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1986-10-29 第107回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十九日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 佐藤 信二君    理事 臼井日出男君 理事 奥田 幹生君    理事 加藤 卓二君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 城地 豊司君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       逢沢 一郎君    麻生 太郎君       甘利  明君    石渡 照久君       大坪健一郎君    奥田 敬和君       梶山 静六君    粕谷  茂君       熊谷  弘君    玉生 孝久君       中山 太郎君    野田  毅君       野中 英二君    牧野 隆守君       松本 十郎君    水野  清君       宮下 創平君    谷律 義男君       緒方 克陽君    奥野 一雄君       上坂  昇君    関山 信之君       浜西 鉄雄君    水田  稔君       新井 彬之君    竹内 勝彦君       薮仲 義彦君    米沢  隆君       工藤  晃君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局審議官  冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    加藤 昭六君         通商産業省機械         情報産業局次長 山本 雅司君         通商産業省生活         産業局長    浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岡松壯三郎君         中小企業庁長官 岩崎 八男君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第二課長   薄井 信明君         大蔵省関税局輸         出課長     中島 達夫君         大蔵省国際金融         局金融業務課長 金子 義昭君         大蔵省国際金融         局為替資金課長 井坂 武彦君         水産庁海洋漁業         部漁船課長   白石 司郎君         通商産業大臣官         房審議官    飛永 善造君         運輸省運輸政策         局海洋海事課         長       高橋 伸和君         運輸省国際運         輸・観光局海運         事業課長    長尾 正和君         労働省職業安定         局雇用政策課長 廣見 和夫君         労働省職業能力         開発局能力開発         課長      大月 和彦君         建設大臣官房会         計課長     市川 一朗君         建設省住宅局民         間住宅課長   荒田  建君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   甘利  明君     河野 洋平君   奥田 敬和君     小沢 辰男君   熊谷  弘君     藤本 孝雄君   中山 太郎君     木村 義雄君   野田  毅君     大野  明君   牧野 隆守君     自見庄三郎君 同日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     奥田 敬和君   大野  明君     野田  毅君   木村 義雄君     中山 太郎君   河野 洋平君     甘利  明君   自見庄三郎君     牧野 隆守君   藤本 孝雄君     熊谷  弘君 同月二十九日  辞任         補欠選任   尾身 幸次君     谷津 義男君   大西 正男君     逢沢 一郎君   野田  毅君     石渡 照久君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     大西 正男君   石渡 照久君     野田  毅君   谷津 義男君     尾身 幸次君     ───────────── 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ────◇─────
  2. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
  3. 大坪健一郎

    大坪委員 時間をいただきましたので、通産大臣にまずちょっと御質問申し上げたいのですけれども、実は最近円高問題で、いろいろ円高不況というような名称で経済的な難しい問題を検討する時期になってきております。この円高による状況の中で、円高不況と言われる現象に対するいろいろな批判とか、政策問題点指摘されておりますけれども円高日本経済全体にどういう影響を及ぼしておるか。物価が安くなっておるとか、金利低下しておるというような現象も含めて、いい影響と悪い影響と両方出ておるように思われますが、この両方の状態を全体的に、グローバルにとらえませんと我が国経済政策の真っ当な形がとれないと思います。大臣として、この円高のもたらした状況マイナス面プラス面でどのようにとらえておられますか、そしてまた、そういうとらえ方に立てば将来どういう政策中心になるべきだとお考えになっておられますか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  4. 田村元

    田村国務大臣 我が国経済は、国内需要円高等によりまして緩やかに増加しております。しかし、輸出弱含みでありまして、また円高の急速な進展によりまして、特に製造業中心企業業況判断、これには停滞感が広がっております。このように経済にいわゆる景気の二面性というものがあることは事実であります。  こうした経済情勢にかんがみまして、去る九月十九日に総合経済対策を決定いたしました。この対策事業規模約三兆六千億円強に上るものでございまして、その波及効果考えれば相当程度内需拡大が見込まれるのではないかというふうに思っております。この対策効果とまた円高、それから原油価格低下による物価の安定や金利低下我が国経済に与えるプラス影響と相まって、我が国経済は今後内需中心とした着実な拡大を図るもの、このように期待いたしております。  ただ、基本的にはそういうことでありますけれども為替レートがなお不安定であるという点、それからまた、いささか円高傾向が強過ぎるという面、それから原油価格の安定度というものがまだ確認されないというような不安定要素がございます。ございますが、基本的には今申し上げたようなことだと思います。
  5. 大坪健一郎

    大坪委員 実は最近ある証券会社の方の話を伺っておりましたら、原油下落が、昨年の今ごろでバレル当たり二十八ドルぐらいしておりましたが、今十三ドルから高い方で十五ドルでございますね。日本は大体十二・三億バレルぐらい輸入しておりますから、ドルを百六十円と見ましても原油下落分の年間の円高差益が三兆円、それから円高による交易条件改善が約二・九兆円、金利が、公定歩合が五%から三%に下がりましたけれども、それによる企業収益改善で一・五兆円、この程度国内需要プラス要因として働いておるというふうに民間でも見ておるようでございます。したがって、円高不況が非常に声高に言われておりますけれども円高不況対応策は、このような円高がもたらす差益国内経済における需要プラス面をも考慮して、うまく対策を立てられなくちゃならないんじゃないかと思われるわけでございます。  近藤大臣にお伺いしたいのですけれども、最近の我が国経済の統計をいろいろ見てみますと、製造業製造業以外、特にサービス業とでは経常的な収支状況が逆向きに動いておるように思われますけれども、最近のそういう数字について情報がございましたらお教えをいただきたいと思います。
  6. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 お答え申し上げます。  まずは細かい数字の方の関係でございますので私から先にお答えさせていただきます。  おっしゃいます製造業と非製造業の二面性の問題でございますけれども、私が今手元に持っておりますのは日銀の短観の八月調査数字でございます。これに基づきますと、例えば設備投資の場合、製造業では六十一年度マイナス六・一%というふうな計画になっておりますが、非製造業につきましてはプラス一四・六という非常に高い数字になっております。  それからもう一つ企業収益でございますが、これもやはり日銀短観の八月調査数字でございますが、売上高経常利益率で見まして、製造業の方は六十年度上期の四・四一%から六十一年度上期の三%へ、非製造業の方はもともと売上高利益率というのは製造業よりも水準は低うございますが、六十年度上期の一・三二%から六十一年度上期は一・七九%へと上昇いたしております。そういう形で、こういった企業収益動向動き製造業、非製造業の例えば設備投資動き、そういったところに反映してきているのではないかと思います。
  7. 大坪健一郎

    大坪委員 大体一般的に言われておりますように、円高状況の中で不況局面にありますのが輸出中心とする製造業であり、そうでないところは必ずしもそう悪くないというのがどうも実態のようであります。  そこで、交易条件であります円の価格が最近、一時百五十三、四円から百五十五円ぐらいでしたのが百六十円前後まで安くなってきておりますが、円が若干弱含みに推移してきております状況について、実は日本政策努力大変裏プラスになっておるのじゃないかと私は思うのですね。そのことについて大蔵省の方が来ておられたらちょっと教えていただきたいのですが、最近ユーロ円債発行規制が非常に緩和されてきたということ、それから円建て外債についてのいろいろな制約を大蔵省が非常に政策的に緩めてきておるということで、円の海外への流れが大きく働いておりまして、円の国際化が進んでおるというふうにも見られておりまして、これが円高を引き下げる要素に働いておるように思いますが、通産省でも将来は海外投資を促進するための法案を御準備になっておるという点もあるようでございますが、国際金融市場における円資金の調達の状況をちょっと教えていただきたい。
  8. 井坂武彦

    井坂説明員 お答え申し上げます。  為替相場は、この二、三カ月ドルが底がたいというような格好で推移してまいりましたが、先週の後半以降ドルが百六十円内外ということで若干ドルが上昇いたしております。本日の東京市場も一ドル百五十九円七十銭というようなことで市場がオープンいたしております。これらの点につきましては、最近のアメリカ経済指標にやや明るい材料が出てきたというようなことでありますとか、あるいは外債投資に関連いたしますドル需要があったというようなことが背景になっているというふうに思われますが、御指摘がございましたようなユーロ円取引自由化等の話でございますけれども、これにつきましては、金融資本市場自由化といいますか円の国際化というようなことでここ一、二年着実に進めてまいっております。ことしの七月以降も資本流出規制の緩和というようなことで順次具体的な措置をとってまいってきておりますが、それらが結果といたしまして為替市場の安定に資することになれば大変好ましいというふうに考えているところでございます。
  9. 大坪健一郎

    大坪委員 そこで、通産大臣にお伺いしたいわけなんですが、今円高になりまして、中小企業のみでなくて大企業でも製造業関係、特に輸出依存度の高いところでは経常収支が非常に悪くなっておりますから、これに対する対策として、企業の根拠地を外国に移したり、あるいは取引先国内から外国に変えたりいたしておるようでございます。そういう動きが相当出てきておるようでございますけれども、これが度を過ごしますとスプロール現象と称する空洞化現象が起こるわけでございますが、先進国の中でアメリカが特に顕著にそういう状況になっておるようですし、ドイツあたりでもそういう状況が出ておるようでございますが、労賃を初め全体としてコストの安い外に資本が動いていくというのは円高のような状況のもとでは防ぎがたいことかもしれませんけれども、余りこれがそのままで放置されると、実は将来の我が国にとって大変マイナスになってくる。  しかし、この問題を将来の長い目で見た日本経済の位置づけの中でどう考えたらいいのか。さっきちょっと触れましたけれども、円の自由化がどんどん進んでおりまして、国際金融市場に円が出ていくような状況がございます。そういう状況のときに、例えば通産省では、新聞の情報によると、国際投資保証機構加盟促進法という法律を準備しておるというような話も聞くのですが、スプロール現象を奨励するような形での資本海外進出を特に奨励するというようなことでいいのかどうかという問題が実はあるのではないかと思うのですね。全体としてバランスがうまくとれながら日本経済が動けば、日本は今明らかに世界最大債権国に移ろうといたしておる時期でもございますから、海外資本が出ていくことについて積極的な援助措置ということが見境なくどんどん行われるということがいいかどうかという問題があろうかと思いますが、そこのところについて大臣のお考え、将来政策についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  10. 杉山弘

    杉山政府委員 お尋ねのございました海外投資の問題につきましては、これからの中長期的な問題といたしましては、おっしゃるような状況のもとで、日本企業海外投資の問題なり、また海外からの部品、中間・半製品の輸入といったものを進めていかなければならないという大筋については御了解願えるのではないかと思いますが、ただ、最近の急速な円高によりましてこういう傾向が相当急テンポで進む可能性が出てきておりまして、これがおっしゃいますように度を過ごしますと国内におきます雇用その他の面でいろいろな問題を生じてまいりますので、私どもといたしましては、大きな方向としてはこれを進めていくという方針のもとに、国内での大きな摩擦問題を生じないような方向で、できるだけペースを守っていくということにも配慮をいたしたいと思っております。  先ほどお話の中に出てまいりました法案の問題につきましては、これはやはり海外投資をいたします場合には多くのリスクを伴いますし、輸出保険でカバーできない分野というものもあるわけでございますので、こういった部面につきましては国際的な組織によりまして対応していこう、そういう組織には日本としても入っていこう、こういうことでございまして、その運用に当たりましては、御指摘のありました点につきましてはこれまた十分配慮してやっていく必要がある、かように考えております。
  11. 大坪健一郎

    大坪委員 時間がちょっと足りませんから、その問題はまた次に預けることにいたします。  通産大臣労働大臣もなさいまして、我が国雇用問題について非常に造詣の深いお方でございますから、特に今全体として日本債権国に移る状況の中で、日本産業構造を大きく変えなければいかぬという課題が大変強くなってきております。内需振興のための国内経済政策方向づけも、やはり輸出型の日本経済が変わらなければならないということを要請しておるわけでございまして、産業構造転換するということになりますと、当然数多くの労働者が特定の産業を離れてほかの産業に移っていかなければならないという雇用の調整問題というのが出てくると思うわけでございます。かつて日本では、石炭産業繊維産業造船産業等産業政策転換あるいは部分的な雇用調整という問題がございました。今後は国内産業全体についていわば重厚長大型産業構造が俗に言う軽薄短小型の産業構造に変わっていくし、製造業中心のものがサービス業中心に新しく再編成されるという方向が出てくると思われます。そうすると、非常に異質な職場に日本雇用が生まれ、従来の雇用が消滅するということになって、大変難しい雇用調整問題が出てくると思うのでございますが、大臣の従来の御造詣の上に立って、その産業転換のための政策に伴う雇用調整の問題について基本的な視点をひとつお話しいただきたい。
  12. 田村元

    田村国務大臣 産業構造改善というものは、当然のこととして痛みを伴うものであります。でありますから、それに対する予防的措置また対応あるいは補完的な措置、そういう点で我々はよほど重大な決意で取り組まなければならないと思います。  私は、昭和三十八年に労働省政務次官時代石炭の緊就という問題と取り組みました。その後、労働大臣のときにまた離職者対策と取り組みました。そういう経験にかんがみまして、雇用政策というものが単純な考え方では十分な効果を発揮し得ないということを身にしみて感じております。例えば一口に研修、職業訓練と言っても、高年齢、中高年の人々に対してどういうふうにするか、いろんな難しい問題がございます。でありますから、先般も平井労働大臣に申し上げたのでありましたが、到底我々だけでできる問題じゃないので、労働省もひとつぜひ我々と相提携して、そのかわり通産省の連中に逐一連絡をさせるからどうぞよろしくお願いを申し上げたい、極端に言えば、地域対策その他の問題で大蔵省通産省、そしてそれに労働省、完全な三位一体でなければなかなかこの点は難しい、こういうことを申し上げた次第でありますが、今のような基本的な考え方で、いわゆる労働省の果たす役割というものに対する期待と同時にその難しさに対する認識等を踏まえて、これから大いに頑張りたい、このように思っております。
  13. 大坪健一郎

    大坪委員 今の大臣のお言葉、大変ありがたいのですが、問題の方向は二つあると思うのですね。一つは、全体の経済キャパシティーを大きくして、大きくなったキャパシティーの中で新しく産業構造を支える部門の領域への誘導を上手に行うということが必要だと思いますが、この間杉山局長お話なんかを承っておりますと、潜在成長力を四%と見込んでこれを目指して一生懸命頑張るというような話でございます。この潜在成長能力をフルに活用して経済キャパシティーを大きくするということがまず非常に重要だと思うのですが、えてしてそういう総需要増大政策をとると、現在の構造のままで経済が推移すればインフレ要素が非常に出たり雇用偏在が起こったりするということになるので、地域的な配慮が大変必要になってくると思うのでございます。ところが、地域的な配慮というのは産業政策ではなかなかやりにくいわけで、城下町対策のようなことは部分的にはできますけれども地域開発あるいは地域開発、そういった地域に目の届いた産業政策というものを将来どうやって進めたらいいのか、そこの辺がやはり新しい次の時代への産業転換政策一つ問題点だと思うのですが、この点についてお考えがあればお話しいただきたい。
  14. 杉山弘

    杉山政府委員 ただいまお話のございましたように、これから産業構造転換を進めていきますためには、全体としてできるだけ国内経済を活況のある方向に持っていくということが必要でございますし、それと同時に、おっしゃいましたような地域的な問題についても、心配り、気配りをした産業政策が必要であろうかと思います。  御案内のように、通産省といたしましてはこれまで工業の再配置問題というのをずっと手がけてきております。今回は第四次の全国総合開発計画が策定されるというようなことでもございまして、それに沿った方向で私ども工業配置計画というものも見直すべく、現在作業をやっているところでございます。したがって、そういう過程におきまして、ただいま御指摘のございましたような今後の産業構造転換の問題を、地域的にも問題をできるだけ少なく、スムーズにやっていくため、十分その再配置計画の内容にこれを織り込んで、またその計画を実現するために必要な政策手段についても充実を図ってまいりたい、かように考えております。
  15. 大坪健一郎

    大坪委員 この問題も、実は時間がありませんので、次の機会にまたもう少し詰めさせていただきたいと思います。  最後に、総体としての問題ですけれども、実は世界経済をずっと達観した場合に、一八〇〇年代の末期にイギリス世界最大債権国になって長期間のイギリス繁栄があって、それから第一次、第二次世界戦争を通じてアメリカ世界最大債権国になって大変長期繁栄をした。今や世界最大債権国日本がなろうとしておる時期でございますから、これからの債権国対応というのは世界経済に非常に影響があると思うのです。  実は、第一次世界戦争のときには、対応を誤って国内政治の強化のみにアメリカが狂奔したために、かえって世界恐慌を導いたと言われております。第二次世界戦争の後には、その失敗に懲りてアメリカ資本をむしろ外に盛んに出した、あるいはマーシャルプランをつくって経済的に困難な国々を助けた。したがって、日本の場合も、いろいろな予測がございますけれども、ある予測によりますと、一九八二年から八六年にかけて日本の黒字は二千億ドルを超えるだろう、アメリカの赤字がマイナス四千億ドルになるだろう、こう言われております。非産油開発国マイナス千五百億ドル開発産油国マイナス八百億ドルというふうに、世界的な富の偏在が非常に具体化するだろう。  そうすると、これは閣僚としての両大臣にお願いしたいのですけれども債権国となった日本国際政治の中でどういう役割を果たすかという場合に、開発途上国援助あるいはODAあるいはこういった領域への思い切った資本の移転を行わないと、世界経済的に見ると大変バランスの悪い、いわば一部分にインフレを促進するような富の偏在をもたらしかねない。そこのところが特にこれからの我が国世界政策の中の対応として重要なところではないか、通産政策問題点もその辺に絞られてくるのじゃないかという気もいたしますので、これはもう時間がございませんからお答えは要りませんけれども、ぜひひとつその点をお考えいただきたいと思うのです。  どうもありがとうございました。
  16. 佐藤信二

  17. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 本日は、時間もございませんが、山積する諸問題の中で円高中小企業に絞って質問させていただきます加藤卓二でございます。  まず初めに、昨年の秋以来、急激かつ大幅な円高のために、企業経営環境は著しく悪化しております。このままで放置すれば、日本経済は四%はおろか景気の失速が予想されるときに、通産大臣は就任当時、通産大臣とは言いかえれば中小企業対策大臣だとおっしゃっておられました。この円高デフレに対していかなる政策をおとりになるか、またこの問題の影響中小企業に深刻な問題を引き起こしていることをどのように認識しておられるか、よろしくお願いします。
  18. 田村元

    田村国務大臣 中小企業対策というのは、通産省の仕事の大半だと考えてよかろうと思います。  今、私の記憶に間違いがなければ、事業所別に言えば約六百七十万事業所に対して中小企業は六百四十何万ということでありまして、九九・四%、少なくとも事業所別ではそういう高いシェアを持っておる。しかも、その中小企業の約三分の二は下請をいたしております。  そこで、今の急激な円高デフレ、この円高によりまして、もちろん先ほどの大坪委員にお答えした経済産業の二面性はありますけれども、特に輸出面においては非常に手痛い打撃をこうむっておりますから、この輸出面における、あるいは構造不況のしわが特に下請の中小企業に集まっておるということでありまして、この中小企業対策というものは何をおいても最優先的に通産行政の面で取り扱っていかなければならないと考えております。  基本的な考え方をということでありましたから、具体的なことは後に譲るとして、私の考えの基本だけ申し述べた次第であります。
  19. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 次に、経済企画庁長官にお尋ねしたいと思うのですが、何回も同じような答弁をなさっているので大変お気の毒だとは思うのですが、せっかくのこういう機会でございますので、よろしくお願いいたします。  大企業海外へ進出する国際化時代は、当然これはやむを得ないと思うし、日本の立場でもこれは大事なことだと思うのですが、だからといって国内産業を犠牲にしていいというものではないし、基本的な我が国経済構造転換を図る必要があるのじゃないかと思います。確かに、増大する貿易黒字を縮小すること等、また安い労働力があるから安直に外へ出ればいいというような問題点、原材料を求めて外へ出るというようなことがありますと、生産基盤が外にとられるという形になりまして日本産業の空洞化が出るといつも言われるのですが、これに関して大臣のお考えをお聞きしたいのと同時に、いま一つ円高差益を受けている企業、確かに差益を受けているけれども、今まで本当にそれだけの内容、日本企業が世界に冠たる企業かというと、社会資本の充実という意味でいけば、電力会社だとかガス会社だとか、まだまだ地域におろさなければいけない資本が随分あるはずでございます。こういう問題も含めて御答弁をお願いいたしたい。
  20. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生おっしゃいますように、円高企業海外進出ということは促進されると思います。ただ、傾向としてはそうでございますけれども国内よりも国外で新しい工場をつくり仕事を起こすということはそんなに簡単なことではないのではないかと私は思います。むしろ、これまで日本経済アメリカやヨーロッパと比較してそういう海外生産のウエートが少なかったわけでありますからその傾向が進む、こういうふうに私ども考えているわけであります。と同時に、国内的にも、海外に任せられないような非常なハイテク化またソフト化の産業というのは依然として国内で残るわけでございますので、労働力のミスマッチという現象はあると私は思うのです。すなわち、高級な技術労働力が必要とされ、余り技術力を必要としない労働力が余ってくるということはございますが、総体としての労働力の需要ということを考えますと、職業訓練その他によって転換がうまくいけば産業の空洞化は防げるのではないか、こういうふうに考えているわけであります。  一方、新たな方向産業構造転換するということは、それ自体が大変な投資需要を生むわけでありますので、従来の工場以外に新しく工場をつくるということが新しい投資需要でもございますし、また先生御指摘のように欧米に比較いたしまして社会資本がおくれておりますから、その社会資本を充実するということも国内的な大変な潜在需要であると思いますので、そうした産業構造転換、社会資本の整備ということに対して積極的な資金が流れるような政策をとれば、国内の空洞化また雇用不安ということは政策努力によって解消できるものである、こういうふうに考えておる次第であります。
  21. 田村元

    田村国務大臣 先ほどの数字、全体で六百二十七万事業所、それに対して中小企業が六百二十四万事業所。九九・四%は合っております。
  22. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 両大臣のお考え方、本当に頼もしく、また経済がわかる大臣ということで非常に安心してついていけるわけなのです。私たちもまだ一年生、二年生とやっと幾らか政治がわかりかけると同時に、政治のあり方を非常に気にする年代というか二年生で、一年生のときにはいろいろな問題点について一生懸命勉強をやってきた。内需拡大というので、私も振り返ってみますと、自分の選挙区のためにもいろいろ考えなければいかぬかなという気持ちがしております。  それで、我が国経済構造転換を図る必要性があるということでございますので、国の方ではテクノポリスだとかの構想に基づいて各地でそれぞれ地域振興政策が立案されているわけでございますが、その点についての意見を申し述べたいと思うのです。  テクノポリス構想の中に入ったり城下町の一つの保護の中に入っているところはいいのですが、それ以外のところでもほんの少し足りないためにそれから外れてしまっている人たち。私が選出されております埼玉県において、県が中心になってテクノグリーン構想というのを今度は打ち出して対策を立てている。豊かな自然環境があって地域相互間の連帯、相乗効果が上がるような、個人的に言うのもなんですが、立地的にも大変いい場所なので、私たちも何とか二十一世紀に生き残れるふるさとづくりをやろうということで一生懸命やっておるわけです。その中の一つに産官学一体というのがいつもうたい文句にあるのですが、実際にどんなふうに実現していくかということで大学、教育機関を、非常に環境もいいところでありますからぜひそういうところにつくりたい。そういう関係関係機関の御努力もいただきながら、通産の方の行政の指導もあったのでしょう、とにかく先端産業が定着しているのですが、そこで従業員を養成しようというときには、これはアメリカにもあるようにボストンの近所だとかスタンフォード大学の周囲サン・ノゼ、しかもその周囲にベンチャービジネス、ベンチャーキャピタルそしてシリコン・リバー、こういうような町を、バレーじゃなくてリバー、流れをつくろうじゃないかというので頑張っているのです。これはかつての委員会のときにもいろいろお話ししましたが、地域の発展のために国から取り残されないようにしたいという地域の心配が物すごくあるわけでございます。県の方もそれに対してグリーン構想というのを出す。厳しい経済状況の中ではございましょうが、ひとつそういう不安を持っている地域産業に対して国の大きな思いやりをお願いしたい。また、テクノポリスから外れたところでも、モデルケースみたいな形でぜひ手を差し伸べていただきたい。そういう意味で、自分の郷土のことを言うようで大変恐縮でございますが、今内需拡大ということなので、私の方の立場で言うと、自分のふるさと、その辺にいま一度関心を求めて足元を固めたい、そういうつもりでおりますので、前向きな御検討をお願いしたい。これは問題が地域に限られますので、大臣、長官の答弁でなくて結構でございますが、ひとつお話をいただきたいと思います。
  23. 加藤昭六

    加藤(昭)政府委員 先生御指摘のように、地域経済の発展を図るために、先端産業の導入とあわせまして人材の育成、これが極めて重要な課題であると認識しております。そうした観点から、ことしの五月に民活法を施行いたしまして、人材の育成、研究拠点の形成などを図りつつあるところでございます。  先生御選出されました埼玉県におきまして、テクノグリーン構想があることも承知しております。あの中には研究拠点づくり、人材育成の構想が含まれており、大変時宜を得た構想であると承知しております。まだ検討中であると伺っておりますが、構想が具体的に煮詰まった段階で、地元からの要請がございましたら、民活法の対象となり得るかどうかも含めまして検討を進めてまいりたいと考えております。
  24. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 なお、テクノグリーン構想というのと一緒に、民間活力を導入しようということで、ハイテクの森という形で、各大企業、研究機関、海外の人たちが一緒になってやろうという構想があって、それに申し出ろということで埼玉県も立候補していると思うのです。  また、きょうこの場所では適当でないのかもしれまぜんが、産官学ということで、産という言葉がその中に入りますと、通産省、企画庁や皆さんの大きな横の連絡がないとうまくいかない。縦糸だけの政治ではなく、それに横糸が、しかも彩り豊かな経済政策を、文部省の皆さんにも御協力をいただきながら、ぜひ長官にもお願いしたいと思うわけでございます。  それから、大規模リゾートエリアとして取り組んでいるものに秩父長尾根丘陵整備構想というのがございます。テクノグリーンと一緒に出ていることですが、経済の活性化を図り地域振興のねらいとして埼玉県及び地元の町村が計画しているこの構想は、埼玉県の四分の一の面積もある広大なところを大型のリゾート地として整備しようというものです。ここは秩父多摩国立公園や、日本の三大祭りである秩父夜祭りがある自然環境の大変いいところでございまして、伝統文化に恵まれた、首都圏郊外といっても一時間ちょっとで足の届くところです。産官学のほかにリゾートという、国民の考え方の中にも憩いを入れていくという形で、中核施設としてこの秩父長尾根丘陵地帯一万七千ヘクタールを開発して、健康、教育、レクリエーション、先端産業ゾーンとか大学のエリア、そういうものをつくりたいということで、地域の人が乗りおくれた分を取り返そうと大変努力しております。  これには巨額な資金がかかるわけで、民間活力の導入が必要であり、国の方針に沿って内需拡大を導くねらいもあって、第三セクターみたいなのをつくってやっていこう。建設省の複合リゾートカントリー構想等の国の民活諸施策を活用するとともに、総合的にこれを大きく開発しなければならないのですが、通産省の方の助成策というのはどのように考えておられるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  25. 杉山弘

    杉山政府委員 最近国民の価値観が変わってまいりまして、余暇活動の充実を求める声が強くなってきておりますが、それに対しまして大規模なリゾート施設がまだ不十分でございます。一方、各地ではこういったものを整備しようという具体的な動きが出てきておりまして、その中の一つに、埼玉県に秩父長尾根丘陵整備構想というのがあることも私ども十分承知いたしております。  こういう時代でございますので、内需拡大のために民間事業者の活力を利用して整備が実現できるということになりますと、これは極めて望ましいことだと思っておりまして、そういう際に政府として、民間事業者の能力の活用にどの程度の応援、バックアップができるのかという問題につきまして通産省といたしましても現在検討をいたしておりまして、できましたら来年度の各種の新しい政策の中でそれを実現していきたいと考えております。  各省庁にも同じような構想があるということも聞いておりますので、いずれこういった点につきまして各省庁相談をし、政府としてまとまった対策を実現することになるのではないかと考えておりますので、私ども通産省もその中で、通産省としてどういうことがやれるかというのをこれから十分検討してまいりたい、かように思っております。
  26. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 最近一番関心を持っている問題の中に国鉄の民営化というのがある。政府関係企業がいろいろな形で民営化されていることについての問題点について一言お聞きしたいと思います。  国民の負担を軽減しようということで政府関係企業が民営化される。企業努力をしろということは大変大事なことだと思いまして、そのことには大変賛成をするものの一人であります。効率のいい経済行為をしようと鳴り物入りで大型のプロジェクトが国有地にできておる。私たち遠くの方のことはよくわかりません。身近なところから見ますと、東京の中でもあらゆるところでいろいろな企画、経営がなされておるし、これから計画するものもあるし、現実的には、国有地を使って民間企業に進出しているところもあるわけでございます。  その問題に関して一言質問したいわけでございますが、実際に地域の発展を図ろうという形の中でなされる大型プロジェクトは、意外と公営という形で民間で行われているのですが、おりてくる方たちがやはりお役人というような関係もございまして、なかなか一晩で変えるわけにもいかぬでしょうが、習性から来るものでしょう、親方日の丸じゃなくやらなければならぬ。民間の大企業でも下からはい上がっていっているわけですね。新日鉄にしろどんな企業にしろ、私は今松下さんの話をするわけじゃございませんけれども、ソニーにしろ松下にしろ日立にしろ大変な下積みの生活を重ねながら大きくなってきた。今の国営の企業というのは上からすっとおりてくる。そのハンディキャップがあるのでしょうか、地域との摩擦が幾らかあるように思うわけであります。一番大事なことは、地元の小売屋さんを大事にしますよと言って、鳴り物入りでできてきた政府の施設が、意外と地元の人にとって情報が不足のために出店できなかったとか、納品できる業者になっていない。例を挙げて説明してもいいのですが、非常に問題がある。私たちもまだ確実につかんでいるわけじゃございませんが、そういう陳情を受ける中でぜひお願いしたいのは、地元業者を圧迫するような政策でなく、拾い上げていって、地域の人たちが大きく育つような施策を経企庁なり通産省なりで御指導願いたい。今までは運輸省だとか国鉄だとかいう立場の人たちがやった場合、接点で幾らか摩擦があるように思うので、そういう問題に対して十分に通産省の方で御指導を願いたいと思うのですが、それに関してのお考えをいただければと思うのです。
  27. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 確かに、国鉄その他の今までの政府機関が民営化されましていろんな事業をやるという動きがございます。それに対して地域中小企業が不当な圧迫を受けるということは、これは私どもとしても配慮していかなきゃいけませんので、今回の国鉄関連法案の中におきましても特に要請しまして、地域中小企業の利益を不当に圧迫することがないよう特に配慮すべしという規定を入れていただいたりしております。  ああいう機関も民営化されますと、いわば大企業一般になりますわけで、しかも非常に力の強い大企業になりますわけですから、ぜひ地域中小企業との利害の調整ということに深く心がけていただきたいと思っておりまして、最終的には私ども分野調整法あるいは小売商業調整特別措置法というようなものがございますので、その法体系の中で中小企業との利害調整ということができるわけでございますが、そういう場に行く前に、できるだけ当事者が地域中小企業の利害に真剣に配慮をいただくように、これは運輸省、郵政省等にもその民営化に当たって強く申し入れているところでございます。
  28. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 一生懸命中小企業庁長官考えていただいていることはよくわかりますが、地元の小売業者やなんかが納得できるようにすることをひとつぜひしていただきたい。地権者、そういう人たちとの理解を十二分に得られるように今後とも努力願いたいと思うわけですが、そのためにもぜひひとつ私は政府関連企業民間経営化に伴うところの中小企業問題対策協議会みたいな何かをつくって、そういう苦情の窓口、受け入れ口をぜひ通産なり企画庁なり、どういうところがよろしいんでございましょうか、ひとつお願いしたい。  最近NTTのような今まで国営でやっていたのが民間へおりてくると、これは一生懸命経営合理化を図るために、逆に言うと今まで下請だった人たちに対しての思いやりが少し欠けてくるだろう。すそ野を広げながら下請も育てながら、なおかつ大きくなっていただけるようにぜひお願いしたい。中小企業を排除するのでなくお願いしたいな、こう思うわけです。  それから、国鉄の所有されている地域、これは心がけで結構変わってきますし、すそ野はどんどん広がるわけですが、今まで遊ばせていた地所が有効に動くのです。ですから、地域全体の活性化には当然つながっているのですが、本当に隣接する中小企業だとか地権者だとかそういうものに対しての思いやりをそういう機関が取り上げてあげながら、小さな摩擦をぜひなくなしていっていただきたい。そのような協議会、今まで通産省では手の届かなかった運輸だとか建設だとか郵政だとかいろいろな形の総合的な対策が立てられる場所にはやっぱり経企庁長官のようなポストが一番いいのか、通産行政の中で細かくやっていただくのがいいのか、そのようなことをひとつお考えいただけるようにお願いしたいわけでございます。
  29. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 この中小企業行政は、省を超えまして中小企業庁で一括して目を配っておるわけでございますけれども、今回のそうした問題については、既に制度としては中小企業分野等調整審議会というようなものがございまして、むしろ制度というよりは現実の今後の、例えば民営化された国鉄等の具体的な動き、それについて監督官庁同士どのようにそれを指導していくかということではないかと思います。そういう意味で、運輸省との間でも今回の法律作成に際しまして、国鉄の新規事業分野への進出については事前に前広に私どもと相談いただく、こういう合意もできておりまして、できるだけ地域ごとの摩擦がないように両省で指導していく、こういう体制はできておる次第でございます。
  30. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 今、話をひとつまた違う観点に戻させていただきますと、大企業を地方に誘致しようとみんな非常に熱心にやるのですが、大企業が来たから地方が豊かになるかというと、土地を取り上げられてどんどんというような問題じゃなく、なかなか大企業が簡単に進出できるものでもない。そういうときに、大企業誘致が今すぐできないのだったらば、例えば莫大な資金や時間がかかるのだから無理なのならば、海外へ工場をつくるような金をぜひひとつ地域の、非常に格差のある地方というのは、本当に下手をすると海外に比べてもまだまだ安い人件費で働いている方たちがおられる時代になってきている。ですから、いま一度内需、そういう問題へ目を向けていただいて、大企業の下請に対するあれをいま一度見直していただいて、それでその合理化の中に問題点を見つけ出していただけるような配慮をお願いしたい。ですから、工場誘致するよりも、今あるよそへ出しているものを再度、いま一度民活に——農家の人たちの納屋、お蚕小屋があるわけですから、例えば内需ではもうやっているわけです。例えば袋詰めだとか箱詰めだとか全部やっています。それを企業が用地を買って借金をしてやるからその利息を払わなければならない、工場の償却をしなければならない。農家みたいなところへ分散してやれば、大変大きな敷地は先祖伝来持っておるし、それが下請を、すそ野を広げるような産業になる。そういうふうに私たち今一生懸命やっているのですが、そういう問題に対しての助成策、考え方もひとつ御検討願いたい、こういうことでございますので、よろしく。
  31. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 確かに日本産業組織におきまして、すそ野を見ますと非常に広がっている。例えば燕、三条等では実質三千の場所で現在のあの産地ができ上がっていると思っております。したがいまして、そういういわば非常に小さい事業をオーガナイズして一つ産業活動を行う、これはむしろ日本国における産業活動の一つの大きな特徴点ではないかというふうに思っておりますので、そういう形でのいろいろな地域産業の振興というものができるということは非常にいいことだと思います。  私どももそういう意味での下請企業というものの需要拡大という面については私どもの力でできる限りのことをやっておりまして、各地域に下請企業振興協会というのがございます。そういうところが今特にこういう状況でございますので、自分たちはこういうものができる、これをだれか使えないかというような、需要者と供給者の出会いのあっせんというようなことについて非常に努力しておりまして、特に最近は広域あっせんという視点から、何回もそういう広域あっせんの活動が各地において行われております。また、来年は私ども下請企業振興フェアというものを各地域、県と一緒に考えていきたい。これで自分たちは今こういうものができた、新しい転換のためにこういう製品をつくったというようなものを、そういう展示会を開きまして、それに対する新しい需要者との出会いというものをできるだけ大きくしていきたいというふうなことを考えている次第でございます。
  32. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 最後に、少し時間がございますので、一言お願いしておきたいことがあるのです。  昔、私たちが子供の時分は農商務省というのがありまして、その時分には下の、今の農協というのは産業組合、はっきり言うならば農家もやりましたよ、精米所もやっていました、油屋さんもやっていました、そういうような形で非常に複合していた。今は専業農家でなければ農家でないような発想にならないように、地域地域の長い年月培ってきたものを、よそからの指導でやる場合でもいろいろあるでしょうが、私は日本の国にのっとったような考え方で御指導願いたい。大臣は非常に幅が広いので、私たち非常に楽しみにして、この大臣のもとで質問できることを本当に心楽しく思うわけでございますが、ひとつすそ野の広い産業行政をぜひやっていただきたい。農家でこれから産業を興したい子弟のためにも、そして農地を利用することによって借金がなくスタートできる中小企業を育成していくような意味でも、ひとつ縦横のつながりを、農林省だ通産省だという形でなく、昔の産業協同組合に戻って国で融和を図りながら、その中に大きな流れをつくっていただけるようお願いするわけでございます。これは私の方のお願いでございますし、農林省のことも関係しますが、バイオテクノロジーを含むいろいろな形になりますと、農業も商業と区別がつかないような時代が必ず来るのですから、そのときに経済企画庁長官、ひとつそういう大きな指針をつくっていただけるようお願いいたしまして質問を終わらせていただきます。どうも大変ありがとうございました。
  33. 佐藤信二

    佐藤委員長 緒方克陽君。
  34. 緒方克陽

    ○緒方委員 私は五、六点質問をしたいと思うのでありますが、まず最初に政府が使われております用語について、できるだけ英語とかそういうものを使わずに、わかりやすい日本語を使うべきではないかな、そういう意味で御質問を申し上げたいというふうに思います。  二十一日だったと思うのですが、その前ですか、大臣の所信表明演説があったわけでありますし、その後いろいろな通産関係の書類なんかも目を通させていただいているわけでありますが、大臣お話とか、あるいはそういった通産省関係、企画庁関係の書類というのは国民に向けて明らかにされた文書でありますから、国民の皆さんがよくわかって、なるほどなと、そういうものでなければそれは意味がないのじゃないかなというふうに私は思うわけですね。  ところで、先日の通産大臣の所信表明などでは、例えば「インセンティブの付与」であるとかあるいは「ファンダメンタルズ」などというような言葉が出てまいりまして、これはいわゆる奨励とか誘導、あるいはファンダメンタルズというのは基本的とか基礎的なということのようですけれども、どうしてこれが日本語を使えないのかなという気が、素人として感じるわけですね。そういう意味で、例えば中小企業のおやじさんでも、あるいは田舎の村長さんでもわかるような産業政策とかあるいは通産の政策というのがされなければ意味がないのじゃないかなというふうに思うわけでありまして、そういう意味でできるだけわかりやすい言葉を使うべきではないかなというふうに思うのでありますが、その点について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  35. 田村元

    田村国務大臣 全く同感でございまして、少し片仮名が多過ぎる。先般の所信表明も、私がこれはちょっと横文字が多過ぎるのじゃないかと注意をしたのでございましたが、役所内ではあれが常用語になっておるのですね。それでどうもぐあいが悪いが、私自身もそれほど大学時代に勉強した方じゃありませんから、役人が使いました言葉をわかったような顔をして、後でそっと辞書を引いて確認するというような、全くお説のとおりだと思います。これからできるだけそういう点で留意をさせるように、なおも私からも申しておきます。逆に言えば、いいことを言っていただいたという気持ちであります。
  36. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは今大臣から表明がありましたので、そういう意味でぜひ国民にわかりやすいそういった表現をお願いしたいというふうに思います。  次に、私は森林河川緊急整備税、いわゆる水源税について質問をしたいと思います。  この問題につきましては、もう既にこの委員会で何回か議論がありまして、大臣からも表明がありました。このいわゆる新税というのは、例えば紙パルプであるとか鉄鋼を初めとする産業円高不況の中で非常に苦しんでいる中で問題があるということ、あるいは基本的な税制の問題としてこれは認めるべきではないという意味で通産大臣としての表明などもあっているわけでありまして、私はその点については非常に心強く思っているわけでございます。  ところが、最近の動きを見てみますと、ここに私、新聞、これは二十七日の読売でありますけれども、それから二十三日の毎日新聞などでありますが、水源税の問題がマスコミでも取り上げられまして、いわゆる農林族と言われる方々がそういう会をつくって進めるのだというようなことも載っております。ここで私、きょうの委員会の自民党の皆さん方にけしかけるわけではありませんけれども、商工とかあるいはそういった人たちの中では問題だという意味で言われているわけでありますが、そういう状況の中でいま一歩この問題については前に進むべきではないかというふうに思うわけでございます。  この問題について、さきの委員会の中では、いわゆる自民党内の議論にもなるだろうということと、それから大臣としては、厚生省とも相談をして対応したいというふうに十月二十一日に御発言をいただいているわけでございまして、それから一週間以上たっているわけでございます。非常ににぎやかになってきたわけでありますが、そういう意味でその後の厚生省との対応であるとかあるいは今日の決意といいますか、そういうものについてお聞かせ願いたいというふうに思います。
  37. 田村元

    田村国務大臣 これは通産省、厚生省が反対で建設、農林が賛成。これは当然のことだと思うのです。それで自民党の方でも双方が連合軍で今堂堂の布陣をしいておる。これから大変な論争になると思いますが、厚生省との対応は、実は幸い厚生大臣の斎藤十朗君は私の県の同郷人でございまして、私は斎藤君のお父さんの選挙事務長をしたようなつき合いでございまして、何でも物が言える。彼が初立候補したときに私が親がわりを務めたというような因縁もあります。それこそ何でも相談できる間柄でありますから、二人で顔を合わせるたびに、いつもお互いに頑張ろうぞ、力を合わせようぞと確認し合っておるということでございます。
  38. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは、そういう決意がございましたので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。  次に、三番目に円高問題とそれに関する雇用問題について質問をしたいと思います。  それぞれ今までも議論になってまいりましたように、大変な円高の中で雇用問題あるいは首切り、合理化問題が発生しているわけでありますけれども、その中で少し具体的に質問をしてみたいと思います。  最近の雇用情勢の特徴というのは、円高による解雇が大量に出ているということについては既に同僚議員からも質問があったところでありますけれども、総務庁の発表した労働力調査によりますと、八月のいわゆる完全失業率というのは二・九%ということで、七月と同じ数字で二ヵ月連続して過去最高の失業率となっているということで、これだけの高水準になったのは初めてであるというのは政府の発表でもそういうふうになっているわけですね。  そこで、そういう問題について政府の見解をお聞きしたいのでありますけれども労働省の職業安定局長が、七月十四日の日経でありますけれども、日経新聞のアンケートに答えましてこういうやりとりがあります。  ちょっと簡単に読み上げてみたいと思いますが、「大蔵省などは秋口には円高メリットが浸透して景気は回復すると見ていますが、そうなれば、雇用情勢も好転しますか。」というのが問いであります。これに対して職業安定局長は、「そんなにうまくはいかんでしょう。完全失業率は年末までには三%台になるのじゃないかと危機感を持っています。個別、局地的に不安材料がたくさんありますから。造船業界では近く二〇%の設備廃業に取り組みますが、大手中心に一万六千人以上の余剰人員が出るでしょう。ことしだけですでに三千人以上の離職者が出ています」そして「合板、製材業では今後、二千人程度の離職者が出る見込みで、アルミ精錬、紡績、セメントでも雇用調整があるでしょう。自動車メーカーも季節工を補充しないといった形で求人を手控える動きが強まっている。基幹産業雇用吸収力も弱くなる」ということで、これは安定局長の話ですね。  そういうことになっておるわけでありますが、そういう状況の中で政府としては九月にいわゆる総合経済対策というものを発表されまして、具体的には雇用問題で三項目の内容というのを出されておるわけでございます。一つ雇用調整助成金の問題、あるいは特定の不況地域や不況業種の問題、それから三つ目に、過剰人員を抱えている企業が解雇をしないでいわゆる出向という形で何とか雇用をつないでいこうというような、これは新たな施策のようですけれども、そういうことが総合経済対策の中の三本柱という形で出ているわけでございます。  しかしながら、私が見る限りでは、そういった安定局長の発言あるいは九月に出されました総合経済対策、いよいよ予算も出てきますけれども、そういう中で失業率が二・九ということでありますが、果たしてこれを押し下げるということができるのかどうか、年末に対して一体政府としてはどういうような見通しを持っておられるのかお聞きをして、そのことに基づいて後ほどまた質問をするということになればすると思いますが、そういう状況の見通しについてお答えを願いたいと思います。
  39. 廣見和夫

    ○廣見説明員 お答え申し上げます。  最近の雇用失業情勢の問題でございますが、今先生お話のございましたように、私どもも、確かに最近は円高の進展等を背景といたしまして、生産活動が停滞しているという中にあって、雇用調整を実施する事業所も増加してきておりますし、一方求人が減少するあるいは失業者が増加してくるということで悪化する動きがあるというふうに考えております。  具体的には、今先生も安定局長の話ということで新聞の記事等をお読みになったわけでございますが、例えば有効求人倍率もだんだん下がってきております。現在〇・六一倍ということが八月の一番新しい数字になっておりますし、また完全失業率につきましても、今お話のございましたように二・九という水準で推移いたしております。それからまた、企業の中の雇用に対する考え方労働省の方の統計で見てみますと、やはり雇用過剰感が強まっております。具体的には製造業の中で雇用過剰というふうに考えております企業の割合を見てみますと、八月時点で二〇%というふうになってきております。また雇用調整を実施する事業所もふえてきておる。それからまた、さらに個別の産業あるいは業種ということを見てまいりましても、これまた今先生記事でお読みになったような状況等がございまして、やはり離職者等が増加してきております。そういうふうなことで、全般的には今後も雇用調整がさらに本格化し、雇用情勢は一層厳しくなるということを懸念される状況ではなかろうかと私ども思っておるわけでございます。
  40. 緒方克陽

    ○緒方委員 今言われましたような、労働省としては大変厳しい見方をされているわけでありまして、そういう状況に対する政府の対応はいかんという質問をしますと、それが言うなれば今度予算を出す三兆六千億だというような答えが返ってきそうな気がするわけでありますが、私といたしましては、先ほど言いました具体的な雇用対策の三項目というものだけでは到底対応できない大きな問題があると認識をしております。幾つか質問したい問題がありますので、これは後ほどさらに具体的な問題については情勢認識に対する問題点としての意見は申し上げたいと思いますが、非常に不十分ではないかということだけ申し上げて、次に移りたいと思います。  問題を少しローカルに移したいと思うのでありますが、全国の完全失業率は先ほど申し上げたわけでありますが、これを全国のブロックに分けてみますと、これは朝日新聞だったと思うのですけれども、七月の完全失業率とか景気の動向を含めた全国の雇用状況その他が絵を入れて出ていたわけであります。それで見ますと、完全失業率が非常に高いのは北海道と九州ということになっているわけですね。大変厳しい状況にあります。  その中で少し具体的に御質問したいのですけれども、ゴム履物産業と合板ベニヤ関係について、全国的な状況も含めてお尋ねしたいと思います。  まず第一は、ゴム履物関係でありますけれども、九州はゴム履物関係労働者が非常に多いわけであります。私が調べたところでは、全国的には十五年前までは約五万名のゴム履物関係労働者がいたわけでありますけれども、今日では一万七千名ということで約三分の一、時代の流れと特に円高問題あるいは外圧といろいろな要素が絡まっているわけですけれども、三分の一という労働者状況になっているわけです。そして、それぞれ企業の名前を挙げるといろいろ問題があると思いますから申し上げませんけれども、例えばゴム履物関係では北海道や関東でもいわゆる合理化首切りというようなことが起きております。  そこで私、九州の佐賀県とか福岡県のゴム履物関係の下請がかなりあるものですから、いろいろなところを回ってきたわけであります。そこで社長さんとも話をしたし、組合とも話をするのですけれども、かなり操業短縮が行われているわけですね、雇用調整給付金も含めて。しかし、これ以上続くとあとは扶養家族を減らす以外にないという言葉が社長さんの言葉としては返ってくるわけです。それは何を意味するかといいますと、結局合理化で人員整理、私どもに言わせれば首切りという問題でありますが、そういうことになっているわけで、大変厳しいわけであります。もちろんゴム履物産業全体では、メーカー自身が輸入をするというような問題もあって、体質的に改善しなければならぬ問題もいろいろある面はあると思うのですけれども、しかし現実にはさらに今の状況が続いていくとすれば、さっき言いましたいわゆる雇用調整、合理化首切りという問題が出るのは目に見えているという状況でございます。  その中で、この業種に対しては、昨年の多分十二月からことしの十一月まで雇用調整助成金といいますかそういうものが業種として指定になっていると思うのですけれども、これは今後の動きを見てということになると思うのですが、この問題については延長するということにすべきではないかと私は思うのですけれども、これらについて時期的にも当然御検討が迫っているわけでございますので、されているとすればお伺いをしたいということでございます。
  41. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 ゴム履物業界は、先生御承知のとおり、いわゆる運動靴を中心とする業界でございます。最近はジョギングシューズとかスニーカーとか、そういった新しい趣の製品も入ってまいりまして、ここ数年間は何とか生産量が七千万足前後で横ばいで推移をいたしております。御指摘のとおり輸入も相当ふえておりまして、三千五百万足から四千万足くらい、大体生産量の半分くらい輸入が行われているという状況でございましたが、ことしに入りまして確かに生産がかなり大きく落ち込んでおりまして、前年と比べますと一〇%くらい落ちているのではないかというようなことが統計上からも読み取れるわけでございます。どうもこの需要の落ち込みの原因が必ずしもはっきりしないわけでございますけれども、確かに円高状況下で、ある程度値段の先安などを見込みまして買い控えの傾向、あるいは在庫調整の動きが流通段階で起きているのではないかという見方もあるようでございます。  また、輸入につきましても、今先生御指摘のように、メーカー輸入から商社輸入へというようなチャネルの変更の動きもあるようでございまして、こうした要因が幾つか重なって現在のような状況になっているかと思います。ただ、輸入もむしろ減りぎみというところでございまして、先行きの判定がなかなか難しいわけでございますけれども、やはり今後より一段と履き心地のいいもの、デザインのいいものを業界内で開発していかれることが対応の基本だと思っておりますけれども、私ども中小企業事業転換対策臨時措置法の対象業種に指定をいたしているわけでございます。また、御指摘のように雇用調整等の動きもございまして、雇用保険法の活用という動きも出ているわけでございます。最近操短あるいは人員削減の動きが大手企業にも出ているということでございますので、今後十分状況を見きわめながら、労働省ともよく御相談をしてまいりたいというぐあいに思っております。
  42. 廣見和夫

    ○廣見説明員 今先生からお話のございました雇用調整助成金の問題でございますが、確かにゴム履物の関係は昨年の十二月から指定しております。これはゴム底布靴・同附属品製造業といたしまして指定したわけでございます。これは一年間の指定ということになっております。  先生今お話ございましたように、これは確かに九州にかなり多うございまして、昨年十二月一日から指定いたしましてことし八月まで、全体としてこの業界に一億一千五百万円程度雇用調整助成金が支給されたわけでございます。そのうち九州では約八千百万円ということになっております。こんな状況でございますが、今申し上げましたように一年間の指定期限でございますので、ことしの十一月末で一応期限が切れるわけでございますが、再指定が制度の上では可能ということでございますので、また業界等からの要望あるいはお話いろいろと伺わせていただき、基準に照らしまして再指定をするかどうかということについては鋭意検討を行ってまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  43. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは、そういうことで業界その他組合などからもお話があると思いますので、積極的に対応をお願いしておきたいと思います。  次に、合板ベニヤ関係の問題についてお尋ねしたいと思います。合板業界もまた、これはずっと以前から大変な状況でありまして、私どものところで、これは港に多い企業でありますけれども、かなり多くの企業が倒産をいたしまして、いわゆる再建中というのが多いわけであります。それぞれ、再建中のところでは賃金もかなり下がる、あるいは労働条件も悪いという状況の中で、ひたすら会社再建のために何とか辛抱しなければならぬということで、忍びがたきを忍んで働いているということで頑張っているわけでございます。  私もあちこち回ってみたのですけれども、最近は合板ベニヤの半製品、もうでき上がってきたものが日本に上陸をいたしまして、昔は削っていたわけですけれども、それに加工するという形で、ほとんど利潤というか価値が出ないという状況の中でペイがしないということで赤字連続、あとは会社更生の中止か破産かというようないろいろな状況のところを数多く見ておるわけでございますけれども、これに対する対策というのはなかなか大変な状況だと思いますが、雇用情勢の見通しをどういうふうに見ているのか、あるいは対策ということについてどう考えているのか、これは労働省の方にでございますが、お尋ねしたいと思います。
  44. 廣見和夫

    ○廣見説明員 今お尋ねのございました合板ベニヤ関係でございますが、この関係の業界につきましては、需要の大半を占めております住宅需要との関係もございまして、また最近円高の急速な進展というようなことで、確かに厳しい状況にあるというふうに見ております。雇用者もかなり大幅な減少を続けておるわけでございます。例えば合板製造業ということで従業員数を見てみますと、これは農林水産省のお調べのものでこざいますが、五十五年約四万五千だったわけでございますが、六十年に三万二千程度まで減少してきておるということがございます。そういうような状況にございますし、またことしからは関税の引き下げということに伴います国内対策の一環としての五カ年計画の過剰設備の廃棄ということもございまして、これに伴う離職者の発生が見込まれておるというところでございます。  労働省といたしましては、合板製造業につきましては特定不況業種ということで指定しております。これで雇用調整助成金等の支給、あるいは特定求職者雇用開発助成金等による再就職の促進ということをやっておるわけでございます。また、単板ベニヤ関係につきましては雇用調整助成金の指定業種に指定いたしておりまして、失業の予防等に努めているという状況でございます。
  45. 緒方克陽

    ○緒方委員 今合板ベニヤ関係の厳しい現状についてお話があったわけでありまして、調整給付金であるとか幾つかの手だてはされておりますけれども、基本的にはそういう問題だけではもう解決しない本当に厳しい現状にあるということでございまして、これは具体的に今のような制度的なものだけではとても解決できないのではないかという意味で新たな政府関係への要請、要望といいますか、そういう形で出していくということにしたいと思いますので、その節はぜひ御協力をお願いしたいというふうに思います。  次に、円高差益の還元の問題について御質問をしたいと思います。  この問題についても本委員会で随分議論をされてまいりました。国民の多くからは円高というのは大変いいように言われているけれども、実際にはデメリットばかりがあるんじゃないかというような声もありますし、円高差益はどこに行ったか。電気料金とか、あるいはガス料金がほんの気持ち程度下がったということではないか。高級ウイスキーなど、とても庶民の口には入らないわけでありまして、そういう意味では非常に円高というのは国民の生活には返ってきていないということで、経済誌だけではなく、一般の新聞、テレビなども報道をしておりますし、私たち国会議員にも、そういう意味ではいろんな声が出てきておるわけでございます。さきの委員会答弁など、あるいはマスコミでも、通産省や経企庁としてはそれなりの努力をしているということで、百貨店、スーパー、流通業界との首脳の懇談会をしたとか、あるいは幾らかの啓蒙活動をされたということは承知をしておりますけれども、しかしまだまだ国民としてはその問題が還元されてないという声があって、非常にギャップがあるというふうに私は思いまして、そこが一番問題ではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、その一番端的な例、電気料金、ガス料金の問題で質問したいと思いますが、これは幾つも言いますと時間がかかりますから、ちょっと電気料金の問題で質問をしたいと思います。  私は、電気料金は今、六月からですか暫定引き下げという形でされておりますけれども、正式にこれは新体系に改めるべきではないか、そうしなければならぬような大変な問題があるのじゃないかというふうに思いまして、その点についての見解をお尋ねしたいと思います。  まず第一は、電気料金、ガス料金が暫定引き下げになるときに、その根拠を為替レートは百七十八円ですか、それから原油は十九ドルですか、そういうものでありますけれども、それは五月の時点でそうでありますが、今日時点では、例えば九月の平均でもいいですし、十月平均でもいいですけれども、その当時から見ますと幾ら下がっているのか、何%変わっているのかということについてお尋ねしたいと思います。
  46. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 お答え申し上げます。  六月に実施されました暫定引き下げの際の算定諸元でございますが、先生お話しございましたように、為替レート百七十八円、原油十九ドル、それからLNGにつきましては二十三ドルというふうに入れたわけでございます。その後、最近の推移でございますが、為替レートにつきましては六十一年の上期の平均が百六十四円程度でございまして、御存じのように最近は一時百五十五円程度から、近時百六十円台に戻ってきているという状況にございます。  それから原油価格でございますが、六十一年度の上期の平均CIF価格は十二ドル五十セント程度でございます。OPECの生産調整の影響等によりまして最近上昇傾向にあるといったような状況でございまして、先行き不透明であるというふうに判断いたしております。  なお、LNG価格でございますが、原油価格に換算いたしますと、六十一年度上期の平均CIF価格は二十二ドル五十セントということでございまして、これも原油価格と同様、先行き不透明な状況にあるというふうに見ておるところでございます。
  47. 緒方克陽

    ○緒方委員 それで、六月から実施したときから見まして、為替レートも十何円、二十円近く、それから原油に至っては六ドルの差が既に出てきているということでございます。  前回の質問のときも、しかし原油についてはOPECのある国がということで、これはサウジを指すかどうか知りませんけれども、十八くらいにすると言っているから上がるんじゃないかということで、盛んに通産大臣としては予防線を張っておられたわけであります。確かに冬場の需要期ということで一定の値上がりはするけれども日本に入るときには十八から十九ドルというような言い方をされておりますが、そんなにまではならないのではないかというのがいろいろな専門家の見方であるというふうに私は承知をしております。  そういう状況に加えて為替レートの問題、重油の問題、それに加えて電気料金、ガスの場合には公定歩合の問題もあるわけですね。五十九年度は五%であったわけですけれども、現在は三・五という形で下がっているわけでありますから、いわゆる資金を借りて設備投資をする場合でも、そういった企業は経営的には楽になっているということは明確に言えると思うわけですね。ですから結局のところ、電力業界としては、これは一つの例です、ガスも含めてしなければなりませんが、時間が足りませんから言いませんけれども、一兆三千四百二億と想定した円高差益よりもかなり高い円高差益が出るのではないかと私は思うわけです。問題は、いわゆる原油差益と為替の差益金利差益、この三つのトリプルと言えるような好条件の中で、電気料金の再引き下げをしないということになれば、次のような問題が起きるんじゃないかと思うのです。  三月の決算では、昨年の九電力の収益は一兆七千六百五十一億ですか、これは多分税引き前と思いますけれども、それをはるかに超す、三千億になるのか五千億になるのかわかりませんけれども、なるんじゃないかというふうに、私は専門家じゃありませんけれども思うわけです。そうすると、その出た利益を一体どうするかというのが問題になると思うわけです。それで膨大な利益が三月決算で出ますと一体どうなるかといえば、税金に払う以外にないということで、政府がごっぽり税金を取る。政府は税金を欲しいということになると思うのですが、みずからが円高差益は国民に還元しなければならぬと言っている政府が、電力会社がもうかったからというので全部税金に持っていくというのはちょっといかがなものか、国民的には納得しがたいものではないかと思うわけでありますけれども、その点が一つです。  それからもう一つは、税金に持っていかれないためにということで、私は仕組みはよく知りませんけれども、今度の差益でも七割、八割が還元、残りは設備投資ということで既に回されているわけですから、さらに出た利益金を、これも設備投資に回すというのも問題ではないかと思うわけですね。  したがいまして、そういう点について、最後に三つとも含めてお尋ねしたいと思うのですけれども、さきの同僚議員の質問の中で、来年度も現行の暫定引き下げをやめるということについてはどうもしがたいというような感じの、それをやめるということにしない、つまり値上げをしないということだけれども、再引き下げはどうかなというような感じの答弁があっているわけですけれども、さっきも言いましたように円高差益原油差益金利差益考えれば、三月決算まではまだ時間はあります。しかし、ぎりぎりになってからでは差益をどう戻すかということも、技術的にはいろいろありますよ、ありますけれども、そろそろ検討に入る時期ではないかと思うのであります。その点についてどういうふうにお考えなのか、お尋ねしたいわけです。
  48. 田村元

    田村国務大臣 私が申しましたOPECの中で十八ドル云々といいますのは、そういうようなことを主張する向きもあって不透明さを申し上げたわけでありまして、別に予防線でも何でもない。私は個人的な感情からいえば、別に還元に反対というわけでも何でもない、差益還元を阻止する理由は何もないのであります。  ただ問題は、先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、まだ非常に計算をする数字が不透明でございます。例えば百七十八円で大体一兆一千億の還元という基礎数字を出したわけなんです。それが百五十四、五円まで高くなって、それがまた少し弱含みになってきたということ。それから十九ドルという原油価格、これが十二ドル台まで下がりましたけれども、これが最近九ドル台まで下がりましたけれども、最近やや戻り歩調にあるということ、それから先ほど申し上げたようにOPECの動向がいまひとつわからないということ、いわゆる特に調整問題がしっかりわからないということ。それからLNGが原油換算のバレル二十三ドル、それにほとんど戻ってきておるということ、二十二ドルどれだけということでございまして、不透明な要素がたくさんあるということでありますから、仮に今急いで還元をして、下手をして料金を下げてまた上げなきゃならぬというようなことがあっても大変だし、これはもう行政当局として慎重にというのはお察しをいただきたいのでありまして、見通しを誤れば誤ったでおしかりを受け、決して褒められることのない、これが行政でございます。  それと、六月の一兆一千二百億円というのが三月までの暫定でございますから、これを何とか恒久化しなきゃなりません。そういうような問題もございまして、そこへもってきて新料金にすべきかどうかというような問題も審議会等で御検討中と漏れ承っておりますが、そういういろいろな問題もございますのでいましばらく様子を見させていただきたい、こういうことを今までずっと申し上げてきたわけでございます。現実に、きょうも寄りつきが百五十九円七十銭というようなことで、やや円が最近弱含みという状況です。しかも、これにいわゆる投機という感覚がまだ残っておりますから、これが加わったらどう変動するかわからないという警戒感が我々には非常に強くあるということでございます。
  49. 緒方克陽

    ○緒方委員 今、そういった意味で政府の責任は非常に慎重でなきゃならぬということはわかりますが、国民の声としては、やはりそういった三つのトリプルの差益があるじゃないかという強い声があるということを踏まえて十分対処されますように強く要請して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  50. 佐藤信二

    佐藤委員長 浜西鉄雄君。
  51. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 まず冒頭に金属鉱山の関係について質問いたします。その次に酒税、酒の関係、こういうふうにかなり時間が遅くなりますが、気の毒でございますが、もう決まったことですからおつき合いをお願いいたします。  新聞でたくさん出ておりますから私が今さら言うまでもないと思うのですが、それこそ造船から鉄鋼から自動車から繊維、非鉄金属関係含めて雇用調整が始まった。これはマスコミも全部取り上げておるわけです。  そこで、具体的に秋田県の問題に絞って質問するわけですけれども、その前に、このような状態が起こっておることに対して、私ども一つ一つ小手先で問題の処理をしておったのではもう追っつかないところまできておるんじゃないか、こういう気がするわけです。片方では、アメリカ経済の空洞化が言われた時代から、既に今度は日本経済の空洞化が言われ、それぞれ外に活路を求めるというような資本動きがあるわけですから、内需拡大どころか外へ向かって動き始めておる、これは大変なことだと思うのです。  そこで、これは経企庁長官に以前から私は一つの論争点としてずっとお尋ねしてきた事柄ですから、この際冒頭にお尋ねするのですが、例の四全総、この四全総問題は、これはたしか物特委員会だったと思いますが、私の質問に対して答弁は十月には出るだろう、こういうことであったわけです。早く出してもらいたいという要望をつけてその時点では質問を終わっておったわけですが、四全総の中身はここで私が長々言う必要はないと思いますが、簡単に言えば、軽薄短小時代にも入っておることだし、言ってみれば日本列島全体に平均をして産業を興していこう、つまり内需型の産業というものを平均的に、つまり大都市中心型から地域バランスのとれた産業構造、こういう前提に立っておると思うのです、四全総は。それは三全総の時代からそういう流れできているわけです。同時に、これは働く者、労働者の定住性ということもこの中で盛られておる。こういう思想に立ってまとめられておるかに見えたわけですが、これは新聞紙上ですからちょっとよくわかりませんが、聞くところによると、総理大臣は四全総というよりかむしろ大都市型の産業構造というふうに言われておるとか言ったとか、そんなのがちらちら見えますので、冒頭に、こういった四全総がいつごろ出る見通しなのか、それと関連をして、日本のこれからの産業構造をどのように持っていくのか、こういった基本的な考え方を、秋田県のことをやる前にちょっと聞いておきたいと思います。
  52. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生御質問の冒頭に内需拡大というお話があったわけでございますが、私も先生と全く同じような考えを持っておりまして、この内需拡大の基本は内需拡大できる入れ物をつくることであり、入れ物を大きくすることだと思うわけであります。東京集中で、もう東京の最高値一坪が一億二千万みたいなそういう過密集中では、これは物を買っても置くところがないわけでございますので、やはり日本列島全体を均衡ある発展を実現する、このことが私は内需拡大の基本で、そしてそういう中でその地方の都市をつくり、そこに地方の立派な住宅をまずつくっていくということが消費財を含めての内需拡大にもなる、こういうことでございますので、私は四全総の基本的な考え方もそういうことで、従来から三全総を初めそういう方向で議論をしてきておると思うわけでありますけれども、第三次中曽根内閣になりまして国土庁長官がかわったのを契機にしたかどうかでありますが、国土庁長官と総理がお話しになって、そしてこれまで考えてきておった事務局案というものはもうちょっといろいろな角度から検討する要があるのではないかということで、国土庁の事務局案に対して検討を命ぜられた。片方で、国土庁長官のもとで国土開発に関する私的な諮問委員会のようなものをつくって今いろいろな角度から検討している。こういうことでございますので、今秋という予定であったようでございますが、どうもいろいろ聞いてみますと、来春に四全総のまとまる時期がおくれたが、そのほかいろいろな角度から検討し直して立派なものをつくろう、こういうことのようでございます。
  53. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 状況はわかりました。つまりおくれておるわけでありまして、微妙な発言ですけれども、やはり従来からとってきた方針が少し変わるような気がいたします。今出てきていませんから、内容についてはここで論争するわけにはまいりませんが、物の考え方として長官は私の意見とそう違わないという立場でございます。したがって、成案ができるまでにまだ多少日時に余裕があるようでありますから、最大限産業構造を、将来を見通した中で、今言われた内需拡大の前提になる四全総というものにぜひ力を入れてもらいたいことをこの際要求しておきます。また、四全総が出たときに改めて日本産業構造について、あるいは労働者の定住性の問題、活力の問題、いろいろやってみたいと思っています。基本的な問題は以上にしておきます。  さて、冒頭申し上げましたように、非鉄金属関係円高影響をもろに受けたところでありまして、秋田県だけではありません、あちこちありますが、きょうは具体的に私資料を持ち合わせておるのが秋田県の問題でありますから、そういう非鉄金属鉱山というものが中心となって町を形成してきた、町の経済を保ってきたというところでありますから、具体的には大館市、小坂町に絞ってお尋ねするのであります。  これは年間大体八十四億円、関連のそういう会社といったところにはそれだけの金額が影響を及ぼしている、それだけの発注額があるということでございまして、人口の比率でいきますと、大館の場合は全体の人口の中で六%、しかし小坂町の場合は三二・一%、これだけの影響があるわけであります。これらが全くにっちもさっちもいかなくなっておるわけでありまして、この金属鉱山が閉山をされ、あるいは閉山寸前、全国的にもあちこちあると思いますが、ここに絞って、どのような産業政策地域対策、つまり雇用対策がかなり深刻になってきておると思うのですが、後ほどまた労働省の方にも具体的にお尋ねしますけれども、まずこう絞ったこの状況の中でこれからどのような指導をされるのかを聞いておきたいと思います。
  54. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおり、今非鉄金属鉱山というのは急速な円高と国際的な商品市況の低落により大きな影響をこうむっておりまして、既にことしの上半期でも七鉱山が閉山をするという状況になっております。  私どもこの問題を基本的にどう考えるかということで、ことしの夏から鉱業審議会におきましていろいろな議論をしていただいておりまして、九月に出ました建議でございますが、その中身は、日本の非鉄金属鉱山の意義ということを三つの点から考えております。一つは安定的な国内資源、二つ目に海外資源開発の技術を涵養する、三番目に、先生今御指摘地域経済なり雇用における意味、こういう観点から国内鉱山の意義を認めておるわけでございますが、ただ経済性というものを考えていかなければならないというものが基本にございます。  これで三つに分けておりまして、一つはこのままで存続が可能であるもの、二番目に合理化等によって存続が可能であるもの、これが大半であろうかと思っておりますが、三番目に鉱量が終わるあるいは閉山せざるを得ないものというふうになっております  これらについてそれぞれ国、地方自治体あるいは企業がどういうことをするかというのが建議の中に書いてございます。国、地方自治体はその企業の合理化等についてできるだけの支援を行うこと、それから地域経済に対して閉山あるいは合理化によって吐き出された雇用についてできるだけの支援を行うというようなことが建議に書かれております。例えば公共事業等において、そういう地域に対してできるだけかさ上げあるいは集中をするというようなことも一つの方法ではないかということが建議に言われております。
  55. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 今言われたのは九月十二日ごろの提出と思いますが、この建議書の中に盛られておるかどうかわかりません。つまりこの円高で差が出たわけですから、緊急措置としてのこれの価格差補給金制度というものがこの中に盛られておるのかどうか私はよくわかりませんが、この点、そこに絞ってちょっと質問します。
  56. 野々内隆

    ○野々内政府委員 価格差補給金構想につきましては、審議会の議論の中で自治体、労組、業界から要望があったことは事実でございますが、審議会全体としては合意に至らず、したがって建議の中には入っておりません。審議会の会長が通産大臣のところに建議書をお持ちになったときに、そういう要望があったということを御説明になっております。
  57. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 事情はわかりました。それでは、言ってみればもうからぬからこうなっておるわけですからね。もうからぬ理由は、言うまでもなくそれだけの予定された収入が入ってこない、円高によってずっとだめになったということです。それならば、これをよみがえらせる、何とか閉山を免れるには多少の人員合理化その他も含めての合理化が必要かもわからぬけれども、一番肝心の価格差補給金が論議はされたがこれが採用されなかったという、これは一番大事なところでむしろ不思議でならないのですが、どういう理由でこれが採用されなかったのか、この分だけ聞いておきたいと思います。
  58. 野々内隆

    ○野々内政府委員 審議会におきます議論の中で価格差補給金が議論されたわけでございますが、大勢としてとるに至らなかった理由が幾つかございます。一つは、現在我が国産業構造の調整が行われつつあるわけでございますが、これは鉱山だけではなしにいろいろな業界で行われており、そういう流れからいってこの価格差補給金制度というのは好ましくないのではないか、適合しないのではないかということ、あるいはそういう制度をとることによって海外からの批判があるのではないか、あるいは企業の活力という点から考えてむしろほかの方法をとる方がいいのではないか、このような議論がございました。
  59. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 簡単に答えてもらえればいいのですが、それではほかにかわる方法で、何か特段ここで言えるものはありますか。
  60. 野々内隆

    ○野々内政府委員 そこで、最も現実的であるということで採用されたのが金属鉱業安定化融資という超低利融資でございます。これは五年間平均二・二%、最初の一年半が〇・三%という超低利の融資でございまして、これを活用しようということになり、昨日の閣議で決定された今回の補正予算の中で、この融資幅を拡大をし、それから対象事業をふやすということが決定されております。
  61. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 その裏打ちが予算でされたということですが、どの程度の予算が裏打ちされておるかということをここで言えますか。
  62. 野々内隆

    ○野々内政府委員 今回の予算によりまして下期の融資規模が約百四十五億円、利子補給のための補正予算が十八億円を予定いたしております。
  63. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 きて結果は、そこに働く人たちあるいはそれにぶら下がっている人たちが、地域経済がこれで急速にだめになるわけでありますから、関連産業も含めてそういった人たちにかなりの失業が出ておるわけです。これを救済するというか、言ってみれば転職、転業ということもあるだろうし、鉱山関係にかわる誘致の問題もあるだろうし、いろいろ想像されることがあるわけですが、それだけの失業者が出ておることに対して、救済を中心とした当面の手だて、方法というものが現在何か具体的にあるのかないのか、公共事業も含めてそれを聞かせてください。
  64. 野々内隆

    ○野々内政府委員 鉱業政策面からまいりますと、今申し上げましたように鉱山の合理化を支援するための各種の施策というものが行われております。鉱山の存在する地域に対する対策といたしましては、現在まだ具体化はいたしておりませんが、例えば公共事業についてできるだけ集中的に行うというようなことを既に建設省にお願いいたしております。その他、当該企業並びに地元で今後いろいろ計画をお出しになる段階で、政府としても各省相談の上御相談に乗り、できるだけの支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  65. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 きょうは国土庁に声をかけておりませんので、これ以上詳しいことをお尋ねするのは無理かと思いますが、こういう地域については最優先的に適用して、公共投資をやって、当面何とか町に残れるような状態をつくり出してもらいたい、そのことを要望しておきます。  労働省関係でお尋ねいたしますが、秋田県の北鹿地帯というか北鹿地域、鹿角市、大館市、この地域に、間もなく千名になるだろうと思いますが、千名の失業者が出ておるわけであります。これらの職業を変えていくとか転職とかということも関係ありますが、公共職業訓練所と申しますか、そういうところに入所したいと思っても受け入れる器があふれてできない、無理だということもちょっと聞いております。この辺の実態はどうなっていますか。
  66. 大月和彦

    ○大月説明員 不幸にして離職された方の再就職を促進するという立場から私ども行っております職業訓練は非常に大事である、こういうふうに認識しているわけでございます。  今お話しの秋田県北地方には、能力開発を行う施設としまして、雇用促進事業団が設置運営しております施設が一つと、県が設置運営しております施設が一つ、現在この二校がございます。そして、これらの二つの訓練施設におきましては現在百八十一人の方が再就職のための訓練を受けているわけでございますが、そのうち、これら金属鉱山からの離職者の方は半分以上の九十八人となっております。私どもとしては、離職された方が希望した場合は、今までのところ全員がこの二校の施設で訓練を受けている、こういうふうに理解しているわけでございます。  それで、さらに今後不幸にして離職者が発生し、教育訓練を受けることを希望されるような場合、私どもとしては、こういった二つの施設で間に合わないような事態になった場合には、民間にございます各種学校とか専修学校とかそういったところに委託して能力開発を行う、こういう手段も現在検討しておりまして、今後発生した場合にはそういうことによって対応できるものというふうに考えております。
  67. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 どうせ私は近いうちに現地へ行って見てこようと思っています。現地の声を十分把握してまた改めて提起をいたしますが、結論として、こういったところではさっき言ったように下請、孫請、関連会社その他があり、親ガメこけたら皆こけたというような状態になるわけですから、こういう意味での失業対策上、ぜひ特定不況業種指定の上、きめの細かい指導をこれから十分行ってもらいたい、このことを要求いたしまして、この問題については一応打ち切っておきます。  それから、少し難しい話が出ましたから、一息入れる意味でお酒の問題であります。 これは国際的な問題ですからお互いがここでかんかんがくがくやる必要はないと思いますが、実はこの問題について私は以前二回ほど取り上げたことがあるのです。きょう新聞の切り抜きを持ってきておるのですが、これは十月九日の朝日新聞ですが、「円高差益還元私たちの手で」ということで、「スコッチウイスキー 東京地婦連が並行輸入計画」これは見られたと思うのです。私も第一回目の質問のときにはこういう考え方に立って、つまり輸入業者などがマージンを取っているから我々の口に入るときには高級ウイスキーは高いのだろうというふうに考えておってそういう質問をしたわけですが、その後実はそうではないということがわかりました。欧州共同体の中で日本の税のあり方、つまり酒税と関税のあり方について随分不満が出て、朝日新聞その他が取り上げてきた切り抜きをずっと見まして、これは第一回目に論議をしたことと違うということで、第二回目にその税のことについて質問をいたしました。そのときには専門家の大蔵省から——余り専門的でなかったと思いますが、私もいまだに納得ができせんので、せっかくの機会ですからこれについてお尋ねするわけです。  たまたま、きのうかおとついごろ来られたのですが、大型の使節団が各政党あるいは各省庁にこの問題でお願いに来ておると思います。私は決て相談をして口裏を合わせたわけではありません。偶然の一致なんです。きょうこの問題を質問するについてたまたまヨーロッパから来られておるということを聞いたわけです。国際的に日本の鎖国主義的なことはだめだということで、中曽根総理みずからも今や国際化時代に入った、自由化だということで門戸を広げて、漸次自由貿易の線に今近づきつつあるわけですが、事この問題については物すごく差があるわけです。一体これはどういうことなのか。まず私から見れば二重課税じゃないかと思うのです。国産品と外国輸入品と比較した場合の税のあり方が余りにも差がひどいので、その税のあり方について、私にわかるようにもう一遍説明をお願いしたいと思います。
  68. 薄井信明

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  今先生御質問の件でございますが、日本で売られている洋酒が高いという観点からの御質問がかつてございました。その際には流通の問題等が御議論されたことを私ども読ませていただいておりますが、日本で売られている洋酒と同じような小売価格の国産品と比べて、国産品にどれだけ酒税がかかっているか、それから同じ価格の洋酒がどれだけ税金がかかっているか、こういう観点から比較いたしますと、これはむしろ国産品の方が税金が重い計算になるわけでございます。そういう意味では、私ども、酒税法の世界では国産品と外国品は何ら差別をしていないということを申し上げられるかと思います。  ただ、ECがあるいはアメリカが私どもに対して酒税法を直すべきではないかとおっしゃっている向きはこういう点でございます。二点ございまして、私どもの酒税法は、ある価格以上に高くなりますと、価格に応じて税金をかける従価税という制度をとっております。ところが、ヨーロッパではお酒の税金は量に応じて税金をかける、日本流に言えば一升幾らというような税金しかない。ところが、日本の場合は高いお酒には高い税負担をお願いできるという考え方から、価格の高いお酒に従価税というものを適用している。この点がヨーロッパ、アメリカの酒税制度と違うので、これを直してほしいという御主張が一つございます。  それからもう一つは、日本の場合、特にウイスキーを中心かと思いますが、等級といいますか級別、特級、一級、二級という差をつけて、これに税率をそれぞれ張りつけております。それで、特級のものは品質もいい、高い、こういうものをお買いになる方は担税力があるという発想から税率が高くなっております。二級は税率が低い。こういう仕組みをヨーロッパではとっておりません。したがいまして、この級別をなくしてほしい、こういう観点から御要望をいただいておるわけでございます。  やや長くなりましたが、この御要望の点につきましては、昨日まで開かれておりました政府の税制調査会にも私ども十分説明してございまして、きのういただきました答申の中では、酒類間あるいは級別間の税負担の格差は、難しい問題もあろうけれども、縮小する方向で検討する方が適当であるという答申を昨日いただいたばかりでございます。  以上です。
  69. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 やはり、日本のそういう税金のかけ方の違いだということはこれはわかりましたね。問題は、その違いがわずかならばいいが、その違いの結果どういうことが出ておるかというと、これはちょっと言っておきますが、スコッチの場合は蔵出し価格は五百七円ですね、これは一番現行のやつです。これは言ってみれば最低の酒税、関税を払った場合のコストの関係で今私が説明しておるわけですが、スコッチは五百七円、これはFOB。それから国産ウイスキー二級、これが四百六十九円。だから、五百七円と四百六十九円ですから、この限りにおいては大したことはない。つまり、スコッチが一〇八%というふうになっていますね、差が。それから輸入関税は、スコッチの場合二百四十七円、日本の場合はゼロ、もちろんかかりませんね。酒税はどうなっているかというと、スコッチウイスキーは二千九十八円ですね。日本国産品二級、わずかの二百九十六円です。まずこれでも、今外国と違う税制だからと言われましたが、このように差があるわけです。したがって、そのコストといいますか、つまり酒税、関税を払った後のコストでいきますと、スコッチの方は二千八百五十三円、国産ウイスキーの二級は七百六十五円、何と三七三%も比率が出てくる、スコッチウイスキーの方が高い。  さてそうすると、それじゃもしこの税金を言ってみれば外国並みというか、あるいは輸入品を国産並みと言ってもいいでしょうね、とにかく公平に適用されたというふうにみなしてやった場合に、スコッチは、冒頭言ったように五百七円、国産品は四百六十九円、言ったとおりですね。それで輸入関税が二百四十七円、これはスコッチの方です。日本の場合はそれはゼロ。そうすると酒税もお互いが同じように千百九十七円。そうするとスコッチの方が、つまり輸入関税だけが高くなって千九百五十一円。そして国産ウイスキーが千六百六十六円。わずか一一七%、スコッチの方が高いだけ、こういう結果になります。  だから、バーに飲みに行っても、我々は国産品しか飲めない。スコッチは結局社用族だとか、あるいはまあ大蔵省の偉い人はスコッチを飲めるかもわからぬが、そういう庶民の手の届かないところに置かれておるわけですね。だから、これは明らかに日本が税制によって国内産を保護し過ぎておるということがいろいろな新聞、それこそECの各種団体がありますね、そんなところから絶えず、これはガットに提訴するぞ、するぞといって問題を持ち込まれておるわけですが、私はここに原因があると思うのです。  したがって、現在の税のあり方がいずれ検討されておるという、何かそういうニュアンスがありましたから、私はそれに期待する以外にないと思いますが、もう少し庶民の段階までそういうものが、おいしいものはおいしいものとして価格で競争するのはいいが、税金で差をつけることのないようにこれは検討してもらいたい。もう一遍この点について、大蔵省はどういう将来展望を持っているか、聞かしてもらいたいと思います。
  70. 薄井信明

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。  今御指摘のスコッチの件ですが、日本で八千円程度で売られておりますスコッチ、税金を計算いたしますと、そのうちの大体二〇%程度でございまして、先ほど御指摘のような、税金だけでこの値段ができ上がっているということではないように私ども承知しております。ただ、先ほど私申し上げましたように、制度の仕組みが違うということから、二級との比較をいたしますと、先ほどのようなケースも出てくるかと思います。  そういったことを受けまして、先ほど申し上げましたように、昨日いただきました税調答申では、「各酒類の現行税負担水準は、歴史的、沿革的な要因の積み重ねによるものであり、各酒類の生産・消費の態様や財政事情等を考慮した場合、これに急激な変革を加えることには困難な問題が多いが、近年の酒類消費の状況等を考慮すれば、税負担格差の縮小を図る方向で検討することが適当である。」という答申をいただいておりますので、また年末にかけまして議論が進んでいくかと思いますので、この線に沿って検討を進めてまいりたいと思っております。
  71. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 酒の話はこのぐらいにしておきます。またひとつ税調の方で案が出てまいりましたときに、庶民の味方になってそのときにもう少し発言したい。きょうはこれでとどめておきます。御苦労さんでございました。よろしく頼みます。  さて次は、最後の問題でありますが、これは九月二十二日の毎日新聞に出たことでございますから、この問題を今から質問をいたします。  さて、漁船といってもいろいろあるわけでありまして、サケ・マス漁船からカニ漁船から母船式底びき網漁船からトロール漁船、あるいは北洋はえ縄、刺し網漁船、たくさんあるわけですが、これらの船を外国に売る、つまり輸出する。この問題について、我が国の優秀な漁船を無差別に外国に売ったのでは、それこそ競合する海の上ではいつも負ける理屈になるわけです。向こうの方が恐らく人件費も安いし、日本の優秀な船は鬼に金棒。そういうことを避けるためにも、日本の漁業者を保護する意味からも、何らかの規制があると思うのです。私はその点詳しいことはわかりませんから、まずそういった漁船の輸出について何らかの規制があるのかどうか、これから聞いておきたいと思うのです。
  72. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 漁船の輸出につきましては、三段階の審査なり規制をしております。  まず通産省といたしましては、輸出貿易管理令に基づきまして、これは漁船だけではございませんで船舶一般につきまして輸出承認をしております。その輸出承認をする前の段階で運輸省が、海上運送法に基づきまして船舶の譲渡の許可という形の大臣の許可をしております。  それで、この二つが法律に基づく承認と許可でございますが、今先生御指摘の漁業との調整の観点がございますから、その二つの許可と承認を行います前段階といたしまして、水産庁がその漁船を出していいかどうかということについて実質的な審査をするという形になっておるのが実情でございます。
  73. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 それでは、今船舶一般についてということでの説明がありましたが、漁船に絞った場合に、冒頭私が言ったような一つの目的——規制というもの、つまり認可をするというのは、主体的には審査をするのが水産庁だということですからこれはわかりましたが、そういう許可をするということは、やはり一定の目的があってやることですから、その目的をわかりやすいようにちょっと言ってもらえませんか。なぜそういうふうな規制をするのか、こういうことについて。
  74. 白石司郎

    ○白石説明員 ただいま御説明がありましたが、法律的にはかようなことでございます。  水産庁といたしましては、我が国の水産業を健全に維持発展させるという見地から、漁船の輸出に関しまして輸出貿易管理令及び海上運送法の運用上、通商産業省及び運輸省から協議を受ける、こういうことになっております。
  75. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 これは通産なのか、ちょっとどこに質問したらいいかわかりませんが、この輸出承認基準というもの、これは水産庁なのか運輸省なのかよくわかりません。輸出承認基準というものはいつごろから実施するようになったのですか。そういうものができた時期はいつごろですか。
  76. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 この輸出承認につきましては、戦後、外国為替貿易管理法というのができまして、輸出貿易管理令は外国為替貿易管理法のもとに政令としてできております。したがいまして、これは戦後新しい法体系になったときからずっと持っている法体系でございます。
  77. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 輸出承認基準というものは、不変といえばおかしいのですが、戦後外国為替管理令か何か知りませんが、そういう外為法ができて、それと同じように並行してできたという説明なんですが、そういう規制、基準は守られてきておるのかどうなのか。承認基準、船の数ですね、これは年度によって変わるのか。戦後できたままずっときておるのか。一般船舶ならばそうかもわからぬが、漁業問題についてはかなり漁業者の死活問題にかかわることですから、厳しいというかそういう承認基準というものがあると思うのですが、それは変わるものなのか、ずっと不変できておるのか、それを聞かしてください。
  78. 白石司郎

    ○白石説明員 輸出の基準につきましては、年を二つに分けまして上半期、下半期、こういうことで見直しを行っております。
  79. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 その見直しをするということはわかりましたが、見直しをしなければならない理由というか状況、なぜ見直しをしなければならぬのかということが一つ。それから、以前はカツオ・マグロ船というふうに一くくりにして言っておった。これは一つの種類だ。それが今度カツオとマグロというふうに分離してこれを一隻ずつという扱いになったのは、これもなぜなのか。この二つについて聞かしてください。
  80. 白石司郎

    ○白石説明員 まず一点でございますが、漁船の輸出につきましては、我が国の漁業に悪影響を及ぼさないということで具体的な規制が行われているわけでございます。そういうことで我が国の漁船との競合、我が国沿岸漁民等に重大な影響を及ぼす、そういうような観点から見直しを行っているわけでございます。  それから第二点につきましては、カツオとマグロと規制を分けたということでございますが、これは昭和五十五年の下期からこういう規制をしいたわけでございます。その理由といたしましては、当時カツオ漁船の減船問題がございまして、漁業者の負担の軽減を図るという観点もございまして、この減船自体が業界の自主減船であったということもございまして、その対策の一環といたしまして、従来カツオとマグロは一緒の規制枠があったわけでございますが、それをカツオとマグロと分離したという次第でございます。
  81. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 自主規制であったということですね。これはまた私はずっと調べてみますが、規制内容が上半期、下半期、毎年変わることについての説明がありましたが、どうもその辺がはっきりしませんな。そうすると、逆にこういうふうに聞いた方がいいんじゃないですか。承認基準が下半期、上半期、今言うようにマグロ船もカツオ船も分けた、いろいろ変わってきていますね。変遷がありますね。そういう変遷を経て今日があるわけですが、例えば今日時点から過去十年間くらいさかのぼって、漁船の輸出状況の把握というか、これはどこか記録にとどまっておらなければならぬと思うのですが、そういう漁船の輸出状況をウオッチしておるのかどうなのか、この辺の輸出実績、これをまず聞いておきたい。把握できておるのかどうなのか。
  82. 白石司郎

    ○白石説明員 漁船の輸出実績につきましては、水産庁の方で把握しておりますのは十トン以上の漁船でございまして、輸出承認を取得したということで御理解いただきまして申し上げますと、実績につきましては昭和五十年ごろから五十三年ごろまでは増加の傾向でございまして、その後傾向といたしましては減少になっております。さらに最近、再び増加の傾向で推移しております。  以上でございます。
  83. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 基準の内容といい、種別といい、一貫して変わってない状態ではない。むしろ逆に、今の答弁を聞いていますと、非常にぐるぐる変わっている、中身が判然としない。例えば、現在、既に輸出してもよろしいという許可を受けた船が和歌山県の勝浦漁港につないだままになっていますね。そうすると、水産庁は十トン以上の承認をしたということで、もうそれで何となく終わりみたいになっていますね。それが果たして正常な手続によって本当に輸出されたのか。手続はしたが、そのままこの第八瑞漁丸というのがまだ停泊しておるのですね。何年も放置しておるわけです。そういうものも含めて、今まで承認した船が昭和何年には何隻、そういうものが記録されておるはずですから、その記録はありますかと私は言っているのです。把握されておりますかということです。もう一遍その辺。     〔委員長退席、加藤(卓)委員長代理着席〕
  84. 白石司郎

    ○白石説明員 ただいま申し上げましたとおり、輸出承認を得ました隻数について申し上げます。昭和五十年から順次申し上げますと……
  85. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 あればいいのです。それじゃそれをコピーでもいいです。簡単な資料でいいです。今昭和五十年からということでずっとここで述べようとされたわけでありますから、その分を私の手元に下さい。委員長いいですね。
  86. 加藤卓二

    加藤(卓)委員長代理 はい。
  87. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 そこで、九月二十二日の毎日新聞、これを私は手元に持っていますが、これによれば、和歌山県の那智勝浦からトラック島に輸出されたはずのマグロ漁船、これが巧妙な手口で仏領ニューカレドニアにトンネル輸出された、これが関係者の証言で明るみに出た、こう書いてある。このことを水産庁、通産省あるいは運輸省、それから売買がありますから大蔵省、一体どこまで知っておるのか。簡単でいいです。深く知っているとか、全然知らなかったとか、そういう答えで結構ですから、順次、水産庁、通産、運輸、大蔵どうですか。
  88. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 通商産業省といたしましては、輸出をするときに輸出の承認を取るわけでございますが、今先生の御指摘のものについては確かに輸出承認証を下付しておりまして、税関を通ったというところまでは確認しております。ただその後のことについては確認しておりません。
  89. 長尾正和

    ○長尾説明員 通産省の方から御説明ございましたように、輸出承認の前に海上運送法による譲渡の許可がございます。その許可につきましては、本件につきましては昭和五十八年三月に運輸大臣の許可をしておりますが、その後手続的には説明がございましたように輸出承認等の手続がございまして、その後については把握しておりません。
  90. 白石司郎

    ○白石説明員 水産庁といたしましては、当該漁船はミクロネシアに輸出するということで譲渡許可及び輸出承認を取得いたしまして、ミクロネシアに向けたということについて承知しておりますが、その後の事実については承知いたしておりません。
  91. 中島達夫

    ○中島説明員 税関の立場からお答えいたします。  当該新聞記事にございました、これに該当する漁船が税関で輸出許可されたことは承知しております。それで、当該漁船が税関に申告されました際、税関では先ほどお話にもございましたように輸出承認証の確認をいたしました。それから仕向け地であるトラック島の公的機関が発給いたしました船舶国籍証書、こういうものがございますので、これで船籍港を確認いたしまして、それから輸出を許可しております。
  92. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 さて、今それぞれ答弁がありましたが、許可をされたこと、あるいは処理の段階では知っておるが、その後どうなったかがわかってないということになります。そうでない、全部知っておるというのなら今すぐ発言してください。それぞれが手続方については知っておる、あるいは認可されたことは知っておるが、後は、私から言わせれば、悪く言えば野放し、全然追跡調査もなければチェック機能も働いていない、こう思うのです。このことを具体的にまず指摘しておかなければいかぬと思うのです。  大蔵省にちょっと聞くのですが、その今見たあるいは知っておるという事実関係書類では、私はここに資料を持ってきておるわけですが、言葉で言えば第二十五立勝丸関係、これは申請人は立木喜一という人です。これは各大臣あてにトラック島に輸出をするという、運搬船として使用するという誓約書までついておるのです。これは申請が五十九年三月三日。これは事実と違うわけです。明らかにこの申請をしたところでないところに持っていっておるわけです。そして運搬船でもなくなっておるわけですね。だから内容も行く先も違うわけですが、これは一体どういうことなんですか。  それから代金の決済、これは大蔵省なのか、水産庁だと思いますがね、決済どおり行われてはいない。つまり国内の業者がその船の代金を払っておるわけですね。向こうへ持っていって外国からもらったのではなくして国内の業者がそれを支払っておる。こういったケースについてはどうなるのですか。これは外為法あるいは輸出貿易管理令あるいは関税法に違反すると私は思いますが、一体この見解はどうなんですか、実態をどこまでつかんでおるのか、これを聞かしてください。
  93. 中島達夫

    ○中島説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、税関といたしましては、輸出承認証それから船舶国籍証書、こういうものを確認いたしまして、審査をいたして輸出を許可してあるわけでございます。それで、それが果たして輸出後どのようになっているかということまでにつきましては、当方といたしましてはそのようなことは事実上できませんので確認をいたしておりません。  なお、決済の問題でございますが、この問題は税関といたしましては特にいたしておりません。別の外為法上の問題に支払い関係はなりますので、税関としてはタッチしておりません。  以上でございます。
  94. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 今、税関の立場での答弁ですからそれなりに意味はわかりますが、結論を言えば、後どうなったかわからぬというのですよ。そういうことですね。  それから、この金の決済の関係をまたここでやると時間がなくなる。これはまた実態を調べて、もしもそれが本当ならば一体どうなるのか、そんなことが許されていいのかどうかという大きな疑問が私にはあるわけですから、これは今でなくてもいいですから解明してもらわなければなりません。話は預けておきます。どうせ私はまたこの問題はずっと続いてシリーズ物でやってみたいと思っておりますから。  そこで今の第二十五立勝丸、これに絞って言いますと、大阪税関の管轄にある下津税関支署、これに対してトラック島を輸出先、こういうふうに申告手続していますね。下津税関支署はこの関係書類はもちろん受理しているわけですね。にもかかわらず、その船が出航のときに立勝丸の乗組員が、輸出先と全く違うニューカレドニアに行く、こういうふうに言っているのです。さらに船体のペンキを塗りかえて船尾にヌメアというふうに書いておるわけですね。このヌメアというのはニューカレドニアの町の名前です。言葉で言い、船にもそう書いておる。これは素人でもわかる。書類に掲載された輸出先と全く違うことを口で言い、船尾にもそういうことを、今から行くところが書いてある。にもかかわらずそれを出航させた、これはどういうことですか、全然わからぬ。船が売れて向こうでまたどうなるかはわからぬにしても、船が日本を出るときに明らかにこれはだれが見たってわかる。それがそのまま許された。どうぞ行ってください、これはどういうことですか。この事情知っていますか。
  95. 中島達夫

    ○中島説明員 お答えいたします。  正当に輸出の許可を税関が行ったということは、先ほどお話し申し上げましたとおり事実でございます。それで、船体にニューカレドニアのヌメアというような表示があったそうでございますが、これについて税関が確認をしたかどうか、こういうことは実は二年半前のことでございましてよくわかっていないわけでございます。
  96. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 そんなでたらめは通らぬですよ。幾らでも証人がおりますし、わからなければ改めてそういう人たちに国会に来てもらって、ここで事情を説明してもらうという手もあるわけです。これは私はシリーズでやりますから、きょうのところはその結論も預けておきますが、これは明らかにしなければなりません。二年前だからそれはわからぬというようなことでは済まされない。  ちょっと言いますと、こうなるんですよ。この立勝丸の輸出の手続をとった人はこの船主の友達、知人。この知人という人が昭和五十六年ごろから五十八年にかけて、関連会社を輸出元にしてパラオ向けにそういう商売というか輸出をやったわけですね。そのときの漁船の五隻が実際にはインドネシアでマグロ漁船として使われておるわけですね。船の名前は、第三拓洋丸、第十六合栄丸、第八瑞漁丸、第一瓢漁丸、現在は瓢洋丸と名前を変えておる。それと第八万漁丸。このうちの瓢漁丸と万漁丸はインドネシアで運搬船に使うということにして九州の運輸局、いいですか、これは運輸省の関係、九州の運輸局鹿児島海運支局にそういうことで操業届を出しておる。しかし、実際はインドネシアで漁業に使われておる。これはパラオからインドネシアに売られた売買契約書まであるわけでありまして、こういうようなやり方、これは密輸に当たるのじゃないですか。  また第三拓洋丸の場合は、立勝丸と同じように第三国に売買するよう工作しておる書類まで出てきたのです。こんないいかげんなことは、これは一体どういうことなんですか。これは水産庁の指導なのか税関なのか運輸省なのか、さっぱりわからぬ。  これらを総合的に把握をして、そしてチェックする。チェックすることは、冒頭私が聞いたように、これは日本の漁業者を守るため。日本の優秀な漁船が向こうの手に渡れば海上で競合するわけですから、特に競合するところについては厳しい規制があるはずです。この規制についてさっき答えがなかったけれども、厳しい規制があるはずです。そういう目的というものは、やはり日本の漁業者を守るため。ところが、これは全くでたらめで、運搬船に使うと言っていながら漁船に使っておる。そのことは、お互いそれぞれの省庁が、売るときまでの審査あるいは書類はわかっておるが、その後わからないということで、どこが一体責任を持ってそれをチェックし日本の漁業者を守るのか、ここがポイントなんです、私の言わんとするのは。だからこれについて明らかにしてもらいたいし、委員長にもお願いしたように昭和五十年から六十一年まで、まあ六十一年は無理にしても、六十年までのそういう外国輸出したその許可と、輸出が実際そのとおりいっておるかという実態を知るために私が年度別に出してもらいたいと言ったのはそこにあるわけです。これは一体どこがやるのですか。私は特定しませんが、そういう漁業者を守るために、そういうことが守られておるかどうかということをチェックし管理監督するのはどこなんですか。——わからぬなら総理大臣に聞いてほしい。これはどこが所管なのか
  97. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 最初の先生の御質問にお答えしましたように、法律的には輸出承認の段階と船舶譲渡の段階がございます。ただ、実質的に、漁業の保護というような観点からはその前段階として水産庁が事実上把握する、見るという形になっておるわけでございます。したがいまして、これはまだ各省庁の関係で私から責任を持っては申し上げかねますけれども、漁業の保護あるいは国内漁業との競合という観点につきましては、実質的には水産庁の方で見ていただいているというようにとりあえず現在のところは申し上げられるかと思いますが、後で各省と話しまして、もし違うようでしたら次の機会に訂正させていただきます。
  98. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 ほかの省庁でこれに対して責任を持って述べられるところがあったら言ってください。——これもまた宿題にしてパートツーでやります。  そこで、今度はこの手続上、海事代理士、海の事務ということで海事代理士、この海事代理士の性格あるいは任務、資格と申しますか、これを簡単に素人にわかるようによく教えてください。これは運輸省ですか。
  99. 高橋伸和

    ○高橋説明員 お答えいたします。  海事代理士の資格についてでございますが、海事代理士法によりまして、運輸大臣の行う海事代理士試験に合格した者、または、行政官庁で十年以上海事に関する事務に従事した者であって、海事代理士の業務を行うのに十分な知識を有していると運輸大臣が認定した者ということになっております。また、海事代理士の職務でございますが、他人の委託を受けまして、海事関係行政機関に対し、海事関係の法令の規定に基づく申請、届け出、登記、こういった手続を行い、さらにこれらの手続に関する書類の作製を行うということでございます。この海事代理士業務の遂行に当たりましては、誠実かつ敏速にその事務を処理することが要請されております。
  100. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 わかりました。そうすると、簡単でいいですが、船を外国に売る場合、そういう手続は海事代理士以外の人ができるかどうか。
  101. 高橋伸和

    ○高橋説明員 お答えいたします。  海事代理士法の十七条によりまして、海事代理士でない者は、他人の委託により、業として海事代理士の業務を行ってはならないということになっております。
  102. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 にもかかわらず、先ほど私が言った中に出てくる第三拓洋丸、これに関して言いまと、これは、一部上場会社であるニチモウ、これの海外営業部員、名前はわかっておりますがここでは伏せておきます。これが申請手続をとっておる。運輸省の外航課はこれを受け付けておるわですね。今答弁になったように、その業をほかの者はしてはならないわけです。仮に書類その他手伝わせたにしても、最終的にはそれを海事代理士がチェックし、印鑑を押すことになっておるわけですね。これをやらずにニチモウの海外営業部員がその手続をとっておる、これを運輸省外航課は受けておる。これは第三拓洋丸の話ですよ。  このニチモウというところは、以前、いつごろか、大体昭和五十二、三年か四、五年か、五十年前半というふうに聞いていますが、これは第三国へこういう漁船の転売をやっておるのですね。それで水産それから通産の処分を受けているのです。このような会社の海外営業部員が、海事代理士でない人がこういう手続をしたことを運輸省の外航課は受けておるということになると、一体何のためにそういうものをつくってあるのか、あるいは、もとに話を戻しますが、日本の漁業者を守るためにできたそれぞれの制度、チェック機能が全く無意味になっているのですね。こんなでたらめなことがあっていいとは思わない。そういう事実関係というものに対して、つかんでおるのかおらないのか、つかんでおらなければこれは十分調べて後日明らかにしてもらいたいと思います。これはどうですか、知っておりますか。
  103. 長尾正和

    ○長尾説明員 お答えします。  ただいまの第三拓洋丸の海上運送法上の譲渡の許可申請につきましては、御指摘のように、申請の代理人といたしましてニチモウの方がやっておられます。海事代理士法の代理人が行う業務といたしましては、法律の別表で書いてございまして、海上運送法あるいは船舶法等海事法令でございますが、輸出貿易の問題であるとかあるいは我々の譲渡の前段でございます水産庁関係の手続につきましては海事代理士の行う法令の中に入っおりませんので、したがいまして、これら一貫した輸出の業務の一つといたしまして、サービスいうことでこういった業務を代理を受けて行っておるというようでございます。
  104. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 言い回しがはっきりせぬから、実際いいことなのか悪いことなのかわからないのですが、これはもうちょっと調べてください。これは、それぞれの法律があって世の中は運行されておると私は思うのだが、余りにもこのことはチェック機能が働いておらない。資格のない者が、手なれた人がやれば書類上はうまくいくでしょうが、そんなことをすれば海事代理士というもののせっかくこしらえた制度というものが有名無実になるわけですから、これは後日事実関係をまた改めて私の方から聞きます。きょうは時間の配分上、それは言えません。  さて、以上の船の関係に、ついでですからマグロの輸入関係について、これは大蔵省なのか、国際金融局になるのか、よくわかりませんが、今さっき私が言いましたニューカレドニア、こことの取引が、オセアニア水産というのが大阪にあるのですね。この水産会社が現地のアルマトンという会社、外国の名前は難しいのですが、その会社と取引をしてマグロを輸入しておるわけですね。このオセアニア水産、それから親会社の、これは大阪なんですが、パリ、フランスのパリですね、パリという服飾品会社、それから多額の資金というものが現地に流れておる、こういうことなんですが、そういうことで日本円がどんどん行っていいんですか。これは外為法にかかるんじゃないですか。これは、大体そういうことをやろうと思えば大蔵大臣の許可を受けるのが手続上正しいと思うのですが、一体そういうことを勝手にやっていいのかどうか、これを聞かしてください。
  105. 金子義昭

    ○金子説明員 外為法上、その支払いの関係がどうなっているかということをお尋ねでございますが、現在支払いにつきましてはいわゆる外為法に列記してあります取引、例えば直接投資あるいは証券の取得、そういう資本取引にかかるもの、それからまた支払いの方法が非常に特殊な方法であるというふうになっておるもの、こういうものを除きましては一般的に自由ということになっております。したがいまして、今御指摘の点につきましても、一体それがどういう形で金が流れたかがわかりませんと、そもそも外為法上自由な取引に当たるのか、あるいは外為法上何らかの手続を要する取引なのか、必ずしも判然といたしません。私たち、ただいま御指摘の取引について承知しておりませんので、一般的な形でそれが果たして外為法上問題かどうかというのを申し上げるのは難しいということでございます。
  106. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 これも事実をつかんでください。どうせきょうは棟は上がらぬわけですから問題提起のような格好で終わりますが、これは私は総じてゆゆしき問題だと思っていますから。こんなことは手続あるいは書類さえ整っておれば、顔さえちゃんとあればあとはどうでもいいという、結果としてはそうなるわけですね。そうすると悪がしこい、もうけをたくらむ人は、手続のノーハウを知っておるような人は、幾らでも他人の名前を買ったり、好きなことができるわけです。たくさんの証言その他があるわけです。例えばちょっと判こを押して手続に署名してくれれば千ドルやると言われて署名いたしましたという証人もおるわけであります。こんなでたらめが通っていいはずはない。  それから、念書の提出の問題についても、ついでですから、昼過ぎましたから私はきょうははしょるわけでありますが、念書というものは、昔は漁業者本人が一人書けはよかったですね。ところが、これが連名で申請するようになった。これはどういうことだろうか。一名では心もとないから二名にしたのか、何か意味があるのか。この念書の扱いもちょっと聞いておきたいのですが、どういうことで一名から連名の署名にしたのか、わかりますか。
  107. 白石司郎

    ○白石説明員 漁船の輸出につきまして漁業者から念書をとっているわけでございますが、これは第三国に転売をしないという内容のものでございます。これにつきましては、輸出した船は輸出した後に他の国に直ちに転売をしないということで、行政的な指導でそれを防止しようという試みでございます。今御指摘のとおり当初は譲渡人からいただいておったわけでございますが、譲渡人のほかに輸出業者、さらに申請代理人がおる場合はそれも加えまして、二者ないし三者にそういう意識を植えつけまして、そういうことのないような指導をやるということでかようにした次第でございます。
  108. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 これはさっき私が言ったことに関連するのですが、一名から二名にした理由はわかりました。やはり厳しく転売をしないという一つの力をここに持つわけですが、何回も言うのですが、そういう念書を一人から今度連名にしたということは、手続的にあるいは物の考え方では前進だと思うのです。しかし、それが果たして転売されたかどうか、さっきからどなたに聞いても明確にこうこうしかじかでこうだということがない。手続的にはそれこそ水産も大蔵もあるいは運輸も、みんなそれぞれ一生懸命やっておるのだろうと思うが、今言う転売が問題なのでありまして、運搬船ならば魚をとるわけじゃありませんからまあまあ、仮に基準を超えて何隻か多く売ったにしても余り目くじらを立てることはないと思うのだが、問題は漁船としてまだ十分活用できるものを道具を外していかにも運搬船のごとく仕立てて、そして行き先は全然違うところへ売って機械をくっつけて漁船で使う。つまり転売させないということは、そのことをさせないための転売をさせないという意味だろうと私は思う、そうでないと意味がないわけでありますから。このチェック機能が働いていない、これが問題だと私は思う。  したがって、まだいろいろ質問したいわけでありますが、時間が中途半端になりますので、もう昼もかなり経過いたしました。私も声を大きくして腹が減りました。きょうは一応問題点を提起し、それぞれの関係省庁からも意見を聞いたわけですから、これを私もまた整理いたしまして、後日この問題を改めて提起することにいたしまして、さっき約束しました、委員長もうんと返事をされました輸出実績、これを後日出してもらいたい。資料提出の関係をここで言っておきまして、以上で終わらせてもらいます。  皆さん、大変御苦労さまでございました。
  109. 加藤卓二

    加藤(卓)委員長代理 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時七分休憩      ────◇─────     午後三時三十一分開議
  110. 佐藤信二

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。薮仲義彦君。
  111. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、きょうは政府が提出しました総合経済対策、これに焦点を絞りまして何点か両大臣にお伺いをいたしたいと思います。  この委員会では各委員がずっと指摘しておりますように、昨年の九月にG5が行われてからの急速な円高、しかもそれが大幅であったということで、国内景気に及ぼす影響は大変深刻である。特に輸出関連の企業の経営は大変厳しい状態に追い込まれておる。政府の公共事業等の前倒しがありますので、かろうじて内需は持ちこたえておりますけれども、それが果たして景気を回復するまでに至っているのかどうか、この点は非常に問題であろうと思うのでございます。しかも、九月十九日に総合経済対策が発表はされましたけれども、これから補正、実際にお金が動くのは年末に近くなるでしょうし、あるいは規制緩和が、私はこの総合経済対策を読んでみましたけれども、果たしてこれが経企庁長官が言うようにおおむね一ヵ年の間にばたばたと効くような、規制緩和等をいろいろ書き並べてありますけれども、私は余り効くようなものがないのじゃないかなと思っております。  最初に通産大臣にお伺いしたいわけでございますが、大臣は運輸大臣も経験なさっておられます。この経済対策にも直接盛り込まれておりませんが、造船であるとか海運はかっての高度経済成長時代日本の花形というような基幹産業でございました。現在、その状態も日を追って深刻の度合いを深めております。私は、そういうことも含めてきょうはこの総合経済対策が果たして景気を回復する力があるのかどうか、お伺いをしたいと思うのでございます。  さしあたって、通産省が二十七日に発表しました九月の鉱工業生産指数、これによりますと、九月で生産指数が一二二・一、前月比二・六%の増、出荷指数も一一七・五で同じく二・七%の増と上昇はしております。しかし、これを一—九月の生産指数で見ますと、大臣も御承知のように六十年の一—九は一二一・九でありました。六十一年の一—九は一二一・七であります。ですから、前年同月比で〇・二%減じておることになります。同時に通産省が発表した製造工業の生産予測指数、これは十月、十一月いずれもマイナスでございます。これがこのまま低下してまいりますと、今年度の鉱工業生産指数は前年度を下回るのではないか。前年度を下回るということは、かつて第一次オイルショックのとき、昭和四十九年、五十年以来なかったことです。それほど鉱工業の生産は落ち込んでいる。通産大臣はこの状態をどうごらんになるか。また、政府が旗を掲げております四%の経済成長というのは、このようなもろもろの指数あるいは経済の動向を見てまいりますと、私は不可能に近いのじゃないかと思いますが、まず大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  112. 田村元

    田村国務大臣 御指摘のとおり景況感は極めて厳しいものがございます。特に今度の急速な円高は、御承知のように経済の二面性というものをもたらしております。でありますから、一方においてその円高差益というものをどういうふうに国民に均てんせしめていくかということが一つ。しかしまあこれはどちらかというといい方の材料でございますが、一方において急激な円高による不況の波をもろにかぶっておるのが製造業でございます、特に輸出関連。その中でもとりわけ中小企業でございます。中小企業の三分の二は御承知のように多かれ少なかれ下請をやっておる。下請、孫請というものに対して特に不況の波が押し寄せる可能性が強うございます。もう既に押し寄せておるわけでございます。でございますから、私どもはとにもかくにも、もちろん中長期的には産業構造の調整、いわゆる改善というものをやっていかなければなりませんが、当面の問題としては内需拡大ということで御承知のような景気対策をとったわけでございます。なるべく早く補正予算が通ってくれないと困ります。  同時に、私は今御指摘のとおり造船不況というものとまともに取り組んでまいった経験がございます。当時は今よりもっと深刻でございました。オイルショックをもろに受けたときでございます。海運、造船の不況というものは、それはもう今日とはまた比べものにならないほどあのときは激しいものでございました。そういうことでございましたが、とにかくあのときの経験を生かしながら今後あらゆる総合的施策、思いつくものをすべて実行していく。例えば不況というものに対して、企業そのものももちろんでありますが、地域という問題があります。雇用という問題がある。でありますから、例えば地域に対しては、建設省あるいは運輸省あるいは農林水産省等々、公共事業を抱えたところがありますが、そういうところに対して御協力をお願いするとか、あるいは労働省に十分に御協力を賜って雇用体制をとり、それは後始末的な感覚ではだめであって、とにかく予防的にも行動していかなければならぬ、このように思っておりますが、今御質問の御趣旨に対して私のお答えを申し上げるならば、製造業について、特に輸出関連の製造業、とりわけ下請をやっておる中小企業に非常に不況感が強うございます。この景況感は極めて厳しいものがございます。しかしいろいろな対策を講ずることによってしのぐことができるであろうし、また同時に為替レートの問題でもそうでございますが、私どもは適時適切な政策介入をお願いしていかなければならぬ、またお願いもしております。そうして一日も早く円が少なくとも日本企業を支えるだけの程度の安定はしてもらわねばならぬ、OPECの問題もまたしかりでありますが、そのように考えております。
  113. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣は今いみじくも為替のことをおっしゃいました。ちょっと私、大臣にその点重ねてお伺いしたいのですが、経済閣僚として来年度の予算編成あるいは経済政策を組み立てていかれる上で、今おっしゃった為替のレートがどうなってくるか、これは重要な政策の根幹をなす問題だろうと思うのでございます。これは本来大蔵大臣の所掌でもございますし、為替は為替に聞けと言うほど的確なことを言うことは避けなければならないことかもしれませんが、見通しとして、感じとして通産大臣のお考え、感じをお伺いしたいのです。例えば、現在の為替レートというものは日本経済にとって正常なものとお考えになるか、それともこれはいかがかなというお考え、特に基調としてこのようなレートが来年も、あるいは上がるのか下がるのか、適時適切な介入をお願いするというお話でございましたけれども、重要な経済閣僚として経済運営の上から来年度の経済政策を立案する中で、基調として、どういう感触を持っていらっしゃるか、このままか、上がるのか下がるのか、その感じだけで結構です、いかがでしょうか。
  114. 田村元

    田村国務大臣 来年がどうなるか、これは率直に言って私にもわかりません。わかりませんが、ただ、百五十四、五円というような姿で安定されたらこれは大変なことでありまして、幸いにしてここ何日かやや円が弱含みに推移しております。きょうも百五十九円台でございますが、先般百六十円台に乗ったということでございますけれども、結局構造改善というものの実がどこまで上がるかということは、結果は見えなくてもそれに対する努力とか内需拡大がどこまで効力を発揮するかとか、あるいは輸出入のバランスがどういうふうになるだろうというような面で、ちょうど株が、内容がよくなれば値段が上がる、悪くなれば下がる、まあそれほど単純なものではないかもしれませんが、そういう点で、例えば黒字減らしでも、単なる海外投資というだけではなく累積赤字に悩んでおる途上国に対してこれを還流せしめる。それに対して、しかし単なる還流では非常に心配でしょうから、それを補完する保険制度というものをもっと充実していくとかというようにして、我々のあらゆる努力を傾注すれば、私は、円は妥当な線に向かってグラフを描いていくであろう、このように思っております。
  115. 薮仲義彦

    薮仲委員 そこで、経済企画庁長官に経済指標に基づいてやはり同じことをお伺いしたいのですが、その前に、造船とか海運の現状、こういうものについてはこの委員会で余り真剣に論議はされません。しかし、ただいまも田村大臣からお話がございましたように、造船、海運は円高、特に韓国等の追い上げの中で競争力を失って非常に厳しい情勢に追い込まれておるのも事実でございます。そういう意味で、ここに触れられておらない経済対策の中で、先般は鉄鋼あるいは石炭、ここで論じられました。では、同じような基幹産業、臨海工業地帯を支えておったそういう工業というものの現状はどうであるか。私は経企庁長官と認識を同じにするために、きょうは運輸省においでいただいておりますので、造船の現状についてまずお伺いをしたいと思うのでございます。  簡単に言いますから、この数字を的確にお答えいただきたいと思います。  まず新造船の受注量、手持ち工事量、国際競争力、特に韓国との間でどうであるか。それから主要造船十社と言っておりますけれども収支状況、あるいは要員削減にどういう努力をしておるか。今後造船業界というものがあと何年間ぐらいで、さっきの大臣の話じゃないですけれども、水面下から浮かび上がれるのか、今後何年苦しまなければならぬのか等々、ここで簡単に的確に造船の現況をクローズアップしていただきたいのです。
  116. 佐藤信二

    佐藤委員長 自動車業務課長は来ているけれども、造船関係は来ていませんね。
  117. 薮仲義彦

    薮仲委員 それではしようがない。それでは、私から言うのもなんですけれども、造船、海運の実態というのは、先ほども大臣がおっしゃいましたけれども、船腹量と物量とは全くミスマッチでございまして、船腹の過剰という状態に追い込まれておるわけでございます。結論だけ簡単に申し上げますならば、造船業界というものは今後十年間ほどは水面下の中で苦しまなければならないのじゃないか、こういうことがまず造船業界そして海運業界を取り巻く情勢でございます。しかも、海運大手十社の中でどうやら持ちこたえているのは本当にわずか一社でございまして、あとはほとんど収益が上がってない、こういう状態が続いております。  特に造船の中で昭和五十年当時は日本は世界の船舶建造量の中で約五〇%を占めておりました。そのとき韓国はわずかに一・二%でした。ところが今、一九八六年になりまして日本の造船量、いわゆる建造量というものは五〇%弱、正確には四七・一でございますけれども、韓国は一・二から二四%とその建造能力を上げてきています。これはどういうことかというと、いわゆるウォンとドル関係日本の国際競争力は韓国にかなわないといいますか、非常に追い込まれている現状でございます。こういう状態でございますので、今後造船業界が日の目を見るまでには、このグラフを見る限り、まだまだあと数年、もしくは十年近い間非常に苦しい情勢の中を歩んでいかなければならない。  同じように海運業界も船腹過剰でございますので、また省エネで、タンカーの運航も非常に荷動きが悪くなっております。そういうことで、いずれにしましても造船、海運ともにまだまだ厳しい情勢をここ何年となく続けなければならない、これが造船、海運の現状でございます。  きょう本当は、運輸省にちょっと通告を忘れておってあれなんでございますけれども、運輸省からここで経企庁長官によく御承知おきいただきたいということでおったわけでございますが、大変失礼しました。経企庁長官、どうか造船、海運の現状というもの、そのきしみ、苦しみの声は聞いておいていただきたいと思うのでございます。  次に、私は、この造船、海運と同時にやはり日本産業の中でアルミニウムの製錬業、これは鉄と同じように非常にすぐれた物性、機能を有しておるということで、消費量の多い金属素材として、これも日本経済の中でその消費量というのは非常に増大してきたわけでございます。しかも、その自給体制をつくろうというようなこともございました。ところが現在エネルギーコストの増大、電気の缶詰というほどのものでございますので、アルミ製錬業の置かれた状態というのは非常に厳しい状態にございます。このアルミの状況についてちょっと御説明いただきたいのです。
  118. 飛永善造

    飛永説明員 御質問ございましたアルミ製錬業の現況について簡単にお答え申し上げたいと思います。  まず、総括的でございますが、アルミ製錬業はこれまで数次にわたる構造改善を実施してきたわけでございますけれども、御承知のように五十九年の秋以降国際アルミ地金の市況が非常に悪化しております。それに加えまして、昨年秋以降の急激な大幅な円高ということで、国内のアルミ市況が非常に悪くなりまして、現在アルミ製錬業の環境は極めて厳しいという状況でございます。  具体的な数字で若干申し上げますと、国内のアルミ市況は、二年前は三十五万円でございましたが、現在は二十二万円台というふうに大きく落ち込んでおります。この背景といたしましては、円高に加えまして、特に国内のアルミ市況のもとになります国際的なアルミ市況価格が五十八年の九月、三年前でございますが千六百十四ドルという価格をしておりましたが、ことしの八月は千百三十二ドルというふうに急激に落ち込んでおりまして、いずれのアルミ製錬業も非常に苦しい経営状況を強いられているところでございます。
  119. 薮仲義彦

    薮仲委員 もう少しはっきり言ってもらいたいのですけれども、今アルミ製錬業は会社数にして五社ありますね。今後この中で生き残れるのは何社ですか。
  120. 飛永善造

    飛永説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように、日本のアルミ製錬業は五社ございましたが、実はことしの二月でございますけれども、その一社の昭和軽金属が生産をやめましたので、現在はアルミ製錬業を営んでおりますのは四社でございます。その四社のうちのもう一社、住友アルミ製錬という会社が本月末におきまして生産をとめるということで、実際に十一月以降アルミの製錬を続けていくのは三社という状況になります。
  121. 薮仲義彦

    薮仲委員 この三社も、今申されたように世界の市況に日本の競争力が及ばないという状態にありますので、最後に生き残れるのはせいぜい一社くらいではないかと言われていますけれども、違いますか。
  122. 飛永善造

    飛永説明員 先ほど申し上げましたように、日本のアルミ製錬業を取り巻く環境は非常に厳しいものがございますが、一方ではアルミの安定供給というのはやはり非常に大事でございますので、これからの地金市況の状況あるいは円高状況は極めて不安定な要因があるわけでございますが、私どもといたしましては、現在六十三年を目標の構造改善計画を推進しておりますので、何とかしてこの三社で国内のアルミの安定供給ということに努力していただかなければというふうに思っております。
  123. 薮仲義彦

    薮仲委員 それではその三社を休業に追い込まないようにしっかりと面倒を見ていただきたい。私は非常に厳しいのじゃないかなという判断を持っております。  次に、自動車の問題をちょっとお伺いしたいと思うのでございますが、まず海外へ進出している自動車産業の現況と、その設備が完成した場合の生産台数、海外進出しているその企業の工場が生産する合計台数はどのくらいになりますか。
  124. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 現在海外で生産しているのを、一番代表的な市場でありますアメリカについて申し上げますと、一九八五年の生産実績は日本企業で三十六万一千台でございます。現在計画中のプロジェクトが数件ございまして、これが完成した場合に一九九〇年代の前半におけるアメリカにおける生産台数は現在の計画では百六十五万台という計画になっております。
  125. 薮仲義彦

    薮仲委員 今の数字で示すように、一つ企業を除いては日本の自動車産業というものはほとんど全部アメリカあるいはカナダの方まで出ているわけでございますけれども、今御答弁がありましたように百六十五万台の生産が可能である。そうしますと、今日本の自動車産業の持っている経済界におけるウエートを簡単に数字で言っていただきたいのですが、主要商品別の輸出額において自動車産業というのは何%か、製造業において生産割合は、自動車と輸送用機器を足しますとシェアは大体何%か、自動車部門は全就業人口の何%程度か、それから日本の自動車が世界に占める生産の割合は現時点では何割くらいか、これだけちょっと言ってください。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕
  126. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 今先生の御指摘の各項目については手元に全部がそろっておりませんから、一番代表的な生産金額と生産に携わっている従業員について申し上げますと、自動車産業全体で従業員数が現在七十二万人と公称されております。それから生産金額は二十七兆円前後でございます。あと具体的な世界に占めるシェアとか、あるいは全製造業に占める自動車産業のウエートというのは、数字を今見つけまして、後ほどお答えしたいと思います。
  127. 薮仲義彦

    薮仲委員 では、こちらでちょっと数字を申し上げますと、輸出額に占める割合は、四百二十二・三億ドル、シェアで二四%、製造業における生産の割合は、今自動車と輸送機器を足しますと二三・六%、金額は確かに二十七兆六千億ほどですね。全就業人口は、確かに自動車部門だけとりますと七十万ですが、関連まで入れますと五百四十四万人になるはずです。日本の全就業人口は約五千万、これの約一割です。しかも、世界の自動車産業で三割の力を持っておるわけでございます。今日本の最も競争力の強い自動車というものが海外へ工場をつくっていく。そうしますと、やがては海外で百六十五万台の車が生産される。それがすべて日本の自動車産業影響するという短絡的な表現はいたしませんけれども、今申し上げたように、国内産業の中でこの自動車産業というのは日本の国の経済の約四分の一を支えているわけです。そのほとんどが海外へ工場をシフトする。そうなりますと、雇用であるとか、あるいは産業構造それ自体が非常に変わってくるのじゃないか。  特に問題は、空洞化ということがよく言われますけれども、自動車産業はやはり一流企業です。しかも非常に競争力の強い、最も優秀な企業です。それが円高だ、あるいは安い労働コストで自動車をつくっていこう、このようにして海外へ移転した場合に、日本の国の中でそういう競争力のある工場がもしも海外へどんどんシフトした場合に、後に残るのはどういう企業が残ってくるのかな。しかも今北米がほとんど日本の国の輸出の大宗だと思うのです。北米で、もう日本の輸入は結構ですよと言われたときに、日本経済ほどうなるのだろう。通産省は空洞化は心配ありませんと言うかもしれません。しかし、日本アメリカとは経済の基盤が違うと思うのです。自動車の持っている日本経済におけるウエートというのは相当なものがあります。例えばいろいろと生産工場を他の国へ移したとしても、アメリカはそれにかわる一統の企業は数多くあります。言われるように、例えば製造業海外へ移したとしても、アメリカの持っている基礎研究であるとかソフト、サービス、流通、宇宙開発、農業、これはやはり世界で一流でございます。ですから、日本の国で自動車がぽっとなくなって約二五%、四分の一近くを占める経済力をシフトしたのと、アメリカ製造業をシフトしたのでは、全く意味合いが変わってきます。  このように、円高であり、あるいは労働コストが高いということで自動車産業がもしも競争力を失った場合、しかもさっき私は造船の例をもう少し的確に経企庁長官に御理解いただきたかったのですが、なぜ日本の造船が苦しくなったか、韓国の追い上げが物すごかったのです。とても日本の造船はそこまで競争力を持ちこたえることはできなかったのです。自動車がそうならないという保証は全くないと思うのです。もしも日本の国の自動車が国際競争力を失ったならば、あるいは日本で生産基盤がなくなったときに、本当に大丈夫ですか。簡単に空洞化はないとおっしゃるけれども、大丈夫か。  特に、造船と同じように自動車というものはアセンブル産業です。すそ野の広い産業です。これは、いわゆる企業城下町と言われておるところがたくさんあります。私の地元にもあります。その影響はもう出ています。中小企業庁が、いわゆる円高不況のアンケートをとった中に、一部もう出てきています。受注が減少してきたというのが六割と書いてあります。あるいはどうやって将来の自分の事業の見通しを立てていいかわからないという不安の声も、もう既に聞かれております。百六十五万台の製造をしないうちに、既にもう国内ではさわさわと危機感が漂ってきています。それほど日本経済は、ある意味では底が浅いといえば底が浅い。この自動車産業が、ここにあるだけでも日産自動車がテネシー州へ、本田技研がオハイオ州へ、トヨタ自動車がゼネラル・モーターズとカリフォルニアに、トヨタ自動車がケンタッキー州に、マツダがミシガン州に、三菱がイリノイ州に、日本の有力な企業がほとんど世界に進出しています。これで果たして空洞化が来ないのか、あるいは日本経済が大丈夫なのか。今日本経済を支えているのはほとんどが自動車だと思うのです。このことに対して通産省はいかがお考えでございましょう。
  128. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 今の自動車産業の実情は先生の御指摘のとおりでございます。  ただ、自動車産業海外展開につきましては、やはり自動車産業の性格からいきまして、現在アメリカ、カナダあるいはイギリス等に現地生産を進めているのが実情でございます。現在のところ、日本で全部つくりましてそれを海外にそのまま輸出するという形では、なかなか世界経済の実情を考えますと、そのままの形では進められないという実情になっております。したがいまして、世界戦略を進める上でどういう形をとるか、これは基本的には企業の判断によるところではございますけれども、現地生産を一部進め、現地の中で雇用を確保して製品を提供するという形を、ある面では考えていかなければならないという実情でございます。ただ、そういう実態で事態が進みますと、今御指摘のような国内の空洞化という問題が懸念されるわけでございますが、現在のところ自動車産業全体から見ますと、まだその輸出の伸びる部分、あるいはごく一部代替が起こるかもわかりませんが、そういう形で現地生産を進めるというようなことで私ども考えておるわけでございます。  ただ一番心配なのは、自動車産業そのものの本体というよりも、それを取り巻く下請関連企業の問題もございます。したがいまして、こういうすそ野の広い産業だけに、その産業の実態を踏まえまして、どういう形で将来産業構造を持っていったらいいかということについては慎重に検討し、適切な対応策をとらなければならないというように現在考えている段階でございます。
  129. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは通産大臣にもお伺いしておきたいのでございますけれども、自動車というものが日本で一番の競争力になるというのはただいまの数字が示しているわけでございますが、かつて造船が世界を制覇しました。海運も制覇していました。ところが、時代の流れとともに競争力を失うと大変な状態に追い込まれてまいります。自動車産業が今はこのように競争力のある力強い業績を残しておりますけれども、果たしてこれがいつまでもこのままでいられるのかなという懸念は、私はどうしてもぬぐい切れないものがあるわけでございますが、通産大臣としてはいかがでございますか。
  130. 田村元

    田村国務大臣 今、次長の方から申し上げたとおりだろうと思います。まさに、かつて海運の不況が造船の不況を呼んだというのと同じように、自動車がもし海外に進出する、不況になるということになれば、非常にすそ野の広い産業でありますから、当然部品工場を初め大変なことになる、そういうことでございますから、とにかく海外進出をするにしても、その空洞化ということを防がなければなりません。アメリカがあれだけのシェアを海外に誇っておるといいますのも、結局、未来産業といいますか、ハイテクやバイオやその他のサービス部門とか、いわゆる新分野においてそれだけの裏づけをしていったということであろうと思うのであります。でありますから我々も、もちろん海外に対して直接進出をしていくことはいいことでありますし、また、それなりによき経済関係を樹立していけば評価できることであろうと思います。でありますから、その点は進めなければなりませんけれども、よって来る影響というものに対して今申し上げたような繊細な注意が必要、このように考えております。
  131. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、今の通産大臣の御意見、そのとおりだと思うのです。特に、自動車産業が終わって、その次にやはり世界に冠たる産業が後から後からと出てくるのであれば、これは大変に安心できます。しかし、もしも競争力の強いのが円高だ、労働コストの安いところへ行って品物をつくろうということで出ていったときに、日本国内に残ったのは競争力のない、こういう言い方は大変不穏当でございますけれども、あるいは二流、三流と言われるような企業しか残らない、こうなったときには、確かに企業海外に残ったかもしれません。しかし、日本の国の存立というものがあるいはこのままでいいのかという問題については十分御検討、御配慮をいただきながら経済運営をお願いいたしたいと要望はいたしておきます。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一点、これも経企庁長官に今後の経済見通しを聞く前にお伺いしたいことが一つあります。それは、御承知のように日本の国は全エネルギーの六割は石油、しかもそれは輸入でございます。日本経済というのは無資源でございますから、どうしても原油の中に浮かんでいると言っても過言でないほどの状態にございます。今、この円高デフレの中で多少救いは、原油下落傾向にある、これが今は円高差益であるとか差益の還元と言われて、少なくともプラスの面で言われておりますけれども、ではこの原油が今のような価格が続くのかどうか、これは非常に不安要因の一つでもあろうと私は思うのです。いつまでも円高差益があるよ、こういう安易な感覚で経済運営を図っていれば、第三次のオイルショックがぽんと起きたならば、中東であるいはどこかで原油をショートするような事態が起きたときに、日本は一遍でもう第三次オイルショックには立ち向かっていけないほどショックを受けるのじゃなかろうかと不安がございます。決してそうじゃないという意見もあろうかと思います。  しかし私は、先般のOPECの合意、あるいは今非OPECの産油国が限度いっぱいに産油しております。余力を持っているのはOPECです。あのように原油が下がってくると、古い油井であるとか採算性の割れる油井はどんどんやめると思うのです。この油井というのは、やめればまた掘り直すというわけにいきません。そうすると、OPECの支配というものはまたふえてくるんじゃないか。しかも、このように原油のコストが下がっているとどうしても新しい油田を探そう、そういう動き調査、そういう問題は起こらなくなると思うのですね。ストップしちゃう。やがて発展途上国もだんだんと原油の消費量は減るよりもふえてくると思うのです。仮に中国が自動車社会になったら大変だと思うのです。こういう国際社会の原油の需給のバランスというのは果たしてこのままで推移するのかどうか。今、円高差益だという言葉で言われておりますけれども、この原油価格の動向が果たして大丈夫なのかどうか、この辺私は経済運営の上で非常に重要なポイントであろうと思います。きょうエネ庁さんお見えだと思いますので、この原油の、石油の今後の需給の見通し、それから価格の推移というものがどのようになっていくのか、その辺をちょっと御説明いただきたいのです。
  132. 野々内隆

    ○野々内政府委員 石油の価格問題、これは短期の問題と中長期の問題に分けて考える必要があろうかと思っております。  まず短期の問題でございますが、これは先般のOPECの臨時総会で暫定的に年末まで減産が続くということでございまして、来年以降の問題がまだ決まっておりません。当面弱含み、横ばいという感じかと思います。もう少し強含みかと思いましたのですが、ここ二、三日案外原油のスポット市場が下がっておりまして、今回のOPEC総会で完全な、もっと厳しい減産合意ができなかったということに嫌気を差して、若干市場関係者に弱気が出ているんじゃないかと思っております。来年以降の問題は十二月のOPEC総会で議論されますが、今回は各国のシェアをどうするかということについて八つの項目が決まっただけでございまして、これに基づいて具体的に各国のシェアをどのように決めるかということについては利害が対立をいたしまして決定できませんでした。十二月も、そのあたりはまだ不確定かと思います。十二月にもしそれができますと、来年はかなり強含みになりましょうし、それができませんとまた下がるということで、来年の原油の動向につきましては今何とも言えないというふうに言うのが正確かと思います。  長期的にはIEAが既に見通しを発表いたしておりますが、先生御指摘のように、主として発展途上国における石油需要というものが今後増大をする、他方このような非常に低い価格によりまして開発活動がスローダウンいたしております。特にメジャーは三割、四割と開発探鉱費をカットいたしておりますので、早晩、需給が詰まってくるであろうというふうに考えられますので、一九九〇年代に入れば当然かなりの需給の詰まりがあり、かつそれが価格上昇の引き金になるというふうに考えておりますので、長期的観点からエネルギー政策というものに取り組んでまいりたいと思っております。
  133. 薮仲義彦

    薮仲委員 確かに、長期的と言いますけれども、あるいはここ数年という時間で起きないとも限らない問題であろうかもしれません。この問題は、今長官がおっしゃったように、非常に不確定要素が多いことではございますけれども日本経済の運営の中で、原油が安いよというようなことで経済運営をしていることは当然許されない状況にございますので、その辺は十分お含みおきの上での運営をしていただきたい。  そこで、ここで経済企画庁長官に初めてお伺いするわけでございますが、今まで申し上げたように、原油を初め秋以降には円高のメリットが出るであろう、このような政府の経済見通しがずっと言われてまいりました。ところが、先ほども通産大臣に質問させていただきましたけれども、最近の経済指標を全部見て並べてみますと、どうも言われるほど経済の情勢というのはよくないんじゃないか、こういうような感じがしてならないわけでございます。経済企画庁経済研究所のいわゆる四半期別の国民所得統計速報、これは如実に経済の実態を浮き彫りにしているわけでございます。  こういう数値の中から長官に何点かお伺いしたいわけでございますが、この国民所得統計速報によってGNPの働きを見てまいりますと、景気は明らかに減速している。この資料にもありますように、昨年の七—九、このあたりは大体五%台で実質成長は推移をいたしております。しかし、ことしに入りまして一—三は三・二でございます。また四—六に入りますと二・二でございます。前年同月比二・二%と落ち込んできているわけでございます。これを前期比で言うならば〇・九%の伸びになっているわけでございますけれども、もしこれを政府の当初の経済見通し四%を達成するなどということになりますと、これは七—九以降年率で七%台の成長が必要になってくるわけでございます。しかもこれは毎期、前期比で一・七%程度伸びなければならないという試算もできるわけでございます。この月例報告を見る限り、こうした伸びはちょっと無理じゃないかな、本当に四%できるのかな。今まで長々と申し上げましたが、日本経済を取り巻く環境というのは思ったほど明るくないんじゃないかな、あれほど明るいと言われた自動車産業も底辺のところではもうきしみが起きておりますし、またエネルギーも不確定要素が多分にあります。造船、海運等もまだまだ長い冬の季節が続きそうです。あるいは鉄鋼、石炭考えてまいりますと、やはり経済全体に四%の経済を持ちこたえるだけの、この指標が示すように、国民消費支出あるいは政府の支出というものがそれを支えてはいますけれども、回復するまでに至ってないような感じがしてならないわけであります。私は、この四%が本当にできるのかなという感じがいたしますけれども、長官にお伺いしたい。  単にこれだけの指標じゃなくて、輸出入の方もついでに数字を挙げてみますと、やはり円高影響が出てきているんじゃないか、輸出も鈍化の傾向に来るのじゃないかなと思われます。また鉱工業の生産指数も大変芳しくありませんし、さらにまた雇用状態も月例経済報告にございますように今まで最悪の二・九だ、中でも男性は三・一%、最悪の数値が出てきておりますので、私は秋から景気がよくなるどころか、だんだんと落ち込んでいるのじゃないかなという不安よりも懸念を持っておりますが、長官はこの四%は、絶対に総合経済対策によって景気は回復するとお考えですか。
  134. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 最初お礼を申し上げなければならないわけでありますが、大変具体的な数字を挙げまして今の日本経済の深刻な面についての御教示があったわけであります。私も先生おっしゃるように、輸出関連を中心として、またそれに関係する製造業中心として、日本経済の現況が厳しい様相を呈しているということについては同じような認識を持っているわけでございますので、そうした円高から来るデメリット、マイナス効果の深刻さについては十分に配意をしていかなければならないと思っているわけであります。  しかし同時に、私どもたびたびいろいろな機会に申し上げているわけでございますけれども、そうした製造業関係は深刻な様相を加えつつありますが、しかしマクロの統計で見る限り個人消費は依然として好調でございますし、百貨店の売り上げがどの程度よく大衆の消費の動向を示すかということは議論があるかもしれませんが、百貨店の売り上げでまいりますと、六月六・三%、七月四・七%、八月七・七%前年同月比で上がっているわけであります。また一方住宅投資でございますけれども、これもかつてないぐらいな好況を示しておりまして、昨年度は年率にいたしまして百二十数万戸の建設が、現在は六、七月それぞれ年率百三十万台の建設が行われている。  こういうことを考えてまいりますと、これは明らかにプラスの面でございますし、同じ産業でも、いわゆる非製造業の分野では依然として強気の見通しを持っている経営者も多い。日本銀行の短期企業予測の中でもそうした数字が出ているわけでございます。そして同時に、四月、五月と政府としても総合経済対策そして当面の経済対策という二回にわたる対策をとりまして、これは一つ円高によって影響を受けている中小企業対策であり、そして一つは電力料金の値下げを柱にする円高メリットの還元政策であり、そしてもう一つの柱は公共事業の前倒しということで、上半期で七七・四%の契約をし、そして実行を進めておる。  こうした政府の施策が進んでおりますので、今どういう状況にあるかということはなかなか統計的につかみがたいわけでありますけれども、先生の御指摘もございましたいわゆる四—六月期の四半期国民所得の速報値によりましても確かに前期比〇・九%であって、これをずっと延ばしても三・六にしかならないわけではありますが、各国民所得の構成の様子を見てまいりますと、今言いましたように個人消費と住宅と政府支出、これは私たちの当初の予測をむしろ上回っているぐらいな数字を少なくとも六月の段階では示しておるわけであります。  問題は、先生も御指摘ございました輸出入がどういうことかということでありますけれども、これは確かに円高影響を受けまして輸出は数量的にもとまっておるわけでありますし、特に輸入は前期と比較いたしまして二割から三割ぐらいふえている。輸入の増加というのは国民所得計算上は確かにマイナスファクターでございます。輸出プラスファクターですから、輸出が抑えられて輸入がふえているということは国民所得計算上はマイナスファクターで、こうした輸出入の数量的な差額から来るGNPの減がどれぐらいになるかということは、最近のデータがなくてなかなかわかりませんけれども、少なくとも四—六月期の傾向をずっと延ばすような形で見てまいりますと、海外要因は明らかにGNPのマイナス要素になる。ですから、国内的な要素を足し引きいたしますと、大体私ども考えておった線に近いか、問題は製造業投資活動がどれぐらい落ち込むかということによって、場合によっては内需でも私たちの見通しよりも少し落ち込むかなという感じもいたしますし、それから海外要因はまさに輸入の増という形でGNPに対してマイナス要素になっている。  ですから、全体として六十一年度GNPが結果としてどれぐらいの成長に追いつくかなということは、今の段階でなかなか正確に申し上げられないわけでございますけれども、よく言われておりますように一%そこらの落ち込みは、海外収支というもの、国際収支というものを柱に、それに製造業における投資マイナスがどの程度加味するかによってやはり一%、場合によってはプラスアルファぐらいの落ち込みになるのかなという感じを踏まえて、その落ち込み分だけは何とかもとに戻そうというのが先生からも御指摘ございました三兆六千億円余に上る総合経済対策でございます。これは六十年度名目GNPが三百二十兆円でございますから、対比いたしますと一・一%強のいわば追加的な内需拡大になるわけでございますので、これがどういう影響を国民経済にこれから与えるか。例えば一年間四兆九千億で一・五%ということを私どもいろいろなときに申し上げておりますけれども、問題はしからば六十二年三月三十一日で切ったときにどれぐらいのGNP効果があるかということは、これは年度内にどれぐらい総合経済対策の実行が可能になるかということにかかっているわけでございます。実は私も閣議においてもたびたび発言をしてございますし、またきょう通産大臣おいででございますが、通産大臣、建設大臣その他関係閣僚にお願いいたしまして、何とか三兆六千億円余の総合経済対策をさしあたって年度内にできるだけ消化できるように関係筋にお働きをお願いいたしたいということでございます。  実は今補正予算を今度国会で御審議いただくわけでございますが、その中でも国が中心になって一兆四千億の公共事業をする、そうして地方の単独事業で八千億上積みをするということで、私どもあらゆる方策を使い努力をいたしまして、年度内に総合経済対策の実行を図って、そして景気の落ち込みをカバーしGNPの落ち込みを何とか回復をいたしたい、こういう努力を今一生懸命やっておるということを御理解いただきたいのでございます。
  135. 薮仲義彦

    薮仲委員 長官の苦しい胸のうちは何となくわかるのですけれども、要約すると、何となく一%下がりそうかなという感じもするわけでございます。しかし、そうあっては困るというのがまた我々の共通の認識でもあろうかと思っております。きょうはこういう委員会でございますから、大臣の言うことになるほどそうかというわけにはなかなかまいらない。我々とすると、これで大丈夫かなという不安要因を幾つか申し上げます。なぜ申し上げるかといえば、総合経済対策だけではなくて、来年の予算編成の中で十二分に御検討いただきたい。決して政府がいいとか悪いとかというのではなくて、国民の一人として、やはり日本の国は住みよくて楽しくて、あしたの生活に希望が持てる、働くことに不安がないような世の中でなければ困るわけです。だから、政府に嫌みを言うとかなんとかじゃなくて、大丈夫かなという懸念を我々は絶えず持っているわけです。日本がいつもすばらしい国であってほしいと思います。今長官のおっしゃった御答弁、そう願っております。でも、これから総合経済対策を具体的に聞くわけですけれども、私はこれが果たして効くのかどうかということには非常に不安を持っている一人でございます。お話しのように三兆六千三百六十億と大変大きな金額が最大事業量として出ております。これを我々裸にしてみて、本当に効くのかどうか、ここで明らかにさせていただきたいと思うのです。  この中で柱は何だろう。公共事業あるいは民間活力、規制緩和等々いろいろございます。まず最初に、建設省お見えだと思うのでございますが、公共投資の金額的な数字をちょっとおっしゃってください。
  136. 市川一朗

    ○市川説明員 今回の補正予算の数字でございますが、政府全体では事業費ベースで公共事業一兆四千億円でございます。そのうち建設省関係は一兆三百十三億円となっておりまして、約七割でございます。  その内訳でございますが、公共事業のうち災害復旧が五千五百億円、一般公共事業が八千五百億円でございまして、建設省は七割程度というふうに御理解いただきたいと思います。一般公共事業のうち今年度の完了事業が千五百億円、それから六十一年度歳出国費つき国債が四千億円、いわゆるゼロ国債が三千億円という内訳になっております。それらに要します六十一年度の国費は政府全体で千三百三十億円、建設省関係は九百三億円ということになっておりますが、そのほかに災害復旧関係も含めますと、国費は政府全体で五千四百九十億円、建設省関係が四千三百三十四億円という内訳になっております。
  137. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは建設省だけに聞くのもいかがかと思うのですが、全体の数字を大体掌握なさっていらっしゃるようですので。今、一般公共事業八千五百億というお話がございました。この中で本年度内に予算が執行される事業、これは金額にして幾らになりますか。
  138. 市川一朗

    ○市川説明員 先ほど申し上げました今年度完了事業千五百億円は、全額今年度内に執行されるわけでございます。それから、六十一年度歳出国費つき国債につきましても、その二三%程度は六十一年度国費がついてございまして、それも今年度内に執行できるわけでございますが、ただ建設省といたしましては、建設大臣の指示もございまして、ゼロ国債等今年度に国費の支出が予定されていない国庫債務負担行為にかかわる事業につきましても、できるだけの手段を講じまして今年度内に出来高が上がるような措置を講ずる方針で現在臨んでおる次第でございます。したがいまして、それらを合わせますと、ただいま申し上げました予算化が確定しております以上に相当の出来高は期待できるというふうに見込んでおります。
  139. 薮仲義彦

    薮仲委員 今ざっと数字お話しいただいたわけでございますが、経企庁長官にちょっと確認のために申し上げますと、今の一兆四千億の内訳の中で災害復旧五千五百億、これは非常に大事なことだと思うのです。しかし、これは御承知のように災害のあった地域に対する復旧工事でございますので、本年の災害等を勘案しますと大体東北方面に災害復旧の予算として執行されるであろう。そうしますと、オールジャパンということで一応考えますと八千五百億。しかし、建設省さん一生懸命頑張る、あるいは関係の省庁いろいろ頑張ると思いますけれども、これから寒くなってまいります。積雪寒冷地では公共事業はできません。やはり地域が限定されますし、新規着工でなければならないということでございますから、事業内容も限られてまいります。これが実際に動き出すのはどうだろうかな。経企庁長官は各省庁にお願いして、年度内というお話がございました。あるいは年内にというお話もございました。その辺が大丈夫かな。しかも本年度内に予算執行されますのは、今お話がございましたが、災害復旧は当然でございますけれども、一般公共事業の八千五百億のうち今年度出資分は二千四百二十億でございます。全額が出るわけではございません。御承知のように今年度完了事業が一千五百億、いわゆる前金つきというのですか国庫債務負担行為、この金額が九百二十億、これで二千四百二十億というのが年度内に執行されるわけでございますけれども、この予算の成立、これが順調にいってどこまでいけるかな、この懸念はどうしようもないものがあろうかと思うのでございます。これで今御答弁のあった景気のてこ入れに本当に大丈夫ですか、金額にしますと実際に国費が出ていくのはこれだけですよということになるわけで、このことを経企庁長官にお伺いするのはいかがかなと思うのですけれども、やはり大丈夫ですかと聞かなければならない。そして、向こう一ヵ年間の総合経済対策でございますけれども、本当に大丈夫かどうかお伺いしたい。
  140. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生御指摘のとおり、五千五百億の災害復旧工事はまさに災害のあったところに行くわけでございますから、その点は地域的に限定されておるわけでございますが、それ以外の八千五百億につきましては、そういった災害復旧で工事量が出ない地域であり、しかも先生からも今御指摘がございましたが、円高不況によって深刻な影響を受けたような地域とか、また全体として東北地方のように社会基盤の整備がおくれている地域というものを考えながら配分しよう。これは建設大臣にもお願いしておりますし、建設大臣もまた通産大臣といろいろ御相談しながらそうした配分をまず考える、こういうことが第一でございます。  それから、私が申しましたのは年度内にできるだけ施行ということでございますが、そのためにはまさに年内に契約が進まなければならないわけでございます。それができるためには補正予算案をできるだけ早く国会でお通しをお願いしたい、これもお願いしておるわけでございます。同時に公共事業の場合には、地方自治体のいわば地元負担がございますから、その八千億の総合経済対策に掲げました地方単独事業は大体九月県会で御承認いただいたものが多いわけでございますけれども、この新たな一兆四千億に見合うものは、これは災害も含めて、いろいろこれからの地方で負担をお願いしなければならない。したがって、国の補正予算の国会成立と同時ぐらいに、実はできるだけ早い機会に地方議会においても臨時議会を招集していただいて、裏負担についての対応を即刻とっていただきたい、こういうことでございます。これが第二点。  第三点として、そう言っても実際に年内にできるものは千五百億だけじゃないか、あとは四千億の前払い金のあった分の一部である、こういうお話でございますが、通常の場合は、確かにいわゆるゼロ国債といっております、債務負担行為を前倒しして契約するのは、契約だけ終わってしまって実際の施行は新年度以降となっておりますけれども、今回は総合経済対策として、ともかく当面の景気対策ということが重点でございますので、国が払う前払いは前払いとしてそれ以外にどんどん仕事を進めていただいて、仕事が進んだ分につきましては、また必要なお金については、今御案内のように金融緩和の時代でございますし、金利も安い状況でございますので、それは地方自治体で場合によっては早めに起債をしていただいて払っていただくとか、また地方の銀行なり市中銀行から融資をしていただいて仕事を進めていただく、こういうことで、資金のやりくりについてはこれは建設省を中心として、公共事業の執行官庁とそれから地方自治体とそして実際の執行者と地元金融機関等で十分に御相談をしていただいて、何としてもできるだけ年度内施行で年度内完了まで持っていきたい、こういうことでございますので、そういう体制ができて動いてまいりますと、私は、景気に対して相当のプラスの前向きの効果を与える、かように考えておる次第でございます。
  141. 薮仲義彦

    薮仲委員 長官、きょうはやめておこうと思いますけれども、これは大蔵省の「日本の財政」六十一年度版、ここには公共投資の乗数効果というのが出てくるわけです。ここで使っておる計数は経企庁のいわゆる世界モデルを使っておるわけでございますが、きょうはもうやめておこうと思います、その御努力に水を差すような言い方は。ただ、経企庁もマクロモデルでは公共投資の乗数効果に懸念を持っている。これを言うと公共投資をやる意欲を失う可能性もございますので、きょうのところはやめておきますけれども、この次に……。大蔵省でございますから、公共投資の乗数効果に疑問があるし、これがいわゆる輸入の増加等内需拡大に結びつかないよという言い方をしておるわけでございますけれども、これはきょうはやめておきます、時間がもうなくなったものですから。きょうは本当は建設省にいろいろと総合経済対策の中身をしっかりお伺いしようと思ったのですが、残念ながら時間がございません。  この総合経済対策の一番最初に出てきます住宅金融公庫の割り増し、基準の割り増し等が出ておりますが、この取り上げ方、ちょっとお伺いしたいのですけれども、四期五計が終わって五期五計がスタートしたところでございます。四期五計の反省の上に立って五期五計ができたと思いますし、四期五計をトータルしますと、持ち家と借家の状況というのは、持ち家の方が減っておるわけですね。民間借家が非常に増高の傾向にある。これは御承知の住宅宅地審議会の答申にもきちんと出ておるわけでございますけれども、やはり今国民は、家を建てるかな、それともやめようかなと、この住宅需要実態調査数字が示すように、こう振れています。ここで建設省がどういうスタンスをとるかによって大きく変わってくるわけでございますが、五期五計がすとんと始まった途端にこのように公庫融資の枠を変えた、条件を緩和した。  これは一言でお伺いしたいのでございますが、単なる景気対策なのか、それとも住宅政策、やはり持ち家の方向へ多少振った方がいいということで政策を変えられたのか。景気対策なのか、政策を持ち家の方に振られたのか、その辺簡単にお答えください、時間がありません。
  142. 荒田建

    ○荒田説明員 お答えいたします。  五期五計の持ち家建設戸数は、先生御指摘のように、六百七十万戸に対して四百二十四万戸ということで計画しておるわけでございますが、確かにちょうど世帯の持ち家取得年齢層が次第に減ってまいるというような要因はございますけれども、建てかえのニーズですとかあるいは買いかえのニーズといったものに伴う持ち家需要というのは出てまいるということを想定しておりまして、四期五計の持ち家建設戸数よりは若干少ないところで計画をしておるわけでございますが、今回の特別割り増しの増加等の景気対策は、もちろん当面の景気対策という側面も重要でございますけれども、現在計画しております五期五計による年間建設戸数が、六百七十万戸を五で割りますと大体百三十万戸ぐらいになりますけれども、現実の着工戸数が現在そこまでまいっておりませんので、何とか計画までキャッチアップさせようということで、そのために条件を改善していこうということの側面もありますので、お含みおきいただきたいと思います。
  143. 薮仲義彦

    薮仲委員 ちょっとそこにいてください。  来年も続けますか、公庫のこの割り増し。
  144. 荒田建

    ○荒田説明員 特別割り増しの制度につきましては六十一年度限りということになっておりまして、ただ、私どもも、来年度以降継続したいということで大蔵省に予算要求させていただいております。
  145. 薮仲義彦

    薮仲委員 私はここで二つ指摘しておきたいのですが、もしもこれがことし限りというなら非常に不公平の感を免れない。いわゆる持ち家をつくる人に、景気対策のためにわずか数ヵ月間やったのか、十月一日以前にやった方は非常に損をした、こういうことが建設行政の中であってほしくない。やはり国民が納得できるような、取ってつけたようなことであってはほしくないわけです。  これは課長、専門ですからちょっと、なぜそれを問題にするかというと、これは長官よく知っておいてください、これはいわゆる家を建てるというときには、建てたいという世代があるわけです。今の住宅公庫融資、二十五年です。三十歳から三十九歳で建てないと、例えば六十とか七十、高齢化社会が来ますが、そこから建てようというと大変なんですね、やはり老後の生活、医療等で。やはり建てる世代というのは三十から三十九歳なんです。  きょうは数字だけ簡単に申し上げておきます。厚生省の人口の統計が出ているわけでございますけれども、この中で、五十五年から六十一年までは三十歳から三十九歳が大体二千万近いのです。ところが、六十二年以降年々百万ずつ減ってくるのです、団塊の世代が移ってくるものですから。六十二年になりますと千九百万、六十三年は千八百万、六十四年は千七百万、六十五年は千六百八十七万と、三十代の男女の数が減ってくるのです。ということは、家を建てようとする世代ががくんと減っているのです。これは建設省が専門ですからよくわかっているのです。  私の言いたいのは、持ち家志向といっても最近の若い方は所得と、住宅の値段が高過ぎるのです。きょうは本当はやりたいのですが、乖離が五倍近いのです。四倍、五倍なんです。もう手が届かないのです。そうすると、楽しい生活を送るために借家でもいいやというニーズが、先ほど言ったように分かれているのです、今どっちへ振ろうかな。しかも一つ、建てようとする世代の人口が減ってきます。このときに、こうやって経済対策とはいえやるということ自体いかがかなといる気がするのです。  もう一つは、新しく家を建てるのは、今住んでいる持ち家の人が建てかえ需要なんです。これも建設省の住宅統計でいきますと、五十四年が二十一万五千二百、これが五十五年にいきますと二十万八千二百、そして五十八年の統計でございますが、十六万五千と減っているのです。ということは、建てかえの意欲も非常に落ち込んでいる事実がございます。  今、住宅金融公庫等でぽんと建てやすいようにしました。でも、そこに欠けてくるのは地価の対策なんです。これは地価対策をしっかりやりませんと、このように上物だけをやりますと必ず地価が高騰してきます。きょうは国土庁もお見えいただいて地価の問題もやりたかったのですが、総合経済対策というものはやはり取ってつけたようなことをおやりになると、どこかで非常にきしみが出てくるし、長い計画の中でやっていることが非常におかしな形になりはしないかなという懸念は、私これで感じておるのです。  また、この中で多くの規制緩和をやっていこうということは認めます。でも、さしあたってすぐできるような規制緩和というのは非常に少ないわけです。特に、金科玉条のごとくいつも出てくるのは、東京環状七号の内回りの一種を二種にすれば建物が建ち上がるごとく言います。幻想です、あれは。八%です。この八%の一種を二種に変えられるかというと、これはもうなかなかそうはいかない。なぜいかないか。これは現在の建築基準法に前面道路幅によっての建ち上がりの斜線制限があります。それからまた北側斜線制限、日照権、地域住民の同意がなければだめです。ですから、この環状七号の内回りの一種住専を二種に変えればいいんだ、こういう言い方をすること自体が、ある意味においては私は説得力のある話に見えますけれども、これを本気になってやろうすると、とてもできない話です。建ち上がりません。こういうことが今度は出てくるわけです。ですから私は、やはりこの中で、例えばガソリンスタンドの上に喫茶店でも設けよう、ファーストフードを設けよう、これはいいと思うのですよ。でも、右のものを左に移したぐらいで経済効果があるのかなという懸念も、私は読んでいて感じます等々、この一つ一つを見てまいりますと、私は非常に経済効果といいますか、疑問のある点があるわけです。  きょうは残念ながらこれで終わりますけれども、私はもう少し本当の意味で国民経済を下から底上げするような対策をやっていただきたい。特にこの中で、私は見るべきものとは言いませんけれども、もしも民間活力で、わずかの金で一千億程度のあれが出てくるということができればいいですけれども、中にはもう仕事にかかってますよという方もあるわけでございます。  ただ私ここで、最後の御答弁でお願いしておきたいのは、さっきちょっと落としましたけれども、金属鉱業、この金属鉱業の状態は非常に深刻でございます。特に、これは資源エネルギー庁の所掌だと思いますけれども、いわゆる緊急金属鉱業対策の基金というものは非常に大事でございますので、ぜひともこれは実現をしていただきたいと思うわけでございます。  最後に、両大臣にお願いがございます。  経企庁長官はきょうはこのくらいで終わったわけでございますけれども、やはり来年度の予算編成にしっかりとした景気対策を織り込んだ予算を組んでいただいて、なるほど大丈夫だなという手ごたえが国民にわかるようにしていただきたい。  それから通産大臣に、これは意見として、考えとしてお伺いしたいわけでございますが、経済構造を変えるという話がよく出てまいります。しかし、我々五十代あるいは四十代、両大臣ともそうだと思いますが、人生の生き方が余りにもかたくなな部分がございます。仕事を趣味としてというような生き方で生きてきたり、まじめ一方で働くことを人生の生きがいのように生きた数多くの人がいます。しかし、これから日本の社会も経済構造を変えると同時に一人一人の生活の感覚を変える必要があるのじゃないか、もっと文化的な素養やいろいろな知識を学びながら人生は楽しもうというようなゆとりのあるような生活の状態をつくらなければならない。これは学校教育だけじゃできない、社会教育だけでもできない、やはり今は会社ぐるみで何となくそういう空気もつくっていく必要があるのじゃないか。日本の国の全体がもう少し生活を幅広く文化的に、ゆとりを持って生活するような方向性を築いていかないと、単にぎしぎしと経済構造だけを変えればよくなるかというと、やはり人間の生活様式、生活の感覚、そういうものも政治の中で、教育だけではなくて、すべての企業やあらゆるところで生活慣習を変えていかないと、生活の取り組みを変えていかないとミスマッチが起きてくるんじゃないかな、私はこのようにも考えられます。  いずれにいたしましても、この総合経済政策、私は非常に不十分じゃないかなという懸念を持ちながら雑駁な質問をさせていただきましたけれども、来年の予算編成等を踏まえて最後に両大臣の御決意を伺って質問を終わりたいと思います。
  146. 佐藤信二

    佐藤委員長 時間が参っておりますから、簡潔にお願いいたします。
  147. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生のお話、全く私も賛成でございまして、今経済企画庁が事務局になりまして経済審議会の中に経済構造調整特別部会というのをつくりまして、前川前日銀総裁を部会長にいたしまして、今先生のお話のような日本人の生活態様も踏まえながら新しい経済構造のビジョンをつくっていこう、こういうことでございますが、その中で非鉄金属の話も含めて、例えば造船も海運もそして鉄も、そういった不況産業と言われている素材産業等々も、やはり日本の新しい産業構造の中にどういう位置づけをするか、その点にどういう対策をするかということを真剣に考えている次第でございます。  住宅につきましては、よくわかりますが、ただ建てかえもさることながら、建てかえと同時にリフォームしていくという需要も、これからむしろどんどんふえてくるのではないか、私はこういうふうに思っておるわけでありますが、いずれまたこの問題は議論させていただきます。  いずれにしても、国の基本的な内需拡大政策と並行して、民間の方々の積極的な投資活動、そして消費活動というものが大事でございますので、今度の補正予算と並行して、来年度予算についても景気対策を十分に考えた予算を組むことが民間経済に活力を与えるための大きな政策となることと考えておりますので、御趣旨を体しながらこれからも頑張ってまいりたいと思います。
  148. 田村元

    田村国務大臣 今のゆとりある生活についてのお話でございます。我々、十一月を「ゆとり創造月間」と定めまして、とにかくゆとりある生活ということを人間の意識として強く持ってもらおうという努力をいたしております。しかし、何といってもゆとりというものは豊かさが裏づけにならなければ何にもならないわけでございます。そういう意味ではやはり経済産業政策というものをしっかりやらなければいけない。先ほど企画庁長官にお尋ねになった来年度の予算、当然のことでございます。企画庁というのはどっちかというとコンサルタントのようなもので、私どもは職人のようなものなんです。ですから、我々はあくまでも四%成長という目標を捨てないで、限りなくこれに近づく努力をしていかなければならぬということで日夜腐心いたしております。  ちょっと申し上げたいのでありますが、先ほどの企画庁長官の答弁にも、また他の答弁にもございましたが、例えば積寒地帯等で、率直に言ってちょっと困る面もあるだろうと思うのです。十一月に補正予算を組んで、しかも公共事業中心ということであればなおさらそういうことは言えるかもしれませんが、そこで、例えば石炭にしても鉄鋼にしても不況業種の地域対策ということで、先般私から建設大臣に頭を下げまして、建設大臣も快諾をしてくれまして、もう早速先週エネ庁長官を建設省へ、おおむねのリストアップをさして、それを持たして走らせました。他の省へもこれをお願いするつもりでございます。  それから、民間の設備投資というのは非常に大きくなると思います。これはどんどんお願いしていこう。例えば、一つの例にすぎませんが、電力の設備投資、これは本来六十一年度で、しかしでかいものだと思いますが、三兆七千億だ。それを二回にわたって一千億ずつ積んでいただいて、そしてなお六十二年度の発注を二千億前倒しをしてもらった。ですから、それが三兆六千の中に若干三千億ばかり入ってダブっておりますが、ダブりはとにかくとして電力で四兆一千億という設備投資の発注、契約あるいは工事ということでお願いをいたしておるわけでございます。六十一年度で幾らぐらいの金額がこなせるのか、今電力業界に一遍問い合わせをして調べてみろと指示をいたしておりますが、そういうふうにして民間が相当設備投資もしてくれましょう。それがいわゆるひとつの差益還元でもあるわけでございます。そういう点で何とか頑張りたい、このように思っております。
  149. 薮仲義彦

    薮仲委員 ありがとうございました。終わります。
  150. 佐藤信二

    佐藤委員長 米沢隆君。
  151. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、最近の円相場の問題と産業空洞化の問題、それに関連する幾つかの問題点について当局の見解をただしたいと思います。けさほどからいろいろと議論がなされておりますから、ひょっとすると重複する面があるかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。  まず、大蔵省にお伺いをしたいと思いますが、最近の円相場の問題でございます。  御承知のとおり、一時は百五十円台の前半まで上昇いたしました円相場が最近百六十円台に下がってきております。昨日は百五十九円だったそうでございますが、まだ顕著に下降現象は定着しておるというふうには見えません。しかし、百五十円台から百六十円台のボックスに入ってきたという現象は、円の乱高下の中での一過性の相場と見るのか、それともある程度円に天井感が出てきて、高くなり過ぎた円レートが傾向的に下降状態に入ったと見るのか、その点についてどのような御判断でしょうか。
  152. 井坂武彦

    井坂説明員 お答え申し上げます。  為替相場は、ここ二ヵ月ばかりドルが底がたいというふうな格好で推移をしてきておりましたが、先生御指摘のとおり、先週後半以降、一ドル百六十円前後という格好で若干ドルが上昇いたしております。本日の東京の外為市場でも一ドル百五十九円三十五銭という形で取引を終えております。  それで、これらの動きにつきましてはいろいろな要因があろうかと思いますので一概に申し上げられませんが、最近のアメリカ経済指標に若干明るい材料が出てきたといったようなことが背景にあるというふうに言われておるところでございます。ただ、まだ数日の動きでございますので、これが一過性のものなのか、それとも傾向的なものなのかというようなことについては、ちょっと申し上げることは差し控えるべきであると存じますが、いずれにいたしましても為替相場の動向につきましては今後とも十分注視をしてまいりたい、かように考えております。
  153. 米沢隆

    ○米沢委員 去る十月二十六日の日経新聞によりますと、「国際資金に円離れの動き」こういう見出しで、「ニューヨーク外為市場では日本の機関投資家が米国国債の購入のため、ドルを積極的に買い始め、欧州市場でも欧州の機関投資家が日本の株式や債券に向けていた資金を引き揚げている。また日本投資信託も米国中心海外の債券や株式を買い増す意向だ。」「日米間の景気格差もからんで「円からドル」へのシフトが表面化した形だ。」こういうような報道がなされております。  大蔵省も最近、急激な円高に歯どめをかけるという意図もあってか、資本流出規制の緩和策を次次に打ち出しておりますね。そういうものが効き始めたのかなという感じもするのですが、その点はいかがですか。
  154. 井坂武彦

    井坂説明員 御指摘のとおり、大蔵省では金融資本取引の自由化の一環といたしまして、ことしの夏、七月以降順次資本取引の規制緩和の具体的措置をとってきておりまして、それらが結果として為替相場の安定に資すれば非常に好ましいというふうに考えておりまして、御指摘のように先週末来若干ドルが戻したわけでございますが、その一つの要因として、外債投資のための関連のドルの買い需要というのがあったということも事実でございます。
  155. 米沢隆

    ○米沢委員 それと同時に、先ほどの記事によりますと、「しかし日米貿易不均衡が続く中でのドル上昇に、米通貨当局は政治的に耐えられないとの見方も米銀などには強く、市場には日米通貨当局のドル売り介入への警戒観も出ている。」そういうことで「ドルの上昇テンポしだいで、ニューヨ−ク連銀がドル売り介入に動くことが考えられるほか、乱高下防止の目的で日銀がドル売り介入を実施するとの見方もある。」こういう書き方がしてあるわけでございます。  そこで、ニューヨーク連銀のドル売り介入の動きはともかくといたしまして、日銀がドル売り介入を実施するという見方そのものが、幾ら乱高下防止の目的とはいえこの段階で、百六十円台ぐらいになっておる段階で、日本ドル売り介入に動くとは私は思えないのでございます。日銀がドルの売り買いはするのでございますが、大蔵省として円の相場観がどれぐらいのものが適正と考えるかということを占う意味で非常に興味がございます。どういうふうにお考えですか。
  156. 井坂武彦

    井坂説明員 為替相場は基本的には各国の経済ファンダメンタルズを適正に反映するということが望ましいというわけでございますけれども、具体的にどのような相場が適正かというようなことにつきましては種々議論もございますし、また為替市場への影響もございますので、申しわけございませんが発言を控えさせていただきたい、かように思います。
  157. 米沢隆

    ○米沢委員 大蔵省あるいは日銀が、日本経済にとってどれぐらいの円相場が適正と考えるかという議論まで話として差し控えるということは、そんなに大事なことなんですか。
  158. 井坂武彦

    井坂説明員 今御答弁したとおりでございますけれども為替相場には種々の要因が極めて複雑に作用しておりますので、その先行きを見通し、いろいろなことを申し上げるということが非常に困難なわけでございますが、為替相場の安定が経済の安定成長のために極めて重要であるということは、それはもう十分認識をいたしておりまして、従来から相場が乱高下すると判断される場合には適時適切に介入するということを基本方針といたしております。  なお、基本的には為替相場の安定には各国の政策の協調というのが重要でございまして、先般のIMF・世銀総会等一連の会議におきましても、経常収支の不均衡是正のためには協調的な努力が強化されることが必要で、今後は大幅な為替レートの調整なしに不均衡が是正されるよう努力を行うということが合意されたわけでございまして、これらが、為替相場の安定の重要性について各国の意見の一致を見たというようなことで、大変有意義なものであったというふうに考えております。
  159. 米沢隆

    ○米沢委員 確かにドルと円の相場は、本来ならばそういう各国の経済ファンダメンタルズを適正に反映してしかるべきだ。しかしながら、資本の流出入のバランスのとれたところで平価は決まるとか、あるいは政治力平価と言われるようにいろいろな人の発言が相場に影響して乱高下する、そういうたぐいのものになっていることは事実でございますが、大蔵省でも日銀でも、そういう意味で我が国にとって適正な水準はこう我々は思うということがいろいろな質疑の中で絶対出てこない。しかし、アメリカ高官は勝手に言っていますね。なぜアメリカはあんなことを言えて日本は言えないのですか。
  160. 井坂武彦

    井坂説明員 先生の御指摘は、例えば一つの相場の目標のようなものを設定するようなそういう御議論かと思いますけれども為替レートの安定のためにそういった例えば一定のゾーンを設けるといったような考え方につきましては、具体的にゾーンといったようなものを、どういう為替相場の水準を想定するかというようなことが非常に難しいということと、逆に、そういうものを設定をいたしますと、かえってそれが投機の標的のような格好になって相場が不安定になるといったようなところから、必ずしも現実的ではないのじゃないかというふうに我が国としては考えておりまして、他のアメリカでありますとかあるいはドイツ、イギリス等十カ国蔵相会議等の場でも、我が国と同じような意見が多数であるというふうに聞いております。
  161. 米沢隆

    ○米沢委員 しかし今のお答えでは、アメリカ高官が、我々は円をどれぐらい下げる、下げない、こうあるべきだという発言をしておることと、皆さんが何もしないということとの理由はわかりませんね。理由について今の御答弁では私はわかりかねます。  ところで、今度は通産大臣にお聞かせいただきたいのでございますが、通産大臣はもっと気軽に物が言えると思うのでありますが、我が国経済が耐えられる円相場は、各産業によって違うとは思いますが、大体どれぐらいだというふうにお思いでしょうか。  例えば円高不況に悩んでおる中小企業の皆さんのアンケートを協和銀行がとった資料によりますと、彼らは、採算レートは百九十三円だ、これは八月十五日現在でございますが、そういう調査結果もございます。あるいは経済企画庁あたりが購買力平価を試算すると一ドル百七十円程度だ、こう言われております。これは計算をする時期によって少々は変動はありましょうが、一ドル百七十円から一ドル百七十六円ぐらいが正常な購買力平価であろう、こういう試算が行われております。と同時に、三菱銀行あたりの調査によりますと、「日本と米国との価格競争力を比較すると、六十年までは、すべての業種でわが国製品が優位にたっていた。しかし、円高の進行とともにその優位が失われ、一ドル=一七〇円でなお強い競争力を持つのは、電気機械、一般機械など一部の業種にとどまる。一ドル=一五〇円では、ほとんどすべての業種で価格競争力を失う、」というような調査がございます。  そういういろいろな調査を総合的に判断されまして、通産大臣としては、我が国経済が耐えられる相場をどのように思っていらっしゃいますか。
  162. 田村元

    田村国務大臣 私は割合にはっきり物を言う性格ですけれども、これだけは簡単に言うわけにまいらない。といいますのは、もし私が下手なことを言って、それによって投機が起こったらどうなるかということもございます。先ほどから大蔵省課長が大分困っておったようでございましたが、アメリカはどんどん言うじゃないか。アメリカ日本との場合、行政官あるいは政治家の感覚的な相違もありましょう。と同時に、今日まで急速なG5以来の円高傾向、言うなればある意味においては、ドルが安くなったからドルが負けたんだというのではなくて、アメリカにとってみれば、今ドルが安いことによって、円高であることによって、むしろ勝ち誇っている面が多分にあるわけでございます。ですから、そういう点で追い打ちをかける、大きな貿易インバランス日本を追い打ちをかけるという相乗効果はございましょう。けれども日本の場合は必死にもがいて円高を少しでも解消していこうというわけでございますから、そこに置かれた立場も異なります。また、幾らなら適正かといっても、それは業種によって全然違いましょう。でございますから、一概にこれは言うわけにもまいりますまいと考えますが、いずれにいたしましても、私の立場で幾らぐらいが妥当かということは、これはちょっとお許しを願いたい。大臣でもやめたら気楽に物を言いますけれども大臣をしている間はひとつ慎重にいきたいと思います。
  163. 米沢隆

    ○米沢委員 アメリカの高官は勝手に物を言い、日本の高官は物が言えない。確かに貿易収支のインバランスがございますから、少々弱みがあって言いにくいのかもしれませんが、逆に私は、余りに弱みを負い過ぎているのではないか、それが結果的にそういう発言を差し控えるという議論になっているのではないかな。あるいはまた目標圏を設定しようという議論でも、先ほど投機が起こるとおっしゃいましたが、実際は投機を鎮静化するためにも目標圏を設定することは可能なのではないでしょうか。特に投機相場、意外に大胆な相場を張る人もおりますが、かなりセンシティブなものでありまして、やはり政治力平価だと言われる時代になった段階では、こちらも政治力を発揮して、できれば円の相場が安定的に推移するように、現在の円高が余りにも厳しいものであるならばそれを円安に導くような、少々の芝居をかけてもある程度の発言があってしかるべきだ。そうでなければ日本の為替外交なんというものは全然落第になってしまうのではないか、私はそう思うのでございますが、いかがですか。
  164. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるお気持ちはよくわかりますけれども、あるいは私が質問者であれば同じことを聞くかもしれません。しかし、いやしくも政府でございますから、慎重の上にも慎重をという姿勢は必要であろうと存じます。  それから、貿易インバランスを意識し過ぎるのではないかという御意見でございますが、私は四極貿易大臣会議あるいはガットの閣僚総会等々に参りまして、私が日本を立つときに考えておりましたのとは全然けた外れの日本のインバランスに対する厳しい姿勢が全世界の姿勢でございました。まさに私は、日本問題という問題で、いわゆる俗に言うBOBの問題で孤軍奮闘のような形になった。最終的にBOBというものを宣言文の本文に入れなかった、それは彼らが日本を守ったのではないのであって、彼らは自由貿易を守ったのだ、こういうことであって、日本に対する厳しい姿勢というものは変わっておりません。我々は日本問題、いわゆるバランス・オブ・ベネフィットというものに対して甘い評価をしたら大変なことだ、だからこそ我々は自主的な努力を必要としているのだというふうに考えております。
  165. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほど来の議論を聞いておりますと、政府として円がどれぐらいが適正かという相場観もはっきりせず、結果的には我々は円高不況で苦しみ、そして産業構造転換を迫られると、業界でも今一番知りたいのは、政府がどれぐらいの円相場を維持してくれるかということではないか。にもかかわらず、そこらは全然明らかにしないで何とかしろというのは政府として無責任ではないか、そう思うのですね。  確かに昨年の九月、G5で協調介入を決めた。そのころには確かに、この前の予算委員会の質問でもはっきりどれぐらいの目標だということは決めたことはないとおっしゃいましたけれども、少なくとも表に出さなくても腹のうちにはあったはずですね。せめてここで協調介入をしたならば年末ぐらいには二百円ぐらいになるのかなぐらいの気持ちはあって協調介入に合意されないと、これは本当はおかしいと思いますね。どこまでも円高になって結構だなんといって協調介入に合意されたはずはない。それは我々信用しなければならぬと思いますが、少なくとも表には出なくても、年末ぐらいは二百円ぐらい相当かな。したがって、例えば政府がいろいろと試算をされておるときには二百七円を利用されたり二百四円を採用されたり、結局それは、昨年の段階でことしは大体それぐらい、二百七円か二百四円ぐらいで行くだろうなあと思われたから二百七円とか二百四円を基礎にしていろいろな試算を積み上げられた、私はそう信じたいのですね。同時に、東京サミットの前後には確かに百七十円前後で一生懸命日銀が介入している事実は、これは新聞等に報告をなされておりますが、確かにそういう意味では、表には出さないけれども少なくとも腹の中にはある程度のターゲットみたいなものはあってしかるべきであり、あるはずだと思うのです。それは実際はあるのですね、表には出さないけれども。これは大蔵省でもいいな、通産大臣でもいいな。それでなければこんなものは無責任きわまると思うな。
  166. 田村元

    田村国務大臣 これは本来大蔵省のことでございましょうが、大蔵省の若い課長にその答弁をさせることはかわいそうだと思いますから、あえて私が矢面に立ちますけれども、それほどの程度ならどうというようなことはいろいろと考えるでありましょう。さっきも言ったように、業種によっても違いましょう。ですから、頭の中か腹の中かはとにかくとして、いろいろなことを考えていないと言えばうそになるかもしれない。けれども、それが言えないつらさ、これは無責任とは違う。それが言えないつらさ、これが政府なんですよ。それをひとつ御理解願いたいのです。
  167. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほどからも議論になっておりますように、結局、余りにも急激な円高になった、それも短期間になった、そのことが、頭の中では産業構造転換しなければならぬという結論になってその必要を迫られておりますけれども、実際は急激な円高と短期間の円高で右往左往しておるというのが今の日本産業の置かれた立場ではないかな、こう思うのです。そしてまた、日本としても将来的にはある程度円高を誘導していかなければ国際協調に合致するような経済体質にならない、これも正論だとするならば、これはもう当たり前のことかもしれませんが、これから産業構造改善をもし政府として産業界に説かれるならば、少なくとも二つの要件があると私は思います。  一つは「少なくとも現在の円相場が業界にとって一体高いものか低いものか、ある程度の算段をされて、それをある程度のターゲットにしながら安定的に軟着陸できるような操作をしていく、これは政府の責任だと思いますね。もう一つは、やはり適正な成長がなければ構造改善はできないと思いますね。少なくとも現在のように一%と言われるような、二%と言われるような経済成長で、幾ら国際協調のために日本経済構造転換させねばならぬといえども、このような成長率ではどだい無理だろう。逆に業界に多大な負担をかけるにすぎない。その点において政府は無策だと言われても仕方がないと言えるのではないかと私は思います。その点については私と通産大臣は大体同じ考えですね。
  168. 田村元

    田村国務大臣 今、私ども産業界に対していろいろなことをお願いしております。その基本は、今の為替相場では円が高過ぎて困る、これははっきり言っております。それは今おっしゃったとおりであります。それからもう一つは、産業構造改善というのは、すぐの問題ではありません。これはすぐから先をずっと言うわけでありまして、言うなれば二十一世紀を目指した中長期的な我々の構想と言わなければなりません。産業構造改善がすぐに手品のようにできれば簡単でございましょうけれども、それは痛みも伴いましょう。それに対してどういうような対応をするか。雇用問題だ、地域問題だ、空洞化だ、いろいろな問題がございますから、これはやはり相当な時間がかかることは現実の問題でございます。  でございますから、私どもは今、内需拡大というものにかけておるわけでございます。内需拡大に政府として可能な限りの努力をして、これは近藤君の方の分野でございますが、可能な限りの努力をして、私どももまた各業界に対して、円高のメリットを感じておる業界に対して、でき得る限りの設備投資あるいは円高差益還元等々お願い申し上げて、そして我々は、少なくとも通産省は四%の目標は捨てまいぞ、この目標に限りなく近づく努力をしようじゃないかと皆で誓い合って、日夜本当に努力をしておるというのが今の我々の姿でございます。
  169. 米沢隆

    ○米沢委員 今いみじくもおっしゃいましたように、これからの産業構造転換というのは、痛みも伴いますし、時間のかかる問題だと思います。したがって、先ほど申しましたように、円相場そのものもこんなに急激なものではなくて、徐々に円高にしていくというリードタイムをとる必要があろう。そのために政府も汗を流してもらわねばなりません。  同時にまた、適正な成長がないとこれはもうどうしようもありませんね。今度、総合経済対策に基づきまして補正予算が組まれたわけでございますが、経企庁長官にお尋ねをしたいと思うのでありますが、この補正で今年度の経済成長は一体どういう姿になっていくのか。もしできれば、今度の補正予算がどれくらいの追加需要を生み出すのか、それが結果的にはGNP比どれぐらいの割合になるのか、お知らせいただきたい。
  170. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生も御案内のように、今回の総合経済対策は全部で三兆六千三百六十億でございます。その中で大きな項目が一兆四千億の政府が直接関係する公共事業であり、そして八千億が地方の単独のこれも公共事業でございます。そして道路公団や本四架橋、鉄建公団といった公団に財投を通じて約一千億の仕事をしてもらう。合わせますと、二兆三千億になるわけでございます。さらに七千億の住宅投資を住宅金融公庫の融資条件の緩和ということで考えておりますし、それにプラスしていわゆる民間活力の積極的な導入ということで、誘発ということで電力事業とかKDDとかというものを合わせて三千六百億、そしていわゆる民活プロジェクトで一千百六十億、中小企業で一千億、地域開発四百億、その他二百億、こういうことで締めて三兆六千三百六十億でございますが、これが完全に年度内に消化されるということになりますと、GNP昭和六十年度で名目三百二十兆円でございますから、一・一%強ということになりますし、さらに御案内の乗数効果というものをプラスしてまいればさらにこれが上積みになる、こういうことになるわけであります。  ただ、問題は、補正予算をこれから御審議を願うわけでございますので、これをいつ通していただくかということにも関係をするわけでございますし、率直に言って住宅建設等は大勢の関係者の方々が積極的にこれに参加をされるということでなければ目標の数字はすぐには達成できない、こういうふうなこともございますので、三兆六千億のうちどれぐらいが年度内に消化されるかということが実は率直に言って今の段階では確定できないわけでございますが、ともかくできるだけ促進をいたしたい。特に国が積極的に関係をしております一兆四千億の公共事業は、予算上は年度内に仕事が終わるものとして千五百億、そして前払い金を支払って仕事が着工できるものとして四千億、それが伴わないものが三千億、災害復旧で五千五百億、こういうことになっているわけでありますが、直接国の予算の支払いが伴うものであるとなしと関係なしに、実は建設大臣にもお願いをいたしまして、国の前払い金の支払いがないものについても、今のような金融緩慢の状況でございますので、民間の金融機関の積極的な協力をまつことによって、契約ができればすぐにも工事の着工にとりかかるようにお願いをする、こういうことでございますし、また電力会社等の設備投資の上積み分も、通産大臣にお願いしてできるだけ年度内に実行していただく、こういうようないろいろなことをやっておりますので、相当程度の年度内の効果が期待できるもの、私はかように考えておる次第でございます。
  171. 米沢隆

    ○米沢委員 不確かな部分がございますから、正確にことしは何%成長になるということは言いにくいことかもしれませんが、ことしの四月から六月期の動きを見ておりまして、もし総合経済対策がなかったらことしは一%をちょっと超えるぐらいのものになってしまっただろう、私はそう思っております。したがって、今度三兆六千億に及ぶ総合経済対策を補正で出されて、そして今からの動きを見るわけでございますが、それにしても、今お話がありましたように不確定要素があってわからぬところもありますが、トータルとして四%は切るであろう、これは予測論でございますから後でしかわかりませんが、少なくとも三%を切るぐらいのところで落ちつくのではないか、私はそのように思います。  そうなったときに、これは推定論議の上での議論でありますからやりにくいと思いますが、産業構造の変革を長い時間かけてやっていかれはなりませんが、少なくとも今予測されるような現在の経済成長では産業構造転換はスムーズにいかないのではないか、そういう危惧の念を私は持っておるのです。世界の中での日本の立場みたいなものがありますから、そう簡単に我が道を行くわけにはいきませんでしょうが、これから先この厳しい産業構造転換させていく作業を進めていくためには、年度少なくとも四%成長、できれば五%の実質経済成長率が確保できないと、産業構造転換は口では幾ら演説ができても実際はスムーズにいかない。結果的にはそこに犠牲がたくさん出てくるだろう、そう思わざるを得ないと私自身は思っておるのでございますが、そういう意味で、ことしの経済成長率はどうだという議論を離れて、これから先、少なくとも来年度あるいはこれから十年ぐらいかけて、皆さんの立場としては、大臣はおりられておられるかもしれませんけれども産業構造転換をスムーズにやっていくためには適正な成長率、少なくとも四、五%の実質経済成長率を確保するという決意が政府にないとこれは大変問題ではないかなと思い、同時にまた、ぜひ適正経済成長を果たすように、来年度だけではなくてこれから十数年かけて、そのあたりを決意を込めて確保していくという話を両大臣から聞かしていただきたいものだと思っておるのですが、いかがでしょう。
  172. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生のおっしゃるように、成長経済でなければ産業構造転換ができないというのは私も全く賛成でございます。しかし同時に、産業構造転換ということ自体が潜在的に大変な需要要因だと私は思うわけであります。すなわち、こちらのAという産業分野ではもうだめだからBという産業分野に転換するわけでございますから、積極的な設備投資をしなければ転換できない。また、為替レートがどうだというお話がございましたけれども、どの程度が適正かどうかは別として、円高経済というものは円高状況対応するための積極的な設備の合理化、近代化、そして研究開発投資、こういったものを潜在的に醸成しているわけでございますから、今の円高経済というのは、ある意味では圧力がかかっちゃって、そして投資をしなければならないという、うつぼつたる投資欲求が経済にみなぎっている状況と私は思っているわけであります。  しかも同時に、御案内のように金利が非常に緩慢になって金利も安くなっているわけでございますから、今安い金利の金を借りて積極的に設備投資をしておかしくないのだけれども、なぜ民間の企業の方々がいま一つ踏み切れないかと言えば、それは将来の産業構造がどういう方向に展開するかということについての明確な考え方、ビジョンをまだお持ちになっていらっしゃらない。この問題について、私ども経済審議会の中で経済構造調整特別部会をつくりまして産業構造の将来のビジョンづくりに早急に取り組んでおりますし、同時にもう一つ、政府が補正予算を通じて、六十二年度の予算を通じて、積極的な成長政策を天下に示すことがそうした潜在的な投資意欲を表に出してくる効果がある、こういうふうに考えますので、成長経済がなければ産業構造転換はできないけれども産業構造転換意欲それ自身がある意味では新たな成長要因、投資要因である、こういうふうに私は考えて、その辺は国の政策と民間の意欲がうまく調和しながら何としてもしかるべき率の成長を達成してまいりたいと思って頑張っている次第でございます。
  173. 田村元

    田村国務大臣 産業構造改善といいますのは、先ほど来おっしゃるように、また私が申し上げたように時間のかかる問題、これはあくまでも国際協調型の輸出輸入のバランスのとれた産業構造転換し、また海外への投資も促進する、そのようにして国際分業の実を上げよう、こういうわけでございます。でありますから、痛みも伴うと申し上げたのはそこでありまして、当然痛みも伴います。雇用の面あるいは地域問題あるいは空洞化問題等、たくさんいろいろなそういう対策も講じていかなければなりません。そういうことでございまして、海外投資もする、同時にまた、一面において累積債務に悩んでおる途上国に対して我々の黒字の還流も図らなければなりません。そのためには、これを補完していく保険制度の改善とかいろいろなことをしなければならぬというふうにして日本の体質が改善されていく、ドルは減っていくということ。  それともう一つは、何と言っても長い間のことでございますから、今のような、どちらかというとうっとうしい経済情勢がずっと続くとは言えない。場合によったら過熱になって、今度は抑えなければならぬことだってあるかもしれない。私は代議士生活をずっとしてきまして、随分赤字に悩んだ時代も経験してきた、またなべ底不況も経験した、あるいは過熱になって金融引き締めで苦労した時代も経験してきた。わずか三十年の間にそういう波が幾つかございました。これから我々は、二十一世紀を展望した中長期的な問題としてこれを取り上げるわけでございますから、今のような姿でずっとグラフが横に一本に真っすぐにいくとは思えない。でございますから、それはやはり適時適切の対応をしていく。しかし、少なくとも今のようなうっとうしい経済情勢では困るということでございます。
  174. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、この国際的な不均衡を是正するために日本がある程度円高を受忍せざるを得ないといいましょうか、現行水準を受け入れざるを得ないとするのであれば、やはり我が国経済政策も新しいフレームワークをつくっていかねばならぬ時期に来ておる、そう思うのですね。少なくとも現在の緊縮財政の延長線では解決不可能であろうと思いますし、ただ民活民活を叫ぶだけでは、産業構造改善とか、あるいは日本産業の空洞化を防止するみたいなものはほとんど不可能であろう。それ以外の答えを出さない限り、我が国経済は真っ暗やみであろう、そう思わざるを得ないのでございます。そういう意味で、これから先、来年度の経済政策を初めとして、少なくとも過去の延長線に、ただ金を工面しながら何とか内需拡大しましょう、何とか公共事業をやりましょうという発想では、将来の国民は泣きを見るのではないかと思うのでございますが、どうお思いですか。
  175. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 円高不況でいろいろ困っていらっしゃる方々の多い昨今でございますし、内需中心としての景気対策をやっていくためには国がしなければならない役割はあると私ども考えておりますし、それだからこその総合経済対策であり、そして一兆四千億の公共事業である、こういうことでございますし、来年度も予算の中では景気対策を十分盛り込んでおくべきだと思っているわけであります。  しかし、日本経済というのはもうまさに三百二十兆、三十兆、こういう大変大きな経済でございますし、国ができる役割といえば、例えば公共事業予算でも、予算の中で六兆円でございますが、これをどうするかということも大事であります。しかし、民間設備投資は五十五兆円ある。民間の消費は百九十兆円ありますが、例えば民間の消費がたった一%ふえるだけで一兆九千億、二%で三兆八千億。民間設備投資もそうでございます。したがって、国がやることはやりますけれども、しかし、民間の設備投資がもっと積極的に出てくる、そして民間の消費がもっと出てくるということの方が実はGNPの中でもっと大きな役割を果たすと思うわけであります。まさにそういう面で、国の財政政策と、民間設備投資や消費を今後どうふやすかということのための財政金融政策、例えば税制改正という問題も本格的に考えておるわけでありますが、そういう形で積極的な投資や消費を推し進めることが大事なのであって、何でもかんでも国が背負わなければならないということではないのではないかなと思っている次第でございます。
  176. 米沢隆

    ○米沢委員 時間が参りましたのでこれでやめたいと思いますが、私は、円高という現象は、今までも石油ショックだとかニクソン・ショックだとかいろいろありましたけれども、まさに円高ショックと言われるほどに画期的に我々が今住んでおる環境ががらっと変わったと見なければならぬだろうと思いますね。そういう意味で少なくとも国の経済政策、八〇年代の将来を展望する何とかがありましたね、ああいうものだとか財政再建対策だとか、あれはみんなこの際がらっと変えて新しいものに組みかえて、やはり目標を持って政治がその目標を達成するように努力する、そういう時代だと私は思いますね。そういう意味で、少なくとも従来のいろいろな計画とか従来のいろいろな物の考え方からちょっと離れて、がらっと我我の環境が変わったのだという意識の中で財政再建対策も変えねばなりませんし、経済政策のあり方も変えねばなりませんし、財政運営のあり方もやはり工夫が見られなければならないだろう、私はそう思います。  答弁を求める大臣をどちらにしようかなと思っておりますが、通産大臣、最後に締めていただいて質問を終わりたいと思います。
  177. 田村元

    田村国務大臣 先ほど申し上げましたように、いろいろな努力をしてドル減らしをすることによって円が適正な価格に戻りましょうし、また高目の成長を図り続けることによって日本産業構造改善というものも達成され得るものと思っておりますが、今おっしゃいましたことを言葉をかえて言えば、行政改革はとにかくとして、財政改革というものと、そして新しい高目の成長を目指した、言うなれば景気の浮揚を目指した財政というものとの整合性をどうとるか、それで悩まなければならぬ時代が来たのではないか、そういう御趣旨じゃないかというふうに私は聞いておりましたけれども、そういう点でまたいろいろと悩まなければならぬ時代が訪れてきたことは事実であると思います。しかし、我々は財政改革ということを捨てるわけにもまいりません。同時に、緊急避難的に今内需拡大というものと取り組んでおりますが、今後恒久的な問題として内需拡大と取り組むときにこれとどう整合性をとっていくかということについては、やはり深刻に悩んでいかなければならぬ問題であろうか、これは個人の解でございますけれども、他の大臣はどう考えておるか知りませんが、少なくとも私はそのように非常に深刻に受けとめております。
  178. 米沢隆

    ○米沢委員 御健闘を祈ります。
  179. 佐藤信二

  180. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 先日の委員会に引き続きまして、私は、円高不況中小企業対策について質問を行います。  異常円高によりまして中小企業の倒産、労働者やパートの首切り、そして自殺者や夜逃げの続出など、現状のまま推移するならば、これから年末にかけましてさらに深刻な事態は免れることはできません。  そこで、まず中小企業向けの官公需の問題でございます。国等の契約の方針につきましては毎年閣議で決定をし、中小企業官公需特定品目が十品目定められております。六十年度の実績は中小企業の契約比率が全体で七七・八%、潤滑油三九・三%、外衣と下着は四五・六%、織物は四九%となっております。円高不況で中小業者があえいでおります。仕事がなくて困っていることを考えますと、この特定品目についてはまず一〇〇%中小企業に発注をするという措置をとるべきではないでしょうか。お尋ねいたします。
  181. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 官公需の中小企業向け発注の確保につきましては、私どもそれをできるだけ上げるべく努力してまいりました。今年も去る七月に各省庁ことに御協力をお願いをして折衝いたしました結果、全体として三九・八%というこれまでの最高の比率の目標を今年度掲げておるわけでございます。また、地方庁に対しましても、そういう国と同じような一つの目標を定めてやっていただくようにということで、その趣旨の徹底を図ってきているところでございます。その中で今御指摘の特定品目についてもできるだけ発注、落札等の情報中小企業者によく徹底をするというような努力をしておりまして、その結果が、今先生御指摘のとおり、昨年度においては全体の七七・八%が中小企業者に落札された、こういうことになった次第でございます。  ただ、一方、国のそういった予算につきましても効率的使用ということが当然に定められておるわけでございまして、そこでそれを最初からこれは中小企業者向けであるというふうに確定するということについては、なかなか現実的に行いがたいものであるというふうに考えております。
  182. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 中小企業に対してこの時定品目を一〇〇%発注する、こういうことだけで三百四十五億円という仕事を新たに中小企業に回すことができるわけです。私は先日北陸の繊維産地の問題を取り上げたわけですけれども、繊維の三品目だけで一挙に百十九億円回せるわけです。省庁別に見ますと、文部省は九九・五%、通産省も九六・四%を実現いたしております。しかし、他の省庁ではまだ低いところもあるわけなんですね。これは中央一括発注ということを地方支分部局発注、こういうことで発注をやろうという認識と自覚に立てばすぐできることだと思うわけなんです。官公需全体でいいますと、今年度の中小企業契約目標が三九・八%となっております。この目標を五〇%に引き上げれば中小企業に八千三百七十五億円の仕事が回るわけですね。仕事の減少で泣かされている中小企業への対策としては、これは極めて効果的なものだと思うわけです。中小企業の経営危機を打開する緊急の措置として、私が申し上げましたことをぜひとも急いで実行をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  183. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 私どももそういった官公需というものの中小企業者への効果を重視して、今年五、六、七月というふうに各省庁とこれの最大限の中小企業への受注確保について折衝をしてまいりました。ただ、各省庁によりましてその官公需の中身が違います。それが大企業でも中小企業でも供給できるという性格のものとそうでないものがございます。したがいまして、各省庁とも本当にこの問題の重要性については近年非常によく認識してもらっていると私ども実感しておりますけれども、そういう努力の結果が残念ながら三九・八%であった、こういうことでありまして、過去の目標に比べますと一応若干ではございますけれども、過去最高のところまでは実現できたかと思っておりますけれども、もちろん今回補正予算も確定していきますわけで、そういう補正予算等の使用についても今後とも中小企業の受注確保ということについて改めて各省庁へお願いを申し上げたいというふうに思っております。
  184. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 これは、東京湾横断道路であるとか民活による大規模なプロジェクト中心というような公共事業を幾ら進めましても中小企業には少しも役に立ちません。通産省中小企業向け官公需の取りまとめをされる官庁なんですから、中小企業の仕事を確保するためにもっと積極的に他の省庁に働きかけて、あらゆる創意と工夫、努力をしていただきたいと重ねて要望を申し上げたいと思います。  続いて金融対策についてお尋ねいたします。  中小企業者の皆さんから実情をお聞きいたしました中で、最も強く、しかも皆さんが共通して訴えられましたのは既往債務、借金の返済、負担の重圧の苦しみですね。中小企業事業団の高度化融資、設備近代化資金貸し付け、国民金融公庫、中小企業金融公庫などの返済猶予の内容、それから猶予の実績というのはどういうふうになっておりますでしょうか。
  185. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 返済猶予については私ども、個々の企業状況に応じてできるだけ弾力的に中小企業者の要請に応じてもらうようにということで、大蔵当局と連名で各機関にそのお願いをし続けてまいっているところであります。その結果、今の御質問でございますけれども、今年度四月から六月、この三カ月で見まして、件数で申しまして中小企業金融公庫で千八百六十六件、国民金融公庫で九千四百二十一件、商工中金で四百五十九件というような返済猶予の件数の報告を受けております。お尋ねの中小企業事業団につきましてこの返済猶予というようなものは、ちょっと今集計したデータがございません。
  186. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それぞれの融資の貸し出し残高と対比しまして、この返済猶予、これははっきり言っていただけませんでしたんですが、実績や実態は極めて不十分だと言わざるを得ないわけです。  そういう中で、中小企業はこのように言っておられます。政府はいろいろ対策を講じてくださるけれども、返済の条件変更は新規の融資を受けるよりもはるかに厳しい、私たち中小企業者の苦しみをもっと配慮した運用を是が非でもというのが皆さんの共通の要求であるわけです。ことしの二月、新事業転換法で近代化融資の返済期間をそれまでの五年間から三年延長して八年にされたわけですね。このように、高度化融資や国金や中金、これにつきましても、せめてこの猶予期間を一年から三年にする、返済期間も連動して三年間延長すべきだ、こう思うのですが、いかがでしょうか。  また、時間がないので一緒にお聞きいたしますが、既往貸付金の返済、負担の軽減措置ですね。これにつきましても、措置期間の一年は余りにも短過ぎると思うわけですね。せめて三年間は面倒を見るべきです。軽減措置がわずか一%に満たないというようなことなんですね、計算いたしますと。こんなことでは全く実情とは相反して、焼け石に水だという状況なんです。もっと実態をよく調べていただき、親身になって大幅に措置をすべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
  187. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 返済期間等につきましてはいろいろな制度ごとに確定しておりますけれども、現時点において、そういう返済期間で実は借りていたものが、このような苦境の中で返せないというような問題がございます。それからまた、その時点で借りたときにはその時点の金利水準であった、それが現在こういうふうに全体として金利水準が下がっておるので借りかえたい、こういう要請もございます。あるいは、さらにまた新たに借りかえるについて担保がない、したがってそういう担保の徴求についてもっと緩やかに考えてくれないかとか、御指摘のとおり、個別のケースごとにいろいろな中小企業の金融についての御要請がございます。  私ども、それらについてできるだけ弾力的に運用するようにということで指導しておるわけでございますが、最後は、やはりこれはその金融機関の一つの経理の問題になります。政府系中小金融機関、これは今資金コストとその金利水準の差が非常に縮まりました。毎年赤字を出しております。したがって、その赤字を補てんすることによって現実的にそういった融資の弾力的運用ができるわけでございます。したがいまして、私どもはそういうことを、一片の通達ではなく、できるだけ実のあるためにはその裏づけをしてあげなければいけないということで、今回この補正予算において百十六億のそういった補給を手当てするということを考えているところでございます。
  188. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 この問題の最後に大臣にお尋ねをいたします。  中小企業、零細業者の皆さん方は、多額の借金を抱えているから仕事をやめるにもやめられない、それから借金を返済しなければならないから親企業の買いたたきにも泣く泣く応じて、赤字承知で仕事を続けざるを得ない、こういう悪循環でますますどん底に追い込まれているわけです。こうした皆さんの苦境を打開するために、既往債務の返済猶予、負担軽減措置の拡充と中小企業者の実態に応じた積極的な運用、これを私は強く要求をいたしますが、いかがでしょうか。  さらに国際経済特別貸し付け、いわゆる円高緊急融資、事業転換融資の金利の問題を一緒にお尋ねいたします。今の円高不況は政治災害なのですから、融資金利を激甚災害並みの三%あるいはそれ以下にして当然ではないでしょうか。五%や四・八五%の金利では問題にならないのです。現に補正予算では金利二・二%の金属鉱業経営安定化融資制度、これの創設が考えられているわけですね。真に中小企業のことを心配するのなら、直ちに実現されるべきだ、そして本当に借りたい人が借りられるという指導を強めるべきだ、こういうふうに思うのです。  この二点につきまして、大臣の御答弁をお願いをいたします。
  189. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 経理について技術的な御質問がございましたので、私からまず御答弁させていただきます。  私どもは、中小企業の政府系金融機関による融資、これは基本的な考え方として、大企業が借りられる最優遇金利、プライムレート、これを中小企業にも確保する、これをもって中小金融の一つの原則としております。そのようにこの年来確保してまいりました。現在、御承知のとおりプライムレートは六・四%でございます。そこで、資金コストは高いのですけれども、基準金利として六・四%を実現しておるわけでございます。  そのほかに、そういうプライムレートではなおかつ現在のいろいろな状況対応し切れませんので、今御指摘のように、新転換法に基づき国際経済調整特別貸し付けということで五・〇あるいは四・八五という、中小企業金融としてはこれも非常に超低利と申し上げてもいいような金利水準をこの二月に実現し、中小企業者も非常にこの制度を活用していただいておりまして、当初三千億枠を用意しましたけれども、この九月末までに既に二千四百億を消化した、こういう状況にございます。  さらに、今回円高の一層の進展の中で、特に集中した影響を受けている地域中小企業者に対して三・九五%のいわば超低利の資金を用意したいということで今回の補正予算にその手当てをしたところでございます。  さらにつけ加えますと、中小企業事業団は、中小企業者がいろいろな組織的な活動によってこの苦境を何とか活路を開きたいというような組織的活動に伴ういろいろな共同事業については、金利○%の融資制度を持っている次第でございます。
  190. 田村元

    田村国務大臣 まず第一の問題でございますが、年末を控えて、特に政府系金融機関による金融政策を弾力的に運用することは当然でございまして、先ほど長官が答えたとおりでございます。  また、私からお答えしようと思いましたが、国際経済特貸の問題につきましては、今長官から詳しく御説明を申し上げました。あれに尽きておると思います。
  191. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 再度申し上げますが、本当に借りたい人が借りられるための努力、指導をもっと強めていただきたいと強く要望して、時間がありませんので、続いてさらにこの根本的な対策ということについて質問をしていきたいと思います。  昨年九月のG5では対外インバランスの解消を最大の目標として為替レートへの協調介入が合意をされました。今日まで円高ドル政策が実行されてきたわけです。しかし、一年余りたちました今日、アメリカの貿易赤字は解消どころかさらに拡大をして、今年度の赤字は昨年を大きく上回り史上最高の千七百億ドルです。あるいは千八百億ドルにも達すると予測をされているわけです。我が国の貿易黒字も、昨年度の五百二十六億ドルを大きく突破して、政府経済見通しの五百六十億ドルをもはるかに超えて、今年度は九百億ドルにも達すると予測をされているわけです。アメリカの双子の赤字、つまり財政赤字と貿易赤字の原因が、レーガン政権の大軍拡とアメリカ経済の多国籍企業化による空洞化にあることは、今では我が国大手金融機関の指摘も含めまして広く指摘をされているところです。また、日米あるいは日欧貿易不均衡の最大の国内の要因が我が国企業の異常に強い国際競争力にあるということについても、我が党は繰り返し指摘をしてきたところでございます。異常円高を是正すること、そして対外不均衡の根源であるこれらの原因にメスを入れることこそ今日最も重要なことだということを改めて私は指摘をしたいと思います。  そこで、異常円高の要因となりました我が国の貿易黒字についてお伺いをいたします。  昨年の我が国企業輸出上位十社はどこどこでしょうか。そして、上位十社及び上位三十社の輸出額は円ベースで幾らになっておりますでしょうか。
  192. 畠山襄

    ○畠山政府委員 輸出に関します統計といたしましては、大蔵省がつくっております通関統計と私ども通産省でつくっております輸出確認統計がございますが、いずれも商品別、国別に整理をされておりまして、企業別の整理はいたしておりません。また、そういうものとして公表するべくとっておりませんので、今お尋ねの正確な輸出順位ということではわからないわけでございます。  ただ、有価証券報告書の方で製造業の上位十社というものが出ておりますが、それの六十年度の輸出額を見てみますと十三兆三百六十億円でございまして、その製造業の上位十社といいますのは、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研、松下電器産業、マツダ、日立製作所、新日鉄、ソニー、東芝、日本電気ということでございます。  それから、三十社の輸出額を申し上げますと、この有価証券報告書で二十兆九千五百七十一億円ということでございます。
  193. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 輸出額上位十社は言われましたか、ちょっと聞き逃しましたが。
  194. 畠山襄

    ○畠山政府委員 ちょっと早く申し上げ過ぎてあれでしたけれども、上位十社の輸出額といいますか、製造業で上位十社の輸出額を合計いたしますと十三兆三百六十億円でございます。
  195. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 昨年度の総輸出額は四十兆七千三百二十億円ですから、上位十社だけでそのうち三二%も占めているわけです。それから、上位三十社では五一%ですね。  次に中小企業庁にお聞きをしますが、我が国産地中小企業の一昨年、一九八四年の総輸出額は幾らでしたでしょうか、それは八三年に比べて一体どうなんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  196. 岩崎八男

    ○岩崎政府委員 産地の定義にもよりますが、五百二十六産地というようなことでとらえますと、五十八年の産地の輸出額は一兆七千二百八十億円、それから五十九年の産地の輸出額は一兆五千八百六十億円でございました。
  197. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 昨年はさらに落ち込んでいるというふうに思いますが、一昨年で一兆五千八百五十六億円、これは総輸出額のわずか三・九%にしかすぎないわけです。前回の円高、今から十年前、一九七六年度の輸出総額は約二十兆円でした。そのうち上位十五社で三〇%、上位五十社で五〇%を占めていたわけです。これが九年後の昨年度には輸出総額が二倍になっている。しかも上位十社で三二%、三十社で五一%を占めるまでになったわけです。自動車や電機などごく一部の大企業がいかに猛烈に輸出を伸ばしてきたかは、この数字ではっきりしているわけですね。だから、全国どこへ行きましても、自動車や電機など一部大企業のおかげで異常円高にされ、関係のない自分たちがなぜこんなに苦しまなければならないのか、こういう批判と悲鳴を聞くわけです。ところが、事もあろうに大企業円高を理由にいたしまして一層過酷なことを労働者中小企業に強いております。  例えば、トヨタ自動車はこう言っております。乾いたタオルを絞るような徹底したコスト低減、下請中小企業いじめによって一ドル百四十円でも生き残れると豪語をし、さらに合理化を強いているわけです。本田技研は、社長が先頭に立って、一ドル百円に対応できる企業体質をつくろう、系列部品メーカーを含めて一年間に生産性を三倍に高める運動を展開しているわけです。また松下電器は、五年後に海外生産比率を現在の一四%から二五%に高め、さらに工数四〇%以上の削減、すなわち四割以上のコスト低減を三カ月間で達成しようという猛烈な合理化を展開しているわけです。  大企業のこうした行動を放置しておくということは、一部大企業の国際競争力をさらに強めていき、どこまで円高が進んでも貿易不均衡は解消しない。そればかりか、労働者中小企業の耐えがたい犠牲によってこれらの悪循環をさらに重ねていくだけだと思うわけです。ですから、今政府に求められていることは何でしょうか。それは断固たる決意で異常円高の是正に取り組むこと。さらに、通産省に求められていることは、異常な国際競争力の背景にあります劣悪な労働条件、下請取引条件を抜本的に改善をすることです。そしてこれまでの悪循環を繰り返させないように大企業を指導をすることではないでしょうか。答弁を求めます。
  198. 畠山襄

    ○畠山政府委員 大企業の十社の輸出が先ほど申し上げましたように十三兆円という額になっていることは事実でございますけれども、その十三兆円の輸出を行うに際しましては、当然中小企業を含めました下請企業にその一部を出しているわけでございまして、したがいましてその十三兆円の分をまた抑制をするというようなことになってまいりますと、さなきだに円高で困っておりますところをまたさらに困らすということにもなりかねませんので、非常にその点は慎重に考えていかざるを得ない問題でございます。  また、そういうことがございますからこそ、長期的には我が国経済構造転換いたしまして、輸出に依存しないで内需に依存をしながら商売をやっていけるような、そういう体制に改めようと政府としても努力をいたしているところでございます。
  199. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 これに輪をかけまして大変な問題が産業構造調整でございます。  中小企業庁は八月二十一日に地域総合実態調査結果、これを発表をされました。その中で産地、企業城下町、中小企業の事業転換、多角化等について「現実には資金面、技術面、販路面等での制約が大きく一部の中小企業を除き対応は容易ではない。」こういうふうに述べているわけですね。資金力もない、情報もない、人材もない、ないない尽くしの中小企業に事業転換を求めても、それこそ容易ではありません。今の御答弁は大変安易だと思うのですね。  ところが、大企業はこれまでの輸出ラッシュで異常円高をもたらし、労働者中小企業、国民に大変な困難をもたらしながら、今度は前川リポートや中曽根総理の対米公約に治った産業構造調整、海外進出海外の生産拠点からの製品、部品の輸入を急増をさせているというのが実態ではありませんか。産構審の「二十一世紀産業社会の基本構想」というのも、国際協調化と称して、大企業のこうした企業行動を促進させようとしているわけです。これは、今でさえ大変な中小企業、農業、地域経済等にとりまして重大な事態をもたらすということは火を見るよりも明らかです。  この「日経ビジネス」ですね、これの九月十五日号を見ますと、日本的経営の空洞化を特集をしておりますが、ここでは輸出企業海外直接投資の急増によって、これからの五年間に製造業だけで金属製品の十八万人、自動車の十六万人など九十万人の職場が消えるとして、国滅んで企業が栄えるとまで警告をしているわけです。  通産大臣は御就任に当たりまして総理から、産業構造調整にはかみそりではなくて大なたを振るってほしい、こう言われたそうですけれども、これはとんでもないことではないかと思うのですね。事業転換中心の不況対策中小企業や農業を犠牲にして一部大企業だけを栄えさせるというような産業構造調整政策は直ちにやめるべきではないでしょうか。大臣いかがでございますか。
  200. 田村元

    田村国務大臣 私ども考えております産業政策と基本的にお考えが違いますので、ちょっと私も、どうお答えしたらいいか先ほどから考えておりましたが、要するに我々が考えております産業構造調整というものについていろいろと痛みも出る可能性がありましょうから、それが出ないような予防措置を講じ、もし出た場合には徹底して救済策を講じていくというようなことで、率直に言って、大企業はとにかくとして、中小企業を思う気持ちにおいては、私はあなたに劣るものではございません。
  201. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 基本的な考え方が違うということで逃げられましたが、大臣は就任のときにも言われたように、中小零細企業大臣だとおっしゃったのですから、今のは答弁不能なのかなというふうに理解をいたしました。大臣のお答えになれないというような政府の方針ですね、それは本当に国民に重大な犠牲を強いるだけでなくて、日本経済、将来にとりまして取り返しのつかない禍根を残すことになるのではないか、こういうふうに大変強く懸念をするわけです。私はこのことを強く警告を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  202. 田村元

    田村国務大臣 今産業構造改善お話をなすって、私にその御質問をなすった。そして中小企業問題を御質問になりました。私は、中小企業を思うことは劣るものではございませんと申しました。産業構造改善というものをいきなり中小企業問題で答弁不能と決めつけられて、それを原稿にされてはたまりません。それだけお答え申し上げておきます。
  203. 佐藤信二

    佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会