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1986-10-30 第107回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月三十日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 石川 要三君    理事 北口  博君 理事 竹中 修一君    理事 戸塚 進也君 理事 船田  元君    理事 宮下 創平君 理事 鈴切 康雄君    理事 和田 一仁君       有馬 元治君    今井  勇君       内海 英男君    大村 襄治君       河野 洋平君    鴻池 祥肇君       武部  勤君    玉生 孝久君       月原 茂皓君    前田 武志君       谷津 義男君    大原  亨君       角屋堅次郎君    田口 健二君       野坂 浩賢君    市川 雄一君       斉藤  節君    川端 達夫君       児玉 健次君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 倉成  正君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君  出席政府委員         北海道開発庁計         画監理官    大串 国弘君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁長官 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      西村 宣昭君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         厚生省社会局長 小林 功典君  委員外出席者         法務省刑事局公         安課長     木藤 繁夫君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      林  貞行君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         厚生省保健医療         局感染症対策室         長       伊藤 雅治君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ───────────── 委員の異動 十月三十日  辞任         補欠選任   今井  勇君     住  栄作君   佐藤 文生君     玉生 孝久君 同日  辞任         補欠選任   玉生 孝久君     佐藤 文生君     ───────────── 十月三十日  臨時行政改革推進審議会設置法案内閣提出第一八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十月二十八日  靖国神社公式参拝反対に関する陳情書(第一号)  人事院勧告完全実施に関する陳情書外六十七件(第二号)  スパイ防止法制定促進に関する陳情書外五件(第三号)  国家機密法制定反対に関する陳情書外三十二件)(第四号)  同和対策充実強化に関する陳情書外八件(第五号)  部落解放基本法制定に関する陳情書外三件(第六号)  地域改善対策特別措置法有効期限後の措置に関する陳情書(第七号)  元軍人軍属恩給欠格者救済措置に関する陳情書(第八号)  軍人恩給法改定に関する陳情書(第九号)  シベリア抑留者恩給加算改定に関する陳情書外三件(第一〇号)  元満州開拓青年義勇隊員在籍期間軍人恩給算入に関する陳情書(第一一号)  旧台湾人日本軍人軍属に対する補償制度早期確立に関する陳情書(第一二号)  在外私有財産に対する国家補償早期実現に関する陳情書外二件(第一三号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ────◇─────
  2. 石川要三

    石川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。児玉健次君。
  3. 児玉健次

    児玉委員 防衛二法の改正案質疑に先立ちまして、若干お尋ねしたいことがございます。  この二十一日の衆議院会議で私は防衛法改正案について御質問いたしましたが、そのとき、戦前における日本の大東亜共栄圏思想、そして同じく戦前ナチスドイツゲルマン民族に対する特別な純血性単一性の強調、これらが不幸な戦争への思想的要因になったということを思い起こしつつ、中曽根首相単一民族発言について質問いたしました。それについて中曽根首相は、日本には差別を受けているような少数民族はいない、私なんかも、まゆ毛は濃いし、ひげは濃いし、アイヌの血は相当入っているのではないかと思う、こういう答弁をされました。この答弁には多数の国民が驚き、アイヌ皆さん方を初め多くの国民から抗議の声が起こっております。私は、中曽根首相発言首相御本人が発言を撤回し陳謝する、それ以外にないと考えておりますが、きょうは先日の本会議質問とも関連して、幾つかの御質問をまずさせていただきたいと思います。  最初に、厚生省に伺いたいのですが、北海道土人保護法について、北海道土人とはどんな人たちを指すのか、そのことについて簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  4. 小林功典

    小林(功)政府委員 北海道土人保護法に言います北海道土人といいますのは、和人と言われた人たち北海道に移住してくる以前から北海道に居住していた先住民族及びその子孫でございます。いわゆるアイヌと呼ばれる方々でございます。
  5. 児玉健次

    児玉委員 この法律の第七条に「北海道土人保護ノ為必要アルトキハニ関スル施設ヲ為シ又ハ施設ヲ為ス者ニシ補助ヲ為スコトヲ得」、そして八条に「前条ニスル費用ハ北海道土人共有財産収益以テニ充ツシ不足アルトキハ国庫ヨリ之ヲ支出ス」。  そこでお尋ねしたいのは、「北海道土人共有財産収益」が今どうなっているか、それから「不足アルトキハ国庫ヨリ之ヲ支出ス」、そのようなことがあったかどうか、お尋ねします。
  6. 小林功典

    小林(功)政府委員 第七条に確かに先生の御指摘のような施設規定がございますが、それは法制定以来やったことはございません。したがって、それに共有財産収益は使ったことはございません。ただ、現金で共有財産を持っておりまして、今約九十一万円ございますが、これは銀行に預金して管理しておるということでございます。
  7. 児玉健次

    児玉委員 この法律の対象となるのは、先ほど厚生省からお答えがあった北海道の先住民、いわゆるアイヌ人たちに限定されているのですか、どうですか。
  8. 小林功典

    小林(功)政府委員 アイヌ人たちに限定されていると思います。
  9. 児玉健次

    児玉委員 厚生省はこの法律を翻訳されて外国に紹介なさったことがございますか。
  10. 小林功典

    小林(功)政府委員 訳しまして外国に送ったことはございません。
  11. 児玉健次

    児玉委員 この問題でこれまで政府がどのような態度を公式にとってきたかということを少し振り返って調べてみました。そうすると、昭和四十七年三月十六日の社会労働委員会議録に出ているわけですが、斎藤昇厚生大臣、この方が「ここで」、いわゆる旧土人保護法です。「ここでいう旧土人と申しますのは、当時アイヌ人種といわれておったのが主でございます。」と、「アイヌ人種」というふうにお使いになっている。「そこでアイヌ方々がその生活をだんだん脅かされて、そしてだんだんと減っていくのじゃないかというようなことから、旧土人保護法というものが制定せられたものだと考えております。私が役人生活を始めて内務省にいました当時、昭和の初めごろ、この旧土人保護法というものを所管する課におりました。そしていかにもこの法律の名前もいかがなものであろうかという感じを若いときに抱いておりまして、今日まだそのままになっておることを、これでいいのかなと感じました。」昭和四十七年の段階で斎藤厚生大臣は正式に答弁されております。  現在の斎藤厚生大臣はたしかこの斎藤昇さんの御子息だと思います。二代にわたって、しかも斎藤昇厚生大臣が官僚になられたその直後、昭和の初めからこの法律については妙だとお感じになっていた。斎藤昇さんが昭和の初めに変だと思ってから既に半世紀以上たっています。  そこで私は厚生省にお尋ねをしたいわけですが、この際旧土人保護法を廃止する、名称が適当とか不適当とかじゃなくて——名称が不適当であるということは余りにも当然ですので、この際旧土人保護法を廃止して、アイヌ生活権利文化保護を保障する新しい法律をつくることが政府責任だと考えておりますが、厚生省はどのような検討をなさっているのか、お答えいただきたいと思います。
  12. 小林功典

    小林(功)政府委員 ただいまお話しのございましたアイヌについての、今はウタリと言っておりますけれどもウタリについての文化とか教養とかいう全般を含めたお話になりますと私ども厚生省としてお答えする立場にございませんけれども、少なくとも私ども厚生省としましては、前々から北海道土人という名称は適切ではないだろうと考えておりまして、それはそれでいろいろ検討し議論したわけでございますけれども、その名称につきましては何らかの是正措置を講じなければならぬと考えております。
  13. 児玉健次

    児玉委員 ちょっと述べておきますが、アイヌ皆さん方はみずからのことを仲間、ウタリとおっしゃいますが、最近アイヌ皆さん民族意識の高揚の中で、みずからのことをアイヌと堂々と胸を張っておっしゃいますので私は先ほどからアイヌと言っているのです。これは念のために申しておきます。  厚生省厚生省立場としての範囲があるという点についても若干今お話がありましたが、もう一遍伺いますけれども名称が不適当だという範囲での検討ですか。
  14. 小林功典

    小林(功)政府委員 名称と申しますか、旧土人保護法関係につきましては、これは私どもの所管でございますのでお答え申し上げますが、その他の先生のおっしゃるアイヌ全般についての取り扱いといいますか、法体系をどうするかという問題につきましては、これは全省的な問題でございますから、しかもそれはアイヌ方々の議論も今なされております、現に北海道におきましてウタリ問題懇話会というものが開かれております、そこら辺の関係も見ながら検討しなければいけませんので、今直ちに厚生省としてここでお答えするわけにはいかない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  15. 児玉健次

    児玉委員 厚生省には積極的な努力を強く期待いたしますし、そして今お話しのように内閣全体の問題、関係省庁の問題にまたがっているということですから、この点については後ほど後藤田長官に伺いたい、こう思います。  次に行きます。アイヌに対する差別の問題についてです。  十月二十二日の衆議院法務委員会において我が党の安藤委員からこの点を質問いたしまして、法務省人権擁護局長などから、アイヌに対する差別が残っていることについての幾つかの事例が具体的に示されました。そして、これは何も現在国会で新しく問題になったわけでなく、多くのアイヌ方々が居住されている北海道で、例えば昭和四十八年、一九七三年の三月、北海道議会の本会議で、当時の堂垣内知事が次のように述べております。「開道百年をこえる長い歴史の中で、ウタリ方々は御指摘のように一部の心ない人々の偏見などにより幾多の苦難の道を歩んでこられました。私としましてもまことに遺憾に存ずる次第であります。私はこのような反省に立ちまして、積極的な努力を致してまいる決意であります。」この堂垣内知事決意について、開発庁は御承知でしょうか。
  16. 大串国弘

    大串政府委員 承知をしております。
  17. 児玉健次

    児玉委員 そして、昭和四十九年三月ですが、北海道開発庁長官をされていた町村金五さん、町村さんの政治的な経歴や御意見について私はさまざまな意見を持っておりますが、町村国務大臣国会において次のように答弁をしております。「北海道は、開道百年前には、わずかに人口は、いわゆる和人内地の人は数万にすぎなかった。」そう述べた後、「そのあとに和人が入りまして、次第に彼らの生活圏をだんだんと縮めていってしまったというようなことで、現在は御承知のように、例の旧土人保護法というようなものができ上がりまして、わずかばかりの土地等を彼らに確保するというようなことが、明治時代に行なわれたというようなことでありまして、まさにそのとおりであり、われわれとしてはこれをこのままに放置しておいてはまことに相済まぬことと、こう思っております。」  当時の町村開発庁長官はこう答弁されまして、そして、続いてこうも答弁をされています。「内地人は、アイヌ民族の持っておりまするきわめて貴重な文化というものを、われわれの時代にこれを消滅させてしまってはまことに相済まぬことだと考えております。アイヌ民族は、御承知のとおりことばがありましたけれども文字を持っていない。」言葉はあったけれども文字は持っていない。「したがって、いまだんだん古老などが次第に減っていってしまうというような状態でありまするので、そういう方々の現存しておられるうちにこういう文化の遺産というものを一つ残さず保存するということは、ほんとうに私はわれわれ和人の重大な責任だと考えております」、こうも述べております。この点について、開発庁は御承知でしょうか。
  18. 大串国弘

    大串政府委員 承知しております。
  19. 児玉健次

    児玉委員 それでは、町村開発庁長官がそのように述べているわけですが、そういったことを踏まえて今開発庁としてはウタリに対する対策などでどのような努力をなさっているのか、そのことについて御答弁いただきたいと思います。
  20. 大串国弘

    大串政府委員 先生指摘のように、堂垣内知事の御答弁それから町村長官の御答弁、こういう問題が契機となりましてウタリ福祉対策、これは道庁が進めておりますが、四十九年からウタリ人たち生活向上を図るという基本的な立場に立つということで、ウタリ福祉対策北海道庁がやっております。それを国の立場からも支援するといいますか、強力に推進するということで、昭和四十九年にウタリ対策関係省庁連絡会議というものを設けまして、これは北海道開発庁が窓口になって進めております。  そのウタリ対策事業内容につきましては、生活環境改善とか教育の奨励、就労の安定、生活基盤の整備と広範にわたっているところでございます。四十九年から進めておりますけれども、六十一年度の予算につきましては、国費ベースで十二億五千七百万ということになっております。この事業を進めることによりまして、ウタリ方々生活水準向上が図られている、このように考えているところでございます。
  21. 児玉健次

    児玉委員 アイヌ皆さんの御意見をよく聞いてくださって努力を強めていただきたいということを述べまして、次の問題ですが、十月二十一日の衆議院会議における中曽根首相の御答弁が多くの国民を驚かせ、そして抗議の声を上げさせているということについては冒頭述べましたが、私は、この機会に国際的な反響について一つだけ述べたいと思います。  カナダにグローブ・アンド・メールという新聞がございます。これはカナダの有力な全国紙です。この新聞の十月二十三日付に東京特派員電が大きく掲載されておりまして、その見出しは「中曽根発言アイヌ人を怒らせる」、これでございます。そして、中にこういう記事が書かれております。「私はマユやヒゲが濃く、アイヌ人の血が相当混じっている」と述べたことを紹介して、この発言は、カナダ首相が自国の中で「自分の大きな鼻はユダヤ人の血統であり、リズム感の良さは黒人の血を引いているからだ、と冷やかし半分にいうのと同じことだ、」そう報道いたしまして、中曽根首相民族観を痛烈に皮肉っております。そして、この記事は続いて「彼ら(アイヌ人)は本当は存在しない、とほのめかしてアイヌ代表たちを怒らせている」、こう指摘し、そして、本会議における私の質問でも言及いたしましたが、他民族であって日本国籍を取得した多くの方々、例えばこのカナダ全国紙在日韓国人の例を挙げて「明らかに少数民族は存在するように思える」、こう述べております。  私がこの記事をあえて紹介いたしましたのは、御承知のとおりカナダは多民族で構成する国家でございまして、少数民族自主性独自性を最大限に尊重し、みずから多様文化主義を国是にしている国です。そういう国の東京特派員中曽根発言について自分の国にそういう記事を送った。私は非常に興味があります。  そこで、外務省にお尋ねしたいわけですが、外務省は、北海道土人保護法を翻訳なさって国連に何らかの形で報告されたことがあるでしょうか。
  22. 中平立

    中平政府委員 旧土人法を英訳いたしまして国連報告したという記録はございません。
  23. 児玉健次

    児玉委員 紹介はされていないということですが、北梅道土人保護法を何らかの言葉に翻訳なさったことはあるでしょうか。
  24. 中平立

    中平政府委員 現在まで、調査したところではございません。
  25. 児玉健次

    児玉委員 そこで、日本政府昭和五十四年に批准いたしました国連の市民的及び政治的権利に関する国際規約、このことについてお尋ねしたいと思います。  第二十七条は、「種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己文化を享有し、自己宗教を信仰しかつ実践し又は自己言語を使用する権利を否定されない。」こう書かれております。そして、四十条は規約を締約した国に対する問題として、「この規約において認められる権利実現のためにとつた措置及びこれらの権利享受についてもたらされた進歩に関する報告提出することを約束する。」すなわち、権利実現のためにとった措置、これらの権利享受についてもたらされた進歩に関する報告提出する。外務省はどのような報告を御提出になったでしょうか。
  26. 中平立

    中平政府委員 委員指摘のように、昭和五十五年に第一回の報告書国連提出いたしました。第二回の報告につきましては、五十六年にその報告書検討されましたので、その五年後の今年の十月までに提出されるべきであるということになっております。現在のところ、関係各省と協議しながら報告書の準備に当たっておるわけでございますが、これは、よろしいですか。
  27. 児玉健次

    児玉委員 昭和五十五年に提出された報告書内容をお聞きしておりますが……。
  28. 中平立

    中平政府委員 それは、二十七条に関しましては、委員指摘のように、二十七条に言うところの少数民族は存在しないという記述をつけて報告した次第でございます。
  29. 児玉健次

    児玉委員 一九八〇年に提出された報告ですが、これは、二十七条の趣旨、そして四十条で求められた報告内容、それを素直に読んでいったら、どうもこのような答えにならないと思うのですよ。  日本アイヌという少数民族が存在している。現に存在している。これは歴代の厚生大臣開発庁長官が正式に答弁していることです。そういう中で、みずからの文化言語を使用する権利は否定されない、そう述べて、その点について日本はどんな努力をしたのかと聞かれているのに、いないと答えるというのは筋が違うのじゃないか。どんな努力をしたと答えるべきではないか。例えば旧土人保護法、これが現存しているわけですから、そういったものが存在していることを報告して、それについて、このような是正措置を講じようと思っている、こう述べるのが、四十条に対する言ってみれば正確な答えではないかと思うのですが、外務省考えを聞きたい。
  30. 中平立

    中平政府委員 政府といたしましては、一九八〇年に、関係各省と慎重協議した結果、二十七条に関しましては、以下のように報告しております。「自己文化を享有し、自己宗教を実践し又は自己言語を使用する何人の権利わが国法により保証されているが、本規約規定する意味での少数民族わが国に存在しない。」そういう報告をしておるわけでございます。  この報告に当たりましては、この二十七条に言う少数民族とは、種族、宗教または言語を異にし、歴史的、社会的、文化的観点から他と明確に区別し得る少数民族というふうに政府としては解釈いたしまして、このような観点から、少数民族は我が国には存在しないという判断に立ち至ったものでございます。
  31. 児玉健次

    児玉委員 伺いますと、この次の報告書期限は今月末だと聞いております、今国連局長お話にもありましたように。今月末まで余り時間がない。そこで、いろいろと御意見をお聞きになっているそうですが、この機会に、後藤田官房長官に対して、北海道土人保護法の問題、そして国連に対する報告の問題、この点について、内閣を取りまとめられているお立場からお考えを伺わせていただきたいと思います。
  32. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 旧土人保護法という法律が今あるわけでございますが、この法律内容が今日といえども実体的な意味がある規定であるとするならばこの名称は不適切である、少なくとも名称は直さなければならない、私はさような理解でございます。また、せんだって、記者会見等でもそういう趣旨回答を私はいたしたわけでございます。  それから、国連規約二十七条との関係では、今外務当局からるるお答えをいたしましたように、二十七条の規定で言う意味合いにおける少数民族は存在をしない、つまり、何らの権利の制約は日本はしておらぬ、こういう意味であろうと思いますが、さらに五年たちまして、近くどういう回答をするかということの中身は今外務当局検討中だ、かように聞いておるわけでございます。
  33. 児玉健次

    児玉委員 そこで、重ねて外務省国連局に伺いたいのですが、今官房長官からのお話もございましたが、この後の報告はいつごろをめどに作業をお進めになりましょうか。
  34. 中平立

    中平政府委員 最終的な結論はまだ出しておりませんが、先ほどもちょっと触れましたけれども、本年十月末までに第二回の報告書を出すようになっておったわけでございますが、実は、現在、委員も御存じかと思いますけれども国連行財政改革というものが進行中でございまして、財政的にやや困っておるという事情もございまして、このB規約の人権委員会なるものの開催の頻度がやや少なくなっておりまして、その関係から、各国から出されております報告書がややたまっておりまして、そういうことから、必ずしも慌てて出してもらわなくてもいいという非公式の感触が国連事務局の方から我が方に参ったこともございまして、政府といたしましては、できるだけ新しい、最新の報告書を出す方が望ましいのではないかという観点から、現在、いつ出すのが一番適当かということを含めまして検討中のところでございます。
  35. 児玉健次

    児玉委員 外務省国連提出する報告書中身は、日本における少数民族の問題、その実態を正確に踏まえられて、そして日本における少数民族というべきアイヌ方々の直接の御意見も聞かれて、そして作成されることが適当だと私は考えます。  そこで、一、二申したいのですが、先ほどから幾つか触れましたように、国連規約の二十七条を素直に読む必要があると思うのですが、「種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、」そういうふうに述べております。「種族的」という点については、先ほど御紹介いたしました斎藤昇厚生大臣が既に衆議院の場でアイヌ人種という言葉で明確に述べております。それから「言語的」という点について言えば、町村開発庁長官が、アイヌ言葉を持っている、そう述べて、それが次第に今失われつつあるんだというふうに述べております。そして「宗教的」ということについて言えば、これも多くの事例がありますが、中曽根首相に対して小川早苗さんという私の知人が、札幌の白石区に住んでいるお母さんですが、この方が先日、直接お手紙を出されました。その中で、みずからの生い立ちの経験から、アイヌの古老は、死が近づくと、アイヌの風俗での死に装束をまとってアイヌの儀式によって送られることを望んでいるというふうに手紙の中でも書かれているわけでございます。  そういった実態を踏まえて、国連規約四十条が求めている報告書を出していただきたい、強く要望いたしますが、いかがでしょうか。
  36. 中平立

    中平政府委員 この報告書の作成に当たりましては、外務省はもちろん非常に関係あるわけでございますが、関係各省の御協力をいただきながら作成するというのが現実的な対応でございまして、今委員の御指摘のような点につきましては、特に関係の深い各省は十分勘案されるものと思いますけれども、いずれにいたしましても、外務省立場としては、外務省独自で報告書を作成するというわけではございませんで、関係各省と十分協議しながらやるということでございますので、その過程で先生指摘の点は関係各省の方で吸収されるのではないかと思いますけれども、この段階でおっしゃるとおりにしますということは私としては言えません点は御了承いただきたいと思います。
  37. 児玉健次

    児玉委員 何といっても、現に残念ながら差別を受けているアイヌ方々の御意見をちゃんと踏まえながら、外務省として日本の実態を踏まえた報告書提出されるように強く要望いたします。  私たち日本共産党は、昨年の第十七回大会で政党にとって憲法というべき綱領の改正に当たりまして、「党は、わが国における少数民族というべきアイヌ生活権利の保障、文化保護などを要求してたたかう。」こう明らかにしているわけですが、私もこの分野についての努力をさらに一生懸命やるということを述べまして、次の質問に入りたいと思います。  防衛二法の改正案に関連してでございますが、私はきょうの質問では、自衛官が武器を使用して防護する対象の拡大について何点か御質問をしたい、こう思っております。  現行自衛隊法九十五条によれば、武器使用ができる対象になっているのは、武器、弾薬、火薬、航空機、車両、液体燃料に限定されております。私はそのこと自体も是とするものではありませんが、そのように限定されております。もちろん「等」という言葉はついておりません。今回の改正案範囲が拡大をされた。防衛庁の先日の説明によれば、にせ左翼暴力集団の国鉄ケーブル切断事件なども今回の法改正の理由の一つになっているようですが、一九五四年に自衛隊法がつくられてから今日まで、九十五条が発動されたことがあるのかどうか、その点についてまずお伺いいたします。
  38. 友藤一隆

    友藤政府委員 発動されたということの内容でございますが、その前提として弾薬庫等の警護をやっておるということはございますが、これにより武器を具体的に使用するに至ったという事例はございません。
  39. 児玉健次

    児玉委員 今度その範囲が拡大される通信施設、その中には中央指揮所やレーダー基地などが含まれると思うのですが、本改正案における有線電気通信設備、無線設備、これは全国に一体何カ所あるのでしょうか。
  40. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊の有線電気通信設備、無線設備数でございますが、これを正確に申し上げることはなかなか難しいのでございますが、例えば主要なものといたしましては、防衛マイクロ回線の中継所として約六十カ所、航空自衛隊のレーダーサイト二十八カ所、それからOH通信用の中継所約三十カ所等がございます。また、各駐屯地、各基地には多数の有線、無線の設備が存在しておる状態でございます。
  41. 児玉健次

    児玉委員 武器防護の対象を法の改正によって拡大しようというわけなんですが、そのとき武器防護の対象となる施設がトータルで何カ所あるのか、その点を私はお聞きしているのです。
  42. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 それでは無線設備につきまして、なかなか有線、無線区別が難しゅうございますけれども、例えば無線設備につきまして該当するものの数を概数申し上げてみますと、電波法の適用を受けまして郵政大臣から承認を受け開設いたしております無線局でございます。これは例えば防衛マイクロ回線等のために開設している固定局、それから地上から船舶への通信のために開設いたしております海岸局、地上から航空機への通信のために開設しております航空局等々でございますが、これが約七百局ございます。  それから、防衛庁長官が郵政大臣から周波数の承認を受けて開設いたしておりますレーダー及び移動体の無線設備でございます。これは例えば船舶に開設いたします無線局、航空機に開設する無線局、稼動中または特定しない地点に停止中運用する無線局あるいは各種のレーダー等を使用する無線局等でございますが、これが約三万局ございます。
  43. 児玉健次

    児玉委員 ちょっと質問の角度を変えて、個々具体にお聞きかせいただきたいのです。  海底に敷設されている対潜水艦探知のソナーケーブル、これは対象となるのかどうか。それから、自衛隊員個々人が携帯している無線機器についてはどうなのか。稚内、根室などの通信施設、米軍との共同使用がなされておりますが、これについてはどうなのか、お答えいただきたい。
  44. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  御指摘の対潜ソナーでございますが、これは自衛隊の設置、管理、運用する有線電気通信設備ということでございますので、今回改正をいたします九十五条の防護対象に追加される設備というふうに考えております。  それから、個人で携行いたします無線設備等につきましても、それぞれ基本的には防護対象になるということでございます。  それから、NTTで持っております通信所、名崎の通信所の件でございますが、これは名崎の送信所は実態的には、日本電電会社でございますか、NTTが設置、管理をいたしておりまして、防衛庁は他の利用者と共同して使用しておるということでございますので、自衛隊法九十五条の防護対象に追加される設備には該当しないと考えております。
  45. 児玉健次

    児玉委員 長官にお尋ねしたいのですが、二十一日の本会議における私の質問に対して、長官は次のように御答弁になりました。「この自衛隊の有線電気通信設備及び無線設備とは、あくまでも自衛隊が設置、管理、運用する設備であり、日本電信電話株式会社や国際電信電話株式会社の通信回線のように自衛隊として単に役務の提供を受けているものは含んでいない、」こう御答弁になりましたが、単に役務の提供を受けているものは含んでいないとはどういう意味でございましょうか。
  46. 友藤一隆

    友藤政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、借り上げをいたしております回線は直接自衛隊が管理、運用しているわけでございませんで、その回線を通じてNTTからサービスを受けておるわけでございますので、自衛隊が設置、管理、運用の全般をやっておるということでございませんので、自衛隊の通信設備ということにはならないということでございます。
  47. 児玉健次

    児玉委員 そうなりますと、先ほど官房長がお答えになったソナーケーブル、私たちはその詳細を知りたくていろいろ今まで調べてはきたのですが、例えば北海道松前の警備所から出ていると私たちが思っているソナーケーブル、これは自衛隊のものだと思うのですが、いかがでしょうか。
  48. 鎌田吉郎

    ○鎌田政府委員 御指摘の対潜ソナーでございますが、潜水艦を探知するセンサーでありまして、自衛隊の設置、管理、運用する有線電気通信設備であるというふうに考えております。
  49. 児玉健次

    児玉委員 先ほど範囲が拡大された箇所の数を伺ったのですが、この海底の対潜水艦探知のソナーケーブルは何カ所ございますか。
  50. 西廣整輝

    西廣政府委員 対潜ソナーの設置箇所等については、事柄の性質上、お答えを控えさせていただきたいと思います。
  51. 児玉健次

    児玉委員 範囲は拡大するという、しかし、その範囲がどのように及ぶかということについては答えない、これでは審議が進まないじゃないですか。もう一回答弁を求めます。
  52. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛隊の管理、運用する有線、無線設備については防護対象にしたいということでございまして、それがどこにあるかということは、例えば車両等が従来から武器防護の対象になっておりますけれども、その車両が道路のどこの上にあるかとか、そういったことまで申し上げる必要はないのではないかと私ども考えておるわけであります。
  53. 児玉健次

    児玉委員 私は車両について今聞いているんじゃないのです。海底ソナーケーブルというのは、車と違って動くものじゃありませんよ、これは固定しているものです。もう一遍答弁を求めます。
  54. 友藤一隆

    友藤政府委員 先ほど防衛局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、この九十五条の規定の適用に当たりましては、ここに挙げてございますものすべてを常時警護するということでございませんで、四囲の状況等に応じまして警護する必要が考えられる物件について警護任務を付与するということでございますので、むやみに拡大をするという趣旨のものではございませんので、その辺も御了解をいただきたいと思います。
  55. 児玉健次

    児玉委員 委員長に要請いたしますが、今の答弁の中で、対潜水艦感知のソナーケーブルの箇所と数については私はあくまで資料として提出していただきたいので、この点は後の理事会に諮っていただきたい、いかがでしょうか。
  56. 石川要三

    石川委員長 後刻、理事会にお諮りして、検討いたします。
  57. 児玉健次

    児玉委員 先ほどの御答弁の中で、自衛隊員側個人が携帯する無線機器も含まれる、こういうお話でしたが、そのような個々人が携帯する無線機器に対する防護の態様というのはどうなるのですか。
  58. 友藤一隆

    友藤政府委員 この防護のやり方でございますとか、どういう形でどういうときに防護するかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、その具体的状況に即して考慮していくということでございますので、あらかじめ、どういうふうに防護するのかということを現時点で具体的に申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
  59. 児玉健次

    児玉委員 ここでもまた問題が出てくるわけですね。先ほど防衛庁の方からは、周波数が郵政大臣によって承認された施設の数だとか無線設備の数についてはあらあらの数字をお示しになりました。ところが、自衛隊員個々人が携帯する無線機器は防護の対象になる、それをどのように防護するかということを含めて言えないというのでは、この法案の審議は進みませんよ。  だれかが無線機器を持っている、そこでその無線機器が防護の対象になるというとき、それを携行している自衛隊員との関係というのはどうなるのですか。
  60. 西廣整輝

    西廣政府委員 個人携帯無線機につきましては、従来から武器防護の対象になっております個人装具の例えば小銃等の武器と同じように、その持ち方の形態によりますが、個人が携帯する武器については、その個人にその武器なりあるいは通信機の警護任務を与える場合もありますし、部隊として任務を与える場合もある、両様ありますが、個人装具についてはまずそれを携帯しておる個人に防護任務を与えるということになります。
  61. 児玉健次

    児玉委員 以上の一連の防衛庁の答弁からも極めて明らかなんですが、長官、私は二十一日の衆議院会議で次のように聞きました。国民にとって、どれが民間のものか、どれが自衛隊のものか、全く知らされていない、そこで国民が自衛隊の通信施設と知らずに近づき、立ち入れば、銃口が突きつけられる事態も生じ得る、どうですかと伺って、あのときそのことに直接触れた御答弁はございませんでしたが、この機会長官の御答弁をいただきたいと思います。
  62. 友藤一隆

    友藤政府委員 お尋ねの点につきましては、一般的に車両でございますとか船舶とかいうことで規定をしてございます。今回の改正の規定ぶりも従前と大体同じ表現を使っておるわけでございまして、特にこの機会にそういうものを無制限に広げていくというような形をとっておるわけではございません。  それで、防護に当たりましてもきっちりした厳しい条件がついておりまして「職務上警護するに当たり、」「防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用する」、しかも、正当防衛、緊急避難に該当する場合のほかは人に危害を与えてはならない、こういうことでございまして、警護、防護しております場合には周囲から見えることは当然でございますし、突然銃口が向けられるというようなことは規定趣旨からあり得ないことでございます。
  63. 児玉健次

    児玉委員 突然銃口が突きつけられるような事態はあり得ないということはよく記憶にとどめておきます。そして、依然としてその施設が自衛隊のものなのかどうかということがわからないままこの法の改正を進めていくということは、極めて危険な事態を生み出すということを強く指摘して、次の問題に入ります。  今度の対象に船舶が加わっておりますが、ここでいう船舶とは何を指すのですか。
  64. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  自衛隊の船舶とは、自衛隊の使用する船舶でございまして、具体的には護衛艦、潜水艦、掃海艇、輸送艦、海洋観測艦等の自衛艦及び自衛艦の出入港の支援等を行います支援船等が入るわけでございます。
  65. 児玉健次

    児玉委員 出入港の支援をするというと、普通に言うところのタグボートのことですか。それとあわせて、自衛隊のチャーター船はどうなるのか、この点もお答えいただきたいと思います。
  66. 友藤一隆

    友藤政府委員 お尋ねのタグボートの場合も、自衛隊が持っております船籍のあるものにつきましては、当然これは対象として入るわけでございます。  チャーター船の場合は、その態様がいろいろございまして一概に申し上げることは難しいわけでございますが、一般の利用者と同様の態様で単に役務の提供を受けるための船舶を借りるというような場合には、今回の自衛隊の艦船というものには該当しないものと考えております。
  67. 児玉健次

    児玉委員 船舶の防護というのは、どのような事態にどのような形で行われると予想されておりますか。
  68. 西廣整輝

    西廣政府委員 いろいろな場合が想定されると思いますが、通常考えられますのは、港湾等で停泊をしておるときに、これを奪取するあるいは破壊をするといったような状況が生じたときにどう対応するかという問題であろうかと思っております。
  69. 児玉健次

    児玉委員 航行中ではどんな対応がございますか。
  70. 西廣整輝

    西廣政府委員 航行中の艦艇に対してこのような状況が行われるということは余り通常考えられないわけでございますが、例えば、公海条約等にあります「海賊行為」みたいなのがないわけではございませんけれども、通常は考えられぬのではないかというように考えております。
  71. 児玉健次

    児玉委員 海賊行為のようなことがないわけではない、そのような場合の防護の態様というのはどうなりますか。
  72. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛艦につきましては、御承知のように、国際法上軍艦と同じような立場を与えられておりますので、そのような行為が行われた場合に対してはそれを排除することが可能であるというように考えております。
  73. 児玉健次

    児玉委員 それを排除するという場合に、集団的な排除にならないでしょうか。
  74. 西廣整輝

    西廣政府委員 集団的なという意味がちょっと理解できませんが、私どもにつきましては、個々の警護任務鑑艇というものが、全体とすればたくさんの武器を積んでおる場合もありますし、いろいろな状況があると思いますが、そういったものが組織的に個々の警護任務を組織化してといいますか、束ねて対応するという格好になるのではないかというように考えております。
  75. 児玉健次

    児玉委員 個々の任務を組織的に束ねて行動する、私はそう聞いたのですが、そうなりますと、刑法におけるいわゆる正当防衛、緊急避難、そういった一つの法律的なカテゴリーに含まれるのかどうかということが重要な問題として提起されてきます。  法務省にお尋ねしたいのですが、昭和五十三年の九月十四日、参議院の決算委員会法務省の説明員である伊藤当時の刑事局長でございますが、この方がこのように述べられている。「緊急時の措置の問題であろうと思いますが、その場合に、個人としていわゆる正当防衛的な行動ができるか、あるいは部隊としてそういうことができるか、こういう問題は、私ども考えますところでは刑法上の問題では全くない、刑法に正当防衛とか緊急避難とかいう概念がございますけれども、これは犯罪構成要件に当たるような行為を犯しました人の刑事責任を評価する際に一つの判断基準になるものでございまして、一般的には、広く行政法の分野でも正当防衛的な行為あるいは緊急避難的な行為というものが許される場合があると思いますけれども、これは自衛隊等の行為につきましては刑法の問題としてとらえるのは全く場所が違うんじゃないか。」こう述べられておりますが、法務省の見解はどうですか。
  76. 木藤繁夫

    ○木藤説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の当時の伊藤刑事局長答弁した内容でございますけれども、それは、いわゆる外国からの奇襲攻撃を受けた場合に、それに対して刑法の正当防衛とか緊急避難といった問題でとらえることができるかどうかということにつきまして、これを否定的にお答え申し上げたものでございます。その答弁内容は、その限りにおきまして現在でも変更するつもりはございません。  しかし、今問題になっております自衛隊法九十五条は、いわゆる平時におきまして正当防衛あるいは緊急避難という規定の適用があり得るかという問題でございますが、これは規定上もそういった適用の余地があり得るということは明らかであると考えております。
  77. 児玉健次

    児玉委員 当時の伊藤刑事局長答えについて変わりがないということは確かめました。  そこで、先ほどから聞いているように、私は例示的に船舶の問題を取り上げているのだが、船舶といってもさまざまのものがある。さっきお話しのようにタグボート、それから輸送艦、潜水艦救難艦、補給艦、何百トンのものもあれば何千トン、何万トンのものもある。そういう中で、先ほど防衛庁の御答弁にも出ていたように、海賊行為に対する対処、そうなってくると、伊藤刑事局長が述べる場合にはまるのじゃないですか。
  78. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  この九十五条の規定は、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段が損壊され防衛力が低下することを防ぐため、警察権の行使として武器等の警護に当たる自衛官に武器の使用を認めたもの、こういうことでございまして、その限りにおいては船舶の場合も全く同様な扱いでございます。したがいまして、同条の規定によりまして、刑法三十六条あるいは三十七条の要件に合致する場合には、同条ただし書きにより人に危害を与える場合があることも排除されないという形になっておるわけでございまして、法務省の御見解と何らそごするものではございません。
  79. 児玉健次

    児玉委員 船舶の防護、そういう場合に現場の指揮官の判断で自衛隊法九十五条により防護する、事実上これは集団的な交戦状態に限りなく近づいていく、刑法三十六条、三十七条の範囲をはるかに超すものになっていく、そういう重大な問題点をこの法の改正は含んでいる、きょうの質問ではそのことを指摘して、次の問題に移ります。  今行われている日米統合実動演習についてでございますが、私は一月二十五日恵庭と千歳に行きまして、千歳の市役所で助役さんを含めた市の当局者にお会いいたしました。そのとき、千歳市当局としては、今回の日米統合実動演習について、その演習の是非は別として、民生の維持に全力を挙げたい、このように述べました。そして千歳市としては八月二十七日と八月十三日、札幌防衛施設局に対して、来道するアメリカ兵の検疫については万全を期されたい、このように申し入れられました。そのことについて、防衛庁がとられた措置についてお答えいただきたいと思います。
  80. 平晃

    ○平政府委員 お答えいたします。  お尋ねの件につきまして、札幌防衛施設局の担当者が千歳市を訪れ、日米共同統合訓練に伴う施設、区域の提供等について説明を行ったことがございます。その際、来道する米軍の検疫に関しまして質問を受けたわけでございますけれども、札幌の施設局の担当者が市の部長さんに、これは当庁の所管ではないけれども関係機関において適切に措置されるものと承知しています、そのような御説明をしたと承知しております。
  81. 児玉健次

    児玉委員 関係機関において適切な措置をされるものと承知している、もう一遍聞きますが、それだけの答えだったのですか。
  82. 平晃

    ○平政府委員 この検疫の問題につきましては、具体的には米軍人の入国の際に、所管の防疫事務所におきまして米軍人の検疫を行うというような手続が決められております。そういうことについても御説明したということでございます。
  83. 児玉健次

    児玉委員 申し入れをした市の当局としては、国の官庁の縦割りがどうであろうと、日米合同の演習について説明に来たその人に、検疫について万全を期してほしい、そう申し入れたことで必要な努力がなされていると、私が会ったときそう思い込まれていたのですよ。それでは話がそこでとまってしまうので、そういうのは誠意のある態度とは言えませんね。  そこで聞きますが、それでは今現に北海道で行われている実動演習、アメリカの兵士が相当数北海道にやってきております。この方々に対する検疫について、防衛庁はどのようにされているのでしょうか。
  84. 岡本行夫

    ○岡本説明員 日本におきます米軍人が提供施設、区域たる飛行場または港から我が国に入国いたします場合には、米国側の検疫機関が検疫伝染病が我が国に持ち込まれることがないと認めたときには、日本側の検疫所長が署名し、委託いたしました検疫済証に所要の事項を記入して交付しております。また、米国軍人が我が国の一般の飛行場または港から入国する場合は、日本側が検疫を実施しております。これが現在の地位協定上の米国軍人に対する検疫の制度でございます。
  85. 児玉健次

    児玉委員 それでは具体的に聞きますが、八三年十月の日米統合演習の場合、それから現に行われている統合演習の場合、今外務省お話しになった検疫の措置は、日本のどの場所で最も多くなされたのか、お答えいただきたいと思います。
  86. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先ほど御説明いたしましたように、我が国に入国いたします米軍人は、その入国時点で所要の検疫手続をいたします。したがいまして、特定の演習に参加いたします米国軍人がどこの場所で個人個人検疫を受けてきたかということは、正確には把握しておりません。
  87. 児玉健次

    児玉委員 千歳市の当局の言う民生の維持に全力を尽くしてほしい、これはすべての国民の共通の願いだと思うのですが、八三年十月の統合演習のとき、そして今回、最初に日本に足を踏み入れた場所で検疫は行われなければならぬと思うのですが、どこに最初に足を踏み入れたのか、今回の演習について言えば、私がさっき聞いたようにどの場所で最も多数の米兵に対する検疫が行われたのか、この点について答えてほしい。
  88. 岡本行夫

    ○岡本説明員 日米演習に参加いたします米軍兵士の大宗は、既に日本に駐留している人たちであります。したがいまして、その演習に参加いたします一人一人につきまして、入国の時点にさかのぼりまして、どこで検疫を了しているかということは、私どもは一々その演習についてチェックはしておらないわけでございます。
  89. 児玉健次

    児玉委員 厚生省にお伺いしたいのですが、今度千歳の検疲所にお邪魔していろいろお話を伺ったのですが、米兵が千歳にやってくる場合、検疫を要する際には自衛隊から事前の連絡があって、そこで苫小牧の検疫官が千歳に赴くというふうに御説明を聞いたのですが、その点はそのとおりでしょうか。
  90. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 そのとおりでございます。
  91. 児玉健次

    児玉委員 そうすると、今回の演習の場合、検疫官に対する自衛隊による事前の連絡というのはどのようになされたのか、防衛庁からお伺いします。
  92. 依田智治

    ○依田政府委員 共同訓練等に参加する米軍が、個々の米軍の方々日本に入ります場合には、それぞれの機関において検疫をしておるわけでございます。防衛庁としましては、どこからということを詳細に把握する立場にございません。
  93. 児玉健次

    児玉委員 何千人という外国人が日本に入ってくるとき、事実上、それが検疫を受けずにフリーパスとしているとすれば、これはゆゆしい問題ですよ。私たちはその点で調べてみたのですが、例えば昭和五十八年、千歳空港での問題について言えば、米軍用機の検疫機数は一機、検疫人員十四人、検疫空港名千歳空港、そして「備考」として検疫人員のうち米軍人軍属等の種別は不明、こういうふうに出てきているのですが、この点について、恐縮ですけれども、もう一遍厚生省の方から御説明を願いたい。
  94. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 お答えをいたします。  昭和五十八年十月におきます千歳空港におきます検疫実績でございますが、五十八年十月、日本側の検疫によるものが、議員御指摘のとおり一機、十四人でございまして、同年、米軍側の検疫官による検査を経たものとして、別に二機、七百六十三人の検疫が行われていることが判明いたしました。
  95. 児玉健次

    児玉委員 米軍側による二機、七百六十三人については、最寄りの検疫所長が検疫済証または仮検疫済証を交付なさったわけですね。その点についてお伺いします。
  96. 伊藤雅治

    ○伊藤説明員 御指摘のとおりでございます。
  97. 児玉健次

    児玉委員 そうなると、防衛庁に私は再度お尋ねしますけれども日本の検疫所のシステムは、防衛庁の側から、検疫を要する米軍人が来るとき、事前に連絡して、そして所要の検疫をしている、そしてそれは厚生省の側では、今度の千歳空港の場合もそうでしたが、昭和五十八年十月についてほぼ私たちはその経過がわかりました。  であれば、今度の十月二十七日から始まった演習についての米兵に対する検疫、防衛庁ほどのように検疫所に対する事前の連絡をなさったのか、この点を答えていただきたい。
  98. 依田智治

    ○依田政府委員 先ほど申し上げましたように、個々の米軍人が日本に参ります場合にどこから入るかということを承知する立場にございませんので、私も実は詳細に承知しておらないわけでございまして、連絡は行っていないのではないかというように考えております。
  99. 児玉健次

    児玉委員 昭和五十八年十月について言えば、日本の検疫官が機長から明告書を受け取るという形で米軍機一機、十四人の検疫を済ませている。それから検疫済証または仮検疫済証を交付するという形で米軍機二機、七百六十三人について検疫の手続をとっている。五十八年十月で可能であったことが、なぜ今回の演習ではその中身について答えられないのですか。
  100. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  日本に入ります場合に、千歳等にストレートに入る場合、それから他の基地等を経由して入る場合等があるだろうと思うわけでございます。そういうことで、今回等の場合でも、例えば横田等に入り、それから千歳へ入るというようなこともあるわけでございまして、そういう詳細を調査してみないと、どこから入ったかということを申し上げることはできないわけでございます。
  101. 児玉健次

    児玉委員 ですから、私は最初の千歳市役所の要望をもう一遍繰り返したいのですよ。防衛庁に対して、検疫について万全を期してほしい、防衛施設庁の方は、それは他の官庁がやるから、そのように承知いただきたいと御説明なさって何もされていない。ところが、五十八年十月の検疫の実施について言えば、後から追跡して、当時の演習に参加された米兵のかなりの部分に、私は全部だとは言わないのですが、かなりの部分がどのような検疫の手続を受けたかが明らかなんです。教訓局長は横田と言われたけれども、横田の場合も最寄りの検疫所の所長が米軍軍医の報告に基づいて検疫済証または仮検疫済証を交付するのですよ。その数は明らかなはずです。しかも、そのことについての事前通告は防衛庁がしなければならない。防衛庁の説明は全く私には理解できません。
  102. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  防衛庁が連絡するという体制になっておると承知しておりません。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  103. 児玉健次

    児玉委員 そうすると、千歳空港の検疫所で、具体的に自衛隊から連絡があった場合に検疫官が派遣されて、そして米軍機の中に入って、明告書、ゼネラルデクラレーション、日本語と英語が双方書いてある、これを約十五分要して米軍機の機長から聞き取り、そしてそれを受け取って検疫が行われたとする。この手続は、あなたの御回答によれば成り立たないことになるんじゃないですか、どうですか。
  104. 依田智治

    ○依田政府委員 先ほどから申し上げましたとおり、私どもがそういう通知をしたりする立場にないというように承知しておるわけでございます。
  105. 児玉健次

    児玉委員 これは一つのミステリーだと言わなければいけませんね。千歳空港の検疫官は、自衛隊側から連絡があったときに、苫小牧に二人、定員配置されている検疫官が、慌ただしく千歳空港に駆けつけて検疫を行うのですよ。ところが、防衛庁の方はそのようなことをする立場にないと言う。では、だれがやるのですか、外務省に開きたいのです。
  106. 岡本行夫

    ○岡本説明員 地位協定の仕組み上、日本に入国いたします米国軍人はすべて所要の検疫手続をとることになっております。これは、米軍から一義的には我が方の検疫当局にその必要性が通告され、所要の検疫手続が行われるわけでございます。  その我が国の検疫当局に対します通報のチャンネルは米軍でございますけれども、場合によっては我が方が、外務省が受けてそれを検疫当局に通告いたすこともありますし、それは場合によって若干の差異があるかもしれませんが、いずれにしても重要なことは、我が国の検疫当局が日本に入国いたします米国軍人の検疫の必要性をすべて捕捉いたしまして所要の検疫手続が行われている、この点だと思います。
  107. 児玉健次

    児玉委員 どのような対応にしろ、我々が調べた限りでは、米兵が日本に入国して何らかのことをなす場合に、検疫の出先における対応というのは三つしかありません。  一つは、自衛隊の連絡に基づいて検疫官がそこに赴いて、機長または船長からこの明告書を受け取って検疫が終わったとする、それが一つ。二つ目と三つ目は、在勤する米軍軍医の報告を受けて、最寄りの検疫所長が検疫済証または仮検疫済証を交付する場合ですよ。この三つの対応しかないのです。外務省、それ以外があるのですか。
  108. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、米軍で検疫の必要性を有した軍人が入国する場合には、米軍の検疫官または日本側の検疫官、いずれかによりすべて所要の手続を了することになっておるわけでございます。米側に専用施設として提供されていない場所から米国軍人が入ってまいります場合には、これは本来日本側の検疫官が所要の手続を行っておりますけれども、事情事情に応じまして米側の検疫官が行うこともこれまた排されない、いずれにいたしましても検疫手続は漏れなく行われているということでございます。
  109. 児玉健次

    児玉委員 今あなたは米軍が検疫を必要とすると考えた場合はと言われたけれども、もし米軍が検疫を必要としないと考えた場合はどうなるのですか。
  110. 岡本行夫

    ○岡本説明員 米国軍人の検疫につきましては、地位協定、またその実施細目の性格を有します日米合同委員会の合意によりましてきちんと手続が決まっているわけでございます。これは、日本と米国の間で交わされております国際約束でございます。したがいまして、米側にはこの合意の遵守義務がございますので、検疫を必要とするものはすべて米側が日本側に通告する。私が御答弁申し上げましたのは、日本側として、在日米軍、既に日本におります米軍人のどの人が検疫手続が必要でどの人が既に済んでおるか、これを判別する立場にはないということでございます。
  111. 児玉健次

    児玉委員 この点で非常に重要な手落ちがありますね。「安全保障条約第三条に基づく日米行政協定の本文中に直接検疫の取扱についての明文がないが、外国軍用艦船等に関する検疫法特例の範囲内において、次の措置を実施することに同意している。」こう述べて、三つの対応ですよ。検疫済証、仮検疫済証、そして明告書。外務省の最後の御答弁でそのことについては対応を認められた。  もう一遍防衛庁に聞きます。あなたたちは、今度の十月の演習で日本にやってきた、主としてハワイからだけれども、この多数のアメリカの青年の検疫について最寄りの日本の検疫所長に対して事前の通告をしたのかしなかったのか。そのことをしたのかしなかったのか、答えていただきたい。
  112. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  実施していないというように承知しております。
  113. 児玉健次

    児玉委員 極めて重大な問題で、この点についても引き続いて私たちは論議を進めていきたい、実態を明らかにしていきたい、こう考えます。  次に、エイズの問題ですが、昨年の七月にフィリピンのスビック海軍基地、クラーク空軍基地周辺のホステス十二名がエイズに感染をした。そして、ことし六月六日の日本経済新聞に次のような記事がありました。「エイズ患者が軍隊に多いのは、いまや“常識”。そういった中で、昨年十二月二十五日、横須賀市は、入港中の米空軍ミッドウェーの乗組員水兵にエイズのウイルス抗体陽性の患者が一名発生したと発表している。  外務省に伺いたいのですが、これはなぜ米軍が発表したのでなくて、横須賀市が一名のエイズ患者を発表したのでしょうか。
  114. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私、そのときの時間的な経緯についてつまびらかに記憶しているわけではございませんが、ほぼ同時期、あるいはそれより前に、米側から外務省に対しまして、エイズを有している疑いのある者が一人いるという通告は受けております。
  115. 児玉健次

    児玉委員 外務省として、米軍のエイズ罹患に関連して米軍に対してどのような努力をなさっているのか、その点をお伺いしたいのです。
  116. 岡本行夫

    ○岡本説明員 我が国におきましても、エイズ問題について各種の報道がなされ、種々の憶測が行われていることから、米軍施設、区域の周辺の住民の方々が心配されていることはよく了知しております。  したがいまして、エイズ病の流行のようなものが万が一にもあってはならないという観点から、米側及び我が方関係当局で十分な協議を行っております。さらに、昨年十一月下旬に行われました日米合同委員会の場におきまして、このような我が国の関心を表明いたしますとともに、在日米軍とこれからもよく連絡をとり合って協議していくようにということを私どもの方からも申し入れ、米軍からも賛同を得て、現在必要に応じ所要の調整が行われておるところでございます。
  117. 児玉健次

    児玉委員 時間の関係もありますからこの問題だけに終わるわけにはまいりませんが、演習の是非についてはともかく、やはり民生について万全を期してほしい、これはひとしく国民の願うところです。私たち共産党は演習は非だと考えておりますが。  以上の経過の中で、日米共同演習にかかわっての検疫体制に大きな問題があることが明らかになっておりますが、この点について防衛庁長官の御所感をいただきたいと思います。
  118. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今いろいろ議論を聞いておりましたけれども外国から日本へ入ってきた場合に検疫が行われるのは当然である。しかし、日本国内におる者が本州から北海道へ移動する、そういう場合に検疫があるはずがない、こう考えております。
  119. 児玉健次

    児玉委員 初めからやり直すわけにいかないので、最初に日本に入るときのことをさっきから問題にしているので、あなたのお答え答えになっておりません。  二十八日の本委員会で、防衛庁は海岸防御型陸上部隊の整備についてお触れになりましたが、北海道の十勝・大樹町の海岸に沿って八・八ヘクタールをもし防衛庁の方で購入される御計画があれば、その概要を伺いたいと思います。
  120. 千秋健

    ○千秋政府委員 現在、陸上自衛隊の揚陸訓練を実施するため、先ほど先生指摘のように、大樹町の町有地約八・二ヘクタールを借り上げて使っておりますが、これにつきましては来年度購入したいと考えておりまして、現在概算要求をしているところでございます。
  121. 児玉健次

    児玉委員 概算要求の金額と、それからその近くに防霧林があるはずなんですが、その防霧林を将来購入する計画があるのかどうか。  それから、ちょっとまとめてお聞きしますが、皆さんが購入予定の八・八ヘクタールは水際に直接はつながっておりません。八・八ヘクタールから水際までの間は海岸保全地域となっているはずですが、この海岸保全地域を使用するについてどのような手続が必要なのか、この点あわせてお答えをいただきたい。
  122. 千秋健

    ○千秋政府委員 購入金額につきましては、現在概算要求中でございますので、ここで公表するのは勘弁していただきたいと思います。  それから、防霧林につきましてはいろいろ保安林上の制約がございますので、取得する予定はございません。  最後に御指摘ありました海岸の問題でございますが、ここは国有海岸でございまして、現在建設省所管、北海道がその委託を受けて管理しているということでございまして、我々が使用する場合は北海道庁と協議して使用するということになっております。
  123. 児玉健次

    児玉委員 使用する場合に、北海道庁の知事がその使用について許可をしなかった場合はどうなるのでしょうか。
  124. 千秋健

    ○千秋政府委員 道庁と協議いたしますので、協議が調いませんと使うことは難しいかと存じます。
  125. 児玉健次

    児玉委員 私たちは、この十勝・大樹町における八・八ヘクタールの購入計画というのは、一昨日もお話のあった海岸防御型陸上部隊の着上陸阻止の演習に使われる。着上陸阻止の演習というのは、どこかの軍隊が上陸してこなければその作戦はできないわけだから、この購入自体、自衛隊の性質を新しくより危険な方向に追いやっていくものだ。  これを将来もし皆さん方が購入なさった場合に、米軍との共同使用があり得るかどうか、その点もお伺いします。
  126. 依田智治

    ○依田政府委員 現在の段階におきまして、日米共同訓練をそこでやるという考えはございません。
  127. 児玉健次

    児玉委員 重ねて伺いますが、日米共同使用にすることがあるかどうか、この点についてお伺いしたいのです。
  128. 千秋健

    ○千秋政府委員 米軍の方から同訓練場につきまして共同使用の申し入れ等は聞いておりません。
  129. 児玉健次

    児玉委員 最後に、日米統合演習についてお伺いをしたい。  十月二十七日からパワースウィープというニックネームの演習が始まっているはずですが、このパワースウィープという演習の内容と、現在北海道で行われている日米統合演習との関連についてお答えいただきたいと思います。
  130. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 ただいま御質問のパワースウィープ演習と申しますのは、米国の統合参謀本部の主催により本年十月二十七日から十一月七日までの予定で行われている指揮所演習ということでありまして、統合参謀本部、特定軍、統合軍及び非軍事機関の一部の危機管理手続を試験評価するものであると承知いたしております。このパワースウィープ演習と今回行われております日米共同演習というものは全く関係ないと承知いたしております。
  131. 児玉健次

    児玉委員 全く関係がない、そのように言われたわけですが、一昨日、日米統合演習について何人かの先輩議員からこの演習のシナリオはどうなのかということについて御質問があって、防衛庁の側からはお答えがありませんでした。しかし、現に行われている演習のシナリオについてはほとんどの新聞が既に報道をしております。  そこで伺いたいのですが、新聞が報道しているシナリオについて、防衛庁はそれを否定されるのか、お答えいただきたいと思います。
  132. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  前々からお答えしておりますように、演習を円滑、効果的に実施するために、それぞれ必要な限度のシナリオをつくっておるわけでございますが、防衛庁としては一切公表しておりません。その点で御判断いただきたいと思います。
  133. 児玉健次

    児玉委員 否定も肯定もしないということですか。
  134. 依田智治

    ○依田政府委員 発表しておりませんので、否定も肯定もするわけにはまいりません。その点御承知おきいただきたいと思います。
  135. 児玉健次

    児玉委員 こういった非常に緊張した統合演習が行われる、その準備の過程で自衛隊機にかかわっての事故というのが発生をしております。例えば、九月二十五日、千歳航空基地において偵察用のRF4E機がパンクをして民間空港に大きな影響を与えるということがございましたが、この飛行機の事故の内容について、そしてそれがどのように北海道——東京の間の民間航空に困難を与えたか、その中身についてお答えいただきたいと思います。
  136. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  ただいまのRF4の事故でございますが、本年の九月二十五日十六時過ぎに千歳飛行場の滑走路上で発生したものでございます。着陸滑走中にパンクした、それでE5というタクシーウエーで停止したという状況でございます。このために、発生直後の四時四分から五時四十一分ごろまでの間滑走路が閉鎖いたしましたために、約二十便程度の民間機に影響があったという状況でございます。
  137. 児玉健次

    児玉委員 パンクの原因は何だったんでしょうか。
  138. 依田智治

    ○依田政府委員 現在調査中でございますが、これまでの報告では——前にもう一つあったわけで、これは現在恐らくブレーキ系統であろうということで推定はしておりますが、詳細な原因につきましては調査中でございます。
  139. 児玉健次

    児玉委員 新聞の報道によれば、ファントム機が着陸するときに通常使用するドラッグシュートが脱落した、そして、そこから着陸時の速度が制御できなかったので強力にブレーキをかけて両輪ともパンク、こういうふうに言われていますが、どうでしょうか。
  140. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  ファントムの場合には、これは九月一日にあったわけでございますが、ブレーキが強くかかり過ぎたということで路面とタイヤの摩擦が起き、そのためにパンクするに至ったということで、これを起こすためのアンチスキッド・コントロール・システムというのが故障があったと思われるということで推定されております。  なお、先ほどちょっと私お答えしましたが、現在のところ、後の方のRF4につきましては、まだ原因ははっきりしないということで、調査中でございます。
  141. 児玉健次

    児玉委員 RF4Eの一機が、ドラッグシュートが脱落し、アンチスキッド・コントロール・システムに故障があって両輪がパンクした、九月一日のFl5がパンクしたときにもアンチスキッド・コントロール・システムの故障だ、そうなってきますと、自衛隊機のブレーキ装置について抜本的な検討が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  142. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  F15につきましてはアンチスキッドの関係でございますが、RF4の関係につきましてはまだ現在調査中で、その推定もまだつきかねる状況でございます。  なお、ブレーキ系統につきましては、Fl5につきましてそういう推定ができておりますので、現在、事故調査委員会におきましてさらに詳細な調査をしておる段階でございまして、その結論を踏まえて、もしいろいろ構造上のふぐあいその他がありますれば、それに対する抜本的な対策を講ずるということでございます。
  143. 児玉健次

    児玉委員 私は、同型機のブレーキシステムについて全面的な検討を加えることが必要だと考えますし、その内容が明らかになるまで、その飛行機が日本の空を飛び滑走路におりてくるということは非常に危険な事態であるということを強く指摘をしておきたいのです。  そこで、今度の日米統合演習の中で、昨日、アメリカ軍機が不時着をしたという報告防衛庁は受けていらっしゃるでしょうか。受けていらっしゃるとすれば、その内容についてお答えいただきたいと思います。
  144. 平晃

    ○平政府委員 詳細は承知しておりませんが、米軍のヘリコプターが予防着陸をしたケースが一件あったように記憶しております。
  145. 児玉健次

    児玉委員 詳細は承知してない——場所はどこで、どのような機種で、いつそのような事故が起きたのか。
  146. 平晃

    ○平政府委員 事故が起きたということは聞いておりません。そういう事実があったということは聞いておりません。ただ、ヘリコプターが予防着陸をしたケースがあったという報告が一件あったことは記憶しております。
  147. 児玉健次

    児玉委員 けさ現地から新聞を送っていただいてわかったわけですが、鉄道からわずか二十メートルの場所で、近くには民家がある、そこに二十九日午前八時三十分ごろ、キーンエッジ87に参加していた米軍機が秋まき小麦畑に不時着をした、米兵が多数やってきて応急修理をして、午前十一時三十分ごろ離陸をした、こういうケースは、防衛庁にとっては詳細を知る必要のない瑣末なケースなんでしょうか、お伺いします。
  148. 平晃

    ○平政府委員 事故でありますと当然、詳細、細部にわたって原因究明等措置する立場にございますけれども、予防着陸というのはヘリコプターについて多うございます。これは、メーターがちょっとぐあいが悪いというような場合に、近くの河原とかあるいはおりられる場所におりて、点検をしてまた飛び立つということはよくあるケースでございます。
  149. 児玉健次

    児玉委員 このヘリコプターがおりた場所は農家の所有にかかる小麦畑ですよ。そしてそこにしばらくの間とどまっていた。そのままじゃ飛べなくて、必要な要員が駆けつけて、そして慌ただしく飛んでいった、激しい軍事演習の中でこういうケースが起きている。  先日から自衛隊の綱紀の問題が議論になっていますが、事故というのは、その事故が持っている可能性、どのような事故に発展するかというその可能性、それを十全に見極めて必要な体制を真剣にとるということが必要だと思うのですが、そういう態度を防衛庁はとらないのかどうか、お聞きしたいと思います。
  150. 平晃

    ○平政府委員 航空機の事故等につきましては、発生した場合の事後措置ばかりでなく、平生から安全に十分配慮するよう、また機の点検等十分手を尽くすよう常に申し入れているところでございます。
  151. 児玉健次

    児玉委員 そういう態度で終始していたら、いわゆる自衛隊員のたるみという性質のものでなく、緊迫した演習の極度の緊張感の中で不測の事故が起きる危険性がありますよ。その点についての十全な対処が必要だと思います。この点については長官の御答弁をいただきたい。
  152. 平晃

    ○平政府委員 ただいま御質問がありました件につきましては、事故ではなく予防着陸ということで、そういうケースがあったことは事実でございます。
  153. 児玉健次

    児玉委員 そういった事故が起きた場合にどのような姿勢で対処していくのかということを私は聞いているのですよ。そのことに答えてほしい。
  154. 平晃

    ○平政府委員 航空機事故というのは、ケースによりましては大変悲惨な結果を生ずるものでございます。これはあってはならないことでございます。日ごろから米軍当局もみずから点検等十分措置はしていることでございますけれども、当庁としても、日ごろからそういうことについて十分配慮するよう申し入れているということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  155. 児玉健次

    児玉委員 今回の統合演習の統裁官は、日本の自衛隊の側とアメリカ軍側はだれとだれで、その階級をお答えいただきたいと思います。
  156. 依田智治

    ○依田政府委員 日本側の統裁官は統合幕僚会議議長の森空将でございます。アメリカ側はティシエ在日米軍司令官、中将でございますが、アメリカの方で現在会議がございまして、グスタフソン少将が代行しておるという状況でございます。
  157. 児玉健次

    児玉委員 ティシエ在日米軍司令官がこの統合演習のさなかに参加されている会議とはどんな会議でしょうか。
  158. 依田智治

    ○依田政府委員 これは米軍の内部の会議でございまして、私どもは詳細を承知しておりません。
  159. 児玉健次

    児玉委員 私たちの推測によれば、エドワード・L・ティシエ空軍中将は、現在アメリカで行われている世界的な統合指揮所演習であるパワースウィープに参加しています。そこに今度の日米共同演習の持っている深刻な中身があります。そういう中で行われているこの演習について、まだこれが続けられますから、私たちは即刻中止することを求めて、私の質問を終わります。
  160. 船田元

    ○船田委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ────◇─────     午後一時五十六分開議
  161. 石川要三

    石川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田口健二君。
  162. 田口健二

    ○田口委員 最初に、去る二十八日の本委員会で我が党の野坂委員質問をいたしました、いわゆる航空自衛隊の元パイロットで雫石事故の元被告であります隈元一尉の執行猶予明け祝いを兼ねた励ます会が二十五日に持たれまして、この激励会に全国の航空自衛隊の基地からもとの同僚パイロット十八人が参加をしたという点について私はお尋ねをいたします。  栗原防衛庁長官もその答弁として、大変遺憾なことである、残念なことであり、このことについては空幕長にその実態について調査を命じておる、このような御発言がございましたけれども、その後の調査結果について、その実態はどのようになっておるのか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  163. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  全国に散らばっておりますので、現在なお詳細は調査中でございます。したがいまして、現時点で判明しておる点について申し上げたいと思います。  去る十月二十五日の土曜日でございますが、航空自衛隊のT33練習機十機が、年間飛行、要務飛行等のために福岡空港に飛来し、先生指摘のように、搭乗員二十名中十八名が、同日夕刻、福岡市内で行われました元自衛官隈太茂津氏の激励会に参加したという事実がございます。  各機の飛行は、それぞれ年間飛行、要務飛行等として、いずれも訓練としてはそれぞれ上司の許可を受けて運航しているものであるということを判明しております。それから、現在搭乗配置にない操縦者につきましては年間飛行をやることになっておるわけですが、それは訓練上九十時間、それから実際に六十時間ということでなっておるわけですが、それにつきましては、幕僚長が全体としての計画を立て、個々の飛行につきましては操縦者自身が飛行計画を立案し、それらについて所属部隊の長の許可を得るということで、この手続等については正当に行われておるということもはっきりしております。  それからこの激励会は、航空自衛隊のパイロットの親睦団体の春日支部というのが主催いたしまして、会の開催につきましては、同支部から文書でパイロット等に案内があったものであるということもはっきりしております。  なお、この飛行を許可した部隊の長等は、その訓練飛行が終わった後、その日、土曜日でございますので、夕刻この激励会がある、関係者は大部分の者がその激励会に行くということを承知して許可をしておるということもはっきりしております。  以上のような状況でございまして、私どもとしましては、今回の場合訓練飛行自体は一応正当に行ってはおりますが、年間飛行の目的地の選定に当たって私的会合への参加ということがやはり念頭にあった、そういうことで、まさに会合に出席するために航空機を使用したのではないか、これは批判は免れないところでございまして、この点実に遺憾であり、今後そういう認識自体を改めるように、また現在徹底した調査をするとともに、今後の指導の徹底を期してまいりたい、こういうふうに考えておる状況でございます。
  164. 田口健二

    ○田口委員 十機の練習機が福岡空港に飛来をしておるわけですが、その十機というのはどこどこの基地から飛び立ったのか。それから、十八人というふうに言われていますが、この激励会に参加をされた十八人の方々の所属基地と、その方の階級をお尋ねしたいと思います。
  165. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  今回の福岡空港への参加十機は、千歳、松島、百里、入間からそれぞれ一機、小松、新田原、那覇、各基地からそれぞれ二機、合わせて十機ということでございます。  それから、階級につきましては、友田将補、これは新田原基地から要務飛行で行っておりますが、将補が一人でございます。それから一佐が三名、二佐が五名でございます。それから三佐が五名でございます。あとは尉官ということでございます。
  166. 田口健二

    ○田口委員 これは新聞で報道されておるわけでありますが、航空自衛隊の築城基地から四十三人の若手幹部パイロットが大型バス一台で参加をしている。これに対して、基地でだれが話をしたのか具体的になっておりませんが、「パイロットの中には雫石事故を知らないものも多く、当基地では若手幹部の再教育の一環として準公用で許可した」と書いてあります。これは事実ですか。
  167. 依田智治

    ○依田政府委員 今それらの点につきましては詳細に調査中でございますが、周辺の基地等からバス等を出して参加した者があるというのは事実でございます。それで、準公用かどうか、これは現在調査中でございます。  この雫石事件というのは、大変にパイロットのプロとしての責任を問われ、かついろいろな意味で、民間の百六十二名の方の犠牲を出した事件であり、パイロットとしても、自分の職業としてこれを教訓として厳しく身を処していかなければいかぬという大変教訓の含まれた判決であるというように感じておるわけでございます。なお、今日においてはもう時間なり高度等で訓練空域を区分するというのは当然に行われておるわけでございますが、雫石事件当時はそういう区分も不明確というような状況の中で起こった事件でございますし、今回の判決につきましては、教官である隈元一尉がプロとしての責任を厳しく問われたということもございますので、そういう面も含めて、若手の諸君にはパイロットとして今後生きていくために非常に勉強になることであるというような現地における感じを持った将官も恐らくいるのではないかと思うわけでございます。  そんなことで、私も一部の全くプライベートにいろいろ意見を聞いたところでは、そういうような意見を持つ者もおったわけでございますが、いずれにしてもこの事件は、そういうことと公用車を利用したり航空機を利用する、あたかもそのために利用したようなことになるような運用というのは絶対に慎まれなければいけませんし、そういうことが許されるものではございません。そういう観点に立って我々はこの問題に対しては厳しく処しておるところでございますが、一部そういう状況があるということではないかというように感じておる次第でございます。  なお詳細につきましては、実態をさらに詳細に把握して対処したいというように考えておる次第でございます。
  168. 田口健二

    ○田口委員 ちょっと今のあなたの答弁というのはおかしいと私は思うのです。確かにこの雫石事故というのはあってはならない内容のもので、そのこと自体を教訓にするというならわかるのですよ。私が聞いているのは、激励会に行くことが教育になるんですか、そんなばかな話はないでしょう。そこのところを私、今確認しているんですよ。だれが言っているのかわかりませんけれども、築城基地の関係者によれば、若手幹部の再教育のために準公用で出席をさせたと言っているんですよ。激励会に行くことがどうして再教育になるんですかね。その辺はどうなんでしょうか。
  169. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  そのような細部の状況につきまして、どういう状況でどういう認識のもとにそういう参加があったのかというのを現在それぞれ調査しておる状況でございまして、それらの結果を待って、私どもとしても適正に措置したいというように考えておるわけでございます。
  170. 田口健二

    ○田口委員 この問題は、私も公務員の出身でありますから、これまで、同じような事柄であっても民間の人であれば許される、しかしそれは公務員という立場にあれば厳しく指摘をされる、そういうことを随分経験もしてまいりました。  今回の問題、この雫石の事故の問題というのは、言われておりますように、国民の生命、財産を守っていくことが本来の最も重要な任務である自衛隊員が、事情はどうあれ百六十二名というたくさんの国民の犠牲を強いてしまった、こういうことから考えていくならば、少なくとも一般の国民の常識あるいは公務員という立場から考えていけば、その事件に関係をした方が執行猶予の期限が切れた、まあそのお祝いか激励会でしょうけれども、そういうところに現職の自衛官が出席をすること自体が、一般の常識からいって大変問題があるんだというふうに私は感ずるわけなんです。それがしかも、防衛庁もお認めになっておるように、まさに自衛隊の飛行機を使って公私混同も甚だしい、こういう結果が生まれているわけです。  私は特に防衛庁に要請をしたいのは、新聞記事先ほど読み上げましたように、お答えがありましたように、十八人の方というのは自衛隊の中でもかなり幹部クラスの人が参加をした。そして基地の司令も、そういうものが行われ出席をされるであろうということを知りながらやはり許可をしている。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕 そして、この築城基地の話によっても、激励会に行くのに幹部の再教育になるから準公用で許可した、こういう感覚が、いわゆる自衛隊という武装集団の中にあって幹部の人たちが我々一般国民とは全くかけ離れた常識の中でこれが平然として行われるということになれば、私はこれは大変危険な問題だと思うのです。単なる公私混同とか規律の弛緩では済まされない問題ではなかろうかというふうに思うのであります。  私は 今度の臨時国会が開会をされ、冒頭の代表質問を聞いておりましたときに、初めてでありましたが、本会議場の中でかなりやじが飛び交った、それを聞きながら、あることを思い出したのであります。かつて戦時中に旧軍の幹部が、幹部といっても上の方ではなくて中堅幹部でありますが、あの本会議場の中でやじに対して黙れという発言をした有名な事件がありますね。ああいうことが、結局そういう体質を持っておることが、あの第二次大戦という侵略戦争にのめり込んでいった、そういう背景にあるのではないか。私は必ずしも今回の問題とは短絡的に結びつけようとは思いませんが、そういう一般国民、一般常識とはかけ離れたような考え方が自衛隊の中の幹部にあるということ、これは非常に危険だ、ですから、そういう意味で今後この問題に対しても防衛庁は対処してもらいたい、このことを申し上げておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  171. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今御指摘のとおり、国民の常識に支えられて我が国の自衛隊は存立をするわけです。ですから、主観的にいろいろ我々はこう思う、ああ思うというのは、それはそれなりに私はわからぬわけじゃないが、国民的常識に合わぬことはしてはいかぬ、そういうふうに考えまして、今後この線に沿って御期待に沿うように努力をいたしたい、こう考えております。
  172. 田口健二

    ○田口委員 事故の問題でもう一点だけお尋ねをしたいと思うのですが、今年に入りまして航空機に関する事故が随分多発をしておると思うのです。その都度防衛庁の方でもその実態なりを調査されておると思うのですが、ただ、私はこの事故の大きな原因の一つに、今防衛庁の方で進めております現在の日本における防衛のあり方、そういうものに基づいて当然訓練計画などというものは立てられていくだろうと思うのです。したがって、このように事故が頻発をするということは、今自衛隊の方で立てておるこのような訓練計画に無理があるのではなかろうか、またそれを受ける自衛隊の側においても、技術的に、あるいは精神面も含めて今の計画についていけない、こういう状況があるのではないか、こういう気がしてならないのであります。  防衛の進め方については後ほど触れさせていただきますけれども、その辺の計画の立て方、そしてその計画についていけない現実が今日の自衛隊の中にあるのじゃないか、この辺については当局としてはどのように御理解をしておられますか。
  173. 依田智治

    ○依田政府委員 訓練計画につきましては、年間それぞれ幕僚長が計画を立て、それから各飛行隊等でそれぞれまた月とかその日ごとに計画を立て、それぞれ具体的に実施しておるわけでございます。そういう点に無理があるというようには認識しておりませんが、これまでの最近起きた事故等をいろいろ分析しておりまして、事故調査委員会等で得た結論、それぞれこの間の燃料切れまでの事故については結論が出ておるわけでございますが、そういう計画を見ますと、計画に無理があるというような結果は出ておりません。ただ、今回のような場合に、例えば燃料切れの事故の場合に、大きなウエートとしてパイロットが燃料はあったけれども飛行が完全に行われなかった、そのために目的地寸前で墜落したということがあったわけでございます。  そういう面で、私どもよく見てみますと、やはりそういう危機状態における訓練というようなものについてもう少し徹底をする必要があるのではないかというような面もいろいろありますので、通常の現在立てておる計画の実施の中で、そういう面もさらに加味して、いろいろ任務を付与し経験を積ませれば全く安全な訓練ができるというように感じておるわけでございまして、計画そのものに無理があるというようには考えておりません。
  174. 田口健二

    ○田口委員 それでは法案の問題で少しお尋ねをしたいと思います。  今回自衛隊の自衛官の数を六百六人増加をするという改正案が出されておるわけですが、五十八年に増員をして以来三年間こういう法改正が出されておらないわけですね。三年間出さなかったその原因というのは一体何なのか。それから、今回六百六人の増員要求が、改正が出ているわけですが、この中身ですね、具体的な配置といいますか、これについてまずお尋ねをしたいと思います。
  175. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の増員の中身といいますか、なぜ出さなかったということを含めて申し上げますと、御承知のように、今回の増員は海空でございますけれども、これらは主として新しい航空機なり艦艇が就役をしてくるということに伴って必要になるものの増員、一方、艦艇なり航空機が退役をするということで逆に減が出てまいります。そういったものの差し引きをして、そして、どうしてもふやさなければいけないものについて増員をしていく、そういうお願いをするということでやっております。過去二年間につきましては、たまたまその前の増員の法案等の通るのが非常におくれたということもありまして、その段階で増員がなされたこと、さらには、ぎりぎりの定数の見直し等行ってやってきたわけでありますが、いよいよ就役してくる艦船、航空機等の定員が賄えなくなったということで、今回お願いをいたしておるわけであります。  内容といたしましては、今回お願いしておりますのは、艦艇、航空機の就役等に伴う増員というのが千九百一名でございまして、それに対して、減っていく、除籍をしていくというもののマイナスがございます。それが総計で千四百五十七人あります。まず、その差し引きが要るということであります。その他の要員といたしまして、これは例えば航空戦術支援のための十四名であるとか、あるいは硫黄島の整備に伴うものであるとかといった海の関係、空の関係でいえば、警戒航空隊の新編に伴う増員であるとかそういったもの、さらには統幕に中央指揮所というものができておりますが、これを二十四時間の運用態勢に持っていくもの、そういったものを含めまして百六十二名ございます。それらを加えて全体で現在お願いしておる増員計画になっておるわけでございます。
  176. 田口健二

    ○田口委員 常識で考えれば、これまで二年間にわたって内部的なやりくりというので補てんをしてこられたということになれば、今後とも現在の定員の中で十分やっていけるのではないかというふうに考えもするわけです。とりわけ自衛官の充足率、海空合わせてもまだ一〇〇%にはなっていない、今九七%というふうに聞いているのですが、充足率がまだ一〇〇%にもなっていないわけですから、現行の定員の中でその辺は十分に賄っていけるのではないでしょうか、その辺ほどのようになっているのでしょうか。
  177. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず、充足の問題と定員の問題とは別にお考えになっていただかなければいけません。  定員と申しますのは、例えばある船なら船を運航していくためには、艦長以下それぞれの部署についての人間というものが、定員というものの裏づけがないといけません。それがないと、平時、仮に三直であるべきものを二直で運航していたにしろ、有事に三直体制にするための定員の裏づけがないということでは動きがつかないということをまず御理解いただきたい。つまり、定員というものは部隊の枠組みを決めるもので、それなりの裏づけがないとまずいということでございます。  一方、充足の問題でございますが、御承知のように、海空の自衛官の充足率というのは現在九六%ということになっております。九六%というのは、我々としてはさらに九八%ぐらいまでふやせるのではないかという考え方も持っておりますが、充足というのは定員をオーバーして持つわけにはまいりませんので、例えば四月に高校を出た者あるいは防衛大学校を出た者が入隊をしてくる、その段階でも一〇〇%以上にはならないという状況から、逐次退職をしていったり補充をしたりということがありますけれども、平均的には一〇〇%の充足ということは物理的には不可能であります。そういうことも含めまして、九六%の充足というのはほぼ一〇〇%に近いものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  178. 田口健二

    ○田口委員 定員についてはそういうお考えなんですが、先ほど言ったように、二年間は内部努力でやりくりをしておった、だが今回新たに法改正が提案されているわけですけれども、現状ではどうしてもこれだけ増員をしないと従来のやり方では不都合が出てくる、こういうことになっているのですか、少しその辺の状況を教えていただきたいと思います。
  179. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の増員につきましては、防衛庁として必要と考えるものを要求いたし、それについて総務庁あるいは大蔵省等も十分審査の上、これだけの増員はやむを得ないというぎりぎりの線をお願いいたしておるものであります。
  180. 田口健二

    ○田口委員 いや、私は大蔵省が認めたからとかなんとかということをお聞きしているのではなくて、実際にこれだけの人数を、定員をふやさないと航空機なり艦艇の運用に支障が出てくる、そういうのが具体的にあるのかということをお尋ねしているわけです。
  181. 西廣整輝

    西廣政府委員 すべてを御説明するわけにはまいりませんので、一、二例を挙げて御説明したいと思います。  先ほど申し上げたように、艦艇が就役をしてまいりますと、それぞれの部署に充てるべき人員がいませんと艦艇が来てもそれは幽霊船になってしまうということでありますので、それぞれの艦艇にはぎりぎりの詰めに詰めた定員というものが決まっておりまして、それを充当する必要があるというものであります。これは艦艇、航空機等の就役に伴うものは御理解いただけると思います。  一方、警戒航空隊、これは早期警戒機でございます。この航空機の取得はもう既に早く行われておりましたけれども、当初の間はまだ訓練期間であるので要員等の訓練をしておくという状況でありましたが、いよいよパイロットあるいはそれを運航する要員等の養成も終わってきますと、それを部隊として編成しなくてはいけない、そういうことになりますと部隊としての必要な定員というものを与えませんと部隊運用ができない状況になるということであります。  それから、先ほど申し上げましたが、統合幕僚会議に中央指揮所を設けておりまして、従来の形では昼間しか運用できないものを二十四時間運用する態勢に持っていくためには、さらに二十三名の者がいませんと交代要員が得られない。  そういった形でお願いしておるものであります。
  182. 田口健二

    ○田口委員 次に、武器による防護施設の問題で一、二お尋ねしたいのです。  有事法制の中間報告の中に、「なお、有事法制の研究と直接関連するものではないが、自衛隊法第九五条に規定する防護対象には、レーダー、通信器材等が含まれていないので、これらを防護対象に加えることが必要であると考えられる。」と書いてあるのです。ここで「有事法制の研究と直接関連するものではないが、」とわざわざ断りながら、この中間報告の中にそういう問題が出されてきておるのです。そして、それが今回の法改正の中身にもつながってきておるわけです。一見、非常に解せない感じがするわけですけれども、この有事法制の中間報告の中にそういう記述を入れなければならなかった理由は何かあるのですか。
  183. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  有事法制の研究が話題になりました当時、武器の使用等をめぐり論議がございまして、そういった論議を踏まえまして九十五条の問題も当時いろいろ話題になりましたので、そういう点も含めて、直接七十六条の防衛出動時への対応ということにはなりませんけれども、武器の使用という観点から検討課題として上げられたというふうに聞いております。
  184. 田口健二

    ○田口委員 それからもう一点、防護対象の中に今度新たに船舶というのが入って、きょうの午前中も船舶の範囲というのが答弁があったと思うのです。そういたしますと、護衛艦とか潜水艦というのは従来は対象に入っていなかったのですか、それはどうなんでしょう。
  185. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  従前の規定では、護衛艦、潜水艦等につきましては、当然のことながら武器を搭載しておりますので、したがいまして、全体として武力行使のための一つのシステムでございますので、武器としての取り扱いということが可能であったということでございます。今回、この規定に船舶というふうに追加いたしましたのは、そういった武器を搭載しない船、例えば海洋観測艦とか潜水艦救難艦、こういった重要な任務を持つもので武器を搭載していないものがございますと、周辺の自衛艦ばかりではなくてその他の支援を行う船であっても防衛装備として重要な位置づけにあるものがございますので、今回追加をお願いしておる、こういうことでございます。
  186. 田口健二

    ○田口委員 そういたしますと、午前中の答弁を私は聞き違えておったのですか。護衛艦とか潜水艦は従来どおりの解釈でその対象になるし、今回改正になった船舶というのはあくまでも武器を搭載をしておらない船舶だというふうに考えておられるわけですか。
  187. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  今回、防護対象として追加を船舶という形で行いますと、先ほど指摘のございました護衛艦、潜水艦等武器を搭載しております船もやはり船舶としての態様の中に含まれてまいるというふうに考えております。
  188. 田口健二

    ○田口委員 次の問題ですけれども、今度新たに「国賓等の輸送の用に主として供するための航空機を保有することができる。」これは本会議答弁の中でも少しあったのでありますが、ただ、率直に考えて——これは現在総務庁ですか、保管をしておるのは。総務庁が現在保有をしておる。これを今度は自衛隊に移すということになれば、私どもはその用途からいって、国賓あるいは内閣総理大臣等々、いろいろ説明もありましたが、そういう趣旨から考えてみれば、何も自衛隊に保有をさせなくても、他の政府機関、運輸省もあるわけです。海上保安庁などもあるわけでして、そこに持っていけばいいのではないかというふうに考えるのですが、防衛庁にこれを移すということについては何か特別な理由があるわけですか。
  189. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  この国賓その他の者の輸送につきましては、本来それぞれ所管の官庁が輸送されるというのが筋合いであろうと思いますし、特に国公賓の送迎につきましては外務省がその接遇の一環として従来からやっておることでございますが、ただ、本来各省庁が輸送すべき国賓等につきまして、当該省庁の依頼を受けて航空機で輸送するという権限、この権限については特に従来定めがございませんで、他の行政機関に属しない事項ということで総理府が所管をされて、サミット等の国賓等の輸送、要人等の輸送を行われたわけでございます。  しかしながら、総理府におきましては、そういった輸送を行いますためのスタッフでございますとか機材、こういったものについて十分な日ごろからの用意があるというわけでございませんで、私どもでいろいろ御協力を申し上げておったわけでございますが、やはり継続的にこういった国賓等の輸送という需要がございますのと、特に先生お尋ねのことに対します答えになりますが、こういった航空機等の保守整備、維持管理、こういったものにつきましては、類似の航空機等の維持管理をやっております自衛隊においてそういったものを所管させるのが一番適当であろうという御判断がございまして、自衛隊にそれを移すということの御検討がなされ、しかしながら自衛隊法ではこういった任務を遂行するための明文の規定がございませんので、今回これについての規定を設けて、きっちりした形で自衛隊の業務として行うことにする、こういうのが今回の改正の趣旨でございまして、御理解を賜りたいと思います。
  190. 田口健二

    ○田口委員 こういう規定が設けられて自衛隊の任務としてこういう内容が付加されてくるということになりますと、現在はヘリコプター三機だというふうに聞いておるわけですけれども、今後自衛隊としてはこれらの用に供するために他の飛行機、民間で使っておるような旅客機というか、そういう形の飛行機を持っていくということも考えられるわけですが、その辺の考え方というのはどうでしょうか。
  191. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の規定の改正によって国賓等の輸送を自衛隊が行い得ることになるわけでございますが、その際、それに用い得る航空機というものが今回の改正に伴って総理府から移管されるピューマだけということでは必ずしもございませんで、自衛隊が持っておる航空機、他の航空機を使うことも可能であろうと思います。  なお、この種の用に専ら供するために新たに大型機を持つか持たないかということについては、そのような計画は現在のところございません。
  192. 田口健二

    ○田口委員 現在のところそういう大型機を購入するとかいう計画はないということですが、ここにこういうふうに明文化をされてくるということになれば、今お答えがあったように他の航空機を利用することもあり得るということでありまして、例えば、そうなりますと、内閣総理大臣が言われておるように海外にいろいろ用件で行かれる、そうなった場合に当然これらを利用するということになれば、自衛隊の操縦士がこうした航空機を操縦して外国に行くということになる状況が出てくると思うのですね。そうなった場合に、現在の法制上、そういうことが認められるのかどうなのか、可能なのかどうなのか、その辺について見解を伺いたいと思います。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  193. 友藤一隆

    友藤政府委員 百条の五の規定によって国賓等を輸送し得る地理的範囲はどうか、国外も入るのか、こういうお尋ねであろうと思いますが、今回お願いをしております百条の五の規定は、規定上、輸送の地理的限界と申しますか範囲を限っておるということではございませんので、同条の規定により国賓等を海外へ輸送するということも可能という形にはなっております。
  194. 田口健二

    ○田口委員 そういうことができるということでありますから、今私がお尋ねをしたように、そうなった場合に自衛隊のパイロットがそれらの航空機を操縦をして外国に行く、そういうことは現行の法制上は何ら問題はないのかということをお尋ねをしておるわけです。
  195. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛隊法等に規定がありますれば、従来も例えばオリンピックの支援ということで自衛隊の航空機を運航してパイロットが聖火を取りに行くといったようなことで、任務の範囲内で海外に出ることそのものについては、そういう任務が与えられているときは問題がないというように考えております。
  196. 田口健二

    ○田口委員 それでは少し防衛の問題についてお伺いをしたいと思うのです。  一昨日のこの委員会における答弁の中でも、十年前に防衛大綱が制定をされた当時の状況と今日の状況の中で、最も著しく変化が起きているのは、極東におけるソ連軍の軍備が増強されておる、このことを防衛庁の方では盛んに強調されておったように私も聞いたわけであります。  ただ、この問題というのは極東の範囲内でとらえてみるということでは間違ってくるのではなかろうか、やはり今日の東西関係、米ソ関係ということになればもう少しグローバルな見方をしていかなければいけないのではないか、そういう形の中で極東における配備の状況というのは一体どうなっているのか、こういうことを見ていかなければいけないのではなかろうかという気がするわけですが、防衛庁としては現在の米ソの世界戦略の基本理念、さらにその構造についてどのように現状認識をしておられるのか、非常に大きい問題だと思いますけれども、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  197. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 先生もおっしゃられたとおり、大変大きな課題でございます。  御存じのように、先生がおっしゃられました極東ソ連軍のみならず、ソ連全体の軍事力というものが非常に拡充されておるということは事実でございます。本年度の「ミリタリー・バランス」で書いてございますけれども、ソ連の軍事力は一番大きく見積もってGNPの一七%、一番小さく見積もっても一四%が軍事費に費やされているというふうに書いてございます。こういう軍事費の増強というものはこの一年とか最近にとどまるものではございませんで、六〇年代からずっと引き続いているということが現実でございます。その結果、ソ連の全世界的な軍事力の増強というのは非常に大きくなっておるということでございます。  これに対して米国は、七〇年代、御存じのようなベトナム戦争の後遺症というようなものもあったし、他方においてデタントのムードというようなものもございました。これがやはり民主主義国というものの一つのあらわれでございますが、こういう世論の中で軍事費というものが非常に低滞ないしは減少していったわけでございます。そういうようなことから、米ソの軍事力の問題については七〇年代の後半にいわゆる脆弱の窓というものがあるのではないかというような論争が起こった、これをレーガン政権になって何とかして立て直そうということになったというのが現状だと思います。  私どもとしては、アメリカの国防政策というものは一貫して抑止力を維持するということにあるというふうに認識いたしております。現在におきましては、米ソともども十二分なほどの核、通常兵力を持っておるということで、これを何とかしてもっとレベルの低い形で均衡を維持すべきであるというのがレーガン大統領も言っておるところでございますけれども、言ってみれば高いレベルで均衡状態ができておるというのが現在の国際的な軍事情勢ではないかと思います。
  198. 田口健二

    ○田口委員 問題が問題だけにちょっと抽象的なことになるわけですけれども、実際の米ソの兵力の配備状況というのはどのように把握をしておられるわけですか。
  199. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 米ソそれぞれ兵力を展開しておる最も基本的なところは、それぞれの母国、アメリカにとってはアメリカであり、ソ連にとってはもちろんソ連でございます。  一方、アメリカは日本を含めた東アジア、またヨーロッパのNATOというものを中心に海外に戦力を展開いたしております。また、海上兵力も、米国は大きな海軍国でございますから大きな海軍兵力を展開しておる。  他方、ソ連の一番大きな海外戦力は東欧に持っておるわけでございまして、東欧におよそ三十個師団を配備しておると承知いたしております。また、現在においてはアフガニスタンを中心といたしますところのソ連から見た南の方にも大きな兵力を配備しておる、これが海外の兵力の配備ということであろうと思います。
  200. 田口健二

    ○田口委員 そういう兵力の展開の中で、極東におけるソ連の軍事力の増強ということをこの前から盛んに強調されておるわけですけれども、極東におけるソ連軍の兵力の配備というのは、ソ連の軍事力、兵力の大体どの程度になるのですか。
  201. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 大まかに申しまして三分の一から四分の一でございます。
  202. 田口健二

    ○田口委員 そこで、先ほども申し上げましたように、防衛庁の方では前回の答弁の中で、ソ連の極東軍事力の増強ということの中で、SS20の問題あるいはバックファイアの問題、これらを数字を挙げて盛んに強調されておったようでありますけれども、SS20が極東に配備をされたのはいつですか。配備をされた時期とそれからSS20の性能についてちょっと教えていただきたいと思います。
  203. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 SS20が極東に配備されたのは七〇年代の末であると承知いたしております。また性能につきましては、およそ五千キロの距離、また百五十キロトンの弾頭を三つ持っておるというふうに承知しております。
  204. 田口健二

    ○田口委員 SS20が一九七〇年代の後半に極東に配備をされたというお話ですけれども、では、SS20が配備をされる前に極東にこういった核ミサイルは配備をされておらなかったのですか。
  205. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 いわゆる戦略核と言われる長距離大陸間弾道弾というものとは別に、SS4、SS5というような短距離のミサイルが配備されておったと了知しております。ただし、SS20に匹敵するような中距離のミサイルは存在しておらなかったというふうに了知しております。
  206. 田口健二

    ○田口委員 今、短距離のミサイルが配備をされておったというふうに言われたのですが、ではSS4の射程距離はどのぐらいあったのですか。
  207. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 SS4はおよそ千八百キロでございます。
  208. 田口健二

    ○田口委員 同じことをバックファイアについてもお尋ねをしたいと思うのです。バックファイアがいつごろ配備をされたのか、そしてバックファイアの持つ性能ですね。
  209. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 配備されましたのはおおよそ七〇年代の末ということでございます。行動半径は四千キロを若干上回る程度というふうに了知しております。
  210. 田口健二

    ○田口委員 そうしますと、これも同じことになろうかと思いますが、バックファイアが配備をされる前にどういう爆撃機が配備をされておったわけですか。その性能についても一緒にお尋ねをしたいと思います。
  211. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 バックファイアの配備される以前におりました爆撃機はベア、バイソン、バジャー等でございます。ただし、現在バジャー、ベアといったものはもっと改造型になっておりますので、当時は大分古い型のベアないしバジャーでございます。
  212. 田口健二

    ○田口委員 そうしますと、SS4核ミサイルなり現在のSS20という核ミサイルというのは極東に配備をされておる。一体どちらに向かってその照準が定められておるわけですか。
  213. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 これはソ連のみが知るところでございまして、私どもソ連から聞いておりません。
  214. 田口健二

    ○田口委員 私ども常識的に世界地図を広げてみますと、ソ連とアメリカの最短距離というのはやはり北極を中心にして向かい合っている距離というのが一番最短距離だろうというふうに思うのです。ですから、極東に配備をされているソ連の核ミサイルがどこをねらっているかわからぬというのは、それはもちろん教えてくれないでしょうけれども、常識的に米ソの今日の軍事の配備ということを考えていくならば、それは当然わかることじゃないでしょうか、どこに照準が定められておるかということは。  そこで、私は特にこの辺で疑問に思っているのは、SS20の配備だとかあるいはバックファイアの配備によって非常に極東における安全保障が潜在的な危機にさらされておる、あなた方は盛んにこのことをこの前も強調されておったのですが、しかし、今も明らかになったように、SS20の配備の前にも既にSS4という核ミサイルが配備をされていた、あるいはバックファイアの配備の前にも同じようにソ連の爆撃機が極東に配備をされていた。兵器ですから日進月歩によって性能というのはずっと高まっていくでしょうから、古いものはどんどん新しいものにかえられていく。だから状況的には余り変わっていないと思うのです。それを防衛庁の方では、SS20がこうなったから、バックファイアがどうだからということで盛んに脅威というものを強調しておる、この辺が私は国民に誤解を招く結果になるのではないかというふうに思うのですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
  215. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 ただいまの先生のお言葉ではございますが、米ソということとなりますと、常識的に米ソの間で最も脅威ということになっておる核兵器は戦略核兵器でございます。ミサイルといたしましてはいわゆる大陸間弾道弾、ICBMと潜水艦から発射されるところのSLBMというものでございます。  このSS20というものは、先ほど申し上げましたような射程距離ということにいたしますと、極東に配備されましたSS20にいたしましてもまたヨーロッパ地区に配備されましたSS20にいたしましても、米国大陸ではほんのちょっとアラスカをかする程度というところにしか届かないということでございます。この射程距離の中に入るのはユーラシア大陸、日本を含めましたアジアとヨーロッパということでございまして、これがヨーロッパ人にとりましてもまたアジア人にとりましても非常に脅威となるということは非常に現実的であると考えます。  同様に、バックファイアにいたしましても、航続距離からいたして米国に対する戦略爆撃機というふうに定義するか、これを中距離のもっと距離の短いものと定義するか、これは実はSALT交渉のときにも米ソの間で大変に話題になったというか、非常に検討されたところでございますけれども、まずこの航続距離からして戦略的な、いわゆる米ソ間で飛んで脅威となるというものよりは、ユーラシア大陸に対する脅威の方が大きいのではないかというふうに考えております。
  216. 田口健二

    ○田口委員 それでは、極東におけるソ連軍の軍事力が強化をされたことによって日本の安全保障に潜在的な脅威が増したというふうにたしかこの前言われたと思うのですが、具体的にはどういう理由といいますか内容でもってそのようにお考えになっておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  217. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 我が国の周辺において軍事力が増強される、しかも極めて急速に増強されるということは、我が国にとってやはり潜在的な脅威が増したというふうに考えざるを得ないわけでありますが、さらにソ連の場合には活動も活発化しておるということでございます。軍用機また軍艦の我が国の周辺における活動も、この十年間をとってみれば非常に活発化しているというのが遺憾ながら事実でございます。
  218. 田口健二

    ○田口委員 その軍事力が強化をされる、あるいは今言われたように活動が活発化をしておる、これは必ずしもその一つの国だけがそのようなことをやっているということではなくて、あくまでも相対的なものだというふうにも思うわけですね。例えばアメリカが第七艦隊を強化をしていく、あるいは、戦艦ニュージャージーなどを就役させてこれに巡航ミサイル・トマホークを配備する、こういうことなどが相対的に相まって緊張というものが増してくるというふうに考えるわけですけれども、その辺はどのように御理解をしていらっしゃいますか。
  219. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 先ほども申し上げましたが、七〇年代をとってみましても、米国の全般的な軍事的な体制というものはやや停滞していたというのが事実でございます。これに引きかえまして、ソ連の方は極めて一直線的に戦力を拡充してまいりましたが、特にその拡充の大きかったところが極東であるというのが歴史的な事実でございます。
  220. 田口健二

    ○田口委員 全体的な問題はちょっとこのぐらいにしまして、最近議論になっておりますシーレーン防衛について少し考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  221. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーン防衛と申しますのは、一言に申しますと海上交通の保護というようにお考えいただきたいと思いますが、要は、我が国のように海外依存度の非常に大きな国が、国民が生存していくために必要な物資等を海外から輸入する、あるいは我が国が攻撃されているような場合に防衛行動というものを継続していくための最低の戦略物資等を持ってくる、そういった場合の海上交通の保護を確保しようというのがシーレーン防衛の目的でございます。
  222. 田口健二

    ○田口委員 この前も論議になっておりましたが、洋上防空についてどういうふうにお考えになっておられるのか、あるいはどのように検討しておられるか、お尋ねをいたします。
  223. 西廣整輝

    西廣政府委員 洋上におります船舶の保護、安全確保のためには、その脅威となるのは潜水艦あるいは水上艦による攻撃、さらには航空機による攻撃等が考えられるわけでございます。従来から洋上における防空というものは考えられておったわけでありますが、当時の状況としては、一部の爆撃機等が洋上にあらわれることがある。しかしながら、それらは従来のタイプで言えば船舶の上から爆弾を落とす、そういったような攻撃パターンであろうというように考えられておったわけであります。したがって、その船舶を保護する海上部隊がそれなりの対空火器、高射砲なり対空ミサイルなりを持つことによって相当の防御が可能であろうというように考えられておったわけであります。  しかしながら、先ほど来御説明がありましたように、さらにスピードの速い爆撃機等が出現をしてきた。しかも、それらの爆撃機等は爆弾を落とすというだけではなくて、非常に射程の長いミサイルを積むようになった、数百キロに及ぶ射程を持っておるミサイルで艦艇等が攻撃できるようになったという状況に現在はなってきておるわけであります。ということになりますと、船舶を直接護衛しておる艦艇が対空火器等をもってその攻撃してくる航空機を排除するということができない状況になりつつあるということでありますので、そういった状況にどう対応するかというのが洋上防空を現在検討しておる直接的な動機であるわけであります。  しからばどういう考え方があるかということについては、まさにこれから研究していくところでありますが、我々の考えるところ、やはりできるだけ早い時期に相手方の航空機の動静というものを把握して、でき得ればこちらの船舶がその航空機と遭わないように回避をしてしまうというのが一番望ましい状況ではないかと思います。さらに、どうしても回避ができないような場合には、それを洋上で何らかの形で阻止するシステムというものが考えられないかどうか、そういったことを今後研究していきたいというように考えておるわけであります。
  224. 田口健二

    ○田口委員 続いて、OTHレーダーの配備についてどのように検討されておるのか、お尋ねしたいと思います。
  225. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど洋上防空の関係で申し上げました、できるだけ早い時期に相手の動静を探知してという際に、OTHレーダーというのは非常に遠距離の監視が可能な装置であるというように私どもは理解をいたしておりますが、現在のところOTHレーダーそのものについて机上の検討というものを進めてきております。その範囲内では、洋上防空、さらには本土防空においてもOTHレーダーというものは有用なもの、効果の大きなものではないだろうかという点で、その性能に着目をしておるわけであります。  そこで、昨年決められました防衛力整備五カ年計画で、このOTHレーダーの有用性についてさらに検討を進めて、それを整備するかどうかということを含めて検討するということになっておりますが、そのためには、今後我々が場合によっては整備したらいいのではないかと言われるOTHレーダーが現在米国で開発中であります。したがって、その開発状況等を実地に調査する機会があればなというように考えておりますし、さらには、我が国で整備をする、配備をするということになりますと、どこに配備をするのがいいのか、どこに配備ができるかといったような設置場所等についても今後いろいろと研究してみる必要があろうというように考えております。
  226. 田口健二

    ○田口委員 続いてもう一つ、エイジス艦の購入、配備についてどのように考えておられるか、お尋ねをしたいと思います。
  227. 西廣整輝

    西廣政府委員 これも先ほど来御説明申し上げている洋上防空の中の一つの機能であるというようにお考えいただきたいと思いますが、先ほど申したように、航空機からの艦艇攻撃あるいは潜水艦、艦艇からも行われるわけでありますが、いわゆるクルージングミサイルによるかなり遠距離からの攻撃というものが艦艇に加えられるおそれが非常に高まってきておるわけでありまして、そういったものに対応するためにはどういう対空火器が必要であろうかという研究が洋上防空の一環としてなされておるわけであります。従来の対空ミサイル等でありますと、発射間隔が非常に大きいとかいろいろな問題がありまして、クルージングミサイル等に対しては有効な対応ができない、エイジス艦が積んでおりますようなミサイルというものがあるいは有効ではなかろうかということで、我々の検討の対象にはいたしております。
  228. 田口健二

    ○田口委員 今の問題は後からまたまとめてちょっとお尋ねをしたいと思うのです。  途中になりますが、日米防衛協力のためのガイドラインについての研究が行われているというように思うのですが、その辺の状況についてひとつお知らせをいただきたいと思います。
  229. 西廣整輝

    西廣政府委員 日米防衛協力のためのガイドライン、これに基づく研究というのはいろいろな面からやられておるわけでございますが、その一つとして共同の作戦計画の研究というのがございます。これにつきましては、昭和五十六年度に一つの想定といいますかシナリオに基づく研究というものが概成し、その後それの補備充実作業というものをやってまいりまして、五十九年の末に大体これは概成をいたしております。  それから、さらに次のといいますか、また新たな想定に基づく研究というものもやらなければいかぬと思っておりますが、現在はそのための準備作業をしておるという状況であります。  もう一つ、いわゆる作戦研究ではなくてシーレーンの防衛共同研究というのがございます。これは昭和五十八年三月に開始した研究でございますが、海上交通保護といいますかシーレーン防衛のために、いろいろな想定のもとに、どういう脅威があるか、どういうシナリオで戦闘が行われるかというようなことで、シナリオ等をつくって各種のシミュレーションを行って分析をいたしております。これもいよいよ最終段階に至っておりますので、遅くない時期にある程度の研究の成果が出るのではないかというように考えておるわけであります。  そのほか、六条関係の研究、外務省が主体になってやっておられる研究がございます。  それ以外に、日米の調整機関の問題であるとか、あるいは情報交換の要領であるとか、そういった幾つかの項目がございますが、これらについても逐次研究は進めておりますけれども、いまだ余り進展はしていないというのが実情でございます。
  230. 田口健二

    ○田口委員 栗原防衛庁長官にお尋ねをしたいと思うのですが、ことしの九月四日に栗原長官とワインバーガー長官が会談を持っておられますが、その会談の中身についてお知らせをいただきたいと思うのです。そこでアメリカの方から具体的な要求といいますか、そういうものがあったのかどうなのか、ひとつ教えていただきたいと思います。
  231. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ワインバーガー長官と私との会談では、米ソの間で軍縮、こういうものがどのように進められてきたか、またこれからどうするのか、米ソ首脳会談はあるのかないのか、そういった話をいたしました。そのときのワインバーガー長官お話は、ソ連の方もいろいろ考えてきておるけれども、まだなかなか最後の詰めまでは来ない、しかし米ソ首脳会談というものは行われるであろうというような雰囲気でございました。  それから、私の方では、今までどおり日本はアメリカとの安全保障体制を堅持しながら、自分の国は自分で守るんだという心構えの上に、憲法のもとに必要最小限度の防衛努力をする、具体的には「防衛計画の大綱」水準を達成するために計画にのっとって着々とやりたい、こういう話をいたしました。米側からは、その点については評価するけれども、議会等でいろいろと同盟国に対する防衛努力を強く要請を受けておるというようなことで、議会側の状況を説明するような格好でお話がございました。私は、それはそれで理解をするけれども、しかし我が方としては、できることはできることでやるが、できないことについては約束することができない、そういうことでお答えいたしまして、非常に率直な話し合いが行われたと思います。  特定の問題についてこちらの方が重荷をしょって帰ってきたということは一切ございません。
  232. 田口健二

    ○田口委員 先ほどから幾つかお尋ねをしました。シーレーン防衛の問題それから洋上防空の問題、関連をしてOTHの問題なりエイジス艦の問題をお尋ねをしたわけですが、この前から防衛庁の今日の日本における防衛のあり方というものについていろいろ聞いておりますと、今お尋ねをいたしましたシーレーン防衛の問題についてもあるいは洋上防空等の問題についても、こういう考え方をずっと進めていくということになれば、政府はそれまでの四次防までの考え方を転換をして、十年前に防衛大綱という新しい防衛のあり方といいますかそういうものを策定をされて、この十年間経過をしてきた、しかし現在のような考え方でこれから進めていくということになれば、それはもう防衛大綱の枠をはみ出してくるのではないか。いわば鈴木内閣のときに日米首脳会談でシーレーン防衛の一定の約束がなされたというように言われておりますけれども、それ以降の、特に中曽根内閣になってからの防衛のあり方について、今申し上げた幾つかの点をこのまま遂行していくということになれば、明らかに現在の防衛大綱の枠をはみ出していく。  もう既に、防衛当局の方でも、大綱は変えないと言っていますけれども防衛白書を見ても、別表については変更はできるんだ、こういう言い方がしてある。しかし、別表だけの問題じゃなくて防衛大綱そのものも見直してしまう、こういう考え方があるのではないか、また現実にそうなっていくのじゃないか、私はそういう気がしてならないわけですけれども、それについての見解を承りたいと思います。
  233. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーンの防衛といいあるいは洋上防空といい、これらの問題は、大綱というよりも、それ以前、一次防、二次防のころからあった考え方でありまして、海上自衛隊の主たる任務というのは、まさに海上交通の保護という任務を引き続き長年持っておったわけでございます。しかしながら、その間時代が流れてまいりますと、同じ洋上防空であっても、かつては対空火器なりターター等のミサイルで防御可能であったものが、軍事技術の進歩に伴ってそれがなかなか困難になって、次の装備というものを考えなければいけない時代に来たということを申し上げておるわけでございます。  シーレーンの防衛はまさに海上自衛隊の任務そのものであって、過去何十年かの間に、シーレーン防衛について申しましても、当初のころの脅威と考えておりました潜水艦が逐次原子力潜水艦に変わってくるという段階で、当初の海上自衛隊の装備というものから、現在の原潜にも対応できる装備ということになりますと装備内容がずっと変わってまいりました。例えばP3Cというような新しい航空機も入れなくてはならなくなった。そういったことで、装備そのものについては、物の考え方、防御対象等は変わらなくとも、逐次変わらざるを得ないということも事実であります。  一方、それでは現在我々が研究をいたしております洋上防空なりシーレーン防衛のために今後どうなっていくかということについては、この五カ年計画の中でいろいろ検討はいたしておりますが、いずれにいたしましても、現状において現在の大綱を、別表を含めてこれを見直しするというような考えは全くございませんで、現在の枠組みの中でどうやることによって十分な対応措置がとれるかという研究をいたしておるわけでございます。
  234. 田口健二

    ○田口委員 そのシーレーン防衛が海上自衛隊の本来の任務であつて、一次防、二次防のときから考えておったんだ。今それを装備の問題ですりかえようとしているんじゃないですか。  私はそうじゃないと思いますよ。今の防衛大綱が策定をされたときに、今言われておるシーレーン防衛などというものは想定されておったのですか。防衛大綱には現在のシーレーン防衛というのは入ってないでしょう。防衛庁は、シーレーン防衛というのは海上交通路の確保だとか言っていますけれども、現在のシーレーン防衛中身というのはそうじゃないでしょう。最初のことをお聞きしたいと思うのですよ。海上交通路という点から考えるとあるいは海上自衛隊の任務の一部に入ってくるかもわからぬけれども、今言われておるシーレーン防衛というのは、少なくとも防衛大綱が策定をされるときにはそういう考え方はなかったと思うのですよ。書いてないでしょう、大綱の中にも。あれば当然大綱の中にも明記すべきだと思っていますよ。  結局、鈴木内閣以降のアメリカとの約束の中でシーレーン防衛という問題が出てきているんじゃないですか。その辺もう少しお聞きをしたいと思います。
  235. 西廣整輝

    西廣政府委員 この点については累次お答え申し上げてきていると思いますが、シーレーン防衛という考え方は決して鈴木内閣のときに米側との間で初めて出たという話ではございませんで、一次防、二次防のときから、当時としては、日本が有事に輸入しなければいけない最小限の輸出入量について、すべてを船団護衛でやっていこうという考え方で防衛力の組成というものを考えておったわけでございます。  その後、日本の輸出入量ともにどんどんふえてまいりますので、船団ですべてを直接護衛でやっていくことでは困難であるということで、かなり早い時期から、そういう直接護衛ではなくて、例えば航路帯というものを設けて、その回廊のような形で比較的安全に航海できる海域というものを設定をして、その中を自由に船舶を走らせるといったようなオペレーションも考えなくてはいけないだろうということで、航路帯方式というようなものも考えられてきたわけであります。  したがって、航路帯方式なり哨戒あるいは直接護衛、各種の作戦を通じて行う我が国船舶の保護、海上交通の保護というものについては、従来からあった考え方であって、決して鈴木内閣のときに突如浮かび上がった構想ではないということを十分御理解いただきたいと思います。
  236. 田口健二

    ○田口委員 そうしますと、海上航路帯というような言い方をされましたけれども、それは日本の沿岸から何海里ぐらいまでのことを考えているのですか。
  237. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは防衛力整備の対象としての考え方でございまして、オペレーションのときどうなるかということは一に状況によるわけでございますが、従来から申し上げておりますように、防衛力整備の対象としては、いわゆる周辺海域の哨戒海域としては本土から数百マイル、そして航路帯というものを設ける場合には一千マイル程度のものが行い得るだけの防衛力を整備するということで、防衛力整備の目標といたしております。
  238. 田口健二

    ○田口委員 その一千マイルぐらいの距離というのが一次防、二次防のときから考えられておったのですか。そういう発言というのはなかったんじゃないですか。最近になってその一千マイルなんという数字が出てきているので、その辺はどうなんですか。
  239. 西廣整輝

    西廣政府委員 一次防、二次防のときの船団護衛の範囲、いわゆる防衛力整備の対象としている範囲というものは、当時サイパンあるいはグアムというような言い方をしておりましたが、そのあたりまでということで、距離にいたしますといずれも一千マイル強ということになろうかというふうに考えております。
  240. 田口健二

    ○田口委員 いろいろな言い方をされているのですけれども、片一方では防衛大綱の見直しという議論が出てきたり、あるいはその別表については変更することができるんだという言い方があり、また片一方では、防衛大綱はあくまでもそのまま継続して守っていくんだという言い方もされる。  しかし実際に、今防衛庁の方がいろいろと説明をされ考えておることをお伺いをしてきますと、さっきの繰り返しになりますけれども、洋上防空の問題にしてもシーレーン防衛の問題にしても、中身を詰めていくと、これまでの政府が進めてきた防衛のあり方とは随分質的に変わっていくんじゃないか。いわゆる日米軍事共同という形でアメリカの対ソ戦略の一環の中に日本の自衛隊が入っていく、そういう形で今後進められていくんじゃないかという気がするのですよ。それは今日の防衛大綱、政府みずからが十年前に定められた防衛大綱の枠からはみ出ることになるのじゃないか。  そして同時に、このいろいろな洋上防空の説明を聞いておりましても、随分金がかかる問題ですよ。これは長官がときどき言われる一%——見直しとは言いませんけれども検討する必要があるというような言い方、それにもかかわってくると私は思う。我が日本には憲法上の制約があって、いわゆる集団自衛権というものは否定をされておる。日本防衛の基本はあくまでも専守防衛立場であるということをずっと政府は主張をされてきておるわけですが、今のままでいくとこれに抵触してくるのではないか。繰り返しのようになりますが、今のままの防衛のあり方というものを考えていくと、これらに基本的に抵触をしてくるんじゃないかという気がしてならないのですが、そうじゃないとおっしゃるならもう一度その辺を明確にしていただきたいと思うのです。
  241. 西廣整輝

    西廣政府委員 日本の安全保障政策と申しますか防衛政策が、我が国の憲法の枠内で、そして「国防の基本方針」で定められておりますように、日米安保条約というものを基調にしながら、専守防衛防衛力というものを整備をしてこれに対応しようということは御理解いただけると思うのですが、大綱で言っておりますのは、いずれも能力で、これこれの態勢を持ち、これこれの能力を持つことというふうに能力で限界というものを定めておるわけであります。例えば、限定的な小規模な事態、そういったものについては独力で対応できるものを持ちなさいという形で決められております。  したがって、その能力というものは、限定的・小規模という事態であっても相手方の力との相対的なものでございますので、時代を経てまいりますと当然のことながら軍事技術その他変化をしてまいります。そういう点には常に対応していかなくてはいけないということで、大綱にも書かれてありますように、諸外国の軍事技術の技術的な水準というものの動向に対応できるように、質的な充実向上というものに常に留意しながらやっていかなくてはいけないというように書かれておるわけであります。したがって、大綱水準というのはあくまでも固定的なものではない、能力としては固定的でございますけれども。やはり時代とともに技術とか質的に変わってまいりますので、そういったものを常に追求し続けなくてはいけないという代物であろうと私ども考えております。  そういう点で、防衛力整備というものも我々現在まだ大綱水準に達しておらないと考えておりますから、それをできるだけ早い時期に埋めなくてはいけないということと同時に、現に持っておる防衛力というものを逐次周辺諸国、世界の軍備の動向、軍事技術の水準というものに合わせながら更新、近代化していかなくてはいけないという両方の面を持っておるわけであります。そういう点で、かなりお金のかかることも事実でございますけれども、それは決して大綱の枠組みを超えてしまうということじゃなくて、大綱水準というものを維持していくのはかくも難しいことであるということも十分御理解をいただきたいと思うわけであります。
  242. 田口健二

    ○田口委員 今資料がちょっと手元に見当たらないのですが、防衛大綱が制定をされたときに防衛庁長官の談話が発表されているのです。あの談話を読みますと、言うならば、量的な面から質的な面への転換なり一定の水準なりを大綱の中で決めていくということを盛んに言っておられるわけですね。ですから、技術的な水準が変わってくれば、今あなたが言われたようなどんどん無制限に質を高めていくということにはならないのじゃないですか。やはり総枠的な防衛のあり方という点を含めて、ある程度の水準というものが想定された大綱じゃないのですか。それはどうなんでしょう。
  243. 西廣整輝

    西廣政府委員 当時のことを少し申し上げますと、御承知のように、大綱ができます以前の政府防衛力整備のいわゆるねらっておった目標というものは、通常兵器による局地戦以下の事態ということであったわけです。つまり、大綱の言葉で言えば限定的な事態ということになろうと思います。大綱ではさらにそれにもう一つ歯どめ——歯どめといいますかレベルの低い段階を考えて、限定的でかつ小規模な事態に対応するということで、目標を我が国に対して起こり得る事態、防衛力自身で単独で対応できる事態というものに、目標を引き下げたものにしたという点が大綱の一つの特徴だったろうと思うわけです。  その際に、何度も申しますように、そういう事態に独力で対応できるということでありますから、それはあり得べき小規模・限定事態というものがその時代時代の軍事技術の動向によって変わるということも当然であるから、先ほど申したように、技術的にそういった外国の傾向というものに十分対応できるように配慮しなければいけないということが書かれておったことも、本文を見ていただければおわかりのとおりであるわけです。  したがって、当時としても、質的にはそれでは青天井なんだなというようなお話がありなした。それはその当時から私どもも、通常兵器による小規模・限定事態に対応するためのものとしては質的にはまさに青天井であり、諸外国の水準というものに常に合わせていかなくてはいけないのだというように御説明をいたしております。
  244. 田口健二

    ○田口委員 時間の関係もありますので、また次の機会に譲りたいと思うのです。  外務省、お見えになっていますね。——お尋ねをしますけれども、去る八月にアメリカの戦艦ニュージャージーが佐世保に寄港をしたということについて、私も八月の本委員会でお尋ねをしたわけであります。その際もそうなんでありますが、核の持ち込みについては事前協議の対象になっておるし、事前協議がないから核は持ち込まれておらないという従来どおりの回答が実はなされておるわけです。現地としては、この外務省の態度に非常に不満を持っているわけですね。  今月の二十四日の現地の新聞を見ましても、佐世保市の棧市長自体が、外務省回答には私も満足をしていない、だから再度回答外務省に対して求める、こう言っているのですね。随分今まで佐世保の港に核を搭載しておるというふうに私ども考えている艦艇が入ってきていますが、この前も申し上げましたが、とりわけこのニュージャージーの場合には、いわゆる核巡航ミサイル・トマホークを配備しておるということはもう世間一般の常識だと言われている。だから、少なくともニュージャージーの問題についてはこれまでと違った対応があるであろうというふうに地元も考えておるし、この当事者である佐世保の市長も考えているのですよ。しかし、政府の方は従来どおりの回答を繰り返しておるにすぎない、こういうことで非常に不信感を持っているのですね。これはどうなのですか、この外務省回答については佐世保市当局から何か言ってきていますか。
  245. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 戦艦ニュージャージーの寄港に当たりましては、累次国会でも御説明しておりますけれども、このニュージャージーが持っております象徴的な意味もございまして、外務大臣がマンスフィールド大使を呼びまして、八月十六日でございますけれども、事前協議制度の確認を、改めて念には念を入れるという見地から行っているわけでございます。  御質問の、佐世保市長の方から、これは九月一日でございますけれども、いろいろな質問がございまして、それに対して外務省の安全保障課長が応対いたしたことはございます。
  246. 田口健二

    ○田口委員 そうすると、外務省の方もニュージャージーに巡航ミサイル・トマホークが積載されておるということは認めておるわけですか。
  247. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 これも累次お答えしているところでございますけれども、トマホークは二つの種類がございます。核弾頭つきのトマホークと通常弾頭のトマホークでございます。  アメリカの資料などを見まして、ニュージャージーに核弾頭つきのトマホークの能力が付与されているかどうかということ、これは必ずしも明確ではございません。アメリカは御存じのとおり艦級について核弾頭のトマホーク能力が付与されているかどうかということを触れておりまして、艦の名前で言っていないということはございます。  いずれにしましても、核弾頭つきのトマホークの能力の付与と、核弾頭を現実に所持しているか、搭載しているかどうかということは全く別個の問題であるということでございます。
  248. 田口健二

    ○田口委員 その核弾頭を持つことができるということと、実際に核弾頭がついておるかどうかということは別問題というふうに言われるのですが、現地の人は皆このように理解しているのですよ。トマホーク、とりわけ水上艦艇に配備をされておるトマホークというのは、陸上の場合とは違って、現状の中では海上から、水上艦艇から発射をされる場合についてはまだまだ精度が十分でない、したがって、水上艦艇に配備をされるトマホークというのは核弾頭でなければ意味がない、こう言われているのですよ。  ですから、ニュージャージーを初めとして第七艦隊の中に随分配備をされているわけですが、これはもう核弾頭つきであるというふうに多くの人が理解をしておるのですが、外務省はその辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  249. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 トマホークの能力の問題でございますけれども、核弾頭つきのトマホークの能力、それから通常兵器としてのトマホークの能力、この二種類があるわけでございますが、全般に見まして、通常トマホークの圧倒的な主体は通常兵力、核弾頭でないものでございます。  いずれにしても、またそれは能力の問題でございまして、能力が付与されているかどうかということと、それから現実に核弾頭を搭載しているかどうかということは全く別個の問題であるということを累次申し述べておるとおりでございます。
  250. 田口健二

    ○田口委員 同じ答弁の繰り返しですから、これ以上お尋ねしても変わってこないと思うのですが、この事前協議の中で、核の問題もそうでありますが、中長距離ミサイルの持ち込みというのは事前協議の対象にはならないのですか。
  251. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解に言います中長距離ミサイルと申しますのは、専ら核弾頭を使用する、核弾頭の持ち込みを当然前提とする核専用のものであるということでございます。
  252. 田口健二

    ○田口委員 佐世保の問題でもう一、二点、お尋ねをしたいと思うのです。  現在佐世保の米軍基地というのが、佐世保を母港とするアメリカの艦船というのは五隻が配備されているわけですが、さらにこれがふえていく、こういうことを市長も言っているわけです。これはそういう感触を持っておるということで発言をしておるわけです。外務省に対しては正式にアメリカの方からそういう要請が来ておるのか、外務省はどの程度このことについて状況を知っておられるのか、教えていただきたいと思うのです。
  253. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいまの御指摘の点は、いわゆる乗組員、家族の海外居住計画に関連してだと思いますけれども外務省の知る限りにおきましては、現在五隻の関連があるわけでございますが、さらに新しい艦船に関連しまして、乗組員、家族の海外居住計画を佐世保について行うという計画は、現在のところ承知しておりません。
  254. 田口健二

    ○田口委員 外務省が知らないということについて私は非常に疑問を持つのだけれども、佐世保の市長が訪米をしたときに、米海軍の高官が、複数の艦船について佐世保を母港にするというようなことをはっきり伝えているわけですね。一佐世保市長にそのことが伝えられ、日本政府に対してそういうことが伝えられていないというのはおかしいと思うのですが、外務省に対してはアメリカの方から何も連絡はないのですか。
  255. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 新たな艦船につきまして乗組員の海外居住計画を行うという連絡は受けておりません。
  256. 田口健二

    ○田口委員 それでは、これは防衛施設庁の関係になるかと思うのですが、今月の十八日、佐世保市の針尾工業団地というところがあるのですが、そこで新たに米軍の住宅の建設工事が始まっておる、実際もう起工しているわけですが、この内容について、わかっている分だけ教えていただきたいと思います。
  257. 岩見秀男

    ○岩見政府委員 お答えいたします。  針尾住宅地区におきます昭和六十一年度の提供施設整備の内容でございますけれども、家族住宅二百二戸、それから管理棟、厚生施設等の建設等を含めまして、歳出予算額は約十五億二千万円でございます。それから、昭和六十二年度の概算要求でございますが、家族住宅五十六戸及び消防署等の建設等を含めまして、予算額約九十億円を予定しております。
  258. 田口健二

    ○田口委員 こうした米軍のための住宅建設というのは、どうなんですか、新たに佐世保の米軍基地が増強される、あるいは艦船の母港化がまたふえていく、こういう状況の中で、住宅のこういった増設といいますか、これの計画が進められておる、こういうふうに理解をしていいのでしょうか。
  259. 岩見秀男

    ○岩見政府委員 佐世保地区におきます米軍は艦船の乗員の居住化計画を進めておりまして、現在住宅が相当不足しておるというふうに聞いております。ただいま申し上げました住宅につきましては、そういったものに充てるためのものと承知しております。
  260. 田口健二

    ○田口委員 そうすると、今計画をしておるこの住宅の建設というのは、具体的に何世帯、何人分が計画をされておるわけですか。
  261. 岩見秀男

    ○岩見政府委員 米軍があるいはその家族が何人そこで居住いたしますか、私ども具体的に把握いたしておりません。しかしながら、ただいま申し上げたように、その一部ではございます。
  262. 田口健二

    ○田口委員 何人入ってくるかというのでなくて、今つくっている住宅は何世帯分、大体何人ぐらいを対象に計画をしておるのかと聞いているのですよ。
  263. 岩見秀男

    ○岩見政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、針尾地区におきましては二百二戸でございます。これが六十一年度分でございます。それから六十二年度の概算要求におきましてさらに五十六戸を要求いたしておるわけでございます。したがいまして、合わせまして二百五十八戸ということに相なります。  それから、居住する人員につきましては、ただいま申し上げましたように、一世帯当たり何名になるかということにつきましては、私ども把握できない状況でございます。
  264. 田口健二

    ○田口委員 ちょっと時間が残りましたけれども、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  265. 石川要三

    石川委員長 斉藤節君。
  266. 斉藤節

    斉藤(節)委員 最初に、外務省の方に御質問申し上げたいと思うわけでございます。それは、まずSDIについてお尋ねしたいと思うわけでございます。  申すまでもなく、このたびのアイスランド・レイキャビクでの米ソ首脳会談があのような結末で終わったことはよく知られているわけでありますけれども、この主な原因と申しましょうか、理由と申しましょうか、これは、SDIに対するソ連のゴルバチョフ書記長の実験室内研究にとどめることに対する米国レーガン大統領の拒否にある、このように言われておるのであります。  そこで、お尋ねでありますけれども、何ゆえソ連のゴルバチョフ書記長はSDIに対して強力に反対してくるのか、外務省としての御見解を賜りたいと思います。
  267. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ソ連がなぜSDIに反対するかということは、日本政府としてこうであるという解釈を述べるわけにはまいりませんけれども、ソ連政府が累次語っておるところによりますれば、SDIは攻撃的な兵器であり、その目的は、ソ連に対して経済的な窮乏を強いてくるというようなことをいろいろ言っておるわけでございます。
  268. 斉藤節

    斉藤(節)委員 私のような素人から見ますと、SDIというような膨大な構想はとても実現不可能のように思うのでありますけれども、しかし、十月二十一日付のワシントン・タイムズの社説に「アームズコントロールリアリティーズ」、いわゆる「軍備管理の現実」という題で論文が載っているわけでありますが、この中で、このようなことを言っているわけです。私は余り発音はよくないのですけれども「モスコー シンクス SDI キャン ワーク」、このように「キャン ワーク」と言っているわけです。「パハップス ビコーズ イッツ オウン セブンティーンイヤーオールド スターウオーズ プログラム オールレディー ハズ ボーン フルーツ」、こういうふうに言っているわけです。すなわち、ソ連は戦略防衛構想、SDIを実現可能と考えている。これは恐らくソ連自身の十七年かけたスターウオーズ計画、これが実を結んできているからであろう、このように述べておるわけでございます。  このような社説あるいはその他のいろいろな資料などを見ておりますとうかがえるわけでありますけれども、私は、戦略防衛構想、SDIは時間と努力と金を惜しまないで十分に研究するならば実現可能かもしれないと思うわけでございます。このことについて外務省としてはどう思われるか、SDIというのは実現可能なのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  269. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 SDIは実現可能かどうか、これがまさにSDI研究計画の一つのポイントでございます。日本政府は累次御説明しておるわけでございますけれども、SDIというものは今日何であるか、それは研究計画でございます。その研究計画は何を研究するのかと申しますと、一つのビジョンがあるわけでございますけれども、そのビジョンが技術的に可能なのかどうかということを研究する計画でございます。さらに、単に技術的だけではなくて、経済的にもそういうものが果たしてワークするのかどうかということを研究していくのがSDI研究計画であり、それが今日行われている実態であるというふうに存じております。
  270. 斉藤節

    斉藤(節)委員 大体わかりました。  現在の状況を見てみますと、一九五七年十月、ソ連のスプートニク一号の打ち上げ以来、人類は約三千個の人工衛星を宇宙空間に送り込んできておるわけであります。そのうち何と約七五%は軍事衛星と言われ、各種の軍事目的のために広範に利用されてきているのが現実であるわけです。申すまでもなく軍事衛星は、写真偵察衛星、電子情報衛星、早期警戒衛星、海洋監視衛星、航行衛星、通信衛星、気象衛星、測地衛星など多岐にわたっているわけでありますけれども、これらの衛星の総合力を利用して通常兵器や核兵器の運搬手段の命中精度を高めたり、目標についての正確な情報や敵からの攻撃に関する情報を供給したりして、いわゆる軍の指揮、統制、通信及び情報、コマンド・コントロール・コミュニケーション・アンド・インテリジェンス、C3Iというふうに言っておりますけれども、これに役立っておるわけでございます。軍事戦略上、今やこれらの衛星は不可欠の存在になってきていることはもう明らかな事実であります。  このような事実から、宇宙は既に軍事目的に使われていると言っても過言ではないのではないか、このように思うわけであります。このことは、既に一九六七年に国連でなされました月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約、いわゆる宇宙平和条約でありますけれども、これに反していると思うのであります。この辺はどうでありましょうか。
  271. 林貞行

    ○林説明員 お答えいたします。  宇宙条約が禁止しておりますのは、核兵器その他大量破壊兵器を軌道に乗せること及びこれらの宇宙空間への配置でございまして、今藤井局長の方から申し上げました研究段階にあるSDIとの関係では本問題は生じてこないというふうに考えております。
  272. 斉藤節

    斉藤(節)委員 こういう衛星、偵察衛星とかといったようなものは、いわゆる核爆弾のようなものではないからそういうものに当たらないというわけでありますけれども、このように軍部の軍事衛星に対する依存度が高まるにつれて、敵の衛星を破壊しようと考えるのは当然のことであろうと私は思うわけです。  そこで衛星破壊兵器、ASATが開発されることになる、いわゆるハンターキラーと言われる衛星がこれに当たるわけでありますけれども、米国防総省の報告書、「ソ連の軍事力一九八三年」、古いのでありますが、これによりますと、これに類する衛星は既に三十三個になるというふうに言われておるわけであります。アメリカにおきましても、ASATは宇宙防衛計画の柱の一つであって、一九八四年一月に実験が行われておるわけでございます。ソ連は一九六〇年代後半から研究してきておりまして、今述べましたように三十三個も既に上げておりまして、いわゆる実用段階に入っているというわけです。  ここで問題になりますのは、アメリカの宇宙防衛計画のもう一つの柱である弾道ミサイル防衛システム、BMDであります。ソ連のICBMの命中精度は近年とみに向上してきておりますから、もしもソ連からICBMによる攻撃を受けたような場合、現在アメリカはまだこれを迎撃破壊する手段を持っておりませんので、アメリカのICBMが壊滅するおそれが出てきたということで、宇宙空間に対ソ連ICBM防衛網をしこうという構想が生まれてきた、そんなふうに私は理解しているわけであります。それがいわゆるSDIであるというふうに理解するのですが、これは正しいでしょうか。その辺の外務省の御見解を伺いたい。
  273. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 SDI計画が出てきました背景でございますが、いろいろな背景がございます。その中に、今委員指摘の、ソ連のICBMの命中精度が非常に高い、それが非常に強化されてきておる、いわゆる脆弱性の窓というものが特に七〇年代後半に非常に問題になったわけでございますが、そういうものも全く無関係ではございません。  ただ、八三年三月にレーガン大統領がSDIを発表したその一番基本の考え方は、レーガンがみずからに発しておる問いでございます。それは、現在の世界は、核兵器の相互の確証破壊、お互いにお互いを確実に破壊できるということによって平和が成り立っておる、それでいいのだろうか、科学技術の進歩によって核兵器を何らかの形で無力化することはできないかということ、これがSDI構想の基本的な動機であるというふうに観念しております。
  274. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かにレーガン大統領の発表のあれには、ハイフロンティアというのですか、あの考え方が入ってきているのだろうと私は思うわけでありますけれども、そういういろいろなこと、核を完全になくそうということが問題だろうと思うのであります。しかし、このSDIは、つまりICBMの破壊に対する構想である、そんなふうに言ってもいいのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  275. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 レーガン大統領のSDIに対する考え方は、単にアメリカだけではなくて同盟国、ヨーロッパ、日本を含めてでございますが、その安全にも役立てたいということでございまして、ということは、とりもなおさず、ICBMのみならず中距離核等についてもこれが有効であるような構想、SDIというものを将来考えていきたいということでございまして、現実の研究計画におきましても、そのような面にも力が置かれているというふうに了解しております。
  276. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かに、ICBMだけじゃなくてSLBMですか、これに対してもあれでございましょうけれども、私はそこでちょっと心配になりますのは、米国がSDI配備に動けばソ連はあらゆる手段で対抗してくると思うのでありますけれども、その辺はどのように考えられますか。
  277. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 確かに委員指摘のように、アメリカがSDIを一方的に配備していけば、ソ連はいろいろ対抗手段を講ずるということを述べております。ただ、御存じのとおり、現在SDIはまさに研究計画でございまして、この研究が一体いつまで続くのか、いろいろ研究でございますので、現在ない技術、現在の技術の何百倍、何千倍という精度に、経済的にそれが成り立つのかということでございますので、いつ一体この研究が終わるのかということははっきりいたしません。人によって十年と言う人もおりますし、九〇年代の初めと言う人もございますが、いずれにしましても、アメリカは配備をするに当たってはソ連と十分話し合うということを何度も公言しておりますし、宣明しておりますし、現に現在の実態を見まするに、この研究計画において既にソ連と話し合いをしておるわけでございまして、まさに交渉をしておるわけでございます。したがいまして、この配備という将来いつの時点になるかわかりませんことを前提に物を考えていくよりは、現在この研究計画を中心に米ソがいろいろ話し合っているということがより現実ではないかというふうに考えるわけでございます。
  278. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かに、研究でありますから、いつ終わるか、またいつ完成するかということはわからないわけでありますけれども、いわゆるSDIという盾ができれば、今も局長おっしゃいましたように、確かにソ連はあらゆる手段を講じて対抗するということでありますけれども、いわゆるあらゆる矛を強化してその突破をねらう、ここで心配されるいわゆる軍拡競争がますますエスカレートしていくのじゃないか、そんなふうに思うわけでありますけれども、その辺はいかがでございますか。
  279. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 盾と矛の関係でございますけれども、SDI研究計画そのものは、先ほど申し述べましたように、単にSDIというような構想が技術的に可能であるかというのみならず、それが経済的に可能であるかということを検討するわけでございます。さらに、それが攻撃などに対しても十分耐えられるという面を持っており、それがさらにその攻撃よりも安くできるかということをあわせて全体的に検討するわけでございまして、もしこのSDIの研究が進んでいきまして、仮に攻撃の方が非常に簡単にできる、いわゆる矛の方がどんどん進んでいくというようなことであれば、そのSDI自体が成り立たないということでございまして、研究計画自体に、そういう側面を研究するということが十分包含されているわけでございます。  さらに、その研究すること自体が軍拡を、不信を及ぼすのではないかということにつきましては、まさに先ほど来申し述べておりますように、米ソの間でその研究の期間を十年というところまでは歩み寄りがあったようでございますけれども、それがどういう研究であるかというところで今交渉しているというようなことでございます。
  280. 斉藤節

    斉藤(節)委員 ちょっと観点が変わりますけれども、アメリカは盛んにSDIというのは防御兵器だ、このように主張しておるわけですが、いわゆるSDIは攻撃兵器としても十分考えられるのじゃないかなと私は思うわけでございます。例えばエックス線レーザーその他の光学兵器でも、直接地上を攻撃できる、ICBMのようなものを撃ち落とすことができるくらいな力、エネルギーは持っているわけでありますから、当然そういうことも可能じゃないかなと思うわけでありますけれども、本当に単なる防御兵器というふうに解釈してよろしいでしょうか。
  281. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 レーガン大統領は、レイキャビクから帰ってまいりましての国民に対するテレビにおきましても、SDIは非核の防御兵器であるということを明確にしたいと述べております。  この防御兵器とは何かということについては、もちろんいろいろ定義その他がございまして一般論では申し上げにくいわけでございますけれども、SDIの特性から見まして大量破壊兵器でないことは明瞭でございます。それから、先制攻撃に全く適していないことも明瞭でございます。  SDIは、例えばそのSDIの構想の一つでございますけれども、宇宙におきまして、宇宙空間において高速で飛しょうする小目標である弾道弾、これを無力化することをねらっておるわけでございますが、宇宙から地上をねらうということになりますと、まず天気、雲があるというようなことで地上に対して十分なる照準が困難でございます。さらにそれが天気が仮によかったといたしましても、空気の作用によりまして大変に力が減殺されるということでございますし、仮にそれが届いたといたしましても、極めて微小な範囲に短時間照射されるだけでございます。したがいまして、これをもちまして例えば都市とかあるいはサイロとかそういうものを攻撃するということはちょっと考えにくいわけでございます。
  282. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かに局長言われるように大量破壊兵器ではないことは事実であります。それから、レーザービームでありますから一遍に強い力で大気中を通ってくるとも考えにくいことでございますから、そういう点では申されるとおりだと私は思うわけであります。  そこで問題になるわけでありますけれども、SDIの目標達成は技術的に非常に困難ではないか、こんなふうに言われておるわけです。特にコンピュータープログラムの作成の上において非常に困難である、そういう専門家の見方もあるわけでありますけれども、その辺ほどのように考えられますか。
  283. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 御指摘のとおり、SDIにおきまして一番難しいものの一つが、極めて高度な、極めて高速なコンピューターをどうやってプログラム化していくかというようなことでございますが、この辺を含めまして、先ほど申し述べましたようにSDI研究というものはそのビジョンが一つあるわけでございますけれども、そういうものが技術的、経済的その他の面で一体可能であるかということをまさに研究していくということでございます。
  284. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そういう点で可能であるかどうかということは非常に疑問になってくるわけでありますけれども防衛研究所の戦史研究室長であります岩島久夫氏は論文でこのようなことを述べているわけです。「SDIとABM条約」という論文の中で、「ザ・ディフェンス・モニター」という、ボリューム十四のナンバー十ですが、一九八五年。この論文を引用しまして、米国の査察能力の高さと優位性に対してもっと自信を持ったらいいのではないか、そして各種の軍備管理交渉を推進すべきである。結論としてこの方は、「米ソの「話し合い」そのものが、米ソ相互にとって「最良の査察」であるということがいえるのではないだろうか。米ソは、もっともっと話し合うべきであるし、お互いにもっともっと手のうちを明かすべきだろう。」このように結んでおりますけれども、この辺に日本のやるべき役割があるのじゃないかなと私は思うのですけれども、いかがでございましょう。
  285. 林貞行

    ○林説明員 お答えいたします。  米国政府は、軍備管理協定に関しまして、その遵守を確保するために検証の措置を極めて重視してきておりまして、これは我が国の立場とも軌を一にするものでございます。  今先生のおっしゃいました米国の査察能力につきましては我が国としてコメントする立場にないわけでございますが、他方、米ソ二国間の条約に関しまして、一方の当事国である米国が、自国の検証手段のみでは遵守の確保が困難との判断を下して、今後締結されるいかなる軍備管理協定も十分な検証措置を伴うものでなければならないという立場をとっておることについては、我が国としても尊重すべきものかと思います。  一般論といたしまして、今先生がおっしゃいました米ソ両国の対話の継続が相互の信頼醸成の基礎ともなるということにつきましては、軍備管理交渉促進にもつながるという観点から、御指摘のとおりだと考えます。
  286. 斉藤節

    斉藤(節)委員 やはり先ほど局長も言っておられましたけれども、レーガン大統領が大いに話し合いましょうということを言っているわけでありますから、それにゴルバチョフ書記長が対応してくださればよろしいわけでありますけれども、その辺、日本が大いにその対話を進めていくことを力を入れていっていただきたい、そんなふうに私は思うわけでございます。  そこで次に、ちょっと内容は変わりますけれども、やはりSDIの研究関係でありますけれども、去る十月二十六日の朝日新聞に、石田特派員がアメリカのNASAのアンドルー・ストファン局長と会見いたしまして、ここで、SDIの研究というものについて、米国のいわゆるNASAの研究所で行われるのじゃないかというような、そういう話が出ておるわけであります。  ちょっと読んでみますと、「同局長は、戦略防衛構想(SDI)など米国紡総省の研究が将来、日本のモジュール(実験棟)などで行われる可能性について、「全くないとは言えない」と述べ、計画推進の最高責任者として初めて「軍事利用」の可能性に言及した。」ということでありますけれども、その中でこのように言っているわけです。「ストファン局長は「宇宙基地はシビリアン(民間人)のためのもの」であり「平和目的の計画である」と何度も強調した。しかし、国防総省の研究が日本のモジュールで行われる可能性について「全くない、とは言い切れない」」このように言明しているわけです。また、「基礎研究ならだれが利用してもかまわない。明らかな兵器開発の場合は「ちょっと待て」というが、」そういうことも言っているわけです。  また、「宇宙基地がSDI開発に利用されるかどうかについて、「難しい質問だ。しかし、基礎研究である限り、たとえSDI技術に応用される可能性を指摘する人がいても、イエスだ」」とこのように断言しているわけです。「SDIなど軍事がらみの研究の場合、基礎研究であるかどうか、を基地利用の基準にしたい」との考えも明らかにしているわけでありますけれども、しかし、「基礎と(軍事への)応用研究の境界がどこにあるのか、定義することはできない」、これは当然そうだと思うのですけれども、そのように言っているわけであります。  こういう記事があったわけでありますけれども、科学技術庁の川崎雅弘審議官がこれに対してコメントをしているわけでございます。どのように言っているかと申しますと、「「宇宙の平和利用」の国会決議や宇宙開発事業団法の第一条に明確に規定してあるように「平和の目的に限り」宇宙開発を進めている。宇宙基地の利用の仕方は、日、米、カナダ、欧州宇宙機関(ESA)の四者で交渉している段階だが、宇宙基地の予備設計の協定でも「平和目的に限る」と決めてある。宇宙基地の開発・利用については政府間協定を結ぶことになるだろうが、「平和目的に限る」前提で話し合いは進んでいるので、九五年に運用が始まる宇宙基地で「SDIの実験をしたい」と米国が申し入れてくるとは考えにくい。はっきり平和目的外とわかった実験をJEMでしたいという要望があった場合は、拒否せざるを得ない。」このようなコメントを載せているわけであります。  このように、もし我が国のいわゆるモジュールなどで行われる可能性がSDIの研究についてあるとすれば、これは問題だと私は思うのでありますけれども、その辺どのようにお考えになっておりますか。
  287. 松田慶文

    ○松田説明員 御説明申し上げます。  御案内のとおり、この米国の宇宙基地計画に対する協力は、一九八〇年に日米間で締結されております米国と日本との間の科学技術研究開発協力協定、これを受けました科学技術庁とNASAとの間の宇宙基地に関する了解覚書、これは昨年の五月に締結されておりますが、その枠組みの中で現在予備設計の協力を進めております。  この私が申し上げました昭和五十五年の日米間の研究協力協定の第一条に、日米間で行われるべき科学協力は、平和的目的のために、相互利益の原則に基づいて、合意された分野において進めると明定してございます。また、これを受けました了解覚書の中でも、宇宙基地そのものも平和目的に限定することを明記してございます。  このNASAの基地局長の記者会見の発言ぶりも、子細にこの記事を読みますと平和目的に限ることを非常に強調してございます。ただ、委員指摘のとおり、基礎研究は汎用性のあるものであって、それがどのように使われるかはなかなか難しい問題だということであって、宇宙基地の問題がSDIに直結していくということはむしろ否定して言っている次第でございます。  私どもも、これからあと五年、十年と続きますこの宇宙基地協力の枠組みの中では、今強調されました平和目的に沿って当初の目的どおりの運用をするということを本旨として、今後の話し合いもその方針で貫くつもりでございます。
  288. 斉藤節

    斉藤(節)委員 その辺よろしくお願いしたいと思うわけでございます。  以上で外務省関係は終わりでございます。どうもありがとうございました。  次は、防衛関係方々に御質問申し上げたいと思います。  まず、審議に入る前に長官にちょっとお話をお伺いしたいのですけれども、きょうのお昼のニュースを見ておりましたら、資料横流し事件の被告でありました小田切元二等海佐に対して、本日、有罪の判決があったわけでございます。執行猶予つきでありますけれども、一年六カ月ということであります。業務上横領で二百五十万円横領したという話であります。  こういう自衛官の規律につきましては、おととい同僚議員であります鈴切委員からお話がありましたから、私はそれに対して深くここで取り上げるつもりはないのでありますけれども防衛白書なども読んでみますと、国民の信頼を得ていこうという涙ぐましいくらいの努力を今盛んに防衛庁でやっておられる、そのときにこのようなことが起こるというのは私も大変残念に思うわけであります。この自衛隊法にも載っているわけですが、つまり品位を保つ義務ということで、自衛隊法五十八条でありますけれども、「隊員は、常に品位を重んじ、いやしくも隊員としての信用を傷つけ、又は自衛隊の威信を損するような行為をしてはならない。」このように法律できちっと定められているのであります。国家公務員法もいろいろありますけれども法律があったからといってこれは全部守られるということではないと思うのですけれども、しかし、大変残念だと私は思うわけです。  この辺、長官、きょうの有罪判決があったことに対しまして、御所見をお伺いしたいと思います。
  289. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 有罪判決というものを厳粛に受けとめまして、こういう事件が起きないようにさらに努力をいたしたい、こう考えております。
  290. 斉藤節

    斉藤(節)委員 長官のそのお言葉で大変ありがたいと私は思うわけでありますけれども、ひとつ、御努力のほどをお願いしたいと思います。  私も自衛隊の方々と、友達もたくさんおりまして、よくお話もしているのでありますけれども、みんないい人なんですね。まさかこういう人々の中からそういう方が出るなんて思われないわけでありますけれども、きょうの判決なども、二百五十万円、これは会社か何かを設立するために準備したというようなことでありますけれども、実際問題として、自衛官の方々生活はどんなものなのでしょうか、関連ですけれども、その辺をちょっとお開かせ願いたいと思うのです。
  291. 松本宗和

    ○松本政府委員 お答えいたします。  自衛官の生活でございますけれども、まず給与の面から申しますと、基本的には一般職の公務員に準じまして、若干の修正は行っておりますが、諸手当等含めまして支給しております。したがいまして、そういう所では一般の公務員と大差のない生活ができる基盤はつくってございます。  ただ、勤務地が非常に全国に散らばっておるとかいうような状況もございますし、また、若い隊員でございますが、営内に居住するというような状況もございまして、そういう点では一般の公務員に比べまして厳しい環境に置かれておるというぐあいに考えております。ただ、この点につきましても、私ども、少しでも隊員の生活の環境を改善するということにつきまして常々努力をしておりまして、例えば単身赴任者につきましては単身赴任者用の宿舎を建設していこうとか、いろいろな面で隊員の処遇改善につきまして努力をしておるところでございます。
  292. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かに私、去年、決算委員会の視察で三沢基地を訪問して視察させていただいたわけですけれども、あのとき将補クラスの方々と話したのですけれども、ほとんどの方が単身赴任なんですね、本居は東京におるとかいろいろなところにおって単身赴任しておる。今、公務員あるいは会社員の単身赴任など問題になっているわけですけれども、単身赴任すればやはりそれなりの経費も相当かかってくる、そんなふうに思うわけでありますけれども、何も自衛隊の方々だけじゃないわけでありますから、その辺、特別扱いしろと私は申すことはできませんけれども、しかし、何らかの形で考えていっていただきたい、そんなふうに思うわけでございます。  本論に入らせていただきますけれども、まず、防衛庁は昨年十月から庁内に業務・運営自主監査委員会を設置し、自衛隊と内局、附属機関の業務運営改善に関する三十二項目の検討事項をまとめまして、今年の一月十一日に発表しておるわけであります。今回、提出されましたこの防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案、これは前々国会から提案されているわけでありますけれども、しかし、これは自主監査委員会で取り上げております三十二項目と非常に連動するところが多いように私、思うわけでございます。そういう意味で、今回の法律の一部改正もこういった監査委員会でのいわゆる検討事項の延長線上にあるというふうに考えてよろしいかどうか、その辺、お聞きしたいのです。
  293. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  今先生から御指摘のございました業務・運営自主監査委員会あるいはその発展をいたしました防衛改革委員会のプロジェクト、その中の業務、運営関係は三十二項目、御指摘のとおりあるわけでございます。これらにつきましては、そちらの方の発表にもございますように、本年の四月に中間報告をさせていただきまして、検討の段取りをつけさせていただいておるわけでございまして、検討の成果につきましては今後、逐次出てまいる、具体的には予算とかそういったものに反映をしていく形になろうかと思いますが、そういった面については若干時間がかかると考えております。  それで、設置法、隊法の改正の内容と申しますのは、当然のことながら、定員増にいたしましても予備自衛官の増員にいたしましても、いずれも私どもとしましては逐年、効率化、合理化の徹底を図るということで、部内でいろいろ切り詰めました結論としてどうしてもお願いをしなくてはいけないものを今回お出しをしておるわけでございまして、そういう点では同じような流れの中で検討された成果というふうに考えていただいて結構だと思います。
  294. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そういう流れの一つであるということのもとで、本法案の内容に入る前にちょっと二、三御質問申し上げたいことがあるわけでございます。  まず、防衛大綱についてでございますけれども昭和五十一年十月二十九日、「防衛計画の大綱」が閣議決定されまして、昭和五十二年度以降の防衛力整備は大綱に従って進められてきた、そのように思うわけであります。大綱は、先ほどから何回も言われておりますように、「安定化のための努力が続けられている国際情勢及びわが国周辺の国際政治構造並びに国内諸情勢が、当分の間、大きく変化しないという前提」、こういうものに立っているわけでありますけれども昭和六十一年の防衛白書において初めて、この大綱の別表の見直しが可能である、こういうような解釈が加えられたわけであります。大綱決定以来十年目となっているわけでありますが、この大綱の見直しをする考えがおありなのか、またあるとすればどのような理由からか。例えば国際情勢及び我が国周辺の国際政治構造の変化、こういったものがあるからか、それとも国内情勢の変化によるためか、具体的に明らかにしていただいきたいと思います。  まず、大綱を変えられる、そういう意向があるのかどうか、その辺からお答え願いたいと思います。
  295. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず、白書に大綱見直しについてそういう見解が示されたように申されましたけれども、実は白書で書かれておりますのは、最近の国会におきまして大綱の仕組みについて御質問がありましたので、こういう仕組みになっておるということをお答えしたという事実関係を書いたわけでありまして、現在のところ、私どもといたしましては大綱を見直すとかそういった考えを持っているわけではありませんので、その点お断りを申し上げておきたいと思います。  なお、今御質問にございました大綱策定当時と現在の情勢がどうなっているか、それによって大綱がどうなるのだろうかというような御質問であったろうと思いますが、御案内のように、大綱をつくった当時と現在とを比べますと、先ほど来瀬木参事官の方から別の先生の御質問お答えしたところでございますけれども、我が国周辺の諸国の軍事力の動向というものについて言えば、より厳しさを増しておるということは事実であろうと思います。しかしながら、我々としましては、大綱の基本的な考え方を決めるに至った世界的な枠組みあるいは極東における枠組みという基本的な枠組みは変わっていないのではないかというように現在も考えております。  御承知のように、大綱は限定的・小規模事態に独力で対応し得る能力を持つということを上限とした防衛力整備を考えておりますが、この考え方は、我が国に対する侵略というものが限定的・小規模なものに限られるであろうとか、そういったことでつくられておるわけではございませんで、我が国に対する脅威は、例えば軍事力による示威、恫喝みたいなものから間接侵略といったように、逐次レベルアップして全面核戦争まで、各種の様相があろうかと思います。  それらについて、我々としては日米安保体制というものを前提にしてそれぞれの段階を抑止できるようにしたい、そして日米安保体制と相まってそれぞれのレベルにすき間のない形で防衛力が対応し得るようにしたいというのが基本的な考え方でありますので、我々独自、防衛力独自で対応できるものとしては、そのうちの、各種の段階のうちの小規模・限定的な事態にまでまず独力で対応できれば、一応すき間のない防衛体制というものが形成できるのではないかという考えに立っておるわけであります。  また、その前提としては、累次申し上げておるように、まずグローバルに見て全面的な戦争というものは米ソの核抑止力というものを中心に強く抑制をされておるということ、さらに言えば、極東の地域におきましても、かつてのように中ソが一枚岩であった当時に比べれば、東アジア地域でも米、中、ソといったような三極鼎立のような形になって、より安定した体制がつくられておるのではないかというようなこと等々を踏まえますと、ある一国と一国との間にある程度の軍事力の差ができたからといって、すぐ弱肉強食の時代のように襲いかかってくるといったような状況ではないではないか。  ということになれば、平時から我が国として最小限持っておるべき防衛力というのは、たとえ安保条約があってもその支援のいとまのないような限定的・小規模事態には、自分だけでも対応できる力というものをまず持っておるということがしかるべきではないかということで大綱というものが決定されたわけでありまして、その当時の判断のもととなった情勢といいますか、基本的な国際的な枠組みというものは現在も変わっていないというように考えておるわけでございます。
  296. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そうでしょうかね。五十一年当時と現在とでは、脅威に対するそういった枠組みは、我が国周辺のそういう状況というのは変わっていない、そんなふうに考えておられるわけですか。
  297. 西廣整輝

    西廣政府委員 日米安保を前提にしますと、例えばある国がアメリカとの全面対決を覚悟して日本を侵略してくるというような状況にはない、しかも日米安保というものは引き続き当時と同じように緊密な状況にあるということでありまして、要は、防衛力を整備しようという小規模・限定的な事態というものが、その後十年たちましたので、周辺諸国の軍備の動向なりあるいは軍事技術の動向ということで、同じ小規模・限定であるけれども、そういう形で日本に来襲し得る兵力の質なり侵攻の質なりがある程度変わったということは言えるかもしれませんが、それはやはり小規模・限定ということにおいては変わらないというように御理解をいただければありがたいと思います。
  298. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かに今すぐ戦争が起こるような、いわゆる弱肉強食ですか、そんなような状況にはないと思われることは確かだと思います。  大綱は、いわゆる質を重視した防衛哲学をベースとして、今申されましたけれども、平時に我が国が保有すべき防衛力の目標を示したものであると言われているわけです。すなわち、その根幹をなす考え方は基盤的防衛構想である、こういうわけですね。それは、我が国に予想され得る現実的な脅威としては、今も言われましたように限定的かつ小規模侵略以外にない、このように想定して、これに対しては原則として我が国独力で排除する、そういうものであるということであります。  そこで御質問申し上げるのですが、今日置かれておる我が国の情勢は、今もその枠組みは余り変わっていないということでありますけれども、本当にそうなのか、もう一度重ねて御質問申し上げたいと思うのです。
  299. 西廣整輝

    西廣政府委員 私の御説明がちょっと悪かったかとも思いますが、私、大綱の考え方が、日本に対する侵攻が限定的・小規模以上のものは考えられないということを申し上げているのじゃなくて、日本に対する侵攻というのは、先ほど申したように非常に軽易なものから核を用いた全面戦争的なものまであり得るという前提に立っておるわけです。したがって、当時も今も日本に対する侵攻は限定的・小規模以上のものはないのだというような考えを決して持っておるわけじゃございません。  そうじゃなくて、平時から我が国独自の力で対応し得るようにしておかなければいけないのは、限定的・小規模な事態までは少なくともする必要がありましょう、それ以上のものについては日米安保という米側との連携によって対応できるという形で、全体としてすき間のない体制ができるのではなかろうかというのが大綱の基本的な考え方になっておるということを御説明申し上げたわけであります。
  300. 斉藤節

    斉藤(節)委員 わかりました。  そこでお聞きしたいのでありますけれども、そういう考え方だとしますと、今三十二項目の検討項目が出されているわけでありますが、私はここで最も注目しなければならぬのは北海道統合部隊構想ではないかと思うわけです。統合部隊は自衛隊法二十二条により有事の際には設置可能だが、現在行われている陸海空三自衛隊の統合訓練では指揮系統が別々になっているわけです。しかし、今度の構想では平時からいわゆる統合部隊を設置しようということでありますから、三自衛隊の枠組みを決めている大綱に反する、見直しをしなければこういうことはできないのじゃないかなと思うのですけれども、その辺どうでしょうか。
  301. 西廣整輝

    西廣政府委員 統合部隊、先生が申されたとおり自衛隊法二十二条の一項で、有事、つまり防衛出動下令時あるいは治安出動として出動時に初めてつくり得る特別の部隊が統合部隊と言われるものじゃないかと私ども考えておりますが、これはあくまで有事に編成し得るものでありまして、平時から置くということになりますと、基本的に法改正をしなくてはいけない代物であろうということであります。  そこで、現在改革委員会の方で検討しておりますのは、平時から統合部隊を置くということについて検討しているということではないと私は理解をしております。有事に統合部隊が編成をされ行動する際に、それが有効かつ能率的に行動ができるかどうかというために、例えば陸海空の間の通信機能はどうなっておるかとか、その種の各種の問題について今洗い出しをしているというふうに理解をいたしております。したがいまして、平時から統合部隊を設置するという構想は今のところ私ども検討の対象にはなっていないというふうに御理解いただきたいと思います。
  302. 斉藤節

    斉藤(節)委員 つまり有事を想定してこれらのことを考えておるということですけれども、現在は有事ではないことは事実でありますが、ただ、今平時でありますね、平時であるけれどもこのようなことはやるのだ、こういうわけでございますか。
  303. 西廣整輝

    西廣政府委員 二十二条による特別の部隊というのは、地域的にあるいはある作戦別に単一の一元的な指揮のもとに、陸海空の部隊から編合といいますか一緒になってつくられた部隊を指揮しようというための措置としてつくられているものだと思っております。  その際に、通常の場合ですと陸上部隊に対しては陸上幕僚長を通じ、海上部隊に対しては海上幕僚長を通じて指揮することになっておるものを、そのような形で陸海空のそれぞれの部隊からつくられたある特別の部隊に対しては、統幕議長を通じて指揮が伝達されるということが二十二条で定められておるわけですが、それはそれなりに、そういう部隊ができ統幕議長を通じて指揮が伝達されることになりますけれども、実際問題としてそういったことが有事に非常にスムーズにできるのであろうかどうかという、いろいろな機材的な問題なり、あるいは陸海空が使っておる例えば命令の伝達の文書の方式とか、いろいろ違っている点もあろうかと思いますので、その種のものも含めて、有事に困らないようにするためにはどうすべきかというような検討を中心に勉強しておるということでございます。
  304. 斉藤節

    斉藤(節)委員 有事のときに困らないようにということで検討しようということでありますけれども、大綱にうたっていない事柄をやろうとするのであれば、これは明らかに大綱の変更ということになるのじゃないかなと私は思うわけです。  次の質問をいたしますけれども、大綱水準について、中期防衛力整備計画、六十一年から六十五年度で装備面で大綱水準の達成が射程内に入ったと言われておりますけれども昭和六十一年度までの達成率はどのくらいなのか、白書にも出ておりますけれども、これは達成されるのかどうか、その辺お伺いしたいと思います。
  305. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の達成率というのは大変難しゅうございまして、先ほど来申し上げているように、必ずしもそれは量のみではない、質も含めた話ということになろうと思いますので大変難しゅうございますが、具体的に別表そのものに書かれておる数量の主たるものを申し上げますと、例えば、海空自衛隊の作戦用航空機が大綱では約二百二十機及び約四百三十機というようになっておるのに対しまして、六十一年度の完成時ではそれぞれ百五十機、三百八十九機というようになっているということで、それぞれまだ、水準といいますか大綱の目標まで達成をしていないということになろうかと思います。  ただ、ここでお断り申し上げておきたいのは、そういう数量的なものもさることながら、やはり防衛力としてはその持っておる装備の質もそうでございますし、あるいはそれ以上に、例えば有事直ちにその事態に即応できる態勢であるとか、あるいは弾の備蓄のように、防衛戦闘を続け得るかどうかといったような能力、いわゆる継戦能力という言葉を使っておりますが、そういったこと、あるいはレーダーサイトその他航空基地等が敵の攻撃に対して耐え得るかどうかといった、例えばハード化をする、地下に入れる、そういった問題でございますが、そういった点においてまだまだ十分でないものが多いというように考えておりますので、そういったものも含めて我々としては大綱水準というものを考えていきたいというように考えております。
  306. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、大綱は解釈が大変難しいと私は思っているわけでございます。大綱の別表の達成率とかなんか見ていきますと、確かに量は達成していくのでありましょうけれども、しかし、質の面において絶えず変わっていく。既にこれはいろいろ質の面で変わっているということが大綱に出ておりますね。出ておりますけれども、このように質を絶えず変えていくということであれば、大綱達成は常にできない、そのようになってしまうのじゃないか。つまり永久に大綱というものは達成されない。そういうことであれば、常に大綱達成という目的のためにいつまでもいつまでも続いていってしまう、際限がない、その辺を私は心配するわけでありますけれども、いかがでございますかね。
  307. 西廣整輝

    西廣政府委員 確かに先生の御指摘されたような点があるわけでございまして、防衛力というのはあくまで相対的なものでございますし、先ほど申したように時代とともに技術その他も変わっていくということでございますから、ある水準に瞬間的に達成をしたといっても、それが、持っておるものが旧式化していくとか、そういうことが起きてまいりますので、大綱を維持し続けるということのためにかなりの努力が引き続き必要であろう、それは軍事力というもの、防衛力というものが要らなくなるまでやはり続けなければいけない努力であろうかというように考えております。
  308. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そうなりますと切りがなくどこまでも行ってしまうわけでございますので、防衛力というのは大変難しい問題だなと私は思うわけでございます。  そこで、よく聞く話でありますけれども防衛費は三兆円を超えたわけでございます。しかし、このうちの八割近くが人件費などである、このように言われております。それで、不毛の一%論議よりも内容検討せよとよく言われておるわけでありますけれども、これについてはどんなふうに考えられますか。
  309. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 ただいまの御質問趣旨は、防衛費のかなりの部分が人件費に食われている、こういうことでございます。  六十一年度予算で申し上げますと、現在全体の防衛費のうち四五・一%が人件費、これは糧食代と両方含めてございます。なぜかといいますと、これは月給にかわるようなものが糧食でございますので、両方合わせて申し上げております。  我々としてもこの人件費の比率が高いということについては改善措置を講じなければいかぬということはかねがね考えておりまして、昭和五十一年の段階ではこれが五六%でございましたが、逐年下げてきております。もちろん自衛隊の場合は、先ほどお話がございましたけれども、基本的には他の公務員と月給の水準は同じなんでありますけれども、それにしましても、日本人の所得というものはかなり高い要素がありまして、どうしても比率が高くなっております。しかし、基本的な方向としてはこの比率をできる限り下げて、装備の効率化とか、先ほどお話がありました即応能力とか抗堪性とかそういうところに今後力を注いでいく、そういう点については全く同じように考えております。
  310. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、ちょっとお聞きしたいのでありますけれども、軍事大国にならないということですね、我が国は。これは宣言されております。この軍事大国という意味ですけれども、どういうのを軍事大国というのか、こんなふうな素朴な質問でありますけれども、お願いしたいと思います。
  311. 西廣整輝

    西廣政府委員 軍事大国ということについて必ずしも定義があるわけではないと私ども考えております。国会等の御質疑を通じて出てまいりますのは、一つは、軍事的に非常に大きな力を持っている国ということで使われる場合もございますし、時には軍国主義的な国家という意味でも使われることがあるようでございますが、私どもといたしましては、不相応な軍事力を持って他国に侵略的な脅威を与えるような国にはならないという意味で、軍事大国にはならないということを政府関係方々は言われておるのであろうと理解をいたしております。
  312. 斉藤節

    斉藤(節)委員 軍事大国にならないというわけでありますけれども、陸海空の規模の比率は見直したらいいのじゃないかという声もあるようでありますけれども防衛庁としてはどのように考えておりますか。
  313. 西廣整輝

    西廣政府委員 陸海空の規模について、海空重視をしたらいいんではないかとか、いろいろな御意見は承っております。しかしながら、私どもといたしましては、現在の規模といいますか、例えば陸の十八万人という規模でございますが、これは我が国を守るについてはやはり最小限に近いものではなかろうかと考えております。それは、いろいろな考え方がございますが、例えば北海道一つをとってみましても、これは広さでいえばスイスの二倍ぐらいあるということであります。スイスはそれじゃどうかといいますと、そこを守るために、陸続きの国でありますけれども、有事七、八十万の動員をしてそれを守るという体制をとっておるわけでありまして、十八万という陸上自衛隊の数というものは決して多くはない、それどころか極めて少ないのであって、これを母体にして国土を防衛するということはかなり工夫をしなければ難しいのではないかと考えております。  日本の国土というのは非常に細長くて、大陸にへばりついたといいますか、それに広がったような格好になっておりますので、これを防衛するというのはなかなか地形的には難しい関係にございます。いずれにしましても、陸上自衛隊が主体になって守らなければならない地域もございますし、海空部隊に相当なものが依存できる地域もございます。そういった点を含めて陸海空のバランスというものを常に考えて整備をしていくということが重要であろうかというように考えております。
  314. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、最近GNP比一%枠内に抑えていたのでは国は守れませんよということをよく言われておるわけでありますけれども、これに対してどうでしょうか。
  315. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 一%では国は守れないという意見を言う人がありますし、また、一%を超えたら軍事大国になる、そういう言い方をする人もあります。私は、一%という枠、これは今までの経過からいって尊重し守ってまいりたいと思っております。  しかし、この一%にこだわって、これ以上でなければ国は守れない、いや、これ以上では侵略だ、そういう決めつけ方はよくないと思うのです。内容にわたって十分に検討する。その内容は何かというと、これはいろいろ言っておりますけれども防衛大綱、これが歯どめですよ。これが定性的な歯どめでして、それに基づいていろいろなものが来ているわけですね。この大綱は何からできているかというと、憲法ですね。そういう意味で、一%を超えたらばこれはもう侵略だ、いや、国を守るためには一%以下ではだめだ、そういう議論は私はとらない。むしろ計画されたものを継続的かつ計画的に着々進めていく、それが一番重要だと思っております。
  316. 斉藤節

    斉藤(節)委員 大綱が一番の歯どめになるということでありますけれども、しかし、先ほどお話がありましたように、大綱は常に変わるわけですね。内容も変わります。質が変われば内容が変わっていくわけですから。そういうことで、本当に歯どめになるかどうか、その辺、私はちょっと心配するわけでありますけれども
  317. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 いや、そんなことはないです。大綱というのは限定かつ小規模の侵略に対応する。それは一体何かというと、そのときの情勢判断でする以外にないでしょう。だから、要するに、変わるといったっておのずから限界があるわけですよ。ですから、大綱は当てにならない、そういう議論は私はとりません。
  318. 斉藤節

    斉藤(節)委員 大綱は当てにならないという議論は私はとらないということでございますけれども、しかし、これは大変難しい問題だと思うのです。大綱自身が非常にフレキシビリティーに富んだものでありますから、そういう意味でも本当に歯どめになるかどうか、私はちょっと心配でございまして、長官とはその辺ちょっと意見を異にするような感じがします。
  319. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 それでは逆に、固定してしまって絶対これ以上は動かさない、こう決めた場合に、我が国の防衛というものは一体成り立つでしょうか。
  320. 斉藤節

    斉藤(節)委員 長官お答えいたすことになったわけですけれども、確かに私も、そういう固定するということは、これは常識的に言ってこういう防衛問題というものでは考えるものじゃないだろう、そんなふうに思いますね。やはりこれは大変フレキシビリティーのあっていいものだと私は思いますけれども、しかし、何かその歯どめということがやはり大事じゃないかなと私は思うわけでございます。  そこで、長官は大綱が歯どめであるということでありますけれども、私はそうは思わないのでありますけれども、今まで長官も、日本国憲法が最後にあるのだ、そういうふうに言われました。日本国憲法の枠の中で、世界情勢に関連しながら我が国の平和と安全保障を維持していくためにどうしたらいいのかということで、その中でいろいろ工夫がなされてきたと思うわけです。その工夫の一つに非核三原則とかあるいはGNP一%論など、こういったようなルールがつくられてきたのだろうと私は思うわけです。また、武器輸出三原則も、まだ完全なものじゃないですけれども、その一つじゃないかなと思うわけです。  そこで、先ほどもSDIについて私は外務省の方に質問申し上げたのでありますけれども、このようなSDI研究に参加するとか、あるいは有事を想定した三自衛隊と米国の三軍による初めての日米共同統合演習が現在行われているわけでありますが、そういう国内の事情にかんがみまして、我が国の平和維持という点でどのように考えておられるのか、その辺、長官の哲学などを聞かしていただきたいと思います。
  321. 西廣整輝

    西廣政府委員 SDIの参加問題がすなわち私ども防衛力整備あるいは防衛政策に直に関係あるものというふうに私どもは理解しておりません。これは外務省からるる申し上げておりますように、日本と同盟関係にあるアメリカのその種研究が進んでいくことは、同盟関係にあるアメリカの核抑止力に依存しておる我々日本にとっても、抑止的な効果を上げるという点で望ましい方向ではないかと考えておりますが、さればといって、このSDIの成果そのものが直ちに我が防衛力に反映をしてどうこうするといったものではまだないのではなかろうかと現段階では考えております。
  322. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では、この問題はこの辺で終わらしていただきまして、次の問題に入りたいと思います。  自衛隊法の中に国内の災害に対して救援問題が出ているわけでありますけれども、これについてお尋ねしたいと思うわけでございます。  まず、日航機の墜落事故のとき自衛隊は出動したが、夜間行動の装備品、つまり夜間暗視装置がなくて、残念ながら事故機の位置の特定や救難活動は翌朝を待たねばならなかった、自衛隊が夜間でも十分行動できなければ有事の役に立たないという声も聞かれているわけでありますけれども、本論に入る前に、これについてお考えをちょっとお伺いしたいと思います。
  323. 西廣整輝

    西廣政府委員 JAL事件が起きましたときに、夜間山岳地域に墜落したというように見られたわけでありますが、そこにいち早くヘリコプターで救助隊員を運べなかったかという点であるわけでございます。  一つは、ヘリコプターの性能そのものからいいまして、高度の非常に高いところでは空中で静止することが非常に難しい、どうしても空気の濃度その他の関係で難しくなってくる、それから、急斜面でありますと下からの風圧が変わってきますので滑り落ちてしまうということで、非常に高度の技術が要るという点がございます。それから、夜間、険峻な山岳地帯であると同時に、高圧線その他がかなりありまして、昼間参りましてもそういったものを避けながら現地に到着するというのがなかなか難しい状況であります。  そういったときに、十分な装備がなくて行けなかったのじゃないかという御批判をいただいたわけでありますが、その後、我々としてもいろいろ研究いたしましたけれども、今いわゆる暗視装置、夜でも見える装置とかサーチライト等でJAL事件のような状況下で行き得るような装備があるのかないのかということを当たってみましたけれども、現状ではまだその種のものがないということで、残念ながら、再びああいうことが起きても直ちに夜間到着することはまだ無理ではなかろうかと思っております。  そこで、それでは有事にそんなことではどうにもならぬではないかという御質問であろうかと思いますが、そのような使えないものは使えないということを前提にして夜間行動する、それは徒歩行進も含めてその種の行動で夜間において最大限の能力を発揮する以外にない、言うなれば、これは敵味方同じような状況にあろうかと思いますけれども、その中でどちらがより努力し、より工夫して夜間戦闘をするかということにならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  324. 斉藤節

    斉藤(節)委員 その夜間暗視装置でありますけれども、こういうような装置は米軍は持っていないのですか、どうなんでしょうか。
  325. 西廣整輝

    西廣政府委員 夜間暗視装置あるいはサーチライト等もございます。ただ、それはあくまである程度平たんなところなりそれなりの開けたところでヘリコプターが離着陸するとか、そういったときに使える程度でありまして、その急峻な山の中に、戦闘があるかもしれないところに、谷間に入っていく、あるいはそういうものを十分見れるだけの遠距離まで見通せるものというのは、現在のところ開発されていないというのが実情でございます。
  326. 斉藤節

    斉藤(節)委員 ちょっと横にそれますけれども、照明弾なんというようなものはだめなんでしょうか、使い物にならないのでしょうか。
  327. 西廣整輝

    西廣政府委員 戦闘になりますと照明弾等も使い得ると思いますが、ああいう状況でございますと、山火事が起きるとか、あるいは下に墜落しておる飛行機等の油とかが残っておりますと火事が起きるとか、そういったことがございますので、照明弾の使用はああいう状況では不可能ではないかと考えております。
  328. 斉藤節

    斉藤(節)委員 日航機事件のときは、もっと早く発見できれば助かった人も相当おったのではないかというふうにも言われておりますので、確かに大変残念な状況だったと私は思うわけでございます。そういう点で、どのような山であろうと、どういう地形、地理的な条件であろうと、照明が十分されまして救出できる装置を一日も早く持っていただきたいものだなと思うわけでございます。それをお願いしておきたいと思います。  そこで、白書の第四部の「第二節 国民生活への貢献」の中に、「自衛隊は、防衛任務のほか、その組織、装備、能力等を生かして災害派遣や各種の部外協力活動などを行っている。これらの活動は、国民生活や地域社会の安定に寄与するとともに、」云々とあるわけであります。そこで、自衛隊法八十三条、災害派遣のことについてありますけれども、派遣する場合、どういうような仕組みで派遣することができるようになっておるのか。「災害派遣」の項には、「自衛隊は、天災地変その他の災害に際して、原則として都道府県知事等の要請を受けて災害派遣を実施している。」とありますけれども、この都道府県知事から要請されれば、どこでどう受けて、どのように命令が下って例えば部隊が出動するのか、その辺をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  329. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま先生申されたとおり、自衛隊法八十三条の規定によりまして、都道府県知事、海上保安庁長官、管区海上保安本部長及び空港事務所長が要請を出せるということになっておりまして、それを受ける者としましては、防衛庁長官と「その指定する者」ということで、現在は方面総監、師団長、駐屯地司令等を防衛庁の中で指定をいたしておりますけれども、これに対して要請することができ、その要請を受けた防衛庁長官あるいはその指定する者がこれに応じていくという格好になっております。それから、事態がやむを得ないという、なかなか要請がなくて状況が緊迫してまいっているというような、特に緊急を要する場合には要請を待たずに部隊を派遣することができるようになっております。
  330. 斉藤節

    斉藤(節)委員 確かにこの施行令百五条には、政令で定める者がいわゆる要請者になれるということで、都道府県知事、それから「政令で定める者」としては海上保安庁長官、管区海上保安本部長あるいは空港事務所長ですね。これからいわゆる要請がありまして、そこで命令権者としては、防衛庁長官は当然だと思いますけれども、その「指定する者」が訓令三条にあるわけでありますけれども、この中には今局長が申されました方面総監、師団長あるいは駐屯地司令の職にある部隊等の長、こういう人々が当たることになるわけでありますが、このように「指定する者」は、どのような場合にどのような方が指定されるのか、その辺ちょっと詳しくお知らせ願いたいと思います。
  331. 西廣整輝

    西廣政府委員 部外からの要請の場合いろいろな場合がございますが、例えば地震防災派遣というものがございます。これは要請する方は内閣総理大臣になっておりまして、内閣総理大臣から防衛庁長官に要請があり、防衛庁長官がそれを受けて実施をするという格好になっております。それから不発弾処理等でございますと、これは要請する者は警視総監あるいは各都道府県の警察本部長で、それから要請があった場合に方面総監がこれを受けるというような格好になっております。機雷等の除去については、管区の海上保安本部長からの通報によって地方総監がこれを受けるというような形で決められております。そのほか土木工事であるとか運動競技会とかいろいろなものがございますが、それぞれについて、だれからでなければいけないし、こちらの受け方はだれであるかということとその場合の実施の枠組み等を部内の訓令をもって定めておりますので、その枠組みの中で行動していくということになろうかと思います。
  332. 斉藤節

    斉藤(節)委員 結局、今の話によりますと、例えばその「指定する者」、方面総監あるいは師団長、駐屯地司令の職にある部隊長、こういう人々に要請者から直接そこへ行くわけですか、どういう仕組みで行くのですか。
  333. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの件は恐らく災害派遣の場合を想定されていると思いますけれども、これは都道府県知事から駐屯地司令等に直接言ってくるわけでございますが、知事さんが直接言われるというよりも、それぞれの県に防災課等がございまして、日ごろからそういう連絡網というものはできておりますので、そこを通じて御連絡があるということになろうかと思います。
  334. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、「指定する者」、いわゆる方面総監その他が命令を出せるわけですけれども、その命令は防衛庁長官には報告されるのですかされないのですか。
  335. 西廣整輝

    西廣政府委員 災害派遣の要請を受けた駐屯地司令等は、直ちに防衛庁長官報告する仕組みになっております。
  336. 斉藤節

    斉藤(節)委員 どのような問題でもすべて防衛庁長官の方に報告されるわけでございますか。
  337. 西廣整輝

    西廣政府委員 例えば駐屯地がございまして、その隣が火事になったというような近隣の防災、その種のものはいわゆる災害派遣要請とはまた別途の問題でございますのでございませんが、災害派遣であれば、通常の形で、要請がいつあり、どういう形になるかということについては報告があるということでございます。
  338. 斉藤節

    斉藤(節)委員 最終的には防衛庁長官の方に報告が行くのでありましょうけれども、全部が全部行かないのではないか、内局ぐらいでもってとまっている場合もあるのじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  339. 西廣整輝

    西廣政府委員 駐屯地司令からの報告と申しますのは、例えば陸であれば方面総監、幕僚監部を通じて参りますので、さらに長官ということになりますと、我々長官の内部的な補佐者である例えば防衛局というところに参りまして、その事案の内容によりまして長官に直ちに御報告するなり事後報告するなりということを仕分けさせていただいております。
  340. 斉藤節

    斉藤(節)委員 私の心配するのは、いわゆるシビリアンコントロールがどのくらいまで働いているかということなのです。部隊長がいいと思って出動させた、そういう場合に報告長官のところへ行くまでにかなり時間がたってしまったというような問題もあるのじゃないかと思うわけですけれども、速やかにどの辺までその出動に対して報告が行くのか。今ありましたように、命令権者は、防衛庁長官が指定する者として訓令三条にあるわけですけれども長官のところまで行かなくてもこういう命令を出せることになっているわけですから、その辺ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  341. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど御説明しましたように、災害派遣につきましては、駐屯地司令等は所属する部隊等に対してその範囲で権限を委譲されておるわけでございます。したがって、原則的には都道府県知事等から要請を受けた場合、その要請の内容に応ずる部分について災害派遣行動をするということについては許容されているというふうにお考えいただきたいと思います。  もちろん、災害派遣をし部隊を出動させたその後の状況等については、逐一命令系統を通じて上がってまいりますので、その間にさらに増援するなりあるいはより災害派遣の状況を縮小するなりといったことを、指示は随時与えていくという形になろうかと思います。
  342. 斉藤節

    斉藤(節)委員 それで大体わかったわけであります。  そこで御質問申し上げたいのは、災害派遣、それから先ほども言われましたけれども、地震防災派遣あるいはよく不発弾なんかを処理しておられるのを見ておりますけれども、そういう機雷等の除去、それから、これは訓練を目的としたということでありますけれども土木事業等の受託、これもあるわけですね。これは工事をするわけですけれども、そのほか運動競技会に対する協力、それから南極地域観測に対する協力、そのほか教育訓練受託というものがあるわけです。こういういろいろなものが自衛隊の方によって行われるので国民としても非常にありがたいわけです。  そのようなエネルギーが我が国に存在しているということもまた大変ありがたいことであるわけですけれども、これにはいろいろとお金がかかると思うのですね。ちょっとみみっちい話になってきますけれども、これに要する経費として年間どれくらい防衛庁として見込んでおられるのか、その辺ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  343. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 災害派遣等にどれだけ経費がかかっているか、こういうことでございますけれども、これは大変難しい要素がございます。  先ほど先生お話がございましたように、自衛隊はみずからの任務として災害派遣を行っております。したがいまして、通常でありますと、そこで教育訓練用の油だとかあるいは行動用の車両だとかそういうのを使ってまいります。したがいまして、当然防衛費の中で運用しております。しかし、それがどこまでが災害かということは非常に難しいわけです。例えば人件費をどう見るか、使いましたヘリコプターだとか船だとか、これは何らか傷むわけでございますから、その償却費をどう見るか、使った油をどう見るか、なかなか難しくて、具体的にこれが災害派遣で幾らだということは断定できません。  しかし、現在の予算で明らかに災害派遣用として認められているものは二つございます。一つは災害派遣用の手当であります。これが標準予算になっておりますけれども、年間千九百万ございます。それからもう一つは糧食、被服でございますが、自衛官は一日八百円の受給を受けて食事をしておりますが、災害派遣の場合はこれに三百円追加をいたします。この糧食費と、それから被服と申しましても下着でございますね、それから石けん、タオルのたぐい、こういうものを買う経費、これは両方合わせまして大体千五百万、合わせて三千四百万が災害派遣用として計上されておりまして、その余のものにつきましては、今言ったような事情でございまして、どこまでが災害でどうこう、特に通信機とかそういうもの、償却費、なかなか具体的には計算ができません。  それから、お尋ねの教育訓練の受託、これは予算で認められておりまして、八千万であります。それから南極の観測、これは八億八千九百万、不発弾処理が一千万、それぞれその名目で認められております。しかし、そこに使います車両だとか人件費だとか、そういうものは全体の中で運用しておる、そういう状況でございます。
  344. 斉藤節

    斉藤(節)委員 大変お金がかかっておる、これは皆防衛庁予算としていわゆる一%以内の予算でやっているわけですか。
  345. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 そのとおりでございます。
  346. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで私は一つ疑問を持つわけでありますけれども、例えばJAL、日航機が墜落しましたときに、あれはいわゆる日航機でありますから、これは運輸省関係になると思うのですが、あれに相当の防衛予算が使われたのじゃないかなと思うわけです。これは運輸省の方、聞くと怒るかもしれませんけれども、正直言いまして、そういう例えば土木工事をやれば建設省とか、いろいろそれぞれ省庁には予算を持っているわけでありますけれども、その辺についてお話し合いなんかしたことがあるのですか、どうですか。
  347. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 結論から先に申し上げますと、これは先ほど申しましたように自衛隊の固有の任務でございますので、防衛費で運用しております。したがいまして、そういう経費の負担について他の省庁と相談しているわけではございません。  土木工事の受託につきましては、御承知のように材料費等は直接受益者からいただいておりますし、南極の観測でありますと、これは文部省から経費の所管がえを受けております。それから、話はちょっと直接ではございませんが、例えば政府専用機については総務庁の方から予算を移してもらう、そういうことをやっておりますけれども、さらにそれ以上の負担をという話はしておりません。また、そういう立場にはありません。
  348. 斉藤節

    斉藤(節)委員 ちょっと今、話の中に、言葉じりをとらえるのはあれですけれども、そういう立場にないというのはどういうことでございますか。
  349. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 どうも言葉が適切ではなかったかもしれませんが、申し上げたい趣旨は、これは自衛隊の固有の任務として既に我々の責務になっておりますので、防衛費の中で負担をしている、そういう意味でございます。
  350. 斉藤節

    斉藤(節)委員 大体わかったわけでありますけれども、しかし、南極観測に協力しておられるわけですが、砕氷船「しらせ」、これは文部省予算で買ったわけですね。購入している。そして現在自衛隊が保有しているわけですね。運送、こういったようなことをです。
  351. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 「ふじ」の件につきましては、これは運輸省に予算がつきまして、それを我々の方へ移していただきまして我々がつくりまして、それからいろいろな運航にかかる経費、必要なものについては運輸省の方から移しかえをいただいて南極観測を実施しております。
  352. 斉藤節

    斉藤(節)委員 よくわかりました。そういうあれで海上輸送部門の経費だとか燃料、修理費、こういったようなものはもらっているということでございますね。
  353. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 先ほど運輸省と間違えました。文部省が正解でございます。  いただいております。
  354. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では、この辺で災害の出動の問題につきましては終わることにいたしまして、次は法案関係の方に入らせていただきたいと思います。  まず、法案関係でありますけれども、予備自衛官制度、これの任務及びその員数についてちょっとお尋ねしたいと思うのでありますが、その前に、正規自衛官のうちで任期自衛官の募集状況はどうか、特に二士、二等陸士とか二等海士とかいうふうになっていますけれども、その二士自衛官の男子については毎年困難な状況にあるということでありますが、充足率はどうでしょうか。また、その理由について御答弁願いたいと思います。
  355. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 この点については政府委員から御答弁させます。  ただ、この際にちょっと先ほどの私の発言の中で、誤解を生むといけないので申し添えておきたいと思います。  歯どめは何だ、そういうお話がございました。一%ももちろん歯どめでございます。専守防衛も歯どめでございます。憲法も歯どめでございます。「防衛計画の大網」も歯どめでございます。ただ、「防衛計画の大網」とか憲法とか、そういったものは定性的な歯どめですね。定量的な歯どめは一%である。この定量的の歯どめについていろいろ議論がございますが、それについては国民皆さんの多くの意見がこの国会の場で集約されることを望む、しかし、政府立場からすると一%問題は守ってまいりたい、そういうことでございますので、誤解のないように。
  356. 松本宗和

    ○松本政府委員 自衛官の募集の状況につきまして御説明させていただきます。  御案内のとおり、防衛庁では自衛官の募集、相当数の若者を募集しております。ただ、その中でも今先生がおっしゃいました男子二士、これが一番大きなウエートを占めておりまして、毎年約二万人前後というような数字の隊員を募集しておるわけでございます。この二士男子の募集につきましては、その二士の適齢人口でございます十八歳から二十四歳、この人口が五十六年あたりを境にいたしまして漸増の傾向にございます。それから、民間事業所におきます若年労働力に対する需要等、これが一応横ばいの状況にあるというようなこともございまして、またさらには国民の自衛隊に対する理解も深まってきておるというような条件が、募集についてはプラスの材料ではないかと考えております。  ただ、一方におきまして、最近の高卒者の進学率、これは大学だけではございませんで各種学校等も含めますと非常に高くなっておりますし、またいわゆる核家族化と言われる現象、さらには最近の若い人たちの地元に就職したい、つまり地元から離れたくないという傾向が進展しておりまして、そうした中にありまして良質の隊員を確保していくということは、先生指摘のとおり大変厳しいということが申せます。  そうした中にありまして、私どもといたしましては地方連絡部等の広報努力などを通じまして、現在までのところ所要の充足に必要な員数は確保してきております。例えば昨年度、六十年度でございますけれども、約二万一千人採用しておりますが、それに対する応募者は四万五千人、倍率約二・二倍、過去ずっと大体二倍前後の応募数を確保しておるという状況でございます。
  357. 斉藤節

    斉藤(節)委員 次に、今度の法改正では予備自衛官の中に自衛隊未経験者でも採用するということになっておりますけれども、この見通しはどうでしょうか。どのぐらい採用できるのでしょうか。またどれぐらいの員数を見込んでおられるのか。
  358. 西廣整輝

    西廣政府委員 官房長がおりませんので、私からお答え申し上げます。  今回の法改正は従来の予備自衛官制度の中でお願いをいたしておりますので、一般民間人からの募集ではなくて自衛隊経験者の中から採用するということでお願いしておりますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  359. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では、結局今度の予備自衛官の募集はみんなOBであるというふうに解釈してよろしいんですね。
  360. 松本宗和

    ○松本政府委員 そのとおりでございます。
  361. 斉藤節

    斉藤(節)委員 次に、航空自衛隊に予備自衛官制度を新設することについての趣旨を御説明願いたいと思います。
  362. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは陸海空通じての問題でございますが、予備自衛官と申しますのは、基本的には平時は余り要らないといいますか、有事になって所要がふえてくる部隊、通常は、例えば陸でいえば兵たん部隊、輸送部隊等がそうでございますし、海空でいいますと、平時は日直、昼だけでやっているような整備とか補給とかいった兵たん部門、そういったものが有事になりますと昼夜兼行ということになりますので、そういった点をより手厚くしなければいけないということで予備自衛官の必要性が出てくるわけでございます。  航空自衛隊につきましては、平時から比較的領空侵犯等の業務がありますので二十四時間体制になっておるわけでありますが、その中で一番手薄になっておりますのがいわゆる航空基地なりレーダーサイト等の防空要員でございます。これは平時そこまでやらなくてもということでごく一部の基幹要員で賄っておりまして、それに、有事になりますと基地の事務をやっていた人間とかさらには予備自衛官を加えて防空部隊を編成するという構想になっておりますので、まずそれに充当する予備自衛官を今回はお願いいたしております。
  363. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、予備自衛官の訓練についてお尋ねしますけれども、どのように行われているのか。陸上、海上、航空の三自衛官について、共通部分とそれから独立した部分があると思うのですけれども、どういうことでございましょうか。
  364. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  陸上、海上、航空とございまして、まだ航空はございませんので陸海について申し上げます。  教育訓練は自衛官としての在職中の練度を保持するということを主眼として実施しておりますが、現在具体的には五日訓練と一日訓練ということをやっております。一日の方は、自衛官として退職して一年未満の者に初年度について実施するということでやっております。  訓練内容としましては、五日訓練の方は、共通の訓練といたしまして小銃射撃、体育、使命感を高めるための精神教育というようなものをやっております。独自の訓練としましては、陸上自衛隊では主として小隊規模以下の戦闘訓練、また最近特に職種訓練等につきましても工夫しておりまして、武器、需品、輸送、衛生等の支援職種等に対しましては職種訓練をやり、また、一部の職種の者について若干工夫するような訓練も取り入れ始めております。海上自衛隊にあっては、各人の特技に応じて術科を実習するというような形をとっております。  なお、一日訓練につきましては、一日でございますので、陸自、海自とも予備自衛官としての使命感を高めるための精神教育とか服務指導というのを地方連絡部でやるというような実態でございます。
  365. 斉藤節

    斉藤(節)委員 訓練というのは年間通じて大体二十日間ぐらいですか。
  366. 依田智治

    ○依田政府委員 制度上二十日となっておりますが、実際上は今の一日訓練と五日訓練で実施しておるということでございます。
  367. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこでお聞きしたいのでありますけれども、待遇それから資格、履歴上の問題についてはどうなのか。すなわち、予備自衛官として招集された場合に、各人が勤務している勤務先での招集中の待遇と取り扱い、例えば休職扱いになってしまうのか休暇扱いになるのか、それとも特別な扱いをされているのか、この辺はどうでございますか。
  368. 松本宗和

    ○松本政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問は、予備自衛官が訓練招集を受けている間の勤務元での待遇はどうなっているかということだと思います。  予備自衛官は、平時は普通の市民として働いておるわけでございまして、その大部分が何らかの形で企業等に勤務しております。年一回の招集訓練に際しましては休暇等の取り扱いを受けて参加しておるわけでありますが、休暇については、全員について詳しく承知しておるわけではございませんけれども、かなりの企業主等の御協力、御理解を得まして有給休暇という扱いになっております。ただ、若干欠勤と申しますかそういう扱いを受けておる者もおりますので、この点につきましては今後とも企業主等に御理解を求めてまいりたいと考えておるところでございます。
  369. 斉藤節

    斉藤(節)委員 防衛庁としてはどんな待遇が望ましいと思っておられるのでしょうか。
  370. 松本宗和

    ○松本政府委員 お答えいたします。  予備自衛官に対しましては二つの手当が支給されております。まず一つは予備自衛官手当でございます。これは毎月三千円でございます。これは訓練招集に応ずる応じないということとは関係なしに毎月三千円ずつ支給されております。もう一つ、訓練招集手当というのがございます。これはただいまここで議題になっております訓練招集に出頭した際に、その日数に対して一日につき現在は四千七百円支給されております。  その他、当然のことでございますが、訓練に出頭してくるための出頭旅費は支給されております。
  371. 斉藤節

    斉藤(節)委員 先ほど答弁の中で、有給休暇で来ているということでありましたけれども、有給休暇というのは大抵会社に勤めていて病気になったとかなんとかということに使わなければならない休暇でありますので、予備自衛官として招集されている間にそれを使い果たしてしまうのはその人にとって困るのではないかなと思うのですが、その辺はどういうお考えですか。
  372. 松本宗和

    ○松本政府委員 確かに先生のおっしゃるような場合もかなりあるかと思います。その点につきましては、事情をよく把握いたしまして、さらに各企業主の御理解を求めるようにやっていきたいと考えます。
  373. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで、私さっきお聞きしたのは、防衛庁としては勤め先に対してどのような待遇が望ましいと思っておられますかという御質問だったのですけれども、さっき予備自衛官の給与とかそういったことについてお答えいただきましたので、それはそれで結構データとしてありがたかったわけでありますけれども、そのほかに、自衛隊側としては、各企業とか何かに勤めている人がそこから出てくるわけですから、そういう企業に対してどのようなことが望ましいと思っておられるか、その点。
  374. 松本宗和

    ○松本政府委員 ちょっと趣旨をつかみかねますが、先ほどからも申し上げておりますように、例えば休暇の付与とかそういうことにつきまして企業サイドの御理解を一層賜りたいというのが、私ども考えと申しますか希望と申しますか、そういうところでございます。
  375. 斉藤節

    斉藤(節)委員 私も、予備自衛官を出しておられる企業の方々にはぜひとも御理解賜りたいと思うわけです。そうでないと予備自衛官になりたい人がなりたくてもなれなくなってしまう、そういうことになりますので、その辺、企業に対してお願いしたいなと私も思うわけであります。  そこで、もう時間もありませんのでもう二、三お願いしたいのですけれども、現在予備自衛官になっている方々の訓練招集に応じている割合はどのぐらいなのか、お尋ねしたいと思います。
  376. 松本宗和

    ○松本政府委員 訓練招集の出頭率でございますが、訓練招集を出しました予備自衛官のおおむね九〇%が訓練出頭に応じております。この点につきましては、さらに向上すべく努力してきておりますが、過去から考えますと大体八〇%の上の方であったものが現在九〇%強ということになっておりますので、徐々にではございますが改善されてきておると考えております。
  377. 斉藤節

    斉藤(節)委員 九〇%応じておるということで、大変私も心強く思っておるわけであります。九〇%ですからほとんどですけれども、応じられていないという方々の理由は何ですか。病気だとか何かですか。
  378. 松本宗和

    ○松本政府委員 お答え申し上げます。  一〇%の不出頭者の不出頭の理由でございますが、六十年度の例で申し上げますと、これはピックアップしてやっておるわけでございますが、勤務の都合、つまり現在働いておる事業所での仕事の都合というのが六一%ということで最大でございます。その他家庭の事情等によるものが八%等等ということになっておりまして、先ほどから私どもの願望として申し上げておりますように、企業側の御理解というものを一層賜りたいというところでございます。
  379. 斉藤節

    斉藤(節)委員 もう時間がほとんどなくなってきましたので、最後のお尋ねになると思いますけれども、現在予備自衛官になっている人々の社会における職業あるいは年齢構成は、大抵OBですからもう年だと思いますけれども、どんな状況になっていますか。
  380. 松本宗和

    ○松本政府委員 予備自衛官の社会での職業分布でございますが、六十一年三月末現在で申し上げますと、いわゆるサービス業が二六・二%、それから製造業が二四・一%、商業が一三・二%、運輸通信関係が一三%、その他というぐあいになっております。  それから年齢構成でございますが、三十歳以下が約半数の四七・一%、それから三十一歳から四十歳以下が二三・六%、四十一歳から五十歳以下まで一一・九%、残り五十一歳以上が一七・四%ということで、全体平均をいたしますと三十四・九歳ということになっております。
  381. 斉藤節

    斉藤(節)委員 もう時間になりましたのでこれで終わりますけれども、さらに私は、白書における世論調査の結果などについて御質問申し上げたかったのであります。また、思いやり予算についても御質問申し上げたかったのでありますけれども、時間になりましたので、次の機会に移させていただきます。本当にどうもありがとうございました。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  382. 船田元

    ○船田委員長代理 和田一仁君。
  383. 和田一仁

    ○和田委員 防衛二法の審議でございますけれども、きょうはわざわざ外務大臣においでをいただきまして貴重な時間を割いていただきましたので、外務大臣の方から御質問をさせていただきたいと思います。  この七月二十八日ですか、ソ連のゴルバチョフ書記長のウラジオストク演説というのがございました。まあ異例ではないかもしれませんが、非常に注目をされた演説であったと思います。内容も、ソ連も太平洋国家であるということをはっきりと言明されまして、アジアを従来以上に重視して、その緊張緩和を求める姿勢が明らかになってきたと思います。  この演説を外務大臣としてどのように受けとめておられたか、このことはソ連の極東政策あるいは対日政策の転換につながるとお考えになっておられるかどうか、この辺についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  384. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答え申し上げたいと思います。  ゴルバチョフ書記長が七月二十八日ウラジオストクにおきまして行いました演説、極めて長文のものでございまして、その中でいろいろなことを申しておりますが、ただいま御質問のアジア・太平洋に関する部分についてお答え申し上げますと、最近アジア・太平洋地域にソビエトが非常に関心を持ち始めておる、特にゴルバチョフ書記長のウラジオストク訪問を、アジア・太平洋地域のソ連外交に占める重要性を強調する絶好の機会をとらえたというふうに考えておる次第でございます。  ゴルバチョフ演説の対日関係部分について、いろいろ申しておるところでございますけれども、この中で、過去の問題にこだわることのない平穏な雰囲気のもとでという一項目がございます。この解釈でございますが、日ソ協力の関係を深める、そういう点で申す意味においては私はこれは評価するわけでございますけれども、右の発言が領土問題を棚上げすることを意味するものであれば、政経不可分の立場をとっております我が方の立場と相入れないものであると考えておる次第でございます。  また、ヘルシンキ型の太平洋会議の開催を提案しているのは御承知のとおりでございますけれども、右提案は、戦後の欧州の国境を固定化した一九七五年のヘルシンキ全欧安保会議同様、アジアの国境を固定し、あるいは既存の安全保障体制の解消等をねらいとしているものと考えられるわけでございます。ソ連との間に未解決の北方領土問題が存在し、日米安保条約を安全保障体制政策の基軸としている我が国といたしましては、この提案に応ずるわけにはまいらない次第でございます。  以上が極東部に対するゴルバチョフ演説に対する我が方の基本的な考え方でございます。
  385. 和田一仁

    ○和田委員 その後に懸案の米ソ首脳会談が持たれました。十月にレイキャビクで米ソ首脳会談が持たれておるわけでございます。世界注視の会談ではございましたが、残念ながら結論としては物別れという結果に終わったと思います。非常に長時間の会談であったのですが、不調に終わった原因はSDIについての意見が相入れなかったということが原因であろうと思うのです。  こういう大事な問題で意見が合わずにああいう結果になった、その後の米ソの間は今どういう状態になっているか、そしてこれからどんなふうに変化するのかしないのか、そういう点について大臣の御所見はどの辺にありますでしょうか。
  386. 倉成正

    ○倉成国務大臣 御案内のとおり、米ソの首脳会談がアイスランドのレイキャビクで行われまして、世界注目の的であったわけでございますけれども、最後の段階になって、ソビエトがパッケージでオール・オア・ナッシングということで、この会談がいわば不調に終わったということは極めて残念なことであると思っておる次第でございます。  その後、御案内のとおりレーガン大統領は、このレイキャビクの会談は不調に終わったけれども、ジュネーブにおける軍縮交渉においてレイキャビクの会談を踏まえてこれからやっていこうということも言っておりますし、ゴルバチョフ書記長もまた、いろいろ表現は使っておられますけれども、やはり前向きの考え方を述べておられる、いわば交渉のテーブルにはお互いに着こうという趣旨のことが言われておるわけでございます。  どういう形でこれがいつ実現するかということは、私としてここで申し上げるだけの材料を持ち合わせておりませんけれども、一日も早く米ソ両大国の、世界の平和と安定のために両首脳会談が実現するということを期待いたしておる次第でございまして、注意深くこの両国の関係を見守っておるというのが現状の姿でございます。
  387. 和田一仁

    ○和田委員 このレイキャビク会談にレーガン米大統領が臨む前に、前々から参加を要請されていたSDIの研究参加の問題ですけれども、これに対して我が国も、これは九月九日でございましたか、官房長官談話でその研究参加の方向が決定されたという報道がございました。これは非常に意味のあることではないかと思っております。これはやはりレイキャビクに臨もうとしているレーガン大統領にとりまして、西側の結束が固まっているということを誇示できる非常に力強いバックアップになったのではないかと思うのです。  こういう決定をされておりますけれども、我が国としても西側の結束を固めようとすることは、これから対ソ外交の中で積極的に日ソ外交の中に踏み込んでいこうという考え方を背景にしてこれを決定されたのかどうか、そういう性質のものかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  388. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまのSDIに対する研究参加の問題についての委員の御発言でございますけれども、この点に関しましては御案内のとおり、先般官房長官談話によって政府の決定いたしました理由について極めて要領よく問題点を整理しながら発表されたところでございますけれども、御承知のとおり、かねてからこのSDI研究計画に参加するかどうかということは慎重に検討いたしてまいりまして、関係の閣僚会議を開いたり、これは四回ほど開きました、その前には御承知のとおり調査団を先方に派遣する、そういうことをいたしました上で、最終的に研究計画に参加することを決定したような次第でございます。  このSDI研究計画に対する決定は、官房長官談話の中にも申しておりますように、我が国の平和国家としての立場、また日米安保体制の効果的な運用、我が国の関連技術の向上、いわばこのSDI計画の中でいろいろな研究が行われることが我が国の技術向上にも影響を及ぼす、そういう可能性等々を勘案して、総合的な見地からこれを考えた次第でございまして、米ソのいろいろな政治的な問題に介入するとか、そういう政治的な意味でこれを配慮ということで参加するというものではございません。
  389. 和田一仁

    ○和田委員 それではSDIのことについてもまた後で少しお聞きしたいと思いますけれども、米ソ会談がうまくいかなくなった、しかしその見通しについてはジュネーブ交渉に向かってまだ非常に両方とも前向きである、こういう御判断もあるようでございます。そういう判断はあるにいたしましても、最近のソビエトの対日姿勢を見ると、こういった米ソ間の首脳会談が不調に終わったにもかかわらず、それと反比例に対日接近の姿勢は非常に強いような感じをいたしております。  こういった状態の中で、日本とソビエトとの関係改善の何か糸口のようなものがだんだんと具体化してくる、そういう中で、アメリカの方はこういった現象に対してどういうふうにとらえておると思われるか。来月訪米をされるという報道もございます。その訪米の中でこの辺の感触を探ってこようという意図がおありなのかどうか、あるいはこれから来年早々にというか来年にでもゴルバチョフ書記長の来日ということも考えられる時期として、この外務大臣の訪米は相当の意味合いがあると思っておりますけれども、いかがなものでしょうか。
  390. 倉成正

    ○倉成国務大臣 まず、御質問は二点あったと思いますが、後の方の私の訪米云々の件はまだ何ら日程に上っておりませんので、これはひとつそういうふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、最近の日ソ関係、いわばソビエトが非常に極東に関心を持っておることについて一体アメリカがどう考えているだろうかということにつきましては、私どもが他国の考え方について種々の推測を行って私の考えをここで申し上げるというのは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、私がアメリカとの関係で申しておりますのは、御承知のとおり、我が国は対ソ関係におきましても西側の一員であるという立場をとっておることと、それからもう一つは、我が国はソ連との間においては戦後四十年にわたりながら平和条約がない、隣国であり、そして移転することのできない隣国であるソビエトと平和友好の関係を結びたいけれども平和条約がないということは、これは異常な関係である。  これは申すまでもなく北方領土の問題が解決していないということでありますから、これは私がしばしばあらゆる機会をとらえて申しておることでもございますし、シェワルナゼ外相とニューヨークで会談した際にも、この点については我が方の立場ははっきりと先方に伝えた上でゴルバチョフ書記長の来日を求めるということを申しておる次第でございますし、先般カピッツァ外務次官が参りました際も我が方の立場は明確に伝えておる次第でございまして、そういう政経は不可分であるという立場というのはいささかも変わりがないわけでございます。しかし、先方はなお、そういう我が方が言った立場を聞きつつも、ことしじゅうは無理だけれども、とにかくなるべく早く来日の時期は知らせたい、そういうお話でございました。  これが現状の姿でございます。
  391. 和田一仁

    ○和田委員 今大臣のお話を伺っておりますと、懸案のゴルバチョフ書記長来日の見通しも、カピッツァ外務次官のお話等を見ても近い将来にあるような感じがいたします。  それで、今のカピッツァさんの発言に先立って、昨年の十二月にもプリマコフ・ソ連世界経済国際問題研究所の所長が北方問題についての発言をしておりますし、先般はまた、日本に参りましたカピッツァさんのお話でも、一九五六年の日ソ共同宣言の意義というものを非常に強調しておられるように思います。そういうことを非常に強調しておられる背景に、私どもは、近々自分のところのゴルバチョフ書記長が日本へ行く、そういうことを頭の隅に置きながら、そういう時点をねらって北方領土問題についてソ連側のこうした一連の発言というのは、日ソ関係改善あるいは対日接近に非常に期待感を高めさせているような印象がしております。何とか今度はこの問題に入っていくのではないか、こういうような姿勢を示しているような印象があるわけでございますけれども、こういったソ連の基本的な姿勢に対して、変化があるとごらんになっておりますでしょうか、どうでしょうか。
  392. 倉成正

    ○倉成国務大臣 これは、我が日本政府としては日本政府立場を明確にソ連政府にも伝えておるところでございますし、内外にこの立場を宣明いたしておる、あらゆる機会に明らかにしておるところでございますし、また、衆参両院の委員会あるいは本会議におきまして、満場一致で一人の反対もなく北方領土返還の問題についての御決議をいただいておるわけでございます。いわば日本国民の総意といっていいぐらい、悲願というべき北方領土の問題、この問題を抜きにしてゴルバチョフ書記長の御来日がありましても、それは長期安定的な日ソ関係をつくるゆえんのものではないということを申しておるわけでございまして、先方には日本側の立場は十分伝わっていると確信をいたします。  ただ、先方がどういう態度に出てくるのかということについて私がここで云々することは差し控えさせていただきたいと思いますが、願わくは、我が国民の悲願を先方が十分しんしゃくして、これに満足のある回答が得られるように、最大の努力を我々としてはいたす所存でございます。
  393. 和田一仁

    ○和田委員 大臣の決意お話はよくわかりますが、一連のこうしたプリマコフあるいはカピッツァさん等の発言を見ておりますと、何か一九五六年の共同宣言を非常に重く強く意識して物を言っている。そういう発言があるだけに、共同宣言第九項で示されているこういったことが向こうから逆に——これはもちろんさっきおっしゃったように、四十年果たしていない国交の正常化に入っていくためには領土問題を避けて通れません。そのことは向こうは十分わかっているはずでございます。わかっていないとまた困るわけです。そういうことを踏まえながら、ここで何とか糸口をつくろうという意味合いで、ソ連の方から五六年の日ソ共同宣言の合意からどうだ、こういう話がもし逆に提案されてきた場合、これはされるかされないか、大臣の予測としては——そんなことは四島一括だ、こういうことかもしれませんけれども、もしあった場合にどうされるか、これもちょっとお聞きしたいと思います。
  394. 倉成正

    ○倉成国務大臣 事実関係についてもし必要があれば後で政府委員から補足いたしたいと思いますが、御案内のとおり、歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土でありまして、我が国は日ソ共同宣言の交渉時より一貫して北方四島一括返還を要求しておるところでございます。また、北方四島の問題が戦後未解決の諸問題の中に含まれることは、一九七三年の田中・ブレジネフ会談でも確認されたところでございます。政府としては、今後とも北方四島一括返還の早期実現のため粘り強く対ソ折衝を続けていく所存でございます。したがって、我々は日ソ共同宣言交渉時から一貫して北方四島一括返還を要求しているという事実、このことはひとつ十分御認識いただきたいと思います。
  395. 和田一仁

    ○和田委員 誤解されると困るのですが、私は四島返還で、二島返還でもいいから入れということを申しているのではございません。ただ、そういったことを糸口にしてこられたら、そのときの対応は、我が国は今大臣がおっしゃったように四島は固有の領土であるという主張が前提にあるわけですから、ばんと二島ではだめだと言ってはねつけていかれるかどうか。  このことはことし一月の日ソ共同コミュニケで、「平和条約の内容となり得べき諸問題を含め、交渉を行つた。」こういうふうにうたわれております。しかし、北方領土問題について当時の安倍外務大臣とシェワルナゼ外相との間で討議された経緯からいって、この北方領土問題の進展というのは大変厳しい前途のように思うわけですね。  ですから、そこで一歩でも半歩でもというようなことでこういう提案がされたときに、私どもは今大臣がおっしゃるような四島一括返還、固有の領土で、これは二島ではだめだという世論が国論としてきちっと形成されていればいいけれども、時と場合によっては島より魚だという議論すらあったこともあるわけでございまして、二島返ってくればまずまずだ、あとの二つは出口でどうだというような議論もなきにしもあらず、こういう感じがしておるものですから、念のためにお聞きをしたわけでございます。いかがでしょう。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  396. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私は、ここに衆参両院の委員会決議あるいは本会議の決議を持ってまいってきておりますし、また、これは注意深く読ませていただいております。出口論という立場は我々はとりません。そういう基本的な姿勢を貫いていきたいと思っておることを明確に申し上げておきたいと思います。
  397. 和田一仁

    ○和田委員 先般の北方領土返還の国会決議を踏まえて対処をしていただきたいものです。これは大臣の双肩にかかっておるわけです。  ゴルバチョフ書記長来日ということになりますとこういう問題がいろいろ出てくると思いますが、こういう問題について提案があろうがなかろうが、どういう結果になるか、これはやってみないとわからないと思うところもありますけれども、その後の中曽根総理の訪ソについて、外務大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  398. 倉成正

    ○倉成国務大臣 今の我が日本政府といたしましては、ゴルバチョフ書記長の来日を御要請している、年内は無理だ、しかしなるべく早く時期は知らせたいということで、ボールは向こう側にあるわけでございます。しかし、いつ来るかということは、いろいろ報道はされておりますけれども、少なくとも正式の外交ルートを通じては何らまだ我々は聞いていないわけでございますから、そういう中で我が方の総理が云々ということを私の口から申し上げることはいかがなものであろう。  まず向こうのボールをどうやって受け取っていくか、まずボールをこちらに早く打ち返してほしい、来られる時期を確定してほしい、そうしたらその時点で十分双方で、すべてのいろいろな問題について、実りのある会談にするためにひとつ話し合って準備をしていこう。一週間後に来るから、それじゃ会談をやろうなんといったって、それはできる問題ではございません。それなりに双方の立場、どういう問題を議論するかということを準備する必要がございますから、そういう意味では、いつおいでいただくかという回答を早くいただくことを期待しておる次第でございます。
  399. 和田一仁

    ○和田委員 ここまで来たんですから、来日をして、ぜひそういった会談を持っていただいて、それを踏まえてまた我が国から訪ソをするなりして、こういった四十年懸案の国交正常化へ向かっての成果をぜひ上げていただきたい。その前提には領土問題、大変な難問が横たわっておりますけれども、こういったところは大臣の双肩にかかっておるわけでございますので、御健闘いただきたいと思います。  それで、大臣おいでのうちにもう一つお聞きしたいのですが、SDIの研究参加の協定でございます。これを今検討されつつあるのではないかと思いますが、政府としてはどういう内容の協定をされるようにお考えなのか。既に英国や西ドイツ、こういうところはそれぞれアメリカとの間で協定ができておるようでございますけれども日本の場合はどういう内容を頭に置かれておりますでしょうか。
  400. 倉成正

    ○倉成国務大臣 本件につきましては、米側と今協議を行っているところでございますので、その内容について申し述べることは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げますと、例えば情報の伝達、秘密情報の取り扱い、研究成果の利用の問題、研究した場合の成果をどういうふうに利用できるか、そういう問題に関するものが協議の対象となることは従来から申し上げている点でございまして、こういうものが一応中心の課題になるだろう。  そのほかいろいろ技術上の問題があろうかと思いますが、御案内のとおり、米国と他国との協定も公表されておりませんので、我が国は我が国として国益を踏まえつつこういう交渉に臨んでいる、協議に臨んでおるというのが今の状況でございます。
  401. 和田一仁

    ○和田委員 我が国の防衛の根幹というのは、日米安保条約というものを踏まえて、アメリカの核の抑止のもとですべての対応をやっておるわけですが、その核の廃絶につながる、こういう言われ方をしております。SDIは非核の防御システムであって、弾道弾ミサイルを無力化することによって究極的には核兵器の廃絶を目指すものである、こういう位置づけがされた上で研究参加をされる、こういう問題なだけに、これは国民にとりましては非常に重要な問題であり、また関心も高い問題である、こう思うわけでございます。  したがって、内容を含めまして、こういう重要な決定というものについて国民の理解が形成されているということが非常に大事ではないかと私は思うのです。しかし、これは高度の軍事機密にもちろんつながるわけでございますが、国民にとっては何も見えないというのでは、これはやはり不安が先に立ってくる、こんなふうにも思います。そういう意味では、こういう国会の場においてできる限り国民が知り得ることをお示しいただくということが大事ではないかと思うのです。  私は、一つには、政府、民間ともにこういった研究参加を考えておられるのか、あるいは民間ベースだけのことを考えておられるのか、そういうことも含めて、今対応されておる中身について差し支えない程度のお話が聞ければありがたいと思います。
  402. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまアメリカと折衝をしておるわけでございまして、その中身については大臣が先ほど申し述べたとおりでございます。  政府、民間ともにという御質問でございますけれども、このSDI参加問題ということには二つの側面がございます。一つは、SDIに日本としてどういう態度をとるかということでございまして、これは昨年ワインバーガー国防長官から招請の手紙が参りまして、それに対する対応が官房長官談話で九月九日に宣明いたした態度でございます。その態度は、要するに既存の法律の枠内、既存の日米の取り決めの枠内で行っていくということ、さらに、研究機関等がこれに参加をするということは現在においても可能なわけでございますけれども、それを実質的に参加を容易にしていくためにアメリカと折衝に入るということを政府として決めたものでございます。  さらにもう一つの、参加ということでございますけれども、これは、企業、研究機関等が具体的にアメリカのSDI研究計画の一部にそれぞれの主体的な意思を持ちまして契約等によって参加することがあり得る、それが具体的な意味での参加ということでございます。
  403. 和田一仁

    ○和田委員 この内容は企業、研究機関が研究に参加していくわけですけれども、そういった協定のあり方としては、民間、政府機関が参加ということになると、協定はやはり国会等である程度示して、そして承認を必要とするものではないかという気がいたしますが、これは全く行政サイドの責任でやり得るものというふうにお考えか、あるいは承認条約に等しいものだとお考えか、その辺はいかがでしょう。
  404. 倉成正

    ○倉成国務大臣 SDIの研究計画の参加については、先ほども申し上げましたとおり、本年九月九日付の官房長官談話で発表いたしたとおりでございまして、現行の我が国の国内法及び日米間の取り決めの枠内で処理するということでございます。今後米国との話し合いの結果を取りまとめてどういう取り決めないし文書を作成することになったといたしましても、それは国会の承認を求めるべき性格ではない、現段階ではそう考えられるわけでございます。
  405. 和田一仁

    ○和田委員 かつて国会承認対象条約の条件は何かということを外務大臣が御答弁なさっている記録があるわけです。要約しますと、それは三つ条件があって、一つは予算が伴うかどうか、一つは法律事項が絡んでいるかどうか、それからいま一つは、その二つがなくても国家間の一般の基本的な関係を法に規定するかどうか、こういうことがあれば国会承認は必要だという当時の大平外務大臣の答弁がございますけれども、民間と政府機関が参加ということになると、政府機関の場合もSDIのアメリカの予算の中で研究開発の委託を受けてやるということでしょうか、それとも、内容を示されて独自に政府機関として研究をやる、テーマだけは与えられているということになると、これは予算を伴ってくるし、それだけでなくても私は基本的に非常に国家間の関係の深い問題だ、こう思うので、これは承認すべき条件を持っているのではないか、こう思うのですが、そういうことはございませんか。
  406. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま、昭和四十九年の大平外務大臣答弁の形で示されました国会承認条約の範囲についての御質問がございましたので、それを補足しつつお答え申し上げたいと思います。  御承知のように、昭和四十九年に示しました政府考え方というのは、先ほど指摘がありましたように法律事項を含む国際約束、それから財政事項を含む国際約束、三番目に正式な批准行為を必要とする条約、この三つのカテゴリーとしてお示ししたわけでございます。  まず第一に、SDIの研究計画への参加の態様いかんによっては財政事項を含む国際約束になるのではないかというお尋ねでございますけれども先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、我が国の現行法令の枠内それから日米間の取り決めの枠内ということで処理をして、基本的には米国側が計画をしており予算措置を講じておる研究計画に対して、契約ベースに基づいて我が国の企業等が参加するという参加の態様が想定されておりますので、そういうことから考えますと、ここでお示しをしたような財政事項を含む国際約束、つまり予算で承認を得られている以上の財政的な支出を条約によって約束をする、そういう性格の取り決めができるというようなことはちょっと想定できないのではないかと考えております。  それから、第三番目の政治的に非常に重要な国際約束であるというようなものではないかというお尋ねでございますけれども、この第三のカテゴリーと申しますのは、そういう二国間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味で非常に重要な国際約束であって、したがって、その結果として批准という正式な国際法上決められております手続、正式な批准行為というものが条約発効の要件になっている条約がございますが、そういうものであればこれは国会の承認を得ることになっておる、こういう趣旨でございます。  具体的な例で申しますと、例えば日中平和友好条約のようなものは政治的に非常に重要で今申し上げたような二国間の基本的な関係を律するものである、そのゆえに批准が要件とされている条約である、いわゆる批准条約である、こういうのが典型的な例でございまして、今度SDIの研究計画参加の結果、何らかの文書あるいは取り決めというようなものができるといたしましても、そういう性格の文書あるいはそういう性格の批准条約になるということはちょっと想定できないのではないかと考えております。
  407. 和田一仁

    ○和田委員 ボン・サミットで中曽根総理がSDIに対して五原則を言われましたね。この中には明らかにソ連への一方的な優位を求めないとか、いっぱいございました中で、ABMの制限条約の枠内ということがございました。これは研究参加からどういうふうになっていくか、時期もはっきりいたしませんけれども、研究参加の協定ができることによってそれから先へ進んでいくことは間違いないですね。そうなったときに、具体的にいわゆるABM条約の九条の「移転」に相当してくるということになると、これはさっきの御説明のように関係ないというわけにはいかないというふうに私は理解するのですが、その辺もさっきの答弁のとおりでございますか、いかがでしょう。
  408. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 第一に、アメリカ政府は、ただいま委員が御指摘になりましたように、ABM条約に反しないということを、累次、日本に対してもでございますが宣明しております。したがいまして、日本としては、アメリカのSDI研究それ自体がABM条約に反するというような事態を想定してはおらないわけでございます。  それから、我が国の参加と申しますのは、先ほど御説明申し上げましたとおり、アメリカの研究計画の一部に、契約などによりまして日本の研究機関等がその研究に参加していくという行為でございまして、それがABM条約に違反する云々という問題は、先ほどの第一点とあわせまして起きないというふうに考えております。
  409. 和田一仁

    ○和田委員 SDIの問題につきましては、また一遍機会を改めていろいろお聞きしたいと思いますが、大臣にお約束いたしました時間が参りましたので、御退席いただいて結構でございます。大変恐縮でございました。  防衛庁長官、一日大変御苦労さまでございますが、いましばらくお願いしたいと思います。  この九月に訪米をされまして、いろいろアメリカの首脳とお話をされたということでございます。先ほど同僚議員からも御質問がございました。何のオブリゲーションも持ってこなかったぞ、できることはやるけれども、できないことはだめだ、はっきりノーと言ってきた、こういうお話でございました。非常に結構だと思っております。  ただ、そういったワインバーガーあるいは副大統領とお話しになった中で、防衛費の問題についても発言をされておるのではないか。つまり、一%枠程度というような発言をされたやに新聞で拝見をいたしましたが、それはそうでないかどうかが一つと、それからSDIについて、ワインバーガー長官あたりとどういうお話があったかをちょっとお聞きしたいと思います。
  410. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 後の方からお答えいたします。  SDIにつきまして、ワインバーガー長官からSDIはどうなりましたか、そういう趣旨お話がございまして、私の方は、ちょうどあれは九月四日の日でしたから、近く結論が出ると思いますというお答えをしておきました。それ以上SDIの内容等について話をすることは一切なかった、またその時間もなかったわけであります。  それから、防衛費の問題につきましては、一%について論議を交わす、そういうような場面はございませんでした。ただ、アメリカ側は、防衛力の整備についてさらに一段の努力をしてもらいたい、その中で、円高が非常に進んでおるので、その円高メリットを防衛の方に使ったらどうでしょうかという、バード議員のあれがありますね、あれを紹介しましたよ。私は、それはだめです、なぜだめかというと、円高によって金が浮くから装備類をどんどん買うというようなことは継続的、計画的でない、円高だから買います、円安なら買いませんよ、こういうわけにはまいらない、特に、装備というのは人がつきますから、人との関連においてやらなければならないからそれはできません、こういう話をしたのです。  ただ、全体としてアメリカ側から日本に対する要請は、円高だから何とかそのメリットを生かせないかというようなニュアンス、もう一つは、米駐留軍に労務を提供している日本人の人たちに対する俸給、給与がありますが、これが、円高で支払いにドルを多く持ち出さなければならぬから頭が痛いというようなお話がございました。それに対しましては、私は理解は示した、しかしそれに対して結論を出して、やりましょうというような話は一切しておりません。
  411. 和田一仁

    ○和田委員 先ほど他の委員からの質問を聞いておりまして、関連してちょっとお尋ねしたいと思うのですけれども、今度の法案の中に予備自衛官の増員がございますが、この問題を本会議質問したときに、長官の御答弁の中で、予備自衛官に民間人も登用するという構想を聞いたわけでございます。今までは、かつて自衛官であった人から予備自衛官というものは採用していた、これを民間人から採用するという構想をお示しになられましたけれども、これはどういうお考えか、まず基本的なところからお伺いしたいのです。
  412. 西廣整輝

    西廣政府委員 予備自衛官の問題につきましては、今二つの側面から検討しておるわけでございます。一つは、自衛官といいますか、平時から持っております実員の自衛官のできるだけ効率的な持ち方という意味で、多くのものをできれば平時は民間等に委託をしておきたいという合理化の面からの考え方があります。ただし、そうした場合に、有事にそれらの業務というものが十分確保されなければ困る。ということになると、そういった業務は、民間に委託すると同時に、予備自衛官制度といったようなことで裏づけをしておく必要があるのではないかというような面からの検討が一つございます。  もう一点は、現在の自衛隊は、いろいろな面で継戦能力その他を見ますと非常に弾力性がない、着たきりスズメみたいな格好になって弾力性がない、そういった形で、予備自衛官制度というものを活用することによってより弾力性なり融通性を持たした部隊運用が可能になるのではないかというようなことを考えておりまして、そのためには現在より、より多くの予備自衛官というものが必要になってくるのではないかということが想定されるわけでございます。  としますと、自衛官の経験者だけをソースとして予備自衛官を確保していくということはなかなか難しいのではないかということでございます。御承知のように、現在の技術の進歩等に伴って、階級構成というものが逐次、幹部なり曹がふえてくる、士そのものの人数が減ってきておる、さらには充足率等の問題で士についてかなり欠員が多いということになりますと、若い士経験者のOBというものは非常に限られた人数になってしまう、もう少し広いソースから採用することも考える必要があるのではないかということで、これも含めて検討の対象にしておるということでございます。
  413. 和田一仁

    ○和田委員 今お答えいただいた、まず一点目の民間委託という考え、これは防衛庁、自衛隊業務の中で民間委託し得るような業務というのは具体的にどういうものでしょうか、二、三お示しいただきたいのです。これが一つ。  それから弾力性がない、今の自衛隊と予備自衛官との関係だけからいえば、これは継戦能力からいっても極めて硬直している、そういう意味での弾力性がない、こういう御答弁でしたね。私は、そういう意味で新たに民間から予備自衛官を採用しようということならこれはわかります。しかし、一点目の民間委託が、一体どういう業態のものを民間委託にするのか。それがもし何かのときに遂行されないと困るから予備自衛官としての身分を与えておく、こういう御答弁のように思ったのですが、だとすると、まずどういうものを民間委託というふうにお考えになって、その部分を新たな民間からとった予備自衛官にやらせようとしておられるのか、それをちょっとお知らせください。
  414. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  民間への業務の委託の問題につきましては、いわゆる防衛行革といたしまして昨年十月からやっております業務・運営自主監査委員会におきます検討の過程で項目として挙げております。  現在検討いたしております事項を申し上げますと、まず装備品等の整備業務がございます。それから、自衛隊の業務で使いますコンピューターのソフトの維持管理業務でございます。それから、教育訓練の分野におきましては、部外に教育機関のあるようなものの教育、隊員の教育でございます。こういったものを対象に現在検討をいたしております。どの程度民間委託できるかということも含めまして、やり方等についても現在いろいろ検討いたしております。  そのほか、少し時間がかかるのではないかと思われますが、艦艇の設計業務のようなもの、こういったものも民間委託ができないかどうか、それからあと、募集業務等につきまして退職した自衛官を活用できないか、こういった問題について、合理化、効率化の業務運営というような観点から現在検討させていただいております。
  415. 和田一仁

    ○和田委員 いろいろ挙げられた中で、ああなるほどなと、例えば募集業務等ですね、こういったものはあるいは適当かなとも思いますけれども、装備の整備とおっしゃったのですか、こういうものまでやり得るのかどうか、これは非常に問題だと思うのですね。また、恐らくこういうものが頭にあるからこそ、そういうものの民間委託をやってそれがきちっと確保されないと困るので、予備自衛官としてそういう業務は予備自衛官にやらせる、こういう発想になってくるのかなとも思いますけれども、私は今度、大臣が答弁されたように、この予備自衛官を民間からの人を入れてでもふやしていこうというからには、やはりこれは法改正を含めて相当思い切ったお考えだと思うので、この点については、やはり採用の基準だとか資格だとか、あるいはOBではだんだん年をとるから若い予備をつくっておかなければいかぬ、そういう発想等があるとすれば、そういうことも含めてきちっと検討した上でやっていただきたいなと思うのです。  それで、これは私のいつもいつもの老婆心みたいにお聞きになるかもしれませんけれども、さっき御質問の中ではてなと思ったのは、今の予備自衛官の訓練だとか手当だとか、そういうものは出ておりました。しかし、もしこういう民間の人たちが入ってきた、そういう場合に、これを予備自衛官とする意味合いの中に、この予備自衛官が一番本来の活動目的を達成するのは有事の場合でしょう。有事の場合ですね。その有事の場合の給料はどうするのですか。それから、有事の場合に現職の自衛官と同じすべての補償が与えられるのかどうか、いかがですか。
  416. 松本宗和

    ○松本政府委員 お答えいたします。  有事の場合におきます予備自衛官の待遇、特に自衛隊を経験していない人から採用した予備自衛官の待遇の問題でございますが、まず根っこの、自衛隊を経験していない人から採用するという問題につきまして、現在まだその可否も含めまして法的側面から検討しておる段階でございますので具体的に申し上げる段階ではないかと思いますけれども、仮に予備自衛官となりました場合には、現在の予備自衛官でございますが、防衛招集を受けた場合、それはその階級の自衛官になります、そうしてその階級に対応した待遇を受けるということになっております。また、災害補償におきましても同じ扱いを受けるということになっておりますので、仮に、先ほどから話題になっております自衛隊未経験者から採用した予備自衛官でありましても、防衛招集という形で自衛官になった場合には同じ扱いを受けるのではなかろうかというぐあいに考えております。
  417. 和田一仁

    ○和田委員 だんだんわかってきたような気がいたします。  私はここでちょっと、前のこの内閣委員会でも質問したのですけれども、きょうは防衛庁長官以下全員いらっしゃるのでもう一回お聞きいたします。  今も私は有事のことを伺いました。この間は公務員の災害補償法のときに松本局長にはこの問題をお聞きしたわけですけれども、その問題というのは、防衛庁職員給与法第三十条、ここで、防衛出動が下令された、その場合の特別措置については、「別に法で定める。」という規定があるというお話で、じゃそれをどうするのだというお話を聞いたら、これは高度の政治的な問題であるのでという御答弁でございました。  きょうは防衛庁長官がいらっしゃるので、この高度の政治的な判断に属する防衛庁職員給与法第三十条、有事の場合に、この間長官は、私は三軍の長と言って、言い直されました、三自衛隊の長であると。この三自衛隊の士は、自衛官は、長官の命令でどんな危難の中にもそれは職務として応ずる、こういう姿勢で日夜訓練をしておりますね。それは何のためかといえば、まさに有事の際どんな危険があろうともやろうというのが、それが本来訓練の目的でございますね。その有事の際に、何か事あったときの補償が法律的に何も決められてない。平時の場合の災害補償はどうするのだ、それはこうします、それはいいです。しかし、一番大事な有事の際の補償について何ら規定がされないというのは、これは大変な問題だ、私はこう思っておるわけなんです。  それで、これは高度の政治的な判断に属する問題だからという御答弁でございましたので、きょうは長官から、こういった問題について一体どういうふうな方向でこれを解決していこうとお考えになっているのか、ちょっと御所見を伺いたいのです。
  418. 松本宗和

    ○松本政府委員 御説明いたします。  これは前回の委員会におきまして私、御答弁申し上げましたが、有事法制全般が、当面、近い将来に国会提出を予定した立法準備ではないということで、法制化の問題につきましては、防衛庁といたしましては一般的には有事法制研究で指摘された問題点につきまして法制が整備されることは望ましいと考えておりますものの、高度の政治的判断に係るものでありまして、国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえまして慎重に検討してまいりたいとお答えいたしました。  その高度の政治的判断ということでございますけれども、まさにこれは繰り返しになりますけれども国会におきます御審議でありますとかあるいは国民世論の動向等を踏まえまして慎重に判断していかなければならないという点において、高度の政治的判断を要するということを申し上げたわけでございます。
  419. 和田一仁

    ○和田委員 有事立法の問題全体についても、私どもは絶えずこれの促進を申し上げておるわけでございまして、いよいよとなったときに一網打尽、大きく網をかぶせてやればいいというならそれはまたそれでやり方としてあるかもしれませんが、しかし少なくも、こういったきちっともう別に定めるとしてあるような、特に第一分類の中でも、自衛隊自身が自分の問題として考えて解決できる問題として、やはり一番先にでも手をつけてやっていただかなければならない問題だ。  こういうことがないということは、これは自衛官全員が知っているかどうか知りませんが、しかし、ないんだ、それをやってもくれないんだということがはっきりすれば、これはやはり仕事に対する熱意、言いかえれば士気に大いに影響してくる、こういうふうに考えざるを得ないと思うのです。いよいよとなったときにはおれは給料分だけだぞ、おれはもう逃げ出すぞというような自衛官は、幾ら合同演習なんかやってもこんなものは意味がない。そういうときには、今までは今までのやり方があったかもしれぬけれどもこれからはそうでない、こういうことできちっとおまえさんたちのことは考えているということを明らかにしておくことが大事だ、こう思います。長官、いかがですか。
  420. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今の御指摘に対しましては、私は大変関心を持ってお聞きしたのです。有事法制の問題につきまして、特に自衛隊に関するものは私どもとしてはできるだけ早く立法化をいたしたい、こう考えております。  高度の政治判断というのはどういうことかというと、やはり国民全体が自衛隊に対して熱い思いを持って理解をしてくれる、そういう事態がないと、この問題そのものが今度はいろいろと政治的な混乱を招くおそれもある、甚だ残念でございますけれども、そういうようなこともあるのではないか。昔のように、日本の本土だけでなくて外征軍というような場合と、今の専守防衛でやるという場合、自衛官も公務員ですからそこら辺との関係もあるでしょうし、総合的に見て、やはり高度の政治判断を要する時期ではないかと思います。  ただ、和田さんのおしゃるとおり、自衛隊のために、自衛隊を激励してくださる、そういう意味におきましては大変ありがたい御意見である、私はそういうふうに考えております。
  421. 和田一仁

    ○和田委員 高度の政治判断についての見解は、私は自衛隊が国民から認知されておると見ておりますから、そういう認知されておる自衛隊に対して——その本来の目的をやってもらうのが国民にとっては自衛隊を認知した理由だと思うのですね。その本来の任務である有事の際に動きのとれない、前線で司令部一つ建てられない、ざんごう一つ掘れない、戦車も輸送できない、こんな不備なままでいることの方が認知した国民にとってはおかしいというのが私の見解でございまして、高度の政治的な問題というのは、むしろそういった国民の期待にこたえることが高度の政治的な判断としてなされなければならぬと思っておりますから、その辺はどうぞなるべく早く整備していただきたい、こういうふうに思います。  そこで、きょうは早目にやめますが、一つだけ。  自衛隊と言い直されましたね、大臣。三軍の長が三自衛隊の長に変わったわけですが、私はあのときにはっと思ったんです。これはもう何回も何回も議論されていることですけれども、ついこの間北海道で日米合同演習をやりましたが、米軍は軍隊ですね。日本の自衛官はこれは自衛隊、軍ではない。こういう解釈のもとに合同演習をなさっている、何か有事の場合を想定してああいう合同実動演習をやっておられる。これがいよいよそういう紛争の中で日米合同でやったときに、片っ方は軍であり、片っ方は自衛隊である、軍ではない。国際法上これはどういうふうに理解したらよろしいですか。そしてまた、そのときに日本の自衛官が捕まった場合には戦時国際法上の適用を受けないのかどうか。長官、軍から自衛隊と言い直された中にその辺に対する思いはございませんでしたか。
  422. 斉藤邦彦

    斉藤(邦彦)(外務省政府委員 国際法に関するお尋ねでございますので、最初に私の方からその点お答えいたしたいと思います。  自衛隊及びその構成員であります自衛官が国際法上軍隊及びその構成員に当たるかどうかという点は、個々の国際法の規則に照らして判断すべきであるというのが政府立場でございまして、これは従来から御説明しているとおりでございます。  お尋ねのような場合、例えば演習をしてその結果何か事件が起こったとき、どのような取り扱いを受けるかという点でございますが、これもそのような事件を律します国際法の規則に照らして判断するということになるかと思います。  ただいま捕虜になった場合どうかという御指摘がございましたけれども政府立場といたしましては、捕虜の待遇に関する一九四九年の条約がございますが、ここで言われております軍隊、日本の自衛隊はこの軍隊には該当するというのが政府考え方でございます。したがいまして、万一自衛隊員が捕虜になったというような事態、これは当然国際法上、捕虜としての待遇を受けるべきものであるというのが政府考え方でございます。
  423. 和田一仁

    ○和田委員 もう一回同じことをお尋ねいたします。  今の御答弁は、一九四九年の捕虜の待遇に関する国際条約の中で、我が国の自衛隊はここで規定している軍に相当する、こういう理解のもとで扱われる、こういうことですか。もう一回正確にひとつ。
  424. 斉藤邦彦

    斉藤(邦彦)(外務省政府委員 そのとおりでございます。
  425. 和田一仁

    ○和田委員 個々の国際法上の規則に照らして、こういうことでございまして、なかなかどうもわかったようなわからないようなところなんですが、私は、今度の防衛二法の改正を踏まえて、だんだんと防衛全体に対する国民の理解、認識もこういった議論を経ながら深まっていくものと思っております。いろいろまだ問題がございますが、どうぞひとつ機会あるごとに明らかにさせていただきたい、こう思っております。  まだ時間があるのですが、七時になったらやめようと思っておりましたので、きょうはこれで打ち切らせていただきます。
  426. 石川要三

    石川委員長 次回は、来る十一月四日火曜日午前十時十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十九分散会