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黒田参考人 全国の鉱業市町村、
石炭関係の市町村百十三市町村長で組織しております
全国鉱業市町村連合会会長の、
大牟田市長の
黒田でございます。
今回の八次策の策定に当たりましては、石特の
先生方には
石炭の事情というものを御理解いただきました上で大変な御尽力をいただきましたことを改めて厚くお礼を申し上げたいと思います。
ただ、今回の八次策は、いずれにいたしましても、非常に
石炭を取り巻く環境の厳しさの中で、私
ども地域住民といたしましては、当初は全く予期もしなかったような大変な
答申が出されたわけでございます。残っております十一
炭鉱の各市町村は、本当に
閉山か
縮小という、必ず今のまま無傷では通れない実態となったわけでございます。そして、かつて
石炭対策がとられましてから、
昭和四十年の中ごろまでにほぼ一応の
閉山が終わりまして、今残っている
炭鉱は、その後平穏に、将来安定して操業ができるという想定のもとに今日まで操業を続けてまいりました。ところが今回、
産業構造調整というような
関係から全体が
縮小、
閉山ということに追い込まれるに至ったわけでございまして、私
どもとしては非常に残念でたまらないわけでございます。
しかしながら、私
ども、こういう取り巻く環境の厳しさと
需要業界の問題等についても理解は示すべきものと思います。今回出されました八次策につきましては、そういう意味では、この
政策の目的としております秩序ある
生産の
集約化というような方向に向かいまして、私
どもも全力でもって、特に
地域混乱を起こさないための
最善の
努力をして、八次策の目的を達したいというふうに思う次第でございます。
しかし、今回出されましたこの八次策の中身につきましては、いろんな問題
課題を抱えていると思います。
問題点につきましては、既に各
参考人の
先生方が御
指摘をなさっておりますとおりでございますが、中でも歯ど
め策の論議、私
ども、日本の
エネルギー政策としての
国内炭の
位置づけをいま一度振り返って考え直す必要があるのではないだろうかという点でございます。
まず何と申しましても世界の先端的な技術を温存し、蓄積してきました日本の採掘技術あるいは探鉱の技術あるいは地質学、こういったものが
企業家と離れていく中では、地質学とかそういうものにつきましても恐らく学問としても存続しないことになるんではなかろうか。そうだといたしますと、日本もこの環太平洋
地域からの
石炭の輸入というのは今後も大いに待たなければならないであろうし、その場合に、特に後進性の環太平洋
地域の技術指導というものについて、せっかく持っているこの技術を国際
協力という意味からしても放てきしていいのだろうかという、原点論というものをやはりいま一度考え直していただく必要があるのではなかろうかということ。
それから、例えば有明海にもまだ有望な無限の資源が眠っているわけでございますけれ
ども、民族資源がこれだけありながら今これを
閉山するというようなことにでもなるとするならば、再び日の目を見ることはないということを考えますならば、こういった
視点からでも、この国の
長期にわたるところの安定した我々民族の資源をどうするのかという論議も考えられていいのではなかろうかというふうに思うわけでございます。要は、やはりそういった問題がはっきり
位置づけをされることによりまして、私
どもがいつも言っております歯どめ論というものの方向性というものがはっきりしてくるのではなかろうかというふうに思われます。
それから、時間もございませんので、今回の八次策が具体的な施策として、あるいは実際の運営として、あるいは
政策立案というようなことがなされる場合に、こういった点が問題ではなかろうかという点を申し上げたいと思います。
まず最初に、私
ども一番危惧しますのは、従来の
政策は
閉山対策ということが非常に制度として
確立してきたわけでございます。しかし、今回、残された十一
炭鉱の中には
閉山対策の中に
閉山という形で終息するものもあると思いますけれ
ども、
縮小という形で進んでいくものもあるだろうと思います。その際、
縮小であろうと
閉山であろうと、ともに
産業構造調整という一つの
政策の目的あるいは
政策路線の上に立ってこの
縮小も行われるわけでございます。したがいまして、単なる
閉山対策ということではなくて、
縮小も今回の終息
政策の中の
位置づけを
閉山と同じように
位置づけをしてもらう必要があるのではなかろうか。例えば三池
炭鉱におきまして四百六十万トンを仮に四百万トンに落とす、六十万トンを落とすということは高島
炭鉱が一つつぶれることになるわけでございまして、そのことは
離職者対策あるいは
地域対策というようなものにつきましても、同様の問題というのは
地域あるいは
労働者の方に発生するわけであります。
縮小したところの
労働者には黒手帳は交付されるのだろうかあるいは鉱産税がゼロになる
閉山は臨時交付金が交付されるけれ
ども、
縮小されるところにはこの交付金は交付されることになるだろうか、あるいは取引業者との
関係に対しましても現在
閉山交付金は交付されておりますけれ
ども、
縮小による
影響を受けた中小業者に対する交付金は支給されるのであろうか、こういった点についての
縮小と
閉山の
政策の隔たりがあってはならないのではないかという意味で、今後はこの
位置づけを
閉山と同様に明確にしていただきたいということをお願いいたしたいと思う次第でございます。
次には、飛び飛びになりますけれ
ども、従来の産炭地振興策というものは主に、まさにその柱は工場誘致にあったわけでございます。いわゆるインダストリーを誘致することによって
石炭にかわる
地域活性化を図っていくということに主眼が置かれ、土地の造成あるいは
企業誘致の誘導策がとられたわけでございます。しかし、今後私
どもがこういう中で
企業誘致をしていきます場合に、いわゆる工業の分野でどんな立派な
企業を持ち込みましても
雇用吸収力は非常に低いということでございます。投資は大きくても
雇用吸収力は非常に低い。したがって今後は、日本の
経済構造がこうして変わっていく中で、単に工業の分野だけではなくてやはりもっと幅広い
地域活性化策というものを
地域としてもとらなくてはならない時期に来ているということを考えてみますと、特に内需の拡大その他の点につきましても考えていきます場合に、商業とかの流通
関係、サービスあるいは情報
産業あるいは観光、文化、こういうものにつきましても一つの事業として、
雇用吸収力を持つ事業として
地域の特性に応じてそういった事業はなし得るわけでございますし、またなさなければならないわけでございます。こういう点につきましても、今後は産炭地振興策の土地造成であるとか融資の特例というようないろんなことにつきましても、幅広く見ていただくようにお願い申し上げたいと思います。
それから次に、私
どもが今後第二の筑豊にならないということのためには、従来の施策のどこに誤りがあったのかという点をいま一度見直す中から、現在の
経済情勢に適合したぴっとした
政策というものをいま一度見直していただきたいということをお願いしたいわけでございます。これらの点につきましては、なお詳細に私
どもとしても従来の
政策の見直しをし、こういう点については今後はこうしてもらいたい、今申しましたような点も含めまして今後
検討を進めて、行政側とも十分
連携をとりながらお願いを申し上げたいと思います。
その中でも特に問題なのは、従来の振興策が市町村単位でとられていたという点に大きな問題があるのではないか。やはり空知地区あるいは筑豊にいたしましても、広域的な
地域インセンティブをするような大きな事業というものは市町村単位でやり得るわけではないわけで、相当広域的に取り組むような大型プロジェクトでなければ
地域の活性化にはつながらないと思います。そういう意味からいたしまして、今後はやはり広域的な事業、となりますとこの事業主体を少なくとも県に置く、あるいは道に置くような事業というものを主眼に置いて、それに関連して各市町村の
位置づけをして、それぞれの持ち分を各市町村が分担してやっていくということが必要になってくるのではなかろうかということを思うわけでございます。この点につきましても特にお願いを申し上げたいと思います。
それからいま一点は、従来の
閉山の中で大きな問題を残したのは、鉱業用地を、鉱業権利を
石炭業者に持たせたまま
閉山したというところに問題があると思います。今後
縮小後の
地域を利用できるものは鉱業用地にしかないわけでございます。ところが、
企業の
閉山後の利益追求、当然だと思いますけれ
ども、その目的にのみ用地が利用されたのでは残された住民がその土地を活用しながら
地域の活性化を図るということはできないわけでございます。今回の
答申には若干そういった点に触れられておりますけれ
ども、用地の解放という
地域のオーソライズされたような大きなプロジェクトにつきましては、それに
協力しなければならないというぐらいのものがなければ
地域を発展させる計画を具体的に
地域課題として取り組むことはできないだろうと思います。こういう点につきましても格別のお願いを申し上げたいと思います。
それから、こういった問題、まだまだ多くの問題をはらんでいると思いますけれ
ども、今後私
どもも十分いろんな
角度から今後の新
政策の
あり方についても
検討してまいりたいと思いますけれ
ども、何と申しましても資金の
確保は本当に図られるんだろうか、八次策が絵にかいたもちになるのではなかろうか、そして充実した
地域対策等がなし得るだけの財源がぜひ
確保されなければ、従来の
石炭特会の中のパイの分け合いということだけではもはや目的を達し得られないような
状況にあるという点から、ぜひひとつ財源
確保については格別の御配慮をお願いを申し上げたいと思います。ただ、従来石特会計の一つのならされた慣行の中でいろんな制度、
離職者対策にしましても
地域振興にしましても、ありましたけれ
ども、こういった点は見直すと同時に、新しい悲惨な
地域が生まれるわけでございますので、今後重点配分について
政府の方でも格別の思い切った
角度からそういった点をお願い申し上げたいと思います。
そのほか、残り得る
炭鉱につきましての資金的な援助等も当然やってもらわなければ自滅するわけでございますので、こういった点についての御配慮もぜひお願いを申し上げたいし、あるいは
需給調整機関につきましても、
政府出資による、そしてまたコントロールを
政府介入によってやっていくような
機関をぜひおつくりをいただき、秩序ある
縮小の方向へのコントロールをお願い申し上げたいと思います。
長くなりましたけれ
ども、以上お願いを申し上げたいと思います。ありがとうございました。