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1986-10-29 第107回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十九日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 山口 敏夫君    理事 甘利  明君 理事 浦野 烋興君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 中山 利生君 理事 高沢 寅男君    理事 神崎 武法君 理事 永末 英一君       小川  元君    大石 正光君       椎名 素夫君    塩谷 一夫君       竹内 黎一君    武村 正義君       中山 正暉君    村上誠一郎君       森  美秀君    河上 民雄君       鳥居 一雄君    伏屋 修治君       岡崎万寿秀君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 倉成  正君  出席政府委員         外務大臣官房長 北村  汎君         外務省アジア局         長事務代理   渋谷 治彦君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局次         長       池田 廸彦君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     宝珠山 昇君         防衛庁教育訓練         局訓練課長   藤島 正之君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房領         事移住部長   妹尾 正毅君         大蔵省理財局国         有財産審査課長 長谷川正榮君         国税庁直税部審         理室長     諏訪  茂君         文部大臣官房審         議官      青柳  徹君         文部省初等中等         教育局高等学校         課長      小西  亘君         農林水産省経済         局国際部国際協         力課長     高橋  勉君         通商産業省基礎         産業局バイオイ         ンダストリー室         長       岡林 哲夫君         自治省税務局企         画課長     杉原 正純君         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ───────────── 十月二十九日  理事永末英一君同月十七日委員辞任につき、そ  の補欠として永末英一君が理事に当選した。     ───────────── 十月二十八日  非核原則の厳守に関する陳情書(第二七号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 山口敏夫

    山口委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山口敏夫

    山口委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事永末英一君を指名いたします。      ────◇─────
  4. 山口敏夫

    山口委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大石正光君。
  5. 大石正光

    大石(正)委員 私は、このたびの第三十八回衆議院選挙に初当選をいたしました大石正光であります。国政にあずかる議員として、その責務全力を挙げる覚悟でありますが、自民党の外務委員として日本アジア政策について質問をさしていただきます。  去る十月十九日、ソ連カピッツァ外務次官が四日間にわたり日本を訪問されました。彼はインドからの帰国の途中日本に立ち寄ったと聞いております。ソ連がこのような行動をとったことは、ソ連が今後アジア諸国の中でアジアの国家としてそれぞれの外交立場をさらに強力に進めるという意向であると所存するわけであります。我が国世界平和のために、そして世界の貢献のために全力を挙げてまいることはもちろんでありますが、日本中国お互いに相携えてこれからの世界の平和のためにともに協力をしていく必要があると思います。総理は来る十一月八日から中国招きにより訪中をされるわけでありますが、このことを十分踏まえて総理は外国に行かれると思います。私は、日中関係は諸先輩の時代から随分と協議をされてまいりましたが、これらの問題の中で二、三、日中関係に関して御質問をさしていただきたいと思います。  まず最初に、カピッツァ外務次官帰国後、日本書記長来日についてのいろいろな協議をされてまいりました。日本はもちろん北方四島を含めた返還を主張しておりますが、その中において、きょう新聞に出ておりました、ソ連日本大使が一月にゴルバチョフ書記長来日をするという中で、ソロビヨフ大使が十一月の十三日から十四日にモスクワで事務レベル日ソ協議を開くことの中で書記長来日がほぼ決まるだろうという新聞報道がありましたが、大臣にその所見に関して御質問をいたします。
  6. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  大石委員外交政策について極めて深い関心をお持ちになり、これからまたいろいろ日本外交問題について御検討いただく力強い御所見をいただきまして、私も大変うれしく存ずるわけでございます。  今、ソ連ゴルバチョフ書記長来日に関してのお話でございますが、カピッツァ次官が先般日本に参りましていろいろレイキャビクの関係の報告をしたことも事実でございますし、私から再度日本立場を明らかにして、ボールソ連側にあるのでなるべく早く時期を確定するということが大切であるということを申し上げたことも事実でございます。また鹿取大使発言に関して新聞紙上で伝えられておることも聞いておりますけれども、いつゴルバチョフ書記長来日するかということについては、まだ正式の外交ルートを通じては何ら私の方に伝わってきておりません。もちろんいろいろな機会にいろいろな懇談が行われることであろうかと思いますし、また来月の十三、十四日に事務レベル日ソ会議が行われることも事実でございますけれども、いつの時点においてゴルバチョフ書記長来日するかということについては、まだ私の方に正式に何らボールがはね返ってきていないというのが事実でございます。  私といたしましては、先般のニューヨークのシェワルナゼ外相との会談において、ことしじゅうは無理である、しかし日本には来たいという希望を申されましたし、またカピッツァ次官日本に来たいというゴルバチョフ希望については私に対しても強い期待感を述べられました。日本の主張は変わることなく、日本政経分離はしないという基本的な態度は事あるごとに私は伝えておる次第でございます。  以上がありのまま申し上げました現況でございます。
  7. 大石正光

    大石(正)委員 ゴルバチョフ書記長日本に来たいという希望を強く持っていらっしゃることは、今大臣お話しのとおりでありますが、ソ連日本希望しなければ日本に来ないという意向新聞紙上で強く示しているようでありまして、日ソ間におきましても、日本経済関心があるということの中で、日本だけではない、西ドイツやアメリカもそれだけのアプローチをソ連にしているという形での投げ返しの運動があるような気がいたします。  この中で、これらの諸問題をひとつ大きく前進する意味で、中曽根総理中国を訪問するということは日本外交史上の中で非常に大きなかぎを握っていると私は思うわけであります。私は、今回の十一月八日からの中曽根総理訪中に関して、その目的事務当局から御説明をいただきたいと思います。
  8. 渋谷治彦

    渋谷政府委員 中曽根総理は、十一月の八日、九日、胡耀邦氏の招きによりまして日中青年交流センター定礎式出席のため中国を訪問されます。その際に、中国最高指導者たちとの間で国際情勢日中関係等について話し合いが行われることになっております。
  9. 大石正光

    大石(正)委員 その際に、中曽根総理中国側に提案をしておりました青年交流センター定礎式に出るという新聞報道もあるわけでございますが、その真意と、日本中国に対しての二国間の援助の内容を事務的に御説明いただきたいと思います。
  10. 英正道

    英政府委員 お答え申し上げます。  日中の青年交流センターにつきましては、昨日の閣議で三年間にわたりまして百一・一億円の規模で日中の青年交流目的とするいろいろな施設建設無償協力計画を決定いただきました。極めて近い将来に中国側と所定の取り決めを結ぶことになっております。  それから中国に対する経済協力基本方針ということでございますが、これはもう御案内のように、七案件につきまして七カ年で四千七百億円という規模協力を行うということで着実に実施が行われている次第でございます。
  11. 大石正光

    大石(正)委員 ただいまのお話しの中で、日本中国に対して有償無償援助をかなりされているということはお話しのとおりでありますが、その現実と、それがどの程度将来に向かって進んでいくか。その辺、鉄道とか建設という形以外でも、直接、日中友好病院交流センターという形での民間のメンバーでかなり進んでいるわけでありますが、一体、何年先までそれが見通しとして決まっているか、その辺の御説明をいただきたい。
  12. 英正道

    英政府委員 日中関係は今後とも非常に長期にわたりまして緊密な関係を保っていくということで、その中で経済協力というものが重要な役割を果たすであろうということは御案内のとおりでございます。  御案内のとおり、日本経済協力は、無償協力につきましては単年度予算主義でございますので、長期的な計画をつくって供与するという形にはなっていません。今度の青年交流センターの場合には、建設に相当時間がかかりますから、先般の日中友好病院と同じように、これはそういう長期間を要するものということで閣議の決定をいただいて実施しているわけでございます。あとは先方からの要請を待って、無償協力に関しましては、その必要性先方優先順位、それから我が方の協力可能性等を見きわめながら個別に積み上げていく、今そういう形になっております。しかし、規模的には無償協力についてはたしか年間六十億ぐらいの規模で実施されてきておることは御存じのとおりでございます。それから、有償資金協力につきましては、当面先ほどの四千七百億円ということでかなり長期にわたっての意思の一致があるわけでございまして、このラインで行われると了解しております。
  13. 大石正光

    大石(正)委員 そういたしますと、中国からの要望が非常に多いというお話でございますが、その要望の中で、中国もこれからの新しい中国の将来の発展のためにさまざまなプロジェクトの計画をしているように聞いております。その中で中国側としては、金額的に大きな技術協力をいただくと同時に、さらに周辺地域、すなわち僻地に対しての援助協力希望もかなり持っておるようであります。  ただ、総額的にどうしても大きな金額が積み重なってくるために、なかなか末端に対する援助希望がうまく積み上がらないような話を聞いておりますが、その現状はいかがなものでございますか。
  14. 英正道

    英政府委員 無償協力に限って申し上げたいと思いますけれども、私ども、中国側からいろいろな機会に出てきている計画は実に何ページかにわたるリストになっているわけでございます。その中で中国側優先順位をつけて要請してくるということでございますけれども、今先生の仰せられたのは、今後は地方に重点を移していくということはどうであるかという御質問だと思いますけれども、確かに最近長春で水道関係計画浄水場整備計画というのを行いました。大変好評でございました。中国側も今後地方のそういう計画を重視していきたいというような希望を持っておられるように承知しております。現在、具体的に検討しておりますもので、新疆のウイグル自治区に初等教育のための施設をつくるというようなものも検討しております。
  15. 大石正光

    大石(正)委員 私は国会の中で農業問題に対していろいろと努力をして勉強しているわけでありますが、今中国遺伝子野生資源の非常に宝庫だと言われております。今盛んに農林省通産省が新しいバイオという研究をされているわけでありますが、そのバイオ遺伝子の中で中国には相当な数の遺伝子宝庫があると言われております。その辺で、これからの協力をしていく上で、ぜひとも農林省通産省姿勢技術協力経済協力の中にこういう点を取り入れていくことができれば、二十一世紀の食糧問題の中で非常に大きな一つの柱をつくることになるのじゃないかと思いますが、今その現状を踏まえて農林省としてはどのような形で中国に対するバイオ姿勢を示しているのか、事務当局より御説明をいただきたいと思います。
  16. 高橋勉

    高橋説明員 お答えいたします。  今御指摘のように、中国バイオテクノロジーを進める上で、原生遺伝資源等生物資源開発を進める上で非常に重要な国でありまして、植物の遺伝資源宝庫と言われております。特に雲南等におきましては、稲等多くの有用遺伝資源が存在しております。我が農林水産省といたしましては、こういった中国雲南地方の有用な遺伝資源を利用いたしまして、水稲の耐冷、耐病、多収性品種育成等について現在共同研究を進めておるところでございます。
  17. 大石正光

    大石(正)委員 それでは、一方通産省としては、その新しいバイオテクノロジー研究の中での一つ方向をお聞かせいただきたいと思います。
  18. 岡林哲夫

    岡林説明員 通産省といたしましても、バイオテクノロジー重要性は非常に認識しておりまして、私ども、技術開発を中心に振興策を実施しておりますけれども、中国との関係におきましては、中国とのバイオテクノロジー面での協力重要性についても十分認識しておりまして、通産省の積極的な支援のもとに、去る十月十五日から五日間、財団法人発酵工業協会バイオインダストリー振興事業部が開催した東京国際バイオ・フェアにも二名の講師をお招きしておりまして、今後も要請があればこのような協力可能性というのを検討してみたいと思っております。
  19. 大石正光

    大石(正)委員 ただいま、それぞれ農林省通産省からの中国に対する新しいバイオ取り組みというものがあるわけでありますが、やはり無償供与に際しましても、外務省がリーダーとなって中国に対する指導というものをしていかない限り、直接に結びつくことが非常に難しい現状ではないかと判断するわけであります。そういう点に関して、これからの日中間のそういう新しいバイオに対する援助という方向外務省としてはどのように考えていらっしゃるか、その点をぜひとも御指摘をいただきたいと思います。
  20. 英正道

    英政府委員 ただいま農林、通産両省説明員から、我が国としてもこの面における協力大変関心があるという御発言がありました。外務省としても、もちろん経済協力先方側要請を受けて先方自助努力を補完するというのが基本でございますので、あくまでもそういう基礎の上に立ってではございますけれども、今後そういう分野についての先方協力要請が出てくる場合には、積極的に取り組んでまいりたいという考えでございます。特に科学技術協力分野でいろいろな計画がございますけれども、こういう枠内でも積極的に取り組んでいきたいと考えております。
  21. 大石正光

    大石(正)委員 ただいまの御指摘の中で、新しい方向に向かってぜひとも強力に推進していただきたいと思うわけでありますが、中曽根総理訪中される中で、青年交流センターという新しい文化への取り組みというものがあらわれているわけであります。私は、これから新しい中国学生に対する指導というものの中で、新しい教育という面に関しての一つ日本姿勢というものを強力に進める必要があると思います。  そういう意味におきまして、私は数回にわたり北京大学に行ってまいりました中で、学生お互いに憩う場所、学生会館というものが非常に足りないということを強く痛切に感じているわけであります。もしそういう形での将来の展望の中で、直接学生の中に我々日本政府の手が差し伸べられるのであれば、将来の二十一世紀日中間お互い交流の中で大きな足跡を残すことが可能である、そのように強く感じるわけでありますが、その点において文部省並び外務省の中でのそういう新しい援助に対する姿勢方向転換というものをどのように考えられているか、お答えいただきたいと思います。
  22. 英正道

    英政府委員 大石委員指摘のとおり、今後の日中関係を担うものは若い人たちの力であると思います。その青年の間に友好気持ちが生まれるということは非常に重要なことだと考えておりまして、従来からもこの分野につきましては大変積極的な努力を行ってきております。特に文化教育分野での協力重要性というのはよく認識しておるつもりでございます。先ほど触れました日中青年交流センター建設企画も、このような考えに基づく総理の御発意によるものでございます。
  23. 大石正光

    大石(正)委員 今日本は非常な経済発展を遂げておりますし、そして中国に対する新しい、非常に友好的なすばらしい援助のもとに日本の国が発展していくことはもちろんでございます。これからは、今お話しのように日中間においての新しい教育に関する推進と同時に、お互いに心が触れ合うものをもっと強力に進める必要があると思います。周恩来総理の碑というものが日本の京都の嵐山にあるということを常々聞いておりますし、また中国から訪問される多くの皆様方は、その記念碑をぜひとも訪問したいという希望を強く持っております。  しかし、それを訪問しても、その碑というものがどうしても中国側から見れば非常に質素であるという気持ちを持って、期待に対して裏切られた形でかなり多くの中国人が帰っていくことを耳にしておりますときに、日中の友好の輪は、お互いに心を触れ合い、心の中をどのようにあけてすばらしい日中の将来に向かっていくかという大きなかぎを持っていると思います。そういう意味におきまして、日中間における多くの援助だけではなくて日本の中にあるそういうような施設に対してももっと心配りをすることこそが日中の二十一世紀に向かう大きなかぎになると思います。  これからの日中の友情の中で、倉成大臣倉成外交としてのすばらしい展開を進めていらっしゃいますが、その外交の中でぜひともそういう細かい気の配りを進めて、二十一世紀に日中の柱が世界の平和として大きく結ぶような、そういうリーダー的な外交姿勢をこれからもっともっと推進していただくことが世界平和と日本経済、また自由主義社会の安全という中で大きな責務を果たす、私はそのように強く感じるわけであります。その点を十分お含みの上、ぜひとも外務大臣に御所見を賜りたいと思うわけでございます。
  24. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま大石委員指摘のとおり、日本中国両国関係国交正常化以来着実に発展を遂げておりまして、日中間には既に安定的な友好関係が確立されておると信じます。日本中国とが本当に信頼し合い友好的な関係であるということは、日中間のみならずアジアの平和、安定、また世界の平和、安定にも通ずることでもございますから、我々は日中関係を大切にしていくということにおいてこれから最大の努力を払っていかなければならないと思うわけであります。  先ほどから農業の交流あるいは文化交流等についていろいろお話がございました。また経済交流についてもお話がございましたけれども、これらの全般の問題を通じて私どもは日中間友好関係の確立を図ってまいりたいと思います。その際に、今後とも日本が日中の共同声明にうたっております平和友好平等互恵相互信頼長期安定、この四原則を踏まえながら中国近代化協力していくことが大切じゃなかろうかと思うわけでございます。  なお、バイオについていろいろお話がございましたけれども、もう政府委員からお話を申しましたから私から蛇足でございますけれども、御案内のとおり、中国には多くの種子がございますね。未開の地域における種子がございます。そういう種子遺伝子として利用していくという問題もありましょうし、日本の豚について申しますと非常に病気に弱い、しかし非常に悪食と申しますか悪い環境の中で育った豚であれば病気に対する抵抗力も相当強い。銀座のスズメが糖尿病にかかっているというような例えもあるわけでございますけれども、そういう意味抵抗力の強い遺伝子を活用する、そういう意味においてのバイオテクノロジーの活用というものは非常に有意義であると思うわけでございまして、非常に大事な点を御指摘いただいたことに敬意を表したいと思います。
  25. 大石正光

    大石(正)委員 ただいま外務大臣から御答弁があったわけでありますが、持ち時間も終了したわけでございます。御答弁の中で意に満たない点が非常にあるわけでありますが、時間が来ましたので、ここでやめさせていただきます。  どうかこれからの新しい中国に対する経済、そしてまた政治の方向というものをただいま大臣が申したような方向推進をし、これから将来に向かう土台づくりのためにぜひとも心がけていただきたいと心からお願いを申し上げます。  これで大石正光として質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  26. 山口敏夫

    山口委員長 次に、高沢寅男君。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 いろいろお尋ねしたいことがありますが、大変時間が制約されております。したがいまして、大臣にはどうぞ簡潔に、そして私のお聞きすることにまともに答えていただくということをまずお願いをいたしたいと思います。  私、今内外情勢我が国非核原則をめぐって非常に重大な段階に来ているのじゃないか、こんなふうに考えますので、きょうはこのことでまず大臣の見解をお尋ねしたいと思います。  まず、我が国非核原則というものは、世界じゅうにもう一切核兵器がない、こういう時代になればともかく、そうなるまでは当然不変の大原則である、不変国是である、こう考えますが、いかがでしょうか。
  28. 倉成正

    倉成国務大臣 非核原則日本政府のとっておる原則でございます。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 私は不変原則であるということをお尋ねしたわけですけれども、いかがですか。
  30. 倉成正

    倉成国務大臣 不変の、という意味がどういう意味を指しておられるのかわかりませんけれども、日本政府が採用している原則であるということを申し上げている次第でございます。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 日本政府がと言われますが、御承知のとおり、これは国会全会一致で決まった原則であります。したがいまして、日本政府も当然それに拘束される、それを守らなければいかぬ、しかしこれはまた日本国民全体が守らなければいかぬ、そういう非常に大きな、非常に包括的な大原則であります。そうお考えになりますか。
  32. 倉成正

    倉成国務大臣 私が日本政府がと申しましたのは、もちろん国会の決議もこれあり、いろいろ日本国民の感情を踏まえた日本政府立場を含めて申し上げた次第でございます。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 ここに昭和五十七年六月九日、国連軍縮特別総会で当時の鈴木総理が演説をされた、その記録がありますが、この中では鈴木総理は、「我が国は、この憲法の下、軍事大国にならないことを決意し、核兵器については、持たず、造らず、持ち込ませず、という非核原則国是として堅持しております。」こういうふうに国連総会の場で述べられたわけですが、このことは世界各国から、日本がそういう非核原則を持っておるということはもう周知のものとして認められ、また、世界各国からそのことは高く評価されておる、こういう状況だと見てよろしいでしょうか。いかがですか。
  34. 倉成正

    倉成国務大臣 これは各国にも周知をしていただいている原則でございます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、鈴木総理発言の言葉にもありますように、この非核原則我が国の憲法から発する原則である、憲法に基づく原則である、こういうふうに私は理解しますが、そのとおりでよろしいですか。
  36. 倉成正

    倉成国務大臣 我が国の憲法は、御承知のとおり平和を目的とする平和憲法と言われている憲法でございますから、憲法の精神に基づく原則であると申して差し支えないと思います。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、一番最初に申し上げた、そういう憲法に基づくものであるから、つまり不変原則である、こういうふうに私はお尋ねをしたわけですが、いかがでしょうか。もう一度答えてください。
  38. 倉成正

    倉成国務大臣 私が申し上げたことでもう尽きると思いますが、不変のという意味は、ちょっと質問者に御質問申し上げるのは適当でないと思いますけれども、不変のというのは……
  39. 高沢寅男

    高沢委員 もう一度言います。  私は、世界にもう核兵器が一切ない、こういう時代が来れば別に非核原則は必要がなくなる。しかし、そういう時代が来るまでは、それはまだ何年先かわかりませんね。二十一世紀にかかるかもしれません。そういう間において、何か国際情勢なりの変動があったそのたびに、非核原則は今度は適用しなくていいんだとか、非核原則の重みが変わるとか、そういうことはあり得ない、非核原則というものはこの地球上に核兵器が一切なくなる時代が来るまでは我が国国是として厳として貫かれる不変原則である、こういうことをお尋ねしたわけです。そうでしょう。大臣、いかがですか。
  40. 倉成正

    倉成国務大臣 歴代の内閣は非核原則国会の決議を踏まえて尊重し、堅持してまいる、こういう決意でおることは御承知のとおりでございまして、現在におきましてもその方針には変わりはございません。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 将来にわたって変わらない原則である、私が大臣ならそう答えますけれども、ひとつその点は大臣もしっかり腹の中に据えておいていただきたいと思います。  さて、そこでその非核原則ですが、今までこの国会非核原則が論議された主なポイントは、持ち込ませずという原則があるが、実はニュージャージーが入ってきて、あれにはあるじゃないかとかというような意味でいろいろ論議になりましたが、とにかくそれはそれとして、持ち込ませずというこの大原則は、これは当然大臣は将来にわたって堅持しなければいかぬ、こうお考えでしょう。いかがでしょう。
  42. 倉成正

    倉成国務大臣 そのとおりでございます。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、つくらず、この原則も同じように将来にわたって堅持する、こういうことでしょう。いかがでしょう。
  44. 倉成正

    倉成国務大臣 お話しのとおりでございます。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 もう一つありますので、持たず、この原則も将来にわたって堅持するものである。よろしいですか。
  46. 倉成正

    倉成国務大臣 そのとおりでございます。
  47. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、つくらずということの具体的な内容で私はお尋ねしたいのですが、さっき大臣が言われた、日本政府非核原則を守るということでありますから、したがって、日本政府の行為として核兵器をつくるということは断じてあり得ない、これはもううなずいておられますから、間違いありませんね。  もう一つ。私は、非核原則日本国是として日本国民全体を包括する原則である、こう思いますから、したがって、今度、日本人、日本国民あるいは日本の企業等々、こういうものもまた核兵器をつくるようなことがあってはならぬ、つくることに関与することがあってはならぬ、こう思いますが、いかがでしょう。
  48. 倉成正

    倉成国務大臣 核兵器日本がつくらないということは国の政策でございます。
  49. 高沢寅男

    高沢委員 だから、大臣、私にまともに答えてくれと言っているのです。日本政府原則であることはもうわかりました。  今度、日本人、日本国民日本の企業、これも同じようにつくってはならぬ、つくらない、こういう原則だということを、そうですかとお聞きしています。どうですか。
  50. 倉成正

    倉成国務大臣 我が国の主体的意思で核兵器をつくるというようなことはあり得ないと思います。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 それは答えになってないのですよ。我が国の主体的意思という場合には、これは政府であります。日本国民日本人、日本の企業、これもつくってはならぬ、そうでしょう。いかがですか。
  52. 小和田恒

    ○小和田政府委員 大臣がただいまお答え申し上げたことを補足して申し上げますが、大臣がお答えいたしましたのは、非核原則というのは我が国政府が一貫してとっている政策であり、国是とも言うべき政策である、さらにそれを国会において、国会決議等の形において国会の意思としても表明しておられ、政府としてはそれを尊重しておる、こういうことでございます。  したがいまして、それはあくまでも我が国我が国として主体的な意思としてとっておる政策である、こういうことを申し上げているわけでございます。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 小和田局長の補足でも私の質問に答えていない。日本人、日本国民日本の企業、これが核兵器の生産やそれに関与すること。どうですか、小和田局長、じゃ、あなたが答えてください。
  54. 小和田恒

    ○小和田政府委員 私が今お答えいたしましたことからおわかりいただけたかと思いますが、我が国我が国の政策としてとっておる政策ということでございますから、他国の核政策であるとかあるいは他国の核政策に対する我が国の対応であるとかいうようなことについて非核原則そのものが規定しておるということではないというのが政府立場でございます。  他方、実際問題として委員が御指摘になるようなことがあるかということになりますと、これはまた別な問題でございます。私は、非核原則という政策の範囲について申し上げれば今申し上げたようなことであるということを申し上げておるわけでございます。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 あなたが今言った別なこととして、あなたの言われるようなことがあれば別なことだと言いましたが、その別なことの場合は、非核原則に当たるのですか、当たらないのですか、どうですか。
  56. 小和田恒

    ○小和田政府委員 別なことということで申し上げましたのは、例えば我が国は核不拡散条約の当事国になっております。核不拡散条約という国際約束上の義務を我が国が負っておるということがございます。  他方、先ほども申し上げましたように、非核原則そのものは我が国が政策としてとっておることでございますので、それは一つのことであり、例えば核不拡散条約上の義務として出てくるような問題というものはもう一つ別なことである、こういうことを申し上げたわけでございます。
  57. 高沢寅男

    高沢委員 すると、核不拡散条約は、核を保有していない国に対して核保有を援助するとか、その技術を提供するとかいうことはやってはいかぬ、こうなっておりますね。  じゃ、既に核を保有しているアメリカあるいはイギリスやフランス、こういう国の核政策に対して日本国民協力する、参加する、これはいいのですか。非核原則の中でもそれは結構だというのですか、お答えください。
  58. 小和田恒

    ○小和田政府委員 核不拡散条約はいろいろなことを規定しておりますけれども、今高沢委員が御指摘になったこととの関連においては、二つのことを規定しているわけであります。  まず第一条で、「核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないこと」云々、こういうことでございます。第二条におきまして、「締約国である各非核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者からも直接又は間接に受領しないこと、」云々、こういうことを規定しているわけでございます。そういう我が国といたしましては、非核兵器国であるこの核兵器不拡散条約の当事国として一定の国際法上の義務を負っておる、こういうことを申し上げているわけでありまして、高沢委員が御質問になっております我が国の政策としての非核原則とこの問題とは論理的には別な問題である、こういうことを申し上げているわけでございます。
  59. 高沢寅男

    高沢委員 今あなたの説明は、我が国政府としては核に関する情報を他国へ提供するようなことはしてはいかぬ、これは核防条約で、不拡散条約で否定されている、こう言いました。一方、また、非核保有国はそういうものを今度は受けてはならぬ、これも規定されている、こう言いましたね。  受けてはならぬという側で仮に考えれば、例えばパキスタンとかイスラエルとか今核兵器を持ちたがっておると言われておりますが、しかし、それらの国はとにかくそういうものを外国から受けてはならぬ。これはわかる。そして今度は我が国政府の行為としてそういうものを与えてはならぬ、こういう立場にありますが、私がさっきから言っているのは、そういう政府の行為というものと別に、日本国民日本の企業が仮にそういう協力をパキスタンにやる、イスラエルにやるというふうなことが出てきたときに、これは一体核防条約との関係でどうなる、非核原則との関係でどうなる、それは非核原則とは別だということになるのか、これをお尋ねしておるわけです。
  60. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほどからの繰り返しで恐縮でございますが、若干補足して申し上げます。  今高沢委員がお挙げになりました仮定の例で、例えば我が国の企業が核兵器の製造、爆発等に関する技術を他国に渡すことが許されるか、こういうお尋ねでございますが、核兵器不拡散条約第二条によりまして、我が国は非核兵器国として「核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者からも直接又は間接に受領しないこと、核兵器その他の核爆発装置を製造せず又はその他の方法によって取得しないこと及び核兵器その他の核爆発装置の製造についていかなる援助をも求めず又は受けないことを約束する。」こういう国際義務を負っておるわけでございます。国としてこういう国際義務を負っておりますから、我が国に今高沢委員が御指摘になったような核兵器を製造したりあるいは爆発装置を製造したりというような技術というものは存在しないわけでございまして、したがって、そういうことは起こり得ないことであるというふうに考えているわけでございます。  ただ、先ほどもお答えいたしましたように、これはあくまでも核兵器不拡散条約上の問題でございまして、非核原則、すなわち我が国として核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずというこの我が国の政策というものは、これはもう一つ別な問題であるということを申し上げているわけであります。
  61. 高沢寅男

    高沢委員 ここに昭和六十年二月二十五日の衆議院予算委員会、ここで今ここにおられます公明党の神崎委員がSDIに関連しながら質問された。それに対して小和田局長、あなたは、ちょうど今言ったことと同じことを言っていますね。「我が国非核原則を堅持しており、それから核兵器の不拡散の条約の当事国でもございます。したがいまして、我が国には核兵器に関する技術というものはそもそもないわけでございます。」こう答えている。今もまたそういう答えをした。本当にないんですか。私は、この答えようによっては、この前もちょっと言ったが、三百代言と言わなければならぬ。  一体、核兵器をつくる技術というのは何ですか。ウランを濃縮する、これは核兵器をつくる技術でしょう。現に我が国はあの鳥取県でウランの濃縮をやっているじゃないですか。これで核兵器をつくる技術はないと言えますか。いかがですか。
  62. 小和田恒

    ○小和田政府委員 核兵器不拡散条約が対象としておりますのは、高沢委員が御承知のとおり、核兵器その他の核爆発装置でございます。したがいまして、そのことと核エネルギーの平和利用の問題とは一応区別して扱われておりまして、私が先ほど来申し上げておりますのは、核兵器不拡散条約の締約国として我が国核兵器その他の核爆発装置またはその管理について義務を負っておる、こういうことを申し上げているわけでございます。先ほど御答弁いたしましたのもそのコンテクストにおいて申し上げているわけでございます。
  63. 高沢寅男

    高沢委員 これも答えになっていないです。大体アメリカが最初に原爆をつくったのはなぜですか。それはウラニウムの濃縮に成功した。濃縮ウランが一定量できれば装置もくそもない。一定量を合わせれば爆発するんだ。我が国の原子力発電所は日々プルトニウムをつくっていますよ。プルトニウムはウランよりなおさら少ない量で原爆になる。それを一定量まとめて、そして何かの安全装置を外してかちんとぶつかれば爆発するんですよ。装置なんというのはないんだ。プルトニウムとウラニウムがつくれるということは既に核兵器がつくれるということなんだ。その技術は日本にあるんだ。あなたはないという発言を取り消すべきだ。いかがですか。
  64. 小和田恒

    ○小和田政府委員 高沢委員が今御指摘になったことを私が正確に理解したかどうかよくわかりませんが、核兵器不拡散条約上は、先ほども申し上げましたように核兵器その他の核爆発装置とそれ以外の核の平和利用の問題というものは一応区別するという建前ででき上がっておるわけでございます。  ただし、先ほどは申し上げませんでしたけれども、その第三条で、締約国である各非核兵器国は、原子力が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するために一定の義務を負う。具体的に申しますと、国際原子力機関との間で保障措置についての義務を受諾する、こういうことがあるわけでございます。そういうことによって平和利用が核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するという国際的なレジームができ上がっておるわけでございます。  私が先ほど申し上げましたのは、そういう核兵器あるいは核爆発装置というこの核兵器不拡散条約の対象になっておりますような技術というものは、核兵器不拡散条約の当事国である我が国には存在しないであろう、こういうことを申し上げているわけでございます。
  65. 高沢寅男

    高沢委員 私がどう聞いてもその答えしかしないというふうにもう心に決めて出てきているようでありまして、あなたの首に綱をつけて私の求める答えをさせようとしても、この場ではどうも不可能のようです。ただ、私は、非核原則日本政府を拘束するのみならず日本国民日本の企業、すべてにわたって拘束する大原則であるということをここに申し上げて、そのことは今後とも明らかにする決意です。  それでは、もう一つお聞きしますが、ここに昭和五十七年の一月に公明党の草川議員が出した質問主意書に対する政府答弁の資料があります。「非核原則を堅持している我が国が、核兵器の部品又は核兵器の製造のための技術を輸出することは考えられない。」そういうことはしない、こう言っているわけです。  部品または核兵器の製造技術——核兵器の部品というのは何ですか。小和田さん、答えてください。
  66. 小和田恒

    ○小和田政府委員 大変恐縮でございますが、私はその方面の専門家ではございませんので、ここで誤解を招くかもしれないようなお答えをすることは差し控えた方がいいだろうと思います。
  67. 高沢寅男

    高沢委員 わかりました。  私がさっきからしている質問をあなたは現実は知らぬで答えている。知らなくて答えている。製造の技術はありません、ないはずです、じゃ核兵器とはこういうものじゃないか、部品とは何だと聞いたら、それは私は専門じゃありませんから知りません。要するに、あなたは知らずに答えている。この国会委員会というものをそういう適当なはぐらかしで、時間さえ過ごせばいいというようなことで審議に臨んだら大変なことですよ。  具体的に言いましょう。ICBMとかの弾道ミサイルは明らかに核兵器です。この弾道ミサイルは今はいわゆる多弾頭、たくさんの弾頭をつけて、それが空中で破裂したら各弾頭がそれぞれの目標に向かって飛んでいく、こうなっていますね。そういう各弾頭を誘導するものは何ですか。最高度のハイテクノロジー、電子技術じゃないですか。その電子技術というのは核兵器の部品ですよ。こういうものが、これから、これは核兵器とは関係ございませんといってどんどん我が国からアメリカへ出る。今そういう技術協力をやろうとアメリカは来ている、日本はやろうと言っておる。これは核兵器の部品の輸出じゃありませんか、いかがですか。
  68. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど申し上げましたように、具体的な技術的なことにわたりますと、私はその道の専門家ではございませんので私がお答え申し上げることは適当ではないと考えておりますけれども、私が先ほど来申し上げておりますのは、条約の枠組み、それから非核原則という政府の政策についての枠組みの問題として申し上げているわけでございます。  そういう見地から申し上げますならば、ただいま高沢委員が御指摘になりましたようないろいろな附属品あるいは核兵器に関連して使われるような部品というものがすべて核兵器の部品であるというのが政府考え方ではないと承知しております。つまり、核兵器の定義の問題と関連してくるわけでございますけれども、核兵器とは何かということの関連においてその本質的な部分をなしているようなものということであるのか、あるいはそうではなくて、核兵器そのものに必ずしも固有ではなくて一般的に使われるようなものであるのかというようなことを基準にして考える必要があるのではないだろうかと考えております。
  69. 高沢寅男

    高沢委員 もう一度言いますが、ICBMの弾頭を目標に飛ばす、それを誘導する。これは大臣も科学技術を勉強されているからおわかりでしょう。これは最高度の、例えば光ファイバーとか超々短波のミリ波であるとか超LSI、非常に計算速度の速いICであるとかというもので初めて目標に誘導できる。これがなければ核弾頭というのはもう意味がない。どこに飛んで行くかわからない。つまりその意味では、こういう超近代的なエレクトロニクスは核兵器のもう心臓部であり、核兵器の頭脳である。これがなければ核兵器は成り立たない。それが今、そのものを今度はアメリカが日本から買いましょう、日本は輸出しましょう、これは非核原則との関係で絶対にあってはならぬことだと思うがどうだ、こう聞くと、条約上の問題とは違います。あなた、そんなような条約上の解釈ではなくて、現実に起きておる、これがまさに明らかに非核原則に違反する事態になっておる、このことを私は聞いているのです。  大臣、今のやりとりでかなりおわかりでしょう。大臣の見解を聞かせてください。
  70. 倉成正

    倉成国務大臣 今高沢委員がおっしゃることの意味がようやく私もわかってまいりました。部品をどこまでの範囲で考えるかということになると、これは非常に難しい問題であります。例えば、今高沢委員お話を非常に極端な表現まで広げてまいりますと、原子力発電所にいろいろ建築物をつくったりあるいは原子力発電所でいろいろ使うもの、そういうものまでやはり核兵器関係があるといえばあるということになるわけでありますから、それは絶対にだめだということになるわけですね。これは非常に極端な議論で、そういうことをおっしゃっておるとは思いません。しかし、御案内のとおり汎用技術と軍事技術との区別は非常に難しい問題でございまして、今コンピューターのお話がございました。確かにクレイのコンピューターが十年くらい前までは世界で最高の水準の高速コンピューターであったわけですけれども、現在は日本でもクレイのコンピューターをはるかに追い越す速度の速いコンピューターが開発されつつありますし、第五世代のコンピューターも世界の注目を浴びているわけでございます。まさに電子技術、エレクトロニクスというものが汎用技術として日本の産業を支えていることも御承知のとおりでございます。  したがって、汎用技術の輸出について、また汎用技術の交流について全然これができないということは、それが核兵器関係する、高沢委員がそれが中心部であるからというふうに断定されて、そしてこれが輸出も何も全然できないというところまでいくということになると、それは議論が少々混乱してくるんじゃなかろうかと私は思うわけでありまして、そういう非核原則の精神と申しますか、憲法の精神というものはあくまで尊重していかなきゃならないけれども、汎用技術の問題のすべてにわたってそれはもう絶対にだめだ、何かそれが軍事技術に応用される場合があればだめだというところまで絶対にこの場で言わなければ日本がおかしいのだという議論は、私としては賛成するわけにはまいりません。
  71. 高沢寅男

    高沢委員 大臣御承知のとおり、今は産業技術も科学技術もますます国際化の時代です。本当に国際化が日進月歩。そういう中で日本の科学者、日本の技術者が例えばアメリカとの関係やその他の関係でそういう研究協力をして、もちろんその主観的意図はそのつもりでなくても、結果としてそれが核戦略のものに役立てられたというふうなことが、これは後でわかって大変ということもあり得ないとは言えない。だから、私はさっきから、日本人、日本国民日本の企業の非核原則を守る、この立場を確認しているのですが、どうしてもあなたははぐらかして答えない。しかし、今後やりますよ。  しかし、今現に問題になっているのは、神崎委員もお尋ねしたSDIの関係なんです。それでお尋ねしたのです。SDIの関係で今のような超高々度の科学技術が日本から出て、アメリカはそれをSDIに使うということで今日本協力を求めているということになれば、これはもう明らかにSDIの核戦略部分に触れてくるということになるんじゃないか、こういうことで私はお尋ねしているわけですよ。大臣、いかがですか。
  72. 倉成正

    倉成国務大臣 まさに技術というものがもろ刃の剣であり、それがなければ進歩というものはあり得ないし、また技術の進歩が人類の幸せに貢献していることも高沢委員は十分御承知のことであろうかと思います。しかし、これがもし間違って悪い方に使われるということになると、ちょうど原子力がそうでありますように、エネルギーとしてこれにはいろいろ議論があるところでございますけれども、いずれにしましても日本のエネルギーの相当部分を原子力発電が占めておる、これには賛否両論あることも承知しておりますが、エネルギーとして使われておる。その限りにおいては平和目的に使われておると私は思う。  しかし、仮に原子力が核兵器という形で利用されるということになれば、これは人類を破滅に陥らせるようなものになるわけでございますから、いわば技術というものはそのような宿命を持ったものである。これをコントロールするのがいわゆる人類の英知であり、そして我々が二十世紀に生き、また二十一世紀に文明を伝えていく我々の任務であると考えておるわけでございまして、私も長崎の出身、原爆の被爆地の出身でございますから、その間のことはよく承知しておるつもりでございます。  しかし、汎用技術と軍事技術を区別するということは非常に難しい問題でありまして、それを何というか、確実にこういうことが軍事技術に活用できるから絶対にできないんだというふうに断定することには賛成いたしかねるということを申しておるわけでございまして、まさにこのことをどうやってコントロールしていくかということがこれからの人類の英知の問題であり、政治の課題であろうかと私は思うのでございます。
  73. 高沢寅男

    高沢委員 もう時間ですから次のテーマへ移りますが、ただ、この関係で言っておけば、非核原則国会全会一致、ということは日本国民の意思の結集としてつくられた国是であります。この国是は、日本の内であろうと外であろうと、それこそまさに全世界にわたってこの日本非核原則というものは、少なくとも日本政府あるいは日本国民に関しては守らなければならぬ大原則、私はこう思います。ただ、最近、行政府立場から、例えば日本の領域の外なら別だというふうな言い方とか、あるいは今のようなそういう汎用技術というものは結果としてどうなるかわけがわからぬからというような言い方とか、いろいろこの非核原則を穴をあける、あるいは非核原則の解釈をそれこそ都合よく曲げていくというふうな動きがあることはまことに私は遺憾であり、これは重大な問題だと思います。  その意味においては、これは委員長お願いします。この国会中、この問題、やはり中曽根総理においでいただいて、また中曽根総理の最高の判断という立場非核原則はどうあるのが正しいかというようなこともこの外務委員会で質問をさせていただきたいということを私は思いますので、この点はひとつ委員長に御努力お願いをしたいと思います。  次のテーマへ移りますが、いわゆる中曽根総理の人権発言ということに関連して、日本は単一の民族国家である、こういう立場国連に対して人権問題報告書を出されておる。今度はその報告書を十月に出すのが半年ぐらい時期がずれておくれて出す。その間に今の単一民族論について何か再検討するというようなことも新聞報道では伝えられておりますが、この辺はどういう対応をされるのか、お尋ねしたいと思います。
  74. 中平立

    ○中平政府委員 委員御存じのように、市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約というものがございますが、その第四十条におきまして、締約国は報告書を出すということが義務づけられておるわけでございます。  ことしの十月末に、実は先回の第一回の報告書から五年たちますので、一応十月末ということになっておったわけでございます。ところが、実はB規約人権委員会に提出されております諸外国からの報告書が非常にたまっておりまして、そういう意味で審議が必ずしも十分予想どおりに行われてないという事情がございまして、国連事務局の方から、今十月末に出してもらってもいいけれども、それだけたまっているので実はアップ・ツー・デートというか、もっと最新の報告書を出してもらった方が望ましいのではないかというふうな感触も伝わってまいりましたので、我々としては、それなら今あわてて出すというよりも、そういう国連の都合に合わせて出した方がいいのではないか、こういう考えをしておりまして、最終的にいつこの報告書を出すかということは決定しておりません。  しかしながら、今先生御指摘のように、かつ新聞に出ておりましたように、その内容を再検討するというために延ばしたということは全くございません。
  75. 高沢寅男

    高沢委員 私は、今盛んに論議されておりますように、日本にはアイヌという存在もあり、在日朝鮮人や在日中国人の問題もあり、こういう単一民族国家論というのはむしろ再検討すべきだ、こう思いますが、今外務省としてはその考えはないというお答えがあったわけですが、これは私はそういう意見として留保いたします。  それに関連して、文部省お見えになっていますね。最近アイヌの非常にいろいろな訴えが出ています。学校教育の場で先生がアイヌに対する非常に差別的な発言をしたケースであるとか、あるいは出版社で出しておる漫画本とかそういうものにいかにもアイヌというものを差別的、軽べつ的に扱ったような内容があるとか、こういうことについて文部省としてはどういう規制なり対応をされる考えか、お尋ねしたいと思います。両方からどうぞ説明してください。
  76. 小西亘

    ○小西説明員 先生今御指摘のように、昭和五十五年に北海道の道立高等学校で行われました差別授業の問題は極めて遺憾なことであるというように考えております。  学校教育におきましては基本的人権の尊重ということが非常に重要でございまして、児童生徒の発達段階に即し各教科、道徳あるいはまた特別活動など学校教育全体の中で基本的人権の尊重の涵養ということに努めているところでございます。今後ともこの基本的人権の尊重の教育というのは一層大切に扱っていかなければいけない、強く指導していかなければいけない、このように考えているところでございます。
  77. 青柳徹

    ○青柳説明員 さ・え・ら書房発行の「日本のんびり旅行」という本のことかと思いますが、この本の問題につきましては、問題の箇所についてアイヌの方々のお気持ちをおもんぱかりますと適切でないというふうに思われる記述がございます。  これに対します私どもの対応でございますが、一般論といたしましては、出版物の内容について国が積極的な働きかけを行うということは表現の自由とのかかわりもございまして難しい問題でございます。著者ないしは出版社の自覚にまつというのが第一義かと思いますが、なお実情を十分調査いたしましてどのような対応がとり得るか、適切な対応がどのようなものか検討してみたいと思っております。  なお、先ほども学校教育について申し上げましたが、社会教育の部面におきましても、国民の人権問題に対しましての関心を一層高め、このための学習活動をいろいろな機会に広げていきたいというふうに考えております。
  78. 高沢寅男

    高沢委員 これ以上文部省にお尋ねはしませんが、ただ要望としては、そういうアイヌの問題あり、また特に在日朝鮮人、在日中国人の問題あり。それから、日本人の中には例えば一般に外国人を呼ぶ呼び方を我々だけの仲間内だと、毛唐が何々した、こういう言い方をしたりあるいは黒人を呼ぶのにクロンボとかいう呼び方をしたりとか、そういう意味における外国人に対する非常に何かコンプレックス的な変な意識があることは認めざるを得ないと思う。そういうものはこれを是正していかなければいかぬわけです。ですから、その意味でいやしくも学校教育なり社会教育なりあるいは出版活動なり、こういうような面においてそういうことは厳に規制をしていくという立場が必要だと思いますので、この点は一層文部省にも今後の御努力お願いしたい、こう思います。  もう一つ、今度は東京における外国の公館のあり方ということについてお尋ねをしたいと思うのです。  外交関係に関するウィーン条約の第二十一条で「接受国」つまり外国の公館を受け入れる我が方、日本ですね。「接受国は、派遣国が自国の使節団のために必要な公館を接受国の法令に従つて接受国の領域内で取得することを容易にし、又は派遣国が取得以外の方法で施設を入手することを助けなければならない。」ここで「取得することを容易に」する、それからまた「取得以外の方法で施設を入手することを助け」る、こういうふうな表現がありますが、これは具体的には外国の大使館などが日本で土地を得てその上に大使館を建てる、こういうことを助けなければいけない、あるいはまた土地を買うことができないにしても、例えば借地権とか等々、あるいはどこかのマンションの一室を借りるとか等々の形で大使館活動ができるように、そういうことを助けなければいけない、こういう意味だと思いますが、この辺の外務省の対応される実態がどうなっているか、お尋ねしたいと思います。
  79. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員指摘のウィーン条約の条項がございまして、事実私どももときどき新しく東京に大使館を置いたりあるいは借りかえたりするような場合に相談を受けて、そして我々としてときどきそういう要望に対してできるだけ御助力するということはやっております。例えば、余り今まで東京に関係のなかった新しいアフリカの国の大使館ができるようなときには、例えば不動産協会のようなところを紹介したようなこともございます。
  80. 高沢寅男

    高沢委員 そういう場合に、日本の国有地をあっせんするといいますか、そういうケースもあるんですか。今までにずっと多くの大使館ができてきておりますが、そういうケースがあるのかどうか、いかがですか。これは大蔵省理財局、来ていますね。
  81. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  古いところの記録はちょっと調べられなかったのですけれども、在京の外国公館に対しまして、戦後ですが、これは二十六年以降、売り払いしたものは十件、八カ国ございます。
  82. 高沢寅男

    高沢委員 それは国有地ですか。
  83. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 はい。
  84. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、仮に、今幾つかの国の大使館の売却の話などが出ていますので、それは直接そうかどうかは別として、国有地を提供した、その場合は有償無償か、どのぐらいの土地代金を取っているのかというふうなことも後でお尋ねしたいと思いますが、そうしてできた外国の大使館が、ある時期が来て、今度は非常に高い値でそれを売って、そしてまたやはり別な大使館をつくらなければいかぬから、また国有地をあっせんしてくれというようなことにもしなってくるとしたら、こういうケースは今まであったかどうか知りませんが、一体どんなふうに対応されますか。
  85. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  大部分の先ほどのような売り払いのケースというのは、貸し付けていたところをその在外公館の国というか、外国公館に売り払いしたケースであります。  それで、先生が御指摘になりましたようなケースは今までございませんし、今後につきましても、貸し付け中の国有地というのは件数が非常に少ないので、処分をする際に、まだこれは具体的に話は聞いておりませんけれども、そういうことのないような処分の仕方ができますので、そのようなことにはならないと考えております。
  86. 高沢寅男

    高沢委員 何だかちょっと今のあなたの説明が、処分する場合はそういうことにならないようにとか、何かこう、よく中身のわからぬ説明ですが、もう一度具体例で言ってみてください、今のあなたの説明
  87. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  具体的な話を今聞いておるわけではございませんけれども、今までの処分の中では用途指定というのがございますけれども、譲渡禁止を条件といたしましたり、外国公館として使うということで処分しております。
  88. 高沢寅男

    高沢委員 それが売却されて、そして、またひとつ国有地を頼みます、こういうふうに来たケースというのはありますか、ありませんか。
  89. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 そのような話は聞いておりません。
  90. 高沢寅男

    高沢委員 今度は逆に、我が国の大使館が諸外国にあるわけですね。その場合の、我が国の大使館が、例えばアメリカやフランスやそういういわゆる自由主義諸国にあるケース、そういう場合には、その国における土地の取得まで含めて、我が国の大使館は日本の国有財産としてあるのか。それからまた、今度は、例えばソ連のような国、あの国は土地国有ですから、日本の大使館にソ連のモスクワの土地を売ってくれ、売りましょうということは恐らくないだろうと思います。そういういわゆる社会主義の国では、我が国の大使館の設定の仕方はどういう条件でしているのか、その辺を説明してください。
  91. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 私どもは、委員よく御承知のように、できるだけ我々の大使館の事務所、公邸は国有化したいという方針を持っておるわけでございますが、国によりまして、例えば今委員指摘の社会主義国におきましては、これは土地の取得というものは許さないわけでございます。また、旧英連邦諸国ですね、イギリスなど、こういう国はもう法制上の制約がございまして、長期の期限つき借地権は購入できるのですが、その土地を国有化するということ、これはできないわけでございます。しかし、それ以外の国、アメリカなど、これでは、我が方は土地所有権を収得して、そこに事務所をつくったり公邸をつくったりしておるわけでございます。
  92. 高沢寅男

    高沢委員 先ほど大蔵省理財局からは、我が国は、国有地を出して、そしてできた外国の公館が、それを売って、また別に、こういうケースはない、こういうお話がありましたが、今マスコミで盛んに言われている、例えばフィリピンのケースとかあるいはカンボジアのケースとか、これは日本の国有地を取得してというケースではない、こう見ていいですね。いかがでしょうか。
  93. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 二件とも詳しい話はよくわかりませんけれども、カンボジアについては国有地を処分したものでないと考えております。
  94. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、これはきょうはもう時間がありませんのですべてをお尋ねできませんが、そういう東京にある外国の大使館などの、土地の所有権を持っている大使館、それから借地権の大使館あるいは部屋を借りている大使館というふうな関係の一覧表のようなものを、これは今後とも大変関連がありますから、資料としてお願いをしたい、こう思います。これは後ほどで結構です。  それから、今の売却話に関連して財テク、これで大いに金を稼ぐんだ、非常に土地の値の出た場所にある大使館がこれを売って、どのくらいのあれか知りませんが、べらぼうな利益を上げるというふうな話が伝えられておりますが、こういう売買が現実に行われたとき、これは我が国の国税はどうなるのか、地方税はどうなるのか、それは外交特権だから、そういうものには一切税金はかからないということになるのか、この辺を国税、地方税の両面で説明を願いたいと思います。
  95. 諏訪茂

    ○諏訪説明員 国税庁の執行当局から申し上げます。  一般論として申し上げますと、外国政府我が国において収得する所得のうち、通常の政府機能の範疇に含まれる行為に基づく所得につきましては、相互主義を前提とします国際礼譲の建前から、これを免税としておるわけでございまして、これは私ども主権免税と言っております。  御質問の、在京の外交公館の土地、建物の譲渡に関する所得でございますけれども、これにつきまして、今申し上げましたいわゆる主権免税の取り扱いをするかどうかにつきましては、相互主義の前提が満たされているかどうか、そういった事実関係を把握した上で判断をしたいというふうに考えております。
  96. 杉原正純

    ○杉原説明員 地方税につきましても、法人住民税等の関係があるいは出てくるかと思いますけれども、課税所得のとらえ方が国税と同じように扱っておりますものですから、国税の扱いに準じた扱いになろうと思っております。
  97. 高沢寅男

    高沢委員 私は、今マスコミで言われているようなケースはまさに相互主義に該当するものではない、こう思います。そういう点においては、まだ売買が実際行われていないので、今、だろう、だろうで盛んにマスコミが書いていますが、そういう売買が実際に行われた段階では、これはやはり税務当局としてはこれに厳正に臨まれるのが正しい、こんなふうに考えます。  それからもう一つ、今度はこういうケースが伝えられますね。ある大使館は、高層のビルをつくって、そのビルの一階、二階は大使館で使って、あと上の方はマンションに貸すとか貸し事務所にしてうんと稼ぐ、こんな話がありますが、こういう場合の稼ぎというのは外交特権で課税の外になるのかどうか、この点はどうですか。
  98. 諏訪茂

    ○諏訪説明員 今、先生の申されましたことは私どもは新聞報道でしか把握しておりませんけれども、一般論で申し上げますと、先ほど申し上げました主権免税の扱いをするかどうかというのは事実関係の把握にかかってくるのだろうと思います。そういう意味で、今申し上げましたケースは、事実関係を把握した上で主権免税の扱いをするのかどうかという判断をすることになろうかと思います。
  99. 高沢寅男

    高沢委員 そういうケースが本当に起きたら主権免税になるかどうかを検討する、こういう税務当局のあれですが、むしろ外務省当局は事前に、そういうおかしなケースにならないように——何といっても外交特権という枠の中で外国の公館が設置されているわけですから、今日本ではやりの、土地が上がったから、さあ、売ってもうけましょうとかいうような財テクまがいのことを外国の公館がされることは好ましくないという点においては、そういうことのないような、いろいろ国家、国家の主権関係がありましょうが、十分な対応をされることが必要ではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  100. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 現在、そういう具体的なケースとしてうわさを聞いたり、計画の概略をちょっと説明を受けたようなことはございますが、一般論として申しますと、外国の公館といえども日本の国内法を遵守しなければならぬ、これは申すまでもないことでございます。  そこで、外国の公館が持っておる土地をどういうふうに使用するかという問題それ自体は、一義的にはその外国の決定するところでございます。しかし、今おっしゃったような、これは一般論ですけれども、一部を大使館のあれにして一部を例えば賃貸にする、これは建設費用を工面しなければならぬとか、その国のいろいろな事情があるのかもしれません。しかし、とにかくそういうような形態のものが仮にできた場合は——ウィーン条約二十三条に基づいて免税される対象になるのはあくまでも大使館でございます。大使館活動をやる事務所であり、公邸であるわけでございます。ですから、それに関係のない賃貸されるような部分とそういうものははっきりと明確に区別して登記されなければなりませんし、またそれは税金の対象になる、これは当然そういうことになろうと思います。
  101. 高沢寅男

    高沢委員 もう時間がありませんので最後になりますが、大蔵省の理財局にもう一度お尋ねします。  フィリピン大使館は、戦後日本の対フィリピンの賠償という枠の中で国有地を提供した、そこにできてきた、そういう公館ではないのですか。いかがですか。
  102. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 私どもの記録でも、確かに港区六本木の土地につきましてはそうなっております。
  103. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、これは日本の国有地提供ですね。賠償だからもちろん無償で提供したのでしょう。それが今度は売却されるということになる。しかし、売却したってどこかに大使館が必要ですから、今度はこちらの方へ大使館をつくりたいが頼むというふうな話に当然なるのでしょうが、そういうときに大蔵省理財局はそもそもそういう売却を認めるのですか。いかがですか。
  104. 長谷川正榮

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  私どもまだ具体的に聞いておりませんので、答えが出ているわけではございませんが、先ほど申し上げましたように、処分の際の条件というのが、この場合におきましては賠償として処理されておるものですから、通常私どもが国内の国有地を処理するのと多少違っておるのではないかと思っております。具体的なケースになってきたときにはまた検討させていただくことになると思います。
  105. 高沢寅男

    高沢委員 私は、賠償と国有地の売却とは確かに性格が違うと思いますが、それにしても賠償であるだけに当然無償で提供した、そういう土地が今度は財テクのための材料にされる、そのかわりこっちにまた大使館が欲しいからこっちを頼む、これは私はどうも成り立たぬ議論ではないか、こう思うのです。  この話は、かつてマルコス時代にそういう話が出たと伝えられて、アキノ政権はそれはだめだと言った。最近になったら今度はアキノ政権もその売却をしたいと言っているやにマスコミでは伝えられているというふうなことでありますが、北村さん、フィリピンの六本木の大使館については賠償で提供した土地であるという性格も前提になるとすれば、そういう売却話に対して、外交活動の枠を超えることのないような十分な話し合いをなさるべきではないかと思いますが、いかがでしょう。賠償で出したということは我々の財産が無償で提供されているわけですから。
  106. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 私どもとしましては、現在フィリピン政府から本邦にある同国有地について売却ないしは貸与する意向はないという連絡を受けておるわけでございまして、その後、本件土地の売却問題については、うわさもあったりいろいろなことは聞くわけでございますけれども、そういう委員指摘の事情ということもいろいろございますので、この問題については我々としても極めて慎重な検討をしなければならぬと思いますけれども、いろいろ議論もございますので、今の時点ではこれ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  107. 高沢寅男

    高沢委員 今の点、いろいろデリケートな問題もあろうと思うし、さりとてお互い外交活動というものの一番土台の話でありますから、きょうはここまでにしておいて、いずれまた改めて論議する機会もあろうかと思います。  それでは、時間が参りましたので、終わります。
  108. 山口敏夫

    山口委員長 次に、伏屋修治君。
  109. 伏屋修治

    ○伏屋委員 まず最初に、本年四月にロンドンで発生しましたイスラエル航空機爆破未遂事件に関連しまして、イギリスがシリアと断交しました。そして、アメリカ、カナダがこれを支持して、シリア大使の引き揚げ、召還を決めた、こういうことがあったわけでございます。そして、二十七日に波多野外務報道官が談話を発表しております。その内容としましては、テロリズムに対する非難、こういう談話を発表しておるわけでございます。それ以上の外交措置につきましては、二十七、二十八日のルクセンブルクで開かれますEC外相理事会の結論を待って外交措置を講ずる、こういうような報道があるわけでございます。  五月の東京サミットにおきましては、国際テロリズムに関する声明の採択に関しまして積極的な役割を果たしてきましたが、同時にまた、イラン・イラク和平の環境づくりという意味で独自の対中東外交を展開してきたわけでございます。このシリア制裁をめぐって、日本は今、西側の一員としての立場を強めるのか、また独自の対中東外交路線というものを維持するのか、こういう分岐点に立たされているのではないか、このように考えるわけでございますが、この波多野報道官の声明、またルクセンブルクのEC外相理事会における結論をどのように予測され、そして外交措置をどういうふうに考えようとしておられるのか、その辺の見解をお伺いしたいと思います。
  110. 倉成正

    倉成国務大臣 まず第一に、事実関係から申し上げますけれども、波多野報道官の談話というのは発表いたしておりませんので、それは何かのお間違いではなかろうかと思います。  第二の問題でございますけれども、今般のエルアル航空機爆破未遂事件の被告人ヒンダウィに対し出された判決及び英、米、加等の各国のとった措置については、国際テロ撲滅の観点から、我が国としても強い関心を有しております。我が国は、従来より、理由のいかんを問わず、いかなる形の国際テロにも断固反対するとの基本立場をとっておる次第でございます。我が国としては、今後とも国際社会全体の問題としてこれらテロ防止の国際協力を積極的に推進してまいる所存でございまして、本件についてもかかる観点から対応ぶりを検討いたしているところでございます。
  111. 伏屋修治

    ○伏屋委員 外務大臣としましては、ルクセンブルクにおける外相理事会の予測される結論というものについてはどのようなお考えを持っておられますか。
  112. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 お答え申し上げます。  EC外相理事会の結果については既に御承知のことと思いますが、大分議論をいたしまして、議長を務めておりましたハウ・イギリス外相が記者会見をして発表しておりますが、そこでは、例えば文書は発表されておりませんで、いろいろ議論をして意見が一致した点もあるけれども、最終的には十一月十日にもう一回外相レベルで集まって協議するということでございます。一般に言われておりますのは、イギリスとしてははっきりとした形でのシリア批判という結論を得たかったけれども、今度の会議ではそこまでいかなかった。いずれにしましても、EC各国がシリア政府と話をしたりいたしまして、そういう結論を持ち寄って十一月十日にもう一回やろうということでございます。  この間、アメリカのテロ担当の大使もヨーロッパに行っておりますし、いろいろな動きもありますので、私どもといたしましては、その辺のところ、できるだけ情報を集めまして、日本としてどう対応していったらいいかということを検討していく必要があるというふうに考えているわけでございます。
  113. 伏屋修治

    ○伏屋委員 先ほど大臣のお答えがございましたけれども、やはりテロに対する国際的なそういう非難、そういうものに対しての日本というものの考え方はわかりましたけれども、また一方、日本は資源を中近東に求める国であるだけに、やはり中東外交というものは非常に重要視してまいらなければならない、こういうことでございますが、その点、もう一度確認の意味大臣のお答えをいただきたいと思います。
  114. 倉成正

    倉成国務大臣 国際テロに関するいかなるテロに対しても断固として反対するという我が国姿勢は、東京サミットの中でもうたわれておりますように、いささかも変わっておりません。  ただ、どのような対応をするかという問題については、ECの閣僚会議でもいろいろ議論がありましたように、観光国である某国のごときはそういう立場から多少態度を留保するというようないろいろな問題がございましょう。いろいろその国々によってその対応ぶりが、イギリスは断交という形での対応、国交断絶という形の対応をとったわけでございますが、その対応ぶりについては若干の相違があろうかと思うわけでございますが、我が国我が国の国益を踏まえながら、断固として国際テロに反対するという立場を貫きながら、我が国の国益に合う対応をいたしたいと存ずる次第でございます。
  115. 伏屋修治

    ○伏屋委員 次に、在日米軍への思いやり予算の問題について二、三お伺いしたいわけでございます。  急激な円高から、在日米軍の駐留費の日本側負担、いわゆる思いやり予算についてアメリカ側から増額の強い要請があると聞いております。日米安保条約に基づく地位協定二十四条では、アメリカ軍の維持に伴う経費は米国が負担する、こういうように明記されておるわけでございますが、昭和五十三年以来、思いやり予算としてその一部を日本側が負担してきたという経緯がございます。その額も年々大きくなってきておるわけでございます。  また、ここでアメリカ側からその強い要請を受け入れるということには問題がある、このように考えるわけでございますが、そこで、こういう思いやり予算というものは地位協定の規定に反するものではないか、こういうふうに考えるわけですけれども、外務省の御見解はどういう御見解でしょうか。
  116. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま思いやり予算のお話ございましたけれども、米側より、一般的に在日米軍駐留支援の一層の充実につき極めて強い期待が表明されていることは事実でございます。  この関連におきまして、安保条約に基づく米軍の我が国駐留は日米安保体制の根幹でございまして、在日米軍駐留支援は、在日米軍の円滑な活動の確保という観点から極めて重要であります。かかる観点から申しますと、政府といたしましては、従来から在日米軍駐留経費については施設整備費及び労務費の増額に努めてきたところでございます。  また政府は、昨今の急激な円高傾向のもとにおいて在日米軍基地従業員の解雇、雇用の不安定が生ずることはぜひとも回避したいと考えておる次第でございます。したがって、在日米軍駐留支援の強化については、今後とも自主的な判断によって、できる範囲で努力する所存でございます。このため、いかなる方策があり得るかということについて、ただいま勉強いたしているところでございます。
  117. 小和田恒

    ○小和田政府委員 大臣が今お答えしたわけでございますけれども、委員が御質問になったことについて技術的な側面が一つございますので、ちょっとお答えを補足させていただきたいと思います。  いわゆる思いやり予算というものが地位協定二十四条の枠外ないしはそれに反するものではないかという御指摘があったように思いますが、いわゆる思いやり予算と申しますものは、二十四条の範囲内において政府としてできることについてとっている措置でございまして、二十四条の枠外の問題としてやっているわけではございません。
  118. 伏屋修治

    ○伏屋委員 アメリカ軍の強い要請が年々エスカレートしてまいりますと、この地位協定が全くの形骸化されてしまうのではないか、こういうふうにも思うわけですけれども、外務省としてはその地位協定についてこれを改正するという御意思があるのかどうか。また今後予算問題等々において、予算というのは防衛庁の予算になってくると思うのですけれども、どんどん膨れてくるということになってくるとそこにも支障が出てくるのではないか、こういうふうに考えますので、そこら辺の御見解をお尋ねしたいと思いますし、さりとてその思いやり予算というものを思い切ったカットをしていきますと、先ほど大臣のお答えにありましたように、在日米軍に従事しておる日本人の労働者の雇用の問題にもかかわってくるわけでございますので、その辺の改正をする意思ありやなしや、また基本的にどういうふうにお考えになっておるのか、もう一度お尋ねしたいと思います。
  119. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど大臣がお述べになりましたように、この在日米軍の駐留というものは日米安保条約の根幹でございまして、その支援というものは日米安保条約の円滑な維持にとって極めて大切でございます。そういう中で円高等諸情勢が発生したわけでございまして、この点につきましてどうしていくかということについていろいろ今後とも知恵を出していく、考えていくということは必要であるわけでございます。これは大臣が御答弁になったとおりでございますが、具体的にいかなる方法があるかということについて現在検討しておるわけではございませんし、今お触れになりましたけれども、地位協定の改定ということについて検討しておるわけではございません。
  120. 伏屋修治

    ○伏屋委員 地位協定を改正する御意思は今のところ外務省にはない、こういうふうに受けとめていいわけですか。
  121. 倉成正

    倉成国務大臣 政府委員が御答弁申し上げたとおりでございます。
  122. 伏屋修治

    ○伏屋委員 となりますと、だんだん円高、アメリカの方から言えば、まだ百二十円までの円高ということも言われておるときでございますので、そうなってくれば、地位協定というものはますます膨らんでくる。本来ならば、アメリカ軍が全額負担しなければならないと安保条約にはうたわれておるわけでございます。それが一応そういうことを考慮しながら、五十三年からそういうような思いやり的な意味を込めてそういうような予算措置が講ぜられたということでございますが、これが改正する意思がないということになりますと、どんどん予算が膨らんでいく、こういうようなことも考えられるわけですが、その辺はどうなんですか。
  123. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 思いやり予算には、御存じのとおり施設、区域に関係するものもございます。労務費につきましては、地位協定の現在の解釈でぎりぎりのところで来ておるということは累次政府答弁申し上げているとおりでございます。  この労務費の問題につきましては、先ほども大臣がお触れになりましたように、日本人労務者、労働者の雇用の安定の問題もございまして、したがいまして、全体の今の状況の問題ということを憂慮しながら今後ともいろいろ考えていかなければいけないということにあるということは事実でございますけれども、他方、これにつきまして具体的にどういう方策でというようなことを検討しているわけではございません。
  124. 伏屋修治

    ○伏屋委員 では、問題を変えまして、次に、日ソ関係についてお尋ねしてまいりたいと思います。  今、日ソ間での一番の懸案となっておる問題は、いわゆるゴルバチョフソ連書記長の訪日であるわけでございますが、過日来日したカピッツァ外務次官が訪日の時期を回答できると述べた、こういうふうにも伝えられておりますし、ソ連側から訪日の可能性を示唆する発言が多く見られるわけでございます。  日本政府としましては、国会運営のこともあるので、来年一月じゅうに訪日をということを希望してボールソ連の方へ投げた、そして外務大臣は、そのボールがどのように投げ返されるかということを期待しておるというような御発言もございました。そういう面におきまして、外務大臣は訪日の見通しについてボールを投げ返されるのを待つ、こういうような御発言もございましたけれども、大臣としてはどういう判断を持っておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  125. 倉成正

    倉成国務大臣 先般、カピッツァ外務次官と梁井審議官と会談をいたしまして、また私に対して、カピッツァ次官の表敬がございまして、その際、いろいろお話ございまして、ゴルバチョフ書記長日本に来たいという希望を持っているということの表明がございまして、しかし、その時期は何も触れておりません。私からさらにニューヨークにおいてシェワルナゼ外相に申し上げましたいわゆる政経分離はしないという日本基本的な立場をさらに確認をいたしまして、このことをひとつ踏まえてゴルバチョフ書記長来日を歓迎する、そういう意味発言をいたしたわけでございますから、ボールは向こうにありまして、私からは一月中にというボールを投げておりまして、年内は無理だ、そして米ソ関係があるのでということで、レイキャビクはああいう結果に終わりました。したがって、その後の対応をどのような判断をし、どういう対応に出てくるかということは全くソ連側の態度にかかっていることでございますから、私がここでどうであろうかということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思うのでございます。
  126. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今月の十九日がいわゆる日ソ関係の国交回復の三十周年という記念で、先日もその式典が持たれたわけでございますが、この間、日本総理は鳩山さん、田中さん、中曽根総理とたびたび総理ソ連を訪れておるわけでございますが、いまだにソ連の最高首脳というものは一度も来ておらないわけでございます。しかし、ことし一月にシェワルナゼ外務大臣が訪日をされ、そしてこれは八年ぶりだそうでございますけれども、日ソ外相定期会議が開かれた、そしてまた、五月には安倍外務大臣が訪ソして、七回目の外相協議を持たれた、また十一年ぶりに北方領土の墓参が再開された、こういうふうに日ソ関係が非常に大きな前進をしたと見られるわけでございます。  そういうような日ソ間の政治対話が進む中で、書記長の訪日というものが、今まさに訪日されるようにソ連はいろいろな面で報道をしておるわけでございます。一つの訪日という機会がそういう日ソ関係に改善、前進の大きな役割を果たすわけでございますが、外務大臣は最近の日ソ関係というものをどのように評価し、また書記長訪日の意義をどのようにお考えになっておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  127. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま委員お話しのとおり、日ソ関係におきましては、文化面の交流であるとかあるいは北方墓参、これは二島でありますけれども、実現したとかいろいろな意味での雰囲気がよくなってきていることは事実でございますし、また御案内のとおり、ゴルバチョフのウラジオストク演説におきましても、ソ連が太平洋地域日本に対する関心を深めてきていることは評価すべきだと私は思っておる次第でございます。  しかしながら、同時に、戦後四十一年間にわたりながら日ソ間に平和条約がない、すなわち領土問題が解決していないという厳粛なる現実を私たちは忘れてならないと思うわけでございまして、つい最近も衆参両院の委員会、本会議において、全会一致で一人の反対もなく日本国民の悲願ともいうべき北方四島の返還を決議をしていただきました。  したがいまして、私は日本外務大臣として、日本国民の感情を、そして日本国民の悲願を先方政府に伝えて、ゴルバチョフ来日希望すると同時に、このことについての前進があることが必要である、このことを十分認識していただきたい、そのことによって初めてゴルバチョフ書記長来日が意義あるものになるし、そして日ソ両国の長期にわたる安定的な友好関係が確立されるゆえんのものであるということをあらゆる機会をとらえて申しておることでございまして、私はそういう意味においてゴルバチョフ書記長の御来日を歓迎すると同時に、このことを忘れないでいただきたいということがソ連側に対する私の所見でございます。
  128. 伏屋修治

    ○伏屋委員 ゴルバチョフ書記長が訪日すれば、当然そこで首脳会談も持たれると思います。その首脳会談の主議題は、やはり今大臣が御答弁になられましたように北方領土の問題が大きな主題になってくるのではないか、このように考えるわけでございますが、最近の鹿取駐ソ大使のインタビューの談話が報道されておるわけでございますが、その内容を見ますと、ソ連側が北方領土問題でどこまでかはわからないけれども日本側の要求に応じる可能性は十分考えられる、こういうような談話もありますし、また、ソ連もこの領土問題について前進させるべきだと考えている、こういうような談話があるわけでございます。そういう談話に対しまして外務大臣はどういう認識を持っておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  129. 倉成正

    倉成国務大臣 私はまだ正確な報告、また正確なソ連側発言というものを承知しておりませんので、コメントは差し控えさしていただきたいと思います。  しかし、日本政府立場は十分シェワルナゼ外相を通じてソ連政府に伝えておりますことでもございますから、日本側の我々の立場を踏まえて、この問題についての前進があることを心から期待している次第でございます。
  130. 伏屋修治

    ○伏屋委員 新聞報道で見る限りでございますけれども、最近、日ソの国交回復当時の重光外務大臣のいわゆる重光日記というものが報道されておるわけでございます。昭和三十一年当時についての報道でございますが、その三十一年五月の日ソ漁業交渉の際に、その当時の農林大臣でございました故河野一郎農林大臣がブルガーニン首相と会談した際に、北方領土問題は歯舞、色丹だけで国後、択捉二島は放棄するということで漁業交渉を進めた、こういうような日記の記事があるわけでございます。いわゆる密約説でございますけれども、その後八月十日のブルガーニン首相、シェピーロフ外相、フルシチョフ第一書記と重光氏との会談の会見録の詳細というものは外務省に存在する、このように新聞報道にはあるわけでございます。  これは北方領土問題について極めて重要な問題ではないかと思うわけでありますけれども、そこで、この河野・ブルガーニン密約説の事実関係について御説明願えたらお願いしたいと思います。
  131. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  モスクワにおきます日ソ国交回復交渉に先立ちまして、当時の河野一郎農相がブルガーニン首相と随員を引き連れずに単独で会談を行われたということは事実でございます。しかし、その際どういうことが話されたかということにつきましては、後に河野農相御自身が、領土問題はブルガーニンとの会談において、私がそれに対して、それと申しますのは歯舞、色丹のみの返還ということでございますけれども、それに対して同意を与えるとか結論を出すとかいうような大それたことを言うはずがないことはおわかりいただけると思うというふうに国会答弁されております。したがいまして、この件につきましてはそのように理解している次第でございます。  それからなお、会談の記録につきましては、そういうものが存在するのは事実でございますけれども、問題自身が現在なお交渉中の案件でございますので、その記録はまだ公表し得る段階になっていないというふうに我々は判断している次第でございます。
  132. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そうすると、その会見録というものは外務省には存在するわけでございますね。その資料というものは今は提出する時期ではない、こういうような御答弁でございましたけれども、やはりこれが大きな主要問題であるだけに、こういう資料がありとするならば、できるだけ早い時期にそういうような資料も公開して国民の皆さんにもわかっていただくというような面で、国民総ぐるみでやはり北方領土の返還というものは期待をしておるわけでございますので、そういうような誤解のないためにもそういう資料はできるならば早目に公開をする、そういうふうに希望するわけでございますが、もう一度その辺のお答えをいただきたいと思います。
  133. 西山健彦

    ○西山政府委員 極めて重要な外交交渉案件でございますので、一日も早くこの問題についての交渉が完結して平和条約が成立し、このような記録も歴史的資料として公開できるような日が来ることの早からんことを祈る次第でございます。
  134. 伏屋修治

    ○伏屋委員 次に、米の問題について少しお尋ねをしたいと思います。  アメリカの全米精米業者協会、RMAが七四年通商法三〇一条、不公正取引慣行への対抗措置に基づいて日本の米市場の開放を求めていた提訴について、その結論として先日、アメリカ通商代表部はこの提訴を却下した、こう言われておるわけでございます。  しかし、このときにヤイター米通商代表は、日本の米輸入制限について米国としてはガットの国家貿易条項には該当しない、すなわちガット違反である、こういうような判断も示しておるわけでございます。その決着は来春から始まるところのガットのニューラウンドの交渉議題として市場開放を求めていく意向を明らかにしておるわけでございます。こうしたアメリカの通商代表部の考え方、措置について外務大臣はどのように考えているのか、まずお伺いをしたいと思います。
  135. 倉成正

    倉成国務大臣 米の輸入制限措置につきましては、ガットの十七条、いわゆる国家貿易の問題として、例外措置として日本考えておるわけでございますが、アメリカ政府が必ずしもこれに同意していないわけでございます。しかしながら、今までガットの場においてこの問題が提起されたことはないということは事実でございますね。そういうことでやってきたわけでございます。  今回、いわゆる三〇一条の提訴に対して、米の問題に対する提訴に対して、USTRが、アメリカの通商代表部がこの三〇一条の提訴を却下したということで、これをウルグアイ・ラウンド、ガットの新しいラウンドの中でひとつ取り上げよう、そういうことを言っているわけでございますから、これは我々としてはあくまで従来の主張を貫くように最大の努力をしていくわけでございますけれども、これをどのように扱っていくかといことは、これはやはり委員会等で決定することではなかろうかと思うわけでございます。したがって日本としては、我々の従来の主張を貫いて、日本の基幹作物である米の位置について世界の国々の理解を深めるための最大の努力をしてまいりたいと思う次第でございます。
  136. 伏屋修治

    ○伏屋委員 ガットでは、いわゆる国が独占的に管理している品目については例外的に貿易制限を認めているということがありまして、日本が米について国際的に認められておるという根拠はここにある、こういうように考えるわけでございますが、しかし、この解釈についても必ずしも明確ではなくて、いわゆるガットの規定に一〇〇%合法である、こういうようなことは言い切れないという指摘も一部にはあるわけでございますが、このあたりの見解について政府はどういうお考えを持っておられるのかお聞きしたいと思います。
  137. 池田廸彦

    ○池田(廸)政府委員 ただいま大臣から御説明申し上げましたとおり、日本政府といたしましては、ガットの国家貿易条項、十七条でございますが、この制度に該当する、したがっていわゆる残存輸入制限、そういうものには該当しないという立場を貫いてきております。これまでのところ、日本政府のこういう考え方がガットの場でほかの国からおかしいと言われたことはございません。今後さらにお米の問題につきましては、日本の農業の中に非常に重要な地位を占める品目である、それからガット上の法律論も含めまして、各国政府の説得に今まで以上の力を傾けてまいりたい、かように考えております。
  138. 伏屋修治

    ○伏屋委員 中曽根総理も過日の国会答弁の中で、日本の米について国際価格と国内価格の落差が大き過ぎる、これは食管制度にも何らかの欠陥があるのではないかというような答弁をされておるわけでございますし、また米に限らず、ついせんだっての新聞報道によりますと、農産物十二品目の輸入制限に対してもこれはガットで協議しなければならぬ、こういうような事態に立ち至っておるわけでございまして、そのアメリカの提訴に対しましてオーストラリアとかニュージーランド、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、こういうような国々はそれぞれアメリカの主張を支持しておるわけでございまして、今の一つの流れとしましては、やはり日本の農産物における市場開放というものが緊急である、こういうような多数の意見があるように聞いておるわけでございますが、その辺のところについて外務大臣のお考えはどうなんですか。
  139. 倉成正

    倉成国務大臣 御承知のとおり十月二十七日月曜日のガットの理事会におきまして、農産物の十二品目に関するガット・パネルの設置が決定されたということは報道されているとおりでございます。そういう事実があるわけでございますので、我が国としては右理事会のパネルの討議において十分我が国立場説明していきたいと思っておる次第でございます。  一方において、ウルグアイ・ラウンドにおいては、農業貿易に関しましては、輸入のアクセス、輸出競争に影響力を与えるすべての措置を強化され、かつ、運用上効果的なガット・ルールのもとに置くことを目指して交渉を行うことになっておるわけでございます。主としてこれは輸出補助金が議題になったわけでございますけれども、結局は農業貿易の障害になるものを取り除くというのが趣旨でございます。そういう意味から申しますと、日本は御案内のとおり米は国内で自給しておりますし、そしてまた日本の農家の基幹作物でありますから、これは何としても守っていかなければならないというのが政府の方針でございます。しかし、それと同時に、余りに国際価格と日本の国内価格との格差が大きいということになると、日本の国内でもいろいろ議論が沸き起こってくるわけでございますから、新しい技術を駆使して生産性の向上を図る、あるいは規模の拡大を図る、国際価格にできるだけ近づくような最大の努力をやはり農業の側としてもすることが必要であるということをしばしば私はこの委員会以外の委員会でも申し上げているところでございます。
  140. 伏屋修治

    ○伏屋委員 ウルグアイでの閣僚宣言の内容については今わかったわけでございますけれども、これを強力に推進されたのは倉成外務大臣とも聞いておるわけでございます。それだけに、今後そういう農業貿易の障壁というものを取り除いていくための合意をされておるわけでございますから、これからのニューラウンドの時代においては非常に厳しいものがあるのではないか、このように考えるわけでございます。  しかし、農水省に聞くのが本当かもわかりませんけれども、国際価格と国内価格との落差が大き過ぎる、いわゆる食管制度そのものにもやはり大きな問題がございます。しかし、やはり何といいましても八割を占めるのは消費者でございますので、消費者のそういう支援の御意思があってこそ、そのニューラウンドの交渉においては強力な発言ができる。今のいわゆる米の自由化については、どちらかといえば消費者は静かに見守っておるというのが現状でございます。それだけに、そういう意味を込めて、ニューラウンドにおける大臣の御活躍というものが期待される、その背景にはどうしても消費者もそれに合意をする中でのそういう背景がなければならぬ、このように考えるわけでございますが、そのあたりもう一度御見解をお聞きしたいと思います。
  141. 倉成正

    倉成国務大臣 まさに委員お話しのとおりでございまして、ガットと申しましても、平たく申し上げれば自由貿易体制のルールでございます。自由貿易体制の一番の恩恵を受けているのは先進国では日本であると私は考えるわけでございまして、自由貿易体制があればこそ資源小国の日本がこれだけの発展を遂げることができた。もちろん、日本が紛争に巻き込まれないで安全であったという前提条件がそのほかにあるわけでございますけれども、ガットの恩恵を一番受けておるのは日本であるということは忘れてはならない。したがって、ガットのルール、ガットの申し合わせというのが壊れるということになると、これは一挙に保護主義に走っていくということでございます。  そうなってくると、一番被害を受けるのは資源小国である日本である。世界の国々、いろいろありますけれども、自給自足を完全にできる国はございませんけれども、少なくとも多少の困難を忍んでもある程度やっていけるわけでございますけれども、日本の場合にはもう全く自由貿易主義を離れて——世界が保護貿易主義に走っていったならば、もう全く日本経済は壊滅的な打撃を受ける。まさに第二次世界大戦の一つの発端になったのはこういう背景があったわけでございます。  そういうことを考えてまいりますと、どんなことがあっても自由貿易主義を守っていかなければならない。ガットの新しいルールづくりを成功させなければならないということで、私ども微力ながら全省庁が一致協力しましてこの問題に当たったわけでございまして、曲がりなりにもウルグアイ・ラウンドが発足することができたことを喜んでおる次第でございます。  米の問題に関して申しますと、そういう中でございますけれども、今御案内のとおり農産物十二品目についてガットの理事会でパネルを設けられるというような事態になっているという状態の中で、一番基幹的な作物である米について今また農民に不安を与えるということになれば、これは日本の農業に関して大変な不安を農民に対して与えるということでございましたので、ちょうどウルグアイにアメリカの農務長官が来ておりましたから、私は農林省局長を連れて日本の農村の事情を説明し、それからUSTRのヤイター代表と会って、他の問題が話の中心でございましたけれども、米の問題についてはこれは非常に難しい問題であるということを申したわけでございます。ヤイターは、これは自分で決めることですという返答、一分間だけ応答したわけです。  それからニューヨークへ参りまして、シュルツ国務長官と国際情勢その他いろいろな問題について懇談をした際に、これはヤイター通商代表の所管のことであるけれども、日本国民にとって極めて関心の深い問題であるからヤイター代表にこういうことを申しておきましたということを念のためお伝えするということをシュルツ国務長官に一言お伝えしたわけでございます。シュルツ長官から、これはセンシティブな問題であるということをよく承知しておりますというお返事がありましたので、私はありがとうございますと一言、所要時間一分間でございますけれども、それぞれ担当の方に対しまして日本の農民の気持ちを率直に伝えたということでございます。
  142. 伏屋修治

    ○伏屋委員 間が参りましたので終わりますが、いわゆる日本の農業、農家の立場というものもよく理解され、また日本の今までの農業の歴史というものも十分に踏まえ、そしてまた、農業というものも消費者あっての農業であるという消費者のそういう御意思というものも背景にしながら、中曽根総理がいつも口にする国際化ということに対しまして、これからのニューラウンドに臨むに当たりましても、そういう国際化に対応した行政というものに徐々に切りかえていかないとますます対外不信がエスカレートしてくるのではないか、こういう意味において、ニューラウンドでそういう背景をしっかり踏まえながら大臣の御活躍を心から御期待申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  143. 山口敏夫

    山口委員長 次に、永末英一君。
  144. 永末英一

    永末委員 四月二十六日におきますソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故は極めて重要な事故でございまして、一番の特徴は、一国内に起きましたこの種の事故が国境を越えて国際的な被害を及ぼしたということでございました。しかも、四月二十六日に事故が起こりながら、ソ連がそれを公式に外へ発表いたしましたのは四月二十九日である。この三日間の世界に及びました恐怖というのは言い知れぬものがございまして、幾多のデマが飛んだわけでございます。  そういうことを考えつつ、五月の東京で行われましたサミット会議では声明が出されました。その中には、一つは、そういう事故が起こった場合、そういう緊急事態に対する報告をひとつ国際協定をつくって早期通報をやろうではないか。もう一つは、望ましくないことではございますが、事故が起こったとき相互に緊急援助の供与について、これも相談しようではないかという声明が行われました。  八月の終わりに、山口外務委員長を団長とする我が衆議院の外務委員会がソ連へ参りまして、チェルノブイリの事故について相手方の原子力委員会の責任者と会談をし、山口委員長から我が方のこれらに対する援助についての申し入れがございました。私は、この月の八日から二十五日まで、民社党の原子力平和利用調査団を編成いたしまして、フィンランド、スウェーデン、さらにまたオーストリア、ドイツ、フランス、イギリス、イスラエル等にこの問題について調査を行いました。その結果、この機会外務大臣の見解をただしておかねばならぬと思いますことをひとつお聞きしたいと思います。  第一は、こういう経過にかんがみて、外務大臣とされては、望みたくないことではございますけれども、この種の原子力事故あるいは放射能被害があってはならぬことでありますが、これらについて早期通報あるいは相互援助についてどのような外交的枠組みが必要だと考えられ、その考えに基づいてやっておられることを御報告願いたい。
  145. 倉成正

    倉成国務大臣 永末委員が原子力問題について極めて御造詣が深く、そして各国の実情をつぶさに御見学いただいたわけでございますので、後で詳しく事情を聞かせていただきたいと思うわけでございます。  先ほども御言及になりましたように、五月の東京サミットにおきましても、議長国として本件分野における国際協力の強化の必要性については声明をいたしたことは御承知のとおりでございます。さらに、原子力事故の及ぼす国際的影響にかんがみまして、原子力事故関係の二条約がございますが、この条約は極めて有意義であると思うわけでございますが、この条約の締結についてまだちょっと足踏み状況にあるわけでございますので、本条約実施のための所要の国内的な検討を鋭意進めまして、可及的速やかに両条約の締結のために努力をいたす所存でございます。  なお、永末委員ずっと御見学になって御承知のとおり、スリーマイルの事故にいたしましてもチェルノブイリの事故にいたしましても、いろいろ構造的な問題はもちろんございますけれども、全く初歩的な人間のミスというか我々が予想しないようないろいろな問題があったということを考えてまいりますと、そういう問題についてもこれからいろいろ検討していかなきゃならないことではないかなと思っておる次第でございます。
  146. 永末英一

    永末委員 ただいま二つの条約、恐らくは早期通報に関するものと相互援助に関するものに言及されましたが、大臣お話では、今足踏み状態であって国内的検討を急ぎ可及的速やかに何とかしたいということでございますが、その点をきょうはお聞きしたい。  それからもう一つ、チェルノブイリの事故、スリーマイルアイランドの事故は初歩的なミスというのは、それは外務省の見解ですか。チェルノブイリの事故につきましては、既に詳しく報道されておりますし、IAEAでもソ連側が報告して各国がこれを聞いたわけでありますが、むしろソ連の体制上の問題あるいは人事、これらのことに携わる訓練の問題、それを飛び越えて構造上の問題すら論議をされておるのであって、初歩的なミスなんというのは、大臣、それは日本政府の見解ですか。
  147. 倉成正

    倉成国務大臣 私の言葉がちょっと足りませんでしたので、その点は訂正させていただきたいと思います。  もっと端的に申しますと、取り扱う人間の問題、訓練の問題と申しても差し支えないかと思います。それを初歩的なという言葉はちょっと言い過ぎであったと思いますので、訂正させていただきたいと思います。決して政府の見解でございません。私がスリーマイルの事故の際に多少勉強いたしましたとき、そういう感じを抱いたものですからそういうことを申し上げたのでございますので、ただいまの点は訂正させていただきたいと思います。
  148. 永末英一

    永末委員 訂正されましたからそれはそれでございますが、この二つの条約、すなわち原子力事故の早期通報に関する条約、さらに原子力事故及び放射線緊急事態における援助に関する条約につきましては、七月二十一日、これはあなたが外務大臣になられたころでございますけれども、それから八月十五日に至る長い期間を費やしまして、ウィーンのIAEAにおいて六十二の国々が参加して政府の専門家会合を持っていろいろと検討してそれをつくり上げ、一応その会議としては採択をされたものでございました。日本からはどういう体制でこれに参加されましたか、御報告願いたい。
  149. 松田慶文

    ○松田説明員 お尋ねのIAEAの専門家会合には外務省、科学技術庁、通産省から原子力専門家及び国際法専門家を派遣いたしまして、全会合に出席してその作成作業に協力した次第でございます。
  150. 永末英一

    永末委員 そういたしますと、我々の日本政府のこの点に関する専門家がこれだけの期間を費やし、あらゆる場面に参加をして練り上げた草案でございますから、この草案が一応でき上がれば、そう重大なる変更をしなければならぬとは思われませんが、日本政府の見解はいかがですか。
  151. 松田慶文

    ○松田説明員 この二条約の草案につきましては、大多数の国が専門家会合でできましたドラフトに賛成をした次第でございますが、一、二の国が非常に強い留保をつけておりまして、これを総会、すなわち九月二十四日から二十六日までウィーンで開かれましたIAEA特別総会で修正動議を出すという動きが最後までございました。それをいろいろと説得し、原案のとおり確定するということで、総会二日目の夜にようやく関係国は修正動議を出さないということで落着し、三日目午前に最終的に原案どおり採択された次第でございます。
  152. 永末英一

    永末委員 その採択というのはいつですか。もう一遍その日時を正確にお答え願いたい。
  153. 松田慶文

    ○松田説明員 九月二十六日午前、正午直前でございます。
  154. 永末英一

    永末委員 この特別会議は九月二十四日から二十六日、御報告のような会議がございまして、この案文が確定をいたしました。  そこで伺いたいのは、この二十六日の日に、この条約に二つございますが、それぞれ署名をいたした国は何カ国でありますか。
  155. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  当日午後、すなわち二十六日の午後に署名のために回報された次第でございますが、その午後に両条約に署名いたしました国は五十一カ国でございます。
  156. 永末英一

    永末委員 早期通報の国は二十六日五十一カ国、それから相互援助も二十六日は五十一カ国、そういう意味ですね。
  157. 松田慶文

    ○松田説明員 御指摘のとおりでございます。両方とも五十一カ国ずつでございます。
  158. 永末英一

    永末委員 各国で大臣は何カ国出ておりましたか。
  159. 松田慶文

    ○松田説明員 特別総会参加国九十三カ国中、閣僚レベルの出席がございましたのはニ十七カ国でございます。
  160. 永末英一

    永末委員 二十六日の署名国はそれぞれ五十一でございますが、本日どうなっておりますか。
  161. 松田慶文

    ○松田説明員 本日現在の署名国は、早期通報条約につきましては五十八、相互援助条約に署名した国につきましては五十七でございます。一カ国だけが早期通報条約にのみ署名しております。
  162. 永末英一

    永末委員 五十七、一つ足らぬのは、それはルクセンブルクでありますが、日本国は署名をしたのですか。
  163. 松田慶文

    ○松田説明員 まだ署名するに至っておりません。
  164. 永末英一

    永末委員 大臣に伺いたいのでございますが、先ほどから既に御説明がございましたように、東京で行われたサミットトークで我が国の代表である内閣総理大臣が参加し、外務大臣も参加をされて、そうしてこの二つの条約の淵源になるべき見解については日本政府の見解として共同声明をお出しになった。それに基づいてウィーンのIAEAで専門家会議が行われて案文が確定をした。八月十六日。そして一月以上たってそれに対する各国政府の今度は代表が集まって会議を開いた。当然日本政府としては案文の細目にわたって検討し、なすべき措置についてどうすべきかを検討したあげくの果て、ここへ出席したはずだと思います。しかもこの会議は各国の非常に注目するところでございますから、先ほど九十三と言われたが、私の承知しておるところでは九十四カ国、六百三十九名の政府代表が出席をいたしました。そして、特に重要なのは、この種の会合としては珍しく各国のニュースメディアの関心を呼びまして、二百八十二のメンバーが見守る中でこの会議が行われたわけでございまして、しかるにかかわらず日本政府は署名しなかった。署名をしなかった理由を伺いたい。
  165. 松田慶文

    ○松田説明員 永末委員指摘のとおり、この条約は、両条約とも事故以来私どもの主張してまいりました線に沿うものでございまして、それぞれの本旨、趣旨には全く賛成でございますので、その限りにおきましては私どもとして署名を妨げる実体上の理由はございませんが、ただ、御案内のとおり緊急援助条約八条、十条には、それぞれ援助にかかる状況下において特権、免除あるいは便宜供与、それから損害賠償及び補償というかなり複雑な国内体制上の諸手当てを必要とする条項がございまして、これらの分野につきまして多岐にわたります各省庁との調整を進行させている次第でございまして、現在それを鋭意進め、できるだけ早い機会国会に御承認のため提出させていただきたいと考えている次第でございます。
  166. 永末英一

    永末委員 他国の者が我が国に入ってくる、他国を代表して入ってきた者について、そういう場合、例えば特権付与であるとかあるいはその他の義務免除であるとか、あるいは補償の問題があればありましょうし、裁判の問題も起こりましょう。それはそうだが、早期通報に問題がありますか。
  167. 松田慶文

    ○松田説明員 早期通報条約につきましては、ただいま私が申し上げましたような国内体制上の諸問題はございません。ただ、これが二条約そろって初めて一つの完結した事故対策となるものでございますから、政府といたしましては、あわせてともどもに措置をしたいと考えている次第でございます。
  168. 永末英一

    永末委員 五十一カ国が九月二十六日に調印をいたしまして、二十九日には二カ国、三十日には一カ国、十月二日に三カ国。もっとも九月ニ十九日には通報の場合が三カ国で援助の場合が二カ国になっておりますが、これはルクセンブルクがなくなっておる。ルクセンブルクの例を見ても、一体でなければならぬという署名じゃないじゃないですか。なぜあなたは、日本だけは一体にしなくちゃならぬ——片方、早期通報にはそういう国内法は不必要である。援助にはなるほど他国の人が入ってくるわけだから、今までの国際慣行上行われておるそういう特権付与や免除規定やいろいろなものが必要であることはわかりますよ。しかし、一緒でなくてはできないという積極的な理由があるのですか。
  169. 松田慶文

    ○松田説明員 御説明申し上げます。  この条約は、行政府限りで署名しました後、国会の御承認を賜りました後、批准していくわけでございます。私どもは、この両条約をそろえて国会に御提出し、あわせて原子力事故に係る諸般の問題を御説明しながら国会の御承認を得たいと思っております。したがいまして、IAEAとの関係では、両条約の御承認を得て、そろって批准ということで初めて我が国に対して効果を発生する次第でございますから、一つだけを署名するというのは、行政府としての姿勢を示すことになることは御指摘のとおりでございますけれども、条約の我が国に対する適用という観点からは二つそろえていくのが国会との御関係でも至当と考えたわけでございます。  あわせてもう一点御説明させていただきますと、先生御指摘のとおり、通報条約は国内法との絡みなしでいけるはずだという点を踏まえまして、御指摘の総会の我が国の代表発言の中で、我が国は署名はいささかおくれるが、通報については問題がないので、この条約に加盟するまでの間といえども万が一このような事故があった場合には、我が国として自発的に協定どおりの仕事、すなわち通報はいたしますということを宣明した次第でございます。
  170. 永末英一

    永末委員 条約に署名をして批准がおくれているのを一遍言うてもらいましょうか、外務省が何件持っておるか。山ほどあるではないですか。なぜ今の場合だけちゃんとやらなければ署名もできないと言っておるか、この理由がわからぬ。この二つの条約、今や発効しているでしょう。
  171. 松田慶文

    ○松田説明員 通報条約のみ発効しております。
  172. 永末英一

    永末委員 外務大臣、あなたの外交だから、事務当局はあんなことを言うていますがね。これだけ関心を集めている。日本は、いつも言われることだが被爆国である。したがって他国の人々よりは放射能の災害を極めて鋭敏に感ずる国民である。だからこそ、東京サミットだからあれだけの声明も出し得るし、そしてまた聞いてもらえる素地があったと思う。そして、夏の専門家会議では、日本から行かれた十五名の人は非常に努力をしたと聞いておる。そしていよいよ打ち上げのときには署名をしない。  核兵器を持っている国はみんな署名をしましたか。
  173. 松田慶文

    ○松田説明員 署名いたしました。
  174. 永末英一

    永末委員 原子力発電所を持ってそれを動かしている国は署名しましたか。
  175. 松田慶文

    ○松田説明員 原子力発電所を保有している国は世界で二十五カ国及び一地域でございますが、このうち十九が署名しております。
  176. 永末英一

    永末委員 大臣我が国世界の中でも原子力発電所の保有個数は多い方ですね。最高級に多い方ですよ。そして、工業国、産業国と言われるところは大体みんな署名しておるわけだ。しかるに、我が国だけがその援助条約の国内法の手続を理由にしていまだに署名しない。そうすると、日本外交というものは、あれだけ原子力、原子力なんとか言いながら怠慢であると思われてもしようがないじゃないですか。そんな日本外交でいいのですか。
  177. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどから永末先生、また政府委員からるる御答弁申し上げておりますが、御案内のとおり、先ほど私がちょっと足踏みと申し上げたのは決してぐずぐずしているという意味ではないわけでございまして、国内の実施体制について日本政府というのは非常に慎重主義であるためにこの署名がおくれたと思うわけでございまして、できれば次の通常国会に承認を得るべく、この条約に参加する方針で鋭意今、準備中でございまして、おっしゃるとおり、これは一日も早く国会に出して、そして皆様の御承認を得るというのが基本的な姿勢でございます。しかし、ありのままに、今そういうことでおくれたということを申し上げておる次第でございます。
  178. 永末英一

    永末委員 国会政府がやっておる条約について批准をいたす場合、例えば日ソ間の漁業協定などは、協定がまとまればすぐに我が方の漁船団が出漁するということで、時間をはかりながら協定調印、署名、即批准というように時間を急ぐことがございます。この件は、事故が起こるとはだれも予測できない。寺田さんではないが、災害は忘れたころやってくる。原子力災害は望みません。とんでもないことだ。やりたくない。しかしながら、その災害に対する万全の備えをやるのが政府の役割であって、自衛隊は何のために持っておるんですか、戦争をやるために持っているんじゃない、そういう場合が来たときに困るから我々は自衛隊を保有しておる。各国は軍隊を持っておるんである。しかるに、何ら準備の要らない通報ですら署名もしない。  ILO関係であと同件残っていますか。署名して、そしていまだに批准しない条約、一番長いものは何年かかっていますか。ちょっと報告してください。
  179. 小和田恒

    ○小和田政府委員 大変恐縮でございますが、突然のお尋ねで今正確な資料を持ち合わせておりませんけれども、御承知のようにILOにつきましては特殊な形で条約の採択を行います。その関係上、採択される条約の数が百を超える数に上るわけでございまして、その中で残っているものは非常に多い、日本が当事国にならないままに残っているものは非常に多いということは申し上げられると思います。
  180. 永末英一

    永末委員 国の方針を決める重要な問題、核拡散防止条約でも大分長い間置きましたね。あれは我が国の原子力政策をどうするかということがあったから時間をかけた。これはそんな問題じゃないわけだ。我が国が求めている問題。それでもあなたは、通常国会っていつのことを言うておるのですか。通常国会というのは、十二月から始まって一月から審議を始めて予算委員会が始まって、そして外務委員会でそんなことをやる、そこまで時間をかけなければならぬ問題ですか。各国はどう思うておると外務大臣は判断されておるのですか。日本という国はあんなことをやっておるけれども、ああ署名もしてないのか。その間、日本の原子力外交に対する各国の見方はどうなっていくのか、これを考えるのが外交じゃないですか。  倉成さん、事務当局あんなこと言うてますよ。それを国内のどうだこうだ言っているけれども、そんなもの事例が何ぼでもあるじゃないですか。やろうと思ったらすぐできるんだよ。  大体、この二十四日から二十六日、何で我が国大臣は行かなかったんですか。
  181. 松田慶文

    ○松田説明員 従来よりIAEAの総会には科学技術庁長官が御出席になるのが慣例でございます。今回の場合も大臣は御出席を検討されたと承っておりますが、国会との関係でやむなく政務次官を代理でお出しになったと承知しております。
  182. 永末英一

    永末委員 国会は、重要な会議にはいつでも大臣の国際会議への出席を認めておるではありませんか。この臨時国会だって何ぼでもありましたでしょう。求めもせぬで、そして政務次官か何か行って、署名もせぬで帰ってくる。これは科学技術庁の問題じゃない、あなたの外交の問題だ。そんな外交姿勢でいいですか。
  183. 倉成正

    倉成国務大臣 国会のお許しさえ得れば私もあらゆる国際会議にできるだけ出て、そしてまたすぐ解決できる問題は現地からそれぞれ総理あるいは関係閣僚と連絡をとりながら判断をしていく、私自身はそういう気持ちを持っております。  しかし、今お話しの点は残念ながらそういう経過を経て今日に至っておるわけでございますから、最善を尽くして早く御期待に沿うような努力をしたいと思っておる次第でございます。
  184. 永末英一

    永末委員 最前を尽くして早くとおっしゃいましたから、その方針で私はいいと思いますが、先ほど言われたように通常国会なんて言わないで、批准はそれでいいですよ、しかし、その準備を急いで、署名だけはもっと早くされるべきではありませんか。署名は通常国会を待たず早くするとこの場でひとつお約束ください。
  185. 倉成正

    倉成国務大臣 もちろん署名は国会と直接あれではございませんから、国会前に署名をするつもりでございます。
  186. 永末英一

    永末委員 外交は相手方がある。そしてまたタイミングがあります。日本外交が、政府の行政的事項に煩わされてうろうろしておったのでは、生きた外交とは言えません。その点ひとつぜひ、抱負をお持ちの外務大臣でございますから、そんなぼんやりしておる行政当局の順番を待つことなく、タイミングを失せずにきちっと外交をやっていただきたい。特に原子力外交については、日本の出方を各国は非常に注視をしておるのでございまして、その意味でも腰を入れて、性根を入れてひとつ進めていただきたいと強く要望しておきます。
  187. 倉成正

    倉成国務大臣 大変御激励をいただきまして、ありがとうございます。私も原子力については深い関心を持っておりますので、またいろいろと御教示を賜りたいと思います。
  188. 永末英一

    永末委員 終わります。
  189. 山口敏夫

    山口委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  190. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、ただいま北海道を中心に展開されています日米合同演習について質問したいと思うのです。  今回の日米合同演習は、日米三軍による初めての統合実動演習であるという点から見ましても、またA10などの在韓米軍が新たに参加したという点から見ましても、極めて重大な意味を持っていると考えます。これは日米共同作戦体制が新たな段階、仕上げの段階に入ったのではないかという見方を強めるものでございます。  今月の二十日に東干歳で展示会がありまして、米軍の対化学戦用、対核攻撃用の装備等も展示されていました。これらの装備が今度の統合実動演習で使われるような想定があるのかどうかについて、まずお尋ねします。
  191. 藤島正之

    ○藤島説明員 お答え申し上げます。  CBR兵器につきまして、今回の演習で使用されるというようなことは考えておりません。
  192. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 八三年に北海道で行われましたヤマト83では、これは陸上の日米合同演習でございますが、ここでは核・化学汚染地域を設けた訓練が行われているわけでございます。放射能汚染の区域といいますと核が使用されたことが前提になりますし、核戦争を想定した訓練だと思うのです。  そこで大臣にお聞きしますけれども、きょうも質問がありましたけれども、日本非核原則国是とする国なんです。このときに日米合同の演習で核戦争を想定するような実動演習をやってよいものかどうか、政治的な御判断をお聞きしたいと思います。
  193. 倉成正

    倉成国務大臣 全くもう仮定の御質問でございまして、私がコメントするのは適当でないと思いますけれども、一般論として言えば、日本の防衛のために核が絶対に使用されないということは言えないのではないかと思うわけでございます。しかし、そういうことはあり得ないと私は確信いたしております。
  194. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 仮定の問題とおっしゃるけれども、現に米軍が展示しているのは対核攻撃用の装備も展示されていますし、さらに八三年の日米合同演習ではそういう汚染区域を設けた実動演習もなされているわけですね。これはやはり核戦争を想定したと言わざるを得ないし、今の答弁はどっちかよくわからぬですけれども、そういうことはあり得ないというふうに一般論でおっしゃるのですか、それともあり得るけれどもやむを得ないとおっしゃるのですか。
  195. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、今世界に米ソを含めて核弾頭、核兵器というのは人類を何十回も皆殺しするくらいの兵器を持っておるわけでございまして、これが使われるということは人類の破滅を意味するわけでございますから、まさかそういうことは世界指導者が英知を持っている限りはあり得ないと私は信じておる、そういうことを申し上げておるわけでございます。
  196. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大臣はちょっと誤解されていらっしゃるようですが、私が聞いているのは訓練ですよ。演習の問題なんです。核戦争じゃなくて、そういう核戦争を想定するような演習がなされることは是か非かということについて政治的な御判断を聞いているわけです。
  197. 倉成正

    倉成国務大臣 演習そのものは、今、核の、非常に不幸なことでありますけれども恐怖の均衡という、私が余り使いたくない言葉でありますけれども、現実の今日の世界の軍事バランスと申しますか、平和というものが、核の均衡、一方が核の攻撃をした場合には相手国がそれに対して破壊的な攻撃を行う、そういう恐怖、これによっていわば現代の世界の平和が保たれておるということはまごう方なき事実であります。したがって、そういうことが起こり得る——起こってはならないというのが我々の気持ちでございますけれども、そういうことを前提として今世界の平和が保たれておる場合に、そういうことについて考えるあるいはそういうことについての訓練が行われるということは理論的にあってもおかしくないのではないかと思います。
  198. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 重大な発言だと思うのです。望ましくないけれどもそういう核戦争を想定した実動訓練があってもおかしくないという御答弁でございますが、これはしばしばアメリカの高官も言っていますし、ここに材料を持ってきていますけれども、今の訓練というのは実戦を想定したものだ、実戦と不可分のものなんですね。こういう形で核戦争を想定する実動演習がなされるということは日本の核戦場化を意味しますし、許すべきではないと私は思います。  そこで、きょうは防衛庁からも来てもらっていますので、端的に簡単にお答え願いたいと思いますけれども、今回の演習、これは北海道に相手国軍が着上陸したという一つの想定と、もう一つはシーレーンが潜水艦等によって攻撃を受けた、これに対する反撃だという想定のようでございますね。一昨年末、日米制服の間でまとまった日米共同作戦計画、何回国会で要求してもその一部分でさえもお示しにならない、こういうマル秘の作戦計画です。これによったものだということは各新聞も書いているとおりなんです。  そこでお聞きしますが、三問です。一つは、今後こうした日米統合実動演習、どんな形で、例えば年間何回とか繰り返されるのか。二問は、海峡封鎖、宗谷とか津軽ですね、こういう海峡封鎖なども想定した実動訓練を今後やっていくのかどうか。三つ目は、先ほどの大臣答弁にもそのにおいは出ていましたけれども、先方が核を先に使ったような場合を想定する実動演習も考えられているのかどうか、端的にお願いします。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  199. 藤島正之

    ○藤島説明員 お答えいたします。  今後、今回行っているような日米の統合の共同訓練をどういうふうにやっていくかということにつきましては、現在まだ決まったようなものはございません。  それから、海峡封鎖とか核を使用する云々の件でございますが、これらについても全く現在そういうような計画を持っているものではございません。
  200. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 来てもらってろくな答弁がないんで、そういう答弁だったら余り必要ないんです。現にあるはずですよね。言わないだけです。これは今後とも追及していこうと思っています。  そこで、大臣、こういうことははっきりしておきたいと思いますので聞いておきたいのですが、去年の二月十九日、衆議院の予算委員会で、私の質問に対して中曽根総理はこういう答弁をされました。「日本列島が侵略されて敵が日本に上陸しているとか、」ちょうど今度の実動演習の想定がそうでございますが、「日本が爆撃されているとか、そういう非常事態、侵略事態が起きているという場合」、日本救援の米軍が核を使うようなことまで日本側が排除する立場にない、つまり抑止のためには必要だという、そういう御答弁でありました。  それを受けて、同年二月二十一日の同じ衆議院予算委員会で、共産党の東中委員が次のように質問しています。   米軍の核使用の相手は、これは日本に上陸してきている敵の、攻撃してきているその部隊に対する使用も、それは米軍が勝手にやるということですね。 こういう質問に対して、中曽根首相は、   それは、私はそのときの情勢で大局的に判断をすべきもの こういうふうに答弁されているわけです。理論的問題でしょう。しかし、日本の領域内でも核使用が大局的判断であり得るような御答弁で、マスコミ等でも大きな問題になりました。  ちょうど日本への着上陸が前提となったそういう統合演習が行われているときでございますので、大臣も同じ見解かどうか聞いておきたいと思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 倉成正

    倉成国務大臣 全く仮定の御質問でございますので、私がお答えするのは差し控えたいと思います。
  202. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 単なる仮定であればいいのですけれども、現に日米統合実動演習はそういう方向に一昨年末の日米共同作戦計画に従って進んでいるわけなんでして、私たちはそのことを大いに懸念するわけなんです。日本の核戦場化の方向にそういう日米軍事同盟体制が進むことを強く懸念して、私たちはこういう訓練をやめよという申し入れをしているわけです。  時間の都合で先に進みますけれども、原潜の導入問題です。  新聞を持ってきました。こんなときに海上自衛隊の幕僚監部が原潜を持つことを検討し始めているし、非公式にアメリカに打診をしているということが伝えられているわけですね。これはアメリカ海軍筋の意向をよくつかんでいる制服組だけの動きなのか、それとも防衛庁でもこういうお考えなのか、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  203. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 御説明いたします。  通常型の潜水艦は、潜航持続力あるいは高速の持続力という点で原子力型と比較しますと劣りますけれども、静粛性あるいは価格という点ではすぐれております。こういう判断のもとに、海上自衛隊は「防衛計画の大綱」で定められております重要港湾あるいは主要海峡などの警戒、防備を行うという任務を十分達成できるという判断のもとに、従来から通常型の潜水艦を整備してきておりますし、現在、中期防衛力整備計画で進めておりますのも通常型でございます。  推進力として原子力を利用することを現在防衛庁で検討しているかというようなことでございますれば、全くそのような検討を行っておりません。  それから、海幕の方で照会しているというような御質問でございますが、調査いたしましたが、そういう事実は全くございません。
  204. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 なければ結構でございます。原潜を持つということは、一層日本がアメリカとの共同作戦の深みに入っていくことになりますし、被爆国日本では例え原子力推進であっても持つべきでないということを考えます。  さて、先ほど質問がございました思いやり予算の問題を最後にお聞きしておきたいと思うのです。  このいわゆる思いやり予算で労務費をこれ以上ふやすのは現行の地位協定でできないという見解をこれまで何度も政府は表明されてきています。その一、二を御紹介しますと、これは昭和五十五年三月二十五日、衆議院内閣委員会での玉木防衛施設庁長官の答弁でございます。   労務費をこれ以上負担することはできないと申しましたのは、地位協定の現在の考え方から言ってこれ以上負担はできないということでございます。  次は、ことしに入って、五月八日の同じく衆議院の内閣委員会での藤井北米局長の御答弁です。  従来から政府答弁いたしておりますように、ほぼ労務費につきましては限度いっぱいということでございます。したがいまして、これ以上、労務費におきまして、地位協定の上から日本側として何かするということは極めて困難というふうに存じております。 このようにはっきりと現行の地位協定の上ではこれ以上労務費をふやすことはできないという見地が政府姿勢でございました。  外相は、先ほどその方策について勉強していますということ、しているところだというふうに答弁なさいましたが、これはこのような政府姿勢、方針の枠内でおやりになることなのか、それとも従来の政府姿勢を変える方向も含まれているのか、その辺お聞きしたいと思うのです。
  205. 倉成正

    倉成国務大臣 政府といたしましては、現在、雇用者側が負担している労務費であって、これまで米側の負担とされてきた経費については、地位協定の範囲内でこれ以上日本側で負担し得るものはないと答弁してきておることは事実でございます。こういう考え方でございます。
  206. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、大臣、その方針を貫くということですね。現行の地位協定を守る上では、これ以上労務費をふやすことはできないという見地を守るということでございますね。
  207. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほどもこの問題について本委員会でお答えいたしたとおりでございますけれども、一方におきまして、今岡崎委員指摘のような、地位協定上の解釈についての政府がとってきている態度があるわけでございます。他方におきまして、本件につきましては、昨年の秋からの円高等の諸情勢によりまして新しい状況が展開していることも事実でございまして、それが在日米軍の駐留ということ、すなわち安保条約の骨格、非常に大事な側面に直接の影響を与える問題であるということのみならず、日本人労働者の雇用の安定の問題にも関連するわけでございます。  そういう状況におきまして、従来からも政府はいろいろと検討と申しますか、この問題を認識しているということでございますけれども、その問題を今後とも考えていかなければいけないということを申し述べているわけでございまして、現段階におきまして、先ほど申し述べましたとおり政府が具体的な検討を行っているということではございません。したがいまして、政府が今後どういうことをするかということにつきまして、現段階におきまして具体的な御答弁をすることはできないというふうに存じます。  地位協定の変更を考えているかということにつきましては、地位協定の具体的な変更を検討してはいないということを明確に申し述べられるわけでございます。
  208. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 よくわかりませんね。  他方、新しい状況を説明されている、地位協定の変更は考えていない。そうしますと、現行地位協定のもとでの労務費のこれ以上の値上げをしないという従来の政府の見解を変えることもあり得る、具体的に検討していないと言うと、変えることもあり得るということを示唆されているんですか。
  209. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 地位協定の二十四条一項につきまして労務費に関連しましての解釈、これは既に政府が五十三年、五十四年以来申し述べてきていることでございまして、これを変更するということは全く考えておりません。
  210. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それは、大臣もその見解でよろしゅうございますね。従来の見解は変えないということでよろしゅうございますね。
  211. 倉成正

    倉成国務大臣 政府委員がお答え申し上げたとおりでございます。
  212. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、重ねてその中身についてお聞きしたいのですけれども、新聞報道等によりますと、為替相場にスライドさせて労務費の目減り分も負担するようなことがあるように報道されているのでございますけれども、それも結局は、地位協定でできないことになっている労務費を日本側に負担させることと同じなんですね。ですから、こういうスライドということも当然今おっしゃったような範囲に入るというふうに理解してよろしゅうございますね。
  213. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど来るる申し述べておりますように、本件に関して安保条約上あるいは日本人の労務者の雇用の安定という問題が存在するということを認めておるわけでございますが、これに関連して政府が具体的にどういう措置をとるかという検討に入っているわけではございませんので、新聞にどういうふうに書いてあるか正確に存じませんけれども、具体的な中身に関してどうのこうのという段階では全くございません。
  214. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 答弁になっていません。  私が聞いているのは、物価スライドについて、そういうことで目減り分を負担するというようなことはない、従来の政府方針ならばないということなんですね。ですから、おっしゃったことの中身を聞いているわけなんです。
  215. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 まことに申しわけございませんけれども、先ほど来るる申し述べておりますとおり、ここに一つの実体的問題があるということを認識しておるわけでございますが、それに対して政府がどういう態度をとるべきかということに関して検討していないわけでございますから、どういうことを将来とるとかあるいはとらないとか、そういうことについてコメントを行うことはできないわけでございます。
  216. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 従来の方針を変えないと言いながら、物価スライドの問題については、当然、従来の方針からいってはノーということなんです。しかし、そのことについてもはっきりお答えにならない。もっと姿勢をしゃんとしてもらいたいと考えます。  もともと円高・ドル安というのはアメリカ側にも大きな責任がある現象なんです。それによって今労務費などの目減り分が出てきているわけでございますが、これを日本側に負担せよというのは私は不当だと思います。そういう点からいいましても、現在、基地労務者は二万一千人くらいいらっしゃいますか、合理化あるいは雇用不安が押し寄せているという状況でありますが、これはアメリカの責任で円高・ドル安現象も起こっていますし、やはりアメリカの責任で日本人労務者の雇用安定のためにもっと努力してほしい、そういうことを政府としてもはっきり申し入れるべきではないかと考えますけれども、大臣、いかがでございましょうか。
  217. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど北米局長から御説明をいたしましたように、実体問題としてはそういう状況が生じておる、こういうことを政府としては認識しているわけで、その問題が日米安保体制の安定的な維持という問題、それから米軍によって雇用されております日本人の労務者の雇用の安定という二つの面から、我々としてもその問題に対して十分な認識を持たなければならないということは、政府として一貫して考えておることであると思います。それに対してどう対応するかというようなことについては、具体的に何ら検討していないということでございます。
  218. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大臣にお聞きしているわけです。  大臣、今駐留米軍に働いている労務者の雇用の安定のためには、アメリカに申し出ても、協議しても最大限努力するという姿勢は必要だろうと思うのです。いかがでしょうか。
  219. 倉成正

    倉成国務大臣 御指摘のとおり、これから日本経済で一番大きく起こってくる問題は雇用の問題だと思いますし、ただいまの在日米軍基地に働いておられる方々の雇用の問題についても深い関心を持っておる。ただ、国防費の範囲の中でそれが賄われるわけでございますから、ここにしわ寄せがいかないように最大限の努力はしたいと思うわけでございます。
  220. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間が来ましたので、これで終わります。
  221. 山口敏夫

    山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時七分散会