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1986-10-24 第107回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十四日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 山口 敏夫君    理事 甘利  明君 理事 浦野 烋興君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 中山 利生君 理事 高沢 寅男君    理事 神崎 武法君       逢沢 一郎君    井出 正一君       石原慎太郎君    大石 正光君       坂本三十次君    椎名 素夫君       武村 正義君    中山 正暉君       三原 朝彦君    村上誠一郎君       森  美秀君    岡田 利春君       河上 民雄君    辻  一彦君       鳥居 一雄君    伏屋 修治君       神田  厚君    岡崎万寿秀君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 倉成  正君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省国際連合         局長      中平  立君         食糧庁次長   山田 岸雄君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      久米 邦貞君         外務大臣官房審         議官      川上 隆朗君         外務大臣官房外         務参事官    木村 崇之君         大蔵省国際金融         局開発政策課長 峯嶋 利之君         農林水産大臣官         房参事官    高橋銑十郎君         農林水産省経済         局国際部長   塩飽 二郎君         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ───────────── 委員の異動 十月二十四日  辞任         補欠選任   小川  元君     逢沢 一郎君   竹内 黎一君     三原 朝彦君   村上誠一郎君     井出 正一君   土井たか子君     辻  一彦君   永末 英一君     神田  厚君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     小川  元君   井出 正一君     村上誠一郎君   三原 朝彦君     竹内 黎一君   辻  一彦君     土井たか子君   神田  厚君     永末 英一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件(条約第一号)      ────◇─────
  2. 山口敏夫

    山口委員長 これより会議を開きます。  千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 千九百八十六年の国際小麦協定についてお尋ねを申し上げます。  なおまた、これとの関連で、今問題の日米間の米問題、こういうことについても後ほどお尋ねしたいと思います。きょう、我が党の辻一彦委員も、またそういう問題について後ほどお尋ねいたします。  一番最初にこの国際小麦協定ですが、千九百七十一年の国際小麦協定、これは七回にわたって十二年間延長されてきたわけでありますが、その十二年間にこの協定の運用にどういうふうな変化、手直しがあったのかということが一つと、それから、今回は一九八六年の新しい協定をつくったということであるわけですが、従来のそういう延長でなくて、今回新しい協定にしたという、そのことはまたどういう背景があってこういうことになったのか、まずその辺からお尋ねをしたいと思います。
  4. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  委員指摘のとおり、国際小麦協定は一九七一年以来七回にわたって延長されてまいりましたけれども、その間、国連小麦会議において備蓄制度を伴う新規約小麦協定に盛り込もうというような試みもございましたけれども、それがまとまらなかったということで、七一年以来の主要な動きといたしましては、一九八一年の十二月に国際小麦理事会活動を強化するということで決定を見て、それを国際小麦協定に盛り込むということになりました。  具体的に申しますと、小麦についての需給長期見通し、それから各加盟国穀物在庫政策等についての研究報告書を作成するということと、もう一つは、各国穀物政策変更等について情報交換を行うということでございます。すなわち、国際小麦理事会活動を強化するということが七一年以来の大きな変化でございます。同時に、国際小麦協定の重要な一部をなしております食糧援助規約についても一九八〇年の新規約が作成されましたけれども、その当時に比べまして食糧援助の規模、最小拠出量が大幅に増加したということが大きな変化として指摘できると思います。  それから第二点でございますけれども小麦貿易規約は十年以上という長い期間効力を有していて、実際の理事会活動に即した規定を有する新たな規約を作成することが望ましいというように考えられて、さらに先ほど申しましたように、備蓄制度、いわゆる経済条項を有する新規約の作成ということは当分望み得ないということで、有効期間延長を毎年毎年議定書を作成して行うよりも機関決定によって延長の可能な新たな規約をつくる、新協定をつくるということが望ましいということで、御指摘のように延長ではなく新協定を作成したという背景だと承知をしております。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 今度の協定小麦貿易規約の第二条、ここで穀物定義ということがなされているわけです。  この穀物定義は、七一年協定と比べてその中身が変わっているわけでありますが、この理由はどういうことか、そのことをまずお尋ねいたします。
  6. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 委員指摘のとおり、小麦貿易規約において穀物定義が七一年の規約と比べて変化してございますけれども、これは二つの要素になります。  一つは「ミレット」すなわちアワ、ヒエ、キビの総称だそうでございますけれどもアフリカ諸国食用とされているということでこれを特掲して加えることにしたということが第一点。第二点は「並びに理事会が定めるその他の穀物及び製品」ということになっておりまして、理事会が必要に応じて穀物定義を拡大できるようにあらかじめ措置をとったということでございます。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 これに関連しますけれども食糧援助規約、この方にもまた穀物についての規定が出ておりますが、その中で「人間消費に適するその他の種類穀物委員会が定めるもの」、こういう規定がありますが、これは具体的にはどういうものを指すようになるのか。またその場合には、新たな何か穀物を指定するときは、当然そういう穀物を食生活上使う相手の国があってのことではないか、こう思いますが、その辺の事情はどういうことか、お尋ねします。
  8. 川上隆朗

    川上説明員 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、今回の規約におきましては委員今おっしゃったような規定が入ったわけでございますが、「人間消費に適するその他の種類穀物委員会が定める」というのは、一般の社会通念から判断して、人間食用として妥当かつ適当と認められる品質、規格の穀物委員会がこれを認定したものということでございまして、例えば飼料用穀物は除くといったような趣旨を念頭に置いたものでございます。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 小麦貿易規約の第三条「情報報告及び研究」の項に「情報交換及び適当な場合の特別研究のための措置がとられる。」こういうことが書いてありますが、この「情報交換」はそれなりにわかりますが、「適当な場合の特別研究のための措置」、これは具体的にはどういうことを意味するのでしょうか。
  10. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 委員指摘のとおり、小麦規約の三条で、適当な場合特別研究のための措置をとるということが規定されてございますけれども、この「適当な場合」とはどういうことかと申しますと、特に理事会関心のある事項について理事会決定として特別研究を行うという趣旨でございます。  一九七一年の旧規約のもとでは、国際小麦理事会が、先ほど申しましたように各国在庫政策穀物長期見通し等について特別研究を行った事例がございます。今回、かかる先例を踏まえて適当な場合の特別研究を行えるという規定を設けたものと承知しております。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、要するに国際穀物市況状況ですね、需要供給関係とかそういうふうなものに何か著しい変化をもたらすようなことが出ればそれを研究する、あるいはまたそういう国際的な穀物需給を安定させるために何かこういう措置が必要だというようなことが出てくればそれを研究する、こういうふうな意味ですか。
  12. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 委員指摘のとおり、基本的にはそういうことだと思いますけれども、そのときそのとき、その時期において理事会が重要かつ適当と認めるような問題について特別研究を行っていくということでございます。  ただ、情報交換研究報告ということでございますから、こういう政策をとることが望ましいというような勧告的な性格を持つ特別研究というのは少なくとも先例に関する限りございません。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 例えば一例として、ソビエトの毎年の穀物生産がふえるか減るかというようなことが、それによって今度はソビエトアメリカからの穀物買い付けが非常にふえるとかいうふうなことが大きな国際的な穀物需給変動要因である、こう見られておりますが、こういうことがこの特別研究というふうな対象になったことがあるのか、あるいはこれからなる可能性があるのか、この辺の状況はどうでしょうか。
  14. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 事実関係で申しますと、過去において委員指摘のような問題、すなわちソ連穀物生産の将来の見通し等について研究を行ったということはございません。理論的にそのような研究があり得ないということは申し上げられないと思いますけれども、それが適当かどうかということについては、先ほど来申し上げますように、理事会決定するということだと思います。  他方ソ連穀物生産見通し等については、国連機関でございますFAOとかそういうところでもそれなり研究を行っているというように承知しております。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 この食糧援助規約に基づく我が国援助という関係になりますが、最低三十万トンに相当する拠出義務を負うということで、昭和六十一年度、ことしの予算においては二百二十三億五千六百七十三万円というものが計上されているわけですが、この予算を決めた当初の段階では、円とドルレートは当時一ドル二百九円であった、こう承知しております。しかし、その後この援助を実行した時点、八月の時点、このときになりますとずっと円が高くなってきた。ドルと円の関係がずっと円が高くなったというこの動き、及びその動きによって当然円高の差益というか、予算の言うならば使い残りというふうな面が出ているのじゃないのか、こういうことをまず予算実態からお尋ねをしたいと思います。
  16. 峯嶋利之

    峯嶋説明員 先生指摘のとおり、本年度予算KR食糧援助につきまして当初計上されておる予算でございますが、これはまだ未執行の段階でございますので、具体的な支出は行われておりません。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 では、重ねてお尋ねしますが、具体的な支出はどういう時点においてどういうふうに行われるか、それを説明してください。
  18. 峯嶋利之

    峯嶋説明員 これから順次実行に移していく段階でございますが、この段階で、六十一年度当初予算におきましては一ドル二百九円の支出官レート前提に積算が行われておりますので、小麦四十万トン相当援助を行う過程で御指摘のとおり円高により自動的に不用となる部分が出てまいりますけれども、この点をこれから考慮していかなければいけないということで、他の外貨関連予算との横並び等を見まして私どもとしては不用計上するというような方向検討をしていくという状況で、検討中でございます。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 今、峯嶋課長は四十万トンと言われましたが、三十万トン以上ということは実態は四十万トン援助するということですね。
  20. 峯嶋利之

    峯嶋説明員 国際的な規約上の義務量最低三十万トンということでございますが、六十一年度予算要求としては四十万トンを目指して私ども予算要求し、その相当量につきまして予算を獲得している、こういう状況にございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、二百二十三億五千六百七十三万円は、要するに四十万トンという前提で組んだ予算であるということですね。しかし、それが、今言った円高状況の中で不用分が出てくる。  その不用分というものの使い方ですが、私の立場からすれば、そういう不用分が出てくれば、その分をさらにまた食糧援助をふやす方向へ充当する、そうすれば、それは相手国援助を受ける側も非常にいいし、またその援助する穀物買い付け発展途上国からするとすれば、日本とその発展途上国との間の貿易収支もそれによって非常に改善されるという一石二鳥の効果を持つのじゃないかと思いますが、その辺の考慮は大蔵当局としてはどうされておりますか。
  22. 峯嶋利之

    峯嶋説明員 そのような御意見があることも承知しております。が、今のところ本件のみならず他に外貨関連支出する予算項目がございまして、それ全体を横並びで十分見ながら私どもとしては検討中である、こういう状況でございます。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 結局、そういうものの処理主計局マターというふうなことのようであります。  さて外務大臣、今申し上げたように食糧援助の予定した予算円高のために四十万トンの援助をしてもなおかつお金の余りが出るというふうになったとき、大蔵当局は、円高による予算の言うならば不用分がこの食糧援助のみならずほかにもいろいろある、だからそんなものを全部寄せて予算不用分として掌握して、場合によればそれを補正予算の財源にまた入れようとか、いろいろ大蔵主計局はそういう判断をするだろうと思います。  しかし、私としては、せっかく食糧援助に計上された予算ですから、そういう余りが出ればそれをもっと援助の増額に充てるというふうなことにしたらいいじゃないか、こう思いますが、この予算はどうも大蔵省の所管だ、こう聞きましたが、しかし外務当局としても、そういう食糧援助政策立場からすれば、大蔵省に対してそういう主張要求を出されるのが適当じゃないか、こう思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  24. 倉成正

    倉成国務大臣 今の高沢委員の御趣旨については理解できますけれども、ただいま大蔵当局から申しましたとおり、財政上の立場もあろうかとも思います。したがって、やはり、この状況を見ながら、よく財政当局と相談し合いながら本来の目的を達成するように努力していきたいと私は思います。ケースバイケースで考えていくべきものではないかと思っております。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、大変慎重に、ケースバイケースというお答えですが、その辺は、我が国の外交の一歩前へ足を踏み出す、そういうケースとしてひとつ使っていただきたい、私はこう思います。  次に移ります。一時アフリカ飢餓の問題が非常に大きな問題であったわけですが、最近はマスコミの面でもそういうものはずっと報道が小さくなっていますが、今のアフリカ飢餓実態がどうなっているか、それから、飢餓の問題といえば、当然アフリカ以外、世界の各地にもそういうケースがあるだろうと思いますが、そういう実態は今どうなっているか、お尋ねをしたいと思います。
  26. 久米邦貞

    久米説明員 まず、御質問の第一点のアフリカ飢餓の問題についてお答えいたします。  国連食糧農業機関報告によりますと、八六年度アフリカ諸国食糧生産は、前年度、特にひどかった前々年度でございますけれども、に比べまして大幅に改善を見ておりまして、多くの国において平年並みもしくはそれ以上の収穫が見込まれております、ただ、幾つかの例外的な国、七カ国ほどを除きまして。これはエチオピア、スーダン等でございますけれども、におきましては依然として深刻な飢餓状況が続いているということでございまして、これらの国については今後も緊急の食糧援助というものが必要かと思われます。  他方、こういう改善が見られたということは、主として雨が多かったということが原因でございまして、構造的な食糧問題というものは大部分の国において依然として残っておりまして、そういう中長期的な観点からの食糧増産援助というのは今後も続けていく必要があると思います。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 今のお答え関連しますけれども、いわゆる発展途上国ですね。今、世界人口総数約四十五億と言われる。西暦二〇〇〇年になりますと六十億から六十一億ぐらいの世界人口になる、こう言われている。非常な人口増加ですね。その増加する分の大部分発展途上国人口増加している、こういうことで、発展途上国では、人口がふえればそれに応じて非常に食糧輸入がふえる、こういう動きがあるわけですね。数字によれば、これはFAOの予測ですけれども発展途上国は一九九〇年には一億トンも輸入するようになるだろう、二〇〇〇年には一億七千万トンも輸入するようになるだろう、こう言われていますが、そういう発展途上国でどんどん輸入がふえていくということに対して、一方、じゃ供給能力の方は果たしてバランスがとれるのかどうか、こういう一つ大きな問題がある。  それから、一方では、それと逆の現象で、今アメリカは非常な余剰農産物を抱えているとか、あるいは東南アジア諸国も最近非常に米の生産が過剰になっている、日本でも米は過剰で盛んに減反をやっておる、一方ではこういう過剰という姿がある。  この足りないという心配と過剰、こういう、現象としては非常に矛盾した現象ですが、いわゆる我が国食糧安全保障というふうな立場から見たときに、非常に長期的な趨勢ではありますが、こういう事態見通しなりそれに対する対応の仕方ということを農水省当局としてはどういうふうに把握されているか、この点をお尋ねしたいと思います。
  28. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答え申し上げます。  先生が御指摘のように、FAOにおいては、一九八一年に、五年前でございますが、発展途上国穀物需要を予測しております。人口増加等によりまして将来の開発途上国穀物輸入はかなり増加する、需要増加するという予想を立てております。  公表されております見通しについては幾つかのシナリオがございますが、先生が御指摘のように、過去の趨勢延長いたしますと、そのシナリオによりますと、西暦二〇〇〇年には発展途上国の純輸入国輸入総量は約一億七千万トンという数字が出ております。しかし、その後、現在までの世界穀物需給は、世界的な景気低迷によります需要の伸び悩み、一方では主要穀物生産国生産拡大によりまして、緩和基調ということで推移しております。  しかし、長期的に見れば、今後も開発途上国中心とする人口増加あるいは経済発展に伴いまして畜産物消費増加、一方、気象変動幅の増大あるいは砂漠化進行等もございまして、不安定要因も考えられます。また、技術進歩によります単収の増加等要因もありますが、長期的に見ますと、世界穀物需給は必ずしも楽観を許す状況とも考えられません。我が国といたしましては、国土条件制約等から、一定程度穀物輸入はどうしても頼らざるを得ないという状況にあります。  以上のような状況を勘案いたしまして、今後とも、我が国農業生産性の向上を図りつつ、国内生産可能なものについては極力国内生産することを基本といたしまして、総合的な食糧自給力維持確保に努めるとともに、開発途上国への農業協力あるいは我が国におきます備蓄等を通じ、食糧安定的供給に努めてまいりたいというふうに考えております。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 今の農水省高橋参事官お答えの中でも、我が国としてもてきるだけ穀物生産性を向上するような努力もしたい、こういうお話がありました。  さて、その中心は、言うまでもなく米であります。そして、今、日米の米の問題ということが登場しておりまして、私もいろいろお尋ねするつもりで用意はしておりましたが、事態の方が非常に発展しておりまして、けさのNHKのニュースでも、アメリカヤイター通商代表が対日の米の問題について非常に重要な見解発表をやった、こう伝えられております。  その見解発表は一体どういう内容であったのか、これが一つ。それから、そのヤイター通商代表見解に対してアメリカ精米業者等の業界はどういう対応をしているのか、これが第二。それから第三には、では、そのことを我が国政府はどのようにとらえ、どのように対応していくのか。この三点の問題をまずひとつ御説明を願いたいと思います。
  30. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 お尋ねの三点のうち、第一点と第二点、すなわち、ヤイター代表発表の概要、それから提訴者であるRMA全米精米協会反応について私からお答えいたします。  アメリカ通商法の三〇一条の提訴について、USTR米国通商代表ヤイター大使は、二十三日、骨子次のような発表をいたしました。  ヤイター通商代表は、米に関する米国精米業組合提訴につき二本立ての戦略を発表し、三〇一条に基づく調査を開始しないこととした。すなわち三〇一条の全米精米業組合提訴を却下したということでございます。  ヤイター代表新聞発表によりますと、三〇一条は貿易問題解決のために常に最適な方法ではない、かつ唯一の方法でもない。  米国精米業組合懸念は理解し得るが、懸念と申しますか関心は理解できるが、提訴を受け入れればガット紛争処理手続を開始することを法律上余儀なくされ、これは日本市場開放を促進することにならないと思われる。  米国方針としては、ウルグアイ・ラウンド、すなわちニューラウンドに関する全ガット加盟国のコミットに関係している、そういう方針である。その方針の中には、ニューラウンドで合意されたロールバック規定農産物貿易を含む市場開放規定が含まれる。  日本の米に関する制度が、米国の考えるとおりガットとの整合性がない場合には、ロールバック規定が適用される。また、ガットとの整合性いかんにかかわらず、農業貿易に関する制約、コミットメント上、日本は米の制度ウルグアイ・ラウンド対象とする義務がある。  現在の日本の米に関する制度に対し妥当な変更を求めることは、米国のみならず多くは開発途上国である米の全生産国にとって合理的な交渉目的である。  それから、日本が一九八七年年央までにこの件について前向きに対処することのない場合には、我々、すなわち通商代表部本件を速やかに見直す。  米国の米に関する制度にも、間接的補助金に大きく依存しているという問題があり、日米ともにみずからの政策ウルグアイ・ラウンド対象とすべきである。  昨日、二十三日発表されました通商代表プレスリリース骨子は、以上のとおりでございます。  次に、三〇一条の提訴を行いましたRMA全米精米業組合反応でございます。  ヤイター代表発表の後、同じくプレスリリースが出ておりますけれどもRMAは、このレーガン大統領決定に深く失望している。USTR、すなわちアメリカ通商代表部RMA主張の正しさを認めたにもかかわらず、提訴が却下されたことに驚いている。  RMAは、米政府の言うところの市場開放を求める積極的貿易政策提訴却下ということがどういう関係にあるのかということに当惑している。  日本保護主義の牙城であり続けるときに、なぜ米国市場日本製自動車テレビ等に開放する必要があるのか。  ヤイター代表は、日本が一九八七年年央までに新ラウンドで米について十分な前進を見せないときは本件を再検討すると示唆しているけれども、今までの態度から見て、日本は何らオファーするとは思われず、九カ月も待つ必要がわからない。  最後に、日米の米の制度を比較するヤイター代表の発言、すなわちアメリカにも問題があるという発言は、誤解を招くものであり、不適切と考える。  以上でございます。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 これに対する日本政府の対応は……。
  32. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま政府委員から事実関係についてのお答えを申し上げましたけれども、これに対して日本政府としてどう考えるかという先生のお話でございますが、私は、米政府が三〇一条の提訴却下決定を行ったことは評価すべきであると思っておるわけでありまして、このことについて私もプンタデルエステにおいてヤイター代表に、またアメリカ、ニューヨークにおきましてシュルツ国務長官にも申しておった次第でございます。  なお、ウルグアイ・ラウンドとの関係でございますが、閣僚宣言の枠内で交渉に積極的に参加すべきことはもちろんでございますけれども、一方、食管制度日本農業にとっての重要性、米の国家管理制度ガットとの整合性、これは旧ラウンドとの関係を申しておるわけでございますが、その理解を深めるために一層の努力を払ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 今ヤイター大使の発表についての御説明がありました。全米精米協会はこれに対して非常に不満であるということではあるが、私の感じとしては、ヤイター大使の発表したアメリカ通商代表部の態度は、二枚腰、三枚腰というようなことでこれから日本へ迫ってくる、こういう問題点をはらんでいるのではないか、こう思います。  まずヤイター大使自体は三〇一条の提訴を却下はしたけれども、彼自身の日本の食管制度に対する認識としては、これはガット規定に反する、不公正取引のものである、そういう見方、立場に立っているのではないのか。この辺はヤイター氏はどういう認識に立っていると外務当局はお考えか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  34. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 委員御承知のとおり、日本政府の態度は、食管制度ガット上問題がない、ガット整合性を有するということでございますけれどもヤイター通商代表の意見は、日本の食管制度ガットと必ずしも整合性がないと考えているように推察されます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 今の御説明では、ヤイター氏はアメリカの米にも実は補助政策があるのだということを言って、しかしそれも不公正だ、そして、日本の食管はそれよりなおさら不公正だ、こういう言い方で、国際舞台でアメリカもそういうことをやめるが、そのかわり日本もやめろ、自分も痛みを受けるが、日本もその意味においてはもっと痛みを受け入れるべきだ、こういう一種の捨て身の態度で迫ってくるというのがヤイター氏のこの発言の一番のポイントではないか、私はこういう感じがいたしますが、その点は今度はこちらの認識と対応はどういうふうにされるか、それをお尋ねしたいと思います。
  36. 倉成正

    倉成国務大臣 ニューラウンドで個別的に何を取り上げるかということについては、まだ日本政府としては決めていないわけでございます。したがって、ニューラウンドでこれからいろいろ取り上げていくことになろうかと思うわけでございますが、その際、いろいろ話し合いをしていくということになろうかと思いますし、ヤイター代表の発言そのものを私がコメントすべき立場にはございませんけれども国内的な対策というようなこともやはり考慮にあるのではなかろうかと考える次第でございます。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 重ねて大臣お尋ねでありますが、今までアメリカ日本に対する農産物の開放要求は、牛肉とかオレンジとか、そんなところから始まって、レモンとかたばことか、彼らは日本一つ一つ扉をあけさせるということで追ってきて、いよいよ米に来た、こういう感じを私は持つわけです。その意味においては、今度の日米の米問題は一つの正念場に来ておる、こういうふうにとらえるべきではないかと思うのです。  その点において、日本は、これはガットに適応した食管制度だ、こういう立場で頑張られますが、国際舞台へ行きますと、日本主張が通るにはなかなか難しい条件が具体的にあることは認めざるを得ない。そこヘアメリカがみずからも捨てるぞと言って迫ってきたときに、日本にとっては大変重大な事態が出てくるのではないか、こんなふうに思いますが、その辺のところの大臣の御認識をもう一度お尋ねしたいと思います。
  38. 倉成正

    倉成国務大臣 確かに理論的に申しますと、先生のお話のような問題は起こり得ると思います。しかし、御案内のとおり、今度ガットニューラウンドの場において、農産物の輸出補助金の問題を中心として大論争がアメリカとヨーロッパあるいは途上国等との間で本当に混戦状態で大変な議論が巻き起こったわけでございます。  そういう中で、日本の食管制度の問題は幸いにして議題となってなかったわけでございますけれども、やはり一連の関連を持つことも理論的には考えられ得ることでございます。農産物の貿易の障害を除くという意味でですね。しかし、私は、先ほど農林省から申し上げましたように、日本の米というのは日本農業の根幹をなす問題であり、また旧ラウンドにおきましても国家貿易制度としてガットとの整合性を持っておったというわけでございますから、この主張をひとつ新ラウンドの中でも貫くように努力していきたい。  しかし、相手のあることでございますから、いろいろ各国間で話し合いをしていく、その話し合いの中に全然応じないというわけにはいかないと思っております。十分日本立場説明し、そしてまた我々の主張を理解していただくように最善の努力をしていきたいと思っておるわけでございまして、三〇一条の問題について私があえてヤイター代表あるいはシュルツ国務長官に、この問題は日本国にとって大事な問題だから慎重に扱うようにということを申し入れたのもそういう趣旨でございます。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、もう辻委員に交代いたしますので、私の質問はこれで終わりますが、最後に私の見解として一言言わせていただきたいと思います。  九月の二十二日、三日、フランスのストラスブールで欧州評議会の会議がありました。この会議は、要するに一九八五年のOECDの活動報告、それを議論する、こういうふうな会議で、実は我が国会からも江藤隆美議員が団長で、私もその団の一員に入ってこのストラスブールの会議に出席をいたしました。  そのときの発言の模様を見ますと、失業問題とかいろいろな論点はありましたが、特に農業政策、この問題について非常に強く豪州あるいはニュージーランドあるいはカナダ、こういう国々から、要するにアメリカの農業保護政策はけしからぬ、それからEC諸国のやり方はけしからぬ、そこではまだ日本とは言っておりませんでしたが、当然これは日本にも波及してくる問題になります。そういう強い強い国際的な農業補助をやめるということの世論があることは確かに間違いない、こう見たわけであります。  日米の二国間でやっておる今の米の問題、これはこれで非常に重大な問題ですが、今度はニューラウンドというもっと国際的な広い舞台へ出た場合に、EC諸国も自分ですねに傷がある、アメリカだって自分のすねに傷があるというような立場だけれども、この日本の米、食管となると、どうもそれらもみんなで日本に向かってやめろという国際的な圧力がかかるんじゃないのか、こんな点も私は、一つ見通しではありますが、大変憂慮いたします。  そういう意味においては、この国際舞台で、ニューラウンドの場で頑張るということについては、またこちらもよほどの論点整理をして、またひとつよほどきちんとした腹を持って臨んでいただきたい、こういうことを要望として申し上げて、あと辻委員に交代をいたしたいと思います。
  40. 山口敏夫

    山口委員長 次に、辻一彦君。
  41. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私、今の高沢委員の質問を受けて、少しそれに引き続いて関連していきたいと思います。  第一問でお尋ねしたいことは、大体高沢委員から今質問があって、いろいろ御答弁がありましたから、それらをひとつ踏まえた上で入っていきたいと思います。  きょうは私も、RMA提訴を却下をしてアメリカガット違反として判断をしているという問題点、それから食糧安保としての考え方、それからもう一つは、日本アメリカ、ECの価格政策の比較、そして時間があれば援助米の問題について若干触れたいと思います。  まず第一に、今論議がありましたが、RMA提訴アメリカ政府が却下をした、こういうことはアメリカ政府の良識に対して敬意を表したいと思います。しかし、問題は非常に残っているというのは、ヤイター代表も、今答弁の中で、また朝のニュース等で述べておりますが、日本についてのRMA提訴は、ガットで国家貿易品目として米が認められている、だからこれを取り下げるんだというのではない。却下はしたけれども日本輸入制限、食管制度ガット違反である、こういう判断をしているということ、これは今後に大きな問題を残しているということが言えると思います。  アメリカの言うガット違反とは一体どういう点を指しておるのか、これについての見解をまずひとつ伺いたいと思います。
  42. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 日本政府は、先ほど申し上げたとおり日本の食管制度ガット整合性があるという見解でございます。それに対して、今度の新聞発表で見る限り、アメリカ通商代表は、日本の食管制度については整合性はないのではないかという見解をとっているように推察されます。しかしながらその具体的な説明ぶり、根拠については説明を受けてございません。したがって、この席で推測をするのは差し控えさせていただきたいと思います。
  43. 辻一彦

    ○辻(一)委員 まあこれはいずれいろんな論議の場でまた公式、非公式にあろうかと思いますからよくただしてほしいと思いますが、そこで、アメリカはかねてから、米については暗黙の中にはガットで認めている国家貿易品目であるし、日本の米は聖域であるというような見解を非公式にはしばしば漏らしておる。またもう一つは、米は日本にとっては主食であるというだけでなしに、日本の歴史、風土、文化、そういうものと非常に深いかかわり合いがあるし、これに手をつければなかなか大変なことになるということも理解をしておる。そういう意味で米は聖域で、なかなか手をつけ得ない、こういう考えを持っておったと思うのですね。  しかし、そのいずれであるにしても、日本の米に触れれば日本農業の根幹を揺さぶり、日米関係が緊張して重大な政治問題になるということを知りながら今こういう要求をしてくるというのについては、アメリカ日本の米に対する考え方にかなりな変化が出てきたんじゃないか、こういうふうに思いますが、これについてどうお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  44. 倉成正

    倉成国務大臣 アメリカも御承知のとおり民主主義の国でございますから、アメリカのお米の業界からの提訴USTRに対して行われた、これに対してUSTRとして一つ見解を示したということではないかと思うわけでございまして、特別大きな変化があったのかどうかという判断は、私はまだここで申し上げるべき立場ではないと思います。
  45. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは問題を整理するために、日本の米がガットで認めている国家貿易品目であり、そういう食管の制度は認められている、私もそういうように考えますが、ちょっとその理由を整理して、政府のこれについての考え方をもう一度整理して聞かしてください。
  46. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 我が国の米を中心とする食管制度ガット十七条によって認められた国家貿易制度であるということをガット加盟当初から日本主張しておりました。事実関係といたしまして、その点について米国を含めた諸外国から批判されたということはございません。
  47. 辻一彦

    ○辻(一)委員 両国の主張は直接ぶつかっているわけじゃないのですからまだまだわかりませんが、とにかく報道されるところのアメリカ主張と我々が三十年来持っておった主張とかなり大きな食い違いがある、こういうことは言えると思うのですね。  そこで、アメリカの方は今度ガットの協議に応じるべきだ、応じなければ来年の夏は三〇一条を直接政府で取り上げる、こう言っておるわけですね。私はこれは安易に妥協してはならないと思うのですが、そういう意味で、我が国としてガットの新ラウンド協議に簡単に応じるべきでもないと思いますが、この点はどうお考えになっていますか。
  48. 倉成正

    倉成国務大臣 農産物について何をニューラウンドの中で取り上げていくのかということは別にコメントしてないわけでございます。しかし、今ガットにつきまして、もう専門の先生ですから御承知のとおり、各参加国が交渉の正式な終結までにスタンドスティル及びロールバックの監視についての合意をしているわけでございます。したがって、これについて何を取り上げて、これからどうしていくかという問題はこれからの問題でございますから、交渉していこうとみんなの国が言うときに、もう全然話し合いをしないということはできないのじゃないか、やはりお互いの話の中で我々の主張を貫いていくように最善の努力をしていくということじゃないかと思います。  先ほども高沢委員からお話がございましたけれども、私も十年来欧州関係のストラスブールあるいはその他の会議に参加しておりますけれども、とにかく欧州共同体におきましても最大の問題は農業問題でございまして、最近まで欧州共同体の予算の八割が農業補助金に使われておった。イギリスとフランスと相当なこの問題についての意見の対立があったということもこれあり、これは一番端的な例がイギリスとフランスとの対立でございますが、そのほかの国もまたいろいろあるわけでございますね。スペイン、ポルトガルが入ってくればまた複雑になってくる。いずれの国におきましても農業問題についてはいろいろな問題が錯綜しておるわけでございますから、それらの問題を踏まえながら、我々は、日本としては日本立場を貫くべく最大の努力をしていくということではないかと思うわけでございますから、ニューラウンドの場である程度の議論をするということはこれはやむを得ないことではないかと思います。
  49. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今大臣の方からもECとの問題にも触れられましたので、ちょっと私は質問の順序を変えて、日本アメリカ、それからECの価格政策を若干比較をして御質問したい、こう思います。  日本アメリカ、ECの価格政策、価格支持、輸出補助金等はそれぞれ相当財政負担をしておると思うのですが、これについて、ちょっと数字の点を農林省の方からお伺いしたい。
  50. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 日本アメリカ、EC三カ国の価格対策なりあるいは輸出補助政策の比較についてのお尋ねでございました。  お答えを申し上げます。  御案内のように、農業につきましては、やはり他の産品と違う特性が大変ございまして、特に自然条件等に左右される面が非常に大きいわけでございます。こういった観点から、世界の主要農産物生産国は、そのほとんどが何らかの政策措置の中におきまして価格面あるいは所得面の対策を実施してきているわけでございます。御指摘のありました日本アメリカ、ECについてもそういった対策を従来から実施をしてきているわけでございますが、その概略について申し上げます。  まず日本でございますが、これについては、もう御案内のとおりいろいろな種類の農産物につきまして価格制度がとられているわけでございます。当然、産品の性格によりましてその具体的な措置の内容が異なるわけでございますが、例えば米につきましては、食管が直接買い入れるいわゆる管理価格制度をとっておりますし、牛肉、豚肉等については価格帯を設けまして実際の市場価格がその中で安定をするような措置を講じております。また、大豆、菜種等あるいは加工原料乳につきましては不足払い制度をとっておるわけでございます。こういった価格対策の範囲に属する予算措置といたしまして、八六年度予算額で申し上げますと約五千億円、農業関係予算が全体で二兆五千億ほどございますので、大体二〇%程度が価格対策に向かっているというふうに御理解いただきたいと思います。  次にアメリカでございますが、アメリカは物によって違いますが、主要穀物につきまして目標価格とローンレートという二段階の支持価格を定めることによりまして最低価格の支持なりあるいは農家の手取りの保障ということを実施しております。それに要するアメリカ政府の予算額は、八六年度数字で申し上げまして約三兆五千億これに充当されておりまして、同じ年度アメリカの農業予算全体九兆四千億の中に占める割合としては約三割ということでございます。  それからECでございますが、ECは非常に幅広い農産物につきまして共通農業政策のもとで域内の指標価格なりあるいはこれに連動しました介入価格を定めることにより価格支持を行っておるわけでございます。輸出補助金と合わせてこれに要する金額が八六年度で約三兆七千億、農業総予算が三兆九千億でございますので、農業予算の中で圧倒的な割合が価格対策に向かっているわけでございます。  それから、特に輸出補助面の対策につきましては、これは先ほどお話がございましたように、最近の農産物の過剰状況を反映いたしまして、各国の価格対策が輸出面では輸出補助金政策という形にあらわれてきておりまして、特に、ECにおきましては域内の市場価格と国際価格、これは当然域内の方がはるかに高いわけでございますので、その差額を輸出補助金で補てんをすることによりまして、域内で生じた過剰農産物の処理、輸出拡大、あるいは新規市場の開拓を推進するという形をとっております。  また、アメリカは、従来どちらかといいますと輸出補助金は望ましくない形の政策であるという立場で輸出補助金を比較的使わないタイプの国であったわけでございますが、昨年末成立いたしました八五年農業法の枠組みの中で、アメリカとしてもアメリカの農産物の輸出の減退を背景にいたしまして輸出補助に積極的に乗り出している、具体的には、アメリカ政府が過剰在庫として持っております穀物等の現物を輸出業者にボーナスとして支給をすることを通じまして輸出のインセンティブを与えるというような措置をとっているわけでございます。
  51. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今の数字はわかりましたが、今アメリカ予算が農業予算に対して価格支持の経費が三割、これは正確に言えば三七%、間違いないですか。
  52. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 正確に計算いたしますと、先生のおっしゃるような数字に近い数字になろうかと思います。
  53. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはもう既に十分わかっていることですが、一応念のために数字お尋ねしたわけです。  アメリカ、ECもそれぞれ自分の国の農業を守るために農産物の価格支持、輸出補助金、相当な多額の財政負担をしている。日本はパーセントで言えば総予算に対して一%、それから農業予算に対して二〇%になりますが、アメリカの場合は総予算に対して価格支持は二・五%、農業予算に対して三七%、ECは、予算の立て方がそれぞれ国があって、そしてその上にあるわけですから違いますが、それにしても総予算の六二%が価格支持政策費であり、農業予算の九五%が価格支持あるいは輸出補助金に使っている。言うなら、日本の五千億に対してアメリカは七倍、それからECは七・四倍、価格支持のために、あるいは輸出補助金に現実に財政を投入している。これは事実であると思うのですね。  何か今までいろいろ論議をされている、あるいはマスコミ等に日本だけが非常に膨大な価格支持をやって、そして農産物を支えている、こういうような印象が非常に流されておるように感ずるのでありますが、この事実は数字を見ればまことに違っているし、明らかであると私は思いますが、この点について大臣、どうお考えになりますか。
  54. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 先ほど塩飽国際部長から御説明がありましたとおり、ECについても米国についても相当な価格支持政策を行っている。かつ、委員指摘のとおり、日本の価格支持政策日本予算に占める価格支持のコストというものは高くないという点はそのとおりでございます。  他方、これは米国主張と御理解いただいていいと思うのですけれども、やはり日本の米の価格が国際的に非常に高いということで、それは貿易を制限しているからそういう高い価格を維持できる、したがって、そのコストは国民が負担している、消費者が負担している、それは不合理ではないだろうかという指摘だろうと思います。
  55. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その問題は、私は食糧安保論というところで若干触れたいと思うのですが、今継続して、日本日本の農業を守る、特に主食である米を守るために食管制度と国会決議によって米については価格支持をやっている、これはもう当然のことですね。自給政策をとっている。日本アメリカもECもそれぞれ自分の国の農業を守って、食糧自給のためにかなりな支持あるいは助成金、補助金を出している、これはそれぞれやっていることであり、お互いのことであると私は思うのですね。各国の独自の農業政策食糧政策であって、それぞれの国の主権に属しているものであって、余り内政干渉がましいことを言って立ち入ってくるということは行き過ぎではないかというように思いますが、大臣、これについてどうお考えになりますか。
  56. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、農業というのは、先ほど農林当局から申しましたように、自然条件にも支配されますし、また国民の食糧として、いざというときにどうしてもこれはなくてはならないものでございますから、この問題について特別な考え方を持つのは当然のことだと思うわけでございますし、また国によってそれぞれの農業政策が価格政策に重点を置くのか、構造政策に重点を置くのかということは、それぞれの国で異なってしかるべきだと思うわけでございますが、今問題とされているのは、いわゆる日本の農産物が、例えばいろいろな個々の物資については農林当局からお話があろうかと思いますけれども余りに外国の農産物と比較して高過ぎる、そういう点がいろいろ議論されておるわけでございまして、自由に、本当に外国から入れるならもっと安い農産物が手に入るじゃないかということを議論されておるわけでございます。  しかし、我々は、そうであるけれども、農業というのはやはり特別な性格を持っておるから、根幹については我々としては守っていかなければならないということを主張しておるわけでございまして、これはなかなかデリケートな非常に難しい問題ではなかろうかと思っております。
  57. 辻一彦

    ○辻(一)委員 農産物の国内価格と国際価格がかなり大きな開きがある、それは事実ありますね。また、そういう国境で一線を引いておっても、その格差がどんどん大きくなれば、その圧力は大変で容易じゃない。やはり国内においてはそのコストを下げていく努力は十分やらなければならない、これは当然であると思いますね。そういうことを前提にして私は申し上げておりますので、御理解をいただきたいと思います。  さっきも言いましたが、日本が非常に不当な価格政策をとっておるというような印象を与えかねない、やはりいろいろな宣伝がされているのですね。この際、私はもう少しこういう数字をわかりやすく説明をして、国内においてもあるいは国際的においてももっと理解を広げていく、深めていくということが、日本農業を守っていく、米を守っていく上にも大変大事だと思いますが、この点はいろいろな努力をする必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  58. 倉成正

    倉成国務大臣 政府委員からお答えした方が適当かもしれませんが、大変政治的な感覚を申せということであれば、私は、お話しのように、今問題にされているのは、価格維持政策が問題にされているというよりも、やはり農業貿易の障害、いわゆる貿易の障害という点でいろいろ議論がされているのが本質じゃなかろうか、その一環として価格政策が議論されておるのではないかと私は思うのです。  そういう意味から申しますと、いろいろな例外条項とかいろいろな割り当て制度とか、いろいろな問題についていろいろ議論が行われておる。しかし、我が国我が国立場があるから、これは我が国としての主張を今一生懸命になって農林当局はやっておるというのが現状じゃないでしょうか。ですから、一局面だけをとらえて、ここのこの部分は少ないから正当性を主張しようとしても、その議論で説得できるかどうかということはちょっといかがなものだろうかと思いますけれども、御専門の先生のお話でございますから、また御意見があればお聞かせいただいて、また、私に意見を述べよと言われれば申し上げたいと思います。
  59. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私もこの問題だけで全部が説得できるというふうには思いません。しかし、日本が価格政策で非常にたくさんの金を使っているという印象をやはり国際的にも国内的にも与えているので、是正する点あるいはもっと説明をする点は理解を深める必要があるだろう、こういうことを申し上げたわけです。  そこで、前の新聞等をずっと読み返してみると、ヤイター代表は、日本の米(こめ)食糧安保論は理解できない、こういう発言をしておりますね。直接聞いたわけじゃないですから、新聞、マスコミを通してですから、どういう表現であったかは定かではないのですが、趣旨はそんなに変わりがないと思うのです。言うなら、米聖域にあらずということですが、実は私は昨年の九月に五、六人の超党派の議員団でアメリカの方に貿易摩擦、農業問題というので十日間ほど参りまして、向こうの国会あるいは政府筋、USTRにも参りました。いろいろなところで十日間接触をしてかなり論議を重ねたのです。その中でUSTRへ参ったときに、ヤイター代表は下院の公聴会に呼ばれて今出かけていくということで、十分な論議をせずに別れましたが、責任者と随分論議をしました。  その中で、もっと日本食糧を買えないかというお話だったので、私はこういうことを言ったのです。アメリカの農産物を買うのでは、日本は最大の買い入れをやっている、これはもうぎりぎりだ、日本穀物の自給率は三二%、今に三割を割りかねない状況にある、国の安全保障という点から考えても、これ以上自給率を下げるわけにはいかない、特に米についてはそうなんだ、そこでアメリカ日本の米についてどう考えているんだ、こういって聞き直したのです。そのときに彼らは、日本は狭い国土で食糧をつくっている、だから米まで自由化要求は無理でしょうね、こういう認識を示しておったのです。しかし、農林省からも、今までしばしば国会論議をしても、そういうような認識をアメリカは持っておるということを、前のブロック農務長官あるいはその代表もそういう認識を持っているということをいろいろな機会を通して聞いておった、私はそういうように理解をしていたのですが、四月十六日にリン農務長官が米聖域にあらずとアメリカで一部新聞のインタビューに答えている。それを見たときに、これは非常に問題が今後出てくるのじゃないかという感じがしたのです。  というのは、リン農務長官はカリフォルニア州の出身であるし、レーガン大統領が加州の知事当時の農務省の局長である。それで連邦政府の農務長官になっておる。加州とは非常に縁が深い。そのリン農務長官がこういう発言をしておるということは、これは火が広がる懸念がある。そういう意味で、衆議院の農林水産委員会で四月十六日にこの問題を取り上げて前農相の見解をただしたことがあって、今のうちによく対策を講じてやらないと火が広がる懸念があるという私の意見も述べておいたのですね。今回、RMA提訴を機会にアメリカのそういう日本の米に対する認識が、さっきも申し上げたが、やはり変化しつつあるのじゃないか、こういう感じが私はするのですね。  そこで、日本の米に対する重要性、私はこれをアメリカによくよく話をしないといけないのじゃないかと思うのですが、農林省も随分努力をしておりますが、これは外務省も当然でありますが、しっかりとやってほしいのですが、外相、これについてひとつ決意をお伺いしたいのですが。
  60. 倉成正

    倉成国務大臣 私、米については、ただいま委員からお話がございましたように、日本食糧の基本をなすものでございますし、豊葦原の瑞穂の国とも申すわけでございますから、これはもう本当に大切な作物であり、この作物についてはぜひひとつ諸外国の理解を得るために最善の努力をしたいと思います。  同時にまた、価格が余りに国際価格と開き過ぎるということになりますと、それは当然安いものが欲しいという気持ちが消費者の間に起こってくることも事実でございます。したがって、その生産性の向上のために格段の努力をする必要があろうかと思うわけでございます。バイオテクノロジーその他新しい技術も進んでおりますから、今までの技術に関する限り明治から考えましてもせいぜい二倍程度の増加であろうかと思うのですけれども、これから飛躍的に、科学博で一本のトマトに一万五千個ならすことができたということから考えまして、いろいろな工夫をやはりしていかなければいけないのじゃないか、あるいは規模の拡大もしていかなければいけないのじゃないかということで、やはりこういう機会に日本の農業の基本的な改革と申しますか、構造改革に努力をしていかなければいけない。価格政策だけでこの問題を解決していくのにはおのずから限界があると思います。
  61. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それで、米が仮に自由化というようなことに将来なったという問題が起こったとき、小麦が戦後四十年間に自給度がどのように変遷したかということと比べ合わせてみると、やはり非常に問題があると私は思うのですね。  そこで、農林省の方から、戦後四十年間小麦の自給度というものがどういうふうに変化をしたか、細かい数字は要りませんので、最高自給度の高いときは何%、そして最低、それから現在どういうふうに変化しているか、ごく簡単で結構ですから、聞かせていただきたい。
  62. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答えいたします。  自給率について申し上げますと、小麦でございますが、戦後におきまして高いところでは二十年代に四九%程度の自給率ということになっておりますし、今先生指摘の最も低い自給率ということになりますと、四十年代の後半におきまして四%程度に下落した、こういう事実があるわけでございます。なお、最近におきましては一二%程度を維持しておるところでございます。
  63. 辻一彦

    ○辻(一)委員 我が国では、かつて米とともに小麦、麦もかなり高い自給度を持っておったわけですが、戦後に食糧の非常に急迫したときがあった。アメリカ小麦援助を受け入れて、これは随分と助かったわけですが、しかし、それを引き金にして小麦の市場というのは日本アメリカの市場が非常に拡大をされる、そして今数字がありましたように、大体半分の自給——戦時中等をいえばもっと高い自給率を持っておりましたが、戦後でも半分という時期があった。それが四%に落ちて、そして今転作で何とか支えて一二%ということでようやく維持をしている。この小麦の自給度の変遷ということをずっと見ると、米を自由化する、そういうことになれば同様な状況が起きかねない。例えば今日本に適する米は当然短粒種ですが、アメリカももし日本にどんどん米が入るということになれば生産体制を短粒種に切りかえていくと思うのですね。  そういうふうにして構造的に日本の米までが外国に相当数依存するというような状況を起こせば、麦もしかり、そしてまた米もその道をたどるとするならば、国家の安全保障という観点から、食糧はできる限りどの国も主食は自給したいというのがそれぞれの国の気持ちですから、そういう点から考えて、非常に問題が起こってくると思うのですね。そういう意味で、米自給の基本方針はしっかりと守っていかなくてはならない、こう思いますが、国の安全保障、食糧安保等々の観点から、大臣、どうお考えになりますか。
  64. 倉成正

    倉成国務大臣 農林大臣がここにおられて御一緒に答弁した方が適切でないかと思うわけでございますけれども、あえて私に御質問でございますが、私は、今先生のお話しのように、日本食糧ができるだけ自給できることが望ましいと思います。ただし、御承知のとおり非常に広大な面積を持った百ヘクタール以上の耕地面積でつくる作物と、一ヘクタール以下の、平均しますと本当にそれ以下の非常に小さな経営でやろうとすると相当無理がいくことも事実でございます。  しかし、アメリカと話をしたときに、アメリカに対して私どもの一番の強みというのは、かつてアメリカ政府が行いました大豆のエンバーゴーの問題がありますね。こういうことがあったときに日本は大変な混乱と不安を感じた、そういうこともこれあり、やはりある程度の——ある程度のというか、食糧については基本的に確保できるようにしておきたいと思っておるわけでございますが、完全な自給ということは、もう既に御承知のとおり、穀物で三二%の自給率になっている。鶏について申しますと、コケコッコーと鳴いているけれども、あれは日本語でなくて英語で鳴いていると申しても差し支えないわけでございまして、そういう意味から申しますと、私は潜在的な自給率と申しますか、いざというときに必ず日本の国民が何とかやっていけるというようなことを真剣に考えるべきではないだろうかと思うわけでございまして、石油が全部とまってしまえば、たとえ自給政策をとっておりましても、日本の農業生産というのはがたっと減ってしまうわけですね、今の農業生産の方式でいきますと。したがって、総合的に農業政策というのは考えていくべきではないだろうかと思います。  しかし、これは所管は農林大臣が答えるべきことを、私に御指名ございましたから、あえてお話を申し上げた次第でございますので、農林大臣からいずれ改めてもっと専門的な御答弁があろうかと思います。
  65. 辻一彦

    ○辻(一)委員 農林大臣にここに出てもらえば一番いいのですが、なかなかそうもいかないものですから、また機会を得て農相には委員会で尋ねたいことがあります。  それで、この問題は大変大事なのでもう一度触れておきますが、国民生活、国民経済の中で食糧とエネルギーが何といっても基本的なものであると思うのです。我が国は今は石油状況、原油は緩和をしているので、エネルギーについては当面はそれほど心配がないようですが、しかし、かつての石油ショックを見ても、将来の石油資源等々を見ても、石油は大部分を、まあ九九%までは外国に依存しておる。それから新しいエネルギー源としての原子力発電、これも半分は自前の点もありますけれども、しかし濃縮ウランという点を考えればこれは完全に外国に依存をしておる。言うならば国民経済の二つの大事なもののうちの一つ、エネルギーはほとんど外国依存、ここからなかなか抜けるわけにいかないですね。  これは急にはなかなか変わらないわけですが、もう一つ食糧の中で、さっき触れましたが、米麦。麦は今自給度は非常に落ちてしまっておる。やはり米はそういう意味ではしっかり守って、そして少なくともエネルギーと食糧食糧の中の米だけは確保しておくということが日本の国家としての自主性というものを確立していくあるいはしっかりさせていくために欠くことのできない要件じゃないかと思うのです。そういう意味で、私は、何でも食糧を全部日本で自給しろ、そんなことを申し上げているわけではないのですが、一番我が国にふさわしい、そして単位面積から最も多量のカロリーを生産して国民を支える米だけは自給の基本を持ってしっかりやっていくことが国の安全保障という点からも大事ではないか。国の安全保障という点になればこれは外相の当面される所管の問題ではありますし、そういう点であえて先ほどお尋ねしたのです。そういうことで、エネルギーと食糧食糧については一つだけは確保すべきだ、こう思っております。それは既に見解を承りましたから、ひとつ意見として申し上げておきます。  大体時間が来たのですが、最後に援助米の問題であります。  これは既にヤイター代表RMAの代表に援助米構想は難しいということを伝えたわけですから、一応消えてはおるのですが、しかし、これは将来また出てくる可能性がないとも言えないと思うのです。  さっき申し上げましたが、去年九月にアメリカの穀倉地ワシントン州をフォーレ−議員なんかの案内で見て回ったのですが、そこの農民と会うと、農村には物すごい小麦の滞貨がある。これは大変な山で、野積みにしていますね。そこで、それを日本が、黒字なんだから買い上げて、アフリカ等の援助に使えないかというお話を各地で随分聞きました。しかし、そのときに私たちは、一つは、日本は二割に及ぶ減反を現実にやって大変なんだということ、もう一つは、開発途上国から援助用の食糧を買うということが国際的な申し合わせになっておるのでなかなか難しいだろう、こう言って帰りました。政府も一時この問題をかなり検討されたようですが、やはり難しいということですね。これは消えたようです。  私は、米についても同じように思うのですが、米についてはどうなのか。私はタイ等はこの問題について非常に気にしておると思うのですが、米についても同様であるかどうか、ちょっと見解をお伺いしておきたい。
  66. 川上隆朗

    川上説明員 米国産米の援助使用の問題でございますが、我が国食糧援助においてアメリカ産米を使用するということにつきましては、次のような幾つかの問題点があるというふうに政府としては考えておりまして、困難であるということでございます。  第一番目に、ただいま御審議いただいております食糧援助規約上の問題でございます。これは三条七項に規定がございますが、開発途上国穀物の使用が一般的な目標とされております。これをできるだけ使えということでございます。  それから第二点としまして、ただいま先生からも御指摘がございましたように、従来から我が国食糧援助における米の調達をやっておりますタイ、ビルマ、それからパキスタンでございますが、こういう国からは自国産米をできるだけたくさん使ってくれという強い要請がございまして、これら諸国との関係を我々としては一義的に考える必要があるという点でございます。  その他、アメリカ産米はアジア諸国の米に比べましてかなり高価であるといった問題とか、援助穀物として米に対する需要は必ずしも高くないといったような問題もございます。  以上でございます。
  67. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう少し触れたいこともありますが、時間の点から割愛いたしますけれども、とにかく国の安全保障からも米は非常に重要であるということをもう一度強調して、農林大臣もしっかりやっていただかなければなりませんが、外務大臣も外務省もしっかり取り組んでもらうことを心から願って、これで終わります。どうもありがとうございました。
  68. 山口敏夫

    山口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  69. 山口敏夫

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鳥居一雄君。
  70. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 まず外務大臣に伺いたいと思うのですが、去る七月二十五日の本委員会におきまして、そのあいさつの中で経済問題について大変力強い所見の御披露がございました。そして、倉成外交を推進したいということでございました。外務大臣は、特に経済協力、対外援助についてどういう方針のもとに進めていかれようとされているのか伺っておきたいと思うのです。  昨年の九月十八日に政府開発援助の第三次中期目標が示されました。大枠では九二年までの実績総額として四百億ドルを上回る目標を設定してやりたい。本年の予算を見てみますと、既に一兆二千億という水準確保ということでありますから、特に質の面で倉成外交というのは今後進んでいくのかな、こんな期待を持っているわけでありますが、いかがでございましようか。
  71. 倉成正

    倉成国務大臣 ODA、政府開発援助の拡充につきましては、平和国家日本として重要な国際的な責務と心得ております。経済協力は、御承知のとおり第三次目標に向かってODAの着実な拡充に努めておるところでございますけれども、緊縮財政の中で大蔵省との折衝問題がいろいろございます。しかし、いずれにしましてもこの援助の拡充には最大の努力をいたす所存でございます。同時に、この援助は適正かつ効率的に行っていくということが必要ではないかということでございまして、今後ともこの点につき一層努力をいたす所存でございます。  なお、私のところに多くの国々の方々がおいでになっておりますので、その事情をよく伺いながらその国にふさわしいODAというものを考えていくことにしたいと思っております。
  72. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ただいま議題になっております協定でございますけれども、これは午前中の議論の中にもございましたとおり二本の全く異質の規約一つ協定になっている。一つ小麦貿易規約であり、もう一つ食糧援助規約である。これは言ってみれば穀物という点では共通した課題であろうと思いますが、全く異質の規約である点、流通の上からいって円滑をねらおうとする貿易規約、まあ商品協定、一方の援助規約は被援助国に対していかに援助を充実させていくか、こういう全く性質の違う二つの規約から成っておるわけですが、本来これは別々であるべきはずのものではないでしょうか。
  73. 川上隆朗

    川上説明員 委員指摘のとおり、小麦協定の中に食糧援助規約小麦規約という二本が入っているわけでございますが、小麦協定というものにそもそも食糧援助規約が入ることになったあたりの経緯をちょっと御説明させていただきたいと思います。  なぜそういうものが入ることになったかということでございますけれども国際小麦協定に初めて援助規約というものが含まれることになったのは一九六七年の国際穀物協定の際でございます。その協定の作成に当たりまして、小麦貿易量のうち約三分の一が援助等特定の取引ということがございます。このような特殊な取引を小麦貿易に関する国際協力の推進を目的とする小麦貿易規約と一体化して小麦協定対象とすることが望ましいという議論が行われまして、そういうことによってこの規約が中に入ることになったということでございます。  なお、現在でも食糧援助規約に基づいて供与される援助の六、七割ぐらいは小麦または小麦粉の形態によって行われております。そういう意味において関連が深いということが申せると思います。
  74. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これは、作業部会を見てみても全然異質の国々の集まりで、一方の小麦規約の方は加盟輸出国、加盟輸入国が協議をして成案を得る、一方の食糧援助の方は援助しようとする国、ECを加えて二十二カ国がこの規約の作成に当たった。そういう経緯からいっても、これは本来別であるべきだと思うのです。しかし、国内的にこれは議案を別にするとかということではなくて、交渉の場において本来別であるはずだと思うのです。後にまた申し上げたいと思うのですが、食糧援助を効果的に一元的に行っていくためには、随所にいろいろな機関援助が行われるあるいは協議される、それは必要性があるかもしれません。しかし、一元的に効果的に行うという点から考えたら、やはりこれは異質のものであると言って間違いないと思うのです。  それで、この小麦規約でありますけれども、安定供給の上から需給の安定確保あるいは価格の安定確保、こういうことがねらいであることはもとよりであります。これは言葉をかえて言えば食糧の安全保障を明確にしていく、こういうことだと思います。今日の我が国におきます農政の中の大きな課題でもあるわけですが、食糧安全保障を揺るぎないものとして確立する、その場合不測の事態というのをどういうふうに考えていらっしゃるのか、お答えいただきたいのです。
  75. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答えいたします。  先生おっしゃるように、食糧の供給安全ということは大変重要なことでございます。食糧の安定供給を図るためには、まず国内における生産の安定あるいは我が国のように多くの物を輸入に頼らざるを得ない国にとっては輸入の安定を図ることが基本であると思っております。一方、内外の不作やあるいは輸出国の港湾ストあるいは輸出規制等による一時的な食糧の供給の減少という不測の事態があることも考えられますので、そういうときには我が国においても必要な備蓄の確保ということは重要であるというふうに考えております。
  76. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 今大体コンセンサスが得られているのは、一つは、例えば港湾ストライキあるいはかつての海賊みたいなのが出現して我が国に対する安定的な供給が受けられない、そういう短期的な危機、それがまず第一の危機だろうと思うのですね。  それから、例えば循環的な危機。これは七年に一遍あるいは十年に一遍凶作になる、飢饉がやってくる、これに対する安全をどのように確保していくか。  それからもう一つは、中長期的に見て今日の地球人口四十五億人が二〇〇〇年を越え、将来六十億を超えようとする、その場合に、食糧需給という問題は一体将来の展望として大丈夫なのかどうかという点だろうと思うのですね。  この三つに対する備え、これはどういうふうになっていますか。直接的には穀物の備蓄在庫ということだろうと思います。その点はいかがでしょうか。
  77. 高橋銑十郎

    高橋説明員 長期的な問題につきましては、午前中の高沢委員の御質問のときにも申し上げましたように、二〇〇〇年という十五年先を見越した場合には発展途上国における輸入量もかなりの量に達するのではないか、そういうものについては現在先進国における生産もかなり上がっているというもので対応していくということになるのではないかというふうに考えております。  我が国について、短期的な一時的な港湾ストあるいは輸出規制等による場合については、例えば国民の主食である米については、五十九年から始めております水田利用再編第三期対策中の各年平均約四十五万トン程度の積み増し増加をしておりまして、おおむね計画どおりの積み増しが行われつつあるところでございます。  また、輸入の減少の事態が生じた場合に重大な支障を生じないために、小麦でありますとかあるいは飼料穀物、トウモロコシ、コウリャン等、あるいは大豆については公益法人あるいは食糧管理特別会計において必要な備蓄を現在行っているところでございます。
  78. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 そうすると、主要穀物を取り上げたいと思うのですけれども、例えば小麦で現在の自給率が一二%、飼料用穀物で自給率が二%、米、この備蓄在庫というのは需要の何カ月分を確保する目標であり、現在何カ月分の確保ができているのか。
  79. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答えいたします。  食糧小麦につきましては、従来から国において通常の需給操作上必要な在庫量に安定余裕を見まして、例えば六十年度で申しますと、外麦需要分の約二から三カ月程度を確保しているところでございます。こういうことによりまして、国際需給動向等の海外の諸状況などから見ましても、あるいは短期的な国際需給の逼迫にも十分対応できるものというふうに考えております。  また、飼料穀物につきましては、コウリャン、トウモロコシ合わせましておよそ国内需要分の一カ月程度を備蓄しております。また、そのほか、この備蓄対策とあわせまして配合飼料メーカー等に対しましては通常在庫分約一カ月分ほどを確保するような指導もしているところでございます。  また、大豆につきましては、我が国油脂原料として、あるいは食用原料としてかなりの量を輸入しているわけでございますが、例えば製油用の大豆につきましては各メーカーが通常在庫ほぼ一カ月分を所有しているということで、かなりの安定性がございます。そこで規模が零細であります食用及び醸造用の大豆につきましては、公益法人におきまして年間需要量の約一カ月分を備蓄しているところでございます。  主食用の米につきましては先ほど申し上げたような状況でございます。
  80. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 つまり、短期的な危機に対しての備えとして、おおよそ二カ月をめどに備蓄在庫を持ちたい。二カ月ということの是非といいますか、当否といいますか、これはどんなものなんでしょうか。安全保障の上からいって二カ月というのは今どういうふうになっていますか。
  81. 高橋銑十郎

    高橋説明員 お答え申し上げます。  先生も御存じのように、食料品については在庫にも限度があり、品質として長く、長期間無制限に持続して持っているということにまいりません。また、持つからにはかなりの経済的コストがかかるということもございます。そこで、現状におきましては、メーカー、流通業者等の御意見も拝聴した上で、現状の国際的な需給関係において先ほど申し上げましたような備蓄量で、ここ五、六年の過去の実績も見まして、ほぼ先ほど申し上げましたような不測の事態にも対応できるというふうに考えております。
  82. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 食糧安全保障という重要な、極めて大きなテーマでありまして、限られた時間の中で本当に一端の議論しかできないわけでありますけれども、例えば外国のよく言われているのはスイスでありますけれども、スイスのパンは非常にまずい、小麦三年備蓄で、備蓄の古いところから市場に出回る、そういうことでまずいんだというのが巷間言われていることですね。必ずしも三年がいいのか悪いのか、これは議論のあるところだろうとは思います。しかし、我が国において本当に平和の中で今日まで戦後四十年が経過をした。平和になり切って、その中に二カ月の備蓄で大丈夫だという哲学が出てきているのか、大いにこのあたりは議論をしてコンセンサスを得、安全確保をしっかりした基盤のあるものにしていかなければならない、こういうふうに思うわけです。  そこで、今度の小麦規約でありますけれども小麦規約の本来の目的であります加盟輸出国、加盟輸入国の間のさまざまな利害、それがこの協定の中で議論されてきたわけでありますけれども、安定的な供給、これを受けていくためには、一つ需給の上での安定、もう一つは価格の上での安定というのが確保されなければならないだろうと思うのです。それで、価格帯を決めて、そして一定量は保証される、こういう経済条項を今回またしても規約の中に取り入れることができなかった、これはどういうことによるわけでしょうか。
  83. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、この回、この規約の交渉をする以前に、この理事会では作業部会を設置いたしまして、経済条項を伴う規約の交渉の可能性を含めて作業を行っておったわけでございまして、特に主要輸出国は引き続き経済条項を伴う規約の作成には後ろ向きでございました。こういうような状況のもとで経済条項を伴う規約の交渉を行っても合意に達する可能性は乏しいというふうに判断され、現実的でないという判断から、経済条項を伴う規約の交渉が見送られたわけでございます。  今度の規約についてそういうことになったわけでございますが、この主要輸出国が経済条項を伴う規約の作成に消極的である理由といたしましては、一九七八年から七九年の交渉会議が不調に終わりまして、その後、むしろ食糧安定的供給は自由貿易体制の維持等により達成されるべきで、備蓄についても各国が独自に適切な在庫を保有すべきであるという考えが強くなってきたことがございます。それから、経済条項を伴う規約の交渉を行うための三主要国間の意思統一の基盤が欠けているということで、交渉を行っても成果は見込みがないと判断しているということでございます。
  84. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 我が国立場は、経済条項をどうしても入れた方が国益にかなう、そういう考えのもとに各国に働きかけをやったのでしょうか。この点どうですか。
  85. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  我が国としましては、妥当な価格による小麦の安定供給が図られることが基本的に望ましいということはもちろん考えております。しかしながら、先ほど申しました一九七八年、七九年の小麦貿易規約の交渉が不調に終わりまして、その後は、主要輸出国が経済条項を有する新規約の作成に消極的になったということ、それから、最近世界的に小麦需給が緩和しているという状況で、実際上小麦の安定供給を実現することが現実的かつすべての国に受け入れ可能かということについてどうしても見通し得ないというふうに判断いたしまして、この時点で、経済条項を有する新協定または新規約可能性をさらに検討するということはできるし、やるべきだと思いますが、交渉を推進することについては成功する可能性も少ないというふうに判断いたしております。
  86. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これは加盟輸入国の利益ばかりではないのですね。生産がうんとふえて供給過剰ぎみになってきたときのためにも働くわけであります。ですから、要するに、これは経済条項を入れようという折衝をやらない限りにおいては、価格帯というのは入ってこないのではないですか。それは、技術的には十五種類もあって非常に複雑であると言われてまいりました。しかし、入れようという合意をどこかがリーダーシップをとってやっていかなければならない問題ではないですか。本気になってやっているのですか、この交渉を。
  87. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  一九七八年、七九年の交渉におきまして、我が国としてはそういうような可能性をいろいろ探ったわけでございますが、基本的に主要輸出国においてそういう強い立場にございまして、合意に達し得る基盤がないというふうに判断いたしたわけでございます。
  88. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 今後の努力にまつしかないと思うのですが、交渉に当たる当事者として、やはり経済条項のない小麦規約なんというのはもう意味がない、こういうふうに理事会の事務局長も言っているわけです。ですから、ひとつ努力をしていただきたいと思います。  援助規約の方で一つ伺っておきます。  特に、アフリカの大変悲惨な状況がございました。今日なお改善されていない、そういう状況の中にあります。国連食糧農業機関FAOの総会におきまして、改善はされてきているけれども、やはり大変な深刻な事態は解決できていない、特に五カ国においてひどい状況が続いている、こんなような状況報告もなされておりますし、サウマ事務局長は、相当量食糧援助が来年も続けられなければならない、スーダン、エチオピア、モザンビーク、アンゴラ、ボツワナ、この五カ国では緊急食糧援助が必要だ、ざっと計算してアフリカは七百万トンからの食糧輸入しなければならない、そのうちの三百三十万トンは援助に頼らなければならない、こういう発言をなされております。  この一つの原因として、アフリカ各地の中にある内戦、内乱、政情不安、そういうことが農政がどこかへいってしまう大きな原因というふうに考えられるわけでありますけれども我が国の外交努力として、アフリカのこうした事態に対し、何らかの打開点を見つけられるような努力がなされなければならないと思っております。今後どういう努力をされようとしているのか、直接的には無償援助また外交努力によるところ、これらにつきまして伺いたいと思います。
  89. 久米邦貞

    久米説明員 国連食糧農業機関報告によりますと、依然として幾つかの国において飢餓状態は非常に深刻な状態が残っているという点は御指摘のとおりでございます。  ただ、全般としましては、昨年、一昨年に比べましてこの八十六年度事態改善しているという報告がなされておりまして、先生指摘の五カ国においては、まさに御指摘のような事態があるわけでございまして、こういう事態に対しては、今後も緊急食糧援助という形での支援が必要かと思います。またその他の国につきましても、これは天候がよくなったという要因から大幅な改善が見られたわけで、構造上の問題というのは依然として残っておるわけでございますので、やはり今後も、これまで行ってきました食糧増産体制を確立するという上での援助が必要かと思います。  さらに、政治的な面でございますけれども、これは、例えば南ア及び周辺諸国との関係等につきましては、我が国としましても、アパルトヘイトには断固反対という立場から南ア政府に対しても働きかけを行っておりますし、また、今回の制裁その他の結果として周辺諸国がこうむっております種々の経済的困難、今後また予想されます困難につきましては、この周辺のフロントライン諸国に対する援助を今後とも強化していく方針でございます。
  90. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 申し合わせの時間が参りましたので、質問を終わります。
  91. 山口敏夫

    山口委員長 次に、神田厚君。
  92. 神田厚

    神田委員 国際小麦協定の御質問をいたしますが、その前に、特に質問通告はしておりませんでしたが、本日の各報道機関で取り扱われておりますけれども、ゴルバチョフ書記長の来日問題につきましてかなり具体的な日程の詰めが行われているというような報道もございますが、この問題はどういうふうになっておるのでありましょうか。  一つは、米ソの首脳会談が行われましたけれども、もう一度米ソの首脳会談が行われた後に来日をするというような判断といいますか見通しに立っておりますのか、それとも、報道によりますと来年一月ということが言われておりますけれども、単独で、米ソの関係は抜きにして日本に来られるような形になっておりますのか、その辺はいかがでありますか。
  93. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ただいまの御質問でございますけれども、種々の報道あるいは種々の情報等が入っておりますけれども、外交ルートを通じては何らまだお話は伺っておりません。私の方からは、御案内のとおり、カピッツァ次官が参りましたときにも、先方は来日したいということは言っておりますけれども、日にちは明示しておりません。また、これが米ソ関係とどういう関連になるかということも、私の方で今コメント申し上げる材料を持ち合わせておりません。
  94. 神田厚

    神田委員 いずれにしろ、カピッツァ次官が民間人の人たちに対しましてもかなり具体的なことを言っておるというような報道もありましたし、そういう意味では、外務省としましても来日の環境づくりというようなことについて具体的に準備をなさっておるのかどうか、その辺はいかがでありますか。
  95. 倉成正

    倉成国務大臣 私、外務省、日本政府といたしましては時期を確定するということがまず第一だと思います。このことははっきり先方にも申しております。その時期を確定した上でひとつ実りのあるために双方でいろいろな諸準備を慎重にやろうということをしばしばいたしておるわけでございまして、時期の確定が最初じゃないかと思っております。  同時に、ボールはもう既にソ連側にあるわけでございますから、そのボールがどうやってはね返ってくるかということを静かに待っておるという状況でございます。いろいろな発言あるいはいろいろなところがあるかもしれませんけれども、少なくとも外交ルートに関しては、何らその後の変化はないということを申し上げておきたいと思います。
  96. 神田厚

    神田委員 次に、一連の総理発言が問題になっておりますが、これは各委員会などでも取り上げられた問題だと思っておりますけれども、まず最初に、いわゆるアメリカの人種差別的な発言問題がありました。私は、過日、その当時アメリカに行っておりました宗教の指導者と会う機会を得ましたが、あの発言のために、戦後営々と築いてまいりました日系人のアメリカにおける社会的な地位といいますものが根底から覆されるような、そういう衝撃的なことがあったと言われております。嫌がらせの電話がたくさんありましたり、あるいは墓地にいたずらをされたり、こういうふうなことがあったということをその当時アメリカに行っておりましたその方が言っておられました。  なお今日でもさらにその余じんが残っているようでありますけれども、これらの問題につきまして、現時点におきまして外務大臣としてどのように考え、今後どういうふうな形で対応していくおつもりがありますか。いかがでありますか。
  97. 倉成正

    倉成国務大臣 先般の総理発言に関連いたしましては、総理大臣から心からおわびをするというメッセージを出しまして、このメッセージを受け取りました結果、先方の、御案内のとおり議会の議決等が取りやめになる、あるいはその他の各種団体の動きについてもだんだん鎮静化してきておると承知しております。もちろんこれで完全におさまったというわけではなくて、やはりまだ余じんが若干残っている面があろうかと思いますけれども一つ一つ誠実に対処していくということで、松永大使には私、毎日のように電話をし、情報を伺い、そして、その対処については慎重に誠実に対処していくようにということを指示いたしておるような次第でございます。
  98. 神田厚

    神田委員 また、最近総理が、いわゆる日本民族が単一民族である、あるいはアイヌ問題等での発言があり、物議を醸しておりますけれども、国際的な視野に立ちます外務大臣としては、これらの発言につきましてどういう所感をお持ちでありますか。
  99. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまの御発言はアイヌの関係の問題であろろうかと思いますけれども、次回の報告書についてただいま検討中でございます。
  100. 神田厚

    神田委員 検討されておりますことはあれですが、大臣個人といたしましてはこの総理発言についてどういう御感想、所感をお持ちでありますか。
  101. 倉成正

    倉成国務大臣 条約に関する回答というのは、御案内のとおりあるわけでございますね。そういう意味で総理は申したと思うわけでございますけれども、ただいま私がお答えしたとおり、第二回目の報告については検討いたしているということを今お答えした次第でございます。
  102. 神田厚

    神田委員 つまり、日本には少数民族がいないとか、あるいはそういうふうなことでの問題がいろいろあるわけでありまして、アイヌ関係者の方からはかなり強い抗議も来ているというような状況でもあります。したがって、そういうことから外務大臣としては、この総理発言を個人的にどのようにとらえておられるのか、その点はいかがでありますか。
  103. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま申し上げたとおりでございまして、総理発言が条約の回答としてあるわけでございまして、それに基づいて総理が御所見を述べられたと思うわけでございます。したがって、第二回の報告について今検討中ということでございますから、私が今ここでコメント申し上げるのは適当でないと思うわけでございます。
  104. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員(外務省) ただいまの大臣の御答弁を若干補足させていただきますと、六年前に日本政府が人権規約に従いまして国連に出した報告の中では、日本にはこの規約に言うような少数民族は存在しないという回答をしております。総理発言はこの点を踏まえてなされたものと我々考えております。  次回の報告でどういう報告をすべきかという点につきましては、今大臣が申し上げましたとおり、この規約の精神その他関連事項を検討中ということでございますので、そのように御了解いただきたいと思います。
  105. 神田厚

    神田委員 次に、国際協力事業団の問題でありますが、JICAの汚職事件等の不祥事が出まして、国際協力事業団の改善策が進められているというように聞いておりますけれども、どのような形で改善を行うのか、その点をお聞かせをいただきたいと思います。
  106. 倉成正

    倉成国務大臣 JICAの改革方針につきましては、昨日JICAの総裁から報告をいただきまして、自分としては、この報告に基づきまして、各界有識者の意見を踏まえて万全を期す考えでございます。  また、こうした考え方に立って、今後のJICAの改革を全うするため、事務次官を中心とする省内の検討委員会を設けた次第でございますが、これまで積み上げてきた経済協力の効果を一層向上させるためにも、右委員会における活発な検討を期待しておりまして、こうした検討を踏まえて、一層適正かつ効果的な協力の実現に資する考えでございます。  総裁の報告の詳細について申し上げると時間がかかりますので、ポイントとして申し上げますと、再発防止のための改善措置ということで、人員の適正な配置であるとか、あるいは同じところに、長く一つの場所に人を置かないとか、いろいろそういう具体的な問題がこの中にあるわけでございまして、これらの問題をさらに具体化していくために努力をしていくということでございます。
  107. 神田厚

    神田委員 さらに、総務庁がODA、政府開発援助に対する行政監察問題を提起をしておりますが、これにつきましては外務省としてどのように対応なさいますか。
  108. 倉成正

    倉成国務大臣 玉置長官が記者会見で本件についてお考えを述べられたことは承知しておりますが、いずれ総務庁から正式に御相談があろうかと思いますので、御相談を受けた上で検討対応をしてまいりたいと思う次第でございます。
  109. 神田厚

    神田委員 この問題も、開発援助に絡むやはり不正事件等が一つのきっかけになっておるわけでありますから、そういう意味では、情報公開とかいろいろな重要な内容も含まれているようでありますが、外務省自身としては現時点で、例えば総務庁との話し合いなどについては行っておるのですか。
  110. 倉成正

    倉成国務大臣 JICAの不祥事件については、もうしばしば私が申し上げましたとおりに、外務省の責任において、反省すべきところは十分反省し、改善すべきところは改善をしていくべきであるということで、既にJICAの総裁に対して、大臣命令で報告書を提出させるとか改善命令を出すとかということで報告を受けておるところでございます。  また、御案内のとおり、省内の検討委員会をつくってさらに進めておる、また省外の有識者の意見も聞いてやっておるというところでございますが、他方、総務庁の玉置長官の御発言、記者会見されたということを聞いておりますが、正式に総務庁からそのお話が参った段階でひとつこれに対応したい、そう考えておる次第でございます。
  111. 神田厚

    神田委員 それでは、小麦協定関係に移ります。  まず最初に、現在の小麦生産状況需給関係、これはどのようになっておりますか。
  112. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  九月のアメリカの農務省の発表によりますと、八五−八六年の世界小麦生産は、史上最高の豊作であった前年度と比べますと若干減りまして二・三%減の五億三百七十万トンであったと言われております。これは特に米国における生産調整によるところが大きいと承知しております。  また八六−八七年度につきましては、東欧等において減産が予想されておりますけれども、逆にカナダ等では増産が見込まれておるということから、全体としては対前年比〇・四%増、五億五百六十万トンになるというように予想されております。
  113. 神田厚

    神田委員 小麦の市況はソ連生産などによってかなり影響をされるわけでありますが、チェルノブイリの原発事故などがありまして、そういうこともどういうふうな影響が考えられるのか、その点はどうでありますか。
  114. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  私どもの持っております情報では、チェルノブイリの原発事故そのものが小麦生産に大きく影響するというふうな情報は得ておりません。したがいまして、ソ連における小麦生産というのは、従来からあります天候の問題が最大の問題で、あと管理の問題等が大きな要素というふうに考えております。
  115. 神田厚

    神田委員 それでは、この無償援助の問題でお聞きをいたしますが、現在の無償援助状況はどういうふうになっておりますか。
  116. 川上隆朗

    川上説明員 お答え申し上げます。  我が国は、現在御審議いただいております食糧援助規約におきまして、年間、小麦に換算しまして最小三十万トン相当拠出義務を負うということになっておりますが、従来から規約上の義務というものを着実に履行しているところでございます。  例えば一九八四−八五年の船積みベースの実績で申し上げますと、小麦に換算いたしまして約三十六万トンの援助を実施いたしました。これは規約加盟国の同年度援助総量が一千八十万トンでございますが、それの約三%に当たっております。  また、六十年度我が国食糧援助をコミットメントベースで見ますと、アジア、アフリカ等の低所得食糧不足国二十八国及びカンボジア難民、アフガン難民等四難民に対しまして総額二百十四億円の援助を実施いたしております。  地域別では、アフリカが全体の五六%、アジアが三九%、中近東が五%ということでございまして、対象国といたしましてはバングラデシュが最大、続いてスーダン、タンザニア等ということになっております。  なお、我が国食糧援助相手国の要請内容をも考慮いたしまして、五十九年以降はタイ米、ビルマ米、パキスタン米、米国小麦、ジンバブエ・メーズ等第三国産の穀物援助品目として使用いたしております。  以上が大体の概要でございます。
  117. 神田厚

    神田委員 援助をされている国、被援助国からいろいろな要望が出ているというふうに聞いておりますが、主にどういうふうな形で要望されておりますか。
  118. 川上隆朗

    川上説明員 御指摘のように、いろいろな要望が来ておりますが、アジア、アフリカ地域等の低所得食糧不足国は従来から我が国食糧援助というものを非常に高く評価いたしておりまして、継続をぜひやってもらいたいということを言ってきております。政府としましても、各国よりの要望を踏まえまして、今後とも応分の協力をやっていきたいというふうに考えております。  ただ食糧援助のみならず、開発途上諸国からは食糧援助と並びまして食糧増産のための農業開発援助一般、特に農業資機材の供与あるいは食糧の輸送手段、貯蔵能力拡大のための協力といったものを要請してきておりまして、政府としてもこのような分野での協力を拡充してまいっているという状況にございます。
  119. 神田厚

    神田委員 食糧そのものも援助しなければならない状況でありますが、やはり増産援助というのが大変大事な内容になってくると思っておりますが、今後具体的に増産援助に対しましてどういう形でこれを強力に進めていくか、その辺の考えはどうですか。
  120. 川上隆朗

    川上説明員 ただいま申し上げましたように、我が国開発途上国食糧問題というものは基本的には自助努力で解決されるべきだということで、食糧生産の増大によって解決されるべきという考えを持っておりまして、これを支援するという目的でもって先ほど申し上げました食糧増産援助、すなわち形態的には肥料、農薬、農機具等の供与を行っておりますが、これらはその食糧増産に必要な資機材ということでございます。これは昭和五十二年度から所要の予算措置を講じておりまして、今後ともこういう形態での援助を着実に進めてまいりたいというふうに思っております。  ついでに実施状況について簡単に申し上げますと、昭和六十年度のコミットメントベースで申し上げますれば、アジア、アフリカ等の開発途上国四十二カ国に対しまして総額三百八十億円の援助を実施いたしております。地域別にこれを見ますと、アジアが全体の六四%、アフリカが二八%、その他中近東、中南米が八%ということでございまして、この分野でも近年アフリカへの供与を増大させているというところでございます。  我が国としましては、農業が開発途上国の所得、就業人口、貿易等において大きな比重を占め、経済成長に強い関連性があるという認識のもとに、農村・農業開発も援助の重点分野の一つとして位置づけておりまして、今後とも食糧増産、農業開発分野での協力を積極的に進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  121. 神田厚

    神田委員 最後に、時間がなくなりましたので、一言大臣にお伺いしたいのであります。  アメリカの米問題でありますが、RMAアメリカ通商代表部に対する提訴が却下をされたということであります。しかし、その内容はかなり日本にとりましても大きな宿題を持たされたような形になっておりますが、この点につきましてどういうふうにお考えになりますか。
  122. 倉成正

    倉成国務大臣 御指摘のとおり三〇一条の提訴は却下いたしましたけれども、今後これらの問題についてまたいろいろと議論されるだろうということは当然予想されるわけでございますので、我が国としては、米が我が国に占める重要なものであるということを国際社会において訴えていく、またアメリカ政府に対しても訴えていくという立場を貫いていきたいと思っておる次第でございます。
  123. 神田厚

    神田委員 終わります。
  124. 山口敏夫

    山口委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  125. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間も少なくなりましたので、端的に質問いたします。  きょう審議しています国際小麦協定、この中の小麦貿易規約の第一条、そこには「小麦の貿易のすべての側面について国際協力を促進すること。」とうたっています。ところが国際小麦協定は七一年以来効果的な経済条項を欠いているわけでございます。理事会の方では市場の安定や食糧の安全保障という二つの目的を達するためにいろいろと努力はされているようでございますけれども、しかしこのように重要な経済条項を欠いているという点は大きな問題点を残しているというふうに思いますが、なぜできないのか、どこに問題と困難があるのか御答弁願いたいと思います。
  126. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり千九百八十六年の小麦貿易規約は千九百七十一年の小麦貿易規約と同様に経済条項を欠いているわけでございます。この理由につきましては、先ほども申し述べましたとおり、この規約を交渉する以前に理事会は作業部会を設置いたしましてこの問題の検討を行ったわけでございますが、特に主要輸出国でございますが、引き続き経済条項を伴う規約の作成には非常に後ろ向きであったということから、こういうような状況のもとで経済条項を伴う規約の交渉を行ってももう合意に達する可能性がない、現実的でないという判断で経済条項を伴う規約の交渉が見送られたわけでございます。
  127. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その主要輸出国というのは具体的にはどの国ですか。
  128. 木村崇之

    ○木村説明員 米国中心とした国々でございます。
  129. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 アメリカの名前が挙がりましたけれども日本としては早く市場の安定供給という点からいってもこういう問題がなくなるように、イニシアチブをとってこういう欠陥を克服するように努力してもらいたいと思います。  時間もありませんので、次は食糧援助規約について質問いたします。  開発途上国に対して食糧援助を行うことは極めて重要であることは当然でございますし、日本が三十万トンのところを四十万トン援助していることは、それはそれなりに必要なことだというふうに思います。問題はどの発展途上国にその援助を行うかという問題なんですね。これはどこで決めるのですか。
  130. 川上隆朗

    川上説明員 お答え申し上げます。  加盟国規約上遵守すべき基準と申すべきものに関しましては、ただいま御審議いただいております食糧援助規約第七条二項というのがございまして、加盟国援助を供与する場合に世界食糧計画、WFPの食糧援助政策計画委員会が定める食糧援助のための指針及び基準というものがございます。この基準に従うべき旨が規定されているわけでございますが、その指針及び基準によりますと、幾つかの基準がございますが、例えば受益国の開発目的に合致したものであるべきである、長期的かつ計画的に実施されるべきである、所得の低い食糧不足国に供与を優先すべきである、特にLLDCには無償で供与すべきである、それから開発途上食糧生産国からの買い付けに配慮すべきであるといったような基準が定められております。  それでは個々の国、つまり我が国の場合に食糧援助を供与を決定する基準ということになりますと、当然今のような食糧援助のための指針及び基準というものに従うわけでございますが、それとともに、他方におきまして、外交ルートを通じてなされます援助要請に基づきまして随時開発途上国食糧不足の状況、経済社会情勢、我が国との二国間関係等諸般の事情を総合的に勘案いたしまして、当然のことながら我が国と当該国との間で十分協議を行った上でその援助決定するということになるのが一般的な姿でございます。
  131. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その際、発展途上国の要望なり要求なりはどのように反映し、また考慮されるようになっているのでしょうか。
  132. 川上隆朗

    川上説明員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、我々が供与する際の基準といたしまして、食糧不足の低所得国であるとかLLDCに対する供与だとかいうものについては先ほど申しましたような基準があって、それを当然踏まえましてやるわけでございます。途上国側からの要望というのは非常に多岐にわたってまいりますが、それを先ほど御説明申し上げましたような基準に基づきまして、いろいろな考慮のもとで一定の供与を決定するというプロセスをとっているわけでございます。
  133. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そのいろいろの考慮というのがまたいろいろな問題を含んでいるように思うのです。  そちらの方からいただきました参考資料を見ますと、一九八四年から八五年の我が国援助状況ですが、この年はアフリカ飢餓問題が国際的にも大変な問題になっていまして、当然アフリカ難民に対する食糧援助ということは緊急重大な問題であったわけです。しかし日本の実際の援助量を見ますと、アフリカ難民には二万一千八百十五トン。ところがアフガン難民には三万三千八百五十一トン、カンボジア難民には五万七千六十五トンという形で、アフリカ難民よりはるかアフガンやカンボジア難民に多く行っているわけです。いろいろな考慮という表現で述べられましたけれども、なぜこういうことになっているのか、お答え願いたいと思います。
  134. 川上隆朗

    川上説明員 お答え申し上げます。  先ほど御説明申し上げましたように、いろいろな方面からの援助というものを踏まえまして、限られた援助供与額でございますので、その中から割り振りを行うというところがあるわけでございます。先生指摘アフリカにつきましては若干統計上の問題がございまして、御指摘の統計、八四年−八五年ではまだ数字として出てこないものが八五−八六年で若干ふえるということになると承知いたしております。
  135. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 若干ふえてもアフガンやカンボジア難民よりふえるというわけじゃないでしょう。いずれにせよそういう一つの政治判断が働いている。私どもはこの国際小麦協定について異論を持つものでありますけれども、その重大な問題がそこなんです。  ここに出されている統計を全部数字で計算しましたところ、アメリカが戦略援助国として決めている例えばソマリアとかジンバブエとかスーダンなど、そういった戦略的に重要だとしている国あるいは地域難民等に対する援助の割合が非常に高いのです。八一年から八二年までが四九%、八二年から八三年が四〇・七%、八三年から八四年が二八・八%、八四年から八五年が三二・六%、若干減ってはきています。しかし、まだまだ比重が高いのですね。その辺のところでアメリカの戦略援助国にかなり重心がかかっている。これはこの趣旨からいっても公正ではないと考えますが、こういう点、やはり公正にやるということ、その姿勢を貫くということを大臣、はっきりお答え願いたいと思います。
  136. 倉成正

    倉成国務大臣 食糧援助をどういう基準でどこにどれだけやるかということは、そのときの状況の判断またインフラ、輸送、他の国の援助がどういう形で行われているかということを総合的に判断して決めるべきものだと考えておるわけでございまして、必ずしも先生が御指摘のような要因で決められたとは私は考えておりません。しかしながら、適正な援助が一番必要とするところに行くように心がくべきであるという趣旨の点については、私もさよう考える次第でございます。
  137. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間があればもっともっと論議したいのですけれども、この問題を見る場合、やはりアメリカとの関係がまた非常に色濃く残っていまして、戦略援助国に対するいわゆる戦略援助的な側面があるということを私たちは重視しているものです。大臣が言われるように、公正にこの規約趣旨に沿って努力されるように強く要望しておきます。  さて米の問題でございますけれども、きょうこれが多く論議されていますが、私はちょっと違った側面からお聞きしておきたいと思います。  米ヤイター代表の姿勢も今まで述べられたとおりです。一応却下したものの強硬な態度を崩していませんし、日本の今後の農業あるいは外交にとって重大な問題を残しているように思うのです。  そこで各委員会、特に農水等ではこの問題が論議されていまして、昨日の参議院の農林水産委員会で我が党の下田京子議員の質問に答えて、加藤農林水産相は、すべてそういう問題については——これはアメリカの側から日本の米の輸入の自由化の問題等についていろいろ要望が出されてきた場合をすべて含んでですが、すべてそういう問題についてはノーである、一切受け付けないと、アメリカ要求には応じない考え方を明らかにされていますが、これは倉成外務大臣としても同じ姿勢であると認識してよろしゅうございますか。
  138. 倉成正

    倉成国務大臣 加藤農林水産大臣がどのような御発言をされたか私は詳細は承知しておりませんが、すべての農産物について何でも相談に応じない、ノーというふうに発言されたかどうかを私ちょっと伺っていないわけでございますので、農林大臣の真意をよく確かめた上でお答えをしたいと思います。
  139. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 相談にも応じないというわけではないのです。要求に応じないというのです。米を日本輸入するその制限を撤廃せよという要求には一切応じない、そういう趣旨なんです。それについてどうかということです。
  140. 倉成正

    倉成国務大臣 わかりました。  米についてお話しになっておると御了解してお答えいたしますと、米については御承知のとおりガット十七条の国家貿易の品目として従来取り扱われてきたわけでございます。したがいまして、ニューラウンドにおいて向こうは取り上げたいと言っております。しかし、ニューラウンド日本が何を取り上げるかについてはまだ何も決めてないわけでございます。しかし、先方からこの問題をニューラウンドで協議したい——これはアメリカとだけで決める問題ではございません。ニューラウンドでこれをいろいろ話すというときに、全然これに応じないというわけにはいかないと思います。これはニューラウンドで、ちゃんと合意事項がございますから、一つのルールに従って話をしていく。しかし、その際日本のとる立場としては、米は日本の基幹作物であり重要なものであるという従来の姿勢は変わりないということでございます。
  141. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 米は日本の基幹作物である、したがって米の輸入の自由化については一切応じないというふうに理解してよろしいのですか。
  142. 倉成正

    倉成国務大臣 さような立場を貫きたいと思います。
  143. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ぜひそういう姿勢を貫いてもらいたいと思うのです。  日本は瑞穂の国とおっしゃったように、長い伝統、文化、国民生活の基盤の上につくられている米でございますし、そういう点では、米の完全自給というのは当然日本の国策とも言えるものではないかと私は思うのです。大臣、そのような所見をお持ちになりませんか。
  144. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、基本的には今お話しの線は全く同感でございます。  同時に、我が国生産性を上げるためにもっと努力すべきではないかという点もやはりあわせてやらないと、余りに国際価格と国内価格の差が大き過ぎるということになるといろいろな批判も出てくるし、また国民の中にもいろいろな意見が出てくると考えるわけでございますから、あわせて考えていくことが妥当な考え方ではないかと思う次第でございます。
  145. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 生産性を上げるために努力することは当然だと思います。あわせてというふうにおっしゃいますので、それはやはり一〇〇%、つまり完全自給という立場を貫くことが国策であるという考え方に基本的には御異論ないわけでございますね。
  146. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、米については日本国内で自給をするというのが基本的な方針でございます。  しかし、それと同時に、先ほどからつけ加えましたように、我々の方でも生産性の向上に努力していかなければならない。そうしなければ、なかなか日本だけですべてのことを決めるわけにいかない、各方面からの批判が出てくるわけですから、そういう努力もあわせて真剣にやる必要があるということを申し上げておるわけでございますから、この点はひとつ御理解賜りたいと思います。
  147. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 同じことを繰り返されましたけれども、一〇〇%完全自給ということは基本方針だというふうに今おっしゃいました。国策ということと同じことだというふうに理解しますが、ぜひそれを貫いてほしいと思うのです。  それにつけても、最近いろいろとアメリカにコミットする文書の中に、アメリカ側に誤解を与えるような文書がさまざま出されているように思うのです。  ここに持ってまいりましたけれども、御存じの前川レポート、国際協調のための経済構造調整研究会が出した報告書でございますが、この中に「国際化時代にふさわしい農業政策の推進」とうたって、「基幹的な農産物を除いて、内外価格差の著しい品目については、着実に輸入の拡大を図り、内外価格差の縮小と農業の合理化・効率化に努めるべきである。」という表現がございます。この「基幹的な農産物」という中には米は入っているのでございましょうか。
  148. 木村崇之

    ○木村説明員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、前川リポートという先生のおっしゃられた報告書は政府に対しての報告ではございますが、その前川委員会報告ということでございます。したがいまして、その内容について私どもの方からこれは入っているはずだ、入ってないはずだということは申し上げるわけにはまいりませんが、私どもとしては、その基幹作物ということの中に米が当然入っているのだろうというふうな理解を持っております。
  149. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 先ほどから大臣が、米は日本の基幹的な農作物だとおっしゃっている。当然入っていなくてはいけないのです。前川レポートは単におっしゃるような軽いものではなかったはずですね。アメリカに見せたわけでしょう。  それで、その前川委員会を主宰されました前川前日銀総裁が朝日新聞の八月二十日付のインタビューで、「コメにしろ石炭にしろ、経済構造転換には非常な痛みが伴う。でもね、やらないと海外から袋だたきにされる」といった発言がございます。そのコピーを持ってきていますが、「基幹的農産物を除いて」という表現はされているものの、こういうインタビューに応じられるような発言内容からして、米も輸入自由化の考慮の余地があるかのようにアメリカから誤解されるような態度、発言がなかったかどうか、疑問を持つわけです。こういう点についての御見解はどうでしょうか。
  150. 木村崇之

    ○木村説明員 先生がおっしゃられた前川委員長の御発言というのは、私ども、詳細存じておりません。したがいまして、私どもとして前川先生がどういうふうにお考えになっているかということをここで申し上げるのは若干無理でございますので、控えさせていただきたいと思います。
  151. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 わかりました。それで結構でございます。  では、前川レポートに書かれている中にははっきりと米は除かれているというふうに理解してよろしゅうございますね。
  152. 木村崇之

    ○木村説明員 先ほど私、先生に申し上げましたとおり、前川報告そのものは前川委員会報告でございますので、いわば有権的解釈と言うとおかしゅうございますけれども、そこに何が含まれているかというのはやはり前川委員会の判断だろうと思います。ただ、私が申しましたのは、私どもから見れば基幹作物ということに米は当然入っておるだろうというふうに理解しておるということでございまして、その点、先生の御指摘のとおりでございます。
  153. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 もう一つございます。それは日米諮問委員会報告です。八四年九月に出されたもので、「日本国総理大臣およびアメリカ合衆国大統領への提言」というものでございます。これ自身は、出された翌年の日米首脳会談で両首脳によって高く評価されて、中曽根首相自身も当時最大限に尊重すると言った中身でございます。  この中で米にかかわる表現がございます。特に二国間食糧安全保障計画という問題が打ち出されていまして、「日本はその食糧安全保障政策を見直すべきである。」「食糧の自給自足のみに焦点を当てた現在の食糧安全保障政策は、安全保障のための備蓄を行う可能性を低めることになる。」といった批判等がなされています。この中には、米の輸入自由化を示唆するような見地が入っていないかということを懸念するわけですけれども、これは最大限尊重するというふうになされていますので、もっとはっきりした答弁ができると思いますが、いかがですか。
  154. 木村崇之

    ○木村説明員 まことに申しわけございませんが、私ども、今の時点でこの報告書について、その内容を具体的にこれは何が入っているというのは私の方で判断いたしかねます。先ほど申しましたとおり、牛場・パッカード・グループの作成したものであるということでございますので、私どもの方で解釈するということは差し控えさしていただきたいと思います。
  155. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 準備がないのはやむを得ないと思いますけれども、これは総理自身が最大限尊重するとうたっている報告なんですよ。単なる、だれかが書いた、政府がそれについて何ら関係を持たないような文書と違うわけです。したがって、総理自身が尊重すると言い、両首脳で高く評価すると言った文書の中で、こういうあいまいな、米の輸入自由化の方向日本食糧安全保障政策を見直す方向が示唆されている、こういうのはうまくないと思うのです。  私は、前川レポートや、それから日米諮問委員会レポート、二つ挙げましたけれども、こういうあいまいな姿勢が、先ほどは大臣自身が、米は日本の基幹作物である、したがってこれは基本方針として輸入自由化をさせないように頑張っていくとおっしゃったけれども、こういうのをあいまいにするような幾つもの発言、態度が出ておるということ、これはやはり改めてもらわなくちゃいけないというふうに思うのです。やはり日本の米を守る、そういう見地に立つならば、こういう前川レポートとか日米諮問委員会報告、あるいはこれからも出されるであろうさまざまなそういうあいまいな、アメリカの方からいろいろと揚げ足をとられる、そういうことはやめる、注意する。大臣、いかがでしょうか。
  156. 倉成正

    倉成国務大臣 るる委員が申されましたけれども、私があえてプンタデルエステでヤイター代表に対して米の重要性を訴え、またシュルツ国務長官に対しても日本の米の重要性を訴えて注意を喚起した。そして三〇一条が、もちろんこれは法律的な問題があるわけでございますけれども、いずれにしても却下されたということ。そのこと自体から考えましても、私は、日本政府がいかに真剣に、米が日本の基幹作物であり、国民生活にとって大事なものであるかということを実際に証明していると思うわけでございまして、米が基幹作物であり、これを大切にしていかなければならない、守っていかなければならないという政府の姿勢はいささかも変わりございません。
  157. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私はきょうかなり準備してきまして、日本穀物の自給率の問題については、もう自給率という見地じゃなくて、自給力という形で日米の相互関係で見直した方がいいといった、そういう財界人の発言等もあらわれていますし、そういう点などを見ると、政府の姿勢はそれで貫いてほしいと思いますけれども、やはり日本の各種の発言の中で、米の輸入自由化の方向を示唆する、アメリカに誤解を与えるような、あるいはアメリカがそれを手にとって日本に自由化を迫ってくるような発言が幾多見られるような点があるのですね。そういう点などは十分押さえられて、そして日本の米を守っていくというこの姿勢を貫いてもらいたいというふうに思います。  時間が参りましたので、これで終わります。
  158. 山口敏夫

    山口委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  159. 山口敏夫

    山口委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 山口敏夫

    山口委員長 起立多数。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 山口敏夫

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  162. 山口敏夫

    山口委員長 次回は、来る二十九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十五分散会