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1986-10-30 第107回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月三十日(木曜日)     午前九時三十二分開議  出席委員    委員長 原田昇左右君   理事 小宮山重四郎君 理事 塚原 俊平君    理事 平沼 赳夫君 理事 牧野 隆守君    理事 粟山  明君 理事 小澤 克介君    理事 矢追 秀彦君 理事 小渕 正義君       有馬 元治君    菊池福治郎君       櫻内 義雄君    竹内 黎一君       中山 太郎君    羽田  孜君       若林 正俊君    木間  章君       村山 喜一君    大久保直彦君       冬柴 鉄三君    山原健二郎君  出席政府委員         科学技術庁研究         開発局長    長柄喜一郎君  委員外出席者         参  考  人         (株式会社三菱         総合研究所取締         役会長)    牧野  昇君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     竹内  均君         参  考  人         (電気通信大学         教授)     合田 周平君         科学技術委員会         調査室長    工藤 成一君     ───────────── 委員の異動 十月二十九日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     大西 正男君 同日  辞任         補欠選任   大西 正男君     有馬 元治君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件(二十一世紀科学技術展望に関する問題)      ────◇─────
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件、特に二十一世紀科学技術展望に関する問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として株式会社三菱総合研究所取締役会長牧野昇君、東京大学名誉教授竹内均君及び電気通信大学教授合田周平君の御出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  4. 原田昇左右

    原田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本日は、二十一世紀科学技術展望に関する問題につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でありますが、まず参考人からそれぞれ御意見を四十分程度お述べいただき、その後委員の質疑に対し御答弁をお願いしたいと存じます。  それでは、牧野参考人にお願いいたします。
  5. 牧野昇

    牧野参考人 牧野でございます。  それでは、科学技術政策でこれから問題点になることを二、三お話ししてみたいと思います。  第一がインテレクチュアルプロパティーの問題でございます。インテレクチュアルプロパティーというのは知的所有権というふうに訳したらいいのかと思いますが、実はきょうも出席している科技庁の長柄局長資源調査所所長のときに、二十一世紀の文明と資源という、どうも物以外の資源がいろいろあるということで、委員会をつくりまして、半年くらいやりました。私、委員長でございましたが、最終的な結論の中で非常に強く言われているのは、結局我々の持っている所有権という問題、物でなくて知的な、インテレクチュアルプロパティーと言っていいでしょう、こういうことが非常に強くなってきている。そして今アメリカインテレクチュアルプロパティーの大合唱になってきているというのに対して、我々はまだそれを素直に受け入れてないのじゃないかなという感じでございます。  今度ウルグアイでありましたガットで何がディスカッスされたかというと、例えばソフトウエアだとか著作権だとか特許あるいはノーハウ、いわゆるソフトという問題が今後非常に大きく国際問題として挙がってくるということでございます。具体的な名前を挙げられませんけれども、現実に日本の有名な会社ソフトウエア攻撃を受けて利益が三分の一になったということがあるわけです。恐らく今我々がアメリカインテレクチュアルプロパティー攻撃を受けているということは、逆に言うと、これから我々はこれを確立して、今後我々が韓国とかいろいろなところにテクノロジートランスファーをしていくということが大事になってくる。そのときにインテレクチュアルプロパティーをよく確立してないと問題です。例えば、我々が知的所有権の問題について、テクノロジートランスファーですから、韓国にこれからいろいろ技術を教えてその技術料をもらうという形をとった場合に、我々周囲の国というのはインテレクチュアルプロパティーに対して余り関心がないわけです。例えば著作権一つとっても、私の本が韓国で、三冊ぐらいですけれども、ほとんど無断でやられます。非常に良心的な人でも、あいさつに来て朝鮮ニンジン一箱、こういう感じでございまして、ほとんどオープンということですね。これじゃ我々もどうかなという感じがするわけです。今韓国では日本が冷たいと言う。私がこの間国際会議に呼ばれてソウルで話を聞いてきたのですけれども、例えばコストの問題でも、日本が第二製鉄所のときにノーハウの提供をとめたわけです。これは向こうが非常に怒っているわけです。日本人はひどいじゃないかということですけれども、しかし、今やノーハウをとめざるを得ない。ということになると、逆に言うと、そのノーハウに適当な対価がつけば出してもよかったのだということもあり得るわけです。中国なんかもっとひどいもので、私の「衰亡と繁栄」という本を今度中国で訳して出すと言うのです。お手紙をいただきまして、出すことになったけれどもお金は全然出せません、しかし、はしがきだけはただで書いてくれ。この辺のところのギャップが今後大きく出てくるだろうと思うのです。  今私がどうしてこれを強く言うかというと、我々産業の立場からいいますと、日本はこれから物をつくっていくのに非常に難しくなってくるのです。この間私の友達の三菱金属の永野社長が帰ってきて、アメリカ一つ工場を買ってきたと言うのです。何だと聞いたら、日本でやっていてもうまくいかぬと言うわけです。大体給料アメリカを抜いちゃった。まさかと言うけれども、計算すれば実際抜いているわけですね。例えば一人頭国民所得、一人頭のGNPをとっても、二年前にアメリカが一万四千八百で日本が一万そこそこだったのが、今や四〇%近く上がったから抜いたわけです。給料は高いわ、工場をやろうといったって土地は高いわけでしょう。土地の値段の高さは我々がびっくりするぐらい最近高いわけで、この間テレビを見たら、ハンカチを出しまして、このハンカチ面積土地を都心で買うと幾らかというと六百万円だというのです。アメリカ土地面積で言うと日本の四十倍だけれども、単価を比べると、四十分の一の日本よりアメリカの方が安いのですから、土地を買って工場はできないというわけ。エネルギーはどうか。アルミ産業が壊滅したようにエネルギーばか高ですからね。給料ばか高で、土地ばか高で、エネルギーばか高産業をやっていけといったってやっていけないわけです。  そうするとどうするかというと、我々はどうしても首から上の知的分野で活動して、いわゆる知的活力国内に興す。そうしないと産業空洞化が起きる。みんな向こうで買った方がいい。一つの例を挙げますと、本田技研の二輪車技術研究所へ行きますと、本田は五十五工場を外へ出しているのですが、世界の九〇%を日本の二輸車が押さえて、そのうちの大部分をどうして本田が押さえたかというと、技術開発力の違いなんです。世界的にハーレーダビッドソンとBMWしかないのだけれども、ハーレーダビッドソンというのは、向こう技術研究所のトップに聞いてみると、五年に一遍しかモデルチェンジをしない。日本はどうかというと、うちは月に二、三個モデルチェンジすると言う。マイナーを入れると年に百か百五十モデルチェンジする。向こうは五年に一遍。だから勝つわけです。  そうすると何が日本の強さかというと、首から下の物をつくって、安い給料でよく働いて、力もあって、少し条件が悪くて煙が出ても働くよというところは、どうも日本の中ではやれなくなるわけです。だけれども、本田技術研究所は、二輪車だけで、非常勤を入れてだろうけれども五千人の人を置き、そこでやれ調査研究あるいは開発だ、デザインだ、設計だ、マニュアルづくりだ、テスティングだ、こういうのを我々ソフトと言うのですけれども、こういうものをつくって、あとはおまえのところでやりなさいという。首から下の仕事向こうへ出すという形によって、日本国内における産業活力を保たなければならないということなんですね。皆さんも本田という会社活力がなくなって空洞化したと夢にも思わないのは、首から上の非常に価値の高いものを押さえているからなんです。そして五階建てぐらいの建物だからエネルギーも要らなければ土地も要らない。しかし価値だけは高い。そういうものに入っていかざるを得ない。そうするとそれは何が大事かというと、物の所有感じゃなしにインテレクチュアルプロパティーの問題になってくるわけです。  そういう意味で言うと、今度のガットでもこれが最大のターゲットになったように、今やインテレクチュアルプロパティーの大合唱が起きますよ。  それに対してどういう対応をしたらいいのか。これは日本はこれからが大事で、今はアメリカにやられているわけですけれども、インテレクチュアルプロパティーについて我々がどういう形で政策的に対応をしていったらいいか。これはケース・バイ・ケース、緩急自在で行くと思いますけれども、ソフトウエア一つをとったって、著作権法でいったって大変です、著作権法ソフトウエアと全然違うのだけれども。ところが、ソフトウエア産業はまさに今コンピューター産業を追い越しているわけです。それをどう扱うかという問題は、今文部省で扱っているわけです。文部省ソフトウエアかねという。我々は、文部省というのは余りやわらかい印象がないのです。非常にこちこちという印象ですから、どうもあそこでいいかなという感じがあるのです。この問題が一つでございます。インテレクチュアルプロパティーの問題が、今度、ある意味産業空洞化における日本科学技術政策として非常に大きくなるだろう。いわゆる知的所有権の問題です。  さて二番目、これは情断の問題です。情断というのは、我々の冗談じゃなくて、情報がたえるということです。昔、「油断」というので堺屋太一氏が売り出したのですけれども、油がたえて日本が大騒ぎになったという話がありました。今油がたえても何ともないのだけれども、情報がたえたら日本は最後ですよ。日本が今みたいに知的付加価値で生きていこうという中において、例えば我々が一つのことをやろうと思うときに、日本科学技術研究者が百人いるとすると、世界中には千五百人か二千人がいるわけです。この百人の人が仕事をするためには二千人の人のデータベースにしてやらないとまずいわけです。我々は常に情報を入れなければいかぬということなんです。  ところが、日本というのもおもしろうございまして、いつだったか中曽根さんの私的諮問機関高度情報社会懇談会というのがありまして、私も委員をやっておりますが、いろいろなデータがそのとき出たのですけれども、情報でも情報を扱う機械がございます。例えばVTRとかテレビ、あるいはOA、コンピューター、電卓、これのアメリカとの貿易は九対一で日本輸出超過なんです。ところがノーハウをいただくとか特許をもらう、あるいは向こうの映画を買うとか向こうの本を翻訳してこちらにもらうとか、あるいはジャック・ニクラウスのクマのブランドをもらうとかいろいろございます。こういうのを我々はソフト輸出入と言うのですけれども、このソフト輸出入が何と九対一で向こう輸出超過なんです。まさに日本は物は極端な輸出超過だけれども、ソフトとか知的なものは輸入超過なんです。  ところが、日本技術がなぜうまくいったかというと、大体日本人英語は読めるけれども向こう日本語が読めないから、まさに日本は得なわけです。これは何と言ったって向こうの出たものは全部読んじゃうし、向こうのものをこっちが相当レベルアップして読んでも、向こうは読めないわけです。夕べ電子関係東大先生とか日立、日電の所長さんと座談会をやったのですが、今非常に重要な半導体とかICあるいはデバイス部門は、大発明はなかったのです。大発明というのはトランジスタレーザーですけれども、その後はちょぼちょぼの発明改良です。第一フェーズ発明は、確かにレーザーにしたってトランジスタにしたって向こうでやったけれども、そこから先の改良、改善はフェーズなりフェズ1.5以降ですね。ICをつくっていくとかレーザーで線を非常に遠くまで送り込むとか、発振装置半導体レーザー、こういうものは日本が抜いているわけです。日本が抜いているから向こう日本の抜いているものを見ようといったって、ちんぷんかんぷんなんです。こっちは向こうへ行って、最近若い人は英語がうまいですから、向こうのものは全部入れちゃう。こっちは全然出さない。アメリカNTIS、ナショナル・テクノロジー・インフォメーション・サービスというのでワシントンで科学技術関係お金を出しますね。アメリカでは、科学技術関係お金国立研究機関大学以外に民間にも出すわけです。しかし、アメリカ政府がつばをつけた研究は、全部一回それをレポートにしてNTISというところに入っているわけです。毎年何百万と入っている。それを日本に出すときに、うち三菱総合研究所を通さないと出せない仕組みになっているのです。赤字でやっているのです。もうけているわけじゃないですよ。うちが全部責任を持って配ってやっているわけです。それでも向こうから新しいものを年に三億ぐらい買っています。ところが、日本から行くものはほとんどない。しようがないから一人雇って表題だけ向こうに送っていますけれども、向こうは、まさにけしからぬ、こそこそ隠しちゃってと言う。大体日本人というのは自分研究したものは隠したがるのです。例えば次世代技術研究会か何かで、もっとオープンにせよ、世界じゅうに知らせよというと、いや、国民の税金を使ったのだから隠しておけという議論が強いわけです。向こうはそんなことは言いません、全部オープンですから。向こうオープンの上にこっちは読める、こっちは全部隠したがる上に日本語しかやらないというのだから、これはアンバランスになるわけです。  向こうが言っているのは、そんなことを言うのだったらこっちも出すのをやめようじゃないか。これが情報断絶なんです。情報断絶になればどうかというと、日本は本当に参っちゃう。日本研究員は人口的に言ったってそう大勢いないのです。アメリカはがぼがぼいる。いろいろなところがある、それをみんな入れているから、それをベースにして、例えば十段上がるのに八段ぐらいはそこで入れて、そのあと二段を自分がやるわけだから、その八段のはしご段を全部外される可能性があるんだということでございまして、この辺一体どうするかという問題があるのじゃないかなということでございます。  そういうような情断、言いかえますと、データベース日本の充実とそのデータベース向こうへ出してやるという、いわゆる対等な感じを持たすわけですね。私は向こうNTIS長官に会うと、いやドイツはしっかりしている、ドイツはちゃんと英語に直してどんどん配るよと言う。日本もやろうかと言うと科学技術庁、そんな予算ないと言う。最近ちょっとふやしましたけれども、最初は何か言いに行ってもけんもほろろだったね、科学技術庁の当時の局長さん。今は違うけれどもそういう感じでございまして、もう少しこの辺の認識をやっていただかないと大変ですよと。油がたえたときは何ともないけれども、情報がたえたときは大変だ。今みたいなアンバランス向こうが我慢するはずがないんだ。向こうカポーニョ長官代理なんかかんかんになって怒っちゃって、もうおれは首だと言うわけ。こういうものはギブ・アンド・テークです。ギブ・アンド・テークしたってこっちが得なんだから。アメリカの方は優秀な人と優秀でない人がいる、中曽根さん流に言うと。それは確かなんですね。中曽根さんが言ったからまずいので、私が言っても構わないんだけれども、日本の場合にはそろっちゃっていますから、どんな工場の端くれでも英語で文献を読んでやっていますからね。その辺のところを相当重要な問題としてひとつ考えていただきたい、私はこういう感じでございます。  三番目に、科学技術の問題になると常にクリエーティビティーの問題になるんですね。結局はクリエーティビティーの勝負だよということでございますけれども、このクリエーティビティーが一体日本にあるかないかという話をちょっとここでしてみたいと思うのです。  クリエーティビティーの問題で、私は江崎玲於奈日本に来ると、仲がいいものだから二回ぐらい会うんです。年に二回ずつぐらい会っているかな。一回は泊まりがけ勉強会をやるんだけれども、この間も彼とあるセミナーで一緒になって、江崎玲於奈牧野昇の対談というのをやった。私が江崎玲於奈に聞くにはどういうことを聞いたらいいかということがわかるわけ、今までの感じで。それは簡単なんですね。江崎さん、あなたノーベル賞をおとりになったけれども、日本人というのは創造性がないとみんな言う。なぜ創造性がないんでしょうと言うと、彼が待ってましたというのでしゃべるわけ。ところが、ことしの二月か三月にやったら、いや、創造性といってもいろいろあるんだ、どっちがいいか悪いか言えない、こういう話になった。ああ、アメリカ認識も変わったなという感じでございます。  それで、二人の間で話題になったのがニューズウィーク日本版でございます。ちょうどニューズウィーク日本版になったときにギャラップが世界六カ国の二千人近くの人にそれぞれアンケートを出して、日本人というのをこちらに挙げまして、こちらに例えば傲慢だとか平和でない、セクシーでない、こうかつだとか創造性があるとか二十ぐらいの言葉を挙げておいて、日本人というと一番最初に頭に浮かぶのは何か、こういうことをやったわけです。ところが、私も驚いたんだけれども、江崎玲於奈もそれを見てびっくりしたんだけれども、六カ国のうち五カ国が日本人のイメージに対して創造性というのを挙げているわけですね。それも圧倒的に挙げている。韓国だけはだめ。韓国というのはなかなかおもしろい国で、きょうはその話をしなくてもいいんだけれども、アメリカ、フランスなど六カ国が全部そうです。言いかえますと、日本人というのは創造的なんだよということですね。ただ江崎玲於奈に言わせると、創造の質が違うというのは、未踏の分野に飛び込んでいくような創造性タイプと、ある程度目鼻はついたけれども、それを実際に持っていくことにおいて非常に難しいところをやり上げる創造性とがあるのだということです。例を挙げますと、トランジスターを発明したのはショックレーだけれども、トランジスタラジオを工業化したのはソニーです。あるいはレーザーを使ったコンパクトディスクあるいはレーザーディスクの原理をやったのはフィリップスだけれども、フィリップスはギブアップしちゃっている。それをやったのが日本なわけですね。  そういう例を挙げると切りがないんですけれども、そういう点で言うと日本創造性というのは確かにフェーズ1じゃないけれども、フェーズ1.5から2というところが強いんだ、みんなこれも創造性なんだよと褒めているんです。トヨタの豊田章一郎社長は、自動車は創造性がないというけれどもとんでもないことだ、なぜトヨタ自動車があれだけ優秀になったか、世界を征覇したか。それは熱処理とか工作機械従業員一人一人が創造性を持っていて、それがサムアップしたからアメリカのGMを追い越したんじゃないかという形でございまして、創造性の違いがあるわけで、向こうは四番バッターのバースがいるけれども、あとは一割バッターだ。日本は二割五分から二割八分のところがそろっている、こういうことですね。ですからその辺のところを我々は評価しないと。今の評論家とかは、日本人創造性がないよとすぱっと切っちゃう。そうじゃないんだ、創造性というのはタイプタイプがあって、創造性がなければこれだけ国がよくなるわけはないので、そういうアプローチ、言いかえますと、創造性というものに対する我々のある意味での自信が必要だということであります。  私自身日本技術輸出第一号のMTマグネットというのを発明したわけですから、私自身はそういう点では創造的なことをやったと思うわけなんです。だから私がつくづく思うのは、私がMTマグネット発明してアメリカ技術輸出して、それで工業化して品物になっていくときに一番クリエーティブなところはどこかというと、発明の段階じゃないんですね。それを本当に商品化して、JIS規格を通ってアメリカ技術輸出して製品にして出すという、いわゆる歯を食いしばって頑張っていくこの二年、三年が一番クリエーティビティーなんですね。大学でいろいろ発明をすると、また余計なことを言わない方がいいけれども、大体発明の本を見ていますとみんな偶然に発明した、こう言うのです。江崎さんも偶然にと言う。三島徳七先生も偶然に。これは当然偶然が入ります。だけれども、開発して製品まで行くのは偶然はないわけです。だからそこをもう少し評価してもらわないと、また評価するという政策をとらないといけませんよということがあるのだということでございます。  もう一つは、日本大学先生とか国立研究機関の最近の低下沈滞ぶりというのも僕は非常に残念なんです。僕も東大に十何年いたからふるさとのことを言うわけじゃないですけれども、昭和の初めの大学先生というのはすごかったわけです。例えば半導体対応するフェライトの発明が東工大の武井さん、マグネットで言うと本多光太郎のKS、三島徳七MK鋼、それからテレビの高柳さん、マグネトロンの岡部金次郎さん、あるいは磁気テープ、今のテープレコーダーの方式というのは東北大永井健三さんがやっているわけ。それから光ファイバーの研究東北大西澤さんというぐあいで、昔は相当にやっているわけです。昔あれだけやっていながら最近どうして大学先生が出ないかというと、隣に大学先生がいるので言いにくいんだけれども、やはり国鉄方式で安住しちゃったんじゃないか、こういうことでございます。これはまた意見が別かもしれませんけれども。竹内さんは別です。竹内さんはまさにファイトの方ですけれども、西澤さんとか竹内さんみたいなあのファイトがなくなっちゃね。  江崎玲於奈意見をまた言うと、ノーベル賞ですから余り意見を出すわけにいかないけれども、創造性について彼の言うのは、ノーベル賞をとる条件の中で幾つか挙げて、その一つが闘う心を常に持て、二番目に安住したらだめだ。ところが大学におりますと、私もいたからよくわかるんだけれども、闘う心がなくなっちゃう。朝は何時に来てもいい、どこへ行っても先生先生だ、レポートを出さなくても首になる心配はない、こういうところでしょう。これはどんな人だって安住しちゃうわけだ。闘う心を失っちゃう。だから私に言わすと、極端かもしらぬけれども、だめな先生は首にしろと言うんだ。毎年首にしろ、そうすればノーベル賞がとれるよ。やや過激な発言があったかもしれませんけれども、そういう感じでございます。  ノーベル賞というのは基礎研究ですから、さっき言ったみたいに工学的な発明に対してはノーベル賞はもらえない。それはがぼっとほかから特許料をもらうから。だからそういう分野というのは日本の場合にはいい。なぜか。私も企業にいたからわかるが、物すごくテンションが高い状態なんです。だめだったら、企業にいれば、おまえそれじゃ北海道でも行くか、こうなっちゃうわけでしょう。ところが大学先生はそういうことはないんですね。だから私は、大学先生にいつもテンションをかけろ、テンションをかけなければだめだ。かけなくてもいいというんなら別ですけれども、国民の税金を使ってエフィシェンシーを上げなければいかぬ、簡単に言うと。そのときにおいてどういうテンションをかけていくかとなると、国鉄がつぶれた原因になった親方日の丸と同じように、おれは首になることはないんだ、どこに行っても先生だよ、レポートを出さなくても一生大丈夫だよという状況があることについては私は余りよくなかった。その点昔は先生も相当苦労したんだ、そういう感じがしているわけでございます。  そういう点で言うと、クリエーティビティーの問題はいろいろございますが、そういう点が大事だ。そんなことを言ったっておまえ、日本にはクリエーティビティーがなくてノーベル賞がもらえぬのは研究費がないからだろう、こう言うんですけれども、そんなことじゃないですね。  日本の軍事を除いた研究費というものは、これは御専門の方が多いので今さらかもしれませんが、ちょっとデータを挙げますと、これは科技庁のデータでございます。基礎研究の国家支出でございます。これは軍事費を除いた、国防研究費を除いた政府関係研究費ですけれども、日本が対国民所得比で〇・六、アメリカが〇・六四でございます。それから対国民所得に対する政府負担率、いわゆる対国民所得比というのが〇・六と〇・二ということでございまして、イギリスが〇・四八ですから、どっちかというと私は軍事費以外の基礎研究費の政府支出は日本は多いと見ているわけです。一般には政府お金を出さないと言うけれども、それは軍事費を入れているわけです。軍事費を抜けばイギリスとアメリカに比べても日本政府負担の研究費が多い、それが実態でございます。なぜ私がアメリカ、イギリスとやるかというと、戦後における基礎的な研究費をどのくらい出したかというのをアメリカのNSFが出しておりますけれども、今はアメリカ、イギリス、日本の順です。だからこの三カ国を比べて国民の所得比で日本が——これは軍事を除きますよ。軍事をやれというのなら話は別だけれども、軍事を抜いた場合に、日本政府が出しておる研究費は——政府が出している研究費は大体基礎研究なんですね、余り商売を上げなくていいから。これはイギリス、アメリカといい勝負か、むしろ多いんだ。だから研究費を出せば基礎研究ができるよとか、研究費を出せばノーベル賞をとれるということでは決してないんだということですね。それを日本はどうして基礎研究データが出ないか、いや政府の支出が少ないからと一つの単純なつながりでしか言わないんですね。日本人というといや創造性がないとか、パターンが決まっている。そういうものじゃないということをひとつぜひ頭の中に置いていただきたいということでございます。  今、私は第一点がインテレクチュアルプロパティーという問題が特に重要だ。二番目に情報がたえるという情断という問題が今や大変大きな問題になっていますよ。これは私がアメリカと接触した感じでございます。それからクリエーティビティーという問題をどう考えているかということでございます。  さて、もう少しターゲットについてお話をしてみたいと思いますけれども、これからの二十世紀における研究開発のターゲットあるいはプロジェクトはどんなものがあるかというと、中期的に言えば、情報処理関係と通信関係と新素材がいわゆる御三家と言っていいわけですが、その中でもう少し細かく分けますと、一つICですね。もう一つは光エレクトロニクスで、三番目がテレコミュニケーション、こういうことになっておりますけれども、それぞれ非常に問題は大きいんですね。  ただ、情報処理関係という形になりますと、きのうも情報処理関係、デバイス関係の人と会いましたけれども、二百五十六KダイナミックRAMという、つめの四分の一に素子がダイナミックタイプで六十万個、スタティックタイプで百二十万個ぐらい乗っていますね。ところがもう間もなく出始めるのは一メガでございます。その四倍でございます。今学会で出てきているのは四メガでございまして、来年あたり学会に出るのは十六メガでございます。恐らく一九九〇年に入ると六十四メガになるだろう。今二百五十六K超LSIでつめの四分の一に百万個素子が乗っているといってびっくりしているけれども、その四倍のまた四倍の四倍の四倍、四を四回掛けるから大変なものです。それができるわけです。そうなりますとどういうことになるかというと、この問題をどう考えるかということが一つでございまして、簡単に言うと、私が言いたいのは、こういうICとか超LSIをハイテク産業であって、そこが成長産業と見るのは間違いだということなんです。  例えば、今IC産業を束にしても一兆七千億でございますし、どこも二年赤字、二年黒字という会社です。きょう発表がございましたように富士通から日本電気から全部だめなのは、このICが赤字だからです。おととしはICは黒字だった。だから二年二年というんですね。しかもマーケットの大きさが一兆七千億ぐらい。一兆七千億というのはどのくらいかというと、女性の着物とかお化粧品が二兆ですね。それからサービス産業でお寺のお坊さんの上がりが四兆、パチンコが六兆です。パチンコの四分の一の産業ですから、余りICに興奮することはないんだ。ただICは主食じゃなしに活力剤です。ICが非常に小さく強くなった上に値段が安くなる。どのくらい安くなるか。二百五十六KダイナミックRAMで言いますと、今から二年前に一万八千円から二万円でございました。去年が千五百円から二千円でございます。現在が三百円ですね。今度日米半導体競争で決まった数字で大体二ドルですから。来年は五十円になりますね。再来年はくぎと同じ値段になる。五年でくぎというんですね。つめの上に百万個乗ったものが五年でくぎとなるから、この産業自身は非常につらい産業なんですね。ところが、これを使った産業がそれによって息を吹き返す。だから活力剤だと言うんですね。  例えば工作機械があって、昔は工作機械というのはアメリカのシンシナティ社から輸入しなければならなかった。私も大学で十八年間講義したけれども、あのころはアメリカ工作機械は神様だった。ところが工作機械日本がだめになったときにNC装置、ニューメリカルコントロールという、いわゆるICのCPUという中央演算とメモリーを入れたもの、これは日本世界の六〇%を占めておるが、これをつけたことによって一挙にアメリカ市場を押さえてしまった。そして今工作機械交渉を日米がやっている。それはそうでしょう、アメリカにおける一番最先端のマシニングセンターの七五%は日本製だもの。だから工作機械が生き返ったのだ、こういう感じなんだ。時計だって一時つぶれそうになったが、例えば一万円とすると、この中に入っているICは五百円。五百円で一万円を生かすわけですよ。カメラでもそうですね。そういう意味で、私の言おうとするのはどういうことかというと、ハイテクというとICだ。こっちもICだ。IC金太郎あめみたいに言っているんだけれども、そんなのは意味ないんだ。小さいんだ、パチンコの四分の一だよ。しかし、それを使ったメカトロニクスは二十兆、三十兆だから、そっちに目をつけていってくれ。なぜかというと、ハイテクというとはるか遠くのものだと国民の一同がみんな思っているけれども、そういうのじゃないのだ、ハイテクというのは皆さんのものだということをよく言わないとまずいんだということです。  この間酒屋さん、全国酒造業の大会があって、九段会館で千人も集まって税金まけろなんと言ったけれども、よせと言うのだ、まかりっこないのだから。皆さんのところの工場を見てみろ。温度をはかるのにいまだ杜氏が赤い鉢巻きしてやっている。当今どんぶり勘定をやっている。だからだめなんだ。皆さんのところでは早くエレクトロニクスを入れろ、こういうのをサケトロニクスと言うんだよと。そうしたらえらいね、半年もしたら、牧野さん、早速サケトロニクスをやりましたと言って一升瓶持って私のところに来ましたよ。日本で四番目のサケトロニクス、もう随分になる。  この間、私は日経のファクトリーオートメーションの審査員をやっておりましたら、九州のみそ屋でマルショウだかマルキンというのが百五十人くらいでやっているところがある。それがエレクトロニクス化して十五人でやっている。偉い先生がいる。こういうのをミソトロニクスと言うのです。  この間、私つい先週徳島へ行った。そうしたら、牧野さん、徳島は仏壇の名産地だという。仏壇売れにゃしようがないだろうと言ったら、あなた何言っているんだよ、今仏壇はエレクトロニクス化して大変だぜと言って、これは竹内宏さんに聞いたんだけれども、彼は見てきたというので間違いないと思うのだ、名前を挙げてあれだけれども。仏壇の全国展示会があって見てきた。いわゆるハイテク仏壇というのがあるというわけです。仏壇の前に座ってボタンを押すとドアがすうっとあく、それでお経と木魚がぽくぽくと聞こえてくる。それからお灯明じゃだめなんですね。光ファイバーで戒名が全部きれいに出てくる。一通り終わると上から先祖の写真ががたっと落ちてきて、おまえもう少し頑張れと、こう言うのだという。こういうのをブツダントロニクスと言うのです。  なぜ私はこういう卑近な例を言うかというと、ハイテクというのは国民全体のものなんだ。IC屋さんはいつも赤字を出してパチンコの四分の一だけれども、これは酒屋さんからみそ屋さんから仏壇屋さんから、もちろん機械屋さんから自動車屋さんまで全部がハイテク化していくんだよ、こういうのをハイテク化と言うんだよという意識を持たせないといけない。ハイテクというものと皆さん苦労している中小企業との間にギャップがあり過ぎるんだけれども、そうじゃないんだ、これはくぎなんだよ、これを使ってみんながハイテク化する、そういう意識なり政策なりをしてやらないといかぬ。そうしないと、だめなやつはだめですよというようないわゆる負け犬根性になってしまいますよ、こういうことだと思います。  その次にもう一つ話したいのはレーザーでございまして、光エレクトロニクス。これは例のSDI絡みでございますけれども、現在私の感じで言うと、今の御三家、コミュニケーション、光エレクトロニクス、ICのマイクロエレクトロニクスの三つで、レーザー関連が一番伸びるでしょう。二十一世紀のターゲットというとレーザー関連だと私は見ているわけです。これは当然のことで、光通信がそうでしょう。それからコンピューターのあれですから、メモリーとか、皆さんの聞いている例えばオーディオだとかあるいはこれから我々が本を読むやつが電子出版といってレーザーディスクにかわりますね。このくらいのところで、一枚で大体百科事典が一つ入りますから非常に大きいんですね。だからレーザーを中心とした研究をいかにやっていくかということが非常に大事なんで、どうもSDIに賛成するというと、ちょっとあいつまずいなというムードもないことはないのだけれども、なるべくそういう話は三菱が言わない方がいいんだけれども、やはりSDIというのは大事だと僕は思うのです。  どういうふうに取り込んでいくかは別だけれども、SDIのポイントというのは二つあるわけです。一つレーザーの勝負なんですね。これは強力レーザーから弱いレーザーまで、レーザーというのは一つのこれからの中核技術です。通信もそうだ、コンピューターもそうだ、今言ったメモリーもそうだ、それから普通のオーディオもそうだ、出版業から加工業からあるいは測定から全部レーザーなんですね。だからこの辺の技術を、さっき私が情断と言ったが、情報がたえちゃいかぬ、何かの形で情報を常に得ておけということです。  SDIについてもう一つ言いますと、SDIのポイントというのはレーザーソフトですからね。SDIというとすぐ例のこういう宇宙線が飛んできて光がぱっと出るというあれをイメージするとまずいのだけれども、SDIのポイントはソフトなんです。これは敵というか向こうから飛び立つミサイルをつかまえて、そして認識して直ちに追っかけていってこれを撃ち落とすという段階、これはもうソフトの勝負なんですね。大体どのぐらいの命中率が要るかというと、例を挙げると一キロ先の蚊トンボの目玉に命中させるのですからね。一キロ先の目玉をつかまえて命中させるというのは、もうソフトの勝負なんです。物すごい高いソフトウエアが要るわけです。いかにつかまえて、いかに追っていって、そしていかにそれにかちんと当てていってそれを最終的に撃墜をしていくか、こういうのはソフトなんです。例えばこちらに「陸奥」、「長門」があった場合に、向こうに当てるためにやはり右角度何度で撃てと、こういうのをソフトと言うのですね、使い方の技術ですから。そういう非常に高度なソフトというのがここから出てくるわけでございますので、そういう点で言うと、私はSDIというものにある程度コネクションを持っていていい。情報がたえちゃまずいですよということが一つの方向として言えるんじゃないかな、こういう感じでございます。  最後に、長期的な方向としてよく言われているのがバイオです。二十一世紀技術というと大体バイオが顔を出してくるのです。バイオというのは簡単に言いますと、今日本で騒いでいるのは遺伝子組みかえですね。遺伝子の部分に入っているやつです。我々が例えば糖尿病で困る。そうすると、それは今は豚のインシュリンだから、それじゃまずいから大腸菌の遺伝子の中に人のインシュリンを出すというDNAを植えかえて、大腸菌で人のインシュリンをつくる。これはもう今やっている人がいますけれども、薬品関係と食品、みそ、しょうゆ関係、それから植物における細胞融合というあたりだけなんです。だからマーケットとしては大きくない。  大きいのは、ちょうど工業技術院が今度新しく予算を出しまして、予算第一号の第一ページに載っているのがヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムというもの、これは中曽根さん好みのプロジェクトと言われているのです。これはどういうのかといいますと、例えば私が機械エンジニアだとすると、人間を見た場合どうだ。人間のエンジンはすごい。私が朝卵焼き一つに食パンで、これだけしゃべって半日もつ。こんな機械はないわけです。こんなすごいのがあって瞬間的にやる。それから、例えば脳の神経なんかもそうです。脳は大体百兆ビット、コンピューターは二十億ビットしか持っていない。それから神経一つとったって、向こうの百五十キロのスピードの球をセンサーで目で見て、右に曲がりそうだというのを今度手の運動神経に命令を出してぱちんと打つわけでしょう、ホームランみたいに。あんな機械はない。機械というのは大体同じ与えられたものを右から左へ振り回しているだけだからね。それから化学工業の人から見ると、我々は物をこう食べる。適当なやつだけ膜からすうっと入れて後、汚ないのを出せばいい。こんな化学工業の装置があったら、わざわざ温度を上げて蒸留装置なんか要らないわけです。何しろ入れればすうだからね。だから今我々にとって大事なことは、人間とか生物の持っておる不思議なメカニズムをいかに我々がひとつ入れてやっていこうか、このバイオなんですが、こういう分野のバイオ、言いかえますと、バイオというのも我々もう少し広い面で見ると、我々にとって科学技術の新しいブレークスルーに非常に役に立つでしょう、こういうことでございます。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  次に、竹内参考人にお願いいたします。
  7. 竹内均

    竹内参考人 今牧野さんおっしゃったことに私非常に賛成しているところが幾つかありますので、そのことについてちょっとつけ足しみたいな形で述べさせていただきたいと思うのです。  まず、最初のころにおっしゃったのが要するにソフトといいましょうか、インテレクチュアル何とかとおっしゃっていましたが、そういうものがこれから日本の金のもとになるわけですから、一種の資本なんですから、これを決して安く売っちゃいけないんだということ、これはとても大事なことだと思うのです。特に、これはさっき牧野さんもそのていのことを多少おっしゃいましたが、例えば大陸のチャイナと何とかやろうということになりますと、本当にどうもひどいのです。要するにただでくれろという感じなんです。賠償金を蒋介石が払わなくてもいいと言ったので払わなかったことのアフターエフェクトが来ているのじゃないかなんて書いている評論家もいますけれども、そういうことでずっとおつき合い願うことはできないと思うのですね。ほかのいわゆる自由主義国と言われている国では、まだそういう観念がありますからいいですけれども、社会主義国とつき合います場合には、やはりそういうことをよほど腹構えしていかないとえらいことになってくるのじゃないかと思うのです。  例えば、いずれソビエトのゴルバチョフさんなんかがやってきますけれども、こんなときなんかも何か調子に乗って安い取引なんかしない方がいいと思うのです。これは非常に大事なことだと思います。何かジョイントワークだとかなんとかいってうまい口先にだまされて、ソフトをそのときに込みで安く売っちゃったりするなんというのは国を誤ることだと思うのですね。ちょっと過激な論調かもしれませんが、これは非常に大事なことなので、牧野さんがおっしゃったことを言っているだけのことなんですけれども、一つつけ足しにしておきたいと思うのです。  韓国なんかもちょっとやりにくい方なんですが、だんだんこういうことになってくるのじゃないかなと思いますのは、台湾というところはまだしもそういうところが自由主義国に近い取引ができるんじゃないかなというようなことをちょっと経験しましたので……。私、ややコマーシャルめきますけれども、大学をやめましてから、今、「ニュートン」という科学雑誌の編集長をやっております。これは非常に大事なことで、特に若い人たちに科学を知ってもらうということではこういうことをやるのがとても大事だと思って、大学をやめてからはそういうことに打ち込んでいるつもりなんですけれども、今日本で大体四十万部売っております。科学雑誌で四十万部売るというのも珍しいと思うのです。売れて金が入るので喜ぶというほど単純じゃないので、それくらいたくさんの若い人が読んでくれるのはうれしいと思うのですが、問題は台湾なんです。台湾が、日本「ニュートン」が成功すると直後くらいに台湾のある出版社がやってまいりました。台湾とか韓国は御存じのように国際翻訳同盟というのでしょうか、何かそういったところに加入しておりませんから、別に何も断らなくて海賊出版してもちょっと文句言えない筋合いなんですね。さっき牧野さんなんかは自分の本が何とかいろいろおっしゃっていました。僕なんかもいろいろ訳されているらしいのですが、いまだもろうたことありませんけれども、それはそれとしまして、だからなお感心だと思いますのは、台湾からある出版社がやってまいりまして、台湾では今言ったように海賊版を出してもいいんだけれども、うちはそんなことしたくないと言って、ちゃんと使用料みたいなものを払って実に立派なものを出しまして、驚くなかれ台湾で四万部売っているのです。これは僕ちょっと驚くべきことだと思うのです。御存じのように台湾の人口は千八百万くらいでしょうか、日本は一億何千万ですからね。まだ経済のレベルは日本に比べれば低いと思うのですが、そういう国で結構四万部売っているというのは驚くべきことです。それでまた、それが若い社長なんですけれども、本当にこっちが嫌になるくらいしばしばやってまいりまして、こういうことをやりたい、こういうことをやりたい、これで幾らでと言うのですが、またそれが華僑の精神なんでしょうか、いろいろ値切ったり、そういうコマーシャルの取引に僕が出るわけじゃありませんけれども、担当の者が困り抜いているくらい熱心なんですね。言いたいのは、困るということではなくて熱心なんです。つまり全部商取引としてやってくれているわけです。そういうことをやろうと思えばだんだんできるんじゃないかと思うのです。その辺はやはり国と国との何か駆け引きみたいなことになってくると思うのですが、さっき牧野さんおっしゃったこと、そういう意味では非常に大事なことをおっしゃっていると思いますので、それがつけ加えの一点なんです。  それから、さっき日本人創造性ということをおっしゃいました。私も全く牧野さんと同意見なんです。日本人というのはやはり相当すぐれた創造性を持っていると思うのですね。ただ、これも牧野さんおっしゃったことですけれども、天から降ってくるような、何か偶然というようなことをおっしゃいましたが、そういうのですと、まだ日本人はそういう創造性にはやや欠けているところがあるんじゃないかと思うのです。何しろ自然科学というか学問の歴史を考えましたって、イギリスにはニュートンが出てから何百年たっておりますが、日本がそういうものを受け入れたのは明治になってからで、百年と四、五百年の違いがあろうかと思うのです。そういう学問の歴史の短さのせいだと僕は思っておりますけれども、まだ天から降ってくるような、一世紀に何人しか出ない天才がやるような創造というものには多少乏しいかもしれません。  ところが、日本人は、これは多分農耕民族だからだと思うのですが、お互い寄り合って、よく言われるのですが、会社を引けてから赤ちょうちんでもって何か余り浮いた話はしませんで、会社をどうしようというような話をやっているというのを、僕は行ったことないから知りませんけれども、そういうふうに書いてあります。つまりお互いに力を合わせ合ってやっていくというような、ちょっと劣るけれども十人くらい合わせれば、天から降ってくるようなインスピレーションを抱く天才を追い越すことができますからね。そういうようなことで、僕は日本人はすごい創造性を持っていると思うのです。  これはまた話が横へそれますが、本田宗一郎さんというのは、牧野さん盛んに褒められましたが、僕も実に立派な方だと思います。あの方はもう自分のおつくりになった会社を六十前にみんなほっぽり出してというか、つまり責任の地位から退かれました。僕は本田さんから伺ったことがありますが、おやめになって一年くらいは、何かもう反射的に朝になると立ち上がって車に乗って会社の方へ出かけるんだそうですが、途中で思い返して帰ってきたというのですね、自分が行っては邪魔になる。これは偉いことだ。  今度は、ちょうど本田さんがそういうことをやっていらっしゃるころだったと思うのです、僕は本田技研の研究所へ行って伺いましたら、その所長さんはこれまた偉いことを言うていました。本田さんの精神をちゃんと脈々と受けていたと思うのです。それから、今私がここでつけ足しをしておきたい創造性とも関係することなんですけれども、うち本田さんがやってくると追っ払うと言うのですね、研究所では。なぜかというと、ああいう天才だって、それは寿命がありますからいつか死ぬだろう。そういうときに今私が言った準天才みたいな者が十人くらい集まって、本田さんの一天才を抜こうというようなことをこの研究所でやっているので、そこへ何かいろいろなディスターバンスが入ると困るので、来ると追っ払うんだということを言うておりました。これは非常に大変な、つまり創業者も立派であったけれども、それを受け継いだ人もそういう創造性の何たるかを理解した立派なことをおやりになっていると思うのです。  とにかく卑下することはないので、むしろ日本人は非常にすぐれたいろいろな特性があって、それは僕がさっき申しました農耕民族でお互いに助け合っていくというところから出ていると思うのです。知恵を出し合って、手柄をひとり占めしないとか何かいろいろいい特性がありますけれども、それのせいだと思うのです。  嫌らしい例を一つ思い出しましたのですが、私、若いころにアメリカへ行ってすぐのころに、アメリカの学会で話したことがあるのです。日本の学会ですと、そういうときには弁士の講演が終わりますと一問一答というのがある。いわゆる質問がある。それは何か言って答えるのですね。僕の演説が終わりましたら一人のやつがとことこと僕の横へ出てきまして、質問するのにはえらい接近してきたなとやや警戒の念を出しておりましたら、驚いたことに、これは日本では見なかったことなんですけれども、自分竹内と同じことをやったという演説を始めまして、僕と同じ時間くらいしゃべったのです。これは肉食民族と穀食民族、ここが違うと思ってそれ以来嫌らしくなりましたが、そういうような感じがあるのです。  それと反対のようないい特徴を日本人は持っているわけですから、卑下することはないし、こうなってきますとこういう特徴を臨教審あたりで議論していただかなければいけないのじゃないかと思うのですけれども、お互い助け合って頑張ろうじゃないかというようなところをもうちょっと教育して、まあ教育しなくても日本人はそういう特性を持っているのだと思いますけれども、教育したらもっとよくなりますから、したらいいのじゃないかなと思うのです。  それからその次にもう一つ大事なのは、よく言われます軍備なんです。軍備がいいか悪いかというようなことを何か哲学みたいな問題とか宗教みたいな問題で近ごろ論じられているように思えて僕はしようがないのです。そういう論じ方をするのはおかしいのじゃないか。僕は、軍備というものは経済という面から見たらいいのじゃないか、こういうふうに思うのです。  例えば、今一生懸命軍備をやっておりますのは二大強国のアメリカとソビエトです。そのためにこの両方の国の経済ががたがたになっているというのは事実だと思うのです。  まずソビエトの方を申しますと、そのために人々の生活というものが非常に事欠く状態になってきて、それでどうしようもないという状態になっている。僕は、だからソビエトの方に多少のいら立ちがあると思うのです。アイスランドの会談なんかでも強いことは言っておりますけれども、我慢し切れない。つまり、民需を抑えて軍備に注ぐという限界まで来ていて、何とか妥協したいという色が見えるように思うのです。それがソビエト側の事情です。  一方、アメリカ側の事情は、さっき牧野さんは違ったニュアンスでおっしゃいましたが、産業空洞化というのが起こっておりますが、そのかなり大きい原因が、いろいろな技術だとか、それから人、科学者、技術者、金や人を軍備に関係した研究に注いでいるということにあるように思うのです。アメリカの経済が落ち込んできているのもそこにあると私思うのです。  そういう意味では日本は、戦後やや強制された形で平和国家としての道を選んだわけですが、これあったればこそ現在の経済繁栄が来たと思うのです。というようなことを改めて言うまでもないのですけれども、これはかなり真剣に考えて、そういう見方から軍備というものを見ていったらいいのじゃないか、見ていくべきじゃないかと私は思うのです。  端的に申しますと、軍備というのはおつき合い程度にすべきだと思うのです。これは戦後吉田茂さんという方が偉かったと思うのですけれども、平和憲法をつくって、アメリカの軍備のもとで協力を受けるというか中へ入る。これは経済問題として考えると、アメリカが腹立たしくなるくらいに利口な道を日本は選んだと思うのです。その路線を戦後ずっと日本は歩み続けているわけですから、それから外れない、そういう意味のおつき合いですけれども、軍備はそういう意味のおつき合い程度にとどめておいて——本当は軍に注ぐ金はゼロだった方がいいのですけれども、しかしそうは言っておられませんので、おつき合い程度の軍備というものを考えるのが日本科学技術に関係していると僕は思うのです。そういう道を選んでいけばまず空洞化は起こらないと思いますので、そういう意味でこれはとても大事なことだと私は思うのです。  というようなことを、二、三牧野さんのしり馬に乗って申したわけですが、これから少し自分の大事だと思うことを二、三言わせてください。  一つは、いきなりどうも変な話になってきますけれども、私、地球物理という学問を長いことやってきましたのでいつも思いますことは、日本の心配というのは一つが東京大地震だと思うのです。これは今現在駿河湾あたりが危ないと言われております。またそれには地球物理的根拠がありますけれども、そのことを別にいたしまして、やはり東京が大地震に襲われたときのダメージと静岡が襲われたときのダメージとは日本国に与える影響としては違うと思うのです。これは決して静岡をないがしろにするというような意味にとらないでいただきたいのですが、それではずっと起こらないかというと、これはどう考えましても起こるわけです。いつの日にかは東京大地震というものが起こると思うのです。そのときの問題です。  この前、一九二三年ですか起こりました関東大地震のときは、とっくに御存じと思いますけれども、あのときの物的損害が五十億円でした。当時の国家予算が十五億円でしたから、国家予算の三年分余りがすっ飛んだわけです。それから人的損害、行方不明も入れまして死んだ人がおよそ十五万人でした。そのままの状態が今起こったとしますと、これはやはり相当日本国にとっては大変なことです。国家予算の三年分も一遍にすっ飛んじゃったらどうしようもないわけです。  じゃ、どうしたらいいかということです。地震の予知なんというようなことをいろいろやっているじゃないかと言われるのですけれども、私は、なかなか物の役に立つ地震の予知は難しかろうという考えなんです。物の役にというのは、つまり、いつ起こるということがなかなか言いにくいのですね。いつ起こるかをちゃんと言ってくれなければ予知としての意味をほとんどなしませんから、そういう意味で大変難しかろうと思うのです。しかしとにかく起こるのは必ず起こる。しかし、いつ起こるかというようなことも込めて、地震の予知はできない。それではおまえ、一生地球物理を勉強してきたというけれども、何をやっていたんだときっと牧野さんあたりは僕を責めるのじゃないかと思うのですけれども、それはそう言われると困るのです。地震というのは非常に物が破壊する、地面が破壊する現象で、確率統計的な現象ですから、確率統計的な現象を予知するというのは非常に難しいのです。あしたの天気だってなかなかわからないわけですからね。おまけに天気の場合は、最近は気象衛星「ひまわり」から雲の動きはわかるのですけれども、それでもあしたの天気はあれだけ難しい。ましていわんや今度は、地球の中は上の方から見て透いて見えるわけじゃありませんのでわからなくて、というようなことになりますと、その難しさの程度を御理解いただけると思うのです。  さあ、必ず起こる、予知は難しいということになって、おまえどうするんだ、責任をとれというようなことになってくると思うのです。しかし僕は、問題がちょっと変なぐあいになっているように思えてしようがないのです。地震の予知をなぜしたいかというと、結局は地震による損害を少なくしたい、これが目的だろうと思うのです。それは地球物理学者は予知するのがおもしろい、こういう人ももちろんいますし、そういう好奇心をとめることはできませんけれども、国から金をいただいて研究するのは、なぜやっているのかといったら、やはりそれはもう当然のことながら、起こったときの損害を小さくする、その手だての一つとして予知ということを考えているのだろうと思うのです。  ところで関東大地震の場合について申しますと、実はあの場合には火事が物的にも人的にも損害を五十倍にしているのです。さっき物的損害が五十億円と申しましたが、関東大地震の後ですぐ地震学者たちが行って調べまして、例えば、くしゃっとつぶれた家と、つぶれた後で焼けた家とは、見ればわかるわけですから、というようにして調べてみますと、地震が起こって二、三分でくしゃっとつぶれた家、それによる損害というのは一億円程度だという調べがあります。それが五十億円に膨れ上がったのは、あの場合には言うまでもなく火事なんです。人的損害についても大体それと同じようなことが言えます。地震でくしゃんというので死んだ人は二、三千人と見積もられております。それが十五万人に膨れ上がっているのですから、この場合七十倍です。ですから、逆の言い方をいたしますと、あの大正十二年の関東大地震の場合、火事が起こるということがなければ損害は五十分の一にとどまったであろうということです。これだってゼロではありませんけれども、五十に比べては一はゼロだと私は思うのです。問題は、ただしこれから次の東京大地震でまた火事が損害の倍率を掛けるのかどうか、そこのところはちょっと疑問がありますけれども、まずさしあたり焼けない家をつくるというようなこと、これはいろいろな手だてがありますから、地震の予知とは違いましてこれはできることですから、というようなことにもうちょっと気を使うべきじゃないかと私は思うのです。おまえ、東京のことばかり言っているけれども、大阪は大丈夫なのか、それはどこらじゅうやれたら一番いいのですけれども、冒頭にも申しましたように、東京で起こったときの被害の大きさは大阪で起こったときに比べてもちょっと国に与えるダメージとしては違うと思いますので、みんなやれたらいいのですけれども、専ら私はまずは東京のことを言いたいと思うのです。  さあ問題は、次の東京大地震のときの被害に倍率を掛けるものが火事であるかどうかという問題です。これは僕は、やはりあのころに比べましては家もだんだん火に対して強いものができてきましたし、それが数十倍にするということはまずなかろうと思うのです。それは思うだけで、実際どうなるかわかりませんけれども。当然火に注意すべきだということは変わりませんけれども、ウエートはやや落ちてきているのじゃないかと思うのですが、私は、それにかわってもう一つ重要なものが現在出てきていると思うのです。  どういうようなことかというと、要するに情報の伝達みたいなことなんですけれども、例え話で申しますと、私は目黒の柿の木坂というところに住んでおります。それから私のオフィスは西新宿にございます。それから孫が一人学校へ通っておりますが、芝白金の辺に通っております。非常に都合の悪いときに東京大地震が起こったとします。僕がオフィスにいて、孫が学校にいて、家の者は家にいてというとき、そういう状態を考えましたときに、例えば私がすぐに西新宿のオフィスから家へ電話を入れて、大地震がいったな、だけれどもおれのいるビルも大丈夫だし、自分自身も大丈夫だったよ、家はどうだというようなことの連絡がとれれば、同じようなことが孫と家人との間にとれれば、仮にその後私が二、三日家へ帰れなくても、そして時々刻々、時々電話をかけてというようなことができれば、これは不安の程度といいましょうか、それは非常に少ないと思うのです。ところが逆に、電話線がすべて断たれてとか錯綜してというような場合のことです。これは冗談じゃないので、宮城県沖地震というのが数年前に起こりましたが、このときに電話が錯綜でもって数日間通じなかったという例があるのです。仙台ごときと言うと仙台の人は怒るかもしれませんが、それでそうですから、東京でこんなことが起こったらえらいことになると思うのです。こういうときに、何か電話線を臨時に借りるとか、僕は具体的な方法は余り知りませんけれども、人工衛星をそのときだけチャーターするとか、とにかくそういう手だてを講じておくということが大事です。これはやはり、前の関東大地震のときのような火事による損害が次の関東大地震で少なくなったとしても、今私が心配しているようなことで起こります損害というもの、これがえらいことになるのじゃないかなと時々不安になるのです。こういう点についての何というか、前もってといいましょうか、手だてを今のうちから考えておくべきじゃなかろうか。私はずっと地球物理学をやってきましたものですから、また、やってきた立場で社会的責任というものをいつもいつもひしひしと感じているものですから思うのですけれども、非常に心配というか、今のうちから少なくとも憂慮しておいた方がいいというようなことの一つに、この関東大地震のときの情報連絡というようなことについて何か方策を講じておくべきじゃないかということを申し上げておきたいのです。  それから、これからの産業の行く末というか、いろいろ考えておいたらいいというようなことで、これも牧野さんは、こういうことが重要だ、こういうことが重要だとおっしゃったこと、非常に的確におっしゃっていると私は思います。おっしゃったことのまた復習みたいなことをいたしますと、いろいろな集積回路だとかそういった問題、そこのところだけ、その生産がハイテクだというような誤解が私は世の中にあると思うのです。それは牧野さんがおっしゃったとおりです。しかしそれは、産業としてはパチンコの四分の一の規模だというようなことでびっくりしましたが、でもこれは欠かせないのです。これも牧野さん的確におっしゃいましたが、つまり人間の栄養みたいなもので考えると、たんぱく質とかそういうもののほかにビタミンが必要なわけで、それに当たるようなことだと思うのです。問題は、まさにこれも牧野さんおっしゃったように、そういうものは大きい電機会社あたりに、ほかのところでもうけてもらったその余りの金をうまく回してLSIとかそういったものの研究をやっていただく。それは大きい会社の責任だし、もしかすると国がそこに適当な援助というようなこともあろうかと思うのです。ただ、国全体として、国の経済を賄っていくという意味ですと、そういうふうにしたハイテク技術というものをやはり人々の生活に、また経済の規模としても大きいようなところに応用していく。川上と川下という言い方がよくなされますが、川下の方に行けば行くほど川の流れが大きくなるわけですから、そういうところにうんと利用するということが私はとても重要だと思うのです。  それで、そういうことの一つとして考えられますのは、私は長いこと大学におりましていつも思っていたことなんですが、教育というのが恐ろしく非生産的だと思うのです。まあちょっと漫画的な言い方、かつていたところに泥をかけるような言い方なんですが、僕はそういうことをしてこなかったつもりですからいいのですけれども、例えば大学先生なんというのは、まずとにかく普通の人にはとてもわからないようなしゃべり方でしゃべります。僕は西田哲学なんというのが悪かったと思っているのですけれども、要するに何かわからないことをしゃべると、あの人はおれにもわからないことをしゃべっているから、もしかすると偉いのじゃないかというような誤解を起こすというようなところがあると思うのです。というようなことをこの間ある仏教の人に話しましたら、昔の天台宗だとかそういうところはみんなそれで食っていたというような話をしてくれまして、そこへ親鸞とか日蓮が出てきて、在俗仏教というのでやっと多少わかるようなことを言うてくれたというような話でしたけれども、それはやはり、これもさっき牧野さんおっしゃいましたが、とにかく国民の税金で教育の任に当たってもらっているわけですから、この辺もうちょっとまずしゃべり方あたりも考える。  それから、教育と研究というようなことをよく言うのですね。それで、何か自分はすごい研究をやっているから教育なんかどうでもいいわというような非常に間違ったことを言うているやつがいる。そういうやつに限って研究の方も何もしてないんですけれどもね。これはどういうふうにして活を入れたらいいかよくわからないのですが、何か教育の能率というものが恐ろしく非能率だと思うのです。だからやはり何というか、さっき牧野さんもこれはおっしゃいましたが、そこに何とか競争原理みたいなことを入れなければ話は片づかないと思うのです。親方日の丸でわからないことをしゃべっていても大丈夫だとか、教授になったら何もやらなくても定年まで食えるとか、ちょっといけなさ過ぎると思うのです。そういうところへ活を入れてもらわぬといかぬと思うのです。  とにかく教育を考えましても、これはいろいろな見積もりの仕方ですけれども、教育産業というのがかなりの規模だというのですね。教育産業にもいろいろあります。大学だとか小学校まで入れて、それから塾から、何ならマスコミ、テレビとかみんな入れたらえらいことになると思うのですが、十兆円か二十兆円の規模だと思うのです。これは相当大きな規模なので、そこにいろいろなハイテク技術を使って教育を効率化することが非常に大事なことじゃないかと思うのです。  一例で申しますと、教育テレビというものがあろうかと思うのですね。例えば山の中の高等学校でなかなかできないような実験をテレビの画面でならば凝った実験室の中でやってもらうことができるわけですから、そういうものを見てもらえば山の中の高等学校でも非常にちゃんとした教育ができるわけですし、そういうところへ出てくる弁士の先生もわかりやすいことをしゃべる人を一義的に選びましてやれば、教育の能率をうんと上げられると思うのですね。そういう観点から教育産業をもう少し効率化するというようなこと。ほかにもいろいろあろうかと思います。  今は教育テレビのことを申しましたし、またまたコマーシャルめきますが、私がやっている科学雑誌なども教育の効率化に貢献する一つ仕事じゃないか、そう思って私は一生懸命やっているわけですけれども、もうちょっと教育の効率化というようなことを言いますと、教育という神聖なるものを土足にしたというような感じのことをおっしゃる方がいるのです。これは僕は大間違いだと思うのです。とにかく大学先生国民の税金で養われているわけですから、教育を立派にやらなければ務めを果していないわけなのですから、この辺のところをもうちょっと考えるべきじゃないかと思うのです。  それから、産業規模から申しましてとてもハイテク産業とは言いがたいのですけれども、僕は日本人の特性に適したメンテナンス産業とでもいいますものがあると思うのです。  メンテナンス産業と言ったっていきなりはよくわかりませんけれども、例えば大きい方から申しますとチェルノブイリ原子力発電所がばかんとああいう爆発をするわけです。それなども、私は非常に興味があるものですからその後いろいろ入ってきます文献をずっとフォローしておりましたけれども、あれで何か起こらないのはおかしいというような変なメンテナンスをやっております。それからスペースシャトルです。今すこぶるNASAが落ち込んでおりまして、あれなどもメンテナンスとしてよく考えますとどうもたるんでいる、そんな感じがしないでもない。ところが日本人はこういうことがすこぶる得意です。日本国民性のどこかにそういうところがあると思うのですね。  よく冗談に言いますのは、日本人は車を買いますとやたらぴかぴかに磨きますね。走るだけということを考えましたらあんなのは磨かなくてもいいわけです。アメリカ人なんか磨いておりませんで白いほこりをかぶっておりますが、日本人はぴかぴかに磨きます。それはやや漫画的ですけれども、もしかするとそういったところにメンテナンス産業というか、そういうのが得意な適性みたいなものが出てくるように思うのです。  例えば今の集積回路をつくる工場なんかへ行きましたらもっと徹底していますからね。マスクをかけて、入るときにみんな口をぬぐって、看護婦さんが着るような着物を着て入る。これなんか潔癖みたいなことがなければおよそ関心がないわけですからね。だからこれから発展しようなんて国でなかなかハイテク産業がつくれない一つのところは、そういうやや潔癖みたいなことに関係した問題があると思うのです。そういう点でいきますと、日本人はすこぶるすぐれていると僕は思うのです。メンテナンス産業といいましょうか、メンテナンスというようなことにかけまして適性があると思うのです。  国鉄をやたら非難するのが多いのですけれども、国鉄で立派なことをやったと思うのが新幹線です。立派なものをつくっただけじゃなくて、御存じのように人身事故を一つも起こしてないのですから、これはメンテナンスとしたらえらいことだと思うのです。褒めるところはもうちょっと褒めてあげた方がいいと思うのです。いかぬところも随分ありまして、貨物なんというのに怠りを見せましたからどこかの運送会社に負けちゃったりするわけで、だめなところはだめなんですけれども、新幹線のメンテナンスというのは本当に誇りにしていいことだろうと思うのです。つまり、こういうところは日本人の適性にかなっているし、メンテナンスというものを広く考えますと産業規模が大きいですからね。  またまた話が横へ広がりますけれども、例えば病院のシステムです。僕は元気なものですから余り行ったことがないのですが、横を通って大病院の受付あたりを見ているわけです。長いこと待っておりますね。あれなんかうまくやれば待ち時間がなくてやれると思うのです。そんなに難しいことじゃありません。だんだんそういうのを商売にして、ソフト屋がきっと出てくると思います。あるいはもう出ているのかもしれません。そんなこともメンテナンス産業の中へ入れるといいと思うのです。  それから、警備保障の会社なんてありますね。これも文字どおりのメンテナンスですね。これなんか技術としては大したことはないわけです。よく知りませんけれども、センサーかなんかいろいろなところへ取りつけて、それで中央のパネルかなんかでやるのだと思いますが、そんなに難しいことはないと思う。ですから、こんなのはハイテクではないのですけれども、メンテナンス、もうちょっとそれを広く言いますと、いろいろなものを修理する産業というのもこれから発展していくと思うのです。またそういうのに注目したらいいと思うのです。  大体電気製品なんかを考えますと、電気製品も一通り行き渡りまして、今さら何か買うてくれといっても買いたいものがないわけです。けれども、製品ですからやはり壊れるわけです。壊れて電気屋へ修理に持っていきますと、電気屋は非常に嫌な顔をするわけです。新製品を買ってくれと言うのですけれども、僕らは非常に勤倹節約で育ってきたものですから、そういうことをするに忍びないのですね。それはやや冗談に申しましたけれども、修理産業というようなこと、それは電気製品の修理だけじゃなくて、家の修理だとかいろいろな修理があると思うのです。家なんかもときどき取りかえたりなんかします。だからモジュールみたいになってある部分だけ取り外してなんということが簡単にできるようになったらいいと思うのですが、要するにそういったメンテナンス、それから修理産業、こんなのはハイテク一辺倒という人に聞かせますとみんな非常にばかにするのですけれども、もうちょっと目覚めて日本人の特性を発揮して、これは産業規模が大きいので金としては非常にもうかると思うので、もうちょっと力を入れたらいいのじゃないかと思うのです。  それから、これもさっき牧野さんがおっしゃいましたが、レーザーディスクです。これはまずレーザーが基礎技術としては非常に重要だ。僕は今出版なんかやっているものですから思うのですが、レーザーディスク、これはえらいことになると思うのです。御存じのように、あのディスク一枚に数万ページ分くらい入るとよく言われておりますね。数万ページといいますと大きい百科事典三十巻物くらいが一枚に入ってしまうわけですね。しかもそれがランダムアクセスというのですか、どこか取り出そうと思うとぱっと出てきてくれるシステムというのがあるわけですから、こういうのをうんと使って、例えば百科事典の将来がどうなるかというと、今百科事典一セット買いますと二十万円、それが一枚二十万円で買うだろうかということをいろいろ言う人がおるのですが、自分自身は買います。それは百科事典は家の場所をふさぎますから、場所代だと思うと二、三十万円は安いと思うのです。というような観点で、どんどこどんどこレーザーディスクに詰め込むべきだ。  これは産業規模としては小さいですけれども国にとっては大事だと思いますのは、古文書というものが日本にたくさんございます。日本は少なくとも千年の歴史を持っておりますから、古文書がいっぱいあると思うのです。これは紙ですから、ほうっておきますと朽ちてしまいます。せっかくの大事なものが朽ちてしまいます。古文書なんかを蓄えるのにこれほど適したものはないわけです。一つの県に一つだけレーザーディスクの記録ができるものを買えばいいわけです。そんなものは何のお金にもなりませんけれども、これで後世の人が大変喜ぶだろうと思うのです。  それからテレビが大画面になったり、コンピューターについているディスプレーが板になったりすると教育の能率がうんと上がると思いますので、そういうところも頑張ってほしいなと思うのです。  話があっちへ行ったりこっちへ行ったりして申しわけありませんが、大体このくらいです。
  8. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  次に、合田参考人にお願いいたします。
  9. 合田周平

    合田参考人 合田周平と申します。  私は現役の教師でございまして、今竹内先生からいろいろおしかりを受けたような形でございますが、わけのわからぬ話をするのではないかと思いまして、一応話そうと思うことをコピーをつくって配付いたしましたので、この辺に関連したお話を少ししてみたいと思います。  私は、オートメーションのシステム工学のエンジニアでございまして、オートメーションの方から次第に社会を含めるといいますか、工場内のオートメーションから社会的な影響が非常に多くなりましたので、工場内ではなくて、コンシューマー及び社会という観点からオートメーションの発想をどんどん広げていこうというような考えできょうはお話をしてみたいと思います。  初めに、システムに対する発想が、工場内における人、物、金の効率化の時代から社会も含めた効果の時代に今や移ってきた。すなわち、技術というのは効率のいい方にどんどん行ってきたのは当然のことですが、今や効果の時代であるということであります。つい十日ぐらい前も、イタリアのミラノで日本とヨーロッパとアメリカにおけるハイテクオートメーションの会議がありまして、いろいろな方の御意見を伺っておりましたら、これからは東洋的な創造性を発揮する時代であるということを欧米の方はしきりにおっしゃるわけです。そういう意味で、私は初めにちょっと漢文風な、天道と人道という言葉を引用して話をしたのであります。  かつて、安岡先生にそういう教えを請うたことがありまして、これは先生のお言葉を引用しているのでありますが、天道というのは自然の道、人道というのは人為的な道、すなわち自然と技術というふうに置きかえていい。かつて二宮尊徳は、田畑を開くときには大いに天道に反して人道を振れ、すなわち荒野を開いて畑にするには人道、技術が必要である。しかし、一たび田畑ができれば、今度は天道の思想に従っていかに人道を運用するかを考えるということを明治の初めか何かに、既に現在を予測したようなことを言っていらっしゃいます。  あるいはまた、仏教においては三輪の思想というのがあるらしいですね。これは与える者と受ける者とその中身、これらが一体化して初めて人間の英知が発揮できるという思想であります。これはまさに今お二人の先生方がお話しになったように、情報技術、すなわちエンジニアリングのネットワークは比較的簡単にできる時代になってきた。しかしながら、この技術を活用して受ける者、すなわち発信側と受け手、しかも情報の中身、これらが一体になって初めて高度情報社会と言い得るのであって、これはまさに東洋的発想による新しい次元の創造性が発揮し得る時代ではないかと思います。  ヒューメインインダストリーという言葉がありまして、一般にヒューマンといいますと人間化というようなことでありますが、ヒューメイン、すなわち英語のヒューマンのしっぽにeがつきますと途端に人間的な、内面的な精神の問題になってくるわけですね。ヒューマンからヒューメインへといいますか、人間化云々から人間味のある発想をしよう。エンジニアでも、エンジニアリングフォースのエフィシェンシー、効率を上げるために頑張るのではなくて、エンジニアーズスピリット、すなわちエンジニアが人間としての精神を発揮して、何を開発したらいいのかという意図とビジョンを掲げようではないかということであります。  今、本田宗一郎さんのお話がありましたが、私は十年ぐらい前から本田さんと大変に親しく、いろいろお教えを受けておりまして、本田さんにお願いをして本田財団というのをつくっていただきまして、私が主としてその活動をしているのであります。この本田財団の思想というのは、ヨーロッパの人たちといろいろ話し合いまして、ヒューメイン・ユース・オブ・ヒューマン・アイデアズ、すなわち人間の発想というものを人間味のある活用をしていこう、こういう意図、インテンション、ビジョンというものを掲げて、大変我田引水でありますが、ヨーロッパにおいて好評を博しているシンポジウムを毎年開いている次第であります。  ここで、エコ・テクノロジーという言葉について少しお話をしたいのでありますが、現代文明というのは、物質とエネルギー情報というこの三つの柱によってでき上がっていることはどなたも否定し得ないことだろうと思うのです。  ところで、ここに書いてありますように、物質とエネルギーの関連分野において、主として重工業、すなわちヘビーインダストリーといいますか、従来のインフラストラクチャーの技術が発達し、今やこの分野においてはアモルファスを初めとして、新素材であるとか新エネルギーの変換方式等々の研究開発が行われております。  次いで、物質と情報の関連分野においては、コンピューター及び情報技術の発達によって、流通産業情報産業というものが大変な勢いで発達してまいりました。ここまでは従来の技術志向の延長で来た。しかし、これから重要なことはエネルギー情報の関連分野であろうと私は思っております。すなわち、技術の効率的な活用から社会的な効果を考える。エネルギーも、何も電気とかガス、こういう非常にインダストリーなエネルギーだけを考えるのではなくて、人間のアスピレーションといいますか、人間の思いとか精神力、これを考えるのだ、人間の意識が技術を開く。実は本田宗一郎さんがF1ということを始められた折に、技術はどうあれ、とにかく世界一の車をつくろうという本田さんの意思、インテンションが受け継がれて、ついこの間F1で優勝したのであろうと私は思います。すなわち人間のこういう意思、インテンション、意図というものが、今お二人の先生もお話しになりましたように、ICとかいろいろな周辺技術を非常にうまく集積していくわけですね。これは人間のやる気、意図、ビジョンを掲げる人間の周りについてくるのではないかというように私は確信しております。  次いで、エネルギー分野でいいますと、エネルギーの多様化という問題があります。今はガスと電気が事業法によって随分分割しているような形でありますが、エネルギーも実は形態の異なるもの、すなわちガスとか電気というものを何も別個に送るのではなくて、一緒に送ってもいいのではないか。使う方がこれを勝手に選べるようなシステムというのは、今のハイテクの時代にあってはかなり簡単にできる。しかも電気においては、非常に不都合といいますか、あれだけ大きな東京電力という会社が幾つの商品を売っているかといいますと、関東エリアでは五十ヘルツの交流しか売っていない。私はこういうことがいつまでも続くとは思えない。四百ヘルツぐらいの交流を売れば、たしかクーラーも大きさが半分で効率が上がる。いろいろな設備が半分ぐらいになるということは事実なんです。したがって、エネルギーも多様化を図る必要がある。あらゆるものの多様化を図って初めて情報技術が活路を見るといいますか、活性化する時代であろうと思います。  それから、お二人の先生も触れられましたバイオテクノロジーの問題、これも一つ一つ技術で見ると、情報エネルギーの関連分野にかなりバイオテクノロジーという分野も入ってくるのではないか。これも週刊誌的な発想で、これができた、これができた、したがってこの技術を使って何かをするというのではなく、やはり一つのビジョンを掲げて、バイオテクノロジーによる新しい化学工業あるいはバイオテクノロジーを含めたオートメーションというものはどうあるべきかというビジョンがエネルギー情報の関連分野から大いに発生してくるということで、この分野こそ二十一世紀産業新時代を開く大きなステージではないかというように私は考えております。  二つ目に書いてありますオートメーション技術の展開というのがあります。このオートメーションも、何度も言いますが、効率の時代から効果の時代に入ってきたということは、すなわち、これまでの工場側の論理で物をつくって売るという時代から今や人々、コンシューマー、生活者が欲するものは何かという時代へ、あるいはまた、コンシューマーレベルに従って工場もつくり変えてしまうというほどに技術は発展してまいりました。すなわち、従来のオートメーションというのは効率化といいますか、いい品物、技術の便益をできるだけ多くの人々に公平に分割するという理念で発達してまいりました。これが経済の発展と同時に効率化にウエートが置かれ、今や人間化にウエートが置かれてきた。いずれにいたしましても、オートメーションも工場の論理ではなくて、消費者の論理によってオートメーションをつくり変えるということで、難しい言葉でありますがフレキシブルオートメーション、すなわち、どうにでも対応できるような工場のシステムが情報技術とメカトロニクス及びほかのいわゆるハイテクによって可能になってくる時代であります。  このあたりはいろいろなことが考えられるのでありまして、高齢化時代への対処ということもこの分野で大いに考えねばならないことだろうと思うのです。高齢化時代といいますと、ついこの間も資源調査会で委員会がありまして、私も委員の末席にいましていろいろ勉強をしたのでありますが、何か福祉というとすぐお金を与えるとか、高齢化の人々に平和に安楽に暮らしていただこうということではなくて、今や高齢化の人たちというのは大変元気があるわけですね。しかもお金を持っている。この人たちの活力をいかに引き出すかということもこれからの技術あるいはインダストリーの分野に課せられた大きな任務といいますか、ニュービジネスの一つであろうと私は思うのです。今高齢化でありまして、お金があっても欲しいものがないと言います。したがって、高齢化の人たちで、お金があって時間があってというような人が一体どういうものを欲しがっているのかということをステージして、これをつくっていくということも、これからの二十一世紀産業のビジョンにとって大変に重要なことであるまいかというように私は思っております。  このあたりはオートメーションの展開もいろいろな次元がありますが、とにかく、初めにも言いましたように、工場内におけるオートメーションが今や社会をもあるいは国際社会をも抱き込んで発達しつつあるというこの事実、非常に物理的には広域化した情報のネットワークがあって、広域化した生産側と消費者側がいるということは、現在の国際間における経済摩擦の問題を見ても明らかでありまして、これを逆手にとっていろいろと新しいビジョンを掲げた産業、今竹内先生がおっしゃったような一つのメンテナンスというようなことも大変に重要な分野であって、これなども強いて分類すると、エネルギー情報の関連分野における新しい産業に発展し得るのではないかと思っております。  三つ目には、社会構造が変化している。これも明らかであります。したがって、一つぐらいこの中から話をしますと、アトミズムの考え方とホーリズムの考え方というのが古くから欧米でもあります。アトミズムというのは、あらゆる真実は分析によって把握できるという発想ですね。アトミズムというのは、すなわちあらゆる物体がアトムからできているという時代に生まれた哲学でありますから、これをアトミズムと言います。したがって、あらゆるものを分析して、これを組み立てれば全体が把握し得るという発想であります。しかし、これは大変に現代では誤りを生むということで、今やホーリズムという発想があります。ホーリズムというのはホーリーといいますか、全体を把握する。何よりも全体を把握することによって世の中の動きを感じ取らねばならないというのがこのごろの世界観の変遷でありまして、ホロニックスというような言葉も恐らくこの辺から生まれた大平内閣時代の科学の一つの考え方であろうと思います。  余り時間がありませんので、四番目に高度情報技術と応用分野というのがあります。これは今竹内先生牧野先生もお二人とも触れられましたが、要するにソフトウエアの問題、結局人間のインテリジェンスの機械化にどういうような言葉が必要であるかということであります。しからばヒューマンインテリジェンスとは一体何なのかといいますと、一言で言うと、質問に答える能力であるとかあるいは問題解決の能力であるとかというように言っておりますが、これを技術的に見ますと、コンピューターの発達によるC3アンドIという言葉があります。これは英国にありますIISSという国際戦略研究所で、この十年間における軍事技術の発達というのは一体何の技術が主であったかというときに提起してきた言葉でありますが、コンピューターの発達によって一つはコミュニケーション技術が大変に発達してきた。それから二つ目にはコントロール技術でございます。オートメーションを初めあらゆる機器をコントロールする技術が発達してきた。それから三つ目はコマンド技術、すなわち指揮系統の技術でございます。このC3の技術と文化といいますか、組織というものが安全保障につながるのだ。Iというのはインテリジェンスで、これはアクチュアリーインテリジェンスとかインフォメーションとかいう意味合いであります。竹内先生がしきりに触れられた自然災害の問題でも、C3アンドIということをいかに日本国内及び国際間において確立していくかというのがこれからの科学技術の重要な課題であり、かつ、これをどういう手順とどういうビジョンとどういう意図で行うかというのをぜひとも先生方にお決めいただきたいと私は思っております。すなわち、C3アンドIというのは技術と同時に文化の問題もある。すなわち、人間集団におけるコミュニケーションが密であればこの集団は必ず繁栄する。コントロールが非常にうまくいけばこの集団も大変に危機に強い。並びにコマンド、すなわち指揮系統が平常時からきちっとしておればこの集団も危機に強いということで、図らずも現代の技術システムの基本であるC3アンドIというのは、これがまた人間の集団、国家とか企業とかにおける安全保障の基本であるということであります。これは、図らずもと言いましたが、当然でありまして、技術というのは要するに人間的な精神のあらわれであるということをダ・ビンチが言っているように、技術というのは本来人間のそういう内面的な精神のあらわれであるということを考えますと、C3アンドIの技術と文化といいますか社会といいますか、これが大変にシステム的にうまくいっている国あるいは集団というのは必ず繁栄していくのではないかと思っております。  ところで、情報技術の応用分野で、私はこれから大変に必要なことは国際金融のシステムであろうと思います。今週から英国のシティーの国際金融の仕組みが大きく変化して自由化いたしました。つい一月ほど前にシティーに呼ばれまして、日本情報技術の話をしてきたのでありますが、要するに情報技術、エレクトロニクスデータによって、国際的な金融がぐるぐる回ってロンドンに集まってくるというような金融支配を考えた一つの手を打ったのではないかと思います。これに対して日本技術、殊にソフトウエアは大変な利益を短期間に得るでありましょう。例えばある日本の大手の証券会社はこうしたことも含めて一年間に六百億とも八百億ともいうお金を投資して、ソフトウエア並びにハード的な対処をするという話を聞きました。しかしながら、これによって真に利益を得るのはどこかということを考えていただきたい。日本のハイテクはいい、いいと海外に行っても一生懸命に言っている人もいますが、私は、牧野先生もおっしゃるように、これは単なるフローとしてはいいのであって、すなわちLSI、IC云々というのはフローの本当の一断面における技術のすばらしさであって、真の技術はやはりストックの技術あるいは産業というものをどういう意図とビジョンでこれから日本がつくっていくのかということを考えると、この国際金融における情報システムということをアメリカのSDI及びヨーロッパにおけるユーレカ計画とあわせて考えていく必要が十分にあるということを私はぜひともお願いしたいのであります。  殊に、情報というのは、今日本の役所が得ている情報は一体どこから得ているのか私は知りませんが、日本ぐらい情報の有権解釈がすいすいいく国は少ないわけですね。すなわち権威、権力のある人がこの情報はこうだと言えば、これがすべてずっと通ってしまう。しかし、情報というのは常に現場から発生する。したがって、現場で実際に働いて国際金融なら国際金融に触れ合っている人たちからじかにどうやって情報をとるかということを考えることも、私は国会の大きな任務であろうと思います。  技術は確かに効率的に発展いたしました。しかしながら、日本の効率的に発展した技術を使ってこれを効果的に活用しているのは、これは大変残念なことでありますが欧米であります。バイオテクノロジーも、今のように末端の話だけをやっておりますと恐らくこういうような事態になって、欧米で新しい化学工業が発達した、これに対して日本は相変わらずIC、LSIのごときと言ってはしかられますが、程度の貢献で終わってしまう。これで果たしていいのかということをぜひとも国会の先生にお考えいただきたいと思います。  すなわち情報技術情報、殊にシステム情報、これをいかなるレベルでだれから得るかということこそ私は大変に重要なことであろうと思います。殊に、日米欧の産業協力を考える場合、今大変重要なことは、アメリカにおける知的所有権法というのがあります。これと同時にSDI、ユーレカというのがあります。一方では前川レポートというのが出ました。しかしながら、これを実践する気があるのかどうか私は大変に疑わしいのは、こういうことを一方では言いながら、SDIとかユーレカという問題に対しては、国際分業というような方向には行かずに、国内分業を相変わらず固持するような国内の制度が多過ぎる。すなわち、日本でどんなに効率よくハイテクを開発しても、国内の制度によってこれを真に活用するシステムづくりになかなか発展しない。これはまさに国会の大きな仕事でありまして、技術的な問題と制度の問題ということをあわせてお考えいただかねばいけないのではないか。  私は、一言で言いますとフローとストックの技術産業、私は今イギリスのクランフィールド工科大学というところの併任教授もしておりまして、一月半に一回ずつ英国に行っておりますが、日米欧の技術協力、殊にコンセプトにおける協力、これはプレコンペティターといいますか、コンペティターになる以前にこの分野は大変に必要なんだというような分野における協力をやる必要がある。コンペティターになってから幾ら日米欧の協力を云々してもこれは遅いのであります。そういう意味でSDIとかユーレカとかいうようなことは大いに考えていく必要があるのではないかと思います。  きのう実はイタリアからフィアットの副会長で、かつECの経済委員長等々をおやりになっていたウンベルト・アニェリさんという私の古くからの友人が来ておりまして、いろいろな方にお会いしたいというので前外務大臣の安倍さんにお会いして、しばらくお話をしているのを聞いていたのでありますが、彼はしきりに、SDIとかユーレカに影響を及ぼすような計画を日本が打ち出すべきだ、特に来年はイタリアでサミットがありますから、これを控えてぜひとも情報技術による経済、文化、社会、こういうことにより効果のある技術のビジョンを打ち出してはいかがですかという話をしましたら、安倍さんが何か首相の周りで今そういう話があるんだというようなことを言っておりましたが、私は、ぜひともこの科学技術委員会あたりからも、こういうような発想で新しいストック、フローの産業ビジョンを国際社会の中で、国内分業におけるいろいろな制度を越えて提案する必要があるのではないかと思っております。  それで私は、二十一世紀と言いますが、一九九〇年代が一つの大きな節目だろうと思います。すなわち、九〇年代というのは、アモルファスとかバイオとかいろいろな新技術が果たして活用できるかどうかというような話がはっきりしてまいります。したがって、九〇年代というものを一つのターゲットにしていろいろな問題をここで考慮していく必要がある。殊に、技術システムでは、バイオとオプトとメカトロニクスというようなものをいかに一緒のレベルで考えるかということが大変必要でありまして、こうした技術的な情報を踏まえて二十一世紀産業への意図とビジョンを、国際分業型の産業をいかに日本でつくるかというシナリオを打ち出す必要があるのではないかと思うのです。これはシナリオの一般論でありますが、ここで例えば四つぐらいシナリオの基本があるのです。  これは、私の友人の演出家の浅利慶太がいつも劇とかいうものを演出する折の基本というような話から引用しているのでありますが、現代技術はまず何をしているのか。殊に、日本技術と国家的ビジョンの欠けている問題、これを洗い出す。三つ目には、これをこういうふうにすればいろいろな産業が興ってくる。ということは、今お二人の先生がお話しになったことも含めて、新しい産業への日本の国際国家としてのよみがえり、これを複数項挙げて、この中から一つを掲げる。それは英語ではヒューメインインダストリーという言葉でありまして、この中には竹内先生がおっしゃったこと、牧野先生がおっしゃったことすべて入ってしまうのではないかと思います。きょうこうしてお招きをいただきましたので、現役の教師でありますから一応こんなものをつくってまいりましたが、竹内先生がおっしゃったようにどうも余りピントが合ってないような話になったのではないかと思いますが、これは現役の大学教授だから仕方がありません。  ところで、一番終わりに、ついこのごろ出た本をPRして終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 原田昇左右

    原田委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 原田昇左右

    原田委員長 これより質疑を行います。  この際、委員各位に一言申し上げます。  質疑につきましては、時間が限られておりますので、委員各位の特段の御協力をお願いしたいと思います。  なお、委員長の許可を得て御発言をお願いしたいと思います。それではどうぞ。
  12. 中山太郎

    ○中山(太)委員 牧野さんにちょっとお尋ねしたいのですけれども、今政府の方も、主として輸出関係をやっている通産の方は、これからの日本の成長、内需振興して四%に持っていこう、こういう話ですね。ところが、内需振興するにしたって元手が要るわけですから、やはり輸出を強化していかなければいかぬ。拡大均衡、そういう形でいく中で、二十一世紀にはいわゆる空洞化の問題を含めて、今の政府の予測では農業人口は半減する、全労働人口の四・九%くらいになるでしょう。そうなってくると、先ほど言われたように第二次産業技術移転も含めて近隣国へ移動していくのではないか。だから日本はその中継的な加工基地になっていく。そういうことで、どういうふうな産業を輸出のポイントにしていくのか、メルクマールにしていくのか。例えばバイオを輸出の中心に持っていくということもなかなか難しいと思うのですね。そうするとエレクトロニクスか、あるいはまた新しい集約型の機械産業、例えば航空機とかそういうふうな問題をどういうふうに考えていったらいいのか。政府も、為替が急激に上がったので、去年まで発表していた白書というものは全部一応基礎的なべースが狂ってきたものですから、これからの日本の経済成長と日本産業構造、それからどういうところにターゲットを絞った日本産業政策展開か、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  13. 牧野昇

    牧野参考人 何点かお話ししたいと思いますけれども、今お話ございました四%の経済成長というのは無理なんですね。それをするためには相当に摩擦が多いわけでございまして、大体三%ぐらいというところがいいだろうと思うのです。そうなりますと、日本が二%台、今、男が二・八で女が四・〇の失業率ですけれども、このレベルを維持するのはどだい無理なわけなんです。例えば西ドイツでも今九%くらいです。アメリカが八から七%、それからイギリスが大体一二、三%ということでございます。計算方法が違いますから、イギリスの一二、三というのは日本でいうと六、七くらい。それにしても日本が二%でほかの国が六、七、八、九というのは異常なんですね。異常であるがゆえに異常なビヘービアが出るわけでございますから、そういう点でいうと、日本のこれからの成長というのは内需拡大といっても無理です。無理というのは、もう方法がないわけなんです。民活、民活でやるといっても、ことしの経済成長は、あれだけ建設国債をやっても恐らく三%いくかいかないかだろうと思うのです。簡単に言うと三%がいいところであって、アメリカ、ヨーロッパに比べて少しはいいけれども、そんなによくない成長率。アメリカ、ヨーロッパが二そこそこだとすると、日本は三そこそこという形でいくのが一番いいだろう。アメリカは必ずしもそうじゃない。その場合に、日本の失業率を二・八に抑えるということはどだい無理なんですね。無理なのをしようとすることに非常に大きなポイントがあるわけでございまして、三%台に入っていくということは、日本にとっては非常に大変なことだけれどもやむを得ないだろうと私は思うのです。  二番目に、今中山さんおっしゃったように、日本が輸出を出せなくなったということがあるのですけれども、これは非常に大きな誤解があると僕は思うのです。一人頭の輸出額というのは、GNP対比でいっても、大体西ドイツ、その他のいわゆる資源のない国と比べると、輸出というのはキャパシティーでいうと日本は半分なんですね。言いかえますと、一人頭の輸出の比率あるいはGNP当たりの輸出の比率をとっても西ドイツの約半分でございまして、こういう国は世界的に珍しいのです。アメリカ、ソ連みたいに巨大な資源のある国は別といたしまして、日本みたいに小さなところにいっぱい住んでいるところで、日本みたいに輸出の非常に少ないところは少ないのです。だから日本というのはもっと輸出していいのだ。ではどこが問題かというと、輸入しないからなんです。だから輸入するシステムをどういうふうにしていくかということがあると思うのです。  ただ、一つ考えなければいかぬのは、現在日本が国際的にアンバランスが非常に高い一つのポイントというのは、一次産品の値下がりが非常に効いているわけです。普通は経済成長と一次産品はカップリングしていくわけですが、アンカップリング現象といいまして、一九七三年の値段、もし一次産品の値段が十年前と同じだったら、アメリカの赤字は大体三割か四割減りますね。それから中南米の累積赤字も恐らく半分になると思うのです。だから、逆にもっと上がっていればもっとなかったのだけれども、日本にとっていいか悪いかは別として、たまたま日本の輸入の一次産品は非常に下がっている。油は下がる、そしてあらゆる鉱石が下がるという形でございますので、日本の場合にどうするかという一つのポイントの中に、輸出を減らさないで拡大均衡をいかに考えていくかということを頭に置かなければならない。それには、簡単といってはおかしいのですけれども、ECみたいに日本の周りの国のレベルを上げなければいかぬということですね。そうすればいっぱいあるのです。  今アメリカと西ドイツへ行くから、顔の色の変わったやつが出てくるからこのやろうということになるので、そんなに日本がいじめられる必要はないだろう。この間、大河原さんがちょうどアメリカへ行っているときに、大河原さんに、日本はたしか二百七、八十で、台湾が百八十だったことがあるのです。オプトを輸出しよう。何だ台湾の人口が日本の五分の一か六分の一なのに輸出が伸びたらおかしいじゃないかと言ったら、日本は特別に見られているのだということです。なぜ特別に見られていくかというと、ハイテク摩擦が非常にアメリカの顔に泥を塗ったというようにハイテクは日本が強くなった。いろいろございますけれどもね。しかし簡単に言うと、日本アメリカ中心に余りにも輸出に依存するということにどだい無理があるわけです。そうするとどうするかというと、周りにいっぱいいるじゃないか。韓国もいれば台湾もいる。あちこちの、人口は大きいけれどもレベルが低い、これを上げていけば需要があるのだから、日本から物を買うに決まっているわけです。ところが、日本というのはこれをやらないのです。やらないというのは、日本人技術はもらうけれども技術は出さない。これもまた非常に難しいのです。  この間、韓国のPOSCOのお偉い人と一緒に呼ばれていって国際会議でしゃべったときに、日本というのはけしからぬ、アメリカから技術をもらいながらアメリカに対して黒字だ、韓国はまだ赤字だけれども日本は入れてこないということを言うのですね。テクノロジートランスファーの問題というのが日本は非常に下手なんですね。テクノロジートランスファーの問題というのは、向こう技術をいかにうまくやっていくかという問題もそうですし、また向こうに合うような、アプロプリエートテクノロジーとよく言うのですけれども、向こうに合う技術開発国内で余りしないのですね。何でもいいからすぐ持っていけ、こういう感じです。だから私はこの間もその話で、あのとき鈴木長官かだれかに言ったのだけれども、これは企業と企業の問題だというのだけれども、そんなことはないので、ほかのことがあれだけ干渉している。やはりテクノロジートランスファーをいかにうまくやっていくかという問題で、私は、余り文句を言われないところの貿易をふやしていかなければいけないのじゃないかなという感じ一つします。  第三点は、おっしゃるように物離れとか二次産業が縮んでいくということは、やや錯覚があるわけですけれども、私は三次産業にだんだん移り過ぎるということは問題だと思うのです。だから私は、二次産業は二次産業として強いけれども、二次産業が二次半産業的になっていく方がいいのだと見ているわけです。  それはどういうことかといいますと、簡単に言うと、我々は一つの品物をつくる場合に、セメントはうまくないけれども、新しいファインセラミックのような二次産業ですね、教育とか出版とかカルチャー産業じゃなくて、これがカルチャーをウエートとして含んでいくのだ。そういうものはいっぱいあるわけでございまして、着物は物質としては売れないけれども、これをファッション化していくと日本のファッションは非常によくなって売れていくとか、あるいは味の素みたいな会社が、味の素をつくったらうまくいかないけれども、インスタントみそ汁をつくる。昔はみそ汁をつくるときに四十分ぐらいかけておふくろとか女房がやっていたのだけれども、今はもうそんなの嫌だというのですね。二秒でぱっぱっというものがある。これがすごく売れて、五年間に家計支出の中の比率が二倍に伸びた。それは何を売っているかというと、みそ汁をつくるということは、これはおみそとあれですから十五円だけれども、五十円というのは家事サービスを四十分から二秒にしたという価値なんですね。そうするとその分だけは当然のことながら金を出すわけです。それを私はサービスをインクルーディングした製造業というのです。例えば、さっき竹内さんでしたか合田さんでしたか、メンテナンスが大事だと。メンテナンスが大事だということはどういうことかといいますと、今住宅産業というのは悪いわけです。今空き家率一六%ですから、百八十万戸の住宅が今百三十万戸に落ちている。住宅産業全体は十八兆から十兆近くになっているけれども、逆にストックはふえているわけです。ストックがふえているというのは、去年百軒つくって、その次百軒つくって、その次百軒つくる。フロートじゃ横ばいだけれども、ストックは三倍になっているわけです。それの修理、修繕、建てかえあるいは改造というマーケットが、かつて二、三兆のものが九兆になっている。間もなく逆転するのですね。これはストックに対応するメンテナンス、修理、修繕業が新しいコンストラクションを超していくのだ。ということになると、建築業がむしろメンテナンスサービスを含む建築業に変わっていくのだ。それが、今までの売り上げの二兆が八兆になり、十兆になってくくっていく。そうすると建築業でも製造業でも食品業でも、あるいはセラミックというセメント屋さんでも、すべてそのものの中にいかにインビジブルな価値を入れるかということで製造業が伸びていかないとだめなんだということですね。  そういう意味で言うと、製造業をいかに上げていくかということになりますと、国際分業で言うと部品というものが高いものに入っていかなければならない。これは知的価値が高い。国際分業で言うと、部品点数で三千点までの白黒テレビが今NICSにかなわない。日本が強いのは部品点数が五千点から五万点までなんです。簡単に言うと、カラーテレビから自動車までは日本がいいのです。部品点数が二十万点から五百万点のものはアメリカがまさっている。そうするとどういうことになるかというと、部品点数が複雑だというのはソフト的テクノロジーの価値の高いものですから、日本はこの上へ持っていくということになるわけです。言いかえますと、同じ時計をつくってもなるべく複雑な時計にしていくとか、できれば一次システムとかプラントとか、あるいはべクテルみたいに建築屋だったら知恵の方が八割で建築には韓国の人を雇うという形、まあ一種の巨大な建築業、そういう形になっていくことによって、言うなれば非常にハイブリッド化した、いわゆるシステム化というか複雑な多様なものをいかに組み合わせるかという製造業に入っていくことによって、実は製造業はもっともっとアクティブになるのであって、製造業から抜いてコンサルタントだとか知恵だとかカルチャーだとかサービスだとかに分かれてやると、それは経済にとって余りよくないのであって、いかに製造業がインビジブルな価値を入れていってアクティブになっていくかということの戦略が非常に重要になっていく、私はこう見ているのです。
  14. 中山太郎

    ○中山(太)委員 ありがとうございました。
  15. 山原健二郎

    ○山原委員 竹内先生にお伺いします。  国会では、平和目的に限るという科学技術の非軍事性ということの論議が随分なされているわけです。お話の中で、平和憲法のもとで科学技術の振興が我が国はあったという問題が提起されたわけですが、私もそうだと思います。同時に、今回のSDIの問題と関連して、SDIに参加しなければ科学技術の面でおくれをとるのではないかというような考え方も出てきておるわけですね。その辺のことについてもう少し御意見を承りたいと思います。それが一つ。  それから牧野先生に、例のコンピューターソフトウエア著作権のことに触れられたわけですが、私も文教委員会著作権問題を取り扱っていますので、その問題点がどこにあるかということをもうちょっと詳しくお話しいただければと思います。この二点です。
  16. 竹内均

    竹内参考人 まずSDIですけれども、多分アメリカ日本なしにはそういう技術を具体的になかなか進め得ないという、つまり日本はいろいろ特技を持っておりまして、それの助けがなければ彼らが考えているSDIという技術を進め得ないという事情があると思います。ですから相当しつこくといいましょうか、これがないと具体的になかなか進め得ないという事情があるわけですから、何とか協力しろという形で追ってくると思いますけれども、さあそれから先どうしたらいいかというのは僕はよくわからない。さっき僕が言ったのは、軍備というものについて日本が考えるのは、日本でもって自主防衛なんということはまずはあり得ないわけですから、つき合い程度に考えるという、今私が言ったつき合いの限度を超えるのか超えないのかということ。これはまた後でできたら牧野さんにもう一つそこのところもお聞きいただくとありがたいと思うのですが、僕は、これは踏み切る場合の契約の仕方だと思うのです。例えば向こうにこちらが教えてやって、それである進展があったときに、こちらにまたフィードバックしていろいろな情報が返ってくるとか、つまり始める前に日本としてそういった取引をして、どういう基本方針でいったらいいのか僕にはわからないのですけれども、その基本方針に沿うように契約の前にきちっと決めるべきことだろうと思います。
  17. 牧野昇

    牧野参考人 今の話に追加して申し上げますと、科学技術と軍事問題というのは非常に微妙な問題でございまして、ここでしゃべると後に残るのでなかなか……。私も、軍事産業科学技術を支えてきたということをかつて文芸春秋に書いて東大でえらい目に遭ったことがございましてね。うまくしゃべらないといけないかと思いますけれども、私が言っている意味は、簡単に言いますと、これは我々技術屋の仲間では、例えばなぜ日本の造船業がよかったかというと、かつての船をつくる技術があった。なぜ日本のカメラがいいかというと、かつての光学兵器の技術が残っている。これは技術屋にしてみれば否定ができないものです。それから、軍需産業技術が一般に応用されて平和利用されているということになると、簡単に言うと原子爆弾が原子力発電でしょう。これがなかったら、オイルショックの後みんなテレビで高校野球も見られなかったということです。それからICというのは、いわゆる小型で飛ばそうというミサイルとかNASAの技術ですから。日本はそれを使って電卓に入っていって、今や例えばICにおける超LSIの二百五十六Kは世界の九〇%を押さえていますね。だからそれは軍事技術が平和的に転用されて、日本の現在がいろいろな意味でカメラ王国、造船王国、IC王国、メカトロニクス王国となった。そして小さなコンピューター日本が今強いという背景はあったと思うのですね。これは否定できないわけです。ただ、それだから科学技術を進めるためにどの程度軍需と関係したらいいか、これは政治の問題で、我々みたいな科学技術者の問題ではないのですけれども、しかし、あったかなかったかということについては、私はあったと言わざるを得ないのだということが一点です。  それではSDIに入った場合にどうかといいますと、我々の技術というのは、今やまさにインターディシプリナリーといいまして、いろいろな分野のいろいろな国の人がちょうちょうはっしやらないと進歩しなくなったというときにおいて、あの巨大な分野にいろいろな人がいろいろな分野から入っていって、まさに最先端の金をふんだんに使ってやるプロジェクトといえば、ヨーロッパのユーレカ計画かSDIのどっちかしかないのです。それじゃユーレカに入ったらいいかというと、日本は輸出一つとったって防衛一つとったってアメリカにおんぶにだっこという状況を外すことは当面できない。先に行けばいろいろな作戦はあるけれども、当面はアメリカ日本の間のコネクションを外すことはできないわけですね。その場合に、我々がSDIという非常に魅力的なターゲットとアメリカの関係を思うと、我々はアメリカにそういう形で入らざるを得ないだろう。ただ入り方の問題だということなんですね。ただ私は、それじゃSDIをやめろと言えばやめてもいいのですね。ということは、SDIに入れることによって日本の新しい技術というものが八十点が八十五点になる。我々は八十五点でありたいと思うわけでございますから、その五点をSDIと組むことによってレベルアップできることは間違いないけれども、SDIに入らなくても八十点のレベルで、かなり競争力があるわけですから、それは私としてはむしろ政治の問題だ。八十点でよければ八十点でいいんだ。これはむしろ政治の問題というよりは国民の問題ですね。そう感じるわけです。  さて、著作権の問題でございますけれども、今著作権の問題で通産が何とかしてもらいたいと言い、そして私みたいな、産業界でも何とかしてもらいたい点は何があるのかといいますと、著作権というのは期限が長いわけですね、いわゆる夏目漱石のものを一つ見ても。ところが技術は非常に進歩する。四十年ですかね、ちょっと正確にあれでございますけれども。例えば夏目漱石の小説も森鴎外の小説も、五十年たっても百年たっても価値が変わらないのだけれども、ソフトウエアというのは長い間縛るということに対しては非常に縛りにくい。変化の非常に大きい、言いかえますと、三年か五年でやるようなものに対してどうしてそんなに長い間著作権でやる必要があるかということ、これが一つですね。  それから、特許著作権と比べますとよくわかるのですけれども、特許の場合には、これを使わないと会社が困りますよといったときには調停機能があるわけです。この特許がないとこの会社が困るということは幾らでもあるわけですね。文学の方にはないのですけれども、その場合に、調停機能というのがあるのに、著作権でやるにはそれがないから調停できないわけですね。ところが、今比較的著作権特許権の間に妥協点を求めようというのは、せっかくこれは国民のため、あるいは世間のため、人間のためといいますか、非常にいいのに、ある人が突っ張ったためにできませんよということは——これは特許じゃできないのだけれども著作権法ではできる。しかしソフトウエアというのはそういうものではないのであって、一つコンピューターをいかにうまく動かすかという状況の中において、その技術があった方が国のための効率化にも、あるいはいろいろな世間的な、国民的な意味でも非常にいいじゃないかといったときでも、これがリセットされてしまうというのはおかしいじゃないか、こういうことですね。だから、著作権法をやることにおける欠点と特許のままにしておく欠点と両方あるのです。そういう意味で言うと、両方のいいところと、そしてソフトウエア、今まで我々になかったような特別の知的所有権という問題については、新しい皿で新しい料理の仕方が必要じゃないか、こういうことを考えているわけです。よろしゅうございましょうか。
  18. 原田昇左右

    原田委員長 どうもありがとうございました。
  19. 有馬元治

    有馬委員 牧野先生にさっきの関連でちょっとお聞きしたいのですが、失業率三%は、僕らは危機ラインというふうに考えているのだけれども、やむを得ない、そこのところが少し違うのだけれども、二次産業を二・五次産業に広げていった方がいいという御意見とその三%というのとは関係があるのですか。
  20. 牧野昇

    牧野参考人 二・五次産業に上げていくというのは、主要な産業、二次産業が今相次いで空洞化していくことに対して、それが歯どめとして必要だという意味ですから、幾らか関係があるわけですね。今おっしゃるようにもし我々が失業だけを頭に置いた場合に、どういう産業がいいか。なるべく能率の悪い産業の方がいいのです。そうなると、三次産業とか、なるべくぶらぶらしていても金になるような産業とか、あるいは政府とか、政府と言ってはまずいけれども区役所とか、区役所というのもまずいですね、そういうような感じでございまして、まだ相当ゆっくりというところを置いておいた方かいいのですね。だから産業そのものも大事ですけれども、むしろ行革とかあるいは効率化というのが非常に問題なんですね。効率化をどんどん進めれば、どうしても日本の場合には要らない人が出てくるわけですし、それに対して日本的なあれで、少し効率は悪くても、経済はそんなに競争力がなくなっても、やはり炭鉱は残しておき、そして新日鉄は三千人の首切りを千三百人にしておけというのがあるのです。これは私も当然あると思うのですね。  だからそういう点で言うと、私が言っているのは、トレードオフと産業の効率化というのは非常に問題があるのです。そこをどこにするかというと、僕は二・八に抑えていくのは無理だということを言っているのであって、これがアメリカとか西ドイツだって今七か八でしょう。それは多い。しかし三を占めると——経済審議会でも中期計画をやる場合にまず出てくるのは、日本の失業率を二%に抑えるということがすべて前提条件になっているのですね。いつもそうです。だけれども、それは無理だよ、それは日本が成長していたらそうだけれども、ヨーロッパ、アメリカとほどほどのおつき合いをするときにおいて、日本だけが非常に失業率を落とすというのは相当難しい問題であって、やはり三%の枠というのを破らないとしようがないんじゃないかということですね。ただ、これは政治的には非常に問題ですね。だけれども、必ずそうなりますから。三%を超しますから。これはいくと思いますね、恐らく。
  21. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 三先生にお聞きいたしたいのですけれども、今官僚システムの中で、縦割り行政の中で、文部省科学技術庁、通産省等々ございますけれども、牧野先生情断という、いわゆる知的なものが富をつくる、また豊かにする、また平和をもたらすというようなことで、日本ではなかなか大学大学ができないのですよね。科学技術、いわゆるアンダーグラジュエートだけではもう用ができない。例えば国際大学大学大学というのは越後湯沢にある。そこへなかなか行かない。それはもう文科系だけで、自然科学の大学大学、例えば理化学研究所、埼玉大学の理学部、私の方は埼玉ですから、それから早稲田大学のライフサイエンスといったようなものが各地で組んで大学大学、主任教授が来ているんですからポストドクターくらいまでできる。そういうようなことがやはりどうしても必要だと思うのですけれども、何年も声がかかっていますけれどもちっとも進まないのです。先生方にちょっと御意見を聞きたいのは、そういうものは必要であるのかないのか。日本ではなかなかインスティチュートというようなもので勉強しないで、会社自分で勉強している、その点についてどうお考えですか。
  22. 牧野昇

    牧野参考人 本当は竹内さんのあれがいいのですが、僕は早く帰ってしまうものですから。  私は余り必要ないという意見なんですね。それは企業がやるから心配要らないよということです。うち研究所は正規の研究員が六百十七人で、非常勤を入れて約九百人いまして、研究員の四割が博士と修士です。それは自然に国際化しますね。自然にお互い同士手を握る。それは我々が考えている以上ですね。我々だと外人が来ると面倒くさいなといって、飯を食うのもまずくて、余り食うと下痢しちゃうとかそういう感じがあるでしょう。今若い人というのは全然そういうことがなくなったということです。大学というのは非常に大事だし、もちろん今のような大学がある程度できるのはいいけれども、大学を出てきても新潟のああいうところで百人、二百人。ところが、実際に今日本の約四〇%の仕事をしている人がゴールドカラーといって、今みたいなやや知的な首の上のことでやっているのですけれども、その数で言えば二千万ぐらいいますからね。だからそういう意味ではやはり必要に応じてやれるんじゃないかな。むしろ制度よりは現実の方が先に進んでいるような感じうち研究所なんかではそうなんですよね。だけれども、今おっしゃるような形がある程度あった方がベターであることは間違いないですけれども、そこに大きな期待をなかなかかけにくいんじゃないか、こういう感じがするのです。
  23. 竹内均

    竹内参考人 私も長いこと大学におりましたのですが、そういう経験にかんがみて申しますと、税金を払ってというか税金を使ってというようなことを考えますと、大学大学というような屋上屋をつくらない方かいいのじゃないか。つまり、それは今牧野さんもそのことをおっしゃったと思うのですが、ちゃんとした会社は非常に立派にやっているのです。これほどの会社の社長さんあたりに聞いてもそうですね。それじゃ大学は何をやったらいいんだといったら、大学ではただ忍耐心だけ養ってくれればいいなんという冗談を言う人がいます。忍耐心を養って、出てくると後の方の仕上げはうちの方でするということですけれども、僕も何となしにそういうふうに思うのです。多少また悪い言い方をするのですが、親方日の丸とか、首がずっとつながるというようなところでまたのんきなことをやるというのも、国民の税金を使うのですからね。僕はそう思います。
  24. 合田周平

    合田参考人 私は今現場にいるわけなんですけれども、うち大学で今度来年からやっと博士課程が認可になったのです。博士課程というのは数によるとか、それとあとは私が何度も触れましたように国内制度の問題ですね。  これは私は英国の大学へ行っていまして、あちらでは要するに民間との共同研究が実に自由にできる、これはもうこれからの時代にとって大変に重要なことだと思うのですね。ところが日本では、今、先生おっしゃったように文部省から国家予算が来て、多少はいただいておりますが、しかし、これで本当に研究教育できるかというとできませんね。したがって、民間の委託研究費を受ける。しかし、これも国家予算と同じ枠組みで参りますから非常に使いにくい。したがって、国立大学が会計法の配下にいつまでもあるのが果たしていいのかどうかということをいつも私たちは議論をするのですけれども、しかし少なくも私立大学はその範疇に入っておりませんので、ひとつ自由に……。  問題は、そういう産学協同が本当にできるような人材をいかに把握するかなんですよ。この前もイギリスで会議をしておりましたら、日本のプロフェッサーというのは会議に来て人の意見だけ聞いていって一向に発言しない、何かブラックホール・プロフェッサーということで非常に気味が悪いということを言っていたのですけれども、これなんかもいろいろな制度の問題があるということじゃないかと私は思うのです。だから臨教審もいいんだけれども、やはり国立大学のあり方ということ、殊に工学関係の大学のあり方というようなことを十分に論議しないと、やたら国際化というので秋から入学試験をして入れろとかいうような末端的なことだけを変えても、これはもう一向に変わらない。  それからあと一つ言えることは、私どもの大学は今就職率が大変にいい。そんなにいい学生でもないのにどんどんいいところへ入っていく。しかし十年たって会うともう物すごくいいエンジニアに変身している。これは確かに牧野さんがおっしゃったような企業内教育というものが大変に行き届いている国でであるということは実感するわけです。
  25. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 ありがとうございます。
  26. 原田昇左右

    原田委員長 牧野先生お出かけになるということですから、私から一つだけ牧野先生にお伺いしたい点は、インテレクチュアルプロパティーというお話を大変おもしろく伺ったのですが、確かに今日本がこのままの為替レートの状況でいけば急速に空洞化すると思うのです。我々は、今まで農業にしても工業にしてもともかく物をつくるということ、工業化社会ということの中で物事を考えてきていますので、例えばもう一九九〇年ぐらいにはアメリカで二百万台の日本の自動車生産ができるんだというようなことになると、今二百万台ぐらいしか輸出してないわけですから、これは一体どうなっちゃうんだろう。そういう意味で、急速に空洞化が進むという場合に、牧野先生おっしゃったように二・五次産業とか三次産業という知的生産というのは非常に大事になることは確かなんですが、今例えばソフトウエアとかあるいは宇宙産業なんかでも、アメリカはそういう分野の力はかなり進んでいるのですね。日本が今二次産業から三次産業なり二・五次産業に離脱していった場合に、果たして今のままでいけるのかなと私は非常に危惧するのです。しかも失業率の問題ももちろんあります。その場合に一体どういう政策をとっていったら知的なプロパティーをふやすことができるのか、何が一番大事かという点を一言お伺いしたい。
  27. 牧野昇

    牧野参考人 第一に、日本アメリカソフトウエア分野技術レベルのアンバランスというのは非常にはっきりしているわけで、例えば今ソフトウエアの最先端のAI、アーティフィシャルインテリジェンス一つをとっても、かなり大きなギャップがあるだろうということは間違いないですね。それでは日本がそれに対して追いつけないかというと、私は追いつけると見ているわけです。なぜかといいますと、このソフトウエアにもいろいろなタイプがあるわけで、向こうは非常にすばらしい発明家がちょぼちょぼやるというタイプはいいのですけれども、日本の場合にはそろった者がやるタイプがいいわけですね。ソフトウエアの業界でも製造業と同じでございまして、アイデアを出す人もいる。現在日本における例えばキャッシュディスペンサーのソフトウエアとか、いろいろなソフトウエアがあるわけです。そういうソフトウエアというのは中間層の支え、言うなれば非常に人手を中心とした作業でございますので、私は追いつける可能性はあるんだというふうに見ているのです。これが一つです。  それから二番目に、それに対して今お話がございましたようにどういう政策をとったらいいだろうかということですけれども、ソフトウエアに関するいろいろな意味でのバックアップ。私が今さらそれを言うのはおかしいのですけれども、うちソフトウエアとかシンクタンクをやっていますと、例えば大学先生を呼んで食事をするとかいろいろな取材費というのは税金がかかるのですね。うちは今度も九億利益を出して七億近くが税金に取られるのですけれども、これは正力さん偉かったから、出版をやるとか、放送は全部無税なんですね。だからソフトウエアが大事であるから、ソフトウエアが大事だということに対して、これは税制でございますけれども、ソフトウエア産業をやるために必要な条件というのがいろいろあるわけで、それをひとつ見直してやってくれないかというのが業者としての意見でございます。  三番目に、これも非常に大事ですけれども、今私がいろいろなお話を伺った中で一番大事なことは何かというと、これは抜けているのですけれども、東京に今のような状況ですべてが集まっている。Uターン現象と昔言ったのですね。十年から十五年前に人々は東京に集まった。年率二%。五年から十年前は人々はみんな地方に行った。これをUターン現象と言った。最近は再び東京に集まって、プラスで一%超したという。この間平松知事に会ったけれども、いや地方試練の時代だ、ひどいよと言うわけね。それで流行歌も変わって、昔は「あのふるさとへ帰ろかな」だったけれども最近は「東京さ行くだ」になっちゃった。こういう感じでございまして、今やもう東京へ、東京へなんですね。さっき言った情報機能とかあるいは国際機能というような、きょうお話に出たものは全部今東京に集まっている。それで地方はこれからますますひどいですよ。だって工場誘致一つとったって、東京の周りの百キロ圏に二〇%ふえて、その周りはほとんどなく、その外側は——私この間室蘭に行ったのですけれども、五年前に十九万人だった都市が今十三万人ですからね。だから今お話しのようにソフトウエアだ、知的だあるいは物というのは今や東京に集まっちゃって、地方から全部吸い上げているんだという状況というのはこの先非常に強くなる。これがあと二、三年すると大変になりますよということです。  今東京都の産業振興研究会をやっていて、きのう鈴木知事に出した。私は委員だったけれども、私が言っているのは首都だからといって東京に何でも集めないでくれと。世界じゅうから日本に金が集まるとまずいように、今や東京に全部集まって地方はひいひい言っているのですよ。だから東京ばかりがいい。東京を振興したから日本がいいんじゃないので、首都というのは少し犠牲を払っても地方をよくしてくれ。今みんな東京だね。だからアークヒルズの家賃が五万円で、これはできる前から満杯だ。ツイン21は二万円だけれどもまだあいておる。名古屋へ行くと一万円でまだあいておる。こういう感じでございまして、これでいいのかということがあるわけです。  だから、また政策で言いますけれども、国は今や東京はほうっておけというんです、自分でやるから。地方にもっと手厚く金をばらまいて地方のソフト化とか全国がソフト化しないと、東京だけ先に行ったってだめなんだ。だから東京民活、地方官活だ、地方に金をまけ、これが今一番大事な政策だと僕は思いますよ。よろしゅうございますか。
  28. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。
  29. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 牧野参考人竹内参考人日本人創造性の問題に触れられたわけでございますが、牧野さんお帰りになられましたので、竹内参考人にお尋ねしたいと思うのです。     〔委員長退席、平沼委員長代理着席〕  お話の中で、日本人創造的だという国際的な評価もむしろ今は受け始めている。しかしながら依然として質的にはやはり多少異なっている。牧野さんのお話では、フェーズ1については苦手で、フェーズ1.5ないし2については大変よろしいというお話があったのですが、人類の文明史に残るような画期的な創造的なもの、あるいは言い方を変えればパラダイムの変革をもたらすような創造的なもの、それが日本人の中から出ないのはやはり寂しいといいますか問題があろうかというふうに思うのです。その原因なんですけれども、農耕民族というお話も伺いましたけれども、日本人の資質それ自体が欠けるとは私には思えないんですね。例えば関孝和なんかのような大変な世界的な数学者を出したこともございますし、その原因についてお考えがありましたら教えていただきたいと思うのです。私の考えでは、教育といいますか、あるいは社会それ自体が変わり者を排除するようなところがあるのではないか。日本の学校ではほかの生徒と変わったことをするとしかられるけれども、外国ではほかの生徒と同じことをやったんじゃ褒められない、こういう違いがあるのじゃないかなと思うのですけれども、その辺についての考えを教えていただきたいと思います。  それからもう一つ、時間のついでに合田参考人にお尋ねしたいのです。お話がちょっと難しくて必ずしも私正確に把握したかどうか自信がないのですが、要するに生産の効率という観点からむしろ社会的効果というふうに視点を移すべきであるというお話だろうと思うのです。言いかえれば、製造あるいは供給側の発想ではなくて、需要側といいますか生活側からの発想が必要なのではなかろうか、大きく言ってそういったニュアンスのお話だったのではないかと私は思うのです。そういたしますと、さらにそこからもう一歩進んだといいますか、もう一歩の違いだろうと思うのです。     〔平沼委員長代理退席、委員長着席〕 改めて産業といいますか、産業社会それ自体の意味を問い直すような動きが世界的に出てくるのじゃないかと思うのです。エコロジストの運動というのはまさにそれだと思うのです。合田先生来られる前に牧野先生のお話で出たと思うのですが、ハイテク仏壇という例がございました。これは半分冗談でおっしゃったのだろうと思うのですが、スイッチを押すとお経が聞こえてくるような仏壇がある。これはまさにICをどう応用するかという発想から出た商品だと思うのですが、こんなものは祖先を崇拝するというような敬けんな態度とは恐らく無関係だろうと私は思いまして、いずれがらくたになるのではないかという気がするわけですね。それは一つの例ですけれども、そのように産業それ自体の意味を根源的に問い直すような風潮といいますか、風潮というとおかしいのですが、そういう考え方、それについてはどのように合田先生は評価されるか、その二点をお尋ねしたいと思います。
  30. 竹内均

    竹内参考人 まず私のかかわるところについての考えをちょっと申しますと、おっしゃったように日本は農耕民族だからだと私思うのですが、ちょっと変わり者が出てきますと退けられるという傾向があると思うのですね。ところが、変わり者が出てきて科学とか技術が進歩したというのも一方で事実だと思うのです。その辺のところの兼ね合いなんですけれども、やはりこれから日本の国は、今既にそうだとも思いますし、だんだんと富んでまいります。金持ちになってきましたときに変わり者を十分に養えるというか、変わり者だけれどもあいつはそのうち何とかなるだろうというような、つまり多少経済問題が絡んできまして変わり者を大事にするような経済的基礎ができてくるように思えてしようがないのです。そのまた前に、日本がそういういろいろな条件さえ与えられれば、天から降ってくるようなすばらしい創造性に本質的に欠けているとは私はどうしても思わないのです。おっしゃったように、今まで余り出てこなかったのは、やはり変わり者を排除するというような社会的なことがあったからだと思うのです。ところが、金持ちになってまいりますとそういう者も受け入れようということになって、そういったことが一つの動機づけになって、これから変わり者が適当に優遇されて、世界の科学や技術に貢献するような時代が来ると僕は思うのです。  一つだけ、日本の例じゃございませんのですけれども、今から百年くらい前のイギリスです。チャールズ・ダーウィンという人は科学に大変な貢献をした人で、進化論の生みの親と言っていい人です。これはあるいは御存じかと思うのですが、ダーウィン家は先祖がずっと医者で、奥さんの方はウェッジウッドという今でもイギリスの陶器のあれで、両方とも金持ちの家が結婚しまして、そしてダーウィンは多少変わり者だったわけです。けれども、変わり者を十分に養える経済的基礎がダーウィン家に備わっておりました。だからダーウィンは大学教授になるというようなはしたないことをしないで、すごい大邸宅に温室から何からみんな構えて、自分で新しい種をつくり出すというようなことをやって悠々と一生を送って、ダーウィンの伝記なんか読みますと腹が立ちますが、一日に二時間くらいしか仕事をしていないのです。昼寝も十分にやりましたし、夜になりますと奥さんが本を読んで聞かせたというのですから多少幼児的なところがあったと思うのですが、という中で悠々とやって、一種変わり者があんなすばらしいことをやるのですね。日本もこれからそういう条件を経済的に備えてくると思うのです。そういう条件を備えられれば日本はすごいと思うのです。  直接の話はそれだけですけれども、もう一つ思いますのは、コンピューターなどでもハードよりもソフトの方が日本により適性だと思います。ですから、そこまで込めまして、要するに日本の資質というのは大変なものだと思っております。
  31. 合田周平

    合田参考人 それは今おっしゃったとおりだと私は思うのですけれども、要するに今のハイテクの仏壇の話というような発想しか日本のこれまでのインダストリーはなかったわけです。すなわち、こういうハイテクが生まれたからこれを何か使いたい。しかし、欧米の発想というのは、今やこういうものが人類にとって必要だ、早い話SDIにしても、こういうようなことが国家として必要であるから技術を集めようとか、また、技術開発をしなければいけないという、非常にホーリスティックというか全体の方から来た、パラダイムの方から来た技術の旗が振られているわけですね。オートメーションの分野で言っても、日本は生産技術が非常に秀でて今日に来ているわけなので、したがって、工場の側の論理で物事をつくったりオートメーションをつくるのではなくて、これからは生活者側、ですから文化的な効果であるとか社会的な効果ということを考えてこういうような工場が必要であるという時代に入ってきているということですね。今、分散の話が少しありましたが、実際に車みたいなものを一カ所でつくって、箱みたいなものを運ぶというようなオートメーションの方式が次第に崩れてまいりましたね。部品点数も大いに減らして、極端に言うと販売店で組み立てて、コンシューマーの欲する車を現場で組み立てて販売するというように、コンシューマーといいますか人々の効用、効果によって工場全体がどうにでもなるように現在のハイテクというのは発達してきたのだ。これはフレキシブルオートメーションという名前があるのですけれども、したがって我々に今必要なことは、ハイテク云々ということではなくて、こういうような社会が必要だというビジョンがあれば技術はついていく、あるいは技術の不足のところは開発していくというようなことを言いたいわけなんです。という意味で、技術というのは効率あるいは経済的な効率で来たものを、文化的な効果を重んじた社会、産業という一つのパラダイムをここで打ち出そうというのがヒューメインインダストリーの基本であると言っているわけです。
  32. 原田昇左右

    原田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。      ────◇─────
  33. 原田昇左右

    原田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  生命科学に関する件について調査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十六分散会