○大川清幸君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております
昭和六十一年度総予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
反対する理由の第一は、所得税減税を二年連続で見送り、
一般会計の公共事業費も前年比二・三%減と三年連続して
削減するなど、政府予算案が、国の内外からの要請である内需拡大に何らこたえていないことであります。
中曽根内閣が発足して以来、年を追って増大してきた経常収支の黒字幅は六十年度には五百億ドルを突破し、貿易摩擦問題を一層激化させております。この責任は、
米国の景気回復に依存するのみで、有効な内需拡大策を打ち出し得なかった中曽根内閣の経済運営の失敗にほかならないのであります。
一方、景気の転換点を迎えた国内経済は、可処分所得の伸び悩みから消費の低迷が続いており、失業率も史上最高を記録し、円高デフレの影響から、六十一年度の実質経済成長率は政府見通しの四%を下回る
可能性が大きくなっております。
これらの経済情勢に対応するため、説得力のある内需拡大策を内外に示すことこそが政府に課せられた最大の責務なのであります。内需拡大を図ることは、世界経済の約一割を占めるに至った
日本の対外的貢献にもかなうものであり、また国際水準と比較して見劣りの激しい我が国の社会資本を整備させる上からも欠くことができないのであります。しかるに、政府が、我々の強い要求である二兆円規模の所得税減税や公共事業費の追加
措置に応じなかった点は到底容認することができません。
反対する理由の第二は、昨年九月のG5以降もたらされた中曽根・
竹下コンビによる急激な円高誘導策が、国内経済に無用の混乱を及ぼしていることであります。
五十三年の円高局面を上回る史上最高値を突破した今回の急速かつ行き過ぎの円高に対しては、
米国に協調逆介入を断られ、我が国単独での逆介入を余儀なくされるところまで追い込まれたのであります。しかも、今回の円高は政府の手によって政策誘導された性格が色濃く、その犠牲を一方的に中小企業や国民大衆に強いるやり方は断じて許されません。既に輸出関連中小企業や地場産業では輸出契約のキャンセルが相次ぎ、操業短縮や企業倒産に追い込まれておりますが、こうした現実を政府はどう理解しているのでしょうか。
私は、政府に対し、行き過ぎた円高を速やかに安定化させ、輸出関連中小企業等への万全な
措置を講ずるとともに、円高差益の還元や輸入品の適切な値下げ等円高メリットを国民に広く均てんさせるよう強く要求するものであります。
反対する第三の理由は、政府による財政再建目標が完全に破綻していることであります。
これまで幾度もつくられてきた政府の財政再建目標が、ことごとく失敗に陥ってきたことは周知の事実であります。中曽根内閣の財政再建目標もこれらの例に漏れず、六十五年度赤字国債脱却に必要とされた一兆円の赤字国債減額幅は、五十九年度五千二百五十億円、六十年度七千二百五十億円、六十一年度四千八百四十億円と目標額を大幅に下回り、残る四
年間、毎年度一兆三千百億円の赤字国債を減額することは到底不可能であります。
しかも、政府による財政再建が、
一般歳出の抑制ということのみに目を奪われているため、公務員給与改善費を計上しないという欠陥予算をもたらしていることは言語道断であります。さらに、特別会計や財政投融資を通ずる予算操作を繰り返し、厚生年金や国民年金等の国庫負担を後年度に先送りしていることは極めて不当な
措置であります。こうした実情を覆い隠し、シャウプ勧告以来のゆがみを是正する税制の抜本改革と、言葉巧みに大型間接税の導入を図ろうとする中曽根内閣の態度は断じて許されません。
反対する第四の理由は、政府予算案が国の負担を地方財政に転嫁させようとしていることであります。
六十年度限りとされた地方自治体向けの高率補助金の一律
削減措置が、今後三
年間にわたって継続され、さらに国庫補助率が一段と削り込まれたことは決して許されません。財政の帳じり合わせのためにとられたこのような
措置は、行財政改革とはおよそかけ離れたものであり、国の借金を地方に肩がわりさせたにすぎず、地方自治体の公債費負担率を高め、地方財政を窮地に陥れる以外の何物でもありません。
反対する第五の理由は、超緊縮予算案の中にあって、防衛
関係費を大幅にふやし、その伸び率を異常に突出させていることであります。
政府予算案の防衛費の伸びは、六十年度と同様に給与改善賢一%分を加えると七・〇四%にも達し、六十年度の六・九%をも上回る突出ぶりとなっております。
防衛費の対GNP比も〇・九九三%と、政府公約である一%枠とのすき間はわずか二百三十五億円にすぎないのであります。申すまでもなく、防衛費の対GNP比一%枠は、我が国政府が内外にわたって宣言した重要な平和政策の
一つであるとともに、国民世論の大宗をなすもので、この政策変更は絶対に許されるべきものではありません。私は、六十一年度の防衛費が、人事院勧告の増額を含めても対GNP比一%以内に確実にとどまるよう、経費節減等の
措置を講ずることを強く要求するものであります。
最後に、六十一年度予算案審議に関連して政府に一言申し上げます。
米国から
マルコス文書が公表され、我が国の経済援助が
マルコスの
不正蓄財に利用されていた疑いが濃厚となってきております。国民の貴重な税金が一政権の私腹を肥やすために使われたとしたら、これほど国民を愚弄するものはほかにないでありましょう。にもかかわらず、政府が円借款にかかわる受注企業名、受注額等の公表を拒否するなど、疑惑解明に背を向けていることは断じて容認できないのであります。私は、この際、
マルコス疑惑の徹底的究明を果たし、この問題をうやむやにすることが絶対にないよう、政府に対し強く警告を与えるものであります。
また、本予算案成立が執行年度にずれ込み、暫定予算の提出が必要であったにもかかわらず、政府がこれを提出せず、予算の空白を生じさせたことは、財政民主主義をないがしろにするもので断じて許されません。今後は、本
委員会での決議を十分に尊重し、暫定予算の提出等万全の
措置を講ずることによって、予算の空白を絶対生じさせないよう政府に反省を求め、私の反対討論を終わります。(拍手)