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○
和田静夫君 まず、
参考人に御
出席を願っていますので、
東京湾の
横断道路問題から
質疑を開始いたしたいと思います。
ある
新聞報道によりますと、次のような
投書が載っていました。この
投書というのは、だれのための
横断道路かと疑問に思うというものであります。
漁業への
影響、
海上交通への
影響、あるいは
土地の買い占め、そして
自然環境の破壊などもろもろの問題が内容になっているわけであります。私も実は同じ疑問を持つのでありまして、これらの
問題点を加えて果たして採算が合うのだろうかというようなことも実は考えます。仮に赤字が出た場合にだれがこれを負担するのでおろうか等々のたくさんの疑問が出てくると思うのであります。
そこで、きょうは漁民の
立場から
船橋市漁協の
大野組合長に
意見陳述をしていただくことにいたしました。御苦労さまでございます。
大野組合長、昨年も
青潮でかなりの被害を受けていらっしゃるわけでありますが、率直に言って、
東京湾の
現状をどういうようにごらんになっていますか。
-
○
参考人(
大野一敏君)
大野一敏です。
東京湾の
現状を短時間でお答えすることは大変困難なことだと思います。私は、たまたま三十年来
東京湾で
漁業をいたしております。私の父も、また
祖父も、またその
祖父もずっと
東京湾で生かされてきておりますので、
漁業の
立場から
東京湾の
現状と申しますか、特に
船橋市の
漁業協同組合を中心とした
漁獲高とか、そういうことによって推察していただければありがたいと、そう思います。
昭和五十九年度の
漁業生産高ですけれども、
皆さんが予測するよりははるかに多いと思うんですけれども、
総トン数で約一万五千トン、
うちマイワシが七千トン、
スズキが二百七十トン、カレイが百二十四トン、コノシロが三百六十トン、それからイシモチとかそういうのが三百トン、干し
ノリが二千五百万枚、それから
あとアサリが五千トン近く水揚げされております。
ここに御
出席の
皆様方は
赤坂かいわいで
アサリの
酒蒸しとかあるいは
バターいためとか、そういうものを食べると思うんですけれども、五十九年、六十年度のこの
首都圏の
アサリの市場のシェアの八〇%は
船橋産だったわけでございます。特に、今度飲みに行かれてお聞きになるとわかると思うんですけれども、おいしい
アサリは特に
東京湾産でございます。そして、
スズキなんかはほとんど活魚で、
首都圏はもとより
大阪方面、北は仙台まで出荷されております。ですから、おいしい
スズキの洗いなんかはほとんど
東京湾産。全国の約一割を産出しております。それから、
マイワシはほとんど鮮魚として
皆さんの食卓に乗っているわけです。
銚子で相当大量に揚がるんですけれども、
銚子でとれないときに
東京湾で
漁獲されております。
それから
あと、
総トン数一万五千トンということは、
千葉県の
人口が五百万人相当ですから、最近
健康食品として水産物がクローズアップされておりますけれども、一食とったとして大体一月
分千葉県民が食べられるというだけの
漁獲があるわけです。特にその中で特筆すべきは、干し
ノリはかつて
東京湾の
江戸前ノリあるいは
浅草ノリという名前で呼ばれていたその
浅草に一番近いところが今、
船橋市の海なわけでございます。そこには昔から豊穣の海として残されている三番瀬――一番、二番、三番の三番瀬という広大な
海域が残っております。沖合い二千メーター近くのところが大潮の干潮時になりますと、ちょうどひざぐらいの浅さになってしまう砂地の
海域が残っておるわけですけれども、そこでいまだに
アサリと
ノリがとれておるわけです。
東京湾全体の
状態を守るための貴重な
海域でもあるわけです。
浅海が
酸素の
供給をしているわけですけれども、現在、
多摩川河口に
羽田州という州が残っております。その近くで現在大
規模な
埋め立てが行われておりますけれども、これは
羽田の空港の拡張だと思います。それから、
荒川河口においては三枚州という州がございます。ここも秋になりますと
マイワシが大挙して上ってくる場所です。すぐ川の岸まで来て
マイワシの釣りができるという
状態になります。それから、
船橋、
市川前面の三番瀬という州がやはり
酸素の
供給源として残っている。それから、
養老川河口が、これは五井の鼻になりますけれども、
養老川河口に少し小さな州が残っている。
それから、ずっと行きますと今度、
盤洲の鼻に
自然海岸が残っていて、そこがやはり
ノリの
漁場と
アサリの
漁場になっておりまして、
牛込漁業協同組合から始まって木更津まで、たしか七
組合ぐらいあると思うんですけれども、それから
船橋のような
規模の
組合が富津にもございます。それから、神奈川県側の小柴にもあるわけです。
交通が錯綜しておりますけれども、盛んに
漁業が行われているということをまず推察していただければありがたい。
それから
青潮は、地形の変化とかあるいは
埋め立てによって湾の空気と触れ合っております表面積が減ったものですから、
自浄能力が少し減っていったので、
青潮はやはり
環境への赤信号ではないかと、そう思います。
以上です。
-
○
和田静夫君 今もお話がありましたが、この
横断道ができると
東京湾の北部にかなり深刻な
漁業への
影響を与えるということになるわけであります。とにかく、橋がかかると
好漁場と言われている
盤洲鼻がどうなるかというようなことは、これはもう大変な
関心事であります。
漁業補償も問題になると言われているんですが、こういう点はどうでしょう。
-
○
参考人(
大野一敏君)
横断橋が確かに
漁業への
影響があるとすれば、当然
補償という話になっていくと思うんです。橋ができたら魚がとれるという話が一番いいと思うんですけれども、そういう橋をまず考えていただくのが先決ではないかと、そう思います。そして、できれば今後も、
補償という形の話ではなくて、
漁業ができるような
施策といいますか、そういうものも真剣に考えていただいた方がいいと思うんです。
と申しますのは、
東京湾の
湾岸域には
日本の三分の一の
人口が張りついていると言われておりますけれども、これからのその
人たちの住
環境を守る意味でも、そこに
漁業が脈々と生きるという話はやはり
環境を守るというところにつながるのじゃないかということで、
漁師を生かすことが将来の
日本をいい
日本にするといいますか、住みやすい
日本といいますか、「ふるさと
千葉五か年
計画」というのを
千葉はやっておりますけれども、そういうものに貢献する話になるんじゃないか。
一応、
後継者も夢を持って
漁業が続けられるように、
横断橋は一抹の不安を抱かせるわけですけれども、そういう不安を取り除いていただいて、
漁師が生きられるような
施策をしていただければ、
補償という話にならなくても解決できるような気もします。当然、損失が出れば
補償という話になるんじゃないかと思います。
-
-
-
○
参考人(
大野一敏君) 素人なものですから。
東京湾と
サンフランシスコ湾を比較したときに、もう御存じのとおり、アメリカは
工業立国あるいは
経済大国として
日本の先輩でございます。そういった中で、
サンフランシスコ湾においては
東京湾のような状況が五十年、六十年前にあったわけです。
横断橋についても、大体五、六十年前の
ニューディール政策によって
経済振興という形の中で行われたわけですけれども、全く似ていると思います、その点は。ただ、時間がずれているということだと思います。
そして、現在
サンフランシスコ湾においては、まず
法律があるということです。その
法律の
目的は、湾のかけがえのない
資源を守るということが第一の
目的でありまして、それにあわせて第二の
目的として、その湾が持つ
エネルギーを最大限開発していく。
埋め立てを最小限にとどめながら開発する。その二大
目的で長期的な、それも五十年先までの湾岸の
人口の張りつきを考えて長期
計画を立てております。それがベイプランというわけですけれども、それを策定するに当たっては、大体三年の調査期間をかけました。そして、その報告書は二十三冊にまとめられているわけですけれども、それらの資料が、一般市民が知りたいというときには多くの公共の図書館とか、それからそこの事務局へ行きますと閲覧できるという
状態になっているわけです。そしてまた一般向けには、それを全部圧縮した小冊子、ベイプランというのが発行されておりまして、だれでもそれを見ることができる。それをつくるときに、BCDC、
サンフランシスコ湾保護開発
委員会というものが一九六五年につくられております。マカテアペトリス法というのがその湾を守る
法律なんですけれども、それがやはり一九六五年につくられております。
そして、それをもとに湾
計画を立てるときに連邦政府の代表者、州の代表者、それから郡の代表者、市の代表者、それから市民代表。そのほかに諮問
委員会あるいは評議
委員会がありまして、それが専門家の建設に関する評議
委員会であるとか
環境に関する評議
委員会であるとか、そういうものの評議
委員会がございます。
あとはスタッフがいて、そしてベイプランを公開して、悪いところは悪いというようなことでやっている。
東京湾は二県一都で自由な発想で進めてきているわけですけれども、そういう点が大変違うのじゃないかと、そう思います。
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○
和田静夫君 ありがとうございました。
本格的な論議は一般質問に回しますが、この
横断道路が仮に三分の二がトンネルになるといたしましても、
環境庁長官、
環境に対する
影響というのは、これははかり知れないものが私はあると思うのです。今もお話がありましたがね。
ところが、昨年九月に道路公団から出されました中間報告を読んでみました。これは
環境への
影響がどうなるのだろうか、極めてラフにしか書かれていないのであります。例えば、今お話がありました
盤洲干潟がどういう
影響を受けるのだろうか。恐らく
環境庁長官の選挙区のことですが、
盤洲干潟は
東京湾内部の水質や、あるいは魚、野鳥の生息にとって、これは欠くことができないのが常識になっているわけであります。で、まとまったものとしては唯一残された干潟だというふうに言われています。そうすると、これがどうなるのかは中間報告ではさっぱりわからぬわけでありますが、いかがですか。
-
○国務大臣(森
美秀君) 今、先生御指摘の
盤洲干潟の問題、私実は一週間前の日曜日に行ってまいりました。大変いい
環境で今残っておることは事実でございます。したがいまして、
東京湾横断道をつくりますについては、事業者とよく連絡して、よき自然を残しておきたいということを考えております。以上でございます。
-
-
○国務大臣(森
美秀君) 十二、三キロにわたっておりますので、
横断道ができまして多少の私は
影響を受けると思いますが、私が参りましたのは小櫃川の近辺でございます。この辺は十分に残っていくだろうと確信して帰ってきた次第でございます。
-
○
和田静夫君 農水大臣、
漁業の問題がどういう
影響を受けるかさっぱりわからぬのですが、あなたはおわかりになっていますか。
-
○国務大臣(
羽田孜君) ただいま
日本道路公団の方で、
日本水産
資源保護協会、こちらの方で、この
横断橋をつくったときにどのような被害が出るか今調査しておる。そして、その結果が近々出るというふうに私ども伺っております。
-
○
和田静夫君 私は、
東京湾を死の海として、そして
漁業に対してはお金を積んで解決していくというやり方は、これは今も
参考人からお話がありましたように、反対であります。したがって農水大臣、
漁業が続けられるというような形でもって十分な対処が必要なんですが、どういうふうにお考えですか。
-
○国務大臣(
羽田孜君) 私どももこの調査の結果を見つつ、これは当事者である道路公団に対して、お話しいただきますように、建設省と十分協議してまいりたいと、かように考えております。
-
○
和田静夫君 この
横断道路がさまざまな
問題点を抱えていることは、今の議論で一端が明らかになりました。その問題の解決の見通しがついて、初めて着工の是非が問われる、そう考えるべきだろうと思うんです。
そこで総理、そのためには何よりもまず情報の、調査情報というのが公開されていないんですよ。で、さっぱり判断のしようがないんです。ここのところを保証してもらいたいと思うんです。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君)
東京湾横断架橋につきましては、
昭和四十年代から道路公団及び建設省を中心にいたしまして長年月にわたって調査をしてきておるところでございます。もちろん、もしこの大事業を行うという場合には、
漁業関係の
皆さんあるいは
環境関係に御迷惑をおかけしないように厳重に規制を行いつつ保全を行う、そういう考えに立ちましてこれは行うべきものであり、その
環境調査あるいは
漁業に対する
影響調査等も十分に行って、そして関係者の御理解をいただいて行うべきものと考えております。
具体的な方策につきましては、御要望があれば建設大臣から答弁させます。
-
○国務大臣(江藤隆美君)
昭和四十一年から建設省が調査にかかりまして、そして五十一年から実はこういう水質問題あるいは一般的な生物調査等にかかりまして、五十八年度から今農水大臣が申し上げました専門家による
漁業調査を本格的に行ったわけであります。先生がおっしゃったように、昨年の九月に中間報告を行いまして、今月じゅうに全体の取りまとめをいたします。これが本格的なものでありまして、これが出ますというと全容が明らかになります。この明らかになった結果をもちまして閣議決定に基づく
環境影響評価を受ける、こういうことになりますから、これを関係の都あるいは県、それから市町村、また関係の団体等にこれをお示しして、もちろん
環境庁長官の御意見を承る、こういう手続も必要でありますが、私どもの十年間にわたる研究あるいは調査の成果というものを各方面にわたって評価をいただく、その上で建設の問題に取りかかる、こういうことになろうかと思います。
-
○
和田静夫君 総理、問題の解決の見通しがつかない限り、すべての関係者の合意が得られる、そういうような
状態にならぬ限りは、着工はやっぱりやるべきではないでしょうし、その意味では柔軟に
計画が変更される、そういうような保証があってしかるべきだと思うんですが、いかがでしょう。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) もちろん公共物でありますから、関係者
皆様方の御意見も伺い、また御了解もいただいて、これは円満に進めることが望ましいと考えております。
-
○
和田静夫君 もう一つは、今も
参考人からお話がありましたが、私たちは
東京湾が今瀕死の
状態にあると言っても過言ではないような
状態ではないかと実は思っているんですが、
サンフランシスコ湾の例に倣って
東京湾を総合的に保全する立法措置、対策、そういうものが必要であると考えるんです。ここは自治大臣、
環境庁長官、検討に値するとお思いになりませんか。
-
○国務大臣(森
美秀君)
サンフランシスコ湾につきましての保全の州法につきましては私どもも勉強しておりますが、これらにつきまして今後各省と協議してやってまいりたいと考えております。
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○国務大臣(小沢
一郎君)
漁業の問題を含めましてあらゆる問題に、地域社会に大きな関連を持つものですから、総合的な観点から検討して、円満に、そして地域のために国民のためになるように対処していかなければならない、そのように考えております。
-
○
和田静夫君 総理、ちょっと今のお二人の答弁とも的外れでありますが、私はサンフランシスコの持っておるような
法律、いわゆる湾保全のためのそういうような立法措置なり対策なりというものを政府としてはこの機会に
東京湾としてお考えになる、こういうことが必要じゃないかと思っているんですがね。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 我が国におきましては、公害等につきましてかなり厳しい規制があり、水質汚濁あるいは
環境保全等についても大体法体系としては今整っていると私は思うんです。
東京湾だけという特別の立法が必要であるかどうか。今の
日本の厳しい規制で私は十分ではないかと思うんです。瀬戸内海にいたしましてもあるいはその他の港湾等にいたしましても、やはり同じような厳しい規制のもとにあるわけでございますから、
東京湾におきましてもその厳しい規制を適用していささかも公害が起こることがないように配慮しつつ行うべきであり、それでいいのではないかと今考えております。
-
-
-
○
和田静夫君 戦後政府が部落問題解決に本格的に取り組むようになったのは、一九六五年、同和対策審議会答申が出されて、一九六九年に同和対策事業特別措置法が制定されて以降であります。この二十年間の取り組みによって部落差別の実態というのは
環境面などにおいて改善を見ているわけでありますが、教育や仕事の実態、さらには差別事件に代表される差別意識の実態にはなお深刻なものがあることは御存じのとおりであります。
同対審は、「いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、
日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」「その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」というふうにしているはずであります。
中曽根総理の、部落問題の持つ深刻さとこの問題解決の重要性に対する認識をまず承りたい。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君)
日本国憲法にのっとりまして基本的人権の尊重、擁護ということは最も重要な政治の責任であると思っております。そういう意味におきまして、政府も人権保護というものを中心にいろいろ
施策をしてきたところでございます。特に、差別の問題あるいは地域の差別の問題等につきましては立法もございまして、その趣旨にのっとりまして今までも努力してきたところでございます。
大体振興法等の趣旨とするところは、具体的には生活や福祉の問題を積極的に取り上げて、そして同水準あるいはそれ以上の一般的なものにこれを回復、上昇させるという考え方に立ってやって、事業も相当残っておったというところから、何回かこの
法律はさらに延ばされてきたわけでございます。この
法律を忠実に実施いたしまして、
法律の
目的とするところを早期に完了するように今後努力していきたいと思います。
-
○
和田静夫君 封建社会にその歴史的な起源を持つ部落問題を、これだけ発展した我が国がいまだに解決していないという、こういう
状態というのは、我が国が本当に民主社会であると言うことができるのかどうかという疑問さえ抱くのでありますが、この問題を根本的に解決してこそ
日本は民主社会と言える。同対審は、「同和対策は、生活
環境の改善、社会福祉の充実、産業、職業の安定、教育、文化の向上及び基本的人権の擁護等を内容とする総合対策でなければならないのである。以上の諸
施策は、おのおのその分野において強力に推進されなければならないが、同時に、総合対策として統一的に把握され、有機的かつ
計画的に実施されなければならない。」と言っているわけであります。
そこで、
日本の民主社会の実現のためにも部落問題の根本的な解決が求められていること、さらにそのための
施策の実施に当たっての留意点に関して、これはどういうふうにお考えになっていましょうか。
-
○国務大臣(江崎真澄君) 過去十七年にわたって御指摘のように随分努力をしてまいりました。生活
環境等においては確かにある程度の改善もなされ、それなりのいい結果を見ておることは御了承のとおりだと思います。ただ、精神面、差別の心の問題、これはソフトの問題と、こう表現されておりますが、確かにまだ残っておると思います。これは粘り強く教育、啓蒙を徹底することによってこうした
環境を一日も速やかに是正しなければならぬ、私どもも非常にこのことを痛感し、同じ
日本人でありながら、なぜ封建時代のこんなことが論議されるのか、いかにも遺憾にたえないと思っております。現在、基本問題について検討部会をつくりまして、そして基本調査をしておるところであります。
-
○
和田静夫君 今もお話がありましたように、現行の地対法も残り一年となったわけです。これまで指摘した深刻な部落差別の実態を踏まえて、改めてこの同対審答申の精神に立ち返って部落問題の根本的解決を速やかに達成する、そういうことのための法整備というようなものが考えられなきゃならぬだろう。この点に関して政府は、今答弁にあったように、この地対法後のあり方について地対協の検討を依頼して、そして基本問題検討部会が設置されたということであります。その検討の基本的な方向としては、私は当然同対審答申を踏まえた部落問題の根本的解決の方向である、そういうふうに理解をいたしておきますが、総理、よろしいでしょうか。
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○国務大臣(江崎真澄君) これは基本問題検討部会も十分検討していただきますし、また私ども担当官庁である総務庁としても御意思の存するところを十分承りながら基本的にどう対応していくか、まだ一年ちょっと時間もあるわけでありますから、もうしばらく時間をおかしいただきたい。
また、かねてから御主張のあります、新しい
法律によって規制したらどうか、こういう御意見もよく承っております。しかし、これを例えば法制化することによるもちろん効果的な面もありましょう。しかし、その
法律を永続化することによって同和問題を地域改善対策特別措置法に変えたりとか、いろいろ苦心して今日に至っておりますが、リアクションの面も考えていかなければなりませんので、慎重にこの基本問題と取り組んで検討をいたしたい、これが現況であります。
-
○
和田静夫君 総理は施政方針演説で、戦後の民主主義と平和を前進させたいという趣旨のことを述べられました。その限りでは賛成です。しかし、どうも実際中曽根内閣がおやりになっていることは、その美しい言葉とは裏腹に、
日本のある意味では民主主義を後退させる方向に踏み出させていっているのではないだろうかということが数々散見されるわけであります。民主主義の基本的な構成要素として地方自治があるわけであります。憲法は地方自治を民主主義に必須の要件としたことは、これはもうひとしく政治家である者は知っているのでありますが、憲法は地方自治を民主主義の必須の要件とした。ところが、中曽根内閣は地方自治、住民自治を踏みにじるという幾つかの現象を今つくり上げている。東京都の三宅島で、神奈川県の逗子市で進行している事態というのは、まさに政府・与党による地方自治の破壊であるというふうに私は述べて過言ではないように思うのであります。
三宅島において今何が起こっているか。政府と自民党は、アメリカの空母ミッドウェーの艦載機夜間訓練基地の建設をごり押ししているわけであります。基地建設に対して三宅島の村民有権者は八五%が御存じのとおり反対をいたしています。にもかかわらず、政府と自民党は七百億円という札束でほおをたたくがごとき、そういう説得工作に乗り出した。もう唖然といたしました。これは離島の小さな事件ではありません。ここに私は、
日本の民主主義の質が問われる、そういうふうに実は考えているのであります。防衛は国の専管事項であるという理屈の是非、これはひとまずおいて、私は制度的な事務の配分を問題にしているのではない、行政のプロセスとして、住民の合意なき強行は内容としての民主主義の後退を意味していると考える。自治大臣、憲法世代なんですから、あなたは。
-
○国務大臣(小沢
一郎君) 国全体の政治は、いわゆる国、中央政府そして自治体、地域、地方と、両々相まって初めてその政策効果をあらわすものでありますし、有効に遂行することができるものであろうと思います。したがいまして国の
施策、それにつきましても、もちろん住民の協力、正しい理解、これを得ながら進めていかなければならない、そのように考えております。
-
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 憲法に地方自治の本旨に基づいて行うと規定されておる地方自治というものは、
日本国憲法の重要な骨格の一つであると思っております。そういう意味におきまして、中央政府といたしましても十分この憲法の精神を尊重しながら、両者で協力しつつ国全体の繁栄に資するようにしていきたいと思っております。いろいろな問題が起きますが、ちゃんと整備されておる法規体系のもとに、しかるべくすべて民主主義的手続で進行していると思うのであります。この民主的手続という国会で決められた手続が順調に進行するということは、やはり中央、地方が考えなきゃならぬことで、それは行われていると私は思っておるのであります。
三宅島の問題につきましては、ともかく話を聞いてください、説明をお聞きくださいという御要望を申し上げておるので、やはり対話ということは民主主義の基本的な大事な要素でありまして、話は聞いてみる、その上で判断をなさるについて強制やあるいはそのほか不当なことはやらない、自由に御判断ください、しかし一応お話はお聞きください。これは民主的な手続としてやっぱり考えられることではないかと思います。
-
○
和田静夫君 私が述べましたように、利益誘導政治の典型が民主主義をゆがめる、こういう
状態を残念ながら三宅島の事態に見ます。しかも、見返り事業の七百億円というのはもう根拠が極めて薄弱です。
若干一つずつ尋ねますが、まず厚生省。
自民党が提示した上水道の整備のための海水淡水化施設、これは十二億四千万ですね。これは全額国の負担ですか。
-
○
政府委員(森下忠幸君) お答えいたします。
簡易水道事業としてこういった淡水化の施設を整備いたします場合には、三宅島に対しましては、ここは離島でございますので離島振興法が適用されることになっておりますから、現行の制度では施設整備の二分の一が補助できることになっております。
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-
○
政府委員(森下忠幸君) 同様に現行制度では二分の一の補助をいたします。
-
○
和田静夫君 五十億円かけてヨットハーバーを建設すると言っているんですね。運輸省は話を聞いているのでしょうが、これは実現可能ですか、運輸大臣。
-
○国務大臣(三塚博君) 三宅が合意を得てスタートを切りますれば、その線に沿って切りますと、こういうことです。
-
-
○国務大臣(三塚博君) 合意いたした事業は政府の責任において処理をいたします。
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○
和田静夫君 どういう形で出るのかと聞いているんです。
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○国務大臣(三塚博君) ヨットハーバー、これは三宅の合意に基づくものでありますから、その時点で協議をして財源の捻出を考える、こういうことであります。
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○
和田静夫君 厚生省の答弁ははっきりしたのですよ。全額と言っているけれども、言っていることはうそであって、二分の一なんだと、こうはっきりしたんです。運輸省、五十億円はどういう形で出るんですか。
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○国務大臣(三塚博君) ハーバーでございますから港湾事業として一部採択をし、それからヨットハーバーでありますから民活などを考慮しつつこれに対応いたす、こういうことであります。
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○
和田静夫君 そんな思いつきの答弁じゃだめですよ。ちゃんと厚生省のように立法に基づいて言ってくださいよ、
法律に基づいて。
-
○国務大臣(
加藤紘一君) 三宅島に対します対策につきましては、現在まだ当然のことながら行政ベースにのっていない話でございまして、また六十一年度予算にも当然のことながらのっていないことでございます。現在、党といたしましては、政府の状況をいろいろ聞きながら政治的に、今後三宅島に若干の御迷惑をおかけするわけでございますから、どういった村の振興策をするか、党レベルで御相談いただいております。政府と与党との関係でございますので、いろんな部分で党主導型の政策論議が行われることは当然のことでございまして、そういう中で村側のいろんな財政状況等を聞きながら、そして党として何ができるかということを政調会長を中心に今御議論いただいておるわけで、詰まっていない部分は当然のことながらまだございます。
ですから、私たちとしては村にどのようなことをやってあげられるか、そしてそれぞれ国と自治体がどういうふうに負担したらいいか、そういうことの話し合いもあるものですから、ぜひ話し合いの場を持たせていただきたいということを政府として強くお願いしている段階でございます。
-
○
和田静夫君 運輸大臣の答弁は大変けしからぬですが、ここで全貌がだんだん明らかになりつつありますから。
農水大臣、かん排事業、これは実現できますか。
-
○
政府委員(
田中宏尚君) 離島につきましても、技術的に可能でありますと制度的にはかん排事業も仕組み得る形になっておりますけれども、我々が若干調査等したところによりますと、天水なりあるいは地下水、こういうものにつきましては大
規模なかん排事業をやるというような立地条件には必ずしもないというふうに聞いております。
-
○
和田静夫君 これも七百億のうちで、札束で村民のほおをたたいているんです。今答弁がありましたように、三宅島ではできないことなんです。あるいは
国土庁長官、溶岩流地を公園用地として買い上げるということなんですが、これは現行制度は全額国の負担ですか。
-
○
政府委員(
吉居時哉君) 現在、三宅島の申請に基づきまして、本年二月二十一日付で集団移転促進事業
計画の変更を承認いたしまして、買い取りは行わないということを決定しているようなところでございます。
-
○
和田静夫君 しかも、これをやったとして二分の一の補助なんですね。要するに七百億円といっても内容の裏づけが全然ないんですよ。裏づけがないものを持ち込んでやっているわけです。これは非常にひどい。私はまさに民主政治の否定につながっていると思っている。自治の否定につながっていますよ、自治大臣、ここのところは。村の財政の持ち出しがかなり必要となる。
渡辺通産大臣はうまいことを言ったよね、毛針で村民を釣るというような。こういうときに使うんですよ、あなた。そうじゃありませんか。
-
○国務大臣(
渡辺美智雄君) 私の発言とは関係ありません。
-
○
和田静夫君 藤尾政調会長がお持ち込みになっているところの七百億円というのは、生きたえではなくても針だ、こういう
状態。しかしそれ以前に、利益誘導で村民を説得しようなどとすること自体が民主主義の否定であります。これは
防衛庁長官、
計画は見直されるべきです。
-
○国務大臣(
加藤紘一君) この三宅島の問題と地方自治の問題につきましてでございますけれども、私たちのように国土の狭いところでいわゆる防衛施設関連のものをつくろうと思いますと、なかなか難しいことがございます。特にアメリカのように広大な
土地があれば施設も自由につくれる、反対もないということがありますけれども、私たちの国土の場合には常に防衛当局としてはその悩みがございます。私たちとしては地方自治を尊重しなければなりません。総理もおっしゃったとおりです。ですから、私たちはできるだけ話し合いで説得を申し上げたい。誤解が多くある。
例えば、
和田委員のお言葉の中にも基地をつくるというお言葉がありました。三宅でもそうみんな思っておられます。基地というイメージと今度の私たちがつくろうとしております官民共用の飛行場というものは全く違うものでございます。カービン銃を持って鉄条網があってというものではなくて、飛行機が年間六十日ないし七十日、夜間行きまして、そしてすぐそのまま帰ってしまうわけであります。そして、米軍の要員もほんの二十人ぐらいそのとき行きますでしょうか。そういうような感じのものでございますので、そういった誤解もまず解くべきなのではないか。そういった意味でもぜひ話し合いをしていただきたい。
ただ、現在はない騒音が三宅の島に六十五ホン程度ですけれども年間限られた日数であっても発生する、それは事実でございます。ただそれは全国の中で、いろいろ考えて三宅の場合に御迷惑をかける度合いが一番少ないのではないかと思って三宅をお願いするわけですが、だからこそ、私たちはそれに見合った村の振興策を考えていかなければいけない。決して利益誘導というものではなく、村に対して御迷惑をかける分について、国民的な事業としてかけるわけですから、その分、国全体として何らかの振興
施策を考えるのは国の行政当局としては当然のことのように私は思います。
-
○
和田静夫君 と言われてみても、私は対話を否定はしていません。もちろん十分に尊重しなければなりません。ところが、基礎になるものが、今私は部分的なことしか申し上げませんでしたが、ある意味では、一定のところはできないことをできると言ってみたり、もう極端にはうそで固まっている部分があるわけですね。こういうようなことは、あなた方として恥ずべきことである、そういうことは指摘をしておかなければなりません。
次に、逗子の池子弾薬庫跡地の米軍住宅建設問題も、全く同じ問題を私は包蔵していると思う。既に逗子の市民は二度にわたって建設ノーを明確に意思表示したわけですね。ところが、防衛施設庁は全く知らない顔で建設
計画を強行しようとしているでしょう。住民自治や民主主義を尊重するのであれば、当然
計画は根本的に見直されるべき、ですよ。
自治大臣、まずそうお考えになるのは当然だと思うんですが、いかがですか。
-
○国務大臣(小沢
一郎君) 先ほども御答弁申し上げましたように、国の
施策も地域の住民の理解を得て、そして初めてその効果を上げることができますし、政策を遂行することができるわけであります。したがいまして、地域の理解を得るように国も努力しなければならないし、お互いに理解を深め、その上で政策が実行されるように願うものであります。
-
○
和田静夫君 総理、今回の逗子市議会リコールの成立ですが、これを一体どういうふうに受けとめられますか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 地方自治の本旨に基づいていろいろつくられておる諸制度、これが機能している、そう思います。賛成、反対おのおのそれらの手続があるわけでございますから、その手続に従って機能していると考えております。
-
○
和田静夫君 やっぱり議会のリコールの成功を考えてみた場合に、憲法世代としての
防衛庁長官は
計画の変更について大胆である、それぐらいであるべきですよ。
-
○国務大臣(
加藤紘一君) 現在、リコールが市長さんにつき、また議会につき、それぞれ進行いたしておるところでございますから、国の行政の
立場にある人間としてこの問題についていろいろ申し上げることは、現地に混乱を与えますので差し控えたい、こう思っております。
私たちとしては、いろいろ施設をつくる場合に、当然のことながら町の
人たちの理解を得なければなりません。戦前と違いますのは、昔は強権でやったかもしれません。しかし、私たちとしては説得の力をもってこれを執行していくというのが戦後の行政の中で必要なことであろうと思って精いっぱい努力してまいりたい、こう思っております。
-
○
和田静夫君 自由民主党の国民運動本
部長は、反安保を公約に市を手中におさめた市長が、自分の支援者を使って反民主主義を平気で行っている、民主主義の危機だ、こういうふうに述べていますが、同じ見解ですか。
-
○国務大臣(
加藤紘一君) かなり現在地元におきましてはいろんな論議がございます。したがいまして、政党間で行われておりますことにつきまして、私たちがここでとやかく言うことは差し控えます。
ただ、私たちとしては、緑が論争になっておりますけれども、私たちとしても緑の大切さというものは十分認識しておりますからこそ、アセスを正確な手続で、膨大な事務量になるが、その手続を踏んでおるわけでございます。私たちは緑を大切にしている
計画なんだということをぜひわかっていただくために精いっぱいの努力を、今PR活動をやっていることでございます。
-
○
和田静夫君 答弁が外れているんですけれども次に進みます、時間の関係もありますから。
新聞報道によりますと、このリコール期間中に防衛施設庁はビラをまいたんですよ。今、
防衛庁長官はいみじくも、いろいろのことをここで言ったならば現地に混乱を起こすからそれは差し控えるんだと、
防衛庁長官の考え方はそれでいいと思うんですよ。ところが、
防衛庁長官が責任を持っておるところの防衛施設庁はそうはなっていない。ここのところの事実関係、日時等報告ください。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
リコールはダブルリコールと言われる形で、市長に対する建設賛成派、市議会に対する建設反対派が行われておりまして、これに対する論評は差し控えますけれども、事実関係を申し上げますと、十月の二十八日から始まっておりまして、既に三月の二日、市議会の解散直接請求が行われた。そして、それに基づきまして四月の六日に市議会の選挙がございます。また、来る三月二十三日には市長の解職請求のリコールが行われる運びとなっておりまして、それぞれ法定の期間、四十日及び五十日ですが、もし成立をいたしますと、約半年にわたってこのリコールによる地方自治法に基づくところの住民の意見を決める政治的な動きがあろうかと存じます。
一方、私ども防衛施設庁といたしましては、本件につきましては長期間、前市長ではございますが、三島前市長及び市議会と協議を重ね、その結果、ようやく御理解を得まして、五十九年の六月には三十三項目の条件つきで受諾をいただいたわけでございます。そのうち二十七項目の条件を誠実に履行することを条件に、私どもはこの作業を進めておるわけでございますが、先ほど総理あるいは
防衛庁長官がお答えをいたしましたとおり、防衛施設行政というのは必ず反対あるいは不満を伴うものでございますので、住民に十分理解徹底をさせ、御理解、御協力をいただくことが私ども行政の努めであろうかと考えております。
この期間、政府の大きなプロジェクトのPRを一切やるなと、こういうことでは私どもは責務が果たせないということから、リコール期間中ではございますが、既に四回かと思いますが、ビラ、チラシ等による広報宣伝活動を行っております。この法的根拠は、私ども防衛庁設置法第六条で権限が与えられており、かつその責務を負っておるものと考えており、この周知徹底の作業によりまして、このリコール運動とは関係なく、私どもが現在進めております県条例に基づくところの
環境アセスメント、これの公聴会が近く行われるわけでございますので、逗子市民及び関連をいたします鎌倉、横浜の関連地域の住民に対してビラを配布いたしました。
-
○
和田静夫君 この時期になったのには理由があるんでしょう。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
リコールとの関係をお尋ねかと存じますけれども、私どもは継続的かつ
計画的に広報活動を進めておるところでございまして、特に年末から六十年度予算の第四・四半期、この時期は年度がわりの時期でございますし、四月から、現在御審議いただいております予算案がお認めいただきますとしますれば十三億五千万の池子米海軍家族住宅の、しかも将校、下士官の建設
計画の予算をちょうだいいたしておりますので、この時期、この所掌事務の周知宣伝に関することという設置法六条による国としてのPRは
計画的に続けておる。したがいまして、リコールの投票時期あるいは市長選、あるいはその他とは関係なく、このPRは
計画的に続けておる、こういう状況でございます。
-
○
和田静夫君 本院決算
委員会における答弁とこの答弁違うのはどういうわけですか。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
決算
委員会における答弁も同様趣旨のことを申し上げております。
-
○
和田静夫君 じゃ、議事録を起こしてもらいましょう、そんなこと言うんなら。まいた日時にも何にも触れずに答弁して済まそうとしたってだめですよ。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
決算
委員会における答弁の際には、こういう時期を避けて行うべきではないか、こういう御指摘、あるいはこのリコールに関与したんではないか、国の予算をもって地方自治を侵犯したと、こういう趣旨の御質問に対しまして、リコールとは関係なく、こういう政府の重要なプロジェクトを行う場合にはPRが必要でございます、こういう御答弁を申し上げております。
-
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
私、承知をいたした上でやった広報活動でございます。
-
○国務大臣(
加藤紘一君) 私も報告を受けております。
-
-
○国務大臣(
加藤紘一君) 事前にこういうことをやるということで、PR活動はしっかりやりなさいと言っておきました。
-
○
和田静夫君 いや、
防衛庁長官、余り無理されない方がいいな。そんなのわかっているわけはないんだから。これは事実と違う。
三種類のビラをまいたんですよ。そうでしょう。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
一つは、まず現在の池子の景観図、これの横に引き伸ばしたカラー写真、もう一つは完成後の、これは
環境アセスメントの案の中に登載してございます完成した際の景観図、これを対比させたものを第一面にいたしました。第二面には、運動施設等が市民も使えます、そうして健康で明るい運動施設、市民の福祉のためになりますと、こういう二種類のビラ。それともう一つは、たまたまその時期に、これは後でアメリカ側からの訂正をいただいておりますが、ピアットさんと申しましたか、海軍省の次官補が、池子以外にも代替候補地があるようなことをアメリカの国
会議員さんにあてた手紙、この中身が間違っておるということを言ってきたものですから、そのことの広報を行いました。その意味で、この内容につきましては横浜施設局において起案をいたし、
防衛施設庁長官である私が決裁をいたして発出したものでございます。
-
-
○国務大臣(
加藤紘一君) それを出す前に私も目を通しました。それで、なかなかよくできたパンフレットだろうと思います。後で若干地元で問題になって、芝生の中で走っている女性、家族を示す意味で女性を出しているけれども、これはおかしいじゃないか、大体米軍人の家族住宅だから
日本の女性が走っているわけないというような点、何か問題になったようですけれども、その辺は確かに言われればそうだと。今度パンフレットをつくるときには、予算の関係もあるでしょうけれども、米人のモデルを使ってやるように言っておきました。
-
○
和田静夫君 広報活動だと言ったのはどこに広報活動と書いてあるの。いわゆる公聴会ですね、公聴会のための広報活動なんてどこにも書いてないよ、そんなもの。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
御指摘のように、ビラの内容を先生もごらんのとおり、公聴会が行われますということはこれはまだ書けない状況でございます。なぜならば、横浜と鎌倉につきましては既に三月十二日でしたか、日にちが決まっておりますが、逗子は今たまたまリコール騒動の最中でございますので、まだ日にちが決まっておりません。しかしながら、長洲県知事が、このアセスの公聴会はなるべく早く関係地域において行いたいという御意向がございました。
また、公聴会の実施を行うということはそこに書いてございませんけれども、同時に市長リコールとかなんとかいうことはもう意識して一切書いてございません。それはお読みいただくとおわかりいただけると思いますが、特にこれまでも何月何日に説明会が行われますというような具体的なビラをまいたことがございます。逗子市内等において十四回の説明会を行いました際には、そういう具体的な期日を明示し、その広報の具体的な目標を明示いたしましたが、公聴会が近く行われるであろうということは決まっておりますけれども、日にちが決まっておらないところから、そのことはまた明示しておりません。
-
○
和田静夫君 どういう手続でもって、あなたは日時に触れないんだが、二十四日、二十五日にこれが集中的にまかれるという
状態、庁内手続でおくれた、こう言っているんだから。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
従来この種のチラシをまきましたのは六十年の二月十八日、六十年の四月八日、六十一年の二月二十四日と二十五日、それから先ほど申しました海軍次官補の訂正、これは三月の一日と二日に配布をいたしたところでございますが、私どもとしてはもう少し予算があればもっと活発にどんどんやりたいわけでございます。しかしながら、限られた予算の中で効果的にやるためには何とかいい原案をつくりたい。また大変残念ながら予算が十分でないところから、印刷所の選定それからその作業の云々と、こういうようなことからもっと早くつくりたいものがおくれたことは事実でございます。
それから、内容につきましても先ほど大臣が御答弁いたしましたように、やはり日米の家族がともに生活をエンジョイしている写真、こういうようなものをやはり選べばよかったなという反省がございまして、次回配布を予定いたしておりますものには、米海軍家族と
日本の周辺住民が盆踊りをやっておるところを出す予定でございます。
-
○
和田静夫君 このビラというのは、普通の
状態では読めないぐらいですから立派なビラじゃないですよ、ビラそのものとしたら。この字なんて、とっても読めるような代物じゃないんです。一体直接の発行責任者はだれですか。
-
-
○
和田静夫君 どんなふうに抗弁されましょうとも、この三種類のビラというのは公権力のリコール選挙への介入ですよ。特に、「米軍家族住宅の池子建設は日米間で決定済みです」、これをリコールの日にまくというのも、そんなふざけた話ありませんよ。そう思いませんか。
-
○
政府委員(佐々
淳行君) お答えいたします。
私どもは、日米合同
委員会においてこのことが既に決定されておるということは再々PRを申し上げているところでございます。横浜防衛施設
局長配布の資料にそのくだりがございましたのは、アメリカの海軍次官補が池子以外にも代替地があるのではないか、こういうことを上院議員でしたかに手紙でもって書いたと、これが問題の発端でございますので、この問題は既に決定済みである、この決定済みであるということを特にリコールの日に出したというものではございませんで、過去数カ月間私ども国会答弁におきましても、新聞記者会見におきましても、地元市民に対する広報宣伝の際もこのことは言い続けておる問題でございます。
-
○
和田静夫君
国家公安委員長、このビラの配布は地方自治法八十五条、公職選挙法百三十六条の二違反であります。選挙違反です。
-
○
政府委員(大林勝臣君) 今回のリコールの問題に限らず、リコールにおきます文書の頒布につきましては、一般の国会あるいは地方の公職の選挙と異なりまして、文書に関する制限というものはリコールの際にはこれは特段の規定を設けておらないところであります。
-
○
和田静夫君 いや、今の答弁、間違っていましょう。そんな答弁、間違っていますよ、よく読んでみてください。じゃ、条文全部読んでみてくださいよ。
-
○
政府委員(大林勝臣君) 制度の問題といたしまして、選挙運動でございますと、ピラとかポスターについていろいろ制限規定があるわけでございますが、リコールにつきましては、形式的なリコールの政策の普及宣伝に関する制限につきましては特段の規定を設けておらないところであります。
-
○
和田静夫君 これはだめです、
法律解釈ですから。自治省から出ているコメンタール全部持っているんですから。
-
-
○
委員長(
安田隆明君) 速記を起こして。
政府の方で今、統一見解をまとめておりますので、暫時休憩をいたします。
午前十一時十二分休憩
―――――・―――――
午前十一時十四分開会
-
-
○
政府委員(大林勝臣君) 先ほどお答えいたしましたのは、選挙あるいはリコールとの関連で選挙運動に関する規制というものは、リコールについては文書の数とか量とかそういうものについて一般的にはございませんが、その使用する形態といたしまして公務員の地位利用とかそういった実質的な問題に波及する場合にはこれは問題になるわけでありますが、その間の具体的な事情については私ども判然としてはおりません。
-
○
和田静夫君 それは今言われたとおりなんですよ。公務員の地位利用なんです。そこで
国家公安委員長、どうされます。
-
○国務大臣(小沢
一郎君) ただいま行政
局長から答弁いたしましたけれども、いわゆる事実関係も判然といたしませんし、また法解釈につきましては
政府委員から答弁させます。
-
○
政府委員(大林勝臣君) 選挙運動一般論としまして、公務員の地位利用というのは公務員が持っております。その
立場なり権限、こういったものを利用して選挙運動を有利に運ぼうと、こういうことでございまして、非常に具体的な問題につきましては事実認定の問題になってくるわけでございます。私ども、一般的にどういうものが地位利用に当たるかどうかについて、一般論としてはなかなかお答えできないところでございます。
-
-
-
○
和田静夫君
国家公安委員長、リコール期間中は行政が申立を堅持して選挙民の判断に
影響を与えるような一切の行為をしてはならない、これが立法の趣旨なんです。違反はもう明らかであります。特に国家公務員がかかわった違反はこれは明らかであります。特に「米軍家族住宅の池子建設は日米間で決定済みです」というビラをまいているんです。これは大変ひどい、防衛庁は。これは
防衛庁長官がいかに上手な答弁をされたって、この事実関係は消えませんよ。これはリコールをやっても米軍住宅はつくります、住民の
皆さん勝手にどうぞ、こういう姿勢ですよ。対話も何もあったもんじゃないのです、これは。
国家公安委員長。
-
○国務大臣(
加藤紘一君) 米海軍の次官補でございましたか、それに関する発言はその直前に新聞に出まして、その事実関係についての問い合わせがかなり頻繁に防衛庁にあったと聞いております。したがってそれに合わせたものでございまして、新聞に報道された日とそのビラのタイミングを見ていただきますとその辺はおわかりいただけると思います。
それから逗子市でございますけれども、リコールの請求の署名運動、これが市長さん及び議会についてございました。それからリコール選挙をやるべきかどうかについての選挙、それから今度の議会の場合はそれに基づく本選挙というのがありまして、議会、市長、この二つにつきまして三回やるわけでございますから、延々半年ぐらいかかっておるわけでございます。その間、私たちが広報活動しないというわけにはいきませんことを御理解いただきたいと思います。
-
○
和田静夫君 あの横浜防衛施設局のビラというのは、これは自治法の八十五条の立法の趣旨に全く背いている。それだけでなくて、人事院規則の一四―七にいう本来の職務を遂行するための当然行うべき行為を著しくこれは逸脱していますよ。つまり本来の広報活動を著しく逸脱しているんですよ、これは。
第一に、わずか十日の間に集中して三種類のビラを、しかも全戸配布するということ自体がリコールヘの介入でなくて何ですか。こんなことはやったことないじゃないですか。広報活動、広報活動といろいろやるけれども、今まで全然やってなかったのがリコールの活動のときに集中的に落とす。見え透いているじゃないですか。きれいごとの答弁だけじゃ終わらない、これは。自治そのもの、民主主義の基本としての自治そのものに対する政府の挑戦ですよ、これは。そのことを頭に置いて答えてくださいよ、あなた方は。
第二に、施設庁は公聴会のためにまいたと、こう言う。ところが、このビラのどこにも公聴会のことは書かれていないことはさっき指摘したとおり。特に逗子においては公聴会は決まっていない。知事がどう言った云々というようなことは話は別の問題ですよ。
公安
委員長、事実関係は以上のとおりなんだ。明らかに公選法の違反。見解を求めます、最後。いや、あなたには求めてないよ。(「大臣だ」と呼ぶ者あり)
-
○
政府委員(佐々
淳行君) それでは、
委員長の御指名がございましたので、事実関係について申し上げさせていただきます。
まず、逗子市に集中的にリコールの期間に配ったと申しますが、先ほど申しましたように、六十年の二月十八日、六十年の四月八日、この時期も署名運動その他そういう動きがございまして、二月の二十四、二十五に配りましたこの御指摘の資料は、まず第一に、逗子市だけではなくて、
環境アセスメント条例に従って、この対象区域であるところの横浜市及び鎌倉市の該当住民にも同時に配っておるということ、まずこれを申し上げさしていただきます。
それから、国家公務員の地位利用であるという御指摘でございますが、お言葉ではございますけれども、米軍家族住宅の建設事業は、これは防衛庁設置法第五条二十五号に定める駐留軍の使用に供する施設区域の提供に関すること、また、三十三号で「所掌事務に係る施設の建設工事の実施に関すること。」、さらに安保条約第六条によりまして、これは我が国の国の固有の事務となっておりまして、防衛施設庁の権限を逸脱したものではございません。それに関する広報活動は、先ほどお答えいたしましたように、設置法第六条によって私どもに権限も与えられ、庁費を使ってそれをやってよろしいということを
予算委員会においてお認めをいただいた予算によって行っておるものでございます。
なお、さっきのピアット海軍次官補でございますが、これが出ましたのが二月の二十六日でございました。それに対する回答が、大急ぎでやったんでございますけれども、たまたま三月二日になったということでございます。
なお、私どもは
環境アセスメントの条例に従いまして、昨年の十月には十万五千通に及ぶ地域住民の意見書をちょうだいして、これを全部評価をし、それに対する見解書を十月末日に出しましたが、その中に非常に多く、この米軍住宅は一体どうなっておるのか、決まっておるのかと、いろいろな御質問がございましたので、これに対する回答をしなければいけないと思って、その米軍住宅は既に決まっておりますというPRに重点を置いたものでございます。
-
○国務大臣(小沢
一郎君) 防衛庁の広報活動が、先生の御指摘のような法に抵触するかどうかは、それは先ほど申し上げましたとおり、事実関係や法解釈の判断の問題ですから、今私が答弁することはできません。
しかし、いずれにいたしましても今回のこの問題は、いわゆる国の国有地の中に住宅をつくるということでございまして、本来の法的、制度的には地方団体の了解を得るとかいう必要性のないものであります。しかしながら、私、先ほど来答弁しておりますように、国の
施策もやはり地域住民の理解を得て初めてその効果を発揮することができる、遂行することができるということでございますので、できるだけ住民の理解を得るように努めなければならないであろうということを申し上げておりますし、それに対しまして総理も
防衛庁長官も十分地域と話し合いをしたい、しなければならないと、こう言っておるわけでございますので、どうかその線に沿いまして理解を得るように、そして円満に遂行できるように私どもとしては願っておるものであります。
-
○
和田静夫君 せっかく
理事会等を通じてこの論議を進めようと思っていましたが、言ってみれば、施設
庁長官は指示したと言うんです。国家公務員としてあなたは法違反をしたんだと、私はそう言うのに、あなたは答弁を
委員長に求められてあれだけ長い答弁をされたんですが、これ以上私は、事実関係を明らかにして結論を出してもらいますまで質問を続けるわけにはまいりません。
-
-
○
委員長(
安田隆明君) 速記を起こして。
和田君の
質疑は午前はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
午前十一時三十五分休憩
―――――・―――――
午後一時開会
-
-
-
○
政府委員(佐々
淳行君) 先ほど御答弁申し上げましたチラシのうち、米軍の家族住宅の完成予定図と写真入りのものは、御答弁申し上げましたとおり、二月二十四日、二十五日に横浜、鎌倉の
環境アセスメント関係地域にも配布をいたしましたが、三番目のピアット海軍次官補の修正、これにつきましては
環境アセスメントと関係のない問題でございまして、かつ逗子市民等からの問い合わせがありましたために、急ぎ逗子市民等に広報の周知徹底を図ったものでございまして、その点御訂正申し上げます。
――
―――――――――――
-
○
委員長(
安田隆明君) この際、
委員長から申し上げます。
午前中の
和田君の
質疑の際、問題となりました防衛施設庁の広報活動等に関する件につきましては、
理事会で協議の結果、
総括質疑中に政府の統一見解を求めることになりました。
官房
長官から発言を求められておりますので、これを許します。後藤田
内閣官房長官。
-
-
-
○
和田静夫君 国民生活、税制問題に入りますが、中曽根内閣のもとで国民の暮らし向きがどのように変化をしたのか、国民の生活は豊かになったのか、それとも苦しくなってきているのか、まずこの点が問題だろうと私は思うのでありますが、総理の御認識を承りたいのであります。国民の暮らし向きは楽になったとお思いになっているのか、それとも苦しくなっているとお思いになっているのかということであります。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 我々政府といたしまして一生懸命努力しておりますが、国民の
皆様方の御期待に一〇〇%おこたえすることができないのを残念に思っております。しかし、最近におきまして物価の超安定に支えられ、さらに最近の状況から見ますと、若干の生産性の向上等もございまして、実質賃金におきましてはやはり上昇を続けている。それから、内閣の国民意識の調査等を見ますと、やはり中産階層に所属しているという意識も非常に多うございまして、また大体現在の生活に満足しているかどうかという内閣の調査におきましても、かなりの方々が大体満足しているという方に点数を入れていただいております。だからといって、我々がこれで安心しているわけにはまいりませんが、しかし今後とも物価の安定及び賃金の増加あるいは休暇の問題、そのほか今円高不況に苦しむ中小企業の
皆様方や農村の
皆様方等に対する対策等についても充実させ、特に社会福祉の面におきまして弱い方々やお困りの方々に対してはきめ細かい配慮をしてまいりたいと思っております。
-
○
和田静夫君 国民の暮らし、決して楽になってきているとは言えないというふうに私は思うのでありますが、これは東京都が行っている「都民のくらしむき」という調査から私が抜き出してつくってみたものであります。(資料を示す)年収の低い方からⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳと、こういうふうに並んでいるんですが、これを見ますと、年収二百万円から三百万円のクラス、この低所得層では家計にこういうふうに赤字が出ているわけですね。それで、この階層では貯金をおろして生活費を補っている、こういうような暮らしの
状態が中曽根内閣のもとで続いているということになりますが、これはもう明らかに悪くなっている
状態であります。
去年の数字はまだまとめられていないのであります。したがって、八四年の数字になるわけでありますけれども、おととしの数字をこう見てみますと、おととしの数字は赤字がまたふえるわけであります。こういう
状態でふえるわけであります。それで、年収二百二十八万円の層と年収三百四十五万円の層で家計の赤字がこういうふうに出る。この年は一兆円減税が行われた、その家計への
影響がほとんどあらわれない
状態がこれでも明らかであります。で、低所得層では赤字の幅が拡大をするというような形になっているのであります。年収四百万円あたりの層でも、これはもう貯金の取り崩しが始まるという
状態になっています。
こういうような傾向というのは、東京都だけじゃありません。総務庁の家計調査でもちゃんと出ています。したがって、
経済企画庁長官、このデータごらんになってどういうふうにお考えになりますか。
-
○国務大臣(平泉渉君) 私ども、総務庁家計調査、こういうので見てまいりますと、第一分位のところで五十七年は対前年増減率で可処分所得は三・九%の上昇、五十八年がO・五、五十九年が〇・五、第二分位は同じく五十七年三・九、五十八年〇・七、五十九年二・三と、こういうふうになっておりまして、赤字というのは私どもの数字の統計では出てまいっておりません。
-
○
和田静夫君 総理府の統計だって全国的に調べられているわけであります。そして、どうも対象は安定している国家公務員的なところが対象になっているような感じが見受けられる。東京都の場合は、これは実態であります。労働大臣はどういうふうにお考えになりますか。
-
○国務大臣(林ゆう君) 勤労者の可処分所得は名目と実質とございますけれども、五十八年名目では二・六%、五十九年四・四%、六十年の前半は四・O%、このように緩やかではございますけれども増加を見ておりまして、これを実質で見ますと、消費者物価の安定などもございまして、五十八年前年比〇・七、五十九年二・二%の増でございまして、六十年前年比一・九%の増というふうになっております。着実な改善がなされていると、このように思っているわけでございます。今後とも適度な経済成長及び物価の安定を通じまして、勤労者の実質可処分所得の着実な改善と勤労者生活の向上が図られるよう期待をいたしているところでございます。
-
○
和田静夫君 国民生活は実は苦しくなっている、低所得者層において。これは中曽根内閣のさまざまな政策が国民生活を圧迫しているということが言えると思うんです。目立った所得税減税が一九八四年度を除いては行われなかったということが一つありますね。そのために国民の税金の負担が高くなって家計が圧迫をされた。それから税、社会保険料の負担増について東京都調査のあれを挙げてみますと、
昭和五十七年と五十九年の二年間で約一〇%上がったんですね。ところが税、社会保険料の方は一五%上がっている。そのあおりで手取りの収入が八・八%しかふえない、年平均で四・三%しかふえなかったというような
状態になっている。つまり、税金の負担が家計を圧迫しているという事実は歴然としていまして、総理、この点はお認めになりますか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 減税が行われればその効果は出てくるだろうと思います。しかし、ただいま申し上げましたように、行われない場合でも、物価の非常な安定あるいは引き続いての経済成長に見合いまして実質賃金は増加している、そういう状況は今御説明申し上げたとおりでございます。今後もそういう政策については十分配慮してまいりたい。最近の貯蓄の状況を見ましても、
日本国民全体で平均して約五百万円前後の貯蓄を持っておる。もちろん借金もその見返りに多少はあるようでありますが、しかし貯蓄は依然として増強しているということは我々としてはいい現象ではないかと思っております。
-
○
和田静夫君 中曽根内閣、一方で生活関連予算を切りまくっている、そのあおりで家計が圧迫される、典型的なものが年金や医療という社会保障による収入が減っている、こういうこと。それから子供たちの教育費、特に学校の授業料が急激に上がっていますね。社会保障による給付というのは、東京都調査では月額で五千二百六十三円から五千百六十八円に減っている、この減額分が一般所得の低い方を直撃している、こういう結果になっていると思うんです。授業料について言えば、
昭和五十七年と五十九年の二年間で何と二六・二%も上がっているのであります。ふえた金額は二年間で三万五千円という金額になりますが、これは明らかに教育関係予算を削った結果でありまして、ここのところは厚生大臣、文部大臣、それぞれどういうふうにお考えになりますか。
-
○国務大臣(今井勇君) いずれにいたしましても、福祉の水準をきちっと守りまして、水準が下がらないように措置してまいりたい、こう考えております。
-
○国務大臣(海部俊樹君) 文部省といたしましては、従来行っておりました奨学金制度の充実とか私学振興の助成の問題とか、それらの
施策をあわせて、なるべく父兄の経済負担が増大しないように努力してきたところでありますが、これからもその方針を貫いてやっていきたい、こう思っております。
-
○
和田静夫君 行政改革の名のもとで教育予算が削られた。国公立の学校への支出が削られた。それから私立学校の助成金がカットされてきた。その結果がここに私は歴然としてあらわれたと思うんですが、授業料の年平均の値上がり率は
一二・三%なんですね。教育予算のカットが家計を圧迫しているという事実はやっぱり文部大臣お認めになってしかるべきじゃないでしょうか。
-
○国務大臣(海部俊樹君) 数字だけを私どももいろいろ研究しますと、例えば御指摘の入学金とか授業料は
昭和五十年代と比べると上昇率は下がってまいりまして、ことし、去年はともに三・九%ということになっておりますけれども、家庭の教育費等という幅を広げたところで見ますと、おけいこごととか塾とかいろいろな経費が入ってまいりますので、御指摘のように上昇しておって家計に圧迫がある、こう受け取らざるを得ないと心得ております。
-
○
和田静夫君 過去三年間、政府は国民生活関連予算を切り捨てることで国民の暮らしを刻んできた。その一方で一機百億円以上もする兵器を大量に買い込んできたんですが、六十一年度の予算ではさらに切り捨てようとしているわけでしょう。例えば老人医療の自己負担を引き上げようとしていますね。厚生大臣、老人医療の一部負担の引き上げ、幾らになりますか。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) お答えいたします。
外来で一月四百円を一月千円に、それから入院につきましては一日二百円を一日五百円に引き上げようとしているわけでございますが、総額におきましては六百十億円を千五百七十五億円に引き上げまして、その増加額は九百六十五億円でございます。医療費に対する割合で申し上げますと、一・六%を三・七%に引き上げまして約二・五倍に相なるわけであります。
-
○
和田静夫君 私は、主として都の家計調査をもとに、国民の暮らしが苦しくなってきている事実を指摘をしてまいりました。低所得層の暮らしは今言ったように苦しくなってきている、中曽根内閣のもとで。その中でもとりわけ老人世帯の家計は耐えがたいほどに困窮しつつあると思うんです。厚生大臣、老人世帯の収入は一般の世帯に比べてどういうような
状態になっていますか。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) 老人世帯の収入でございますけれども、厚生省で行っております六十年度の国民生活実態調査に基づきますと、高齢者世帯の一人当たり所得で申し上げまして一月十一万四千円でございます。なお、全世帯の平均は十一万五千円となっております。
-
○
和田静夫君 去年の七月に発表された東京都中野区の調査なんですが、調査対象世帯の三割五分が月五万円未満ですよ。月収五万円から十万円が一割五分というのが出ているんです。つまり、半数の老人世帯というのは月収十万円以下で暮らしているということになりますね。私は、月収十万円以下というのは生活が成り立たない
状態だと思うんですが、それが半数にも達しているという
状態であります。そこに外来で月一千円、入院五百円の負担が覆いかぶさってくるということになるわけですね。しかも、月一千円というのは一診療科目について一千円でありますから、老人の場合は幾つかの病気を持っているわけですから、負担はもっとふえると見なきゃなりません。厚生大臣、これじゃ老人に死ねと言うのと同じではありませんか。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) お答えいたします。
外来の受診の実態でございますけれども、おおむねお年寄りの方は月にいたしまして一回ないしは二回ということで、どちらかと申し上げますと、かかりつけの医療機関でのじっくり受診の実態でございまして、月に平均しますと一・五回医療機関に行っておられるということでございますから、引き上げ後においても千五百円程度が平均になろうかというふうに考えます。
-
○
和田静夫君 しかも入院すれば、必要なのは保険の医療費だけではない。差額ベッド料、付添婦、おむつ代、付添婦さんの寝具代等々負担という形で降りかかってくるわけですが、この中野区の調査では差額ベッド料は最低でも九千円、普通五万円から十万円取られているわけであります。おむつ代は約六割の人が一万円を負担をしている、こういう形になります。厚生大臣はこういう医療費の実態をよく把握されていましょうか。
-
○国務大臣(今井勇君) 実態は調査をいたしましてよく把握しておるつもりでございます。
-
○
和田静夫君 それじゃ、ちょっと細かく言いますが、把握されているのなら、差額ベッド、付添婦の人件費、おむつ代あるいは寝具、入院患者の総負担額ぐらいは頭の中にあるでしょうね。大臣ですよ、これは。把握されていると言うのだから。
-
○国務大臣(今井勇君) 老人の患者が入院されました場合、一人当たりの負担額総額でございますが、大部分の老人の方は入院時に一部負担金としては一日三百円、一月九千円、二カ月を限度として負担いただくことになっております。さらに、基準看護病院以外の病院におきましては、付添看護婦をつけた場合には平均的には月およそ三万円程度の患者負担を伴いますので、老人のうち数%の方々には一部負担と合わせまして約四万円の負担と相なります。また患者の希望によりまして個室あるいは二人部屋を選ばれた場合には、このほかに一日当たり約三千円程度の負担になります。
なお、大都市周辺を中心に、おむつ代あるいはテレビ使用代等実費徴収を行っている病院もありますので、その場合にはその実費が患者負担ということになるが、その詳細につきましては、現在、この間の御質問もありまして調査をいたしておるところでございます。
-
○
和田静夫君 それから、実態調査が十分に行われない、そういうような
状態の上に立って老人保健法が提案をされた、こういうふうに理解していいんですか。
-
○国務大臣(今井勇君) この間も御答弁申し上げましたが、社労の
委員会の審議が始まりますまでには、十分調査をやりますもののまとめをいたしたいと存じております。
-
○
和田静夫君 調査はこれからですと、結果もわからないで負担増を押しつけるということになるわけですね。これは全く言語道断ですよ。大臣、どうなんです。
-
○国務大臣(今井勇君) 今回の老人保健法におきます一部負担の問題でございますが、健康に対します自覚と適正な受診あるいは世代間の負担の公平という、そういう観点からお願いをしているものでございまして、やはりこれは老人保健制度の長期的な安定のためにはぜひとも必要なものだ、こう考えておりますので、御理解をいただきたいと思いますが、御指摘のように、差額ベッドの保険外負担の問題につきましては、先ほど私ちょっと申し上げましたが、従来からその是正に努めてはまいりましたが、お世話料につきましては、その実態を今調査中でございます。その調査結果を踏まえまして今後とも適切に対処してまいりたいと思いますが、なるべく早くまとめたいと思っているところでございます。
-
○
和田静夫君 実態調査の結果も出ないのに
法律案だけ出てくるというのはどういうことですか、大臣。
-
○国務大臣(今井勇君) お世話料と申しますのは、おおむねおむつ代とかあるいは洗濯代、電気製品の使用代、そういったものであります。あるいはまた、日常の世話の対価と考えられる、例えば理髪代とか買物手数料、こういったものでございまして、これは特定のサービスの対価ではございませんで、入院全般にかかわる対価と考えられるものでございまして……失礼しました。お世話料と申しますのは、ただいま申し上げました実質的なものと、あるいは日常的な世話の対価と考えられるものでございまして、入院そのもののものではございません。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) 訂正します。
御指摘のお世話料につきましては、詳細については調査中でございますけれども、私どもが承知している限りにおいては、ただいま大臣から答弁がありましたように、いわゆるお世話料の中には雑多なものが入っておりますけれども、主としておむつ代あるいは貸しテレビ等の料金あるいはまた散髪代からその他もろもろのものが入っているわけでございますが、大部分は医療のサービスとして行われる範囲外のものでございます。したがいまして、どちらかというと入院患者さんの生活の利便のためにサービスが行われる、それに対してその実費が徴収されるということでございますので、私どもは、医療に関係する部分はそれは困るということで、県を通じましてその指導、是正を図っておりますけれども、その他の先ほど申しましたような経費については原則的には医療と関係はない部分だと承知いたしておりますけれども、なお、さらに詳細について調査中ということでございます。御理解をいただきたいと思います。
-
○
和田静夫君 十分に理解をするわけにはいかないのであります。
昭和四十五年十一月二十五日の中央社会福祉審議会答申は、老人の医療費について、大臣、どういうふうに言いましたか。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) 申しわけございませんが、ただいま資料を持ち合わせておりませんので、直ちに取り寄せたいと思います。
-
○
和田静夫君 いや、社労の生活の長い厚生大臣ですから、頭の中にはこれぐらいのことはあると思ってお聞きしたんですがね。
答申が言っている、自己負担が多額に達する場合が少なくない、こういうところがある。また老人は一般的に経済的に弱いという
状態、こういうところがあるんですね。ここのところを改善されましたか。
-
○国務大臣(今井勇君) 全般的に老人福祉の対策につきましては、一つ一つ改善をしてまいったつもりでございます。
-
○
和田静夫君 改善されたと言うなら、客観的な事実を明らかにしてください。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) 老人に対しますもろもろの給付なりサービスを引き上げておりますけれども、現在の年金額で申し上げますと、これは現実に受け取っておられる平均年金額でございますが、厚生年金につきましては十一万六千円、それから国民年金の老齢で二万六千六百円、老齢福祉年金では二万六千五百円ということで、年々、例えば年金をとってみても改善に努めているところでございます。
-
○
和田静夫君 ともかく、大臣、実態も知らず調査もせずに負担増を一方的に押しつけてくる、こういうことになっているんで、これは許せない。よって
法律案をまず撤回をして出直す。いかがです。
-
○国務大臣(江崎真澄君) これは、いま段々厚生大臣が御答弁しておりますとおりに、まず高度成長時代の積算基礎に基づいた給付、それから急激に来たいわゆる高齢化社会、そして二十一世紀を展望して安心して老人が医療が受けられるように、また老人の医療についてのいわゆるマンネリ化というものを脱出しよう、そして、むしろこの高齢化社会を現実のものと受けとめて、将来展望に立ってぜひひとつ現実的に、多少の負担増はあっても、そんなにそれがお荷物にならない形でという勧告がもとになってなされておるわけでありまして、その点は御了解を願いたいと思います。
-
○国務大臣(今井勇君) 先ほども申し上げたとおりでございますが、今回の老人保健法の一部負担の引き上げという問題は、健康に対します自覚と適正な受診あるいは世代間の負担の公平という観点からお願いをいたしておるものでございまして、これは老人保健制度の長期的な安定のためにぜひともやりたいものだ、必要なものだ、こう考えておりますので、ぜひひとつ御理解をいただきたいものだと思っておるものでございます。
-
○
和田静夫君 理解するには実態の把握で共通点があったり、調査結果というものがひとしく我々にも提示をされ、初めて理解に向かっての協議が進む。その前提がないのに
法律案だけ出てくるのはだめだ、したがって撤回して出直しなさい、こう言っている。
-
○国務大臣(今井勇君) したがいまして、先ほどからまた御答弁申し上げていることの繰り返しになりますが、御指摘のお世話料の問題だとか差額ベッドなんかのいろいろ保険外の負担の問題につきましては、従来から是正に努めてまいりましたけれども、今後ともよくその実態を調べまして、これも今やっておるわけでございますから間もなくその実態がわかりますので、この間もここで御答弁申し上げましたが、わかり次第ここではっきり御回答を申し上げるというふうに申し上げたところでございますので、そのように御承知いただきたいと思うものでございます。
-
○
和田静夫君 これは国民の非常な
関心事でございまして、したがって前提になるものがやはり共通に論議がされるということが保証されないで
法律案だけが先行するという、これは大臣、常識的に考えてそんなことはおかしいとお思いでしょう。
-
○国務大臣(今井勇君) したがいまして、私どもは一生懸命今わからない問題につきましては調査をいたしております。その調査結果が間もなく出てまいります。そういうことでございますので、この間もこれは答弁申し上げたとおりでございますので、ぜひこれは御理解いただきたいと思うものでございます。
-
○
和田静夫君 何かいじめのためにいじめているわけじゃないんです。これは本当にまじめに老人保健の問題というものを二十一世紀を展望しながらお互いが考えるためには、基礎的なベースの問題ぐらいは共通のものがなきゃ困る。
-
○国務大臣(今井勇君) 御趣旨の点はよくわかるわけでございまして、そこで私どもは鋭意そのわからない問題については今調査中だということで繰り返し御答弁申し上げているわけでございますので、ひとつぜひ御了解いただきたいと思います。
-
○
和田静夫君 調査中はちゃんと理解をしています、そのことは。したがって調査の結果がわかって、それから
法律案の提出に入っても遅くはないのではないか。それぐらいのことがあなた方によって配慮されるべきではないかと、こう言っているんで、このことはわかりますか。
-
○国務大臣(今井勇君) 今回お願いしているのは世代間の公平を図りたいという大きな趣旨から今度の法改正をいたすわけでございますので、またそれはひとつ御理解をいただきたい。今の私ども調べていることは調べているのでございますが、この法改正をやろうとする趣旨のものは世代間の公平を何とか実現したいという意味でございますので、ぜひひとつその点はわけてと申し上げると大変またおしかりを受けるかもしれませんが、御理解いただきたい、こう思います。
-
○
和田静夫君 これから質問しようとすることの答弁を先に言っているわけですが、大臣の
立場もわからぬことはない。
立場だけはちゃんとわかりながら共通の論議をしましょうと、こう言っているのでありますから。
老人保健法の改正には、このほかにも国庫負担を現役のサラリーマンに肩がわりをさせる、いわゆる加入者案分率の見直しといった問題の多い方策が織り込まれるわけでしょう。この辺どう考えるんですか。
-
○
政府委員(黒木
武弘君) 今回の老健法の改正で案分率の変更をお願いいたしておるわけでございますけれども、これは老人を多く抱える保険者も制度も、あるいは老人を少ししか抱えていない制度も公平に老人医療費を負担してもらおうということで今回の改正をお願いしているわけでございます。
-
○
和田静夫君 大臣、同じような答えをずっとされるのも答弁の技術で、非常にあなたは上手なんだと思うのです、こっちがしびれ切れるのを待っておる、こういうわけですから。
加入者案分率について、老人保健法制定に際して医療費実績部分五〇%、加入者案分の部分が五〇%。五〇対五〇、これは適当であるということで
法律本則で定められているわけです。そうすると今回の改定というのは、こういう法制定時の経緯を無視して、唐突に感じませんか。
-
○国務大臣(今井勇君) 今度の老人保健法をつくりましたときの大きなねらいの一つは、老人医療費につきまして、先生御案内のように、医療保険制度間の老人の加入率の格差に基づきます負担の不均衡の是正を図ろうということでありました。したがって、加入者の案分率を何%にするかにつきましてはいろいろの考え方がありました。しかしながら、法制定当時におきましては、老人医療費につきまして保険者間の共同負担方式を初めて導入したわけでございます。そして、当面の考え方として医療技術的の部分を半分残し、加入者案分率を五〇%と、こうすることが適当と判断されたものだと私は承知いたしております。このようないきさつで制度が発足して三年を経たわけでございます。
この間、保険医療制度の改革によりまして、給付と負担の公平化を目指す医療保険の一元化の方向づけがはっきりしてまいりましたことと、それから制度間の老人加入率の格差が私ども考えましたよりもさらに拡大をしております。そんなことでやはり老人保健を取り巻きます状況が変化をしてきておる。したがって、昨年の老人保健審議会の中間意見におきましても、加入者の案分率につきましては一〇〇%を目指して検討すべきだ、こういうふうにされているところでございます。今回の加入者案分率の引き上げは、このような制度実施後の状況の変化などを踏まえまして、保険者間の負担の不均衡をさらに是正しまして制度の長期的な安定を図りたいというために行うものでございまして、ぜひとも御理解いただきたいと思うものでございます。
-
○
和田静夫君 増税なき財政再建のもとで、我が国の社会保障の負担が国庫の負担から現役の負担へと、こういう形に着実に肩がわりが進んでいるんです。ここのところを私は指摘しているわけでありまして、取りやすいところから取っていくという態度が露骨であります。これは隠れた増税だと言うことができると私は思うんです。国民を欺くものであるということが言えると思うのであります。負担の公平、公平とこう言われるんですが、大蔵大臣、これはまさに隠れた増税ではありませんか。
-
○国務大臣(竹下登君) まず厚生大臣からお答えがありましたように、世代間負担の公平とそして長期安定、その中で今度の問題は国民連帯という考え方で、私はもっともだな、すなわち制度間の負担調整というのはまさに国民連帯だというので感心して説明を聞いておりました。
-
-
○国務大臣(今井勇君) 一部負担の問題でございますが、しばしば申し上げますように、健康への自覚と適正な受診の観点からお願いしておるものでございますが、現在の一部負担の額と申しますのは、先生御案内のように、老人医療費の一%台でございます。それで、私どもは世代間の負担の公平という観点も極めて重要であろうと考えますので、今回の改正はこのような観点から行われますので、これによりまして六十一年度で老人医療費の三・七%、満年度では四・五%程度の一部負担となりますが、年金やあるいは高齢者世帯の実態などを考えましても、これは無理のないものじゃないかと考えます。また加入者案分率の引き上げというのは、保険者間の老人加入率の格差を是正をし、しかも老人医療費の負担の公平を図るために行うものでございます。この結果、老人加入率の低い被用者保険は拠出金がふえることになりますが、被用者保険の財政状況は安定基調にありますから、加入者案分率を引き上げましても大部分の保険者は保険料率の引き上げを要しないものだと考えております。
したがって、一部負担、加入者案分率等の改定とも、御指摘のような隠れた増税というものでは私はないのではないかと思っております。いずれにいたしましても老人保健制度の改正は、世代間あるいは保険者間の負担の公平を図ることによりまして制度の安定を図り、また二十一世紀に向けて安心して老後を託せるというものでありますので、ぜひとも御理解いただきたい、こう考えるものでございます。
-
○
和田静夫君 国民の暮らし向きが中曽根内閣のもとで悪化していることは客観的なデータで私は明らかだというふうに言ってきたわけでありますが、こういうときに、解決に二正面作戦が必要であろう。その一つというのは、国民の収入を引き上げることであります。これは、国民経済的に見ても有意義なことであります。それから、経済摩擦を解消するためには、
日本経済の根本的な体質を変えることが必要だとお互い考える。外需に依存する経済体質から内需主導の経済に変えること、またその内需の大宗を占めるところの個人消費を拡大することがポイントであるということは、これはもうみんなひとしく考えるのだろうと思うんですが、経済摩擦の根本的解消策は賃金にあるでしょう。労働時間の短縮に、さらにつけ加えれば社会資本の充実にあるはずであります。そんな大げさなことを言わなくても、ここ数年賃金の伸びというのは生産性の上昇に比べて非常に低いので、労働者の取り分は減ってきているのが
現状であります。つまり、稼ぎ出した分だけ労働者の手に入っていない。労働大臣、こうお認めになりますか。
-
○国務大臣(林ゆう君) 先ほど御答弁申し上げましたように、可処分所得というのは、五十七年以降少しずつではございますが改善されているように思います。名目も実質もそれぞれ大体二%台あるいはまた三%に近い台で推移をいたしておりますので、物価の安定その他のこともございますが、安定した増加と申しますか、そういったことが今数字の上ではあらわれているところでございます。
-
○
和田静夫君 そこで労働大臣、賃金の上昇を実質労働生産性の範囲内におさめるべきだという主張が経営側の一部から行われているわけですが、これは明らかに理論的な誤りであると私は考えています。賃金上昇率は名目ベースの話でありますからこういう議論は間違っている、これはお互いよろしいですね、そういう理解で。
-
○国務大臣(林ゆう君) 数字の上であらわれております増加率は、漸増ではございますけれども安定した増加を認めているというふうに私は思っております。
-
○
和田静夫君 経企
庁長官に聞きましょう。
この労働生産性に対する賃金のギャップですね、立ちおくれ、非常にこの感が強まっている。昨年の賃上げをもってしても七〇年代後半の労働分配率にこれは追いついていません。労働者の取り分が落ち込んでいる事情というのは変わっていないんです。ということは、大臣、これは理論的な話として承っておくのでありますが、ここ数年にわたって相当の賃金上昇がなければ七〇年代後半の労働分配率にまで到達しないということですね。
-
○国務大臣(平泉渉君) 労働分配率は年によって徐々に変化して、非常に高いときも低いときもあり、波を打っておるわけでございます。そのときどきの経済の情勢、景気の情勢、企業の利益の情勢、そういったものがいろいろ反映しておりますが、最近特別に低いというわけじゃございません。もっと昔低かった段階もございます。最近は大体、おととしぐらいはかなりいい率になってきております。ちょっと去年が一昨年より落ちたというような感じはございますが、いずれにしましても経済政策の根本の目標はやはり賃金が上がる、そういう増勢、また労働時間短縮ができる、私どもとしてはどうしたらそういうことが可能であろうかということが経済政策の大きな
目的であるという点に努力をいたしておるわけでございます。
-
○
和田静夫君 ちょっと私の質問に答えていないんですがね。
-
-
○
和田静夫君 この数年にわたって相当の賃金上昇がなかったならば七〇年代後半の労働分配率にまで到達をしないということでしょうと問うているわけです。そのとおりですとお答えになってしかるべきではないでしょうか。
-
○
政府委員(勝村
坦郎君) お答えを申し上げます。ただいま大臣が答弁されましたとおり、労働分配率はいろいろ景気の情勢その他によっても変化いたしますが、トレンド的に申しますと、大体
昭和四十年代は国民所得の中の雇用者所得の比率で申しますと五〇%台が普通でございます。それが五十年代に入りましてから大体七〇%近くになっておりまして、現在のところ五十九年度までの数字しか出ておりませんが、六九・七%ぐらいの数字でここ数年間は推移をいたしております。
御質問の、今後賃金上昇率がどの程度であればこの分配率が維持されるかということでございますが、一般的に申しますれば、実質成長率、これに対しまして一人当たり雇用者所得という意味で、労働力の増加率約一%弱を引いたぐらいの一人当たり雇用者所得の伸びということがあれば分配率は大きく変化をいたさないというふうに考えられると思います。
-
○
和田静夫君 相当の賃金上昇が続かなかったならば七〇年代後半の労働分配率は守られないでしょうと聞いているのに答えてくださいよ。そんなあなた、答弁を外したらだめですよ。
-
○
政府委員(勝村
坦郎君) 基本的な考え方はただいまお答え申し上げたとおりでございますが、今お答え申し上げました基本的な考え方は、これはあるいは先生御批判があるかもしれませんが、一人当たり生産性の伸びと、それから一人当たり実質賃金の伸びが等しい、あるいは名目賃金の伸びが等しい、そういう場合には国内インフレ要因としての消費者物価の上昇率は基本的に生じていない、そういう
状態を想定して言っているわけであります。そういうふうに生産性上昇率と名目賃金上昇率が基本的に等しいという前提のもとで申しますと、先ほど私が答弁いたしましたとおりの数値になろうかと思います。
-
○
和田静夫君 そういう答弁をされるのなら、あなたのところから出しているESP二月号の五十三ページを説明してください。
-
○
政府委員(勝村
坦郎君) 大変失礼でございますが、ちょっと手元にその資料を持ち合わせておりませんので……。(
和田静夫君資料を示す)
先生の御質問の趣旨は、私先ほどから答弁していることで御答弁申し上げているというふうに思います。と申しますのは、これからの消費者物価というのは円高の傾向もありましてかなり落ちついた動向で推移するだろう、基本的に消費者物価あるいは国民総生産のデフレーターというものが非常に安定した状況の中で推移いたします場合を前提にいたしますと、実質生産性の上昇率と名目賃金の上昇率というのがほぼ等しい範囲内でこれからの
日本経済はほぼ調和のとれた形になり得るのではないだろうか。したがいまして、労働分配率といいますのも大きく変化はしないであろう、こういうふうに想定いたしております。
-
○
和田静夫君 非常に専門的に言われるものだから、聞いていらっしゃる
皆さんがおわかりになるかどうかと思って、何遍もくどく国民の
皆さんに向かって説明を求めたんです。
一口で言えば、私が言ったとおり相当の賃金上昇率が続かなければ七〇年代後半の労働分配率は保たれないんだ、こういうことなんでありまして、そういう意味で今度の春闘というのを政府も我々も非常に重視しなきゃならぬ。通産大臣いかがですか。
-
○国務大臣(
渡辺美智雄君) 春闘には常に重大な関心を払っております。
-
○
和田静夫君 労働大臣、もう一言ですが、ずばり言ってことしの賃上げ、どういうふうに期待されますか。
-
○国務大臣(林ゆう君) 技術革新などの経済発展の成果を賃金と労働時間の短縮に適切に配分されるということが大事だというふうに思っておりまして、今回ことしの春闘につきましても、経済成長の達成という面から見ましても、先ほども申し上げました賃金と労働時間に対する適切な配分というものが私は大きな意義があるものという認識を持っております。そして、ずばりどうかということは、これから労使の問題ではかられることでございますから、労働省といたしましては関心を持ってこれを見ているというのが
現状でございます。
-
○
和田静夫君 個人消費の拡大のため、つまり内需拡大のためには手取り収入すなわち可処分所得が伸びなければならない、そのためには春闘が一つの正念場だと私はさっきから何遍も言っているんですが、低い賃上げでは恐らく円高デフレを加速させていくことになるのじゃなかろうか。生産性の伸びている部門、企業収益がよい部門では大胆な賃上げが今度必要だと思うんですが、大蔵大臣、これはいかがですか。
-
○国務大臣(竹下登君) 賃上げ問題というのは、これはまさに労使の間で適切に決められるべきものであって、私ども政府関係者からそれに対する感想を述べることも差し控えるべきだということを幼少のころから教えられております。
-
○
和田静夫君 総理大臣、ちょっと見解を承りましょう。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 私は中年のころから教えられております。
-
○
和田静夫君 春闘問題については同僚
委員がさらに深く論議を展開いたします。
最近、賃金格差が拡大しているんですよね、労働大臣。大企業で比較的大幅な賃上げがあったとしても、中小零細企業でそれに追随することができなかったら、全体として個人消費の増というのは見込めないわけです。こういう点については労働省、一つの対策をお持ちになる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
-
○国務大臣(林ゆう君)
規模別の賃金格差は確かにございまして、
昭和六十年における現金給与総額について見ますと、五百人以上の
規模の事業所を一〇〇といたしまして、百人から四百九十九人までの
規模では八二、そして三十人から九十九人の
規模では七四という数字が出ております。この
規模間の格差の推移を見ますと、高度経済成長の時代には労働力の不足というようなこともございまして非常に伸びておりますし、また中小企業の賃金の上昇率も高まっておったのでこの格差が大分縮まってまいりましたけれども、オイルショック以来いわゆる中小と大
規模との間に労働者の構成の変化などもございまして、またその格差が大きくなりつつある傾向にあるわけでございます。こういったことは、なるべくならば大企業あるいはまた中小企業との企業間の格差というものが逐次縮まって、働く者がそれぞれの喜びを持って働けるというような
環境にならなければならない、このように思っているわけでございます。
-
○
和田静夫君 産構審ですが、労働時間の短縮なんですが、この小
委員会報告は、全労働者の完全週休二日制、ゴールデンウイーク、夏休み、年末年始にまとまった休暇を取得できるような休暇制を確立せよ、年間総実労働時間をアメリカ、イギリス並みの千九百時間に引き下げるべきである、こうなっているわけです。私もこの提案に全く賛成であります。できるだけ早くこの千九百時間以下に労働時間を引き下げるべきであると考えるのですが、政府としてまとまった対策はとられますか。
-
○国務大臣(林ゆう君) 労働時間の短縮につきましては、週休二日制の普及あるいはまた労働時間の短縮というようなことで労働省は取り組んでございまして、昨年十月の経済対策閣僚
会議の内需拡大に関する対策や、あるいは経済審議会から十二月に提出されました経済
計画の見直し報告、この趣旨を踏まえまして、
昭和六十五年度までに年間休日を十日程度ふやすということ、あるいはまた年間の総実働時間を二千時間へ短縮ということを目指しまして、昨年、中央労働基準審議会の了承を得て「労働時間短縮の展望と指針」というものを出したわけでございます。それに基づきまして積極的に取り組んでまいっているわけでございますが、具体的には週休二日制の普及を基準に年次有給休暇の消化の促進、あるいはまた連続休暇の定着等を重点といたしまして、労使の自主的努力の推進援助、これを今進めているというところでございます。
-
○
和田静夫君 総理に重ねて伺いますが、労働時間の問題というのは中小企業がネックになっているわけであります。中小企業で時間短縮が進むように何らかの財政措置を含む特別対策が講ぜられてしかるべきだと私は考えているんですが、いかがでしょうか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 中小企業の時間短縮の問題は、やはり我々も相当関心を持っております。一般論といたしまして、できるだけ時短の問題を促進したいという政策を我々は持っておりまして、その一環としても大きな関心を持っているわけでございますが、これはやはり労使関係でいろいろお話しを願うべきことが第一義でございまして、政府が介入することは必ずしも適当でない。ただ、年次有給休暇というものを団交によって
皆さんお持ちのようであります。公務員も持っております。これを完全消化するという方向に進めることが一番手っ取り早い、そういうことも考えておりまして、この夏についてもそういう面で我々は積極的に政策を進めていきたいと考えておるところであります。
-
○
和田静夫君 日銀総裁、お待たせしました。
公定歩合の再利下げ、私は歓迎しますが、これで円レートはどの程度の線になるとお考えでしょうか。
-
○
参考人(
澄田智君) 現在為替市場、不安定な
状態でありまして、今回の公定歩合の引き下げに当たりましては、為替市場の急速な変化というものは、これは
日本経済としても対応に難しい面がありますし、そして国際通貨情勢の安定の上からも望ましくない、こういう見地が今回の引き下げの一つの動機になっているところでございます。
したがいまして、現在ドル安・円高というそういう過程が進んでおりまして、このこと自体は対外不均衡の是正の上から方向としては望ましい方向ではございますが、これ以上急速に進むということは、先ほど申しましたような次第で、今回の公定歩合の場合においてもこれを避けなければならない、こういうふうに考えた次第でございます。したがって、今後は安定的に推移することの方がより当面望ましいことである、かように考えております。
-
○
和田静夫君 再利下げしたばかりの
状態ですが、累積債務問題や景気の動向などというものを考えますと、さらに利下げが必要になってくるという観測がなきにしもあらずであります。アメリカの公定歩合の水準がなお高いと思われるのでありますが、こういう点は少し長いスパンで見てどうなんでしょう。
-
○
参考人(
澄田智君) 今回アメリカも公定歩合を引き下げた次第でございます。アメリカの公定歩合の引き下げということ自体は、これはアメリカの経済のため、そしてそれはまた世界経済にも大きな
影響がございます。さらには債務累積国といったような問題を考えた場合に望ましいことである、こういうふうに考えておりますが、アメリカの公定歩合の水準自体を云々するということは、やはり私の
立場からは差し控えたいと思います。
-
○
和田静夫君 総裁、金利政策として円高の行き過ぎ是正あるいは円高不況への適切な対応がとられているわけでありますが、そのほかの対策としてどういうものが円高のデフレ的傾向を回避する政策としては考えられるのでしょうか。
-
○
参考人(
澄田智君) 私どもは金融政策を担当いたしている次第でございます。したがいまして、前回の引き下げに続いて今回の引き下げということで相当な効果を内需の拡大という面に期待をしている、かように申し上げることになるわけでございます。
-
○
和田静夫君 通産大臣、サミットに向かって景気対策なんですが、追加的な景気対策が必要だと私も思うんですが、何か案がありますか。
-
○国務大臣(
渡辺美智雄君) 景気対策につきましては、ただいまの予算で現在の状況下においては最善の方法を講じておりますから、一刻も早くこれをまず成立をさせて、それを執行することが最優先である、そう考えております。
-
○
和田静夫君 少し長い目で見て、
経済企画庁長官、私はどうしてもやっぱり景気政策というものがもう少し追加的に考えられるべきだと、こう考えているんですが、いかがでしょう。
-
○国務大臣(平泉渉君) 先ほどお話がございましたように、
日本経済の外需依存体質を直していかなければいかぬ、これは国際的な要請がございます。そういう意味からも内需を大いに拡大する。一番重要なことは、やはり長い目で見て住生活の改善ということです。これが国民の要望も非常に強いし、かつての経済成長の中で、国民の消費の中で住宅投資に向けられた分野というのは最近低くなってきておりますから、この分野を大きくしていくということが非常に大きな役割を果たすんじゃないか、そういうふうなことを含めまして内需振興総合対策を立てていかなければならぬ、我々は常々努力をいたしております。
-
○
和田静夫君 総理、何か具体的な政策をお持ちでしょうか。
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○国務大臣(
中曽根康弘君) よく公定歩合再引き下げとかというのが新聞記事に出ますが、この間下げたばかりでまた下げるなどということを言われれば今借りる人はいなくなってしまうんです。だから公定歩合再引き下げなどということは、為政者としても
日本銀行としても言えることではないのであります。しかし、これらすべて景気の動向やらあるいは国際関係、国際的な金利水準等をにらんで新しい観点から考えるべきことで、この間引き下げをやったのを今これをいかに普遍化するか、また具体的に郵貯やその他も含めまして実践していく方向に具体化する政策を行うか。大体一月ぐらいかかるようですね、コンピューターを入れ直したりいろいろする必要があるかげんで。そういうことも考えまして、やはりじっくり腰を据えて政策というのはやっていく必要がある、そう思います。
それから、予算が幸いに四月の初旬に成立さしていただきますれば、この予算執行に関しまして内需をさらに促進する方向にこれを執行すると、そういう面に絡んで幾つかの政策が当然考えられていい、特にいわゆるデレギュレーション、規制緩和による民活という問題につきましても、かなりこれを展開するように今、江崎
長官及び関係大臣にお願いをして、そのときまでに間に合うように案をつくってくれと、そうお願いしているところであります。
-
○
和田静夫君 総理の諮問機関の経済構造調整研究会の中で円高、原油価格の低下に伴う差益還元について議論がされているようであります。政府のいわゆるODAなどの国際協力等へ振り向けるべきという意見が支配的であると報ぜられていますけれども、アメリカとの間で五百億ドルに及ぶ黒字が発生をして、そして経済摩擦が起こっているといっても、国民は日常生活においてこのことを実感はしていないわけであります。こういうような差益というのはまず国民に還元すべきであると考えるんですが、いかがでしょうか。
-
○国務大臣(
渡辺美智雄君) 円高差益の問題につきましては輸入関係の石油その他で出ておるわけでありますが、これはおのずから市場メカニズムを通じまして自動的に国民に還元されるものと、管理価格になっておりますから政府が価格改定をしなければならないものと二つございますが、政府の関与するものについては
皆さんの意見をいろいろ聞いて、そして五月ごろまでには政府の態度を決めたいと、そう考えております。
-
-
-
○
和田静夫君 また、この研究会の報告では「国際化時代にふさわしい農業政策の推進を図るため、農産物の原則自由化を打ち出す」、こういうふうに報ぜられておりました。我が国の農産物の自給率は既に先進諸国の中で最低であります。その向上こそ求められておって、本院でもたびたび決議が行われていたわけであります。研究会で農産物の原則自由化等の方向を打ち出すというのは、これはおかしいと思うんですが、どうですか。
-
○国務大臣(
羽田孜君) 私どもはまだ具体的に、経済構造調整研究会ですか、こちらの方のあれはお聞きしておりませんけれども、今先生からお述べになりました農産物の原則自由化というのは新聞等で私どもは拝見しております。
ただ問題は、御案内のとおり各個とも農産物につきましてはそれぞれ国境措置というものをとっておりますし、また我が国の農業も、考えたときに原則自由化というのは非常に困難なことであるというふうに考えております。ただこの問題につきましては、ちょうど私どももアクションプログラムの中で指示をされておりますように、今ガットの中で農産物の貿易というものはどうあるべきかということを検討いたしております。我が国としてもこの問題につきまして積極的に参加し、議論をしている最中でございまして、この中の議論というものを踏まえながら、私どもの
日本としてどう対応するのか、国際化の中で
日本の国もやはりある程度いろんなことについての原則というものは決めていかなければならないというふうに考えておりますので、そういった議論を踏まえて私どもは対応していきたいというふうに考えております。
-
○
和田静夫君 先般来指摘しているビタミンK2剤の副作用問題でありますが、製薬業界に委託をされた調査結果を報告できますか。
-
○
政府委員(
小林功典君) ただいまお尋ねの医薬品の添加物、これはポリオキシエチレンヒマシ油のことでございますが、これを製造しております会社に対しまして現在報告を求めているところでございます。まだ全部出そろいませんで、あくまで中間的な集計で、今後若干数字は変動し得るという前提でお聞き取りを願いたいと思いますが、先週末までに報告のあった会社が六十四社でございます。これによりますと、ショックとの因果関係はこれから検討いたしますので、因果関係ありというふうに判断したわけではございませんけれども、とにかくポリオキシエチレンヒマシ油含有注射剤によるショックとして報告されたものの症例は九社、六十七症例でございます。
-
○
和田静夫君 そこで、今言われましたこの副作用はビタミンK2の有効成分によるのではなくて、溶解剤として添加されているHCO―60による可能性が強いわけでありますが、このビタミンK2のほかにもHCO―60を含む薬や化粧品というのがありますね。どういうような薬、化粧品が含まれていますか、厚生大臣。
-
○
政府委員(
小林功典君) おっしゃいますとおり、確かに当初はビタミンK2に含有しているということで調べたわけでありますが、その主成分なのかあるいは添加物なのか、その原因がはっきりいたしません。そこで、先ほど申しましたような調査をいたしまして、その添加物の方を含んだK2以外の医薬品についても全部調べてみて、それでその原因を究明しょうということでやっているのが今回の調査でございます。したがいまして、その調査結果がまとまれば、ある程度見当がつく、こういうことでございます。
-
○
和田静夫君 化粧品やその他の問題は全然今わからぬですか。
-
○
政府委員(
小林功典君) 医薬品のほかに、若干化粧品も使っているようでありますが、これも調査をいたしてみます。
-
○
和田静夫君 中間報告の中では出てきてないわけですか。
-
-
○
和田静夫君 昨年十月に薬事審議会が販売を認めたシクロスポリン、これは臓器形槽の際に拒絶反応を抑制する新薬でありますが、これは点滴静注によりショック症状を起こした例がある、しかもその原因はHCO―60に類似した溶解剤によるものであるというふうに理解をいたしますが、こういう事実、厚生省どうですか。
-
○
政府委員(
小林功典君) 外国の文献に、今おっしゃいましたように免疫抑制剤であるシクロスポリンの静脈内投薬によってショックが発現したという症例報告がございまして、その原因がシクロスポリンの溶解剤であるポリオキシエチレンヒマシ油でございます。これが一つの原因ではないかという疑いがあるという旨の記事があることは承知をしております。我々としましては、先ほど申しましたような、関係メーカーに対する調査をいずれ中央薬事審議会で検討していただきますのですが、その際に、それとともにそういう国内あるいは国外の文献も一緒に提出をいたしましてまとめで審査をしていただこう、こういうふうに考えておるところであります。
-
○
和田静夫君 HCO―60というのは食品には使われていませんね。
-
-
○
和田静夫君 食品と薬というのは性格が違います。したがって同様に扱うことはできないでしょうけれども、しかし食品添加物で禁止されているものは薬でも使わないというのは、これは常識的じゃないだろうかと思うんです。
厚生省、食品に添加してはならない物質で薬に添加されているというのは幾つありますか。そういう代表例挙げてください。
-
○
政府委員(
小林功典君) 医薬品の添加物の場合には、それ自体は薬理作用がございませんで、その主成分を医薬品にするために必要ないわば製剤化のために使う薬であります。したがいまして、それ自体は一般的には非常に安全なものというふうに理解しているわけでございます。
そこで、例を申し上げればおわかりだと思いますが、幾つかのこういう添加物があるんですが、大きく分けまして六つぐらいございます。
一つは保存剤、その例としましてはパラオキシ安息香酸エチル、それからもう一つは酸化防止剤、トコフェロール、それから第三は溶解補助剤、プロピレングリコール、それから軟こう基剤、これはゴマ油とかパラフィンであります。それから第五番目が賦形剤、小麦でん粉あるいは米でん粉といったものがその例であります。それから滑沢剤、これはつや出しでありますが、ステアリン酸とかステアリン酸カルシウム、こういうものでございます。
それで、添加物の数でございますが、実はこれは先ほど申しましたように、製剤化のために非常に多岐にわたって使われますし、しかもごく微量しか使わないというケースが多いものですから、全体を正確に把握することはなかなか難しいのでございますが、よく汎用されます薬については
日本薬局方とかあるいは
日本薬局方外医薬品成分規格とかいう公定の書物に載っています。それが大体百五十でございます。それ以外にごくまれに使うような添加物もありますので、正確な数字はわかりませんけれども、ざっと千を少し超す程度というふうに我々は承知をしております。
-
○
和田静夫君 厚生大臣、
日本では薬の添加物、ほぼ野放し
状態になって表示の義務はないんですね。EC諸国では、調べてみましたが表示を義務づけておりますし、アメリカでも深刻な副作用を引き起こすものについては表示させています。今後の検討結果をまって、ショック症状を引き起こす疑いの強いものについて表示させるような措置を私はとるべきだと考えているんですが、どういうふうに対処されますか。
-
○国務大臣(今井勇君) この問題につきましては、まず添加物でございますが、医薬品の製剤化のために使われるものであります。しかもまだ薬理作用が期待されないものでありますことから、それ自体の安全性は私は高いものだと考えております。したがって、一般的な添加物すべてについて表示を義務づける必要性はないものだと考えております。
しかし、おっしゃいますように、添加物のうち特に医師の注意を喚起する必要があるものにつきましては、これまでも各企業に表示を指導してまいってきたところでありますが、今後とも特に医師の注意を喚起しなきゃならぬそういった添加物については適切な指導をしてまいりたいと思いますが、全部についてこれの表示を義務づけるかどうかということについては、そこまでまだ実は十分考えておりません。
-
○
和田静夫君 添加物についてはHC―160に限らず、幅広く調査をされるべきである、そして対策をとるべきだと、私はこういうふうに考えているんですが、これは厚生大臣もう一度。
-
○国務大臣(今井勇君) 確かにおっしゃいますように、今のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油ですか、それとショックの問題等がありますので、これは今一生懸命その調査を進めておりますけれども、その結果、中央薬事審議会でこれは御検討いただきまして、必要ならばやはり適切な措置をとらなきゃならぬだろうと思いますが、いずれにしても薬事審議会がございますので、よくひとつそこで検討していただきまして対応を考えたいと、こう思っております。
-
○
和田静夫君 ありがとうございました。薬事審議会でもって一定の結論が出ましたならば、私が述べたような趣旨に基づくところの対応はされる、こう理解してよろしいですね。
-
○国務大臣(今井勇君) お説のようなことでございます。
-
○
和田静夫君 アメリカFDAがアスピリンのラベルにライ症候群の警告を表示すると決定したと昨日来報道され続けていますが、これは
日本はどうされますか。
-
○
政府委員(
小林功典君) ライ症候群の副作用の問題につきましては以前から承知をしておりまして、きょうの新聞、私も拝見しました。
アメリカでの措置は、従来からアメリカでは自主規制ということで現にやっておったわけでございます。それが何らかの事情でそれを義務づけしたというのが今回のニュースのポイントでございます。したがいまして、その実態は余り変わりないと思うのでございますが、
日本におきましては既に去年の十月でございますか、実際に業者を指導いたしまして、注意書きにその旨を記載させるという措置をとっておりますので、今回のアメリカの措置に応じて特に新しく何らかの措置をとるという必要はないであろうと思っております。
-
○
和田静夫君 そこで、再び国民生活実態に戻ることにいたしますが、中曽根政権下で三年余りの間に国民の暮らしは苦しくなったことを私はデータに基づいて、客観点な統計をもとにしながら明らかにいたしましたが、こういうような国民の暮らしを圧迫する税・財政の
状態を変えなければならないわけであります。そこに私は
昭和六十一年度の予算審議の実はポイントがあると、こう考えているのでありますけれども、総理、国民の税負担の軽減、所得税減税、これは焦眉の急でありますが、なぜ六十一年度予算で昨年の各党合意があるにもかかわらず所得税減税案を出さなかったんでしょうか、減税を行わなかったんでしょうか。
-
○国務大臣(竹下登君) 確かに、昨年の今ごろでございますが、私どもも十分承知いたしております。したがって、あのときの合意が結果として国会審議に反映をして、結局七月いっぱいこの税制の議論というものが国会においてなされたわけであります。
そのとき、それをまとめて正確に税制調査会へお伝えして、やっぱり税制調査会で議論された時間より国会の方がはるかに実際は多いわけでございますから、それを正確に報告した上で、さて抜本策ということでお願いをしようということになりますと、やはりおのずからシャウプ以来の問題でございますから時間もかかる。さようしからば、ことしの秋に答申をちょうだいして、そして六十二年度税制からこれを実施に移すことにするということは、やっぱりあの合意が一つのプレッシャーとして税制調査会へ持ち込むところの発端になったという理解もできるのではないか。したがって今年度の税制では、いわば根本的なものは触れない形の中でそれぞれの措置をして御審議をお願いしておるというのが
現状であろうと思っております。
-
○
和田静夫君 私はむしろ今の答弁理解できないんです。やろうとすればできた。問題はやる気だった。税調における論議もピッチを上げればできないことはなかった。所得税に関して言えば、ある意味では論点は出尽くしている。早くやろうとすればできないことはない。政府の作業は、私は国民の暮らしから見て遅きに失していると言わざるを得ません。百歩譲って、シャウプ以来の大改革ということで多少の時間が必要であるということなら、六十一年度に緊急避難的な減税をやるということもできるわけでしょう。例えば税率をいじらずに所得控除あるいは課税最低限を上げておくという減税の方法だってあるわけであります。
もう一度伺います。制度の根幹に触れないでも減税はできる。したがって、六十一年度中においても所得税減税はできるし、むしろ国民の暮らしからしてやらねばならないと考えるわけであります。どうでしょう。
-
○国務大臣(竹下登君) 総理からもたびたびお答えがあっておりますように、減税はしたい、さようしからばやるとなれば、これはシャウプ以来の抜本的なものをやるべきである。したがって、ゆがみ、ひずみ、重圧感は一体どこにあるかと、こういうところから審議をしていただいて、そして秋までには総体としての答申を受けて、これでもって対応していく。だから、早いほどいいじゃないかという議論を私は全く否定しようとは思いませんが、やはりやるとなれば、根本的な税体系の見直しの中に所得減税等もやられるべきものが本質ではなかろうかというふうに考えます。
-
○
和田静夫君 総理、私は内需拡大という観点からも所得税減税というのはもう大変やらなきゃならない重要なものだと思っているんです。したがって、これはやっぱり総理の決断にも一つかかると思うんですが、総理としては今の大蔵大臣答弁以上には出ないんですか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 思い切った減税をやりたいと、そう思って前から申し上げているとおりで、そのひずみとか重税感とか、そういうものから解放するための案をつくってくださいと、そういうことで税調にお願いをいたしておりますが、何しろシャウプ以来の約三十五年にわたる税のひずみその他を点検してこれを直していくという大作業でございますから、そう拙速にやるわけにはまいりません。ある程度の中間案ができても、ある程度国民の
皆さんにお目にかけて、そしていろいろな世論、反応もよく見つつ、大体落ちつくところはこの辺かなということの見当をつけるための時間的な経過も必要である、そう思っております。そういう意味におきまして、この秋に全部の総括的なまとめをやり減税法案の作成に入りたい、そういうスケジュールで進んでおります。
-
○
和田静夫君 所得税減税に関して質問の論点ちょっと変えますが、どういう部分に重点を置いて減税をやるのかということは、総理の答弁では必ずしもはっきりしてないんです。一昨年からずっと私参
予算委員会で同じような論議をしてきましたけれども、総理は、年収で幾らの層から幾らの層までが重課になっているというふうにまずお考えになっているんでしょう。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) これは統計によったりして多少いろいろ変化がありますが、大体四百万から八百万、それぐらいが一つの中心線ぐらいじゃないか、その前後というものにどの程度なだらかな線を持っていくかというようなことが
日本の場合は考えられる。それは主として教育費とかあるいは住宅のローンとか、子供がだんだん大きくなってきておる、部屋も小さく狭くなってきた、場合によっては単身赴任の家もありますし、そういうような家庭が一番重圧感あるいはひずみ感というものを持っているんではないかと考えております。
-
○
和田静夫君 そうすると、その層に重点を置いて減税をおやりになりたいと考えていらっしゃるととっておいてよろしいですか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) これは税調がどういうふうにお決めになるかということで、私は今、自分の感触を私見として申し上げておるわけでございます。やり方自体については、レーガンさんがアメリカ議会に出しました減税のやり方というものは非常に大きな参考になります。しかし、あれもアメリカ議会でどういう扱いを受けるか、なかなか難航しております。そういう点で、アメリカでどういうような反応や意見が起きておるかということも今注目しておるわけでございます。
しかし、ともかく所得税の問題、特にサラリーマンの場合、特に子持ちやあるいはローン返済あるいは教育費等で一番今苦しんでいるその層、そういうものが頭に非常に強くあるわけでございます。それから法人税の問題もございます。地方税の問題もございます。場合によっては相続税の改革という問題も考えられます。そういうような諸般の点を税調の
皆様方がどういうふうにお取り扱いになるか、非常に大きな関心を持って見詰めておるところでございます。
-
○
和田静夫君 最高税率を引き下げるという話があるんですが、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) ともかく
日本の今の状況は、国際的に見ても非常に高過ぎるという点は、税調の
皆さんも大体同じような意見のようだと承っております。私も同感に思います。そういう意味において、これをどの程度引き下げるかということが今研究の一つの中心になっているだろうと思われます。
-
○
和田静夫君 先ほど答弁にありましたレーガン流の傾斜の緩やかなフラット税制とでもいいますか、それに関心を非常にお持ちだ。ただ、議会の動向、総理自身は関心以上のものをお持ちだということですか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) これはもう二年ぐらい前から申し上げているところでございますが、簡素あるいは一連のことを申し上げました公平、公正、選択あるいは民間活力、こういうような原則で活力を生み出す税制というものをぜひつくってみたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
-
○
和田静夫君 私は、実は現在の所得税の収入ですね、所得が上昇するに従って税率が高くなるというこの累進構造は基本的には維持されるべきだろうというふうに考えています。それは、所得税は富める人々が多く支払って、貧しい人々はより少なく支払うということによって所得を階層間で再分配するというシステムを持っているわけでありまして、国民の多くの
皆さんはそのことを期待しているのであります。それが所得税のメリットであると我々は考えているからであります。その所得税の長所は維持されるべきである。これは大蔵大臣、よろしいでしょうか。
-
○国務大臣(竹下登君) 所得税そのものが、今、
和田さんおっしゃいますように富の再配分という大きな機能を持っておるわけですから、その累進構造自身は、それはシャウプさんのときからそのことを鉄則として今日連綿と続いておる。ただ、刻みが多過ぎるとが余りにも最高税率が高過ぎるとか、そういう議論は当然たびたび行われている議論でございますが、税制調査会の結論待ちと、こういうことになるわけであります。
-
-
-
○
和田静夫君 ところで総理、たびたび補正のときも承りましたが、あなたは六十二年度の減税を我々に約束をされるわけであります。継続してやっぱり内閣を組織していくおつもりなわけですな。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) これは運命であります。
-
○
和田静夫君 運命はみずからの思惟によって変えていく条件を持っていますが、その辺はどういうふうに……。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 自民党総裁は党則に従うものであります。
-
○
和田静夫君 私は、仮に最高税率を引き下げるとすれば、シャウプ勧告がそうしましたように、富裕税だとかあるいは資産税というものを抱き合わせるべきだと考えているのであります。あるいは最高を下げるのなら最低も下げなきゃならぬ。しかし、それ以前に最高税率の引き下げは私は賛成ができない、このことは明確にしておきます。
それから、所得税減税は課税最低限を引き上げることを中心にして行うべきでありますが、こういう方式こそ比較的に低い所得の人々の重税感を取り除く方法である。ここのところはやっぱり重点的にお考えを願っておく必要があるのでありますが、総理、大蔵大臣の見解を承ります。
-
○国務大臣(竹下登君) 抜本的見直しの一環としてそれこそ検討さるべきものでございますが、五十九年改正のときにいろいろ御議論をいただきました。そして御案内のように、二百三十五万七千円でございますか、課税最低限の引き上げを行った。最高税率については七五を七〇%に引き下げた。これを見ますと、やっぱり諸外国と比べたときには両方とも高いところにあるということは現実としてはあり得ることであろうと思っております。だからといって、その課税最低限を下げないという意味でお答えしておるわけじゃございませんが、そのような資料も含めて、きょうした問答もまた正確に報告して税調で議論をしていただこうというふうに思っております。
それから、富裕税の問題につきましては、あれがまた廃止されたいきさつというものもやっぱり過去を顧みれば反省すべきではないかなと、こんな感じもしますし、それからキャピタルゲインの問題等についても、今前段ではまだ議論にお入りいただいておりませんけれども、後段の議論等には当然なり得るものであろうと考えております。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 今のレーガン税制等を見ておりますと、国民の
皆さんの欲しているところを推測しますと所得税、法人税あるいは地方税というものの大きな減税を望んでおる。そして所得税については、レーガン税制がやっているような非常に簡素な、刻みを少なくしなさいと。階数をレーガン税制は三つに分けてしまいました。十四あったのを三つにしている。
日本は十五段階あるようです。これも思い切って相当簡素にした方がいいんではないか。最高税率が国際的水準から見ても非常に高過ぎる、この最高税率も考える。特に地方税を加えた場合の構想というものをよく考えておく必要があると思います。
それから、相続税等についてもいろいろ工夫をして、つまり民活に資する。例えば亡くなった場合にこれを文化的な事業や大学なんかに寄附する、その場合にできるだけ免税にしてあげる。故人の遺志を尊重する。そのかわり片っ方で私学に対する補助金がそれで多少減っていけばプラス・マイナス・ゼロになりはせぬか。故人の意欲というものは残るし名誉も残る、そういうようなやり方で私学やそのほかに対する助成や活力を増したらどうかというような意見もあります。こういうようなことも何も国家が介在してぐるぐる回しやらぬでも、ストレートに民間の発想が生かせればこれも一つの案だなとも考えられます。これは例え話でありますが、そういうような点でいろいろ知恵をめぐらす点があるのだろうと私も思っております。
しかし、富裕税というのは、今大蔵大臣御答弁のように、あれはやめるときにいろいろな問題がございまして、これは一問題だと思っております。
-
○
和田静夫君 ところで、この辺非常に気にかかるところなんですが、大蔵大臣、減税財源として大型間接税、EC型付加価値税の姿が見え隠れしていますよ。補正予算の際にもこれは質問いたしましたが、自民党の村山調査会が所得・法人減税の財源をEC型付加価値税に求めるとされている。竹下さんは補正の際に、重要な参考資料として絶えず念頭に置くべきものと村山報告を位置づけて答弁された。
これは一般論としてお尋ねするんですが、所得と法人の減税を行って、他方で大型間接税を導入するということは、これは所得の低い階層の人々には減税の効果はなくなるか、もしくは非常に薄いものとなる。そういうことは税制上工夫を凝らしてみてもどうしても出てこざるを得ない。というのも、大型間接税というのは本来所得の低い人も所得の高い人も同じように負担がかかってくる。大金持ちが大根一本を買っても貧乏人が大根一本買ってもそれにかかる税金というのは同じですから、したがって収入に占める税の負担は貧しい人ほど高くなってしまう、これが大型間接税であります。いろいろ工夫をして生活必需品を除くようにしてみても、こうした間接税の金持ちに有利で貧乏人には不利だということ、なかなかこれは打ち消すことはできないはずであります。こういうような間接税、消費税の性格そのものは大臣はお認めでしょうね。
-
○国務大臣(竹下登君) いわゆる消費一般にかかる税制というものは、これは所得制限というものをやらないという限りにおきましては俗に言う逆進性というものがある。それはどなたがお飲みになっても酒一升にかかる、なかんずく従量税の場合なんか一緒でございますから。そのことは本来ある税の性格であるというふうには私も思っております。
-
○
和田静夫君 たとえいろんな工夫をされて収入に占める税金の割合が比例的になったとしても、それは税の持つ所得の再配分効果を減退させることになる。そういうような意味で、私は所得税減税の見返りに大型間接税、EC型付加価値税を導入することには反対であります。大型間接税の欠点はそればかりではなくて、個人消費を冷え込ませたり物価の値上がりを招いたり、したがって大型間接税は導入すべきではないのであります。
そこで、自由民主党の村山調査会の所得・法人減税、EC型付加価値税導入という結論について、なかんずくEC型付加価値税の導入について賛成か反対かを伺いたいのでありますが、ひとつ自由民主党員の
皆さんでありますから、
国土庁長官どうですか。
-
○国務大臣(
山崎平八郎君) お答えいたします。
私の任務からいうとそういう
立場ではございませんが、個人的意見といたしましては導入すべきではないと、かように考えます。
-
-
○国務大臣(鈴木省吾君) お答えをいたします。
いろいろ検討してまいりたいと思います。
-
-
○国務大臣(
羽田孜君) 自由民主党の党員でありますけれども、今国務大臣という
立場でコメントをする
立場にございません。
-
-
○国務大臣(江崎真澄君) 私は、党におりますときは、あれは各段階でみんな懐に手を入れるんですから、これはどうも
日本人向きではないなという議論をしておりましたが、今閣内におりますので、これはやっぱり税制調査会の結論を待つ、こういう姿勢でございます。
-
-
○国務大臣(
佐藤文生君) お答えします。
党の税調の結論がだんだんと出てくると思いますので、それを待って対処していきたいと思っております。
-
○
和田静夫君 党の税調はとっくに結論出ているんですよ、あなた。
竹下さんいかがでしょうか。
-
○国務大臣(竹下登君) いや、党の税調も別に結論は出ておりません。村山調査会というものの報告はございます。そして、各党からもまたいろんな意見をちょうだいしておりますので、それらを総合的に勘案して、税調で議論をしていただけるものであろう。ただ、総理が明瞭に
和田さんに対する答弁でも御否定なすっておりますように、EC型付加価値税といってもいろいろの態様が考えられますが、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大
規模な消費税を投網をかけるような形はとらないという
立場でございますというようなことは明確に答弁をされております。これらに該当すると考えられるようなものは中曽根内閣としてはとりたくないと。そして、私の頭にありましたのはまず第一に取引高税があったわけでございます等々、これはかつて
和田さんに答弁されたことはそのまま今日も生きておるということであろうと思います。
-
○
和田静夫君
国土庁長官が一番はっきりしていまして、非常に歓迎をいたします。
河野さん、新自由クラブですが、どういう見解ですか。
-
○国務大臣(河野洋平君) 個人の資格で御答弁をさせていただきますが、極力慎重であるべきだと、こう考えます。
-
○
和田静夫君 総理は、一昨年二月二十三日の私の質問以降、
衆議院に行っても、中曽根内閣が続く限り大型間接税は実施しないと確約され続けました。その内容は、今いみじくも大蔵大臣が読み上げられたとおりであります。
そこで、総理の定義に含まれない大型間接税というのはありましょうか。
-
○国務大臣(竹下登君) この問題は、税制調査会の今日まで、今年度に限らず、あるいは五十八年の中間報告でございますとか、そういうものを見てみますと、いわゆる課税ベースの広い間接税の問題についてということになりますと、従来の税調の基礎的な議論の範囲から考えれば広範な検討領域の中に入っておるというふうに私は思っております。しかし、取りまとめの順序からしますれば、いわば後半の議論になるであろうというふうに今考えておるわけであります。ただ、ぎりぎりそれでは課税ベースの広いという広い範囲はどこまでかと、こういう議論になりますと、
日本の場合どちらかといえば酒、たばこに大変特徴づけられるような間接税の体系になっておりますので、別に物品税等々もございますが、それらがどういう位置づけをされるかということは、まさにこれからの課題であろうというふうに考えております。
-
○
和田静夫君 そうすると、これからの課題になりますと、税の名称といいますか、税目といいますか、そういうものを挙げることができましょうか。
-
○国務大臣(竹下登君) 今まで議論をされたものは、課税ベースの広い間接税等のあり方については、将来とも検討しなきゃならぬというようなものもございますし、あるいはキャピタルゲイン課税の問題等もたびたび指摘を受けたところでございます。
それから、いわゆる総合主義と選択分離の問題等からする金融商品に対する利子課税等の問題等も指摘を受けたことがございますし、国会の議論でもそれらはたびたびなされておることでございますので、あれほど正確に報告してありますから、議論の対象にはなるものであろうというふうに思います。ただ、正確に税目を何だと言うだけの自信はなかったものですから、極めて常識的な言葉でお話しをしたことをお許しください。
-
○
和田静夫君 総理、EC型はどうでしょう。EC型は総理定義の大型間接税に含まれるんでしょうか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) これは間接税とか大型とかというものの定義にもよるので、一概には言い得ないと思います。
ただ、税調が審議対象を選ぶという場合にはいわゆる聖域というものは設けないで、自由に論議してくださいということで一応論議の対象の中には入っておるが、しかし結論がどう出てくるか、またその結論を我々がどういうふうに採用するかしないか、これは出てきた後の話になるだろうと思っております。
-
○
和田静夫君 その答弁は総理からはいただけないのであります、非常に失礼ですが。なぜならば、EC型にもいろいろの態様があるというふうな形で総理自身が定義づけられたわけでありますから、総理の定義を中心としてこれから論議を詰めるわけです。そういうことを考えますと、いろいろの態様があると言われるのなら、ここで逐一分類をしてもらいたいんです。これは大蔵省の答弁ではなくて、総理が定義されたんだから、総理に分類をしていただきたいですね。
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○
政府委員(尾崎護君) お答え申し上げます。
課税ベースの広い間接税の類型といたしましては、単段階課税のものとして製造者売上税、これはカナダで行われているものでございます。それから卸売売上税というものがございまして、オーストラリアとかスイスとかで行われているタイプのものでございます。それからアメリカの州で行われておりますようないわゆる小売売上税というのがございます。それから先ほど来話題になっておりますEC型の付加価値税と申しますのは、多段階課税のタイプでございまして、これは世界で最も広く行われているタイプでございます。それから我が国にもございました累積型の取引高税、これが多段階課税でございます。それからEC型の付加価値税の変形というような形で、我が国でかつて議論されましたいわゆる一般消費税というのがございまして、大体課税ベースの広い間接税のタイプといたしましては、現在この六通りがあろうかと存じます。
-
○
和田静夫君 納得できないのであります。総理が定義されたことですから、私は総理と私とで詰めをやりたいと思っておりますから、余分な答弁で時間をとられては困るのであります。
多段階でなく、包括的でなく、かつ網羅的、普遍的でない、かつ大
規模でないEC型付加価値税ありますか、総理。
-
○国務大臣(竹下登君) いや、総理のおっしゃいましたのは、これは大体今それぞれ指摘なさいました多段階、網羅的、普遍的というのは概念的に申されたことであって、それを中曽根博士がシャウプ博士と同じようにちゃんと定型的にそれの税というものを整理して申されたというふうには私も理解いたしておりません。まさに政治家としての感覚で受けとめられた言葉であるというふうに私はこれを理解いたしております。
-
○
和田静夫君 それはだめですよ、竹下内閣にまだなっていないんですから。
これは
委員長、一昨年の二月二十三日、この場で補正予算の論議を通じて初めて中曽根総理が私に約束された、国会の中で全部衆参合わせてここで初めて約束されたその後追いを今やっているんですから。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 私が御答弁申し上げたのは、おっしゃるとおり多段階、包括的、網羅的、普遍的であって、そしてたしか大
規模な消費税を投網をかけるようなやり方で取るというタイプのものは、中曽根内閣としてはとりたくないと、そういうようなことを申し上げた記憶がございます。
しからば、今御質問のように、多段階でない、包括的でない、そういう別のタイプのEC型付加価値税というのがあるかないかという御質問でございますが、私は考えようによってはいろいろあり得ると思うんです、組み合わせでございますから。そういうようなものを税調が研究するかしないか、これは税調の自由であります。しかし、あらゆる種類のものを知能の限りを尽くして研究して、これが
日本に合うか合わぬかという、また別の問題が出てまいります。
しかし、ともかく税調は自由でありますから、どういう答申が出てくるか、最後にその出てきたものを我々が見て、そうしてこれはいいとかこれは悪いとか党で判断をする、我々もまた判断をする、そういうことになるだろうと思います。ですから御質問にお答えすれば、いろいろな仕組みやタイプは理論的には考えられるであろう、そういうふうに申し上げられるだろうと思います。
-
○
和田静夫君 その理論的に考えられるものを具体的に出していただいて、私も共通の場で税制の問題ですから論議をしたいから言っているわけですから。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) それは、私の税の知能指数ではとても難しいので、制度として申し上げられるようなまだ力はございません。ただ観念的に申し上げているところであります。
-
-
-
○
和田静夫君 なかなか総理の頭の中に回転をしているもの、我々よりもずっと回転が速いわけですから、推測することはなかなかできないのですが、今観念的にと言われれば結果的にはないとお答えになったのかなと思うのでありますが、ここのところちょっと一言。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 今、急な御質問をいただいて、私のような税の理論あるいは勉強の不足な者にはすぐこれを構成するということはなかなか難しいことでもあります。そういう固まった固定的なものはないのであります。
-
○
和田静夫君 実は中曽根総理の大型間接税の私との長い三年間にわたる論議を経て、図式にあらわしてみたのです。こういうことになるんですね。(図表を示す)中曽根総理の場合はI型、この大型間接税がEC型を含んでおる、これでいいんですかな。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 私はただいま申し上げましたように多段階、包括的、網羅的、普遍的で大
規模な消費税を投網をかけるような形で取るという、そういうタイプの間接税というようなものはとりたくないと、そう申し上げておるので、それが今先生がおっしゃったその円の中に入っているか入っていないか、にわかに断ぜられないと私は思うのであります。EC型付加価値税と言われましても、国によってはいろんな性格の差はやっぱりあるだろうと思います。しかし、今そう申し上げた中でも、今申し上げたような多段階で包括的、網羅的と、特性を挙げたそういうようなものはやらないというのですから、そういうものは入っていないわけです。それだけは言えるだろうと思います。
-
○
和田静夫君 Ⅱではありませんね、大蔵大臣、どうでしょう。
-
○国務大臣(竹下登君) 私どもが使っておりますのは課税ベースの広い間接税と、大型という言葉を使いますと、どこが大型、どこが中型、どこが小型と、こういうことになりますので、一般論として今日まで税制調査会で使われた言葉として課税ベースの広い間接税、こういうことを言っておりますので、EC型にももろもろの態様が考えられるという形においては完全に外へ出てしまってはいないだろう、学問的には。私も大した学問じゃございませんけれども、そう思います。
-
○
和田静夫君 そうするとⅠとⅡは消えました。消えますと、ここが非常に重要なところでありまして、私たち協議するのに。Ⅲでしょうか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 税調がどういう答申を出してきますか。その税調の出してきたものが今あなたのおっしゃる第Ⅲの類型に属するかどうか、まず第一に検討を要するだろうと思いますが、私が申し上げた限度の多段階、網羅的云々というものに属さない場合には、それは我々としては一応検討の対象にすることはできると思いますけれども、それを採用するか採用しないか、これは党とも相談をし、あるいは内閣でもいろいろ相談をして決めることで、完全にそれは自由な
立場を今日は持っておるわけであります。
-
○
和田静夫君 総理が言われておることは私はわかりますよ。わかりますけれども、総理があえて定義をされましたから、私はその定義を確定をしたいのです。そうでないとこれから論議できませんものですから、したがってⅢの部分について明らかにしてもらいたい。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 私は固定的な固まったものは持っておりません。ただいま申し上げましたように多段階、包括的、網羅的云々というものでないそういうEC型のものがもしあるとすれば、それは今あなたがおっしゃったような両方の交錯するところへ入れるでしょう、理論的には。しかし、そういうものが具体的にどういう形を持って出てくるか、それは税調が検討した結果何を出してくるかによるのでありまして、その場合、今度は我々が自由な
立場でそれをあるいは拒絶し、あるいは部分的に採用しということは完全に白紙の
立場でやり得ることであると、そう考えております。
-
○
和田静夫君 だんだん狭まってきたんですが、どうもⅢのにおいがし出した。そうすると大蔵大臣、きょうは僕はここで云々言いません。このEC型のこれであると言うのならば、少し具体的に出してもらえますか、協議をしながら。
-
○国務大臣(竹下登君) これはなかなか難しい問題ですよ。これは私が思いつきで申しますと非常な誤解を受けてもいけませんので、総理が去年からいろいろ申されておりますように、このEC型付加価値税は多段階のものであります。これは確かにそのとおりですが、EC型付加価値税といってもいろいろの態様が考えられますということを申されております。その態様を今漠然と三つの図でおっしゃいましたが、観念的には私もⅢみたいな感じがしないわけでもございません、恐らく理論的には。しかしその中の態様で、さればどの段階は国税にしてどの段階は地方税にすべきだとか、そんな議論になりますとまさにプロの議論で、プロの議論で仮にあったとすれば、それは議論としてはあり得ることだと思いますが、私どもの方でいろんな態様を出してみると言われれば、やっぱり先ほど尾崎
審議官が申しましたような、私どもが平素考えておる各国のいろんな税制のあり方には
和田先生こんなものがございますと、もう今までも何回も恐らく持っていっているでございましょうから、それをさらに詰めた議論をするというのはこれはなかなか容易なことじゃございませんので、大体考え方が今の絵図面の中で、逐次この国会の問答を聞きながら国民の
皆さん方にも、いろんな税制というのがあり得るなということがわかっていただけたということで、私にとって大変な収穫ではないかと思っております。
-
-
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) いわゆる大型間接税あるいはEC型付加価値税に関しましては、私が前国会で
和田先生にお答え申し上げた以外のことについては固まったものはないので、まだ白紙でございます。
-
○
和田静夫君 戦略防衛構想SDIについて尋ねますが、SDIは宇宙の核軍拡であり、そもそも世界の平和に逆行するものでありますから私は反対であります。しかも、これに参加することは我が国の憲法が集団的自衛権の行使を否定していることからして違憲の疑いが極めて強いわけであります。したがって、我が国は実戦配備はもとより研究にも参加すべきではないと思っていますが、外務大臣いかがでしょう。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) SDIにつきましては、その研究は理解するという
立場でございます。この点については御承知のとおりでございますが、研究に参加するかどうかにつきましては目下、調査検討を重ねておるわけでございまして、第一次、第二次の調査が終わりまして、第三次の官民合同調査団をアメリカに派遣するということで今その編成を進めておるわけであります。この調査団の報告も踏まえ、政府部内で慎重に検討して方向は決めなければならない。まだまだ検討しなければならない課題は多いと思っております。そういう
立場から、これから慎重に検討は進めたい、こういうふうに思います。
-
○
和田静夫君 報道によりますと、サミットの前に官民間わずの線で参加の意思表示をするなどというような報道がずっとあるのですが、そんなことはありませんか。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) 研究参加についてどうするこうするという方針を決めるに当たりまして、特にサミットの前であるとか後であるとか、別にそういう期限的な設定はないわけでございまして、十分検討しなきゃならぬと考えております。
-
○
和田静夫君 アメリカはこの研究参加に当たって
日本に秘密保護法を要求していると言われるのでありますが、これは非常な問題でありますが、いかがですか。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) まだ我々としては、今そこまでアメリカとの間で話をしておるわけではありません。世界各国、イギリスであるとかあるいは西ドイツ、あるいはまたイタリーあるいはフランス、それぞれがそれぞれの国の
立場で参加を決めておるようでございますが、その態様もいろいろと異なっております。そういう中で
日本は
日本なりの
立場があるわけでございますから、そういう点も踏まえてこれから検討はしなければならない、こういうふうに考えておるわけです。
-
○
和田静夫君 このSDIの参加というのは四十四年五月九日の国会決議に私は違反すると考えていますが、研究といえども参加はできない、参加しない、これは外務大臣、明確にされた方がいいのじゃないですか。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) 国会の決議は、これは尊重していかなければならない、また尊重するというのが政府の
立場であると、こういうふうに思っております。
-
-
○国務大臣(河野洋平君) SDIに限らず、憲法あるいは国会の決議、こういったものは遵守すべきことは当然だと考えております。
-
-
-
○
和田静夫君 フィリピンについて一問だけ聞きますが、マルコス前大統領の一族の在外資産が問題になっているわけですが、外務大臣、
日本にも隠し資産がある可能性は十分にあるわけですけれども、これは調査をされていますか。まだだとすれば早急に調査をして、差し押さえなどというようなことの必要があるとお考えになりましょうか。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) マルコス大統領の資産についてはいろいろと言われております。アメリカにあるということも報道で我々も承知しておるわけでありますが、
日本については今のところ私たち何も承知をしておりません。外務省として調査するという
立場といいますか、そういう機能を持っておりませんので、大使館の公的な財産とか資産とかいうものははっきりしておりますが、それ以上のことは我々として調査することは困難であろう、こういうふうに思っております。
-
○
和田静夫君 改憲などをめぐって隣国韓国の政治的な動きがあるようでありますが、外務大臣、どういうふうに把握されていますか。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) 一九八八年のいわゆる大統領の改選をめぐりまして、それまでに直接投票を行うように今の憲法を改正すべきである、そういうふうな議論が野党側からも出ております。それに対して全斗煥大統領は一九八九年改憲ということを示唆されておるというふうに聞いております。
こうした韓国の情勢はいろいろと我々としても知っておるわけでございますけれども、何といいましても隣国の内政の問題でございますし、その点は我々として注目をしながら情報を集めておるということであります。
-
○
和田静夫君 これは評論的になりますが、フィリピン情勢というものが今日の韓国情勢に反映をしているというふうには理解をされていますか。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) 私は、フィリピンはフィリピンであろうと思いますし、韓国の動きはまた韓国の中で起こっておる独自な動きであろう、こういうふうに理解しております。
-
○
和田静夫君 財政再建に入りますが、大蔵大臣、
昭和六十五年度に赤字国債の発行をゼロにすることができると、これは本当に真剣にまじめに考えていらっしゃるんですか。
-
○国務大臣(竹下登君) これは、かたくななまでにもまじめに考えております。
-
○
和田静夫君 私は残念ながら非常に不可能だと思うのです、何遍も指摘をしましたが。したがって財政再建のやり方を改めるべきだと考えているのですが、どうしても旗をおろされないわけですね。
-
○国務大臣(竹下登君) これは私も、この六十五年度赤字国債依存体質から完全脱却するということは容易ならざるものだという問題意識は持っております。しかし私どもといたしましては、再三再四にわたってこれに対して議論をしながら今日に至っておりますし、やはり今日の段階で、いわゆる六十五年までに赤字公債の依存体質からは脱却し、その後残高全体を対GNP比等において減らしていくという二段階の目標は、やっぱりこれは掲げるべきである。仮に一たびこれに柔軟な対応をしたといたしますならば、直ちに歳出圧力というものも出てまいりましょうし、そして今までの努力というものが水泡に帰す結果をもたらさないとも限らないというふうに考えるからでございます。
-
○
和田静夫君 それでは、どういうような手順、方法でおやりになるかということを具体的にお示し願いましょう。これは補正予算のときに本予算までにという約束が成り立ったのでありますが、ついに詰めができませんでした。したがって、ここで答弁を求めます。
-
○国務大臣(竹下登君) この問題につきましては、確かに補正予算のときに先生と議論をいたしましたが、あのときも申し上げましたように、具体的な
計画案を策定することは率直に申し上げて困難でございます。すなわち、何年度には増税をどれだけやって、歳出削減はこのような費目でどれだけやってというようなことを現段階でお示しすることは困難だ、これは御理解をいただきたい。そこで、もとより毎度御満足をいただいておるものではございませんけれども、中期展望あるいは仮定計算というようなものを、少しでも予算審議の手がかりとしていただくために、一定の前提を置いてのものではございますけれども、いつもこれをお示ししておる。
それで、強いてこの中において変わったことは何かと申しますと、やはり私は一つには、まだ決算が済んだものでもございませんけれども、いわばお許しを得ておりますところの電電株の売却益というものを、これも一定の前提を置いた評価をして予算に計上さしていただいておるというようなことが、さらには年々進んでいく一つの前進した中期試算あるいは仮定計算の中へ組み入れさしていただいた要素になっておるではなかろうかどいうふうに考えます。
-
○
和田静夫君 竹下財政は、これまで前年度の中期展望で示された巨額の歳入不足や歳出超過、いわゆる要調整額というものを予算編成の段階になると消してきたわけであります。これまで四年間の要調整額を解消するテクニック、これを明らかにしてもらいたいですね。
-
○国務大臣(竹下登君) 一つは財政、いわゆる歳出の制度、
施策の根本にさかのぼった改革をしてきたということもございます。これはある意味において、概算要求基準というものを設けた中において各省において優先順位をそれぞれおつけいただいた内なる改革の結果であろうというふうに思います。
それから二番目には、やはり地方と国との業務分担あるいは費用負担のあり方についてことしの場合で申し上げますならば、昨年はいわば一律的であった、したがって一年限りの措置としてその間に閣僚
会議あるいは専門家
委員会等において検討しますということに基づいて、費用負担のあり方というものを決めて今日御審議いただいておる。これらもやっぱりテクニックと申しますか、基本的な考え方の一つの結果としてのあらわれではなかろうかというふうに思っております。
それから、しとしの場合は他に特別な措置といたしましては、財政上の都合から給与改善費の一%をあらかじめ計上することをしないということでお許しをいただこうと、これらもそこの中に入りますし、さらには、ことしは予算繰り入れはございましたものの、いわゆる国債整理基金に対する減債制度というものをここで継続してまた提出さしていただいておる。そういうような措置をも含めて、いわば毎年予測される要調整額を今日どうやら一般歳出前年度同額以下という枠の中へ埋め込んだとでも申しましょうか、そのようなことではなかろうかと思います。
もし正確を期するためでございましたら、主計局からいま少し正確にお話ししても結構でございます。
-
○
政府委員(吉野良彦君) まず、昨年度予算を御提出申し上げましたときに示されておりました六十一年度の要調整額でございますが、そのうち歳出の面について申しますと、中期展望におきまして六十一年度は前年度に比べて約二兆円強一般歳出で増加をするというような数字が示されていたわけでございますが、その後脚案内のとおり、いわゆる概算要求基準を厳しく御決定をいただきましたので、各省庁から出てまいりました概算要求は前年度に比べまして約四千八百億強という水準にまで圧縮をされたわけでございます。つまり、昨年度の中期展望で示されておりましたいわば自然体での六十一年度の一般歳出の増加圧力が約二兆円であったわけでございますが、各省庁の要求に当たってのいろんな工夫努力によりまして、それが約一兆六千億程度圧縮をされたということでございます。
その各省庁の要求自体における圧縮の努力の主なものというふうに申し上げますれば、一つは厚生省の関係でいわゆる老人保健制度の見直しを織り込んで御要求があった。あるいはまた公共事業関係につきましては、いわゆるマイナスシーリングでございましたので、国費ベースではマイナスの要求が出された。それからまた、いわゆる補助率問題でございますが、要求の段階でとりあえず前年度同額程度の要求が出されまして、その後御案内のように、年末までにかけて、補助率問題について補助金問題検討会の御結論をいただいた、こういうことでございます。
これが要求までの段階でございますが、さらに要求後いわゆる国家公務員の給与改定が決定をされましたので、先ほど申しました概算要求におきます約四千八百億増の上にベア関連の歳出増加要因といたしまして約六千億が上積みになったわけでございます。したがいまして、概算要求後の実質的な要求は前年度に比べまして一兆円強ふえるという姿になったわけでございますが、その後、予算編成過程を通じましてこの一兆円をほぼゼロ、若干のマイナスでございますが、ゼロのところまで削減をさせていただいたというごとでございますが、その中身は、これも主なものを申し上げますと、いわゆる補助率の総合的な見直しによります国費の節減、あるいは政管健保につきましての繰り入れの特例をお願いをする、あるいはまた国鉄の民営化に伴います、いわば円滑に移行させるというようなことを念頭に置きましての国鉄に対する助成措置の改革といったような項目等々を工夫をいたしまして、概算要求後のいわば実質要求一兆円をゼロにまで圧縮をしてまいったということでございます。
-
○
和田静夫君 要するに、これまでの要調整額を解消してきた主な手段というのは、一般会計から国債整理基金への定率繰り入れを停止してきたということであります。
それで、これまでの要調整額解消のテクニックを私は図にしてみました。歳出の方で見ますと、毎年定率の繰入額が一番大きいわけです。八三年度で一兆四千百億円なのであります。地方交付税を除く実質削減分の七五%がこの定率繰り入れの停止であるわけであります。この実質削減分で八四年度は五五%、八五年度は五七%、八六年度は五四%ということに大蔵大臣なっているんですね。そのほかに大きいところでは歳出の後年度送りが目立っているのであります。
そこで、八七年度、
昭和六十二年度は定率繰り入れはどうなさるおつもりですか。
-
○国務大臣(竹下登君) 今財政審へお願いをいたしていろいろ議論していただきました。したがって、この定率繰り入れというものについては確かに議論がございます。それだけ結果としては公債発行額を余計にしておるということにすぎないではないかと、こういうような議論もございますが、種々検討をいただいた結果、やはり減債制度の根幹はこれを維持すべきである、こういう精神の上に成り立っております。
新たなる要素といたしましては、電電株の売却収入の問題が出てくるでございましょうが、かれこれ総合的に勘案いたしまして、六十二年度予算を作成する際、これはぎりぎりの段階で減債制度を維持しながらどうするかということは結論を出そう。
和田さん、今からおよそこのような措置で行おうと思っておりますという
状態には全くございません。
-
○
和田静夫君 後年度負担というか、ツケ回しについて一つだけ承っておきますけれども、政管健保については国庫負担の減額を行っている。しかも、この特例措置というのは前大臣の答弁と異なる、これは約束違反なんです。
そこで大臣、剰余金の繰り入れということは、これは約束違反ですが、おわかりになっていますか。
-
○国務大臣(今井勇君) このような特例措置は確かに変則的なものでありまして、私といたしましても好ましいものではないと思っております。しかしながら、六十一年度の予算編成に当たりまして、国家財政が極めて厳しい状況の中で特段の協力を求められましたので、政管健保の財政運営に何らの支障を及ぼさないということを前提に万やむを得ないものとして協力をいたすことにいたしたものでありまして、事情を御賢察いただきたいと思います。
-
○
和田静夫君 それは大臣だめですよ。あなたもう少ししっかり防衛しないと国民生活は大変なことになるのでありまして、政管の保険料を一千分の一引き下げたわけですから、これをまだ下げられるというようなことなどもあるでしょう。
-
○国務大臣(今井勇君) 政管健保は保険料の財源で負担すべき過去の累積債務をだんだん償還し終えまして、ようやく五十九年度、六十年度と剰余金が生じまして、積立金ができるようになったわけであります。
政管健保の積立金の
規模でございますが、私どもは望ましい姿としてはやっぱり給付費の少なくとも二カ月分ぐらいは持ちたいものと考えております。政管健保の六十一年度の予算編成の際になお単年度の収支に剰余が生ずると見込まれ、こうした状況について社会保険審議会から被保険者への配慮を優先的に考えるようという強い御意向を承りましたので、積立金は二カ月分に満ちませんが、保険料率を一パーミル下げることにしたものでございます。
-
○
和田静夫君 六十二年度には特例措置はこれは絶対にやらない、確約できますか。
-
○国務大臣(今井勇君) 六十二年度の取り扱いでございますが、現段階においては何とも申し上げられないというふうなのが心境でございます。私としましては、五十九年度から先生おっしゃいますように政管健保の財政の基盤が最近変わってきているようにも思われるその反面、また五人未満の事業者の適用の拡大あるいは老人医療費の増というような問題もこれありまして、今後社会保険審議会の御意見も十分に承りながら将来にわたる財政運営のあり方について総合的に考えてまいりたいと今考えておるものでございます。
-
○
和田静夫君 それはだめです。やっぱりここでは明確に六十二年度は絶対にやらないんだというぐらいのことを厚生大臣はしっかりお約束にならなければなりませんよ、これは。
-
○国務大臣(今井勇君) 来年度のことでもありまして、約束というわけではないのでありますが、やっぱりそのようなことはやりたくないという私の素直な気持ちを申し上げたいところでございます。
-
○
和田静夫君 厚生大臣としてはやりたくない、明確にしてください。
-
○国務大臣(今井勇君) 再度繰り返しになりますが、来年のことでございますが、約束というわけではございませんが、やっぱり私としましては素直な気持ちで申し上げれば、そのようなことはやりたくないという気持ちでございます。
-
○
和田静夫君 定率繰り入れに戻りますが、六十二年度の場合仮に定率繰り入れを大臣やったといたしましても二兆八千七百億の要調整額が出てまいりますが、二兆八千七百億というのをどういうふうに解消されますか。
-
○
政府委員(吉野良彦君) 先ほど大臣からも御答弁がございましたが、いわゆる国債の償還につきましての定率繰り入れの問題でございますが、従来から申し上げておりますように、このいわゆる減債制度の基本は堅持してまいりたいという考え方をとりつつ、六十一年度におきましても緊急いわば異例の措置として定率繰り入れの停止をお願いをしているわけでございます。私どもといたしましては、やはりこの定率繰り入れという減債制度の基本は維持してまいりたいという基本的な考え方をとっているわけでございますが、具体的に六十二年度とういう取り扱いをするか、これは六十二年度の財政事情が歳出、歳入を通じまして全体としてどのような事情になりますか、全体の総合的な判断の中で慎重に検討をしてまいらなければならない、かように考えております。
-
○
和田静夫君 大臣、マイナスシーリングはやられるんですか。
-
○国務大臣(竹下登君) これはまだ概算要求基準というのを決めたわけではございません。が、いずれにせよ厳しいものにならざるを得ないであろうなということまでは私は言えると思いますが、まだ今年度の予算をこうして御丁重に御審議いただいておるときに、来年度の予算の概算要求基準まで私も言及するだけの能力の持ち合わせはございません。
-
○
和田静夫君 六十五年度ゼロというのを頭に描きながらでありますからこの予算の論議の中で申し上げているのでありまして、もうちょっと率直に言って何%ぐらいマイナスにしたらいいというぐらいのこと頭の中にあるでしょう。
-
○国務大臣(竹下登君) それは仮定計算でもお示ししますように、完全に同額以下で貫かれたら、今でもこの六十五年度脱却は不可能ではないという仮定計算上あるわけでございますが、来年度の予算について何%というようなことを考えているかということについては今私が申し上げる段階ではございませんが、今まで各省に御協力をいただきました経常部門の一〇%あるいは投資部門の五%というようなものが念頭にはございます。
-
○
和田静夫君 後年度送りにできる歳出というのはどういうものでしょうね。
-
○
政府委員(吉野良彦君) 六十二年度予算に関連してのお尋ねかと存じますが、今具体的に念頭に浮かんでまいりますものはさしあたりございません。
-
○
和田静夫君 私が言いたいのは、要するにどのようにして要調整額を解消するのでありますか、具体的な手段はということなんですから、そんな不親切なのは困るんですね。
-
○
政府委員(吉野良彦君) 六十二年度予算編成、これはまだ先のことではございますけれども、やはりその時点時点で、従来からも毎年毎年続けてまいりましたような努力をさらに一層工夫をして、努力に汗をかいていかなければならないということかと思いまして、今具体的に六十二年度予算編成に当たっての具体的な腹案というようなものはまだ全く持ち合わせておりません。
-
○
和田静夫君 いや、最も精緻な数字を展開するはずの主計
局長と禅問答をやる、政治家同士の話をやっているような感じになってきまして、これじゃどうも手順も方法も全然我々野党側の頭の中に浮かんでこぬということになりますね。したがって、予算編成に全然我々が責任を持てないというような
状態になってくるのでありますが、その意味で六十五年度赤字国債脱却が可能だと言われるのでありますから、可能なのならば、そこに向かっての具体的な手順と方策は示されるべきだ。
-
○国務大臣(竹下登君) この問題を毎度申し上げておるのでありまして、されば増税で何ぼあるいは歳出カットで何ぼ、社会保障が幾ら、何が何が幾ら、こういうようなことはこれは申せる問題ではない、これだけは御容赦を願いたいということを毎度申し上げておるわけであります。したがって、この六十五年度までに脱却しようというこれは非常に困難、難しい問題であるということは十分意識しながらも、それに対しまして毎年毎年の努力と、そして少しでも予算審議をしていただくための手がかりになるためにというようなので、新しい要素が入ったとすれば、ことしの場合前提を置いてのことではあるけれども、電電株の売却収入等が入ってきたと、そういうふうに毎年毎年積み上げていかなきゃならぬと思います。
そこで、六十二年度考えられることは、今度はそのほかに何が考えられるだろうかということをいろいろ考えておりますが、税制の問題というのが一応は答申が出てきて、年末までにはどのように扱ったかということが決まりますと、仮にその中で単年度あるいは平年度化した場合にどういうふうになるかとかいうようなものが幾らか下敷きの上に浮き彫りにされるのかなと。そういう努力を毎年毎年続けていかなきゃいかぬ私の
立場も容易なことではございません。
-
○
和田静夫君 大蔵大臣の
立場は容易じゃないんでしょうが、しかし六十二年度に向かっていろいろお考えになっている、例えばそのうちの一つは税制と、こう言われたんですが、いろいろの
あとの方は。
-
○国務大臣(竹下登君) それは、歳出削減もさらにやらなきゃならぬ。制度の
施策の根源にもさかのぼっていかなきゃならぬ。それから、これもまさに仮定の事実でございますが、電電株がどうなるものかとか、あるいは他の株式の問題がどうなるものかとか、そういうようなものが一応考えられることではなかろうか。あるいは
和田さんのお考えの底には、中には粗っぽい議論として、六十年償還ルールを七十年にしたらどうだとか、こんな議論もあるにはありますが、それは今その議論にくみしておるわけではございません。
-
○
和田静夫君 中期展望で機械的な数字はお出しになるが、
あとは国民にお任せいたしますと、具体的な方針は一向に示されない。そして、いつも年末の予算編成ぎりぎりになって密室の中で要調整額圧縮のために重要な制度変更を決める、そして国会に押しつける。こういうやり方というのは、竹下財政の中ではやっぱりもう改めなけりゃいけません。次に天下をとろうとお考えになっておれば、ますます私はそのことが必要だと思うんですよ。歳出削減をやるというのならきちんとした
計画をやっぱり出すべきですよ。
今頭の中にあることを一つずつ誘い出していけば、やっぱり頭の中にあるんです。それを数字で裏づけてもらいましょう。
-
○国務大臣(竹下登君) これこそ容易なことじゃございません。頭の中に政治家として観念的にいろいろなことを考え模索を続けておる毎日であると、こういうことでございまして、それを定量的にお出しする作業というのは到底私はお約束はできない課題である。
だから、国民の
皆さん方の理解と協力を求められるようなコンセンサスというものに少しでも近づいていくだけのいろいろな資料等は整えていかなければならないではなかろうかというふうに考えておりますし、また今おっしゃったように、年末密室の中で一つの政策決定をしたものを国会へ押しつけるということではなしに、それは事前には政策担当者間の意見交換もございますし、党首会談もございますし、また難しい問題は個々のそれぞれのセクションの方々に御理解を得る努力もいたしますし、そういう努力はこれからも続けていかなきゃならぬというふうに考えております。
-
○
和田静夫君 たばこ消費税一つとってみても、あれだけのものなら簡単に相談できそうなものを全然相談せずに密室の中でおやりになったんですからね。したがって、信用しておった竹下さんに対する不信感はあれで物すごく増大してしまった、国民の目から見れば。そういうことになっているんで、その辺は深く御理解になっているんでしょうね。
-
○国務大臣(竹下登君) たばこ消費税、一本一円ということ、厳密に言えば四十五銭と四十五銭で手数料が十銭、こういうことになるわけでございますが、これを手続上の問題として、税調に事前に諮ることなく決定したではないかと言われれば、私もそのとおりでありましたと、これは言わざるを得ません。これはまさに税制調査会の答申をいただいた後、最後のぎりぎりで、いわゆる地方財政
計画の中でどうするかという、二千四百億円、これを赤字公債の増発に求めるか、何らかの措置をとるかという最終判断で決めましたので、大体各関係方面に了解を得るいとまもなかった。したがって、税制調査会等におきましても事後承認をいただかざるを得なかった。各党の関係者の方、またたばこでございますと今民間になったばかりの会社でございますが、それの社長さんにも労働
組合の方にも連絡するいとまがなかったということについては、私は関係方面に対して今その弁明のために毎日汗を流しておりますが、これはみずから汗を流す責任があると思って汗を流しておるわけであります。
-
○
和田静夫君 時間がなくなりましたが国鉄問題に触れまして、国鉄問題の多くの部分を一般質問に回さざるを得ませんが、まず国鉄改革関連法案が先ごろ国会に提出されました。この問題に入る前にあらかじめ聞いておきたいんですが、中曽根総理は、国鉄改革を大義名分としてこの六月にも衆参同時選挙をやるといううわさが絶えないわけであります。果たして国鉄改革が大義名分のあるものであるとお考えになるのかどうか、解散、総選挙を考えているのか、まず伺います。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 国鉄のような重大法案は、これを一日も早く成立せしめることを念願して、解散は考えておりません。
-
○
和田静夫君 もう一つ、国鉄の哲学を問うておきたいのでありますが、国鉄問題を取り扱うに当たって、国鉄というのは官鉄時代を入れると百十余年の歴史を持っている。つまり、その歴史の重みにふさわしい慎重な取り扱いを要するということだろうと私は思うんですね。
周知のとおり、明治政府の大隈重信や伊藤博文、アメリカなどの要求をけって自力建設を進めて、明治五年に汽笛一声、新橋から出発をした。このことは、
日本の独立主権の確立にとって重要な意味を持っていたわけであります。すなわち、国鉄というのは国の体面や国のありようと一体となった国民の共有の財産であったわけであります。私たちは、国鉄という存在をとらえる哲学があって初めてその経営形態を含めた百年の大計を考えるべきである。少なくとも私はそう考えているんですが、特に国鉄ほど地域と一体感があり、また全国に連絡をしている、そういうものはほかにないわけであります。飛行機にも船にも、あるいは自動車にもない。この全国の動脈であることを忘れて国鉄を論ずることは、運輸大臣、できませんね。
そうすると、国鉄というのは、少年の日の山村の駅に立った記憶を私たちはたどってみますと、これはだれしも思い至るとおり、
日本人の連帯のきずなであります。この動脈、この連帯を分断するということは、
日本人の心の分断であるというふうに私は考えている九ですが、総理、この辺いかがです。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 国鉄は、百余年にわたる輝かしい歴史を持って
日本国家の建設及び民生の安定等に非常に大きな貢献をしたし、また戦前においては
日本の財政を助けるために非常に大きな貴献をしたことも事実でございます。
しかし最近、世界情勢の変化、科学技術の進歩等々の大きな変化を受けまして、いわゆるモータリゼーションとかあるいはそのほかのいろいろな要因によりまして
交通体系にも一大変革が訪れつつあるわけであります。その大きな変革に、普通の言葉で申し上げますと乗り損ねたと申しますか、対応が不十分であった。そういうような関係から今のような事態になりまして、今全国民の御協力をいただいて大改革を行わんとしておるので、国鉄に対しては愛惜は残りますけれども、しかし時代の進展に即応する国鉄、しかもまだ分割によって地元にさらに密着をする国鉄という方向に変わり、さらに民有化を促進することによって、自分たちの国鉄というふうに新しい変化が望まれると、そう考えておる次第であります。
-
○
和田静夫君 国鉄の資産が一体どれぐらいあるのか全くわからないわけであります。資産の正しい評価なくして企業の再建はできないことはこれは常識であります。
私は、東京周辺の原簿価格の一覧を今お手元に配りました。簿価はめちゃくちゃに安く設定されています。国分寺のアパートなどは、何と平米当たり二百三十三円であります。国鉄当局、国鉄の貸借対照表は資産が不当に低く評価されていることはこの一覧で明らかですが、総裁、そのとおりですね。
-
○
説明員(杉浦
喬也君) どの企業でもそうでございますが、
土地あるいは財産、これはおおむね取得原価、簿価によるものの表示が普通でございます。簿価の表示は年とともに
土地の値上がり等によりまして実勢価格とは乖離しているのはこれも当然なことと思います。
-
-
○瀬谷英行君 今、総理の御答弁によりますと、国鉄法案は一刻も早く成立をさせたい、こういう御趣旨の答弁があったのでありますけれども、今まで監理
委員会というのは何年もかかって、しかもまだ結論の出ていないものもあるんですね。これを、今まで出た結論だけを法案にまとめて一刻も早くと言うと、国会に対してはこれを早くうのみにしろ、こう言われるのと同じなわけです。しかし、それは私はできないと思うんです。うのみにした場合には小骨がひっかかって飲み切れないものもあるかもしれない、あるいはまた中毒を起こすかもしれない。我々国会がその点は十分にそしゃくをしなければならぬというふうに考えておるのでありますが、その点、総理としては国会のそしゃくに対して期待をしているんですか、していないんですか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 国民を代表して国会において十分な御論議が望まれると思います。
-
○瀬谷英行君 その場合には、国会は国会でもってあるいはこの法案に対して修正をする、手直しをする、こういう必要に迫られるということもあり得ると思うんです。その場合に総理はそういう問題に対して素直にお受けになるというお気持ちがあるかどうかお伺いしたい。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 政府は、提出しました法案が今最善の法案であると確信して、修正という考えは持っておりません。
-
○瀬谷英行君 最善であるというふうに考えるのは総理自身の考えであって、実際はそうじゃない。監理
委員会の答申というものは極めて欠陥が多い。第一、去年の六月、七月に結論を出すことになっていたのがまだ、例えば鉄道貨物会社のように結論が出ていない問題だってあるんですね。ということは一体どういうことかというと、答申自体に無理があるということになるんじゃないかと思うんですよ。言ってみれば、これはもう戦争末期の大本営の作戦
計画と同じなんですよね。机上プランだけはあるけれども実際にはうまくいかないという問題が現にあるんです。その点について総理はどのようにお考えになりますか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 臨調以来監理
委員会に引き続きましてかなり長時間にわたり審議していただいたものでありまして、現時点においては考え得る最善の案であるとそう考えております。
-
○瀬谷英行君 まず、監理
委員会の答申自体の間違いを指摘するならば、最初に、赤字の原因についてはっきりしてない。この赤字の原因は、我々も何回か指摘しておりますけれども、国家的な投資を国鉄の借金でやらせてきたというところに一番大きな原因がある。この点はお認めになりますか。
-
○国務大臣(三塚博君) 総額が五十九年の決算によりますと二十一兆九千億ということになっております。そういうことで大ざっぱに見まして、先般もお答えをいたしたのでありますが、建設国債分、赤字国債分という国民の皆様におわかりやすい形をとりますとフィフティー・フィフティーだなと、こういうことであります。ですから設備投資、建設国債分もそれなりに新幹線、その他複々線、電化というようなことに投資をされておりまして、鉄道運営に役割を果たしてきた、このように言わざるを得ません。
-
○瀬谷英行君 監理
委員会自身が答えを出しあぐねている鉄道貨物会社だっていい例なんですけれどもね。これはもう今まで二千億の赤字が一挙に十六億の黒字になるというんです。これは手品と同じですよ。こんな手品が経営上やっていけるかというんですよ。これはハイヒールを履いて綱渡りするようなものなんです。こんな難しいことができると思っていますか、どうですか。
-
○国務大臣(三塚博君) 貨物の赤字の分析の仕方、従前の方式でまいりますと共通経費で見てまいりますものですから御指摘のように相なりますが、今回の改革はすべて収支を裸にいたしまして、その線その線の形の中で国民の前に明らかにする、こういうことにさせていただいております。
それともう一つ、監理
委員会は貨物の処方について、非常に通運その他の関連がございますものでありますから、なお検討を政府にゆだねるということにいたしました。私ども政府はこの問題で真剣に業界との連携もいたしながら、特に貨物会社の独立採算の上に立つ収支の確立のために検討を進めました結果今回の
法律提案をいたしたわけでございますが、準備はすべて完了をいたさせていただきまして法案の審議にスタンバイの
状態にございます。
-
○瀬谷英行君 それは結局無理だということは、一プラス二は五だというふうな答えを監理
委員会が要求をしたからなかなか答えが出なかったんです。しかもこの貨物会社の構想なんかでも、やっぱり競争ができるようになってないんです。通運会社の分野に入っちゃいけない、内航海運の分野に入っちゃいけない、こういうふうに制約があるんですよ。これで競争できますか。
きのうマラソンがありましたけれども、あのマラソンだってみんなああいうスタイルで走るからいいんで、あれを羽織はかまでもってげた履いて参加しろと言ったら競争になりませんよね。その点はやはり考える必要があるんじゃないかと思うんですが、どうですか。
-
○国務大臣(三塚博君) 御説のとおりでございまして、高げた履いて羽織を羽織って走っておりましたのじゃ対等の競争になりません。よって、行為能力を十分に持たせつつ貨物会社が十分な活動ができ得ますように、そういう法体系にしてまいりたい、そのような法体系を今回御提案をいたしておる、こういうことであります。
-
○
和田静夫君 それでは最後に。
お渡ししましたこれは、(資料を示す)簿価ではなくて、せめて公示価格で移譲するのが当然でしょう。公示価格で移譲して国民負担を軽減するというのが私は筋だと思うんですね。
あと具体的なことは一般質問でやりますが、ここの基本だけはしっかり認識の統一をしておきたいと思うんですがね。余り非常識なことをやっちゃいけませんよ。
-
-
○国務大臣(三塚博君) 総裁が答えるのが適切かと思いますが私から申し上げますと、総裁が言われましたとおり、取得価格で簿価を決定いたしております。同特に、今回は破産ではございませんで、鉄道として
和田委員が御指摘のように地域に貢献できる鉄道を再生、新生をしてまいりたいと、こういうことでありますので財産の処分を考えてないわけであります。しかし考えますのは、非事業用地として二千六百ヘクタール程度、このことを今選別をいたしておるわけでございまして、この部分についてはできるだけ国民負担を軽減する観点から処分をしてまいりたい、このように考えておるところであります。
-
-
○
説明員(杉浦
喬也君) 財産の評価の方法というのはたくさんございます。その
目的いかんによりまして、先ほどの御質問のように簿価で表示をすることが是である場合と、あるいはそのときの取得価格、時価評価というようなことが是である場合といろいろあろうかと思います。先生のお尋ねの、いわば鉄道事業としての本来の姿でどうかといいますと、これは新しい会社にそのまま事業が引き継がれるわけでございますので、従来どおりの簿価で実施することが当然かと思います。
その他の事業用以外の用地につきましては、できるだけこれを売却いたしまして、その売却のお金を償還財源に充てまして国民の負担をできるだけ軽減するということが適切かと思います。
-
-
-
○
中西一郎君 御高配大変ありがとうございます。急なことでございまして、お許しをいただいて大変ありがたいと思います。
さて、まず総理からですけれども、施政方針演説でもって西洋文明と東洋文明の融合ということについてお触れになりました。それをお聞きしたときに私の頭へ浮かんだのは、学生時代読んだシュペングラーの「西洋の没落」とかあるいはアーノルド・トインビーの「物の考え方」とかが浮かんだのでございますが、総理はどういう背景と展望を持ってああいった西洋文明と東洋文明の融合ということを御発言になりましたか、その点を伺いたいと思います。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 最近になりまして世界に大きな変化が起こりつつあります。例えば、イランにおけるホメイニ革命、あれは歴史家から見れば、前のシャー、王様がやりました新しい近代化
計画、いわゆる資本主義化あるいは西欧化に対する回教あるいは伝統的歴史観から見る一つの反発で、ある意味においてはアメリカ化しようとしているあれに対する大きな反発があった、資本主義に対する反発あるいはアメリカ文明に対する反発、それは回教のファンダメンタリズムから出てきておる、あるいは文明の相克的様相が一つあそこへ出てきておる。
〔
委員長退席、理事
桧垣徳太郎君着席〕
各地における紛争等を見ますと、新しい国が独立いたしまして、みんな固有の生き方や考え方を持って生まれてきておるわけで、そういうようないろんな情勢変化等を踏まえてみますと、やはり最近になって非常に大きく様相が変わりつつあると思っておりました。
例えば、文明はギリシャ、ローマからさらに地中海へ、地中海からアメリカへ、アメリカから今度はアメリカの西の方へ移ってきまして太平洋岸、次はもう太平洋というものが大きな注目の的になっておる。そういうような歴史的変遷を考えてみますと、片っ方は大西洋回り、片っ方はインド洋、アジア回りというような形で、太平洋で新しいランデブーが行われる可能性も見られる。そういういろんな面から見まして、西欧的なものあるいは東洋的なものあるいは回教的なもの、その他あるいはヒンズー的なもの、さまざまな考え方がここで出会ってくる。そうして、原爆、水爆を抱えて苦悩している人類の前途を模索しつつある。そういう観点から考えた次第であります。
-
○
中西一郎君 私もおおむね同感でございます。
そこできょうは、主として初めに
環境庁長官あるいは
気象庁長官、
科学技術庁長官にお伺いしたい。
というのは、近代科学文明というのは、今、総理からお話があったような変遷を経て今日に至りました。
日本の文明というのも西欧文明を受け継いでここまで来た。
それはそれとして、資料を配ってもらいたいと思いますが、(資料配付)地球の全体の
環境、
日本の
環境も先ほど来問題になりましたが、地球全体の
環境についてのペーパーをお配りいたします。これを一々お話ししておると大変なことになりますが、二十一世紀に向かっていろんな問題が山積している。
衆議院なり、きょうここでなり、ことしの問題、来年の問題あるいはここ数年の将来の問題、いろいろ問題になりました。しかし、政治家としては、もっと先のことも考えて今から対処をしておく必要があるのではなかろうかという趣旨で質問をしたいと思うのです。
まず初めに、アメリカ大統領府でもって、全地球的なという意味でしょう、「全地球的
エネルギーの将来と二酸化炭素問題」という指摘が
昭和五十六年、西暦で言うと一九八一年の十二月になされておりまして、それに基づいて一九八四年一月二十四日、「二酸化炭素の蓄積による気候変動と
資源問題に関する調査報告」というのが、これは科学技術庁の
資源調査会の気候・
資源小
委員会で発表をしておられるわけです。それに引き続いて気象庁が一九八四年の三月二十二日、「異常気象レポート84」というのを出しておられる。これは「近年における世界の異常気象の実態調査とその長期見通しについて」という副題がついています。ここでお見かけすると、五十歳前後から四十歳代の閣僚が五、六名いらっしゃるんですけれども、恐らく二十一世紀になっても議員をしておられる方々ばかりだろうと思うんです。といって、それ以上の年配の方々が関心を持たなくていいという意味ではございません。みんなで関心を持っていただかなければなりませんが、そういった将来の展望を踏まえて、まず、順序はどちらでもいいんですが、科学技術庁それから気象庁からこのリポートの概要を御説明していただきたい。全閣僚、全
委員の方々にわかるように、余り専門的でない説明をしていただきたい。科学技術庁からやりますか。
-
○
政府委員(
内田英治君) お答え申し上げます。
先生御指摘の大気中の二酸化炭素という問題でございますが、これは地球上の気候というものがだんだんと変動をしておりますけれども、この重要な要因の一つでございます。それで、これが年々急速にふえ続けているという事実がございます。これが地球を温暖化するであろうということが多くの人から言われているわけでございます。
そこで、今、先生御指摘の近年の気候変動という問題につきまして、
昭和五十九年に気象庁の発行した「近年における世界の異常気象の実態調査とその長期見通しについて」、こういうパンフレットを発表いたしましたが、その中で、かいつまんで申し上げますと幾つかの事例を指摘しているわけでございます。例えば、異常気象とよく申しますけれども、これは世界的に見ますると一九六〇年代よりも一九七〇年代の方が気温あるいは降水量についての異常現象が著しく増大していると、そういうふうなことをいろいろ報告しております。それから、地球大気の大循環に
影響するエルニーニョ現象というのがございまして、これはペルー沖の海水温の異常でございますけれども、そのことについても触れております。またアフリカの干ばつと砂漠化のこと、このことも触れております。それから、異常気象や気候変動の原因というようなことについても述べております。例えば、これには自然の原因もございますし人為的な原因もございますけれども、その人為的な原因の中に、今先生の御指摘の二酸化炭素などというような問題が含まれているわけでございます。
そのほか二十一世紀の見通しというようなもの、これは多くの専門家がいろんな説を言うのでございますけれども、二十一世紀になりますと気候は温暖化してくるというふうなことを多くの人が言っておりますが、そのことを述べ、しかし今世紀は、じゃ、どうであるかという問題でございますが、これについてはほとんど現在とそう大差はなく推移するであろう、かいつまんで申し上げたのでございますが、このようなことを報告したわけでございます。
-
-
○
政府委員(川崎
雅弘君) 先生から御指摘いただきました
資源調査会の報告は、
昭和五十八年から五十九年に行いましたものでございまして、
資源調査会の報告第九十二号として公表をした内容を指しているかと存じます。
本報告の概要は、一言で申しますと、ただいま
気象庁長官からもお答えがございましたが、最近の気候変動あるいは異常気象問題について種々の調査が内外においてなされております。さらに、そういう長期的な気候変動の要因については火山活動であるとか、御指摘の二酸化炭素の問題であるとか、あるいは太陽の黒点の活動であるとか、いろいろの要因が挙げられておりますが、そういう点について内外でいろいろ行われております諸調査の結果を全体を通観することにいたしまして取りまとめ、その上に立って今後このような問題についてどういう点から検討を進めていったらいいかというのを特に二酸化炭素に注目をいたしまして、若干の今後の進め方といいましょうか、調査の進め方についての提言を中に取りまとめておるものでございます。
その一つは、二酸化炭素が本当に
影響があるかどうか、さらに調べていくために定常的に観測する、そういうような地点を全地球的に整備していく必要が一つあるでしょうとか、あるいは第二には、地球上の炭酸ガスの要素になりますのは炭素でございますけれども、そういう炭素が大気中あるいは海洋、地上でどのように循環をしているか、そういうような循環の定量的な解析を少しずつ勉強し出してはどうかとか、あるいはそういうようなものが、もし大気循環全体についてのモデル化ができるかどうか、モデル化ができれば予測に役に立つだろう、そういうようなことを提言をしておる内容だったと承知いたしております。
-
○
中西一郎君 役所の説明ですから淡々とおやりになったんですけれども、第百国会で、今、後藤田
長官新聞記者会見でいらっしゃいませんが、後藤田
長官がお答えになっているのは、中長期的な問題としてこういった問題は真剣に取り組む必要がある、こういう御答弁をしておられる。そのとき
環境庁長官もまた御答弁なさっていますが、南氷洋とか北氷洋の氷が解けて平和の女神のおへその辺か手の辺がわかりませんが、ともかくあの辺まで海面が隆起してくるかもしらぬというようなことまで実はリポートの中には入っているらしい。いろんな仮説に基づく議論ですから、仮説だからほっておけというようなことであるのかもしれませんが、仮説に基づいて原子爆弾ができたんであるし、スペースシャトルもできた。学者の仮説というのはそうばかにできないと実は思う。
そういうことを踏まえて、これは時間がないから飛びますが、最近通称前川
委員会でございますか、新聞によりますと、技術革命国際機構をつくるんだというような提案があった。これは総理にもう御答申が出たのかどうか明らかではございませんが、二十一世紀を目指しての新科学技術の開発国際機構をつくろうじゃないかと、こんな中身のようでございますが、総理、これはもうお受け取りになったんでしょうか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) まだ受け取っておりません。まだ正式に決まったものでもありません。ただ、これからの科学技術の将来を考えまして、生体機能というものとコンピューターやメカトロニクスというものの結合を考うべきである。今までは自動車とかその他つくってきておるけれども、もっと物が進んできて、筋肉の作用とかあるいは大脳の作用とか、そういうものをもっと分析して、それをもう少しハイテクを使って、それ類似のものまで持っていけないかという新しいフロンティアに挑戦しよう、そういう議が起こりまして、今その詰めをやっておる。その考え方は世界的にも協力を求めて、そして長期的、持続的な
計画として
日本がイニシアチブをとって、相当金も出して、また外国のお金もお願いをして、共同作業として進めたらどうか、そういう議がありまして、今詰めをやっておる、こういう状況です。
-
○
中西一郎君 私新聞を見まして、これは大変いいことだと実は思っておるものの一人であります。
関連して言いますと、ヨーロッパで酸性雨の被害が大変ひどい、
日本の森林も荒廃している、そういうようなことを全部あわせ考えまして、ちょっとお話も出ましたが、生態系というようなことにも着目して、リサイクル文明といいますか、東洋文明というお話がありましたが、東洋文明というのは元来がリサイクル文明じゃなかったかというふうにも思う。そういうことを世界の中で、西欧諸国の協力も得ながら
日本から知恵も出していくということは、これは我々の子や孫のためにもどうしても必要なことだ。今までほうっておかれたのがおかしい、そういうような見解を持っておるんですが、
科学技術庁長官、どうですか。
-
○国務大臣(河野洋平君) 先ほど総理からも御答弁がございましたが、私どもといたしましても、ヒューマンサイエンスと申しますか、生命科学と申しますか、その分野については極めて野心的な分野だ、我々にとって極めて注目すべき分野だというふうに考えておるわけでございます。世界的に見ますと、アメリカがSDIあるいはヨーロッパがユーレカ、こういうような大きなプロジェクトを組んで、恐らくあの力が相当に技術開発を引っ張っていくだろう、科学技術の進歩をリードしていくんじゃないか。そういう中にあって
日本は一体どういう役割を果たしていくかということを考えなければならない場面におる、こういうふうに考えておりまして、工業技術院におきましてもいろいろなお考えが、これは通産関係でございますが、あるようでございますが、科学技術庁におきましてもヒューマン・アンド・アース、人間と地球、こういう点に着目をした研究をやってみてはどうかということを現在検討いたしておるわけでございます。
先ほど総理からのお答えがございましたように、ロボットでございますとか、自動車産業でございますとか、急速に進みましたけれども、意外に人間のことについては全くわかっていない分野も相当ある。あるいは地球そのものについてもまだわかっていない分野が相当あるわけでございまして、そうした分野に解明のメスを入れていく必要がある。しかし、それには相当な
規模の財政的な裏づけも必要でございましょうし、英知を集めなければならぬ、相当
規模の大きいプロジェクトを考えなければならぬというふうに考えておりまして、国際的に協力、協調をして取り組むべき課題、こんなふうに考えておるわけでございます。
-
○
中西一郎君
環境庁長官に伺いますが、歴代
環境庁長官、国際
環境の問題についての国際
会議にずっと出ておられます。私は、今申し上げたようなこと、また御答弁があったようなことを全部ひっくるめて考えますと、
環境庁というところの仕事は大変重要であると実はかように思うんです。ところが、それを受けて立つ各省庁の方は、話は聞いて帰るけれども、あすの行政、あすの政治とは関係がないからというようなことでしょう、余り表座敷で議論をして大きく取り上げるということに結果としてなっていない。その辺に大きな問題があるのではないかと思うんですが、今までの間答を踏まえて、
環境庁長官の御所見を伺いたい。
-
○国務大臣(森
美秀君) お答え申し上げます。
御承知のように、
環境庁というのは今から十五年前、
昭和四十六年にできたわけでございますが、その後非常に
環境行政というものがいろいろな面で見直されて、今や、今おっしゃいましたような他の省庁も非常に協力的な姿勢を示しております。殊に、
昭和五十五年に地球的
規模で
環境行政を見ようじゃないかということで
委員会をつくりまして、自来きょうまでで二十六回
会議を開いてだんだん話を詰めております。と同時に、五十七年にナイロビで、原
環境庁長官行かれまして、もうちょっと世界的な
規模の国連でもって
環境問題を取り上げてくれということで
委員会ができまして、それも来年の三月にいよいよ結論が出ることになりました。御心配いただいておりますが、ともかく我々の子供、孫に対する
環境行政というもの、非常に
皆さん方目覚めてやっていただいていることを感謝しております。
-
○
中西一郎君 感謝されるのはいいんですけれども、ひとつ
環境庁長官の力で、ここに居並ぶ各省庁の大臣方が
環境庁と同じようなレベルで問題と取り組むということでないと、先ほど来の総理の言われた生態系を根幹とした東洋文明というものの世界的な位置づけをしっかりさしていくということに沿わないことになる。その辺をよく踏まえて各省庁の大臣方にお願いをしたい。御要望を申し上げておきます。
なお、国家目標というようなことを言うと、また右がかった話だというふうにとられかねないんですが、この問題、
経済大国ということを国家目標にするんだという世論の分析もありますし、あるいは福祉大国がいいんだという考え方もある。いや、そうじゃないんだ、世界の中で世界に寄与する
日本でなければならないというような議論もある。そういったようなこと、それぞれもっともな議論なんですけれども、
経済大国だけねらっていますと、これは世界じゅうからつまはじきされかねない問題になる。福祉大国というのも結構なんですけれども、
日本の福祉だけ考えておるとこれもアンバランスになっちゃう。ということになると、今申し上げた世界の中で、世界に寄与することのできる
日本というのがこれからの大きな国家目標になっていくんじゃないか、そうでなければならないんではないか。先ほどお話がありました経構研の研究なさっておることもそういったようなことをねらっておられるんではないかと思うんですが、その辺について総理の御所見を伺いたい。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君)
中西さんが最初におっしゃったことは非常に重要なことであると思っております。つまり東洋というようなものは循環を考える、リサイクルを考えておる。それは人間の思想でもやはり魂が行ったり来たりするというようなリサイクル、お盆になったら帰ってくる、そういうようなリサイクルというものを考えておる。しかしバイオの世界、生物の生命についてもやっぱりリサイクル、循環というものを考えていかないといかぬ。一番端的な例は、堆肥を使わなきゃいかぬじゃないか、そういうような問題。水耕栽培と堆肥というものが非常に対比されるような時代になってくると、そうも思いますですね。そういう意味において
環境という問題は非常に重要性を持ってきつつあるように思います。
今おっしゃった、科学技術庁あるいは各省庁あるいは今の経済問題の研究会で今いろいろ検討しておる考え方というものは、一面においてバイオの重要性あるいはリサイクルというものの重要性を考えると同時に、また一面においては生体機能というものをどういうふうに解明して現在のハイテクにこれを利用できるかというような面も考えつつあるのでありまして、非常に画期的なアイデアであるだろうと思います。そういう意味において、もう少し詰まるところまで詰まらして、それを我々はどういうふうに評価してこれを展開するか検討していきたい、そう思っておるところであります。
-
○
中西一郎君 これは、今の何といいますか、東洋文明あるいはもっと突っ込んで言うと東洋文化、
日本文化にかかわる話なんですが、実はきのうある本を読んでいましたら、三千六百年前、神武天皇よりもっと古い、その当時の古書、秀真伝、三笠紀、太古、カタカムナ、皆別々のものですが、などのあることを実は知ったのであります。たまたま本年は終戦後四十年たってしまいましたし、天皇御在位六十年の慶祝すべき年でもある。そういうことを考えますと、私の人生にとって実は画期的な知見が加わったわけでございますが、今の東洋文明とか
日本の文化とかということをあわせ考え、また西洋文明と東洋文明の融合ということを総理が言っておられる。そういう問題にも若干関係することがあるんだろうと思いながら、これから勉強いたしたいと実は思っておるんですが、これは私の言いっ放しで速記録にとどめておいていただければいいわけでございます。
そこで、次に防衛との関連なんですけれども、SDIの話が出ました。新聞にもよく書いてありますから一般国民よく御存じだと思いますが、まだ十分御存じでない方もおられるかもしれない。簡単に言うとどういうことなのか、防衛庁で説明を一分か二分でやれませんか。
-
○
政府委員(藤井宏昭君) お答え申し上げます。
SDI、戦略防衛構想と申しますのは、レーガン大統領が二年ほど前でございますけれども初めて提起したものでございますが、その骨子は要するに、最先端のレーザーあるいは電子粒子ビームの兵器などを使いまして、非核でございますが、核兵器の攻撃が行われました場合にそれを無力化するということでございます。それを四段階で行っていくわけでございますけれども、その技術的詳細はかなり膨大なものでございますが、本年アメリカの国防報告にもございますように、この
目的はあくまで核兵器の廃絶というところにあるわけでございます。この核兵器の廃絶のために、防衛システムのハイテクを使いまして長い年月をかけて研究を行っていきたいということで、現在その研究の段階にあるというふうに承知しております。
-
○
中西一郎君 先ほど来、外務大臣に対してSDIの対米交渉はどうなっているかというお話が出ましたから私はいたしません。ただ、SDIについて、私何かで読んだんですけれども、レーガンの言っておられることだということなんですが、自分の方で開発を始めるんだけれども、ある段階までいけばソ連側も持ったらいいじゃないか、そしてお互いに持てばお互いの核が無用化する、今の話のとおり。ある人に言わせると、無用化した核弾頭というのは原子力発電に全部使えばいいよなんと言う人もいましたがね。
今、私が申し上げたようなことなんですけれども、政府の方で、レーガンがソ連側も持つということについて否定的な見解は持っていない、あるいは場合によっては協力してつくってもいいというような発言があったということを御存じか、あるいは私の読んだものが間違っているのか、その辺についての外務省のお考えを聞きたいと思うんです。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) レーガン大統領は非常な情熱を持って、理想に燃えてこのSDIを開発したい、これが、今
局長が言いましたように、核兵器の廃絶につながるということで、予算もつけて各国にも研究参加を求めておられるわけでございますが、このSDIについての研究は、御承知のように、アメリカだけじゃなくて既にソ連でも始まっているということでございます。
そういう中で、レーガン大統領がいろんな機会に、弾道弾に対する防御の技術が開発された場合には、その技術を独占しないでソ連を含む他の国に提供する用意がある旨述べておられることははっきりしておるわけです。ただ、この発言の趣旨は、米国政府が戦略核の先制攻撃能力を保持することは意図しておらない、また弾道ミサイル防御の分野においても、ソ連に対する一方的な優位を獲得しようとするものではない旨をかねてより明らかにしております。したがって、SDI研究の推進に当たっても、国際的な安定を損なうことのないようにソ連とも十分な意思疎通を図っていく用意があることを述べたものと、こういうふうに我々としても理解をしております。
-
○
中西一郎君 わかりました。じゃ、私の知見も間違いでなかったということで、これから選挙区で大いにこの話をしようと思います。
それから、防衛の関係でこの前、秦野さんの質問のとき関連質問をいたしたんですけれども、装備その他機材、施設等について防衛庁でもっとリース、レンタルを活用したらどうだという提言をいたしました。余りいい返事でなかったんですけれどもね。この間
政府委員の人に申し上げたら、今度はもうちょっと親切な答弁をいたしますというようなことなんで、事務当局で結構ですから、どこまで考えが進んでおるのか、これからさらにどうなさろうとするのか、御説明をしていただきたい。
-
○
政府委員(
山田勝久君) 先生御指摘のリース、レンタル制度、これは一般的に言いまして、私どもも資金の効率的な運用あるいは経済を活性化する有力な手段、こういう意味で非常に有意義だとは認識しておるわけでございます。しかし、戦闘機あるいは戦車等、私ども防衛庁、自衛隊が使用いたします主要装備になりますと、これは有事におきまして破損する、あるいは滅失する危険性が非常に多いものでございます。したがいまして、契約内容にもよりますけれども、返還義務を一般的に有しておりますリース方式というのはなじむものだろうかと問題を感じておるわけでございます。また会社の方にいたしましても、危険が高いものですから、これは保険をかけなきゃいかぬなと。そうすると、その保険料というものは、結局防衛庁のコストとしてかかってくるわけでございます。そのほか、単年度を見ますと、なるほど資金の効率的な運用ができますけれども、リースは、やや長期間契約をいたしますとすれば、その累積的なコストはかなり高うつくということになるわけでございます。
そうは言うものの、私ども、先生の御示唆もございましたものですから、汎用コンピューターあるいは事務器、こういったものは現在でもレンタル制度を活用しておりますが、なお一層こういった対象品目を拡大できないものだろうかということを勉強を始めておるわけでございます。
〔理事
桧垣徳太郎君退席、
委員長着席〕
先般来、私どもが設立をいたしました業務運営自主監査
委員会というものがございますけれども、これを庁内で勉強いたしておるわけでございますが、この一環といたしまして先生御提案のリース、レンタル制度を防衛庁が使用します機械、機材にどのくらい拡大できるか現在検討しておるところでございます。
-
○
中西一郎君 ここで反論するつもりはございませんが、もう少し柔軟な頭脳を持ってもらいたい。というのは、あるリース会社の社長に申し上げましたら、それはひとつ大
規模な研究会でもつくって検討してみられたらどうだと僕に言いましたけれども、私は、今の
立場でそう大
規模な研究会を持つ
立場にないということも御理解いただいて、防衛庁の中でございましょうか、あるいは今度できる官房の安全保障
会議ですか、どこかで真剣な検討をしていただきたいということを御要望申し上げておきます。
なお、ここで厚生大臣、野党の方々は選挙になりますと、選挙でなくてもそうですが、防衛突出、福祉後退、これがある意味ではスローガンですよね。これに対して、余り細かい話はいいんですが、大筋で、こういうことで福祉なり厚生省は頑張っているんですということを、ちょうどいい機会ですから、茶の間に向かってわかるような御説明ができないでしょうか。
-
○国務大臣(今井勇君) ここ数年、おっしゃいますように社会保障関係予算の伸びが従来に比べまして低率となっております。これは実は、長期的な観点から制度の改革に取り組んでおること、それからまた、厚生年金の国家負担の繰り延べを図るなど、事業の運営に支障がないように配慮しながら財政上種々の工夫をしたことによるものでございまして、表面上の予算の伸び率だけで福祉の水準を判断することは私はいかがなものかと思っております。
そこで、福祉の水準を考える一つの指標といたしまして、よく言われますが、医療とか年金とかその他の社会保障給付費の動きを見てまいりますと、
昭和五十六年度から六十一年度までの間に、推計に伴う多少の誤差はあるといたしましても、四〇%以上伸びております。じゃ、この間における国民所得の伸びは幾らかといいますと二六%でございますから、私はそんなに落ちてはいないと思うんです。
また、個別の
施策を全部申し上げるわけにもまいりませんが、例えばこの間に、老齢福祉年金、これが一三・三%伸びておりますし、また生活保護の基準額、これは標準四人世帯でございますが、これも一八・八%実は伸びております。じゃ、その間消費者物価上昇率はいかがかといいますと、これは一一%でございますから、私は福祉の後退というのはないものだというふうに考えておるものでございます。
-
○
中西一郎君 いろいろ工夫をしていただきたい。そして、茶の間なり一般の方々がわかりやすいようなこと、これは党で考えることでもございますけれども、しかし資料は厚生省がお持ちなんですから、官僚的な作文を超えて大勢の人に理解してもらえるようなプロパガンダということを考えていただければ幸いであると、かように思います、
次に貿易摩擦ですが、一部の人が言っていますけれども、ある意味で文化摩擦ではないかという人がいるわけですね。手を挙げられました江崎さん、お話しいただけますか。いかがでしょう。通産大臣が先でしょうか。
-
○国務大臣(江崎真澄君) いやいや特命相ですから。
-
○
中西一郎君 じゃ、江崎大臣、お答えお願いします。
-
○国務大臣(江崎真澄君) まさに非関税障壁という面に文化の違い、特に長い間封建制度をとってきて、後、百年以上の近代国家としての生々を遂げてまいりましたが、何といっても戦争前はやはり経済的に見ても発展途上国であったことは今の数字に比較したら明らかですね。そして、戦後わずかの間にこれだけの大発展を遂げてきたということは、確かに西欧諸国、アメリカ等にとっても全く疑問の多いことだと思います。まさに言葉の違いとか、風俗、習慣の違いとか、いろんな違いがありましょう。それよりも何よりも、
日本に売り込む難しさというものは、中小企業が九九・四%だというんでしょう、中小企業の定義はもう御存じのとおりですが。ですから、いかに激しい競争かということを一つ考えてみても、これは文化の違いですね。文化摩擦とおっしゃる意味はそのとおりだと私も思います。
-
○
中西一郎君 要するに、お茶とかお花とかいろんな文化がございますが、伝統工芸品などを見てもそうでございますが、ともかくきちっとしているわけです。
日本の歴史あるいは文化、そういったものが制度として積み重なってきている。後でも触れますが、いろいろ自由化というようなことが行われてきたんだけれども、どこかぎりぎりのところへ行きますと衝突があり得るんじゃないか。西洋文明と東洋文明の融合ということはもちろん必要でございますが、融合がなぜ必要かというと、衝突が起こっておるから融合が必要なんだ。その衝突というものを克服するためにはお互い理解してもらう必要がある。その理解を進めるという過程が年数がかかりますけれども、大変御苦労いただいておるんですが、そういうことを踏まえて相手国側によくその事情をのみ込んでもらう必要があるんではないかということを実は痛感いたしておる。僕が痛感いたすよりも江崎先生、党でもおやりになったし、大臣になってもおやりになっているんですから一層痛感なさっておると思うんですが、これをどう克服していくか。これは外務大臣、ちょっといきなりですけれども、外務省として
日本の文化を外国によくわかってもらうための努力というのが欠けておるという論議も多いわけですが、今までいろんなことをやっておられるんでしょうけれども、これからの決意についてお聞きすることができればと思いますが、いかがでしょう。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるように、貿易摩擦一つ取り上げてみましても、やはり
日本と西欧諸国との間では歴史とか文化の違い、言語の違いというのがあって、そういうところにいろんな誤解が生まれておるように見えます。例えばヨーロッパとアメリカでは非常にスムーズに解決される問題が、
日本とヨーロッパあるいは
日本とアメリカとの間では非常に解決しにくい欠陥があったり、そういう点、我々、アメリカとヨーロッパなんかのいろんな関係を見てみますと、
日本とアメリカ、
日本とヨーロッパの関係で確かにその辺は文化の質的な差というものを感ぜざるを得ないわけで、それにはやはりお互いにもっと理解し合うような、根本的には文化とか伝統とかあるいは言葉とか、そういうものを理解し合うような、そうした国際交流、文化交流というのは非常に大事だということを私も痛感をいたしております。
外務省あるいはその他関係各省庁でもこうした文化交流を今進めておるわけでございますし、年々文化交流というのは拡大しておると思っておりますが、これからのやはり
日本の国際的な地位が高まってくるにつれてその役割も重くなってくるわけですから、こうした根本的な問題をもっとやはり正面から取り上げて進めていくということは非常に重要だということを考えます。そういうふうに思います。
-
○
中西一郎君 ある雑誌、これは多数そういう意見があるから、もう
皆さんの頭にはよく入っていると思うんですけれども、
日本の青年が余り外国に行きたがらない。ボランティア活動というようなことを一つとっても、欧米の諸国の青年の行動と
日本の青年の行動は大変違う。内にこもりがちである。外に行っても長年月いることはしないというようなことを考えますと、海外青年協力隊の活動とかあるいはOISCAの活動とかああいった草の根の活動というのをもっと、何といいますか、
日本の若い
人たちが積極的に参加する、そういう方向に持っていく必要があると思うんですが、これも外務大臣。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) 我々の時代と違いまして、最近の若い世代の
人たちは外国に行くのは余り苦にしないんじゃないかと思っておりますし、今の青年協力隊なんかでも募集しますと何倍という人が参加して、その中から選ぶわけでありますが、そうした活動あるいは参加という意欲は非常に強くなってきている。そういう意味では最近の若い
人たちの国際意識といいますか、参加意識というのはもう大変広がってきているんじゃないかと私は思っておりますが、それはそれなりに
日本が国際的な国家になってきているということでしょうから、そうした面をさらに広げていくために国としていろんな面でバックアップしていく必要があるんじゃないか。留学生、研修生あるいはまた人的ないろんな面の若い
人たちの交流ですね、そういうのは大いにこれから拡大していかなきゃならぬと、私もそういうふうに率直に思っておりますし、努力を重ねておるわけであります。
-
○
中西一郎君 経常収支が大変大きな黒字になっているということで、円高差益がどんどん出ているということもあるし、石油の値も下がったというようなこともございますが、先ほど来若干質問もあり応答もあったんですけれども、重ねてその円高差益あるいは油の値下がりという問題についてこれからどう対応していくか、市場原理だと、こうおっしゃいましたが、それだけでない分野もあるとおっしゃったと思います。簡単で結構でございますから……。
-
○国務大臣(
渡辺美智雄君) 円高差益と油の値下げの問題について、どういうふうに国民にこれを還元するかという話でございますが、まあ円高の問題はどこの辺で落ちつくのか、百八十円なのか九十円なのかもっと強くなるのか、なかなかわからない。けれども、まあある程度のところは予想はおおよそされます。問題は油の方でございますが、これは本当に、この間もヤマニさんと随分長い間いろいろ話ししたり、アメリカの
エネルギー長官と話したりいろいろしているんですが、結局だれもわかる人はいないということなんです、結論は。本当に十五ドルを割っちゃうのか、もし割ったときにどれぐらい期間が続くのか、それともスポット買いだけで、生産調整ができればもとへ戻っちゃうのかということもわからないものですから、全体のボリューム、どれくらいの一年間で利益が出るかということがなかなか政府としては確言できないというのが現在の
状態なんです。
したがいまして、仮に油が下がったといいましても、我々は今までの原子力政策とかあるいは天然ガスを使う話とか、石炭を使うとか、いわゆる代替
エネルギー政策は続けていかなきゃならぬし、備蓄も途中でやめてしまうというようなことは危なくてできない、そう思っておるわけであります。しかし、確実にある程度油は下がる傾向にあることは間違いないので、もう少し様子を見たいと実は思っておるわけでございます。
円高で発生した利益の方はある程度わかっておりますが、油の方も、もし電力等で還元する場合は、油の値下がりという部分も一緒に含めてと思っておるものですから、もう少し時間をかしてくれませんかと。それで衆参両院の先生方の御意見や一般の有識者の話とか消費者の、需要者の話とかいろいろ聞いた上で、まあ五月いっぱいまでには結論をとりあえず出したいという考えてあります。
-
○
中西一郎君 五月いっぱいまでに結論を出したいというお話でございます。大勢の人が、一般の主婦を初め産業界、どうなるんだろうと思ってみんな注目しておるところでございます。そういったような意味で、できるだけ早く結論を出していただければありがたい。電力料金一つとりましても、
日本の場合はアメリカの電力料金の倍ぐらいですか、という話もある。そういうことも踏まえて御善処をお願いいたします。
経済企画庁長官戻ってこられましたんですが、GNPはこれから
日本も伸びていく、アメリカも伸びていくんでしょうけれども、手元の資料だとアメリカのGNP総額が四兆ドルですか、こんな大きくなったものかなと実は思うんですが、
日本は二百二十五円で計算して一兆四千億ドル、こんな手元の数字があります。後十年たったら一人当たりのGNP、
日本がアメリカを追い抜くんじゃないかという、何といいますか
日本の世紀が来るんだというような論調もある。見ようによってはこれは大変楽観的あるいはちょっと浮かれ過ぎの物の見方ではないかという見方もある。その辺の長期見通し、大変難しいとは思いますが、現段階で
経済企画庁長官どう思われるかというのが第一点。
質問の時間も限られておりますので続けて申し上げますが、百八十円という台を割るという円高になってきた。GNP四%という経済成長率を計算なさった経済見通しの場合と大分違ってきた。あれは二百四円ですか、で一ドルを見ておられたはずであります。そういったようなことでシュミレーションが大分変わってきておるんじゃないか。その辺の作業をまだやっておられないかもしれませんが、大分経済見通しの内容が変わってくるんじゃないかと思うんですが、その辺についていかがでしょう。
-
○国務大臣(平泉渉君) ちょっと古い資料でございますが、
昭和五十七年の七月に経済審議会長期展望
委員会、座長大来佐武郎氏というので、「2000年の
日本」というのを展望いたしておるわけでございますが、それによりますと、大体二〇〇〇年のGNPというのは、
日本とアメリカの構成比、世界のGNPにおける構成比でございますが、
現状では
日本が一〇に対してアメリカが二二%、二〇〇〇年では
日本が
一二になりましてアメリカが二〇と、こういうふうな形でございます。今、お話ししたのは一人当たりでございますから、
日本とアメリカの
人口比が今度はどうなるかと、こういうことでこれまた割らなきゃなりませんが、ざっと考えまして大体同じぐらい、
日本とアメリカが肩を並べると、こういうことになるのではあるまいか。まあこれは大分先のことでございますから、一応私の感じを申し上げたわけでございます。
それから、経済見通しとレートの問題でございますが、まあレート、確かにおっしゃるとおり、昨年の十一月から十二月に経済見通しの作業をいたしました段階は、大体二百四円の当時のインターバンクレートの中間ぐらいのところを基礎にして考えておる、
現状は大分それから円高になってきておると、こういうわけでございますので、当然個々の計算の数字は変わってまいりますが、同時に
日本の国民所得全体の計算からいいますと、それだけ今度は安く物が買えるということで国内の内需が盛んになってくる、こういう計算もございます。輸出が恐らく少し減ってくる、あるいはそのかわり国内のいわゆるドメスティックなプロダクションがふえてくると、こういう計算もございます。我々の今の段階では経済見通しを変える必要はないと、こういうふうに考えておるわけでございます。
-
○
中西一郎君 官房
長官帰ってこられましたので、六十年の七月二十二日行革審の答申が出ています。それからいろいろな作業が進んで、安全保障
会議設置法とか御準備をなさっておると思うんですが、その進捗状況、現在どうなっているかということをまず伺いたい。
-
○国務大臣(
後藤田正晴君) 内閣の総合調整機能の強化の問題、これは
中西さん御案内のように、古くて新しい、
昭和三十八年の
佐藤調査会でもいろいろ御意見が出ましたね。その後今日まで未解決になっておったわけですが、だんだんこういうように国際関係、あるいは国内も高度化するといったような段階の中で、今までのような各省割拠のままの対応ではこれはいかぬではないか、もう少し内閣の総合調整機能を強化しろと、こういう御意見が出たわけです。その御意見の中で行革審からの御提言があり、御質問の点に触れて申しますと、内閣官房の組織を再編成しなさいと、こういうことで内政調整室、外政調整室、安全保障室、情報調査室及び内閣広報官を設置したらよかろう。これに伴って審議室あるいは広報室、あるいは
国防会議事務局、これは廃止をする。そして広報官は設置をする。なお、その際に国防
会議の任務を継承して、重大緊急な事態に対処するための体制の整備をすべきである、それがためには内閣に安全保障
会議を設置すべしと、まあ大体そういう御答申でございます。
その際に、安全保障
会議だけはこれは立法事項になるわけです。それ以外は政令事項と、こういうことでございますから、政府としては、この国会にこの御答申の趣旨に沿って安全保障
会議の設置を閣議で決定をして、
法律案として国会の御審議を仰ぐということになっているわけでございます。なお、政令事項につきましては、この
法律案が国会で御承認をいただければ、その暁にこの
法律案の施行とあわせて、政令事項で処理できる御提言を実行、実施しようということで、内閣を中心にしまして今準備を整えておる、これが
現状でございます。
-
○
中西一郎君 時間の関係がありますからまとめて申し上げますが、これは官房
長官がいいのか、総理がいいのか、官房
長官からお答えいただければそれでも結構です。
有事立法の進捗状況、特に第三分類、それが一つ。
それから今、安全保障
会議の設置法案については伺いましたが、この中身ですね。各省から役所の人が出てきまして仕事をするわけでしょうが、また母屋へ戻るというような格好で、それもいいんですけれども、ともかく母屋の役所の合意を得ないことは言いたくても言わない、聞いても答えないというような、箱はつくったけれども中身がないというようなことになることは大変困ったことだ。これはリードされる総理の力量によることかもわかりませんが、その辺のこともあわせてお考えおきいただきたいんですが、どうでしょうか。その二つ。
-
○国務大臣(
後藤田正晴君) まさにおっしゃるとおり、どうしてもああいった人員構成では母屋の方に向きがちなわけですね。ただ、
中西さんに申し上げておきたいのは、今度の内閣機能の強化、その一環としての安全保障室の設置、これはやはり総理のスタッフ組織を強化しよう、こういう考え方でそもそも発足をしておるわけでございます。したがって、スタッフにふさわしいような、今は大体
課長級ですね、先が長いからやっぱり母屋へ向きますよ、これは。そこで、もう少しハイランクの方を出していただいて、日ごろからそれらの関係各省と十分連携しながら、何か従来のような調整のやり方のままでできなくて、ボトムアップでずっと待っているわけですからできませんね。しかしながら、方針だけはどうしても早くやらなきゃならないという問題が幾らでもありますから、その際にはトップダウンで方針だけはこういった組織できちんと決めて、それを各省にやっていただく必要がありますから、もちろん総理大臣のリーダーシップ、これは必要でありますけれども、そういうような意味合いでこれはつくってあるんだと、これはひとつぜひ御理解しておいていただきたい。ハイランクの人が余り母屋のことばかり見るようでは困るが、ここらはもう先がありませんから、それはもう十分そういうことのない立派な方をそろえたい、こう思っておるわけです。
それから、有事の法制の問題、これは今度の行革審の答申にもありますように、審議の中身を見ましても、有事の問題は従来から防衛庁でやっておりますからその線には触れておりません。したがって、今回の安全保障
会議の設置が有事法制の問題に触れてそこで扱うということを決めてやっておるんではありません。これは全然別個の問題である、かように理解をしておいていただきたいと思います。
そこで、第一分類と第二分類はこれは防衛庁でずっとやっていらっしゃいますから、聞くところによると、相当防衛庁は検討が進んでおる、中間報告なんかもしておりますね。ただ第三分類は、これは防衛庁というわけにいきません。これはやっぱり政府全体が取り組むべき私は課題であろう。といって、これがなかなか進みませんので、だから防衛庁としては、第三分類に属することの中で防衛との関連において重要な項目は、これは内部資料として私は勉強しておられると思います。その内部資料はまだ検討がそれほど進んでいないということも聞いておるんですが、この防衛庁の検討の結果を私どもはよく聞きまして、そして、いずれにせよ政府全体としてこれは取り組んでいかなければならない重要な勉強の課題であろう、かように考えておりまするので、御理解を願いたいと思います。
なお、その際にやるのは、これは本来防衛庁に関係することは従来から国防
会議の所掌事務となっておったわけでございますから、新しく今度のやつで云々ということではありません。
-
○
中西一郎君 いずれにしましても、内閣機能の強化充実ということは、これから総理大臣になられそうな方も大分並んでおられるんですけれども、先進国の例を見ましても
日本がどうも一番おくれている。それで、諸外国並みにしておきませんと、何かのときにほかの国相手の問題ですから、こちらの体制がしっかりしていませんとほかの国の協力が得られないような場合も起こりかねない。秘密保護法の問題も頭に浮かぶんですけれども、情報が守れない国には情報が入ってこない、大事な情報が入ってこないという危険がございますから、そういうようなことも含めて、内閣機能の強化ということはぜひとも急いでいただきたい。
それから、時間の関係で先に進みますが、総理官邸を建て直したらどうだと私も言ったことがあるんですけれども、官邸の建て直しについての現況はどうなっておるんでしょうか。
-
○国務大臣(
後藤田正晴君) これも古くて新しい問題なんですね。いろんな財政事情その他もありましたし今日に及んでいるんですが、これはやはり官邸そのものの何といいますか、建てかえは必要であろう。ともかく、大変機能的でありません、中に入っておったらたまらぬです、あれは。そういうようなことでございますから、これは建て直しの必要ありということで、古くからの問題ですから内閣官房ではずっと勉強しておったわけでございます。それで、今度予算等調査費等もつけていただいておりますから、その調査費を活用しながら、ひとつ時代にマッチした、総理官邸にふさわしいような機能を備えた官邸の建てかえということは、これはやっぱり着手をしなければなるまい、こう思っております。
-
○
中西一郎君 着手すると同時に急いでいただきたい。
それで、郵政大臣に伺いますが、KISS、官邸の中の情報機能ですね、余り戦前と変わらない、我々の自宅と変わらないような通信機能にちょっと新しいものが加わっておるというのが
現状でしょう。そういったことで、この情報化社会の中で内閣の機能が十分に発揮できるとは思えない。奥田元郵政大臣と当時いろいろ打ち合わせしまして、KISSを導入したらどうだ、KISS――官邸インフォメーション・セキュリティー・システムを導入したらどうだという話がございました。その後の進展状況といいますか、技術開発の状況といいますか、官邸との交渉の進捗度といいますか、そういうことについて郵政大臣から伺いたい。
-
○国務大臣(
佐藤文生君) 奥田元郵政大臣からやはりそういうお話も承っておりまして、現在郵政省としては、五十八年、五十九年、六十年度、こういうぐあいに
計画を立てておりまして、五十八年では、官邸の新築ということが具体化される段階までに、
計画的にまず第一段階としては情報通信の総合システムをどうすべきかということを考え、さらに次年度においてそれをパラにしまして、使いやすいシステムをどうしたらいいかということに検討を加え、さらに本年度にはその情報の機能の、特にソフトの面について総合的な検討を加えて、官邸が具体的に建築をされるまでにKISSの完全体制が整備されるように今準備中でございます。
-
○
中西一郎君 今のままですと、末端で起こった緊急事態というようなことが速やかに伝わってくるという要請にこたえられないという心配がある。これは答弁要りませんけれども、大地震でも起こると、今度
衆議院で本
会議場ですか、机の下にヘルメットか何かずきんを置くという、本当かうそか知りませんが、そんな話もちらほらしている。参議院でどうするのか知りませんが、一朝有事のときに官邸が機能するためにはやはり通信機能というのは今のままではまずいということが一点。
それから、何か起こったときに、自動車で閣僚が官邸へ集まるといったって集まれない場合もあるんじゃないでしょうか。そういうときにヘリコプターを飛ばすにしても、関係閣僚のお宅の近くにヘリの出発点があるのかないのか、こっちへ飛んできたら一体どこへ着けるのかというような絵がないと、閣僚あれども相談できずというような格好になってしまう。これはあすの問題でもあると思う。そういうような点について官房
長官いろいろ御配慮をしておいていただきたいことを申し上げます。
それから、大蔵大臣、先ほどの官邸、急いで建ててほしいということを言ったのですが、予算渋々やっておられるとまた十年先か何かになって、
皆さん方総理大臣のときにまだ今の官邸を使わねばいかぬということになってしまうのですけれども、今の官邸をできるだけ早く建て直すということについてのお考えはいかがでしょうか。
-
○国務大臣(竹下登君) 後藤田官房
長官からお話がありましたように、本当に古くて新しい問題でございます。私がまだ、それこそ今から二十年前、内閣官房副
長官をしておりますときにもその
計画はありましたが、結局はそのままになって今日に至っておりますが、昨年来具体的に
計画が進みつつあるやに承っておりますので、予算上の問題、これは十分御協議申し上げなければならない課題であろうと思っております。
-
○
中西一郎君 金融の自由化とか、私ども素人だからよくわからないんですが、資本の自由化とか円の国際化とかいろいろアクションプログラム以来新聞にはよく出ます。これは関係業界たくさんありますが、みんな対応で大わらわであろうし、新しい勉強もしておられるでしょう。しかし、余り急ぐなという議論もあるわけですよね。
それは、先ほど来ちょっと申し上げましたが、文化摩擦ということを申し上げましたけれども、
日本人の歴史とか伝統とか非常にきちっとした性分、そういうものの積み上げで制度というのはできていますから、これを突き放していって、今までの護送船団方式というような言われ方もしていますが、それを解体するということについてはよほど上手にやりませんと混乱を来すのではないかというような議論がある。その辺にどう対応していかれるのか。アメリカの方は
日本に急げ急げと、こう言いますけれども、といって、長い伝統と歴史で積み上げられた制度でございますし、その辺の持っていき方、これは大蔵大臣として大変難しい問題だと思う。この間のG5の結果、二百四十円から百八十円になってしまったということ自身も大問題ですけれども、金融自由化というのは及ぼすところいろいろあると思います。メリットもあればデメリットもあると思うのですがね。こういうことについて、短時間では御説明しにくいでしょうけれども、茶の間につながっていますので、わかりやすく御説明いただければありがたい。
-
○国務大臣(竹下登君) 金融、資本の自由化というのは、中曽根・レーガン会談以後、円・ドル
委員会というものができまして、私なりに客観的に見ますと、かなりスピードがかかって順調にきておると思います。
そもそもは、例えば銀行に例をとりますと、アメリカは今一万四千五百ぐらいございます。
日本は相互銀行を異称しまして百五十五でございます。ただ、明治三十四年には
日本も銀行が千八百あったことがございます。したがって、サウンドバンキング、すなわち健全経営という点においては
日本の方がすぐれておる。したがって、アメリカから見れば、
日本ではなかなか銀行が買収ができないが、
日本の金融機関はすぐアメリカの銀行を買収するじゃないか、こういう議論もございまして、とにかくお互いが対等な
立場で全都市場を開放して、さあいらっしゃいというような
状態をつくろうということになっておりますが、現在銀行の買収はございません。こちらは絶えず買収しておると、こんな感じでございますが、しかし、そもそも、今金融大国とかあるいは金融強国とか言われますときに、お互いそれが国際化していくということは、
日本の資金を調達する場合にも、運用する場合にも、マクロで見れば大変いいことだと思っております。
ただ、どうしてもその場合は金利のだんだん自由化と、こういうことになりますと、今大口から逐次自由化しておりますけれども、
日本には郵便貯金というものもございますし、また小口の金利自由化までにはいましばらく時間がかかるんじゃないか。そうなると、銀行は倒れないものだから
日本は貯蓄が高い、こう言われましても、いわゆる信用保険制度というようなものはこの辺で少しやっぱり充実しておこうじゃないかというので、今度
法律でお願いをしましたり、金融自由化しますために、さらに今東京証券取引所へも外国の証券会社が入ってまいりましたり、あるいは信託銀行が
日本へ進出してきましたり、そういう
状態にもございますので、特に中小企業金融ということになりますと、これから競争も激化いたしますから、地方の金融というものに徹して、なお健全経営をするような指導もこれからしていかなきゃならぬ。
さらには、今度の
法律でお願いしておりますのには、オフショア市場というのを開設しなきゃならぬ。これは外と外との取引でございますが、オフショア市場というものができるそうだが、どこの埋立地へどんな建物が建ちますかというような質問も時にはございますが、そういう質問がかえってまた国民の
皆さん方に金融自由化、国際化、
日本が大きな金融大国になったということのもとに理解していただける一つのきっかけになれば、そうした素朴な質問もまた是なり、こういうふうに考えて、これからも歴史的淵源がございますから、それを十分守りながら着実に国際化、自由化を進めていきたいものだというふうに基本的な考えを持っておるところでございます。
-
○
中西一郎君 いろいろ聞きたいことはたくさんあるんですが、先へ進ましていただきます。
内需拡大の問題です。民活法案も用意ができている、そしてビッグプロジェクトが並んだ。通産省もいろんな
計画を法案に織り込んでおられる。結構なんですけれども、私の考えでは、民活の方式というものを山間僻地あるいは
日本海側、建設省はいろいろおやりいただいていますけれども、そういった地域でのスモールプロジェクトに着目して民間活力導入を図っていただければ地方の経済の活性化にも役立つ、かように思うんですけれどもね。今の法案はどうもそこまでは手が届いていないような感じがするんですが、建設大臣、その辺いかがでしょう。
-
○国務大臣(江藤隆美君) 民活につきましては、
東京湾とか明石海峡大橋が代表的なものでありますが、今全国で、私が就任しましたとき五十八のプロジェクトが上がってきておりまして、それでは中央に偏りますから、地方の、おっしゃるような細かい直接の民需の拡大、景気回復に役立つものを拾い上げていく必要がある、こういうことで、二年間にわたる建設省内の蓄積をもとにいたしまして、建設大臣を座長とする民活プロジェクト推進
会議をつくりまして、実はけさも八時半から
会議をやったわけでありますが、今地方のそうした小さな、直接人々の生活に結びつくプロジェクトのいわゆる掘り起こしを懸命に進めておるところでございます。
-
○国務大臣(江崎真澄君) ちょっと補足して……。
今御要請のありましたように、全国的
規模でもっと行き届いた民活掘り起こしはないのか。これは今度法案を提出しました、先週の閣議で。民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法案、随分長い名称でございますが、これは通産省それから建設省、郵政、運輸、特に港湾は
日本海側にもあるわけですが、そういうところの空地を利用してこれを多
目的に利用しよう、こういう法案を一括法案にして、そしてその取りまとめに今の民活特命相として当たったわけです。これはもう既に国会に提出しておりますので、これが相当通産省もかぶりますし、運輸省の港湾関係、そこへ郵政の関係、だから工業技術の開発及び企業化の基盤施設だとかあるいは国際見本市、それから国際
会議場、これは都会が中心になりますね。しかし、情報化産業のいろんなセンターを整備していこうということも手広くやっていこう。そしてそれには、何といってもいろんな規制がかかり過ぎておりますから、総理もしばしば言われますように、公的規制の緩和、デレギュレーションの問題ですね、これを活発化しようということで、各省横の連絡を密にしまして今その調整に入っておるところであります。
-
○国務大臣(
渡辺美智雄君) 実は、私の後ろに
羽田農林水産大臣がおるんですが、国有林とかその他を使いまして、これは今江崎大臣が言ったように、小さなやつなんだけれども大変これは役立つということをぜひ紹介をしたいというので、さしていただきたい。
-
○国務大臣(
羽田孜君) いやこれは、ただ私が今個人的にそれこそ勉強しているあれなんですけれども、いわゆる国有林ですとかまた公有林、この空間的な利用ということが今方々で言われております。そんなときに、いろんな勤労者の方々と話しておりましても、主たる住居というものを、自分で例えば働く場所である都市でつくろうといってもなかなかできない。できれば地方に勤労者のためのセカンドハウス、こんなものをつくることができればな、そして公有林ですとか国有林、こういったところを長期で比較的安く借りることができれば、そんなことができるとおもしろいんじゃないか。そのために、主たる住居じゃありませんけれども、税制とか金融とか、こういった面で援助してもらうんだったら相当な戸数が建つのじゃないかということを言う
人たちがおりまして、そういうことが可能かどうか、実は私が個人的に勉強している話を
渡辺通産大臣とお話ししておったということであります。
-
○
中西一郎君
農林水産大臣、もう一つ。
今のお話に関連しまして、山の中にセカンドハウスをつくるのもいいです。これは御専門で言うまでもないことですが、この際宣伝の意味も兼ねまして、間伐材を使って家をつくるというようなことについて、リサイクル、先ほど来話が出た問題でもございますし、ひとつ胸を張ってこういうことをやりたいということをおっしゃっていただけませんか。
-
○国務大臣(
羽田孜君) 今実は申し上げましたのも、その背景には、そういった間伐材などを使いましたログハウスというようなものを建てたらどうかなという考え方を持っております。そして、今ちょうど農林水産省に、一昨日でしたか、小さなものでありますけれども、その間伐材によるログハウスの展示、この建物を今つくりました、本当に小さなものでありますけれども。しかし今地方では方々でそういったものが開発され、そしてそれの普及を図っているという
現状がありますので、こういったものを今申し上げたようなものとドッキングさしたら非常におもしろい、本当の意味での民活というものが起こるんじゃないかなということを考えております。
-
○
中西一郎君 これも
農林水産大臣。
国際森林年ですよね、今。
日本がこれにどういうふうに対処していくかということは、一番初めの問題とも関連するんですけれども、国際的な
立場で、地球全体を視野に入れて我々は対処していかなければならない時代に来たのではないかと申し上げたんですけれども、国際森林年に関連して、大きな構想で、世界の緑のために寄与するというような
立場を我が農林水産省はとれないものでしょうか。
-
○国務大臣(
羽田孜君) 先ほど先生からお話がございましたように、まさに
日本の、ちょうど戦後植えました人工林、この面積と同じぐらいが毎年壊廃しておるという
現状であります。そして
日本の国は、世界の木材の、何というんですか、交易量といいますか貿易量、これのほぼ四〇%を実は
日本が一国で買っておるというような
現状でありまして、こういったことからも、やはり
日本がみずからの国の森林というものに対していろんな対策をすると同時に、やはりいろんなノーハウというものを
日本は持っております。こういうものを特に今アフリカですとか、そういった地域にやっていくことが必要なんじゃないかなというふうに思っております。今日までも東南アジアですとか中南米、あるいは昨年からアフリカ地域、こういつたところにつきまして林業育苗訓練プロジェクト、こんなものも開拓しております。
なお、昨年が国際森林年であったということで、国際森林年記念シンポジウム横浜森林宣言というのが採択されております。ここでは、あすの人類のための森林の十年、これを設定することが提唱されており、その趣旨について、FAOの
理事会などの場におきまして関係各国の理解を深めたい、このように考えております。
-
○
中西一郎君 あわせて水産関係。二百海里、日米の問題、話がついたようですが、八年間で撤退するとか、近海もそうですし、沿岸
漁業もいろいろ力を入れておられるけれども、まだまだやりようがあるんじゃないかという感じもする。
水産についての御所見、いかがでしょう。
-
○国務大臣(
羽田孜君) ちょうど二百海里が制定されまして、制定されたというより本格化してまいりまして十年ぐらい迎えるわけでありますけれども、まさにその二百海里時代というのが今定着したなという感じがございます。そういった中で、日ソ、日米、非常に難しい実は交渉をし、ようやく
日本とアメリカの間においては妥結を見たというのが
現状であります。
しかし、その結果というのは決して生易しいものでないというのが
現状でありまして、そういうことを考えましたときに、やはり遠洋
漁業というものは非常に難しい事態になっておるなということを今我々は感じ、そういうことの事態を踏まえながら、やはり国内における、いわゆる二百海里専管水域内、この中における
漁業というものを真剣に考えなければいけない。そのためには、つくり育てる
漁業というものを進めなければいけないんじゃないかなというふうに思っております。
なおこれは、今二百海里の問題について申し上げましたけれども、我が水域内におきましても、イカなんかにつきましては、実は、なかなか
資源が今問題がございます。そういうことで、まず、我が国の二百海里内もいろんな問題がありますから、先ほど申し上げましたようなことを含めまして、我々としても、我が魚食民族の国民にきちんとした食糧を
供給する、そのためにも、また漁民の
皆さん方が生々と各地域の漁村においても活動できる、そんな体制をつくるために今検討を進めておるところであります。
-
○
中西一郎君 イカの問題についてお話がありましたから、これは聞きません。いろんな難しい問題を
漁業組合抱えていますので、善処をお願いしたい。
なお、これはもう答弁要りません。時間の関係があるし、私の時間も大分残っていますから、自分でちょっとおしゃべりをせにゃいかぬ。
そこで、
農林水産大臣、聞いておいていただきたいんですけれども、食糧の自給度たびたび話が出ますが、カロリーベースとか穀物ベースとかいろいろ言う。どんどん食糧が入ってきていますね。それも自給度を減らす要素になっている。これは当然なんですけれども、問題は、先ほど非常事態の場合にちょっと触れましたが、スイスなどというのは、まさかの場合に備えての食糧の自給
計画を持っているわけですよね。三千カロリー以上食べておるんでしょう。しかし、それのカロリーを二千数百カロリーまで落とすという
計画も持っている。そのときに、例えば牧野ですね、あそこは酪農が盛んですから、牧野にジャガイモを植えるという
計画も既に持っている。家庭は家庭で二週間分とかの備蓄をする。地下室を見てみるといろんなものが置いてございますよね。そういうような意味での、まさかのときの食糧について、それを確保しておくための考え方に立った自給度というものを考える必要があると思うんです。これはどうしましょう、御答弁されますか。聞いておいていただければ結構ですから、勉強していただきたい。
それから、民間技術がいろいろございます。例を挙げると時間がかかりますから申し上げませんが、私の県には、例の科学技術博覧会へ出した一本のトマトの木に一万何千個、あれは力いっぱい生命力を発揮させますと三万個できるといいますが、それだけじゃない、いろんな民間技術がある。どうも農林水産省の今までの民間に対する接し方というのは、あれはアウトサイダーだ、余り関係ないんだ、だから批判はするけれども協力を求めることをしない。何かそんな感じが、私農林水産省出身ですけれども、するわけです。新しい時代ですから、もうそういう狭い視野でなしに、広く情報をとって、広く意見を聞くというような体制をとってほしい。質問取りに来られた方にちょっとそういうことを言っておきましたが、何か一歩か二歩か前進しておるようですけれども、答弁要りませんから、心得て、ひとつ大臣の職責を果たしていただきたい。
ほかにもいろいろございますが、次は円高・デフレ対策で、通産省の関係ですか、いいですか。
特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、国際経済調整対策等特別貸付制度、いろいろある。これをやろうとしたら、ヤイターさんがまた、それは輸出奨励策じゃないかというようなことで水をかけてきた。これはどう考えるんですかね、円高不況で大変な業種が多いんですからね。
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○国務大臣(
渡辺美智雄君) これは一月の半ばごろ私が訪米をしたときにも問題になりまして、非常に内容を誤解いたしておるということが私わかったんです。非常に神経質になっておって、
日本はまた円高になって中小企業がおかしくなった、そこで官民一緒になって金を出させて、補助金をつけて立て直しをしてまたもう一遍攻め込んでくる、そいつを始めるんじゃないかというような誤解を持っておった。非常にそれについて通産省、外務省一緒になりまして説得工作をやってまいりまして、大体ごく最近は理解を得たものと思っております。
-
○
中西一郎君 四全総の関係ですけれども、国際交流が活発化していく、交流の時代だというのでいろんな
計画をつくっておられる。莫大な金額がかかるようですね。それはそれとしまして、大都会へ集中するのはやむを得ないかのようなお考え方のように感じる。というのは、国土の均衡ある発展ということが片っ方あるわけですよ。その辺の調整をどうしていくんだということを考えましたときに、小さな話になるんですけれども、東北地方で言えば東と西、我々瀬戸内の方へ行けば北と南、
横断道路というんですか肋骨道路というんですか、そういうものが必要だと思うんですがね。そういったような発想は、
計画の中に取り入れていただいておるのであろうかどうか。入れていただきたいなと思うんですが、これは
国土庁長官と建設大臣、どちらからでも結構です。
-
○国務大臣(
山崎平八郎君) お答えいたします。
おっしゃるとおり今後この秋を目標に四全総の策定、これに向かって今努力中でございますが、先生おっしゃるとおり、確かに我が国が近年国際化が一層進みまして、特に東京圏、ここへ金融機能とか情報機能などが、中枢管理機能もあわせまして非常に集中しております。しかしまた、一万
人口も増加基調でございます。そこで、安全な国土づくりを行う上でも先生のおっしゃるとおり国土の均衡ある発展が非常に重要でございまして、中枢管理機能の各地域での適切な分担ということを考えながら、
人口の地方定住を図るための諸
施策を、現在おっしゃる四全総の策定作業におきまして鋭意努力中でございます。御承知のように、全総に始まって新全総、ただいまの三全総、そして四全総に向けての努力中でございますが、特に三全総は定住が中心の構想でありますけれども、これに実は交流という面を加えまして、いろいろ
交通、通信、もろもろの各都市との交流を図ると、この趣旨でございます。
-
-
○国務大臣(江藤隆美君) 高速自動車道路は、
昭和六十二年をもって熊本の八代と宮崎のえびの間を除いて北から南まで完全に縦貫道路はでき上がると、こういう
状態にございまして、七千六百キロのうちのおおよそ三千七百キロが現在供用開始中である。したがいまして、私はこの前の国幹審で申し上げたんですが、もはや高速道路は縦貫道路の時代を終えて、まさに
横断道路の時代に入ってきた、それがやっぱり地域開発であると、こういうふうに思っております。
また同時に、第九次道路整備五カ年
計画の中でいわゆる高規格高速道路の指定をするということになっておりまして、今全国都道府県の要望をまとめておるところでありますが、新たに高規格幹線自動車道路に編入してもらいたいという希望は何と九千五百キロあるわけでございまして、今後この秋の国土庁の四全総の決定をまちまして、私どもは
昭和六十二年度なるべく早い時期にこれのいわゆる新しい
計画への編入をいたしたいと、こういうふうに準備を進めておるところでございます。
-
○
中西一郎君 これは聞こうと思ったんですけれども、こちらからの要望にとどめます。
それは下水道関係、随分予算が要りますよね。四全総でもそういう計算にならざるを得ないと思う。一番初めの話のリサイクルに関係するんですけれども、そのリサイクル技術というものをユーレカ
計画に負けないような
規模でやっていこうという先ほどの総理のお話もありましたが、技術開発によって通産省もおやりのようです。建設省もやっておられるようですね。アクア・ルネッサンス、それから建設省はバイオ・フォーカス・ウオーター・トリートメントですか、こういうことについて力を入れていくことによって資金の有効な活用も図れるし、水
資源の有効利用も図れるし、何といいますか、一番初めに堆肥の話も出ましたが、いろんな技術開発は可能だろうと思いますが、そういったことについて力を入れてもらいたい。
それから運輸大臣ですが、国鉄等はもうたびたび話が出ていますから、海運と造船の不況対策、これにひとつしっかり力を入れてやっていただきたい。――わかりました。じゃ、御答弁は要りません。
それから通産大臣。これは都市の空洞化といいますか、大都会の
人口が減りまして、大分例があると思うんですけれども、商店街とか小売市場が寂れていくわけです。お店が歯抜けになっていく。そこへまた入ってくる方もございますが、全体としまして商店街とか小売市場の問題にどう対応していくのか、民活関連もあり得るでしょうが。
それから、建設省の方では市街地の活性化ですか、おやりになっておるようですが、これは中小企業の人がたくさんいますので、簡単な答弁で結構ですが、決意の表明をしていただきたい。
-
○国務大臣(
渡辺美智雄君) 商店街はただ物を売るというだけでなくて、それでは人が集まりませんから、なるべく若い人が集まれるように地域住民の憩いの場になったり、集まっていろいろなことができるような施設を商店街の中に何かつくってやる。そういうふうなことでコミュニティ・マート構想というのをことしの六十一年度でモデル事業としてやっておりますが、それをさらに一段と拡大してやってまいりたいと思っております。
-
○国務大臣(江藤隆美君) 建設省も近ごろは少しハイカラになりまして、シェイプアップ・マイタウン
計画というのを持っておりまして、ことしは七地区それから来年度は
土地区指定をいたしまして、商店街近代化資金等々あわせていわゆる小市街地の再開発事業をやろう、そして商店街の活性化あるいは公園、緑地あるいはまたそういう憩いの場所、そういうものをつくっていこうということで今進めておるところでございます。
-
○
中西一郎君 これは法務大臣ですけれども、外国人登録法、指紋の問題ですが、五十七年に改正された。だんだん年数がたってきておるんですけれども、まさに国際化時代と言わざるを得ない。ヨーロッパ諸国、まあ諸外国いろんな例がございましょうが、端的に申しまして、手帳の交付期間といいますか、指紋をもう一遍押してもらう、五年ごとになっているらしい。これを一年でも二年でも延ばせという陳情があるんですが、いかがでしょう。それが一点。
それから、国際化時代なんで外国人弁護士の問題が起こっていますね。どういうふうな相互主義でいくんでしょうか、まだ問題が残っておるようですが、現段階でどうなっているか。その二点。
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○国務大臣(鈴木省吾君) 先生もお急ぎのようですから簡略に答弁を申し上げさせていただきます。
指紋の問題ですが、これは五十七年の九十六国会で改正をさせていただきました。したがって、五年というふうに決められておりまして、昨年がその年に当たったものですから大変な切りかえの員数になりまして、三十七万ほどになりましたけれども、御理解をいただきまして九七%は済んでおります。残り一万ほどのうち拒否というのは二千五百人、〇・七%、保留というのが八千九百人ほどおりますが、これは逐次御理解をいただいて順調に進めてまいろうと思っております。
それから、制度そのものは、御案内のように
日本人でありますと戸籍、それから住民台帳その他でどこのどなただかという確認が容易でありますけれども、外国人でありますとそれがなかなか容易でありません。特に国際化時代を迎えまして大変な往来があるわけでございます。さらにまた不法入国、不法滞在等も後を絶ちません。そういうようなことで、どこの国のどなたであるということを確認するのになかなかいい方法がございません。外国人といえどもその安全を守ってあげなきゃなりませんし、またその人の権利等も守っていかなきゃならぬ。それについてははっきり同一人であるということを確認する。それには写真その他ではまだ不十分でございまして、いろいろメーキャップされたり髪形を変えられたりするとなかなか容易でございません。指紋だけは万人不同、それから永久不変だそうでございます。
さようなことで、アメリカを初め韓国、ヨーロッパでも二十数カ国、三十カ国に近い国が実施をいたしております。しかもまだ先生御案内のとおり、五十七年の九十六国会でその指紋の問題を含め、あるいはまた外国人登録証を常時携帯しているという、その問題を含めて国会で御審議をいただいて決定していただいた経緯がございますので、しばらくは今の制度でやりたい、かように考えております。
それから外国人弁護士の問題。これは先生既に御承知でございますから詳しく申し上げませんが、貿易摩擦の一環としてアメリカそれからECからも要求をされております。しかし、これは各国の司法制度の問題、とりわけ弁護士制度の問題と深くかかわり合いを持っているわけでございます。
日本の弁護士は、御承知のように完全な自治権を持っておるわけでございます。そこに入ってくる問題でございますので、日弁連と法務省は数次にわたっていろいろ協議をいたしました。幸い日弁連も二月の六日に大綱を決めまして、こういうことでお入りいただいたらどうだろうという案を法務省に持ってまいりました。法務省といたしましては、その案をもとにアメリカ等と交渉をいたし、おおむね大綱においては合意を見ておるのでありますけれども、若干まだ未調整のところがございますので、至急その点を詰めまして、できれば、その結果法案を作成して今国会に提案をしたい、かように考えておる次第でございます。
-
○
中西一郎君 厚生大臣、先ほど御答弁をいただいたのですが、障害者の関係で国際障害者年、今進行中でございますね、そろそろ五年目を迎える。何が実現されて何が残されているかというような総括評価を行う必要があるかと思うんですが、その辺について御所見はどうですか。
-
○国務大臣(今井勇君) 障害者に対します長期
計画のことでございます。
障害者対策に関します長期
計画というのは、御案内のように一九八二年から一九九一年まで十年間の障害者対策を定めたものでございます。その中間時点でそれまでの
施策の成果を評価、総括いたしまして、後半におきます
施策についての再検討を行いますことは、
施策の効果的な推進を図る上で極めて有意義なことだと考えております。したがいまして、御提案の方法も含めまして、その具体的な方策について関係省庁と十分協議いたしまして効果的な推進に努めてまいりたい、このように考えておるものでございます。
-
○
中西一郎君 総理に伺いたいのですけれども、総理は政府の障害者対策推進本部の本
部長と聞いています。本
部長としまして、この五年たったということを踏まえて、国際障害者年中間年というものを設定してこの問題と強力に取り組むことについてお考えがございましょうか。
-
○国務大臣(
中曽根康弘君) 国連では一九八七年に前半期の評価、総括を行うこととしておりますので、我が国においてもそれにあわせてこれまでの
施策の成果についての評価、総括を行い、後半における
施策を再検討し、その効果的な推進を図ってまいりたいと思います。
-
○
中西一郎君 厚生大臣、これはまだ微々たる事例しかございませんが、老人施設とか障害者、軽度の身体障害の場合が多いと思いますが、その施設内でいろいろな作品をつくる、さらに商品をつくる、売れる物、野菜をつくるというようなことをやろうとしておるグループもある。これは
農林水産大臣の所管になりますけれども、要するに自助、自分の力で生きていこうという手段を開発することによって、施設に入っておる
人たちが生きがいを感じるようになっていくんではないかということが問題たり得ると思うんです。まだそう進んでいないと思いますから答弁は要りませんけれども、ひとつそういったことについて関係省庁とよく連絡をとりながら、先端技術というようなことになりますと、ボタン一つで何かうまく物ができるのかもしれないというようなことも考えて、施設の何といいますか、独立採算といかぬまでも経費の幾らかは自分で生み出していくということが喜びにつながるんではなかろうかと思いますので提言をいたしておきます。
-
○国務大臣(今井勇君) 全く同感でございまして、やっぱりこれからの方々、特に障害者とか体の不自由な方々に対します福祉の問題につきまして、さらにそういった方々の活動分野を拡大するためにはやっぱり福祉のすぐれた機械とか、それから作業設備の開発が必要であると考えております。たまたま厚生省では国立の身体障害者リハビリテーションセンターというのがございますので、そこを中心に、今関係機関とも協力しながらそういった研究開発に努めているところでございまして、御趣旨に沿いましてせっかく勉強いたしたいと、かように考えております。
-
○
中西一郎君 北方四島の問題なんですけれども、この間うちから、八年間断絶しておった日ソ外相
会議が再開された。非常に結構なんですが、はっきりしない点があるんです。平和条約で領土問題を除外しないことを認めさせたことは成功であると言う向きもある。あわせまして、シェワルナゼ外相は帰ってからでしょうか、共同声明があった後ソ連での発言、領土問題では一歩も譲っていないと言っていたという報道もある。玉虫色に書いてあるので、
日本政府が自画自賛しているのだという説もある。その辺、外務大臣いかがでしょう。
-
○国務大臣(
安倍晋太郎君) これはもう非常にはっきりしております。
日ソの共同声明におきまして、我々は三時間近く領土問題について協議したわけですし、これはあくまでも日ソ平和条約の交渉ということを前提にして協議したわけです。そして、今後ともこれを続けていくということはもう両国間で確認し合っているわけであります、それは共同声明にはっきりと盛り込んでおるわけですから。具体的にも、過去の問題として、実際領土問題を含めて日ソ平和条約交渉を行ったということを合意しているわけですし、これからもやろうということですから、これはもう明快でございます。国民の皆様にもよく御理解いただけると私は思っております。
この次私が参りますときは、領土問題をさらに協議をしながら平和条約交渉を行ってまいりたい、この基本は両国間で合意しておりますから今後とも変わらない。これまではテーブルに着くということを拒否しておりましたけれども、今後は、テーブルに着いて領土問題も含めてこの日ソ平和条約交渉を行うということでございます。しかし、協議は行いますけれどもソ連の態度は変わらない、ソ連は領土問題についての自分たちの考え方は変わらない、こういう姿勢でございます。しかし、テーブルに着くことはソ連も認めておる、こういうことであります。
-
○
中西一郎君
北海道開発庁長官、今の話に関連しまして、根室一市、それから四町、あの辺の地域振興についていろいろ御高配いただいておると思うのですけれども、
現状はいかがでしょう。
-
○国務大臣(
古賀雷四郎君) お答えいたします。
北方領土隣接地域、これは全国民の北方領土返還運動の重要な拠点であります。また北方領土問題未解決のために望ましい地域社会の発展が阻害されているという特殊な事情のもとにありますので、このような事情にかんがみ、この地域の振興を図って安定した地域社会をつくりたいということで進められているものでございます。
このため、
北海道開発庁としましては、北方領土特別措置法に基づく同地域の安定振興
計画の推進に努めておる次第でございまして、安定振興対策事業としては、地域の基幹である農業、水産業を中心とした産業の振興、道路、港湾、空港等の産業基盤、国土保全施設及び住宅、下水道等の生活基盤の整備等を広範にわたって行っております。これらの事業は、毎年度地元の要望に沿うように、その重点的実施を図っているところでございます。
なお、隣接地域の振興等の基金が設けられておりますが、その活用によりまして、水産
資源増大のための事業等、地域に密着した必要な事業が積極的に実施できるよう特段の配慮をいたしております。私としましては、今後とも隣接地域の安定振興のための諸
施策を関係省庁の協力を得て積極的に推進してまいりたいと考えております。
以上。
-
○
中西一郎君
あとちょっと要望もしておきますが、
沖縄開発庁長官、やはり
古賀さんですが、第二次振計ひとつしっかりやっていただきたいということが一つ。
それから、国際交流センターも大分機能を発揮しておるようですが、国際化時代と言われておる時代なんですが、もうみんなあそこへ行って大変驚嘆するらしいですね、施設などを見て。そういう意味で大いに宣伝をして有効に使っていただければ幸いだと、要望させていただきます。
それからもう一つ、これはだれに言ったらいいのかよくわかりませんが、今の、北海道の一市四町の振興と沖縄、これは歴史的ないろんな経過があることは御承知のとおり。もう国体も各都道府県を一巡しましたし、次も決まったらしいですけれども、これからは根室地域と沖縄と輪番で国体を隔年にやっていく。各都道府県の若い
人たちが北の問題にも沖縄の問題にも関心を持つというふうな機会を与えたらどうだというふうにかねて私は思っておるんですけれども、そういったことを各閣僚念頭に置いていただいて、今すぐ御返事は要りませんけれども、そういうことをお考えいただければありがたい、申し上げておきます。
それから、
あと幾つか用意しておるんですが、最後に戦後処理問題、これは通告していなかったかもしれませんが、官房
長官のところでいろいろ御苦労をいただいておる経過があるわけですが、シベリアとか軍人恩欠とか、あるいは在外資産とかございますね。調査費をとって調査しておられるようです。何といいますか、私が質問すると言ったら、必ずその質問の中に入れてくれという要望までありましたから、
現状をひとつ
皆さんによくわかるように簡単にお願いしたい。
-
○国務大臣(
後藤田正晴君) この問題、かねて各方面で何とかひとつ個人
補償云々といったような御要望の強いことは承知をいたしております。
そういうことで、二年間、官房
長官のところに有識者にお集まりをいただきまして、それぞれのお
立場で御意見を拝聴したわけでございますが、その結果、いわゆる個別
補償の問題についてはいろいろな議論がありましたけれども、結論としては、国としてはこれ以上の措置をとることは必ずしも妥当ではなかろう。しかしながら、大変お気の毒なお
立場にあることはこれはもう申し上げるまでもないことでございますから、やはりこういった万々のお
立場を考えて、特別な基金を設けて対処したらいいのではないか、こういう大方の御意見でございました。その御意見を踏まえまして、政府としましてはこの基金の
規模、あるいは基金の内容、あるいは基金をつくった場合の運営、こういったようなことを検討しなきゃならぬ段階になりまして、それにはやはり恩給欠格者の方々、あるいはシベリア抑留者の方々、あるいは在外資産の
補償を要求している方々、もうたくさんいらっしゃいますから、それぞれ一万人のこれは無抽出のサンプル調査をいたしまして、それで現在実情の調査中でございます。その予算もちょうだいをいたしております。
ただ、基本的な考え方は今言ったような特別基金の運営と、こういうことでございますが、私はやはりこういった場合には政治としては温かい、血の通った措置をとるのが一番大切なことではなかろうかと、こう考えておりますが、いずれにいたしましても実情調査の結果を見まして政府としては今後の対応を考えていきたいと、かように考えております。
-
○
委員長(
安田隆明君) 以上で
中西一郎君の
質疑は終了いたしました。
明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後六時五分散会