については三年間の地価上昇率を毎年五%と想定して算出をしている。それで六十二年度初めでは六兆六千億という数字が出ていますが、これは間違いありませんか。
  376. 林淳司

    ○林政府委員 今先生の資料をちょっと私よく存じないのですけれども、恐らくこれは監理委員会が試算をしたときに、五十八年の公示価格を基準としまして実勢を加味して積算をした、そうしたところが、二千六百ヘクタールにつきまして六十二年にはその評価をすれば六兆六千億になる、それからいわゆる基盤整備費その他を引きまして、その結果として五兆八千億になるという数字ではないか思います。
  377. 浅井美幸

    ○浅井委員 いずれにせよ、用地入札の問題についてまた、時間も余りございませんけれども触れなければなりません。  政府は、今度、日本国有鉄道清算事業団法によれば、「土地の処分に関する契約の締結の方法は、一般競争入札の方法に準じた方法とする。ただし、次のような場合には、随意契約によることができることとする。」こういうことでいろいろと書いております。この中で、随意契約によらない場合、一般競争入札、そして「国、地方公共団体等に公共用、公用等の用に供するため必要な土地を譲渡することを目的とする場合」は随意契約、こういうように書いておりますけれども、この随意契約による特別の場合、随意契約によらない場合あるいはまた一般競争入札によらない場合、こういうものに対しての例を挙げて御説明いただけますか。
  378. 林淳司

    ○林政府委員 具体的な例というのはちょっとここでは挙げにくいわけでございますけれども、資料として既に御提出をいたしました政省令の案がございます。そこで「土地の処分に関する契約の締結の方法」ということで、法律上は「一般競争入札の方法に準じた方法」、これが原則である。ただし、省令で定める場合はこの限りでないということで、その省令で随意契約による場合を幾つか想定しております。もちろんこれについては、この法律の御審議をいただいた後で、現実に省令を制定する段階で正式に決定する事項でございますが、現段階で考え得る方法として六つほど掲げてございます。  一つは、その契約が国とか地方公共団体等に公共用あるいは公用という形で使用される、そういう場合に必要な土地というものを国あるいは公共団体に譲渡する場合、あるいは一般競争入札によって公告を行いましても入札者がないという場合でありまして、かつ予定価格以上の価格で契約が締結できる場合、あるいは再入札をいたしましても落札者がない、そういう場合でありまして、予定価格以上の価格で契約が締結できる場合、あるいは落札者が契約を結ばない、そういう場合で、落札金額以上の価格で契約の締結ができる場合、あるいは貸付契約の内容がこの法律の第一条の目的を妨げない場合であって、貸付期間が一年を超えないごく短期の貸し付けの場合、それから契約が売却を目的とする場合であって、その予定価格が一定価額を超えない、こういうふうな場合を一応現段階では想定しておるということでございます。
  379. 浅井美幸

    ○浅井委員 この随意契約というのは、国とか地方公共団体等に公共用、等の用に供するために必要な土地を譲渡することが目的とされております。ところが、新聞報道によりますと、和歌山県では、町に払い下げられた国鉄の土地が一般の民間に転売されていたということが報道されておりました。この契約は、国、地方公共団体等の中に、例えば大きな土地であるので地方公共団体も財政負担が困る、だから民間も入れて第三セクター方式で払い下げを受けたい、そういう第三セクターが入った場合でも公用等の用に供する、このように判断するわけですか。
  380. 林淳司

    ○林政府委員 現在の国鉄用地につきましては、これが地方公共団体に譲渡される場合のほかに、いわゆる公法人と申しますか、公的な法人というものに対して譲渡する場合も随意契約で行うことができるようになっております、現段階では。しかし、この辺については、これからの清算事業団としての売り方というものは、できるだけ財源をたくさん確保するとか、いろいろな面で、どういう売り方をするかということについてはこれから相当慎重に考えなければいけないだろうということでございまして、これについては最終的には、この法律を成立さしていただきましたならばその暁において、運輸省令を定める段階でそこは十分さらに慎重に検討したいというふうに考えております。
  381. 浅井美幸

    ○浅井委員 それから、先ほどの御説明の予定価格以上の価格で契約を締結する、この予定価格というのは一体実勢価格なんですか、時価なんですか、あるいはまた評価額なんですか、基準価格なんですか。
  382. 林淳司

    ○林政府委員 先ほど御答弁申し上げました六番目でございますけれども、「契約が、売却を目的とする場合であって、その予定価格が一定価額を超えないとき。」というのは、非常に安い場合、例えば鉄道林、これは地方の鉄道林等につきまして価格が非常に安い場合がございますが、こういうものについてはそれほどシビアな縛りは必要ないんじゃないかということで、ある予定価格というものを決めまして、その安い予定価格による場合には随契ができる、こういうことを想定しておるわけでございます。
  383. 浅井美幸

    ○浅井委員 それを聞いているのではないのですよ。予定価格というのは一体どういう価格かと聞いているのです。予定価格は一定価額かとは聞いていないのです。予定価格というのは時価なのか、実勢価格なのか、評価額なのか、基準価格なのかと聞いているわけです。
  384. 林淳司

    ○林政府委員 これは時価でございます。例えば入札する場合には、企業者側で時価で予定価格をつくりまして、それでもってそれを目安にして、これはもちろん公表しないわけでございますけれども、入札をするわけでございますが、あくまでこれは時価でございます。
  385. 浅井美幸

    ○浅井委員 いわゆる随契にまつわる問題が今までいろいろとありました。したがいまして、この随契に対する、後から国民の疑惑のかからないような歯どめというか転売規制だとか、いろいろな問題についてはもう一遍また明日子細に伺いたいと思いますけれども、いずれにせよ、今この用地の問題については最大限国民関心を集めている問題なんです。この用地の問題についての売買、あるいはこれから売るに当たって不明朗なことのないようなやり方というものを私どももまた考え方として持っておりますので、それはまた明日子細に申し上げたいと思います。  大体時間が参ったようでありますので、この際、この席で資料の提出を求めておきたいと思います。  国鉄の関連企業が離職者に対して、受け入れをするわけであります。約二万一千人についてございますけれども国鉄関連企業は八百六十五社あって、既に受け入れを表明した企業としては、大手で鉄道弘済会、日本交通公社、日本食堂、営団地下鉄等ございますが、その他についてはまだ子細に聞いておりません。二万一千人の確保ができるかどうか、このことについて私は心配な点がありますので、この点を明らかにするために、委員会に明日までに資料の提出をお願いしたいと思います。  また、もう一点、関連企業と国鉄とでは給与水準に差がございます。関連企業の職員の年代別給与水準と国鉄職員の年代別給与水準の比較、これをぜひ出していただきたい。  この二点について要望いたしますが、総裁、いかがでしょうか。
  386. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 御指摘の数字は明日までに提出いたします。
  387. 浅井美幸

    ○浅井委員 本日はいろいろな点がございましたが、時間も参りましたので、本日の質疑はこれで打ち切りたいと思います。
  388. 細田吉藏

    細田委員長 次回は、明八日午前九時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会