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1986-10-28 第107回国会 衆議院 環境委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十八日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 林  大幹君    理事 小杉  隆君 理事 武村 正義君    理事 戸沢 政方君 理事 山崎平八郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 春田 重昭君    理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    臼井日出男君       小沢 一郎君    片岡 武司君       金子 みつ君    森田 景一君       岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       山内 豊徳君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君  委員外出席者         防衛施設庁総務         部調停官    鈴木  杲君         国土庁長官官房         水資源部水資源         計画課長    徳岡 康夫君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         文部省大臣官房         文教施設部計画         課長      木村  直君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   加藤 三郎君         林野庁指導部造         林課長     杉本 正興君         林野庁指導部森         林保全課長   山口 夏郎君         林野庁業務部経         営企画課長   塚本 隆久君         通商産業省貿易         局輸入課長   鳥居原正敏君         労働省労働基準         局安全衛生部化         学物質調査課長 冨田 達夫君         建設省都市局下         水道部流域下水         道課長     斉藤健次郎君         建設省河川局河         川計画課長   角田 直行君         建設省河川局開         発課長     山口 甚郎君         建設省住宅局建         築指導課長   立石  真君         環境委員会調査         室長      山本 喜陸君     ───────────── 委員の異動 十月二十八日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     臼井日出男君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     河本 敏夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 林大幹

    林委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小杉隆君。
  3. 小杉隆

    小杉委員 それでは、公害健康被害補償見直しについてまず質問をいたしたいと思います。  ちょうど今から三年前の五十八年十一月十二日に、環境庁長官から中央公害対策審議会公害健康被害補償見直しについての諮問が行われまして、今日まで専門委員会で四十二回、そして作業小委員会で十一回というような審議を重ねて、去る十月三日に作業小委員会報告があり、また十月六日に答申案が発表されたわけでありまして、明後日、十月三十日に中央公害対策審議会の総会が開かれるということであります。非常に精力的に作業された委員の皆様に私はその労をねぎらいたいわけでございますが、この問題についてはいろいろな賛否両論が渦巻いております。今回出されましたこの中公審答申案につきまして、まず長官から、どのようにお考えになっておられるか、基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  4. 稲村利幸

    稲村国務大臣 今先生がお触れになりましたとおり、三年にわたり中公審において御熱心に審議をされました。専門委員会四十二回、作業小委員会十一回、さらに部会としては四回ということですので、環境庁としては、答申をいただき、当然のことながらこれを十分に尊重しつつ、適切に対処していかなければならないと思っております。
  5. 小杉隆

    小杉委員 中公審構成メンバーにつきまして、被害者代表が含まれていないではないかというような批判があります。答申案をまとめる過程の中で患者意見をどのように吸い上げ、また答申に反映させたのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  6. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  中公審環境保健部会におきましては、本年六月三日に、患者団体等関係者から制度改正についての意見聴取を行っているわけでございます。そのときには患者さんの方からは六人の代表の方々が出てこられまして、いろいろ御説明を受けたわけでございます。また、事務当局へは具体的なこと等について陳情もございまして、作業小委員会あるいは委員先生方にこの意見を伝えるといったようなこともやってきたわけでございます。またそのほか、四月以来五回にわたりまして、患者さんの方から陳情書あるいは資料等をぜひ小委員会あるいは部会の方へ伝えてほしいというようなこともございまして、そういうものも審議会の方へお配りしたといったようなこともあるわけでございまして、患者意見も十分踏まえて審議を行っていただいているものというふうに私ども理解をいたしておるところでございます。
  7. 小杉隆

    小杉委員 専門委員会委員長部会で、今回の答申案について批判的な意見を述べたと言われています。そして、ことしの四月に出された専門委員会報告の科学的な知見をねじ曲げ、公害企業とか経団連の政治的圧力に屈服したという批判も聞かれるわけですけれども部会答申案を決めるに当たって専門委員会報告をどのようにしんしゃくしてこられたのか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  8. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  答申案の中では、次のように考えられているわけでございます。  専門委員会報告は、動物実験、それから人への実験的な負荷研究、疫学的な研究及び臨床医学的な知見を総合的に検討し、集約をいたしまして、大気汚染健康被害との関係評価を現在の科学的知見で可能な限り行ったものでありまして、このことは、この審議会審議前提となっているものであるわけでございます。中央公害対策審議会環境保健部会では、作業小委員会で一回、それから部会で一回、それぞれ鈴木先生から具体的に専門委員会報告について十分な説明をいただいたわけでございます。そして、その先生の御説明あるいはその報告を踏まえまして、この報告科学的知見として答申案を取りまとめられたものの基礎とされたということで理解をしているところでございます。
  9. 小杉隆

    小杉委員 今回の答申については、特に自動車排気ガスに悩む大都市などを抱える自治体から、窒素酸化物中心とする複合汚染が進んでいるということで、むしろ今の制度を拡充すべきだというような声が強いわけでございます。今度の答申案につきましても、やはりもっとそういった自治体に対する説明なり理解を求めることの必要があるのではないか。  それから、今度の答申案の中身を見ますと、具体的にこれからの対策を進めるに当たっては、自治体が主役でやっていかなければならない仕事がたくさんあるわけでございますので、そういった自治体に対するPRとか協力要請というようなものをどのように進めていくのか、この点についても明らかにしていただきたい。
  10. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  環境庁といたしましては、正式に答申をいただきました後に適切に対処する所存でございますが、いずれにいたしましても、今後とも地方公共団体理解協力をいただくことが大変重要なことと考えております。したがいまして、正式に答申をいただきましたならば、その答申内容あるいはそれを踏まえた環境庁考え方等について、地方公共団体理解協力を得るべく最大限の努力を払ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  11. 小杉隆

    小杉委員 それでは次に、少し内容面に触れたいと思うのですが、今回の答申案によりますと、窒素酸化物を含めた総体としての大気汚染というものが慢性閉塞性肺疾患、いわゆる気管支ぜんそくなどに何らかの影響があるということを認めながら、指定地域を全面的に解除するというふうになっているわけですけれども、その基本的な考え方をお知らせ願いたいと思います。
  12. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  答申案におきましては、まず第一番目といたしまして、現在の大気汚染総体として慢性閉塞性肺疾患自然史に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できないとしております。二番目に、しかしながら、現在の大気汚染のもとにおいてはその影響気管支ぜんそく等の主たる原因とは言えなくなっているために、汚染原因者の負担によって個人に対して民事責任を踏まえた補償を行う合理性は失われていると考えるというふうに答申案にはなっているわけでございます。したがいまして、合理性がないということから、現在第一種の地域として指定される四十一の地域はすべてその指定を解除して、新規患者認定を行わないこととするのが適当であるということになっているわけでございます。また、現在の大気汚染のもとでは、個人に対する個別の補償を行うというのではなくて、総合的な環境保健に関する施策を推進することが適当である、このように答申案には述べられているところでございます。
  13. 小杉隆

    小杉委員 しかし、現実には、認定患者だけで毎年九千人もふえ続けているという状況を見ますと、まだまだ潜在患者が存在しているということをうかがわせるわけですけれども、こういった現状をある日突然打ち切ってしまうということは、潜在患者を切り捨てるものではないかという批判もあるわけですね。今、目黒部長がおっしゃったように、確かに昭和三十年代、四十年代とは状況は変わってきている。硫黄酸化物環境基準を達成していますし、平均すると大体当時の五分の一ぐらいに減っている、一番ひどかった地域でも十分の一ぐらいに減っている。そういう状況変化というものは認めますけれども、まだまだ毎年毎年これだけの認定患者がふえ続けているという原因は一体どこにあるのか、その辺も含めてお答えいただきたいと思います。
  14. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  ここ数年間、被認定者状況は、新規認定年間九千人、それから治癒等によります制度から離れていく者が年間六千人、差し引き年間患者は毎年三千人ふえているというレベルで推移してきているものでございます。指定地域におきます被認定患者の内訳を見ますと、気管支ぜんそく患者数増加が大変著しいわけでございまして、これが被認定患者数増加をもたらしているのでございます。このことにつきまして、答申案では次のように考えているのでございます。  まず第一番目には、非特異的な疾患である指定疾病大気汚染以外の要因によっても発生するものであるし、被認定患者増加原因考えられます気管支ぜんそくについて見ますと、ここ数年の指定地域での気管支ぜんそくの被認定患者増加率は、全国的に見ますと、一般の気管支ぜんそく患者増加率と同じような水準になっていると答申案はうたっているわけでございます。  また二番目に、全国的に気管支ぜんそく患者増加している理由につきましては、国民の健康意識とか医療水準の向上あるいはアレルギー素因者増加、それから都市的な生活様式の拡大による食生活あるいは住環境変化あるいは高齢化進展等いろいろ考えられているわけでございますけれども、科学的にまだ十分解明されていないのでございます。  なお、答申案では、具体的には「非特異的疾患である慢性閉塞性肺疾患は、大気汚染以外の原因によっても発症するものであることから、大気汚染程度かかわりなく、患者発生するのは当然のことである。大気汚染健康被害との関係についての検討に際しては、大気汚染による患者発生の過剰が意味を持つのであって、このような点に留意していない数字自体をもって評価が下されるものではない。」というふうにも述べているところでございます。
  15. 小杉隆

    小杉委員 次に、専門委員会報告には二つ留意事項が示されているのですね。一つは局地的な汚染という問題と、それから高感受性集団というものがあって、この点については答申案ではどのように考えられているのか、勘案されているのか、伺いたいと思うのです。
  16. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  答申案では、専門委員会留意事項については次のように考えられているわけでございます。  まず第一番目には、局地的汚染健康影響について評価を行うには科学的な知見が十分ではない、調査研究及び大気汚染防止対策を一層推進するほかに、健康被害防止事業についてこれらの地域対象とすることが適当であると述べておるわけでございます。また、公健制度関係では、一部の幹線道路沿道等について、現時点における科学的知見によっても人口集団に対します大気汚染影響程度を定量的に判断できないので指定地域とすることができないというふうに述べているわけでございます。  また、二番目に、感受性の高い集団としては、通常人口集団対象といたします疫学調査によっては結果的に見逃される可能性があるような集団のことを専門委員会では取り上げているわけでございます。児童老齢者等通常疫学調査では把握される集団でございまして、専門委員会報告指摘しておりますこの感受性の高い集団とは、このような児童老齢者ではないのでございます。専門委員会報告感受性の高い集団ということにつきましてはさらに調査研究をする必要があるのでございますが、著しい大気汚染影響による疾病の多発という状況前提といたしまして個別の補償を行う本制度観点からは、検討対象とはしていないというふうな考え方でございます。
  17. 小杉隆

    小杉委員 答申案の中に、新たに行う事業として、基金に基づく健康被害防止事業というものを提言されていますけれども、その主な内容について説明していただきたいと思います。
  18. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  今回の答申案の中で、健康被害防止事業として、環境保健事業環境改善事業考えられているのでございます。環境保健事業は、人口集団対象といたしまして、予防、リハビリテーション等によりまして健康の確保、回復を図る事業でございます。それから、環境改善事業の方は、大気汚染防止対策により環境そのもの改善し、健康被害を引き起こす可能性のないものとするための事業でございまして、事業の詳細につきましては、答申となりました後に地方自治体等関係各方面と十分相談しながら詰めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  19. 小杉隆

    小杉委員 この答申案の中でちょっと目新しい提言があるのですけれども、それは環境保健サーベイランスシステム実施ということであります。このサーベイランスシステムというのは一体何なのか、お答えいただきたい。
  20. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  御指摘のこの答申案にありますサーベイランスシステムは、次のように考えられております。答申案では、サーベイランスシステムとは、大気状況及び地域における大気汚染による疾病発生等に関する情報を定期的、継続的に集収し、解析して、そしてその結果を対策に迅速に反映させるシステム、これをサーベイランスシステム、このように定義をしているのでございます。
  21. 小杉隆

    小杉委員 東京都のことしの五月の調査によりますと、これは複合大気汚染健康影響調査という名目で行われたのですけれども、その調査によると、幹線道路に近いほど呼吸器有症率が高い、それから二番目に、女性の肺がんと窒素酸化物とのかかわりが高い、こういうことで、特に幹線道路沿道地域指定は重要であるというような指摘が行われております。こういう新しいサーベイランスシステムということの内容として、今、環境改善環境保健という二つ事業を言われましたけれども、特に交通量の多い、あるいは大気汚染の著しい沿道対象に行うことが大切ではないかと私は思うのですが、その辺の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  22. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  大気汚染健康影響に関する知見も進歩いたしましたが、まだまだ未解明部分が多くあるわけでございます。また、今後再び大気汚染によって疾病が多発するという状況を完全に払拭することはできないわけでございますけれども、そこで長期的に、かつ予見的な観測という観点から、大気汚染状況住民健康状態との関係を定期的に、継続的に観察をいたしまして必要に応じて所要の措置を早期に講ずるということのためには、環境保健サーベイランスシステムを早急に構築することが必要であるというふうに答申案では指摘しているところでございます。
  23. 小杉隆

    小杉委員 今回の答申案で非常に注目すべきところは、将来激しい公害が頻発するような事態が生じた場合に備えて、速やかに対応できるよう補償制度を今後とも存続する、こういうことですけれども、今までの御説明にもありますとおり、大気汚染と健康とのかかわり合いというのはまだまだ未解明部分科学的知見が不十分な点があるわけですが、今後、例えば科学的知見がどんどん蓄積されてNOxと健康との間に因果関係があるということが明らかになった場合には、法律でこういったものを救済することはできると考えていいのかどうか、その点をお聞かせ願いたい。
  24. 目黒克己

    目黒政府委員 答申案では、現行の制度については、今御指摘のように再び昭和三十年代、四十年代の当時のような状況になったならば、それに対応するためにこの制度を存続するのが適当だというふうな御意見があるわけでございます。私ども、このような答申案の御意見を受けまして、御指摘のような点も含めまして今後検討してまいりたい、このように思っているところでございます。どのように考えるかということについては、三十日に答申をいただきました後に私ども決めてまいりたいと思っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもとしては答申趣旨を十分尊重してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  25. 小杉隆

    小杉委員 もう一つ注目すべき点は、新たに環境改善事業環境保健事業実施するに当たっては、患者住民のニーズなどを把握した上で行うようにという表現があるわけですけれども、先ほど私が指摘したサーベイランスシステムとか集団的ないろいろの対策を講ずるに当たっては、恐らく今まで指定した四十一地域というものが中心になると思うのですが、例えば、今まで指定されなかった四十一地域以外のところからそういった調査なり対策をやってほしいと言われた場合には、それらも考慮に入れる余地があるのかどうか。
  26. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  その点につきましても、委員会では、環境保健事業実施いたします場合に、「第一種地域としての指定が解除された地域の中で大気汚染による健康影響が懸念される地域及びこれに準ずる地域人口集団中心に、」云々というふうなことが出ておるわけでございまして、御指摘のものについても、この答申案趣旨の中には恐らく入っているものというふうに私ども理解をしているところでございます。
  27. 小杉隆

    小杉委員 時間の制約がありますので、今までの質疑を通じて、今回の答申案にもかかわらずやはり大気汚染の問題というのは依然として、むしろひどくなってきているということで、私はもう少し議論を発展させて、道路交通公害対策についてより一層きめ細かな対策が今ほど望まれているときはないと思うわけです。そこで、大都市地域における騒音とか大気汚染状況はどうなっているか、特に、道路周辺での環境基準達成状況はどうかといった点を伺いたい。
  28. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  先生お尋ね大都市地域におきます騒音及び大気汚染状況でございますが、まず騒音につきましては、これは例年、典型七公害のうちで苦情件数が最も多いものでございまして、その分野も、工場、事業場からの騒音あるいは建設作業騒音自動車等交通騒音カラオケ等近隣騒音等多岐にわたっているところでございます。  お尋ね自動車からの道路交通騒音について見ますると、環境基準達成率は、昭和五十九年の結果におきましては一五・一%というぐあいに非常に低い水準にございまして、経年的に見ましても顕著な改善傾向は見られず、依然として厳しい状況にあるわけでございます。  大気汚染につきましては、全般的には改善傾向にありますが、二酸化窒素あるいは浮遊粒子状物質等分野におきましては依然として改善を要する状況にございます。特に道路沿道におきましては、二酸化窒素かかわります環境基準達成率が、昭和五十九年の数字でございますけれども、七三・四%にとどまっておりまして、大都市地域中心として一層の改善を要する状況にございます。
  29. 小杉隆

    小杉委員 質問はたくさんあるのですが、時間が限られていますからショートカットいたしまして、一つだけ道路交通公害対策について、環境庁のあり方といいましょうか姿勢について伺いたいと思うのですけれども環境庁というのは調整官庁であって実施官庁ではないということでおのずから限界があると思うのですが、やはり交通公害対策については、例えば、トラック業界とかバス業界あるいは自動車メーカーなどに対して、直接環境庁協力要請を行うべきじゃないか。もちろん、こういう業界は運輸省とかあるいは通産省とか所管の実施官庁もあるわけですけれども、そういう官庁指導というのはやはり業界仕事の方の指導ということに重点が置かれるわけで、環境という立場での行政指導なり助言なり、そういったものをもっと積極的に行う必要があるのじゃないか。前の大臣も、たしか自動車メーカーを呼んでディーゼルエンジンのお願いをしたようなこともあると思うのですが、例えば東京都なんかも、環境保全局はいろいろな業界を呼んで懇談会をやったりいろいろお願いをしたりしているわけで、環境庁もそういった直接的な、実効の上がる対策をもう少し講ずべきじゃないかと思うのです。長官のお考えをお聞かせいただきたい。
  30. 稲村利幸

    稲村国務大臣 小杉委員の御意見のとおりだと私も心しております。道路交通公害につきましては、関係省庁と一体となって取り組むと同時に、みずからも必要に応じて業界との接触を、これはもう当然おっくうがらずにとりたい。また私としても、本問題の重要性をよく理解して、御指摘のとおり努力していく所存でございます。
  31. 小杉隆

    小杉委員 ちょっとはしょってポイントだけ申し上げますが、先般、長官も知床を見られたようでございますし、今度全国法人ナショナルトラストをつくる、こういうことでございます。ナショナルトラストについては、近年相当進んできていると思います。例えば税制の面でも、昨年度は法人税所得税あるいは地方税である不動産取得税固定資産税の減免が決まったわけですし、ことしからは相続税についてもそういった免税措置がとられた。しかし、我が国ナショナルトラスト運動というのはイギリスなどに比べてまだまだ歴史が浅いわけでございまして、イギリスのように民間の自主性だけに任せてもやっていけるというのとは違うので、もっと積極的に国とか自治体が支援、指導すべきであると考えますけれども環境庁としてはどう考えますか。
  32. 古賀章介

    古賀政府委員 お答えいたします。  我が国におきましては、ナショナルトラスト活動を育成いたしていくためには、地方自治体を初め行政の役割もまた重要であることは先生の御指摘のとおりでございます。このため、環境庁としましては、従来よりナショナルトラスト活動に対する地方自治体理解協力を求めますとともに、今、先生指摘のように税制上の優遇措置を講ずるなどいたしまして、活動発展のための条件整備を図ってまいったところでございます。今後は引き続きこれらの施策の推進を図りますとともに、地域の自主的な活動を支援、指導をもする全国的規模のナショナルトラスト法人の設立を進めてまいりたいというふうに考えております。
  33. 小杉隆

    小杉委員 時間が参りましたのでやめますが、環境行政もこれは戦後の一つの処理というか、戦後の経済成長の後始末という要素が強かったわけです。公健法の見直しなんというのはまさにその典型だと思いますけれども、しかし、これからの二十一世紀を考えますと、物から心へとか、あるいは環境という問題が非常に大きなウエートを占めてくると私は思うのです。  最後に私が一言だけ申し上げたいのは、今、例えば四全総なんかが検討されています。三全総では、全国定住圏構想で、なるべく東京なり大阪といった都市圏から人口を分散させて定着させようとしたのですけれども、それにもかかわらずどうしても大都市に人口が集中してきてしまう。特に、これからの二十一世紀に向かって日本の産業構造がだんだんソフト化、サービス化あるいは情報化というような形になってきておりますので、どうしてもまた東京圏、東京だけじゃなくてその近隣のところも非常に過密になる危険性がある。今、そういった四全総なり二十一世紀の産業構造はどうあるべきかということを各省庁で検討していますが、環境庁もそういうものができ上がってから対応するのではなくて、むしろこれからどうなるかということを先にキャッチして、そういう計画があったら、こういう危険性があるぞということをまず環境庁が問題意識を先取りしていろいろな提言なり警告なりをしていくという姿勢を持っていくべきだと私は思うのです。これは答弁要りません。私は、そういう姿勢をぜひ今後とも環境庁は持っていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  34. 林大幹

  35. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 しばらくぶりでございますので少し長い時間をいただきましたが、お許しをいただきたいというふうに思います。  最初に、私の選挙区でございます逗子市の米軍弾薬庫跡地の米軍住宅建設問題について、防衛施設庁にお尋ねをいたしたいと思います。  防衛施設庁は、昨年十二月三日の本委員会における私の質問に対して、住宅建設は、神奈川県の環境影響評価条例に従って計画を進めていくということを公約されました。この公約は今後とも守られるものと信じてよろしいかどうか、まず最初に御答弁をいただきたいと思います。
  36. 鈴木杲

    鈴木説明員 環境影響評価の手続を終了した上で、できるだけ早くこの事業に着手したいという方針に変わりはございません。
  37. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 申すまでもありませんけれども、この神奈川県の条例というのは、「第一章 総則」の第一条の「目的」というところで、「良好な環境の確保に関する基本条例(昭和四十六年神奈川県条例第四号)の本旨を達成するため、土地の形状の変更、工作物の建設等の事業実施環境に及ぼす影響について、あらかじめ調査、予測及び評価を行い、その結果を公表し、及びこれに対する意見を求めるための手続その他の環境影響評価に関する事項を定めることにより、これらの事業実施に際し、環境保全上の見地から適正な配慮がなされることを期し、もつて良好な環境の確保に資することを目的とする。」と明記してありますが、その点はちゃんとお読みになってアセスに従って手続を進めるというふうに理解してよろしいでしょうか、念のためにお伺いをしておきたいと思います。
  38. 鈴木杲

    鈴木説明員 先生指摘のとおりでございます。
  39. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 確かに、この条例はいわゆる計画アセスではございませんで、事業内容評価するいわゆる事業アセスという性格を持っておることは言うまでもございません。しかし、「環境保全上の見地から適正な配慮がなされることを期し、」例えば県の審査会が報告書をまとめた場合に、これを尊重し、これに誠意を持ってこたえるということは当然だと思いますけれども、そのとおりに理解してよろしゅうございますか。
  40. 鈴木杲

    鈴木説明員 今、環境影響評価条例に基づいて審査が行われておるわけでございます。県知事がこの審査会の意見を聞きまして、さらに公聴会における意見あるいは関係市長の意見等を十分考慮して審査書が作成され、送付されてくるものと承知しております。審査書が送付されてまいりましたら、これを十分尊重の上対処していきたいと考えております。
  41. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 釈迦に説法かもしれませんが、神奈川県のアセスメント条例の特徴は三つございます。  第一は、事業者の自己責任で予測、評価を行って、それを第三者機関が審査するという方式を基礎にしておる。長洲県知事の言葉をかりて言えば、これは自由と公正。自己責任と強制にかかわる複雑な背景を持つ争点について、自由と自己責任を基本として、それで公正が損なわれる場合は的確にパブリックな制御を加えるという立場をとっておることは御存じのとおりです。  第二は、住民参加の保障でございます。事業者によって予測や評価をするという方式をとっておる以上は、その公正さを期するために、住民の側が説明会とか公聴会への出席あるいは意見書のような形式を含めてできるだけ広く自由に意見を出せるような、意見というよりもいろいろな希望を出せるような仕組みになっておるということも御存じですね。  第三は、情報の公開でございます。事業者の予測、評価住民意見、第三者機関での審議結果など手続の節目節目で、だれがどう考えてどのような知恵を出したのかということをだれにも見えるように明らかにする、そのことを通して合意の形式を目指していくということに意味があるわけでありまして、その意味ではこの公開の原則というのは貫かれておると思うのです。  これらの神奈川県アセスメント条例の三つの特徴は、防衛庁あるいは防衛施設庁も、当然のことながら十分承知の上で尊重していくというふうに受けとめてよろしいでしょうか。
  42. 鈴木杲

    鈴木説明員 御指摘の三原則については、私も、熟知しておると言うほどの自信はございませんけれども、十分承知しております。その上で、県の審査書が出ました場合は、これを尊重して対処してまいりたいと考えております。
  43. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今、県の審査書が出た場合にはこれを尊重してというふうにおっしゃいました。それで結構なのですが、いわゆる防衛施設庁のアセス案と県のアセスメント審査会の結論が食い違うというケースが十分あり得る。こういう場合には防衛施設庁がお出しになったアセスメント案というものを変更される用意があるのかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  44. 鈴木杲

    鈴木説明員 今審査の中途の段階でございまして、先生の御指摘は仮定の問題ということになるわけでございます。先ほど答弁申し上げましたように県の審査書を尊重するという立場でございまして、それ以上はちょっとコメントしにくい問題かと考えます。
  45. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 県のアセスメント条例の立場に立って手続を進めるというようにおっしゃってきました。県の審査会が結論を出すということは当然予測されています。それがあなた方の計画そのとおりに出るとは限りません。そんなことは当たり前のことでしょう。これは手続の問題です。だとすれば、あなた方がお出しになったアセスメント案と言われるものについて不十分さがあったり、間違いがあったりということは十分あり得るわけです。県の審査というものを尊重して変更なさるというお気持ちがなければ尊重するということになりませんよ。御答弁いただきます。
  46. 鈴木杲

    鈴木説明員 審査書の内容を尊重して、十分検討の上対処してまいりたいと思います。
  47. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 十分に尊重するということはそれでいいですけれども、例えば、あなた方がお出しになったアセスメント案が間違っていたり、あるいは正確さを欠いていたり不十分であったりという場合には、あなた方の案というのはある意味で県の審査会の結論と言われるものと食い違うわけですよ。県の方の審査に従うと言っている以上は、あなた方のアセスメント案と言われるものは変更する用意があるのかと聞いているのです。それがないと言われたのでは手続を尊重するということにもなりませんよ。もう一遍お答えをいただきます。
  48. 鈴木杲

    鈴木説明員 御指摘のように、間違っていたり不十分であったりというようなことがあった場合、変更するのにやぶさかではございません。
  49. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、これは仮定の問題ですから私はそこまで詰めませんが、いろいろやってみたところがどうも県のアセスの目指す方向、つまり、皆さん方が最小限に環境に対する影響を少なくしようというふうになさったこととはかなり違うという結論が出てきた。そうすると理論的には、これは理論的で結構です、皆さんたちの出された計画の変更ということもあり得ないことではないというふうに理解してよろしいですか。そうでないとあなたの前の答弁と一貫性がありませんよ。
  50. 鈴木杲

    鈴木説明員 お答えいたします。  先生が理論的とおっしゃっておりますので、理論的にはそのようなことがあり得るということでございます。
  51. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 条例の特徴である住民参加とか情報の公開について、防衛施設庁は事業主体としてどんなふうにお考えですか。一般論で結構です。
  52. 鈴木杲

    鈴木説明員 これは手続の公正を期するという意味でそういう規定が設けられているものと承知しております。
  53. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 だから、そういう手続というものも含めて尊重するということを御答弁いただきたいと思います。
  54. 鈴木杲

    鈴木説明員 条例の手続も含めて尊重する所存でございます。
  55. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さて、その条例の十四条の二項には、「知事は、審査書の作成に先立ち、関係市町村長に対し、環境保全上の見地からの意見を求めるものとする。」と規定されていることは御存じのとおりでございます。この場合、逗子市長の意見はアセスメント条例の具体的な手続の中に含まれるものというふうにお認めいただけますか。
  56. 鈴木杲

    鈴木説明員 知事が市長の意見を求めるというのはアセス条例上の手続と考えております。
  57. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そこで、第三項は、「知事は、審査書の作成に当たつては、意見書、見解書、再意見書、公聴会における意見及び前項に規定する関係市町村長の意見について、環境保全上の見地から十分考慮するものとする。」と述べていることは御存じのとおりですね。市町村長が条例を尊重するという立場から意見を出す、あるいは市町村長が住民の立場に立って、意見書を出す以上は、綿密な調査をして住民に対して責任を担保できるような意見を出すことが当然だと思いますけれども、これは市長の義務として当然だというふうにあなたはお考えですか。
  58. 鈴木杲

    鈴木説明員 市長さんがどの程度調査が必要かということについては、審査を受ける事業者である立場としてコメントする立場にはございません。
  59. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 条例の手続の中に、関係市町村長の意見を求めるということになっている。関係市町村長が住民に対して責任を持って意見を述べるために少なくとも実態を調査するという立場を考えた場合に、今私はこの条例の特徴を言いましたが、住民参加あるいは情報の公開、さらには事業者のいわゆる予測や評価と言われるものだけではだめだからチェックするのだということになっているわけでしょう。それならば、一般的な意味で結構ですが、市長が基地内の実態を調査するということについて調整をする用意がありますか。
  60. 鈴木杲

    鈴木説明員 市長の基地内への立ち入りについて、防衛施設庁は調整する立場にはございません。
  61. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 結構です。  外務省、今やりとりをいたしてまいりました。地元の市長が市民に対して責任を持てる意見を述べるために立入調査を要請している、この場合に外務省は悪意のない配慮を行うべきだと私は思いますけれども、安保課長の御見解をいただきたいと思います。
  62. 岡本行夫

    ○岡本説明員 御承知のとおり、地位協定の第三条一項におきまして、米軍は施設、区域の管理等につきまして必要なすべての措置をとることが認められております。したがいまして、地方自治体が施設、区域に立ち入りを希望する場合、それは一義的には、現地米軍と当該地方自治体の間の話し合いの結果によることになっております。
  63. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今、安保課長お聞きのとおりでございまして、県の審査会は立ち入りを認めていただいて、アセスの要件であるいろいろな手続をやってきました。その同じアセスの要件の中にある地元の市長の意見書づくりのための調査、それも水害対策だとか、防衛施設庁から出された評価書案のいわゆる欠落部分などについて調査をしたいと言っているのに、これはだめですというふうに断るのは余りにも感情的、意地悪というふうに言っても差し支えないと思うのです。あるいは官僚的だというふうに言わざるを得ません。  普通、遊休施設なんかの場合に私ども立入調査お願いすれば、日付の問題は若干ありますけれども、割合簡単に立ち入ることができるわけでございます。これはアメリカの、日本人というよりも逗子市民というふうに言っていいのかもしれませんが、市民の自治に対する理解のバロメーターだというふうに私は思うのです。私はアメリカの民主主義はもっと強靭なものだと思うし、寛容だと思うのです。その意味では、外務省はこのようなアメリカの立場を誤解されるような態度をとるべきではない。窓口は外務省ですから防衛施設庁には言いませんが、その意味で言うと、安保課長は、地元の要望を生かすためにもし要望があったときにはそれなりの御配慮を賜りたいと思いますが、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  64. 岡本行夫

    ○岡本説明員 ただいま御答弁申し上げましたように、立ち入りの申請は基本的には地方レベルで行うことになっているわけでございます。ただいまの先生の御趣旨を踏まえましてもう一度申し上げさせていただきますけれども、仮に神奈川県より国に対しまして、アセス条例に基づきます審査作業の一環といたしまして、逗子市長も含めまして関係自治体による施設、区域への立入調査を実現させることが必要であるとして御要望がございました場合には、国としてはアセス条例の尊重を約束していることもございますから、その自治体の御意向は米側に伝えること、これを検討させていただきたいと思います。
  65. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 神奈川県経由で外務省に要請があったときには御検討をいただき、アメリカに対してそのような要望を説明をしてまいりたいというふうに理解してよろしいですか。
  66. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私どもの方から神奈川県の御意向を米側に伝達させていただく、これを検討させていただくということでございます。
  67. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、今までのケースを振り返ってみれば、それなりに外務省がそういうお立場をとることによってアメリカの理解を得ることは決して不可能ではないというふうに私なりに理解をいたします。したがって、ぜひ外務省として、いわば要らざる感情的対立といいましょうか、あるいは要らざる意地悪といいましょうか、そういうふうなことについてアメリカ側が誤解を受けることのないような御協力を心からお願い申し上げたいと思います。  環境庁長官、今外務省と私、やりとりしました。県の方を通してくればアメリカに説明をするというふうな御答弁をいただきましたが、アセスのことに関連をしてでもございますし、池子の自然や緑を守るという問題でもございますので、ぜひ市長の立入調査に対する要望を生かしていただくように側面から御理解をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。御理解で結構です。
  68. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先生の御指摘のとおり理解をさせていただきます。
  69. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直に申し上げまして、神奈川県のアセス審査会というのは、これまで部会を設けて、各分野の専門家が十回を超える現地調査を行ってきました。その部会報告によれば、基本事項を初め、動物、植物あるいは文化財、地質など全般的に防衛施設庁のアセスメント案が間違っていたり不十分であり、この地域における自然への影響を抑えようとする防衛施設庁の目標というのは今日の土木や造園の技術では不可能である、したがって、計画そのものの変更や見直しを求めるという意見が強く述べられていることは御存じのとおりです。恐らく県の審査書というものも、こうした事実関係に基づく調査を背景にして結論が出されるのではないだろうかというふうに思います。防衛施設庁は、このような結論に対して謙虚であるべきだと思います。その意味で先ほど、理論的には計画変更もあり得る、あるいはまたアセスの案について県から出されてきたものに対して、防衛施設庁の側のアセス案の修正、変更ということもあり得る、こういうふうに御答弁をいただいたことについては、私はそれなりの前進だと思います。問題は、住民の不安や反対の気持ちというものを、どういう形で皆さんの目標を実現させていくための合意の方向に近づけていくのか。そのためにはあらゆる意味で誠意が求められていると私は思うのです。そういう意味で、今後とも防衛施設庁がそういう立場に立って御努力を願いたいということをお願いいたしたいと思います。最後に防衛施設庁の御答弁をいただきたいと思います。
  70. 鈴木杲

    鈴木説明員 この事業を進めていくに当たりましては、地元関係住民の御理解を得られるよう十分努力してまいりたいと思います。
  71. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私自身は反対の立場を貫いてまいりますけれども、それはそれとして、やはり国民的なコンセンサスをどうつくっていくかという努力は、お互いが努力をしなければならないだろうと考えております。そういう点を含めて、今後ともの誠意のある対応を改めて求めておきたいと思います。  私はこの機会に、この委員会で取り上げて私なりに国会の内外で努力を重ねてきた問題について若干質問をしておきたいと思います。特にその中で、一歩前進というか解決というか、そういうところへ近づいた問題もたくさんございますので、関係省庁にそのことについて感謝をしながら、若干の質問を申し上げたいと思います。  第一は、この国会で何回か取り上げてまいりました例のキンクロライオンタマリンのブラジル返還問題がございまして、随分長い間時間がかかりました。通産省の関係者の御努力も大変だったというふうに思います。また環境庁の皆さんにも敬意を表したいし、外務省の皆さんにもお礼を申し上げたいと思いますが、十四頭が無事にふるさとに帰ることができました。  そこで、通産省に伺いますけれども、鉄は熱いうちに打てという言葉があるので申し上げるわけですが、その経過と御苦労なさった一番の問題点を振り返っていただいて、その点についての御見解をいただきながら質問をしていきたいと思います。
  72. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 お答え申し上げます。  キンクロライオンタマリンの件につきましては、先生初め関係者の皆さん方に大変御協力をいただきまして、九月十二日、無事にブラジルに返還をされました。外交ルートで確認いたしましたところによりますと、現在、サンパウロの動物園において元気に飼育されている、こういう連絡を受けております。この機会に、関係者の皆さん方の御協力に深く感謝いたしたいと思います。  なお、今後こういう問題が二度と生じないように、通産省といたしましても、水際規制に万全を期すべくいろいろな対策を講じてまいりたいと考えております。
  73. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 水際規制というのは基本的に重要なことなんですが、入ってきてしまって実は大変振り回されたわけですね。どこに問題があるかといえば、国内法の整備の問題なんです。これは私は国会で何回かやってきましたからもう言いませんけれども、国内法の整備が必要だということは環境庁長官関係の省庁もお認めいただいています。それでそれなりの取り組みもされておられると思いますが、今の状態と、どんな目標で、スケジュールを細かく明らかにすることはできないにしても、可及的速やかにやるべきだと私は思うのですけれども、そんな意味で、国際的な信頼をかち取るためにも、今日の作業の実態について御答弁をいただきたいと思います。
  74. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 国内法の整備につきましては、従来からたびたび御指摘になっておられるところでございますが、本件は、中長期的な課題ということで従来から関係者の間で検討を重ねておりまして、通産省といたしましても、関係方面の方々と御相談しながら、具体的にどういう法的な問題があるかということを十分に詰めた上で、今後何らかの措置をとる必要があれば積極的に検討を進めてまいりたいと考えております。
  75. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 あなた、さんざん苦労した前任者の立場に立って物を言わなければいけませんよ。あればじゃなくて現実にあったのです。国内法が整備されていないから関係者との協議もなかなかうまく進まなかったし、問題の解決に何年かかかったのです。だから、あればじゃなくて、あることははっきりしている。通産がそれをお認めになるかならないかの問題なんです。あるというふうにお考えですか。
  76. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 いろいろ問題点があるというふうに我々も認識しておりますので、その辺は関係方面とも十分相談しながら、先ほど申し上げましたように検討いたしたいと思います。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今までの御答弁は、あればということでございました。しかし、今初めて、キンクロライオンタマリンの返還問題をめぐって問題があるという御認識に立たれたことに敬意を表したいと思います。  ワシントン条約の科学当局、サイエンスオーソリティーは環境庁でございまして、環境庁も積極的にこの問題について御努力をいただく以外にはございませんけれども長官、もし御相談をいただいて御答弁いただけるならば、御答弁をいただきたいと思います。
  78. 稲村利幸

    稲村国務大臣 この国内法の整備について、私も長官に就任して以来、早くこれが整備できたらいいなと本当にそう思っております。今、通産省の答弁を聞いていて、これはぜひ前向きに進めてもらいたい。先生の御意見に全く同感でございます。
  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。  この間、長官の選挙区へ、ナショナル・トラストを進める全国の会の総会がございまして、お邪魔いたしてまいりました。長官がお見えになるだろうと思って私楽しみにしていたのですが、公用があって来られなかったそうでございますけれども、トラストの発足を来年の三月をめどにしてという新聞発表を拝見いたしました。大変結構なことだと私も思います。ただ、ここでどうしても申し上げておきたいのは、例えば知床にしても天神崎にしても、結局民間の運動があのエネルギーを支えたと私は思うのですね。これを官製でつくってもなかなか日本人の国民感情とそぐわない面がある。そういう点でいいますと、市民のというか、国民の自発的で積極的な創意工夫を含めた努力というものが日本型ナショナルトラストにはどうしても必要だろうと私は思うのです。そういう点で、全国法人の運営や活動の中でぜひ民間のそういう運動を保障する仕組みにしていただきたい。そうでないとお役所仕事ということになってしまうと思いますが、若干御意見をいただきたいと思うのです。
  80. 稲村利幸

    稲村国務大臣 自然回帰の高まり、イギリスナショナルトラスト運動百年の歴史を参考にしながら日本独自の運動を盛り上げたい、そういうことで今まで、例えば会社の創立十年、二十年、三十年を記念して浄財をということがあっても受け皿がなかった。そこで国民の間に自然を守ろうという声、それと同時にトラストの全国法人の設置というまさにタイムリーな動きになってきていると思うのです。知床、天神崎や鎌倉の風致等々、そういう民間のこれまでの運動は運動で大変ありがたいことだと思っております。今度は全国法人を組織しながら、そういうものに補助、援助をしていけるようなことでやっていければありがたい。全国法人も急がねばならないなと思っております。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 全国法人のことは私、否定しているわけじゃないのですよ。そうじゃなくて日本での募金活動、つまり、一般的な募金活動というのはなかなか困難がございます。私も緑の地球防衛基金やなんかでかかわってまいりまして、またこのナショナルトラスト運動にもそれぞれの地域の運動にかかわってきましたからよくわかるのですが、具体的にどこをどういう形で守っていくというターゲットを明らかにしながら協力を訴えていくことがどうしても必要なんですね。それで、民間の運動を盛り上げていくためにも、実は民間のそういう運動を積極的に支えていく体制が必要だと思うので、私と原文兵衛さんが二人で顧問をやっておりますが、私どもは名前ばかりですけれども、ナショナル・トラストを進める全国の会などのそういう運動の実態はもっともっと根深いし、もっと広がりを持っております。こういう団体などに対する協力あるいは援助などについても御考慮をいただきたい、こういうふうに思います。  それからもう一つは、実は非常に残念なのだけれども、民間団体の法人化、法人の認可が大変厳しいのです。全国で民間団体のいろいろな運動があるのですが、これがなかなかいろいろな厳しさのために法人格を持つことができない。こういう許可条件を緩和することもナショナルトラスト運動地域に根づかせていく。地域に根づくことが全国に根づくことなんですから、その意味で、私はシビルトラストとナショナルトラストを分けて言うつもりはございませんが、やはりそういう認可条件の緩和についても長官の頭の中に描いていただいて御努力を賜りたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  82. 古賀章介

    古賀政府委員 先生言われました点は、税制上の優遇措置を受けますための法人の基準がやや厳しいのではないかというようなお話だと思います。これにつきましては大蔵省当局と十分詰めておるわけでございますが、先生の今の御提言を一つの参考にいたしまして、さらに検討を進めてまいりたいと思います。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 話があちこち飛んで恐縮ですが、林野庁いますか。  白神山系のブナの原生林の問題も、私も現地に三度も足を運んでおりますのでかなり執念深くお願いをしてきたわけですが、私は学術参考林ということを申し上げたこともございますし、あるいは遺伝子保存林ということを申し上げたこともございました。そういう考え方が生かされようとしていることに対して敬意を表したいと思うのですが、林野行政の中で、遺伝子保存林というような考え方、学術参考林というような考え方が必ずしもなじんでいません。環境庁の言う自然環境保全地域、これは法律用語として定着しているわけですけれども、こういうものとどこがどう違うのだろうというところの考え方の基本をぜひこの際明らかにしていただきたいと思います。
  84. 塚本隆久

    ○塚本説明員 お答えいたします。  今後、バイオテクノロジー等先端技術の開発を推進する上で、その基盤となります遺伝資源を保存するということは極めて重要なことであると考えております。このため、多くの天然林を有する国有林野を活用いたしまして、森林とそこに生息する動植物を含む遺伝資源を保存するために、生物遺伝資源保存林というものをこの際新たに設置しよう、こう考えているところでございます。具体的には、昭和六十二年、六十三年度の二カ年間で、我が国の森林生態系を代表し、かつ一カ所当たり千ヘクタール以上のまとまりを有する天然林を対象といたしまして、学識経験者の意見も聞きながらその設定を行うことといたしております。  自然環境保全地域との関係でございますが、私どものこの保存林は、森林生態系を構成する生物遺伝資源を保存、利用することを目的として設定するものであります。国民生活のための自然環境の保全を目的として指定されている自然環境保全地域とはその趣旨が異なるものではありますけれども、当然、重複して設定されることはあり得るものと考えております。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国立公園がございますね。これはすぐれた自然環境を保存するために設置される制度なんですけれども、国立公園内での森林施業というものがかなり広範に行われている現状がございます。後ほどお尋ねをするつもりですが、例えば、知床国立公園なんというのは特別保護地区が約五〇%を占めていますが、高山帯が大部分であることは御存じのとおりです。森林帯というのはすごくわずかだ。その重要な森林帯のほとんどに森林施業を行うことができるような、第二種、第三種特別地域ということになっている。この国立公園という制度から見て、やはり天然林などが残されているということが私は非常に重要じゃないかと思うのですが、第二種、三種特別地域指定されていて天然林伐採が行われているという状態を何とか改善することができないかというふうに実は私自身思い悩んできました。国立公園の中の森林施業というものをどんなふうにお考えになっていらっしゃるのか。  そこで質問をしたいのは、例えば、知床国立公園のような自然環境のすぐれた地域の地区区分を見直すというふうな立場で環境庁と協議をするというお気持ちは全くないのか、その点についてちょっと見解を承っておきたいと思います。
  86. 塚本隆久

    ○塚本説明員 その点につきましては、環境庁からお話があった時点で林野庁としても考えてまいりたいと思っております。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう一つ、林野庁にちょっとお尋ねしておきたいのですが、森林というのは、これは私が申すまでもないのだけれども、基本的には、木材生産の場として森林施業を考え地域と、貴重な自然環境を将来にわたって手つかずのままに残す地域があっておかしくないと私は思います。日本の各所には、まだ辛うじていわゆる貴重な天然林というか自然林が残っていることは御存じのとおりです。これはたしかもう二十年も前だと思うのですが、生態学会が保全林という考え方を出しまして、禁伐にするというふうなことが強調されてまいりました。日本学術会議などでもそういう意見を述べてきたわけですが、生物遺伝資源保存林というような考え方と別ではなくて一緒でも結構ですが、やはり貴重な原生林あるいは原生環境というようなものは生態系をそのまま残していくための禁伐地域にするぐらいな決断、国民の理解をいただくという努力が必要だと思うのですけれども、そういう点はお考えになったことがありますか。
  88. 塚本隆久

    ○塚本説明員 現在、国有林七百六十万ヘクタールのうち、学術参考保護林等いろいろな制度関係で禁伐になっておるところが約百三十四万ヘクタールになっております。それで、今後国有林の取り扱いにつきましては、林政審議会の中でも自然保護に留意した施業をすべきであるというようなことが述べられておりますので、先ほど申し上げました遺伝資源保存林の設定等含めまして、禁伐林についてふやす方向で検討してまいりたいと考えております。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 林野庁さんが商売がお上手かまずいか私は知りませんけれども、森林が持っている価値というものは、計算をすれば大変なものだと私は思うのです。それは単に国土保全ということだけでなくて、環境の保全だとか、あるいはまた生態系というものを確保することによって人間の文化みたいなものを伝承していくという上でも、そういう計算できないほどの大きな価値というものがあるわけでが、そういう計算できないほどの大きな価値を国民の皆さんに御理解をいただく、そしてそのコンセンサスの上でみんなで守っていくというような努力を、林野庁も木を切ることだけでなくてやはり真剣に考えるべき時期が来ているように思うので、そんな努力をぜひお願いしたいというふうに思います。  環境庁長官、わざわざ知床まで行っていただきまして御苦労さまでございました。知床まで行っていただいた率直な感想をお尋ねしたいと思いますし、今林野庁も、二種、三種の問題について、環境庁から御相談があればというふうに御答弁をいただきました。にこにこしないで、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。
  90. 稲村利幸

    稲村国務大臣 大変短い時間ではございましたが、知床の自然にじかに触れることができました。そして関係者の生の声も私なりに聞いて、それぞれの立場で自然保護のために努力されているということもよくわかりました。環境庁といたしましては三月のことがありますから、私はそれも十分考慮しながら、少しこづかれるかなとも思いましたが、自然保護という素朴な国民の声というものも配慮しながら自分なりに政治家としての気持ちを表現させていただきましたが、農林水産省、営林局、加藤大臣、最高責任者が私の想像以上に大変寛大な理解を示してくれておりまして、伐採期間の延長を現実に発表してくれ、そしてその調査も約束してくれておりますので、ぜひいい方向でその調査結果が出て国民の御希望に沿えられればと、こう考えております。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国民の希望というのは守ってほしいということでございますので、そこにすんでいる動物との共生を目指す国民のそうした努力を裏切らぬように、ひとつぜひお願いをしたいというふうに思います。  これは林野庁にお尋ねしたいのですけれども、実は自然保護議員連盟で加藤農林水産大臣にお目にかかったときに、私どもとしては、この地域の原生林の生態学的な調査をやってほしいというふうに要望しました。そうしたら加藤さんからは、シマフクロウやクマゲラなどの生息状況を、巣箱だけでなくて鳴き声を含めてしっかり調査したいという御回答をいただいたわけです。ちょっとすれ違いはございましたけれども、含めてという言い方の中で御理解をいただいたわけですが、鳴き声を調査するという場合には、繁殖期である五月ぐらいまで考えなければちょっと無理じゃないかという感じがするのですよ。そこで私ちょっと頭に描いたのは、二月という数字が出てきていますよね、どこからともなくというよりも林野庁の姿勢として。これは会計年度で押さえたのかな、本当に生態系の調査をなさるおつもりなら二月という数字は出てこないはずだがというふうに実はちょっと感じたわけですが、シマフクロウの生態調査中心にやるんだ、予算年度とかかわるわけではないという理解をしてよろしいでしょうか。
  92. 塚本隆久

    ○塚本説明員 六十一年度の調査につきましては、営巣木調査、つまり、巣をつくっている木があるかないかという調査を葉の落ちた秋から冬にかけて行いたいと思っています。それから、ただいまお話のありました鳴き声による生息確認調査につきましては、繁殖期に近い、鳴き声の確認が行いやすい二月を目途として行うことにいたしております。それが三月まで必要なのかどうかということにつきましては、現在専門家による検討が行われておるところでありますので、これを待って調査実施したいと考えております。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 二月というのは恐らく会計年度のことから出てきているのだろうと思いますけれども、専門家がもし判断をして、例えば、実はその調査のためにはもっと期間が欲しいというふうな場合には、当然専門家の意見を尊重するということですね。
  94. 塚本隆久

    ○塚本説明員 専門家の意見を聞いて決めてまいりたいと思っております。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 二月が何となく切れ目みたいな感じで受けとめていました人々にとっては大変朗報だというふうに思います。ただしかし、シマフクロウが確認をされますと、大変欲の深いことと言うけれども当たり前の話になるわけですが、それが繁殖をして生き延びていく生態系といいましょうか、環境というものを確保しなければならない。それを壊してしまったのでは、確認をしただけでは何の意味もなさないわけです。そういう意味では今回の調査というのは、もしいた場合にはそれが繁殖していくような、そういう条件整備を可能にするようなお気持ちで御調査をなさるというふうに受け取ってよろしいでしょうか。
  96. 塚本隆久

    ○塚本説明員 貴重な動物等の生息環境を確保することは、林野庁といたしましても重要なことと考えております。したがいまして、今年度行われます調査結果を踏まえまして、専門家の意見を聞く中で知床の森林の取り扱いについて考えてまいりたいと思っております。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境庁長官、せっかくお乗り出しになったのですから、林野庁も大変だと思いますけれども、この調査のために、資金的にもあるいはスタッフの面でもできるだけ協力を惜しまないというお立場をぜひ表明していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  98. 古賀章介

    古賀政府委員 例えばシマフクロウにつきましては、昭和五十年度、五十六年度に特殊鳥類調査というのをやっておるわけでございます。しかしながら、今回の第五次地域施業計画につきましての調査というものは林野庁がおやりになるわけでございますから、林野庁が適切な御判断のもとにこれを実施に移すということでございます。もちろん、私どもの方に御相談があれば、御相談に応ずることにやぶさかではございません。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 林野庁が切る方で環境庁が守る方だというような感じではなくて、やはり力を合わせてやらなければどうにもなりませんし、林野庁もそれなりに最近いろいろな御苦労を重ねながら、厳しい林野財政の中で自然や緑を大事にしようという方向を目指しつつありますので、環境庁も力を合わせて頑張っていただきたい、こういうふうにお願いを申し上げておく次第でございます。  それでは引き続きまして、アメリカ海軍の横須賀基地で大改修中のミッドウェーから出されたアスベストの問題について質問を申し上げたいというふうに思います。  その前に、これは一九八二年五月八日の読売新聞の夕刊でございますが、横須賀共済病院の三浦さんというお医者さんがチームをつくってアスベストの追跡調査をやっております。アスベストを取り扱っていた作業者に肺がんが多発して、最近五年間に三十九人が死亡していることが明らかにされました。この調査に関連をいたしまして、瀬良好澄さんという国立近畿中央病院の名誉院長さんが、「肺組織の中に石綿の結晶物質が多く見られ、暴露歴がはっきりしていることから、石綿による肺ガンは間違いないだろう。低濃度の暴露でも、肺ガンや悪性胸膜中皮シュを引き起こす可能性はあり、今回の肺ガン多発の事実から、全国的に実態調査をすれば、潜在患者がもっとたくさん見つかるだろう。職業性肺ガンに対する認識を高めるべきだ」というふうに語っておられます。一般的に、造船などのアスベストを多く使用する作業場で働く人々がこの繊維を吸い込むことで通常の何十倍というふうな発がんの危険を抱えているというデータも現実には出されているわけでございます。細かいデータを申し上げるつもりはございませんが、そういう指摘がございます。  これはもう御存じでございますから申し上げるまでもないと思いますが、あえて申し上げますと、ちなみにアメリカでは、一九七三年以来三万人がアスベスト企業を提訴している。アービング・セリコフという有名な教授の、年間九千人の死亡が予想されるというふうなことがございまして、EPA、環境保護局がことし初め、五つの分野でアスベストの即時使用禁止と十年後の全面禁止という方針を打ち出したことは御存じのとおりです。また、アメリカの労働省労働安全衛生局はことし六月に、大気一CC中のアスベスト繊維の数をこれまでの十分の一の〇・二本以下として、基準を大幅に強化したというふうに伝え聞いております。またイギリスでは、これは政府が発表した統計なんですが、一九七八年から二〇一八年、これからの話を含めてですが、それまでの四十年間に五十万人の人々のアスベストによる肺がん死亡を予想することができるというふうに発表しております。ちなみにこの数字は、第二次世界大戦で戦病死したイギリス軍二十六万五千人の倍に近い数になるわけでございます。  国際的にそうした取り組みが進んでいる中で我が国のアスベストに対する対策が必ずしも十分ではないというふうに言わざるを得ませんが、環境庁が昨年二月に大気中の濃度調査をまとめて、当面健康への影響は少ないという見解を示されました。そして、これらに対する対策を示すということについて必ずしも積極的ではございませんでした。このお立場は現在もお変わりございませんか、御答弁をいただきたいと思います。
  100. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  アスベストによります大気汚染の問題でございますが、ただいま先生からお話しございましたように、私ども、五十六年以降、専門家の御指導をいただきながらいろいろな調査を行ってまいったところでございます。ただいま先生からお話がございましたように、六十年二月に公表した検討結果によりますれば、現在の一般環境大気中のアスベスト濃度は、日本産業衛生学会が勧告しております作業環境の暴露限界、二ファイバー・パー・立方センチメートルに比較いたしまして、百分の一から一万分の一程度のレベルでございます。そのようなレベルでございますから、直ちに問題となるレベルではないというぐあいに考えておるという形で発表いたしたところでございます。しかしながら、アスベストは環境蓄積性の高い物質でありますことを考えますれば、環境大気中のアスベスト濃度の推移を把握しておくことは必要であるということでございますので、当庁におきましては、六十年度からアスベストの環境濃度の長期的なモニタリングを実施いたしておるところでございます。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 昨年一年のアスベストの輸入量というのを通産省の統計で調べてみました。日本は二十六万トン、次いでアメリカが二十四万トン、これは七八年の統計ですが、西ドイツが十五万四千トン、同じようにイギリスが十一万八千トン、フランスは七九年の統計ですが十万八千トンとなっておりまして、日本は実は世界一の輸入国になっているわけでございます。これだけ多く輸入して使っていて、諸外国の対応というものと比べてみて果たして十分だろうかと実はあえて問いたいわけですが、今局長の御答弁がございましたから、その点はぜひ諸外国の例を学びながら対策を進めてほしいというふうに思います。後ほどまた御質問申し上げます。  労働省にお尋ねしますが、労働省は昭和五十一年五月二十二日付の労働基準局長名で、「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」という通達を出されました。この通達によれば、一つは「関係事業場及び石綿取扱者のは握」、そして、関係事業場に対する在職者及び退職者のじん肺健康診断結果の長期保存、二つは「石綿の代替措置の促進」、三つは「環気中における石綿粉じんの抑制」、そこでは「濃度基準」や「発散抑制措置の徹底」というものが含まれています。四番目には「呼吸用保護具の使用」、五番目は「清潔の保持の徹底」、六番目は「石綿作業従事者の喫煙について」、七番目は「自動車のブレーキ修理の業務に従事する者の健康管理」などの内容になっておりますけれども、この通達内容というものはどの程度実行されているか、この際、御説明をいただきたいというふうに思います。
  102. 冨田達夫

    ○冨田説明員 石綿の取扱労働者の石綿による健康障害の予防対策につきましては、これまで行政の重要課題の一つとして重点的に取り組んできております。今後とも一層その徹底を図ってまいりたいと考えております。  石綿の取り扱いにつきましては、現在我々が把握している対象事業場は約三千、関係労働者は約三万人となっております。過去三年間実施されました石綿にかかわる特殊健康診断結果は、有所見率が〇・五から〇・八%、また肺がん、中皮腫で補償を受けた件数は、過去三年間延べ二十三件でございます。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 労働基準監督署の体制もなかなか厳しいのですが、かなり十分な体制としてそういう手だてが講じられているのかどうか、その判断を承っておきたいと思います。  それと関連をしまして、ついでですから申し上げますけれども、ILO総会がことしの六月二十四日、肺がんなど職業病の原因となるアスベスト規制を目的とした、石綿利用の安全に関する条約、ILO百六十二号条約と勧告を採択いたしております。この新しい条約にはILOでかなり議論があったというふうに承っておりますけれども、それはそれとして、この百六十二号条約というものをどんなふうに受けとめておられるのか、関連して御答弁をいただきたいと思います。
  104. 冨田達夫

    ○冨田説明員 先ほどお答えしましたように、石綿取り扱いによる障害防止は非常に重大なものでございますので、重点的に取り組んできておりまして、現在、その現場における石綿障害防止措置状況に関しては、各監督署の年度計画等をもちまして実態に応じた対応を図っているところでございます。  二番目の御指摘のILO百六十二号条約でございますけれども、ことしの六月二十四日、ILOの第七十二回総会で採択されました。このILO条約等につきましては、世界各国の政労使が一堂に集まりまして、それぞれの立場で活発な議論を重ねた上ででき上がったものでございます。したがいまして、その趣旨は十分尊重して対応していきたいと考えております。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは批准の手続ということもあり得るわけでしょう。それらについての労働省の見解を承っておきたい。
  106. 冨田達夫

    ○冨田説明員 ただいま申し上げましたように、種々の状況にある国々の立場が異なっておりまして、その立場の異なった意見の集約されたものがILO条約でございます。今回の石綿条約、正確には石綿の利用における安全に関する条約と申しますけれども、その内容と日本の現行の労働安全衛生法令との対応関係について、慎重に検討していきたいと考えております。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 慎重に検討するのはいいのですけれども、やはり批准をする方向でお取り組みいただいているというふうに理解してよろしいですか。
  108. 冨田達夫

    ○冨田説明員 検討した結果、対応していきたいと考えております。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もうちょっと歯切れよくお願いしたいのですが、日本の今の国内法でかなり手直しをしなければならぬ部分がILO条約の批准の場合にはあるのですか、ないのですか。
  110. 冨田達夫

    ○冨田説明員 一部ございます。その点についても慎重に検討していきたいと考えております。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは、余りクリアが難しいというふうにはお考えになっていらっしゃらないというふうに理解してよろしいですか。
  112. 冨田達夫

    ○冨田説明員 検討の結果を待たないとこの場では申し上げられませんけれども、なるべくクリアな結果を期待しております。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私がなぜそんな質問を導入部分でしてまいりましたかというと、ことしの十月六日、横須賀市の日の出町三丁目十七番地に所在する日本保温有限会社前の路上に、約一・五トンのアスベストを含む廃棄物が放置されているという連絡を市役所が受けまして、直ちに調査の結果、日本保温という会社は四、五日前から閉鎖されている、社長さんの所在も捜しても不明だということで、その会社の家主さんである森本商店というところにその善処方を協議して、そして家主さんの経費負担で専門の産業廃棄物処理業者に依頼して路上から回収し、業者のストックヤードに管理の上で、十月七日、横浜市内の産業廃棄物処理場へ搬出して処分を終了した。  実は、この問題が起こってから横須賀市は非常に速やかな対応をいたしまして、翌日、米海軍横須賀基地民事部長を訪ねまして、基地内のアスベストが放置された件についての調査依頼と、今後かかることのないよう基地内のアスベスト取扱業者の指導方について要請をしたということになっております。そして、横須賀市は庁内で、助役を初めとして関係部長の会議を開きまして、アスベスト対策について今後その方向づけを検討することにして、アスベスト対策検討委員会というものを発足することになりました。実は、そこの席上を含めて、これは私ども社会党の市会議員の荒井銀次郎という人がかかわってきたわけですが、その荒井さんの質問に対して市の鈴木生活環境事業部長が発言をしております。「十一月初めにも保健衛生部を事務局として、庁内でアスベスト問題に総合的に取り組む対策委を発足させる」というふうに明らかにした上で、「国に法整備を早急にしてもらわないと、地方自治体で出来ることに限度があるが、法が出来るのをただ見ているのではなく、廃棄されるアスベストがどこで発生し、最終的にどう処理されているか追跡調査したい」「まず、指導を受けている県に話をして国への行動を起こすほか、清掃問題を協議する全国都市清掃会議でも問題を提起していきたい」という横須賀市の立場の表明がございました。  実は、ミッドウェーの大改修に関連をいたしまして、ボイラーだとかエンジンルームだとかヒートパイプだとか居住区だとか、あるいは電子装置のカバーから飛行甲板にまでアスベストが多用されている。非常に古い船だものですから、アスベストが非常に多用されているということが問題になるわけでございますけれども、その取りかえ作業が行われているのですから、大変な量の廃棄物が外に出されてきたという実態がまず一つございます。  それで、先ほども申し上げましたように、横須賀の市役所が米軍基地の民事部長をお訪ねしてお話をしたところが、米軍自身はかなり厳しい規制というか管理をしているのです。ところがその米軍も、日本側業者の直轄工事の場合、軍財産処理局というセクションがあるのですが、そこは直接タッチせずに業者が処理することになっている、処理料も請負契約中に含まれている、日本保温のアスベスト処理のルートについては秘密だから言うことができない、実はこういう返事でございました。つまり、アメリカ自身も、完全に処理されているということについての確信を持つことはなかなか難しいと素直にお認めになったわけでございます。  その後、横須賀市の調査によって、アスベスト関係の処理のフローが大体明らかになりました。ここに私も資料を持っているわけでございますけれども、例えば、今申し上げた日本保温などという会社は、企業規模や従業員数も必ずしも明確でございませんけれども、私どもが調べたところによると、社長と留守番のおばさんだけで、仕事があれば多いときは三十人あるいは四十人の労働者が集まってくる、それ以外のときは四、五人、現在は労災保険にも入っていない。店の看板には「各種保温・保冷・防音 ダクト工事 その他プラント工事」というふうになっているわけでございます。これは実は処理業者ではないのですけれども、こういう小さな下請といいましょうか、そういうところがアスベストを外に持ち出しているという実態があるわけでございます。  ちなみに、実はきょう、私はアスベストの放置されたものを持ってまいりました。余りオープンにしてもいけないのですが、米軍がつくった赤い袋は、「注意 石綿の粉じんを吸うと健康を害する恐れあり」というふうに日本字で書いてありますし、また同時に英語でそういうことが書かれているわけです。処理をする規則がございまして、赤、白と二つ袋があってそれぞれ二重、三重にしなければならぬということがあるわけですが、この業者は二重、三重ではなくて一重になっているわけです。  それで、実は私の仲間がいろいろあちこち聞き取りをやってまいりまして、その聞き取りの結果をちょっとランダムに御紹介しておきたいと思うのですけれども、黒いラバーの上のものはアスベスト、クリソタイルのファイバーで織ったものに白ペンキを塗ってある。これは私ども専門のところで調べていただきました。労働科学研究所の分析でございます。ここにございます黒いラバーの上にあるものがそれでございますが、まさにアスベストそのものでございます。それで、日本保温のもとの関係者の話を伺ったところ、赤袋、白袋の中身は空母ミッドウェーのボイラーパイプの保温材であるという証言を得ています。それから、社長さんからはいまだに連絡がない、店舗の看板などは次の入居者が外して日本保温のトラックに積み込んだ。横須賀市がそういうルートを明らかにしたわけです。  それから、この二十一日に証言した基地の退職者、八五年十二月に退職された方ですが、アスベスト廃棄物の基地外持ち出しということに関連をして、業者のアスベスト処理はずさん、日本保温だけでなく他の業者も持ち出している、基地外へ出てからのルートはわからない、あるいはドックサイドに業者が艦船から出したアスベスト廃棄物が、業者の責任ですぐ持っていかねばならないのにアスベストコンテナにも入れずにいつまでも野積みにされている。  あるいは、同じ日本保温の関係者の話でございますが、高校生がアルバイトに使われているというようなことも聞いたことがある。中学生から高校生、とにかく中学を出たばかりのえらく若い者を使っていた。さらに、八六年九月に退職をした基地の退職労働者に聞きますと、ミッドウェーのような大工事になると高校生やおばさんのバイトが入っていたと思う、人数は不明だがかなりの数ではないか。  それから、下請労働者の作業実態については、これも八五年十二月に退職した基地の退職者から伺ったわけでございますが、業者の従業員は、草履履きで入って草履履きで出てくるのもいた。もう一人のことしの九月に退職をした基地労働者は、コントラクター、下請はミッドウェー各所でアスベストのリップアウトをやっている。これはばらし作業のことです。SRF安全課ではアメリカの人が大変厳しいチェックをしているけれども、一〇〇%のチェックは非常に無理だということでございます。専門の保温屋さんがやる場合には、アスベストのリップアウトのときは一応安全課に届けて許可をとるけれども、パイプ屋やその他の業者は、小作業のリップアウトだと届けないでやってしまうので安全課もつかめないことが多い。  さらに、もう一人の基地退職の労働者に言わせると、コントラクターもSRF安全課の支配下で、アメリカ人が一人いて、安全、防じんに対して先ほど申し上げたように大変うるさいということで、一応紙製の円管服それからマスク、ゴム手袋、その姿で朝から作業にかかる。昼、上がりのときにバキュームルームに入り、その円管服やマスクやゴム手袋の脱じんをして、脱衣をしてシャワーを浴びて着がえをして食事をする、こういうことになっているわけでございます。ところがそういうことをやらない。特にアスベスト・リップアウトの人たちは、エアラインマスクなんというのはほとんど使わないということも証言を得ているところです。また、先ほど申し上げましたばらし作業といいましょうか、リップアウトというのは四人一組でやる。周囲を青いシートで覆って、入り口に一平米の黄色い「部外者立入禁止」の看板を立てる。ただしこれは建前で、仕事が押してくると他のショップ、他の職種の労働者との混在作業が非常に多い。他のショップの労働者は、安全課指導に基づき防じんマスク、眼鏡をつけるけれども、白のいわゆる紙製の円管服は着ないというふうなことなど、いろいろな形で証言を得ているわけでございます。  私がここで申し上げたいことは、率直に言って、外へ持ち出されてからどこへ消えているのかわからないということがまずあるわけです。しかし、持ち出されるいわゆるルートというのは横須賀市が確認をいたしまして、それを私どもの仲間と一緒に私も調査をいたしてまいりました。一つの場所は、基地から運び出しまして、横浜の戸塚というところに中間処理の施設がございまして、実はMという企業の名前でございますが、(写真を示す)こういう形で余りしっかりした覆いのないところで中積みをしているわけですね。ここであるいは破砕をする可能性も十分にある。また、そういうことを言われている向きもございます。その周りには、例えば直径四百メートルでとってみて病院がございます。それから大きな団地が二つもあります。それから老人ホームも中学校も小学校もあります。そういうところで実は中間処理をやる。この中間処理をしたところから今度は千葉県の佐倉市に持っていく。佐倉市へ行きますと、これはまた現場の人に聞いて大変びっくりしたのですけれども、M企業というところは実は袋を外して持ってきてくれるので非常にいいお得意様だというわけです。つまり、そこでみんな袋をとってしまうわけです。それで一般の廃棄物なんかと混在をして、結果的に佐倉の処理場でこういう形で埋め立てられているわけであります。もう何が何だかわかったものではありません。アスベストもへったくれもあったものじゃない。  私、さっきもこのアスベストについて調査したと言いましたが、それだけでなしに、横須賀の市営の廃棄物処理場でもアスベストが捨てられている。これも実は労働科学研究所で調べてもらったらやっぱりアスベストなんですね。これはミッドウェーだけじゃないのです。そういうものがこの際どんどん捨てられているという状態が一方にあるわけであります。先ほど大気保全局長が、普通の状態のもとでは危険はないというふうにおっしゃったけれども、こうなってまいりますと、私は危険がないなどとのんびりしたことを言っておられるだろうかとあえて言いたいのです。  ここで申し上げたいことは、中間処理の施設を通って埋め立てのところまでいく。その間に、アスベストであったものが袋もとられちゃって破砕されて——破砕することがいけないのです、大気に飛び散るわけですから。そういう形でどんどん処理されている。佐倉の処理場の周りにも、ちょっと離れていますけれども住宅地帯がございます。こういうことを考えると、二つ問題があると私は思うのです。  一つは、先ほど申し上げましたように、アメリカは大変厳しいアスベストの規制がある。日本で修理するというのは、アスベストの規制のない日本でやっているのかな。つまり、アメリカのアスベストの廃棄物処理場に日本が使われているのではないだろうかというふうに言わざるを得ない実態がある。アメリカ自身は精いっぱい安全管理のために努力をしている。しかし、その目の届かないところで実はどんどんこういう実態がしり抜けになって現実に出ているということになれば、さっき言ったようなことも考えざるを得ない。  それからもう一つは、基地の中は危険物で、基地から一歩外へ出たらもう安全、何をされても仕方がないという形で処理されている一つの物の流れを見たとき、あるところまでは危険物で、あるところからは全然関係がございません、そんな理屈が通るだろうか、こんな状態でいいのだろうか。しかも、大変高い発がん性を持っているということを考えれば考えるほど、何とかしなきゃいかぬ、こういう感じでいっぱいでございます。  そこで、実はこれは各省にお願いを申し上げたいのですが、外務省、大変長い間お待たせをいたしました。お尋ねをいたしますが、日米合同委員会環境問題を取り扱うセクションもあるそうでございますので、アメリカ海軍当局に、ミッドウェーを初めとする米艦船の修理に関連して、アスベストの廃材などが出る場合はできるだけ日本側に明らかにさせていただく。軍事秘密に関するものもあると思いますから、細かく数量まで云々というようなことを申し上げるつもりはございませんけれども、できるだけそのことを明らかにするための努力をお願いしたい。同時に、日本の業者に対して、特にこれは下請でございますが、安全についての指導を徹底して、厳格な防護措置をとっていただくようにアメリカに対して要求をしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  114. 岡本行夫

    ○岡本説明員 米軍は、地位協定に従いまして、我が国の国内法令にのっとりましてこのような作業を行うことができるわけでございます。もちろん、その場合に業者と契約をいたします。そのような業者に対しては日本国内法令が全面的に適用されることは申すまでもございません。米軍がそのような業者が行いました処理作業の後、業者が施設、区域外に廃棄物を搬出いたしましたその行動につきまして一々監督官権限というようなことを及ぼすことは、法律的には不可能でございますし、また実態的にも極めて困難であろうと思います。米軍といたしましては、先生指摘のように、施設、区域内にありましては安全対策観点からその管理に万全を期しているわけでございまして、今回、日本の業者が米側の目の届かないところでそのような不法行為を行ったことには、極めて当惑しておるところであろうと承知しております。  なお、米軍がアスベストが問題になります工事を行いました場合にはその関連資料を日本側に提供することになっている、これは、施設庁の方から既に別の委員会で御答弁申し上げているところでございます。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 基地の中で防護作業をやっている人々に対するチェックを強化してほしいということも、私、基地の外のことを言っているのじゃないのです。基地の中で米軍の、つまりSRFの担当官などもぜひひとつ目を光らしていただいて、下請などの面についてもそうした御指導を願いたいということをアメリカに言っていただきたいということなんです。それは問題ないでしょう。
  116. 岡本行夫

    ○岡本説明員 あるいは施設庁の方から御答弁いただくのが適当な御質問かもしれませんけれども、駐留軍従業員の安全確保につきましては、私どもといたしましても、常々在日米軍に申し入れているところでございます。アスベストを取り扱うことのある駐留軍従業員及びアスベストにさらされる可能性のある従業員について、米軍といたしましては、毎年度健康診断を実施しておりますし、今後とも安全については万全を期すということでございます。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。外務省、結構です。お忙しいところを済みませんでした。  次に、厚生省にお尋ねをします。  廃棄物の収集、運搬の権限というのは地方自治体にあることは言うまでもありませんけれども、ここではっきりしたように、受け入れ側の佐倉市にしてみれば、それがどんなに危険なものか、あるいはどんな形で市内に入ってきたのか、そしてそれがどう処理されたのか全くわからない、危険だけが押しつけられる、こういうことになっております。これは中間処理の横浜市でもやはり同じだろうと私は思うのであります。こうした行政の縄張りを言って責任を回避できるものじゃないと私は思うのです。そういう意味では、発生源の自治体がアスベスト廃棄物処理の流れをチェックして、継続的に監視できるようなシステムというかそういう指導をやらぬことには、全部地方自治体ごとに切れてしまって、そしてそれが、さっきも申しましたように基地の中は危険で、外へ出たら——とにかく一般廃棄物か産業廃棄物か知らぬけれども中間施設まではいく、そして中間施設から今度は全く危険のないものみたいな形で埋め立てられていくという実態は何とかしなければいかぬのではないか、つまりフローを。どういう形でチェックするのかということは私もちょっとわかりません。しかし、少なくともそういうことを考える必要があるのではないだろうかということが一つ。  それから、今の佐倉の処理のやり方なんですが、これは管理型処理というのですか、少なくとも遮へい型ではないですね。そういう遮へい型の処理というものを義務づけるようなことだとかあるいは途中で破砕などをさせないようにするとか、そういう極めて初歩的な対応というものをしなければどうにもならぬのではないだろうか。先ほどから申し上げておりますように、労働省は確かに危険物という形で対応していますけれども、そうでないほかの省庁というのは危険物としての扱いをしてないという形、つまり、そういう対応がばらばらな状態では国民生活は守れない、こんなふうに私は思うのですが、この問題に関連してぜひ厚生省の御見解を煩わしておきたいというふうに思います。
  118. 加藤陸美

    加藤説明員 私ども廃棄物行政を担当している者といたしましては、およそ廃棄物処理に当たって生活環境に支障を生ずるとか、作業員なり周辺住民の方の健康に問題が生ずることのないように、常に最大の努力を払っているわけでございます。アスベストにつきましては、私どももアスベストが有害物質であることは十分承知しておりまして、先ほど大気保全局長の方からお答えになりました調査の中でも、廃棄物処理場というのはアスベストを含むいろいろな建材が産廃も含めて持ち込まれる可能性があるということで、実は調査をしてもらっているわけでございます。その調査結果によりますと、廃棄物処分場あるいは廃建材を持ってくるそういった場所におきましては、一般環境大気中より比較的高い、相対的には高い濃度で出現している、しかし、一般的なアスベストの取扱事業場内の平均的な値に比べるとはるかに低い濃度だ、そういうことをいただいておるわけでございまして、一応私どもとしては、一般論としては、アスベストについて特に御心配いただくようなレベルになっていないというふうに環境庁調査で認識しておったわけでございます。それに加えまして、実は私どもも独自に、五十九年度に全部で十カ所、この中には産廃を持ち込む処分場、いわゆるあわせ処分場と申しますが、そこでも調査をいたしましたけれども環境庁調査結果と余り差のない調査結果を得ているわけでございます。  そういうわけで、私どもといたしましては、一応の調査によれば、端的に申し上げまして、アスベストについて現時点で特に御心配いただくほどのことはないというふうに思っておったわけでございますが、廃棄物処理の観点から申し上げますと、私どもの技術上の基準というのがございまして、それで、廃棄物の処理、処分に当たっては、およそアスベスト等を含むそういったものが飛散、流出しないように注意をさせる、それから、一般廃棄物の処理施設の設置に当たっては生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないようにする、そういう指導をこれまでやってきたわけでございます。今、先生指摘のいろいろな産廃業者について、一たん出たものがどこからどういうふうに行って、そして最終的にきちっとした形で処分されているのかという御心配がございました。確かに、残念ながら特に産業廃棄物につきまして不法投棄があるという実態は承知しておりますし、またこれが後を絶っていないということも承知いたしておりますが、私どもとしては、廃棄物処理法に従いまして十分に指導していきたいというふうに考えているわけでございます。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 安心しているわけじゃないのでしょう。具体的な手だてを求めなければならぬこともあるわけでしょう。今のような場合に、かなりまとまった形でそれ自身が埋め立てをされているという実態などについて言えば、そのままにしておいていいだろうか、それが環境庁調査に基づく環境影響がないというレベルで割り切れるだろうか。これはちょっと違うと思うのです。そういう場合の対応というものをぜひ厚生省としてお考えいただきたいと思いますが、いかがですか。
  120. 加藤陸美

    加藤説明員 先ほど、先生が御指摘になった事例ではございませんけれども、一般的に、廃棄物処理場を全国の各地から選んで私どもなりに調査した結果を申し上げました。ただ、先生が具体的に御指摘になりました、例えば横浜の問題とか千葉県佐倉市の問題とか、これは実は私どもその現場等について直接まだ調査をいたしておりませんので、現時点では実態をよく把握いたしてございません。それで、私どもといたしましては、神奈川県なり千葉県、産廃処分の許可を出しているところがそういうところでございますので、そういう自治体を通じまして、まず第一義的に実態はどういうことになっているのか、よく調査をさせてみたいと思っております。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっと十分ではありませんけれども、労働省にお願いいたします。  アスベスト使用の建築工作物解体の工法というものを検討していただいて、解体作業の労働者の保護とか、周辺環境汚染防止のための基準やマニュアルみたいなものをきちんと早く出していただきたいということが一つでございます。  それから、先ほどちょっと課長さんから言われましたが、この際でございますから、横須賀市や県などとも協力して、横須賀市を対象区域としてアスベストによる健康被害の全体像を明らかにするために、例えば造船あるいは基地退職者などの疫学調査をぜひひとつ御検討を願えないだろうか。これは市や県と相談の上で結構です。私は、特に下請の労働者の健康被害は差し迫った問題だろうと思うのです。それを全部追跡するというのはなかなか大変な面もございますが、横須賀という地域は特殊で、造船の長い歴史あるいは自動車関係というようなことがあってこの問題でございますので、ぜひ御考慮をいただきたいと思いますが、御検討いただけますでしょうか。
  122. 冨田達夫

    ○冨田説明員 石綿の問題は、先ほどお答え申し上げましたように、既に人に対する発がん性が明らかになっている物質でございます。我々が対応しなくてはならないことは、いかにして石綿粉じんの吸入を防止するかということに尽きるものと思います。先ほど先生の御質問にございました解体作業については、第七十二回のILO総会の石綿委員会の席上におきましても活発な議論が交わされまして、具体的な条項が取り入れられたものでございます。労働省といたしましては、ことしの九月に、建設業労働災害防止協会会長ほか四団体の長にあてまして、解体作業をする場合の作業手順をきめ細かく指示いたしました。なおかつ、出先の都道府県労働基準局に対してもその旨周知を図って、解体作業中におけるアスベストの粉じん暴露を防止するように徹底を図っておるわけでございます。  二番目の問題は、我々の立場としては、既に昭和四十年代後半にIARC、これはフランスにございます国際がん研究機関でございますけれども、そのような権威ある国際機関において人とアスベストに関する発がん性についての評価が十分なされているという判断を前提として、我々がやる措置としては、その粉じんをいかに暴露させないかということに全力を挙げていきたいと考えております。
  123. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 まとめという形で環境庁お願いをいたしますが、先ほど長谷川大気保全局長からお話がございましたけれども、健康への影響が少ないという見解には私はにわかに同意することができません。それは皆さん方のお立場でございますが、やはり国際的な動向というものをはっきり見きわめた上で段階的に少なくしていく、あるいは禁止していくというようなプロセスを目指すべきだ、そのためには健康に対する被害というものを余り軽視してはいけない、このことだけを強調しておきたいと思うのです。  実は、ミッドウェーの今度の廃棄物というのは、率直なところばかにならぬ量だと思うのですが、これはもうおわかりいただけると思うのです。先ほどから何回か申しますけれども、このままにしておくと横須賀というのは、これは横須賀に限らないのですけれども、横浜にしても佐倉にしてもアメリカのアスベストの最終処理場みたいなことになってしまう。アメリカでは、どうも裁判に負けて、裁判で禁止されてしまうものですから、そしてまた同時にかなり厳しい規制ができてしまったものだから日本でやるというのでは、これは日本人はいい面の皮だと私は思うのですね。そういう意味では、こういうものの規制というのは国際的なレベルを合わしていく努力も必要だと思うのですが、それはそれぞれの科学的な知見が背景にあるわけですから、それ以上のことを申し上げるつもりはございません。ただ、本件についてもしお願いができるならば、環境庁が、厚生省や労働省やあるいは神奈川県、横須賀市を含めて結構です、協議をいたしまして、暫定でもいいから応急の対策というものを確立していただいて、横須賀市民や関連の市民、これは横浜もそうだし、千葉県の佐倉もそうですが、その不安を解消する、そして心配がないならない、あるいはあるならばこういう手だてをする、こういうことのお骨折りをいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  124. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、先生からの御指摘でもございますので、私ども関係省庁と連絡をとりながら対策を講じてまいりたいというぐあいに考えております。
  125. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣、今大気保全局長から明快な御答弁をいただきました。アスベスト問題というのは、これからも私は質問をしていくつもりですけれども健康被害の問題と結びつきが非常に強いと私は思うのです。実は今度の問題でもアスベストなんかの問題を取り上げてもらいたいと思うのですが、それはそれとして、今のように関係省庁が連絡をとり合って、そして、今横須賀に起こっている事態あるいは不安の広がりみたいなものをきちんと御理解をいただけるように努力をすると御答弁をいただきたいと思います。
  126. 稲村利幸

    稲村国務大臣 今の局長の答弁と同様、関係省庁と連絡をとり、先生のまさに御努力された調査、それを踏まえての御意見に沿うべく努力したいとは思います。
  127. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。  では、最後になってもう余り時間がなくなって恐縮なのでございますが、「公害健康被害補償法第一種地域のあり方等について」の答申に関連をして御質問を申し上げたいと思います。お忙しいところをありがとうございました。  実は、私はここに、全国紙、ローカル紙の社説で、今度の中公審環境保健部会が結論を出した一種地域指定の全面解除、そして今後新しい患者認定はしないという方針に対する社説を届けていただきました。非常にバラエティーに富んでいます。そして、それぞれ取り上げている問題が特徴的な感じを持ちます。だから、この社説で私は聞いてみたいと思っているのです。  例えば、一番最初に読売新聞を申し上げましょうか。「確かに工場などの固定発生源による大気汚染は低減したといえる。だが自動車の排出ガスを“主犯”とする局地汚染複合汚染は、依然として減らず、健康への影響が心配されている。特に幹線道路沿いの排ガス汚染はひどい。東京では昨年四月までに達成するはずだった窒素酸化物環境基準は達成が実現できなかった。また東京都の調査では、幹線道路に近いほど呼吸器有症率が高く、女性の肺ガンと窒素酸化物かかわりが高い、というショッキングな結果も出ている。つまり大気汚染は、その発生源が煙突から道路に移動したわけである。「もう公害は終わった」と、基金を出すだけでは“免罪符”にはならない。大気汚染をめぐる新たな局面に向かって、行政、産業界の真剣な取り組みを望みたい。」ということになっております。  ここで伺いますが、今度の答申の中で、東京都の沿道調査の結論というものは何か否定されたみたいな形に扱われていますけれども、その辺の位置づけがどんな形で取り入れられているのか。長い間かかって大変な予算も使って、それなりの専門家を集めてやってきた結論がずばっと切り捨てられている感じがしてならないわけでございますが、まず第一にその点についての御答弁をいただきたい。
  128. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の点につきましては、この答申案の中にも具体的に触れられておるわけでございまして、「専門委員会報告後現時点に至るまでの間にも、更に、大気汚染健康被害との関係に関する知見について東京都における複合大気汚染健康影響調査等新しいものが出てきているが、それらの知見を考慮しても専門委員会報告の結論として示された現時点での大気汚染健康被害、特に慢性閉塞性肺疾患との因果関係評価を変えるものではないと判断される。」というふうに答申案においては述べられており、いずれも作業小委員会あるいは部会等で御審議をいただいた上の結論であるというふうに理解をいたしているところでございます。
  129. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私、実はここだから申し上げますけれども、小委員会の発足のときに私はあなたに質問をしたことがある。それは、専門委員会の長い間にわたる調査というものを小委員会に反映することは当たり前のことだ、つまり、科学的な知見制度にしていくプロセスで科学的な知見を尊重することが大事だ、だから専門委員のメンバー、例えば鈴木さんのような方を小委員会に加えなくていいのか、こういうことを申し上げたことがございます。ところが、その必要はないという御判断で小委員会が構成されました。  この際ですからお尋ねをいたしますが、専門委員会鈴木先生は今度の部会報告と言われるものに同意をされておられますか。
  130. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  審議会の個々の先生方がどのような御発言をされたかということにつきましては、これは審議会での申し合わせと申しましょうか審議会での話の中で、外へ出さないというふうなことになっているところでございます。したがいまして、私どもの方といたしましては、個々の先生方がどのような御発言をしたかということについては、ここで公表すると申しましょうか、申し上げることについては極めて困難なのでございます。その理由といたしまして、やはり審議会の中では、何人もの先生方がいろいろな意見を持ち合いながら、少しずつ意見を調整し合いながら進んでいくというプロセスであるというふうに私ども伺っておりまして、そういう観点からも、今の先生の御質問でございますけれども、私はできれば控えさせていただきたいというふうに考えているところでございます。
  131. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 目黒さん、私は一般的に言っているのじゃないのですよ。専門委員会の科学的な知見というものが正確に反映されるべきだ、そのためには委員がそういう形で加わることが必要だということを申し上げてきた上で、あなたはその必要がないという判断で一応やりとりがあったわけですから。これだけ聞きましょう。保健部会は満場一致ですか。
  132. 目黒克己

    目黒政府委員 ただいまの御質問についてお答えいたします。  一つ作業小委員会でございますが、鈴木先生は、前国会でお話しいたしましたように参加をいただきまして、作業小委員会でも御議論をいただいたところでございます。そして、この十月六日に開かれました環境保健部会におきましては、答申案について議論がなされたわけでございます。大変活発な審議が行われたわけでございます。それで、もちろん中には答申案に対して批判的な意見も出されたわけでございますが、作業小委員先生方などから説明がございまして、また幾つかの所要な修正をするといったような形をとって現在の形の答申案にまとまってきたわけでございます。また、中公審環境保健部会におきましても、同じように皆さん方の中で御意見があったところでございます。したがいまして、御指摘の点については、同じように批判的な御意見もあったわけでございます。
  133. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 満場一致ということではなかったということを確認をさせておいていただきたいと思います。  さっきの社説に戻ります。今度は朝日です。一番最後に、「答申を受け取る環境庁は、大気汚染による健康被害の防止と、被害が出た場合の救済について、実効ある方策をたてるべきである。それなしでは、制度見直しなどでなく、環境行政の大きな後退となる。」というふうに書いてございます。大気汚染による健康被害の防止と被害が出た場合の救済、これについて実効ある措置をきちっと明らかにすべきだ、そうでないと環境行政の大きな後退となるというふうに指摘をしておりますが、この点についてどんな手だてをお考えなのか、具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  134. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  答申案にございますように、今後の環境保健に関する施策等を含めまして、患者個人に対して民事責任を踏まえて補償を行うことではないけれども、現在健康に何らかの影響を及ぼしている可能性が否定できないので各種の環境保健対策を講ずるべきだという趣旨がございまして、こういう中で環境保健対策として、健康被害防止事業実施あるいは調査研究の推進あるいは環境保健サーベイランスシステムの構築あるいは大気汚染防止対策の推進といったようなことが答申案に盛られているわけでございます。  私ども環境庁といたしましては、三十日に総会が開かれるわけでございますが、答申をいただきました後に、十分に答申案を尊重いたしまして適切に対処いたしたいというふうに考えているところでございます。
  135. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 目黒さん、今一番最後におっしゃったサーベイランスシステムというのですか、これには、「万一不幸にもそのような事態が起これば、」つまり、大気汚染健康被害状況を監視して、そして影響を及ぼすことのないように努力をするということが前提であるわけですが、「直ちにそれに対応した行政措置を採り得るようにすることが必要である。」と書いてある。この「行政措置」というのは何ですか、また指定するということもあり得るのですか。
  136. 目黒克己

    目黒政府委員 私が先ほど来お答え申し上げましたように、この答申案の中では、公害健康被害補償制度は、著しい大気汚染による疾病の多発という事態が生じた場合に備えて速やかに対応できるように、今後ともその制度を存続するというふうに書いてあるわけでございます。したがいまして、私ども、先ほど来申し上げておりますように、これらのような答申をいただきました暁には、この答申を十分に尊重して具体的に施策に入っていくというふうに考えているところでございます。
  137. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今度は毎日新聞を指摘しますと、「大気汚染の寄与率が少なくなったのなら、公害認定の基準をきびしくするとか、SOx排出者の賦課金を減らすなど、より合理的な補償のあり方を探るべきではなかったか。少なくとも、幹線道路沿いの汚染指定地域を解除したのは疑問である。」というふうに指摘をしています。そして、「最後に公害健康被害補償制度は、汚染防止の役割も果たしてきた。今回の答申でその歯どめがなくなることは、NOxの環境基準大都市で未達成な折だけに、なおのこと遺憾である。」こういうように書いてある。全部解除するというふうな形のやり方ではなくて、例えば、自動車汚染度というものを十分考えて費用の負担を応分にさせていく、そして、確かにSOxの排出者の賦課金を減らすなどということはあるいは必要なのかもしれない。そういう手だてを、つまり、ソフトランディングに改善措置をとっていくということがなぜできないのか。これらの点についてはどんなふうにお考えでございますか。
  138. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの点につきましても、やはりこの答申案には盛り込まれているところでございます。特に自動車沿道の問題等につきまして、局地汚染につきましてはこの科学的な知見が十分でないこと、したがって、調査研究といったようなこと等が必要であるというような提言がなされているわけでございます。また、特に大都市地域中心に、窒素酸化物等についてはいまだ改善を要する状況にあるので一層その対策を講ずる必要があるとも答申案に出ているのでございます。したがいまして、私どもこれらを十分に尊重して適切に対処してまいりたい、このように考えているところでございます。
  139. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう時間が来てしまいましてゆっくりやっている時間がないのですが、今私がここに持っている新聞の関係だけでなくて、例えば信濃毎日新聞だとか河北新報だとかあるいは北海道新聞だとか神奈川新聞だとか、ローカルな新聞を含めて、「大気汚染は止まっていない」「大気汚染を軽視した答申」「大気公害はなくなっていない」「性急過ぎる公害補償見直し」「公害環境行政を後退させるな」「汚染地域指定解除への疑問」というように、ほとんどの社説がそのことを強調しています。私は、私個人がそれなりに主張するということだけではなくて、世論の動向がやはりその辺にあるのではないか。余りにも性急ではないか、余りにも非情ではないか。しかも、そこの背景にあったものは、だれが指定の解除を求めたのかということの因果関係から考えてみても、財界の言いなりになって結果的にそれにつじつまを合わせるような、そういうことを積み重ねてきたのではないだろうかという疑いを環境庁に寄せている。その国民の気持ちが広がっていることは事実だと私は思います。環境庁にとっては非常に不幸なことだと私は思います。稲村さん、えらいときに大臣になってしまったという感じが率直なところいたします。  私は、これから中公審の議論などがあるだろうと思いますけれども、やはり科学的な知見というものがあって、そのために専門委員会が長いこと努力をした、それが何かそれと違うような、あるいはそれとは全く関係のない形の割り切りという形で制度化が進んでいくということには納得ができません。もしそうであるとすれば専門委員会というのはまさに隠れみのであって、それを使ってとにかく指定地域の解除という方向にまっしぐらに進んできたものだ、時間稼ぎでしかなかったのだとあえて言いたいわけでございます。そういう点で、環境庁長官として、願わくは患者の気持ちを含め、そしてそうした科学的な知見というものに率直に耳を傾け、謙虚に公害行政というものを前に進めていく、そんな努力の一つの機会として、この中公審の議論やあるいはそれに対する答申について環境庁は御配慮賜りたいと思いますが、御答弁を煩わして最後の質問といたします。
  140. 稲村利幸

    稲村国務大臣 岩垂先生、えらいときにという言葉もありますが、大変な問題だという認識は私も持っております。今先生本当にこの問題について勉強されておられることに敬意を表しつつ、今のお話を念頭に十分置いて、中公審答申を受け、それを尊重しつつ適切にこれから対処していきたいというのが、今私がお答えできる精いっぱいのお答えでございます。
  141. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。
  142. 林大幹

    林委員長 森田景一君。
  143. 森田景一

    ○森田(景)委員 先般環境庁長官は北海道知床まで飛ばれたそうでございまして、知床の原生林を恐らく守れということで現地に飛ばれたのだと思うのですが、ただ現場を見ただけではなかったと思うのです。そういう点につきまして、長官の熱意のほどを私も推察しているわけでございますけれども、やはり環境庁の使命としては公害絶滅へ向けて熱意を失ってはならない、私はこのように考えるわけでございますが、長官の決意のほどを最初にお聞かせいただきたいと思います。
  144. 稲村利幸

    稲村国務大臣 御指摘のとおり、公害から国民の健康、財産を守ることは環境庁に課せられた最も重要な使命であると認識をしております。今後とも全力を挙げて公害防止対策の一層の推進に努力をしてまいる、この決意は変わっておりません。
  145. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は、きょう水環境の問題について大臣の決意を胸に刻みながらお尋ねしていきたいと思います。  私の地域には、湖沼汚濁全国ワーストワンの手賀沼、それからワーストスリーの印旛沼、こういうところを抱えておりまして、千葉県もあるいは関係する市町村もこの浄化対策に必死になって取り組んでいるわけでございますが、なかなかきれいになりません。     〔委員長退席、小杉委員長代理着席〕 きれいにならない原因は生活雑排水である、こういうことで、この生活雑排水対策に非常に頭を痛めて取り組んでいるわけでございます。この生活雑排水対策につきましては関係する省庁たくさんございまして、本来ならば一本化して早急に対策を進め、一日も早く河川、湖沼がきれいになるように対策を講じてもらうのが望ましいな、こう思っておりますが、なかなかそうはまいりません。こういうことを専門家の方々に申し上げるのは大変失礼かもしれませんけれども、雑排水対策というものについてどういう方法があるのか、まず最初にお伺いしておきたいと思います。
  146. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、生活雑排水が海なりあるいは川なりの汚染の大きな要因として近年だんだんそのウエートを高めてまいっておるわけでございます。したがいまして、生活雑排水につきましての対策を講じていかなければならないわけでございますけれども、大きく分けまして二つあろうかと思います。  一つは、その生活雑排水を出しておるもとであります一般の家庭の御協力を得まして、できるだけ台所だとかから汚いものを水と一緒に流さないようにするという、言ってみますと汚染源の対策発生源の対策でございます。  それから、もう一つは、さはさりながら、やはり汚濁が一般家庭からも出るわけでございますので、それを公共水域に出す前にきれいにする、そのための施設を整備する対策であると思います。
  147. 森田景一

    ○森田(景)委員 実は、私も余り台所の方は関心がなかったわけでございますが、先般私どもの党で水環境問題のシンポジウムを開きまして、国立の公害研究所からも先生においでいただきましていろいろとお話を承りました。そうしましたら、汚濁負荷といいますか、これはし尿よりも家庭雑排水の方が大変に大きい、こういうお話も承りまして、また資料なども見せていただきまして実はびっくりしたわけでございます。そういうことについては、例えば家庭の台所のごみについては三角コーナーといいますか、隅の方に金網のついた大きなごみを分ける器具がございます。あそこにろ紙を入れるだけでも三〇%はカットできる、あるいは使わなくなった女性のストッキングなどをそこに使って、その上からごみを捨てるとやはり三〇%ぐらいカットできる、こんな話も聞きまして大変驚いたわけでございます。そういう状況ですから、家庭の主婦の方々が皆さんそういうことを御存じかどうかわかりません。こういうのはやはり地域地域によって教育の重要性といいますか、町内会であるとかあるいは自治会であるとか婦人団体であるとかそういうところで、これは国が実施するというのは困難だろうと思いますが、国の方がいろいろな応援をして各地方自治体でそういう教育といいますか、そういうことを徹底していけばそれだけでも雑排水対策がかなり効果がある、こういうふうに考えたわけです。そういう点についてどんなふうにお考えでいらっしゃいましょうか。
  148. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 お答え申し上げます。  先生今御指摘がありましたように、一般家庭から出ます汚濁の中で、し尿の二倍以上の汚濁が家庭雑排水と言われております台所だとかふろ場とかといったようなところから出ておるわけでございます。したがいまして、これをできるだけ少なくするという努力が必要なわけでございまして、今先生おっしゃいましたように、コーナーを設けるとかあるいは網を置くということだけでも非常に大きな削減になるわけでございます。私たちは、そういう趣旨からいたしまして、まずあらゆる機会をとらえまして、台所にそのようなコーナーを置くとか、あるいは網を置いて台所で食べ物くずとかなんとかを水に流さないというようなことをする必要があるということを啓発普及しておるわけでございまして、パンフレットをつくったりあるいはテレビ等で放送したりというようなこともやっておるわけでございます。要するに、小さな話ではございますけれども一つ一つの家庭が水質汚濁の加害者であるという立場を十分にわきまえた行動をとってもらわなければならないということでの啓発普及をやっておる次第でございます。  特に具体的な話といたしましては、環境庁で若干の予算で実施しているものでございますのでまだ全国的にというわけにはまいりませんが、モデル的な事業といたしまして、地域住民理解協力を得まして、今申し上げましたような家庭における調理くずあるいは廃油の処理を適正に行うということのための実践活動、これは生活雑排水対策実践活動と称しておりますけれども、そのようなことも推進しているところでございます。このようなことを通じまして、先ほど申しましたようなことで本当に地道ではありますけれども、これが水質汚濁を防止するために一番基本になるところだというところを国民の皆様方に理解していただくという努力を続けていきたいというふうに考えておる次第でございます。     〔小杉委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 森田景一

    ○森田(景)委員 努力はなさっていらっしゃるようでございますが、私の住んでおります地域でも、市の広報などではろ紙を各戸に配付しますなんてあるのですけれども、私の家なんか一遍も来たことはないわけでございます。これはこちらの関係じゃありませんけれども、そのくらい徹底というものは難しいということをいつも感じているわけでございます。  先般、私の住んでおります柏というところで、地域の方々が地震の際にビールの空き缶で御飯を炊く炊き方の講習会をやりました。婦人団体の方が大変大勢集まりまして、こうすれば災害のときにも炊事ができるのだという実感を持って参加したわけでございます。そういう形で主婦の方々、最近は男性も炊事をなさるそうでございますが、両方含めまして、そういう教育の重要性というものを私も痛感するわけでございます。特に食用油は大さじ一杯流すだけで、環境基準を満たすためには何と三トンのきれいな水が必要だというのですね。これには私も実は驚いたわけでございます。そういう教育の重要性につきましては十分御存じでいらっしゃるわけでございますから、今後ともいろいろな方法を考えてぜひ努力をいただきたいと思うわけでございます。  それから、この処理対策の方でございますけれども、何といっても今きれいな水にするには公共下水道が最優先、第一番、こういうように考えられているわけでございます。その公共下水道の普及率が、昭和六十年度で約三六%だそうです。それで、普及率を一%上げるのに一年間かかるというのですね。それは予算の関係がありますから、予算が少なければ一%も上がらない。非常に建設省の方も努力はしていらっしゃいますけれども、なかなか思うように進まないわけでございます。この公共下水道も、とにかく一〇〇%は無理だと思っておりますけれども、少なくとも平たんな市街地等については早急に公共下水道を完備していかなければならない、このように私は考えているわけでございます。建設省からもおいでいただいていると思いますけれども、この公共下水道の建設について建設省の取り組み方、その辺のところをひとつお答えいただきたいと思います。
  150. 斉藤健次郎

    ○斉藤説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、昭和六十年末の数字でございますけれども、今国の下水道普及率は三六%でございます。欧米諸国に比べて著しく立ちおくれておる現状にあるのは事実でございます。私どもといたしましては、本年八月に国土建設の長期構想というものを策定いたしたわけでございますけれども、この中では、昭和七十五年までに市街化区域において概成しよう、市街化区域外の地域についても整備の促進を図るということによりまして、おおむね七〇%まで引き上げることを目標にいたしております。また当面、本年度から始まりました第六次下水道整備五カ年計画では昭和六十五年度までに普及率を四四%、調整費を執行した場合には四六%になるわけでございますけれども、これを目標として事業の推進に鋭意努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  151. 森田景一

    ○森田(景)委員 一生懸命努力なさっても昭和六十五年度で四四%という状況でございます。建設省も大蔵省と強硬に談判して、予算をたくさん取って下水道の推進に努力していただきたいと思うわけでございますが、しかしそれにいたしましても、未処理地域、未処理人口というのは大変なことでございます。昭和六十五年度どうなるかわかりませんが、現在ですと約六千七百万人の方々が未処理の地域に住んでいらっしゃるということでございます。ですから、このままいきますと水はいつまでもきれいにならないまま、一部幾らか下水道の進んだ部分はよくなるかもしれませんが、全体としては水はまだまだきれいにならない。きれいになるためには先ほど申し上げました雑排水対策で、特に処理対策の方を個別処理という形で処理してきれいな水を流すようにしていかなければならないわけです。  そういう点で、今回、厚生省あるいは建設省あるいは環境庁からもいろいろと要望が出ておるようでございますが、生活排水合併個別処理システムといいますか、合併し尿浄化槽が非常に効果があるということで各省から要望が出ておるようでございます。ところが、同じ合併浄化槽に対して三省から要望が出ておるので、大蔵省の方はこれはどこかで調整しなければならないということになっておるようでございます。この辺のいきさつ、状況について御報告いただきたいと思います。
  152. 加藤陸美

    加藤説明員 それでは、厚生省の取り組みについて御説明申し上げたいと思います。  厚生省におきましては、廃棄物処理法の体系化によりまして、し尿はもとより台所やふろ場から来る雑排水も含めて処理していただこうということで補助制度をもってきてございます。  具体的に申し上げますと、地域し尿処理施設、通常コミュニティープラント、さらに略してコミプラと略称されておる場合がございますが、このし尿処理施設に対する補助を長いことやってまいりましたけれども、五十九年度から雑排水だけを対象にいたします補助を創設いたしまして、私どもの用語で生活排水処理施設と申しますが、それに対して五十九年度から助成をしてまいったところでございます。これによりまして、先ほど来先生指摘の雑排水に取り組んでまいったわけでございますが、さらに最近の浄化槽の普及、これは現時点で五百二十六万基、大ざっぱに申しまして五百三十万基ぐらい浄化槽があるわけでございます。それによって三千万を超す人が浄化槽を利用しているわけでございますけれども、この浄化槽の適正な維持管理をするための浄化槽法というのが五十八年にできまして、この中で浄化槽行政を推進しているわけですが、先生指摘になりましたこの合併処理浄化槽は非常に有効でありますのでもう少し普及させたいというふうに考えまして、昭和六十二年度予算要求におきまして合併処理浄化槽に対する国庫補助というものを要求いたしてございます。その背景といたしましては、東京都ほか五つの自治体、全体で六自治体で、現時点で何らかの格好で合併浄化槽に助成を開始しておりますので、そういったものを後押しする施策を講じていきたい、こんなふうに考えております。
  153. 立石真

    ○立石説明員 合併処理浄化槽につきまして、建設省として今後どういうようにその奨励措置をとっていくかということについてお答えいたします。  建設省では、住宅を建設する際に住宅金融公庫等の融資措置を持っているわけでございますが、生活雑排水対策として合併処理方式が非常に効果があるというように考えておりまして、金融公庫の割り増し貸付融資の中において、合併処理浄化槽については限度額五十万円程度の割り増しができるように検討しておるところでございます。
  154. 加藤陸美

    加藤(陸)政府委員 お答え申し上げます。  合併浄化槽の必要性につきましては、先ほど来の御答弁で述べられておりますのでそこは同様でございますが、これを進めていくための手法としていろいろな方策を考えておる中の一つでございますが、環境庁関係では、直接事業環境庁自身ではそれほどやっておりませんけれども、実は公害防止事業団という制度がございます。先ほど来お話がございましたようないろいろな対策との関連もございますけれども公害防止事業団は融資制度を持っておりますので、ただし今までは公害防止のプロパーの問題が主でございましたが、公害防止事業団の制度見直し、改正が現在議論されておるさなかでございますが、その一つの新たな事業として生活雑排水の諸対策、特に合併し尿浄化槽等も含まれるわけでございますが、それに対する融資を行うべく関係省庁と調整をお願いしておる段階でございます。いろいろな方法の一つというふうに考えて努力したいと思っておるところでございます。
  155. 森田景一

    ○森田(景)委員 この合併浄化槽の効果ということについては、環境庁あるいは厚生省、建設省も非常に重要性ということを認識していらっしゃって、報道によりますと来年の目玉である——一億円の予算で目玉というのはちょっとおかしいなと私は思うところがあるのですけれども、いずれにしてもそういう認識を非常に深めていらっしゃることについては、私も共感を持つものでございます。  今までの浄化槽といいますと、余り効果のないものというふうな認識が多いわけでございます。それで、これは省が別でございますけれども、厚生省の初代環境衛生部長だった方で楠本正康さんという方がいらっしゃるそうでございますね。この方がいわゆる活性汚泥法というのですか、この浄化槽の認可をした当事者だったそうでございます。ところが退職されまして、今日、あれは大きな誤りであったということをおっしゃっている、これは公表しております。なぜかといいますと、活性汚泥法というのは非常に汚泥が残りましてその処理が大変なわけです。そういうことで、この今の合併浄化槽というのは非常にそれから進んだ浄化槽でございますが、どちらの省がどうなるのかは私もここでわかりませんけれども一つの問題について関係するところが三つもあるということですから、実現できるようにぜひひとつ努力をしていただきたいと思うのです。  それからもう一つ。これは建設省の関係になるのですけれども、今建築基準法では浄化槽の構造基準といいますか、五十一人以上は合併式ということが義務づけられているわけです。ところが、やはり各家庭大体五人くらいは住んでいらっしゃるのじゃないかと思います。特に、河川の上流部分などについてはやはり一世帯の構成人口が多いと思います。ですから、五人以上の家庭で浄化槽を設置するときには合併浄化槽にすべきであるというふうに義務づけてもらえばかなり大きく普及するのじゃないだろうか、こうも思うわけですけれども、この点について建設省の見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  156. 立石真

    ○立石説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、建築基準法におきましては、し尿浄化槽について、その設置する区域であるとか、あるいはまた処理対象人員に応じて構造基準を定めておりまして、市街地では通常処理対象人員五十一人以上のし尿浄化槽については合併処理方式としなければならないというように定めているところでございます。  御指摘のように、処理対象人員五十人以下の小規模な合併処理浄化槽につきましては、そこに流入する水量であるとかあるいは水質が日々変動するというような点が大きいわけでございますので、その排水について適正な水質あるいは安定的な水質を確保することが難しい面がございます。現在はその技術開発が活発に進められている段階であると私たちは考えているところでございます。しかしながら、既に実用化されたものもございまして、建設大臣認定しておりますものが十社十九基本型式あるわけでございますけれども、まだ一般的な構造基準として確立する段階には来ていないということでございますので、現時点では合併処理方式を義務づけることは難しいと考えているところでございます。しかしながら、先生指摘のように水質汚濁防止を図るためには、単独処理浄化槽を、生活雑排水をあわせて処理いたします合併処理浄化槽にかえていくことは非常に好ましいわけでございますので、当面はまずその普及促進策を講じる、そして技術開発の動向を考えながら適切に対応してまいりたいというように考えているところでございます。
  157. 森田景一

    ○森田(景)委員 現状では義務化するのは技術的にも難しいという話でございますけれども、しかし先ほど申し上げましたように、来年度予算でも合併浄化槽の補助金ということで積極的に進めていこう、一方では進めながら一方ではまだ技術が未熟だ、これではちょっと話のつじつまが合わないじゃないですか。
  158. 立石真

    ○立石説明員 ちょっと説明が足りない面がございましたが、個別の製品については技術開発が進みつつあるわけでございますけれども、一般的にはまだ構造基準として確立するところまでは至っていない、したがって、一般的な構造基準で合併処理方式を義務づけることまではまだ現段階では難しい、しかしながら、かなり技術開発ができてきている段階でございますので、奨励策としてまず講じるというところはもう支障ないというふうに考えておりまして、私たち、住宅を建設するとき、あるいはまた改装するとき等にそれらを奨励することの意味は大きいと考えて先ほどのような措置をとりたいと考えているところでございます。
  159. 森田景一

    ○森田(景)委員 時間が参りましたので質問を終わりますが、いずれにしても、先ほど申し上げましたように私の千葉県はワーストワンの手賀沼、ワーストスリーの印旛沼、こういうものを抱えておりまして、これの浄化に私もずっと取り組んでいるわけでございますから、きれいになるまで私はこの問題をずっと取り上げていくつもりでございますので、環境庁初め関係の省庁の皆さん方もひとつ格段の努力をお願いしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  160. 林大幹

    林委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  161. 林大幹

    林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春田重昭君。
  162. 春田重昭

    ○春田委員 私は、本日の委員会におきまして、公健法その他何点かについて質問をしたいと思います。午前中に同僚議員から同じような趣旨質問がございましたので、共通点があるかと思いますが、どうかこの点は御了解いただきたいと思います。  まず、公害健康被害補償制度でございますが、もう限られた時間でございますし、基本的な問題だけを長官並びに政府委員お尋ねしていきたいと思います。  この制度のあり方につきましては、中央公害対策審議会専門委員会並びに環境保健部会等で鋭意答申をまとめるべく作業が行われているわけでございますが、今後のスケジュールを御説明いただきたいと思います。
  163. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  三十日に中公審の総会が開かれることになっておりまして、その総会を終えた後に私ども中公審から答申をいただけるというふうに考えておるわけでございます。その答申を踏まえまして、私ども十分その答申を尊重しながら対応していきたい、このように考えているところでございます。
  164. 春田重昭

    ○春田委員 環境庁としては、答申を尊重しながら慎重にやっていきたいということでございますが、この法案につきましては次期の通常国会に改正案を出す予定なのですか。
  165. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  法律案を出すということがもし必要であるならば、そういう場合には出すことを考えておるところでございます。いずれにいたしましても、この答申案を見ましてからということでございます。
  166. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、長官に御所見を承りたいと思いますが、答申が出てないわけでございますが、既にマスコミ等で専門委員会並びに環境保健部会等の作業を通しましてその骨子が報道されておりますので、今まで報道された内容につきまして長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  167. 稲村利幸

    稲村国務大臣 答申案についての所見という先生の御質問ですが、答申案は主として指定地域のあり方について検討を行ったものであり、そのほか今後の環境保健に関する施策大都市地域中心に一層の大気汚染防止対策の推進が必要であると提言していること。もう一つは、今日の答申案中公審において三年にわたり慎重に審議を行ってきたという御承知のとおりの成果でありまして、これを高く評価できるものと考えております。これを尊重して適切に対処してまいりたいと思います。
  168. 春田重昭

    ○春田委員 報道によりますと、指定地域は四十一カ所あるわけでございますが、これを全面解除する、そういった動きがあるわけでございますけれども、その全面解除する理由というものはどういうところからきているとお思いになるのですか。
  169. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  中公審答申案におきましては、特にこの「指定地域の今後の在り方」につきまして、現在の大気汚染のもとでは、その影響気管支ぜんそく等の主たる原因とは言えなくなっているために、汚染原因者の負担によって個人に対して民事責任を踏まえた補償を行う合理性は失われていると考えられる。したがって、現在の第一種地域として指定されている四十一地域はすべて解除し、新規患者認定を行わないこととするのが適当である。現在の大気汚染のもとでは、個人に対する個別の補償を行うのではなく、総合的な環境保健に関する施策を推進することが適当であるというようなことで、具体的に答申案の中にその理由が書かれているのでございます。
  170. 春田重昭

    ○春田委員 個人から地域全体ということで、補償対象が変わったように思いますけれども、この春の専門委員会報告では、現在の大気汚染呼吸器健康被害に「何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できない」、こういったようなことが報告されているわけでありまして、こういった問題点を残しながら全面指定解除の結論というのは非常に短絡的ではないか、こういう考え方を持っているわけでございますが、どうでしょうか。
  171. 目黒克己

    目黒政府委員 この審議会におきましては、三年にわたる慎重な御審議をいただき、専門委員会報告を四十二回、それから作業小委員会報告を十一回といったような形で御審議をいただいたわけでございます。またその間、各方面の御意見等いろいろあったわけでございますけれども、そういうものも踏まえながら、あるいはまたそれを聞きながらこのような結論に到達したというふうに私ども聞いているところでございます。  なお、御参考までに、六月三日に患者団体あるいは費用負担者等の関係者を呼んで、中公審環境保健部会におきまして公聴会といいますか意見の聴取をそれぞれいたしているところでございます。またそのほか、患者団体のいろいろな意見書とか各方面からの意見書といったようなものもその都度委員会に御報告あるいは配付をいたしまして、先生方がそれを御議論いただきながら今日のような結論に達した、このように私ども理解しているところでございます。
  172. 春田重昭

    ○春田委員 新聞でも既に報道されておりますけれども地方自治体の方から、指定地域の全面解除につきましては慎重を期してほしいとか存続してほしいとか、いろいろな要望等が環境庁に出されているみたいでございますけれども、現在どれくらい地方自治体の方からそういった要望書なりが来ておるのでしょうか、数をちょっと挙げてください。
  173. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えを申し上げます。  関係地方公共団体からは、御指摘のように、この問題に関しまして、地方の実情を十分勘案して慎重に対処されたいという旨の要望書をいただいておりますが、ただいまの時点で何カ所というふうに正確に今私は記憶をいたしておりません。今二つ、三つあるわけでございますが、各自治体から御意見を賜っているところでございます。  また、最近におきまして、九月十九日に指定地域で事務を取り扱っております四十一の地方公共団体、これの連絡協議会が開かれたわけでございます。この時点はちょうどこの環境保健部会答申が出た後でございましたので、この公害補償地域の特に大気系の連絡協議会から、地方の実情を十分勘案して慎重に対処されたい旨の御要望があったわけでございます。また、九月八日には県知事等から同趣旨の要望もいただいているところでございます。
  174. 春田重昭

    ○春田委員 これから答申が出されれば、当然各地方団体、関係団体から相当そういった意見が出てくるのではなかろうかと思っております。そういうことで、これから答申が出まして環境庁でいろいろ法案の作成、改正案につきまして煮詰めていくと思いますが、先ほどもお話があったように、中公審でも患者団体の意見等聞いているということでございますけれども、まだまだ患者団体、支援団体等では意見が聴取されていないという声が強いわけでございますので、環境庁でも患者団体並びに地方自治体等の意見は十分くみ上げて、法改正の問題につきましては慎重に対処していただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。
  175. 目黒克己

    目黒政府委員 ただいま九月十九日と申し上げましたが、環境保健部会答申案の出る前でございまして、失礼いたしました。訂正させていただきますが、九月中に先ほどの連絡協議会から御要望があったところでございます。  それから今御質問の点でございますが、私どもこの答申案をいただきました後、各地方公共団体には当然いろいろな形で御協力あるいは御理解を得なければならないところでございますので、今後とも各地方自治体とは十分協議しながら進めていきたい、このように考えておるところでございます。いずれにしても、答申案が出てから私ども適切に対処いたしたいというところでございます。
  176. 春田重昭

    ○春田委員 今回の指定地域解除の原因というのが、二酸化硫黄が相当減ってきたということが一つの大きな原因ではなかろうかと思いますが、指定地域内の現在の大気汚染状況はどうなっているのか。二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質及び浮遊粉じんにつきまして環境基準に対してどういう状況なのか、その辺ちょっと説明していただけませんか。
  177. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  指定地域における大気汚染状況でございますが、二酸化硫黄につきましては年々減少を続けておりまして、すべての地域環境基準を達成しているところでございます。それから一方、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質につきましてはほぼ横ばいで推移いたしておりまして、大都市地域では依然環境基準を達成していないところもあるわけでございます。
  178. 春田重昭

    ○春田委員 ただいま部長から御説明があったように、二酸化硫黄につきましてはかつての五分の一ぐらいに減ってきておりますね。そういった点で二酸化硫黄が減っているというのはわかりますけれども二酸化窒素そして浮遊粉じん等は年々高くなっておりますし、特に二酸化窒素につきましては自動車排出ガス測定局二十六局で環境庁が測定をやったみたいでございますけれども、これはすべて環境基準をオーバーしているわけですね。また浮遊粉じんにつきましても年々環境基準をオーバーしているという実態になっておりますので、SOxが減ってきたので指定地域を全面解除というのはどうもやはり納得できない。現在はこういった複合汚染的な非常に複雑な大気汚染状況になっておりますので、調査とか研究というものをもう少し慎重に行って、諮問してから二、三年かかっていると言いますけれども、まだまだ基準をオーバーしているわけでございますから、少しその辺の調査を時間をかけてやって結論を出すべきではないか、こういう考え方を私は持っておるわけでございます。これから環境庁は法案でいろいろ作業していくわけでございますけれども、そういった点を十分勘案しながらやっていただきたいなと思っておるわけでございますが、どんなものでしょうか。
  179. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、専門委員会報告科学的知見等をもとにいたしましてこの答申案ができ上がってきているところでございます。また御指摘の点等につきましても、御承知のとおりそれぞれの形で答申案の中に内容が書かれているのでございます。こういうふうな中でこの答申案が間もなく答申としていただけるものと私ども考えているわけでございますが、答申をいただきました暁には私ども慎重に、これを十分尊重して対応しなければいけない、このように考えているところでございます。
  180. 春田重昭

    ○春田委員 それから患者の救済につきましては、先ほど部長から話があったように旧患者につきましては従来どおり補償は継続していく、ところが新規患者につきましては今後認めない、こういうことでございます。患者の推移を環境庁からもらっておりますけれども数字をもってちょっと説明してくれませんか。
  181. 目黒克己

    目黒政府委員 先生今御指摘いただきましたように、既存の被認定患者の取り扱いにつきましては、指定地域解除後も補償給付の支給、認定の更新等を従前どおり行うことが適当であるというふうにこの答申案では書かれているわけでございます。  御質問認定患者数の推移でございますが、公健法で認定患者の数は制度発足時は一万九千二百八十一人でございました。この当時は指定地域の数は十五地域でございましたが、その後指定地域が拡大されたこともございまして、六十年度末には九万五千三百九十一人、現在の四十一地域となっているわけでございます。ここ数年は毎年新規に約九千人が出てまいりまして、治癒等によります離脱者が約六千人、したがいまして毎年純増が約三千人となっているのでございます。ちなみに六十年度は三千四十一人の増加となっているわけでございます。
  182. 春田重昭

    ○春田委員 作業小委員会なりまた環境保健部会等の報告の中では、新規患者につきましては今後は補償していかない、こういう報告になっているわけですね。今御説明になったように最近では新規患者は九千名、そして患者認定は二年ごとに更新されるみたいでございますが、患者認定されない人が六千人で純増が三千人、こういうことでございます。しかし現実に八千名ないし九千名の新しい患者がふえているわけでございますから、こういった点を環境庁はどう認識しているのですか。
  183. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  今の被認定患者増加という点でございますが、これの内訳を見てみますと、気管支ぜんそく患者増加が非常に多いわけでございます。そしてこの被認定患者数増加の大部分気管支ぜんそく患者であるわけでございます。このことにつきましては答申案ではこういうふうに述べているところでございます。一つは、非特異的な疾患である指定疾病大気汚染以外の要因によっても発症するものではあるし、それから被認定患者増加原因考えられる気管支ぜんそくについて見ますと、ここ数年の指定地域での気管支ぜんそくの被認定患者増加率は、全国的に見た一般の気管支ぜんそく患者増加率とほぼ同水準となっていると答申案は述べているわけでございます。  それでまた、全国的に気管支ぜんそく患者増加している理由ということになりますと、国民の健康意識とか医療水準の向上、あるいはアレルギー素因の者の増加、あるいは都市的な生活様式の拡大といったようなものによる食生活とか住環境変化、あるいは高齢化の進展といったようなこともいろいろ考えられているわけでございますが、科学的には十分解明されていない、このようにしているわけでございます。  また、この答申案では、具体的に申し上げますと、「非特異的疾患である慢性閉塞性肺疾患は、大気汚染以外の原因によっても発症するものであることから、大気汚染程度かかわりなく、患者発生するのは当然のことである。大気汚染健康被害との関係についての検討に際しては、大気汚染による患者発生の過剰が意味を持つのであって、このような点に留意していない数字自体をもって評価が下されるものではない。」というふうにも述べているところでございます。  いずれにいたしましても、私どもこの答申案の中に述べておりますことの中で、先ほど申し上げましたような答申案内容によりまして、今後新しく出ていく患者というものについては、個人補償するというよりはむしろ地域全体としてカバーをしていくといったような趣旨考え方答申案で出ておりまして、これについては私どもそれを十分、出た暁にはこの答申案全体を十分尊重していかなければならないだろう、このように考えているところでございます。
  184. 春田重昭

    ○春田委員 先ほども言いましたように、春の専門委員会報告の中では、現在の大気汚染というものが呼吸器健康被害に何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できない、こういう報告もあるわけでございますので、現実に八千名ないしことしは九千名ですか、患者がふえているわけでございますから、これを切っていくということは納得できない、私はこう主張しておきます。  いずれにいたしましても、旧患者は見るけれども患者は見ないというのは、どうもその辺が割り切れない。結果的に基金というものを持ってきて、今度いろいろな健康被害防止の施策をやっていくということで、何か妥協の産物みたいな感じがするわけですよ。そういった面で、旧患者補償を継続していくならば、新患者も当然補償対象にすべきであって、患者のそういう色分けがあってはいけない、私はこう思うわけでございます。この問題につきましては、今後さらにこういった委員会を通して質問を継続していきたいと思います。  基金構想なるものが出ていますね。四百億円ないし五百億円企業側から基金を出して、そしてそうした今後のいわゆる健康被害防止の事業をやっていく、こういうことでございますが、この基金構想はどこから出てきたのですか。環境庁が事前に交渉してこういう構想が出てきたのですか。
  185. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  基金構想につきましては、今回の答申案におきまして、現在の大気汚染状況に応じまして環境保健に関する施策一つとして、新たに健康被害防止事業実施することが適当であるというふうに提言を審議会ではしているわけでございます。この提言につきましては、答申案の中に現在の、先ほど来申し上げておりますような個人個人への給付というよりは、全体への対応といったような形から次のように述べておるところでございます。  答申案では、「国、地方公共団体に関しては、従来行われてきた窒素酸化物等の大気汚染防止対策が推進され、慢性閉塞性肺疾患の予防、回復のための努力が更に行われることが望まれる。さらに、環境保健に関する施策としては、健康被害防止事業実施大気汚染健康影響に関する調査研究の推進」等々ということで、「サーベイランス・システムの早急な構築が求められる。」といったような提言があるわけでございますが、いずれにいたしましても、現在の大気汚染による健康影響というもの等から踏まえまして委員会の中でこのようなものが御審議されてきたものでございます。
  186. 春田重昭

    ○春田委員 委員会でそういうものが論議されてきたならば、それは当然国や環境庁施策をやってもおかしくないわけですよ。それが企業からの基金構想ということは、これはどうなんですか。環境庁が企業側に打診しなかったらこういう構想は出てこないのじゃないですか。
  187. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えをいたします。  この審議会の御審議の過程におきましては、当然各方面とのいろいろな意向打診、意見聴取といったようなものは行われているところでございます。したがいまして、患者団体の方の御意見も随分ございましたし、あるいは費用負担者側の御意見もあったわけでございます。このような御意見の中からこのような御審議がされてきた、このように私ども理解しているところでございます。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 ちょっと苦しそうな答弁でございますからこれ以上もう深追いはいたしません。  先ほど同僚議員からも質問がございましたが、中公審のメンバーの中に被害者代表が入っていないということです。私のところにもこういった要望が相当強いわけでございますが、こういった中公審のメンバーの中には被害者の声、また地方自治体等の声も吸い上げながら今後進めていただきたいな、こう思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、環境庁始まって以来最大の公健法の改正になるのじゃなかろうかと思っております。答申が出てから来年の改正案が出てくるまで相当いろいろ社会的な大きな反響を呼ぶのではなかろうかと思います。この問題につきましては、いわゆる医学的、科学的に慎重を期してそういう答申案が出てくると思いますが、環境庁という立場は、よしんばそういったいわゆる科学的な見地のもとに出された答申案であったとしても、やはり患者の立場に立って考えていくのが環境庁じゃなかろうかと私は思うわけでございます。そういった面では政治的な配慮というものが必要じゃなかろうかと思うのです。そういうのがこの基金構想で出てきたのじゃなかろうかと思いますが、環境庁は先ほどからもこの答申を最大限尊重しますと金科玉条みたいにおっしゃっておりますが、いずれにいたしましても、患者側の方にウエートを置きながらこの法の改正といいますか法の扱いについては慎重を期していただきたいな、こう要望するわけでございまして、ひとつ長官の御所見をお伺いしたい、そのように思います。
  189. 稲村利幸

    稲村国務大臣 あさって答申をいただくことになっておりますが、いただきまして、先生の御意見も十分尊重させていただきながら適切に対処していきたい、こう思っております。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、この問題につきましては今後いろいろな機会を通しまして御質問をやっていきたいと思いますので、とりあえずきょうは時間の関係でこれで終わりたいと思います。  続きまして、午前中も質問がございました知床問題でございます。  知床の国有林の伐採につきましては、林野庁が来年二月いっぱいまで動物の生息状況調査するということで一応凍結といいますか延長されたわけでございますが、長官、先ほどこの措置に対しましては、林野庁の、また農水大臣の寛大な措置を非常にうれしく思うという御所見がございましたけれども、いわゆる調査の結果次第では、国有林の伐採が三月の当初から始めることもあり得るわけでございます。現在調査団のメンバーでございますが、どういう構成でされているのか、もう既に終わったのか、そして先ほど言ったように二月いっぱいまでで果たして動物の生息状況がわかるのか、その辺のところをまとめて御答弁をいただきたいなと思っておるわけであります。
  191. 塚本隆久

    ○塚本説明員 お答えいたします。  調査団のメンバーにつきましては、現在私ども調査の委託先であります北海道森林技術センターが人選を急いでいるところであります。先生の日程等の都合もございまして最終決定までには至っておりませんが、北海道内の専門家を中心として構成いたしたい、このように考えております。  それから、調査内容等でございますが、知床の今回の計画は、十年間で千七百ヘクタールの地域を森林施業の対象としているわけですが、これについて、三ブロックに分けまして三年間調査をいたすということにいたしております。六十一年度の調査につきましては、知床横断道路の下の部分、以西の部分約二百二十ヘクタールにつきまして、シマフクロウ、オジロワシ等の希少鳥類を中心として生息確認調査を行うことにいたしておるわけでございます。  その時期につきましては、営巣木、つまり巣となっている木があるかどうかの調査につきましては、葉が落ちて営巣木の確認しやすい秋から初冬にかけて調査を行うということ。それから、鳴き声による生息調査、これにつきましては、繁殖期に近く、鳴き声の確認が行いやすい二月を目途として調査を行うということで計画をしております。現在これらの調査内容につきまして、専門家による検討が行われております。これらの意見を聞く中で今後の調査を詰めてまいりたいと考えております。
  192. 春田重昭

    ○春田委員 当初、林野庁としては相当いろいろ検討した結果こういった伐採計画を出して、自然保護団体の方たちが大きく反対して、それがマスコミを通して全国的に大きな反響を呼んできたということで、伐採計画が相当変わってきたという経緯があろうと思うのです。林野庁としても、相当慎重にやってきたのがこういう結果になって延長になってきたということで戸惑っておられると思いますが、いずれにいたしましても、二月という点が出まして、この地域には天然記念物でございますシマフクロウ、オジロワシ、クマゲラ、そういった動物が生息しているということでしょう。そういった動物の生息状況を、メンバーもまだ決まってない、十一月からかかったとしてもわずか四カ月ぐらいで、それも冬季間だけで果たしてできるのかどうか。特にシマフクロウは鳴き声が大体二月から三月初めぐらいでわかるということでございますが、やはり春夏秋冬、四季を通して一年間ぐらいじっくり調査をして、しかる後伐採をしても——これは五年前からもあったわけでございますが、こうしてずれてきて、ことし何としても林野庁としてはいわゆる林野の若返りという面でやりたいということらしいですけれども、そんな二月いっぱいと区切らないで、この際もうちょっと慎重を期して一年ぐらい、先ほど言ったように四季を通して調査してかかっても決して遅くないのじゃないか、こう私は思いますが、どうでしょうか。
  193. 塚本隆久

    ○塚本説明員 先ほどお答え申し上げましたように、私どもとしましては、営巣木の確認調査につきましては秋から冬にかけて終了できますし、また鳴き声調査につきましても二月をめどにしてできるというような感触を得ております。ただし、専門家の間では今先生がおっしゃったような御意見もあるようでございますので、そこは現在いろいろ検討をいたしておるところでございます。しかし、一応現在の段階では二月ごろをめどに調査を行いたい、こういう方針には変わりございません。
  194. 春田重昭

    ○春田委員 若干戻りますが、先ほどの調査メンバーでございますが、これは当然学識経験者や専門家がなると思うのですけれども、その中には自然保護団体のメンバーは加える予定になっているのですか。
  195. 塚本隆久

    ○塚本説明員 お答えいたします。  調査については、調査結果の科学的あるいは客観的なデータを得る、こういうことでございまして、第三者の機関に委託をいたすことにいたしております。こういった観点から、調査員につきましても試験研究機関等の公的な機関に所属することが望ましいと考えておりまして、自然保護団体の方々を調査メンバーに加えることについては考えておりません。ただし、自然保護団体の方からこうした学識経験者について御推薦がある場合には今後検討していきたい、そのように考えております。
  196. 春田重昭

    ○春田委員 環境庁お尋ねしたいと思うのですが、こうして相当反対の機運が高まってきたわけですけれども、自然公園法上の対応というのが今回の知床の自然林の伐採問題で適切であったかどうかということが言われると思うのですが、環境庁としてはどう思いますか。
  197. 古賀章介

    古賀政府委員 知床国立公園は、御案内のように昭和三十九年に指定をされておるわけです。昭和五十九年に保護の強化を図ることを目的としまして、公園計画の再検討を行ったところでございます。その再検討に際しましては、社会的条件の変化でありますとか各種公益との調整などを図った上で、自然環境保全審議会の御審議をいただいた上で御決定をいただいたものであります。したがいまして、そういう特別保護地区、それから特別地域でも一種から三種までございます。それから普通地域、これらの地種区分につきましては、昭和五十九年に現行のものが決まったわけでありますけれども、それは妥当なものであるというふうに考えております。
  198. 春田重昭

    ○春田委員 二年前この見直しがされたわけでございますが、特別保護地区とか第一種はそう変わってない。第二種、第三種が若干広がったような見直しだったのですね。今回の伐採計画は第二種と第三種でありますが、第二種でも間引きしながら伐採するみたいでございますけれども、さらに格上げして特別地区や第一種にすればできないわけでございます。シマフクロウでも、何か聞くところによると三十羽ないし四十羽ぐらいしかいないという状況でしょう。こういった特別天然記念物の生息するところは格上げしていく必要があるのではなかろうかと思いますけれども、二年前見直したわけでございますが、さらにこういった点も踏まえながら見直していくことが今後必要じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  199. 古賀章介

    古賀政府委員 今お答えいたしましたように、昭和五十九年に現在の地種区分、公園計画というのが決められたわけでございます。それから、その後は五年ごとに点検を行うということでありますので、五年後の点検におきましては自然保護の立場からさらに検討を加えるということになるわけでございます。  現行の地種区分につきましては、これは繰り返すようになりますけれども、各種の資料に基づきまして自然環境保全審議会で慎重な御検討の上にそういう結論を出しておるということでございますので、専門家の方々の意見が十分反映されておるわけでございますから、それは妥当なものであるというふうに考えておるわけでございます。
  200. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、今後の見直しでは第一種地域、さらに特別地区を相当広げていくように環境庁としては図っていただきたいなと要望しておきます。  長官にお伺いしますが、先ほども出ました中央のナショナルトラストの問題でございます。長官は現地の知床へ行かれましてそういった設立構想を打ち出したように報道されておりますけれども、今後どういう形で進めていこうと長官はお考えになっているのか、また具体的にいつごろやりたいとかいったお考えがおありなのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  201. 稲村利幸

    稲村国務大臣 ナショナルトラスト活動につきましては、自然保護の一層の広がりを図る上で極めて重要なものであると考えております。そして、この活動に対する各種の税制上の特例措置、六十年度の所得、法人税、六十一年度の相続税が整備されましたので、今後はその活用を図り、地域レベルのナショナルトラスト活動を育成するとともに、全国的規模の法人を設立して自然環境の保全に一層積極的に取り組んでいきたい。新聞でも来春ぐらいをということで、一生懸命今整備努力中でございます。
  202. 春田重昭

    ○春田委員 最後に、時間がそうありませんけれども、PCBの焼却問題、きょう新聞で報道されておりますが、兵庫県の鐘化の高砂工業所におきまして、いわゆる液状のPCB、これを高熱の熱分解で処理すればガス等が発生しないということで、地元の審査委員会等でゴーサインが出たみたいでございますが、環境庁はこれにつきましてどういうお考えを持っておりますか。
  203. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えいたします。  先生お尋ねの液状廃PCBの高温熱分解処理につきましては、昨年度環境庁におきましてその安全性についての試験を行いまして確認したところでございます。今般、その液状廃PCBを保管しております鐘淵化学工業から処理計画案が兵庫県に提出され、県の審査会におきまして鋭意検討が続けられておりまして、環境庁の試験結果を踏まえまして安全性等が審査されておったところでございます。昨日その結果が先生指摘のとおり県に報告されたということでございます。  環境庁といたしましては、この計画に基づきます処理が適切に実施されまして、環境汚染されることのないよう大きな関心を持っているところでございます。具体的には、担当の職員が審査会にも参加いたしまして、専門の先生方の御意見を尊重しながらも、処理計画案及び県が作成いたしました監視計画案につきまして、環境を保全する立場から必要な指導をしてまいったところでございます。したがいまして、環境庁といたしましては、この計画案及び監視計画案につきましては、安全性の観点から適切なものというぐあいに考えているところでございます。今後の実施に当たりましては、地元住民の合意を得ながら県を通じまして環境汚染の生じないように適切に指導してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  204. 春田重昭

    ○春田委員 これは地元住民との話し合いはされたのですか。
  205. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 お答えします。  先ほど御説明いたしましたように、昨年環境庁実施しました処理計画案に基づきまして鐘淵化学の方から同じような処理計画に基づく処理をしたいということで、県の方にその計画案の承認方の申請が出てまいったわけでございます。県におきましては専門の先生方を集めまして、その処理計画につきましての安全性の観点からいろいろ検討されまして、その計画案なら大丈夫だということでこのたび報告を出されたというぐあいに聞いております。したがいまして、先生お尋ねの地元との合意といいますか、地元住民の御意見等につきましては、これから県あるいは市を通じてのそういう話し合いといいますか、そういう機会が得られるものというぐあいに考えております。
  206. 春田重昭

    ○春田委員 この液状廃PCBやそれからまた固体のPCBというのは、特に固体の場合については地方自治体や企業等に相当滞積しているのです。カーボン紙なんかも相当まだ残っているわけです。かつて海上投棄がされて大きな問題になったのですが、今後これがこういう形になってきた場合には、海上投棄が行われないですべて陸上焼却という形になっていくのですか。
  207. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 私ども昨年実験いたしましたのは、先生お尋ねのカーボン紙とかあるいはトランス等の問題ではございませんで、あくまで廃PCBの原油といいますかそういう形のものでございます。その形のものを焼却するについての実験をやりまして安全性を確認したということでございますので、こういう廃PCB油的なものの処理に当たりましては、私ども昨年やりました実験計画に基づきました処理が行われれば安全なものというぐあいに考えております。
  208. 春田重昭

    ○春田委員 一応液状のPCBにつきましてはこういった鐘化の高温の処理施設で環境は十分クリアできる、こういう形で出たわけでございますが、私が心配しておるのはそういったいわゆるトランスまたはカーボン紙が相当残っているのです。それで、これは通産省や厚生省にも私は決算委員会で相当質問したわけでございますが、自治体の焼却場でやった場合に、大体自治体の焼却場の温度というのは七百度ないし八百度、高温の処理施設は千四、五百度で初めて分解されて有毒ガスが出ないわけです。七百度、八百度でやった場合は御存じのとおり何か有毒ガスが出るというような報告もされておりますから、こういった形で報道されて、残ったものが一般の焼却場で焼却されていった場合相当また問題になってきますので、その辺のところ間違いのないように通産や厚生省に再度徹底されまして、あくまでこれは液状なんだぞ、従来のいわゆる固体のPCBについては慎重を期して対処するようにということを再度徹底方を通産、厚生省にやっていただきたいな、私はこう思うわけでございまして、そういった配慮もすべきじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  209. 長谷川慧重

    長谷川政府委員 先生お尋ねといいますか御心配の点につきましては、私どもの方から、従前からも、私どものやりました環境実験につきましてはそれぞれの関係各省の方へ御連絡申し上げておるわけでございますが、このたび実際に高砂市におきましてそういう焼却が行われるという段階に至っておるわけでございますから、私どもの実験の内容あるいはどういうものを対象にしてやるのかということにつきまして、先生の御意見もございますので再度御連絡申し上げたいというぐあいに思っております。
  210. 春田重昭

    ○春田委員 ちょうど時間が来たようでございます。  いずれにいたしましても長官環境行政というのはこれから非常に重要になってくると思うのです。きょうのある新聞報道では水質の環境問題、PCBの問題、それから湖沼法に諏訪湖が指定されたとか、また先ほど午前中質問があった石綿のああいった問題、いろいろ環境問題について報道が本当に盛りだくさんされておるわけでございまして、それだけ環境に対する関心が非常に高まっているときでございますので、先ほど公健法の問題でも言いましたように、あくまでも環境庁というのはそういった国民の立場に立って、また被害者側、患者側の立場に立ってひとつ政治的な配慮を時にはやる必要もあろう、こう思いますので、ひとつ長官の今後の大いなる環境行政に対する御活躍を祈りながら質問を終わらせていただきたい、こう思っております。  ありがとうございました。
  211. 林大幹

    林委員長 滝沢幸助君。
  212. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長御苦労さま、長官初め政府委員の皆さん御苦労さまです。  公害被害の健康にまつわるいわゆる公健法の改正等の問題は先ほどからいろいろと議論されてきたようでありますから、いずれこれは法案が出てきましたときに譲りまして割愛させていただきますが、ただ一言、三十日にいわゆる審議会答申が出ました場合のその後の日程等を簡単にひとつ説明してちょうだいしたいと思います。  なお、そのときに、私の基本的な認識として注文があるのでありますが、私は、最近政府が事ごとに諮問委員会審議会等にまず問題を付託して、そして、これを逆に議会の立場から見るならば、議会をバイパスするための隠れみのになりやすいと思うのですよ。そのときに常に——臨教審もそうですが、一々臨教審がおっしゃったと、こう言うんだけど、いわば専門家に設計を委託するのならば、設計にそう書いてありますというだけではなくて、設計を発注するときにこれをこうしてちょうだいよ、庭はこうしてちょうだいよ、池をつくってちょうだいよ、全部の金で幾らで上がるようにしてちょうだいよという注文をつけるはずです。諮問の文章にどう書いてあれ、政府の意見というものは諮問にかけるときに既にある程度の腹が決まってなくちゃならぬ。今回の場合も、これを諮問するのですから、諮問するには何らかのことがあるはずですね。その点はきちんとして、私は、一々この審議会答申に隠れるのではなくて、積極的に政府の意見というものを前面に出してちょうだいしなくちゃならぬ、こういうふうに思うのですが、そのようなことを基本の認識として今後の政治日程をお伺いしたいと思います。
  213. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えをいたします。  先ほど来申し上げておりますように、この中公審答申案が出ましたならば、私どもそれを尊重いたしまして、十分意見調整を関係者とも行いながら適切に対処をしていく考えでございます。  なお、検討しました結果、法律上の手当てが必要だというふうな場合には、できるだけ早く所要の法律案を国会に提出するといったようなスケジュールになろうかと思っているところでございます。
  214. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それでいいんですけどね。しかし、私は少し事務的過ぎると思うのですよ。そうではなくて、いやしくも政府が諮問をするからには、いついつまで答申をちょうだい、そうしたならばいつの議会に少なくとも提案をしたい、そして法律に改正の必要があるならばというんじゃなくて、そこら辺のところは、諮問委員会に出したならばそのままもう答申を得るまで一切無関係じゃないんですから、いろいろ作業の中で、私は政府の腹は決まっていると思うのですよ。そういうことについて私は、もっと政府が議論をする姿勢が常に何事にしろ欲しいと言っているわけです。このことについての答弁は要りませんけれど、答申が出ましたら十分に尊重しましてなんていうようなことでは議会は済まされないと私は言っているわけです。  次に、環境庁さんに、これは私が同情を込めて申し上げているんだけど、環境庁さんのお仕事というものは各省庁の御協力が必要である。そして都道府県、市町村ないしは企業を初め民間団体等の大変な連絡と協調が必要なんだけれども、そのときに環境庁という立場は極めて弱いのではないか。私は、各省庁をむしろリードする環境庁の姿勢というものが強く出てこないことには、いわゆる環境の保全というような本来の任務は全うできないのではないか、こう思うのでありますが、どうかひとつ、これは環境庁のお仕事をなさる上の理念と力量が問われることでございますが、どのような決意で進めていらっしゃるのか、長官の御意見を承りたいと思います。
  215. 稲村利幸

    稲村国務大臣 私は、就任に当たって、まさに今滝沢先生の御意見のような心構えで臨み、省職員に対して、今先生がお触れになったようなことを申しました。  環境庁は、環境の保全に関する行政を総合的に推進することを任務とする行政機関として、自然保護の分野においても、関係省庁地方自治体協力しつつ、自然環境保全を初めとする関係制度の総合的な運用に努めてきたところで、環境庁として、今後とも各省庁と十分調整を図りつつ自然環境の保全に努める。しかも、ただ調整機関、調整機関といって何か人の顔色ばかり見ていて前に進まないような嫌いがある、私もそういうふうな感じを持って、就任に当たって、しっかり前向きで取り組んでいこうじゃないか、こういうふうな意気込みでごあいさつをしたつもりでございます。
  216. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大いにひとつ長官のリーダーシップを期待したいところでございます。  次に、林野庁さんに見えていただいていると思うのですが、先ほど国立公園の知床の伐採のことがたびたび議論されてきたわけであります。繰り返すことをしませんけれど、私は端的にお伺いしまして、なぜ林野庁は木を切るんだか、なぜ切らなければならないか。戦後林野庁が伐採をした天然林というものはおびただしい量に達していると私は思う。木霊という言葉があります。木の魂であります。山には神様が宿り、木は神体そのものだという信仰が日本には古来伝わりました。日本だけではございません。世界に共通する理念じゃないでありましょうか。そのような意味で、林野庁の戦後の歴史は、木を切って売って食っている歴史だった、こういうふうに極論してもよろしいと私は思うのです。  昨年でありましたか、例の分収計画の新しいものが出てまいりました。三十年の樹齢のものを、半分の権利を民間等に放出するということであります。つまり切れる木は全部切ってしまったので、これからは立ち売り、先売りで食っていくということでありましょう。そのとき私は、これを食ったら後何を食うのか、こう言いました。そのようなことで、私は木は切るな、いやしくも自然林を切るということはけしからぬ。百年、二百年、三百年ないしは五百年という森でありましょう。それをちょっとした計算でこれを伐採しておのれの生活の利に付するということは、全く自然を暴力するものである、こう言うのでありますが、今我が国には天然林はいかほど残っておりまするか。なぜ切るのか、切った材木はどこにどうして処理するのか、今後はどのようにされるかひとつ承りたいのであります。むしろ私は積極的に自然林を守るという姿勢を、林野庁もひとつ今の環境庁長官の意思を体してお願いしたい、こう思うのですが、いかがですか。
  217. 杉本正興

    ○杉本説明員 現在、天然林でございますが、全国で二千五百万ヘクタールの森林がございますけれども、その五五%に当たります千四百万ヘクタールがまだ天然林という形で残っております。  先生指摘のような点につきまして、今後の森林整備の方向のあり方ということにつきましては、森林に対する国民の要請が非常に多様にわたっているということを踏まえまして、従来拡大造林ということでやってまいったわけでございますが、その拡大造林中心の森林整備の方針の転換を図る時期に来ているというふうに私ども考えているわけでございます。  それで、昨年の八月に取りまとめられました林政審議会専門委員会の中間報告におきましても、今後の天然林に関する森林整備方針につきましては、自然環境の保全・形成とか、国民の森林に対する多様な要請の高まりに対応するために天然林を積極的に整備していくべきだ。それから天然林を人工林にするための拡大造林を主体とした従来の造林施策見直して、既に人工林化したものにつきましてはこれをちゃんと育てて立派な山にしていく。それからもう一つ、自然力を活用して、天然林に対しましてはそれに人工の手助けをしながら、育成天然林施業と言っておりますが、そういう展開等も地域の実情に応じて推進すべきであるというような報告が出されております。そういうことから、森林整備に関する国の施策の指標となります森林資源に関する基本計画、それから重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通しを早急に改定すべく現在作業を急いでいるところでございます。
  218. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 知床で切った木はどこへどうなるのか、後からまた追加して答弁をちょうだいしたい。  これは幾ら言っても仕方がないのですが、政府がその委員等を任命なさるときは都合のいい人々を任命なさるものだから、政府の思っていらっしゃるとおりの答申が出てくるのだ、それは非常に重大なことですよ。自然林はもう整理して人造林にすべきだという答申を出してほしい、そういう人を指名するものだからそういうようなお答えが出てくるのです。これは臨教審もそのとおり、いわゆる教育臨調もこのとおりですね。しかし、それはここで言っても仕方ありませんけれども、私はこういうことについてはもっと慎重な態度で臨むべきだと思いますよ。  そして、全国の針葉樹と広葉樹の割合というものはどのようにあったらいいのか。私は東北、会津におりまするけれども、あの地方は広葉樹がきれいに今紅葉しておりまするけれども、戦後非常に少なくなったじゃありませんか。全部ばかみたいにカラマツを植えるんだな、こういうことはやめなさい、こう言いたいのです。このことをひとつ簡単に答えてください。
  219. 杉本正興

    ○杉本説明員 針葉樹と広葉樹の問題でございますが、現在針葉樹の林が大体半分、五〇%強ございます。それから広葉樹が四割強、残りが針葉樹と広葉樹のまじったような林になっているわけでございます。  先生おっしゃいますように、従来造林を進める場合針葉樹を中心にやってきたわけでございますが、最近の木材の需要そのものに対する中身が、広葉樹材に対する需要が非常に強いというようなこと、それから自然環境の保全・形成といったような国民の森林に対する多様な要請の高まりに対応するため、先ほども申しましたように森林整備のあり方、多彩な森林づくりと申しますか、そういうものが重要になってきております。そういうことで、先ほどの昨年出されました林政審専門委員会の中間報告におきましても、育成天然林施業、それから特に広葉樹を植栽する広葉樹林の積極的な造成といいますか、そういうものを地域の実情においてやるべきだというような御指摘がございます。そういうことから、先ほど申しましたように、森林資源に関する基本計画等の見直し作業を現在急いでいるところでございます。
  220. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 切った木はどこへ持っていってどうするかという答えはありませんが、それは結構です。  次は、狩猟行政というのでしょうか、いわゆるハンター、これについてちょっと申し上げます。  ばかの一つ覚えということがありますね。あれは何代将軍かな、犬将軍と言われました綱吉ですか、いました。私の住むところはカモシカの生息地でありますが、カモシカはとってはならぬ。確かに死に瀕している、絶滅する動物だったらそれは結構であります。しかし、ふえ過ぎてもう山の木の芽は食うわ農作物は食うわですよ。でもこれに手が触れられないのでしょう。そして雪崩に痛めつけられて死んだカモシカを一匹発見したら、三人も四人もの県職員が本省と連絡をとったり大変なことなんだ。これはまさに犬将軍ですよ、ばかの一つ覚えです。こういうものについてもっと実態に即した行政というものはないものかどうか。  もう一つついでに一緒に申し上げさせていただきますが、ここは鉄砲を撃ってはならぬという地域指定しておりますね。しかし、今やそれは逆だ。この山は鉄砲撃ってもよろしいという地域指定して、そこは特別に保護して一般の人の入山を禁ずるということにしていったらいいのではないか。それは将軍様の前以外は刀を抜いてもいい、将軍様の前では刀は抜けないよといった時代の発想なんだね。特に戦後武装解除されて、刀剣等不法所持というような時代じゃありませんか。この平和な日本で、いつ狩人の弾が飛んでくるかわからないようなところに生活しておれますか。昔の狩人は、一日にタヌキを二匹とらなければ妻子が死に絶えるんですよ。生活がかかっているのです。ですから、これはタヌキもウサギももって瞑するに足るといって喜んで食べられたものですよ。しかし今は金持ち様の遊びじゃありませんか。そういうものに撃ってはならぬ場所を——小便するなという場所を決めるんじゃなくて、小便してもいいところを公衆便所というんですよね。どうかひとつ発想の転換を私はお願いしたい、こう思います。  そしてもう一つ、ついでに林野庁さんでありますが、これは林野庁さんじゃないのかもしれませんが、松くい虫はどうなっているのか。相当国会の周辺の松が枯れているようでありますが、いかがですか。
  221. 山口夏郎

    山口(夏)説明員 松くい虫の被害のことでございますけれども、かつて五十四年度に二百四十三万立方という非常に大きな被害が出まして、それをピークといたしまして、以降対策等も進み徐々に減じてきておりまして、現在ほぼ半分程度まで被害が減少してきているという状況でございます。しかし、昭和六十年度で申しましてもまだ百二十六万立方という被害が出ておりまして、被害の区域も大体北海道、青森県を除く四十五の都府県に及んでおります。地域によりましては、これまで非常に被害が軽微だった地域、東北だとか裏日本の方、こういうところでは被害が拡大しておりますし、それから、これまで被害が非常に激しかった西日本の地域では被害が逆に減少してきているという状況でございます。  これの対策につきましては、現在松くい虫被害対策特別措置法等に基づきまして各種対策を講じているところでございますが、実はこの法律は昭和六十二年三月末、来年の三月末で効力を失うという状況でございまして、現在私どもの方で、現制度に所要の改善を加えた上この法律の延長を行う方向で検討しているところでございます。
  222. 古賀章介

    古賀政府委員 まずカモシカの問題でございますけれども、カモシカにつきましてはその保護と被害の防止を図りますために、先生御案内のように昭和五十四年の八月に文化庁、林野庁、環境庁の三庁が協議しまして次のような対処方針を定めたわけでございます。  まず一つは、今後は地域を限って天然記念物に指定し、保護を図る。現在は種としての指定でございますけれども、これからは地域を限って指定をする。それから次は、これに至る措置として全国に十四カ所の保護地域を設定する。三番目は、保護地域の設定が終了した地域におきましては保護地域外でのカモシカの個体数調整を認める、捕獲を認める、こういうことでございます。この方針に基づきまして、昭和五十四年度から特に林業被害の著しい長野、岐阜の両県につきましてカモシカの捕獲を認めているところでございます。環境庁としましては、今後とも文化庁、林野庁と協議しながらカモシカの保護と被害の防止を図ってまいりたい、こういうことでございます。  それから二番目の、現行の狩猟制度を逆にするといいますか、可猟区域を設け、それ以外の地域は禁猟にしたらどうかという御提言だと思います。これも御案内のように環境庁としましては鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づきまして、鳥獣保護区、休猟区などを設けまして狩猟を禁止している地域を設定しておるわけでございます。また他方、安全かつ適正な狩猟を実施するため、猟区の設定を推進しておるということでございます。環境庁としましては、このような調整を通じまして今後とも秩序ある狩猟の実施を推進してまいりたいと考えておるわけでございます。先生の御提言につきましては、今後、勉強させていただきたいと考えております。
  223. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 林野庁さん、お帰りいただいて結構であります。御苦労さまでした。  建設省さん、道路整備計画ないしは河川の改修の計画というようなときに、自然の保護というものはいかが配慮されているものであるか、こういうことであります。  ちょっと聞いた話でありますが、ある川に中州があって、その中州を除去しなければどうも水の流れがよろしくないということで、そういう河川改修の計画を発表しましたら、野鳥を守る会の方々が、あそこの中州に生えている木に巣くっている小鳥さんがかわいそうでしょうということで、大変デモをかけられてその計画は変更されたと聞きました。特定のところをしかっているわけではありません、全体としての考え方を申し上げているわけであります。さっきのカモシカの話であります。さっき申し上げたのは一つの例でありますから、努力しているのかもしれませんが、ひとつ生きた目で物を見てちょうだいしたい。もしもその中州が邪魔してここが大きな洪水になったならば、その小鳥さんかわいそうの小鳥さんは言うまでもありませんが、周辺の人間さんも全部流れてしまうのです。大きな視点に立った計画をお願いしたい、これが一つであります。いかがなものでしょうか。特定の地域を言っているわけじゃありません。
  224. 角田直行

    ○角田説明員 御説明いたします。  私ども河川行政といたしましては、河川改修は、先生指摘ありましたように、洪水や高潮から国民の生命や財産を守るものでありまして、国土保全上極めて重要なことと認識いたしております。したがいまして、自然環境には十分配慮はいたしつつも、河川改修の重要性からして必要な規模での工事の促進を図ることが重要と認識をいたしております。  ただいま先生、あるところでというお話がありましたが、私ども調べた範囲では宮城県仙台市の市内を流れます名取川でそのような問題がございまして、御指摘のとおりでございますが、地域の方々あるいは野鳥の会等の方々の御理解を得るように委員会等を設けまして詰めて、これはぜひ解決を図ってまいりたい、何としても治水対策実施したいという決意でございます。
  225. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 名取川であったならば、名をとらずに実をとるように、よくひとつ努力してちょうだい。  そこで、今度は逆の話になりますけれども、護岸工事等をなさる場合に、やはり第一は何といっても安全ですね。しかし、ともに景観、水質あるいはまた植物ないしは魚族の保護というようなことを考えまして、これらの状況を急速な変化をさせないように配慮しなくてはならぬと思うのですよ。ところが、川をそれこそばかの一つ覚えに全部直線化して、しかもブロックというのでしょうか、セメントで四角に固めてしまうことを考えるのですが、私は川は蛇行しているところもまたよろしいかな、これは決して皮肉を言っているわけじゃありませんよ。そういうことも配慮しませんと、蛇行して緩やかに流れてくるものを直線化して、しかもセメントで固めてしまうものでありますから、もうストレートに急流となってくるという面もあるわけですから、いろいろと御配慮をひとつ、偉い技師さんがいっぱい集まってやっていらっしゃるのでしょうけれどもお願いしたいと思うのですよ。  その一つの中にダム、それは発電ダムもありましょう、ないしは農業用水のダムもありましょう、多目的ダムというものもございます。ところがこのダム等をつくる場合に、魚道を確保するということはとても大事なことではないのかと私は思うのですが、そのような配慮がいささか足りないのではないか、こう思うのです。こういうことについては、いかが配慮していらっしゃいますか。
  226. 山口甚郎

    山口(甚)説明員 御説明いたします。  近年、洪水の被害や渇水が頻発しておりますが、治水目的と合わせまして水資源開発を行います多目的ダムや治水ダムの建設は、これらに対処する上で非常に重要な事業だというふうに考えております。  先生ただいま御指摘の、ダムに魚道をつけられないかというようなお話でございますが、高いダムにおきましては、その構造上魚道をつけることは非常に難しいという状況でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  227. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 いや、私は理解してもしなくてもいいのですが、魚さんにそれこそ聞いてちょうだい。簡単に結論を出さないで工夫をすれば何でもできるものです。川はその川の両岸に住む国民のものです。そして、そこに生きている自然のものです。役所のものではありません。そこのところをひとつ配慮されて、だめだということではなくて十分な工夫をひとつ凝らしていただきたいと思います。
  228. 林大幹

    林委員長 建設省の答弁、よろしゅうございますか。
  229. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 よろしゅうございます。あと国土庁さんになります。建設省さん、御苦労さまでした。  国土庁さんに私はたびたび申し上げているのでありますが、国土計画というのはどんな範囲の広いものか知りませんけれども、そこの中で私は大変不思議に思うことがあります。それは戦後、特にこの十数年間の経済の変動というのでございましょう、その影響によりまして、人口過密な箇所と過疎の箇所が大変激しくなってきました。いよいよもって我々議会の定数等も何倍とかいうことで、いろいろと難しい議論をしているわけであります。しかし、一面からいうと、私は尾瀬沼の地域から出てきましたけれども、尾瀬沼の水を東京、これは東京の周辺の先生方がいらっしゃると大変御迷惑をかけるわけでありますが、いわゆる利根川から持ってこいという議論であります。しかし、これは相ともに過疎過密を定着化し、これを正当なものとし、恒久化するものである、私はこういうふうに思いまして、日本の国として理想の人口の分布はいかなるものであるか。そこで、もはや町村合併三十年、三万都市ということで市に指定したものが二万五千になってしまった市もあれば、百万、二百万都市になって政令都市なんというへ理屈もつけていろいろやっているが、どうにもならぬことでしょう。日本全土に人口をどのように分布するのが最終的な目標であるか、そこのところから逆算したところの国土計画というものが出てこなければならぬと思うのですよ。そういうふうに思いまするときに、この水資源の問題ないしは環境の整備というようなことについて、ひとつもっと高度な基本計画が立たないものか、こう思うのですが、いかがなものですか。
  230. 徳岡康夫

    ○徳岡説明員 お答えいたします。  水資源は上流、下流を通じます河川の水系にかかる地域におきまして広く利用されまして、これら地域の生活や産業活動を支えている貴重な資源でございます。水資源の開発と利用につきましては、それぞれの水系にかかわる地域の生活や産業の動向、地域の発展のあり方などを十分に踏まえまして長期的展望に立ち、また関係機関と十分に調整をいたしまして計画的に進める必要があると考えております。
  231. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 まるで教科書を読むような答弁ですな。  ところで、本当は空気、水、土、光、そういうものの中で動物と植物というのは相ともに助け合って生きるものなんですね。しかし、世界を見ますると、インドなんかは火葬が徹底していますね。そういう宗教です。ところがアメリカなんかでは、例のキリスト教の特にカソリックの方では火葬は絶対にだめだ、だから金も貸そうとしないのですが、それはいいとして、これは本当は土葬がいい、草木の滋養になってきていいのです。それはそれとして、東京周辺は墓園あるいは墓地公園、そしてお墓のアパートなんというのもできて、それでもどうにもならぬというような墓の過密です。いつかテレビで随分と取り上げておりました。人間だけが過密で困っているのじゃない、お骨も過密で困っている、そしてお骨もアパート代が高くて困っているというのであります。しかし、今度は山の中に行きますと、丈なす草の中にいわゆる無縁仏になった滅びた村の仏様がいらっしゃるわけです。そしてそこを、文化庁かどこか知りませんけれども、よく古いお墓なんか発掘なさいましょう。そうすると、実はここは今から千五百年も前に発達した文化を持っておりましたよと、このごろも日曜にそういう講演を承って、仕方なしに拍手をしてきました。  しかし、これは不自然じゃありませんか。さっきの話と同じであります。今、日本の文化の方向は間違っている、これをリードするものは政治であり、その頂点に立つ者は環境庁でなくてはならぬ、こういう気持ちで私は申し上げておるわけであります。災害を人間がつくっておるのです。その災害を復旧するに当たりまして自然保護の原点に立ち返る姿勢が必要だと思うのですが、もう一回その点について、教科書からもう少し離れたノートぐらいのところまで答弁をちょうだいしなくてはいけません。どうぞ、おっしゃってちょうだい。
  232. 徳岡康夫

    ○徳岡説明員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、水資源は地域の生活、産業活動を支える重要な国土資源でございます。この水資源の開発に当たりましては、御指摘のように自然環境の保全に十分配慮することは重要であると考えております。国土庁におきましては、水資源の開発に関しまして、長期水需給計画あるいは水資源開発基本計画あるいは水源地域整備計画等を策定いたしておりまして、これらによりまして関係機関と十分に調整をとり、総合的な観点から自然環境の保全が図られるように努めているところでございます。
  233. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 最初からそう詰めても仕方ありませんからこの程度にしまして、国土庁さん、御苦労さまでした。  文部省さんに見えていただいているわけでありますが、昔から孟母三遷ということがあります。五銭にはならないということでしょうが、それにしても私は、教育委員会ないしは文部省が考えてほしいのは、教育というのはどこでするのが望ましいかということであります。なぜ若き感受性の強い時代、そして健康がどんどん伸びなくてはならない時代に、スモッグと誘惑と犯罪等の東京ないしはそれに準ずる都市部で青春時代を送らなくてはならないのか。そうではなくて、自然の中で子供を育てることが望ましい。孟子が今文部大臣だったら、きっと大学を田舎に移せ、東京大学を初めまず国立の大学を全部都会から田舎に疎開するから、どうぞひとつ民間の私立学校もそうしてちょうだいということを言うと私は思うのです。何か中央大学なんかが田舎に引っ越したようでありますが、いずれにいたしましても大学の疎開、そして自然の豊かな中で、緑と空気の豊かな中で心身を十分に伸ばして教育してほしい、そうすればあの非行とかトラブルはなくなるのではなかろうか、こういうふうに私は思うのであります。そのような計画はお持ちでないのですか、お持ちでなかったならば積極的にこれを立案推進していただきたいと思います。
  234. 木村直

    ○木村説明員 大学の環境といたしましては、文部省の設置基準にもありますように、自然にふさわしい環境というのが理想でありまして、当然その方向で考えていかなければいかぬことだと思います。  ただ、大学の移転関係のことにつきましては、これは自然という立場だけじゃなく、学生の利便とか地域関係、そのほかいろいろなことを総合的に考えていかなければいかぬことだろうと思います。先生の言われますように、当然その中で自然環境を重視することは非常に重要なことだと考えておりますので、そういう方向で国立大学も実施しておるものが相当多いわけです。今後ともそういう方向でいろいろと考えていきたいと思います。
  235. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そういたしますと、これは東大かどうか知りませんけれども、文部省が影響力を持っておる範囲の学校を、少なくともこのスモッグと犯罪と誘惑の都から自然の中に返すという計画は推進されると受け取っていいですか。ここの場合だけ適当に格好いいことを答えてもだめですよ。
  236. 木村直

    ○木村説明員 具体的な移転の計画というのはそれぞれの大学が学生、教官の皆さんが寄っていろいろ総合的に考えていくものですから、文部省自身がどこの大学を具体的にすぐ移転できるとかできないとかいうことにはならないわけですけれども、さっき言いましたように、その中で自然環境を重視して考えていかなければいかぬということは文部省としても当然のことと考えております。
  237. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 最近、何でも大学の自治ということで、大体青年を教えておるのにじじばかりではだめですよ、じじとかばばばかりでは。文部省が積極的に一つの設計図を持って、そして各大学をリードしていくものがなければだめです。大学が御自分でお決めになるのでしょうという姿勢では文部省が何のためにあるのかわからぬ。どうか、教育のことは大事なことですから申し上げておるわけでありますが、誘惑に包囲されておる教育を健康なものに返すために頑張っていただきたいと思います。  委員長、御苦労さまでした。長官、政府委員の皆さん、御苦労さまでした。終わります。
  238. 林大幹

    林委員長 岩佐恵美君。
  239. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 公害健康被害補償法の見直し答申案の問題で伺いたいと思います。  六日の中公審環境保健部会答申案公害指定地域の全面解除、新規認定患者の打ち切りなどの重大な内容であり、公害多発地帯の現状や患者の実態とはおよそかけ離れたもので、本当に怒りを禁じ得ないものであります。  私は、大臣公害患者の実態を一体御存じかどうかというふうに思うのです。私は今月の十四日に、全国でも公害の最もひどい地域一つである川崎市に行ってまいりました。公害患者の皆さんのお話を直接伺い、皆さんから発作がどんなに苦しいかということを口々に訴えられました。七十二歳の男性の方は川崎に五十年住んでおられ、三年前に認定患者となり、今では病気が重くなって、昨年は救急車を四回も呼び、発作が起こると本当に苦しくて、こんなに苦しいのなら死んでもいいと思うほどだと訴えられました。  また、八十一歳のおばあちゃんからは、公害病以外病気知らずだった。それなのに四十九年には十メートルも歩けない体になってしまった。その後二年入院し、退院してまた一年入院、そういう入退院を繰り返して今家にいるけれども、夜中に何度も発作が起きて本当に布団を抱え込んで苦しんでいる。その苦しみをめいごさんが優しく支えてくれて、いつも発作が起こると背中をさすってくれるんだけれども、発作はいつも夜中に起こるので、本当にめいに迷惑をかけて申しわけないという気持ちでいっぱいなんだ。私は何も悪いことをした覚えもないのに、こんな苦しい目になぜ遭わなければならないのかと思うと悔しくて悔しくて、本当にこの被害者の実態というのを知ってほしいということで、おなかの底から絞り出すような切々とした訴えをされて、私も本当に涙ぐんでしまったわけでございます。  今、子供のころから苦しんできた若い患者さんが次々と亡くなっておられます。現地でも一歳の赤ちゃんがぜんそくで苦しんで、真っ赤になってせきをして、本当にかわいそうで見ていられない、そういう訴えもありました。  また、子供さんがお二人おられるお母さんの言葉ですけれども、「子供は三才と五才、子供は二人とも気管支ぜん息で公害認定をうけています。発作が起き始めると、もともとお医者さんの好きでない年令の子供が「お母さん、お医者に行こう。注射して」と自ら進んで治療を求めます。苦しむ子供に「僕の首を切って……」とせがまれた時、親として私は胸がつまりました。」こういうふうに言っておられます。  川崎の資料では、ゼロ歳から十歳の認定患者の方は三二・五%と全体の三分の一を占めています。いたいけなたくさんの子供たちが今公害で苦しんでいるのです。年々公害患者は、東京でも川崎でも先ほどからの論議のようにふえているわけです。しかも、認定患者の数だけで事を判断することはできません。川崎でも患者さんから訴えがあったのですけれども、高校や大学に入って就職時期を迎えると、認定を受けない患者さんがふえるということであります。また仕事を持っている方でも、職場での差別を恐れてやはり認定を受けない方が多いと言われています。潜在患者認定患者の数倍にも上ると言われているわけですけれども、そういう中で新規認定患者は後を絶たないのに、こうした患者さんが放置をされようとしているわけであります。大臣に、こうした公害患者の置かれている苦しい実態、本当に御存じなのかどうか、そのことをまず最初にお伺いをしたいと思います。大臣の政治家としての御答弁を。
  240. 稲村利幸

    稲村国務大臣 患者の苦しみを理解しているかということでございますが、私自身はそういう病気については経験がありません。そういう点について具体的には私自身経験者じゃありませんが、問題の中公審見直しについて先生から今御意見を伺いまして、この中公審のメンバーであるお医者さんやその研究者、そういう人たちが患者さん側からの意見を聴取して、そういう人たちの立場を十分に吸い上げていただいていると私なりに理解をさしていただいております。
  241. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 答申案について具体的に伺ってまいりたいと思います。  今日の大気汚染の実態は依然として深刻であります。このことは環境庁自身の調査でも明らかでありますし、また東京都の八年間にわたる複合大気汚染に係る健康影響調査では、窒素酸化物等の急増によって道路の沿道被害が子供や婦人たちに深刻に出ているということも報告され、これも当委員会で先ほどから指摘をされているところであります。それにもかかわらず公害指定地域を全面解除して、新規患者を全く認めない、まさに血も涙もない、そういうことだということで非常な驚きと、また公害の実態を無視したやり方に私は憤りを覚えるわけです。  こうした実態になぜなったのかということでありますけれども中公審あるいは補償法問題を審議した中公審の保健部会、こうしたところに患者代表が入っていない、業界、財界の代表、そうした業界や財界優先の構成、そういう状況だったからではないかというふうに私たちは思っています。私たちが従前から主張してきたように、なぜ患者代表を加えないのか。まさに今重要な段階を迎えているときに、直接患者の声を反映させる、本当に大事なときにそういうことが実現できていない、この点についてなぜなのかということをお伺いしたいと思います。
  242. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  中公審委員は、いずれも公害対策に関します学識経験者から選任をされているわけでございます。特に大気汚染健康被害に詳しい医師や研究者にも入っていただいておりまして、患者の実態も十分踏まえた審議が行われているものというふうに考えている次第でございます。  特に本年の六月三日には、患者の団体、たしか六名の方が御出席になったのでございますが、中公審環境保健部会におきまして、患者代表から制度の改正について意見聴取を行っているところでございます。また、このほか何回かにわたりまして患者さんの方から申し入れ書をいただいているところでございます。これはいずれも作業小委員会あるいは部会へ提出いたしているのでございます。それからまた、事務当局へも何回か陳情がございまして、その都度、具体的なものにつきましても、作業小委員会を初めといたしまして委員先生方にお伝えをしたわけでございます。また、この十月三日あるいは十月六日の答申案の作成に当たりましても、この辺の細かなものについても患者さん方の要望についてよく先生方にもお伝えいたしました結果、ある程度のものが入ったものもあるわけでございます。
  243. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 患者さんたちはそういう点について、これはもう不十分だということを言っていますし、私どももやはり委員の中に加えるべきだということを主張していることについて幾つか具体的な事例を申し上げたいと思うのですけれども中公審被害者抜きの運営の中で、過去に二回も重大な問題で財界と癒着をして世論の批判を浴びております。  一つは、昭和五十一年度排ガス規制をめぐる癒着で、政府の規制実施についての中公審自動車公害専門委員会審議内容が、国民には秘密にされていながら業界に筒抜けになって、メーカーの提出した資料と判断をうのみにして規制の緩和が決められたということであります。  もう一つは、昭和五十三年の二酸化窒素環境基準、これを従来の基準の二、三倍に緩和するという環境行政上かつてない暴挙が行われましたけれども、そのときに財界から中公審委員研究費という名目でかなりの額のお金が流れ、これも国会で大問題となりました。これらのことは、中公審が公正な立場、被害者の立場を放棄するならばとんでもないことになるということを示しているわけです。  今回も、学識経験者の名目で入っている経団連の岩村英郎環境安全委員会委員長答申案のまとめに先立って、産業界代表して新聞紙上で地域指定全面解除を歓迎する、そういう談話を発表しています。さらに、現在の答申案の基本案をまとめた作業小委員会の構成に至ってはひどいものだというふうに私ども思っています。五十八年に中公審が諮問を受け、二年余りにわたって専門委員会審議され、そろそろ結論が出ようかという時期に委員になったような方が次々と作業小委員に就任をされる。しかも、わずか七名の委員の中には、補償法改悪の審議をしていた臨調第四部会の元会長だとか、雑誌で財界とうり二つの論を展開しているような人も含まれています。これでは財界寄りの結論が出ない方が不思議だと思っています。とても公正な審議が保障されているとは思われません。  例えば、作業小委員会専門委員会報告後に出た東京都の沿道調査について、七ページのところで「東京都における複合大気汚染健康影響調査等新しいものが出てきているが、それらの知見を考慮しても専門委員会報告の結論として示された現時点での大気汚染健康被害、特に慢性閉塞性肺疾患との因果関係評価を変えるものではないと判断される。」こういうふうに一刀両断のもとに切り捨てているわけであります。一体、作業小委員会のメンバーに、東京都の疫学調査の結果を正確に理解し、評価できるような疫学者あるいは公衆衛生学者はいるのでしょうか。
  244. 目黒克己

    目黒政府委員 作業小委員会のメンバーは、いずれも環境保健部会公害対策にかかわる学識経験者の中から選んだ者でございます。この作業小委員会は、専門委員会検討によって得られました科学的知見に基づいて、制度面から公害健康被害補償制度のあり方を検討してきたものでございます。先般来お答え申し上げておりますように、四十二回にわたってこの専門委員会が医学の専門的な見地から報告を出したわけでございまして、その報告をもとにこの制度のあり方を検討してきたものでございます。そのメンバーは、行政、法律等の専門家から構成をされているものでございます。  それから、作業小委員会におきましても環境保健部会におきましても、この専門委員会報告について当然十分審議がなされたわけでございます。この専門委員会委員長からも、十分にこの専門委員会報告について説明を受けておりまして、必要に応じて環境保健部会の疫学の専門家あるいは医学の専門家等の意見も聞きながら御審議を続けていたというふうに私ども理解しているところでございます。
  245. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 医者や疫学者が一人もいないのに、法律や経済、行政学、そういう分野の方々が集まられてどうして大気汚染による健康影響調査について評価を行い得るのか、常識では考えられないということであります。東京都の調査結果については、本年三月二十八日参議院の環境委員会で、東京都の報告書を専門委員会審議の材料に提供する、十分な審議を尽くして拙速な報告を出さない、そういう論議がされているわけです。それにもかかわらずこれを無視して、東京都の報告書が出ないうちに早々と専門委員会報告を出させてしまいました。しかも、疫学の専門家もいないその作業小委員会が、今言ったように東京都の調査を一蹴している。専門委員会鈴木委員長は「公害研究」という雑誌の座談会で「私たちの委員会報告は、環境庁の資料でもって、疫学的判断をせざるをえなかった。これはけっして満足すべきことではありませんが、最近十年間の疫学報告は、官庁によって実施されたものを除きますと、ほとんどないのです。その上、東京都の調査報告も公表されていませんでした。本当に他の人たちの研究資料がほしかったとつくづく思います。」そう述べておられるのです。東京都の八年間にわたる重要な調査結果を専門委員会審議しない、そして疫学者がいない作業小委員会でこうした乱暴な形で切って捨てる、こういうことは絶対に許されないことだと思いますけれども、このことについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  246. 目黒克己

    目黒政府委員 この専門委員会報告の点でございますが、専門委員会報告は、疫学あるいは動物実験、臨床的な知見等々を含めまして総合的に判断し、集約されたものでございます。また、四月の時点で発表いたしたわけでございますが、この専門委員会報告後発表されました主な知見といたしましては、今御指摘東京都衛生局のものがございます。具体的な名前は差し控えさせていただきますが、数人の部会先生がこの東京都の調査にも加わっているわけでございまして、これらの委員先生方の御意見も伺った上で専門委員会報告の結論を変えるものではない、こういうふうに判断をしたわけでございます。したがいまして、御指摘のように専門家不在で行ったということではございませんで、あらゆる形をとらえ、あらゆるチャンスをとらえて専門家の意見を吸収しながら、また専門家御自身の御意見を入れながらこの専門委員会報告はなされ、また現行の、先般出されました答申案が作成されたものと私ども理解をしているところでございます。
  247. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今の専門委員会鈴木委員長の発言というのは「公害研究」十月号に掲載されているわけでございます。委員長が、自分のまとめをするときには東京都のその資料が反映されていないし、それからこういう資料が欲しかったのだということを切々と訴えておられるわけです。その問題について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  248. 目黒克己

    目黒政府委員 この専門委員会報告は、先ほど申し上げましたように鈴木先生も加わりまして、しかも十三人という先生方が、いろいろ個人的には御意見をお持ちの方が四十二回にわたって御審議をいただき、またここにございますように非常にたくさんのデータを入れまして、各種の文献を総ざらいいたしましてこの結論に到達したものでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この専門委員会報告というものは、今の時点での科学的知見を十分踏まえた報告であると理解をいたしているところでございます。
  249. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 本当に矛盾に満ちていると思うのですけれども鈴木委員長は、結局疫学的報告というのは今までなかったのだ、それで東京都なりの他の資料が欲しかったのだ。そういう状況の中で専門委員会の結論が見切り発車的に、資料がないままに出てしまっているわけです。そして、今度作業小委員会では、こうした疫学的なことを判断できない経済学者や法律学者や行政学者、そういう人たちが集まって、こういう東京都の八年間もかかった貴重な資料、鈴木委員長が言われる貴重な資料、そういうものを一刀両断に切り捨ててしまっている。そういう意味ではこのやり方が本当に不明朗だし、また横暴なやり方だというふうに思うのですね。作業小委員会はまた、「大気汚染に対して感受性の高い集団とは、児童老齢者呼吸器疾患患者等ではなく、」と検討対象から除外をしているわけですね。これは公衆衛生の常識では全く考えられないことと専門家から指摘をされています。  鈴木委員長が四月八日に環境保健部会説明されたと思うのですけれども、この部分は一体どう説明されたのでしょうか。
  250. 目黒克己

    目黒政府委員 お答えいたします。  個々の先生の御説明の仕方あるいは御議論の内容等については差し控えさせていただきますけれども、この専門委員会報告の中で、今の留意事項につきましては鈴木先生は、今先生がおっしゃいましたように、非常に特異的なものである、普通の疫学調査では見当たらない非常に見つかりにくいものであって、今後の調査研究が必要である、こういうふうに専門委員会報告で書いてあるとおりの御発言をされたというふうに私は理解をいたしております。
  251. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 鈴木委員長がこんな公衆衛生のイロハを無視をする、そういう発言をされたというのは到底信じられないのですけれども、それならばそのときの議事録をきちんと公開をしてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  252. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、この審議は三年間にわたって御審議をいただいたわけでございます。特に専門委員会あるいは作業小委員会でも大変熱心に各方面の科学的知見あるいは先生方の英知を集めて出した答申案でございますが、この審議の過程ではやはりさまざまな御意見を集約しながら御審議が続けられ現在に至る答申案となったというふうに私ども理解をしているところでございます。また、審議会先生方の御意見でも、この審議の過程、経過あるいはそのいきさつといったようなものにつきましては外へ出さないというような申し合わせもございますので、その議事録の公開等につきましては差し控えさしていただきたい、このように考えておるところでございます。
  253. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 重要な問題でもめているので、私はその点は納得ができません。  さらに、その作業小委員会では、指定地域の全面解除の根拠を専門委員会の最後の部分、「しかしながら、昭和三〇〜四〇年代においては、我が国の一部地域において慢性閉塞性肺疾患について、大気汚染レベルの高い地域有症率の過剰をもって主として大気汚染による影響考え得る状況にあった。これに対し、現在の大気汚染慢性閉塞性肺疾患に対する影響はこれと同様のものとは考えられなかった。」という部分に求めているわけですけれども、この点で鈴木委員長が引用の仕方、理解の仕方について批判意見を出しておられます。見直しの基礎となる報告書をまとめた責任者から反論が出るような答申案、これは余りにも問題があるし、また前代未聞だというふうに思います。しかも、この部分の文章は環境庁の政治的作文であった、そういう指摘があるのですけれども、その点いかがですか。
  254. 目黒克己

    目黒政府委員 お答え申し上げます。  中公審環境保健部会におきましては、先ほど来申し上げましたように、専門委員会報告あるいは作業小委員会報告等を踏まえまして慎重に御審議をいただいたところでございます。先ほど来申し上げておりますように、もちろんそれぞれの先生方は個別の御意見も持っておられるわけでございます。しかしながら、その御意見を集約しながら先ほど来申し上げているような形の報告書として、あるいは答申案として出ているものになったわけでございます。したがいまして、この審議の経過につきましては、十月六日の環境保健部会の後でもお話し申し上げておりますように、若干の異論もあった、しかしながら総体においてこの答申案については皆さん賛成をしておられる、こういう形で私ども受けとめているところでございまして、私どももこの答申案というものはそのようにつくられたものであろうというふうに理解をいたしておるところでございます。
  255. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ここに、先月の十二日に環境庁患者会の皆さんに説明された際のやりとりのテープを起こしたものがあるのです。(資料を示す)それによりますと、大気汚染が今日と三十年代、四十年代と違うという比較検討は本文のどこに書いてあるのか、それもなしに一体この結論はどこから導き出されたのかという患者会の質問に対して、環境庁は本文にないということを認めて、さらにその後ろ側ですね、「ない知恵をしぼって出したのが、最後の結論なんです。」そこで(笑)となっていますけれども、そう言っているのですね。もし専門委員会の方々がまとめたということだったら、こんな「ない知恵をしぼって」、随分失礼な言い方ですよね、そういうことはしないはずだと思うのですね。まさにここに、環境庁自身の作文であったということを自白をしていることだと思うのです。先ほど来から科学的知見とか学問的知見、そういうものの集約だと言いながら、その結論を専門委員会のデータをねじ曲げて財界の意のとおりの政治的作文で導き出す、そして公害患者の皆さんの命綱を断ち切る、まさにそういう点では本当に許せない事態だと思うし、こうしたことについて真相をはっきりさせるべきだというふうに思うのですね。  なぜこういうふうになったのか。最初に指定地域の全面解除という結論があって、その結論に答申を合わせるというような作業がいろいろ行われているから、だから無理やあるいは理不尽なことが起こってきている、そういうふうに思うのですね。そういう点で私は、鈴木委員長のこの点での正確なご意見を伺うべきだと思うのですね。早急に当委員会でぜひ鈴木委員長にご出席をいただいて、あれだけマスコミにも書かれているわけですから御出席をいただいて、その点ははっきりさせていく必要があると思うのですけれども、この点委員長理事会等で御検討いただくようにお願いを申し上げたいと思います。
  256. 林大幹

    林委員長 しかるべき機会の理事会で相談したいと思っております。
  257. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 同時に、作業小委員会及び環境保健部会審議内容についても明らかにしていただく必要があると思うのです。これは先ほどの継続ですけれども環境庁に資料としてこうした審議内容についてぜひ出していただきたいということを要望したいと思うわけですが、先ほどからいろいろと出せないというようなことを言っておりますので、こういうものが出てこないと国会での審議が本当にきちんと行われないというふうに思いますので、これもあわせて委員長お願いをしておきたいというふうに思います。
  258. 林大幹

    林委員長 しかるべき機会の理事懇あるいは理事会で相談いたします。
  259. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今のところ、中公審審議が継続状態にあります。まだ答申案も出ていない、そういう段階でありますけれども、先ほど同僚委員の何人かの質問の中でも、環境庁が経団連だとかあるいは自動車工業会、もちろん企業という言い方をされましたから、そういう方々と折衝をされてこられた、そういうことは伺ったわけでありますけれども、こういう中で公害対策事業基金、これと引きかえに現行指定地域の全面解除の方向で具体的に金額まで提示して動いているわけであります。この環境庁の行動について、国民の命を五百億円で売り渡すのかという批判の声が非常に強く出されているわけであります。これは公正な審議というふうに表面上は言っておられますけれども、結局は財界の意のままに事を運ぼうとする、そういうことではないかということで、患者の皆様方は非常にショックを受けておられ、環境庁に裏切られたという声が非常に強いわけであります。  そういう中で、大変残念なことに「フォーカス」という雑誌で、大臣が財界を代表する方々と一人百万円ずつの会費で励まされる会を催したということが出ていたわけでありますけれども、これが被害者患者の皆さんにはとても大きなショックを与えているわけですね。こういう立場で果たして環境庁患者被害者の立場に立ってもらえるんだろうかということで、いろいろと悩みや、悩みというかそういう訴えが私どものところにも来ているわけですね。そういう点で大臣の御所見を伺いたいというふうに思うわけであります。
  260. 稲村利幸

    稲村国務大臣 財界云々、この間の「フォーカス」のことを言われておると思いますが、あの写真をごらんになってもわかるとおり私はおくれて行きましたときに、既にもう私の後援者の、あれは長い私の当選以来の会です。たまたま財界で江戸さんが入っておられましたが、私の父の旧制水戸高等学校時代からの知り合いで江戸さんがおられたので財界財界と言われているようですが、あとは大体十数年にわたっておられる方で、そのほか私はまだ幾つも後援会を持っておりますので、それは全く次元が違う話だと理解しております。
  261. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 大臣、今こうした公健法をめぐって緊迫した事態、患者さんにとっては命綱とも言えるそういう制度が抜本的に崩されようという事態でありますから、ぜひその点患者の皆さんあるいは被害者の方々、公害がひどい地域の方々の立場に立って行政を進めていっていただきたいというふうに強く要望したいと思います。  先ほど小杉先生からも指摘がされておりましたけれども、首都圏では東京湾横断道路だとか外環道だとか、私の住んでおります三多摩地域では圏央道の計画が今大変大きな問題になっているわけですけれども、こうした道路計画がどんどん進んでいます。また都心の高層ビル化ということも進められて、ますます車がふえる、こういうことも予測をされているわけであります。そういう中で大気汚染はなくなるどころかひどくなる一方で、大臣も御存じだと思いますけれども東京都ではあの二酸化窒素の五十三年規制値の〇・〇六ppmを超える地域が非常にふえているわけですね。東京では、五十八年にはこの〇・〇六ppmを超えた地域幹線道路沿いの測定で六五%、五十九年では七五%、六十年でも七五%。かなり問題がある、かなりというか非常に問題がある〇・〇六ppmですら今達成できない、そういう状況にあります。神奈川でも同じように、五十八年六七%、五十九年八八%、六十年六九%。それから大阪でも、五十八年六八%、五十九年六八%、六十年七三%という状況で、公害はなくなるどころかますますひどくなるという状況をこの数字は端的に示していると思うのです。指定地域の全面解除など本当にとんでもないということをこの数字は私たちに教えていると思うわけです。  そういう点では、私ども従前から主張してまいっておりますように、むしろNOxを指定要件に加えるなど補償法を拡充強化する、それが基本姿勢ではないかと思うわけでありますけれども、最後に大臣の率直な基本姿勢をお伺いしたいと思います。
  262. 稲村利幸

    稲村国務大臣 公健法の見直しに当たっては、制度を合理的かつ公正に運用していくことが大切なことであることは承知しております。いずれにしても、中公審答申を待って、できる限り国民が納得できる適切な方向で対処したいと考えております。
  263. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最後に国民のと言われましたけれども大臣、国民といっても、被害者患者さんの立場に立って環境庁はこのことをしっかりとやっていただきますように重ねてその点強調、要望させていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  264. 林大幹

    林委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会