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政府委員(茂串俊君) 大変幅広の、また
基本的な問題についての御
質問でございます。また飯田
委員がかねてからいろいろこれにつきまして御見解をお持ちのことも十分承知しておるつもりでございます。
ただいま幾つかの点につきまして御
質問がございましたが、恐らく四つぐらいの点に分かれるかと思いますが、いずれも
基本的には共通した理念なりあるいは解釈に立っての御
質問であろうかと思います。
最初に、天皇は国事行為しかできない、いわば国政に関する機能を有していない、そういう立場で解散詔書の発布をされる、そういった形式的、名目的な国事行為に
衆議院の解散といったような国政行為としての効力を持たせてもよいのか、その点がどうなのかという点でございますが、これも前々から何回か御
質問がありまして、私の諸先輩がお答え申し上げているところでございますが、もともとこの
衆議院の解散という問題につきましては憲法第七条に
規定がございます。第七条は御承知のとおり天皇の国事行為についての
規定でございますが、そこの各号に列挙しております中の第三号に「
衆議院を解散すること。」という
規定があるわけでございます。
この第七条に列挙しております各号の事柄を見てみますといろいろなものがあるわけでございます。例えば「儀式を行ふこと。」といったような非常に儀礼的な行為もございます。また、認証といったような行為もございますが、それと並べまして
衆議院の解散とかあるいは国会の召集といったようないわば高度の政治的な性格を有するもの、本来的には形式的、名目的なものではないといったような行為も並んでおるわけでございますが、このような行為につきましても、それについて助言と承認を行うことを職務とする内閣が実質的に決定したところに従って行われるということの結果としまして、天皇の御行為は形式的、名目的なものとなるというふうに我々は考えておるわけでございまして、その意味で天皇は国政に関する機能は行使していない。ということは、すなわち形式的、名目的な行為にとどまるといいながらも、その背後には今申し上げたようなことで
衆議院の解散について実質的な決定権を有する内閣が存するわけでございまして、その助言と承認によって天皇の国事行為が行われるということでございますので、その意味で解散詔書の発布そのものに解散の効力を認めても別に問題はないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
それから第二番目に、憲法にそのことを定めた明文がないのに、
衆議院解散の実質的な決定権が国事行為の助言、承認権の効力として内閣に授権されているというのはいかなるわけであるかとい
うことでございますが、この点につきましても、ただいま御説明したところと若干ダブることになるわけでございますけれ
ども、天皇の国事行為について定めていると条三号に、先ほど申し上げたような「
衆議院を解散すること。」という
事項が載っておるわけでございます。これは先ほ
ども申し上げましたように、いわゆる本来的に形式的、名目的なものではございませんで、政治的な性格を有するものであることはもとよりでございます。
ただ、天皇は、憲法第四条一項の
規定によりまして、国政に関する機能を持っていないわけでございます。それからまた、このようないわゆる国事行為を行う場合には必ず内閣の助言と承認が必要であるということが
規定されておるわけでございます。それから、先ほど申し上げましたように、憲法七条の三号「
衆議院を解散すること。」あるいはまた
一つ前の二号の「国会を召集すること。」といったようなことをその文理どおりに解しまして、これをそういう意味では非常に国政にかかわりのある行為であるというふうに解しました上で、先ほど申し上げた天皇は国政に関する機能を有しない、またこういったいわゆる国事行為をやる場合には必ず内閣の助言と承認が要るというようなことを総合的に勘案いたしました上で整合性のとれた解釈をいたしますると、前々から
政府が申し上げておりますように、これらについて助言と承認を行う立場にある内閣が実質的に決定する権限を持っておる、そして天皇がその決定したところに従って形式的な、名目的な行為をなさるというふうに解するのが最も合理的なのではないかというふうに考えておるわけでございまして、これはもう前々から
政府が一貫して御答弁申し上げているところでございます。
それから第三番目は、
衆議院の解散というのは
衆議院議員の全員をいわば罷免することでありまして、これは憲法十五条のいわゆる公務員の選定あるいは罷免は国民固有の権利であるという
規定がございます、その十五条一項との兼ね合いで一体行
政府限りでそういうことをやってもいいのかという点であったかと思います。これにつきましては、確かに
一般に申しまして憲法の十五条一項はあらゆる公務員の終局的任免権が国民にあるといういわば国民主権の原理を表明したものでありますが、必ずしもすべての公務員を国民が直接に選定したりあるいは罷免すべきだという意味ではもとよりないわけでございまして、この選定、罷免につきましては、直接または間接に主権者たる国民の意思に依存するようにその手続が定められなければならないという趣旨であろうかと思うのでございます。
ところで、先ほ
ども申し上げましたように、
衆議院の解散は確かにその効果といたしまして
衆議院議員の全部について任期満了前に議員たる資格を失わせるということになりますので、その意味におきましてはこの十五条一項とも関連することは否定できないと思うのでございます。ただ、先ほど申しましたように、憲法七条の解釈によりまして
衆議院の解散は内閣が実質的に決定したところに従って天皇が行為をなさる、それによって解散が行われるということが明定されておるわけでございますので、この憲法の
規定に従って
衆議院の解散権を行使する、あるいは
衆議院の解散を行うということ自体がこの憲法の十五条一項に触れるということにはならないのではないかというふうに考える次第でございます。
それから最後は、たしか内閣の所掌する事務の範囲がこれは憲法の第六十五条とかあるいは七十三条その他に明定されておるということでありまして、ところがその六十五条あるいは七十三条の解釈として
衆議院の解散ということが一体含まれているのだろうか、少なくとも明文がない以上は含まれていないのではないかという御疑問ではなかったかと思うのでございますが、これも先ほどの御答弁と重複することになりますけれ
ども、我々といたしましては、憲法第七条によりまして、これを
根拠としまして、内閣は実質的に
衆議院を解散する権限を有しているという解釈でございますから、特にこの七十三条とかそういった行政事務の範囲を定めている
規定にそのようなことが明文として置かれていなくても、この七条の解釈そのものから
衆議院の解散権は実質的に内閣に属するという解釈をいたしておるわけでございます。
大体、たしかその四つの御
質問だったかと思いますが、なお答弁として足らないところがございましたら補足して御答弁を申し上げます。