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1986-10-23 第107回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十三日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 堀内 光雄君    理事 戸井田三郎君 理事 長野 祐也君    理事 丹羽 雄哉君 理事 浜田卓二郎君    理事 池端 清一君 理事 沼川 洋一君    理事 田中 慶秋君       逢沢 一郎君    粟屋 敏信君       井出 正一君    伊吹 文明君       石破  茂君    石渡 照久君       小沢 辰男君    大野  明君       大野 功統君    片岡 武司君       木村 義雄君    古賀  誠君       佐藤 静雄君    佐藤 敬夫君       自見庄三郎君    園田 博之君       高橋 一郎君    武部  勤君       武村 正義君    戸沢 政方君       中山 成彬君    野呂 昭彦君       鳩山由紀夫君    藤本 孝雄君       三原 朝彦君    箕輪  登君       持永 和見君    田邊  誠君       中沢 健次君    永井 孝信君       広瀬 秀吉君    村山 富市君       井上 和久君    大橋 敏雄君       貝沼 次郎君    橋本 文彦君       塚田 延充君    浦井  洋君       田中美智子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    長尾 立子君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局老人保健部長 黒木 武弘君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         社会保険庁年金         保険部長    岸本 正裕君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   田波 耕治君         自治省財政局調         整室長     二橋 正弘君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     鳩山由紀夫君   小沢 辰男君     園田 博之君   大野  明君     石破  茂君   木村 義雄君     逢沢 一郎君   古賀  誠君     武部  勤君   自見庄三郎君     石渡 照久君   戸沢 政方君     佐藤 敬夫君   藤本 孝雄君     井出 正一君   箕輪  登君     武村 正義君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     木村 義雄君   井出 正一君     藤本 孝雄君   石破  茂君     大野  明君   石渡 照久君     自見庄三郎君   佐藤 敬夫君     戸沢 政方君   園田 博之君     小沢 辰男君   武部  勤君     古賀  誠君   武村 正義君     箕輪  登君   鳩山由紀夫君     伊吹 文明君     ───────────── 十月二十三日  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律案内閣提出第一一号) 同日  学童保育施設国庫負担等に関する請願外七件(近江巳記夫紹介)(第三三五号)  老人医療患者負担反対等に関する請願上田哲紹介)(第三三六号)  同(有島重武君紹介)(第三六五号)  同(斉藤節紹介)(第三六六号)  同(池田克也紹介)(第三八九号)  同(金子みつ紹介)(第四七二号)  老人医療費患者一部負担反対等に関する請願近江巳記夫紹介)(第三三七号)  同(小川国彦紹介)(第三六七号)  同外一件(上坂昇紹介)(第三六八号)  同(斉藤節紹介)(第三六九号)  同(渡部行雄紹介)(第三九〇号)  同(安藤巖紹介)(第四二七号)  同(小川国彦紹介)(第四二八号)  同(柴田睦夫紹介)(第四二九号)  同(田中美智子紹介)(第四三〇号)  同(正森成二君紹介)(第四三一号)  保育予算増額等に関する請願左近正男紹介)(第三三八号)  老人保健法改善等に関する請願上田哲紹介)(第三三九号)  同(上坂昇紹介)(第三七〇号)  同(斉藤節紹介)(第三七一号)  同(池田克也紹介)(第三九一号)  同(竹内勝彦紹介)(第三九二号)  同(武藤山治紹介)(第三九三号)  同(渡部行雄紹介)(第三九四号)  同(柴田睦夫紹介)(第四三三号)  同外一件(田中美智子紹介)(第四三四号)  同外一件(寺前巖紹介)(第四三五号)  同外一件(藤原ひろ子紹介)(第四三六号)  同外一件(金子みつ紹介)(第四七三号)  同(永末英一紹介)(第四七四号)  国立療養所秋田病院移譲反対等に関する請願阿部喜男紹介)(第三五三号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三五四号)  同(川俣健二郎紹介)(第三五五号)  同外一件(佐藤敬治紹介)(第三五六号)  同(新村勝雄紹介)(第三五七号)  同外一件(三野優美紹介)(第三五八号)  同(川俣健二郎紹介)(第三九五号)  同(川俣健二郎紹介)(第四三七号)  同(佐藤敬治紹介)(第四三八号)  同(川俣健二郎紹介)(第四七五号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律案廃案等に関する請願外二件(木下敬之助紹介)(第三五九号)  同(田中慶秋紹介)(第三六〇号)  同外五件(阿部喜男紹介)(第三九六号)  同(石橋大吉紹介)(第三九七号)  同外一件(石橋政嗣君紹介)(第三九八号)  同(小野信一紹介)(第三九九号)  同外二件(緒方克陽紹介)(第四〇〇号)  同外一件(大出俊紹介)(第四〇一号)  同外二件(川崎寛治紹介)(第四〇二号)  同外一件(河野正紹介)(第四〇三号)  同(上坂昇紹介)(第四〇四号)  同(上原康助紹介)(第四三九号)  同(加藤万吉紹介)(第四四〇号)  同(佐藤徳雄紹介)(第四四一号)  同外二件(坂上富男紹介)(第四四二号)  同外七件(嶋崎譲紹介)(第四四三号)  同外二件(清水勇紹介)(第四四四号)  同(城地豊司紹介)(第四四五号)  同外四件(新盛辰雄紹介)(第四四六号)  同外二件(関山信之紹介)(第四四七号)  同(田口健二紹介)(第四四八号)  同外五件(竹内猛紹介)(第四四九号)  同外一件(中西績介紹介)(第四五〇号)  同外二件(中村茂紹介)(第四五一号)  同(楢崎弥之助紹介)(第四五二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第四五三号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第四五四号)  同(前島秀行紹介)(第四五五号)  同(三野優美紹介)(第四五六号)  同(武藤山治紹介)(第四五七号)  同外四件(村山喜一紹介)(第四五八号)  同(安田修三紹介)(第四五九号)  同(吉原米治紹介)(第四六〇号)  同(渡部行雄紹介)(第四六一号)  同(緒方克陽紹介)(第四七六号)  同(金子みつ紹介)(第四七七号)  同(田中恒利紹介)(第四七八号)  同(楢崎弥之助紹介)(第四七九号)  同(野坂浩賢紹介)(第四八〇号)  国立福知山病院経営移譲計画中止等に関する請願竹内勝彦紹介)(第三六一号)  同(玉置一弥紹介)(第四八一号)  国立横浜東病院国立横浜病院統合反対等に関する請願外一件(田中慶秋紹介)(第三六二号)  小規模障害者作業所の助成に関する請願中西績介紹介)(第三六三号)  老人保健法改悪反対等に関する請願有島重武君紹介)(第三六四号)  同(池田克也紹介)(第三八七号)  同(高沢寅男紹介)(第四七一号)  老人保健制度改悪反対等に関する請願河野正紹介)(第三八一号)  老人保健制度拠出金増額反対に関する請願外五件(関山信之紹介)(第三八二号)  国立療養所西香川病院の廃止・経営移譲反対等に関する請願三野優美紹介)(第三八三号)  老人医療費患者負担増大反対等に関する請願池田克也紹介)(第三八四号)  同(武藤山治紹介)(第三八五号)  同(渡部行雄紹介)(第三八六号)  同(児玉健次紹介)(第四二三号)  同(藤原ひろ子紹介)(第四二四号)  老人保健法改悪反対等に関する請願関山信之紹介)(第三八八号)  同外二件(浦井洋紹介)(第四二五号)  同外三件(田中美智子紹介)(第四二六号)  国立医療機関統廃合反対等に関する請願安藤巖紹介)(第四一四号)  老人医療無料化制度復活等に関する請願佐藤祐弘紹介)(第四一五号)  同(田中美智子紹介)(第四一六号)  医療福祉改善等に関する請願外一件(田中美智子紹介)(第四一七号)  同(辻第一君紹介)(第四一八号)  同(寺前巖紹介)(第四一九号)  同(中路雅弘紹介)(第四二〇号)  老人医療患者負担増額反対等に関する請願田中美智子紹介)(第四二一号)  国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律案廃案等に関する請願吉井光照紹介)(第四二二号)  医療保険制度改善に関する請願草野威紹介)(第四三二号)  国立病院療養所統廃合反対等に関する請願上田哲紹介)(第四六九号)  同外三件(竹内猛紹介)(第四七〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  老人保健法等の一部を改正する法律案内閣提出第九号)      ────◇─────
  2. 堀内光雄

    堀内委員長 これより会議を開きます。  内閣提出老人保健法等の一部を改正する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。斎藤厚生大臣。     ─────────────  老人保健法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいま議題となりました老人保健法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  人口高齢化が急速に進む中で、老人医療費増加は避けられないところでありますが、最近著しい伸びを示している老人医療費を適正なものとし、国民がいかに公平に負担していくかということは、老人保健制度を長期的に安定したものとしていく上で不可欠の課題であります。  また、人口高齢化に伴い、今後急増すると予想される寝たきり老人等の要介護老人に対し、保健医療福祉を通じた総合的な施策展開が求められております。  こうした状況等を踏まえ、老人保健制度を幅広く見直すこととし、老人保健法等の一部を改正する法律案を第百四回国会に提出し、御審議を煩わしたのでありますが、継続審議となった後、第百五回国会において衆議院の解散に伴い廃案となり、成立を見るに至らなかったものであります。  しかしながら、老人保健制度改正は、今後の本格的な高齢化社会において、国民が安心して老後を託せる制度を確立するという観点から、極めて重要なものでありますので、ここに再度この法律案提案し、御審議を願うこととした次第であります。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、一部負担改正であります。現在、外来の場合一月四百円、入院の場合二ヵ月を限度として一日三百円となっておりますが、これを改め、外来については一月千円に、入院については期限を撤廃して一日五百円に改定することとしております。増大し続ける老人医療費負担の現状にかんがみ、健康に対する自覚と適正な受診、さらには世代間の負担の公平という観点から、被用者保険本人在宅療養者とのバランスも勘案して、定額制を維持しつつ、一部負担金の額の引き上げお願いするものであります。  第二は、加入者按分率引き上げであります。昭和六十一年度の十一月一日以降は八〇%、昭和六十二年度以降は一〇〇%に引き上げることとしております。老人医療費につきましては、一人当たりで他の世代の五倍となっているため、老人加入率の高い保険者ほど老人医療費負担は重いものとなっており、各保険者間の老人医療費負担の不均衡は一層拡大しております。このため、加入者按分率引き上げ、どの保険者も同じ割合老人を抱えるようにし、負担の一層の公平化を図ることとしております。  第三は、老人保健施設創設であります。寝たきり老人等の要介護老人にふさわしい医療サービス生活サービスを提供する施設として、老人保健施設創設するとともに、この施設を利用する老人に対する新たな給付として、老人保健施設療養費を支給することとしております。  これらの施策を講ずることにより、国民が安心して老後を託せる老人保健制度を確立しようとするものであります。  以上のほか、医療保険各法に準じて特定療養費制度を導入するとともに老人保健施設創設に伴う医療法社会福祉事業法改正なども行うこととしております。  また、医療保険制度を通ずる老人医療費の公平な負担を図るため、国民健康保険法改正し、正当な理由がないのに保険料を滞納している者に対し、給付を一時差しとめる等の措置を講ずることとしております。  なお、この法律施行期日は、本年十一月一日としておりますが、老人保健施設に関する事項公布の日から起算して一年六カ月を超えない範囲内において政令で定める日とし、また、関係審議会への諮問に関する事項公布の日としております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 堀内光雄

    堀内委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 堀内光雄

    堀内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野呂昭彦君。
  6. 野呂昭彦

    野呂委員 今国会の最重要法案一つであります老人保健法改正案委員会審議のトップを切りまして、大臣は私と同郷でございまして、その同郷大臣初め厚生省の皆さんに御質問をさしていただけることを大変うれしく思うのであります。  大臣も、今最も若い閣僚として二十一世紀に向けて大変御活躍のことを同郷立場からなお一層うれしく思っておりますが、事この老人保健法のことでございます。したがいまして、私もしっかり質問をさしていただきたいと思うわけでございます。  さて、先ごろ発表されました新人口推計によりますと、我が国高齢化は急速に進行し、わずか十四年後の二十一世紀には現在のヨーロッパ並みになりまして、昭和百年には六十五歳以上の人口比率が二三・三%と、実に四人に一人はお年寄りを抱えるという世界類例のない長寿社会を迎えると予想されておるわけでございます。  こういう中で、我が国経済社会の活力を維持して、国民が安心して老後を送れるようにするために、人生八十年時代長寿社会にふさわしい社会保障制度を確立していかなければならないということでございますが、大臣は今後の社会保障政策をどのように展開をされていくのか、まずその点からお伺いをいたしてまいりたいと思います。
  7. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいま野呂議員から御指摘をいただきましたように、日本の高齢化のスピードというものは世界類例を見ない速さで進行をいたしております。これから三十五年ないし四十年後には、今御指摘がございましたように、全体の四分の一をお年寄りが占めるという長寿社会を迎えるであろうと言われておるわけであります。この長寿社会を迎えるに当たって、その長寿社会におけるお年寄りの御生活の基本になるべき社会保障制度というものを、皆様方の御安心と、そして安定した揺るぎなき制度としていくために、今こそしっかりとした基盤づくりをいたしてまいらなければならない時期であるというふうに考えさしていただいております。  そのため、具体的には各制度における給付負担公平化、また施策効率化という観点から、それぞれの見直しを行っておるところでありまして、今回老人保健法の一部改正お願いをいたしておりますのも、そういう観点からでございます。  同時にまた、そのような長寿社会を迎えて、お年寄り方々が生きがいのある健やかな社会でなければならないわけでありまして、いわゆる社会福祉政策の推進、拡大ということにも努めてまいらなければならないと考えております。その中で、特にお年寄り方々が住みなれた地域で、また御家庭で健やかに過ごせるような在宅福祉施策展開ということが一番大事なことである。そのためには保健医療福祉という面が有機的に結合し、連係を持った総合的な施策として進めていくということが必要であるというふうに考えております。  第三点といたしましては、少し大げさな言い方かもしれませんが、人類の長寿へ向かっての願いというものは、地球上に人間が存在して以来の願いであったと思います。その長寿を達成しようとしておるわけでありまして、そういうことから考えますと、言うならば未知世界へ入っていく、こう言っても言い過ぎでないと思うわけであります。その未知世界へ向かっての社会的なシステムのあり方、またいろいろな問題点等、今こそいろいろなプロジェクトをつくって研究、検討を今から始めていくということも一つの大事なことであるというふうに考えておるところでございます。
  8. 野呂昭彦

    野呂委員 安定して揺るぎない基盤づくりをもとに未知社会への挑戦もしていく、こういう力強い御返答でございました。  そこで、今回のこの老人保健法でございますが、五十八年の二月にもう既に発足をいたしまして三年を経過いたしてまいりました。そこで、今回この老人保健法を見直そうということになりましたが、今日まで果たしてきた役割は一体何だったのか、あるいはなぜ今回見直そうということになったのか、その目的はどういうところにあるのだろうか、その辺のところを次にお伺いをさしていただきたいと思います。
  9. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいまお話がございましたように、この老人保健制度昭和五十八年の二月から発足をさしていただいたものであります。その発足当時の考え方は、主に三つの点があったと考えております。  その第一点は、増高する老人医療費をいかに負担をしていくかということにおいて、保険者間のいわゆる持ち寄りとでもいいましょうか、それで負担をし、そしてそれを通じて国民全体がお年寄り医療費を支えていくという観点に立つことが第一点であったと思います。  また、そういうことを踏まえて、お年寄り医療費につきましても、お年寄りの健康への自覚、また適正な受診というような観点から一部負担の導入をお願いをいたした点であります。  そして第三点は、健やかに老いるという言葉がございますけれども、若い時代から健康づくり健康管理ということに努めて、そしてお年寄りになったときの健康を維持していくことを考えていかなければならない、こういう観点から老人保健事業というものを新たに創設をし、これを展開をいたしてまいったわけでございます。  こういうことによりまして、老人保健医療の確保に対して非常に大きな役割を果たしてきたと考えております。その後三年程度経過した今日、お年寄り老人医療費というものの増高も、他の国民医療費伸びを相当に上回るという状況にあります。また各保険者間の老人医療費のアンバランスというものも非常に大きくなってまいっております。  そういう観点から、今回の改正におきまして、この老人医療費を支えていただく国民負担というものを一層公平な負担に徹底をしていただきたいということが第一点であります。  また、第二点におきましては、一部負担見直しでございますが、世代間の公平の観点からも一部負担見直しお願いをいたしたいということであります。  第三点は、寝たきり老人等、また入院治療から自宅へお帰りになる、その中間、いわゆる医療サービス生活サービスという両面を兼ね備えた施設としての老人保健施設というものを新しく創設をして、寝たきり老人や要介護老人等施策に資してまいりたい、こういうようなことが第三点であると考えております。
  10. 野呂昭彦

    野呂委員 ちょっと質問の時間が余りございませんので、お答えの方ももう少し簡潔にお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、今回の老人保健法改正の前後、いわゆる医療制度につきまして数年来改革をしてきたわけでございます。そしてまた厚生省は既に六十年代の後半の早い時期に医療保険制度一元化をしようということを掲げておられるわけでございますが、こういう中で老人保健法位置づけというものはどういうことになっておるのか、お尋ねをいたします。
  11. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、これからの長寿社会に向かっての社会保障制度を安定した揺るぎなきものとするために、それぞれの改革を進めてまいったところであります。これまでに老人保健制度創設また健康保険法改正等を行い、そして一層負担給付公平化、また施策効率化ということに努めてまいる、そして今御指摘がございましたように、昭和六十年代の後半できるだけ早い時期に医療保険一元化へ向けての努力をしてまいる、そういう中にあって、今回の老人保健制度改正というものは、それへ向かっての橋渡しの役目であるというふうに私どもは位置づけをいたしております。
  12. 野呂昭彦

    野呂委員 そこで、最大の悩みが、今日大変医療費増大してきておる、こういうことでございますけれども、特に老人医療費増加が最近著しいということが指摘をされております。人口高齢化とともに避けられないものであろうかと思うのですが、これが余りにも国民の過大な負担となってはなかなかこの制度への信頼というものが生じてこない、こういうこともありますので、増大要因なりあるいは長期的な立場から、この適正化の対策の面でどのように施策を講じていかれようとしておるのか、お伺いをいたします。
  13. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人医療費増大要因はどこにあるかというお尋ねでございます。  御案内のように、老人医療費は最近一〇%程度伸びを見ておりまして、六十一年度ベースで四兆三千億円に達する見込みでございます。この増加要因でございますけれども、一つは、やはり老人人口伸びている、高齢化現象に伴いまして毎年三十万人程度老人医療対象者増大をしておるわけでございまして、これがやはり老人医療費増大ベースにあるということが一つでございます。さらに二つ目には、老人一人当たり医療費伸びておる、特に入院医療費伸びているということでございます。一人当たり医療費の増の原因につきましては、一つ老人有病率が高く、増加傾向にあるわけでございまして、これが受診率を高めているということでございますとともに、老人循環器系疾患等慢性疾患が多いわけでございまして、入院患者増加とともに入院期間を長引かせているということがございます。さらに医療技術進歩等影響等も加わりまして、入院医療費を中心に増高が著しい、こういうことが老人医療費増高の大きな要因だというふうに考えております。  さらにお尋ねは、ではその老人医療費をどういうふうに適正化するのかということでございます。  先ほど述べましたように、やはり老人医療費一定割合伸びることは避けられないと思っておりますけれども、できるだけこれを国民の所得あるいは経済伸び範囲内程度にとどめていきたいということで、国民経済に過大な負担にならないような努力が必要だろうと思っております。このためにはあらゆる政策努力が必要なわけでございますけれども、私どもとしては、従来から実施をいたしております市町村におけるレセプト点検、医療費通知等の行政努力の強化がまず大事でございます。それとともに、基本的には健康づくり、健やかに老いるための老人保健事業の推進がやはり長期的には非常に重要だと思っております。それから老人診療報酬の面におきまして、在宅医療の促進というようなことが図られるような診療報酬を今後とも定めてまいらなきゃならないだろうということでございますとともに、今回御提案申し上げております老人保健施設制度化、こういうことも含めまして総合的な医療費適正化対策に取り組んでまいりたい、かように思っております。
  14. 野呂昭彦

    野呂委員 大変大きな問題でございますだけに、これからのいよいよの御尽力をひとつお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、一部負担の問題に入ってまいりますが、今回お年寄りの一部負担外来四百円を千円に、また入院の方が一日三百円というのを一日五百円で、しかも二ヵ月という期限を撤廃しよう、こういうわけでございます。そこで、今回の引き上げ理由、さらにお年寄り受診状況や所得の状況から今回の改定額がなぜ妥当なものと考えられておるのか、その点についてお尋ねをいたします。
  15. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 約四兆円を超える老人医療費の中で、現在お年寄り方々負担をしていただいておる分は、全体で申し上げますと約一・六%程度、こういうふうになっておりまして、その他の部分についてはおおむね若い世代方々負担をしていただいておるという現状にあるわけであります。お年寄りも若い方々もともにこの老人医療費負担をしていくという観点から、この一部負担の改定をお願いをいたしておるところでありまして、今回の改定を全体で見ますると、先ほど一・六%と申し上げましたのが、四・五%程度ということに相なるわけでございます。また、その仕組み等につきましても、お年寄りが支払いやすいような定額制というものを守りつつ、また外来につきましては、一ヵ月に月初め一回払っていただけばいいという、そういう仕組み、こういうものを保ちつつ改定をお願いをいたしておるところであります。  高齢者世帯における所得、消費の水準等を見てみますると、全世帯の所得水準とそう変わらない現状のように今調査がされておるわけでございまして、そういうことから考えまして、そう無理のない御負担をいただけるものというふうに考えております。
  16. 野呂昭彦

    野呂委員 今、大臣の御答弁でも、今回のこの引き上げについて、総額で老人医療費の一・六%が四・五%程度になるんだ、こういうお話でございました。しかし、御承知のとおり、お年寄り医療費というのは若い人の約五倍もかかる、こういうことが言われておるわけでございます。そうしますと、単純に計算してまいりますと、五倍かかる医療費の四・五%でありますから、若い人と並べて比較をいたしますと、五掛ける四・五で二二・五ということになりまして、これはそうしますと大変な負担ではないか。国保の三割負担あるいは健保の一割負担と比較しても現実大変な負担になるんではないか、こういう御指摘がございました。この辺は非常に大事なことでございますので、厚生省もしっかりと御答弁をいただきたいと思います。
  17. 黒木武弘

    黒木政府委員 御指摘のように、老人医療費は若い人の五倍になっておりまして、若い人の平均が十万にいたしますと、老人の一人当たり医療費は五十万くらい年間なっておるわけでございます。この高い原因は、やはり受診率にあるわけでございまして、入院受診率が約五倍、外来受診率も二倍あるわけでございまして、老人は総じて入院なり外来について多く受診をされているという、医療機関にかかられているという状況一つあるわけでございます。それで五倍になっているということでございます。  確かに御指摘のような計算というのは、医療にかかった人もかからなかった人も込み込みで計算いたしますと、そのような計算もあるいはあろうかと思いますけれども、実際に受診した人の負担について比較をいたしますと、法改正以後においても健保本人よりもかえって老人が重くなるということはあり得ないと思っております。
  18. 野呂昭彦

    野呂委員 受診率の違いがかなりあるというお話で、この要因を考えれば理解もできるわけでございますが、ただ一部負担の問題でもいろんな指摘国民の関心の高さを示すようになされてきております。  そこで、もう一つお尋ねしたいのは、現行制度におきまして、総合病院で複数の診療科で受診した場合には、一部負担をその都度払わなくても一回払えばいい、こういうことでありますが、診療所の場合には、複数の診療所に行きましたときに、その都度一部負担を支払わなければならない、こういうことになっております。  そこで、このような仕組みというのは、今日いろいろと心配をされております病院化傾向、特に大病院指向ということを強めていく心配はないんだろうか。特に今回の改正がこの傾向を構造的にさらに強めてしまうのではないか、こういう心配も指摘をされておりまして、これも私、大変大事なことだろうと思いますので、ひとつ厚生省のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 黒木武弘

    黒木政府委員 総合病院におきまして、お医者さんの指示があった場合には、確かに御指摘のように、一部負担はその後取らないという仕掛けになっておるわけでございますが、この取り扱いは、老健法が成立するときの国会審議の過程で、総合病院については、そういう例外的な、特例的な取り扱いをしたらどうかという御指摘を踏まえて、私どもはそういう運用をいたしておるわけでございます。したがいまして、現時点におきましては、同一の傷病及びこれに関連する傷病につきまして、医師の指示に基づき一連の治療行為の必要がある場合にのみ行われる例外的な措置でございまして、このために患者の大病院指向が強められているとは私どもは考えておりません。
  20. 野呂昭彦

    野呂委員 ただいまお答えをいただきましたが、私はこの問題は極めて大きな問題でもあると思っております。したがって、今後の課題として厚生省の方で御検討なりお取り組みをお願い申し上げておきたいと思うわけです。  お尋ねしたいことはたくさんあるのですが、時間もあれなので、次に拠出金の方へ移らせていただきます。  今、我が国にはいろいろな医療保険制度があるわけですが、これら発足の時点とか沿革についてもいろいろ異なっておるわけでございます。今日の姿というのは、いろいろな社会経済情勢の影響もありましょうが、一方では、それぞれの保険者努力、工夫をしてまいりまして今日に至ってきておる、こう思うわけでございます。したがいまして、経営努力の足りない保険者については、ぜひそれを促していかなければなりませんけれども、今日までそういった努力をしてきておる保険者については、その努力を十分に評価していくということもまた一方で必要であろう、こう思うわけでございます。  そこで、今回の加入者按分率引き上げでございますけれども、各保険者の経営努力を損なうものではないか、こういう強い御指摘も出ております。このことにつきまして、厚生省はどのようにお考えでございますか。
  21. 黒木武弘

    黒木政府委員 医療費適正化につきまして、経営努力をすることは極めて大切なことだと考えております。現在、各医療保険制度老人加入率を見ますと、サラリーマンも退職をいたしますれば国保に加入することなどによりまして、構造的に国保は老人加入率が高く、健保の四倍になっているのが実情でございます。今回、加入者按分率引き上げをいたしまして、このような老人加入率の格差を是正し、どの保険者も同じ割合老人を抱えるようにすることによりまして負担の公平を図るものでございます。  その際、御指摘になりました経営努力の点でございますけれども、私どもは、加入者按分率を一○○%にいたしましても、各保険者の拠出金の算定に当たりましては、個々の保険者に加入しているお年寄り医療費を使って、各保険者老人医療の実績を基礎として計算する仕組みにいたしておりますので、各保険者の経営努力は一〇〇%に引き上げてもきちっと反映されると思っております。
  22. 野呂昭彦

    野呂委員 いろいろ構造的な要因によるところの不公平を是正していくためということでございますし、負担と公平という観点から見て基本的に理解はできるのでありますけれども、この加入者按分率は、現在四四・七%でございますが、六十一年に八〇%、六十二年に一〇〇%に引き上げるということでございますが、これは余りにも急激ではないか、こういう指摘もされておるわけです。健康保険組合は六十年の単年度でも三千億円の黒字、累積では二兆五百億ある、こう言われております。しかし、これは全部が全部そういう意味ではございませんで、財政的に大変厳しいところもありますし、余りにも急激な引き上げについては支障を来すのではないか、こう思われますので、先ほどちょっと御答弁はいただいたのですが、特に心配をいたしておるわけでございます。どうでございますか。
  23. 下村健

    ○下村政府委員 お答えいたします。  被用者保険の財政状況は現在極めて安定いたしておりまして、今回加入者按分率引き上げましても、全体として見れば、その運営に支障を来すことはないと考えております。ただし、個々の組合を見るといろいろな事情もありますので、拠出金の急増する保険者等につきましては、経過措置を設けるというようなことで配慮してまいりたいと考えております。
  24. 野呂昭彦

    野呂委員 国民の関心の非常に強いことでございますので、ひとつ説得力ある厚生省の御答弁、御努力お願いしたいと思うのです。  次に、老人保健施設の問題に移ってまいりたいと思います。  これまでは費用の面でございましたが、老人保健施設、実は寝たきり老人等介護老人の問題は、今後本格的な高齢化社会を迎えるに当たって大変深刻な問題であろうかと思います。現在こういったものに対応する施設としては、特別養護老人ホームというのがありますし、また医療の面からは老人病院もあるわけでございますが、今回の老人保健施設は、こういった問題にどのように対応するものであるのか、大臣お尋ねをいたします。
  25. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今、御指摘がございましたように、寝たきり老人等介護老人の対策は大変急務を要するものでございます。現在、特別養護老人ホームがあり、またいわゆる老人病院があるわけでございますが、今回の老人保健施設は、その中間に位置するようなものとして位置づけをいたしてまいりたい。すなわち、専門的な治療はもう必要がないが、なお介護を必要とする、またリハビリを必要とするような方々であり、かつまた自宅でその介護なり療養ができかねるという方々について、この中間施設において生活的なサービスも行う、すなわち療養のサービス生活福祉サービスを兼ね備えたものとして老人保健施設というものを新しく創設して、全体として、寝たきり老人なり要介護老人の対策に資してまいりたい、こういうことでございます。
  26. 野呂昭彦

    野呂委員 ただいま大臣の御答弁にありましたように、医療サービス福祉サービスを一体化したような中で、中間的な施設として老人保健施設をつくっていく、これは大変結構なことでございまして、今回のこの法案の改正が、ややもすると費用の負担の問題に集中しがちでございますが、いまひとつこの点の認識が十分でないということを私も残念に思っておるわけでございます。  そこで、具体的に老人保健施設につきましてどんなサービスが行われていくのか。また、こういうお年寄りの中には、自宅におられる方が極めて多いわけでございまして、そういう方に対しますところのサービスというものが大変重要でございます。そこで、老人保健施設としては、在宅サービスについてどのようなものを考えておられるのか、このことについてお尋ねをいたします。
  27. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設につきましては、先ほど大臣から答弁いたしましたように、医療面のサービスと日常生活面のサービス、両方兼ね備えてサービスをいたそうと思っておるわけでございますけれども、その原点は、やはり病弱な寝たきり老人に対しまして、その方々にふさわしいサービスをして差し上げたいということでございます。  具体的にどういう内容かというお尋ねでございますけれども、まず入所サービスにつきましては、主なものだけ申し上げますけれども、まず第一にリハビリテーションを行いたい。それから看護、介護サービス、この中にはもちろん体位交換から清拭、食事の世話、入浴等のお世話を含んでおるわけでございますし、さらに医療サービスとして、比較的安定した症状の方々でございますけれども、診察とか投薬とか検査、処置等の医療サービスも行うようにいたしたい。それからさらに理髪あるいはいろいろなレクリエーションとかいったような個人的な、その施設で快適にお年寄りのそれぞれのニードにこたえられるような日常生活的なサービス、お世話もして差し上げたいものと思っておるわけでございます。  また、デイサービス、在宅サービスについてのお尋ねでございますけれども、一つはデイケア、それから二つ目には短期の入所ケアを行いたいというふうに考えておりまして、その中身は、食事とか入浴とかリハビリテーションといったようなサービスを昼間だけとして、あるいは短期間収容してサービスをする、そういうものが主なサービス内容になろうかと思っておるわけでございます。
  28. 野呂昭彦

    野呂委員 この在宅老人にかかわりますサービスという問題、これは寝たきり老人を抱える家庭にとりまして大変深刻であります。本人にとってもそうでありますし、家族の肉体的、精神的な苦痛というものも大変負担が大きいものでございます。そういうことにも今回の老人保健施設が正面から取り上げられていくというねらいがあることは大変評価できることだと思います。  そこで、寝たきり老人の問題とともに最近大きな問題になってきております痴呆性老人の対策についてでございますが、従来ややその対応がおくれぎみであるということが指摘をされておりました。総合的な、腰を据えた対策が必要である、こう思うわけでございますが、こういったことに関しまして、今回の老人保健施設におきまして痴呆性老人についてどのように御配慮をされておるのか、この点についてお尋ねをいたします。
  29. 黒木武弘

    黒木政府委員 痴呆性老人の方はさまざまな症状をお持ちの方があろうかと思いますけれども、やはり異常行動とか非常に問題行動が多過ぎる方は精神病院なりそれぞれの専門的な施設での処遇が必要かと思っておりますけれども、病弱で痴呆性の方、つまり食事とか入浴の介助が必要であり、かつ病弱な痴呆性老人という方は、私どもはこの老人保健施設の対象と考えております。
  30. 野呂昭彦

    野呂委員 痴呆性老人の問題、これから大変大事な問題になってまいりますので、ますます御配慮をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。  さて、そういう大変結構な老人保健施設なんでありますけれども、具体的にこの中身を見ていきますと、いま一つわからない点が多く出てまいります。これはこれからの省令等で細かい規定をされていくということでございますが、例えば老人保健施設では定額による老人保健施設療養費という形で必要な医療というのがなされることになっておるわけでございます。この必要な医療というのは具体的にどういう内容なのか、また例えば老人の場合には、体調が急変するという緊急事態が発生いたす場合が多いと思います。例えばのどを切開しなければならぬというような緊急事態に対応する場合に、これも定額の中に含まれるのか、あるいはそれについてはこれまでの出来高払いを認めていくというのか、こういった点についてひとつお尋ねをいたします。     〔委員長退席、長野委員長代理着席〕
  31. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設で行われます必要な医療と申しますか、その具体的な中身と、それに対します定額の支払いの考え方についてのお尋ねだと思います。  御案内のように、この施設の入所者と申しますか対象者は、主として高血圧症や脳卒中の後遺症をお持ちの御老人でございまして、しかし病状が安定期にある方を考えておるわけでございます。したがいまして、そこで行われます医療は、まずリハビリテーションとか看護、介護のほかに診察、それから血液、尿、心電図等の症状のチェックのための検査、疾患の管理等のための投薬、注射といったものが医療ケアの中身になってまいるのではないかと思っております。もちろんその施設で、風邪を引かれた、あるいは腹痛といったような一時的な疾病に対応する医療も行えるだろうというふうに想定をいたしております。それからなお、施設における療養の過程で脳卒中が再発したとか骨折とかそういう突発的な医療の必要が生ずるだろうということも重々想定をいたしておりまして、私どもは、そういう場合には、あらかじめ契約した協力病院の往診とか、あるいはその協力病院への入院といったような形で定期的な診療を受けられるように、その辺も運営基準できちっと措置いたしたいと考えております。  定額の絡みでの施設療養費のその場合の考え方の御指摘でございますが、老人保健施設においてのどの切開とか骨折とかいったような緊急事態が生じた場合は、先ほど申しましたように、原則として提携病院から往診を求める、あるいは入院で対処する考えでございまして、その場合には施設療養費の定額とは別でございまして、保険医療機関による出来高による診療報酬が支払われるということになるわけでございます。しかし、そういう緊急事態が起こった場合に緊急に往診が求められなかったとか、あるいは他の医療機関へ、提携病院への入院が円滑に行われなかったというようなこと等の場合で、そこの施設のお医者さんが対応なさった場合にどうするかということでございます。私どもとしては、個別の定額加算といったようなもので、そういう私どもとしては予定をしていなかったことを施設のお医者さんがやっていただいた場合には、何らかの評価と申しますか、工夫が要るのではないかということで今検討をいたしておるところでございます。  いずれにしましても、施設療養費につきましては、審議会の御意見を聞きながら適切なものを定めていきたいというふうに考えております。
  32. 野呂昭彦

    野呂委員 それからもう一つ、医薬品のことに関しましてお尋ねをいたしますが、老人の場合には慢性疾患の場合が多いと思われます。したがいまして、医薬品についても長期に服用するという場合が多いわけでございます。この老人保健施設におきましても、その医薬品の有効性、安全性を確保するということは当然必要でございますし、そういう立場から薬剤師が専門的に指導管理をしていくということが極めて望ましいわけでございます。厚生省におかれましては、薬剤師のこの施設での位置づけあるいは医薬品を管理、調剤をする施設等についてどのように規定をしていかれるのか。この点につきましては、もともと薬局がある病院に併設をされる老人保健施設と、それから特養なんかに併設される場合、あるいは単独で施設を持つという場合ではいろいろ状況も違ってくるだろうと思うわけでございます。  そのことを一つと、時間がございませんので、少し複数でお尋ねしておきますが、先ほども老人保健審議会で定額の問題についてもこれからいろいろまだ検討していただくというお話でございましたが、この審議会、今回の改正で権限が非常に拡大されるということでございまして、そうなりますと、医療福祉の関係者の意見が十分に反映されるような体系をとっていかなければならぬと思います。そういう面では、この構成の面について検討を加えるべきではないかという意見も実は指摘されておりまして、この点についてはどうお考えなんでございましょうか、まとめてお尋ねいたします。
  33. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設におきます医薬品の適正な管理と申しますか、調剤の確保というのは、私も非常に重要なことだと思っております。したがいまして、老人保健審議会におきます施設、人員基準の検討の一環として、御指摘の調剤所の設置とか薬剤師の配置について十分検討をお願いしたいというふうに考えております。  それから、この諸基準の制定につきましては、老人保健審議会で審議を願おうと思っておるわけでございますけれども、十分関係者の方々の意見が反映されますよう、特に専門部会として老人保健施設部会を設けて御審議お願いしたいと思っておるわけでございまして、そこでそういう関係者の専門的な意見が十分反映されるようにしたいというのが私どもの考えでございます。
  34. 野呂昭彦

    野呂委員 まだ細かい点でお尋ねしたいことがたくさんあるんですが、時間の都合もありますのでお尋ねできません。  そこで、今後この老人保健施設、どのように整備をされていくのか、医療法との関連ではどういうことになっておるのか、これは地域医療計画でございますね。それからさらに老人保健施設の整備を今後促進していくための対策、どういう対策を考えておられるのか、その点についてまとめてお尋ねをいたします。
  35. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設の整備の考え方でございますけれども、私どもは今後二十一世紀初頭までに百万人程度寝たきり老人増大をすると見込まれておりますので、昭和七十五年を目途に二十六万ないし三十万床程度の整備を段階的に進めてまいりたいと思っております。  そのための整備の促進方策についてのお尋ねでございますけれども、とりあえず六十二年度予算概算要求では百カ所の施設整備のための補助金をお願いいたしておりますし、そのほかに低利融資制度創設についてもお願いをいたしておるところでございます。  また、そのほか事業税とか固定資産税とかといったような税制上の優遇措置についても要求をいたしておるわけでございますから、その辺を総合的に講じまして、整備を計画的に進めてまいりたいというふうに考えております。     〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 老人保健施設医療法との関係でございますが、先ほど来お話がございましたように、老人保健施設は日常生活サービスとともに医療サービスを提供するものでございます。したがって、この医療機能に着目いたしますと、病院、病床の補完的機能を果たすものと考えられるわけでございます。このため、医療法に基づきます医療計画の中で、地域の病院、病床数の現状を示す既存病床数の算定に際しまして、老人保健施設の入所定員数を所要の補正を行った上でカウントするということにいたしております。
  37. 野呂昭彦

    野呂委員 もう時間もごくわずかになってまいりましたので、この老人保健法の中で大きな柱の一つであります保健事業についてお尋ねをさせていただきます。  この保健事業につきまして、これまで第一次五カ年計画で厚生省、熱心にお取り組みをいただいてまいりました。しかしながら都市部を中心に健診面での立ちおくれが目立っておるとか、あるいは健康相談等の体制づくりもいまだ不十分であるというふうな指摘をされておる向きもございます。こういう中で、これまでの実績に基づきまして今後どういうふうにされていくのか。来年度から第二次の五カ年計画を持たれるということでございます。  そこで、その基本的な考え方をお示しいただきたいと思うのです。特にその中で、加えて具体的な面で、例えばお年寄りにとりまして食べるということは非常に大きな楽しみの一つでございますね。でありますので、例えば歯科対策等についてどんなふうに来年以降考えておられるのか、その点も具体的な例としてつけ加えて御答弁をお願い申し上げます。
  38. 仲村英一

    ○仲村政府委員 御指摘のように、ヘルス事業につきましては、第一次五カ年計画でやってまいりましたけれども、片方で十分な成果が上がっておるという評価も私どもしておりますが、必ずしも都市部等におきまして受診率がまだ高くないというふうな批判もございますことを十分承知しております。  そういうことを受けまして、私ども第二次計画を策定いたしまして、従前の量的な確保から質的内容を向上してまいりたいということで、地域や家庭で老人をきめ細かくケアする体制づくりでございますとか、健康診断の内容を充実して魅力ある健康診断にしていきたいとか、先ほどお尋ね寝たきり老人でございますとか痴呆性老人対策を強化してまいりたいというふうなことで考えてきておるわけでございまして、さらにそういう観点から私ども質的な拡充を図ってまいりたいと考えております。  歯科対策につきましてのお尋ねでございますが、御承知のように、御老人には歯槽膿漏等歯周疾患が多いわけでございますので、その予防を重点といたします健康教育でございますとか、健康相談について新たに実施してまいりたいと考えておるところでございます。
  39. 野呂昭彦

    野呂委員 この保健事業につきましては、壮年期からの健康づくりを目指して健やかな老後を送るために大変大きな意義を有するものでございます。ひとつ今後も大きな推進を図っていただきたいとお願いを申し上げる次第でございます。  以上、いろいろな点についてお尋ねを申し上げてきたわけでございますが、今回の老人保健法改正につきましては、私どもは、まずは避けられない長寿化、高齢化の中で、国民医療老人医療について、その構造的なものからくる基本的な諸問題をよく認識をしていかなければならない、その上で二十一世紀に向けて長期的、安定的な老人保健制度を確立していくことが何よりも必要であるという考えを持つわけであります。  そんな観点から、この基本を踏み外さずに、そして同時にいろいろお尋ねをしてまいりましたように、いろいろな問題点もありますから、これは細心の注意をお払いいただきまして、揺るぎない制度の確立に努めていかなければならぬのじゃないか、そんなふうに考えます。そういう点から、最後に大臣に御決意のほどをお承りをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  40. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 冒頭にも御議論がございましたように、日本の高齢化のスピードは非常に速いスピードで進行いたしておりまして、迎えます長寿社会が本当に活力のある長寿福祉社会であるために、今こそいろいろなことをしていかなければならない。そしてその長寿社会におきましても、生きがいのあるお年寄りの御生活が保てるように、最善の努力を各方面からいたしてまいりたいと考えております。  今回のこの改正法も、医療の面から二十一世紀に向かって揺るぎない医療保険制度を確立していくという観点からのお願いでございまして、何とぞひとつ御理解をいただきまして、早期の御成立を心からお願いを申し上げる次第であります。
  41. 野呂昭彦

    野呂委員 どうもありがとうございました。
  42. 堀内光雄

    堀内委員長 これにて野呂昭彦君の質疑は終了いたしました。  池端清一君。
  43. 池端清一

    ○池端委員 私に与えられた質問時間は三時間二分でございます。各般の大変大きな問題がございますので、ひとつ懇切丁寧に答弁をお願い申し上げます。  斎藤厚生大臣は親子二代にわたって厚生大臣に就任をされました。さきの橋本厚生大臣に次ぐ二回目の快挙でございまして、心からお祝いを申し上げる次第でございます。  私は御父君を存じ上げておりませんけれども、いろいろ当時の会議録やその他の書物を拝見いたしまして、実は非常に感銘をいたしておるのであります。例えば昭和四十五年の新年のごあいさつでは、こう述べられております。「確かに我が国経済は目覚ましい高度成長を遂げましたが、真に豊かな社会、すべての人々がひとしく幸せな生活を享受できる社会が達成されたとは言い得ません。(中略)真に豊かな国民生活を実現するために、経済成長の成果を社会的アンバランスの解消に振り向け、国民保健福祉の向上に一層の努力を傾ける決意を新たにしたいと存じます。」このように述べておられるのであります。また昭和四十七年三月二日の第六十八通常国会における本委員会での所信表明では、こう述べておられるのであります。「昨年は、円の切り上げ、景気停滞など、内外経済は大きな試練に遭遇したのでありますが、一方国民各層の間に次第に高まってまいりました福祉優先の声は、蓄積した経済力を社会資本への投資と福祉向上に充てるべきであるという政治の基本姿勢としてとらえられるに至っております。」と述べて、したがって、「厚生省としましても、行政各般にわたり思い切った改善措置を講ずる」、このように実ははっきりと言明をされておるのであります。そして厚生行政を進めるに当たって再三御父君が述べておられることは、人間尊重の精神に徹する、こういうことでございました。  当時と現在とでは経済状況も異なります。我が国経済を取り巻く環境は変わっておりますものの、福祉なり厚生行政に対する御父君の識見というのは極めて卓越したものがあると私は考えるわけでありますが、御子息である現大臣の率直なこれについての御所見を承りたいと思うのであります。
  44. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 私の父の厚生大臣の当時のことをお引きをいただき、また父子二代にわたる大臣として御歓迎をいただき、まことに恐縮に存じております。  お話をいただきましたように、私の父が厚生大臣を拝命いたしましたときに私も大臣の秘書官を務めさせていただきました。厚生行政との触れ合いをそのときから持たせていただいたわけであります。そういう厚生行政との触れ合いの中で、私は現在のようなこういう自由主義社会の中においていろいろなことを考えますときに、政治というものは、そういう自由主義社会の中で富の再配分をどのように図っていくかということが政治に課せられた最も重要な課題である、これがすなわち広い意味での福祉というものであるということを痛感をいたしたわけであります。その広い意味での福祉を推進をいたしてまいるということが政治の究極の目的でなければならない。その中で、その中心をなしていくのは社会保障や厚生省が担当する厚生行政である、こういうような信念にも近いものを持たせていただいたわけであります。  それ以来、私も政界に出させていただき、政治の中での取り組みの姿勢として、一貫してこの考え方を守り、福祉社会実現のために努力をさせていただき、厚生行政の進展のために及ばずながら一貫して努力をいたしてまいったつもりでございます。しかしながら、このように厚生行政の責任者を拝命をいたしました今日、国民生活に本当に重要にかかわる部分を担当する厚生行政の責任者として、その身の引き締まる思いをいたしております。何とぞいろいろな御指導をいただきまして、厚生行政の推進が図れるよう私も努力をいたしてまいりたいと考えております。
  45. 池端清一

    ○池端委員 御所見のほどは承りました。富の再配分、所得の再配分が最も重要であり、福祉社会の実現こそ政治の究極の目的である、こういうお話でございました。  しかし、現実はどうでございましょうか。臨調、行政改革の嵐が吹き荒れ、この五年間でも実に五兆円の社会保障関係予算が削減をされたのであります。自立、互助、民間活力を基本、こういう名のもとに、年金の抑制、健保の改悪を初め次から次へと、私たちの言葉で言えば制度改悪がなされているのであります。老人医療費一部負担の導入の老人保健制度創設しかり、健保本人一割負担の導入の医療保険制度改革しかり、年金抑制の年金制度改革しかり、児童扶養手当法の改正、児童手当法の改正生活保護、社会福祉施設措置費等の補助率の引き下げ、政府管掌健康保険国庫負担の特例措置、厚生年金国庫負担の特例措置等々実に枚挙にいとまがないのであります。こういう制度の改悪がなされてきているこの今日の状況について、厚生大臣としてはどんな御感想、どんな御所見をお持ちなのか、それを承りたいと思います。
  46. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 私の父が二度目の厚生大臣をいたしましたのは昭和四十六年から七年でございましたが、昭和四十八年を福祉元年と称して、私どもはそれまでの戦後の復興期から高度成長時代に入り、そしてそれまで余り振り返られていなかった福祉というものに目を置き、福祉の増進に向けて追いつけ追い越せということで福祉の充実に集中的に努力をいたしてまいったと考えております。そういう過程の中で、まずは追いつけ追い越せということでありましたので、制度的にもまたいろいろな面におきましても、試行錯誤もあったことも否めないと思うわけでございます。  そういう過程を経て、いわゆる真の福祉とはどういうものであるのか、すべて無料ということがいいことなのか、一部有料であっても、それが真の福祉として将来につながっていくいいことなのかどうかというような議論も行われてまいり、またこれから将来へ向かって、特に長寿社会を迎えていこうという中において、いかに多くの皆様方のコンセンサスを得ながら福祉というものを組み立てていくかというようなことにおいていろいろと見直しが行われているということは、私は、当然といいましょうか、そのような状況であるというふうに理解をいたしておるところでありまして、福祉の切り捨てというよりも、福祉をいかに国民多くの皆様方負担の面、給付の面から公平にしていただき、また御理解をいただき、国民コンセンサスの中で福祉を盛り上げていくかという観点に立って、今進めておるというふうに理解をいたしておるところでございます。
  47. 池端清一

    ○池端委員 ということは、福祉の切り捨てではないと、結論的にはそういうことをおっしゃるわけですね。  実は、ここに一つの決議がございます。昭和六十一年七月十六日、これは自由民主党政務調査会社会部会、医療基本問題調査会、公的年金等調査会、社会保障調査会の連名によるところの決議でございまして、社会部会の部会長さんはそこにおられる自民党の戸井田三郎先生だと承知をしておるわけであります。この決議を読みますと、まあ全文必ずしも私ども同意するものではございませんが、部分的に非常に賛同するところもあります。例えば「社会保障費は、あらゆる制度改革にもかかわらず人口の急速な高齢化に伴い毎年必然的に巨額の当然増が生じるという、他の施策とは異なった特殊性をもっており、このような社会保障費に対し、昭和六十二年度においても現実を無視した概算要求基準枠を適用するとすれば、社会保障制度の根底をゆるがし、国民に大きな不安を与えることは必至である。」「我々は、このような国民の期待を裏切り、国民生活の安定に必要不可欠な社会保障制度の崩壊につながるような抑制措置を容認することは断じてできない。」これは社会党の決議ではございません。自由民主党の、あなた方の部会の決議なのであります。「政府においては、国民の声を厳粛に受け止め、昭和六十二年度の社会保障予算については、必要額全額を確保できるよう十分配慮すべきである。」と、高らかに宣言をしておるのであります。部分的に私は同感のところもございます。この決議の趣旨は、これまでのいろいろ社会保障に対する切り込みというものが現実に福祉切り捨てになっている、もはやこういう状況を許しておくわけにはいかぬという自民党の皆さんの切なる気持ちがこの決議にあらわれていると思うのであります。  しかし、斎藤厚生大臣は、今までのこういうような措置について、必ずしも福祉切り捨てに当たらない、こういうふうに言い切るのでありましょうか。その点改めてお聞きしたいと思います。
  48. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 御承知のように、財政的にも非常に厳しい状況にはございまするけれども、やはり福祉の水準、社会保障の水準というものは維持をしていかなければなりません。また、これから迎える長寿社会において安定した社会保障制度を確立をしていかなければならない。そういう中にあって、将来に安定できる制度として国民の多くの皆さん方の合意を得、負担給付の公平を図っていくという観点からの見直し等をすることによってこそ将来に安定した制度が確立をされてまいる、そういう観点から制度改正なども今まで行われてまいったわけでありまして、これを行わないでいくことによって、万が一将来に制度が崩壊をしてしまうというようなことになったのでは、まさに将来の福祉水準を維持するということができないことになってしまう、こういうふうに思っておるところでございます。
  49. 池端清一

    ○池端委員 昭和四十七年に老人福祉法の一部が改正をされました。昭和四十八年から、先ほど厚生大臣からもお話がありました、所得制限づきながらも老人医療費の無料化が実現をしたのでありますが、この制度を実現したときの、時の厚生大臣は実は御父君の斎藤昇厚生大臣であったのであります。老人医療費無料化の実現、これに大きな力を果たされたのが御父君であったわけであります。  戦前、戦中、戦後、あの苦難の時代を生き抜き、戦後の日本の復興に貢献したお年寄りの皆さんに対し、せめて医療費は無料にしようということで、岩手県の沢内村に引き続きまして東京都も無料化を実施いたしました。その後、各地方自治体でこの無料化がまさに燎原の火のごとく広がって、ついに昭和四十七年に斎藤厚生大臣も法改正に踏み切ったのであります。  それから数えて今日で十四年目、今まさに御子息の手によってこの改正案提案されようとは、時のめぐり合わせとはいえ、まことに残念に思えてならないのでございます。私は、大臣も実は内心胸の痛みを覚えている、じくじたるものがあるのではないか、こうお察しするのでありますけれども、どのようにお考えでございましょうか、御所見を承りたいと思うのであります。
  50. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 父の厚生大臣時代老人医療の無料化が行われ、そして今回このような改正の提出者になることをどう考えるかというお話でございますが、まさに感無量の思いをいたすところでございます。  ただ、当時は、先ほども申し上げましたように、これから福祉社会の建設へ向かって頑張ろう、こういうことで福祉元年とこう言った年でありまして、当時を思い起こしてみますると、健康保険制度も、家族が五割給付という時代でありました。また高額療養費制度というようなものもございませんでした。また年金等につきましても、老齢福祉年金というものが非常に象徴的なときでありまして、月額二千三百円、当時は三百円引き上げた、千円引き上げたということで大変な、私どもも演説をして、こんなによくやりましたというようなことを言っておった。それが二千三百円、三千三百円という時代でございました。  そのような時代から今日を考えてみますると、年金の水準も相当に飛躍的に充実をいたしてまいり、またその他の医療保険制度も充実をいたしてまいった今日であります。先ほども申し上げましたように、その福祉元年ということで福祉社会建設へ向かって出発をした時代から、今日、本当に真にあるべき福祉社会、また将来に備えて安定的に制度を維持できる社会保障制度というものを考えるときに、私は今回の御提案が妥当なものであろうというふうに思わしていただいておるところでございます。
  51. 池端清一

    ○池端委員 その御答弁には私は全く納得できかねるということをはっきり申し上げておきますが、時間の関係もありますから、次に進みますけれども、具体的な内容に入ってまいりたいと思います。  今度の老人保健法改正案の大きな柱として、患者の皆さん方、老人の一部負担引き上げ、自己負担の厳しい強化ということが打ち出されておるわけでございます。これは過去の国会論議の経過、これに甚だしく逆行する措置ではないか、私はこのように考えるわけであります。  ずっと従来の国会審議会議録等をひもといてまいりますと、このような措置がなされるということは、実に心外である、こういうふうに思うものでございまして、立法府の意思を無視した措置ではないか、こう言わざるを得ないのでありますけれども、これについて厚生省はどのようにお考えでしょうか。
  52. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 附帯決議がございましたことは承知をいたしておるところでございますが、この問題につきましては、その後の無料化制度の実施状況を踏まえ、七十歳以上の方々及び六十五歳以上の寝たきり老人を対象として、あわせて一部負担を導入する老人医療制度の成立を見たところでございます。  今回の一部負担引き上げは、これからの本格的な高齢化社会を控え、増加の避けられない老人医療費老人もまた現役世代も公平に負担をしていただく観点からお願いをいたしておるものでございます。
  53. 池端清一

    ○池端委員 どうもお答えになっていないと思うのであります。  これは本院ではありませんが、参議院でございますけれども、参議院社会労働委員会昭和四十七年六月十二日の老人医療費無料化に当たっての附帯決議、ここにははっきりと明確に打ち出されておるわけであります。   政府は、次の事項について、早急に改善を図るべきである。  一 無料化の対象年齢を六十五歳に引き下げること。特に「ねたきり老人」の対象とり入れについてはその実現を急ぐこと。  二 老人医療費の支給に関する所得制限は撤廃すること。    なお、それまでの間は、前年度所得を基準とすることから生じる負担の過重について、調整措置をとること。 以下、八点の極めて重要な附帯決議が参議院の段階ではございますけれども、付せられておる。このことをどう考えるのか。附帯決議は単なる作文なんだ、こんなものは取るに足らないものである、こういう立場をとっているのではないでしょうか。むしろ六十五歳に引き下げるべきだというのが国会の意思である、こういうふうには受けとめないのでしょうか。その点どうですか。
  54. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、国会の附帯決議が昭和四十七年当時にございましたことは承知をいたしております。しかしながら、その後の時代の変化に伴い、本老人保健制度国会で御審議をいただき、一部負担を導入したこの老人保健制度国会で御審議をいただいて今日に至っておるということでありまして、その時代の変遷の中で御理解をいただけておるものと考えております。
  55. 池端清一

    ○池端委員 その後、老人保健法が制定されたから、この附帯決議はほごになっているのだ、御破算になっているのだ、こういうことをおっしゃるのだと思うのでありますが、私はやはり国会の意思というものは、七十歳ということでは年齢は高過ぎる、むしろ六十五歳に引き下げるべきだ、こういう方向で政府も努力すべきだということが、これが厳然たる国会の意思として打ち出された。それに対して逆行するような老人保健法の制定がなされ、そしてまた今度の改正がなされようとしている。これは二重にも三重にも国会の意思を無視する行為である。今日までのこの論議経過を慎重に十分に考えていくならば、そういうことがはっきり言えるというふうに私は思うのでありまして、この点を強く申し上げ、政府の猛省を促しておきたい、このように私は思うわけでございます。  そこで、今度の改正案では外来一ヵ月につき四百円を千円に、入院一日につき三百円を五百円に引き上げる、さらに入院の場合は二ヵ月を限度とするという現在の負担限度を撤廃する、こういう内容になっておりますね。これではよく言われておりますように、外来で現行の二・五倍、一年間の入院だと実に十倍という負担増になるわけであります。およそ物価の変動において一挙に二倍半ないしは十倍というべらぼうな値上げの例がほかにあるでありましょうか。私はこのような例を知らないのであります。まさに非常識きわまる引き上げである、値上げであると言わざるを得ません。  この改正案も過去の国会審議を全く無視したものであると言わざるを得ませんが、過去の国会論議についてもう一回振り返って、ひとつ当時の論議経過をここで御説明願いたい、こう思うのです。
  56. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健法創設いたしましたときに、これまで無料であった医療費につきまして、有料化と申しますか、一部負担創設を行ったわけでございますけれども、そのときの議論の経過がどうであったかというお尋ねでございます。厚生省としては、そのときの一部負担の考え方として、その当時のいきさつでございますけれども、無料化によっていろいろな問題が出てきたということでございます。その当時では病院のサロン化とかはしご受診というような批判もこれあり、やはり行き過ぎた受診があるのではないかということが言われていたわけでございます。そういうことから、これからの高齢化社会を踏まえまして、お年寄りにもやはり老人保健制度に参加していただく、何がしかの負担をお持ちいただいて、そして健康への自覚あるいは適正な受診お願いしなければならないのではないかということで御提案を申し上げたわけでございまして、そのときの金額につきましては、当時健康保険法がたしか入院では五百円、外来では初診時八百円というベースがあったこと等を踏まえまして、それを下敷きにして定額の一部負担を提出いたしたわけでございます。その結果、国会の方で外来の一部負担あるいは入院の期限について御修正を賜ったわけでございますけれども、やはり無料化というものは、これからの高齢化社会を見据えますと、継続することは困難であるという立法府の意思から一部負担制度創設をされたものと、しかもこの趣旨は、私どもがお願いをいたしておりました、やはりお年寄りにも健康の自覚を持ってもらう、そしてまた適正な受診お願いしようという観点から設けられたものと思っております。  今回の引き上げは、さらに健保法の改正ということで本人が一割になったということから、そのバランスということもあって、特に世代間の公平という見地からの引き上げお願いいたしておるものでございます。
  57. 池端清一

    ○池端委員 この老人保健法というのは制定当時相当な議論があったわけでございます。これは園田厚生大臣のときに国会に法案が提出をされた。そして村山厚生大臣のときに衆議院を通過して、森下厚生大臣のときに参議院を通過した。三代の大臣にまたがる極めて長期、重要な法案として審議をされたのです。その間にこの一部負担の問題もいろいろ議論をされた。ここに「老人保健法の解説」という、当時の厚生省老人保健部長の吉原健二さん、現在の社会保険庁長官、この方が書いた解説書があります。膨大な解説書で、この中にも、厚生省案がどうして修正をされたのか、そういう経緯が詳しく載っておるわけでございます。いろいろな紆余曲折を経ながらも、原案は外来一部負担金の額は五百円であります。入院の一部負担金の期間は四カ月でございました。これが各党の共同修正——実は私ども社会党はこの共同修正には加わっておらないわけでございますけれども、昭和五十六年十一月十二日、本委員会でこの修正案が通過しております。外来時一部負担金の額は五百円から四百円に下げる、入院時一部負担金を支払わなければならない期間を四カ月から二ヵ月に改める、こういう修正がなされたわけなんです。そしてこれが実施をされたのが昭和五十八年二月からであります。いまだ三年ちょっとしか過ぎていない。この時期に朝令暮改的に今度は二・五倍ないし十倍という大幅な引き上げ提案してくる。これは国会の意思に逆らうものではないかと私は言いたいのであります。真剣な議論をして、こういう修正案がまとめられ、そして三年有余の年月を経た段階で、今この国会の決定に挑戦するがごとく、こういう不当な引き上げを含むところの提案を出してくるということは、まことに不穏当ではないか、このように考えるわけでありますが、この点についてはどうですか。
  58. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほども老人保健部長から御説明を申し上げたとおりでございますが、当時、一部負担を導入いたしましたときには、いわゆるお年寄りの皆さんにも健康への自覚を持っていただく、また適正な診療を確保していただくというような観点から一部負担の導入をさせていただいたわけであります。また金額の点につきましても、当時の健康保険制度の中における一部負担とのバランス、見合いというようなことでいろいろ御論議があり、外来の一部負担につきましては御説明を申し上げたところでございますが、入院の一部負担等についても、当時は一日五百円で一ヵ月間というのが健康保険の一部負担でございました。五百円掛ける三十で一万五千円。老人医療の方は三百円で二ヵ月で一万八千円に落ちついたというような過程があったということを記憶いたしておるところでございます。  その後、制度が運営されていく中で、老人保健審議会等で制度全般の見直しなり御検討をいただいてまいったところでございますが、その御検討の中で、無理のない範囲での一部負担の増額ということも検討すべきであるという御意見もいただき、これに基づいて今回このような提案をさせていただきました。  もう一点は、この法律にあります保険財政の負担をいわゆる各保険制度からの持ち寄り、すなわち国民全体で支えていただくということを今回徹底させていただきたいということ、同時に若い世代との間の公平、また御理解をいただくという観点からも、今回一部負担の改定をさせていただいたということでございまして、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  59. 池端清一

    ○池端委員 よろしく御理解をと言われましても、どうも御理解はできない、そのことを申し上げておきます。  それでは、この一部負担引き上げによって老人の皆さん方の負担額がどのようにふえると考えておられるか、その数字を示していただきたいと思います。
  60. 黒木武弘

    黒木政府委員 一部負担引き上げに伴いますところの負担の総額でございますが、六十年度は約六百億、一部負担で御負担を願っておるわけでございますけれども、引き上げますと、これが医療費割合で四・五%になるわけでございまして、負担総額としては千九百億に引き上がるわけでございます。
  61. 池端清一

    ○池端委員 現在六百億円のものが千九百億円。一挙に三・五倍ですね、お年寄りの皆さん方の負担が。これはまた大変な数字だと私は思うのであります。お年寄りは常に病気と共存をしておるわけであります。しかも年老いて収入の道は閉ざされております。それだけに、安心して医療が受けられることがお年寄りに対する最低限の福祉政策でなければならない、私はそのように思います。  厚生大臣は、十月九日の本委員会における所信表明的ごあいさつで、「社会保障制度は、だれもがいつでもどこでも安心して頼れる、公平、公正な制度でなくてはなりません。」こういう所信を述べておられます。つい先日のことでございます。「だれもがいつでもどこでも安心して頼れる」、ここまで言い切っている。今度の改正案はこれと矛盾しませんか。この厚生大臣の言われた立場からも、老人生活不安を増大させる、いや応なしにお年寄り医療から遠ざける、これはまさに弱者いじめの法案であると断ぜざるを得ません。どうですか、撤回する意思はございませんか。
  62. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ただいま老人保健部長が申し上げましたように、今回一部負担の改定をいただきまして、これまでの約六百億円から約千九百億円くらいに総額としては増加をいただくことになるわけであります。医療費全体の中での負担を見てみますると、これまで一・六%程度負担をいただいておりましたのが四・五%程度の御負担をいただく、こういうことでございます。  先ほど申し上げましたように、若い世代皆様方との世代間の負担の公平というような観点からも、この点を御理解いただきたいと思っておりますが、同時にまた、その一部負担のあり方につきましても、支払いやすい定額制というものを堅持いたし、また外来の場合、特に月初めに一回支払っていただけばそれで結構というような支払いの仕組みというものも堅持をいたしておるところでございます。  また、お年寄りの所得の問題を考えてみますると、先ほど老齢福祉年金が昭和四十六年当時は二千三百円といっておりましたが、本年は二万七千二百円というふうに老齢福祉年金も引き上がってまいり、また厚生年金等の標準的な年金も十七万円を超すというような水準に達してきております。またお年寄り世帯の所得につきましても、若い世帯の一人当たりの所得とほぼ変わらないデータが出ておるわけであります。そういうことから考えますると、今回の一部負担引き上げも、御負担をいただけるものというふうに私どもは考えておるところでございます。
  63. 池端清一

    ○池端委員 今お年寄りの皆さん方の生活実態を若干の数字を引用されてお話がございましたが、私どもの別の資料では、国民年金の問題にしても極めて低い水準にあって本当に大変な状況である、こういう実態も実はあるわけでございます。  そこで、もっと具体的に、老齢福祉年金あるいは国民年金を生活の柱とされているいわゆる低所得者層の人たちがどのくらいいらっしゃって、その人たちに今度の負担増というものがどういう影響を与えるとお考えになっているのか、それを具体的にお答え願いたい。要するに、七十歳以上のお年寄りの方の生活実態についてもっと具体的に御説明願いたい、こう思うのであります。
  64. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人の方あるいは老人世帯の所得の実態についてお尋ねでございます。五十九年度の国民生活実態調査によりますと、世帯当たりの平均所得で申しますと、高齢者世帯は二百十四万ぐらいでございまして、全世帯の平均が四百七十二万でございますから、世帯当たりの総額としては、やはり高齢者世帯は所得が低いわけでございますけれども、世帯の人数と申しますか、世帯員が高齢者世帯は少ないわけでございまして、したがいまして、これを一人当たりの所得ということで見ますと、先ほど大臣が申し上げましたように、お年寄りの世帯も平均的な若い人たちの世帯も一人当たりで約十一万四、五千円ということでほぼそろっておるということでございます。  それから、年金、恩給等の割合でございますけれども、五十九年度におきまして高齢者世帯のうち九三・二%の世帯が年金、恩給を受けられている世帯でございます。また四一・九%の世帯では年金、恩給による収入が所得の一〇〇%を占めておるという状況でございます。  私たちの今回の引き上げ外来につきましては、四百円を千円にということでございまして、月千円お支払いを願うわけでございます。それから入院につきましては、一月一万五千円に引き上げを願うわけでございますけれども、私どもは、今申し上げましたように、高齢者世帯の所得の実態から申しまして、外来で月千円程度の御負担生活に支障なくお支払いをいただけるのではないか。それからまた入院された場合には、家計費として食費その他がかかっていたものが、入院されますと不要になるわけでございますから、したがいまして、入院された場合の一万五千円というものも、私どもは無理なく負担していただける金額ではなかろうかというふうに考えております。
  65. 池端清一

    ○池端委員 どうも数字は都合のいいところだけつまみ食いして言われているのですね。おたくの国民生活実態調査、昭和六十年度で、それでは年収百万円未満の高齢者世帯はどういう構成になっているか、お答え願いたい。
  66. 黒木武弘

    黒木政府委員 高齢者世帯の実態の資料を手元に今取り寄せてお答えいたしたいと思いますけれども、私が記憶をいたしております限りにおきましては、若い世帯は平均的なところに分布が多い。それに対しまして高齢者世帯は、平均で申し上げましたけれども、高所得者から低い所得者まで分布が非常になだらかになっているというふうに記憶をいたしておりまして、正確に百万以下の世帯の割合というものは手元に数字が今ございませんけれども、若い世帯に比べまして、低所得あるいはボーダーライン層の世帯がかなり多い割合を占めているのではないか、かように存じております。
  67. 池端清一

    ○池端委員 私は何も無理な数字を出せと言っているんじゃなくて、きのう私が厚生省から聞いた数字を出してもらいたい、こう言っているんですよ。それが手元にないというのはどういうわけですか。厚生省の調査の数字を出してもらいたい。それがないというのはどういうわけだ。
  68. 黒木武弘

    黒木政府委員 大変失礼いたしました。「世帯別類型に見た所得階級別百分率」という統計がございまして、それによりますと、百万以下、九十九万以下ということになりますけれども、約三割程度が該当するのではないかというふうに考えられます。
  69. 池端清一

    ○池端委員 二八・七%ですね、正確には。大臣、よく覚えておいてくださいよ、厚生省の調査ですからね。池端清一の調査ではないんだ。  それでは、国民年金は今どういう水準ですか。
  70. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 国民年金の平均の支給年金額についてのお尋ねかと思います。  国民年金の老齢年金の受給権者の平均年金額は、現在月額で二万七千八百一円ということになってございます。それから老齢福祉年金の六十一年度の年金額は、月額で二万七千二百円ということでございます。
  71. 池端清一

    ○池端委員 今、厚生省からも御答弁があったように、この年金の水準も二万七千八百円から二万七千二百円、こういったような状況ですね。やはり極めて水準は低い。しかも生活実態調査においても高齢者の平均所得はおたくの数字によっても年々実質ダウンしているんです。しかも年収百万円未満の高齢者世帯は何と三割近くもある、こういう状況の中で二・五倍や十倍くらいは支払い可能だ、こういう言い方をするのは余りにも庶民の生活実態というものを無視した言い方ではないか、私はこういう怒りさえ覚えるのであります。本当に極めて低い水準にあり、老人の特性に対する配慮が全くなされていない、こう言っても言い過ぎではないと思うのでありますが、大臣、もう一度それに対して、これは決して福祉の切り捨てではないと言い切れますか。お答えを願いたい。
  72. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、年金の水準も相当改善をされてまいりましたし、また老人世帯の一人当たりの所得も、若い世帯の一人当たりの所得とほぼ変わりなく月額十一万四、五千円という状況の中でございますので、外来の一部負担月額千円、また入院が五百円で一ヵ月一万五千円という額はそう無理なく御負担をいただけるものというふうに考えております。しかしながら、全体としてはそのように考えるわけでございますが、どうしてもやむを得なく特別な事情があって支払いができないという方々については特別の措置、規定がございますので、これらの運用ができないものであるかということを考えてまいりたいと考えております。
  73. 池端清一

    ○池端委員 これから私が申し上げる問題は、本委員会におきましても再三取り上げられておりますし、先般の本会議でも我が党の中沢議員からも質問をいたしたところでありますが、入院したお年寄りにとって自己負担分のほかにいわゆるお世話料と称して保険外負担がある、これはもう公知の事実というか御承知のとおりであります。おたくの調査、昭和六十年十二月の厚生省の調査でも、入院患者一人一ヵ月当たり平均で二万七千五百円、関東地区では実に五万円、こういう出費になっているのであります。しかも一般病院の場合は差額ベッドや付添看護料などはこの数字には含まれておりません。東京のある私大の病院では四人部屋で一日四千円も取られているという数字も出ているのであります。こういう現状においてすら、老人方々負担額というものはもう本当に限界に達しているのです。そして今度のこの一部負担引き上げ、まさにこれは老人のこの大変な状況に対して追い打ちをかけるような負担増であると言わなければならない、こういうふうに考えるわけでありますが、厚生大臣、それでもなおかつあなたはこの程度負担では大した影響はないと言い切れますか。あなたのような所得の多い人ならばそうかもしれませんけれども、しかし、多くの庶民の立場から本当に言い切れるか。この問題はあすは我が身に降りかかってくる問題であります。ひとつ真剣な御答弁を願いたい。
  74. 黒木武弘

    黒木政府委員 お世話料と保険外負担の問題の御指摘でございます。  御指摘いただきましたように、昨年十二月に全国の老人病院を対象にいたしまして実態調査を行った結果でございますけれども、入院患者一人当たり一月で保険外負担の額が平均二万七千五百円ということで、お世話料の実態が明らかになったわけでございます。地域別に見ますと、東京で、関東地区でございますけれども、平均が四万九千円あるいは四万二千円ぐらいのところにございます。さらに先生のおひざ元の北海道では二万一千六百円ぐらいでございますし、あるいは中国でも二万二千円、近畿で三万六千円ということで、地域的には差があるわけでございますけれども、平均的に見ますと二万七千五百円、約三万円弱のお世話料の負担になっておるということでございます。その内訳をどういうものかと見てまいりますと、四割以上がおむつ代関連でございます。そのほかにどういうものがあるかと申しますと、電気製品の使用代、貸しテレビ料とその他でございますとともに、あと理髪代だとかその他いろんな日用諸雑費が取られておるようでございます。  このお世話料につきましては、医療給付との絡みで問題になるわけでございまして、私どもが保険給付として医療として給付しておる部分については、いかなる名目であれ一切費用を徴収してはならぬということで、そういう疑いのある費用徴収をやっておる病院については、都道府県を通じ是正の指導を行い、その成果も上がっておるというふうに考えておりますけれども、先ほど申し上げましたような費用については、医療給付外のことでございまして、お年寄りが家庭におられても必要とされるような経費を病院に行った場合にも御負担願っておるという、そういう経費が多いわけでございますから、今回の一部負担引き上げにより入院されますと、一日三百円が五百円に二百円アップになるわけでございますが、あるいは月にいたしますと九千円が一万五千円になるわけでございますが、先ほど申し上げましたような保険外負担は主として家庭においても必要とされるような経費の支出でございますから、それが病院においてさらに徴収される面があってもやむを得ないところがあるわけでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  75. 池端清一

    ○池端委員 家庭においてもそれだけの大変な負担があるわけだから、せめて七十歳以上のお年寄りに対しては医療費をただにする、こういう発想でなければならないと思うのです。家庭でもかかっているから当然その分を取っても構わないし、負担引き上げをやったって大した影響はないのだという考え方は全く逆な発想ではないかと私は思います。それはおかしいと思います。  そこで、本年九月二十一日付のある新聞にこういう投書が載っておりました。「老人の通院を誤解しないで」という埼玉県に住む七十八歳の御婦人の投書でございます。   老人保健法が出来たころ、病院の待合室が老人のサロン化したようなことをいわれました。それを聞く度に私は悲しいと思いました。事実、老人の通院がふえたとしても、それは今まで少し体の具合が悪くても、お金がかかることなので周囲に気兼ねして医者にかかれなかったのです。   私を始め周囲の老人はあちこち病んで医者にかかりますが、よくなれば早く退院したくなり、通院もやめています。明治、大正生まれの老人はお金も物も時も大切にすることが体にしみついています。誤解しないでほしいのです。 こういう切々たる訴えでございますが、この声がお年寄りの皆さん方の本当に率直な声ではないかと私は思うわけであります。  老人保健法制定当時、全国の老人クラブ連合会は、条件つきながらわずかの一部負担であればやむを得ないという態度をとっておったのであります。いろいろ調べてみましたらそういう事実があるわけでございますが、しかし、今回は違います。全国十二万七千の老人クラブ、八百万の会員がこぞって反対しておるのでございます。私はこの事実を直視してもらいたい。あの老人保健法制定当時は、多少の負担はやむを得ないと言っておった方たちも、今度の引き上げは大変だということで、今反対に立ち上がっておるわけでございます。老人医療費増加を抑制するための自己負担の強化というものがどれほどお年寄り方々の心を痛め、政府への信頼を失わせているか、そのことに実は思いをいたしていただきたい。今我が国経済大国と言われておりますけれども、今日のこの日本の発展、復興のために、本当に戦中戦後を通じて大変な御苦労を願った、その骨身を削ってきた人たちに対する措置として、このようなことがなされるということは、まことに遺憾なことだと私は思うのであります。やはり私たち政治家の任務というものは、こういう方々立場をしっかり守り抜いていくことではないか、このように思うのですが、どうでしょうか。
  76. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 池端先生が御指摘をいただきましたような老人病院の待合室がサロン化しているというようなお話が、これまでその他の事柄についてもいろいろ笑い話のようなことで取り上げられてまいりましたけれども、私どもはそれがすべてのお年寄りであるというふうには決して思っておりませんし、ごく一部のそういう現象もなきにしもあらずということであり、大部分のお年寄り方々は健康にみずから責任を持ち、また自覚を持ち、そして節約の精神で臨んでいただいておるということを私どもは十分承知をいたしております。そういう中で、これからの老人医療費というものを国民全体が、若い者もお年寄りもみんなが自覚をし合って、それを支えていこうという制度を確立をしていく。そういう中で若い方々も、またお年寄り方々も御理解をいただき、御納得をいただける範囲負担をしていただくことによって、この老人医療制度というものが二十一世紀長寿社会に向かっても安定した制度として確立、運営されていくという観点から、今回の一部負担お願いもいたしておるところでございます。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  77. 池端清一

    ○池端委員 全く説得力のない御答弁でございますね。  それでは次に、加入者按分率の問題についてお尋ねをしたいと思います。  いろいろ経過はありますが、前段は省略をいたしますが、この老健法制定当時、衆議院の審議の段階で政府の原案が修正をされまして、加入者按分率五〇%、医療費按分率五〇%、こういうふうになったわけでありますが、こういう修正の経緯をどういうふうに受けとめておるか、理解をされておるか、その辺の国会審議の経緯について改めて確認の意味でお答えを願いたいと思います。
  78. 黒木武弘

    黒木政府委員 加入者按分率あるいは医療費按分率ということで政府原案を提出いたしたわけでございますけれども、これはやはり新しい老健法の基本理念に沿って、国民老人医療費を公平に負担するという理念に沿っての提案であったというふうに考えております。そのときの私どもの提案は五○%から一〇〇%の間で政令で定めるという形で提案をいたしたわけでございます。そして国会審議では五〇%の場合の試算とそれから一〇〇%の場合の試算を提出いたしまして、御審議をいただいたという経緯が一つございます。  その後、審議の過程におきまして、やはり五〇%でスタートすべきだということで、五〇から一〇〇の間で政令という形から、本則として五〇%ということで修正の上、衆議院で決定を見たということでございます。  この五〇%になったということをどういうふうに受けとめておるかということでございますけれども、私どもは、初めて保険者の共同負担方式としてこの方式が導入された、今まではそれぞれの保険制度でそれぞれの老人医療費負担していたのが、今回初めて職域を超え、地域を超え、加入者按分率という形で国民老人医療費負担をしていくという仕掛けができたわけでございますし、したがって、初めて導入されたこと、それから保険者の急激な負担の変動を避けるという意味があって衆議院で五〇%に修正されたものと承知をいたしております。
  79. 池端清一

    ○池端委員 老人保健法第五十五条の第二項「前項の医療費按分率及び加入者按分率は、それぞれ二分の一とする。」こういう修正がなされたわけでございますね。そしてこの修正が実は参議院の段階でまた再修正をされたわけであります。現在の加入者按分率は再修正をされまして四四・七%になっておるわけでありますね。この修正の意味するもの、なぜこのような修正が参議院段階でなされたのか、その意味するものをお答え願いたいし、それからこれまでの、五十八年度以降今日までの経過についてもお尋ねをしたいと思うのです。
  80. 黒木武弘

    黒木政府委員 先ほども答弁いたしましたように、衆議院で五〇%、五〇%に決定を見、参議院に回りまして五〇%の範囲内で政令で定めるという形に修正があったわけでございます。  その意味するところのお尋ねでございますけれども、私どもとしては、一つは、三年後の見直しという規定とともに、それまでの間においては保険者負担増が著しく大きくならないようにということでお決めになった、特に被用者側の負担増が老齢人口の増程度範囲にとどまるようにという御趣旨で参議院の方で二分の一で政令で、そして老人保健審議会の意見を聞いて定めるべしという形でお決め願ったものと承知をいたしております。  そういう附則の規定によりまして加入者按分率がどういうふうに決まっていったかというお尋ねでございますが、私どもは老人保健審議会の意見を聞いて政令で定めてまいったところでございますけれども、先ほどお答えいたしましたように、健保組合等の負担増を老人人口増加率の範囲内にとどめていくという参議院の修正の趣旨を踏まえまして計算をしていったわけでございます。その結果、加入者按分率につきましては年々低下をいたしまして、五十八年度は四七・二%、五十九年度は四五・一%、六十年度は四四・七%ということで現在に至っているわけでございます。
  81. 池端清一

    ○池端委員 それが今度の改正案によると、加入者按分率は六十一年度は一挙に八〇%、そして六十二年度は一〇〇%、こういうふうに引き上げようとしているわけですね。これは大変な引き上げでございまして、これまで毎年度老人保健審議会で加入者按分率を政府の諮問に応じて審議、決定をする、そしていわば拠出金の基準を決めてきた、そういった経過あるいは関係者の合意、これを全く無視する、全くほごにする、そういう内容になるのではないか、こう思うのであります。老人保健制度創設時の国会での審議経過が十分反映をされていない、そういう一気の引き上げではないか、こう思いますが、この点についてはどうでしょうか。
  82. 黒木武弘

    黒木政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、前回老人保健制度創設された大きなねらいは、やはり老人医療費について医療保険制度間の老人加入率の格差に基づく負担の不均衡の是正にあったというふうに考えておりまして、それが老健法の第二条の基本理念ということで、国民の公平の負担ということで老人医療負担していこうではないかという理念としてあらわれているものというふうに承知をいたしております。  国会審議の経過でございますけれども、加入者按分率を何%にするかということについては、確かに私どもが国会に提出時、それから法案審議の過程を通じまして種々の考え方があったわけでございます。しかし、先ほど申しましたように、衆議院段階では老人医療費につきまして初めて共同負担だと、それからもう一つは、やはり当面の考え方として医療費実績部分を半分ぐらい残す方が適当であろうという御見解があっての上のことだというふうに先ほど答弁いたしたとおりでございますけれども、私どもとしては、その後発足して三年間の経過の今日における状況でございますけれども、この三年間におきまして、私どもが按分率の大きな引き上げお願いしたいという理由一つは、医療保険健康保険法改革がございまして、給付負担公平化を目指す医療保険一元化の方向づけがなされたわけでございまして、これからは国民負担給付、両面にわたって負担の公平を目指した一元化の方向づけがなされたということが一つの大きな今回の私どもの按分率引き上げの背景にあるわけでございますとともに、もう一つは、制度間の老人加入率というものがこの三年間でさらに拡大をいたしまして、健保組合では老人の加入率はほとんど横ばい、変わらないのに対しまして、国保の方は一〇%台が一二%台といわば高齢化率が進んだわけでございます。そういうことから老人保健を取り巻く状況が大きく変化をしてきたのではないかということで、私どもは昨年老人保健審議会の方に御意見を求めたわけでございますけれども、その際、老人保健審議会の中間意見におきましても、加入者按分率につきましては一〇〇%を目指して検討すべきだという御意見をちょうだいした、そういういきさつを踏まえまして、今回御提案を申し上げておりますように、高齢化社会を乗り切るためには、この時点で保険者負担の不均衡をさらに是正をしていく必要があるということでございます。つまりお年寄りも若い人も世代間の負担の公平を求める。それから各保険者、どの制度におられても、若い人がどの保険者におられても、公平な負担をしていただく、そういうこれからの高齢化社会を踏まえまして新しい国民負担のシステムをこの際確立をしておく必要があるのではないか、こういうことで、一部負担の改定にあわせまして加入者按分率引き上げお願いをいたしておるということでございます。
  83. 池端清一

    ○池端委員 口を開けば高齢化社会を乗り切る、負担公平化を図る、いかにももっともらしいことを言っているのでありますが、私は国会の今までの議論の経過からいって八〇%、一〇〇%なんという引き上げ、こんなことは想像だにできなかったことだということを申し上げておきたいのであります。例えば、昭和五十七年八月三日の参議院社会労働委員会における質疑、これは「老人保健法の解説」にも出ておりますが、「老人保健の拠出金にかかわる保険者負担増は、毎年の老人人口増加率を最高限度として考え、三年以内を目途に見直すべきであると思いますが、いかがでしょうか。」こういう質問に対して、お答えは「御指摘の点につきましては、老人人口増加率を最高限度として老人保健審議会にお諮りすることとし、この法律の施行後三年以内を目途に見直すことといたしたい」こういう答弁なんです。この答弁の趣旨は、今回のような加入者按分率を八〇%にあるいは一〇〇%に大幅に引き上げる、大幅に見直す、こういうことを言っているものではないのですよ。それを拡大解釈といいますか、国会答弁を無視して今回のような引き上げをするということは、当時の国会審議に全く反する提案ではないかと思うのですが、どうですか。
  84. 黒木武弘

    黒木政府委員 確かにお尋ねのとおりの答弁をいたしておるわけでございますけれども、一つは確かに三年限りの特例措置でございますから、三年後に見直して、その特例措置をどうするかという検討が必要だということでの答弁もあったと思います。それからさらに修正で「検討」という規定が附則に入ったわけでございますけれども、三年後に見直しをするというその見直し規定の対象は、特例措置見直しということで定まっておるのではなくて、本則の五〇、五〇を見直すという本則規定の見直しという形で修正として入ったという経緯もございまして、私どもは今回その見直し当たりまして、若い人と老人との世代間の公平を求めるとともに、保険者間の若い人同士の負担の公平を求めるわけでございますけれども、そういう附則の趣旨、あるいはさらに法の基本理念に立ち返って今回検討し御提案申し上げたということでございまして、国会審議の経過等々について決して無視を申し上げているつもりではございません。十分その辺も考えながら新しい提案を申し上げたいというふうに御理解をいただきたいと思います。
  85. 池端清一

    ○池端委員 先ほど老人保健部長の答弁では、国保における老人加入率も非常にふえてきている、こういうことでございますが、私の調査では五十九年度は一一・六%、六十年度は一二・一%、六十一年度は一二・五%、多少のアップはありますけれども、ほぼ一定に推移しているわけですね。このことによって老人加入率がアップされてきたから国保財政が非常に窮迫をしてきたのだということの理由にはならないと思いますが、その点はどうですか。
  86. 黒木武弘

    黒木政府委員 各制度間の老人の加入率の推移は御指摘のとおりでございます。健保組合につきましては五十七、五十八、五十九、六十年度と二・八%の横ばいでございまして、六十一年度に二・九ということで○・一%増加をする。片や国保につきましては一〇・七の五十七年度から一一、一一・六、一二・一、一二・五ということで、この間一・八%の増加があったわけでございます。しかし、いわば高齢化率みたいなものでございまして、この間老人の加入率が約二%ふえるということは、やはり国保財政に影響を与える大きな要素ではないかと考えておりまして、わずか一・八%だと見るのか、一・八%も高齢化率、老人の加入率が進んだと見るのかということは、御意見もあろうと思いますけれども、私どもはこの増加率がやはり多大な影響を国保財政に与えているのではないかというふうに判断をいたしております。
  87. 池端清一

    ○池端委員 確かに老人加入率は上がってきておることは事実であります。しかし、私はそれほど大きな、緊急に加入者按分率を八〇や一〇〇に引き上げ理由にはならないと思うわけです。もし緊急性があるとすれば、私はこれは厚生省の失敗で、退職者医療制度の加入対象者の見込み違いによって生じた国保の赤字救済を図ろうとするものではないか、これが緊急性があると言えばあると思うのでありますが、その点についてはどうでしょうか。
  88. 下村健

    ○下村政府委員 国保の財政状況に関連して申し上げますと、今、老人保健部長がお答えいたしましたように、老人医療費負担の方が実はより深刻で、国保財政にとってより負担の重い問題だと考えているわけでございます。退職者医療の問題も確かに国保財政に非常に大きな影響がございまして、財政の悪化に拍車をかけることになった、これは御指摘のとおりでございますが、これについては補正予算等いろいろな形で財政措置の面でも国として国保財政の安定のために力を尽くしているところでございます。  一方、退職者医療の方の対象者数が当初の見込みに比べてかなり低かったというところが退職者医療の問題を発生させたわけでございますが、これの数の方は五十九年度末で二百六十七万人であったものが六十年度末では二百九十七万人ということで、当初予想に比べますと足取りは遅いわけでございますが、多少とも退職者医療の方は対象者数が伸びてきているというのが現状でございます。
  89. 池端清一

    ○池端委員 退職者医療制度、当初見積もりは四百六万人でございましたね。それが五十九年度末では、今答弁ありましたように二百六十七万人、六十年度末では二百九十七万人、こういう誤差が生じたわけでございます。これによって対象者の見込み違いによるところの五十九年、六十年両年度の国保財政への影響額は、総額で一体どのようになっておりますか。
  90. 下村健

    ○下村政府委員 影響額は五十九年度で六百七十億円、六十年度で千四百十億円というふうに見ております。
  91. 池端清一

    ○池端委員 そうすると、見込み違いによって昭和五十九年度、六十年度二年間の国保財政の影響額は二千八十億円に達している、こういうことですね。これに対して今日までどのような措置をとってまいったか、その経過を説明願いたい。
  92. 下村健

    ○下村政府委員 ただいまの影響額につきましては、五十九、六十年度で御指摘のように二千八十億円でございますが、これに対しまして六十年度の補正予算におきまして国保の特別交付金という形で千三百六十七億円を措置いたしたわけでございます。
  93. 池端清一

    ○池端委員 二千八十億円の影響額、要するに穴ですね、これに対して千三百六十億円の手当てしかしていない。これではもう国保財政はたまったものではありませんね。本当に市町村の皆さんは今大変な御苦労をされているわけでございます。国保中央会の発表では、実質収支残高が昭和五十九年度では千三十億円あったものが昭和六十年度では六百五十八億円に減っているのであります。この原因は、まさにこの見積もり違い、見込み違いということや国の予算措置の不足によって生じた問題であって、私は国の責任は極めて重大であると思うわけであります。  それでは、昭和六十一年度予算ではこの問題に対してどのように措置をしているのか、お尋ねをしたいと思います。
  94. 下村健

    ○下村政府委員 六十一年度予算では特別交付金といたしまして二百三十億円の予算を計上いたしております。
  95. 池端清一

    ○池端委員 わずか二百三十億円しか六十一年度予算で手当てをしない、ここに大きな問題があるのであります。そしてその不足分は結局加入者按分率引き上げで補おうという魂胆なんでしょう。ここに問題があるのですよ。私はどうしてもこの点は納得できません。  今、六十一年度の補正予算の問題がいろいろ議論をされて、来月初めにも国会に提出されようとしておりますけれども、昭和六十一年度補正予算で国保財政に対してどういう措置を行おうとしているのか、また昭和六十二年度の概算要求では厚生省はこの問題に対処するために特別交付金を幾ら要求しているのか、この点もあわせてお尋ねをしたいと思います。
  96. 下村健

    ○下村政府委員 六十一年度の補正におきましては、老人保健法の成立のおくれに伴います法定の国庫負担の不足分、それと保険料負担に影響するものもございますので、その両者を合わせてできるだけの額を確保いたしたいということで目下努力しているところでございます。六十二年度につきましては、老人保健法の成立によりまして、国保財政全体としては格別の特別交付金のようなものは必要がないと判断いたしております。  なお、先ほど申しましたような国保財政の現状から申しますと、二千億に対して千三百億ということでは不足するのではないかという御疑問でございますが、六十年度の補正予算でそれを措置したわけでございます。国保財政の現状から申しますと、その時点では市町村が大変な苦労をいたしまして、五十九年度の決算は一応終わったという状況でございますので、六十年度不足額千四百億に見合うものは何とか確保したい、一つの考え方としてはそういうこともございまして、そういう措置をとったということでございます。  退職者医療の影響も非常に大きいわけでございますけれども、一方で老人医療費負担というものも、国保に与える影響からいいますと、大体年々一千億ぐらいは増があろうかと思いますが、そういうことで老人医療負担が国保財政にとってより深刻で、現状のまま放置すると、これからますます重くなっていくということが明らかであると私は考えております。
  97. 池端清一

    ○池端委員 六十一年度の補正予算、もうこれは間もなく国会に提出されるのですが、目下努力しているという段階だけですか。財政当局と話し合っている具体的な金額はないのですか。
  98. 下村健

    ○下村政府委員 金額はまだ最終決定に至っておりませんので差し控えさせていただきますが、できる限り厚生省としては必要額を確保するということで臨んでおるところでございます。
  99. 池端清一

    ○池端委員 それでは、厚生省として考えている必要額は幾らですか。
  100. 下村健

    ○下村政府委員 これは折衝途上でいろいろな数字を言っておりますので、厚生省として幾らかということをなかなかここで申し上げるのも難しいのでございますが、市町村側からは千四百億、先ほどお話がございました二千億の不足に対して千三百億という部分と、それから六十二年度で法律の施行のおくれによりまして保険料へのはね返りが約七百億というのが国民健康保険中央会から要望されている数字でございます。一応そういう数字を私どもとしては置いて、国保財政が悪化しないように最大限の努力をするという方針でいろいろ折衝しておるわけであります。
  101. 池端清一

    ○池端委員 努力をしているというなら、こういうような立場努力をしているということを国会の中でも率直に訴えるべきだと私は思うんですよ。与野党を通じて国保財政の危機を何とか打開しなければならないという気持ちは私は一つだと思うんですよね。そういう意味では、この委員会に対しても率直に政府の考え方というものを示されてしかるべきではないか、私はこういうふうに思うのであります。  六十二年度は要求をしていないということは、これはもう加入者按分率を一〇〇%拡大することによってこの穴埋めを図る、こういうねらいがあることは明らかなわけであります。つまり退職者医療制度の対象者数の見込み違いによる国保に対する過度の国庫負担の切り下げという国の失政の責任を、加入者按分率の拡大によって被保険者サイド、つまりサラリーマンや企業の負担増でこの後始末をする、決着をつける、こういうことにほかならない、私はこういう手法だと思うのですが、どうでしょうか。
  102. 下村健

    ○下村政府委員 私どもとしては、国保財政の悪化の原因は、老人加入率の格差が拡大しているという状況がより基本的な問題としてある、こういうふうに認識しておるわけでございます。したがって、国保のその基本的な問題の方を解決することによって、退職者医療についてはまた別途措置もするわけでございますが、六十二年度の国保財政は現在私どもが考えておる措置で安定するというふうに考えているわけでございます。
  103. 池端清一

    ○池端委員 午前中の質疑時間が終了したということでありますので、以下の質問は午後に回します。
  104. 堀内光雄

    堀内委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ────◇─────     午後一時四十四分開議
  105. 堀内光雄

    堀内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池端清一君。
  106. 池端清一

    ○池端委員 大臣には本会議に引き続きまた委員会、大変御苦労さまでございます。  負担公平化という問題がよく言われておるわけでありますが、政府は、加入者按分率を一〇〇%に拡大すれば各制度が公平に同数の老人医療費負担することができる、こういうことをおっしゃっているわけでございます。したがって、このことから盛んに今負担公平化ということを言われているのだと思いますが、国保の老人医療費の拠出金には、御承知のとおり実質五五%の国庫補助がついておるわけであります。したがって、保険料として負担するのは残りの四五%についてでございまして、加入者按分率を一〇〇%として、国庫負担を除けば国保が千人当たり三十一人分の老人医療費保険料負担するのに対して、国庫負担のない健保組合や共済組合では千人当たり六十九人分の老人医療費保険料負担する、こういうことに実はなるわけでありまして、負担公平化を図るといううたい文句にはなっておりますけれども、実際はむしろ制度間の負担は著しく不公平になる、こういうふうに考えるわけでございますが、この点についてはどういうふうに考えておりますか、お尋ねをしたいと思うのであります。
  107. 黒木武弘

    黒木政府委員 国保に国庫補助が五五%入っている、したがって今回の一〇〇%の改正は、そこを勘案するとかえって不公平であるという御意見があることは承知をいたしております。しかし、国保に国庫負担がなぜ入っているかということに相なるわけでございますけれども、国保には事業主負担がない、あるいは低所得者が多い、そういった理由から国庫負担が導入されているわけでございます。  私どもの老人保健の拠出金は、現行の医療保険制度の仕組みを前提として、各保険者間の老人加入率の格差による負担の不均衡を是正し、老人医療費を公平に負担してもらおうという観点から設けられているものでございます。つまり砕いて申しますと、かつてはそれぞれの制度老人を抱えていたわけでございます。国保は国保で、健保組合は健保組合で自分の財源でお年寄りを抱えておった。したがって、老人について申せば、事業主負担と本人の保険料、国保でいえば国庫負担保険料で自分のところの老人だけの老人医療費負担いたしておったわけでございますけれども、新しい医療保険法の制度ができまして、いわば共同事業という形で、市町村に医療の事業の実施をお願いするけれども、全部拠出金の形でその医療を拠出しましょうという制度ができたわけでございます。  したがいまして、そういう現行制度の枠組みの中で拠出金制度が設けられたということからいたしますれば、やはり私どもは拠出金をイコールにするということが正しい負担の公平であると考えておりまして、仮に国庫負担を除くとか、仮に事業主負担とかいうような議論ではなくて、拠出金を比較するとすれば、事業主負担も国庫負担も含めました加入者一人当たりの拠出金額によって判断するのが適当であると考えておるわけでございます。  加入者按分率を一〇〇%にいたしますれば、先生今御指摘のとおり、どの制度においてもどの保険者においても同じ割合老人を抱えることになるわけでございまして、いずれの制度も、国保も健保組合もそれぞれ等しい老人数で、それぞれの市町村においても老人加入率の違いがあるわけでありますけれども、どの市町村においても公平な形で、いずれの制度の場合も保険者の場合にも、加入者一人当たりの拠出金額が等しくなるということで、これは法の理念に沿った、国民が公平に負担するという趣旨に沿うものだというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  108. 池端清一

    ○池端委員 今の御答弁では、健保組合などには事業主負担があるではないか、こういうことでございます。しかし、国保に対する補助金五五%と健保組合の事業主負担を同列視するということは大変な問題だと私は思うのですよ。そもそも健保組合などの事業主負担というのは、これは学説なんかでも定説になっておりまして、労働の代償として行われるものであり、賃金の一形態とみなすべきであると思うのです。それを補助金と同様に扱うということは大変な問題がある、基礎学力が大変落ちているということをあえて言わざるを得ないと思うのであります。また国税納入の実態から見て、国庫負担の財源の多くはサラリーマンや企業によって担われている、こういうものでございますから、保険料の事業主負担と国保の国庫負担を同じ次元で考えるということは全く納得できません。またそれは大変な矛盾でございます。結局政府は、公平ということに名をかりて国保拠出金の減額に連動するところの国庫負担の削減を図る、これをねらっている、これをそっくりサラリーマンや企業に押しつける、こういうもの以外の何物でもない、こういうふうに私は思うのでありますが、その点について重ねてお尋ねをします。
  109. 黒木武弘

    黒木政府委員 先ほどから御答弁いたしておりますように、これから高齢化社会を迎えまして老人医療費はますます増大をしてくるわけでございます。この老人医療費増加は避けられないものと私ども思っております。これをどう国民負担するかということでございますけれども、一つは、やはり世代間の公平ということで、お年寄りも若い人も負担してもらおうというシステムが必要だと考えておりますとともに、やはり若い世代間においても、どの保険、どの組合、どの市町村国保におられても同じ老人数を抱えた形での拠出金を負担してもらうというシステム、そういう世代間の負担の公平あるいは世代内においての負担の公平を図るシステムがこれからの長寿社会にふさわしい負担のシステムではなかろうかということで御提案申し上げているわけでございまして、結果として、御指摘のように、国保には五五%の国庫補助が入っておりますから、国庫負担の削減ということに相なりますけれども、私どもの趣旨、今回の改正のねらいは国庫負担の削減を目的といたしているものではないということで御理解をいただきたいと思います。
  110. 池端清一

    ○池端委員 公平という名のもとの不公平、全くこういうことですね。  それでは、加入者按分率を一〇〇%とした場合には、国庫負担が一体どれだけ削減されるか、被用者保険の各組合、国保の拠出金がどのように変わるか、六十一年度ベースでひとつ具体的な数字でお答えをいただきたいと思います。
  111. 黒木武弘

    黒木政府委員 加入者按分率引き上げに伴います国庫負担の影響、さらには被用者保険あるいは国保の財政影響についてのお尋ねでございます。  六十一年度十一月、私どもの再提出申しております法律ベースで申し上げますと、六十一年十一月から加入者按分率を八〇%に引き上げる等の改正を行うことにいたしておりますけれども、これに伴う各制度の拠出金の影響額でございますけれども、政管健保は二百十億円の増、健保組合は三百五十一億円の増でございます。その他共済等ございまして、被用者保険合計では六百五十六億円の増でございます。これに対しまして国保は千三百二億円の減でございます。うち保険料相当部分が五百八十二億円の減ということになるものと見込んでおります。また国庫負担につきましては八百七十三億円の減になるわけでございまして、これは政管の負担増と国保の負担減を相殺した結果の数字でございます。  六十二年度について申し上げますと、六十一年度十一月実施ベースからどれぐらいふえるかという計算になるわけでございますけれども、六十二年度におきましては、加入者按分率を一〇〇%にすることにいたしておりますけれども、これに伴う財政影響でございますけれども、六十一年十一月実施ベースと比較しまして、政管健保は千三十四億円の増、それから健保組合は千四百八十億円の増、それから被用者保険合計では二千九百六十一億円の増と相なります。国保は四千二百四十三億円の減でございまして、うち保険料相当部分は千八百九十二億円の減になるものと見込んでおります。また国庫負担は二千五百五十億円の減になるものと見込んでおります。
  112. 池端清一

    ○池端委員 この八〇%ないし一〇〇%に按分率を拡大することによって六十一年度、六十二年度両年度だけで政管健保は千二百四十四億円の負担金の増です。健保組合は千八百三十一億円、一方国庫負担は三千四百二十三億円の減、国保は五千五百四十五億の減。部長は先ほど、これは国庫負担の減をねらったものではないと。しかし数字は何を物語っているか。国庫負担の増を図るものでは決してないですね。両年度だけで三千四百二十三億円もの国庫負担の減、これは何を物語っているのですか。お答え願います。
  113. 黒木武弘

    黒木政府委員 御指摘のとおり、両年度の合計では国庫負担は三千四百二十三億円の減になります。重ねての答弁で恐縮でございますけれども、私どもの今回の改正のねらいは、新しく長寿社会に備えての国民の公平な負担のシステムをつくろうということにねらいがあるわけでございまして、同じ答弁になって恐縮でございますけれども、国庫負担の削減そのものをねらいにして今回の改正を行ったものではございません。私どもは高齢化社会に備えまして老人保健制度創設をいたしたわけであります。その後、健康保険を改正し、あるいは年金を改正し、あるいは医療法改正しということで高齢化社会に備えて一連の改正に取り組んでおるわけでございまして、これからもまた医療保険制度一元化に向かっての改革に取り組んでいく予定でございますけれども、そういった一連の中での改革であるということでぜひ御理解をいただきたいと思っておるわけでございます。
  114. 池端清一

    ○池端委員 ぜひ御理解をと言ってもそれはむなしい答弁でございますね。本当に説明が全くなっていない、説得力のある答弁になっていないと私は思うのであります。  今、答弁ありましたように、被用者保険の拠出金は大幅にふえます。そして加入者按分率の拡大によって被用者保険の保険料負担増大をする。そして保険料率の引き上げにつながる、こういうことになるわけですね。昭和六十年度決算で健保組合は二千九百六十七億円の黒字を出しました。政管健保は三千十億円の黒字となっておりますが、この黒字はたちどころに拠出金の増加に充てていかなければならない、こういう状況でございますね。今後原案どおりこの按分率を拡大するとして、拠出金の負担がどういうような推移をたどっていくのか、今後五年間の推計をひとつ数字で出していただきたいと思います。
  115. 黒木武弘

    黒木政府委員 今後五年間の拠出金の推移についてのお尋ねでございます。拠出金の将来推計を行います場合には、医療費の推計の前提になりますところの物価とか賃金とかさらには医療費の改定の動向等非常に不確定な要素が多いわけでございますけれども、今回の制度改正を前提にいたしまして、一定の仮定で推計を行った結果の数字で申し上げますと、まず老人医療費につきましては、六十一年度の四兆三千億から六十五年度には約六兆二千億になるものと見込んでおります。同様に、各制度の拠出金は、この医療費増大に応じまして増加を見るわけでございますけれども、政管健保につきましては、七千二百億余が六十五年度には一兆二千八百億円、それから健保組合については、六十一年度の五千三百億が六十五年度には一兆七百億円に、国保につきましては、六十一年度の一兆四千二百億が六十五年度には一兆三千八百億円になるものと見込んでいる次第でございます。
  116. 池端清一

    ○池端委員 これは医療費伸び率はどのように押さえておりますか。それから老人数の平均伸び率はいかほどとして試算したものでございますか。
  117. 黒木武弘

    黒木政府委員 医療費伸び率の前提になります一人当たり医療費伸びでございますけれども、ここ三年の医療費伸び率の平均をとりまして、一人当たり医療費伸び率を五・九と見ております。  老人数の平均伸び率でございますが、これは人口問題研究所の直近の人口推計の数字を使っておりまして、年平均の伸び率を三・三というふうに見込んでおります。
  118. 池端清一

    ○池端委員 この資料によりましても、政管健保は、六十一年度は七千二百四十一億円のものが六十五年度には一挙に一兆二千八百億円、こういう増になるわけですね。組合健保に至っては、六十一年度五千三百十一億円が六十五年度は一兆七百億円、こういう数字になるわけでございます。これは医療費伸び率を五・九%、老人数の平均伸び率を三・三%として試算をしたわけでありますが、一方、健保連の試算によりますと、六十五年度では一兆一千二百六十億円、こういうような膨大な拠出金額になる、こういうような試算も出ておるわけでございます。  現在、健保の積立金は一兆七千億あるわけでありますが、これは長年にわたる事業主とサラリーマンとによって不時の備えとして営々として今日まで努力してきたその一つの結果だ、こういうふうに思うわけでございます。ですから、一兆七千億円の積立金があるから、そこから支出すればよいじゃないかというような安易な判断というものは、これは許されない、そういう立場をとるべきではない、こう思うのであります。しかも、健保組合の中には財政状態が悪くて積立金もほとんど持たないところもある。現在の法定最高料率は千分の九十五でありますけれども、千分の九十五以上の料率は設定できないわけでございますから、これで賄い切れない費用というものは、当然支払い不能という事態に立ち至ることになると思うのでありますが、これについて厚生省はどういうような対応をお考えになっているのか、これをお尋ねしたいと思うのであります。
  119. 下村健

    ○下村政府委員 健康保険組合につきましては、総体としては財政が非常に安定いたしておりますので、今回の加入者按分率引き上げによりましても、ほぼ現在程度保険料率を維持してかなりの期間運営が可能だというふうに考えているわけでございますが、御指摘のように、財政状況が悪くて積立金を持っていないというふうな組合もあるわけでございます。こういう組合につきましては、従来から行われております財政窮迫組合に対する補助事業あるいは健保連が共同事業を行っておりますので、そういった面で運営に支障が生じないような対策を考えていきたい。また拠出金が急増する組合につきましては、急増に対する特例措置のようなことも今回の法案の中で考えているわけでございます。
  120. 池端清一

    ○池端委員 共同事業対処とか国庫補助とかいうことを言われておるわけでありますが、この拠出金の増大によりまして、各健保組合の財政は急速に悪化することはもう必至でございます。したがって、健保組合の存立そのものを危うくする、存立の基盤というものが非常に揺らぐ、こういう状況になることが予想されるわけでございます。  健保連の見込みによりますと、千七百四十三組合のうち千分の九十五以上の組合数は、昭和六十一年度現在百六組合もある。それが昭和六十六年度には八百八十三の組合に膨れ上がる。まさに全組合の五〇・七%、半分以上の組合が千分の九十五以上、こういうふうになるわけでございます。私の出身地であります北海道の健保組合の状況を見ましても、二十五組合のうち千分の九十五以上の組合数は現在五組合。それが昭和六十六年度には実にほとんど大半の二十三組合になる、こういうような状況も出ている。まさに健康保険組合の存立が揺らぐという状況になるわけでありますが、これに対する対策、今言ったような対策で十分講ずることができると自信がございますか。
  121. 下村健

    ○下村政府委員 健保連の推計をもとにしての御質問でございますが、健保連の推計は私どもから見ますと、例えば医療費伸びを八%、それから老人人口伸び率は三・八%、一方標準報酬の伸び率は三・五%というふうなことで、これは賃金と言いかえてもいいかと思いますが、三・五というと現在よりもさらにひどいくらいの状態、こういうことではないかと思います。一方、医療費の方はそれの倍以上のスピードで伸びるという仮定で、私どもとしてはちょっと極端なんではないかと思っております。したがって、実際問題としては、確かに財政窮迫の組合等がございますので、御指摘のような状況に陥る組合も放置すれば出てくるかと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたようなことで、できるだけ個別組合の状況に即してきめ細かい対策を考えてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、お話にありましたように、北海道の健保組合の財政状況につきましては、炭鉱あるいは造船等の構造不況業種を母体に持っている組合が多いということが一つ状況としてあるわけでございます。それから一人当たり老人医療費が全国平均に比べると北海道は非常に高いわけでございます。ということで、保険料率が高くて財政運営が厳しい組合が多く存在しているということは事実でございますが、これに対応する形としては、今回の改正法におきましては、医療費の上限分をカットするとか、あるいは先ほど来申し上げております激変緩和措置を盛り込むというふうなことで、できるだけの対応を講ずるということで、ただいま組合側でいろいろ試算をしておられるわけでございますが、それは一般法則に従って一応自分たちの拠出金がどうなるだろうかという推計をしておられる例が多いと思いますので、ただいま池端先生御指摘になりましたほどの深刻な状況にはならない。私ども先ほど来申し上げているような対応策で十分安定的な運営が確保していけるのではないかというふうに判断しているわけでございます。
  122. 池端清一

    ○池端委員 局長はそういうふうにおっしゃいますが、あの退職者医療制度でも大変な見込み違いをしているわけでございます。そういう楽観論というものは非常に危険ではないか、私はこういう気がするわけでございます。  ともあれ、国庫負担の削減分を加入者按分率の拡大によってサラリーマンや企業に肩がわりさせる、これは実質的な増税であるというふうに断ぜざるを得ません。     〔委員長退席、長野委員長代理着席〕 したがって、本則どおり加入者按分率は五〇%にとどめるべきである、このことが今日最も最良の道である、私はこういうふうに考えますが、その点について重ねて見解を承りたいと思います。
  123. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 加入者按分率の問題について池端先生のずっとの御議論でございますが、もう何回か申し上げたこともあろうかと思いまして恐縮には存じますけれども、この医療保険制度創設する際に、今後将来にわたって増高する老人医療費をどのように負担していくかということで国民全体が、老いも若きも、また男性も女性も、地域の差もなく皆でこれを支えていこう、こういう基本的な考え方に立ってこの老人保健制度というものが創設されたわけでございまして、この考え方そのものについては十分御理解をいただけるものと思うわけでございます。  そして、その仕組みといたしましては、既にあります歴史的ないろいろな経緯を持っております各保険者によってその負担をしていただくことによって、先ほど申し上げた国民全体の負担という考え方につなげてまいる、こういうような仕組みといたしたわけであります。  当初この原案を提出いたしましたときには、加入者按分率を五〇%から、そして将来一〇〇%に向けて政令で定めてまいる、こういう考え方であったわけでございます。御指摘もございましたように、国会での御議論によりまして、激変緩和もしくは経過措置というような観点からも、加入者按分率を五割にしてはどうかという修正がなされたわけであります。そして参議院におきましては、老人人口伸び以下に抑えていくという各党のお考えが反映をいたしまして、現在四四・七%というような状況になっておるわけでありますが、そういうこの三年間の中で、老人の加入率というものも、国保は健保組合に比べて約四倍に近いというふうに、各保険者間における老人加入率のばらつきというものも一層激しくなってまいったわけであります。     〔長野委員長代理退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕 また医療保険制度全体の負担給付の公平という観点からの一元化というものの取り組みも、今進んでまいったところでありまして、そういうようなことを背景といたしまして、老人保健審議会におきましても、大方の御意見としては、加入者按分率を一○○%に引き上げることを検討してはどうかという御意見も賜り、そして本法における三年後の見直しということともあわせて、当初の国民全体がこれを引き受けていくということに徹底していただくという意味において、今回一○○%に段階的に引き上げていただくということを御提案申し上げておるところでございますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  124. 池端清一

    ○池端委員 これではますます不公平が拡大をする、こういうことになるということを私は重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで、先ほどもちょっと触れましたが、国保財政の問題でございます。  今日国保財政がどういう状況に置かれているか、危機的状況というふうに言われておりますが、その現状と問題点、またその将来展望についてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  125. 下村健

    ○下村政府委員 国民健康保険は他の制度に比べて医療費が多くかかる高齢者が多いあるいは保険料負担能力の面から見ますと、低所得者が非常に多いというふうなことで、制度の財政的基盤が構造的に脆弱だということが基本的な問題としてあるわけでございます。  特に、最近の状況で見ますと、医療保険制度間の老人医療費負担の不均衡という問題が基本的にございますので、これによる医療費増高が激しくて、保険料引き上げを近年は相当大幅に行っている。しかしながら、その結果によりましても、五十九年度の決算状況で見ますと、最終的には基金からの繰入金あるいは前年度の繰越金を加えた決算では一千億の黒字でございますが、経常収支という点で見ますと、約一千億円の赤字というのが五十九年度の状態でございます。したがいまして、私どもとしては、退職者医療等の問題についてはできる限り国としての措置を講ずるとともに、老人保健法改正によりまして、老人医療費負担の公平を図っていくというのが第一に必要な措置であるというふうに考えているわけでございます。  また、今後の高齢化の進展、産業構造の変化等を考慮いたしまして、将来にわたって財政基盤の強化策を引き続いて検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  126. 池端清一

    ○池端委員 確かに国保の老人加入率は全体の医療保険制度平均の約二倍、組合健保の四倍に達している、老人一人当たり医療費が若い世代の五倍であること、こういうことは十分私も理解できるわけであります。したがって、国保の保険者である市町村が大変御苦労されている。その御苦労の状況は私も痛いほど承知をしておるわけでございます。しかも国保というのは、昭和五十九年度の状況を見ても、年間所得が百万円未満の世帯が全体の四四%を占めている、こういう現状でございますから、これはやはり財政状況というものを抜本的に再検討していかなければならない、今そういう段階に来ていると私は思うのであります。したがって、これは小手先の対応では根本解決にはならない、こういうふうに思うわけでございまして、あくまでも国の全面的な補助を前提にした国保財政を守っていくという姿勢が今日非常に急務になっているのではないかと考えますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  127. 下村健

    ○下村政府委員 確かに、先生御指摘のとおり、被用者も高齢になって、退職後は国保に加入するというふうな事情もありまして、老人の加入率が非常に高いわけでございます。  そういうことで、私どもとしては第一番には、何をおいてもやはりその面の不均衡を正していきたい、老人保健法改正をぜひともお願いいたしたいということでございます。それが国保が安定的に機能するための第一の条件であろうというふうに考えております。  それから、国庫負担の問題に関して言いますと、国保制度につきましては、低所得者が多い、あるいは先ほどの事業主負担との関連等も考えまして、直接に加入者が負担する保険料が不均衡にならないように、給付費の二分の一というふうな、他の制度に比べれば格段に高率の国庫補助を行ってきているわけでございます。ただ、社会保険制度、皆保険ということで、国民全体の医療を保障していくというのが政府の基本姿勢になっているわけでございますが、医療保険制度という前提で考えてまいりますと、国庫補助はやはり二分の一程度一つの限界と考えられるわけでございます。これは税負担等の先行きを考えてみましても、現在の厳しい国家財政の状況から見ましても、これ以上補助を引き上げることはなかなか困難ではないかというふうに考えております。     〔丹羽(雄)委員長代理退席、長野委員長代理着席〕
  128. 池端清一

    ○池端委員 老人保健法改正によって問題の解決を図っていくという姿勢については、かねてから言っているように、これは問題がある。そういう発想ではなしに、やはり国の全面的な補助というものを基本にした、財政の危機を乗り越える方法を探求すべきであるということを申し上げているわけでございまして、今の御答弁に私は承服しかねるものがございます。  そこで、国保にかかわる課題も幾つかあるわけでございます。例えばレセプトの点検率や医療費通知の実施率を高める、こういうような問題。あるいは収納率が非常に低いというわけです。五十九年度は収納率が九三・六%、滞納額も千四十三億円に達しております。一方、政管健保は九九・四%、あるいは組合健保は収納率一〇〇%。こういう状況に非常にほど遠い状況でございまして、これらの問題については、関係者に対してさらに一層の努力お願いしなければならない、こういうふうに思うわけでございますが、この収納率の改善の問題について、厚生省としては今後どういうような方針で、どういう指導を行っていくつもりなのか、この辺の方針を明らかにしてもらいたいと思うのです。     〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 下村健

    ○下村政府委員 国保の収納率が御指摘のように非常に低いということは事実でございまして、私どももこの点については大変関心を持って指導してまいっているところでございます。  具体的には、収納率の向上対策といたしましては、収納率向上のための特別対策事業というふうなことで、保険者規模に応じまして具体的な市町村における計画を立てていただく。例えば夜間とか休日とかなかなか被保険者の把握ができませんので、そういう場合の戸別訪問等による納付指導をやる、あるいは保険料の徴収をやる、あるいは口座振替制度を拡大する、あるいは特に悪質なものについては滞納処分を強化する、あるいは広報活動を強化するといったような形で、各市町村ごとに収納率向上のための特別な計画を立ててそれを実行に移していく、そのための補助面における特別な措置も考慮いたしまして、収納率の向上に努めておるわけでございます。
  130. 池端清一

    ○池端委員 この滞納者の問題でございますが、五十九年度の滞納額は千四十三億円という膨大な額に上っている。こういう滞納がふえている原因というものをどういうふうにお考えか、もっと具体的にお尋ねをしたいと思います。
  131. 下村健

    ○下村政府委員 収納率が低いのは、一般的に言いますと、都市の国保の方が多いわけでございます。都市部においては、集団的な住宅が多いとか、あるいは就業形態も夜間の勤務が多いとか、あるいは昼間なかなかつかまらないとかいうふうな方が多くて、被保険者の把握がとにかくまず第一に困難という方がふえているという状況が一番大きな原因としてはあろうかと思っております。
  132. 池端清一

    ○池端委員 私はそればかりではないと思うのですよ。例えば私の地元であります北海道室蘭市、収納率は実に全国平均をはるかに下回っておりまして八三・七%、こういう状況でございます。これは御案内のように、現在、鉄鋼や造船の不況、こういうもので市民の雇用や暮らしが重大な危機に直面をしておる、こういうようなものをもろに反映をしているというふうにも考えますし、もう一つは、やはり国庫負担割合を四五%から三八・五%に削減をした、そのため自治体では国保料あるいは国保税を二〇%から三〇%も値上げするところが続出した、そのことによって実際に支払うことができなくて滞納がふえた、こういう国民生活実態がもろにこの収納率の低さにあらわれているのではないか、私はそう思うのですが、それについてはどうですか。
  133. 下村健

    ○下村政府委員 御指摘のように、地域によりましては、そういう構造的な不況業種のようなものが地域産業を支えているというふうなところで、経済の悪化が滞納がふえる原因になっているということは考えられると思います。ただ、ただいまは国庫負担の問題と関連して保険料が上がり過ぎているのではないかというふうな御指摘もあったわけでございますが、必ずしもそればかりではありませんで、一方では国保の医療費負担老人も含めてでございますが、これは現在も非常に高い水準にあるということも事実でありまして、私どもとしては、収納率の向上に合わせて医療費適正化、先ほどレセプト点検等のお話もございましたけれども、そういう面でも市町村にも努力お願いいたしたいし、国としても、またその面で市町村国保の安定のためにできるだけの手を尽くしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  134. 池端清一

    ○池端委員 今度の法改正では、いわゆる悪質な滞納者に対する一種の制裁措置みたいなものが出されておるわけであります。これらの人たちに対して被保険者証にかえて資格証明書を交付する、窓口で一たん全額自費払いの後、現物給付相当分を療養費として償還する、滞納保険料を納付するまでは療養費その他の現金給付を一時差しとめ、こういうことをやるということが出されておりますが、一体その悪質な滞納者というのはどういう人たちを指すのでしょうか、そういう基準を設けることができるんでしょうか、その点についての見解を承りたいと思います。
  135. 下村健

    ○下村政府委員 何が悪質かという点について具体的な基準をつくるというふうなことはなかなか難しいわけでございますが、私どもとして概括的に申し上げますと、合理的な理由がなくて故意に保険料を滞納すると認められる者、もう少し具体的にいいますと、災害でありますとか失業でありますとかあるいは長期入院というふうなことで家計が窮迫しているとか、何か保険料を納められないということについて、そういった特別な事情がないのに、長期間滞納している、また一方で財産名義の変更を行うとか、どうも保険料納付を回避する意図が見受けられるというふうな形の者を悪質滞納者ということで考えているわけでございます。
  136. 池端清一

    ○池端委員 そういうのはこの現行法でも対応できるのではないですか。
  137. 下村健

    ○下村政府委員 御質問趣旨は、恐らく滞納処分というふうな規定が現在もございますので、そういう形でそういう悪質滞納者については滞納処分をやればいいじゃないかというふうな御趣旨ではないかと理解いたしたわけでございます。  もちろん保険料の滞納者につきまして必要に応じて滞納処分という形で強制徴収をするということは、今回の措置を導入いたしたとしても、必要な場合には当然厳格に実施してまいらなければならぬと思うわけでございます。しかし、滞納処分をやる場合には、適当な差し押さえ物件を見つけてきてそれを差し押さえる、こういう形の措置が必要でございます。またその前提として、そういういろいろの物件の把握がまた難しい、それから当然、これは法律的に非常に強力な処分でございますので、なかなか機動的にそれに先立つ対応ができないという面もございます。一方、そういう悪質な滞納者という場合には、差し押さえを当然予想しまして、名義変更を行うとかいうふうなことが行われる場合がありますから、実務上には当然限界が出てきてなかなか効果が上がらないという場合があるわけでございます。  今回の措置はそういうふうなことも考え合わせまして、こういう問題点を補完するという意味も含めて制度化を行っていこうというものでございますので、ぜひとも御理解をいただきたいと考えております。
  138. 池端清一

    ○池端委員 どうも強権的なにおいがふんぷんとして私は承服できないのであります。これは国民皆保険の精神にも反する重大な問題ではないかと私は思うのですよ。「悪質滞納者」私はそういう表現は使いたくないのだけれども、ここに書いてありますからそう言うのですが、いわゆる悪質滞納者の中に、災害、失業、長期入院がないにもかかわらず長期に滞納している者、こういう人たちを全部含むということになれば、非常に所得が低い人で国保料を払いたくても払えない人が全部適用されてしまう。こういう人に全部適用するということは、今申し上げたこの国民皆保険の精神に反する重大な問題である、こういうふうに私は思うわけであります。それでなくても、滞納処分の問題で現行法でも十分対応できる法的な措置もございますので、重ねてお聞きしますが、なぜ現行法ではやらないのか、改めてこういう極めて国民皆保険の精神にも反するような問題を提起したそのゆえんのものをお聞かせ願いたいと思うのです。
  139. 下村健

    ○下村政府委員 冒頭に申し上げましたように、災害、失業あるいは長期入院による家計の窮迫というふうな具体的に明確な理由がある者について、今回の措置の対象とするものでないということは、まず前提として御理解いただきたいわけでございます。  そこで、滞納処分につきましては、ただいま申しましたようなことで、強制的な措置であるということでいきなり強制的な措置にまいるよりは、今回のような給付の一時差しとめという形で、とにかく被保険者と十分な話し合いをする機会をつくっていく、このコンタクトがなかなか難しいというのが実情のようでございますので、これを契機にして十分実情をお伺いしながら行き過ぎのないようにこういう制度をつくっていきたいというのが私どもの趣旨でございます。
  140. 池端清一

    ○池端委員 この問題についてもかなりの問題点がございますので、後ほどまた我が同僚議員によっていろいろお尋ねすることにいたしまして、時間の関係もございますから、次の問題に移らせていただきます。  今度の改正案のもう一つの大きな目玉は、老人保健施設の問題であります。いわゆる中間施設制度化の問題でありますが、その改正内容は、寝たきり老人等の要介護老人に対し、その心身の状況にふさわしい医療サービスと日常生活サービスを提供する施設として老人保健施設制度化する、こういうふうになっておりますが、どうも施設内容があいまいもことして、どういうものを描いているのか非常に理解に苦しむのでございます。  そこで、老人病院や特別養護老人ホーム等との違いを中心にして、もっと具体的にわかりやすくその老人保健施設の青写真というものをここでぜひ描いていただきたい、そのことをお願いいたします。
  141. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設につきましては、御指摘のとおり、寝たきり老人等の心身の状況にふさわしい医療サービス生活サービスをあわせ提供する新しいタイプの施設として創設お願いしているものでございます。  対象、機能別等、病院、特養ホームとの違いを含めて具体的に説明せよということでございますので、詳しく御説明をさせていただきます。  まず、機能でございますけれども、老人病院は、メーン機能と申しますか、主たる機能で申し上げますと、治療機能と理解されるわけでございますが、これに対しまして特別養護老人ホームは、家庭と同じ機能でございまして、家庭にかわって介護してあげる機能だろうと思っております。今回の老人保健施設につきましては、家庭復帰のために療養機能と申しますか、病院で入院治療が終わった人をここで引き受けてリハビリ、療養してさしあげて家庭に復帰させるという機能を中心に考えているわけでございます。  対象者でございますけれども、老人病院等は、病状が急性期また慢性期の治療を要する老人方々でございますし、特別養護老人ホームは、在宅での介護が困難なため生活の場を必要とする寝たきり老人だと考えております。老人保健施設につきましては、対象者は、病状が安定期に入って、入院治療をする必要はないけれども、リハビリとか看護だとか介護を必要とする寝たきり老人が対象になると考えております。端的に言えば病弱な寝たきり老人がこの対象だということで御理解をいただければと思います。  それから、費用の支払いでございますけれども、老人病院は、医療費ということで老人診療報酬によって出来高払いで支払う。特別養護者人ホームにつきましては、措置費という形で支払うわけでございますが、老人保健施設につきましては、療養費という形で、定額の老人保健施設療養費を支払うことにいたしております。  財源につきましては、老人病院が現在保険者拠出金が七割、国が二割、県、市町村が一割の財源になっておりますけれども、老人保健施設については、財源は老人病院と同じにしたいと考えております。特別養護老人ホームにつきましては、国が二分の一、県または市が二分の一ということで、税金で財源が構成されております。  利用者負担でございますけれども、老人病院は、御提案申し上げておりますように、改正後は月一万五千円でお願いいたしたいということでございます。特別養護老人ホームについては、費用徴収という形で本人の所得に応じて負担してもらうことになっておりますが、老人保健施設につきましては、利用者負担ということで、食事等の日常生活サービスに係る部分を利用者負担という形でお願いいたしたいということでございます。  利用手続につきましては、病院、それから老人保健施設については、いずれも病院と個人の契約でございまして、保険証を持っていけば利用できるということでございますが、特別養護老人ホームは、福祉事務所の所長の入所措置ということで、公的な手続で入所されるということでございます。  その他、施設については詳しくはもう申し上げませんが、老人病院については医療を中心とした設備でございます。特別養護老人ホームは主として生活面に配慮された設備でございます。老人保健施設については、その両方の設備を持たせたいということで、療養室、診察室、機能訓練室に加えまして談話室、食堂といった生活面の配慮の設備もあわせ持たせたいというふうに考えております。  スタッフにつきましては、老人病院につきましては百人当たりで医師が三人でございますが、老人保健施設については一人を考えております。特別養護老人ホームは非常勤で可ということで一人でございます。看護婦さんにつきましては、病院が十七人、老人保健施設につきましては七人から十人程度で考えておりますが、特別養護老人ホームは三人でございます。介護職員につきましては、老人病院は十三人でございますけれども、老人保健施設につきましては十五人ないし十八人程度を今のところ考えております。特別養護老人ホームは、介護職員は二十二名でございます。そのほか、老人保健施設につきましては、OT、PTあるいは相談指導員という形で、家庭復帰のお世話をするような人も配置をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  142. 池端清一

    ○池端委員 現在、六十五歳以上の寝たきりの老人の方がどのくらいおられるのか、どういう実情にあるのか、入院されている方あるいは特養に入所されている方あるいは在宅の方、こういうふうに分類をして、その実態を御説明願いたいと思います。
  143. 黒木武弘

    黒木政府委員 六十五歳以上の寝たきり老人の数でございますけれども、現在約六十二万人と推計をいたしております。こういう寝たきり老人方々がどういうふうに処遇されているかという処遇別で見てまいりますと、病院に入院している方が約二十五万人、特別養護老人ホームに入所されている方が約十二万人、それから在宅で療養されている方が約二十五万人というふうに推計をいたしております。
  144. 池端清一

    ○池端委員 そこで、老人保健施設の利用料、いわゆる本人負担分と、公費や保険者拠出金で賄われる施設療養費、これがどの程度の額になるのか。これは今後審議会等で検討されることになるのか、現在その成案があるのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  145. 黒木武弘

    黒木政府委員 利用料の額についてのお尋ねでございます。  私どもは、生活サービスに対応するものにつきまして利用料として負担していただく考えでございまして、在宅の寝たきり老人方々とのバランスを考慮しまして、食事等は自己負担お願いをいたしたいというふうに考えております。  利用料の額でございますけれども、これは地域によっても差がございますし、あるいはいろいろの条件によって違いが出てまいる可能性はあるわけでございますけれども、一応この施設をどの程度の金額なら利用できるかなということを、私どもも種々の角度から試算をいたしておるわけでございます。今後審議会等でその点についても御議論をいただくわけでございますけれども、強いて申せということでございますれば、私どもは、食費、おむつ代、日常生活品費等を実費程度で計算をいたしまして、五万円程度になるかなというふうに考えております。
  146. 池端清一

    ○池端委員 この施設療養費の額は。
  147. 黒木武弘

    黒木政府委員 施設療養費につきましては、いわば医療費でございまして、これも審議会の意見を聞いて定額で定めることにいたしておるわけでございます。これもスタッフの配置をどうするか、何人程度どういうふうに置くかとか、どういう治療ないし医療の方針を指針として定めるかとか、いろんな要素が絡まってくるわけでございまして、最終的に決めているわけではございませんけれども、私どもとしては、現在特養の一月当たり措置費が約二十万円である、老人病院の六カ月以上の長期入院患者の一月当たりが約三十万円である、そういうバランスも考慮しつつ、それから先ほど詳しく説明する際に申し上げましたような具体的な項目の私どもの現在の考え方に沿って、この施設がそういうスタッフ等を抱えて適正に運用するために、そして医療が確保されるということで、私どもなりの現時点における試算を申し上げますと、二十万円程度かなということでございます。
  148. 池端清一

    ○池端委員 今の説明によりますと、本人負担分は五万円程度施設療養費は二十万円程度、こういう数字が出されたわけでありますが、月五万といいましても、低所得の方にとっては大変な負担だと私は思うのですよ。これについてはどうお考えでしょうか。これは五万程度負担なら可能である、だから五万なんだという乱暴な議論でお考えになっていらっしゃるのか。それからまた施設療養費については、必要な医療と認められる場合に支給するとなっておりますが、必要な医療とはどういうような基準で決めていくお考えなのか、その点もお伺いをしたいと思います。
  149. 黒木武弘

    黒木政府委員 食費等の利用者負担の考え方でございますけれども、社会保障制度審議会におきまして、まず中間施設についての御提言があったわけでございますが、そのときに食費等の生活費等はやはり利用者負担という考え方が打ち出され、そしてまた私どもの中間施設懇においても、その考え方が支持されたものと承知をいたしております。  私どもの考え方といたしましては、入院治療が終わって在宅にかわられる方々の中間的なケアの施設だと考えておりまして、したがって、在宅で療養されても必要となる程度の費用は、この施設に入って療養される場合にお出し願えまいかということを基本的な考え方に立てておるわけでございます。いろいろ一部負担のところで御説明いたしましたけれども、高齢者世帯一人当たりの所得は十一万円ぐらいでございますが、支出面を見ますと、七万円程度が五十九年度の家計調査の一人当たりの消費支出でございます。家庭においても必要な費用については、この施設に入所されてリハビリ等の介護のサービス生活サービスを受けられる場合に、先ほど申し上げた程度の利用者負担お願いできるのではなかろうかと考えているわけでございます。
  150. 池端清一

    ○池端委員 本人負担分五万円程度というのは、これはあくまでも平均的なものだということのようでありますが、そうすると、施設間にアンバランスがあってサービスに違いがある場合、利用料がさらにはね上がるということが出てくるのではないか、本人負担にも非常な格差が生ずる結果になるのではないかと思います。そうなりますと、これはサービスの個別的な有料化だ、いわゆる福祉の産業化ともいうべきものでありまして、福祉医療も金次第、こういう現代社会のゆがんだ風潮に拍車をかけることになるのではないか。その点についてはどうでしょうか。
  151. 黒木武弘

    黒木政府委員 利用者負担につきましては、私どもとしては、運営基準あるいはガイドラインにおいて適正な料金に指導してまいりたいというふうに考えております。  利用料の対象費目は、先ほどから申し上げておりますように、食費とかあるいは理髪代あるいはおむつ代、その他日常生活品費でございまして、そういうものについて私どもは、地域差とか若干の差はあるでしょうけれども、そういった経費についてそうべらぼうな利用者負担が課されるものとは考えておりませんが、若干程度の差は生じてもやむを得ないと思っております。地域地域あるいは利用者のニーズ、そこの施設でどういうレクリエーションなりどういう生活サービスが行われるかということによって若干の相違が出てくるのはやむを得ないと思っておりますけれども、利用者負担の対象費目がそういう日常サービス的なものですから、そう大きな差はなかろうと思っております。ちなみに、医療費の部分、施設療養費の部分について一部負担を取るとか、その何割を取るとかいうことですと、かなりの差が考えられるわけでございますけれども、こういった費目について実費程度を取っていただくということでございますれば、そういった差は余り生じないのではないかと思います。  いずれにしましても、ガイドラインを示して、この利用者負担の経費の対象は患者との契約になるものですから、必ず施設に掲示しておくとかあるいは改定のときにはよく説明をして利用者負担の額を改定するとか、そういうきめ細かなガイドラインをつくって、先生御指摘のように、変な形の老人保健施設にならないように最善の注意を払いながら、寝たきり老人等のための福祉の増進が図られますようこれから審議会等にも諮っていくわけでございますけれども、ベストな案をつくってまいりたいというふうに考えております。
  152. 池端清一

    ○池端委員 アメリカにおけるナーシングホームでの看護の実態というものもいろいろ文献に出ておりますし、社説等にも出ております。その実態は大変問題が多いということも言われておるわけであります。貧しい食事、床ずれの発生、高い死亡率、架空請求、水増し請求、まさにこれはアメリカの恥である、こういうふうに言われている。そういう一面を持っておるわけでございます。私は、こういうようなアメリカにおける実態をこの目で見たわけではございませんので、十分承知をしているわけではございませんが、こういうようなものにならないという保証が果たしてあるのでしょうか。その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  153. 黒木武弘

    黒木政府委員 アメリカのナーシングホームにつきましては、退院後の継続医療ということでメディケアの対象になるということから、非常な勢いでナーシングホームがふえていったというふうに承知をいたしておりますが、そのふえていった経過において自然発生的なふえ方があったようでございまして、その過程において、その施設が営利目的の企業体による設置がほとんど大多数を占め、しかも医師等がほとんど配置されていないというような形から、アメリカのナーシングホームは非常に問題が起きたと承知をいたしております。そういうアメリカのナーシングホームも、今では相当公的な規制がなされて、いいナーシングホームになったとも聞いておりますけれども、そういうアメリカの轍を文字どおり踏まないように、最初から法律の形で制度をつくり、食事も時間をかけてつくらせていただきまして、先生の御心配のように、老人の処遇その他について問題が出ないように、慎重に我が国老人保健施設については実施をやらせてまいりたいと考えております。
  154. 池端清一

    ○池端委員 いろいろな批判があるわけでありますが、基準のつくり方や運営の仕方によっては、お年寄りの小楽園になる可能性も秘めているけれども、簡易うば捨て山、寝たきり、ぼけ老人収容処理施設に向かう危険性も決して小さくはない、実はそういう叫びもあるわけでございます。アメリカのナーシングホームの実態等も今いろいろ言われましたけれども、そういうような状況を見ますと、私どもはこの問題についてはもっともっと慎重に検討すべきではないか。しかも、この中間施設というのは、単に老人だけのための施設ではなくて、いわゆる身体障害者の皆さん、難病の皆さん等々にこういう施設が設けられてしかるべきだと思うのですが、そういうものも含めた総合的な検討がなされるべきではないか。しかし、今度出されてきたものは余りにも拙速に過ぎはしないかと思うのでありますが、この点はどうでしょうか。
  155. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 難病患者あるいは障害者といった方々に対する中間施設についてどう考えておるのかという御質問かと思いますが、難病患者、障害者等を対象にいたします中間施設につきましては、それぞれの疾病なりあるいは障害の特殊性、いろいろあるわけでございますので、それを十分踏まえた上で、その必要性も含めまして引き続き検討を進めていきたいと考えております。
  156. 池端清一

    ○池端委員 昨年の八月二日、中間施設に関する懇談会の報告によりますと、「今後さらにその実施方策や具体的個別的事項についての十分な検討が必要であり、また関係審議会における具体的な検討が期待される事項も少なくないと考えられる。」実はこういう報告があるわけでございます。したがって、この懇談会でももっともっと慎重な十分な検討がなされる必要があると言っておるわけでございますが、このような検討が十分なされないままに今度の制度改正というふうになったのではないか、私はそのように考えるのですが、その点はいかがですか。
  157. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 老人保健施設につきましては、ただいま老人保健部長からその内容等るる御説明申し上げ、その輪郭は相当御理解をいただけたものと思うわけでございますが、現在の寝たきり老人皆様方や、また病院におられてもう自宅に帰れる寸前にきておられるという方々、いわゆる治療そのものは必要ではないが、しばらく医療的ケアを施しながら、またリハビリを施しながらというような方々について、また在宅で介護が難しい方々について生活サービスを兼ね備えて行っていく、こういうような中間施設でございまして、私は、現在非常に多くの方々から期待をされ、求められておる施設であると考えております。文字どおり中間施設に関する懇談会も、今御指摘がございましたように、「実施方策や具体的個別的事項についての十分な検討が必要であり、」こうなっておりますが、そういった検討も厚生省内におきまして相当重ねてまいり、また今後もモデル施設を運営することによって、実態に即した状況も見比べながらこれをつくり上げてまいりたいと考えております。  これまで公的な老人施設といたしまして、養護老人ホームや特別養護老人ホーム等におきましても、先ほど御指摘がございましたような、日本におきましてはうば捨て山だとか、また非常に暗いイメージだとかというようなことよりも、最近の養護老人ホームも特養につきましても、大変いい、明るい施設として全国で運営がされておるということも先生御承知のとおりでございます。私どもがというか日本で各施設がこのように運営をされているということも御勘案をいただきますならば、必ずやすばらしい施設ができ上がってまいるものと私どもは自信を持っておるところでございます。
  158. 池端清一

    ○池端委員 高齢化社会に対応する要介護老人のための施設不足を、国の財政負担をできる限り軽減する、そして民間資金を導入して安上がりの施設をつくるというのであれば、これは私たちは到底了承しがたいのでございます。やはり医療も看護も十分に対応できる、老人方々が安心して治療に専念できる施設、そういう方向を目指して十分な御検討をひとつお願いしたいと思います。  そこで、必要な医療に対して老人保健施設の療養費が支給されるわけでございますけれども、これは定額になっておりますが、この定額にしたという理由はどこにあるのでしょうか。
  159. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設療養費につきましては、定額ということで御提案申し上げておるわけでございます。その理由でございますけれども、老人保健施設で行われる医療ケアにつきましては、先ほど来御説明いたしておりますように、病状が安定期の寝たきり老人等に対するケアでございまして、看護とか介護あるいはリハビリ等の比較的定型的なサービスでございます。もちろん個々の投薬とか処置とか検査とかいうものもございます。しかし、大部分が比較的定型的なサービスでございますので、そこで注射が一回行われたら何点、投薬が行われたら幾らというような形、そういう出来高によるお支払いよりも、やはり定額の形でお支払いする方がふさわしい支払い方式ではなかろうかということで、定額の形で御提案を申し上げておる次第でございます。
  160. 池端清一

    ○池端委員 私はそこに非常な心配を覚えるものでありますが、施設によっては丁寧な治療をする、あるいは行き届いた看護をする、そういうことをすればするほど施設は赤字になります。採算をとろうとすれば老人はほうっておかれてしまう、そういうふうになるんではないか。定額にすることによって当然医療内容が低下するおそれがある。これはこの施設が、悪い表現でございますけれども、いわゆる寝たきり老人の簡易収容施設あるいははみ出し施設というような存在になる危険性があるのではないか、定額にすることによってこういう危険性がもたらされる、私はこういうふうに思うのでありますけれども、そういう御心配はございませんか。
  161. 黒木武弘

    黒木政府委員 定額制については長所もあり短所もある支払い方式だと思っておりますけれども、先ほど申しましたように、この施設には定額がふさわしいと考えております。しかし、その定額のデメリットは、今、先生御指摘のようなことだろうと思っております。この点につきましては、そこで行われる必要な医療ケアを賄うのに十分な人員配置を確保することがまず大事であろう。必要なスタッフ、医師、看護婦あるいは介護職員、リハビリの方々、その他いろいろな職種の方について必要な人員の配置についての基準を定めるとともに、その必要な費用についてお支払いすることによって、ケアに必要な十分な人員配置を確保し、先ほど先生御指摘のように、いわば一種の手抜きみたいな運営がなされないような手だてを講じたい。そしてさらには運営について指針を設けたい。今保険医療機関においては医療担当の指針というものが決まっておりますけれども、やはりこの老人保健施設につきましても、運営の基準と申しますか、医療を担当する指針なり方針というようなものを定めさせていただきまして、それに沿って医療を行ってもらいますとともに、私どもとしても必要な指導を行っていきたいと考えておるわけでございます。またこの施設は利用者の施設でございます。公的に措置する施設じゃなくて、患者の方で、各家庭の方で利用する利用施設でございますから、利用者の選択というようなことも、あるいはそういうサービスの低下をある程度妨げる要素になり得るかなと思っております。  いずれにいたしましても、そこで行われる必要なサービスを確保するに足る十分な人的、物的なものについて基準を定め、それに対する必要な費用を支払うことによって、さらに必要な運営の基準あるいは取り扱いの指針等を定めることによって、ここで行われる施設の運営あるいは寝たきり老人に対するサービスが的確に行われるようにいたす努力をしていきたいと思っております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  162. 池端清一

    ○池端委員 先ほども質問がありましたけれども、老人一般の特性から突発的な合併症あるいは併発症、施設内での転倒、骨折などといったような救急的な医療施設の医師が行う、こういう処置がすべて定額の中に含まれるのかどうか。ときには手術などというようなものも行われるわけでございますが、これもこの定額の中に含まれると解していいのかどうか。それから外部からの往診は管理医師が必要と認めた場合に認められ、往診した医師は別途の診療報酬の算定ができる、こう説明をされておりますけれども、そのこととこの施設の医師が行う処置の定額との間に矛盾はないか、この点について承りたいと思います。
  163. 黒木武弘

    黒木政府委員 この施設におきます医療ケアは、先ほど来申し上げておりますように、症状安定期の寝たきり老人等に対する医療ケアでございまして、通常は定型的な医療が行われるわけでございます。しかし、先生御指摘のように、突発的に脳卒中が再発したとかあるいは骨折があったとかというような形で、私どもがそこで予定している医療を超えるような医療を必要とするケースが出てまいろうというふうに想定をいたしております。そういう場合には、当該老人保健施設には常勤医師一名ということで考えておりますので、通常の場合には、やはりそこの施設で手当てをするのは無理があるのではないかということで、私どもは、運営基準におきまして、そういう緊急事態が生じた場合の措置ということで、原則として協力病院というものを契約をして置いていただいて、そこからの往診をお願いをする、あるいは協力病院への入院お願いするというようなことで運営がなされるであろうというふうに考えております。その場合には、応援していただいた医療機関が保険点数によりまして出来高払いの請求に相なるというふうに考えております。  しかし、この緊急事態に施設の管理医師がみずから処置をした場合にどうするかということでございます。もちろん定額の中でということもあり得るわけでございますけれども、やはり医師が進んでそういう緊急的な場合の手当てをやっていただくような方途を講ずる方が老人の健康維持の面でいいのではないかというふうに私ども考えております。したがって、施設の医師がそういう緊急事態の医療をやった場合には、私どもとしては、個別の定額加算というようなもので別途評価できるやり方があるのではないかということで検討をいたしておるということでございまして、その辺を含めまして、これから関係審議会で御審議願い、その辺について万全の体制にいたしたいというふうに考えております。
  164. 池端清一

    ○池端委員 この問題、聞けば聞くほどいろいろ問題点がたくさんあるように思いますので、さらにこれは別途の機会に、同僚委員等を通じて政府の考え方を明らかにしていただくような措置をとってまいりたい、このように考えるわけであります。  それで、この問題、後にまた譲ることにいたしまして、持ち時間がもう参りましたので、最後に締めくくりの御質問、御意見を申し上げたいと思うのであります。  実は、九月十日の朝日新聞の「論壇」に「納得できぬ老人保健法改正案 自己負担の強化は弱者いじめ」と題する投稿が載っておりました。これは全国老人クラブ連合会副会長の太宰博邦氏でございます。太宰さんというのは、厚生省、皆さん方の先輩でございますね。この先輩の太宰さんも、この老人保健法改正案には全く納得できない、自己負担の強化は弱者いじめだと痛烈に批判をしているのです。この先輩の言を、やはり私はぜひ拳々服膺してもらいたい。やはり前回の老人保健法制定の当時には、太宰さんは特にこの発言をされておりませんでしたが、今度は見るに見かねてこういう投稿までされておるわけでございます。「自己負担を強化すれば、なるほど医療費増加は抑制されるかもしれないが、それはひっきょう、老人をいや応なしに医療から遠ざけんとするものであって、弱者へのいじめであり、福祉の切り下げである。これを、制度の恒久的安定と言うのであろうか。」こういうふうに結んでおるわけでございます。各新聞社の論調も、マスコミも、もう一斉にこの今度の老人保健法改正には反対ないしは批判的な論調で満ちあふれております。労働界はもとより、全国の老人クラブ、そしてまた経営者団体、こぞって反対をしております。こういう欠陥法案、あえて言うならば悪法を、私どもは何としてもこの国会で通すわけにはまいらぬ、このように考えておるわけであります。ぜひ撤回を再度求めたいと思いますが、いかがですか。
  165. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 これまでの御審議でいろいろと御意見の違う点もございましたが、御審議を深めていただくことによって御理解いただける部分もあったのではないかというふうに、私は先ほどから聞かせていただいておるところでございます。いろいろな御意見はございますけれども、何といいましても、この老人保健制度を長期的に安定させてまいることによって、今後迎えます長寿社会におきましても、お年寄りの皆さんが安心して老後を託せるような、そういう老人保健制度に今きちっとつくらなければならないというふうに私どもは考えております。何とぞひとつそういう観点から御理解をいただきたいと思います。
  166. 池端清一

    ○池端委員 厚生大臣のお考え方は、このような反対の声が強くても、何が何でも原案で強行突破をはかる、こういう御意思だというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  167. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、今後迎えます長寿社会に向かって老後を託せる老人保健制度として、今その基盤づくりであるというふうに私どもは考えておりまして、ひとつ御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。
  168. 池端清一

    ○池端委員 本日の私の質問はこれで終わります。
  169. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次に、井上和久君。
  170. 井上和久

    ○井上(和)委員 私は初めて質問をさせていただきます。素朴でありますし、また細かい問題もお伺いしますし、直接的なことを聞くようになろうかと思いますが、どうか大臣初め皆さんの前向きで誠実な御答弁を心からお願いをする次第でございます。  今や我が国経済的に大国となりまして、物の豊かさあるいは生活の利便性、こういう面におきまして世界の注目を集めておるところでございます。反面経済大国、生活は小国、社会資本のおくれなどを指摘する声もございます。なかんずく心身に障害がある方あるいは子供、また老人など自分で自分の幸せをつかみにくい方々が幸せになる、これが政治の大きな課題であると私は思います。最大多数の最大幸福という言葉がございますが、まさにこれは国民が主役であり、なかんずく社会的に弱い立場の皆さんが主役になる、こういう社会であろうかと思うのであります。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、まず私は厚生大臣福祉ということについての基本的な認識と概念をお伺いいたしたいと思います。またあわせまして、我が国福祉の現状、それから将来の展望についてどのようにお考えなのかをお伺いをいたしたいと思います。
  171. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほど池端先生の御質問にもお答えをいたしましたように、私は特に私自身の政治家としての出発に当たりまして、厚生行政との触れ合いの中から、現在の自由主義社会のこういうシステムの中において、政治がつかさどっていく一番重要なことは、言うならば、所得再配分とでも言いましょうか、弱い方々もまた力のある方々も一緒になって助け合っていく、そういう社会をつくっていくことが政治の要諦である、究極の目的であるというふうに私は考えております。そういう中でお年寄り皆様方やまた子供たちの幸せ、そして身体にハンディを持たれた方々への福祉ということを三本の柱としてこれを推進いたしてまいるべきである、このように考えておるわけでございます。  特に、これから日本におきましては、現在も非常に早いスピードで高齢化いたしておるわけでありますが、これから迎えます長寿社会が、まさに人生八十年代というこれまで人類の夢でありました長寿が実現をする、そういう長寿社会になったときに、生きがいのある、活力のある福祉社会ができ上がっていかなければならない、そう考えておるわけであります。そのためにきめ細かな福祉政策を推進いたしてまいり、また将来にわたって取り組んでいかなければならない諸問題について、今その検討を十分してまいるということが大事である、こんなふうに考えております。
  172. 井上和久

    ○井上(和)委員 最近、私の住んでおります愛媛県で二つの大きな事件がございました。愛媛県は、御案内のとおり高齢者率が一二・九%、まさに高齢者の先進県でございます。八月十八日に九十六歳の夫が看病の疲れから寝たきりの九十歳になる自分の妻を刺し殺す、こういう事件がございました。また九月二日に五十六歳になる娘が七十四歳の寝たきりの実の母の首を絞めて殺し、自分も首をつって自殺をするという痛ましい事件がございました。マスコミ、各紙ともに「死の清算、行政に鋭い警告」あるいは「老人問題の深刻さ浮彫り」、このような大きな見出しをつけまして、この事件を報道したのであります。  この二つの事件に共通しますことは、一つは年金生活者であるということであります。それから寝たきりであったということであります。そして介護の疲れが頂点に達していたということでございます。そして将来を悲観していた。この四つの事柄がまず共通の事柄でございます。  そのほかにもこのような痛ましい事故というのが、特に敬老の日を前後いたしましてよく起こるわけでありますが、昨年一年間をもちまして、この種の事件がどのくらいあったか、おわかりになっておる分だけでよろしいのですが、お話しいただきたいと思います。
  173. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 今、御指摘がございましたような事件の実態につきまして、私ども統計的にはそれを把握しておりませんけれども、ただ、今、先生おっしゃいました愛媛の二件のほかに、昨年の十一月に東京都におきまして、やはりこれも看病疲れでございますが、一人息子が脳炎の後遺症としての精神分裂ぎみのお母さんを殺したという事件を承知しております。  それから、ついでで申しわけございませんが、今の御指摘の愛媛県の例、特に九月二日の方のケースでございますが、これは聞くところによりますと、福祉事務所もその状況を把握しておりまして、民生委員も何回か訪問していろいろ御相談に乗っているということ、それから市がやっています巡回入浴の制度、これも御利用いただいたということでございますので、いろいろ手は尽くしておりますが、まことに残念な痛ましい事件であった、こういうふうに思います。
  174. 井上和久

    ○井上(和)委員 高齢化社会の到来ということであります。そうなりますと、社会保障費がふえるということであります。また老人医療増大をいたします。そして若い人たちで支える老人の数がふえていく、こういう社会、これは一つ高齢化社会の特徴である、こういうふうに思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  175. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 そういうことだと思います。今、老人人口の全体における率は一○%をやや上回る程度でありますが、これから三十五年ないし四十年たちますと、二三・五%と約四分の一の方々がいわゆる今いうところのお年寄り、こういうことになるわけでありますので、世の中全体におけるお年寄りの比率というものが非常に高くなり、相対的に若い人たちの数が減ってくるということでありまして、若い人たちがお年寄りを多く支えていかなければならないということになってまいるわけであります。
  176. 井上和久

    ○井上(和)委員 そのように社会保障費がふえるし、老人医療増大し、若い人たちで支えるお年寄りの数がふえる、こういうような社会がそうであります。この老人保健法の今回の改正というのはいろいろなことがありますけれども、一つ老人の、なかんずく体の弱い方から医療費ということで今まで以上に何倍もお金を出させるということが決められようとしておるのです。もう一つは、国庫負担金を結論として減らすんだということになると思います。そうしますと、この高齢化社会が費用の負担の大きな社会である、こう認識をされておる以上、急速に高齢化が進んでおるならば、今はこの国庫の負担を減らそうというときではなくして、むしろふやそう、こう考えていくのが時代の流れに合うんじゃないかと私は思うのです。これを、高齢化は進んでいる、その高齢化社会とは負担の大きな社会、それはわかっておるけれども、今回の法案では国庫負担は減らそうとしている、ということは時代の流れに合わないんじゃないか、こう私は思うわけなんですが、いかがでしょうか。
  177. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今、先生が御指摘の前段にございましたように、若い者たちがお年寄りを支えていく率が非常に高くなってくる、そういう際に、若い人たちの負担というものをどのように公平に負担していただくように持っていかなければならないかということが今回の改正一つの大きな眼目でございまして、いわゆるいうところの加入者按分率一〇〇%にお願いをするということも、若い人たちができるだけ均等に負担をしていただけるようにしようではないか、こういうことでございます。  また、老人医療費全体の中で、お年寄り方々負担を、現在負担をしていただいておりますのは、トータルといたしましては一・六%ということであり、その他の部分については三割が公的負担、うち二割が国庫補助ということでございます。この率は変えずに残りの七割の分について公平な負担お願いする、こういうことでございますので、そういった若い方々の御理解をいただくためにも、お年寄り皆様方に無理のない範囲で一部負担の改定もお願いをさせていただき、そしてお年寄りも若い者も皆理解をし合い、納得して老人保健制度を支え、維持していく、こういうことにするべきではないか、こんな考えから老人保健法改正お願いいたしておるところでございます。
  178. 井上和久

    ○井上(和)委員 ただいまの御丁寧な御答弁でございますが、かえってああいうふうに御答弁をいただくと、何かわからぬようになってくるような気がするわけでありまして、もっとすんなりとといいましょうか、直截にお話を聞く方がいいような気もするのであります。  きょうの新聞の社説でございますが、今回の老人医療費の件です。「厚生省案は、大黒柱となるべき国の負担には触れていない。」こういうふうな指摘がここにございます。それもありますが、先ほどお答えいただいたようないろいろな事柄がいっぱいございます。ございますが、私が直截的にお伺いしたいのは、老人の体の弱い方々が、この法律が通ることによって、今の状態よりも懐から金を余計出さなければならなくなるのですね、ということをまず聞いておるのです。そして国庫負担金は今よりも減るのですね、こう聞いておるのです。それは違いますかそうですか。そこだけちょっと言うてください。
  179. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 端的にお答えをいたしますと、お年寄り皆様方負担をしていただく負担額はふえることに相なります。  国庫の負担は減るかということでございますが、老人保健制度における国庫負担は二割で、これまでどおり変わらないわけでございます。
  180. 井上和久

    ○井上(和)委員 高齢化社会におきます老人対策というのは、健康、年金、医療、その他税制面、いろいろな面で総合的な対策が必要である、こういうふうに思うわけでありますが、先ほどの例でも申し上げましたように、在宅寝たきり老人という問題は、介護人の御苦労、また御家庭あるいは社会におきましても大きな課題であるというふうに私は思うわけであります。ある調査では、結婚後ずっと介護をしているという人が六六%もいるというようなことも言われております。本来はこういう方々に介護手当を差し上げるということが普通であります。けれども、あえてそれができないとすれば、税制面において、例えば介護控除制度などを実施をしていけばいいんじゃないか、こういうふうに私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  181. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 在宅のお年寄りの介護は大変重いものでありまして、その軽減を図っていくということは、私どもの老人福祉政策を進める中で最も重点に、頭に置いているものでございます。  そういうことから、在宅における介護を少しでも楽にするために、在宅の方々に、いわゆるホームヘルパー、そういった派遣だとか、またデイサービスとかショートステイとかいうような新しい施策を進め、この介護の軽減に努めておるところでありまして、税制面でのそのものストレートの考え方というものは、現在のところ持っておらないところでございます。
  182. 井上和久

    ○井上(和)委員 大蔵省の方にもお願いがしてあったと思うのですが、この件について……。
  183. 田波耕治

    ○田波説明員 ただいまの厚生大臣の御答弁を多少補足して御説明申し上げたいと思います。  先生がおっしゃいますいわゆる寝たきり老人方々、その介護をされる方々に対する減税問題につきましては、実は六十年度の予算修正問題のときに与野党間の非常に重要な事項として協議が行われたわけでございます。その結果、六十年分以降の所得税につきましては、いわゆる寝たきり老人を含みますところの同居の特別障害者に対する特別控除額というのが、それまで七万円だったわけでございますけれども、これを十四万円にいたしました。そういう形で解決が行われまして、昨年の十二月に法律改正が行われているわけでございます。  この金額でございますけれども、通常の子供を扶養する場合のいわゆる扶養手当というのは、御存じのように三十三万円でございますけれども、こういった御老人を抱えておられる家庭におきましては、その三十三万円のほかに今の十四万円の特別控除がございます。さらに特別障害者控除ということで三十三万円ございますので、そういった御家庭につきましては、全体で八十万円の控除が認められているということを御理解願いたいと思います。
  184. 井上和久

    ○井上(和)委員 老人保健法、これは高齢化社会の進行によりまして急に膨れ上がってまいりました老人医療費が将来的に医療保険制度自体を破壊しかねない、こういうことから、これに対応する名目で制度化をされたものでございます。この老人保健法が目指す老人保健制度というのは、本来高齢化社会に対応して健康な老人になってもらおうということが主眼でございます。そのためには、疾病の予防及び早期発見、早期治療、こういうふうなことが重点になっておるわけでありますが、従来の治療重点に加えまして、予防ということを見直して、治療と予防の一体化された保健制度老人保健制度の目的にしていく、こういうふうなことであるというふうに伺っておるわけでありますが、今回の一部負担の増を初めとする老健法の改正は治療に対する抑制の憂いが強いのであります。同時に、保健事業の進展、保健業務といいましょうか、保健事業の進展がなおざりにされると、この老人保健法の基本的な趣旨というものをぶち壊すことになるわけであります。  したがいまして、六十一年度までの第一次計画では、マンパワーの確保ということで、保健婦八千三百九十八人を必要とする、こういうふうに言われておりましたが、現在何名の確保ができておりましょうか。それとあわせまして、PT、いわゆる理学療法士あるいはOT、作業療法士、また精神衛生相談員、これらにつきまして、当初の実態数、それから目標、そして現在の充足数、この三通りに分けて教えていただきたいと思います。
  185. 仲村英一

    ○仲村政府委員 おっしゃるとおり、老人保健法の重要な目的の一つは、お年寄りが健やかに老いていただいて、健康で幸福な老後生活を送っていただくということのために、いわゆるヘルス事業と言っておりますお尋ね保健事業というのは、重要な施策として私どもとしても展開してまいってきたわけでございます。  六十一年度を最後の年といたします第一次の五カ年計画でございますけれども、これは市町村事業ということで初めてやっていただいたわけでございます。いろいろ困難もあったことと思いますけれども、私どもといたしましては、全体的に非常に評価のできる事業が達成できたというふうに考えておるわけでございます。なお、若干、幾つかの問題点もございまして、都市部における受診率の低い点でございますとか、その他もろもろの問題点はございますけれども、そういうふうな観点を今後第二次計画の方で生かしていきたいと考えておるところでございます。  お尋ねの、老人保健事業のいわゆるマンパワー等の、基盤整備と私ども言っておりますけれども、これにおきましては、現在、五十九年度末で申し上げますと、保健婦の充足が千三百七十六人、理学療法士、作業療法士につきましては二名、それから精神衛生相談員については五十五人ということでございますし、施設整備におきましては、市町村保健センター九十七カ所というふうなことで着々と準備を進めておるところでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、まだまだ十分でない点もございますし、実施体制におきましてより工夫をする必要もあろうかと考えておりますので、第二次計画におきましては、その点を含めまして、さらに改善をし、質的な向上も図ってまいりたいということで幾つかのことを考えておるわけでございますし、先ほど寝たきりのお話にもございましたような健康教育でございますとか健康相談もさらに活発にしていく必要もございます。あるいはこの事業と離れても、一般の保健所の活動といたしまして、老人精神衛生の相談でございますとか、幾つかの老人対策を、この老人保健法に基づきます保健事業を中核といたしまして、さらに高齢化社会に向けまして、私ども予防を重点といたします健康対策を拡充整備してまいりたいと考えておるところでございます。
  186. 井上和久

    ○井上(和)委員 ちょっと私聞き取りにくかったのですが、保健婦さんが千三百七十六、それから理学療法士さんが二名、それから作業療法士さんも二名、それから精神衛生相談員さん五十五名、そこのところ、もう一度、済みませんが……。
  187. 仲村英一

    ○仲村政府委員 保健婦の五十六年から五十九年の増員の状況でございますけれども、合計で千七百六十八名の増員を図られたということでございます。——申しわけございません。最初に申し上げました保健婦の千三百七十六名と申しますのは、五十九年単年度で増員を図りました人数でございます。理学療法士、作業療法士につきましても同様でございます。二名と申し上げたわけでございます。
  188. 井上和久

    ○井上(和)委員 それで今合計が幾らになって、目標に対してどのくらいできたかということを聞いたのですが。
  189. 仲村英一

    ○仲村政府委員 今、数字をお出しいたしまして、後で正確にお答えさせていただきますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。
  190. 井上和久

    ○井上(和)委員 これは数を正式にお出しいただいて、しっかりと見せていただきたいと思いますが、ただ、「週刊社会保障」という雑誌の中で、近藤さんという課長の方が「保健事業の実施状況」という文章を載せておられるのですが、この中の「保健事業の五か年計画」というところで、「一般診査は計画に較べて七〜八割」また「子宮がん検診は八〜九割という水準になっているが、着実に受診者数が増加している。健康診査を除くその他の保健事業については計画を上回っている。」こういうふうにお書きになった文章があるわけなんです。そういうふうなことで、そういう結果が出るんではないかと思いますが、一応申し上げておきたいと思います。  次に、一部負担の件についてお尋ねをいたします。  本法案では、外来一ヵ月につき四百円から千円、入院一日につき三百円を五百円、しかも二ヵ月という期間をなくし全期間にわたる、こういうことであります。そういうことによりまして、通院の場合は月二・五倍、入院の場合はさらに厳しく、一年間でやりますと実に一万八千円から十八万円、こういうふうに一挙に十倍に負担がふえるということでございます。まさにこれは異常としか言いようがないわけであります。この負担金、一回につき千円、また入院一日につき五百円というこの金額ですね。千円と五百円でありまして、聞いたところ非常にすっきりした金額に感じるのでありますが、これが九百五十円であったりあるいは四百三十円であったりするようなのが普通じゃないかという気が私は単純に考えてするわけなんですが、こう千円と五百円というふうになったのは、どういうふうなところからこれが出ましたか。
  191. 黒木武弘

    黒木政府委員 今回の一部負担見直し当たりましては、まずその基本として、私どもは、現在の定額制を維持しよう、それから外来につきましては、月初めに一回だけ支払う仕組みというのを残そう、これがお年寄りが払いやすい老人の特性に照らした一部負担の方式ではないかということで、その点の仕組みというものは維持することにしたわけであります。ただし、私どもが一部負担創設しましたときに、下敷きと申しますか、横にらみになっておりました健保本人の一部負担、これは定額であったわけでございますけれども、それが現時点では一割負担になっているわけでございます。そういうことから、再三申し上げておりますけれども、これからの老人医療費ということを考えますと、どうしても世代間の負担の公平が要るだろうということで、その健保本人の一割の半分程度、五%ではなくて四・五%ということで、少し五%をおりましたところで、まず一部員担の医療費に占めます割合をセットさせていただいたということでございます。  その次に考えましたのは、入院時一部負担金の期限の問題でございます。これは私どもとしては、今いろんな利用料金あるいは徴収金がございますけれども、特養にしろ、ある期限で後は無料という制度はない。しかも在宅で療養されている人との負担のバランスということも考えますと、期限の撤廃というものをまずやるべきではないかということで、期限の撤廃をやるということにいたしたわけであります。  その残りをどういうふうに金額に割り振るかということでございますけれども、五百円、千円は、私どもは入院については期限を撤廃したということで三百円から五百円程度に、それから外来につきましては、最終的に全体が四・五におさまるように試算をいたしましたところ、四百円が千円にということで、世代間の負担の公平を図れる一部負担の金額ということで決定をしたということでございます。
  192. 井上和久

    ○井上(和)委員 老人保健法審議をされました五十六年当時と、今日の高齢者の所得というのはどのぐらいふえておりましょうか、お伺いをいたします。
  193. 黒木武弘

    黒木政府委員 三年前の所得については、今資料を出しておりますけれども、現時点におきましては、高齢者世帯の一人当たりの所得は月十一万程度でございまして、若い人と変わりはない状況でございます。  ちなみに、この間物価においては六・三、賃金においては一二・八、福祉年金は八・四%程度の三年間の伸び率でございますから、恐らく高齢者世帯の伸びもその程度範囲内ではなかろうかというふうに考えておりますが、正確な資料は後で御説明をいたします。
  194. 井上和久

    ○井上(和)委員 続いてお伺いをしようと思っていますのですけれども、後で後でと言われますとなかなか言いにくくなるのですが、例えば厚生省が六十年度にお出しになっておる「国民生活実態調査の概況」という書類をいただいております。これは厚生省からいただいたんですが、その中にはきちっと数が出ておるわけでありまして、それによりますと、五十六年に二百十七万四千円、この老健法が審議されました当時ですね、五十六年当時二百十七万四千円。そして五十九年では二百十四万六千円。これは厚生省がおまとめになった資料の中にちゃんとそう書いてあるわけであります。ということは、これを見ますと、結局は五十六年より五十九年は高齢者の所得というのは減っておる。二百十七万四千円と二百十四万六千円ですから減っておる。所得は減っておるということが実態として出ておるわけであります。  そして五十六年の当時、村山厚生大臣がこの老人保健法の一部負担のところについてこのように言われております。「客観的に見まして、生活保護は別にいたしましても、低所得者の方でも大体いけるのではないかというところを目指したわけでございます。」この「大体いける」というのは、現在の外来四百円、入院時三百円二ヵ月、これでございます。これを決めるときに「大体いけるのではないか」こういうふうに言われたわけです。  五十九年が五十六年より所得が減っておる段階で、今度は「大体いける」どころではなくして、二・五倍、また入院で一年間にすれば十倍、こういうふうな大幅引き上げを行おうとしておるのが今の状況でございます。  こう考えますときに、本当に老人いじめ、そういうふうにみんなが言いますが、私もそうじゃないかという気がするわけであります。まさに福祉の後退ではないのか、こういうふうに言われますが、いかがでございましょう。
  195. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人の所得につきましては、家計実態調査で、ある年次に前年度より減っているという数字が出ているようでございますけれども、これはひとつ分析をしてみたいと思っています。福祉年金その他やはり年々伸びておるわけでございますから、分析をいたしてみたいと思っております。  今回の引き上げでございますけれども、引き上げ率からいいますと確かに大きいということだと私も思います。ただ、引き上げ後の水準と申しますか、引き上げ後の負担額から申し上げますと、先ほど申しました高齢者世帯の所得水準は約十一万ぐらい、若い世帯と変わらないわけでございますから、一月外来について千円程度負担あるいは入院につきまして一万五千円になりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、入院した場合には生活費、食費等が不要になるわけでございまして、ちなみに高齢者世帯の一日の食費をとってみますと、家計調査によりますと、やはり高齢者世帯でも一日七百円要しているわけでございます。それが入院をいたしますと五百円の一部負担ということに相なるわけでございますから、確かに一部負担額の伸び率ということでは大きいという印象はありますけれども、最終的な負担額から見れば御負担を願える額ではないか。先ほど来申し上げておりますように、この引き上げ世代間の負担の公平ということから若い世代の半分程度お願いをしたいという発想から出てまいった金額でございます。しかも若い世代は、毎年毎年老人医療費が一〇%程度伸びる、現在四兆円の規模ですから、毎年四千億程度老人医療費の増があるわけでございますが、それを負担していただくという中で、やはりお年寄りも力を合わせて若い人と同時に負担お願いをする。国民が公平に負担するシステムが今構築されないと、これから世界に例を見ないような高齢化社会に対応できないのではないか、そういう考え方で私どもは御提案申し上げている次第でございます。
  196. 井上和久

    ○井上(和)委員 先日貯蓄についての世論調査の結果が発表されておりまして、貯蓄の目的についてでありますが、最も多いのは病気、災害の備え、これがトップでありまして七五%でした。それから子供の教育費四四・七%、老後生活費四二・五%、土地建物の購入などの資金二〇・五%、こういうふうに続くわけであります。この調査結果を見ますと、病気への不安あるいは老後生活費への不安が貯蓄の目的にあるということがよくわかるわけであります。  そこで、高齢者世帯の貯蓄額についてでありますが、四三・五%の世帯が二百五十万円以下になっております。これらの層では年間の所得額は百五十六万足らずになっておるわけであります。またこれも厚生省の五十九年の国民生活実態調査によりますと、貯蓄のない人一三・八%、百万円未満の人三一・七%、すなわち百万円未満とない人を含めますと四五・五%の方々がこの階層に入るわけであります。  このような状態でありまして、今回御負担願えると考えておられるそうでありますが、この実態一つを見ましても、これは国民の皆さんの願い、ニーズにこたえるものではないし無理があるんじゃないか、こういうふうに私は思うのでありますが、このことについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  197. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今、貯蓄に関しての実態調査からお触れになられましたが、同じ調査でございますけれども、また見る角度を変えますと、六十五歳以上の御家庭の一人当たりの貯蓄量は約三百六十七万円で、若い世代を含めた全世帯の一人当たりの平均貯蓄百四十一万円を相当大幅に上回っておるという分析もできるわけでございます。  先ほど五十六年と五十九年の比較もお述べになられたわけでございますが、私どもは現在におけるお年寄りの皆さんの所得をいろいろと検討をいたしてみましたところ、老齢福祉年金等につきましては月額二万七千二百円、またお年寄り世帯の一人当たりの所得も十一万四、五千円ということで若い方々ともそう変わりがない。また厚生年金の標準的な年金額も十七万円を超える相当な水準に達しておるという現状の中で、今回の世代間の公平な負担を考えていただくという観点からの一部負担引き上げというものは、そう無理のない範囲で御負担をいただけるものであり、また受診を抑制するというものではないと考えておるところでございます。
  198. 井上和久

    ○井上(和)委員 所得の一○○%が年金、こういう世帯が四一・九%、こういうふうに言われたと思うのでありますが、この老齢福祉年金は五十六年と現在とで幾ら増額になりましたか。
  199. 黒木武弘

    黒木政府委員 五十六年当時の数字はちょっと持ち合わせておりませんが、制度創設の五十八年度から六十一年度で申し上げますと、福祉年金は二万五千百円から二万七千二百円、約二千百円上がっておりまして、八・四%の引き上げになっているというふうに承知をいたしております。
  200. 井上和久

    ○井上(和)委員 老齢福祉年金は五十八年から六十一年で二千百円しか上がっていないというお答えでございます。こういうふうなことが実態であります。その中で単純に言いましても二・五倍あるいは十倍、こんなような話が可能な範囲というふうに思うことはできぬのであります。特に物価の変動におきましても、このような二・五倍あるいは十倍、こんなに大きく上がったようなことはないと思うのです。今日まで公共料金の大幅値上げ、こんなこともたびたびありましたけれども、こんな大きな値上げというのは、今まで経験がないと私は思いますが、いかがでしょう。
  201. 黒木武弘

    黒木政府委員 今回の一部負担改正につきましては、物価にスライドするとか、その状況を勘案して引き上げるということではございませんで、私どもは基本的なシステムの改革お願いをいたしたいということでございます。先ほど来申し上げておりますように、世代間の負担の公平ということで、健保本人の負担状況が変わったわけでございます。とともに、これから医療保険制度一元化に向けて国民ひとしく負担給付両面にわたる公平な措置に向かって高齢化社会に備えての制度の構築をいたしていくわけでございますけれども、その間において老人の一部負担だけが、健保本人では一割であり、国保では三割であるという状況の中で、これを今後将来的には一つの方向に公平にしていくわけでありますけれども、ひとり老人負担だけが一%にとどまっておるということでは、やはり世代間の公平と言えないのではないかということで、一・六%の現状を四・五%程度に、この際改正お願いをしたいといういわばシステムの改革によるということで、先ほどお挙げになっておりますように、物価とか賃金とかそういうものの伸び率、それはもとより数%とか一〇%程度のものでございますから、そういうものの指標と比較いただくと大変私どももつらいわけでございますけれども、今回の改正の考え方は、先ほど申し上げたようなことであるということで、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  202. 井上和久

    ○井上(和)委員 日本医師会の調査によりますと、老人医療機関の受診というのは、二つ以上の医療機関に通っている人が七一・七%おられる。政府の言う千円で済むという老人は少ないわけでありまして、実際には二千円もまた三千円も支払う人が多くなるということはわかるわけでありますが、厚生省自体が、老人の診療科目は一人平均一・五である、こういうふうに言われております。またある書物では一・五弱とかいうような表現があったというふうに記憶をしておりますが、この一・五という数は、いつ、どの地域で、何人の方を対象に、だれが調査をされたのか、お答えをいただきたいと思います。
  203. 黒木武弘

    黒木政府委員 医師会の調査につきましては、私どもも聞き及んでいるわけでございますけれども、恐らく尼崎地区における調査であるというふうに承知をいたしております。当該地区はかなり外来医療費の高い地域でございまして、そういう地域ではそういう実態もあろうかと思いますけれども、私どもは全国ベースで実は統計をとっているわけでございます。  私どもの調査は六十年十月、六十一年一月、六十一年四月のレセプトによりまして、社会保険診療報酬支払基金それから各都道府県国保連合会がそのレセプトによって調査をした結果の数字でございます。それによりますと、医療機関に一回もかからなかった人の割合が三二%でございます。かかった人の割合で見ますと、一軒の人が四四%、二軒の人が一七%となっておりまして、三軒以上の人は七%弱でございます。したがいまして、全老人の平均ではほぼ一軒でございますけれども、かかった人の平均で申し上げれば一・五軒弱であるということでございます。  一方、一軒当たり三・七回通院しておられまして、私どもの理解では、お年寄りの方は長期慢性の疾患を持っておられますから、一つ医療機関、かかりつけのお医者さんでじっくりかかられる傾向というのが読み取れるということで、私どもの全国ベースの調査は実態を反映している数字ではないかなというふうに実は自負いたしておるわけでございます。
  204. 井上和久

    ○井上(和)委員 済みません、もうちょっと具体的に教えていただきたいのですが。六十年の十月と言われましたが、それで結構なんですが、具体的な数、北海道から沖縄まで全国ベースでおやりになったと思いますが、どこではどのぐらいやったかというふうな具体的なやつをぜひ教えてもらいたいと思います。
  205. 黒木武弘

    黒木政府委員 対象になった数についてのお尋ねでございますけれども、卑近の調査は全数でございます。それから各都道府県国保連合会の調べの対象者の総数は約二百十万人程度の調査対象でございます。
  206. 井上和久

    ○井上(和)委員 保険外負担についてお伺いをいたします。  寝たきり老人の介護問題は今日大変深刻な問題になっておりますことは、先ほどから指摘をしておるとおりでございますが、特に入院してもお世話料を初めとする保険外負担の費用を支払っておるわけでございまして、これらは家計に対しまして大変な影響を与えておるものでございます。保険外負担というものが大変大きな問題になっておると思うのでありますが、これについて大体どのくらいであるとお考えになっておるのか。
  207. 黒木武弘

    黒木政府委員 昨年の十二月に全国の老人病院を対象に調査を実施いたしたわけでございますけれども、その結果は、入院患者一人一月当たりの保険外負担の額でございますけれども、平均いたしまして二万七千五百円でございます。
  208. 井上和久

    ○井上(和)委員 先ほどからずっとお伺いしておりまして、同じことに対しての数がばらばらな感じがするわけでございます。  この保険外負担につきまして、老人福祉連絡会の調査では、差額ベッド代を除いて六万五千八百円、これは六十年十一月の調べだと書いてございます。また全電通の、全国電気通信労働組合、ここが六十年の三月から五月の調査をされましたのでは、一ヵ月平均で四万二千八十円、最高の人が十五万円だった、こういう結果が出ております。また東京中野区の「高齢者の入院に関するアンケート調査」によりますと、これは六十年七月ですが、ずっと出ておりまして、一番多いパーセントのところは、十万から二十万というところが二三・八%で一番多くなっておるわけなんです。二万七千云々ということは、ここでどれを見ても出てこぬわけなんです。これはどうしてこんなに、もちろんこの数なんかもごらんになったと思うのですが、どうしてこんなに違うのでしょう。
  209. 黒木武弘

    黒木政府委員 いろいろな調査で違う数字が出てくることの御疑念の点でございますけれども、一つは、やはり地域的に私どもの調査でもお世話料の額がばらつきがあるということでございますので、その調査地域によっては多い負担額あるいは少な目の負担額が出てまいるのではないかと思っております。  それから、どういう対象経費をその中でいわゆる保険外負担として見るかということもあると思います。私どもはいわゆるお世話料ということで調査をいたしておるわけでありますけれども、調査によっては付き添いあるいは差額ベッド、それから中野区の調査のような場合にはお医者さんの謝礼といったようなものも入っておりまして、どういう範囲のものがいわば保険外負担として調査の対象になっておるかということでいろいろ差異を生じてくるのではないかと思っております。私どもは、付き添いあるいは差額ベッドを除きまして、そしてお医者さんの謝礼みたいなものを除きましたいわゆるお世話料というものを調査した結果が二万七千五百円ということでございます。
  210. 井上和久

    ○井上(和)委員 お世話料についてですが、看護料の二重取りをなくするようにという注意を厚生省はされたということを伺っておるわけでありますが、このお世話料というのは結局違法ではないかという話もあるのですが、この点はいかがでしょう。
  211. 黒木武弘

    黒木政府委員 一般的にお世話料は保険の給付の外の分野の経費を負担願っているという面でございまして、したがいまして、一番多いのはおむつ代でございますし、あるいは貸しテレビの電気代とか、そういう類の費用の徴収が多いわけでございます。しかしながら、いわゆるお世話料という名目の中で、医療給付の中の経費を二重にお世話料ということで負担をさせているということは、それは私どもは許せない行為でございますから、かねてより医療給付と重複するものを患者から徴収している医療機関に対しては、その是正を指導するようにということで、都道府県を通じて指示をいたしておるわけでありまして、最近でも各県で相当是正させた例も報告を受けておりますが、今後とも、今御指摘のように、いわば違法の医療給付の中の経費を患者負担させている、肩がわりさせているというようなお世話料的な、あるいはそういう保険外負担は厳に厳しく指導して、見つけ次第と申しますか、調査した上で厳しく是正をさせてまいりたいというふうに考えております。
  212. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、加入者按分率の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  加入者按分率を一〇〇にすることになりますと、各保険者が抱える老人数は千人当たりで六十九人、これが等しくなる。各保険者が公平に老人医療費負担し合うことになると言われるのでありますが、健保組合は千人当たり六十九人分を保険料負担するのに対し、国保は国庫補助があるということから、これを除くと三十一人の負担になるではないか、これは大変不公平ではないかというような声もあるわけでございます。老人保健制度創設されて三年でございます。この間に各制度間における老人加入率の変化というのはどのようになってこられたのか、また加入者按分率をこのように八〇からやがて一〇〇というように変えなければならないということがどうして起こったのか。この三年間でどういう事情や条件の変化が急速に起こってきたのかということについて、この経過をお伺いいたしたいと思います。     〔委員長退席、長野委員長代理着席〕
  213. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人加入率の格差の拡大の状況についてのお尋ねでございます。  政管健保からまず申し上げますと、五十七年から申し上げますが、四・〇、五十八年が四・一、五十九年が四・一、六十年度が四・二、六十一年度見込みで四・三でございまして、五十七年から六十一年にかけまして政管健保の老人加入率増大はプラス〇・三%でございます。健保組合につきましては、五十七年から八、九、六十年と二・八%で推移いたしておりまして、六十一年度見込みで二・九ということでございまして、その間が〇・一%の増でございます。国保につきましては五十七年度が一〇・七%でございます。その後一一・〇、一一・六、一二・一、一二・五ということで、六十一年度見込みが一二・五になっておるわけでございまして、その間一・八%老人加入率が高まっておるという状況でございます。  なぜ八〇、一〇〇へと引き上げるのかというお尋ねが第二点だと思います。  御案内のように、法附則でこの按分率について老健法成立から三年後に加入者按分率見直しの規定が法律上、国会の修正で入っておるわけでございます。したがって、私どもはどういうふうに按分率を今後持っていくかということで、まず前広に老人保健審議会に意見を聞いたわけでございますけれども、多数意見として一〇〇%を目指すべきだという意見をまずいただいたわけでございます。そういうことから私どもも一〇〇%について検討いたしたわけでございますけれども、考え方としては、これからの高齢化社会負担給付にわたる両面の公平というものが非常に必要になってくるわけでございますから、まず老人のところだけでも、老人医療についてだけでも、この際完全に公平化を図るべきではなかろうか、これが老健法の基本理念に沿うものではなかろうか、こういうことで一〇〇%の御提案を申し上げておるわけでございます。そのことによりまして、どの保険者も千人当たり六十九人のお年寄りを抱えていただくということで、公平な負担が実現するものと考えておる次第でございます。
  214. 井上和久

    ○井上(和)委員 組合健保あるいは政管、こういうところが三千億円の余裕金を出したということでありますが、これにつきましては、それぞれ組合の事情がありますし、まして保険料収入の確保あるいは医療費適正化健康管理強化、こういうふうに運営努力に鋭意取り組まれてこういうふうになった、こう考えるのが筋であると思います。健保組合は千七百余の組合がありますが、その中にも随分と赤字の組合もあるわけであります。これらを考えましても、今回のような八〇からやがて一〇〇へというような按分率を急激に引き上げる、こういうやり方というのは、まさに財政調整が中心であって、とにかくあるところから取ろう、こういうふうに私には思えるわけであります。健保の制度の基盤というものを危うくするやり方になりはしないか、この憂いを持っておるのでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  215. 下村健

    ○下村政府委員 健保組合を初めとする被用者保険の財政状況から見て、按分率の引き上げがどういう影響があるかという問題でございますが、総体として見まして、健保組合、政府管掌健康保険、ともに財政は比較的安定している状況にあるわけでございます。したがいまして、今回加入者按分率引き上げましても、大部分の健保組合は保険料率の引き上げを要しないというふうに考えております。ただ、御指摘のように、個別の健康保険組合の中にはいろいろ問題を抱えているところもございますので、大幅な拠出金の増になるというふうなものにつきましては、激変緩和のための経過措置を設けまして、拠出金の軽減を図るということを法案の中で考えておるわけでございます。また政管、健保組合、ともにさしあたり保険料引き上げるという必要はないと思っておりますが、そういう組合につきましては、その他に、政府の財政窮迫組合に対する補助事業、それから健保連が行っております共同事業という面で対処をしてまいりまして、今回の按分率引き上げに伴って困難を来さないように十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  216. 井上和久

    ○井上(和)委員 次に、国保会計についてお伺いをいたします。  事務費の負担金及び収納率の向上についてでございますが、元来、国民健康保険事業というのは国の責任で取り扱われるべきものでございます。ただ、委任事務として各区市町村が取り扱っておるのでありますが、例えば私の地元であります松山市を例にとりますと、昭和六十年度で事務費が三億四百十六万八千円、うち国庫の負担金は二億一千六百三十八万九千円で、八千七百七十七万九千円の超過負担になっておるのであります。この超過負担の解消は当然行われるべきものであると思うのでありますが、これにつきまして、社会保障費の基準財政需要額というのは実態からかけ離れておる、だから超過負担というのが自動的にできる、それによって一般財源を圧迫しておる、こういうふうなことが言われておるわけでありますが、この基準財政需要額の見直しあるいは超過負担の実態というのはどうなっておるか、お伺いをいたしたいと思います。
  217. 下村健

    ○下村政府委員 国保の事務費につきましては、その運営に必要な経費については実態調査をもとにして国が負担をするということになっておるわけでございますが、給与水準の面につきましてはいろいろ問題もございまして、国家公務員の水準を上回っている部分等市町村独自の負担に帰すべきものと政府としては考えておるものがあるわけでございます。したがって、ただいま松山市の場合に八千万ある、こういうお話でしたが、八千万全部が超過負担になるかどうかということはちょっと問題があるわけでございます。私どもとしては、そういうことで今後とも超過負担の解消ということについては努力をしてまいりたいということでございます。超過負担額そのものにつきましては、そういうことで実態調査をやった時期でありませんと、今の時点で幾らあるかというのはちょっと正確にはわからないのですけれども、現状ではその後給与の是正等が図られておりますので、大きなものはないというふうに考えております。     〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
  218. 井上和久

    ○井上(和)委員 実態調査をしないとわからぬということでありますが、これは直ちに実態調査をしてもらいたいと思うのです。このことによりまして各扱いの市町村は大変困っております。これは事実でございます。  また、この超過負担、例えば松山市の場合のこの八千七百万というのは、これで全部がなるかどうかわからない、こういうふうなお話でございますが、私が知るところでは、これ以外にもっともっと補助対象外の経費というものが要っております。この金額、補助対象外経費、これは松山市の場合を言いますと、九千三百万もお金が出ておるわけでありまして、そうすると、一億八千万からのお金が国保の事務費のお金として松山市の一般会計を圧迫している、そういう実態があるわけでございます。これは全国でいいますと、このことだけでも大変な状態を生んでおるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  次に、納付率の向上についてでありますが、国保会計の自助努力として納付率ですか、これが悪いとかあるいはレセプト点検の甘さがよく指摘をされるところでございます。納付率が九二%以下のところは一つの制裁措置として国庫負担金を五%削減する、こういうことを実施されておるわけであります。六十年度、これが何カ所でどのくらいの金額を削減したのか、お伺いをいたしたいと思います。
  219. 下村健

    ○下村政府委員 先ほどの実態調査につきましては、国民年金の問題も実は厚生省としてはございまして、年金制度改正が行われた時点でございますので、年金制度改正にかかわる事務がある程度落ちついた段階で関係省庁とその問題については検討をしよう、こういうことになっております。  それから、ただいまの収納率の低い保険者に対して補助金を減額しているのじゃないか、こういうことでございますが、国保の補助金の調整措置というのは、一応各町村に対しまして定率の補助を行いました後で、その財政状況に応じて傾斜的な配分をやっておるものがあるわけでございます。これはもちろん財政状況に着目をして配るわけでございますけれども、収納率が低いために財政状況が悪いというところに対しては補助金がたくさん行く、財政状況の結果だけから見ると、そういうことが起こり得るわけでございます。そこで私どもとしては、それに対する調整ということをやっておりますので、御指摘のように、収納率が低い町村に対しては調整交付金が減額されるということになるわけでございますが、やはり収納率の向上という面につきましては、各市町村ともに努力をしていただかなければなりませんので、収納率が低いところに対して得をするような補助金の配分は私どもとしてはちょっとできかねるわけでございます。  その適用対象の数につきましては、ちょっと今持ち合わせておりませんので、後刻調べまして御報告をいたしたいと存じます。
  220. 井上和久

    ○井上(和)委員 ぜひ調べてもらいたいと思うのです。  それで、もちろん私は悪いところをよくやったと言えというのじゃありませんよ。そうじゃなくて、それは悪いところはしっかり激励もしていただきたいし、努力もしてもらわなければなりません。しかし、私自身が知る範囲では、国保に関係しておる人も非常に一生懸命収納率を上げようと努力しております。これはもう間違いないところであります。そういうことを踏まえまして、願わくは、よくやったというか収納率のいいところを褒めてあげるという方向に持っていくべきじゃないかというふうに私は思います。
  221. 下村健

    ○下村政府委員 私どものねらいといたしましても、収納率向上等の面で努力をいたしたところに対してできるだけそれを評価する形で補助金の配分をいたしたいということでございますので、御趣旨を踏まえてやっていきたいというふうに思います。
  222. 井上和久

    ○井上(和)委員 それと、この納付率の向上のために補助金を出しておりますね。この補助金について、どういうふうに使うことがいいのですよというか、指導をどのようにされているかということ、それとこの金額はどのくらいになりましょうか。それからこれによって収納率が確かにこういうふうに上がった、この三点についてお尋ねをいたします。
  223. 下村健

    ○下村政府委員 ただいまの問題につきましては、保険料収納率向上特別対策事業という名目をつけまして、各市町村ごとに、一種のメニュー方式なのでありますけれども、夜間、休日等の戸別訪問による納付指導をやるとか、口座振替制度をやるとか、あるいは滞納処分を強化するとか、広報活動をやるとか、日曜、休日の納付相談窓口をつくるとか、いろいろ市町村によりまして、これを全部やるというわけではありませんで、実情に応じてそれぞれの収納率向上のための事業計画をつくってもらう、それに対応いたしまして、こちらから出す補助金の方は定額でございますが、保険者の規模に応じまして、例えば人口一万人未満ですと三百万、一万から五万までは五百万、五万人以上は一千万、そういうふうに一定額をその事業に対する奨励の形で交付をしている、こういう形でやっているわけでございます。
  224. 井上和久

    ○井上(和)委員 時間も過ぎておりますので終わりたいと思いますが、最後に、本法案は高齢化社会の到来に伴い、老人保健制度の長期的な安定と老人保健医療福祉施策の総合的な推進を図るために今回の法案を提出する、このような趣旨であったと覚えておるわけでありますが、私はこの改正案に対して反対であります。また撤回を強く希望するものであります。例えば、もし成立をしたとすれば、再びこのような法案が提出されることはないのかどうか。というのは、長期的安定の長期というのは、大体どのくらいが長期なのかということについてしっかりとお伺いをしておきたいと思うのです。
  225. 黒木武弘

    黒木政府委員 私どもは二十一世紀をにらんで改正お願いをいたしておるわけでございます。したがいまして、私どもの提案しているものをお認め願えれば、私どもは改正がなくても二十一世紀に向かえると思っておりますけれども、その間いろいろな諸事情の急激な変化も、予測し得ない事態もあろうかと思います。したがって、確約はできないわけでございますし、こういう改正をちょくちょくやるような改正ではないというふうに考えておりますけれども、絶対将来とも行わないというところまでの確信的な答弁はできかねますが、基本的な改正であるという私どもの考え方はお酌み取りいただきたいと思うわけでございます。
  226. 井上和久

    ○井上(和)委員 どうも大変ありがとうございました。以上で終わります。
  227. 堀内光雄

    堀内委員長 貝沼次郎君。
  228. 貝沼次郎

    貝沼委員 今、同僚議員がいろいろと質問をいたしましたので、それを聞いておりましたが、私の場合時間が余りありませんので、次の質問の機会があるかどうかちょっと今心配をしているわけでございます。それでとりあえず、先ほど議論のあったところを聞いておりまして、どうもおかしいというところだけ二、三点まず伺って、それから入りたいと思っております。  結論から申し上げますと、この法案、一部負担につきましては反対でございます。それから見直すべきだという考えでございます。それから按分率の問題につきましても、見直すべきであるというのが私の結論でございます。  そこで、初めに大臣でもほかの方でも結構ですが、先ほどから二十一世紀をにらんで高齢化社会の到来ということを盛んに、もう何か二十一世紀が来たような感じがするわけですけれども、一体こういう高齢化社会になるということは、私どもにとっては大変喜ばしいことなのか困ったことなのか、どう認識されますか。
  229. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 どちらかとお尋ねがあれば喜ばしいことだと思います。先ほども申し上げましたように、人類が長寿を全うしたいということは、人間の永遠の願望であったというふうに思います。それが長寿社会が到来をし人生八十年代になるということでありますので、大変すばらしいことだと思います。  ただ、長寿と長命ということは同一ではないというふうに考えておりまして、その長寿する時代に楽しく愉快に明るく活力のある生活を少しでもしていただけるような、そういう社会をつくっていくということを目指していかなければならないというふうに考えております。
  230. 貝沼次郎

    貝沼委員 喜ばしいことである、喜ばしいということは、これからの施策いかんによっては大変いい社会になっていく、長寿社会というものはすばらしいものを目指すのであろう、こういうふうに私も考えるわけでありますが、とかくその言葉があるにもかかわらずやっていることは後ろ向きの話が多いわけでございます。例えば老人の多くなった社会というのは金がかかって大変だ、だからみんなで負担してくれとか、そういう話が多いわけでありまして、高齢者の持っておる力、資質、そういったものをどう生かしていくのかというようなことにも積極的に取り組んで、これからはそういういろいろな方々と同居しながらやっていかなくちゃならない社会なのだという認識、きょう時間があればやりたいと思っておりますが、例えば今問題になっております痴呆老人の問題にいたしましても、これはどうも我が家から痴呆老人が出た、うちのじいさんが歩くのは恥ずかしいというような感じがあったのでは、この問題は解決しないわけですね。だれもがなり得る、自分だっていつなるかわからない、そういう方々がおるのがこの人間の社会なのだ、それでなおかつ楽しく幸せになっていかなくちゃならないというのがこれからの課題ではないかと思っておるわけですね。そういうような観点から、今後積極的にどういうことをやろうとなさっておるのか、端的にひとつお答え願いたいと思います。
  231. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 お話のように、お年寄りが多くなるということが世の中にとってプラスになるということでなければならないわけでありまして、お年寄りの長年にわたる知識や経験というものを社会に生かしていただくような、そういう社会システムをつくっていかなければならないでありましょうし、またそのためには、長年住みなれた御自宅で、または地域において御生活ができるような、そういう福祉的なサービスも推進をしていかなければならないと考えております。またそういうお年寄り皆様方社会参加を積極的にできるような、例えばこれまでやってまいりました老人クラブ活動の推進というようなことなどを中心といたしまして、社会参加を積極的にしていただけるようなこともしていかなければならないと考えております。  また、御指摘ありました老人性痴呆症の問題もまだまだ未解明の部分がございます。その発生のメカニズムの解明、またその予防対策等々これから積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  232. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、今社会福祉あるいは福祉サービスというお話がありましたが、私は単に福祉福祉というだけではなく、これからは福祉サービスが非常に大事になってくるのではないか。殊に、今回打ち出されておりますような在宅指向というのは、まさにそういうことになるのではないか、こう考えております。  そうなってまいりますと、改めて問題になってまいりますのが、要するに、福祉の公的責任というのはどうなっておるのか、公的責任の範囲というのは今までと変わってくるのかこないのか、その内容に変化があったのか、少なくとも国が今まで予算を組んでやった部分について、今度は受益者負担が入ってくるわけでありますから、そういう面において公的責任の内容において変更があったのかなかったのか、この点についてお尋ねをいたします。
  233. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健法創設されまして、公的責任の問題が変わったのかというお尋ねと承りまして、私からお答えさせていただきます。  確かに、老人保健法創設されまして、その基本理念の中で、老人保健制度は、「国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、老人医療に要する費用を公平に負担するものとする。」こういうことで基本理念が書かれておりますから、従来以上にとは申しませんけれども、国民の自助努力あるいは国民の連帯の精神というものが新しい理念、哲学としてつけ加わったということは、私どもは紛れのない事実かなと思っておるわけでございますが、国の責任あるいは地方公共団体の責任につきましては、やはり老人保健法できちっと明記がされているわけでございます。老健法の世界はそういうことでございますけれども、私どもの基本的取り組み姿勢は、社会保障なり福祉の問題について、基本的な枠組みなり基本的な施策は国が責任を持ってやってまいるということは変わりがないと考えております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  234. 貝沼次郎

    貝沼委員 今、この議論をしておりますのは、実はこの後の中間施設との関係があるから確認をしておるわけでございます。  それで、一部負担のところでいろいろ議論がございましたが、歴史的に見ると、老人医療無料制度昭和四十八年から行われたわけです。しかし、五十一年度予算編成の直前に、大蔵省が五十二年度実施を目指して老人医療費の有料化を強く打ち出してきたわけです。歴史がそうなっているわけです。それで厚生省が強く反発いたしました。非常に力強かったのであります。そして当時三木総理大臣の裁断で見送られたといういきさつがございます。大蔵省も渋々見送ったわけであります。しかし、大蔵省は五十一年度実態調査を行いまして一部患者負担を主張してまいりました。一方、厚生省も二月に厚生大臣の私的諮問機関として老人保健医療問題懇談会を発足させまして、老人福祉全般のあり方を検討したとなっておるわけでございます。この辺から姿勢が少しおかしくなってくるわけであります。そして五十五年度予算編成の過程で、大蔵省は財政再建元年の名のもとに公費負担医療費見直しを迫った。さらに行管庁も一月に老人医療費見直しを提言して迫ったわけです。ここに至ってようやく老人保健法となって五十六年国会に提出されましたが、大幅修正を経てようやく五十七年八月に成立し、五十八年二月より実施、こういうことだと思いますが、これは間違いありますか。
  235. 黒木武弘

    黒木政府委員 老健法の成立の経過についてはそのとおりだと思いますけれども、厚生省といたしましても、老人医療の無料化に伴っていろいろ問題が出てまいりまして、特に無料化後、老人医療費が急激な勢いで増大をいたしました。そして老人を多く抱える国保が大変な財政赤字その他財政負担にあえぎ苦しんだわけでございます。その過程において、厚生省においても検討され、小沢私案とか橋本私案とかいうものを世に問いながら慎重に検討を続けた結果、最終的に先生御指摘のような老人保健法改正案ということで厚生省提案をしたというふうな経過でございます。
  236. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう歴史的な経過を見れば、明らかにこれはもう財政のためなんですね。財政調整が本当は一番根強く働いておるわけでありまして、ほかの理由をいろいろおっしゃるけれども、それは後からくっつけたもので、財政調整以外の何物でもないというのが真実だろうと私は思うわけでございます。  それで、いろいろなことを言っていますが、二十一世紀を目指して本当に基盤をつくるのならば、私は、国会でああ言った、こう言ったというそんな言葉のやりとりなんかするんじゃなしに、本気になって、裸になって国民の一人一人と真実はこうです、だからこれ以外に方法はありませんということで、それはもうあからさまに議論をしていかなければ国民の理解を得られるようなものはできないのではないか、私はこういうふうに考えておるわけでありますが、いかがですか。
  237. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 今、先生が御指摘のように、昭和四十八年に無料化いたしまして以降相当の年月が流れる中で、所得水準やまた経済情勢も変化をしてまいり、また予想以上の老人人口増加、これに伴う老人医療費増高というようなことについて、この老人医療費をどのようにみんなで負担をするかということについて、国民全体でこれを負担していこうではないか、こういう考え方に立って五十八年から施行されました老人保健制度というものができ上がったわけであります。そういう意味におきましては、これまでの医療保険制度の中では、言うならば画期的な一つ国民連帯の老人保健制度というものができ上がったというふうに考えております。  そういう国民全体で負担をしていただく中で、お年寄り方々にも一部負担をどのようにしていただくかということについて、若い世代方々にも御納得をいただき、公平な負担がし得るようなシステムも考えていかなければならないということで一部負担お願いをし、また今回それの改定をお願いいたしておる、こういうことでございます。
  238. 貝沼次郎

    貝沼委員 次は、確認だけさしてもらいます。  この「医療保険制度における給付率は、原則八割程度で統一する。」これは政府の高齢者対策企画推進本部報告の中にありますが、これの文言を見ますと、やがては二割負担一元化というふうなことが本音ではないかという感じがいたしますが、それでよろしいのですね。
  239. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 健康保険法改正お願いをいたしましたときにも、現在の制度におきましては一割負担ということになっておりますけれども、これを八割給付にするということについて、国会の御承認を得て将来八割給付にしていこうということになっておるわけでございまして、そういうことを中心にして今後将来の医療保険制度を考えてまいりたいと考えております。
  240. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう一点だけ確認です。  老人に対しては五%程度の定額一部負担とする、これは大臣も答弁になりまして、将来とも五%というふうに答弁があったようでありますが、これは間違いありませんね。
  241. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 老人保健における一部負担が、今回の改正をお認めいただきますと、全体で四・五%ということに相なるわけでございます。この四・五%程度が現在はちょうどいいのではないかという判断をいたしております。ただ長い将来、先にわたってはいろいろな状況の変化もあろうかと思いますので、断定的な、今後一切もうこれで固定だということまで一切を断言するわけにはいかないとは思いますけれども、現在見通せる範囲内においては、この程度負担お願いをいたしてまいりたいと思っております。
  242. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう言い方をすると時間がかかってしまうんだね。要するに、半分程度という言葉があるから、何回かほかの委員会質問があったわけですね。そのときに、いや五%です、将来とも五%ですと言うから、じゃ五%で変わらないんだろうなということになっているのに、何か途中変わるような、半分程度が生きてくるみたいな話になると、じや将来一割になるのだなということになってくるから、ややこしくなるんです。ですから、きょうは時間がありませんからやりませんけれども、そこのところが問題なんですよ、実際問題。  それからもう一つは、例えばあるお医者さんと会ったらこういうことを言っておりました。一部負担は今まで風邪を引いて来る人が来なくなるだけです、やがて肺炎を起こしたら来るでしょう、そうすれば病院の方はむしろもうかるのです、これが本当に保健ということになるのかどうかということなんですね。確かに抑制はありますよ、診療抑制は。ただ金額は変わらないですね。これは皆さんの厚生省保健医療局の老人保健部で出した統計ですよ。「老人医療事業年報」ですね。この中に全部グラフを書いて老人保健法を施行したときから一体どうなったかというのを丁寧にまとめてありますね。それを見ると全部影響があらわれておる。  例えば入院の方は余り変わらない。これはもう入院しておりますから余り変わらないのですけれども、診療費の伸び率、受診率の推移なんか見ましたら、この二月からどんと下がっているわけですね。早い話が来ないということです。では一人当たりの金額はどうなっておるのか。一人当たりの金額は後からどんとふえてくる。それから一件当たりの日数も、この期間が終わると非常に重い病気の人が来るようになっている。それで病院に来る人は少なくなっておるのだけれども、しかしかかっておるお金の方はちゃんと同じようにかかっておる。ということは、やはりこういう一部負担金が上がりますと、少々風邪を引いたのは来ないということです。重くなった人だけが来るということです。そうすると、病院というのは軽いときに行って健康になって戻る、これが私は保健の精神だと思うのですね。ところがこの法律からいきますと、病院には重くなるまでは来てはいけませんよということになって、これを果たして保健と言うのでしょうか、こういう感じがするわけでありますが、そういう現象は御存じなんでしょう。どうですか。
  243. 黒木武弘

    黒木政府委員 老健法が成立いたしまして一部負担が導入された後、御指摘のように、外来については医療費が落ち、最近ではまた伸びが見えているわけでございますけれども、反面入院については終始伸びを見ているわけでございます。  この外来の落ちをどう見るかということでございますが、私どもは再三御説明さしていただいておりますように、確かに受診率は一部負担創設されて落ちたわけでございます。対前年で約三・四%ぐらい落ちているわけでございますけれども、かわりに一件当たりの日数が伸びているわけでございます。つまりどういうことかというと、一つ医療機関でじっくり見てもらえる傾向が出てきたなということでございまして、一部負担創設するときの問題点の一つは、やはりはしご受診というようなことが批判の一つにあったわけでございます。そういうことから言って、私どもとしては、評価としては、その当時はじっくり受診型がふえてきたなということで、必要な受診が抑制されたということではなくて、適正な受診が行われたと受け取っていたわけでございますし、そういう意味で、今回の引き上げ後においても必要な受診が抑制されるというふうには考えていないということでございます。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  244. 貝沼次郎

    貝沼委員 そんなことは言わなくても、やはり軽い者は来ておりませんでしたと言った方が素直なんです。要するに、長く病院におったということは重いということなんですから、病気でない人がおるはずがありませんから、そういう言い逃れはちょっと聞けないですね。  時間がありませんから、今度は、先ほど按分率のことで少しはっきりしない点がありましたから、一点だけお尋ねをしておきます。  つまり被用者保険の方々が、その組合が運営努力を一生懸命やる、これは先ほど自民党の方も質問しておりました。その努力というものは認められなくちゃいけないということなんですね。認められて、それはどう生かされるのですか。これについては既にこの法律の中に書いてございます、計算方法は書いてございます、こういうことなんですね。これは努力のどこを認めて、そしてどういうふうになりますか。この法律は非常にややこしくてよくわからないようにできていますから、ちょっと説明してください。
  245. 黒木武弘

    黒木政府委員 按分率と経営努力との関連でございますけれども、拠出金の計算方法と申しますか拠出金を計算する場合の要素は二つございまして、一つ医療費でございます。そして一つ老人数と申しますか、人数掛ける医療費単価ということになっているわけでございます。  加入者按分率を調整いたしますと、当該保険組合なり市町村国保で持っていただく老人の数がふえたり減ったりいたすわけでございますけれども、その老人数に掛けるところの医療費は、全国平均の医療費を使うわけではございませんで、当該市町村国保なり当該健保組合の実績と申しますか、そこで必要とした医療費を使うわけでございます。したがって、健保組合等が健康管理なりいろいろな面で経営努力をなされば、その結果医療費単価の方が減る仕掛けになっておりますから、健保組合等が健康管理を適切にやられ、あるいは予防ないしはいろいろな面で健康事業に取り組まれた結果というのは必ず反映され、仕組みとして一〇〇%に上げても残るということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  246. 貝沼次郎

    貝沼委員 それは一〇〇%反映されないのです。論理の矛盾がある。あなたのおっしゃるのは、運営努力をやれば、その医療費は使っていないから少なくなるから、それに率を掛ければ、その出てきた答えもまた小さくなるから、努力は認められたことになるのです、はっきり言えばこういうことなんです。そうでしょう。  ところが、そうじゃないのです。なぜこの按分率の問題が起こってきたか。国保に構造的に高齢者が多いから成り立たなくなった。国保が怠けておってだめになったんじゃない、構造的な問題。それと同じように、例えば組合健保とか被用者、そういうところの中にも、例えばデパートとかスーパーとかというふうに若い人ばかりのところがあるのです。これはいいですよ。反対に今度は運送の会社、例えば何とか運送というようなのは割と高齢者です。そういうところは今あっぷあっぷですよ。今度この附則の六条ですか、適用しなければならぬようなところ、要するに下げてもらわなければいかぬところですよ。そういうふうに構造的な問題がある。  ところが、今回は老人の数だけで計算しておる。あとは医療費だけで計算しておる。そうでしょう。そうじゃなしに、構造的な問題、例えばどういう年齢の人がその組合にはおるのかというようなこと、あるいはその職種によってそういう人たちが集まるところと集まらないところ、例えば年齢は高い人が多いけれども、割と給料が少ないとか、若いけれども給料が多いとか、その職種によっていろいろ変わってくる。そこでバランスが崩れてくるのですね。  ですから、これは老人の数だけでばっさり切ってしまって、いや、ここは運営努力をやったからといって、努力範囲よりも、そういう要素の影響がはるかに大きい。それをどうやって努力した、しないという判断をされるのかということを考えると、単に老人の数だけですべてをぶった切ってしまうというやり方はまことに大ざっぱであり、この問題が出てきた原点に立ち返って考えるなら、これはだめなんです。落第なんですね。論文ならバツで戻るところです、これは国会だからなかなか戻らぬのですけれども。ですから、そういうところをもう少し考え直す必要はあると思いますけれども、いかがですか。
  247. 下村健

    ○下村政府委員 確かに保険者ごとにいろいろ体質の差と申しますか、構造の差のようなものがありまして、それらを考えた上で相互の財政調整をやるべきだという考え方はあるわけでございます。ただ、そういう財政調整論についてはいろいろ議論を重ねた結果、反対論も一方において強うございまして、とりあえずは老人の数だけで調整をしようという結果、現在の老人保健制度が成り立ったものであるというふうに考えております。  御指摘の点はごもっともでございます。したがって、私どもとしては六十年代の後半のなるべく早い時期に医療保険制度一元化をやるということを言ってきているわけでございますが、その段階において、それらの問題も踏まえた一元化構想を考えていきたいということで考えておるわけでございます。
  248. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、その一元化があるので今心配をしておるわけでございます。  それから、時間が余りありませんので、老人保健施設の方を何点か、確認程度になりますけれども、まず第一点は、この施設福祉サイドのものとして導入されたのですか、それとも医療サイドのものとして導入されたのですか。これは今後の設立その他の要件と非常に関係してまいりますので、はっきりお答え願いたいと思います。
  249. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設につきましては、再三お答えをいたしているところでございますけれども、医療サービスと日常生活サービス、両方のサービスをしてさしあげる、いわば医療福祉的なお世話もしてさしあげるという施設でございます。したがって、どちらサイドと言われても当惑するわけでございますが、いわば中間施設ということで、新しいタイプの施設だということで御理解いただきたいと思います。  ただ、機能的には、先ほど申しましたように、入院治療を終わりまして、そこから家庭復帰するまでの間において、ここでリハビリ等をしてさしあげて家庭に復帰させるというのをメーンの機能に考えているところでございます。
  250. 貝沼次郎

    貝沼委員 今のはちょっとおかしいのです。これは老人保健法なんですよ。医療法改正じゃないのですよ。あなた、サービスもしてあげるとか、そうじゃないのですよ。そっちが主なんです。老人保健法老人福祉法から出ているでしょう。先ほどあなたが目的をちゃんとおっしゃったでしょう、その目的とあなたの答えは今違うのです。医療をやりながらサービスもしてあげる、そうじゃないのですよ。サービスとか福祉がいろいろありますね、そういったことを主にして医療もするということなんですよ。そうじゃないですか。そうでなければ老人保健法に入ってくる意味はないのです。別のところでやればいいのです。福祉が中心なんじゃありませんか、どうですか。
  251. 黒木武弘

    黒木政府委員 どちらが中心かというのは考え方によっていろいろあり得ると思いますけれども、確かに老人保健法老人福祉を基本として定められている法律であることはそのとおりでございますが、今回つくります施設は、先ほど来御説明いたしておりますように、両方の機能を備えておるわけでございまして、必ずしも私どもはどちらサイドという理解はいたしてなくて、新しい中間施設として創設お願いしているもの、こういうことで御理解をいただきたいと思っているわけでございます。
  252. 貝沼次郎

    貝沼委員 結果はそういう中間的なものができたのですよ。だけれども、発想のもとはやはり老人福祉法から出ておるのです。そこのところをはっきりしておかないと、これを設立するとき、開設するときに、一体これは——例えばお金だってかかるわけでしょう。あるいはいろいろな場所、市街化調整区域のところにつくらなければならぬ場合だって出てくるでしょう。あるいは融資問題だってあるわけでしょう。いろいろそういうことが必要になるわけですが、これは病院の場合と福祉施設の場合と流れ、やり方が違う。だからどちらかの方にある程度寄っておかないと、本籍を定めておかないと、これは難しいですよ。  では、もう時間が余りありませんから伺っておきましょう。  開設のときに、例えば公的融資、民間融資というのは普通あるわけですから、公的融資制度の活用とか、あるいは市街化調整区域内での設立の問題、あるいは税制上の優遇策とか何らかの公的負担とかというような、ほかのものもあるかもしれませんが、少なくとも公的融資制度の活用、それから市街化調整区域内での設立はできるかどうか、それから税制上の優遇策はあるのかどうか、何らかの公的負担はあるのかどうか、この四つについて何かお考えのことはございますか。
  253. 黒木武弘

    黒木政府委員 融資制度については低利、有利な融資の道を開きたいと思っておりまして、融資の道を開くということが一つ。それからもう一つは、税制についても、私どもは中間施設について配慮ある税制をお願いしたいということ。それから三つ目には、負担については国庫負担お願いをしているということでございます。市街化調整区域については、現在建設省と相談をいたしておりまして、私どもの受け取っている感じで申し上げますと、相当理解ある態度で建設省は対応してくれるものと考えております。
  254. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは先ほど言いましたように、医療施設福祉施設の間で大部やり方が違いますから、やる以上はその辺のすり合わせが必要になってくるということを今言っているわけでございます。  それから、中間施設というのが一体どういうところにできるのかということですね。あのモデルというものもちょっと拝見いたしましたら、今回はモデルで十カ所ばかりいろいろとやっておるということですが、八カ所までは病院でやっておるのですね。  そこで、これは前事務次官の吉村さん、本日お亡くなりになったそうでございますが、大変恐縮ですけれども、きょうはその発言を読ませてもらいたいと思うのです。  五十八年八月に、「(病院の)ベッド数が現在一六〇万床あるけれども、このうち四〇万床ぐらいは、そういう施設(中間施設)として再編すべきではないか。特養の機能をもたせてもいいし、リハビリテーション機能をもたせてもいい。昼間だけ老人がくるデイ・ケアみたいなものにしてもいい」こういう発言があります。  それから、五十九年九月二十六日に同じく事務次官は、「個人的には病院のベッドを老人福祉施設として開放し、福祉施設的に運用し、その費用を医療費でもつことが考えられる。今のように税金だけで負担することはないだろう。特養ホームは必要なのに、土地がないため山奥に造って老人を隔離するようなことがよいとは思えない。老人のショート・ステイを予算要求しているが……山奥では無理だろう。むしろ病院の一部をあてた方がよい」こういう発言がございます。そういたしますと、これは中間施設というのはかなり病院というものが頭にあるのではないか。それで例えば、ある病棟を一部病院から外して、その病棟を中間施設とするというようなことが考えられておるのではないかと思うわけでありますが、これは中間施設になることができるわけですね、どうですか。
  255. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設の設置形態についてのお尋ねでございます。  まず一つは、独立の形で設置が行われるだろうというものを想定いたしておりますが、そのほかに病院とか特別養護老人ホームと同一敷地内につくられまして、その併設ということが考えられると思います。  お尋ねの病院の病棟単位の転換でございます。この点につきましては、私どもの中間施設に関する懇談会の報告で「保健医療及び福祉の機能の連続性、既存施設の有効活用等の見地から、病院、特別養護老人ホームに併設することも積極的に考えていくべきであり、特に入所型施設については、病棟単位の病床転換等も可能とするなどの措置を講ずるべきである。」という指摘がございまして、私どもといたしましても、その方向で考えているところでございます。
  256. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただ、この場合に起こってくるのは、先ほどアメリカの例で議論が出ておりましたけれども、ああいう問題があるということですね。それはよほど気をつけておかないといけないだろうと思います、日本ではないと思いますけれども。  それから、特別養護老人ホームに併設ということも書いてあるのですね。そうすると、特養の弱さというのは医療機能の弱さですから、それを補おうというわけですが、先ほどあなたがおっしゃったように、医療をしながら福祉サービスもするのだという発想があると、特養がなくなってしまうのです、特養が飛んでしまうのですよ。要するに、特養の措置制度が果たして残されるのか残されないのかというような問題になってくる。ところが、これはあくまでも福祉サイドのものなんだから、特養に医療を持ち込んでいくんだということになれば、措置制度は残っていく。そこで私は先ほどから一生懸命聞いているわけです。こういう場合は措置制度は残っていくというのが当然正しいと私は思っておりますが、これは侵害されることはありませんね。
  257. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 老人保健施設の機能につきましては、先ほど老人保健部長がお答えしたとおりであります。片や特別養護老人ホームにつきましては、これはいわば家庭での介護ができないという方を入所させて家庭にかわって生活の場を提供する、こういうことでありますから、機能が全く違うわけであります。そういう意味では、老人保健施設ができましても特養は残るし、措置という行為そのものが将来とも残るかどうかは別にしまして、そういう家庭での介護が困難な方について入所していただいてサービスを提供するというものは残るというふうに御理解いただきたいと思います。
  258. 貝沼次郎

    貝沼委員 心強いというのか、そうなってもらいたいと思いますが、中間施設に関する懇談会の中間報告によりますと「また、将来的には、特別養護老人ホーム、入所型中間施設老人病院を加えた三つの施設を通じ、条件整備を図りながら制度の体系化、一元化を図るべきである。」こうなっているのですよ。だから全然違うものをどうやってやるのでしょうね。一元化というのだから、もともと同じような格好のもので制度が違うというものなんでしょうけれども、しかし、この措置制度というものと、医療から来るものとはちょっと違いますよ。その辺は大丈夫なんですか。もう一度御答弁願います。
  259. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 あるいは繰り返しになるかもしれませんが、老人保健部長が申しましたように、老人保健施設というのは、医療とリハビリ、それをやって家庭へ帰っていただくというところであります。特別養護老人ホームにつきましては、家庭で介護ができない方を収容する施設でございます。したがいまして、それを関係づけてこれからいろいろ議論になると思いますけれども、そういう特別養護老人ホームの必要性、これは今後も残るし、我々もその線でこれからも整備を進めていくというつもりでおります。
  260. 貝沼次郎

    貝沼委員 だんだん時間がなくなってまいりました。  それから、これは中間施設と特養との関係において随分と食い違ったことが今後出てまいりますね。具体的に詰めてみますとございます。先ほど例えばどれぐらい負担があるのかということでありましたけれども、今老人ホームの入所基準、あれは入所判定委員会ですか、それから一人一人の行動一切について報告を出さなければならぬようになっておるとか非常に難しいのですね。ややこしい。その割に先ほど答弁があったように、中間施設はもう非常に簡単です。そういうハンディがある。  それからもう一つは、きょう詳しくやろうと思ったけれども時間がありませんが、先般こういうのが、これは福祉事務所単位で、「老人福祉施設入所者に係る費用負担制度改正について」というので、要するに、そこの福祉事務所管内におる配偶者または子も扶養義務者となり、そしてその中の最多税納付者、一番税金を納めている人が今度負担しなさい、こういうことになって、親戚じゅうが今大騒ぎしているのですね。いいかげんにしろ、あんたらが入っておって今度おれに払えと言うのか、そんなだったらもうやめておけ、こういうぐあいになってきて、随分とこれが地元ではもめております。そうすると、今まではまあ親子とかで払っておったのが、今度は税金の多い人が払うようになってきますと、全然知らない人が今度、知らないというよりも、まあ同じ管内でしょうから、兄弟か何かでしょうから、全然知らぬことはないのでしょうけれども、余り関係していない人が今度はそれを納めなければならぬというので、そんなだったらやめておけという声が出ておるのです。  それからもう一つは、所得などを計算してみますと、あの表を一々やればいいのですけれども、時間がありませんからやりませんが、割と所得の低い人でないと老人ホームはなかなか入りにくくなる。そうして今度は入ったらなかなか出ないものですから、回転率が、もちろんこれは生活の場ですから、そう簡単には回転しないのですけれども、要するに、公営住宅へ入るときと同じように、非常に困っておるところは福祉があるのですね。それからうんとお金のある人は自分でサービスを買うことができるのです。だけれども、今度中間の人が本当はいつもあぶれるのです、どの場合でも。そういう一つのジンクスみたいなものがあるのですけれども、とにかくいろいろな関係者に意見を聞いてみましたら、だんだんもう入る人がいなくなってまいります、これは下手をすると救貧施設になってしまいますと。それから同じぐらいの金をかけるのなら病院へ行った方が専門家がおりますと。あるいは例えば倉敷の場合、デイサービスというのがありますけれども、今までの老人福祉の方から来るデイサービスの方は車で全部送り迎えをする、老人保健法で来るのは歩いていらっしゃい、これは補助がないわけですから歩いていらっしゃい——歩いていくくらいなら何も機能訓練する必要はないんだ。来なければならない人をやらなければならないのに、同じ場所に来るのに既にそういう差が出ておるというふうに、中間施設老人保健施設との間においてはいろいろ現場においてかみ合わない問題があるのです。  したがって、私がここで申し上げたいのは、そういう現場がまごまごしないようにもっとスムーズにやれるようなすり合わせということをする必要があるのではないか、こういうことを申し上げたいわけでありますが、いかがですか。
  261. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設につきましては、私どもこれからの手順といたしまして、法律の制定を待ってモデル実施に入り、そしてそういう成果も見ながら関係審議会で最善の実施細目をつくっていただくわけでございます。そういう際にぜひ福祉関係者もお入りいただいて、そういう先生御指摘のような問題点についてお聞かせいただきまして、特養と老人保健施設がうまく連携をとって実施なり運営ができますように最善の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。
  262. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう時間が……。一問だけお願いしたいと思います。  この施設では、いわゆる痴呆老人も精神病院で専門的な医療及び保護が必要な者を除き老人保健施設の利用者の対象となる、こういうふうになっておるわけですね。さあその痴呆の度合いなんですけれども、これは次に私、質問する時間があればやらせていただきたいと思っておりますが、要するに、この人は痴呆疾患であるという方は対象になるということですが、ただ問題は、暴れる人、暴力を振るう人、そういう人がおりますから、そういう痴呆疾患の方は対象になるのかならないのか。もしそれがならないのであれば、ならないと言わないで、例えば精神病院の病棟の中に、精神病院に入院をするということよりも、精神病院の中の一つの病棟を中間施設の特殊なものとして、それを認めることができれば、これはほかの人に迷惑がかからないわけですから考えられると思いますけれども、その辺のところはどうお考えなのか、それを伺って終わりにしたいと思います。
  263. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設におきます痴呆性老人の方の受け入れでございますけれども、私どもの感じは、老人保健施設はかなりオープンな感じのレイアウト、部屋が必要ではないかという考えもございます。そうしますと、そういう暴れる方、その他危険な行動等を持っておられる方は、やはりそのほかの老人の問題が生じますので、この施設では無理であろうというふうに考えております。  では、その場合にどうするかということでございますが、先生が御指摘になった精神病院における病棟の問題等も含めまして、私どもとしては検討させていただきたいというふうに考えております。
  264. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  265. 堀内光雄

    堀内委員長 貝沼次郎君の質疑は終了いたしました。  田中慶秋君。
  266. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、民社党の立場から、今般の老人保健法の一部を改正する法律案について順次質問させていただきたいと思います。  まず総括的に大臣にお伺いしたいわけでありますけれども、福祉国家の論議をちょっとしてみたいと思います。  福祉国家の建設はかねてから我が党の主張であり、世界に例を見ない高齢化社会を前提とした現在、長期的視点に立って社会保障の確立が急務であろうと思います。そういう中で、初めに高齢化社会に対する取り組みについて大臣はどういうふうにお考えになっているか、まずこの辺をお伺いしたいと思います。
  267. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 御指摘のように、社会福祉国家建設に向かって努力をいたしてまいりたいと考えておることは、私どもも全く同じ気持ちでございます。  もう私が申し上げるまでもなく、非常に速いスピードにおいて高齢化が進んでおる中で長寿社会を迎えんといたしておるわけでありますが、その長寿社会においてもお年寄りの皆様を初め社会全体が生き生きとした活力ある福祉社会でなければならないと考えております。そのためには、その生活の基礎をなすべき社会保障制度というものが多くの皆さん方に信頼を持っていただき、また安定的に推移するような、そういう社会保障制度でなければならない、そのために今こそしっかりとした基盤づくりをいたしてまいらなければならないと考えております。今回、老人保健法の御提出をさしていただき御審議をいただいておるのも、その一環であるというふうに考えております。  同時にまた、一方、生きがいのある生活をしていただけるような福祉政策というものの推進も重要でありまして、政府全体といたしましても、「長寿社会対策大綱」というものをこの六月に決定をいたし、広い分野からこの実現へ向けて努力をいたしてまいる、その中で厚生省は中心的な役割を果たしてまいらなければならない、こう考えておるところでございます。
  268. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今、大臣からこれからの高齢化社会に対する考え方、生きがいと活力の問題、社会保障制度の問題が述べられたわけでありますけれども、今回の老人保健法改正というものは、残念ながら目先の財政効果としかとられない、こんなふうに私は受けとめるのです。長期的な展望を持たないものと考えざるを得ないわけであります。今、大臣が言われたようなことが基本的に福祉なりあるいは高齢化社会の考え方の原点であろうと私は思いますが、今度の法案の改正というものは、財政効果という形で、長期的な展望というのがないような気がいたします。高齢化とともにある程度負担増大することは避けられない、これからそういう形になってくると思いますけれども、国民負担を求めるためには、将来の社会保障のあるべき姿というものを明確にする必要があると思う。将来はこうしますよということを明確にして、例えば医療についても生活についても保障されるから困らないんだよという、これが真の社会保障じゃないかと思います。そして負担の水準はこうですよということを示して理解を求めるのが一番重要ではないかと思います。その将来の負担の水準はどのような考え方でおられるのか、これらについて私は一番基本だと思いますので、この将来のビジョンといいますかあるべき姿というもの、そして負担の水準というものも明確にしておかなければいけないと思いますけれども、いかがでしょう。
  269. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 目先の財政対策ではないかという御指摘が前段にございましたが、お言葉ではございますけれども、老人保健制度創設したときの基本的な考え方は、お年寄り医療費国民全体でできるだけ等しく負担をし支えていこう、こういう発想でできたものでありまして、その基本的理念に今回の改正で非常に近づけていただくということにあるわけでございます。  また、将来の社会保障の負担の水準等についての御質問でございますが、今後医療保険等についても一元化を目指して進めていく、そういう中で負担給付の公平を図りながらやってまいるということでございまして、今直ちに具体的にこのようなことということは申し上げにくい段階ではございますけれども、全体としての負担といたしましては、ヨーロッパの水準よりもかなり低い負担状況でいけるようにいたしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  270. 田中慶秋

    田中(慶)委員 負担の問題は、今そういう形でヨーロッパ並みと言うけれども、社会保障のあるべき姿ということがやはり明確でなければいけないと思うのです。それが明確であって初めて負担というものがついてあるんじゃないか。ところが、今お年寄りの人たちは老後というものに対してどのように考えられているか、快適で楽しい毎日、あなたが言われているように、生きがいと活力に満ちた形の中で社会保障がされているという認識をされているお年寄りというのはそう多くないと私は思います。むしろいろいろな制度の合間あるいは制度の谷間の中で絶えず不安な状態を繰り返しているのが今の高齢者の人たちであろうと思います。今度の老健法の改正の問題もその一つでありますし、あるいはまた税制改革の問題でもそうであります。例えば具体的になりますけれども、年金暮らしをしているお年寄りがわずかな年金も利子の改正によって大変生活が困ってまいりました。こういう実態も現実には政治のひずみだと思います。私たちは、そういう中で今後の社会保障のあるべき姿を明確にしてやる、負担の問題やいろいろなこれからの問題について将来はこうなるんだからやむを得ないなという姿を明確にしておく必要がある。ところが現在それが明確でない。そこに大きな問題があると思いますけれども、どうですか。
  271. 長尾立子

    ○長尾政府委員 先生のお話は、社会保障の今後のあるべき姿について、個々の国民の皆様一人一人がわかるような具体的な像を示す必要があるのではないか、こういう話ではないかと思うわけでございます。  我が国社会保障を総体として考えてみますと、諸外国、西欧先進諸国と言われます国々の社会保障と比べてみますと、制度の面におきましては、例えば医療保険は皆保険でございますし、年金も皆年金になっております。それから保険のほかの種類、例えば業務災害の問題でございますとか失業保険でございますとかいった制度的な面で見ますと、私どもは西欧社会が持っておりますようなシステムそれ自体は一応でき上がっていると言うことができるのではないかと思います。  問題は、個々の一人一人の方がそういった仕組みの中で十分福祉が守られているかという問題になってくるのだろうと思います。これはいわば制度の大きな枠組みの上に、さらにきめ細かな配慮がその次に必要になってくるのだろうと思います。具体的には福祉の対策というものが身近な形で生かされていくということが必要なのではないかと思います。政府全体といたしましては、ことしの六月に「長寿社会対策大綱」というものを設定をいたしました。これは政府が持っておりますいろいろな、例えば雇用政策ですとか住宅政策ですとかいろいろな分野のものを全部総合いたしまして、今後の長寿社会に向けましてどういう対策をとったらいいかということの大枠を決めたものでございます。私どもはこれをいわば私どもの行政の分野に引き直した形で、先ほどお話がございました高齢者対策企画推進本部でいろいろ細かい議論をいたしたわけでございますが、この中では、実は先生の御指摘、大変ごもっともだと思うのでございますけれども、なかなか分野分野ごとによりまして長期的な見通しが大変困難な分野もございます。長期的な見通しがある程度はっきり示せるものもございます。例えば今お話がございました公的年金が今後どういう形になっていくのかということにつきましては、ある程度のものではございますが、長期的なビジョンを示すことができます。しかし、そのほかの例えば福祉の分野でございますと、これは例えば扶養の関係がどういうふうに変化していくのかとか家族の構成がどうなっていくのかなかなか予測困難な問題がございます。私どもとしましては、この点につきましては、きめ細かな在宅サービスの充実ということを今回打ち出したわけでございまして、先生がおっしゃるような意味で、少しずつ皆様の身近の中に福祉が浸透していくような、こういう方向を持ちたいと思っておるわけでございます。
  272. 田中慶秋

    田中(慶)委員 よく説明はわかりますけれども、今お話にも出ましたように、制度的なものはある程度完備されてきた。すなわち制度法律だけが、極端なことを言えばひとり歩きしているのです、現在の日本の場合。そういう点でいろんな問題が起きているわけです。例えば雇用の問題もその一つだと思うのです。そういう点では、今度の老健法というものは、そういう点でなく、幅広い形の中で医療福祉という問題についてもう一度、厚生省が担当部署なんですから、その原点を総ざらいをする必要があるであろう、こんなふうに思いますけれども、大臣どうですか。
  273. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 御指摘のように、保険と医療、そして福祉というものが連携をとって、総合的にその施策を推進をいたしていくということをきめ細かくしていくことによると考えております。
  274. 田中慶秋

    田中(慶)委員 総論でありますから、その辺からこれから具体的な問題にちょっと触れてみたいと思います。  そこで今度の問題は、一つには加入者按分率の問題でありますが、加入者按分率引き上げは安易な財政対策としか言わざるを得ません。先ほどもいろんな議論がありました。しかし、今回見ていただければわかるように、老人医療費負担を公平なものとすることを必要とする、こういう形で主張されておりますけれども、そういう形のものは認めるにしても、制度的には今までのこの加入者按分率という問題は、それなりの経過、それなりの負担の変動というものがあったわけでありますけれども、この問題については具体的な政策として今日までされてきたと思います。そこで、当面は五〇対五〇という一つ法律的な根拠に基づいてこれが行われているというふうに私は理解をしておりますし、そしてその望ましい方向というものが、少なくとも一つの五〇対五〇という法律的なこの方向をとりあえず目指すべきではないか、こういうふうに考えておりますけれども、その辺はどうでしょう。
  275. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 この老人保健制度創設されましたときに、老人医療費国民等しく負担をしていこう、そういう考え方に立って制度が設立されました。そして具体的にどうするかという場合に、これまで歴史的な経過のあります各保険者がこれを負担をしていくのが望ましいであろう、こういうことであったわけであります。そして当初提出をいたしました原案では、いわゆる加入者按分率を五〇%から一○○%の間に向かって政令で順次決めさせていただく、こういうことになっておったわけでございますが、国会における御審議、各党間のお話し合い等におきまして修正がなされ、激変緩和もしくは暫定的な措置というようなことから、五〇%にするのが当面いいであろう、こういうようなことでなったというふうに理解をいたしております。  その後いろいろな事情の変化があったわけでございますが、一つには老人加入率のばらつきというものが一層顕著になったということが一つであり、また負担と公平の観点から、医療保険一元化へ向けての一つ制度改革が行われてまいったということ、また老人保健審議会等におきましても、大方の御意見といたしては、加入者按分率を一〇〇%にすることについて検討したらどうかというような御意見をいただいておるということ、また本法における三年後の見直しという規定もあるということ、こういったようなことを踏まえて、今回この法律の設立当時の基本理念に非常に近づけていただくという意味において、加入者按分率を八〇%にしていただき、そして一〇〇%にしていただきたい、こういうような改正お願いをいたしておるところでございます。
  276. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、お伺いしたいのは、いずれにしても、現在四四・七%ですね。これを八〇なり一○○にする。私は、これは大変負担率の伸びが急激なものであり、こんなに負担が急増されるというものは過去に例のないことだと思いますよ、はっきり申し上げて。大体一割とか二割とかという問題だったらともかくも、これだけ急激な負担率の急増というものはあり得ない。特に、今からもし一〇〇%になったときに、例えば三年後には組合健保も財政が破綻状態になるという数字が、はっきり申し上げて明確に出ているのです。そういう点では、私は今度の八〇とか一〇〇というものが、皆さん方が財政負担だけを、財政対策だけを考えて八〇なり一〇〇、国の財政だけしか考えていない、こういうふうに言わざるを得ませんけれども、どうでしょう、その辺は。
  277. 下村健

    ○下村政府委員 被用者保険の総体の状況からいいますと、現在は五十九年決算あるいは六十年決算というものも相当な黒字が出ているというふうな格好でございまして、総体とすると、今回の負担増は十分その中におさまり得るという格好でございます。  ただ、そうは申しましても、例えば健康保険組合ですと、それぞれの組合によっていろいろな事情があって、財政状況に違いがあるわけですから、隣の健保組合の黒字をそのまま自分のところに使うというわけにはいかないわけでございます。したがって、私どもとしては、トータルとしてはそうなんですから、一つは健康保険組合連合会がやっている共同事業のようなところでできるだけこなしていけるのじゃないだろうか。それから国も、わずかではございますが、財政窮迫組合に対する助成のようなこともやっていく。それからまた拠出金、またトータルとしてはそうだといいましても、確かに一挙に急増するような、老人の加入率が低いようなところについては一挙に負担がふえるというような問題が出てくる組合もございます。したがって、それらについては激変緩和のための経過措置を設けるというふうなことで、個別組合に対する対策はできるだけ講じてまいりたいということで、目下保険局と老人保健部で個別の状況をできるだけ把握をいたしまして、問題の生じないような対策を講じてまいりたいということで考えている次第でございます。
  278. 田中慶秋

    田中(慶)委員 言われていることは理解はできますけれども、現実問題としてはっきりお聞きしたいのですけれども、今日の景気事情、財政事情すべてこれは影響しませんか。答えてください。
  279. 下村健

    ○下村政府委員 御指摘のとおり、今後の負担の問題がどうなっていくかというのは、経済情勢、具体的に言いますと、保険の方からいえば標準報酬ということになるわけですが、賃金上昇率がどのぐらいあるか、それから医療費伸びがどのぐらいあるかということによって負担の問題というのは決まってくるわけであります。不確定要素は残りますが、私どもとしては、現在の趨勢、今後の状況を見きわめていろいろな試算をやっておりますけれども、それで見ても、三年というふうなことはないと判断をいたしております。
  280. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は何件かのアンケートをさせていただきました。一〇〇%にしてまいりますと、大体八割方——今の経済情勢を踏まえて、条件がありますよ、今の経済情勢、円が例えば百五十円台を推移し、なおかついろいろな形の中で労働環境、すべての環境を考慮してみますと、平均して大体三年後には財政破綻を生じる、こういうアンケートの結果が八割方返ってきております。ですから私は、今度の提案で八〇なり一〇〇にしようということについて、大変厳しい財政であるから理解したくても、一方においてはそういう状態に来ているということで、国だけがいいという関係にならぬと思うのです。そういう点では、今こういう問題が非常に敏感にとらえられているわけですから、その辺をあなたはどう考えているか、もう一度答えてください。
  281. 下村健

    ○下村政府委員 確かに現在の経済情勢というのは非常に厳しい、これは実は私どもの政府管掌健康保険の標準報酬の上昇率というふうなところにも端的にあらわれているわけでございます。ただ、そのままずっと続くかどうかということになると、むしろ今はそういう経済的な面からいえば一番厳しい時期ではないかと思っているわけでございます。  それから、医療費の方もいろいろな見方があるわけでございますが、適正化努力を重ねるということで、健保連が言っている八%と三・五%というふうな見方はちょっと極端過ぎるというふうに思っているわけでございます。
  282. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、この問題だけであなたとやり合っているわけにはまいりませんけれども、ただ、あなたも今言われているように、経済状態は今の状態が最低だというのは、私はそういう認識をとっておりません。これは当分推移するであろうと思っておりますし、政府だって経済成長率見直しを、下方修正をするぐらいなんだから、そういう点では当分こういう形は続くであろうというふうに思っておりますので、ぜひそういう論点で——基礎がないものが三年後どうなるかという話はできないわけですから、現時点の一つベースで私は申し上げてきている。その辺ぜひ御理解いただきたい。  そこで、もう一つぜひ皆さん方の考え方をお聞きしたい。先ほどから出ているのは、例えば六十から六十九歳までの退職者医療の問題について考えてみますと、組合健保という形で持たれているでしょう。国は全然財政的な負担をしていませんでしょう。私はそういう点ではここに大きな問題も出てくると思うのです。こういうところをあなたはどう思っていますか。
  283. 下村健

    ○下村政府委員 退職者医療制度創設の際に、国庫負担の問題というのは、この社会労働委員会においてもいろいろな議論があったわけでございますが、結果的に国庫負担はつけないということで落ちついているわけでございます。その考え方としては、退職者医療は国保に加入しているかつての被用者保険のOBを退職者医療という形でつないでいこう、こういう考え方で健保組合類似のものというとらえ方をしているわけでございます。被用者保険については、従来から保険料で賄うという大原則のようなものがございまして、したがって、退職者医療についても国庫負担はやらないでやっていこうというのがその際の結論でございます。
  284. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いいですか。按分率は上げるわ、片方においては国庫負担もなければ、幾ら経営努力をされたって具体的に評価をされるところははっきり申し上げて何もないでしょう。そればかりじゃないですよ。例えば政府管掌等についてちょうど五十八年に値上げしましたでしょう。二年間で現実に約六千億の黒字があるでしょう。黒字になったから、極端なことを言えば、被保険者給付率を上げるとか、こういう形のものがあればそれは理解できると思うのです。今の状態はそうじゃない。取ることしか考えていない。給付率を上げる考えはありませんか。
  285. 下村健

    ○下村政府委員 確かにこれだけ財政状況がよくなっていれば、家族給付率を上げられないかという議論はございます。ただ、給付率の問題は一元化の中で考えていきたいというのが一つの考え方としてあるということと、もう一つは、短期的な黒字、今たまっている六千億なら六千億というものだけを当てにしてやっていく、一方において、先生御指摘のように、確かに拠出金の負担は政管もふえてくるという情勢もございますので、その辺の推移を見きわめた上で家族給付率の問題は考えてまいりたい。まだ現在の状況で直ちに家族給付率の問題に取り組むほど政管の基盤というものは安定しているとも言えないのではないか、もう少し長期的な動向をはっきり見定めた上で取り組んでまいりたい、こんなふうに考えているわけでございます。
  286. 田中慶秋

    田中(慶)委員 その辺納得できませんね。そうでしょう。値上げをしたから黒字になったのでしょう。経営努力をされたから黒字になったのでしょう。そういう点を考えると——なおかつ拠出金まで出しているのです。みんな取ることしか考えてないじゃないですか。せめて給付率ぐらい上げて還元すべきじゃないですか。長期的云々じゃない、現実にここにあるのです。大臣、どう思いますか。
  287. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 昭和六十年度以降、六十年後半の早い時期に医療保険制度一元化を目指していろいろと検討し、努力をいたしてまいろうと考えておるところでございまして、そういう中でこういった問題も当然議論し、考えていかなければならないというふうに考えております。
  288. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひそういう形で、例えば組合健保の場合、経営努力をして、いろいろなことを含めてメリットが何らかの形で被保険者なり家族なりにあるわけでしょう。こちらもあると思いますけれども、いずれにしても、こういう問題で率でがっちり押さえてやることは、そういう点では余りよくないことだと思いますよ。ですから、これだけはちゃんとしてやっていただきたい。  そこで本論の、今度の国保の問題で、改正一つの大きな理由として、国保の財源が緊迫していることを考えられて、今度のような形で値上げの問題が出てきていると思うのです。そこで国保の財政というものを将来的に長期的にどのような形が望ましい姿として考えられているのか。例えば老人医療の問題一つとってもおわかりでしょう。無料になって財政が厳しいからといって、そこでいろいろな議論をして、大体議論だけで七、八年かけて一部負担を五十八年からしましたね。そうしてまた、逆に、それではおかしいから、足りないからということで、今度また大幅値上げをしようとしているわけでしょう。この先どうなるのかわからぬ。そんなことを考えますと、国保の財政という問題、現状、将来とも含めてある程度明確にする必要があるだろう。そのことが負担に対する理解もされるのではないか、私はそんなふうに思うのですけれども、どうでしょう。
  289. 下村健

    ○下村政府委員 国保財政は非常に厳しい状況にあるわけでございます。一つの原因としては、退職者医療の問題があるというふうなことも言われているわけでございますが、私どもとしては、国保の基本的な問題は、やはり高齢者を多く抱え、老人医療費負担というものが財政上の最大の問題である、こんなふうに考えておるわけでございます。したがって、まずその面を今回の改正によってならして国保財政をとりあえず一段と安定させたい、それに引き続いて国保問題の検討を、これは一元化の展望を踏まえながら検討していかなければならない、こんなことで考えているわけでございます。  その際、どういうことを検討してまいるかということでございますが、臨時行政調査会からの意見あるいは行革審からの意見としては、都道府県の役割を見直すべきだというふうな御意見も賜っております。それからもう一つの問題点として言いますと、一元化ということになりますと、両者の被用者保険との公平を保つということが一番の問題になるわけでございます。また一方、国保の財政安定という面から申しましても、保険料の賦課方式をどうやっていけばいいかというふうな点もございます。その辺のところを中心にして、国保問題については引き続き検討に入っていきたいというのが私どもの考え方でございます。
  290. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は根本的に間違いがあったということを指摘を申し上げたいと思うのですね。  あなたもいみじくも言われましたように、要するに、厚生省のこの退職者医療の見込み違いというものが根本的にあったんじゃないかと思う、はっきり申し上げて。先ほど言われているように、この辺で、厚生省はこの点についてこれからどういう形にされていくのか、基本的な問題がこの辺から出てくるような感じが私はします、老人医療の問題も含めて。極端なことを言えば、全般的に退職者医療以降の七十歳以降が有病率が高いということになれば、逆に七十歳を前倒しして六十五歳からやったっていいわけですよ。いろいろな問題が政策的にはあろうと思いますけれども、これも一つの方法であろうと思いますね。年齢も下がるんでしょうし、有病率も低いところを取り込むということも一つの方向だと思う。ですから、基本的にこの辺の財政悪化という問題は、私は、退職者医療の見込み違いというものが大きく原因をつくっている、こんなふうに思っております。  そこで、実はこの国保の問題の中で二分の一が国庫補助がついているわけですけれども、しかしその中で運営が苦しいというのは、基本的に私は親方日の丸的な要素で問題があるんじゃないかと思います。そこで体質強化を図らなければいけない、あるいは国保の運営の問題等々含めて経営の合理化といいますか、あるいはまた経営的な感覚をもっと徹底してこれをやっていかなければいかぬじゃないか。そうでしょう、政管なり組合なりが一生懸命努力して、努力の姿が見られますけれども、こちらはどうにも見られないんだ、はっきり申し上げて。片方は、政管も組合健保も恐らくこの収納率というのは一〇〇%でしょう。あるいは一〇〇%近似値ですよね、近いですよもう。ところがこちらは全然違うわけですから。そういう点で、この経営努力といいますか、そういうことを含めて足りない、こういうことを含めて、さっきからこれを議論されておりますけれども、この辺をどういうふうに考えられているのか、関連する問題ですから、明確にしておいてください。
  291. 下村健

    ○下村政府委員 確かに国保の経営努力は大いにやっていただかなければならないというふうに私どもも思っております。ただ、全くやってないんじゃないか、これはちょっと国保に酷ではないかと思いますが、国保の関係者も鋭意努力をしているわけでございます。例えば保険料でいいますと、健康保険組合の方はいわば源泉で徴収されるという形に対して、国保は一々別に取らなければならないというふうな事情もありまして、徴収率の面ではどうしてもハンディキャップが出てくるという面もあるわけでございます。  ただ、一応最近の状況を申しますと、収納率、大分下がりかけていて気になっておったわけでございますが、五十九年度にはややその低下傾向に歯どめがかかっております。また収納率だけで見ますと、おくれて入ってくるという面もありますので、少なくともおくれて入ってくるぐらいならば、当年度になるべく早期収納をする、これだけでも多少国保財政にはいい影響がありますので、そういう面でも大いに努力をすべきではないかということで、収納率の強化については特別の助成策なども講じまして、大いに努力をするということでございます。  また、レセプトの点検でありますとかあるいは医療費通知というふうな面につきましても、一応の体制はでき上がって、実施率からいいますと、ほぼ被用者保険と遜色のないところまで追いついてきたというのが実情でございますが、なおその内容面でさらに充実を図っていくという形で、医療費通知あるいはレセプト点検といった医療費適正化という面についても大いに努力をしてまいりたいと考えております。
  292. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで今度も、今回の改正にもあります悪質滞納者といいますか、その対策を織り込んでいるわけでありますけれども、まず一つは、これは弱い者いじめの対策であってはいけない。この辺はちゃんとしておかなければいけないのですけれども、まずこれについて明確に答えてください。
  293. 下村健

    ○下村政府委員 私どもといたしましては、御意見のように、あくまでこれは悪質な滞納者ということに限って厳正な運営をやっていきたいということで、真に負担能力がないとかたまたま一時的に支払いがなかなか難しいというふうな方については、国保の場合は保険料の減免制度のようなものもございますので、十分実情に即した対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  294. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひこの悪質滞納者対策というのは、重ねて申し上げますけれども、弱い者いじめをするような形になってはいけない、こういうふうに思います。そういう観点から、例えば逆に正義観点からというような形で言うならば、経済能力があるにもかかわらず所得の過少申告などもあるということ、そういう方法もとられているということも聞いているわけでありますけれども、これらについて、そのような事実関係はあるのでしょうか。
  295. 下村健

    ○下村政府委員 個別例はいろいろあるわけでございますが、例えば税理士さんをやっているというふうなことで、当然負担能力はあると考えられて、払いますというふうな誓約をしてもなかなか守られないとか、あるいは年収は税の方の状況からいいますと優に一千万近くあっても保険料は払わないとか、そういう個別例はいろいろあるわけでございます。したがって、こういうふうな事例のものについてはぜひとも厳正にやっていきたい。  一方で、まじめに納めているところもあるわけでございます。特に地方と申しますか、町村部は比較的収納率は高いわけでございます。都市部でなかなか徴収が厳正に行われないという傾向もありますので、保険者間の公平を守るあるいは被保険者相互間の公平感を保っていくという上からも、ぜひともそういう収納率の向上という面については努力をしてまいりたいと思います。
  296. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、一つの方法としてこんなことが言われているのですけれども、国保の被保険者が納得できるために、例えば適正な保険料負担するためには、資産に着目した保険料を重視する方向もあるというけれども、この辺はそういう点ではどうなのだろう、こんなふうに言われておりますけれども、どうでしょう。
  297. 下村健

    ○下村政府委員 御指摘のように、国保は資産割という形の保険料も賦課できるという形になっておりますが、実態としてはかなりのウエートが所得割にかかっている。これは実は国保の保険料は税を基礎にいたしますので、どうしてもそちらにウエートがかかり過ぎて所得本位になり過ぎているという感じがいたします。そこで、先ほど申しました保険料の賦課方式の検討の際には一つの大きな問題点であろう、検討を要する問題点だというふうに考えております。
  298. 田中慶秋

    田中(慶)委員 やはり正直者がばかを見ないようにするために、今申し上げたように、法的にはちゃんと制度があるんだから、そして逆にそれを運用してないことによって改めて悪質滞納者対策なんというようなことで、ややもすれば弱い者いじめをされるような感覚でとられるようなことがあってはいけないと思うのです、はっきり申し上げて。ですから、現行法の中で、私は、例えば自治省と連携をとるなりいろいろなことをして、保険料について資産に対する着目というものはできる、こういうふうに認識しておりますので、その辺について、これは資産税といいますか、そういうことになってまいりますと自治省との関係もあると思いますけれども、こういう問題を含めて、やはり適正化努力というものは本当にもっとしておかなければいけない。そういうことをしないでおいて、逆に悪質対策を立てるということ自体私は理解に苦しむわけです。正しい意味で正しく納めていただく、こういうことでその辺をもう少し明確にしておく必要があるだろうと思いますので、再度この辺を……。
  299. 下村健

    ○下村政府委員 自治省も国保財政の安定化ということについては大変強い関心を持っておりますので、ぜひとも御指摘のような方向に沿って軌道に乗せていきたいと思います。しかし一方で、やはり困った事例もいろいろありますので、悪質滞納者に対する措置はお認めいただきたいというふうに考えております。  税の賦課の問題につきましては、一元化というふうなことを将来考えていくにいたしましても、今回の按分率の引き上げということをお願いするにいたしましても、やはりその基本における公平感を保っていくという上で一番肝心なことだというふうに認識しておりますので、御指摘の御意見を踏まえまして、積極的に取り組んでまいりたいと思います。
  300. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、国保の大きな検討課題の一つとして経営規模の問題があると思います。これだけ医療費増大している中で、例えば小さな市町村段階でやれということ自体が無理だと思うのです。ですから、これらについてナショナルミニマムの確保という観点から見ても、この事務そのものを都道府県に移譲して、大きな形の中でおやりになった方がいいのではないかと思いますが、その辺どう思いますか。
  301. 下村健

    ○下村政府委員 確かに都道府県に国保の経営を任せてはどうかという議論は前からございますが、一方においていろいろな経営努力であるとかなんとかをやっていく面からいいますと、規模が大きくなり過ぎるのは問題だという見方もあるわけでございます。また現実問題として、国保は市町村が中心になりまして何十年間かやってきた。しかも一方で、老人の問題でありますとかいうふうな問題になりますと、保健とか予防事業であるとか福祉であるとかというものに一体的に取り組むということになりますと、どうしても市町村の方がいいという考え方もあるわけでございます。それでは部分的に小規模な市町村はどうか、これも一つの考え方であろうと思いますが、いずれにせよ、これからの高齢化社会ということになりますと、関係団体それぞれができる範囲で力を合わせていくということが必要であろうと思っておりますので、そういう観点から、都道府県がどういう役割を果たせばいいかということは、ぜひとも国保問題を検討する際に積極的に検討を進めてまいりたいと思っております。
  302. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私はいろいろな赤字の原因なり経営規模の問題等々を考えて、今あなたがおっしゃることも一つの方法でしょう、現実にやられているわけですから。しかし、これはもう発想の転換を求めていかなければいけない時代でしょう。例えば電算化にしても機械化にしても、いろいろなことがすべて進んでいるわけですから、そういう点でむしろ私は、経費の負担増になる、いろいろなことを含めて大変重荷になっている小さな市町村、ここで大きなプロジェクトとして、これは都道府県段階に移行すべきだという考え方を持っておるのです。そのことが経営規模等いろいろなことを含めて改善になっていくのではないか、こんなふうに思いますけれども、これは自治省との関係もありますが、もう一回厚生省に答えていただいて、自治省の見解もお伺いしたいと思います。
  303. 下村健

    ○下村政府委員 この問題は関係者の間で、はっきり申しますと、意見が一番対立する点でございます。自治省ももちろんいろいろな見方があると思いますが、私どもとしては、田中先生の御意見を踏まえまして、ぜひとも真剣に検討してみたいと思います。
  304. 二橋正弘

    ○二橋説明員 国民健康保険の事務を県に移譲してはどうかというお尋ねでございますが率直に申し上げまして、自治省といたしましては、そのことは適当ではないというふうに考えております。  理由はいろいろございますが、特に、現在の保険料あるいは保険税の賦課というのは、住民基本台帳でございますとか住民税、固定資産税の台帳をもとにして行っておるわけでございまして、これらはすべて市町村が作成、保管をいたしております。そういうことから申しまして、保険料の賦課徴収は市町村が行うのが効率的であるというのが一つございます。  それから、ただいま保険局長のお話にもございましたように、市町村が事業主体となりましていわゆるヘルス事業というのを行っておりまして、これと一体的に国保を運営するというのが望ましいというふうなこともございます。  さらには、都道府県が保険者となりますと、多かれ少なかれ新しい機構とか人員とかが必要になってまいるわけでございまして、それらの点から申しまして、都道府県を保険者とするということは適当ではないというふうに考えております。
  305. 田中慶秋

    田中(慶)委員 適当でないということでありますけれども、一つの流れというものが今ここで大きく変わろうとしているわけであります、はっきり申し上げて。  例えば、一県に市町村というものがどのぐらいあるかわかりませんけれども、大きいところでは八十ぐらいも百ぐらいもあるでしょう。そういうところで個々にそれぞれの経費を使っていったら膨大なことになるわけであります。そういう点では、もっともっと時代の流れということに、特に自治省あたりは敏感にこたえて、これらの問題を受けとめていただきたい。  それと、いろいろな形で基本台帳の問題等々あるにしても、例えば県だって、現実には県民税だって払っているわけです。いろいろなことを含めて考えるならば、その基礎ベースというのは当然そこに出てくるわけですから、市町村でなければそういうことはできないという理由は何もない。  ですから私は、総体的にこれらの問題というものは、今こういう時期ですから、もっと積極的に考えていくべきではないか、こういうふうに思います。先ほど厚生省の方が、それぞれ連携をとってやってみるということでありますから、その辺は、縦割りのセクショナリズムにならないで、もっともっと突っ込んでできるものはやっていただきたい、こういうふうに問題提起をしておきます。  そこで、今回問題になっております一部負担の問題でありますけれども、今回の一部負担というのは、どうしても私は納得いかないわけであります。今いろいろな形で前段それぞれ述べてまいりましたけれども、すべてが財政を考えるような形であります。そういう点で私は、質疑の時間はきょう一回ではありませんから、またたくさん時間をちょうだいしてやりたいわけでありますけれども、例えば今回のような一部負担引き上げというものを考えても、四百円を千円にする、これは単なる六百円の値上げだと考えたら大きな間違いであります。全国平均で一人が一・五カ所の病院に通っているわけです。例えば関東あたりですと二・六カ所ぐらい通っている。ですから、それは単なる六百円じゃないという問題。こういうことを含めても、少なくても、医療費負担率というか、そういう点では余りにも高過ぎる。ゼロから四百円になり、また六百円上がっている。三段跳びですね。こんな値上げはどこにもないわけですから。  そういう点で大衆の人たちは、収入を考えていただけばわかると思います。逆に、老齢福祉年金を見たって二万七千四百円ですか、こういう問題があるわけです。ほかに収入があるんじゃないわけです。そして私が最も憂慮すべきことは、日本が戦後これだけの世の中をつくっていただいたのは、この老人医療が今改悪されて負担増になろうという対象者の人たちが一生懸命努力をしてつくったわけでしょう。その人たちの功績というものを、むしろ逆にお金が赤字であるからという形で全部処理されようとするのは、これからの福祉やいろいろなことを含めて、先ほど大臣が生きがいと活力に満ちたこれからの社会保障や福祉を考えなければいけないという、その考え方からすると、どちらかというと逆行しているような気がいたします。  こういう点で、これらについてまずこの一部負担、先ほどの四百円から千円の問題、さらにまた三百円から五百円の問題を一つとっても、今までも述べられているように、単なる二百円の差じやないわけです。今回の法案は、見ていただければわかるように、今までは三百円の二ヵ月という限度をつくっておりました。一万八千円で済んだものが、これが青空天井でありますから、例えば半年に区切ったって九万円でしょう。はっきり申し上げてこれだけの差が出るのです。それだけじゃなく、先ほど大臣からも言われているように、世話料という問題、地方と首都圏では違うようであります。関東では大体五万円、こういうことが言われているわけです。しかし、五万円だけで済めばいいわけですが、差額ベッド代も出てくる、付添代も出てくるわけです。こんなことをしますと、膨大な費用の負担であります。お金がなければお医者さんにも行けなければ入院もできない。まさしく物の時代、金の時代。今むしろ心の時代と言われているときに逆行しているんじゃないかと思いますけれども、どうでしょう。
  306. 黒木武弘

    黒木政府委員 今回の一部負担の改定の理由は、再三申し上げておるところでございますけれども、私どもどうしても御理解をいただきたいのは、毎年毎年四千億あるいは五千億の老人医療費の増が見込まれるわけでございます。これはやはり何とか国民負担していかなければならない。負担していかなければ老人医療が逆に確保できないわけでございます。そういう意味で、私どもはどうしてこれを確保するかという点について思いをめぐらせているわけでございまして、その医療伸びをできるだけ適正なものにとどめるという必要がありますけれども、それでもなおかつ医療費伸びるだろうということでございます。したがって、この伸び医療費をやはり国民が公平に負担をしなければ、老人保健制度の財政的な基盤と申しますか、安定的な基礎が失われるのではないか。こういうことで、今回世代間の負担の公平、若い人の公平もあわせてお願いしておりますけれども、世代間の負担の公平ということでの引き上げお願いをしているということでございます。  あわせて外来の多受診の御指摘もございました。入院についてのお世話料の御指摘もございました。あるいは老人世帯の所得の御指摘もあったわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、今回の一部負担というのは、老人の所得の実態あるいは受診の実態等から見て無理なく負担を願える額ではないかと私どもは思っておりますし、したがって、そのことによって必要な受診が抑制されたり、あるいは老人生活に支障が生ずるということではないんではないかというふうに考えておるわけでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。特にお世話料、保険外負担の問題は、確かに入院される方の重い負担になっておるのも事実でございます。私どもは保険外負担適正化に取り組んでおるわけでございますが、お世話料につきましても、これから適正に指導をして、医療と重複した形で取るとかあいまいな形で取るということは是正をさせていって、お年寄り負担をできるだけ軽くしていく努力を重ねていきたいと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  307. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、福祉とか老人医療は単なる公平とかそういうもので割り切れない問題だと思います。むしろ政策的にどうあるべきかという、私はその辺が大切であろうと思います。老人医療の問題や福祉の問題というのは、政策的にもっと明確にしてやらなければいけない問題だと思います。財政が厳しいから、国保が赤字だから、その赤字の原因は老人医療だから、すべてこんな形で負担増にすることは絶対避けるべきであろう。むしろ政策的に、ではその分はどこで埋め合わせをするか、いろいろなことを考えてやるべきではないか。私は少なくとも今後そういうことを含めてやっていきたいと思うし、今回の提案についてはどうしても納得がいかない、こういうふうに思っております。  そこで、実は次の問題に若干触れておきたいと思います。老人保健施設の問題、今まで言われておりました中間施設の問題であります。これについても、もう時間が余りありませんから、次回にこの辺をよく突っ込みたいと思いますけれども、要は、今度の問題は、研究という言葉をぜひ皆さんの中で聞かしていただきたい。例えば今度の六十一年度の予算、全国的にパイロット計画として十カ所皆さんがその施設をつくる、こういうことであります。大変すばらしいことだと思うし、将来必ず必要なことなんです。そのためには、その十カ所のパイロット計画でより吟味をされていろいろな問題——さっき出ましたね、矛盾が。あなたが現実に答えられない問題がたくさん出てきましたでしょう。そういう中で将来これは福祉なのか医療なのかという問題もありました。あるいはまたこの中間的な施設の問題について、これからいろいろ具体的な措置の問題も出てまいります。制度上の問題もある。例えば調整区域の問題も出てまいりました。建設省に働きかけています。私はそういうことで、法律を出す分においては、まだこの辺については時期尚早だと思います。少なくとも十カ所の全国的なこの施設を、これは将来とも必要なんだから十二分にデータを集積をされて、そしてそれに基づく法律をつくる必要がある。でなければ法律は完全にひとり歩きばかりします。例えば今までいろいろな機関で、この医療の問題は別にしても、一つの大きな事業をするというときには、三年も五年もかけて研究されて、その結果、これが一番すばらしいであろうというプランが出てくる。それが法律でなければいけないし、ましてこれから中間施設が大切だと言われているときに、そのことなくして今度の法律提案するというのは、私は大変めちゃくちゃなやり方ではないかと思います。  いずれにしても、時間が参りましたので、私はこの問題をじっくりと次回にやりたいし、今申し上げたような考え方で、制度上の問題もこのことによって大きく変わるのですよ。例えば今までの医療という問題と福祉という問題がはっきり変わってまいります。特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、中間施設はわかります。しかし、医療なのか福祉なのかも明確にしていない。私はそういうことを含めて大きな発想の転換——将来に向けて結構だと私は思う。しかし、そういう点では今データの集積が足りない。厚生省の内部においてもあるいは医師会においても、いろいろなところで今議論されてはっきりして、これが一番いい法律でありますよとだれも自信を持って言える人がいないんじゃないですか。そういうことで、今ここに提案されているというのは、私はいろいろなことを含めて時期尚早ではないか、こんなことを指摘をしておきます。  時間が参りましたから、この問題は次回にじっくりと触れさせていただきます。ありがとうございました。
  308. 堀内光雄

    堀内委員長 以上で田中慶秋君の質疑は終了いたしました。  田中美智子君。
  309. 田中美智子

    田中(美)委員 老人保健法質問をさせていただきます。  老人医療の無料化をやめて一ヵ月四百円ずつ窓口で取るということになりましたのが昭和五十八年ですが、そのときに老人医療費伸びが九・四%でした。ところがそれが一気に伸びが三・九%になったということは、てきめんに、政府側は効果抜群であったという評価をしていらっしゃるようですけれども、この一部負担の効果が抜群だと思っていたところが、昨年の四月にはもはや一五・四%に急増しています。これはどういうわけでしょうか。どういうわけでこのように急増するようになったのでしょうか。
  310. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人医療費伸びを傾向的に見ますと、最近は一〇%前後で伸びているというふうに認識をいたしておりますけれども、その月々でかなり大きな変動が出てまいります。これは対同月の前年度の医療費伸びが低く出ますと、こちらの方が高く出るという関係もございますために、月々で見ますとどうしてもかなりの変動があるわけでございます。しかし、老人医療費伸びている原因については、私どもは一つはやはり老人入院医療費伸びているためだというふうに認識をいたしております。
  311. 田中美智子

    田中(美)委員 私もそのように思っています。なぜ入院費が膨らんできたかということは、やはりお年寄りの病気というのは大体において急性ではありません。慢性で自覚症状が少ないものですから、どうしてもお金がかかると思えば、大したことないというので、その月にお金がかかるからちょっと診療を延ばすということが、結局早期発見、早期治療というのがおくれて、そして気がついたときには入院しなければならないという結果、お年寄り医療入院という形で急激に伸びてきたということだというように私は思うのです。ですから、一部負担というものがなくて、軽くて、すぐに医者に行ける無料化であれば、受診の数はふえても医療費の単価は非常に少ないという形で、むしろ医療費伸びないのではないか。これは岩手県の沢内村のことなどを見れば明らかにそのことは実験的にやられているわけです。その逆行をしてきた。それなのに、こうしてやってみて、これで失敗しているにもかかわらず、また四百円を千円にしていくということは、また一年ぐらいは受診抑制でぐっと減るかもしれませんけれども、また慢性患者をふやすという形でさらに医療費が広がって、医療費を節約するどころか医療費がさらに膨れ上がっていくということ、過ちを二度繰り返すのではないか、私はそのように思います。  こういう私の考え方とそっくりな考え方が朝日新聞の論壇に載っておりました。これはこういう言葉を使っているのですね。「「生存抑制」が狙いか老健法」生存を抑制しようとしている。「受診ガマンさせ早期発見遅らす」という形で、論壇の写しですけれども、これにはこういうふうに書いています。「老人医療費は再び大きく増大して、一五・四%の伸び率になったと報道されている。これは「入院費の膨らみによるもの」と行政側は分析しているが、「それ見たことか」といいたい。」これは特別養護老人ホームの園長さんで全国老人福祉問題研究会の会長、医者である中川晶輝さんという方が、四百円取っただけでも「「それ見たことか」」こう言っているわけです。それにも懲りずにまた千円に上げる、入院費も上げるということは、むしろ医療費の節約どころか医療費増大させることになると思いますので、この点は絶対に千円に上げるということには私は反対。むしろ無料化にして、沢内村の考え方を、これは小さな村ですから、これを国全体にぱたっと当てはめることはできないにしても、その精神というものを学んでいくべきではないかと思いますが、大臣のお答えをお願いします。
  312. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 たびたび申し上げておりますように、四兆円を上回る老人医療費をいかにして国民全体で負担をしていくか、そしてお年寄りも若い者もその負担のあり方について理解をし、了解をしていただきながら、この制度を維持していかなければならない、そういう観点から今回の一部負担引き上げお願いをいたしておるわけでございます。先生の御指摘のように、老人の生存権を奪い去るものであるというような考えは毛頭なく、逆でございまして、この老人保健制度というものが将来において維持できなくなる、崩壊してしまうというようなことにでもなれば、これはまさにお年寄り医療を賄っていくことができなくなってしまうわけでございますので、今、今後将来にわたってのこの老人保健制度というものをしっかり維持していけるような、そういう基盤をつくってまいりたい、そういう観点からお願いいたしておるところでございます。
  313. 田中美智子

    田中(美)委員 全く私の質問に対して答えていない。それはただ大臣の御意見を述べたのであって、私はむしろ医療費を節約するには無料化にした方が節約になるのだ、その方がきちっとお年寄りに対していい制度ができるのだと言っているのですね。それに対してどうかと聞いているのに、そういうふうにしかお答えにならないということは、これはそらしたということ以外にはないと思いますので、次の質問に移ります。  加入者按分率を八〇%、一〇〇%にする、こういうことですけれども、こういうことによって国保からの拠出金が減り、そして一般のサラリーマンやほかの保険制度からの拠出金が多くなるということがあるわけですが、なぜ国保が赤字になったのかということです。大臣、きちっと聞いていてください。かみ合った応対をしていただきたいと思うのです。お互いに違う意見を言って、そちらも違う意見を言うのではなくて、かみ合うようにまじめにお答え願いたいと思うのです。  なぜなったかということは、これは政府の見込み違いじゃありませんか。退職者医療制度をつくるときに、百五十万ぐらいの人数の計算違いか見込み違いかしていた。ふたをあけてみたら、国保からは減っていなかったという形で、減るということを見越して四五%から三八・五%に大幅に国庫補助を減らしたんじゃないですか。そのために赤字になった。この責任はどうとるおつもりなんでしょうか。
  314. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 退職者医療の見込み違いによりましての影響については、六十年度、五十九年度の分につきまして補正の措置を行ったところでございます。なお、それ以上の部分について国保組合の皆様方の大変な御努力もいただいておるわけでございます。  同時に、国保における構造的な問題といたしまして、それ以上の問題として老人医療増高というものがあるわけでございます。今回の加入者按分率を一〇〇%に引き上げていただくということにつきましては、この国保を助けるというだけのことではなくて、もともとの老人保健制度創設のときの考え方、すなわち国民全体で持ち寄りでこれを負担し、支えていこうという考え方に徹していただくということをお願いいたしておるわけで、その結果として老人加入率の非常に高い国保の構造的な一つの問題点が緩和される、こういうことに結果としてつながってまいることであるというふうに考えております。
  315. 田中美智子

    田中(美)委員 按分率を変えることによって国保は非常に助かるけれども、ほかの保険制度からはたくさん拠出金を出さなければならない。これは明らかに、国保を助けるという意識はないけれども、結果的にはそういうふうになったんだというのが大臣のお答えですけれども、私は、見込み違いをしたということについては、まず三八・五%の補助率というのをもとの四五%に戻す、間違ったんだからもとに戻す、もとに戻した上でどうなるか、そういうことによって按分率をどうするかというふうに考えるべきではないですか。そうでなければ幾ら意図的に国保を助けようと思って按分率を変えたのではないんだ、結果的になっただけなんだと言っても、やはり見込み違いをしたということは、これをもとの四五%に補助金を戻すということがまず先ではないですか。順序が狂っていると思います。これはぜひ四五%にもとに戻してほしいというふうに思います。いかがでしょうか。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  316. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、退職者医療の見込み違いに基づきます影響につきましては、私どもとしても最大限の努力をしてその補てん措置を行ったところでありますし、なお足りない部分について国保組合においても非常な努力をしていただいております。私どもも今後とも国保の財政の安定または基盤の強化ということについていろいろな角度からの努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。
  317. 田中美智子

    田中(美)委員 大変抽象的な、四五%に戻せというのに対しては戻さないとは言わないで、抽象的なお断りで戻さないと言う。ということは、考えてみれば自分が借金をつくっておいて、その借金を隣の人に払わせているようなことですよ。ですから、まず自分がつくった借金というのは自分で払って、その上にまだ借金があるならば、借金というか不明金があるならば、これをみんなでどうしようかと考える、町内会で考える、こういうのならわかるのですけれども、自分でつくった借金を人に押しつける、こういうやり方というのはほかの保険制度の方たちは納得いかないと私は思うんですね。ほかの保険制度というのは無限に金があるわけではありませんので、こういうところからの拠出金が多くなれば当然そこの金は減る。そうなれば、この間本人一割負担ということが大変な反対の中でまさに強行採決、あの「健保国会波高し」という本が自民党の委員長から出されるような、ああいう芝居まで打ちながら一割負担というものがやられました。これが今度は二割になっていくという心配も今労働者の中には出ているわけです。  それから、保険料もまた上がるんではないかというふうになりますと、結局、見込み違いをした政府の責任は全くほおかむりしてほかの労働者に押しつけていく、こういうふうに見ますと、私どうしてもおかしいと思うのです。先ほどからの政府の答弁、皆さんの答弁を聞いていますと、みんなでお年寄りを見ましょう、みんなで見ましょう、こう言いますと、言葉としては確かにみんなのようですけれども、このみんなの中に政府は入っていないのですね。政府はどんどん金を削って出さないようにしている。それから労働者を雇っている財界も全く手をつけられていない、五対五なんということは。そんなに健康保険の金が足らなくなってきたというならば、ヨーロッパを見ましても五対五なんというところは少ないわけですから、これはやはり資本家の方に例えば七持たせるとかいうふうな形で保険料を取っていくという道だって私はあると思うのです、努力の道というのは。労働者に、国民にただ押しつけるだけが努力ではなくて、政府も金を出そう、労働者を雇っている財界の方も金を出そう、こういうふうにするから、国民の皆さんも一緒にお年寄りを何とかしてほしい、こう言うならば、では考えてみようかという話にもなりますけれども、みんなでみんなでと言いながら、実際には国の負担をどんどん削っていっている、こういうからくりというのは許されないことだというふうに思います。こういう意味で今度の加入者按分率を変更して国保を助ける、そしてほかの保険をむしろ赤字に近づかせていくということには断固私としては反対いたします。  そこで聞きますけれども、この按分率でいきますと、国民保険の赤字は解消されますか。国保が赤字になっているわけでしょう、この按分率でやればそれが解消されますかと聞いているのです。
  318. 黒木武弘

    黒木政府委員 国保の財政の問題でございますが、私からお答えさしていただきますけれども、現在国保の財政を悪くしている一つの原因は老人医療費でございます。老人医療が年々増大をする、しかもこの三年間加入者按分率も下がるということで、拠出金がたしか二三、四%増大をしてきたわけでございまして、この影響も相当大きな財政影響を与えております。もちろん見込み違いによる財政影響もあるわけでございます。私どもといたしましては、今回加入者按分率を八〇、一〇〇に上げさせていただきますと、国保の財政は安定をいたすものと考えております。
  319. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、赤字は解消される——ほかのことは言わなくていいですから聞いたことを答えてください。赤字が解消されるわけですね。
  320. 黒木武弘

    黒木政府委員 たしか国保の赤字は五十九年度の決算で一千億程度だというふうに記憶いたしておりますけれども、今回の按分率の改正による財政効果、八○、一〇〇にいたしますと、それを上回る保険料の軽減ができるわけでございます。したがいまして、財政的には一千億程度の赤字は解消されるんではないか、かように考えております。
  321. 田中美智子

    田中(美)委員 今度の按分率でいきますと、一千億どころか三千億から五千億くらい浮くんじゃないですか。そうしますと、国民健康保険の保険料を下げることができるんじゃないかと思いますけれども、下げることができますか。下げていただきたいと思うのですが、下げられますか。
  322. 黒木武弘

    黒木政府委員 国保の保険料は、先生も御案内のように、現在ほかのサラリーマンの保険料と比べましてかなりハイレベルにあるわけでございます。したがいまして、その中で現在の国保財政を維持いたしておるわけでございますが、国保の財政状況は一千億程度の赤字と申し上げておりますけれども、私担当でないので少し不正確かもわかりませんけれども、基金の取り崩しとかあるいは一般会計からの繰り入れとかいろいろな要素で財政が維持されている要素もございますので、今回の加入者按分率引き上げによって保険料が下げ得る状況になるかどうかというのは、確たる返事はいたしかねるわけでございますけれども、国保の財政の安定に寄与することは間違いないということで御理解をいただきたいと思います。
  323. 田中美智子

    田中(美)委員 私は何を言いたいかといいますと、今国保の保険料が非常に高いために払えない人がたくさんいるわけなんですよ。これもサラリーマンの場合は幾ら高くても給料から差し引かれてしまいますので、いやでも応でも取られてしまうわけですね。ですけれども、中小零細の業者の皆さんたちというのは、二ヵ月に一遍とか三カ月に一遍とかまとめて払うわけですね。そうすると、年間二十万も十何万もというのを払うわけですから、そうしますと、そういうときにちょうど円高でちょっと困ったとか、売掛金の金が取れなかったとか、家族に病人が出たなどというときになりますと、払えないということが出てくるわけです。そうすると、一回払えないと、二回目というと下手すれば六カ月もたまってしまうわけですね。こういうふうになったときに払えない、こういう人たちから保険証を取り上げるというわけですから、これはもう絶対憲法二十五条違反だと思うのです。それを今度の法案でやろうとしているわけでしょう。そうならば、払える保険料、安い保険料にすべきじゃないでしょうか。そういう意味で払える保険料に安くする努力をぜひ政府としてしていただきたい、そういう御指導をしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。大臣、お答えください。
  324. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 御質疑の通告がなかったもので、保険局の担当者が今帰ってしまいましたので、明確な数字を申し上げることはできないわけでございますけれども、今回の措置がそのまま行われますれば、国保に対する財政的な影響は非常にいいものになるであろうというふうに考えております。  ただ、ここ数年、国保各組合におきましては大変な御努力をいただき、御指摘のように、保険料引き上げも行ってきておる、ここ三年間でも三六%程度平均して引き上げたというようなことにもなっておるわけでありますので、その引き上げが今後なお続いて引き上げるというようなことはしないで済んでまいるであろうというふうに思います。  そして先ほどから申し上げますように、国保の体質的なアンバランスとでも申しましょうか、この老人加入率からくる問題が相当部分解消されますけれども、なおその他にもいろいろな重要な問題があるわけでございます。先ほどの御質疑でもお話がございましたように、いわゆる経営努力というようなものも今後一層進めていかなければなりませんし、また構造的な問題の解決のために、今後国保制度をどうしていくかということについての検討も、この後やってまいらなければならないというふうに考えております。  いずれにいたしましても、国保加入者の皆様方が安心して医療を受けていただけるような制度に改善をいたしてまいるために努力をいたしてまいりたいと思います。
  325. 田中美智子

    田中(美)委員 長々とおっしゃいましたが、今国保の方が安心して受けられるように努力をしたいということは、保険料を払える保険料に引き下げることを努力するのだというふうに私は聞きました。それを質問したわけですから、御努力なさるということは、そういう点で十分に努力していただきたいというふうに思います。  さて次に、老人保健施設の問題に入りたいと思いますが、特養老人ホームと老人保健施設を利用する人、中に入る人の違いというのはどこにあるのでしょうか、簡単にお答え願いたいと思います。お年寄りがどういうふうに違っているか。一目見て、このお年寄りはこっち、このお年寄りはこっちとわかるように説明してください。
  326. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設と特養の対象者の相違を述べよということだと思いますが、私どもは、端的に申しまして、施設の機能からお考えいただきたいのですけれども、老人保健施設の対象者は、一口で言えば病弱な寝たきり老人等を対象にいたしたいということでございますし、特養の方は家庭がわりで寝たきり老人等をお預りする施設でございますから、いわば病気の方は低いグレードだというふうにお考えいただきたいと思います。
  327. 田中美智子

    田中(美)委員 これは何遍聞いてもわからないですね。特養老人ホームにお入りになっている平均年齢は大体お幾つですか。
  328. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 ちょっと今手元に見当たりませんので……。
  329. 田中美智子

    田中(美)委員 私、最近幾つかの特養老人ホームを見てみましたけれども、大体八十歳近くになっていますね。ですから、こういう方たちは大体病弱です。そして寝たきりに近いのですね。ですから、見たところはわかりませんよ。机の上では老人保健施設は病弱で寝たきりの人だ、特養も大体病弱で寝たきりの人が多いのです。食堂に来るのも車いすで来たり、連れられてきたり、ベッドで食べたりする人がいるのです。どこが違っているのですか。もう一度はっきりわかるように言ってください。
  330. 黒木武弘

    黒木政府委員 病院とこの中間施設と特養の関係で申しますと、私どもの老人保健施設の主たる対象者というのは、病院において治療が終わる、例えば脳卒中で治療を受けられる、それでその治療が終わった段階で、この中間施設へ入っていただく、そしてリハビリを中心にした医療ケアを行いつつ、さらに生活のお世話もしながら療養を送っていただいて、いずれは家庭復帰をしていただくという機能をメーンに考えているわけでございます。したがって、病状の方からいうと、病弱ということになるわけでありますけれども、具体的なイメージとしては、例で申しますと、脳卒中で入院治療を終えたが引き続きリハビリテーションを必要とするような老人が主としてこの対象であるとお考えいただきたいと思いますが、そのほかぼけの老人の方とかあるいは骨折なんかで寝たきりの状態であった、療養されておりましたけれども、病状が悪化いたしまして、家庭では療養が無理だというような人たちももちろん利用いただけるわけでございますけれども、特徴的な対象者で申し上げますと、先ほど言いましたように、治療が終わって、そして家庭復帰までの間においてリハビリ、医療ケア、生活のお世話をしてあげる施設というふうに考えております。
  331. 田中美智子

    田中(美)委員 やはり実際には同じですね。特養ホームも、そういう脳卒中で病院を出されて、お宅に帰っても十分な介護ができないし大変だというので特養に入っていらっしゃる方はたくさんいらっしゃる。ですから、非常にダブっているので、どう考えても、お年寄りのイメージとして、あの人は老人保健施設、そっちの人は特養だというふうにはどうしてもわからないですね。  では、その施設のつくり方なんですけれども、特養は施設整備費を大体公費でやっているわけですね。そして運営費は措置費でやっているのですね。そして多少の自己負担というか徴収をやっているのですね。これは間違いありませんか。
  332. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 施設整備につきましては、国が二分の一、地方が四分の一、四分の一が自己負担でございますね。措置費につきましては、一応全額公費でございますが、所得に応じて利用者の負担があるということでございます。
  333. 田中美智子

    田中(美)委員 そのときの措置費は一人に対して平均どれくらいですか。
  334. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 措置費の平均月額は十九万五千円でございます。
  335. 田中美智子

    田中(美)委員 それから自己負担させられますね。少し徴収しますね。それは平均どれくらいですか。
  336. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 費用徴収額の平均が月額一万九千円でございます。
  337. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、老人保健施設というのは、病院と同じように開設するということですから、公費の補助はないということですね。運営費は保険から二十万円ぐらい出るということですか。そして自己負担があるということですか。
  338. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設におきます施設整備費をどういうふうに確保するかということでございますけれども、基本的には低利の融資でやっていこうと思っておりますけれども、来年度は整備促進という意味を含めまして、百カ所分国費を要求いたしております。  それから、運営費でございますけれども、これはこれからいろいろ人員配置とかその他の諸条件をにらみながら決めていくわけでございますけれども、今のところの私どもの心づもりは二十万程度になるかなということは、先ほどお答えいたしたとおりでございます。  利用料につきましては、医療サービスについてはすべて老人医療費の中で、公費とそれから保険料財源で賄う予定でございますけれども、生活サービス、食費等の部分は自己負担お願いをいたしたいということで今回提案を申し上げているわけでございます。
  339. 田中美智子

    田中(美)委員 その自己負担は大体どれぐらいですか。
  340. 黒木武弘

    黒木政府委員 食費、おむつ代とか、それから日常諸費、理美容代とか、いろいろ項目別に積み上げ計算をいたしておりまして、現時点のところでは、地域差とかいろいろあると思いますけれども、五万円程度の試算をいたしております。
  341. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、特養と老人保健施設はPT、OTはいるわけですか。
  342. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人保健施設は、先ほど申しましたように、家庭復帰というものを主たる機能と考えておりますので、OT、PTは配置いたしたいというふうに考えております。
  343. 田中美智子

    田中(美)委員 特養はどうですか。
  344. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 特養は、先ほど申し上げましたように、家庭で介護が困難な場合の生活の場の提供でございますので、OT、PTはおりません。
  345. 田中美智子

    田中(美)委員 大分中身がわかってきたわけですけれども、結局特養というのは国が大きい責任を持っている。しかしOT、PTなどを置いて、社会復帰ができるような努力はしないところなのですか。それから老健施設の方は、なるたけ自宅に帰すようにするためにOT、PTを置いて、それでもだめならば、そのままそこに置いておくということで、そのかわり国は費用は余り持たない、ほとんどが老人保健の療養費で賄うということですね。それでよろしいですか。
  346. 黒木武弘

    黒木政府委員 施設療養費につきましては、老人医療費と同じ財源構成でございます。現在の老人医療費の約四〇%相当は国費になっておるわけでございますから、この施設療養費も、その程度はやはり国費が投入されるということで御理解いただけたらと思います。
  347. 田中美智子

    田中(美)委員 国費国費と言いますけれども、老人保健は各保険から出した金じゃないですか。措置費と違いますでしょう。それでは聞きますが、この老人保健施設措置費はありますか。
  348. 黒木武弘

    黒木政府委員 老人医療費の財源割合と申しますか負担割合は、老人医療費に対しまして三〇%公費で見ております。二〇%が国でございます。あと五%市町村、五%都道府県の負担になっております。その残りの七〇%がいわゆる拠出金でございまして、保険料から出していただくということでございますが、国保の拠出金につきましては五五%相当が国庫負担が入っておるわけでございまして、そういうことから、先ほど答弁したような国庫の金がこの療養費の中に入ってまいるというふうに説明いたしておるわけでございます。
  349. 田中美智子

    田中(美)委員 そうすると、これは措置費ではないわけですね。
  350. 黒木武弘

    黒木政府委員 措置費ではございません。
  351. 田中美智子

    田中(美)委員 これは「週刊社会保障」の二月三日号です。この中に阿部正俊社会老人福祉課長が書いておられます。その中で、当分特養が不要になることはないが、少なくともここ数年は従来ペースでいくけれども、その先は、特養、中間施設老人病院などの制度的な再編成時代になるかもしれない、こういうことを言っていられるのですね。  それで、結局措置制度というものは日本の社会保障の根源だと私は思っています。ですから、この特養がなくなっていくのではないか、中間施設をつくることによって特養がなくなっていくのではないか、国の責任を持った特養がなくなっていくのではないか、こういう心配をしているのですけれども、そういうことはありませんか。はっきり答えていただきたい。大臣、答えてください。
  352. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほどから老人病院、また中間施設、そして特養のいろいろな性格づけについて御質問をいただいておるところでございますが、先ほどから老人保健部長が申しておりますように、特養は専ら家庭にかわって介護の場としてあるべきものでございます。そしてその中で、必要に応じた医療というものも若干プラスアルファされておる。中間施設につきましては、医療ケアという部分と、そして生活サービスという部分が言うならば五対五で存在をしているというふうに御理解をいただいたらいいのではないかと思います。また老人病院は専ら治療を行うところであるというふうに御理解をいただけたらいいと思うわけでございますが、そういう体系の中で特養ホームというものを今後ともこれまでどおり整備をいたし、存続をいたしてまいるという考えでございます。
  353. 田中美智子

    田中(美)委員 ということは、特別養護老人ホームは今までどおりずっと続けてこれからもつくっていくということを大臣が今はっきり言われたということですね。それでよろしいですね。それだけ答えてください。
  354. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 ずっとと言いましても、何十年、何百年先はわかりませんけれども、今見通せる範囲において、今予想される範囲においてはずっとつくってまいります。
  355. 田中美智子

    田中(美)委員 今、ここで社会老人福祉課長が、数年は今のままでいくが、その先はわからないというふうな言い方をしていることは、これは誤りであったということがわかりましたので、絶対に特養をつぶすというようなことはしないでいただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、私は、御理解いただきたいと言われますけれどもやはりまだなかなか御理解ができないのですね。言葉ではわかりますけれども、どういうものかというのが浮かばないわけです、それはできていないから浮かばないのかどうかわかりませんけれども。  これもやはり富岡悟さん、そこにいらっしゃるのじゃないでしょうか、先ほどちょっとお姿が見えましたが。あの方が愛知県の医師会に呼ばれて講演をしていらっしゃるのですね。「愛知醫報」その中にこういうことを書いているのですね。「こういう老人に対しては老人ホームということで対応していたが、そこでは措置ということで、」特養ですね。「措置ということで、かわいそうな老人をほっといてはいけないとして、役所が権力的にその施設に入所させる措置という体系をとっていた。役所が権力的な措置をとった費用として措置費を支払うという仕組みであったわけです。しかし最近のように、低所得者やかわいそうな人だけが老人ホーム入所の対象ではなくなり、かなり一般的に、こういうサービスが必要な時代になってまいりますと、」何々と、こう書いてあるのですね。こういうものを見ますと、ああ、やっぱり特養というのは低所得者のかわいそうな人を入れるところなんだな。病弱だとかやれ何だとかと言うけれども、考えてみれば、今度の老人保健施設というのは百人に一人しか医者がいないわけですから、どの程度の治療ができるかわからない。現実として今特養は医者が嘱託としてやはり百人に一人ぐらいはいるわけです。ですから、そこだって結構治療もできますし、それから特養にしても老人保健施設にしても協力病院というのがありまして、病気になればそっちに行って、そしてまた戻ってくるということはできるわけですから、同じじゃないか。結局違うところは、やはり富岡さんのおっしゃる低所得者のかわいそうなお年寄りを入れるところが特養老人ホームである。だから、今度はお金がかかっても——五万円ということをさっき言いましたけれども、五万円というのはガイドラインでしょう。ガイドラインというのは強制じゃないですからね。五万円以上取ってはいけないということじゃないですから。これはちょっと論理が違うかもしれませんけれども、婦人の差別について婦人局で婦人の差別のガイドラインというのをちゃんとつくりましたよね。つくりましたけれども、これはつくってあることは悪くはありませんけれども、それで世の中変わったわけじゃありませんからね。五万円ということは、これは守られるという保証は全くないのですね。その上に建設費というものが特養と違って、今百カ所国費でつくるようなことを言っていますけれども、予算はわずか四億でしょう。四億で百カ所できるのですか。聞かせてください。犬小屋ですか。四億で百カ所もつくったら犬小屋みたいな老人保健施設しかできませんよ。
  356. 黒木武弘

    黒木政府委員 四億というのは六十一年度のモデル実施のための予算でございますけれども、私が先ほど申し上げたのは、百カ所で二十八億程度の予算を計上いたしておりまして、国費で全部見るわけにはいかぬわけでございますけれども、新しく制度がスタートするということでございますので、全国的に普及ということで、国庫補助も何がしか応援をいたして推進をしたいという趣旨で概算要求に盛り込んでいるわけでございまして、したがって、私どももそういう意味では四億ではなくてかなりの予算を苦しい中で要求しているというこの熱意をお酌み取りいただきたいと思います。
  357. 田中美智子

    田中(美)委員 熱意なんていうのは、それはあなたは公務員としての熱意を持ってやっていらっしゃるかもしれませんけれども、私も熱意を持ってお年寄りが屈辱を感じない、本当なら年寄りに尊厳を守った生活をしていただきたい、こう思いますけれども、せめて屈辱にまみれないような生活をお年寄りにしていただきたい、早急にしていただきたい、こういうふうに思うわけです。  しかし、今お話を聞いていますと、私も国会に来てもう十何年になりますけれども、毎回社労で話すときに、将来のお年寄りまでが安定するように、いつもこういうふうに言われるんですね。そうすると、何となく将来よくなるようですけれども、十何年たちましたけれども、いつも今のお年寄りというのは置いてきぼりになるのですね。ですから、十年先になったら、また十年先の年寄りがちゃんといくようにと、またそのときの年寄りはだめになるのですね。私なんか絶対間に合わないなというふうに思うのです。今のお年寄りをどうするかというところからいかなければいけないのに、今はほっ散らかしておいて、そして将来とも制度をつくっていく、こういうわけですから、そういうことで熱意を持っていたのでは、今ここにいらっしゃる方たち全部いなくなってからどんなものができるかわかりませんけれども、年をとって大変なことになるというふうに思うのですね。  国が責任を持たない。十カ所つくるのに四億と言っていますでしょう。百カ所二十八億でしょう。森進一だかだれだか忘れましたけれども、北島三郎だったか忘れましたけれども、その人一人の家でも三億だとか四億で家を建てているという人がある時代に、お年寄りに快適に住んでいただくものを百カ所つくるのに二十八億円の金を出して、この熱意を御理解くださいなどと言ったって、これはその費用はみんなそこに入所する人にかかってくるのですよ。ですから、二十万と言ってますけれども、措置費の十九万というのは建物も全部別ですからね。これで二十万が平均として、約二十万近くが特養の場合には使われていくわけですけれども、老人保健施設の方でしたら、この二十万というのは家の建設費から皆入っていくわけですからね、実際には物すごい金を取られる。その上に自由契約でしょう。自由契約をしなさいというわけですから、いわゆる何々病院というようなものをつくって、その病院がお年寄りを入れて、それであなた幾ら払えますか。自由契約ですね。国は五万だとか十万だとかというような形でガイドラインを決めて、これぐらいのところにしておきなさいよというふうに言うだけであって、これは法律事項でも何でもないわけですから。  今だっていろいろなところでお世話料なんかを十万も十五万も取っているところがたくさんありますでしょう。今入院費は一日三百円といっても、お年寄り入院していますと平均十万円ぐらいかかっているのですよ、差額ベッドだとかそういうので。特別高いところは別ですよ。それぐらい本当はかかっているのですよ、三百円と言ったって。今度五百円になって、一年間になったら十倍になって十八万になる。これは十倍に上がると言っていますけれども、本当は一年間入院して十八万円で済むものではないわけですよ。そうでしょう。差額ベッドもあればお世話料もあれば、いろいろな形で取られる。そうしましたら、この老人保健施設なんというのは全くの自由契約ですから、金持ちは幾らでも金を出して特別室に入るとか、食費がみんな違う。私は、これは五年ぐらい前のことですからちょっと古いかもしれませんけれども、アメリカのナーシングホームを三十カ所ぐらい見てきました。十階建てぐらいのところで、各階によって値段が皆違うのですね。食べ物も全部違うのです。部屋の大きさも違うのですね。これは実に屈辱的ですね。ですから、アメリカの老人問題というのは本当にひどいものだというふうに私も思ってびっくりしたのですね。日本は全体のレベルは低いですよ、低いですけれども、これを平準化しながら一歩一歩上げていくという形で、福祉元年のときから少しずつきたわけでしょう。  ところが、中曽根内閣になってから、一気に戦後の総決算などと言い出して、そして福祉の総決算をする。今度の老人保健施設というのは、まさに措置費をなくすということですね。ですから、これはほかの精薄だとか乳児院だとか、そういう福祉施設措置費までこれから取られていくんじゃないか、保育所もやられていくんじゃないか。福祉関係の研究者もまた福祉関係のところで働いている人たちもそういう心配をしているのです。ですから、今度の老人保健法は単なるあれだけではないんだと、千円になるとか入院費が高くなるだけではないんだと、一番大事なところはここなんだと、この老人保健施設のところなんだと富岡氏が言っているじゃないですか。新聞に千円とか入院費だけがひとり歩きしているけれども、一番大事なところは、この老人保健施設のところなんだ、こう言っている。ということは措置費を崩していく。今までは補助金をカットするという形だった。今度は柱を削っていくのですよ。だから、富岡さんがこれは一番大事なんだ、何としてもこれは通さなきゃならないという熱意はわかりますけれども、こういう熱意ではたまったものではないわけですよ。ですから、措置制度のない福祉施設みたいなものをつくるということは、これは——なぜ特養にもっと医者をふやし、PT、OTを置いて、これを早急につくるということはできないですか。  大臣、こんなわけのわからない、いいかげんなものでなくて、今の特養はちゃんとわかるわけですから。この特養はどこが足らないか。責任は国が相当持っている。私はそういう意味では精神的には立派だと思います、特養は。ですけれども、PT、OTがいないとか医者が嘱託医しかいないとか、こういうことではおかしいと思うのです。その点ちょっと大臣お願いします。
  358. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、特養というのは家庭にかわっての生活の場でございますから、おのずから医療は限界があると思います。したがいまして、特養の機能というものは残ります、必ず残りますけれども、それをさらに先生がおっしゃるように、医療の機能を付与するという点はいかがなものであろうか。むしろそれは先ほど来大臣老人保健部長がお願いしておりますように、老人保健施設で対応するのが筋であろうと思います。
  359. 田中美智子

    田中(美)委員 その上にもう一つ国立病院の統廃合や何か、これはきょう国会にかかりましたけれども、今全国で、国立病院だけじゃなく、ベッドが百七十万床あるわけでしょう。そのうちの三十万床か四十万床を使って中間施設をつくろうということでしょう。だから、四億円でも犬小屋みたいなものでない中間施設ができるというわけでしょう。今ある病院をそのまま使うということじゃないですか。そういうふうにしますと、病院の六十万床くらいというものを、これを病院でなくするということですから、こういうふうになりますと、結果がどうなるかということは、これは今から私が予言しますけれども、お年寄りだけじゃなくてすべてを含めて医者にかかりたい患者がいる、看護をしてもらいたい患者がたくさんいるのに、医者と看護婦が失業するという状態が出てくるんじゃないですか。大臣、どう思われますか。
  360. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 先ほどからの御議論でございますけれども、特養は特養としての使命、また中間施設は中間施設としての使命というものを先ほどから御説明も申し上げ、また先生もいろいろおっしゃっていただいておるとおりでございます。そのようなそれぞれ違った使命を持った施設が、今度新たに中間施設として一つ加わって、二つの施設が有機的に結合してまいる、こういうことでございますので、特養施設をやめにして中間施設にしてしまうということではなく、特養は特養としての発展をこれから進めてまいる、また中間施設は中間施設として充実をさしてまいるということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  361. 田中美智子

    田中(美)委員 私が聞いているのは、そんなこと聞いてない。それは最初からばかの一つ覚えみたいに同じことを何回も言っているでしょう。そんなこと言っていないのですよ。四億円で十カ所すぐモデルケースで老人保健施設をつくると言っているのでしょう。百カ所二十八億円でつくるというのでしょう。それだったら犬小屋みたいなものしかできぬじゃないか。だから一体何でつくるのかといえば、結局今ある病院のベッドをつぶして、これを老人保健施設にする。それでこれは金がかかって貧乏人は入れないものをつくるんだ、そして低所得者のかわいそうな人は特養に入れて、お金がたくさん出せる人はそっちに入るんだということになりますと、病院に入るということ自体がもう病院のベッドが減るわけですから入れない。そしたらそこで医者や看護婦が、患者がいなくて医者と看護婦が要らなくなるのならこれは結構な話ですよ。しかし、病人はふえていて看護も受けたい、医者にもかかりたいのに、医者や看護婦が失業するという状態が起きるじゃないですか。それはどう思うかと聞いているのです。
  362. 斎藤十朗

    斎藤国務大臣 百カ所で二十八億円ということでどうするんだというお話がまず最初にあったわけでございますが、これからの中間施設につきましてはいろいろな形態が予想されると思います。確かに今御指摘のように、病院から転換をするという中間施設もあろうと思います。そのような場合には内部の改装というようなことと若干の施設の整備というようなことで済むかと思います。また新しく建物を建ててまいるという場合もあります。特養施設に併設をするという場合もあろうと思います。そういうふうにいろいろな形態がございますので、単に二十八億円を百カ所に均等に割り振るというようなことではないわけでございますので、そこのところは御理解をいただきたいと思います。  また、病院の病床が減って医者と看護婦が余ってしまうのではないかという御指摘でございますけれども、やはり病院は病院としての治療を行っていく使命があり、それはそれで充実がされるものと思いますし、また中間施設は中間施設としての使命に基づいた充実がなされていくということになってまいるわけでありますので、このことが今御指摘のようなことに直接つながってまいるということではないというふうに思っております。
  363. 田中美智子

    田中(美)委員 今のお答えは、そこまで考えつかなかったということでしょうね。そういうことになるということが考えつかなかった。ですから、もう時間がありませんので、十分にお考えになってください。  それで最後に一つ、これは三十九年から五十九年までの国民の総医療費の表を、それをだれが分担しているか、どこが分担しているかというのが表になっているのですが、これを見ますと、五十八年から医療費はずっとふえていることは大臣も御存じですね。ところが国庫から出しているのが五十八年から減ってきています。そして保険料からの医療費の出し方がふえてきているのですね。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕 これを見ましても、何だかんだと言いながら明らかに国の金を国民医療に使うことをできるだけ節約していく、医療費が膨れ上がればそれだけ国が使っていかなければいけないわけですけれども、むしろ国が五十八年あたりから減ってきているということは、表を見ても明らかなわけですね。こういうことでは国民の健康を国が責任を持って、憲法二十五条の健康で文化的な最低生活を維持するという憲法を守る姿勢ではないというふうに私は思います。そういう意味で、医療にもっと金を使い、予防にも金を使って、お年寄りが尊厳を崩されることなく、屈辱的な生活をしなければならないようなことにならないように十分に努力していただきたいということを申しまして、私の質問を終わります。
  364. 堀内光雄

    堀内委員長 以上で田中美智子君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十八日火曜日午前九時四十五分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。     午後七時十七分散会