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国務大臣(竹下登君) 総理からもいつかお答えがあっておりましたように、相続税というものにつきましても、もとより税制
調査会で御審議をいただく課題であるというふうに私
どもも理解をいたしておるところでございます。
率直に申しまして、
日本の相続税というのは、山林であるかあるいは山林以外の他の財産であるかを問わず、その有する価格に等しく相続税が課せられる。今いみじくもおっしゃいましたが、これは山林に限らず何に限らず、三代たてばゼロになる。これも表現は適切でないかもしれませんが、
日本の相続税というのは、西郷南洲先生の「児孫のために美田を買わず」と。一定のところまではみんなが一生懸命やって、子供を教育したりいろいろしなさいと。それから先はやっぱり本人の能力であって、努力のたまものであって、初めから特定の資産家とかそういう者が存在するのは必ずしも好ましくない、こういうのが
日本の相続税の、これは竹下流の解釈でございますけれ
ども、そういう状態であろうかと思いますので、確かに相続税は諸外国と比べて決して低いという状態にはございません。そこで、相続人が配偶者と仮に子二人の場合の相続税額というのは、五億円で一億九百五十二万、すなわち二一・九%。あるいは相続人が配偶者と子供さんが四人おると、これは九千七百三十八万、一九・五%と、こういうことになるわけでございます。
それで、林地について一般的に相続税を軽減するということは、言ってみれば特定の資産を持っておる者のみが優遇されるから課税の公平上の問題が存在すると。しかし、都市緑地保全法とか、そういういわゆる私権の制限が行われております林地については、相続税の課税上、その規制の程度に応じた評価が行われておるわけでございます。緑地保全の観点から、この間の税制改正で、相続財産を贈与した場合の相続税の非課税制度の対象となります法人の範囲に、すぐれた自然環境の保全のため、その自然環境の保存及び活用に関する業務を行うことを主たる目的とする法人、いわゆるナショナルトラストを追加した。しかし、これは相続された子供さんが寄附されなければいけませんわけですけれ
ども、これもいわゆる自然環境保全のため、自然環境の保存という意味でこの制度を既に国会で議了していただいたと、こういうことであるわけでございます。
それからもう
一つ、山林経営というのは、例えば五十九年度の相続開始があった相続税事案は四万三千十二件ありますと、山林というのはどれぐらいあるかというと五十件。それから全相続税事案の取得財産価額は五兆八千三十一億円で、そのうち立木価額は百六十七億円ですから、その占める割合は〇・三%と、こういうことになっております。
これは実情を素直に申し上げただけでございます。が、最初申し上げたとおり、いろんな相続税に対しては、例えば中小
企業者の承継税制の問題でございますとか、今御
指摘なさいました山林の問題でございますとかありますので、これは結局税制
調査会で当然のこととして議論をしていただける課題であろうというふうに考えておりますし、今のような意見も税制
調査会に正確にお伝えすべき課題であるというふうに考えております。