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1986-11-27 第107回国会 衆議院 科学技術委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十七日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 原田昇左右君   理事 小宮山重四郎君 理事 塚原 俊平君    理事 平沼 赳夫君 理事 粟山  明君    理事 小澤 克介君 理事 矢追 秀彦君    理事 小渕 正義君       有馬 元治君    竹内 黎一君       中山 太郎君    村井  仁君       木間  章君    村山 喜一君       安井 吉典君    大久保直彦君       冬柴 鉄三君    山原健二郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ツ林弥太郎君  出席政府委員         科学技術庁科学         技術政策局長  中村 守孝君         科学技術庁科学         技術振興局長  藤咲 浩二君         科学技術庁研究         開発局長    長柄喜一郎君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   佐々木壽康君  委員外出席者         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         外務省国際連合         局原子力課長  山田  広君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       向 準一郎君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     神田  淳君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電運転管         理室長     杉原  誠君         気象庁地震火山         部地震火山業務         課長      鈴置 哲朗君         気象庁地震火山         部地震津波監視         課長      勝又  護君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事長)     林  政義君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      植松 邦彦君         科学技術委員会         調査室長    工藤 成一君     ───────────── 十一月十三日  原子力発電安全確保対策に関する陳情書外二件(第一四二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事長林政義君及び同理事植松邦彦君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 原田昇左右

    原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  5. 安井吉典

    安井委員 質問機会が延び延びになっておりまして、久しぶりの質問ということになるわけでありますが、きょう私は幌延問題を中心にしたいのでありますけれども、初めにチェルノブイル事故につきまして若干のお尋ねをいたしたいと思います。その原因だとかいろいろな問題につきましては、もう少し時間をとったときにしなければならないと思っているわけでありますが、あの事故によって日本の場合いかなる教訓を読み取るか、いかなる対策を講じていくかということをまず伺いたいと思うわけであります。  日本原発というのは厳しい規制の中にあって、安全基準も高い、多重防護の体制は十分とられている、非常電源三つもついている、安全審査からすべての過程が相互チェック仕組みになっており、ヒューマンエラーの入り込む余地はない、こういうような説明を私は聞くのでありますけれども、例のTMI事故の後に、原子力安全委員会は五十二項目もの反映事項を摘出して専門家を集めて検討に移し、対策を講じてきたというふうに聞いております。今度は違うのだということだけで済まされる問題ではないと私は思うのでありますが、どうでしょうか。
  6. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  原子力安全委員会の中にこの事故調査いたしますための特別委員会を設置しておりまして、今後どういうことを我が国原子力安全の向上のために学ぶべきかということについて現在鋭意検討中でございます。特に、ソ連報告書をもとに、これまでにごく概要についての報告書を一たん出しておりますが、現在さらに詳細な定量的な分析をいろいろやっておりまして、その結果が出ました段階で、どういう点について学ぶことになるかということがはっきりいたすと思います。現時点では、私どもでは、これまでわかっている範囲内では特に我が国原子力につきまして何らかの反映すべき事項、改善すべき事項があるというふうな解析結果は出ておりません。
  7. 安井吉典

    安井委員 この間の事故によりまして、きょう一つの例として伺いたいのは、現段階における死者とか負傷者の数はどうなっているのか、特に発電所に従事している人、それから消防職員死亡があるはずでありますが、それ、それから周辺住民、その三つに一応区分してどんなような形になっているのか、それを伺います。
  8. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  これまでソ連から発表されております数字でございますが、死亡者は三十一名ということでございます。このほかに、いわゆる急性放射線障害を受けたというふうに診断された方が百七十四名ございます。この死亡者三十一名は主として消防士のようでございますが、その辺の内訳はソ連から出されておりません。それから死亡原因は、主として火による火傷と放射性物質による汚染によります皮膚のやけど、そういうことで亡くなった方がこの三十一名の中でかなり多くを占めているということを聞いております。  以上でございます。
  9. 安井吉典

    安井委員 まだ実態をつかんでないというのですからしようがないですが、その結果によって、発電所で従事している人にそういう事故の場合にどんな影響が出てくるのか、それからその事故対策として真っ先に飛び込んでくる消防士人たちへの影響、あるいは地域住民というふうに、それぞれの立場事故がいかなる障害を与えていくのか、それを明確につかむことによって初めて、もし万一日本で起きた場合も、消防の問題はどうするのだとか従事している人たちの問題はどうするのだとか、あるいは住民への対策だとか、そういうものが出てくるのじゃなかろうかと私は思うのです。ですから、そういう点を把握することをまず急いでいただきたい。そのことをひとつ要求しておきます。  それから、日本国内においては原子力産業あるいは原子力発電立場にある人たちから、安全審査というか、そういうようなものに対するいろいろな注文がこれまで出てきていたように思います。特に円高という新しい事態で、石油と比べて原子力のコストが高いか安いかということが議論されている。そういうような段階では、原発経済性を上げたいという要求が出てくるのも当然ではなかろうかと思います。国内経済性優先稼働率向上というために、安全基準は少し厳し過ぎるから耐震基準を見直しをしてほしいとか、定期検査の期間をもっと短縮してほしいとか、あるいは簡素化してほしいとか、そういうような規制緩和要求が今日まで上がってきていたように聞いております。しかし、安全性経済性と引きかえにすることは許されないということを今度のチェルノブイルは示しているのではなかろうかと思います。ですからこういう要求は消えたと思うし、また、たとえそういうものがあってもやはり安全性優先という立場をこの際明確に貫くべきだと思うのですが、これは事務当局、さらに大臣からも伺いたいと思います。
  10. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  原子力開発利用を推進していくのに当たりましては、当然安全性確保ということが大前提でございます。科学技術庁としましては、従来から安全確保のため万全の措置を講じてきているところでございます。先生が今おっしゃいましたような原子力産業界の御指摘のような動きでございますが、私ども余り詳細なことは承知しておりませんけれども、少なくとも経済性向上を図るために安全性を軽視するといったようなことは、当然あってはならないことだというふうに考えております。
  11. 三ツ林弥太郎

    三ツ林国務大臣 今回の事故につきましては、多数の死者を出した点、また、原子炉等に損傷が生じた点、また、大量の放射能の放出により他国にまで汚染を及ぼした点等において、原子力開発史上かつてない重大な事故と受けとめております。原子力安全委員会特別委員会がまとめた第一次報告書でも指摘されているように、今回の事故については、安全設計上の問題点を背景として、規則違反等運転管理上の問題が引き金となって生じたものであり、我が国では考えられがたい事故であったことがほぼ明らかとなっております。我が国としては、今回の事故を謙虚に受けとめ、原子力安全委員会において引き続き詳細な検討を進め、今回の事故から学ぶ点があれば、これを教訓として一層の安全確保対策の充実に努めてまいる所存でございます。
  12. 安井吉典

    安井委員 それは一般論としてはそのとおりだろうと思いますが、私は、原子力産業界の方から基準緩和のいろいろな要求が出てもそれは断固拒否する、それくらいの態度でなければいけないということを大臣に申し上げ、そのお考えを伺っているわけです。
  13. 三ツ林弥太郎

    三ツ林国務大臣 原子力産業界の御指摘のような動きにつきましては、詳細は承知しておりませんけれども経済性向上を図るために安全性を軽視するということがないよう、今後とも原子力安全確保にさらに努力してまいりたいと存じます。
  14. 安井吉典

    安井委員 どうも今までのいろいろな原子力安全委員会等からの言い方も、日本の場合はヒューマンエラーはあり得ないというような断定的な言い方で、こういうようなことは私は随分危険なことではないかと思うのですけれども、それらの課題については別な機会にもう少し時間をとって論議したいと思っています。  ただ、ここで私が申し上げたいのは、原発は危険だと考えている人が扱ってやっと安全である、安全だ安全だと言っている人には原発は任せられません、こういう言葉があります。今度の原子力白書の中では、原発クリーンエネルギーだという言い方をしていて、チェルノブイル事故の後に何と無神経な言葉の使い方をするんだろうなと私は思ったわけでありますけれども、安全だ安全だと言っている人には任せられません、そういう表現をもう一度かみしめてほしいということを私は申し上げておきたいと思います。  そこで、これは科学技術庁もかんでいるが、外務省が最終的に処理されるのだろうと思いますけれども、ウィーンの国際原子力機関特別総会で九月二十六日に原子力事故早期通報条約原子力事故または放射線緊急事態における援助条約、この二つの多国間条約が採択されているわけでありますが、同日中に五十二ヵ国が調印したというのですね。しかし日本はどうなんですか。国内法との調整というような問題があるのだろうと思うのですけれども国会手続とか、これからどういうふうな処理をなさるおつもりか、伺います。
  15. 山田広

    山田説明員 お答えいたします。  九月二十六日に五十一ヵ国が先生指摘のとおり署名をいたしました。この署名というのは、いわゆる参加意思を公式に表明するということでございまして、署名をもって拘束を受けるということには自動的にはならないのでございます。我が国は、その時点で志村科学技術政務次官より、本条約の成立を非常に喜ぶと同時に、今後日本が早急に批准のための国内手続を進めるという意思表示をいたしました。  私どもは現在法制局等案文調整等に入ってございます。これは日本語の案文でございますが、関係省庁とも、法律及び例えば事故通報の場合、事業者から情報をどういう手続に従ってとり、それをどういうふうにして送るか、そういうことを固めるという作業を現在しておりまして、既に外務大臣外務委員会で表明しましたとおり、できる限り早い時期に署名をしたい。その上で国会に御審議をお諮りした上で、御同意が得られれば直ちに批准書ないしは同意書の寄託という形で本二条約について拘束を受けるという格好に持ってまいりたいと思っております。  以上でございます。
  16. 安井吉典

    安井委員 今度の国会といったって無理なのはわかるけれども、次の国会には提案するのですね。
  17. 山田広

    山田説明員 失礼いたしました。  十二月に始まります通常国会でございます。
  18. 安井吉典

    安井委員 次に幌延の問題であります。  調査の問題をめぐっていろいろとこれまでもトラブルが起きてきたわけでありますが、政府動燃の方も、地元理解協力なしには立地はもとより調査といえどもやりませんと国会答弁を続けてまいりましたし、知事地元の人に対してもしばしば言明してきたところであります。ところが、昨年の十一月二十三日に、知事周辺町村反対を押し切って調査を開始いたしましたが、そのときには地元理解協力を得るための調査をやるのです、こう言ってきたわけです。国会答弁でも、地元の疑問や不安に答えるために、その適否を探る調査であります、こういうふうな言い方をしてきたわけであります。そういうことになりますと、現在まで一年有余にわたってやってきたこの調査目的性格というのは、地元の疑問や不安に答えるため、その適否を探る調査というふうな目的性格を持ったものだということですか。
  19. 松井隆

    松井政府委員 先生おっしゃるとおりでございます。
  20. 安井吉典

    安井委員 本来の立地環境調査ではありませんね。
  21. 松井隆

    松井政府委員 目的はあくまで地元理解協力を得るための調査ないしは立地適否の判断ということでございます。ただその中には、やった調査の結果がいわゆる環境調査と申しますか、そういうものに適用されるものもあろうかというふうに思っております。
  22. 安井吉典

    安井委員 地元理解協力を求めるための調査という表向きの名目で、実際は立地環境調査をやっているのだ、地元理解納得を求めるためだというのは単なる言い抜けなのだ、そういうふうにとられているようでありますが、どうですか。     〔委員長退席平沼委員長代理着席
  23. 松井隆

    松井政府委員 地元の方がどういうふうに理解しているかについては私も定かにわからないところはございますけれども、いずれにしろ、今回の調査につきましては地元理解協力を得る。具体的にはいろいろな不安とか疑問が提起されたわけでございまして、それについてまずお答えするということが必要かと思いまして、それについての調査ということでやっておるわけでございます。
  24. 安井吉典

    安井委員 しかし、それは結果的には立地環境調査にそのまま当てはめていくということなんでしょう。だから、表をそういうような言葉でカムフラージュしながら、実際は実績を積み重ねていく、そういうことなんじゃないですか。
  25. 松井隆

    松井政府委員 前々から御説明申し上げておるわけでございますけれども本件立地につきましていろいろと地元の御意見があるわけでございます。特に昨年から、一つはまず地盤が非常に緩いのではないかという問題、あるいは地下水が多くて、その地下水を通して放射性廃棄物が漏れて、それを通して今度は牛乳まで汚染していくのではないかとか、活断層があって非常に危ないのではないか等々の疑問、不安等が提示されたわけでございまして、まずそれから調査を始めようという格好で始めているわけでございます。
  26. 安井吉典

    安井委員 どうも水かけ論になるわけでありますけれども、それは一応おいて、私は、その調査のこれまでのやり方が非常に大きな問題を起こしているということだと思います。  昨年の十一月二十三日に最初調査と称するものが行われました。だから北海道では十一月二十三日を幌延デーと称して、反幌延記念日にしていろいろな運動が起きているという実態があります。しかし、このときは、真夜中に道路を通るとわかるというので線路沿いに入っていって、夜が明けるまでどこかでたむろしていて、それから夜が明けて何かスプレーで印をつけてきたというのがこの十一月二十三日であります。だから泥棒猫調査と言われるわけであります。それから今度は八月三十日のボーリング機材搬入も、反対派を避けるというふうなことだったと思うのですが、午前四時三十五分にトラック七台で三百人の機動隊に守られて緊急に入ってきて、ほんのわずかの人しか反対行動がなかったわけでありますが、それを押して入っている。それから十月十六日のボーリング機械搬入も、これは全く真夜中に極秘裏トラック九台で入っていった。それから十一月六日には、これは午前十時ごろ、初めて昼間の行動になっているわけですが、そのときも、反対派が二百人くらい集まっていたのを頭越しにヘリコプターで搬入をした。  こういうような経過からいって、まるで何か大変悪いことをやるように、犯罪行為でもやるような仕組みでやっているのが今度の幌延動燃の適応の仕方だと私は思います。そういうようなことでつくられたデータに対して信頼性が果たしてあるのかどうかということです。だから、都合の悪い部分だけを除いて都合のいいところだけでつくり上げられるようなものになるのじゃないかと今までの調査行動の中から類推をされているような状況であります。こういったようなことが国民の信頼を受けた政府あるいは政府機関のやることなのかという声があります。これまでやってきた調査あるいはこれからやる調査信頼できるものであるという立証ができますか。
  27. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  ただいままでいろいろと文献調査を進めさせていただいておりましたし、また同時に、浅層ボーリングもやらしていただいております。先生指摘深層ボーリングの準備はさせていただいたわけでございますが、そういったデータを取りまとめて評価するというのは動燃の第一義的な責任であるというふうに考えておりますので、動燃といたしましてそれらのデータ検討評価したいというふうに考えております。しかしながら、得られました成果につきましては、学識経験者先生方にもいろいろと御意見を伺っていきたいというふうに考えております。
  28. 安井吉典

    安井委員 どうも秘密に調査をやろうとしている。その調査現場をだれにも見せていませんし、記者団には機械がこれだけ入っているという資材だけは見せたそうでありますが、そういうようなことでの不信感最後まで非常につきまといますよ。そのことを私は言っておきたいと思います。これまで調査をずっとおやりになっているわけでありますけれども、もう一年になるわけですが、まだその結果発表がありません。これはなぜなんですか。
  29. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  昨年の十一月に調査の着手をさせていただきましてから約一年たちました。その間、いろいろと文献調査も進めてまいりましたし、浅層ボーリングも進めさせていただきました。それらの結果につきましては、現在、評価作業検討作業を行っておる最中でございます。まだ総合的な評価をする必要があると考えておりますので、今後行う予定の深層ボーリングの結果その他も含めて評価をすべきであると思っておりますので、結果が出るのはもう少し先になるというふうに思っております。
  30. 安井吉典

    安井委員 昨年の十一月二十三日の最初調査の後動燃理事長は、調査の結果については調査データ分析検討を行った後速やかに発表し、地元理解を深めていくことにしたい、こう言っています。ところが、丸一年たっているわけですね。結果の発表については何らありません。何が速やかかと言いたいところであります。調査の結果が出ることによって地元理解納得を求めるわけですから、したがって、丸一年たったけれども、あなた方は地元理解納得を求めることができないわけですよ。そうでしょう。調査の結果が出なければ、その結果を見て理解納得協力を求める、こう言うのですから、その作業が全くやられてない状況では、地元理解協力などを求められるわけがないじゃないですか。どうですか、その点は。
  31. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  我々が集めております資料は、先ほど申し上げましたように現在検討評価を行っておる最中でございますので、これをその途中でいろいろな形で流すということはやっておりませんが、例えば浅層ボーリングの結果などにつきましてはもう既に新聞にも出ておりますが、今まで掘進をやりました結果、現地において現場作業実施段階で既に地盤としてはN値五十以上の地盤が存在するということが確認をされております。こういったことについては既に新聞などにも発表がされておるところでございます。
  32. 安井吉典

    安井委員 地元理解納得をする必要がないというわけですね、最後結論が出るまでは。最後結論というか、地元の人に最終的な結果をいつ発表するのですか。
  33. 植松邦彦

    植松参考人 総合的な評価動燃としていたしまして、そして先ほど申し上げたように学識経験者先生方の御意見も伺ってと思っておりますので、それまでには相当な時間を要するというふうに考えております。しかしながら、今申し上げましたように浅層ボーリングのように現場試験で直ちに結果の出たものにつきましては、新聞などを通じてもいろいろと公表をしてきたところでございます。
  34. 安井吉典

    安井委員 最終的な結果はいつごろ出るのですか、そのことを私繰り返して聞いているのです。
  35. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、今後深層ボーリングを行うということが非常に大切だというふうに考えております。深層ボーリング自体には約六カ月くらいかかるのではないかというのが現在の予想でございます。さらにそのデータ分析をし評価をするにはさらに数ヵ月を要するのではないかというふうに思っておりますので、大分先になるかと思います。
  36. 安井吉典

    安井委員 深層ボーリングにあと六カ月、その後また数ヵ月ということになりますと来年の今ごろですね、大体全体的なあれがわかるのは。ところが、昭和六十二年度の政府予算の編成に対して科学技術庁幌延立地を予定して予算要求をしている、そういう事実があるわけですが、結果がわからないのに何で幌延なんですか。そんな要求をするというそのこと自体が私はおかしいと思うのですが、どうです。
  37. 松井隆

    松井政府委員 お答えいたします。  これは昭和六十二年度のまだ概算要求でございまして、これから年末にかけて大蔵省と折衝して政府予算案が決まるわけでございますけれども、現在私ども要求の中身は、ガラス固化体貯蔵プラントあるいは深地層試験場等のいわゆる基本設計でございまして、これはそういう意味ではまだ基本設計でございまして、具体的なサイトをまだそこまで決定しなくてもできるものである、ただいずれにしろ早くサイトが決定次第遅滞なく物事が進めるように、こういうような考え方で現在要求しているわけでございます。
  38. 安井吉典

    安井委員 環境調査のごときは、サイトが決まらなければ予算組みようがないじゃないですか。どこに立地させるかということが決まらなければその予算使いようがないわけですから、これは非常におかしいと思いますよ。これは大分議論になりますので、次の問題がありますから、私は重大な問題だという指摘だけ一つしておきます。  幌延の地質の問題につきまして、新聞でも幾度も論争が行われております。ここにもいろいろな資料がございますけれども、きょうは深く入った議論をする余裕はございませんが、とりわけ北大、東北大名誉教授の八木健三さんの「文部省科学研究費補助金 総合研究(A)」ということでの研究課題、それのレポートもきちっと出ていて、これは外国の学者にも送られているわけです。そういう中で、ここは全く不向きだ、不適当だということを断言し、外国の学者からもそれに対する同感の意の表明があったというふうなことでありますけれども、これはどういうふうに受けとめておられますか。
  39. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  八木先生が文部省研究費で幌延地区の論文をお書きになっているということは拝見をいたしております。また、その成果を海外にお送りになって海外の専門家の方々から意見を求められたということも聞いております。しかしながら、八木先生の論文を詳しく拝見させていただきますと、八木先生動燃が現在計画を進めている貯蔵工学センターは処分場であるとの趣旨で議論を進められておるのではないかというふうに考えられます。動燃で進めております貯蔵工学センター計画には処分を行う計画は含まれておりません。その点、八木先生の御判断と多少違うのではないかというふうに思っております。  さらに八木先生からは、動燃に対しましても、海外から先生がお受け取りになった手紙のコピーをいただいております。その手紙も拝見をさせていただきましたが、必ずしもすべての方が不適とおっしゃっておられるわけでもございませんで、工学センターというものは容認できるという意見を述べておられる海外の専門家先生もいらっしゃるというふうに了解をさせていただいております。
  40. 安井吉典

    安井委員 きょうは内容にわたっての論議はできませんので、これもまた別な機会に譲りたいと思います。  ここでこの間群発地震が起きているわけであります。私もちょうどそのとき向こうに行っておりましたけれども、毎日毎日ひっきりなしに、四、五日間に有感、無感合わせて約二十回というふうに伝えられております。これもまた今回だけじゃなしに前にもあるわけですね。気象庁の方からもおいでをいただいておると思いますが、きょうは時間がありませんので十分なお話を伺えないと思いますが、その地震についての、あるいは過去の歴史だとか、後で資料の提出でもいいですから、きょうは概括的なお話だけちょっと伺います。
  41. 勝又護

    ○勝又説明員 今年の八月下旬、正確に申しますと八月二十三日でございますけれども、八月中に私どもの地震観測所では約十五回の地震を記録いたしております。至近距離に私どもの観測所があるわけではございませんで、稚内の観測所等では人体に感じませんでしたが、震源に非常に近い幌延、豊富付近では震度二ないし三として人体に感じたというふうに聞いております。この地域は、非常に小さな微小地震の活動でございますけれども、時にはございます。例えて申しますと、昭和五十年の暮れから五十一年の初め、この時期にもちょっとした群発地震がございまして、震源に近いところでは震度三あるいは場所によっては四を感じたというふうな報告がございます。
  42. 安井吉典

    安井委員 後でまた具体的な資料をいただきたいと思います。  群発というのが気になるわけですが、これは活断層の存在ということが前から言われているわけで、その一つの証明ではないかというふうに心配されるところであります。あのときはその地震がぐらぐらと揺れている最中に調査が行われたというわけなんです。気象庁、三原山で忙しいときだったと思うのですが、これで結構です。後でまた資料をいただきたいと思います。  そこで動燃の方に伺います。深層調査をこれからやられるというわけでありますが、その目的は何なのか、そして一ヵ所だけというふうに伝えられているが、そういうことなのか、いつから着手するとかどこをやるとかということなしに資材の持ち込みだけが急がれているのはなぜなのか等について一応お答えいただきたいと思います。
  43. 植松邦彦

    植松参考人 お答えいたします。  御質問深層ボーリング目的などでございますが、動燃といたしましては、地元幌延町の開進地区では、その地下の深部に関しまして三百メートルも掘れば水が出る層であるとか、当該地区が非常に不安定な地質構造を持っているのではないかとか、地下にガスが存在するのではないかといった疑問や不安があるというふうに聞いております。このような疑問や不安にお答えするため、これまで動燃では文献調査を実施してまいりましたし、また地表、地質調査及び浅いボーリング調査を行ってきております。これに加えて深いボーリングを実施してみませんと、三百メートルも掘った下のことはよくわかりませんので、こういう深いボーリングを実施するということが必要ではないかというふうに考えております。この時期、場所については、現在検討をしておるところでございます。
  44. 安井吉典

    安井委員 一本やそこらでそう簡単にできるような地質じゃないんですね、あそこは。現に留萌開発建設部、これは北海道開発庁の出先なんですけれども、ダムをつくるつもりでやったところが、そのダムサイトの地点、とても二百年もダムが耐えられるようなところじゃないというのでやめましたね。別な地点のボーリングを今やっていますよ。とにかく私は、八木先生資料を見るだけでも、あの辺がいかに複雑で、しかも活断層まで持っているということが明らかでありますから、深層ボーリングという問題にもいろいろな問題がつきまとうということだけ言っておきたいと思います。  ただ一つ私は期待ができるのは、千メートル以上掘れば温泉がわくかもしれませんね。少なくもガスが出るかもしれません。隣のすぐそばの豊富温泉があるんだしね。あそこは天然ガスで暖房をみんな賄っているわけです。それから、こっちの天塩町も、今たしか石油公団ですか、ガスのボーリングをやっています。そのちょうど中間なんですから。そして、今の地質的な状況の中でも、油の関係やガスの関係については、いろいろなそういうものに至るのではないかということを予測されるような資料が出ていますね。温泉でもわけば、隣に豊富温泉があるし、こっちは幌延温泉ということで、これの方がよほど地域開発に役立ちますよ。それはまあ冗談でありますけれども、私は、そういう深層ボーリング理解納得が得られるような状況の中でやっているのじゃないのだということだけを皆さんにしっかり理解してもらいたいし、こういうようなことで何かおくらせているというのは、まだあなた方ちゅうちょがあるのじゃないか。ですから今のうちに断念をするというようなことをひとつ勧告しておきたいわけであります。  そこで、今までの地質調査データは全部公開して、私はむしろ調査段階から学者などの科学的な検討にゆだねていく、そういうことでなければならないと思うのですが、公開の問題についてはどう考えていますか。もしやるとすればいつごろですか。
  45. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、幌延地区で調査を行うこと及びそのデータ評価を行うということは、実施主体でございます動燃事業団の責任であるというふうに私たちは考えております。したがいまして、私たちといたしましては、調査の実施そのものは動燃の責任でやるべきであるということで現在進めさせていただいております。私どもといたしましては、その評価につきましては、必要に応じ外部の学識経験者の皆様方の意見を聞かせていただく機会をつくりたいというふうに考えております。     〔平沼委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 安井吉典

    安井委員 自主・公開の原則がありますね。だからあくまで公開した中でやるのでなければ、そんなものは幾らおやりになったって信頼できるものにはならぬのだ、私はそういうことになるのではないかと思います。  今まで、幾ら調査をやっても知事反対なら立地できないのですよということを動燃は時々言われるわけであります。これはどういう意味ですか。
  47. 林政義

    ○林参考人 貯蔵工学センターを実際に立地する段階になりますれば、ぜひ知事の御了解を得たいと考えております。今後とも知事の御理解が得られますように最善の努力をしてまいりたいと存じております。先般来行っておりますボーリング、浅層、深層についてもその一環でございまして、いろいろ地元からも、深いところに活断層があるのではないかとか、地下水があるのではないか、あるいは非常に地盤が軟弱ではないかというふうな疑問もございますので、それらを解明することが我々の責務であるとも考えておりますので、地元の皆様の御理解を得られるように今の調査を進めておる状況でございます。
  48. 安井吉典

    安井委員 調査を進めていることはわかるけれども、何も理解になっていないじゃないですか。結果がわかるのは来年の今ごろでしょう。それまで理解納得を求めようとあなた方が幾ら言ったって、そんなものはむだですよ。ここで大丈夫ですとかなんとか言ったって、結果が全然出ないんだから。その理解納得を求めるための調査だと今言っているのでしょう。それが全然答えが出ないのですから、今そんなことを言ったってむだですよ。来年の最後ごろに結果が出れば、あるいはそれを持って知事さんどうですか、こういうことはできるかもしれませんけれどもね。つまり今理事長が言われたのは、日本じゅうどこだって原発の問題だって、そこの知事反対したままでやったというケースは一つもありませんよね。ただの一度もありません。そういうような中で、知事があくまで反対したらできないということでしょう。
  49. 林政義

    ○林参考人 ただいま申し上げましたように、ぜひ知事の御理解を得られるように今後とも努力をしていきたいと思っております。
  50. 安井吉典

    安井委員 しかし、その努力は、来年の結果が出るまでは、幾ら言ったって、結果を見せてくださいと言われたらあなた方一言も言えないじゃないですか、調査そのものに知事反対しているのですから。そういう現実的な問題が今までのあなた方の言い方から出ているわけですからね。つまり、理解納得を求めるための調査です、こう言っているわけですから、その結果が出ない限り何とも言いようがないじゃないですか。念仏みたいに言うだけにとどまっているということではないかと私は思います。  新聞によれば、今度の調査発表をおくらせているのは、調査というか、大体深層ボーリングをおくらせているのは知事選挙の関係ではないかという観測も書いている新聞があります。つまり、とりあえずボーリングの機械だけ入れるのは、十二月二日から幌延の町長選挙が始まるわけですから、推進賛成の町長に対するバックアップで機材だけ入れたのだろう。しかし、現実にボーリングをどんどんやっちゃって結果が出たら、来年の春の統一自治体選挙にそのことが争点になってくる。それを避けるために六カ月などということを言い出してきている。その結果が出るのはその後だというようなことを言っている。統一自治体選挙の争点ということになれば、北海道は今全道的に反幌延の道民の世論というものが高まってきています。世論調査の結果もそうなんですね。だから、そういうことになれば、その推進をしている道会議員も落選するし、それから、それを推進しようとしている知事候補は、これも当選できない。だから今度は争点にするなということを進めている政党も現実にあるというふうに伝えられています。そうなんじゃないですか。どこかからそう言われて今のようなあなた方の調査の実行や発表のスケジュールを立てているのじゃないですか。どうですか。
  51. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  今先生から御指摘のようなことではございませんで、我々としては、できるだけ早くデータが出るような努力をするということが実施主体としての動燃の責任であると思っておりますので、現在ボーリング装置を搬入させていただきまして開始の準備をしておるところでございます。準備が整い次第開始をさせていただきたいというふうに思っております。六カ月もかかるということにつきましては、これは前にも数ヵ月はかかるであろうということを新聞その他にもお話ししてあるとおりでございまして、急にボーリング期間が六カ月もかかるようになったということでは決してございません。
  52. 安井吉典

    安井委員 先ほどの植松理事からのお話では、幌延は高レベル、低レベルいずれについても最終処分場とすることにはならない、そういうお考えをさっき言われたのだと思うのですが、そのとおり考えていいですね。
  53. 植松邦彦

    植松参考人 お答え申し上げます。  我々といたしましては、幌延の貯蔵工学センター計画の中には処分ということは入っていないということを申し上げたわけでございます。
  54. 安井吉典

    安井委員 これは理事長それから大臣に伺いたいのですが、今の答弁からいうと、最終処分場とすることはいたしませんということを言わないのですね。だから、最終処分場とすることがあるのですか、それとも最終処分場とすることは全くありませんということをきょう言明していただけますか。最終処分場について、イエスかノーか、もうそれだけで結構です、時間がなくなりましたので。理事長と大臣にそれぞれ伺います。
  55. 林政義

    ○林参考人 お答え申し上げます。  貯蔵工学センターの計画では、東海再処理工場から出ました高レベル廃棄物、TRU廃棄物等を東海事業所におきまして安定処理した後に同センターに持ってまいりまして、そこで三十年ないし五十年貯蔵をいたします。この計画の中には、これらの放射性廃棄物を処分する計画は含まれてはおりません。処分地をどこにするかということは、この計画とは全く違った観点から日本全国を調査して進めるということでございまして、現在のところ全く白紙でございます。
  56. 安井吉典

    安井委員 それじゃ幌延も処分場になる可能性があるわけですね、現にそこで地層試験をやるわけですから。はっきり言えないのですか、ここは将来ともいたしませんということを。
  57. 原田昇左右

    原田委員長 安井君に申し上げます。時間が過ぎておりますので……。
  58. 安井吉典

    安井委員 この問題で終わります。
  59. 原田昇左右

    原田委員長 では、簡単に答えてください。
  60. 松井隆

    松井政府委員 御案内のとおり、高レベルの廃棄物の処分につきましては、今後十年かけて全国各地を調査している段階であるということはるる御説明申し上げているとおりでございまして、貯蔵工学センターとこの高レベル廃棄物の処分地とは別の問題でございます。したがって、現在同センターを処分場にする計画はございません。
  61. 安井吉典

    安井委員 そんなことはもうわかっていますよ。処分場にしないという計画は、もう何遍も我々は聞かされていますよ。ただ、将来処分場にするかしないか、その考え方を伺っているわけなんです。じゃ、今までの答えの中で、幌延はもう処分場になる可能性があるわけですね。何分の一か、それはわかりませんよ。あなた方はゼロだということは言わないのでしょう。私の伺いたいのはそのことだけです。
  62. 松井隆

    松井政府委員 既に前々から御説明したとおり、白紙でございます。
  63. 安井吉典

    安井委員 では処分場になる可能性があるんだ、何分の一かわかりませんけれども、そう受けとめるより私は方法がないのです。もしそのことに反論があったらお答えください。私はこれで質問は終わりますから。白紙なんですね。白紙なんでしょう。――答えがなければそのとおり、私は幌延も候補地の中にはいっているのだというふうに理解して、終わります。
  64. 原田昇左右

    原田委員長 小澤克介君。
  65. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 大変国民の注目を集めましたソビエトのチェルノブイル原発事故からかなりの日数がたったわけでございます。去る九月九日に原子力安全委員会ソ連原子力発電事故調査特別委員会による「ソ連原子力発電事故調査報告書 第一次」と称するものが発表されております。それで、本来であれば、国民代表のこの議会、特に当委員会におきましてこの報告書について詳細な報告をいただき、批判的な観点からいろいろ検討するということがあってしかるべきだろうと思いますし、また、ぜひそのような機会を近く設けていただきたい、これは委員長にお願いをするわけでございますが、とりあえずきょうは、一般質問ということで時間も余りございませんので、この調査報告につきまして、一応これはもう聞いたといいますか読んだという立場から、若干疑問点を何点かお尋ねをしたいと思うわけです。  この報告によりますと、いろいろ技術的な観点からの報告となっており、まあ基本的にはソビエト当局の発表したものを紹介しているのが大部分だというふうに思うわけですけれども結論といたしまして、本件事故はその背景に、この炉型の一つの特性といいますか、具体的にはボイド係数がかなり大きい正の値をとるということ、それから原子炉停止機能を初めとする安全対策について十分な配慮がないというような設計上の問題、こういうものが背景にあり、その上に人為的ミスがあって本件事故を惹起した。人為的ミスについては、ソビエト当局は六つばかりの要素を挙げているけれども、その中で直接関係が深いと思われるのは三つないし四つであるというような結論というふうに読めるわけでございます。そしてその結果、「本事故我が国では考えられ難い事故であったことがほぼ明らかになった。」このように結論づけているわけでございます。  そこで、これにつきまして大きな疑問があるわけでございますが、その一つに、まあボイド係数の問題、これは確かにこの炉における一つの特性だろうということはわかりますけれども、これに対しまして制御系としては、一応十分なといいますか、制御系が用意されていたのではないかということがむしろこの報告書からは読めるわけでございます。いろいろ世間では、ソビエトのこの形の炉は暴走しやすい上にブレーキの効きが悪いのだというようなことが言われているようですけれども、この報告書を見ますと、まず制御棒の作動速度が一秒間に四十センチということで比較的低速であるということが指摘されておりますが、同時に、制御棒の数量の多いことにより比較的低速であることが補われているという記載がございます。これが報告書の十八ページにあります。  それからボイド係数がかなり大きいということが一つありますけれども、それを含めても、この報告書にございます反応度操作余裕という概念があるわけですけれども、これが規定どおりになっていたならば、緊急保護システム作動の初期の負の反応度の投入速度は一秒間に一ドルということであって、これは正のボイド係数の効果を補償するのに十分である、こういう記載もあるわけです。これは二十三ページにございます。  このように見てきますと、規定どおりの運用がされていたならば、一応十分な制御系を備えていたのではないかというのがむしろこの報告書の率直な読み方ではないかと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  66. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  先生規定どおりとおっしゃいました意味の規定どおりの解釈はいろいろあるかと思いますが、出力レベルにつきまして、本来二〇%以上のあたりで実験を行うということになっていたわけでございますが、例えばそういうところで実験を行っておれば、出力係数が負でございますので、こういう暴走というようなことは多分なかったのではないかということは言えるのじゃないかと思います。  先生、いろいろ反応度を抑制する装置について十分であったはずだという御意見でございます。確かに規定どおりの運転をしておればこの原子炉はちゃんと制御されたということも事実でございますが、ソ連の方では、今回の事故に基づきまして幾つかの反応度制御に関連した改善策をこれから行おうということになっておりますので、そういう意味で、ソ連自身も制御をするスピードについては、やはり若干問題があったというふうに今回の事故の結果考えていると私どもは受けとめております。
  67. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 その点でもう一つ、これはちょっと読んでいてわからなかったので、率直な疑問で教えていただきたいのです。  緊急保護系が緊急時においても四十センチ・パー・セック、一秒間に四十センチという作動速度だというふうに読めるのですが、その一方で、本件事故の直前にクラッチ解除によって制御棒を自重落下させる措置をとった、こういう記載もあるわけです。これは報告書の四十三ページから四十四ページでしょうか。そういたしますと、本当の緊急時にはより速い作動といいますか、自重落下による制御棒挿入といういま一つの機能があったのではないかというふうにも読めるのですけれども、この点はどう読めばいいのか教えてください。
  68. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  その辺について詳細な説明は特にございませんけれども、自重落下でありましても、あるいは今回のような単なるスイッチボタンを押した結果のスクラム作動でありましても、結局、自重落下いたしましてもいろいろな抵抗もございますし、この原子炉の場合は、ここに書いてございますようなスピードでしか炉の中へ挿入されないということになっているようでございます。
  69. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 それで、本件事故が発生した直前の段階では、制御棒が効果をあらわすのに六秒を要するような状態であったというような記載があるのですけれども、この六秒というのは何か根拠が示されているのでしょうか。
  70. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  ほとんどの制御棒が上限値まで引き上げられていたということで、先生よく御存じのとおり、制御棒といいますのは炉心のある程度中へ入ったところで初めて効くわけでございますが、この六秒という数字の評価につきましては、ソ連が今回の事故にかんがみましていろいろな解析を行ったわけでございますが、この六秒というものはソ連が解析した数字でございます。
  71. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 その根拠についてまでは示されていない、こういうことだろうと思います。  そこで、この報告書を読みまして、タービントリップに対するスクラムをあらかじめ切っておいたために、もちろんこのスクラムが効かない。そこでいよいよ出力上昇が始まった段階で手動で制御棒の挿入を行ったけれども、つっかえて入らなかったということのようでございまして、結局のところスクラムに失敗したということが端的に言えるのではないかと思うわけですね。確かに、制御棒の作動速度がやや遅いとかいうようなこともありますけれども、しかし、我が国の軽水炉等でもスクラムにおいて制御棒が本当に効果をあらわし始める、いわゆる効き始めるのにはやはり二秒ぐらいはかかるというようなことも聞いておりますので、五十歩百歩ではなかろうか。すなわち、いよいよ核暴走が始まる段階においてスクラムをかけても間に合わないというのがこの暴走、反応度事故における実態ではなかろうかと思うわけです。ですから、あらかじめタービントリップの際の自動スクラムを切っていたというところが本質的なこの事故の発生原因ではなかろうか、こういうふうに思うわけですね。そういう理解はどうなんでしょう、間違っているのでしょうか。
  72. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  もちろんソ連事故評価、それから私ども原子力安全委員会特別委員会評価では、タービントリップによるスクラム信号のバイパスというのは、これがなければ事故を防止し得た可能性は非常に強いということではございますが、それよりもその他の規則違反の方がむしろ大きい要因であったというふうに解析しております。
  73. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 その他の規則違反というのは、非常に低出力で、かつ炉心を冷やし過ぎのような状態で運転をしつつ実験に入ったということをおっしゃるのだろうと思いますけれども、私が聞きたかったのは、その辺はともかくといたしまして、いざ反応度の暴走が始まり出した段階で慌てて手動でスクラムをかけても間に合わないのではなかろうか。これは多かれ少なかれどの炉にも言えるのではなかろうかということなんですが、そうではないのでしょうか。
  74. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  我が国原子力発電所の場合でございますと、制御棒全挿入に必要な時間が二秒ないし四秒ということでございますし、炉心自体ソ連の原子炉に比べれば非常に小さいということもございます。負の反応度挿入のスピードは非常に速うございますので、ソ連の場合のようになかなか反応度の抑制が効いてこないというようなことはないというふうに思っております。
  75. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 確かにスクラムの場合の負の投入度の速度は、我が国の軽水炉ではこれに比べればかなり速いというふうには聞いておりますけれども、しかし、反応度事故といいますか、暴走というのは非常に短い時間です。何秒とかいうようなのとはけた違いに速いわけですから、どうもそのようには言えないのではないか。結局五十歩百歩ではなかろうか。むしろ反応度事故が起こり得るような条件に至る前にスクラムがかかる、これこそが反応度事故を防止するポイントではなかろうかと思うわけですけれども、そうじゃありませんか。
  76. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 先生が御指摘になりましたような非常に短時間に起こる急速な反応度の変化の問題でございますが、これにつきましては、一番重要なことは自己制御性でございまして、単に制御棒で抑えるということ以前に、我が国の原子炉の場合でございますと、燃料の温度係数が当然マイナスでございますし、その他の係数、ソ連のようなボイド係数が非常に正で大きいといったようなこともございませんし、自己制御性で出力の負の係数が非常に大きいということがございますので、そういうような暴走状態になるということは、私どもはいろいろ安全審査の過程でも審査しておりますが、ないというふうに判断しております。
  77. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 今の御説にはちょっと納得いかないといいますか、大変異論があるわけですけれども、それは後でまたお尋ねすることにいたします。  もう一つ本件報告書で非常にわからない疑問なのが、爆発が前後二度起こっているわけですけれども、この二度目の爆発の性質でございます。この報告書でもこれについては必ずしも断定していないように見受けられるのですけれども報告書の四十五ページを読みますと、花火のような状態があったという証言があります。それから、本件事故によってエアロゾルがかなり多量に検出されているということがございます。それからいま一つ、これはR・E・ウエッブという方が一九七六年に「原発事故災害」という論文を発表しておられるのですが、その中に今回と非常に似たといいますか、前後二度の爆発が起こる、そのような事故を想定しておられる。しかも、これは軽水炉において想定しているわけですけれども、この想定によりますと、出力が一たん上昇してそして一たん下がる、その後、これは自己触媒的というのでしょうか、オートカタリティックな核暴走が起こる。出力が定格出力の百倍程度に至るというようなモデルを想定しているわけですね。本件に非常に合致している。これらの三点から考えますと、この二度目の爆発というのはむしろ核爆発に近い、すなわち核燃料が気化してしまうような形での爆発ではなかったのかというふうにも思われるのですが、この点はいかがでしょうか。
  78. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  爆発の経過についてでございますが、ソ連は、最初の反応度の高まりによりまして燃料に加えられた熱量の計算をしております。私ども原子力研究所のNSRRという研究炉でこの種の反応度事故についての燃料の健全性の試験研究をやっておりますが、そのときに、ソ連の今回チェルノブイルで加えられたような熱量が軽水炉用の燃料に加えられた場合には、燃料が飛散するといいますか、粉々になって飛び散る現象が起こるということを把握しておるわけでございますが、そういう事象が起きますと、熱い燃料のいわゆる粉になったようなものが水と急速に反応しまして蒸気が発生して、この高圧蒸気のためにまず第一回の反応が起きたのではないかという推測が一つなされております。  それから二度の反応につきましては、これもあくまでも推測の段階だと思いますけれども、高温になった炉心部の被覆管であります金属と高温の水が反応いたしまして水素ができた。その水素が空気中の酸素――炉心部はこの状態では破壊されておりまして、空気が周りからも入ってきておる状態であろうと推定されますけれども、この空気中の酸素と反応して水素爆発。と同時に、ソ連の原子炉の場合は黒鉛が減速材としてあるわけでございますが、黒鉛の温度自身が七百度以上という非常に高温状態で運転されておりますので、これがさらに加熱されますと水とか空気とかの反応でいろいろな爆発が起こるということでございまして、現在のところでは第二の爆発は水素爆発とか黒鉛の燃焼とか、そういう化学爆発であろうというふうに推定されております。
  79. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そのエアロゾルの存在については化学爆発で説明できるのでしょうか。
  80. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  第一段階の破壊で、先ほども申し上げましたように燃料が飛散するといったような急速な破壊をしているわけでございまして、非常に超高温な状態でございます。その際に、そういうエアロゾル的な放射性物質が生成されたということは当然考えられますし、その後の化学爆発によってもさらにこれが助長されるといいますか、そういうことはあり得たのじゃないかというふうに考えられます。
  81. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 この点は、本件第一次報告ということでまだ必ずしもはっきりしていないということのようでございますので、この程度にとどめますが、先ほどもちょっと触れましたが、ウエッブのモデルによりますと、軽水炉でもこのような反応度事故、暴走事故というのは十分起こり得る。ウエッブが想定したのは、蒸気バルブが何らかの原因で突然閉鎖する、そのために出力が上昇いたしまして、そして一たんは下がるのですけれども、燃料の一部溶け出しなどが生じて、その結果再び反応が急上昇するということは十分起こり得るということを想定していたわけですね。本件はこれに非常に類似している。ウエッブは、あなたの想定が極めてぴったり当たったではないかというふうに言われて、いやむしろ外れたんだ、私は軽水炉で想定していた、軽水炉であれば原子炉の中の放射性物質が全量出てしまったであろう、しかしソビエトの事故はチャンネル型であったために四%程度の放出で済んだ、このようにおっしゃったということも聞いているわけです。すなわち、ボイド係数が正だから不安定だというふうによく言われるのですけれども、蒸気バルブが突然閉鎖したというような場合にはむしろ圧力が高まる形で出力が上がる。こういう場合にはボイドが逆に消えるわけですから、そういったタイプの核暴走というのも十分あり得る、このように思うわけですね。したがいまして、形が違うから、あるいは自己抑制性が我が国の軽水炉には備わっているから我が国の軽水炉ではこういう事故は起こり得ないというふうに言い切るのは、極めて危険であり、かつ乱暴な意見ではなかろうかと思うわけです。  その点はいろいろ議論のあるところだろうと思いますけれども、結局のところこの事故は、反応度操作余裕の規定に違反をして、非常に暴走が起こった場合にとめにくい状況で運転をしていた、さらにまた、非常に不安定な低出力で、しかも冷やし過ぎの状況で、しかもタービンをとめるというような荒っぽい実験を行った、簡単に言いますとこういうことだろうと思うわけですね。そうしますと、このようなあってはならない条件下でこういう運転をし実験を行った、そういう意味ではやはり操作ミスといいますか人為ミスだという要素が非常に大きいのではなかろうかと思うのですけれども、そのような理解で間違いないでしょうか。
  82. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  先生も御案内のとおり、今回特定の実験を目的としてとにかくその実験を遂行したいということで、それを妨げるような一切のいろいろな安全保護系統のバイパスをやったわけでございまして、これは完全に意図的な人為ミスというふうに私ども理解しております。
  83. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 いろいろ細かい議論はあろうかと思いますが、本質的には極めて大きい人為ミスだというふうに現段階では結論づけられるのではないかと思われます。一つは、このような人為ミスを許すような仕掛けになっていた。例えば反応度操作余裕についても、インターロックがなかったではないかというようなことが指摘されているのですけれども、どうなんでしょうかね。これはやはり構造上の欠陥というふうに言えるわけでしょうか、構造といいますか、むしろ設計といいますか。
  84. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  我が国の原子炉の場合でございますと、一定の条件が整わない場合には制御棒の引き抜きはできないということになっておりますが、今回のソ連の制御棒の操作状況を見ますと、そういうこともなしに、とにかく運転員が引き抜きたければ引き抜ける、結果的にはそういうふうになっていたということで、そういうインターロックがなかったということはやはり安全上非常に大きな問題であったというふうに私ども理解しております。
  85. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 それはそうだろうと思いますけれども、しかし、これは人間のつくったものですから、たとえインターロックの装置があっても、これは常に外すことができるわけですね。人間がつくったものですから人間が解除することはできるわけでして、その意味で結局人為ミスが非常に大きいといいますか、いかに精緻な機械であっても結局は人間が操作する、その人間のミスが重大な結果を招くということを図らずも見せつけたというのが今回の事故の本質ではなかろうかというふうに思うわけです。  そこで、この点についてはまだ伺いたいことかいっぱいあるのですが、ちょっと時間も足りなくなりましたので、最近の我が国における原発事故について少し伺いたいと思います。相変わらず大小いろいろな事故が発生しているようでございますが、これ全部をお尋ねするととても時間が足りませんので、主なものについて御説明願いたいと思います。  ことしの七月七日に関電の大飯発電所一号機ですか、ここで原子炉が停止する事故があったようでございますが、これはどういった事故でしょうか。
  86. 杉原誠

    ○杉原説明員 御説明いたします。  ことしの七月七日に起こりました関西電力大飯発電所一号機の故障につきましては、定格出力で運転をしておりましたところ、保修員が屋外の開閉所、これは電気系統の設備でございますが、そこのケーブル点検作業中に誤って主変圧器の保護装置用のケーブルを損傷させて、変圧器の保護回路が働いて発電機が自動停止をして、それによって原子炉が自動停止をしたものでございます。
  87. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 これは三、四号機増設工事のために作業をしていてケーブルを損傷させたというふうに聞いておりますが、そのとおりでしょうか。  それともう一つ、この事故では保護装置の一つが作動したにもかかわらず作動していないという誤信号が出て、そのために別の遮断器も作動して、結局運転用電源が一時全部断たれるという事態に立ち至ったというふうに聞いておりますが、これは事実でしょうか。この二点、お願いいたします。
  88. 杉原誠

    ○杉原説明員 先生指摘のとおりでございます。
  89. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうしますと、これはまさに増設工事の作業のためにケーブルを損傷させたという典型的な人為ミスということになろうかと思うわけです。     〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕  次に、同じくことしの八月二十二日に、関電の高浜二号で蒸気タービンが負荷のないままに回転数が急上昇して、これが原因で結局原子炉が停止するに至ったという事故を聞いておりますが、これはどういった事故だったのでしょうか。
  90. 杉原誠

    ○杉原説明員 ことしの八月二十二日の関西電力高浜発電所二号機の故障についてでございますが、これは定期検査を終了して、調整運転といいまして準備段階でございました。それで、調整運転を行っているときに、発電機を併入準備中に蒸気タービンの回転数を上昇させる際に操作員が運転操作手順を誤りまして、順序をちょっと逆転をさせたために主蒸気の流量が増加し、蒸気タービンの回転数が上昇して、その上昇したのを運転員が見て異常だということで手動で蒸気タービンをとめました。蒸気タービンがとまったことによって原子炉が自動的に停止をいたしたものでございます。
  91. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 このケースでは、負荷をかけながら徐々にタービンの回転数を上げていくはずのところを手順を誤った、そのために毎分八百回転のはずが千四百六十回転まで一気に上がってしまったというように聞いているわけです。タービンの回転が急上昇をするということは極めて危険なことはよく知られているところでございまして、これも操作員が操作手順を誤ったために起こったという典型的な人為ミスであるということが指摘できようかと思うわけです。  それから次に、続いて八月二十五日、東電福島第一の五号機ですか、ここでやはり原子炉が自動停止したということがあったようですが、これはどういったことから起こったのでしょうか。
  92. 杉原誠

    ○杉原説明員 八月二十五日の東京電力福島第一原子力発電所五号機の事象につきましては、これもやはり定期検査最後段階でございます調整運転というのを行っておりましたが、その際の給水制御系の不調によりまして原子炉への給水が増加をして、原子炉の水位が高いということで自動停止をしたものでございます。この原因は、給水制御系の配線を定期検査の最中に誤って配線をしてしまいまして、そのために制御系を切りかえた際に誤った信号が出て給水を増加させたために、原子炉の水位が高くなって、原子炉トリップに至ったということでございます。
  93. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 このケースでは、要するに配線を間違えたという非常に基本的なミスで、しかもテストを行ったにもかかわらず配線ミスのために自動停止に至ったというふうに聞いているわけです。これもまた典型的な、かつ重大な人為ミスだと言わなければなりません。  そのほかにもいろいろあるのですけれども、時間の関係で全部挙げるわけにはいかないのですが、もう一つだけ。  十月十日に日本原電の東海発電所で二機のタービン発電機が自動停止したということも聞いております。なお、このケースでは補助海水循環系配管に損傷が発生したということも聞いておりますが、このタービンの自動停止、これはどういったことから起こったのでしょうか。時間がございませんのでなるべく簡単にお願いいたします。
  94. 杉原誠

    ○杉原説明員 十月十日の日本原子力発電東海発電所の事象でございますが、これも定期検査の最終段階調整運転の段階でございました。こちらには二台のタービン発電機というのがございます。これが停止した原因は、この定期検査中に発電機の取りかえを一台やっております。それの保護系統の設定値を低い値に設定したために、通常の運転をしておるにもかかわらず発電機の保護系電気が働いて、発電機がトリップしたのが原因で原子炉がとまったというものでございます。
  95. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 これもまさに発電機の保護系の設定値を誤って設定したという極めて単純な、かつ重大な人為ミスだということが言えると思います。  このように見てきますと、人為ミスというのは数限りなく起こる。むしろ過ちを犯すのが人間であるということが最近の事故数例からでも立証されると思うわけですね。したがって、我が国では考えられない人為ミスであるというふうに他国の事故を言い切ることは非常に危険があるということを指摘をせざるを得ないわけです。  そこで、時間がなくなってしまったのですが、あらかじめ提出いただいたこの事故の一覧表にはなぜか載っていないのですが、十月十二日、原電の敦賀の一号炉ですか、これで制御棒の駆動水ポンプがトリップをしたという事故があったのではありませんか。
  96. 杉原誠

    ○杉原説明員 御指摘のとおり、十月十二日に日本原子力発電敦賀発電所一号機制御棒駆動水ポンプの電動機の巻き線の損傷事故はございました。
  97. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 このケースについては、協定に基づいて県あるいは市に対して事故の通報がなされているのでしょうか。
  98. 杉原誠

    ○杉原説明員 県、市への通報があったかなかったかについては、私のところでは承知しておりません。
  99. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 これは県、市の方に問い合わせたいと思います。このケースでは、同時に高圧注水系、これはECCSだろうと思いますが、そこにもトラブルがあったのではありませんか。
  100. 杉原誠

    ○杉原説明員 御指摘の点については承知しておりません。
  101. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 承知していないはずはないと思うのですけれども、ついでに聞きますが、同時に原電敦賀の二号機でも何らかトラブルがあって、出力が変動したというようなことがあったのではありませんか。
  102. 杉原誠

    ○杉原説明員 御指摘の点についてもちょっと承知しておりません。
  103. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 実は、私の入手した資料によりますと、この敦賀一号、敦賀二号のトラブルについて、原電とそれから通産省とで、事前に県あるいは市に提出する資料について相談する、通産省が事前にチェックをする。そしてその結果、「敦賀一号についてはオーケーだ。ただし高圧注水系のトラブルについては非公開と主張しなさい。」それから「敦賀二号の出力変動の記載は細か過ぎる。ここまでプラント挙動が公開されるのは困る。もっと簡略化できないか。」というようなことを指導している、こういう資料があるのですけれども、いかがですか、通産省。場所も通産省で、日にちは十月十四日、時間も十一時五十分からこういう指導があったということを聞いているのですが、どうですか。承知してないということでは済まないと思いますがね。
  104. 杉原誠

    ○杉原説明員 申しわけございませんが、私には心当たりがございません。
  105. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 固有名詞もわかっております。ここでは固有名詞までは出しませんけれども、通産省からだれが出たということもわかっているのですよ。出力変動についてもっと簡略化できないかというのに対して、原電の方で、「何時何分に出力変動があったか記載するようにフォーマットが定められており、訂正が困難だ。試運転時なので細かくなる。」そうしたら通産省の方で、「今回はこのままでよいが、来月以降詳細は別添にする等検討してほしい。」それに対して原電の方で、「難しいが検討してみる。」こういうやりとりがあった。要するに、県や市に対する資料の提出について通産省が事前にチェックをして、しかもこんなに明らかにすることはないとブレーキをかけている、こういうことになるわけですね。これは重大な意味を持つと思いますよ。わからないということですから、ここでわかる、わからぬと言っていても時間がたつばかりですからこの程度でとどめますけれども、あってはならぬことであります。よく調査をしていただきたい。しかも、この結果について市、県に対して通報したのかしないのか、もししなかったのだとしたら、それほどういう根拠に基づいてしなかったのか、また通産省はどういう根拠に基づいてこういう指導をしたのか、ぜひ調査をして御回答を願いたいと思います。  時間がそろそろ終わるようですけれども、もう一つ、東電の柏崎で十月三日に再循環のポンプの軸にクラックが生じた、そのために取りかえた、こういう事実もあるのですが、これについてはいかがですか。
  106. 杉原誠

    ○杉原説明員 柏崎の一号機の件についてお答えいたします。  御指摘のような事象は承知しておりません。     〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 これは私、根拠なしに言っているのじゃないのです。再循環ポンプの軸にクラックがあった。取りかえた。そのために内部的にいろいろ対策などが行われているのです。これはもし通産の方で知らないということになれば、東電が隠しているということになるわけです。ぜひお調べをいただきたい。その上で御報告を願いたいと思います。
  108. 神田淳

    ○神田説明員 先生指摘の敦賀の二号の件でございますが、そういう指導ということについて私ども承知していないのでございますが、帰りましてよく事情を調べまして御報告申し上げたいというふうに考えております。
  109. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 時間が来ましたのでこの程度でやめますが、人為ミスというのが非常に多数起こっている。しかも、原電の敦賀一号、敦賀二号について高圧注水系にもトラブルがあったということを示す資料があるにもかかわらず、これを非公開と主張しなさいということを通産省がわざわざ指導している。さらに敦賀二号については、出力変動の記載が細か過ぎる、プラント挙動が公開されるのは困る、こんな指導までしている。これはまさに事故隠しを通産省が指導しているとしか思えないわけです。あってはならぬことです。きょうは固有名詞までは挙げませんけれども、どなたが出席していたかまでわかっているのです。ぜひ調査をして御報告を願うことを要請いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  110. 原田昇左右

    原田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十六分休憩      ────◇─────     午後一時十七分開議
  111. 平沼赳夫

    平沼委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。冬柴鉄三君。
  112. 冬柴鐵三

    冬柴委員 科学技術庁昭和六十二年度重要施策の中に、大型共同利用基礎研究施設の整備調査費として一億二百万円の予算概算要求がなされております。この施設はいわゆる六十億電子ボルトのエネルギーを持つシンクロトロン放射光発生施設を指すと理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。
  113. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 先生指摘のとおりでございます。ただ六十億電子ボルト、六ギガエレクトロンボルトになるかどうかは、正確にはこれから検討することでございますが、おおむねその程度の規模のものを考えておるということでございます。
  114. 冬柴鐵三

    冬柴委員 以下、このシンクロトロン放射光発生施設のことをSR施設、このように略称させていただきたいと思いますが、これは六十一年三月二十八日付で閣議決定をされました科学技術政策大綱との関係においてどのような位置づけを考えていられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  115. 三ツ林弥太郎

    三ツ林国務大臣 お答えいたします。  超高輝度、短波長を伴う特徴を有する高性能放射光施設は、物質・材料系科学技術、ライフサイエンス、情報・電子系科学技術等、新しい発展が期待される基礎的・先導的科学技術の推進に資するとともに、また、大型共同利用施設として科学技術振興基盤の強化、産学官及び国際研究交流の促進に貢献する点において、科学技術政策大綱が示す方針に沿うものでございます。  高性能放射光施設の設置計画は欧米においても進められておりまして、基礎研究分野で世界に伍していくためには、我が国においても早期着手が必要であります。今後とも推進に向け努力する所存であります。
  116. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常に丁寧にお答えいただきまして、どうもありがとうございました。  重ねてでございますけれども、この整備推進についての国務大臣の所信を明らかにしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  117. 三ツ林弥太郎

    三ツ林国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、推進に向けまして努力する所存でございます。
  118. 冬柴鐵三

    冬柴委員 若干技術的なことになると思いますけれども、このSR施設の概要、特に六GeV、六十億電子ボルトということになりますとどのような概要を有するものなのか、簡潔に説明をいただきたいと思います。
  119. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 お答えいたします。  まず、この放射光施設というものの概要でございますけれども、この施設によって出てきます放射光というものは、電子を光速近くまで加速いたしまして、その電子の軌道を電磁石等を使って急激に曲げますと電子軌道の接線方向に出てくる光ということでございまして、非常に強力な光でございます。また、この光を出すための施設でございますが、まず加速するために線形加速器というのがございまして、これは大体長さが四百メートルぐらいございますが、ここでまず第一段階の加速をいたします。それから次にシンクロトロン加速器という円形をした加速器を使いまして、さらに電子を光の近くまで、光速近くまで加速する。それを貯蔵リングという、直径が大体三百メートルぐらいになりますが、これに電子を入れまして、そこから電子軌道を曲げることによって放射光を取り出すという装置でございます。  この光の特色は、非常に輝度が高い、明るいということ。それから、その波長の幅が非常に広い。長いものは可視光線から、あるいはだんだん短く紫外線、さらに短波長のエックス線領域までの光を出すことができる。それから、その光の性質が非常に指向性がいいというか、俗な言葉で言えば非常にシャープな光が出るというような特徴を持っております。したがいまして、この光を使いますと、例えば濃度をそれほど濃くしない状態でも材料に含まれるほんの微量の物質の解析が可能になるとか、あるいは非常に明るい光でございますので物を非常に短時間で観測することができる。したがって、例えばたんぱく質あるいは材料といったものをつくる過程でどういう化学変化が起きるかというような、非常に瞬間的に起きるような現象も子細に観察することができるというような特色を持っておりまして、したがって、いろいろな基礎研究の分野で使われるものでございます。
  120. 冬柴鐵三

    冬柴委員 現在医学分野でも相当な利用がなされているようでございますが、医学分野あるいは生物物理分野、物性物理学、化学、それから材料工学、電子工学、そのような分野でいろいろな研究計画あるいは意見等が発表されているようでございます。簡単で結構でございますけれども、その典型的なものについて御説明いただきたい、このように思います。
  121. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 利用分野といたしましては、例えば物理とか化学とか生物というような基礎研究の分野でも、非常に微少な試料の構造の解析であるとか、あるいはいろいろな結晶が成長する過程を観察することだとか、動物、植物内のごく微量の金属原子あるいは不純物等の観察、解析というようなこととか、あるいは確かに医療分野でもがんの治療だとか循環器障害の診断、それからさらに工業の分野では超LSI等の新素材の開発だとか、あるいはバイオテクノロジー関係では酵素の合成とか医薬品の合成とか、そういった分野がこの利用分野として考えられております。
  122. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのような有用な施設につきまして今から調査をされるわけですけれども、施設建設にはどの程度の費用が要るように考えていられるのか、その概算ですね。それから、このような大型の基礎研究施設の開発費、こういうものは当然政府負担をもって行うべきであると考えていますけれども、そのような点につきましてもどのような方向で考えていらっしゃるのか、その点についても説明を願いたい。
  123. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 今私どもが計画しております六ギガエレクトロンボルトクラスの大型の専用設備というのは現在世界にございませんで、国際的にも欧米で目下計画が進められ出したばかりというような状況でございます。私ども科学技術庁としても来年度の概算要求に提起しておりますが、その中で必要な技術面の検討だとか立地適地の選定等についての検討だとかいうことをやることにしております。したがいまして、明確に今建設費が幾らだとか、どこに立地するかということは現状ではちょっとお答えできないわけでございます。ただ、建設費につきましては、ほんの概算でございますが、本体部分だけで六百億円程度はかかるのではないだろうかというふうに考えております。
  124. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのように六百億、これは本体だけでございますけれども、その開発費は当然政府負担、そのような形で行われるかどうか、その点について。
  125. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 こういった基礎研究に必要な施設でございますので、国が中心になってこの設置、運営を進めるということは基本的にそのとおりだと考えておりますけれども、ただ、この施設は、先ほども申し上げましたように各基礎研究分野の方々の共同利用施設として建設したいと考えておりまして、いろいろな費用の分担だとか運営のあり方等についても、そういった利用される方々にもぜひ協力していただきたいというふうに考えております。したがいまして、具体的にどこを国が負担して進めるかという点につきましては、今要求しております調査費を使いまして、関係者の方々ともよく相談しながら今後検討を進めてまいりたいと考えております。
  126. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちなみに科学技術研究開発費に対する政府負担割合でございますけれども、一九八四年度の統計によりますとアメリカは四六・六%、西ドイツは四二・三%、フランスは五八%を政府が負担している、残念ながら我が国は二〇・八%、割合としては先進国の半額にしかなっていない、このような報告があります。これは早急に引き上げられるべきである、このように考えますが、大臣のその点についてのお考えを伺いたいと思います。
  127. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  国の研究投資に占めます政府の投資といったものにつきましては、欧米先進国と我が国の水準は今先生指摘になりましたとおりの統計的な数字が出ているわけでございますが、一方、国全体の研究投資を見ますと、日本は今二・九九%というような数字にまで高まっておりまして、このところ非常に急速に民間の研究投資が高まってきて、欧米先進国よりもオーバーしているようなところもあるわけでございます。そういったこともあって、政府の方は財政がこういう状況でございますのでなかなかふやしがたいということで、相対的に政府の比率がどんどん落ちてきました。かつては二五%ぐらいのこともあったわけでございまして、そういう意味では非常に残念でございますが、単に民間との比率ということだけでなく、国民一人当たりの研究投資というような数字を見ましても国の研究投資が少ないという状況にもございますので、もちろん研究費の効率的な使用というのは当然のことでございますが、私どもとしてはやはりパイを大きくすることが今の我が国にとって一つの重要な課題ではないかと考えております。  そういうことで、各省とも非常に苦しい財政事情の中でございますが、毎年ほかの経費を削ってこういう研究投資の方に振り向けているということで、ゼロシーリングといいながら、毎年少しずつでございますが、科学技術関係の経費は増大させていただいているわけでございます。私どもも今後とも国の研究投資の増大についていろいろなことで努力してまいりたい。それとあわせましてやはり重点的な投資をしなければいけませんので、そういった点も考えながら努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  128. 冬柴鐵三

    冬柴委員 民間の血のにじむような支出といいますか、そういうもので我が国の研究投資がGNP比二・九九%、相当な額にまで達しました。このようなことから、民間の負担というものを助成すると申しますか、そういうものに対して国庫補助とか委託費の適正な配分、あるいは税制上の優遇、金融措置を講ずる等の施策をとるべきだと私は考えますけれども、その点につきましてどのようなお考えでいらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  129. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  民間の研究投資の増額については前々からいろいろ税制上の措置を講じておりまして、例えば前年度よりも試験研究費を増額したものにつきまして免税をするというような税制上の措置を講じておりますし、そのほかはいわゆる国の補助金とかそういったもので、国全体の立場に立って今後重点的に推進していくべき民間の技術開発については、それを一つの刺激剤にしまして民間の研究投資を増大する方策を従来からとっております。民間の研究投資の増大につきましても政府として引き続き努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  130. 冬柴鐵三

    冬柴委員 SRの施設そのもの、いわゆる本体の建設費、そういうものについて六百億円、そのほか共同利用施設をそこに付加することによって必要なものが数百億円に達すると言われているようでございます。また、その価格の中には土地の代金なども含まれてないように考えておりますので、このような民間の投資というものについてなお一層税制あるいは助成その他について特段の御配慮をいただきたい、このように要望しておきます。  なお、六GeV・SRということになりますとどの程度の面積の土地を必要とするのか、本体及び共同施設についてどの程度予定されているのか、そのような点についてもお伺いしておきたいと思います。
  131. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 先ほど来申し上げておりますように、正確なところはこれからの検討にまつわけでございますが、一応現段階で私どもが想定しておりますのは、おおむね百ヘクタールぐらいの用地が必要であろうと考えております。
  132. 冬柴鐵三

    冬柴委員 規模は別としまして現在我が国に設置されているSRは四基ある、こういうふうに理解しておりますが、それはいずれも東日本に存在している、名古屋以西には全く設置されていない、このように思うのです。このようなことから照らしまして、このたびの調査につきましてはぜひ関西を中心に行われたい、このように考えますが、この点についての見解を伺っておきたいと思います。
  133. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 具体的な設置場所につきましては現段階ではまだちょっとお答えできる状況ではございませんが、ただ、関西方面でこの施設を非常に熱心に誘致していただいている方がおることは事実でございます。私どもとしてはそういったことも念頭に置きながら、いずれにせよ日本全体として、あるいは学界、産業界、国研というような関係者全員の御意見をこれからいろいろお聞きしながら、この施設がその目的を果たすのに最もふさわしい場所に建設したいと考えておる次第でございます。
  134. 冬柴鐵三

    冬柴委員 先ほど大臣の御答弁にもありましたように、この施設の設置は我が国にとっては非常に大切なものであり、また緊急の課題でもあると信じております。また、その関西への設置は我が国の研究開発機能のバランスある発展につながると私は信じますので、そのような点で格段の配慮を求めたいと考えます。  次に、外国におけるSRの開発状況について若干触れられましたけれども、六GeVというようなことになりますと現在どのようなことが考えられているのか、簡単に説明をいただきたいと思います。
  135. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 現在私ども科学技術庁検討しておりますものとほぼ同様の性能を持つ放射光施設の建設計画としては二つございまして、一つはアメリカで、イリノイ州のアルゴンヌ国立研究所というところで、加速エネルギーが六ギガエレクトロンボルトクラスのものを計画しておると聞いております。もう一つはヨーロッパでございまして、フランスのグルノーブルというところに、これはフランスだけではございませんで、フランス以外にも西ドイツ、イギリス、イタリア等のヨーロッパの数ヵ国が参加いたしまして、共同プロジェクトとして進めている放射光施設計画がございます。これも加速エネルギーとしては五ないし六ギガエレクトロンボルトということになっております。
  136. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと話は変わりますけれども、六十一年九月六日付の日本経済新聞朝刊には、「文部省高エネルギー物理学研究所は五日、世界最強の放射光光源を六十二年度から三年計画で開発すると発表した。」同所の素粒子実験用巨大加速器トリスタンの一部に、総額約十億円を投じて放射光取り出し口を設置することにより、六十億ないし八十億電子ボルトのエネルギーを有する放射光を取り出すこととする、このような趣旨の記事が掲載されました。この高エネ研の考えておられるものと、今までここで論じてきたSRとは内容が違うのかどうか、その関連はどうなのか、その点についてわかりやすく説明していただきたい、このように思います。
  137. 藤咲浩二

    藤咲政府委員 私どもが計画しておりますのは、先ほど御説明しました、欧米で現在開発計画が進められているものと同じ水準の性能を持つ、世界の最先端を行くような放射光専用の施設でございます。これを共同利用施設として建設したいということでございます。文部省の方の計画は、今先生のお話にもございましたように、現在高エネルギー物理学研究所が大規模な実験装置として持っておりますトリスタンの前段の加速器の一部を利用して放射光を取り出そうということでございまして、放射光の専用施設ではないわけでございます。したがいまして、そこから出てくる放射光の性能といいますか、一番重量な性能は明るさ、輝度でございますけれども、これは全く違うものでございまして、当面、より明るい光を取り出すという意味ではトリスタンの改造計画というのも非常に意義があると考えておりますが、十年先を見て、世界最先端レベルの性能の装置を持つという意味では、私どもの計画がぜひ必要だというふうに考えておるわけでございます。  なお、それからもう一つ、専用器でございますと、光を取り出す取り出し口、ビームラインと呼んでおりますが、これをたくさんつくることが可能になるわけでございまして、私どもの計画で約三十六本、その三十六本のそれぞれの先に実験装置をつけまして、多数の方が本体を共同利用できるという形になるわけでございます。一方、トリスタンの一部改造計画ですと、取り出し口も恐らく二つぐらいということになりまして、利用者の数もかなり限定されるというようなところが違うのではないかというふうに考えております。
  138. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そのように、相当目的とするところが違うわけでございまして、文部省の方からのそういう予算要求がされているようでございますけれども、それと競合してといいますか、それとは別に、ぜひこのSRを設置するように科学技術庁の方でも早急に着手をされたい、このように強く要望いたしまして、この点についての質問を終わります。  次に、主に天然ウランの資源の需給について伺いたいというふうに考えます。  先ほど発表されましたいわゆる原子力年報によりますと、我が国の原了力発電は、六十一年八月末現在におきまして、運転中のもの三十二基、発電設備容量二千四百五十二万キロワット余であり、世界で第四番目になっている、このようになっております。また、六十年度の実績で総発電電力の二六・三%を占めるに至って、初めて石油火力発電の二五%を上回った、このように述べられております。また、今後さらに開発さるべき十六基、このようなことを考え合わせますと、原子力発電への依存度は今後一層高まる趨勢にあることは明らかでございます。そのような環境下にありまして、原子力発電の燃料は言うまでもなくウランでございますが、我が国の原子炉の燃料は、現状においても、また将来においても、一〇〇%輸入に依存しなければならない状態にあります。このように考えてまいりますと、ウランは希少な資源でありますし、反面、重要な戦略物資、そのようなものでもあると思います。したがいまして、これが一時の石油資源のように戦略的に利用されたり、あるいは国家間の貿易摩擦等の制裁的保護貿易の対象とされたり、あるいは局地戦による産出、加工、出荷のいずれかの段階に支障が生じた場合に、我が国の受ける影響、不安、打撃、このようなものははかりがたいものがあると考えられます。  そこで伺いたいのですが、我が国の原子炉は、若干の例外を除きましてすべて軽水炉でございます。それで、これを主流の炉型というふうに前提をした場合に、二十一世紀までの天然ウランの需給のバランスについて伺っておきたいと思います。
  139. 松井隆

    松井政府委員 ウランの需給バランスの御質問でございますけれども、一応こういうふうに私ども考えてございます。  電気事業者の今後の計画がどのくらいあるかということが一つ今後必要なわけでございまして、昭和六十五年で三千二百万キロワット、昭和七十年で四千七百万キロワット、昭和七十五年で五千八百万キロワットというふうに、今電気事業者は一応そういう計画を持ってございます。じゃ、一体それに必要な天然ウランはどのくらい要るのかということになりまして、この天然ウランもU308、すなわち八酸化ウランでございますか、その数量で申し上げますと、累積で申し上げますけれども昭和六十五年で十万ショートトン必要である、昭和七十年では十六万ショートトン必要である、昭和七十五年では二十三万ショートトン必要である、こういうふうに計算上なってくるわけでございます。  それで、現在我が国では、我が国に電気事業者がいろいろなところから長期の購入契約を結んでおりまして輸入しているわけでございますけれども、現在、電気事業者が、例えばカナダであるとかイギリスであるとか、世界各国にいろいろございますけれども、累積で約十七万ショートトンの天然ウランの購入契約を締結してございます。それからもう一つは、これは購入契約と違いまして、ニジェールから開発輸入という仕組みで約二万ショートトンの天然ウランを確保してございます。つまり、足しまして十九万ショートトンのものが確保されているわけでございます。したがいまして、この数字で申し上げますと、大体七十年代前半ごろまでに必要な天然ウランは一応確保されているというふうに現在考えております。
  140. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その場合、輸入契約ですけれども、先ほど挙げたような相手国と、戦時とかそういうような場合にその輸入契約が円滑に履行される保証約款があるのですか、その点について伺っておきたいと思います。
  141. 松井隆

    松井政府委員 申し上げますけれども、ただいま私、電力会社の契約の詳細な内容について承知しておりません。恐らくこれは全部長期契約になってございます。そういう意味では契約の相手方がかなり信頼できる会社でございますもので、まず間違いないだろうというふうには思ってございますが、ただ、どういう事態が起こるかわからないという点では、私もはっきり絶対大丈夫であるということはちょっと申し述べる自信はありません。
  142. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私は法律家ですので、その点につきましては非常に危惧を感じます。それには、戦争その他については必ず免責約款が入っているのではないかと推定されます。  なお、需給のバランスにつきまして、先ほど一応六十五年、七十年、七十五年というふうな段階に分けて御説明をいただいたわけですけれども、その間に、やはり年間に供給と需要の間に若干のマイナスが生ずる時期があると思われるわけです。その点と、それから開発輸入の問題ですけれども、これは購入と開発輸入はどの程度のバランスが理想的だと考えていらっしゃるのか、その点についてもあわせて説明願いたいと思います。
  143. 松井隆

    松井政府委員 先生質問の一点、需給がクロスすることがあり得るのではないかという御質問でございますけれども、先ほど出しました七十年代前半、それまでにおきましては需給のバランスがクロスすることはございません。  それから、開発輸入と長期購入契約とのバランスがどのぐらいがベストであるかということでございますけれども一般論として申し上げますと、なるべく開発輸入と申しますか、そういうことでもって日本確保したウランが多ければ多いほど望ましいということは言えますけれども、具体的にどの辺が適当なバランスかということは、ちょっと私も今ここで直ちに申し上げる段階ではないと思っております。
  144. 冬柴鐵三

    冬柴委員 我が国のバランスはそういうことでありますが、世界的な採掘可能な資源量、このようなことを前提として考えた場合に、既知の在来資源のうち経済的に採掘可能資源、一応ウランをキログラム当たり八十米ドルの程度で考えた場合に、世界の需給バランスはどのようになるのか。需給クロスが考えられるとしたらその時期はどうか。そのような時期が近づいた場合に価格高騰の可能性は予測しているのかどうか、このような世界需給に照らして、我が国の供給資源確保の見通しは先ほど述べたことで心配はないのかどうか、いろいろと聞きましたけれども、その点についてお答え願いたいと思います。
  145. 松井隆

    松井政府委員 世界全体の天然ウランのバランスのお話でございますけれども、これにつきましては、ことしの九月に国際原子力機関、IAEAと経済協力開発機構原子力機関、OECD・NEAの共同報告が出てございます。それによりますと、まず世界に大体どのぐらいウラン資源があるだろうかということでございます。これはあくまで自由世界という範囲でございますけれども、現在、既知在来資源としては約五百七十万ショートトンというふうにそのデータではなってございます。先ほど先生のおっしゃいました確認されたその資源のうち経済的に採掘可能な資源量につきましては、約二百十万ショートトンというふうにそのデータではなってございます。  それで、そういうあるウラン資源に対してどうなるかということでございますけれども、問題はその発電規模あるいは炉型戦略等々によって影響を受けるわけでございます。そういう意味じゃ確実な見通しということは極めて困難なことかと思いますけれども一つの試算として御説明させていただきますと、まず現在、一九九五年までの短期的な需給バランスについては十分供給量は確保されているというふうにそこでは考えております。  それで、最も多くのウラン資源を必要とする方式として、軽水炉で使いましてそれを使い捨てと申しますか、ワンススルーと言っておりますけれども、そういった場合を想定いたしますと、現在確認されている経済的に採掘可能な資源量に対しまして、約二十年から二十五年後の二〇〇五年ごろないし二〇一〇年ごろ、そのころの間に一回需給がクロスすることになるのではないだろうかと言われております。したがって、そのころには当然ウラン価格が上昇する可能性があるということになります。  ただこの問題につきましては、今後のウランの値段が高くなれば採掘活動も進むわけでございまして、そういうものの展開によって恐らく確認資源量の増加ということも考えられるかもしれません。それから炉型戦略によりまして、プルトニウム利用ということが考えられるわけであります。そういうものの不確定要素がございますけれども、いずれにしろ今の大体の見方としては、天然ウランの需給というのは大体緩和基調でまだ当分推移するのじゃないだろうか、こんなのが世界の大体の見方になってございます。
  146. 冬柴鐵三

    冬柴委員 一応、一九九五年程度まではバランスはとれるということでございますけれども我が国は全く長期購入契約に頼っているという点が非常にウイークだというふうに危惧を持つわけでございまして、やはり開発輸入ということをもう少し考えなければならないのではないか。そのような意味から安定的供給源の確保ということを考えますと、動燃事業団法第一条の規定、この中には探鉱、いわゆる鉱山を探すだけではなくて採鉱、選鉱も行うように規定されております。現在はいわゆる探鉱だけしか行われてないようでございますので、進んで採鉱あるいは選鉱も行わせるべきではないかと考えるのですが、その点についてはどうでしょうか。
  147. 松井隆

    松井政府委員 現在、動燃事業団は、先生指摘のとおり海外各地で探鉱活動を実施しておるわけでございます。現在で申し上げますと、今十五地区におきましていろいろと探鉱活動を実施しているわけでございます。  それで、私どもの考えとしては、そこで出た成果につきまして、動燃自身がその先をみずからやるよりもむしろ民間会社においてそういうものを引き継いで、みずからそれからウランをとって輸入するという仕組みの方がよろしいのではないだろうかと思っておりますけれども、その一例を申し上げますと、ニジェールのアクータ鉱床というのがございます。ここはPNCがいろいろと評価をいたしまして、それを具体的には現在民間会社に引き継いでおりますけれども、そこで五十三年から生産を行っておる。実は二万トンぐらいのウランを加工しておるわけでございますけれども、そういうような仕組みでやっておる次第でございます。
  148. 冬柴鐵三

    冬柴委員 先ほど、探鉱を行っている箇所が十数ヵ所ある、そのうち一ヵ所だけで、残りが事実上動いていないということは、経済ベースに乗るような鉱山が見つかってないということかもわかりませんけれども、もう一つ裏返して考えますと、現在天然ウランの市況が緩んでいるというようなところで経済ベースに乗りにくいのじゃないかということから、いわゆる探鉱の段階から採鉱あるいは選鉱に進んでいないのじゃないかというふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  149. 松井隆

    松井政府委員 確かにウランの値段との絡みで開発が進むかどうかということは大きなファクターでございますけれども、何分、日本としてはこういう探鉱活動は比較的後発だったものでございまして、かなりいいところは外国にみんな押さえられているというような実情があるわけでございます。そういう意味では、これからもまだまだ努力をしなくちゃいけない問題だと思っております。いずれにしろ、まだ日本として非常にいいのが見つかっていない、見つかってもごくわずかであるというふうに考えている次第でございます。
  150. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いわゆるこのプルトニウム利用というようなことから天然ウランの市況が緩んでいるのだろうと思うのですけれども、こういうときにこそ出おくれていたそのような鉱山の手当てというものを取り戻す絶好のチャンスじゃないかなという感じも受けるわけでございまして、進んで今のような方法で、海外で国の力で採鉱も考えるべきではないか、このようにも思いますので、その点についても配慮を願いたい。  それからもう一つは、その市況が緩んでいるときに濃縮ウランの相当量を備蓄するというような発想はないのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  151. 松井隆

    松井政府委員 濃縮ウランの備蓄の御質問でございますけれども、いずれにしろ、まずウランをどういうふうにそういう海外の不安定な要因から守るために確保しておくか、こういう趣旨かと思います。  これはウランの形態によって大分左右をされるわけでございます。つまり軽水炉が主流の場合には先生おっしゃるとおり濃縮ウランの備蓄ということかと思いますし、その他のプルトニウム利用というような場合には再処理をして日本の中でプルトニウムを持っておくとか、あるいは高速増殖炉を使う場合には当然劣化ウランのものも必要になってくる、こういうようなことがございます。  ただ、この備蓄問題につきましては、現在の私どもの認識としては、そういう意味じゃ世界的にかなり緩んでおるということと、それから濃縮ウランの備蓄等につきましても、日本国内でまず濃縮の施設を国産技術で開発するということが大事かと思っておりますし、また、核燃料サイクル自体が備蓄効果を持っておるわけでございます。具体的には、例えば現在燃料に加工しておるわけでございますけれども国内原子力発電所で必要とする燃料の約一年分をそこで備蓄してあるとか、そういうようなものはあるわけでございます。いずれにしろ、先生のおっしゃる趣旨もよくわかりますけれども、ひとつ長期的な観点に立って少しこの問題については検討するべき事項であろうかというふうに思っております。
  152. 冬柴鐵三

    冬柴委員 確かにプルトニウム利用を前提とする炉型戦略、そのようなことも積極的に進められているようでありますから、余り神経質にならなくてもいいのかもわかりませんけれども核燃料サイクルの確立にいたしましても、現在緒についたといいますか、そのような状況であると理解いたしますが、では核燃料サイクルの確立を目指す我が国の現状はどのようになっているのか、その点についてもあわせて伺っておきたいと思います。
  153. 松井隆

    松井政府委員 核燃料サイクルの確立というのは、まさに原子力発電が持っているメリットと申しますか、国産エネルギーに準じた高い供給安定性と申しますか、そういうものの確保という観点からも重要だというふうに認識しているわけでございまして、従来から、我々としても、一つはウラン濃縮の問題、それから使用済み燃料の再処理の問題、それから副次的に起きます放射性廃棄物の処理処分の問題、こういうものが重要と思って進めてきているわけでございます。  ウラン濃縮でございますけれども先生御案内のとおり動力炉核燃料開発事業団で遠心分離法によるウラン濃縮技術というものをもう従前から開発を進めておりまして、現在、六十三年度完成を目途に、二百トンSWUと申しまして、大ざっぱに申し上げますと百万キロワットの原子力発電所約二基分の年間の必要量が賄える程度のものでございますけれども、そういった装置を岡山県の人形峠で建設している段階でございます。もちろん民間の電気事業者を中心にいたしまして日本原燃産業株式会社でございますか、そこが引き続いて青森県の六ヶ所村において商業規模のウラン濃縮工場をつくる、こういう計画になってございます。  それから再処理でございますけれども、これも我々原則として使用済み燃料は国内で再処理するという基本的考え方をとっているわけでございます。そのために動力炉核燃料開発事業団が東海再処理工場を建設、運転しているという状況でございます。さらにそれに引き続きまして、民間の電気事業者が中心になりまして、日本原燃サービスという会社が、約八百トン規模の再処理工場を同じく青森県六ヶ所村につくる、こういう計画を持っておるわけでございます。  それから廃棄物の問題でございますけれども、特に原子力発電所から発生する放射性廃棄物最終処分につきましては、現在青森県六ヶ所村で同じくやはり陸地処分という計画を進められておるわけでございます。  そういうわけで、着々と核燃料サイクル確立に向けて進んでおると考えている次第でございます。
  154. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ただそのように説明を受けると着々と進んでいるようですけれども、冒頭申し上げたような膨大な我が国の発電量に照らしまして、そういうものに基づいて、核燃料サイクルによってプルトニウムが利用される、あるいはウランが利用される、そのような状況我が国の中だけで安全にできるんだという状況はまだまだ先のような感じがいたします。しかも午前の質問にも出ておりましたけれども、いわゆる高レベル廃棄物の処理という問題が解決しない限りそういう問題が閉塞状態に陥ると思うのですね。  そこで国民に対する啓発といいますか、そういう問題が非常に大事ではないかと考えるわけでございますけれども、いわゆる安全性についての啓発、午前の質問を聞いておりましても、人為的ミスによって非常に重大な結果が起こるのではないか、このような不安を常に感じる。あるいは廃棄物につきましても、高レベル、低レベル、このように呼ばれますと、実際そうでしょうけれども、何か程度問題のような感じがするわけですけれども、そこには人体に対する影響という観点から見ますと非常な懸隔があると思われます。  それからまた、我々の国は世界で初めて原子爆弾というものの洗礼を受けたといいますか、そういうような民族でございますので、核とかあるいは原子という言葉につきましては、国民の間で非常にアレルギーと申しますか、言葉が適当ではないのじゃないかという感じすらするわけでございます。安全性についての啓蒙、それから廃棄物についてその人体に対する影響度、そういうものについての啓蒙がもう一つ行き渡っていないように思われるわけでございますけれども、その点についてはどのようなことをやっていらっしゃるのか、また今後どういう取り組みをするつもりなのかをお伺いしたいと思います。
  155. 松井隆

    松井政府委員 いわゆるパブリックアクセプタンスと申しますか、PRと申しますか、そういう点でございますけれども、私どもこれを進める上にいろいろな措置は講じてやっているつもりでございます。具体的には、科技庁で一般会計、特別会計含めまして全体として広く申し上げますと約百三十億ぐらいの金もつぎ込んでございますし、その使途につきましても、例えば我々がPRすることもございますし、それから地元の市町村にPRしていただく、あるいはいろいろなパンフレットをつくっていただく、そういうことも強化しているつもりでございます。  と申しましても、何分日本は被爆国ということがございますもので、特に放射線問題に非常にセンシティブであるという面がございます。また、特に人体影響の問題につきましては、放射線医学総合研究所というところがございまして、そこで昭和三十年の初めごろから放射線の人体影響について、これは定量的に把握すると申しますか、つまり具体的にどのくらいの線量があったらどういう効果があるか、そういうことの研究も進めておりますし、またそういう成果につきましても世界各国交換いたしまして、そういうものをもとにして、世界としてこういうレベルなら大丈夫であるとか、いろいろな形で私どもパンフレットをつくって、皆さんにおわかりいただけるようにいろいろと説明はしているつもりでございますけれども、何分まだこの辺につきましては私どもとしても今先生の御指摘のとおりさらに強化して考えなくてはいけない問題であるというふうに考えております。     〔平沼委員長代理退席、塚原委員長代理着席〕
  156. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いずれにしましても、ここ数十年の間、好むと好まざるとにかかわらず原子力発電というものは我々にとってぜひ必要といいますか、そのような状況であると思われますので、その燃料であるウラン、そういうものの確保については、一〇〇%海外に依存しているだけに、特段の長期的な戦略というものを要望しておきたいと思います。  最後に、とはいうものの原子力あるいは化石燃料の先に行わるべき代替エネルギーの開発というものを我が国はどのように目指しているのか、その研究についてはどうなのか、その点について若干伺っておきたいと思います。
  157. 向準一郎

    ○向説明員 お答え申し上げます。  通商産業省におきましては、サンシャイン計画ということで、中長期的な観点から我が国のエネルギー供給力を向上しますために新エネルギー技術開発をやっておりまして、昭和四十九年度から発足しまして、太陽エネルギー、地熱エネルギー、石炭エネルギー、水素エネルギー、こういう分野におきまして鋭意研究開発を進めているところでございます。
  158. 冬柴鐵三

    冬柴委員 水素エネルギーにつきましては転換、貯蔵、こういうものについて極めて有利である、このように考えるわけでございます。しかも、燃焼に際して有害物質を一切排出しないというようなこと、あるいは地球の循環システム、こういうものを乱さない、またその原料を海水から求められる、そのようなところから非常に有利であると考えるわけですけれども、要は、これが二次エネルギーだ、水素をそういうものからつくるためにそれと同じ量のエネルギーを必要とするというところが泣きどころでございまして、こういうものについて、科学技術庁の主導のもとに水素エネルギーをもっと開発するような方法、例えば今並べられた太陽熱、地熱、そういうものを一次エネルギーとして海水から貯蔵とかあるいは運搬に便利な水素エネルギーを得るというような研究開発の方向に進まないものかと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  159. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 エネルギーの研究開発につきましては、政府全体としましてエネルギーについての研究開発基本計画というものを取りまとめております。これは科学技術庁において各省と御相談して取りまとめさせていただいておるわけでございます。ただエネルギー問題は、通産省が資源エネルギー庁という組織でもってエネルギー問題に取り組んでおるわけでございますので、プライオリティーの点から申しますと一義的には通産省でいろいろ御判断いただく問題かと思いますが、水素エネルギーにつきましては、先生今御指摘のようにあくまでも二次エネルギーでございます。水素をつくり出すためのエネルギーというのが必要でございます。使う面においてはいろいろ利点もございますが、そういった点を勘案しながら今後取り組んでいかなければならないと思います。  一エネルギーとして石炭とか石油とかあるいは電力だとかそういったものを使わないで何か自然から水素をつくり出す方法はないのか、例えば光合成というのがございまして、これはいきなり水素をつくるわけじゃございませんが、水素と炭素の化合物を光合成でつくり出す、そういうようなことも自然界では行われておるわけでございますので、そういったメカニズムなんかについても研究していきたい。これにつきましては、科学技術庁でも、理化学研究所などでそういった地道な研究もやらせておるところでございます。
  160. 向準一郎

    ○向説明員 通商産業省におきましても、今お話し申し上げました水素エネルギー、先生のおっしゃいますようにいろいろの利点を持っておりまして、そういうことで水素の製造技術それから輸送、貯蔵技術それから利用技術、こういうことにつきまして基礎的な研究開発を総合的に進めておるということでございます。現時点では水素の製造コストをいかに安くするかということが必要でございまして、解決すべき多くの研究課題がございます。そういうことで実用化の時期はかなり先でございますが、当面基礎的な研究を着実に進めていく、こういうことで我々努力している次第でございます。  以上でございます。
  161. 冬柴鐵三

    冬柴委員 科学技術庁にお伺いしたいのですが、理化学研究所における水素の研究費、今年度実績額でいいですが、どれくらいですか。
  162. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  今研究費が幾らかという資料を手元に持ち合わせませんが、何分にもまだまだ基礎段階でございますので、数億、十億、こういった金額じゃございませんで、まだまだ地道な基礎研究の段階であるということでございます。
  163. 冬柴鐵三

    冬柴委員 日本は研究も成功するというはっきりした見通しがないとなかなか投資をしない。まあ研究開発のリスクというものをなるべく低く抑えようという英知の結晶だと思うのですけれども、それが新しい非常に大切な研究をおくれさせてしまうという面もあると思うのです。このような水素というのは、私も素人でわかりませんけれども、在来の燃焼機関そのものもそのまま使えるとか、あるいは燃焼させなくてもそのまま電気に変えることもできるとか、いろいろな利点があるようでございますので、理化学研究所でもいいのですけれども、その点についてぜひもう少し研究開発について投資をされて進めていただきたい、このように思います。  なお、水素を貯蔵する合金とかあるいは燃料電池ですか、そういうような問題も考えられているようですが、その点についても若干伺っておきたいのです。
  164. 向準一郎

    ○向説明員 お答え申し上げます。  水素の吸蔵合金を使いました研究開発の一例といたしまして、工業技術院では水素自動車というのを試作しております。これは水素吸蔵合金を燃料タンクとして用いましてそれで走らせるということで、工業技術院の試験研究所におきまして、最高速度が百キロメートル、一回の水素を吸蔵することによりまして走行の距離が二百キロメートル以上、こういうような成果も出つつあるわけでございます。
  165. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最後大臣に要望したいのですが、そのような状態で当面ここ数十年はもちろん原子力発電というものが主流をなすでしょうけれども、その先のエネルギーというものについてもっと大きな研究開発費を確保されるように要望したいのですが、大臣、その点についていかがでしょうか。
  166. 三ツ林弥太郎

    三ツ林国務大臣 ただいま先生との御論議でありましたように、ウラン関係につきましては御案内のとおりでございますが、エネルギーの研究開発は、エネルギー資源に乏しく、対外依存度が高い一方、エネルギーを大量に消費している我が国として、経済社会の発展、国民生活の安定等の観点から積極的に取り組むべき課題だと認識をいたしております。このため、科学技術政策大綱においても、重要研究開発分野のうち経済活性化のための科学技術分野の一つとしてエネルギーの開発及び利用が位置づけられておりまして、国としても重点的に推進することといたしております。
  167. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  168. 塚原俊平

    ○塚原委員長代理 小渕正義君。
  169. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まず最初に、追加でございますが、火山の予知技術等についての現在の体制についてちょっとお伺いしたいと思います。  御承知のように三原山が大噴火いたしまして、幸いに犠牲者が出ずに現在小康状態を保っておりますが、一部マスコミ等によりますと、我が国は世界有数の火山国でありながらもこれらの火山予知に対する国の取り組みが非常に弱い。国の予算その他を含めましても四億幾らだとかという数字が言われておりましたが、研究体制も非常に弱く、研究陣も少ない。そういう問題点が実は今回の三原山の噴火に際しましていろいろ報道されておるわけであります。現在まで、我が国のこういった火山の予知についての体制はどのような状況で取り組まれておるのか、科学技術庁関係も含めまして要領よく御説明いただきたいと思います。
  170. 鈴置哲朗

    ○鈴置説明員 お答え申し上げます。  火山噴火予知技術の現状でございますが、火山噴火を予知いたしますためには、まず地震でありますとか微動あるいは地盤の傾斜、そういったいわゆる地球物理学的な現象を観測いたしまして、その中から前兆を検出する必要がございます。近代的な火山観測が始まりましてから残念ながらまだ歴史が浅うございまして、また、火山現象そのものが大変複雑でございます。これは、火山によりまして噴火の様式がさまざまでございますし、また、一つの火山でも時とともにさまざまな噴火の形態を示すわけでございます。そういう状況でございますので、現在の段階では、観測データの中から前兆現象をはっきりと判定して噴火を予知することはまだ甚だ困難な状況にございます。今後とも観測データを蓄積いたしまして、噴火予知技術の開発に向かって努めてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、今回の伊豆大島の噴火に際しましては、去る七月に十二年ぶりに火山性微動というものが出現いたしました。それ以来、従来にはないほどの多くの観測手法が伊豆大島に導入されまして鋭意観測を続けてまいりました。今回これらによって得られました結果は今後の予知技術開発のために大いに利活用されるもの、また、我々としてはそれを大いに利活用して防災に努めていかなければならない、こういうふうに思っております。  以上でございます。
  171. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 噴火予知に関します科学技術庁の対応でございますけれども、私の方の国立防災科学技術センターというのが筑波にございますが、ここでは地震予知の研究をやっております。その一環といたしまして伊豆諸島の火山の観測、研究も行っております。具体的には、硫黄島、伊豆大島、こういうところに傾斜計とか地震計を置いておりまして、そのデータを筑波の研究所の方にテレメーターで送っているということを行っておりまして、今回地震予知連絡会等へいろいろそのデータを供給している、こういうことでございます。  ただ、伊豆諸島における火山の観測は非常に歴史が少のうございまして、大島におきましては実は昨年に設備を設置して、本年からデータをとり始めたというふうなことでございます。今回のこのような噴火を契機に我々としてはこのような研究をさらに拡充してまいりたい、こう思っているところでございます。
  172. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 また別の機会にいろいろお尋ねしたいと思いますが、いずれにいたしましても、我が国の火山予知に対する観測体制といいますか、そういうものが、アメリカと比較しても、火山の国と言われている我が国のそういった地質といいますか立地というものを抜きにしても、日本の場合が極めて貧弱というか、国としての取り組みも総合的なものが非常に弱い、こういうことが今回の噴火を契機に非常に言われておるわけでありますが、現在これらの火山予知等に対して取り組まれている国としての予算といいますか経費は大体どの程度なのか、その点、数字的にもしはっきりしていればお知らせいただきたいと思います。
  173. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 科学技術庁では、噴火ではございませんが、地震予知関係の取りまとめを行っております。噴火関係の予知の研究も地震予知の研究の一環として行われる場合が多うございまして、どこまでが地震予知でどこまでが火山予知かというふうに区別は判然としない点がございます。はっきり火山噴火の研究であるというふうに予算で計上されていますのは大学の研究が約三億五千万ほどございますけれども、その他は地震予知と噴火予知の研究が合体してなされている、こういうことでございます。ちなみに、地震予知の研究のための経費というのは約六十億近くございます。
  174. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 わかりました。ほかにも問題がありますので、次に移ります。  それからあと一つは、本年五月、ソ連チェルノブイル原発事故が発生したわけでありますが、その後、あの事故を契機に、国際的に原子力発電に対するいろいろな論議を呼びまして、特にヨーロッパ、北欧諸国においてはいろいろな反応が出されたわけであります。今回、私どもの党の第二次調査団が北欧、西欧方面を視察した結果、当初、原発に対する見直し論、その他廃止論等、オーストリア、その他西ドイツ、いろいろなところでかなり敏感に反応が出ておったようでありますが、結果的には鎮静化してしまっておるというような報告も聞いております。そういう中で、今回のチェルノブイル原発事故は俗に反応度の事故であるということが言われておるようであります。現在世界的には大体四百基以上の原子力発電が稼働中だと思いますが、このように反応度事故に類するようなもの、原子力発電の型式その他中身はそれぞれ違いますが、これに準ずるようなものが過去に果たしてあったのかどうか、その辺はこれからこれらの原子力発電を論議する際に非常に大きな参考になると私は思います。我々としては、結果的にはチェルノブイル事故についてはこれはまたほかの国際的にそれぞれ稼動しているものとはかなり中身が違うということは理解しておりますが、そういうものを含めた中で、果たしてこれに準ずるような反応度事故がかつて過去にあったのかどうか、そういう点についての状況をひとつお知らせいただきたいと思います。
  175. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 お答えいたします。  原子力の開発の非常に初期の段階では、試験研究用の、現在の原子力発電所等の原子炉に比べますとはるかに小さな原子炉におきまして、例えばカナダのNRXとかアメリカのSL1といったものが反応度事故を起こしております。しかし、原子力発電が実用化されまして以来、今回のソ連の黒鉛減速沸騰水冷却型の原子炉における反応度事故以外、我が国が使っております軽水炉等においては全くこういう反応度事故というものは起きておりません。  実はけさほど小澤先生の方から、ウエッブさんという方が軽水炉についても反応度事故があると言っているというような御指摘がございました。この点について若干、先生の御質問と関係がございますので、御説明申し上げたいと思います。  このウエッブさんという方は、元ウエスチングハウスの原子力の技術者でございまして、現在はオハイオ大学の先生をしておられます。ここ十数年は非常にフリーな立場から原子力についていろいろな批判をされておられる方でございまして、九月の下旬にウィーンでIAEAの特別総会が開かれると同時に反原発会議というものが開かれておりますが、そこにも出席しておられます。その方の著書の一つに「原発事故災害」といったようなタイトルの著書がございまして、これは一九七六年でございますから約十年前の著書でございます。その中で、軽水炉についてもいわゆる反応度事故が起こるというようなことを言っておりますが、その解析の前提条件が私どもが現在安全審査でやっております解析条件と非常に違っております。といいますのは、この反応度事故が起きる理由としまして、例えば沸騰水型でございますと、原子炉の炉心の中で発生した蒸気が発電するためにタービンの方に送り込まれるわけでございますが、この途中のところで主蒸気をとめる弁がございますが、例えばそれをとめた場合に反応度事故が起きる、こういうことを言っておられます。この主蒸気弁をとめますと、原子炉の中の圧力が必然的に高まるわけでございます。圧力が高まりますと炉心の中の蒸気の発生量が、圧力によって抑えられますので減る。この蒸気の発生量は負の出力係数ということを何度もいろいろな機会で御説明申し上げておりますが、逆にこのボイドが減るということは正の反応度が当然入るわけでございまして、こういう主蒸気の隔離弁をとめますと正の反応度が入って原子炉が危ない状態になるということをこのウエッブさんが解析しておられます。  私ども安全審査では、その際当然一定の条件をつけまして、例えば一本の非常に反応度価値の高い制御棒が入らないという条件をもちまして原子炉はスクラムが作動するという条件で解析しておりますが、ウエッブさんの場合は、スクラムは一切作動しないといったような、原子炉の本来備わっている装置を全然無視したような解析をなさっておられます。そういう関係で原子炉の中の圧力が高まって、やがては制御棒も飛び出してしまう、そういう事故の解析をしておられますが、私どもは、あくまでも安全解析上は、そういった原子炉の非常に重要な安全保護系統が作動しないということは本来、設計あるいは建設の段階でそういうことがないように対処されているわけでございますので、そういうことを安全審査段階で想定する必要はないということで解析をいたしておりまして、私どもは軽水炉についてはそういう反応度事故は起きないというふうに思っております。
  176. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 要するに、実用化前の研究段階では若干それに類するようなものがあったが、実用化された段階では今まで一切そういったものはない、このチェルノブイル事故以外はないということですね。
  177. 佐々木壽康

    佐々木(壽)政府委員 そのとおりでございます。
  178. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 我が国は特に原子力発電については非常に敏感にそれぞれ反応いたします。肯定的な立場からの議論とか否定的な立場からの議論、いろいろ議論があるわけでありますが、特に我が国の場合には、被爆国ということもありまして非常に敏感に反応しますので、この種のいろいろな議論についてはやはり科学技術庁科学技術庁としてきちっとした立場から機会あるたびにはっきり物の言えるものは言ってもらうということは非常に大事ですので、その点は特に要望しておきたいと思います。  次に、SDIについてちょっとお尋ねをいたします。  これは外務省関係の方になると思いますが、要するにSDIについては、結果的には研究に参加するということの中でいよいよ政府間の協議が現在進んでおるわけであります。これは特に私が五月に、別の委員会でございましたが、SDIの技術開発についての参加の問題について、技術成果の帰属の問題とか、またはその後のそういった公開の問題とか、いろいろなものを問いただした場合に、当時の政府としては、技術開発は特に我が国影響に重要なポイントであることを考えて慎重に検討するということで、まだその当時は参加の方針を決めておりませんでした。したがって、現在参加の方針が決められていろいろ日米間で協議が行われておりますが、その現在の進展状況はどういうことなのか、その点についての状況説明いただきたいと思います。
  179. 岡本行夫

    ○岡本説明員 SDIの研究参加問題につきましては、現在、我が国の企業等が参加を希望した場合にそれが円滑に行われ得るような諸措置について米側と協議中でございます。協議の内容は、ただいま先生が御指摘になりました研究成果の利用の問題、さらには秘密保護の問題、それから情報の伝達の方法の問題等々あるわけでございますが、いまだ米国との協議は継続中でございます。
  180. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まだ継続中ということはわかりますが、日米協議に臨むに当たっての我が国のスタンスというのはどういう構えでおるのか、やはりそこらあたりをお尋ねしたいと思います。特に先ほどから言うように、要するに研究成果の帰属の問題、それから公開、非公開の問題、いろいろとそういった問題点が西ドイツその他の協定の中からも出されておるわけでありますが、過日、倉成大臣は何か非公開もあり得るようなことを外務委員会等でも言われているわけであります。新聞報道によりますとそういうことが報道されておりましたが、要するにこれらの日米協議に臨むに当たっての我が国としての一つのスタンスはどういう構えの中でこれらの問題についての話し合いをしているのか、そこらあたりをひとつはっきりしていただきたいと思います。
  181. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私どもが官房長官談話で取りまとめております政府の参加問題についての認識に至りましたのは、安全保障上の理由、SDIの目的等々ございますけれども、ただいま御指摘になっておられます研究面での成果が我が国にとって適切な形で確保されれば、それは我が国の関連技術水準の向上に大きな影響を及ぼすことがあり得るという認識もその根っこにあることは事実でございます。したがいまして、私どもといたしましては現在の対米交渉におきまして、我が国のSDI研究計画のプロジェクトの受注者が行いました研究成果につきまして、それに対する応分の権利が確保できるよう、そしてこの問題について、つまり成果の利用の問題につきまして日米双方で最大限の満足がいくように、交渉の重要なポイントとして鋭意話を今しているところでございます。  それから取り決めの公開、非公開の問題でございますけれども、現在米国と行っております協議の結果、仮に何らかの文書が作成されることとなりました場合には、私どもとしては、これは公表できるものはできるだけ公表していくことが望ましいのだという基本的な考え方で臨んでいるわけでございますが、ただ、御理解いただけますように、本件が有しております防衛、安全保障上の性格、それから米国が他の西欧諸国との間に結んでおります取り決めの中身も公表されていないというような実態にも照らしますと、今後我が国が米国と結ぶことがあります何らかの文書の中で非公開の部分が出てくることはあり得る、これは倉成大臣も過日御答弁申し上げたとおりでございます。
  182. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これはまた後で議論することになると思いますが、やはり非公開の部分があり得るということになると、政府間取り決めが完全に守られておるかどうかということのチェックができないという形になって、これは問題がかなりあるのじゃないかと思いますが、この点はまた別の機会に議論の展開をすることにいたしまして、時間がありませんので次に移ります。  我が国が従来から保有している独自の技術、ノーハウ、こういったものが十分に保護されて、これらについて我が国に適用される秘密保護規定の範囲外とすること、これは今回の政府間取り決めの中での合意事項の絶対に必要な条件だと思うわけでありますが、この点についてはどのようにお考えになられておるのか、その点、今日までの交渉経過との関係の中で、御答弁できるならばぜひひとつこのあたりのポイントを説明いただきたい、かように思います。
  183. 岡本行夫

    ○岡本説明員 現在の米国との協議の内容については事の性質上まだ明らかにできないわけでございますが、私どもといたしましては、研究参加に伴う研究成果に対する権利が応分の形で確保されること、これを重視していることは先ほど申し上げたとおりでございます。御懸念の我が国が既に有しております技術がSDI参加との関連で何か新しい制約を課されることにはならないかという点でございますが、これは、私どもといたしましては、我が国企業等のSDIへの参加は、いずれにいたしましても現行の我が国国内法及び日米間の取り決めの枠内で行われるものでございまして、我が国の既存技術が、SDI研究との関連で何らかにせよその使用方法等について新たな規制をかけられるということはあり得ないことと考えております。ただ、念には念を入れるという観点から、我が国といたしましては、米国との協議に当たりまして我が国の既存技術にまで制約が課されるべきではないということは明確に申し入れているところでございます。
  184. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 その点は今の御答弁でわかりますが、ただしかし、過日、これはNHKの十一月六日のテレビ報道によると、西ドイツのシーメンス社は結果的にSDI研究参加をやめた、こういう報道がなされておるわけであります。これは一体どういうことを意味するのかというと、やはりそこらあたりいろいろと問題点が具体化してきたためにこのような態度を西ドイツのシーメンス社は出してきたのじゃないかということが懸念されておるわけでありますが、政府として何らかこの点についての御見解があればお聞かせいただきたいと思います。
  185. 岡本行夫

    ○岡本説明員 御指摘のケースにつきましては、私ども個々の企業の一々のケースまで承知しているわけではございませんので判断することは差し控えさせていただきます。いずれにいたしましても、企業等のSDI研究計画への参加は、それぞれの企業の独自の企業利益、商業的利益等によって判断されることであろうと存じております。
  186. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それでは、この問題は政府間協定の進展の状況でまた次回に機会を得たいと思いますので、次に問題を移します。  余り時間もございませんので、深海開発についての若干の御質問を申し上げます。  我が国自身の手で現在深海の海洋調査が行われていると思いますが、何をいつまでにどの範囲でやろうとしておるのか、そこらあたりの全体的な深海、海洋構想についてのものがあれば、ひとつその点をお示しいただきたいと思います。
  187. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 深海には膨大な鉱物資源また生物資源、こういうものもございますし、それから、地震等の自然災害を予測するためにも深海の調査をしなければいかぬ、こういうことでございます。こういう考え方に基づきまして、科学技術庁では潜水調査船「しんかい二〇〇〇」というのを五十六年に建造しておりまして、現在いろいろ深海底の調査を行っております。  この調査の計画につきましては、いろいろな専門家の方にお集まりいただきまして、どういう地域をどういう目的調査を最優先的にやるかということを御検討いただいております。現在ございますものは六十一年度から六十五年までの五カ年間の方針が定められておりまして、この方針におきましては、海域としては四つの海域を重点的にやる。相模、駿河湾及び日本海では地震の発生について地震関係の調査を行う、沖縄トラフ、それから伊豆、小笠原諸島海域、ここでは鉱物資源関係を中心に行うというふうに四つの地域を定めておりまして、それで計画的に調査をしようということにしております。  なお、本年度には、この「しんかい二〇〇〇」に加えまして無人の探査船ドルフィン3Kという三千メートル級の無人の調査機ができますが、これにつきましてもやはり同じように計画的に地域を定め、目的を定めて調査計画を進めたい、こう考えております。
  188. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そうすると、調査のための手段としては、今もお話ありました調査船、無人潜水機、有人潜水艇ですか、こういったものが当然主要な調査手段になりますが、我が国のこういう海域の周辺のニーズに応じた自主開発という点から見て、このような調査手段といいますか技術といいますか、そういうものについては何かいろいろ取り組まれておる点があるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  189. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 深海底の調査を行います場合、その手段としましては大体三つ必要でございまして、調査船ということで、これは洋上から非常に広い範囲を調査する、そしてさらに無人の潜水機を使ってさらに詳しく調べる、さらに、そこでわかったある特定の範囲を決めまして、そこでは有人の潜水船でやる、この三つの装置、機械が必要かと思っております。  それで、このような三つを組み合わせまして調査するわけでございますが、深海底は非常に圧力が高いとか技術的に非常に難しい点がございまして、いろいろそういう機器装置の開発、維持、管理、こういうものにはどうしても自主技術が要るということで、我が国独自の技術でこの開発に当たっているところでございます。
  190. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では、時間も来ましたからあと一つだけお尋ねしますが、マンガン団塊ですか、既にこういう研究組合もできていろいろこれらの海底開発について推進中でありますが、特に最近発見されて課題となっておるのが、マンガン団塊よりもさらに有効活用の可能性のある熱水鉱床、それからコバルト・リッチ・クラスト、いろいろこういったものが非常に新しい最近の課題となっておると思います。こういったものに対する探査計画というものは我が国としては現在組織的に取り組まれておるのかどうか、その点はいかがでしょう。
  191. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 マンガン団塊につきましては、通商産業省が中心になりましていろいろ調査を行っておるわけでありますが、最近非常に脚光を浴びております熱水鉱床、コバルトクラスト鉱床、こういうものはまだ余り組織的な調査というわけにはまいっておりません。ただ、熱水鉱床にしましてもコバルトクラスト鉱床にしましても比較的浅いところにある、そして我が国の二百海里水域に賦存する可能性が非常に高いということから、資源調査会等でもこの調査に早く着手するようにということを勧告されております。  科学技術庁といたしましては、先ほど申し上げました「しんかい二〇〇〇」を用いまして本年七月には沖縄トラフ海域におきまして調査を行い、初めて熱水噴出ということを確認しております。さらに、この十月からは伊豆、小笠原諸島海域におきまして同じく「しんかい二〇〇〇」で熱水鉱床の調査を行っている。それからコバルトクラスト鉱床につきましても、来年度より南鳥島周辺海域におきましてその調査を開始するという予定を立てております。
  192. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 最後になりますが、このように我が国が自身で十分な探査計画を独自な手段で行うことも当然でありますが、米英等の先進国との国際協力の中で行うこともまた非常に効果的であり、必要ではないかと思います。これらの面における国際協力的な点については現在どのような状況にあるのか、その点をお伺いいたします。
  193. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 海洋自身が本質的に国際的な性格を持っているわけでございますが、我々といたしましては、この国際協力ということも非常に重視しております。先進国との間ではいろいろやっておりますけれども、主なものとしては米国でございまして、この米国との間で天然資源の開発利用に関する日米会議という枠組みもございますけれども、その小で海洋資源・工学調整委員会というのを設けておりまして、その傘下でいろいろなプロジェクトの協力を進めております。例を挙げますと、深海調査につきましては、米国の調査船に日本の研究員が乗り込んで調査したとか日本調査船にアメリカの研究者が乗り込んでいる、こういうふうな例もございます。そのほか、フランスとの間で同じく深海調査の計画を持っておりまして、こういうものについてもさらに今後拡大、充実させていきたい、こう考えている次第でございます。
  194. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間が参りましたので、終わります。
  195. 塚原俊平

    ○塚原委員長代理 山原健二郎君。
  196. 山原健二郎

    ○山原委員 SDI参加問題と原子力基本法の関係につきまして、特に核起動エックス線レーザー兵器をめぐりまして、予算委員会あるいは本会議等の中曽根首相の答弁を聞いておりましても納得のいかない面がありまして、この点を明らかにしたいと思ってお聞きしたいと思うのです。  一つは、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、」というのが基本法の第二条でございまして、これが我が国の研究、開発、利用の大原則であるわけですね。ここで言う「原子力」とは何かという問題ですが、第三条に定義が出ておりますからちょっと読んでみますと、「「原子力」とは、原子核変換の過程において原子核から放出されるすべての種類のエネルギーをいう。」こういうふうになっております。この点は間違いありませんね。
  197. 松井隆

    松井政府委員 おっしゃるとおり、間違いございません。
  198. 山原健二郎

    ○山原委員 核爆発によって生じるエックス線、これも「すべての種類のエネルギー」の一つ、つまり原子力であると思いますが、この点も間違いございませんか。
  199. 松井隆

    松井政府委員 基本法で言っている原子力の定義は、先ほど先生のおっしゃったとおりでございまして、具体的に申し上げますと、原子核変換の過程において原子核から放出されるエネルギーというものは、ベータ線、ガンマ線とかアルファ線、中性子線を初めとする粒子線、そういう形で出てくるわけでございます。  それで、エックス線でございますけれども、エックス線につきましては、原子核変換の過程ではなくて、例えば運動している電子が制動を受ける、具体的には運動状態が急激に変化する、そういう制動作用を受けた場合とか、あるいは原子核を取り巻く電子がエネルギーの高い軌道から低い軌道へ移る場合、そういう場合に発生するものでございまして、通常約百オングストローム、これは百万分の一センチメートルに当たりますし、それから〇・〇一オングストローム、これは百億分の一センチメートルでございますけれども、その範囲の波長を持った電磁波であるというのがエックス線の定義でございます。そういう意味合いから申し上げまして、先ほど申しました基本法の原子力の定義から考えますと、エックス線は原子力の定義に当てはまらないのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  200. 山原健二郎

    ○山原委員 核爆発によって生じるエックス線、これは「すべての種類のエネルギー」と基本法に書かれている原子力でない、こうおっしゃるわけですね。説明は要りません、時間がないから。
  201. 松井隆

    松井政府委員 基本法の定義は「原子核変換の過程において原子核から放出される」ということでございまして、エックス線は、原子核変換の過程ではなくて、電子が制動作用を受けるときあるいは電子のエネルギーの高い次元から低い次元へ落ちるとき、そういうときに発生するものでございます。そういう意味で、基本法の定義から見るといわゆるエックス線は原子力かということについては、原子力ではないのではないだろうか、そう考えているわけでございます。
  202. 山原健二郎

    ○山原委員 ないのではないかというのではなくて、ないとおっしゃるのですか。その辺ははっきりしておいてくださいよ。
  203. 松井隆

    松井政府委員 基本法の定義から見ますと、エックス線は原子力の定義に当てはまらないということでございます。
  204. 山原健二郎

    ○山原委員 「平和の目的に限り、」というこの言葉ですね。これは軍事利用を厳禁するという意味の内容を持つと思いますが、これは今までここで随分論議されたことですけれども、その点は確認してよろしいですか。
  205. 松井隆

    松井政府委員 この趣旨につきましては、具体的には昭和四十年に政府の統一見解というのが出てございます。それによりますと、「平和の目的に限り、」と規定されておるということでございまして、したがって、我が国における原子力の利用が平和の目的に限られているということは明らかである。したがって、例えば自衛隊が殺傷力ないし破壊力として原子力を用いるいわゆる核兵器を保持することは、同法の認めないところである。また、自衛艦の推進力として使用されることも、船舶の推進用としての原子力利用が一般化していない現状においては、同じく認められぬと考えられる。これが政府の統一見解で、四十年に出ております。それがこの意味であるというふうに理解しております。
  206. 山原健二郎

    ○山原委員 これは、昭和三十年の十二月に原子力基本法が国会で審議されましたときに、中曽根現首相が、当時の議員ですが、提案理由の説明をしまして、そこでどういうふうに言っているかというと、「軍事的利用は絶対禁止するという意思である」というふうに説明をしているわけですね。エックス線レーザーが原子力であるとするならば、この二つを組み合わせてみますと、原子核変換の過程において原子核から放出されるすべての種類のエネルギーの、私はエックス線を含むと思いますが、研究、開発及び利用は、軍事的利用を絶対禁止しというふうに読みかえることができると思うのです。  で、核エネルギーをエネルギー源としたエックス線レーザー兵器がSDⅠの構成要素の一つとして研究されておることは、米政府もまた日本政府もこれを認めているわけですね。そのSDIに研究参加することは原子力基本法に反すると思いますが、そう思いますか。
  207. 松井隆

    松井政府委員 米国からは、先生御案内のとおり、SDIは非核の防御システムであるという説明を一貫して受けている次第でございます。  また、米国が行っているそのエックス線レ-ザーの研究については、ソ連が現在研究中と言われるエックス線レーザー兵器を仮に保有するとなった場合に、米国のSDIに対していかなる影響、脅威を与えるかを見きわめる、そういう観点からのものであって、その研究につきましては、SDI研究計画の中での極めて限られた一部にすぎないというふうになっているわけでございます。したがって、私どもとしては、このような研究が同研究の一部にあるからといって、原子力の平和利用との関係で、我が国が同計画に参加すること自体が問題になることはないというふうに考えております。
  208. 山原健二郎

    ○山原委員 これは私はずっと予算委員会におりましたから、聞いておるのですよ。だから、ソ連がどうとかということをきょう言っているのではなくて、いわゆる原子力基本法による平和利用に限るというのが非軍事だということを今までも政府はおっしゃってきているわけですからね。そのことについて聞いているわけです。また中曽根さん自身が、先ほど言いました原子力基本法が審議されましたときに、当時は衆議院の科技特と呼ばれておったわけですが、提案者を代表して答弁しておりまして、これは田万議員がおいでるときでございますが、こう答えているのです。「核燃料を使った爆発物やその他を兵器に使うということは、直接的利用でありまして、これは絶対的に禁止すべきだと思います。」これが中曽根さんのおっしゃってきた当時の国会における答弁の中身でございます。  この中曽根答弁からしましても、核爆発によって生じたエックス線を破壊力、殺傷力として使ったり、そういう兵器開発の研究を行うということは、基本法が厳しく禁止している原子力の軍事利用であって、その兵器開発のための研究を含むSDI研究に我が国が参画することは原子力基本法に触れると言わざるを得ない。これが私の考え方です。その点をお聞きしているのです。SDIが非核であるとかそうでないとかということを今論議しているのじゃなくて、非軍事目的というこの日本国会において論議された原則に照らしてみてこれが触れるものであるという考え方を今私は申し上げているのですが、その点はどうですか、触れないというふうにおっしゃるのですか。
  209. 松井隆

    松井政府委員 核爆発を利用したエックス線レーザーというものがあるということでございますけれども、それは現在まだ存在していない兵器であるというふうに我々は知っております。  それでまた、そういう意味では、これが具体的にいかなるものかということもわからないわけでございまして、またこのSDI研究の中で、こういった研究がどんな研究が行われるのか、それも定かでない段階でございます。そういう意味では、それをもちまして反する反さないということを決めるのは困難であるという状況にあるというふうに考えております。つまり、まだそういう段階のものでございますから、原子力基本法との関係を云々する段階ではないというふうに考えております。
  210. 山原健二郎

    ○山原委員 では、どうして非核という言葉があの国会の本会議場で中曽根首相の口から出るのですか。いまだに研究していない、開発された兵器でない。それは当たり前のことですね。それは私も知らぬわけじゃない。だからこれから研究する、それに参加するかどうかという問題なんです。これは開発された兵器ではない、でもそれは非核だ、こうおっしゃって参加するという論理の展開をされているわけですから、今局長がおっしゃったことを適用すれば、非核だという断定をされた中曽根首相の発言そのものが否定される内容になってくるわけです。これから研究してみなければどんなものになるかわからぬ、こうおっしゃるわけでしょう。でも非核だから参加をしてもいいんだという言い方をされておるわけです。     〔塚原委員長代理退席、粟山委員長代理着席〕 最近の国会における答弁は少し違って、これはアメリカが主になってやるのだからとかいうこと、あるいはまた、まだつくられていないものだから、つくられたときにこれが本当に核兵器であるならばもちろん取りやめますということもおっしゃっているけれども、しかし、非核だということはレーガン大統領も言っているし、中曽根さんも言っている言葉なんです。そういうことから考えますと非常に矛盾しているのですよ。あなたのおっしゃっていることは間違いではないです。今まで政府答弁の中にも今おっしゃったことは出ているから間違いではないと思うのです。しかし、政府答弁をつづってみると物すごい矛盾があるわけです。まだできていないんだ、でも非核だ、こういうのでしょう。できてみたら非核であるか核兵器であるかわからぬのに、非核であるから参加する、こういう論理の展開はもともと矛盾があるわけでして、この点は指摘しておきます。後で出てきますから、お答えがあったら時間がないから後で答弁してください。  それで、私はこれは明らかに基本法に抵触すると思っています。これは、総理のおっしゃったこと、また倉成外務大臣のおっしゃったことが中心になっておりますから、当然また次の国会あたりの予算委員会その他で問題にすべきことだと思いますので、後でお答えがあったら言ってください。  その前にもう一つ言っておくことがあります。宇宙の平和利用をうたった国会決議とSDI研究参加の関係についてお聞きしたいのですが、政府は九月九日に閣議でSDI研究参加を決めました。その際の後藤田官房長官談話では、昭和四十四年の宇宙開発及び利用に関する国会決議との関係について触れられておりますが、「国会決議の有権的解釈は、もとより国会において行われるべきものである」としながらも、「政府としては、SDI研究計画へのかかる我が国の参加は、本件国会決議に触れるものではないと理解している。」と結論づけられました。ところが、これは結論はあるけれども、その過程における理由づけは全くありませんね。国会における有権的解釈は国会独自のものですから、本来ならば国会結論を出すべきなんです。ところが、政府はこれを断定的に判断して、触れないというふうに解釈をしたわけです。この点については、その後国会審議で一定の見解が示されておりますけれども、なおお聞きしたいのです。  SDI研究はアメリカが主体で行うもので、そこに部分的、局部的に日本が参加することは国会決議が律する範囲外だという論法が主要な口実となっております。しかし、部分的、局部的とはいえSDI研究に参加する、そこで研究を行うのは日本の企業や研究機関などでございますから、その参加行為につきましては国会決議の対象となることは当然ではないかと思いますが、この点は科技庁はどうお考えになっていますか。
  211. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 国会決議の有権解釈は、もとより国会においてなされるべきものと理解していますが、政府としては、我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議については、我が国における開発及び利用を対象にしたものであって、他国の開発及び利用に対する我が国の関与は我が国みずからが行う開発及び利用と同列に論じられるべきではないと考えており、SDI研究計画参加と国会決議に関する政府理解は、これまで国会において累次申し上げているとおりでございます。
  212. 山原健二郎

    ○山原委員 結局アメリカ主体だから、外国主体だからいいのだ、国会決議には触れないのだという御説明であろうと思います。  ところが、例の有人宇宙基地計画もアメリカが主体となって計画を策定いたしまして推進している計画でございますが、この計画への日本参加の問題が表面化しました際に、宇宙の軍事利用につながり、ひいては宇宙の平和利用の原則をうたった国会決議に反する懸念がこの委員会で論議されました。これは昭和五十九年のことですから、ここにいらっしゃる議員の皆さんもこれについては大変熱心な審議をされました。  例えば、各党ともやっておられますが、我が党の工藤晃さんがこの委員をしておりまして、そのときに、「今大事な平和利用に限るという我が国の宇宙政策を傷つけないために、長官として、」科技庁長官ですが、「この問題では絶対そういうことが起きないようにするという決意をぜひ述べていただきたい」こうただしたのに対して、当時の岩動科学技術庁長官は、「宇宙開発に関する法律上の平和利用ということ、また国会の御決議も十分に体して対応してまいりたい」こう答弁をされております。これはその後もこのお考えをずっと歴代の長官はお示しになっております。そして、科学技術庁とNASAの間で取り交わされました宇宙基地計画予備設計段階(フェーズB)に関する了解覚書では、その前文に「平和目的のための有人宇宙活動」という文言を入れたわけですね。これは経過として明らかです。  このように米国が主体となって推進している有人宇宙計画への日本の部分的、局部的参加でも、科学技術庁長官は国会決議を十分に体して対応するとしてきたのでございます。この態度は科技庁は変わっておりませんか。いかがですか。
  213. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 宇宙ステーション計画の予備設計作業を六十年度から本年度までやっているわけでございますが、科学技術庁といたしましては、その了解覚書にもございますように、この装置は平和の目的のためにやるものであるという考えであることは、その後何ら変更ございません。
  214. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、アメリカが主体となっていることは有人宇宙計画の場合も一緒なんですね。ところが、SDIのケースになりますと態度が変わってしまいまして、国会決議の対象外などという立場をおとりになるわけでございまして、これは私は認めるわけにはいかないと思っております。国会決議の精神をゆがめるような御都合主義的な対応はやめるべきだと思うのでございますが、長官、お答えすることがございましたらお答えになってください。いかがですか。
  215. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 SDIの研究計画への我が国の参加の対応を見てみますと、このプロジェクト全体、それから個々のプロジェクトに至るまで米国がみずから策定し進めている計画でございまして、我が国が参加する場合でも、我が国がイニシアチブをとりあるいはその責任において進めるようなものではなく、その参加の形態は個々の具体的プロジェクトの特定の局面に参加するということにとどまるものでございまして、SDI計画に対するこのような形での参加まで本件国会決議が禁止しているものというふうには考えておりません。
  216. 山原健二郎

    ○山原委員 例えばこの費用負担の問題にしましても、新聞を見ますと、中には資金を負担する企業が出てくるかもしれない、金を出せば成果の所有権でも有利になるだろうと外務省の幹部がおっしゃっている記事が出ております。ところが、アメリカがSDIについてはすべてをやる。有人宇宙計画につきましては、日本がいわゆる実験棟をつくるとか一定の予算的措置もされておるわけですが、そういう予算的措置をもし仮に日本がSDI研究に参加するに当たってしたとするならば、それはだめだ、こういうふうになるのですか。すべてアメリカがやるから大丈夫だ、抵触しないというお考え、そういうことですか。もし仮に日本が金を出す、あるいは企業が金を出すというようなことがあればこれは抵触する、そこで問題が変わってくるのかという点になりますと、ちょっとお聞きしておきたいのです。
  217. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 SDIの研究計画に関しまして、政府としては、我が国政府が研究費を負担することは一切考えておりません。
  218. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、結局こういうことになるわけですね。アメリカが主体でやるのだから国会決議には抵触しないということになりますと、例えば外国の核兵器開発研究計画の一部分に日本が参加する、あるいは受託研究というような形で核兵器研究を行うことも、これは外国が主体でやることへの局部的参加だから原子力基本法がうたう原子力平和利用の原則には触れない、こういう理屈が成り立つわけでございますが、そう解釈したらこれは大変なことになると思いますけれども、そういうお考えでしょうか。
  219. 松井隆

    松井政府委員 原子力基本法は法律でございまして、したがいまして、本件につきましては我が国法の及ぶ限りその基本法の精神が適用されるというふうに私ども理解しております。
  220. 山原健二郎

    ○山原委員 原子力の研究、開発、利用にも平和利用の原則、いわゆる非軍事という原則がございますね。それから宇宙開発についても平和利用、非軍事の原則がございます。一方は法律、一方は国会決議ですね。しかし、この国会決議というのは、決議されたときのことを覚えておられると思いますが、法律に準ずるものとして、あれが非常に重要な重みを持つものとして国会で決議された経過があるわけでございまして、法律、決議の違いはあっても、いずれも我が国の行為を律するものであることには間違いありません。  ところが宇宙開発については、外国が主体となって行う兵器研究へ部分的、局部的に参加することは抵触しないということになりますと、それなら同じ理屈で、外国が行う原子力兵器の研究に我が国の民間や研究機関が参加しても、国内にしか効力を持たぬ原子力基本法などには触れないという解釈が出てくるわけでございますが、そういう解釈を科学技術庁はとっているのですか、どうですか。
  221. 松井隆

    松井政府委員 原子力基本法の件につきましては、先ほど申しましたように我が国法の及ぶ限りということでございまして、他国の行う活動に関する関与であるか否かにかかわらず、原子力の研究、開発、利用は平和の目的で行うということでございます。つまり、我が国内法の及ぶ限りということでございます。
  222. 山原健二郎

    ○山原委員 長くやられると時間が足りないし、今のように簡単にやられるとわかりにくいというジレンマが私にはあるわけでございますけれども、そうなりますと、例えば外国というクッションを利用しますと、原子力の軍事研究、核兵器の研究開発が自由にできることになりかねない中身を持ったお答えだと思いますね。こういうことを当然そのとおりというふうに私は認めるわけにいきませんが、そういうことになりますと、例えば非核三原則だって、これは国是と言われておるものでございますね。つくらず、持たず、持ち込ませず。したがって、つくらずという原則がありますけれども、外国が主体となって我が国が部分的、局部的に関与することは、非核三原則のつくらずの対象外だという理屈が発生をしてくるわけでございます。  この点に関して言いますと、核起動エックス線レーザ-兵器についての議論でも明らかなように、中曽根首相は、これが核兵器だということがはっきりすれば手を引くと最近おっしゃっておられます。またそう言明する一方で、現時点ではわからないから今後の推移を見なければならないという、これは実に苦しい言いわけになっているわけですね。しかし、政府国会決議に抵触しないとした判断を援用するとすれば、そんな苦しい言いわけはなくても済むわけでございまして、結局、こういう言いわけをするところにSDIは非核だとおっしゃった前提すら覆る非常な矛盾をはらんでいるわけでございます。核起動エックス線レーザー兵器が核兵器であっても、その研究開発はアメリカが主体となって実施しているものであり、我が国は局部的、部分的に関与しているだけだ、だから非核三原則に触れないという理屈も生まれてくるわけですよ。しかし、非核三原則や原子力基本法に関しては、そういう解釈の立場に立った議論は今まで政府は行っておりません。SDIが出てきて初めてこういう矛盾した理論が出てきているのです。これは大変なことなんですね。科学技術庁の皆さんは答弁する側、私ども質問をする側でございますけれども、少なくともこの科学技術委員会においては、平和の目的に限るという非軍事の原則というものはお互いが納得して今日まで来たはずです。これがこういう解釈をしますと崩れていくわけでございまして、私はこれは到底納得することはできないのです。  きょうは余り時間がございませんけれども、そういう意味で、SDIへの参加というのは閣議で決定されましたけれども、これは当然取りやめるべきだ。そして、この理論構成についても国会において当然もう一回正当な議論をすべきである。また科学技術庁におかれましても、今まで主張してこられた。きょうは竹内前長官もいらっしゃる。竹内先生も長官のときそういうふうに私たちに答えてこられておる。これが科学技術庁が今まで貫いてきた平和の精神なんだ。それが崩されるようなことになったら大変なんです。だからその意味で、私はそういう危惧の念を持っておりますから、この点についてはもう一回お答えをいただきまして、できますれば三ツ林長官の方から御見解を承りたいと思います。
  223. 松井隆

    松井政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますけれども、SDIの内容でございますが、非核の技術による防衛システムである、こういうことになってございます。それで、しからばSDI研究の中に核爆発を利用したエックス線レーザーなるものがあるのではないかという御指摘でございますけれども、これについては先ほど来御説明しておりましたとおり、これはアメリカの説明でございますが、ソ連がそういった種類のレーザー兵器を持った場合にSDIシステムにいかなる脅威、影響を与えるかということを研究する、調べる、あくまでそういった観点から行うものでございまして、このSDIシステムの中で核爆発によるエックス線レーザー兵器を使うということは、私ども全く聞いておりません。したがいまして、私どもとしては本件につきましては、SDIシステム全体に参加すること自体原子力基本法との関係で問題になるというふうには考えていないというふうに説明している次第でございます。
  224. 山原健二郎

    ○山原委員 一言申し上げて、三ツ林長官のお答えを聞いて終わりたいと思いますけれども、私は、SDIが非核であるとか核兵器であるとかいうことをきょうは論議しておりません。またソ連の問題については、ソ連に対してもやめろとやればいいわけですから、そのことをきょうは言っているわけじゃない。そいういう政治判断を今しようとは思っておりません。けれども、少なくともこの委員会では、宇宙開発についても原子力開発につきましても非軍事という原則をお互いが貫いてきた立場から申し上げているのでございまして、非核であるとかないとかいうことは、これは予算委員会、本会議で論議されております。私が今言っているのは、非軍事というお互いが確認してきた平和利用の原則からいってこれは大変な誤りを犯すということを申し上げているのでございまして、もう時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、長官、御返事がありましたら伺いたいのです。
  225. 三ツ林弥太郎

    三ツ林国務大臣 私といたしまして、原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限るとの方針に何ら変わりはありません。
  226. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。ありがとうございました。
  227. 粟山明

    ○粟山委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十一分散会