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1986-12-16 第107回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十六日(火曜日)     午前九時四十五分開議  出席委員    委員長 佐藤 信二君    理事 臼井日出男君 理事 奥田 幹生君    理事 加藤 卓二君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 城地 豊司君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    甘利  明君       尾身 幸次君    大坪健一郎君       大西 正男君    梶山 静六君       玉生 孝久君    野中 英二君       緒方 克陽君    奥野 一雄君       上坂  昇君    関山 信之君       浜西 鉄雄君    水田  稔君       新井 彬之君    長田 武士君       薮仲 義彦君    塚田 延充君       工藤  晃君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局審査部長 樋口 嘉重君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局審議官  冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    加藤 昭六君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省生活         産業局長    浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君         資源エネルギー         庁石油部長   内藤 正久君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岡松壯三郎君         中小企業庁長官 岩崎 八男君  委員外出席者         警察庁刑事局搜         査第二課長   古川 定昭君         警察庁刑事局保         安部経済調査官 緒方 右武君         法務省刑事局刑         事課長     石川 達紘君         大蔵省銀行局特         別金融課長   高橋 厚男君         林野庁業務部業         務第二課長   石寺 隆義君         労働省職業安定         局雇用政策課長 廣見 和夫君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 十二月十六日  辞任         補欠選任   米沢  隆君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   塚田 延充君     米沢  隆君     ───────────── 十二月九日  鉄鋼産業危機打開に関する請願伊藤茂紹介)(第二二三〇号)  同(小野信一紹介)(第二二三一号)  同(河上民雄紹介)(第二二三二号)  同(木間章紹介)(第二二三三号)  同(佐藤観樹紹介)(第二二三四号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二二三五号)  同(戸田菊雄紹介)(第二二三六号)  同(早川勝紹介)(第二二三七号)  同(安田修三紹介)(第二二三八号)  同(青山丘紹介)(第二二五六号)  同(伊藤英成紹介)(第二二五七号)  同(岡田正勝紹介)(第二二五八号)  同(春日一幸紹介)(第二二五九号)  同(河村勝紹介)(第二二六〇号)  同(神田厚紹介)(第二二六一号)  同(木下敬之助紹介)(第二二六二号)  同(北橋健治紹介)(第二二六三号)  同(佐々木良作紹介)(第二二六四号)  同(田中慶秋紹介)(第二二六五号)  同(塚田延充紹介)(第二二六六号)  同(塚本三郎紹介)(第二二六七号)  同(中野寛成紹介)(第二二六八号)  同(中村正雄紹介)(第二二六九号)  同(中村正男紹介)(第二二七〇号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二二七一号)  同(西村章三紹介)(第二二七二号)  同(林保夫紹介)(第二二七三号)  同(吉田之久君紹介)(第二二七四号)  同(和田一仁紹介)(第二二七五号)  同(上田卓三紹介)(第二二九三号)  同(井上一成紹介)(第二三四四号)  同(小澤克介紹介)(第二三四五号)  同(浜西鉄雄紹介)(第二三四六号) 同月十五日  鉄鋼産業危機打開に関する請願左近正男紹介)(第二三六四号)  同(新村勝雄紹介)(第二三六五号)  同(土井たか子紹介)(第二三六六号)  同(安倍基雄紹介)(第二三九四号)  同(小川国彦紹介)(第二三九五号)  同(小沢貞孝紹介)(第二三九六号)  同(大矢卓史紹介)(第二三九七号)  同(川端達夫紹介)(第二三九八号)  同(神田厚紹介)(第二三九九号)  同(小渕正義紹介)(第二四〇〇号)  同(滝沢幸助紹介)(第二四〇一号)  同(玉置一弥紹介)(第二四〇二号)  同(永末英一紹介)(第二四〇三号)  同(水田稔紹介)(第二四〇四号)  同(米沢隆紹介)(第二四〇五号)  同(田邊誠紹介)(第二五五六号)  同(永井孝信紹介)(第二五五七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ────◇─────
  2. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野一雄君。
  3. 奥野一雄

    奥野(一)委員 時間がもう少しあれば、四時間くらいでも質疑ができるということであれば、相当中身まで詰めて質問したいと思ったのですけれども、きょうは余り時間がございませんので、ごく入り口の部分だけでお尋ねをして、これは次の通常国会のときには、ぜひじっくり時間をかけていろいろまたお尋ねもしたい、こう思っているわけです。  そこで、きょうは大体三つの点についてお尋ねをしておきたいと思います。  一つ経済見通し関係でございます。最近、新聞報道なんかでもいろいろ出ておりますし、今年度の見通し自体も、とにかく当初の政府見通し達成はまず不可能だ、こういう報道もされております。しかし、政府の方とすればまだそれを捨てるわけにはいかない、これからまださらに努力をする、こういうことのようでございますし、また来年度の見通しなんかにつきましてもいろいろ報道されてきております。民間の各見通しを見ますと相当厳しい見通しを示しているようですが、政府の方では大体三・五から三・七くらいというようなお考えのようであるようにも報道されておりますが、恐らくまだはっきりしたことはお答えができないのではないかと思います。  そこで最初に、今六十二年度の予算編成も進んできているわけでありますけれども、この予算編成経済見通しというものは全く別々なものであるのか、あるいは予算編成経済見通しというものは不離一体のものであるのか、まずこの点をちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  4. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 端的にお答えいたしますと、予算編成一つ基礎になりますのは来年度経済見通しでございます。というのは、来年度経済見通しによって来年度の税収がどれくらいになるかということが一つめどが立つわけでございます。ただ実際、税収見込みは各税目ごとに積み上げてまいりますから、成長率幾らであるから税収幾らという形の機械的な関係ではございませんが、見通しを踏まえながら、どれくらいの税収に各項目ごとになるかということを積み上げて計算しているわけでございます。  そういうような関係がございますし、片一方で、どの程度財政規模に来年度なるかということは、民間需要との関係でどれだけプラスアルファのいわば景気促進効果を持つかということもございますし、片一方税制いかんでは消費投資影響を受ける面もございますので、予算編成経済見通しというのは一つパッケージで、ある程度の幅はございますが、一つパッケージ政府として両方見ながら、こうなればこうだ、ああなればこうだという形で調整をしながら進めていくものでございます。
  5. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私もそうだと思うのです。全く別々な形でこれは動くものではない。そうなりますと、例えば経済見通しなどを立てる場合でありましても、これは単に国内のことだけということにもならぬのではないか。やはり外国との関係というものも考えなければならない。貿易収支黒字とか経常収支関係についてこれを何とか解消していこうということになると、ある程度経済政策も組まなければならないと思うのです。そうすると、例えば内需拡大、これは従来からずっと言われてきておるわけですけれども内需拡大をするためにそれでは財政面でどうしていったらいいのか、あるいはまた産業面ではどういうことをやっていかなければならないかとか、当然いろいろなことがその中で出てくると思うのです。  そういうことからいくと、今予算編成の作業というものはずっと大詰めにきているわけですね。聞くところによると、二十五日ころには大蔵原案が示される、今そういう段取りになっていると思うのですね。そうすれば、そこまできているということは、それぞれの省庁においてはもう来年度予算の骨子というのはほぼ決まってきているというふうに私は思うわけです。  そうすると、今経済企画庁の方で来年度の経済見通しというものを並行してやっておられるとは思いますけれども、これが例えば予算編成が決まった後で出てくるとか、予算編成の前にそれじゃそれがどう生かされていくのかということになると、今のこの状況からいくと若干おかしいなという感じを持つわけなのです。各省が勝手に、勝手にと言うと語弊がありますけれども各省がそれぞれの立場で予算編成を仮にやっていって、その積み重ねが大蔵原案というような形になった場合に、それでは来年度例えば内需拡大をするためにこういうことをやったらいいのじゃないかなと思われておっても、それが予算の中に生かされてこないということになった場合には、経済見通しを立てたって、それがそのとおりになっていくのかどうかということが非常に不明確になってくると思うのです。私、毎年経済見通しができた段階では質問させていただいておりますけれども、そういう点今まで指摘をしてきているわけです。そういうものが出てこないと、予算が決まっても、あるいは経済見通しというものが決まっても、それが実際整合性を持って一体効果を発揮できるのかどうかということが非常に疑問になってくるのではないか、こう思っているわけなのです。  そういう面で、今経企庁として考えておられる来年度の経済見通し、何%というところまでお答えできればそれはお答えいただいた方がいいと私は思うのですが、もしそれができないにしても、原則的に例えばどういうような形で来年度の経済政策というものを進めていこうとしているのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  6. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 まず、来年度経済見通しの前提になりますのが、今年度の経済見通しといいますか、実績見込みと私ども言っておりますけれども、これがどうなるかということでございますが、先生から御指摘ございましたように、民間調査機関は押しなべて政府の当初見通しよりも厳しい線を出していることは私どもよく承知しております。  私ども現実に今数字として持っておりますのは四—六月期のQE、七—九月期のQE、したがって六十一年度上半期一応数字が出るわけでありますけれども、これは御案内のように四—六月期が〇・九%、そして七—九月期が前期比〇・六%でございますから、これを合わせて上半期実績考えますと、下半期についてはどうなるかということを考えると、率直に申しましてこの四%の経済成長を六十一年度達成するためには、下半期相当急ピッチ経済成長を上げていかないと当初見込みの四%には達しない。したがって、現実を踏まえて考えますと、達成はなかなか難しい状況であることを私どもは認めざるを得ないわけでございます。  そういう状況の中で、できるだけ正確に六十一年度経済実績見込みを立てよう、いわゆる総合経済対策実施の度合いも見ながら早急に検討中でございます。それを踏まえまして来年度どのような成長率達成できるかということについて、おっしゃるように予算も見ながら検討中でございますが、まだここでお話しする段階ではございませんけれども、大ざっぱに申しますと、例えば消費については六十一年度も当初見込みを上回る形で実績が出ておりますし、六十二年度においても消費はそんなに悪くはないのじゃないか。  それから住宅民間住宅建設は当初見込みをはるかに上回って非常に好調を続けておりますので、来年度もこれは好調が続くであろう。ただ、非常に高く伸びてまいりましたので、どの程度伸びが続くかということについては、多少いろいろな議論もございますし、伸びを続けさせるべく住宅金融公庫のローンを下げるとか、一般住宅ローンを下げるとかといったようないろいろな措置を講じていただけば、ある程度の高い伸びを続けることができるのではないかと思うわけであります。  民間設備投資につきましては、六十一年度は当初見込みよりも伸びてはおりますけれども、率としてはまさに円高不況のあおりを受けて製造業中心に下がっておりますから、非製造業で上がっても総体として伸び率はそう高くない。ただ、来年度はレートが百六十円ということで安定というか、そこで少なくともこれより上がらないというようなことであるとすれば、設備投資についても一応伸びが期待できるのではないか。在庫投資も今までマイナスだった分が恐らくプラスに転ずるのではないか、そういうようなことを考えておりますので、こうした民間需要に対して政府がどういうようなプラス効果を持つか。  財政においても、こういう厳しい状況の中で、私ども中位成長、中成長と言っておりますけれども、ある程度の中成長を実現するためには、六十一年度も相当役割を果たしたわけでございますが、六十二年度においても、予算予算として少なくとも公共事業事業規模においてある程度プラス効果を果たしていただかないと、来年度の経済成長はなかなか中成長達成できない。そういうことで、民間需要需要として、プラスアルファで国の公共事業がどれだけ役割を果たすかということは、まさに先生指摘のように来年度予算と密接に関係があるわけでございますので、このあたりの問題について、大蔵省中心として、また関係省庁の御意見もいろいろ聞きながら、今後調整をしていかなければならぬと思うわけであります。  それにプラスもう一つは、まさに海外問題でございます。輸出入がどうなるか、これもいろいろな関係国内需要よりも予測がなかなか難しいわけでございますけれども、ある程度国際経済調整を進める、具体的には貿易収支黒字幅を減らす形で考えなければなりませんので、こういったものを全体として勘案して、どのあたり達成できるのか、むしろ目指すべきなのかということについて、これから鋭意検討してまいらなければならないと思っておるわけであります。
  7. 奥野一雄

    奥野(一)委員 本来時間がたっぷりあれば、その辺のところは今いろいろな問題で一つ一つお尋ねをしていきたい点がたくさんございます。きょうはそういう面はちょっと時間がありませんのでまた後で、通常国会のときにやらしていただきたいと思うのです  私は前々から申し上げてきているのですけれども政府の方である程度経済見通しを立てる、政府経済見通しというのは民間経済見通しと全く同じということでは困る。同じというのは数字でないのですよ、やり方です。やはり政府の方は一つ経済見通しを立て、それと同時に経済政策というのは当然出てくると思うのですね。それは財政不離一体のものとして、こういう姿に持っていかなければならない、例えば外国との貿易摩擦なり経常収支というものをある程度緩和しようとすれば、それに見合った誘導ということをやはり一緒にやっていかなければならない。それは産業やその他のものにもすべて影響してくる。そういうようなことを今度は財政面なんかでバックアップしながらやっていかないというと、当初の見通しどおりいかないことだってあり得る。ことしなんかの場合も、それじゃ困るということで、総合経済対策などというものをまた別に立てられたりして、そして公共事業などを補正で組んだりして、そういう措置をとってこられたと思うのですね。そういうことについてやらなければならないというふうに思うのですね。  だから、これからやはり総合経済対策の中では、そういう面も含めて来年度予算の中に生かしていくということをやっていかないと、今のような予算編成状況の中では非常に難しいんじゃないかという気がするわけです。それは単に成長率がどうなるかということだけにとどまらないで、これは後で触れますけれども雇用の面とか産業構造とかいろいろな面にまで影響を及ぼしてくるのではないか、こう思っているわけですね。そういう面で、これからまた配慮していただきたいと思っております。  いずれ具体的にこれができました段階でまた質問させていただきたいと思います。きょうは時間がありませんので、その辺で割愛をさせていただきたいというふうに思っております。  次に、産業関係のことでちょっとお尋ねをしておきたいのですけれども、これは通産大臣の方になろうかと思いますが、円高だとかあるいは貿易摩擦関係などで政府の方でもいろいろな手だてを講じてこられました。せんだってもそういう関連法案を成立させたわけでありますけれども、今度の国会になりましてから私が一般質問の中でお尋ねをしたときに、これは杉山局長だったかと思うのですけれども、例として自動車の問題を出しまして、産業空洞化ということになっていくのではないか、こういうことでちょっとお尋ねをしたことがございます。そのときのお答えでは、それは将来の問題で、当時としては、まだ二、三カ月くらい前の話だと思うのですけれども、そんなに心配するようなことではございませんというお答えがございました。しかし、現実に今の状況を見ますと、せんだっても自動車関係労働組合の方からも私ども資料をいただいたり、勉強させていただきましたけれども、やはり相当進んでいるというふうに見なければならないと思います。  それから、先日もちょっと報道されておりましたように、製造業なんかの場合でも、もう既に相当海外進出計画したりあるいは実施をしているところもある、そのことによって雇用調整をやらざるを得ないという状況にまでなってきている。加えて、その後出てきた石炭産業の問題もありますし、いろいろな問題があるわけでありまして、政府の方ではその個々の問題についてはいろいろ手を打っておられるけれども、これが何か単に個々の問題を扱うということになると、後手に回ってしまうという気がしてならないのですね。例えば、事業転換をしなさいと言ってみたところで、実際には事業転換というものは難しい、私はそういうふうに判断するわけですね。  たまたま函館どつくの問題、この前もちょっと例として出しましたけれども、今度また新聞報道によると、いよいよ本格的に函館どつく造船部門というものはだめになる、こういう見通しが今強くなってきているわけですが、例えばあそこの場合、地元でどんな事業転換できるのかなんていうことになっても、恐らく無理だと思うのですね。そうすると、個々のものに力を入れていただくということはもちろん結構なことだと思うのですけれども、それぞれの地域における事業者というものは何に転換していいかわからないということだと思うのですね。  せんだっても、通産の方からもおいでをいただきまして、繊維関係の現状についてのレクチャーを私も受けました。その中から出てきている意見というのは、例えば繊維なら繊維というものの事業転換ということを考えてみた場合でも、力のあるところは、いや残って頑張りたいと言うけれども、では日本全体でもって一体どれだけの繊維を生産した場合にそれがうまく経営していけるのかという、その数値というものは全然出ていないわけですね。だから、残りたいという業者は一生懸命やろうということで残ってみた、だめなところは仮に設備共同廃棄ということでやっていく、しかしトータルで見たら依然としてまだ過剰なら過剰という形になる、そんなようなことになって、また転換をしなければならないとか経営が行き詰まる、こんなことが現実に起きていると思うのですね。  だから、そうなった場合に、本来であれば、日本全体として国内で生産をする例えば繊維なら繊維はこの程度がいいのじゃないか、そうすると、それに見合った設備ということになるから余った設備は例えば廃棄をした方がいいという一つ考えが出るわけですね。そういうものが全体的に示されていないから、判断するのは業界の方々が判断をしなければならない、判断をしても行くところがない、こんなようなことになってくるのだろうと思うのですね。これは非常に難しいとは思うのですけれども、やはり全体的に、地域分業的にここは何産業があった方がいいのじゃないかという、ある程度全体的な産業構造ビジョンというものを示していかないと、こんなことで一つ一つどんどんだめになっていってしまったら、何年かたってしまったら日本産業というものは何かもうなくなってしまうのじゃないかという気がしてならないわけですね。  一つはやはりそういうものについて総合的にビジョンというものを示す、そんなことが必要ではないのかな、それに基づいて誘導していく、必要なものは助成をするとか、そういう方針というものが必要でないかという感じがしているのですけれども、その辺のところはどういうものでございましょうか。
  8. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいまお尋ねのございました日本産業全体としてのビジョンについてということでございますが、御案内産業構造審議会の「二十一世紀産業社会基本構想」、この中にも、極めて大ざっぱではございますが、将来の産業構造の姿というものは示されていると存じますし、また企画庁でも経済審議会あたりで御検討をいただいているというふうに承知をいたしております。  ただ、こういった全体的なビジョンもさることながら、主要業種についてそれぞれ将来どうなっていくのかということについて、よりきめの細かいビジョン見通しといったものもできるだけ作成をしてお示しをしていくべきではないか、こういうことで今主な業種につきまして機械情報産業局等におきましてそれぞれ具体的な将来像についての検討が行われております。冒頭先生からお話のございました自動車等につきましても、海外投資との関係で今後どうなっていくのかというあたり極めて大きな関心が持たれておりますので、今申し上げました作業の一環としてやっておるところでございます。成果につきましては、来年になるかと思いますけれども、精力的に今勉強いたしておりますので、成案が得られましたらお示しをして御批判をいただきたい、かように考えております。  それから、冒頭に先生の方から、自動車について、現に雇用調整が起こっているじゃないかというお話がございました。これはそのとおりでございまして、私どもがやりました調査によりましても、既に主要な自動車メーカーの中に雇用調整の動きが出てきておりますが、これはただ、海外投資と直接因果関係を持つ、関連をしたものということではないと思っておりまして、最近の円高によります輸出の不振、会社によりますと、国内での売れ行きが他社と違いが出ている、そういった点に基づいて具体的な雇用調整の動きが出始めている、こういうことはあろうかと思うわけでございます。  海外投資に伴います雇用調整が本格的に生ずるかどうかということにつきましては、これは若干先の話になってくるのではないかと思いますが、かなり関心も持っておりますので、先ほど申し上げましたビジョンの中でこういった点を主要な検討課題として今勉強しているところでございます。
  9. 奥野一雄

    奥野(一)委員 今局長の方で進められている主な産業のあれは大体どんなような業種のものなんですか、ちょっと教えていただければお願いしたいと思います。
  10. 杉山弘

    杉山政府委員 今検討中のものにつきましては、主としてこれから海外投資が進むでありましょう加工組み立て型産業につきまして、海外直接投資等との関連で国内の当該業種がどういう動きになっていくかということでございまして、これの中には自動車も入っておりますし、その一部には多分エレクトロニクス関係のものも対象になっていると思います。それからまた、構造不況的ないわゆる素材産業といったものもその検討の一環になるかと存じますし、またその他の原局では、例えば生活産業関係繊維といったような問題についても同じような検討の対象になるのかと思いますが、直接的には私ども産業政策局でやっているわけではございません。各原局にお願いをしていることでございますので、詳細については、ただいまは以上のようなことしか申し上げられないところでございます。
  11. 奥野一雄

    奥野(一)委員 全体的な産業構造ビジョンというのですか、これは二十一世紀を展望したということでは経構研のリポートにもある程度出ていますし、あるいは産構審の方のものでもある程度出ています。出ていますけれども、あれだけ見たのでは私どもとしてはどういう姿になるのかわからない。今一番心配しているのは、円高だとかあるいは貿易摩擦だどかいろんな要素が加わって、心ならずも日本産業が壊滅するかもしれないという状況に今なっているわけですね。  例えば石炭なら石炭という問題を挙げますと、そういう状況に今なってきているわけですね。経構研の中でもはっきりそのことは言われているわけですね。安い海外炭を輸入したらいいだろう。そうなってくると、それじゃ日本石炭産業というものは一体どうなっていくのか、こういうものについてやはりある程度検討を加えて、そして完全にそれはなくなってしまうということになるのか、その辺のところが一つ一つ具体的に出てこなければならないと思うのですね。  危険な場合もあると思うのですよ。石炭産業はそれじゃ全くだめだとか、あるいは洋食器なら洋食器というものはもう海外とは太刀打ちできないんだからこれもだめだとか、繊維関係についてもだめだなんということばかりになってくるとこれは大変ですけれども、しかしそういうものがはっきりしないものですから、繊維産業なら繊維産業というのは将来一体どうなっていくんだ、あるいは皮革産業、革なら革製品とか、こういうものについても将来どうなっていくのかわからない。そういう将来的なビジョンというものがわからない中で、さあそういう不況の状況に陥って競争力もないところは事業転換をしていきなさいよと仮に言われたって、それは地域にしても大変だと思うし、あるいは関連産業にしたってそれはなかなか大変なことだというふうに思うのですね。これは農業でも同じだと私は思うのですよ。外国から安いものを入れてくる、それで日本の農業でだめなものは、つぶれていけとは言っていないけれども外国から安いものが入ってくれば当然つぶれるわけですから、そういう成り行きだけにしておいていいのかということだと思うのですね。  だから、日本全体の産業というものを考えた場合には、こういうものについてはこうしていくべきなんだ、そんなような全体的な、これは非常に難しいとは思うのですけれども、私自分の頭で考えても難しいな、こう思っているのですけれども、しかし難しいといって済まされないのじゃないか。もし本当に難しいというのだったら、私は、外国の要求なんていうのははねつけるべきだ。日本国内産業を守るということが本来なら国益に合っていると思うのですね。しかし、そうでなくて国際社会の中の日本ということを考えていけばそうもいっていられないということで、いろいろなことをやるわけですね。  しかし、やっている反面で日本産業一つ一つがだめになっていくということでは、これは大変なことになっていくのじゃないか。産業自体もそうだし、そのことによって雇用が先行きどうなるのか、今の状況では私には全く見当がつけられない。雇用という関係になりますと、人間だけがどんどん余っていく状況になってくるわけですよ。農業あたりも恐らくこれからどんどん、米の自由化なんてことも言われておりますけれども、そんなようなことになってきてみたり、あるいはまた来年の春先あたりから牛肉、オレンジの交渉がさらに激化してくる、あるいはまた十二品目の問題なんかについても激しくなってくれば、そのことによって農業労働者はまた町へ出てきて働かなきゃならないということにもつながっていくわけです。  だから、これは通産省だけで扱うというのも非常に難しい面があるのではないかとは思いますけれども、やはり通産あたりが、産業の方の親分でございますから、全体的な立場の中でそういうものを判断して、何か行くべき道筋というものを示してもらわないと、経営者自体も、あるいはそこに働いている労働者自体も、今は先行きが全くわからないという状況でないかと思うのですね。だから、個々のものについての対策は当然必要でございますけれども、全体的な、地域性も考慮した対策ということについてもやはり早急に立ててもらわないと不安だけが残っていくのでないだろうか、こういう気がしてならないわけです。  内部についても詰めたい点がございますけれども、予定の時間も大分経過してきておりますので、次の問題をちょっとまた質問させてもらいます。  次は税金の問題で質問させてもらいます。  今自民党の税調の方でも大綱は決められて、個々の問題でいろいろ詰めを行っているようですし、政府税調の方でもやっておられるようです。私どもも私どもなりに税制の問題についていろいろ検討をさせていただいております。  これは通産大臣、経企庁長官両方にお尋ねをしたいのですが、今政府税調なり自民党税調の方で取り上げようとしております新しい日本型の付加価値税、これがとられた場合に、日本産業あるいは経済、こういうものにどんな影響を与えるというふうに考えておられるのか。本来であれば賛成なのか反対なのかというところまで聞きたいところでありますけれども、なかなかそうはいかないだろうと思いますので、どんなような影響を及ぼすというふうに今お考えになっておられるか、両大臣からそれぞれ見解をお示しいただきたいと思います。
  12. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 今自民党税調でいろいろ詰めをしておるわけでございますので、日本型付加価値税といいますか、売上税という言い方をしておりますが、これがどういうような影響を与えるかということにつきましては、率直に言って、まだ税率が決まっておりませんし、それから非課税対象品目をどうするかということもこれからいろいろ議論していくようでございますし、それからいわゆる一億円以下の売り上げの業者については免税にするとか、この問題についてもまだ最終的には詰めていない、今検討中のようでございますので、これが実行された場合に税収なり景気に対してどうした効果を持つかということについて、私ども経済企画庁としてはいろいろな前提を置いて検討しておりますけれども、まだここで申し上げる段階ではない。そうした数字はまだ固まっていないわけでございますが、非常に単純に一般論として申し上げれば、売上税がかかった分の幾らかは当然消費物価に影響してくるでございましょうし、それは消費に対しては多少は抑制的な効果を持つものではないか。こういうことは一般論として申し上げますけれども、具体的な影響については最終的な結果を見た上で詰めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  13. 田村元

    ○田村国務大臣 まだ法案が出されている段階でもありませんから、あくまでも仮定の問題としてお答えをしなければならぬわけですけれども、一言にして言えば、売上税というものが導入されれば物価は上がってデフレ効果が生ずる、これはもう当然のことだと思うのです。でありますから、所得税あるいは法人税等の思い切った減税等をやって、環境整備をして円滑な受け入れをしていくという方途を講じなければ大変なことになる、結論から言えばそういうことだと思いますが、何分にもまだ政府でこれを決定して法案を出しておるという段階ではありませんから、それ以上の評論、まあ一種の評論になりますが、これは御遠慮申し上げるとして、環境整備を先へしていくということが必要なんじゃないでしょうか。
  14. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 ちょっと私言い忘れましたが、通産大臣からもお話ございましたけれども、これは売上税の方の効果でございますが、法人税、所得税減税を当然考えておりますので、これの消費なり投資に対するプラス効果というのもございますから、片一方だけで一概に論ずるわけにいかない。通産大臣からもお話がございましたけれども、私からも付言しておきます。
  15. 奥野一雄

    奥野(一)委員 それは、通産大臣にいたしましても経企庁長官にいたしましても政府の閣僚のお一人でございますから、なかなかいいとか悪いとかというようなことについてそう簡単にはおっしゃられないだろう、これは私も重々承知をしているわけなんですが、今の考えられている新しい日本型の付加価値税というものがとられるということになりますと、やはり一番範囲の広いのは通産だと思うのですね。通産所管というのが一番大きな影響を受けるだろう、私自身はこう思っているのですよ。そのことが例えば国民生活に影響を与えるということになってもうまくないわけですね。これはまた経企庁の方の所管にもなるわけですね、国民生活ということになりますと。国民生活白書で本当はちょっと言いたいこともあるのですけれども、これはきょうできませんけれども通産の方にしてみますと、そのことで例えば産業の中にもしもまずい点が出てくるということになった場合には、これはやはり困るということになるだろうと思うのです。  そこで、これは私もよくわかりませんけれども、今日本産業界の中で、いろいろなすべての産業を含めて、今度の新しい税金に賛成と言っているところはどこかありますかどうか、もし御承知だったらちょっとお尋ねしておきたいと思っているわけです。
  16. 杉山弘

    杉山政府委員 今回の売上高税といいますのは、その限りにおきましては増税になるわけでございまして、そういう意味では、これをぜひやるべきだということを言っている業界というものについては、私寡聞ながら今のところは承知をいたしておりません。ただ、全体として言いますと、一方では財政が非常に苦しくなっているという状況もありますので、そういうことをあれこれ総合勘案して、あるいはやむを得ないというような意見のところはあろうかと思うわけでございますけれども、賛成といって積極的に意思表示をしているところについては承知はいたしておりません。
  17. 奥野一雄

    奥野(一)委員 増税ですから、これは賛成というところはないと思うのでありますけれども、これは私どもの方の例えば北海道の場合も、今道内で一斉に反発の動きが出ているという報道もされております。これは北海道にすれば「三重苦に追い打ちだ」こういうことで表題に載っているわけでありまして、北海道内の各産業界は今度の新しい税金には物すごい反発をしておるわけです。これは建設関係の業者もあるし、あるいは交通関係、教育関係、医療関係、それぞれ各部門からも出されておるわけでありますけれども、決して評判のいい税金ではないわけであります。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕  ただ、税金そのものについては、これは主管が大蔵でございましょうから、通産大臣なり経企庁長官に物を申し上げるということは、その部分については範囲外だと思いますから、このことはあえて申し上げません。しかし、そのことによって万が一でも産業活動に影響を与えるということになった場合には、きょう前段からずっと申し上げてきておりますような経済活動の問題にしても、あるいはまた雇用とかいろいろなものに関係するというふうに私は思うものですから、きょうあえてこれを取り上げたわけですけれども、そういうものに影響を来すおそれがあっては困るのではないか。だから、そういう面を決めるのは政府税調か自民党税調なのか大蔵なのかわかりませんけれども意見とすれば当然そういうことについては反映されていると思いますけれども、これからもそういう面については、私もうまくないものはうまくないということをはっきり言った方がむしろいいのではないかと思っているわけです。  本来でありますと、通産あたりから出されております税調に対する要望、いろいろなものが出されているはずでございます。きょうはその資料を一々申し上げるつもりはございませんから持ってきておりませんが、私の方にも手元にはございます。その中で一つ二つだけちょっと例示的に、これはどうなるのかなということだけお尋ねしておきたいのです。  例えば、電気税あるいはガス税というものがございます。これは今の新しい税金ということになりますと、現実に今電気税、ガス税というのがございますね、これには免税点というのがあるわけなんですが、まさか二重課税のような形にはならないだろうと思っているわけですけれども、その点が一つ。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕  それから、新しい税金の方に移るという場合、これは電力あたりなんかは何か文句を言っているようでありますけれども、今ある免税点というのは一体どういう措置になっていくのか。これは私ども聞かれましても、まだ具体的に中身がちょっとわからないものですから、もしその辺のところでおわかりになっている点があったら教えていただきたいと思うのです。
  18. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 お答え申し上げます。  電気税、ガス税につきましては、売上税の導入に当たっても、電力、ガスの需要家の負担をできるだけ軽減するように配慮する必要があるというふうに考えている次第でございます。電気税、ガス税存続、売上税非課税、これは仮の一つの組み合わせでございますが、そういうことになりますと、消費者あるいは産業需要家にとりまして売上税を、売上税は仮に五%と言われておりますが、これを課税した場合以上に大きな負担を課することになるということが明らかになってきたということでございまして、したがいまして各需要家の過重な負担を回避するためには、むしろそういう組み合わせよりも、電気税、ガス税を廃止して売上税に一本化すべきであるというふうに考えておる次第でございまして、二重課税にならないように、むしろ売上税に一本化した方がいいというふうに考えている次第でございます。  それで、免税点のお尋ねがございましたが、現行の電気税、ガス税におきましては、一般電気事業者及び一般ガス事業者は納税義務者ではなくて徴税代行者となっておるわけでございますが、これらが廃止されまして仮に売上税に一本化された場合には、これらの業者が納税義務者となるわけでございますけれども、この売る側につきましては現在一億円以下の事業者は非課税というような形で議論されておりますが、逆に購入者側、買う側の事情によって免税点を設けるということはできないというふうにも言われておりまして、こうした問題につきまして財政当局等と関係者間で現在検討が行われている、この検討の結果を待ちたいというふうに思っている次第でございます。
  19. 奥野一雄

    奥野(一)委員 検討の結果を待ちたいということはわかるのですけれども、資源エネ庁の方ですか、おたくの方の関係になるのかどうかということもちょっと私は疑問があるので、これは当事者同士の話ということになるのですか、電力業界と政府側との話し合いということになるのですか。検討を待ちたいという気持ちはわかるのですけれども、今言われましたように、従来は免税点というのがあった。私が知りたいのは、従来あった免税点というものが今度なくなるということになると、今までの免税点以下の電気、ガスの消費者は税金がかかるということになるのかどうかということなんです。そこのところが知りたいのですよ。だから、かけないようなことで検討を進めているというのであれば、そういうふうにしてくれという要望か何かを出して検討を進めているというのであれば、それはまた結果を待ちたいということにもなるのですけれども、そこのところわかりますか。
  20. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、現在電気、ガスについて、御指摘のとおり免税点が設けられておるわけでございます。  それで、電気税、ガス税存続のまま売上税非課税となりました場合でも、現在免税の取り扱いを受けている消費者に対しましては、売上税の前段階、電気事業者、ガス事業者に以前に課せられた売上税の分がかかってきてしまうことになる。それが三、四%に増加してしまうということになりますし、またその免税点を超える家庭につきましてはむしろ大きな負担になってしまう。したがいまして、全体としては売上税移行の方が負担が軽くなるということになろうかと思うわけでございます。  それで、先ほどちょっと説明不足であったかもしれませんが、免税点の議論がどうなるのかといいますのは、売上者側の免税点については議論されているけれども、買う側、購入者側について免税点を設けるかどうかという点につきましては、まだ税調の中で議論が進んでないようでございますので、そこらの議論の進展を待ちたいというふうに考えておるわけでございます。
  21. 奥野一雄

    奥野(一)委員 その辺のところは私もちょっとおかしいな、こう思っているのですが、資源エネ庁の方にそれを言っていいのか悪いのかという判断もありますしね。消費者の方の側にすれば、今まで免税点というのがあったんだから、新しいこの税金によってその部分に対しても課税されるということであれば迷惑だ、こういうことにもなるわけで、その辺のところは検討してもらいたいな、こう思っているし、それから電気の場合は大体一億円以下なんというところはございませんから、新しい税制に移っても全部課税対象の事業になりますね。ガスの場合だったらそうでないのが出てくるわけですよ。課税と非課税と両方出てきますので、その辺のアンバランスというものもあるし、そういう面もう少しお尋ねをしたかったわけでありますけれども、直接の所管ではもちろんないわけでございますので、きょうのところはこの程度にとどめたいというふうに思っております。  あとまた、前段申し上げましたように、通常国会のときにまたいろいろ御指導いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  22. 佐藤信二

  23. 緒方克陽

    緒方委員 時間が五十五分ほどしかありませんから、余り多く質問できません。できるだけ質問は簡単に申し上げたいと思いますので、回答をよろしくお願いしたいと思います。  まず第一点は、テクノポリス関連の問題についてお尋ねしたいわけでありますが、このテクノ構想というのは、御承知のように昭和五十八年に法律が成立して、ずっとその後の指定と作業が進められているわけでございます。今日の進捗状況といいますか、そういうものについて、できるだけ簡単で結構でございますが、御説明をお願いしたいと思います。
  24. 加藤昭六

    加藤(昭)政府委員 テクノポリス構想につきましては、五十八年の七月法施行以来現在までに二十地域が指定されております。概して順調にその建設が進んでおります。まだ日が浅うございますので、その成果を十分に評価する段階には至っておりませんが、二、三の例を申し上げます。  例えば企業立地でございますが、昭和六十年までに承認いたしました十八地域について見ますと、五十九年、六十年の二年間の立地件数の年平均が、それ以前の三年間の立地件数と比較いたしまして一・四倍、敷地面積につきましても一・七倍というぐあいな増加状況でございます。  また、各地域のいろいろな技術開発、共同研究などにつきましても、着実にいろいろなプロジェクトが進んでおりまして、その成果も具体的に得られつつあるという状況でございます。
  25. 緒方克陽

    緒方委員 そういう現在の状況でありまして、これからということのようでありますが、私が住んでおります佐賀は、福岡と佐賀両県にまたがっての、いわゆる県を挟んでの構想というのは鳥栖・久留米テクノポリスだけのようでありますけれども、そういう中で今作業が進んでおります。今もお話ありましたように、それぞれのところでスタートはしておるわけでありますが、結局、実際にはまだまだ今始まったばかりである、この成果はこれから具体的に出てくるということであろうと思うわけでありますけれども、その援助措置が時限を切られるということになっておりまして、このままこれが切られるということになりますと、せっかく始まったテクノポリス構想というのが途中でポシャってしまうということにもなりはしないかというふうに思うわけでありまして、これは大蔵の方が結局財源措置の問題でそういうことになる。つまり、通産としてはこれはもちろん延長して産業の育成発展という立場で考えられると思うのですけれども、なかなか厳しい状況のようにも聞いているわけであります。  通産大臣としては、この延長の問題について今日どう取り組んでおられるのか。とにかくしっかり頑張ってもらわないと、これが、先ほども言いましたように、途中でポシャってしまうということになるのではないかというふうに思いまして、この延長の問題について政府としての意思決定がされると思うのですが、それに向けて大臣としてどういう努力をされているのかということが一つ。  いま一つ対象業種の問題があるわけです。テクノポリスでありますから、私いろいろお聞きしてきましたら、当然その指定業種というものの中に入るべきものが、いまだ入っていないというようなことを聞いてびっくりしたのであります。例えばソフトウエアの業であるとか、磁気ディスク、光ディスク製造業であるとか、ニューセラ製造業といったものは当然入るべき性格のものであろうと思うのですが、いまだ入っていないということのようでありますけれども、これは当然入れてしかるべきではないかというふうに思うのであります。  この二点について、大臣か省の方からお答えを願いたいと思います。
  26. 加藤昭六

    加藤(昭)政府委員 先生指摘のテクノ償却制度でございますが、これはテクノ地域に立地いたしました企業に対しまして、先端技術型業種事業の用に供する設備につきまして初年度三〇%の特償の上乗せを認める制度でございます。  先生指摘業種の追加の点も現在要求中でございまして、最近ソフトウエア業種が非常に活発でございます。したがいまして、こうした業種業種、これには先端分野も幾つか入っておりますが、従来七十業種事業を認めていただいておりますが、これに八業種の追加を要求しております。  いずれにいたしましても、現在財政当局にこの制度の適用期限の延長と業種の追加を強く要望しているところでございます。
  27. 緒方克陽

    緒方委員 今局長の方からそういう御答弁があったわけでありますが、これは今の状況の中でやはり大臣としても積極的に努力をしてもらわなければならぬ問題であろうと思うのでありますが、この点について、よければ見解をお願いしたいと思います。
  28. 田村元

    ○田村国務大臣 これは通産省としても、将来性ある非常にすばらしいことでもございますし、また表現があるいは妙かもしれませんが、目玉商品ということが言えるわけです。それで、今の延長と追加、これは財政当局と今すり合わせ中ですけれども、とにかく頑張れ、手に負えなくなったらおれのところへ上げてこい、こういうふうにして局長以下を督励しておるという段階でございます。
  29. 緒方克陽

    緒方委員 それでは、そういうことで通産としては大臣も含めてぜひ積極的に努力をお願いしたいと思います。  次に、今度の国会で成立をいたしました特定地域中小企業対策臨時措置法の指定の拡大の問題についてお尋ねをしたいと思います。  今日の円高中心にする大変な不況の問題については、かねがね当委員会でも議論をされているわけでありまして、中小企業は本当に厳しい状況の中で具体的な抜本的な対策を立てなければならぬということでございまして、私ども社会党も全国の幾つかの地域を調査に参りました。つい先日は、山口書記長を団長といたしまして福岡県の北九州にも調査団を派遣いたしまして、中小企業の代表、あるいは労働組合の代表、さらには県当局や地方自治体の代表などにもいろいろ意見を聞いたり事情聴取をしてきたのでありますが、大変厳しい状況にあるわけでございます。  具体的に言いますと、北九州ではいわゆる鉄冷えというふうなものが基本的にありまして、経済地盤が沈下をしているわけでありますが、円高の問題あるいは産業構造調整という形で大変な雇用問題が起きております。さらに、金属とかセメント関係の工場では、具体的にお聞きをしましたけれども、工場閉鎖が相次いで退職金さえ取れないところもあるという状況にありますし、さらに国鉄の分割・民営化ということでありますが、北九州には国鉄の総局などもありまして多くの労働者がいるわけでありますが、これも分割・民営化という形で多くの労働者が失業の谷間にほうり出されるのではないかというふうに想定されている中で、百万都市でありますけれども例年人口は減っているという状況、また雇用の問題では、具体的な数字であります有効求人倍率が〇・二五、それから門司の場合には〇・二を割るというような大変な状況にあるわけでございます。  そこでお尋ねするわけでありますが、確かに今度政令で四十三が指定をされたわけでありまして、それなりに中小企業庁としても調査をされ、検討をされてやられたことだと思いますが、今日の状況は、その後例えば鉄鋼も今後大変な厳しい対応が要請されるし、国鉄の問題も言いましたような状況が出てくるという中で、一遍指定をしたからこれであとは終わりということにはならないのではないか。ただ、指定したばかりですから、早急な指定というのは難しい面もあるかと思うのですが、その後の経済情勢あるいは雇用情勢の悪化というような状況の中で、北九州市などから申請といいますかそういう申し出があった場合には、これについてはそれなりにやはり機動的に対応するというのがこの法律の本来的な趣旨ではないかというふうに私は思うのでありまして、この点について前向きに対処されるべきではないかというふうに思うのですけれども、お考えをお聞きしたい。ぜひそういうふうにしていただきたいということについて質問を申し上げます。
  30. 田村元

    ○田村国務大臣 今回の地域指定は、当初我々といいますか、事務方が考えておりましたよりは広い分野になりました。例えば長崎市の場合、高島まで含めた随分距離のあるところなんですが、そういうふうに、しかも四十三カ所というふうにふやしていったわけでございます。しかし、今回の指定をもって能事終われりとするものではない。今後必要に応じて追加等の検討はしなければならぬと思います。  ただ、ここで北九州はどうだと言われても、私も特定地域のことを触れるわけにはちょっといかないものですから、一般論として今後必要に応じて検討をしていくというふうにしかお答えのしようがないわけですけれども、景気の動向、地域の困窮度等、あるいはその地域の人口に対してどういうような影響があるか、いろいろな面を考え、しかしまあできるだけ、考え方としては、事務当局はある程度厳しく査定していくことは当然でしょうけれども、私はある程度考え方にゆとりを持たしてもいいのではないかというふうに思っております。ただ、特定の町の名前のことに関しては御容赦を願いたいということでございます。
  31. 緒方克陽

    緒方委員 私も、そういう意味で特定のところを挙げると問題だろうということで、ただ四十三カ所指定されたけれども、その後の状況で、やはり状況は刻々と変わっていくわけですから、そういう状況等を北九州市などというふうにあくまで言っておりまして、そういう新たな状況のところが出てきた場合については弾力的に、あるいは幅を持って機動的に対応されるように、この際強く要請を申し上げておきたいというふうに思います。  さて次に、円高の差益の問題について御質問を申し上げたいと思います。  新聞等の報道によりますと、大臣が円高の問題で差益の再還元をというふうに言われて作業が進められて、何かけさほど電力業界と都市ガスから申請があったということでありまして、それなりに努力、対応されているというふうに思いますし、政府としても通産省としても、そのことで早急に検討されていくだろうと思いますので、私の認識としては不十分だというふうに思いますが、電力や都市ガスの業界も一定の努力をされているというふうに理解をするわけでございます。  きょう私が取り上げたい問題は、家庭用のプロパンガスの問題でありまして、この差益が十分に還元をされていない、これは非常に問題ではないかという意味で御質問を申し上げたいというふうに思います。  それで、まず数字の上で通産省の方に確認をお願いしたいわけですけれども、LPガスの価格の推移について確認をしたいと思うのであります。これは政府の資料でありますけれども、例えば昭和五十七年ごろでありますが、五十七年度は輸入価格がトン当たり大体六万円から七万円、高いときで七万二千円程度でございまして、七万円程度ですね。これに対して小売価格は五立方メートル当たり二千五百円台という状況になっているわけでございます。ところが、六十一年の十月ではLPガスはトン当たり一万九千六百六十八円ですか、そういう数字ですね。それから、卸売物価指数でいきますと、前年同月比で見まして五六・五という数字ですし、五十五年を一〇〇といたしますと四九・三ですね。ところが家庭用の小売は、これは六十年の一月を一〇〇にして九四・九という数字でございまして、五%しか減っていない。ですから、その数字を具体的に言いますと、例えば昭和五十七年は約七万円であった輸入価格が、六十一年に一万九千六百六十八円ということですから、大体三分の一以下ですね、そういう数字になっているわけです。  具体的なLPガスの、例えば昭和五十七年ごろと今日時点の値段の実態について、少し説明をお願いしたいと思います。
  32. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 御説明いたします。  今先生の御指摘数字は、すべて事実に基づいた数字でございますので、御指摘のとおりでございます。したがいまして、例えば一家庭一カ月の平均消費量、大体十立米でございますけれども、その価格を通産省で実施いたしております消費者価格モニター調査で見てまいりますと、六十一年四月五千四十四円に対して、六十一年十月四千七百五十五円ということで約五・七%の差益還元、前年同月比で比べますと約六%の低下になっております。その低下の状況が十分であるかどうかということにつきまして、この業の実態を少し申し上げますと、一つは、家庭用LPGにつきましては、メーターを業者が設置いたしまして、使用に応じてボンベを交代していくという継続的な契約関係になっております。  そういう契約実態を踏まえつつ、コストのかかります要因といたしましては、保安投資が非常にかかるわけでございます。例えば容器の定期検査でありますとか、従業員の研修でありますとか、消費者の啓蒙でありますとか、事故対策としての保険の付保でございますとか、あるいは今申し上げましたようなボンベで配送して回るというのは、人件費のコストが非常に高うございます。したがいまして、そういう契約実態及びそのコストのかかる度合いということから申しますと、今御指摘のCIFのLPGの輸入価格がそのまま同じような比率で末端価格に還元されていくという実態ではないと思っております。  ただ、契約が今申し上げましたような継続的な関係であるということを踏まえまして、本来は市場メカニズムに任せておりますけれども、その契約関係の実態から考えて、引き下げが十分に適正に行われることは必要であるという強い認識を持っておりまして、したがって五月に指導要請をいたしました後、先ほど申し上げましたような価格引き下げが行われてきたということでございます。  ただ、現状におけるその水準につきましては必ずしも十分ではないという認識でございまして、そのさらなる差益の還元につきましては検討をしておるという実態でございます。したがいまして、先生の御指摘数字はすべて事実でございますけれども、それにそのCIFの入着価格に見合った形で、必ずしも差益還元がそのまま行われるものではないという実態についても御理解をいただきたいと思います。
  33. 緒方克陽

    緒方委員 今業界のそういった特殊的な状況についてお話があったわけでありますが、それはこういう形で円高、あるいはLPGの単価が下がったという以前からあった問題で、それはもうそういう体質は変わらないというふうに思うわけですね。  それで、そういうふうな円高差益の還元が十分にされていないという国民の不信というものがあるわけでありますが、また業態としても確かに幾つかの問題があるかもしれませんけれども、こういうふうな十分に還元されていないという原因については、一つはやはり小売業者です。確かに小売業者も成り立っていかなければなりませんけれども、みずから円高が出ているときには返そうというような意識、そういうものがないという問題があるんじゃないか。二つ目には、やはり通産省の指導についても、後ほど質問いたしますけれども問題があったのではないか。それから三番目に、先ほども言われたんですけれども、プロパンガスの容器の提供とか配管の問題を含めて、自由競争が非常にできにくい体制といいますか、そういう制度的なもの、中間的なものもあると思うのですけれども、そういう問題もあると思います。それから、公正取引委員会もそれなりに活動されているようですが、いま少しその権力といいますか行政力といいますか、そういうものの発動が私はあるべきではなかったかというふうに思うわけであります。  そこで、具体的に質問をしたいと思います。  公正取引委員会に御質問するわけでありますけれども、十二日、一部九州では十一日に載ったそうでありますが、福岡県と鳥取と相模原のプロパンガスの協会なりその支部が独禁法違反で、顧客の移動禁止ですか、それからやみカルテルだということで新聞にも報道されておるわけでありますが、このことについてその後の経過と、私は国民的関心事であるからきちっとしなければならぬというふうに思うのですが、どういうふうになっているのか、公正取引委員会の方からお答えを願いたいと思います。
  34. 樋口嘉重

    ○樋口政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、一部新聞にも報道されましたけれども、私ども公正取引委員会といたしましては、先ほど御指摘ございましたように、社団法人神奈川県プロパンガス協会相模原支部ほか三支部と、社団法人鳥取県エルピーガス協会、社団法人福岡県エルピーガス協会につきまして、独占禁止法違反被疑事件ということで審査を行ってきております。  審査の結果を申し上げますと、次のとおりでございます。  まず、神奈川県プロパンガス協会相模原支部と座間支部、厚木支部及び県央支部の四支部は、昭和六十年六月の上旬ごろ、支部員間の得意先の移動を禁止し、やむを得ない事情で移動した場合には立会料とか配管料を支払うということを決定していた疑いが認められ、これは独占禁止法八条一項四号に違反するおそれがあるというものでございます。  次に、鳥取県エルピーガス協会及び福岡県エルピーガス協会は、資源エネルギー庁が円高差益還元のために社団法人日本エルピーガス連合会を通じて行った家庭用LPガス小売価格の引き下げ指導につきまして会員間の対応策を検討した結果、まず鳥取県エルピーガス協会は本年五月に、六月から来年の三月までの間、会員の小売価格の引き下げ幅のめどを六%とすること、それから福岡県エルピーガス協会は本年六月に、七月から当分の間、引き下げ幅を一立米当たり二十円、これはパーセントにしますと約四%になりますが、二十円にとどめること、さらに福岡通産局の指導がございまして、本年七月に、九月から来年の三月までの間、前述の引き下げ幅を含めまして六ないし八%にすることをそれぞれ決定した疑いが認められ、いずれも独占禁止法第八条第一項第一号に違反するおそれがあるというものでございます。  そこで、当委員会といたしましては、本日、神奈川県の前述の四支部と鳥取県エルピーガス協会、福岡県エルピーガス協会に対しまして警告を行うことにいたしております。  以上でございます。
  35. 緒方克陽

    緒方委員 そういうことできょう警告をされるということのようでありますけれども、独禁法違反の疑いがあるということで、それなりの情報があってされていると思うのであります。しかし、実際に先ほど統計で見た数字はそれぞれ五%程度とかそういう形でありまして、結局のところ、他の県でも同じようなことが行われているのではないか、そういうふうに見ざるを得ない問題があるわけでありまして、今度のそういう警告が一罰百戒になるかどうかわかりませんけれども、いわゆる独占禁止法というものに違反するような行為がないようにするために、公取としてはさらにその機能を生かして国民の生活防衛という立場で厳しい対処をしてもらうようにお願いをしておきたいというふうに思います。  次に、通産の方にこの件についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、いろいろお聞きをしたところによりますと、それから資料によりますと、ことしの六月であったか、ちょっと月日は正確ではありませんけれども、いわゆる総合経済対策の中で円高差益の還元ということが言われているわけでありますが、その還元の総額が一千億程度ということでそういう指導を通産省がされた。したがって計算をしますと大体六%になるということで、それじゃ六%にしようじゃないかということでそれぞれになっているような気がしてならないわけです。  ですから、これは先ほど言いましたように、業者の意識の問題といいますか、それはプロパンガス協会も食っていかなければならぬし、成り立っていかなければならぬわけですけれども、しかし、今日の状況では、言葉が過ぎるかどうかわかりませんが、ぼろもうけの状態じゃないかなというふうに私は思うのですが、そういうふうなことの中で、通産省としてもできるだけ差益は還元する、そういう指導をしなかったということのためにこういう結果になっているのではないかという意味で、その指導について問題があったのではないかというふうに私は思うのでありますが、その点についてどういうふうにお考えになっているか、お聞きをしたいと思います。
  36. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 LPGにつきまして適正な差益還元が行われるべきであるという基本認識のもとに、LPGの業界に対して従来指導してきておることは事実でございます。  まず、五月六日に一般的な指導といたしまして石油部長名で関係団体に対し差益還元の要請をいたしております。その中身は「最近の外国為替相場の円高基調及び産ガス国の販売価格引下げに基づく輸入価格及び仕入価格の値下がりの状況を踏まえて、これが家庭用液化石油ガスの末端価格に適切に反映されるよう貴会傘下の会員に周知徹底方お願いします。」ということを五月六日付で文書で要請をいたしております。  それで、ここの今読み上げましたことでおわかりいただけますように、価格の値下げの幅が幾らであるとか、その水準、いつ、どういう形で実施すべきか、例えば話し合いを許容するとかいうふうなことは当然のことながら一切触れていないわけでございます。したがいまして、このときも含め、独禁法違反の事態に至らないようにということは、累次にわたって周知徹底を図っているところでございます。  なお、その後、六月及び八月にも同様の趣旨の徹底を口頭で関係者に依頼をいたしております。  そういう事態の中で今回の公正取引委員会における審査が行われたということにつきましては、非常に遺憾なことだというふうに思っております。とりわけ鳥取及び福岡につきまして、価格の下げ率をめぐる協定が行われたという事実については、基本的には値下げ努力の一環ということで善意は認められますけれども、共同行為を行ったということについては、我々業界に対し差益還元を常に要請しております立場から考えて、まことに残念な事態だと受け取っております。  その指導につきましては、先ほど申し上げましたように、独禁法違反に至らないようにということを累次言っておるわけでございますけれども、ただ一定のめどが十分に示されていなかったという点については、我々の行政指導のやり方についても一工夫要るのかなということで考えておりまして、今後とも業界に対して独禁法違反は一切行わないよう、当然のことでございますが注意を喚起するとともに、今後指導するに当たりまして、そういう不本意な事案を誘発しないような工夫もいたしていきたいと思っております。  それで、今先生の御指摘経済対策閣僚会議の決定でございますけれども、これは五月三十日に経済対策閣僚会議で「当面の経済対策」ということで一千億の差益還元が公式に発表されております。それを算定いたしますと七%程度というのが当然にわかるわけでございますが、それはマクロの数字であったわけでございます。したがいまして、今後ともそういう事案については、そういう不本意な独禁法違反が誘発されないよう十分な工夫を払ってまいりたいと思っております。
  37. 緒方克陽

    緒方委員 数字は一千億で七%程度と言われたわけですが、実際には五%か六%にしかなっていないという今日の現実があるわけでございます。さらに電力会社や都市ガスについては、きょう申請が出されて対応がされていくというふうになるわけでありますが、家庭用のプロパンガスについては、そういった過去の経緯についても通産の指導も非常に問題があったと私は思うし、それから実際の差益還元も十分な形がされていないという二つの前提がある中で、電気料金、都市ガスについてはその他も含めて指導がされていくと思うのですが、家庭用プロパンについては、今日までの経緯も踏まえてやはり特段の具体的な指導がなされないと、またもや同じことが繰り返され、国民の不信を買うことになりはしないかと思うわけであります。この新しい事態——事態というのは、今までの経過の二つの問題と、それからきょう認可申請が電力、ガスについて出されたという状況の中で一体どうされるのか。今日までの対策では不十分ではないかと思いまして、その具体的な今日までの経過を踏まえての対処をお聞きしたいと思います。
  38. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 先ほども申し上げましたように、LPGの差益還元が十分ではないと我々も思っておりますので、電気、ガスと競合する家庭用エネルギーとしてその水準を総合勘案しながら早急に検討を進めてまいりたいと思っております。
  39. 緒方克陽

    緒方委員 今のお答えではちょっと納得しがたいわけです。前段の通産の指導の一千億の問題も言いましたし、独禁法で摘発をされているという状態もあるという中で、検討をしてまいりたいということですが、検討という意味はいろいろな意味があるわけでして、具体的にどのような形で検討されていくのか、その辺を再度お答えを願いたいと思います。
  40. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 差益が適正に還元されるよう、具体的な指導を含めてどういうやり方でやるか、どういう水準でやるかを具体的に検討したいということでございまして、検討して実行しないということではございません。実行するという方向で検討したいということでございます。
  41. 緒方克陽

    緒方委員 それでは、今のことについてもう一遍お聞きしますが、早急に検討をされるということですか。
  42. 内藤正久

    ○内藤(正)政府委員 早急に検討をする予定でございます。
  43. 緒方克陽

    緒方委員 それでは、今の問題はそういうお答えをいただきましたので、そういう円高差益が国民に還元されていないという問題についてぜひ対処されるように、この際強く要請をしておきたいと思います。  次に、原発の問題についてちょっと質問を申し上げたいと思います。  私は原発のある県に住んでおり、立地県という立場でありますけれども、特に玄海原発では不安と非常に不信が高まっているわけでございまして、事故の問題あるいは自治体との対応の問題を含めて非常に問題がありますので、その点でお尋ねをしたいと思うわけであります。  なお、前提として申し上げますけれども、私は核と人類は共存できないといった考え方を持っているということではなしに、県民が非常に不安あるいは不信を持っている、そういうことで解明をしてもらいたいという問題でありますので、お答えを願いたいと思うわけであります。  これは十二月十日の朝日新聞に載っている原発関係の囲み記事であります。全国版に載っているわけですが、「佐賀県知事は十月七日、九州電力に一通の要請文を出した。「十分な対策を」と求めた同様の文書は、定期検査の度に出すようになった。」それは蒸気発生器の細管の粒界腐食が次々に起きている、ふえている、そういう状況で「今回は損傷細管が四百六十六本とさらに増え……」という形で新聞に報道されているわけでありますが、県民としては非常な関心事であるわけでございます。そういう問題が一つ。  それから、事故がいろいろ起きているわけでありますが、それに対して県と安全協定が結ばれているわけです。しかし、その対応が非常に不十分だということの問題もあるわけです。  そこでエネルギー庁の方に質問をしたいと思いますが、この細管の粒界腐食というのは、佐賀の玄海の場合には、第五回の検査が二百三十三本、それから六回が百七十六本で、七回目はちょっと少ないようですね。ところが第八回目では二百八十八本とふえて、ついに今回の第九回の検査では四百六十六本ということでふえているわけです。これはいわゆる粒界腐食と言われて、そのたびごとに九電としては対応していると言われているわけでございますけれども、減らずにふえる。十分に洗浄いたしますからと言っているけれども、ふえていくという現状があるわけですね。  そこでお尋ねしたいわけですが、そういうふうに言っているけれども実際に効果が上がっていない、いわゆる対策がきちっとできていないのではないかと思うわけであります。この点についてお答えをお願いしたいと思います。
  44. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 お答え申し上げます。  たくさんの御質問ですので、順次お答えしたいと思いますが、まず蒸気発生器の損傷でございます。  蒸気発生器と申しますのは一次系と二次系の熱交換をするものでございまして、一基当たり三千三百八十本くらいの細管がありまして、一次系が中を通って、二次系が外側で熱交換をする、こういうものでございます。  御指摘の細管の損傷の問題でございますが、これは定期検査のときにこの状況をチェックすることになるわけでございます。その結果、貫通しているということではないのですけれども、割れがかなり進行しているというものが見つかるわけでございます。そうしますと、それを定期検査で修理をしまして、いいものにしてから再開する、こういうことでございます。  この問題は各発電所かなりいろいろなところで起きておりまして、玄海の細管につきましても粒界腐食損傷ということで、私どもの中でも委員会をつくりまして原因は十分究明してわかっておるわけでございます。原因はわかっておりますが、玄海の場合とほかの発電所とはいろいろ事情が違いますけれども、玄海一号の場合は、現在は使っておりませんが、かつて補助ボイラーに使っておりました燐酸ソーダがまだ残留しておりまして、これが悪さをしているということでございます。この除去の方法もほぼわかっておるわけでございますが、これを完全に除去できていないから定期検査のときに故障箇所が発見される、こういうことでございます。  玄海の場合に、定検のたびに故障箇所がふえるではないか、こういうお話ですが、今のところそういう状況がまだ続いておりますけれども、そのままで運転しているということではなくて、安全なようにしてから運転するということでございまして、安全上の問題は特にないというふうに私ども考えております。  それから通報につきまして、遅いではないか、不信感があるというお話でございます。私どももそういうことは聞いております。具体的に県との間ではどういうふうに報告するかということを申し上げますと、これは県及び市町村との間で電力会社が安全協定を結んでおりまして、事故、トラブルがあったらこれに基づいて報告する、こういうことになっておるわけでございます。先般起こりました問題は、安全系の一つであります余熱除去系のポンプの軸について定期検査の十月十日に発見したのを十日ばかり後で報告した、報告がおくれたのではないかということでございます。この問題につきましては、私どもにもおくれて報告があったわけでございます。その原因は、定期検査であるからまだ急がないのではないかという解釈をしたことと、中身が軽微であろうというふうに思ったようでございまして、この点につきましては私どもはきつく言ったところでございます。それで、県との関係につきましては同時に問題になったということを聞いております。  この問題につきましては、基本的には県と電力会社の問題であるというふうには思っておりますけれども、私どもといたしましては、地元の理解と協力を得た上で原子炉の運転、建設を行うということを指導しておりますので、今後ともちゃんと守るようにということで厳しく指導してまいりたいと思っております。  あと全般的には、私どもの認識でございますが、日本みたいな資源の少ないところでは、ある程度のウエートで原子力を導入していかなければいけない、そういうふうに考えております。その場合に、やはり一番重要なのは安全確保である、安全を第一にしながら原子力開発を進めてまいる、このような基本的な姿勢を持っております。  以上でございます。
  45. 緒方克陽

    緒方委員 今、施栓をしているから大丈夫だというような言い方をされるわけですが、そういう言い方をされるものですから、佐賀の新聞社などの社説では、微細な傷があったというような言い方をされているわけです。エネ庁なんかの資料でお聞きをしますと、これは蒸気発生器の厚さが一ミリあるのか一・二ミリなのか、多分その程度だと思うのですが、三割から五割まで腐食が進むと計器に出てくるということでありますが、五割もひびが入っているということは、運転の時間を今どんどん延長しているわけですから、時間が延びているという形で、中までいわゆるピンホールができていくということすら十分考えられる問題でありまして、今のような答弁では非常に問題があると思うわけであります。  そこで、時間がなくなってきましたから言いますけれども、栓をするからいい、運転には影響ないということでありますが、この施栓率というのがどうも次々に変えられてきているわけであります。例えば安全解析施栓率なんというものを指定してどれだけ大丈夫なのか、新しい言葉までつくってやらなければならぬという大変な問題でありますが、この施栓率を例えば関西の大飯一号などでは八二年は八%に上げ、八四年には一二%に上げているし、美浜一号などは二八%までという形で次々と率を上げているわけでございます。玄海の場合だってそういうことで次々と上げられていく。一体限界はどこなのかという問題があると私は思うわけであります。  アメリカなどではこれを全部取り払って、そっくり入れかえるというような大手術もされることがあるようでありますが、日本でそういうことが考えられていないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  46. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 施栓をしたから安全上心配ではないかということでございますが、これは基本的には、もしリークがございましたら直ちに検出するということになっておりまして、運転中に、施栓しているから、その運転状態で安全が確保できないということではございません。それがまず一点でございます。  もう一点は施栓率の話でございますが、これは余り施栓が多くなりますと、LOCAという大破断の事故を想定しているのですが、想定した事故のときの水の流れが悪くなるであろう、水の入り方が少なくなるのではないか、こういうことで安全解析上の数字を決めてあるわけでございます。その数字は、突破するということになりますともう一度解析上の検討をしなければならないということでございまして、玄海の場合は一五%で解析しておりまして、それが突破するということになりましたらまた解析をしなければならないということになるわけでございます。ですから、この施栓率が安全解析上の数字より下である間、特に安全上支障のあるものではないということを御理解願いたいと思います。  それからもう一つ、最近スリーブ型の改修というのがありまして、内側にスリーブを入れまして、それで施栓をするという以外の技術開発が進んでおりまして、実際上は施栓率を上げないで対処できるようになっております。ですから、日本では当分の間全体を取りかえなければならないという状態にはならないと思います。海外では確かに御指摘のとおりそういう例もございます。  以上でございます。
  47. 緒方克陽

    緒方委員 時間がなくなりましたので、最後にあと一点だけでありますが、結局住民の不信というのは、そういった細管の腐食の拡大とか、あるいは七十ミリもあるステンレスの冷却水のシャフトが折れるとかいう問題もあります。同時に、連絡が、とにかく技術系というのはそういうものをばらせば、連絡をすれば、何か九電自体の責任になるんじゃないかということでとにかく連絡をしない、しなくてもいいんじゃないかというような勝手な判断をして、結局ますます不信を高めるというような状態があるわけであります。謝罪文も今度九電が出されたということでありますが、結局そういう通産の指導のあり方というのが十分でないから、幾らやっても、何遍も何遍も、四遍も五遍も同じことが繰り返されるというのは問題じゃないか、そういう体質については通産省の指導体制そのものも問題があるというふうに僕は思うわけでありまして、その辺についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  48. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 繰り返しになりますが、御指摘の点につきましては、連絡を密にするようにということで従来から指導しておりますし、なお一層今後ともしっかり連絡をやるように指導したいと思います。
  49. 緒方克陽

    緒方委員 時間が参りましたので、これで私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  50. 佐藤信二

    佐藤委員長 新井彬之君。
  51. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 私は、若干の質問をいたしたいと思うわけでございます。  昨日も質問通告をいろいろさしていただいたわけでございますが、その中で、こっちは商工委員会で質問させていただくのは初めてでございますので、経済の問題といえば、これはもう全部わかっているのが経企庁長官総合調整機能という立場で、世界を見渡しての経済、そしてまた日本の中の経済、そしてまたどうすれば四%の達成成るか、こういうことを基本的にまとめて提言できるというのは経済企画庁長官だろう。したがって、質問は経企庁長官一人でもいいのじゃないかというぐあいに思うわけでございますけれども、いろいろ聞きますと、いや、これはもう通産関係です、これは労働省関係ですといろいろ分かれておりまして、その中でなおかつ担当がたくさん分かれている。そういうわけでございますので、ちょっといろいろデータとかあるいはまた勘違いしているような私のいろいろの質問があろうかと思いますけれども、初めてでございますので丁寧にひとつ教えていただきたい、このように思うわけでございます。  十一月二十八日に大蔵省が発表したわけでございますが、国際収支状況を見ますと、本年四月から十月の経常収支五百五十六億ドルと、政府見通しの六十一年度分の五百十億ドルを突破しているわけでございます。今何とかこの貿易収支を、貿易黒字を是正しなきゃいけないということで内需拡大、こういうことで今まで進んでまいったわけでございますけれども、今回の黒字の拡大についてどのような分析をされているのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  52. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生の御指摘のように、貿易収支黒字幅は当初見込みよりも上回っている状況でございますが、これはよく言われますJカーブ効果ということでございまして、当然、円高になればその分だけドル価格を上げなければ従来と同じ円表示の収入が得られないわけでございますので、輸出メーカーは一斉にドル建て価格を上げる努力をするわけでございますが、いろいろ輸出先のほかの国との競合の面もございますから、その円高分だけ全部上げられなくても、平均でいいますと大体半分ぐらい円高分は上げているようでございますので、その分がドル建て収入の増という結果が一つ出てまいるわけでありますし、同時に、御案内のような原油価格の国際的な低下の現象もございます。これは輸入支払い代金のドルの減、こういうことでございますので、あわせてまいりますと、お話しのように貿易収支ベースでは黒字幅が当初見込みを上回っている、こういう現象が起こっているわけでございます。
  53. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 よくわかるわけでございますけれども、そういうようなことを例えて言いますと、原油の価格が大体このぐらいで推移するだろうとか、あるいはまたそれだけの円高になれば当然またそれに対して値上げをしなきゃいかぬ、そうするとドルが入る、そういうようなことは、昨年の円高・ドル安の状況の中でこれはもう確かに日本の国は大変なことになる。言ってみれば輸出でもって日本経済というのは拡大をしたわけでございますし、いい商品が安く売れれば、当然世界各国どこでもこれは買うと思います。そういうわけですから、日本の技術というのは大したものでございますし、これは貿易立国として今までずっとやってきたわけでございますので、黒字がどんどんたまる。しかし、これはあくまでも為替レートの関係でやろうと思えば、一遍に四〇%も四五%も安くなるような商品なんというものはつくっているわけはないわけでございますから、一挙に大打撃を受ける、こういうようなことになるのではないか。こういうことはもう予測されておったわけでございますが、そういうようないろいろの中でもう計算されて、なおこういうぐあいに出てきたということでございますか、いかがですか。
  54. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 どの程度円高を最終的にG5の段階関係者が考えておったかということは、私も実は必ずしもよく知らないわけでございますが、ただ、当初考えておったよりも急激に円高が進み、しかも、むしろことしに入って四月、さらに七月と、ずっと円高が進んでまいったわけでございます。その円高現象が一定の水準で安定いたしますと、いわゆるJカーブ効果というのはそこで終わってしまうわけでございますけれども、ずっと円高現象が急進しておりましたのでJカーブ効果が上積みになってきた、こういうふうに御理解いただきたいと思うわけであります。  ただ、現在は百六十円ということで一応小康を保っておりますので、この水準が今後続くと考えますと、今度はJカーブ効果ではなしに輸出数量の減ということが価格効果で出てまいりますので、今度はJカーブ効果でなしに、現実にもう今輸出数量はだんだん減っておりますので、一定のドル価格で輸出数量が減っていけば、まさに為替調整による国際収支の調整効果がこれから具体的にあらわれてくる、かように考えておる次第でございます。
  55. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 それで、もともとレーガン政権というのは、経済政策のバックボーンになっているのはシカゴ大学のフリードマン教授、シカゴ学派と言われているらしいのでございますけれども、そういう方々というのは経済問題については絶対政治介入しない。しかし、今回のベーカー財務長官、G5でこういう協調介入ということを図ったわけでございますけれども、これは世界にとっても大変な問題になっているのじゃないか、こういうふうに思うわけです。日本も、確かに中小企業初め大手まで大変な状況でございますけれども、食糧にいたしましてもアメリカから一番買っているのは何しろ日本でございますし、また原油にいたしましてもたくさん買っておるわけです。  しかし、そういうわけですから、世界の経済がこういうことで混乱をする、アメリカにおいても逆に言えばまた大変な打撃を受けている、こういうことも今大分言われているわけでございますけれども日本といたしましては一体一ドルどのくらいが妥当の線であるのか、そういうようなことについては経企庁長官としてはどのように思っておられますか。
  56. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生の御質問でございます、どれくらいのレートが妥当であるかということは、これはなかなか難しい御質問でございまして、純粋理論的にもこの為替レートがどう決まるか、いわゆる両国の購買力を比較いたしまして出すのが購買力平価による為替レート、こういうことでございます。これも計算の仕方でいろいろな数字が出ておりますが、現実の為替レートというのはそうした購買力平価だけじゃなしに、貿易勘定、いわゆる経常勘定と、それから資本勘定合わせたドルと円に対する需給関係で決まるわけでございますので、単に経常勘定、購買力平価だけで並べてどうだという機械的な計算では決まらない面がございます。  ただ、このG5の合意によりますと、少なくとも一ドル二百四十円とかそこらの数字は、これは明らかに均衡を逸した数字であって、現在の水準というのは宮澤・ベーカー共同合意によりますと、少なくとも両国のファンダメンタルズを反映したものである、こういう言い方をしておるようでございます。
  57. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 その問題についてはいろいろと、百八十円がいいとか二百円がいいとか、日本からいえば企業によってもいろいろな違いがあるでしょう。  そういうことで、今度は逆にアメリカの食料品を買ってあげるときに幾らぐらいがいいのだろう、あるいはまたOPECの石油を買う場合に幾らぐらいがいいのだろう、こういうことで、日本国内だけでは考えられない経済問題というのはあるわけでございますけれども、そういうようないろいろ流れというのは自動的に経済の原理の中で処理されていく、これが一番妥当な線だと思いますけれども、少なくとも今の日本の現状、企業の現状を見ますと、我々もいろいろな要望を聞いているわけでございますけれども、とにかくこの前も法律が出まして、お金は低金利で貸してあげよう。しかしお金なんか何も貸してほしくないというわけですね。仕事がないわけですから、とにかく金よりも何よりも仕事をください、仕事がだめならば、やはり私たちが一生懸命汗水垂らして適正な値段で輸出ができる、そういうような安定した為替レートに持っていっていただきたい。ですから、一番の要望は、私たちは何もしてもらわぬで結構だけれども、政治介入でもって経済問題をぶち壊したような、そんなやり方では困りますよ、とにかく為替レートを安定してもらえば、私たちはそれに応じて一生懸命にコストダウンも図りますし頑張ってまいります、こういうことでございました。  そういうわけでございますから、やはり何といいましても今の状況からいきますと、為替の安定というもの、それも適正な安定というものがやはり一番多くの企業に望まれている現状である、これを非常に感じているわけでございます。したがいまして、経企庁長官といたしましても、大蔵省あるいはまた通産省いろいろなことがございましょうけれども、そういう問題についてはやはり研究をされて明確にそういう方向性を持っていく。そして日本だけの利益ということになっては悪いわけでございますから、これはやはりアメリカのものを輸入する場合、あるいはまたECのものを輸入する場合においても、結局プラス・マイナスきちっとしているじゃないかという形で考えていただきたい、このように思うわけでございます。  それからもう一つは、私専門でないからわかりませんけれども、貿易問題については非常にアンフェアな部分があるんじゃないか。例えて言いますと、労働時間が長いとか低賃金で働いているとかということもありますけれども日本は関税障壁をつくってなかなか輸入させてくれないというようなこともあるわけでございます。  一つ、ここに、アメリカの銀行家のローレンス・プレスラーという方がウオール・ストリート・ジャーナルというアメリカの新聞に寄稿しているわけです。その中で、  「日本の貿易黒字が史上最高の水準に達したという発表があったとき、私はたまたま年次休暇で東京からニューヨークに帰っていた。過去十二か月間に円がドルに対して五五パーセント上昇したことで日本消費者は輸入品をどれだけ買いやすくなったか、またアメリカの消費者にとって日本からの輸出品がどの程度買いにくくなったかを調べてみようと思い立った」   プレスラー氏の調査によると、第三国製品は東京の方がニューヨークよりもほとんど例外なく高い。例えばスコッチウイスキーのジョニ赤は、ニューヨークでは十二ドル六十四セントで買えるのに東京では二十四ドル五十二セントもする。オリーブ油のベルトリ(イタリア産)はニューヨークで二ドル九十五セント、東京で五ドル九十八セント。メープルシロップ(カナダ産)はニューヨーク一ドル二十セント、東京二ドル二十四セントといった具合に、いずれも東京の方が約二倍高い。   もっと驚いたのは、日本の人気製品でさえ東京で買うよりニューヨークで買った方が安いことだ。普及型のキャノン・カメラはニューヨークのディスカウントハウスで買った方が東京の安売り店よりも三五パーセント安いし、ニコン・カメラは二五パーセント安い。オリンパス・カメラレンズもニューヨークの方が二四パーセント安だ。カシオの計算器付き腕時計は一三パーセント、ソニーのダブルカセット・テープレコーダーは八パーセント、マクセル・オーディオテープは五〇パーセントもニューヨークの方が安かった。しかもニューヨーク側の値段表には、同州の売り上げ税八・二五パーセントまで含めてあるのだ。  「私の簡単な調査の結果は、日本が貿易相手国との間で抱えている基本的な問題を浮き彫りにしている。つまり日本の輸出品が他国の相対的に開放された市場に参入することで大きな利益をあげているのに、日本の市場は外国製品に開放されているというには程遠いという点だ」   こうした閉鎖性は、日本人の集団志向と上下関係を重んじる社会慣行にも原因がある。つまり同じ資本系列の会社からしか買おうとしない態度だ。もう一つは流通機構の複雑さにある。 こういうようなことで言っているのですけれども、これに対して一体どのようなお考えを持つのか。  それからもう一つは、この前も十一日からブリュッセルで開かれました第三回日本・EC閣僚会議でも、ウイスキー、ワインなどの洋酒の税金、酒税とか関税が非常に改善を要求をされたということを聞いておりますし、この洋酒問題については日本とEC諸国とはやり方、考え方が違うわけでございますけれども、これからはこういう簡単な問題ではなくて、今までの日本の文化とかあるいは一つの歴史に根差したような問題が必ず問題になってくる。逆に言えば、日本も各国に行って、聞きますのに、輸出は大変けっちんを食らっているところがたくさんあるわけでございます。一つ一つの国と日本とがフィフティー・フィフティーの関係、非常にフェアな関係で、やはりこれからは貿易というものをもっときめ細かな視点で話し合いとか討議を続けていかなければいけない、このように考えるわけでございますが、まとめて御答弁をお願いします。
  58. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 まず最初に御理解いただきたいことでございますが、関税について申しますと、日本の現在の関税率は世界の中で工業製品については最低の水準になっているわけであります。  そこで、いろいろな海外の輸入品の国内価格でございますけれども、これは経済企画庁でいろいろ各商品ごとに調査をしておりますが、円高以来相当に下がった商品がたくさんございます。ただ、特定の銘柄商品については、これは総代理店契約ということで、むしろ売る側でいわばこちらの足元を見て上げてきているような面もあるようでございますので、こうした商品については並行輸入を積極的に促進する形で、競争関係において国内価格を下げるようにさらに努力をしてまいりたいと思っておるわけであります。  御指摘の、ニューヨークの方が日本のもの、カメラでも何でも安いのだ、こういうお話でございますが、私も数名の友人からそういう事実を知らされて、これは大変困ったことだなと思っているわけでございますが、国内の輸出における過当競争がそういった現象を招来している、こういうふうに考える次第でございます。  酒の税金につきましては、これは関税の問題もさることながら、国内の税体系、酒税体系にかかわる問題がたくさんあるようでございますが、この問題は先ごろEC・日本閣僚会議からお帰りになった通産大臣からひとつ御答弁をお願いいたしたいと思います。
  59. 田村元

    ○田村国務大臣 きょうの御質問は大体企画庁長官へという冒頭の御発言でありましたので、私も答弁を御遠慮申し上げておったわけであります。  ECとの会合でも、またバイの会談でも、あるいはまたアメリカ、カナダにいたしましても、日本が売り込むことを責めるより買わないことを責めるんですね。ただ、それじゃどれだけ輸入障壁があるかといいますと、先ほど企画庁長官が申しましたように、鉱工業の関係では二・一%というような先進国では世界で最低の関税率というようなことであり、残存輸入制限品目は、石炭一品目を除いてあとの二十二品目は農産物ということでございまして、一般の品物につきましてはほとんど障壁はないのです。ところが買わない。泣くようにしてお願いしても買わない。魅力がないというのでしょうか、私もしっかりわかりませんが、買わない。ブランド商品なんかは、高いから売れるのだということを言ってなかなか安くしない。まさか統制経済のように取り締まるわけにもいかず、私も有名デパートやスーパーやいろいろな代表と会ってはお願いをしておる、こういう状況でございます。  数量ベースでは輸出は微減しておりますけれども、しかも円ベースでは減っておりますけれども、ドルベースではふえている。輸入の方も数量ベースではふえておりますけれども、ドルベースではそうでもないというようなことでありまして、本当に困っております。  アルコール飲料の問題でございますけれども、これは率直に言って三つの問題があります。一つは関税であります。もう一つ日本の酒税であります。いま一つは代理店等が取得する、つまり輸入業者が取得するマージンが非常に高いということであります。ただ問題は、洋酒と日本酒というもの、しょうちゅうも含めた日本酒というもの、これをどういうふうに仕分けていくかというところが一番大きな問題になるのじゃないかというふうに思いますが、しかしECのみならず、アメリカもカナダもこれは連合軍でございますから、アルコール飲料については非常に厳しいものがある。私も外務大臣もほとほと困り果てて、やっつけられて帰ってきたというようなことでございます。もうこれを放置するときは過ぎた、何とかしなければならぬ。先般も閣議の席で総理大臣から大蔵大臣に対して非常に強い口調で改善方の指示がなされたということでございます。私は直接の所管ではありませんけれども、一汗も二汗もかきたいというふうに思っております。
  60. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 通産大臣、大変失礼いたしました。私が経企庁長官だけでいいというのは、さっきの貿易黒字問題についての総合的な判断ということで言ったわけでございまして、通産大臣、もう大先輩で、本当に今それこそすばらしい活躍をされているわけでございまして、通産大臣にもたくさんお伺いしなければいけない問題があるわけでございます。そういうことで、さっきの問題とはちょっと違いまして、それを了解を願いたいと思います。  一般的な日本の国民から見ますと、出てくる本とかいろいろ見ますと大分反論もございますけれども、何か日本の方が輸入制限を大分強めているんじゃないかというようなことを思われがちでございます。例えて言いますと、米なんか全然別でございますけれども、米を強硬に入れないというと、ほかのたくさんの商品もそういうことをやっているんじゃないかとか、そういうことについて余り深く知っている方はいらっしゃらないわけでございます。しかし、外国は御承知のように各国いろいろありますけれども、地域ぐるみで、日本はこういう農産物をこういうことで入れさせないとか、いろいろな方々が非常に興味を持って言われる。そういうわけでございますから、日本の場合は一番貿易立国にふさわしい、それだけの対応をしているということはよくわかるわけでございますが、私はこれからもそういう問題については声を大にして言っていただきたいし、それからまた国民にもわかるように、日本はもうそんなことじゃありませんよ、一番フェアにやっているんですよということもよくわかるように報道等もしていただきたい、このようにお願いをするわけでございます。  それから、内需拡大を一生懸命、今回も補正予算を組んでおやりになったわけでございますが、内需拡大をやったからといって、造船、鉄鋼が非常に大変な状況になっておりますが、その方々にどのような影響があるのか。これは地域によっていろいろございます。鉄鋼あるいは造船でもっているような地域におきましては、今失業問題というのは大変なことになっておりますし、当然それに対してこの円高の中でそういう業種が今後長くやれるとは私も思いません。したがいまして、内需拡大をやって、そうして日本は貿易黒字を少なくするんだ、こういうぐあいな考え方でございますけれども、今の内需拡大のやり方では、別にハイテクの輸出が減るわけでもないでしょうし、あるいは自動車とかそういう関連だって、取り決めて年間何万台といえばそれはそれで終わるでしょうけれども、とにかくそういう形以外に減る方法はないんじゃないか、こういうぐあいに思っておりますが、その辺はいかがでございますか。
  61. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 御指摘のとおり内需拡大の意味でございますが、いわゆる公共事業中心とした内需拡大政策によれば造船とか鉄鋼は直接関係がないじゃないか、こういうお話かもしれませんが、基本的にはそういうことだと思いますけれども内需拡大によって例えば道路をつくるとか、それから橋梁をつくるとか、またビルをつくるとなれば鉄鋼や一部造船の需要になる面もあるわけでございます。  ただ、長期的に日本において造船業をどう維持するのだ、また鉄鋼はどうなんだということにつきましては、実は現在経済審議会の中で経済構造調整特別部会というものを設けまして、部会長に前の日銀総裁の前川春雄さんにお願いをいたしまして、来年の春を目途に、どのような形で日本経済調整を遂行していくのか、学識経験者による一つの将来像と、そしてそれを実行するために必要な政策についての答申をおまとめいただいておるというのが現状でございます。
  62. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 通産大臣は、今不況地域各所に一生懸命足を運ばれて内容もお聞きになっていただいているということでございます。  そういう中で一つの例を挙げますと、兵庫県の相生市という市がございますが、ここは石川島播磨重工、造船業で成り立っている町でございます。その相生市から陳情が出ているわけでございます。   相生市は、兵庫県の南西部に位置し、明治以来造船を基幹産業として発展してきた文字どおりの企業城下町であります。   このたびの石川島播磨重工業(株)の合理化計画は、下請中小企業はもちろんのこと、市民生活にも壊滅的打撃を与えております。   市としても、市議会と一丸となって出来る限りの対策を考えているものの、財政規模の小さい地方都市のことでもあり、大変苦慮しております。   かかる事情を御賢察のうえ、地域の活性化を図るため、次の事項について格別のご高配を賜りますようお願い申しあげます。 こういうことでございますが、ここの工業の状況を見ますと、工業出荷額は、この石川島播磨重工が占めているのは八八%になっているわけでございます。それから、このデータを見ましても、従業員数から何からもうほとんど石川島播磨重工一社で支えていただいている、こういうような状況であります。したがいまして、石川島播磨重工がなくなるということは即相生市がなくなってしまう。これはいろいろ人口動態とか雇用状況とかずっとデータが出ておりますが、時間がありませんから読みませんが、そういう中で本当に何とかしていただきたいという希望があるわけです。  造船関係は運輸省ということでお伺いしたわけでございますが、その要望は、「造船技術を活用できる橋梁・鉄骨等公共事業の促進」、こういうことが一つあります。それから二つ目は「特定地域中小企業対策臨時措置法制定に伴う地域の指定」、これは大臣のお計らいで指定にされました。それから三番目が「地域活性化のための産業おこしプロジェクトの地域の指定」、それから四番目に「雇用の確保のための企業誘致に対する支援策の強化」、こういうことの要望が出て、一つはやっていただいたわけでございますが、こういう地域からこういう要望が出ておりますが、どのようにお考えになるか、御答弁をお願いいたします。
  63. 田村元

    ○田村国務大臣 今おっしゃったことはまさにそのとおりでございます。特定地域には指定いたしましたから、その点であの法律の恩典を受けるということはできると思います。  また、造船の特徴を生かした転業といいますか、あるいは幅を広げるというか、これは運輸省のことでございますけれども、やはり何としてもやらなければならぬことだと思うのです。  例えば、ちょっと古い話になりますが、私が運輸大臣のときでございましたが、飛行場を、いわゆる空港を浮き桟橋でやろうという計画を立てまして、当時の通産大臣は田中龍夫さんで、フローティングエアポートということを考えた。そうしますと日本の鉄鋼、造船は一発で息を吹き返すというようなことでございまして、そのころ随分検討いたしました。結局、埋め立て方式に対して三倍ぐらいのコスト高になるということで採用できなかったわけでございますけれども、今おっしゃったことは、まさにそのノーハウを我々大いに考えていかなければいかぬという問題だろうと思います。  それからまた地域活性化のいろいろな問題、これは何といっても地元が、現地がこういうことをということを考えて、そして県あるいは国に相談をおかけになる、そういう筋のものだと思いますが、有効な、いいプロジェクトその他をお考えになりましたときには、私どもも全面的にお手伝いをするにやぶさかではございません。実は私も地元に日本鋼管というのを抱えておって往生いたしておりますが、相生の苦しみというものは痛いほどわかりますだけに、地元の一層の意欲というものを期待する次第でございます。
  64. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 もう一つ、これは姫路市長と姫路市議会、姫路商工会議所が新日鉄の社長に対しまして陳情を直接行っているわけでございます。確かに、経済問題というのは上からどうしろこうしろというようなことも言えないわけでございますので、一生懸命にお願いをしているわけでございます。   ご高承のとおり、貴社広畑製鐵所は、昭和十四年高炉に火が点じられて以来、恵まれた立地条件と、すぐれた技術力のもとに、幡磨臨海工業地帯の中核として、その先導的役割を果してこられました。一時、敗戦による操業全面休止、賠償工場指定の危機にも、地域社会あげての再開支援運動が奏効するなど、広畑製鐵所と本市とはゆるぎない連帯の絆で結ばれ、今日にいたりました。   因みに、本市における全産業の製造品出荷額に占める鉄鋼業の構成比は三一・五%に及び、今や本市経済の活性化は広畑製鐵所を抜きにしては考えられないものとなっています。   しかるに、近年、世界的な鉄鋼需給の構造変化と、加えて、急速かつ大幅な円高の進行によって、わが国鉄鋼業界は深刻な影響をうけ、各社ともきびしい合理化措置がとられており、貴社におかれても、一時帰休や、生産調整などが実施されている由聞き及んでおり、事態の深刻さを厳粛に受けとめております。   さらに、近時、一連の新聞報道によりますと、こうした当面する不況対策と併行して、将来の各製鐵所の設備再編成をふくむ合理化策が相当具体的に検討されているやに伝えられており、われわれは、その方策の帰趨に重大な関心を寄せているところであります。   もし、広畑製鐵所の高炉一貫体制が分断されるような事態がおきるとすれば、本市地域経済に与える打撃は計りしれない程深刻なものとなり、都市の活性化を根底からそぐのは必至であります。   何としても、この事態は回避してもらわなければならないと、切に陳情いたす次第であります。   もとより、鉄鋼業界をとりまく、内外情勢はきびしく、合理化の推進は企業防衛のための至上課題であることには、いささかの疑念をはさむものではありませんが、広畑製鐵所と本市とは市勢振興上きわめて密接不離の関係にありますので、あくまでも高炉一貫体制を堅持され、今後とも最新鋭製鐵所としての展望をきりひらくべく特段のご配慮とご努力を切にお願い申し上げる次第であります。 こういうことで、先ほど申しましたように姫路市長それから市議会、商工会議所の会頭、商工会議所の関係者が新日鉄に直接に陳情に行っておるわけでございますが、こういうような問題について通産当局としては、何か協力をしてあげるとか、あるいはまたこれは中へ入ってこうだとか、いろいろのことがあろうかと思いますが、何かこれに対してお考えがございましたら御答弁をお願いいたします。
  65. 鈴木直道

    ○鈴木政府委員 現在、鉄鋼業が直面しております厳しい状況につきましては、先生指摘のとおりでございます。昨年の円高以来、国内需要の低迷あるいは輸出の減退、市況の低迷、いろいろな要因によりまして、現在の鉄鋼業の生産水準は前年度に比べますと七ないし八%減少しておるということでございまして、特に収益面におきまして本年度は約四千億円の赤字を実質面で計上するだろう、かように言われております。そのような状況を踏まえまして、鉄鋼企業各社は自己努力で何とかこの難局を乗り切りたいということで、お話のような経営面の合理化に取り組んでおるというのが現状でございます。  具体的に申しますと、相当人員面におきましての合理化というのが大きな課題になっておりまして、本年の二月には労働省の雇用保険法に基づきます雇用調整助成金の支給対象業種に指定していただきまして、教育訓練面での雇用調整をスタートしておりますが、本年十二月からさらに一時帰休という面につきましてこの雇用調整助成金の給付を受け始めている、こういう状況でございます。具体的な今後の展開におきまして、雇用問題につきましては私ども大変重視しておりまして、田村大臣、率先いたしまして労働省との話し合いを始めております。協力しながらこの問題に対処しようということでございまして、私どもと労働省との間で構造調整関連対策協議会というものを設置いたしまして、きめ細かく地域別の雇用問題についても対応してまいりたいと考えておるわけでございます。  今後の問題でございますが、やはり基本的には内需の拡大ということでございまして、先ほどもお話がございましたような補正予算に基づきます公共事業等につきましても、鉄鋼関連不況地域につきまして、より分厚く対応していただく、あるいはまた今申し上げました雇用問題につきましてもきめ細かく対応するというようなことで、私どもとしても、地域それぞれが今後対応するであろう難しい問題に個別、具体的に柔軟に対応してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  66. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 専門家で一生懸命におやりになっている方が、もうなかなか打つ手がないというような状況だと思います。私だって何もいい知恵があるわけじゃないのですけれども、とにかく三一%にも上る工業出荷額の会社が閉鎖されるようなことがあったら、その市としては失業者は当然ふえますし、それからさっき言いましたように、少々公共事業をやっていただいてもその方々がそっちへ雇用で移ることもないのじゃないか、そういうようなこともいろいろと思うわけでございますが、やはりそれにかわるべき新しいこれからの業種といいますか、そういうものをやっていただいて、うまく転換していただくのが一番いいのじゃないかと思うのですけれども、そういうようなことも鋭意研究をしていただきまして、何とかひとつ皆の願いをかなえていただきたいと心からお願いをしておく次第でございます。  それからもう一つは、先般の総合経済対策でも強調されましたテクノポリス構想の一層の促進を図るために、昭和六十二年度税制改正に当たって「テクノポリス特別償却制度の適用期限の延長並びに対象業種の拡充について」という要望が出ておるわけでございます。これも必要性とかいろいろ出ておりまして、もうよくおわかりのことと思いますが、これにつきましてどのようにお考えになっているのか、お伺いしておきたいと思います。
  67. 加藤昭六

    加藤(昭)政府委員 先生指摘のこの税制は、テクノポリス地域への先端技術企業誘致に非常に大きな力となるものでございます。テクノポリス促進策の最大の柱の一つと私ども考えております。来年三月末で適用期限が切れます。したがいまして、現在財政当局に、本制度の期限延長それから八業種の追加を強く要望しておるところでございます。
  68. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 では、もう時間が参りましたので、労働省にも来ていただいておりますから、最後に雇用問題について一言だけお伺いしておきたいと思います。  さきの衆議院の本会議でも「雇用の安定に関する決議案」、こういうのが出ました。その中で「内需を中心に景気の着実な拡大を図り、」ということで「経済政策産業政策と一体となつた総合的雇用政策を推進すること。」雇用の問題は、もう労働省は受け身の形でございますから、企業がどんどん倒産をしてしまった場合あるいはなくなった場合に、その労働者を右から左どのようにするかといっても非常に困る問題であろうかと思いますが、来年度はどうしても緊急事態的な状況になろうかと思います。きょうの新聞にも大分出ておりますし、いろいろな予測はされておりますけれども、今後のそういうような失業問題、雇用問題に対して基本的なことをお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  69. 廣見和夫

    ○廣見説明員 今お尋ね雇用対策の問題でございますが、私ども、今先生からもお話のございましたように、雇用情勢としては大変厳しいものがあるというふうに考えております。これからまた、経済動向のいかんにもよりますが、雇用失業情勢は経済景気動向と若干のタイムラグもございますので、これからしばらく厳しいものがあると考え、対策を講じていかなければならない、このように思っております。  ただそのときに、こういった厳しい雇用情勢は必ずしも全国一律、画一的に生ずるわけではなく、地域ごとに大変厳しい状況が生まれてくる、あるいは業種ごとにも大変問題のある業種が出てくる、かようなことだと思います。そういう意味では、地域ごとに大変厳しい状況になることに対応しての地域雇用対策、こういったようなものには相当力を入れていく必要があるのではなかろうか。その場合に、今先生もお話ございましたように、単に離職された方の再就職を図るということだけではなく、私どもといたしましても、通産省等とも十分御相談させていただきながら雇用機会の増大をその地域に図っていく、雇用の開発を図るというようなことを中心的な考え方とし、そういったようなものを目指しながら対策を進めていく、こういうことを基本にし、いろいろ対策を練っていきたい。そういう意味で今検討を進めておりますし、所要の法律案等もできれば提出いたしたい、このような考え検討を進めておるところでございます。
  70. 新井彬之

    ○新井(彬)委員 終わります。
  71. 佐藤信二

  72. 塚田延充

    塚田委員 昨年九月二十二日のいわゆるG5以来、円レートはあれよあれよといううちに二百四十円台から今では百五十円ないしは百六十円台に急激に上がってしまったわけです。鉄鋼、造船、非鉄、繊維業界などは、従来から構造不況ということで苦しんでいたわけですが、それなりに地道に構造改善の努力をしてきたようでございます。ところが、今度のこの急激な円高によってとどめを刺されたような形になってしまい、今までの地道な努力の成果もかなりの部分吹っ飛んでしまった。それ以上に問題なのは、生き残ろうとする意欲も失われるような羽目にまでこれらの業界及び産地が落ち込んでしまっていることでございます。  申し上げたように、そもそも円高がG5という国際政治上の決定、これは政治がもたらした円高ということを指摘されていることは事実でございますが、となりますと、政治の失敗と申しましょうか、決定によって特定業界及び特定産地が大変な打撃を受けているわけですから、それを政治の責任によって救済なり手助けの処置をとることは当然のことじゃないかと私は考えるわけでございます。  そのような見地に立ちまして、私は、いわゆる業界の構造改善のための設備共同廃棄について、及びいわゆる政府系金融機関による既往の融資の利下げの問題、そして三番目といたしまして雇用対策問題について取り上げてみたいと考えております。  まず構造改善のための設備共同廃棄でございますが、繊維業界におきましては六十年から実施されておりましたものの、現在問題が生じたために凍結された形になっております。ところが、大変朗報といってよろしいのでしょうか、先ごろ通産省は新たな内容のもとで再開するという決定をされたというマスコミ報道に接しているわけでございます。これは評価したいと思います。  そこでお伺いいたしますが、今まで凍結しておった理由と、それとの関連におきまして、今度新たな内容で再出発ということですが、その主なポイントは何になっているか、御説明を伺いたいと存じます。
  73. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 いわゆる設備共同廃棄事業につきましては、昨年の暮れ以来大変物議を醸しましたいわゆる撚糸工連事件を契機にいたしまして、見直しが強く迫られたことは先生御承知のとおりでございまして、ことしの五月三十日の経済対策閣僚会議におきまして、現行制度を抜本的に見直し、現行制度を廃止するということが決定されたわけでございます。ただし、御承知のような状況でございますので、いわゆる円高対策という観点から、改めて厳格な要件及び監視体制の強化のもとに、特定産地等の構造調整を推進するための新たな設備共同廃棄事業実施するということが決定をされているわけでございます。この決定に従いまして新しい枠組みを設定をすべく、関係業界あるいは関係省庁意見調整を進めてまいりました。かなり従来とは枠組みを変更しようというような考え方があったものでございますから、結果的にかなり時間を要したわけでございまして、その間、いわば凍結というに近いような状況になっていたわけでございます。  いろいろと論議がございましたが、ただいまの御指摘のとおり、ようやく先週関係省庁との意見調整も終わりまして政府全体としてのコンセンサスができたわけでございまして、いわば新しい枠組みの方向が決まったと申し上げていいかと思っております。今後、各関係産地と業界の実態等を踏んまえながら、新しい枠組みのもとでの新しい設備廃棄の具体的なプログラムを詰めていくというような段階になっているわけでございます。  基本的な新しい枠組みにつきましては、一つは、いわゆる相互監視機能を強化するという観点から、従来は全国一本の工業組合連合会が事業主体でございましたけれども、今後はいわゆる産地組合を事業主体に切りかえるというようなことにいたしております。それから、費用の負担等につきましても、いわゆる相互主義というような考え方を徹底するというような意味で、残存者負担の考え方をしっかりと確立をするということにいたしております。それから、そのほか、設備廃棄計画を公開をするとか、あるいは設備廃棄の現場を府県の職員によりまして十分確認をしていただくとか、そういった点での手直しといったものを決めているわけでございます。  なお、御指摘の、昭和六十年度から設備共同廃棄事業がスタートいたしておりました繊維関係業種につきましては、既に六十年度分の事業実施をされておりまして、残った分を新しい枠組みに乗せるということになっております。それで、残った、六十一年度、六十二年度の対象になる企業と、既に事業の適用を受けております企業との間で、特に買い上げ価格等につきまして大きな格差が生じるのは問題ではないかというようなことが大変論議になっておりましたけれども、田村大臣の御裁断等もございまして、大きなギャップを生じないように経過措置を講ずるというような方針も決まりまして、この分野につきましても関係方面の納得のいく線が出てきております。  いろいろと論議もございましたけれども、現段階におきましては関係業界も十分納得いたしておりまして、新しい枠組みに沿って必要なプログラムの整備を進めるというようなことで積極的な取り組みが始まったところでございます。私ども、こういう動きができるだけ円滑に進むように適切なアドバイスをすると同時に、迅速な事務処理に努めたいというぐあいに思っておる次第でございます。
  74. 塚田延充

    塚田委員 通産省のその取り組み姿勢につきまして評価をしたいと思います。  そこでお伺いしますが、その新しい枠組みに基づく、いわば再開ということでしょうか、これはいつごろをめどに再開されると受けとめたらよろしいのでしょうか。
  75. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 基本的には再開していると申し上げていいと思います。ただいま申し上げましたように、その後かなり情勢も変わっておりますので、各組合でどれぐらい廃棄希望があるかという辺を、既に予備調査はやっておりますけれども、さらに本調査に取りかかっておるというような状況でございます。特に都道府県の予算につきましては、今年度分の予算が不用になるというようなことがあってはならないというような声も強いわけでございまして、そのためには少なくとも年度内に交付決定をするというようなことが必要だというような声もございまして、私どもはその辺の声を十分念頭に置きながら、先ほど申し上げましたような姿勢で対応してまいりたいというぐあいに思っております。
  76. 塚田延充

    塚田委員 このたびの改善内容をつぶさに見てみますと、ちょっと業界にとって酷過ぎやしないかというような心配もするのですが、その辺は通産省いかがお考えでしょう。
  77. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 先ほどちょっと触れさしていただきました不祥事件の論議の過程で、私どもも制度のあり方につきまして大変いろいろと反省させられる点もあったわけでございます。やはり相当大規模な国家資金を投入する事業でございますし、また関係する範囲も広いわけでございますので、再びああいうことがあってはならないという思いのもとに、確かに制度全体の枠組みにつきましてはかなりシビアに見直しをいたしました。  経過的には酷過ぎるというような声もあったかと思っておりますけれども、先ほど申し上げましたように、いわゆる継続七業種等につきましては極端なアンバラスが生じないような、いわば経過的措置を講ずるというようなこともいたしておりますので、現段階におきましては、論議は十分ホットでございましたけれども、一応関係方面でも御納得いただいて、その線に沿って努力してみるというような空気になっていると思っているわけでございます。
  78. 塚田延充

    塚田委員 共同廃棄を進めるに当たりましては、転廃業者だけを認めるのでは、まじめに事業を継続しようと考えている中小企業の業者を救うことはできないことになるわけです。むしろ、転廃業を考えている中小業者よりも継続を望んでいる中小業者を救うのが今の政治の役目ではないか、こういう論も成り立つわけでございます。そのような考え方に立って、いろいろ厳しい条件をつけなければいけないとは思いますけれども、一部廃棄ということを認めてはいかがかと思うのですが、この件いかがでございましょう。
  79. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 現在の、中小企業事業団からの融資を基本にいたしますいわゆる設備共同廃棄事業がスタートいたしましたのは昭和四十年代後半でございまして、制度がスタートいたしました当時は、御指摘のとおりいわゆる一部設備廃棄業者も対象にいたしておりました。何度か事業が重ねて適用された業種もあるわけでございますけれども、やはりこの過程で、一部廃棄業者を対象にするということにつきましては随分と論議が出、また批判もあったわけでございます。言葉は適当かどうかわかりませんが、結果的にざるで水をすくうようなことになっていないかというような御意見等もあったりいたしまして、五十八年の繊維工業審議会・産業構造審議会での御論議、改めて繊維産業ビジョンを論議していただきました際に、今後の設備共同廃棄事業というのは転廃業の円滑化というところに焦点を絞って、さらに各業種とももう一回適用するというような方向づけをいただいたわけでございます。  先ほど来御指摘いただいております六十年度からスタートしておりました事業は、そういう枠組みのもとにスタートしていたものでございまして、円高というような厳しい状況はあるわけでございますけれども、こういう事業の適用につきましては、やはり転廃業円滑化という基本的な路線は維持してまいりたいと思っているわけでございまして、一部事業整理というような企業につきましては、やはり金融面等その他の面での対応で心を配っていくしかないのではないかというぐあいに思っているわけでございます。
  80. 塚田延充

    塚田委員 転廃業を推進していくことにより構造改善の成果を上げるということになりますと、これはイコール企業家にとっても、そこに働く労働者にとっても、雇用問題に直結するわけでございます。  そこで、労働省にお伺いいたしますが、労働省は、十三日でございますか、産業の空洞化の影響調査を発表しておられます。それによりますと、製造業者のうち三八%が既に雇用調整実施しているという結果が示されているわけでございます。この結果を受けまして、労働省としては今後失業率がどのように推移していくと見込まれておるのか、この辺、将来の展望について御説明いただきたいと思います。
  81. 廣見和夫

    ○廣見説明員 お尋ねの失業率の見通しでございますが、雇用失業情勢全般をどう見るかということともイコールかと思いますので、そのような観点から考えてみたいと思います。  今、先生お話のございました雇用調整を行っている事業所、確かに十一月時点で三八%というように大変ふえております。八月時点ではこれが三一%でございましたので、かなり急激に高まっている。それからまた、同じ調査によりますと、製造業の中で常用雇用が過剰であるとする事業所の割合も、八月時点で二〇%でございましたのが、十一月調査では二六%というふうに上がっている。そいう意味ではかなり雇用過剰が広まり、雇用調整が進んできている、これからまた雇用調整がさらに本格化するおそれがあるのではなかろうかと思っております。  そういうふうに見てまいりますと、引き続き雇用情勢が厳しくなってくるということでございますし、もう一つ基本的な景気の動向、経済の動向がどうなるかという大変難しい問題もございまして、このあたりは必ずしも労働省だけで見通すわけにもまいりませんが、そういったようなものが仮にいずれかの時期回復に向かう、あるいは景気が拡大に転ずるということがございましても、性格上、雇用情勢は景気動向等と一定のタイムラグがあるということもございます。したがいまして、ここしばらく、年末さらに年明け、引き続き厳しい雇用情勢が続くであろう、私どもそういうふうに考えておるところでございます。
  82. 塚田延充

    塚田委員 そのような産業構造の変化に伴う雇用機会の縮小が今日の深刻な雇用問題を引き起こしているわけですけれども、今までの労働省の施策というのは、どちらかというと失業の予防または失業者の救済に重点を置いて、結果的には経済対策の後追い的な雇用対策になっていたのじゃなかろうか。これではこれからの厳しい雇用状況に対処するのには極めて不十分であると考えざるを得ないわけでございます。  そして、先ほど論議されました設備共同廃棄におきましても、これは転廃業を促進するということになっておりますから、雇用の場から浮き出した方々がどんどん出てくる。その受け皿がないままに幾ら通産省がやろうとしても、転廃業はそう簡単に進むものではない。となりますと、あらゆる経済政策というのは、今までのような縦割り行政のみではなくて、そういう設備共同廃棄の裏返し、受け皿として雇用を創出していくというような雇用対策がこれから望まれるわけでございます。  このような見地から、私たち民社党は雇用開発促進法の制定を提唱し、さらにその具体的な内容も提案しているところでございますが、このような積極的な雇用創出につきまして政府はどのような施策を具体的に考えておられるのか、御答弁いただきたいと存じます。
  83. 廣見和夫

    ○廣見説明員 今先生お話のございましたように、労働省といたしましても、確かに先ほど来お話のございますように、円高あるいは産業調整影響等によりまして、不況業種が集まっている地域ごとに雇用状況が大変深刻化している情勢がございますので、こういったような状況を十分踏まえまして、雇用の安定といったような施策だけではなく、積極的に雇用機会をふやしていく、雇用機会を創出していくような施策を進めることが重要であるというふうに考えておるところでございます。  こういうようなことにつきましては、既に私ども、中央職業安定審議会にいろいろ御検討いただきまして、去る十一月十日にも一定の建議をいただいております。この建議の中でも述べられておるところでございますが、地域雇用対策の整備充実を図りなさいということになっておりますが、その考え方の中心といたしまして、雇用の開発といったような観点を入れるべきではないかというようなことで、具体的には、例えば地域雇用開発会議といったようなものを開催する、あるいは事業場の新増設に対する助成あるいは援助みたいなことも考える、あるいは第三セクターに対する援助といったようなものも考えるべきではなかろうかというような指摘、建議を受けておるところでございます。  私ども、こういったようなものを受けまして、今申し上げましたような考え方を基本に、基本的な検討を進め、できれば次の国会に所要の法律案を提出するということでやってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  84. 塚田延充

    塚田委員 ただいまの説明の中で、所要の措置を近々とるということでございますが、これは名称のいかんは別としても、私ども考えております雇用開発促進法的なものを準備しておると考えてよろしいでしょうか。
  85. 廣見和夫

    ○廣見説明員 今先生からお話のございました雇用開発促進法案でございますか、民社党がおまとめになりましたものにつきまして私どもその要綱を拝見させていただいておりますが、昨今の円高不況というようなことを背景にいたしまして、鉄鋼、造船、繊維といったようないろいろな構造不況あるいは円高不況産業、あるいはそういったような産業中心となっておる地域を中心に、それに対処するという観点から策定されていると私ども理解しているところでございまして、いろいろな内容が盛り込まれておる。私どももこれを十分に勉強させていただき、労働省としてもいろいろな形でこれから具体的な案を検討するわけでございます。詰めていくわけでございます。そういう中で検討を進めていきたい、このように思っておるところでございます。
  86. 塚田延充

    塚田委員 雇用創出につきまして、ぜひ前向き、積極的に取り組んでいただきたいと思います。  それでは、私が予告いたしました最後のポイント、すなわちいわゆる政策金融の既往融資分の借りかえ、もしくは実質的な金利低下をどのようにして実現させるかということにつきましてお尋ねしたいと思います。  まず政府は、本年二月成立の特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、いわゆる円高法、並びに十一月成立の特定地域中小企業対策法において、低利の融資を実施することを決定されております。  これらにつきましては評価するものの、今最も中小企業者が望んでおりますことは既往融資の借りかえでございます。なぜならば、融資を受けたくても既に借りておる分の残高が非常にかさんでおります。そして、それの金利負担が非常に重くなって、今の不況下ではその金利を背負い切れないというような状態に追い込まれているわけでございます。  一方、御存じのとおり、今公定歩合は史上最低と言われるようなぐあいでございまして、市中金利も大幅に下がっているわけでございます。それらを横目でにらみながら、自分のところは実質的には数%高いとなりますと、実質的にもやりきれないし、また心理的に本当に耐え切れないような気分を中小企業者は感じているわけでございます。  政府は、補正予算においてこのような既往貸付金の返済負担の軽減を盛り込んではくれておりますものの、それは返済すべき元利分の融資にすぎません。ということは、実情において苦しんでおる高金利の負担分、これを全額借りかえたいんだというような願いからはほど遠いものになっておるわけであり、残念だと思っております。  そこで、来年度の予算においてぜひ全額を借りかえられるような予算措置を講ずることが特定産業また特定地域のこのような不況対策の大きな柱であり、また実効性が極めて伴いやすい、政府にとっては大ヒットともいうべき善政になる政策だと私は考えるのですが、この辺、大蔵省の見解はいかがでございましょう。
  87. 高橋厚男

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の方から、ここ一年間とってまいりました措置について詳しくお触れいただいたわけでございますけれども先生の御発言にもございましたように、既往の高金利、かつての高かった時代の貸し付けの返済ということで、その返済に困難を生じておられる中小企業の方がいらっしゃるわけでございます。そこで、去る六月十六日から不況業種の元利返済資金緊急融資制度というのを実は設けたわけでございまして、それは約定金利が一定の水準以上の方につきましては一年間その元利返済資金を低利でお貸しする、こういう制度をつくったわけでございます。ただ、中には、担保力とか信用力とかという観点から、そういう融資をつくりましてもなお困難な方もいらっしゃいます。そういう方に対しましては、一定の水準まで当該一年分の金利を減免する、こういう制度もあわせてつくったわけでございます。政府といたしましては、中小企業に対しまして、そういう面での金利負担につきましても十分配慮をしていると考えているところでございます。
  88. 塚田延充

    塚田委員 その点につきましては、私は既に指摘しているわけでございまして、それは評価する。しかしながら、いわゆる残存分ですね、これが膨大なものになっておる。その負担にあえいでおる。しかも一番問題なのは、市中金利が下がっておるのに、自分のところだけは政府からの借り入れではあるけれども割高の金利で苦しんでおる、この割り切れない感情といいましょうか、そしてまた実質的に困っておる、これについて手を打つためには、今の措置からさらに一歩進んで、現在の市中金利そのものに合わせるというわけじゃないけれども、それに近いような措置、すなわち全額丸々の低利への借りかえをさせるような、いわば徳政令的な特別措置が現在の円高不況救済のための特別措置になるのじゃなかろうか。  そして、私が冒頭申し上げたように、そもそもこんなに苦しむようになったもとは何か。円のレートがもとに戻ってくれればこんなことは言いません。前に借りた金利で、多分そのときは政策金融ですから有利だったでしょう。感謝の気持ちを業者は今も持ち続けると思います。ということで、円高が政治によってもたらされたものならば、これは政治によってひとつ徳政令的に手を打つのが政府の善政というよりは義務じゃなかろうか、このような見地から私は質問申し上げているわけであり、質問というよりは提案でございます。  そして、大ざっぱな数字ではございますけれども政府系金融機関の融資残高は大ざっぱに十九兆円と言われておりますが、いかがでしょうか。そして、これが今市中金利からかなり、数%乖離して割高になっておる。高いとは言いませんよ。今のあれから言うと割高になっておる。これで、例えば一%のいわゆる利子補給のような形か全面借りかえか何かした場合には、それに要する資金は千九百億円です。このくらいは政府の責任、償いということでやったらいかがか。  同時に、いわゆる産業空洞化もしくは特定の地域が産地構造ということでもって丸々国民全体が苦しんでしまっておる。それを救うこと、そしてそれが今の内需拡大であるとかいう形で国際問題にもなっております経済摩擦の打開の一つのきっかけになるんじゃなかろうか。通産大臣、このくらいの大英断をぜひお考えいただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  89. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 先生御承知のとおり、政府系金融機関の中小企業への融資というのは、そのときどきの大企業に対する最優遇レートと同水準のものを中小企業者にも与える、こういう原則でやっておりますので、そのときどきにおいて常に他の市中金融機関から中小企業者が借りるよりも有利な条件で借りられるように、こういう配慮でやってきておるつもりでございます。  かつまた、金利というのはもちろん申すまでもなく金融という商品に対する価格でございますので、それが固定金利ということで、ある時期に何%でこの金融を買う、こういう決断をし、そしてそれに対して貸し付け期間中払う、こういう性格のものでございますので、それを途中において変えるというのは、まさに先生のおっしゃるとおり、いわば徳政令というようなものではないかと思います。今急速に全体の金利水準が下がってまいっておりますので、かつ非常に厳しい状況の中で、先生おっしゃるとおり、借り手としてある割り切れないものを持っておるというのも事実だと思います。  しかし、そういう金利というものの常識、こういうものの中で、金利に手をつける形で中小企業者の窮状を救うというのにはやはりある限界があろうかと思います。その限界の中で、私ども関係省庁と合意の上でやっでおりますのが、先ほど大蔵省の方から御説明申し上げました、いわば既往の高い金利のものの当面支払い期限が来る部分について元利の融資あるいは利子の減免、こういうものをやっておる、これが現状における一つの限度ではないか。それを今度の総合経済対策で来年九月まで延長したわけでございますけれども、少なくとも金利面における政策というのは、より一般的に、中小企業金融機関の金利コストを財投金利を下げることによって今後下げていく。そういう中で、繰り上げ償還とか今の返済猶予とかいうようなことがより容易にできるようにするというのが本筋ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  90. 塚田延充

    塚田委員 契約ですからそれを守るべきということは、私も商道徳としてよくわかっておりますし、また、政府系金融機関によってよかれと思ってされた政策に乗っからせていただいて、その恩恵を受けた事実も百も承知でございます。しかしながら、今の円高不況というのが政治によってもたらされた、それの対策をするためにほかはみんな低金利になってしまったというような状況の変更がある。これを政府は読み取らなければ、血も涙もある政治とは言えないのじゃなかろうかということで、契約は守るからその契約を変更しろと言うことが難しければ、その分、僕は田村通産大臣に言いたいのは、あくまでも政府がやったことに対して罪滅ぼしでもって利子補給みたいな形で、金融機関の手を煩わせずに、自主的に中小企業者の割り切れない気持ちを救い、また実情を救済する、このような方向で御検討いただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  91. 佐藤信二

  92. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 きょう私は、悪徳商法の問題を中心にいたしましてお尋ねをしてまいりたいと思います。  近年、訪問取引という商法が盛んになるにつれまして、巧みなセールストークに乗せられて要らないものを、不要なものを大量に買い込んでしまったり、あるいは法外な値段で押しつけられてしまったり、そしてあげくの果てには生活資金を失うというような見過ごせない事態が引き起こされてきております。そういう中でも、無価値な紙切れと引きかえに、お年寄りの最後のよりどころであります生活資金を根こそぎ奪った大がかりな犯罪的な商法があの豊田商事事件でありましたことは、まだ皆さん記憶に新しいところでございます。  過日、私は豊田商事京都被害者の会の滝井信子さんという方からお手紙をいただきました。滝井さんはこうおっしゃっております。「被害者は世間の冷たい批判や政府の心ない無対策に生きる望みさえも挫かれ、苦しみだけを背負わされ、救済の目途も立たず、老後の不安が募るばかり」とつづり、「国民の安全を守る義務を果たすべき政治は誰のためになされていたのでしょうか。国会での審議に際しても、どの省も責任ある回答をしないまま今日に至っており、被害者を見殺しにし、犯罪を取締ろうとしない悪事のやり放題の無法国家同然の政治に、私達はどうして黙っておられましょうか」と訴えておられるわけです。警察、検察は総力を挙げて、ぜひ詐欺罪を立証してもらいたい、こういうのが被害者と弁護団の気持ちでございます。  法務省と警察庁にお伺いいたしますが、大阪府警本部や大阪地方検察庁を中心に捜査が進められ、大詰めに近づいているというふうにお聞きしているわけでございますが、捜査の進行状況と今後の見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
  93. 古川定昭

    ○古川説明員 いわゆる豊田商法に対しましては、警察としてこれまで強制執行不正免脱罪や外為法等特別法違反容疑でそれぞれ所要の捜査を行ってきたところでありますが、詐欺罪につきましても被害者等からの告訴がございまして、これまでに十五府県の警察において二十三件の告訴を受理しております。それらを踏まえまして、現在関係警察において捜査を実施しております。
  94. 石川達紘

    ○石川説明員 現在法務省において把握している豊田商事関係事件はおおむね次の四つに分類できますので、その分類に従いまして御説明いたします。  まず第一は、豊田商事関係者による強制執行不正免脱事件でございますが、この事件につきましては、大阪地検におきまして警察から役員、従業員五名の送致を受け、昨年八月七日、うち二名、これは銀河計画副社長の薮内博と同社専務取締役山元博美でございますが、この二名を大阪地裁に起訴し、その余の三名につきましては不起訴処分といたしております。  起訴しました公訴事実の要旨は、被告人らは、共謀の上、豊田商事の預金口座に対する強制執行を免れる目的をもって、六十年六月三日新たに個人名義の別口座を設け、以後、豊田商事各支店からの送金をこの口座あてにさせるなどして、合計八億四千八百六十一万八千七百九十一円を隠匿したというものでございます。  なお、起訴しました二名のうち、薮内につきましては、本年十月二十三日、大阪地裁におきまして懲役十月の実刑判決が言い渡され、山元につきましては、本年八月十四日、大阪高裁におきまして懲役一年の実刑判決が言い渡されて、それぞれ確定しております。山元につきましては、一審で懲役一年二月の実刑判決が言い渡されたわけですけれども、被告人控訴で減刑されて、懲役一年の実刑になったわけでございます。  第二番目は、豊田商事関係者による外国為替及び外国貿易管理法違反事件、いわゆる外為法違反事件でございますが、これは昨年十月十一日、神戸区検察庁が薮内及び同社海外事業部長米戸千秋を同法違反で起訴し、神戸簡裁は、同月十五日、薮内に対し罰金十五万円、米戸に対し罰金二十万円の略式命令を発しております。その公訴事実は、外国法人に対する無届けの金銭貸し付けなどでございます。  また、大阪区検が、同年十二月二十六日、同社の常務取締役奥敏雄及び銀河計画の常務取締役田村隆一を同じく外為法違反で起訴し、大阪簡裁は、同日、各罰金十万円の略式命令を発しております。その公訴事実は、本邦通貨を外国に無許可で持ち出したというものでございます。  第三番目は、豊田商事の関連会社と言われているベルギーダイヤモンド株式会社の関係者に対する無限連鎖講の防止に関する法律、いわゆるネズミ講防止法でございますが、この違反事件でございまして、これは昨年十月以降、名古屋地検ほか十四地検が警察から事件送致を受けまして、全事件を名古屋地検に移送の上捜査中であったわけでございますが、同地検におきまして、本年四月十五日、被疑者全員につきまして不起訴処分に付しております。  第四番目は、豊田商事及びその関連会社と思われる鹿島商事の商法が詐欺あるいは出資法違反に該当するとの告訴、告発事件でございまして、これは大阪地検等において現在鋭意捜査中でございます。  見通しでございますけれども、これらの事件は事案の規模も大きくて関係者も多数に上るほか、御承知のとおり、主犯と目されます永野一男会長が殺害された関係で捜査が難航いたしておりまして、最終処理までにはいましばらく時日を要するものと思われます。  以上でございます。
  95. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 豊田商事事件は、判明いたしただけでも被害届け出数は二万七千件です。それから金額は実に一千百億円に上るというような甚大なものであるわけです。豊田商事の根本的な解決なくして悪徳商法の根絶はあり得ないわけです。事情を今いろいろおっしゃって、期間をいただきたいということですが、今国の責任が問われている、急いでやらなければならない、根本的に解明をしなくてはならないということを私は強調しておきたいと思う次第でございます。  さて、ことし金にかわりまして現物まがい商法に登場いたしましたのは抵当証券、真珠やダイヤモンドのネックレス、それからペンションの会員権とかあるいは電話の加入権、こういうものなどで、訪問販売法であるとか預託法、こういうものが及ばないところで暗躍をしているというのが現状です。  その一つを例に挙げますと、京都を舞台に勧誘の手を広げました日本リゾート興産の場合は、同社が所有しておりますロッジやペンションを低料金で利用でき、一般利用客が支払うビジター料金の分配が受けられるとする会員権、五十万から二百万を、ペンションなんかを利用することもない高齢者を対象として売りつけているわけですね。これがその権利証書の現物なんですが、この会社はペンションを一戸も所有していない。一戸も持っていないのにこういうものを発行して、利用もできず、客の料金の分配もあり得ないわけですね。これでは全くペテンとしか言いようがないわけです。こんなことがまかり通っているわけです。  これは被害の発見が早かったために被害者は二十二名と見られます。そのうちの十四名に係る被害額が八千四百五十万円です。指定外商品を編み出し、人を、それも消費者情報に疎いお年寄りを食い物にするというような悪徳商法を絶対に許すわけにはまいりません。  日本リゾート興産の場合で見逃すことができないのは、この会社の役員四名のうち二名が元豊田商事の社員であったことです。営業部員にも七名の元社員がいて中心的な存在だった、こういうことなんですね。  法務省と警察庁にお伺いしますが、元豊田商事の社員が各地の悪徳商法で暗躍しているというふうに私どもは聞いておりますが、そういう事実をつかんでおられるのかどうか、つかんでおられるならばどう対処するおつもりなのか、簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  96. 緒方右武

    緒方説明員 お答えいたします。  元豊田商事役職員による悪質な利殖商法によって消費者に損害を与えた事件として警察が検挙しましたのは、本年になりましてまず警視庁が検挙しました飛鳥、大阪府警が検挙しました大和信用債券、それから千代田抵当証券、さらには福岡県警が検挙しました樹及びフェニックスジャパン等十五事件になっております。検挙しました事件の被害者総数は約四千三百人、被害総額は約五十八億円になっております。  これら悪質業者というのは、法の網の目をくぐったり、あの手この手のいろいろな商法をやったり、表面的には正常な取引をしているように見せかけて、なかなか証拠を見せないのが実情であります。我々警察としましては、なお一層努力しましてこれら悪質業者の検挙に邁進していきたいと思っております。
  97. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 悪事を働いた日本リゾート興産に典型的に見られますように、豊田商事に籍を置いていたことのある人物が中心になって、さまざまな商品を使って法の網を抜け、お年寄りなど法律にうとい消費者を次々にだましているわけです。これが最近の悪徳商法の大きな流れであるわけです。  通産省にお伺いをいたしますが、今後このような事件の再発を防止するためには、司直の側の監視や取り締まりとあわせて、悪徳商法を許さないために行政面からも十分にフォローが要る、このように思うのですね。対策を検討すべきだというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  98. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 ただいま先生がお挙げになりましたようなケースは、大変遺憾なことだと思います。私どもは直接には、豊田商事の事件にかんがみて制定されました預託法、これを去る十一月から施行いたしておりますので、この法律の厳正な執行に努めますが、広く考えました場合に、私はこのようなものの再発を防ぐにつきましては、第一は、先ほど法務省から御説明がありましたように、違法があれば一罰百戒で厳しく臨むということがまず第一。第二といたしまして、次々とあの手この手で法の網をくぐってまいりますので、消費者にもできるだけ自衛をしていただく。そのために私ども消費者にできるだけの手段を尽くしまして、このようないかがわしい商法にひっかからないように情報提供をし、啓蒙に努めたいと思っております。既にテレビ、出版物等を通じましてできるだけのPRは行っておりますが、今後とも一層強化してまいりたいと思います。  それからさらに、何か制度として、仕組みとして手を打てないかということでございますが、当面やりましたことは、業界団体等を通じまして、いわば良貨が悪貨を駆逐するように業界の自主的な体制を強化していくということで手を打っておりますし、さらに現在の制度、法制について強化すべきところがあるのならばそれをやらなければいけませんので、先般来通産省内に訪問販売等に関する研究会を設けまして勉強しているところでございます。
  99. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 かねてから問題とされておりました、いわゆる霊感商法につきましても、被害は全国に広がるばかりでございます。被害の実態について、経企庁はどのように把握をしていらっしゃるでしょうか。
  100. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 国民生活センターで受け付けました印鑑とかつぼとか多宝塔にかかわる開運商法でございますけれども、この消費者相談件数は、五十八年度八十件、五十九年度四十八件、六十年度五十件、六十一年度は十月末までの仮集計でございますが五十四件でございます。相談内容につきましては、解約に係るものが大多数となってございます。
  101. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 朝日新聞の調査が一九八六年十二月五日の朝日ジャーナルに載っているわけですね。これによりますと、ここ二年半で、全国で一万六百十一件の苦情相談があって、約四十億円が被害金額として報告されているわけですね。未集計を含めると、倍の八十億円に達するというふうに見られているわけです。今の御報告ですと、余りの差があるわけですね。五十八年が最高で八十件、昨年は五十件というような、どうしてこんなに違いが出るのかということに大変不思議さも感じるわけです。その不思議さはどのようにあらわれているかといいますと、このように朝日新聞が調査した、全国消費者センターなどから集計した分ですが、国民はこれを読んでいるわけです。こんな被害が出ているのに、通産省がやっておられるトラブル情報提供制度では、これがただの一回も紹介されていない、こういう状態なんですね。これは一体どういうことなのか、不信さえ起こってくるわけです。  先日、京都でも六人の被害者が告訴をいたしております。京都新聞によりますと、手口は、手相を見て、祖先に悪いことをした者がいる、つぼを買い毎日拝めば家系が断絶することはないと言い寄って、百三十万円のつぼを買わせた。これは元は何ぼ見ても五万円か、何ぼ高くても十万円そこそこまでのものだというのですね。それが百三十万円で、全くおどしをかけた。これを霊感商法といいますが、未婚の女性には、あなたは男運が悪いので結婚できない、この数珠で拝めば結婚ができると言って、一万円そこそこしかしない数珠を百万円で売っているんですね。印鑑が二十一万円、つぼが八十万円、こういうものを買わされているわけです。まさにこれは公序良俗に反する商法だと思うのですね。  ですから、五十件とか八十件とか、そんなことをおっしゃらずに、手口を調べて情報提供すべきだ。先ほど末木官房審議官は、いろいろな情報を提供いたしておりますとおっしゃっておりましたが、これに関する情報提供はないわけですね。この点について通産省の御見解をいただきたいと思います。
  102. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 霊感商法につきましては、私ども通産省の方への相談の件数は、実は必ずしも、ほかのいかがわしい商法と比較しまして多くないわけでございます。どうしてそうなのか、先生お挙げになりました朝日の調査との関係につきましては私もやや不思議に思う感じがございますが、想像いたしますと、恐らくこれは単純に、商品を買って、その商品の売買という意識でかかわった方が商品について不満があれば言ってこられるわけですけれども、それ以外に、今先生がおっしゃいましたような運命占いのようなことが絡んでおりますと、通産省の問題ではないとあるいはお考えになってお見えにならないのか、これは想像でございます。  ただ、先生おっしゃいました消費者トラブル情報提供制度につきましては、私ども非常に大事な有効な制度だと思っております。十二月五日にも、最近特に目立っているいろいろな不当な商法の発表をいたしました。今後、霊感商法につきましてもよく耳を澄まし目を凝らしまして、私どもに寄せられる問い合わせ、苦情等をよく分析いたしまして、この制度も含めまして適切な情報提供に努めてまいりたいと思っております。
  103. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 通産省の情報提供がないことは事実だと思うのですけれども、これは一九八五年四月五日の朝日ジャーナルですが、「追及第七弾「原理運動」」と書いてあるのです。「統一教会の食口(シツク)であることを隠し地区教会長らの指令で詐欺まがいの「経済活動」に身を投じた狂奔の日々」「私たちは教会員だった」、その手口でやっていたという人の告白というのがここに出ているんですね。  そうすると、通産省には来ないから情報提供はいたしませんとおっしゃいますけれども、みんなこういうものを読んでいたら、ああ、通産省は何か御都合が悪くて隠さなければならない関係にあるのかななどと、あらぬ誤解、不信を招くというふうなことにも通じるんじゃないかと思うのですね。ですから、これだけ情報提供する場も持っておられる、こういうものもたくさん出ている、ただ下から、各都道府県ですか、情報センターから集まってこないからやりません、これだけではもうだめだと思うのですね。こういうものがはびこるこういう事態が一方あるわけですから、数だけで言っているのではなくて、積極的にその情報提供をしていただくということを強く要望をいたしたいと思う次第でございます。  さて、悪徳商法から消費者を守るために関係法規を強化するということが大変急務となってきております。さきの預託業法審議の際に、私ども日本共産党・革新共同は、今の訪問販売法を思い切って強化をして、豊田商事のような現物まがい商法はもちろんのこと、他の悪質な商法もあわせて規制できるようにというように主張させていただいて、出資法であるとか訪問販売法、商品取引所法、海外市場先物取引規制法、この四法の改正を提案をしてまいったところでございます。  特に訪問販売法改正のポイントとして、対象商品を政令で特定する現行方式にかえて、商品はもとより役務も含む原則としてすべての有償行為といたしまして、今後の新手の悪徳商法も規制できるようにする。それから、勧誘の行為についても、長時間にわたるもの、ごたごたとしつこくしつこく言ってそれで負けてしまうというようなやり方もあるのですから、こういう長時間にわたるような勧誘の仕方、また朝早くから夜討ち朝駆けというような、早朝、深夜にわたるようなもの、こういう執拗な脅迫まがい、こういった悪質な行為を禁止する。違法な勧誘行為があった場合には、契約は無効ということで損害賠償もできるようにする。あるいはクーリングオフ期間を、現在七日ですが、その二倍の十四日とするとともに、契約時消費者に対してクーリングオフ通告用のはがきを交付するというようなことを義務づける。こういうことを提案したわけですが、その後の事態を見ますと、ますますこういうことが大変大切だ、必要だというふうに痛感をしているところでございます。これらの点について早急に実施すべきだ。  そこで、先ほどもおっしゃいましたように、訪問販売等問題研究会というのを発足させられたわけですが、全国の消費者大会でも訪販法の抜本改正をぜひともというふうに求めておられます。私の地元の京都の市議会におきましても、近く抜本改正をぜひという意見書を採択するというような運びというふうに聞いてもいるわけです。こうした世論を無視することなく、消費者被害の救済に当たっている相談員や弁護士の方々の意見を十分くみ上げていただく、そして訪問販売法の抜本改正に着手をすべきだ、こういうふうに思うのですが、大臣の御決意を伺いたい、こういうふうに思います。
  104. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 一言事務的に御説明させていただきます。  訪販法につきまして共産党の改正の御提案は承知しております。法律というものをつくったり改正したりする以上、実効性のあるものでなければならないと私どもは思いますし、また現行のいろいろな制度、他の法令との関係も十分検討しなければなりませんけれども、悪徳商法をはびこらしておくわけにはまいらないという立場から、この研究会で貴重な御提言も含めて勉強してまいりたいと思っております。
  105. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 あと時間が三分しかございませんが、林野庁せっかく来ていただいておりますので、簡単にお聞きしたいと思います。  「ひと足先の大きな資産に」というキャッチフレーズ、「緑のオーナー制度」というのが今宣伝されているわけでございます。私も資料をいただきました。夢とロマンのある緑のオーナーというふれ込みで応募してみたけれども、二十年から三十年後どの程度の資産になるやも保証がないというふうな状態がレクチャーを聞く中で明らかになってまいりました。国民はちょっと複雑な気持ちにならざるを得ないと思うのです。国民に有利な財テクの一つという錯覚を与えかねない宣伝だ、「ひと足先の大きな資産に」という宣伝では。ですから、こういう宣伝の仕方は改めていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  106. 石寺隆義

    ○石寺説明員 お答えいたします。  私どもがやっております分収育林の趣旨についてでございますが、具体的に申し上げますと、二十年から三十年生の杉とかヒノキとかそういう人工林について、一口五十万ということで出資していただきまして、将来販売時にその収益を国と折半するというような趣旨でございますが、これは単に資産づくりを目的とするというものではなくて、国の行っております緑資源の確保に対する国民的要請にこたえる、さらに国民参加による国有林の整備を促進するのだ、こういう趣旨で出資していただいているものでございまして、森林づくりの夢とロマンを含めたものといたしまして、国民の皆さんに理解をしていただく意味でそういう文言でPRしたものでございまして、他意は特にございません。
  107. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 他意はないと言うけれども、「ひと足先の大きな資産に」これを読んで飛びつくという人もやはりあるわけですから、ぜひ改めていただきたい。  もう一つ、中途解約ができないわけですね。二十年から四十年に至る長期契約ということだけに、オーナーとなった人々の中には解約希望者も出てくるであろうというふうに見ておかなければならないわけですね。それを頭から、事業計画として支障を来しますということでぽんとはねるのは、やはりお役所仕事ではないだろうかというふうに思うのです。中途解約を認めるか、補欠募集して譲渡者を国の方で見つけるということをするか、何らかの救済措置をとるべきだ。  本来国有林は国の財産で維持すべきものなんです。しかし、いろいろの事情があってそれができなくなってきた。そこで緑を守らなければならないというのを心から訴えて国民に協力をしていただくということをなさったのがこれだというふうに善意に理解をして、百歩譲って緑を守る点で国民の協力を求めるというのなら、有利な財テクであるかのような宣伝をしたり、こういう中途解約なんかは、あなた入ったんだからだめですよ、二十年たとうが三十年たとうが、貨幣価値も木材価値もどうなるかわからないというふうなものに対して、中途解約なんかをしないというのはやはり改めるべきだと思うのです。  大臣に最後に御意見を聞きたかったのですが、時間も参っておりますので、強くそのことを申し上げまして終わらせていただきます。ありがとうございました。
  108. 佐藤信二

    佐藤委員長 二見伸明君。
  109. 二見伸明

    ○二見委員 私、鉄鋼産業について若干お尋ねをしたいと思います。  最初に、鉄鋼の中長期の需給をどう見ているのかお伺いしたいわけでございますが、実は鉄鋼の状況については、これから私が申し上げることは釈迦に説法みたいな話でございまして、それで大変面映ゆい、恐縮だと思うのでございます。  我が国の鉄鋼業は、経済の基調変化による内外鉄鋼需要の低迷、先進地域市場での輸出制限の強まり、中進製鉄国の追い上げなどの構造的な諸困難というか、難しい問題を既に円高以前に抱えておりました。したがって、現在鉄鋼産業の置かれている状況というのは、そうした円高以前の構造的な困難と円高による打撃という、いわば複合したものによって、その深刻の度合いというのはかなり深いものがあるというふうに私は認識をしております。  また、先日の労働省の調査によると、製造業の海外での生産が拡大されるという方向にあるというような調査も出ておりますし、そうなればますます鉄鋼産業の環境というのは厳しい状況になるのではないか。経営者側もスリム化だとか合理化だとかコストの削減だとか、いろいろな努力をしてこの危機を乗り切ろうとして今頑張っているわけでございますけれども、そうした鉄鋼産業が生き残りのために懸命の努力をしている、そういうことを念頭に置きながら、中長期の鉄鋼の需給というのを通産省はどういうふうに見ておられるのか。  例えば、現在九千六百万トンが需給バランスだと言われているけれども、ことしはもっと低くなるだろう。来年、再来年、五年後、果たして九千万トン程度までいくのか、あるいは八千四、五百万トンまで落ちてしまうのか、そうしたところの見通しをどう立てておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  110. 鈴木直道

    ○鈴木政府委員 鉄鋼業について考えますいろいろなポイントにつきましては、先生指摘の点そのとおりだと存じます。  今後中長期的にどうなるかという点でございますが、私ども、鉄鋼が基礎素材として占める重要性については基本的には変わらないと思いますが、第一に国内需要がどうなるか、これは国内成長率が今後どうなるかということと非常に関係がございまして、我々は高目の成長というのを言っておりますけれども、仮にそれが実現した上におきましても、鉄鋼の消費原単位の低下、ハイテク化が進んでおりますので、経済成長を維持していつつも鉄鋼の消費の数量は総体的に減っていく、こういう側面があると存じます。  もう一つは、御指摘のように周辺のアジアNICS諸国がだんだん生産力化してまいりますので、それとの競争力という関係が非常に出てくると思います。それから、それらが輸入にどういう形であらわれてくるかという点がもう一つございます。さらには為替レートでございまして、今安定的に推移しておりますけれども、これが非常に影響を与えてくる。いろんな要因が今後あるわけでございまして、基調といたしましては、世界全体の生産あるいは需要というものは、IISIという国際的な鉄鋼協会での試算ではやや増加をする。しかし先進国では減少する。発展途上国では増加をする。その先進国で減少するという中で日本があるわけでございますが、我々は鉄鋼業の方々の合理化努力、おっしゃるようにこれから非常に血のにじむ努力があるわけですが、それを前提とすれば、微減ではあるが経営として立派にやっていく余地はある、かように考えております。
  111. 二見伸明

    ○二見委員 中長期の需給見通しといいましても、おっしゃられるように円のレートがどうなるか、今百六十円台だけれども、これが百八十円ぐらいに戻るのか、あるいはさらに円が高くなっていくのか、これもはっきりしませんし、なかなか予想がつきにくい点だろうと私も思います。こういうときの需給見通しというのは、何かある程度の前提を置けば予想はつけられるものなんですかね。というのは、生き残るために合理化努力をする、あるいは新しい技術を開発する、いろいろ努力しておりますね、鉄鋼産業では。どこまで努力すればいいのか、それがある程度見きわめがつかないと、先行きの不安も出てくるのじゃないでしょうか。ですから、ある程度の見きわめをつけられるものなのか。それとも、自由経済ですから、日本だけの問題じゃないから、どうしてもそこがつきにくいのか。微減とおっしゃったけれども、微減というのは一体どのくらいなのか、そこら辺どうでしょう。
  112. 鈴木直道

    ○鈴木政府委員 私ども、鉄鋼の将来の議論をする場合に、一般に数量、トンということで議論するケースが非常に多いわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、消費原単位が減少するというのはトンベースの問題でございます。  しかし、一方におきまして質の面での向上というのが非常にございます。恐らく今後国際分業が進む過程におきまして、日本の鉄鋼業の生産の中心は非常に付加価値の高い鋼材の方に移行していくわけでございまして、数量面では減少すると思いますが、これを価格で考える場合におきましては、やはり日本の鉄鋼業自体は十分に世界の中で存立し得る内容を持ち得る。なぜならば、現在鉄鋼が持っております設備、技術あるいは人材、これは世界の中では最優秀だと存じます。ただ、今回の円高で非常に大幅な固定費の増加をもたらしておりますので、この面についての合理化努力、それが前提でございます。それが実現し得れば十分に存立し得る基盤はあるのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  113. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっとしつこくなって申しわけないのですが、円高による八六年度の直接輸出の減少というのは、前年比八、九%減だと言われております。二百七十万トンから三百万トン程度減少するだろうと予想されているわけですけれども、韓国や台湾もこれから製鉄能力がどんどんふえてきますね。そうすると、八七年度、来年度以降輸出はさらに厳しくなるのではないか、減少するのではないかという危機感が鉄鋼産業の中にあるわけです。そこら辺はどういうふうにごらんになりますか。おっしゃられるように、付加価値の高いものであれば金額ベースの面では変わらないけれども数量では減るとか、いろいろな計算の仕方があるんだと思うけれども、どうでしょう。
  114. 鈴木直道

    ○鈴木政府委員 御指摘のとおり、韓国及び台湾につきましては、現在鉄鋼業に関する投資が行われております。二年というレンジで見ますと約八百万トン、さらに一九九〇年までに一千万トンくらいの能力の増加があると想定されております。この間ちょっとテレビで拝見しておりましたら、韓国の鉄鋼メーカーの社長さんは、三割くらいを輸出に向ける、かように言っておられるのを見ましたけれども、そうなりますと三百万トン、仮に多目に見ますと五百万トンというのが輸出に回ってくる。現在我が国の鉄鋼業は三千万トンを輸出しております。三千万トンを振りかわるだけの力はないわけでございます。その中で、御指摘のように三百万トンないし五百万トンがそういう発展途上国等の製品に振りかわる余地はある、かように考えますし、我々はそのための努力をしていかなくてはならないと考えております。
  115. 二見伸明

    ○二見委員 大臣、ちょっとお尋ねしたいんですが、鉄鋼産業にとっては輸出採算の悪化というのが数量の減以上に深刻な問題となっているわけです。鉄鋼の円ベースの輸出単価は、八五年七月から九月がトン当たり十万五百円、ところがことしの七月から九月が六万六千円、三四%減、輸出単価が円高によって悪くなったわけですね。これは鉄鋼産業にとってみれば、全く天から降った災害みたいなものでありまして、従業員の給与もトン当たり十万五百円で企業は計算しているだろうし、企業の損益もトン当たり十万五百円、この程度で損益を計算したと思います。それが円高によって六万六千円になってしまった。全量が輸出に向けられているわけではないけれども、鉄鋼産業の受けた打撃は相当深刻なものだと私は思います。  そこで、先ほど申しましたように、鉄鋼産業では、短期的に現在の問題としてはコストの切り下げだとか余剰人員対策だとかということで当面は切り抜けながら、中長期的にはスリム化、合理化あるいは新しい技術の開発、新しいニーズに応じた製品の開発ということでいくわけであります。組合側も、そうした経営側の経営方針とはそれほど大きな考え方の差はございませんで、相当の出血覚悟でこの苦境を乗り切らなければならないという決意も持っているわけです。ただ、組合側としては、継続雇用の確保、個々人の属性を大切にした適材配置と働きがいの確保、世間並みの労働条件水準維持、この三点を協力の前提として確保しつつも、腹を据えて相当の出血覚悟でこの危機を突破しようという、組合側もかなり悲壮感があるわけです。そうした鉄鋼産業の現状を考えながら円高を是正しなければならぬということが一つあると思います。  もう一つは、特効薬のように言われているけれども、内需の拡大、この二つしかないと思うのです。  それで、ちょうど六十二年度予算編成がこれから始まるわけでございますけれども、そうした鉄鋼産業ばかりではなく、ほかの不況産業にも関係があるのだけれども、今までみたいな緊縮財政というのはもう六十二年度はとり切れないのではないか。我が党にも、建設国債を発行して積極財政をやることに対しては慎重論はある。もちろん政府部内にもあるだろうし与党内にもあるだろう。いろいろな意見があると思う。しかし、ここで積極財政に踏み切らなければ、角を矯めて牛を殺すような結果にもなりかねないのではないかという危機感を私たちは持っているわけですけれども通産大臣として基本的なお考えはいかがでございましょうか。
  116. 田村元

    ○田村国務大臣 何といっても為替レートの問題と内需の拡大、おっしゃるとおりであります。特に鉄鋼は、元来が構造不況的な色彩を帯びておる、それが円高によって、しかも急激な円高によって追い打ちをかけられたということでありますから、この対応はもう為替レートの問題と内需の拡大ということになると思うのです。  為替レートの問題は、これは協調介入といってみても、ちょうど会社の株と一緒で、その国の体質というものが基本的な市場の対象になりますから、我々はあらゆる面でスリムになることを考えなければならぬ、これはもうおっしゃるとおりであります。先般もECとの会合で貿易インバランスという問題を随分議論したわけです。我々が貿易インバランスをある程度解消するだけでも円は安くなるだろうと私は思うのですよ。ですから、いかにしてこの黒字を解消するか。  それはそれとして、今の内需拡大の問題であります。今積極財政という言葉が適当かどうか、ちょっと私も何とも言えませんけれども相当高目の成長を目標にして予算を組んでいく、あるいはあらゆる内需拡大策をとっていく必要があろうかと思っております。六十二年度の公共事業費は、事業費において五%ぐらいアップさせるというようなことを言われておるようでありますけれども、内需の拡大ということになれば何といっても公共事業だと私は思うのです。ですから、この際思い切って建設国債を発行する、財政再建ももちろんですけれども、思い切った緊急避難措置をとることが必要だと僕は思うのです。  先般、実は私の母校の教授連と飯を食う機会があって、それで教授連中に、行政改革と財政改革を旗印にしておるが、どうも行政改革に余り熱心でなく財政改革にこだわっておるようだ、それで一体内需の拡大が本気でできるのかね、こう言って僕は冷やかされたわけです。もちろん財政改革は必要ですけれども、やはり緊急避難措置として公共事業を思い切って拡大する、そのためには建設国債の発行に何らためらうことなく取り組むというぐらいのことが必要だろうと思うのです。  例えば、きょう午前八時三十分に電力、ガスの差益還元のことで僕は申請を受けたわけです。これの規模が一兆八千六百億円。これだけでもいわゆる税制改革の基本方針の中にある所得税の減税の規模に匹敵するわけですね。そして法人税あるいは法人住民税、または非課税貯蓄制度、マル優の原則廃止の額を上回るわけです。例えば鉄鋼、化学、非鉄、繊維等、今の厳しい不況下の基礎素材産業に約六千億程度の恩恵を与えるわけです。やはりこのようにして思い切った総合的な措置をとっていくということだと思いますが、とにもかくにも六十二年度の予算編成に関しては、公共事業を抱えておる建設省、運輸省、農林水産省あるいは厚生省等の強力な応援団になってあげたい、このように私は思っております。
  117. 二見伸明

    ○二見委員 私も、ぜひとも強力な応援団として頑張っていただきたいと思います。  最後に、企業の海外進出について、細かい議論をするわけじゃありませんけれども、私もかつて日本の貿易インバランスを解消するために日本の企業が海外にどんどん出ていくべきだと、ヨーロッパへ行ってしゃべったこともありますし、日本の企業が海外へ出ていくことは阻止することはできないし、阻止すべきだとは思いません。しかし、一面、国内産業の空洞化といいますか、優秀な企業が全部出ていってしまって、十年後、二十年後に気がついたら、今日本の最高水準をいく、例えば鉄鋼産業であってもあるいは自動車産業であっても、まあ鉄鋼が海外に行くことは恐らくないだろうと思いますが、日本に残っている産業が時代おくれのものになってしまう。いわゆる産業の空洞化というようなことも一面では考えられるのではないかというふうに思っております。これは一方では日本の企業はどんどん海外に進出すべきだといいながら、その結果、産業の空洞化が生じ、また雇用機会が減少するという矛盾もあるわけでございますけれども、そうした企業の海外進出について大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  118. 田村元

    ○田村国務大臣 まさに御指摘のとおりなんです。産業構造調整、いわゆる産業構造改善ということを志向すれば、当然海外投資ということは考えなきゃならない。私は、ECとの話し合いでも、それから去る九月にポルトガルのリスボンのそばのシントラで四極貿易大臣会議がありました。それからまた、ウルグアイのプンタデルエステというところでガットの閣僚会議があった。そういうところへ行って、ヨーロッパの先進国からまでもどんどんと投資をしてくれということなんです、もう世界各国が日本投資をしてくれ。例えば、あのかつて日本人が夕方から後は通れないと言われたデトロイト、ここでアメリカの自動車産業日本によって手痛い打撃を受けた。そのデトロイトが日本の企業進出を求めておるというような状況でありますが、これはもう当然、企業進出というものは日本のこれからの産業一つのあり方になるだろうと思うのです。  ただ、これが余りにもドラスチックにいくと、おっしゃったような空洞化対策あるいは雇用の創出ということで大変な問題になります。ですから、これを何とか雇用の創出、雇用面では労働省と緊密な連絡をとりながらいかなきゃならない。私は、先般も事務次官を連れて労働省へ行って、労働大臣にも頭を下げた。そして、私は何かと労働省は御縁が深くて、三度のお務めをしたのです。政務次官と労働大臣と臨時代理と、三度のお務めをした。我が家みたいなものですから、行って、従来労働省は通産省なんかのしりぬぐいばかりさせられたわけですね。これからはそうじゃなくて、協議をして、予防措置まで考えていかなきゃならぬのじゃないか。そういうような政策をお互いに協力し合うというので、事務次官を長とするハイレベルの合議機関をつくってもらったのです。今いろいろと洗い出しをして、やはり労働省はプロですよ。ですから、通産省が出していく問題点に対して、労働省の対応というのは非常に高度なものがあります。そのようにして雇用問題を論じなきゃいけないだろう。  と同時に、それは政策面であって、現実面としてはハイテクとかバイオとかそういう新分野の産業や技術を興して、そしてそれに吸収していく。そのようにして空洞化対策をやっていく。また、先般成立を見た中小企業二法、あれだって地域対策として大いにお役に立つだろうと思います。また、今要求しております経済構造調整基金、これをうんと活用して地域の活性化にも資するようにしなければなるまい。  いろいろ考えておりますが、まさに二見委員がおっしゃったとおりであって、我々が一番恐れているのは空洞化現象が起こるということなんです。ですから、今からそれに対応し、また今それほどひどい空洞化現象は起こっておりませんから、今からそれに対応する予防策を十分に練っていきたい、このように考えておる次第であります。
  119. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わります。
  120. 佐藤信二

    佐藤委員長 次回は、来る十八日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時五十五分散会