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1986-11-05 第107回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十一年九月十一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    今枝 敬雄君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       高鳥  修君    戸塚 進也君       鳩山由紀夫君    藤波 孝生君       村井  仁君    村上誠一郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    上田 卓三君       沢田  広君    中村 正男君       早川  勝君    堀  昌雄君       柴田  弘君    古川 雅司君       矢追 秀彦君    薮仲 義彦君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君 ────────────────────── 昭和六十一年十一月五日(水曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 池田 行彦君    理事 大島 理森君 理事 熊川 次男君    理事 笹山 登生君 理事 中川 昭一君    理事 中村正三郎君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       石破  茂君    今枝 敬雄君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    小泉純一郎君       笹川  堯君    杉山 憲夫君       戸塚 進也君    鳩山由紀夫君       村井  仁君    村上誠一郎君       上田 卓三君    沢田  広君       中村 正男君    早川  勝君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    日笠 勝之君       矢追 秀彦君    山田 英介君       安倍 基雄君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  中西 啓介君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      日向  隆君  委員外出席者         経済企画庁調整         局財政金融課長 大塚  功君         外務大臣官房審         議官      川上 隆朗君         文部省教育助成         局財務課長   井上 孝美君         林野庁管理部管         理課長     鈴木 久司君         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       平野 直樹君         郵政省貯金局経         営企画課長   木村  強君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 九月十一日  辞任         補欠選任   古川 雅司君     山田 英介君   薮仲 義彦君     日笠 勝之君 同月十二日  辞任         補欠選任   伊藤  茂君     武藤 山治君 十月三日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     奥野 誠亮君  石破  茂君     小此木彦三郎君   今枝 敬雄君     宇野 宗佑君   江口 一雄君     小渕 恵三君   矢島 恒夫君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     今枝 敬雄君  小此木彦三郎君     石破  茂君   小渕 恵三君     江口 一雄君   奥野 誠亮君     井上 喜一君   金子 満広君     矢島 恒夫君 同月三十一日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     宇野 宗佑君   石破  茂君     福島 譲二君   今枝 敬雄君     小坂徳三郎君   江口 一雄君     原田  憲君   金子 一義君     松野 幸泰君   戸塚 進也君     田中 龍夫君   村井  仁君     武藤 嘉文君   矢島 恒夫君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     井上 喜一君   小坂徳三郎君     今枝 敬雄君   田中 龍夫君     戸塚 進也君   原田  憲君     江口 一雄君   福島 譲二君     石破  茂君   松野 幸泰君     金子 一義君   武藤 嘉文君     村井  仁君   不破 哲三君     矢島 恒夫君 十一月四日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     宇野 宗佑君  石破  茂君     小此木彦三郎君   今枝 敬雄君     細田 吉藏君   江口 一雄君     村田敬次郎君   金子 一義君     松野 幸泰君   戸塚 進也君     海部 俊樹君   日笠 勝之君     矢野 絢也君   矢追 秀彦君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     井上 喜一君  小此木彦三郎君     石破  茂君   海部 俊樹君     戸塚 進也君   細田 吉藏君     今枝 敬雄君   松野 幸泰君     金子 一義君   村田敬次郎君     江口 一雄君   正木 良明君     矢追 秀彦君   矢野 絢也君     日笠 勝之君     ───────────── 十月三十一日  昭和六十年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例に関する法律案内閣提出第二〇号) 同月八日  大型間接税導入反対等に関する請願長田武士紹介)(第七四号)  大型間接税導入反対等に関する請願渋沢利久紹介)(第七五号)  国民本位税制改革に関する請願大原享紹介)(第一二五号)  国鉄共済年金改善に関する請願山花貞夫紹介)(第一二六号) 同月十六日  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願粟山明君紹介)(第一六八号)  同外一件(与謝野馨紹介)(第一六九号)  同(三木武夫紹介)(第二六四号)  大型間接税制定反対に関する請願村山富市紹介)(第二〇七号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願野呂田芳成君紹介)(第二五〇号)  大型間接税導入反対税制改革等に関する請願菅直人紹介)(第三一〇号)  大型間接税導入反対不公平税制の是正に関する請願菅直人紹介)(第三一一号) 同月二十三日  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願越智通雄紹介)(第三四九号) 同月三十日  毛皮製品に対する物品税課税廃止に関する請願鯨岡兵輔紹介)(第五二一号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第五二二号)  同外一件(深谷隆司紹介)(第五二三号)  同外一件(園田博之紹介)(第五六二号)  同(熊川次男紹介)(第六四六号)  大型間接税導入反対国民本位税制改革等に関する請願正森成二君紹介)(第五五九号)  大型間接税導入反対等に関する請願工藤晃紹介)(第五六〇号)  同(正森成二君紹介)(第五六一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第六〇二号)  非課税貯蓄制度存続に関する請願赤城宗徳紹介)(第六四四号)  税制改正に関する請願粟山明君紹介)(第六四五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十月二十八日  税制改正に関する陳情書外四件(第二八号)  所得税減税に関する陳情書外五件(第二九号)  大型間接税導入反対に関する陳情書外十五件(第三〇号)  日本銀行の国庫納付金に係る課税適正化に関する陳情書(第三一号)  公共事業用地取得に伴う税制改正に関する陳情書外一件(第三二号)  少額貯蓄非課税制度存続に関する陳情書外二十九件(第三三号)  公的年金受給者所得控除制度等適正化対策に関する陳情書(第三四号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  昭和六十年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例に関する法律案内閣提出第二〇号)      ────◇─────
  2. 池田行彦

    池田委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項 の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 池田行彦

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 池田行彦

    池田委員長 次に、昭和六十年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例に関する法律案議題といたします。  まず、政府より趣旨説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣。     ─────────────  昭和六十年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  5. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました昭和六十年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和六十一年度におきましては、給与改善費を初めとする追加財政需要相当程度に上る一方、税収は当初予算をかなり下回る状況にあり、政府は、補正予算編成に当たり、まず、既定経費節減等に最大限の努力を払ったところでありますが、なお財源不足が生ずる状況にあります。  こうした厳しい財政事情もとで、特例公債追加発行を回避するため、本法律案は、臨時異例措置として、昭和六十年度歳入歳出決算上の剰余金全額補正予算不足財源に充当することができるよう財政法特例を定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  財政法第六条第一項においては、各年度歳入歳出決算上の剰余金の二分の一を下らない金額を翌々年度までに公債または借入金の償還財源に充てなければならないこととされておりますが、昭和六十年度剰余金については、この規定は適用しないこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 池田行彦

    池田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  7. 池田行彦

    池田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川勝君。
  8. 早川勝

    早川委員 ただいま議題になりました法案につきまして若干の質疑をいたします。  今大臣から、今回の法案につきましてその提案理由等内容がございましたけれども、今回、一般会計に繰り入れる四千四百五億円の剰余金の発生した背景、これについてちょっと御説明いただきたいと思います。
  9. 角谷正彦

    角谷政府委員 昭和六十年度一般会計決算上の純剰余金は今御指摘のように四千四百五億円でございますが、その内訳につきましては、まず歳入増加二千七百二十三億円、歳出不用千七百六億円の合計額四千四百二十九億円から道路等特定財源の増、いわばひもつきになりますものの増の二十四億を差し引いたものでございます。  まず、歳入について申し上げますと、税収につきましては、補正予算に対しまして五百三十八億円の増収でございました。税外収入につきましては三千四百八十五億円の増収でございましたが、このうち主なものは日銀納付金の三千百二十五億円の増加でございまして、これは国債市況が非常によかった、国債市況が上昇したことによりまして、日銀のいわゆるオペレーション等による利益が増加したということに基づくものでございます。こういった中から特例公債につきまして、いわゆる出納整理期間中の特例公債発行千三百億円を取りやめましたので、これを差し引いた中身が結局二千七百二十三億円の歳入増加でございます。  一方、歳出不用でございますが、その内訳といたしましては予備費不用が五百七十三億円、それから予備費以外の歳出不用が千百三十三億円でございます。予備費以外の歳出不用の主なものは、石油公団の行います炭鉱投融資実績等が下回ったことに伴いまして二百五十億円、それから退職手当の支給が義務教育費国庫負担金等を中心に少なかったことによります二百三億円などが主なものでございます。
  10. 早川勝

    早川委員 剰余金補正予算に繰り入れるに当たっては、特例公債発行をできるだけ抑えたいというお話がございましたけれども、いわゆる特例公債発行を抑える、仮にこの剰余金の繰り入れをしなかった場合、特例公債増発になるわけです。その理由背景は、恐らく税収が落ち込んだと思うのですけれども、このあたり理由につきましてもお聞かせいただきたいと思います。
  11. 角谷正彦

    角谷政府委員 現在国会に提出しております昭和六十一年度補正予算におきましては、税収が今御指摘のように、当初予算に比べまして一兆一千二百億円の大幅な減収になっております。他方歳出につきましては、給与改善費を初めいろいろな追加財政需要がございます。こういった歳入歳出相当厳しい情勢もと昭和六十一年度補正予算を編成したわけでございますけれども、まず私どもといたしましては、既定経費節減等大幅な節減不用によりまして極力努力する、しかしそれでも相当大幅な収支ギャップがあることは事実でございます。  こういった中で、先ほど大臣から提案理由説明で御説明申し上げましたように、特例公債増発を何とか回避したい、そのための臨時異例措置といたしまして、やむを得ず昭和六十年度歳入歳出予算剰余金全額四千四百五億円を不足財源として充当させていただいた、こういうことでございます。
  12. 早川勝

    早川委員 税収が落ち込んで、恐らく法人税あるいは所得税が落ち込んだわけですけれども、その原因は恐らく景気の問題あるいはその内容である生産活動によると思うのです。ここでちょっと、これはなかなか難しい答弁かもしれませんけれども、ことしのGNP実質四%が本会議等答弁を伺っていますと、努力目標だという答弁をいただいているのですけれども、税収落ち込みを考えますと、例えばことしの税収見積もりをやるときに、もちろん、昨年の暮れからの経企庁の出した経済見通しもとにして恐らく推計されているわけですけれども、今回こういう落ち込みが生じたことによって、このGNPの問題について今現在どのような認識をされていますか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  13. 水野勝

    水野政府委員 税収見積もりにつきましては、今回のような補正予算に際しましてのと申しますか、年度途中におきます見積もりは、もちろんもろもろの経済指標等は参照いたしておるわけでございますが、年度中途でございますので、その年度のある程度の実績というものが判明をいたしておるわけでございます。そうした実績もとにいたしまして、それから今後におきますところの企業収益につきましてのヒアリング、そうしたものを資料にいたしまして積み上げをしておるというのが大まかな方法でございます。したがいまして、年度途中におきますところの見積もりといたしましては、必ずしも政府経済見通しとかそういったものとは直結したものとはなっていないわけでございまして、GNPとの関係で申しますと、いろいろそこに変化が生ずるわけでございます。  もともと税収GNPとの関係につきましては、弾性値といった数字でよく論議されるわけでございますが、この弾性値景気の局面、経済動向によりましてかなり変動するものでございますので、そうしたGNP税収との関係につきまして、常に一定である、あるいは経済の、GNP変化すれば必ずそれに応じた税収変化する、あるいは税収変化するのはGNP変化が必ずその裏にあるといったところまで厳密な関係は認められないわけでございまして、結果的に見ますと、GNP税収との間におきましては弾性値としていろいろ変化はしておるわけでございますが、事前的にそうした関係から税収を云々するというところまでには至っていないわけでございます。
  14. 早川勝

    早川委員 今説明がございましたけれども、ただ、最近のこの弾性値の問題について考えますと、GNPが高いときにはかなり乖離が起きると思うのですけれども、こういう低成長の中では余り違いがないのではないか。例えば見通しを見ても、一・一とかそういう見通しを出しているわけですから、そんなに違いは出てこないのじゃないか、弾性値の観点から見て。そんな感じを持つのですけれども、いかがでしょうか。
  15. 水野勝

    水野政府委員 確かに弾性値は、昭和三十年代、四十年代の高度成長期におきましてはGNPの方もかなり伸びておりますが、税収の方もかなり高い伸びを示しておる。その関係におきまして弾性値は大体一・五前後と申しますか、比較的高い水準であったことは事実でございます。その後経済安定成長に移行いたしましたと申しますか、昭和五十年代以降、弾性値としても一を若干上回るといった水準にあるわけでございます。しかしながら、昭和五十年代に入りましても、昭和五十四年、五年あたりは割合高い数値を示しておりますので、なかなかどうも一概には申し上げられないところでございます。
  16. 早川勝

    早川委員 そうしますと、先ほどの答弁と重なるわけですけれども、税収が落ち込んではいるけれども、GNP動向にそれほど考えなくてもいい。私などは、弾性値は一・一とか一・〇というような動向にあると思うのですね。そうしますと、GNPの動きが税収に割と直接に反映しているのじゃないか、そういうふうに考えますと、こういう今回のような落ち込みからすると、GNPが名目にして五・〇ですか、そういう数字が出ていますけれども、どうも低い方に直した方がいいのじゃないかな、そんな感じを持つのですけれども、もう一度答弁お願いします。
  17. 水野勝

    水野政府委員 去年からことしにかけましての円高なり原油価格が低落した、こういった時期におきましては経済動向から申しますと、国民経済計算からいろいろ議論される在庫品評価調整、これがプラスになったりマイナスになったり、これが大変税収も左右するわけでございます。これがかつて第一次石油ショック、第二次ショックあたりにおきましてはプラスとなって税収にあらわれ、それがその数年後には急激に税収減をもたらすようになっておる。  今回のような原油の低下あるいは急速な円高、こういったものを前提といたしますと、むしろ在庫品評価損が出て、それがどういう時期にどのくらい発生し、どういうタイミングで消滅していくのか、こういった問題もあろうかと思いますので、去年からことしにかけましての税収経済動向につきましてはなかなか難しい問題がある。したがいまして、現時点での弾性値云々からGNP税収との関係を見直すことはなかなか難しい問題であると思っておりますが、いずれにいたしましても、補正予算での税収は専ら積み上げをもって積算をいたしておるというところでございます。
  18. 早川勝

    早川委員 剰余金が、一般会計特例国債増発を防ぐためにということが行われているのですけれども、そうしますと問題は、財政再建の問題についてどういうふうにこれから考えて取り組んでいったらいいのかという問題になると思います。  それで、大蔵大臣も、いわゆる大蔵大臣として初めてこの大蔵委員会で御答弁いただくわけですが、御存じのように、特例国債というのが昭和五十年度補正予算から発行されたわけです。今六十一年度ですから十一年間、当初出しました年度昭和五十一年度ですから十一回目ですか、大ざっぱに言って十年余発行されてきているわけです。そういう意味で財政再建特例国債をなくさなければいけないな、恐らくそういう政策運営がされてきたと思うのですけれども、この十年間、いわゆる五十年代から今日にかけての我が国特例国債を抱えたあるいは国債に抱えられた財政、いろいろな表現がされていますけれども、この十年間の赤字財政につきましてどんな所感をお持ちになるか、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 石油危機が発生いたしましたのは昭和四十八年でございますが、その後しばらくたちましてからその影響が我が国財政にもあらわれ始めまして、昭和五十年度税収不足三兆九千億円でございましたか、そういう事態が発生をいたしました。ここから特例公債発行が始まるわけでございますが、御記憶のように、その後昭和五十一年、五十二年と非常に不況がまたこれに続きまして、特例公債発行が継続して行われることになったわけでございます。  このような事態にかんがみて、政府としても、どこかでこの財政バランスを合わせなければならないということは常に考えておりましたが、大平内閣におきまして、当時、一般消費税と仮称せられました新税導入することによって、財政バランスを回復したいというふうに政府は考えたわけでございます。しかし、昭和五十四年の十月に総選挙がございまして、この問題が総選挙の大きなテーマになりまして、結果として政府はこの新税導入を見送ることを決定いたしました。  しかし、問題はなお続いておりまして、昭和五十四年度公債発行額は十三兆円になりまして、一般会計公債依存度は三四・七%という極めて異常な状況に達しましたので、五十五年度から財政再建、これを元年といたしまして国債の減額に努める、それで五十八年からは一般歳出の対前年度比同額以下というふうに、一般歳出はずっと減らしてまいりまして今日に至っておるわけでございます。今日に至りまして六十一年度予算補正後では国債依存度は二一・四%になったわけでございますが、これは五十年度以降過去十年間の一応最低になったということでございます。しかし、依然として二〇%の公債依存をしておるという、極めて健全でない財政体質でございます。  そこで、このような財政でありますことは、いろいろな事態に対しての財政対応力を極めて弱めております。現在のように異常な経済情勢になりまして、ただいま補正予算の御審議をお願いしておるわけでございますけれども、この補正予算自身がいかにも対応としては十分でないという御批判をあちこちから受けておるわけでございますが、これは財政が十分にこの事態対応できないということを如実に実はあらわしておる。御審議いただいておりますこのような法案に盛られました措置をいたしましても、なお財政がこのような事態に十分に対応できないほど弾力性が弱まっておるということを考えますと、何とかしてこの事態は計画を立てて脱却をいたさなければならないというふうに、私どもやはり考えます。  で、そういう考えのもとに、逐年一般歳出を抑えながら、財政体質を何とかして改善をいたしたい、そのために最大限の努力をすることはまことに現在の急務であるというふうに考えておるわけでございます。
  20. 早川勝

    早川委員 大ざっぱに言いますけれども、この十年間の特例国債を抱えた財政運営が行われて、その脱却が大きな課題だということで今日に至っているわけです。これは一方に経済全般の動きがあるわけですけれども、財政再建特例国債からの脱却を図るために、予算それ自体として取り組んできたいわゆる政策的な方向というのがあったと思うのですね。例えば五十四年の大平内閣のときの増税、一般消費税の増税という方針が出たわけですけれども、考えてみますとそれ以前は、従来から経済予算との関係で、一般会計の伸びがGNPの名目より高く編成をしていくのか、それより抑えていくのかという、一つのメルクマールになっていたと思うのです。その観点で見ますと、五十年代の大平内閣のときの増税、一般消費税の増税という方針が出る前は、建設国債を割と出してGNPを上回る予算規模で編成をして、言うなれば景気をよくして自然増収を上げて財政再建を図っていこう、こんな形での予算編成が行われ、財政運営が行われたと思うのですね。  それが後半になりまして、財政再建ということで一兆円減額等が始まるわけですけれども、どうも昭和五十年代の後半は、今の臨調路線の中で歳出カットの方に方針が転換されている、そして今日に至っている、こういう大きな二つの流れを考えますと、こういう流れ、そしてこれから六十一年度以降、六十二年度以降どういう方向になるかということも考えられるのですけれども、この十年間の大きな二つの流れについてはどのようなお考えか、ちょっと伺いたいと思います。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはわずかに十年しかたっておりませんので、一つの歴史的な事実としてどのように評価をしていいかは、少し申し上げるのに早いかもしれないと思いますけれども、昭和三十九年にオリンピックがございました、それから四十五年に万博がございましたわけでございますが、そのころまでの我が国経済の伸びというものは、お互いが全く、何と申しますか、もう常に日本経済成長していくというふうにいっとき考えたほど伸びていたわけでございますが、その日本経済の伸び自身に、もう内在する問題があるいは既にあったのかもしれません。が、たまたま四十八年になりますと石油危機でございますので、どの部分が石油危機の直接の結果であって、どの部分が日本経済成長そのものが実は鈍化し始めておったのかということはなかなか分けて考えにくい、いずれ将来はわかってくるかもしれませんが。いずれにいたしましても、四十八年石油危機を契機にいたしまして日本経済成長が非常に大きな影響を受けた。石油依存率が高うございましただけにその影響は大きかったわけでございまして、それが先ほどから申しましたように、如実に財政に反映をいたしたと思います。  ただ他方で、日本経済そのものは、この石油危機という事態の中でそれに対応していくうちに、いわば新しい技術、省エネを目標としておりますうちからいろいろな新しいものを生みつつございまして、それが日本経済がいわば新しい道へ、仮にハイテクノロジーとでも申しますか、よく言われますような言葉で象徴されるような、エレクトロニクスを中心とした新しいものに変わりつつあるということも事実でございますから、この石油危機が日本経済プラスに働いている面がもう明らかにあると私は思います。  ただ、それは財政にはどうも反映されておりません。経済そのものがかなり、いわば自由社会第二の経済になり、日本はアメリカとともに新技術の最先端を今歩きつつあることは確かでございますけれども、それならそれが財政に反映して国庫も豊かになってきたかと申しますと必ずしもそうでないというような、二つの面を今持ちつつ日本経済は進行しているのではないだろうか。殊に、ごく最近のことを申しますと、昨年のプラザ合意、為替調整というものがこの一年間、日本の経済財政に与えました影響は、これがまたかなり大きゅうございます。といったようないろいろな錯雑した面を持ちながら、今我々の経済は進行しているのではないかというふうに考えています。
  22. 早川勝

    早川委員 なぜ、この十年間の大きな流れを二つに区分してお伺いしたかといいますと、簡単に言いますと、五十一年から五十六年までは、いわゆるGNPを上回る率での一般会計での予算編成が行われた。そして五十七年以降からは、そのGNPを下回って歳出削減という方針で予算編成が行われて、ずっとそれを見ていますと、そうはいっても、いつも補正予算の段階で景気対策を考えなければいけない、同じようなパターンが繰り返されておるわけですね。そうしますと、当初予算編成に当たって、マイナスシーリングでまた来年度も行われるわけですけれども、どうもそういうやり方が限界に来ているのではないかという気が私なんかはするわけです。  それで、財政再建に絡むわけですけれども、昨日の衆議院の予算委員会大臣財政再建について、日本の円高問題だとかアメリカの貿易赤字、それから日本の税制改正等の問題が一定の方向が定まるならば、いわゆる六十五年度特例国債脱却という、一つの目標としての財政再建を若干見直してもいいんだというような答弁がされている、それとも絡むんですが、ことし一月の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」の中で、中期的には、国の一般会計歳出の伸びは名目成長率以下とするという考え方を基本的に踏まえていくということが方針に書かれているわけですね。  そうすると、六十五年まで同じような、逆に言いますと、五十七年度から六十五年度までそういう意味での歳出カットという方針でずっと財政再建を進めていく、またそれが可能、このように理解されているのかということで、私などはそれはどうも難しいんじゃないか。先ほど来言いますように、歳出増、財政が積極的に自然増収を生み出すような財政運営をやろう、それが変わっていったので、経済構造が変わってきたので、それが不可能で歳出削減の方向に変わった。じゃ、これから五年間、五年タームで考えていきますと、今までと同じ方向で進めて財政再建ができるのかという問題について、どうも私などは消極的な考え方をとるのですけれども、その点はいかがですか。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 後ほど政府委員から、必要があれば補足をしてもらいますが、昨日予算委員会でお尋ねがございまして、それは昭和六十五年度には赤字特例公債依存体質を脱却するということはもうここまで来れば事実上難しいのではないか、そういうお尋ねがございまして、私はそれに対しまして、なかなか容易ならざる事態であることは存じております、しかしこういう一つの目標を持っておりませんと、歳出を厳しく削減するということが、削減する方も削減を受ける方もやはり一つの目標があって我慢をすることでございますから、それを取ってしまいますといわばなまってしまって、そういうことが現実にできないということになってしまうことを心配しておりますので、やはりこの目標は掲げておかなければならないということを申し上げました。  重ねて、しかしそれは現実的ではないだろうというお話があって、そこで私がつけ加えて申し上げましたことは、この看板をおろしますときにはこれにかわる看板を持たなければならぬ、いつまでも特例公債におんぶをしておっていいというわけではございませんから、かわる看板を持たなければなりませんが、それならばそれはどういうものを持ったらいいのかということについて、やはり議論というものはなかなか尽きないであろう、それで今度掲げます限りは、きちんとそのような状況をつくり上げていくということがどうしても必要でございますが、それには幾つかの条件があるように思われますと申し上げまして、ただいま御指摘になりましたような幾つかの条件が整いまして、そうしてその上でこの年以降はもう特例公債はゼロにいたしますということにいたさなければ、新しい看板をかけかえた意味がない、ただ看板をおろすだけというわけには、今の財政の現況ではまいらないという気持ちがいたしましたので、そういう意味のことを申し上げたわけでございます。  したがいまして、そのような見通しが現実に立ってまいりますことが一日も早いことを望むわけでございますが、ただいまのところとしてはこの六十五年度という目標を変えるわけにはやはりまいらない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  24. 角谷正彦

    角谷政府委員 「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、これは本年の一月に国会にお出ししたものでございますが、この点について若干補足させていただきます。  確かに委員指摘のようにこの中では、「歳出全体の規模については、中期的には、適度の経済成長率が維持されていることを前提に、国の一般会計歳出の伸びは名目成長率以下とするという考え方を基本的に踏まえつつ、引き続き歳出全般にわたる徹底した節減合理化を進め、全体としての歳出規模の抑制を図る。」こう書いてあるわけでございます。ここで「中期的には、適度の経済成長率が維持されていることを前提に、国の一般会計歳出の伸びは名目成長率以下とするという考え方を基本的に」というこの考え方は、実は臨時行政調査会において提言されておる考え方をそのまま引っ張ったものでございます。  考え方といたしましては、現実の予算編成におきまして一般会計を見てみますと、国債費、地方交付税、一般歳出と三つございます。国債費につきましては、御承知のように百四十兆円を超える国債残高がございまして、年々これが累増していくという状況もとでは、国債費の伸びというのはかなり大きいわけでございます。それから地方交付税につきましても、国税三税の伸び、三二%は地方交付税でございますので、通常の税収もとでは一般会計の伸びを上回る傾向にございます。こういった中では、いずれにいたしましても、国債費、交付税を除きますところの一般歳出の伸びは、名目成長相当程度下回って抑制せざるを得ないというのが実態でございます。  こういった努力を通じまして、この四年間は一般歳出ゼロという中で当面の財政改革を進め、そしてその中で六十五年までに特例公債依存体質から極力脱却していこう、こういうことで進めているわけでございまして、このことはまさに現在の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」をお示ししたものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  25. 早川勝

    早川委員 財政再建の看板を書きかえるという場合に、いろいろな財政再建の目標というのが指摘されているわけですね。特例国債依存率ゼ口、特例国債発行をゼロにするというのも一つでありますし、いわゆる四条国債を含めての国債依存率を下げていくことを一つの目標にしたらどうなんだろう、あるいはGNPにおける国債残高を一つの指標にしたらどうか、いろいろ議論があるわけですけれども、ゼロにするというだけでは現実にどうも不可能だし、そのやり方というのがマイナスシーリング、ゼロシーリングというやり方で、生活のサイドから見ますと、どうも弊害がしわ寄せされるというようなことを考えますと、この目標、年次の問題もありますけれども、どうも看板の中身を、特例国債ゼロというのがすべて財政再建だという見方から少々変えてもいいんじゃないかな、また、変えることが現実的じゃないかなというような感じを持つのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在、これは全部の国債でございますけれども、国債費が一般会計の二割を超えておりまして、これは漸増するわけでございますので、一般会計というものが大変に弾力性を欠いておる。どうもこのことは何とかして、少なくともそのうち、いわゆる特例国債に関します部分は何とかして終期を定めておきませんと、この国債費のふえていきますふえ方にめどが立たない。その結果として一般会計弾力性が失われているという、このことは何とかある時期にはやはり特例公債だけはなくしてしまいたいということが、一般会計弾力性を高めるゆえんだというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  27. 早川勝

    早川委員 財政再建問題は、恐らく特例国債だけ減らしても、逆に言えば建設国債がふえれば残高がふえて国債費がふえるわけですから、極論を言いますと、トータルで赤字特例国債がゼロになって、いわゆる四条国債がそれだけふえれば、国債費は同じですから、どうも考え方をもう一度整理して財政再建を考えるのがいいんじゃないかというような感じを持ちます。  それから、財政再建に関連しましては、やはりこれからの税制改革、いわゆる歳入の問題が重要になると思います。そこで、昨日も予算委員会で質問があり、大臣もお答えになっておられますけれども、十月二十八日に答申されました政府税制調査会の答申ですね、受けたわけですけれども、これをもとにしてどんな形での具体的な取り組みをされていくのか。それは、三年間とかあるいは五年間ということもあるかもしれませんけれども、六十一年度税制改正案としてはどんな形で取り組まれていくんだろうか。中期的に、あの中ですべて単年度でというような中身にはなっていないようですし、そうしますと、答申の中に盛り込まれた提案の中から選択しながら決められていくわけですけれども、どんなスケジュールで具体化を図っていくのか、この点について伺いたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般いわゆる政府税調の答申がございまして、ただいまこれを中心に私ども政府・与党の中で、どのような案を国会に提出して御審議をお願いするかについて検討をいたしておる最中でございます。  目標といたしましては、来たるべき通常国会に提出をいたしまして御審議を仰ぎたいと考えておるわけでございますが、このたびの税制改正はいわゆるシャウプ税制以来の基本的、抜本的な改正というふうに考えておりますので、したがいまして、改正の全部が関連を持つ一体的なものとして私どもとらえなければならないと思っております。そういう意味では、国会に御審議を仰ぎます際には、やはり全部を一体として有機的な連関のある改正案というものを考えまして、御審議を仰ぎたいということを考えておりますのが第一でございます。それから第二は、歳入面におきまして先ほども申し上げましたような財政状態でもございますので、抜本改正ではあるが、その歳入に与える影響は中立的であらねばならない。ネットの減税ということでもなく、ネットの増税ということでもなく、財政に対しては中立的な、しかし安定的な歳入構造のものとして改正案を考えたいというのが第二でございます。したがって、そこから参りますことは、提出して御審議を仰ぎます新しい税制改正は一体のものであり、しかも歳入としては中立的なものである、こういうことになるわけでございます。  その歳入中立の意味でございますが、現在のような財政状況から申しますと、原則としては各年度の段階において、まずまず歳入上過不足のないようなものとして実施をしてまいりたい。原則としてはそういうものでございませんと、仮に歳入欠陥というもの、つまり不足がございますと、その財源をどうするかという問題が出てまいります。原則としては、そういうものとしてお願いを申し上げたいというふうに今考えておるわけでございますが、何分にもその内容が固まっておりませんので、ただいま申し上げましたことは、基本的な考え方を申し上げたにとどまるわけでございます。
  29. 早川勝

    早川委員 シャウプ以来の税制改正ということで、全体として非常に、それこそシャウプ勧告と比べると、ボリュームからしてもまだ少ないのではないかなという感じもするのです。そうするとあの法案は、中から文字どおり選択をして法案として提出したい、こういう意向を伺ったのですけれども、そのときには税収の中立性ということも言われたのですけれども、今十一月ですから、例年ですと十二月の二十日前後ぐらいに与党の自民党税調の大綱が出て、それから政府の税調が六十一年度改正案を出して、それから政府案が決められるわけです。そうしますと、どうもあれだけの中身のことを政府税制調査会が総理に答申をして、それからこの後一カ月余、五十日ぐらいあるわけですけれども、その間、政府税制調査会というのはどういう対応をされるのかなという感じをちょっと持つのです。  といいますのは、五十年ぐらいまでは、率直に言って政府税制調査会の権威が非常に高かった、しかし、五十年代財政赤字になってからはそうでもないというふうな感じを持っているわけですね。そうすると、今回の大税制改正案がつくられるときに当たっての政府税制調査会の権威は、これからどういうふうに位置づけられるのかなということをちょっとある面で心配をするものですから、その点について伺いたいと思います。
  30. 水野勝

    水野政府委員 税制調査会は、このところ大体三年置きに中期的と申しますか、基本的な見直しの答申をまとめておられるわけでございます。前回は五十八年の秋、その前は五十五年の秋、その前は五十二年、いずれも十一月の上旬、中旬あたりに、基本的な方向につきましての審議を取りまとめておられるわけでございます。その後約一カ月間置きまして、そうした基本的な見直しにつきましての世論の動向と申しますか、各方面の御意見、反響等をも見定めながら、翌年度税制改正の作業に入るというのがこれまでの例でございました。  今回はそういう意味におきましては、中期的な方向は十月の下旬にまとめられておるわけでございまして、十一月一カ月間と申しますのは、いわばそれにつきましての世論の動向、各方面の御意見の集約と申しますか、そうしたものに充てられ、例年のように十一月下旬あるいは十二月上旬に年度改正の作業に入られる、こういうことになるのではないかと思うわけでございまして、今回におきましても、大体従来の例に沿いまして恐らく作業に着手されるのではないかと私ども考えておるわけでございます。
  31. 早川勝

    早川委員 政府税制調査会が与党の税調よりはより国民のための、開かれた、中立的だというふうに考えますと、過去に戻ってということは不可能なわけですけれども、もう少し権威あるような形での位置づけがされたらなと思います。  それで、今大臣は、税収の中立性が一つの原則だと言われたのですけれども、来年度税制改正のときに内容的にはすべての答申を受けて出される、しかし、単年度それぞれ過不足ない、プラス・マイナス・ゼロという改正案とされている。そうすると、財政再建との絡みでいいますと、税制改正により税収を図るということはしない、それから積極的な財政運営もしない、では、財政再建というものは依然として今までと同じように歳出カットで続けていく、さしあたり六十五年度までをそういうふうに考えてよろしいわけですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨日もその点についての御質問があったわけでございますけれども、現在の日本経済昭和六十一年度における日本経済の運営というものは、私は決して満足すべきものではないというふうに考えております。いろいろな原因がございますけれども、かなりの不況のうちに推移をいたしておりまして、税収そのものも歳入欠陥が出るような状況でございますから、こういう状況がいつまでも続いておるということは決していいことではない。これが日本経済の本来の姿だというふうに私は実は考えておらないわけでございますから、何とかしていろいろな要素を改善しながら、もう少し力強い日本経済の運営にならなければならないし、それだけの潜在力があるというふうに私は考えております。  したがって、各方面の改善を図りながらそういう日本経済に戻していかなければならない。もとより、かつてのような非常に高い成長率がもう一度戻ってくるとは思いませんけれども、潜在力が十分に今発揮されておるとは思わないものでございますから、そういうものにしていかなければならないと思っておりまして、そういう中から財政再建の方途もまた見つけなければならない、基本的には私はそういうふうに実は思うものでございます。
  33. 早川勝

    早川委員 税制改正についても、そして財政再建との絡みを考える場合にも、単年度的に予算税収バランスを考えていく発想が一つあると思います。これは、税制改正についても同じことが言えるのじゃないかと思うのです。初めに減税ありきという言葉もありますけれども、初めに減税もなければ増税もなくて、プラス・マイナス・ゼロだと。政府の税調、そして大蔵省も資料を出していただいたわけですけれども、活力ある税制にするのだと言いながら、勤労者、八割ぐらいあるいは七割以下の人たちは今回の税制改正の中で、来年度以降はっきりしてくるのを見るとどうも負担がふえるのじゃないか、活力がなくなるのじゃないか。そんなふうに考えますと、どうも単年度ごとにプラス・マイナス・ゼロという税制改正案の中身を進めていくということも、今大臣が言われたような意味での本当に潜在的な経済的な活力を引き出す方向には向かわないのじゃないか。  御存じのように、日本の経済の中で見ると六割が個人消費であり、何とかして内需をふやさなければいけない。もっと安心して、まあ、いい面での貯蓄があるわけですけれども、他面で貯蓄に回る分があるわけでして、どうも個人消費のためにというのは、いろいろな不安があるから非常に貯蓄に回るという面があるわけですが、それを引き出して消費をしなくちゃいけないのだなというふうに考えますと、そういう方向にはどうも向かわないのじゃないかなという感じを持つのです。そういう意味で、プラス・マイナス・ゼロというやり方にも積極さがないのじゃないか、そんな感じを持つのですが、いかがなものでしょうか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこは単年度の問題と全体の問題があるわけでございますが、結局は同じことを申し上げることになりますが、単年度において、いわゆる過不足なくでなく不足が生じましたときに、その財源をどうやって見つけるかということになればそれは特例公債につながりやすい、そのことについての問題は先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、全体としての歳入中立ということについて申しますならば、人情として減税の方は非常に受け入れやすいけれども、その財源を補うための措置というのは人情として受け入れにくい、これはもう当然のことでございますから、両方をセットにしておきませんと、減税の部分だけがいわば確定をしてしまう、こういうことになりますとさらに財政に与える影響が深刻だ、こういったようなごくごく世間でもすぐにおわかりいただけるような心配をしながら、先ほどのようなことを考えておるわけでございます。
  35. 早川勝

    早川委員 先ほど、政府の税調の問題をちょっと出したわけですけれども、そして、これから税制改正案が来年度以降出されるということなわけですが、税制改正案の中身じゃなくてこの審議のあり方、国民の選択、意向を聞くという意味で、ちょっとアメリカの税制改正案との取り組みの違いを考えたのです。  例えばアメリカの場合には、八四年のレーガンの年頭教書で税制改革の意図を明らかにした、それから同年十一月に財務省が報告書を出す、「公正、簡素及び経済成長のための税制改革」こういう報告書を出された、そして八五年は五月に、それを具体化して財務省が検討の中から、例えば付加価値税は落として大統領の租税提案が行われた、それから昨年の十二月には下院本会議を通って、ことしの六月に上院本会議を通る、こういう形で考えますと、八四年の初めから八六年六月二十四日の上院本会議で約二年半、本当に税制改正をやるのだという意見が出されて、それぞれのステップを踏まれて今日アメリカで税制改正が成立する。日本の場合は、昨年の九月二十日に総理がシャウプ以来の税制改革に着手したいのだというようなことを言われて、ことし十月ですから十三カ月ですか、答申が出てこれから法案が出るというふうに考えますと一年半ぐらいですか。  アメリカは大体二年半ぐらいかけている。じっくりかけて、それこそ国民の選択と意見を聞いて、それぞれの院でも修正する部分は修正していく、こんな形で取り組んできているわけですね。そういうのは、それだけアメリカは民主的なんだな、税制の面でも民主的な国なんだな、こんな感想を持つわけですが、そういうことを考えて日本のスケジュールについて、希望になるのですけれども、出されてもそんなに慌てる必要もないのじゃないかという感じを持つわけです。というのは、今の財政状況を踏まえて、特例国債でも一年間で五千億くらいしか削られないわけです。それよりも、税制の信頼を高めるためには、本当に時間をかけていろいろなデータを率直に国民の前に出して、意見を広く聞きながらやるのがいいのじゃないかという感じを持つのですけれども、これからの取り組みの課題とそのスケジュール、審議の時間についてどのように考えられますか、お伺いいたします。
  36. 水野勝

    水野政府委員 御指摘のように、今回の税制改革は、直接には昨年九月二十日の内閣総理大臣から税制調査会への諮問が形式的には出発点となっておるわけでございますが、実は昭和五十九年十二月末において昭和六十年度税制改正を行います際に、政府税制調査会は、今や税制は部分的な手直しでは限界に来ておる、抜本的な税制改正に着手する必要があるということを、単年度税制改正の答申ではございますけれども、異例なことではございますけれども、その中でそういう方向を答申で打ち出しておるということになっておるわけでございます。したがいまして、実質的には出発は五十九年の暮れとも言えるわけでございます。  さらに、なぜ五十九年十二月にそういうような答申に相なったか、その背景を若干申し上げますと、昭和五十九年度税制改正におきまして本格的な所得税減税が行われました。これは、五十二年以来七年ぶりのことでございますが、その財源問題とも絡みまして、法人税の引き上げ、酒税の引き上げ、物品税の引き上げと拡大というようなことで、当委員会にも種々御提案申し上げ御議論願ったところでありまして、そうしたいろいろな部分的なと申しますか財源の寄せ集めと申しますか、そういったことで五十九年度税制改正を御議論いただいたその過程の中で、もはや現行税制ではもろもろの需要に対応できない、限界に来ておる、そういう認識を税制調査会としても得られたのではないかと思うわけでございます。そうした情勢を踏まえまして五十九年十二月末に、六十年度税制改正の答申ではございましたけれども、抜本改革、抜本見直しの方向を指摘されたということでございまして、そこから実質的には見直しと申しますか審議がと申しますか、議論が始まっておるとも言えるかと思うわけでございます。  その翌年、年が明けましてから、六十年二月からの国会の御議論で内閣総理大臣から、公正、公平、簡素、選択、活力、こうした理念で税制の抜本的見直しを行いたいといったことをしばしばお述べになったわけでございまして、おおむねそういったことでございますから、去年の初めからあるいはおととしの暮れからこうした問題が起こっておる、そうした期間を置いて昨年の九月に正式に諮問が出されたということでございます。そうした諮問を受けましてことしの四月、中間報告をとりまとめて世の中にご提示申し上げ、それにつきましての御議論を幅広くお願いいたしたわけでございまして、さらに七月以降本格的な審議を再開されまして、このほど十月に取りまとめられた、そういう経緯でございます。  今後、先ほど申し上げましたように十一月下旬か十二月初旬に年度改正を取りまとめられる、そうした取りまとめの結果を踏まえまして、政府、大蔵省といたしまして六十二年度税制改正の姿を確定し国会に御提案を申し上げ、来年の春までにかけましていろいろ御検討を願うということでございます。やはり大きな改正でございますので、当初から計算してまいりますと、今まで二年なり二年半ぐらいの経過になってくるのではないか、こんなふうな感じでございます。
  37. 早川勝

    早川委員 取り組みが、単年度税制改正で抜本的税制改正が必要だとういことが指摘されたところからのスタートだ、こう言われたのですけれども、考えてみますと、ことしの四月に中間報告が出て、さかのぼってもそれぐらいからスタートするのがいいのかな、でも、あれも二つの部会ですか、そういう形で考えますと、たとえばアメリカは財務省の報告書が出てから法案が成立するまで一年七カ月余かかっているわけですね。それから、大統領が税制改正を出して一年かかっている。そしてそれぞれ、まあ国会が違うわけですから中身は当然違っていいとは思うのですけれども、それぞれデータを出して、それぐらい十分議論をして検討しなければいけない、これが常道だと思うのですね。  そうしますと、こういう選択を含めて出たのが十月二十八日なわけですね。今までの慣例ですと、日切れ法案だ、三月末成立だなんという話をされますと半年余で終わってしまう、こんなことで今回のような大税制改正案が国民に十分理解されるのかな、そんなことを心配するのですけれども、これはぜひ大臣の見解をちょっと伺わせていただきたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府税制調査会におきまして、各方面を代表される方々が専門的な知識のみならず広く国民各層の要望を代表して長いこと御検討をいただいたのでございますので、そういう意味では非常に長い、数年ということではございませんけれども、よく国民各層の問題意識を御審議に反映していただいたというふうに私どもは考えておりますが、さらに、税というのはすぐれて政治的な重要性を持つ問題でございますので、政府・与党の間で意見調整をしておりますことも、ひとつそれとして御理解をいただきたいと思います。  これは、いろいろな意味での国民の考えを正確に反映するための努力であるというふうに私どもは考えておりますが、それを済ませました上で、国会におかれまして、文字どおり国権の最高の機関としての御意思決定をいただく、こういう手続を経つつあるわけでございます。私どもとしましては、できるだけ早くこの手続を了しまして国会に御提案をいたしまして、御審議の時間にいろいろ恐縮なことでありますけれども、深くかつ速やかに御審議を賜りたいということでございまして、できるだけ早く準備をいたしまして提出いたしたいと思います。
  39. 早川勝

    早川委員 本当に初歩的な点で、税制改正であと二点だけ伺いたいと思いますが、一つは、個人所得減税で二兆七千億、法人減税が一兆八千億、利子課税で一兆円、新型間接税三・五兆円、四兆五千億ぐらいの増減税でプラス・マイナス・ゼロだ、こう言われるのですけれども、先ほども言いましたように、どうも個人所得減税が行われても、新型間接税と利子課税のところで四兆五千億円増税されるならば、個人のところは増税になるんじゃないか。そのかわり法人は減税になるわけですね。そういうふうに考えますと、活力は法人の方へ出るかもしれないけれども、個人のところには出てこないなというふうに率直に素朴に感じるわけです。そうすると、日本経済というのは今までと同じような形で進むのかな、どうも日本経済の活力は期待できないのじゃないか、そんな感じを持つのです。このプラス・マイナス・ゼロの中身からそんな印象を受けるのですけれども、この点についていかがなものか、お聞かせいただきたいと思います。  もう一点は、一兆八千億円の法人税減税をやるわけでして、税率を引き下げるわけですが、アメリカの場合、租税特別措置をずっと整理していてそして税率を下げている、そして文字どおり課税ベースを広くしてこういう改正を行う。税率については、実効税率をずっと議論されるわけですけれども、実際には税制の中身が非常に難しくて、ましてやそれに特別措置等いろいろなものが入ると実質的な税負担率はどうなんだろうかというのは、従来からずっと議論されているわけです。そういうことを考えますと、少なくとも税率を下げて一兆八千億円ということだけではなくて、租税特別措置でそれこそ簡単に法人関係だけでも六十一年度四千億円強ありますし、それを反映した地方税収の方も千二百億円くらいの減収が立っているわけですね。そういうことを考えますと、この法人税減税について、租税特別措置、もちろん引当金は特別措置ではないと言われるのですけれども、どうも実質的にはそういう性格を持っているし、そういう効果を持っているというふうに考えますと、法人税の税率を引き下げるということは内容的にはよくわかるのですけれども、それに絡まる法人課税についての改革の方向、それについてもお聞かせいただきたいと思います。この二点を、税制改正についての個別の問題として伺いたいと思います。
  40. 水野勝

    水野政府委員 納税者の大半を占めますところの中堅サラリーマン層の負担累増感、こうしたものに対処するというのが今回の税制調査会の答申の眼目ではないかと思われるわけでございます。働き盛りの中堅のサラリーマン、そうした方々の負担の累増を緩和しておおむね同一の限界税率が適用になるように配慮する、それによりましてゆとりのある生活、逼迫感の緩和、こうした点が打ち出されているわけでございまして、これが今回の改正の眼目となってございますので、税制全体として見ましてもまたその眼目から見ましても、これが社会の活性化にそうした点から寄与できるものではないかと私どもも考えておるわけでございます。  それから、法人税につきましては一兆八千億という数字をお示しでございますけれども、これは中間報告に示されておりました、実効税率を五〇%以下とする、そういう基本的な方向からすると、国税、地方税を合わせまして機械的に一兆八千億円くらいの数字にはなるわけでございます。したがいまして、これをもっていわば最高の限度額になるわけでございます。  しかし一方、今回の答申におきましても、引当金、租税特別措置等につきまして、実情に即しつつ厳しい見直しを行う必要がある、税率を引き下げる一方では課税ベースの拡大を図るべきであるという方向が指摘されておるわけでございまして、税率の引き下げの反面、こういった課税ベースの拡大によりましてまたある程度の税収が確保されるわけでございます。したがいまして、一兆八千億と申しますのは、形式的に見た最高の限度額でございまして、今後税制改正の具体的な詰めに応じましてこうした金額もまた変わってくるわけでございますし、また、極力そうした方向で配慮すべきであるという方向が答申でも指摘されておるというふうに、私ども考えておるわけでございます。
  41. 早川勝

    早川委員 これから積極経済、積極政策がある面で必要だと思うのですけれども、どうもヨーロッパでいわゆる付加価値税が入った経過を考えてみますと、社会保障をよくするとか給付水準を上げるとか、あるいはイギリスの場合、たしかEC加盟というのを契機にして導入したという経過があります。一般的には、間接税というのは御存じのように逆進的性格を持っているわけでして、しかも今回のこの数字を見ますと、新型間接税で三兆五千億円、それに対して所得税の方が二兆七千億円、そうしますと、どうも経済政策の観点から見て逆方向になるのじゃないかなという感じを持つのです。これは大臣の感想で結構なのですけれども、ちよっとお聞かせいただきたいと思います。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国では、かなり所得水準がもう高くなってまいりましたし、しかもその所得の分布も非常に均等である、世界のほかの国に比べますと均等性が強いわけでございますから、そういう社会において間接税負担をもう少ししてもらうということは、政策としてはしかるべきことではないかと私は考えております。それによりまして、殊に個人所得税法人税もそうでございますけれども、について中堅サラリーマン等々を中心にいたしまして累進制を緩和していくということは、いわば勤労意欲、事業意欲に必ず貢献をいたしますので、そういう意味では、先刻申し上げました日本経済の活力というものを必ず大きく助けていくであろうというふうに考えるわけでございます。  なお、間接税そのものは、先般仮定計算を申し上げましたときにいろいろ議論になったわけでございますけれども、いわゆる非課税団体であるとか公共団体であるとかいうところも負担をいたしますから、家計だけではございませんので、その点は両方の間のいわゆるネットの負担減、負担増になる、ならないという問題は、そういう点がございますことを御理解をいただきたいと思います。
  43. 早川勝

    早川委員 あとの時間で、いわゆる財政再建というよりも財政改革という観点で、二つお聞きしたいと思います。  一つは国債管理政策の問題でして、今回の補正予算でも、当初予算国債整理基金特別会計に繰り入れようとしていた一般会計からの四千百億円の予算繰り入れを取りやめているわけですね。そういうことを考えますと、御存じのように国債整理基金というのは、とにかく国債発行がある以上、できるだけ担保して国民の国債に対するいわゆる信頼を確保していかなければいけないということがその趣旨だと思いますが、その基金の財源というのはいわば三本柱から成っていた。御存じのように、一・六%という定率繰り入れの部分と前年度剰余金の二分の一、今回の特例の中身にも関連するわけですけれども、それともう一点は予算繰り入れ、この三本の柱から基金財源というものは確保されてきたわけですけれども、五十七年以来この一・六%の定率繰り入れが停止されている。そして剰余金繰り入れについても、過去を見てみますと、今回が初めてじゃない、減税財源に使われたこともございますけれども、前年度、今年度剰余金繰り入れもやめていく、それからこの予算繰り入れも今回取りやめてしまった。  その背景については、御存じのように、今回NTT株の売却益が非常に多かったということで確保されているわけですけれども、そうすると、そもそものこの三本柱、基金財源を確保する三つの柱が崩れている。特に一・六%の定率繰り入れというのは、五年間も停止しているわけですね。ちょうど歳出カットの財政再建路線と軌を一にしてきているわけです。定率繰り入れを停止しているがために、今回たしか二〇・二%の国債依存率に、一番低いんだ、こう言われたのですけれども、これには定率繰り入れが入っていないのですね。恐らく、定率繰り入れのために必要な財源というふうにまた入れれば二〇・二で終わらなくて、それが二一、二二に依存率が上がるわけで、実質的にはそんなに改善されていないのじゃないかなと思うわけですが、それはともかくとして、この基金制度、どうも変質するというのか、その本来の趣旨から変わりつつあるのではないか、変わってきているのではないか、そしてこのつなぎで恐らくNTTの株の売却益で四、五年はいけるのかもしれないけれども、どうも設立された、昭和四十二年ですか国債整理基金特別会計がつくられて、財源を確保していこうといった中身が変わってきている、そういうふうに考えますと、基金制度あるいは会計の性格を含めて検討の時期に来ているのではないかな、こんな印象を持つのですけれども、いかがなものでしょうか。
  44. 角谷正彦

    角谷政府委員 確かに委員指摘のように、今回昭和六十一年度当初予算におきまして償還財源繰り入れを予定しておりました四千百億の予算繰り入れ、これを停止させていただきました。これにつきましては、先ほどから補正予算に関してるる御説明申し上げておりますように、大幅な税収不足がある、あるいは給与改善費初め多額の財政需要がある、その中でぎりぎり特例公債増発を回避するといった措置の一環として行ったものでございますが、これにつきましては、委員指摘のように国債整理基金に帰属しておりますNTT株の売却収入が、その入札状況を見ますとかなり当初予算を上回っているということが確実であるということから、これを繰り入れなくても当面国債整理基金の運営には支障がないといった状況を見きわめた上で、そういった中で、本年度補正予算をめぐる極めて厳しい財源事情の中で特例公債増発を回避するための臨時異例措置として予算繰り入れを行わない、こういったことにしたものでございます。  したがいまして、当面そういった意味では、NTT株の売却収入といったものによりまして、現在の国債整理基金の運営に支障がないということを見きわめた上での措置であるということについて御理解いただきたいと思います。  他方、定率繰入れにつきましては、御指摘のように昭和五十七年以降停止いたしておりまして、今回の六十一年度当初予算におきましてもそれを継続しているわけでございますが、これもまた御承知のような厳しい財政事情の中で特例公債増発を可能な限り抑制するというために、やむを得ず定率繰り入れを停止しているわけでございますが、これにつきましても国債整理基金の残高を見きわめながら、六十年償還ルールに従いました減債制度の維持といったものには支障がないといったことを踏まえつつ行ったということでございます。  そういったことで、定率繰り入れあるいは今回の剰余金繰り入れあるいは予算繰り入れといったことについては、それぞれ現在の段階においてはこれを停止せざるを得ないという財政事情の中でございますけれども、幸いにいたしましてNTT株の売却収入といったこともございまして、このNTT株の売却収入は、いわば現在六十一年度以降公債の償還ルールに従った償還を進めていく上でのかけがえのない財源であるといった中でございますので、六十一年償還ルールに従いまして今後ともできるだけ維持するような方向で考えていきたいというふうに思います。  そういった中で、国債償還財源をめぐる事情は極めて厳しい事情にあることは御指摘のとおりでございますが、こういった問題につきましては、今後の歳入歳出をめぐる動向を見きわめながら、何とか現在の減債制度の基本を維持できる方途がないかどうか、中長期的な観点から引き続き慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  45. 早川勝

    早川委員 国債整理基金制度の問題については、またの機会にお話しさせていただきたいと思います。  もう一つ、これは直接大蔵省には関係ございませんけれども、森林、緑の問題に関連してちょっと伺わせていただきたいと思います。  御存じのように緑の問題あるいは森林、山の問題は大変です。大蔵委員会としては国有林事業が所管になるわけですけれども、とにかく今のまま放置していくと、日本の森林、山さらには林業が深刻な状態になる。これは御存じのように、日本だけじゃなくて、国際的な規模で砂漠化が進んでいるというような報告もありますし、ブラジルの原始林が地球的な観点から見ても酸素供給源だなんという話を聞いたこともございます。そんなことを考えてみますと、とにかくやれることからやっていこうというので、日本の山のことを考えていかなければいけないのじゃないかと思いますが、林野庁から見えていると思うのですけれども、さしあたり国有林の問題で結構ですので、国有林の課題、間伐が進んでないとかいう話を伺っていますけれども、国有林の今日抱えている問題について、ごく簡単で結構ですからお話しいただきたいと思います。
  46. 鈴木久司

    ○鈴木説明員 国有林野事業につきましては、近年木材価格の低迷とかあるいは資源的制約による伐採量の減少、さらには長期借入金の利子、償還金の増大といったような非常に厳しい事態に直面しておりまして、このためことしに入りまして林政審議会におきまして、国有林野事業の経営改善方策につきましていろいろ検討を願ってまいったわけでございますけれども、この八月に中間報告が出されているわけです。その中間報告におきましては、現在改善計画をつくりまして、それに基づきまして経営改善を進めておりますけれども、その改善計画を改定、強化いたしまして、業務運営の一層の改善合理化あるいは要員規模の適正化、自己財源の確保、こういった最大限の自主的改善努力を尽くすということでございまして、私どもとしましては、この線に沿いまして今後とも努力をしてまいりたいというように思っております。  また、国有林野事業の経営の改善を推進するためには、従来から所要の財政措置を講じておりまして、六十年度におきましても、非常に厳しい情勢でございますけれども、従来の措置に合わせまして新たに所要の財政措置を講ずるべく予算の要求をしているところでございます。今後とも自主的な改善努力とこれらの財政措置によりまして、国有林野事業の経営改善努力してまいるという所存でございます。
  47. 早川勝

    早川委員 中間答申を読みましてもそれこそ臨調路線そのものでして、要員を二万人に減員しなくちゃいけないとか、どうも再建はそこにしか手だてがないというような印象を受けます。問題は、国有林特別会計というものが、基本的には収益事業を目的とした事業会計になっているわけですね。ところが、御存じのように、国際価格と比較しても木材は非常に高い。それから、木が若くて、若年木というのですか、成木として売却するにはまだ二十年、三十年かかる、こんな状況があります。その中でなおかつ、国有林特別会計というのが事業会計で、立木なり木材を売って収益を上げてというのが基本的な性格になっているわけですね。一般会計から入っているのが、六十一年度当初予算で百十億しか入ってない。山を育てるとか、そういう発想じゃないわけですね。そこにあるのは事業勘定と治山勘定しかない。基本的に事業会計だと位置づけているものですから、一般会計から入れて山を育てようとか守ろうとか、そういう発想に立ってない。  今の客観情勢はそうならない。山、森林を考えますと、公益的な機能あるいは環境保全的な機能が非常に高いということがはっきりしているわけです。そういうように考えますと、林野庁の発想もこれまでの域を出ていないわけですね。大蔵省もその域にとどまっていて、財政事情が厳しいからとはいえ、余り入れない。ここに限界がありまして、これから考えを改めていただいて、例えば特別会計に公益勘定とか環境保全勘定とか新たな勘定を設けて、文字どおり社会資本的な発想に立って山を守っていかなければいけないのではないか、こういうふうに考えるのですけれども、これは林野庁が言っていただけるのですか、大蔵省も重ねて伺いたいと思います。
  48. 鈴木久司

    ○鈴木説明員 国有林野事業を経営していく上で、もちろん経済的な側面を重視することも重要ですけれども、公益的機能といったものを重視した施業をしていかなければならないというように思っております。そのために、従来から自然環境に配慮した施業を進めてまいっておりまして、その面では、例えば治山事業につきましては全額一般会計実施というような形でやっておりますので、今後ともそういった面での充実を図ってまいりたいと考えております。
  49. 角谷正彦

    角谷政府委員 国有林野事業につきましては、特別会計法でも企業的に運営するために一般会計と区分して経理するというふうに規定されておりますし、あるいは本年の八月に出されました林政審国有林部会の中間報告におきましても、特別会計制度のもとで原則として独立採算によって行うものだというふうにはっきり指摘されているわけでございます。これから明らかなように、国有林野事業につきましては企業会計で、本来公益的事業を含めまして原則として独立採算で経理されるのが原則であろうかと思います。  他方、最近における厳しい財務状況あるいは国有林野をめぐる環境にかんがみましていろいろな措置をとっております。  まず第一には、昭和五十三年度に国有林野事業改善特別措置法を制定いたしまして、そこの中で、林道開設とか造林に係る事業費につきまして一般会計から繰り入れを行う、これが先ほどおっしゃいました六十一年度予算の百十億に対応するものでございます。  第二は、今林野庁からお話がございましたように、従来一般会計から繰り入れを行っておりました国有林内の治山事業につきましても一般会計が負担する形で、むしろ国有林野事業から切り離しまして治山勘定で行うということをいたしておりまして、これにつきましては六十一年度予算で二百四十八億、これは国有林野事業の繰り入れとは別にあるわけでございます。  三番目には、五十九年度から、いわば急増する職員の退職手当財源を運用部から借り入れで賄っているわけですけれども、その利子を補てんするということでございまして、これについても六十一年度予算でたしか十六億ということで、いろいろな措置を講じているということでございます。  そういうことで、これまでも一般会計の負担で国有林野事業の推進と経営改善の円滑な実施のために必要な措置を講じてきていることは既に御承知のとおりでございますけれども、国有林野事業は、いわば企業会計として、原則として独立採算で賄っていただく、こういった基本につきましては、これを変えることは適当ではないのではないだろうかというふうに考えております。
  50. 早川勝

    早川委員 時間が参りましたので終わりますけれども、一言だけつけ加えさせていただきたいと思います。  私自身が初めての質問で、財政再建問題とか税制改正問題を通じまして自分なりに整理したわけですけれども、六十五年度の再建目標というのもありますけれども、それを超えて、それこそ財政改革を基本的に検討する時期じゃないかなというふうに考えます。税制改正がこれから行われるし、それから国債整理基金の問題についても軌を一にしているように、六十五年ぐらいで電電の売却の問題についてもどうも限界が来るんじゃないかというふうに考えられるわけですね。そうすると、国債整理基金の問題も考えなければいけない。それから、今最後に触れました国有林野事業特別会計についても、収益事業であり、そして単年度収支原則に立った会計処理が行われている。これもどうも、五十年、六十年たたないととにかく木というのは商品にならないわけですから、そういう意味で限界が来ているんじゃないか。  あれやこれや考えますと、大臣がせっかく財政改革の責任ある地位につかれたこの機会に、経済運営、財政政策とのかかわり、そして個別における特別会計の問題についてもあります。そういうことで、大きな財政改革の時期に我が国は直面しているんじゃないかというふうに考えます。最後にそういう決意をぜひ大臣から披瀝していただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからいろいろ御指摘になりましたように、新しい国民の需要と申しますかニーズというものが大変に出てまいっておる現在、しかも我が国が高齢化社会に入ろうとしております今、財政がそれに対応する力がいかにも十分でないということは痛感をいたしております。日本経済の運営を何とか現在のようなことでなく潜在力をもう少し発揮できますようにいたしまして、その中から財政再建の方途も探り、財政弾力性ももう一遍見出してまいりたい、こういうふうに考えております。
  52. 池田行彦

    池田委員長 柴田弘君。
  53. 柴田弘

    柴田(弘)委員 きょうは、今回の特例措置に関連をいたしまして、新しい財政再建へのルールづくりの問題、そして税調から答申を受けました税制の抜本的な改革の問題を中心にして、大蔵大臣を初めいろいろ御意見をお聞きしたい、こういうふうに思うわけでありますが、その前に、今一番新聞紙上等々をにぎわしております抵当証券の問題につきましていろいろとお聞きしておきたいわけです。  いろいろな状況を見ておりますと、どうもこれが第二の豊田事件になっていくのではないかということも危惧をされているわけであります。そこで、大蔵省としてはこの抵当証券の問題をどのように現状認識をしてみえるのか、その実態というのは一体どうなっているのか、投資家保護という観点からしましてどこに問題点があるのか、そういったことについてまず御説明を賜りたい。
  54. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 御存じのように抵当証券は抵当証券法に基づきまして発行される有価証券でございます。したがって、同法で定める要件及び手続に従いますれば何人でも登記所からその交付を受けて譲渡、販売を行い得るということになっているわけでございます。したがいまして、大蔵省としては、この抵当証券の実態について、そういう意味からいいますとこの詳細を十分に把握しているわけではございませんが、現在いろいろ調べているところでございますけれども、抵当証券取扱会社の数といたしましては、現在では百社を超えるというような状態になっております。それから抵当証券の販売残高も、このところ非常に増加しておるということでございます。  したがいまして、大蔵省といたしましては、このような抵当証券の販売が一般の投資家を対象としている、しかもこの抵当証券を使って資金を必要とする人たちが長期の資金を調達しているというようなことから、この問題につきましては非常な関心を持って現在注視してきたところでございます。したがいまして、こういうような抵当証券につきまして、新聞等で書かれておりますように、あるいは報道されておりますように、投資家保護という点、これにつきましてはやはり重視しておりまして、現在法務省とも相談しつつこの問題について検討をしているというのが現状でございます。
  55. 柴田弘

    柴田(弘)委員 大蔵省からいただきました資料を見ましても、要するに抵当証券業懇話会というのが何かあるのですね。これに加盟をしているこれは大手の比較的良心的な会社だと思うのですが、これが六十一社今日あるわけであります。昭和五十九年三月末は十八社で、抵当証券の販売残高もわずか九百二十億であった。ところが、本年の九月末にはこれが六十一社になりまして、もう十倍近くの八千八百六十三億円にこの残高がなってきた。この会社は、去る九月に、要するに自主的にひとつルールづくりをして投資家保護のためにやっていこう、こういうことでやっていらっしゃったわけでありますが、問題はこれ以外の会社。今銀行局長答弁だと百社近くというのでありますが、この実態というものはまだわかってない。中には、もう既に抵当証券の販売をやめちゃった、こういうようなところもあるということであるわけでありますが、この実態というものは本当に政府の方でもよく掌握してない。これが私は一つ問題点があろうかと思います。  それで、法務省との間で研究会というのを発足されまして、今、今後の法整備を含めての検討をなさっていらっしゃる、こう私も思うわけでありますが、これは貸金業者ならだれでも営業が自由にできるわけでありまして、やはりこうした届け出制だけのものを認可制あるいは免許制にしていくという問題、開業規制の問題が一つあると思う。  それから二つ目には、会社の経営内容を行政当局が把握できるようにしていく、行為規制を含めての問題もあろうと思います。  それから三つ目には、税制面で、抵当証券の利息、これは現在雑所得でありますね。これはやはり預貯金の利息並みにしていく、いわゆる利子所得課税にしていくべきではないか。特に今回の税制改正を機に私はそんなふうに考えているわけであります。  いずれにいたしましても、こういった諸問題があるわけでありますが、この法整備の問題、税制面の改正の問題を含めた開業規制、行為規制の問題について今後大蔵省としてはどんなふうに対応されていかれるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  56. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今委員が御指摘のような各般の問題があるわけでございます。特に投資家保護という観点につきましては、やはり非常に重要な問題であるというふうに我々も考えているわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、先般抵当証券の研究会というのを設けまして、そこでこれらの問題について検討を始めたわけでございます。その検討の中身といたしましては、委員もおっしゃいましたような法制の整備、この点についても十分にその対象になり得るものというふうに我々は考えております。したがいまして、今後精力的にこの研究会の場で検討を進めて、今申し上げた諸点について結論を得た上、各般の措置をとっていくということになろうかと考えております。
  57. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこでこの問題、最後に大蔵大臣にお聞かせいただきたいのですが、今銀行局長から御答弁ありましたようにさまざまな問題を抱えているということは、大臣もよく御承知だと思います。第二の豊田商事事件にもう既になっているわけです。よく御承知だと思います。抵当証券の問題は、もう既にきちっとした、例えばいわゆる抵当証券業法というような法律が整備をされまして、あくまでも投資家保護という観点から行政が既に進められていなければならぬというのが現状ではないかと私は思う。いずれにいたしましても、どうもこういった行政というのはおくれている、こういうふうに私は思います。  だから、遅くとも来年の通常国会にはいわゆる法制定をしていくというのが一つ。それから税制面でも、先ほど申しましたように金融商品のイコールフッティングという観点から、どうせ抜本的な税制改正をやっていくというのであれば、雑所得から利子所得の方に分類を、仕分けをし直していく、そういった観点というものがあってしかるべきである、私はこのように考えるわけでありますが、この法整備の問題と税制面の措置の問題について大臣の決意、御所見というものをひとつお伺いをしたい、このように思います。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは基本的には市場経済というものにはなるべく干渉をしない方がいいというふうに考えておるものでございますけれども、この問題につきましては、先ほどから御指摘のような事実があり、善良な市民が思わざる災厄に遭い、また金融秩序を乱すというようなことがかなり事例として出てきているように承知をいたします。したがいまして、先ほど政府委員から申し上げましたように関係省庁の間でこの問題についての検討を進めておりまして、やむを得なければこれを規制することにいたさなければならないと思っておりますが、なおしばらく検討を進めさしていただきます。
  59. 柴田弘

    柴田(弘)委員 ひとつ法整備へ向けての、そして税制面の今申しましたような方向へ向けての前向きな検討、あくまでも投資家保護という観点から前向きな検討をお願いをしてまいりたい、このように思います。  そこで本題に入りたいと思うわけでありますが、今回のこの剰余金特例措置というのは、やはり一番根本は、政府円高対策に対するいわゆる消極的な取り組みの姿勢、それが一兆一千二百億円という税収不足に結びついた、何とか赤字国債発行しないためにこの税収不足を補うためのいわゆる臨時異例措置である、こういう御説明であるわけであります。そこで私が申し上げたいのは、この一兆一千二百億円という法人税所得税を中心にして税収不足をもたらした政府経済の実態というものを無視した財政運営、経済運営というものの失敗をまずここで御指摘を申し上げていかなければならない、こんなふうに私は考えるわけであります。大臣、いかがですか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今回の税収不足を分析してみますと、その一つは、御指摘のように法人税、それも恐らく第二次産業、輸出に関連の深い法人を中心にした法人税の減収でございます。次に、所得税の中で源泉所得に関するもの、それも給与、いわゆるボーナスでありますとか時間外手当でありますとか、そのようなものから生ずる源泉所得税に関するもの、第三に、石油税等から生ずるもの、関税から生ずるもの等々であろうと思われますが、その原因は、恐らくかなりのものが昨年の九月のプラザ合意以来の急激な円高によるものであります。また一部は、しかし、石油価格の下落に基づくものもございます。  総じまして、昨年のプラザ合意以来、ドルの過大でありました評価を下げることには成功いたしまして、やがてそれが米国の大幅貿易赤字の削減につながっていくという目的を実現することとは存じますけれども、その間における円の上昇が極めて短期間に急激でありましたために、日本経済はこれに十分対応できずにその結果がまた税収不足にあらわれた、こういうふうに考えるべきものかと存じます。
  61. 柴田弘

    柴田(弘)委員 こうした特例措置というのは過去の例にもありまして、例えば五十一年度には三千四十四億円、五十五年度には四百八十四億円、五十七年度には千四百七十一億円、これは大臣も御承知のようにいずれも減税財源に充当をされてきております。ただ、昭和五十九年度の千七百五十四億円だけにつきましては赤字国債追加発行圧縮のために使われた。私どもは、六十二年度の抜本的な税制改正と切り離して戻し減税でこの四千四百五億円という剰余金を減税財源にして減税をやりなさい、こういうように主張しておったのが、政府の方もなかなかうんと言わなくてそうできなかった。こういう点で私どもは非常に不満であります。しかも与野党合意による今の減税問題というものはまだ宙に浮いてはっきりした対応をされていない、こういった問題も私本来ならば大臣の所見も聞かしていただきたいのですが、これは今各党の政調、政審会長の段階で任されておりますので、この問題については言及いたしません。しかし、そういったことを主張しておったということをここで一言私は申しておきたい、このように思います。  そこで、今政府経済財政運営について、これは急に思いもよらぬ円高になったからこういうように歳入欠陥を生じた、G5以来そうなった、日本経済がそれに十分対応し切れなかったというのが政府のあるいは大臣のお考えかもしれませんが、私どもはかねがね、政府予算編成のときには今日の緊縮財政路線というものを積極的な経済財政路線に転換をしていくべきときだ、そうでなければ政府の目標である実質四%の経済成長というものもなかなか達成できないであろう、あるいは対外的ないわゆる貿易摩擦、貿易不均衡という問題を勘案いたしましても、やはり内需を中心にした経済財政路線に積極的に転換を図れということを主張してきたわけであります。ところが一向にそういった路線をとらなかった。やはりそれが今日のこうした歳入欠陥を生み出し、政府目標の四%成長も本年度も恐らく達成不可能であろうと思うわけであります。そういった点を考えますと、いよいよ宮澤さんも大蔵大臣になられまして、来年の抜本的な税制改革等もあるわけでありますが、来年度予算編成というものが一つの大きな我が国経済財政運営の転機にならなければならないと私は考えているわけであります。  金融政策の弾力的な運営という問題につきましては、公定歩合も史上最低の三%になったわけでありますが、あとは果たして財政の主導による積極的な財政運営をどうしていくかという問題が私は一つの大きな課題になってこなければならぬと思います。  公共事業の積極的な追加という問題、それから所得税減税、この問題が大きな二本柱になってくると思いますが、所得税減税の問題は、税制の抜本的な改革の中で取り上げられておりますから、また後で論及します。この際はここでは申しませんが、とにかく公共事業の着実な増加、これは財投、地方財政の活用、あるいはまた規制緩和をどんどん進めてそして民活を活用していく。これをしっかりやっていけば単年度で〇・五%の実質的な経済成長が見込める、こんなふうにも言われております。そういったもろもろの総合的な視点で来年度予算編成を初年度として今こそ積極的な経済財政運営に踏み込んでいくときである、私はこういうふうな感じを持っているわけでございます。  対内的な要因、そして対外的な要因を考えまして、やはり時期を失してはいけません。もう遅きに失しているわけでありますが、そういうことを痛切に私は感じ、訴えたいわけでありますが、大蔵大臣としては来年度予算編成に関連してどのようなお考えのもとで進められていくのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国内事情から見ましても、対外的ないわば我が国の負わされております立場からしましても、そういうことを考えなければならないではないかという御主張は、よく私も理解をいたします。要は、日本経済そのものがこれだけの潜在力を持っておる、潜在的な活力を持っておるわけでございますから、財政がそれに対してある程度の呼び水といいますか刺激を与えることによってどれだけその活力、潜在力を引っ張り出すことができるかということに尽きるわけでございます。ならば、最小限と申しますと語弊がございますけれども、国民負担になるべくなりませんような形で最大限に財政としてのそういう機能をどうやって発揮させることができるかということ、それについていろいろ工夫をいたしてみたいと考えております。
  63. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこでその工夫でございますが、大臣の考えは、例えば公共事業の場合、六十一年度一般会計の公共事業費は前年度予算に比べましてたしか二・三%の減だと思います。ところが総事業量としては財投等を活用して四・三%拡大をしている。こういった手法をとられるのかどうかということなんですね。そうすればこれは六十一年と全く一緒の手法であり、先ほど来私が主張しておりますいわゆる積極的な経済財政運営というものはないわけです。ところが、不況の状態、円高デフレの状況というのは、もうそういったことを言っておれぬ。景気停滞感は、北海道、東北、九州だけではなくて、最近自動車、工作機メーカーなどの産業にも影響してきている。神奈川県、愛知県にも影響してきている。だから、一つの議論として、もうこの際公共事業をマイナスシーリングの対象から外して積極的な財政出動を求めるという声も非常に強いわけであります。こういった議論も実はあるわけでありますよね。これは来年度非常に大きな議論になってくると私は思います。もう今既になっていると思いますが、やはりそういった一つの考え方、発想の転換というものが大臣にあるのかないのか、一遍この際さあっとした答弁を聞かせていただきたい。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本件につきましては、既に七月の中旬、前内閣の時代に昭和六十二年度予算要求の概算要求基準を決定いたしておりまして、これはいわゆるそういう意味での聖域なしということで、少数のもの以外はなしということで、公共事業もまたその概算要求基準の中に入っておるわけでございます。この点はやはり、いろいろ財政の事情を聞いてみますと、公共事業だけを特別扱いするということが現実の問題としてできない、難しいのでなくてできないといういわば我が国の行政のいろいろな習慣、仕組みであることは、どうも事実として認めざるを得ない。となりますと、それは全体的な予算編成の原則が崩れることになりますので、この点はやはり前任者のやられましたことを踏襲しなければならないと私は考えております。  ただ、そうではありましても、先ほど申しましたように、総事業費あるいは総事業量の確保については、過去にもいろいろの努力をいたしておりますが、一層の工夫をし、努力をいたさなければならないことは事実であろうというふうに考えております。
  65. 柴田弘

    柴田(弘)委員 前任者の竹下さんが決められたということで、それを踏襲するのはやむを得ぬ、こういうことでありますけれども、あなたも所得倍増論を訴えられて、積極財政路線だ。えらい失礼しました。資産倍増論だそうです。まあ結構なことだと思うのですね。積極的な財政運営というのはそれと同じ整合性がある。だから、まだまだ予算編成というのはこれからの段階でありますし、しかも経済状況が七月以来ますます厳しい状況になってきたということを考えられまして、ひとつ宮澤大蔵大臣の持論というものを積極的な六十二年度のいわゆるあなたの第一回の予算編成の中から実現をしていっていただきたい。時間がありませんので、また一遍この問題についてはやりますが、ひとつ要望しておきます。今これ以上やっても平行線になりますからやめますが、どうかひとつそういった面においても要望してまいりたい、このように考えております。  あわせまして、先ほども議論が出ておりました国債償還の問題に関連をして、NTT株の売却の問題。これは国債整理基金特別会計法によりまして、株式の総数の三分の二に当たる株式は国債の元金償還に充てるべきだ、こういうふうに書いてあるわけであります。これは一つの法律があるわけでありまして、今回もこれはもっと詳しく、百九十五万株のうちの二十万株がどうなって、十万株が値つき株、そしてこれを含めた百七十五万株が安全率八〇%で一兆六千七百五十八億円になる、この安全率というのは一体どういうものかということも本当は聞きたいのですが、これも余りはっきりした根拠があるものじゃない、こんなふうに私も思っております。  いずれにいたしましても、あなたの方からいただいた資料を見てまいりますと、昭和六十一年度末の基金残高は一兆七千六百四十五億円、これは昭和六十二年度国債償還に使う、こういうことでありますね。これは当初二十一万三千円で予定をしておったのが百十九万七千円、六倍ぐらいに売却値が上がって予想外の収入をもたらしたということになると私は思いますが、この千五百六十万株のうちの三分の二、千四十万株を売却することになります。そのうちの七百八十万株を四年間に売却する、こういうことになるわけですね。こんなにうまくいくとは限りませんが、いずれにいたしましてもこれは相当な人気が出まして相当いい値段で売却できる。  そうしますと、またこれも一つの議論でありますが、こうしたものを一般財源に充当して公共事業費あるいは減税の財源にしたらどうかという議論も当然出てくると思います。この辺のところをきょうは一遍きちっとしていただきたいと思いますが、そういった議論が出てきても、いやこれは必ず法律どおりあくまで国債償還に充ててまいりますよときちっと言い切っていただけるかどうか。そして、それも、言い切ったら、そういった議論が出ても、それはもうあとはここでこう言ったことだったからやりませんよというふうにきちっとしていただけるかどうか。これは大臣の将来を展望しての考えの中からひとつ御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点についてはいろいろな議論がありいろいろな考え方があると私は思います。しかし、政府としては、やはりこれは国債償還の財源に充てるべきである、既にそういう制度も法律によって確立をしておるところでございますので、そのように考えます。
  67. 角谷正彦

    角谷政府委員 柴田委員御案内のように、昭和六十年度国債整理基金特別会計法の一部改正によりまして、電電株につきましては、これはその三分の二は国債整理基金に所属させまして国債の元金の償還に充てるというルールを決めていただいているわけでございます。このことは、要するに、現在百四十三兆円にも及びますところの国債、これは国民共通の負債でございますが、これを国民共通の資産である電電株によって償還するというふうな原則をお決めいただいたものであり、これは既に制度的に確立しているものと私どもは考えております。  また、NTT株というのは、六十一年度のように一般会計からの定率繰り入れ等を停止せざるを得ない厳しい財政事情もとでは、現行の国債償還ルールに従った国債償還を進めていく上での本当にかけがえのない貴重な財源であると考えております。  こういった情勢から見ますと、NTT株の売却益というものを御指摘のような減税財源とか公共事業財源に充てるということは考えられないことだと考えております。
  68. 柴田弘

    柴田(弘)委員 その線に沿って対応していただきたいと思います。  次は、税制改正の問題で、これも大臣にお聞かせいただきたいのですが、税調答申を受けまして自民党の税制調査会も審議に入られた、こういうことであります。マスコミの報道によりますと、自民党税調会長は、政府税調の答申というものを政府が考えていることの羅列であると批判をされて、これを無視する、そして党独自で行う、こういうふうにおっしゃっているそうであります、マスコミの報道が間違いなければ。そうしてまいりますと、政府税調の答申と異なった結論が党税調で出た場合、政府としてはどちらを優先する方針であるのか、これを一遍大蔵大臣からお聞かせいただきたい。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府税調におかれましては各方面の有識者の方々、学識経験者の方々から長いことこの問題について御検討いただきまして答申をいただいたわけでございますが、それはいわば国民各層のこの問題についての関心を反映した答申となっておることは間違いないところでございます。  と同時に、しかし、この税制の問題は国会制度の発足の原因にもなりましたぐらいすぐれて政治的な大きな問題でございますから、私どもの政府・与党の中で国会に提出いたします案の作成について慎重な検討をし議論をするということも、お互い政党人としては当然のことであろうと思います。  ただいまそれが進行しておるわけでございますが、そういう事態を当然のこととして予想しながら、政府税調の答申の中では幾つかの選択を示しております。したがいまして、現実の問題として政府税調がこうでなければならないと言っておることについて結論としてそれと全く違った方向が出るというような仕組みにはなっておりませんで、政府税調の答申そのものが広く政府・与党が、ひいては国会でございますが、議論されます上でのいろいろな考え方の選択肢を提供しておる、私どもはそういうふうに考えております。
  70. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そうしてまいりますと、私は、今回のこの政府税調の答申というのは、いわば抜本的な改正ということで、二十一世紀を目指しての一つの大きな我が国税制改正のあり方を答申してきておると思います。  例えば、所得税二兆七千億そして法人税一兆八千億、相続税三千億ですか、四兆八千億、それに対する財源は、大型間接税で三兆五千億、マル優廃止等で一兆円ということであるわけであります。でありますから、この政府税調の答申というのは六十二年度で一挙にこれを実現するということは無理であろう、これは当然のことだと思います。その辺の見解と、でありますからやはり単年度ごとに、例えば昭和六十二年度税制改正については、政府税調のこの抜本改正を一つの基礎とした政府税調としての六十二年度年度だけの答申というものをまた受けるのかどうか、それに諮問するのかどうかという問題もあります。その辺のこともお聞かせいただきたい。  それからもう一つは、具体的な問題として、四兆八千億の減税というのは私は単年度ではとても無理だと思う。例えばまかり間違って大型間接税導入されましても、あるいはマル優廃止が実現いたしましても、こんなことはそう簡単にはできないと私は思いますが、やはり国民の周知期間あるいは準備期間、周知徹底といった意味から、減税は確かに昭和六十二年度の四月からできたとしても、一方における財源措置というのはそんな簡単にできるものではない、私はこういうふうに思っております。そういった観点からいいまして、この六十二年度年度の減税幅というのはそう簡単に大きなものにはなってこないのじゃないか、少なくても二年から三年かけた改革案というものになってきそうな気が私はしているわけでありますが、その辺のところはいかがでしょうか。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど早川委員にも申し上げたことでございますが、基本的な考え方は、第一に、今回の税制改正は三十何年かを経ましたいわば抜本的な改正でございますので、全体を一体的に、有機的にとらえたものでなければならないということが第一でございます。第二に、いろいろな事情から、その実現は歳入中立的に行われなければならない。この二つが大原則であろうと思います。したがいまして、すべての問題処理はそこから出てくると考えておりますが、残余につきましては政府委員から申し上げます。
  72. 水野勝

    水野政府委員 御提示の四兆八千億円といった数字でございますが、このうち一兆八千億円は法人税と言われているわけでございます。この点につきましては、先ほども申し上げましたが、中間報告におきまして、法人税の実効税率、国、地方含めましたところでの実効税率を五〇%未満とするというところからいたしますと、機械的に算出されてくる税額でございます。  ただ、この税制調査会の答申におきましては、税率水準を下げていく一方、課税標準の拡大、課税ベースの拡大といった点につきましてもかなりいろいろ御指摘があるわけでございます。そうした点からいたしまして、一兆八千億と申しますのはいわば機械的に算出されました、しかも最高の限度額でございまして、今後具体的な改正の詰めの段階でこの規模はまたいろいろ変わり得るものでございます。  また、所得税、住民税につきましては二兆数千億といった数字が挙げられておりますが、この点につきましても四月の中間報告におきまして、普通のサラリーマンが就職してから退職するまでほとんど限界税率が変わらないようななだらかな累進税率とすべきである、そういう方向が示唆されておるわけでございます。そういたしますと、下の方の税率をかなり引き上げたりいたしますればそれによって減税額と申しますか所要歳入額は出てこない場合もあり得るわけでございますが、そうした点は、また現実性の観点からいたしましていろいろ問題があるとすれば、現在の最低税率は据え置きだから、税率構造をなだらかにするというふうにいたしますと二兆数千億といった数字が一応仮に算出されてくるわけでございます。したがいまして、全くこの数字も仮置きでございます。  ただ、税制調査会におきましては、検討、分析、御審議をある程度高いイメージを持って願うということからいたしまして、かなり大胆にいろいろ仮置きの数字を挙げて御審議を願ったという経緯はございます。しかしながら、あくまでそのあたり数字は仮置きの想定値でございまして、今後こうした大枠の中でどのような具体的な内容が固められるか、それによりましてまたこうした金額もいろいろ変わってくる、そうした性格の数字、金額でございます。
  73. 柴田弘

    柴田(弘)委員 ですから、お聞かせいただきたいのは、来年度一挙にできませんでしょうということと、やはりこれは後の質問の関係があるからちょっと聞きたいんですけれども、単年度、単年度に、例えば六十二年の場合はまた新たに税調から答申を受けるんですかと、それからもちろん減税幅も四兆八千億はそう一年でできませんでしょうと、こんなことを聞いているわけなんです。
  74. 水野勝

    水野政府委員 ただいま申し上げました大枠の数字、これは全くの仮置きでございますが、そういったものも前提といたしながら、また来年の税収状況、それから先ほど大臣から申し上げました一体性の原則、それから歳入中立の原則がございます。したがいまして、減税額を具体的に検討いたします際には、それに見合う税収もまた別途考えながら検討するわけでございます。  そうしたもろもろの要素を織り込みまして、いろいろな考え方を整理いたしまして、税制調査会にも六十二年度税制改正、単年度税制改正の案をある程度整理いたしました段階で御審議を願う、それによりまして政府としての最終的な六十二年度改正の姿をまとめ国会に御提示する、こういうことに相なろうかと思うわけでございます。
  75. 柴田弘

    柴田(弘)委員 初めからそういうふうに答弁していただければいいわけであります。そうだと思いますね。  そこで問題は、政府は、同時同額増減税実施だ、こういうことをおっしゃっている。ところが、税調答申の中に気になる文言がある。今回のこの税調答申、肝心のところははっきりしない。盛り上がってない。答申の中でただ一つ明確になってきたのが今回の改革に込めた大蔵省のねらいである。それは何かと申しますと、答申の 「基本理念」の中に、「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になるという面もあろう。」こういう表現があります。これは財政再建のための増税の可能性をずばりと言い切っておるんじゃないか、私はそう思う。先ほど大臣もおっしゃいましたが、広く、薄く、国民各階層の負担を求めるという今回の改革の流れの中で、換言すれば税金を取りやすくするというシステムの構築以外の何物でもない、私は今回の税制改正答申というものはそういうふうに断言したいわけですね。これはもし違うというなら反論してください。また私もやりますから。  それから、今回の答申というのは、当面の増減税同額をうたう一方で、新型間接税などがもし実現をすれば将来財政上の要請に応じ弾力的に対応できると述べておりますので、果たしてこの増減税同額同時実施の原則というものをいつまで続けていかれるのか、これは本当に私どもにとって極めてあいまいであり、国民にとっても極めて重大な問題であろう、こういうふうに私は思うわけであります。だから、この辺のところをひとつ大蔵大臣、これは政府財政再建路線のあり方というものと絡んで私は大事なことだと認識をしておるが、どういうふうにあなたはこの税調の答申を読み切っていらっしゃるのか、そしてどう対応していかれるのか、あいまいなことでなくて、ずばっとひとつお答えください。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、ここに書いてございますように、「経済が活性化し国民経済バランスのとれた発展に向かうことが期待され、」云々と、先ほど私がお答え申しましたのも同様な意味でございますけれども、このような税制改正によっていわゆる国民の、国民経済の活力というものが、潜在力が顕在化いたしまして、日本経済がさらに大きく発展をしていく、こういうことにこのたびの税制改正が役立つ、そのために役に立つということが期待される。その結果といたしまして、国民経済成長が、過去のような高度でありませんでも、きちんとした健全な成長になり、また財政もそれから裨益をしていく、そのような税制改正を庶幾しておる、そういうことと考えております。
  77. 柴田弘

    柴田(弘)委員 もちろん経済の発展、経済の活力を引き出すという税制改正ということについては異論はありません。ところが、私が今聞いておるのは、大臣答弁をはぐらかしては困るわけですが、要するに同時同額の増減税実施というものをずっと続けていくかどうかというのが一番のポイントなんです。その場合に、現在の政府のいわゆる財政再建路線というのはきちっと堅持されるという前提というものがなければならない。もしそうでなければ、新しい財政再建路線というものを本当は提示すべきだ、こう思います。むしろ今回の税制改正に対して、こういうふうに財政再建というものをやってまいりますよといういわゆる手法、手順というものをきちっと本来は明確にしていくのが政府の責任ではないか、私は実はこんなふうにも考えているわけなんです。税調はあえて各論併記でそういったことをずばっと言わなかった。そして例えば租税負担率はどこに適正な水準を求めるかという問題、あるいはまた社会保障費に対する目的税的なものは、とにかく大蔵省の方が何とか新型間接税を導入したい、マル優を廃止したいといったことで、私が勘ぐれば、そういった議論もあったことはあったがそれを一切答申に盛り込むことができなかった。責任ある政府として、私が考えることは、やはり税制改正を一つの機に、租税負担率、ひいては国民負担をどうしていくか、社会保障負担というものをどうしていくのかといった問題を含めた整合性のあるきちっとしたものが政府の統一見解として出されるべきであるということを今回の答申を見まして痛切に思いました。  端的にお聞きしますが、今回のこの政府がねらっている抜本改革というのは、増減税同時同額実施をさらに永久に続けられるのかどうか、あくまでもそれは実質増税ではなくて財政再建のための税制改正ではない、そして租税負担率の上昇をもたらさないという「増税なき財政再建」路線は今回の税制改革を機にさらに守っていかれるか、こういった疑問点が実はあるわけであります。ひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第一に、このたびの税制改正から政府増収、増税を期待しているということはございません。それはいわゆる税収中立であるということでございます。政府が期待しておりますのは、先ほども申し上げましたように、そのような税制改正を行うことによりまして国民経済の潜在力が活力となって発揮されまして日本経済全体が健全な成長の道に返る——返るというのは語弊がございますから、道を歩む、それによって財政もまた裨益をする、その結果として財政再建への道も開ける、そういうふうなコースを考えておるわけでありまして、このたびの税制改正によって増税を期待し、それによってもって財政再建の原資を生み出すという考え方はいたしておりません。
  79. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それではきちっとそれを覚えておきますから、何年か後に、そのとき宮澤さんが大蔵大臣であるかどうかはわかりませんが、私はどうもそれは不信感がある。人間がげすっぽくて人のやられることを余り信じられないたちだからいけませんけれども、大蔵省のねらいは私はやはり財政再建路線だと思います、今回の税制改正は。今の大臣答弁で一応了とはしますが、その疑問というものは恐らくここ何カ年かは持ち続けていくのではないか、このように私は考えております。  そこで、この税制改正に関連をして土地問題で大臣の御見解をお聞かせいただきたいのですが、今度公定歩合が〇・五%引き下がって三%になった。肝心の金が設備投資の方に回らないで銀行の不動産融資というものにますます拍車をかけるのではないか、こういう懸念を一つ持っている。ちなみに、本年の四月に銀行局長通達で報告義務ということをやりましたが、一つのデータとして日銀の統計を見てまいりますと、八月末、都市銀行十三行の不動産業向け融資残高は十兆四千五百七十二億円、前年同月比四四・五%増、地方銀行それから信託銀行等を含めた全国銀行の残高は二十兆八千八百十億円、三四・七%も一年間に増加をしているわけですね。これが不動産融資、そして地価高騰に拍車をかけている。この不動産融資の規制というものを何らかの形でもっと考えていかなければならないという問題。  それからもう一つは、税制面で地価高騰にどう歯どめをかけるか。例えば国土庁が考えておりますいわゆる買いかえ特例制度の見直しの問題をどうするかという問題。それからいま一つは、二年以内の短期譲渡、これを課税強化するかどうかという問題もある。そういった点を含めて、地価高騰に対しての大臣対応、対処についてお考えをお聞かせいただきたい。
  80. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今委員がおっしゃいましたように、金融機関の不動産業者向けの融資はこのところかなり急増してきております。対前年で三割を超える増加でございます。これらの融資がどういうところへ回っているかということでございますが、かなりの部分が土地の売買資金として回っていることも事実であろうかと考えているわけでございます。したがいまして、大蔵省といたしましては、これらのお金がいわゆる土地の転がし等によって地価を上げる方向に働かないように、融資に当たって十分に公共性を自覚して行うようにということで前々から金融機関に指導してきているわけでございます。  先ほども御指摘がございましたように、昨年七月にそういう方向で通達を発出いたしました。さらに、最近、特に都心部の一部地域で地価の急騰がございましたので、本年四月十六日により一層強い調子の通達を出してきております。ただ、この問題は、非常に我々としても悩んでいる面は、いずれにしましても金融機関の融資は金融機関みずからの経営判断において決定するのが基本であるわけでございまして、そういう意味から金融機関が十分に公共性を自覚してやっていただきたいということを行政当局としては指導する、そういう意味での行政の指導にもある程度限界があるわけでございます。したがいまして、我々としては今後ともこのような観点から金融機関に対しては引き続き指導を行っていきたいと考えております。
  81. 水野勝

    水野政府委員 土地税制につきましては、この二十年ぐらいをとりましても、もろもろの要請に応じましてあるときは軽課し、あるときは重課する、いろいろの過程を経てまいっておるわけでございます。昭和四十四年に一律分離的な税制導入しました結果大変な土地転がしを生んだというようなおしかりも受けたり、あるいはそれを一転してまた厳しくしたりというところでございます。利用可能な国土が絶対的に限られているという我が国の土地問題の特殊性からいたしますと、土地政策におきまして税制が果たし得る役割には限界がある、あくまで補完的なものではないかという気もいたすわけでございますが、せっかくの委員からの御指摘でございます。また、関係省庁から重課、軽課を含めたもろもろの御提案も出されておるところでございます。年末にかけましての税制改正作業の中で税制調査会にも御相談しながら検討してまいりたいと思っておるところでございます。
  82. 柴田弘

    柴田(弘)委員 時間があと少なくなってまいりました。きょうは郵政省、文部省に来ていただいておりますので、郵政省にマル優廃止の問題で簡単にお聞かせいただきたいのですが、これは郵政大臣が言っておりますように、あるいは郵政審議会の答申がありましたように、あくまで今回の税制改正についてはマル優廃止反対だと思います。高齢化社会を迎えてますます貯蓄の重要性が高まってきた。あるいは社会資本整備ということに貯蓄の果たす役割は大きい。しかも、国民世論の大多数が、三千三百有余の自治体の九八%が、地方議会でも反対の決議をしている。新聞の世論等でも七〇%以上の人が反対だ。これはあくまで死守していくべき問題だと思いますよね。私、大賛成だ。簡単にひとつ決意を聞かしてください。
  83. 木村強

    ○木村説明員 ただいまの先生の御質問、大変ありがとうございます。  郵政省の決意、かねてから郵政大臣も表明いたしておりますように、郵便貯金の利子非課税制度、マル優、少額貯蓄の非課税制度の意義は先生御指摘のとおりますます重要なことになるというふうに理解いたしておりまして、断固非課税ということで頑張ってまいりたい、国民の要望にこたえてまいりたいと考えております。よろしくお願いします。
  84. 柴田弘

    柴田(弘)委員 大臣、断固やっていくということです。あなたは、本会議の代表質問等々においても、とにかくマル優廃止をしていこうという方向なんだ、慎重な検討という表現ながら。郵政省との調整というものは一体どう図っていくのですか。これは、私、無理だと思います。  それから、国民世論というものをどう考えていらっしゃるか。一番大事な問題。なかなか難しい。簡単な問題ではないと私は思います。どうされますか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 各省庁、皆おのおのの立場を持っておりますが、それは結局すべて国民のためを思えばこそでございます。そういう共通の基盤がございますので、必ず話し合いができることと思っております。
  86. 柴田弘

    柴田(弘)委員 まあそれ以上は次に譲りますが、郵政省、頑張ってください。我々もしっかり応援しますからね。応援団はこんなにおりますからね。  それから最後に、義務教育費国庫負担法の問題です。これは、マスコミの報道等を見てまいりますと、今度また大蔵省が事務職員、栄養職員に対する国庫負担を見直す。これは国庫負担法という法律によって二分の一、しかもその精神は憲法二十六条のいわゆる義務教育無償の精神から来ているわけです。これは文部省、要望しておきますが、そういうことが今後の予算編成の中で恐らく大蔵省から話が出てくる可能性も十分あると思います。過去、要するに昭和六十年には旅費、教材費に対する国庫負担は全額カットされる。三百五十三億。六十一年度は共済費追加費用、恩給費に対する負担が三分の一に引き下げられ、八百四十二億円カットされている。今回これがまたカットされますと、これは約一千億近い地方負担になってくるわけであります。見解はいかがですか、文部省。
  87. 池田行彦

    池田委員長 時間が経過しておりますので、簡潔に答弁願います。
  88. 井上孝美

    井上説明員 お答え申し上げます。  義務教育費国庫負担制度は義務教育の機会均等と教育水準の維持向上を図る上で根幹をなす制度でありまして、国が義務教育について地方と責任を分かち合う以上、この制度の基本は今後とも堅持すべきものと考えているところでございます。  学校の事務職員や栄養職員はいずれも学校の基幹的な職員でございまして、文部省といたしましては、義務教育費国庫負担制度の対象にするという考えに立ちまして概算要求しているところでございまして、関係省庁とも協議しつつ対応してまいりたいと考えております。
  89. 柴田弘

    柴田(弘)委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、さまざまな税制改正の問題を含めまして、来年度予算編成は非常に問題がある。きょう議論を尽くせなかった分は、同僚議員、また次回に譲りまして、この辺で質問を終わります。どうもありがとうございました。
  90. 池田行彦

  91. 安倍基雄

    安倍(基)委員 宮澤大臣、私、初めて質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  この法案関連と、それに一般的な話が加わると思いますけれども、今回のいわば特例法の財源不足はどこから生じたか、簡単に説明してください。
  92. 角谷正彦

    角谷政府委員 今回の六十一年度補正予算におきましては、歳入歳出両面にわたっていろいろ問題といいますか収支ギャップが生じたわけでございますが、まず一番大きいのは、歳入面におきましては、税収が一兆一千二百億円当初予算に対して減額を見込まざるを得なかったということ、税外収入につきましても日銀納付金を中心に差し引きいたしまして千三百三十三億円の減収を見込まざるを得なかったということがございます。他方、給与改善費初め歳出需要につきましても、公共事業を含めまして一兆二千五百二十五億円の歳出追加がございました。こういった中で私どもといたしましては全体といたしまして経費の節減等によりまして一兆五千億円余の財源を生み出したわけでございますが、それでもなお不足する財源等につきまして、特例公債増発をぎりぎり回避するための措置として、今回剰余金全額歳入に繰り入れさせていただいたということでございます。
  93. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても経済成長が非常にダウンしたということだと思いますけれども、歳入見積もりの基礎になった経済成長を現在どう見ているかということを簡単に企画庁の方からお聞きしたいと思います。
  94. 大塚功

    ○大塚説明員 六十一年度経済成長率でございますけれども、現在のところ四—六月期の実績しか出ておりません。四—六月期は実質経済成長率は前期比で〇・九%の伸びでございました。そういうことで、四—六月期しか出ておりませんもので、あと三四半期ございますものですから確たることを現段階で申し上げることはできないわけでございますが、最近の景気情勢を見ますと、いろいろな面で二面性があらわれております。製造業と非製造業の間だとかあるいは内需、外需あるいは都市、地方といったいろいろな面で二面性があらわれております。そういうことで、政府といたしましては去る九月十九日に三・六兆円規模の総合経済対策を決定したところでございます。この三・六兆円という規模は、現在の名目GNPに対しまして約一・一%の規模でございまして、その波及効果まで考えれば相当の効果があるんではないかというふうに考えておるわけでございます。さらに、御案内のとおり十一月一日から第四回目の公定歩合引き下げが実施されておるわけでございまして、このような政策効果が今後浸透していくと期待されるところでございます。また、従来から申しておりますが、円高のメリットと言われるものが十兆円を上回るという試算もできるわけでございまして、この効果が内需面にこれから着実に出てくるということを考えますと、我が国経済は内需を中心として着実な成長を今後とも続けていくんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  95. 安倍基雄

    安倍(基)委員 答弁は簡単にしてくださいね。  結局歳入見積もりの問題になると思うのですけれども、来年もどうなるか。基本的にはまず、じゃ、来年どのくらいの経済成長見通しているのかなということと、もう一つは、その基礎になる為替相場ですね。経済成長というのは常に為替相場を考えた上でないと今のところできませんから、なかなか相場の見通しというのは難しいことは事実でございますけれども、来年度を考えるときに、これからいろいろ予算編成をしていくというときに、来年度経済成長をどのくらいに見るのかということが第一点。その基礎となる為替相場をどの辺に見ておくのか。これは、大臣もこの前アメリカへ行かれて、大体この辺じゃなかろうか、この辺でどうにか落ちつけましょうという話もしてこられたようでございますけれども、この二点について簡潔に答弁してください。
  96. 大塚功

    ○大塚説明員 来年度経済見通しにつきましては、現段階ではいろいろ勉強中でございます。例年のことでございますけれども、翌年度経済見通しにつきましては、内外経済情勢変化をよく考えまして、経済見通し経済運営の基本的態度という形で予算編成と同時に決定するならわしになっております。そういうことで、現時点で六十二年度経済成長率について申し述べることはできない状態でございます。  それから為替レートでございますが、そういうことで、経済見通しの前提となります為替レートにつきましても、現段階では何らの数字も持っておりません。御案内のとおり為替レートは市場で基本的に決定されるものでございまして、各国経済成長率とか金融動向等によって決定されるものでございます。一般的に申し上げました場合には、経済見通しをつくる場合には、為替レートにつきましては、そういうことで非常に不確定でございますので、その時点におきまして直近の実勢相場を採用するということでございますので、仮に年末に経済見通しを策定するとなりました場合には、その時点直近の実勢レートを採用するということになろうかと存じますが、現段階では何とも申し上げられない状態でございます。
  97. 安倍基雄

    安倍(基)委員 予算と一緒に決めるというのはそれは形式的な話で、今これから編成をしていくときに何らかの見通しがなくてはこれはしようがない話なんですよ。しかも、過去のように大体相場が決まっているというときならまだわかるのですけれども、もう去年から非常に大きく変化してきているということを考えますと、予算編成のときに一緒に発表しますよ、だから今やっていませんというのでは、何のために企画庁があるかわからないという感じがございます。これはこれからのいわば来年どういう予算をつくるかというときにやはり大まかな為替相場の見通しとかがなければ、たまたま予算と一緒に発表しますというのでは、まさにその予算をつくる過程においてどのくらい歳入があるか、どのくらい経済成長があるかという前提がなければ、つくってしまった後で何となく数字合わせをすることになってしまうと思う。  この点、この課長さんに追及してもあれかもしれませんけれども、大蔵大臣としても、これから大体来年の相場を言うのはなかなか大きな話でございまして、今それを無理やり引っ張り出そうということまではできないと思いますけれども、大体のめどを持っていないと本当は困ると私は思いますけれども、これはいかがでございましょう。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは安倍委員のおっしゃることはごもっともなお話ですが、これもまた安倍委員がよく御存じのように、今これを答えろとおっしゃることは至難のことでございます。恐らく今年末に仮に経済見通しを立てられるといたしますと、企画庁といたしましてもいろいろ各省に御相談はされるものの、やはり直近の一月ぐらいの相場を仮に置く、どうもそれしか方法がないのじゃなかろうかと想像いたします。
  99. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この問題は私は今度初めて出てきた問題じゃないかと思うのですよ。今までは直近の一月の相場くらいでよかったかと思うけれども、去年からの一年間の変動を見ますと、これは直近のやつを機械的に使ってやるというのでいいのかどうかという大問題があると思うのです。この問題は非常に難しい問題でございますからあれでございますけれども、企画庁ももう少し真剣に、一生懸命やっていると思うけれども、経済見通しを立ててもらわないと、これは大変な話になると思います。この話は要望としてお話ししておきますし、また別の機会でお話しすると思います。  ちょっと細かい話でございますけれども、今円高差益を還元せよという話が非常に起こっておりますけれども、あるところから聞いたら、日本航空がえらいべらぼうないわば為替相場で運賃を計算しているというように聞いておりますが、この点について運輸省の方から御説明願います。
  100. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  国際航空運賃につきましては発地国通貨建てという制度になっておりまして、基本的には日本の国際運賃と申しますのは日本企業の経営といいますか経費を中心に考えておるわけでございまして、いわゆる通貨の、為替の問題は直接には関係ないわけでございます。  先生御指摘の高いレートで計算しているのではないかという点は、恐らくIATAという国際的な航空事業者間の協会がございますけれども、この中で各航空会社が主として精算のために用いておりますレートがございます。これは一ドルが二百九十六円ということで計算をしておりますが、ただしこれに調整率というものを掛けて若干そのときどきの変動を反映するような仕組みになっております。ただ、この点はいわゆる航空会社間の精算ということでございますので、運賃の設定そのものとは直接は関係ないということでございます。
  101. 安倍基雄

    安倍(基)委員 二百九十何円ですかな、それはいつごろからそういう条件になっておって、あなたは運賃のいわば算出に関係ないとおっしゃるけれども、これは私いろいろ聞いてみますと、ほかの外国の会社と比べてべらぼうに高いままで据え置かれているという話を聞きます。今運賃と関係ないという話があったが、どうもはっきりわからないということと、今の二百九十何円でしたかな、それはいつから決まっているのか、それは一体変える気持ちはあるのかないのか。
  102. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  二百九十六円といいますのは、変動相場制に移行したとき、つまり一九七三年からこの制度をとっておりますけれども、先ほど申しましたようにこれは主として航空会社間の精算のために用いているということでございますが、いかにも誤解を与えるということもございますし、このレートを実勢にもう少し合わせるべきではないかということでエアラインも指導しておりますけれども、何と申しましても国際的な場におきまして相談をするということになりますので、例えばことしの秋にも引き下げを提案したのでありますけれども通らなかったというような事情もございます。私どもとしましては、結局はいわゆる方向別格差と申しますが、日本発の運賃が外国発の運賃に比べて割高になっておるという事実が問題であろうかというふうに考えておりまして、この点はできるだけ是正するように努めてまいっておる次第でございます。
  103. 安倍基雄

    安倍(基)委員 大臣円高差益を還元しろ還元しろと、それは一番大事な時期でございますけれども、日本航空なんというのは政府のいわば監督が十分行き届いている企業でございますね、それが今もって全く実際と離れたレートでいろいろな計算をしておる。まさにおかしい話でございまして、この点について大臣の御感想を承りたいと思います。むしろ御決意ということじゃないですかな、皆さんもあれでございますから。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よく事情を存じませんので、所管大臣からも承ることにいたしたいと思います。
  105. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この点はまたこれから問題になると思いますけれども、大臣もよく御理解いただいて、率先して円高差益の還元というところに旗を振っていただきたいと思います。  次は、当面我々としては支出というものを非常によく聞いてみなければいかぬと思うのですけれども、フイリピンのアキノさんが来ますね。べらぼうな援助を要求しているという話がございます。私はかつて外務省の方といろいろ議論したときに、いまだかつて経済援助に反対した議員は与野党ともにほとんどおらぬというような発言を受けたことがございます。しかし、経済援助というものが国の懐から出ているというところを考えますと、これはやはりよほど厳しく見ていかなければいかぬ。日本の国際的な地位というものを考えるべきでございますけれども、御承知のように今円高で、私ども選挙区なんか回っても青息吐息でもう首つり寸前だという企業者がぞろぞろいるわけです。そういうのに今度はいわば業務転換とか業種転換とかいろいろと考えていかなければいかぬ、日本の産業構造全体をいろいろ変えていかなければいかぬという時期でございますから、今までのように経済援助はいいことだということばかりではいけない。どういうぐあいに使われているかということを監視すると同時に、経済援助そのものを聖域視すべきではないと私は考えております。特に、首脳あたりが来ますと何かお土産をやっちゃうという風習があるわけです。特に最近、アキノさんが来られるというので、恐らく外務省もお土産をやろうと思っているでしょうし、中曽根さんあたりもお土産をやろうと思っているかと思います。一説によりますと二千億円を上回るお土産を持っていかせようとしているとか、あるいは四、五百億と大体決まったとか、いろいろ報道されておりますけれども、このフィリピン援助につきまして、アキノさんの来日を間近に控えて、外務省はどういう方針で臨まれるのかということをはっきり教えていただきたいと思います。
  106. 川上隆朗

    ○川上説明員 先生御指摘のように報道でいろいろ伝えられておりますが、まず事実としましては、フィリピン側から第十四次の円借款及び特別借款について要請を受けているということは事実でございますけれども、その具体的な案件とか要請額等は今交渉中でございます。  我々といたしましては、いずれにしても円借款につきましては、フィリピン側の要請を踏まえて、個々の案件の実行可能性というものを十分確認してからその供与の可否について検討するという姿勢をとりたいと思っております。
  107. 安倍基雄

    安倍(基)委員 個々の条件の実行可能性ということもさることながら、総額をどのくらいにするかということが非常に大きな問題ですね。その点について、私も交渉中のところを全部吐き出せとは言いませんけれども、いずれにいたしましても、経済援助はいいことだ、だからつき合わざるを得ない。私はもちろんお金持ちの日本がある程度の経済援助はしなければいかぬと思っていますが、それも全くフリーパスみたいな感じで考えてもらっては困ると思うのです。  特に非常に問題になるのは、従来の予算で、大体防衛庁の予算が伸びるとそれとあわせて経済援助も伸ばしていく。つまり、日本が軍国化したと思われたくないと思う、だからそれと同じくらいのパーセンテージで経済援助を伸ばしていくということがこの過去何年かの慣例になっている。ただ、これは非常に冷静な見方で見ますと、国の安全保障費というものは、軍事費をふやせばむしろ経済援助を減らしてもいい。軍事費が非常に少ないから経済援助でカバーする。私はどちらかといえばむしろシーリングというか安全関係費は一定であってもいいくらいな感じであると思います。その点、従来の考えが、日本が軍事大国になるのではないか、そう言われるのではないかということで、軍事費を伸ばすとそれに負けじとばかり経済援助費をふやす。この点について私は非常に疑問に思っているんです。この点について、フィロソフィーの問題ですからちょつと簡単に言い切れないかと思いますけれども、外務省あるいは大臣の考えを承りたい。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国はいわゆる軍事大国にはならないという道を今日までも歩いてまいりましたし、これからもそうでございますが、これだけの自由諸国家群の第二の経済大国でございますから期待されるところも大きい。しかし、軍事面で我が国が貢献することはほとんどできないわけでございますから、やはり経済援助というものはできるだけやっていくということ、これは基本的な考え方でなければならないであろうと思います。  ただ、それにいたしましても、安倍委員がおっしゃいましたように、一種のエモーションと申しますか、そういうことに流れるようなことはもとよりあってはなりませんし、間違いがあってはもとよりこれは問題外でございますが、そういう意味では援助が有効に使われますようにということは常に配慮をしてまいらなければならないことであります。
  109. 安倍基雄

    安倍(基)委員 きょうの質問時間が限られておりますので、余り経済援助ばかりを論議できないので、また改めて一般質問のときに考えてみたいと思っております。  一点、こういうことがあるんですね。日本の場合には、いわゆるODA以外に、輸開銀融資とか海外経済協力基金の融資とか投資とか、そういったセミオフィシャルというのが非常に多いんですね。私はかつてこの問題を取り上げまして、ODAで優等生になるのもいい、しかし日本はそういうセミオフィシャルのお金を随分使っておるじゃないか、それを全然考えないで、要するに対外援助をODAだけで考える、日本はほかの方でも随分自主的に余計出しておるにかかわらず海外援助が足らぬ足らぬと言われておるということを私は指摘して、こういったこともいろいろな国際的な会議ではっきり主張すべきじゃないかということを言ったことがございます。  私はもう一遍外務省にお聞きしたいのは、日本と同じようないわゆるセミオフィシャルファンドをほかの国はどの程度投入しておるのか。私の理解は、以前アメリカあたりはあったけれども大分減ってきて、ODA以外のものは非常に少なくなっている。日本の場合には、ODAと今のそういうセミオフィシャルファンドと合計すれば、まさにほかの国よりもずば抜けて大きな額を援助しておると私は見ておるのですけれども、この点、外務省は、ほかの国の例との比較においてどうなっておるか、御説明願いたい。
  110. 川上隆朗

    ○川上説明員 先生御指摘の点は、OECDのいわゆる開発援助委員会で言っておりますOOF、アザー・オフィシャル・フローというものであろうかと存じますが、このシェアを各国別に見てまいりますと、一番新しい数字でございますが、八四年度数字で、日本の場合七億四千三百万ドル、これはフローの額でございます。フランスの場合が十二億四千万ドル、ドイツ九億九千五百万ドルといった数字になっております。それからアメリカにつきましては十億ドルというところでございまして、パーセンテージで見ますと若干違ってまいりますが、絶対量で申しますとそういったような数字が出ております。
  111. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私が前回の質問のときに取り上げた資料を見ますと、これは大分数字が違っているんですが、これはまた私がもう一遍取り上げまして議論いたします。例えばフランスなんかの場合にはかつての自分の植民地も入れているとかいろいろな要素が入っておって、日本は何と申しましてもいろいろな面で対外援助総額においては非常に多いと見ている。これは今のあなたの数字と私の持ってきた数字と違いますから、時間もございませんから、対外援助をまたもう一遍きちっと取り上げて全部論議いたします。  私が今ここで何でこの問題を取り上げたかといいますと、例のアキノさんの訪日を控え、いわゆるお土産的な考えですぐに考えるということはやめていただきたい。日本の国内を見回すと、私の選挙区なんかを見ると、円高で本当に困っている連中が多いわけです。これから日本の産業構造を大きく転換するためには、かつて炭鉱の連中にいろいろ援助をして転職を促進させたように、巨大な資金が要ると私は思うのです。国鉄などはいろいろ再雇用先を考えてやると言っておりますけれども、私もさっき民社党の国対にいろいろ聞いたのですけれども、造船から解雇されていく者はふえている。ある島などは火が消えたようになってしまう。こういった失業者がどんどんふえてくる。この為替レートのままでいきますと、言われるように空洞化が始まるし、雇用問題が大きくなる。産業構造の転換のために巨大な資金が要ると思います。こういうときに、ただ援助はいいことだというような考え方で考えられては困ると私は思います。基本的に、それは友好ということは考えてもいいですけれども、それがいわゆるお土産外交的な話になってルールを無視した援助になっては困ると思うので、アキノさんの訪日を控えまして、ひとつその点をきちっと、大蔵大臣、閣内で、中曽根さんが懐から取り出してちょっとやろうというようなことがありましたら、とめていただきたいと私は思います。いかがでございますか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようなこともなかろうかとは思いますが、よく注意をいたします。
  113. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それから、これは飛び飛びで申しわけないけれども、今の海外援助とも若干関連するのですが、いろいろな国際的な企業あるいは大商社あたりが国内で税金を納めているのは非常に少ないという話があるわけです。これは簡単に申しますと、外国の支店でどんどんたくさん取られてしまう。特に大商社あたりは、新聞の記事か何かに出ておりましたけれども、国内で納める金額がこればかりだ。それはなぜかというと、各支店でそれぞれの国が所得源泉はこちらにあると言って課税をする。その課税の税額控除というのは、外国税額控除ということでほとんど中身が吸われてしまって、日本国内で納めるのはごく少額だという話も聞きます。  この点について、発表し得る程度の実情をお聞かせ願うとともに、私はかつて若いころに租税条約のことのはしりをやったことがございます。そのときに、外国税額控除の問題を僕と津島君と若いときにやったことがございますけれども、これは特に後進国などの場合には、すべて自分の国の源泉所得だということでがっぽり課税してくるわけですね。その結果、日本の国内では、全体の額の中から取られてしまうものですから、ちょっぴりしか納めてないというような実情があるかのように聞いております。この点についてお話しできる範囲内でお話ししていただきたいと思います。
  114. 日向隆

    ○日向政府委員 ただいま委員指摘のとおり我が国は外国税額控除制度がございまして、企業が外国で納付した控除対象となる法人税額を控除限度額において控除した金額を申し上げますと、直近の五十九年分で見まして四千八百四十一億円に達しております。かなり巨額でございます。ただ、これは全法人の算出法人税額十一兆九百十六億円に比較いたしますと四・四%という数字になっております。さらに、続いて御指摘になりました商社の問題でございますが、外国における活動の最も顕著な主要商社について見ますと、外国税額控除額は六百六十七億円でございまして、全体の算出法人税額九百四十九億円に対する割合は七〇・三%に達しております。
  115. 安倍基雄

    安倍(基)委員 こういうぐあいに、これから国際化が始まれば、今始まっておりますけれども、進めば進むほど、こういった要するに外国の方に取られてしまう、日本ではほとんど納めてないというような話になるわけです。これはゆゆしき問題でございます。さっきの援助との関連でございますけれども、例えば後進国にそういった企業がたくさん納める、しかもそれは無理やり、これもおれの源泉所得、これもというぐあいに取り込むようなところは、援助のときに考慮すると言っては変だけれども、バーゲニングパワーというか、これはこういうことを言い出しますと私は本当に援助反対派の筆頭みたいになるかもしれませんけれども、やはりそういうことも考えながら交渉を、つまり余りむちゃくちゃな現地課税をするところについては、おまえ、そんなむちゃ言うな、これだけ援助しているじゃないか、逆に援助を減らすぞと言ってはいかぬけれども、あるいはこういうことを言うと藤尾発言みたいになると思いますけれども、そういうことがいわば理性的な大人のあれじゃないかと思います。  この点について、これから本当に国際化がどんどん進んでくる過程において、いろいろな増税案ございますが、こういう大きな抜け穴があるわけです。またはタックスヘーブンに行くところもございます。この辺を含めましてひとつ大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに取引は非常に国際化してまいりますし、また企業の方が世界企業になってまいりますから、そういう意味では税制それから税務の執行というのは今までと違った要素が随分出てまいることはどうも避けられない、その事態に対処していくことを考えなければならないと思います。
  117. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これで終わります。
  118. 池田行彦

  119. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣は午前に引き続いて午後も予算委員会がございますので、昼食の時間も御入用でしょうから、できるだけ簡単に伺いたいと思います。  まず第一に、剰余金処理特例法案に絡んで伺いますが、剰余金の二分の一以上を国債整理基金に繰り入れるというのは、国債の償還を安定的に維持して国債に対する国民の信頼を確保するという点から行われているものであることは言うまでもありません。今回の二分の一繰り入れを停止する特例法案は、経済関係税収欠陥が出るというようなもろもろの状況もとで大蔵当局としては非常にやむを得ないという御見地であろうかとは思いますけれども、国債の償還という関係から見てはにわかに賛成することができないものであります。  それに関連して一つだけ伺っておきたいのですが、宮澤大蔵大臣は、大臣御就任前から、あるいは就任なさってからも御発言があったかと思いますが、国債の償還は借換債で行っていくんだということを何回か御発言されました。これは一回限りの臨時特例の場合でも若干問題があるのに、万が一これが相当期間にわたって続けるべきだというお考えであるとすれば、これは国債整理基金の状態あるいは国債償還に重大な問題があります。大臣御就任になった現在、どういうお考えなのか。NTTの売却益もございますので、それとの関連も含めて御答弁をお願いします。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 以前からこの問題についてはそのような問題意識を持っておりまして、少なくとも一方で特例債が新しく発行されているような状況においてどういうものであろうか、そういう問題意識を持っておりまして、就任後も事務当局に対してこのことは検討してほしいということを申してございます。ただ、減債制度の基本と非常に関係のある問題でございますので、検討は慎重にやってもらわなければならないと思っておりますし、また、たまたま今正森委員が言われましたNTTの株式の売却の問題がここ何年かはあるわけでございますから、そういうことも考え合わせながら検討してもらっておるわけでございます。
  121. 正森成二

    ○正森委員 きょうのNHKでございましたが、当分は借換債で全部償還を行うという考えは大蔵省は断念したというような報道もされておりますが、そういう趣旨の御答弁と承ってよろしいですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特にそういう意味で申し上げたわけではございません。問題としては、実は、例えば来年度予算編成ということになりますと、いろいろな不確定要素がただいままだございます。歳出歳入面でございますので、そういうこともございますからなお検討を続けてもらっておるということと御承知願いたいと思います。
  123. 正森成二

    ○正森委員 それではそう承っておきますが、御答弁の全趣旨からは、たまたまここ数年間はNTTの売却益というのもあるので、そういうことも考慮して検討するというように承っておきます。  二番目に、今回の補正予算は災害復旧向け以外に建設国債発行されるわけですが、これは、多くの報道にもございますように、財政再建のルールのようになっておりましたものが修正されたものである、こういうように言われておりまして、これは五十五年度財政再建に着手して以来初めてのことであるというように言われております。また、事実そうだと思います。宮澤大蔵大臣が十月の二日にワシントンから帰国された記者会見で「総合経済対策を柱にした補正予算だけでなく、六十二年度予算でも公共事業に配慮する必要がある」というように述べられたと多くの新聞に報道されております。また、前大蔵大臣である竹下幹事長は十八日山形市内での記者会見で、十八カ月予算という見方で考えれば、公共事業費、事業量の確保は積極財政の範疇に入ると考えるという旨の言明をされたと、これも諸新聞に報道されております。  幹事長と大蔵大臣という党と政府の要職にある方が似たような発言をされたわけでありますが、財政再建の基本的な考え方との関連ももちろんですが、想起しなければならないのは、昭和五十二年の福田内閣のときに、日本とアメリカと西ドイツが機関車であるというような機関車説を唱えまして、特に日本に大きな期待がかかっているということで、昭和五十三年でありましたか、七%成長というような非常に高い目標を立てまして莫大な国債発行いたしました。国債の公共事業の増加率は、私の記憶に誤りなければ、三四・五%くらいであったと思います。そういうことが現在の財政危機を招いた少なくとも一つの原因であることは間違いありません。  そこで大蔵大臣に承りたいのですが、先ほどのワシントンから帰られた発言等がいわゆる積極的な財政の方に補正予算だけでなしに通常予算でも向かわれるという内心の御意図を表明されたものか、それについてはなお慎重であるのかどうか、承っておきたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる日本機関車論、七%成長を志向いたしましたときのことは、私も閣内におりましたのでよく記憶をいたしております。ただいまの状況はそれとは同じではない、今日本が機関車になるということを国際的に要請されておるといったようなふうには考えておりませんしいたしますから、ただいまの問題はただいまの問題として処理すればいいことであると考えております。
  125. 正森成二

    ○正森委員 それでは次の問題に移らしていただきます。  これはきのうの予算委員会、私も入っておりましたが、そこで宮澤大蔵大臣から言明がございました。なお、記者会見でもおっしゃったそうでありますが、六十五年度赤字国債脱却について、大蔵大臣は、その達成は容易ならざることだが看板をおろすわけにはいかない。これは基本的なスタンスだと思うのですが、それに続いて、きのうはさらに踏み込まれまして、「円高に終止符が打たれる、米国の貿易収支赤字にも改善の見込みが出る、わが国の税制改正も実現する、など経済財政をめぐる環境が変化した場合には、この目標を見直すこともあり得る」、これはほぼ同趣旨のことが朝日、日経その他に載っております。そう言われたように私も考えておりますが、率直に言わしていただくと——まず、そうおっしゃったかどうかだけ承っておきましょうか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ほぼそういうことを申しております。
  127. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、私は経企庁長官もお務めになりました宮澤蔵相のように造詣が深くありませんけれども、非常に率直な国民の声で申しますと、六十五年度までに赤字国債を脱却するというのが、最近三、四年一生懸命やってまいりましたが、一兆円以上減縮しなければいけないのに四千億円であるとか、実際上はなかなかできないで目標が達成できない。それはなぜかといえば、経済が余りよい状況でなくて、税収の伸びも非常に少ない。その中で自然増の経費その他を賄わなければならないから、そこで赤字国債を圧縮する幅は狭くならざるを得ないし、六十五年度赤字国債からの脱却もなかなか難しいというのが国民全体の今までの経緯から思っていたことなんですね。だから、宮澤大蔵大臣が、経済状況がこれからもうまくいかないかもしれないから、だから見直すと言うなら私はわかるのです。  ところが、あなたの御意見では、税制改革もうまくいく、円高もとまる、アメリカの貿易のインバランス改善される、いいことがあった場合には逆に六十五年度赤字国債からの脱却を見直すというのは、私はどうも私の頭脳からいえば納得できない。そこでその真意を伺いたいと思います。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は昨日そこを申し上げたつもりであったのです。つまり、六十五年度まではなかなか容易ならざることである、そこで、そうかといってこの看板をおろすわけにはまいらないと申し上げました。そこで、仮にと申し上げましたのは、仮にこれをおろすということになれば、新しい看板を掲げなければなりません。その新しい看板を掲げました以上、この目標はぜひとも達成をしなければならないし、また達成できるような目標でなければいけないと思いますが、そのためには日本経済が好転をしておる必要がございます。今のような低迷した経済ではそれはなかなか容易なことではないように思いますので、先ほどおっしゃいましたような幾つかの要因がプラスに働きまして日本経済の潜在力が発揮されるようになりますと、そういたしますと財政もおのずからその余慶を受けて、そうして赤字国債脱却という状況が生まれてくる。そういうときに、そういう状況でありませんと新しい看板を掲げるわけにまいりませんので、したがいまして、ただいまの看板は外すわけにまいりません、こう申し上げておったわけでございます。
  129. 正森成二

    ○正森委員 ほとんど同じようでもあるし、ニュアンスが違って全然違うようでもあるのですね。今のを聞いておりますと、経済が好転、よくなれば、それは赤字国債からの脱却もできるし、そのときには新しい看板を出すこともできるということで、新しい看板の方に重点がございまして、さすが将来を見た、これ以上は言いませんが、宮澤大蔵大臣の深謀遠慮だというように感じた次第です。  ただしかし、大蔵大臣、非常に率直なことを申し上げますと、毎日新聞に「首相「財政再建」で微妙な差 蔵相」という見出しの囲み記事が出ているのです。その中を見ますと、今申しました宮澤大蔵大臣の発言を、「この答弁について大蔵省首脳は」、だれのことか知りませんが、「「税制改革が実現し、増税が可能になれば、財政再建目標など必要なくなるという意味だ」と解説している。」こうある。私の率直な意見を言いますと、それなら意味がわかるというように、私は最初はよくわからないと言ったのですけれども、こういう意図があるならそれは大いによくわかるというように思うのですが、これは何とかの勘ぐりでしょうか、それとも正解でしょうか、お答え願います。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはまた思いがけない解釈でございまして、私はこのたびのお願いをしようと思っております税制改正が、個人におきましても、法人におきましても、所得税関係の負担を軽減いたしまして、それによって勤労意欲、企業意欲が高まっていく、活力が高まる、そういうこととして日本経済体質がよくなる、そういうことを税制改正に期待をいたしておりますので、そのような意味でございます。
  131. 正森成二

    ○正森委員 それではあと一問だけ聞かせていただきますが、宮澤・ベーカー共同声明と言われるものが出されました。それについても昨日の予算委員会で質問がございましたが、私の聞き方に誤りがなければ、現在の為替レートはファンダメンタルズを反映していると思われる、マーケットに任せてもよいという状況になっておるというように思うというようにお答えになったと思うのですね。同時に、きょうの新聞を見ておりますと、あるいは委員会でおっしゃって私が聞き漏らしたかもしれませんが、少なくとも四日の閣議後の記者会見で宮澤大蔵大臣は、「米財務省高官が「米国の為替政策に変化はない」と協調介入に慎重な姿勢を示したことについて、「介入はもともと事前にいうことではなく、よその国の介入については言及しない方がいい。しかし、共同声明では『為替市場の諸問題について協力を続ける』と、わざわざうたっている。その点を留意してもらいたい」」というように御発言になったと承っております。これは事実でしょうか。そうしますと、マーケットに任せてよいという環境だというのと、この協調介入といいますか、そういう点の余地が残されているというところに留意してほしいと言われた真意とはどういうぐあいに関係するのか、承りたいと思います。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の九月二十二日以降のいわゆるプラザ合意というものは、ドルが高過ぎる、これがファンダメンタルズを反映していないということから各国が介入をいたしましてその後に及んだわけでございますが、今となりましてはもうドルと円との関係はファンダメンタルズを反映するに至ったというのが私とベーカーとの基本認識であります。したがって、第一段に、そのような状況においてはもはや相場というものは市場に任せていいものである、今やそういう時期が来た、これ以上円が高くなる、人為的に高くすることはこれは必要でもないし好ましいことでもない。第一段でございます。  第二段は、そこに一つ設問が実は飛んでおりまして、それでも仮に何かが起こったときには介入というものはでは一切ないのかということでございますから、いやそれはもともと乱高下があるとかいろいろな状況のときには介入というものは認められておることである、ただそれは他国のことでもあるしあらかじめ言うことでもあるまい、こういうことを申したのであります。
  133. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いますが、ファンダメンタルズを反映しているという点は、日本からいえばこれ以上の急激な円高はないというようにとられるかと思いますが、それは同時に、アメリカから見ますと、これ以上の余りなドル安はないというようにとってもいいのですか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 こういうふうに申し上げればいいかと思います。  あの水準と申しますか今の水準と申しますか、これでもう円の上がりは十分である、これは日米両国考えて十分であるし、これ以上上がることは必要もないし好ましくもない、しかもそれはファンダメンタルズを反映したものであるからこれから後の動きはマーケットに任せてよい、そういう意味でございます。
  135. 正森成二

    ○正森委員 非常に微妙な御答弁でございますが、そう承っておきます。  それでは、昼食の時間でしょうから、やめさせていただきます。
  136. 池田行彦

    池田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、来る七日金曜日午前十一時五十分理事会、正午委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十六分散会