○武村
委員 環境委員会で初めて
質問をさせていただきます。今までは地方で専ら答えることばかりやってまいりました。
質問は余りなれておりません。よろしくお願いいたします。
私は、僣越でございますが、琵琶湖の経験をする中で、世界の湖、そして世界の水や緑や砂漠化や
大気の問題にいささか
関心を持ち始めております。そういう意味でグローバルな
環境問題に、微力でございますがこれから取り組んでいきたいと思っております。
ところで、人類の歴史の中で、一九七二年のあのストックホルムの国連
人間環境会議ほど重大な
会議はないというふうに私は
認識いたしております。その前後、ローマ・クラブの提言等もございました。あの
会議のテーマは、御承知のように「かけがえのない地球」ということでございました。地球は大変狭くなってまいりましたし、我々五十億の人類が生きている空間でございますが、土、
大気、水、緑、有限の自然
環境の中で数百万の生命が存在を許されているわけでございます。その生命の
一つが
人間でございます。この
人間だけが思い上がって、
人間だけの幸せのためにしたいほうだいをしてこの小さな地球の
環境を随分大きく変えてきている。しかも、悪い方向に変えてきている事例が二十世紀になってどんどんふえてまいっているわけでございます。そのことに大きな警鐘を発したのがあの
会議であったかと思います。
振り返って、
大気の問題でショックを受けましたのは、ことし四月のあのソ連のチェルノブイリの原発事故でございました。地球全体、人類全体を大変な不安に陥れたわけでございますが、ウラル地方に近いヨーロッパを中心にして、あの近辺では文字どおり恐怖のどん底に一瞬突き落とされたわけでございます。新聞報道等で記憶いたしておりますように、しばらく子供たちは学校に行けない、家の中に閉じこもっていよ、あるいは新鮮なミルクや野菜は食べてはいけないと、考えられないような事態が起こったわけでございます。
環境問題には外国はないという言葉があります。確かにこの原発事故
一つを例にとりましても、
大気を共有いたしておりますから国境はありません。ウラルの原発事故の放射能は日本にまでいささか降ってきたわけでございます。改めてグローバルな
環境問題への
認識を深めたわけでございます。
また、最近いささか鳴りを静めております例のアフリカ難民の問題を取り上げましても、これは主として緑との
かかわりが深いわけでございますが、結局あの問題の根底には、五億三千万というアフリカの諸
国民が、大変貧しいために木を切って燃料にしなければならないという現実がございます。アフリカの約九五%が薪炭に依存している、インドネシアでも、九〇%が依然として石油やガスでなしに薪炭に燃料を依存しているのが現実でございます。
そしてまた、私も二年前アフリカの空をセスナで飛んでみたのですが、二、三カ所で煙が上がっておりました。あれは何だというふうに聞いたのですが、どうも焼き畑農業であったようでございます。アフリカの緑の喪失の約七〇%が転々と移転をしていく焼き畑農耕にある、アジアでも五〇%近いものがこれに
原因をしているようでございます。もっとも、経済林として熱帯林を切り倒した跡を焼くというふうなこともあるわけですが、いずれにしましてもそういう現実が緑を減少させ、ひいては砂漠化の進行や土壌の流出という事態を生みながら、
人間の生存の足元を大きく崩してきているわけでございます。
もう
一つ水に関しては、私はちょうど衆議院の解散が決まったころシベリアのバイカル湖畔におりました。第二回世界湖沼
会議がアメリカでございまして、その帰りにバイカル湖を視察してきたわけでございます。バイカル湖というのは、御承知のように世界で最も古い湖、約二千万年という歴史を刻んでおります。加えて世界で最も水量が多く、そして千六百二十メーターでしたか、世界で最も水深の深い、また透明度が四十一、二メーター、摩周湖よりも深いという話でございますが、世界で最もきれいな湖でもあります。ところが、バイカル湖の湖畔に立って北側の山を眺めると大変神秘的な景観でございましたが、このバイカル湖も徐々に汚濁が始まっておりました。話を聞きますと、遠くは蒙古等の開発、牧畜等の汚濁が
原因をなしているという説明でございましたが、あのすばらしい、世界で最も透明度の高い湖ですら汚濁が始まっているという
現状を見てまいったわけでございます。
大気、緑、水と例を二、三申し上げたわけでございますが、我々二十一世紀を目前にした人類の前には二つの大きな心配事がある。
一つは、言うまでもなく核戦争の不安、いま
一つは、広くは資源とかエネルギー、食糧、人口問題も含めたグローバルな
環境問題の不安でございます。核兵器の問題は、
人間の病気に例えますと急性病とでもいいましょうか、割合物事がわかりやすい、これは絶対起こしてはならないという
認識をみんな持っています。また、そういう意味でいろいろな
努力を始めているわけですが、この
環境問題だけはじわじわやってまいります。国内の
環境問題もそうですが、結果がはっきりして、
人間の生命に被害を及ぼして初めてみこしを上げるというふうなことになりがちでございまして、ましてや地球規模の
環境問題については何か遠い話という実感がまだまだぬぐい切れないわけでございます。
今申し上げたような例を考えますと、これは遠い世界の話ではない、あすの我々の子孫の問題だし、水も
大気も緑も含めて日本の近い将来の深刻な課題だという
認識を持って我々はこの問題に対処していかなければいけないのではないか。そういう意味では、日本の国内の世論も政治的な我々の
努力もまだまだ足りないと思っております。
環境庁におかれては、国内の
環境問題に追われがちでございますが、ぜひグローバルな
環境問題にこれからは大きな力を割いていただきたい、外務省、農林省も含めた日本政府全体がこの問題に鋭い目を向けていただきたいというふうに思っている一人でございます。
長々と申し上げましたが、そんな意味も含めて、まずグローバルな
環境問題、その中における日本の
役割という点について
長官の御
所見を承りたいと思います。