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1986-12-12 第107回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十二日(金曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 玉置 一弥君       井上 喜一君    石破  茂君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       高鳥  修君    戸塚 進也君       長野 祐也君    鳩山由紀夫君       上田 卓三君    沢田  広君       中村 正男君    早川  勝君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    日笠 勝之君      平石磨作太郎君    山田 英介君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵大臣官房総         務審議官    足立 和基君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大橋 宗夫君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省証券局長 北村 恭二君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   冨尾 一郎君         国税庁間税部長 十枝 壯伍君  委員外出席者         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      広瀬 勝貞君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十一月二十五日  辞任         補欠選任   早川  勝君     永井 孝信君 同日  辞任         補欠選任   永井 孝信君     早川  勝君 同月二十六日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     青木 正久君 同日  辞任         補欠選任   青木 正久君     井上 喜一君 同月二十七日  辞任         補欠選任   石破  茂君     佐藤 文生君   今枝 敬雄君     住  栄作君   江口 一雄君     亀岡 高夫君   金子 一義君     久野 忠治君   戸塚 進也君     渡辺 紘三君 同日  辞任         補欠選任   亀岡 高夫君     江口 一雄君   久野 忠治君     金子 一義君   佐藤 文生君     石破  茂君   住  栄作君     今枝 敬雄君   渡辺 紘三君     戸塚 進也君 十二月四日  辞任         補欠選任  日笠 勝之君     平石磨作太郎君 同月九日  辞任         補欠選任   金子 一義君     加藤 紘一君   安倍 基雄君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     金子 一義君   塚本 三郎君     安倍 基雄君 同月十二日  辞任         補欠選任   山中 貞則君     長野 祐也君   矢追 秀彦君     日笠 勝之君 同日  辞任         補欠選任   長野 祐也君     山中 貞則君   日笠 勝之君     矢追 秀彦君     ───────────── 十一月十日  大型間接税導入反対等に関する請願外二件(高沢寅男紹介)(第六八四号)  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願石原慎太郎紹介)(第六八五号)  同(戸井田三郎紹介)(第六八六号)  同外一件(愛知和男紹介)(第七四六号)  同外一件(小沢一郎紹介)(第七四七号)  同外一件(木下敬之助紹介)(第七四八号)  同(藤本孝雄紹介)(第七四九号)  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願砂田重民紹介)(第七四五号) 同月十一日  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願有馬元治紹介)(第八二七号)  同(遠藤和良紹介)(第九三一号)  同(小此木彦三郎紹介)(第九三二号)  同外一件(北村直人紹介)(第九三三号)  同(平沼赳夫紹介)(第九三四号)  大型間接税導入反対に関する請願外二件(近江巳記夫紹介)(第九二九号)  大型間接税導入反対所得税減税等に関する請願外一件(竹入義勝君紹介)(第九三〇号) 同月十四日  大型間接税導入反対国民本位税制改革等に関する請願安藤巖紹介)(第一〇一八号)  同(石井郁子紹介)(第一〇一九号)  同(岩佐恵美紹介)(第一〇二〇号)  同(浦井洋紹介)(第一〇二一号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一〇二二号)  同(金子満広紹介)(第一〇二三号)  同(経塚幸夫紹介)(第一〇二四号)  同(工藤晃紹介)(第一〇二五号)  同(児玉健次紹介)(第一〇二六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一〇二七号)  同(柴田睦夫紹介)(第一〇二八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一〇二九号)  同(田中美智子紹介)(第一〇三〇号)  同(辻第一君紹介)(第一〇三一号)  同(寺前巖紹介)(第一〇三二号)  同(中路雅弘紹介)(第一〇三三号)  同(中島武敏紹介)(第一〇三四号)  同(野間友一紹介)(第一〇三五号)  同(東中光雄紹介)(第一〇三六号)  同(不破哲三紹介)(第一〇三七号)  同(藤田スミ紹介)(第一〇三八号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一〇三九号)  同(正森成二君紹介)(第一〇四〇号)  同(松本善明紹介)(第一〇四一号)  同(村上弘紹介)(第一〇四二号)  同(矢島恒夫紹介)(第一〇四三号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇四四号)  同(田中美智子紹介)(第一一三二号)  同(東中光雄紹介)(第一一三三号)  大型間接税導入少額貯蓄非課税制度廃止反対等に関する請願児玉健次紹介)(第一一二八号)  同(柴田睦夫紹介)(第一一二九号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第一一三〇号)  同(中路雅弘紹介)(第一一三一号) 同月十七日  山林に係る相続税軽減措置に関する請願野中広務紹介)(第一一六九号)  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願外二件(鯨岡兵輔紹介)(第一一七〇号)  同外三件(鯨岡兵輔紹介)(第一二一六号)  同(坂本三十次君紹介)(第一二一七号)  同(武田一夫紹介)(第一二一八号)  大型間接税導入反対に関する請願経塚幸夫紹介)(第一一七一号)  同(井上一成紹介)(第一二一九号)  同(左近正男紹介)(第一二二〇号)  同(東中光雄紹介)(第一二二一号)  大型間接税導入少額貯蓄非課税制度廃止反対に関する請願藤田スミ紹介)(第一二一五号) 同月十八日  大型間接税導入反対、大企業優遇税制是正等に関する請願坂口力紹介)(第一三三七号)  大型間接税導入反対等に関する請願中路雅弘紹介)(第一三三八号)  同(岩佐恵美紹介)(第一四四三号)  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願玉沢徳一郎紹介)(第一三三九号)  山林に係る相続税軽減措置に関する請願伊吹文明紹介)(第一三四〇号)  同(谷垣禎一紹介)(第一三四一号)  大型間接税導入少額貯蓄非課税制度廃止反対等に関する請願浦井洋紹介)(第一四〇二号) 同月十九日  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願小沢辰男紹介)(第一五〇〇号)  少額貯蓄非課税制度存続に関する請願小沢貞孝紹介)(第一五二二号)  大型間接税導入少額貯蓄非課税制度廃止反対等に関する請願柴田睦夫紹介)(第一五二三号) 同月二十日  少額貯蓄非課税制度存続に関する請願串原義直紹介)(第一五九八号)  同(清水勇紹介)(第一五九九号)  同(中村茂紹介)(第一七四二号)  自動車関係諸税負担軽減等に関する請願永末英一紹介)(第一七八二号)  同(田中慶秋紹介)(第一八三九号)  大型間接税導入反対等に関する請願藤田スミ紹介)(第一七八三号)  大型間接税導入少額貯蓄非課税制度廃止反対等に関する請願正森成二君紹介)(第一七八四号) 同月二十一日  大型間接税導入反対等に関する請願大野潔紹介)(第一八六七号)  同(経塚幸夫紹介)(第一八六八号)  大型間接税導入反対税制改革等に関する請願沢田広紹介)(第一八六九号)  大型間接税導入反対国民本位税制改革等に関する請願瀨長亀次郎紹介)(第一八七〇号)  大型間接税導入少額貯蓄非課税制度廃止反対等に関する請願経塚幸夫紹介)(第一八七一号)  自動車関係諸税負担軽減等に関する請願伊藤英成紹介)(第一八七二号)  同(河村勝紹介)(第一八七三号)  同(神田厚紹介)(第一八七四号)  同(小渕正義紹介)(第一八七五号)  同(佐々木良作紹介)(第一八七六号)  同(玉置一弥紹介)(第一八七七号)  同(塚田延充紹介)(第一八七八号)  同(中野寛成紹介)(第一八七九号)  同(吉田之久君紹介)(第一八八〇号)  同(米沢隆紹介)(第一八八一号) 同月二十五日  大型間接税導入反対等に関する請願上田卓三紹介)(第一九七二号)  同(浦井洋紹介)(第二一七〇号)  大型間接税導入反対税制改革等に関する請願沢田広紹介)(第一九七三号)  大型間接税導入反対国民本位税制改革等に関する請願外一件(沢田広紹介)(第一九七四号)  大型間接税導入少額貯蓄非課税制度廃止反対等に関する請願沢田広紹介)(第一九七五号)  同(柴田睦夫紹介)(第一九七六号)  同(城地豊司紹介)(第一九七七号)  同(浦井洋紹介)(第二一七一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二一七二号)  自動車関係諸税負担軽減等に関する請願小沢貞孝紹介)(第一九七八号)  同(岡田正勝紹介)(第一九七九号)  同(春日一幸紹介)(第一九八〇号)  同(川端達夫紹介)(第一九八一号)  同(木下敬之助紹介)(第一九八二号)  同(城地豊司紹介)(第一九八三号)  同(塚本三郎紹介)(第一九八四号)  同(中村正男紹介)(第一九八五号)  同(中村正雄紹介)(第一九八六号)  同(林保夫紹介)(第一九八七号)  同(和田一仁紹介)(第一九八八号)  同(安倍基雄紹介)(第二一七三号)  同(北橋健治紹介)(第二一七四号)  同(滝沢幸助紹介)(第二一七五号)  同(西村章三紹介)(第二一七六号)  同(二見伸明紹介)(第二一七七号)  非課税貯蓄制度存続等に関する請願外七件(小沢貞孝紹介)(第二一六七号)  同外七件(岡田正勝紹介)(第二一六八号)  所得税専業主婦特別控除に関する請願正森成二君紹介)(第二一六九号) 十二月九日  共済年金の改善に関する請願井上普方紹介)(第二一九二号)  大型間接税導入反対国民本位税制改革等に関する請願野口幸一紹介)(第二一九三号)  同(大出俊紹介)(第二二二二号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二二四七号)  大型間接税導入反対等に関する請願川俣健二郎紹介)(第二二二一号)  同(川俣健二郎紹介)(第二二四六号)  同(山下八洲夫君紹介)(第二二八二号)  同(緒方克陽紹介)(第二三〇二号)  同(岡田利春紹介)(第二三〇三号)  同(川端達夫紹介)(第二三〇四号)  同(河上民雄紹介)(第二三〇五号)  同(佐藤観樹紹介)(第二三〇六号)  同(野口幸一紹介)(第二三〇七号)  同(前島秀行紹介)(第二三〇八号)  自動車関係諸税負担軽減等に関する請願青山丘紹介)(第二二四八号)  大型間接税導入反対所得税大幅減税等に関する請願井上一成紹介)(第二二九八号)  大型間接税導入反対所得税減税等に関する請願外三件(清水勇紹介)(第二二九九号)  同外二件(中村茂紹介)(第二三〇〇号)  同(野口幸一紹介)(第二三〇一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月二十日  山林に係る相続税軽減措置に関する陳情書(第一五六号)  公共用地取得に係る租税特別措置特別控除額引き上げ等に関する陳情書(第一五七号)  大型間接税導入反対に関する陳情書外一件(第一五八号)  少額貯蓄非課税制度存続に関する陳情書外一件(第一五九号)  公的年金課税強化反対に関する陳情書(第一六〇号) 十二月十二日  大型間接税導入反対に関する陳情書外十二件(第一八八号)  少額貯蓄非課税制度存続に関する陳情書外二十二件(第一八九号)  公的年金課税強化反対に関する陳情書外二件(第一九〇号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国の会計税制及び金融に関する件      ────◇─────
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 この臨時国会での最初大蔵委員会の開会に当たりまして、実は与野党国対委員長政策審議会長等大変努力をされまして、御案内のような減税案について与野党合意をされたようでありますが、どうもその取り扱いにつきまして、合意がされた日から比べて、これが与野党議員立法として処理をされるということでございますのに、大変取り扱いがおくれておるように聞いておるわけでございます。  これは議員のベースの話でございますから、政府にお尋ねをするわけではないのでありますけれども、私はかつて当委員会で、今の委員会のあり方というのとほかに、例えばイギリスのように、対政府議会ということでなくて議会内部においてもう少し与野党意見を交換し議論ができる場がないと、今のような問題というのは実は当委員会では私が一方的に発言をするだけで、まことにむなしい状態になるわけであります。かつて私、重要な税制その他の問題については、公式の委員会はさることながら、与野党議論をする場をつくったらどうだろうかということを当委員会提案をいたしましたら、現在の山中税制調査会長が、受けて立つ、いいぞと、実はこういう不規則発言をしていただいたことがあるのであります。  私は、昭和三十五年に当委員会に参りまして今日まで長く当委員会におりますけれども、常に私ども議会側政府との間に議論、討論が行われるということは、もうこの段階では少し考え直したらいいのではないだろうか。と申しますのは、実はこれまで日本は、先進国に対して追いつくというか、キャッチアップをするということが主要なテーマでございましたから、モデルが常にあったわけでありますけれども、今日私どもが一番前へ出てきますとモデルがございません。そのときに何が一番重要かといいますと、日本の国としての経済なら経済についての戦略がどうしても必要だ、こういうふうに私は考えるわけであります。  率直に言って、非常に優秀な大蔵省事務当局皆さんでありますが、残念ながら任期は限られているわけでございます。今ここにいらっしゃる中で一番古い入省窪田さんでございましょうね。窪田さんが御入省になったのが昭和二十九年でございますか、私は昭和三十五年から当委員会におるわけでありまして、三十五年ごろには窪田さんはどのぐらいのお仕事をしていらっしゃったのでございましょうか。
  4. 窪田弘

    窪田政府委員 官房調査企画課の係長をしておりました。
  5. 堀昌雄

    堀委員 要するに、長い間にわたって大蔵省の中でいろいろなお仕事をやってきておられるのでありますけれども一つの問題を長くやるというふうには大蔵省の仕組みは、各省皆そうでありますけれども、なっていないのであります。私は、財政経済金融、それらの問題を、そればっかり昭和三十五年から今日までやらしていただいてきたわけであります。  きょう、皆さんのお手元に私の二十五年の本をお配りさしていただきましたが、これは私の二十五年間の当委員会でいろいろやってまいりました集積でございます。これをまた皆さんもごらんをいただきたいのでありますけれども、どうしても私が今気になりますのは、大蔵省の場合には政策立案をなさる立場という者は、最終的には局長がなさるのだろう。もちろん、その局のいろいろな意見を聞いておやりになるのでありましょうが、ちょっと課長政策立案をしたのがそのままこうなるというのではなくて、やはりそういう局議といいますか、いろいろな過程を通じてやられることになるのではないか。必要なのは、そういうための時間的な幅がなさ過ぎる。私どもは長い間こういうふうにやっておりますから、歴史的な過程を踏まえ、将来的な展望を踏まえて長期に物を見るという、要するに非常に有利な立場に立っているわけであります。  同時にまた、大蔵省では、税の専門家の方はどちらかというと税をしっかりやっていらっしゃる、もちろん主計の方とかいろいろありますが。ところが、やはりどうしても一生懸命その仕事をやっていらっしゃる方は、大蔵省の全部のパートについて目を配るというのはこれはなかなか困難ではないか。幸いにして、私は長年やらしていただいておりますから、全部のパートについてそれなりに実は勉強さしていただいた、こういうことでございますので、まず長期展望に立って戦略が立てられる、各局を越えて一つ財政なら財政金融なら金融について物を考えることができる、国際的にも広い視野で物を考えることができる、こうなりますと、これからの日本経済政策の問題というのは、ひとつしっかり議員皆さんにお勉強をいただいて、要するに議員行政当局を引っ張っていけるような戦略展望——もちろん、私どもは十分な情報がありませんから、それはもう事務当局から情報の提供を受けながら、お互いにひとつ、与党野党という問題ではなくて、国会として日本経済的な戦略及びその展望考えていく必要がある時期に来ているのではないだろうか。  そうなりますと、今のこういう形式だけで、何か政府の揚げ足を取ったり政府を追及したりすることが、果たして本当に日本経済なり日本国民のためになるのかというと、私は必ずしもそうではないと思う。私ども、今自民党税制調査会でいろいろやっていらっしゃることを新聞で拝見しております。一遍ぐらい私どもの税の関係者自民党の税の関係者が、別にオフィシャルな必要はないわけでありますから、こういう一つの問題について議論が交わせたら、それは日本国民のためになることではないだろうか。結局、今の自民党でいろいろなすったことが法律案としてここへやってきて、それが政府提案となってくる。それに対して私どもはおかしいではないかと言っても、これはやはり三百議席あるものと数の少ない方とでは、議会制民主主義の中ではかみ合わないのでありまして、やはりそういうものが出てくる前に野党与党議論を尽くすという場がある方が、これからの日本経済政策の運営のために、あるいはそういう戦略を立てる意味でも大変重要ではないか、私はこう思うのであります。  私は宮澤大蔵大臣とは、昭和三十四年私が文教委員をいたしておりましたときに、宮澤さんは参議院議員として文部政務次官として、私は委員会最初にお会いをいたしました。私も、当時四十二歳ぐらいで若うございましたが、宮澤さんは恐らく四十歳ぐらいでいらしたと思うのでありますが、大変すばらしい政務次官にお会いをして、私は非常にクリアな御答弁大変感服をいたしたのでありますが、それ以来今日までの長い間、あるいは経済企画庁長官として、あるいは通産大臣として、いろいろな立場宮澤大蔵大臣論議をさせていただいてきておるのであります。  私は、いろいろな点で実は大体宮澤さんのお考えと、偶然というか何というかわかりませんが、非常に共通な物の考え方に立っておるわけでございまして、きょうも後でそのことについて触れさせていただくのでありますが、ひとつ今の日本が置かれておる状況、特に国際的に今、日本は非常に大きな責務を果たさなければならない立場に立っておるという、この新しい状況の中における宮澤大蔵大臣としての、ちょっといろいろ多くを申し上げましたが、経済政策に対する戦略の問題、国際的な問題、あるいは事務当局政治家との関係、それらの問題についての御所感をひとつ宮澤大蔵大臣から承りたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 堀委員が二十五年余りの年月の間、本委員会を通じまして大変な御尽瘁をなさっておられますことに、まず心からの敬意をささげたいと存じます。今後とも、私どもに対しましていろいろ御教示を賜りますようにお願いを申し上げます。  今日の我が国国際の場におきまして置かれております立場、その中において我が国経済政策がどのようにあるべきかということについて考えを述べよということでございますが、申し上げるまでもなく世界第二の経済大国に、それも非常に短時日の間になりました。そのために国民意識が、必ずしも外から我が国に期待されておるような役割に十分目覚めていない嫌いがあろうと存じます。第二の世界経済大国としては、いわゆる自由化をさらに進めることによりまして、世界経済発展世界の平和のためにより大きなことをいたさなければならないということは明らかなところでございますが、余りに発展が急でございましたので、なかなか国民意識がそれについてまいらないという意識の問題が一つございます。  それから、それと別に、たまたまそのときに当たりまして、我が国財政が極めて困難な状況に陥っているという、そういう問題がございます。殊にこのことは、昨年九月のいわゆるプラザ合意以降、急速に円高が進みましたために、我が国経済全体がこれに十分に即応できない状況に今日なおございます。財政もまたそれを反映いたしまして、かねて赤字財政に苦しんでおりましたところへ、さらに税収の減があるといったような今日の状況でございます。  なお、我が国自身の問題といたしまして、急速に国際競争力をつけてまいりましたけれども、戦後のいわゆる輸出優先という考え方からなかなか急激には転換ができませんで、その間に、どちらかと申しますと国内のいわゆる社会資本といったようなものが十分に充実されないまま今日に至っておって、外国からも時としていわゆるウサギ小屋といったようなことも言われる。そういったような内外ともに非常に難しい問題を抱えながら財政が必ずしも豊かでない、このような認識を持っております。
  7. 堀昌雄

    堀委員 いろいろな条件がございますから、なかなかそのどちらかに割り切って問題を処理するわけにはまいりませんのですが、ちょっとここで、この前も、その本の中にも入っているのでありますけれども、竹下さんが大蔵大臣最初になりましたときに、私はこういうことを公式にこの委員会で申し上げたのであります。歴代大蔵大臣、多くの方に論議をさせていただいてきたのでありますけれども、多くの大蔵大臣皆さんは、大体事務当局が書かれたペーパーを土台とした答弁をされておりました。ただ一人だけ違ったのは、田中角榮大蔵大臣でございました。田中角榮大蔵大臣のときに、実は私はいろいろな問題を提起をさせ、それが政治家田中角榮さんの物の考え方と合ったときには、彼はその場で直ちにそれに対する明快な回答をしていただいたわけであります。  きょうお配りをした中にも、証券取引法の改正の問題等について、関西電力の前副社長、現在顧問をしております加治木さんが当時証券部長をしておられたのでありますけれども、私が証券の免許制についての証取法の改正の提案をいたしましたのについて、実は加治木さんが横から、大臣、慎重にお願いします、こういうあれをやっておられましたけれども、堀さん御案内のように、事務当局は大変消極的です、一年や二年で免許制をやるなどという答弁をされたら困りますよとさっきまで言われていたが、しかし、私は政治家として、現在内閣委員会に証券局設置をお願いしておりますので、これを通していただいたら直ちに最初仕事として証券取引法の改正に取り組みます、実はこういう御答弁をいただいているわけです。  ここで、実は日本の戦後における証券取引法の改正がスタートしたのですが、私は国会の側ですから事情はよくわかりませんでした。この本に座談会として、当時の衝にあられた松井さん、加治木さん、安川さん、水野さんの四人と座談会をいたしまして、その中で大変な事務当局の苦悩の姿を実はお話をいただいたわけであります。とてもこのたくさんの証券を免許制にして大蔵省で監督ができるのか、こういうことについて証券局内部の皆さん、いろいろと御論議をなすったようでありますが、だんだんと証券情勢が変わってきまして、例の山一問題に差しかかる時期になって、局内一致して証取法の改正をやろうということに変わったという経緯を実はこの本の中で関係者皆さんがお話をいただいているわけであります。  しかし、何にしても私は、ここで事務当局の書きましたペーパーを読んでいただく大蔵大臣でございましたら、大蔵大臣に御出席をいただく必要はないのでありまして、関係当局の局長答弁をしてくれればそれで用は足りるわけであります。やはり、政治家政治家としての経綸と判断がなければなりません。さっき申し上げましたような長期展望に立って、広い視野の上で、そうして政治的判断をしていただくために、私はこの大蔵委員会では、法案審議については大臣の出席がなければ法案審議をやらないと、もうずっと若いころから理事として頑張って、それが実は今日当委員会のルールになってきているのは、政治家としての大蔵大臣答弁を求めるということに私は非常な比重をかけて今日参っているわけであります。  そこで、これから本論に入るのでありますが、宮澤大臣が総務会長でいらしたころの御論議をちょっと振り返ってみたわけでございます。そうしますと、これがまた、最初に申し上げましたけれども宮澤さんと私の考えの一致しているところが実にたくさんございます。古いところで、六十一年三月二十四日の「当面の政策について」ということで、「予算成立後サミットまでの間に、左の諸点についてご検討願いたく提言致します。」こう書いていらしていろいろ書いてございますが、この中の二番目に、「今日のような低金利の時代には既発国債をもっと低利なものに借換えれば大きな国益になるはずであるが、このような発想が浮かばないのは、現在の財政制度が大福帖式で、金利の観念がないからである(関係法令はほとんど終戦直後のもの)。将来制度を改め国債の発行や管理を景気動向、金利、税収などを勘案して経済法則に則って弾力的に行なうこととすれば金利支払などかなりの節約が可能になる。」 こういうふうに実はお述べになっていらっしゃる。  私、実は五十六年の二月に、渡辺美智雄大蔵大臣のときにこの問題を取り上げまして、国債特別会計をつくって国債のファイナンスは完全に自由にしようではないかという問題を提起をさせていただきました。そして、大蔵省皆さんにいろいろ御協力をいただいたんですが、やはり財政法という重い法律があるものですから、なかなか時間がかかりました。しかし、今の銀行局長の平澤さんが主計局の筆頭次長のときに、現在の短期国債が発行できるという新しい法律案昭和六十年の法律改正で提案をしていただいた、こういうことになっているわけであります。ですから、時間のあれはちょっと私の方が早いのでありますけれども、問題をごらんになる角度は私と宮澤大蔵大臣、非常に共通性がある。これがまず一点目でございます。  二点目は、六十一年の六月十四日の朝日新聞が、「自民ニューリーダ3氏に聞く」というのを出しているのでありますけれども、その中で宮澤さんはこういうふうに言っていらっしゃるのです。   現在は明らかに景気下降局面に入っている。下半期の実質経済成長はゼロかマイナス、年間通して二・五%成長というところだろうか。まずやるべきことは、公共事業の前倒しをやったあとの対策で、公共事業の追加を中心とした補正予算だ。規模は三兆円がらみと考えている。国債を全額借り換え債を発行して償還すれば、今年度一兆七千億円、来年度なら二兆一千億円の余裕財源が生まれる。あとは税収をにらみながら国債増発などを考えればいい。   国債の増発は問題だという議論があるが、六十年度だって昨年末に赤字国債で四千五十億円、建設国債三千五百三十億円を追加発行しているではないか。 こんなふうに実はお答えになっておりました。  さらに今度は減税の問題について、   私は、税制改革のやり方としては所得税、法人税の減税を先行させ、その後三年間ぐらいかけて歳入を中立に戻せばいいと思う。減税と増税の実施時期をずらせば歳入欠陥が発生することが考えられるが、そうした場合は、先ほど述べた国債を全額借り換え債にすることによって浮くカネを減税の財源にしてもいい。   大型間接税の問題は、今後、増大する社会保障費の財源対策と関連づけでもしない限り、手を触れられまい。 こんなふうにお答えになっているわけでございます。  実は今のこの問題について、昭和六十一年十一月二十日、「減税、増税を一定期間を限って同額とし、併せて現在の財政上の矛盾と誤りを是正する提案」というのを皆さんのお手元にお配りをいたしております。これもペーパーになっておりますが、記録にとどめたいので、ちょっと読み上げます。  一、円高不況の進行とともに、製造業特に輸出産業は極めてきびしい状況に追い込まれ、雇用問題にまで及んでいる。政府の六十一年度経済見通しは大方の予想では二%台となる可能性が高いとされている。このような現状から内需拡大が強く望まれている。それ故六十二年度経済を三%台に乗せることは、国内的にも国際的にも極めて重要な課題なのである。   しかし現状では財政当局に、そのような危機的認識があるようには見受けられない。   私は本年四月三日ワシントンでベーカー財務長官と会談したが、その最初の言葉は「堀さん、日本は内需拡大のために所得税減税を行なうことは出来ないのですか。レーガン大統領は就任後直ちに所得税減税(最高税率七〇%から五〇%へ、ブラケットを十五から十四へ)を行ない、その結果アメリカ経済は今日まで順調に成長が続いています。」であった。   私は「既に六十年二月の予算委員会で中曽根首相、竹下大蔵大臣に最高税率現在七〇%を五〇%に、ブラケット十五を五に減らすよう公式に提案していますが、今日迄所得税減税は行なわれていません。」 と答えた。米国のみならず、EC諸国も、対日貿易のインバランス是正のために速やかに所得減税を行ない、内需拡大を通じて輸入を増加させて欲しいという点では完全に一致している。本年は特にECとの間のインバランスが急増し、そのためECの対日要求はこれまでになくきびしいものとなっている。   しかし中曽根内閣が六十二年度から行おうとしている増減税は、国際的にも国内的にも内需拡大を求める方向とは全く逆の方向に進みつつあるのである。   この誤った経済運営を正すために以下、税の問題と財政の問題の両面から私見を述べ、日本経済の活性化のための提言としたいと考えている。  二、増減税の実施時期の問題   政府税調の答申によると、減税額と増税額は同年度同額としている。   何故このような実行困難、政策不在の決定が答申されたのであろうか。まさに官僚的発想の極みであると思う。民主主義の政治は多数派の意志決定によって行なわれる。自民党が圧倒的多数を占めている現状で、安易に減税先行となれば、必ず増税が時期的にも額的にも不十分となり、現在の赤字財政にしわがよることは必至であるとの心配が事務当局の頭の中に大きく広がっていることは理解出来る。しかし一体初年度である六十二年度に、減税は直ちに四月から実施し得るが、増税は税調答申の三案いずれを選んでも、早くて税収増となるのは六十三年一〜三月期で、その額は新税であるので予定額年度間増収見積りで五分の一程度ではなかろうか。税調案は新型間接税を平年度四兆円の税収と報告している。私の推定では六十二年度中の税収は六千億円〜八千億円となる。仮に七千億円の税収があると仮定し、併せて非課税貯蓄の廃止を前提として一兆円の増収が見込まれているが、たとえどのような税制が選択されても六十二年度の税収としては計上出来ないのではないか。   そうなると六十二年度減税は七千億円の枠内となり、これでは内需拡大の手段とはなり難い。税調は所得税二兆円、地方税七千億円の減税を行ないたいと提案している。国民は二兆七千億円の減税が六十二年度から実施されるものと大きな期待を寄せている。  米国やECの日本の内需拡大への希望に応え、円高不況の国内経済を成長へと転換させるために、六十二年度四月から二兆七千億円を減税することを提案する。しかし六十二年度の増税分は七千億円。二兆円の財政ギャップが生ずる。もしこの財政ギャップが適切に解決されればこの提案は極めて現実的な提案として受け入れられるものと確信する。私も増税額と減税額が一定期間三年ないし四年で同額として調整されることは必要だと考えている。しかし単年度毎に同額である必要はないし、この法案等を所管する衆議院大蔵常任委員として、一定期間の同額調整には与野党一致して合意できるものと思っている。   現在衆議院大蔵委員会には山中貞則自民党税調会長と私が社会党税調会長で共に大蔵委員であることを付け加えておきたい。  三、財政法と現在の財政状況の矛盾とかい離について   現在の財政法は昭和二十二年三月三十一日法律三十四号として法定されている。   戦時中の日本銀行引き受けで発行された大量の国債が戦後のインフレーションを引き起こし、国民生活を困窮に追い込んでいる最中に作られた財政法が均衡財政主義の下に作られたのは、当然のことである。法第四条が「国の歳出は公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」 としているのは、この部分が財政法の義務規定であることを明示している点で極めて重要な規定で、ここに完全均衡財政を規定しているのである。「但し……出来る。」とあるのは例外を規定したものであることを明確に認識して始めて財政法の正しい理解とすべきである。現在四条国債は当然発行出来るものとの誤った認識があるように思われるが、このように見て来ると四条債が特例債であると考えるのが相当である。となると現在の特例債は特、特例債となり、財政法の起案者は六十一年度に国債残高が百四十三兆にも達するなどとは夢想もしていなかった筈である。   五十一年度から特例債が発行され、六十一年度は建設、特例国債合計十兆九千四百六十億円を予定している。   私は五十八年の第三十七回総選挙に当たって社会党の国債政策を転換するよう提案し、党の政策となった。国債に四条債と特例債を区別し、四条債は善で、特例債は悪であるという認識は前記の財政法の誤った認識によるもので、国債は両者の区別なく悪なのである。四条債は公共事業の裏付けがあるから善と考えるのは誤りで、この法律の起案者が将来の但し書き部分の濫用を恐れて歯止め策として公共事業、出資金を裏付けとし、併せて国会の議決を求めていると解すべきで、特例債は悪であるとの認識も以上の論理を広く解すれば、特例債の発行はそれだけ財政上有効需要の拡大の役割りを無視し得ないのではないか。   いずれにしても国債の発行は望ましくないので、特例債のみを六十五年迄にゼロにするという政府財政再建策は実行不可能でもあり余り意味はなく、国債全体の減額を一定期間を設けて確実に行なうことを社会党は提案しているのである。  これは私どもが一九八三年十一月二十五日に出しましたもので、ここのところをちょっと申し上げておきますと  われわれの方針   社会党は財政再建を広義にとらえることが国民のための財政改革につながると考えます。   この立場に立って、財政再建に対して、つぎのような段階的な目標を掲げ、財政体質の改善をはかることとします。   第一段階としては、一般会計における建設国債と特例国債の依存率を両者の合計で二〇%以下にします(五年間で達成)。   第二段階としては、その依存率を一〇%以下にします(五年間で達成)。   第三段階としては、それ以後できるだけすみやかに特例国債の発行をとりやめます(遅くとも五年間)。   国債依存の計画的低下を進めますが、建設国債と特例国債との比率は各年度の予算編成で決めていくことになります。その際、福祉・教育費充実のために一定程度の特例国債の発行は必要となり、逆に建設国債の発行は抑制されることになります。社会資本整備のための財源確保は国の建設国債に依存するだけでなく、十分な地方税源の保障をはかったうえで、地方債の積極的活用による地方中心の公共事業の拡大をはかります。   内需主導型経済への転換 というようなことで、私どもはそういうような転換を既に一九八三年十一月にしておるということでございます。   今回の補正予算の発表に際して、この補正は剰余金と四条債の発行により行なわれたと、さも赤字債と無縁のような発表があったが、この事は事実に反している。一体赤字国債の大量発行の下で何故予算執行上剰余金が生じるのだろうか。五十三年度に財政収入を二兆円余り年度内に歳入として使いたいために、それまで翌年度の歳入として扱われていた三月期の法人決算税収を前倒しにして、例えば六十一年三月決算税収を六十年度にとり入れることになったのである。そうすると二つの問題が生じてきた。一つは六十年度の予算編成は五十九年十二月に行なわれる。五十九年十二月時点で二年先の六十一年三月の法人決算による税収を予測することは極めて困難なことで、不安定な歳入見通しをもたらしている。次に予算の出納閉鎖が五月三十一日に行なわれるが、この時点ではその三月に行なわれた法人決算の税収の判断は進行中のため相当困難なものを含んでいる。過去の剰余金は五十七年度千四百七十二億円、五十八年度二千五百六億円、五十九年度千七百五十五億円、六十年度四千四百億円となっている。五月三十一日の出納閉鎖の時期にその年度の最後の税収が判断出来ない現在の制度は改められるべきで、本来ならこの剰余金に相当する赤字国債を減額して剰余金をゼロとするのが財政再建下の剰余金対応でなければならない。以上で明らかなように六十年度の剰余金四千四百億円は赤字国債の発行によって生じた剰余金なのである。もしこの三月期決算税収を以前のように戻すためには現在では四兆円の財源を必要とする。この問題はここまでに止めて本論に戻ることとする。   現在この均衡財政主義の財政法の下で、五十三年以来十兆円を越える国債が九年連続して発行されている。このことは現状が財政法と完全にかい離していることを証明している。私も将来は均衡財政主義に戻るべきだと思うが、現在は現状に適応した対応を行なうべきだと考えている。   昭和五十六年二月渡辺大蔵大臣との一般質問で私は二つの財政に関する問題を提起した。 一つは大量に発行されている十年債の借換の時期が迫ってきているので、数兆円に達する国債の借換をスムーズに行うためには、事前に短期国債を同額発行して対応する以外に方法がないという問題。 二つは現在の財政法は例外として四条債を認めている程度で、今日の大量発行を予想していなかったので、その返還計画を提出させ、予算総則に四条第一項但書きの規定による公債又は借入金の限度額、第四条第三項の規定による公共事業費の範囲等の規定を設けることを求めている。現在の予算の添附資料においてそれ故二年債、三年債、四年債、五年債、十年債等年間発行額を発行種類別に記載し、国会に提出しなければならないこととなっている。(但し、国会に報告することにより変更は可能。)一方国債金利は市中の資金需要の状態で相当な高低が今日まで生じている。高い時は八%台、低い時は五%台(長短債によっても当然異なっている。)と変動している。しかし現在の財政法の下は、金利の高い時は短期債の発行をし、金利が低くなった時に長期債に乗換える等の今日の流行語ともなっている財テクの手段を採ることには、ある程度の制約があることも事実である。もし金利が一%低く国債の発行が可能なら、百四十兆の残高で一%分の金利が仮に節約出来れば一般会計の国債費の負担は一兆四千億円減額されることになる。民間は財テクを最大限に利用し合理的なファイナンスが行えるのに、国の一般会計昭和二十二年制定の財政法の下でがんじがらめの国債発行を強いられていることは、財政を担当する大蔵委員としては何とも我慢のならないことである。そこで国債資金特別会計を国債整理基金特別会計にかえて創設し、国債の発行、借換、償還等の国債に関する事務のすべてを所管させ、併せて短期金融市場を作るために自由に短期国債の発行を行い、すべてのファイナンスを自由化する、デレギュレーションを提案した。財政当局もその方向に検討を進めてはきたが、漸く六十年通常国会にその一部である借換へのための短期国債の発行、及び借換債の年度越え前倒し発行を決定したに止まっている。   本年四月米国財務省でマルフォード次官補にあった時に彼は、「堀さん、今回二月、三月と五千億円ずつ発行された短期国債に源泉徴収税が課税されるのは理解出来ない。米国も西独もこのようなことは行っていない。速やかに源泉課税を撤廃して貰いたい。」との要求であった。私は、「この短期国債は、私の提案によって発行されることになったもので、日本銀行にブックエントリーしている企業に源泉徴収を行う必要はないと私も考えている。主権免税の中央銀行にまで課税しようとしているのは全く不当なことなので、私もこの源泉課税には反対である。」と答え、その線にそって主税局に問題を提起している。今日、主税局も先ず中央銀行の課税は取り止める方向で作業に入っている。日本金融自由化を進めているが、この短期国債と日銀が市中に売却する政府短期証券により短期の国債市場が整備されつつあり、更にCD市場、現先市場等を含めた短期金融市場があるとはいうものの、米国のTB(財務省証券)市場に匹敵する短期金融市場の規模には達していない。日本銀行は現在発行されている大蔵省証券、外為証券、食糧証券等を軸に短期金融市場の創設を希望しており、日銀による政府短期証券の市中売却は相当の残高に達しているが、日銀の市中売却は、金融調節の手段として行われること等の制約がある。そこで私は、国債資金特別会計で短期国債を発行し、利子払いの節約のためにも、機動的なファイナンスの手段としても、更には短期金融市場の主要商品としても、この短期国債の発行が緊急を要すると考えているが、財政法の改正を必要とするので未だ実現していないのである。   私は、既に六十二年度当初より二兆七千億円の国と地方における所得減税を提案している。その際の二兆円の税収のギャップをこの短期国債の発行でつなぎ、三年ないし四年の間に増税を完全に実施し、税収ギャップが縮小するにつれて短期国債を返還すれば、まさにこの間のファイナンスの問題として処理され、現在の公定歩合三%の金融情勢では、利子負担も最小で済むことになるのである。米国が求めている日本の短期金融市場の創設にも役立ち、大蔵省もその方向を指向して現在の短期国債(不完全商品ではあるが)の呼称を最近TBと呼ぶことにしているのである。   来る通常国会財政法の一部改正と国債資金特別会計法を提案し、増減税法案と共に国会で議決されれば、国際的にも、国内経済の拡大のためにも、極めて有効な政策手段となると私は確信している。   五十六年に提案して、まもなく六年が経過しようとしている。私のこの提案は、速やかに国民の減税の要望に応え、雇用問題を伴ってきた円高不況対策にも有効である点から野党も賛成されることと思っている。   政治には勇気と決断が必要である。高度の政治的決断を中曽根内閣に求めたいと考えている。  これは既に記者会見に使った資料でありますが、ここで私が述べておることと宮澤さんが総務会長のときにお述べになっていることとはベースとしてはほとんど共通しているのじゃないか、こんなふうに思うのでありますが、宮澤大臣の御答弁をいただきたい。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 堀委員のこの十一月二十日の御所見というのは、私も既に拝見いたしておりまして、一つの御卓見であるというふうに存じております。そこで、私がことしの三月ごろに述べましたことと思想的に共通しておるところがあると仰せられましたが、まさにかなりの部分、私も基本的に理解できる部分、要素が相当にございます。  ただ、現実に大蔵大臣立場として申し上げなければならないことは、現に一般会計の二割以上を国債費が占めておりまして、しかもこれは逐年一〇%ぐらいずつふえております。これは、発行高がふえますのでやむを得ないことでございますが、そのために一般会計の弾力性というものが極端に小さくなっておって、このように現に経済が非常に沈滞いたしましたときにも、財政が果たし得る役割というものは極めて限られておるような状況になっております。将来、我が国が高齢化社会になることを考えますと、何とかしてこの財政の弾力性を回復しておきたい、こういうふうに考えますことも御理解のいただけるところだろうと思うのであります。  例えば、この御提言の中で、減税をまず先にやって、二年でございましょうか、三年でございましょうか、その何年間かのギャップは短期国債でつないでおけばいいだろうとおっしゃいますのは、財政家としての一つの識見だと思いますけれども、それは金繰りと申すよりはその間国債を出すということでございますから、その利払いは当然のことながらいたさなければならないといったような問題に逢着いたします。したがって、ただいまのような財政状況では、何とか増減税とんとんということでいかざるを得ないのではないか。結局、この問題は一つのところへ戻りますので、今のような経済財政状況の中で、多少の国債はふやしても減税あるいは事業を行うべきか、あるいは、やはりそこは一般歳出ゼロという、いわゆる今のシーリングと申しますか、そういう基準のもとで財政を行わなければならないかという、二律背反いたします二つの要素をどの程度に調和していくかという判断の分かれ目ではないかと私は考えております。
  9. 堀昌雄

    堀委員 実は日本経済新聞が、十二月十日の朝刊でこのように伝えているのであります。「日本税制改革に失望 NYタイムズ社説」   【ニューヨーク九日共同】九日付の米紙ニューヨーク・タイムズは社説で、日本税制改革が日米貿易摩擦解消に全く役立たないことに強い失望を表明、「中曽根首相が減税を避ける決定をするようではもはや(貿易不均衡は)どうにもならない」と酷評した。「日本税制を改革するが貿易問題を改革しない」と題する同紙社説は、自民党税制調査会が決めた税制改革案について、税制改革であっても減税でないため、消費者の購買力を増加することにならないと指摘、日本の内需拡大にも、輸出依存体質の改善にもつながらないだろう、と述べた。   そしてこうした税制改革案が浮上した背景には「中曽根首相が、日米貿易不均衡で非難されるべきは米国政府財政赤字減らしに失敗したことである、と信じ込んでいることを反映している」と決めつけた。   さらに社説は「もし米国があすにもベルトをきつくすれば、日本経済はひどい景気後退に見舞われるだろう」と警告、「両国はますます貧しく、しかも怒りっぽくなっていくだろう」と極めて悲観的な見方を示した。  私がベーカー財務長官に会ったときのベーカーさんの最初の言葉、そしてその後にアメリカのいろいろな関係者にお会いしていることを通じて、日本は本当に真剣に内需拡大をやる気があるのでしょうかということを聞かれるわけです。外国の皆さんは、日本人は言葉ではいろいろ言うけれども行動が伴っていない、これが私がこの人たちからしょっちゅう受ける言葉なのであります。  そうすると、今のこの情勢の中で、二兆七千億の減税を四月から実施するということは、まさに行動で、真剣に内需の拡大をやっている。確かに財政の問題は重要でございます。財政は重要ですけれども、単年度の財政のことだけを考えて、長期戦略的な対応が怠られているというのが今日の日本財政ではないのか。最初に私が申し上げました問題点というのは、政治不在の経済運営が行われているということに対する強い不満を私は持っているわけでございます。ですから、この私の提案の——理財局長にお答えいただきたいのですが、今、短期国債は大体どのくらいの金利で発行されているのでしょう。これは借換債の方でも何でもいいわけでありますが、六カ月の短期国債……。
  10. 窪田弘

    窪田政府委員 短期国債、最近は九月に発行いたしましたが、そのときの応募者利回り平均は四・六二七%ということになっております。
  11. 堀昌雄

    堀委員 一番短いのは今二年債ですか、それはどのくらいでしょうか。
  12. 窪田弘

    窪田政府委員 二年債、十一月に発行いたしましたものが四・六〇〇でございます。
  13. 堀昌雄

    堀委員 公定歩合が下がったときとその前との違いがあると思うのでありますけれども、どっちにいたしましても四・五、六%台というところで出ているわけでありますね。  ここで二兆七千億減税をして、二兆円の短期国債を発行しても、そこでギャップ二兆円と見たときにおける昭和六十二年度のGNPに対する寄与率は大体〇・四%上がるというのが、日本の信頼できる研究所での試算の結果なのであります。  総務審議官、その点で、皆さんの方もいろいろ御検討いただいているのでしょうが、どういうふうな感じでございますか。
  14. 足立和基

    ○足立政府委員 二兆円の財源をもちましてどういう事業をやるかということでございますが……
  15. 堀昌雄

    堀委員 いや、減税の話、公共事業です。
  16. 足立和基

    ○足立政府委員 減税でございますか、私ども一定の前提を置きまして、一兆円で減税を行う場合あるいは公共事業を行う場合、これも公債を財源として行う、いろいろな経済状況によりまして一義的になかなか申し上げることが難しいわけでございますが、現在企画庁で出しておりますシミュレーションによりますと、減税の効果といたしましては〇・四七ぐらいの効果がある、これに対しまして、公共事業につきましては一・四七ぐらいの乗数効果がある、このような試算がございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 まず、公共事業ということになりますと、これは四条債ですから、どうしても長期の国債の発行で賄うことになります。しかし、今の私の提案のような減税の問題というのは、宮澤さんもちょっとお話しになっていますけれども、「税制改革のやり方としては所得税、法人税の減税を先行させ、その後三年ぐらいかけて歳入を中立に戻せばいいと思う。」こうおっしゃっているので、そこは基本的にやはり減税の効果というものは増減税同額というのじゃ、これは減税をした経済効果がなくなってしまうということでして、この点にニューヨーク・タイムズがかみついているのだと私は思うのであります。  ですから、私はさっきからいろいろ申し上げておるように、自由民主党も大体その方向が強いのじゃないですか、減税先行の方が。通産省もどうも、田村元さんは通産大臣として減税先行を言っておられるようだし——ああそうですか、それは結構ですが。ですから、私は国内的に見ても、今の不況の状態というのは決して楽になるのではなくて、さらに深刻度を増してくるのじゃないかというかうに思いますし、雇用の問題に発展をしておるわけでありますから、何としてもこの際減税を先行してやっていただくことが、たとえそこで金利負担が起きましても、この三年間のトータルとして見るときには、来年加速をして、吹かしてスタートしていきましたら、その次の年にニュートラルで、三年目には増税が多くなりましても、その惰力というものと世界経済関係から見て、ここでその選択をした方が国際的にも国内的にも望ましい対応ではないだろうか、こう私は考えておるわけであります。  この問題はここまでにいたしまして、次に、これは地域によって大変いろいろ皆さんのお考えが異なると思いますけれども、どうにも私が納得できないのが今の整備新幹線の問題でございます。自民党皆さん、この前私大蔵委員会で一回やりましたが、大分たくさん御意見が出ておりました。私はそのことは十分承知をいたしておりますけれども、やはりこの際、大変重要なことでございますので、少しこの整備新幹線問題について触れさせていただきます。  私は、実はこの間国鉄の特別委員会に参りまして、四十分ばかり議論をさせていただきました。宮澤大蔵大臣も御出席をいただいて、私の論議を聞いていただいたわけでありますけれども、簡単に御紹介しますと、「最初に、昭和四十二年四月十九日、今から約二十年前でございますけれども、ここで実は私は、水田大蔵大臣と当時の磯崎副総裁に来ていただきまして、ちょっと論議をしております。ポイントだけをちょっと申し上げます。」ということで、要するに直接経費が賄えない路線というものがどういう形であるのかという質問に対して、「四十年になりますと、これは何と百九十九線——全部で二百四十二線の大体八二%の百九十九線というのが直接費をまかなえない線、こうなっているわけです。赤字金額が九百二十八億円。企業というのは、いま大臣がお答えになったように、何にしても直接費をまかなえるところまででないと企業としてはおかしいわけです。しかし、その直接費もまかなえない線が八二%の百九十九線もあって、」「国鉄は依然としてそれを続けていかなければならぬというのは、なぜでしょうか。」こういうふうに問題を提起いたしまして、私は二十年前に、このままでいけば国鉄はもうどうにもならなくなりますよということを申し上げたのですが、政府も国鉄も何らの対策を講じないで、結果的には今日民営ということになりました。これもやむを得ない選択でありますが。  そこで、実は昨日の朝日新聞の社説を見ておりますと、「促進派の論理は通らない」という形で、朝日新聞が社説を述べているのであります。先ほどから大蔵大臣が今の財政の極めて困難な状況に触れられ、要するに国債費が予算の二割を超えてますますふえるというときに、どうやら今のこの整備新幹線の財源問題というのは、やはり国に負担を求めるということに結果としてならざるを得ないのではないかということを、実は大変心配しているわけであります。  そこで、   国鉄が黒字で、国の財政にもゆとりがあれば、東北新幹線の延長(盛岡—青森)や北陸(高崎—大阪)など、いわゆる整備新幹線五線のかなりの部分がいまごろはできていただろう。ところがそうはいかなくなって、臨調答申を受けた五十七年九月の閣議が「計画は当分見合せる」との凍結決定を出した。その後も建設を求める声が続き、昨年夏から財源問題等検討委が財源をどうするか、投資しても採算はとれるのか、などを研究している、というのがこれまでの経緯だ。   政府の試算によれば、整備新幹線五線の建設費は五十九年度価格で五兆三千二百億円。六十二年度着工、六十八年度完成と仮定して開業時価格は利子を含めて七兆五千億円。一日一キロ当たり往復の旅客は、七十年度の予測で、現在の東海道新幹線の十五万人、東北の四万二千人、上越の二万九千人を下回る「一万一千人から二万五千人」という数字である。そして収支は、建設費の一〇%を借入金、残りを公共事業費とし、減価償却費を計上した場合は、北陸を除いてすべてが赤字になる、としている。着工をいう以上、その厳しさをまず認めねばならない。建設費は、実際には、もっと高くつくだろう。   自民党の促進派は「それなら、全額公共事業方式で建設すればよい」という考え方だ。そうすれば、整備新幹線の運営を受けつぐことになる新旅客会社の経営に悪影響を及ぼすこともあるまい、との論法である。   しかし、これとても大きな問題を含んでいる。第一に、建設するかどうかは、国鉄法案が通ったいまとなっては、運営主体となる新会社の意向をただした上で決定するのがすじだし、第二に、より重大なことは、公共事業方式でやれば新会社の負担は軽くなっても、ツケは財政負担として国民に回ってくることだ。これではいったい国鉄改革は何だったのかわからなくなってしまう。   やみくもに、いま着工に踏み切ることには賛成できない。 こういうふうに社説が述べているわけであります。  そこで、この中でこういうふうに書かれておりますね。「建設費は、実際には、もっと高くつくだろう。」朝日新聞はこう指摘しているのですね。五兆三千二百億円というのが五十九年度価格で、六十八年度完成で利子を含めて七兆五千億円。一日一キロ当たり往復旅客は一万一千人から二万五千人という数字であるというふうに出ておりますが、ちょっと角谷主計局次長の方から、過去の例から見てこの五兆三千二百億円というのは、朝日新聞は「建設費は、実際には、もっと高くつくだろう。」私もそう思うのでありますけれども大蔵省としては一体どういう試算をしておりますか。
  18. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 これからの整備五線について一体幾らぐらいかかるかというのはこれからの問題でございますので、過去の例で申し上げたいと思います。  東北新幹線、東京—盛岡間でございますが、当初計画では八千八百億円でございましたが、実績では二兆八千十億円でございます。したがいまして、約三倍弱の伸びでございます。それから上越でございますが、これは大宮—新潟間でございますが、四千八百億円の当初計画に対しまして実績は一兆六千八百六十億円でございます。なお、この間かなりのオイルショックがあったことも事実でございますが、こういったオイルショックの要因を除きまして考えた場合におきましても、東北につきましては八千八百億円が一兆二千百五十億円、上越につきましては四千八百億円が七千五百四十億円というふうに、五割以上の増加になっております。
  19. 堀昌雄

    堀委員 いろいろ御意見のあるのは後で聞きますが、私も地域の皆さんのいろいろな御要望はよくわかるのでありますけれども、要するに当委員会というのは国の財政国民の負担という問題を中心に物を考え委員会でございまして、その立場から、私が今ずっといろいろ申し上げてきたのは、一時的に負担をしてもそれが結果として返ってくるような負担ならば、私はそれは政策的には積極的にやっていいと思うのですが、既に上越新幹線、東北新幹線、新しい民営の会社になりますが、これはまだずっと赤字が続くわけですね。これがもし黒字になるとすれば、角谷次長、上越新幹線は何年ぐらい先に黒字になるのか、東北新幹線は何年ぐらい先に黒字になるのか、黒字の可能性についてちょっとお答えいただきたいのです。
  20. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 現時点におきましては上越新幹線、東北新幹線、それぞれ大きな赤字になっております。ただ、これは将来の需要見通しにもよるわけでございますけれども、東北新幹線については、これは一般に言われているところでございますけれども十年以上、上越新幹線については二十年程度黒字になるのにかかるのではないだろうかというふうに言われておるわけでございます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 私は、この間四国鉄道の旅客会社の問題を議論いたしましたときに、要するに今の諸条件で予測をするのは問題があるわけです。十年、二十年のタームということになりますと、飛行機の利用、自動車の利用、あらゆる利用形態が変わってくるわけでありますから、私はそういう意味で四国旅客鉄道というのは、民間会社として将来もう立ち行かなくなるのじゃないかという心配を実は問題提起をしたわけであります。  実はこの前ある会合で、監理委員会におられた専門家に私はこのことをお話ししてみたわけであります。私はこの間、国鉄対策の委員会でこういう問題を提起いたしました、二十年前に私は国鉄問題についてこういう問題を議論したのですが、これから向こうへ向かっていったときに、昭和七十六年には本四架橋が三本通ります、自動車が一日に七万五千台通行するというふうに計画では発表されています、高速道路がこれから四百キロもふえるということになっていますという話をしましたら、その方が、実は松山の市長さんは、もう今から鉄道を取っ払ってしまって、その上に高速道路をやってもらった方がむだがなくていいんじゃないかなというようなことをおっしゃっていましたという話をしてくださったのであります。先生のおっしゃる可能性の方が高いですな、こういうのがその鉄道の専門家の方のお話でございました。  私たちは経済の問題をやりますときに、先の見通しをどういうふうに立てるかというときには社会的な全体の変化をベースにして、少なくともここからここまではどういう格好でこうなった、そういうデータの上に類推をして物を考えることが必要なのでありまして、私の判断では、東北新幹線も上越新幹線も黒字になるのは二十年、三十年、少なくとも二十一世紀のかなりの時期になってあるいは黒字になるかもしれないという程度であって、これから飛行機その他の利用というものが進めば、新幹線よりも確かに飛行機の方が速いわけであります。私は、この前当委員会でこの問題に触れて、何とかひとつ、主要な地点に飛行場を整備してコミューターでこれをどんどんつないでいけば、新幹線より飛行機の方が速いわけですし、飛行場をつくって飛行機をつくる経費というのは、新しく新幹線を引くのには関係がありませんし、さらに在来線が有効に使える。ここまで飛行機で行って、次、在来線でちょっと行く、次、また飛行機で行って在来線、こういうことになれば、投資的な問題についても、旅客の便宜のためにも決してマイナスではないではないかということを既にこの前の通常国会で、当委員会で私は問題を提起させていただいているのでありますけれども、その点について宮澤大蔵大臣財政当局としてどうお考えでしょうか。  ちょっともう一つだけつけ加えておきますと、「整備新幹線に積極姿勢 自民四役、財界首脳と懇談」というのが昨晩の夕刊に出ておりました。そこで「整備新幹線問題で経済界側は、大槻会長が「国鉄の分割・民営化後新会社の採算状況を見極めてから考えるべきで、無理に急ぐと国鉄改革の画竜点睛を欠くことになる」と述べた。五島会頭も「行財政改革にマイナスの影響を与える」と指摘、ともに早期着工を自粛するよう求めた。」こんなふうに実は財界の皆さんもお考えになっている。  要するに、本当に国の経済財政を真剣に考える者の立場からすれば、この整備新幹線の問題は、つくるなとは私は言わないのでありますけれども、もうちょっと情勢が好転をして、今の民間の会社がそれなりの経営見通しが立った上で考えるのが筋ではないだろうかと思うのでありますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、私にとりましては実は非常に難しい問題でございまして、東海道新幹線あるいは山陽新幹線ができました後、全国のその他の地域の人々が、ああいうものが自分の地域に来て、そして地域がよくなってほしいと考えられることは無理からぬことであるというふうに考えます。そこで問題は、少なくとも財政経済だけに限りましても幾つかございまして、一つは、そのための投資が非常に大きな金額である。我が国財政は先ほど申し上げたとおりでございますから、この巨額の負担は財政にとってなかなか容易なことではございませんが、実はその次の問題に関係いたしますが、財政がほとんどを負担しなければ、あるいは全部を負担しなければ、将来の黒字の見通しが、それでも実はなかなかつかないといったような問題と関連いたしますので、したがいまして財政に期待される負担が非常に大きいということが第一でございます。  第二の問題は、仮にそういたしましても、なお黒字で経営できる将来の見通しというものがなかなか立ちにくい。この問題には、御承知のように、在来線をどうするかということも関係があるのでございますが、最も甘い条件で考えまして、償却はしなくてもいいというところまで考えましても、将来黒字になるという確たる見通しが立たないという第二の問題がございます。  そこで、仮に第一の問題は、清水の舞台から飛びおりまして、ある程度何とか金をつくったといたしまして、何とかそれが将来ある時点から以後国民の負担になっていかないということになりませんと、どうしてもその方のことがむしろより恐ろしいという感じがいたしておりまして、実はその辺のところをただいま財源問題等検討委員会で、今朝もいたしたわけでございますが、検討いたしております。  現実の問題といたしましては、先ほど堀委員が言われましたように、国鉄が分割後の新しい民営会社になりました際、その会社がこの新幹線問題、在来線問題をどう考えるかということに関係をいたしてまいりますので、実はそれを待たなければならないのでございますけれども、少なくともこの予算編成の時期にこの予算と何かの関連を持たせるべきではないかという問題がございますので、それでただいま検討いたしております。なかなかこれというきちっとした見通しが、今日現在では出てまいっておらないというのが実情でございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 朝日の社説も書いておりまして、私もそう思うのですけれども、国鉄を新しい会社以外のところが運営するなんということはもう考えられませんので、当然この整備新幹線というのはその地域を所管する新しい国鉄の民間会社がやることになるであろう。そういたしますと、昨日橋本運輸大臣が、今度の新会社の人事その他の問題についての委員長に斎藤英四郎さんをして委員会ができるというふうに、ちょっと私、飛行機の中のテレビでしたから正確に見えなかったのですが、そういうのが出ているように思ったのでありますけれども、これは実はNTTの民営化の問題について、真藤さんという民間御出身の方が社長になられて今日やっておられるわけでありますが、民間会社というのは、民間で育って民間の経営の経験のある方でなければ成り立たないと私は思うのです、発想が全然違うのでありますから。そういう意味で、新しい民間会社の社長なり幹部にはそういう民間の方がなられるのじゃないか、私はこう期待しているのでありますけれども大蔵大臣、そこらはどんな方向でございましょうか。大蔵大臣の所管じゃありませんけれども、感じとして。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の所管ではございませんけれども、所管大臣は恐らくは、官界出身ということでなくいろいろな意味での実業を手がけられたようなお方が会長と申しますのでしょうか、その指導的な立場に立たれるような人選をお考えではないかと想像いたしますけれども、私、確たることは申し上げられません。
  25. 堀昌雄

    堀委員 実はこの人事が、整備新幹線に非常に関係があると私は思っているのです。ということは、新しい会社がそれを引き受けますと言わないのに押しつけることは、私は今の国鉄改革の方向からいって考えられないし、そんなことは私ども野党としては絶対に認めない、こういうかたい姿勢であります。当然、新会社の経営者が御相談をいただいたときに判断をされるものだと思うのであります。  私は、もともと旧制高等学校時代からマルクス経済学の勉強をしてまいりまして、資本主義というのは一体どういうものかということの勉強をずっとやってきたわけであります。ですから、利潤のないところには資本主義というものの発展はあり得ない、これがマルクスが端的に言っている今の資本主義分析の基本でございます。そうなると、私が二十年前の昭和四十二年に問題提起をしましたように、ともかくも直接経費が賄えないようなものを民間の会社ができるはずがないと私は確信をしておりますから、もしこの民間の会社の責任のあるところに、民間の経営者の方が会長なり社長なりという位置につかれれば——私がずっと申し上げてきましたように、初めから赤字でいつ黒字になるかわからないものを、既に大変な厳しい条件にある国鉄民営会社が引き受けられるはずがないのでありまして、私は、それが一番はっきりした歯どめとして役に立つのではないか、こう思っておるのであります。  そこで、角谷さんにもう一回ちょっと聞いておきたいのですが、東北新幹線と上越新幹線は、当初一日キロ当たり何人くらいの利用者を予想していて、今日は一体一日当たりどのような状態に変化してきているのか。現実に今、東北新幹線、上越新幹線は動いているわけでありますから、当初のスタートのときの見通しと現実の姿というのはどういうふうに乖離しているかをちょっとお答えいただきたいのです。
  26. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 昭和六十年時点におきます東北新幹線の輸送需要は、一日キロ当たり四万二千人でございます。最初つくりましたときの計画は、六十年時点では九万一千人を予定しておりましたので、その半分以下でございます。  上越新幹線は、六十年時点で同じく一日一キロ当たり往復で二万九千人でございます。そのときの、六十年時点における最初の計画におきましては七万一千人でございましたので、これもまた半分以下でございます。  なお、先ほどちょっと数字を手元に持っておりませんでしたが、東北新幹線につきまして、同じく六十年度決算を見てみますと千五百九十一億円の赤字、それから並行在来線を含めますと二千五百七十八億円の赤字。上越新幹線につきましては、六十年度決算では七百七十九億円の赤字、在来並行線を含めますと千二百三十九億円の赤字でございます。
  27. 堀昌雄

    堀委員 大臣、お聞きのように、当初は大変輸送需要があるという見通しで相当な金額の投資をした。しかし、その投資をした金額というのは、当初の計画よりは大変大きくなったということを既にお述べになりました。投資額の方はふえたけれども、利用の方は減ってきた。現実に今日本の中でこういう新幹線というものの需要が、飛行機や高速道の発達によって当初の見積もりと大きく乖離をしてきておるというのが現実の姿だ、私はこういうふうに考えておりますし、民間出身の新しい民営会社の責任のある方は、そんなものは自分たちは引き受けられないということになると思うのです。  もう一つ残っているのは、それでは公共事業で全部やったらいいじゃないかというようなお話が出てきたら、やはり財政当局が責任を持って対処してもらわなければ、今私が言っておる二兆七千億減税前倒し、二兆円の短期国債で、ともかくも日本経済を今二%台からできるだけ三%台に近づけたい、それが国民の希望でもあるし国際的な要望でもある。そのわずかな財源についてさえ今財政当局が厳しく言っておるときに、このようなしり抜けになっているようなものについて、はっきりした態度で当委員会でお約束をいただきたいと私は思うのでありますが、官澤大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財源が仮に見つかりましても、さて建設されましたその運営をだれかがいたさなければなりません。先ほど御指摘になりましたように、それは新しい民間会社が運営主体になるということでございましょうが、その運営が経常的に赤字であるということになりますれば、そのような運営主体になることを民間会社が引き受けるかどうかという問題がございまして、この点、私は有権的に申し上げられないのでございますけれども、過般の委員会堀委員も御質問になっておられまして、運輸大臣が委員会でお答えになっておられましたことは、これはいずれにしても新しくできた民間会社の経営の判断を待たなければならない問題であるので云々とおっしゃっておられますので、先ほど堀委員のおっしゃいましたようなことに帰着するのではないかと思います。
  29. 堀昌雄

    堀委員 時間があとわずかになりましたので、最後の問題として、実は年金の関係の問題をひとつ取り上げさせていただきます。  私は、昨年の二月四日の予算委員会でいろいろな問題を論議をさせていただいたのでありますけれども最初に取り上げたのは実は年金の問題でありまして、  長期給付財政調整事業運営委員会というのが国家公務員等共済組合の運営の財政調整五カ年計画というのを実は提案をしておるわけでありまして、大蔵大臣は五十九年十月十六日にこの認可申請を受けておられるわけであります。御承知でしょうか、大蔵大臣。  ○竹下国務大臣 承知いたしております。  ○堀委員 その中でこういうことが言われているのであります。「従って今回策定した計画は、あくまでも昭和六十年度から六十四年度の五年間に限った当面の対応策にならざるを得なかった。仮に六十五年度以降も現行の財政支援体制であるとすれば最早支援は不可能であって、支援体制の拡充、強化が是非とも必要である。」非常に重要なのは「六十五年度以降も現行の財政支援体制であるとすれば最早支援は不可能」であるという断定が実は下されておるわけであります。「国鉄共済組合の昭和六十五年度以降の給付の増加は目を見張るものがあるが、長期的にみた給付と負担の不均衡の拡大は単に国鉄共済組合だけではなく、共済年金制度全体にも共通する問題である。各共済年金制度の健全なる財政運営を図って行くためには、現行の給付水準の抜本的見直しと大幅な保険料の引き上げとは避けて通ることができない状況であるが、自助努力にも限界があり、他方、これを放置しておけば各共済組合とも早晩財政破綻が生じる。従ってこれはただ単に財政上の問題だけではなく共済年金制度の存続にかかわる問題でもあり、ひいては公的年金制度全体に対する国民の信頼を失う恐れがある。」 実はこれが今の長期給付財政調整事業運営委員会の公式な記録でございます。  私は、今度の国鉄の問題の中でいろいろな議論があったのを拝見したのでありますけれども、いずれも六十四年度の終わりまでに何とか次の考えをまとめたいというような御答弁に終始をしているわけでありますが、これも実は、この年金問題というような非常に長期的な戦略を必要とするものに、時間だけ稼いで六十四年になったら何とかなるだろうなどという悠長な話でこの問題の処理はできるのだろうか。確かに国鉄の問題というのは、日本国民生活の中では極めて部分的な問題でありますけれども、年金というのは、これからの高齢化社会に向けてこの人たちの生活を保障する、国民生活の中の最も重要なファクターの一つがこの年金問題だと考えているわけであります。  私は、今いろいろな各界の若い方と話をしますときに、その人たちが異口同音におっしゃるのは、堀さん、税金の話もいいけれども、ともかく私たち三十代の者は将来、皆さんが今もらっているような年金をもらえるのでしょうか、私たちは非常に大きな不安があります、だから、何とか私たちも不安のない老後が送れる年金がもらえるように、ひとつ先生頑張ってくださいよということを、これは要するに官僚の諸君も、あるいは会社におられる皆さんも、いろんな広い層の若い人の一番大きな不安は、まさにこの年金の将来に対する不安であります。それを象徴的にあらわしているのが国鉄共済年金だと考えているわけでありますから、この国鉄共済年金を六十四年までに何とかしてやろうなどという、そんな悠長な話をしていて、現在の自民党政府国民に責任を負うことはできないと考えているわけであります。  そこでひとつ、この問題について今からそんな細かいことをどんなふうにしてくださいというようなことを私は申し上げる気はないのでありますけれども、政治的な展望というものがなければ、ただ金をどこかから持ってきて、例えば厚生年金と共済年金も一緒にしてどんぶり勘定にして薄めればいいじゃないかというようなそういう話では、国民は将来に対して不安を解消することはできないと私は考えるのであります。  将来の年金の問題について、私は二月四日の予算委員会の中で、新しい間接税が導入されれば、この財源は基礎年金目的税ということでここにドッキングしてください、それはどういうことかといいますと、付加価値税のようなものはすべて逆進性がありますから、この逆進性のあるものを逆進性を薄めるためには、例えば基礎年金、今すぐ五万円を全部負担する必要はないのでありますが、その五万円の基礎年金というシステムとドッキングすれば、生活保護の皆さんも付加価値税の負担はします、しかし生活保護の皆さんも将来的に五万円の年金は受けられます、あるいは松下幸之助さんも付加価値税の負担はします、しかし受け取る年金は五万円ですということになったときに、私は間接税特有の逆進性の問題がまず解消されるのではないか。  同時に、御承知のような積立方式というものによって、今物価が安定しておりますからいいのでありますけれども、これは実は大変な減価をしてきておるわけでありまして、これはやはり賦課方式として、そのときに税収で処理をするというのが正しい姿ではないだろうか。国民の心配を解消するためには、何としても今度の間接税の税収を、全額をすぐ目的税にしろということではありませんけれども、ここにドッキングをすることが税の公正のためにも役に立つし、国民の不安を解消することに役に立ちます。戦略的な展望を明らかにするという意味でも非常に大きな意義のある問題ではないか、こういうふうに昨年の二月に既に私は提案をしておるわけであります。  山中税制調査会長も、言葉の節々にはそういうこともおっしゃっているように新聞で拝見しておりますけれども、これらの問題について、私は税というものが単に税ということではなくて、日本経済に対してどういう影響を与えるのか、将来の年金という最も重要な国民の願いに対して、どういうふうにこの税がシステムとして組み込まれるようになるのか、これは今度の税制改正の中の極めて大きな問題だと考えるのでありますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国鉄共済年金につきましては、御承知のように政府が統一見解を申し上げておりまして、それに従いまして、ただいま昭和六十四年度までのものにつきまして今年度内に結論を出すというお約束を申し上げておりますので、四閣僚が相談をいたしまして、支払いに支障のないように結論を出さなければならないことになっております。  問題は、これ自身も非常に実は難しい問題でございますけれども、御指摘になりましたように六十五年からの後の問題でございまして、今から推測いたしますと、これはただいま御承知のように財政調整をお願いしておりますけれども、とてもその程度のことでは処理のできそうもない、一けた違った問題になりそうだということが予測されております。それをどうするかということは、まず今年度内に六十四年度までの問題を処理いたしましてから後のことでございますが、そしてそれは国鉄の共済だけの問題にとどまらず、もっと広いいろいろな問題に発展をする可能性をはらんでおるかと思います。ただ、これは私が自分でお答えを申し上げる所管を越えておることでございますので、そういう可能性がいろいろにあるということを今申し上げることができるだけでございますが、そのような問題を含んでおるようでございます。  なお、これとの関連で、いわゆる新しい間接税につきまして堀委員がかねてから御主張になっておられますことは、堀委員の御主張でございますので、私ども注意深く実は承っておりますけれども、そのこととこのこととを関連づけて政府考えておるといったようなことは、ただいまのところございません。
  31. 堀昌雄

    堀委員 大体時間が参りましたから終わりますが、私は最初に申し上げたように、これからの経済運営は、国内もさることながら国際的な問題というものを極めて大きくお考えを願いたい。これはもう大臣は当然そういうことでございましょうが、ひとつ大蔵省全体として国際、インターナショナルの問題を十分お考えをいただきたいと思うのであります。  私、今社会党のEC議員会議というののメンバーとして、この十五日から十五、十六、十七日、三日間、二十二人ぐらい来られるEC議員団の皆さんと——恐らく厳しい要求が出てくるのではないかと思うのであります。私は、しかしそのときにやはりいろいろと認識の相違がございまして、事実認識だけはきちんとしてもらいたいというのが私の主義でございますから、八一年にストラスブールに参りましたときに、向こうの方が言っておるスーパーという概念と日本のスーパーという概念、全然違うわけでありまして、ですからそれを私は向こうで大きく、日本のスーパーというのは確かに皆さんのおっしゃるような小さなものもあるけれども日本ではダイエーとかイトーヨーカ堂とか全国にネットワークを持った巨大なスーパーのシステムがあるのです、そのこともどうかひとつ皆さん十分認識をして問題の処理をしていただきたい、こういうことを実ははっきり申しました。そうしましたら、今度も見えますけれども、イギリスのサー・スチュアートクラークという保守系の議員が最後の夕食会のときに私の隣に座られて、少しあなたと討論したい、こういうお話でありましたが、明日私どもはもうストラスブールを立つものですから、ぜひあなたが今度おいでになるときに議論いたしましょうということで、その次に日本においでになったので議論をいたしました。  率直に議論を交わすと、イギリスのスチュアートクラーク氏もいろいろわかってくれる点はある。同時に、私も彼の話を聞きながら、私たちがやはり考えなければいかぬ問題はここだなということがよくわかるわけでありまして、何としても国際的な関係というものは形式的にあれするんではなくて、人間と人間が腹を割って話のできる条件がどういうふうにできるかということが国際交流の中の最も重要な課題ではないかと私は思っているのです。今度またスチュアートクラーク氏はイギリスを代表して参ります。最も今イギリスが問題にしているのはウイスキーの税率の問題でございます。新聞を見ておりますと、倉成外務大臣がこれからそれなりの対応をなさるように聞いておりますけれども、最後に水野主税局長からこのECの要求しておるウイスキーその他の関税についての現在の考え方を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  32. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の国際化の進展した中におきましては、酒税につきましてももろもろの要望なり批判が外国から寄せられているところでございます。主な点といたしましては、従価税を廃止して従量税へ一本化することとか、アルコール度数に応じた従量税に一本化すればいいので、酒類別の負担の格差あるいは同じ酒類の中の級別の一本化とか、そうした要望、批判が主なものでございます。  現在、税制調査会の答申に従いまして幅の広い新しい間接税を導入したらどうかという提案があるわけでございます。こうした問題との関連におきましても、外国とのいろいろな問題もあわせ考えまして、国際化の時代に即した酒税といったものが実現できればというのが私どもの気持ちでございます。
  33. 堀昌雄

    堀委員 譲るべきところは譲り、譲れないところははっきりと、ここは現在はできません、しかし将来はこういうようにしたいと思うというようなところを、めり張りのきいた対応をぜひ主税局も考えていただいてこれらの問題に対応していただきたい。要するに一番まずいのは、やるのかやらないのかわからぬようなあいまいな態度というのは向こう側にとっては逆にマイナスになるというふうに判断しておりますので、その点はひとつ主税局でも速やかに御検討いただいて、小出しに出すんではなくてここは一応の限界だというところまでどんと出していただいて、ここから先はしばらくだめですよ、こういう処置でこの問題についての対応をぜひお願いしたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  34. 池田行彦

  35. 日笠勝之

    日笠委員 堀大先輩の大論陣の後、数段格落ちでございますけれども、しばらくおつき合いいただきたいと思います。  最近いわゆる税制の改正に関する報道が連日マスコミに大きく取り上げられているわけでございますが、国民の関心も非常に高まっておるわけであります。ところが、仮称売上税と称するもの、これは全体像は全然見えてまいりません。発表される方もまた検討される方も切り文で、骨子ということで御検討されているゆえに、断片的な報道しかなされないからということかもしれませんけれども、私は時間の許す限り売上税、マル優の問題につきまして当局の御見解を承りたいと思いますが、まずその前にお断りしておかなければいけないのは、売上税、マル優の話をしますと、我が党も売上税については同じ土俵に上がって相撲をとる気があるのかというふうに疑われちゃいけませんが、はっきり申し上げまして、逆進性の強い、また総理の公約違反に間違いないこの売上税については私どもは断固反対をし、国民運動の展開も辞さない、こういう決意でございますから、その点をまず御理解をいただいた上で、時間もありませんので、質問は簡略にいたしますので、御答弁の方お願い申し上げたいと思います。  まず第一点は、仮称売上税、当初は大型間接税と言っておりました。それが政府税調の答申で日本型付加価値税になり、それがまた新型間接税になる。今や仮称売上税というようなことでございます。知恵者の大臣におきましては、この名称、まず名は体をあらわすということでございますから、今言われておるところの仮称売上税というものは国民税と呼んだ方がいいのではないかという声もありますし、アメリカでは州の小売売上税というものがございます。まず名前、呼称、これはどういうふうにお考えなのか、もう売上税でいくのかどうか、またほかにもこういう有力な名前があるか、こういうふうなことがあればお聞きしたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は私ども政府与党の間でいまだ検討中の問題でございますが、ただいまのところ売上税という仮称のもとに議論を進めております。終局的にどういう名前にいたしますか、いずれにいたしましても法案作成の段階までには決めなければならない問題で、仮称ということでひとつ御了解をお願いいたしておきます。
  37. 日笠勝之

    日笠委員 では、仮称売上税、変わる場合も考えられるわけですね。  これは、五十四年十二月のいわゆる国会決議、一般消費税、これとどこが違うのでしょうか。どこがどのように異なるがゆえにいわゆる大型間接税と言わないのか、また一般消費税と言わないのか、この違いを明確に御答弁をお願いいたしたいと思います。
  38. 水野勝

    ○水野政府委員 前回の一般消費税と今売上税と言われているものとは、多段階の売り上げに対する課税であるという点におきましては同じでございますけれども、多段階課税であります以上、それは必ず累積排除の方式をその中に組み込むことが不可欠でございます。その点におきまして、前回の一般消費税の累積排除の方式は、いわば仕入れ控除方式と申しますか、アカウント方式と申しますか、そういうことでやっておったわけでございます。今回の税制におきましては、この点につきましては税額控除票方式を採用するということでございまして、あくまで川上からの取引に関連します税額票と申しますか税額控除票によりましてその合計額を控除するという方式によりまして累積を排除する。この点が一番基本的に違う点ではなかろうかと思うわけでございます。  その他の点につきましては、免税点が前回は二千万円というふうな水準で議論をされておったわけでございますが、今回は一億円といった金額を前提に議論がなされておる。これも、それによりまして、一億円でございますと事業者の九割前後が対象から除かれるということにおきましても、基本的な差異が生じているのではないかと思うわけでございます。
  39. 日笠勝之

    日笠委員 ですから、いわゆる税額控除票を使うとか一億円を免税点にするとかいう、これが先日、内閣委員会でしたか、いわゆる外角すれすれストライクということになっちゃうわけですね。地びき網と称して、すぐ訂正されたようでございますけれども、これは総理の公約の党員、国民が反対するようないわゆる大型間接税導入しない。幾ら免税点を上げようと、今までのやり方が違おうとも、これは間違いなく、確かに八七%ぐらいの業者は非課税業者ということだそうでありますが、九〇%の取引は課税対象になるわけでありますから、そういう意味では大型であると認識するのですが、いかがでしょうかね。
  40. 水野勝

    ○水野政府委員 総理がかねがね申されておりましたのは、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模なものを投網をかけるような方法で考えることはしない、そういうことでございまして、その点をさらに総理の敷衍された言葉によりますれば、投網をかけるように縦横十文字すべて網羅して税の網にお願いをするという御趣旨のようでございますが、今回のものにつきましては、多段階であることは多段階ではございますが、今申し上げましたように、九割近くの方々が関係はない、一割近くの方でもって、全体の事業者の一割ぐらいの方にお願いをするということでございますから、網羅的という点で基本的にそこはクリアされているということで私ども考えておるわけでございます。
  41. 日笠勝之

    日笠委員 時間がありませんので、次の国会あたりで本格的な論議が行われると思うのですけれども、売上税をもし導入した場合、そういうことがあってはならないと思うのですが、国民皆さんにもどういうふうなものかを理解していただくために、仮定でございますけれどももし導入した場合、先日大蔵大臣は、導入しても物価上昇に影響はないというふうに金沢の方で記者会見されておられますが、物価上昇はないとお考えですか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えております。ただいま卸売物価が一一%下落しておりますし、消費者物価はほぼゼロでございまして、製造業の設備稼働率が低く、またサービス関係もともすれば失業が心配されるような状況でございますので、こういう場合の価格は、コストで決まりますよりはやはり需給関係と申しますか競争関係で決まっていくと存じます。したがいまして、物価状況にこれが大きな影響を与えることはないであろうと考えております。
  43. 日笠勝之

    日笠委員 EC型付加価値税が導入されたとき、EC等においては物価上昇はどうだったのでしょうか。
  44. 水野勝

    ○水野政府委員 付加価値税といたしましては、ヨーロッパ諸国は、導入と申しますか、それまでございましたもろもろの個別消費税なりあるいは多段階の取引高税的なものからの移行でございまして、基本的には増減収は余り期待しない移行でございました。したがいまして、理論的に見てこれが物価上昇のきっかけとなるということは余り考えられないわけでございますが、そういう観点からいたしますと、どちらかというとこれは専らそのときそのときの経済動向、需給の動向といったものに左右されているようでございまして、こうした税に移行した各国の例を見ましても、それによって上がった場合もございますしほとんど変わらない国もございます。また、たまたまオイルショック等のインフレ含みの時期にぶつかって、そこからさらに上昇を続けていったという例もございます。まさにそのときそのときにおきます経済動向によってまちまちではないかと思うわけでございます。
  45. 日笠勝之

    日笠委員 税調の答申には、一時的には物価上昇はある、それは一回限りのものであろうというふうに載っております。ある信頼すべき研究所のシミュレーションによりますと、もし導入した場合、便乗値上げ等も含めて、五%の売上税であれば五%の、またそれ以上の物価が上昇するのではないかというシミュレーションもあるわけでございますが、この物価上昇については、やはり大蔵当局がそれなりの監視をしたりまた行政指導をしたりしながらやっていかなければ、物価上昇をそのまま見逃すことになりかねないわけでございます。この物価上昇については、これは非常に大事なことでございますので、慎重な対応をお願いしておきたいと思うわけでございます。  さて、いわゆる仮称売上税、五%以下ということでございますけれども、これは基本税率を設けてそして割り増しなり軽減税率も設けるのか、それとも基本税率一本でいくのか、この点はいかがでございましょうか。
  46. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど大臣から御答弁ございましたように、現在与党と鋭意詰めておる段階でございますし、また政府税制調査会においても具体的な検討が進められておる中途の段階でございますので、まだ確定的なことを御答弁申し上げる段階にはないわけでございます。しかし、現在議論されている背景といたしましては、税率としては五%以下とする。五%という水準でございますので、これは軽減税率といった税率は余り考えられないのではないかという感じでございます。
  47. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると、割り増しの方は可能性は十分あるのでしょうか。自動車の二三%とか小型テレビの一五%とか高い税率の分がありますね。ですから、軽減はないだろう、しかし割り増しの方はある可能性も残る、こういうことですか。
  48. 水野勝

    ○水野政府委員 その点につきましても、まさにただいま具体的な検討が行われているところでございます。基本的には単一税率が望ましいということでございますが、現在の個別消費税の中で、相当な水準の税率をお願いをし、また税収規模としても相当なものを上げておる対象物件もあるわけでございます。そういったものを具体的にどのように調整するか、ここらの点についても今後の検討課題の一つとされているところでございます。
  49. 日笠勝之

    日笠委員 検討課題。これからお尋ねすることもほとんどそういう御答弁になるかと思うのですが、最終的に大体いつまでに大蔵省としては煮詰める予定ですか。
  50. 水野勝

    ○水野政府委員 税制改正といたしましては、予算編成が年内編成で終了いたしますように、そういう日程でもって税制改正作業も各方面にお願いをしているところでございますので、中旬から下旬にかけてはある程度大きな骨組み、具体的な仕組みについてもできるだけ詰まる範囲において詰めてまいりたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  51. 日笠勝之

    日笠委員 非課税品目を一応七項目挙げておられるようですけれども、これから個別にさらに詳しくやることだろうとは思いますが、これは最終的には法律事項に盛り込まれるのでしょうか、政省令でいくのですか、どちらですか。
  52. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいまお話のありました七項目と申しますのは、前回のときに挙げられたグループではなかろうかと思うわけでございます。そうした主要なものにつきましては基本的には租税法律主義の一つの具体的なあらわれとして法律でもって規定させていただく、しかしもろもろの限界的な部分については政令、省令等にゆだねられる場合もあろうかと思いますが、基本的には法律で規定されることになるのではないかと考えておるわけでございます。
  53. 日笠勝之

    日笠委員 これが自民党税調では今大変大きな問題になっているようですが、例えば専修学校の授業料とか有料老人ホームの入居料とか、こういう個別的なことで、ほかにもたくさんあるのですが、二つ例を出しましたけれども、これらはどう考えてもやはり非課税品目になるべきものだとは思うのですが、その辺の煮詰めも中旬から下旬にかけて全部骨子を決めていく、こういうことですか。
  54. 水野勝

    ○水野政府委員 教育につきましては、学校教育法の第一条に掲げられている学校につきましては非課税とされる、社会福祉事業におきましては、第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業については非課税とされる、そこまではおおむね確定しているところでございます。また、この税の性格といたしましては、非課税の範囲は極力限定されたものにすることが望ましいとされているところでございます。こうした基本的な考え方を前提として現在詰めが行われているところでございます。
  55. 日笠勝之

    日笠委員 これはちょっと大臣にお聞きしたいのですが、マル優の件です。  老人と寡婦、身体障害者というような話が出ておりますけれども、マル優を廃止した場合、例外適用を老人であれば何歳以上ぐらいから、また寡婦それから身体障害者、こういう方は大臣は一政治家として温かい配慮という意味では入れるべきかどうか、個人的にはどうでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは制度が結果として不公正に利用されたということで、利子所得だけが他の所得と異なって多く課税対象から逃れておるというようなことは不公平でもあり不公正でもあるということで直したいと思っておるわけでございますから、ただいま言われましたような理由で特に同情しなければならない家庭あるいは納税者個人に対してはある程度の特例を設けるということは入り用なことであるし、また望ましいことであろうと思っております。
  57. 日笠勝之

    日笠委員 売上税、マル優のことで最後に総括的に大臣にお聞きしたいと思うのですが、国民的な反対の盛り上がり、また各種マスコミの論調等を見ましても、総理の国民、党員が反対しないような云々という選挙のときのあの公約、先ほど主税局長はクリアしているとおっしゃいましたけれども、どう考えても、私ども、クリアしていない、あくまで公約違反である、こう思います。これは売上税の導入であるとかマル優廃止ということがはっきりとした段階で国民に真を問うという強い決意を持って我々も臨まなければいけないと思いますけれども、その点どうですか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる新型間接税につきまして、総理大臣が選挙中にいろいろな言明をされた、それと今政府考えております案との関連につきましては、先ほど主税局長からも申し上げたとおりで、要するに国民の非常にたくさんの方々を納税義務者としてこれに巻き込むということが不適当である、避けなければならないということでございますので、八割七分の事業者が納税義務者にならずに済むということはそれについての正しい答えではないかと私ども思っております。  いずれにいたしましてもこれは国会で御審議をいただかなければならないことでございまして、そのような立場を申し上げまして国会の御理解を得て、成立をさせていただきたいと考えております。
  59. 日笠勝之

    日笠委員 税制改正で一つだけ個別になるのですが、自民党税調の方で森林・河川緊急整備税というのが今検討事項になっているようでございますけれども、これは一つの目的税でございます。弾力的財政の運用ということから見ても、また治山治水というものは国の基でございますから、本来一般会計でやるべきものだと思うわけです。そういう意味で、財政を預かる当局として森林・河川緊急整備税のような目的税を創設するということはいかがお考えでございましょうか、これはぜひ大臣にお聞きしたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はこの点もただいま政府与党の協議の対象になっておりまして、結論が出ておりませんので私から何とも申し上げられないことでございますが、そのような財源を必要とする問題があるといたしますと、そういう形で処理するかあるいは予算の手当てをするかといったようなこととも関連いたしまして、もう少し検討させていただきたいと思います。
  61. 日笠勝之

    日笠委員 大蔵省が検討すると言うと、何となくそういう目的税を今後どんどんつくっても構わないというふうにもとれるのですけれども、そういういわゆる目的税的な税金の創設というのは基本的に望ましいのか望ましくないのか、その点だけ。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今検討と申しましたのは、大蔵省という意味では実はございませんで、広く政府与党という意味でございました。  目的税そのものはやはり受益関係がどのぐらい因果関係があるかということによりますので、それが余りございませんときに目的税を設けるということは、いわゆる資金にしても資源にしても、その使途をゆがめる弊害があるというふうに言われておるのではないかと思います。
  63. 日笠勝之

    日笠委員 最後に、先ほども御質問がありましたECの対日要望、象徴的ないわゆるアルコール類でございます。これは新聞等の報道によりますと、倉成外務大臣は今ベルギーへ行かれておるようでございますが、大蔵省の方にも相当根回し、打診をされていっているようでございまして、向こうの方ではいわゆる級別、特級、一級、二級という三段階を二段階にというふうな話まで出たような報道も出ておるようでございますけれども、その点はいかがでしょうか。そういうお話で外務大臣は向こうと折衝されているのでしょうか。
  64. 水野勝

    ○水野政府委員 政府税制調査会から十月二十八日に基本的な税制改正についての答申が出され、それに基づきまして現在年度改正の中で鋭意検討が行われているところでございますので、中身についての確定的なものでもって対処しているというところまではまだ至っていないところでございます。
  65. 日笠勝之

    日笠委員 これは税調の十月の答申で急に出たわけではなくて、酒税法改正のたびに必ず附帯決議で言われていることでございます。五十六年の衆議院大蔵委員会におきます酒税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議にも、これは清酒ですが、級別制度、また酒類間のバランスについて広く意見を求め、抜本検討を行え。それから、五十九年に酒税の大増税がありました。あのときの附帯決議にも、酒税制度については、酒類の消費の実態等を踏まえつつ、ウイスキーとかビールなど酒類間の税負担格差の縮小、級別制度の問題については検討していこう。このように酒税法一部改正のたびに附帯決議をされているところでございます。今回もまた図らずも十月の税調の答申でそういうことが言われておるわけでございます。特に今回は中立と国際性ということが理念に加えられて、国際性ということからも酒税についてはアメリカとかECからの日本に対する強い要望があるようでございます。  一つは、関税を何とかしてくれということ。もう一つは、特級、一級、二級と三つあるこういう級別をなるたけ簡素化してもらいたい。そのほかにも、いわゆる従価税の廃止とかラベル表示の問題、またお酒を売る店舗のいわゆる免許のことですが、これをもっと弾力的に、洋酒が売れるような免許を出せとか、いろいろな要望がありますが、その中でも一番強い要望は関税を下げろということ。それから、先ほど言いました日本独特の酒類間のアンバランス、また級別、特級から二級までのアンバランス、この格差を縮小しろというのが向こうの大きな要望だと思うのです。これは日本の国内の酒類業界の方々ともよく御相談し納得をいただかなければいけませんけれども、やはり今度政府税調の答申で国際性ということが新たな理念としてうたわれているわけでもございますし、今後の対応をお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
  66. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 関税につきましてお答え申し上げます。  関税につきましては、ECの要望と米国の要望に若干異なる点もありますのでいろいろ検討しているところでございますが、ただいまの段階といたしましては、現行関税率の引き下げの可能性について検討を行っている、そういう段階でございます。
  67. 日笠勝之

    日笠委員 これは関税率審議会の方で検討させている。もう諮問はしたのですか。
  68. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 関税率審議会には関税引き下げ一般についての諮問をしております。EC、米国の要望につきましては関税率審議会で御説明をしたところでございますが、まだ結論をいただいている段階ではございません。
  69. 日笠勝之

    日笠委員 それから、ECの要求でアルコール度数の単一課税、こう言われておりますけれども、いわゆるアルコール度数に応じた課税ですね、これは現実にEC自身もアメリカ自身もお酒についてはそうなっているんですか。
  70. 水野勝

    ○水野政府委員 国によりましてもろもろの形になっておるわけでございますが、お酒の中でもやはり醸造酒、蒸留酒、ビール、ワイン、こういったものにつきましては、それぞれに応じました課税が行われておるようでございます。その中におきましての蒸留酒につきまして、これはアルコール度数による課税といった国が少なくないようでございますが、また、蒸留酒の中におきましても、それだけでない課税も行われている例もあるようでございます。
  71. 日笠勝之

    日笠委員 これは私、調べますと、イギリスは大体四分類ぐらいしていますね。それから西ドイツが五分類、フランスが八分類、アメリカが六分類、これは蒸留酒というのじゃなくて、例えばビールとかワインとかリンゴ酒とかそういう分類でございます。ですから、すべてのアルコールがすべてアルコール度数に応じて単一課税されておるわけじゃないのですね。そういうふうなことを踏まえて、これはよく主張すべきところは主張して、この日本の嗜好品といいましょうか、特殊致酔性のあるものでございますし、ただ単にどっと入ってくれば売れるという問題でもないと思いますし、そういうことをよく踏まえた上で、交渉には日本のそういう独自性もきちっと踏まえながら、また相手の国のそういうものもよく知った上で交渉を続けていかなければならない、私はかように思うわけでございます。  いずれにしても、国際性ということで、この酒税全般の大幅な抜本改正というものは、これは先ほどから申し上げました国内においても、例えばビールの税金が四八・八%だ、高いじゃないか。これは自民党さんに聞きますと、何かビールを十円安くする研究会を設けられたとかいろんな話も出ておるようでございますけれども、いわゆる酒と酒の間の税負担、しょうちゅうとビールのえらい差もあるというようなこともありますし、これはメーカーのそれぞれの沿革、酒そのものの沿革の歴史があって一概には言えませんけれども、そういう問題。それから、特に清酒なんかは、これは大蔵省の話ということで報道されておるようでございますが、清酒は全銘柄級別審査を受けるよう義務づける、こういうふうに報道されておりますが、これは本当でしょうか。
  72. 水野勝

    ○水野政府委員 現在は任意の出品でございます。これを全銘柄強制的にということは、私どもちょっとお聞きはしてないわけでございます。
  73. 日笠勝之

    日笠委員 じゃ、この新聞報道は誤りということですね。はい、わかりました。  では、時間が参りましたけれども、最後に一言だけ。  我が党も税制改革大綱の中間報告を去る十一月二十七日に発表いたしました。ぜひひとつこれは大臣にも読んでいただきたいと思うのです。というのは、我々の税制改正というのは、まずクロヨンを初めとする不公平を正していく。執行面でいろいろあるかと思いますけれども、そこで浮いてきた金額を減税していく。最も国民税制に対する不平不満は、不公平があるじゃないか、その不公平を是正するということ、このことで私ども税制改正の公明党案をつくっております。これには、当然売上税の導入は反対でありマル優の廃止も反対である、こういう立場を貫いておるわけでございますので、ぜひ一度よく読んでいただきたくお願いをして、終わりたいと思います。
  74. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 山田英介君。
  75. 山田英介

    ○山田委員 大蔵委員会で初めての質問に立たせていただくわけでございますが、限られた時間ではありますけれども、この今回の税制改革に関しまして日ごろから疑問に思っている点など何点か質問をさせていただきたい、かように存じます。  まず、今回の税制の抜本改革、この目的につきましては、税制のゆがみとかひずみを是正をして、重圧感とかあるいは負担の累増感あるいは不公平感というものを除去していく、その点にあると承知をしているわけでございます。ただ、非常にわかりにくいのは、政府自民党税制改革のこのやり方というのが、所得税の減税をやります、法人税の減税もやります、ただその財源はいわゆる売上税でありマル優廃止で一律分離課税二〇%でやるんだ、なぜそこに売上税が出てきてマル優廃止が出てこなければならないのか、この点が率直に言いまして非常にわからないわけでございます。税制改革の目的というのが税制のひずみ、ゆがみというものを是正するんだというところにあるとすれば、やはり所得税の減税であれば所得税制の中に内包されているところの不公平というものを是正する、そしてまた法人税制の中に内包されているこれはどうかなという部分を是正する中で得られた財源をもって、その範囲内でいわゆる所得税の減税を行う、これが正しいやり方であろうと私は思うわけでございます。  そこで、基本的なことで大変恐縮ですけれども、この税制改革の目的で言われております税制のひずみとかゆがみというのは具体的にどういうことを指しているのか、改めてこの際伺っておきたいと思います。
  76. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の税制の骨格は昭和二十四年のシャウプ勧告に発していると言われておるわけでございますが、その後四十年近くを経過した現在、その時点と比べますと社会経済情勢に大きな変化が見られるところでございます。雇用の形態あるいは第一次産業から第三次産業におきますところの各種業態ごとの生産の状況、そうしたものに大きな変化が見られる。また、所得水準におきましても、当時に比べますと著しく平準化がされてきている。そういう事態を背景といたしまして、消費の面におきましても、一般的に高度化するとともに多様化してまいっておる。こうした社会生活、経済活動、いろいろな面におきまして変化が生じてきている。それが税制の基本的な骨格と必ずしも合致しないようになっている。そこにさまざまなゆがみ、ひずみが生じておる。こういうふうに言われておるのではないかと考えるわけでございます。
  77. 山田英介

    ○山田委員 御答弁でありますが、私も政府税制調査会の答申全文を読ませていただいておりまして、そういう御答弁でございました。  具体的に伺いたかったわけでございますけれども一つには、非常に小刻みで、そして非常に強い累進度を持つ税率構造というものがある。これが具体的なひずみでありゆがみの一つであることは論をまたないと思います。これはどういう作用といいますか影響を与えるかといえば、負担の累増感、これを非常に強く与えるということになります。したがって、今回の税制改革では税率の刻み数を少なくするあるいはフラット化するという中でこの負担の累増感というものを解消していきたい、こういうことになっているわけですね。  それからいま一つは、給与所得者と事業所得者との税の負担における格差というものが非常に拡大をしておる。これもゆがみ、ひずみの一つであります。したがいまして、今回の税制改革では、政府自民党において、例えば配偶者特別控除を創設するとか、あるいはまた給与所得控除の実額控除という部分で申告納税の道を開くとか、そういう不公平感というものを除去するための対策をとろうとなされておる。  これらはとりもなおさず減税効果をもたらすものであるわけですが、問題は、冒頭申し上げましたように、なぜ減税の財源が売上税でなければならないのか、こういうことなんでございます。税制のひずみ、ゆがみを是正してということであれば、所得税でいえば所得税制の中にまだそのほかにもいろいろなひずみとかゆがみというものがあるわけでございます。それは、例えば利子配当課税一つ見ても、課税の原則というのは総合課税主義ということにあるわけでございますから、その意味では現行の総合課税を選択したものの二〇%課税、あるいは分離課税では三五%ということで現行は運用されているわけでございますが、この利子配当所得の課税のあり方はできるだけ総合課税化する方向へ持っていかなきゃならない。それもゆがみやひずみを是正するということにつながると私は思っているわけでございます。  あるいはまた、有価証券の譲渡益に対する課税、土地の譲渡益に対する課税、いわゆるキャピタルゲイン課税が今日このままの状況で手をつけずにおいてよいのかどうかという点も、その意味でひずみ、ゆがみの一つになるわけでございます。  さらに大きく言えば、所得捕捉というものが非常に不公平であるということが指摘されているわけでございますが、まさに所得税制の中にある、あるいはそれに関連をして存在をするこういう不公平な税制あるいはひずみ、ゆがみというものを是正をする中で、そこで得られた財源をもって減税を行う、こういうことであれば非常に国民にも納得がいくし、非常にわかりやすいわけでございます。  法人税の減税についても全く同じことが言えるわけでございます。なぜ法人税の減税を売上税をもって、大型間接税をもってしなければならないのか。法人税制の中にはそれでは不公平とかひずみとかゆがみとかが全くないのかといえば、そんなことはないわけでございます。これはやはり租税特別措置等で是正をしていかなければならない税制というものがあるわけでございますので、それに手をつけずに、財源は売上税だ、マル優廃止だということになると、これは私は到底納得ができない、こういうことになるわけでございます。  それで、これも極めて基本的な質問でございますが、減税財源に売上税を導入しなければならない、売上税を導入して財源を確保しなければならないという根拠は一体どこにあるのでございますか。改めて伺っておきたい。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の抜本改革は、所得税、法人税の減税というものにとどまるものではございませんで、各税につきましてゆがみ、ひずみを直し、基本的に見直しをするということでございます。その中の一つが間接税の基本的な見直しということではなかろうかと思うわけでございます。  間接税それ自体におきましてもゆがみ、ひずみが生じておる、これをいかに是正していくかということも大きな検討課題であるわけでございます。間接税といたしましては、マクロ的に見ますと戦後一貫して間接税の税体系中のウエートは連年低下する一方でございまして、今回におきましてもその点を一つの大きな眼目といたしておるわけでございます。また、ミクロ的に見ますと、現在の間接税は、物品税で申しますと八十五品目に限定して課税をお願いをいたしておる。しかし、先ほど申し上げましたように、消費水準が上昇する中で消費が多様化してまいりますと、果たして八十五品目というものにだけ限定して負担をお願いをする現行税制というのが適正なものかどうか、そうした問題があるわけでございます。  政府税制調査会が五十九年の十二月に、今や部分的な手直しをしていたのでは間に合わない、税制の抜本的な見直しをすべきであると年度答申において提言をいたしておるところでございますが、その具体的な一つのきっかけといたしましては、五十九年度改正において行いました物品税の拡大、またその検討、それからまた酒税におきましてのもろもろの増税をお願いしたそれのもろもろの影響等、ここらに大きな問題が生じておりまして、基本的な、抜本的な見直しを行うべきであるという提言につながっておるわけでございます。したがいまして、間接税それ自体といたしましても、ゆがみ、ひずみが生じ、抜本的な見直しを行うという要請に迫られておるわけでございます。  そうした中で、所得税、法人税も見直し、全体としても、また歳入の面では中立的であるべき税制改革の中では所得税、法人税の減税財源としてこうしたものが充てられることになっておるわけでございます。しかし、もちろん御指摘のように所得税、法人税それ自体の中におきますところのゆがみ、ひずみ、不公平な点とされておる点につきましては、極力それ自体として是正をし、またそれによって財源も確保していくという努力はなされなければならないところでございまして、これは十月の答申におきましても指摘されておるところでございますし、私どもとしても極力その努力はいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
  79. 山田英介

    ○山田委員 問題は、なぜこんなに急いで大型間接税たる売上税を導入しなければならないのかということでございます。水野局長の御答弁を伺っておりますと、おっしゃろうとしていることはわからないわけじゃないのですけれども、それは公平を欠いているというかあるいはバランスを欠いているかというふうに言わざるを得ないわけでございます。  これは所得と資産と消費にバランスよく課税をしていくというのが政府税調の基本方針でもあり、あるいはまた今回の政府与党がなさろうとしておる一つ税制改革の方向であるわけでございますから、今の局長の御答弁は、そこが所得と消費のところだけでございます。この資産のところの課税が全く欠落をしておる。これはある意味では本当に致命的な問題だと思います。したがいまして、五%以下の税率で約三兆円にも上る税収が上がるというような、国民あるいは生活に対しても重大な影響を及ぼすこういう売上税をそういうお考えのもとになさるということは、拙速に過ぎやしないか、私はそれはいけないことであるというふうに言わざるを得ないわけでございます。それはそのくらいにしておきますが、いわゆる所得、資産、消費とバランスをとって、そういうふうにおっしゃるのであればきちっと税制改革で対応すべきである、こういうことでございます。  それで、先ほど我が党の日笠委員からも指摘がございましたけれども、過般の衆参ダブル選挙で、確かに総理、そしてまた与党の候補者のほとんどの皆さんが、いわゆる包括的な、多段階で、そしてまた網羅的でなお投網をかけるような、そういう国民が反対をするような大型間接税なるものは導入はしません、国民に向かってこう公約をされたことは事実でございます。それを国民も決して忘れてはいないわけでございまして、だからこそ一体どうなっているのかという、こういう非常にわかりづらい今回の税制改革の進みぐあい、姿になっておるわけでございます。  そこで、ちょうど大臣、席を外されておりますので後ほど伺いたいと思いますが、さきに自民党税調の山中会長は、売上税の導入は公約違反である、このように明言をされた。さきの内閣委員会で総理は、公約違反すれすれであるというそういう趣旨であると聞いている、こういう答弁をなされたわけでございます。  大臣、お戻りになられましたので、今この売上税の導入、ダブル選挙のときに公約をなされた導入しないといった大型間接税の問題がありまして、宮澤大臣としては現時点で、この売上税というものが導入されるということになれば、首相公約に違反をするとお考えですか、あるいは違反をしないとお考えですか、率直なところをお聞かせいただきたいと思います。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 選挙中に中曽根総理大臣が幾つかの言明をなさいましたのは、かつて昭和五十四年にいわゆる一般消費税というものが考えられ、その後に国会の御決議があったわけでございますから、そういったようなものはやはりあってはならない。それは結局、あの当時考えられましたのは事業者の売り上げが二千万円でございましたので、相当たくさんの納税義務者をつくり、また資料等々もいろいろに手数のかかることになって大変に煩瑣な、しかもいろいろな意味で煩わしい、たくさんの人を巻き込む、こういうことがあってはならないという意味であったと思います。なるべく国民生活、国民経済の各層を納税者として巻き込まないようにという趣旨であったと思いますので、このたび事業者の八七%は納税義務者にならなくていいといったようなことを考えてみますと、まずまず、国民各位に納税者としての煩わしさをおかけする、そういう点は少ない、そういう意味で総理が言われましたことに背馳をしていないというふうに私は思っておるわけでございます。
  81. 山田英介

    ○山田委員 今大臣は、八七%、それは年間の売上高一億以下の免税業者が措置される、こういうことであります。しかし、納税義務者はそういうことであっても、実際に税を負担する人たちというのは消費者であり国民ということになるわけでございますので、必ずしも一億以下、八七%の免税業者を置いたからといって、これはそれによって非常に小さないわゆる間接税に変身をするということにならないというふうに私は思うわけでございます。  それから、総理が選挙中に導入しないと公約をした大型間接税と売上税(仮称)は別のものであって、これは大蔵大臣もそのような趣旨で御答弁なされたわけでございますけれども、一般消費税といっても新型間接税といっても、あるいは日本型付加価値税といっても売上税といっても、EC型の付加価値税をそのモデルにしているということは間違いないわけでございまして、いわゆる製造から流通に至るまでの各段階にすべて課税される。それは確かに免税業者ということを置けばカットされる分もありますけれども、あるいはまた税収規模、先ほども申し上げましたけれども五%以下で約三兆円という税収が見込める、こういう税収規模から見ても、あるいはまたその仕組みから見ても、これは大型間接税ということには変わりはない、課税ベースの非常に大きなそういう税であることに変わりはないというふうに私は考えます。  それで先ほど局長からも御答弁あったかと思いますが、もし縦横十文字に投網をかけるような、完全無欠な、すなわち免税点も設けない、免税業者もつくらない、あるいは非課税品目も全く設定をしない、いわゆる完全無欠のいわば大型間接税なるものは、世界じゅうどこの国を探してみてもこういう税というのは存在をしないわけでございます。ですから、総理を初め政府の進もうとしておられる今の姿を見ておりますと、世界じゅうに存在しない税というものを念頭に置いて、それをダブル選挙で国民導入しませんと直接約束をしたとしか思いようがないわけでございまして、これは非常に大きな問題である、政治不信を増幅させるもの以外の何物でもないというふうに私には思えてならないわけでございます。  そういうことでございまして、大蔵委員会とか予算委員会とかこういう委員会の席で細かい言葉の部分でやりとりをするということはいささか違うのではないか。国民に向かって直接、しかも選挙のときに総理大臣が公約をなさった。それが、自分の念頭に置いている大型間接税はこういうものであって、国民皆さん考えておられた大型間接税とは違うのですよというような、言葉は大変悪くて恐縮でございますが、すりかえるといいますか、ごまかすといいますか、何かそういうような感じで受け取られるようなこのやり方、これは私は絶対にやってはならないことだと思うのです、そういう議論の中に国民を巻き込んではいけないと思うのです。  ですから、世の中には常識というのがあるわけでございますし、国民にとって政治というのは最高の常識でなければならないと私は思っておりますので、そういう観点からいたしますと、今回のこの売上税を強行突破していこうという、それは選挙時における公約とのかかわりにおいて断じて許されるものではないということを私は明確に申し上げたいと思うわけでございます。  それから、この売上税につきましては、構造的欠陥は非常にたくさんあるわけでございます。言われておりますように、物価高をもたらす、あるいは便乗値上げ誘発の危険性を持っている、個人消費を萎縮させて、それは現在極めて重要な目標であり施策であります内需拡大に逆行する、あるいはまた低中所得者層にとっては相対的に負担が大きくなってしまう逆進性という問題、こういう欠陥を構造的にこの売上税、大型間接税というものは持つわけでございます。そういう意味で、ゆがみ、ひずみを是正して不公平感等を除去するというところに今回の税制改革の目的というものがあるのであれば、この逆進性という点を一つ取り上げても、新たな不公平の拡大というものを招き寄せる、あるいはそれをまたつくり出してしまうということになってしまうわけでございます。税制改革の本来の目的とこの逆進性という問題一つとらえても、それは矛盾するものである、私はこのように思いますが、これはひとつ大臣からお答えいただければと思います。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 所得税が一般的に累進的であるのに対して、これは累進的でございませんから、それをもって逆進性ということは一般に学者の間でも言われておりますが、さあ、それが社会的に不公正であるかないかということは、その社会のあり方によるであろうと私は考えております。  我が国のように、所得水準が一般的にかなり高く、しかも所得の分布が一番均等であるような、いわゆる大衆消費社会になってまいりましたので、この際、殊に直接税と間接税の比率が七対三よりさらに直接税に傾いておるというようなときに間接税をお願いするということは、私はそれ自身社会的な不公正ではないであろう。殊にそれがかなり高くなっております直接税、それも勤労意欲、企業意欲を阻害するような高さになっておりますときに、その一部を間接税に振りかえていくということは、確かに税金そのものは所得税が累進的であるということからいえば累退的である、逆進的ではございますけれども、その度合いというもの、あるいはそれから得られた収入が財政を通じてどのように使われるかということ等々を総合して考えますと、私は不公正ではないというふうに考えます。
  83. 山田英介

    ○山田委員 御答弁でございますが、直接税が負担の累増感といいますか負担が非常に大きくなってきているという原因は、さきに指摘をいたしましたように、それは税率構造によるものでありまして、あるいはまた、事業者、所得者との関連において不公平感、格差というものがやはり重圧感等にもいろいろな形で影響を及ぼしているわけでありまして、所得税の税負担が大きくなっているのでそれを軽減をするために、補完をするためにといいますか、補完的に間接税にもいろいろと手を加えなければならないという御趣旨の答弁かと思いますけれども、私はそうではないというふうに思うわけでございます。それはあくまでも所得税制の中に内包されている不公正な、不公平な税制というものを是正する中で負担の累増感なり重圧感なりというものを除去してあげるべきでありまして、五%以下の税率で三兆円もの負担を国民に新たに課すような形の大型の間接税というものに補完的な役割を持たせるという論法、考え方は私は納得できないなと思うわけでございます。  それはそれといたしまして、大型間接税、付加価値税を導入しておりますEC諸国の国民の例えば一人当たりの税負担額などを比べてみますと、いわゆる直間比率は、日本やアメリカと比べれば間接税の比率が非常に大きいという状況でありますけれども、しかし、付加価値税という大型間接税導入しているEC諸国におきましても、ほとんどすべての国々の直接税は、日本国民が負担をする直接税よりかイギリスや西独では約二倍大きいわけです。付加価値税の税収全体に占める割合が一番大きなフランスにおきましても、国民一人当たりが負担をする年間の税負担額というものは日本よりも大きい、こういう結果になっているわけです。  何を意味するかといえば、それは、EC諸国というのは、今日本がといいますか政府導入しようとしておりますこの売上税、そういう付加価値税という大型の間接税を導入している国においては、いわゆる直接税の負担も大きいし、そしてまた付加価値税という税負担にもこれはたえなければならない。総体的に我が国よりかEC諸国の国民の租税負担率というものは高くなってきている。それは当初は一〇%とかEC諸国ではそれなりに低い税率で導入しても、七年たち八年たつといずれも一五%へとこの税率がはね上がってきている。  ですから、私が大変心配をいたしますのは、そしてまたそういう意味で決して導入をしてはならないんだという意味で私が申し上げたいことは、仮に日本も同じように売上税導入でこれを強行して実施をするということになりましたならば、国民の税負担額というのは、現在のEC諸国がそうであるように、直接税も高い、そして大型間接税による税負担も極めて大きなものを負担しなければならなくなってしまう。それはまた大きな政府政府の膨張へとつながっていき、やがてまた民間の経済の活力が減退をいたしまして、そうして活力を経済社会全体がなくしていってしまうのではないか。こういう一つ一つの懸念とかあるいはまた問題点につきましては、もっともっと国会であるいは国会以外でも長い十分な時間をかけて慎重に慎重に幅広い議論を積み上げていかなければならない問題であるというふうに考えるわけです。したがいまして、何としてもここで売上税を導入するんだ、こういう政府の今の強行するような姿勢はぜひ改めていただきたいことを申し上げまして、時間でございますので質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  84. 池田行彦

  85. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今回、税制改正が一番大きな問題になってきております。一応政府自民党原案がほとんどできつつある、いよいよ最初委員会でございまして、私自身も御承知のように大蔵出身でございますので、同僚や後輩たちが財政再建のためということで一生懸命努力したことはわかるのですが、また逆に、これだけの要するに財政困難に追い込んだ今までの政治家の責任ということをむしろ我々としては追及したいところでございます。そういった面はわかるのでございますけれども、本日は大分たくさん質問を出しましたけれども、わずか三十分ぐらいしか私ども与えられておりません。民社党数が減っちゃったものですから。でございますから、できるだけポイントを絞って御質問したいと思っております。  まず第一に、現在免税業種やあるいは従来の物品税を今度売上税を導入した場合どう整理していくかという作業をいろいろしておられると思いますけれども、それはいつまでになさるおつもりでございますか。
  86. 水野勝

    ○水野政府委員 現在、予算の年内編成をめどといたしまして、極力それに間に合わせるように税制改正の大綱を決めるべく各方面に審議を願っているところでございます。そうしたところからいたしまして、おおむね二十日前後、このあたりにはできるだけ幅広い点につきまして合意を得たい、取りまとめをしてまいりたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  87. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは順次私は論を進めて最後に結論を出したいと思うのですけれども、いずれにいたしましても非常に短期間に、どの業種を免税にするとかしないとか、あるいは従来の物品税とのかかわりはどうするかということを簡単に決めていいものかどうか。というのは、主計局の査定とは意味が違いまして、売上税をどの業種に適用するか、どれを免除するか、いわば非常に産業構造的な意味を持つわけです。私はいろいろな人に会いますと、ここにかけてもらっては困る、大変だというような声が方々から出てくる。建設業界もあれば自動車業界もあれば繊維業界もある。それぞれが必死になって、税金をかけてもらっては困る、自動車なんかも今までにオンされては困る、そういうような話もしております。こういったことを本当に短期間に決めていいものかどうか。  私はまず最初にお聞きしたいのは、日本経済構造あるいは流通構造というのは非常に多層的になっておる。例えば自動車なんかにつきましても、下請あり孫請あり順番になっているわけですね。また反面、流通段階も、例えば繊維を例にとりますと、卸、仲卸、小売、非常に多層的になっている。これは欧州の付加価値税といいますけれども、欧州諸国と比べてこういった生産構造、流通構造はどうなんだろうか。日本の自動車業界あるいはいろいろな業界がなかなか強いというのは、何層にもわたって多重構造になっておる。それがまたいざというときに、言い方は悪いけれども、下請の方に押しつけて合理化をするというのが、悪い意味でもいい意味でも非常に競争力を強めてきておるわけでございます。こういった現状を考えるとき、また流通段階におきましても、多層的な流通段階というのは、それはそれぞれ雇用を吸収している。この流通の業況が悪いといえばまた話は別ですけれども、そういう現状にあるわけです。  これはほかの国と比べてどうであるのか、欧米諸国と比べて日本のこういう生産面あるいは流通面における多層構造はどう比較検討されているのかということをむしろ通産省の方にお聞きしたいと思います。通産のみならず建設もございますけれども一つの例としてはそれが一番わかりやすいわけでございます。例えば私は繊維の卸、小売業者といろいろ接触しておりますけれども、みんな中小企業がそういった役割を持っておる。中小企業の数において日本は圧倒的にほかの国より多いと言われておりますけれども、この生産・流通構造における欧米と日本の比較はどうであるかということをまずお聞きしたいと思います。
  88. 広瀬勝貞

    ○広瀬説明員 お答えします。  欧米に比較いたしましてわが国の生産・流通構造、確かに私どもも非常に多層的であるというふうに認識をしております。ただいま検討、具体化が進んでおります売上税の構想もその辺はよく考えていただいておるのではないかと思いまして、わが国の流通形態とかあるいは取引慣行になじむような工夫がなされているのではないかというふうに考えております。私ども、今後も、いろいろ具体化の作業の中でそういう日本の流通形態とか取引慣行にできるだけこの制度がなじんでいくような工夫をしていただくように、財政当局にもお願いをしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  89. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は、今の答え、非常にあいまいである。いずれにせよ、欧米と日本と比べるとこの多層構造においては差があるとおっしゃるが、それを考えていただいているはずであるということはどういうことですか。現に考えていただいているのですか、どうですか。
  90. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の税制改革におきましては、間接税のあり方というものにつきましても基本的に見直しをお願いをするというのが大きな課題になっておったわけでございます。その中におきましては、もろもろの間接税が考えられるわけでございますが、日本におきますところの生産、流通、こういったものを前提といたしましていろいろ検討をいたしました結果といたしまして、中立性といった点、効率性といった点、こういった点を考えて、現在議論されております売上税といったものが最もなじむのではないかということになっておるわけでございます。  また、その仕組みといたしましても、極力、日本経済の生産、流通、それぞれの独自な形態になじむように工夫をすることが必要であると考えておるわけでございます。その税率は五%以下とするということで極力影響の大きくないようにいたしたい。また、これは、あくまで前段階税額控除を行うことによりまして累積を排除するわけでございますので、取引に対しましては中立的であるように仕組まれておるわけでございますが、その場合におきましても、その前段階税額の控除によります累積排除方式は極力簡素なものとすることによって円滑、適正な執行ができるようなものとするように考えておるつもりでございます。
  91. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は皆さんの努力はわかるのだけれども、選挙をやってみますといろいろな種類の人間と接するわけです。その一人一人が、新しい間接税について、どういう中身か十分理解してないのですけれども、知れば知るほど大変だという声が非常に大きい。この辺、大蔵の皆さんの場合には個々の卸とか小売とか下請、孫請の実態を必ずしも御存じない。これは通産の方々も必ずしも知らないと私は思う。  かつて日本の取引高税が非常に不評であったのは、日本日本なりの一つの生産・流通構造という特色があって、中小企業が多段階でやっておるという要素が本当に強いのじゃないかと思うのです。例えば流通なんかの場合に、よく日本の場合には卸から仲卸、その辺はそれぞれの業者に値引きをするとか、要するに業者によって差別を設けて選別するというようなことも間々行われておりまして、繊維なんかも最後の段階ではもう投げ売りみたいな格好になっている。そうなりますと、こういった値引きあるいは個々におけるそういった調整をそのまま受け入れるのか、あるいは逆に、ではそのまま受け入れるとするならば今度は業者同士が話し合って数字をごまかす、領収証を発行し合うというようなことさえ行われる。そういった日本の慣行がうまくすんなりいくのだろうか。例えば値引きなんかにつきまして、それは値引きで仕入れたあるいは売ったというところを一応税務上考慮されるのか。考慮するとすれば、また逆にうそをついた場合どうなるのだ。これは執行面でございますからまだまだそこまでは詰まってない可能性もある。しかし、必ずこの問題は起こってくるわけでございます。いろいろな新聞なんかにも最近書かれておりますけれども、間接税のしようによって非常にうまくごまかす連中がふえてくる、モラルをかえって害するというようなことを言う報道もございます。こういった面で、私は本当に日本の取引慣行とどうマッチさせていくのかということは重大な問題であると思うのでございます。  この点について、例えば現在の値引きなんかについてはどういうぐあいに、これはちょっと執行の方はまだ決まってないという状況もあると思います。しかし、それを考えないで立法するのもまた問題なんで、この辺はどうお考えでございますか。
  92. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の間接税は、あくまである一定期間の売り上げをもって課税標準とするわけでございまして、一つ一つのものを追っかけて課税をお願いする単品課税とは違うわけでございます。したがいまして、値引き、割り戻し等が行われれば、そういったものもすべて調整をいたした一定期間、一月とか三カ月間のとにかく売り上げをまず出発点とするということでございますので、これは単品課税を追っかけてまいります個別消費税に比べればずっと簡単ではないかと思うわけでございます。  また、売り上げそのものといたしましては、現在所得税、法人税をお願いをいたしておるわけでございまして、所得税、法人税は、売り上げから仕入れを控除し、もろもろの管理費を控除した残りが所得として複雑な所得計算過程を経て算出される。それに比べれば極めて簡便でございますし、また、そうした所得税、法人税が出発点といたしております売り上げをもって基本的な課税標準といたしておるわけでございますので、そうしたこの売上税の世界だけで売り上げにつきまして大きなごまかし等が起こるというふうには考えられないわけでございます。
  93. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今、法人税の場合にはトータルでいくと言いますけれども、この売上税の場合、期間は個々の商取引ではなくてある程度まとめてかもしれませんけれども、一定期間相当値引きみたいな形をとる。本当に値引きだったのかどうかという審査がまず必要になる。ではこれは値引きし過ぎているからおかしいというようなことまで指摘し始めますと大変なことになる。逆に、またそうなりますと、値引きをうまく操作して、要するにうその取引を計上をしている。これは法人税でも同じじゃないかということを言われるかもしれませんけれども、個々の業者、私がさっき申しましたのは、要するに中小企業の多層的な流通、生産であるという要素からいいまして、いわば今の倍の調査も必要でありましょうし、この辺からかつて取引高税が非常に不評になった。今度は個個の取引ではないとは言いますけれども、大問題ではないかと私は思うのでございます。この点、今のお答えでは必ずしも満足いたしませんけれども、時間もございませんから次の問題へ移りたいと思います。  次に、私が最初に申した免税をするいわば非課税の対象業種、これを一体どうするんだ。これは時間を置けば置くほど大変だから思い切ってどこかでやってしまえというような説もあるようでございますけれども、これはまさに産業構造にもろに影響するわけでございます。例えば食料、医療あるいは住宅等がうわさされておりますけれども、それとはまた別に足腰の弱い繊維産業なんかどうするんだ。今円高で非常に苦しくなってきている自動車なんか従来の物品税にオンするのか。そういうようなことを非常に短期間に、わずか今から一週間か二週間のうちに決めるということはまさに神わざに等しいわけでございまして、主計局で補助金をカットしたり予算を査定したりするのと全く意味が違ってくるじゃないか。  産業政策的な意味が今度の非課税対象業種を選定するときに考慮に入れられるのか。確かに食料品というと消費者にとっては当然免除してほしいなというようなことも出てくるかもしれませんけれども、そうした消費者の面とともに産業構造的な考慮が払われるのかどうか。その点を通産及び大蔵、特に最後には大臣にお聞きしたい。本当にこの短期間にそれだけのことができるのか。まず第一に私は通産の方に、今度の対象業種の選定につきまして消費者の立場のみならず産業構造的なものも含んだ形でなされるのかどうか、これは通産のみならず建設もございましょう、運輸もございましょう、その辺のお考えをお聞きして、最後に大蔵の立場をお聞きしたいと思うのでございます。
  94. 広瀬勝貞

    ○広瀬説明員 非課税の物品、サービスにつきましては、ただいま大蔵省の方から私どももいろいろ相談を受けておるところでございますけれども、今回の売上税の構想というのは幅広く負担を求める税にしようということだろうと思いますので、私どもの承っている限りにおいては、産業政策的な配慮というようなことではなくて、むしろ産業経済に中立的な形で考えていくということではないかというふうに承知をしております。いずれにしましても、ただいま私ども大蔵省といろいろ非課税の考え方についても相談をしているところでございます。
  95. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の間接税はあくまで基本的には消費税でございますので、消費税としてなじまない取引、こうしたものは排除されるというのが諸外国の例でございます。資本移転、金融取引、こうしたものは対象にならない。  それからもう一つといたしましては、現在もろもろの個別消費税が課税されており、この税の性格との関連におきまして、またこの税の財源の使途との関連におきまして、やはりこの税体系とは別のものにするという意味から非課税とされるものも出てこようかと思うわけでございます。  それからもう一つは社会政策的な観点からの非課税でございまして、食料品でございますとか社会保険医療でございますとか学校教育、こういったものが排除と申しますか非課税扱いにされるのではないかと思うわけでございまして、大きくはこのように非課税グループといたしましては三つくらいに分けられるかと思うわけでございます。  したがいまして、先ほど通産省の方から御答弁がございましたように、産業構造的な観点からの非課税扱い云々という観点はちょっとなじまないのではないかと思うわけでございます。  このように非課税の取引につきましては既に国際的にもある程度確立された原則となっておるわけでございますので、こうした点につきましてはそうした基本的な考え方に沿いまして処理されることとなるわけでございますので、それほど長い時間をかけてというか、必ずそうしたものでなくてはということではないと思うわけでございまして、この税の性格、外国の立法例等を参酌いたしまして現在政府の部内で早急に詰めが行われておるところでございます。
  96. 安倍基雄

    安倍(基)委員 最終的な答弁は大臣にお聞きしたいと思いますけれども、いろいろの産業といいましても、さっきのように日本の産業の場合には非常に多重構造になっているものがあったり、必ずしも同じではない。また、環境的にも円高ということがあって、非常に足腰が弱くなっている業種もある。それじゃこういったものに加わることによってどの程度の打撃があるのかという要素も当然あるわけでございますし、また、例えば既に税金がたくさん課せられているものにつきまして、これがオンされるのかというような話も出てきております。この辺の整理がそう短期間にできるものか。六十三年の一月施行ですか、要するに期日を切ってそれに間に合わせるようにやっちまうという話で果たしていいものかどうか。  この売上税に対する批判が今どんどん出てきておりますけれども、実体をみんな見きわめた上でやっているのかという気が私はしてならないのです。一つの例として子、孫請、小さなところまで全部ございます。そういったのがこれから新しい税の導入によってどう変化していくのか。全く中立的でいられるのかどうかという要素もあるんですね。はっきり申しますと、もう少し時間をかけるべきじゃないか。実施を六十三年一月と区切ってそのためにしゃにむにいくというのが後で非常に禍根を残すのではないかと私は考えるのでございますけれども、この点について大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに我が国としては初めての試みでございます。よほど慎重にやってまいらなければならないことは確かでございますが、ここへ参りますまでの間に、事務当局としては、仮に税制調査会等々で答申があったときにはどういうことにするかということは内々にはいろいろ考えておったように存じます。ただいまは党内でも連日大変にインテンシブにただいま安倍委員の言われましたようなことを討議をいたしておりますし、各省に対しましても各省庁の御意見を伺っている。各省庁におきましても、今日ここに参りますまでの間にかなり長い時間が実はたっておりますから、恐らく過去何カ月かある程度のことはいろいろに御検討であろうと思います。いずれにいたしましても、各省庁の御意見もよく伺いまして、確かに余り時間がございませんが、後になって悔いを残しませんように一生懸命全力を挙げたいと思っております。
  98. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今、自民党政府で鋭意やっておるとおっしゃいますけれども、そうなると、その短期間に声の大きい者が勝つという可能性もあるんですよ。要するに、そういった話でこの問題を決めていくというのは非常に不明朗で、かつ、危険ではないかと思います。でございますので、ただただもう締め切りがある、それまでに決着をつけるんだ、その中で大きな声を出した者のところへは耳を向けるというような話になりかねないので、私はもっともっと慎重であるべきであると思います。これは最後にお聞きしますが、この点について本当に大臣、もう少し期間をかけるというお気持ちがあるかないか。僕は期間をかけるべきじゃないかと思いますが、どうお考えでございますか。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは非常に難しい要素を幾つか持っておりまして、片方で所得税、法人税の減税をお願いいたしたいと考えておりますこともありまして、この間接税が周知徹底、準備等のためにある程度おくれることはやむを得ないことではございますけれども国会において御審議を願うときには、片方で減税がある、片方で増税、新税があるということで、同時に御審議をお願いいたし、また同時に結論をお出しいただきたいということもございますので、おのずから与えられた日にちには制約がございまして、その間に全力を尽くしたいと思っているわけでございます。
  100. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実は民社党の方はどちらかというと、これは最初からけしからぬということなのです。私は、導入を前提としたお話は、むしろいささか個人的な見解に立つわけでございます。私は、この税そのものの導入というのは、本当に附則の細かいところまで、日本と外国とのいわば差とかそういったものを踏まえた上であるか、いささか疑問に思っているのでございますけれども、この辺は党の立場は絶対反対の立場でございますから、それは御理解の上で、あるいはそんなことまで言い過ぎたのかと言われる可能性もありますので、釈明しておきます。  もう一つ、まだ幾つも聞きたいことがあるので改めてあれいたしますけれども、現在、売上税を交付税の財源にしようという話が持ち上がっておるようでございます。これは、いわゆる三税が今まで交付税の財源でございますけれども、これだけ血のにじむような増税をして、三分の一は地方に行くということが果たしていいのかどうか。実は地方行政の方の連中から言うと、これはやってくれという話でございます。私はしばしば指摘いたしておりますけれども、現在の地方税は非常に偏在している。前も言ったかもしれませんけれども、例えば人口九・五、六%の東京都が全体の一七%の地方税を取っている。メガロポリスを足していけば半分以上の地方税を取っているわけです。それだからそういったメガロポリスはべらぼうに裕福なんですね。だから裕福じゃないところに国税の三分の一を流し込んでいる。ですから、今度の売上税までも交付税の財源にするというのであれば、もっと地方税の偏在をなくして、余り偏在する地方税はむしろ交付税の財源にぶち込んででもいくべきじゃないか。今度の売上税を交付税の財源にするおつもりであるかどうか、現在どうなっているのか、その点について自治省と大蔵省に御見解を承りたいと思います。
  101. 水野勝

    ○水野政府委員 新しい間接税ができました際にはその一部は地方団体に配分することが必要であると考えておるわけでございますが、その具体的な規模、方法等につきましては、国、地方におきますそれぞれの増減税の規模、内容の検討と並行して詰めてまいる必要があるわけでございまして、今後慎重に検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  102. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ちょっと手違いで自治省が来ていないようでございますけれども、今まで新しい税をつくるときにそれを交付税の財源にするかどうかというのは重大問題でございまして、地方自治という面からいえば当然でございましょうが、現在の地方税というのは本当に、繰り返し申しますように、例えば東京都なんというのは庁舎を移転するのに土地代なしで千億以上かかっている。土地代を含めたら何兆円のものでございます。かつての緑のおばさん、二、三時間旗を振るおばさんに東京都はどのくらい払っているかといったら、あれだけのために八十億円使っているという話も聞いたことがございます。そのようにメガロポリスがむだ遣いをしているというときに、これだけの中小企業者が大反対をする売上税、それをまた回すなんということはとんでもない話で、恐らく予算委員会でもいろいろ問題になると思いますけれども、そういった意味でこういう増税の前にもっともっと行革をすべきなのだ、売上税についてはもっともっと慎重にすべきなのだという持論でございます。  時間もございませんし、私も、同僚、後輩の連中が財政再建へのいわば意気込みを強く持つことは評価しておりますし、本当に従来の政治家の罪であると思っておりますけれども、今回の売上税については、これはちょっと導入を急ぎ過ぎているのじゃないかな、もっともっとやるべきことが幾つもあったのじゃないか、それを踏まえまして、いわば最終ゴールをこんなに短くしてもいいのだろうか。何というか、せっかくここまで来たのだから中央突破してしまえという気持ちはわからぬではないけれども、これは主計局の査定とは意味が違う。各産業に響く話、日本経済全体に響く話じゃないかと思うのでございます。  ちょうどこの問題が大詰めに来ているときでございますので、各業種、例えば自動車は今にオンされては困るとか住宅は外してくれとか繊維は流通が大変だからというようないろいろなことを会った連中から聞きますけれども、こういった問題を本当にわずか半月、十日そこそこの間に自民党の中でこう言ったからこうという形では非常に危険じゃないかと思います。この点、もう少し慎重であるべきだと思います。  私はこういった問題はもっと一時間も二時間もお聞きしたいのでございますけれども、わずか三十分でございますから、いろいろお出しした質問はこれからの我々の質問の一つの予告とお思いくださって、時間も参ったようでございますので、最後に大蔵大臣に重ねてお伺いいたしますけれども、このデッドラインをどうお考えなのか。私は場合によっては少しは減税をおくらせても、これはまた個人の意見ですが、導入については慎重であるべきだ。私は、もちろん内需拡大のために減税は必要でございますけれども、いざとなればそれをおくらせても間接税の導入については慎重であるべきであると思います。いかがでございますか。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 るる御心配の点を御披露されまして、私自身も何分にも経験のないことをやるのでございますので、御心配をいただいております点はよく私なりにわかっております。与えられました時間の中でとにかくベストを尽くしてみたいと存じます。
  104. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう時間も参りましたから、また……。
  105. 池田行彦

  106. 矢島恒夫

    矢島委員 現在大蔵省自民党税調などが中心になりまして税制改革案がまとめられつつありますが、大蔵大臣はそのことに関しまして大変大きな役割を果たされているわけですし、また同時に大臣はあの衆参両院同時選挙のときには自民党の総務会長という重要なポストにおられたわけですから、そういう点を十分踏まえまして、売上税の問題、またマル優や郵貯などの非課税の廃止問題、こういうことについてお伺いしたいと思います。  まず初めに大臣にお聞きしたいのですけれども、先ほども一部御答弁があったようですけれども、極めて重要な問題であるし根本的な問題ですのでさらに御質問申し上げるわけですけれども、今回導入しようとしております間接税というものが、日本型付加価値税だとか売上税だとかいろいろなことを申しますけれども、縦横十文字の投網以上のまさに地びき網の様相を呈するような大型間接税そのものではないかと私は思うわけなのですが、もう一度大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十四年でございましたかにいわゆる一般消費税が議論されましたときに、その後国会の御決議もございますけれども、要するに、たくさんの納税義務者をつくってその人たちに迷惑をかける、あるいはいろいろな意味での心配、もめごとを感じさせるようなことにするな、そういうのが国会の御意思であるというふうに私ども考えました。したがいまして、納税義務者について、事業者の八割七分はこれに関係なしということにいたしましたので、その点で、国会の御決議にいたしましても、総理大臣が心配しておられる点にいたしましても、そういう形で背馳しないように売上税がやれるというふうに考えております。
  108. 矢島恒夫

    矢島委員 いわゆる非課税業者の問題であると思うのですけれども、一億円以下の非課税業者というものをつくることによって現在見込んでおる税収においてどれほど減収があるのか、その辺をちょっとお聞きしたいのです。
  109. 水野勝

    ○水野政府委員 現在検討されております骨子でございますと、税率といたしましては五%以下、免税点といたしましては一億円以下、ここらあたりまでがはっきりいたしておるわけでございますが、免税取引と申しますか非課税取引、こうした点につきましては現在詰めが行われているところでございます。したがいまして、これによります税収の具体的な規模等につきましては確定的なことはまだはっきりいたしてないわけでございますが、一億円以下というところで切りますと、大体売り上げで見ますと一割前後のものが排除されるのではないかと思うわけでございますが、これはあくまで売り上げでとらえているわけでございます。御承知のように、多段階累積課税ではございませんで、前段階税額控除の方式をとっておりますので、これが直ちに税収の規模に連動するものではないことを申し上げたいと思いますが、感じとしてはそういった規模のものではないかと思うわけでございます。
  110. 矢島恒夫

    矢島委員 中曽根首相も、今月八日のNHKの「総理にきく」という放映の中で、今の答弁のようなこと、また大臣の御答弁のようなことも含めておっしゃっていたようでございます。しかし、売上税を最終的に負担するのはいわゆる消費者であるという点です。確かに納税義務者が少なくなるという点についてはこの一億円以下ということによっておっしゃるとおりだと思うのですけれども、そのことによっての税収の落ち込みというのは今御答弁にありましたようにそう大きなものではないということがおおよそ予想できる。  そういう状況の中で何といってもまず問題になるのは、課税ベースが広いとか狭いということよりも、原則としてすべての商品やサービスに税金をかけていく、こういう税金であるということです。その広がりといい、二兆九千億ですかの計算もあるようでございますけれども、こういう額の面でも、まさに大型だ。大型でないということについての、言いわけと言ってはなんですけれども、いろいろ御答弁があるのですが、常識的な考えからすれば、どちらが本物を言っているのかという点を国民皆さん方に御判断いただくわけですけれども、そういう点から考えまして、次の点を私は質問したいと思うのです。  一つは、小売業者が免税業者になったという場合であっても、その前段階におきましては、例えば原料生産の場合あるいはまた製造業者、さらに卸業者という段階においては課税されるわけです。そうしますと、その税金分は結局、転嫁の問題もありますけれども、零細小売業者だとか消費者のところにかかってくるわけなんです。そうなりますと、大多数の消費者、国民にこういう大きな負担を強いる。しかも、平年度でいいますと、今度のこの売上税による税収見込みというのは、所得税や法人税に次ぐ大きなものだと言われているわけですね。そういう点から考えてみますと、課税ベースの問題だとか、あるいは個々の段階での税率を五%以下に抑えるとか、そういう点だけで大型ではないと言うのはどうも納得いかないわけなんです。大型というのを常識的に考えてみれば、どれだけの商品に、どれだけの範囲に、どれだけの額でかけられる税金かというところにあるのじゃないかと思うのですが、この点についてもう一度、そういう考え方における大型間接税ということは考えられないのかどうか、お聞きしたいのです。
  111. 水野勝

    ○水野政府委員 小売業者でございますと、免税点で大体九割ぐらいは落ちるわけでございますが、その中で大きな部分を占めます食料品販売業者につきましては、食料品そのものが非課税でございますので、そうした点につきましての前段階からの税額というのは割合少ないのではないかと思うわけでございます。  また、床屋さんとかの対消費者サービス業者、この人たちの売り上げはどちらかというと自家労働的な部分が大きい。そうした業者につきましても、やはり前段階からの負担額というのは比較的小さいのではないかというふうに考えるわけでございます。  また、飲食店等につきましては、まだ最終的に調整は行われてございませんけれども、料理飲食等消費税の課税の対象者をどうするか、仮にこの人たちがそちらの世界で処理されるとすれば、この税金とは全く関係のない世界になるということでございます。  また、税収規模でございますと、先ほどお話のございました所得税、法人課税に次ぐものではございますけれども所得税は、国、地方を合わせて二十四兆円ぐらいのもの、法人所得課税になりますと十数兆円のものでございますので、その規模としてはかなりな差があるのではないかと思うわけでございます。
  112. 矢島恒夫

    矢島委員 今御答弁の中で挙げられました非課税取引の問題、食料品の問題が例に挙げられましたが、先ごろ農林水産省の方で、売上税導入の場合の食料品価格の上昇率試算というのですか、こういうものを発表されております。このことで農水省の担当者を呼びまして聞いてみたわけなんですが、その説明によりますと、税率を五%とした場合に、豚肉で三・四%、ミカンでは二・六%、イワシの缶詰だと二・九%、いろいろと品物を挙げておりましたけれども、それぞれそのような率での上昇が試算されているわけなんです。しかも、ミカンでいいますと、産地が愛媛ということで、東京の消費者が買う、肥料だとか農薬という生産段階でのいろいろな税金がかかる問題、さらに運送だとかあるいは競りの取引のときの税金、そういうものを考えていきますと、消費者の手に渡るときには、平均いたしますと十キログラムで三千二百六十円で今まで売り渡していたものが今度三千三百五十円になる、二・六%のアップだ、こういう試算がされているわけです。  そうしますと、今お答えのように、非課税取引というものもある、だからすべての物品というか広い範囲での課税とは違うのだと言うけれども、非課税物品であっても、このように実際には課税されて、しかも五%のうちの半分以上税金がかかってくるというような状況があるわけなんですね。あるいは国鉄なんかも運賃値上げが非常に困った問題だというようなことも発表されているようでございますけれども、こういう今お答えの中の非課税物品ということに関連いたしますと、どうもそのことで大型ではないというわけにいかないのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  113. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の個別間接税の中心をなすのは物品税でございますが、その他もろもろの個別消費税も、この税ができます場合にはそれぞれ大方吸収されるものも多いわけでございます。したがいまして、現行間接税を幾つかひっくるめたものとしては、間接税として今までの例のものに比べれば大きなものになることは確かでございます。しかし、その点は、まさに限られた物品、サービスに偏った御負担をお願いをいたしております現在の間接税のゆがみ、ひずみを是正したい、これが間接税につきましての基本的な見直しの観点でございますので、そうした点からは個別間接税をある程度統合したものになってある程度の規模になる、その点は否定できないところでございます。ただ、従来から総理が申されております多段階、包括的、網羅的というのは、結局は縦横十文字、全部ひっくるめてお願いをするということはしたくない、こういうことで御答弁を申し上げているその趣旨には背馳するものではないと私ども考えるわけでございます。
  114. 矢島恒夫

    矢島委員 公約に違反するかどうかという問題での大型間接税の定義というのは、大蔵省もなかなか四苦八苦していらっしゃるようでございますけれども、この論議はさらにこれから続けていくといたしまして、公約違反ということのもう一つの中に、国民自民党員が反対するという項目があるわけなんですね。中曽根首相ももちろん公約しておりますし、自民党のたくさんの当選された国会議員皆さん方も、四分の三に相当する人たちがそういう反対するという発言をされて当選されてきている。現在、自治体におきましても反対決議というのが七百五自治体ですか、先月の二十五日あたりでそのくらいの自治体が反対決議をする。また、ここにも持ってまいりましたけれども、いろいろな流通業者の方々が反対をやっていらっしゃる。朝日新聞の「拝啓内閣総理大臣殿」というので、「大型(新型)間接税」とありますが、これに反対する、もしやる場合にはもう一度国民の審判を問えというようなことも入っているわけなんですね。  そういう状況の中で、私は大蔵大臣に腹蔵のないお考えをお聞きしたいのですが、これだけ非常にたくさんの国民皆さん方が反対だと言っていらっしゃる、言うならば国民がこぞってこういうふうな反対状況にある、こういうようなものでも、やはり前段の部分、いわゆる国民自民党員だという部分なんですけれども、このところに対しては公約違反ではないというようにお考えかどうか、ひとつ腹を割ってお聞かせいただければと思うのです。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は先ほども申し上げたところでございますが、納税義務者を非常に小さく絞りましたので、直接御迷惑をかけるあるいは煩わしさをおかけする点も、国民のいわば十人の中でほぼ九人までは納税義務者でないということでございますので、御負担はそれは願うということでございますけれども国民に御迷惑をかけるというその点は、前回のことに比べますと私は大変に改善されておると思いますし、かたがたこの税をいたしますことと裏腹に所得税等の減税をいたしたいと考えておりますことも御理解をいただける点ではないかと思います。
  116. 矢島恒夫

    矢島委員 売上税につきましてはまだまだたくさんお伺いしたい点がありますけれども、時間も限られておりますし、今後この売上税の導入ということには私ども反対という立場からいろいろな部分についてそれを強めていきたい、こんなふうに思います。  続いて次の質問なんですが、いわゆる利子所得に対する非課税制度の廃止の問題なんです。  まず最初に、さきの総務庁の昭和六十年の貯蓄動向調査ですか、あれによりますと、 一世帯の平均の貯蓄額というのが六百九十二万円、こういうふうに出ております。マル優やあるいは郵貯やそのほか特別マル優などを使っても九百万円にはほど遠い額が出ておりますし、最頻値というのが約百七十三万円です。マル優の三百万という限度にも大分離れたところが最も多い、こういう結果も出ているわけなんですね。また、世論調査の中で、どういう目的で貯金をしているかという質問に対しては、病気や災害に備えて貯蓄しているんだという人が七五%もいらっしゃる。あるいは子供の教育費だという方が四四・七%、老後の生活のために何とか貯金をしているんだ、こういう方が四二・五%で、こういう国民が一生懸命やっておるささやかな預貯金に対して課税していくということはどう考えても極めて冷たい政治ではないか、こう考えるわけなんです。所得再分配機能を崩して社会的な不平等を拡大する、こういう問題が利子所得に対する非課税制度を廃止するということにあるんではないか、こう思うわけなんですけれども、この問題についてはどのようにお考えか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  117. 水野勝

    ○水野政府委員 非課税貯蓄制度は、制度の趣旨といたしましては少額で零細な貯蓄につきましてこれを非課税にするということから出発したわけでございますが、最近のその利用状況を見ますと、もう個人貯蓄の七割前後がその適用を受けるということで、貯蓄一般に対しますところの非課税制度に変化してきておるところでございます。また、その利用状況を見ますと、高額所得者ほどより受益しているという現状にあるところでございます。先ほど申し上げた貯蓄そのものの七割ぐらいがこの適用を受けておる。それによりますところの非課税利子額は十三兆円を超えるところとなっておるわけでございます。十三兆円と申します金額は、全国の法人が法人税、法人住民税を納めております法人所得は二十七兆円でございまして、その中から先ほど申し上げた法人課税は十七、八兆円のものを納めていただいておる、こうした規模の非課税利子になっておるところでございます。  今回、税制調査会は、こうした観点を踏まえて、この非課税貯蓄制度につきましては基本的に見直しを行うという方向に先般答申をまとめて提示されたところでございます。ただ、その場合におきましても、老人、母子世帯等社会的な弱者と言われる方々についてはこれは維持していくという方向があわせて出されておるところでございます。
  118. 矢島恒夫

    矢島委員 そういうお答えでございますけれども、税調の答申の中でも「公平かつ公正な国民負担の実現、」というのが出ておりますし、そのことは過去の政府税調の答申でも繰り返し述べられているわけです。例えば昭和五十八年の答申では「個人のすべての所得を総合しこれに累進税率を適用することにより、負担能力に応じた公平な負担を求めるものであつて」以下云々と書いてありますが、利子所得に対しても本来総合課税の対象とすることが望ましい。  そこで、大臣にお聞きしたいのですが、小倉税調会長も、十二月六日の朝日によりますと、「総合課税にすべきだと思う。一律分離課税では、金持ち優遇になる」という発言をされていらっしゃるわけなんですけれども、この利子所得というものも本来的には累進税率を適用して総合課税にする、これが最も公平だということになるんじゃないかと思うのですが、大臣、その辺はいかがでございましょうか。
  119. 水野勝

    ○水野政府委員 利子課税につきましても、所得税でございますので、総合累進課税が望ましいということは確かでございます。ただ、利子所得につきましては、何億口という口数のある極めて大量な対象でございます。こうした大量なもの、それからまた商品としては極めて多様性、流動性に富んでおるものでございます。そうした特殊な所得でございますので、そうした特殊性に即した中立的で効率的な課税方式を選ぶとすれば一律源泉分離課税が適当ではないかというのが先般の税制調査会の答申におきましても多かった意見でございます。そうした選択の中で、現実的に最も適正であり効率的なものとして今回一律分離課税方式を選択して現在検討が行われておるところでございます。
  120. 矢島恒夫

    矢島委員 一律分離課税ということになりますと、従来の政府税調の基本的な考え方を否定するものですし、この大蔵委員会での論議というものも否定するのじゃないか、こう思うわけなんです。ただ、今お答えにありましたように、何億口という大変な量がある、またそのほか流動的だという点を言われましたけれども、今日コンピューター技術というのは非常に発達してきております。新聞その他専門家意見を言っておるようでございますけれども、そのことは不可能ではないんだというような意見が相当今日出されているわけなんです。余りにも安易な道といいますかやりやすい方法というのでこの一律分離課税というのを導入しようとしているということを私たちつくづく感じるわけなんです。  さらに、不公平税制の拡大の問題では、先ほど高額所得者のマル優制度の利用の問題を出されましたけれども、貯蓄残高の最も多いいわゆる最頻値に近い二百万の場合をちょっと例にとってみますと、利率を四・〇一%ぐらいで計算してみますと、今までゼロであったものが今度の制度廃止によって一万六千円からの税金を取るような状態になるし、また、一億円を預金した場合には、今度は一律二〇%ということになるわけですから、その税負担については六十万も減税される。まさにこのことは大口預金者とか資産家に対して非常に優遇されたものだという点をどうも指摘せざるを得ないのですけれども、その点はいかがでしょう。
  121. 水野勝

    ○水野政府委員 その点は、まさに、高額所得者は高額な貯蓄を有しておられる、そういう高額な貯蓄を有しておられる方が非課税貯蓄をフルに利用して負担の軽減を受けておったというところに一つの問題があるのではないかと思うわけでございます。五千万なり一億円の貯蓄を持っておられる方、こうした方は、例えば家族四人でございますれば、お一人九百万円、合わせて三千六百万円は丸々非課税の貯蓄を利用できる。この非課税の貯蓄を超えた場合には、恐らく割引債等を御利用になる。場合によっては三五%の源泉分離をお使いになる。そうした点からいたしまして、むしろこうした高額所得者の方々で非課税貯蓄を大量に利用されていた方にまず適正な御負担をお願いするというところに今回の改正の趣旨もあるわけでございますので、必ずしもこれが金持ち、高額所得者優遇ということではなく、私ども、貯蓄の実態に即した適正な課税方式ではないかと考えるわけでございます。
  122. 矢島恒夫

    矢島委員 全然納得いかないのですけれども、時間の関係もあります。このマル優など少額貯蓄非課税制度存続せよということで地方自治体四十以上が意見書を採択しておると思いますし、その他多くの団体がこの廃止反対という決議を出しております。また、同時選挙のときの自民党議員さんの中にもたくさんこの問題を廃止反対ということで当選された方もおるわけです。これを廃止していくということは公約違反という重大な問題であるということを私指摘いたしまして、最後の質問に入りたいと思います。  政府税制改革の法案を次の通常国会に提出しようということで作業を進めているようでありますけれども税制改革の法案を一括法で処理しようというような方向があることを聞いておるのですが、宮澤大蔵大臣、そのような準備は既に大蔵省に指示を出されたのでございましょうか。大蔵大臣が出されたかどうかということです。
  123. 水野勝

    ○水野政府委員 その前に、法案の形等技術的な問題でございますのでその前にお答えをお願いする次第でございます。  現在まだ法案の中身それ自体が鋭意党との間で詰められておる段階で、どのような税法なり何なりになるのか、それからまた、それに関連してほかのものがどのような一括して調整を要するものになるのか、そこらの全体の動向を見きわめまして、今後具体的、技術的に法制局等と御相談をしてまいりたい、現在こうした段階でございます。
  124. 矢島恒夫

    矢島委員 大蔵大臣、続けての質問の中で答えていただけるならばあわせて御答弁していただければいいと思うのですが、今のお答えは、法制局の方との折衝が始まってこれから詰めるんだというのですが、私、大蔵省を呼んでちょっと聞きましたところ、何かもうそういう準備で、二十近い法案を一括してやるようにお願いすることになると思いますなんということを言う方がいましたが、大蔵大臣がまだ言わないうちに大蔵省はどんどん進めているのではないか、こういう点は非常に問題があるのではないかと思いますけれども、いずれにしろ国会の審議というものを、本当にこういうわかりにくい、特に国民皆さん方にとっては税制は非常にわかりにくいわけですから、特に税金というのは納税者の理解、協力というものを十分に得られなければならないわけですから、もっとわかりやすい税法というものをつくっていくべきだということは言えると思うのです。ただ、今回いろいろな、例えば国鉄の分割・民営の場合でも一括法案ということで八つも一遍にやってしまうとか、そういう形で次々と進めてきているというやり方、これを今度の場合には絶対やらないでもらいたい、このことを要望しておきますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたびの税制改正そのものが戦後四十年初めてのもので、いろいろな性格から一体的に国会で御審議をいただきたい、増減収なしといったような点も含めまして御審議を一体としていただきたいという希望を政府は持っておりますので、そういう意味では一つの法律で御審議をお願いできますと政府としては大変に幸せだと実は思っておるわけでございますが、これにつきましては、過去における先例でありますとか、あるいは御審議をされます国会立場等々いろいろな問題が実はあると思いますので、私ども少し法案の中身を詰めましてから、法制局を初め内閣全体で検討をいたさなければならない問題であろうと考えております。
  126. 矢島恒夫

    矢島委員 最後に、現在検討されている売上税だとか利子所得にかかわる非課税制度の廃止の問題、非常に多くの問題を抱えているということ、同時に、このような公約違反、明らかに公約違反である大型間接税、しかも国民の大多数が反対している現状の中で、このような法案については直ちに撤回される、準備をやめるということを要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  127. 池田行彦

    池田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十分散会