運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1986-12-12 第107回国会 衆議院 環境委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十二日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 林  大幹君    理事 小杉  隆君 理事 武村 正義君    理事 戸沢 政方君 理事 中村正三郎君    理事 山崎平八郎君 理事 岩垂寿喜男君    理事 春田 重昭君 理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    小沢 一郎君       片岡 武司君    杉浦 正健君       金子 みつ君    草川 昭三君       森田 景一君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       山内 豊徳君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   中野 公義君         宮内庁書陵部長 勝山  亮君         環境庁長官官房         参事官     杉戸 大作君         外務省経済協力         局調査計画課長 平井 慎介君         外務省国際連合         局社会協力課長 金子 義和君         大蔵省主計局主         計官      武藤 敏郎君         文化庁文化財保         護部記念物課長 小林 孝男君         文化庁文化財保         護部建造物課長 工藤 圭章君         林野庁林政部林         産課長     高橋  勲君         林野庁指導部計         画課長     三澤  毅君         林野庁指導部森         林保全課長   山口 夏郎君         林野庁業務部経         営企画課長   塚本 隆久君         通商産業省貿易         局輸入課長   鳥居原正敏君         運輸省運輸政策         局総合計画課長 浅見 喜紀君         運輸省地域交通         局陸上技術安全         部技術企画課長 松波 正壽君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 堀井 修身君         建設省道路局企         画課長     三谷  浩君         環境委員会調査         室長      山本 喜陸君     ───────────── 委員の異動 十二月十二日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     臼井日出男君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     河本 敏夫君     ───────────── 十一月十八日  環境保全等に関する請願(坂口力君紹介)(第一三九三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月十三日  ディーゼル車排出ガス規制強化に関する陳情書(第一四三号)  自然環境保全に関する陳情書(第一四四号) 同月二十日  公害健康被害補償法見直しに関する陳情書(第一七八号)  国定公園並びに県立自然公園公園区域見直しに関する陳情書(第一七九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 林大幹

    林委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。片岡武司君。
  3. 片岡武司

    片岡(武)委員 貴重な質問の時間をお与えいただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございますが、時間に限りがございますので、三点につきまして若干の質問をさせていただきたいと思います。  一つは、今回の指定地域見直しの問題、それから長期構想の問題、そして新幹線公害の問題でございますが、その前にちょっとお聞きしたい点が一つございます。  それは、ことしの五月だと思うのでありますけれども環境庁の方で行われたようでございますが、「どこまで見える?あおぞらコンテスト」というのがあったようでございます。これは新聞にも発表になったわけでありますが、ちょっと私、見落としてしまいましたので、その目的、また内容、結果について、差し支えない範囲でお聞かせいただければ幸いでございます。
  4. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  大気保全施策実施していく上におきましては、国民の十分な理解協力が必要不可欠であるという考え方に立ちまして、みずからの住む地域大気への関心を通じまして、大気保全必要性に関します国民認識を高めまして、今後の大気保全行政に関する関心を、あるいはそれに対する要請につきまして、そういう国民のニーズを高めることを目的といたしまして、先生お尋ね青空観察コンテストを企画し、実施いたしたところでございます。  この内容につきましては、それぞれの土地のシンボル的な建物なり山なりを観察目標物として設定いたしまして、住民参加によりまして一カ月間それらの目標物観察いたしまして、目で見える距離につきまして、その結果を市町村単位で集計したものでございます。このコンテストは、本年の二月から四月にかけまして、全国の四十二道府県の八十五の市町村で、子供から老人を加えまして一万一千四百名余の参加を得まして実施いたしたところでございますが、この観察結果を総合的に勘案いたしまして、本年の五月に「あおぞらの街」ということで四十の市町村を選定したところでございます。  環境庁といたしましては、このコンテストを通じまして、多くの人々がみずからの地域大気につきまして関心を深めることができたことから、極めて有意義であるというぐあいに考えているところでございます。
  5. 片岡武司

    片岡(武)委員 大気汚染ということが昭和四十年代から大変問題になってきて今日に至っておるわけでありますが、最近になって非常に空気がきれいになったという認識も深まっておるわけであります。そういったコンテストを行われて、国民の意識というものが非常に高まったということでありますけれども、そんなことも含めたわけではないと思うのでありますが、実はことしの十月三十日に、中央公害対策審議会から「公害健康被害補償法第一種地域あり方等について」の答申が出されたわけであります。要約すれば、今後の環境保全に関する施策の実現、大気汚染防止策のより一層の推進等に万全を期するようにとのことであると思いますが、しかし重要なことが含まれておるわけであります。それは、公害健康被害補償制度見直しであります。現在の第一種地域として指定されている四十一の地域は、すべて解除して新規患者は認めないということでありますけれども、これは一見、行政の後退のような感じも受けるわけでありますが、その理由についてお聞かせいただきたいと思うのであります。
  6. 目黒克己

    目黒政府委員 この中央公害対策審議会答申内容でございますけれども、まず専門委員会が示しました現行の四十一の指定地域におきます大気汚染を含めて現在の大気汚染状況では、ぜんそく等の主たる原因とは言えなくなっているという、この専門委員会報告の科学的な評価というものをまず前提にいたしておるのでございます。  そして、こうした大気汚染状況下では、地域患者集団の損害をすべて大気汚染と因果関係ありとみなしまして、汚染原因者の強制的な費用負担によって、個人に対して民事責任を踏まえた補償を行うというような合理性は失われているということから、現行の四十一指定地域のすべてについて解除することが相当である、こういうふうに判断をしているというふうに私ども理解をしているわけでございます。
  7. 片岡武司

    片岡(武)委員 大体私としても多分そうだろうと思っておるわけでありますが、ただ公害健康被害補償法が制定されました昭和四十九年当時まで、確かに大気汚染の第一の原因者硫黄酸化物であったと思います。そんなことでそういった法律になったのであろうと思うのですが、それだけに補償の分担も、全体の八〇%を企業から硫黄酸化物排出量に応じて徴収して、残りの二〇%を自動車重量税から出したということであります。その後、今のお話のようにそれぞれの企業努力をしたのでしょう、硫黄酸化物排出量も大変少なくなってきたわけであります。数字的に見れば、昭和四十九年、この法律ができたときは十一億立方メートルであったと思いますが、ことし昭和六十一年は二億立方メートル、いわゆる五分の一に減ったわけであります。その意味においては、大気汚染はかなり改善されたと思うのであります。したがって現状制度見直しということは私も当然だと思います。  しかし、大気汚染硫黄酸化物だけで起こるものではないと思うのであります。窒素酸化物もありますし、ばいじん浮遊粉じん等のいわゆる大気粒子状物質もあるわけであります。ここで指定地域を解除するというのは、いささか乱暴なような感じもするわけでありますけれども大気汚染現状は一体どうなっておるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  8. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  先生からお話のございましたように、大気汚染物質、主たるものが三つあるわけでございまして、まず硫黄酸化物でございますが、硫黄酸化物につきましては先生お話にもございましたように、近年横ばい状況で推移いたしておるわけでございますけれども環境基準達成に関しましては良好な状況が続いておる状況にございます。  それから、二酸化窒素かかわります状況でございますが、これを年平均値で見ますと、全国的には近年では若干改善傾向にあるというぐあいに考えております。さはさりながら、総量規制が導入されております東京都、神奈川県、大阪府の三地域におきましては、昭和六十年度を含めましてほぼ同様の傾向が見られますものの、道路沿道を中心に依然として環境基準を上回る測定値のところが相当数残されておる状態でございまして、なお一層の努力を要する状況にあるというぐあいに考えております。  それから浮遊粒子状物質につきましては、近年、改善傾向を示してまいっておりますが、環境基準達成率昭和五十九年度で約五割という形にとどまっておるところでございます。この物質につきましては、測定体制整備がおくれておる点がございますので、今後重点的な整備を行いまして、濃度の推移を見きわめながら、適宜対応検討してまいりたいというぐあいに考えております。
  9. 片岡武司

    片岡(武)委員 今の御説明、よく理解できるわけであります。  今のお話のように、確かに窒素酸化物等はふえてはおりませんが減ってもいないわけでありまして、いわゆる横ばいであります。また、大気粒子状物質も同様だと思うのでありますが、実際にこの答申の中でも窒素酸化物について指摘をされております。その窒素酸化物対策を真剣にこれから考えていただきたいと思うのでありますが、その点について御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  10. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 窒素酸化物に対します取り組み方でございますが、まず従来からの固定発生源排出規制自動車単体規制に加えまして、自動車交通対策推進を図ることが重要というぐあいに考えておるところでございます。  まず、固定発生源対策につきましては、排出規制徹底等に努めますほか、群小発生源対策についても検討を進めてまいりたいというぐあいに考えております。  それから、自動車排出ガス低減対策につきましては、本年七月に中央公害対策審議会から提出されました中間答申に基づきまして規制強化を図りますとともに、引き続きこの審議会におきまして自動車排出ガス専門委員会におきまして一層の低減に向けての検討をお願いいたしているところでございます。  また、自動車交通対策につきましては、物流の合理化等によります自動車交通量の抑制、分散等推進するために、特に京浜、阪神地域対象にいたしました大都市自動車交通対策等計画策定のための委員会をつくりまして検討に着手いたしているところでございます。  また、これに関連いたしまして、本年度より関係省庁の御協力を得まして、NOx低減のための海上バイパス整備交通管制システム高度化等につきまして調査検討を行っているところでございます。  ただいま申し上げましたようないろいろな対策に強力に総合的に取り組むことによりまして、二酸化窒素低減あるいは二酸化窒素かかわります環境基準達成されるように努めてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  11. 片岡武司

    片岡(武)委員 ぜひともお願いしたいと思います。  また、今回の答申の中で、先ほど言いましたように新規患者を認めないということでありますが、従来の患者はどういう扱いになるんでしょうか。
  12. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  答申では、既に認定を受けている患者さんにつきましては、指定地域が解除された場合でございましても、認定の更新を含めまして補償給付支給等を従前どおり行うことが適当であるというふうにしているわけでございます。したがいまして、今の患者の方々は、病気が治るまで引き続きこれまでどおりの補償を受けることになるというふうに私ども答申から理解をしているわけでございます。  また、先ほど窒素酸化物等においてなお問題が残されているというふうな問題もございましたが、むしろ個人への個別の補償を行うということではなくて、地域全体に健康被害の予防とか回復対策を行うということとともに、大気汚染防止対策強化することが適当であろうというふうにも答申では述べておられるわけでございます。
  13. 片岡武司

    片岡(武)委員 ぜひともお願いしたいと思います。  また、今回の答申で、実はもう一つちらっと今触れられたと思うのでありますけれども健康被害防止事業を進めるべきだというふうに言っておられるわけでありますが、私もこれは大賛成でありますし、ぜひとも速やかに実行していただきたいと思うのであります。内容がいまひとつよくわからぬところがございますが、具体的に何をするのか、またその効果についてお聞かせいただきたいと思います。
  14. 目黒克己

    目黒政府委員 中公審答申におきましては、現在の大気汚染状況のもとでは個人に対します個別の補償給付を行うというのではなくて、健康被害防止事業実施等を含めて、総合的な環境保健に関する施策推進することが適当である、このように述べているのでございます。この健康被害防止事業は、国とか地方公共団体の行う一般的な慢性閉塞性肺疾患対策及び環境改善対策のすべてを行うということではなくて、これらの施策をある程度補完してより効果あるものにしたいというものでございます。  また、この健康被害防止事業内容は、個別のものではなくて、地域人口集団対象としておりまして、例えば予防健診あるいはリハビリテーション等によりまして健康を確保する、あるいは回復を図る、そういうふうな一連のヘルスに関します環境保健事業と、環境自体健康被害を引き起こす可能性のないものとするための、例えば交通公害防止計画づくりや低公害車普及促進等環境改善事業というふうなものから成っているのでございます。このような健康被害防止事業の具体的な内容につきましては、現在さらに環境庁で鋭意検討を行っているところでございます。
  15. 片岡武司

    片岡(武)委員 ぜひとも実行していただきたいと思うわけでございます。時間もありませんので、次の質問に移りたいと思います。  この十二月五日に「環境保全長期構想」が答申をされたわけであります。中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会から出されたわけでありますが、これを受けまして、今後の環境政策をどのように推進していかれるのか、環境庁長官の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  16. 稲村利幸

    稲村国務大臣 「環境保全長期構想」は、今後の長期的な環境政策の指針として極めて重要な役割を担うものでありまして、十二月九日、環境庁の「構想」として決定を見ました。今後、人間環境かかわりを多角的にとらえて、健全で恵み豊かな環境を二十一世紀の世代へ引き継いでいこうという観点に立ちまして環境政策の積極的な推進に努めてまいりたい、そのように考えております。
  17. 片岡武司

    片岡(武)委員 もう一つ環境保全長期構想」の中で、環境保全の幅広い分野について施策の方向づけが示されておるわけでありますけれども、今後どのような形で具体化していくのか、長官の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  18. 稲村利幸

    稲村国務大臣 この「長期構想」の具体化に当たりましては、環境庁みずからが積極的な姿勢で取り組むと同時に、関係省庁地方公共団体とも連携を深めていく必要があると考えております。また、行政のみならず国民事業者が果たすべき役割も大変重要であり、各方面の理解協力が得られるよう努めてまいりたいと思います。
  19. 片岡武司

    片岡(武)委員 ぜひとも頑張っていただきたいと思います。  ちょっと観点を変えますが、最近の傾向だと思うのでありますけれども、例えば我々は下水を出しておるわけでありますが、出していながら下水処理場の建設については反対をするというぐあいに、人間というものは非常に身勝手な面があるわけであります。こういうことを考えますと、環境問題というものは、究極的には国民一人一人の心構えの問題にかかわっているような感じもするわけであります。都市あるいは生活型公害が深刻化したのはこういったものが原因ではないかなと思うわけでありますけれども、「長期構想」においてこのような点についてはどう考えておられますでしょうか。
  20. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 ただいま先生の御指摘になりました問題点、これはいろいろな行政分野でも、そういう問題というのは人間の気持ちとしてどうしてもあるところのようでございます。特に環境問題のように幅が広く、かつ生活に非常につながっておるものについては非常に留意しなければならない問題点だと存じております。特に最近の公害問題には都市型と申しますか、都市生活型公害と言われるような国民一人一人の活動が深くかかわりを持つ環境問題の比重が大きくなってきておることは事実でございます。このために、地方公共団体それから国とも環境保全施策推進に加えまして、国民一人一人が日常生活においてできるだけ環境に与える影響を減らすといいますか、そういう環境保全に配慮した行動を心がけていくことが大切だと存じます。一つ一つは小さくても、その積み上げというのは大きな量になるものでございます。  このような状況を踏まえまして、「長期構想」におきましては、国民それぞれが自発的、自主的に環境問題の改善に努めていくことが望まれるという趣旨の記述を特に加えておりまして、また同時に自主的なそういう活動を支えるための環境関係の広報とかPR、教育の積極的な推進、さらには具体的な例として、既に各地で熱心に行われておりますが、美化清掃活動でございますとか、もっと広く見ますと自然保護関係ボランティア活動など、地域におきます環境保全のための各種の自主的活動普及拡大、こういうところから入っていくという道筋も重要であると述べておられるところでございます。
  21. 片岡武司

    片岡(武)委員 私は、人間というものは今まで物をつくることばかり考えてきたと思うのです。ですから、特に大量生産の時代に入ってその廃棄物について、汚染物質もあれば無害なものもあるわけでありますが、どうも人間というのはつくることばかり考えてきた感じがするわけであります。ですからここで発想の転換といいますか、極論すればつくらない技術、平たく言えば物を処理できる技術、捨てる技術というものも並行して考えていくべきであろうと思うのであります。そういったところから、今回の「長期構想」の中に開発から廃棄までいわゆる汚染物質ができる限り出ないような、そんな考え方が盛り込まれているかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  22. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 ただいま先生が捨てる技術という表現を使われました。私どもちょっとそういうところまでは気がつかなかったのでございますけれども、実はその御趣旨のものは取り上げております。生産に当たって排出されます物質、それから使用した後の廃棄物環境汚染をもたらすということを環境保全上重要な課題としてとらえておるわけでございまして、「長期構想」においてもそのように述べております。  例えば廃棄物が、廃棄された後の性状が変化することへの対応とかIC産業等の新技術への対応等につきましても、事前の評価対応さらには事業者による自己管理重要性などについて触れておるところでございまして、御趣旨の捨てる技術ということにも気をつけるように指示しておりますので、私どもも留意してまいりたいと思います。
  23. 片岡武司

    片岡(武)委員 ぜひともお願いしたいと思います。  時間もございませんので、次に新幹線の問題についてちょっと御質問させていただきます。  私は名古屋でありますけれども、実はことしの四月二十八日に、名古屋で行われていた新幹線公害訴訟が十二年間の裁判に決着がついたわけであります。この間、環境庁皆さん方の非常な御努力をいただきまして、歴代の環境庁長官も二度にわたって現地を視察していただく等、また環境基準設定等にもいろいろと御尽力いただきました。心から御礼を申し上げる次第でございます。  この和解の骨子は、発生源における対策というよりも騒音振動を軽減させること、特に昭和六十四年度までに騒音を七十五ホン以下にするよう最大限の努力をすることとなっているわけでございます。これは非常に厳しいと聞いているわけでございますが、環境庁としてのお考えをちょっとお聞かせいただきたいと思うのであります。
  24. 稲村利幸

    稲村国務大臣 名古屋新幹線訴訟が和解したことにつきましては、当事者はもとより関係各位の御努力のたまものであり、心から敬意を表する次第でございます。  環境庁としては、これまでにも運輸省に対し、住宅密集地域での音源対策の早急な実施について申し入れるなど、新幹線騒音振動対策について取り組んできたところでございますが、今後とも新幹線騒音振動対策の充実に向けて努力を怠らないよう頑張ってまいるつもりでございます。
  25. 片岡武司

    片岡(武)委員 ぜひともお願いしたいと思います。  関連質問の方がございますのでこの辺で、ありがとうございました。
  26. 林大幹

    林委員長 この際、関連質疑申し出がありますので、これを許します。杉浦正健君。
  27. 杉浦正健

    杉浦委員 杉浦でございます。御関係の方に御無理をお願いして、質問する機会を与えていただきまして本当にありがとうございました。片岡議員質問に関連して、新幹線スピードアップに伴う騒音振動の問題についてお伺いいたします。  最近、私の地元愛知県の岡崎市でございますが、その下三ッ木町という、農村地帯ではございますけれども、その集落の真ん中を新幹線が貫通している地域の総代さんから、このたびの新幹線スピードアップに伴う騒音振動が著しく増大しておるという陳情がございまして、私も見てまいりましたが相当ひどいという印象を受けたわけでございます。この地域では、スピードアップ前後の騒音振動について公の手で測定がなされているわけではないとのことでございましたが、常識的に見て、新幹線のスピードが上がれば騒音振動もそれに比例して増加するであろうと推測されるところでございまして、そうとすれば、沿線住民全体に関係することでございますので、以下お伺いするわけでございます。  第一に、今回の新幹線スピードアップに伴う騒音振動対策について事前にどのような御説明を受けておられるかということ。第二に、スピードアップの前後における騒音振動について環境庁は把握をされておられるかどうか。第三に、環境庁の御把握によって騒音振動の増加が著しい場合には、環境庁はいかなる対応を予定しておられるのかお伺いしたいと存じます。
  28. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  まず第一問でございますが、新幹線スピードアップ実施に先立ちまして、環境庁としても先生のおっしゃるような心配があったわけでございますが、この点に関しては国鉄に問い合わせましたところ、パンタグラフの改良あるいはレールの表面を滑らかにするような対策強化することによって、そういうことについては心配ないというような国鉄の回答、説明を受けているところでございます。  それから第二点目でございますが、今回のスピードアップ後の騒音振動の実情の調査を沿線都府県に現在依頼をいたしておるところでございます。結果を入手次第評価してまいりたいと考えております。  第三番目のお尋ねでございますが、環境庁といたしましては、ただいま申し上げましたように、評価をした後において必要があれば運輸省、国鉄に対して所要の対策を要請してまいりたいと考えております。
  29. 杉浦正健

    杉浦委員 騒音振動の著しい増加がある場合には、ぜひとも所要の対応をしていただくようお願いしたいと存じます。ありがとうございました。
  30. 林大幹

    林委員長 武村正義君。
  31. 武村正義

    ○武村委員 環境委員会で初めて質問をさせていただきます。今までは地方で専ら答えることばかりやってまいりました。質問は余りなれておりません。よろしくお願いいたします。  私は、僣越でございますが、琵琶湖の経験をする中で、世界の湖、そして世界の水や緑や砂漠化や大気の問題にいささか関心を持ち始めております。そういう意味でグローバルな環境問題に、微力でございますがこれから取り組んでいきたいと思っております。  ところで、人類の歴史の中で、一九七二年のあのストックホルムの国連人間環境会議ほど重大な会議はないというふうに私は認識いたしております。その前後、ローマ・クラブの提言等もございました。あの会議のテーマは、御承知のように「かけがえのない地球」ということでございました。地球は大変狭くなってまいりましたし、我々五十億の人類が生きている空間でございますが、土、大気、水、緑、有限の自然環境の中で数百万の生命が存在を許されているわけでございます。その生命の一つ人間でございます。この人間だけが思い上がって、人間だけの幸せのためにしたいほうだいをしてこの小さな地球の環境を随分大きく変えてきている。しかも、悪い方向に変えてきている事例が二十世紀になってどんどんふえてまいっているわけでございます。そのことに大きな警鐘を発したのがあの会議であったかと思います。  振り返って、大気の問題でショックを受けましたのは、ことし四月のあのソ連のチェルノブイリの原発事故でございました。地球全体、人類全体を大変な不安に陥れたわけでございますが、ウラル地方に近いヨーロッパを中心にして、あの近辺では文字どおり恐怖のどん底に一瞬突き落とされたわけでございます。新聞報道等で記憶いたしておりますように、しばらく子供たちは学校に行けない、家の中に閉じこもっていよ、あるいは新鮮なミルクや野菜は食べてはいけないと、考えられないような事態が起こったわけでございます。環境問題には外国はないという言葉があります。確かにこの原発事故一つを例にとりましても、大気を共有いたしておりますから国境はありません。ウラルの原発事故の放射能は日本にまでいささか降ってきたわけでございます。改めてグローバルな環境問題への認識を深めたわけでございます。  また、最近いささか鳴りを静めております例のアフリカ難民の問題を取り上げましても、これは主として緑とのかかわりが深いわけでございますが、結局あの問題の根底には、五億三千万というアフリカの諸国民が、大変貧しいために木を切って燃料にしなければならないという現実がございます。アフリカの約九五%が薪炭に依存している、インドネシアでも、九〇%が依然として石油やガスでなしに薪炭に燃料を依存しているのが現実でございます。  そしてまた、私も二年前アフリカの空をセスナで飛んでみたのですが、二、三カ所で煙が上がっておりました。あれは何だというふうに聞いたのですが、どうも焼き畑農業であったようでございます。アフリカの緑の喪失の約七〇%が転々と移転をしていく焼き畑農耕にある、アジアでも五〇%近いものがこれに原因をしているようでございます。もっとも、経済林として熱帯林を切り倒した跡を焼くというふうなこともあるわけですが、いずれにしましてもそういう現実が緑を減少させ、ひいては砂漠化の進行や土壌の流出という事態を生みながら、人間の生存の足元を大きく崩してきているわけでございます。  もう一つ水に関しては、私はちょうど衆議院の解散が決まったころシベリアのバイカル湖畔におりました。第二回世界湖沼会議がアメリカでございまして、その帰りにバイカル湖を視察してきたわけでございます。バイカル湖というのは、御承知のように世界で最も古い湖、約二千万年という歴史を刻んでおります。加えて世界で最も水量が多く、そして千六百二十メーターでしたか、世界で最も水深の深い、また透明度が四十一、二メーター、摩周湖よりも深いという話でございますが、世界で最もきれいな湖でもあります。ところが、バイカル湖の湖畔に立って北側の山を眺めると大変神秘的な景観でございましたが、このバイカル湖も徐々に汚濁が始まっておりました。話を聞きますと、遠くは蒙古等の開発、牧畜等の汚濁が原因をなしているという説明でございましたが、あのすばらしい、世界で最も透明度の高い湖ですら汚濁が始まっているという現状を見てまいったわけでございます。  大気、緑、水と例を二、三申し上げたわけでございますが、我々二十一世紀を目前にした人類の前には二つの大きな心配事がある。一つは、言うまでもなく核戦争の不安、いま一つは、広くは資源とかエネルギー、食糧、人口問題も含めたグローバルな環境問題の不安でございます。核兵器の問題は、人間の病気に例えますと急性病とでもいいましょうか、割合物事がわかりやすい、これは絶対起こしてはならないという認識をみんな持っています。また、そういう意味でいろいろな努力を始めているわけですが、この環境問題だけはじわじわやってまいります。国内の環境問題もそうですが、結果がはっきりして、人間の生命に被害を及ぼして初めてみこしを上げるというふうなことになりがちでございまして、ましてや地球規模の環境問題については何か遠い話という実感がまだまだぬぐい切れないわけでございます。  今申し上げたような例を考えますと、これは遠い世界の話ではない、あすの我々の子孫の問題だし、水も大気も緑も含めて日本の近い将来の深刻な課題だという認識を持って我々はこの問題に対処していかなければいけないのではないか。そういう意味では、日本の国内の世論も政治的な我々の努力もまだまだ足りないと思っております。環境庁におかれては、国内の環境問題に追われがちでございますが、ぜひグローバルな環境問題にこれからは大きな力を割いていただきたい、外務省、農林省も含めた日本政府全体がこの問題に鋭い目を向けていただきたいというふうに思っている一人でございます。  長々と申し上げましたが、そんな意味も含めて、まずグローバルな環境問題、その中における日本の役割という点について長官の御所見を承りたいと思います。
  32. 稲村利幸

    稲村国務大臣 武村議員の環境問題に関する大変深い御見識にまず敬意を表します。  水と大気と緑に関して、環境人間活動を支える基盤であり、よりよい環境を将来の世代に伝えていくことが、地球的規模で考えても大変重要なことであることは私も全く同感でございます。我が国としても、従来から二国間協力及び国際機関を通じた協力推進しているところでございます。我が国の提唱により設立された国連環境特別委員会が来年二月に東京で最終会合を開催する機会でもあり、私といたしましても、今後とも国際環境協力の充実に努めてまいりたいと思っております。
  33. 武村正義

    ○武村委員 ありがとうございます。  すばらしい経済大国を日本は実現さすことができたわけであります。このことは我々の大きな誇りでございます。人類の歴史の中で、こんなに自由で便利で豊かな国というのは恐らく存在しなかったのではないか、そんな意味でも大変ありがたい限りであります。  しかし、この豊穣な国日本というのは、何となく日本人の勤勉さだけでつくり上げたように我々は思いがちでございますが、よく考えてみますと、まさに国際化の真っただ中、世界経済の共存の中で実現し得たことでございます。日本の経済が必要とする資材は世界じゅうから運ばれてまいりますし、幸い、日本でつくった付加価値の高い生産品が世界に飛ぶように売れていく、そういう状況の中で日本の今の繁栄が実現を見ているわけでありますが、しかしその背景を考えますと、こんな状況が一体いつまで続くのだろうかという、いささか不安も感ずるわけであります。その不安を取り除きながら、ぜひこれが持続するように我々は努力しなければならないと思っておりますが、何となくつかの間の僥幸とかあるいはラッキーであった、世界から欲しいものがどんどん安く入る、どんどん世界につくったものが売れていくという状況そのものが、そういう感じを持ちますと、もっともっと国際的な、経済に限らず、責任を日本自身が背負っていかなければならないように思っております。  トイレットペーパー一つ例にとりましても、東京も最近はほとんど、トイレへ行きますと手を洗います、その後横っちょに大抵紙が出る仕組みになっておりまして、我々はもう何となく紙を引っ張って手をふいて捨てるということになれ始めておりますが、しかし考えてみますと、日本の木材の約三分の二は外材でございます。そして、先ほど申し上げたように、これが熱帯林を含めた、あるいはシベリア大陸やカナダやアメリカの木材に依存をしているということを考えますと、ハンカチで手をふけばいいのに、一々紙で手をふくというようなことにもうなれてきているわけですが、これでいいのだろうか。一枚一枚の紙、水をふくだけの紙が世界じゅうの緑にかかわっているということであります。ぜひ今長官のお答えのように、今後環境庁中心にこういった環境問題にひとつ御努力を賜りたいと思います。  そこで、実はこういう目で見ておりますと、ことし日本の国で二つの新しい動きがございました。一つは、ことしの七月に正式に設置が決まったITTOというのでしょうか、国際熱帯木材機関というのが横浜市に誘致が決定したわけでございます。四年ほど前に、国際熱帯木材会議があったようでございまして、そこでこの協定が生産国十八カ国、消費国二十三カ国の合意で採択されて、その後熱心な誘致運動が展開されたようでございますが、横浜市が非常に熱心に御努力をされて、かなり経済的な面も努力をされて、ようやく誘致が決まったということでございます。これは生産、消費国を基本にした、熱帯木材の生産から流通、消費に至る国際的なかかわりをより協調的にしていこうという趣旨であろうかと思いますが、その中に、やはり生態的な立場から熱帯林に対する取り組みをしようという趣旨も入っているように伺っております。この問題について、農林省の御所管だと思いますが、評価、今後の政府のかかわり等について御所見を賜りたいと思います。
  34. 高橋勲

    ○高橋説明員 お答えいたします。  国際熱帯木材機関は、先生おっしゃいましたように、熱帯木材に関する諸問題を解決する目的で設置が決まった機関でございます。その中に、熱帯林及びその遺伝資源の持続的利用及び保全並びに関連地域の生態学的均衡の維持といったものがございまして、環境保全にも寄与することとしております。我が国は熱帯木材の主要な輸入国であり、熱帯木材問題について高い関心を有しております。このため、この機関の活動に大きな期待を寄せておりまして、これに貢献するという観点から本部誘致を行ったものでございます。  林野庁としましても、世界的な森林環境の保全に資するべく、従来から熱帯木材生産諸国における森林造成等に対する協力を行ってまいりましたけれども、今後ともこれらの林業協力推進するとともに、本機関の活動に対しても、関係機関と連携を図りながら支援を行い、環境の保全に資することとしていきたいと考えております。
  35. 武村正義

    ○武村委員 もう一つは、不肖私自身もかかわってまいったわけでございますが、国際湖沼環境委員会という組織がことしの三月誕生をいたしました。これはNGOでございますが、二年前の、琶琵湖畔で開きました世界湖沼会議に出席をされたUNEPのトルバ局長が基調報告の最後で提案をされた組織が、二年越しにやっと誕生したということでございます。主に世界の専門家を中心にして世界の湖沼の問題に取り組んでいこうという趣旨でございますが、三月にスタートを切りまして、早速この秋には湖沼環境管理のセミナーも開催されておりまして、十五カ国から参加をされているようでございます。  また、伺いますと、UNEPは、この機関に対しては、NGOではあるけれども、UNEPの世界の湖沼にかかわる幾つかのテーマについて将来委託をしていこう、調べますと、ザンベジ川、タンガニーカあるいはビクトリアというふうな川や湖の行動計画について委託をしようという動きもあるようでございますし、また、世界全体の湖沼のガイドラインをこの委員会でつくってもらおうとか、さらには専門家の養成を委託しようというふうなことがUNEP本部でも論議をされておりまして、私は大変結構なことだと思っております。特に、こわごわそういう会議を呼びかけてみたわけでございますが、実際に通知を出してみますと、二年前の会議も随分たくさんの国が喜んで参加をしてくれました。地球的な規模の環境問題の中では湖沼というのは大変小さな存在でありますが、しかし、どの国におきましても湖というのは大変身近な、なじみやすい自然でございますから、ひときわ関心が深かったということもありましょうか、そして世界じゅうの湖沼、押しなべて大なり小なり新たな湖沼の汚濁という事態に直面をしている。中には北欧やスイス、北米のように、富栄養化問題等についてはかなり早くから取り組んでそれを乗り切っている、もう卒業しましたというふうなことを言う国もございます。しかしまた、今どんどん汚濁が始まっているという国も少なくないわけでございます。世界じゅうの湖沼にかかわる行政あるいは学者あるいは住民が、失敗も成功も含めてお互いに経験を交換し合おう、そしてその中から新しい知恵を出していこうという趣旨でございました。こわごわ呼びかけた国際的な会議が大きな成功をおさめたということを考えますと、やはりまだまだUNEP等の国連の努力も足りないということにもなりますが、この問題に対する世界じゅうの関心も非常に高まっている。湖沼一つ例にとってもそんな感じを持ったわけでございます。  一地方自治体の呼びかけから始まった組織ではありますけれども、UNEPもそういう形で将来は事業委託をしていこうという考えのようでございますし、ぜひそういう動向もごらんいただきながら、環境庁、外務省におかれましても、この国際湖沼環境委員会に対してこれからぜひ大きな関心を持っていただきたい、ひとつできる限りの協力を賜りたいというふうに思っております。この点についてひとつ御所見を承りたいと思います。
  36. 山内豊徳

    ○山内政府委員 ただいま先生からの御紹介ございましたように、この国際湖沼環境委員会、ILECと略称するのでございましょうか、これは五十九年でございまして、確かに滋賀県における国際会議が直接のきっかけとなりまして、この二月でございますか、我が国に事務局を置くという形で発足したわけでございます。  今、先生からお話ございましたように、湖沼の問題というのは非常に共通的な面と、また同時にその国の生活なり地形に密接な関係がございますために、それぞれ問題を抱えている。にもかかわらず、多くの国から専門家が集まってこういった国際的な会合が発足したことは、異なった問題を抱えながらも共通する、さっき先生おっしゃる地球的規模の環境問題の一つの軸になっているものとして、私どもも非常に有益と申しますか、有効な国際機関であると思っております。先ほどお話のございました木材関係の政府間機関と違いまして、外務省の方でも民間協力に基づく国際的な機関ということで、今後御援助申し上げるにしましてもいろいろな問題点もあろうかと思うのでございます。  実は私ども環境庁の立場から申し上げますと、UNEPの活動とも連携なさっておられる国際的な機能という面ももちろんこれからのILECに寄せられた大きな期待でございますが、同時にこれは日本国内の活動という面から考えました場合に、滋賀県はもとよりのこと、湖沼を抱えましたいろいろな自治体とも実は共通のと申しますか、一体となった取り組みにつながるものを持っておられるのではないかと思います。そういった意味で、環境庁直接に考えます場合にも、国内における湖沼の資源を確認し、あるいは湖沼を利用する場合の環境管理の向上を図るといった役割が今後大いに発揮されるのではないかと思っておるわけでありまして、そういった意味で、そういった役割に即した環境庁なりの御援助の仕方、あるいは場合によっては人的な応援の仕方も考えていかなければならない、そのように理解しているつもりでございます。
  37. 武村正義

    ○武村委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。  もう一点はODAの問題でございますが、日本の対外的な経済協力は、外務省を中心にされたこのODAにおおむね集約されているわけでございますが、全体で今年度は六千二百億でございましたか、かなり大きな予算に膨れ上がってきているわけでございます。防衛費の問題と並んで、あるいはそれ以上に私は、日本のこれからの役割を考えますと、このODAについてはさらに努力をしていくべきだというふうに思っている一人でございます。その中でさまざまな経済協力があるわけでございますけれども、今申し上げております世界の環境問題に対する日本の貢献ということを考えますと、ODA予算の中で、各国に対する具体的な事業予算の中で、もっともっと環境問題に対する目を開いていただきたい。  せんだって農林省で伺いますと、緑の関係だけで聞きましたら、今十一ぐらいのプロジェクトが進んでいるようでございます。環境庁御所管の中でも、人の派遣等含めて数多くの事業があるわけでございますが、事業名とか対象国はかなりの数に上っておりますが、一体予算はどのくらいですかというふうに聞きますと、これはちょっとわかりませんでした。しかしどうも内容が、いわゆるプロジェクトに対する技術協力技術移転といいましょうか、そういうことが今の段階では主体のようでございますし、あるいは人の派遣とか受け入れ、研修、機材の提供、そんなところから始まっているわけでございますが、国の大変大事な環境問題に対しては、将来無償供与も含めた環境を復元するなり守るための事業予算をぜひ組み込んでいただきたい、そういう分野にまで目を広げていただきたいということを特に思っているわけでございます。一体ODA全体の中で、予算的に、件数もございますが、今どのくらいのシェアなのか、わかれば教えていただきたいし、これからの外務省の姿勢としてこの問題に対するお考えをお聞かせをいただければと思います。
  38. 平井慎介

    ○平井説明員 お答えいたします。  まず環境分野における援助の占める割合でございますが、これを技術協力で申しますと、おおむね五%前後ということが言えるのではなかろうかと思います。具体的に申しますと、JICAベースで行っております研修員受け入れ、これは過去三年間の実績で申しますと三・二%でございます。専門家派遣で申しますとこれは五%でございます。それから協力隊派遣に占めます環境分野の割合というものは一・三%でございます。先生指摘のように、開発途上国の経済開発におきまして環境保全の問題というのは非常に重要でございます。外務省といたしましては、開発途上国に対しまして援助を行う際には、この環境分野における協力重要性というものを十分に認識して積極的に実施しているところでございます。  具体的に、例えば二国間援助で申しますと、緑化でございますとかあるいは砂漠化の防止、それから森林保全といったような分野に対する協力、それから我が国のこれまでの経験を生かしまして公害防止分野におきます協力といった環境保全に資するような協力、極めて多岐の分野にわたって現在積極的に行っている状況にございますが、さらにこのほか、援助の実施に際しまして環境に与える影響というものに対しても十分に配慮していくことが必要であろうか、かように考えております。今後とも外務省といたしましては、環境問題に対する国際的な取り組みに積極的に参加することはもちろんのことでございますが、二国間援助におきましても可能な限り積極的に経済協力というものを実施してまいりたい、かように考えております。
  39. 武村正義

    ○武村委員 ありがとうございます。  最後に、環境庁長官、あすから北欧の方へ旅立たれるようでございます。伺いますと、先ほどお触れになりました国連の環境特別委員会委員長をなさっているノルウェーのブルントラント首相にもお会いになるようでございますが、二月に先ほどお触れになりましたこの委員会の最終会議が東京で開かれるようでございます。この会議の前後、恐らくグローバルな環境問題に対する日本の世論もいささか高まるのではないかと私は大きな期待をしている一人でございます。ブルントラントさんに会われて、恐らく東京最終会議のあるいは打ち合わせもなさるのかとも思いますが、この最終段階を迎えた委員会に対する長官としてのお考えを伺いたいし、最終の骨子もまだ公にはされておりませんが、どんな内容のまとめになるのか、東京宣言というふうなものが発せられるのかどうか、その辺がおわかりであれば感触だけでもお教えをいただけたらと思います。
  40. 稲村利幸

    稲村国務大臣 国連環境特別委員会活動は、先ほど来先生繰り返し御見識を御披露されているように、人類の将来にとって大変大事な問題だ、また我が国も国連のこの委員会の提唱国として、また最大の拠出国としてできるだけの支援をしなければならないなと思います。そして、私自身あすノルウェーに赴くわけでございますが、今先生のお聞きの委員会内容等どうかという点についても、向こうが委員長ですのでこちらから御意見を聞きながら、こちらでもこう考えているというような意見の交換をやってきたい。先ほど先生お触れになったODAの問題も、この東京開催を成功させることによって、これはもういや応なしに日本国として、先進国として協力の額もふえていく、ぜひ成功裏に終わらせたいな、国際的な環境問題に積極的に我が国が取り組んでいるという姿を世界に示したいな、そう考えております。
  41. 武村正義

    ○武村委員 ありがとうございました。
  42. 林大幹

  43. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ワシントン条約に関連をして若干の質問を申し上げたいというふうに思います。  せんだってもシンガポール経由でワニ皮が日本に輸入をされているという報道に接したわけでございます。それに引き続いて、こんな深刻な事態が世の中に出ることを私は大変遺憾に思いますけれども、エルサルバドルとグアテマラから同じようにワニ皮の輸入が大変な量にわたってされております。これまでワニ皮の違法な集散地となっていたボリビアやパラグアイが輸出を禁止いたしまして、エルサルバドルとグアテマラが供給地となっているわけであります。  ちなみにエルサルバドルに関連をして申しますと、これは通関実績でございますから正確な数字でございますが、一九八六年の四月、ことしの四月、同国から一万六千七百二十九キログラムが日本に輸入されております。七月四日にワシントン条約事務局は、締約国への通達、ナンバー三百九十八ということで、エルサルバドルから、または同国を経由して行われる条約当該種のいかなる取引も防止し、禁止する措置を速やかに講じるように要請をいたしております。ここに原文がございます。しかしながら、九月になってまたしてもエルサルバドルから一万二千七百六十八キログラムが輸入されました。四月と九月に同国から輸入された二万九千四百九十七キログラムというのは少なくともワニ五万頭分に相当いたします。これは少なくともです。  またグアテマラからは、一九八六年五月七日、ワシントン条約事務局が締約国へ通達を出しました。これはナンバー三百八十六でございます。グアテマラでは、一九八六年三月二十四日から野生生物の捕獲、国内売買、輸出及び再輸出が禁止されたことを通知し、同国の禁止令の施行を助けるために、規制を逃れようとした取引についてはワシントン条約事務局に連絡するようにという通達を出しているわけでございます。ところが、一九八六年八月に同国から九百二十キログラムが輸入されました。また一九八六年九月にはさらに千五百二十キログラムが輸入されました。グアテマラから輸入された二千四百四十キログラムのワニ皮は約四千頭分に相当するというふうに言われております。  これは十一月十九日の各紙の朝刊に載っておりますけれども、マレーシアから同じように二万四千キロのワニ皮が輸入されている。このマレーシアが原産と称するワニ皮というのは、金額にして輸入申告額は三億一千五百万円ということになっているようでございます。  このような事実が、素人が見ても通関実績を見ればわかるわけであります。このような事態について、言うまでもありませんけれども、附属書に取引が禁止されているそうしたものについて、一体ワシントン条約事務局から来た通知をどこが受けとめて、どういう形でそれに対して対応なさってきたか、この点を関係者から御答弁を煩わしたいと思います。まず外務省にお願いをいたします。その次に通産省に御答弁をいただきます。
  44. 金子みつ

    金子説明員 お答えいたします。  現在のワシントン条約事務局からの通達等につきましては、スイスに所在する条約事務局から通報等が発出されますと外交ルートを通じまして、現実には在スイス日本大使館から外務省に通報がありまして、外務省としてはこれら通報等を受け取ると直ちに管理当局、科学当局に配付しておりますし、附属書の改正については官報等で告示を行っています。  その他につきましては、管理当局または科学当局がそれぞれ対処をしているということでございます。また回答につきましては、先ほど申しました外交ルートでやっております。
  45. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 先ほど外務省から答弁ございましたように、外務省の方から通知があったものにつきましては、できる限りの注意を喚起したり改善の策を講ずるような対応をいたしております。
  46. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私がかなり前からやかましく言っていることに対して、昨年の四月でございますけれども、それに対する対応として、ワシントン条約で規制されている野生動植物については、一つは原産国の名前、二つは原産国の輸出許可書、そして三番目は再輸出の許可書の三点を確認して輸入するようにということを義務づけているわけであります。実際問題としてこれらの措置が行われている、守られていると通産省はお考えになっていらっしゃいますか。
  47. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 具体的な水際でのチェックのやり方につきましては、先生も御承知のように、条約加盟以来ステップ・バイ・ステップで改善をいたしてきておるわけでございまして、当初は原産地の証明書だけでよかったものを、約一年半ほど前でございますが、ちゃんとした輸出許可書に切りかえるというようなことで措置をしてまいっております。パーフェクトなチェックをしているかどうかという御議論につきましては、さっき申し上げましたように、時代を追ってステップ・バイ・ステップでそのチェックの方法を万全を期するようなことで対応しておるつもりでございます。
  48. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうワシントン条約事務局から来たものを外務省が受けとめて、どういうことで手だてを今とっているか、そしてその手だては十分だと思っているか、その点をもう一遍お答えいただきたいと思います。
  49. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 実際にいろいろなところから国内に不正とおぼしきルートで、あるいは必ずしも十分な手続を踏んだ上でなく国内の流通がされているという事実が時折摘発されるわけでございますが、そういう点を見ますと、今のチェック体制というのが完全であるかと言われますと、必ずしもそうではない部分があろうかと思っております。したがいまして、このチェックというのは行政のコストもかかるわけでございますので、その辺、コスト等もにらみ合わせながら、先ほど言いましたように、徐々にそのチェック体制というものを拡充強化していかなきゃいかぬ、こういうふうに考えております。
  50. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今のワシントン条約を批准したままで、チェックには金がかかる、システムも要る、それはわかります。それならば、それをどうやって補強していくべきか。水際作戦だけではだめなんです。これはあなたも御存じのとおりです。キンクロライオンタマリンの例をまつまでもない。どうすればいいというふうにお考えになっていらっしゃいますか。御答弁をいただきます。
  51. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 水際でのチェックをまずは万全を期するということで徐々にやるということ、これが第一だと思っておりますが、御指摘のようにそれだけでは必ずしも十分でない、特に最近そういう例が多々ございますので、管理当局としての通産省といたしましても、国内法的な措置を含めて何らかの別途の措置を早急に検討しなければいかぬというふうに考えておりまして、そういう方向で環境庁を初め関係省庁とも十分相談をしながら前向きの形で対応していきたい、こういうふうに思います。
  52. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 課長さんにいろいろ言っても恐らく限界があろうと思います。  私は、実はつい二、三日前に、アメリカの人権運動の指導者で民主党の大統領候補であったジェシー・ジャクソンさんにお目にかかりました。彼はこう私に言いました。日本は経済的には確かに大きな黒字国だ、しかし、モラリティーの点で必ずしもそうではない、赤字国だと言われても仕方がない面があるのではないだろうかという指摘を受けました。私はまさにその指摘は正しいと思います。つまり、人間社会におけるモラルの問題あるいは道徳と言われる問題、こういう問題を私たちは余りにもないがしろにしてきたのではないだろうか、ワシントン条約にかかわる対応というのはまさにその事例の一つではないだろうか、私は真剣に考えざるを得ませんでした。絶滅に瀕しつつある動植物にしてみれば日本人はまさにインベーダーであります。戦争のときだけ侵略者であるわけではないのです。  率直に申し上げます。私自身も二十年ぐらい前まではワニ革の財布だとかなんとかというものを大変貴重なものと考えやすかった。しかし、そのことを改めていかなければいけないということに気づいた。率直なところ、日本人全体がそういう気持ちになっていくには時間がかかるかもしれない。しかし、地球社会といいましょうか、そういうところに住んでいる生きとし生き続けている人間同士が、とりわけ日本人がそういう点で経済的な大きな影響力を持てば持つほど問われている問題ではないだろうかと私は深刻に反省をさせられました。  そういう意味で、ここ十年ぐらいそんなことばかりやってきたのですけれども、それはそれとして、毛皮やワニ革というようなものが日本人の虚栄心を助長する手だてとして使われてはならない。そういう立場に立つと、お互いに協力し合って日本人のそういう気持ちというものを変えていく努力もしなければならぬことは事実だが、今通産省とのやりとりの中で明らかなように、何らかの不正を取り締まる手だてというものが必要ではないだろうか、こんなふうに思い続けてきました。幸いにして、稲村長官が国内法を制定したい、二月には国会に提案したい、そういう御決意を表明されたことに改めて私は敬意を表したいと思います。その御決意をこの席で改めて御開陳賜りたいと思います。
  53. 稲村利幸

    稲村国務大臣 ワシントン条約の国内法の制定につき、今先生が、国際的に見て日本のモラル、先進国としての、経済だけ優先でなくそういう大変大切な点を指摘をされまして、まさに敬意を表さざるを得ません。国民の間にも環境を大切にしようというゆとりを追求する自然な盛り上がりもできてきておる折から、今一連の通産省、外務省の課長の責任ある答弁を聞き、まさに機熟し、今まで遅きに失していた点が先進国としてあるなと私も思いまして、岩垂先生大変御熱心にこの問題について先ほど来主張されておりますが、私も総理自身にこの問題を申し上げましたところ、エジンバラ公からも直接に依頼されて、また田村通産大臣にも研究会その他で私も再三この問題について必要を迫りました。私自身環境庁として、責任者として関係省庁、通産、外務、大蔵、厚生、農林、内閣、本当に連絡をとり、次期通常国会にぜひとも提案し、この成立を見たいな、先生方の御協力もまたお願いしたいところでございます。
  54. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 稲村さんの御努力に心から敬意を表したいと思いますし、そのあなたの決意が日の目を見るように私どもも及ばずながら協力を惜しまないつもりでございます。  ただ私も、法律だけつくればいいというものではないと思うのです。したがって、その法律の中に最低限諸外国の国内法との関連を含めて必要だと思われる問題点について、これは自然保護局長でしょうか、イエスとかノーとか、そういうことが必要だと思っているとかいないとかという御答弁をいただくだけで結構ですから、四つか五つちょっと羅列をしてみたいと思います。  一つは、ワシントン条約の精神によると、各省庁の責任分担ということをはっきりさせる必要があるだろうと思うのです。これはワシントン条約の中にも、いわゆる管理当局と科学当局というものが指定されなければならない。その権限及び責任を法律に明記する。日本の場合は恐らく管理当局というのは通産になるだろう、あるいは科学当局は環境庁なり農水省なりということになるだろうと思うのですが、そんなイメージでよろしゅうございますか。
  55. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先生今おっしゃいましたように、条約上の管理当局は、我が国におきましては通産省と農林水産省、科学当局は環境庁と農林水産省がそれぞれ指定されておりまして、条約事務局に通報されております。管理当局及び科学当局の権限、役割は条約で定められておるというふうに理解をいたしております。
  56. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 やはり法律条項でもそのことはきちんとしておきませんと、条約上出ているからそれでいいんだという議論にはなかなかならぬと思いますので、その点は今後とも御検討を煩わしたいと思います。  二番目は、これは当然のことなんですけれども、条約該当種の取得、所有、売買、移動及び執行について規定するということは国内法のイロハのイですけれども、言うまでもございませんね。
  57. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先ほども通産省の方から御答弁がございましたけれども、我が国の場合、一たび通関を終えまして国内に入りました場合にはこれを取り締まる法規がないということでございまして、これが一番問題であろうというふうに考えております。しかしながら、これは先生がお述べになる各項目について言えることでございますけれども、現在関係省庁と精力的に詰めておる段階でございますので、個々の項目につきましては関係省庁と十分相談をしてまいりたいというふうに考えております。  さらに若干コメントいたしますれば、特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律というのがございますけれども、これは譲渡、輸出入を規制しておるということでございます。こういうものも一つの参考になろうかというふうに考えております。
  58. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そこのところをはっきりしませんと国内法の大前提が崩れちゃうんで、これも各省庁の御理解をいただかなければなりませんけれども、頑張っていただきたい。  それから権限のある担当官に、差しとめや捜査や書類及び当該物の検査あるいは没収及び逮捕の権限を含めて執行に係る権限を与えるということは最低限必要だと思いますが、ここら辺のところの検討は頭の中にございますか。
  59. 古賀章介

    ○古賀政府委員 諸外国の立法例を見ますと、今先生おっしゃいましたような権限が法律上明記されておる立法例もございます。これもやはりこれからの検討事項でございますけれども、特に没収の規定を設けるかどうか、それから逮捕、捜査等の権限をどうするかということでございますが、取り締まり法規を設けました場合の一般的な捜査の規定というのは刑事訴訟法等に定められておるわけでございますから、そういうような考え方もあろうかと思います。いずれにいたしましても、各省庁と十分相談をさせていただきたいというふうに考えております。
  60. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 古賀さん、各省庁と相談をするということはいいんだけれども環境庁長官がこれだけ異常な決意をなさったわけですよ。だから環境庁自身もそういう方向をきちんと明らかにして、世の中に問うて、それは全部そのとおりにいかないかもしらぬけれども、そういう方向性だけは出さなければ、年がら年じゅう受け身では本当のところを言ってどうもならぬ。二月といったら大変なことですよ、それは大変な御決意だと私は思う。そうであるなら、やはりお役所も全力を挙げて、そういう方向を明らかにしながら取り組んでいくという姿勢をぜひお願いしたいと思うのです。  その次に、罪状に応じた罰則を設けなければなりません。これは最低限のことですが、例えば小売価格に相当する金額を罰金として科する。つまりそんなことをやってももうからぬ、没収されたらかえって罰金で損すると言われるようなことも含めた、つまり小売価格を上回るようなそういうものの基準を設けていくことによってある種の抑止を配慮していいのじゃないか。この罰則のことについて多少お考えになっていることがあったらお話しください。
  61. 古賀章介

    ○古賀政府委員 取り締まり法規を設けることにいたしました場合には当然罰則が伴うわけでございます。その罰則をどのようなものにするかにつきましては、やはり今後十分検討しなければならない。他の同種の取り締まり法規との均衡というような問題もございますし、法務省等との協議も当然必要でございます。先生の御意見も十分参考にさせていただきたいと思いますけれども、やはり我が国は我が国の刑事処罰法規の体系がございますので、その中で考えていくことになろうかと思います。
  62. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いずれにせよ、捜査といいましょうかそういうことに関連をして、公権力がきちんと対応する、違反に対しては罰則を設ける、これはもう当たり前のこととして私は考えてみたいと思うのです。そうでないと、法律をつくったってこれはしり抜けですよ。一遍つくった法律を変えるというのはなかなか大変な仕事ですから、最初からきちんとしていただきたいと思うのです。  それから輸送業者。これは船舶、航空会社に対して、輸送する積み荷の合法性を証明する責任を持たせる、輸送した積み荷に必要な書類が適正なものでない場合には、違法な積み荷を返送する経費を負担させるということが第四回の条約締約国会議の決議で決まっているわけですが、こんなことも頭にございますか。
  63. 古賀章介

    ○古賀政府委員 費用負担の問題はやはり一つ検討課題と申しますか、これは国内法を制定する場合の課題であるということは間違いないと思います。これは最終的にどういう形になりますか、それは今後の検討に待たなければなりませんけれども、条約上は、条約で禁止された動植物を輸出国に返送する場合には輸出国の負担であるというふうな規定もございます。しかしまた、今先生おっしゃいましたような逆の、輸入国側の負担でこれを賄うという決議もございますから、そういうような条約上ないしは決議の上での規定を踏まえながら検討を精力的に続けるということになろうかと思います。
  64. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは輸出した国が受け取らない、そんな銭持って返さなくてもいいみたいな対応というのは間々あるんです。私、個々のケースについて言いません。こっちの動物園に行くはずだったやつをこっちが預かっているというような形もあるわけでして、そういうことはある程度輸送業者にも応分の負担というか責任を持たせるということが、輸送業者自身も啓発するという意味で大事なことだと思うのです。  今の場合の関連で言いますと、不正に輸入した動植物、特に動物の場合、生きた個体の場合ですけれども、返すまでの間の救助センターとでもいいましょうか、そんなことも考えておかないと、キンクロライオンタマリンの場合はちょっとケースが違いますけれども、とにかく動物園ということだったからまあまあそれでも生き延びたというふうに思いますけれども、そういうシステムももちろんお考えいただきたいと思います。これは要望でございます。  さて、これは非常に大きな問題なんですが、長官、お考えおきいただきたいと思うのは、国内法が施行される事前の措置を考えておきませんと、一つは駆け込みの問題があります。もう一つは、前から持っている人に対してこの法律でどうするかというような問題が当然残ってくるわけでしょう。例えばワシントン条約批准、たしか一九八一年十一月でしたか、それ以後どういう手だてかはともかくとして、持っているという人にある種の登録をしていただいて、これは別だよ、外国へ旅行するときに、おれの前から持っていたやつだよということの証明がチケットであるでしょう、ああいう形でしておかないと、あれはいつ入れてきたものかというふうに考える問題があるので、登録というシステムは私もなかなか大変だと思いますけれども、しないと、法律が施行された後とそれ以前に持っている人たちとの問題を区別することができませんので、その点ちょっとお考えおきいただきたいというふうに思います。どうやらワニの問題も国内法整備との絡みでこの際駆け込みで輸入してやっていこうというような気持ちさえするわけでして、大変どうも困ったことだな、どこかでだれかがもうかる仕組みになっているのかいなという感じさえ否めないのですけれども、それはそれとして、その点も御考慮いただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
  65. 稲村利幸

    稲村国務大臣 今先生指摘の点を十分踏まえて事務当局に検討させたいと思います。
  66. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いずれにしても、来年一九八七年度のいわゆる締約国会議というのは、たしか七月カナダのオタワですか、開かれるわけですね。日本はいつも正直なところを言えば、御出席なさる方々も恥ずかしい思いをするわけですから、国内法を二月提案ということなんですから、少なくとも七月の締約国会議にきちんと間に合うように環境庁長官、もう一遍御決意をいただきたい。これは大臣が本気になって走らぬことにはどこもだめですよ。しかもいろいろなかかわりがございますから、その御決意をぜひ承りたいと思うし、それはやはり中曽根内閣自体の責任として対応していただきたいという気持ちを込めて、最後に御答弁をいただきます。
  67. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先ほども申し上げましたように、この問題の必要性は、先進国日本としておそいぐらいである。キンクロライオンタマリンにしてもアジアアロワナにしても、入ってきてから返す方の費用、エネルギーを各省庁が考えて、こういうむだな、しかも恥ずかしいことをしないためにも法の制定を急がねばならないのだ、そのために私自身も、先生の、また各政党の御協力をいただいてぜひ次期通常国会に制定したい。よろしくお願いを申し上げます。
  68. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。  次に移りますけれども、先日、国際鳥類保護会議、ICBPのナイジェル・カラー博士が私の部屋に来てくれまして、かねてから私も気にしていたのですけれども、南西諸島の自然保護といいましょうか、特に山原の問題を指摘されました。今週の日曜日でしたか、NHKの報道特集を見て、これまた大変ショックというよりも私自身の責任をもっと感じなければいけないなというふうに思いました。  そこで、私ちょっと伺っておきたいのですが、ここにUNEP、それからIUCN、国際自然保護連合、WWF、世界野生生物基金でつくっている地図、国際的に貴重な地域、保護地区設定の優先性の高い地域の地図がございます。これを拝見しますと、日本では南西諸島だけなのですね。この地域として指定されているのは日本の中では南西諸島というふうになっているわけで、私はびっくりしたのですけれども、日本政府というか、環境庁はこれに対する評価をどう考えているか、それをどう保護しようとなさっているのか、後で具体的にお尋ねしますので、総論的で結構です。
  69. 古賀章介

    ○古賀政府委員 環境庁といたしましては従来ございます鳥獣保護区、自然公園等の制度を今後とも推進してまいりますとともに、さらに「南西諸島における野生生物の種の保存に不可欠な諸条件に関する研究」、いささか長い題名の研究でございますけれども、この研究を今年度から開始をいたしたところでございます。これは世界野生生物基金日本委員会に委託をいたしまして研究を行うことにいたしておるわけでございまして、これら専門家の御意見等も十分参考にしながら保護対策の一層の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  70. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 本年度からというのは結構な話なのですが、五年計画でしょう。五年たって調査したらいなくなってしまって、何のために調査したかわからないということになる。絶滅した経過を調査するということになりかねない。私がお願いしたいのは、特殊鳥類調査というのがあるのです。これは立派なものです。これはもう既にできているのです。ヤンバルクイナやノグチゲラについてはできているのです。だから、これを軸にしてぜひ具体的な手だてを続けてほしいということを前提として、続いて質問を申し上げたいと思います。  ワールド・コンサーベーション・ストラテジーとでもいうのですか、これの国際的な評価ということを考えまして、特に僕は南西諸島のことも、ほかもあるけれども、国際的な視野でこたえていく努力が必要だろうと思うのです。その関係があったのでしょう、WWFJの大来さんが長官に、林野庁や沖縄県知事に出した要請をお届けしているでしょう。これに対してどのようにおこたえになろうとしていらっしゃるか、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。
  71. 古賀章介

    ○古賀政府委員 世界野生生物基金日本委員会から環境庁長官あての要望書というのが参っております。これは先生御案内のように「貴重な野生生物保護のために、鳥獣保護区の拡大や、その他総合的な保護対策推進のためにご尽力下さい」、こういう内容でございました。私どもは先ほど御答弁申し上げましたように、既存の制度の活用、それからさらにこれからの研究、既存の各種の調査研究の成果並びに知見、そういうものを十分活用しながら対応を進めてまいりたいというふうに考えております。
  72. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも事態の深刻さに対してのんびりし過ぎている感じがするのですけれども、ざっくばらんに聞きますが、鳥獣保護区域だけでは十分でないと私は思う。思うけれども、当面の手だてとして鳥獣保護区の拡張あるいは新設、これをお考えになっていますか。
  73. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先生御案内のように、現在五カ所の県設の鳥獣保護区がございます。環境庁としましては、ノグチゲラなどの生息環境の保全をさらに推進するために鳥獣保護区の拡大が必要であると認識をいたしております。今後とも関係機関並びに地元の方々の御理解を得るための努力を一層いたしてまいりたいと考えております。
  74. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうことを申し上げていいかどうかわかりませんけれども、私も実は林野庁の方ともまた各方面とも接触をしてきましたけれども、とりあえずのところは鳥獣保護区の指定というものが出てくれば、それに見合って木の切り方やあるいは行政指導みたいなこともやりやすくなるという御見解もございます。だから、それをぜひ急いでいただきたい。今鳥獣保護区の拡大、新設を考える、取り組んでいくという御答弁をいただきましたので、それをぜひ時間的にも急いでいただきたい、よろしゅうございますか。
  75. 古賀章介

    ○古賀政府委員 鳥獣保護区の拡大等につきましては、一番問題になりますのは地元との調整でございます。今も御答弁申し上げましたように、関係行政機関及び地元の理解を得るということが前提でございますので、そのための努力を今後いたしてまいりたいということでございます。
  76. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境庁は、自然環境保全地域の指定というようなことをこの地域についてお考えになっていらっしゃいますか。
  77. 古賀章介

    ○古賀政府委員 自然環境保全地域対象として検討をいたしますためには、この山原地区には民有林が多いなど地元との調整にさまざまな問題がございます。先生もその実態は十分御承知だと思いますけれども、そういう難しい問題もございますので、沖縄県とも十分相談しながら考えてまいりたいと考えております。
  78. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 長官、もう御存じのはずですから私が申し上げることもないのですけれども、山原の天然記念物というのは国指定、県指定合わせて十五種ですね。そして、南西諸島の固有種で山原に見られる種というのは、両生類十七種のうち山原が十三種、それから爬虫類が南西諸島全体で十二種のうち山原で八種、哺乳類が南西諸島全体で八種のうち山原で二種、鳥類が南西諸島全体で四種のうち三種いるわけですね。既に絶滅をしてしまった種がございます。そういうふうに考えてみると、これはできるだけ早く対応しなければいかぬし、報道機関が非常に積極的にキャンペーンをしている意味もそれなりに受けとめなければならぬと私は思います。だから長官にこれらの問題について、現地をごらんになることが一番いいと思うのです。ぜひノグチゲラと御対面いただきたいのですが、それはそれとして、そういうことについての御配慮をぜひいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  79. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先ほど来古賀局長から御答弁いただいているように、特に絶滅のおそれのあるノグチゲラ、ヤンバルクイナ等山原地区の貴重な野生生物の保護については、私ども環境庁の立場から、責任官庁から真剣に取り組んでいかなければならない。特に、私も最近長官になってから、なるほどこういう貴重な動物、植物の絶滅は、本当にどういう手段を労しても防がなければならないなと認識を強めております。
  80. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 林野庁、山原地区の森林というのは、国有林七千九百三十二、公有林二万七千六百四、民有林一万五千六百九十二ヘクタールというような状況を聞いているわけですが、大方の森林は県知事の作成する地域森林計画の中に入っているということも承知しております。実は、現実に起こっている事態というのは、国有林以外のところで問題があるわけですけれども、現在の地域森林計画というのはいつつくられて、そしてどの程度の期限になるのか、それから、県知事が森林計画をおつくりになったときに、ノグチゲラやヤンバルクイナなどの鳥獣保護の行政について十分考慮されておつくりになっていらっしゃるかどうか、この辺を御答弁いただきたいと思います。
  81. 三澤毅

    ○三澤説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生お話ございましたように、山原地域の森林、沖縄本島北部の国頭郡と名護市、これが全体で五万一千ヘクタールございまして、そのうち国有林八千ヘクタール、私有林が約一万六千、県有林、市町村林合わせて二万七千、こういうことになっておりまして、私有林と公有林を合わせたもの、これを民有林としているわけでございますけれども、これは沖縄北部地域森林計画ということで、沖縄県知事が昭和五十八年度に立てております。五十九年度から六十八年度までの十カ年の計画、このようになっているわけでございます。  この地域森林計画におきまして一つの方針を出しているわけでございますけれども、この沖縄本島北部というのは、沖縄県における中心的な林業地域であるとともに重要な水源地域である、それから亜熱帯特有の動植物が豊富な地域である、そういうことにかんがみまして、林業の振興とあわせて森林の有する国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全等の公益的機能、これの適切な発揮を図るということを基本的な方針としておるところでございます。
  82. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今三澤さんが御答弁になったような前提ならばこんなことにはなってないと思うのですよ。と申しますのは、あなたも御存じのように、私も現地からの報告を聞きますと、ダムの集水域にもかかわらず大面積皆伐が現実に行われているのです。現に土壌流出が起こっている。こういう問題というのは、あなたが今御指摘をいただいた配慮というものが生かされていないものだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  83. 三澤毅

    ○三澤説明員 お尋ねのダム、これは辺野喜ダムかと存じますけれども、この集水区域が約八百五十ヘクタールございます。県有林、国頭村有林、私有林にまたがっておるわけでございますけれども、これが八百五十ヘクタールあって、この近辺で集水林伐採が多いという御批判を受けているかと思います。この集水区域内は、実は県有林、村有林の通常の伐採計画に従う伐採でございますが、その伐採に加えまして、ダム湛水区域の伐採が重なってしまって、たまたま一部行き過ぎがあるような印象を与えておるのではないか、こんなように考えておるところでございます。したがいまして、湛水区域外につきましては、伐採区域の設定とか、あるいは保護樹帯の設置等に当たって一層の配慮をするよう今後関係機関との調整に努めてまいりたいと思います。  それから、当該地域において、六十年度以降の伐採についてちょっと申し上げますと、大変減少しております。昭和六十一年度については、現在のところ木材生産のための伐採の予定はないというふうに聞いておりまして、一時的にちょっと集中した、そういった嫌いがあるのではないか、このように考えておるところでございます。
  84. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では六十一年度は、これからもう切らないですか。
  85. 三澤毅

    ○三澤説明員 今のところ、六十一年度については予定はないというふうに聞いております。
  86. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先ほどちょっと環境庁にも伺ったのですが、大来佐武郎先生が林野庁長官に山原地区の野生生物保護についての陳情をいたしておりますね。それには具体的に項目が書いてございます。「1 現在ノグチゲラの繁殖が確認されている自然林については禁伐とする。2 ノグチゲラの繁殖の可能性が高いので、大面積皆伐の回避や大径木の保存などにより、その保全に特段の配慮をする。3 ノグチゲラをはじめ、イシカワガエル、リュウキュウヤマガメなどの特産種の生息地になっている河川生態系の保全を図る。」というふうに具体的に載っておりますが、これに対してどんなお考えでお答えになろうとしていらっしゃるか、御答弁をいただきます。
  87. 三澤毅

    ○三澤説明員 国有林につきましては、地域施業計画に基づきまして沖縄営林署が管理経営を行っておりますし、私有林、公有林につきましては、先ほども申し上げましたように、地域森林計画に基づきまして沖縄県知事が森林施業についての指導を行う、こういう仕組みになってございます。したがいまして、国有林について申しますと、そのほとんどが米軍演習地として提供されているわけでございまして、積極的な木材生産の場としての利用は行っていない実情にございます。また、民有林につきましては、WWFあるいはWWFJと申しますか、日本委員会の要請が各方面になされておりまして、もちろん私ども林野庁にもいただいているわけでございますので、林業上の利用と貴重な動植物の保護等自然環境の保全について十分配意しながら、関係機関との調整を図ってまいりたいと考えております。
  88. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ことしの十一月十七日に林政審の答申が出ていますね。その「林政の基本方向」という項目の中に、自然保護を重視する森林施業をやる、それから、皆伐方針を転換して天然林施業を行うことが必要だというふうに実ははっきり書いているわけでしょう。それは、今までの林野庁の方針の大きな転換だというふうに私は思うのです。その延長線上に知床もあったし、その延長線上に白神山系のブナ林もあったと私は思うのです。私は、少なくとも今申し上げた自然保護と、とりわけ国際的に見ても非常に貴重だと言われているヤンバルクイナやノグチゲラの保護という観点を、民有林だけれども、林政審答申は国有林だけではございませんから、そういう意味では林野庁として、沖縄県並びに当該森林組合など含めてできるだけそういうものが保護できるような、そしてWWFの要望、そのとおりにいくかどうかは別として、その筋で行政指導なさるということを御答弁いただけますか。
  89. 三澤毅

    ○三澤説明員 先生お話しのとおり、十一月十七日の「林政の基本方向」におきましてはそのような方向が出されております。私ども、林業は本来的に自然保護という問題をむしろ内在している、対立する概念ではなくて内在する観点でとらえるべきだ、このように考えておりまして、おいおいにそういう方向に持っていかなければならないと考えておるところでございます。  ただ問題は、山というのは自然に放置すればいいということじゃなくて、そこに人がかかわり、人が何らかの手を加えて森林資源を維持造成しながら自然を守っていくということが大切でございますから、林業とそういったものを調和ある形で進めていくのが得策ではないか、かように考えている次第でございます。
  90. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 一般的な意味の林業のことを言っておるのじゃないのです。ノグチゲラやヤンバルクイナのいるこの山原地域の施業についてそういう指導をお願いできるかということを私は言っておるわけですから、御答弁を願います。
  91. 三澤毅

    ○三澤説明員 特に沖縄県御当局とも十分相談しながら、また、ほかの問題につきましては関係省庁とも十分相談しながら慎重な対応をしてまいりたい、かように考えております。
  92. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今の山原地域の国有林といいましょうか、沖縄県に貸している勅令貸し付けといっているものが約四千五百ヘクタールあるわけですね。これは期限が昭和六十四年の五月に切れますわね。それをどうするかということは別として、その際に、私はやはり林業の振興に利用すべき森林、それからそうでなくて貴重な野鳥を保護すべき森林などというふうに線引きして、そして守っていく配慮をお願いしたいというふうに思います。そうすれば何とか生き残れるという感じがいたします。その点はいかがですか。あなたにすぐここで答弁しろと言っても無理でしょうが、ぜひそういうことを生かすように御配慮いただきたいと思いますが、いかがですか。
  93. 三澤毅

    ○三澤説明員 勅令貸付地、先生指摘のとおり六十四年五月までの期限に一応なってございます。もちろんその後の取り扱いについてはいろいろの関係から慎重に検討すべき問題だと考えておるところでございますが、その問題もさることながら、私先ほど申し上げてきましたような考え方に立ちまして、また先生お話趣旨を踏まえまして十分慎重な検討をしてまいりたい、かように考えております。
  94. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に、まだ少し時間がございますから、新石垣空港建設問題について若干の質問をいたしたいと思います。  これは環境庁ないしは運輸省どちらでも結構ですが、沖縄県が今開かれている県議会にアセスのための補正予算の提出を行っておりますが、それはどのような目的でどういう項目で補正予算の要求があったというふうに受けとめていらっしゃるか、御答弁をいただきたいと思います。
  95. 堀井修身

    ○堀井説明員 お答えいたします。  新石垣空港の建設にかかわります環境影響評価につきましては、沖縄県が環境影響評価準備書を作成しまして関係者に縦覧をしたということでございます。それで、各方面からいろいろと御意見をちょうだいしたと私ども聞いております。  お尋ねの補正予算でございますけれども、このような意見を踏まえまして、特に新空港予定地周辺の一部に群生しておりますアオサンゴ等に関しましてこれまでの調査を補完し、環境影響評価に万全を期するということで、アオサンゴ群生域の位置でありますとか規模、その周辺の潮流、こういったものの状況を確認するために調査を補完的に行うというふうに聞いてございます。
  96. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この問題について環境庁が指導なさったというふうなことが新聞報道に伝えられていますが、事実ですか。あったとすればその内容をお聞かせいただきたいと思います。
  97. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 このアセスメントは、先生もう御承知のとおりでございますが、事業者として行われておるもののまたその関連という位置づけでございます。ただ、アセスメントという問題でございますので、県からいろいろな相談はございます。県からのそういう相談に応じまして適切な環境アセスメントを実施するために必要な手続上の、あるいは技術的な事項について助言を行ってきているところでございます。ただ、今回のただいまお話のありました調査につきましては、沖縄県がみずからの判断で実施を計画したものということでございますが、これもその中で特に技術的な問題でございますが、いろいろ相談に乗り、技術的な助言を与えるということはいたしております。
  98. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 加藤さんにちょっとお尋ねしますけれども、アオサンゴに限らず、沖縄県の新石垣空港問題懇話会というところが提言をいたしておりますね。サンゴを移植すればと書いてありますが、サンゴを移植できますか、できると思っていらっしゃるのですか、どうかお答えをいただきたいと思います。
  99. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 私も専門家ではありませんので、それをまずお断りしなければなりませんが、サンゴというのは相当期間を経て生育しているものであると聞かされておるわけでございます。もちろん生育環境とかいろいろな事柄もあると思いますが、沖縄のような地域は、サンゴには日本列島の中では一番条件のいいところというふうに聞いております。移植というのが一般的にできるかどうかということにつきましては、私深い学識を有しておるわけではございませんので明確には申し上げかねるわけでございますが、これも聞き及ぶところでございますけれども、那覇近辺で現在そういう実験と申しますか勉強と申しますか、こういうことをされておるということは承知いたしております。この程度の知識しかございませんので……。
  100. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 片方で実験して、いつになるか、成功するかどうかわからない、そんなことはあり得ないと思うのだけれども。これはぜひ長官にお見せをしたい。これはアオサンゴというのですけれども、「世界」という雑誌の来年の一月号にアオサンゴの群落のことが書いてある。これは世界でも本当に珍しいと言われております。加藤さん、世界にも珍しいと言われているアオサンゴをお守りになるおつもりがあるかどうか、壊すおつもりなのか、その辺の御答弁を煩わしたいと思います。
  101. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 アオサンゴという種類のサンゴにつきましては、これも今ちょっと正確な資料を持っておるわけではございませんけれども、日本列島におきましてはもう沖縄にしかないというふうに承知いたしております。ただ、これは先生も先刻御承知だと存じますが、南洋諸島におきましてはもちろん日本列島より多く存在しておるというようにこれも承知いたしておるわけでございます。  さて、アオサンゴを守るというか、守るという言葉はいろいろな意味合いも持ちますので正確にはなかなか申し上げかねるわけでございますが、貴重な自然環境というもの、これはたまたまゾーニングと申しますか地域を指定して守っておるものもございますし、それから身近な自然ということで維持していきたいというものもございますし、あるいは保護を図りながら利用するという森林の問題なども自然一般についてはあるわけでございます。今のアオサンゴの問題について考えますと、日本列島の中では貴重なものであることは確かでございますので、これは何とか維持し、かつ日本の国内ではそこでしか見れないものであるということから、また現在でもそこへ夏に訪れておられる方も多いように伺っておりますので、そういう意味合いでは大事にしていけたら大変ありがたいと考えておるものでございます。
  102. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 加藤さん、行ったり来たりしないで、お残しになるおつもりなのかどうかと聞いているのですから、残したい、残す、そう言えばいいのですよ。  それで、あなたも認められたように日本にそこしかない。しかも、その群落自身としてのスケールを含めて世界でも数少ないということはもうはっきり確認をされているわけですから、それを守っていく。そうでなきゃ環境庁といって看板を掲げていられなくなってしまう、そういうふうに思いますので、その点はぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。  さて、アオサンゴ礁を残すということになると実際問題として埋め立てできないですよ。何か滑走路を小さくするとかどこかへ計画を移転するとかというような御相談、環境庁にございませんか。
  103. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 現時点でそういう具体的なことについては承知はいたしておりません。ただ、どういうふうにしたらそれが守れるかという手法等を勉強していくのもアセスメントの中の重要なポイントではないかと考えております。
  104. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうやったら守れるかといったって、そこのところを埋め立てちゃったらサンゴは生きっこないじゃないですか。だから手法といったって手法はあるものじゃないのですよ。移植のことでごまかしたってそれはだめなんです。それはもうそれ以上言いますまい。環境庁はアオサンゴを守りたいという明確な御答弁をいただいたというふうに考えて、そのことを前提にして我々は見詰めてまいりたいと思います。  さて、県自身もアセスの、念のためにという言葉はあるにしても、結果として不十分さをお認めになったわけですが、予算がついても少なくとも来年の三月三十一日までに予算が執行できるというような体制にはなりませんね、堀井さん。
  105. 堀井修身

    ○堀井説明員 新石垣空港の予算の執行の件でございますが、先生御案内のとおり、六十年度繰越予算及び六十一年度の予算おのおの三億五千万ございます。先ほど来の問題から本格着工に至っていないということでございます。現在沖縄県で環境アセスメントの諸手続と申しましょうかそういうものをやっておりますが、この後公有水面埋立法に基づきます諸手続等があるわけでございます。こういうものの時間を考えますと、六十一年度の予算の執行は極めて難しい状況にあると言わざるを得ないと考えてございます。
  106. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうすると前の方は二年にわたって不用額になりますね。
  107. 堀井修身

    ○堀井説明員 繰越予算となっております六十年度の分につきましては、不用額とせざるを得ないという状況でございます。
  108. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 堀井さん御存じのように二年にわたって不用額ですね。
  109. 堀井修身

    ○堀井説明員 そのとおりでございます。
  110. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大蔵省主計官、大変お忙しいときに申しわけございません、予算編成で忙しい最中に。しかしあえてお願いをしておかなければなりません。二年にわたって不用額を出しています。しかも、実は簡単にできなくなるわけです、全体の状況を見ても。私、この間沖縄タイムスという新聞が朝日新聞と一緒になってやった世論調査を見ますと、最初はちょっと違いましたけれども、今では慎重論というものが五〇%を超えているのです。新石垣空港について慎重論が非常に多い。先島地区、つまり当該地域でも五八%の慎重論だというふうに指摘しています。県民世論もそういうふうに変わってきているのです。事がわかればわかるほどそうなってきているのです。  私は、実は復帰前に沖縄に何回か行きまして石垣島を現実に見ています。本当にすばらしいサンゴ礁がそれこそ全島を取り巻いていました。しかし、最近石垣へ行きましてびっくりしたことは、かつて非常にすばらしかったサンゴ礁が死屍累々という状態でございます。その理由や経過について私は申しません。かろうじて白保地域に残っているサンゴ礁、これが今雑誌のグラビアでお届けをしましたように、大変立派なサンゴ礁として残っているのです。  私は率直に言いますけれども、石垣島全体をとらえても、あのサンゴ礁というのは文字どおり石垣島のすばらしいサンゴ礁を代表するものだ、そしてそこにしか残っていないというふうに言ってもいい。そういうものをぶち壊して、そしてお客様を呼ぶといったって、金の卵を産む鶏の話のようなもので、鶏を殺してしまったら卵は産みませんよ。そういう意味ではサンゴ礁というようなもの、そしてあの自然、本当にそこに息づいている人々の生活というようなことも考えたら慎重の上にも慎重を期さなければならぬが、ぼつぼつ結論を出した方が利口ではないかと私は思います。  それはそれとして、来年度予算も、運輸省から申請がございましたからイージーにくっつけていきますというようなことはなさらないでしょうね。財政の大変厳しい折からでございますので大変恐縮ですけれども、長い間お待たせいたしましたが、そういう質問で恐縮ですが、武藤主計官に御答弁をいただきたいと思います。
  111. 武藤敏郎

    ○武藤説明員 六十二年度の予算編成につきましては、現在鋭意検討を重ねておるところでございます。お話しの新石垣空港の予算につきましても現時点では検討中ということでございますが、今お話のありましたような地元の情勢等を踏まえながら、運輸省を初め関係者と十分相談してまいりたいと考えております。
  112. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境庁長官に最後にお尋ねというかお願いもあわせてしてまいりたいと思うのですが、今私が申し上げたような石垣島の状況、白保の状況があるわけです。確かに行政が決断をし、運輸省がそれに対する認可をしたことは事実でございます。それはそのときの状況があったことは私は否定しません。しかし、その後例えばお客さんはどのくらいになるか、大幅に下方修正をせざるを得ない、農産物の輸送のためだ、コストが高くついてしまってそんなものはやれるものじゃない、あらゆる事情から見て、時間がたつとともにその必要性あるいは優先度と言っていいかもしれない、非常に低いものになっていることも現実なんです。だから、過ちは改めるにしかずというふうに言うが、私は過ちとあえて言わない。当時の状況の判断としてそれはあったとしても、今日の状況はそれとは違っている。だから今日の状況に合わせて再検討を願いたい。あえて私は行政のメンツとか立場上とかということでこの問題を処理してはいけない、こんなふうに思います。そういう立場から言うと、今日の状況の中で、この問題について具体的に手を染めていないというか客観的な判断ができるのは唯一環境庁だと私は思う。さっき申し上げたように、アオサンゴの群落は残したいということをおっしゃった以上は、それらのことも含めて、単にアオサンゴだけじゃありません、ぜひこの問題についての再検討を煩わしたいし、環境保護の立場を毅然として貫いていただきたい、このことだけ、難しいことは言いませんから、御答弁をいただきたいと思います。
  113. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先ほど来先生の御意見を十分拝聴させていただき、行政の独立で運輸省に云々は私の立場からは差し控えますが、先生の御意見を体し、事業主体である沖縄県が環境保全に十分配慮し、特に今見せられたアオサンゴ礁の保全に十分な慎重な配慮を払うことを私からも切望いたします。
  114. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  115. 林大幹

    林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  116. 林大幹

    林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。金子みつ君。
  117. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、きょう最初に松くい虫防除の問題で林野の方に質問をしたい。  お尋ねしたいことは、松くい虫被害対策特別措置法という法律が松くい虫防除のために制定されて実施されているのですが、それが今回三回目になりますか、五年延長しようという計画があるようでございます。そこで、その問題について少しお尋ねしたいことがあるわけなんです。  松くい虫防除特別措置法というのが昭和五十二年に制定されて、そしてその後五十六年に期限が切れたのを延長されて、さらにそれがまた延長されよう、こういうことなんでございますけれども、先般どうしてそんなに五年、五年と安易に延ばすんだろうと思いまして、延ばさなければならない理由を説明していただいたのです。説明を伺いました範囲では、伺いながらどうも釈然としないわけです。いろいろ考えてなさっているとは思うのですけれども、効果が余りないわけなんですね。一番目的とするところの松を枯らす虫、マツノマダラカミキリという虫が、これもやはり虫だと思うのですけれども、マツノザイセンチュウという小さな虫、これを体につけて運んで飛んでいって、あちこちの松の木にとまって、そしてとまっている間に材線虫というのは松の幹の中に入り込んでいって、そしてその松を枯らしてしまう、こういう問題のようなんです。それで、どうもお話を承っておりますと、イタチごっこみたいに幾らやっても追いつかないという感じを非常に受けるわけなんです。  そこで問題は、そのことが解決されないだけじゃなくて、そのために手段方法として行われていることが、防除のための薬品をヘリコプターで空中散布するわけです。松林の上に空中散布をするのですが、空中散布をするために、目的とする松の木だけではなくてほかのものにも弊害を及ぼす、こういう問題があるわけなんです。周りに及ぼしている影響が非常に大きいということ、これが一つの問題だと思うのです。それから、費用をかけて空中散布をしても余り効果が上がらないというふうなことになっていくといたしますと、これはもう一遍原点に戻って考え直さなければいけないんじゃないだろうかというふうにすら思うわけなんです。  それで、幾つかお尋ねしたいことはあるのですけれども、手段方法として空中散布以外にないのかということが一つ知りたいわけですね。空中散布以外に、よそに被害を及ぼさないで、枯れる松の木だけの対策ということを何か考えることはできないんだろうか、そういうことがひとつお尋ねしてみたいと思うことなんです。専門家の方たちが研究していらっしゃるのでしょうから、何かいい方法も考えられるのじゃないかなと思うのですが、そういうことが一つ。  それからもう一つは、松の木だけじゃなくて周りに及ぼす被害が大変に大きいものですから、これ以上空中散布をやらないでもらいたい、言葉をかえれば今度の法律の延長というのを中止してもらいたいという要求が市民の中から出てきている。つい昨日ですかそういう集会があって、林野庁の方も出席されているはずだと思うのですけれども、そういう要求も出てきております。殊に私どものところに入ってまいりました問題は、空中散布になりますものですから、松の木だけじゃなくて大きな被害を受けたのが養蚕をやっている農家です。桑の木、桑の葉っぱに薬剤がかかりますから、その桑の葉っぱを食べた蚕が弱って死んでいく、そして普通の繭をつくることができない、大変問題になってこれは裁判ざたにもなっているわけなんです。まだ裁判の方は解決してないようですけれども補償が全然出てこないという問題があって、これも一つ問題になっているわけです。  そこで、そういう問題もあるということを考えながら、空中散布の方法をそれでもここでまた五年間延ばそう、どうしても延ばそう、強引にしていこうとされるのかどうかということをひとつ伺わせていただきたいと思います。
  118. 山口夏郎

    ○山口説明員 御説明申し上げます。  一点目の方法論でございますが、松くい虫、これを防除する方法でございます。一つは駆除という方法でございまして、枯れました木を切り倒して、倒した木の中に入っている材線虫を運ぶマダラカミキリの卵、幼虫を薬をかけて殺すという方法、または伐倒した木を焼却して殺すという方法がございます。  それからもう一つは、予防の方法でございますが、現在の技術の中では農薬の散布という方法、地上から散布する方法なりまた空中から散布する方法でございまして、これ以外の方法というものにつきましていろいろとこれまでも研究してまいりましたし、現在も研究を進めておりますが、天敵だとかそういう生態的な防除法だとかいうものについて現在やっております。誘引剤ということで虫を呼び寄せてとってしまうという方法もございます。しかしマダラカミキリの誘引剤につきましては、誘引物質は現在一応見つけておりますけれども、ただこれが一ヵ所に集めて捕虫するというような実用的な段階にまでまだなかなか至っておりません。そのほか天敵等につきましてもいろいろ研究者の方で、林業試験場等で研究していただいておりますけれども、実用化に至るような有効な方法は現在まだ見つかっておらないという状況でございます。  私どもといたしましては、今の段階ではこの松くい虫の被害というのは非常に急速に蔓延していくということでございまして、しかも被害が非常に大きくなっているという状況の中で、何とかこれを鎮静化させようということでこの特別措置法を五十二年にお願いいたしまして努めておるわけでありまして、被害の状況につきましても、昭和五十四年には二百四十三万立方というような膨大な被害が出まして、その後私どもいろいろ努力いたしまして、現在、昭和六十年で百二十六万立方まで被害を落としてきております。私どもとしては、さらにもう一息努力をさせていただかないとまたこれが拡散するということで、現在これにつきましてさらに制度に所要の改善を加えた上で延長をお願いしたいということで検討しているところでございます。  特別防除に当たりましては、確かに農薬の散布でございますので、私どもといたしましても、場所の選定に当たりましてはいろいろと人家の周辺を避けていくとか、密集地帯は避けるとか、それから水源地辺を避けるとかいうような配慮をいたし、また実行に当たりましても生活環境、自然環境というものにできるだけ影響を与えないように、また農林漁業等にいろいろと危被害が及ばないように努力してやっていくべき必要な措置を講じてやっておるところでございます。
  119. 金子みつ

    金子(み)委員 お話を伺ったのですけれども、五十二年に法律をつくられたときに、大変皮肉なことに新しい法律をつくったと思ったら翌年からぐっとふえたのですね。そしてそれがずっとふえ続けていった。そこで、そのことを防除するために五年延ばした、これはわかるのですね。五十六年に延長した、五年だけではだめだったんだということで延ばされたのはわかるのですが、今回またそれを延ばす。今お話もありましたように半分近くまで害が少なくなってきたということですが、これをここであと五年延ばす、そうしたならば、果たしてこの問題は解決するのかどうか、果たして目算があるのかどうか、そしてまた同時に、一体これはいつまで続けていくおつもりなのか、どうなったらやめるのか、どこまでいったらこれはやめることにするのかという問題が一つあると思うのですね。それをひとつ教えていただきたいと思います。
  120. 山口夏郎

    ○山口説明員 御説明申し上げます。  五十二年に法律をお願いいたしまして、それに基づきまして防除に取りかかったわけでございます。五十二年の当初から、この法律目的といいますか目標とするところというのは、被害が微害終息という状況になれば目的を達するというふうに私どもとしては考えているわけでして、いわゆる松くい虫が非常に急激に蔓延していく、しかも普通の従来のいろいろの森林病害虫には見られないような勢いで被害程度が非常にひどいということでございまして、それを何とか一般的なレベルといいますか、ほかの病害虫と同じように地域的な問題だ、そういうようなところに閉じ込められるような形にまですればいいのじゃないかということで、その後は通常的にいろいろと、森林病害虫等防除法というような法律もあって対策がございます。そちらで対応するということを目標といたしておりまして、いわゆる微害終息型と申しますのは、今百二十六万立方でございますが、これが半分程度までいければこの法律としてはほぼ目標を達成できるのじゃないかなと私どもは考えております。
  121. 金子みつ

    金子(み)委員 そうなんですね。幸い百二十六万立方くらいまでなってきたから、それの半分というと六、七十万くらいになったらそこでやめてもいい、今のお話ですとこういうお考えであるわけですね。そうすると、これから五年延ばしたらそうなるかというお見通しがあるわけじゃないのですよね。あるわけじゃないけれどもやってみよう、こういうことになるのでしょうね。あるいは目算がおありになるのですか。
  122. 山口夏郎

    ○山口説明員 私どもといたしましては、この法律をもし仮にまたあと五年延ばさせていただきましたら、その中でそちらの方向に最大限の努力は払っていきたい、かように思う次第でございます。
  123. 金子みつ

    金子(み)委員 私は今こんなことを考えたのです。これは五十二年につくったときは八十一万だったのですけれども、五十三年からぐっとふえて二百万立方ぐらいになってしまったのです。それで三年間ぐらいそういうのが続いて、五年目にこれをまた延ばしました。延ばしましたら、幸いなことに減ってきているわけです。半分じゃありませんけれども、百四十七万、百二十四万というふうに下がってきておりますから、ただ五年ずつ延ばしていけばいいと安易に延ばしているような感じがするのですけれども、それだったら、幸い下がってきているんだから、いっそここでちょっととめてみたらどうだろう。というのは、余りに周りの被害が大きくて、やめてくれという声が上がってきておりますでしょう。それで養蚕業なんかが裁判ざたになるぐらいの問題を起こしているのですから、ここで仮に一年でも二年でも休止してみたらどんな結果になるだろう。そんな行政なんてないよとおっしゃるかもしれませんけれども、そういうことだって考えてみてもいいんじゃないか。これは余り変わらないんじゃないかと思うのです。どうなんでしょう。  空中散布で虫をなくすことのメリットと、周りに広げられていくところのデメリット、被害が及ぶデメリットとを比べて考えてみたならば、果たして五年続けていいのかどうかということは非常に疑問があるわけなんです。周りの被害ということになると、林野庁だけでなくて環境庁の問題にもなるのだろうと思います。環境庁に対してきょうこの問題の質問をするつもりではございませんでしたけれども、そういうふうになった場合に環境庁ではどうなさいますか。周りに及ぶ被害が非常に大きくなるということがわかっているのです。周りに被害がないのならいいんだけれども、周りに被害が起こってきているということがあるわけです。通告した質問ではありませんけれども、そういうのはいかにも環境衛生には関係があると思いますので、環境行政の上からも問題じゃないかと思うのですが、それはどうお思いになりますか。一言だけおっしゃっていただければありがたい。
  124. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 お答えいたします。  空中散布をすることに伴いまして、自然なり私たち人間生活との関係で被害を及ぼしてはならないというような立場から、私たちといたしましては、従来からそうでございますが、法律をつくるとき、あるいは五十七年に改正をするときに林野庁とよく協議しまして、そのような被害がないやり方でやるということで合意をしておるわけでございます。  今回また期限切れになりまして、次にこれを延長というお話でございますが、私たちといたしましてはまだ正式に林野庁からそのようなお話を聞いておりません。またお話が当然あるのだろうと思いますが、そのときには、従来考えておりますような自然環境あるいは生活環境の保全という立場で私たちとしてはいろいろ御協議に応じてまいりたいと考えておる次第でございます。
  125. 金子みつ

    金子(み)委員 この問題では余り時間をとりたくないのですけれども、今のお話のように、環境庁のお立場からは周りに被害がないということを前提に話し合いをしたんだということなんですが、結果はそうなってないですよ。結果は周りに大きな被害を及ぼしているわけなんです。ですから、これは今ここで議論いたしませんけれども、実態は決して環境庁が考えていらっしゃるような形になっていないということをもう一遍認識していただいて、そしてもう一度環境庁と林野庁で話し合っていただけないでしょうか。そして何かいい方法を考えられないかということを御相談いただきたいと思います。ただ空中散布を五年続ければいいというふうに簡単に考えないで、これから先五年やるのだったらかなり大きな問題が起こってくる可能性がありますから、五年と言い切らなくていいんじゃないでしょうか。あと一年やる、二年やってみる。こういうことは、時限立法になっているんだったらその都度直すのは面倒かもしれませんけれども、それはやはり一つの仕事ですから仕方がないと思いますので、五年もやるなんということを今から言わないで、せめて二年ぐらい、半分ぐらいにしてやってみて、そしてということに考えられたらどうでしょうか。  そして、それをなさるについても、これからの問題ですから環境庁ともう一遍よく話し合っていただきたい。周りの被害というものを無視してやられるのは困ると思うのですね。もしこのまま続けられるようになるとすればまた問題が起こると思います。次々と被害者が出てきたりすると困りますので、そのことを考えながらやっていただきたいと思いますが、それはどうでしょうか。林野庁、そういうふうに考えていただけますか。
  126. 山口夏郎

    ○山口説明員 現在私どもにおきましては、再度延長をお願いしたいということで検討を進めております。また成案を得ました暁には、当然環境庁関係省庁、これらとは十分御相談、協議させていただきながら進めていくという考えでおります。
  127. 金子みつ

    金子(み)委員 もうこの問題は取り上げませんが、私が今最後にお願いした、五年と言わないで二年なり三年なり短い期間でまずやってみるということをぜひ考慮していただきたいので、環境庁の方にもお願いしておきますから、相談して考えていただきたいと思います。  次に、環境庁の問題になりますが、先般、この前の委員会のときにも何人かの同僚の委員質問もなさいましたし、そして制度見直しが実現したということを承知しておりますが、公害健康被害補償制度の問題、これの見直しの問題なんですけれども、決まったことではありますけれども、まだ何となく納得できない点がありますので、この問題について少し質問をして、そしてお考えを聞かせていただきたいと思います。  まず一番初めに長官にお願いしたいのは、この公害健康被害補償制度見直し案に対して審議会からの答申をおもらいになっていらっしゃるし、その答申答申として、そのときに答申と一緒に会長から談話が発表されておりますね。中央公害対策審議会ですが、その会長の和達さんから会長談話というのが特に出されている。御存じだと思います。お読みになっていると思いますけれども、こういう談話が出るということはやはり問題があっているんだなということをすぐ感じますね。すんなりと答申が出たというんじゃなくて、答申答申として出したけれども、これだけのことは言っておかなければならぬという意味の談話だと思うのですね。ですから、この談話には大変意味があると私なんか思います。そこで、この談話を環境庁長官としてはどういうふうに受けとめられていらっしゃるのか、どういうふうにそれを考えていらっしゃるのか、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  128. 稲村利幸

    稲村国務大臣 金子先生の御質問ですが、この公害健康被害補償制度見直しの問題について十月三十日の中公審の総会が開催され、答申が取りまとめられました。答申に際し、中公審の会長の談話が申し添えられましたが、これは、答申を取りまとめるに当たり、一部の委員から指定解除について反対あるいは時期尚早との意見があり、これを明記するとともに、総会の総意を受けて、今後の環境保健に関する施策の実現、大気汚染防止対策のより一層の推進等に万全を期すよう行政に要請をしたものと受けとめております。
  129. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、この談話の内容を考えながらこれからの行政を進めていこう、こういうお考えというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  130. 稲村利幸

    稲村国務大臣 そのように受けとめております。
  131. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは、中身をお進めになるその中身の具体的な問題で少しお尋ねしたいことがございます。  時間の関係もございますのでポイントだけにいたしますけれども、この公害健康被害補償法の今回の見直しの問題は、詳しくは申し上げる必要はありませんから申しませんけれども、結局端的に申しますれば、従来中心に据えられておったSOx、硫黄酸化物、その問題がここ十年ぐらいかかったわけではありますけれども一応ほぼ解決された、こういうふうに報告などで受けとめておられて、したがって第一種の四十一地域の指定は取り外すことにしたというふうになっております。しかし、指定は取り消したということは、そういうわけだから取り消したんだというふうにはなっておりますけれども大気汚染そのものは決して改善されていないわけですね。そのことはこの会長談話の中にも入っておりますね。大気汚染改善されたわけじゃないので、SOxに基づくところのものはほぼよくなった、こういうふうにしか考えられないわけです。  そこで、問題は幾つか残るわけだと思うのですけれども大気汚染改善されていない。ここにも書いてございますように、窒素酸化物などの大気汚染については、大都市などにおいてまだまだ改善する余地があるんだというふうに会長がおっしゃっておられるように、特に大都市自動車の排気ガスによるNOx、窒素酸化物、これによる被害というのはむしろどっちかといえば増加しているのじゃないだろうかというふうに考えられるわけです。この問題についても調査されたところだと思うのですけれども、今度の見直し対策の中身にこの窒素酸化物に基づく被害に関する部分がうたわれていないというのはどういうわけだろうかな、こういうふうに思うわけなんです。  このことについては余りはっきりと言っていないのですね。後の方に出てまいりますけれども、取り扱いが違ってきたわけですね。例えば、SOxの場合にはその被害者である一人一人の患者に対する補償その他の措置が図られてきたけれども、今回はそういう取り扱いはしないということが後の方で出てまいりますね。その取り扱いの違いというのが出てきているわけで、そのことも後ほど伺いたいと思っている点なんです。環境庁がこれから見直し制度に基づいて進めていこうとなさっていらっしゃる行政の中身としては、NOxの問題をどの程度に考えていらっしゃるのかということが非常にはっきりわからないわけです、これから見ますと。そのことがどういうことなのかということがひとつ知りたいということがございます。まずそれから聞かしていただきましょうか。
  132. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  専門委員会報告におきましては、ただいまのNOxの問題については、我が国の最近の大気汚染では、二酸化窒素とそれから大気中の粒子状物質が特に注目される汚染物質であると考えられる、このようにしているわけでございまして、窒素酸化物等についても十分に検討を加えた上で総体としての大気汚染の健康影響について述べておられるわけでございます。このように言っておるわけですが、現在の大気汚染が、総体としてぜんそく等の発病と経過に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できないものの、昭和三十年から四十年代と異なり、現在の大気汚染ぜんそく等の主たる原因とは考えられない、このようにしているわけでございます。したがいまして、この答申では、現行の四十一地域につきましても、現在の大気汚染ぜんそく等の主たる原因じゃないということから、汚染の原因者の強制的な負担によりまして個人に対して民事責任を踏まえた補償を行う合理性が失われているということから、現行四十一の指定地域のすべてについて解除することが相当だ、こういうふうにしたわけでございます。  またそのほか、窒素酸化物を含む問題につきましても、この専門委員会の科学的な評価を十分に踏まえました上で、窒素酸化物を含む現在の大気汚染について、健康被害の予防、回復対策とか、あるいは調査研究の推進等環境保健対策実施大気汚染防止対策強化を提言しているのがこの中央公害対策審議会答申内容でございます。
  133. 金子みつ

    金子(み)委員 それは答申がそういうふうにあったわけですよね、今御説明いただいたのは。それはわかっております。  そこでお尋ねしたいのは、だから四十一地域はやめたんだということはわかりました。四十一地域はやめて、今までの患者には補償は継続していきます、しかし、これからの新しい人にはいたしません、こういう意味ですね。その新しい人というのは、新しくSOxで患者になった人という意味なんでしょうか、それともNOxの方の患者という意味なんでしょうか。新しい人には何もしないという言い方がしてありますけれども、それはどちらですか。
  134. 目黒克己

    目黒政府委員 専門委員会の報告並びに中公審答申、いずれにおきましても、この窒素酸化物を含めまして総体としての大気汚染、こういうことでただいま申し上げましたようなことの結論に到達しているわけでございます。したがいまして、現状大気汚染の中で、将来あるいは今後新規に出てくる患者さんに対しては、個別の補償ではなくて地域全体としての環境保健対策、こういう意味で、あくまでも窒素酸化物を含む全体としての大気汚染、こういう趣旨答申あるいは報告は述べられているのでございます。
  135. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、個々の人に対して補償するんじゃない、地域対象に考えるんだ、こういうお話ですね。そこまでわかりました。  そうすると、大都会の場合には非常に窒素酸化物の弊害がひどいということはもうわかっていらっしゃると思いますから申し上げませんけれども、殊に幹線道路沿いなんかすごいわけですよね。それで、たしか前国会のときの質問で私申し上げたと思いますが、東京の場合なんかですと環七の沿線ですね、一番ひどいところは。環七、環八ございますが、特に環七はひどいので、環七の沿線の左右百メートルぐらいまでは指定してほしい、あるいは百メートル以内に住んでいる人たちを救済してもらいたいということを申し上げたのを覚えておりますけれども、それはならなかったわけです。しかし、今度の地域対象として考えるということになりますと、今申し上げたような幹線道路沿いの住民が住んでいる地域、こういうものは対象として新たに考慮の中に入れていこう、こういうふうに考えていらっしゃるわけでしょうか、その辺をはっきりわかりたいのですが。
  136. 目黒克己

    目黒政府委員 あくまでも総体としての大気汚染状況でございますので、指定地域の中におきましても、沿道等の者で、もしそういうNOx等の大気汚染あるいは現状大気汚染の中で患者さんが出てくるとしますれば、そういう方々について、あるいはそういう可能性のある事柄に対しまして、個別に行うのではなくて総合的な対策を行う、こういうふうな趣旨答申案は書かれているところでございます。
  137. 金子みつ

    金子(み)委員 お話はわかったように思いますけれども、総体的に考えて沿道を対象にする、そこに住んでいる個々の人にするのではなくて沿道を対象にするのだということになりますと、沿道に対する対策というのが出てくることになるのですね。窒素酸化物ですから、公害を出す汚染源、例えば自動車の問題あるいは燃料だとか自動車の会社だとかメーカーの問題だとか、いろいろ関連が出てくると思います。道路の問題も出てくるかもしれません。そういった問題を対象として物を考えるのであってそこに住んでいる人のことを考えるのじゃないんだ、こういうふうに理解するんでしょうか。
  138. 目黒克己

    目黒政府委員 これはやはり第一種の指定地域として指定を解除されました地域を中心に、その地域におきます人口集団、こういうものを対象として、人の健康に着目するなどして環境保健対策推進すると同時に、環境自体そのものに着目した環境改善事業といったような二つのものを含めて考えているものでございます。
  139. 金子みつ

    金子(み)委員 私は頭が悪くてよくわからないのですけれども人口集団対象に考えるということになりますと、相手は人間ですよね。やはり個々の人じゃないけれども、その地域に住んでいる全体の住民を対象にして、こういうふうになるのでしょうか。そういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
  140. 目黒克己

    目黒政府委員 この沿道の問題にかかわりますただいまの御指摘の点等につきましては、当然科学技術的にも、技術面から見まして、例えばどこまで区域を区切るとかいろいろ難しい問題があることは事実でございます。こういう点につきましては今後調査研究を進めていくというような提言がなされているわけでございますが、先生指摘のように、一人一人個別に気管支ぜんそく等原因大気汚染が主たる原因ではないということでございまして、これはなかなかはっきりしない面もございますので合理性がなくなってしまったことでございます。しかし、さはさりながら、若干健康に影響を与えることも否定し得ないということ等々を含めまして、ここに住んでおります人に対して、人口集団に対してこれを適用しよう。したがいまして、具体的にどうするということについては現在検討いたしておるところでございますが、少なくとも中央公害対策審議会答申あるいは専門委員会報告等におきましては、そういうものに対して調査研究を行うとともにそういう対策を立てるように、こういうふうな御提言があったところでございます。
  141. 金子みつ

    金子(み)委員 ちょっとわかりにくいですね。なかなか一般の人は理解しにくいんじゃないでしょうか。  そうすると、今のお話なんかはこれと関連しますか。「環境保全長期構想」というのを今度環境庁でお出しになっていますね。この中に似たような問題が出てくるのですね。この構想の中の、お持ちでしたら三ページですけれども、ここに「(1)環境への配慮の徹底」というのがあります。その中の①、②を読みますと、今の問題とつながってくるような気がするのです。これは結びつけて考えてもいいことなんでしょうか、それともそれはまた全然別の問題なんでしょうか。
  142. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 「長期構想」の関係でもございますので、不十分な点があればまた担当部長の方からの補足もいたさせますけれども先生ただいまおっしゃいましたのは「長期構想の要点」の方かと思いますが、「環境への配慮の徹底」というのは環境政策を考えていく上での大きな一つの視点として出ておる項目でございます。その中で、広い意味で言えば集団的なといいますか地域的な特性への配慮というのは関係はあるかと存じますけれども、この「長期構想」というのは二十一世紀への準備というようなことで、ここ十年をにらんだ物の考え方というものでございますので、必ずしも直截につながるものではないと思います。
  143. 金子みつ

    金子(み)委員 そうしますと、この①のところで「大都市圏を中心に、窒素酸化物による大気汚染、閉鎖性水域等の水質汚濁、交通騒音等未だ改善の遅れている分野が残されており、」というふうにうたっておりまして、②の方に参りまして、「このような「新たな汚染可能性」について、事業者による自己管理の徹底を図るとともに、環境を監視し、汚染を生じさせないような管理のシステムの整備を図る。」というような言い方がありますね。こういうのはつながってくるんじゃないでしょうか。先ほどのお話のように、個人対象にするんじゃなくて地域対象にしてその対策を立てるというその対策を立てるの中に、後ろにこういう考え方があっていると考えてもいいんじゃないでしょうか。そうお思いになりませんか。
  144. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 この中で、特に現状並びに今後の問題としては、都市の問題それから生活雑排水等の問題というようなものを意識してきておりますので、若干そういう関係のものはございますけれども、最後に先生がおっしゃいましたように、この公害健康被害補償制度のあり方を直接念頭に置いてという部分ではないわけでございます。
  145. 金子みつ

    金子(み)委員 直接つながらないというふうにおっしゃっておりますから、そうですかと思って理解しようと思いますけれども、考えの奥にはこういうものがあっているんじゃないかなと私は思うわけなんですよ。だからこういうものを今度「構想」としてお出しになったんじゃないかなというふうにも思ったのですけれども、それは思い過ごしですかね。
  146. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 御趣旨がわかってまいりましたのでございますが、この「長期構想」は前の計画があったわけでございますが、十年たちまして、ちょうどそれの目標とされておった時期が本年でございますので、今後の十年を見通すために出したものでございまして、タイミングとしてはそちらが主でございます。ただ、考え方の中に、確かに今後の大きな方向というのはここにも書いてございますように、例えば大都市圏であれば窒素酸化物による大気汚染というような問題が特に注目されなければならないという意味合いでは先生の御指摘につながる面はあると存じます。
  147. 金子みつ

    金子(み)委員 そのことはわかりました。  関連いたしますけれども、このいただいた資料の中で、拝見しましたら、大気汚染改善する環境改善事業のために民間拠出による基金をつくるというのがございますね。これはどんなものをどのように用意して――民間拠出なんですよね。だからこれは補償に関する問題でしょう。そうすると公的補償はないということで民間による拠出で基金をつくる、こういう意味なんですね。ここのところをちょっと御説明いただけますか、どういう意味か。
  148. 目黒克己

    目黒政府委員 今の基金の問題でございますが、環境保健事業の中の新事業と言われておるこの基金でございますが、今回の中央公害対策審議会答申の中で、今後の環境保健に関します施策の中の一つとして、特に健康被害防止事業というものを実施することが提言されているわけでございます。この事業の財源は、汚染原因者等がその社会的責務の観点から拠出される資金を基本とする、こういうふうに答申では考えられているわけでございます。その拠出に当たりましては、当然経済界の協力が必要なわけでございます。そういうことで、先般来経団連等に対して、この中公審答申についての理解協力を要請しているというふうな事実もあるわけでございます。  また、先ほどの健康被害防止事業の点につきましても、単に対象といたします人口集団が既認定者とかそういうことだけに限らず、健康な人も含めた広く地域のというふうに私どもこの答申理解しているということを改めてちょっと添え足しさせていただきたいと思います。  以上でございます。
  149. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、その話の続きになりますが、今後の対策として、今のお話につながりますけれども大気汚染による健康被害の防止というのを計画していらっしゃいますよね。それからその健康被害の防止の問題と被害を発生した場合の患者の救済ということを考えて私はお尋ねしようと思ったのですが、患者の救済ということはあり得ないわけですね。個々の患者の救済ということは今後あり得ないというふうに先ほど理解したのですが、それはそれでいいわけですね。そうすると、被害を発生した場合の患者の救済ということは考えないけれども大気汚染による健康被害の防止ということは考えていくんだ、そのための施策はする、こういうことですね。これは具体的にどんなことを考えていらっしゃるのですか。
  150. 目黒克己

    目黒政府委員 私どもあくまでも、この指定地域を解除いたした後に発生するかもしれない患者さん、こういうことに対しても、当然個別の補償はしないけれども全体的な人口集団対象とした補償をする、こういうことでございますが、その具体的な内容でございます。  これは予防的なことも含めましてヘルス全体の環境保健対策内容でございますけれども、この一般的なものにつきまして申し上げますと、この健康被害防止事業は、まず第一は、国とか地方公共団体の行います一般的な慢性閉塞性肺疾患対策とかあるいは環境改善対策のすべてを行うということではなくて、これらの施策を補完してより効果あらしめるように持っていこうというのが一つの性格でございます。  また、健康被害防止事業内容でございますけれども地域人口集団を先ほど来申し上げましたように対象としておりますが、例えば予防健診とかあるいはリハビリテーション、こういうことによりまして健康の確保とか回復を図る、あるいは予防する、あるいはそういうことを含めました環境保健事業といいますものと、それから環境質自体を健康被害を引き起こす可能性のないようにする、予防するための例えば交通公害防止計画等々といったようなものと、こういう二本立てになっているのでございます。そしてこのようなものにつきましては、具体的な細目等につきましては現在検討を行っている、そういうところでございます。
  151. 金子みつ

    金子(み)委員 わかりました。  お話はそこまででわかったんですが、長官、これはとても難しいですね。わかりにくいですね。私が悪いんだろうと思うのですけれども、一般的に私はちょっと理解が難しいと思うのですよ。被害を受けた個人には何もしないけれども、その個人の住んでいる地域対象に考えるんだ、こういうことになりますと、個人が何かのけられたような感じがしまして、一般国民としては非常に理解しにくくて誤解されるおそれがあるんじゃないかというふうに思ったりもいたします。大変に難しいから、これは何かよく説明のできたものをお出しになるなりなんなりきちっとPRしていただかないと、環境庁地域指定を廃止した後何もしてくれないという感じにどうしてもなりますね。一般の人たちというのは、障害を受けた、被害を受けた個人補償がなくなるという問題について、今後はいたしませんと非常にはっきり書いてあるわけですね、ここら辺に非常に抵抗を感ずるわけなんですよ。だから、今御説明を伺えばわかるわけなんですけれども、そのことは一般の人によくわからないですから非常に誤解されると思いますよ。ですから私は、その辺は十分注意して何かをお出しになった方がいいのじゃないかというふうな気がいたします。  それから、もう時間も余りございませんけれども、先ほどちょっと触れましたがこの「環境保全長期構想」、この問題でお尋ねをしたいことがございます。時間がありませんから一つ一つ申し上げませんが、いただきましたこの資料の中からまず一ページをごらんいただきますと、一番初めに「本構想策定の必要性」というのが書いてあって、①②③④と分けて書いてございますね。この辺をずっと読んでまいりますと、その次に「前回計画との相違」というのが出てくるわけなんですが、前段にこれがあるということをわかって「相違」というところを読まなければいけないのだと思うのでそのようにして読んできてはいるのですけれども、この「相違」のところがどうしてこうなるのか、どうしてこういうふうにしたのかというのがまたはっきりしないわけなんです。例えば、前の計画の時代には非常にはっきり数字が出てきていたわけですね。窒素酸化物を年三百三十万トン削減することが必要だとか、自然環境保全地域の面積を十倍増しの六十万ヘクタールにするとかというふうに、とにかく数字が入ってきたのですね。非常にわかりやすいし、数字が出ますとその数字に達成する目標というのが一般にはっきりするわけです。素人わかりもするわけですね。  ところが今度は数字はやめてしまったのですね。定量、すなわち数字の目標はやめて、ここに書いてございますね、「定量的な目標を示すことよりも新しい視点から環境政策の新たな展開の方向付けを行うことに重点を置いている。」というわけですから、数字を示すのじゃなくて発展の方向づけをするというような言い方をしてありまして何かよくわからないですね、これまた私が悪いのだと思うのですけれども。何となく漠然としていてつかみどころがない、明確じゃない。だから、何もしなくても今やっている最中だと言って何とでも返事ができる。こういう言い方をしてはいけないのかもしれませんけれども、悪く勘ぐれば、何もしなくても、いや今やっている最中なんです、努力をいたしておりますというふうに説明すれば事が済むというふうな感じがいたしまして、何とでも理由がつけられて大変に納得しにくいのです。ここら辺は大変高邁な考え方でおつくりになったことだと思いますので、私どもみたいに端的に物を考えてはいけないのだろうと思いますが、非常にこの点わかりにくい。ここら辺のことをちょっとお話しいただけますでしょうか。
  152. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 先生の御指摘、確かにおっしゃるような意味合いのことは、実は私ども関係の皆様方あるいは論説の先生方にもお話を承っておる点でございます。その点でなかなか難しい問題と承知いたしております。といいますのは、前回「計画」と銘が打ってあったわけでございますが、これは公害の非常に厳しかった昭和五十二年当時でございます。それで、早急にある環境基準達成しなければいかぬということでございました、この点はもう先生よく御存じなわけでございますが。現時点では環境基準がすべて達成されたわけでないことは確かでございますが、昭和五十二年当時とはその点が違うという点をまずひとつ御理解いただきたいと存じます。  それから、であっても現在でも目標値というものはあってしかるべきだと考えております。この点は、実はこちらは「構想」という大きな立場に立ちましたのでるる詳しくは書いてございませんが、中に出ておりますが、実は環境基準というのはこの「計画」とか「構想」とかかわりなくまずあるわけでございまして、それを達成すべきことは当然のことである、これはごく短い文章で書いてあるんでございますけれども、それが一つベースにございます。今回の物の考え方はその五十二年当時と違って公害の発生状況と申しますか、問題の発生状態が生活型と俗に言われるような問題、あるいは都市交通公害というようなところにあらわれておりますように少しあらわれ方が変わってきております。それらに適切に対処していくためにはまず定量的な分析に重点を置くのでなしに、それ以前にと申しますか、それと別な立場でと言った方がいいのかもしれませんが、定性的という言葉も当たらないかと思いますけれども、物の考え方それから手法、これは国民理解まで含めまして幅広い対応をしていかなければ達成がなかなか難しい部分、問題も新たに出てきておる。  それからさらには、ちょっと欲張っておりますけれども、よりよい環境というのをいま一つ目指しておるということから「構想」という姿になったわけでございまして、先生おっしゃいましたように、何々という数字を挙げてこれを十年後にこうするという形のものでない点は確かにそのとおりでございます。ただ、今の時点ではそういう物の考え方、方向ということがまず大事ではないかというふうに考えたわけでございまして、おっしゃいますような分野によりましてそういう分析もし、勉強もさらに加えていくつもりでおりまして、何か言い抜けができやすいようにという、結果的にはそういう部分が確かにあるかもしれませんけれども、それをねらったものでないことは御理解願いたいと思います。
  153. 金子みつ

    金子(み)委員 もちろんそうだと思います、そんなことがあったら大変ですからね。  今の問題と大変似ている問題でそのものずばりじゃないですけれども考え方が大変似通っているという点で非常に気になりますので、ひとつ申し上げてお返事をいただきたいのですが、それは環境保全と経済との関係なんですよ。四十年代、今お話のあった公害のひどい時代、そのひどい時代の環境行政というのは、公害対策基本法から経済との調和条項というのを削ったくらいに大変強い姿勢できておられた。その後環境と経済との関係が変わりまして、たしかこれは一昨年、上田長官の時代のお話だというふうに聞いておりますが、環境庁と経団連の首脳との懇談会があったそうです。その席上で上田長官が、環境と経済の両立、調和ということを強調されたそうです。両立、調和、それは聞けばそのとおりというふうに思うわけですけれども、その考え方がだんだん変わってきて、保全と経済の関係のバランスが、両立、調和まではいいんですが、調和が妥協になるおそれがあるということを非常に心配するわけですよ、経済の強さがありますから。経済の問題と環境を保全するという非常に重要な問題はよくわかるのですが、そのバランスの関係、両方の関係が調和でとどまっていればいいのですけれども、妥協になったら大変だというふうに私は心配するわけです。  ですからそういうことが絶対にないように――今度の考え方はだんだん変わってきています。今は時間がないから申し上げませんけれども、快適環境づくりなんというのを環境庁なさいましたね。そういうものも一歩退いているわけですからね。さらにまた今度の「構想」というところでそうなるんじゃないかという不安があるわけです。何となくわからない。今度の「構想」は余りに大きくとらえていらっしゃるものですからつかみどころがなくてわからない。ですからへたすると調和が妥協になるのじゃないかなという心配があるわけです。  ですからそういう点は厳に戒めてと申しますか、十分に気をつけてしていただきたいということを、これは私の方からの御要望になりますけれども、そういうものを含めて、時間がございませんので最後に長官に御答弁いただきたいのです。この「構想」をお出しになった考え方、これは果たして将来非常に期待のできる内容なのかどうかということですね。ぜひお聞かせをいただきたい。
  154. 稲村利幸

    稲村国務大臣 「長期構想」では、環境の資源としての有限性を再認識して、環境のさまざまな恵みをバランスよく持続的に享受していくことが重要であるとしております。  今の先生の御意見に私もまさに同感なんです。これは従来、ともすると開発、利用に当たって経済的価値が優先され、環境の恵みが損なわれがちであったことへの反省に立つものでありまして、妥協ではないんだ、こういう認識を私もしなければならないと心しております。
  155. 金子みつ

    金子(み)委員 ありがとうございました。
  156. 林大幹

    林委員長 春田重昭君。
  157. 春田重昭

    ○春田委員 今後非常に心配といいますか懸念される環境問題の中で、窒素酸化物による大気汚染の問題があろうと思います。それから生活雑排水による水質の汚濁の問題、さらにバイオなど先端技術によるハイテク汚染、さらに酸性の雨や雪による樹木や湖沼、建物等の汚染被害等の問題があろうかと思います。  そこで私は、きょうは時間の関係で、窒素酸化物による大気汚染の問題、さらに酸性の雨や雪による被害の問題、この二点に絞って御質問を展開していきたいと思っているわけでございます。  まず、窒素酸化物による大気汚染の問題、その主たる原因二酸化窒素でございますけれども、この二酸化窒素の濃度というのは、環境基準に対しまして現在どのような状況にあるのか、まずこれを御説明いただきたいと思っているわけでございます。
  158. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  二酸化窒素にかかわる環境基準達成状況いかんというお尋ねでございますが、六十年度の環境基準達成状況につきましては、現在データの最終的な整理の段階でございますけれども、東京、神奈川、大阪といいます総量規制地域におきましては、残念ながら環境基準達成されない測定局がかなりの程度残されている現状にございます。しかしながら、五十九年度に比較いたしますと達成測定局数は相当程度増加しておるところでございまして、五十八年度並みの状況になるのじゃなかろうかなというぐあいに思っているところでございます。  全般的には、ここ数年来の傾向といたしましては、窒素酸化物に関します大気汚染は若干改善傾向にあるというぐあいに理解いたしております。
  159. 春田重昭

    ○春田委員 六十年値はまだ出てないわけでございますが、相当よくなってきているという話でございます。五十九年度の環境庁調査では、御案内のとおり、自動車の主要道路沿いでは環境基準に対して二七%が未達成である、さらに東京、大阪、神奈川等の大都市圏では七六%が基準を達成してない、こういう状況でございます。  二酸化窒素環境基準というものは当初、四十八年でございますか、設定された時点では年平均が〇・〇二ppmで設定されたと聞いております。四十八年か、若干その前かもしれませんけれども、そのように設定された。その後見直されまして、昭和五十三年ですか、年平均が〇・〇三ppm、一日平均が〇・〇四から○・〇六、最大が〇・〇六ppmと緩和されたわけでございまして、約三倍緩和されたと非難もありました。そういった緩和したツケが今日の上限、いわゆる〇・〇六ppmをオーバーするところが非常に出てきている。今のお話では、六十年度はかなり改善されてきているとおっしゃっておりますが、いわゆる一般の測定局ではよくなっているけれども自動車の主要道路沿い、特に三大都市圏では余りよくなってないという報告も聞いているわけでございます。昭和五十三年に改定した、緩和した、ここに私は環境庁一つの――事業所というか工場といいますか、それを念頭に置いて、自動車排気ガスの問題を念頭に置かなかった、その結果が今回のこういう結果になっているのではなかろうか。工場等では脱硫装置や脱硝装置をつければよくなっていくだろうという甘い考え方が今回のツケになったのではなかろうかと思いますが、その点どうでしょうか。
  160. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  五十三年の環境基準の改定につきましては、当時のいろいろな科学的知見をもとにいたしまして、専門家の御意見をいただきながら環境基準の改定を行ったところでございます。その後、私どもといたしましては七年間にわたります疫学調査実施いたしまして、その結果におきましても、現在の環境基準を改定するような状態にはないということで評価いたしているところでございまして、そういう面におきましては、環境基準そのものにつきましては、現在の科学的知見を踏まえまして妥当なものというぐあいに考えているところでございます。  なお、先生からお話がございましたように、確かに固定発生源につきましてはかなり規制等を強化いたしているところでございますが、自動車に対します規制につきましては、逐年改善はいたしておるところでございますけれども、御案内のとおり、自動車総量の伸びといいますものが予測以上に伸びておるという現状からいたしまして、なかなか環境基準達成が難しい、厳しい状況にあるというぐあいに理解いたしているところでございます。
  161. 春田重昭

    ○春田委員 環境庁は五十三年の改定当時、少なくとも六十年度、七カ年の間において基準達成したい、これを目標年度に置かれたわけでございますが、今言ったように、主要道路ないし大都市圏では基準達成をオーバーしているところが非常に多いわけですよ。したがって、中公審答申は出ましたけれども、最終決定するのは環境庁であり閣議なんですから、私は環境庁に大きな責任があろうかと思うわけでございます。  ところで、NOxの環境濃度を今の環境基準達成する時期は、昭和五十三年当時は七カ年、六十年度を大体目標年度に置いたわけでございますけれども、一応今達成していないわけですよ。現段階において環境庁はいつぐらいまでにこの環境基準をすべての局において達成する、そういう自信がおありなのかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  162. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 先生から御指摘がございましたように、六十年度に環境基準達成するということで、五十三年当時にそういうようなことで議論をいたしたわけでございますが、六十年度におきます環境基準達成が非帯に難しいというようなことで、昨年の暮れに環境庁の方ではこの環境基準達成のための検討委員会を設けたわけでございます。それがいわゆる「中期展望」という形で、現在の大気汚染状況についての評価及び今後の取り組み方について考え方をまとめたところでございます。  端的に申し上げますれば、固定発生源につきましては今後とも規制強化を続ける、あるいは自動車単体につきましても規制をさらに強める、それから交通流、物流というものについてはさらに効率的な方策についていろいろ検討していくというようなことの方針を「中期展望」という形で取りまとめたところでございますので、現在私どもはその「中期展望」に沿いまして、それらの施策関係各省あるいは自治体と協議を進めながら対策を講じておる段階にございます。
  163. 春田重昭

    ○春田委員 そういうNOxの削減対策は後で聞きますけれども、五十三年当時には六十年までに抑えるという一つのめどをつけたわけですよ。今日においてはいつごろまでに基準達成するということは出ていないわけです。それを聞いているのです。
  164. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 先ほども御説明申し上げましたけれども、現在環境庁におきましては、自動車単体からの排出ガスの規制強化やあるいは総合的な自動車交通対策のあり方について検討を行っておるところでございます。お尋ねの達成時期につきましては、現在の時点ではなかなかお話しすることは難しい状況にございますが、できる限り早く総合的、計画的に対策を講ずることによりまして、達成に向けて努力してまいりたいというぐあいに思っております。
  165. 春田重昭

    ○春田委員 そんなあいまいなことで環境行政が守れるのですか。要するに環境庁は、六十年の目標が達成できないということで六十五年ぐらいに、努力目標というのですかね、そういう報道も一部されたわけですよ。そういったことで、六十五年度も努力目標というあいまいな形で表現されておるわけですよ。いろいろな削減対策はされておりますけれども、ある程度の、何年までにはこういう形でやりたいという一つの目標があってこそ初めて対策というのは生きてくると私は思うのです。そういった面で、一生懸命やっております、それはわかりますよ。わかりますけれども公害をなくして環境を守っていくという強い姿勢が本当に環境庁にあるならば、基準達成年度はいついつまでにやるんだ、こういうことは明確にすべきではないかと私は思うのです。環境庁長官どうですか。
  166. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先生の大変御熱心な御意見ごもっともだと思いますが、年々自動車もふえておるというような観点もあり、できる限り、まあ局長の苦しい答弁も聞かされておりまして同情しておるわけですが、精力的に早い機会に目的達成できるように努力いたします。
  167. 春田重昭

    ○春田委員 私は何も数字にこだわっているわけじゃないですけれども長官、この環境基準をオーバーした場合は、環境庁調査でも、例えば児童等のぜんそくの症状、その有症率が非常にはね上がるというのですよ。データも出ているわけですよ。だから私は、この環境基準というものは、環境庁が一応決めた以上それに向かってあらゆる対策をやって、また関係各省に呼びかけて、そして少なくとも何年までにはやっていくんだということを決めなかったならば、一生懸命やっていますだけでは通じない、こういう意見なんですよ。先ほど金子先生もおっしゃいましたけれども、「環境保全長期構想」にしても、構想といいますか理念だけであって、「計画」から「構想」に変わってきておるわけでしょう。そういう点で環境庁は非常に他の省庁に遠慮しているみたいだし、来年の公健法の改正を見ても、どうも環境を本当に守っていくという姿勢があるのかどうか疑いの声が非常に上がっておりますから、そういう点では長官ないしまた環境庁そのものが一体となって勇断を持ってやっていかなかったならば、そんな受け身では環境はよくならないのですから、私は長官ないし環境庁全体の勇断を望みたいわけですよ。そういう点で、基準の数字の問題についてはちょっと時間がございませんのでまた後日改めてやりたいと思いますが、念頭に置いて環境庁は鋭意努力してやっていただきたい、このように要望しておきたいと思います。  そこで、環境庁は今いろいろな窒素酸化物の削減対策をやっておられるわけでございますけれども、どういう対策をやっておられるのか。また、現在の窒素酸化物、NOxの排出割合、その主たる原因はどういうものにあるのか。もし数字が挙げられるのならば、例えば固定発生源で何%、自動車で何%、その他何%か、挙げることができれば御説明を簡単にいただきたいと思います。
  168. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答え申し上げます。  全国的な数字になりますとちょっと手元に資料がございませんので、例えば東京都におきます状況について御説明申し上げようと思います。  まず、東京都におきますNOx、二酸化窒素かかわります排出量関係でございますが、移動発生源のものが大体六割から七割、固定発生源のものが二割から三割というぐあいに聞いておるところでございます。
  169. 春田重昭

    ○春田委員 それから、削減対策ですね、これはどういうことを考えていますか。
  170. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  まず移動発生源につきましては、本年の七月に中央公害対策審議会からトラック等についての規制基準の新たなものが示されましたので、これは六十三年から六十五年にかけて規制強化をすべく現在準備を進めている段階でございます。  なお、中公審におきましては、ディーゼルトラック等車からの排出ガス規制につきましては今後とも引き続き検討するという御方針でございますので、私どもその結果を待って対処してまいりたいというぐあいに考えております。  それから固定発生源でございますが、固定発生源につきましては、総量規制の導入、あるいは昨年小型ボイラー等の規制強化ということで年々規制強化を図ってまいっておるところでございますけれども、今後とも新たな規制についての検討、あるいは従前から行っております規制強化について検討してまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。  それから自動車交通量関係でございますが、特に大都市におきます物流、人流等の交通量につきましては、現在そのための専門の検討委員会をつくりまして、これには関係各省庁とそれから自治体も加わっていただきまして、そういう大都市、京浜、東京地域におきます物流、交通流につきましての検討会を開いているところでございます。この結果、それぞれのところでもう少し効率化、合理化できるようにしますれば、車の流れといいますか、全体量も改善されるものというぐあいに期待いたしておるところでございますが、現在その内容についての検討を続けている段階にございます。
  171. 春田重昭

    ○春田委員 ただいま局長から御答弁があったように、自動車の中でもトラックの台数が非常にふえている。国鉄にかわりまして宅配便というのが非常に利便さを買われているわけです。そのトラックのほとんど、九六%ぐらいがディーゼル車であると聞いておるわけでございます。このディーゼル車というのは黒煙を非常に出して、二酸化窒素窒素酸化物とともに大気汚染原因でございます浮遊粒子状の物質を出すと言われております。  今局長の御答弁では、このディーゼルの排ガスの規制、トラックの排ガス規制につきましては、六十三年から六十五年にかけて規制強化していきたい、こういうことでございます。環境庁としては告示を出されまして、その告示に従って運輸省がトラック等の構造改革といいますか構造基準を変えるということでございますが、その辺の見通し、いつごろ告示なさって、そして運輸省としては大体いつごろからかかっていくのか。当然告示されてからかかると思うのですけれども、その辺、もう少し具体的に御答弁いただきたいと思います。
  172. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  ただいま運輸省におきましては、ガット通報という規定がございますので、このガット通報に基づきます、日本の国内の規制がこういう形になりますということを関係諸国に連絡申し上げているところでございます。関係各国からそれに対するコメントをいただきました後におきまして、運輸省におきまして、先生からお話がございましたような告示がなされるということでございますので、手続的には時間がもう少しかかるのかもしれませんけれども規制そのものにつきましては、六十三年末から六十五年末にかけまして逐次規制実施できるものというぐあいに考えておるところでございます。
  173. 春田重昭

    ○春田委員 同じくその趣旨について、運輸省がおいでになっていると思いますが、ひとつ運輸省の方から御答弁いただきたい。
  174. 松波正壽

    ○松波説明員 お答えいたします。  今環境庁局長から御答弁がございましたけれども運輸省といたしましても、六十三年から六十五年にかけて、乗用車を除きますところのディーゼルトラック、バス等につきまして、車種において順次規制強化を図るべく、先ほども話がございましたけれども、貿易の技術的障害に関する協定に基づきまして締約国に対し事前通報を行い、道路運送車両の保安基準の改正の手続を今進めている段階でございまして、それらのコメントが得られた上で環境庁の告示を受けまして、正式に道路運送車両の保安基準の公布をいたしたいと考えております。
  175. 春田重昭

    ○春田委員 その環境庁の告示というのは大体いつごろに出る予定ですか。
  176. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 明年の一月中には告示を出したいというぐあいに考えております。
  177. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、大都市圏、とりわけ東京、これはせんだって四全総の報告もございましたけれども、特に四全総の中でも、機能が東京へ集中するような報告になっております。そういった面で、ますます大気汚染といいますか深刻化するのじゃなかろうかと心配されております。私が住んでいる大阪でも、関西新空港がこれから建設されていくわけでございます。さらに六十五年には花の万博ということで、これも二千万人ぐらいの入場者を見ておりますから、そういった排ガスによる大気汚染を心配されている向きがあるわけでございます。きょうは警察庁の方がおいでになっていると思いますが、こういった都市の中心部への特に大型トラック等の乗り入れを規制したらどうか、抑制したらどうかという意見もあるのです。都心部で抑制すれば当然他の迂回道路の方に影響が出てくると思いますけれども、都心部においては今言ったようなことで大変な状況になっているわけでございますから、何かうまい方法がなかろうか、こう思うわけでございますが、警察庁としてはどう考えるか。  また、信号等の連動の問題ですね。私も大阪の守口市という非常に大気汚染が強い地域に住んでいるのですけれども、わずか百メーター足らずのところに信号がようけあるのですが、それが必ずしも連動していない。そのたびにとまっていくということで、排ガスがどんどん出ていくわけでございます。これらにつきまして警察庁としては、窒素酸化物対策といいますか排ガス対策といいますか、大気汚染防止のためにも環境庁とともに力を合わせてやっていく必要があるのではなかろうかと思っておるわけでございますが、どういうお考えでございますか。
  178. 中野公義

    ○中野説明員 今先生から二点につきまして御質疑があったわけでございますが、初めの、大型車の都心部への乗り入れの規制といいますか禁止という措置の点でございますけれども、そういうことも一つの方法ではありますけれども窒素酸化物というものを削減していくという立場から見ますと、ある一定のエリアの中に大型車を仮に入れないということにいたしましたときに、先生も触れておられましたけれども、やはり物資を輸送しなければならないという必要性がある以上、迂回路を通るとか別のところに行かなければならぬということになりますと、やはりその区域では窒素酸化物がそれに応じて出てくる。地域全体を見ますと、確かに規制をしたところは少なくなるかもしれませんが、その周辺でふえてくるということになると、プラス・マイナスの結果としてどうなってくるか。それから、大型車を規制をいたしますと、これはどうしても荷物を運ばなければならないという立場ですと、今度は中型車なり小型車の方に転換をしていくという行動になります。そうしますと、従来大型車一台で都心の方まで運んできたものが、一台では運べないから今度は二台のトラックで運ぶということになりますと、一台をやめて二台にした方が全体として見て窒素酸化物排出量減少に結びつくかどうか、これは十分検討をしてみないと、その効果という面から見ると、そういうプラス・マイナスどっちかなというところで、私どもとしては現在やや消極的に考えております。  そのほかで信号の連動という御指摘がございましたけれども、これは現在NOx対策だけではなくて、都市の円滑化という一つ観点もございまして非常に積極的に進めております。これは一定の速度、例えば時速五十キロで道路を走行いたしますと、進行方向に向かって逐次信号が青になっていくということで、全体としての円滑化ということもありますけれども、一番のねらいは信号機によって自動車がとめられるということがないようにしていく、つまり、交差点においての停止、発進の回数を極力少なくしていこうというものでございます。  環境庁からいただきました資料等によりますと、アイドリングをしているとき、それから自動車が発進をするときは、一定量のガソリンの中からでもNOxの排出量が大変多いと聞いております。こうしたことで、全体としての信号の系統化と私どもは申しておりますけれども、それを重点に今後進めていくということによりまして、一定の距離を走るに際して極力エンジンの稼働している時間を短くする、つまりガソリンの消費というものを少なくする、それによってNOxというものも総体的に減少させていく、こういう観点から、現在の交通が広い意味で円滑にいくということの対策を強力に進めていくことによって、この窒素酸化物の削減に力を入れてまいりたい、このように考えております。  以上でございます。
  179. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、NOx対策というのは、自動車単体に対する対策と交通網全体に対する対策とありますから、これは環境庁だけではできない問題でございますので、そういった交通網に対するいろいろな対策につきましては十分御協力いただきたいと要望して、警察庁の方はこれで結構でございます。  さらに、マイカー通勤が非常に多いのですね。私の地域も、大阪市内へのいわゆる通過地点にあるのですけれども、数年前までは朝方は七時半ごろから込んでおりましたが、だんだん時間が早くなりまして、それだけ車の台数がふえたと思うのですけれども、今日においては七時前から込み出して、それがいわゆる数珠つなぎで大阪市内に流れている。私なんか車に乗っている方を見れば、駅まで自転車で行った後で電車で行った方が、そんなにいらいらもしないで、ガソリンの消費もしないでいいのじゃないかと思うのですけれども、相変わらずそういった朝の通勤というのは車のラッシュ、またのろのろ運転で大変な状況です。この朝の車の状況を見れば、ほとんどがマイカーの方で営業車というのは非常に少ないのじゃないかと思うのです。そういった面で、これは環境庁だけの問題じゃなくて関係各省、政府全体として取り組むべき問題であろうと思いますが、マイカー通勤に対する抑制といいますか規制といいますか、これは非常に難しいと思うのですけれども、マイカーに対する啓蒙とかその他いろいろなことを考えながら、都心に向かってのマイカー通勤の規制というものが何とかできないものだろうか。こんなことを考えているのは私一人じゃないと思うのですけれども環境庁としてはどう考えていますか。
  180. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 先生の御指摘のとおり、マイカー通勤による車の流れといいますものは相当な量があるということも私ども承知いたしておるところでございます。先ほどもちょっと御説明申し上げましたけれども、京浜、阪神地域対象にいたしました大都市自動車交通対策等計画策定というための検討会をつくりまして、関係各省なり自治体も加わって検討を始めているところでございますが、その中におきましてマイカー通勤の実態なり、そのマイカーの方々が他の公的交通機関を利用するためにはどういうことを希望しておられるのか、あるいはその公的な交通機関を利用するためにはどういうことを考えたらいいのかというようなことにつきましてもいろいろ検討を加えていただこうということで、現在検討いたしているところでございます。この検討会の結果を待って私ども適切に対処してまいりたいというぐあいに考えておるところであります。
  181. 春田重昭

    ○春田委員 鋭意努力なさって早急な結論を検討会の方で出していただきたい、こう思います。  最後になりますけれども、低公害車として非常に評判のいい一つはメタノール車、かなり試験が行われているみたいでございますけれども、どこまで進んでいっているのか、それからさらに電気自動車、この普及、どこまで進んでいるのか、これは運輸省環境庁、電気自動車は通産省になってしまうのですかな、通産省は来ていませんから環境庁でいいです、メタノール車は運輸省でしょう、それぞれから答えてください。
  182. 浅見喜紀

    ○浅見説明員 お答えをいたします。  ただいまお尋ねのメタノール自動車でございますが、運輸省におきましては、一つには今いろいろ先生が御議論されておられます都市における自動車排出ガスの窒素酸化物対策あるいは黒煙対策という観点からこれの導入を推進しております。  それから運輸省としてはもう一点、交通部門におきましても、エネルギー源について石油だけに頼るということではなくて、将来いろいろエネルギー源について選択の余地を広げておくことが必要ではないか、そういう観点からこのメタノール自動車の導入を推進しております。具体的にどういうことをしておりますかと申し上げますと、従来から外国との情報交換、あるいは導入のための調査研究といったことを行っておりますが、最近はさらに一歩前進をさせまして、トラック運送事業者関係者の協力を得まして、何回かにわたってメタノール自動車の市内走行試験というものをやっております。ことしに入ってからの主な走行実績といたしましては、三月から六月にかけましてメタノール、これは小型トラックでございますが、これによりまして七千五百キロメートルの耐久走行試験というのを実施しております。それから七月から十一月にかけまして、これは実際にトラック運送事業者が貨物輸送にメタノールトラックを使用するという形で走行試験を実施いたしておりまして、その結果、営業用のトラックとしても十分使用に耐えるという結果が出ております。このようなテストを踏まえまして、近いうちに約三十台ほどのメタノールトラックを用いまして、これも実際にトラック運送事業者が貨物の輸送という形で使用していくわけでございますが、そういった本格的な市内走行試験を開始する予定にしております。  メタノール自動車の普及につきまして一番重要なことは、ユーザーに対しましてメタノール自動車の信頼性を高めるということが大事だというふうに考えておりまして、このような意味からも今申し上げましたような走行試験の積み重ねを行いまして、できるだけ早く普及していくように努力をしております。それから六十一年度から、このメタノール自動車につきまして自動車税、それから自動車取得税につきまして電気自動車並みの優遇措置が講じられております。  以上でございます。
  183. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 メタノール自動車につきましては、環境庁におきましても排ガスの実態調査を行っているところでございます。  電気自動車について御説明申し上げたいと思うわけでございますが、電気自動車につきましては、現在オンロードで約六百台、オフロード車を含めますと約千八百台程度の普及状況であるわけでございますが、環境庁といたしましては、関係省庁と連携をとりながら、今後例えば電気ごみ収集車などにおきまして電気自動車の特性に応じた用途での普及に力を入れてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。  それからこの電気自動車の普及のための施策といたしましては、従来よりも税制上の優遇措置を講じてまいっているところでございますが、この適用の時期が今年末までとなっているところでございますので、現在この延長につきまして要求中でございます。今後ともこの電気自動車あるいはメタノール自動車につきましては、いろいろなそのものの特性に応じた使い方についての普及に心がけてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  184. 春田重昭

    ○春田委員 時間がなくなってまいりましたけれども、もう一点酸性雨による被害という問題がこれから心配されるわけでございます。この問題につきまして質問いたします。  我が国は昭和四十年代の後半ですか、この酸性雨による被害というのが報告されておるわけでございます。その後今日まで、全国至るところで酸性雨ないしそれらしきものの被害が報告されているわけでございますが、取りまとめてどういう実態なのか御報告いただきたいとともに、環境庁としては酸性雨、酸性雪、これに対してどういう対策を講じようとしているのか、まとめてひとつ、簡単で結構でございますから御説明をいただきたい、こう思います。
  185. 杉戸大作

    ○杉戸説明員 お答え申し上げます。  まず最初に酸性雨の現状についてでございますが、国内ではかなり各地で大変酸性度の高い、pHの低い雨が観測されております。しかしながら、欧米のような湖沼とか森林への顕著な被害というものはこれまでのところ報告はなされておりません。しかしながら、過去酸性雨が原因ではないかと指摘をされております二つの現象が出ておりまして、その一つ昭和四十八年から五十年にかけまして関東地方を中心に霧雨とか降雨、それによります目とか皮膚への刺激、そういう事件が発生いたしております。これは五十六年ごろにも群馬の方でそういうことがございましたが、五十七年度以降はこのような現象は報告されておりません。  それからもう一点、昨年これは群馬県の衛生公害研究所の発表で、関東の北西部におきまして杉枯れの現象が見られる、これは酸性降下物との関連があるのではないかという報告がございました。これにつきましては早速環境庁とそれから農水省とタイアップいたしまして、実態の調査などを行っておるところでございます。現在までのところ、杉の衰退と酸性降下物の影響につきましてはまだ明確な結論は得ておりませんが、今年度も引き続いて調査をいたしておるところでございます。  それからほかの対策といたしましては、昭和五十八年度から五カ年の計画で、酸性雨の機構、発生のメカニズムの解明とか、あるいは陸水、土壌に及ぼす影響、そういった点を中心に、これは六十二年度までの五カ年の計画で調査を進めておるところでございます。
  186. 春田重昭

    ○春田委員 関東方面の被害状況の御報告があったわけでございますが、その後島根県の松江市で松枯れという現象が出てきた。それから琵琶湖のいわゆる富栄養化の問題も酸性雨の影響じゃなかろうかということも滋賀県の方から報告されているわけでございますけれども、こういった因果関係というのはどう見ているのですか。
  187. 杉戸大作

    ○杉戸説明員 先生ただいま御指摘の島根県とか琵琶湖のその問題についても私どもは承知をいたしております。  島根県の問題につきまして、私ども全国的に今酸性雨の観測点を何カ所か設けまして、酸性雨と窒素酸化物とか硫黄酸化物などでございますが、その関連などにつきまして調査をいたしております。その調査の段階で、島根県につきましても今後対象として調査を進めていきたいと思っております。現在のところ、それと松枯れとの因果関係につきましては、ちょっと知見が十分でございません。  それから、琵琶湖の富栄養化の問題も承知いたしておりますが、この点につきましても私どもは大変関心を持って注目しておるところでございまして、これも今申しましたそのような調査の中で、またいろいろ検討を進めていきたいと思っております。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 これは新聞報道で、私自身直接松江市に聞いたわけではないのですけれども、その報道によりますと、五十九年六月から六十一年十月の二年四カ月でいわゆるpH三台が十三カ月も測定された。酸性雨というのは大体pH五・六以下ですね。三台になってきたら相当な影響が出てくるのではなかろうかと言われております。それが十三カ月も測定されたということは、非常に注目に値するのではないかと思うのですね。そういった面で、いわゆる松江市の松枯れの問題、松が枯れて松くい虫が出てきたというのですけれども、松くい虫が出てくるというのは、松の生命が弱ったというのは、やはり土壌が酸性雨によって侵されたのではなかろうかという説もあるわけですから、これは早急な調査が必要ではないかと思うのです。  琵琶湖の問題についてもこれから調査するということでございますが、環境庁は酸性雨に対する予算額というのは今日までどれぐらいとっているのですか。さらに、来年度についてはどれぐらいの予算要求をしているのですか。
  189. 杉戸大作

    ○杉戸説明員 五十八年度から行っております酸性雨対策検討会の六十一年度予算は約三千六百万円でございます。六十二年度も約三千六百万円、同額を要求いたしております。  それから、国立公害研究所の方で酸性雨に関します調査を行っております。これは「雲物理過程を伴う列島規模大気汚染に関する研究」、ちょっとややこしい研究でございますが、この酸性雨の研究におきましては、六十二年度に四千二百万円の要求をいたしております。  それからもう一つ、先ほどちょっと触れましたが、群馬県を中心にいたしました杉枯れの調査でございますが、これは環境保全総合調査研究調整費、約八百万円でございますが、これで現在行っております。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 国立公害研究所の予算と合わせても一億以下です。微々たるものですよね、長官。本当に我が国の環境行政というのは常に後追い行政になりまして、地方自治体がいろいろな報告をする、琵琶湖がそういうおそれがあるのではないか、松江でそういう報告がある、また、浦和とか兵庫でいろいろな報告がされている、それを追認するような形で環境庁がやっている。また関東方面の杉枯れの現象についても、聞くところによると六十一年度の予備費で調査をやったというのですね。こういったことでは、これから心配される酸性雨の対策というのは十分できない。現在の観測地点だって、やっとことし何カ所かふえたのですか、全国で十四カ所ぐらいになるかな、観測地点が非常に少ない。そういう点で、酸性雨の今後の心配に対して環境庁は十分じゃないのではないか。来年度の予算だって、今年度と同じような三千六百万しか要求していない。私は、これでは十分な対策はできないと思うのですよ。  そういった面で、酸性雨が出てきた、それがまた広がった、それからの対応というのは何年、何十年とかかるのは長官も御存じのとおりなんですよ。公害が広がった後は対策は大変なんです。そういった面で、やはり予防といいますか、これが非常に大事になってくると思うのです。そういう点で、松江が出てきたからということで日本海側を相当重点的にやるみたいでございますけれども、これは重点的でなく全国的に、監視網といいますか監視体制をつくって酸性雨対策をやる。  長官も御存じのとおり、西ドイツ、スウェーデン、アメリカ、私も西ドイツに行きましたけれども、もう本当に樹木が枯死寸前、湖沼の半分の魚が全滅、ローマに行ったら、かつての本当に古い建物、遺産の大理石が腐食してきている、こういうことが先進国でも出てきているのですね。我が国は土壌の問題が云々とかいう話がありますし、四面海に囲まれていますからちょっと西欧とは比較できませんというお話がございますけれども、いずれにいたしましても、中国とか韓国から偏西風によって非常に日本海側にそういった酸性雨の影響を及ぼすような可能性も十分あるわけでございますから、そういった面でこの予算を十分とっていただきたい。国立公害研究所でも一生懸命やっているけれども、予算が少ないからできないのですよ。そういった予算の面と、中国、韓国、特に中国は日本の十倍ぐらいの石炭を使っていますから、中国との意見交換の場を持っていいんじゃないか、できたら長官も中国に現地視察にぐらい行って実態を見られたらどうか、私はこう思うわけでございますけれども、こういった点長官、どうですか。
  191. 杉戸大作

    ○杉戸説明員 まずちょっと事務的に、将来の私どもの考えについて報告させていただきます。  先ほど申しましたような現在の調査、いろいろ検討を進めておりますが、それをできるだけ拡大しまして、予算を効率的に使いまして、総合的、長期的な見通しのもとに検討を進めたいと思っております。  それから、関連の各省庁でもいろいろ酸性雨の問題につきましては取り組んでおられます。そういうところとも連携を密にしたいと思っております。  それから対中国関係でございますが、近隣諸国の工業化の懸念の声も非帯に高いものがございますので、私ども、中国とは昨年日中環境行政交流会議を持ちまして、今後情報交換などを密にしていこう、そのようなことも考えておるところでございます。そういういろいろな角度から、酸性雨についてこれから積極的に取り組んでいきたいと思っております。
  192. 稲村利幸

    稲村国務大臣 春田先生から、予算でもっと頑張るようにというありがたい御意見を伺いました。私どもも、環境庁は後追いでなく予防ということで切りかえていくのですからかくあらねばならない、頑張りたいと思います。
  193. 春田重昭

    ○春田委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、環境庁、上海の問題にしても、これは大阪市が力を入れ、また国際協力事業団が力を入れてやっているのであって、電気自動車も東京都が力を入れてやっている。環境庁というのは地方自治体に協力できないのか、他の省庁に協力できないのか。そういう点では環境庁はもうちょっと全面的にやっていただきたい。それにはやはり予算だと思うのですよ。そういう面で、効率的な運用ということをおっしゃいましたけれども、精いっぱいおやりになっているその努力は認めますが、やはり現在だけでなくして孫末代までも守っていくのが私たちの立場だ、こう思いますので、長官初め環境庁皆さん方が、そういったこれから一番心配される酸性雨の問題、大気汚染の問題について鋭意御努力なさることを期待いたしまして終わりたいと思います。
  194. 林大幹

    林委員長 森田景一君。
  195. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は最初に、知床原生林の問題について、知床の原生林は守るべきである、こういう立場から質問いたしてまいりたいと思います。  森林の若返り、こういうことを理由にいたしまして、知床の国有林全体の約五%に当たります千七百ヘクタールを対象に択伐を行おうと林野庁の北見営林支局が発表しまして、これを阻止しようとする自然保護団体と対立しているわけでございます。これは、稲村環境庁長官も現地に行かれまして状況を視察なさってきておりますから、よく御存じだと思います。  御存じのとおり、林野庁は来年の二月までに六十一年度分のいわゆる択伐予定区域の動物生息調査を行うことになりまして、その結果によって伐採をする、こういうことになっておるわけでございます。第三者も含めてきちんとした調査を行い、自然保護団体の人たちを説得したい、こういうことになっておるわけでございますけれども、もし伐採に踏み切りますと混乱は避けられないのではないかと私は考えておるわけでございます。この点について長官はどのようにお考えでしょうか。
  196. 稲村利幸

    稲村国務大臣 この知床問題ですが、ただいまのところ、農林水産大臣が今後十分な動物調査を行い、その結果を見て伐採について判断される、こういう決断をされたことに私は大変敬意を表しておるところでございます。したがいまして、動物調査の結果、自然環境の保全に十分配慮をされた結論を出されることと信じておるわけでございます。
  197. 森田景一

    ○森田(景)委員 来年の二月までに生息の実態調査をするということでございますけれども、私は、この調査の期間はもう少し長くした方がいいのではないだろうかと考えております。実は私も公明党の知床原生林調査団の一員として現地に参りました。長官の行かれた場所も行きまして、それよりもまた奥深く行ってまいりまして、やはり二月までの調査だけでは期間が短過ぎるのではないだろうか、こう思いました。  それで、これは別な問題ですけれども、青森県と秋田県の境の白神山地、ここがブナの原生林のあるところだそうでございますけれども、ここは五年間伐採を延期する、こういうことに決まったそうでございます。こういう営林局もあれば、二月までに調べて後は切ってしまう、そういう姿勢の営林局もあるわけでありますが、やはり少なくとも五年間ぐらい調査期間を延ばすべきではないかと私は思うのです。現地で聞きますと、過去、五年前にも択伐の計画がありまして、そのときは自然保護団体の反対で延ばしたんだということですね。この五年間延ばした間に、先ほど申しましたような調査団をつくって調査をしていけば今までにわかったのではないかと思うのです。私は現地でいろいろ見まして、これは勘ぐりですけれども、もしかしたら北見営林局の職員の人たちが五年間かかって――聞きますと、二月ごろは雪が積もってスキーで山を自由に走り回れるそうですから、この五年間のうちにシマフクロウとかクマゲラとかこういうものを追っ払ったのではないか、そうも考えられるわけなんです。この点についてはどうでしょう。これは林野庁の方で結構です。
  198. 塚本隆久

    ○塚本説明員 お答えいたします。  五年前に立てられた計画が延長になったことにつきましてはただいまお話しのとおりでございますが、故意にそういう希少動物を現地から追い払ったということはございません。私どもも、五年前に立てられた計画が、林道をつけてかなり高い伐採率で事業を行うということでございましたので、今回は知床の自然環境保全というものに十分留意いたしまして、林道をつけずにヘリコプターで、しかも一ヘクタール五本ないし六本というような非常に少ない木材を抜き切りする、こういう計画で今回の計画を立て、既に環境庁を初め北海道、地元町等に説明を行い、必要な手続を経て、本年三月に樹立されたというふうになるわけでございます。  その間、自然保護団体等の方からいろいろ要望等もございまして、あるいは地元斜里町の方からも要望等がございまして、希少動物の調査をするということで現在準備を進めておりますので、この調査の結果を見た上で適正な森林の取り扱いをしてまいりたい、このように考えております。
  199. 森田景一

    ○森田(景)委員 ただいま御答弁いただきました方は塚本経営企画課長さん、日刊紙で投稿なさった記事を私も拝見いたしました。択伐推進論者というふうに私は受けているわけでございます。きょう初めてお目にかかるわけでございます。  この択伐のやり方、いろいろ聞きますと、林道をつくらないでヘリコプターで約十年計画で択伐をする、こういう計画だそうでございますが、ヘリコプターが十年間あの知床半島の上を飛び回ったら、シマフクロウとかクマゲラ、オジロワシ、こういった動物はすさまじい音にびっくりして、今まですんでいたものもすめなくなってしまうのではないか、こういうことは考えられると思うのですが、その点どういう御判断なんでしょうか。
  200. 塚本隆久

    ○塚本説明員 お答えいたします。  伐採する数量も少ないわけでございますし、したがいまして、ヘリコプターの飛ぶ時間というものもそれほど多くないと思っております。また、その搬出をする時期につきましても、繁殖期等、生態に影響のある期間を避けるということで計画をいたしております。それよりもまず、今回の調査によりまして、その場所にシマフクロウ等がすんでいるかいないかということが明らかになるわけでございまして、そこに明らかにすんでいるということになりますれば、またそれなりの対応を考えたいと思っております。
  201. 森田景一

    ○森田(景)委員 ですから、今回の地域調査してシマフクロウがいなければ択伐する、だから先ほど申し上げましたように五年間かかってシマフクロウを追い出したのではないか、こう勘ぐりたくなるわけなんですね。この点いかがですか。
  202. 塚本隆久

    ○塚本説明員 追い出す、追い出さぬという話は別にいたしまして、ただいま申し上げましたように非常に短い期間の集材でございますし、また、この地域につきましてはこれまで何度か伐採が入っておりまして、人手の加わっておる地域でもありますので、私どもとしましては、自然環境に与える影響というものは最小限ではないのか、このようなことで計画をいたしたということでございます。
  203. 森田景一

    ○森田(景)委員 いわゆるワシントン条約というのがあるわけでございまして、絶滅のおそれのある野生動植物につきましては国際商取引が禁じられているわけでございますけれども稲村環境庁長官は、国内での売買規制や原産国へ強制返還するなどを法制化する、このように方針を決めたと報道されているわけでございます。いろいろと貴重な野生生物といいますか、これが輸入された後の問題については報道がたくさんされております。こういう状況を何とか防ごう、こういうことで次の通常国会で規制する法案を提出することになった、こういうことでございます。大臣いませんけれども、これは次の通常国会で間違いなく提出できるんでしょうか。
  204. 古賀章介

    ○古賀政府委員 稲村大臣から強い指示を受けておりまして、環境庁というのはワシントン条約関係省庁連絡会議の議長役を務めておるわけです。その関係省庁は七省庁ございますが、その議長役としての、私どもは事務当局でございますが、大臣から指示を受けておりまして、次の通常国会に向けて国内法を提出すべく準備を急ぐように、こういうことでございます。現在最大限の努力を払っておるという状況にございます。
  205. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は、大臣の決断というのはすごいことなんだなということを感じたわけです。今まで長い間この問題については結論が出てこなかったわけでございますが、稲村環境庁長官が国内法を整備しよう、こう決断しますと役所も動くし、ほかの省庁も動く、こういうことで大臣の決断というのはすごいことだ、このように敬服をしているわけでございます。  知床の問題につきましても、択伐を環境庁としても一応承諾したというふうに私は聞いているわけです。それは前任の環境庁長官だったと思うのです。前任者を悪く言うつもりはありませんけれども、そういうオーケーを出しながら、それでもなお大事な問題については、今度は新任の長官がみずから現地にまで飛んでいってとにかく延期が決まった、こういうこともすばらしい決断だと私は思うのです。その大臣の決断というのはすばらしいことでありますから、稲村大臣の決断で知床のシマフクロウやクマゲラ、こういう貴重な動物が保護されるように、そのためには択伐をやめなければだめだ、こう私は考えているわけでございます。今やめるというのが無理ならば、せめて調査期間を延長して慎重にひとつ対処してもらいたいということを大臣の決断で表明して、関係省庁に働きかけていただきたいな、こう思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  206. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先ほどお答え申し上げましたとおり、現在は農水大臣が大変な見識を示してくだすって、環境保全、動物の生態調査をというふうに約束をしてくだすっておりますので、農水大臣の御努力を信頼しておるのでございます。
  207. 森田景一

    ○森田(景)委員 ではひとつ農水大臣の方にもなお重ねて申し入れをしていただきまして、その長官趣旨が伝わるようにお願いしたいと思います。  林野庁が知床原生林の伐採にこだわっている理由というのは一体どういうことなんでしょうか。
  208. 塚本隆久

    ○塚本説明員 私どもは国有林を適正に管理をし、国有林から上げた収入をもってまたその国有林を維持管理していく、こういうことで現在経営を行っております。したがいまして、国有林につきましては、自然環境保全等で残すべきところは残しますが、利用できるところは利用していく。特に我が国は資源小国でございまして、大量の木材を外国から買っている、こういう状態でもございますので、国有林野のうちで、自然環境保全等を十分注意しながら、利用できるところは利用していく、こういうことでございます。  ただいま問題となっております知床の国有林につきましても、国立公園の九割を国有林が占めておるわけでございます。その国有林のうちの約六割につきましては、全く手をつけない地域として残しております。残りの四割について自然環境保全に十分に注意した形で林業生産活動を行っていこう、こういうことで先ほど説明したような択伐による事業を予定いたしておるわけでございます。  今後とも、知床という国民関心の高い地域でありますので、そうした自然環境保全に十分注意をしながら我々も森林の取り扱いを決めてまいりたい、このように考えております。
  209. 森田景一

    ○森田(景)委員 今御説明いただきましたように、林野行政は林野経営の中でやっていかなければいけない、ここに大きな問題があるんだろうと思うのです。国有林が七百六十万ヘクタールあるのですね。そのうちの約六〇%が保安林等で収益には結びつかない森林だということです。残りの四〇%の経済林で収益を上げなければならない、これが実態のようでございます。ですから、林野庁としては今お話しのように、切れるところは切っていこう、こういう姿勢になるのは私も理解できないわけではないです、今置かれている立場はそうなのですから。これを守るためには、例えば知床を全部切ったって幾らになるかということは計算すればわかると思います。少なくともこことここは残すという部分をはっきりして、それで後のところで林野行政といいますか経営を考えていった方が、自然環境を守る、あるいは希少動植物を守る、こういうことには非常にいい方法だろうと思うのです。そういう点で知床は残すべきである、私はこう考えております。  実は私も、自分のことになって申しわけございませんが、栃木県の山間部に近いところで生まれまして少年期を過ごしました。私の生まれた周辺はやはり木が大きく育ちますと、今はそういうのがありませんけれども、雑木林ですと切りまして炭を焼く。山は丸裸になります。しかしその後に植林をするとかあるいはそのまま自然に、雑木林もまた山になって育っていく。あるいは杉とかそういった常緑樹というのでしょうか針葉樹というのでしょうか、こういうものは大きくなると切って材木として出てくる。そういうのを子供のときから見ておりましたので、そういうものが林野行政かなと思っていたのです。しかし知床へ実際に行ってみますと、残すべきところは残すべきなんだということをしみじみ感じるわけですね。だから、少なくとも日本の中でこことここは手を入れないで自然のまま残していかなければいけないところだ、そういうものがはっきりすればいろいろトラブルが起こらなくて済むんだろうと思います。  そういう点で何といっても、さっきも話が出ましたけれども、お金が絡んでくることでございます。そんなことを言ったって、お金がなければ背に腹はかえられない、こういうことだと思いますので、ひとつ大臣に、林野行政のあり方は、実際は六〇%は金にならないところだ、四〇%でやらなければならないのだから、これは足らないのが当たり前ですから、ぜひこの辺のところを考えていただいて、特別会計を外すなら外すという、これは課長さんお一人の決断ではできないと思います。また直接大臣にも言いにくいかもしれませんけれども、そういう方向をぜひひとつ探って、将来にわたって日本の自然を残すという方向に、お立場は切る方のお立場ですけれども、そういう理解を深めていただければ大変ありがたいことだ、こう思いますのでよろしくお願いしたいと思います。この問題はこれで終わります。ありがとうございました。  次にハイテク産業汚染対策についてお尋ねしたいと思います。  ハイテクの先進国でありますアメリカにおきまして、数年前からIC産業密集地で大規模な有機溶剤汚染事件が深刻な社会問題となったことは御存じのとおりでございます。日本におきましても、今後同質の問題の適切な対応が欠かせない重要な課題になってくるだろうと思うのです。実際日本でも既に、環境庁で集計なさったものですけれども、地下水汚染が十九都道府県で浸透しておりまして、四十八市町村に広がっているということが環境庁の資料にございます。こういう状況でございますので、このハイテク汚染対策につきまして大臣の所見をまず承っておきたいと思います。
  210. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先端技術の進展は人類に多大な恵みをもたらし、公害防止等の分野にも寄与することが期待されておりますが、その反面で、その利用法を誤ると従来と異なる新たな環境の汚染を引き起こす可能性も否定できないと思います。先端技術環境問題には早期に十分な対応を行い、未然防止の実を挙げていくことが国民の生命、健康を守る環境庁の使命でありますので、最重点課題として今後一層の努力をしてまいるつもりでございます。
  211. 森田景一

    ○森田(景)委員 このハイテク公害の難しさというのは、例えば煙を吐く煙突があるとか、あるいは危険物質が野積みされている、こういう目に見えるものでなくて、いわゆる化学物質によって汚染されてくる、ここにハイテク汚染の難しさがあるだろうと思うのです。いろいろ申し上げますと時間がありませんので、具体的に三つほどまとめてお伺いいたしますので、ひとつお答えいただきたいと思います。  一つは、IC産業等ハイテク産業のもたらす公害を防止するために、使用する物質の公開と届け出、有害物質排出規制と管理の徹底、製造工程に応じた公害防止対策を確立しなければならないわけでありますけれども、この対策はどうなっていますか、これが一つです。  第二番目に、今後飛躍的発展が期待されております生命工学、いわゆるバイオテクノロジーでございますが、これにつきましては、一部には遺伝子操作等に伴う有害な菌、生物の発生による環境汚染可能性と生命操作の危険性が、また新素材については安全性や分解性の問題が指摘されております。したがって十分な事前評価による安全対策が必要でありますが、この点についてはどのように対応されていますか。  第三番目に、急速に進展するエレクトロニクス化は、一方で電磁波の漏出、いわゆる電磁波公害をもたらしました。電子機器の故障など種々の弊害が表面化してきておりますが、欧米では既に対策が行われているようでございます。日本でも電磁波公害の拡大を防ぐために電磁波公害の実態調査を行うべきではないか、このように思います。また、電磁波防止素材、システムの開発と普及を進めていくべきではないか、このように考えておりますが、この三点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  212. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 非常に幅の広い御質問でございますけれども、なるべく要点をお答え申し上げるようにいたしたいと思います。  第一番目はIC産業等関係公害未然防止のお話かと存じます。これにつきましては、ハイテク産業の製造工程ごとの使用物質名であるとか、あるいはその量であるとか、あるいは排出実態、それからそこでいろいろ講じられている防止対策などの実態把握がまず肝要と考えておりまして、IC産業については関係四省庁、これは通産省、労働省、厚生省それから環境庁でございますが、現在実態調査を行っております。今後ともハイテク産業につきまして必要な情報の入手に努めることは当然でございますし、未然防止の観点から適切な対応検討してまいりたいと思っております。  それから第二番目の問題につきましては、これは非常に幅の広いお話かと存じますけれども環境汚染の未然防止、これは当然環境庁の責務としてやっておるところでございますが、その中でも先端技術の利用という面につきましては、これはいろいろな分野があり、またその技術そのものもまだ未成熟という状況でございますので、なかなか明確に、具体的に申し上げにくいわけでございますが、いずれにいたしましても科学的知見の蓄積、それと将来への見通しというのが必要な分野でございますので、これを見通しながら対応を考えていかなければならない。そのために有識者による会議を設けまして勉強させていただいておるわけでございます。技術開発と環境かかわりについての中長期的視点に立った総合的な検討を行っておるわけでございます。それからいま一つは、先ほどもちょっとお答え申し上げました実態調査をやっておるということを御報告申し上げましてお答えにかえさせていただきます。  それから最後の電磁波という関係でございますが、これまたまだよく実態が明確にはわからないわけでございまして、先生おっしゃいましたように機器障害、機械の方の障害などの例示がございましたけれども、これは型どおりでございますが、いわゆる典型七公害というものにはもちろん入っておらぬわけでございます。環境庁として一般問題ということになりますけれども、非常に対応の難しい段階であるということは御理解いただきたいと思います。いずれにいたしましても、先端技術関係のものであることでございまして、先端技術環境汚染の未然防止全体に対応いたしてまいるわけでございまして、今後とも関連情報の収集に努めてまいりたいと思っております。
  213. 森田景一

    ○森田(景)委員 時間が参りましたけれども、最後に一言だけ申し上げておきたいと思います。  ハイテク公害というのは、一見クリーンな工場がたくさんあるわけです。クリーンな工場ですけれども、それは機械工場ではなくて実際は化学工場だ、こう言われているわけですね。実態のわからない薬品がいろいろ使われるわけです。働いている人も有害かどうなのかわからないのです。それだけにこの公害が発生してきますと大変な被害が出てくる。この例がアメリカの例でございます。そういう点で、先ほどもありました後追い行政ではなくして、予防の環境庁ということで今後とも対策を講じられますようお願い申し上げまして、質問を終わります。
  214. 林大幹

    林委員長 滝沢幸助君。
  215. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長どうも御苦労さま。長官以下政府委員の皆様御苦労さま。  環境庁のお仕事は、先般申し上げさせていただきましたが、いわば各省庁に非常に広くまたがっておりましてやりにくいことでもありましょうが、強力な指導力を発揮していただくならば大変効果も上がるであろうということであると理解しております。  実は、私は一昨日衆議院の災害特別委員会で三原山の例の噴火の状況を視察さしていただきました。それによって痛感したのでありますが、自然の力はいかに偉大なるものであるか、その中で人間は生きなければならない、つまり自然に対する敬けんなるものがなければ人間はそこに生きることはできないということを学ぶ一つのよすがとすべきだろうというふうに見てきたのであります。そのような視点に立って二、三申し上げさせていただきたいと思いますが、環境保全のお仕事が、先ほど申しました各省庁そして都道府県、市町村など地方自治体の協力、そして地域住民の御協力、特に地域住民がいろいろと営んでいらっしゃる各団体等との協力関係ないしは指導と申し上げてもいいと思います、こういう姿勢というものは非常に大事なことであろうと思います。  ところで、せんだっての委員会でも申し上げさせていただきましたが、宮城県の名取川の中州を除去しようとしましたら、愛鳥会の皆さんが小鳥さんかわいそう、それをとらないでくださいということで、建設省がそれもそうだなということでごちゃごちゃしているというのでありますが、言語道断であります。それはいろいろありますよ。例えばせんだってもカモシカの話を申し上げさせていただきましたが、カモシカ一匹が雪崩にたたかれて死にますと、何人もの県庁の職員が幾日も、まるで人間様が亡くなったよりも大変な大騒ぎをなさる、犬将軍だと私は申し上げさせていただいたのでありますが、いろいろありますよ。カルガモがお産をしまして、それが道路を横切るときに、お巡りさんが監視して交通を全部とめておりました。ああいうこともあります。そしてまた、千葉県では何かお寺さんが飼っていらっしゃるトラが、猛獣といえばとても人間は飼えるものではないと思うけれども、ペットといえばかわいいという感じ、ばかなことですよね。このようなことで大変迷惑をかけ、また大変な予算も必要なことでしょう。あるいはまた、私は田中角榮さんに何も恨みはありませんけれども、パンダを見ると田中角榮を思い出す。パンダを見ると田中政治の理念の次元というものを考えるのですが、あのばか騒ぎは何です。ああいうものは本当に文化国家の名にふさわしいことかどうか、後で文部省さんにもいろいろと承らしていただきますが、要するに原点を忘れた安易なる住民団体等との妥協の中では真の環境保全はできない、こういうふうに私は思うのです。そういう点で、民間団体等との協力関係を中心としまして、環境行政の基本理念のようなことを長官から一言承りたいと思います。
  216. 古賀章介

    ○古賀政府委員 自然保護につきましてはいろいろな御意見、御主張があろうと思います。しかし、国民理解協力の上に立って進められるべきものだと思うわけであります。  それで、昭和四十八年に定められました自然環境保全基本方針というのがございますけれども、そこに「自然環境の保全を十分図るためには、国民一人一人が保護、保全の精神を身につけこれを習性とすることがなによりも肝要である。」というふうに述べております。こういうようにやはり国民一人一人の正しい認識が必要ではないか、その上に立って国民理解協力を得ながら自然保護行政を進めていくべきではないかと思います。
  217. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 長官、一言。
  218. 稲村利幸

    稲村国務大臣 かけがえのない自然は国民共有の財産であって、これを皆さんの良識で守り、子孫に継承をしていくことが大切だと思います。また、自然保護については国民理解と、先生おっしゃられる各省庁、地域、そうした協力をもとに積極的に取り組んでいきたい、こう思っております。
  219. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 今の御両所のお答え、百点満点でございます。ただ、その百点満点の御答弁というものが実際においてそのように実行することはなかなか大変なことでありますから、これは何も環境庁をしかっているわけではありません。以下申し上げる二、三の省庁についても同様であろうと存じまして申し上げておるわけであります。  最初に文化庁さん、見えていただいているわけでありますが、文化財の管理、これは大事なことだと私は思いますよ。これは大事にしなくてはならない、そのことはわかります。しかし、これもややもすればいわゆる安易な地元住民等との妥協、そして見てくれなものに流れやすいのではないか、こういうふうに私は見て憂えているわけであります。そこで、文化財等の管理ないしは修復あるいは再建、こういうものに対する許認可というようなこともございましょう、あるいはまた援助のための予算措置なんかもあると思いますが、いかがなものでございましょうか。
  220. 工藤圭章

    ○工藤説明員 お答えいたします。  私ども、社寺仏閣等重要文化財もしくは国宝に指定されているものについて、この保存のためのいろいろな施策を行っております。管理につきましても、いろいろな問題があれば、文化財保護法の第三十条の中で文化庁長官が管理について指示できるということになっております。それからお尋ねの保存、修理に関しましては三十五条で、多額の経費を要する場合、所有者が負担にたえないときにその一部を補助することができるというふうになっております。  そういう管理についてもいろいろな問題があり、また修理についてもいろいろ問題がありますが、要するに今のところはすべて個人というか所有者があって、その財産で、国の財産ではございませんけれども、先祖から受け継いだ遺産をいかにそのままうまく子孫に伝えていくかということで国がかなりの制限をしております。例えば変なふうに変えるといけないというので、四十三条では現状変更の制限や何かを行っております。そういうことから、その制限に対する代償的な面もありまして、保存、修理のときに補助をするということをやっております。
  221. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そういう場合に非常に難しいのが宗教の領域と行政の領域ですね。これはばかな話ですが、一昨年ですか、プラハを訪ねました。御承知のように共産主義の国ですが、これは先輩篤と御理解のとおり、町じゅうが文化財といいますか町じゅうがドーム、塔の町と言うんだそうでありますから、全部寺院と言ってもいいみたいな町です。それを国が管理費を負担して修復をしていっているわけですね。ところが、のろのろやっているものだから五年も十年もかかる。修復のためにかけた足場が壊れてくる。足場を修復する足場をかける、その足場を修復する足場をかけるというようなことだそうでありまして、お役所の仕事というのは、資本主義の政府も社会主義の政府も大体似たものかなと見てきたのでありますが、何も彼をあしく言い、こちらをののしっているわけではございません。ただ、ああいう社会主義の国におきましても、宗教的財産と行政との協力はある、協力はあるが接点が非常に難しい、こういうことであります。これは日本もまことに同様でございますが、私がもしもどこかの宗教の教祖もしくは管長でありましたら、私は絶対に国の保護とか援助とかは断ります。  ところで、秘仏なんというのもありますよね。しかし、こういう秘仏なんというのが最近はどんどん暴かれて、そして高島屋なんかの催し場で皆さんの目の前に出るわけですな。そういうのが最近の文化というものの考え方なのであるならば、例えば三千院にしてもあるいはまた飛鳥の石舞台にしても、なぜにあのようなものを何百万人という人に踏ませたり、見せたり、さわらせたりしなくちゃならないのか。これが文化国家の姿勢であったならば、私はこれは間違っておるのではないかと思いますよ。  そこで、例えばヒノキの廊下なんかは何千年も、例えば天皇陛下であったらどこまで、華族様はどこまで、平民はどこまでという、入る制限があることがいいか悪いかは別として、つまりそうそういろいろな人に踏ませたりしなかったわけでしょう。それが、これは私は何も御婦人に恨みはありませんけれども、かかとの細い靴でとことことこうなさる、といって女に見せるなと言っているわけではありませんよ。とにかくそうして大衆の前にさらし、そして踏ませるわけですよ。だれかばか者が弥勒菩薩の指を接吻して折ったとかいう話もありましたわな。そういうことですよ。そういうことをして今日本は文化国家、そして文化庁がいろいろと援助されていたならば、その結果というものはどうなんですか。何千年も継承してきた日本民族の文化ないしは特定の宗教の神聖なる御存在が、これから後の世代にどうなりますか。  モナ・リザ、これはまた田中内閣時代のことでありますから、パンダと一緒にするのは大変おかしい話でありますが、これも何百万人の人が見たでしょう。しかし、あの絵画について本当に理解と尊敬を持って鑑賞された方は幾人おありでしょうか。もちろん、一人○・何秒とかいう時間しか見なかったというのですから、本当に鑑賞に値する時間ではなかったと思いますよ。あれは何か大変なぞの微笑だそうでありますが、ばかな人たちだと思って笑っていたんじゃないですか、わかりませんけれども。そういうことを思いまして、私は、今、日本ないし環境庁、文部省がしていらっしゃる文化に対する態度、自然に対する態度は間違っている、こういうふうに思うのでありますが、いかがですか、文化庁さん。
  222. 工藤圭章

    ○工藤説明員 先ほど申し上げましたように、私どもはいかに先祖から受け継いだものを守り育て子孫に伝えていくかということを考えているわけでございます。私は建造物の修理を担当しておりますけれども、修理については、年間全国で約百件ほど完成しております。全国的に見ますと、こういう修理をやることによって古代の建築技法が伝承できますし、かつまた修理の技術が向上してまいります。それから、昔使った材料をいかに確保していくかということが当然受け継がれていくわけでございます。ですから、修理をずっと行っていく、また管理をしていくことによって、我々の先人から伝えられたいろいろの技術、単に建物だけではございません、そういう無形の技術まで全部伝えることができますので、そういう意味では、保存、保護していく、その辺は私どもの立場をこのまま続けていっていいのではないかというふうに思っている次第であります。
  223. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 答弁が一部分しか触れていないのであります。私が申し上げているのは、保存する、保護することがいけないと言っているのじゃありませんよ。しかし、そうしていらっしゃる一面からいうと、もう何百年、何千年と大変ないわれがあって鎮座されているお宮さんやまた御仏さんを、今逆に荒らす結果にもなっているのじゃないか。見せればいいというものではない、公開すればいいというものではないじゃないですか。秘仏としてこれは見てはならぬとしていらっしゃる宗教の立場であったならば、これはやはりお見せしないことの方がその文化を尊敬することになるのではないかと私は申し上げているわけです。その一面に対する御理解とお答えはないわけであります。  そこで、古墳、遺跡等を発掘なさるということは今本当に流行ですね。古い墓場を見れば暴かなければならないと思っていらっしゃる傾向も、これは何も中央だけではありませんよ。末端の行政までそういう姿勢ではありませんか。私はそれをテレビやその他で拝見しておりまして、発掘に当たっていらっしゃる作業現場の方、またその指導者がテレビで大変得意顔に、これによって何とかの常識は覆されてなんて、副葬品がどうしたとかおっしゃっています。しかしそこには、全然と言っていいと私は思う、敬けんなる態度というものが見えませんね。一つの古いお墓、どういう方がどうしてお亡くなりになって、どういう方々がそれを葬られたかは知りません。しかし、これに対する敬けんなる気持ちというものが、もっと行政の中にも学者さんとおっしゃる方々の中にもなくてはいけないのではないか、私はこう思いますよ。人間と動物との境のような何万年昔がどうかしたなんて学者さんの議論はいいですよ。それを国が支持していろいろな補助金を出したりして発掘等をなさる、これもいいですよ。しからばその姿勢というものは今日の生活の中に生きているか。今日、今、きょうの生活を大事にする、これを誇りを持って後世に伝えるというものがなくて、二千年前の人間の骨か猿の骨かわからぬようなものを持ち出して議論するだけではだめではないか、私はこういうように思いますよ。  皆さん、例えば戦中の、また戦後の農村の生活、職人の生活、そういうものが今伝わっておりますか。どこの展示場なんかを見ましても、これが戦中の兵隊さんの正規の服装でございます、これは将校の何でございます、それはその当時の兵隊さんが食べた食堂の原形でございます、随分と連隊等ありました。それは取り壊されて今住宅になったりしておりますが、せめてそこに一つの建物でも残して、そこで兵隊さんの生活した状況というものを保存しようなんてことは全くございませんね。  農作業の状況だってそうでしょう。ゆうべ私は山本有三の「路傍の石」を読みました。そうしましたらやぶ入りのことが書いてありました。あのころの小僧さんの服装、その生活が今どこかの記念館に保存されているという話は聞きませんよ。五年前、十年前、二十年前のお父さん、お母さんの生活文化を大事にすることなくして三千年、五千年、一万年前の歴史だけを今日探ろうとしていらっしゃるでしょう。私はこの不均衡な姿勢を問うているわけです。再度御答弁を願いたい。
  224. 小林孝男

    ○小林説明員 お答えいたします。  ただいま全国で埋蔵文化財の発掘調査というのは、宅地開発あるいは道路建設等開発事業に伴って行われている発掘調査がほとんどでございます。私ども、埋蔵文化財の一般的な取り扱いにつきましては開発事業者側と十分に事前に協議を行いまして、工事予定地から当該埋蔵文化財の包蔵地を除外する、あるいは計画変更をする、こういうようなことによりまして可能な限り現状を保存するよう、そういうような方針で各地方公共団体を指導しているところでございます。ただし、埋蔵文化財包蔵地がどうしてもやむを得ず工事予定地にかかる、こういうような場合に限りまして、その場合には事前に発掘調査をいたしまして学術的な記録だけは残してほしい、こういうことで従来発掘調査をしてもらっておる、こういうことでございます。
  225. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ただいまの生活、五年前、十年前、二十年前、四十年前、五十年前の、つまり現代の生活を保存する努力はどうされておりますか。
  226. 小林孝男

    ○小林説明員 私ども文化庁で所管しておりますのはかなり時代の古いもの、これは物によって違いますけれども、建造物の場合には現在のところ例えば明治時代のものまで、あるいは遺跡につきましても明治時代の中ごろのものまで、そういうものにつきましてはそういう保存の方法を講じておるところでございますが、五年前、十年前のもの、それを文化財と呼ぶかどうかというのはちょっと問題があるかと思いますけれども、そういうものにつきましては今私どもの保護法の範囲の外になっておる、こういう状況でございます。
  227. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 では君と議論してもわからぬ。後で適当な人をひとつ文化庁で、私が別の機会に質問するときに申し上げさせてちょうだい。  私は、繰り返して申し上げますけれども、古いものにのみ文化があると思ったら間違いだ、我々の今生きている文化を伝えることなくして真の文化の相続はあり得ないと思うわけで、そういう観点で申し上げているわけであります。  ついでに参考までに申し上げさせていただきます。これは古いことですよ。さっき明治時代なんておっしゃいましたが、仮に明治でもいい、藩政時代のものでもいい、二百年、三百年前のものでもいわゆる民家、住宅等がたくさんございます。そうしたらあなたたちはまた、これは何も国宝でございませんから、こうおっしゃるのかもしれませんけれども、私も大工さんの経験があるのですよ。昔は古い家を解体するときに棟梁が、親方様が弟子を全部集めて、みんなこれを見ろ、このほぞの掘り方はどうだ、このくぎの打ち方はと一々解説をして大事に大事に壊したものですよ。だから、最近よくありますが、再建しようと思ったらたちまちできるような壊し方を昔だったらしたわけです。学校だってそうじゃありませんか。今は、何か知りませんけれども、大きな機械でがちゃがちゃと壊しちゃうでしょう。この姿勢ですよ。  服装だってそうじゃありませんか。昔は貧しかったからかもしれませんけれども、おじいちゃんが着なすったものを、針目を大事に伝わりながら新しい着物に再生したのでしょう。そういうときに、ああ、おばあちゃんは花嫁に来なさる前にも村で評判の縫い手だったそうだけれどもさすがだなと言いながら、お母さんはそれを学びながら解くでしょう。それを孫さんが見ているわけですよ。それが文化の相続じゃありませんか。今はそれは全部市役所が持っていって焼いちゃうのでしょう。これは文化の中断だ。私はこれを言っているわけですよ。ですから、皆さんの所管からいうとどうか知りませんけれども、今日の日本の文化の姿勢は間違っている。それはもっとその日その日を大事に生きることでなくてはならぬ、使い捨ての中には真の文化はない、そのことを行政の中で生かしてちょうだいと私は申し上げているわけであります。  さて次に、宮内庁さんからも見えていただいております。先ほど古墳等のお話を申し上げましたが、私は特に、私だけではありません、心を込めて心配しているたくさんの方々がおいでなのでありますが、宮内庁が管理していらっしゃると聞きます御陵等のことであります。今、日本全国にはいかほどの数の御陵等が宮内庁の台帳に載っており、かつ管理されておるか。それに対してどの程度の費用がどう使われておるのか、簡単で結構であります、一言ちょうだいしたいと思います。
  228. 勝山亮

    ○勝山説明員 お答えをいたします。  陵墓につきましては現在、近畿地方が中心でございますが、四百五十四カ所ぐらいの場所に、御陵ないしは御墓というものが八百九十二カ所ございます。これの維持管理の予算でございますが、大略申し上げますと、年間約二億円ぐらいの経費でこれを保存し、修理をしたりしているところでございます。
  229. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 戦後いろいろ変わりまして、宮中におきまする祭祀の変遷なんかについても実はいろいろと言われているわけでありますけれども、先におっしゃっていただきました文化庁さんは、そこに道路工事等があるときに、どうしても避けられないときだけそれを発掘するんだとおっしゃっておりますけれども、仮に御陵等が発掘という希望あるいはまたそういう状況になりましたらどうなりますか。これは許可されますか、あるいはまた、これは宮内庁が許可をするというような性質のものかどうか、そこら辺のところをひとつお願いします。
  230. 勝山亮

    ○勝山説明員 お答えをいたします。  一つは発掘の希望が出たような場合に宮内庁としてどうするかとか、文化庁との関係がどうか、そういう御質問だと思いますが、現在御陵につきましてはいわゆる文化財保護法に言う古墳の例外となっておりまして、宮内庁が管理をし、必要があれば修理をしたり発掘をしたりするということであろうかと思いますが、文化庁にはその必要があればその都度通知をいたしまして、宮内庁が主導権を持つといいますか、そういうことでいろいろ工事をしたりするということになろうかと思います。現在までのところ破損とか台風による損壊とか若干の小規模のものはございますが、そういったものにつきましてはその都度文化庁と連絡をとりながら調査をした上で最小限の手当てをしている、こういうふうな状況でございます。
  231. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そうしますと、発掘の希望等がありましても許可しませんか、しますか。一言で結構です。
  232. 勝山亮

    ○勝山説明員 お答えをいたします。  基本的な宮内庁の発掘といいますかそういった考え方でございますが、陵墓につきましては、前から国会で私どもお答えをしておりますように、天皇及び皇后、皇族等をお祭りしてあるところでございます。その陵墓の静安を保ちまして、なおかつ御祖先のお祭りしてあるところでございますので、これを追慕したり尊崇の対象といたしましてまさに敬けんなお気持ちで祭祀が行われている墳墓でございますので、できるだけ原形で長く保存をしていきたい、このように宮内庁としては考えておりますので、先ほど先生お話しになりましたような一般的な意味での発掘調査対象とすべきものではない、このように宮内庁は考えております。
  233. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 文化庁さん、宮内庁さん、御苦労さまでした。どうぞお帰りちょうだいして結構でございます。  林野庁さんに見えていただいているわけでありますが、松くい虫の話であります。せんだってもそういうようなお話がありましたが、松くい虫対策特別措置法が来年三月で切れるということで再延長をされると聞いておりますが、そのとおりですね。
  234. 山口夏郎

    ○山口説明員 特別措置法につきましては、私ども現在の被害状況から見ましてさらに対策が必要であるというふうに考えて、現在延長する方向で所要の改善を加えつつ改正、延長を図りたいということで検討しております。
  235. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 通常国会に提案されますか。
  236. 山口夏郎

    ○山口説明員 現在の特別措置法は来年の三月三十一日で期限切れになりますので、当然年明けごろにはお願いしたいなというふうに、今作業の方は検討段階でございますが、そういうふうに考えております。
  237. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ところで、福島県に信夫山というものがありまして、これは多分自然公園か何かなんですかな、あれは県が指定しているんでしょうか、そこに数々のいろいろな施設がある。小中学校、幼稚園もあれば文化センター、いろいろとありますが、そこの空中散布の実態報告というのが私の手元に参りました。要するに空中散布等を一切やらないでくださいということですね。これはふくしま有機農業研究会というところが言ってよこしたわけであります。とともに、「松くい虫被害対策特別措置法の再延長に反対します。」というものが来ました。途中からでありますが、「一九七七年、林野庁はねつ造したデータを基にして、農薬空中散布があたかも松枯れ防止に効果があるかのごとく見せかけて、「松くい虫防除特別措置法」を強行成立させ、」となっておりまして、最後に「私たちは、農薬の空中散布を強権的に実施しようとする「松くい虫被害対策特別措置法」の再延長に強く反対します。」となって、特別措置法の再延長をやめさせる市民集会という名目で、これは各都道府県に幾つかの団体がありまして、六、七十でしょうかという団体が連名しているのであります。先ほど私は各省庁も同じことだと言いましたが、市民団体等との協力、それは何も安易にこれにこびへつらうということではなくて真の理解を求める努力、このことを申し上げたのでありますが、この間の事情について、またこのような団体等の要求に対してどの程度御理解され、折衝等をされておるかどうか伺いたいと思います。
  238. 山口夏郎

    ○山口説明員 ただいま先生からありました団体等につきましては、昨日その皆さん方と集会がございまして、私どももその場でいろいろとお話を聞かしていただきながら二時間ほど話し合いをやって、今後いろいろ私どもの方でまた調べさせていただく点は調べさせていただくということで話し合いはきのうやっております。
  239. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 この法律が再延長されれば空中散布はされる、延長されなければ空中散布はされない、こういうふうに見ていいんですか。それとともに、この資料によれば空中散布をしますと非常に健康に害があるという、いろいろと何か学者の研究データ等書いておるのですが、その点いかがですか。
  240. 山口夏郎

    ○山口説明員 空中散布の件につきましては、この特別措置法におきましては空中散布の直接実施ということを定めております。防除法におきましては命令実施ということができることになっておりまして、この特別措置法における直接実施と申しますのは、いわゆる森林所有者、管理者、これらの方の被害林、松林の被害が出ましたときに、一々この人たちにやりなさいだとかやりますからよろしくという了解というようなことをやらないで、公示的にこうやりますよ、この薬によってここの防除をやりますよということをお知らせして直接実施するという措置がこの特別措置法にあるということでございまして、あと一々命令をかけたりということになりますと、現在昭和二十五年からございます森林病害虫等防除法の方でやることができるようになっております。
  241. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そのようなことですよね。だから、この法律というのは非帯に強い権力を持っているわけですね、またこの法律を必要とお考えなんでしょうから。しかし、強い権力を持っていれば強い権力を持っているものほど謙虚な姿勢、そして真実に対する敬けんなる態度が必要なんですよ。権力がある、法律があるからこれはやってよろしいというような姿勢であるからこういう反対運動が出てくるわけです。そういうことを御理解されて遺憾なきを期していただきたい。  とともに、これは今ほど御質問申し上げました各省庁にわたることでありますが、真の自然保護、これは国民の皆さん、住民の皆さんの御協力がなくてはできないことだ、だけれども、これはいわば国宝等をただ皆さんに公開して、どうぞどうぞという姿勢のような安易なる妥協に流されてはだめだ。やはり守るべきものを守ることについては、百万人といえども我行かんという一線は必要だ、そこのところの使い分けを十分によくしてちょうだいしなければ、いわば環境保全、文化財保護、すべてのことがうまくいかぬのだ、非常に難しいけれども、これをしていただかないことにはいけない、こういうことだと思うのでありますが、最後に長官、ひとつ簡単に御所見を。
  242. 稲村利幸

    稲村国務大臣 滝沢先生の大変高邁な御意見を先ほど来聞かしていただきまして、まさに環境行政は節度と良識、そういう大切なけじめを持ちながら国民環境、自然、健康を守りながら後世に伝えていく、こういう気持ちが大事だなと思います。
  243. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。長官初め皆さん御苦労さまでした。終わります。
  244. 林大幹

    林委員長 岩佐恵美君。
  245. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私は前回の当委員会公害健康被害補償制度改悪、つまり全国四十一指定地域全面解除の中公審答申の不当性、また患者の皆さんの置かれている困難な実態についてお伺いをいたしました。きょうは、四月八日の第三十回環境保健会議事速記録について伺いたいと思います。  保健部長のお手元にこの速記録があると思いますけれども、私、専門委員長の鈴木武夫先生が留意事項について説明されているくだり、つまり速記録の十四ページから読み上げたいと思います。   私は二つのことに留意していただきたい。後でもう一回申しあげますけれども、注意すべきものが二つあるということを表面で申しあげておきたい。   私たちの集めました最近の疫学的研究というものは、一般環境の、ですから発生源から離れたと申しますか、汚れものが拡散してしまった一般環境大気汚染と、非常に多数の人口集団との関係につきましての疫学的研究からこう判断をいたしました。しかしながら、実際には、一般環境大気汚染の状態を測定している場所以外に、それよりも汚れているところがあるに違いない。それについての疫学的結果は我々はもっておらないわけです。これはほかの言葉で申しますと、いままでは、大気汚染対策というものは、あるいは、ものの考え方というものは、面として考えていることが重点的でございました。しかしながら、面の問題がここまでなってきたならば、そろそろ線なりポイントなりという細かい配慮が必要であろう。それにつきましての配慮は、局地的汚染という言葉で表わしておきましたけれども、そういう局地的汚染の影響は考慮を要しますよ、ただ私たちはその資料を持たなかった、ということでございます。   もう一つは、もうずっと前から大気汚染に対しまして感受性の高い集団の存在ということがいわれておりました。赤ん坊とか病人とか老人とか……。しかし、それ以外に何か、動物実験をなさっている方々、私たちは何かよく分らないけれども、動物実験なり疫学的研究をしていると、非常に感受性の高い少数の人がどうもいそうである。これは具体的には今日はご説明できませんけれども、いま行っておりますような疫学的調査をやっておりますと、人口集団の数が多くなりますから、だれか特別に感受性の高い集団がありますと、現代の疫学の手法で申しますと、その比較的少数の――繰り返します、私が申しましたのは、常識的にいっているものよりもほかに、比較的少数の何かある、その人 十五ページに入ります。  たちが見のがされてしまう可能性があるから、それにつきましてひと注意をして見ていかなければいけないということを、どうしてもこの際申し上げておかなければならないということになりました。 これが十四ページから十五ページのくだりでございます。  この議事録について、私が今読み上げました速記録、これはそのお手元にある速記録と同じかどうかについてお答えをいただきたいと思います。
  246. 目黒克己

    目黒政府委員 中央公害対策審議会におきましては、公正かつ自由な審議を確保するという観点からも、中公審御自身の判断で審議が非公開というふうになっているのでございます。したがいまして、審議会の席上での個々の委員の発言についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。  なお、今御指摘専門委員会報告では、留意事項でございますが、従来から大気汚染に対し……(岩佐委員「ちょっと質問に答えて」と呼ぶ)いや、今の留意事項の点のところでございますので……
  247. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 要するに速記録、今私が読み上げたものとあなたがお手元に持っているものと相違がないかどうかということを私はお伺いしているのです。それだけ答えてくれれば結構です。
  248. 目黒克己

    目黒政府委員 私が今申し上げましたように、個々の委員の発言等については、中公審の御自身の判断もございますし、審議が非公開となっているところでございまして、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思っているところでございます。
  249. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これは十日の参議院の環境委員会においても、沓脱委員環境庁との間でやはり同じやりとりがあるわけですね。これはもう非常に重要な問題点なんです。それについて、問題だからこそこういう議事録、速記録が私たち国会議員の手に入るという事態になっているわけです。ここのところは、何だかんだと言って環境庁が認めないということは本当に不当だと思うのです。これが現在の中公審答申が不当かどうかというかぎを握っているところですので、私はその点については非常に怒りを持って指摘をしておきたいというふうに思うのです。  それで続けて、この二つの留意事項の意味するところ、今保健部長が答えられようとしたのだろうと思いますが、要するに、鈴木委員長ははっきりとこの二つの留意事項の中で、弱者は救済されなければならないのは当然のことだ、それを外して全面解除はひどいという意味をこの中に込められているわけです。それからもう一つは、指定地域の解除ということにつきまして、それが今までは面で考えていたけれども、その問題についての検討はいろいろあるかもしれないけれども、いずれにしても、線とか点というものについては、これは残していかなければいけないんだということがこの二つの留意事項だというふうに思うのです。そういう点で、私は再度この問題を確かめておきたいというふうに思います。
  250. 目黒克己

    目黒政府委員 専門委員会報告では、今の留意事項の点でございますけれども、こういうふうに記載してあるわけでございます。「従来から、大気汚染に対し感受性の高い集団の存在が注目されてきている。そのような集団が比較的少数にとどまる限り、通常の人口集団対象とする疫学調査によっては結果的に見逃される可能性のあることに注意せねばならない。」としているわけでございます。この留意事項につきまして、さらに答申では、「専門委員会報告では、大気汚染に対して感受性の高い集団とは、児童、老齢者、呼吸器疾患罹患者等ではなく、通常の疫学調査において検出し得ないような少数の集団を指している。」としているのでございます。  また専門委員会報告では、都市型のものを含めまして、現状大気汚染が、老人や児童などを含めて、一般にぜんそく等の主たる原因ではないというふうにされているのでございます。したがいまして、答申はこれを取り入れまして、以上のことから、留意事項とされております大気汚染に対し感受性の高い集団に対しては、「更に調査・研究を加える必要があるが、「著しい大気汚染の影響による疾病の多発」という状況を前提として個別の補償を行う本制度観点からは、検討対象とはならないものと考える。」というふうにしているところでございます。
  251. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まさに今のことが、結局その鈴木さんが所属している専門委員会の報告、そういうことと全く違っている。そういうことが今私が読み上げた中で指摘をされているわけであります。これは前委員会でもかなり議論をしているところですので、このことについて繰り返し言うことは避けますけれども、そういう不当な結論に基づいて指定地域の解除を、物差しをきっちりと決めないで、大気汚染が主たる原因ではなくなったということでいきなり全面解除に飛躍をしている、ここのところは非常に問題だ。一体全体地域指定を解除できるのかどうかということについて、まずきっちりした物差しを決めるべきなのではないか、私たちはそういうことをすべきだと思っているわけですけれども、これはもう保健部長の答弁は結構ですので、大臣から御答弁いただきたいと思います。
  252. 目黒克己

    目黒政府委員 では簡単に申し上げます。  今のことにつきましては、現在の我が国の一般環境大気中に見られます最高濃度レベルの大気汚染の影響を含めても、専門委員会報告では先ほど来申し上げているように評価されているわけでございまして、現行の四十一指定地域を含めた我が国の総体としての大気汚染と健康影響との関係評価したものだ、こういうふうな趣旨であるというふうに私ども理解しているのでございます。
  253. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 指定地域を決めるときにはちゃんと物差しを決めておいて、解除するときに物差しも決めないでばさっと全部切り捨てる、そういうところが非常に問題なわけです。その点について大臣の御意見を伺いたいのです。  それで大臣、これは今大変深刻な問題になっています。そして、患者さんにとっては公害史上初の暴挙といいますか、非常に重大な事態なんですね。今そういう中における大臣の位置だと思うのです。人間というのは、一度生まれてきたらその人の人生は一回しかないわけです。健康で、それこそ公害もない楽しい人生を送る権利がだれにもあるわけです。これを、たとえ社会発展のためとかなんとかいえ、企業だとか個人だとかいう人たちが侵すことは絶対にできないというふうに私は思うのです。そういうことが問われていることでありますので、ぜひ大臣の基本姿勢をお伺いしておきたいと思います。余りメモなどごらんにならないで、大臣自身が答えてください。
  254. 稲村利幸

    稲村国務大臣 ひとつメモを見ないで答えますから。  先生御案内のとおり、中公審公害問題に関しての立派な権威者が三年間にわたって御意見を交わし、本当に真剣に協議をされたことで、私はその答申を尊重せざるを得ない立場でございます。
  255. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 来年いつになるかわかりませんけれども、当委員会に法案としてかかってくるというようなことが今言われているわけでありますが、私どもとしては、中公審答申は決して立派な答申ではない、これはやり直すべきだ、科学的ないわゆる批判にたえ得るものではない、むしろつくられた委員自身が抗議をしているというような事態であるということを指摘して、きょうはこの問題についてこれ以上議論をする時間がありませんのでこれで終わりたいと思いますけれども、私どもはそういうふうに考えているところであります。  次に、高尾山の問題を伺いたいと思います。高尾山の真ん中にトンネルを二本掘って道路を通そうという首都圏中央連絡道、いわゆる圏央道計画について伺いたいと思います。  高尾山は温帯と暖帯の境界にあり、その微妙な自然のバランスの中で約千三百種の植物が生育し、約四千種もの昆虫、ムササビ、タヌキなどの小動物、さらにはキツツキなど野鳥もかなりの種類生息をしています。低山では珍しいイヌブナやブナの林は有名で、昆虫の生息地としては日本で三大生息地の一つとなっています。この豊かな自然は、千二百年もの間いわゆる信仰の山ということもあって守られてきています。一九六七年には明治の森高尾国定公園に指定をされています。高尾山には毎年二百五十万人の、それこそお年寄りから子供さんまで幅広くたくさんの方々が訪れています。都市近郊では珍しく自然が豊かに残され、多くの人々に親しまれている高尾山の自然や緑を守る、このことは、今都市部で緑がどんどん壊されていっている中で大変大事だと思います。環境庁は今回の計画に当たって、当然自然を守るという立場で当たられるというふうに思いますけれども、改めて基本姿勢についてお伺いをしておきたいと思います。
  256. 稲村利幸

    稲村国務大臣 この問題は、まさに今先生がお述べになったとおり、明治の森高尾国定公園に指定されておりまして、東京近郊としては自然の状態が良好に保たれている地域であります。また、自然に親しむレクリエーションの場としても重要であると認識しております。  圏央道につきましては、高尾山をトンネルで通過する計画と聞いてはおりますが、自然環境に及ぼす影響を避けるために特に慎重な配慮が必要である、私もそのように考えております。
  257. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 現在、ことしの七月に提出をされました環境影響評価書、アセスの審査の手続が進んでいます。ところがこのアセス案が驚くほどずさんだ、とても科学的なものとは言えないという専門家、自然保護関係の団体の方々あるいは住民の方々からも批判の声が上がっております。特に、環境への影響を予測するための基礎的な調査が余りにもずさんであるという指摘は重大だというふうに思っています。  建設省に伺いますが、例えば植物調査の方ですけれども、オヒョウが二ヵ所で見つかったあるいはミヤマムグラもあったとなっていますが、実際はどうだったのでしょうか。
  258. 三谷浩

    ○三谷説明員 お答えいたします。  環境影響評価については、現在案を提出いたしまして地元説明会それからお話を聞いているところでございます。  植物の調査でございますが、既存文献の調査あるいは現地の調査ということをやっております。今御指摘の高尾山のオヒョウについてはハルニレの誤認でございます。見解書で適切に対処したいというふうに考えております。  ミヤマムグラにつきましては、持ち帰った標本でいろいろ検討をいたしまして、ミヤマイラクサはムカゴイラクサ、またミヤマムグラはヨツバムグラであることが判明いたしましたので、本編には正しく記載してございます。
  259. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今お答えになったように、オヒョウもミヤマムグラも間違いだった。ハルニレの間違いについて都の街路計画課長は、九月十八日付読売新聞の地域ニュース欄で「オヒョウを例にとると、マニアに盗まれないように確認場所を明記しなかったのが、かえって誤解を招いたようだ。キメ細かな実踏もしているので、反対住民の言うようなことはない」、こういう反論をしているのです。ところが、オヒョウというのは木の高さが十メートルから十五メートル、幹の回りが三十センチから四十センチというニレ科の落葉高木なんですね。だから、マニアに欲しがられるような代物ではないのですね。そういう意味では、全くお粗末な調査に加えてお粗末な言いわけをしている、これが現地で大変不評を買っているのです。  それから、アセス案の現地調査の出現種、見つかった種ですね、高尾山にあるはずのないものが、今のような間違いで十五種以上もあるというふうに専門家は主張しています。ごく普通に見られるのに記載されていない種類は高尾山だけで百二十種類以上ある、こういうふうに言われております。アセス案の植物調査地点の記載、これも例えば資料編では、「高尾山とその周辺」ナンバー一から八十六地点、ところが、調べてみるとそのうち四十地点、つまりナンバー十七から三十七までない、五十四から七十二までない。そしてまた「高尾山以外の地域」ナンバー一から九十六、そのうちのやはり五十地点が欠落をしているわけですね。報告書では、八十六地点で調査を行った、こういうふうになっているわけですけれども、一体どちらの数が本当なんでしょうか。
  260. 三谷浩

    ○三谷説明員 まず、評価書案の本編の方には表が載っておりまして、植物群落調査調査地点が九十六と載っております。その九十六調査地点が、資料編の方には地点図という格好で書いてあるかと思っております。整理の都合上通し番号でやっておりませんでしたので誤解を招いたものと思いますが、資料編を見ていただければおわかりだと思いますが、まさに地点は九十六ちゃんと載っております。それで、番号が多分抜けているというお話だと思いますが、通し番号でないのですが九十六点、今の本編とそれから資料編との数値は完全に合っております。
  261. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 要するに、通し番号にするのをしなかったんだということなんですか。
  262. 三谷浩

    ○三谷説明員 お答えいたします。  御質問が、本編には九十六点の地点数が載っていたけれども、資料編の方でその数がないじゃないか、こういう御指摘ですから、それはちゃんと載っております、こういう御答弁をしました。
  263. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 いや、資料編では四十地点載ってないわけですね。それから、高尾山以外のところは五十地点が載ってないわけですよ。報告書では、八十六地点で調査を行った、こうなっているわけですね。
  264. 三谷浩

    ○三谷説明員 資料で御説明をまた別途いたしたいと思っておりますが、この参考資料の方には、図としまして、高尾区域での地点図とその他地域の地点図と別に載っているわけです。それで、今御指摘の番号が抜けているというのは高尾のことだと思いますが、一番から十六番があるのです。ただし、十七から三十七という数字を使っていないわけです。そのかわり三十八から五十三、こういうのを足しますと、高尾では四十六地点、その他が五十地点、合わせて九十六地点、ですから、これは本編の数値と合致をしているということでございます。
  265. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、参議院段階で上田参議院議員に局長が答えられた「調査をしたけれども、記載をしなかった」ということとは違うわけですね。
  266. 三谷浩

    ○三谷説明員 今の回答が正しいかと思います。
  267. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 昆虫の調査でもあきれるほどずさんなんですね。高尾山では代表的なエゾゼミが書かれていない、あるいは小学生でも知っているミヤマクワガタがない。それから、アオマツムシもない。アオマツムシというのは大変うるさく鳴くんだそうです。道路沿いで車の騒音にも負けないくらい鳴き続けるというのに、現地で確認されないはずがないと言うのですね。何を現地調査したのかと失笑を買っているほどです。本当にひどいアセス案なんですね、今の数字の問題もそうなんですけれども。  アセス案では、「トンネル掘削に伴う不圧地下水への影響については、高尾山トンネルを始め、計画路線のトンネルを横断する大規模な破砕帯を伴う断層は存在せず、特定の水脈の存在も考えられないため、水脈の遮断は考えられない。」こういうふうに言い、「影響は少ないと考える。」となっているわけですけれども、一体どういう調査をされたのでしょうか。
  268. 三谷浩

    ○三谷説明員 お答えいたします。  地形、地質調査につきましては、既存の文献、資料によることが一つございます。それから計画線周辺、ちょうど五百メーター幅でございますが、これにつきまして現地踏査を行っております。もちろん、こういう専門的な調査でございますから専門のコンサルタント等へ委託をしてやっております。
  269. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 高尾山を含む小仏層を専門的に研究しておられる方の報告では、蛇滝下の部分に幅三十メートルにわたる破砕帯を伴う断層が東西方向、つまりトンネルと直交する方向に走っていることが指摘をされているのです。これはもう大変なことなんですね。  それで、建設省のある技術者が、これは朝日新聞の十月二十二日付の「高尾山の自然は」というシリーズなんですが、この水脈の問題で、「建設省の幹部は不安な証言をする。「本音を言えば、山の中は掘ってみなければわからない」」こういうふうなことが紹介されているのですね。掘ってみてわかったというのでは遅いわけです。一体どういうことなんでしょうか。
  270. 三谷浩

    ○三谷説明員 いわゆる地質の調査につきましては、先ほどやり方については御説明したとおりでございます。  そこで、確かに今御指摘のように、この区間につきましては小仏層が主体でございますが、調査によれば、蛇滝の下流それから琵琶滝の下流を結ぶ断層と交差することが想定されますが、この断層は、断層面に沿って幅五センチメーターぐらいの断層粘土を伴うとともに、断層周辺部一メーター前後の粘板岩が片状となっている程度の小規模なものでございます。したがって、地表水の問題、こういうものの湧水、こういうことは考えられないわけでございます。
  271. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 専門家が破砕帯の断層があるということで不安であるという指摘をしているわけですね。それで建設省は、今言ったように、結局工事の直前になってボーリングをする、そして確かめるんだというようなことなので、これでは納得をさせることができないのですね。高尾山にあれだけの豊かな植生があるということは、水脈が非常に大きな影響を与えているということだと思うのですね。その非帯に重要な水脈について、今のような論争のあるまま、掘ってみなければわからないというままでいかれたんじゃ困るわけです。この点について、いかがですか。
  272. 三谷浩

    ○三谷説明員 専門家がおっしゃったということについては私はよくわかりませんが、こちらの方も専門家がいろいろ調査をしているわけでございます。  一般的に、先ほど申し上げましたように、小仏層は中生代の白亜紀の堆積岩でございます。もちろん砂岩と頁岩、こうなっているわけです。こういうものはそういう断層とかいうようなものじゃなくて、こういう新しい硬質岩盤部では開口クラックとか、それから層理、節理とか、こういう専門語をちょっと申し上げますが、ほとんど密着した状態でございますので岩石自体が緻密であります。したがって、今のような透水性の問題あるいは湧水がどう、こういうようなことは考えられないというふうに考えております。
  273. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 余りここでもって議論をする時間がないのですけれども、ちょっとそのままにしておくとあといけないというふうに思うのですが、一般的には今説明されたようなことで、岩盤が高尾はかたいはずだというふうに従来言われてきたのです。それは私も専門家の人と話をしたときにそういう話がされて、そんなものかと思っていたのです。ところがこの小仏層に詳しい方が本当に足で歩いて、そしてその中でやはり大変な事態だということを指摘をしているわけですね。事態はそういうふうに違うわけですから、私はこれは捨ておけないというふうに言っているわけです。どうですか。
  274. 三谷浩

    ○三谷説明員 今御指摘のあったいろいろな御意見があることは、私どもも十分存じ上げておるわけでございます。したがいましていろいろな、例えばボーリング調査とかこういうようなことはもちろん工事を進めるときにはやはり必要かと思います。ただ前段の環境影響評価、こういう段階において一つ一つ掘ってということはいかがか、こういうふうに考えます。
  275. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、大気汚染の問題について伺いたいというふうに思います。  巨大なジャンクション、五十メーターの高さのものですが、巨大なジャンクションが裏高尾の地域にできるわけです。この裏高尾にできますジャンクションの交通量というのは、資料編によれば大体最小で七万四千、それから最大で九万四千四百台、交差点部分は八万四千台だと言われています。これは今排ガス問題で言われている環七の自動車道、例えば世田谷の若林二丁目では七万八千六百台、練馬区では六万一千三百台、それから足立では六万六千四百台、大体この環七並みの交通量というふうに言われているわけでありますけれども、あの狭い谷合いにそうした巨大な環七並みの交通が入ってくるということは大変重大なわけですね。特に裏高尾は接地逆転層が起こるということが従来から、この計画が表面化する前から専門家によって指摘をされているのですね。つまり接地逆転層というのは、上の方の暖められた空気で下の冷たい空気がそれより上に出られないということですね。言ってみれば密封された状態になる、そういう逆転層問題なんですが、この逆転層について当初からいろいろな議論がありました。今度の評価書案では二十七カ所逆転層が起こっているというふうな記載があるのですけれども、一体どんな方法で調査をされ、そしてなぜ二十七回分しか載せなかったのか、もっと全体で多かったと聞いているのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  276. 三谷浩

    ○三谷説明員 逆転層調査、私どもは、建設省ではゾンデを上げまして上空の温度、風向、風速の測定を行ったわけでございます。現地の専門家の方もいろいろな調査をやられたというふうに私も伺っております。回数等は評価書案に書いてあるとおりでございます。
  277. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この調査についてですけれども、住民の方々は学者の協力を得て、長期にわたって九ヵ所、いわゆる自記温度計によってはかっています。狭い谷合い特有の異常に強い逆転層が観測をされて、一日に最高十七・五時間も逆転状況があるということが調査をされていますし、また曇天やあるいは夏場でも逆転層が観測をされる。普通は曇天だと起こらないとか、あるいは夏場は起こらないとか、そういうふうに言われているのですけれども、こういう中で逆転層が起こっているわけであります。  この逆転層が起こるような重大な大気状態のところでありながら、今度の大気汚染の予測調査というのがいわゆる拡散式方式というのを使っていまして、例えば東京都だとかあるいは建設省自身も、自分のところで沿道地域の居住環境整備に関する総合技術の開発報告書というところで、谷合いでもっていろいろ大気汚染の予測をする場合には風洞実験というのをやらなければいけませんよというようなことで、図入りでこれは建設省自身も出している。そういう技術指針なんですね。東京都はもちろん同じような、やはり風洞実験なり複雑な地形に合ったようなそういう調査をしなければいけませんよということを指摘しているわけですけれども、これが高尾山では用いられていない。  それからもう一つ、いわゆる掘り割り部分でもこういう複雑な地形と同じような実験方式を用いなさいよというふうに指摘されているのですけれども、やはり拡散式方式を建設省はとっているということでちょっと一つ一つ議論したかったのですが、きょうは時間もなくなってしまいましたので、指摘だけにとどめさせてもらいますけれども、こういうだれが見ても納得できないような環境アセス案をめぐって今住民と建設省の間でのやりとりが続いているわけです。  環境庁にお尋ねをしたいのですけれども、やはり先ほど大臣が最初に姿勢をお示しいただいて、私たちは大変心強く思っているわけですけれども環境庁として自然を守る上でどういうチェックをされるのか、そのことをお伺いをさせていただいて、そしてその後大臣のそれに沿ってのいろいろ御決意をお伺いしたいと思います。
  278. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 お答え申し上げます。  要点だけにいたしますが、アセスメントの手続中でございます。現在の時点では先生お話しございましたように公聴会の段階でございます。アセス書案ができて公聴会、これから後一連の慎重な手続が予定されておるわけでございます。現在その公聴会の段階で、住民の皆様方の御意見を伺っておられると聞いておりますが、そこで見解の相違もございますように伺います。  しかし、いずれにいたしましても、これはアセスメントの手続の中で十分意見の交換をされ、それを踏まえて全体として環境の保全が図られるというのが本来のアセスメントのまたねらいでもあるわけでございます。環境庁といたしましても、アセスメントの手続の中でそういう意見交換を十分にしていただき、その結果環境の保全が図られることを望むものでございます。
  279. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ちょっと大臣の答弁の前に一言。  石本長官のときに、高尾山に一度お見えになるというお話だったのですが、お見えにならないうちにおかわりになってしまいました。その点も含めて――まあ知床は見に行かれて、択伐が行われない、しかもその前に調査が行われるというような結論を引き出しているわけですけれども、この高尾山についても、都民が二百五十万人も行かれる、東京にとっては本当に唯一残されたオアシスとも言えるような場所ですので、長官にぜひ現地に来ていただくなり、あるいはしかるべく対応をしていただきたい。そういう御決意を含めて答弁をいただきたいと思います。
  280. 稲村利幸

    稲村国務大臣 環境庁としての態度は、先ほど加藤企画調整局長から答弁をしたとおりでございます。  また、高尾山を視察したらどうか、こういう御意見ですが、今事業者及び東京都が一生懸命調整をしている段階でございます。また、そういう必要な時期が来れば、私なりに考えてみたいと思います。
  281. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  282. 林大幹

    林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十一分散会